NHK朝ドラ『花子とアン』『ごちそうさん』『あまちゃん』…ストーリーを勝手に解釈&裏読み … ほぼネタバレ…
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2013年04月30日 (火) | 編集 |
第26話

アキが初めてウニを獲った時の映像、これがインターネットで大反響を呼び、問い合わせが後を絶ちません。

観光協会も北三陸駅も朝から電話の応対に大わらわです。

「アキちゃんね、地元の現役の高校生なんですよ」

「はい今週末、土日限定で天野アキちゃんが北三陸鉄道に乗ります」

「北鉄のユイちゃんも1日車掌で、そうなんですよ、ユイちゃんとアキちゃんの夢のコラボで … アッハッハハハ」


大吉が愉快そうに笑いながら電話しているのを、アキとユイは駅の待合室で複雑な気持ちで聞いていました。

「もちろん、写真撮影OKです。お待ちしております」

電話を終えた大吉はやっとふたりの元にやって来ました。

「参ったよ、ずっと電話鳴りっぱなし」

参ったと言う割に緩んだ表情の大吉はいきなり「どうだい?」とアキに聞きました。

「どうだいって、もう決定している言い方でしたよね? 夢のコラボとか」

アキに代わってユイが不満そうに答えました。

「そりゃあ、最終的には本人次第だけれど、海女クラブにとっても絶好のPRなんだど」

「んだんだ、アキちゃんさあこがれて、海女になる後継者が出てくるかもしんねえ」


大吉と吉田の言葉にアキの心は少し揺れました。

「どうだい、やってみねえか?」

… … … … …

「わがった」

アキが首を縦に振ってしまったのでユイが心配して聞き返しました。

「えっ、アキちゃん平気なの?」

「海女の格好でウニ丼売るだけですよね?」

「写真撮られるんだよ、いろんな角度から狙われるんだよ」


吉田が自分と大吉がしっかりガードするからと安心させました。

「あ、何ならユイちゃんも海女の格好してみっか?」

悪乗りした大吉を吉田が、ユイはミス北鉄なんだから「趣旨が違う」とたしなめました。

「いやいや、ここらでライバルに差つけねえと」

「ライバルって?」


アキには大吉の言っている意味が分かりませんでした。

ユイとアキのことを交互に見比べる大吉。

「じぇじぇ、ライバルなんてやめてけろ! おらとユイちゃんではレベルが違い過ぎる … 」

恐れ多いと慌てるアキですが、ユイの返事は …

「私やります、海女の格好してウニ丼売ればいいんでしょ? 全然平気、できる、やる!」

「じぇじぇじぇ」


大吉は半分冗談、ダメ元で言ったことでしたが、ライバル心を煽ったことが功を奏しました。

見かけによらず、ユイは負けず嫌いでした。

… … … … …

「祖母ちゃんが作ったウニ丼いかがですか~?」

肩からウニ丼の入った番重を下げた海女姿のアキとユイがホームに現れると、電車に乗ってきたオタクたちが一斉にふたりを取り囲んで、ウニ丼を買うやら写真を撮るやらで大騒ぎとなりました。

「こりゃ、正にうれしい悲鳴ですねえ」

吉田の言葉にうなずいた大吉は絶叫しました。

「うれしい、じぇじぇだあ!」

… … … … …

用意したウニ丼は5分で完売。早速、夏の元に追加注文の電話が入りました。

作業小屋では、海女クラブのメンバーが総動員でウニ丼作りに協力しています。

「あと何個作れる?」

「この分だと、午前中でウニ足らなくなるど」


弥生の返事に夏は頭を抱えましたが、組合長が八戸の業者から、昼までに追加のウニが10キロ届くように手配してくれましたのを知って、俄然張り切り出しました。

「ナンボでも注文受けろ!」

そこへ起きてきたのが春子、寝起きの機嫌悪さなのか …

「何、朝から騒いでるのよ?」

出来上がったウニ丼の山を運び出しながら、かつ枝が答えました。

「アキちゃんとユイちゃんが車内販売してるんだと」

「えっ?」


… … … … …

走行中の車内でもウニ丼は飛ぶように売れていきます。

電車が駅に戻れば、次は撮影会です。

夢のコラボ、奇跡のツーショット、アキも笑顔でVサインです。

その様子をリアスから不満顔で見ていたのは春子でした。

… … … … …

一日が終わり、一同が梨明日に集まっての打ち上げが始まりました。

ステージに上がった吉田がマイクを握りました。

「というわけで、本日の利用者数 … 3,080人でした!」

歓声が上がり、拍手喝采、クラッカーを鳴らす者もいました。

「これはもちろん今年度最高の数字です … そして、ついに9月の収支、黒字になりました!」

ひときわ大きな歓声がまた上がりました。

「大吉さん何年振りね?」

商工会長の今野に聞かれても、はるか昔のことなので大吉にもわかりません。

吉田は自分が入社してから初めてのことだと言いました。

「駅長、乾杯のご発声を!」

指名を受けた大吉ですが、うれし泣きでうまく言葉が出てきません。

「泣くな!」

弥生が一喝しました。

「はい、思い起こせば24年前、この北三陸鉄道が皆様のあつい、あ … 」

埒が明かないと判断した弥生はもう一回、どなりつけました。

「泣け!」

声を上げて泣く大吉に代わって夏が音頭を取りました。

「乾杯!」

… … … … …

グラスを鳴らしあう人たち。

ずっと冷めた顔をしていた春子が、人知れず大吉のことを店の外に連れ出しました。

「え、何だって?」

大吉は春子の言葉に耳を疑いました。

「だから、今日限りで辞めさせてって言ってるんです」

「でも、アキちゃん明日もやるって … 」


大吉の言葉を遮り春子は毅然と言いました。

「許しません! … ごめんね、親バカで、でも耐えられない、見てられないのよ、娘が見世物になって」

考え過ぎだと大吉は言いましたが、春子は譲りませんでした。

「浜では平気なの、でも海女の格好して電車乗ったり、愛想振りまいたりするのは何か違うんじゃないかなって … 」

… … … … …

「何にも違わねえべえ」

アキとユイを従えて店から出てきた夏が口を挟みました。

「観光海女はサービス業だ。お客さんが喜んでくれたらそれでいい、それでお客が増えれば本望だ … 浜でも電車の中でも違わねえべ」

春子はあえて反論せずにアキに尋ねました。

「アキはそれでいいの?

… 駅弁売ったり、チヤホヤされたり、写真撮られたり、そんなことする為にここで暮らしてるの? … 違うんじゃないの?」

「わがんねえ … 」

「それじゃ困るのよ、もう子供じゃないんだから!」


… … … … …

「海女さんだけじゃ生活できねえのはよくわかった … でも潜るの好きだし、ここが好きだし、皆が好きだし、他さ行きたくねえし … だから今は皆の役に立てればそれでいい」

アキは何も考えずにただ大人たちの思惑に乗っている訳ではありませんでした。

それがわかった春子はもう何も言えませんでしたし、夏は成長した孫の姿をうれしく見上げました。

「今日は一日、ユイちゃんと一緒で楽しかったし」

天真爛漫に笑ったアキ、ユイもうなずきました。

「さあ、そろそろ年寄りは帰って寝るべえ」

夏はアキとユイを連れて帰って行きました。

… … … … …

「今日は、おめえらおかげで忙しかった」

帰りの北鉄で笑いながら話す夏。

「どうしたの?」

ユイはアキが何だか元気がないように見えて声を掛けました。

「なんでもねえ」

笑顔を作ったアキ、ユイはそれ以上聞いてはきませんでした。

しかし、アキはやはりさっきの母の言葉が気にかかっていたのです …

… … … … …

お開きにした梨明日には春子の他、大吉と保の2人だけが残っていました。

「確かに観光客の多くはアキちゃんとユイちゃんと鉄道目当てだ … でもあくまでもきっかけだ、そこからどう広げていくか、それが町おこしの課題さ」

「うん、でもいつまでも女子高生ふたりにおんぶに抱っこっていうのも不味いべな」


建て前と理想を言う大吉に保が現実的に答えました。

「おらだって最初は抵抗あったさ、ああいうやや偏った客層を相手にするべきかどうか … 北鉄のユイちゃんや海女のアキちゃんを主人公にしたマンガを勝手に描いて持ってくる輩と真剣に向き合っていくべきなのか?」

「え~えっ?!」


大吉が話したマンガ、保が薄い本を取り出して春子に渡しました。

「 … 中身は意外に普通でした」

ページをペラペラとめくる春子。

「とにかく先輩も俺も最初はオタクっていう人種さ偏見ば持ってた。ところが、ちゃんと話してみたら素直だし真面目だし、マナーもキッチリしている … 

ま、動機はともかく、おらんどが生まれ育ったとこさ、あんなに大勢の人来てくれるってのは、それだけでうれしいべ」

「そういうもんかなあ」


春子にはいまいちわからない感情でした。

「今日、ホームさ人さあふれてるの見て、おら開通式のこと思い出した … 1984年7月1日、春ちゃんが出て行った日のことさ」

… … … … …

「あの日がこの町のピークだった … あんなことは二度と起こらねえ、いやあれは夢だったと半ばあきらめてた … ところが今日、もう一度奇跡が起こった」

『うれしい、じぇじぇだあ!』

「まるで24年前のあの日みてえだった … 何だっけ、こういうの? え、何とかって言うべ … まめぶ、じゃなくて」

弥生みたいなことを言う大吉に春子が教えました。

「デジャヴ!」

マンガに気を取られていた春子は、いつの間に保の姿が消えていたことに気づきました。

知っているのか知らないのか、大吉は語り続けています。

「開通式に出てった春ちゃんがアキちゃん連れて帰ってきて、そのアキちゃんが海女になって観光客いっぺえ呼んで、こんなにうれしいことはねえべ」

… … … … …

「っていうか、菅原君は?」

「 … 先に帰った、先輩からの無言の圧力を感じてな」


及び腰になる春子、いきなり大吉は立ち上がりました。

「春ちゃん! 帰ってきてくれて、本当にありがとう」

… 奇しくも小百合と同じセリフを大吉の口から聞いた春子でした。

最敬礼をする大吉、照れた春子は菅原を探すフリ(?) …

… … … … …

次の日も大勢の観光客が北三陸を訪れました。

「あの海女のアキちゃん … 」

男がアキだと思って声を掛けた海女の格好の女性、振り向いた顔は似ても似つかぬ、漁協の新事務員・花巻珠子でした。

「 … すいません、間違えました」

ウニ丼を売っているのが別人とわかると、男は買わずに立ち去りました。

しかし、駅にアキの姿はありませんでした。

今日のアキは作業小屋でウニ丼を作る方の手伝いをしていました。

そこへ、姿を見せないアキを心配したユイが顔を出しました。ユイはすでに海女姿に着替えています。

「迎えに来ちゃった」

「ユイちゃん … 」


… … … … …

「やっぱりつらかった? 写真撮られたり、握手してきたり」

アキは頭を振りました。

「じゃあ、どうして?」

「昨日、お母さんに言われたことが … 」


『駅弁売ったり、チヤホヤされたり、写真撮られたり、そんなことする為にここで暮らしてるの?』

「やっぱり、おら、ユイちゃんとは違う。ただ潜りたくて海女やってるんだ」

ユイはうなずきました。

「容姿にも自信ねえし、接客が上手いわけでもねえ、潜る以外なんの取柄もねえ、なんもできねえ、ただの女子高生だ」

「そんなアキちゃんにわざわざ遠くから逢いに来ている人がいるんだよ」


ユイに言われて、アキは初めてそのことに気づきました。

「ただの女子高生のアキちゃんが海に潜ってウニ獲ったから、100万回も再生されたんじゃん」

「そうだけど … 」


ユイはお姉さんが言い聞かせるようにアキに話しました。

「容姿とか接客とかそんなの関係なくてね、アキちゃんは十分『かっけえ』んだから」

そう言われてもいまいち自分に自信が持てないアキです。

「そんなに潜りたいのか … じゃあ、1年中潜れるいい方法知ってるよ」

ユイの一言で、アキの表情が一変して、目が輝き始めました。

「え、なになに?」

「明日、学校で教えてあげる … だから、今日はちょっと頑張ろうよ」

「うん」


その日もふたりで120個のウニ丼を売り切りました。

… … … … …

そして、次の日 …

放課後、アキはユイに手を引かれて、今まで訪れたことのない校舎棟に連れて行かれました。

「覗いてみなよ」

ユイが指差したのはその建物に取りつけられている丸窓でした。

そっと覗いたアキは、目を見張りました。

「じぇじぇじぇ!」

そこから見えたものは … まるで水族館のように張りつめられた水の中、ホースにつながれた宇宙服のようなものを着た数名がブクブクと気泡を吐きながら漂っていました。

一体これは何なのでしょう?

… 続きは明日。


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2013年04月29日 (月) | 編集 |
第25話

年に一度の「本気獲り」、アキはとうとうウニを獲ることができました。

2008年10月4日(土)

「本気獲り」が終わってすぐに安部ちゃんは、まめぶの使者として岩手物産展に参加するために袖が浜を後にしました。

小百合が旅立つ朝、アキと夏、海女クラブの仲間、組合長が袖が浜駅まで見送りに来ていました。

しかし、春子の姿が見えないので夏はご立腹です。

「寝坊か、だらしねえ、同級生の門出だっていうのに」

宮古行きの各駅停車がホームに入ってきました。

「安部ちゃん、我慢すんな、まめぶさ限界感じたらすぐ帰えってこいよ、ええか」

夏の言葉に小百合はうなずきました。

「ダメでもな、安部ちゃんのせいでねえぞ、まめぶが悪いんだ」

「んだんだ」

「来年の夏も潜ってるから、帰ってこいよ」


… 失敗することを前提としたようなハナムケの言葉 … 帰るところはある、待っている仲間もいる、安心して精一杯やって来いというエールの裏返しなのでしょう。

「上り各駅停車、宮古行、まもなく … 」

電車の入り口に手を掛けた小百合、弥生がアキを促しました。

「アキ、おめえ、ちゃんとお礼言わねえと」

半べそのアキは、一歩前に出て小百合に頭を下げました。

「面倒見てもらって、どうもありがとう」

「アキちゃん、頑張ってね」


小百合に頬をポンポンと軽くなでられて、泣き笑いのアキです。

「大体、一言ずつしゃべりました? じゃあ、そろそろ行きますんで」

「待てっ!」


電車を発車させようとした車掌の吉田を大吉が止めました。

… … … … …

「あんべちゃ~ん!」

ホームに駆け込んできたのは春子でした。

「よかった、間に合った … これずっと借りっぱなしだったから」

息を切らしながら、春子が小百合に手渡したものは、隠し部屋で見つけた昔借りたままのゲームのカートリッジでした。

「安倍さゆり」と自分の名前が書かれたカートリッジを見つめる小百合。

「あ、今更返されても困るか … 本体ないもんね」

発車時間が過ぎたので、吉田が急かしました。

「春子さん … この際だから言っちまうけど、私、春子さんのこと嫌いでした」

「えっ?」

「ごめんね、許せませんでした」

「 … 安部ちゃん」


突然の告白(?)に春子は言葉を失いました。

… … … … …

「うるせえっ!」

ヤキモキしている吉田を大吉が一喝しました。

… 小百合の話は続きます。

「女子大生にあこがれてたんです。高校の間だけ海女やって、卒業したら、仙台か東京の大学に進学して、OLやって、おしゃれするって … それなりに明るい未来を思い描いていたんです。

でも、同級生の春子さんが突然家出して、それで海女クラブ抜けづらくなっちゃって … 海女やりながら働いて、だけど春子さんの代わりにはなれねえから、勝手にプレッシャー感じて … 

今思うとバカみてえだな、春子さんとおらでは全然、全然違うのに … 」


自嘲して笑う小百合に春子は答えました。

「うん、全然違う … 安部ちゃんみたいに優しくないもん、私」

「でも、この3ヶ月、すごい楽しかった … いろいろ話せたし、アキちゃん可愛いしいい子だし … やっと、24年分の埋め合わせできたような気がする …

帰ってきてくれて、ありがとう」


小百合の目に光るものが、そして春子に頭を下げました。

「ごめんね、安部ちゃんごめんね」

春子も泣きながら小百合を抱きしめました。

… … … … …

しばらく抱き合った後、小百合は春子の腕を解くと後ろにいた大吉の腕を取って春子の前に引っ張り出しました。

「大吉さんのこと、よろしく頼みます!」

… 自分では春子の代わりになれない、もしかしたら大吉とのことも …

「何でよお?!」

それとこれとは話は別、不満顔の春子。

小百合が電車に飛び乗ると、待ちかねていたように発車のベルが鳴り始めました。

「安部ちゃんとまめぶ汁の検討を祝して … バンザ~イ!」

組合長の合図で、万歳三唱が始まると同時に、ドアが閉まって電車が動き出しました。

「安部ちゃああん!」

電車の窓から身を乗り出して手を振る小百合、アキは電車が見えなくなるまで手を振り続けました。

… … … … …

「誰だ?」

余韻に浸る一同は、怒鳴り声で振り返りました。

「誰だ、ここさナベっこ置いたの、子供が足ひっかけて転んだらどうするんだ、バカ野郎!」

ふたりの女の子を連れて旅行カバンを下げた女性が、小百合がホームに忘れていったナベを見て文句を言っています。

鍋を自分のもののように手にすると、そのまま歩き出しました。

「田舎もんが!」

夏たちとすれ違った時、ふくれっ面で捨てゼリフを吐きました。

その人は安部ちゃんの代わりに呼ばれた事務員の花巻さんでした。

花巻珠子、袖が浜生まれの出戻りのシングルマザーです。


… … … … …

海女のシーズンが終わって、アキは心にポッカリと穴が開いたような気分でした。

「ただいま … 」

学校から帰ってきたアキは、入り口に座り込んだかと思ったら、ため息をつきました。

そんなアキのことを夏がからかいます。

「潜りたいのに潜れず、ただ暇を持て余し、ふてくされるアキなのでした」

「ふてくされてねえもん」

「だったら手伝え」


夏は皮を剥いた柿が入ったザルをアキに持たせました。

軒下に吊るして干し柿を作るのです。

「あ~あ、早く夏になんないかなあ」

「バカ言え、やっと落ち着いたばっかりだべ」

「3ヶ月なんて短すぎるよ、来年の海開きまで9ヶ月も皆どうしてるの?」


皆それぞれにパートをしたり、内職したりで、生活がかかっているので、かえって忙しいぐらいだと、縄で結んだ柿を吊るしながら、夏が言いました。

「まあ、そうは言っても、夏に比べたら、張り合いねえなあ」

そんな夏の言葉を聞いて、アキはまたため息をひとつ …

… … … … …

おらたちばかりじゃありません。かつ枝や弥生も美寿々も …

うつろな目、ため息をつく三名。

組合長が漁協に戻ると、海女クラブのメンバーが琥珀掘りの勉さんと、車座になって何かを作っていました。

「おめえら、何してるんだ?」

「内職だ」


答えたのは勉さんでした。

「おらが勉さんさ頼んだんだ … こいつら毎日ここさ集まって何するわけでもねえ、ボーっとして愚痴こぼしてるからよお」

事務室から出てきた珠子がいかにも迷惑そうに説明しました。

「何作ってるの?」

「ミサンガ … 」


当の本人たちもよく分からずに作っているようです。

「昔から海女っつうのは夏の間だけビャアビャアうるせえんだから、セミか?」

敵意むき出しで嫌味を言った珠子でした。

… … … … …

一方、観光協会。

「やだあ、何これ? 壊れてるう」

パソコンでホームページをチェックしていた、しおりが声をあげました。

アキの動画の再生回数が異常な勢いで増えていると言うのです。

100万カウントをすでに超えていました。

「このパソコン、バカになってるな」

保もあきれたように言いましたが、後ろの席からヒロシが口を挟みました。

「壊れてないですよ、この動画、今すごい人気なんですよ … もうちょっとでユイに追いつくと思いますよ」

と言っている間に目の前でユイの動画の再生回数を超えました。

「じぇじぇじぇえ … 」

その動画とは …

「本気獲り」の日、アキが生まれて初めて自分の力でウニを獲った時の動画でした。

ヒロシが撮影した僅か数十秒の映像のおかげで、ついにアキの人気が爆発しました。

動画を見て、アキのファンになったオタクたちが、袖が浜におしよせましたが … 

しかし、時すでに遅し … 彼らを待っていたのは、『海女の今年の実演は終了しました』の看板でした。

… … … … …

「どうすりゃいいんだあ?!」

喫茶リアスのカウンターで頭を抱える大吉です。

「どうするも何も来年の夏まで待ってもらうしかないじゃん」

春子は冷静です。

「待ってくれるでしょうか?」

ヒロシが尋ねると、「無理でしょうね」とヒビキ一郎が答えました。

「そうだよね、流行り廃りに敏感なオタクさんが9ヶ月もあの動画だけで我慢できるわけないよね」

「やったあ! … しか言ってないですもんね」


悲観する大吉と吉田 … そもそもあの映像のどこが良かったのかも、わかっていませんでした。

「僕なりに分析すると、大衆は少女が健気に頑張っている姿に弱いんです。

これは日本人の習性です … ウサギとカメならカメを、アリとキリギリスならアリを、ハブとマングースならマングースを応援するんです」

「ウチの娘はマングースって訳ねえ?」


少し不愉快そうな春子です。

「僕としては、ハブの逆襲に期待って感じですね」

一郎がしたり顔で言いました。

「北鉄のユイちゃんVS海女のアキちゃんかあ … 」

大吉がつぶやくと、一郎はユイの心情も推測しました。

「ユイちゃんも内心穏やかではないはずですよ、親友に追い越されちゃったわけですからね」 

… … … … …

琥珀の採掘場。

誰かが入ってくる気配を感じた勉さんが振り向くと、こちらに向かってくる懐中電灯の灯りが見えました。

「あれえ?」

灯りの主はユイでした。

いつかアキに、勉さんの採掘場だったら、誰にも聞かれずに大きな声を出してストレスの発散ができると、聞いたことを思い出してやってきたのでした。

ユイはベンさんに断わって、穴の奥に向かって叫びました。

「めっちゃ、くやしいいいい!」

… … … … …

「 … というわけでようやく軌道に乗り始めた町起こし、このタイミングで海女のシーズンが終わったのは痛い」

大吉は早速、K3NSP(北三陸をなんとかすっぺ)のメンバーを観光協会に招集しました。

「そう言われてももう潜れねえからな」

夏が釘を刺しました。

「このピンチをチャンスにするためにメンバーの知恵をお借りしたい」

まず、しおりが温水プールで潜るという案を出しましたが、お湯ではウニが死んでしまうと夏と弥生が却下しました。

「じゃあ、せめて10月いっぱいまで潜ってもらえませんか?」

「バカこの、海女が死んじまうべ!」


吉田の提案も弥生が一刀両断に却下。

… … … … …

大声を出してスッキリしたユイが帰ったばかりの採掘場にまたひとり訪問者がやって来ました。

「あれえ?」

「すいません、勝手に」


ヘルメットをかぶったアキでした。

「今度はアキちゃんか?」

「 … 今度は?」


目をぱちくりさせるアキ。

… … … … …

K3NSPの会議は続いています。

「おらたちが、海女クラブ作った時は駆り出されて、何処までも行ったよな、弥生さん」

「んだんだ、絣半纏、手拭巻いてさ … 冠婚葬祭からパチンコの新装開店まで」


夏と弥生の昔話に耳を傾ける一同。

「やっぱし、海女の格好は喜ばれるんだあ、今の言葉でいうと … 」

「コス、コス、コス … 」


またカタカナ言葉に詰まる弥生の代わりにヒロシが答えました。

「コスプレですか?」

夏が妙案をひらめきました。

「たとえば、海女のコスプレで北鉄さ乗って、ウニ丼売ってもらうとか」

「おおおっ!」


拍手と歓声が上がりました。

「なるほど! 北鉄のユイちゃん、海女のアキちゃん、奇跡のコラボレーションですね」

「何でここにいるんだ?」と言われ続けていたヒビキ一郎がいつの間にかK3NSPのメンバーに加わっていて、偉そうな顔をしてうなずいています。

「いやいやいや、いいね! いくねえ? いいぞこら、コラボだあ!! 」

… … … … …

大人たちが良からぬ相談しているとは知らず、アキは心の叫びをぶちまけていました

「海さ、潜りてえええ!」

「早ぐ来年の夏になれえええ!」


大声を出して発散したアキ。

「ああ、スッキリした」

「よかったな」


優しく笑った勉さんにアキは笑顔でうなずきました。

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少女たちは勉さんには心の叫びを聞かれも平気なんですね …

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2013年04月28日 (日) | 編集 |
さて、次週の「あまちゃん」は …

初めてウニを獲ることができ、海女として認められたアキ(能年玲奈)。しかし、同時に海女漁のシーズンが終わり、さらに安部(片桐はいり)も「まめぶ汁」PRのため町を去ってしまって、心にぽっかりと穴が開いてしまう。

そんな折、アキ(能年玲奈)はユイ(橋本愛)とともに、北鉄の一日車掌を任される。2人が海女姿で夏(宮本信子)たちの作る「ウニ丼」を車内販売すると、観光客が殺到して町は大盛況。大吉(杉本哲太)ら町の人々は大喜びするが、母の春子(小泉今日子)だけはなぜか不満そう。

潜水土木科ぁ?

春子に厳しい言葉を浴びせられ、自分が進むべき道について悩むアキだったが、ユイに連れられて高校の潜水土木科の授業を見に行く。金属製のヘルメットと宇宙服のような装備。伝統的な「南部もぐり」の訓練にすっかり魅了されるアキ。

もしかしてアキちゃん好きなの?

さらに、そこで出会った種市浩一(福士蒼汰)に一目惚れ。春子を説得して普通科から潜水土木科に編入したアキは、同じ学科の卒業生である祖父の忠兵衛(蟹江敬三)の遺影に毎朝手を合わせ勉強に励む。

この大事な時期にスキャンダルはちょっと困るんでねえかな?

その頃、夏の様子がいつもと違うことに周囲が不審を抱き、長内(でんでん)との不倫疑惑が持ち上がる。そして、アキは思いがけない人物に…。
あまちゃん 公式サイトより)



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2013年04月27日 (土) | 編集 |
第24話

本気獲り当日の朝が明けました。

「海女クラブの皆さん、おはようございます … 本日、天候もよく予定通り海女の口開けを行います … 」

漁協の有線放送で小百合の声が本気獲りの開催を知らせています。

「海女クラブの皆さんは、漁協にお集まりください」

夏はじっとしていられないようで、アキたちの部屋の様子を窺がったりして、ソワソワしています。

アキはまだ寝床の中にいましたが、その目は爛々 … 結局、一睡もできずに朝を迎えてしまったのでした。

… … … … …

海女クラブの面々が漁協にやってきて、アナウンス中の小百合にそれぞれが声を掛けました。

「おはよう安部ちゃん、気合入ってるな!」

「なんせ最後の本気獲りだもんな」

「あんまし最後最後って言わないでよぉ」


小百合は泣きそうになるのを堪えながら放送を続けました。

この日を最後に安部ちゃんは北三陸を離れます … 岩手物産展で「まめぶ汁」のお店を出すんです。

… … … … …

アキが眠い目をこすりながら浜へ下りていくと、漁港の入り口辺りでビデオ撮影をしているヒロシと出くわしました。

『好きなんだよ、アキちゃんのことが好きなんだ』

ヒロシに隠れて迂回しようとしたアキを目ざとく見つけてカメラを向けるヒロシ、昨日のことなど関係ないように普通に挨拶して来ました。

「おはようアキちゃん、眠れた?」

アキは、まともに返事もせずに通り過ぎました。

天野家を代表して、その重圧もさることながら、昨日の出来事が頭から離れず …

浜には、弥生やかつ枝たちの他に見かけない海女がたくさんいました。

「袖が浜集落の全部だ、海女クラブ引退したOBもいる」

夏がアキに説明すると、弥生が釘を刺しました。

「なめんなよ、皆ちっちぇえ頃から潜っている連中だからな」

… … … … …

「本気獲り」の今日は海女たちの出で立ちもいつもの絣半纏ではなく、ウエットスーツを身にまとっています … 真剣勝負なのです。

そして、海女は各々ボートへと … アキは小百合と共に組合長が指揮を執るボートに乗り込みました。

「皆、乗ったかあ?! しゅっぱああつ!!」

組合長の合図で何艘ものボードが港を離れ、漁場を目指します。

アキは船着き場で待つ夏の顔を見ました … 夏はうなずいてアキを見送ります。

… … … … …

波を乗り越えて進むアキのボート、並走するボートからヒロシがビデオを撮影しています。

ウニの漁場に着き、ボートはエンジンを止めました。

「ほんでは、2時間勝負だあ!」

組合長が漁の開始を知らせるサイレンを鳴らすと、海女たちは一斉に海に飛び込みました。

「すんげえ、皆本気だ」

その勢いに圧倒されるアキです。

「本気獲り」とは、3ヶ月間観光海女として働いた海女さんにとって、ちょっとしたボーナスです。

普段はウニがいなくならねえように、加減してとっていますが、この日ばかりは獲りたいだけ獲っていいのです。


アキはボートの上から、競争するようにウニを獲る海女たちを見つめていました。

「皆、すげえべ?」

組合長に聞かれて、アキはうなずきました。

「獲ったウニは、今日のうちに換金するんだから、そりゃあ必死だべ」

… … … … …

アキのことが気になる夏は監視小屋へと急いでいました。

坂道を駆け上がるのは海の中を泳ぐようなわけにはいきません … 息を切らしながら辿り着くと、そこにはすでに先客がいました。

望遠鏡を覗いているのは春子でした。

「何やってるんだべ、おめえ!」

「いいでしょ、別に … 」


夏が望遠鏡を貸せと言っても、春子は自分が見ているからと言って渡しません。

夏はやきもきしながら、漁をしている辺りへと目を凝らしました。

「ねえ、何で譲ったのよ? … あたしが潜っていた時は絶対代わってくれなかったのにさあ」

春子は、アキのことを気にしながらも、少なからず嫉妬を感じてもいるのでしょうか …

「さあな、年だからだべ」

そんなことより、夏が気になるのは、アキが海に入ったかどうかでした。

「 … まだです」

望遠鏡を覗きながら春子が答えました。

… … … … …

まるで、いつもとは違うスイッチが入ったように真剣な眼差しで漁を続ける海女たち … 溺れても流されても、今日は助けてもらえないんだ。

… そう思うと、足がすくんで動けませんでした。


時間だけが過ぎていきます …ボートの縁に手を掛けたままのアキ。

「どうするアキちゃん? おっかねえなら、やめといた方がいいぞ、いつも潜っている海とは全く別物だから … 潮も早いし、水温も低い、ベテランでも溺れることあるからね」

組合長は忠告しましたが、意を決したアキは、水中メガネを取り出して海水に濡らすとそれを被りました。

ボートの上に立ちあがったアキ、ヒロシはビデオを構えなおしました。

… … … … …

「おっ、立った!」

春子の言葉に我慢が出来なくなった夏は「貸せ」と双眼鏡を奪い取りました。

… … … … …

「行ぐのか?」

「うん!」


アキは自分の磯樽を海に放り込みました。

「大丈夫か?」

「安部ちゃんと約束したんだ、自分の力でウニ獲って、一人前の海女さなるんだ」


そう言ったアキの姿は何となく凛々しく見えました。

海に入ろうとして、水温の低さに思わず怯んでしまったアキを励ますために組合長が浮き輪を掲げて言いました。

「心配するな、何かあったらすぐ投げるから!」

アキはうなずき、今度は慎重に海に入りました。

しばらく磯樽につかまって体を慣らすと、思い切り息を吸い込んで …

… … … … …

「潜った!」

双眼鏡で見ていた夏が声をあげました。

今度は春子が我慢できなくなって、監視小屋から飛び出してきて、夏から双眼鏡を奪い返しました。

… … … … …

アキは両手で水をかいて海中を潜っていきます。

しかし、いつもの入り江と違って水深が深く、ウニのいるところへたどり着く前に息が続かなくなって海面に顔を出してしまいました。

何回か挑戦しましたが、同じことの繰り返し …

磯樽につかまって呼吸を整えながらアキはつぶやきました。

「考えない、考えない … 考えない」

そしてまた潜る。

何も考えないことが、頭を空っぽにすることが、こんなにも難しいなんて … いつしかアキは3ヶ月前の海開きの日のことを思い出していました。

そう、初めてこの三陸の海に入った時のことを …


夏に不意を突かれて、海に落とされたあの時のことです。

「飛び込む前にあれこれ考えたってや、どうせその通りにはなんねえ … だったら、何も考えずに飛び込め!」

そうだ、あの時も祖母ちゃんは考えるなって言ってた …


… … … … …

群生している昆布の切れ間にウニがいるのが見えました。

必死に手を伸ばして掴みかけた瞬間、掌からこぼれて深みに沈んでいくウニ … それを追いかけようとした時、「危ないっ!」という声が確かに聞こえました。

小百合でした。

小百合はアキの体を抱えて、その場所から離れて海面へ引き上げようとしました。

「大丈夫、離して!」

アキは小百合の手を振りほどいて、ウニをめがけて水をかきました。

… 全ての音が消えた瞬間 …

… … … … …

「アキちゃん!」

海面に飛び出た小百合が叫びました。

少し遅れて顔を出したアキ、磯樽につかまりました。

「大丈夫か? アキ!」

組合長がボートから身を乗り出しました。

「獲れたか?」

息を切らして波間に揺られているアキ。

小百合だけでなく、別のボートの上からかつ枝と弥生そしてヒロシも息を飲んでアキに注目しています。

やっと落ち着いたアキが高く掲げた左手が掴んでいるのは紛れもなく黒くてトゲトゲのあるウニでした。

「おおっ!」

「やったあ、アキちゃんウニ獲ったあ!」


… … … … …

夏がうれしそうに笑い出したので、春子はふたたび双眼鏡を取り上げました。

「ちょっとどいてどいて … あ、ホントだ、持ってる持ってる」

… … … … …

組合長も手を叩いて喜んでいます。

「おめでとう!」

自分の告白がアキのピンチを招いていたとはつゆ知らずヒロシも祝福しています。

歓声と笑い声があふれる海。

アキは波間に揺られながら、初めて自分の力だけでウニを獲ったことを確認するように声をあげました。

「獲れたあ!」

… … … … …

「はい、ご苦労さん」

組合長が話していたように、「本気獲り」で収穫したウニは、その日のうちに換金してもらうことができます。

ウニが入ったバケツを持った海女たちが計量の順番を待っています。

「おお、さすが美寿々ちゃん、今年は液晶テレビ買えるっぺ」

アキが初めてウニを獲ったことを聞きつけた大吉と保が顔を出しました。

「よかったな、これで一人前の海女でねえか!」

「大げさだなあ、たかがウニ獲っただけだっつうのに」


そう言いながらも夏の顔もゆるんでいました。

「いやいや大ニュースだべ、足立君これ早速ホームページにアップするべ」

今日は保もノリノリです。

「安部ちゃん、安部ちゃんにはオラから餞別のづけで、長い間ご苦労さん」

「ありがとうございました」


有終の美を飾った小百合へ惜しみなく送られる拍手 …

… … … … …

「ほら、アキの番」

春子がアキを促しました。

… 計量するまでもなく、結局アキはあのウニ1個しか獲れませんでした。

組合長はアキの獲ったウニを手に取り言いました。

「うん、じゃあ今年の天野家は、500円」

深くお辞儀する夏。

「はい、アキちゃん」

組合長から500円玉1個受け取ったアキは、申し訳なさそうに夏の顔を見ました。

「ごめん、お祖母ちゃんだったら何万円も … 」

「銭が全てじゃねえ、アキが初めて自力で獲ったウニだ … 天野家にとっちゃ、一生もんだべ」


夏の言葉に春子もうなずいています。

アキはやっと初めてウニが獲れたことを心から喜ぶことができました。

「あ、ユイちゃん、やったよ、ウニ獲ったよ」

駆けつけたユイ、ふたりは抱き合って喜びました。

「おめでとう! … どれ、見せて見せて」

他のウニと混ざってしまって、どれか分からなくなってしまった … と思いきや、組合長は三方に乗せたウニをふたりの目の前に差し出しました。

「ちゃんとここさ、あるのでござる」

… … … … …

アキが獲った、たった1個のウニは海の神様に奉納されました。

「今年もありがとうございました」


神様に手を合わせる海女クラブの面々、記念の写真撮影に忙しい春子 …

こうして海女のシーズンは静かに幕を閉じたのです。

安部ちゃん、ご苦労さん …

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2013年04月26日 (金) | 編集 |
第23話

二階の隠し部屋。

アキが机の引き出しの中のノートに手をかけた時、部屋のドアが開きました。

「何してるの?」

慌てて引き出しを閉めながら振り向くと、そこには春子が立っていました。

「ママ … ごめんなさい、ママ」

この部屋に忍び込んでいたことがとうとう春子に見つかってしまいました。

「眠れなくて、家の中を探検してたら偶然見つけて、何て言うかアキの秘密基地的な … 」

部屋に入ってきた春子の腕が言い訳を言うアキに向かって伸びてきました。

ぶたれるの? … そう思って、アキは身をかがめた瞬間 …

「ちょっとどいて」

春子はアキをどかせて、自分がその位置に立って急に笑い出しました。

「吉川晃司だよこれ、ははは、懐かしい」

壁に掲げてあるLPレコードのジャケットを指さしながら言いました。

「この髪型、ちゅうかこの肩幅、はははウケル~」

叱られるものばかりと思っていたアキですが、母の反応は想定外でした。

春子はその隣のジャケットを指さしました。

「ああ聖子ちゃん、シルエット。これね3枚めのアルバムだよ」

その次のジャケットも。

「出たあ、安全地帯だよ … うん、これ誰だろう?」

そのまた隣にあるシングルレコードに顔を近づけました。

「ジャガー横田だって、何であたしこんなの持ってたんだろう?」

唖然として佇むアキのことを振り返って言いました。

次に春子は机の引き出しから先ほどのノートを取り出しました。

「これ交換日記だ、誰とやってたんだっけ? … 菅原だって」

顔を見合わせる母娘、春子は笑い出しました。

「やだやだ、観光協会の菅原さんだよ … しかもこれ3日で終わってるんですけど」

… … … … …

「変でしょ? この部屋 … 元々はね、ママのお祖父ちゃんが、お金を管理するために使ってたんだけど、それをママがね勝手に自分の部屋にしちゃったの」

春子はドアを締めながら、ポスターの女性が「聖子ちゃん」だとアキに教えました … 昨日、小百合に見せてもらった昔の春子の写真と同じ髪型でした。

「しかし本当、昔のまんま、何でこんなに残してるんだろうねえ」

「いつか帰ってくると思ったんじゃない?」


アキがやっと口を開きました。

「あたしが? … 何それ気持ち悪い、うふふ」

「ねえ、ママ」

「うわっ、何かこの部屋でママって言われると変な感じするわ」


… … … … …

「ママになる前のママもいるんです … っていうか、いるっていうか … いたんです。

この部屋にいた時には、あんたのママになるなんて、思いもしなかったんだから」

「そっかぁ … 18歳っていったら、アキと2個違いだもんね、パパとも知り合ってなかったん … 」


春子は本気で嫌そうにアキの言葉を遮りました。

「パパとか本当やめて、まじで、本当に!」

身をよじりながら立ち上がった春子は何かを踏みつけました。

手に取ってみると、ゲームのカートリッジでした。

「これ、あたしんじゃないな」

裏にひっくり返すと、拙い文字で「安部さゆり」と書かれていました … 借りっぱなしでそのままになっていたのでしょう。

「返さなきゃね … 今何時?」

こんな夜更けに返しに行くのかとアキは驚いて聞き返しました。

「まさか … ちょっとさ、散歩行こうよ、散歩」

… … … … …

♪ さんくすさんくすさんくすさんくす、もうにか

アキにには聞きなれない歌を繰り返し口ずさみながら春子が連れ出した先は、堤防の突端にある灯台でした。

「ここって … 」

「ママの秘密基地、お祖母ちゃんとケンカして飛び出した時によく来てたんだ … 悪い子だったからね、あんたと違ってさ」


… … … … …

春子は灯台の元、高校生の自分が書き残したままの落書きをアキに見せました。

「東京、原宿、表参道 … すげえ、これ全部ママが書いたの?」

「そう」


他にもいくつも落書きがありました。

『愛羅武勇』

「あい・ら・ぶ … いさむ、いさむって誰?」

「アイラブユーって読むの」


アキは感心しています。

「これは?」

『舞蹴蛇苦尊』

「ぶ、ぶ・ける・へび … マイケル・ジャクソンだ … 」

書いた本人もすぐにはわかりませんでした。

「はは、どうかしてるよねえ、田舎が大っ嫌いだったからね」

当時を振り返る春子です。

『海死ね』『ウニ死ね』という落書きがあるのも見つけたアキ。

「ホントだ」

「あんたと正反対だねえ」


アキはうなずいた後に言いました。

「っていうか、ユイちゃんみたい」

「へえ、あの子そうなんだ?」

「うん、卒業したら東京行くんだって」


… … … … …

「あんたは … 東京、戻りたいとか思わないの?」

やや遠慮がちに春子はアキに尋ねました。

「うん、今んとこ平気」

その答えを聞いた春子がつぶやくように言いました。

「よかった … 」

「えっ?!」


… … … … …

「よかったって、どういう意味?」

春子は少し慌ててみえました。

「知らないし … 言ってないし、よかったなんて、何言ってるの?」

とぼけた春子は灯台を後にして堤防を引き返しはじめました。

そのあとを追いながらアキは声をあげました。

「待ってよ、春ちゃん!」

「はるちゃん?!」


我が娘に愛称で呼ばれて、春子は驚いて振り返りました。

「だって、ママって呼んじゃいけないんでしょ?」

春子は思わず吹き出してしまいました。

「ははは、バ~カ」

ふたたび歩きだした春子にアキがじゃれついてきました。

「春ちゃ~ん」

「やめてよぉ」


笑いながら走り出した春子とアキ … 東京にいた頃のふたりでは考えられないような夜でした。

… 春子役のキョン2がアサイチにゲスト出演した時に、アキが「このシーンの撮影がずっと続けばいいのにと思いました」とお気に入りにあげていたシーンです。 … ようやく放送されましたね。 … 閑話休題

… … … … …

家に帰って、寝床に戻ったふたり。

「ああそうだ、いいこと教えてあげようか … 昔ね、お祖母ちゃんに潜り教わっている時に言われたの、長く深く潜るために必要なものって何だと思う?」

アキは布団の上に飛び起きて春子に尋ねました。

「ヒントは、呼吸に関すること」

少し考えたアキがわかったと言って答えました。

「エラ、エラ、エラ呼吸!」

「エラのある人間はいません! … 人間の体の中で一番酸素を使うのが、脳みそなんだって … 脳みそを使えば使うほど、考えれば考えるほど酸素を使うんだってよ」


アキの表情がパアっと明るくなりました。

「つうことは、脳みそを使わなければ長く潜れるってことか … なあんだ、だったら得意中の得意だっぺ!

… 脳みそ使わなきゃいいんだべ? 楽勝だあ!」


安堵したアキは即眠りにつきました。

… 本当にこの子、理解したのかしら? 

… … … … …

「春子さん、朝ご飯ですけど」

夏がいくら呼んでも、夜更かしした春子は起きてきません。

あきらめた夏は、「先に食うべ」と食卓に着きました。

すでに座っていたアキは夏にあることを願い出る機会を窺っていました。

「何だよ?」

その気配を感じた夏の方からアキに尋ねました。

「あたし、本気獲りさ、行ぎてえ!」

そんなことだろうと予想していたのでしょう、夏は別段驚きもしませんでした。

「船さ乗って、沖さ行ってみてえ」

「なして?」

「安部ちゃん、明日で終わりなんでしょ … 思い残すことなぐ引退できるように、安部ちゃんいなくてもウニ獲れるってとこ見せてやりてえんだ、だめ?」


夏は一言「だめだ」と言いました。

「なして?」

「本気だからに決まってっぺ」


簡単に許してもらえるとは思ってはいなかったアキですが、やっぱりあきらめきれません。

しかし、夏の話には続きがありました。

「それでも行きてえのなら、勝手にしろ」

「えっ、いいの?!」

「来んなって言っても、来るんだべ?」


アキはニッコリうなずきました。

… … … … …

「そりゃ、ダメだ」

アキは喜び勇んで漁協に報告に行きましたが、今度は組合長が許可しません。

「なしてえ?」

かつ枝が代わって説明しました。

「あんな、アキ … いつもの実演と違って、本気獲りには漁業権が必要なんだ」

海に潜って漁することを許可された権利です。

そして、その権利は一家で一人にしか認められていないのです。

「乱獲防止だ、ウニも大事な資源だからよ、なんぼでも獲っていいってことになると、いなくなるべ?」

「つまり、アキちゃんが行ぐってことは、夏ばっぱ行けなくなるってことなんだよ」

「じぇじぇ … 」


そんな決まりがあることを夏は何も言わなかったので、アキは全く知りませんでした。

ちょうど、漁協にやって来た夏に組合長はアキの話を確認しました。

「そういう訳で、今年は天野家からはアキがエントリーしますんで」

夏は頭を下げました … 孫の気持ちを汲んで、一人分しかない権利を夏はアキに譲ってくれたのでした。

9月30日は、海女の口開け(本気獲り)といって、北の海女にとって最も重要な日です。

7月1日の海開きから3ヶ月間、観光海女としてサービスに徹してきた海女が、この日だけは自分と家族のために漁をしてよいのです。


… … … … …

北三陸駅の待合室、アキから本気獲りのことを聞いたヒロシは言いました。

「そっか、じゃあ頑張んなけりゃね … 俺もビデオカメラ持って応援に行くから」

「やめてよ、ただでさえプレッシャーで押しつぶされそうなのに!」


アキにしては珍しくピリピリとした強い口調でした。

「仕事だよ、アキちゃんとユイ撮影するのが」

それなら仕方がないこととアキはあきらめました。

「ごめんね、巻きこんじゃって … 俺が君のビデオ、アップしたばかりに大騒ぎになって」

「いえいえ、お構いなく、お客さん増えて、皆喜んでますから」


ヒロシはアキに何か用があるらしいのですが、電車に乗る時間が迫っていました。

「ストーブさん、急ぎの用事じゃなかったら、また日を改めて」

席を立とうとするアキをヒロシは引き留めて言いました。

「心配なんだ、アキちゃんのことが」

「いやだからお構いなく、自分でもわかってるし、チヤホヤされるのは今のうちだけだって … 女子高生の海女なんて珍しいから、一時的に騒がれているだけだし」

「そんなことないよ!」


ヒロシがムキになって言ったのでアキは変に思いました。

「ごめん … 自分で蒔いた種なんだけど、君の人気が出てうれしい反面、君が遠くへ行ってしまったような気がして」

「何処にも行きませんよ、学校と浜の往復ですよ」


… … … … …

「いや、実際の距離の話でなく、気持ちの距離 … 」

「気持ちの何?」


鈍感で幼いアキにヒロシの言葉のウラなど読めるはずもありませんでした。

「っていうかさ、お母さんから何も聞いてない?」

ヒロシは、思わず口走っていました。

「普通何となく伝えると思うんだけどな … 」

ぼそぼそつぶやくヒロシ … 春子にあれだけ反対されたことは忘れてしまったのでしょうか?

「何なんですか?」

電車の時間が気になるアキはいい加減面倒になってきています。

「好きなんだよ」

… 言ってしまいました。

「じぇじぇ」

アキは思わず立ち上がりました。

… … … … …

「 … ママが?」

「ちがう、アキちゃんのことが好きなんだ!」


アキは固まってしまいました。

「ごめん … お母さんには反対されたんだけど、我慢できなくて、取りあえず気持ちだけ伝えたくて … 答えはすぐじゃなくていいんだ、じっくり考えてからで」

自分の本位の言いぐさでした。

「やばい … 」

「えっ?」

「わっ、やばい、やばい、やばい!」


アキが頭を押さえてかがみ込んだので、ヒロシは慌てました。

「脳が、脳みそ使っちゃダメなんです、考えちゃダメなんです、酸素使っちゃダメなんです! じぇ! じぇじぇじぇ … 」

取り乱すアキにオロオロするヒロシ … アキはヒロシに向き直りました。

「本気獲りなんです、明日 … ああ、もう最悪 … 何してくれてるのよ、ストーブ!」

怒りがこみあげてきたアキはヒロシを突き飛ばして、待合室を飛び出して行ってしまいました。

ベンチの上で呆然としているヒロシ、切符売り場から一部始終見ていた吉田が笑顔で言いました。

「残念でしたねえ、ふふふ … 」

… … … … …

その夜、アキは眠れませんでした。

無理もありません、はじめて異性から告白されたのですから …


無理に目をつむって、頭の中でウニを勘定しました。

「ウニが1匹、ウニが2匹、ウニが3匹、ウニが4匹 … 」

『好きなんだよ!』


ダメだ、眠れない。

しかも、相手はよりによって親友の兄。

日付はすでに本気獲りの当日 … 時計の針は午前3時を指しています。

「ウニが1匹、ウニが2匹、ウニが3匹、ウニが4匹 … 」

『アキちゃんのことが好きなんだ!』


眠りに落ちそうになると、ヒロシの言葉が思い起こされて目が覚めてしまう、その繰り返し …

「ダメだ、考えちゃだめなんだ … 」

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2013年04月25日 (木) | 編集 |
第22話

北三陸市は、ミス北鉄のユイちゃんのおかげで観光客が一気に増えました。

その人気は袖が浜にも飛び火して、「海女のアキちゃん効果」で今年一番の大入り。


列に並んでいた母娘、母親がアキに話しかけました。

「横浜から来たんです、娘がアキちゃんの大ファンで」

「じぇじぇじぇ」


ファンなんて言われたのは初めてのことでした。

「まだ8歳なんですけど、ネットの動画毎日見てるの。将来は海女さんになるって」

アキはその子の目の前でウニを割って、身を口の中に入れて食べさせてあげました。

「美味しい」

「アキちゃんが獲ってくれたと思うと、一段と美味しいね」


母親の言葉を聞いたアキは思わず口を滑らせてしまいます。

「本当は獲ってないんです」

アキは少女に海水でバケツを洗っている小百合のことを指して言いました。

「あの人が獲って、海の中でこっそり渡してくれるの、凄いっぺ? … だからあのおばちゃんにご馳走様って言って」

母親の方は怪訝な顔をしていましたが、少女は素直に小百合に向かって礼を言いました。

… … … … …

漁協に帰ると、かつ枝があきれ返ってアキのことを責めました。

「なしてばらしちゃうかな、このワラシは」

「ごめん、でもやっぱウソつくの無理だ。子供の前だと特に」


青いことを言うアキを弥生は叱りつけました。

「本当のこと知りたくて、横浜から来たわけではねえど! … 第一、あれじゃ、却って安部ちゃんの立場がねえべ?!」

小百合は自分のことは、いいと笑っていますが、弥生は気が済まないようです。

「最後の最後ぐれえ、気持ちよぐ送り出してやりてえべ?」

「最後? … 何、最後って」


外から入ってきた夏が代わりに答えました。

「安部ちゃん、今年で引退なんだと」

「じぇじぇじぇじぇ!」


アキにとっては初耳でした … 血相を変えて、小百合に理由を尋ねました。

「元々、漁協の事務が本業で、人手が足りねえ時だけ潜ってたんだが、昨日観光協会から呼ばれてさ … 」

… … … … …

大手百貨店の丸越屋から岩手物産展に「まめぶ汁」を北三陸の名物としてエントリーしないかというオファーがあったのです。

まめぶをおしゃれなカフェっぽい感じの屋台で販売したり、レトルト食品にもするという企画でした。

保は反対でしたが、その話を聞いた大吉が … 小百合の元亭主が、小百合とまめぶにチャンスを与えてくれと頼み込んだのでした。

「おらあ、安部ちゃんのまめぶが一番美味えと思う、まめぶの中ではな … だからどうせなら、その一番美味えまめぶを全国の人に食ってもらいてえと思う」

「大吉さん … 」


… … … … …

「 … という訳なの」

「じゃあ、安部ちゃん、東京さ行ぐんですか?」


小百合は首を振り、「宇都宮」と答えました。

「北関東からじわじわ責めて、様子見ながら東京に進出する計画なんだと … だから、9月の“本気獲り”が終わったら、お別れなんだ」

「本気獲り?」


またアキには初耳のことでした。

「アキは知らねえが、“本気獲り”通称マジ獲り!」

美寿々が派手な身振りで答えると、あとは組合長が説明してくれました。

「海女のシーズンが終わる9月の最終日にはな、船で沖さ出て、ウニ獲りまくるのしゃあ!!」

アキの目がキラキラ輝きだしました。

「何それ、楽しそう!」

しかし、夏が水を差しました。

「まあ、アキには無理だな … ははは」

「なしてえ?」

「浜の浅瀬でウニ獲れねえのに、沖で獲れるわけねえべ」

「なんせ、本気獲りだからな」


かつ枝たちにもそう言われて、アキは凹んでしまいました。

… … … … …

次の日、北三陸駅の待合室。

「需要と供給?」

アキはユイに聞き返しました。

「そう、だってアキちゃん自身潜るのが好きで、お客さんも喜んでいるわけでしょ? … 需要と供給つりあってるじゃん」

ユイの言うことをアキはいまいち実感できません。

「そうだよ、だってダルダルのおばさんが潜ってウニ獲ってきても、お客さん納得しないわけじゃん」

ダルダルのおばさんって誰のことだろう … アキは想像して思わずにやけてしまいました。

「アキちゃんが可愛いから人が集まってるわけでしょ?」

「いやいやいや … 」

「そんなの皆わかってるよ、だから割り切ってニコニコ笑っていた方がいいと思う、私はそうしてる」


ユイの考え方はアキよりはるかに大人でした。

「ユイちゃんはさ、電車乗って記念写真撮ったり、握手したり、サインしたりして楽しい?」

「いや、楽しくはないけど … それが今望まれている自分だからね」

… かっけえ、何だかわかんないけど、かっけえ! と、アキは思いました。

望まれている自分を演じる、それを堂々と言えるユイは、やっぱりプロなんだ、私とは違う …


… … … … …

アキがリアスに立ち寄ると、店はひと段落した時間のようで、客は勉さん一人でした。

後片付けをしながら、春子が何か食べるか聞いてきました。

「ママって、子供の頃、アイドルになりたいって思ったことある?」

唐突にアキに尋ねられて春子はポカンとした顔をしています。

「ママにとって、あこがれのアイドルって誰?」

「な、何よ、急に … 」

「ピンとこないんだよねアイドルって、取りあえず可愛くて、歌とか踊りとか上手くて … 男が光る棒みたいの振り回して応援しているイメージ、アイドルって?」


春子は何も答えずアキに食べさせるための調理を始めます。

「十代の頃、あこがれのアイドルとかいた? … あ、聖子ちゃん?」

春子は、ハッとして一瞬だけ振り返りましたが、適当に誤魔化して調理を続けました。

「あ、そうね、そうそうそう、世代的にそんな感じ」

「同じ髪型にしてたんでしょ?」


今度はしっかりと振り返ってアキに尋ねました。

「誰に聞いたの? そんなこと」

「安部ちゃんが言ってた」


… 「この町で一番最初に聖子ちゃんカットしたの、春ちゃんだもの」 …

春子は、もうこの話題は終わらせたいようですが、アキには伝わっているかどうか …

「昔の話よ、中2か中3の … 」

「写真見たいなあ」

「ないわよ」

「え~っ、家に帰ったらある?」


アキも少ししつこかったかも知れません、しかしそれは昔の母のことを知りたいというごく普通の好奇心から出たことでした。

写真などないと言い切る春子。

「うそうそ、探せば一枚くらいあるでしょ?」

「いい加減にしなさい!」


… … … … …

春子の余りの剣幕に勉さんが磨いていた琥珀を落としてしまいました。

春子は調理の手を休めて、アキに向き直りました。

「何なの? 海女になりたいって言いだして、ちょっと壁にぶつかったら今度は何、アイドル? … くっだらない、ちょっとチヤホヤされたからって、いい気になってるんじゃないの!」

アキはそんなつもりで聞いたのではありませんでした。

「そんな浮ついたものばかりに興味持たないで!」

「海女は浮ついてないもん!」


口応えが火に油を注ぎました。

「そうですね、海女は海に潜ってウニ獲りますもんねって … バ~カ、そういうの屁理屈って言うのよ!」

… … … … …

「ウーロン茶、ストレート!」

何も知らずに店に勢いよく入ってきた大吉、ただならぬ雰囲気を感じて立ち止まりました。

「アイドルになりたいなんて言ってないもん」

「あったりまえよ、あんたみたいなブス、なれるわけないじゃないの!」


鼻で笑った春子は、大吉に渡すはずのおしぼりを壁に投げつけました。

「ブス? … 」

母の口から出た言葉、アキは自分の耳を疑いました。

「ごめん、言い過ぎたかな … 」

我に返った春子が謝りましたが、時すでに遅し … アキの目から涙がこぼれ落ちてきます。

「ちょっとどうしたの? 春ちゃん … 」

何事があったのか、大吉は尋ねましたが、お茶を濁す春子。

そのうちにアキが声を上げて泣き出しました。

「うえっ、うえぇぇん」

「泣くんじゃない!」

「泣いてねえ!」


春子に怒鳴られてもアキは強がりましたが、誰が見ても泣いているようにしか見えません。

「いやいや、泣いてるよ! どうしたの、アキちゃん?!」

大吉の言葉を合図(?)にアキは、また声を上げて泣きながらリアスを飛び出して行きました。

… … … … …

何かを叫びながら、ものすごい勢いで自転車をこぐアキ、のどかに走る北鉄の列車を追い越していきます。

可愛いと言われた直後にブスと言われ、アキはすっかり壊れてしまいました。

結構走って来てしまったところで、アキは気づきました。

「どうしよう、自転車で帰って来ちゃったよ」

… … … … …

母が何故あんなに動揺したのか、アキには全く理解ができませんでした。

アキは考えました、何故母は突然切れたのか … 腑に落ちない、過去に春子があんな理不尽なキレ方をしたことがあっただろうか?


東京にいたころ、テレビを修理して出費があったばかりなのにエアコンの調子も悪くなった時に切れたこと … 岩手なのに猛暑でバカみたいに熱いと切れたこと … 袖が浜は映るテレビ局が少なくて、見たい番組が一つもないと切れたこと …

結構あった … 母はちょいちょい理不尽に切れる女でした。

でも今日はいつもと何かが違った、一体何が母の逆鱗に触れたのか?


… … … … …

アキは袖が浜まで自転車で帰ってきてしまいました。

漁協の前に差し掛かると、小百合が一生懸命に看板を磨いているのが見えます。

アキが自転車のベルを鳴らすと、それに気づいた小百合がこちらを向きました。

「安部ちゃん … 」

アキの顔が寂しそうに見えたのか、小百合は優しく尋ねました。

「まめぶ食べっか?」

顔は個性的な小百合ですが、海女クラブの中で一番優しい女性です。

… … … … …

アキがまめぶを食べながら待っていると、小百合が自宅からあるものを取ってきてくれました。

「中学のはこれしか … 」

小百合が取ってきてくれたもの … 中学の卒業アルバムです。春子と同級生の小百合なら持っていると思ってアキが頼んだのでした。

手渡されたアルバムを開こうとしたアキですが、何故か見るのをやめて小百合に返しました。

「何で?」

「だって、ダサいんでしょ?」

「今見たらね、でも当時は流行のヘアスタイルだったんだ」


アキはまたアルバムを受け取りました。

しかし、ページを開こうとしてまた閉じてしまいました。

「見たら死ぬ、見たら石になる」

「そんな、呪いの写真じゃねえし、そこまでダサくねえ」

「本当?」


小百合はアキの前にアルバムを置きました。

… … … … …

アキがアルバムを開くと、小百合がクラスを教えてアキの横に座り直しました。

アルバムをめくっていたアキが急に笑い出しました。指でさしたのは、中3の小百合でした。

「きゃはははは、安部ちゃん、受ける」

天パー気味の小百合は、聖子ちゃんカットには見えませんでした。

「私はいい、似合ってないから … 」

小百合はアルバムを奪うと、春子を探して、アキに教えました。

「これが春子さん」

… … … … …

アキは母の写真を見つめました。

そのままじっと固まったように動かないので、小百合が声を掛けました。

「えっ?」

「石になったかと思ったあ」

「なんないよ、だって可愛いじゃん」


少し斜に構えた写真の春子は、田舎の中学生の中でひときわ目立っていました。

小百合は懐かしそうにアキに話しました。

「可愛かったんだよ、わざわざ隣町から男子が見に来たんだよ。ファンクラブもあったんだから」

「ユイちゃんみたい」


アキが思わず口にした通り、まるで今のユイのようでした。

… … … … …

アキの胸に母に対する疑問がわいてきました。

「じゃあなんで、あんなに怒ったんだろう?」

「えっ?」

「ブスとか、バカとか怒鳴られたの、ヒドクね? … ただ昔の写真見たいっていっただけなのに」


小百合の顔色が変わり、慌ててアルバムを閉じました。

「ねえ、何でだと思う? … 安部ちゃん何か知ってる?」

「わかんねえ、おら何も知らねえ」


明らかに動揺した小百合は、アルバムを抱えると海女クラブを出て行ってしまいました。

何か隠してる、いかに鈍感で幼稚なアキでも、その慌てようを見ればピンときました。

安部ちゃんだけじゃない、この町の大人たちは皆、春子の過去を知っている …

でもそれは、ママにとっては消したい過去なんだ … 理由はわからないけど、触れちゃいけない、見ちゃいけないんだ。

見ちゃいけないものほど、見たくなるものです。


リアスから戻ってきた春子は、昼間のことなど何もなかったように、夕食の時もいつもと変わらない様子でした。

アキは春子が寝入るのを待って、二階の隠し部屋を訪れました。

この部屋を訪れる時、母に対する罪悪感のようなものは今もありますが、初めてここを見つけた時のようなためらいはなくなりかけていました。

机の上のスタンドのスイッチを入れ灯りを点けたアキは引き出しを開けました。

中に何冊かのノートが見えます。

そのノートに手をかけた時 … 部屋のドアが開きました。

「何してるの?」

慌てて引き出しを閉めながら振り向くと、そこには春子が立っていました。

「ママ … 」

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2013年04月24日 (水) | 編集 |
第21話

「じぇじぇじぇじぇじぇ」

何とユイちゃん効果でアキまでブレイクしてしまったのです。

… まあ、ブレイクと言っても普段の三割増し、プチブレイクってやつです。


… … … … …

「観光協会のホームページ見ました」

ヒロシが海女姿のアキにインタビューした『じぇ!新人海女が北三陸の魅力を紹介!』と題された動画が、ミス北鉄のユイの動画の横にアップされているのです。

北三陸市観光協会ホームページ

ユイとは対照的な親しみやすいキャラクターととんでもない訛りが受けたようです。

大勢のカメラ小僧の前でポーズを取らされるアキ、浜は撮影会になりました。

「笑って、笑って、笑って訛って」

「急に訛ってって言われても、何しゃべったらいいのか、おらわがんねえっす」


その受け答え自体がすでに訛っていると大受けです。

「ムービーでやってたじゃん、びっくりした時のリアクション」

いつぞやは、アキのことをブス呼ばわりしたヒビキ一郎が最前列でカメラを構えながら注文をつけました。

「じぇじぇですか?」

その一言に「超可愛い」等と歓声が上がりました。

「アキちゃん、潜ってウニ獲ってきてもらっていいですか?」

一瞬、固まるアキ。

男たちをかき分けて、美寿々が出てきてアキのことをかばいました。

「ごめんね、この子まだウニ獲れねえんです」

一気に落胆の声が上がりましたが、雰囲気に流されたのか …

「ああ、でも今日は獲れるかもしんねえので、頑張ってみます!」

美寿々が止める間もなく、アキが入り江の降り口に向かうと一同もゾロゾロと後について移動して行きました。

… … … … …

何十年ぶりのことだったでしょうか、袖が浜がこれほど多くの観光客で賑わったのは … お陰で海女たちはヘトヘトです。

「いやあ、たまげたあ、今日は随分稼いだべ?」

三割増しだと小百合が答えました。

「どうりで足がパンパンだあ」

「こりゃアキちゃんさ、臨時ボーナス出さねばな」


組合長にそう言われましたが、結局1個のウニも獲ることができなかったアキは沈んでいました。

「ああ、何でこんなことになったのかなあ?」

畳の上にひっくり返ったままの弥生に、夏の腰をマッサージしながら美寿々が答えました。

「観光協会のホームページだっぺ」

「だども、北鉄のユイちゃんはわかるが、アキはブスではねえがごく普通の高校生だべ?」


夏の疑問に答えたのは、いつの間にそこにいたのか … ヒビキ一郎でした。

「そこが今回の北三陸ブームのポイントなんですね」

「何でいるんだ、おめえ?」


弥生の質問は無視して、一郎は話を続けました。

「ごく普通のブスにまでスポットライトが当たる、つまり北三陸が今“来てる”証拠なんです」

「何言ってるかわかんねえよ」

「確かに北鉄のユイちゃんの可愛さは神レベルです … でも、その揺るぎのない可愛さゆえ、近づきがたい印象を与えてしまうのも事実 … 

そこに海女のアキちゃんが現れた」

「アキは前からいたよ」


海女たちが代わる代わる合いの手のような突っ込みを入れますが、一郎は構わず持論を続けました。

「ユイちゃんのとても17歳には見えない美貌と、アキちゃんのとても16歳には見えない子供っぽさ、訛り、バカづら … 」

「言い過ぎだ、この野郎!」

「ブスって言ったな、この野郎謝れ!」


一郎の理屈っぽい話は海女たちには何を言っているのか、さっぱりわかりません … 「ブス」だの「バカづら」などアキの悪口を言われたと腹を立てて詰め寄りました。

… … … … …

観光協会ではヒロシが、ホームページのアクセス、動画の再生回数をチェックしていました。

「あ、また増えてる」

ユイの動画はすでに再生回数998,572 … 100万は目の前、アキの動画もユイにははるかに及びませんが、僅かな間に102,136回再生され、着実に増え続けていました。

「正直、ユイひとりじゃここまで盛り上がってないと思います。」

「対抗馬が現れて、ファン心理に火が付いたってわけだな」

「天龍が現れて、ジャンボ鶴田の人気が出る、みたいな感じですね」


保の感想を吉田がかえって分かりにくく例えました。

「北三陸っていうヘンピな土地柄もいいんじゃないですか?」

しおりの言うように、わざわざ何時間もかけて逢いに来る、その行為自体がイベントであり、障害が大きいほど盛り上がるというものです。

… … … … …

「これはエライことになったぞ、吉田君」

大吉が眉間にしわを寄せました。

「はい、チャンスとピンチがいっぺんに来ました」

もうすぐ海女のシーズンは終わってしまうのです。

… … … … …

そうなんです、アキが海女として潜れるのは今月いっぱい、残すとこあと一週間なのです。

「今月中にウニ1個でも獲れたら、おめえを海女として認めてやる … その代り、獲れなかったら二度と潜らせねえぞ」 … 夏との約束でした。

軒下に洗濯した自分の絣半纏を干しながら、アキは間近に迫った期限を思って憂鬱な顔になっていました。

疲れた夏に代わってスナックに出かけようとした春子がアキに声を掛けました。

「今日たくさんお客さん来て忙しかったんでしょ?」

「うん、でも私なにもしてねえから」


アキは少し寂しげに言うと縁側に腰かけました。

「何、どうしたの? … 今日も獲れなかったの?」

アキはうなずきました。

春子は隣に腰かけながらアキの顔を覗き込みました。

「そっか … 昔のアキならさ、ここで投げ出してたんだろうね」

「えっ?」

「ママもさ、だったらヤメレバとか言ったんだろうな … あるいは、自分で決めなさいとか」

「ママ … 」


春子流のエールでした。

それ以上は何も言わず、春子は出かけていきました。

… … … … …

「あと一週間かあ」

漁協には、夏とアキを除いた海女たちがまだ残って酒盛りをしていました。

「こんなこと言ったらアキには悪いが、まあ無理だべな」

神妙な顔で弥生が言いました。

かつ枝はコップのビールを一気に煽りました。

「しゃあねえ、奥の手使うか」

… … … … …

翌日 …

集まったカメラ小僧たちが見守る中、アキは海に潜りました。

しかし、いきなりウニが獲れるようになるはずもなく …

それでも海面にアキの顔が上がると、一斉に拍手が起こります。ぎこちない笑顔で手を振るアキ。

海から上がり、重い足取りで石段を昇るアキ。

「あれ、アキちゃん、それウニ?」

男たちに指摘されて、腰に吊るした網を見ると … ウニが1個だけ入っているではありませんか!

「じぇじぇじぇ?!」

「あら、アキちゃん、ウニ獲れたの?」

「アキ、おめでとう!」


狐につままれたような顔をしているアキの傍に美寿々と弥生が寄って来ました。

カメラ小僧たちから起こる「ウニコール」と万歳三唱。

「ありがとう!」

よくわからないけど、ウニが獲れたらしい … アキも笑顔で応えました。

… … … … …

「ママ、見て見て!」

春子が縁側で季節物の後片付けをしていると、興奮したアキが庭先に駆け込んできました。

「何、大きな声出して?」

アキはウニの入った網を春子の目の前に差し出して見せました。

「何、ウニ?」

「んだ、ウニだあ」


騒ぎを聞いて、作業小屋から夏も出てきました。

「アキ、浜からそのまま来たのか?」

海女の格好、海から上がったそのままで飛んできたのです。

「見て、ウニウニ」

「じぇじぇじぇ、自分で獲ったのか?」

「そうなの? 自分で獲ったの?」


夏と春子に改めて聞かれて、アキは考え込んでしまいました。

「う~ん、う~ん、う~ん … は、はいっ!」

不自然な返事をしたアキに春子は聞き返しました。

「何それ?」

「獲ったっていうか、網さ入ってた … わがんねえ!」


アキは座り込みました。

「無我夢中で潜ってたから、自分で獲ったって記憶はねえけど、ここさ入ってるってことは獲ったんだべな?」

アキから聞いた話から夏はすべてのことを理解したようです。

「あっ! もしかしてウニが自分から網さ入って来たんでねえか?」

この子何を夢みたいなことを言ってるのかしら … 春子はアキのことが心配になりました。

「アキちゃん、そんなわけないでしょ、ウニには手も足もついてないのよ、自分から入ってくるわけないの … 大丈夫?」

ところが夏の反応は春子には信じられないものでした。

「いやあ、あり得るべえ … 潮の流れでウニは移動すっからな、アキは日ごろの行いが良いから、ウニもこの子に獲ってもらいたいなあ、そう思ったんだべ」

… … … … …

「じゃあ、合格?」

夏は笑顔でゆっくりとうなずきました。

「もう、あまちゃんじゃなく海女さんだ」

「やったあ!」


飛び上がって喜んだアキは、そのまま駆け出しました。

「ちょっと、何処行くの?」

「漁協、ウニ獲ったら、組合長に食べさせるって約束したの!」


どうも腑に落ちない春子は夏のことを見つめました。

春子の視線を感じた夏ですが、何も言わずそそくさと作業小屋に戻って行ってしまいました。

… … … … …

しかし、自分から網に入ってくるほど、性格の良いウニはいるわけもなく …

アキは、その後も海に潜りましたが、思うようにはウニは獲れませんでした。

その時、アキの網に自分が獲ったウニを入れたのは小百合でした。

小百合はアキの手にもウニを持たせると離れていきました。

… アキは、どうやって自分の網にウニが入ったのかがわかりました。

… … … … …

浜に上がったアキは、そのウニを割って待ちわびていた観光客に渡しました。

「美味そう、わざわざ名古屋から来た甲斐があります」

その人が喜んだ顔を見ると、アキは複雑な心境でした。

居たたまれなくなったアキはその場を離れて漁協に戻ってしまいました。

… … … … …

「しゃあねえべアキ、あの客はおめえに獲って欲しくて遠くから来たんだから」

かつ枝が噛んで含めるように言い聞かせますが、アキは不満顔です。

「だから、今年は安部ちゃんが獲って、そんで海の中からこっそり渡して … 」

「そんなのインチキだべ?!」

「インチキなんて、人聞きの悪い」


弥生に言われてもアキは納得できませんでした。

「安部ちゃんが獲ったウニを自分が獲ったような顔して、お客さんに出すなんてできません … それじゃ、安部ちゃん、まるで落ち武者だべ?」

… 組合長が首をかしげました。

落ち武者のような顔をして(?)安部は言いました。

「私のことは気にしないでいいから、皆最初はそうだったんだから」

意外な事実でした。

「そうなの?」

「そうだよ、安部ちゃんも私も最初は夏ばっぱに助けてもらったあ」


美寿々が言いました。

そこへ、黙って聞いていた夏も話の輪に加わりました。

「男っつうのは単純で正直だからよ、同じ値段なら若くてめんこい娘っ子に獲ってもらいたいもんだ」

「でも、それじゃ安部ちゃんに悪いべ」


… … … … …

「何も安部ちゃんはおめえのためにやった訳でねえんだ」

「じゃあ、何のために?」


アキは夏に尋ねました。

「アキ、おめえ何か勘違いしてるんじゃねえのか? … 観光海女は接客業、サービス業なんだど」

「 … サービス業?」

「お客さんを第一に考え、サービスをする、それが基本だあ … 自分で獲りてえとか、安部ちゃんに悪いとか、そんなの知ったこっちゃねえ … 

サービスする、喜んでもらう、また来てもらう、オラらが考えるのはそのことだけだ」


小百合をはじめ海女たちは皆うなずいています。

「ウニは銭、海女はサービス業、わかったな?」

夏の言うことは、なんとなくわかるアキでしたが … いずれにせよ、まだ1個のウニも獲っていないことに変わりはないのです。

「影武者じゃないか?」

さっきからずっと考え込んでいた組合長が突然言いました。

「落ち武者じゃなくて、安部ちゃんはアキちゃんの影武者じゃないか?」

… 今になってはどっちでもいいことでした。

海女はサービス業、その言葉はアキの背中に重くのしかかりました。

… … … … …

今までアキは、自分のために潜っているつもりでした。

楽しいから潜る、海が好きだから潜る … でもそれだけじゃ、一人前の海女にはなれない。

その点、ユイちゃんはプロでした。

さすがアイドルを目指すだけあって、サービスに徹しているように見えました。


今日も駅でファンの男子生徒たちと記念撮影をしているユイが、アキに気を遣ったのか男の子たちに言いました。

「もしよかったら、海女のアキちゃんも一緒にどう?」

「私はいいから」


しかし、アキは自分から断って、ユイを残したまま駅を出て来てしまいました。

アキは自転車を引いて歩きながら、ふと道路の上に観光案内のために描かれた海女の絵に目を留めました。

今までじっくりと見ることがなかったその絵の海女は、胸を張って遠くを見つめています。

… ウニ1個さえ獲れない自分は海女とは言えない …

あまちゃんと海女さんの間でアキは今揺れていました。

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2013年04月23日 (火) | 編集 |
第20話

海女を始めて2ヶ月余り、アキはまだウニを獲ったことがありません、1個もです。

あと少しなんです、でも深く潜って手を伸ばすと、つい思い出してしまう … 穏やかだった海が表情を一変させ、アキは初めて恐怖を感じました。


流された時の記憶がフラッシュバックして目の前のウニを後に海面へと逃げてしまうのでした。

… … … … …

気落ちした感じで、濡れた半纏を干しているアキ。

観光協会の取材で漁協を訪れているヒロシに先輩海女のかつ枝は言いました。

「しゃあねえべ、誰もが一度はぶち当たる壁だ」

「いっぺん危ねえ目に合うと、しばらくは怖くて潜れなくなるものなのよ … 溺れたり流されたりする経験が、ほれ、あれだ、ほれ … 子、丑 … 」


いつものように言いたいカタカナ言葉が出てこない弥生です。

「トラウマですか?」

カンの良いヒロシが代わりに言うと、「よぐわかったなあ」と他人事のように感心した弥生です。

… … … … …

ヒロシがカバンからビデオカメラを取り出しました。

「観光協会のPR用の素材撮って来い言われて、ネタ探してるんです」

「ようやく本気になったか観光協会も」

「だから、簡単なインタビューを … 」

「よし、何でも聞け」


ヒロシの言葉に身構える海女たち。

「 … アキちゃんに」

しかし、アキはそんな気にはなれずに元気のないまま帰ってしまいました。

「今日は無理だなあ」

… … … … …

その夜、アキは春子が良く眠っていることを確認すると、そっと寝床を抜け出しました。

落ち込んで眠れない夜、アキは二階の隠し部屋へ行きます。

そこは、母の春子が高校3年の夏まで過ごした部屋、まるで時間が止まったかのように当時のまま残っていました。


アキは、机の上に置いてあるラジカセの再生ボタンを押してみました。

♪ 君に、胸キュン。キュン …

スピーカーから音楽が流れだしたので、慌てて止めます。

… … … … …

一階に寝ていた春子の耳にもその音楽が一瞬ですが届いていました。

目を開けて、ふと横を見るとアキがいません。

… … … … …

「何これ? 1983年12月5日、夜のベストスタジオ … 」

アキはラジカセから取り出したカセットテープを物珍しげに眺め、書かれてる文字を読みました。

それは十代の春子がテレビの歌番組を録音したテープでした。

まだビデオさえ普及してない時代、子供たちはラジカセで歌番組を録音して聞いていたのです。

ちなみに当時のヒット曲はこんな感じ … 吉川晃司「モニカ」、杏里「CAT'S EYE」、YMO「君に、胸キュン。」


「♪キュン。」

外に音が漏れないように、今度はヘッドフォンをつけてカセットを聞くアキ。

春子が高校生の時に流行った曲ですが、初めて聞くそれはアキにとって新鮮であり心地よいメロディでした。

「♪キュン。♪キュン。」

ヘッドフォンをして音楽に没頭するアキは、部屋のドアが開いたことに気づきませんでした。

部屋を覗いたのは、この部屋の持ち主だった春子です。

春子は24年前家を出た日のままの自分の部屋を見渡しました。

しばらく様子を窺がっていた春子は、アキにわからないようにそっとドアを閉めて寝床に戻りました。

… … … … …

ミス北鉄に選ばれたユイちゃんの人気は土日に限ったことではありませんでした。

駅で他校の男子生徒から一緒に記念撮影を頼まれることも珍しいことではありません。

自分のメルアドを書いた紙を渡してくる者もいましたが、記念撮影以上のことは大吉や吉田が目を光らせていて完全にブロックしていました。

「はいダメ、それダメ、絶対ダメ!」

… … … … …

一方、アキのスランプはまだ続いていました。

美寿々や小百合も水深の浅い場所、ウニが多くいる場所を教えたりして、何とか夏との約束を果たすことができるように協力しているのですが …

あれから、ヒロシは頻繁にビデオ撮影にやって来ました。

「すいません、毎日」

せっかく撮影に来てくれてたのに自分は肝心なウニをまだ1個も獲れないなんて …

「元々、ウニそんなに好きじゃないし、いくらの方が好きだし」

「いくらは獲ってこれない … 」


わかり辛い冗談とそれを笑う余裕のないアキでした。

… … … … …

「それお仕事ですか?」

アキはビデオカメラを手放さないヒロシに尋ねました。

「うん、WEB用に地元の人にインタビューしてるの、北三陸の魅力を … 」

「私はいいです、ウニも獲れねえのに、しゃべる資格ねえから」


気まずい雰囲気にヒロシは、ビデオカメラを収めて立ち上がりました。

「仕事楽しいですか?」

そんなヒロシにアキが唐突に聞きました。

「あ、興味ないのに聞いちゃった … すみません」

「興味ない?」


ヒロシにしてみれば、アキに言われると、少なからずショックな言葉でした。

「海に入るとウソがつけないって言うか、つい本音が出ちゃうんです」

動揺を隠しきれないヒロシですが、質問に答えました。

「楽しくはないけど、取りあえず親父はホッとしているんじゃないかな? … 世間体ばっかし気にする人だから」

「ホントにそうかな … 世間体気にしてたら、あたしの前でストーブさん、ぶん殴ったりしないと思う … 親として本当にストーブさんのこと心配なんじゃないですか?」


… アキちゃん、訛ってないよ …

ヒロシにはストーブさんの意味が分からず聞き返しました。

「そう呼ばれてましたよね?」

「そんなストーブの前から離れらないような奴が、東京で続くわけないって」 … アキが足立家を訪問した時に父、功が言った言葉でした。

苦笑いするヒロシ。

「子供が可愛くねえ親なんていねえと思います」

ヒロシは考え込んでしまいました。

「やっぱり、ちょっとしゃべっていいいですか?」

「えっ?」

「インタビューしてもらっていいですか? 北三陸の魅力広くアピールしたいんです、私」


… … … … …

浜に下りたふたり、ヒロシがビデオカメラを回しました。

「普段通りでいいからね、自然な感じで」

「はい、ここは袖が浜です! 私は高校さ通いながら、ここさ来て海女やってます、天野アキです。

ここは日本最北端の海女の漁場で、ここの海女さんは北の海女って呼ばれてます。」


入り江をバックにアキは自分でも不思議なくらい饒舌に話していました。

「ウニが獲れます! でも、私はまだウニを獲ったことがねえです。じぇじぇ … あ、今のは袖が浜の方言です。

こっちの人はびっくりした時に“じぇじぇ”って言います。もっとびっくりした時は“じぇじぇじぇ” … もっともっとびっくりした時は“じぇじぇじぇじぇ”っていうように“じぇ”が増えます」


ニコニコ顔のアキ。

「 … 何しゃべるんでしたっけ?」

「北三陸の魅力」

「ああ、んだんだ … まずウニが超うめえ」


その時、偶然通りかかった夏がアキを後ろから驚かしました。

「じぇじぇじぇじぇ、びっくりしたあ!」

「何やってるんだ?」

「インタビューだ」


夏は抱えている大きなザルの中身を見せながら言いました。

「組合長から、でっけえサザエもらったぞお! … 焼くぞお、早く来ないとなくなるぞ!」

アキは子犬のように夏の後について行ってしまいました。

インタビューをすっぽかされたことなど忘れて、その後ろ姿を微笑ましく見つめるヒロシでした。

… … … … …

観光協会に戻ったヒロシは一人、撮影してきたアキのビデオを編集していました。

パソコンに映し出されたアキの動画を何回も何回も繰り返し再生するうちに …

ヒロシは急に立ち上がって、観光協会を飛び出しました。

飛び込んだ先は、スナック梨明日です。

今夜の店番は春子と弥生、カウンターには大吉と定位置に勉さんが座っていました。

「どうした、観光協会のWEB担当?」

店に入るなり、ヒロシは春子に向かって告白しました。

「やっぱ好きです、やっぱ俺好きみたいです!」

勘違いした大吉が立ちはだかりました。

「てめえこの若造、俺を差し置いて!」

ヒロシは大吉の言うことなど意に介さずに春子に尋ねました。

「ダメですか?」

「ダメに決まってるだろう、てめえ … 歳なんぼ離れてると思ってるんだあ!」


ヒロシの胸倉をつかむ大吉を春子が制しました。

「あたしじゃないわよ!」

「えっ?」


思わず隣に立っている弥生の顔を見る大吉。

「 … あたし?」

「ちがう! … アキでしょ?」


うなずくヒロシ。

「ああ、びっくりした、夢かと思ったわよ … あれっ? びっくりしたら標準語になっちゃったわよ」

… … … … …

「やっぱそうなんだ、そうじゃないかなと思ってたけど」

「すみません … いやなんか、昼間撮ったインタビュー見てたら、たまらない気持ちになっちゃって」


カウンター席に腰を下ろしながらヒロシは言いました。

「本人に告げる前にお母さんに探りを入れとこうっていうか、何かお母さんの方が身近だったんで」

春子は朗らかに笑いながら、ヒロシに尋ねました。

「そんで?」

「自分、アキちゃんと … 」

「ダメ、絶対ダメ!」


春子はヒロシの言葉を遮りました、それ以上しゃべらせません。

「あり得ない、絶対ダメ、金輪際ダメ」

… … … … …

弥生が口を挟みました。

「春ちゃん … おらの経験上、海女って、彼氏ができると潜りが上達するんだあ」

「やめて、シモネタ … 」


春子に話の腰を折られて不満そうな弥生です。

そんなことより、諦めきれないヒロシが身を乗り出して言いました。

「一応、理由聞いておきたいんですけど … やっぱ、高校生だから?」

高校生だからとか、妹の親友だからとかは関係ないと春子は言いました。

「えっ、じゃあなんで?!」

「ヒロシ君じゃ、アキを幸せにできないからよ … だって、何やっても続かないでしょ、今は取りあえず観光協会で働いているけど、いつ辞めるかわからないし、地に足がついてない! 

… 良いお友達でいてあげて」


まっとう過ぎる理由で反論の余地はありませんでした。

「わかりました、この気持ちは胸に仕舞っておきます … だけど、アキちゃんのことを好きになったのは、俺が一番ですから、俺が第1号ですから!」

泣きながら店を飛び出して行きました。

… … … … …

そしてまた、怒涛の週末がやってきました。

しかし、先週とは少し状況の変化がありました。

「何? 袖が浜で客がどんどん降りてる … なして、じぇじぇ??」

北三陸駅で待ち構えていた大吉は首をひねりました。

『はい、ここは袖が浜です! 私は高校さ通いながら、ここさ来て海女やってます、天野アキです … 』

いつもは静かな袖が浜の漁港、得体のしれない男たちの群れがぞくぞくと浜に下りてくるのが見えました。

男たち … オタクたちは、浜にいた組合長の長内と小百合に海女の漁場を訪ねました。

場所を確認すると先を争うように走り出したオタクの群れ。

「じぇじぇじぇじぇじぇ~」

… … … … …

『あ、今のは袖が浜の方言です。

こっちの人はびっくりした時に“じぇじぇ”って言います。もっとびっくりした時は“じぇじぇじぇ” … もっともっとびっくりした時は“じぇじぇじぇじぇ”っていうように“じぇ”が増えます』


… 傷心のヒロシが観光協会のトップページ、ユイの動画の横にアキの動画もアップしたことが原因でした。

ヒロシの目を通して撮られたからかもしれません … 動画のアキは素朴で可愛く、オタク心をくすぐったのでしょう …

海女の詰所めがけてオタクたちが迫ってくるのを見たアキ。

「じぇじぇじぇじぇじぇ」

オタクたちはアキを見つけると一斉にカメラを向けてシャッターを切りはじめました。

何とユイちゃん効果でアキまでブレイクしてしまったのです。

「どうすっぺ … 」


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2013年04月22日 (月) | 編集 |
第19話

2008年9月20日土曜日、過疎の町岩手県北三陸市の市民にとって、この日は忘れられない一日となりました。未だかつてないほどの観光客が大勢で押しかけてきたのです … その数、実に普段の約30倍!

駅前のターミナルに湧いて出てくるようなオタクの群れに観光協会の保も我が目を疑いました。

発端は観光協会のホームページにアップされたたった30秒の動画でした。

… … … … …

アキが電話に出ると、リアスにいる春子から、ウニ丼が売り切れたからと、追加の注文でした。

その数を聞いて、アキも夏もたまげました。

「じぇじぇっ! 120個?!」

到底無理な注文でした。

副駅長の吉田が勝手に注文を受けてしまったと、電話の向こうの春子も困惑しています。

オタクで満員のリアスの店内、小百合が作ってきたまめぶでしばらく繋ぐと言って春子は電話を切りました。

… … … … …

観光協会に駆け込んできたのは大吉です。

ヒロシが実家に電話をかけてユイのことを呼び出していました。

「まだ寝てるみたいです」

「起こせ! 早く起こせえ!」


… … … … …

「え~、うれしいお知らせです。本日の一日車掌、ミス北鉄こと足立ユイちゃんを乗せた列車が、たった今畑野駅を出発しましたあ!」

大吉がメガホンで告知するとリアス店内のオタクたちから歓声が上がりました。

… … … … …

夏は作れるだけのウニ丼を作りました。

それを抱えたアキが袖が浜の駅から電車に乗ろうとしましたが、カメラを持ったオタクたちに阻まれました。

いつもの通学時のように制服姿で文庫本を手にしたユイにカメラを向けたオタクたち … 車両の中はまるでユイの撮影会でした。

「ユイちゃん、何これ?」

「わかんない … 取りあえず乗ってくれっていわれた」


… … … … …

北三陸の駅に着くと、ユイは車掌姿に着替えさせられ、再び始まる撮影会。

カメラ小僧の輪の中から出てきた一人のオタクがユイの横に並ぼうとするのを、先頭にいたヒビキ一郎が制しました。

「ツーショットはご遠慮ください!」

あたかもユイのマネージャーのごとく。

「なんで、アイツ仕切ってるんだ?」

腑に落ちない顔の大吉に吉田は言いました。

「やらせておきましょう … それより駅長、次の電車どう考えても定員オーバーです」

元々1時間に数本しかないダイヤ、一両編成の車両では、大量に押しかけたオタクに加えて一般の利用客を捌くことは不可能でした。

「二両編成にするべ、車庫に点検済みの車両あるべ、それでもダメなら臨時列車出すべ」

… … … … …

その頃、アキはようやくリアスに追加のウニ丼を届けました。

ウニ丼を配るアキに一人のオタクが尋ねました。

「この辺でお勧めの観光スポットってどこですか?」

「まめぶお代わりですか?」
 … 違うってば、あんべちゃん

アキは店にあった袖が浜のパンフレットを手渡しました。

「北の … うみおんな?」

「“あま”です! … 袖が浜は素潜り漁の世界最北端なんです。だから“北の海女”って呼ばれてるんです!」


自信を持って勧めたアキでしたが、オタクは興味がないようにパンフレットを返しながら言いました。

「いや、そういうんじゃなくて、何かこうテーマパーク系がいいんだけど」

… … … … …

「ミス北鉄、ユイちゃんを乗せた列車が折り返しまあす!」

大吉の号令で、一斉に店を引き上げるオタクの群れ …

ユイはホームに立って、電車に乗り込むオタクたちに笑顔で手を振ります。

電車に乗り込んだオタクは窓から身を乗り出してホームのユイにカメラを向けます。

「危ねえから頭引っ込めて!」

注意する吉田がユイの前に … 避難轟々を無視して、発車の笛を吹き鳴らしました。

お祭り騒ぎは日が暮れるまで続きました。

… … … … …

嵐が去った後のような北三陸市、疲れ切った一同は梨明日に集まって慰労会です。

ほぼ一日中、オタクの相手をしていたユイはカウンターでぐったり居眠りをしています。

アキが複雑な顔をしているのは、オタクたちが北の海女には全く興味を示さなことが不満なせいでした。

「で、結局何人来たんだ? 今日」

「北鉄の利用者が、のべ2,300人」


大吉が聞くとカウンターの中の吉田が集計したメモを見ながら答えました。

普段の約5倍の人間が駅を利用したことになります。

「海女クラブの方はどうでしたか?」

「知らね … 」


話すのも億劫そうな夏 … 今日一日中、小屋でウニ丼を作っていたので、浜には出ていないのです。

「おら今日67個も作ったからな」

「浜は普段と変わらなかったそうです」


小百合が代わりに答えました。

… … … … …

「中心部は今日一日で少なくとも、1,000万円の経済効果がありました」

しおりの発表にどよめきの声が上がりました。

今更ながら、インターネットの影響力に驚いている保に大吉は言いました。

「だから早くホームページこさえろっていったんだ!」

そこに口を挟んだのは、ヒビキ一郎でした。

「ネットのというより、ユイちゃんの潜在能力でしょうね … むしろ今後は、足立ユイという100年にひとりの逸材をどう生かすか、皆さんのプロデュース能力が問われるでしょう」

ステージに立ちエラそうに話す一郎に吉田が突っ込みを入れました。

「何でお前がいるんだよ?」

… … … … …

確かに、せっかくお客さんが来ても、開いてる店が商工会長の今野の店を含めて7件だけしかありませんでした。

商店街の連中は大勢の観光客になれていないのです。

押し寄せる客を目の前に恐れをなして急遽店を閉める店主さえいました。

「おいおい、しっかりしてくれよ、商工会さんよ!」

大吉が非難しましたが、北鉄も人のことをいえるほど大したことはしていませんでした。

… … … … …

「オタクの皆さんどうぞ、こちらでございます!」

オタクを引き連れて北鉄の車両見学会。

「オタクさん、オタクさん」と繰り返し呼んでいた大吉たちに対して一郎がクレームを付けました。

「一応、言っておきますが、オタクという呼び方は蔑称ですので、オタクと呼ばれて傷つくオタクもいますので」

「さん」をつけても、お客さんみたいな言い方をしてもダメなようです … 「鉄道ファン」ならOK … 面倒くせえなあ。

「明日も来んのか、オタクは?」

言ってるそばから夏が尋ねました。

明日は日曜日だし、下手すりゃ今日より増えるかもしれないと保が言いました。

「明日は30個しか作んないぞ」

夏が宣言すると、小百合もまめぶ汁は買出しに行かなければ材料がない、今野は臨時休業だと欲のないことを言い出しました。

… … … … …

「ちょっと待てよ! 北鉄開通から24年、やっとめぐってきたチャンスだど、おめえら何ビビッてるんだ?!」

檄を飛ばす大吉。

「別にビビッてるわけじゃねえよなあ」

「くたびれてるだけだ」


今野と夏はうなずき合いましたが、一人熱くなっている大吉は構わずまくし立てます。

「言い訳は聞きたくねえ! せっかく増えた観光客みすみす手放すのか、また過疎の町に逆戻りか?

… 商工会長、明日は北三銀座の店、端から端までシャッター開けさせろ!」


頭ごなしに言うと、保には市内の宿泊施設と連携したPR活動と各観光スポットを往復する観光バスを手配するように命令しました。

「そして我が北鉄は、我が北鉄は … 」

大吉はユイの方に向き直りました。

「明日、私予定あるんです … 盛岡でダンスのレッスンがあるし、嵐の新曲の発売日だし、雑貨屋にも行きたいし … 」

ユイが申し訳なさそうに断ろうとすると、いきなり大吉は土下座しました。

「この通りだ … 情けねえ話だが、この北三陸にはこれといった名物もねえ、テーマパークもねえ、ファストフードもシアトル系コーヒーもねえ … ミス北鉄だけが、頼みの綱だ!」

ユイは困惑しています。

「ええ大人がよってたかって女子高生さ頭下げてみっともねえぞ!」

見かねた夏にたしなめられても、大吉は言いました。

「なりふり構ってらんねえべ … なあユイちゃん、電車さ乗ってくれればいい、時々笑ってくれればいい

頼む! 地元のためと思って!!」


大吉がもう一度頭を下げると、吉田、今野、保たちまで頭を下げました。

… … … … …

ユイちゃんは次の日も列車に乗り、撮影会では収まらず、急遽じゃんけん大会が開かれるほど盛況ぶり … ウニ丼も70個完売しました。

作業小屋から出て来た夏は、母屋の入り口に突っ伏しました。

「限界だあ … ウニもご飯も見たくねえ」

… … … … …

「疲れた~」

ウニ丼を売り切ったアキも北三陸の駅の待合室のベンチに座り込みました。

「うん、疲れたね」

心なしかユイは元気なく言いました。

「でもすごい人気だね、わざわざ九州から逢いに来た人もいたもんね」

興奮気味にアキが話しても、ユイは落ち着いていました。

「まあ、あれだけチヤホヤされたら勘違いしちゃう子もいるだろうね」

アキにはユイの言っている意味が分かりませんでした。

「だって私、何もしてないじゃん … ただ列車乗って、時々顔あげて笑って、撮影して、握手して、じゃんけんして …

ただの田舎の女子高生が何やってんだって感じ」

「でもアイドルみたいだったよ」

「みたいなだけで、アイドルじゃないもん」

その冷静さにアキは驚きました。どんなに騒がれてもチヤホヤされても、ユイは自分を見失ったりしないんだ。

「かっけえ … やっぱりユイちゃんアイドルだよ」


ユイはアキの顔を不思議そうに見ました。

「なんで?」

「なんでって言われると困るけど … そもそもアイドルが何だか、よぐわかんねえし

でもユイちゃん見てると、おらも明日からがんばっぺえって思うんだ」

「アキちゃん … 」

「きっとあの人らも、そう思ってるっぺ」


あの人たち … 北三陸を去るオタクたちの顔も満足そうでした。お互いが撮ったユイのベストショットを見せ合う … どちらかというとキモイ彼らが輝いて見えるから不思議です。

アキの言うように、そんなパワーをくれるユイは、すでに紛れもなくアイドルでした。

… … … … …

絣半纏、海女の衣装に着替えたアキ、長内組合長が持つ鏡で髪型を整えると勇ましく宣言しました。

「組合長、今日こそウニ獲ってくるからな!」

「ようし! 晩酌の肴はウニの網焼きだあ!」


ハイタッチすると勢いよく漁協を飛び出しました。

「レッツゴー!」

目の前に袖が浜の海がひろがりました。

アキが海へ潜るのは、潮に流されて以来のことでした。

浜へ続く道を走って行くアキ。

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2013年04月21日 (日) | 編集 |
さて、次週の「あまちゃん」は …

一千万円の経済効果がありました

初代「ミス北鉄」のユイ(橋本愛)の人気によって、町には前代未聞の観光客が押しかける。

笑って訛って! … じぇじぇ

さらにアキ(能年玲奈)に想いを寄せるヒロシ(小池徹平)がアキの動画も掲載したことで、今度はアキのファンが押し寄せる事態が発生。

アキちゃん、獲れたか?

しかし、いまだウニを獲ることができず、観光客のリクエストに応えられないアキ。

奥の手使うか?

先輩海女たちは、安部(片桐はいり)が、海中でこっそりウニをアキに渡して、アキが獲ったように見せかける。

ダメ、絶対ダメえ!

自分のふがいなさに悩むアキは、かつて春子(小泉今日子)が過ごし、そのままの状態で残っている部屋で、母の若き日に思いを馳せる。そこに春子がやってくる。思い出の品々を通じて、心を通わせる母と娘。

脳みそ使っちゃだめなんです、考えちゃだめなんです

スランプ脱出の秘訣を春子から聞き、奮起したアキは「本気獲り」に挑むことに。この日は、年に一度獲れるだけウニを獲ってよい、海女たちの真剣勝負の漁で、海女漁の今季最終日。天野家を代表し、参加したアキは、夏(宮本信子)や春子(小泉今日子)が見守る中、海中に潜っていく。

… … … … …

しかしアキは前日にヒロシから突然の愛の告白を受けて大混乱していた…。思うように動けず海中でもがく中、脳裏によみがえる、夏や春子の言葉。果たしてアキはウニを獲って一人前の海女になれるのか?!

もう、あまちゃんじゃなく海女さんだ

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2013年04月20日 (土) | 編集 |
待田純(夏菜)が「カイザーオオサキプラザホテル」を去って2年余り…。純の先輩で教育係でもあった桐野富士子(吉田羊)は宿泊部長として忙しい日々を送っている。

そんな30代最後の朝、出勤の支度をする富士子にかつての恋人・鶴田(風間トオル)から電話がかかってくる。「今夜会いたい」と。久々のデートの約束にときめく富士子。だが今日だけは平穏であってほしいと願う富士子の願いもむなしく、ホテルではトラブルが続く。

保身に走る上司・中津留(志賀廣太郎)からは無茶な指示を出され、部下の水野(城田優)からは突き上げられ、歯ごたえのない新人たちの相手をし、それでもなんとか一日が終わるかと思われたころ、飛行機のトラブルで大量のお客を急に引き受けなくてはならなくなる。大混乱する現場。最前線で指揮を執る富士子に刻々と約束の時間が迫る。はたして30代最後の夜、富士子に幸せは訪れるのか…。

連続テレビ小説「純と愛」でも特に人気の高かったキャラクター・桐野富士子を主役に据え、人生の岐路に立つキャリアウーマンの一日を描写する中で、アラフォー女性のリアルな生活や仕事と恋、そして夢と悩みを描くハートフル・ヒューマン・コメディ。
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気になっていた「愛」のその後がわかるかと期待して見ました。

電話で純は、愛と仲良く花見をしたりしていると話していました … ということは?!

「富士子は見た!」

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2013年04月20日 (土) | 編集 |
第18回

今日は北三陸秋祭りの日。

毎年この日に向けて各地区ごとに豪華な山車を製作し、競い合うように町内を練り歩く、そんな一大イベント


喫茶リアスも焼きそばの屋台を出店しています。アキも呼び込みを手伝っていました。

でも今年はいつもと違いました。

今日このステージでミス北鉄が決定するのです


… … … … …

コンテスト出場者控室。

ユイを始めとした最終候補の5名が出番を待っています。

晴れ着、ナースの制服、水商売っぽい服、ユイはただの普段着のようですが、やはりひときわ際立っていました。

別の意味で目立っているのが、観光協会のしおりです。彼女だけ何故か水着姿なのです。

「何これ? 水着誰も着てないじゃん」

保が吉田を問い詰めていますが、埒があきません。

そこへ顔を出した大吉。

「ああ、今日は気温も低いんで服装は自由ってことになったんだ、ごめんね!」

「水着の方が審査にちょっとは有利だってことかな?」


吉田が笑って答えました。

「ああ、それはないです。もう結果出てるし」

… … … … …

ステージに現れた大吉がマイクを取りました。

「それでは結果発表です … 初代ミス北鉄は、足立ユイちゃんに決定!」

ファンファーレの後、バンドの演奏が始まり、盛大な拍手の中、ユイがステージに上がってきました。

呆気にとられている保としおり。

「終わりか、これで終わりか? 準ミスだの審査員なんとか賞とかねえのか?」

「 … ねえです」


ステージの上では、大吉がユイの頭にミスの証のティアラを乗せていました。

初代ミス北鉄はあっさり決まりました

… … … … …

「すごいね、あんたの親友。グランプリだって … あんたも頑張んないとね」

母に言われて、アキはうなずきました。

「せっかく転校までして東京の生活捨ててこっち来たのに、海に潜れないんじゃあ何のために来たかわからないもんね」

沈んだ表情を見せる娘に春子は発破をかけました。

「何よ、悲劇のヒロインみたいな顔しちゃって … ギクシャクした時間が長引けば、元に戻るのも時間がかかるよ、ママみたいに」

自分の経験から出た母のこの言葉には、説得力がありました。

… … … … …

夕暮れ迫る頃、勢ぞろいした山車に明かりが灯り、祭りのメインのパレードが始まりました。

賑わう見物客が見守る中、目抜き通りを山車が連なって練り歩いていきます。

人込みをかき分けながら急いでいるアキは、交通整理をしているヒロシを見つけました。

「あ、ストーブさん!」 … その呼び方どうなんでしょうね?

「ユイちゃんの山車はまだ?」

「ああ、こっちへ向かってるって」


ミス北三陸のお披露目、ユイは山車に乗って周っているのです。

… ヒロシが持っている誘導灯を見て、アキにズルい考えがひらめきました。

「もっと近くで見てえ、もっと近くで見てえなあ」

わざとヒロシに聞こえるように何回も言いました。

… … … … …

ヒロシに頼んで、交通整理のスタッフに紛れ込んだアキは一般の見物客が入ることができない道路上でユイの乗った山車を待ちました。

「ミス北鉄に選ばれた足立ユイちゃんを乗せた山車が到着しました … 」

アナウンスが流れ、ひときわ豪華な山車がアキの目の前に現れました。

山車の中央のカラクリが開くと中にはお姫様の衣装を着たユイが立っていました … 笑顔で手を振るユイ。

親友のユイが地元のアイドルになった、まるで自分のことのようにアキは無邪気に喜びました

「見た? 今ユイちゃん、こっち見て手を振ったよ」


嬉しそうに話すアキにヒロシはうなずきました。

同い年だけど、クラスメートだけど、仲良しだけど、ユイと自分は明らかに持っているものが違う

私、アイドルになるの … 東京に行って、アイドルになるの …


ふたりきりの駅のホームでそう言ったユイの顔をアキは思い出していました。

… … … … …

パレードの後、祭りの宴は続いています。

色々な地区の人たちと代わる代わる記念撮影をしているユイを遠くから見ていたアキは、急に立ち上がりました。

「んだ、やらなきゃ損だべ!」

ようやくユイはアキたちの元に戻ってきました。

「ごめん、山車に乗ってたから酔っちゃったみたいで、気分悪いから帰るね

そういうとそそくさと詰所を後にしようとします。

「あ、待ってけろ、ユイちゃん!」

アキは思い立ち、ユイを呼び止めて、傍にあった団扇とマジックを差し出しました。

「サインけろ! … 今日のユイちゃん見てたら、なんか吹っ切れた、勇気もらった気がする

だから、記念にサインけろ!」


ユイは一瞬戸惑いの表情を見せましたが、受け取って、慣れた手つきで団扇にサインをしました。

それは即興で考えたようなものではありませんでした。

「 … あるんだ」

「人に頼まれて書いたのは初めて … 」


将来を夢見て、自分の部屋で何回も何回も練習したものなのでしょう。

「ありがとう! … ガンバっぺ!!」

アキが右手を差し出すとユイはうなずいて握り返しました。

笑いあうふたり、ユイは握手会のアイドルのように両手でアキの手を握りました。

すっかり訛りが戻っているアキ、しかし今日のユイはそのことには触れませんでした。

… … … … …

祭りが終わると、海女のシーズンもそろそろ終盤 …

夏を先頭に海女たちが浜から上がってきました。

「今週一杯だな」

弥生が言うと、美寿々がうなずきました。

「んだな、冷ゃこくてもうダメだ、客も来ねえし」

秋祭りが過ぎ、海が冷たくなると、海女たちは途端にふさぎ込み弱音ばかりを吐くようになります


… … … … …

一同が海女クラブに戻ると、絣半纏に着替えたアキが正座をして待っていました。

一瞬で険しい顔に変った夏が冷たく言いました。

「何の用だ? 来んなって言ったはずだぞ」

後ろに控えていた春子に尻を叩かれて、アキは話しはじめました。

「夏ばっぱ、やっぱおら潜りてえ、海さ潜ってウニ獲りてえ、このまま海女辞めたくねえ … だから、また教えてください」

畳に頭をすりつけました。

「だめだ、おめえは海を舐めてる。まだガキだ、また波さ飲まれて溺れる」

夏に切り捨てられても、アキは食い下がりました。

「もう絶対溺れねえから!」

「だめだ … 」


夏は許しませんでした。しかし、そう言った夏自身も苦しんでいるように見えました。

「なして?」

「 … おめえは海女である前に、おらの大事な孫だ、死なれたら困る」


思ってもみなかった理由でした。

その時、口を挟んだのは、かつ枝でした。

「もし、おらに気を遣ってるのなら、余計なお世話だぞ、夏ばっぱ」

… … … … …

「えっ?」

「何? 何でかつ枝さんに気遣うの?」


尋ねたのは春子でした。

かつ枝の元夫 … 組合長の長内六郎が言いました。

「ああそうか、春ちゃん知らねえんだな」

「ふふふ、おらの倅も波に飲まれたのしゃ」


サバサバとした顔でかつ枝が答えました。

「え、克也君が … いつの話?」

「16年前か … 」

「ほら、ここさいらあ」


長内は漁協の壁の上に掲げてある亡き息子の写真を指さしました。

「地曳網の漁師でなあ、時化だの嵐だの何べんも危ねえ目に合って、それでも助かって … 母さん、でえじょうぶだ、おら悪運が強ええからなんて笑ってたんだけんど … 」

春子の幼い頃の思い出の中にいる克也は優しいお兄さんでした。

「そう言えば、そう言えば見ないなって思ってたの」

克也の写真を見上げながら春子は胸が痛みました。

「ごめんね、かつ枝さん、あたし何も知らなくて」

「いやいやいや、もうおらたちも普段はほとんど忘れて暮らしてるんだから … 」


… … … … …

夏がアキに向き直って話しはじめました。

「いいかアキ、おめえがウニ1個獲れても獲れなくても、たった500円の違いしかねえんだ … そのたった500円のためにおめえ、危うく命を落とすとこだったんだど」

アキは改めて自分の過ちの意味を知りました。

「ごめんなさい」

「たった500円と引き換えに命を奪うのが海だ、甘く見るんでねえ!」

「ごめんなさい」


夏は長内夫妻に目を向けました。

「残された人間の辛さ考えろ」

同時に自分の考えの甘さも知ったアキでした。

… … … … …

「先輩たちの言うこと聞くか?」

夏の言葉にアキはしっかりとうなずきました。

「入り江の外さ出ねえな?」

「はい」

「よし! そんならこうすっぺ」


夏は立ち上がりました。

「今月で海女のシーズンは終わる、今月中にウニ1個でも獲れたら、おめえを海女として認めてやる」

… … … … …

「やったあ!」

アキの顔に笑顔が戻りました。

「その代り、獲れなかったら二度と潜らせねえぞ」

「じぇじぇじぇ」


夏の一言一言で、ころころ変わるアキの表情です。

「ようし、おらたちもアキがウニ獲れるまで潜っぺ!」

かつ枝が皆に気合を入れました。

「んだな、冷ゃこいだの潮が早ええだの言ってらんねえ!」

俄然元気を出す美寿々です。

「明日からビシビシ行くぞお!」

こうしてアキはめでたく謹慎が解け、海女クラブに復帰しました


… … … … …

一方、観光協会には例の面倒くさい青年(中年?) … ヒビキ一郎がやって来ました

「こちらのホームページに掲載されている足立ユイちゃんの写真が僕的に全然納得いかないっていうか … あれじゃ、ユイちゃんの魅力が全然伝わらないんですよね

だからどうぞ、僕が撮った写真を使っていいですよ的な … あ、動画もありますけど」


顔を見合わせる保とヒロシ。

「だから、トップ画面に動画をアップするだけで反応ぜんぜん違いますから!」

「アップ動画にトップを画面?」


ちんぷんかんぷんなことを言っている保に業を煮やしたイチロー。

「もうPC借りま~す」

観光協会のPCを使ってその場で勝手にトップ画面を自分の思うように作り変えてしまいました。

こんな風に …

… … … … …

「毎週土曜に一日車掌として北鉄にの乗ることになりました!」

北鉄の制服姿で帽子をかぶって一日車掌と書かれたタスキをかけたユイ。

その僅か30秒のビデオが北三陸市に大変な奇跡を起こすのです …

「ぜひ、名物のウニ丼をお供に私に逢いに来てください」


にっこりほほ笑むユイ。

… … … … …

北三陸駅のホームに電車が近づいてくるのが見えます。

案内のアナウンスをする吉田は目を疑いました。

「じぇじぇじぇ」

電車が乗客ですし詰め状態なのです。

停車した電車から降りてくるのは、一目でわかるオタクの群れ … 先頭切ったイチローが吉田にユイの居場所を尋ねました。

吉田が指差す方にどどどどと大移動 … 怯える吉田。

「じぇじぇ!」

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2013年04月19日 (金) | 編集 |
第17回

ユイの家から戻ったアキが家の前に立つと中から祖母と母の笑い声が聞こえてきました。

アキは不思議に思いながら戸を開けました。

「あ、おかえりアキ」

「誰か来てるの?」


夏と春子の他には誰もいませんでした。

「笑い声が聞こえたから … 」

今まで楽しそうに笑っていたはずの夏はアキにソッポを向いたまま、「そろそろ寝るべ」と自分の寝床に行ってしまいました。

アキはアキで、そんな祖母のことを気にするそぶりも見せずに風呂に入る準備をしています。

居間に残されたのは、春子ひとり。

「もう、いい加減仲直りしてくんないかな、面倒くさい」

… … … … …

海女クラブ。

吊るされたままの夏の絣半纏 … ここ数日、海女クラブの会長は漁を休んでいます。

鏡を見ながら身支度を整えていたかつ枝が言いました。

「体もしんどいだろうし、アキがいねえんじゃ浜さ出ても面白くねえもんな」

「はあ、だったらいい加減許してやりゃあいいのに」


ため息まじりの美寿々です。

… … … … …

海を舐めてかかる奴、目上の人間の言うこと聞けねえ奴は潜る資格ねえ … 海女失格だ!

袖が浜駅のホームでアキはユイに謹慎になってしまった理由を話しました。

「そっか、一度言ったら聞かない気がするもんね、リアスのおばちゃん」

ユイに言われてアキはうなずきました。

「どんなに仲良くてもギスギスするんだね … ウチも昔、仲良かったもんな」

思い出したように話すユイにアキが尋ねました。

「いつもああなの? お兄さん」

「うん、顔合わせると大体言い合いが始まって、ああなる … 2ヶ月で帰ってくるからだよ」


アキはユイに前から聞きたかったことを思い切って聞いてみました。

「なんでそんなに東京にこだわるの?」

… … … … …

ユイは質問には答えずにアキの顔をじっと見つめました。

まずいことを聞いてしまったのかと思ってアキは謝りました。

「私もお兄さんと一緒で、東京を逃げてきた負け犬だから … でもね、わざわざ東京行かなくても、ネット使えば欲しいもの大抵買えるし、もう東京も田舎も変わんないって感じするけど …

むしろ、自然とか、海とか、美味しい食べ物とか、都会にはないものいっぱいあるし」


アキの話を無表情で聞いていたユイがボソッと言いました。

「今日、訛ってないね」

確かに … ユイに指摘されてアキも気づきました。

「あ、そうだね … 最近、浜に出てないから戻っちゃったのかも」

「そっちの方がいいよ、アキちゃんが訛ってるのなんてウソだし、不自然だし、なんかバカにされてるような気がする」


アキにそんなつもりは全くありませんでした。でもユイがそう感じていたのならどうすればいいんだろう …

戸惑うアキを見て、ユイは笑顔を見せて言いました。

「ごめん、怒った? 今のは言い過ぎ」

… … … … …

「だけど、半分は本心 … ネット使えば欲しいもの買えるとか、田舎も東京も変わんないとか、私は言えない … そんなの田舎者の負け惜しみだもん」

ユイはベンチから立ち上がりました。

「自然がいいとか海がきれいとか、東京から来た人が言うのはわかる … でも私は言えない … だったら都会が好き私は、ビルが好き、地下鉄が好き、ネットカフェが好き」

… 「言ったことないけど」と笑いました。

「だから行きたい、この目で見たい」

ふたり以外誰もいない昼間のホームはまるでユイの独壇場でした。

ユイはゆっくりとホームの先に向かって歩き出します。

「地方出身者でも同い年の子とか、年下の子とか全然頑張ってるし、チャンスがあれば明日にでも出て行きたい … 私はお兄ちゃんとは違うの、行ったら絶対帰ってこないんだ … 夢があるから」

立ち止まり、ふうっとひと息つきました。

「言っちゃおうかな … 」

話が見えず、アキは聞き返しました。

「誰にも言わないでね」

振り向いて念を押したユイ、アキはうなずきました。

「私、アイドルになるの、東京に行ってアイドルになるの」

… … … … …

何言ってるんだこの子は?

開いた口がふさがらないとはこのことです。

バカなのか、毎日あんな分厚いステーキばっかり食べてるから、どうかしちゃったのかしら?


取りあえず、アキは聞こえてないフリを装いました。

… … … … …

「アイドルになりたああい!」

ユイはホームの先端から、その先に見えるトンネルに向かって大きな声で叫んでいました。

気持ちが晴れたのか、ユイは笑いながら戻って来ると、アキの隣に座りなおしました。

聞こえない作戦、失敗です …

丁度、ユイが乗る電車がホームに入ってきました。

「じゃあ、また明日ね」

ユイは可愛い、そして自分が可愛いことを知っている … そのことに何の迷いも戸惑いもないんだ


アキはユイが乗った電車を見送りながら、つぶやきました。

「かっけえ … 」

… … … … …

観光協会。

ミス北鉄コンテストの最終候補メンバー5名を紹介したポスターが刷り上がってきました。

当然のことながら、メインの位置にユイが載っています。他の候補も皆それなりに魅力はあるのでしょうが、到底ユイの敵ではありません … それだけユイは別格でした。

一応、候補に残っているしおりが自分だけ年を食ってて顔がむくんでいると悲観しています。

「可愛いって、可愛くむくんでらって」

保が無責任なことを言ってなぐさめました。

「え~、言うまでもなく、このミス北鉄コンテストの目的は町おこしです。赤字続きの北三陸鉄道の再興と地域活性化のシンボルとして、1年間北鉄および市の各種イベントに参加してPR活動に励んでいただきます」

ポスターを前に能書きを垂れる大吉に弥生が尋ねました。

「賞金は、なんぼもらえるの?」

そこまで考えていなかった大吉は弥生とかつ枝にどやされました。

「バカかおめえ、今どきの娘がただで水着なるわけねえ!」

「水着ぃ?!」


驚いているのは、しおりです … 水着審査があることは聞いていなかったようです。

… … … … …

「本当は辞退するつもりだったの」

学校の渡り廊下を歩きながら、ユイがアキにミスコンのことを話しています。

「デビューした後にそういうの発掘されたら嫌じゃん、ミス北鉄とか正直ダサいし、下積み時代に鉄道オタクのアイドルだったとか … 私的には消したい過去だからね」

「そんな先のこと考えているんだ」

「田舎で運使い果たしたくないしね … だけど、お兄ちゃんのこともあって断れなくなっちゃった」


ヒロシが大吉の紹介で仕事が決まったのです。

その職場とは …

… … … … …

ヒロシを伴って観光協会を訪れた大吉は保に紹介しました。

「この通り、暗えし顔色悪いけど、頭いいし真面目だし、何しろパソコン得意みてえだから」

「よし、まずジオラマを … 」


何はなくともジオラマの保。

「ジオラマじゃねえべ、バカこの! パソコン得意だって言ってるんだから、まずホームページだべ!」

観光協会のWEB担当となったヒロシは、瞬く間に北三陸市観光協会のホームページを完成させました。

「そうそう、こういうのをイメージしてたの」

「エラそうに半年も待たせやがって」


したり顔の保に大吉。

ヒロシが画面のマップ上をクリックすると市内の観光スポットの案内が表示されました。

「 … ジオラマいらなくなっちゃう」

トップ画面にはミス北鉄コンテストの告知も貼ってあります。

「写真をクリックすると投票できるんです」

… … … … …

「ほんで足立君は誰さ投票したの?」

大吉が尋ねると、「アキちゃん」と即答しました。

「じぇじぇ」

「だって、か、可愛いじゃないですか … 」


… アキのことに関しては、割とハッキリ意思表示するヒロシでした。

「それは … おたまじゃくしが可愛いとか、チンパンジーが可愛いとか、そういう類の可愛いじゃ」

「普通に可愛くないですか?」


カチカチカチ、カチカチカチ …

ふと見ると、しおりが物凄い勢いで自分の写真を繰り返しクリックしていました。

慌てて止めるヒロシ。

「一人1回です、組織票が入っちゃうんで … 」

… … … … …

「だから、取りあえず参加することにした」

北三陸秋祭りの山車の最終仕上げ、パーツを取りつけながらユイは言いました。

「そっか、お兄ちゃんのためか … 」

「ためって言うか、せっかく決まった再就職だし … お兄ちゃんがしっかりしてくれないとユイも家、出れないからさ … まあ、やるからにはグランプリ狙うけど」

本気なんだ、ユイは本当に卒業したら東京に行くんだ、夢をつかむために着々とその準備をしているんだ

「 … かっけえ」


アキの口から思わずこぼれました。

ユイは自分のこととは気づかずに、山車を見上げました。

「ああ、カッコいいね」

… … … … …

それに引き換え、私は華もないし存在感もない … 可愛いなんて最後に言われたのはいつだろう?

海女になったのはいいけれど、ウニひとつ満足に獲れない、しかも今は謹慎中で海に潜ることさえ許されない、ただ時間だけが過ぎていく …


今夜は、夏とアキふたりきりで夕食の夜でした。

「何だよ?」

「ううん … 」


夏の顔をぼんやりと見つめていたアキは頭を振りました … ふたりの間はいまだギスギスしたままです。

… … … … …

浜へ出なくなってから、眠れない夜が増えました …

目が覚めると、隣の寝床に母はまだ帰ってきていませんでした。

布団を抜け出して、何か飲み物でもと台所へ … ふと冷蔵庫の横の引き戸が気になりました。

そっと開けてみると階段があります。

家の中を探検することはありましたが、二階へ上がるのはこの時が初めてでした。

… … … … …

天野家に限らず、古い漁師の家は独特な造りになっています。

金庫を隠すための屋根裏部屋があったり、廊下が複雑に入り組んでいたり、隠し部屋があったり …


ふと触れた扉がゆっくりと開きました … 部屋があります、恐る恐る覗くと …

そこは1984年の夏で時間が止まっていました … チェック柄の変な髪型の若者たち、肩パットの男、猫の免許書 … くるくる巻いたの髪型の女性歌手 … ブラウン管のテレビ …

アキが手に取ったもの、それはペチャンコにつぶした学生鞄でした。裏を見ると、赤いバラの絵と「暴走天使 天野春子 参上」と書かれた文字 …

そこは春子が18歳まで使っていた部屋でした。

アキは躊躇しました、同じ年頃の少女として、軽い気持ちで立ち入ってはいけない領域のような気がして … 


… … … … …

「ただいま」

母が帰ってきた声が下からしました。慌てて部屋を出るアキ。

… … … … …

春子が家に上がると、居間で夏がうたた寝をしたままでした。

「こんなところで寝てるの?」

気づかれないように1階に戻ってきたアキは何事もなかったように母を迎えました。

「あら、まだ起きてたの?」

「うん、眠れなくて」

「早く寝ないと、明日お祭りだよ」


アキはうなずき、そそくさと自分の寝床に入りました。

そうです、明日は待ちに待った北三陸秋祭りなのです。

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2013年04月18日 (木) | 編集 |
第16回

というわけで「ミス北鉄」コンテストが開催されることになったのです。

北三陸の駅にも「ミス北鉄★コンテスト2008」と書かれた投票箱が設置されました。

… … … … …

「ごめんごめん、お待たせ」

他校の男子生徒から、プレゼントらしきものを受け取っていたユイ、アキは駅に貼られたミスコンのポスターを眺めていました。

「ミス北鉄だって」

「ださ」


ふたりとも全く興味を示さずに駅を後にしました。

… … … … …

「え? じゃあ、海女さん辞めちゃったの?」

「辞めたくねえけど、祖母ちゃんの許しが出るまで謹慎 … おらが祖母ちゃんのいいつけ守んねえからだ」


落ち込むアキをユイは自宅に誘いました。

「じぇ?」

「だって、ヒマでしょ?」


東京では友達がいなかったアキは家に誘われた思い出がありませんでした。

「ヒマだけど … 行っていいの?」

「いいに決まってるじゃん、友達だもん」

「わあ、うれしい」

「なんかアキちゃんの話したら、パパが会ってみたいって … お母さんの担任だったみたいで、すごい可愛くて有名だったんだって」


初耳でした … そんなことより、ユイに家に誘われたことがたまらなくうれしいアキでした。

… … … … …

リアスには、いつもの同じ顔ぶれが勢ぞろいしています。

大吉が唐突に春子に年齢を尋ねました。

「42だけど」

「あら、42か … でも四捨五入すれば、40には見えるっぺ」

商工会長の今野が言うと、カウンターの男どもが同意しました。

「見える見える」「ぜんぜん問題ありませんね」

意味深に笑いあう一同を見て、春子には意味が分かりません。

「何? … 何だよ?!」

不愉快な顔になった春子に大吉が言いました。

「あのな、ミス北鉄に推薦しておくから」

傍らに置いてあった投票箱にさっき書いた紙を投票しました。

「何それ? あたしそんなのやんないよ」

「まあまあまあ … 」


吉田が取り出したチケットの束、大吉が説明しました。

「これな期間限定のミス北鉄コンテストの記念切符で、半券にミス北鉄の投票権がついてるんじゃ」

「つまり、北鉄さ乗れば乗った分だけ投票できるんです」


… まるでA○B商法 …

「一応、年齢制限が40までなんだけど、春ちゃんは別格だから」

「いやです、絶対! 私、ミスじゃないし … 普通、ミスコンって20代とかでしょ?」


男どもが顔を見合わせて笑い出しました。

「20代? 20代なんてまだケツの青いガキだべや」

「んだんだ、30から墓場までだ」


今野に続いて漁協の長内がそう言い、皆楽しそうに笑い合っています。

「腐りかけが一番いいんだよね」

カウンターの入り口に近い自分の指定席に座っていた勉さんが琥珀を磨きながら、ボソッと言いました。

「腐ってませんから … 」

春子はカウンターから出て、イス席にいたヒロシに同意を求めました。

「ねえ、あり得ないよね?」

マンガを読んでいたヒロシは顔をあげて言いました。

「そうっすね、アキちゃんならまだしも … 」

それを聞いたカウンターの親父どもは、首を振りながら声を合わせます。

「いやいやいや、子供子供子供 … 」

… … … … …

「あ、そうだ!」

春子は、アキが今日はユイの家にお呼ばれしたと言っていたことを思い出して、ヒロシに話しました。

「え、ウチに?」

… … … … …

観光協会では、菅原が事務のしおりにミスコンに出場することを勧めていました。

「だめだめ、もう若くないし … お腹出てるし」

「ちょっとぐらい出てる方がいいんだってばあ」


菅原におだてられて、しおりはその気になりかけています。

… … … … …

北三陸から北鉄に乗って1時間ほど南下した畑野駅、袖が浜よりもっともっとのどかな村にユイの家はありました。

広大な土地に豪邸 … アキはユイの家の前で立ちすくんでいました。

「な、なんじゃこれ?」

ユイの父、足立功は北三陸高校の元教師で、定年後は県議会議員を務める地元の名士。

母、よしえはこの土地の人間ではありません … 仙台出身の彼女は短大卒業後、岩手のテレビ局にアナウンサーとして入社、足立に見初められ、結婚しました。

笑顔のよしえに出迎えられて、アキは緊張気味に挨拶をしました。

… … … … …

「すげえ家だな」

ユイの部屋に通されたアキは感心して言いました。

「祖母ちゃんちとは大違いだ」

「でもここ村だよ」


そう、足立家の中だけ別世界でした。

「パパは環境がいいから住んでいるって言うけど、不便だし … 早く出たい」

「東京に?」


ユイはうなずきました。

「本当はお兄ちゃん当てにしてたんだけど、2ヶ月で帰って来ちゃったからねえ」

「どうして?」

「ま、所詮、負け犬体質なんだよね」

「 … 厳しいね」


… アキは、妹とは何年もしゃべってないと言ったヒロシの言葉を思い出しました。

… … … … …

ユイの部屋がノックされて、父親の足立功が顔を見せました。

「君が天野春子さんの娘さん?」

元気にあいさつをしたアキに功は「似てないね」と言いました。

「お母さん、有名だったんですか?」

「そりゃあ知らない人はいなかったよ … 可愛いのももちろんだけど、それ以上に天野、ツッパリでね」


アキもユイもツッパリの意味が分かりませんでした。

… … … … …

ユイが父に春子の写真はないのか尋ねました。

「そう思って、卒業アルバム探したんだけど … 考えてみたら天野、卒業の時には学校にいなかったんだよ」

アキは母の話を思い出して、うなずきました。

「中退したんだ … へえ、かっこいい」

ユイはそう言いましたが、アキにはその感覚はよく理解できませんでした。

… … … … …

アキのいない天野家、食卓の準備をする夏に春子が声を掛けました。

「今日、アキいないよ」

「ああ、お呼ばれか … で、ふたりだけか?」


夏と春子ふたりきりの夕食は初めて … いや、24年ぶりのことでした。

… … … … …

足立家の食卓では、功が春子の思い出話に花を咲かせていました。

「文化祭の時だったかな、他校の生徒がね、わざわざ天野を見に来てね … 整理券配ったんだよ」

「すごいじゃん … だって綺麗だもん、アキちゃんのママ」


ユイにそう言われてもアキには、功の話に出てくるような母のことイメージすることができませんでした。

アキはリビングの隅の置いてあるものが気になって、功に何か尋ねました。

「ああ、あれはね薪ストーブ」

「この辺、寒いんだよ … 5月まで雪降るんだから」

「じぇじぇじぇ」

「結局、1年の半分以上使うから置きっぱなしにしてるの」


よしえが前菜の皿をアキの前に置きながら説明しました。

アキが今まで見たことがないような、おしゃれな料理でした。

… … … … …

一方、天野家のふたりは簡単な夕食を終えて、漬物を肴に母娘で酒を酌み交わしていました。

会話もなく沢庵をかじる音だけが聞こえてきます。 

「静かだなあ、誰か呼ぶか?」

間が持たないのか、思わず夏が言いました。

「 … 何でよ?」

不機嫌に答える春子。

「おめえ、そんなに強かったか? … 酒」

「一緒に飲んだことなんてないじゃん」

「父ちゃんとも飲んだことねえか?」

「ないよお!」


夏の問いかけに面倒くさそうに無愛想にしか答えない春子です。

「なんかよ … 」

「無理してしゃべんなくてもいいよ、別に!」

「 … おめえこそ、無理につんけんしなくてもいいべ」


… … … … …

「昔はともかく、今ならわかっぺ? … 子を持つ母の気持ちがよ」

「まあね、こんな面倒くさくて無愛想な娘をよく飼いならしてたと思うよ … 大したもんですよ、夏さんはね」


嫌味だけでなく、半分は本心でした。

返事を待っていた春子ですが … 夏は何も言いだしません。

「何かしゃべってよ」

「うるせえなあ、黙れっつたり、しゃべれっつたり … おら24年間、ずうっとずっと黙って暮らして来たんだど、急にリクエスト通り、しゃべったり黙ったりできるか!」


へそを曲げた夏は、ぐい飲みを手にすると、食卓を立って囲炉裏の方へ行って座ってしまいました。

さすがに申し訳ないと思ったのか、春子は一升瓶を持って夏のそばに行きました。

「そりゃ、すみませんでした … はいどうぞ、おかわりどうぞ」

夏は黙って春子の酌を受けました。

… … … … …

足立家では功の思い出話が続いていました。

「天野の担任だったから、随分彼女とは揉めたね … でもね、あの子は頑として自分の信念を曲げないんだよ」

帰宅したヒロシが無言でリビングを通り、冷蔵庫を開けて飲み物を取るとストーブの前に座り込みました。

「黙って通り過ぎるのか? ちゃんと挨拶ぐらいしなさい」

見かねた功が注意しました。

アキが立ち上がって挨拶をすると軽く会釈だけ返しました。

よしえがヒロシの分の食事の用意をしようとすると、済ませてきたと断りました。

「あそこお兄ちゃんの定位置、ご飯もあそこで食べるんだよ」

… … … … …

「外で済ましてくるなら連絡ぐらい入れたらどうだ? 皆待ってたんだぞ」

ユイが友達が来てるんだからやめてと言いましたが、功は構わず続けました。

「ヒロシ、返事ぐらいしなさい!」

「はいはい、すみませんでした」


その返事の仕方が気にくわなかったのか功の小言は終わりません。

「外で食べて来たってな、働きもしないで、そんな金がどこにあるんだ?」

よしえもやめるように頼みましたが、功は聞きいれません。

「23にもなってな、昼間からウロウロして世間体の悪い … 仕事しないならせめて家から出ないでもらいたいね」

… … … … …

「仕事してますよね?」

思わずアキは口を挟んでしまいました。

アキは、驚いたような顔をしている功に説明しました。

「漁協の監視小屋で密漁船とか見張ってるんです … 私が海で溺れた時にサイレン鳴らしてくれたんですよね」

アキはアキなりに気を利かせたつもりでした … まさか、それが火に油を注ぐことになろうとは …

「もう辞めたから … 」

功は、ヒロシの前に立ちはだかり問いただしました。

「何だ? 監視小屋って … お父さん、聞いてないぞ」

「もう辞めたって言ってるじゃん」


よしえが助け船を出そうとしましたが、ヒロシは拒否してリビングを出て行こうとします。

その腕を功がつかみました。

「待ちなさい、まだ話は終わっていない」

「うるせえ、離せよジジイ!」


それはいつもアキが外で見る穏やかで気の弱そうなヒロシとは別人でした。

功の平手がヒロシの頬を叩きました。

やべえ、やっちまった … これもしや、私のせいですか?

後悔の念に苛まれるアキにユイが声を掛けました。

「気にしないで、いつものことだから」

「えっ?」


… … … … …

功を睨みつけるヒロシ。

「何だ? 文句があるなら言い返してみろ」

ヒロシは何か言おうとしましたが、それを飲みこみ自分のスペース … ストーブの前に戻ってしまいました。

呆気にとられているアキによしえはスープのお代わりを勧めました。

「それともメインにする?」

「メイン?」


こんなにご馳走が出たのに、まだメインじゃなかったの?

「いいよ、遠慮しないでどんどん食べて」

よしえもユイもまるで何事もなかったように平然としています。

あきらめたのでしょうか、功を止めることももうしませんでした。

… … … … …

「言うこと聞いてな、大人しく就職しとけばよかったんだよ、カッコつけやがって … お父さん言ったよな3月に、そんなストーブのそばから離れられないような奴が、東京で続くわけないって … 

言った通りになったな、2ヶ月で帰って来やがって」

「2ヶ月半だよ!」


自分の一言がきっかけで起きてしまった事態にアキはヒロシにも申し訳ない気分でいっぱいでした。。

「アキちゃんね、あいつストーブなんですよ … ストーブだけが“お友達”」

ひきつった笑顔を返したアキ。

「は~い」

よしえがアキの前に置いたメインの料理、とびきりでかいビーチサンダルくらいあるステーキでした。

食べられない、こんな張りつめた状況で、こんな油の滴るサーロインステーキなんて … 

しかし、横を見るとユイは黙々と肉を口に運んでいました。

アキも言われるがままに … 美味しい!

… … … … …

帰りの北鉄、アキは車窓に流れる北三陸の景色を見ながら、ユイの家での出来事を思い返していました。

… 田舎にも大らかじゃない人がいる、ギスギスした家庭もある … そして、美味しいものは、どんな状況でも食べようと思えば食べられる。

アキがその日学んだことでした。

ツッパリって …

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2013年04月17日 (水) | 編集 |
第15回

「ねえママ起きてよ、朝ご飯食べようよ」

アキがいくら起こしても春子は寝床から出ようとはしません。

枕元のテーブルには寝酒をしたビールの空き缶が数本転がっています。

日曜の朝、天野家に不穏な空気が立ち込めていました … 

原因はアキでした。

約束を破って、4時以降に漁に出たため海流に流され、海女クラブ会長の雷が落ちたのです。

そのことがきっかけで、せっかく雪解け間近にみえた夏と春子がまた大ゲンカをしてしまったのでした。

… … … … …

夏のウニ丼を大吉が受け取るところをアキは作業小屋の外からのぞいていました。

「お、アキちゃん、今日も素潜りか?」

事情を知らない大吉に声を掛けられても、ただ首を横に振っただけです。

大吉が車のところへ行った後、アキは思い切って、夏がいる小屋の中に入りました。

昨日、海女クラブで叱られてから、夏とはまともに話をしていません。

話したいこと、話さなければいけないことがあるのに、その機会が作れずに朝を迎えてしまったのでした。

夏はアキの方を見ようともせずにせっせと後片付けをしています。

「何だよ、さっきから … 言いたいことあるなら、サッサと言え」

しかし、アキの口から出た言葉は …

「 … 何か手伝うことない?」

夏はアキに自分が販売する分のウニ丼を渡して言いました。

「20個、きっちり売るまで帰えってくるなよ」

そして、大吉とどこかへ出かけて行ってしまいました。

… … … … …

毎月第一日曜日は、北三陸市の定例の首脳会議が開かれます。

海女クラブの会長として、私も呼ばれます。


会場は観光協会の事務所、参加者は、観光協会の菅原、事務の栗原、北三陸鉄道を代表して大吉と吉田、商工会長の今野夫妻、漁協から組合長の長内(元)夫妻、まめぶ汁後援会から小百合、何故か琥珀掘りの勉さんです。

北三陸をなんとかすっぺ … 略してK3NSP合同サミット、まずは北三陸鉄道の報告からです。

大吉が提示したデータによると、北三陸市は、ここ5年間、人口、観光客、観光収入、すべて減少していました。

「そんな中、わが北鉄の利用者数、ほぼ横ばい」

胸を張る大吉、皆から拍手が起こりましたが、菅原が指摘しました。

「だが、収支は減少傾向だべ?」

「その通り、昨年度も大赤字ぶっこきました … 何でか?」


記念切符や北三陸駅限定グッズ、各種イベントの開催費用等の観光目的の投資の結果だと吉田が説明しました。

「種は蒔いた、今月14日は恒例の秋祭りだ … 町おこしの成果見せるチャンスだべ、皆の力をひとつにするべ!」

また菅原が異論を唱えます。

「お言葉ですが、秋祭りは観光目的ではなく、地元の市民のためのもので … 」

「そういう辛気臭せえこと言ってるから、東北人は暗くて閉鎖的でへそ曲がりだって外から思われてんだど」


夏の意見に菅原は黙りました。

「出し惜しみしている場合でねえ、来るものは拒まずの精神で徹底的にサービスすんべ!」

… … … … …

その頃、孫のアキは、ウニ弁当を抱えて、海を見つめていました。 … 普段なら、休みの日は朝から晩まで潜れるのに … 

「あら、アキちゃん」

浜に向かう美寿々の自転車とすれ違いました。

「夏ばっぱ、今日は会合だべ?」

「はい、だからウニ丼売りさ行ぐんです … 美寿々さんは、浜さ行ぐんですよね」


うらめしそうにそう尋ねたアキに美寿々は申し訳なさそうにうなずくとそのまま自転車を走らせました。

… 少し行ってから気になって振り返ると、まだアキが見ていました。

「浜さ行ぐんですか?」

アキがもう一度聞くと、美寿々は親指を立てて言いました。

「元気出せアキ、またいつか潜れっぺ!」

… … … … …

北三陸の駅前には大きな3つの看板のスペースが並んであって、北の海女、北鉄、もうひとつが空いたままなのです。

「あそこさ入る第3の名物、なんかある人?!」

大吉が聞くと、勢いよく手を挙げたのは勉さんでした。

「琥珀以外でなんかある人?!」

… 琥珀に恨みでもあるのか、大吉さん …

一同、黙り込んでしまいました。

「なんだなんだ、ロウ人形になってまったか?」

「まめぶ!」

「だから、安部ちゃん、まめぶは違うって」


しかし、かつ枝が妙に納得して言いました。

「たしかに、ご当地グルメは必要だ」

宇都宮の餃子、八戸の煎餅汁しかり、横手焼きそばしかり …

「でも、まめぶは地元の人間ですら … おかずなのか、おやつなのか … 」

「だからこそ、まめぶを北三陸の名物に認定して、まめぶ1グランプリを決めましょう」


俄然、小百合が張り切りだしました。

菅原自慢のジオラマを指さしながら …

「まめぶ博物館をこの辺りに、まめぶミュージアムを建てて、こっちにまめぶの森美術館を … 」

「黙ってくれ、安部ちゃん」


ジオラマに関わることなら菅原も黙っていられません。

「そっちなら、ジオラマ作りなおさねばなんねえけど、こっちなら … 」

「おめえも黙れ … お前もロウ人形にしてやろうか?!


… … … … …

「夏さんのウニ丼があるべな!」

長内が膝を叩きました。

これはすでに名物だし、皆賛成しました。

しかし、夏が作ることができるのが1日に30~40個が限度、そもそもウニが足りなくなることでしょう。

ご当地グルメの案も出尽くした頃、一同には疲れが見えてきました。

「誰だ?!ここさ琥珀そばって書いたの!」

… そんなこと書くのはひとりしかいません。

… … … … …

「他になんかない?」

半ばヤケぎみに大吉が意見を募ると、今まで話し合いに加わらずに自分の席で何か調べていた事務の栗原しおりが手をあげました。

「 … 北三陸市の有名人、誰がいたかなと思ってネットで調べたら … いませんでした」

「じぇじぇじぇ?!」

「有名人誰もいませんでした」


パソコンが苦手な菅原は栗原がネットを使えること自体に驚いていましたが … 話の本筋、北三陸市出身の有名人は今だかってただの一人もいないのです。

新沼謙冶は大船渡、サンドウィッチマンは宮城、気仙沼ちゃんは … 名前に地名が入っていますからと吉田はあきれ顔です。

「天狗! … 遠野の山には昔から天狗が出るって有名だ」

真面目なのか不真面目なのか、力説する勉さん。

「 … 何も言えねえ」

… … … … …

春子がひとりのリアスにヒロシが顔を出しました。

「あれ、浜にいないからここだと思ったんだけどな」

「アキ? 残念、あの子クビになったの … クビは大げさか、自宅謹慎、しばらく頭冷やせって」


… … … … …

K3NSP合同サミットは依然続いています。

「電車バカっているよね」

弥生がジオラマの鉄道模型を見ながら言いました。

「それは鉄道オタクのことですね」

「お、新しい切り口だな」


北鉄の二人が食いつきました。

… … … … …

ずっとヒマだったリアス、ヒロシが呼び水になった訳でもないと思いますが、次々に客が訪れ始めました。

それも見るからに、いかにも鉄道オタクといった輩ばかりです。

… … … … …

一方、K3NSP合同サミット。

「あとほれ、ホームさ三脚立てて写真バッシャバシャ撮る … 」

「写真バカ?」


しおりと弥生の会話を聞いて、吉田が言い直しました。

「カメラ小僧ですね」

… … … … …

ふたたび、リアス。

先ほどと同じ類の連中がまた後から入ってきて、店は鉄道オタクで満席になってしまいました。

… よく見ると、その中にあのヒビキ一郎の姿も見えます。

まさか、娘を盗撮していた「ヘンタイ」が客としてきているとは思ってもみない春子、当の一郎も自分を「ヘンタイ」呼ばわりした女の店とは思ってもいないようです。

オタクどもは店の都合などお構いなしにそれぞれが好き勝手なものを別々に注文します。

「あ~、もうめんどくさい!」

… … … … …

K3NSP合同サミットの話題も、いつの間にか鉄道オタクのことになっていました。

「なんか、あの人たちって気持ち悪いですよね」

「だって、駅のベンチで野宿してるべ、寝袋で」


鉄道オタクを毛嫌いする観光協会の二人に大吉は言いました。

「それがどうした、観光客減って困ってるのに選り好みできる立場か?」

「大吉さんの言う通りかもしんねえ!」


いきなり立ち上がった弥生。

「野宿している人がいたら安い宿を紹介してやる、そういう地道なサービスが、リ、リ、リ … リポート?」

「リピーター?」

「んだ、リピーターを作るんだ」


大吉も思わず立ち上がりました。

「良いこと言った! … そういうオタク心をくすぐるアイディア、なんかない?!」

… … … … …

春子の方は、ヒロシの手を借りて、オタクの一団の注文をさばくことができました。

オタクが去った後の片付けまで手伝ってくれているヒロシに春子は礼を言いました。

「いえいえ、ヒマなんで」

「無職だもんねえ」

「あの、アキちゃんって … 」

「何、好きなの?」


いきなりストレートに聞かれて、ヒロシは面食らいました。

「だったらさ、気晴らしにどっか連れてってあげてよ … 何か落ち込んじゃってるの、最近」

「いや、俺は別に … 」


ヒロシ、ドギマギ。

「あ、そうなの? ごめんね、アキ目当てで毎日来てるのかなって思ってたからさ」

春子が目当てだったりして … 

… … … … …

そこへ、ウニ丼を売り切ったアキが帰ってきました。

「今のは忘れて」

春子がヒロシに何か耳打ちしたのが見えたアキ。

「何?」

そんなヒロシと目があい、見つめ合ったふたり …

このまま誰も入ってこなければ、或いは恋が芽生えたかもしれません … 誰も来なければ …

… … … … …

会議を終えた夏を先頭に大吉たち一行がどやどやと店に入ってきてしまいました。

「もうさ、観光協会当てにしてたら何も進まねえべなあ」

「んだんだ、商工会と北鉄で勝手にやるべえや」


大吉はヒロシがカウンター内にいるのに気づくと …

「おお、また来たのか? 足立先生のところの、足立 … 」

「きよし!」


… 弥生でした。

「ヒロシです」

… … … … …

アキは夏にウニ丼20個売り切ったことを報告しました。

「はい、ご苦労さん」

期待していたわけではありませんでしたが、返ってきたのはそれだけでした。

元気のないアキにヒロシは声を掛けます。

「アキちゃん、今日も潜って来たの?」

「こいつ、海女向いてねえから辞めさせました」


夏が代わりに答えると、アキの表情が険しくなりました。

場の空気を読んだ … わけではないのでしょうが、弥生が話題を変えました。

「ちょうどいい、若者の意見も聞いてみるべ」

… … … … …

「町おこしのアイディアさ … これだけ大人が集まって、6時間もくっちゃべって何にも決まんねかったのよ、情けねえ」

「町おこしって、ミスコンとかやる奴ですか?」

「ご当地グルメはダメだぞ、さんざん出たすけ」


釘を刺した大吉がふと気づきました。

「んっ? … 今、おめえなんつった?」

「まめぶ?」「琥珀?」
 … しつこい二人のことは無視。

「足立君、今なんか言ったべ」

皆がヒロシに注目しました。

「ミスコン … 」

大吉には初耳の言葉でした。

「何だい、そりゃ?」

「地方都市だと必ずやりますよね、青森はミスリンゴとか … でも、そんなのとっくに出ましたよね、すみません」


… … … … …

「いや、出てねえよ … いいね、いくねえ? … いいべ、ミスコン!」

大吉に吉田も今野も賛成しました。

「おらは反対だね」

何故か弥生は不機嫌になりました。

それに構わず、旦那の今野が嬉しそうに言いました。

「当然これ水着審査もやんねえとな」

「反対反対反対、断固反対!」


弥生がカウンターを両手でバンバン叩くのを夏が止めました。

「弥生さんみっともないですよ」

吉田がボソッと言いました。

「ミスター北三陸もやればいいべ、若けえ男さ集めて」

夏の一言で弥生は目の色が変わりました。

「水着審査もか?」

「 … 当然だ」


ヒロシのことをチラ見した弥生は恥ずかしそうに手で顔を隠しました。

「やんだあ~」

「弥生さん、気持ち悪いですよ … 」


… … … … …

「問題はネーミングだな、ミス北三陸じゃ芸がねえじぇ … さあ、なんかないか?」

「ミス琥珀!」


懲りない勉さん。

「善は急げだべ、黙ってたらミス琥珀になっちまうぞ、安部ちゃん」

大吉が小百合を煽ります。

「 … ミスうに」

吉田が小百合にダメ出しをしました。

「そこは、まめぶでしょ?」

「はっ、ミスまめぶ!」


… … … … …

出たり引っ込んだりのスタイルで「ミスリアス」、いっそ「ミス不思議の国のリアス」、海女の要素も入れて「ミス不思議な海女のリアス」 …

「電車バカが喜ぶようなものがいいんでねえの?」

弥生が真剣な顔で言いました。

「北鉄にとっては大切なお客さんだからね、電車の要素も入れていこう」

「ミス赤字」「ミス脱線」「ミスダイヤの乱れ」「ミス北鉄」「ミス人身事故」「ミスつり革」「ミス痴漢」

北鉄の悪口を思いつくまま好き放題に口走っているだけでした … 一人を除いて。

「ストップ、今足立君がまたいいこと言ったべ」

大吉が止めましたが、春子がとどめの一発をかましました。

運転ミス!

… … … … …

というわけで「ミス北鉄」コンテストが開催されることになったのです。

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2013年04月16日 (火) | 編集 |
第14回

9月になると、観光客もますます減り、浜に出るのも交代制になります。

今日の当番は、弥生さんと美寿々さん、そして … アキです。


… … … … …

「こんちは」

声を掛けられて、アキが振り向くとヒロシが立っていました。

「あ、ユイちゃんのお兄ちゃんの足立 … 」

「ヒロシ … 東京行かなかったってリアスで聞いたんで」


アキがユイと毎日学校へ行っていることを話すと、ヒロシは言いました。

「ごめん、妹とはもう何年もしゃべってねえから … 」

… 親父さんともそんなこと言っていたような …

それ以上の話題もなく、気まずい雰囲気になりかけたところへ高笑いが聞こえて … 弥生たちが海から上がってきました。

「あらあ、おめえ足立先生ところのセガレの足立 … 」

ヒロシのことを指さしたまま、そのあとが出てこない弥生。

「ヒロシってそんな難しい名前ですか?」

「 … ウニ食うか? うめいどぉ」


ヒロシはアキに尋ねました。

「アキちゃんが潜るわけじゃないんだ?」

「アキはまだ … 」

「獲ってくる!」


美寿々の言葉を遮ってアキは言いました。

「ちょっと時間かかってもいいですか? 私、獲ってきます」

… … … … …

一時間経ちましたが、アキはまだ海から上がってきません。

「今日はウニ少ないんですか?」

ヒロシが弥生たちに尋ねました。

「いや、ウジャウジャいる」

「あの子、まだウニ獲ったことがねえんだよ」


弥生と美寿々が答えると、ヒロシは驚いた顔で聞き返しました。

「1個も?」

うなずく弥生たち。

息継ぎに顔を上げたアキがまた潜って行くのが見えます。

「海女って難しいんですね」

「いや、簡単だ」


感心しているヒロシに弥生は平然と答えました。

「まあ、誰でもいきなり獲れるもんじゃねえが、アキの場合はちょっと酷すぎるなあ … 運動神経がにぶいんでねえか?」

美寿々も半ばあきれ顔で言いました。

ヒロシは獲れないのに何故、アキが自分から「獲ってくる」なんて言い出したのか不思議でした。

「そりゃおめえ、乙女心だべ … どうせ、冷ゃっこい海さ潜るんなら、若くてカッコいいメンズのために潜った方がいい」

弥生が意味ありげに笑いました。

… … … … …

「ウニだと思うから獲れねえんだ、これからは銭だと思え」

「1個500円、10個で5,000円、そう思ったらナンボでも獲れるべ!」


アキは夏や先輩海女たちの言葉を思い浮かべながら潜り続けていました。

… … … … …

待ちくたびれていたヒロシたちは、アキが海から上がってくる音がして振り返りました。

満面の笑みをしたアキが片手を高く掲げて叫びます。

「獲ったぁ、獲っただ!」

「どれ、見せてみろ?」


弥生に言われて、得意顔のアキが広げた掌の上には … ウニではなく、500円硬貨が乗っていました。

「そりゃ、獲ったじゃなくて、拾っただな」

… … … … …

娘や孫のおかげで私こと天野夏の生活スタイルにも変化が起こりました。

一緒に暮らすに当たり、私たちはいくつかのルールを作りました。

「いただきま~す」

朝ご飯は必ず三人一緒に食べること、それぞれが食べたいものを食べたい分だけ食べる。


夏はご飯に干物のような和食、春子はパン食、アキに至っては両方 … パンに干物もありです。

大吉さんの車でウニ丼を北三陸駅まで運び … アキは学校で勉強している頃、半分を私が車内で売り、残り半分を春子がリアスで売る。

ウニ丼が売れたら、海女クラブの会長として浜に出ます。


… … … … …

一方、春子は副駅長の吉田君と交替します。

放課後、アキが合流し、接客しながら素潜りの練習。


… … … … …

夜のスナックタイムは少々複雑です。

まず、月曜と水曜は春子と弥生が店に出るため、アキは夏と晩御飯を食べます。

火曜と金曜は、夏と美寿々が店に出るため、アキは春子と晩御飯。

木曜と土曜は夏と春子が店に出るので、アキはひとりで晩御飯。

そして日曜、弥生と美寿々に店を任せ、三人で夕食を食べます。

… … … … …

「東京じゃ専業主婦だったんだべ? … 毎晩こんな手の込んだもん食ってたのか?」

春子が作ったパエリヤを食べながら夏が感心して言いました。

「そうだよ、グラタンとかドリアとかソースから作るし、餃子も皮から作るし、和食もブリ大根とか得意だよね」

アキが話すと春子は当然というようにうなずきました。

「パパ、何でも作れるんだ」

「パパ?」


夏は聞き返しました。

「父ちゃんが晩飯作ってたのかあ?」

「あの人ね、趣味が全然なくて … 唯一続いた趣味が料理なの、だからやらせてあげたの」


まったく悪びれずに話す春子。

娘を見直しかけた途端にこれです … 夏は言いました。

「そんなら、スナックさ出る日以外は春子に作ってもらうべ」

… … … … …

「それからな、アキ」

夏は改めてアキに話しはじめました。

「今日、組合長としゃべって、潮の流れがそろそろ変わっから、明日からアキは夕方4時までな」

寝耳に水でした。

「1時間しか潜れないじゃん!」

「安全第一だ」


他の海女は今まで通り6時までと知ったアキは不満顔です。

「1時間で足んねえなら … 」

夏が暗に学校をサボらせようとしましたが、春子にきつく釘を刺されました。

… … … … …

アキはいよいよあせっていました。

9月に入ると水温は日に日に低くなり、潜れる時間も短くなります。


しかし、いまだウニの収穫ゼロのアキでした。

このまま夏が終わってしまったらどうしよう … ウニひとつ満足に獲れないで果たして海女といえるのか?!

アキは休む時間も惜しんで海に戻りました。

「ちょっとは休まねえと足とられるぞ」

かつ枝が声を掛けましたが、アキの耳には入りませんでした。

「アキ、入り江から外さ出んなよ、潮の流れ急だからなっ」

… … … … …

海中を進んでいくアキ、ウニを見つけましたが、気が急いて手にした磯ノミを落としてしまいました。

慌てて拾おうとした時、急な潮の流れに当たってそのまま流されてしまいます。

昆布の茂みに巻き込まれて危うく流されるのは止まりました。

難を逃れたアキは水面に向かって泳ぎ出そうとしましたが … ひときわ長い昆布が左足に絡まっていました。

初めての経験でした … すっかり体の自由を奪われ、浮き上がることすらできません。

… … … … …

4時を知らせるサイレンが鳴る頃、浜に下りてきた夏はアキが見当たらないことに気づきました。

「アキは?」

「そこに潜ってた … あれ、何処行った?」


入り江にいるはずのアキの姿が見えません。

胸騒ぎがした夏は、入り江の外の海を見つめました。

「あそこだ!!」

海面にわずかですが、もがいている人の手が見えます。

咄嗟に美寿々が海に飛び込みました。

… … … … …

美寿々が足に絡まった昆布を解くとアキは海面に飛び上がりました。

「大丈夫か?!」

「美寿々さん、ありがとう」


間一髪、アキは命拾いしたのです。

… … … … …

漁協の海女クラブ、小百合から連絡を受けた春子が飛んできました。

「アキ、あなた大丈夫なの?」

「ごめんママ、ちょっと沖に流されただけだから」


アキの様子を見て無事だとわかると、春子は胸をなでおろしました。

「怪我したって言うから」

「ちょっと足に昆布が絡まっただけ」


笑いながら春子に話すアキ、先ほどから苦虫をつぶしたような顔をしていた夏が怒鳴りつけました。

「笑いごとでねえど!」

… … … … …

静まり返る海女クラブ。

「アキ、昨夜なんって言った? 4時になったら上がるって約束したべ?」

「ごめんなさい … でも、美寿々さんも一緒だったから」

「言い訳すんでねえ、なんぼ美寿々でも波さ飲まれたら助けられんぞ … しかも、おめえ、入り江の外さ出たな?」

「だって … あっちの方がウニもいっぺえいるし」


夏の怒りは爆発しました。

「危ねえから、おらたちも滅多に行かねえんだ、だからウニもいっぺえいるんだ! おめえみたいな、あまちゃんには100年早えよ」

「夏ばっぱ、目を離したおら等も悪いんだから、今日のところはよ … 」


弥生がとりなしましたが、夏はアキに向かって言いました。

「アキ、もうおめえ海女さ来んな … 出入り禁止だ!」

… … … … …

今度は、春子が口を挟みます。

「ちょっと、お母さん!」

「海を舐めてかかる奴、目上の人間の言うこと聞けねえ奴は潜る資格ねえ … 海女失格だ!」


自分には優しいはずの祖母、海女になるのを一番喜んでくれた夏に海女失格とまで言われて … アキは自分が思っていたよりも大変な過ちを犯したことをやっと理解しました。

しかし、春子も黙っていることはできません。

「危ない目にあって学ぶことがあるって、あなたこの間言いましたよね?」

「あん時と今日とは違うべ」

「全然わかんないんだけど … アキは一生懸命、海に潜っていただけじゃん、たった1回のミスぐらいでさあ」


たった1回のミスで命を落とすこともあると夏は言いました。

「おめえだって、アキが海女になりてえって言った時、あんなに反対したくせに!」

「あん時と今は違うでしょ、こっちで暮らすって決めたでしょ?!」


… … … … …

「海女になりたくて、あんたたちと一緒に海に潜りたくてアキはこっちに残ることにしたんです … 東京の生活を捨てる決心をしたんです、そんなアキから一番の楽しみを奪うんですか?」

アキは春子を止めました。

「そういうね、理不尽で一方的で矛盾だらけの態度が、これくらいの娘にとって、どんだけつらいことか、あんた全然わかってないでしょ?!」

「ははは」


夏は春子の言葉を笑い飛ばしました。

「矛盾だらけなのよ、あんた!」

途中から春子自身も何に対して怒っているのか、わからなくなりました … 春子にわからないものが、アキにわかるはずもなく、せっかく仲直りしかけた母ちゃんと祖母ちゃんが自分のせいでまたケンカしている … そのことがただ悲しかった。


「もういいから … やめてママ、お願い … 」

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2013年04月15日 (月) | 編集 |
第13回

「何で来なかったのよ? … 待ってたんですけど!」

「何でって … ワカメが岩さいっぱいついてたから、誰かに採られる前に … 」


春子は夏の言葉を遮りました。

「今日じゃなくて、あん時だよ!」

「 … あん時?」


… … … … …

「待ってたの、あん時 … お母さん、追っかけてくるんじゃないかって」

それは、1984(昭和59)年、北三陸鉄道開通の日のことです。

18歳の春子は電車の窓から、式典でにぎわうホームの人込みの中に夏の姿を探したのでした。

「どんだけ愛情薄いか知んねえけどさ、18の娘が高校辞めて家出するって言ったら、ウソでも止めるじゃん、追いかけて来るじゃん」

「ああ、あん時か … 」

「あん時、ウソでも駅まで来てくれて、ウソでも行ぐなって言ってくれたら考え直したかもしんないじゃん?」


夏は今朝採ってきたワカメを干しはじめながら答えました。

「家出するとは知らねかったもんで」

「はっ? ウソばっかり、寝たふりして全部聞いてたくせに!」


… … … … …

家を出る前の晩、春子は夏の枕元に立って言いました。

「私、やっぱり海女やりたくねえ … 東京さ行ぎてえ」

… … … … …

「あの時、ちゃんと答えてくれてたら、こんなにこじれなかったんです … ウソでも正月とお盆には、ウソでも旦那と孫の顔見せに、ウソでも帰ってこれたんです」

「ウソついてまで帰ってきて欲しぐねえ、去る者は追わずだ … おらあ、そうやって生きてきた、父ちゃん送り出し、娘を送り出し、おらあ、ここさ残る … それが、袖の女だ」


我慢しきれなくなった春子はワカメの入ったバケツを思い切り蹴飛ばしました。

「何するだ?! このワラシ!」

「娘とワカメとどっちが大事よ?!」


夏は迷うことなく答えました。

「ワカメだ、ワカメは食えるが娘は食えねえ」

春子を睨みつけると、平然と作業に戻る夏。

「 … 憎ったらしい」

「なんだ、わざわざ文句言いに帰えってきたのか?」

「こっちで暮らすって決めましたから … あんたと暮らしますよ、ここで!」


春子の思わぬ言葉に、夏は作業の手を止めて振り返りました。

「ママ … 」

… … … … …

「この子のためじゃないですから、私のためですから、くやしいからこのままじゃ … 今度出ていくときは、泣きながら旗振ってもらいますから」

そう言って家に入ろうとする春子のことを夏は呼び止めました。

「春子、何か言うことあるんでねえのか? … 言うなら、今でねえか?」

春子は母の前に戻って、目を見ることなく頭を下げました。

「 … ただいま」

「おかえり」


そのまま不機嫌な顔で春子は家の中に入ってしまいました。

その背中を見ていた夏の顔がゆるんで笑い出しました。

ふたりのやり取りを心配しながら見ていたアキもホッとして、笑顔を見せてもう一度言います。

「ただいま!」

… … … … …

「ただいま!」

漁の支度をしていた海女たちは、さっき別れたばかりのアキが漁協に飛び込んできたのを見て、狐につままれたような顔をしました。

「早かったなあ」「早すぎっぺ」

美寿々と弥生が目を丸くして言いました。

「なんかママが急に東京行がねえって、こっちで暮らすって言い出したんだ」

笑顔のアキが報告すると、海女たちも驚くやら喜ぶやら …

「なんだかよく分からねえけど、えがったなあ」

… … … … …

「春ちゃん、荷物だけ宮古さ行って帰って来たぞ」

大吉が春子の荷物を届けに来ました。

春子は灯台の方へ行ったと聞いて、あとを追おうとしましたが、夏に止められます。

「今、ナーバスになってるから、そっとしとけ」

「ナーバス?」


そわそわ落ち着きのない大吉を見て、夏がからかいました。

「ニヤニヤして」

「だって、こっちで暮らすんだっぺ?」


そういう夏もいつになくご機嫌です。

… 春子の前では素直になれませんでしたが、やはりうれしいのでしょう。

「娘のためでなく、自分のためだってよ」

「春ちゃん … 」


… 早とちりすんなよ、大吉さん。

… … … … …

春子は灯台のたもとにいました。

この場所には、高校生の春子が書いた落書きが残っています。

東京、原宿、表参道 … そっと指でなぞりました。

「そんなにいいもんじゃないよ … 」

春子は18歳の自分に向かってつぶやきました。

… … … … …

アキは、北三陸の駅前でユイと会って報告しました。

「こっちで暮らすことになったの」

ユイも喜んでくれましたが、東京のアキの家に遊びに行けなくなったことは残念のようでした。

「平気、ユイの方がアキちゃんより東京のこと詳しいみたいだし」

「へへへ、ごめん … あ、そうだ」


アキはユイの兄・ヒロシからもらった西新宿のカレー屋のサービス券を返してくれるように頼みました。

ユイは何故兄がアキにこんなものを渡していたのか不思議でした。

… … … … …

こちらで暮らすことになって、学校の友達のことはいいのかと、ユイがアキに尋ねました。

「いないから平気 … 友達も彼氏も好きな人もいない、悩みを打ち明ける相手もいない … こう見えて、東京だと全然キャラ違うんだ」

アキはサバサバしていました。

「私もそうだよ、仲良い子はいるけど、友達じゃないっていうか … 皆そうなんじゃない?」

アキにとって意外なことでした。

「そっか、そんなもんか」

ユイも自分と同じなんだと思ったら、なんだかうれしくなってきました。

「じゃあ、この町好き?」

「好きとか嫌いとか考えたことない … 海も自然もいいなって思ったことはあるけど、あんまり見ないようにしている … 卒業するまでだからね」


意味深な答えでしたが、アキはそこまでは気がまわりませんでした。

「あ、ねえ高校どうするの?」

アキがまだ考えていないことを知ると、ユイは自分の通っている北三陸高校に来るように勧めました。

「一緒に通えるし、そうしよう」

「うん」


… … … … …

9月になって、アキは北三陸高校に編入手続きをしました。

登校初日、アキが袖が浜の駅から発車間際の北鉄に飛び乗ると、車両のいつもの位置にユイが乗っていました。

「似合うじゃん」

北三陸高校 … 北高の制服を着たアキを見てユイは言いました。

「へえ、そうかな … 」

照れ笑いのアキ。

「自転車は?」

「大吉さんが買ってくれたんだ」

高校は、北鉄の終点から更に5キロほど離れているので、生徒の多くは駅に自転車を停めています。


北三陸の駅で下りると、大吉が自転車と待っていました。

「ほーれ、新車だぞ、盗まれねえようにちゃんと鍵かけろ」

「ありがとうね」


… … … … …

アキはユイと同じクラスに編入されました。

「えー、東京から越してきた転校生の天野 … あれ?」

アキが自己紹介のために黒板に名前を「黒川秋」と書いたので、担任の教師がおかしな顔をしました。

「あれ、お母さん、天野って言ってました? じゃあ、天野にすっぺ」

アキは「黒川」を消して「天野」と書き直しました。

「アキちゃんって呼んでけろ、よろしく!」

… … … … …

もちろん、喜んでいる人間ばかりではありません。

春子の夫、アキの父親、黒川正宗は努めて冷静に春子からの電話に答えました。

「そうか、それはよかった … アキが元気なのはいいことだ、アキのためには」

「だから、アキのためじゃなくて、あたしのためなんです」


春子は引き続き夏の店を手伝うことになり、そこから正宗に電話しているのでした。

「何でわかんないかな … 手紙ちゃんと読んだ?」

「読んだよ、持ち歩いて何度も読んでる」

「 … 要するにそういうことよ、今あたしにとって、母親と向き合う時間が大切なの … 24年間普通の親子とは明らかに時間の流れ方が違うわけでしょ? …

幸いさ、母も年取って丸くなったし、今更なんだけどさ、散々親不孝してきたからね」


… … … … …

「お母さんに対する君の想いは十分伝わったよ … でもね、僕のことが書いてないんだよ」

正宗は怒りを噛み殺しながらそう言いました。

「離婚の理由を手紙に書いたって言ったよね? なのに名前すら書いてない、正宗の正も宗も書いてないよ」

「ああ、宗っていう字が難しいからじゃないの、さとう宗幸の宗だもんね?」


正宗は、離婚届と同封して送られてきた自分のことに全く触れていない手紙を、どんな気持ちで持ち歩き何回も読み返したのでしょうか …

当の春子は書いたか書いていないかも、はっきり覚えていないようです。

… … … … …

春子はだんだん正宗の言い回しにいらついてきました。

「 … っていうかそのさ、まず家族のことを第一に考えるっていうの止めてみようか?」

「じゃあ、僕は何を第一に考えたらいいのかな?」

「安全運転とかさ」


いい加減面倒になってきている春子でした。

「考えるよ、他には?」

「再婚とか」


明らかに春子の声ではありません。

「えっ、再婚?」

「再婚しろ、再婚! なんぼ待っても、春ちゃんは帰んねえ、さっさと再婚相手見つけろじゃあ!」


いつの間に春子と電話を代わっていた大吉はそう言って勝手に切ってしまいました。

… … … … …

「いやあ、実に気持ちがいい、ローカル線がモータリゼーションに勝利した歴史的事件だべ」

「電車、乗ってるからって大吉さん選んだわけじゃないし、えっ! … いやいや、そもそも選んでないからね、勘違いしないで … 」


春子は慌てて否定しましたが、勝ち誇ったように不敵な顔の大吉です。

「もう手遅れだべえ」

ちょうど、誰かが店に入ってくる音がして、ひとまず春子は救われました。

ヒロシでした。

「東京、行かなかったんですって?」

「うん、ちょっと気が変わったの」

「アキちゃんは?」


余程、アキのことが気になるのでしょう。

「浜じゃないかな? 最近、放課後はお祖母ちゃんにベッタリだから」

ヒロシは監視小屋のバイトをヒマすぎることを理由に辞めたのを後悔しました。

「で、やめて今何してるの?」

「すげえ、ヒマです」


… … … … …

とにかく、母春子の決断のおかげでアキはこの町に残ることができました。

しかも、今度は無期限 … 大好きな海で大好きな海女さんたちと好きなだけ泳いで潜っていいんです。

「ようし、今日こそウニ獲るぞ!」


… … … … …

長く潜れるようになったものの、アキはまだウニを獲ることができません。

祖母の言葉を思い出しました。

「ウニだと思うから獲れねえんだ、これからは銭だと思え」

ウニが銭だとしたら、アキはまだ1円も稼いでないことになります。


… … … … …

アキは早くも新たな壁にぶつかっていました。

え、なんでまた?

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2013年04月14日 (日) | 編集 |
さて、次週の「あまちゃん」は …

夏休みが終わり、東京に戻る予定だったアキ(能年玲奈)と春子(小泉今日子)だったが、結局、北三陸で暮らすことに。アキは、北三陸高校に編入し、放課後は祖母・夏(宮本信子)の指導で海女修業、という生活。

しかし、いまだにウニを一匹も獲ることができずにいた。秋が近づき、このまま海女漁の季節が終わってしまうことに焦るアキは、夏との約束の時間を越えて、海に潜る。

しかし、大きな潮の流れにのみこまれ絶体絶命の危機に…。先輩海女の美寿々(美保純)に間一髪助けられたが、夏の逆鱗に触れ、海に潜ることを一切禁じられてしまう。

海女失格だあ!

一方、一堂に会した大吉(杉本哲太)ら町のメンバー。過疎が進む町の行く末を案じて町おこしのためのイベントを模索していたが、秋祭りにあわせて「ミス北鉄コンテスト」を開くことを決める。

私、アイドルになるの

初代ミス北鉄には、アキの親友のユイ(橋本愛)が選ばれた。地元アイドルとして輝くユイに刺激を受けたアキは奮起し、夏にもう一度海に潜らせてくれるよう頼み込む。

アキ、お前は大事な孫だ … 死なれたら困る

そこで夏は、漁協組合長の長内(でんでん)と海女のかつ枝(木野花)夫婦を襲った悲劇について語る。海の恐ろしさを知り、肝に銘じたアキは、気持ち新たに海女修業を再開する。

獲ったぁ、獲っただぁ

あまちゃん 公式サイトより)

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2013年04月13日 (土) | 編集 |
第12回

楽しかった夏休みも今日でおしまい … 明日の朝、アキは東京へ帰ります。

収穫したウニの殻を割っている海女クラブの仲間にアキはお別れの挨拶をしました。

「あの、皆さん … 私、今日で最後なんで … 」

夏がうなずいただけで、他の皆はアキの方に目もくれずに黙々を作業を続けています。

「来年もまた来っから」

「どうだかなあ、来年はもう潜ってねえかもしんねえなあ」


かつ枝にそう言われて、アキは悲しくなってしまいました。

「お祖母ちゃん … 」

夏はアキを自分の隣に座らせました。

そして、殻を割ったウニの身を指ですくってアキの口に運びました。

「超うめえ … 」

「 … 忘れんな」


夏も感極まっているようです。

「まあ、なんだかんだ言っても、来年も潜ってるから心配するな」

組合長の六郎がアキを安心させました。

そこへヒロシが監視小屋のカギを戻しにやってきました。

ヒロシはアキが東京に帰ることを聞くと、何やら紙切れの束を差し出しました。

「これ西新宿のカレー屋のサービス券、あと1枚あれば、カレー1杯ただで食えるから」

アキに無理やり渡し、「元気でね」と一言行って帰って行きました。

… … … … …

夜、ドライヤーで洗い髪を乾かしているアキに、春子は話しかけました。

「アキ、本当はあんた、こっちで暮らしたいんじゃないの?」

ドライヤーの音で聞こえないのか、アキは返事もしません。

「アキ … ねえ、アキ!」

ようやく気付いたアキがドライヤーを止めて、振り返りました。

「何?」

「あ、いや … 何でもない」


… … … … …

「東京、帰るんだよね?」

「そうだよ … だって、2学期始まっちゃうでしょ」

「パパと3人で暮らすんでしょ?」

「うん、それはそうなるように話し合い … 」


春子が口ごもっていると、アキは立ち上がって春子の前に座りなおしました。

「そうしようよ、パパひとりじゃかわいそうだし … アキも寂しいし、帰ろう」

… この子もしかして聞こえていたんじゃないかしら? と、春子は一瞬思いました。

両親のために東京に帰ろうと考えているのかもしれないと …

「あんた次第なのよ、いいの? これで」

「いいよ、何か吹っ切れた … こっちに友達もできたし、また来年も来ればいいし」


春子は何か腑に落ちない思いでした。

… … … … …

一方、梨明日には海女クラブのメンバーと大吉が集まっていました。

「どうすんだ、おい! 大吉、北三陸駅長の大吉よお!」

かつ枝が大吉の肩を思い切り叩きました。

「明日になったら、春ちゃん、東京さ帰っちまうど

弥生に言われて、大吉はうなずきました。

「好きなんだべ? ここで決めねば、男でねえど」

カウンターの中から美寿々も煽りました。

「好きは好きだけど … こればっかりは本人同士の問題だからな」

弥生が思い切りカウンターを叩いて声を荒げました。

「本人同士なんかどうでもいい!! この際だから言わせてもらうけど、おめえら中年男女が引っ付こうが離れようがオラたち何も興味もねえ。

のぼせあがんな!!」


弥生の剣幕に恐れをなして、直立不動して頭を下げた大吉はカウンターから逃げ出して席を移りました。

「問題はアキだ … 24年ぶりの新人海女をここで失ってはもったいねえべ! 海女クラブにとって、これ以上の損失はねえ、ここでアキを失ってもいいのか、おめえ!」

大吉が逃げた席までわざわざ来て見下ろしました。

「北の海女が絶滅してもいいのか、おめえ! 言いわけねえべ!!」

首根っこ掴むと壁にめがけて放り投げました。

… … … … …

「美寿々、あとはよろしくね」

夏が店を任せて帰ろうするのを見て、かつ枝が引き止めました。

「夏ばっぱ、まだ話終わってねえべ?」

「オラの意見は決まってる、去る者は追わずだ … ははは」


夏は静かに答えて、店を後にしました。

少し不満顔のかつ枝は、起き上がった大吉の顔を睨みつけると命令するように言いました。

「プロポーズしろ」

「ええっ?!」


… … … … …

春子とアキが東京へ帰る荷造りをしているところへ、夏が帰ってきました。

「ああ、疲れた疲れた」

ふたりのことを一瞥しただけで、「疲れた疲れた」と繰り返して、自分の寝床を用意し始めました。

「お母さん、あたしたち明日帰るんだけど」

春子が声を掛けましたが、それには答えずに着替えもせずに横になり布団をかぶりました。

「明日も早い、さっさと寝るべ」

あきれ顔の春子は言い捨てます。

「またかよ … 」

… … … … …

それは24年前、1984(昭和59)年、北三陸鉄道開通前日 … 北三陸市長と長内夫婦、弥生が天野家を訪れて、高校生の春子に海女になってくれと頭を下げたあの夜のことでした。

「あとは、おらが話して聞かせるから」

夏はそう言って、一同を引き取らせた後、何の話もせずに寝床に入って言いました。

「明日も早え、そろそろ寝るべ」

… … … … …

「あん時もそうだったよね、私は話したいことがあったのに先に寝ちゃって … ていうか、いつもそうだよね … 肝心なことは何にも言わないで、全部私に決めさせて … 

ずるいよねえ、本当に親ってずるい」


春子は布団に入ったままの夏に一方的に話し続けました。

「いいこと教えてあげようか? … お母さんてね、本当に眠っている時には、ちょっとだけ目が開いてるんだよね、だから寝たふりしている時には一発でわかるんだ。

しっかり目つぶっちゃってるから!」


春子は横になって目を閉じたままの夏の顔を覗き込みました。

「 … 知らなかったでしょ? じゃあね、おやすみなさあい」

… … … … …

そして、別れの朝。

帰り支度を整えた春子が外に出ると、海女クラブのメンバーと大吉が待ち構えていました。

「わざわざ集まってくれなくてもよかったのに」

「なにどうせ早く起きっから」


そこに夏の姿はありませんでした。

「お母さんは?」

「随分前に浜の方さ下りてったべ」


小百合が大吉のことを春子の方へ突き飛ばしました。

大吉は海女たちに「今日が最後」だときつく念を押されているのでした。

「は、春ちゃん … 」

「行くよ、アキ!」


アキは名残惜しそうに家の中を見渡していました。

春子は、そんなアキ呼ぶため振り返ったので、大吉は肩透かしを食ったようになってしまいました。

… … … … …

ようやく出てきたアキ、かつ枝は大吉に目くばせしました。

一歩前に出た大吉は、春子の顔を見て

「これか、荷物?」

結局、何も言えずに荷物を車に運び込みました。

落胆する海女クラブの面々 …

… … … … …

それでも、海女の仲間たちはアキたちが乗った大吉の車のあとを追って手を振って見送ってくれました。

「バイバイ、また来年来るからね … 」

… … … … …

夏はワカメが採れる岩場にいました。

鉄橋の上を北三陸鉄道の列車が渡って来ました … あれにアキたちが乗って行くのです。

切ない思いで見つめる夏でした。

… … … … …

北三陸駅のホームに列車が入ってきました。

春子は24年前のことを思い浮かべました。

「あと2、3分で出るから」

大吉が声を掛けます。

「出るっていうか、俺が出すんだけど … 」

… … … … …

アキは何か気にしています … 後ろ髪をひかれるような …

駅舎の窓から、副駅長の正義と琥珀掘りの勉さんが大吉に「春子に言え、言え」とゼスチャーで促していますが、大吉は頭を振りました。

そんな大吉に春子が礼を言います。

「いろいろありがとうね、大吉さん … おかげでとってもいい夏休みになったみたいで、ね?」

アキはうなずき、大吉に向かってペコリと頭を下げました。

… そうです、大吉の偽メールがなかったら、アキはこの町に来ることはなかったのです。

「お世話になりました」

「来年また来いよ、絶対だぞ」

「はい」


… … … … …

「じゃあ、行くか?」

大吉は発車のベルを押して、春子の荷物を持って列車に乗り込みました。

それに続いて行く春子。

… アキが列車に乗ろうとはしません。

「どうしたの? アキ」

「 … お祖母ちゃん、来ないね」


アキは夏が見送りに来るのを待っていたのでした。

「いいから早く乗りなさい!」

アキはうなずきましたが、ドアの前に立ち止まって最後の一歩が出せません。

春子もドアの前まで戻ってきてアキに言い聞かせました。

「あんたが決めたのよ、帰るって」

「うん」


しかし、アキは動きません。

「どうしたのよ? アキ」

春子はアキの顔を見つめました。

「どうしたいの? アキは?!」

「うん」


… … … … …

思い切って列車に乗り込んだアキ、同時に春子は列車から飛び降りていました。

「えっ?!」

「ママ?!」


お互いに見合す顔 …

発車ベルが鳴りやみ、ドアが閉まり始め … 刹那、思わず春子は手を伸ばしてアキの腕をつかむと列車の外に引っ張り出していました。

… … … … …

ドアは閉まって、ホームを滑り出した列車が春子とアキの目の前を過ぎていきます。

「あれ、春ちゃん、アキちゃん??」

事情が分からない大吉が窓から顔を出しています。

「ごめ~ん!」

春子は、大吉に手を振りました。

「なして? いやいやバイバイじゃなくて、なして俺だけ? 春ちゃ~ん」

… … … … …

「ごめんなさい … 」

春子はアキのことを咎めたりはしませんでした。

そして、もう一度、遠ざかる列車に大きく手を振るのでした。

… … … … …

作業場にいた夏は、庭に誰かが走りこんでくる音で顔をあげました。

信じられない … アキでした。

アキは母屋の扉を勢いよく開けて元気よく声を出しました。

「お祖母ちゃん、ただいま!」

うれしすぎて言葉にならない夏 … 気配に振り向いたアキ、お互いに駆け寄りました。

「早すぎっぺ」

「ただいま!」


抱き合おうとしたふたりを引き離したのは … 春子でした。

「何で来なかったのよ?!」

春子は夏には咎めるように言いました。

「待ってたんですけど!」

「何でって … ワカメが岩さいっぱいついてたから、誰かに採られる前に … 」


春子は夏の言葉を遮りました。

「今日じゃなくて、あん時だよ!」

「 … あん時?」


発車のベルが鳴りやんだ瞬間、春子は思い出したのです … 24年前のあの日、自分が北三陸の駅で母が迎えに来るのを待っていたことを …

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2013年04月12日 (金) | 編集 |
第11回

ようやくアキは、新人海女としてスタート地点に立ったのです。

「最初のうちは足ひれつけた方が深く潜れるからな」


夏に足ひれをつけてもらったアキはペンギンのような足取りで波打ち際へ歩いていきました。

ウニの漁場、美寿々たちに交じって浮き輪につかまるアキ、岩礁の上の夏が指示を与えました。

「真っ直ぐ下さ潜るコツは、とにかくケツを高く上げることだ」

先輩たちが次々とあっという間に潜って行きました。

「あとは、手や足を一生懸命動かして底まで潜る … 苦しくなったら、岩さ蹴って上がってくる、それだけだ」

夏の合図で潜り始めたアキ、言われたように手足を懸命に動かして海底を目指します。

ウニを見つけましたが、なかなか辿り着けずに息が苦しくなってしまって、海面に上がってしまいました。

… … … … …

「ウニがいた!」

一足先に浜に上がって一休みしていた夏たちに報告しました。

「何で採ってこなかった?」

「体が浮いて届かなかった」

「ウニだと思うから採れねえんだ、これからは銭だと思え」


夏がそう言うと、美寿々が付け加えました。

「1個500円、10個で5,000円、そう思ったら、なんぼでも採れっぺ?!」

大笑いする海女たち、アキはうなずくとまた海に向かって引き返して行きました。

アキにとって短かった夏休みは終わろうとしていました。

… … … … …

袖が浜の駅。

いつものようにウニ丼の売り子をしていたアキは、例の盗撮男がホームで何か撮影をしているのを見つけてました。

「あの … 」

「な、なんだよ」


盗撮男 … ヒビキ一郎はアキの顔を見ると周りを見回し、他に誰もいないことを確認すると再びカメラを覗き込みました。

「昨日はありがとうございました、オジサンのおかげで1分40秒も潜れたんです」

「オジサンじゃねえし」


… どうみても40は過ぎています。

一郎は、邪険に答えただけでカメラから目を離しません。

アキがお礼だと言って、リアスのウニ丼を手渡そうとしましたが、受け取ろうともしません。

… 自分のことをヘンタイ呼ばわりして追いかけまわした女の娘ということで根に持っているのかもしれません。

「どけよブス、邪魔なんだわ」

「ブス … 」


面と向かって、ひどい言葉を浴びせられたアキはショックを受けました。

… … … … …

「わあ、きれい、すごくいい」

カメラを構えた一郎が声を掛けた先、ホームに浴衣を着た女性が立っていました。

… ユイでした。

いつも電車で見かける制服ではなく浴衣姿のユイは大人っぽく見えました。

「ちょっと目線外してみようか?」

ユイは一郎に言われたように、少し顔を横に向けて遠くを見つめました。

シャッターを切りまくる一郎。

「かわいい … 」

アキは思わず見とれていました。

… … … … …

海女クラブに戻ったアキ、今朝会ったユイのことが忘れられません。

昼飯を食べていても箸が止まって、またウットリ … ぼんやり …

その様子を見て、美寿々が薄気味悪がっています。

「朝からずっとだ、話しかけても生返事で … 」

小百合も心配しています。

「アキちゃん、そろそろ足袋履いて、んだば浜さ行くよ」

美寿々に声を掛けられて、返事をしたまではよかったのですが、足袋ではなく軍手を履きはじめました。

注意されてもヘラヘラ …

「恋の病だなあ」

「じぇ?!」

「間違いない、あれは好きな男ができた時の顔だ」

かつ枝さんの想像は半分当たっていました … アキは確かに恋をしていました。

ただし、相手は男ではありません。


… … … … …

喫茶リアス。

アキが夏にうれしそうに報告しています。

「ねえねえお祖母ちゃん、いつも北鉄の車両の隅っこに立っている子いるっぺ?」

「足立先生の娘のユイちゃん?」

「あの子さ、超かわいくない?!」


弥生がアキが急に東京弁を使ったと驚きました … いや、それが普通じゃない?

「この間、駅のホームで見かけて声掛けたんだ」

… … … … …

あの日、アキは思い切って、一郎の写真のモデルをしている浴衣姿のユイに話し掛けました。

「あの … 」

「どうしたの? アキちゃん」


アキはユイが自分の名前を憶えているとは思っていなかったので、うれしくなりました。

「リアスのおばさんのお孫さんでしょ? 東京から遊びに来てるんだよね」

「んだ、毎日電車で会ってるけど、もう忘れてるっぺと思って、声掛けられなかった」


ユイはアキが訛っているので、初めて会った時と同じように笑いました、相変わらずユイはきれいな標準語です。

「何なんだよブス」

先に行きかけた一郎が戻ってきて、ユイと楽しそうに話しているアキに向かって罵声を浴びせました。

「時間ないの! … ブスは海に潜ってウニでも採ってろ!」

ユイとの会話を邪魔されたことと、今までないような悪態をつかれてアキは無性に腹が立ってきました。

「ブスじゃないもん!」

ウニ丼の横にあったトゲトゲの殻つきのウニを一郎の顔めがけて投げつけました … さすが、春子の娘、夏の孫だけのことはあります。

「痛て、痛ててて … 」

… … … … …

アキの話を聞いて、夏はたしなめました。

「人に向かってウニ投げちゃあだめだ」

「人にもウニにも失礼だからな」


弥生はそう言いながらも楽しそうに話の続きを催促しました。

… … … … …

アキはユイに一郎と知り合いなのか尋ねました。

「ううん、今日はじめて会ったの」

「じぇじぇ!」


一郎はカメラマン志望で東京から来たそうで、ユイのブログを見てコメントしてきたことがきっかけのようでした。

「へえ、ユイちゃんブログやってるんだ、へえ … 」

「ねえ、アキちゃんち東京のどこ?」


アキが世田谷だと言うと、ユイの目が輝き始めました。

「下北沢、三軒茶屋?」

「大体、そのへんかな … 」


飛び上がらんばかりに驚いたユイはアキの隣に座りなおすと、自分が知っている東京の情報を次から次へとアキに確かめました。

「下北沢って演劇とロックの町なんでしょ? 秋葉原ってオタクとアイドルの聖地なんでしょ? … そうだ、井の頭公園でボートに乗ったカップルって、絶対に別れるんでしょ?!」

ユイは興奮して、アキの手をぎゅうっと握りしめました。

東京の話をするユイはいつも電車でみかけていた清楚で大人しいイメージと違って、ごく普通の流行に敏感な女子高生そのものでした。

完全にユイの勢いに飲まれているアキ。

「随分、くわしいね」

アキにそう言われたユイは少しテンションを下げて答えました。

「うん、でもまだ東京行ったことがないんだ」

雑誌やネットなどで仕入れた情報ということでしょう。

「あ、そうだ、明日とかってさ何してる?」

… … … … …

「 … というわけで、ユイちゃんと待ち合わせしてるんだ」

本当にうれしそうに笑うアキを見て、夏も弥生も、常連の勉までもが心が和むようでした。

「そうかい、いがったなあ、同世代の友達ができて」

夏がそう言った時、ちょうどユイが迎えに来ました。

… … … … …

アキがユイに誘われて訪れたのは、北三陸秋祭りの山車の準備をしている詰所でした。

お囃子の練習をする子供たちの脇を抜けると、見上げるような山車から恐ろしい顔をした鬼がアキのことを見下ろしていました。

「じぇじぇじぇじぇ … でっけえ」

からくり仕掛けの山車はまだ製作途中で、たくさんの若い衆が手分けして色を塗ったり、組み立てたりしています。

「おお、アキちゃん、なんだ足立先生のところのユイちゃんも!」

ハッピ姿の商工会長のたもつがふたりを見つけて声を掛けてきました。

「あの、見学していいですか?」

「見学と言ってねえで、手伝ってけろ!」


観光協会の保に頼まれて、結局ふたりは山車の飾りの塗装を手伝うことになってしまいました。

毎年9月に開催される北三陸秋祭りは、それぞれ地区ごとに派手な山車を造り、市内の目抜き通りを練り歩く一大イベント。

この日に備えて、夏の間、有志が集まり山車を造ります。


… … … … …

「おお、随分進んだなあ」

遅れて顔を出した大吉が山車の出来栄えを見て声をあげました。

「先輩、ちょうどいいとこさ来た。上の作業、手伝ってけろ」

普段は犬猿の仲と言われる北鉄と観光協会も秋祭りの時期は一時休戦して、山車造りに精を出す … 作業は深夜に及ぶこともあります。


… … … … …

「友達って?」

夏と交代するためにスナック梨明日にやってきた春子が、アキが友達と出かけたと知って、聞き返しました。

「足立先生の娘さん、山車見に行くから遅くなるって」

「大丈夫かな … 」


春子が何か心配しているようなので、勉さんが思わず口を挟みました。

「あの子は良い子だよ」

春子はうなずきながら言いました。

「良い子だから問題なのよ … こっちで友達なんかできたらさ、ますます東京に帰りたくないって言い出しそうでさ」

「帰んなきゃいいべ」


夏はそうつぶやくように言うと、戸締りのことを念を押して、一足先に帰って行きました。

複雑な顔の春子に弥生は言いました。

「やっぱさみしいんだよ、夏ばっぱ」

… … … … …

「おい、休憩するぞ」

観光協会のしおりから飲み物を渡されて、アキとユイも一服することにしました。

「ああ、汚れちゃったね」

ユイは手に、アキに至っては顔にまで絵具がついていました。

「どうした? アキちゃん」

アキが自分が色を塗っていた山車をじっと見上げたまま動かないので、大吉が声を掛けました。

「なんでもねえ … 」

そう誤魔化しましたが、それでもアキが変だと感じたユイはもう一度尋ねました。

「いや、この山車が町を練り歩くころには、東京さいるんだなあって思ったら、何か悲しくなっちゃった」

さみしそうに笑ったアキ。

「そっか、アキちゃん見れないんだ … 」

「んだ … 秋祭りなのに、アキは見れねえんだ」


アキはわざとおどけた後、また山車を見上げました。

「でも、いいな東京」

「 … いいかな?」

「お台場とか行ったことある?」


アキはユイに聞かれたお台場も原宿も行ったことがありませんでした。

「ええ、うそお! 何で?」

「何でって … 用事ねえし、ママが行っちゃだめって」

「いや、もったいないよ … 原宿って、表と裏があるんでしょ? 芸能人って大体裏に生息してるんでしょ … 」


… … … … …

ユイの口から出てくるのは、アキの知らない東京でした。

東京で生まれ育ったアキには、見えない景色があるんだと、アキはユイから教わりました。

ということは、アキが見ているこの町の風景もユイには見えてないのかもしれない … きれいな海も、カッコよく切り立った岩場も、田圃を走るローカル線ののどかさも、ユイには見えてないんだ。

北三陸で暮らせる限られた時間、アキはなるべく好きな人と一緒にいたいと思いました。

2学期のことは東京に戻ってから考えればいい、今はここの暮らしを満喫しよう、ここでしか見れないものは何でも見てやろう …


… … … … …

その日、アキは勉さんの琥珀掘りのトンネルに連れて行ってもらいました。

腰をかがめた格好でしか歩けない細いトンネルをヘルメットをかぶって、ライトで照らしながら勉さんの後について歩いて行きました。

「すげえ … これ全部、勉さんが掘ったの?」

「うん、ほぼ40年かかったけどね」


… … … … …

採掘場までたどり着くと、勉さんは目の前で琥珀を掘り出してくれました。

琥珀をアキに手渡しながら、勉さんは説明してくれます。

「8500万年前の樹液が固まってできた結晶だど、すげえべ?」

「琥珀もすげえけど、それを掘ろうと思った勉さんもすげえ」


勉さんは照れくさそうに笑いました。

「やってみっか?」

「うん!」


アキは勉さんからツルハシを渡されて採掘場の壁を掘ってみました。

「ここはいいど、夏は涼しくて冬は暖けえ … 何より、誰にも邪魔されずひとりになれる、自分と向き合う場所だ」

アキは手を休めて勉さんのことを見ました。

「誰も来ないの?」

「おお、なんぼ大きな声出しても、外には聞こえねえすけな … カラオケ歌うよりここさ来て、大きな声で叫んだ方がよっぽどストレス発散になるべ」


アキはうなずくと採掘場の横穴の一つに足を踏み入れました。

そして暗闇に向かって叫びます。

「東京さ、帰りたくねえ!」

「ずっとここさ居てえ!!」

「ここで、祖母ちゃんやママや皆と暮らして … 毎日、海さ潜りてえ!!」


… … … … …

アキは、笑顔で勉さんの元に駆け寄りました。

「ホントだ、スッキリした」

「いがったな」


勉さんは、余計なことは一切聞かずに優しく笑いかけました。

「アキ、もっとやっぺえ」

「うん!」


… … … … …

ふたたびツルハシを手にしたアキは一生懸命に掘りました。

ふと、何か小さな塊が落ちたのが見えました。

アキはすかさず拾うと勉さんに見せます。

「これ、琥珀?」

しかし、勉さんは頭を振りました。

「いや、狐のフンだ」

じぇじぇじぇ!


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2013年04月11日 (木) | 編集 |
第10回

「アキ … 」

初めて見る娘のハツラツとした姿に、アキのパパは驚きを隠せませんでした。


いつの間に正宗の横に春子が立っていました。

… … … … …

アキは接客の他、夏に指示された雑用もテキパキとこなしていました。

「初めて見た … あいつ、あんな風に笑うんだな」

「万が一、東京に行かないでここで暮らしてたら、あたしもあんな風に笑ってたのかな?」


春子は、アキと若い頃の自分を置き換えて想像してみました。

「 … いや、無理無理、絶対無理だわ」

「だろうね … 」


言い出したのは自分ですが、正宗に納得されるとそれはそれで少し癪に障った春子でした。

「あたしに出来ないこと、アキが代わりにやってくれてるのかな … だとしたら、何か複雑」

しかし、ハツラツとした自分の娘を見ることは悪い気分ではありません、春子は微笑ましくアキのことを見つめていました。

… … … … …

「ダメだよ、行っちゃ」

正宗がアキの元に行くそぶりを見せたので春子は釘を刺しました。

「でも … せっかく来たんだし、ウニ食べたいし」

不満そうな正宗に春子は言いました。

「今、パパの顔見たら、いつもの暗いアキに戻っちゃう … 今日は遠くから見るだけで」

そう言われたら、父親としたらあきらめるしかありません。

屈託のない笑顔を振りまくアキを遠くから見守る人間が、実はもう一人いました。

監視小屋の足立ヒロシです。

ヒロシは双眼鏡でアキの様子を窺がっていました。

… … … … …

そのヒロシが珍しく、春子が店番をしている喫茶リアスに顔を出しました。

「あ、娘さん頑張ってますね … 変わってますね、高校生なのに海女さんになりたいなんて」

いきなりアキの話題です。

「うん、でもまあ、それも夏休みの間だけ」

春子から期間限定と聞かされて、少しがっかり?

「先生、お元気? … あたしね、足立先生の教え子なの」

ヒロシとユイの父親、岩手県議の足立功は、元教師で春子や大吉の恩師でした。

「ああ、親父は、まあ体は元気です」

意味深な返事をしたヒロシ … 実はもう何年もまともに父と口をきいていないと打ち明けました。

「いらっしゃいませ!」

いきなりで、面食らっているヒロシに春子は言いました。

「7時半からスナックなの、お酒注文してもらっていい?」

店内の灯りを落として、カウンターの後ろの扉を開いてスナック仕様にチェンジしました。

「じゃあ、ビール … 」

… … … … …

「東京のホテルに就職したんでしょ、何で辞めちゃったの?」

答え難そうなヒロシ。

「あ、ごめん … 言いたくないならいいよ別に、そんなに興味あったわけじゃないし」

「なんか、なんすかね … ははは」


ビールをグラスに注ぎながら春子は尋ねました。

「東京は合わなかった?」

「つうか、俺に合う場所なんかこの国にあるのかなって思いますね … 北三陸も好きじゃないし、盛岡行ってもピンとこなかったし …

東京行ったら何とかなるかと思ったら、どうにもならないし」


ヒロシの話にうなずきながら、春子は言いました。

「わかる … 田舎が嫌で飛び出した奴って、東京行ってもダメよね … 逆にさ、田舎が好きな人って言うのは、東京に行ったら行ったで案外うまくやって行けるのよ、きっと。

結局、場所じゃなく、人なんじゃないかなって思う … 最近」


核心をついた春子の言葉、ヒロシは考え込んでしまいました。

… … … … …

次の朝、浜に急ぐアキを呼び止めたのは、父正宗でした。

「パパ … 」

正宗はタクシーの窓から手を振りながら言いました。

「お別れを言いに来たよ … 元気でな、パパ、東京に帰るから」

「まだいたんだ?」

「うん、名残惜しくてブラブラしてた」


… … … … …

「まめぶ、食べた?」

「まめぶ? … あの甘いんだかしょっぱいんだか、はっきりしないスープ?」

「そこがいいんだよ、わかってないな」


正宗は、アキの海女姿を改めて見ながら言いました。

「似合うな、それ … 潜ってウニ採るのか?」

アキは少し表情を曇らせて、頭を振りました。

「祖母ちゃんが危ないからまだダメって」

「そうか … 」


そろそろいかなきゃとアキは歩き出しましたが正宗は呼び止めました。

「パパいなくてさみしくないのか?」

「ママがいるから平気」


さみしいのは正宗の方でした。即答されて、余計にさみしくなりました。

「ふうん、ママとふたりで何しゃべるんだ?」

アキは少し考えて答えました。

「 … パパのこと」

「うっそお!」


途端にうれしくなって、タクシーをアキに近づけました。

「どんなこと?」

「だいたい悪口、たぶん手紙に書いてあるよ … 」


… … … … …

糠喜びでした。

そろそろ潮時のようです。

「そうか … どうれ、じゃあ手紙読みに帰るか」

思わず「また来るわ」と口にしてしまいました。

「また来るの?」

アキは驚いたように聞き返しました。

「いや、わかんないけど … 」

自分はアキにとって歓迎されざる客なのかもしれないと思った正宗はあやふやにはぐらかしました。

「じゃあ … 今度来る時までに潜れるようになってる」

思わぬ言葉に正宗は少しほっとしました。

「うん、頑張れ」

「うん、頑張る」


浜に向かって走り出したアキの背中に声を掛けました。

「ママのことよろしく頼んだぞ」

… … … … …

正宗と約束したものの、アキの仕事は接客以外は、未だに雑用ばかりでした。

アキは焦っていました、8月に入っても海女クラブの会長から素潜りの許可が下りないのです。

このままじゃ夏休みが終わってしまう、海女さんになる前に2学期が始まってしまう …


パシャッ!

確かにシャッターを切る音でした。

あたりを見回す、アキ

パシャッ!

ストロボが光った方を見ると、何者かが橋の陰に身を隠すのが見えました。

気づいていないふりをして、フェイントを使って、さっきの方を見返すと … カメラを構えた見知らぬ男が引っかかて、突っ立っていました。

「 … 何ですか、ちょっと、何撮ったんですか?」

アキに問いただされると、男は知らないような顔をしてから、いきなり走り出しました。

… … … … …

アキは家に帰ってから、盗撮男のことを夏と春子に報告しました。

「何それ、キモイ! そいつ危ないじゃん」

「追いかけたんだけど、見失っちゃって … 」

「追いかけたの? あんたバカ? そういうね、盗撮するような男がキレたら一番怖いんだからね」


母に注意されて怯えるアキ。

警察に通報すると息巻く春子を夏がたしなめました。

「大げさだな母ちゃんは、昔から海女のシーズンはカメラ小僧のシーズンでもあんのさ、今に始まったことじゃねえ」

「そうなの?」

「んだ、減るもんじゃないし、撮られてるうちが華だぞ」


しかし、春子は納得がいきません。

「変なこと言わないでよ、アンタら大人がちゃんと見張るっていうから海女やらせてるんです、約束が違う!」

「そんな悪い奴じゃねえって、ちょっとしゃべったけど」


どうやら夏とは顔見知りのようです。

「あきれた … 田舎者は簡単に人を信用しちゃうんだよねえ」

「東京の人は、被害妄想が強ええからな … 自分の娘がなんぼ可愛いかわからんが、他人を信用できなきゃ、この町じゃくらしていけねえ!

さあ、帰えれ、帰えれ! さっさと東京へ帰えれ!」

「言われなくても帰りますよ … 2学期が始まったら!」


… … … … …

2学期 … その言葉を聞くとアキは切なくなりました。

三陸の海の幸や、海女さんたちのとの楽しいおしゃべりともあと2週間でお別れなんです。


魚介を網焼きする小百合の手伝いをしていたアキは背中に視線を感じて恐る恐る振り返りました。

怪しい風体の人物 … それは、春子でした。

「すげえな母ちゃん、娘は気になる、でも紫外線も気になるで … ロボコップ見てえだ」

小百合が感心した春子の格好 … 紫外線対策にサンバイザー、頭からショールをかぶり、腕まである長いUVカットの手袋etc … 双眼鏡を手にアキに不審者が近づかないように見張っているのでした。

事情を知らない人が見たら、春子が一番の不審者でしょう。

… … … … …

アキの素潜り前の訓練は続いています。

しかし、合格の条件の1分の壁はなかなか破ることができません。

「ゆっくり数えろ、いざとなったら助けに行くから」

かつ枝の助言を踏まえてもう1回チャレンジ …

「1 … 2 … 3 … 4 … 5 …」

水中でゆっくりと指を折って勘定するアキ。

もちろん、春子はこの様子も見守っていました。

パシャパシャパシャ

… と、春子の耳元で連射のシャッターの音がしました。

振り向くと、そこには望遠レンズのカメラを構えた男。

「うん!?」

男は春子に気づくと、そそくさと … 逃げ出しました。

「ちょっと、何してるのあんた? 待ちなさい!」

盗撮男と追いかける春子がアキのタイムを計っていた美寿々の目にも止まりました。

… … … … …

居眠りをしていた監視小屋のヒロシは、誰かに激しく窓を叩かれて飛び起きました。

慌てて開けると、血相を変えた春子が顔を出して訴えます。

「ヘンタイ、ヘンタイ!」

その余りの剣幕に、自分のことかと思って、身支度を直して、机の上の雑誌を片付けるヒロシ。

「ヘンタイ、ヘンタイ」

「すいません、すいません … 」


… … … … …

ウ~ウ~ウ~

またも袖が浜に響くサイレン。

… ヘンタイ発生?

… … … … …

そんな騒動が起きたこともつゆ知らず、アキは一生懸命に数を勘定し続けていました。

1分過ぎたら、美寿々が教えてくれると思って、どんどん海の方へ流されているのにも気づかないで …

… … … … …

監視小屋から戻った春子は、盗撮男を見失った美寿々と小百合に出くわしました。

「 … で、アキは?」

「じぇじぇっ!」


アキをそのままにしてきたことを思い出した3人は岩場に急ぎました。

… … … … …

入り江にアキの姿は見当たりません。

「沈んでねえか?!」

美寿々はストップウオッチを確認しました … 当然、1分はとうに過ぎています。

… … … … …

息が我慢できなくなったアキは水面に顔をあげました。

「美寿々さん、何秒?」

いつもの調子で美寿々に確認しましたが … 辺りの景色が全然違います。

顔を沈めたまま、沖まで流されていたのに今気づきました。

「あれ、えええっ?!」

パニックに陥ったアキは手足をバタつかせましたが … ウェットスーツは浮くことを思い出して、仰向けの体制で波に身を任せました。

「じぇじぇぇ」

… … … … …

海女クラブ。

「親が見張っていて、死にかけてりゃ、世話ねえな」

「アンタら大人がちゃんと見てないからでしょ!」


夏の嫌味に春子は言い返しました。

「ちゃんと見てたのに、誰かさんがサイレン鳴らしたんだべ」

長内がふたりをなだめました。

「まあまあ夏さん、たまたま漁船が通りかかって助かったんだし、皆1回は経験することだべ」

しかし、気が気でない春子はアキに言います。

「だからアキは、浜でゴミ拾ったり、タオル干したりしてなさい、海は危ないんだから」

「危ねえ目さ合って学ぶこともある、過保護にするばっかが親でねえぞ」


… … … … …

「あ、美寿々さん、何秒だった?」

アキが思い出したように美寿々にタイムを聞きました。

「あ、ごめん … 1分43秒で止めちゃった」

大きく目を見開いたアキ、次第に笑みがこぼれてきます。

「 … ってことは?!」

振り返ると、夏も同じように目を丸くしてうなずきました。

「合格だ!」

… … … … …

やったあ!

海女クラブの一同からも歓喜の声が上がりました。

… ひとり面白くなさそうな顔をしている春子を除いて。

ようやくアキは、新人海女としてスタート地点に立ったのでした。

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本日、大吉は二日酔いでお休み…

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2013年04月10日 (水) | 編集 |
第9回

アキが、また海に飛び込みました。

またか … この娘はよっぽど服着たまま泳ぐのが好きなんだな、と思われるかもしれませんが、好きで飛び込んだ訳ではないのです。

父親が訪ねてきたのです。


… … … … …

海女クラブで濡れた髪を乾かすアキ。

折り入った話がある春子と正宗は夏と共に一足先に天野家に帰っていきました。

夕餉の準備をするかつ枝と美寿々、組合長の長内はすでに一杯はじめています。

「遅くまでつきあってもらってごめんなさい」

アキが申し訳なさそうにすると、美寿々とかつ枝は笑いながら言いました。

「気にするなあ、夏ばっぱから聞いてるから」

「どっちみち、一杯やって帰るつもりだったからな」


ちょうど、見張り小屋の仕事を終えたヒロシがカギを返しに顔を出したので、長内がアキに紹介しました。

「ユイちゃんのお兄ちゃんだべ、っていうか先週おぼれた時サイレン鳴らしてもらったし」

「んだんだ、命の恩人だあ」

「今日も海さ落ちたよね? … 監視小屋から見てたんですが、スイスイ泳いでたから、サイレン鳴らしませんでした」


ヒロシはアキと違って、漁協の人たちにあまり馴染んでいないようです。居心地が悪いのかそそくさと帰って行きました。

… … … … …

天野家。

仏壇に手を合わせ終えた正宗に春子が尋ねました。

「何で来たの?」

「あ、車で … 」

「わざわざ車で何しに来たのって意味」


春子はイラっとしながら聞き直しました。

「だから、君が急にいなくなるから」

「急じゃないでしょ? 予感はあったでしょ絶対に」

「あったけど、枕が臭いとかパジャマが臭いとか … でも離婚を予感させるほど重大なペナルティじゃないし … その辺も手紙に書いてあるのかな?」


春子は夏の顔を見ましたが、黙ったままです。

「あの、離婚届に判子押して送ったので、そちらのタイミングで役所に提出してもらっていいですか?」

何故かついてきて玄関口で様子を窺がっていた大吉と小百合、大吉が春子に尋ねました。

「判子ってどっちのよ?」

「どっちのって、天野だよ天野、旧姓の」

「ああダメだ、それ無効」


離婚届を書いている時点ではまだ夫婦だから、夫の姓の判子でなければダメなんだと言いました。

「あたしも安部の判子押したら、突っ返されたの」

小百合が自分の経験から話しました。

「そんなの離婚したことないから知らないし … 」

… … … … …

一方、海女クラブ。

「じぇ、じぇじぇじぇじぇ … 大吉さんと安部さんって夫婦だったの?」

アキがあまりにも驚くので、一同大笑いです。

「しかも一緒に暮らしたことないんだよ」

結婚式を挙げた後、アパートを探して、半年後に空くからということで契約したのですが … 5か月で別れてしまったのです。

「組合長とかつ枝さんも夫婦だったんだよ」

「じぇじぇじぇ、じぇじぇじぇじぇ!」


アキは二人の顔をまじまじと見直しました。

「だったって、まだ一緒に暮らしてるけどな」

「んだ」


夏が言ったように北三陸は離婚率が高いようです。

… … … … …

ふたたび天野家。

「ようするに元々夫婦仲上手くいってねえとこに、大吉が夏ばっぱ倒れたどってウソのメール送ったって訳だ … ほんで、これ幸いとマンション飛び出し、そのままって訳だ」

夏が春子に代わって正宗に説明しました。

「寝耳に水っていうか、僕は上手くいってると … 」

「うっそでしょ?!」


春子は正宗の言い分を否定しました。

「もちろん、小さな衝突はあります … どこの家庭もそうだよ」

「よその家庭はどうでもいいけど、おめえら夫婦の話しろ」


正宗が姿勢を正すと、またまた何故か大吉と小百合が身を乗り出して … すぐそばに座りなおしました。

「取りあえず、出て行った理由を教えてくれないかな?」

「理由なんかない … 逆に、一緒に暮らす意味が見当たらない」


… … … … …

「随分な言われようだな」

正宗のショックは小さくはなかったようです。

夏はわが娘の言動を詫びました。

「すいませんね、ウチは普通の家庭じゃないもんで … 春子の父ちゃんは遠洋の漁師ですから1年のうち340日は母子家庭だったんです」

「ええ聞いています。だから、僕は仕事より家族を優先して … 」


その正宗の言葉を聞いて春子は思い当たりました。

「はっ … それだ、理由。

そりゃさ、皆で一緒に暮らした方がいいに決まってるよ、でも今のアキにとって果たしてそれがいいことなのかなって思ったの」


… … … … …

海女クラブ。

「美寿々なんか駆け落ちしたんだよ」

「やぁめぇて~」


しかも1回や2回ではありません、最後は年下の彼氏と船に乗って …

「若かったぁ~」

「かっけえ、美寿々さん、かっけえ … 」


… … … … …

天野家。

「私たちさ、知らず知らずアキを追い込んでたのよ … 良い子に育ってほしいって言う願望が強すぎて、それはね私がそんなに良い子じゃなかったってことなんだけど」

「悪い子だったんですよ」


夏が茶々を入れると春子は声を荒げて言いました。

「大体良い子ってなによ? 親に迷惑かけない子、携帯電話にロックかけない子、テレビの電源切るときは主電源まで切る子? 良い子って何よ何なのよ」

理不尽にも正宗に詰め寄る春子、正宗は大吉に目で助けを求めますが … 独り者の大吉にわかるはずもなく。

… … … … …

海女クラブ。

「なあ、わかったか? 皆いろいろあるのよ、いろいろあって、今日があるのよ」

かつ枝がアキに言い聞かせるように言いました。

「アキちゃんのお母さんが特別な訳でねえの、皆いろいろあって … 最終的にはここさ帰えってくるの … お互いわかってるから、黙って受け入れるの」

美寿々はニコリと笑ってアキを見つめました。

かつ枝も長内も優しげな顔でアキのことを見ています。

アキは素直にうなずきました。

… … … … …

「ただいま」

アキが家に戻ると、正宗をはじめ大吉と小百合も帰った後でした。

春子は食卓に突っ伏して眠っていて、ひとり起きていた夏が迎えました。

「ママ … 」

「ほら、ちゃんと娘さ説明しろ」


夏に言われて、春子は頭を起こしました … 母親譲りの寝たふりだったのかもしれません。

「わかってるよ … ちょっと待っててね」

自分の中でもアキになんて話したらいいのか上手くまとまっていないようです。

「いいよ、ママ」

意外な言葉がアキから返ってきて、春子は振り返りました。

「わかるから何となく … いろいろあるよね」

「おやすみ」と言って、ニッコリ笑うと寝床のある部屋に入って行きました。

顔を見合わせた夏と春子です。

… … … … …

天野家を後にした正宗は大吉に誘われてスナック・梨明日にいました。

「たまたま私が春子さんを客として乗せたんです、それが出会いでした  … 世田谷から上野駅まで乗せました」

自分と春子との馴れ初めを語っていました。

「春子は東京でいろいろあって、疲れて、もう田舎に帰るんだって言ってました」

それを聞いて、大吉は目を剥いて正宗に詰め寄りました。

「上野ってことはおめえ、東北本線さ乗って帰ろうとしてたってことでねえか?!」

今野にたしなめられた大吉は、弥生にウーロン茶のロックをお代わりしました。

正宗はウーロンハイをお代わりして続きを話しはじめました。

… … … … …

1989(平成元)年、正宗は24歳、春子23歳の時でした。

「道が混んでていろんな話をしました。お互いの身の上話とか、世間話とか」

春子を上野駅で降ろした後、町を流していた正宗の車を停めたのは … 偶然にもさっき降ろしたばかりの春子でした。

「という訳で来た道を世田谷まで戻りました」

「この野郎、何で戻った?!」


正宗に手を出そうとした大吉の顔面を弥生はペットボトルで殴って止めました。

「それで連絡先を交換して、相談に乗ったりしているうちに交際に発展しまして」

「もう許さねえ、表さ出ろ!」


大吉は正宗に掴み掛りました … しかし、あえなく腕をひねられます。

「すみません、こう見えて僕、空手の黒帯なんです … 東京はタクシー強盗多いですからね、自分の身は自分で守らないと」

… … … … …

ヤケになってウーロン茶ロックのお代わりを繰り返す大吉。

「くっそお、腹がちゃっぽんちゃっぽんで、それでも俺は飲むしかねえのか?!」

その大吉のことをさっきから勉さんが意味ありげな顔で見ています。

「その年に結婚して、その2年後にアキが生まれました」

正宗は、なるべく家族が一緒に過ごせるようにシフトを組み、土日は休んで、平日も夜の6時には仕事を切り上げて寄り道もせずに帰宅しました。

「それがいけなかったんでねえの? … 時間通りに帰えって来たのが、不仲の原因じゃねえのって」

弥生にそう指摘されても、正宗には理解も納得もできませんでした。

「家庭を顧みない父親よりはましでしょ?」

「ましだけど、メリハリがねえべ?」


… … … … …

弥生の父はイカ釣り船に乗っていて、半年に1回しか家に戻ってきませんでした。

「帰えって来た時は、母ちゃんそりゃうれしそうな顔してるのよ、でもまあ1週間だな … もうそのうち、『邪魔だ邪魔だ、顔も見たくねえ』ってケンカばっかりしてるのよ、はっはっは …

わかる? 時には距離を置くのも長続きの秘訣だよ、年がら年中一緒にいたら会話もなくなっぺよ?」


正宗にも何となく思い当たることもありました。

「中にはな、大吉さんみたいに一緒に住む前に別れるのもいるけどな」

「何だとこの野郎、やるのか?」


今野に自分のことを言われた大吉は立ち上がろうとしましたが、足がもつれて転倒 … そして、そのまま大いびきをかいて眠ってしまいました。

「ウーロン茶で酔っぱらうなんて、安上がりだなあ」

あきれるやら、感心するやらの弥生。

「やっぱり! これウーロン茶、こっちがウーロンハイ」

大吉が飲んでいたコップを確認した正宗が言いました。

「何かこの店、ウーロンハイ薄いなって思ってたら、おばさん間違えて出してた … この人ずっとウーロンハイ飲んでたんだ」

「じぇじぇじぇ!」


途中からそれに気づいていた勉さん、日頃、大吉から邪険な扱いを受けていた腹いせか、してやったりの顔です。

… … … … …

黒川さんはビジネスホテルに泊まって、翌朝ふたたび袖が浜に向かいました。

正宗は船の陰から、海女姿のアキが観光客を接待する様子を見ていました。

「アキ … 」

初めて見る娘のハツラツとした姿に、アキのパパは驚きを隠せませんでした。

学校でも家でも見せたことがない明るい表情、明るい声、笑い声 …


いつの間に正宗の横に春子が立っていました。

そして、パパとママはそんな娘のことを黙って見続けたのです。

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クドカンの脚本。アキのパパが同じタクシー運転手で登場、ママは後輩

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2013年04月09日 (火) | 編集 |
第8回

漁協の組合長、長内六郎を乗せたタクシーの運転手、誰あろう春子の夫、つまりアキの父親 … 黒川正宗なのであります。

正宗は不慣れな土地の為、長内の行き先の漁協の場所がわかりません。

「お客様、あの漁協まではどのようなルートで … ?」

「ルートも何も一本道だべ、6号線さ出て一本だべ」


その6号線へ出る道もわからず道路マップを食い入るように見る正宗です。

「バイパスまで行って、袖が浜方面曲がれば6号線だ」

正宗が「袖が浜」という地名に反応しました。

「袖が浜聞いたことがあります … 海女さんのいるところですよね?」

正宗は袖が浜が見つからずにここに車を停めて地図で探していたところなのでした。

「やったあ、やっと行ける袖が浜」

何と正宗は料金はいらないからと、運転を長内に代わってもらいました。

… … … … …

漁協の海女クラブ。

潜りの訓練を終えたアキと美寿々が着替えを終えて一休みしています。

「やっぱ長く潜るのは難しいな」

「大丈夫だあ、始めは皆そう言うべ」


そこに長内が、タクシーの運転手に代って自分が運転させられたことをぼやきながら入ってきました。

「参った参った … おお、アキちゃん、帰って来たか?」

「ただいま」


アキもすっかり漁協の一員です。

かつ枝がアキに尋ねました。

「今日みたいなあったかい日でも水の中は冷てえべ?」

「うん、でも楽しい」

「楽しいばっかりじゃねえぞ海は、いきなり潮さ流されるし、漁船さぶつかることもあるからよ」

「潜るときはオラたち大人が見ているときだけだぞ」


アキはかつ枝が段ボールをどかした後に貼ってあった古い海女の写真に目がくぎ付けになっていました。

そこに写っている海女の何人かが、上半身裸で胸をあらわにしたままの姿でした。

「どうしたアキちゃん?」

「安部さんこれ … 」

「おっぱい?」

「何で出している人と出していない人がいるの?」


説明しようとする小百合を遮って、長内が話し始めました。

「新人の海女は、皆乳出して潜るんだじゃ」

「じぇっ?!」

「その方が深く潜れんのだ、水の抵抗がねえからよ … まあ、服着て潜れるようになるのは2、3年はかかる」


アキはショックでした。

「じゃあ、安部さんも美寿々さんも新人の頃はおっぱい放り出して潜ってたの?!」

ふたりとも手ぶりを入れてうなずきました。

「じぇ、じぇ、じぇぇ」

「アキちゃんも深く潜りてえなら、出した方がいいべな」


… … … … …

天野家。

夏が昼食の支度をしているところにうつろな目をしたアキが帰ってきました。

「どうした、アキ?」

アキは答えずにそのまま風呂場に閉じこもってしまいました。

「アキ開けろ … どうした?」

戸を開けたアキは夏に言いました。

「お祖母ちゃん、アキやっぱ海女辞める」

… … … … …

「どうした? 急に」

「自信がない」

「最初は皆不安だ、だけど慣れれば平気だ」


アキは漁協で見た写真を思い浮かべました。

「いやいやいや、慣れたくない! 平気になんてなりたくない!」

… … … … …

「なんで、ねえ何笑ってるの?」

「だからおめえ、組合長にダマされたんだ」


ふくれっ面のアキを前にして、訪ねてきた長内とかつ枝、夏は大笑いです。

「いやいや、まさか信じるとは思わないから」

「どういうこと?」

「あれはな昔の写真だ、今は裸で潜る海女なんていねえ」


目を丸くするアキに夏は話しました。

「まだ祖母ちゃんが結婚する前の話さ … それまでは食うために潜っていた海女だちに観光協会が目つけて、観光海女として売り出したのさ」

観光海女 … 客からお金をもらって、潜ってみせて、ウニ食べさせる今のスタイルのことです。

「どうせ旦那たちは漁さ出たきり何か月も帰えってこねえから、女だちは観光海女として稼いでくらしの足しにしてたんだ」

かつ枝も説明してくれました。

「おっぱい放り出して?」

「出したっていうよりは、隠さなかったって方が正解だな」


… … … … …

「ところが、漁から返ってきた男連中がそれ見て、頭さ血がかーって昇っちまったってわけだ」

夏は愉快そうに話しました。

その時に先頭切って漁協に乗り込んで行ったのが、夏の旦那、アキの祖父の天野忠兵衛だったのです。

「んで、それ見て、『ああ、この人かっけえな』って思って、結婚することに決めたのっしゃ」

夏はアキに合わせて「かっけえ」という言葉を使ってみました。

そのアキはダマされたことなどとうに忘れて、夏の話に夢中でした。

「ええかアキ、海女にはそういう歴史があるんだど … だから、海女が採ったウニやアワビには、家族のために海で働く漁師と留守を守る嫁の愛情がいっぺえ詰まっているんだ」

「だから海女って、かっけえんだ」

「んだ、だから、かっけえんだ」


皆で「かっけい」と言って笑い合いました。

… … … … …

その頃、春子は書き上げた夫への手紙と離婚届を同封した封筒を手にポストの前に立っていました。

いざ投函となると、なかなか思い切ることができずに、逡巡を繰り返しています。

「いやいやいや、もう迷わない … 」

封筒の先をポストに少し差し込んだ時、いきなりクラクションを鳴らされて、思わず手を離してしまいました … 封筒は、ポストの中へ。

「えっ、えっ、ええ?!」

ポストの口に手を入れて封筒を取り戻そうとする春子の目の前に1台のタクシーが停まって、夫の正宗が降りてきました。

… … … … …

「えっ、えっ、ええ、何で?!」

「何でって、こっちこそ何でだよ、春子さん … 何で岩手にいるの?」


正宗は近づいてきます。

「そっちこそ何で岩手にいるのよ」

「君が岩手にいるから来たんだよ、君がいなきゃ来ないよ、岩手なんか … 心配したよ、春子さん、どうして急にいなくなったの?」


春子は人目をはばかり、正臣を別の場所へと連れて行きました。

… … … … …

夏とアキは、他の海女たちと一緒に午後の接客、浜で魚介を焼いて観光客に振る舞っていました。

… … … … …

場所を漁協に移した春子と正宗。

「海女さん?! アキが、何で海女さんなんかに??」

春子からアキのことを聞いた正宗は驚いています。

「そのへんの詳しい経緯を手紙に書いたのよ」

「じゃあ、あとで読むよ」


手を差し出した正宗に春子の口調は強くなります。

「出したわよ! 今まさにポストに入れたところだったの、離婚届と一緒に」

最後の一言を聞きのがしたのか、正宗は平然としています。

春子は念を押すようにもう1回言いました。

「そうよ、離婚届と一緒に」

「離婚届?! … 僕たち別れるの? 何で?」

「だから、その辺の理由も書きました、手紙に」

「僕、読んでないよ」


正宗の態度がいちいち癇に障るのか、春子は切れました。

「出したって言ってるじゃん! 今、速達で … 明日届くわよ、東京に」

ようやく事の成り行きを理解した正宗は急いでポストまで手紙を取り戻しに走り出しました。

… … … … …

しかし、寸での差で手紙は郵便局員に取集されてしまいました。

その様子を見ていた長内。

「あれ? お前、昼間の運転手」

正宗を追ってきた春子に知り合いかと訪ねました。

「 … 旦那です」

「じぇじぇじぇ!」


… … … … …

早速送られてきた長内からのメールを大吉はリアスで受け取りました。

「じぇじぇじぇじぇ!」

「どうしました? 駅長、じぇが4つも」


店番をしている吉田が尋ねました。

「漁協の長内さんからメールで、春ちゃんの旦那が東京から来ているらしい」

「じぇじぇ!」


基本的に吉田にとっては関係のないことなので「じぇ」は2つでした。

「 … どうやらタクシーの運転手らしい」

「モータリゼーションの弊害がここにも」


たぶん違うと思います。

「しかも個人らしいじゃ … 一匹狼だ」

「一匹モータリですね」

「ああ、くそお! こんな時、酒飲みなら一杯やって気合い入れるのに … 俺は酒が飲めねえ!」


吉田は「歌いましょう」とカラオケにリクエストを入れました。

「24年間待ち続けて、苦労してせっかく呼び戻したのに … 何しに来たんだ? モータリゼーション、恐るべしだな!!」

「大丈夫ですよ、運転手としての格は駅長の方が上です」


吉田は、根拠のない慰めを言ってマイクを渡しました。

流れてくるイントロは … 

♪ ゴーストバスターズ!

「よし、行って来る」


大吉は出かけて行きました … この人、本業の方は大丈夫なんでしょうか?

… … … … …

浜では、接客の合間にアキがお裾分けしてもらった焼きハマグリに舌鼓を打っていました。

「うっめえ! … ハマグリってずっと浜の栗だと思ってたけど、貝なんだね」

「相変わらずバカだなあ、アキは」


無垢なアキの言動に海女たちは大笑いです。

「ほら、客来たど」

美寿々に言われた先を見たアキの顔色が変わりました。

「あれ、春ちゃんじゃないか?」

「前歩いている男は誰だ?」


走ってくる男は正宗、そのあとを春子が必死に追いかけてきます。

「どうやら客ではねえようだな」

ふたりの様子を見た夏がそう言いました。

… … … … …

「アキ!」

「パパ … 」

「じぇじぇじぇ」


正宗はアキを見つけると、咎めるように尋ねました。

「何してるんだ? こんなところで … 何だ、その恰好は?」

「あ、海女さん … 」

「そんなの見ればわかる!」


激高して声が大きくなった正宗を春子が制しました。

正宗は自分で自分を落ち着かせると、改めてアキに問いただしました。

「どういうつもりなんだ、アキ? 終業式勝手に休んで、電話しても出ないし、メールも返さない」

「ごめんなさい、あの携帯、海さ落どして … 」


アキは謝ろうとしましたが、構わず正宗は続けました。

「学校はどうするんだ? 補習も塾の夏期講習もあるだろう? … いいのか? お前また成績落ちるぞ、高2の夏で勝負が決まるんだぞ」

「ごめんなさい … 」


誤りはしましたが、アキには今の自分にとってはどうでもいいことのように思えました。

「こんなところで何やってるんだ? アキ」

また声を荒げた正宗がアキに詰め寄ろうとした時 … その前に立ちはだかったのは、夏でした。

… … … … …

訝しがる正宗に向かって夏は言いました。

「海女クラブの会長でがす … この子は孫でがす」

「 … 孫?」


正宗は春子を振り返りました。

「あたしのお母さん」

正宗は恐縮して、あたふたしだします。

「あの、そうでしたか … すみません、いずれご挨拶には伺うつもりだったんですが、あのこんな形で … 」

いきなり頭を下げました。

「黒川正宗と申します、春子さんの夫でアキの … 」

「別れるって聞いてますけど」


うんうんとうなずく春子。

ちょうど、熱血バカ駅長の車も到着しました。

… … … … …

「僕は別れるつもりはありません」

正宗が夏に面と向かって宣言した時、何か飛び込む音が辺りに響きました。

「絶対に別れません! さあ帰るぞ、アキ」

ところが、アキの姿が見当たりません。

「あら、アキは?」

「アキ、また飛び込んだ?!」


美寿々たちが沖に向かって泳いでいくアキを見つけました。

「アキ … 」

アキは、また海に飛び込みました。


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2013年04月08日 (月) | 編集 |
第7回

北三陸鉄道リアス線が開通した朝、町を出て行った娘が24年ぶりに帰ってきました … 孫を連れて。

お祖母ちゃんは袖が浜の海女、その姿を見て孫は言いました。

「かっけえ!」

意味は分かりませんが、どうやら褒めているみたいです。

「わたし海女さんになりたい」

こうして、24年ぶりに16歳の海女が誕生しました。

「はい、ま・め・ぶ!」


… … … … …

もちろん、素人がいきなり潜れるわけではありません。

最初は、浜の掃除やウニの殻捨て等の雑用。そして、接客、客が途切れたらウニの殻むきを教わり、営業が終わってから、ようやく潜り方を教わります。

「冷ゃっこい、冷ゃっこい!」

アキは海に足の指先を入れただけで、その冷たさに驚きました。

「あったりめえよ、だから北の海女なのさ」

海には、ベテランでもいきなりには入りません。

ちょっとずつ体を濡らして、水に慣れてから入ります。

アキは弥生やかつ枝たち先輩海女にまず泳ぎ方から手ほどきを受けました。

夕方まで泳いで、先輩の衣装を干して、また掃除 … 漁協に寄っておしゃべりしてたら、もう夜です。

… … … … …

海女見習い初日を終えたアキ … 家に帰って、夕食を取りながらそのままの体制で眠ってしまいました。

「疲れたんだべ、寝かせろ」

夏はあらためて春子に聞き直しました。

「で、どうすんだ? … アキを置いて、東京さ帰えるのか?」

春子は思い出したように言いました。

「判子どこだっけ?」

「判子? 何に使うんだ?」

「 … 離婚届」


夏はやっぱりといった顔です。

「私ね、離婚することにしました」

春子は夏の前に座りなおして言いました。

「じぇっ!」

… 食卓の横に寝かせておいたアキの寝言です。

… … … … …

「 … 結婚したことも知らされてねえからよ」

「そっか、そうだよね … タクシー運転手と結婚したの。とてもいい人だったけど、別れます」


夏はあきれたように言いました。

「簡単にまとめたな」

そして、夏の口から続いて出てきた言葉は予想に反するものでした。

「気にするな、北三陸はな、離婚率の高さとワカメの収穫高で有名なんだ」

… … … … …

「ようするに、東京さ帰える理由が特にねえってわけだ … だったら、娘と一緒にいればいい」

春子は夏の顔を見返しました。

「ただし、この家で暮らすんなら、生活費ぐらい入れて貰いてえなあ」

夏は春子に「リアス」の雇われママをしないかと提案しました。

「働くのはいいよ、でもスナックはダメ … 私、会いたくない人いっぱいいるし、ほとんど会いたくないし … 変な噂立てられたらどうするのよ?」

渋る春子の言い分を夏は笑い飛ばしました。

「もう立ってるべ、重てえ荷物ガラガラ引きずって、日がな一日パチンコ屋入り浸って … だったらよ、スナックでよ噂する奴らからよ、金取ればいい」

「お母さん … 」

「よし、決まりだな」


今は夏と弥生と美寿々で店をやっているが、海女の時期になるとさすがに掛け持ちはきついのでした。

里帰りしてから一週間、ようやくほんの一瞬、春子は娘の顔を見せました … まったく面倒くさい娘です。

… そっくりそのまま、夏にも当てはまることでした。

… … … … …

軽食&喫茶リアス。

春子は次の日から、店に立ちました。

「ちゅうわけで新人だ … ちなみにバツイチだ」

客の今野と菅原に紹介する夏はどことなく機嫌よく見えます。

「でもよかったんでねえの、24年ぶりの新人海女誕生で」

「ああ、んだな、海女の後継者不足は深刻な問題だったなあ」


春子は今野たちに、アキの海女はあくまでも夏休み限定だと否定しました。

「でもこれで、北鉄の熱血バカ駅長も大人しくなるんでねえか?」

菅野が陰口をたたくと、その熱血バカがドアを開けて入ってきました。

… … … … …

「ここさいたのか、観光協会のハゲ!」

会計を済まして席を立とうとする菅野を大吉は逃がしません。

「協会長さんよ、どうなりましたかね、ホームページの件は?」

「ちゃんとやってますよ、先輩」


菅野は自分は賛成なのだが、市の許可がなかなか下りないと言い訳しました。

「さっき市の広報としゃべった、どんどんやってけろって … さては、菅原おめえ、パソコン使えねえな」

勘定をおいて逃げるように出ていく菅原です。

大吉は一転して笑顔になって、カウンターに座り、春子にコーヒーを注文しました。

… … … … …

軽食&喫茶リアスは、午後7時半からはスナック梨明日になります。

「ウーロン茶ロック!」

昼から手が空くたびに店に入り浸りの大吉は上機嫌です。

「まさか、春ちゃんのお酌で飲めるとはなあ」

仮にも勤務中なので、アルコールではありませんが …

「夏ばっぱも喜んでらじゃ、孫は海女さん、娘はママさんだもの」

「週三だし、夏休みの間だけだからね」


… … … … …

「だけど、田舎もいいもんだべ?」

「どうなんだろう … あたしはやっぱり好きじゃないかも」


春子は、田舎が嫌いというより、田舎にいた頃の自分が嫌い … あの頃のダサい自分を知っている人たちも嫌いだと言いました。

「もちろん、大吉さんも嫌い … そういう人間関係イコール田舎だから、あたしには

だから、田舎が嫌いってことなのかな … 」

「ウーロン茶、ロック! ダブルで」


止めどなくお代わりしてくる大吉に春子は「自分でやって」とウーロン茶のペットボトルとアイスを目の前に置きました。

… … … … …

「俺はあの頃の春ちゃんが好きだよ」

酔ってもいないのにいきなり大声を出す大吉。

「やめてよ大吉さん、声が大きい」

「構わねえ、どうせ、ふたりきりだべえ」


常連の勉さんがいますが、大吉の眼中には入っていないようです。

「あの頃の春ちゃんが好きだから、春ちゃんがいたあの頃のこの町が好きだから、オラ頑張ってるんだ … 

北鉄が黒字だった頃、駅前にはショッピングセンターがあってポロシャツが飛ぶように売れていた頃、そのショッピングセンターの屋上に新沼謙治が来た頃!」


春子は興奮気味の大吉にウーロン茶を注いでなだめました。

「あの頃、皆輝いてたっぺ … これからは地方の時代が来る … そう皆信じていたっぺ、明るい未来があった!

よし … 歌うべ」


… … … … …

「歌うの?」

大吉は自分でカラオケのリクエストをすると、ステージに立ちました。

「俺はこの歌聞けば、あの頃思い出すんじゃ …

昭和59年、懐かしい青春時代、その景色の真ん中にはいつも春ちゃんがいました … そんな思い出の曲です、聞いてけろ!」


イントロが流れ始めました … その曲は … レイパーカーjrのゴーストバスターズでした。

「え、え? ちょっと待ってこれ? … マジでこれ、何でこれ?」

「懐かしいべ?」


大吉は踊りも入れて得意顔です。

「懐かしいけど … 懐かしければいいってもんじゃないでしょ?」

♪ ゴーストバスターズ!

自分でリクエストしながら、大吉が歌えるところはそこだけでした。

こぶしを振り上げて「ゴーストバスターズ」を繰り返す大吉。

それは、あきらかに選曲ミスでした。

でも、大吉さんの言ったことはおおむね真実です。

北鉄が開通した当初誰もが未来を信じていた、庶民の夢がかなうんだ、田舎者だってやればできるんだ … そんな希望がありました。


♪ ゴーストバスターズ!

… … … … …

一方、アキは元気に夏休みを満喫しています。

午前4時に起床して、夏のウニ丼の仕込みを手伝った後、北三陸の駅で売り子をします。

「ウニ丼いかがですか、限定30食です!」 

早く売り切れば、その分早く浜に出れるので、必死に売ります。


車内販売をしていた時にまたユイを見かけました。向こうもこちらに気づきましたが、今回はそれだけでした。

… … … … …

ウェットスーツを着て水中メガネかけ、アキは海面に顔をつけて指で数を勘定しています。

ザバア … 顔を上げると浜でストップウォッチを持った美寿々にタイムを尋ねました。

「26秒だ」

ガッカリするアキ。

「少なくとも、1分は潜らねえと漁はできねえよ … ほら、けっぱれ!」

海女になるためには長く息を止められることが肝心です。


… … … … …

その頃、春子はそこそこ大きな決断をしました。

自分の署名捺印をした離婚届、夫に宛てた手紙をしたためている春子です。

同じ頃、北三陸の駅に一台のタクシーが停まりました。

「自家使用」というプレートがダッシュボードに置かれているので、営業でなくプライベートのようです。

ちょうど駅から下りてきた漁協の組合長、長内六郎がドアを開けました。

「漁協まで」

運転手の男は断ろうとしたのですが、長内はすでに乗り込んでシートに腰を下ろしてしまいました。

仕方なく、車を出す運転手。

この男こそ、誰あろう … 春子の夫、つまりアキの父親 … 黒川正宗なのであります。

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思い出の曲がゴーストバスターズって何かの伏線? ふたりで行った映画とか …

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2013年04月07日 (日) | 編集 |
さて、次週の「あまちゃん」は …

夏休みの間だけという母・春子(小泉今日子)との約束で、新人海女となったアキ(能年玲奈)。祖母の夏(宮本信子)ら先輩たちに交じり、さっそく海女修業をスタートさせる。

春子は、夫・正宗(尾美としのり)と離婚することを決め、夏が経営する喫茶店兼スナック「リアス」のママとして働き始める。

しかし、正宗のほうに別れる気はなく、妻と娘を追いかけてくるが、東京では見たことがないアキのはつらつとした姿を見て、一人東京に戻って行く。

笑顔で見送るアキだったが、海女修業ができる時間が残り少ないことに焦っていた。未だに1分間息を止めることができず、夏から素潜りの許可が下りないのだ。

そんな折、アキは足立ユイ(橋本愛)と知り合う。東京になじめず、北三陸に居心地のよさを感じているアキとは正反対に、ユイは田舎を嫌い、東京に憧れを抱いていた。

町では秋祭りの準備が始まり、ますます北三陸を離れがたく思うアキだったが、とうとう夏休みの終わりが来てしまう。春子に片想いを続ける大吉(杉本哲太)も、アキ親子を引き止められずに右往左往。

別れの日、北三陸駅のホームに立つアキと春子。列車が出発する間際、春子が24年前の出来事を思い出して…
あまちゃん 公式サイトより)

東京さ、帰りたくねえ!

あまちゃん 足立ユイ


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2013年04月06日 (土) | 編集 |
第6回

アキは自分で自分の殻を壊そうとしていました … 誰かに背中を押されるのではなく、自分で …

… … … … …

満員電車、すし詰めの乗客をかき分けて声を上げるアキ。

「降ります、降ります」

通勤、通学の人の流れに逆らって歩くアキ …

教室、同級生が話し声が聞こえます。

「ねえ、アキって子、何考えてるかわかんないよねえ」「って言うか地味だし暗いのよ、あの子」「アキといてもつまんないし」「アキは誘わなくてもいいよね」 …

あの … あたしアキなんだけど …


アキが海面に浮かび上がるほんの数秒の間、脳裏に浮かんでは消えた記憶 …

… … … … …

サバァ!!

海面に顔を出したアキは、立ち泳ぎしながら周りを眺めました。

なんだか無性におかしくなって笑い始めます。

「アキちゃん!」

防波堤をかけてくる、夏、春子、大吉の3人が見えました。

「アキ!」

「お祖母ちゃん … わたし海女さんやりたい!」

「はあ?!」


アキはもう一度言いました。

「海女さんやってもいい?」

「おっかさ、聞いてみろ」


そう言いながら、夏の顔は緩んでいました。

「ねえ、ママ、わたし海女さんになりたい」

開いた口がふさがらない春子でした。

この日を境にアキはすっかり生まれ変わりました … 地味で暗くてパッとしない自分を海の底に置いてきたのです。

… … … … …

漁協の海女クラブは大騒ぎになりました。

「ああ、アキちゃん、海女やるってか?!」

弥生やかつ枝も大喜びで駆けつけてきて、振る舞いが始まりました。

「電話かかってきて、カギ『じぇ!』っと閉めて、タクシー『じぇ!』っと停めて、ジェットで来たべえ!」

「よく決心しただあ」


弥生に頭をなでられて、アキは大きくうなずきました。

「娘じゃなく、まさか孫が継ぐとはなあ、夏ばっぱ」

… … … … …

「あのお! … ちょっと聞いてください!」

皆の輪に加わらず、一人離れて座っていた春子が大きな声を出すと、一同が注目しました。

「まだやるって決まったわけじゃないですから」

春子に水を差されて静まりかけた一同、アキは立ち上がって言いました。

「やるよ、わたしもう決めたもん」

んだんだと活気づく一同を春子は制しました。

「ちょっと待って、黙って!」

そして、夏に歩み寄り不敵な顔で言いました。

「取りあえず、ふたりで話させてもらってもいいですか?」

… … … … …

天野家。

アキは縁側の戸に寄りかかってぼんやりと風鈴の音や虫の声に耳を傾けています。

「本当に、アンタはどうしてアタシの嫌いなもんばっかり好きになるんだろうね」

缶ビール片手に春子は縁側に腰かけました。

「本気なの?」

振り向いて、尋ねると、アキは真剣な顔でうなずきました。

「甘くないんだよ本当に … だから、24年間、誰もやってないの … 水は冷たいし、溺れたり … 」

春子は言い聞かせるように話そうとしました。

「わかってる!」

「わかってないよ!」


春子に言い返されて、一瞬たじろいだアキですが … それでも譲りません。

「わかってないよ … だってやってみないとわからないじゃん、だからやるの」

「いいことなんかひとつもない … 」

「それもやってみないとわからない!


アキが春子に逆らう、それもこんな強い口調で言い返すなんて、今までなかったことでした。

「参ったなあ … どうしよう」

… … … … …

「ママが小さかった頃ね、今のアキなんかよりもっともっと小さかった頃 … お祖母ちゃんにくっついて、しょっちゅう浜に出てたの。

海見てるとさ、不安になるのよ … お母さん、このまま顔出さないんじゃないかって、流されて死んじゃったんじゃないかって …

お母さんが海から顔出すと、ホッとするの … でも、またすぐに潜っちゃうでしょ … またすごく不安になって、そのくりかえし」


それが春子の一番古い記憶でした。

「お父さんは?」

「遠洋漁業の漁師ってね、1年のうち家にいるのは10日ぐらいで、すぐまた漁に行っちゃうの … ま、この辺りは皆そうだったし、そういうもんなのかなって思ってたけど … やっぱりさみしくってね」


… … … … …

「でね、小学校の高学年になるとママも強制的に潜らされた」

泣いて嫌がる小学生の春子を小舟の上から海に突き落とす夏 …

「嫌で嫌でしょうがなかったけど、お祖母ちゃんには逆らえなかった」

「何で?」

「 … 怖かったのよ、今よりぜんぜん … そうだよね?」


縁側から這い上がって、隣の部屋にいる夏に声を掛けました。

うたた寝している夏を見て春子は苦笑します。

「でたよ、得意の寝たふり … 都合悪くなるといつもそうなんだから」

… … … … …

「高校卒業したら、海女やるんだろうなって周りも思ってたし、自分でも半分ぐらい諦めてた」

夏は寝ていませんでした。目はしっかりと開けて春子の話を聞いていました。

「でもそんな流ちょうなこと言ってられなくなっちゃったんだよね」

「えっ?」

「高3の夏、海開きの前の日 … 組合長が市長を連れて訪ねてきたの」


… … … … …

1984(昭和59)年

市長の前に畏まって座る春子と夏。

「明日、北三陸鉄道が開通すれば、観光客も増える、東京からも人が来る … 北鉄は、東京さ繋がってるんだ」

「新聞やテレビの取材も来る、ちょうど海開きで袖が浜の海女も注目される、こんなチャンス滅多にねえべ!」


だから、春子に海女になって潜りを見せてほしいということでした。

「でも、まだ高校生だし … 」

「高校生だからニュースになるんだよ」


かつ枝がそう言い、弥生が手にしていた風呂敷を春子の前で開きました。

「おめえしかいないんだよ、春子頼む!」

風呂敷の中身は、春子の名前が縫い付けられた絣半纏 … 海女の身ごしらえでした。

「んだ、袖が浜の未来のためだ」

「頼む、潜ってけろ」


大の大人が全員、春子に土下座をしました。

… … … … …

「 … で?」

アキは身を乗り出して聞きました。

「ママ潜ったの? 海女さんになったの?」

「なってたら、東京行ってないし、あんたも生まれてないよ」


… … … … …

次の日、春子は開通した北三陸鉄道に乗ってこの町を後にしたのでした。

「それから一回も帰ってないの?」

春子はうなずいて言いました。

「24年間、一度も … 」

アキは、ある意味、母の話に感動していました。

「そっかあ、知らなかった … ママに歴史ありだな」

「ま、聞かれたとしても、しゃべんなかったけどねえ」


… … … … …

「それで、東京でパパと結婚したんだ?」

「こういう家庭で育ったでしょ … だから自分が結婚するときは家庭を大事にしてくれる人がいいなって思ってたの … 

漁師とか船乗りとかじゃなくて、ちゃんと陸にいてちゃんと毎日帰ってきてくれるお父さん」


しかし、いざ本当に毎日帰ってくると … 何か疲れる、煮詰まる …

「ああ、こんなつもりじゃなかたのになあ、みたいにねえ」

寝転がってそんなことを口にする母をアキは見つめていました。

「そうね、うん、結婚も一緒だ」

自分で納得した春子は起き上がってアキに言いました。

「あんたが言うとおりさ、何事もやってみないとワカンナイ、確かに」

笑顔で何回もうなずく母を見て、アキの顔もほころびました。

そんなやりとりを夏は狸寝入りのままずっと聞いています。

… … … … …

「やあね、何の話をしていたかわかんなくなっちゃった … ああ、海女さんか」

春子は改めてアキの顔を見て「やりたいの?」と尋ねました。

躊躇しているアキに向かってもう一回聞きました。

「やりたいんでしょ?」

無言でうなずくアキに春子はあっさりと折れました。

「じゃあ、やればいいじゃん」

「え?」

「ちょうど夏休みだしさ、おやんなさいよ」

「本当?」


信じられないと言った顔のアキに春子は、「夏休みの間だけ」と条件を付けました。

「約束してアキ、二学期になったらちゃんと学校行って、勉強がんばって、ちゃんと高校卒業するって」

「する、約束する!」


… … … … …

「やったあ! … お祖母ちゃん、やっていいって、潜っていいって」

アキは報告に夏のいる茶の間に飛んでいきました。

『地味で暗くて、向上心も協調性も個性も花もない、パッとしない』と思っていた娘が、たとえ海女だとしてもはじめて自分の意志を示したことに少なからず喜んでいる春子の顔でした。

… … … … …

「お祖母ちゃん?」

隣の部屋にいたはずの夏の姿はありませんでした。

ふと玄関口に、海女の身ごしらえが一式置いてあるのをアキは見つけました。

「わあ」

アキは手に絣半纏を取って広げてみました。

「天野春子」と書かれた名札、24年前のあの日、母が着るはずだった絣半纏です。

… … … … …

次の日の朝。

海女の姿に身支度を整えたアキは、夏と一緒に神棚に手を合わせていました。

「よし、行ぐぞ!」

「うん!」


… … … … …

監視小屋のヒロシは、ノックの音で居眠りから覚めました。

窓を開けると、そこから春子が顔を出してコンビニの袋を差出しました。

「ありがとうね、娘を助けてくれて … ま、溺れたわけじゃなかったみたいなんだけどさ」

「娘?」

「うん、海女さんになっちゃった … 」


… … … … …

夏を先頭に弥生やかつ枝、海女の仲間が歌いながら浜に繰り出して行きます。

アキもその中に交じって、同じように口を合わせて歌いました。

♪ 言っているいる お持ちなさいな いつでも夢を いつでも夢を

こうして24年ぶりに16歳の新人海女が誕生しました。

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今日のスタジオパークのゲストは夏ばっぱとアキだよ

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2013年04月05日 (金) | 編集 |
第5回

その少女 … 足立ユイは畑野駅から乗ってきました。

地元の子とは思えない洗練された容姿、清楚な横顔にアキの目はしばしくぎ付けになりました。

「ありゃあ、畑野のユイちゃんか?」

夏が声を掛けると、ユイはイヤフォンを外して、挨拶をしました。

「早えな、学校か?」

「はい、終業式なんです」


きれいな標準語でした。

「訛ってねえ … 」

夏がアキのことを東京から遊びに来ている孫だと紹介しました。

「高校生?」

「んだ、2年生だ」


東京で生まれ育ったアキの方が訛っていました。

「うふふ、私も高2、よろしくね」

笑顔のユイ、アキはぎこちなくうなずくことしかできませんでした。

のちにふたりがお互いにとって、かけがいのない存在になろうとは … 本人たちも知らなかったのです。

… … … … …

喫茶リアス。

「ユイの親父さんは地元の名士なんだ … 元々、北三陸高校の先生で俺や春ちゃんの担任で」

岩手県議会議員・足立功、店の壁に貼ってある講演会のポスターを指して大吉がアキに説明しました。

「だからもう北鉄も観光協会も足立さんには、頭が上がらねえんだ」

常連の今野が言いました。

ポスターの写真の足立功は、ユイの父親にしては随分年配に見えました。

「遅くに結婚したからなあ」

今日の店番の弥生がしみじみと言いました。

ユイには盛岡の大学を卒業して、今年東京のホテルに就職した兄がひとりいました。

「それが、辞めて帰ってきたんだじゃ」

「じぇ!じぇ!」


情報通の大吉は続けました。

「くわしい事情はわかんねえけど … 今完全に無職で、家さ居づらくて、パチンコさ入り浸っているらしい」

パチンコ屋に入り浸っているのは、もう一人いました …

… … … … …

「よく会うね」

春子がパチンコ屋で声を掛けたその若い男こそユイの兄、足立ヒロシでした。

ここに「入り浸っている」二人は、挨拶して二言三言かわすくらいの顔なじみになっていました。

「あんた仕事は?」

「今日から、形だけバイト始めました … 漁港の上の監視小屋、わかります?」


密漁船などを見張って、1日5,000円の仕事だとヒロシは言いました。

「今は休憩中?」

「抜け出してきました」


まったく悪びれずに答えたヒロシ、春子でさえあきれていました。

「ダメじゃん」

… … … … …

「24年ぶりか、春ちゃん帰ってきて … 大吉さん、あのあと上手くいってるのかい?」

弥生に聞かれて、大吉はソワソワし始めました。

『待ってたんだべ、春ちゃんが帰ってくるの、ずっと待ってたんだべ … 』

「まあ、こっちの気持ちは伝えた」

「それで、春ちゃんは?」


一同、大吉の返事に注目しています。

「 … まんざらでもねえって感じだった」

何故か大喜び、弥生は大吉の手を取りました。

「でかしたぞ、でかしたぞ大吉さん」

「春ちゃんが潜ってくれたら、これ以上明るいニュースはねえ」


かつ枝も喜んでいます。

「あっ! そっちの話か … 」

勘違いに気づき、あせる大吉です。 

… … … … …

「ママが、海女さんになるの?!」

横で聞いていたアキは驚きました。

「なってくれたら、まんず後継者不足も解消するって話、なっ?」

かつ枝が言うと、一同うなずきました。

「若い連中が春ちゃんのふぉ、ふぉ」

「フォロワー?」


無理してカタカナ語を使おうとして言葉に詰まっていた弥生を大吉がフォローしました。

「 … フォロワーがついてくれたら、言うことなしだべ」

… … … … …

「確かになあ、客集めるには、海女の若返りは必要だべな」

弥生の亭主、今野が現在の海女メンバーが並んだポスターを見ながら、妙に納得しています。

「そんなにお客さん来ないの?」

アキは不安そうに尋ねました。

若手だと言われている美寿々でさえ、もう50歳です。

若い頃は東京から追っかけが来るほどの人気者でしたが、一時休業して復帰してから冷え性で … 最年少の小百合も漁協と掛け持ちでがんばってはいますが、いかんせん地味でした。

「だが、どうせなら、若者にバトン渡してから引退してえ」

「ここで辞めたら、北の海女は絶滅する」


弥生とかつ枝が声を大にしました。

副駅長の吉田が来たので、店番を交代した弥生は客側に移動しました。

「ああ、くやしい … 酒くれ酒! … それと、ぴす、ぴす、ぴす … ピストル?」

「ピスタチオだべ、弥生さん今日はどうした? いつもはもうちょっとしゃべれるべ」


大吉に言われて、弥生はカウンターの上で頭を抱えてしまいました。

… … … … …

「琥珀はどうだ?」

今まで黙っていた琥珀掘りの勉さんが口を開きました。

「 … 海女と違って年取らねえ、元々8千500万年前の樹液の化石だからなあ」

「勉さん、皆まじめに考えて意見言ってるんだ … 琥珀の時代は来る、琥珀も必ず来るから待ってろ … 8千500万年も待ったんだから、あと2、3年待てるべ?」


大吉の剣幕に勉はうなずきました。

… … … … …

大人たちの話を聞いてアキは、これが過疎の町の実態なんだと … 改めて感じました。

そんな過疎の町を何とかするためにアキの母親は呼び戻されたのです。

皆必死なんだ … きれいな海や美味しいウニ、可愛い電車、それだけじゃ人は生きていけない。

それでもアキはここが好き、ここにいる自分が好きです。

… … … … …

ひとしきりパチンコに興じた春子が家に戻ると、夏は昼寝の最中でした。

「お母さん … 夏さん … 」

返事はありませんでしたが、体が少し動きました。

「 … 今何時だ?」

午後3時ごろでした。

「もうちっと寝かせてけろ」

春子は腰を下ろして構わず話しはじめました。春子の方から夏に話をする、どうしても今伝えておかなければならないことなのでしょう。

「今日、アキが帰ってきたら東京に帰るか、ここに残るか決めてもらうつもりです」

… … … … …

「アキは残りたいって言うと思います。それくらい、あなたに懐いています。

もちろん無理やり連れて帰ることはできます。

でも、果たしてそれがあの子のためなのか、親としては考えてしまうんです。」


夏は横になったままで春子の話を聞いています。

「東京でのあの子は、感情を表に出さない内気な子なんですよ。

殻に閉じこもって、家族にも友達にも心を開かない … 『うっめえ』とか『かっけえ』とか『じぇ!じぇ!じぇ!』とか絶対言わない子なんですよ。

どっちが本来のアキなんだかわかんないけど、あの子にはここがあっているような気がするんです。

だから、せめて夏休みが終わるまでここにいさせてあげようかなって思って … 」


夏からは何も返ってきません。

「お母さん、夏さん! … 聞いてよ」

ようやく夏はゆっくりと体を起こしながら、反対に春子に尋ねました。

「おめえさんはどうなんだ?」

… … … … …

「東京と、こことどっちが好きだ?」

東京に決まっていると春子は答えました。

「ということは、東京にいるときのおめえは、本来のおめえなのか?」

春子は答えられませんでした。

「おらあ、東京さ行ったこともねえ。ここさ生まれて64年、ここから一歩も出たことねえ。

袖が浜と北三陸の町以外、なんも知らねえ …

だけど、ここが一番良いってことだけは知ってる、間違いねえ … その土地をおめえは捨てたんだど」


… … … … …

「まあいいさ … 来る者は拒まず、去る者は追わずだ」

腰を上げた夏は、そのまま母屋を出て行こうとしましたが、玄関で立ち止まりました。

「アキは今、自分で変わろうとしてっぞ … 変わらなくちゃなんねえのは、むしろ春子、おめえさんの方じゃねえの?」

春子は反論もせずに黙って聞いていました。

… … … … …

漁港の監視小屋に戻ったヒロシは、誰もいない防波堤の上を歩く人影を見つけました。

望遠鏡で覗くと、その少女のような人影は灯台に向かってどんどん歩いています。

「あれあれあれ … 」

… … … … …

人影はアキでした。

アキは灯台の下、防波堤の突端で立ち止まり、海面をじっと見つめていましたが … 尻込みをして引っ込みました。

「いやいやいや、服濡れちゃうし、パンツも」

もう一度、恐る恐る海を覗き込み … やはり怖くて引っ込みました。

「怖ええ」

『地味で暗くて、向上心も協調性も個性も花もない、パッとしない子になっちゃったじゃないの!』

母の声が頭の中に響いてきて、アキは思わず耳をふさぎました。

「違う!違うもん!」

その言葉を振り払うように、アキは走りだし … 思い切って踏み切りました。

… … … … …

「あっ!」

監視小屋から双眼鏡で覗いていたヒロシの視界から人影が消えました。

双眼鏡を外すと、その瞬間を肉眼で目撃したのです。

… … … … …

ザ、ブーーン!!

アキの体は放物線を描き、見事な水しぶきを上げて海に飛び込みました。

… … … … …

あまりの事態に、どんな行動をとればいいかわからなくなって混乱しているのでしょうか … ヒロシはテーブルの上のパチンコ攻略誌を手に取りめくりはじめました … 現実逃避?

「いやいやいや、あれあれ ◎×▲☆○■!!」

我に返ったヒロシは、あたふたして … 勢いで、非常用ブザーを押してしまいました。

「あ、押しちゃった … 」

… … … … …

ウ~ウ~ウ~ウ~

袖が浜に鳴り響く緊急サイレン。

何事かと思って飛び出した、夏と春子が玄関先で鉢合わせしました。

「夏さん、夏さん!」

泡食った大吉が駆け込んできました。

「あ、春ちゃん! アキちゃん、海さ飛び込んだじゃあ!!」

思わず口走る春子。

「じぇ?!」

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思わず春子も地が出て「じぇ!」

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2013年04月04日 (木) | 編集 |
第4回

ふたりが船にいるのを見て、春子の心に忌まわしい過去の記憶がよみがえりました。

波の荒い海に浮かべた小舟の上。

「嫌だ、おら入りたくねえ!」

「やかましい!袖のおなごのくせに」


海に入るのを泣いて嫌がる少女の春子、夏は無理やり …

… … … … …

ドボーーーン!!

「アキぃー!!」


夏に押されて、アキが船から海に落ちるのを目撃した春子は一目散に走りだしました。

… … … … …

海の中を漂うように沈んでいくアキの体 … 音のない世界 … 差し込む太陽の光 … 無数の小魚たち … アキは羽ばたくように手を動かして、光に向かって昇って行きました。

ザバァ!

アキが海面から顔を出すと、夏が浮き輪を投げてよこしました。

「どうだ?」

夏が笑いながら尋ねました。

「ひゃっこいとか、足がつくとかつかねえとか、考えるヒマなかったべ?

そんなもんさ、飛び込む前にあれこれ考えたってやあ、どうせその通りにはなんねえ … だったら、何も考えずに飛び込め、何とかなるもんだびゃあ … 死にてくねえからな」


高笑いする夏に合わせて、アキも浮き輪につかまりながら海の上で笑い出しました。

「ああ、気持ちいい! … めちゃめちゃ、気持ちいい!」

「そうか … やっぱり、おらの孫だ」


夏は波間に漂うアキを見ながら、満足そうにつぶやきました。

… … … … …

ようやく船の前まで走りついた春子。

笑い合っているふたりを見て、持っていたカバンを叩きつけました。

「アキに変なこと教えないで!」

そっぽ向く夏、海の上から心細げな顔で春子のことを見つめるアキ。

「ママ … 」

「あんたもママが嫌いなもんばっかり、好きになんないでよ!」


怒りの納まらない春子は、そのあと踵を返して行ってしまいました。

… … … … …

「ママ、海が嫌いなの? … だから、海女さんにならなかったの?」

海女クラブでびしょ濡れになった服を着替えたアキは、集まっている面々に尋ねました。

「そんな簡単な話でねえんだ、春子は … 」

弥生が言うと、それを受けて、かつ枝が言いました。

「んだんだ、いわゆるその … 積み木崩しだべっちゃ」

夏は知らん顔で新聞を読んでいます。

「反抗期だべっちゃ、グレて髪の毛くるくる巻いて … 」

… … … … …

「ほんだども、なしてまたひょっこり、帰ってきたのか?」

「どうせ旦那と上手くいってねえんだべ」


そう口にした夏を弥生が「孫の前だぞ」と諌めましたが、アキの耳にはしっかり届いていました。

「あたしのせいかも … 地味で暗くて、向上心も協調性も個性も花もない、パッとしない子だから」

「誰が言ったそんなこと?」


あきれた夏がアキに尋ねました。

「ママ … 」

「じぇ!じぇ!じぇ!」


… … … … …

駅前に戻った春子は、さきほどのパチンコ屋に再び足を運びました。

譲った台で若い男はまだ打っています。

「やっぱ返して」

有無を言わさず、台を奪い返しました。

「戻って来ちゃった、行き場所がなくってさ」

春子がいない間に男が稼いだドル箱を一箱だけ分け前に与えて、何事もなかったようにまた打ち始めました。

… … … … …

観光協会。

「いつまで待たせるんだ? 菅原、このお! … 1ヵ月前から何も進んでねえべ!」

協会長の菅原に向かって、大吉が大声を上げていました。

「いや、最終判断は市の方で … 」

冷静に答える菅原の態度が大吉の怒りに余計火をつけました。

「たかがホームページ作るのに市の許可がいるって、おかしいべ?! … 面倒臭えなら、面倒臭えって言え!!」

手に力が入って、お茶菓子に出ていた柚餅子を握りつぶしそうになり、慌てて副駅長の吉田が止めました。

「あ、どうも … 」

菅原が挨拶をした先、入り口に春子が立っていました。大吉に用があるみたいです。

「あの、ウチまで送ってもらおうと思ったんだけど … 仕事中か … 」

「すぐ終わるから待ってて」


春子を待たせると、大吉は菅原に向かって凄みました。

「おめえが協会長になってから、市のため町のために何した? … 何もやってねえべ?!」

「いやいや、やってますよ … ジオラマ、ジオラマ作ってますよ」


菅原は、観光協会の事務所を半分近く占領しているジオラマを誇らしげに指して言いました。

「前任の協会長から引き継いで、平成19年からこの北三陸市全体のジオラマ製作に心血を注いでいます」

確かに北三陸市を再現した精巧なジオラマは見事なものですが、大吉には市のためというより菅原個人の趣味のためとしか思えません … 怒りをかみしめながら、菅野に尋ねました。

「 … これは、いつ完成するんですか?」

「はい、平成27年完成の予定ですね」


いけしゃあしゃあと答える菅原に大吉はブチ切れました。

「死ぬまでやってろじゃ!」

持っていた柚餅子を投げつけました。

「ああ、city hallが柚餅子に!!!」

… … … … …

「くそお、赤字ローカル線なんて、構ってられねえってか!」

春子を家まで送るために観光協会を後にした大吉ですが、怒りは収まりません。

「北鉄は市民の大切な足だ。たとえ一人でも利用客がいるうちは走らねばなんねえ … そのためには観光、人は急には増えねんだから、外から呼ばねばしょうがねえべ」

「えらいね … えらいよ、大吉さんは。こんな残念な町の残念な電車のためによくそんな必死になれるよね」


大吉は春子に褒められたと勘違いして、しきりに照れています … 大吉も残念な男でした。

「ぜんぜん褒めてないし … 」

車に乗り込んだ春子が大吉に尋ねました。

「あの時、言ったこと覚えてる?」

… … … … …

あの時 … この町を出て行く18歳の春子に20歳の大吉が言ったこと。

「母ちゃんの後継いで、海女になんのそんなに嫌か? … これからは地方の時代だべ、北鉄も通って、この町もますます活性化するべ」

… … … … …

「ぜんぜん読み外れてるし … 何で漁師になんなかったの?」

大吉は三半規管が弱く、船に乗っても船酔いで5分と持たないために医者から止められていたのでした。

「電車には乗れるのに?」

「レールの上を走るから、比較的安定してんだ」


そう言いながら大吉の目は駅から出ていく電車の乗客を数えていました。

「1、2、3 … おお、今日6人も乗ってらあ」

… … … … …

「だったらさ、東京に出るとか、仙台とか盛岡で働くとかさ選択肢はいろいろあったわけでしょ? … 何もこんな田舎のために人生無駄にしなくてもさ」

大吉は一瞬、躊躇しましたが … 真剣な表情で春子に言いました。

「待ってたんだべ … 春ちゃんが帰ってくるの、ずっと待ってたんだべ」

思いもよらぬ言葉に、春子は大吉の顔を見返しました。

「大吉さん … 電車来る … 電車来る、近い!」

大吉の車、車窓いっぱに北鉄の車両が迫ってくるのが見えました。

半ばパニック状態の春子 … 大吉は冷静です。

「大丈夫、大丈夫、いつもここに停めてるんだ … ほらギリギリで」

電車はぶつかることなく、車のすぐ後ろをかすめて車庫に入って行きました。

… … … … …

天野家の茶の間。

アキが夕食に売れ残りのウニ丼を食べている横、缶ビールを片手に寝そべってテレビを見ている春子がいました。

アキは母親の顔色を窺っていましたが、急に声をあげました。

「うめえっ! うめえ、超うめえ!」

風呂から上がってきた夏が声をかけました。

「悪いな、売れ残りで」

「ぜんぜんいい、むしろ毎日売れ残ってほしい」

「こら、縁起でもないこと言うな!」


笑いあうふたり、すっかり打ち解けて、むしろ仲が良いくらいの夏とアキでした。

「罰として、明日はウニ丼売り手伝ってもらうぞ」

「じぇ!じぇ!」

「今日、ウニいっぺえ仕入れたから、40個作るから、20個ずつどっちが早く売れるか競争だ」

「やったあ! 北三陸鉄道リアス電車また乗れる」


楽しそうなふたりをよそ目に何かおもしろくない春子が口を挟みます。

「なに急に訛っちゃってるの? … て言うかダメだからね、明日こそ帰るんだから」

… … … … …

「けえるけえるって騒ぐ割には、ずいぶんおりますねえ」

晩酌をしながら、夏がちくりと刺しましたが、春子は黙ったままです。

「重てえ荷物ガラガラ引きずって、町の中うろうろして、パチンコさ入り浸って、ヒマなんですか?

それとも何か東京さいれねえ事情があるのかって、街中おめえさのウワサでもちきりだあ … 恥ずかしい、45だべ」


むくり起き上がった春子。

「2です … まだ42 … あっきれた、娘の歳まで忘れちゃってるんだ?」

「何が娘だ、結婚したことも子供産んだことも黙ってて」

「あんただって、父ちゃん死んだこと知らせなかったでしょ?!」

「 … あん?」


たぶん思い違いがあるようですが、あえてここでは触れないことに …

「久しぶりに帰ってきた娘に“お帰り”の言葉もない」

「“ただいま”の言えない娘に“お帰り”が言えますか?」


お互いにああ言えば、こう言う状態が続きます。

ふたりの間で居たたまれないのはアキでした。

「ママ?」

家を出て行こうとする春子に夏が声を掛けました。

「荷物は置いてけ、どうせけえってくるんだから」

… … … … …

「腹立つな」

灯りが消えて、真っ暗な漁港、堤防まで歩いてきた春子。

突端に灯台が白くぼんやり浮かんでいます。

「相変わらずあるねえ … 」

その灯台は、春子の子供のころからの秘密の隠れ家でした。

やっと読み取れる程度の古い落書き、東京、原宿、表参道 … そして、海死ね … そこには、まだ幼かった自分の爪痕が残っていました … まだ見ぬ東京にあこがれいた、十代だったころの春子の …

… … … … …

次の日、午前4時半。

夏のウニ丼の仕込みが始まっています … 今日はアキも手伝いです。

「お婆ちゃん、今日は海、潜らねえの?」

春子が指摘したように、すっかり馴染んだアキの言葉は訛っていました。

「毎日潜るわけではねえんだ … 週2回出ればいいほうだ。オラも年だし、海女は半分趣味だから」

孫に対しては朗らかに笑う夏でした。

「おはようございます」

ウニ丼を引き取りに来た大吉、アキが手伝っているのを見て感心しています。

「電車さ乗るの」

「そうかそうか … 春ちゃんは?」


夏が顎で指した先、茶の間の畳の上で寝ている春子がいました。夕べ遅くに帰ってきたようです。

「どうれ、ウニ丼運んだろ」

… … … … …

「北三陸鉄道リアス線、通称北鉄名物ウニ丼はいかがですかあ!」

いかがですか … 」


夏の後にアキも続きます。

「もっと大きな声出さねえと売れねえぞ」

「いかがですかあ!」


… … … … …

その少女は畑野駅から乗ってきました。「この子、普通の子じゃない」 … アキは直観的にそう感じたのです。

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無駄に豪華なジオラマ…

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2013年04月03日 (水) | 編集 |
第3回

「アキ、東京帰るよ!」

「いやだ … 帰りたくない」


初めてやってきた母の故郷、アキがここに残りたいというのには、そこそこ大きな理由がありました。

… … … … …

「あっそ、好きにしなさい … ママ、ひとりで帰るから」

当然、春子に咎められると覚悟していたアキ、あてが外れ … 思わず立ち上がって母の背中を目で追いました。

「お邪魔しました」

春子は玄関口で振り向きもせずにそう言うと、とっとと出て行ってしまいました。

「春ちゃん!」

「年食ってちょっとはマシになったかと思えば、相変わらずだな」


それは、あんたも同じだべと大吉は心の中でつぶやきました。

「ねえねえ、ママとお婆ちゃん何かあったの?」

「どうれ、ちょっくら見てくっか」


大吉は、アキの質問には答えずに春子の後を追いかけて行きました。

… … … … …

「ねえねえ、お婆ちゃん、明日も潜るの?」

アキは、母に置いてきぼりされたことより、そのことの方が気になっていました。

「ああ、海開きだ。客もいっぺえ来っぺ」

「客?」

「観光客だ。だから、明日からはウェットスーツじゃなくて、絣半纏で潜るんだ」

「かすりはんてん?」


夏は仏壇の前を指さしました。

北の海女と書かれた手拭、濃紺の絣半纏と真っ赤な帯がきちんと畳まれて置いてあります。

アキは半纏を手に取って、まじまじと見ました。何故だか笑みがこぼれてきます。

「どうするべ?! 春ちゃん、本当に行ったじゃ! バスに乗って行ってしまったじゃ!!」

大吉が慌てて駆け込んできました。

… … … … …

北三陸駅のロータリー。

バスから降りてきた春子のことを、観光協会から駅前をチェックしていた菅原が見つけました。

「ありゃりゃ、天野春子もう帰るのか … まあ、観光客ってことで、本日の3人め」

春子も観光客としてカウントしてもたったの3人 …

「行くなあ!」

高速バスに乗り換えようとする春子のことを車で追いかけた来た大吉が呼び止めました。

「どうやっても行くんなら、北鉄さ乗って行け」

訳の分からない大吉の理屈です。

「何でわざわざ … 」

無視してバスに乗り込もうとする春子の前に大吉は立ちはだかりました。

「わざわざ来たんだから、わざわざ帰ればいい」

大吉は高速バスの運転手がトランクに入れようとしていた春子の荷物を勝手に取り上げるとどんどん歩き出しました。

「ちょっと待ってよ、ちょっと!」

… … … … …

母の実家には、物珍しいものがたくさんあって、アキは興味津々で見て回っていました。

… … … … …

「あの子、あんまり学校が好きじゃないみたいなんです」

結局、バスにも電車にも乗り損ねた春子は、大吉に連れられて、駅の一画にある喫茶リアスで時間をつぶしていました。

「中学から頑張って私立の進学校に通ってるんだけど、ついてくのがやっとで … 」

どういうわけか、アキのことを大吉に話していました。

「成績なんかどうでもいいべ、アキちゃん器量もいいし」

「んだんだ、性格さえよけりゃ、嫁さ行けっぺ」


昼間はこの店でバイトしている海女の美寿々がカウンターの向こうでうなずきました。

「性格さえよければねえ … 暗いの、誰に似たんだか」

「まあ、春ちゃんではねえべなあ … 」


カウンターに並んで座っている商工会長の今野あつしが言いました。

「そうなの! 旦那に似たのよ … 」

… … … … …

とある休日のこと。

親子3人揃っているリビングですが、物音一つしない静かさです。

夫はソファーに腰かけ読書、その向かいで娘は携帯のゲームに夢中 … 妻は食卓でモヤシのヒゲを摘んでいます。

そのモヤシが1本、誤ってフローリングに落ちました。

ポーン …

その音に振り向く、夫と娘。

… … … … …

「 … あんまり静かで、床にモヤシが落ちる音が聞こえたのよ」

「そりゃあ、静かだあ」


大吉が感心すると、いつのまに座っていた弥生がドンブリ飯を食べながら、自分は面倒だからモヤシのヒゲなんか取ったことないと見当違いなことに感心しています。

「っていうか、何であたしこんなにしゃべっちゃってるんだろう?!」

「打ち解けてきた証拠さ」


春子は思いっきり否定します。

「違うね、電車が1時間に1本しかないからだね … 次の電車は?」

「今、出たところさ」


カウンター内でエプロンをつけている丸刈りの男がのんびりとした口調で答えました。

「えっ?!」

「19時28分発、上り最終電車さ」


そう話す大吉、店の窓に走り出す電車のシルエットが映っています。

「今夜はもう帰れないさ」

丸刈り男がまた同じ口調で言いました。

「ふざけないでよお!」

… … … … …

「まあまあ、のんびりしていけばいいさ」

大吉がなだめましたが、春子にはこの店に長居をしたくない理由がありました。

この軽食&喫茶リアスは、夏の経営する店なのです。

「大丈夫、ここには来ねえから … 最近は弁当が売れたら帰るんだじゃ」

丸刈り男 … 副駅長の吉田正義や美寿々が交代で店番をやっていると大吉は説明しました。

ついでに、一番奥に座っているのが琥珀掘りの勉さんこと小田勉。その隣が商工会長で弥生の亭主の今野あつしだと常連を紹介しました。

「ほら、銀座通りのブティック今野、わかる?」

「大体こんな感じの蛾みたいな服が置いてある店」


大吉が弥生の着ている幾何学模様(?)の緑色の服を指して笑いました。

… … … … …

「はあい、皆さん … 閉店時間過ぎてますよ」

来ないはずの夏が顔を出したので、春子の顔がこわばりました。

「まあまあ、こういうこともあるさ」

春子に叩かれて弁解する大吉。

「あらあらあら … 東京のお客さん、まだいたのすか?」

「すっかり話し込んで、終電行ってしまったんじゃ」


大吉が取り繕っても、夏から返ってきたのは、きつい言葉でした。

「だったら、駅前にビジネスホテルがありますよ」

「言われなくてもそうします」


春子はカウンターに代金を叩きつけると店を飛び出して行きました。

… … … … …

「春ちゃん、ちょっと待ってけろ!」

後を追いかけてきた大吉は、渋る春子を無理やりに誘って、もう1軒つきあわせました。

店の名は、スナック梨明日 …

「さあさあさ、ここ」

春子が、店の扉をくぐると、突然奥の引き戸が全開に … 何処かで見た景色だと思ったら、さっきまでいた軽食&喫茶リアスでした。

「いらっしゃい」

… … … … …

「7時半からはスナック営業なんです」

カウンターの中から夏が言いました。

「どういうこと?」

何が何だか … 春子は混乱しています。

「そっちから出て行って、こっちから入って来たってことだね」

夏は身振り手振りで説明すると一言。

「何かお飲み物は?」

軽食&喫茶リアスとスナック梨明日は、入り口は別々ですが、中は同じ店なのです。

「いやあああ … 」

宵の口の北三陸の街に春子の悲鳴が響き渡りました。

… … … … …

ここで夏ばっぱこと、天野夏64歳の1日の流れを簡単にご紹介します。

午前4時起床、顔を洗って、ぐるっと散歩。

午前4時半、作業小屋でウニ丼の仕込みを始めます。できあがったドンブリを大吉の車で北三陸の駅まで運びます。

午前9時、喫茶リアス開店。その後、浜へ出て午前中いっぱい潜ります。

正午、その日、売れ残ったウニ丼を車内販売。売り切ったら、家へ帰って午後3時まで昼寝。起きたら、浜に出て、日没まで潜ります。

午後7時半、スナック梨明日開店。飲んだり食ったり歌ったりして、午後11時閉店。大吉の車で帰宅。

風呂に入って、午前0時過ぎに就寝 … で、午前4時起床 …

… … … … …

翌日、7月1日の朝が来ました。

「ああ、いい天気だ」

朝の一仕事を終えた夏は気持ちよさそうに空を見上げました。

漁協の有線放送で弥生が、今日は「袖が浜海岸海開き」だと知らせています。

「 … 海女クラブの皆さんは、速やかに漁協前に集合してください」

その声で目が覚めたアキが茶の間に行くと、夏はすでに絣半纏を身にまとって、神棚に手を合わせていました。

「お婆ちゃん、おはよう」

「お、行くど」


寝起きのアキを見て、ただ一言、表に出て行きました。

そのりりしさにアキは見とれます。

「かっけえ … 」

… … … … …

アキは、颯爽と歩く夏の後をついていきました。途中、海女仲間たちも合流してきます。

漁協前には色とりどりの大漁旗が上がっていました。

勢ぞろいした海女たちがモチをまき始めると子供たちが競って拾います。アキもその中に交じって負けじと拾いました。

北三陸に限らず、東北の人はやたらとモチをまきます … 何で?と聞かれても困りますが …

こうして、7月から9月まで、まる3ヵ月に及ぶ、海女漁が始まるのです。

… … … … …

見物客に見守られる中、海女たちがひとりひとり海に入って行きました。

ウニの居場所を確認したら、息を大きく吸って、一気に潜る … そして、ウニを抱えて岩を蹴って、一気に浮かぶ。

拍手と歓声が上がりました。

夏といっても三陸の海は冷たく水温は15~6度、ウニが好んで住み着く岩場はとくに水が冷たいので、続けて潜るのは2時間が限度です。

アキは、わくわくしながら、海女漁を夢中になって見つめていました。母に逆らってももう一度見たかった祖母の潜りでした。

… … … … …

春子は …

駅前のパチンコ屋で時間をつぶしていました。

「天野春子?」

昔の馴染みか、男が話しかけてきました。

「そうだろう、春子だべ? … 俺、俺、北三陸高校で … 」

「ごめんなさい、今出てるんで … 」


春子は男の言葉を冷たく遮りました。

男は、別の台で打っている仲間に春子のことを伝えに行ったようです。平日の午前中からパチンコをやっているようでは、たぶんロクなもんじゃありません。

面倒になった春子は、隣で打っている若い男に自分の台を譲りました。

「この台出るから打っていいよ、いいからいいから、球も全部あげる」

逃げるように店を出ていく春子 … 若い男は怪訝そうに見ていましたが、そのうちに春子の台に移って打ち始めました。

… … … … …

海開きの行事も終わり、アキは夏が戻ってくるのを港のはずれで待っていました。

「アキ、けえるぞ」

夏には、何だかアキがボーっとしているように見えました。

「何だ? おまはん、母ちゃんに置いて行かれて … 悲しいのか?」

そういうわけではないようです。

「ねえ、お婆ちゃんは、なんで潜るの?」

「なんで? 哲学か … 」


夏は孫にそう聞かれて改めて考えてみました。

「なんでって … 面白いからだべなあ」

「潜っているときは、海の中で何考えてるの?」


聞きたいことが次から次へと浮かんできます。

「なあんも考えてねえ、他のこと考えてたら、潮に流されちまうべ」

「ふうん … 怖いね」


アキは、堤防につないであった船に足を踏み入れました。

「食うために、ただひたすら潜って … 採るだけだ」

ふたりで船の縁に腰かけます。

「そのうちよ、ウニがお金に見えてきてよ … あ、お金がこんなに落ちてる、拾わねば … 他の誰かに拾われてなるものかあってな」

愉快そうに笑うアキの目を見て、夏は尋ねました。

「潜りてえか?」

「えっ?」

「潜ってみっか? 一緒に」


アキは自分が潜るなんてことを、思ってもみませんでした。

「無理無理無理 … 」

アキは立ち上がりました。

「なして? おもしれえぞ」

「だって、冷たいんでしょ? … 泳ぐの苦手だし、息継ぎができないもん … 素潜りもダメ」


… … … … …

やはりアキのことが気になった春子は北三陸から袖が浜に戻って来ていました。

港まで捜しに来て、船の上にいるふたりを見つけました。

「アキ … 」

しかし、春子の所までは、ふたりが何を話しているかまでは聞こえません。

… … … … …

「自分で採ったウニ、食ってみたくねえか?」

夏のその一言が、アキの心を動かしました。

振り向いたアキは、何回も何回もうなずきました。

… … … … …

春子には、アキが船の縁に立ったのが見えました。

アキは手すりにつかまりながら、海の中を覗き込んでいます。

… … … … …

「ねえ、お婆ちゃん … 海の中、きれい?」

答える代わりに夏は両手でアキの腰のあたりを思い切り押しました。

春子の目に娘が母に押されて海に落ちていくのがスローモーションのように映りました。

「アキぃー!!」

何すんだ、この婆あ … アキは空中でそう思いました。

ドボーーーン!!

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2013年04月02日 (火) | 編集 |
第2回

病気と聞かされていた婆ちゃんは、ピンピンしていた …

「何これ? イガイガ動いてる」

アキは生きているウニを見るのは初めてでした。

「何でウニ採ってるの?」

橋の上に上がってきた夏の元へ駆け寄ってアキは尋ねました。

「仕事だからね」

「仕事? お婆ちゃん、もしかしてあれ? … ウニ採り婆あ」

「海女だ」

「あまってなに?」


… … … … …

「やっぱりここにいたのか」

「夏ばっぱ、海開きは明日だよ」


海女仲間の弥生たちが夏を見つけて集まってきました。

「夏ばっぱ … え、お祖母ちゃん?」

アキは、弥生たちの会話からこの女性が自分の祖母、夏だということを知りました。

「わらし、待ってろ」

夏はそう言うと、橋の上に腰かけ、手慣れた手つきで道具でウニを真っ二つに割って、アキに差し出しました。

「ほら、大丈夫だ … 食え」

アキがためらっていると、手で口を押えて、ウニの身を押し込みました。

「どうだ、うまいか?」

「この味がわかれば、酒飲みの証拠だ」


海女たちはアキに注目します。

「うまっ!」

機嫌をよくした夏は、アキにもう一口食べさせました。

「うまっ!」

… … … … …

一方、春子の方は …

「ごめん、春ちゃん … ダマすつもりは、ねかったんだ」

土下座する大吉に春子は冷たく言い放ちました。

「ダマされてませんけど … そもそも、大吉さんが何であたしのアドレス知ってるのかが疑問なんですけれど」

「漁協の安部ちゃんから聞いた」


アキに“まめぶ”を勧めた安部小百合です … しかし、春子は小百合にも教えた覚えはありませんでした。

「またまた、おめえら同級生だべ?」

いつからいたのか、安部小百合42歳も玄関に腰かけていました。

「いやいや、同級生って言っても … 春ちゃんは学園のマドンナで、あたしなんか校庭の片隅でひっそりと干からびているセミの死がいですもの … 」

… … … … …

「アドレスの件はいいよ、変えるから … それよりさ、このメール!

『お母さん倒れた!(‘j’)/』
『今、救急車を呼んだYO!(‘j’)/』
『いしきがないYO!(‘j’)/』

… まあ、文章はいいや、このさ、顔文字どういう意味なの?」


(‘j’)/(‘jj’)/(‘jjj’)/

大吉は一言 …

「じぇ!」

… … … … …

アキはご機嫌で、スイーツでも食べるようにウニを食べ続けていました。

「じぇ! このわらしさ、ひとりでウニ7個も」

かつ枝があきれたように笑いながら言いました。

「じぇ!って何ですか? … おばちゃんたち、さっきからじぇ!じぇ!って言ってるから何だろうと思って」

アキが尋ねると、美寿々が答えました。

「袖が浜の訛りだ、昔からびっくりした時、じぇ!って言うのさ」

「へえ … じゃあ、すごくびっくりした時は?」

「じぇ!じぇ!」

「ものすごくびっくりした時は?」

「じぇ!じぇ!じぇ!」


アキの無邪気な質問に海女たちは愉快そうに笑い声をあげました。

… … … … …

「ウニ、もう一個いいですか?」

「4千円」


アキが8個目にウニをねだると、夏は冗談でそう言いました。

「夏ばっぱ、このわらしさ、春ちゃんの娘だよ」

かつ枝に知らされると、夏の顔色が変わりました。

「春子の?」

「んだ、あんたの孫しゃ」


笑顔が消えた夏は、改めてアキを見ると、手を出して言いました。

「3千円」

「じぇ!じぇ!じぇ!」


… とアキ。

… … … … …

春子は、大吉に顔文字の説明を受けていました。

「へえ、だからこのじぇ!じぇ!じぇ!(j j j)ってじぇ!(j)が増えてるわけね」

「びっくりした?」

「しねえよ! … だいたい、ウソだってわかってたし … 取りあえず、こんな見え透いたウソまでついて、あたしを呼び戻した理由を教えてください」


少し得意になりかけた大吉に突っ込みを入れて、春子は聞きました。

説明しようとする大吉を小百合が制しました。

「その前に、大事な話が」

小百合は、大吉の隣に畏まりなおすと、目くばせしました。

「… ああ、わかってる」

不審な顔でふたりを見る春子。

「実は、俺たち … 離婚したんだじゃ」

… … … … …

「 … で?」

「そこは、じぇ!だろ?」


不満そうな大吉。

「だって、結婚したことも知らなかったしさ … いつ?」

小百合は答えました。

「18年前 … 」

「いえ、結婚じゃなくて離婚が」

「だから、18年前 … 」


小百合に代わって大吉が答えます。

「18年前に結婚して、半年で離婚したんだ」

春子はうなずきましたが、だからどうしたという話でした。

「で?」

… … … … …

現在、袖が浜の海女は、夏をリーダーに長内かつ枝59歳、今野弥生56歳、熊谷美寿々50歳、そして安部の全員で5人しかいません。

「その夏さんが、今年限りで海女クラブの会長を辞めて、引退するっと言い出したの」

「今年で65歳だべし、老体に鞭打ってまで潜りたくないって … 」


それを聞いたかつ枝や弥生、美寿々までも「夏さんが辞めるなら」自分たちも辞めると言い出したのです。

「そうなると、来年から最年少の安部ちゃんがひとりで潜ることになる!」

大吉は、声を大にしましたが、春子にしてみれば、やはりだからどうしたという話でした。

「で、何か問題でも?」

… … … … …

「大問題だべ、最年少ったって42歳だぞ!」

「深刻な後継者不足なんです」


血相を変えて訴える大吉と小百合。

「その後継者問題とあたしと何の関係があるの? … ちょっと何してるの?!」

ふたりは土間まで後ずさって下りて、春子に向かって土下座しました。

「春ちゃん、海女さんになってけろ! … 来年から、夏さんの代わりに潜ってけろ!」

… … … … …

「大吉さん、それ本気で言ってるの?」

「 … なんなら、今年からでも、な」

「んだんだ、ちょうど明日海開きだし」


春子の意志も確認せずに話を進めようとするふたり。

「無理無理無理! あたしだって42歳だもん、同級生じゃん」

「同級生っていっても、春子さんは学園のマドンナで、あたしなんか机の中に入れたまんま忘れられて干からびたコッペパンに生えたカビですもの … 」


… カビって、どこまで卑屈なの …

「頼む! 北の海女は町の大事な観光資源なんだ!」

… … … … …

北三陸地方の男性の多くは、遠洋漁業の漁師で、一年の大半を海で過ごします。

家長が留守の間、家を守り生計を立てるのが、女の役目 … 伝統的な海女漁は今も各地で行われていますが、その中で日本のみならず、世界的にみても最北端に位置するため、袖の海女は「北の海女」と呼ばれています。

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アキは、夏たちの後について、海女クラブを訪れていました。

部屋の壁に所狭しと飾られた古い海女の写真。

「このきれいな人、お婆ちゃん?」

「いや、おらだ」

「おめえはこっちだ、それはおらだ」


きれいな人と言われて、皆が自分だと主張しあっています。

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「夏ばっぱが海女クラブを作った頃、昭和50年か … あの頃がピークだったなあ」

最盛期の思い出に浸る大吉と小百合。

「懐かしんでる場合でねえべ! 北の海女の伝統をここで絶やすわけにはいかねえんだ」

いくら熱く語られても、春子にとっては、興味のない話でした。

「海女と北鉄は観光の二枚看板だべ!」

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「夏ばっぱの見事な潜りを見物した後は、北鉄さ乗ってリアスの限定30食ウニ丼食いながら、車窓の景色を眺めるのが、定番コースだべな」

その限定ウニ丼も夏は今年いっぱいで止めると言っていると小百合が嘆きました。

「ちょっと待ってよ … その観光の二枚看板のどっちも、ウチの母親が背負っているってこと?」

「んだ」


何の躊躇もなく答える大吉に春子はムっとしました。

「背負わせないでよ、64の婆さんにさあ」

… … … … …

「もちろん、海女と北鉄だけでねえ … 他にも名物あるさ」

と言ったものの、他に何も思いつかない大吉に代わって小百合が言いました。

「まめぶ!」

「いやあ、まめぶは違う … 安部ちゃんが思ってるほど、まめぶに将来性はねえ」


不満そうな小百合に大吉は続けました。

「大体、甘いのか辛いのかもわかんねえ、おかずなのかおやつなのかもわかんねえものを、どんな顔して客に出せばいい? それに、まめぶは … 」

春子がだんだんイライラしてくるのがわかりました … 余程まめぶのことが嫌いなのでしょうか。

「もうやめてよ、ひとんちの玄関先で、まめぶまめぶまめぶって … まめぶの将来なんてどうでもいいの! … 大体何なの、何しに来たの?」

… … … … …

「だから、夏さんの後を継げるのは、春ちゃんしかいねえってば」

「いやっ! 絶対にいや … あたしには、あたしの人生があるの、生活があるの!」


大吉は座りなおし、改めて話しはじめました。

「春ちゃん … あんたら親子の間に … その、いろいろ、いろいろ … いろいろあったの知ってる」

「いろいろ? いろいろ? … いろいろあったよ」


… … … … …

「こんなド田舎いたくねえ」

その日開通した北鉄に乗ってこの町を出て行く18歳の春子に20歳の大吉は尋ねました。

「母ちゃんの後継いで、海女になるのがそんなにいやか?」

… … … … …

「あれから24年、絶縁状態だもんなあ」

しみじみと語る大吉。

春子は仏壇に飾ってある父・天野忠兵衛の写真に線香をあげながら言いました。

「お父ちゃん死んだのも知らされてなかったし … 」

それを聞いて驚くふたり。

… … … … …

外から賑やかな声が聞こえてきました。

夏が海女仲間を連れて帰って来たようです。

「ただいま!」

元気よく家に入ってきたアキに春子は尋ねました。

「何処行ってたの?」

「海 … 海、見に行けって言ったじゃん」


いつもと何か感じが違うアキを見て狐につままれたような顔をする春子です。

「ああ、疲れたあ」

アキは大の字になってひっくり返ってしまいました。

「てえしたもんだぞ、このわらしな、ひとりでウニ8つもかっ食らったよ」

「さすが、夏ばっぱの孫だ」


すっかり海女たちと打ち解けたアキが一緒に楽しそうに笑いました。

一番後から、夏が入ってきました。

春子を一瞥しましたが、何も言わずに玄関に腰かけて靴を脱ぎ始めます。

気まずい雰囲気を察した海女たちは適当な口実を口にしながら帰って行きました。

… … … … …

「どうしたの?」

蜘蛛の子を散らすように皆いなくなってしまったことを不審に思ったアキ。

母と祖母は目と目もロクに合わせず、言葉一つ交わしません。

「あ、言葉が見つからねえんだふたりとも、無理もねえ、24年ぶりの再会で」

不機嫌そうに台所へ向かう夏。

「超すげえのお婆ちゃん、ザバアって潜って見えなくなったと思ったら、ウニいっぱい抱えてザバアって上がってくるの」

興奮しながら、祖母のことを母親に報告する娘。

「引退なさるそうで … 海女クラブの会長さん、長い間ご苦労様でした」

台所の夏の背中に春子は話しかけました。

… … … … …

「夏さん、おらが春ちゃん呼んだんだ … 余計な世話だとは思ったけどね … お互い子供じゃあるめいし、母ひとり子ひとりなんだべ? 昔のことは水に流して … 」

台所から茶の間に戻ってきた夏が春子の向かいに座り、いきなり手を差し出して言いました。

「3千円 … ウニ1個500円、8個で4千円 … 家族割引で3千円」

呆気にとられる春子。

「このわらしの母親だべ? … 早いとこ払ってください」

「そりゃねえべ、夏さん … 娘に向かって」


さすがの大吉も夏を諌めました。

「心配して飛んできたんだ、東京から … なあ、春ちゃん?」

「それにしちゃあ、荷物がやたら大きいが」


玄関に置かれたスーツケースを見て夏が嫌味っぽく言いました。

「悪いが、おらまだまだ引退などしねえど」

大吉が慌てだします … この男、また口から出まかせを??

「いやいや言ったべ夏さん、もう限界だって」

「来年も再来年も潜る、自分が食う分は自分が稼ぐさ … あんたの世話にはなりません!」


春子に向かって、言い捨てると再び台所に向かいました。

… … … … …

どっと力が抜けた春子は、ため息をつきました。

「ばっかバカしい … 勝手にして!」

食卓に3千円叩きつけると、立ち上がって玄関に向かいます。

「アキ、帰るよ」

アキは立ち上がりましたが、祖母の方を向いていて動こうとしません。

「何してるのアキ? … こんなところにいたって、しょうがないんだから!」

… … … … …

しかし、アキはまたその場所に膝を抱えて座り込んでしまいました。

「アキ、東京帰るよ!」

春子が怒鳴っても、アキは動きませんでした。

そんなふたりを我関せず、夏は食事をとり始めました。

「いやだ … 帰りたくない」

母親が怖くて動けなかったわけではありません … アキは動かなかったのです、自分の意志で …

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