NHK朝ドラ『花子とアン』『ごちそうさん』『あまちゃん』…ストーリーを勝手に解釈&裏読み … ほぼネタバレ…
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2013年06月30日 (日) | 編集 |
さて、次週の「あまちゃん」は …

アキ(能年玲奈)は憧れの大女優・鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)に出会い、大興奮。

一方、父・功(平泉成)の病で上京できずにいるユイ(橋本愛)は鬱屈した思いを募らせていた。

ユイちゃんは来る、絶対に来る、そんな簡単にあきらめねえし、中途半端なことはしねえ!

ヒロシ(小池徹平)からユイのことを聞き心配になったアキは、安部(片桐はいり)に相談に行くが、そこで潜水土木科の先輩・種市(福士蒼汰)と偶然再会する。羽田空港拡張工事にダイバーとして参加していたはずの種市は、なんと会社を辞めていた。

無頼鮨でアキが種市の近況を聞いていると、鈴鹿ひろ美と事務所の社長・太巻(古田新太)が一緒に来店。何やらいわくありげな二人…。

おら、付き人になるだあの巻よ

数日後、アキは太巻の紹介で鈴鹿の付き人になり、毎日、撮影現場に同行するように。

功の退院のめどが立っていよいよ上京することになったユイ。ところが今度は母・よしえ(八木亜希子)が行方不明に。

だったら、行きゃあいいじゃん、こんな田舎でくすぶってないでさあ!

東京行ったって、ダサい奴はダサいまんまじゃないすか? 超ダサいじゃないすか


すっかり投げやりになったユイは、スーパーで万引きしようとしているところを、春子(小泉今日子)に目撃される。

予想通りの展開だな …

解雇っ?!


その頃、太巻から「国民投票」の開催が告げられる。アキたちGMTとトップグループのアメ横女学園のメンバー全員が対象の、ファンによる人気投票で、40位以内に入らないと解雇されるというのだ。

じぇじぇじぇっ



あまちゃんニュース

『あまちゃん』挿入歌「暦の上ではディセンバー」配信開始

NHK連続テレビ小説『あまちゃん』(月~土 前8:00 総合ほか)の挿入歌「暦の上ではディセンバー」の着うた、着うたフル、シングルの配信が、29日よりレコチョク、NHK SOUND、オリコンミュージックストアなどでスタートした。

YAHOO! JAPANニュース 6月29日(土)11時44分



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2013年06月29日 (土) | 編集 |
第78話

< ミス北鉄のユイちゃんが、約2週間ぶりに皆の前に姿を現しました … >

「今回はどうもお騒がせしました」


ヒロシが皆に向かって頭を下げました。

「いやいやいや、お騒がせって、俺らいつもここで騒いでいるだけだからな」

「俺ら皆先生の教え子だもの、君たち兄妹を助けるのは当たり前だ、遠慮しないで頼ってけれ」


大吉、保、吉田がヒロシとユイを取り囲みました。

「はい、よろしくお願いします」

思わず泣き出す勉さん。

「何か食べる、お腹空かない?」

春子がふたりに声を掛けました。

「 … お兄ちゃん、帰ろう」

無表情、うつろな目のユイがヒロシにそう言いました。

「どうしようかな?」

「そうだね、別に無理して、あれしなくても大丈夫だから … 」


迷うヒロシに春子は気を利かせましたが …

「一杯飲んでけばいいべ、足立君」

吉田にそう誘われて、腰を下ろそうとするヒロシにユイはもう1回言いました。

「 … 帰ろう」

「ちょっとぐらいいいだろう?」


好意を無にしてはいけないと思うヒロシ。

「あ、アキちゃんとは連絡取ってるのか?」

思い出したように保が尋ねましたが、ユイは無表情のままです。

「ああ、そうそう今丁度、しゃべってたんだ! … 今年もやるんだよ、ミス北鉄!」

吉田からチラシを受け取って大吉がそれをユイに見せながら言いました。

「ユイちゃんが二連覇してくれたらなあって」

「んだんだんだ、もう永久にユイちゃんがミス北鉄だ!」


ユイは自分の顔写真が載ったチラシを叩き落とすと、店を飛び出して行ってしまいました。

「何かすみません … 」

ユイのあとを追って店を出ていくヒロシ。

… … … … …

「何なの、あんたたち?」

「えっ?」


春子にそう咎められても、大吉、保、吉田は意味が分かりません。

「何、ぎくしゃくしてるのよ?!」

「いや、いつも通りだべ?」


3人とも全く自覚がないようです。

「いやいや、ものすっごい変な空気でした」

しおりの言葉にうなずいた春子は言いました。

「 … 反省会しようか?」

先ず、吉田に何故引き留めたのかを尋ねました。

「だって、何か食べるって … 春子さんが」

「そりゃ言うわ、スナックだもの … でも、ちゃんと断れるような言い方したよね?」


ようやくわかった吉田。

「で、菅原君、なんでアキのこと話題にした?」

「えっ?」

「今一番触れちゃいけない話題でしょうが?」


保もわかったようです。

「で、追い打ち掛けるように、何、大吉さん … ミス北鉄? 二連覇? … それ言って喜ぶと思ってるの?

バカか? バカなのか?!」


しくじったことに気づく大吉。

「そういう、腫れ物に触るような接し方が一番傷つくんだよね … で、勉さんはいつまで泣いてるの?!」

さっきから泣き続けている勉さん、そう言われても涙が止まりません。

「なるほどなあ、そういう心理は経験者じゃねえとわかんねえもんな」

春子に指摘されて、反省しながら席に着く大吉。

「元腫れ物ですから … 」

思いっきり納得する一同。

… … … … …

「あ、夏ばっぱ?」

アキは聞きたいことがあって、夏に電話しました。

「おう、アキか、こっちは変わんねえよ … まあ、かつ枝が妊娠したぐれえだ」

アキは飲んでいた牛乳を吹き出してしまいました。

夏はかつ枝と電話を代わります。

「ははは、猫だ猫! … おめえが東京さ行ってからよ、夏ばっぱ、寂しそうだから、おらんとこの猫1匹譲ったのだ。

正確に言うと、かつ枝からもらった猫が妊娠したっつう訳」


… … … … …

「えっ何? … 夏ばっぱ、寿司腹いっぺえ食ったら、なんぼかかるかだって」

アキの言葉を夏に伝えるかつ枝。

「回ってんのか、回ってねえのか?」

今度は、夏の言葉をアキに伝えました … まるで伝言ゲームです。

「回ってんの」

「 … 1,000円あれば十分だべ」

「じゃあ、回ってねえのは?」

「ま、2,000円あれば十分だべ」

「そんなもんだよねえ!」


アキはうれしそうに笑いました。

… … … … …

東京EDOシアター前にある寿司屋、無頼鮨 … 太巻がご贔屓にしているだけあって、いかにも値段が高そうな店造りです。

座敷に通されるGMTのメンバーと水口。

「ねえ、アキ … 本当に大丈夫?」

しおりが念を押すと、アキは自信満々、笑顔で親指を立てました。

「私、財布さ、2,000円しか入ってねえけど」

薫子も心配そうに言いましたが、アキは今度は両手の親指を立てました。

「じゃあ、始めようか …

乾杯の音頭は、GMTから初めてのシャドウとして、3日間5ステージを見事に務めた真奈!」


しおりが真奈の背中を叩きました。

拍手を受けて立ち上がる真奈。

「本当は、初日ボロボロやったあと、このまま福岡 … ゴホッ … 帰ろうかにゃと思ったとです。

ばってん、アキちゃんが、がばいよか言葉言うてくれて … アキちゃん何やったっけ?」


めんどくさいことは抜き、アキはグラスを掲げました。

「乾杯!」

それに合わせて皆も同じように「乾杯」しました。

… … … … …

「ご注文は?」

アキは夏に聞いたことを思い返しました。

『メニューがねえ時にはな、「適当に」って言うんだ』

「適当に」

教わった通りに答えたアキです。

「なんくるないべさ!」

… … … … …

運ばれてきた寿司盛りを見た一同から歓声が上がりました。

皆、幸せそうに美味しそうに次々に寿司を口に運んでいきます。

… … … … …

宴もたけなわ、興に乗った喜屋武が踊り出して、水口に注意されました。

「何騒いでるの? うるさいよ」

水口が席を外すと、今度はアユミが立ち上がりました。

「あたし阿波踊り踊る、ヤットサー、ヤット、ヤット!」

「うるさい、あっ」


よろけて、つい立にぶつかってしまいました。

「つうか宮下、お前未成年のくせに飲んでるんじゃねえよ!」

酔って足元がおぼつかなくなったようです。

「未成年ちゃうし … 」

「はっ?」


固まる一同、アユミは笑い出しました。

「すいません、年齢詐称 … あたしホンマは20歳、今年21です」

「じぇじぇじぇっ!」

「アメ女なんかサバ読んどる子、めちゃおるで」


悪びれずにそう言ったアユミ。喜屋武も調子に乗ります。

「売れたら勝ちさね」

「声でけえよ、誰が聞いてるかわからないんだからね」


気が休まらない水口です。

… … … … …

「すみません、うるさくて … アイドルの卵みたいで、東京EDOシアターの」

店の者 … 伊東がつい立を隔てた隣の座敷で食事をしている女性に事情を説明して謝罪しました。

物わかりよくうなずく女性。

… … … … …

「ごめんなさい、ウチもウソば、ついとって … 」

突然、真奈もカミングアウトし始めました。

「ホンマはいくつ?」

きっかけをつくったアユミが尋ねました。

「年齢やなかと、ほんなごてはウチ … 福岡出身じゃなかとです!」

「えっ?」

「佐賀県出身です、ごめんなさい!」

「 … … … 」

「福岡と佐賀って隣同士で、福岡のグループに所属しとるし、福岡出身で通した方が通りよかばいって、博多華丸さんに言われて … 」


泣きながら告白していましたが、あまりの反応の薄さに黙ってしまいました。

「いや、ピンとこない … 」

埼玉出身のしおりが言いました。

「あ、そうか … だから福岡って言う時に咳き込んでたんだ?」

水口に言われて、うなずく真奈。

「えっ、ピンとこんってなん?」

しおりの言葉を思い出したのか真奈の顔色が変わりました。

「いえ、違いがあんまり分かんねえよな?」

「なんくるないさあ」

「いや、売れる前でよかったよ、まあ座って食え」


水口がなだめましたが、真奈らしくない大声をあげました。

「佐賀と福岡は違います、全然違うばい!」

… … … … …

騒ぎをよそにして …

薫子が心配そうにアキに小声で尋ねました。

「なんぼ持ってる?」

「 … きっちり、2,000円」


ふたり合わせても4,000円です。

世間知らずのアキもなんだか心細くなってきました。

「水口さんに借りるか?」

「持ってねえと思う … その証拠にさっきから見てると、寿司一貫も食ってねえし、焼酎飲んでるように見えるが、水を水で割ってる …

最終的に逃げるつもりだ」


アキはまた夏の言葉を思い返しました。

『もし足んねかったら?

… そん時は謝り倒して、皿洗いでも何でもすんだな』

「ここで働くのか … 」

… … … … …

「ねえ、アキは?」

しおりに声を掛けられましたが、アキは質問を聞いていませんでした。

「好きな女優、誰ねって?」

改めて喜屋武が尋ねました。

「ああ … 鈴鹿ひろ美」

躊躇なく答えるアキ。

「ええっ?!」

迎えのタクシーが着いたと伝えられて、席を立とうとしていた隣の座敷の女性がもう一度座り直しました。

「えっ、だめ?」

メンバーの反応にアキは聞き返しました。

「いや、お芝居は上手いと思うよ、ただなんか鼻につかない?」

「いい噂聞かんもんな、新人泣かしたとかさ」

「お城に住んでそうじゃない?」


好き勝手なことを言うしおりとアユミ。

「おらもよく知らねえけど、テレビで昔の映画見て … 」

「映画いっぱい出てるもんな」

「もともとアイドル出ってんでしょ?」


… … … … …

「ごちそうさま」

女性は今度こそ席を立ちました。

座敷の降口で靴を履くその女性の横顔がアキの目にふと止まりました。

何故か気になって目で追うアキ … 出口の前でサングラスをかける時、ハッキリと女性の顔が見えました。

鈴鹿ひろ美 … その人でした。

… … … … …

「じぇじぇじぇじぇ、じぇじぇじぇじぇじぇ ~ !!」

未だかつてない最大級の『じぇ』で驚くアキ。

「何だ、びっくりするな … ゴッドファーザー?」

しおりが尋ねました … そう聞こえなくもないけど。

… … … … …

「すみません、今大体いくらくらい?」

水口が伊東に確認すると、寿司を握っている大将の梅頭が答えました。

「支払、済んでるから」

「えっ?!」

「さっきまで、お隣にいらしたお客様が払われましたよ」


食器を片づけながら伊東が言いました。

< ユイちゃん、これは事件です、大事件です … あこがれの女優、鈴鹿ひろ美がつい立1枚隔てた隣の席にいたなんて!! >

アキは慌てて店を飛び出しました。

「アキ!」

「何処行くんだ?!」


… … … … …

鈴鹿ひろ美を追って外に出たアキ、路地を抜けていくひろ美に追いつきました。

「あの、鈴鹿さん!」

「はいは~い」


鈴鹿は、朗らかに振り向いてサングラスを外しました。

「あ、あの … 」

声を掛けたはいいが、何を言っていいのか …

「おい、天野!」

水口も追いつきました。

「鈴鹿さん、いらしてたんですね」

「あなた確か太巻んとこの、えっと … 」

「水口です … 今日はどうもごちそうさまでした。」


水口に合わせて、頭を下げるアキ。

「いやだもうそんな … お構いなく」

流石、大女優の貫録です。

ようやく駆けつけた他のメンバーもひろ美に頭を下げて礼を言いました。

「大げさ … 今日は、気分が良くて楽しかったから」

そのあとから何故か伊東に連れられて、店にいた客が全員やって来ました。

「鈴鹿さん、ごちそうさま!」

声を合わせて言う一同。

急に怪訝な顔になったひろ美はバッグから明細を取り出して確認します。

「やだ、えっ?!」

伊東の顔を振り向きました。

「あ、あの、皆さまの分も全部払ってと、おっしゃったので … 」

しかし、鈴鹿は一瞬で笑顔に戻り、一同に向かって言いました。

「お構いなく … 放っておけないだけなの、私も皆さんの年頃からこの世界でやってますから …

鼻につくとか言われながらね」

「す、すいません!」


本人が隣にいるのも知らず、好き勝手なことを言っていた、しおりたちはただただ頭を下げるばかりです。

「すいません、世間知らずなんですよ … 地方出身者ばかり集めたアイドルグループで、よろしければご挨拶させていただいても?」

水口がとりなすと、鈴鹿は快く返事しました。

「そうね、ここでお会いしたのも何かのご縁ですから、お名前くらい伺っておこうかしら」

一歩、前に出ようとするアキ … しかし、しおりが大声でハートフル流の挨拶を始めてしまいます。

「はい、海はないけど夢はある!」

人目をはばかった鈴鹿は、そんな挨拶を制して言いました。

「さて、お城に帰りましょう」

「ありがとうございました」


… … … … …

鈴鹿の貫録と人柄に触れて舞い上がっているメンバー、しかしアキは尚もタクシーに向かう彼女のあとを追いかけました。

鈴鹿が乗り込んだタクシーの窓に手をつきました。

「握手、握手」

追いかけてきた水口に引き離されます。

「何やってるんだよ?」

アキは構わず、ひろ美に向かって叫びます。

「ファンです。あんださ、あこがれて東京さ来ました!」

ひろ美は窓を開けました。

アキは水口を振り払って、窓から手を入れて、両手でひろ美の手を握りしめました。

「『潮騒のメモリー』最高です、最高です、最高です!」


何度も繰り返すアキにひろ美は少々戸惑いながらも応えました。

「ありがとう … いつか一緒にお芝居しましょうね」

やさしく微笑み、アキの腕をそっと解きました。

走り去るタクシーを見つめるアキ。

「かっけえ … 」

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2013年06月28日 (金) | 編集 |
第77話

「そばですか、うどんですか … まめぶですか?」

懐かしい声を偶然耳にしたアキは思い切ってその屋台の暖簾をくぐりました。

「いらっしゃい!」

声の主は … そこにいたのは紛れもなく、安部小百合でした。

「じぇじぇっ!」

「じぇじぇじぇじぇじぇじぇ … 」


思いがけない再会にアキと小百合は屋台の裏で抱き合って喜びました。

… … … … …

「宇都宮のデパートで小さな店出したんだけど上手くいかなくて … 無理もねえ、岩手の人間がピンと来ねえ『まめぶ』が、栃木でウケたらそれは栃木の名物だもの」

「そんで立ち食いソバ屋さなりすまして?」

「たまたま車安く譲ってくれる人がいで、暖簾だけ作って、ちょっとずつちょっとずつ東京さ目指して … 上野は、ほれっ東の玄関だべ、ごくたまに三陸沿線の人も通りかかるし …

そうでなくても『そば、うどん、まめぶ』って声掛けてれば、20人にひとりは『まめぶ』って何だべってひっかかるべ」


そう話している間に客が訪れました。

「そばですか、うどんですか、まめ … 」

小百合の言葉を最後まで聞かず、そばを注文しました。

「ひっかからねえ客には間違えた振りして … 」

まめぶをひとつ、そばに入れて客に出す小百合。

「食ってみて、美味えと思ったら、次は『まめぶ』注文するべ?」

「 … すんげえ、安部ちゃん地道だ」

「地道だけが東北人の取り柄だもの、地道にやんねばな … 」

「ちょっと、なんか変な丸いの入ってるんだけど」


クレームをつけた客に「捨ててください」とひとこと。

… … … … …

「それにしても、アキちゃんがアイドルなんて … やっぱり、春子さんの血なんだべか?」

小百合はしみじみと言いました。

「安部ちゃんとは、去年の『本気獲り』以来だもんな」

「アキちゃんが自力でウニ獲ったの見届けて、北三陸離れたから … 」

< そうなんです … 安部ちゃんは、ずっとおらの『落武者』として、海の中でコッソリとウニを渡してくれていた恩人なのです >


… 『影武者』でした。『落武者』と『影武者』では全然違います。

そのアキが今は、アメ女のセンターの『落武者』いや『影武者』なのです …

「一杯食うか?」

「うんっ」

< 安部ちゃんの『まめぶ』は相変わらずピンと来なくて、そのピンとこない味にピンとくるアキでした >

「ああ、懐かしい … 決して美味ぐはねえ、でもそこがいい。

美味えだけのもんなら、東京は何でもあるが … これは、美味ぐもねえのに食いだぐなる、最高だ!」


知らない人には、とても失礼な物言いに聞こえるかも知れませんが、ふたりの間柄だから、分かり合える表現なのでしょう。

「いつでも来て … 結構、リピーターもいるんだから」

「へえ」

「ほら、来た … いらっしゃい!」


どうやら話に出たリピーターの客のようです。

「うどんとまめぶのハーフ&ハーフ」

注文した青年はまめぶの入った鍋の傍に周って、たまらないという感じで匂いを嗅ぎました。

その青年 … なんと、アキの初恋の人、種市浩一でした。

種市は、鍋の向こうに座ってまめぶを夢中で食べているアキを見つけました。

驚く種市 … 食べ終わったアキが顔を上げた瞬間、思わず顔をそむけました。

「ごちそうさま、また来るね」

「うん、ガンバって!」


アキは種市に全く気づかずに行ってしまいました。

… 何故こんな時間に種市が上野にいたのか、そして何故アキから身を隠したのでしょうか? …

… … … … …

< 懐かしい『まめぶ汁』に出会って、心が軽くなったのも束の間 … >

合宿所の前に見慣れた車 … 正宗のタクシーが駐車してありました。

… … … … …

合宿所内の居間。

苦虫をつぶしたような顔で無言のままアキの前に立ち、アメ女のCDを手に取る正宗。

「威圧感たっぷりなところ、申し訳ないんですけど、手短にお願いします … 一応ここ男子禁制なんで」

お茶を出しながら、しおりが正宗に言いました。

正宗はアキの前に座りました。

「ママから聞いたよ … まあ、正確にはママとしゃべっても埒が明かないから来た。

どういうことだ、アキ? 芸能界なんて … お前からは最も遠い世界じゃないか?!

… 部屋にこもって、ネガティブなポエムばかり書いて … 」

「やめでっ!」


アキは正宗の言葉を遮りました。

… … … … …

「リーダー、なあリーダー! アキちゃん! … 誰?」

2階から大騒ぎで下りてきたアユミが見慣れない男性がいるので不審な顔をしました。

「娘がお世話になっております。私、アキの父、黒川正宗と申します」

立ち上がって挨拶をした正宗の応対もそこそこにアユミはしおりに報告をしました。

「 … それより大変じゃわ、真奈ちゃんが」

アユミの後から下りてきた真奈が緊張気味に言いました。

「どがんしゅう … シャドウの出番が来たとよ」

「じぇじぇっ!」

「水口さんからの電話で成田りなって子おるで、その子が体調不良で握手会休んだっぽい! … 段取り確認するけん今すぐ来いって」

「どがんしゅう、お腹痛か … 」


うずくまる真奈。

「タクシー呼ぶ、タクシー? … タクシー!」

しおりが正宗のことを指さしました。

… … … … …

EDOシアター。

アメ女のステージ、衣装替えのためにメンバーが奈落にぞくぞくと駆け下りてきます。

その中に真奈の姿もありました。

「45秒前!」

次の曲までのカウントダウンが聞こえます。

「あと何秒、何秒?」

「25秒!」

「よしっ!」


フィッティングから飛び出した真奈が着ていたのはパンダの着ぐるみ、次の歌の衣装は迷彩柄です。

「どうしよう?!」

「間もなくです、間もなくセリ上がります!」


もう着替えている時間はありません。

「行けこれで、出てまえ!」

そのまま真奈をセリに乗せて、ステージに上げてしまいました。

… … … … …

♪暦の上ではディセンバー でもハートはサバイバー

曲が始まると、奈落にいるメンバーたちも、それぞれのシャドウのパートに合わせて踊り始めました。

もちろんアキも …

… … … … …

その頃、シアターの社長室では、珍しく顔を見せた太巻に水口がGMTについての報告をしていました。

「何でも初めから上手くいくと思うなよ、水口 … アメ女だって4年かかったんだから」

「でも、北鉄のユイちゃんは社長も本命だとおっしゃっていたんで … 」

「おもしろいからいいんじぇね? あの海女の子も」


訛りは直さない方がいいと太巻は言いました。

「有馬めぐのシャドウに抜擢したそうですね?」

「ああ、最近あいつ『これ』だから」


『天狗』のジェスチャーです。

やはり水口自身がアキに釘を刺した通り、危機感を持たせるための噛ませ犬だったのでしょうか …

「男でもできたか? 売れると、すぐだからな … 奈落にいたころが一番おもしろかったよ、水口」

太巻はそういうと寿司を頬張りました。

… … … … …

< 道のりは険しいけど、アメ女がいったい何人いるのか分からないけど … 奈落でも努力は必ず報われる、そう信じるしかないアキです >

… … … … …

「お疲れ様でした!」

「すみませんでした!」


しおり、アキ、そして真奈は楽屋口の前で帰宅していくアメ女のメンバーひとりひとりに今日の不手際を詫びていました。

「お疲れ様でした!」

有馬めぐです。

「すみませんでした!」

アキたちを一瞥もせずに無視して通り過ぎて行きました。

… … … … …

ふたたび奈落に戻った3人。

「元気だしなよ」

しおりが慰めても真奈はひどい落ち込みようです。

「お疲れ、待ってたよ」

「見て、アメ女の子が持ってきたんだ、奈落で食べなって」


食べ残りですが、寿司桶がいくつかテーブルに置いてありました。

「うわ~ !」

喜び勇んで寿司にありつこうとする一同 … しかし、真奈がつぶやきました。

「お寿司があるってことは、太巻さん、見よんしゃったってことばいね … 」

… そういうことでした。

箸をおく、しおり。

「あ、そうだね … 」

「最悪ばい … 」


座り込んでしまった真奈。

「ごめん、残り物で喜んでる場合ちゃうわ」

アユミが謝りました。

「GMTからようやくひとり、客前に出れただけだもんね」

薫子。

皆、一気に寿司どころではなくなってしまった … いやひとりアキだけは、遠慮なくウニの軍艦巻きを手に取ると、あっという間に頬張りました。

「ちょっと、アキちゃん?!」

「超うめええっ!」

「何しょん?!」


アユミが咎めました。

「ごめん、無意識 … だって、もったいねえべ? 真奈ちゃんも食べて」

それどころではない真奈は首を横に振りました。

「それなら … ハイっ!」

アキはポケットから取り出した500円玉を真奈に差し出しました。

「何しょんよ、あんた?!」

アユミは腹を立てています。

「だって、ウニは銭ってばっぱに教わったから」

「金で済む問題ちゃうやろ?」


居たたまれなくなった真奈は奈落から出て行こうとします。

その真奈をアキは呼び止めました。

「真奈ちゃん、ひとつ教えてけろ!」

… … … … …

「ここと上、どっちが気持ちいがった?」

「そんなの … 上に決まってんじゃんね?」


しおりが代わりに答えると、真奈も無言でうなずきました。

「やっぱり、んだべな … なんぼ間違えても遅れても、奈落よりいいよな」

「うん、お客さんおるし、ステージの方が全然気持ちよかよ」


真奈は引き返して来て、イスに腰かけました。

アキは真奈の正面に腰かけて言いました。

「それなら、明日はもっと気持ちよく踊ってけろ … おら、下で応援すっから、なっ?」

「そうだよ、アキの言うとおり、今、上で躍れるの真奈だけだしね」


喜屋武も言いました。

「わかっとう、チャンスやもんね」

少し元気が戻ったようです。

「いつか、皆で上行きてえなあ … 」

薫子がステージを見上げてそう言いました。

「行けるさあ!」

喜屋武のひとことで皆笑いました。

「私、ここから登場してえ」

薫子がメインのセリを指さすと、しおりが慌ててそこに座り込みました。

「だめだめだめ、セリはリーダーの特権!」

また笑い合う一同。

「やりたかねえ、6人で … できるやろうか?」

すっかり元気が戻った真奈がそう言って皆を振り返りました。

… … … … …

「できないんだったら、やめちゃえよ」

「水口さん、いつの間に?」


ステージに続く階段から、水口が降りてきました。

「出るタイミング計ってたんだよ … なんか女子特有のうっとうしいノリが収まるの待ってたんだよ」

「 … すいません」


リーダーのしおりが謝りました。

「ついでに言うけど … 」

寿司に手を伸ばして、ひとつ口に入れたままで話しはじめました。

「GMTはこの劇場では終わらないから、今はたった6人だし、間借りっていうかアメ女の補欠みたいな扱いだけど、絶対47都道府県から集めるし、全国ツアーやるし、ファイナルは武道館だし」

「じぇじぇじぇじぇっ!」


声を揃えて驚く一同。

「そういう気持ちでやってるよ、俺は … 

何しろ初めて任されたプロジェクトだからさ … 逆に言えば、人数が減ってもやめない、最後のひとりまでGMTだからな」

「はいっ」


いつかの夜、アキにマイナス方向の話ばかりした水口と違って、口調こそ物静かですが、今日は俄然やる気が感じられます … 何かあったのでしょうか?

もうひとつ寿司をつまむ水口。

「俺は絶対見捨てないから」

「はいっ」


水口が何か言うたびに目を輝かせ、声を合わせて返事するメンバーを見て苦笑いしました。

「 … うっとうしい」

それは柄にもなく熱く語ってしまった自分に対して言った言葉だったのかもしれません。

… … … … …

「精一杯やろう! 天下、取ろうね!」

しおりが両手を握りコブシにして皆を鼓舞しました。

「なあ、真奈ちゃんが無事シャドウを勤め上げたら、皆でお寿司食べ行かねえ?」

アキの無邪気な提案に、皆の勢いが止まりました。

「お寿司? … 」

「だって、お祝いするってリーダー言ったべ?」

「いやでも、お寿司はお金ないし … 」

「それは、水口さんが … ??」


危機を察知したのか、いつの間にか姿を消していました。

… … … … …

< その頃、北三陸では、『第2回・ミス北鉄コンテスト』が開かれようとしていました >

スナック梨明日。

「なんか盛り上がりに欠けるわあ ~ 」

吉田がぼやいた、その理由とは …

「きれいだよ、去年よりずっときれいだよ」

保が栗原しおりのことをしきりに褒めちぎっています。

去年に続いてまた今年もエントリーさせる気のようです。

「でも、ウエスト3センチ増えちゃったしぃ」

「いやその3センチがいいんだべ、ゆとりだよ、ゆとり世代だべ?」


吉田がもう1回と断ってから言いました。

「盛り上がりに欠けるわあ ~ 」

「なにが?!」


カウンターでは大吉が声をあげました。

その大吉は出場者募集のチラシを手に春子に出場しないかと口説いているのです。

「なあいいべ、春ちゃん、娘の七光りでさ、親子二代で地元のアイドルだべ?」

「だけど、節操ねえにもほどがあるべ! … 去年のミスが17歳で今年が45?」

「3!3! 43!」


春子が訂正しました。

しかし、吉田の言うことはごもっともです。

大吉と保はそれぞれご執心の女性を出場させようとしているだけなのです … ただ、それだけこの町にミスになれそうな人材がいないということでもあるのでしょうが …

… … … … …

店の扉が開いて、入ってきたのはヒロシでした。

「どうも、ご無沙汰してすみません」

バツが悪そうにしたのは栗原でした。

「先生はもういいのか?」

「はい、おかげ様で経過も良好で … 来週からリハビリも始めることになりました」


保に尋ねられて答えたヒロシは少し安堵しているような表情に見えました。

「ねえ、ユイちゃんは … 元気?」

春子が尋ねると、ヒロシは振り返って扉を開けました。

外で待っていたユイが店に入ってきました。

< ミス北鉄のユイちゃんが、約2週間ぶりに皆の前に姿を現しました … >

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2013年06月27日 (木) | 編集 |
第76話

< 素人参加型オーディション番組『君でもスターだよ!』で見事チャンピオンに輝いたママ … しかし、番組は急遽打ち切られ、歌手デビューの夢は断たれ、ママは途方に暮れていました。

… 今から25年前のことです >


… … … … …

< 1984(昭和59)年、夏 … 路上ではとんでもない格好で若者が踊っていたり、「ソイヤ、ソイヤ!」と叫んだり、いろいろとやがましかったようです。

そんな都会でママが辿り着いた場所は、原宿の純喫茶『アイドル』 … 竹下通りを1本入った場所にあったこの喫茶店で、時給550円でアルバイトしながら、ママはアイドルを夢見ていました。

そんなママを店主の甲斐さんは、娘のように可愛がってくれたそうです >


… … … … …

「春ちゃん、昨日のオーディションどうだったの? あのスケバンがヨーヨーで戦うやつ」

「ああ、あれね、ダメだったみたい … 」

「そうか、ピッタリだと思ったんだけどね」


春子にオーディションの結果を聞いて、我がことのように残念がる甲斐。

< 東京に出てきて、1年が経とうとしていました … >

カウンター内に置いたテレビを見ながら、甲斐はぼやきました。

「こいつらがテレビに出れて、何で春ちゃんが出れないんだろうね?」

テレビには今人気のおニャン子クラブが映っています。

「甲斐さん、最近そればっかり」

「だってそうだろ、6番とか9番とか微妙だろう? 歌だって、4番より春ちゃんの方がうまいしさ … まあそこそこ可愛いんだけどね」

< 1985(昭和60)年、秋元康が楽曲を手掛けた『おニャン子クラブ』がブレーク、素人全盛時代が来ました >


… … … … …

< … プロ意識を持って、上京してきたママにとっては、受難の時代でした >

とあるオーディションの面接。

春子のエントリーシートのプロフィールを見ながらディレクターが隣のスタッフに尋ねました。

「岩手県 … 岩手って何有名だっけ?」

「え~ なまはげ、キリタンポ?」

「わんこそばです … あと、冷麺とじゃじゃ麺も有名です」


笑顔で答える春子。

「素人っぽくないよね、なんか君? … 面白い話して」

「あっ、じゃあ岩手だし、ズーズー弁でしゃべってみて」


無茶振りされて、春子はとまどいながら …

「 … おばんです」

その瞬間、スタッフの男がストップウォッチを押して、面接の終了を伝えました。

このままでは何もアピールできずに終わってしまいます。

切羽詰った春子は、次のエントリーシートに手を伸ばしかけたディレクターに言いました。

「あの、母は三陸海岸で海女をやっています … 北の海女っていって、素潜り漁では世界最北端なんです」

「なんだ、面白いネタもってるじゃん」


少し興味を持ってくれたようです。

「じゃ、やってみてよ … ここ海、ちょっと潜ってみて」

ディレクターに促された春子は靴を脱いで、椅子の上に立ちました。

そして、鼻をつまんで片手をあげて潜るポーズを取った時、スタッフがまたストップウォッチを押して言いました。

「はい時間です、結構です」 

『 … 情けなかった … あんなに嫌っていた母さんに、嫌で嫌で飛び出した袖が浜の海女さんに、土壇場で頼ってしまった … それほど、当時のママには何も誇れるものがなかった。

初々しさもない、歌もそこそこ …

だから練習した、一生懸命ヴォイストレーニングやダンストレーニングにも通った … 一歩でもプロに近づきたくて日々努力を重ね、ようやく上京したら、素人の時代 … 何て間が悪いのかしら』

… … … … …

そんなある日のことでした。

「レスカ2つ」

< レモンスカッシュをレスカと略すのがすでにちょっとダサかった昭和60年、青年は純喫茶『アイドル』にやって来ました >


女性連れの青年は、そう注文すると席に着きました。

「 … 25歳までね、トシちゃんのバックで踊ってたの、いやホントホント、『原宿キッス』の頃かな」

どこかで聞いたような話を女性にしています。

「今いくつに見える? 46? … おしい、26! ふふふふ」

< この老け顔の青年が後に秋元康にあこがれ、数々のアイドルを排出する辣腕プロデューサー、あの荒巻太一になろうとは?! >


… … … … …

「でもさ、番組終わっちゃってね … ほら、『君でもスターだよ!』ってあったじゃん?

で、引退して今はスカウトやってるの」


動揺した春子が手にしていたお盆を落としてしまって、その音が店内に響きました。

「失礼しました」

頭を下げる甲斐と春子。

荒巻は大して気にせずに話を続けています。

「名刺渡しておきますね、荒巻です」

荒巻の前に座っていた女性が突然立ち上がりました。

「ごめんなさい、親が厳しいので裸は無理なんです」

「えっ、裸なんて言った? ちょっと待って、俺裸とか … 」


聞く耳持たずに出て行ってしまいました。

ドアの前で佇む荒巻 …

「 … いくら?」

しかたなく勘定を済ませます。

春子は食器を片付けながら、テーブルの上に置かれてあった荒巻の名刺をこっそりポケットにしまいました。

… … … … …

< えっ、ママと太巻さんって知り合いだったの? >

アキは便箋をめくりました。

しかし、そこに書かれていたのは …

『 … 以上。

春子』

それで締めくくられていました。

< 手紙ここで終わってるし、唐突!

「体に気をつけて」とか、そういう母親らしい言葉も一切ない … >


封筒を振っても、もう何一つ出てはきませんでした。

「 … どう思います?」

思わず声に出てしまいました。

「 … どうかと思うよ」

… … … … …

いつからいたのか、水口がテーブルに座っていました。

「じぇじぇっ!」

勉さんのような仕草で何かを磨いています。(琥珀?)

「いつまで起きてるんだよ?」

「あ、すいません」


慌てて、部屋に戻ろうとするアキを呼び止めました。

「会いに行ってきたよ、ユイちゃんに」

「じぇじぇじぇっ」

「まあ、会えなかったんだけどね … あっ」


思い出したように、傍らにあった紙袋から何かを取り出して、アキに放ってよこしました。

「これおみやげ、ブティック今野の新作」

他では絶対に売っていないような、派手な幾何学模様のパンツでした。

「わざわざ、北三陸さ行って来たんですか?」

「うん、ユイちゃんのお父さん、盛岡の大学病院へ転院することになったんだ … 幸い手術は成功して、意識も戻ったらしい。

ただ、後遺症っていうか、介護が必要になるんじゃないかって … 今もずっと付き添ってるみたい」


功の回復のめどが立たないと、ユイも何とも言えない状況だと、水口はよしえから伝えられていました。

… … … … …

「 … どうする?」

水口はアキに尋ねました。

「えっ?」

「岩手に帰ってもいいんだよ … 元々はユイちゃんの方が積極的で、君は付き添いみたいな感じだったし … 今帰ればまだ潜れるだろう?

海女の皆さんも戻ってきてほしいんじゃないかな」

「シャドウに選ばれたんです」


アキは今日、太巻に会ったこと、有馬めぐのシャドウに選ばれたことを話しました。

「へえ、有馬めぐのシャドウにねえ … 」

「ダンスを採用してもらいました」

「ただの気まぐれだと思うけどね … やるんだよ、たまに、人気も実力もない新人をいきなり抜擢して、メンバーに危機感を持たせる、噛ませ犬だよ」

「そうなんだ … 」


アキのささやかな自慢は吹っ飛びました。

「有馬、最近『これ』だったからね」

『天狗』のジェスチャーをしました。

「でも、明日から気合入れてくると思うよ、絶対休まないだろうね … それでもシャドウやる?」

ことごとくアキの気持ちをマイナス方向に煽るような物言いをする水口です。

「 … はい、もうちょっとやります … ユイちゃんと約束したから

ユイちゃんをここさ呼ぶために、もうちょっと頑張ります」


アキはそう宣言しました。

水口の琥珀を磨く手が止まりました。

「そっか … わかった、じゃあ俺もそのつもりで、手抜かずやるわ … おやすみ」

洗面所の鏡に映った自分の顔を見つめるアキ … 何を思う …

… … … … …

< 次の日、ようやくユイちゃんからメールが来ました。

病院にいて返事が打てなかったこと、お父さんの病気が少しずつ良くなっていること、そして … もうすぐ東京に行くことを知らせるとても元気でポジティブなメールでした。

それは、こんな一文で締めくくられていました。

☆CATCH A DREAM!! Yui☆ >


… … … … …

< 一方、おらたちGMTの日常は中々にハードでした。

夜はひたすら奈落でダンスの稽古 … ショーの本番中は、正規メンバーが奈落を猛ダッシュするので、気が抜けません。

時には裏方の仕事も手伝わされます >


… … … … …

「集合~!!」

合宿所に戻ってそれぞれくつろいでいるメンバーにリーダーのしおりが招集を掛けました。

< 就寝前には、ミーティング … >

「もう、ヤバいと思うんだよ、うちら! … もっと危機感持たないとさ、テレビ欄とか、携帯とか、ドライヤーとか、女子会?

ふざけんなよ、マジで危機感持てよ、ねえっ!」

「アンドゥヤル(※そうだ)、うちら縁の下の力持ちじゃないのに … 早く地上に出ないといけんよ」


喜屋武がうなずきながら言いました。

… … … … …

< 2学期が始まり、おらは二度目の転校を経験しました。

今度の高校は、朝比奈学園芸能コース … なので、売れてる子は学校に来ません、遅刻や早退がステータスなのです >


ポツンポツンと空席が目立つ教室で、授業を受けるアキ、しおりと喜屋武はクラスメートです。

… … … … …

< 上京して1週間、あの日以来、太巻さんは劇場に現れません … やっぱり、気まぐれだったのかも知れません >

… … … … …

ある日、アキは上野の町を歩いている時に懐かしい声を偶然耳にしました。

そこは、移動式の屋台が並んでいる通りで、そのうちの一台から声は聞こえてきました。

「そばですか、うどんですか … まめぶですか?」

「!!」

「はい、次の方、そばですか、うどんですか … まめぶですか?」

「カレー南蛮は、そばですか、うどんですか … まめぶですか?」


やたらとまめぶを勧めるその女性の声。

アキは足を止めて、その屋台に近づきました。

暖簾に書かれた屋号は「安部そば」 … 間違いありません!

思い切って暖簾をくぐりました。

「いらっしゃい!」

声の主は … そこにいたのは紛れもなく、安部小百合でした。

「じぇじぇっ!」

突然現れたアキを見て、目を真ん丸にして驚く小百合。

「じぇじぇじぇじぇじぇっ!」

「じぇじぇっ」

「じぇじぇ」

「じぇじぇじぇじぇじぇじぇ … 」


思いがけない再会でした。

… … … … …

とんでもない格好で踊っていた若者たち …

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ソイヤ、ソイヤ!と叫んでいた人たち …

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スケバンがヨーヨーで戦うやつ …

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そこそこ可愛かった子たち
ちなみに6番・樹原亜紀、9番・名越美香、4番・新田恵利です …

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2013年06月26日 (水) | 編集 |
第75話

「じぇじぇじぇっ!」

「誰? … おはよう!」


♪師走は忙しい、町は慌ただしい …

< ユイちゃん、事件でがす … 正式なメンバーですら、中々会ってもらえない太巻さんと、何故か今、奈落にふたりきり … >

「ねえ、ガール?」


太巻は、一旦踊るのを止めて、アキに声を掛けました。

「はいっ」

♪果てしなく …

二通りの振りをしてみせて、アキに尋ねました。

「どっちがいいと思う?」

「はい?」

「だから、どっちが好き?」

< 試されてる … これはテストなのか? おらのアイドルとしてのポ、ポ、ポテンシャルを試しているのか? … 教えてけろ、ユイちゃん! >


考えあぐねるアキ。

「どっちでもいいか? はは … 」

とにかく何かせねば …

アキは、慌てて鏡の前に立つと …

両肩を突っ張らかして肘から先をブラブラさせながら左右に動きました。

♪果てしなく …

「 … がいいと思います」

太巻が聞いたどちらでもない、咄嗟に自分で考えた振りをみせたのです。

それを見た太巻は腕を組んで考え込んでしまいました。

よせばいいのにアキはもう一度、同じ振りをしました。

♪果てしなく …

「 … がいいと思います」

じっと、アキのことを見つめる太巻。

< やべえ … 怒ってる … >

… … … … …

「おはようございます」

その時、頭上から声がして、ステージ衣装を着た少女が、らせん階段を下りてきました。

「じぇじぇっ」

< め、めんこい … 顔ちっちぇ、そして足が長え!>


アキはその美少女に目を奪われました。

「マメりん、Bメロの振り、今日から変えるから」

マメりんと呼ばれた少女は返事をすると太巻の隣に並びました。

♪果てしなく …

「 … にするから」

太巻はアキと同じように踊ってマメりんに見せました。

「はいっ」

♪果てしなく …

今度はふたり並んで踊りました。

自分の振りが採用された? … アキは唖然として、ふたりのダンスを見つめました。

「皆に伝えておいて」

太巻はマメりんに指示すると、アキに近づいてきました。

「僕、初めて?」

「あ、直接は … 訛りすぎる海女の」

「ああ、ネットで見た … そうだそうだ、『潮騒のメモリー』歌ってた … 」


アキはうなずきました。

「東京に来てたんだ、もうひとりの子は?」

「ユイちゃんは、家庭の事情でちょっと遅れてて … 」

「太巻さん、戻ってもいいですか?」


振りの確認を終えたマメりんがそう聞きました。

「ごめんごめん、知ってるよね? 有馬めぐ、通称マメりん、アメ女のセンター」

太巻がアキに紹介しました。

「じぇじぇっ」

< この子がセンター! … どうりでめんこい … >

「誰のシャドウやってるの?」

アキに尋ねる太巻。

「あ、いや、まだ … 」

「まだ決まってないのか … じゃあ、マメりんのシャドウやるといいよ、いいよね?」


太巻は、マメりんにそう言いました。

< びっくりしすぎて、『じぇっ』すら出ませんでした … >

マメりんは、特に返事はせず、ニコリと笑って、またらせん階段を上って行きました。

「じゃあ、頭からやるよ」

アキは急いで、太巻の隣に並んで、言われるとおりに振りをマネました。

♪暦の上ではディセンバー …

階段の上からその様子を見たマメりんが一瞬、不満げな顔をしましたが … 太巻の言葉は絶対なのです。

… … … … …

休憩所、GMTのメンバーがたむろしています。

「太巻さんって、元々ダンサーだったらしいよ」

しおりが言いました。

「はっ、マジ? … 知らんかった」

驚く喜屋武。

「ZOOのメンバーやっとたやろ?」

真奈が見当違いなことを言ったので、アユミがツッコミました。

「それ、EXILEの人じゃって」

「トシちゃんのバックで踊ってたんだって」


何処で仕入れてくるのか、しおりは事情通です。

… … … … …

「だから、今でも『振り先』なんだって」

『振り先』とは?

歌詞が先にあって、それに合うメロディをつけるのが『詞先』、メロディが先にあって、それに合う歌詞を書くのが『曲先』だと、しおりは言いました。

「じゃあ、『振り先』ってことは?」

「振りが先なの … 詞も曲もないのに、振りを考えて、それに合う詞と曲をつけていくんだって」

「じぇじぇじぇ~」


… 『じぇ』がGMTにすっかり浸透しました。

「2次元から3次元、2次元から3次元 … ズッキュ~ン!」

ガラス張りの社長室で振りを考えている太巻を見て、感心するアキたち。

「音楽もないのにさ、よくあんなに踊れるよね … 」

… … … … …

「まいど、無頼寿司です! 特上10人前お持ちしました」

寿司の出前が届くと、太巻が社長室から出て来ました。

「皆、寿司届いたよ!」

アメ女のメンバーを引き連れて、上の階へ上がって行きます。

「太巻さん来ると、必ずお寿司取るの」

薫子が言いました。

「もちろん、食べれるのは正規メンバーだけだよ」

しおりがアキに念を押しました。

… 揺るぎない階級制度です。

… … … … …

梨明日。

春子が店の準備をしながら、電話をしています。

「そうよ、そのアイドルよ … これから1年間レッスンして … っていうかさ、この話今度でもいいかな?! … 今仕込みでバタバタしてるんだわ!」

電話の相手は、正宗です。

… … … … …

「仕込みと娘とどっちが大事なの、君は? … アイドルなんて、そんな地に足のついてない!」

「ああ、もうやったやった … そういうのね、さんざん先週やりました」

「先週って … 知らないよ、何も聞かされてないんだよ、こっちは!」

「あの、もう踏ん切りついてるんで、お構いなく … 」

「ザックリしてるなあ … いきなり訪ねて来たんだぞ」

「あっ、っていうかさ、何で追い返したの?」

「 … 追い返してはいない。

それは兎も角、平気なのか、芸能界なんて … ダマされてるんじゃないのか?!」


… … … … …

「大丈夫よ … 社長が太巻だから」

意味ありげに春子は言いました。

「フトマキ? …  えっ、太巻!」

その名前を聞いて、正宗は相当驚いています。

「へえ、知ってんだ?」

「 … 知ってるも何も、それ、ダメだろ!」


… … … … …

一方、アキは合宿所から夏へ電話をかけていました。

「うん、だから、おらのダンスが太巻さんに認められたんだ! … ♪果てしなく~ってやつ」

「はああ、いがったなあ … センターって真ん中のことだべ?」

「違うよ、夏ばっぱ … シャドウっていうのは、補欠みてえなもんだ。

センターの人がケガで休んだ時だけ、代わりに踊るの」

「ああ、そうかいそうかい … ま、元気で何よりだ」


囲炉裏端で電話をかけている夏の横で弥生が焼いたスルメを裂いています。

「まあな、皆変わりねえか?」

「ねえ、弥生の差し歯が取れたぐらいだ」

「じぇじぇっ」


それは一大事です。

ニタっと笑うと前歯に1か所隙間ができています。

弥生は夏に代わって電話に出ました。

「聞いてけろアキ、まだ誰にも教えていない穴場があってよ、行ってみたらウニがゴロゴロいてよ … 『じぇっ』って言った途端に差し歯が飛んでよ … 気がついたら海の底だあ、なんぼ探しても見つからねえ!

20万の損害だ! はっはは … 」


相変わらず豪快に笑いました。

「あ、そうだ、ワカメと海苔送ってけろ、味噌汁さ入れるから」

… … … … …

電話が終わり、アキは二段ベッドの上に同室の薫子が戻って来ていることに気づきました。

「ごめんごめん、うるせかったべ?」

「東北の訛り、懐かしい」


薫子は微笑みながら言いました。

「宮城と岩手はやっぱ違うか?」

「北の方だから結構似てる、『じぇじぇっ』とか言わねえけど」

「そうか … まあ、おらの訛りは自己流だけどな」

< 何かと不安だらけですが、取りあえず、飯と寝る部屋と訛ってるルームメートは確保できました >


… … … … …

アキは『暦の上ではディセンバー』を覚えるため、消灯後もヘッドフォンをつけて流していました。

♪果てしなく ラララ 貪欲、貪欲 …

「あっ!!」

突然飛び起きるアキ、何かを探して荷物を漁り始めました。

「大丈夫か?」

何事かと、薫子が心配して声を掛けました。

アキが取り出したのは、1通の封筒でした。

『これ、あとで読んでね … 』

上京する時に駅で春子から渡されたものです。

不意に思い出しました。

… … … … …

「危ねえ、危ねえ … 忘れるとこだった」

部屋を出て、階段に腰を下ろし、封を開けました。

『アキへ

今ごろあなたは宮古から仙台へ向かう途中でしょうか、あるいはもう新幹線に乗ったかしら?』

「ごめん、ママ … とっくに東京、だいぶ落ち着いてる」

『二度にわたって手をあげてしまったこと、流石に申し訳なかったと、多少思わなくもないです。

その頃から … いえ、もっと前、あんたがアイドルとやらにあこがれはじめた頃から、いつかこの話をしなくちゃと思っていました。

これはママの、誰にも話していない、数年間の話です … 』

… … … … …

< 1984(昭和59)年、夏 … おらのママこと天野春子さんは、上野駅に降り立ちました。

素人参加型オーディション番組『君でもスターだよ!』に出場するためです。 >

「はい、7組目のチャレンジャーは、東北ブロックから岩手県北三陸市の高校生、天野春子君です」


司会者に紹介されて、春子はステージに上がりました。

歌は松田聖子の『風立ちぬ』です。

< いける! ママは手応えを感じたそうです … 歌いだしのリズムも高音の伸びも申し分ない …

そして、チャンピオンの歌を聴いた時、ママは勝利を確信しました … 唯一、不安なことがあるとすれば、審査委員長のヘッドフォンのコードは抜けてる … >


… … … … …

「お待ちかねの結果発表 … スイッチオン!」

ドラムロールの後、電光掲示板に表示された結果は …

「62対38でチャレンジャー天野春子君の勝利!」

司会者が春子の手を取り高く掲げると、頭上のくす玉が割れて紙吹雪が舞いました。

< 結果は圧勝、ママは見事、第135代目チャンピオンの栄冠に輝きました >

トロフィーを手に、チャンピオンの証の王冠を被りマントを羽織って、満面の笑みを浮かべる春子。

思えば、この時が絶頂でした。

「さあ、新チャンピオンの天野春子君、来週も勝ち抜けるのか? … と、言いたいところですが、ここで悲しいお知らせがあります」

「えっ?」

「 … 実は、『君でもスターだよ!』は本日の放送を以て終了となります」


全く寝耳に水の話でした。

「7年間、ありがとうございました!」

「ええええっ!」

「来週からこの時間は、『ものまね、君でもスターだよ!』と題しまして、装いも新たにスタートいたします!」

< 突如告げられた番組の打ち切り、ママは天国から一転、奈落の底へと、突き落とされました >


… … … … …

「あの、私ってどうなるんですか?」

「まあ、幻のチャンピオンってとこだよね」


プロデューサーは無責任に笑いました。

「あの困るんです、本当に困ります … 」

納得できずに食い下がる春子にプロデューサーは聞きました。

「ものまねできる、伊代ちゃんとか?」

「 … ものまね、ちょっとできないんです … 」


… … … … …

トロフィーと花束を手に楽屋を出た春子は、途方に暮れていました。

「ちょっと待ってくださいよ」

「しつこいなあ」


先ほど、春子たちのバックで踊っていたダンサーの中にいた、ひとりの青年がプロデューサーに食いついていました。

「ものまねできないの?」

「こう見えて、僕トシちゃんのバックで踊ってるんです」

「知らねえよ、ものまね番組だよ、ものまねできなきゃクビ!」


冷たく言い放ったプロデューサー。

… … … … …

ブツブツ言いながら歩いてくる青年、春子とすれ違いざまぶつかってしまいました。

「あ、すみません … 」

落ちた花束を拾う青年。

「ありがとうございます … 」

ふたりはまたお互いに別々の方向へ歩き始めました。

「ものまねなんかできないよ … 」

その青年こそ、若き日の荒巻太一 … 太巻だったのです。

『その人がママの運命を変えることになるとは、その時は思いもしませんでした … 』

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2013年06月25日 (火) | 編集 |
第74話

< 上京したアキは初日から過酷な試練を受けまくります。

ユイが来なくて、あからさまに落胆するマネージャー水口。

不意打ちの自己紹介、揺るぎない階級制度、自己紹介 … きれいな劇場、奈落と呼ばれる吹き溜まり、自己紹介 … 自己紹介に次ぐ自己紹介。

そして、ダメ押し … >


… … … … …

1年ぶりに訪ねた実家のマンションで、アキはバスローブをまとった見知らぬ女性と出くわします。

「誰?」

女性が正宗に尋ねました。

「娘 … 」

正宗が答えると、女性はこちらを一瞥しただけでリビングに消えました。

… … … … …

正宗はドアを閉めて外に出ました。

「何しに来た?」

… ご挨拶でした。アキは招かざる客だったようです。

「 … ごめん」

「いやいや、怒ってないけど、何で来たのかなと思って」


その時、アキの携帯に着信が … 春子からでした。

… … … … …

「あんたさあ、電話ぐらいしなさいよ、心配するじゃないの!」

開口一番、怒られました。

「手紙読んだの? なんか食べたの? … えっ、今何処なの?!」

… … … … …

「ああ、うん … 世田谷」

正宗の顔色が変わりました。

「バタバタしちゃうから、最初に挨拶だけするべえと思って … 」

「 … あっそう、パパ元気、変わりない?」


アキは振り返って、父の顔をまじまじと見ながら答えました。

「うん、ものすご~く元気 … 普通、普通に元気」

正宗が顔をのぞきこんで、にらむので仕方なく言い換えました。

… … … … …

「ふ~ん … ああ、そうだ、あんたユイちゃんから何か連絡あった?」

春子は梨明日から電話していました。

「ないけど … 」

… … … … …

病院で、よしえ、ヒロシ、ユイが功の主治医から受けた説明は、『意識が戻ったとしても、後遺症、特に脳の疾患なので、言語障害、手足の麻痺が残るかも知れない … 』というものでした。

… … … … …

「皮肉なもんだよな、あんなに東京さ行きたがってたユイちゃんがこんなことになるなんて … 」

「んだな、アキちゃんは元々、消極的っつうか、付添みたいな感じだったもんね」


梨明日のカウンターの大吉と保はユイの運の悪さを憐れんで、何となく湿っぽくなっていました。

「あ、アキちゃん、変わりなかった?」

話題を変えようと保は春子に訪ねました … 今朝の列車で行ったばかりですが …

「う~ん、何か変 … あの子、何か隠している」

勘のいい春子は、アキの態度からそう感じたようです。

… … … … …

「私の部屋は?」

「ああ、出て行った時のまんまだ」

「入っていい? 9月から学校通うから、カバンとか必要なもの取りたいの」


標準語に戻るほど、アキにはショックな出来事でした。

正宗はドアを少し開けて、中の様子を窺がってから、アキを部屋に招き入れました。

アキは恐る恐る玄関を上がると自分の部屋に入りました。

真っ暗な部屋の中、アキは頭を抱えてベッドに倒れ込みました。

< 最悪だ、慰めてもらおうと思った自分が馬鹿だった … 知りたくもねえ、パパの秘密を知って、却って荷物が増えちまった! >

… … … … …

必要なものをカバンに詰めるアキに向かって、正宗は話し … 弁解しはじめました。

「酒屋の娘なんだ、今はコンビニになっているけど … 彼女もバツイチで、中学の頃、一緒に図書委員をやった仲で … 起こりがちなんだよな、同窓会ってこういうの。

これだけは言わせてくれ、春子とは去年の年末に離婚が成立している … 同窓会は1月4日、つまり1分1秒たりとも不倫じゃないんだ!」

「 … お邪魔しました」


… … … … …

実家には居場所がなく出てきたアキ。

< ママ、ユイちゃん、会いでえ … 夏ばっぱ、今すぐ海さ潜りでえ … 陸はやんだ、都会はこりごりだ >

歩道橋の上で悲観に暮れていると、誰かが名前を呼びました。

「 … 三高の黒川アキだよね? わあ、どうしたの? 超久しぶりじゃん、元気?」

「ああ、うん … 元気元気」

< その子はこっちの高校のクラスメート、いじめグループの主犯格で陰で私の悪口を言いまくっていた子です >


ヤケに親しげに話しかけてきて、少しでも早くこの場から離れたいアキを捕まえました。

「何かあれでしょ、東北かなんかで超人気なんでしょ? … ネットで見たって誰か言ってた、すごいじゃん、超地味だったのに」

「誰々?」


仲間らしき男女が数名集まってきました。

「黒川アキ、知らない? ネットアイドル」

「ああ、何か見たことあるような気がする」


アキは振り切って逃げるように早足で歩き始めました。

「調子こいてるんじゃねえよ」「ハハハ、本当にアイドル?」

何を言われても、背中から罵声を浴びせられても、アキは答えず、振り向かずにどんどん進んで行きました。

… … … … …

タクシーから降りるアキと水口。

アキはさっきからずっと泣いていました。

「何、お父さんに会えなかったの?」

水口に尋ねられても、泣き止まず答えることもできません。

「泣いてちゃわかんないよ」

水口は困ったような顔をしましたが、アキの手から荷物を取ると目の前の扉をくぐりました。

「ここ何処ですか?」

やっと口をききました。

「谷中、GMTの合宿所 … 入って」

… … … … …

そこは、相当古い木造の建物で、合宿所というよりは、昭和の頃の下宿屋といった感じでした。

だだっ広い居間で、ひとりの少女がカップラーメンを作っているのを見て、水口が注意しました。

「おいおい、こんな時間にそんなもの食うなよ」

「 … すみません」

「さっき、バイトでいなかった徳島の子」


アキに紹介しました。

「ほら、自己紹介!」

水口に促されて、その少女は嫌そうに立ち上がると、笑顔を作っていきなり阿波踊りの手振りを始めました。

「やっとさあ、やっとやっと!

はい、宮下アユミ、19歳! 徳島県でアイドルグループ『うずしお7』のリーダーやってました!

やっとさあ! … はい」


それだけ言うと、真顔に戻って腰を下ろして、ラーメンをすすり始めました。

呆然と見ていたアキですが、水口が無言で『次はお前の番』だと言っていることに気づきました。

もうこうなったら行き当たりバッタリです。

アキは荷物を下ろすと、アユミの前に立ち、両手を頭の上で合わせながら言いました。

「岩手県北三陸市から来ました」

そして、鼻をつまんで潜るジェスチャー。

「海女のアキちゃんこと、天野アキです!」

最後は腰に手を当ててポーズです。

「あれっ、何かそれっぽくなってない?」

上京して、水口から初めて認められた気がして、アキは少しうれしくなりました。

「へへへ … 皆ここさ住んでるんですか?」

「地方組は大体そうね」

「あと親に見放された奴な」


風呂はないから、銭湯か劇場のシャワーを使うように、冷蔵庫は共同だとアユミが教えてくれました。

「誰と相部屋なん?」

水口に尋ねるアユミ。

「部屋割りは明日やろう … 取りあえず、今日は俺の部屋でいいよね」

水口もこの合宿所で暮らしていることがわかりました。

でも、『俺の部屋でいい』とは?

「 … 俺の部屋?」

アキはアユミに尋ねましたが、答えは返ってきませんでした。

… … … … …

水口の部屋、ベッドの横に寝床が用意されて、今夜アキはそこで眠ることになりました。

上京初日で疲れているはずなのですが、なかなか寝付くことができません。

< 夏ばっぱ、事件でがす … お父さん以外の男性と同じ部屋で寝るなんて … その距離僅か3~40センチ。

事件ってほどじゃねえが、大ピンチでがす … どうすべ? いきなり襲われたら、どうすべえ? >

「いやいやいやいや … 」

< 仮にもおらアイドルの卵、いくら水口さんでも大事な商品には手出さねえべ? >


その時、水口が寝返りを打ち、アキはドキッとしました。

< いやいやいやいや … 水口さんだって、社会人である前に健康な男性だ、そういった方面の欲望もあるだろう … 理性を失い、野獣と化して … >

「いやいやいやいや … 水口さんに限って」


思わず声に出してしまったアキ。

「うるさいよ、ブツブツ言ってないで早く寝て」

… 注意されてしまいました。

眠れないときのお決まり、アキはウニを数え始めました。

< ウニが1匹、ウニが2匹、ウニが3匹、4匹、5匹、6匹、7匹 … >

「うわあ、数えきれねえ~へっへっへ」

「天野、怒るよ?」


二度目の注意を受けました。

こうなったら、もっと強力なおまじないを …

「勉さんがひとり、勉さんがふたり、勉さんが3人、勉さんが4人、勉さんが5人、6人 … 」

「だから止めろって!」


水口が体を起こして、アキの顔をのぞきこむと … すでに寝息を立てていました。

… … … … …

翌朝。

アキが目を覚まして、台所へ顔を出すとメンバーはすでに皆揃って朝食の準備をしていました。

「味噌汁?」

「うん、実家からネギ送って来たから」


と、埼玉出身の入間しおり。

「ご飯は、小野寺ちゃんちのササニシキだよ」

「家は農家だから」


米どころの宮城出身の小野寺薫子です。

「じぇじぇ、うまそうだぁ」

「明太子もあるとよ」


福岡の遠藤真奈です。

「島らっきょうとゴーヤの漬物もあるからさ、はいこれ、チラガー、美味しそうでしょ?」

沖縄の喜屋武エレンが皿に載せた豚の顔を見せました。

「じぇじぇっ」

「ねえねえねえ、昨日から気になったんだけど、何でいちいち『ぜ』って言うの?」


しおりが尋ねると、他の子たちもうなずいて皆でアキの顔を見ました。

「ぜ? … ああ、『ぜ』じゃなくて『じぇ』だ … 海女さんたちのしゃべる方言で、ビックリした時に『じぇ』って言うんだ」

「面白いね、もっとびっくりした時は?」

「じぇじぇ」

「もっともっとびっくりした時は?」

「じぇじぇじぇ」

「増えんのかよっ」


皆、笑いました … 何だか和やかな朝です。

… … … … …

「は~い、部屋割り発表します」

水口が食堂にやって来ました。

席に着く一同。

「天野アキは1号室に入ってください、入間しおりと小野寺薫子と同室です」

「じぇーっ、3人で一部屋ですか?」


今覚えた『じぇ』を気に入ったのか早速使うしおり。

「部屋余っとるんやし、ふたりずつにしよう」

アユミがそう言いましたが、水口は却下しました。

「まだまだ増える予定なんだよ … つうか入間、お前実家だろう、何勝手に泊まってるの?」

「だって、一応リーダーだし」

「ここで暮らすんなら、交通費返せよ、ドロボー … あと天野、これ見て歌とダンス覚えて」


アメ女のCDとDVDを何枚か渡されました。

「『涙目セプテンバー』と『暦の上ではディセンバー』が代表曲だけど、カップリングの『ペンフレンドはバンクーバー』も聴いといて」

そう指示を与えました。

「ねえねえねえ、誰のシャドウ?」

しおりが尋ねると、水口は素っ気なく答えました。

「それは太巻さんが決めることだから」

< シャドウ(Shadow)というのは、正規メンバーが病気やケガで抜けた時の穴埋め、つまりピンチヒッターです >

「奈落空いてるから、飯食ったらおいで」


そう言うと、水口は出かけて行きました。

… … … … …

谷中の合宿所からアメ横までアキは自転車を走らせました。

「おはようございます!」

町の人たちに挨拶をしながら、東京EDOシアターに着きました。

シアター正面の電光掲示板にはアメ女たちの映像が流れされています。

アキはそれを見上げました。

… … … … …

ロッカーで着替えたアキ、水口から渡されたCDとDVDをじっと見つめ … 何を思う?

♪暦の上ではディセンバー、でもハートはさ …

奈落の方から、男性の歌う声が聴こえてきます。

通路を抜けて中を覗くと、姿見の大きな鏡の前でひとりの男性が歌いながら躍っていました。

♪暦の上ではディセンバー、でもハートはサバイバー

その男性は … 誰あろう …

「じぇじぇじぇっ!」

「誰?」


男はアキの方を振り向き、腕を組みながら言いました。

「おはよう!」

アキが会釈をすると、その男はまた歌いながら踊り始めました。

< いかに芸能界に疎いおらでも、その顔にはピンときた … アメ横女学園のプロデューサーであり、ハートフルの社長、荒巻太一、通称『太巻さん』つまり会社で一番偉い人 >

♪師走は忙しい、町は慌ただしい …

< ユイちゃん、事件でがす … 正式なメンバーですら、中々会ってもらえない太巻さんと、何故か今、奈落にふたりきり … >

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2013年06月24日 (月) | 編集 |
第73話

< 1984(昭和59)年、夏 … おらのママこと天野春子さんは、上野駅に降り立ちました。

上野は東京の東の玄関、しかし東北新幹線はまだ乗り入れてなくて、大宮がらは各駅停車を使ったそうです >


18歳の春子は、上野のアメ横で通行人にシャッターを押してもらって記念撮影をしました。

< それから25年後 … 2009(平成21)年、夏 … おらこと天野アキも上野に降り立ちました >

相変わらず賑わうアメ横で同じようにカメラならぬ携帯で通行人に頼んで記念撮影をしたのでした。

… … … … …

< 北三陸から上野に行ぐには、宮古まで北鉄を使い、釜石までは山田線、盛までは南三陸リアス線(めんどくせえ)、大船渡線に乗り換え気仙沼、気仙沼線で石巻へ、石巻線で仙台、そっから新幹線でわざわざやって来たのです >

アキは水口に連絡を入れました。

「もしもし、着いた?」

「はい、着きました」

「あ、いたいたいた … 後ろ向いて、上だよ上」


言われた通り振り向いて見上げると、『東京EDOシアター』という看板が掲げられた建物で手を振る水口が見えました。

… … … … …

「アキちゃん、やっと来れたね」

水口は『東京EDOシアター』の入り口でアキを歓迎して迎えました。

「はいっ」

「疲れたでしょ、ご飯食べようか?」


アキの手から荷物を取って階段を上がり始めた水口がふと足を止めました。

「 … つうか、ユイちゃんは?」

「えっ、メール見てないですか?」


携帯を取り出すとメールの着信を確認する水口。

『件名:緊急連絡!!!

ゆいちゃんの父ちゃんが倒れだ!(‘j’)/』

「じぇっ!」

水口の手からアキから預かっている荷物が全部落ちました。

慌てて拾うアキ。

「じぇじぇっ、ユイちゃん来れないの? じぇ … マジかよ」

< 出発前夜、ユイちゃんの父ちゃんが倒れました >


『ごめんね、アキちゃん』

『そしたら、おらも行ぐのやめるか』

『ダメ、それはダメ! アキちゃんは行って! … 大丈夫、必ずすぐ行くから、ねっ』

水口は頭を抱えて座り込んでしまいました。

「会社の人間に言っちゃったんだよ、今日岩手からGMTのセンター候補が来るって … 」

「センターって?!」

「ユイちゃんだよ、ユイちゃんに決まってるでしょ!」


強い口調で言った水口、あからさまに態度が変わりました。

「 … ごめん、君に言っても仕方ないけど」

「本人は来たがってたんですけど」

「こっちもだよ! … 君に言っても仕方ないけど」

< 君に言っても仕方ない … という言葉を、水口さんはこの日、23回も口にしました >


水口は手ぶらでサッサと階段を上がって行きます。

「ついて来て!」

< おらも23回、申し訳ねえ気持ちになりました >


… … … … …

「本社は渋谷にあるんだけど、アメ横女学園関連のスタッフはここに常駐しています … これからお世話になる人たちだから、ちゃんと大きな声で挨拶して」

水口の後について事務所に入ったアキは言われた通り大きな声で挨拶をしました。

「おはようございます、天野アキです」

アメ女のチーフマネージャーの河島耕作に紹介されました。

「あれ、ふたりじゃなかったけ?」

「ええ、ちょっと事情があって、また後日」


先ほどと違って、そつなく答えました。

「あそ … 可愛い方?」

河島は、さほど気にしてはいないようで、アキの顔を見て尋ねました。

「いえ、訛ってる方です」

「うん、期待してるよ」


ほとんど興味を示さずにお決まりの文句です。

… … … … …

「あの、太巻さんは?」

「ここには滅多に顔を出さないの、ここが社長の部屋」


事務所の隣のひときわ広いガラス張りの部屋を水口は指しました。

『太いものには巻かれろ』『巻かれて太れ』『巻かれて巻かれて強くなる』

会社のモットーでしょうか、ホワイトボードに何枚も紙が貼られていました。

… … … … …

楽屋口。

『天野秋 GMT(岩手)』と書かれた名札を渡しながら、守衛が水口に聞きました。

「可愛い方?」

「訛ってる方」


水口は、壁に掲げられた『着到板』と書かれたパネルの前にアキを連れて行きます。

「名札、入る時に必ず裏返して」

アメ女の全メンバーの名札が人気順にピラミッドに並んでいました。

「じぇじぇっ、こんなに?」

その数に驚くアキ、水口はピラミッドの頂点あたり指して言いました。

「この辺は人気だから、さすがに知ってるでしょ?

ファンはこの8人を『アメ女八賢伝』って呼んでいる」


3段目までがレギュラー、その下にリザーブ、ビヨンドと続き、ビンテージはOBだと説明しました。

「で、ここがGMT」

パネルには入ることができず、その下のスペースがGMTの名札を掛ける位置でした。

すでにある5名の横にアキの札が掛けられました。

… … … … …

「おはようございま~す」

ステージ衣装を着たふたりの少女が下りてきました。

ポカンと眺めているアキに水口が注意しました。

「何やってるの? 挨拶しなよ、先輩なんだから」

慌ててふたりに挨拶をするアキ。

「ああ … どうも、お、お、おばんです」

「ふたりはアメ女の新メンバーで … 」


水口が言いかけると、ひとりが元気よく自己紹介を始めました。

「アメ横女学園、出席番号36番 … 片思い星からの転校生、両思いになると死んじゃうの。

み~んなのアリサこと、高幡アリサ13歳で~す! よろしくピョン!」

「じゅ、13歳?」


呆気にとられているアキに構わず、待ちかねたようにもうひとりの女の子も自己紹介を始めました。

「はいはいはい、アメ女の『あ』は?」

「愛してるの『あ』」


アリサだけでなく水口を声を合わせて答えました。

「アメ女の『め』は?」

「メロンの『め』」

「アメ女の『じょ』は?」

「情緒不安定の『じょ』」


女の子は「よくできました」と手を叩き、そして尋ねました。

「あ、ところで私は誰だっけ?」

「成田りな!」

「上から読んでも … 」

「なりたりな!」

「下から読んでも … 」

「なりたりな!」

「成田りな、出席番号37番、15歳! う~わぉ!」


とてもアキがついていけるテンションではありませんでした …

< 帰りたい … 本気でそう思いました。

東京に着いて、まだ2時間ですが、年下の先輩から洗礼を受け、すでに心が折れそうなアキです >

「ああ、天野にも面白い自己紹介考えてもらうからね」


とんでもないことを水口は言っています。

「じぇじぇっ!」

「じゃあ、劇場行こうか?」


… … … … …

「去年、オープンしたアメ女専用の劇場です … 平日は7時半から、土日は2ステージ、アメ女のショーをここでやってます」

ドアを開けて中に入ると、レギュラーメンバーが本番さながらのリハーサルを行っていました。

「すげえ … 」

その華やかさに目を奪われるアキです。

「写真撮ってもいいですか? ユイちゃんに送ってやっぺえ!」

そう言うや否やアキはステージに携帯のカメラを向けてシャッターを切りました。

「こんな立派な舞台立てるって知ったら、ユイちゃん喜ぶ … 」

「立てないよ」


水口はアキの言葉を遮りました。

「 … 立てるのはアメ女の正規メンバーだけ。当たり前じゃん、そんなに甘くないよ … 皆、最低1年はレッスン積んでるんだから」

水口は冷たく言い放つとまたもサッサと歩き出して、舞台の横を抜けて奥へ進んでいきました。

遅れないように後からついて行きながらアキは、尋ねました。

「じゃ、GMTは?」

「シャドウだね … 代役のこと、正規メンバーがケガや急な体調不良、あるいはテレビの仕事で休んだ時に代わりに踊ってもらうから、振りは覚えてもらいます」

「じゃあ、誰かがケガしないと出れないんですか?」

「だからって、靴に画びょうとか入れないでね」


水口の話し方は、あまり感情を出さないので、冗談で言ってるのか本気だかよくわかりません。

… … … … …

< あれっ、何だかイメージしてたのと、随分違う … >

貨物用のようなエレベータに乗って地下に下りました。

「ここは?」

「レッスンルーム、うちら『奈落』って呼んでるけど」

「ならく?」

「ステージの真下だから」


工事現場のような通路を抜けると結構広い板張りのスペースが広がりました。

「じぇっ」

「あれ、お前らふたりだけ?」

「喜屋武ちゃんと小野寺ちゃんは買出し」

「宮下さんはバイトに行きんしゃったよ」

「前に話した、岩手の『潮騒のメモリーズ』」


水口は、ちょうどいたふたりにアキのことを紹介しました。

「北三陸市から来ました、天野アキでがす」

「あれ、可愛い方は?」


アキの顔を見るなり、ひとりがそう尋ねました。

「来ない … 」

「ええ、何それ? センターどうするんですか?」

「うるせえな、ほら早く自己紹介」


さっき上の階であったアメ女の子たちに対する口のきき方と完全に差があります。

今声をあげた方の子がアキの前に立ちました。

「海はないけど、夢はある! 埼玉在住アイドル … NOオーシャンの元気印、入間しおりです。

今日も東武東上線に乗って、元気い~っぱい」


棒読み、無表情で自己紹介しました。

「元気にやれよ、こらっ」

苦笑いする水口。

「福岡天神、ごほごほっ … 親不孝ドールズの柚子胡椒担当、遠藤真奈ばい!」

風邪気味なのか咳き込みながらの自己紹介でした。

「よろしぐ … えっ、GMTって5人しかいないんですか?」

「なんかね、いろいろ難航しているみたい … 親に連れ戻されたりとか」

「47人はちょっと無理ばいね」


… 初耳でした。

「岩手ってどこ、東北だっけ?」

「新潟の上じゃなかと?」

「何が有名? イタコ、恐山」

「キリタンポじゃなかと?」


好き勝手なことを言い合う、しおりと真奈。

「伊達正宗 … 違う、わかったナマハゲ!」

「 … 海女さん」


ふたりに海女が理解できたかどうか … ?

… … … … …

「あ、あれっ、水口さんは??」

いつの間にか姿が消えていました。

「とっくにくさ、出て行きんさったよ」

所詮、アキはそんな程度の扱いなのです。

「皆さん、うちらのこと何て聞いてました?」

「可愛い方は華があるからセンター確定で … 訛ってる方、何か言ってたっけ?」


しおりが聞きましたが、真奈も覚えていないのか、黙っています。

「 … もういいです」

慣れてはきましたが、さすがに気落ちするアキです。

「ばってん、キャラは強烈だって!」

「そうそうそう、一般受けしないけど、マニアにはたまらない奴だよね」


本人には言えないわけです。

「一般受けはしない … 」

元気づけようと言ったのでしょうが却ってアキは凹んでしまいました。

… … … … …

そこへ買出しに行っていたふたりが戻って来たのでしおりが紹介してくれました。

「この子、喜屋武ちゃん、沖縄の子」

「ハイサイ!」


喜屋武エレン、くったくのない笑顔で片手をあげました。

そして、もうひとり …

「はずめまして」

「訛ってる、何処、ねえ何処?」

「仙台です」

「あっ、あの『ずんだずんだ』の子?」


ユイの家のパソコンで動画を見た『仙台牛タンガールズ』の子でした。

「小野寺薫子、14歳でがす」

「じぇじぇ」


何故か少しホッとするアキでした。

「あと徳島の子がいるんだけどさ、今日はバイトって」

「あ、泊まるとこあるの?」

「世田谷さ、実家があるんで」


その時、急に音楽が流れ始め、4人は話を止めて踊り始めました。

< GMTは今のところ、アメ横女学園の妹分っていうか、2軍扱いみたいです … 急に来るかもしんねえ出番に備えて、奈落と呼ばれる場所でレッスンに励んでいます >

… … … … …

取りあえず、実家に顔を出すため、シアターを後にしたアキ、外はもう日が暮れていました。

「やっぱり、東京好きじゃない … 」

< そんなに甘ぐねえと思ってたけど、こんなに甘ぐねえとは … ママ、夏ばっぱ、おらやって行げるのかな?

… ユイちゃん、早く来てよ >


… … … … …

病院の薄暗いロビー。

ユイはアキからのメールを受け取りました。

『ユイちゃん、

おらは無事に東京さ着きました。

アメ女の劇場、すげえ!

早くユイちゃんとこの舞台さ立ちてえ!

待ってるからね。』

アメ女のリハーサル風景を写した写真が添付されていました。

「電源切れよ、ここ病院だぞ」

ヒロシにたしなめられましたが、ユイの目は携帯の画面を見つめたままです。

「ふたりとも中入って」

病室から出てきたよしえが声を掛けました。

… … … … …

< 1年ぶりの東京、1年ぶりの実家 … >

ようやく辿り着いたアキはマンションのチャイムを鳴らしました。

「は~い!」

正宗の返事が聞こえました。

「アキだけど」

突然、バタバタと慌ただしい音が聞こえ始めました。

ドアを少しだけ開けて、父が顔を出しました。

「ごめん、急に … 」

「全然平気、全然平気 … 何?」


一見、平静を装っていますが、どこか変です。

「ママから聞いてない?」

「聞いてない、聞いてない、聞いたことない … えっ、何?」

「中、入っていい?」

「いやいやいやいや … 」


ドアをそれ以上、開けないばかりでなく、アキを部屋に入れようとしません。

「どうしたの、変だよ?」

「誰が、パパが? 変なことなんにもねえよ!」


思わず、ドアを広く開けました。

その刹那、髪をかき上げながらバスローブを羽織った女性が通り過ぎました。

「ジーザス … 」

天を仰ぐ正宗。

< そして、ダメ押し … >

引き返してきた女は、リビングへと入って行きました。

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2013年06月23日 (日) | 編集 |
さて、次週の「あまちゃん」は …

2009年夏、アキ(能年玲奈)はひとり東京にやってきた。

上京したアキは初日から過酷な試練をうけまくります

「帰りたい」不意打ちの自己紹介、ゆるぎない階級制度

さっそく、マネージャーの水口(松田龍平)に劇場を案内されるが、「GMT47」のメンバーはまだ5人だけで、人気グループ「アメ横女学園(アメ女)」の代役に過ぎないという衝撃の事実が発覚。

綺麗な劇場、奈落と呼ばれる吹き溜まり

さらに、久しぶりに実家に帰ると、そこには父・正宗(尾美としのり)の恋人が…。失意のどん底で、アキは谷中にあるGMTの合宿所にたどり着き、メンバーとの共同生活が始まった。

自己紹介、自己紹介に次ぐ自己紹介

翌日、アキは上京する際に春子(小泉今日子)から渡されていた手紙を思い出し、ようやく読み始める。そこには、アイドルを目指して奮闘していた春子(有村架純)が、実は社長の太巻(古田新太)と知り合いだったという驚きの事実が綴られていた。

「あの子、何か隠してる … 」

一方、北三陸では、父・功(平泉成)が病に倒れたため上京できなくなったユイ(橋本愛)が塞ぎこんでいた。変に気を使って、ついぎこちなく接してしまう大吉(杉本哲太)や菅原(吹越満)たちを春子は説教する。

ユイちゃん、大事件です

その頃、メンバーが初めてステージに立てたことを祝って、アキたちは寿司屋で大騒ぎをしていた。だが、その隣の席にいたのは、憧れの大女優・鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)だった。

 … 以上

「盛り上がりに欠けるわ~」


あまちゃん 公式サイトより)


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2013年06月22日 (土) | 編集 |
第72話

ついに、アキとユイが東京に発つ日がやってきました。

北三陸駅には、アキを見送るために海女クラブのメンバー、組合長、そして担任の磯野が駆けつけてくれました。

「天野アキの門出を祝して、万歳!万歳!万歳!」

弥生の音頭で万歳三唱のあと、皆は日の丸の小旗を振って、アキのことを送り出してくれました。

ホームには、大吉が特別に用意してくれた貸切りの臨時列車が停まっていました。

車内には、潮騒のメモリーズのポスターや『ガンバレ!アキユイ』と書かれた垂れ幕が吊るされています。

「ありがとう」

「だば、まだ時間があるから、ごゆっくり」


大吉は気を利かせたつもりで、アキと春子を残して、電車から出て行きました。

… … … … …

と言われても、昨夜一杯話ししたので、これと言って特にもう話すこともないのですが。

「 … 忘れ物ないよね、お金はちゃんと二つに分けた?」

アキはまだ夏のことが気になっていて、上の空で返事しました。

「まあ、あれだ … 色々大変だと思うけどさ、ちゃんと水口さんの言うこと聞いて … 本当になんか困ったことがあった時だけ、パパに連絡しなさいよね」

結局、夏は見送りに来ていなかったようです。

なんだか急に寂しくなってきました。

「 … まあ、せっかく近くにいるんだし、あの人も、ねっ?」

「行ぎたくねえ!」

「ええっ?!」


いきなり泣き出したアキ。

「ママ、東京さ行ぎたくねえ」

「ちょっと待って、何言ってるの? 今更」


おろおろする春子。

しかし、車掌の吉田が乗り込んで来たのを見てアキは言いました。

「行かなきゃ … 」

「 … 行くんだ?」


そして、夏からの餞別、北の海女の手拭を取り出しました。

「じゃあね、夏ばっぱと仲良くね、ケンカしないでね」

春子にそう言ったあと、手拭で涙を拭いました。

「はいはいはい … 」

春子は列車から下りる時に1通の封筒を取り出して、アキに手渡しました。

「これ後で読んでね」

< それは、私の知らない母の半生をつづった手紙でした … >


… … … … …

ホームで大吉と並んで見送る春子。

アキは窓を開けて、母に尋ねました。

「ママ、私変わった?」

「えっ?」

「1年前と随分変わった?」


大吉が発車の合図をすると、ベルが鳴り始めました。

「 … 変わってないよ、アキは」

「ママ … 」

「昔も今も地味で暗くて、向上心も協調性も存在感も個性も華もないパッとしない子だけど …

だけど、皆に好かれたね、こっちに来て、皆に好かれた」


列車は、ゆっくりと動き始めました。

「あんたじゃなくて、皆が変わったんだよ」

窓から顔を出すアキを追いながら春子は続けました。

「 … 自信持ちなさい、それはね案外すごいことなんだからね!」

「うんっ!」

「いってらっしゃい!」


春子は晴れやかな気持ちで手を振りました。

「いってきます、いってきます!」

アキは列車の中を走り、手を振りながら、何回も何回も言いました。

「ガンバレ、アキ!」

「ガンバレ、アキちゃん!」


アキは春子たちが見えなくなると、席につきました。

もう一度、今来た道を振り返り、そして、電車が進む方へ向き直って、前を見つめました。

… … … … …

アキを見送った春子と大吉がリアスに戻ると、弥生が気の抜けたように言いました。

「あ~あ、行っちまったなあ … 」

「さあ、これからが正念場だな、観光課長」


今野にそう言われて、保もやはり気の抜けたように答えました。

「張り合いが無くなっちまったな … ミス北鉄の2代目でも探すか?」

「でも、あの子たちは幸せよ、皆に祝福されてさ … あたしなんか誰も見送りなんか来なかったもんね」


春子の言葉に勉さんが琥珀を磨く手を止めました。

「うそうそ、すごい人出だったべ、日の丸の旗振って!」

「いやいや、それは、北鉄を見に来た人たちでしょ? … ウチなんか母親も来なかったんだから、ふふっ」

「春子さん … 」


春子が振り向くと、勉さんが何か言いたそうな顔をしています。

「浜でワカメ採ってたんだよな、夏ばっぱらしいべ」

弥生が横から口を出したので、遮られてしまいましたが、春子は気になって聞き返しました。

「何、勉さん?」

「 … お母さん、いたんだよ、あの日」

「えっ?!」

「夏さん、ちゃんと見送りしてたんだ」

「じぇじぇっ!」


絶句する春子。

「いやいや、そんな訳ねえべ、おらホームさいたけど、見かけなかったど」

弥生は否定しましたが、勉は続けました。

「ホームじゃなくて、浜で … 」

… … … … …

1984(昭和59)年、あの日 …

勉さんは、浜で竹竿に結びつけた大漁旗を持った夏に出くわしたのです。

夏は、旗を突き立てて鉄橋を見上げていました。

… … … … …

「なんだやあ、そったら大事なこと、なして黙ってた勉さん?!」

弥生は責めました。

「誰にも言うなよって、夏さんからワカメもらったから … 」

「それで25年もか?」


保があきれて声をあげました。

「えっ、ちょっと待って、浜でって … えっ、じゃ何で私気がつかなかったんだろう?」

北鉄は夏が待っていた浜の上の鉄橋に出ると、景色を見せるために少しスピードを緩めます。

春子が列車から外を見ていれば、夏に気づいたはずです。

大吉が急に立ち上がりました。

「ごめん春ちゃん、おらが話しかけたからかもしんねえ!」

… … … … …

25年前、春子は列車の海側に座ってぼんやりと外を眺めていました。

「春ちゃん、東京さ行ぐのか? 北鉄も通って、この町もますます活性化するべ」

「うるせえ、ひとりで生きて行くって決めたんだ!」


家出を止めようと説得する大吉のことをうるさがった春子は席を立って、反対側の窓際に移りました。

ちょうど、それが列車が鉄橋に通りかかった時だったのです。

浜では、夏が列車に向かって大漁旗を振りながら叫んでいました。

「ガンバレ、春子! 行って来い、春子! 元気でなあ! 万歳!万歳!万歳! … 」

もしも、大吉が話しかけていなければ …

… … … … …

勉さんの話を聞いた春子は、どうしようもなくやるせない気持ちになって店から出てきました。

心配した大吉があとを追ってきます。

「 … ずっと恨んでた … もしもあの時、お母さんが笑顔で送り出してくれてたら、どんなに気が楽なんだろうって … 」

「笑顔で送り出してたんだな … 」

「ああ、何だよ、何て人だろう、夏さんて … 何なんだよもう、何なんだよもう!」


恨みつらみ、くやしさ、後悔 … いろんな気持ちが渦巻いて、混乱した春子 … 髪をかきむしり、泣きながらベンチに座り込んでしまいました。

「大吉っ、おめえはバカかこのっ! 大吉ばかっ、このっ、大吉っ!」

大吉は春子の前に立って自分自身を殴り始めました。

… … … … …

アキを乗せた列車は、トンネルに入っていました。

これを抜けると、列車は浜が見える鉄橋に出ます。そこには …

「アキちゃん、どうしても行ぐのか? … 東京さ、行ぐのか?」

吉田が名残惜しそうにアキに声を掛けた時、他に誰も乗っていないはずのボックス席から老婆が現れました。

「車掌さん、おしっこさ行ぎたぐなったんだども、次の駅までなんぼかかんべ?」

「っていうか、これ貸切りの臨時便、ダメだよ、乗って来ちゃあ」


そんなやり取りをぼんやりと聞きながら、アキは窓の外を眺めていました。

トンネルを抜けて、車窓一面に広がった北リアス海岸。

「じぇじぇじぇっ!」

「どうした、アキちゃん?」


アキは、急いで窓を開けました。

「見て、あれ!」

浜で一心不乱に大漁旗を振る夏の姿がありました。

「万歳!」

「ばっぱっ!」


窓から身を乗り出すアキ。

「ばっぱ、元気でね! 行ってくるからねえ!」

アキはちぎれんばかりに手を振りました。

夏も笑顔で旗を振って、叫んでいます。

「万歳!万歳!」

アキも手拭を手に取りました。

「ばっぱ、元気でね! またねえ!」

旗を振りつかれた夏は、よろけて浜に手をつきましたが、最後に列車に向かって叫びました。

「アキ、ツラくなったら帰えって来いよお!」

… … … … …

北三陸駅。

「バカバカバカっ!」

大吉の自己反省は続いています。

「もういいよ、大吉さん ふふふ」

知らなかったこととはいえ、夏はずっと応援してくれていたのです。

自分は決してひとりではなかったんだ …

いつしか春子に笑顔が戻っていました。

… … … … …

列車は畑野の駅に近づきました。

ホームにユイとヒロシの姿が見えます。

「えっ、ユイちゃん?」

ユイは荷物を持っていません。

列車が停まってドアが開きます。

「何で?」

「ごめん、行けなくなった … でも、すぐ追っかけるから、先行ってて」

「 … 親父が倒れたんだ」


強張った顔のヒロシがアキに伝えました。

「お医者さんは、じき意識は取り戻すだろうけど、大きな病院に転院するかもって」

「ごめんね、アキちゃん」

「いや … うん、そしたら、おらも行ぐのやめるか」


アキが荷物を取りに席に戻ろうとしました。

「ダメ、それはダメ! アキちゃんは行って!」

ユイは列車に乗り込んできて、アキの手を握りました。

「大丈夫、きっと良くなるから … 必ずすぐ行くから、ねっ」

自分自身にも言い聞かせるようにユイはそう言いました。

ヒロシに促されて、電車を下りるユイ。

アキはカバンからユイの分の東京までの切符を取り出して渡しました。

「これっ」

無常に閉まる列車のドア。

「すぐ行くからね!」

ドアの向こうでアキはうなずきました。

「すぐ行くから、すぐ行くから待っててね」

動き出した電車を追って、泣きながら叫ぶユイ。

「アキちゃん、ごめんね!」

ホームの先端でヒロシに肩を抱かれながら、泣きじゃくるユイ。

「待っててね、アキちゃん!」

ユイとふたりなら、なんとかやっていけると思った大嫌いな東京 … アキは途方に暮れていました。

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2013年06月21日 (金) | 編集 |
第71話

「 … 許してけろ」

春子に向かって深く深く頭を下げた夏。

「お母さん … 」

夏は静かに顔をあげて、「ふうっ」と25年分のため息をつきました。

「スッとしたあ、やっと言えたべ」

「私もスッとした」

「そうかい?」


春子が2階の部屋に戻ると、待ちくたびれたのでしょう、アキは眠りについていました。

… … … … …

『いいか春子、今なら娘の気持ちも母親の気持ちもわかるべ? … アキにとってどうするのが一番いいのか、よく考えろ』

夏からもらったアドバイス … 春子の中でアキに伝える答えはもう決まっっていました。

春子は机について便箋を取り出しました。

さて、何から書こうか …

「ママ?」

目を覚ましたアキがベッドの上で体を起こしました。

「ごめん、寝ちゃった … 」

春子は慌てて便箋を閉じます。

「もうちょっと寝てなさいよ」

「でも、水口さん … 」

「大丈夫、ママに任せておいて … 駅長も、組合長も、観光協会も、ママが説得してあげる」


春子が出した答えでした。

「 … じぇっ??」

アキはベッドを抜け出して立ち上がりました。

「いいの? … ママ、行っていいの?」

笑ってうなずく春子を見て、アキは抱きついてきました。

「やったああ!!」

春子は強く抱きしめてくるアキの腕から逃れてベッドの上に座り込みました。

「ガールズバーじゃないんだよ? アイドルになるんだよ、いいの?」

興奮気味に聞いてくるアキに春子は答えました。

「その代り、こんな大騒ぎして出ていくんだから、ちゃんと本気でやんなきゃだめだよ」

春子はアキの正面に立ち、その目を見つめて言い聞かせました。

「アキ、0か10しかないからね」

「うん、100頑張る!」

「よしっ!」


… … … … …

アキとユイ、ふたりとハートフルの正式契約は、後日観光協会で執り行われました。

春子や功、よしえの他に大吉や組合長、北高の担任・磯野まで立会人として同席しています。

ふたりが契約書にサインを済ませたことを確認すると背広姿の水口は立ちあがりました。

「それじゃあ、最終確認です。

ユイちゃんのお父さん、アキちゃんのお母さん、大事な娘さんを弊社に預けていただけるということで、よろしいでしょうか?」


功も春子もしっかりとうなずきました。

こうして、北鉄のユイちゃん、海女のアキちゃんは東京へ行くことになりました。

北三陸のアイドルが故郷を離れ、日本のアイドルを目指すのです。


あれほど反対していた北三陸の人たちも今は拍手を送っています。

「水口、おらたちのアイドル頼んだぞ、水口!」

組合長が涙ながらに何回も念を押しました。

「わかってんのか、水口? 駅長なんかショックでもう、しゃべれる状態じゃねえんだぞ、水口」

そう言う吉田も涙声です。

磯野も同様で、いきなり窓を開けて叫びました。

「天野っ、ユイちゃん!」

… … … … …

北三陸駅、待合室。

「深夜バスにしない? 新幹線より安いし」

時刻表で上京する日の電車の時間を調べているアキにユイが提案しました。

「だめだ、ミス北鉄をバスなんかで送り出すわけにはいかねえ!」

聞き耳を立てていた大吉が駅務室から飛び出てきました。

「貸切りだ! 臨時便、出すべえ!」

「え~っ!」

「第3セクターなめんなよ!」


一度送り出すと決めた以上、とことん応援する、大吉の男気でした。

「大吉っつぁん … 」

「わざわざ来たんだから、わざわざ北鉄さ乗って帰ればいい」


アキは笑顔でうなずきました。

という訳で、三陸海岸を北鉄で下るルートになりました。

「8時半発の宮古行さ乗れば、仙台さ3時に着く、そっから新幹線で2時間だべ」


ユイは途中の畑野から乗ることになりました。

「で、新幹線の切符はアキちゃんさふたり分渡しとくべ」

何から何までお膳立てしてくれるようです。

「あと2日か、何だか名残惜しいなあ … 」

「だったら行かなきゃいいべえ … 」


しかし、アキの何気ない一言に思わず本音も出てしまった大吉でした。

… … … … …

ユイは言いました。

「とにかく1年頑張ろうね … 1年は何があっても帰らないつもりで、ね」

「うんっ!」


約束したふたりです。

… … … … …

出発の前日、アキはいつものように浜に出て、思う存分潜りました。

… … … … …

「ばっぱ、ほら!」

浜から上がったままの格好で家に飛んで帰ってきたアキが掲げた網の中にはたくさんのウニが入っていました。

「何だや、随分採ったなあ」

夏も春子も目を丸くしています。

「最後だからな、本気獲りだ」

… … … … …

春子が洗濯した絣半纏を干していると、着替えたアキが縁側に出てきました。

「あ~あ、この景色も見納めか … 」

庭を眺めてアキがつぶやきました。

「何、さみしいの?」

「 … ねえ、ママは東京来ないの?」

「えっ?」


思いもよらぬことでした。

「来ればいいのに … っていうか、おらが東京行ぐって言ったら、ママも一緒に来ると思ってた」

「そっか … そうだよね、去年まで東京で暮らしてたんだよね … 」


今までの春子だったら当然のようにアキと一緒に東京に戻っていたはずです。

それが、アキに言われるまで全く考えてみませんでした。

「ええっやだ、何で思いつかなかったんだろう?」

戸惑いを隠せない春子。

「確かに、そういう選択肢もあるよね」

「ごめん、早く言えばよかったね」

「そうだよ、早く言ってよ … ちょっと、考えていい?」


庭先に立った春子の目に一番に入って来たものは … 離れで作業している夏の姿でした。

答えは一瞬で決まりました。

「やっぱいいわ、めんどくせえっ … こっちで暮らすわ」

アキにとって意外な答えでした。

「あんたはさ、ひとりで大丈夫だけどさ … 夏さん、心配だしさ」

小声でそう言いました。

アキも母の心を理解しました。

「あんたなら、何とかなるかもしんない … 夏さんが言うように、あんたとあたしは違う」

春子は絣半纏の襟に刺繍された自分の名前を指で触れました。

アキが着ていた半纏は本来ならば春子が着るはずだったものです。

「娘だけど全然違う …

だから、アイドルになれる! … かもしんない、がんばんな」

「ありがとう」


少しも優しくなく、ゾンザイでオドケタ言い方でしたが、春子らしいハナムケの言葉でした。

何か温かいものに触れたようで、アキは顔がほころんでいくのが分かりました。

… … … … …

足立家では、珍しく4人が揃っての最後の晩餐でした。

「ああ、明日から3人か」

功が寂しく笑いましたが、よしえは言いました。

「ふたりよ、ヒロシ君も帰り遅いもんね」

「お前どうすんの、ご飯とか?」


ヒロシがユイに尋ねました。

「朝と夜は寮で食べられるみたい」

「無理するなよ、ツラければ帰ってくればいいんだから … もっともね、ヒロシみたいに2ヶ月で帰って来られても困るけど」


ヒロシは眉をひそめましたが、最近は結構頑張っていることを功も含めて家族は知っていました。

… … … … …

「ごちそうさま」

功が余り食が進まないようで、ナイフとフォークを置きました。

「あら、もういいの?」

「何か頭が痛くて … 」


席を立った功をユイが呼び止めました。

「お父さん … お母さん、それから、お兄ちゃん」

ユイは畏まりました。

「 … 長い間、お世話になりました」

家族に向かって頭を下げました。

「頑張れよ」

「無理しないでね」

「ははは … 」


功は言葉にならないようでユイの肩に手を置いただけで、食卓を離れました。

… … … … …

アキとユイが東京に発つ朝がやってきました。

朝食の支度をする春子。

「おはよう!」

居間に下りてきたアキに夏が声を掛けました。

「ここさ、座れ」

言われた通りアキは夏の正面に正座しました。

「餞別だ」

夏が手渡したものは、白地に『北の海女』と書かれた手拭でした。

「この先、つれえことがあったら、こいつで涙拭け … そんで思い出せ … 寒い朝、浜さ出て潜った日のこと、あれよりつれえことはまずねえから」

「夏ばっぱあ … 」


夏の言葉に泣き出したアキは、受け取ったばかりの手拭で涙を拭いました。

「今でねえ、ばか … 東京さ行ってからだ」

「ごめん … 」


泣き笑いのアキ。

「祖父ちゃんさ、線香上げろ」

アキは忠兵衛の写真に線香をあげ、手を合わせました。

… … … … …

「見送り来てくれるよね?」

仏壇の陰から、食卓についた春子にアキは尋ねました。

「大吉さんと一緒に駅まで行く」

「ばっぱは?」

「どうだろうなあ、湿っぽいの嫌いだから夏さんは … 」


それどころか、姿さえ見当たらなくなっていました。

「えっ、さっきまでいたのに?!」

「 … 海だね」


… … … … …

北三陸駅。

「これ、仙台から新幹線の切符、ユイちゃんの分も … 失くすなよ~ 」

アキは吉田から、切符を受け取りました。

「帰りの切符も持っていくか?」

大吉が横からどさくさまぎれに言いましたが、アキは一言。

「いらねっ」

さっさと行ってしまいました。

「いらねえと吉田、もうアキちゃんの心は都会の絵具に染まってるぞお~ 」

… あきらめが悪い男でした。

… … … … …

「アキい!」

急に賑やかになったと思ったら、かつ枝、弥生、美寿々、珠子、海女クラブの面々と組合長が駆けつけてくれました。

「いいの、浜は?」

「ちょっとぐれえいいべ? 今日はアキちゃんの門出だ」


美寿々が笑って言いました。

弥生がいきなり抱きついてきました。

「1年前と全然違う、おめえは北の海女の精神ば受け継いだんだから、胸張って堂々とやれ!

負けんなよ、アキ!!」


力いっぱい抱きしめてくる弥生。

「 … 弥生さん、痛てえ!」

弥生はアキの体をガバっと離したかと思ったら、ポケットからミサンガを取り出しました。

「よし、ミサンガ結んでやっからな!」

すでに種市からもらったミサンガをしているアキの手首に結び始めました。

すると、「おらも、おらも」と他の海女たちも …

… … … … …

発車の時間が近づき、春子と大吉に連れられて、アキはホームに向かいました。

振り向いて夏の姿を探しましたが …

その頃、夏は浜で岩に貼りついたワカメを採っている最中でした。

都会の絵具に染まらないで帰って …

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2013年06月20日 (木) | 編集 |
第70話

『今日、これから話し合うんです、本人と … あっちは東京に行くつもり、こっちは絶対に行かせないつもり … どっちが勝つかなあ?』

大吉の車で家に戻った春子を出迎えにアキとユイは家の外まで出て来ました。

「水口さんは?」

水口が何のためにまた北三陸に現れたかを早く知りたい、そんなところだったのでしょう。

「スナックで待たせてる」

ややガッカリ感が見えたユイに春子は功は疲れたと先に家に帰った旨を伝えました。

「お祖母ちゃんは?」

「分かんねえ、海女カフェでねえか?」


他愛のない会話が終わり、春子は、アキに本題を切り出しました。

「どれ、2階行くよ」

… … … … …

アキが2階へ上がると、先に部屋で待っていた春子が話しはじめました。

「ここでしゃべったよね、アイドルのこと」

「 … そうだね」

「デモテープ、聴いたよね」


少し緊張が解けたのかアキはベッドに腰かけながら言いました。

「あん時、ママ面白かった、話に夢中になってスナックさ休んで」

春子は笑いながらうなずいた後、ぼそっとつぶやきました。

「さては、あれがよくなかったか … 」

「えっ?」


アキに向き直った春子は、一変して厳しい顔で問いただしました。

「どういうつもり?」

アキは立ち上がって「すみません」とひとこと謝りました。

「そうかそうか、ママにもできるんだから私もできるかなあ、なんか思っちゃった?」

アキは否定しましたが、春子の口調はますます厳しくなっていきます。

「そういう話じゃないからね、あれは … むしろ逆!

東京なんか行かなけりゃよかった、アイドルなんかあこがれてバッカみたい、人生やり直したいって、そういう話だからね!」

「そしたら、おらこの世にいねえ … 」

「またそういう!」


春子は、口答えをしようとしたアキの両頬をつまみました。

そして、アキを座らせると、その前に腰かけました。

… … … … …

「アキ聞いて、ママね、あんたが東京に行くの全然反対しない、おっかけになるとか、なでしこジャパンに入るとか全然OK、ガールズバーで働きたいとかでも全然OK!

アイドル以外だったら何にあこがれても、全然いい!

… それぐらい、アイドルはダメ、許さない!」


何故、母はそこまでアイドルを毛嫌いするのだろう?。

「何で?」

「 … 不幸になるからよ」

「やってみなきゃ、分かんねえ」


ふたたび立ち上がったアキはすでに泣き声でした。

階段の降り口では、ユイがふたりの話に聞き耳を立てていました。

「分かるのっ!

… 純粋な気持ち、弄ばれて、利用されて、消費されて … 心が折れる」


アキはラジカセに入っていた春子のデモテープを取り出して手に取りました。

「水口もその社長の太巻って人も、誰も決して手を差し伸べてくれない … そういう世界なのよ」

「それでもいい、やるだけやってみてえんだ」


玄関の扉の開く音がして、夏が帰って来たようです。

迎えに出たのはユイでした。

「アキは?」

ユイは2階を指さして言いました。

「春子さんと … 」

… いつだったか、おばさんと呼ぶなと言われたからでしょう。

それだけ伝えるとユイは丁寧にお辞儀をして帰って行きました。

… … … … …

思ったより、頑固なアキに春子は手を焼いていました。

「聞いてけろ、ママ … おらがアイドルになりてえって思ったのは、ママの歌聞いた時なんだよ」

「えっ?」


突然、アキにそう言われて、春子は戸惑いました。

「かっこよかった … ご飯作ってるママや洗濯もの干しているママも好ぎだけど … 歌ってるママは最高だと思った」

何と答えていいのか迷う春子。

「だいぶ経ってから本物聴いたべ」

『新助、その火を飛び越えて来い!』

春子が吉田から借りていたビデオのことでした。

「鈴鹿ひろ美の潮騒のメモリーもかっこよかった … やっぱり女優は違うなっと思った。

でも、おらママの歌の方が好ぎだ!

先に聴いたからかもしんねえが、ママの歌の方が本物だって思った … 今でもそう思ってる」

「 … ありがとう」


春子は礼を口にしていました。

「お座敷列車で歌った時、海女カフェで歌った時、楽しかった。

もちろん、ママの足元にも及ばねえが、おらの歌がお客さんに届いたような気がして、うれしがった。

もっと届けてえ、もっともっと元気になってもらいてえ … ひとりじゃ無理だが、ユイちゃんとふたりならやれそうな気がするんだ」


アキの言葉は、春子に自分がアイドルを目指していた遠い日の感情を思い出させました。

確かにあの頃、今のアキと同じようなことを考えていたような気がします。

しかしそれは、却って今の春子の頭の中を混乱させてしまいました。

「 … だめか?」

「分がんねえ … 」


思いっきり訛ってつぶやく春子。

アキは、ずっと目を閉じたままの母のことが不安になってきました。

「ママ?」

「 … 何て答えていいのか、全然分かんない」


春子は目を開けて首を振りました。

アキの不安は募るばかりです。

「ちょっと待ってて、お母さんに聞いてくるわ」

「えっ?」


そう言った春子に最初の勢いは消えていました。

そして、アキを部屋に残して、1階に下りて行ってしまいました。

… … … … …

夏はすでに寝床についていました。

「どうしたらいいか分かんないよ … 夏さん、起きてよ、夏さん」

夏からの返事はありません。

「起きてんでしょ?」

春子は横になっている夏の顔をのぞきこみました。目は固く閉じられています。

「あんたならどうする? … ねえ、夏さん!」

『ねえ、母ちゃん、あたしやっぱり海女やりたくねえ … 東京さ、行きてえ』

25年前のあの夜のことが春子の脳裏によみがえりました。

「あん時と一緒か … 」

泣きたいような気持になって、あきらめて部屋を出て行こうとする春子。

「待て … 」

夏が呼び止めました。

… … … … …

寝床から出て、茶の間に腰を下ろした夏は春子に尋ねました。

「何だって?」

春子は立ったまま、斜に構えた格好で意見を乞いました。

「アキが東京に行くって言って聞かないの、アイドルになるんだって … どうしたらいいと思う?」

当たり前のことのように答えた夏です。

「行がせてやったら、いいべ」

切羽詰って相談したのに、それを深く考えもせずにいとも簡単に答えた夏。

「何で?」

「本人が行きてえって言ってるからだ」


春子は夏の助言を素直に聞くことができませんでした。

それは、夏の考えが自分が思っていたものと違っていたからという訳ではありません。

「私も行きたかったけど … 同じように私も夢があって、東京行きたくて、オーディション受けたいって相談したじゃん?」

「いつの話してんだ?」


湯呑みに一升瓶で酒を注ぐ夏、春子は向かいに座って身を乗り出しました。

「あの時、夏さん何っつったか覚えてる?」

「へっへ、くっだらねえ」


… … … … …

『くだらねえ』

春子から見せられたオーディションの通知を夏は放り捨てました。

『お願い、二度とないチャンスだから行かせてください!』

… … … … …

「 … そんな冷たい夏さんがさ、どうしてアキには甘いの?」

それはもう嫉妬でした。

「孫だから? … 娘のことは突き放したけど、孫のことは守るんだ?」

夏からの答えを待つ春子、しかし夏は口をつぐんだままです。

「ねえ、答えてくんないとさ、私もアキに何て言っていいか分かんないんだよ!」

「 … なしてだべなあ」


ようやく重い口を開いた夏。

「やっぱし、あん時のことが引っ掛かってるんだべな … 」

「えっ?」

「母親として、娘の将来も考えねばなんねえ、同時に海女クラブの会長として、地域の活性化に貢献せねばなんねえ。

北鉄が開通して、あの頃は皆前向いてたもんで、地元のために娘を犠牲にしたこと … 今やっぱし、後悔してんだべな」


夏の口から出たのは、春子にとって思いもよらぬ言葉でした。

「ちょちょ、やめてよ … えっ?」

「あの晩、おめえは本気で訴えかけてきた … おらも本気で応えるべきだった。

大事な娘を欲の皮の突っ張った大人たちの犠牲にしたくねえって、市長さんや組合長さ、タンカ切るべきだった … 」


春子の頬を一筋の涙が流れました。

「そのことを、ずうっとずうっと悔やんでたから … おめえの顔見んのがつらかった」

夏は伏せていた顔を上げて、春子の目を見つめて言いました。

「すまなかったな、春子 … 25年かかった、この通りだ … 許してけろ」

深く深く頭を下げました。

… … … … …

春子はあふれ出る涙を止めることができません。

「お母さん … 顔、顔あげてよ、お母さん、お母さん」

夏は静かに顔をあげて、「ふうっ」と25年分のため息をつきました。

「スッとしたあ、やっと言えたべ」

「私もスッとした」

「そうかい?」


晴れやかな顔になった夏が聞き返しました。

「へへっ、謝ってほしかったのか、私 … よく分かったね」

泣き笑いの春子。

「 … まあな … 腹減ったな、うどんでも食うか?」

夏は照れ隠しに台所に向かいました。

「やっぱ、かっこいいわ、お母さんは」

もう『夏さん』とは呼びません … 25年分のわだかまりが解けていくのを感じていました。

「ああ?」

台所から聞き返した夏に春子は答えました。

「なんでもねえ!」

… … … … …

春子が2階の部屋に戻ると、待ちくたびれたのでしょう、アキは眠りについていました。

床に落ちていたデモテープを拾った春子。

インデックスには、『1984.5 君でもスターだよ!』と書かれています。

アキに伝える答えはもう決まっていました …

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2013年06月19日 (水) | 編集 |
第69話

「じぇっ、じぇじぇじぇじぇ!」

アキとユイの家出の件で緊急会議が開かれている観光協会に海女クラブのメンバーが勢ぞろいで乗り込んできました。

「な、何だ、どうした、どうした?」

「袖が浜海女クラブでがす、アキの応援で来ました」

さあ、いよいよ正念場です … アキは思いの丈をぶつけることができるのでしょうか?


辛あああああああ ~

… … … … …

七味唐辛子入りのお茶を飲んでひっくり返った組合長、やっとのことで体を起こして、皆に議事を進めるように促しました。

同情を買おうと思ったわけではないのでしょうが、ヒロシが今の状況をアキに伝えました。

「アキちゃん、この通り、皆今回の件ではショック受けてるんだ」

「見れ、大の大人が皆涙目になって … 組合長なんかもう『泣いた赤鬼』のようになって」


実は七味唐辛子が辛くて真っ赤な顔して涙を流しているとは、勉さん以外は誰も知らず、吉田の言葉をアキは鵜呑みにしました。

「組合長、いろいろとお世話になりました」

申し訳なさいっぱいで頭を下げました。

言葉もまともに返せずにただヒーヒー泣いている元旦那のことを心配して、かつ枝が机の上にあった湯呑みに入っていた残りのお茶を口に含ませました … このお茶が原因とはつゆ知らずに。

「か、か、か、か … 辛~っ!!」

悲鳴をあげながら部屋を出て行ってしまいました。

「そんなに泣かれたら、つらくなるべ」

自分のせいだと完全に勘違いしているアキは半べそです。

「もらい泣きする前に、アキおめえ、夜逃げしようとしたこと皆さに謝れ」

それを聞いていたユイが先ず席を立って、「お騒がせしました」と皆に向かって頭を下げました。

アキも倣って謝罪しました。

見届けた夏は、今度は春子に向かって言いました。

「アキの顔叩いたことちゃんと謝れ … こういうことはな、あとあと大きなしこりが残るんだ。

皆さ見てる前でちゃんと謝れ」


不満たらたらの春子ですが、何とか形だけは謝りました。

… … … … …

「よし、では大吉の言い分、聞かせてもらうべ」

「ああ、それはもう大体、春ちゃんと先生には説明したべ」


大吉にそう言われて、夏は春子の顔を見ました。

「ええ、皆さんにとって大事なのは、目先の金でアキやユイちゃんの将来なんかどうでもいいっていうことがわかりました」

春子の手厳しい嫌味に大吉は反論します。

「ちょ、ちょ、春ちゃん止めてけろ、それじゃまるで俺たちがふたりを金儲けに利用しているみてえじゃねえか?!」

「違うの?」


「違う」と言いかけた大吉ですが、海女クラブをはじめとした一同の冷たい視線を感じて、開き直りました。

「違わねえよ、んだよ、お金欲しいよ!

だって考えてみてもくださいよ、走れば走っただけ赤字になるって、バカにされてきた北鉄がですよ … ユイちゃんのおかげで黒字も黒字、人気ローカル線ですよ!

“じぇっ!”ってなるべ?!」


吉田が太鼓持ちのような相槌を打ちました。

「閑古鳥が鳴いていた袖が浜がですよ、アキちゃんのおかげで観光人気スポットですよ、“じぇじぇっ!”ってなるべ?!」

またまた相槌を打つ吉田。

「“じぇじぇっ!”ってなると、今度はよ、“じぇじぇっ!”じゃ物足りなくて“じぇじぇじぇっ!”を目指すべ? … その次は、“じぇじぇじぇじぇっ!”ってなりてえもんだべ?」

「人間の欲にはきりがないってことだね」


功は言いました。

「だから言ったんです … 3月のお座敷列車でお終いねって」

「それで叩いたんだな」


春子は続けました。

「 … 地道に生きてほしいんです。

あたしが言っても説得力ないかも知れないけど、芸能界みたいな浮ついた世界へ行ったら傷つくの目に見えてるんだから」


… … … … …

「おめえらの話まとめると、春子は娘の将来のため、大吉っつっあんは金のため、先生はどうお考えですか?」

夏が唐突に、功の考えをうかがいました。

「いや、うちはまあ、高校だけは卒業してほしいって、家内と話してます … あとはね、自分の人生だから、悔いのないようにやってみろって」

自分の時とは違うと不平を言ったヒロシの言い分を功は受け付けませんでした。

「つまりは本人次第ってことですな?」

「ま、そういうことですね」


物わかりよく笑った功です。

話がおかしな方向へ舵を切りそうなので、春子は口を出しました。

「だめよ絶対、何言ってるの?」

「んだんだ、せめて9月いっぱいまで頑張ってもらわねば!」


大吉も負けじと主張しました。

「だから卒業した後の話って言ってるんだよ!」

「アキは芸能界なんて絶対ダメですからね!」

「岩手のローカル局で十分だべ?」


堰を切ったように皆それぞれ好き勝手なことを言い始めました。

「夏場は毎年潜って、客を集めてもらわねば!」

戻ってきた組合長も加わりました。

喧々諤々 …

… … … … …

「ああ、もうっ! やがましいっ!!」

突然大声を出した夏。

「どいつもこいつも、自分のことばっかり考えて!

… おめえら、ここらでふたりに恩返しするのが筋でねえか?」


アキの手を取り、ユイの肩に手を置いて夏は言いました。

「若えふたりの未来を … 欲の皮が突っ張った大人が犠牲にしちゃなんねえ」

誰も言葉を返すことができずに、黙り込んでしまいました。

… … … … …

その時、拍手をし始めたのは … 春子でした。

「ふふ、いいこと言うわ、さすが夏さん … 立派。

あたしが出て行く時にも言ってくれたらよかったのに … 」


夏の顔が強張りました。

「来たよね、家に?

… 欲の皮が突っ張った大人が」


春子の視線の先には長内夫婦と弥生がいました。

「春ちゃん … 」

やるせなく春子の名を呼んだかつ枝でした。

『おめえしかいねえんだ、春子』

『袖が浜の未来のためだ、頼む、潜ってけろ!』

「あの時さ、今みたいに立派なこと言ってくれたら、あたしの人生も違ってたんだろうね」

「春子、おめえ、またその話蒸し返すのか?」

「あるいはさ、“行くな”って止めてくれたら、それはまたそれで違ってたよね、人生 … っていうか、止めてほしかったよね」


話はアキとユイから離れて、春子自信の恨みつらみに移っていました。

「それは今だから言えることだな … 今のおめえは後ろ振り返ってしゃべってる、だから話せる。

あん時のおめえは、前しか見えてねがった。

… おらが何言っても、聞く耳もたなかったべ、なっ?」


… … … … …

「そうかもね … そうかもしんない、でもあたしは“止める”

去る者は追う、全力で!

… 娘が傷つくの分かってて、背中押せるほど、懐深くないの、あんたみたいに!!」


感情的になって反抗してくる春子に対して夏は静かに言いました。

「お前とアキも違うぞ」

「ああ?!」


春子は夏のことを思いっきりにらみつけました。

「 … ま、いいか、言いたいこと言ったし … 寝るだ、帰るべ」

夏はこれ以上、相手をせずに退散することを選択しました。

「じぇじぇ、そりゃねえべ、夏ばっぱ … 」

大吉の情けない声など構わずに海女クラブの面々は部屋を出て行きます。

… … … … …

「ありがとう、夏ばっぱ」

アキから掛けられた言葉には、振り返りました。

「 … かつ枝さん、弥生さん、美寿々さん、花巻さん」

続けて、ひとりひとりの名前を呼びました。

「いねえけど … 安部ちゃん、皆ありがとう。

おら、ここさ来て、本当にいがった … 北三陸で袖が浜で、皆と会えて、本当にいがった!」


夏や海女たちの顔に笑顔が戻りました。

そして、アキはこの部屋にいる皆に向かって言いました。

「皆に可愛がられで、怒られで … もう、おら昔のおらじゃねえ、ユイちゃんもいるし、東京さ行っても大丈夫だ!」

ギスギスしていた観光協会がアキの言葉で、一転して、和やかな雰囲気に包まれました。

「ははは … そんならよしっ」

夏は声を上げて笑い、帰って行きました。

… ただひとり複雑な表情の春子、ひどく疲れたようにため息をつきました。

… … … … …

喫茶リアス。

「うっかり泣いちゃったよ、くそっ … 俺が泣いてどうするんだ?!」

カウンターの大吉がウーロンハイのお代わりを注文しました。

「やめときなよ、お酒なんか飲んで大丈夫なの?」

「飲まなきゃやってらんねえよ、チクショー!」

「コーヒーください」


指定席で琥珀を磨いていた勉さんは聞き覚えのある声に隣の席を見ました。

そこに、いつの間にか何食わぬ顔をして腰かけていたのは … 水口でした。

あまりの驚きに言葉が出てこなくて、口をパクパクさせている勉さんに悪びれることなく会釈しました。

「 … 今日は7時であがるから、一応ね、アキと話し合おうかと思って、今後のこと」

春子の言葉に水口の耳が動きました。

っていうか、勉さんの他には誰もまだ店の中、それもカウンターに水口が座っていることに気づいていません。

「なんか、うるっと来ちゃったな、アキちゃんのスピーチ」

「確かにこの1年で、どんどんたくましくなりましたもんね」


足立親子に成長したアキのことに触れられて、春子も認めざるを得ませんでした。

「くやしいけど、それはちゃんとお礼言わなくちゃいけないね … 大吉さん、ありがとうね」

「お、おれ?」


大吉は何故自分がお礼を言われたのかわからないようです。

… … … … …

一方、勉さんは席を立って、水口がいることを何とか教えようとしましたが、タイミングが悪く、誰にも相手にされません。

「吉田さん、吉田さん」

「うるせえな、勉は弟子と琥珀でも磨いてろ!」


頭ごなしに怒鳴られました。

「このいい雰囲気壊さずにそっちさ座って … 」

懸命にまとわりついてくる勉さんを振りほどこうとした瞬間、保の目に映った人物は …

「じぇっ!」

その視線の先を見た吉田も固まりました。

「ああ、遅くなりました!」

春子と交替するために店に飛び込んできた美寿々、水口には気づかないでカウンターの奥に入りました。

「あたしこれであがるからさ、あとよろしくね … あれ、ウーロン茶だから」

春子が美寿々に大吉が飲んでいるコップをそっと指さしました。

「じゃね、お疲れ様~」

急いで店を出ていく春子。

「はい、ウーロンハイお代わり、他にご注文は?」

顔を上げた美寿々 …

「タクちゃん!」

その声でようやく店にいた全員が水口に気がついたのでした。

… … … … …

「こんばんは」

ペコリと頭を下げました。

その時、カウンター奥の窓口が開いて、顔を出した春子。

「水口、いなかった?!」

水口は立ち上がって、窓口の前まで行くと、先ほどと同じようにお辞儀しました。

「 … てめえ、どの面下げてここさ来たあ!」

フラフラと立ち上がった大吉がいきなり水口に殴り掛かりましたが、空振りしてよろけました。

美寿々が止めるのも聞かず。二度三度と殴り掛かりましたが、パンチはすべて宙を切るだけです。

「なしてよける、なしてよける?」

「 … よけてないです」

「もう、飲めねえ酒、飲むから」


吉田が大吉のことをたしなめましたが、春子に実はさっきから飲んでいるのはただのウーロン茶だと知らされたと同時に繰り出したパンチが、水口の顔面にクリーンヒットしてしまいました。

… … … … …

「じぇじぇじぇっ!」

一足先にユイを連れて天野家に帰っていたアキはヒロシからの電話で梨明日に水口が現れたことを知りました。

「水口さん、梨明日に来てるって」

「何で?」


そこまではアキにはわかりません。

「迎えに来たのかな?」

淡い期待を抱くユイ。

… … … … …

ぐったりして、ソファーに横になっている水口は美寿々の介抱を受けていました。

ヒロシは取りあえずそれだけ伝えると電話を切りました。

「もう大丈夫 … すみません」

水口は体を起こしました。

「俺もつい、ウーロン茶に飲まれでまって悪かった」

ウーロン茶グセの悪い男です。

水口は立ち上がると、カウンターに座って背を向けている春子に声を掛けました。

「今日は社長の代理できました … オーディションではなく、正式にユイちゃんとアキちゃんをハートフルの所属タレントとして迎えたいというご相談です」

「何で社長が来ないの? … ここに来るのだって仕事じゃん!」


春子の厳しい指摘には具体的には答えず、水口は話を続けました。

「先日の海女~ソニックの生中継、社長も見ています。

かなり気に入ってくれて、ふたりのキャラクターもさることながら、あのイベントの盛り上がりに感銘を受けたというか … まさにGMT47プロジェクトのコンセプトにマッチする」

「じー・えむ・てぃ?」


春子は聞き返しました。

「地元を愛する地元発のアイドルです」

「ああ、ダジャレね … ハイハイ続けて」

「 … で、公認のグループが全国で16組おりまして」


静岡代表『茶柱ピンピン娘』、福島代表『赤べこ&青べこ』、福岡代表『親不孝ドールズ』 …

「で、その中の選抜メンバーがすでに上京して、上野の劇場でレッスンを受けています … それはGMTのメンバーとして」

「じー・えむ・てぃ?」


春子がわざとらしくまた口を挟むと、水口は切り返しました。

「ダジャレです」

春子は不愉快そうに言いました。

「あんたさ、お詫びとか相談とか言いながら、売り言葉すぐ買ったりするよね? … 愛想もないし、全然なってない!」

「ふふっ、よく言われます」

「ふふっ、よく言われますっていう場合じゃないんだよ!」


水口の態度に春子の中のヤンキーが顔を見せ始めていました。

「 … 本当、危なっかしくて信頼できない」

ソッポを向いた春子です。

「そこがいいのよねえ」

ポツリとつぶやいたのは美寿々でした。

「信頼されてないのはわかっています … でも、僕も本気なんで、ここで引き下がるわけにはいかないんです」

穏やかな口調とは裏腹に眼鏡の奥の目は決して笑ってはいませんでした。

「今日、これから話し合うんです、本人と … あっちは東京に行くつもり、こっちは絶対に行かせないつもり」

春子は水口の前に立ちはだかりました。

「どっちが勝つかなあ?」

そう言い残して店を出て行った春子の背中を水口は見送りました。

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2013年06月18日 (火) | 編集 |
第68話

アキとユイが乗り込んだバスの終点は、上野ではなく袖が浜でした。

こうして、ふたりの家出計画はあえなく失敗に終わりました。

… … … … …

翌日、観光協会で緊急会議が開かれました … 久しぶりのK3RNSP ~ 北三陸をなんとかすっぺ会議です。

出席者は、大吉、吉田の北鉄コンビ、保、しおり、ヒロシの観光協会トリオ、長内組合長、今野商工会長、琥珀の勉さん、ユイの父・足立功、そして春子です。

「今回の議題は他でもねえ、我らが北鉄のユイちゃんと海女のアキちゃんが家出を企てた … よりによってバスで深夜バスで。

ユイちゃんは2回目だ。

一番の問題は前回は引き留める側だったアキちゃんも家出する側に回ってしまったことだ」


司会進行役の大吉が、昨夜のあらましを説明しました。

「何か、申し訳ない … 」

「何かあ?!」


功の言葉に春子が不満そうに食いつきました。

「まあまあ春ちゃん、先生ば責めてもしょうがねえべ」

慌てて、保が春子のことをなだめました。

「んだ、元はと言えば、勉さんとこのニセ弟子がよ」

組合長が水口のことを持ち出すと、隣に座っていた勉さんが皆に頭を下げました。

「何か、すみません … 」

「そこは何かじゃねえべ?! ちゃんと謝れよ勉、その琥珀を磨く手を止めて!」


会議中だというのに琥珀を磨く手を休めない勉さんのことを組合長が強い口調で責めました。

「っていうかさ、アキは?」

事情を聴くために呼んだユイは功と並んで座っていますが、アキの姿が見えないので、春子が大吉に尋ねました。

「アキちゃんは、夏ばっぱに頼んだ」

「なんで?」

「これは、海女クラブの問題でもあるし、春ちゃんが一緒だとそれにまた、ほれ … 叩くべ?」


… … … … …

同じころ、アキは海女カフェで事情聴取を受けていました。

アキの座ったイスの周りを先輩海女たちが囲んでいます。

「心配すんな、母ちゃんは観光協会だ」

縮こまっているように見えるアキが、春子のことを怯えていると思った弥生が安心させました。

「おらたちが多大なるショックを受けてるのは分かるな?」

かつ枝にそう言われて、アキはうなずきました。

そして、黙って見ていた夏が口を開きました。

「アキ、海女クラブの会長として、今おめえをこの町から出すわけにはいかねえ … 海女クラブにとっても、観光協会にとっても、かなりの痛手だ。

わかるな?」

「はい … 」

「それだけじゃねえ、おらたちは毎日、命がけで潜ってる … 海ん中でも陸の上でも、お互いの信頼関係が何より大事なんだ。

おめえはその信頼関係を壊して逃げようとしたんだど、重大なペナルティだ!」


厳しい口調でそう言った夏の顔をアキは見上げました。

… … … … …

観光協会。

「もし万が一、アキちゃんとユイちゃんがいねぐなった場合、この北三陸がどれくらいの経済的打撃を受けるか、今ウチの優秀な経理担当の栗原ちゃんが計算してくれてます」

保が説明しました。

入ってくるはずだった金がいくらかという話です。

軽快なリズムで電卓を叩いていたしおりの指が止まり、眉をひそめて苦しそうに唸り出しました。

「栗原ちゃん?」

鬼のような形相でじわじわと立ち上がりかけたしおり、保はその手から電卓を奪うと抱きしめました。

「ああもういい栗原ちゃん、大体分かった! ごめんよ、ごめんよ」

ひしっと抱き合うふたり。

「眉間のしわの深さが全てを物語ってたよ」

功が思ったように相当の額の損害になるようです。

「しわの中に顔がこう半分めり込んでましたもんね」

いつもなら茶化しそうな吉田も深刻な顔つきです。

「今や北鉄の乗客の7割は観光客だ、これを失うのはツラいっ」

「こっち見ないでよ」


泣き言を言いながらチラ見をしたので春子が大吉に文句を言いました。

「漁協のダメージもでけえど、銀行から借りた2千万、海女カフェの改装費、月々のローン返すので精いっぱいだ」

組合長の話を聞いた大吉と吉田がまた春子をチラ見して言いました。

「ツラいっ!」

「ツラいっていう時にチラ見しないでよ」


… … … … …

「ええ、琥珀は … 」

「琥珀はこの際どうでもいいべっ!」


組合長は机を叩いて、勉さんの話の腰を折ると立ち上がりました。

「取りあえず、新人海女のアルバイト代もかさむし、せめて今年はウニ1個600円に値上げして、漁協の取り分を増やしていただかねば!」

声を大にして訴える組合長。

琥珀のことを軽んじられてムッと来た勉さん、ふと目についた机の上にあった七味唐辛子の小瓶を手に取ると、何事もない顔のまま、組合長のお茶の中に何回も振りました。

… … … … …

海女カフェ。

「深夜バスで何処さ行こうとしてたか言ってみろ」

「東京」


弥生に尋ねられたアキは素直に答えました。

「東京で何するつもりだったか言ってみろ」

「 … アイドル」


かつ枝に聞かれて、そう答えたアキ、珠子が思わず吹き出して、美寿々に注意されました。

「でも、スカウトされたんだべ、芸能プロダクションから?」

「芸能プロダクションなんて、あっちゃこっちゃで名刺バラまいてるんだ、当てになんねえ」


頭から決めてかかった弥生にアキは言いました。

「事務所の社長とも電話でしゃべったべ」

「じぇじぇっ!」


『もしもし、初めまして、太巻ですけど … 夏休みだよね今? 東京に出て来れる?』

… … … … …

観光協会。

「会ってみたいって言われました」

「じぇじぇじぇっ!」


ユイの話を聞いて驚く一同。

「だから、とにかく行こうって決めたんです … 皆さんに事情を説明する時間がなくて、事後承諾っていうか … あとで皆さんにちゃんと説明するつもりだったんです、ごめんなさい」

虚実取り混ぜた言い訳のあと、ユイは立ち上がって頭を下げました。

「小さい頃からの夢だったんです、それを行ってみないであきらめるのが嫌なんです」

… … … … …

ふたたび、海女カフェ。

「家出の理由はわかった … しかし、そうまでしてアイドルとやらになりてえのはなしてか?

おらたち、田舎の年寄りにもわかるようにしゃべってみろ」


夏はアキにそう言いました。

… … … … …

観光協会。

「この町には、まだユイやアキちゃんの力が必要なんだよ」

功の言葉に保と大吉が乗っかってユイを説得します。

「んだんだ、去年の今頃さ比べたら、観光客も増えたし、海女カフェも建った!」

「“北鉄”“北の海女”“潮騒のメモリーズ”この3枚看板で行きたいんだ!」


しかし、ユイは冷静に答えました。

「それについては考えました …

確かにうちらがいなくなると、一時的に観光客は減るでしょう … でも。PRなら東京行ってでもできますよね? … むしろ北三陸の知名度上げるには、ここにいて観光客待っているより、東京に行って呼びかけた方が効果的なんじゃないかって」


正論でした。

「北三陸の名前を全国区にするためにアキちゃんも私も積極的に訛っていこうって」

「じぇじぇっ!」

「じぇじぇ … むしろ、“じぇじぇ”って言っていこうって、相手がタモリさんだろうがアッコさんだろうが、“じぇじぇ”で通そうって … 好きな食べ物は“まめぶ”と“ウニ” … 名前もJJガールズにして、“じぇじぇ”って流行語大賞も獲ります!

よろしくお願いします!」


大人たち相手に一気にまくし立てました。

「 … 我が子ながら、手強い」

困惑する功。

しかし、ユイの話をどこか信じきれない春子でした。

… … … … …

「黙ってたら、わかんねえべ、アキ」

アキは夏の質問に答えられずに黙り込んだままでした。

きっと頭の中でいろいろな答えがぐるぐる回っていてそれを中々まとめることができないのでしょう。

「どうした、母ちゃんが怖えか?」

夏は少しイライラし始めています。

「無理もねえ、顔叩かれたんだもんなあ」

「あれはおらが悪い」


かつ枝の言葉をきっかけにようやく口を開いたアキ。

夏は聞き返しました。

「なしてそう思う?」

「コロコロ言うこと変わるから … 東京さ帰りだぐねえって言ったり、帰りでえって言ったり … 」

「海女になりたいっつったり、南部もぐりさあこがれたりな」


弥生に言われて、アキはうなずきました。

「でも、どれも本気なんだ … ここさ残って就職して、夏の間だけ海女やって、それはそれで間違いなく楽しいべ。

こんなこと言ったら、怒られるかもしんねえが … 」

「怒んねえから言ってみろ」


夏は言いあぐねているアキの背を押しました。

… … … … …

「海女は好きだけど … 今じゃなくてもできるべ」

思い切って口にしたアキ、海女たちの表情が変わりました。

「だけど、ユイちゃんと東京さ行って、アイドルさ … なれるかどうかわかんねえけど、それは今しかできねえべ?」

「なれねがったら、どうする?」


美寿々の問いにアキは即答しました。

「そん時は潔く帰って来るべ」

「帰ってきて、また潜るんか?」


かつ枝は尋ねました。

「当たり前だ、おら海女だもん! … ただし、町のためとか誰かのためでねえ、おらが潜りたいから潜るんだ」

海女たちはアキのことを唖然とした顔で見つめています。

アキは夏の前に立ちました。

「祖父ちゃんが言ってた、ここが世界で一番いい所だって、夏ばっぱに教えるために長く航海してるって … 」

『いろんな国のいろんな町を見て回ってよ、んでも、やっぱここが一番いいぞって教えてやってんだ … 北三陸も東京もおらに言わせれば日本だ』

「おらも一緒だ、ここが一番いいぞって、皆さ教えるために東京さ行ぐ … 行ぎでえんだ!」

… … … … …

「行がせてやっぺ!」

立ち上がったかつ枝が言いました。

「行げアキ、ここはおらたちに任せて東京でがんばれ!」

「かつ枝さん … 」

「誰のためでもねえ、潜りでえ時に潜る … そったな、当たりめえのことを、まさかおめえがら教わるとは思わねがった」

「んだな、朝が早えとか、海が冷ゃっこいとか、家族のため、町のためさって、自分さ言い聞かせて乗り越えてきたが、でもそれはウソだ!

好きだから潜る、それが根本だべ?」


弥生もそうアキに向かって言いました。

「若え時は、潜んのが面白くて、潜るだけで十分だったもんね」

美寿々も笑っています。

「アキちゃんも潜りたいときに潜ればいい」

笑い返そうとしたアキですが、何を思ったか表情が陰りました。

「でも、おらがいねぐなったら、観光客が … 」

「んだんだ、せめて9月の本気獲りまで」


事務を預かる珠子は、海女たちに比べて現実的でした。

「いやだめだ、今すぐ行げ!」

「ここの改装費、ローンまだ残ってるべ?」

「じぇっ!」


珠子の言葉でかつ枝も現実に引き戻されそうになりましたが …

「銭なんか何とかなる! おめえひとり欠けたぐれえで、40年続いた海女クラブが廃れてたまるもんかあ!」

弱気を強がりで一気に跳ね飛ばしました。

「んだんだ、海女はアキだけでない … 後継者なら、他にもいるべ?!」

アキの肩を叩いた弥生、いつの間にか新人海女たちも周りに集まっていました。

「なんなら、花巻ちゃんとこの娘っこもなあ!」

… … … … …

「 … どんだべ、夏ばっぱ?」

真顔に戻ったかつ枝が夏に伺いを立てました。

「アキの好ぎなようにさせてやってもらえねえべか?」

「夏ばっぱ、おらからも頼む … 行がしてやってけろ!」


かつ枝に続いて弥生も美寿々も頭を下げました。

海女クラブの会長とはいえ、アキは我が孫、身内でもあります。

孫のためにクラブのメンバーに苦労を掛けることになるのは明白でした。

しかし、夏は決断しました。

「うん、おめえらの気持ちは、よおく分かった …

アキ、おめえ、東京さ行って来い」

「ばっぱ … 」

「町の大人たちは、おらが説得する」


アキは今度こそ満面の笑みを返しました。

… … … … …

観光協会。

結論は出るわけもなく、硬直状態のK3RNSPです。

「ユイちゃんが芸能界にあこがれている気持ちはよく分かった、東京行きたいなら行けばいい」

春子の言葉に大吉が慌てました。

「ただね、アキを巻き込まないでほしいの … 田舎に来て、やっとカラ破ったのに、また東京に戻ったら、もとの地味で暗くて向上心も協調性も … 」

「アキちゃん?!」


大吉の声に皆が入り口に目をやると、そこにアキが立っていました。

「海女クラブの話し合い終わったのか?」

中々部屋に入って来ないアキのことを大吉は迎えに立ちました。

「さあさあ、怖がんなくていいから、中さ入れ」

部屋に入ってくるアキ、その後から …

「じぇっ、じぇじぇじぇじぇ!」

海女の衣装を身にまとったクラブのメンバーが勢ぞろいで乗り込んできました。

「な、何だ、どうした、どうした?」

「袖が浜海女クラブでがす」


夏が改めて名乗りを上げました。

「海女クラブが何の用だ?」

全く話を聞いていない組合長が不満げに聞き返しました。

「アキの応援で来ました」

さあ、いよいよ正念場です … この欲に目がくらんだ大人たちの、たまたま中央にボスキャラよろしく鎮座する氷のように冷たい目つきの母親にアキは思いの丈をぶつけることができるのでしょうか?


辛あああああああ ~

お茶を飲み干した組合長がもんどりうってひっくり返りました。

表情一つ変えずに、ポーカーフェイスの勉さん … 内心してやったり …

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2013年06月17日 (月) | 編集 |
第67話

『深夜バスで行こうと思うの』

『北鉄の最終列車に乗って、北三陸駅まで行くじゃん … 7時半、でバスが9時 … 

この1時間半、誰にも見られなければ、うちらの勝ち』

北鉄に揺られて、アキは考えました。

何故私はこの町から出て行かなくちゃいけないんだっけ? …


『夏休みだよね今? 東京に出て来れる?』

『おら、アイドルになりてぇ!』

『芸能界とかアイドルとか … ママ、チャラチャラしたの絶対に許さないからね』

『ママなんか嫌い、大っ嫌い!』

北三陸に来て1年と1ヶ月、ついにアキがこの地を去る日がやって来ました。

… 車内アナウンスが電車がまもなく北三陸駅に着くことを知らせています。

… … … … …

北三陸駅、19時半。

「ありがとうございました~」

終電に乗ってきた最後の客が改札を通ると、副駅長の吉田はチェーンを掛けました。

♪東京は夜の七時 ~

鼻歌まじりで、戸締りを始める吉田。

アキはその目を盗んで、駅舎から外へ出ました。

「じぇっ!」

観光協会の窓から駅前を双眼鏡で監視しているヒロシの姿が見えました。

慌てて身を隠すアキ。

… … … … …

ヒロシが重点を置いて監視しているのは、上野行きの深夜バスです。

「この時間に家出なんてしないんじゃない?」

「だよね、よりによって、深夜バスなんかでね」


しおりと保は取り越し苦労だと言わんばかりですが、ユイの性格をよく知ってるヒロシにはわかっていました。

「裏をかくつもりなんですよ、ユイは」

「妹さん思いなんですね」


嫌味を言うしおり。

「ユイは別にいいんですよ、行きたきゃ行けばいい … でも、アキちゃんは、彼女はこの町に必要だ」

振り向きもせず、双眼鏡を覗いたままで答えたヒロシ。

「ああっ見ろ、足立君 … 栗原ちゃんが嫉妬に狂って、ハンカチかじっちゃってるよ」

保の言葉も耳には入らないほど、ヒロシは集中していました。

「アキちゃんだって、本当は行きたくないはずだ」

… … … … …

駅舎に引き返したアキは、辺りを窺がいながら身を隠す場所を探します。

「まだ見張ってた?」

「じぇっ!」


パーテーションで囲まれた談話スペースの中から声を掛けてきたのは、サングラスをかけたユイでした。

♪あなたがいれば ~ この東京砂漠 ~

ユイは慌ててアキの手を取ってをスペースに引き入れます。

カギの束を手にした吉田が駅務室から出てきて、駅舎内の電気を消しました。

… … … … …

吉田はそのまま、営業時間になったスナック梨明日へと入って行きます。

♪かけがえのないひとに ~ 逢えた東京 ~

「方面行最終電車、出発しました!」

大吉に報告すると、それを聞いた弥生が言いました。

「よし、後は深夜バスだな」

「心配ねえって、仮にもミス北鉄のユイちゃんが悪しきモータリゼーションの象徴たる長距離バスなんか乗るわけねえ」


いつになくご機嫌の吉田、ビールを注文しました。

今野が理由を尋ねると、うれしそうに話しはじめました。

「さっき、母ちゃんに電話したんだけど、今日の晩御飯 … 手巻き寿司なんだよね」

微妙な空気 … 思わず吉田の顔を見つめる一同。

「あれ、何これ、すごい温度差 … 手巻き寿司、嫌い?」

「 … いや、好きだよ」


大吉が答えると、我が意を得たり、満面の笑顔で言いました。

「ですよね、手巻き寿司嫌いな人間なんていませんよね」

ビールを継ぎながら春子が尋ねました。

「吉田君って実家?」

「はい、母ちゃんと妹と3人暮らしです … ブスですけどね」


誰にでもどんな顔か想像できそうなのは何故?

「しかも、名前がユイって言うの … ウケル!」

さも可笑しそうに笑う吉田。

「あ、カイワレ買い忘れ!」

… … … … …

一方こちらは暗がりに身を潜めているふたり。

「お腹空かない?」

ユイに聞かれて、アキは頭を振りました。

「ウニ丼食ったから … あっ!」

ユイの分として持って来たウニ丼を北鉄の中で食べてしまったことに気づきました。

「ウニ丼か、もう一生食べることないんだろうな … 」

ユイの言葉を複雑な気持ちで聞いたアキでした。

その時、突然、梨明日のドアが開いて … 歌いながら吉田が駅舎を出て行きました。

♪おら、こんな村嫌だ ~ こんな村嫌だ ~ 東京へ出るだあ ~

「 … 嫌な歌」

「ずっと、ここさ隠れてるのか?」

「だって、外出たら見つかるじゃん」


… … … … …

「あああ、栗原ちゃん止めなさい、ハンカチは食べ物ではありませんよ!」

ハンカチを食いちぎらんばかりのしおり、保がいくらヒロシに呼びかけても双眼鏡から目を離そうとしません。

「 … どうせ食べるんだったらマヨネーズかけて食べろ」

… … … … …

♪NO.NEW YORK ~ あいつを愛したら ~ 星になるだけさ ~

カイワレを仕入れてきた吉田が梨明日に戻って行きました … 東京の唄もそうそうにないようです …

吉田が動き回るたびに見つからないかヒヤヒヤするふたりでした。

「なあ、ユイちゃん」

「やだよ」


アキが何か話し出す前にユイは答えました。

さっきからバスのチケットを手にしたまま、深刻な顔のアキのことを見ていて察したのでしょう。

「 … アキちゃん行かなくても、私は行くからね」

思わず立ち上がるアキ。

「いぐからおらも、心配すんな」

「 … ごめん」


アキを疑ったことを恥じているのか、ユイはパーテーションの外に出ました。

「知ってた? ウチの高校、修学旅行、東京だったの」

初耳でした。

「じぇじぇっ、じゃあユイちゃん、東京行ったことあるんでねえか?」

ユイは頭を振りました。

「骨折して行けなかった … お風呂で転んで」

「じぇじぇ … 」

「無理すれば行けたけどね … でも、逆に良かったと思う。

最初の東京が修学旅行なんて、ダサいじゃない … こんな田舎の駒場と駒沢の違いも分かんない田舎の高校生と一緒じゃあ、東京に失礼だよ」


半分は本気、半分は強がりでしょう。

… … … … …

「冗談じゃないよ、ユイ! 勘弁してくれよ、ユイ!」

梨明日から、吉田がいきなり飛び出て来たので、ふたりは大慌てでそれぞれに身を隠しました。

「何だよ今更、ちらし寿司に変更って?!」

携帯に向かって文句を言いながら、薄暗い待合室を行ったり来たりしています。

ユイというのは妹の方のようです。

「気持ち切り替えらんねえよ! 母ちゃんに代わってけろ!!」

… … … … …

吉田がふたたび梨明日に入るのを確認して、ユイは話を続けました。

「 … だから、私にとって東京は特別なの」

「おらと全く逆だな」


アキもパーテーションを出て、ユイの前に立ちました。

「ユイちゃん、先に言っとくけどおら、東京行ったら別人になるからな」

「えっ?」

「口数減るからな、『じぇじぇ』とか言わねえからな、基本敬語になるからな、1日1食になるからな、歩く速度が1.5倍になって、便秘になるからな」


ユイが座っているベンチの隣に腰かけました。

東京にいた頃の自分がどんなことをしていたか、ひとつひとつ思い出しながら、挙げていきました。

「アキちゃん … 」

「ネガティブなポエム書くからな、毎日、木や草花に話しかけるからな … 毎日っ」
 

ユイがアキがしゃべるのを止めました。

トイレから出てきた勉さんがふたりのすぐ横に立っていたのです。

驚く勉さんに向かって、ユイは唇に人差し指を当てて、頭を下げました。

その妖しい表情に思わずうなずき返す勉さん。

ユイはその指で梨明日のことを指しました。

勉さんは言われるがまま梨明日へと戻って行きます。

… … … … …

「お帰り、勉さん」

目が泳いでいる勉さん、おもむろに琥珀を手に取って磨き始めました。

… … … … …

「見られた!!」

「大丈夫、もう9時、行こうか!」


時計の針は9時5分前を指しています。

「あ、その前にストーブさんに電話」

「えっ?」

「あいつが見張っている限りバス乗れないじゃん」


観光協会の窓に貼りついて、バス乗り場を見張っているヒロシの注意を逸らすために、ユイはアキに携帯に電話を掛けさせました。

「 … アキちゃん、どうした?!」

… … … … …

一方、梨明日店内では …

「俺はちらしずしの方が好きだ、なあ?」

「んだんだんだ」


夕食を手巻き寿司からちらし寿司に変更されて、へそを曲げてしまった吉田を大吉や今野がなだめていました。

「手巻き寿司なんかあれ、手抜き料理だべ」

「ウチの手巻き寿司は手なんか使いません」


そう一言返すとビールを煽りました。

「何処使うんだ、足か?」

下手な上げ足どりをする弥生。

… … … … …

「ちょっとお願いがあるんだけど … 」

「 … えっ、今どこ?」


アキからの電話を受けながらも、ヒロシは双眼鏡を持ったままです。

「いえ、家です、家家」

何とかヒロシを窓から離さなければ … アキは無い知恵を絞ります。

「あの … テレビ点けてください、見てほしい番組があるんです」

「 … テレビ?」


ヒロシは自分はそのままの体制で、保に頼んでテレビのスイッチを入れてもらいました。

「だめ、こっちガン見してるよ」

駅舎の窓を少し開けて、観光協会を見ているユイが悔しそうに言いました。

アキはテレビで気を引くことはあきらめました。

… … … … …

ふたたび、梨明日 …

弥生に手巻きずしを何で巻くのか聞かれた吉田は答えました。

「 … 機械で巻くんです。

海苔とご飯と具をこうベルトコンベアに乗せて、自動的にくるくるっと … そういう機械を作ったの!」


… … … … …

「じゃあ … 冷蔵庫から、マヨネーズを!」

アキは思いつくまま口にしましたが、ヒロシは微動だにしません。

… … … … …

梨明日。

吉田の話を聞いて春子が突っ込みました。

「それ、手巻きじゃないじゃん」

合わせて笑い出す一同。

しかし笑いもせず、強張った顔で琥珀を磨き続けている勉さんのことが却って気に障ったのか、吉田が声を荒げました。

「何だよ、勉さん? 言いてえことあるなら、ハッキリ言え、勉! 勉アフレック!」

※ちなみに …

… … … … …

発車の時間は刻々と迫っています。

「じゃあ、じゃあ … 」

次の手を考えあぐねているアキ。

そんなアキのことを不審に思い始めたヒロシは尋ねました。

「アキちゃん、本当に家から?」

… … … … …

「そ、そ … 」

勉さんがようやく口を開きました。

「 … と、そと」

「外?」


… … … … …

「もういい、バス出る直前に飛び乗ろう」

ヒロシを移動させることをあきらめたユイがそう言いました。

その時です、しばらく黙り込んでいたアキがいきなり携帯に向かって叫びました。

「ストーブさん、おら東京さなんか、いぎだぐねえ! … ずっとここさいてえ、北三陸で暮らしてえ!」

「アキちゃん」


ユイはアキのことを押えました。

「助けてけろ!」

ユイの手を振りほどいて続けました。

「本当は家出なんかしたくねえんだ!」

… … … … …

「落ち着いて、アキちゃん … すぐ行くから、今どこ?」

ヒロシは窓から離れて、観光協会を飛び出しました。

… … … … …

「行こう!」

監視がいなくなったことを確認したアキは、ユイにそう言うと、荷物を手に取りました。

「はあ???」

ふたりが駅舎を後にしたのとすれ違いで梨明日から出てきた大吉。

「まさか … ?!」

… … … … …

鳴り響く梨明日の電話。

「もしもし、ああどうした? えっ、えっ?!」

電話を受けた春子が、振り返って言いました。

「アキがいないって!」

… … … … …

電話の主は夏でした。

うたた寝から目を覚ますと、家にいたはずのアキの姿がどこにも見当たらないのです。

「見たよ、探したよ、部屋も小屋も … ああ、海女カフェ? … いやいやいや、電話したけど、誰も出ねえんだ!

… ちょっと、ちょっと見てくるべ!」


… … … … …

「うん、こっちも探してみるよ!」

「逃げられたあ!」


大吉が店に飛び込んできました。

「ええっ!?」

「あのふたり、バスに乗って行ってしまったじゃあ!」

「ああ、すみません」


申し訳なさそうな顔をしたヒロシが後から入ってきました。

間一髪、ふたりの目の前でアキとユイが飛び乗ったバスは発車して行ってしまったのでした。

… … … … …

「やったあ、やったねアキちゃん」

有頂天のユイ、アキもホッとして腰を下ろしました。

「びっくりしたよ、家出したくないとか言うから … でも演技だったんだね、すごいよアキちゃん、女優になれるよ」

興奮してはしゃぐユイと裏腹にアキはバスの外の景色を見て、不安そうな顔をしています。

荷物を手にして立ち上がりました。

「えっ、本当に行きたくないの?」

「 … このバス、本当に東京行ぎか?」


その時、一番前に座っている老人がブザーを押しました。

長距離バスではあまり見かけない光景です。

『はい、ご乗車ありがとうございます … このバスは“袖が浜”循環バスでございます』

耳を疑うような、バスのアナウンスが流れました。

… … … … …

「アキっ!」

夏は灯りの消えた海女カフェで名前を呼び続けましたが、返事があるわけがありません。

… … … … …

「あの、これ東京 … 行かないですかね?」

恐る恐るバスの運転手にユイは直接尋ねました。

「えっ、東京行きませんよ … 次は、袖が浜、旧漁協前、終点になります」

ふたりが乗り込んだ時は確か上野行きとなっていた行先表示が袖が浜に変わっていました。

… … … … …

海女カフェを隅々まで探してもアキの姿を見つけられなかった夏は、ガックリと座り込んでいました。

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おまけ
吉田の鼻歌リスト
  • 東京は夜の七時 唄:ピチカート・ファイブ
  • 東京砂漠 唄:内山田洋とクール・ファイブ
  • 東京 唄:やしきたかじん
  • 俺ら東京さ行ぐだ 唄:吉幾三
  • NO.NEW YORK 唄:BOOWY
東京にちなんだ鼻歌シリーズでしたが、ユイにも指摘されていたように、最後だけ違います。

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2013年06月16日 (日) | 編集 |
さて、次週の「あまちゃん」は …

アキ(能年玲奈)はユイ(橋本愛)とともに家出し、東京へ行くことを決意する。

しかし、二人を町から出したくない大吉(杉本哲太)らは、町中に監視の目を光らせ、あえなく家出は失敗。

欲の皮が突っ張った大人が犠牲にしちゃなんねえ

アキから、家出の真意を聞いた夏(宮本信子)ら海女たちは、東京行きを応援するが、春子(小泉今日子)は依然として上京に反対。

去る者は追う、全力で!

その頃、プロデューサーの太巻(古田新太)の代理として、水口(松田龍平)が再び北三陸にやってきた。アキとユイを、地元アイドルユニット「GMT47」のメンバーとして迎え入れたいと言うのだ。

でも僕も本気なんで、ここで引き下がる訳にはいかないんです

春子はアキの真意を確かめようと、二人だけで話をする。アキがアイドルになりたいと思ったのは、春子の歌がきっかけだった。

どう答えていいか分からなくなった春子は、夏に相談するが、かつて自分の上京を認めてくれなかった記憶がよみがえり、いつものように夏を問い詰めてしまう。

すまなかったな、春子

お母さん …


そんな時、夏がこれまで秘めてきた胸の内を語り始める。長年のわだかまりがすっと溶けた春子は、アキを東京に送り出すことを決める。

長い間、お世話になりました

いよいよ北三陸を離れる日。アキはわざわざ北鉄で旅立つことになり、駅で熱烈な見送りを受ける。

冗談じゃないよ、ユイ

一方、途中の駅で合流するはずだったユイは…。

元気でね、またねえ!

あまちゃん 公式サイトより)

あまちゃん じぇっ、大吉

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2013年06月15日 (土) | 編集 |
第66話

初めて母親に反発した夜、東京から誘いの電話がありました。

次の日の朝 …

天野家の3人はいつもと変わりなく一緒に朝食をとっていました。

あれだけ言い合った春子とアキ、非常に気まずい状態ではありますが、ここで暮らす時に決めたルール「朝ごはんは必ず3人一緒に食べること」を律儀にも遵守しているのです。

「何よ、叩いたことは謝ったでしょ、ちゃんと」

隣に座っている春子の方を見ないように、ソッポ向いて不自然な格好で食べているアキに春子は言いました。

「謝った後にまた叩いたべ」

「おかしなことばっかり言うからでしょ」

「やめろ、朝からギスギスすんな! 気分悪い」


夏にたしなめられ、春子は自分の食器を片づけ、席を立ちました。

「ごちそうさまでした」

「 … 大人気ねえな、自分の夢を娘に託そうとか、そういう考えはねえのか」


アキは春子に聞こえないように小さな声で悪態ついたつもりでしたが、しっかり聞こえていました。

「あたしが あんたに 夢を 託すか、バ~カ! … あんたみたいに猫背の貧弱なメスのサルに!」

「春子!」


娘のことを罵る春子を夏が叱りました。 … しかし、泣き出すアキ。

「うわああ … 」

「泣ぐな!」


… … … … …

海女カフェ、人気のない簡易局。

心ここに非ず、アキはそんな顔で腰かけています。

「聞いてる?」

ユイに声を掛けられて、アキは我に返りました。

「ごめん、聞いてなかった」

「アキちゃん … どこから?」


ユイは尋ねました。

「最初がら … ごめん」

あきれながらも、ユイはもう一度話しはじめました。

「だから、こないだは国道45号線を宮古まで南下しようとしていたの」

家出未遂の時のことです。

「でも今回は車もないし、別のルートで」

「えっ、何処か行くの?」


アキに聞かれて、ユイは信じられないといった顔で答えました。

「東京!」

「 … 何しに?」

「アキちゃん … 」


決して気の長い方ではないユイが、神妙な顔でアキに念を押すように言いました。

「大事な話だよ、ちゃんと聞いて」

うなずくアキ。

「太巻さんに、会いたいって言われたの、ふたりで」

「じぇじぇっ!」


… … … … …

観光協会。

町の人たちは、まだ警戒を緩めず、家出を阻止する作戦を練っていました。

「ヒッチハイクという手もあり得るな」


ジオラマを前に観光協会の保、しおり、ヒロシ、そして北鉄の大吉、吉田がユイとアキが家出を考えた場合のルートをシミュレーションしています。

吉田が北三陸駅周辺にあと3か所監視カメラを設置することを主張しました。

「いや、そこまでしなくても … 」

水を差したヒロシに吉田はムキになって言いました。

「甘いぞストーブ、事件はジオラマで起きてるわけじゃねえ、現場で … 」

「ジオラマがこういう形で役に立つとは思わなかった、うん」


決めゼリフを言い終える前に保が話し出したので、不満顔の吉田。

「裏をかいて、北鉄を使うって可能性はないかしら?」

… … … … …

しおりが考えたようにアキも北鉄を使うことをユイに提案していました。

「だめだめ北鉄なんて、最終が7時半だよ!」

「始発は?」

「終電から始発までどうやって時間つぶすの?」


駅には大吉か吉田がいて、梨明日には春子、そして常連客は知り合いばかり …

「だめ、北鉄使えない!」

… … … … …

北三陸駅、待合室。

あわよくば『家出』に関する情報を聞き出そうとヒロシはアキのことを待ち伏せました。

「ごめんね、妹のわがままにつき合わせちゃって」

「おらもちょっと親子関係、煮詰まってるから … 」

「その太巻って人は何なの?」


アキもプロデューサーということしか知りません。

「プロデューサーっていうのは何をする?」

「ユイちゃんが言うには、秋元某とか、つん、つん、つん … 」

「つんく?」


言葉に詰まったアキにヒロシが思い当たる名前を出すとアキはうなずきました。

「 … つんく某みてえに偉え人らしい!」

「俺の方がちょっとくわしいかも」


ヒロシに笑われると、アキはくやしそうに言いました。

「だって、プロデューサーなんかいなくても、北鉄と観光協会でやってきたべ!」

「 … でも東京でやるなら」


『東京』という言葉を聞いて、アキは露骨に嫌な顔をしました。

「 … そんなに行きたくないの?」

アキはうなずきました。

「でも、ユイちゃんは行かしてやりてえ … そのためには、おらが折れねえと、ユイちゃんとふたりなら何とかやっていける気もする。

おらもいつまでも逃げ回ってらんねえ、いつかはママみてえに向き合わねえと … 地元でダサかった自分と」


アキにとって地元とは東京のことでした。

「皆にチヤホヤされて、ちょっと調子に乗った時に『地元じゃ、ダメだったくせに』って声が聞こえるんだ …

『うるせえ、おら田舎さ逃げてきた訳じゃねえぞ! 地元でだってやれるんだ』って … うん、克服しねえと」

「アキちゃん … 」


話しをしながら、ふとアキは気づきました。

「あれっ、やばいやばい、いつの間にか東京へ行く方向で話が進んでるな」

ヒロシはそんなアキを見て微笑ましく感じていました。

「アキちゃんは、カッコいいな」

「おらが?」


ヒロシにとってアキの話は耳が痛い話でもありました。

「ストーブさんも東京で負けて帰ってきた、オスの負け犬だもんな」

歯に衣着せぬアキの言葉にヒロシは苦笑いしながら言いました。

「オスの? … うん、2ヶ月で戻ってきた。

負け犬が心の傷、克服するために頑張っているようなもんで」


そう、最近のヒロシはただストーブの前に座っていた頃を考えると、見違えるように頑張っていました。

「で、いつ家出するの?」

上手に誘導尋問したつもりでしたが、アキは危ういところで止まりました。

「うっかり言わねえべ!」

… … … … …

観光協会に帰ったヒロシは、アキから得た情報を報告しました。

「まだ、決まってない?」

「はい … でも家出の話は持ち上がっているみたいで」


「アキちゃんは?」

大吉に聞かれて、まだ迷っているみたいだと告げました。

「じゃあ、今夜ってことはねえか … 」

取りあえず胸をなでおろした一同でしたが …

… … … … …

その午後、アキはふたたびユイから海女カフェに呼び出されました。

「深夜バスで行こうと思うの」

開口一番ユイはそう言いました。

「夜9時、北三陸駅発の深夜急行バス、朝7時には上野に着くの」

ユイはチケットを取り出してアキに渡しました。

その日付を見てアキはびっくり。

「じぇっ! 今日?」

「今日だよ」


当然と言うように答えたユイ、しかしスーツケースなど荷物が一切見当たりません。

持っているものといえば、小さなハンドバッグひとつだけ。

「荷物持って出るからバレるんじゃん、極限まで少なくしたよ」

そしてユイは慌ただしく東京までのルートをアキに説明し始めました。

「北鉄の最終列車に乗って、北三陸駅まで行くじゃん … 7時半、でバスが9時 …

この1時間半、誰にも見られなければ、うちらの勝ち」


否応なく話しをどんどん進めていくユイ。

「え、えっ … もう、今すぐ行くの?」

うなずくユイ。

アキは心の準備ができていないどころか、まだ東京に行くこと自体迷っているというのに。

「 … 1回、家寄ってもいい? … なんぼ何でも、ほとんど手ぶらだし」

「金ならあるよ」


アキにとって、そういう問題ではありませんでした。

「せめて … お祖母ちゃんの顔ぐらい見たいから」

「わかった、駅で待ってるね」


それ以上は口を挟むのはやめて、ユイは一足先に席を立ちました。

… … … … …

喫茶リアス。

「春ちゃん、家出した時もビックリしたなあ」

「ああ … 」


弥生やその旦那の今野、大吉たちが、自分の昔話に花を咲かせていますが、春子は穏やかな顔のままです。

「北鉄の開通式だべ?」

「しかも、海開きの日 … 窓から中覗いたら、電車さ乗ってるんだもの」


『春子、なして乗ってるの?』

「あれは、たまげたなあ~」

弥生が豪快に笑うと、春子も苦笑いしました。

「あれっ、あの日、夏ばっぱ、駅さ居たか?」

今野が尋ねると弥生が答えました。

「いねえいねえ、浜さ出て、味噌汁さ入れるワカメだの採ってたんだ」

「はあ、夏ばっぱらしいなやあ」

「前の日はしゃべったのか?」


大吉が尋ねましたが、春子はとぼけて教えません。

「覚えてねえか、もう25年も前だもんなあ」

感慨深そうな弥生に春子は言いました。

「あたしは覚えてるんだけどね … まあ、今度夏さんに聞いてみてよ」

… … … … …

アキが家に帰ると、夏は囲炉裏の脇で寝ていました。

起こさないように、忍び足で居間に入ろうとしましたが、気配で目を覚ましてしまいました。

「ああ、寝るとこだった」

「いいよ、寝てなよ」


夏は夕飯の支度をするために立ち上がろうとしましたが、アキは止めました。

「ウニ丼でいいよ」

食卓に売れ残りのウニ丼がいくつか置いてあります。

「食いあきたべえ?」

「いい、ウニ丼がいい!」


家を出る前にもう一度、夏のウニ丼を食べておきたい … 忘れないように。

「アキは本当に、手のかかんねえ、いい子だなあ」

しみじみと言って、夏はまた横になりました。

… … … … …

「疲れた?」

ウニ丼の包装を解きながら、アキは尋ねました。

「ああ、大丈夫だ … おらとかつ枝と美寿々、潜りっぱなしだからな、足がパンパンだ」

自分の太ももを叩きました。

「明日も団体さ、3組だ」

「大変だね … 」

「何だあ、他人事みてえに」


うかつにも口を滑らしてしまったアキ、夏は全く気づいてはいませんが。

「アキのおかげだ、毎日大盛況でよ、へへへ … うれしい悲鳴だ、ははは」

この祖母を裏切って自分は今夜、北三陸を出ていくんだ …

ウニ丼を頬張りながら、涙が出てきました。

北三陸に来て1年と1ヶ月、ついにアキがこの地を去る日がやって来たのです …

『東京さ帰りたくねえ、ここで祖母ちゃんやママと皆で暮らして、毎日海さ潜りてえ!』

めまぐるしくもあり、楽しく幸せな、皆に愛された日々 …

「夏ばっぱ、もう1個もらっていい?」

あっという間にウニ丼を平らげたアキが声を掛けましたが、夏からの返事はありません。

振り向くと夏は寝入っていました。

ウニ丼を手にしたアキは、しばらくの間、寝息を立てている祖母の寝顔を見つめていました。

そして、今度は起こさないようにそっと家を後にしました。

… … … … …

しばらくして …

北三陸に向かう北鉄の車内で泣きながらウニ丼を頬張るアキがいました。

本当は東京なんか行きたくない … ずっと夏ばっぱのそばにいたい … それなのに何故自分は旅立つことを選んだのだろう?

アキはまだその答えは出せずにいました。

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2013年06月14日 (金) | 編集 |
第65話

『潮騒のメモリーズ』の復活ライブ、会場にいるはずのない母の姿をアキは見つけました。

なんでここに?

今日は梨明日の当番の日なのに … アキはパニックに陥っていました。


満員の観客をかき分けながら、近づいて来た春子、ステージの前でアキと対峙しました。

「袖が浜、海女カフェからお送りした今日のわんこチャンネル、そろそろお時間となりました。こちら8月15日まで1時と4時の2ステージ、毎日ユイちゃんアキちゃんに逢えるそうです … 」

レポーターがエンディングを告げて中継が終わると、春子はステージに上がってきて、いきなりアキの頬を叩きました。

頬を押さえて、しゃがみ込むアキを怒鳴りつける春子。

「立ちなさいよアキ、あんたどういうつもり?」

ユイが「自分のため」だとかばいましたが、春子は取り合いません。

「約束は約束です。お座敷列車で最後にするって、あんた言ったよね?

何はしゃいでるの?!」

「やめろ、落ち着け春ちゃん!」


大吉と池田がなだめましたが、春子は観客席に向かって大声をあげました。

「いやなんです! … 自分の大事な娘が、こういう男性のギラギラした好奇な目にさらされるのが!」

「別にそんな目で見てねえし!」


先頭に立っていたヒビキが口をとがらせて言いました。

「うるさいっ、メガネは黙ってろ!」

観客席からも春子にブーイングが起こります。

大吉が場所を変えるように言いましたが、春子は聞きいれようとはしません。

「3年生になったら、進路のこと将来のこと、ちゃんと真面目に考えるって … 言いましたよね、先生?」

「は、はい … あの、たまたま … 今日はたまたまです」


観客席にいた潜水土木科の教師、磯野はいきなり話を振られて慌てて弁解しましたが、その手にはしっかりとユイの顔写真が貼られた団扇を握っていました。

… … … … …

「叩くことねえべ … 」

「えっ?」


春子が振り返ると、アキが反抗的な目で自分のことをにらんでいました。

「何もいきなり叩くことねえべ、皆の前なのに」

アキが春子に口答えをするなんて初めてのことです。

「おらにはおらの考えがあるんだ … 叩くことねえべ!」

… … … … …

「確かに今のはやり過ぎだ」

アキの肩を持って、春子のことを非難したのは夏でした。

「ここはアキの職場だぞ。

そこさ乗り込んで、訳も聞かずに手を上げるとは … いくら親でもやり過ぎだ!」


夏の言葉をにらみながら聞いていた春子は、アキの腕をつかんで立ち上がらせると、観客席に向かって訴えました。

「 … 金輪際、チヤホヤしないでもらっていいですか?

普通の娘なんです、何なんですか … アキはここで、ごく普通の高校生活も送れないんですか?」

「うるせえ、ババア! 引っ込め!!」


観客の誰かが春子に対して罵声を浴びせると、一斉にまたブーイングが起こりました。

「ババアっつったなババアって、誰だよ、ババアっつったのは?」

観客側をにらみ返す春子。スケバン時代の迫力は健在でした。

そんな春子の姿にうろたえるアキ、目を伏せる夏 …

… … … … …

そして …

長内夫妻や大吉たちも同席して、春子とアキの話し合いの場は天野家に設けられました。

打たれた頬を氷で冷やしているアキを見て、春子は嫌味を言いました。

「大げさな、ちょっと当たっただけじゃん」

「いやいやいや、中々の闘魂注入でしたよ」


責任を感じたのか磯野もついて来ています。

「よく顎が外れねがったな」

組合長が反対に春子に嫌味を言いました。

「 … 叩いたことは悪かった、ごめん」

自分の非を認めてアキに謝りました。

「でもママ、絶対に許さないからね、あんなチャラチャラしたの」

しかし、譲れないことは、決して譲らない春子でした。

「ただのチャラチャラじゃねえ、おらなりの考えがあってチャラチャラしてたのだ」

「どんな考えよ、言ってごらんなさいよ」


にらんだまま黙ってしまったアキに代わって、ユイが口を開きました。

「私を家から出そうと思って … ねえ、そうだよね?」

アキは肯定も否定もしませんでした。

「水口さんの件で私がふさぎ込んで … 」

「ユイちゃん、黙ってて … アキに聞いてるの」


春子はユイの言葉を遮りました。

しばらくの間の後、アキは訥々と話しはじめました。

「元々、ユイちゃんがデビューして、それで帰って来て凱旋公演やるために造ったステージだけど … 」

「家から出なきゃデビューできないよって」


ユイが言葉をつけたしました。

「 … ユイちゃんに早く元気になってほしくて」

それが理由だという顔をしたアキ。

「それだけ?」

春子は聞き返しました。

「えっ?」

「だったら、ユイちゃんひとりでいいじゃない、あんたまで一緒になって歌う必要なかったじゃない」


勘のいい母には見透かされている … アキは観念しました。

… … … … …

「それだけじぇねえ … 」

一同が身を乗り出しました。

「言いなさい、怒んないから」

「おらも 歌うの 好きだから … 歌って、ワイワイ言われるの 気持ちいいから

最初はただ海女の格好して、電車さ乗って、弁当売ってた頃は何が面白れえのかわかんねがった … 何もしてねえのに写真バシャバシャ撮られて …

だけど、お座敷列車でユイちゃんと歌って、とにかく楽しがった …

あん時のお客さんの笑顔や声援が忘れられねくて、ありがとうありがとうって … 来た時よりも確実に元気になって帰って行くお客さんの顔が忘れられねくて … 」


春子が無意識に母、夏の口グセを口にしていたように、母から娘へ、娘から孫へと繰り返す。

天野家の遺伝子のなせる技なのでしょうか …

「そりゃでも海女やってる時から感じてることだ … 潜って、ウニ獲って、ウニ剥いで、お客さんに喜んでもらう … んだ、サービス業だ!

海女もアイドルも一生懸命サービスしてお客さんに喜んでもらうのは一緒だって、おら気づいたんだ!」


拙いけれど懸命に自分の言葉で母に伝えようと話したアキ。

そのことは春子にもわかりました。

「で、さっき言ったよね、自分なりの考えがあってチャラチャラしてるんだって … 何よ、どんな考えよ?」

立ち上がったアキの口から誰も思いもよらなかった言葉が飛び出しました。

おら、アイドルになりてぇ!

… … … … …

「アイドルになりてえ、歌って踊って、潜ってウニ獲って、上がって食わせる、そんなアイドルになりてえ!」

つかつかとアキに近づいた春子は、また娘の頬を叩きました … さっきよりも強く。

「春ちゃん!」「春子さん!」「おばさん!」

「おばさんじゃない! いつどんな時もあたしは誰のおばさんでもありません!」


春子の必然性のない主張、夏は頭を振りました。

「わあああ … 」

でっかい図体のアキが子供のように泣き出しました。

「泣くなっ!」

「叩くから泣くんだべ、1日2回も!」


叩かれるようなことを言うからだと春子、食って掛かるアキ。

「だって、バカじゃん!

歌って、踊って、潜って、ウニ獲って、食わせるアイドル?!」

「歌って、踊って、潜って、ウニ獲って、上がって、食わせるだ!」


相当低レベルな言い争い … 夏はまるで昔の自分と春子を見るような気分でした。

ここでも繰り返し … 

「同じよ!!」

「同じじゃねえ、海から上がんねえと、息続かねえべ! 潜りっぱなしじゃ、それこそバカだ!」


目に涙を浮かべたまま、母に悪態をつくアキ。

春子の手がアキの頬を掴みました。

「うええ … 」

「泣くなあ!」


春子は一同を振り返って言いました。

「この子ねえ、バカでしょ、バカなんですよ。将来のこと真剣に考えろって言ってるのにぃ!」

「考えたべ」


涙声のアキ、しかし気持ちは負けていません。

「考えた結果が? … バカ過ぎるって言ってるんだよ、ねえ先生?」

またいきなり話を振られた磯野。

「ええっ … へへへ、潜水土木科の担任としては、やはり南部もぐり的な要素も入れてほしかったですねえ」

「えっ?」

「あの、歌って潜って、足場組んで、ふたり一組で作業するアイドル?」


アキは磯野を突き飛ばして、外に飛び出しました。

「待ちなさい、アキ!」

玄関の前で振り向いたアキ、春子に向かって、また悪態をつきました。

「バカって言う方がバカだ、バカっ!」

遅れてやってきた反抗期か、アキのあり得ない言動に春子は唖然としていました。

「アキちゃん?!」

ユイも思わず …

「ママなんか嫌い、大っ嫌い!」

走り去るアキ。

いつものアキでは考えられない振る舞いに誰もがショックを受けていました。

… … … … …

堤防の先まで走ってきたアキ、灯台にもたれて … 目に入った、若かりし頃の春子の落書きを何回も踏みつけました。

… … … … …

「嫌な予感してたのよ、吉田君に借りた映画のビデオ … 潮騒のメモリー … あたしが寝てから毎晩見てたのここで。

夜中の2時3時まで、時々はさ巻き戻して、セリフ復唱したりしながら」

「おらも見た … 鈴鹿ひろみみてえになりてえって言ってた」


夏の話を聞いて、かつ枝にも心当たりがありました。

「海女カフェでもしゃべってたもんな、鈴鹿ひろみはすげえって」

「マジで?」


次々と出てくる事実に春子の憂鬱は高まっていきます。

「だからいつか女優になりたいとか言いだすんじゃないかと思ってたけど … あそこまでバカだとわね」

… … … … …

閉店後の海女カフェ。

灯りを消したフロアにアキとユイはいました。

「本気なの、アキちゃん?」

「うんっ!」

「アイドルになりたいって本当に思ってるの?」


ユイは何度も念を押して聞いてきます。

「わがんねえ … 売り言葉に買い言葉の気もするし、実は随分前から考えてた気もする」

「うそ、うそ … 私のせいかな?」


何だかどんどんアキを巻き込んでいるようで責任を感じるユイ。

「わがんねえ、お座敷列車とか海女カフェとか楽しかったし … おらはただ人が集まる場所で歌ったり踊ったり、潜ったりして、周りの人が元気になればそれでいい。

うん、それがアイドルだっていうならそうだし、海女さんだっていうなら、そうなんだべ」


ユイはアキのことを見つめています。

「まあ、アイドルなんかなれる訳ねえけどな」

「そんなことないよ、なれるよ … っていうか、もうなってる」

「おらが?」


うなずくユイ、アキの顔がほころんでいきます。

「そもそもアイドルの定義って曖昧じゃん、自称アイドルなんてごまんといるわけだし …

でもうちら違うと思う!」


ユイは両手でアキの肩をつかみました。

「今日のイベントだって、結局200人近く集まったじゃん … 東京でも通用するって」

アキから笑顔が消えました。

「ごめん … 東京には行ぎたぐねえんだ、ごめん」

ユイから離れて腰かけたアキ。

「いい思い出ひとつもねえし、学校も嫌いだし、友達もいねえし … 東京って聞くだけで足が震える」

ユイはアキの隣に腰かけました。

「ユイと一緒でも?」

そう尋ねられても答えることができないアキでした。

… … … … …

その時、アキの携帯に着信が … 水口からです。

「 … アキちゃん、今日のイベント観たよ、海女~ソニック」

「じぇっ、な何で?」


イベントに参加していた誰かが自分で撮った動画をネットにアップしていたのです。

「 … 音とか割れちゃってるけど、勢いだけは伝わった … っていうか勢いしか伝わらなかったけど、大切なのは勢いだからね。

今ちょうど、太巻さんが観てる」


黙り込んでしまったアキ。

電話の向こうの水口も隣に座っているユイも不審に思っています。

「 … あれあれどうした、絶句? じぇ、じぇっく?」

北三陸にいた時と違って、水口は軽口を叩きました。

「すいません … 」

ユイが電話の相手は誰かと尋ねました。

「えっと、水口さん」

「何で何で?」


… どうしてアキちゃんが水口さんと?

アキはユイを制して受話器に耳を傾けました。

「 … もしもし、はじめまして、太巻ですけど」

いきなり電話の相手がボスに代わりました。

「 … 君どっち、ユイちゃん?」

「アキです」

「 … あ、そう 夏休みだよね、今? 東京出て来れる?」


単刀直入でした。

アキはまた黙り込んでしまいます。

「 … もしもし、いつ出てこれる?」

「代わろうか?」


ユイの申し出に首を振るアキ、それどころか電話を切りかねません。

「貸して!」

ユイはアキから無理やりに携帯を奪い取りました。

「もしもし、はいそうです、ユイです … 」

初めて母親に反発した夜、東京から誘いの電話がありました。


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2013年06月13日 (木) | 編集 |
第64話

海女のフェスティバル、『海女~ソニック』まであと一週間。

『海女~ソニック』と銘打つからには、それぞれに見せ場を作らなければいけません。


ステージでそれぞれが行うパフォーマンス … 出し物の確認をするヒロシです。

「オープニングは、アキちゃんの開会宣言」

「はいっ!」


アキがステージに上がりました。

「続いては、栗原さん」

金髪のカツラ、サングラスをかけて、ゼブラ柄のコートを着たしおりがステージに上がりました。

「レディ・ガガ」で間違いないですか?」

エントリーシートを見ながらヒロシが確認しました。

しおりはアキに何か耳打ちします。

「トップは厳しいそうです」

通訳(?)するアキ。

次は新人海女5人の『モー娘。メドレー』 … まあ、こんなもんでしょう。

そして、次は …

「美寿々さんのレディ・ガガ」

「Oh! it's Angel !」


颯爽とステージに上がる美寿々 … いきなりかぶりました。

「美寿々さんのガガっていうより、蛾ですよね?」

対抗心丸出し、小馬鹿にして笑うしおり。

「何だこの野郎、ケンカすっかあ?!」

掴み掛る美寿々。

「 … 話し合いで決めてください」

深く関わらず話を進めるヒロシ。

「で、次が花巻さんの『レディ・ガガ』?! … いい加減にしてください!」

ガガばっかりじゃ話しになりません。

「よく見ろ」

ステージの珠子を見て、ヒロシはエントリーシートを見直しました。

「 … レディオ・ガ・ガだ」

珠子が扮しているのはガガでなく、Queenのフレディ・マーキュリーでした。

「わかる奴だけ、わかればいい」

次は、弥生で『昭和ヒットメドレー』と書かれています。

美空ひばりが着ていたような真っ赤なステージ衣装をまとった弥生が現れました。

「 … 長そうだな」

小声でぼやくヒロシ。

「あ~あ~♪ 休憩入れて2時間半」

弥生は、いけしゃあしゃあと言い切りました。

「お腹いっぱいだよ、潮騒のメモリーズに辿り着くころにはお腹いっぱいだよ!」

… … … … …

北鉄のユイちゃんが復活しました。

せっかくのお祭りなので、海女さんたちにバックダンサーとして踊ってもらうことにしました。


新旧合わせて総勢9名のバックダンサーたちにダンスを指導するのはユイです。

ユイの歌う『潮騒のメモリー』と手拍子に合わせて踊る海女たち。

「遅い遅い、移動は速やかに! … かつ枝さん、上手です!」

「かみてってどっちだ?」

「向かって右だべ」


向かって右がよく分からないかつ枝に弥生がもっと分かりにくい説明をします。

「中川家の弟がいる方だべ」

「つうか、弥生さん前に出過ぎ!」

「うちらにかぶってるんですけど … 」


新人海女たちから非難されても怒鳴り返す弥生です。

「弥生さん、下がってください」

見かねたヒロシが注意しても「気のせいだ」とか言って動こうとしません。

「遠近法だべ、全体的にでっけえから、前にいるように見えるんだ」

「下がってください」


下手に弥生のペースに乗って騒いだりせず、冷静に応えることを学習したヒロシでした。

仕方なく後ろに下がった弥生。

ユイの指導にもだんだん熱が入っていきました。

… … … … …

スナック梨明日。

「キャンプで食うカレーみたいなもんだと思うんだ」

店に入って来るなり、功が意味不明なことを言いました。

「何ですかいきなり?」

大吉が尋ねました。

「わざわざ、キャンプ場に行って … 火をおこして … 釜でご飯を炊いて … みんなで協力して … カレーを作る、その行為に興奮するわけだよ。

苦労をして作ったから美味い … ユイもそんな感じだと思うんだ」


理解できない大吉と吉田に保がわかりやすく説明しました。

「だから、わざわざローカル線さ乗って北三陸まで行って … ただの女子高生のためにお金使う行為に興奮しているってことですよね?」

「その通り! 冴えてるなあ、菅原 … 殴るぞ!」


教師時代からの決めゼリフです。

「だからさ、東京行っちゃダメなんだよ … キャンプ場のカレーは、キャンプ場で食わなきゃダメなんだよ」

自分の言葉に納得してうなずく功でした。

… 会いに行かなきゃ、会えないアイドル …

大吉が春子に話を振りました。

「春ちゃんはどう思う? … ユイちゃんだよ、東京に行かせるべきか、引き留めるべきか?」

一同が春子に注目します。

「本音言ってもいい?」

「もちろんだ」


春子はガラッと口調を変えて言いました。

「どうでもいいって言うか、関わりたくない!」

「天野 … 」


絶句する功。

「だって、アキもあたしも、やっとこっちで暮らすって覚悟ができたんだよ … それなのに、東京東京ってさ、トランクごろごろ引きずってさ …

血眼になって止めようとしているアンタたちもどうかしてるよ、いつまでユイちゃんに頼ってるの? … 行きたきゃ、行かしてやりゃいいじゃん!

… っていうのが本音かな、ごめんね」


最後は可愛くまとめました。

非常に痛いところをつかれて、返す言葉が全くない、大吉、吉田、保でした。

「去る者は追わずか … 」

功のつぶやきを聞いて、春子はドキッとしました。

… それは、他ならぬ母、夏の口グセ。

まさか無意識に自分の口から出るとは … 母の遺伝子を自分が受け継いでいることに、改めて戸惑う春子でした。


… … … … …

そして夜になると、アキは毎晩遅くまで『潮騒のメモリー』を見ていました。

繰り返し、繰り返し …

昭和のアイドル映画がこんなにもアキを夢中にさせるとは、主演女優 … やはり、鈴鹿ひろみの存在感でしょうか?

「新助、その火を飛び越えて来い!」


ヘッドフォンで外部の雑音を遮断して、映画にのめり込むアキ、そしてまた泣き出しました。

「アキ … アキ?」

いくら呼んでも返事がないアキ。

不審に思って居間を覗いた春子 … アキが『潮騒のメモリー』を見ながら泣いています … 春子は何故か、たまらなく不安を感じていました。

… … … … …

喫茶リアス。

春子は『潮騒のメモリー』のビデオを持ち主の吉田に返しました。

「ウチにあるとついつい見ちゃうからさ、ありがとうね」

すると、次に貸してほしいと大吉。

「いいですけど、駅長の所、たしかベータでしたよね?」

「バカ言うなこの、20年前にVHSに買い替えたっつうの!」


どれだけ物持ちがいいのか …

「20年前 … おらだけ今年からハードディスク・レコーダーだ」

大吉にはついていけない話題になってきました。

「つうか、勉さん、何だいそれ?」

いつもなら琥珀を磨いているはずの勉さんが磨いているものは何 … 目ざとい吉田が尋ねました。

「これ? 携帯」

「またまたまた!」


とても携帯には見えない形状でした … 勉さんはウソを言った訳ではありません。

それは、スマートフォンでした。

2009年夏、まだスマートフォンが珍しかった時代に、勉さんは北三陸で一番最初に買った男として一目置かれ、『スマート勉』と呼ばれるようになります。

… … … … …

「あ、そう言えば、最近ヒロシ君見かけないけど」

「あいつ、海女カフェで忙しいから」


保は答えました。

「海女カフェ担当だもんね … ユイちゃんは相変わらず出てきてないの?」

「いやいや、あれ、アキちゃんから聞いてねえか? … ユイちゃん、復帰したんだよ」

「そうなんだ … あ、じゃあ、よかったじゃん!」

「えっ、本当に知らないんですか?」


大吉たちは春子の顔を不思議そうに見ています。

「何、何っ?」

「アキちゃんがユイちゃん誘って、ふたりで歌うんだと」

「えっ?」


『海女~ソニック』、『潮騒のメモリーズ』復活のことも当然春子の耳には入ってきていませんでした。

「何それ、初耳、聴いてない!」

調理中の包丁を俎板に突き立てました。

「夏休みの間は毎日歌うらしいですよ」

「はああ?!」


自分にだけ内緒にして、ことが進められている … 怒り心頭の春子です。

… … … … …

『海女~ソニック』当日、海女カフェ。

「 … 何だよ、もっと早く言ってくれれば見に行ったのに~」

アキが携帯で話している相手は、水口でした。

『海女~ソニック』で『潮騒のメモリーズ』を復活させることを報告したのです。

「ごめんなさい、バタバタして … 池田さんも来てるんです、生中継してくれるんです」

「 … 録画送ってもらうよ、ユイちゃんは?」

「超元気だ、振付と演出もユイちゃんが考えたんだ」

「 … へえ、すごいじゃん。必ず送ってよ、上層部に見せるから」


… … … … …

『5時だべ!わんこチャンネル』の生中継が始まりました。

レポーターがミス北鉄のユイが今日、番組に復活することを伝えています。

「しかも、海女のあきちゃんとのスペシャルユニット『潮騒のメモリーズ』の生ライブつき!」

すでにステージの前では、ヒビキとその同族たちがライブの始まりを今か今かと待ちわびながら、歓声を上げていました。

「海女~ソニック2009!」

「北三陸に『潮騒のメモリーズ』が来たあ!」


その光景をテレビで観ている春子 … 険しい表情に気づいた大吉。

… … … … …

一方、海女たちの休憩室で出番を控えるアキとユイ。

「緊張するなあ、何か月ぶりだ?」

お座敷列車が3月だから、5か月ぶりだと、ユイは答えました。

「ありがとうね」

唐突にユイから礼を言われましたが、アキには意味が分かりませんでした。

「前にアキちゃんに励まされて、また借りができちゃったねえ」

「貸し借りじゃねえべ、友達だもん … おらも得した気分だ。

本番前のこの緊張感とワクワクする感じ、おら好きだ、何かクセになりそうだ!」

「私も!」


アキは、デビューしたら、こういう気分を毎回味わうことができるユイのことをうらやましく思っていると言いました。

その時、休憩室の戸が思い切り開いて、ライブを終えたフレディー … 珠子が顔を出しました。

「アキ、いい塩梅に温めておいたぞ」

肩で息をしながらそう言った珠子。

「頑張ろうね!」

「うんっ!」


ユイが差し出した手をアキは握り返しました。

… … … … …

「さあ、お待たせしました … 北三陸の、いや岩手県が誇る伝説のアイドルユニット『潮騒のメモリーズ』奇跡の復活です!

今日は、海女クラブの皆さんをバックダンサーに従えて、スペシャル・バージョンでお贈りします!」


レポーターが紹介すると、あの印象的なイントロが流れ出しました。

そして、ステージ上のふたりにスポットライトが当たり、その姿があでやかに浮び上ります。

♪来てよ その火を 飛び越えて … 砂に書いた アイ ミス ユー

『Y U I LOVE Y U I LOVE 不思議の国の北リアス ユイの可愛さじぇじぇじぇじぇじぇ ~ 』

何色ものペンライトを振りながら、掛け声をかけるユイの親衛隊。

♪北へ帰るの 誰にも会わずに … 低気圧に乗って 北へ向かうわ

… … … … …

フロアの入り口、受付では夏がチケットを勘定していました。

近づいてくる靴音が受付の前で止まりました。

「申し訳ございません、当日券売り切れで … 」

顔を上げると、目の前に立っていたのは …

「春子 … 」

「入っていいよね、保護者だもんね」


そう言うや否や扉を開けて中へ乗り込んで行きました。

… … … … …

♪潮騒のメモリー 17才は寄せては返す … 波のように激しく

バックダンサーが現れ、ふたりを囲んで踊り出します。

♪来てよ その火を 飛び越えて … 砂に書いた アイ ミス ユー

盛り上がり最高潮の中 … 観客の後ろをすり抜けて春子はフロアの奥へと進んで行きます。

入り口のカーテン越しにその様子を窺う夏。

♪来てよ タクシー捕まえて … 波打ち際の マーメイド、早生まれの マーメイド …

『ユイ! ラブ! ユイ! ラブ! ユイ! ラブ!

まめぶ! やませ! ユイ! ラブ!

アキもそこそこ じぇじぇじぇじぇじぇ … 』

「じぇっ!」

曲も終わりに近づいた時、アキはフロアの後方でこちらをにらむ母の姿を見つけました。

何とかエンディングのポーズは決めましたが、動揺は隠せません。

「ありがとう、皆さん、本当にありがとう!」

歌い終えたユイは満足そうに拍手と歓声に応えています。

アキは … それどころではありませんでした。

満員の観客のかきわけながら、少しずつこちらに近づいてくる春子、怯えて立ちすくむアキ。

春子はもうステージのすぐ前まで来ています …

『レディオ ガ・ガ』収録 …

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2013年06月12日 (水) | 編集 |
第63話

部屋にこもるユイを外に連れ出すため、アキはある企画を提案しました。

皆で歌ったり、踊ったり、潜ったり、ウニ獲ったりする、海女のフェスティバル。

海女のサマーフェス、海女~ソニックの開催です。

賑やか好きな海女クラブのメンバーは全員賛成してくれました。

「でも、ママが … 」

口ごもるアキ、かつ枝たちは気になったようです。

「何、ママがって?」

ここからが肝心、いかにして海女たちを味方につけるか …

アキは、いかにも悪そうな顔を作って、春子の口調を真似ました。

「いい、芸能界とか、アイドルとか、チャラチャラしたのママ絶対に許さないからね! … 返事は? 聞こえない!」

腹を抱えて大笑いする海女たち。

「何してるの?」

アキは凍りつきました … 悪意たっぷり(?)のモノマネをしていた本人が目の前に現れたのです。

「め、珍しいね」

「うん、たまにはランチとかいいかなと思って」


かつ枝たちはしらじらしく、何事もなかったように春子をカフェ内へと招き入れました。

皆の協力もあって、間一髪ことなきを得たアキ。

「いつにする、海女フェス?」

夏がアキの顔をのぞきこんで言いました。

「木曜日でいいか?」

うなずくアキ。

「おらに任せろ」

そう言うと夏はテーブルについている春子に向かって声を掛けました。

「春子、アキ木曜日借りるど」

「どうぞ」


二つ返事する春子。

「よし、筋は通したど」

親指を立てる夏。

「じぇじぇっ、今ので?」

夏は笑いながらうなずいていますが、今ので春子が納得するわけがありません。

… … … … …

取りあえずアキは『海女~ソニック』の企画書を作って、観光協会を訪れました。

「本当にいいのか、アキちゃん?」

春子との約束を知っているヒロシはアキに念を押しました。

「うん、ユイちゃんのためだ … 一遍だけやることにした」

「ほお、『潮騒のメモリーズ』復活か?!」


保が色めき立ちました。

「いや、そんな大げさなもんでなく、『海女~ソニック』の間だけひっそりと期間限定で … 」

「派手にやんなきゃしょうがないでしょ、生で特番組みましょう!」


池田はノリノリです。

「そういう訳なんでストーブさん、ユイちゃんを『海女カフェ』さ呼んでください」

「よくお母さん許してくれたね」


アキの顔が急に強張りました。

「それが、家さ帰ってすぐ相談しようと思ったんですが … 」

… … … … …

あの日 …

夏流の筋の通し方では、絶対に春子は納得しないと思ったアキは、正直に話す決心をしました。

帰宅した時、春子は夢中になってテレビを観ていました。

「ママ、ちょっといい?」

「何?」


振り向いた春子の頬に光っていたのは涙でした … テレビを観ながら泣いていたのです。

驚くアキ、春子はテレビのスイッチを切りました。

「何よ、早く言いなさいよ」

「 … いや、後でいい」

「あ、そう … ご飯炊いといたからさ、何か適当に食べて」


逃げるように居間から出て行ってしまいました。

気になったアキはビデオデッキからテープを取り出しました。

ビデオのタイトルは『潮騒のメモリー』 …

… … … … …

喫茶リアス。

「ああ、やっぱり春子さん泣いちゃった?」

テープを春子に貸した吉田が言いました。

「はい、泣いてた … 涙ポロポロ流してた」

アキがあんな母を見たのは初めてかも知れません。

「あの『北の冷血女』と呼ばれてた春ちゃんが?!」

感心する大吉。

「速い車さ乗っけられても、急にスピン掛けられても、泣かなかった春子さんがか?!」

とにかく春子は「強い」「泣かない」イメージで語られていたようです。

「泣くよね、『潮騒のメモリー』観たら」

「泣く泣く、泣くに決まってる」

「俺らの世代は、みんな泣く」


吉田の言葉に大吉と保もうなずきました。

『潮騒のメモリー』は、1986年に製作された青春映画、今や実力派女優として知られる『鈴鹿ひろみ』のデビュー作です。

… … … … …

「ねえねえ吉田さん、どんな映画?」

「それ俺に聞いちゃう?」


アキに尋ねられて、吉田がたどたどしい解説を始めました。

… … … … …

「舞台は新潟だか鳥取だかに浮かぶ架空の島『鈴鹿島』

貧しい漁村の漁師だか工員だかの娘として生まれた少女ひろみは、もっと貧しい村の青年、新一だか新吉だかと出会います。

ひろみ17歳だか18歳だかの夏でした … 」

余りにもたどたどしすぎ …

「ノッケからイライラするな!」

「こんなもんでしょ、いきなり説明しろって言われたらさ!」


アキに罵られて、逆ギレした吉田です。

「新潟と鳥取はだいぶ違うど」

つっこみを入れる大吉。

「正しくは『松島』だね」

琥珀を磨きながら、勉さんがしたり顔で言いました。

松島といえば、宮城です。

「本当か、勉さん? 間違いないか、それ … ファイナル勉さんか?」

「 … たしか、ひろみの母ちゃんが海女さんなんだ」


ムキになる吉田に、この映画を観たことがあるらしい勉さんは答えました。

… … … … …

勉さんのフォローを受けて、吉田は解説を再開しました。

「ひろみの母、律子は海女でした。

夫に先立たれ、女手ひとつでひろみを育てた律子の夢 … それは、由緒正しき本土の名家、合田財閥にひろみを嫁がせること … 」


… … … … …

母、律子はひろみに厳しい口調で言います。

「いけないよ、ひろみ … お前は合田様のお嫁になるんだ」

しかし、母の言葉に逆らうひろみ。

「いや、私は新一さんだか新吉さんだかが好きなの! … 新吉さんもきっと私と同じ気持ちよ!」

… … … … …

「んだ、んだんだんだ、それで例の名場面 … 『その火を飛び越えて来い!』になる訳だな」

大吉が先走りましたが、吉田は首をかしげています。

「その前に新助さんが熱病にかかるんだ」

またまた勉さんが横槍を入れました。

「新助じゃねえかよ!」

「間違えねえか、ファイナル勉さん?」


つっこみどころ満載の吉田が目を剥いて尋ねました。

「ファイナル勉さん!

… でもって、熱病の新助をひろみが背負って本土の病院に連れて行こうとして … 」

「船が難破するんだ?!」


思い出した吉田が言いました。

「アキちゃん大丈夫か、ここまではついて来てるか?」

保に聞かれてうなずいたアキ。

「さあ、来た来た … 無人島に流れ着いたひろみと新助は?!」

「んだっ!」


また先走る大吉、しかし今度は吉田も乗ってきました。

「焚火を挟んで!」

「んだんだっ!」

「新助、その火を飛び越えて来い!」

「う、う~ん … 」


考え込む吉田。

「な、なんだよ … 何でそこでテンション下がっちゃうんだよ?」

… … … … …

「 … そんな場面はないからです」

「ないってどういうことよ?」


保が問いただし、吉田が語った衝撃(?)の事実。

「いや、20数年ぶりに見返して、何がびっくりしたって … 焚火を飛び越える場面がなかったんです」

「じぇじぇじぇっ!」

「ないの?」


アキでさえ知っている有名な場面がないとは??

「ないんです … 」

吉田は言い切りました。

「ファイナル勉さん!」

アキに振られて、勉さんは答えました。

「 … おめえら皆、三島由紀夫の『潮騒』と記憶がごっちゃになってるんだな」

「いやいやいや … だって、歌の歌詞が『来てよ、その火を飛び越えて』だべ?」


納得がいかない大吉。

「一応、飛び越えるシーンはあるにはあるんだけど … 」

口ごもる吉田、一体何を飛び越えたのか?

… … … … …

「 … 飛び越えて来い! … 新助、私が好きなら、その蛇を飛び越えて来い!」

… … … … …

「へびぃ?」

「じぇじぇじぇっ!」

「 … 蛇なんです」


残念そうに言う吉田。

「蛇かあ … 」

「何か盛り上がりに欠けるね」


拍子抜けの大吉、保。

「監督もそう思ったんでしょうね、クライマックスにとってつけたように … 」

… … … … …

「新助、その火を飛び越えて来い!」

「無理だあ!」


ひろみと新助の間にとてつもなく大きな火のかたまりが …

… … … … …

「 … 泣ける映画なんですよね?」

聴いた話ではとてもそうは思えないアキ、吉田に確認しました。

「泣ける、見れば間違いなく泣ける!」

それでも吉田は断言しました。

しかし、アキは疑心暗鬼です。

「こんなもんですよ、80年代のアイドル映画なんて … 」

ガッカリなことを言う吉田、アキは取りあえず帰って実際に観てみることにしました。

… … … … …

映画『潮騒のメモリー』は荒唐無稽なストーリーと斬新な演出が話題となり、大ヒットを記録し、鈴鹿ひろみはその年の名だたる映画賞を総なめにしました。

特にラストシーン …

荒れ狂う海と夕陽を背に立つひろみの姿は大型新人の誕生を予感させる名場面で …


ヘッドフォンをつけて、『潮騒のメモリー』のビデオを鑑賞するアキ。

次第に夢中になり、そのうち涙が止まらなくなってしまいました。

「アキ、どうした? 具合でも悪いのか?」

帰宅した夏がテレビを見ながら泣いているアキを見て、心配して声を掛けました。

夏のことに気づいたアキはヘッドフォンを外して言いました。

「夏ばっぱ、おら映画女優になりてえ!」

「何ぃ?!」

「この人みてえになりてえ!」


アキが指差した画面、本編が終わり解説者が映っていました。

「水野晴郎か?」

「違う … この人だ!」


新聞を広げて、夏に見せました。

「鈴鹿ひろみか」

現在、放送中のドラマ『静御前』の宣伝広告でした。

… … … … …

「すげえんだ、本当に泣けるんだってば」

一気に鈴鹿ひろみのファンになったアキは誰かに話したくて仕方がありません。

海女カフェでも珠子を捕まえては、鈴鹿ひろみがどれだけすごいか話して聞かせます。

「わかった、わかった」

「カッコいいんだって、女優ってすげえな … やっぱりこう … 」


上手い言葉が見つからず考え込むアキ。

「オーラか?」

「オーラが違うべ」


弥生に教わりました。

… … … … …

「アキちゃん、例のもの持ってきたけど」

アキはヒロシに頼んであるものを海女カフェまで持ってきてもらいました。

「夏ばっぱ、またアキがおかしなこと始めたど!」

美寿々に呼ばれて外に出た夏もさすがに驚きました。

「じぇじぇっ、アキどうしたんだ? こんなでけえもの持ち込んで!」

それは、北三陸駅前、観光協会に掲げられてある『潮騒のメモリーズ』の看板でした。

… … … … …

アキは、家に引きこもるユイを強引に海女カフェに連れ出しました。

そして、フロアへ。

『潮騒のメモリーズ』の看板はステージの横に納まっています。

アキはユイをステージの上に引き上げると言いました。

「ここで歌うべ、一緒に歌うべ!」

「アキちゃん … 」


アキはユイの顔をのぞきこんで尋ねました。

「 … だめ?」

目をそらすユイ。

「だめだよ、デビューしてからって約束でしょ」

「 … 部屋さこもってたら、デビューもできなくなるべ!」


『デビューしたいんです、東京行ってアイドルになりたいんです』

『それは、君次第でしょ?』

ユイの脳裏にあの時のことが、水口の言葉がよぎりました。

「ごめん、でも今の本音だ … 皆を元気にするのがアイドルの仕事だとしたら、今のユイちゃんは職場放棄だべ?!」

「おらもそう思う」

「夏ばっぱ … 」


いつの間にか傍にいた夏、ユイに言い聞かせるように話しました。

「この間のお座敷列車が北鉄や町のためだとしたら、今度は『自分』のためだ … 今度は自分のために歌って、踊ればいい」

「おらもそう思う」

「メガネ会計ばばあ … 」


… かつ枝も出てきました。

「東京がなんぼいいか知らねえが、まずは地元でもっともっと人気者になってよ、北三陸もユイちゃんも有名になってよ … プロデューサーだか何だか知らねえけど、直々に頭下げてくるまで、こっちから東京さ行くことねえ」

『君の覚悟っていうか … 本気が見たいって、もし俺が業界の人間で、そういう立場の人だったら思うと思うけどね』

「でも … 」

まだ踏ん切りがつかないユイ。

「でもじゃねえべ!」

… ヒロシです。

「皆お前のためにここまでやってるんだぞ、やれ、歌えよ、つべこべ言わずによ … どうしても嫌だって言うなら、これ駅前まで戻せ!」

看板を指さしました。

「かっけえ … 」

アキはヒロシのことを初めて、そう思いました。

『普通にそこそこ可愛くて、“アイドルになりた~い”なんて言ってる、ちょっと痛い女の子と何が違うのか … 知りたいと思うけどね』

ユイは決心しました。

「わかった、歌うよ … 歌おう、アキちゃん!」

「うんっ!」


笑顔でうなずくアキ。

「よしっ! そんだら、『海女~ソニック』! 盛り上げるべえ!」

「 … メガネ会計ばばあって何?」


今頃になってかつ枝が気にしだしました。

「皆であたしのことメガネ会計ばばあって呼んでたの?」

… … … … …

ユイが復活、『海女~ソニック』は無事開催されることになりました。

速い車さ乗っけられても、急にスピン掛けられても … 『飾りじゃないのよ涙は』収録

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2013年06月11日 (火) | 編集 |
第62話

8月2日、ユイちゃんは今日もお休みです。

わんこチャンネルでユイ担当の人気コーナー『海女カフェ日和』は、病気休養中ということにして代理のレポーターが務めています。

「すっかりおなじみ、ベテラン海女のかつ枝さんと弥生さん」

レポーターに紹介されてかつ枝が流ちょうに話しはじめました。

「皆さん、寝苦しい夜が続いていますが、いかがお過ごしでしょう?」

… … … … …

喫茶リアス。

客は吉田とヒロシのふたりです。

「めがね会計ババア、テレビ慣れしてきたな」

放送を見ながら吉田が感心しています。

『夏バテにはワカメや昆布がお勧めですよ』

カメラがかつ枝から弥生にパンすると、緊張でひきつった顔の弥生が映りました。

『んだんだ、ミネ、ミネミネミネ、ミ~ミネラル … 』

「騒音ババア相変わらずだ」

… … … … …

「そして今日は何と、現役高校生の海女のアキちゃんも一緒です」

リポーターはアキにマイクを向けます。

「こんにちは」

「アキちゃんは3月までユイちゃんと一緒に『潮騒のメモリーズ』っていうユニットを組んでたんですよね?」

「はい」


レポーターがカメラの向こうのユイに励ましのメッセージを贈るように注文しました。

「いや、ユイちゃんそういうの好きでねえんだ」

… … … … …

自宅に引きこもっているユイは、リビングのテレビでその放送を見ていました。

『頑張れって言われるの嫌いなんです … いつか必ず戻ってくると思いますんで、その時はあたたかく迎えてやってくださ … 』

ユイはテレビのスイッチを切ると、ソファーから立ち上がって … 母の呼びかけにも答えずに部屋に閉じこもってしまいました。

… … … … …

「わんこチャンネルやってる?」

大吉がリアスに駆け込んできましたが、ちょうど終わったところでした。

「ユイちゃんは?」

「今日も休みでした、すみません」


頭を下げたヒロシ。

「そっか、心配だなあ … 」

「何が、北鉄が?」


大吉が注文したウーロン茶のロックを作りながら春子が嫌味っぽく言いました。

「ユイちゃんだよ、今のはそういう意味じゃないよ、やめてよ … 俺だって北鉄のことばっか、考えている訳じゃねえよ」

「んだ、エロいことも考えてますよね?」


身もふたもないフォローをする吉田。

「透明人間さなって、女湯さ覗いてみてえな … とか?」

「もうちょっと大人だよ」


春子にからかわれて、大吉は少しムッとしました。

「“発車オーライ”って何か興奮するよね … とか?」

「ミイちゃん、ケイちゃん、両方に告白されたら、おらどうするべえ … とか?」


調子づいてからかうのをやめない吉田と春子。

「“ダイヤの乱れ”って何か興奮するよね … とか?」

「しねえよバカ、鶴光のラジオか?! … しかも“ダイヤの乱れ”とか、全部鉄道関係でねえか!

結局、北鉄のことしか考えてねえじゃないか?!」

「結局、北鉄のことしか考えてないじゃん」


笑った春子に向かって、思わず大吉は口走りました。

「春ちゃんのことも考えてるよ!」

… … … … …

「やめでよぉ … 」

不意を突かれて、照れて横を向く春子。

「あ、訛った」

「 … やめてよ」


標準語で言い直した春子を見て、北鉄コンビが声を合わせて言いました。

「かわい~い!」

「うっさいバカ、何だバ~カ、電車バカ! … 大体古いんだよ、鶴光のことなんかアンタたち知らないでしょ?」

「アンタたち?」


春子に指差されたヒロシがふと隣を見るといつの間にか、しおりが腰かけていました。

「そうですね、リアルタイムではないですね … ピンクレディもギリですね」

「 … ふたり、まだ続いてたんだね?」


吉田にふたりの仲を尋ねられて、何故か慌てるヒロシを差し置いて話し始めるしおり。

「そうですね、まあ終わってはないですね ~ 終わる時は大体わかるんです、空気で … 今までの恋愛、全部自然消滅だったんで。

まあ今回は、職場も一緒だし、そう簡単には終わらないと思います」


真顔でそう言ったしおり … 脅しか、釘を刺したのか … ?

… … … … …

足立家、ユイは自分の部屋でクッションを枕に気の抜けたように寝転がっています。

ドアをノックする音がして、よしえが声を掛けました。

「ユイ、アキちゃん来てるよ」

無表情のまま、動こうともしないユイ。

「 … ユイちゃん、顔ぐらい見せてあげなよ、ねえ」

ドアノブに手をやって、カギか掛かっていることに気づき、よしえはあきらめました。

… … … … …

リビングに戻ったよしえは、待っていたアキに首を振りました。

「ごめんね、わざわざ来てくれたのに … 」

「いやいや、特に用事があったわけじゃないし」


そうは答えても、ガッカリした気持ちは隠せませんでした。

「あ、ご飯食べてかない?」

「えっ?」


功は人間ドック、ヒロシも帰って来ない、ユイもあの調子 …

「お願い、ひとりで食べても美味しくないから、ね?」

… … … … …

「ママみたいになりたくないって … ?」

「 … 言われたのユイに」


『こんな田舎で、こんな山奥で … ダッサいポロシャツ着て、残念なエプロンして、シチュー作って … 

そんな風になりたくないって言ってるの!』

食事をとりながら、よしえは、一度目の家出未遂の後、家に戻ったユイから言われたことをアキに話しました。

「 … どういう意味ですか?」

「さあ、勘違いしてるのあの子、勝手に … 私が結婚と同時に嫌々田舎に引っ込んだって」

「違うんですか?」


よしえは笑いながら否定しました。

「アナウンサーだってなりたくてなった訳じゃないし、短大出てたまたま内定もらえたのが岩手のテレビ局だっただけ」

「へえ … 」

「むしろ都会で育ったから、ずっと田舎に憧れてたの」

「おらと一緒だ」


ふたりは笑い合いました。

「だから、正直わかんねえ … ユイちゃんが何でそこまで、東京さこだわるのか」

部屋からそっと出てきたユイが、ふたりの会話を柱の陰で聴いていました。

「知らないからね、行けばわかると思うの、あの子が思うような夢の国じゃないって … だから、反対しないの、行って挫折したら、帰ってくればいいし、夢が叶うんだったら、追いかければいいし …

私はただ帰ってきた子供たちを温かく迎えてあげたいなって思うだけ、美味しいご飯と笑顔で」

いいお母さんだ、アキは心底そう思いました … 柔らかくて、温かくて、間違っても「ブス」とか「バカ」とか言わない優しいお母さん …


… … … … …

「あらっ?」

よしえがリビングの入り口に立ってこちらを見ているユイに気づきました。

「ユイちゃん!」

ユイはアキのことを自分の部屋に誘いました。

… … … … …

「全部ウソだよ」

部屋に入るなり、開口一番ユイはそう言いました。

「えっ?」

「お母さんの話 … 声も言い方もウソ臭いでしょ、原稿読んでいるみたいでしょ?」


言われてみるとそんな感じもしないではありませんが、「全部ウソ」とは思えませんでした。

「アナウンサーだからでねえか?」

ユイはパソコンを開いて操作しながら続けました。

「近所づきあいしないから、お茶飲み友達もいない … 家事と手芸と韓国ドラマの再放送、それだけで幸せな訳がない」

アキは表情を変えずに母を悪く言うユイのことが心配になってしまいました。

「ユイちゃん … 」

しかし、ユイの話題はもう母のことから移っていました。

「これ、見てよ」

アキの方へパソコンの画面を向けて見せました。

そこには『GMT』のホームページが開いてありました。

「いつの間にかできてた」

キャッチコピーは …

『全国のアイドルが一堂に会する新ユニット!!!

「地方から日本を元気に!」がコンセプトのアイドルグループ「GMT47」』

ページの中央にレイアウトされた日本地図、いくつかの県が赤く塗りつぶされています。

「 … スカウト済みってことじゃない?」

「宮城、埼玉、徳島 … 岩手は?」


岩手はまだでした。

「でも油断してたら、赤になっちゃうよ」

アキはユイに言われて、赤く塗りつぶされた宮城県をクリックしてみました。

… … … … …

すると、ウィンドウが開いて、緑色のお揃いの衣装を着た3人の女の子の動画が再生され始めました。

『森の都仙台に彗星のごとく現れた、“牛タンガールズ”で~す!』

「じぇじぇっ、何だこれ?」


目を丸くするアキ。

「仙台限定のアイドルユニットだって」

『私たちのデビュー曲が、こちらの“GMT47”さんのサイト限定で配信スタートしまぁす!

… それでは聴いてください、牛タンガールズで“ずんだ ずんだ”』


♪ずんだすんだ ずんだずんだずんだ ~

演奏がスタートして、冷めた目で彼女らの動画を見つめるユイ。

「これ、2万ダウンロードだよ」

「じぇじぇ、これが?!」

「ちなみに“ずんだ”は宮城県の郷土料理で枝豆をつぶして … うるさいっ!」


パソコンを思い切り閉じました。

ベッドに倒れこんだユイにアキは尋ねました。

「1日中見てるの? 部屋さこもって」

「だって、気になるじゃん … 本当は岩手も赤だったのに … 邪魔が入んなきゃ … 」


ユイの部屋の壁に掲げられたコルクボードには、地元紙に掲載された『潮騒のメモリーズ』の切り抜きがスクラップされていました。

それと一緒に色々な地方のご当地アイドルの記事も貼られています。

ただ1日の限定ユニット『潮騒のメモリーズ』、お座敷列車で撮った記念写真には笑顔のユイが写っていました。

そして、今のユイは …

部屋の隅にあの日のままの状態で置かれっ放しになっているスーツケースを見て、アキの不安は募りました。

… … … … …

「このままじゃヤバいと思うんです … ユイちゃん、放っておいたら、また家出するんじゃねえがって … いや、家出する気力も無くなる … 部屋にこもって毒ばっか吐いてるから」

アキはどうしたらユイに元気が戻るのか、ワラにもすがる思いで観光協会を訪ねて相談しました。

「ま、それは、ご家族がちゃんとケアして … 」

当たり障りのないことしか言わない保。

「気晴らしが必要だって意味だよね?」

ヒロシが尋ねるとアキはうなずきました。

「とにかく部屋から出さねえと」

しおりが2泊3日くらいで東京見物にでも連れて行ったらどうかと提案しましたが、帰って来ない恐れがあるので却下されました。

「番組にも問い合わせ殺到してるんですよ」

同席していたプロデューサーの池田も困り果てたように言いました。

「1日も早く復帰してくれ、アキちゃんでもいいから毎日出してくれって」

「 … でも?」


口が滑った池田にアキは聞き返しました。

「ああ、ゴメン … 本当はふたりで出て欲しいって、そういう声があるのは事実です」

「んっ? 『潮騒のメモリーズ』復活か?」


期待して腰を上げる保、目の色が違います … しかし、簡単にそういう訳にはいきません。

「でもママが … お座敷列車の時に3月で卒業するって約束したから … 」

『芸能界とか、アイドルとか、チャラチャラしたのママ絶対に許さないからね!』

「 … 無理だ」

… … … … …

絶望的になるアキ。

「ユイちゃんが『海女カフェ』でバイトすればいいのに」

しおりの言葉に池田がひらめきました。

「そう言えば、お店の中に小さいステージありましたよね、あそこで歌ったらどうだろう?」

「おっ、『潮騒のメモリーズ』復活か?」


元々あのステージは、ユイがデビューしたらここで歌って欲しいからと、アキが頼んで造ってもらったものでした。

『アキ、いい? 芸能界とか、アイドルとか、チャラチャラしたのママ絶対に許さないからね … 』

しかし、春子の言葉を思い出すと、震えるほど怯えてしまうアキでした。

「 … 相談します」

そう言うのが精いっぱいでした。

… … … … …

無理だ、いくらユイのためとはいえ、春子が許可するとは思えない … 何か良い方法はないか?

「あっ!」


何か思いついたアキは、走り出しました。

… … … … …

行き先は『海女カフェ』。

アキは海女クラブの仲間にある提案をしました。

「フェス? 何だフェスって」

首をかしげる夏にアキは説明します。

「皆で歌ったり、踊ったり、潜ったり、ウニ獲ったりする、海女のフェスティバルだ」

「ここでか?」


美寿々は興味を持ったようです。

「んだ、ユイちゃんに元気になってもらうのが目的なんだけど … 露骨に元気出せって言うと、元気なくなる子だから」

アキに言われて、皆が納得してうなずきました。

「だから、無駄に元気な海女クラブのお祭りに放り出したらどうだべって」

一同、苦笑いです。

「海女~ソニック」

横で聞いていた珠子が突然、口を挟みました。

「海女のサマーフェス、海女~ソニック」

「はあ???」


おばさん連中にはちょっと難しいようでした。

「 … 何でもねえ」

ふてくされかけた珠子にアキが飛びつきました。

「それいいよ、花巻さん! … 『海女~ソニック』いぐねえ?!」

アキのウキウキした様子を見た夏は言いました。

「何だかわかんねえけど、賑やかなのはいいことだあ!」

「んだな、ユイちゃんもよ来てくれたら、客足更に伸びるべえ!」

「出たよ、この守銭奴が!」


かつ枝に突っ込みを入れたのは美寿々です。

「おら、『ヨイトマケの唄』歌うべ」

弥生のスイッチも入ったようです。

♪父ちゃんのためなら、エ~ンヤコ~ラ~

… ちょっとだけ不安なアキ …

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2013年06月10日 (月) | 編集 |
第61話

或る夏の夜、ユイと水口は家出を企てました。

しかし …

「封鎖だ、国道45号線封鎖だ!」


『海女カフェ』に駆けつけた人たちにステージに追い詰められ、立ち尽くすユイと水口。

ユイの上京大作戦は失敗に終わりました。

… … … … …

「水口君、説明してもらおうか?」

ステージの上の水口を大吉は問いただしました。

「その前に大吉、国道45号線の封鎖、解除していいか?」

取りあえず、封鎖の理由がなくなったので、組合長が尋ねました。

「駅長も言ってみたかっただけですもんね」

吉田に言われて、大吉も照れくさそうにうなずきました。

組合長が封鎖解除のため出て行ったのと入れ替わりに、フロアには海女クラブの面々が駆けつけてきました。

「水口君!」

美寿々の姿もあります。

「ひとり減って、4人増えたぞ」

「まだまだ増えるど、さっさと謝れ!」


大吉、保に迫られると、水口は素直に頭を下げました。

「ダマして、ごめんなさい」

「それじゃあ、おめえさ本当に?」

「はい、大手芸能プロダクション、ハートフルのスカウトマンです」


夏に問われて、淡々と素性を明かしました。

「じぇじぇ、考古学の研究しているって言ったのも … 」

「ウソです … 琥珀なんて興味ありませんし、何が面白いのかサッパリわかりません」

「この野郎!」


追い打ちをかけるような水口の言葉に勉さんは激昂してステージに上がろうとしましたが、大吉と吉田に必死に止められました。

… … … … …

「くわしく話聞かせてもらおうか?」

「聞かなくていいよ、先生」


功の言葉を制して、春子は言いました。

「どうせあれでしょ? … 例のさ、観光協会のホームページ見てさ、アキとユイちゃんのこと知って、まあ人気あるみたいだし、そこそこ可愛いし … 普通に可愛いから、アイドルだのデビューだのさ、そういう調子いいこと言ってりゃあ、所詮世間知らずの田舎もんだし …

ホイホイ乗っかってくるって、そんな感じでしょ?!」


ステージに上がった春子が、水口に詰め寄ると、悪びれずに答えました。

「そんな感じです、まったくそんな感じで弁解の余地もありません」

これだけの人に囲まれても物怖じしない水口の態度、度胸があるのか、甘く見てるのか … あきらめて開き直ったのか?!

「本当、ごめんなさい」

もう一度、頭を下げました。

「謝って済むかバカあ!」

フロアにいる人々の中、美寿々と勉さんのふたりが受けたショックは特に大きなものでした。

… … … … …

「バカにすんなよ、ようするにウチら田舎もんのことをバカにしてるんでしょ?!」

春子がいきなり、水口の胸倉をつかみました。

「あ、それはないです」

表情ひとつ変えない水口。

「うそだね、業界人なんて、こんなやつばっかりなんだよ!」

水口をステージから降ろしました。

つかみかかろうとする、かつ枝と弥生を止める保たち。

「春ちゃんはな、1年前まで東京で暮らしてたんだぞ!」

大吉がそう言いましたが、水口はあっさりと返しました。

「知っています、歌手を目指してたんですよね?」

「えっ?」


水口が自分の過去のことを知っていたので、少し面食らった春子です。

「そういう親が一番厄介だというのもスカウトマンの常識です。

… 反面、自分の叶えられなかった夢を娘に託そうとする母親も多いので、味方につければ心強い … 」

「敵よ、あんたなんか、敵、天敵! … 何なの知ったようなこと言って!」


水口の言葉を遮った春子は少し興奮気味で、ステージを下りてアキを水口から遠ざけようとしました。

「落ち着いてけろ、ママ!」

「あ、でもどっちみち、アキちゃんは本人が乗り気じゃないということで … ユイちゃんだけでもオーディション受けてもらおうということで」

「オーディション?!」


水口は『GMT47』計画のことを説明しました。

「あ~だめだ、ついていけねえ … 」

「夏ばっぱ、あきらめるのはまだ早いぞ!」


夏はお手上げ、それでもまだ、かつ枝と弥生は水口の話を理解しようと必死に聞いています。

「地方から日本を元気にしようというのがコンセプトで、47都道府県のご当地アイドルを集めた … いわば、アイドルの甲子園ですね」

水口にしてみればなるべく分かりやすい表現を使って説明したつもりなのでしょうが、弥生たちもギブアップしてしまいました。

「大吉っつぁん、おめえ分かるか?」

大吉に尋ねる夏。

「まあ、大体アウトラインはつかめた」

一同から上がる歓声。

「だが、いいかミズタクよく聴け?!

… ユイちゃんはな、この北三陸の救世主なんだ、わかるか? … 産業も観光も100円ショップもないこの町の廃線寸前のローカル線を普通の女子高生が復活させたんだ!」

「何が、日本を元気にだ? こっちとら25年間ずっと、元気ねえど!」

「ふたりのおかげでやっと人並みだど、病み上がりだ!」


大吉に続いて、吉田と保も水口のことを非難しました。

「ユイちゃんの代わりはいねえ、誰にも務まんねえ … それでも欲しかったら、差し違える覚悟で来い!」

大吉のタンカに拍手が起こりました。

… … … … …

大人たちの言い分を虚ろな目で黙って聴いていたユイ。

私の気持ちはどうでもいいんですか?!

突然、大声をあげました。

皆が注目する中、ユイは話し続けました。

「私の東京へ行きたいっていう気持ちとか、アイドルになりたいっていう子供のころの夢とかは、聞いてもらえないんですか?

… そんなに町興しが大事なんですか?」


寂しく笑ったユイを見て、アキは心が痛みました。

「ユイちゃん … 」

身につまされる思いの春子。

「だから嫌だったんです、ミス北鉄なんて、こういうことになるの分かってたから …

私、北鉄がどうなろうと、町がどうなろうとどうでもいい! 関係ない!!」


ヒロシが止めましたが、ユイはまた大声をあげました。

「だって、本当のことだもん!」

… … … … …

アキはこんなに悲しいユイを見たことがありませんでした。

「もちろん、皆さんのこと好きだし、田舎をバカにしてる訳じゃないけど … でも、これ以上、犠牲になるのはイヤ。

… こんなところで一生終わるなんて … あり得ない!


ユイはフロアを飛び出して行ってしまいました。

慌てて後を追う、ヒロシ、よしえ …

「大吉君、すまん!」

突然、頭を下げる功、しかし、大吉も責めることができる立場ではありません。

「こっちこそ、いつまでもユイちゃんに頼ってしまって」

「いやいや、それは違うよ、大吉君。

皆の郷土愛や北鉄愛が … その象徴として、ユイやアキちゃんがいるんだから。

誇りを持ってくれ、なっ!」


それだけ言うと、功も家族のあとを追っていきました。

… … … … …

「さあ、そろそろ海女クラブも退散するか?」

夏の号令で皆ぞろぞろと引き上げ始めます。

「かっこよかったぞ」

「えっ?」


夏からそう声を掛けられ春子は一瞬、我が耳を疑いました。

「ウチら田舎の人間をバカにすんなって、おめえが言うとは思わなかった」

「 … やめてよ、違うから、えっと、ちが … 」


思いもよらぬ母の言葉に戸惑う春子。

この晩の出来事は、人々の心に深い爪痕を残しました。

… … … … …

ユイは部屋にこもったきり、外へ出なくなってしまいました。

ドア越しに声を掛けるアキ。

「ユイちゃん、そろそろ帰るね」

ユイはアキにさえ返事もしませんでした。

「僕も一旦東京戻るけど、ちゃんと営業するから … 君もご両親とちゃんと話し合って、3月まで頑張りな」

水口でした。

「3月なんて、すぐだべ? ユイちゃん」

「待ってるから」


… ユイからは一切何も返ってはきませんでした。

… … … … …

喫茶リアス。

「怪しい怪しい、聞いたことないべ、ハートフルなんて?」

「んだんだ、いかがわしいプロダクションだから、経歴偽ってたんだ」


保と吉田の水口に対する悪口も何か虚しく聞こえます。

「ちゃんと実績のある事務所らしいですよ」

ヒロシが言いました。

「上野に自社ビルと専用の劇場持ってて、しょちゅうイベントやってるんだって」

さっきから気だるそうにカウンター内に座り込んでいる春子からもそう教えられて、ふたりともそれ以上何も言えなくなりました。

「大吉さんどうしたの?」

さっきから一言も発さずにずっと考え込んでいる大吉が重い口を開きました。

「昨日のユイちゃんの言葉、胸に刺さったじゃ」

『私の東京へ行きたいっていう気持ちとか、アイドルになりたいっていう子供のころの夢とかは、聞いてもらえないんですか?

… そんなに町興しが大事なんですか?』

「25年前、春ちゃんがこの町出てった時とダブったべ」

「 … 私も昔の自分思い出して、息が詰まった」


皆それぞれ、大なり小なりのダメージを受けているようです。

「確かに俺たちが町興しに集中するあまり、17歳の少女の夢ば食いつぶそうとしてたのかもしんねえなあ」

「一度しかねえ、青春だもんなあ」


お互いを顧みる保と大吉に吉田が尋ねました。

「じゃ、東京に行かせるんですか?」

「それはねえべ」


声をそろえて答えたふたり、本音と建前は違うのです。

… … … … …

海女カフェ。

アキが水口を伴って顔を出しました。

「何だおめえ、まだいたのか?」

水口に咎めるような視線を向ける、かつ枝と弥生。

「今日、帰ります」

「美寿々なら浜だ」


ステージのスクリーンに獲ったウニを掲げる美寿々の姿が映っていました。

「行ってみるか?」

「いえ、くれぐれもよろしくお伝えください」


カフェを後にしようとする水口にアキは尋ねました。

「車ですか?」

「北鉄で … 裏切っちゃったからね、最後ぐらい乗らないと」

「ユイちゃんのこと、よろしく頼むぞ、本当に約束だぞ」


アキの真剣なまなざしに水口はうなずいて出て行きました。

… … … … …

北三陸駅。

帰り支度を整えた水口、ただひとり見送りの勉さん。

「合わせる顔がねえだろうから、誰も呼ばなかった」

「はい、ご迷惑をおかけしてすみません」


何だかんだ言っても一番世話になったであろう勉さんに頭を下げた水口でした。

「これ、持ってけ」

勉さんは胸のポケットから、小さな琥珀を取り出すと水口に差し出しました。

「いや、これは受け取れませんよ」

「持ってけ!」


無理やり水口の手に握らせました。

「こんなもの、元はただの樹液だべ … 磨いて磨いて、やっと価値が出る、お前の仕事もそうだべ?

どんないい原石もよ、磨かねかったら宝石にはなんねえ!」

「ああ」

「ああって、分かったのか?」


結構良いことを言ったつもりが、反応が薄い水口に物足りない勉さん。

「時間ないし、すみません」

荷物を担ぐとホームに向かって歩き出しました。

その時、駅舎に走りこんで来る人影が … 

「タクちゃん!」

水口が振り向くと、そこに海女姿のままの美寿々が … 手に先のとがった磯ノミを手にして立っていました。

少しずつ迫ってくる美寿々に思わず後ずさりする水口。

「 … 行っちゃうの、あたしのこと置いて行っちゃうの?」

切迫つまった雰囲気に追い詰められていく水口。

その視線の先が磯ノミにあったことに気づいた美寿々。

「ごめん、ウニ獲ってたから」

磯ノミをベンチに置きました。

「あ、あの、美寿々さん … 何て言ったらいいか … 」

美寿々は水口の言葉が終わるのを待たずにその胸に思い切り飛び込んで抱きつきました。

「おっ!」

その様子に呆気にとられている勉さん。

水口の首に手を回して目を閉じる美寿々、しばらくして目を開けました。

「よしっ!」

気合と共にバッと体を離しました。

「もう吹っ切れた … 若けえ頃ならこの勢いで駆け落ちもしたけど、もうそんな無駄なことはしねえ。

次だ、次 … ありがとう、楽しがった … じゃあな!」


笑顔で立ち去って行く美寿々の背中を見つめる水口。

「かっこいい … 」

… … … … …

水口は東京へ帰って行きました。

アキとの約束を彼は叶えてくれるのでしょうか?


はじめての弟子が去った駅舎でひとり物思いにふける勉さん、ふと見ると …

「あの野郎! … 忘れていきやがった」

ベンチの上に勉さんが渡した琥珀が、ポツンと残されたままでした。

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2013年06月09日 (日) | 編集 |
さて、次週の「あまちゃん」は …

そんなに町興しが大事なんですか?

東京に行こうとしたユイ(橋本愛)の家出は失敗に終わり、水口(松田龍平)も町を去った。大人たちの思惑で自分の夢を阻まれたユイは心を閉ざし、部屋に引きこもってしまう。

ユイをなんとか励ましたいと思うアキ(能年玲奈)は、「潮騒のメモリーズ」を復活させ、海女カフェのステージで歌って踊るイベントを企画する。

アキは本当にいい子だな

その頃、春子(小泉今日子)は80年代の青春映画「潮騒のメモリー」を観て涙を流していた。興味を持ったアキも、春子に隠れてそのビデオを鑑賞、主演で主題歌も歌っている女優・鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)に夢中になる。

ユイは、アキや町の人々の励ましでステージに立ち、イベントは大成功。しかし、そのことが内緒にしていた春子(小泉今日子)にばれてしまう。

アキはここでごく普通の高校生活も送れないんですか?

ママなんて嫌い、大っ嫌い!


鬼の形相で海女カフェに現れた春子は、大観衆の前でアキの頬を平手打ちに。約束を破ったことをとがめるが、アキは猛反発。さらに「アイドルになりたい」と言いだす。

夏休みだよね、今? 東京へ出て来れる?

その頃、東京では、イベントの動画を芸能事務所の大物プロデューサー、通称“太巻”こと荒巻太一(古田新太)が観ていた。突然、太巻から連絡があり、東京に出てくるように勧められるアキとユイ。

2人は、上京するために再び家出を企てるが…。
あまちゃん 公式サイトより)


あまちゃん 潮騒のメモリーズ

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おまけ情報

『鶴瓶の家族に乾杯』
NHK総合 毎週月曜 午後8時~8時43分/午前10時05分~10時48分(再)

6月10、17日2週に渡って、春子役の小泉今日子さんが、ドラマのロケ地、岩手県久慈市を旅します。

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2013年06月08日 (土) | 編集 |
第60話

その夜、スナック梨明日は不穏な空気に包まれていました。

ついにミズタクこと水口琢磨の正体が明らかになったのです。

… … … … …

週末に行われる『アメ女』のオーディションを受けるために上京しようとしているユイ、アキとふたりで閉店後の『海女カフェ』で迎えに来る約束の水口の車を待っているところです。

ふたりはまだ春子や大吉たちに水口の正体がバレてしまったことを知りません …

「あ、そうだ!」

アキは突然思いついて、カウンターの奥から色紙とサインペンを取って来るとユイに差し出しました。

「サイン書いてけろ、有名になってからじゃ、なかなかもらえねえべ、『海女カフェ』さんへって書いてけろ」

手慣れた感じでサインをするユイに向かってアキは言いました。

「ユイちゃん、おらなんかと友達になってくれて、どうもありがとう」

アキに今更そんなことを言われて、ユイはくすぐったいような顔をして笑いました。

「何それ、やめてよ」

「だって、本当にそう思うから … おらにみてえに自分勝手で、やかましい女、面倒くせえべ?」


そんな話をしながら、アキは色紙に『まめぶおいしかったよ』と書き加えるように頼みました。

「食べてないけど」

「いいから、食ったつもりで」


アキに言われたように書き加えながら、今度はユイが言いました。

「 … こちらこそ、仲良くしてくれてありがとうね」

照れくさいのか言い方が少しぶっきら棒になっています。

… ふたりにとって、お互いが親友と呼べる初めての友達だったのです。

「いえいえ」

何かうれしくなってきたアキはユイの隣に腰かけました。

「だってさ、ネット上ではライバルだったわけじゃん? … しかも男取られて、アキちゃんが心広くなかったら私、2、3発殴られてるわ」

「男取られた? … 」


少し考えるアキ。

「あっ、男取られた!」

「まあ実際、種市先輩とつきあうかは微妙だけど … 『アメ女』は恋愛禁止だし」

「何それ?」


… … … … …

『特定の交際相手がいるアイドルのCDやグッズにお金を払う気になりますか?

10万人、100万人のファンひとりひとりと真剣交際をする … それがアイドル!

(ま、バレなきゃいいんですけどね ふふ)』

… … … … …

これが、太巻の持論でした。

「だから、表向きは恋愛しちゃいけないの」

「へえ、なんか大変だな」

「でも、子供のころからの夢だったからね」


ユイは立ち上がり、部屋の中央にある水槽の中を覗きながら話しました。

「幼稚園の頃とかさ、『大きくなったら何になりたい?』って聞かれて、『保母さん』とか『お花屋さん』とか答える子っていたじゃない? … ウソつけって思ってた。

そう答えれば皆、親が安心してニッコリ笑うの本能的に知ってるのよ」


だから自分は絶対人と違うことを言ってやろうと思っていたとユイは言いました。

「何になりたかったの?」

「キャメロン・ディアス」


ユイは振り向いて不敵に笑いながら言いました。

「 … っていうか、チャーリーズ・エンジョエル、ああいう目まぐるしい女にあこがれてた … あと、バイオハザードとかトゥームレイダーとか、キャットウーマンとかを経て、12の頃アイドルになりたいって言ったら …

やっと、お母さん、ニッコリ笑ったの」

「そりゃそうだ」


アキも少しほっとしました。

「両親は、基本的には応援してくれたけど … でも、潮時かなあって。

ネットアイドルとか、お座敷列車とか地方局のレポーターとか、こっちでできることは一通りやったし … わざわざ会いに来てくれる人がいるってことは、ちょっとは自信持っていいんじゃないかなって思うの。

そういう期待に応えたいって思うの … 間違ってる?」


ユイに尋ねられて、アキは首を振りました。

「ううん、ユイちゃんはそうするべきだよ、表舞台に立つ人だ … 初めて会った時も、去年の秋祭りの時もそう思った」

「 … あれはあれで複雑だったけど」

「いや、あれがユイちゃんだべ!」


でっかい山車の上に乗っても動じずに堂々としている、あれこそがユイの本来の姿だとアキは言いました。

「アキちゃんは … アキちゃんの本来の姿は?」

ユイにそう聞かれて、自分自身のことなど全く何も考えこともなかったことに気づきました。

「お、おらは … 」

白紙の状態でした …

その時、ユイの携帯が鳴りました。

… … … … …

着信相手の表示を確認してユイは携帯に出ませんでした。

「出なくていいの?」

「うん、水口さんじゃないから … お兄ちゃん」


アキはその態度を見て、直感でユイがウソをついているのではないかと疑いました。

「もしかして、黙って出て来たのか?」

返事ができないところをみるとビンゴのようです。

ユイの携帯が鳴りやんだと思ったら、今度はアキの携帯が鳴りました。

「ストーブさんからだ」

ユイは出ないでと言いましたが、ふたりとも出ない方が怪しいとアキは電話を受けました。

「もしもし、ハイ、今 … 家ですけど … ユイちゃん?

いっしょじゃないですよ」


アキもウソをつきました。

「えっ?! … じぇじぇっ、家出?!」

… … … … …

喫茶リアス。

「そうなんだ、連絡つかないんだ … 」

春子がヒロシから無理やり電話を奪い取って代わりました。

「もしもしアキ、あんたさ、あの水口って男に何かされた?」

いきなり単刀直入に聞いてきます。

「正直に答えて、起こんないから言いなさいよ! … 何されたの、こらあ?!」

「こらあって落ち着いて … 」


周りで大吉たちが春子をなだめます。

「いい? … 芸能界とかアイドルとか、チャラチャラしたのママ、絶対許さないからねえ」

電話の向こうのアキは、母のど迫力に怯えてしまっていて、一向に言葉が出てきません。

「返事は?!」

しびれを切らした春子が怒鳴りました。

「は、は … あい」

泣くのを堪えて、ようやくのことで返事をしました。

「あとね、ユイちゃんから連絡あったら、ヒロシ君かママにすぐ電話して … わかってんの? 

返事は?!」


完全に若かりし頃、ヤンチャをしていた時のスケバン春子に戻っていました。

「 … あい」

「つうか、あんたいつまで起きてるの? … とっとと寝なさいよ、バカ!」


泣きながら電話を切ったアキ、ユイが心配して声を掛けました。

「大丈夫?」

その時、アキの脳裏をよぎったこと … 急がないともっと恐ろしい目に合う?!

「ちょっと待ってて、必ず戻ってくるから!」

ユイにそう告げるとアキは家に向かって全速力で走り始めました。

… … … … …

スナック梨明日。

「アキちゃんと一緒じゃねえと、もうわかんねえな」

さじを投げかけた大吉を見て、春子は言いました。

「一緒じゃないって、何故言い切れる? … ウチにいるって、そう言ったのね?」

うなずくヒロシ。

「確かめてみましょうよ」

スケバンが降りてきたままの雰囲気の春子は、アキが本当に家にいるかどうか確かめるために電話を掛けました。

… … … … …

浜からの坂を駆け上がって来たアキ、家の前まで来ると電話の呼び出しベルが聞こえました。

玄関の戸も締めずに家に飛び込むと、慌てて受話器を取りました。

「もしもし!」

「 … アキ?」


予想が外れて、拍子抜けの春子です。

「誰だ、こんな時間に12時過ぎだぞ」

電話のベルで夏も起きてきてしまいました。

「なに? ママ … もう眠いんだけど … 」

走ってきた呼吸を整え、電話口で演技をするアキ。

振り上げたこぶしの納め場所がない、そんな春子。

「だったら寝てればいいじゃないの、電話なんかでなくてもいいのよ、バ~カ!

おやすみ!」


… … … … …

間一髪、何とか春子をダマすことに成功したアキは胸をなでおろしました。

しかし、それも束の間 …

「こんばんは、ごめん下さい!」

開けっ放しだった玄関に立っていたのは、ユイの両親、足立功とよしえでした。

「夜分遅くにすみません、畑野の足立ですが」

一度は寝床に戻りかけた夏が応対に出ました。

「じぇじぇじぇっ」

足立夫妻からユイが家出したことを知った夏は驚いています。

「まったくお恥ずかしい」

「てっきり、アキちゃんと一緒だと思ったんですけど … 」

「いやあ、今日は来てねえです、なあアキ?」」


何と答えていいのやら、アキは夏の後ろでかしこまったままです。

「他に行きそうなところも思いつかないし … 」

困り果てているユイの両親。

アキは今の事態をユイにメールで伝えようと、持っていた受話機の上で必死に指を動かしました。

「アキちゃん、それ … メール打てないと思うよ」

よしえに指摘されて、自分が持っていたのが携帯ではなく、家電のままだったことに気づいたアキ。

… 笑ってごまかしました。

… … … … …

こちらは梨明日。

「国道沿いのファミレスとコンビニで聞いてきたけど、誰も見てないって」

息を切らせながら戻ってきた保がそう報告しました。

「もう東京さ行ったのかもしれませんね」

縁起でもないことを吉田が言いました。

「仮にもユイちゃんはミス北鉄だぞ、万が一故郷を捨てるとしても … 北鉄さ乗って行くはずだ」

大吉の言い分には全員が首をかしげました。

… … … … …

「勉さん?!」

ヒロシが入り口の所に申し訳なさそうに立っている勉さんに気づきました。

「皆さん、ウチの弟子が大変お騒がせしました」

帽子を取って、深々と頭を下げました。

「 … 問い詰めたら、白状しました。

やはり、アキちゃんとユイちゃんをスカウトするために派遣されたそうです。

こはく、こ、こ、琥珀には、これっぽっちも興味がねえと、考古学を勉強してたっていうのも真っ赤な嘘だと … 」


40年間ひとりでコツコツと琥珀を掘り続けて来て、やっと出来た弟子に裏切られ … 涙で言葉に詰まる勉さんを春子が慰めました。

「泣かないで、勉さんひとつも悪くないから」

「いやいやいや、何もかもおらがまいた種だ … もう、金輪際この店には来ません」


流石に思い込み過ぎと一同はなだめますが、勉さんの意志は固いようです。

「大好きな皆さんにこれ以上、迷惑かけられねえ … 水口もアパートを引き払い、『今晩中に車で東京へ帰る』そうです … おらも明日から、穴さ籠って琥珀だけを」

「じぇっ?!」

「俗世間交わることなく、琥珀を愛し、琥珀と向き合い … 」


勉さんの熱弁は終わりそうにありませんが、その前に聞き捨てならないことを口走っていました。

「おいおい勉さん、おいおい勉さん!」

大吉が話を遮りました。

「今何つったよ?」

「琥珀を愛し、琥珀と … 」

「ちがう、あんたじゃなくて水口!」


また思い出したように泣き出す勉さん。

「水口君は、これっぽっちも琥珀に興味が … 」

「わざとか? わざとやってるのか、じじい!」


珍しくキレた吉田が目を剥いて勉さんに詰め寄りました。

「水口さん、車で東京帰るんですね? 今夜!」

ヒロシが確認しました。

「 … はい、そう言ってました」

「モータリゼーションめ!」


忌々しそうに吐き捨てた大吉でした。

「先輩、どうするべ?」

「封鎖だ、国道45号線封鎖だ!」


指示を仰いだ保、叫ぶ大吉。

「よし、組合長に連絡!」

… … … … …

アキまで出て行ったきり戻ってきません。

『海女カフェ』にひとり残されたユイは少し心細くなってきていました。

その時、外で車のブレーキ、エンジンを止める音がして … 水口がやっと迎えに現れました。

「ごめん、遅れて」

「大丈夫ですか?」


水口の唇にアザができているのを見たユイが尋ねました。

「ああ、ちょっと色々 … じゃあ行こうか?」

水口は言葉を濁しました。

一刻を争うように、ふたりが外に出た時でした。

… … … … …

突然けたたましく一帯に鳴り響くサイレン。

『国道45号線、封鎖しま~す!』

組合長の声がアナウンスしています。

… … … … …

「なんだ、なんだ?!」

夏や足立夫妻も外に飛び出ました。もちろんアキも …

『国道45号線、封鎖します、国道45号線、封鎖します!』

組合長の声が繰り返しています。

「何だ、この騒ぎ?!」

今までかつて深夜にサイレンが鳴らされたことや国道が封鎖されるような事態が起きたことはありません。

「大変だ、大変だ」

夏でさえ、理由がわからずにうろたえています。

… … … … …

「やばい、1回戻ろう!」

水口とユイは今出てきたばかりのカフェの中へ再び逃げ込みました。

「中に誰かいる!」

人の気配を感じた組合長が声を上げると、駆けつけて来た大吉たちと共にカフェの中へとなだれ込みました。

ステージに追い詰められた人影、フロアの灯りが点くと、そこには立ち尽くしている水口とユイの姿がありました。

泣きそうな顔で見つめるアキ …

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2013年06月07日 (金) | 編集 |
第59話

思いもよらぬユイからの電話。

「 … あのさ、今カフェにいるんだけど、会えない?」

「えっ?」

「 … 大事な話があるの」


こんな時間に一体 … ?

… … … … …

閉店後の『海女カフェ』の前でユイはアキを待っていました。

「家の方が良かったか?」

頭を振るユイ、アキは鍵を開けてカフェにユイを招き入れました。

「ごめんね、お母さんとケンカしちゃったの」

「じぇじぇっ」


… … … … …

ユイは、今週末に行われる、アメ女 … 『アメ横女学園芸能コース』というアイドルグループ、その3期生のオーディションを受けたいと母に相談しました。

「それ卒業してからじゃダメなの?」

「ダメじゃないけど、次いつあるかわからないし … 」

「受かったらどうなるの?」


もし合格したら、レッスンやイベントに出たりで結構忙しくなるので、単身で東京に引っ越さなければならないことなどを話しても、母よしえはなかなか理解してはくれませんでした。

… … … … …

「 … いくら話してもわかってくれないんだもん、いやになっちゃう」

「アキバ系は説明が難しいよね」


ユイに言わせると、今は秋葉原よりアメ横が熱いのだそうです。

「アイドルカフェ『太巻』でも常時20人のアイドルがサイン会やら握手会やらやってるの、で、そこに47都道府県のご当地アイドルを集めようとしているの、それが … 」

「『GMT47』!」


ユイはうなずきました。

水口のプロジェクト『GMT』は『アメ女』の妹分なのです。

「大体わかった … 」

「本当に?!」

「 … もう、お腹いっぱいだ」


ユイは『アメ女』に拘っているわけではなく、デビューできるなら『GMT』でもどちらでもいいと考えていました。

「でも、両親は高校卒業しなきゃダメって言うし … 私が高校卒業したら、あきらめるとでも思っているのよ、あまいよ!」

苛立つユイが声を荒げたその時、入り口が開いて、水口が顔をのぞかせました。

「だからって、家出はダメだよ」

「水口さん … 」


水口はカフェに入って来ながらユイに言いました。

「言ったよね? … ちゃんとご両親を説得して、同意を得てからじゃないと、事務所もバックアップできないって」

黙り込むユイ。

「何かトラブルがあってからじゃ遅いんだ、なんなら俺がお母さんに説明してもいいけど」

「無理 … もうお兄ちゃん帰ってきてるし」


水口はユイの両親が心配していると思うので連絡を入れてくれるようアキに頼みました。

電話をかけにアキがカフェの外に出ると、ユイは水口に思いをぶつけました。

「水口さん、私もう岩手にいたくないんです … 同年代の子とかテレビで活躍してるのとか見ると、もう … 」

水口は焦れるユイに噛んで含めるように話して聞かせます。

「わかるけど … でも、その前に家族を安心させなくちゃ、そのためにも高校は卒業した方が良いと思う」

決して保険とかではなくアイドルをやっていく上でも大事なことだと水口は言いました。

「焦ってもいいことないぞ」

… … … … …

高3の1学期が終わり、アキやユイちゃんに取って、人生最後の夏休みがやってきます。

潜水土木科の教室でも磯野が夏休みの心得を長々と語っていました。

「 … あ~それから、夏休みだからって気を抜くんじゃねえぞ! あ~それから … 」

「もう、いい加減にしてけろや、いっそん!」


アキの剣幕に唖然とする磯野。

「あ~それから、それからって … 今日は、秋田から団体客が来んだ! 夏休みの方が忙しいんだ!」

磯野に詰め寄ると、女子の新入生たちもアキの子分のごとく続きました。

「それなのに、オチもヤマもねえ話、ダラダラと … 手短に頼む!」

相手が教師でも切れると見境のない … やはり、春子の娘です。

「 … 以上です」

… … … … …

『海女カフェ』に行けば、ウニの殻を割って振る舞ったり、賑わう観光客の接待に追われます。

それでも、少しでも空き時間を見つけては、海に潜るのでした。

「花巻さん、ちょっと浜さ出てきます!」

「おお、いっぺえ獲って来いよ!」


勇んで浜に向かおうとするアキをヒロシが“間が悪く”呼び止めました。

舌打ちしながら寄ってくるアキ。

「 … ちって、一応客なんだけど」

「だって、やっと潜れると思ったのに … ご注文は?」


ヒロシはメニューに書かれたセットの内容を尋ねました。

『海女ランチ』は『まめぶ』と『おにぎり』、『海女プレート』は『まめぶ』と『パン』、そして『海女セット』は『まめぶ』と『プリン』だとアキは説明しました。

結局、ヒロシが選んだのは、ただのコーヒーでした。

「荒巻さん、この人コーヒーだけ」

またも舌打ちしながらアキが注文を伝えると、珠子も舌打ちしながら受けました。

… なんと感じの悪い店、それともヒロシ故の対応?

… … … … …

「こないだはゴメンね、ユイが迷惑かけて」

「ああ、いえいえ」


ヒロシのアキへの本題はこっちの方だったのでしょう。

アキも気になってはいましたが、忙しさのためそのままでした。

「家帰っても大ゲンカして、大変だったんだよ」

「じぇじぇっ」


… … … … …

家出未遂で自宅に戻ったユイは両親と向かい合って座っていて、ヒロシは少し離れたソファーからその様子を見ていました。

「もう一度言ってみなさい」

功はユイが口にした言葉を問いただしています。

「 … お母さんみたいになりたくないって言ったの」

「ユイ、お前それどういう意味だ?」

「これからって時に結婚したんでしょ?」


よしえはユイを止めました。

「だって、女子アナ2年目だったんでしょ? お父さんと出会わなければ、全然違う人生が待っていたわけじゃん!」

「やめて … 」

「それなのに、こんな田舎で、こんな山奥で … ダッサいポロシャツ着て、残念なエプロンして、シチュー作って … 

そんな風になりたくないって言ってるの!」


悲しそうな顔をしたよしえを見ずに、席を立ちリビングを出て行こうとするユイの腕をつかんだヒロシはいきなりその頬を叩きました。

「いい加減にしろよ」

「顔はやめてよ!」

「何様のつもりだよ、お前! … 家族に迷惑かけて、大騒ぎして東京行って、そんなんでどうにかなるかよ?

なんねえよ! … そんなに甘くねえよ」


ヒロシの頭を後ろから功が叩きました。

「お前が言っても説得力ない」

… ごもっともです。

「ユイ、東京行こうが、芸能人になろうが、お前の好きにすればいい … でもな、母さん悪くいうな!

それだけは本当に許さないからな!」


ユイは言葉を返すことはできませんでした。

たださめざめと泣くよしえ …

… … … … …

「それって修羅場でねえか … 」

ヒロシの話を聞いて、アキは心配になってしまいました。

「まあ、俺が出てった時もそんな感じだったから … それにしても、どうしちゃったのかな、あいつ急に焦ってそわそわして」

ストーブさんはまだ知らないのです。

この町にスカウトマンが潜伏していることを …

「東京に彼氏がいるからじゃねえか?」


コーヒーを運んできた美寿々は言いました。

ストーブさんだけじゃない、美寿々さんも花巻さんも、大吉っつあんも菅原さんも、そして春子も気づいてない … 水口の正体を知っているのは、今のところアキとユイちゃんだけなのです。

… … … … …

「私は北三陸の夏の海が大好きです!」

テレビに映るユイは笑顔と明るい声でそう言っていました。

しかしあの晩、ユイは水口には言っていた …

『私もう岩手にいたくないんです …』

ユイの本心を知るアキは複雑な心境でした。

大好きな海に潜っている時でさえ、何だか気分が晴れません。


『まあ、ふたりとも良いキャラだし、本当は君も東京に連れて行きたいんだけど … 何か忙しそうだし、興味ないんじゃね』

興味なくはない … ユイちゃんとふたりなら楽しいし、実際楽しかったし … だけど、東京は嫌い、大っ嫌い!

庭先に洗濯した絣半纏を干しながら、心ここに非ずのアキ。

「アキ、ねえアキ … 」

家の中から声を掛けてくる春子に気づきました。

「あんたさ、洗濯もの出す時にはポケットの中、確認しなさいって、何度言ったらわかんの?」

乾いて取り込んだ洗濯物を畳みながら、春子は文句を言っていました。

「ごめ~ん」

アキのズボンのポケットの中からガビガビになった紙のかたまりが出てきました。

「 … 何だこれ?」

それは名刺の切れ端ようです。

印刷もにじんだりかすれたりしていてよく読めません。

「水、水 … 何だろうこれ? マネ、マネジ … 」

採掘場で水口からもらった、太巻の会社の名刺でした。

ポケットに入れたままになっていて、そのまま洗濯に出してしまったのです。

「じぇっ」

アキは縁側から家に飛び込むと春子の手からそれを奪い取りました。

「何、何よ?!」

「何でもねえ … 」


逃げるように部屋を出ていくと、春子に見られないようにそれをゴミ箱に捨てました。

… … … … …

喫茶リアス。

勉さんの隣に座っている春子、ふたりとも深刻な顔をしています。

震える手で勉さんが手にしているものは … くしゃくしゃな上にテープで継ぎ接ぎだらけになった名刺でした。

春子はアキが捨てた切れ端を拾い集めて貼りあわせたのでした。

『オフィス・ハートフル 水口琢磨』と読めます。

「初めて見ました … 」

ようやくそれだけ口にできた勉さん。

「だろうね、ずっと弟子だと思ってたんだもんね」

「えっ、何々どういうこと?」


春子の言葉に美寿々も反応しました。

「だから、ハートフルっていうのは東京の芸能事務所なの … そこの名刺持っているってことは、業界人ってことでしょ?」

「水口さんが?」


色めきだす一同、ヒロシが聞き返しました。

「業界人がなしてこんな田舎に?」

「しかも勉さんの弟子って … 」


大吉、保も信じられないといった顔です。

「 … 琥珀の、琥珀の魅力に目覚めて」

「違うね、琥珀なんか全然興味ないんだよ!」


勉さんの言葉を遮って春子は言いました。

「ただこの店に出入りするために、勉さん利用されたの」

「じぇじぇ」


今にも泣きだしそうな勉さん。

「じゃあ、私も?」

不安そうに尋ねる美寿々。

「 … そうかも … ね、情報得るために近づいたのかも … 」

「じぇじぇっ」


よろよろと倒れこむ美寿々を春子が支えました。

「えっ、アキちゃんがこれを持っていたってことは?!」

「当然、ユイちゃんもスカウトされてるでしょうね」


名刺を手にしたヒロシに向かって春子は言い切りました。

「じぇじぇっ」

… … … … …

「どうりで … ヘンだと思ってたんですよ様子が、やたら親に反抗したり、東京の賃貸情報とか間取りとか取り寄せたり」

「やばいじゃん、それ!」

「えっ、ハートフルって有名な事務所なんですか?」


春子は傍らにあった雑誌のページを開いてヒロシに渡しました。

ページ一面に載っている男の写真を見て保が声をあげました。

「あ、こいつ知ってる、敏腕プロレスラー」

「プロデューサーの荒巻太一! 通称『太巻』」


『太巻』という言葉に反応するヒロシ。

以前、ユイが観光協会のパソコンを使って検索していたキーワードと同じです。

「太巻のことなんか、調べてどうするんだろうって思ってたんですよ … そっか、プロデューサーか」

長い間、引っ掛かっていたことがわかってスッキリするヒロシです。

「ちょっとちょっと、今ユイちゃんにいなくなられたら北鉄はどうなるんだよ?! … この夏が勝負だっていうのにアキちゃんまで。

ちきしょう、何考えてるんだ、水口の野郎 …」


大人の事情で焦りまくる大吉。

「ちきしょう、ちきしょう!!」

大声でわめきだした美寿々。

「 … 何か『ちきしょう』の重みが違いますけど」

吉田の言葉に顔を見合わせる一同。

「真剣につき合ってたのに、結婚まで考えてたのにい、うううう」

「結婚はあんたしょっちゅう考えてるでしょ?」


余計なつっこみを入れる保。

「式場、仮押さえしてたのに … 」

「じぇじぇっ」


さすがに引く一同。

「車も上げたのにい!」

「じぇじぇじぇじぇじぇじぇっ!」

「あれ、勉さんは?」


ヒロシが勉さんがいなくなっていることに気づきました。

今の今まで思いつめた顔で指定席に座っていたはずの勉さんがいつの間にか姿を消していました。

泣き崩れる美寿々の肩を抱いた春子です。

… … … … …

一方、アキはまたユイに閉店後の『海女カフェ』まで呼び出されていました。

結局、ユイは『アメ女』のオーディションを受けることにしたようです。

スーツケースを持って現れたユイにアキは尋ねました。

「何泊するの?」

「オーディション受けるだけだから一泊だよ」

「その割には荷物 … でっけえな?」

「大丈夫、水口さん車で送ってくれるって」


アキが尋ねたのは、そういう意味ではありませんでした。

「 … もう帰って来ないの?」

ユイは否定しませんでした。

「わかんない … でも、親に言って出てきてるから家出じゃないでしょ?」

ユイなりの言い訳でした。

「遅いな、水口さん … 」

『海女カフェ』まで迎えに来ることになっていました。

… … … … …

その頃、まだ水口は採掘場にいました。

「水口 … 」

いつのまにか坑道に入って来ていた勉さんに声を掛けられて振り向く水口。

「あ、師匠」

自分の正体がばれたことを知らない水口は、うれしそうに話しだしました。

「ちょうどよかった、大きいのが採れたんで梨明日にもって行こうと思って … 」

立ち上がり琥珀を手渡そうとする水口に勉さんは言いました。

「破門だ」

「えっ?」


いきなり殴りつける勉さん。

「今すぐ出ていけ!」

誰に何を言われても穏やかな顔でいる勉さんが鬼の形相で水口のことを睨んで、出口を指しました。

… 水口はすべてを悟りました。

… … … … …

約束の時間を過ぎても迎えに来ない水口。

「運転中かな?」

いくら鳴らしても携帯に出ません。

ユイはあきらめて携帯を閉じました。

やるせない思いのアキ … どうしたらいいの …


ここにも母のようになりたくないと言って旅立った娘がいました …

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2013年06月06日 (木) | 編集 |
第58話

『まだ17才だろ? まだまだ知らない世界があるわけじゃんか … 君自身、無限の可能性を秘めてるわけじゃんか?』

『スカウトマンだからよ、そう荒巻太一の事務所の社員、私たちをスカウトしに来たのよ … 私たちに近づくために、勉さんを利用したんじゃない?』

『実は … ユイちゃん、最近おらの作業場さ出入りしているいみたいなんだ』

3人の話が一つにつながったアキは、いてもたってもいられずに勉さんの作業場を訪れます。

薄暗い坑道の中でユイと水口を見かけたアキ、慌ててバケツにつまずいてしまいました。

… … … … …

起き上がろうと顔を上げた時、懐中電灯の光がこちらを照らしていました。

… ユイでした。

近づいてきたユイは、アキが落としたスプーンを拾うと水口といた方へ戻って行きます。

「じぇじぇっ」

「勉さん、帰って来ちゃうから早く」


手招きするユイの後をアキはついて行きました。

… … … … …

スナック梨明日。

「ああ、また留守電」

一向に繋がらない水口の携帯、美寿々がため息をつきました。

「作業場は圏外なんですよ、地下10メートルだから」

琥珀を磨きながら、勉さんが慰めました。

「ああもう、あたしと琥珀とどっちが大事よ?!」

勉さんに詰め寄っても仕方がないことですし、第一そんな間柄でもないでしょうに …

「どちらも磨けば光ります」

つぶやいた吉田を美寿々は睨み返しました。

「あれ、ホメたつもりなんだけど … 」

… … … … …

ユイはアキを坑道の奥、水口が作業をしている場所まで連れて来ました。

「あの、水口さんは何してるんですか?」

「 … 穴を掘ってます」


水口の口からはアキが聞きたかったような答えは返ってきませんでした。

アキはもう一度聞きました。

「穴を掘って何しているんですか?」

「この琥珀の地層はね、海岸に沿ってまっすぐ南へ伸びているんだ … だから、このまま掘り続ければ、宮古まで行けるはずなんだよ」


水口が何を言いたいのかアキにはわかりません。

「宮古から電車に乗って、俺とユイは東京へ行く」

絶句するアキ、思わずユイの顔を見つめました。

「 … 冗談だよ」

ユイからそう言われて、ホッとしたアキは照れ笑いしました。

「ウチの荒巻が上野に劇場を造りまして … 」

改めて話しはじめた水口、念のためユイは言いました。

「本題入ってるから

うなずくアキ。

「そこに日本全国からアイドルの卵を集めて、コンサートやお芝居を上演しつつ、アイドルを育成しようというプロジェクトで … 」

… … … … …

太巻は、以前テレビでこう語っていました。

「何故、上野だかわかりますか? … そう東日本の玄関だからです。

じゃあ、西日本の玄関はどこか?

イエス、品川!」

… … … … …

その品川にも秋には劇場をオープンするプランがあるそうだと水口は話しました。

… … … … …

そして、太巻は更にこんなことも言っています。

「47都道府県のアイドルを東と西の玄関に集めて戦わせる … ま、戦わなくてもいいんですけどね」

… … … … …

「 … それが『GMT47』計画です」

「じー・えむ・てぃ?」

「地元って意味じゃない? … ダジャレだよね」


アキに説明するユイ。

… … … … …

「東京は田舎者のたまり場なんです! … マスに向けてコアを放つ的な」

コアというのは『地元意識』のことです。

「1億人の『地元意識』、東京を舞台にコアを集めてマスを形成する … みたいなね。

… ま、やってみないと分からないんですけどね ふふ」

… … … … …

「私たちみたいなご当地アイドルって全国にいるんだって」

「ええ、それらを47都道府県から東京に集めて、国民的アイドルグループを作るために、僕は派遣されたんです」


水口はついに自分の正体をアキに明かしました。

大体が、ユイが推理した通りでした。

「へええ、ってじゃあ、本当に業界の人なんですか? … 勉さんの弟子じゃないんですか?」

アキが話をそこまで戻したので、ユイはあきれています。

「バレなきゃそうですね」

「バレなきゃ?」

「バレちゃったから … いや、いいんだけどね、全くバレないのも問題なんで … ずっと琥珀掘ってないといけないし」


当然ながら、本当は琥珀にはあまり興味がないということでしょう。

「何でウソつくんですか?」

「理由はいろいろあるんだけど … 君のお母さんの歌を聞いたから」


意外なことを水口は口にしました。

… … … … …

忠兵衛の送別会で春子が歌った『潮騒のメモリー』 … 店の客のひとりとして水口も聴いていたのです。

「驚きました、あんな場末のスナックで聴く歌じゃない … 上手い下手じゃなくて、説得力というか本物感があった」

業界人の水口に母の歌をほめられて、少し鼻が高いアキです。

「 … 歌手を目指してたんでしょ?

ああいうタイプって我々からすると面倒なのよ、なまじ業界のこと知ってるとガード固いし、だから慎重に少しずつお店の空気に馴染んで … 」


そして、水口が撮影したビデオで、お座敷列車で歌うふたりを見た東京のスタッフから「GO!」が出て、いよいよ交渉を開始しようとしていた矢先に …

『デビューしたいんです!  東京へ行って、アイドルになりたいんです!』

ユイの方から接触してきた …

「 … ていう流れだよ」

おおまかな経緯を水口は説明し終えました。

… … … … …

「へええ … っていうか、何してるんですか? こんな暗闇にユイちゃん連れこんで!」

正体がわかると、どうしようもなくユイのことが心配になったアキは、水口を責めました。

しかし水口に代わってユイ自身が答えました。

「相談乗ってもらってたの、最短距離で夢を実現する方法いっしょに考えてもらったり … 夕方のテレビに出るようになったのも、水口さんのアドバイスなんだ。

もうすぐ18じゃん、決して若くないし、顔と名前覚えてもらった方が良いって」


デビューすることに関して、水口に信頼を寄せているということでしょうか …

「まあ、ふたりとも良いキャラだし、本当は君も東京に連れて行きたいんだけど … 何か忙しそうだし、興味ないんじゃね」

ユイちゃんとふたりで東京へ、アキには想像すらできないことでした。


… … … … …

「じゃあ、お先に」

美寿々が一足先に上がって帰って行き、梨明日は春子と大吉のふたりきりになりました。

「あたしももう出れるから、車まわしてきてよ」

スナックが終わった後は大吉が家まで送っているようです。

「もう1杯飲みなよ、おごるよ」

春子は大吉の好意に素直に甘えて、ビールの栓を抜きました。

「臨時列車、出せることになったよ … 『海女カフェ』のおかげでまた乗客増えたんで、夏の間だけ30分おきに運行することになった」

「へえ、すごいじゃん、こないだまで廃線って騒いでたのにね」

「春ちゃんのおかげだよ」


カウンターから出て、大吉の隣に腰かけながら春子は言いました。

「あは、何もしてないよ、あたしは … 全部アキとユイちゃんのおかげでしょ?」

「きっかけを作ったのは、春ちゃんだべ … 春ちゃんが帰ってきてくれたおかげで町が動き出したと俺は思っている。

だから、感謝している … ありがとう」


… … … … …

「まあ、あたしも随分変わったでしょ?」

「えっ?」

「去年の今頃はさ、話し相手も居場所もなくて、いっつもイライラしてた … ま、今もイライラはするんですけどね … 」


昔のダサかった自分が嫌いで、嫌いな自分がいたこの場所が嫌いで毎日イライラして … 目の前にいる人、海、景色などが見えてなかったと春子は言いました。

「でも、最近思い出さなくなってきたよ、昔のこと … 目の前のことでいっぱいいっぱいでさ … 毎日何かあるじゃん、イライラをぶつける相手もいるし、こことか家とか居場所もあるし …

何か景色も変わった気がする」

「アキちゃんのおかげだな」


大吉の言葉にうなずいた春子。

「でも、アキも夏さんに会うまでは暗い子だったからね」

「じゃあ、夏ばっぱか?」

「 … なんだかんだ言って、すごい人ですよ、夏さんは」


… … … … …

採掘場からアキが家に戻ると、夏はまだそのまま大の字で眠っていました。

アキは居間の灯りを落として、夏に布団をかけてあげました。

団扇で夏に風を送りながら、思い出したのはさっきの水口の言葉でした。

『本当は君も東京に連れて行きたいんだけど … 何か忙しそうだし、興味ないんじゃね』

… … … … …

『私、海女さんやりたい!』

アキがそう宣言してから1年 …

やっぱりアキはここが好きです … ここの海が、人や景色が好きです。

… やっぱり無理だ、ここを離れるなんて …


… … … … …

「ただいま … 」

大吉に送ってもらって帰宅した春子。

食卓を挟んで、並んで大の字で寝ている夏とアキ、ふたりの寝顔をまじまじと見比べてしまいました。

同じように薄目を開けて寝ています。

母の気配にアキが目を覚ましました。

「あ、おかえり」

春子は笑いをこらえながら、アキにしみじみと言いました。

「あんたさ、お祖母ちゃんに似て来たねえ」

不思議そうな顔をするアキ。

「あははは … 目開いたまま寝てたよ」

「じぇじぇっ!」

「将来はあれだね、『アキばっぱ』だね」


そう言いながら、自分の部屋に入って行った春子。

アキは食卓の上に置かれた春子の手提げの中にビデオテープが入っているのに気づきました。

興味から手を伸ばしましたが、春子が部屋から出て来たので引っ込めました。

「ねえ、先お風呂入っていい?」

「どうぞ … 」


… … … … …

アキは春子が風呂場に入ったのを確認して、手提げからビデオテープを取り出しました。

『潮騒のメモリー』と書かれた手書きのラベルが貼られています。

春子が吉田から借りたものを持ちかえって来たのです。

興味津々、見たい誘惑にかられたアキは、テープをデッキにセットしようと …

その時、携帯に着信が … ユイからでした。

… … … … …

「もしもし」

「 … アキちゃん、ごめんね、こんな遅くに」

「うん」

「 … あのさ、今カフェにいるんだけど、会えない?」

「えっ?」


採掘場から家に帰らないで、『海女カフェ』に来たのでしょうか?

「 … 大事な話があるの」

何やら胸騒ぎがするアキでした。

… … … … …

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2013年06月05日 (水) | 編集 |
第57話

2008年夏、アキはこの北三陸にやってきました。

それからちょうど一年後、2009年7月1日。


朝、絣半纏に身を包み、海女の身支度を整えたアキが玄関の扉を開け、陽の光を浴びて大きく背伸びをしました。

「おお、いい天気だ」

後から、出てきた夏も空を見上げました。

「おはよう、夏ばっぱ」

「ははは、早えなアキ」

「興奮して眠れなかった」


楽しそうに笑い合ったふたり。

「ママは?」

夏に尋ねるアキ。

「起きるわけねえべ、まだ5時半だど」

「だめだよ、今日は早く起きるって約束したんだ」


アキは春子を起こしに家の中へ飛んで行きました。

『いつでも夢を』を流す漁協の有線放送、かつ枝の声でアナウンスが聞こえてきました。

「あ~あ、本日は晴天なり … おはようございます。本日は7月1日、袖が浜海岸海開きです。

そして、今年は漁協をリフォームした『海女カフェ』がオープンします … 7時より安全祈願のご祈祷および餅まきを行いますので、速やかに『海女カフェ』前にお集まりください」


… … … … …

「やだちょっと、待ってよ」

「早ぐ、早ぐ!」


アキが春子を無理やり起こして表に出てくると、海女姿の弥生と美寿々、新人たちが待っていました。

「なあに、朝早くから?」

「よし、行くべえ!」

「お~っ!」


早朝からテンションの高い海女たち、寝起きの春子を連れ出しました。

… … … … …

オープン祝いの花輪が飾られた『海女カフェ』、白く塗られたおしゃれな外装、生まれ変わった漁協の姿を見て感嘆の声を上げる春子。

アキはまだ開店前の店内に春子を招き入れました。

それでは、本日オープンする『海女カフェ』の店内をご紹介しましょう。

「いらっしゃいませ!」

まず、入り口のドアを開けると、フレッシュな新人海女さんがお出迎え。

光あふれるエントランスを進むと、広い客席が見えます。

… ちなみに漁協時代は、組合長が油を売っていた場所です。

南側の壁際には、海女の写真館。

そして、大小4つの水槽には珍しいお魚、珍しくないお魚がいっぱい … ちょっとした水族館です。

「へえ、すごいじゃん … キッチンはどこ?」

「こっちだ、ここ!」


… … … … …

花巻さんが舌打ちをしながら、探し物をしていた物置は厨房になりました。

そこには、『まめぶ大使』の安部ちゃんから花巻さんに受け継がれた南部鉄器の鍋が鎮座しています。


オープンに訪れる客に出すためのまめぶ汁をこしらえている珠子、夏はウニ丼の仕込みをしていました。

厨房の奥は、海女さんたちの憩いの空間、ここでミサンガを編んだり、どす黒い噂話をしたりします。

「ウニ丼20個、並べてけろ!」


開店前の忙しい時に、すでにこの部屋でくつろいでいたかつ枝と弥生に夏が言いつけました。

かつて海女たちがどす黒い噂話していたスペースは、おみやげコーナーに大変身。

もちろん、海女のミサンガも絶賛発売中です。


… … … … …

エントランスを抜けると、広々としたオープンテラスがお目見え、獲れたてのウニは1階のテラス席で食べられます。

フレッシュな新人海女が目の前で殻を割ってくれます。


… … … … …

「ママ、こっち来て!」

アキに手招きされて春子は再びフロアに目を移しました。

前面の緞帳が開きそこに現れたものは …

何ということでしょう、念願の特設ステージではありませんか?!

小振りながら、ミニコンサートや握手会を行うには十分なスペースです。

そして、海女カフェの目玉 …


更に、ステージの奥に100インチの巨大モニターが登場して、海中の風景、潜航してくる海女の姿が映し出されました。

「ちょっと待って、あれ美寿々さんじゃないの?」

モニターに映る海女を見て春子が言いました。

「へへへ … 」

「美寿々さんだね、ええっ、どういうことこれ?」

「海底に設置されたカメラから送られてくる映像で、海女さんが潜ってウニを取る様子を実況生中継しているんです」


いつのまにそばにいたヒロシが得意げに説明しました。

「本当はでっかい水槽ここに置いて、アキちゃんが潜ってウニを取る様子見せたかったんですけど、工事費が半端なくかかるんですよ … でも、面白いアイディアだし、どうにか実現できないかなって思って」

画面は、外で餅をまく夏や弥生たちの映像に切り替わりました。

… … … … …

「どう?」

一通り案内を終えたアキが春子に感想を聞きました。

「どうって … すごいよ、この短期間でよくやったよね」

「へへへへ」

「 … でもなんか、いろいろ思い出しちゃうね」


去年の夏、袖が浜に来た日のこと、アキが夏に海へ突き落とされた時のこと … 1年前に起こった出来事がふたりの脳裏をよぎりました。

… … … … …

夏にいきなり背中を押されて、服のまま海に落とされたアキ。

「どうだ?」

浮き輪に捕まって波に漂うアキに笑いながら尋ねる夏。

「ああ、気持ちいい! … めちゃめちゃ、気持ちいい!」

「そうか … やっぱり、おらの孫だ」

アキが海に落ちるところを見て、慌てて走ってきた春子は夏を怒鳴りつけました。

「アキに変なこと教えないで!」

そっぽ向く夏、海の上から心細げな顔で春子のことを見つめるアキ。

「ママ … 」

「あんたもママが嫌いなもんばっかり、好きになんないでよ!」

… … … … …

「あの頃ママ、冷静じゃなかったしさ、ずっと悩んでた … ここにあんた連れてきて良かったのかなって毎日考えてた」

アキは春子の隣に腰を下ろしました。

「ママ、この町嫌いだったし … あ、今でも別に好きじゃないんだけどね … でも、まあココは好き、うん『海女カフェ』は好きっ!」

「やったあ、へへへ」


母を無理に起こして連れて来た甲斐がありました。

「大体さ、好きとか嫌いとか言うのって、よそから来た人間なんだよね … 嫌いだったら、アキみたいに自分で好きなように変えちゃえばいいんだよ、周りを … ね、変えちゃえばいいんだよね?!」

春子の話を聞きながら、何故かアキは落ち着かない雰囲気です。

「それが出来るんだから、あんたやっぱすごいわ … ママが嫌いな場所を、『好き』に変えちゃったんだから、やっぱすごいわ!」

「ママ … そろそろムズ痒くなってきた」

「なによ? ああ、普段あんまりホメないもんね?」

「照れくせえ、褒めるなら、いないところで褒めてけろ … 」


それでも止めない春子を残して、アキはどこかへ逃げて行ってしまいました。

… … … … …

オープンの時間が来て、歓声が上がりました。

白いスーツでめかしこんだ組合長を先頭に入店してきた大吉と保。

「じぇじぇじぇじぇっ!」

余りの変わり様に目を見張り最大級の「じぇ」で賞賛しました。

「おい、やりやがったな、組合長!」

「今日からおらのことオーナーと呼んでけれ」


続々と入店してくる人の波、足立功夫妻の姿も見えます。

「盛況だね、駐車場いっぱいだったよ」

「これ本当にうちのヒロシが?」


驚くよしえに保が説明します。

「そうなんですよ、『海女カフェ』担当として、プランから全部関わって、なあ足立君?」

傍にいたヒロシを両親の前に連れ出し、花を持たせました。

「 … いらっしゃい」

硬い表情のヒロシ、功は人前だからか軽く声を掛けただけでしたが、内心は喜んでいるのでしょう(例え話半分と思っていたとしても)

足立夫妻は先にいた春子と同じテーブルにつきました。

「天野、すごいねえ、新名所誕生だよ」 

「ねえ、皆こういうの待ってたのよね … アキちゃんは?」

「なんかもっと褒めたかったんだけど、照れて逃げちゃったの」

… … … … …

再び歓声が上がり、ステージの奥のモニターに海中のライブ映像が映し出されました。

潜航していく海女の姿に観客から拍手がまき起こります。

「あれ、アキちゃん?」

「アキです、アキ、アキ!」

潜水土木科での努力が実を結び、アキの潜りは飛躍的に上達していました。

大漁のウニ、浜でも海から上がったアキは大勢の拍手と喝采に迎えられて、笑顔で応えていました。

… … … … …

喫茶リアス。

学校帰りのアキが店に飛び込んできました。

「もう始まってる? ユイちゃんの番組!」

テレビをつける美寿々、グッドタイミングです。

今日の足立ユイの『もうお腹いっぱい!』は、『海女カフェ』からの生中継です。

… … … … …

ウニのドアップからカメラが引くと、北鉄の車掌のスタイルでマイクを持ったユイが映りました。

「 … さて、獲れたてのウニはもちろん、ここ“海女カフェ”ならではのメニューもたくさんあるんですよね?」

「じぇじぇっ」


ユイと並んで、かつ枝、弥生、珠子が画面に映ると、一同から笑いが起こりました。

「ここ北三陸では“まめぶ汁”が有名なんですが、ここでは7種類のまめぶが楽しめます」

テーブルに用意された7つのお椀に『かつ枝おばさんのまめぶ汁』『やよいおばさんのまめぶ汁』というように、それぞれの名前が書かれた札が添えてありました。

「では、こちらは?」

かつ枝がお椀を手に取りました。

「かつ枝おばさんのまめまめ●▽×□◎ … 汁です」

緊張してカミカミです。

「かつ枝さんが作られたんですね?」

「 … すいません」


何故か謝るかつ枝。

「いや、怒ってないから謝らなくていいんですよ、ではこちらは?」

「やよいおばさんのまめぶ汁です」

1オクターブ高い声で話す弥生、笑顔が怖い …

「ええと、かつ枝さんのと比べて、味は?」

「き、基本的に同じです」


ユイにマイクを向けられて固まった笑顔のまま答えました。

「じゃあ、花巻さんが作られたまめぶもあるんですよね、どれだろう?」

「つうか、全部おらが作ってる」


… 珠子から爆弾発言が出てしまいました。

「こいつら何もしねえ、味見担当だ!」

カメラが引いて、気まずいスリーショット …

「すいません」

謝罪するかつ枝、そのあと変な間が続きます。

「 … あ、あと10秒あります」

ユイに言われて、弥生が急に歌いだしました。

♪わたすのお墓の前で泣かねえでください ~

他のふたりのひきつった顔、構わず歌い続ける弥生。

… … … … …

「すっげえなこれ、こんなの流していいのか?」

あきれながらも大笑いする美寿々。

「ある意味、放送事故だべ」

そう言いながら吉田も結構楽しんで見ています。

「 … それでは、サヨウナラ!」

収拾がつかなくなったようにみえましたが、慌てず笑顔で締めくくったユイでした。

レポーターも大分板について来て、このコーナーは結構好評のようです。

「すごいじゃん」

春子も感心しています。

… … … … …

「ビール飲んじゃおうかな、まだ6時前だけど … そう言えば、ビデオ見ましたか? 『潮騒のメモリー』」

「まだ見てないごめん」

吉田に聞かれて、春子はあやふやに返しました。

… 見たく(見せたく)ない理由でもあるのでしょうか?

「ねえ勉さん、最近水口君どうしてる?」

指定席で琥珀を磨いていた勉さんに美寿々が尋ねました。

「 … 最近ずっとご無沙汰じゃん、たまには連れて来てよ」

「何、振られたの?」

「がっつきすぎて引かれたんじゃないですか?」


春子と吉田が茶化しました。

「まだまだ、相撲で言ったら『かわいがり』の段階だ」

屈託なく笑った美寿々です。

… … … … …

「やべっ、帰んなきゃ!」

宮古行きの発車ベルが聞こえてきて、慌ててアキが店を飛び出しました。

「アキちゃん!」

後を追いかけるように出てきた勉さんがアキを呼び止めました。

「何?」

しかし、何か言いあぐねているようです。

「ごめん勉さん、電車言っちゃうから」

電車が気になるアキ。

「最近、ユイちゃんと会ってる?」

「うん、毎朝学校までは一緒だ」

「なんか、変わった様子ない?」

「いやどうだべ、お互い忙しくて … 」


勉さんは、少し言いにくそうに声を潜めて話しました。

「実は … ユイちゃん、最近おらの作業場さ出入りしているいみたいなんだ」

「じぇじぇっ!」


口に指を立てる勉さん。

「見たわけじゃない、見たわけじゃねえけど … これ」

ポケットから取り出してアキに手渡したものは、見覚えのあるストラップでした。

「ユイちゃんの!!」

「だべ? … トンネルの中で拾ったんだ」

… … … … …

「悪いなあ、まめぶ汁温める気力もねえわ、体力もな … ははは 」

居間から夏が申し訳なさそうに、台所に立つアキに言いました。

海女のシーズンに入った上、千客万来の『海女カフェ』での慣れない接客、さすがの夏ばっぱでも仕方がありません。

「大丈夫だ」

アキは自分でお椀に入れたまめぶ汁にラップをかけて電子レンジに入れると、スイッチを押しました。

レンジの中で回るお椀を見つめるアキ、さっきの勉さんの話、ユイのことがずっと心に引っ掛かっています。

『まだ17才だろ? まだまだ知らない世界があるわけじゃんか … 君自身、無限の可能性を秘めてるわけじゃんか?』

『スカウトマンだからよ、そう荒巻太一の事務所の社員、私たちをスカウトしに来たのよ … 私たちに近づくために、勉さんを利用したんじゃない?』

『実は … ユイちゃん、最近おらの作業場さ出入りしているいみたいなんだ』

チ~ン!

アキの頭の中で、3人の話が一つにつながりました。

いてもたってもいられなくなったアキは着の身着のまま、スプーンを持ったまま家を飛び出していました。

アキがどんな思いで家を飛び出したのかは定かではありません … こう見えて私は、爆睡してたからです。


… 食卓の脇で大の字で横になっている夏。薄目を開けて寝ている時は、本当に寝ているときでした。

… … … … …

アキは勉さんの琥珀採掘場を訪れました。

坑道に入ると、奥を進む人影が見えました … アキは、その後をつけます。

「お疲れ様です」

ユイの声でした。

「ありがとう」

水口の声、アキは暗がりの向こうにふたりの姿を見つけました。

ユイが袋から何かを取り出して水口に渡しています。

「じぇっ!」

思わず早足になる … 足元にあったバケツにつまずいて倒れてしまいました。

手にしていたスプーンが落ちる音が坑道内に響きます。

起き上がろうと顔を上げた時、懐中電灯の光がこちらを照らしていました。

… ユイでした。

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2013年06月04日 (火) | 編集 |
第56話

勉さんの琥珀採掘場。

坑道内、ひとりで作業している水口が人の気配に振り向くと、そこに … ユイが立っていました。

「おおっ、こんばんは … 」

切羽詰ったような顔で水口のことを見つめるユイ。

「勉さんならスナックだよ」

しかし、ユイが用事があるのは勉さんではありません。

「電話でしゃべってるの聞いちゃったんです」

「?! … 」

「お座敷列車の前の日 … 」


… … … … …

水口は驚いたような顔をしましたが、すぐにまた作業を始めました。

「私とアキちゃんのこと、誰かに報告してましたよね?」

『一応席はキープしてありますんで、太巻さんにもそうお伝えください』

「スカウトマンなんですか?」

「ちがうよ」


あっさりと否定しました。

「業界の方ですよね … 雑誌で読んだことがあります。ターゲットを決めたら、まずその子の近所に部屋を借りて家族や友人と仲良くなってから、交渉に入るって … それが円満にデビューさせる秘訣って」

黙々と作業を続ける水口。

「あの、あのさ、何言ってるか全然わかんないんだけど … 」

「デビューしたいんです!

東京へ行って、アイドルになりたいんです、こんな田舎で終わりたくないんです!」


ユイは押さえていた思いの丈を吐き出しました。

「 … どうしたらいいんですか?」

少し考えて、水口は言いました。

「それは、君次第でしょ? 

君の覚悟っていうか本気が見たいって … もし俺が業界の人間で、そういう業界のそういう立場の人だったら、思うと思うけどね。

普通にそこそこ可愛くて、『アイドルになりたい』なんて言ってる、ちょっと痛い女の子と何が違うのかと、知りたいと思うけどね」


口調は優しくても、決して甘いことは言っていない水口の言葉をユイはどう受け取ったのでしょうか …

… … … … …

一方、天野家。

「ああ、夏ばっぱ帰って来たあ!」

かつ枝は玄関まで出て夏を出迎えました。

「聞いてけろ、夏ばっぱ、さっきまで漁協で銀行の人と会ってたんだよ」

『海女カフェ』の企画書を見せても、最初は無表情で値踏みするような感じの悪い態度だったのですが … 『潮騒のメモリーズ』のアキが関係していることを知ると一転。

「融資決まったのか?」

「2千万、アキの名前で借りられた!」

「海女カフェ出すど、アキ!」


手を取り合って喜ぶかつ枝とアキ。

「ちょっと待って待って待って!」

組合長が聞き捨てならないことを言ったと、台所にいた春子が慌てて飛んできました。

「アキの名前って、アキが借金したことになってないよね?」

「違う違う、アキちゃんがいたら、客がひっきりなしに来て、繁盛して、すぐに借金返せるべって意味だ」


どの道、アキが頼りということには変わりがないようです。

「そんなんで、2千万? … いいの、それで? 返せるの、本当に?」

「大丈夫だ、おら頑張る」

「いやあ、よく言った!」


能天気に笑ったアキが胸を張ると、一同が拍手しました。

「大丈夫か、これ?」

ひとり不安にかられる春子です。

… … … … …

早速、『海女カフェ』の構想について、漁協でミーティングが開かれました。

『海女カフェ』担当のヒロシが議事進行を行います。

「というわけで、7月1日、海開きと同時オープンを目指して、皆さんの意見を … 」

「窓はやっぱ南向きだべな?」


♪南さ向いてる窓を開け~

夏の意見を弥生が歌って茶化すと、一同大笑い。

「海がきれいなのはこっち向きですけど」

ヒロシが東側を指すと、夏は『やませ』が吹くので東はダメだと組合長が言いました。

「2階はさ、やっぱオープンテラスにすっぺ!」

美寿々の意見にかつ枝も賛成しました。

「いいなあ、パラソル立ててさ、マティーニ飲みてえなあ」

「ちゃんとメモしろよ!」


弥生に指示されて、慌ててメモを取るヒロシ。

「海が見えねえなら、いっそ、ここに水槽5、6個置いて珍しい魚泳がせたらどうだ?」

それじゃあ、水族館 …

「いいねえ、だったら、いっそ、でっけえ水槽作って、おらが飛び込んでウニ獲るの見せっか?」

アキも調子に乗ってきました。

「そんでよ、イスとかテーブルはロココ調のアンティークな」

ロココ調の意味もわからず、あこがれるかつ枝。

皆それそれが思いつくまま好き勝手なことを言い出だしました。

メモを取りながら、だんだん憂鬱になって行くヒロシ …

… … … … …

翌日、海女たちの意見を元にした試算を持ってヒロシが再び訪れました。

気が重そうな顔で報告します。

「先日伺った皆さんの希望をすべて叶えますと … 2億4千万かかりますね」

「じぇじぇじぇっ!」


♪億千万、億千万

「もう弥生さん、うるさい!」

また歌って踊り出した弥生を今回は無理やり黙らせたヒロシ。

「大幅に予算を削減してください!」

「じゃあ、マティーニをやめてよ、発泡酒にするか?」

「そういう問題じゃない … そもそもオープンデッキが無理なんです!」


意外という顔をする海女たち。

「それから、人件費削減のため、内装は基本自分たちでやってもらいます!」

「え~っ?!」

試行錯誤を繰り返しながら、漁協を『海女カフェ』に改装するリフォームが始まりました。


… … … … …

この頃から、ユイちゃんはひとりでテレビに出るようになりました。

あっという間に人気に火が付き、ちょっとしたコーナーを任されるようになっていました。


『は~い、ミス北鉄の足立ユイです。

今日はこちら、1,000円でランチが食べられるステーキ店を3つご紹介します!

足立ユイの“もうお腹いっぱい!”』

… … … … …

喫茶リアス。

テレビでユイのグルメレポートを見ながら、くつろいでいる大吉、吉田、保の3人

「あ~あ、平和だ!」

大吉が声を上げて大きく伸びをしました。

「何よ、急に?」

その声に驚く春子。

「本当にいいね、海女クラブのばばあがこっちさ出て来ないば静かで」

しみじみと言う保。

「ばばあ?」

「ばばあで行くことにしたんです。毒蝮三太夫みたいに、言い続ければ気にならなくなるから」


吉田がいつもの調子で説明しました。

「最近、すっかりばばあレスで身も心も軽いもんね」

「血液もサラサラで背も伸びた気がする」


笑いながら話す大吉たちを見て、春子は諌めました。

「ちょっと言い過ぎじゃないの、いくらなんでも」

… ばばあ呼ばわりされている中に自分の母親もいるということは余り面白いものではありません。

「愛があるからいいの」

詭弁を言う保。

「ところでここってビデオ見れましたっけ?」

ガラッと話を変えて、吉田が尋ねました。

「ビデオ、何で?」

「家にあったんですよ」


吉田が取り出したビデオテープ、『潮騒のメモリー』と書かれたラベルが貼ってありました。

「映画か? おっ、鈴鹿ひろみの!」

「じぇじぇじぇっ」

『潮騒のメモリー』とは … 1986年の正月映画として公開された青春映画です。

今や実力派女優として知られる鈴鹿ひろみのデビュー作で、鈴鹿本人が歌う主題歌は60万枚のセールスを記録しました。


ビデオテープを手に取る大吉。

「懐かしいなあ、北鉄が開通した2年後か … 」

「あ、見ます? … テレビでやった時、撮った奴だから、頭とケツに水野晴郎が映ってますけど」

「今はダメ!」


テープをデッキに掛けようとした吉田を春子が止めました。

「何で?」

聞き返されて、春子が一瞬だけ言葉に詰まったように見えました。

「テレビ見てるの、ユイちゃんの」

その言い訳も少し不自然 … かな?

… … … … …

「頑張ってるなあ」

「本当、毎日出てるもんね、律儀に北鉄の制服をば来て」


ユイのレポートを見て感心、感謝する大吉と保。

しかし、春子は少しユイの様子が気になりました。

「でも、なんかやつれてない? … なんか心配、ユイちゃん学校行けてるかしらね?」

「午前中は行ってるみたいです」


音もなく店に入ってきていたのか、背後からいきなりヒロシの声がして、一同がビビりました。

「じぇじぇっ!」

「何でお前、げっそりして … 」


ふらつく足取りでカウンターについたヒロシ、大吉が尋ねました。

「大丈夫か、お前? 『海女カフェ』担当 … 」

「いや … 何かすっかり生気吸い取られちゃって、身長縮んじゃいました」

「イケメンのミイラなんて初めて見たよ」


ガックリと肩を落とし、やつれたヒロシを見て、保も声を掛けます。

「病院さ行った方がいいんじゃないか?」

「だったら、代わってくださいよ … 朝から晩まで5人のおばちゃんの5種類の愚痴聞かされて、血液ドロドロです」

「 … 絶対やだ」


焦点の定まらない目で語るヒロシ。

「あの人たち、文句ばっか言ってて、全然手伝わないんです」

… … … … …

改装工事で職人たちが忙しく動き回り、ヒロシやアキだけでなく、何故か勉さんと水口までもが手伝っているというのに、4人のおばちゃん海女と組合長は邪魔になるのもお構いなくテーブルを置いて座り込んで井戸端会議中です。

「このイスはケツが痛くなる」とか「掘りごたつにすれば良かった」とか勝手なことを言い合っています。

「大体、よく考えたらこの店、おらのスナックの商売敵でねえか」

そう言って夏は笑いました。

「んだんだ、こんな洒落た店出来たら、誰も梨明日さ来ねくなる」

遠慮のない美寿々。

「アールグレイって何だ?」

メニューを見ながら、かつ枝が尋ねると、答えたのは弥生です。

「グレイはバンドだべ?」

そこへ、組合長がまたわけのわかんないことを …

「アボガドか、アボカドかどっちが正解か?」

今話し合わなきゃいけないことなのか?

「どっちでもいい、働け!」

いい加減見かねた珠子がテーブルの真ん中に雑巾の入ったバケツをドカッと置いて、話を打ち切りました。

… … … … …

「このままじゃ、7月1日のオープンに間に合わねえっす」

カウンターに突っ伏すヒロシ。

「だめだよ、海開きに合わせてくんねえと!」

「 … しかも、おばちゃんたち、もう潜る気ゼロなんですよ」

「じぇじぇっ!」

「カフェに専念したいとか言って、かつ枝さんなんかバリスタの資格取ろうとしてますよ」

ちなみにバリスタとは、コーヒーを入れる高い技術や知識を持つ、カフェのスペシャリストです。


ヒロシひとりに任せきりで、のんびりしていたツケが回ってきそうです。

「やばいやばいやばい … 」

… 早いうちに手を打たないともっと大変な事態に、取り返しのつかないことになりかねません。

「募集するべ、若いウエイトレス」

「ついでに海女さんの募集もかけよう」


ヒロシの手を握った保と大吉。

… … … … …

『じぇじぇ、袖が浜のあまちゃんこと天野アキです。

袖が浜海女クラブでは、新人の海女さんを募集してま~す!

泳げない方も大歓迎、7月1日にオープンする『海女カフェ』のウェイトレスさんも同時募集してま~す!』

ホームページにこの動画がアップされると、アキ人気もあってか観光協会には応募者が殺到しました。

「足立君 … これちょっと集まりすぎだろう」

廊下まであふれる面接希望者を見て保はヒロシに耳打ちしました。

「これで半分です。残りは午後に呼んでます」

「じぇじぇじぇっ」

「来てる、来てるわ、北三陸!」


うれしい悲鳴を上げる大吉。

… … … … …

アキのフォロワーが6人、新人海女として加わりました。

去年はたったひとりの新人だったアキが、今年は後輩の教育係です。

「え~、観光海女は接客業、サービス業です。潜ってウニを取るのは諸先輩たちがやりますので」

新人を前にアキがそう伝えると、中には本当に潜りたくて応募してきた子もいました。

「潜っちゃダメなんすか?」

「潜り方は営業時間外に私や美寿々さんが教えます」


… … … … …

「あ、ユイちゃん!」

「久しぶり、いよいよ開店だね」


ユイが池田やテレビのスタッフと共に取材の下見にやって来ました。

同じ学校に通っていながら、お互いそれぞれに忙しく、こうやって会って言葉を交わすことも久しぶりのことでした。

「ユイちゃんのコーナーで『海女カフェ』特集を組むことになったんだよ」

池田が説明しました。

「へえ、なんかすっかりタレントさんだな」

「やめてよ、恥ずかしい」


照れ方も何か手慣れた感じがしました。

「あ、ちょっと待ってて、ユイちゃんさ見せてえもんがあるんだ」

アキは池田に断るとユイの手を取って、改装中の建物の奥に入って行きました。

「見て」

「えっ、何これ?」


それはこじんまりとしていましたが、舞台のようでした。

「組合長に頼んで造ってもらうんだ … ユイちゃんが躍ったり歌ったりするステージ」

「アキちゃん … 」

「テーブル片付けて、椅子の向き変えだら、100人は座れるって、デビューしたらここで歌ってけろ」


アキはユイは必ずアイドルになれると信じているのでしょう。

自分は一緒にはできないけど、応援することならできる …

「 … ありがとう」

「ふふふ ほら、ユイちゃん」


アキはユイを舞台に上げました。

そして、ふたりで舞台から客席を幻の見下ろします。

もうすぐ海開き、アキが北三陸にやって来て丸1年、この町にとってアキはもうなくてはならない存在でした。

♪南さ向いてる窓を開け~

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2013年06月03日 (月) | 編集 |
第55話

「袖が浜に海女クラブが運営する『海女カフェ』を作りましょう!」

「夏までに何らかの回答がなければ、今年は潜んねえぞ!」


アキたちが海女カフェの建設を迫っていたその頃、リアスでは …

「っていうか、何なんですかあ?!

こないだから、隠れてコソコソ写真撮ったり、急に話しかけたり!

… 何が目的なんですか?!」

ユイが水口に食って掛かったのには理由がありました。ユイは水口さんを芸能事務所のスカウトマンだと疑っているのです。


『 … ふたりともキャラは良いので、問題は歌ですね、歌唱力が … いや、母親のガードが固くて、訛っている子が。海女さんの方です』

… … … … …

「ユイちゃん、何か今日はヘンだよ?」

見かねた春子が声を掛けましたが、ユイは思わず強い口調で返してしまいました。

「わかってます!」

肩をすくめた春子を見て、態度が悪かったことに気づいたユイは、謝ると自分の座っていた場所に戻り、元の澄ました顔に戻りました。

まさにガードが固い母親が目の前にいるため、うかつなことは言えないユイでした。

やけに外がにぎやかになったと思ったら、観光協会での交渉を終えた海女たちが店にぞろぞろと入ってきました。

夏は入るなり、ビール5つとコーラを注文しました。

「何よ、昼間っから?!」

「海女カフェ建設に向けての決起集会だ!」


かつ枝が意気込んで言いました。

入れ替わりに店を出ていくユイ、アキが声を掛けましたが、無言のままです。

水口がその後を追いかけて行きます。

… … … … …

「あの … 何か誤解を生んでしまったみたいで、ごめんね」

軽くうなずいてそのまま立ち去ろうとするユイ。

「ちょ、ちょっと待って、写真を撮ったのは親戚に君の … ユイちゃんの大ファンがいて、その子に送るためでした。ついでに言うと、お座敷列車の動画も撮って送りました」

頭を下げて謝罪しました。

黙って聞いていたユイは、定期入れから自分の名刺を取り出して、水口に差し出します。

「これメアドと、最近更新してないけど、ブログです … 『親戚』の方に渡してください」

… … … … …

「スカウトぉ?」

「 … じゃないかってユイちゃん言ってた」

「ミズタクが?」


アキはユイから聞いたことを春子たちに話しましたが、誰も信じようとしません。

「バカ言うでねえ、あれはただの年増好きの琥珀掘りだ、なあ美寿々?」

カウンターの中から弥生が聞くと、美寿々はおどけて答えました。

「私、スカウトされちゃったのかしら?」

一同、大笑い。

「アキは、何か言われたりしてないの?」

「パソコンの動画見たよ、とかその程度だな」

「スカウトされたらどうする?」


夏が冗談を言うと春子が口やかましく注意しました。

「ちょっと、変なこと言わないでよ! あんなボンヤリした押しの弱いスカウトマンいるわけない!」

「どっちにしろ今は無理だ、海女カフェで頭いっぺえだもん」

「んだんだんだ」

「アキが言いだしっぺだからなあ」


… … … … …

一方、海女軍団が引き揚げた後の観光協会。

「海女カフェかあ … 」

「どう思うよ、菅原君?」


大吉に尋ねられて、保はアイデア自体は悪くはないと思うと答えました。

「アキちゃん目当てで客も来るだろうし、夏の観光の目玉にもなる。ただ … 」

保は壁に貼られた北の海女のポスターを眺めながら言いました。

「海女クラブの連中の相手をするのが、面倒くさい!」

同じようにポスターを見つめて納得する大吉と吉田。

「同感だ、カフェなんか始めたらあれが延々続くわけだべ? … 時給上げろとか、交通費出せとか?」

「送り迎えしろとか … 」

「あの勢いで攻め込まれたら、太刀打ちできねえ」

「ノイローゼになっちゃいます」


全員お手上げでした。

「ひとりひとりは物わかりのいいばばあだけど、集団になったらグループ感が増すんだよな … 」

思わずばばあと口走った保。

「ばばあって … 」

ヒロシは諌めようとしましたが、吉田は勢いづきます。

「ばばあで行きましょうよ、もう! アキちゃんに比べりゃ全員ばばあでしょ? … 女子高生 with 5人のばばあでしょ?!」

「ばばあだな!」


我が意を得たりと立ち上がる大吉と保。

「ですよね、きゃははは」

しおりも愉快そうに笑っています。

「トップは夏ばっぱだ、あれが元気で頑固だから始末が悪いんだ!」

大吉は、まず夏のことをやり玉に挙げました。

… … … … …

リアスの夏。

「大体おら、町のために40年から潜ってんだぞ。それに対する敬意がねえ!」

「んだんだ!」


… … … … …

大吉は続けます。

「しかも、ナンバー2のかつ枝さんが金に細けえんだ」

「『メガネ会計ばばあ』ね … 」


本人がいなけりゃ、強気の北鉄コンビ。

… … … … …

かつ枝の言い分。

「大体だ、ウニを1個よ、観光協会が200円も持っていくって、これどういう了見だ?」

「んだんだ!」


… … … … …

「漁業組合がバックについてるからって、言いたい放題なんだよな?」

保も止まりません。

「そこで、火に油を注ぐのは、ブティック今野の弥生さんな」

「でた、騒音ばばあ、ダンプ!」


… … … … …

「んだんだ、んだんだんだ! んだんだんだんだ … よく言った!」

かつ枝の肩を抱く弥生。

… … … … …

「んだんだんだ、んだんだんだ … 1の2面でコイン集めてるのか?!」

弥生の口調をマネながら、すごく分かりにくいものの例えをする吉田。

「そして、油断ならねえのが美寿々さんだ」

「 … フェロモンばばあ」

「あることねえこと言いふらして焚き付けるんだよな?」


… … … … …

「ミサンガもこれからノルマ制になるらしいぜ!」

「何いっ?!」


美寿々の根拠のない思いつきにいきり立つ海女たち。

… … … … …

「んで、あれだ安部ちゃんの代わりに来たあのほれ白い … 」

「白ばばあね」


もうセンスも何もない見たそのままを言う吉田。

… … … … …

「下の娘は花粉症なんです。上の娘は夜尿症なんです!」

いつも何かに怒っているような珠子、しかし何に怒ってるのよくかわからない。
… … … … …

「ああでも、言いてえこと言ったらスッキリしたわ」

ここぞとばかりに日頃、海女クラブに対してたまったウップンを晴らして、大吉は満足そうに言いました。

「まだまだ言い足りねえですけどね」

3人の口から出てくる悪口を何故かワクワクしながら聞いていたしおりが締めました。

「今日はこのへんにしておきましょう」

… … … … …

「あれ、さっきから大人しいね、足立君?」

ヒロシが話の輪にほとんど加わっていなかったことに気づいた大吉。

「え、そうすか?」

特に意識していたのではないようですが …

「ああ、仲良いもんね、海女さん連中と」

「まあ、そうすね … 可愛がってもらってますね、はい」


保に聞かれて、深く考えずにそう答えたヒロシ。

飛んで火にいる … ここぞとばかり、保はヒロシの肩に手を置いて尋ねました。

「じゃあ、やってみるか、海女カフェ?」

「じぇじぇ?」


… … … … …

ヒロシを『海女カフェ』の担当に任命した保、その報告のために大吉たちと共に海女クラブを訪れました。

さきほど海女たちの陰口を言い合っていたのがウソのようににこやかな笑顔で直立不動の3名です。

「 … というわけで『海女カフェ』は、足立君が担当しますので、今後は足立君を通してやり取りしてください」

保の説明を聞いて夏は皮肉たっぷりに言いました。

「うまく逃げたな、大吉」

「いやいや、北鉄もちゃんとバックアップしますから」


大吉のおざなりな言葉にかつ枝は追い打ちをかけました。

「金出すのか?」

北鉄のふたりは思わず顔を見合わせてしまいました。

「ちっ、メガネ会計ばばあ … 」

聞こえないと思ったのでしょう、しかし吉田が舌打ちしてつぶやいた言葉を弥生もかつ枝も聞きのがしませんでした。

「はあっ、今なんつった? 吉田、おい!」

「聞こえたど!」


北の海女たちは地獄耳でした。

弥生は吉田の首根っこ押さえて、ネクタイを掴みました。

「お金のことはまだいいじゃないですか … 」

怖気づく吉田、弥生のことを必死になだめる保たちです。

「そうですよ、そうですよ、まずは皆さんの夢物語ば語っていただいて」

言いだしっぺのアキが答えました。

「漁協をカフェに改装することにしました」

「漁協って、えっ、ここか?」


その方が安上がりなのです。

「あとは今月中に見積もり出すべって」

かつ枝の話を聞いて、決してタカをくくってはいられないと知った大吉たち。

「現実的だな … 」

「夢物語じゃねえど」

海女カフェ計画は実現に向けて動き出しました。


… … … … …

次の日の朝、天野家。

「おはよう!」

学校の支度を終えて居間に下りてきたアキに春子が忠兵衛から届いた絵はがきを渡しました。

「ケープタウンに逗留しているんだって」

「へえ、すげえ、この間までインドだったのに」

「何て書いてある?」


台所に立っている夏が尋ねました。

「 … 読めない」

「ははは」


船の上で書いたはがきの文字は、くちゃくちゃで解読するのに苦労します。

「夏、春子、アキ、夏!」

夏が2回出て来たので、春子が吹出しました。

「 … ケープタウンは真夏です。フリースいらねえ」

大笑いする一同。

「 … それから、春子、お誕生日おめでとう」

夏もアキも忠兵衛のはがきで春子の誕生日を思い出しました。

… それももうすでに過ぎています。

「じぇじぇ、すっかり忘れてた。さすが、忠兵衛さんだ」

「何かプレゼント … 」


アキが申し訳なさそうに母の顔を見ました。

「いいよ、別に」

「ミサンガしかねえけど」

「もう、もらった … 勉さんと大吉さんから」


両腕をまくって見せました。

「それより、アキさ … 」

春子は思わせぶりにもう1枚、旅客機の写真の絵葉書を取り出しました。

「えっ?」

絵葉書を受け取り、差出人の名前を見たアキ。

「じぇじぇ、じぇじぇじぇじぇじぇっ!」

「ふう、ふっふ!」


冷やかしの声を上げた春子は夏に耳打ちしました。

「種市君から」

「やったあ!!」


… … … … …

『天野、元気か?

自分は今、ほとんど休みなく働いてる。

滑走路の土台を造ってる。

ここから国際線が飛び立つと思うと、身が引き締まる思いだ。

天野も立派な南部ダイバーになれ。』

… … … … …

潜水土木科準備室。

「さすが先輩らしい直球メッセージだ」

アキは種市からの絵葉書をユイにも見せました。

「ユイちゃんには?」

アキに葉書を返しながら、興味がなさそうに答えました。

「届いてない」

優越感を感じるアキでしたが …

「あ、でも、メールは毎晩してるよ」

「 … 聞かなきゃよかった」

悲しいかな、種市君とユイの遠距離恋愛は順調に進んでいました … それが現実です。


… … … … …

「それよりさ、お母さん何か言ってなかった? 水口さんのことで」

「何も言ってない」


一気にトーンダウンしているアキでした。

「 … っていうか、あの人本当にスカウトマンなのかな?」

「信じてないんだ?」


ユイは不満そうな顔をしました。

「そういう訳じゃないけど … 」

… … … … …

当の水口は、リアスの指定席でいつものように琥珀を磨いていました。

ひとりきりで店番をしていた美寿々はカウンターから出て、隣の席に座って水口のことを見つめています。

「タクちゃんは、車持ってる人?」

「いや、免許は持ってるけど … 」

「うそ、じゃあ、あたしと駆け落ちしない?」


どういう脈絡があるのだろうと水口は思いました。

美寿々はしなだれかかりながら言いました。

「あたしの車、使っていいから … シャコタンだけど」

「いや、でも俺ここ好きだし … 」


それでメゲルような美寿々ではありません。

「じゃあ、あたしと同棲しない? あたしの車、乗っていいから … シャコタンだけど」

… … … … …

ふたたび準備室。

「ねえ、アキちゃん、もし、もしもだよ」

「うん」

「もし、万が一、ふたりでデビューしないかって言われたらどうする?」

「ふたり?」


アキにはユイの言っていることの意味がすぐにはわかりませんでした。

「潮騒のメモリーズだよ」

「じぇじぇじぇじぇっ!」


ユイは唇に指を当てて、アキを静かにさせました。

「ごめん … でも、それはねえべ」

アキは潜水道具の手入れをしながら答えました。

「それしか理由ないと思うの!

私ひとりだったら、身分なんか偽ったりしないで、直接声掛ければいいと思うの … 実際、連絡先書いて渡したんだよ、でも何も言って来ない

…ってことはさ、私ひとりじゃダメなんだよ、アキちゃんも一緒じゃないと」

たしかにアキにも思い当たる節がないわけじゃありませんでした。


『まだ17才だろ? まだまだ知らない世界があるわけじゃんか … 君自身、無限の可能性を秘めてるわけじゃんか?』

だけど、だからって、芸能界なんて … 第一、ママが、春子が許してくれるわけがない。

… … … … …

「楽しかったって、言ってたよね?」

「え?」

「お座敷列車、歌ったり、踊ったり、そういうの … 」


アキはうなずきました。

「でも、仕事にできるとは思えねえ」

「 … そうかな、海女さんとそんなに変わんないじゃん」

「いや違う、ぜんぜん違う!」


アキが強く否定したので、ユイは少し戸惑いの表情を見せました。

「おら、ユイちゃんとは違う … 潜りたくて潜ったり、歌いたくて歌ったり、それしかできねえ … プロじゃねえから、自分のためにしかできねえ

… お座敷列車は、あれはあれでいい思い出にしてえから … ごめんっ」


… … … … …

夕食を食べながら、アキは今日のユイの言葉やお座敷列車でのことを思いを返していて … すっかり箸が止まっていました。

「アキ!」

春子に呼ばれて、ようやく我に戻りました。

「食べないなら、それちょうだい」

まだ手をつけていないハンバーグを取られそうになって、急いで手で覆いました。

「だったら、早く食べなさい!」

その時、玄関の扉が思い切りよく開いて、長内夫妻が入ってきました。

「春ちゃん、春ちゃん、夏ばっぱは?」

緊急の用事か、かつ枝はいつになく慌てています。

夏は今日はスナックの出番です。

「さっきまで、銀行の人が来ててよ、『海女カフェ』の話で」

組合長も興奮気味です。

ふたりとも勝手知ったる他人の家で、どんどん上がってきて食卓に座りました。

「銀行?」

「2千万、融資するってよお!」


満面の笑顔のふたり。

「『海女カフェ』作れるぞ、アキ!」

かつ枝はアキの両手を握って何度も何度も振りました。

「じぇじぇじぇじぇ!」

… … … … …

アキが歓喜に包まれている頃。

勉さんの琥珀採掘場に近づく人影がありました。坑道内では水口がひとり作業しています。

人の気配に振り向くと、そこに … ユイでした。

「おおっ、こんばんは … 」

ユイは切羽詰ったような顔で水口のことを見つめていました。


1の2面でコイン集めるとは …

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2013年06月02日 (日) | 編集 |
さて、次週の「あまちゃん」は …

アキ(能年玲奈)が母の春子(小泉今日子)と北三陸にやってきて、ちょうど一年が経った。

東京にいた頃とは見違えるほど生き生きと輝き、町の人々にも愛されているアキ。春子もまた、この町で新たな居場所を見つけていた。

2億4千万かかりますね

アキは、夏(宮本信子)ら海女たちとともに、海女カフェのオープンに向けて奔走し、後輩となる新人海女も集まる。

いらっしゃいませ!

じぇじぇじぇじぇ


漁協をリフォームして生まれた海女カフェは、町の新しい観光名所となって連日大盛況。アキは海女としても着実に成長していた。

デビューしたいんです!

一方、親友のユイ(橋本愛)は、アイドルを目指して上京することを心に決めていた。そのことには、勉(塩見三省)の弟子の水口(松田龍平)が深く関係していた。

今すぐ出ていけ!

俺とユイは東京へ行く


アキも一緒に上京することを勧められるが、大好きな北三陸を離れたくないと断る。しかしユイの真剣な思いを目の当たりにし、ユイを応援することに。

家出?

芸能界とかアイドルとか、チャラチャラしたの、ママ絶対許さないからね


ところが、東京に行ってオーディションを受けたいユイは、突然、家出してしまう。町が大騒ぎの中、アキは必死に隠そうとするが、ついにユイや水口と一緒にいることがばれてしまい…。

ま、やってみないとわかんないですけどね ふっ

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2013年06月01日 (土) | 編集 |
第54話

2009年4月、アキは高校3年生になりました。

お座敷列車の効果でアキとユイちゃんの人気は更に絶大なものになっていました。

今やふたりは岩手じゃ知らない者はいないカリスマ女子高生なのです。


北三陸駅の構内に置かれた『潮騒のメモリーズ』の等身大のパネルの前で記念撮影をするファンたち。

ここに来れば、ふたりに逢えると思って訪れる人も多いのですが …

「ええ、じゃあ会えないんですか?」

「もともと期間限定ユニットだからね」

「ユイちゃんなら毎週土曜日1日駅長やってるから会えるよ」


大吉たちもそうファンに説明するしかありません。

「アキちゃんは?」

言葉に詰まる大吉。

そうなんです、春子との約束を守り、アキはPR活動を辞めて、普通の女子高生に戻ったのです。

普通科じゃなくて、潜水土木科ですが …


… … … … …

アキにあこがれて、北三陸高校潜水土木科に8人の女子生徒が入学しました。

「やっぱり無理だよ、天野ぉ、女子の前で授業やったことなんかないのぉ!」


怖気づいた磯野が新入生の待つ教室に入ろうとしません。

下級生の世話係のアキは尻を叩きました。

「おらも女子だべ?!」

「天野なんか女子だと思ったことねえよ!」


… 失礼な言い草です。

しかし、何年もほぼ男子校状態だったのにいきなり8人もの女子生徒を相手にするのは磯野にとっても初めてのことでした。

「酒飲まねば無理だよぉ!」

それはそれでまた別の問題になります。

「大丈夫、先生意外と女子受け良いから!」

根拠のない慰めを言って、この場を切り抜けようとしました。

「 … ほんとに? 臭いとかキモイとか言わない?」

ウソも方便、アキはうなずきました。

「キャラ変えるんだったら、今なんだからね!」

「 … 取りあえず、お姉キャラはNGだ」


扉を開けて、有無を言わさず、磯野の背中を思い切り押しました。

教室に転がり込むように現れた磯野に新入生たちは注目しました。

「おっす、おら担任の磯野 … 『いっそん』って呼んでけろ!」

以前、聞いたような磯野の自己紹介の途中でしたが、ひとりの女子生徒が、入口に控えていたアキを見つけて声をあげました。

「アキちゃんだ!」

「わあっ、やばい!」


黄色い歓声を上げて、アキの周りを囲む女子生徒たち。

「あの、席についてください」

「あ、ゴキブリ!」


ひとりの女子生徒がアキの足元を指さしました。

「じぇじぇっ!」

「やばいっ、“じぇじぇ”出たあ!」

「キャラじゃないんだ、ほんとに“じぇじぇ”って言うんだ」

「ウケル~!」


… … … … …

その頃、ユイは …

こちらも、北三陸駅で数名のファンに囲まれてサインや握手をせがまれていました。

その様子を物陰からビデオに収めている水口、ユイが気づくと慌ててカメラをしまって、足早に立ち去りました。

… … … … …

アキの部屋。

水口が口にした『太巻』という名前が気になっているユイは、アキにそのことを話しました。

「ふとまき?」

ユイは雑誌を開いてアキに見せます。

「芸能プロダクション『ハートフル』代表取締役、荒巻太一氏。昨年はアイドルグループ『アメ横女子学園芸能コース』を世に送り出し、自ら作詞したデビュー曲『涙目セプテンバー』は60万枚のセールスを記録、セカンドシングル『空回りオクトーバー』のカップリング『肌寒いノベンバー』はドラマの主題歌にもなり『暦の上ではディセンバー』で初のミリオンを達成、2009年は御徒町に『アイドルカフェ太巻』をオープンし … 」

最後まで音読しそうな勢いのアキをユイは止めました。

「全部読まなくてもピンとくるでしょ?」

「何が?」


少し、イラッときながらユイはアキに説明しました。

「水口さんが何故、太巻さんの名前を口にしたのか?」

「 … わがんねえ」

「スカウトマンだからよ!」


掴み掛らんばかりのユイですが、それでもアキはまだピンときません。

「スカウトマン?」

「そう、荒巻太一の事務所の社員。私たちをスカウトしに来たのよ」


アキは思わず吹き出してしまいました。

「いやいや、あの人は勉さんの弟子の琥珀マニアだべ?」

「その設定自体、怪しいじゃん」

「 … 勉さんも?」

「勉さんは琥珀掘ってりゃいいのよ、水口さんよ。私たちに近づくために勉さんを利用したんじゃない?」

「へへへ、そんなバカな」


アキはユイの言うことを鵜呑みにできません。

「あの人、こんな風にも言ってたよ …

『まあ、ふたりともキャラは良いので、問題は歌ですね、歌唱力が … 』」

「そりゃ、怪しすぎっぺ!」


歌唱力にも触れられたことを知った途端、アキはムキになりました。

「でしょ、でしょ?」

… … … … …

「どうする?」

「 … どうもしねえ」


拍子抜けするユイ。

「もし水口さんがスカウトマンだとしても、おらには関係ねえ」

ベッドに腰かけ直すアキ。

ユイは少しさみしそうな顔を見せて、机に置いてあったふたりのスナップ写真を手に取りました。

「そっか、お座敷列車で引退したんだもんね」

「海女は続ける、今年の夏は海女に専念する」

「もったいないとは思わない?」

「もともとおら、芸能界だのアイドルだの興味ねえがら、でも … 」


わずかな期待に身を乗り出すユイ、アキは立ち上がって、あの日、地元の人たちと写した記念写真を見ながら言いました。

「 … 楽しがったなあ」

それは、アキにとっても、素敵な思い出でした。

歌って踊って、拍手と歓声に包まれたこと … すべてひっくるめて忘れられない出来事でした。


… … … … …

「『潮騒のメモリー』のメモリーだな」

まだひと月も経っていませんが … 漁協の珠子がアキにそう言いました。

今日は、海女クラブのミーティングだそうです。

夏をはじめ。長内夫妻、弥生、美寿々 … 海女クラブの面々が揃っています。

「あのな、素朴で愛嬌たっぷりのおばちゃんたちが酒の力借りて、どす黒い欲望さらけだす会合さ」

アキにそう説明したかつ枝はすでに結構飲んでいるみたいです。

いや、かつ枝だけでなく、ほぼ皆、赤ら顔 … ミーティングをいう名の飲み会でした。

「かなり下世話な話もするが、いるならいろ、な!」

こちらもかなり酔っている弥生に言われてアキはうなずきました。

「あ、お邪魔してます」

美寿々が連れてきたのでしょう、部外者の水口がチャッカリと座っていました。

「彼はいいべ、無口だし、琥珀にしか興味ねえから」

アキはユイの言っていたことが少し気になりましたが、そのまま席に着きました。

… … … … …

「いいか、とにかくな、今年の夏は空前の海女ブームが到来すると、おらあ踏んでるわけよ」

進行役のかつ枝が熱弁を振るいました。

「大げさじゃねえ、アキがテレビさ出たおかげでな、予約申し込みの電話が1日20件は来るべ」

驚きの声を上げる海女たち。

「4月の段階では異常だべ?」

例年にはあり得ないことなので、組合長も感心しています。

珠子も旅行代理店からツアーを組みたいと問い合わせがあったことを報告をしました。

「『海女と北鉄とまめぶと琥珀と発泡酒と私』みてえなツアーだと」

「いっときのブームに終わらせないためにも、観光名所として恥ずかしくない設備投資を!」

組合長がリーダーの夏に話を振りました。

「ウニ1個500円で浮かれてたら、海女の未来はねえべ」

「その通り!」

「去年の夏もお客増えたっていうのに、おらたちの取り分はナンボ経っても変わんねえ」

「んだんだ」


何だか、少し論点がずれてきました …

弥生がよろよろと立ち上がりました、目が座っています。

「ウニ1個につき漁協さ200円、観光協会も200円取られたら、やってらんねえ!」

「それ搾取しすぎでしょ?」


水口が口を挟むと拍手が起こりました。

「こっちは命がけで潜ってるんだ、100円じゃやってらんない!」

美寿々も立ち上がりました。

「不正だ、絶対不正だあ!」

覚束ない足取りで組合長に迫って行く弥生。

「本性出て来たぞ」

唖然と見つめるアキに珠子が耳打ちしました。

「いやいやいや、海女クラブの運営や維持費もそこから出てるわけだからねえ」

なだめて座らせようとする組合長の首根っこを反対に弥生が押さえつけました。

「ウニの値段を高くするか、おら等の取り分増やすか、ふたつにひとつだ、このズル剥けじじい!」

「いやいやいや、ちょっとこれはな、観光協会に相談せねば … かつ枝、かつ枝!」


弥生にのしかかられて逃げる術のない組合長は元妻に助けを求めました。

しかし、かつ枝はそれは放っておき、高らかに宣言しました。

「あのな、海女の稼ぎはな、海女クラブに還元すべきだべ!」

「まず、金の流れを明確に、儲け話はそれからだ!」


… … … … …

「アキ、アキ、おめえどう思う?」

夏は、一番若いとは言え、れっきとした海女クラブの一員のアキにも意見を求めました。

「どうって、おらまだ1個しか獲ってねえし … 」

「えっ?」

「そうなの、夏の終わりに1個獲っただけなの」


意外な顔をした水口に美寿々が教えました。

「ああ、だからあんなに喜んでたんだ」

… ホームページの動画のことです。

「去年の年収、100円だもんな あっはっははは … 」

弥生に肩を叩かれました。

「陸さいて、皆が潜ってるのを見てる方が多かった … 

それで思ったんだが、海女さんが潜っている間、お客さんがくつろげる場所があったらいいなって」


皆が黙り込んでアキの意見に注目しました。

「待ってる間、意外とヒマだべ? … だから、他になんか食べるもの売ったり」

夏が海の家のようなものかと、尋ねました。

「海の家でもいいが、それだと夏の間だけしか営業できねえから … カフェ?」

… アキの頭の中のどこかにユイに見せられた『アイドルカフェ太巻』の記事のことが残っていたのかもしれません。

「んだ、海が見える眺めのいいカフェがあったら、夏場だけでなく冬場はカップルが来るべ!」

大人たちには思いもよらなかったアイディアです。

「ああ、いくねえ?! … 『海女カフェ』、いいべ?!」

「カフェか … 」


… … … … …

海女クラブは早速、企画書をまとめ、発案者のアキを先頭に観光協会に乗り込みました。

「あれ、アキちゃん?」

アポなしで海女クラブ総員あげての訪問です。

「これ、皆さ回せ!」

珠子が企画書の束をしおりに渡しました。

ちょうど、大吉と吉田の北鉄コンビも揃っていたのは海女クラブにしてみれば好都合でした。

全員に企画書が行き渡ったところでアキは切り出しました。

「袖が浜に海女クラブが運営する『海女カフェ』を作りましょう!」

「んだ!」


突然のことに動揺をかくせない保たち。

「カ、カ、カフェ?」

傍にあった飲みかけのカフェオレのブリックパックに目をつけたアキは、おもむろに手にするとカフェオレの『オレ』の字をマジックで消して、その上に『海女』と書き加えました。

そして、保のライフワーク(?)のジオラマの袖が浜の辺りに勢いよくそれを置きました。

海女たちからあがる歓声。

「ちょっとちょっと、そんな簡単に作りましょうって言うけど、アキちゃん … 現実的に金が!

大吉は指で輪を作って突き出しました。

しかし、かつ枝も後には引きません。アキの腕を取って主張しました。

「何言ってるんだ、いいか? … アキとユイちゃんで儲けた金は、半分は北鉄のもんだが、半分は海女クラブのもんだべ?」

「んだんだ! ミサンガだって売れてるんだべ?」


弥生が怖い顔して、保に詰め寄って行きます。

「ナンボ儲かった?」

「いや … 」


答えに困っている保。

「おい、大吉!」

後ろに立っていた大吉めがけて体当たりしました。

「いや、夏ばっぱ?」

大吉はよろけながら、助けを求めるように見ましたが、夏も厳しい顔つきで迫ってきます。

「夏までに何らかの回答がなければ、今年は潜んねえぞ!」

「んだんだ!」

「来たあ … 切り札、海女ストライキだよ、これ」


海女たちは皆で肩を組んで連呼します。

「海女カッフェ、海女カッフェ!」

… … … … …

一方、喫茶リアス。

客は水口ひとり、指定席に座って琥珀を磨いています。

「アキちゃんは?」

1日駅長のユイが休憩に入ってきました。

「ああ今日はね、観光協会」

春子が答えました。

「『海女カフェ』作るんだってさ」

その場にいて事情を知っている水口がユイに教えました。

軽く会釈をしながら、ユイの脳裏に水口の言葉の一節がよぎりました。

『母親のガードが固くて … ええ、訛っている方の』

「 … お座敷列車終わったばかりなのに落ち着かない子だよね … でも、ユイちゃんも大変だよね?」

「えっ?」

「相変わらず、すごい人気じゃん」


春子が顎で指した方向、店の窓の外から何人もがユイのことを覗いていました。

「ああ … でも、今だけですから」

気のない返事をしたユイ。

「今だけ?」

「こんなヘンピな町のしかも現役女子高生っていう希少価値込の人気ですから … 東京行ったら、私くらいのレベル、ざらにいますから」


もともと冷めたような雰囲気がある子でしたが、今日はいつもとは違う、春子はユイのことが気になりました。

「ユイちゃん、どうした?」

「別に … 」


… … … … …

しばらく黙り込んでいたユイが突然 …

「っていうか、何なんですかあ?!」

いきなりカウンターを叩いて立ち上がりました。

顔を見合わせる春子と水口。

「こないだから、隠れてコソコソ写真撮ったり、急に話しかけたり!」

つかつかと水口の前に立ちはだかるユイ。

「 … 何が目的なんですか?!」

水口琢磨、32歳、乙女座 … この男の存在が、その後のアキとユイの運命を左右することをまだ誰も知りません。


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