NHK朝ドラ『花子とアン』『ごちそうさん』『あまちゃん』…ストーリーを勝手に解釈&裏読み … ほぼネタバレ…
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2013年08月31日 (土) | 編集 |
第132話

< おらの初主演映画『潮騒のメモリー~母娘の島~』がついに完成しました >

北三陸駅では、公開記念と称して、アキが歌う主題歌とミサンガの抱き合わせ … セット販売をはじめました。

「すごいよ、アキちゃん、バンバン売れてる … だって、夏ばっぱなんてウニ丼と一緒に車内販売してるんだもの」

「じぇじぇじぇ、夏ばっぱ、そんなに良くなったのか?」

「うん、調子いい時は電車さ乗ってる」


電話でユイの報告を聴いて、アキはCDの売れ行きよりも、夏がそれだけ回復したことをうれしく思いました。

「あ、チケット届いた?」

「うん、ありがとうね」


ユイの手には『天野アキ GMT5 ファーストコンサート』と書かれたチケットがありました。

「へへへ 今日もレッスンなんだ … 誰よりもユイちゃんに観てほしいから …

ぜってえ来いよ!」

「ふふふ うん、ぜってえ行く!」

< そうなんです!

実は、映画の公開に合わせて、なんと古巣の東京EDOシアターでコンサート開くことになったんです!

1年半でようやくあのステージさ立てるんです!

しかも … 昔の仲間と一緒に >


レッスンのために奈落に集まったアキとGMT5。

少女たちは再会を、そして同じステージに立てることに喜びあいました。

「懐かしかね ~ アキちゃん、振り覚えとう?」

「 … たぶん」


不安はあったものの、アキの体は覚えていました。

曲がかかると、自然と皆に後れを取ることなくダンスを合わせることができました。

コンサートの開催は、2011年3月12日 …

… … … … …

♪地元に帰ろう 地元で会おう …

< あの日、客席がら皆のまぶしい姿を見て、いつかおらもここで歌いでえってひそかに心に誓ってました >

アキはハートフルを解雇されたばかりの頃のことを思い返していました。

< そのステージに今、天野アキの頭文字が … ふたつの『A』が飾られている >

コンサートの準備が整ったステージをアキと水口は客席から見ていました。

「とうとう来たね … 」

「うん … とうとうって程でもねえが」

「いやいや ~ 中々でしょ … 1回クビになってるんだもん」


水口にそう言われて、アキは改めてうなずきました。

「 … ユイちゃん、明日来るんだって?」

「んだ、8時に上野さ着くって」


その時、ステージの『A』の電飾に明かりが灯って … アキが歓声をあげました。

「うわ~ 」

「太巻さんが作ってくれたんだよ」


… … … … …

< ライブの準備をしている間に、こんなこともありました … >

純喫茶・アイドル、鈴鹿ひろ美とテーブルを挟んで座っている春子と正宗。

「 … もう一度、よろしいですか?」

聞き返した春子、ひろ美はひとつため息をついてから答えました。

「ですから、スリーJプロダクションに所属させていただきたいんです」

「『鈴鹿ひろみ』があ?!」


驚いた春子は思わず大声を上げてしまいました。

その声で、春子たちの連れが『鈴鹿ひろ美』だったことに甲斐は気づきました。

「わっ、鈴鹿ひろ美!!」

「はい、鈴鹿ひろ美 … つまり、私を」


余りにも想定外の申し出に春子は正宗の顔を見ました。

「 … どういうこと?」

「君が分からないこと、僕に聞いても分かるわけないだろ … 」


ハートフルから独立して、個人事務所でやってきたのだが、限界を感じて … ずっと、事務所を探していたと、ひろ美は話しました。

「誰かいい人いないかしらって」

「 … 私、いい人じゃないですよ?」

「そこがいいのよ!

あなた、押しが強いでしょ? … 業界の常識や悪しき風習に正面から、こう …

“いてまえ!”みたいな、“いてこませ!”みたいな、“いったらんかい!”みたいな … 」


ひろ美の言葉にいちいちうなずく正宗。

「私、関西人じゃないですよ?」

「 … 娘をアイドルにしたじゃない。

長いものにも、太いものにも巻かれず … ご自分の夢を娘に託して、それを貫いて … ご立派よ!」


ひろ美の勢いに押され気味の春子ですが、一番気になることを尋ねました。

「太巻さんはご存じなんですか?」

「いいの、彼は … 私と同じで限界感じてるはずだから」


ひろ美は少し照れるように笑うと続けました。

「夫としてはいいけれど、仕事のパートナーとしてはとっくに切れてるの … もう無理」

完全にあきらめた顔です。

太巻がひろ美の夫? … 春子も正宗も、そしてサインをもらおうと後ろでスタンバイしていた甲斐も、衝撃の事実を聞いて … 開いた口がふさがらない … 状態でした。

「よろしくお願いします!」

… … … … …

話しは、とんとん拍子に進み、ひろ美は、スリーJプロダクションの所属することに決まりました。

「鈴鹿さんがママの事務所、所属するって … おらの後輩になるのか、先輩になるのか?」

表参道を春子と並んで歩いていたアキがそう尋ねました。

「どっちにしろ、タメ口なんでしょ?」

「んだな、どっちでもいいな」

「そうだよ … どっちにしろ、3年前には考えもしなかったことになってんだから」


春子は、ふと足を止めました。

「 … ママ?」

辺りの景色を懐かしそうに見渡す春子。

「ここに立っていたことある、ママ … 」

横断歩道を指して、その前に立ちました。

「ここでね、信号待ってると … スカウトマンに声かけられるって噂聞いて、朝から晩までここに立っていたの」

精一杯のおしゃれをして、心細く立っていた若い頃の自分を思い出して … 懐かしさや切なさがこみ上げて来る春子でした。

「 … ありがとうね、アキ」

「えっ?」

「ずっと、後悔してた … 家出して東京に出てきて、アイドルにあこがれて …

でも、今は違う … 全部よかったと思ってる。

パパと知り合って、アキが生まれて、そのアキが海女になって、アイドルになって … 

おかげでママ、鈴鹿さんと仲直りできて、所属事務所の社長だよ!

なあにこれ、何? ~ 何かオセロのコマがいっぺんにひっくり返っちゃった感じ」


うなずくアキ。

「だから … ありがとうね、アキ」

「へへへ こっぱずかしい」

「ちゃんと言ったからね、ありがとうって … 忘れないでよ」

「うん … あとはパパだけだな。

どうするの? ヨリ戻すのか? … おらどっちでもいいぞ、一緒に暮らしてるし」

「どっちでもいいなら ~ も・ど・そ・う … かな?」

「じぇじぇっ、やった!」


… … … … …

2011年3月11日 午前11:00 ライブ前日 …

東京EDOシアターのステージでは、太巻を前にして明日のライブのリハーサルが行われていました。

♪潮騒のメモリー 17才は寄せては返す 波のように激しく

「さあ、盛り上がって行くよ、ここから!」

シアターの楽屋口を出た外では、ヒビキ一郎を中心としたファンたちが応援の練習に励んでいました。

「あの、店の裏口なんで、ちょっと静かにしてください」

無頼鮨の真正面でもある場所なので、種市が注意しましたが、一郎たちは聞く耳を持ちません。

「ハイ! ハイ! ハイ! ハイ!」

激しく腕を何度も振り上げる動作に一郎の肩がいやな音を立てました。

「あっ、痛い痛い痛い … 」

オタクの輪を離れた一郎、肩を脱臼していました。

「大丈夫か?」

ここに屋台の店を開いていた小百合が声を掛けました。

「ヒビキさん、まめぶ食うか?」

「いらねえよ!」

「歳なんだから、いつまでも無理してアイドル追っかけなくても … 」

「歳とか関係ねいし、アイドルが存在する限り追いかけるのが、男でしょ!」


小百合にたしなめられても、相変わらずの一郎節。

オタクたちから歓声が上がりました。

… … … … …

「うるせえなあ」

店の中で顔をしかめる梅頭、何故か謝る種市。

「 … 種、お前明日休むか?」

「えっ、いやいや、でも土曜日だし … 自分がいねえと」

「自分がいても、たいして変わんねえよ … いいから休め」


アキのステージを見に行かせてあげようという親心でした。

そこへ河島が店に顔を出しました。

「大将、明日イベントあるんで、握り30人前よろしくで」

「30人前 … 」


顔を見合わせる梅頭と種市。

「 … 梅さん」

ふっと、何ともいえない笑顔を返す梅頭。

… … … … …

リアス。

明日のコンサートのため、上京の支度を整えたユイが列車が出る時間を待っていました。

「気ぃつけろよ、東京はキャッツが多いっていうからよ」

「キャッツ?」


磯野の言った意味がユイにはよく分かりませんでした。

「キャッツ・セールスだべ?」

大吉が代わって答えました。

「劇団四季じゃねえぞ」

この男たちの話は、本気なのか冗談なのか …

「んだ、モデルになりませんかって言われたら、だいたい錦糸町のキャバレーに連れて行かれっからね」

吉田の話、しほりの怖がりかたが余りにもわざとらしかったので、苦笑いのユイ。

「今日、夏さんは?」

夏の姿が見えないので、気にした勉さんがユイに尋ねました。

「あ、休むって、ちょっとしんどいから」

「じぇ、朝いつものようにウニ丼作ってたが … 」


… … … … …

「おい、夏ばっぱ調子悪いってか?」

心配した組合長が天野家を訪れると、夏の部屋からかつ枝が静かに出てきました。

「今、寝たとこだ、起こすな … 」

部屋を覗くと、夏はぐっすりと眠っています。

「たまげたなあ」

「 … 疲れたんだべ」


… … … … …

「心配だな、あとで顔出すか」

「んだね、何つっても、ひとり暮らしだもんね ~ 」


夏を心配する美寿々と弥生。

「地震多いですもんね、最近」

少し不安げなしほり。

「んだんだ、一昨日なんかエライ揺れた … おらとこのマネキン、バタバタ倒れたもんなあ」

「おらの作ったジオラマは無事でしたよ」


今野にどうでもいいことを自慢した保。

… … … … …

「あ、まだいたんだ」

店に入ってきたヒロシ、ユイは腰を上げました。

「うん、そろそろ行く」

「よし、汽車出すか」


席を立つ大吉と吉田。

「あ、これ西新宿のカレー屋のサービス券 … あと1枚あれば、カレー1杯タダで食えるから」

ヒロシがユイに差し出したのは、3年前、東京に帰ることになったアキに渡して、そのあと北三陸に残ることになったので、返されたものでした。

「この店もうないや … ネットで調べたら、とっくに潰れてた。

でも、ありがとう」


そう言うと、ユイはサービス券の束を受け取りました。

… … … … …

店の外に出ると、ちょうど功とよしえに出くわしました。

「やっぱり会えた」

「ちょうど病院にお薬もらいに行くとこだったのよ」

「ユイ、気をつけろよ … まあ、アキちゃんいるから心配ないが」


ユイを見送るためにリアスにいた全員が駅舎に出てきていました。

「なんか嫌な感じ … 皆集まっちゃって」

照れくさそうなユイの言葉に笑う一同。

「元気でな、ユイちゃん」

まるで、長い別れになるような挨拶をした勉さんにユイは明るく答えました。

「やめてよ、帰ってくるんだから … 水曜日にはバイト入れてるし」

「その割には荷物大きいですね … 」


誰もが思っていて口にしなかったことに触れる吉田。

「つらくなったら、いつでも帰ってくるんだよ」

ユイの頭を撫でた美寿々。

「楽しくても、水曜日には帰ります」

皆に見送られ、ユイは改札を抜けてホームへと向かいました。

< ユイちゃんが本当に帰ってくるつもりだったのか、それとも東京で暮らす覚悟だったのか … それは、誰にもわかりません >

… … … … …

EDOシアターの談話室で太巻、河島、水口の3人が食べているのは … 小百合が作ったまめぶ汁でした。

「味が足りなかったら、七味かけてください」

「甘いかしょっぱいか分かんないのに、辛いの入れちゃうの?」


小百合に訪ねた河島。

「あ、美味い!」

声を上げたのは太巻です。

「あらら、もうこの人はまめぶの虜だ ~ 」

うれしそうにそう言った小百合は、鍋を抱えて奈落へと降りて行きました。

「だめだ、この味を表現する言葉がない … 」

そう言った河島をはじめ、誰も箸を休めずに食べ続けているのが不思議です。

… … … … …

「社長、天野のことでは、何とお礼を言ったらいいか … 」

突然畏まった水口に太巻は言いました。

「お前に礼を言われる筋合いはない」

「 … 今夜、天野の親友が上京します」

「えっ、足立ユイちゃん?」

「はい」


河島もユイのことは知っていました。

「よかったら、会ってみていただけますか?」

「わかった … 紹介して」


快く了解してくれた太巻。

「はい」

… ユイとの約束を水口は忘れていませんでした。

… … … … …

奈落でも小百合はアキたちにまめぶ汁をふるまっていました。

「ごちそうさま」

「はい … あら、ミサンガまだしてる」


小百合は、アキの左手に残っている2本のミサンガに目を止めました。

「んだ、切れそうで切れねえ」

「明日、切るんよ、明日」


真奈がそう言うと、喜屋武が立ち上がりました。

「明日のライブで一気に切れるはずよ ~ 」

「んだな ~ がんばっぺっ!」


… … … … …

「出発進行!」

車掌の大吉の合図でドアが閉まりました

今度こそ東京へ行けるんだ … ユイを乗せた列車が北三陸駅をゆっくりと走り出しました。

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2013年08月30日 (金) | 編集 |
第131話

その日、アキ、春子、水口の3人は、レコーディングスタジオを訪れました。

「おはようございます、よろしくお願いします」

準備万端、待ち構えていたのは太巻です。

「来て早々悪いけど、1回聴いてくれる?」

河島から歌詞カードを渡されたアキ、タイトルはもちろん『潮騒のメモリー』です。

< 2010年の暮れ、主題歌のレコーディングに呼ばれました >

… … … … …

ミキシングルームに流れた『潮騒のメモリー』のオケは、前作の雰囲気を踏襲しながらも新しいアレンジを加えたものでした。

「どうですか?」

ミキサーの前に座っている太巻が振り向いて感想を聞きました。

「いいんじゃないかしら」

「社長じゃなくて、本人に聞いたんです」

「大したもんだと思います」

「 … す、すみません、今風なアレンジにしていただいて」


慌ててフォローした水口でした。

取りあえず、1回歌ってみることになりました。

… … … … …

「あ~ テステス」

アキはブースの中から、OKサインを出しました。

ほぼ前作のままの印象的なイントロが流れ始めました。

♪来てよ その火を 飛び越えて 砂に書いた アイ ミス ユー

目を閉じて聴いていた春子、ふと目を開けてブースの中のアキを見ました。

その瞬間、歌っているアキが若かりし頃の自分の姿と重なったのです。

♪北へ帰るの 誰にも会わずに 低気圧に乗って 北へ向かうわ

しかし、それは幻のように、瞬く間に消えてしまいました。

「お疲れ様でした … ちょっと待ってね」

河島が指示を出し、レコーディングは進んでいきました。

太巻といえば、ほとんど任せっきりで携帯をいじっているだけです。

… … … … …

1時間後 … テイク5 …

< これだけ大人がいても、やっぱり一番気なるのは、この人の反応なんですが … >

アキは春子の顔色を窺いました。

難しい顔をして、再生されているアキの歌を聴いています。

< はあ ~ 聞くまでもねえ感じです >

「 … どうですかね?」


河島が感想を尋ねましたが、携帯に気を取られているのか、太巻からは何も返ってきません。

「今のところ、テイク3の前半と中盤はテイク4がよかったかなと思うんですが … 」

「うん、いいんじゃないですか?」


そう言いながらも、一向に携帯を手放さない太巻は時計を確認しました。

黙って控えていた春子がおもむろに立ち上がって、太巻の横に行きました。

「ちょっと、何なのよ? さっきから …

どうでもいいの? 早く帰りたいの? 次に何か入ってるの?

ふざけないで!」


水口が、一回座らせようとしましたが、春子は構わずに続けました。

「初主演映画の主題歌なのよ、一生に一度のことなのよ。

アキにとっても人生を左右する大事な曲なんです … 真面目にやって」


それは、いつものように怒り散らすスケバン春子ではなく、母の顔でした。

… … … … …

「それじゃあ、もう一遍、歌ってみましょうか?」

太巻の言葉にうなずくアキ。

「アキちゃんじゃなくて、社長」

「えっ?」


春子は眉をひそめました。

「この歌、歌えるでしょ?」

吹き出しながら、春子は答えました。

「冗談じゃない? 何で私が … 」

「冗談じゃないですよ、本気ですよ。

歌唱指導は、我々もできますけど … この歌のお手本示せるのは、あなただけでしょ?」


太巻は平然とした顔でそう言いました。

「いやいやいや、太巻さん、さすがにそれは … 」

事情を全く知らない河島が口を挟んだ時、アキが立ち上がりました。

「おらも聴ぎでえ!

元々おらの原点は、ママが歌った『潮騒のメモリー』だ。

… ママの歌聞けば、何かつかめるかしんねえべ?」


アキの言葉に春子は黙り込んでしまいました。

太巻は「どうぞ」というように掌をブースの方へ翻しました。

春子を見つめる水口。

決心した春子は、ブースの中へと入って行きました …

そして、ヘッドフォンをつけてマイクの前に立ちました。

「アキ、1回だけだからね … 失敗してもやり直さないから」

うなずくアキ。

「 … お願いします」

春子の合図でオケが流れ始めました。

♪来てよ その火を 飛び越えて 砂に書いた アイ ミス ユー

… … … … …

時を同じくして、スタジオにとある人物が到着しました。

エレベーターから降りてきたのは … 鈴鹿ひろ美でした。

… … … … …

♪北へ帰るの 誰にも会わずに 低気圧に乗って 北へ向かうわ

春子の歌から何かを得ようと真剣なまなざしのアキ。

「似てるな ~ 鈴鹿ひろ美、そっくり!」

一番驚いているのは河島でした。

「えっ、河島さん、ご存じなかったんですか?」

ハートフルでもこの事実を知っているのは太巻の他は元社員の水口だけだったのです。

♪潮騒のメモリー 17才は寄せては返す 波のように激しく

… … … … …

「おはよう!」

「じぇじぇっ!」


水口は慌てました … ミキシングルームに突然、鈴鹿ひろ美が入ってきたからです。

「ど、どうしよう … やばいっ」

ミキサーを操作しようとする水口を止めたのは、太巻でした。

「いいんだ、水口 … 俺が呼んだんだ」

「えっ?」


春子の怒りを買ったメールの相手は、ひろみだったのでしょうか …

ひろ美は、ブース内で歌っているのが春子だと気づくと驚いた顔をしてサングラスを外しました。

♪来てよ その火を 飛び越えて 砂に書いた アイ ミス ユー

「 … ずっと打ち明けられないまま、時間が経ってしまいました。

もう、もうとっくにご存じだと思うんですが …

歌 … 歌を差し替えてしまいました」


20年経ったあとの告白 … 無言のままのひろ美。

ブースの中の春子へと目をやる一同。

… 春子の歌が途中で止まりました。

ひろ美がいることに気づいたのです。

… … … … …

オケを止める太巻。

ブースの中と外で見つめ合う春子とひろ美。

ひろ美は目をそらしてソファーに腰を下ろしました。

「 … どうして今更?」

太巻に尋ねる、ひろ美。

「分かりません … ダマし通すこともできましたし、鈴鹿さんがダマされ続けることを覚悟してたことも知っています。

だから、墓場まで持って行こうと思っていました。

… この子に会うまでは」


アキの顔を見た太巻。

「じぇっ … お、おらが?」

「そうだよ。

お前が天野をスカウトして、俺に会わせるからこういうことになったんだ」

「あ、すいません … 」


太巻にそう言われた水口は頭を下げました。

「っていうか、鈴鹿さんは知ってたんですか?」

「 … 知ってましたよね?」


アキは、ひろ美が春子と初めて会った日のことを思い出していました。

『素敵な声だわ … 私と似ている気がする、声が …

ねえ、天野さん似てるわよね?』

… あの日、ひろ美は執拗に自分と春子の声が似ていると拘っていました …

「いつからですか?」

「いつ?

はあ … いつかしら?

ずうっと、前のような気もするし … 今のようなきもするし … 」


後は言葉にならない、ひろ美でした。

… … … … …

外で話を聞いていた春子がミキシングルームに戻ってきました。

「あ、私だ … 」

無邪気におどけたひろ美は春子のことを指差しました。

うつむく太巻。

ひろ美は真顔に戻って、ドアの前に佇む春子に、ゆっくりと近づきました。

「ごめんなさいね … 私のせいで表舞台に出られなかったんですよね。

… ごめんなさい」


ひろ美は女優のプライドをかなぐり捨てて、春子に向かって頭を下げました。

「やめてください … そんなんじゃないですから」

困惑している春子。

「俺が君に声を掛けなければ … 申し訳ない、春ちゃん」

「春ちゃん」、あの頃のようにそう呼んだ太巻 … 立ち上がって頭を下げました。

春子の頭の中をひろ美の影武者を務めた日々がフラッシュバックしながら消えていきました。

涙がこみ上げそうになるのを何とか止めて、アキに言いました。

「歌いなさい、アキ … ママ歌ったよ、今度はあんたの番でしょ?

早くっ!」

「 … うん」


一同に見守られ、アキはブースに入って行きました。

… … … … …

ソファーに座った春子、その隣にひろ美 … ふたりは軽く微笑みあって … ブースの中のアキに視線を移しました。

イントロが流れ始めます …

♪来てよ その火を 飛び越えて 砂に書いた アイ ミス ユー

今までのアキの歌とは明らかにどこか違いました。

その歌を目を細めて聴いていた春子がふとつぶやくように言いました。

「 … 感謝しなくちゃ」

「え?」


聞き返すひろ美。

「アキのおかげで … 鈴鹿さんに会えました」

「ふふふ、いい娘さんね」


もう一度微笑みあったふたり。

♪ … マーメイド マーメイド 好きよ …

… … … … …

そして、映画は完成、試写会にこぎつけました。

… ラストシーン。

母に別れを告げ、連絡船に乗ったあきが振り返ると海は朝陽に染まっていました。

島を出て行くあきの希望に満ちた旅立ち …

アキが歌う主題歌、エンドロールが流れ始めました。

ひろ美はアキの隣に座り、そして少し離れた席には太巻 … ハンカチを取り出して涙を拭っています。

春子は、アキの後で、その背中を見つめていました。

『潮騒のメモリー~母娘の島~』の完成。

3人が、長い間それぞれが背負ってきた重い何かから解放された瞬間でした。

それは、春子が言ったように … アキのおかげだったのかも知れません。

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2013年08月29日 (木) | 編集 |
第130話

誰もいないマンションに戻った春子、オフィスで予定表を確認すると、慌ただしくスタジオに向かいました。

< ママが北三陸から帰って来た日、『潮騒のメモリー』最終日の撮影が行われていました >

最後の撮影は、病床のひろ美の元にあきが駆けつけてくる … ひろ美がアキの演技を気に入らず、何度も撮り直しましたが、結局うまくいかずに後回しになっていた、あのシーンでした。

… … … … …

「母ちゃん!」

入口の戸を開けて、家に上がってくるあき。

「あき、来てくれたか?」

「うん … でも、すぐ行かねえと、連絡船が出るんだ」


布団から半身を起こすひろ美。

「あの男と一緒に行くのか?」

首を振るあき。

「おら、ひとりで生きていく … 母ちゃんのように強い女になる」

「 … そうか」

「お母ちゃん … 親孝行できなくて、ごめんなさい」


あきを見つめるひろ美。

… … … … …

台本ではここでカットのはずでした … しかし、ひろ美は芝居を終わらせようとしません。

「カットかけますか?」

助監督が小声で確認しましたが、太巻はモニターに見入ったままです。

「ちょっと、待でや … 」

そう言うと、ひろ美は這って布団を抜け出しました。

「続けろ!」

何かを感じて、そのままカメラを回す指示をする太巻。

「もう使えないっすよ … 鈴鹿さん、瀕死の設定だし、まさか出ると思っていないから … 」

上はパジャマ姿のひろ美ですが、下はジャージのままでした。

「逃げろ逃げろ!」

太巻はカメラをパンさせるように指示しました。

よろよろと隣の部屋へ歩き出すひろ美。

台本には載っていないひろ美の行動に戸惑うアキ。

「芝居続けろ、アキちゃん … 」

祈る水口。

アキは立ち上がって、ひろ美の後を追いました。

「母ちゃん、寝てなきゃダメだ、母ちゃん」

タンスの引き出しに手をやるひろ美。

慌てる助監督。

「まさか開けると思っていないから、美術部の備品しか入ってないです。ペンキとか刷毛とか」

「映すな、逃げろ!」


タンスを開けたひろ美は中から、ボロ雑巾のような布を取り出しました。

「この先、つらいことがあったら … これで涙を拭きなさい」

そう言って、ボロ布をアキに手渡しました。

『この先、つれえことがあったら、こいつで涙拭け … そんで、思い出せ。

寒い朝、浜さ出て潜った時のこと … あれよりつれえことは、まずねえから … 』

それは、上京するアキに『北の海女』の手拭を渡しながら、夏がくれた言葉でした。

… … … … …

涙があふれ出したアキは思わず、握りしめたボロ布で拭おうとしました。

「ああ、今でねえバカ! 東京さ行ってからだ」

「母ちゃん、ごめん、母ちゃん」

「あき … 達者でな」


うなずいたアキをひろ美は抱きしめました。

「はい、カット!!」

太巻の声が掛ると、ひろ美はもう一度アキをぎゅっと抱きしめってから、体を離しました。

「お疲れ、アキ! よかったよ」

そう言いながら、ひろ美も涙を拭っています。

「ずりい、ずりいよ、鈴鹿さん」

泣きじゃくるアキ。

「ごめんごめん … あんたの顔見てたら、続けたくなっちゃった」

声をあげて泣くアキがまた手にしたボロ布で涙を拭おうとして … ひろ美に止められました。

その様子をモニターで見つめる太巻、そして水口 … 涙をこらえる男ふたり。

… … … … …

撮影後のチェック。

「あ~あ、タオル見えちゃってるし … 」

「タオルから逃げるとジャージが」


予定外のことだったので、やはり色々要らないものまで映っていました。

「これ使えねえな … 鈴鹿さん、もう一度撮り直しません?」

「もう無理、できません」


答えが分かっていて尋ねた太巻でした。

「私の芝居なんかどうでもいいのよ。

彼女のリアクションさえ撮れてれば … ここ!」


ひろ美はモニターに映ったアキを指差しました。

「 … ほんじゃ、オッケイ!」

「ということは、ただいまのカットをもちまして … 天野アキさん、全編オールアップです!」


太巻のOKを受けて、助監督の声がスタジオに響きました。

… … … … …

スタッフからの盛大な拍手。

「お疲れ様でした」

アキは監督の太巻とひろ美から大きな花束を贈られました。

「ありがとうございます」

「それでは、天野さんからひとこと!」


助監督に促されてアキはマイクの前に立ちました。

「最初は迷惑 … 迷惑ばかりかけてしまって。

もう監督おっかねえし、鈴鹿さんやかましいし、面倒くせえし … ラブシーンやりたくねえし、こんな映画誰が見るんだとか」

「アキちゃん」


このままいつまでも言い続けそうなので、水口はアキにブレーキを掛けました。

「 … でも、よく考えたら、おら … 鈴鹿さんにあこがれて、この『潮騒のメモリー』がやりだぐて、この世界さ入ったので …

だから、私を選んでくれた太巻さんは大したもんだと思います」


一同から笑い声が上がりました。

「一度はポンコツのガラクタ扱いされたおらを拾ってくれて、どうもありがとう」

アキなりに最大級の感謝の意を表現しました。

「それから鈴鹿さんは … 何だべ?

面倒くせえ … 面倒くせえところを直せば、もっといい女優になれると思います」


だんだんアキ節が乗ってきました。

太巻もひろ美も笑って聞いていますが、水口は冷や汗もんです。

「お疲れ様でした ~ 」

これ以上、おかしなことを言いだす前にと打ち切ろうとしました。

… … … … …

ようやくスタジオに到着した春子。

丁度、外に置かれたモニターに持ちきれないほどの花束を抱えたアキが映っているのを目にして足を止めました。

「 … 最後にひとつだけ。

ここさいないけど、おらのママにも …

ママには随分、ブス、ブス言われたけど … それを言って許されるのは、ママだけなので …

大したもんだと思います」


皆に向かってお辞儀すると、また拍手が起こりました。

大きな仕事を終えて、満足そうに微笑むアキ。

< こうして、1ヶ月半に及ぶ撮影は無事終了しました >

… … … … …

スタジオを出る太巻を水口が呼び止めました。

「太巻さん、今回は本当にお世話になりました」

深く頭を下げる水口。

「お疲れさん … 打ち上げ来れるんだろう?」

「はい。

あのう、俺 … 本当に不義理をしてしまいまして … 」

「うんうん、あとはまあ打ち上げで」


歩き出した太巻、まだ伝えることが水口にはありました。

「実は、社長が挨拶したいって来てるんですけど … 」

太巻の目の前に現れた春子は愛想よく頭を下げました。

「天野です~

この度は、娘が大変お世話になりまして、何とお礼を言っていいのか分からないので … いいませんけど」

「うん、そうね … うん、取りあえず打ち上げで」


作り笑顔でこの場を乗り切ろうとする太巻。

「そうね、まだギャラの話しもしてないんでしょ?」

春子は水口に確認しました。

「それも、打ち上げでね … 」

表面上は穏やかに会話が進んでいるように見えます。

「ママ!」

スタジオから出てきたアキが春子のことを見つけました。

「打ち上げ、楽しみにしています」

春子はもう一度笑顔で会釈しました。

「むふふふふ … 打ち上げ行きたくねえ」

… … … … …

「いつ帰ってきた?」

アキは春子に駆け寄りました。

春子が朝イチの新幹線で帰ってきたことを伝えると、アキはまず夏の様子を尋ねました。

「もうだいぶ元気 … 歩くときは杖ついてるけど、今日からウニ丼復活だって」

「じぇじぇじぇ ~ 」

「 … で、もう帰れるの?」

「それが、鈴鹿さんとお寿司食べに行く約束しちゃって … 」

「寿司ぃ?」


春子の顔が急に険しくなりました。

「えっ、ダメ?」

表情を繕って首を振った春子。

「ううん、全然 … そっか、じゃあ行ってらっしゃいな、はい」

楽屋へ着替えに行くアキを見送りました。

「水口君、ちょっと来て」

… … … … …

数時間後の無頼鮨。

「 … という訳で、お母さんにバレたっぽい」

板場でお造りの仕度をしている種市にカウンター席の水口はそう伝えました。

「じぇじぇっ?!」

驚いて、顔をあげ、手が止まったままの種市、梅頭に促されてまた続きを始めました。

「ようやく板場の修行に入ったんだよね … これ初めてのお造り」

そう言いながら、水口の顔を見た梅頭は、もう一度まじまじと見直しました。

「あれ?」

水口のかけている眼鏡の左のレンズに大きくひびが入っていて、ツルはテープで補強してありました。

「いやあ、さずが元スケバン … 追い込み方、ハンパなかった … 」

… … … … …

「水口君、ちょっと来て」

春子は水口を人気のない階段の脇、物置のようになっているスペースに追い込みました。

「えっと、ちょっと眼鏡外してくれる?」

優しく微笑んでそう言われて、よく意味が分からないまま、言う通りにした水口。

その瞬間、春子の右手が伸びてきて水口の顎を掴みました。

「あんたがついててどういうことよ?!」

「 … すいません」


優しさのかけらもない、おっかない顔に変貌した春子。

「ねえ、分かってるよね?

来年の夏まで恋愛禁止って条件で予備校のCM受けたよね? ねえ、水口?」


春子は「水口、水口」と繰り返し言いながら、腹にパンチを数発ブチ込みました。

「でも … 」

「でも、じゃねえんだよ!」


頭を掴まれて思い切り振り下ろされた水口の手から眼鏡が落ちました。

「 … でも、ふたりはプラトニックです」

「ぷらとにっく?」

「神に誓って … あ、じっちゃんの名に懸けてプラトニックで」

「じっちゃんって誰だよ?」


却って春子の怒りを買ったようで、胸倉をつかまれました。

パリッ!

もみ合った拍子に自分で眼鏡を踏んでしまった …

… … … … …

「 … という訳で、来年までプラトニックで頼むわ」

水口にそう言われた種市ですが、申し訳なさそうに答えました。

「自分、キスしちゃいましたけど … 」

「 … 聞いてねえよ」

「よそ見すんな、種!」


正直に話して水口ににらまれ、勝手に手を休めて梅頭に注意されました。

「調子乗ってるんじゃねえぞ、この野郎、種!」

社長の影響でしょうか …

「種、種、言われてんぞ、種!」

「手を動かせ、この野郎、種!」

< おらの大事な先輩が「種、種」と、ひどい扱いを受けてる頃 … 鈴鹿さんとふたりだけで、ささやかな打ち上げをやっていました >


いつもの奥の座敷に差し向かいで座ったひろ美とアキ。

「今日は、おらにおごらせてけろ」

「そんな悪いわよ、天野さん」


目を丸くして驚くひろ美。

「いいからいいから ~ 大将、適当に握ってけろ!」

… … … … …

「天野さん、よく逃げ出さなかったわね … ご立派!」

ひろ美は改めてアキを評しました。

「だって … 鈴鹿さん、家まで押しかけてくんだもの、逃げるに逃げらんねえべ?」

「そうね … 」


ひろ美はころころ笑いました。

「とにかく必死でした … 才能がねえがら」

『話し相手としては面白いし、いてもらえると助かる … でも、女優はダメ、向いてない』

「 … あの言葉、案外おらの中では重くて … 鈴鹿さんに認めてもらうには、鈴鹿さんと共演するしかねえと思って、オーディション受けました。

で、どうですか? … 女優として、天野アキは?」


… … … … …

ひろ美はほとんど考えることなく、アキの質問に答えました。

「ダメね … やっぱり、向いてない」

少なからずショックを受けたアキ。

「 … そうですか」

「ごめんね、ウソ言っても仕方ないから … 」

「ですよね … 今日だって、結局助けてもらって」


アキ自身がよく分かっていたことでした … しかし、わずかな期待を抱いてもいました。

「そうね … まあ、確かによかったけど。

でも、あれは『鈴鹿あき』じゃなくて、『天野アキ』だったもんね。

『天野アキ』がよかったのよ」

「えっ?」

「今、日本で『天野アキ』をやらせたら、あんたの右に出る女優はいません。

だから、続けなさい … 向いてないけど、向いてないけど続けるっていうのも才能よ」


アキは、ひろ美からこれ以上ない評価をもらったのです。

「母ちゃん … 」

思わず口走ったアキ。

「母ちゃんじゃないわよ、もう終わったんだから!」

「すいません … うれしい、おらやっていがった」


アキの目に涙が光っていました。

どういう訳か、カウンターの水口もおしぼりで目のあたりをゴシゴシ拭いていました。

… … … … …

「お話し中、すみません … 自分、始めてのお造りです」

種市は、見事なお造りを乗せた皿を手にしていました。

「どうぞ」

ふたりの前に置く種市。

「サービスです … どうぞ」

後ろに控えた梅頭が言いました。

「いただきましょう」

早速、箸を伸ばす、ひろ美とアキ。

「うん、美味え!」

笑顔のふたりを見て、ホッとする種市。

「えがった ~ ありがとうございます」

アキがひとつ大きな仕事を成し遂げた日、種市は板前としての本格的な第一歩を踏み出したのでした。

… … … … …

< その年の暮れ、主題歌のレコーディングが行われました >

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2013年08月28日 (水) | 編集 |
第129話

< 鈴鹿さんとの疑似親子生活も、丸1ヶ月を迎えようとしています >

相変わらず、ひろ美は規則正しく5時になる前に起床して、『鈴鹿スペシャル』をこしらえています。

アキもすでにキッチンの前に立って、怯えるような顔でその様子を見つめています。

「正宗さ~ん、起きてくださ~い!」

アキも正宗も朝は、何とか起きることはできるようになったのですが、ジュースの方はどうしても、馴染むことができずにいました。

しぼりたてのジュース、まずアキが飲まされました。

「うあああああ ~ 」

寝起きで目をしょぼつかせたままの正宗が尋ねました。

「飲まなきゃ、ダメですか?」

「もちろんよ、体にいいんだから」


当然のようにうなずくひろ美。

「 … 体が、NOと言っています」

「喉にもいいのよ」

「喉使わなねえし … 」


アキは正宗の顔を見て、首を振りました。

あきらめて、コップを口にやる正宗、一気に喉に流し込みました。

「うおおおおおおお ~ 」

… … … … …

漁港を見下ろす長く急な石段を海女の衣装を身に着けたひろ美とあきが上がって来ます。

先を行くひろ美が、少し遅れてついて来るあきに向かって声を掛けました。

「さっさと歩け、あき」

その声に煽られて、あきは口を真一文字に結んで歩みを速めました …

… … … … …

並んで腰かけて、モニターで演技をチェックしていたひろ美と太巻。

「もう1回、やらして」

「よかったと思うけどなあ、今の表情なんか … 」

< モニターの前で話し込んでいる監督と鈴鹿さんは … 時々夫婦みたいに見えます >

「しゃあないな、雨降ってきているのに … 」


そう言いながらも、太巻はひろ美の願いを聞き入れ、もう1回カメラを回す指示を出しました。

< そして、目の前を歩く鈴鹿さんの背中が、夏ばっぱに見える瞬間があって … >

「さっさと歩け、あき」


… … … … …

アキは、ひろ美にそのことを話しました。

「私が夏さんに?」

「んだ、今のシーンなんかそっくりだった」

「あっそう … 」


黙り込んだひろ美。

「 … ごめん、怒った? ババア扱いして」

「いいわよ、別に … 」


アキの首に腕をまわしました。

「ババアだし … ふふふ」

ひろ美が笑ったので、アキもホッとして笑い返しました。

「かっけえもんね、夏さん」

「鈴鹿さんもそう思うか?」

「もちろん … 本当はね、少し意識してたんだ。

歩き方とか、姿勢とか、演技の参考にさせてもらった」

「じぇじぇ ~ 」

「そっか、似てたか … なんかうれしいな」


尊敬するひろ美に大好きな祖母のことを認められて、たまらなくうれしいアキでした。

… … … … …

天野家。

開け放した縁側、その向こうで洗濯ものを干している春子のことを、夏はベッドの中から見ていました。

「寒くない? 閉めようか、ここ」

気遣う春子に夏は答えました。

「いや、起ぎるからいい」

「はあ?」


言うが早く、夏はベッドから起き出しました。

「ちょっとちょっと、何してるの?」

春子は慌てて、玄関にまわって家に上がって来ました。

「お母さん!」

「何だ、おめえ … こんなに散らかして」


居間の剣幕を見た夏は、いきなりの小言です。

「はあ ~ 洗いもん、たまってるじゃねえか」

夏は台所の流しに向かいます。

「ふたりだから、洗濯もんも洗いもんも2倍だ」

流しに漬けっ放しになっていた食器を、せっせと洗い始めた夏、その背中を居間から見つめる春子。

< そろそろ潮時かな … ママは、そう感じていました。

『おかえり』も『すまなかった』も『ありがとう』も聞いたし … もう思い残すことはない >


春子は流しに行って、夏と代わりました。

「これさ、終わったら、買い物行かない?

… 携帯電話、買ってあげるよ」

「そんなもの、いらねえよ」


そう言うとは思っていました。

「持っててほしいの … 何かあった時に家にいなくても、連絡できるでしょ?

たまにはさ、絵に描いたような親孝行させてよ」


夏は鼻で笑うと、春子をどかせて、また洗い物を続けました。

… … … … …

< その頃、おらは奈落で例の撮り直すシーンのリハーサルやってました >

病床のひろ美を、あきが訪ねるシーンです。

「水口さん、上に来てもらえます?」

アキに立ち会っていた水口のことを河島がわざわざ呼びに下りて来ました。

… … … … …

社長室。

先ず、太巻が切り出したのは、公開日のことでした。

「映画の公開日が、3月5日に決定いたしました」

「それに先駆けまして、年内よりPRや宣伝活動に入ります」


『公開日 2011.3.5』

河島がホワイトボードに書きました。

「さしあたって主題歌なんですが、『潮騒のメモリー』でいこうと思っています」

太巻の言葉にうなずきながらメモを取っていた水口、さっきから感じている違和感を口にしました。

「 … っていうか、何でふたりとも僕に対して敬語なんですか?」

何か魂胆でもあるのか、気になるのです。

「やりづらいやろ?」

「 … やりづらいですね」

「もっと、やりづろうしたろか?」


… … … … …

「その『潮騒のメモリー』なんですけどね … 問題は誰が歌うかってことなんですね ~ 」

太巻は滝口順平の声色をマネはじめました。

「セオリー通りいけば、天野アキちゃんに歌ってもらうとこなんですが … それでは、手前どもには旨味がないし、歌唱力にも問題がある」

「じゃあ、鈴鹿さんに歌ってもらうとか … 」

「それ本気で言うとんのか、我?」


水口のシャレにならない冗談、太巻はドスの利いた声で凄んでにらみつけました。

「 … すみません」

阿吽のタイミングで河島が愛想よく水口に企画書を手渡しました。

「太巻映画祭のトップを飾る作品ですので、やはり太巻プロデュースという形でリリースしなくてはなりません。

というわけで、弊社から提案させていただきたいのですが … 」


… … … … …

「こんばんは ~ 」

その晩、春子と弥生に手を引かれて、夏が久しぶりに梨明日に顔を出しました。

「じぇじぇっ ~ !

夏ばっぱ、いいのか、出歩いて?!」


店番の美寿々が声をあげました。

「どうもどうも、お騒がせしました」

一同に向かって、深々と頭を下げた夏。

「何かね、体がうずいてしょうがないみたいだから、連れ出してきた」

春子がそう言うと、弥生は夏の上着を脱がせました。

「見てみろ、ブティック今野の新作だあ!」

真新しい、いかにもブティック今野というような派手なシャツを夏は着ていました。

「あらららら … 何だ、おらとこの服でねえみてえだな ~

やっぱ夏さん、北三陸の元祖ファッションリーダーだなや」


弥生の亭主、今野がおどけて言うと、梨明日は笑いに包まれました。

… … … … …

「ばっぱ ~ 夏ばっぱ!」

大声で店に飛び込んできたのは、大吉と吉田でした。

「そろそろ、ウニ丼再開しますんで … 大吉っつあん、どうぞよろしぐお願いします」

「いやいやいや、そんなに慌てなくても、なあ吉田君?」

「どのみち、3ヶ月先まで予約受け付けちゃってますから … 」

「じぇじぇじぇ ~ 」


目をまん丸くする夏と一同。

「すいません! NOと言えない東北人ですから」

「YESか、苦笑いしかありませんから … 」


調子のいい北鉄コンビですが、回復した夏のことを心から喜んでいるのは皆と変わりありません。

「いや、こりゃ、のんびりしてらんねえな!

よし、明日から再開するべ!!」

「ちょっと待って … 」


張り切りはじめた夏を春子は止めようとしましたが …

「また、忙しくなるな!」

「んだば、組合長さ電話して、はあ、ウニ調達せねばなんねえな!」


美寿々や弥生までも、待ち構えていたようにはしゃいでいます。

「いや、おらがかける!」

夏は、春子に今日買ってもらったばかりの携帯電話をバッグから取り出しました。

「じぇじぇじぇじぇじぇっ!」

携帯を操作する夏の周りを取り囲むように集まる一同。

< またか … ママは寂しさを感じていました。

夏さんが元気になるということは、町の人たちに夏さんを取られるということなんだ。

夏さんにとっても、遠くの不良娘より、近くの他人なんだ … ようやく目が覚めました >


その時、ヒロシが観光協会に届いた、春子宛て水口からのファックスを届けにやって来ました。

… … … … …

駅舎のベンチでファックスの内容を確認した春子は、折り返し水口に電話を入れました。

「見れました? 自宅の方にも送っちゃったんですけど」

「ああ ~ 何なの、これ?」


不機嫌な声の春子。

「主題歌です … 太巻さん、プロデュースで歌手デビューっていう」

ファックスには、『潮騒のメモリー~母娘の島~』PRプロジェクト企画の第1弾と書かれていました。

『主題歌もリバイバル!!!

“潮騒のメモリー” 天野アキ feat. GMT & アメ女』

「そりゃ、見れば分かるわよ … そうじゃなくて、この feat … 」

「featuring(フィーチャリング※)ですね」


※特定の人物などを際立たせること、音楽では「ゲスト出演」の意味で使用。

「アメ横女学園かGMTをバックに … 」

「絶対ダメよ!」


春子は真っ向から否定しました。

「落ち目のアイドルと抱き合わせなんか絶対ダメ!」

「いや、でも、社長 … 太巻さん、プロデュースってことは … 」


とりなそうとする水口。

「巻かれない!

あんなダンサー崩れの踊りヤクザにうちの娘を … 死んでも巻かれない!」


取りつく島もありません。

「だいたいさ、featuringとか、andとかさ、withとかさ、returnsとかさ、余計なもんでお腹一杯にするようなラーメンライス的な発想!

その安物根性が気に入らないのよ!」


この会話、春子は気づいていませんが、水口の横で太巻と河島もしっかり聞いていました。

「っていうか水口さ、あんたどっちの味方よ?!」

… … … … …

「お電話代わりました … 踊りヤクザで~す」

水口に代わって電話に出たのは太巻でした。

「そちらさんの言い分はよう分かりました。

せやけどね、こっちもボランティアちゃいまんねん … 年頃の娘さん、4~50人から預かって商売してまんねん」


商売がらみの話の時、相手を威圧して自分の立場を有利にしたい時、エセ関西弁を使うのが太巻の手です。

「お宅のお嬢ちゃんが、なんぼになるか … もっぺん、よう考えてみますわ!

ほなな!」


春子には通用しない手だと知っているのか、一方的に言うとサッサと電話を切ってしまいました。

… … … … …

「ちょっと! もしもし!」

怒りまかせにファクスをくしゃくしゃに丸めて叩きつけようと立ち上がった春子、横に立っていたユイと目が合いました。

「 … どうも」

「どうも … いつから?」

「うん、ラーメンライスぐらいから」

「やだもう、恥ずかしい … 」


今更ながらバツの悪い顔をした春子でした。

「いえいえ、カッコよかったっすよ」

親指を立てたユイ。

「え ~ ?」

「まあ、ちょっと過保護って思ったけど。

でも、ママに守られて『彼氏』にも守られて、アキちゃんうらやましい」


春子の顔色が変わりました。

「ユイちゃん?」

「うちは1回捨てられたから … ま、おかげで強くなれたけど。

アキちゃん、ずっと守られてるのに強いもんね … たぶん、春子さんの可愛がり方が荒っぽいからだよ、きっと」

「彼氏?

ごめん … 聞き流そうとしたけど、気になり過ぎて、そのあとの話全然耳に入ってこなかった!

ねえ、何、彼氏って?」


ユイは自分が口を滑らせたことに気づきました。

「やばっ!」

慌てて逃げようとしましたが、一瞬遅く春子に腕を掴まれてしまいました。

「もう遅い、もう遅い、もう遅い!」

逃げ惑うユイの腕を決して離しません。

「何、何、何、アキ彼氏いるの? 誰、誰、誰?!」

「痛い、痛い!」


壁に追い詰められました。

「 … もしかして、板前?」

「板前? … ああ、板前板前」


ユイは、あっさりと白状しました。

驚くほど、取り乱す春子。

「冗談じゃない!

契約違反、重大なペナルティーよ、これ!

ちょっと水口、水口、水口 … 」


… 結局、留守電でした。

… … … … …

次の朝。

旅支度を整えた春子が、玄関をそっと開けて出て来ると … 訪ねてきた長内夫妻と鉢合わせしました。

「おや、春ちゃん、こったに朝早く何処さ行くの?」

春子は静かにするよう唇の前に指を立てて、小声でかつ枝に答えました。

「東京帰るの」

「じぇじぇじぇっ?!」

「 … 起きちゃうから」


夏はまだ寝ているようです。

「何でまた急に? … 黙って行ぐのか?」

「急でもないのよ ~ 『いつまでいんだ?』『いつ帰んだ?』って、うるさいのよ」


長内夫妻は、夏がウニ丼の販売を再開することを聞いて、市場でウニを買い占めて運んできてくれたところでした。

組合長はアキへの土産だと言って、その中から幾つか取り出すと持たせてくれました。

そうこうしているうちに、春子に頼まれた大吉がクルマで迎えに来ました。

「いやいや、今回も本当に長々お世話になって … いろいろ本当に … 」

春子は長内夫妻に頭を下げました。

「何言ってるんだ、水くせえ!」

「夏ばっぱのことは、おらたちに任せろ」


組合長も大吉も胸を叩いてみせました。

「よろしくお願いします。

じゃあ行くね、ありがとう … 皆によろしくね」


春子は慌ただしく東京へ戻って行きました。

… … … … …

こちら黒川家の朝。

キッチンを囲んだ3人、同時に『鈴鹿スペシャル』を飲み干したところです。

「うおおおおお ~ 」

発声練習のように声をそろえて … ひろ美の手の合図でピタッと止まりました。

「うわ ~ 」

ひろ美の叫び声をきっかけに、正宗が低音で声を出します。

お ~ ♪

続いて、ひろ美は高音で …

お ~ ♪

そして、アキが …

お ~ ♪

綺麗なハモリ … こんな朝のひととき、主導権はひろ美が握っていますが、他のふたりも割と楽しんでいるようにも見えてきたから不思議です。

… … … … …

夏の作業小屋では、かつ枝に加えて、弥生、美寿々も手伝いに駆けつけて、ウニ丼作りが再開されていました。

「ああ、だめだ … 今度は載せ過ぎだ」

ウニが適量に定まらずに手こずっているかつ枝。

「どれ、おらが食ってやっぺ」

弥生がはみ出たウニを自分の口に運んでしまいました。

「いい加減にしろ!」

その点、手慣れた夏の手つきを見て、美寿々が感心しています。

「あたりめえだ! 10代のころからやってんだもん」

予定数のウニ丼ができあがり、組合長が受け取りに来ました。

「じゃあ、運ぶど!」

「ちょっと待て!」


夏は組合長を呼び止めました。

「ひとつキープ」

「キープ?」


組合長が持っている番重からウニ丼を1個抜き取りました。

「今日おそらく、春子、東京さ帰るから … 持たせてやっぺと思って」

「夏ばっぱ … 」

「やっぱし、親子だなあ … 何となく分かるんだ」


ひとりうなずく夏を見て、すでに春子は帰ってしまったことを知っている長内夫妻は何も言えなくなってしまいました。

… … … … …

「春子 ~ 春子、ウニ丼作ったど」

ウニ丼を手に母屋に入って行く夏。

「春子、ほれ、持ってけ、ウニ丼 へへへ … いつまで寝てるんだ? もう」

笑いながら、春子の部屋のふすまを開けました。

「ほれっ、春 … 」

そこには畳まれた布団があるだけでした。

「 … 何だ、せわしねえなあ ~ 」

そんな夏にかける言葉もなく見守るだけのかつ枝と弥生。

「誰に似たんだか … はははは、なあ?」

来るものは拒まず、去る者は追わず …

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2013年08月27日 (火) | 編集 |
第128話

< 『潮騒のメモリー』、今日は最も難易度の高い撮影 … すなわち、ラブシーンです。 >

昨晩 …

アキは種市に明日はラブシーンの撮影だということを伝えました。

「キ、キ、キスシーンがあんのか?」

「分がんねえ、明日現場行ってみねえと … 」


ショックを隠せない種市は、よろよろとベンチに腰かけました。

「じゃあ、キスしねえ可能性もゼロではねえんだな?」

「うん … 台本には『貪るような接吻』って書いてある」

「あるじゃねえか、確実に … しかも貪られるのか?!」


思わず立ち上がる種市。

「ごめん、先輩 … 仕事だから」

「仕事じゃ、しょうがねえな … 」


うなだれてそう言った種市、アキは少し不満でした。

「しょうがねえのか?」

「いや、しょうがなくねえ … 自分ともまだしてねえのに!」

「 … してもいいよ」


何でもない事のように言うアキ。

「い、今か?」

「おら、先輩好きだし、練習もかねて」


アキは目を閉じて、唇を軽く突き出しました。

♪白い鴎か 波しぶき ~

気合を入れるためにか、種市は『南部ダイバー』を歌い出しました。

「時間ねえから、早く!」

完全に主導権はアキにありました。

急かされて腹をくくった水口でしたが …

「あっ!」

水口と梅頭がふたりのことをドアの隙間からじっと見ていたのです。

「見せもんじゃ、ねえです!」

… … … … …

< 問題のシーンは、映画中盤の山場です。

素潜りの練習をしていたあきは、沖に流され、たまたま通りかかったイカ釣り船の漁師・トシヤに助けられる。

廃屋となった網小屋で夜を明かすふたり。

以前からあきを想い続けていたトシヤは、焚火の前で愛の告白をする >

「トシヤ役のTOSHIYAさんから、栄養ドリンクの差し入れいただきました ~ 」


助監督の声が響いて、そのあとからTOSHIYA本人がスタジオ入りしてきました。

「TOSHIYAっす」

「よろしぐお願いします」


アキが挨拶をすると、TOSHIYAは握手を求めてきました。

< TOSHIYAさんは、ZOO STREET BOYSというダンスチームのメンバーで、若者の間ではすごい人気で … >

「俺さ、映画とか見ないし、芝居とか興味ないんだけど … まあ、1日だけスケジュール空いたから出ることにしたんだよね」

< 前髪が個性的で、腰さ鎖ジャラジャラぶら下げて、ムッキムキで … >


常に手鏡を持って、その個性的な前髪をチェックしています。

「まあさ、ダンスも、演技も、同じ表現だからさ」

腰をカクカク動かしながら、アキに近づいてきて肩を叩きました。

< すみません … 言っちゃいますけど、苦手なタイプです。

なんかクネクネしてて、いけ好かねえ、ダンス野郎です >


落ち着きが全くないTOSHIYA、セットを見て騒ぎ始めました。

「わあ、超やべえじゃん、このセット! … スタッフすごいよ、ええ!」

マネージャーに言って、セットをバックに写メを撮りました。

< 『前髪クネ男』と呼ぶことにしました >

「これさ、ちょっとつぶやいちゃっていい? え、まずい … ファンクラブのメルマガに? … ダメすか ~ 超やべえわな、これ ~ 」


話し方からして、おバカ丸出し …

< こいつとキスすんのか … >

… … … … …

開店前の無頼鮨。

「そうそうそう … いい手つきだ」

包丁の刃の研ぎ方を梅頭に習っている種市。

「おお、目つきもいいぞ、いいよ! … よし、もういいよ」

一心不乱に庖丁を研いでいる種市は気づきません。

「もういいよ、種! どうした? 種!!」

ようやく気づいて、手を止めた種市。

「 … すみません」

その時、誰かが店に入ってくる音がしました。

「すみません、ランチは12時から … あっ」

鈴鹿ひろ美でした。

「お茶だけくださる?」

ひろ美は今日、撮影が休みでした。

「台本読んでたんだけど … いてもたってもいられなくって」

「えっ?」

「 … 気になるじゃない、大事な娘のラブシーンだもの、ねえ?」


ひろ美の言葉に反応した種市を見て、梅頭は理解しました。

「ああ、そういうことか … 」

「差し入れ持って行っちゃおうかしら?」


何気なく口にしたひろ美 …

「持っていきましょう、持っていきましょう」

切羽詰った顔でふたりに訴える種市でした。

… … … … …

「飛び越えて来い … おらのこと好ぎなら、この火を飛び越えて来い!」

「あきちゃん … あきっ!」


TOSHIYAはアキに向かって跳躍して来ると、肩を掴んで … 顔を近づけました。

「はい、カット!」

太巻がアキに近づいて来て言いました。

「本番はその顔しないよね?」

「えっ?」

「お祖父ちゃん、入れ歯臭い ~ みたいな顔になってるから」


アキは無意識に顔をしかめていたのです。

「 … すみません」

間もなくテストに入ることを助監督が知らせました。

「監督!」

TOSHIYAが太巻を呼び止めました。

「 … テストは思いっきり行っちゃっていいすか?」

アキの耳にも聞こえています。

「その方が彼女も気持ち作りやすいと思うんで … 何か堅いから」

太巻はTOSHIYAに任せるとひとこと。

「オッケイ! じゃあ、行っちゃいま~す!」

< テストからすんのか? ということは、最低2回 … NG出したら、それ以上 …

先輩ともしたことねえのに … なすて、前髪クネ男と? >


… … … … …

「鈴鹿ひろ美さんから、巻き寿司と卵焼きの差し入れいただきました ~ 」

スタッフの拍手に迎えられて、ひろ美がスタジオに入ってきました。

「じぇじぇっ?!」

そのあとに従っているのは種市です。

「ごめんね、今日は見学だから」

「いや、鈴鹿さんはいいけど … 」


種市の顔を見ました。

「 … 俺のことは気にすんな」

「いや、気にするよ!」


代わりに答えたのは、水口です。

「 … 来ちゃダメだろ?」

しかし、種市の目は、相変わらず腰をクネクネさせているTOSHIYAを凝視していました。

「頑張れよ、天野 … 応援してるから」

少しずつ、TOSHIYAの方へ歩き出しました。

「分かってる … 仕事だからしょうがねえ」

「だめだって!」


種市の腕をつかんで止めた水口。

「 … 切ってきます。太巻」

差し入れの巻き寿司を切りに廊下に出て行きました。

… … … … …

「テスト行きま~す!」

巻き寿司を切りながら、種市はモニターに目をやりました。

焚火を挟んで対峙するアキとTOSHIYA。

「飛び越えて来い … おらのこと好ぎなら、この火を飛び越えて来い!」

その時、種市が思い出したは … アキとふたりで北鉄の倉庫に閉じ込められた時のことでした。

『天野、行きます! … その火を飛び越えます!』

「天野 … 」

種市の目はモニターにくぎ付けです。

「あきっ!」

TOSHIYAはあきの名前を叫んで、今まさにふたりを遮っている炎を飛び越えました。

そして、アキの肩を掴んで …

「天野っ!」

走り出す種市。

TOSHIYAとアキの唇が触れ合おうとした寸前 …

「天野っ!!」

スタジオに飛び込んできた種市の声で、ふたりは振り向きました。

「カット ~ 」

後先考えずに思わず声を上げてしまった種市。

「どうしたの?」

太巻の隣でテストを見ていたひろ美が不思議そうな顔をして尋ねました。

「あ … お寿司、切りました」

後から追いかけてきた水口が頭を下げました。

… … … … …

本番が始まるまでのしばしの休憩。

種市に近づいてくるアキ。

「天野?」

アキは首を振りました。

「でも、本番は … 」

「わかってる … 仕事だもんな、応援する」


ふたりの横をTOSHIYAが前髪を直しながら通り過ぎました。

「帰ってけろ!」

アキの口から出た思いがけない言葉に唖然とする種市。

「帰れよ!」

水口に続いて、ひろ美は種市に諭すように言いました。

「 … 帰りなさい」

種市は何も言えず、うつむいて帰って行きました。

… … … … …

洗面所で歯を磨くアキ。

< ああ、こんなことなら、もったいつけるんじゃながった … チャンスはなんぼでもあったのに。

… 天野アキ19歳、デビュー作で早くも壁にぶつかっていました >


… … … … …

「助けてけろ、ユイちゃん!」

リアスでユイがアキからの電話を受けると、いきなりでした。

「代わってけろ!」

アキがそう言うので、電話を目の前の弥生に渡しました。

それに気づかずにアキは話し続けました。

「好きでもねえ、今日初めて会った人と、キ、キ、キスしなくちゃなんねえんだ … できねえべ?

なんぼイケメンでもできるか?」


電話を受けた弥生、どことなくうろたえています。

「 … 折り返し電話しま~す」

裏声で答えました。

「えっ?」

「今は、隣さ旦那がいるがら … やんだあ ~ 」


何故か弥生に突き飛ばされる今野。

「弥生さん、気持ち悪いですよ」

ひとり恥ずかしがっている弥生を気味悪がる吉田。

電話を奪い返したユイ。

「ごめん、ごめん、電話代わってけろって意味じゃないよね?

ちょっと、ボケてみた … って何?

好きでもない人とキスしたくないってことは、好きな人がいるってことか?」


その言葉を聞いて、どういう訳か磨いていた琥珀を落とした勉さん。

「そういうことだよね、違うの?」

「 … 実はおら、つ、つ、つきあっている人が!」

「種市先輩でしょ?」


アッケラカンと答えるユイ。

「じぇじぇっ?! … 知ってたのかあ?」

「うん、何となくね ~ やっと話してくれたね?

って言うか、そんなことでいちいち泣きながら電話してこないでよ!」


まるで春子がのりうつった様な言い方でした。

「ごめん … 」

「 … なんてね」


何かユイはアキの反応を楽しんでいるかのようです。

「終わったら、優しくしてもらいなよ … じゃあね」

「うん … ユイちゃん、ありがとう」


アキは電話を切って、化粧台の鏡に映る自分を見つめました。

ユイはああ言いましたが、憂鬱な気持ちは変わりありません。

… … … … …

「私もファーストキスは現場だったなあ」

いつの間にか後ろに立っていたのはひろ美でした。

「じぇじぇっ … っつうことは?」

「『潮騒のメモリー』 … つまりこの場面。

いやでいやで仕方なかったけど、現場のマネージャーが説得してくれたの」


現場のマネージャー … 太巻のことです。

… … … … …

「女優を続けていくってことはね、好きでもない人を好きになったり、好きな人を傷つけたり、接吻したり … 接吻じゃ済まなかったり、それをずっと続けていくってことなんだ。

もし耐えられないんだったら、今辞めてしまった方がいい。

だって、不自然だろ?

… いくら仕事だからって、ファンのためだって、自分にウソをつき続ける仕事なんて不自然だろ?

普通じゃないよ、好きな人を裏切って評価されるなんて … おかしいよ!」

… … … … …

「それで?」

「 … 辞めることにしたの」

「じぇっ?! 女優を?」

「ううん … 正直に生きるのを辞めたの。

ウソの世界で誰かを好きになったり、誰かの母親になったり、この本に書いてある通り生きることにしたの」


アキの手から、台本を受け取るとページをめくりながら、ひろ美はそう言いました。

「私にとって、ウソか本当かなんて、どっちでもいい … 見てくれるお客さんが本当だと思ってくれたら。

その代り、ウソは上手につかないと、バレちゃうからね」

「はい … 」


ひろ美はアキの口に種市の焼いた卵焼きを入れてあげました。

「ふふふ … はい、行きましょう ~ 」

… … … … …

「 … ここに来てのそれはないんじゃないかな?」

アキたちがスタジオに戻ると、太巻とTOSHIYAが何か揉めていました。

「キスシーンやりたくないとか、前髪野郎が言いだした」

水口がアキにささやきました。

「ZOO STREET BOYSは女子中高生のファンが多いんです」

「うちのファンはもう純粋な子が多いんで … 」


マネージャーと一緒にいかにファンのためかということを訴えています。

「女だろう、どうせ … 嫉妬深い女とつきあってると、男でもキスNGとか言いだすんだよ」

TOSHIYAの言葉の裏を読む水口。

「台本、読んでるのか? … 台本のト書きに何て書いてあったか言ってみろ!」

太巻にそう言われて、TISHIYAは台本を開きました。

『貪るような接吻』

「『おどる』ような接吻?」

「『おどる』じゃねえよ、『むさぼる』だよ! … 漢字勉強しろ、バカ!」

「TOSHIYAは俳優でなく、パフォーマーですから」


フォローするマネージャー。

「パフォーマーだと?!」

本来、音楽プロデューサーである太巻に対して恐れを知らないマネージャーです。

「でも、テストの時はがっついてきましたよね?」

せっかく覚悟を決めたのに … アキも黙っていられません。

「はあ? テストは~って言ったじゃん!

本番で~って、やるよ~って言ってないじゃん!」


ああ言えば、こう言う、口先男でした。

「いや、お前がさ、心開かないからさ … ちょっと、ふざけただけじゃん」

爆発寸前のアキ。

TOSHIYAはいつまでもグズグズ言っています。

「超怒ってるよ、超プンプン顔だよ … TOSHIYA、笑顔与えられなかったことある? ないじゃん … 」 

… … … … …

数時間後、無頼鮨。

「えっ、じゃあ、してないの?」

何だかんだで … 結局、本番でもキスはしなかったと水口が梅頭に話しています。

「はい … カメラの角度とかで何とか誤魔化して撮りました」

種市は心の中で胸をなでおろすのでした。

… … … … …

「先輩!」

しばらくして、種市が裏口にビールの空き瓶を出しに行くと、アキが待っていました。

「おう … お疲れ」

先ほどのこともあるので何となく気まずい種市でした。

「卵焼き、美味かったです」

そんなことは忘れたようにいつもと変わらないアキ。

「 … そうか」

まだぎこちない種市です。

そのまま見つめあうふたり。

お互いに言葉がなくなった瞬間、突然アキは目をつぶって … 種市の腕をつかみ、背伸びしました。

近づく、ふたりの顔 …

< 2010年、秋 『現時点』で一番好きな男性に、無事ファーストキスを届けることが … できました >

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2013年08月26日 (月) | 編集 |
第127話

< 映画『潮騒のメモリー~母娘の島~』、いよいよ撮影開始です。

まずは、オープニング … 日の出のカットから >


まだ覚めやらぬ朝、暗い海辺に集まったスタッフの拍手に迎えられて主役のふたりが助監督から紹介されました。

「段取り前にご紹介します! 鈴鹿ひろ美役鈴鹿ひろ美さんで~す!」

「鈴鹿です。どうぞよろしく」

「そして、鈴鹿あき役の … 」


自己紹介をしようとしたアキの言葉を遮って、ひろ美が話しはじめました。

「私はこの作品になみなみならぬ思い入れがあります。

思い起こせば25年前、右も左も分からない少女がこの作品に出合い … 」


… … … … …

ひろ美の話は長く、20分経っても続いています。

「 … それは、私の女優人生ともリンクする訳です。

いかにして、少女が国民的大女優に成長したか?」


空が白々と薄明るくなってきても、ひろ美の話は終わる気配を見せません。

見かねた太巻が遠慮がちに口を出しました。

「あの … 鈴鹿さん、日の出が … 朝陽が出てしまうんで、もうそろそろ船にですね」

「正直、シナリオにも不満が残っています … 例えば、シーン12、皆さん、台本持ってますか?」


構わずに話を続けるひろ美、あきらめた太巻はスタッフに台本のシーン12のページを開くように指示しました。

「そのシーンのダイアログがいささか冗漫で説明的なのは … まあ、もちろんプロですからやりますが … にしても … 」

そうこうするうちに、水平線から太陽が昇りはじめて、陽の光が射してきました。

「あああ ~ 」

太巻、お手上げ。

「 … 続いて、シーン15」

… … … … …

< ここで、改めて、『潮騒のメモリー』のあらすじを紹介します。

太平洋に浮かぶ架空の離島『鈴鹿島』、伝説の海女・ひろ美が数年ぶりに帰ってくる。

夫と共に島に残したひとり娘のあきは17歳になっていだ。

母と娘、感動の再会。

ひろ美の夫・新助はすでに山火事で命を落としたという … 更に数々の不幸がふたりに襲い掛かる!

夫の残した借金、村人の噂話、執拗ないやがらせ、60年に一度の巨大台風、120年に一度の大飢饉、4年に一度の盆踊り、鈴鹿山の大噴火 … 突然現れるイカ釣り船の漁師・トシヤ。

そして、母ひろ美の体をむしばむ流行病。

あきは母の病気の治療のため、単身東京へ向かうのだった … >


… … … … …

< 映画というのは、頭から順番に撮影する訳ではありません。

2日目だというのに、今日はいきなりクライマックスの撮影です >


病床のひろ美の元にあきが駆けつけてくる例のシーンです。

「用意 … スタートッ!」

太巻の掛け声で、カメラが回り始めました。

「母ちゃん!」

入口の戸を開けて、家に上がってくるあき。

「あき、来てくれたか?」

布団から体を起こすひろ美。

「うん … でも、すぐ行かねえと、連絡船が出るんだ」

「あの男と一緒に行くのか?」

「おら、ひとりで生きていく … 母ちゃんの言うように強い女になる」

「 … そうか」

「お母ちゃん … 親孝行できなくて、ごめんなさい」


… … … … …

「う~ん … オッケイ!」

ラッシュを観終わった太巻が、唸りながらもOKを出しました。

「だめね、もう1回やりましょう」

隣に座っているひろ美がすかさずダメ出しです。

「鈴鹿さん、監督がOK出してるんですから ~ 」

「そんな考え考え出たOKじゃ、ダメよ! … もう1回!」


太巻の迷いはひろ美に見透かされていました。

「 … すみません」

後ろに控えていたアキにひろ美は言いました。

「アキ、オーディションの時のこと覚えてる?」

一次審査の時のことです。

「そう、あれが良かったの … 逆に言えば、2次、最終、今日の本番って下がってる訳!

… 分かる?」


アキはうなずきました。

「じゃあ、もうワンテイク行きますか?」

しかたなく、スタッフに指示を出す太巻。

… … … … …

< それに関しては、思い当たる節がありました。

だって、あん時は … >


撮影の合間にアキは、水口に打ち明けました。

「 … ようするに、お祖母ちゃんの容体を心配してたから、素直に言えたんだね?」

「でも、もうだいぶ良くなったから … 」


… … … … …

その夏はと言えば …

「 … 何してるの?」

ベッドの上で身を起こして何やらやっている夏に、春子は問いただしました。

「何って、おめえ … 内職だ、エビの殻むき」

夏の目の前にあるのは、ザルの中に山のように積まれたエビと剥いたその殻でした。

「も ~ 止めてよ!」

「寝てばっかりで退屈だあ … 指先は動くんだから」

「だめ!」


春子は、聞く耳持たずにザルを取り上げてしまいました。

「ああ、もうヒマだヒマだヒマだ ~ 」

生来働き者の夏は、少し調子が良くなって来ると、じっとしてはいられない質でした。

「何でもいいから、仕事けろ ~ 」

「だめ ~ 」

「 … いつまでいるんだ? 春子さんよ」


玩具を取り上げられた子供のように、春子の顔をのぞきこんだ夏でした。

… … … … …

< その後、何度もチャレンジしたのですが、結局この日は上手くいかず … >

「はあ? … お祖母ちゃん、元気だと芝居できないってこと?」


アキから理由を聞いた、ひろ美はあきれて声をあげました。

「 … すみません」

「ホントよ、あんた!

NG連発した挙句、後日にしましょうってさ … 普通だったら、クビよ! チェンジ、チェンジよ!」

< 撮影が終わると、反省会、連日です。

… でも、実はそれほどツラくありません >


それは、反省会の場所が無頼鮨だからです。

ひろ美に説教されながらも、アキの目は種市のことを追っていました。

「壁があるのよね … 何かカメラの前に立つと」

ひろ美はアキのことをそう評しました。

「 … そうかなあ?」

実感できないアキ。

「今はないわよ … 今の方が良い表情してるじゃない」

アキの顔をマジマジと見ながら言いました。

「何で現場でそれが出ないかな … 」

難しい顔で焼酎を呷るひろ美。

… … … … …

「うんっ … わかった!」

何やらひらめいたひろ美。

瞬間、カウンター内の梅頭と目が合いました。

「一緒に暮らしましょう!」

思わず、腰が引ける梅頭。

「 … 私生活でも、母と娘になりましょう!」

ひろ美はアキの方を向きなおして言いました。

自分が相手ではないことが分かった梅頭ですが、心臓はバクバクです。

「こう、壁取っ払いましょう。

何だったら、今日から一緒に住む?」

「 … い、いいのか?」

「もちろんよ! ねえねえ、よくない?」


隣にいた水口はあいまいに返事をしただけでした。

… … … … …

「はあ? ちょっと待って、それどういうこと?」

梨明日で正宗の電話を受けた春子、言っていることがよく理解できずに、聞き返しました。

「だから、家で一緒に暮らすんだって … 親子合宿」

ひろ美がマンションで一緒に暮らすということでした。

正宗自身はまんざらでもなさそうな顔をしています。

「あの … 空気清浄器ございませんか?」

「えっ?」

「ちょっと、ハウスダストが」


客間に自分の床を延べているひろ美が咳き込みながら話していることが春子にも聞こえました。

正宗はアキに電話を替わります。

「ごめん、ママ … てっきり鈴鹿さんの家、お呼ばれだと思ってOKしちゃったんだ」

… … … … …

「私の部屋に?

呼ばない呼ばない … 絶対、教えない」


アキのことをどんなに可愛がっても、付き人時代から通して部屋には絶対に呼ばなかったひろ美でした。

「ごめん、撮影の間だけだから … で、ママはいつ帰ってくるの?」

「うん? … じゃあ、もう少しこっちにいようかな ~ 今帰ったら、ママがふたりになっちゃうもんね?」


カウンターに並んだ、保と吉田が間に挟んだ大吉のことを冷やかしました。

「違うの … 鈴鹿ひろ美が家に泊まるんだって」

「じぇじぇじぇっ?!」


アキはしつこく、いつ帰るのか聴いてくるようです。

「だから帰るわよ、そのうち!

いつって … お祖母ちゃんが大丈夫だなって、思ったら! はいはいはい、はい … じゃあね」


電話を切った春子は、ため息をつきました。

… … … … …

そんな春子を見つめるカウンターの連中。

「 … 何よ?」

「いやいやいや ~ 」

「帰ってほしくないみたいですよ … 春子さんに」


ユイにさらっと言われて、大吉は慌てて否定しました。

「ちょっとユイちゃん!

… いやいやいや、おらじゃなくて、こいつらが!」

「いやいやいや、先輩だべ!」

「駅長、素直になった方がいいべ」


無責任に焚き付ける保と吉田です。

「ウーロン茶、ロック、焼酎1滴!」

珍しくアルコールを注文する大吉。

「やっぱり機嫌がいいんですよ … 『出発進行』の声が弾んでるもんね。

『独身最高』って聞こえるもんね!」

「いや、それはさすがにウソだべ?」


吉田の戯言を聞き流した春子、氷を入れたグラスにスポイトで焼酎を1滴入れました。

「いや、帰るわよ! 夏さんが … 」

「もう大丈夫なんだべ?」


勉さんにそう言われて … 春子はうなずきました。

「 … もう大丈夫なのよ」

… … … … …

「娘とふたりだと、息が詰まるんだろうね … 今日だってさ、海女クラブの皆さんを呼んじゃって … 」

天野家、夏のベッドの周りを囲んで酒盛りが始まっていました。

「でも、春ちゃん帰って来て、ばっぱ寂しぐねえな」

「どうだかな … 」


美寿々にそう言われましたが、ハッキリしない夏。

夏のあやとりの相手をしている組合長が言いました。

「へそ曲がりだな、うれしいくせに!」

「おらとこなんか、もう夫婦ふたりで … この先どうなるんだか」


ひとり息子を海で亡くしている長内夫婦です。

「子供いたって同じだ … 困った時しか頼って来ねえもの」

ぼやいたのは弥生です。

「これっ、かつえ! 囲炉裏で小便垂れるな!」

突然、怒鳴る珠子、かつ枝は思わず、自分の股間に目をやりました。

「かつ枝さんじゃねえ、猫だ猫!」

美寿々が、かつえを捕まえてオモテに連れ出しました。

「分かってても、ギョッとするわ!」

一同、大爆笑。

「忠兵衛さんも春子も、それからアキも、帰ってくるのは構わないけど … いずれ出ていくかと思うと、頼りたくても頼れねえのさ」

賑やかな中、何気なくポロリと本音をこぼした夏でした。

… … … … …

「東京帰ろうと思ったら、アキはもう鈴鹿さんベッタリだし、もうどうすりゃいいのよって感じ」

春子には春子の思いがありました。

「いやいや、こっちさずっといたらいいべ?」

無責任なことを言う保を大吉が諌めました。

「アキがさ、はじめて自分の手で掴んだ仕事じゃん … 主役だしさ、私がいたら何か難癖つけてさ、まぜっかえすしさ … ステージママとか言われるしさ。

夏さんは夏さんで、『おめえ、いつまでいるんだ』って、そればっかりだしさ」


春子は自分の居場所がなくなったような言い方です。

「行ったり来たりすればいいんじゃないですか?」

しおりが言うと、旦那の吉田も賛成しました。

「んだんだ、実際そう遠くねえし … 」

「遠い誓いの問題じゃねえべ?」


大吉の声のトーンがさっきまでとは違います。

「えっ?」

「気持ちの問題だべ、春ちゃん!

… なんぼ北三陸と東京が近くなっても、おらと春ちゃんの気持ちの距離は変わんねえど」

「今、誰も駅長の話してませんから」


吉田の言葉に大吉は、ふらりと立ち上がりました。

そして覚束ない足取りでステージに向かいます。

… 焼酎1滴で悪酔い?

「おら、マサと男の約束を交わしたんだ!

だから、もう惑わすな! 帰れ、春子!」


カラオケのリモコンで何やら選曲しようとしますが、手元も確かではありません。

「ダイヤの乱れは、心の乱れだ!」

自分の足が乱れてひっくり返りました。

「駅長? … 駅長、寝てまっだ!」

… … … … …

アキは、早朝なのにキッチンから聞こえるモーターのような音で目が覚めました。

微睡の中、そのうち止むだろうと思っていましたが、いつまでたってもそんな気配はありません。

ベッドを抜け出して、眠い目をこすりながらキッチンをのぞくと、エプロン姿のひろ美が何やら忙しそうに働いています。

「あ、おはよう! 起こしちゃった?」

音の正体は、ひろ美がいろいろな野菜をジューサー・ミキサーにかけていた音でした。

「何してんだ?」

「朝ご飯よ、ちゃんと食べないと調子出ないからさ」


アキは時計を確認しました … まだ、午前5時です。

「じぇじぇっ」

「撮影あるなしに関わらず、この時間に起きますから。

起きたら、1時間ウォーキングして、熱いお風呂に浸かって、ジュース飲みますから。

ハイ、飲んで!」


今、しぼりたてのミックスジュースを注いだコップをアキに差し出しました。

「鈴鹿スペシャルですから!」

それは紫色のドロッとした液体でした。

恐る恐る受け取るアキ。

「喉にもいいのよ … ビックリするほど、声が出るから。

ホイ、ホイ、ホイホイ!」


ひろ美は『飲め』と手でアキに強制しました。

仕方なく、一口飲んでみるアキ。

「うわああああ ~ っ!!」

悲鳴にも似たアキの声。

ひろ美自身も同じ液体(ジュース)を呷りました。

「うわ ~ っ!!」

発声練習のようなひろ美の声。

「ね、出るでしょ?」

アキに微笑みかけるひろ美。

「行きましょう … お父さん、起こしてきて」

しかし、そう言ったかと思うと、ひろ美は顔をしかめ、口を押えてうずくまりました。

「だまされだ … 」

口の周りを紫に染めたアキは、次の犠牲者(?)正宗を起こしに行きました …

… … … … …

撮影3日目。

「はい、本番 … 用意、スタート!!」

< 今日は、こないだ撮れなかったオープニングの撮影です >


朝の海を滑るように港に近づく一艘の船。

あきは、堤防でその船を見つめています。

船の舳先に人が立っています … あきの母、鈴鹿ひろ美です。

「うわ ~ 」

< すごい … 映画みてえだ。

いや、映画なんですが、鈴鹿さんがいるだけで目の前の風景が映画になるんです >


あきの目の前を横切る船。

「かっけえ … 」

アキは、役を忘れて、思わず口に出してしまいました。

「ハイ、カット ~ !!」

すかさず、アキに駆け寄ってくる太巻。

「かっけえじゃないだろ?! お帰り母ちゃんだろ!」

「 … あ、回ってたんですか?」

その時、また水平線から … 太巻の顔が朝陽に染まりました。

「ああ、太陽出ちゃったよ ~ 」


アキは、振り向き朝陽に向かって微笑みました。

< 『潮騒のメモリー』撮影快調です! >

「 … まだ、ワンカットも撮ってないよ」
 by太巻

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2013年08月25日 (日) | 編集 |
さて、次週の「あまちゃん」は …

おらのこと好きなら … この火、飛び越えてこい!

いよいよ映画『潮騒のメモリー』の撮影が始まった。アキ(能年玲奈)は思うように演技ができず、母親役の鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)に叱られる。鈴鹿は、アキが役になりきるために、一緒に暮らすことを提案。早速、鈴鹿がアキの自宅に転がり込み、鈴鹿・アキ・正宗(尾美としのり)の奇妙な共同生活が始まる。北三陸では春子(小泉今日子)の心配をよそに、すっかり元気になった夏(宮本信子)が暇を持て余して…。

キスシーンがあんのか?

映画の撮影が順調に進むアキ(能年玲奈)に難題が立ちはだかる。ラブシーンの撮影が待っていたのだ。相手役のTOSHIYA(勝地涼)は、アキの苦手なタイプで、キスシーンの撮影を目前に困惑。種市(福士蒼汰)も気が気でない。実は、アキと種市はつきあい始めたものの、まだキスしたことがないのだ。種市は、鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)とともに、差し入れを口実に撮影現場に乗り込むが…。

今、日本で海女のあきをやらせたら、あんたの右に出る女優はいません

鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)との共同生活にも慣れ、映画の撮影に集中するアキ(能年玲奈)。一方、北三陸にいる春子(小泉今日子)は、夏(宮本信子)が元気になり、かつての生活を取り戻そうとしているのを見て、東京に戻ることを考え始める。町の人々に愛される夏を見て、うれしくも寂しさを感じる春子。そしてついに、アキが種市とつきあっていることを知り、春子は東京へ舞い戻る。別れの日、春子は…。そして夏は…。

あんたがついてて、どういうことよ?

映画「潮騒のメモリー」の撮影は、いよいよ最終日に。アキ(能年玲奈)は、母親役・鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)とのクライマックスシーンに臨む。アキはかつて、自分が北三陸を離れて上京する際、夏(宮本信子)と交わした言葉を思い出す。すると、鈴鹿が予想外の演技をしだして…!? そして、クランクアップを迎えたころ、春子(小泉今日子)が北三陸から戻る。春子はアキの恋愛問題で、水口(松田龍平)に激しく詰め寄る。

問題は誰が歌うかということなんですね ~

映画の撮影を無事に終えたアキ(能年玲奈)は、主題歌のレコーディングに臨む。春子(小泉今日子)や太巻(古田新太)が立ち会う中で必死に歌うが、なかなかOKが出ない。そこで手本を示すため、春子が歌うことに。かつて鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)の替え玉として歌った曲だ。春子が複雑な思いを巡らせていると、そこになんと鈴鹿がやってくる。太巻が、ある目的で呼び出したのだが…。

ありがとうね、アキ …

映画「潮騒のメモリー」がヒットし、アキ(能年玲奈)は、かつての仲間のGMTのメンバーとコンサートを開くことになる。一方、鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)が、春子(小泉今日子)が社長を務めるスリーJプロダクションに所属したいと言いだし、そのまま専属女優となることに。北三陸では、ユイ(橋本愛)がアキのコンサートのため、上京しようとしていた…。

あまちゃん 公式サイト、YAHOO!テレビガイド他を参照)


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2013年08月24日 (土) | 編集 |
第126話

『ファンです! あんたさあこがれて東京さ来ました』

< 去年の夏、東京さ出てきて、すぐおらあこがれの人に会いました >

その人の名は、鈴鹿ひろ美。

『“潮騒のメモリー”最高です!』

『ありがとう … いつか一緒にお芝居しましょうね』

< その約束が、果だされる時が、ついに来ました >

「 … よろしぐお願いします」

「こちらこそよろしく」


アキに向かって手を差し出したひろ美、ふたりは握手を交わしました。

… … … … …

アキがEDOシアターの通用口を出ると、こちらに向かって走ってくる水口が見えました。

「アキちゃん!」

「水口さん!」


水口はアキに駆け寄ると、人目もはばからずにいきなり力強く抱きしめました。

「いてっ」

「うるさい … 何も言うな」


耳元で鼻をすする音がします。

「水口さん、泣いてるのか?」

「うるさい … もっと泣くぞ」


アキは笑いながら水口の背中を軽く叩きました。

「よし、もう大丈夫」

アキの体から離れると、今度は腕をつかみました。

「行こう!」

腕を引っ張って歩き出します。

「あれっ?」

アキは立ち止まって自分の腕を確かめた後、辺りを見回し、切れて落ちていたミサンガを拾いました。

「ミサンガ2本になってた!」

左腕をかざすアキ。

… … … … …

「うそ ~ !!」

リアスでアキからの電話を受けたユイは、大声を上げました。

「やったじゃん … アキちゃん、受かったって!」

すぐさまカウンター席の勉さんにも伝えました。

「おおっ! そうかい!!」

ガッツポーズを取る勉さん。

「ごめん、今、勉さんしかいないの … 『おお、そうかい』じゃ足りないよね?」

興奮気味に話すユイ。

「ううん、まずユイちゃんに知らせたかったから」

アキは、すでに正宗と祝杯をあげている水口にと電話を替わりました。

電話に出たのは勉さんでした。

「でかしたぞ水口、よくやった!」

開口一番、弟子のことを褒め称えました。

「一生懸命、磨いた甲斐がありました … 原石、やっと輝きました」

ふたりとも電話口で泣き出してしまって、それ以上話ができませんでした。

「ごめん、泣いちゃった、はは」

アキは春子のことを尋ねました。

「ああ、病院 … 大吉さんも長内さんも海女クラブの皆も … 」

漁協の関係者ほぼ全てです。

「 … ばっぱ、そんなに悪いの?」

しかし、ユイは明るい声で慌てて否定しました。

「やだ、違う違う! … 今日、退院するの!」

「じぇじぇじぇっ?!」


… … … … …

「ただいま ~ !!」

夏は春子と弥生に支えられ、多くの人たちに囲まれて、実家に戻ってきました。

「夏ばっぱ、帰って来たぞ!」

「早かったなあ ~ 」


留守番のかつ枝が出迎えました。

< 2週間の入院を経て、夏ばっぱは自宅療養になりました >

「見ろ見ろ見ろ! 立派なベッドが来たど!」


組合長が言った通り、夏の部屋に真新しい介護ベッドが置かれていました。

「何だ、大げさだなあ ~ 」

目を丸くした夏は、「大げさ」と繰り返しました。

… … … … …

電話が鳴り、ちょうどそばにいた珠子が受けて春子に渡しました。

アキからです。

「はいもしもし、うんうんうん … えっ、ちょっと待って …

うそでしょ ~ ?!

「どうしたの、春ちゃん?」


電話に出た春子が急に大きな声を出したので、美寿々が尋ねました。

「受かったって … あの子、映画出るんだって、鈴鹿ひろ美とダブル主演で!!」

そう言って、春子はその場にへたり込んでしまいました。

「じぇじぇじぇじぇっ?!」

美寿々だけでなく、春子の言葉を耳にした大吉、保、ヒロシも驚いて寄ってきました。

「どうしよう、アキ、あれ、主題歌 … 『潮騒のメモリー』歌うかもしれない?!」

電話を替わる大吉。

「もしもし、アキちゃん、いがったなあ ~ 」

北鉄や観光協会にとっても明るいニュースでした。

「足立君、早速ホームページのアップ画面さトップするか?!」

わかったように指示を与える保。

ヒロシは大吉から受話器を受け取りました。

「もしもし、アキちゃん!」

「あ、ストーブさんにもお礼言わねば … ストーブさんが撮ってくれた本気獲りの動画あるべ?

あれが決め手になったんだと、ありがとう!」

「いやいや、何か … 」


ヒロシは口ごもりました。

「何?」

「 … 何か、アキちゃんが遠くさ、行ってしまったみてえだ」

「ストーブさん?」

「でも、俺の気持ちは変わんねえから … 今も好きだから」

「 … ごめん、全然聞こえねえ」


ヒロシの背後では、アキの合格を知った一同が、夏の退院祝いと合わせて酒盛りをはじめて騒ぎ始めていました。

相変わらず、間とタイミングが悪い自分のことが無性に可笑しくなったヒロシは、受話器に向かって叫びました。

「おめでとう!」

今度はハッキリと伝わりました。

「ありがとう!」

「アキちゃん、おめでとう!」


… … … … …

< それから程なくして、台本が送られてきました。

鈴鹿さんの役名は、当時のまんま、鈴鹿島のひろ美で『鈴鹿ひろ美』 … そして、その娘の役名は、『鈴鹿あき』。

何だか、鈴鹿さんの養子になったようで、うれしいような、こっぱずかしいような感じです >


… … … … …

夏がベッドをリクライニングさせて体を起こして、何かを読んでいます … 『潮騒のメロディー』の台本でした。

「ああ、私いつの間にか寝てたわ」

縁側でうたた寝していた春子、夏は手にした台本のことを尋ねました。

「何だこれ?」

「ああ、東京から送ってきたの、台本よ」

「そりゃ見れば分かるべ、俺だって … 何の台本かって聞いてんだ?」

「アキが映画に出るの、言ったでしょ?」


納得してうなずいた夏。

「 … すごいと思わない?

あのアキがよ、鈴鹿ひろ美とダブル主演だって!

あの地味で暗くて、存在感も … あれ、何だっけ?」

「思い出さなくていい」


春子はうなずきました。

「 … そうだね、ヒロインだしね」

「なかなか悪ぐねえ本だど」

「ええっ、読んだの?」


ふたりは笑い合いました。

その時、漁協のスピーカーから『いつでも夢を』のイントロが流れ出しました。

『海女クラブの皆さん … 明日、予定通り、海女の口開けを執り行います。

海女クラブの皆さんは、旧漁協・海女カフェ前に明朝5時にお集まりください … 』

放送が終わると、夏はため息をつき、そして悔しそうに舌打ちしました。

「本気獲りかあ … 」

「いいから寝てなよ」


なだめる春子。

「潜り始めて、60年近えが、本気獲りさ行がねがったのは初めてだ」

「うそっ、一昨年アキに譲ったじゃん!」

「ああ … 」


夏は、思い出し笑いをはじめました。

「何よ?」

「たった1個でよ、皆して大騒ぎして … ははは」


ふたりは腹を抱えて大笑いしました。

… … … … …

「麦茶でも飲むか … 」

立ち上がって台所に向かう春子。

「おっ、ありがと」

「あんな子いないよね … あれ?

何か言った?」

「何が?」


聞きなれない言葉が夏の口からこぼれたような気がしたのですが … 聞き違いだと春子はそのまま流しました。

「ああ ~ 潜りてえなあ ~ 」

「来年は潜ってるよ、絶対!」

「 … どうだか?」


寂しそうな顔で外を見つめている夏に、春子は麦茶を注いだコップを手渡しました。

「ありがと!」

今度は確かに聞き取れました。

まじまじと夏の顔を見つめる春子。

「ところで、おめえいつまでいる気だ?」

「 … いつまでいてほしい?」

「いたいだけ、いればいい」


そう言うと、もう一度麦茶をすすりました。

「じゃあ、そうする … 」

… … … … …

< 年に一度の本気獲り、今年はユイちゃんが参加しました >

初参加のユイですが、何とウニを4個獲ることができました。

なんと、大吉たちは、そのウニで『ユイちゃん本気獲り記念』と称して、北三陸駅でオークションを開いたのです。

「貴重なウニを、はい3,000円から!」

ユイが獲ったウニを乗せた三方を吉田が高く掲げると、集まったファンどもが競り始めました。

「40,000円!」

いきなり高額を叫んで、落札したのは … アイドル評論家となったヒビキ一郎でした。

< 相変わらずセコイけど … 皆、元気でなによりです >

… … … … …

< 一方、おらは10月からの撮影に向けて準備が始まりました。

まずやったのは、子供番組の撮りだめ … 映画のロケ中は、他の仕事は入れられないので、怒涛の20本撮りです。

それと並行して、連日のリハーサル … おら、役名で呼ばれるようになりました >

「あ、ごめんねごめんね、ひろ美さんごめんなさい … アキ分かってるかな?」


病床に就いた母ひろ美の元に娘のあきが駆けつけるシーンのリハーサル、監督の太巻はアキの演技を止めました。

「港から走ってきたの … 港から鈴鹿家までは4キロ、1里。

全然ものすごい心拍数が上がり過ぎてても、しょうがないくらいの距離だから … もう1回やってみて」


リアルな演技を求める太巻、それにフラフラになるまで応えようするアキ、そして …

< 鈴鹿さんの集中力は凄まじく、おらついでいくのがやっとでした >

… … … … …

< 他にも、ボイストレーニングや発声練習、素潜りの特訓、和服の所作、日舞、習字、ペン字、生け花、料理など … このまま、お嫁に行けるぐらいの習い事をやり、膨大な資料を読まされ …

とうとう迎えたクランクインの日 >


最初のシーンは暗い海辺での撮影でした。

衣装を着たアキは、呼吸を整えています。

「キャストカー、入ります」

スタッフの声とともに1台のワゴン車が入ってきました。

駆け寄るアキ。

停まった車から降りてきたのは、鈴鹿ひろ美でした。

「おはようございます、アキです」

「いよいよね、アキ … 今日までよく耐えてきたと思う」

「はいっ」

「女優がひとりの女を演じるためにどれだけ努力をするものか、よく分かったでしょ?」

「はいっ」


うなずいたひろ美の口から出てきたのは … とんでもないことでした。

「じゃあね、今まで勉強したこと … 1回全部忘れよう」

「えっ?」

「リセットして、ゼロから始めてみよう。

それが芝居、それが映画です!」


ひろ美はアキの手を取るとどんどん歩きはじめました。

< いやいやいやいや … じぇっ、じぇじぇ ~

… 『潮騒のメモリー』いよいよ、撮影スタートでがす! >


ありがとう

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2013年08月23日 (金) | 編集 |
第125話

「いいから、事務所に戻って! 今すぐ、お願い!!」

春子からの電話を受けて、水口は無頼鮨の厨房を確認しました。

当然のごとく、種市はいません。

「ちょっと、大将! 今日、あの若造なんでいないの?」

「種市? 9時であがったけど … 」

「何やってんだよ?!」


意味も分からず、梅頭は頭を下げました。

水口は、正宗に連絡を取りながら、慌てて店を出て行ってしまいました。

どう考えても自分に非があるとは思えない梅頭は、カウンターの他の客に尋ねます。

「今なんか、謝るところありましたっけ? … ないですよね?」

… … … … …

シャワーを浴び終えて、バスルームから出てきアキ。

足音を立てずに部屋へ向かうと、ドアに手を伸ばして … 勢いよく開けました。

… … … … …

スタンドの明かりだけが灯された薄暗い部屋、アキと種市のふたりはベッドに並んで腰を下ろしています。

種市がアキの肩に手を置きました。

目を閉じるアキ、種市はゆっくりと顔を近づけていきます …

「ああ、だめだ、今更こういうの … 笑っちまう」

照れ臭くなって肩から手を放し、立ち上がってしまいました。

「水の中だと思ったらどうですか?」

「あ … なるほど」


ふたりは潜水実習の時のように、向い合って両手をつなぎました。

そして見つめ合う … すると、種市が首を何度もカクカクとかしげ始めました。

吹き出すアキ。

「なんだよ?」

「だって … 先輩、空気を抜く動作までやってるから」

「ああ、ははは … どうも真剣みが足りねえな」


気を取り直した種市は、ふたたびアキの両肩に手を置きました。

アキは目を閉じます。

今度こそ …

ギュルルル ~ 

アキの腹の虫が鳴き、またも出鼻をくじかれた種市でした。

… … … … …

リビングに電話が鳴り響きました。

「もしも~し、何で電話に出ないのかな?

いないのかな? … アキちゃん!」


ほぼ同時に玄関が開いて、携帯をかけながらの水口と正宗が入ってきました。

ふたりのクツを確認した水口。

「クツがあるってことはいますね」

正宗は急いで家に上がると、アキの部屋のドアをノックしました。

「種市君、いるのは分かってるんだぞ!」

「入るよ、入るからね … 服着てなかったら、待つけど?」


アキの部屋からは返事はありません。

「いいね、入るよ!」

水口は念を押すと、思い切ってドアを開けました。

しかし、灯りの消えた部屋の中には誰もいません。

「あのガキ … 」

吐き捨てる正宗、リビングに急ぎます。

そして、物音にキッチンから顔を出したふたりと鉢合わせしました。

空腹のアキのために種市が卵焼きを作っているところだったのです。

… … … … …

見事に焼きあがった卵焼きは、目の前にお預け状態、種市と並んで食卓に座っているアキに正宗は言いました。

「ママには、最終選考に備えてセリフ合わせをしていた … ということにしておく、いいね?」

ふたりは、恭しくうなずきました。

「一応、納得してくれたみたいです」

春子に説明していた水口が部屋に戻ってきました。

「それにしても、油断も隙もねえな、一般男性はよ」

にらみつける水口、アキは種市のことをかばいます。

「おらが誘ったんだ … 先輩は悪くねえです」

「アキ … 」

「女優である前に、アイドルである前に … おら、18歳の女子だ。

好きな人がいて、一緒にいでえと思ったり、その人のために『仕事がんばっぺ』って思うのが悪いことか?」


反対に水口に質問しました。

「いや、悪くはない。

そして、誰にも見られない安全な場所にここを選んだのは、考えたなと思う。

… ようするに君に取っては、種市君がアイドルなんだな?」

「ああ、そうかも知んねえ」

「そのアイドルにもし好きな人がいたらどうする?」


アキは種市の顔をチラッと見て答えました。

「 … やんだ」

「そのアイドルがもし他の誰かに夢中で、君のことが見えてなかったらどうする?」

「やんだ、その設定リアルすぎて、超やんだ!!」


アキは顔をしかめて、席を立ちオフィスのソファに逃げました。

「ユイちゃんで経験済みだもんな … 」

「ちょっと、水口さん!」


水口は構わず、アキの向かいのソファーに座ります。

「失恋だよ … ようするにアイドルがひとりの男と恋愛すると、100万人のファンが失恋するんだ。

それが、アイドルなんだよ」


… … … … …

「それが、どうした?

俺がひとりで100万人分幸せにしてやる! 100万倍の男になる!!」


頭に血が上った種市が水口に食って掛かりました。

「うるせえし、論点ずれてる。

なんだ? 100万倍の男って … バカか?」

「 … あ、すいません」


血が引くのも早く、おとなしくソファに座りました。

「どうします。お父さん?」

正宗に尋ねる水口。

「えっ?」

「いや、黙ってるから、何か考えてるのかなと思って」

「うん、全然違うこと考えてたよ」


正宗はニコニコしながら、ふたり向かって話しはじめました。

「僕が春子さんと、つきあったのはね … 」

「ちょっと、全然違うなそれ … 今話すことですか?」


水口は止めたのですが、聞きたいと言う種市 … 正宗は話を続けました。

「僕にとっては、春子さんがアイドルだったんだ。

偶然2度、いや3度、タクシーで拾って … もう、春子さんは歌手をあきらめて地元に帰ろうとしてたんだけど … 」


… … … … …

『ファン第1号として、ひとことだけいいですか?

あのね、ここであきらめるなんて、もったいないですよ。

あなたの歌に励まされて、僕はここまでがんばってこれたんです … 横柄な客に罵られても、酔っぱらいに絡まれても、後部座席ガンガン蹴られても … あなたの歌聴いて、彼女もがんばってるんだからって。

行きましょうよ、歌いましょうよ … 東京にはあなたの歌、必要としている人が一杯いるんですよ』

… … … … …

「あれあれ? 種市君、どうした?」

正宗の話を聞いて、感激した種市は号泣していました … 涙もろい南部ダイバー。

「あ、いや … お父さん、かっこいいなあって思いました」

「そう、かっけえんだ、パパは!」


娘とその彼氏にもそう言われて、正宗はもう有頂天です。

「ありがとう!」

種市に向かって右手を差し出しました。

その手を両手で握り返す種市。

「俺なんか、100万倍の男なんか言って、結局何もしてねえなって … 卵焼き作ったけど、それも冷めてるし!」

「あ、ごめん、食べようね」


食事の準備に立つ正宗。

「そんなことねえよ、先輩。

先輩もおらのこと勇気づけてくれたべ?」


『ここが踏ん張りどころだぞ。

ひとりぼっちでつれえのは分かる … でも、今逃げちゃダメだ。

海の底さいる天野に空気を送り込むのは … 自分しかいねえべ?』

「 … いいこと言うじゃないか、君!」

テーブルに箸を並べながら正宗は種市のことを褒めました。

「え、いや、言っただけで、結局何もしてねえし … なんか応援するとか言って、家族の留守に部屋さ上がり込んで … 」

申し訳なさそうな顔をしました。

「それこそ言ってることとやってること全然違うし … 」

「違っていいんだよ … 言ってることも、やってることも、どっちもホントなんだよ。

それが男なんだよ」


春子を待ちながら、同窓生にも心が揺れた正宗だからこそ言える言葉でしょうか …

… … … … …

「うまっ!」

種市の卵焼きを口にしたアキが声をあげました。

「美味えよ、先輩 … これプロの味だよ」

満足そうに腕を組む種市。

「どれどれ … 」

正宗も箸を伸ばしました。

「お父さんも … 」

あきれ顔の水口にアキは言いました。

「水口さんも先輩もしゃべってねえで食え」

「うまっ!」

「んだべ?」


似たもの父娘 …

「とにかく!

当分の間、会うのは、お寿司屋さんだけにしてください。

あと、メール … そこまでは、目をつぶります」


ふたりにくぎを刺すと、水口も卵焼きを頬張りました。

顔を見合わせて笑うアキと種市。

… … … … …

< そして … おらと小野寺ちゃん、ふたりによる最終審査の日がやってきました >

奈落に簡単なセットが組まれて、ふたりはそこでひろ美を相手に演技させられました。

「母ちゃん、私、新助さんが好き … だから、島を出ます」

「好きにすりゃいいべ、さっさと行け!」

「親不孝ばかりで、ごめんなさい!」


走り出したアキをひろ美は呼び止めました。

「ちょっと、どんな気持ちでそっち走ってってんの? … 何か逃げてるみたいだけど、よく考えといて」

「 … わかりました」


次は薫子の番です。

< 台本を手放して、母親役の鈴鹿さんを相手に繰り返し繰り返し、同じ場面を演じます >

「母ちゃん、私、新助さんが好き … だから、島を出ます」

「どんな島?」


ひろ美は演技を止めて、突然薫子に尋ねました。

「 … 小さな島」

「小さい? 八丈島? 三宅島? … まあ、いいわ。

… 好きにすりゃいいべ、さっさと行け!」

< 鈴鹿さんの本番さながらの熱演は、まさに圧巻で、普段のカッパ巻き食べながら焼酎飲んでる鈴鹿さんとは当然ですが、まるっきりの別人でした >


… … … … …

「 … さっさと行け!」

「親不孝ばかりで、ごめんなさい!」


そんなアキの演技を荒巻は悲しげな顔で見つめていました。

… … … … …

アキと薫子はそのまま奈落で結果を待たされました。

「 … 何か嫌だね」

話しかけてくる薫子。

「んだな … 」

「アキちゃんが呼ばれるような気がする」

「いや、小野寺ちゃんだべ」

「本当?」

「 … ごめん、分がんねえ。

でも、どっちが呼ばれてもちょっとうれしぐね?」

「ちょっと、悔しいけどね … 」


お互いに複雑な気持ちでした。

「でも、国民投票とは違う」

「全然違うべ」


… … … … …

社長室。

「 … こんなことなら書類で落としておけばよかった」

「えっ?」


つぶやくように言った太巻をひろ美は振り返りました。

ホワイトボードに並べて貼ったふたりの写真を指しながら河島が説明しました。

「小野寺を主演にした場合、吹き替えが必要になります … 泳げませんから。

それで、一度クビにした天野を残したんです」

「恩に着せたかったんでしょうね … 後ろめたさもありました。

事務所の社長としては、小野寺を押したい … しかし、商売人になりきれないもうひとりの自分が天野を押したがってる。

『天野アキで映画を撮れ』と『天野を吹き替えにしたら、また後悔することになるぞ』と」

「 … また?」


首をかしげる河島。

「結論が出ないまま、昨夜この動画を見つけましてね」

太巻はパソコンを開いて、一同の方に向けました。

それは、北三陸の観光協会のサイトにアップされている、アキが初めて自分の力でウニを取った時の動画でした。

「これ見てたら、もう … 切なくなっちゃって」

… … … … …

病院。

「 … もういいど」

果物を剥いている春子に夏が声を掛けました。

「うん?」

「東京さ、帰っていいど」


春子は夏の横顔を見ました。

「春子 … 世話になったな」

「まだいるよ」

「なすて?」


夏は不思議そうな顔で春子の方を向きました。

「東京帰ったって、どうせ仕事ないしさ … はい、どうぞ」

剥いたリンゴをひときれフォークに刺して夏に手渡しました。

「おっ」

ひとことだけ … 夏は受け取ると、口に運んで美味しそうに食べました。

ほんの少し、くやしそうな春子です。

… … … … …

「お待たせ」

しばらくして、河島が早足で奈落に下りてきました。

イスから立ち上がって、言葉を待つふたり。

「小野寺 … 」

「はい」


先に名前を呼ばれたのは薫子の方でした。

「 … 今日はもう帰っていい」

それ以上は何も言わず、アキのことを呼びました。

「はい」

「 … 太巻さんが呼んでる」


そう告げると河島は先に奈落から出て行きました。

一瞬笑顔になりかけたアキですが、薫子のことが気になって、隣を向きました。

「本当だ … ちょっとうれしい」

薫子はそう言うと、いつもの愛らしい笑顔でアキに向かって手を差し出しました。

握り返すアキ。

「おめでとう」

「ありがとう」


やっとアキも笑うことができました。

奈落から出ていくアキの背中を見送りながら … 涙をこらえている薫子がいました。

… … … … …

「おめでとう、天野」

社長室に入ってきたアキを迎えた荒巻の声は信じられないほど穏やかでした。

「 … よろしぐお願いします」

深く頭を下げたアキ。

笑顔のひろ美が近づいてきました。

「こちらこそよろしく」

手を差し出すひろ美、ふたりは握手を交わします。

その様子を見ている荒巻の顔は … 優しく微笑んでいました。

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2013年08月22日 (木) | 編集 |
第124話

「今日ならいいど … ママもパパも家さいねえの」

アキの口から出た言葉に、種市は一瞬驚きましたが …

「 … 5分待でるか?」

そう言うと、店の中に戻って行きました。

< じぇじぇじぇじぇ ~ どうした、アキ? 天野アキ18歳、いづになく大胆でねえか?! >

アキも自分自身に驚いていたのです。

「ママもパパも家さいねえの」

さっきのシチュエーションを思い出して、もう一度同じ言葉を口にしてみました。

< なんぼオーディションの緊張から解放されたとはいえ、まさかおらの口からこんなベタベタなセリフが出るとは >

「ママもパパも家さいねえの」

< 恥ずかしすぎて、3回も言っちまった! >


そう言う割には、結構自分に酔っているみたいです。

< で、先輩は家さ来るつもりだべか? >

「5分待でるか?」


種市の口マネをしました。

< … 来るつもりだ!

そして、4回目 … >

「ママもパパも家さいねえの」

< 確かにその通り、邪魔するものはなにもねえ … でもいいのか、この大事な時期に?

しかも、夏ばっぱが病気で入院してるっつうのに >


一応、後ろめたさないわけではありませんが … 

帰り支度を終えた種市が、裏口から出てきましたが、アキは気づかずに5回目のそれを口にしました。

「ママもパパも家さいねえの」

< だめだ、黙ってらんねえ … というわけで、『あまちゃん』スタート! >


… … … … …

EDOシアターの社長室。

「2次審査の合格者は以上の5名でよろしいでしょうか?」

河島がホワイトボードに5名の写真を貼りました。

「あら、天野さんは?」

アキの写真がないことをひろ美が指摘しました。

「天野アキでしょ? あの子、良かったよ。俺残したよ」

「あの子良いですよね? … 残しましょうよ」


ふたりのプロデューサーもアキを気に入っていているようです。

困った河島は太巻の顔を見ました。

しかし、太巻は上の空です。

何故、アキのことが春子に見えたのだろう … 太巻はオーディションのことを思い返していました。

… … … … …

「母ちゃん、私、新助さんが好き … だから、島を出ます」

「好きにすりゃいいべ、さっさと行け!」

「親不孝ばかりで、ごめんなさい!」

… … … … …

「ちょっと待って!」

オーディションの時と同じように席を立ちあがった太巻。

その声にアキの写真も貼ろうとしていた河島は手を止めました。

「えっ?」

一同、太巻に注目します。

「 … なんだ?」

「え、今 … ちょっと待てって?」


辺りを見回す太巻、今がどういう状況なのか思い出しました。

「うん、ああ、ええ … 確かに、天野は素材としてはいいと思います」

気を取り直して話しはじめました。

「ただ … ヒロインは荷が重い」

… … … … …

「たとえば、『伊豆の踊子』の山口百恵、『野菊の墓』の松田聖子、これのオリジナルの鈴鹿ひろみさん然り … アイドル映画は、ヒロインの鮮烈なデビューによって記憶に残る。

そういうインパクトが、『天野春子』にはない!」

「えっ?!」


怪訝な顔をする一同 … 確かに『天野春子』と口にしました。

「天野春子にないものが、他の候補者にあるかといえば … 未知数です。

しかし、例えば、小野寺薫子なんかは、表現力こそ天野春子には及ばないが、独特のムードがあります。

年齢的にも若い … 天野はいくつだっけ?」

「40? … 」


首をひねる河島。

「何言ってるんだ! … 18歳じゃないか」

太巻は河島が持っていたプロフィールを確認しました。

「『天野アキ』はそうです」

「えっ?」

「ずうっと、『春子』っていってるから、ねえ」


太巻は、ひろ美に言われて、無意識に『春子』と口にしていたことに気がつきました。

「 … 誰、春子って?」

言葉を失った太巻にひろ美は意味深に笑いかけました。

プロデューサーのふたりもアキを押します。

「残しましょうよ、ねえせっかくだから」

「何か入ってますか? 仕事とか」

「空いてます!」

「水口?!」


突然、水口がホワイトボードの後ろから顔を出しました。

挨拶するために社長室を訪れたのですが、タイミングを逸して入口の所に控えていたのです。

「天野アキ担当のマネージャーです … もちろん、次も空けて待ってましたんで」

「じゃあ、そういうことで … 」


ひろ美が締めて、アキの2次審査通過が決定しました。

太巻は … 膝を抱えてうずくまっていました。

… … … … …

その頃、アキは種市を連れて帰宅したところでした。

種市をリビングに通したアキ。

「ここが事務所か?」

「んだ、あっちがおらの部屋」

「生まれた時からここに?」

「いや、おらが8歳の時、パパがローン組んで買ったそうです … その前は団地です」


物珍しそうに見回す種市。

「何か飲みますか?」

「ああ、じゃあ、ビール」

「じぇっ?!」


… 種市はもう20歳でした。

「あ、その前にシャワー借りていいか?」

「じぇじぇっ?!」


何気なく、そう口にした種市ですが、驚くアキを見て … 焦り出しました。

「あ、ごめん! あの、図々しいよな … 最近、卵ずっと焼いてるからさ、汗かくんだよ。

シャワー浴びないと、気持ち悪くて」

「 … どうぞ」


アキは種市をバスルームへ案内しました。

… … … … …

< うわ ~ うわ ~ 先輩 … いきなり、お風呂って、もしかして先輩? 

うわ ~ うわ ~ しか出てこねえ >


その時、オフィスの電話が鳴りました。

春子からでした。

「うわ ~ 」

「うわ ~ って … 元気?」

「な、な、なんのようだ?」


事務所の留守電を聞こうと思って、かけてきただけでした。

「じゃあ、出なきゃよかったのか?」

「もう遅いけどね … で、どうだったの? 2次審査」

「う ~ ん、まあまあかな?

じぇじぇっ?!」


リビングの入り口に上半身裸の種市が立っていました。

「あ、ごめん … どっちがシャンプーで、どっちがリンスだ?」

「泡が出ない方がリンスだ!」


受話器の口をふさいで慌てて答えるアキ。

「 … 誰かいるの?」

不審がる春子。

「あ、うん、水口さん」

「ああ、そう … 遅くまでご苦労様 ~ 」

「ご苦労様 ~ だって」


それらしく、誰もいないのに伝言を伝える振りをしました。

「じゃあね」

… … … … …

電話を切った春子。

ひとりきりの居間でビールを飲みながら、板の間に目をやりました。

囲炉裏の端で椅子代わりの樽に腰かけ、湯呑みで美味しそうに酒を飲む夏の姿 …

< この家でひとりで暮らしている夏ばっぱの姿を、何故かママは想像しました >

春子は、板の間に行って、夏のマネをして樽に腰かけてみました。

♪星よりひそかに 雨よりやさしく …

< 来るものは拒まず、去る者は追わず … 強がって生きてきた母の日常。

もう一度、夏さんにこの風景を見せてあげなくちゃ … そう心に誓うママなのでした >


… … … … …

< まさか娘が、部屋に男を連れ込んでいるとは、知らず … >

ふたりは、交わす言葉もなく事務所のソファーに向かい合って座ったままです。

「なんかしゃべれよ!」

沈黙に間が持たなくなった種市がアキに言いました。

「あ … はい、えっと … じゃあ、仕事どうですか?」

「じゃあ、って … 」

「すみません、雑談って難しいですね」


種市は訥々と話しはじめました。

「だんだん面白くなってきた。

最初は、大将無口だし、掃除と出前ばっかりだったけど … 最近、ようやく卵焼き任されるようになって」

「卵焼きか ~ 」


種市は急に饒舌になりました。

「ただの卵焼きでねえど。

卵といで、鉄の鍋さ流し込んで、こう火から浮かせてよ … 自分で火加減調節しながら、45分 … 時間かけて作るから美味いんだ」

「へえ ~ 」


種市は、ビール片手に立ち上がって、窓を開けて外を見ました。

「次は、シャリ作り教えてもらって、いよいよ板場の修行だ。

自分なりに目標もできた」

「何ですか?」

「いつか北三陸さ帰って、小せえ店構えるんだ。

三陸の新鮮な魚ど、内陸の米ど、あと地酒が自慢の店」


そう言いながら、アキの隣に座りました。

「いいなあ」

「名づけて … 『ダイバー鮨』」


満足そうにうなずく種市。

「名前はもうちょっと考えた方がいいな」

歯に衣着せぬアキでした。

「あ、そうか? ははは」

… … … … …

「 … 何かなつかしいな」

「え?」

「前にもこんな感じで、ふたりでしゃべったことあったな」


そう言われてアキも思い出しました。

「ああ、北鉄の倉庫で?」

… … … … …

ふたりで、改装中のお座敷列車に忍び込んでいて … それを知らない吉田に倉庫のカギを締められて、閉じ込められた時のことでした。

並んで焚火に当たりながら、いろいろ、とめどない話しをしました。

「『潮騒』って三島由紀夫だべ?

三島の恋愛小説で映画化もされた名作だ … 『その火を飛び越えて来い』っていうのは、その中のセリフだ。

… そのあと、ふたりは抱き合うんだ」

… … … … …

「いきなり電話鳴ってもうびっくりしたな」

懐かしそうに話す種市。

「あん時、先輩はユイちゃんが好きだったんですよね … 」

「 … ごめん」

「いやいや、責めてる訳でねくて … 」

「今は違う、天野が好きだ」

「おらもだ、先輩」

「 … 先輩って」


種市は少し不満そうな顔をしました。

「 … 天野って」

それは、アキも同じす。

真顔になった種市は言いました。

「アキ … 」

そう言って、顔が近づいてきます。

… … … … …

しかし、アキは何やら気配を感じて振り返りました。

「 ?! 」

社長のイスに若い頃の春子が座って、こちらを見ています。

「どうした?」

< なすて? なすて、先輩といい感じの時にママの幽霊が … いやいや、幽霊じゃねえ、ママ生きてるし、実家さいるし … じゃあ、何? >


悩んでいるところに電話が鳴り出しました。

「もしもし?」

「だから、出ないでよ!」


留守電の確認にかけてきた春子でした。

「 … ごめんごめん」

「水口君は?」


咄嗟にトイレだとウソついてしまいました。

「あっそ … じゃあ、いったん切るからね、すぐにかけるから出ないでよ!」

… … … … …

「あ、おらもシャワー浴びていいですか?」

「うっ … うん」

「電話鳴っても出ないでくださいね … 部屋で待っててもいいし」


アキの言葉に目を見開いて、やっとのことうなずいた種市。

平然とバスルームへ向かうアキの背中を見送りました。

ほぼ同時に、オフィスの電話が鳴って、留守電の再生が始まりました。

… … … … …

『もしも~し、水口です。

あとで携帯にもかけますが … アキちゃん、最終選考に残りました!

という訳で、今日は事務所によらずにそのまま帰りますね、ご報告でした』

… … … … …

水口からのメッセージを聞いて、春子は首をかしげました。

「うん? うん? … 今日は事務所によらずに … このまま帰る?」

録音されたのは1時間前 … アキの話と食い違います。

春子は胸騒ぎがしました。

… … … … …

いつになくご機嫌、無頼鮨で食事をとっている水口の携帯が鳴りました。

… 春子からです。

「もしもし … 今ですか? お寿司食べてます … ちょっと、なんか気が大きくなっちゃって、ふふふ …

えっ?! えっ、何で?」

「いいから、事務所に戻って! 今すぐ、お願い!!」


… … … … …

シャワーを浴び終えたアキがバスルームから出てきました。

化粧台の鏡に映った自分の姿を見てひと息吸い込むと、足音を立てずに部屋へ向かいます。

ドアに手が伸びて … 勢いよく開けました。

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2013年08月21日 (水) | 編集 |
第123話

『 … 第一次選考を通過されました。 』

「受かった、受かった ~ 」

< おらが『潮騒のメモリー』の1次審査を無事通過した日、ついに夏ばっぱが息を吹き返したのです >


… … … … …

「じぇじぇじぇっ、夏ばっぱが?!」

「そうなの、目覚めてすぐにさ『ウニ丼こさえるべ』だって」


春子は夏が目覚めたこと、アキは2次審査に残ったこと、お互いに電話で報告しました。

「 … それより、あんたも『じぇじぇじぇ』だよ ~ アキ、1次通過おめでとう」

「エへへへ … でも、2次はもっと長えセリフしゃべったりするみでえだがら」

「大丈夫よ、自信持ってやんなさい」

「うん … ねえ、ママ、いつ帰ってくるの?」

「そうだなあ … まあ、一段落したら帰る」


キッチンの正宗が聞こえてくる電話の内容を気にし始めました。

同じように北三陸の駅舎で電話している春子の話を駅務室の大吉たちが聞き耳を立てていました。

「一段落っていつ?」

「ええ、わかんないよ ~ パパにもよろしくね」


… … … … …

電話を終え、リアスに入って行く春子を指して、吉田が大吉に尋ねました。

「いいんですか? 帰るって言ってますよ」

「いい、おらもう春ちゃんのことは吹っ切れた」


駅務室から出て、駅舎にポスターを貼り始める大吉。

「 … 東京で俺とマサは、堅い友情で結ばれたんだよ、吉田君」

「マサ? … 斉藤でもなく、トミーズでもなく?」

「正宗君さ、今じゃすっかりメル友さ … マサはすごいぞ、吉田君。

何しろ、器が大きい!」


… … … … …

そのマサ … 正宗は、アキから聞いた春子の言葉で疑心暗鬼になっていました。

「 … 何か嫌だな」

「何が?」

「だって、この前もこんな感じで … 春子さん、結局2年近くも帰って来なかったんだよ」

「心配ねえって、一段落したら帰るって」

「しかも、前はウソだったけど、今回はお義母さんホントに倒れた訳でしょ?

… 2年じゃ済まないよ!

嫌だ、何か嫌だ … ああ、すごく嫌だ」


娘の前で器の小さいことを、ほざいていました。

… … … … …

「 … 器は小さい、でもだからこそ小回りが利く … タクシーの走行距離見て驚いたよ、38万キロだぞ?!

料理も上手い、空手も強い、ベストも似合う … 完璧だべ?」


大吉の話を聞いていた吉田の息が荒くなってきました。

「駅長、それでいいのかよ?」

「春ちゃんを幸せにできるのは、マサなんだ。

俺なんか一生日陰でヤモメ暮らしさ … 愛読書は浅田次郎の『鉄道員』さ」

「それでいいのかよ? 大吉っつあんよお!」


吉田は大吉の胸倉をつかみました。

「離せ、離せ、吉田君!」

「おらが今まで、一体どんな思いで独身貴族を気取ってきたのか、あんた分かってんのかよ?!」


大吉をベンチの上に引きずり倒しました。

「副駅長が駅長より先に幸せになってはダメだって、駅長が身を固めるまで独身を貫くぞって、頑張ってきたんだぞ!!」

「 … でも、結婚したね?」


大吉のひとことで吉田の手が緩み、体を引きはじめました。

ここぞとばかり反撃に出る大吉。

「観光協会の栗原ちゃんと割とあっさり追い越したね?」

「 … ええ」

「しかも、何? オメデタなんだって?」


大吉の顔は笑っていても目は笑っていません。

「ええ、お祝いは現金でひとつ … 」

後ずさりしながらも、そう答えた吉田。

大吉はいきなり吉田の左手を掴んで指輪を抜き取りました。

そして、ホームへ向かって走り出します。

吉田は慌てて後を追いました。

「わあああああ ~ 」

… … … … …

吉田の悲鳴は、当然リアスにまで聞こえてきました。

「何? 何?」

顔を見合わせる春子たち。

「駅長、駅長、給料の3か月分!」

叫び声を背中に聞きながら大吉が笑顔で店に入ってきました。

「結婚指輪、線路さ、ぶん投げてやった! わっはっは」

「え ~ っ?!」


平然といつものようにカウンター席に腰をおろしました。

「先輩、春子さん、しばらくこっちさ残るみたいですよ」

「じぇじぇっ」


保の話で初めて知ったフリの大吉でした。

「夏さんが退院するまでは、何が起こるか分かんないしさ。

いくら皆に慕われているからって、親族は私だけだからね」

「だめだ! 帰ってやれ、春ちゃん … 夏ばっぱのことは、おらたちに任せろ!」

「そうはいかないよ」


しかし、あくまでも帰れと言う大吉。

「アキちゃんとマサには、春ちゃんが必要なんだ!」

「 … マサ?」


首をかしげる春子。

その時、カウンター内にいたユイが突然、頭を下げました。

「いらっしゃいませ」

「えっ?」

「ご注文は?」


ウイスキーのロックを注文する勉さん。

… 午後6時半からのスナックタイムでした。

… … … … …

「なんかごめんね ~ 娘が心配で東京行ったと思ったらさ、今度は母親があれで、なんか定まんないよね」

スナックへの模様替えを終えて、春子は席に戻りながら皆に詫びました。

「でも、親孝行は今しかできないし … なんか面白いしさ」

「面白い?」


聞き返すユイ。

「うん、袖の春子が田舎で親の介護とか、面白いじゃん?

… まあ、そのうち飽きるかも知れないけど、でも絶対『ありがとう』って言ってもらうんだ」

「夏ばっぱにか?」

「うん、『お帰り』と『すまなかった』は聞いたから、あとは『ありがとう』でしょ?」

「言ってもらったことねえのか?」


勉さんが不思議そうに尋ねました。

「ない … 1回もない」

断言した春子。

遠くのしょう油を取ってあげた時も、お茶を淹れた時も、全て「おっ!」で済まされていました。

「新聞取ったついでに肩にカーディガンかけた時は?」

「お~お~お~お~」

「 … オットセイみたい」


春子の口真似でユイが笑いました。

「だから、『ありがとう』って絶対言ってもらうんだ。

それまで、やめない! … この親孝行、誰にも渡さない!」

「なんか、天野家ねじくれてねえか?」


保にそう言われて、春子は苦笑いしました。

… … … … …

「いらっしゃい」

「何、今度は何タイム?」


そう言った春子ですが、人の気配に振り向くと、功がよしえを伴って店に入ってくるところでした。

「やあ、ホントにいた!」

「ええっ?」

「いや、袖の春子が帰ってきてね ~ 親の面倒見てるって、噂で聞いたもんだから」


朗らかに笑った功の後ろでよしえが頭を下げました。

「その節はどうも … 」

「いいえ ~ 」


仲睦まじいふたりを見て、笑顔になる春子。

「座れば?」

素っ気ないユイですが、ふたりを席に着かせました。

… … … … …

「あったどおおお ~ 」

雄叫びと共に懐中電灯を手にした吉田が息を切らしながら店に駆け込んできました。

「ありました! 奇跡的にまくら木の上さ、落ちてました!」

指輪を高く掲げる吉田。

「やったあ!」

「それ本当に吉田君の?」

「触んな、電車バカ!」


確かめようとする大吉に悪態ついて出て行ってしまいました。

… … … … …

ユイが注文を聞くと、功はビールの他にピザを頼みました。

「もう、面倒臭い」

顔をしかめたユイ、すると …

「私、やるよ」

よしえが席を立ちました。

「えっ、いいよ、入って来ないでよ」

「いいから … 」


よしえは、お構いなしにカウンター内に入って行きます。

ユイもそれ以上拒むでもなく、母に任せました。

そんな様子を見て、ホッとする春子でした。

… … … … …

< そして、2次審査の日がやってきました >

2次審査の会場は、EDOシアターの奈落です。

「 … 出身は東京なんですか?」

審査官のひとりが尋ねました。

「はい、高2の夏まで世田谷です」

「あのさ、何で訛ってるの?」


別の審査官がツッコんできました。

「えっ?」

「東北弁の方がキャラが立つって誰かに言われたんですか ~?」


無表情でワザとらしい口調、太巻が追い打ちをかけます。

< 完全アウェイの空気で、イジワルな質問が続きました >

「天野さん?」

「 … お祖母ちゃん子で … 最初は、祖母ちゃんや海女さんたちとしゃべってて、自然とうつったんですが、今は訛ってる方が素直な気持ちを伝えられ … 」

「いじめられてたんですか ~?」


アキの答えが終わる前に太巻は次の質問をしました。

余り触れて欲しくはない過去のこと、黙り込んでしまったアキ。

「あっ、失礼 … インターネット上にそのような書き込みがたくさん見受けられたので、事実ですか ~?」

アキは、太巻の隣に座っているひろ美の顔を見ましたが、目を伏せたままです。

< 鈴鹿さんは手を差し伸べてくれませんでした >

「天野さん?」

「えっ、いじめられでだというより … 」

「標準語でお願いします」


ツッコめるところがあればツッコんで、アキを追い落すつもりでしょうか …

「いじめられてたというより、いじめられるほどの個性もなかったんです」

ひろ美は、アキの顔を見ました。

「いじめられる子って、たぶん目立つ子なんだと思います。

その点、私は地味で暗くて、向上心も協調性も … あれっ? 何か足りない … 地味で暗くて、向上心も協調性も … のあとなんだっけ?」


昔、春子に言われた言葉 … どうしても、そのあとが思い出せません。

「異物感? 罪悪感? … あっ、存在感!

存在感も個性も華もない、パッとしない子です! … 言えた」


… … … … …

満足そうに笑っているアキにひろ美が初めて口を開きました。

「今のあなたはどうですか? その頃と変わりましたか?」

「はい、全然違います!」

「は~い、どうも、うっ」


ここで打ち切ろうとした太巻の口を、ひろ美はペンで押さえました。

「どうやって変わりましたか?」

迷わずアキは答えました。

「お祖母ちゃんのおかげで変わりました。

お祖母ちゃんと一緒に海女さんやって、海さ潜ってウニ取って、変わりました」

「そろそろ時間、うっ」


またも太巻の口をふさいで質問を続けるひろ美。

「お祖母ちゃん、どんな人ですか?」

「かっけえ人です ~ この手拭も祖母ちゃんからもらったんだ」


『北の海女』の手拭を取り出して広げて見せました。

『この先、つれえことがあったら、こいつで涙拭け … そんで思い出せ … 寒い朝、浜さ出て潜った時のこと。

あれより、つれえことはまずねえがら』

「お祖母ちゃんだけでなぐ、海女さんや地元の人等、あと親友のユイちゃん!

それがら … もちろん、お母さん、あと海、東京に来てから知り合った仲間。

皆のおかげで変わりました!」


思わず、ひろ美の方に体を乗り出してしまいました。

「結構です … 長々すいませんでした。」

太巻の口を押えていたペンを外して謝りました。

「いいえ、どういたしまして」

… … … … …

EDOシアターに駆け込んできた水口、河島と出くわしました。

「随分押してんな」

予定の時間は過ぎていますが、オーディションはまだ終わっていません。

「2次まで残るとは思わなかっただろう?」

河島は休憩コーナーで飲み物を買いながら、水口の顔を見ました。

「 … やっぱり、鈴鹿さんの後押しですか?」

「まあ、最終的には社長のさじ加減だと思うけど … やっぱ、鈴鹿さんには逆らえないんだよ。

ヘンな関係だよ、あのふたりは」


壁に貼られた『潮騒のメモリー ~母娘の島~』のポスター。

「そもそもリメイクするなら、他にもいい作品あるのに、何で今更『潮騒のメモリー』にこだわるかね?」

… … … … …

オーディション会場 ~ 奈落。

「もっと、ていねいに読んでみて」

ひろ美がアキのセリフに注文をつけました。

「はい。

母ちゃん、私 … 新助さんが好き」


アキは、台本に書かれたセリフを1字1字ゆっくりと読みました。

「ていねいっていうのは、ゆっくりじゃないの、分かる?

意味を考えて、尚且つ、無理に抑揚つけようとしないで」

「『よくよう』って何ですか?」


真剣な顔で聞いてくるアキ、一瞬驚いた顔をしたひろ美ですが …

「 … あ、ごめんごめん、あなたバカだったわね? … 忘れてた」

少しムッとするアキ。

「ええとね、上がったり下がったりし過ぎている …

私のマネしてみなさい」


ひろ美は先ず手本を見せました。

「母ちゃん … 」

アキはあとに続けました。

… … … … …

「うん?」

その時、太巻はある異変を感じていました。

目の前のアキが、若い頃の春子に見えるのです。

面影どころか春子そのものでした。

「母ちゃん、私、新助さんが好き … だから、島を出ます」

「好きにすりゃいいべ、さっさと行け!」

「親不孝ばかりで、ごめんなさい!」


イスを蹴って走り出した春子(アキ?)

「ちょっと待って!!」

太巻は立ち上がって、走って行く後ろ姿を呼び止めていました。

「だいぶ良くなったわ、ねえ監督?」

呆然と立ち尽くしたままの太巻。

「 … 監督?」

「えっ? … あら?」


ひろ美に何回か声を掛けられて、太巻はようやく我に戻りました。

戻ってくるアキ。

太巻は動揺を悟られないように、平然を装いました。

「 … いいんじゃないですか?」

「ありがとうございます」


… … … … …

EDOシアターの楽屋口から出てくる水口とアキ。

「あれ、今日、正宗さんは?」

いつもなら待っているはずの姿が見当たりません。

「今日は、給料日なので、遅くなると言っていました」

「俺ちょっと挨拶しに戻るけど … 大丈夫? ひとりで帰れる?」


アキはうなずきました。

「じゃあ、マスクして顔隠して」

言われた通り、顔半分を隠すくらいのマスクをつけました。

「よし、じゃあ気をつけてね」

水口はアキが見えなくなるまで見送り、シアター内にまた戻って行きました。

… … … … …

それを陰から確認していたアキが、こっそりと戻ってきます。

そして、マスクを外して、シアターの向かいの無頼鮨の裏口へ走りました。

ドアを開けて、種市に声を掛けます。

外に出てくる種市。

「終わったのか?」

うなずくアキ。

「自分ももう上がりだ。

… どうだった?」

「まあまあ … かな?」


何となく、そわそわして落ち着かないアキ。

「何だ、天野? 腹減ったか?」

アキは、眉をひそめて首を振りました。

「 … じゃあ、何?」

「今日ならいいど … ママもパパも家さいないの」


さあ、どうする南部ダイバー??

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2013年08月20日 (火) | 編集 |
第122話

リメイク版『潮騒のメモリー』のヒロイン・オーディション。

アキは課題のセリフに渾身の思いを込めました。

「母ちゃん、親孝行できなくて … ごめんなさい」

そんなアキを見つめるひろ美。

… … … … …

一方、夏の手術室の前では、手術成功を祈って集まった連中が『いつでも夢を』の大合唱。

♪言っているいる お持ちなさいな いつでも夢を いつでも夢を …

いつしか春子もその歌の輪に加わっていました。

背後から近づく人影。

「見て!」

ユイが指した方向を一同が振り向くと、そこに夏の執刀医が立っていました。

マスクを外した医師、ムッとした顔で口を開きました。

「うるさいよ! あんたがた歌ってたでしょ、ダメ、絶対!

… 終わってたからいいけど」


春子が慌てて結果を尋ねました。

「成功でがす」

「あ、ありがとうございます」


ホッと胸をなでおろす春子、かつ枝たちと抱き合いました。

… … … … …

「本当? いがった ~ 」

オーディションが終わって、正宗と水口、それにしおりと真奈かつての僚友と一緒に無頼鮨を訪れていたアキ。

ユイからの電話を受け、夏の手術が成功したことを知りました。

「成功だって!」

「そうか!」


正宗たちも安堵の表情を見せました。

「ママは?」

「まだ病院、意識が戻るまでそばにいるって言うから … そうなの、大変な手術だったからね」


夏はまだ集中治療室のベッドの上で眠ったままです。

春子を残して、ユイは北三陸駅に戻ってきたところでした。

「そうか、大変だったな」

「でも頑張ったんだよ … お医者さんが言ってた、驚異的な体力だって」

「当たり前だ、夏ばっぱ、かっけえもん!」


オーディションのことを尋ねるユイ。

「う~ん、それが、夏ばっぱのことで頭いっぱいで … 結果出たら連絡する。

ありがとね、ユイちゃん」


皆によろしくと伝えてアキは電話を切りました。

… … … … …

アキがカウンター席に戻ると、待っていたかのように水口が言いました。

「さて、そろそろ帰りましょうか?」

「じぇ、もうちょっといいべ?」


せっかく久しぶりに会えた、しおりと真奈とまだ大して話もしていません。

そこへ喜屋武が店に顔を出しました。

「日帰りで沖縄行っとったとよ」

「ピンの仕事で国際通りぶらり旅さ ~ 」


しおりから連絡を受けて、急いで駆けつけてきたのです。

「アキ、で~じ懐かしい … テレビ出てるね、ちばってるね」

お土産のシーサーが入った紙袋をアキに手渡しました。

「わあ、相変わらず、何言ってるかわからない!」

苦楽を共にした同士で再会を喜び合いました。

… … … … …

「大将、適当に寿司握って頂戴!」

しかし、喜屋武の注文を水口が取り消しました。

「なすて?」

不満顔のアキたち。

「なすてって … 鈴鹿さん、ここ来るでしょ? 常連なんだから」

そう言われて、やっと皆納得しました。

「じゃ、マンション来る?」

喜屋武にそう誘われて、アキは聞き返しました。

「あ、言ってなかったか … うちら、寮引き払ったんだよね」

「じぇじぇっ?!」


ファンに寮の場所をつきとめられて「しかたなく」だと、しおりが代わりに答えました。

「しかたなく」を強調していますが …

「自慢じゃないけど、オートロック ~ 」

喜屋武は自慢のようです。

「いやいやいや、ワンルームだけどね」

「ばってん、窓からスカイツリーのくさ、見えるとよ」

「いや、工事中だけどね」

「ばってん、システムキッチンに食洗機のくさ、ついとるとよ ~ 」


3人とも、もううれしくてしょうがない、誰かに話したい … といった感じです。

「聞いたか水口ちゃん、おらいたころは風呂なしで四畳半さ二段ベッドだったのにな」

「くやしいな … 」


自分の手から離れた途端に奈落から一気にトップアイドルの仲間入りしたGMT、水口は複雑な気持ちでした。

… … … … …

「今となっては、で~じ懐かしいね」

「相変わらず忙しいのか?」

「まあね、劇場公演は毎日あるし、並行してレッスンとか取材とか分刻みであるし」


そう話した、しおりですが、忙しいことを決して嫌がってはいないようです。

正宗が睡眠時間を尋ねると、4~5時間あったらいい方だと真奈が答えました。

「なのにさ、週刊誌に合コン三昧とか書かれるんすよ!

… で、アキは?」


今度は反対にしおりがアキに尋ねました。

「9時間」

幼児並みに睡眠時間を取っているアキでした。

「いや、睡眠時間じゃなくて … 彼氏できた?」

「じぇっ?」

「そっちの方は派手にやってますか?」


握り拳をマイクのようにアキにつきつけました。

「 … そうでもないかな」

「おいおいおい、君たち … お父さんがいる前でそんな」


水口が口をはさみましたが、当の正宗はおどけてアキに尋ねました。

「派手にやってるのか? アキ」

親とマネージャーと彼氏を目の前にして、何とも言いようがないアキ。

「わかった、あの岩手の観光協会のイケメン!」

思いついた喜屋武。

「ストーブさん?」

「そうそうそう、告白でもされましたか?」


しおりにまた拳をつきつけられて、うろたえるアキ。

「っていうか、もしかして … あこがれの先輩?!」

真奈がカウンター内の種市を指差しました。

「え ~ っ?!」

無言のままですが顔色が変わった種市、にらみつける正宗、梅頭もまじまじと見ています。

盛り上がってるのはGMTの3人。

自分たちは完全に恋愛は御法度、身近なアキのことで騒ぎたいのも、わからないでもありません。

「どっちにしても地元の先輩ですよね ~ 」

引きつった顔のアキ。

♪好きです 先輩 覚えてますか 朝礼で倒れた私

しおりが『地元に帰ろう』を歌い出すと、あとのふたりも続きました。

他の客の迷惑だからと止めようとした種市ですが、梅頭がそれを制します。

♪都会では 先輩 訛ってますか お寿司を『おすす』と言ってた私 ~

イライラしてワサビを下ろす手に力がこもる種市、キレる寸前 …

「そんな訳ないじゃん!」

大声を上げたのは水口でした。

「やばいでしょ、恋愛して9時間寝てたら … そんなアイドルやばいでしょ?

引退して田舎帰った方がいいっしょ?」

「水口 ~ 」

「彼氏とかいませんから ~ CMの契約あるし予備校の … 向こう1年は受験が恋人ですから!」


いつになく険悪な感じの水口に、空気が読めない喜屋武がツッコミました。

「そういう水口はどうな訳?」

「えっ?」

「アキのことどう思ってる訳?」

「そうだよね、さすがにちょっとは恋愛感情がないと独立なんかしませんよね、ねえねえねえ!」


しおりはアキの手を曳いて、メンバーで水口を取り囲みました。

「 … そうなのか?」

真顔で水口に尋ねる正宗。

「どうなんですか、どうなんですか?」

囃し立てるしおりたち。

「勘弁してくださいよ」

思わず、目に入った正宗のウーロンハイに手を伸ばしました。

「水口さん、運転!」

種市が止めましたが、一瞬遅く … 一気に呷ってしまいました。

「ちょっと来いや」

水口は一息つくと種市に手招きして、店の外に出るように合図しました。

そのあとに続く種市。

「何、決闘? アキを掛けて決闘?」

追いかけようとする、しおりたちのことを正宗が引き留めます。

「まあまあまあ、やめなさい、やめなさい … ねっ、男同士の話し合いだから」

… … … … …

水口は種市の肩を掴んでどんどん引っ張って行きます。

「何なんすか?!」

店の外に出た時、種市はそれを力任せに振りほどきました。

すると、水口は突然、種市の前に土下座しました。

「この通りだ … 何も言わず、アキちゃんから手、引いてくれ」

「じぇ、あの、水口さん、えっ?」


面食らう種市、水口は顔をあげて立ち上がりました。

「っていうか、実際どうなの? ふたりは」

「どうって … つき合ってますけど」

「 … そんなの知ってるよ、なめんなよ。

だから、程度の話してるんだよ … なあ、言ってみ、どこまでいったふたりは?

怒らないから、言ってみ?」

「まだ何も?!」


声を荒げる水口。

「滅茶苦茶怒ってるじゃないすか?」

「まだってことは、いずれどこかまで行こうとしているってことですよね?

先輩、南部ダイバー先輩?」


種市の両肩を押さえて、ベンチに座らせました。

「それが明るみになったら、どう報道されると思います?

『清純派アイドル・天野アキ、交際発覚』『お相手は1歳年上の一般男性』

予備校のCMは打ち切られ、違約金を払わされ、当然映画のヒロインの話も立ち消え …

あ~あ、大損害だぜ、一般男性?」


何も反論もできない種市。

「いっぱ~んだんせ~い、るぱ~んさんせ~い」

目の前に迫る水口の顔、種市は思わずそむけました。

「酒臭いです」

「何してくれてるんだよ? 大事な時期によ … おいら、いっぱんだんせ~い」


あの程度の酒で悪酔いでしょうか?

… … … … …

「水口さん … 」

店から出てきたアキ。

「あ、ごめんごめん、お会計ね」

「もう済ませたよ」


後から、正宗も出てきました。

ちょうどいい頃合を計って出てきたのでしょう。

「じゃあ、タクシーで帰りましょう」

「タクシーって、君飲んでるだろう?」

「タクシーを置いて、タクシーで帰りましょう」


正宗はうなずいて、タクシーを呼ぶために店の中に戻って行きました。

「じゃあ、頼みますよ … 一般男性」

種市にそう言い捨てると、水口は正宗の後に続きました。

… … … … …

「 … 大丈夫か?」

「ああ、俺は …

それより、婆ちゃん無事でいがったな」


アキに心配させないように、気を取り直して種市は言いました。

「はい」

「はいって … 」

「何が?」


アキの態度が種市には他人行儀に感じたのかも知れません。

「 … 大事な時期なんだべ?」

「んだ … でもいいんだ、生きてる限り大事じゃねえ時期なんてねえし。

先輩とつきあってる今だって、おらにとっては大事な時期だべ?」

「天野 … 」


水口にあんなことを言われた後だったので、種市はアキの言葉に思いのほか感激してしまいました。

「仕事も先輩もどっちも大事だ」

「天野ぉ!」


たまらなく愛しく感じて大声を上げてアキに近づく種市。

しかし、アキは思わずよけてしまいました。

「ちょっと!」

「あ、ごめん … 」

「それは、今はちょっと … 」

「じゃあ、いつする?」


あからさまに尋ねる種市。

「いつって … 今は決めらんねえよ」

「じゃあ、いつ決める?」

「 … また今度」


ふと、ドアの隙間から見ている梅頭に気づく種市。

「梅さん!」

「タクシー来ましたけど?!」

< 先輩が珍しくぐいぐい、ぐいぐい迫ってきた夜 … わずか数メートル離れた場所では、大人たちの駆け引きが繰り広げられていて … >


… … … … …

東京EDOシアターの社長室。

河島がホワイトボードに2次審査の合格者の写真を貼り出しています。

「 … こんな感じですかね?」

「あら、天野さんは?」


ひろ美がアキの写真がないことに気づきました。

「うん、入間しおりは外そう、遠藤もね … GMTは分散させて、バランスを取らないと」

太巻はふたりの写真を外しました。

「ねえ、天野さん落としちゃうんだ?」

太巻にひろ美は問いただしました。

「 … 天野は、う~ん、訛ってるからねえ」

「それがいいのよ、あの何とも言えない訛りが!」


食い下がるひろ美に河島が言いました。

「どうせ訛ってるなら、小野寺は宮城の子ですし、ネームバリューもありますし … 」

「泳げるの?」


薫子はカナヅチでした。

「はい、本人に確認しましたら、足がつくところでビート板があれば … 」

「ダメじゃん!」

「 … どっちみち、泳ぎは吹き替えですから」

「泳げるに越したことないでしょ?」


言葉に詰まる河島、太巻の顔色を窺いました。

「う~ん、どっちも残そう … まだ2次ですからね。

そうしましょう、それがいいでしょう」


… … … … …

GMTの3人はまだ無頼鮨に残っていました。

「あのふたりってつきあってたんでしょ?」

「つきあってた?」


しおりの言葉に梅頭は驚いて顔をあげました。

「鈴鹿ひろ美と社長」

「マジで?!」


喜屋武の声が大きいと注意したしおり。

「元々マネージャーだったんでしょ? 鈴鹿ひろ美の」

声を潜めて、聞き返す喜屋武。

「何も知らんね、喜屋武ちゃんは … 20年前に鈴鹿ひろ美が恋人と立ち上げたのが、ハートフルたいね」

真奈が教えました。

「だから、最初は鈴鹿ひろ美しかタレントがいなかったんだ」

「ってことは、鈴鹿ひろ美の個人事務所から、鈴鹿ひろ美が抜けたってこと?」

「そっから、裸一貫で再スタートばしたって、本にも書いてあったし、有名か話ですよね? 大将」


真奈は梅頭に話を振りました。

「つきあって … た?」

不審な顔でそう答えた梅頭。

「えっ、違うとですか?」

この後、梅頭の口から出た言葉が本当だったら … たぶん水口や元付き人だったアキも知らない衝撃の事実でしょう。

「というか、今もつきあってるはずだけど … ふたりで一緒に住んでいるはずだ … けど。

えっ、別れちゃったの?」

「じぇじぇじぇ ~ っ!!」


… … … … …

「こんばんは ~ 」

このタイミングでひろ美と太巻が店に訪れました。

「お疲れ様でした!!」

反射的に頭を下げて出迎える3人。

軽く会釈するひろ美、後から続いて来た太巻がしおりと真奈に言いました。

「お前たち落ちたわ」

「ごめんね、他の映画に出るんですって」


座敷に上がるふたり。

いつまでも立ち尽くす3人を見て太巻は言いました。

「え、そんなショックだった?」

… 別件ですが …

… … … … …

カーテンを通して朝の光を感じる集中治療室の前のベンチ、春子はいつしかうたた寝をしていました。

「 … 春ちゃん、春ちゃん」

春子のことをそっと起こした大吉。

「あ、ごめん … 寝ちゃった」

「夏ばっぱ、見ろ」


大吉に言われて治療室の中を覗くと、薄目を開けた夏がこちらを見ていました。

「ああ、違うの … 夏さんてね、寝てる時にちょっとだけ目を開けて寝るのよ。

昔からそういう体質なのよ」

「ええ、知らねかった」


大吉は改めて窓に近づいて夏のことを見ました。

すると夏は … 微笑んで、ちょろっと舌を出しました。

「じぇじぇ ~ っ!!」

そっくり返って、春子に「中を見ろ」と身振り手振りで伝えました。

「うるっさいな … 何?」

しかたなく春子も窓から夏の様子を窺がいました。

舌を出して微笑んでいる夏。

「夏さん? … いや、何、起きてるの?」

微かにうなずく夏を見て、慌てだす春子。

「起きたの? いやだ、いやだ ~ 」

「やったあああ!」


今にも泣きそうな顔の春子、雄叫びを上げる大吉。

ふたりは『関係者以外立入禁止』と書かれた治療室のドアを開けて中に飛び込んでいきました。

「やったあ、夏ばっぱ、やったあ!」

「いつから、いつから?」

「うるさいよっ!」


隣に控えていた執刀医が顔を出して枕元で騒いでいるふたりを怒鳴りつけました。

「 … ごめんなさい」

「マスクかけて!」


慌ててマスクをかけるふたり。

< ついに夏ばっぱが息を吹き返しました >

… … … … …

一方、ほぼ時を同じくして、スリーJオフィスに1通のファックスが届きました。

送られて出てくる文章を待ちきれずに読むアキ。

『 … 第一次選考を通過されました。 』

「受かった、受かった ~ 」

抱き合って喜ぶアキと正宗。

< そして、おら … 何とか2次審査に残ったのです! >



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2013年08月19日 (月) | 編集 |
第121話

「ウソじゃねえって、今度は!!

夏ばっぱ、呼んでも返事しねえんだよ!」


アキのオーディション当日の朝、春子は夏が倒れたことを大吉の電話で知りました。

「どうしたの? ねえママ、ばっぱどうしたの?」

受話器を耳に当てたまま、しばしの間動けなかった春子でしたが … 静かに電話を切りました。

「あんたは気にしなくて大丈夫だから … 私、ちょっと行ってくるわ」

慌ただしく出かける準備を始め、アキを迎えに来た水口に今日のことを頼みました。

「おらも行ぐ! 夏ばっぱのそばにいてえ、おらも帰る!!」

「お祖母ちゃんは、ママがついてるから大丈夫 … アキはアキが今やるべきことを頑張んなさい!」


自分も夏の元へ行くと言い張るアキを春子はそう諭しました。

… … … … …

北三陸駅に降り立った春子は、先ずリアスを訪れました。

『店主急病のため休業します』

入り口の貼り紙を、信じられないといった顔で見つめる春子。

< ウソだったらいいのに … ママは希望を捨てていませんでした >

あの時みたいに、大吉のウソに違いない …

「あ、春ちゃん」

春子を見つけた大吉が駆け寄って来ました。

「夏さんは?」

「まあ、落ち着け … 大筋は電話でしゃべった通りだ」

「どうせ、ウソなんでしょ?」


… … … … …

大吉の言葉を信じない … 信じたくない春子は、自宅に戻りました。

しかし、当然、夏どころか誰もいません。

居間にへたり込む春子。

「 … しばらくは元気だったんだよ。

今年は水温も冷てえし、歳も歳だし、無理すんなって言うのに、週に4日も潜ってさ」

「早く病院連れてってよ!」


本当だとわかれば、一刻も早く母の元に駆けつけなければ … 春子は大吉を急かしました。

「今行っても会えない、手術中だ。

バイパス手術っていうのか、それ自体は難しいもんじぇねえって医者は言うが … 時間もかかるし、体力が持つかどうか?

なにしろ心臓だからな」


… … … … …

アキは …

夏の容態を気にしながら、正宗、水口と共にオーディション会場である東京EDOシアターを前にしていました。

シアターの巨大なモニターが、映画の制作発表・記者会見の模様を映しています。

… … … … …

『太巻、映画撮ります』

荒巻太一 初監督作品『潮騒のメモリー ~母娘の島~』

2011年春、公開 …

「物語は前作の15年後、主人公のひろ美のその後を描きます」

太巻が概要を説明し、続いて、ひろ美が挨拶をしました。

「鈴鹿ひろ美です … 私の大切な大切なデビュー作のリメイク。

新しいヒロインを迎えるということで … 」

「こちらにおられる鈴鹿さんと、オーディションを勝ち抜いた娘役のダブル主演となります」

… … … … …

3人は、スタッフにシアターの入り口に誘導されました。

階段を上がる途中でアキはふと足を止めてしまいます。

「どうした?」

「 … やっぱ、怖えな」

「俺もクビになって以来だよ、ここ来るの」

「やめるか? アキ」


正宗はアキに尋ねました。

しかし、こんなところで怖気づくわけにはいかないアキです。

「今更、ビビッてても仕方ねえ … おらには夏ばっぱがついてる」

アキは、夏にもらった『北の海女』の手拭を握りしめました。

… … … … …

「スリーJプロダクションの天野アキです」

資料を手渡されて、オーディション会場に入るアキ。

「中に入ったら、簡単な自己PRをしていただきます … その後、こちらのセリフを読んでください」

持ち時間は、ひとり3分だと、河島が説明しています。

「アキちゃん」

席に着いたアキに声を掛けてきたのは、薫子でした。

「小野寺ちゃんも1次から?」

「うん、真奈ちゃんもしおりちゃんもだよ」


後ろの方の席にセリフの練習をしているふたりがいました。

「じぇじぇ … GMTも一般も一緒か?」

「お互い、がんばっぺ!」


薫子は、愛らしく笑って自分の席に戻って行きました。

「相変わらず、めんこいなあ」

薫子と会ってなんとなく癒されたアキでした。

… … … … …

アキは資料にあるセリフを確認しました。



●鈴鹿家

病に伏している母ひろ美の元に駆けつける娘。

布団に横たわる母を見て衝撃。

「母ちゃん、親孝行、できなくてごめんなさい」



そのシチュエーションは、どこか今の夏と春子のことを髣髴させました。

< そこに何気なく書かれた1行のセリフのせいで、おら、また夏ばっぱのことを思い出してしまいました >

… … … … …

大吉に連れられ、夏が手術中の病院に春子が駆けつけると … 手術室の前の待合室には、海女クラブの面々や組合長、ユイまでもが待機していました。

「なんか、お騒がせしてごめんね」

「アキは?」

「大事なオーディションだと」


春子に代わって答えた大吉が手術の経過を組合長に尋ねました。

「うん、さっきから看護師が出たり入ったりしてたけど … 」

取りあえず腰を下ろす一同。

「夏ばっぱ、本当はとっくに引退する歳だもんな」

「んだ、なんぼ元気だって66歳だもの」


美寿々とかつ枝。

「急に東京さ行きだいって言ったのも、今思えば、虫の知らせだったかも知れねえな」

「やめろ、縁起でもねえ」


組合長が弥生を諌めました。

「もう、やり残したことねえって言ってたもんな」

涙ぐむかつ枝のことを帽子で叩きました。

「やめろって、この眼鏡会計・ネガティブ・ババア!」

… … … … …

「 … だから、橋幸夫に会いに行ったのかな?」

「ユイちゃんまで …

最後まで希望を捨てるな!」


そう自分で言ってから、慌てて言い直しました。

「いやいや、最後でねえど … 途中だあ!」

春子はユイに聞き返しました。

「橋幸夫って? … 何、橋幸夫って?」

「しまった」という顔をする大吉。

「何、春子さん知らないの?」

意外という顔で春子を見るユイ。

「会ったんだと、東京で橋幸夫に」

眼鏡会計 … かつ枝が言いました。

「知らないよ、何それ? えっ、知ってた?」

「ごめん、春ちゃんには死んでも言うなって口止めされてたもんで … 」


春子に問い詰められて、大吉は謝りました。

「何よ、何それ ~ 」

「おらたちもよく覚えてねえんだけども …

夏ばっぱが、20歳そこそこの頃、橋幸夫がリサイタルで来たんだと … その時、夏ばっぱ、花束渡したんだって」

「そんでほれ、吉永小百合の代わりに歌ったんだと」


弥生とかつ枝が春子に話して聞かせました。

「写真見てみるか? 勉さんが持ってたの」

美寿々が言うと、ユイがバッグから写真を取り出して、春子に手渡しました。

セピア色に褪せた古い写真、花束を抱えた橋幸夫と並んで写っている若き日の夏 … 

「うそでしょ?」

「んで、ほれ … 鈴鹿ひろ美さんが間さ入ってよ、アキちゃんと一緒に会いに行ったんだと」


写真を見つめたままの春子。

「 … 春ちゃん?」

大吉が呼ぶ声でハッと顔をあげました。

「何? … ちょ、ごめん、聞いてなかった。

… っていうか、可愛いね ~ 夏さん。ちょっとアキに似てる」


… … … … …

オーディション会場。

太巻やひろ美を前にしての自己PRが続いています。

アキの番が回ってきました。

「236番、天野アキ、東京都出身18歳です。

えっと、高2の夏から岩手県北三陸で海女さんをやってました … なので、素潜りには自信があります。

尊敬する人は、お祖母ちゃんと … 鈴鹿ひろ美さんです!

『潮騒のメモリー』を観て、鈴鹿ひろ美さんにあこがれて … 」

「ごめん、時間ないからそこまで」


途中でしたが、ひろ美本人に打ち切られてしまいました。

「 … ありがとうございました」

「それじゃ、次セリフいってみようか?」


… … … … …

「私、何にも知らないよ、夏さんのこと … 娘なのに何にも知らないわ、笑っちゃうくらい知らないわ」

自分でも呆れるくらいでした。

「18歳で家出るまでの夏さんのことしか知らないんだよね … いや、それも怪しいな。

何が好きかとか何が嫌いとか、全然知らないんだわ。

だって、橋幸夫とデュエットとかさ、何これ … 」


言葉に詰まる春子。

「しゃあないべ、口数の少ない人だから」

組合長はそう言いましたが、春子自身は否定しました。

「違うね … 私が知ろうとしなかったんだね」

一同、改めて春子の顔を見ました。

「自分のことばっかでさ … 夏さんのこと、口やかましい母親としてしか見てなかったんだわ。

夏さんの母親じゃない部分、見ないで来ちゃったんだね」


… … … … …

「母ちゃん、親孝行できなくて … ごめんなさい」

オーディション会場では、審査員の前で、ひとりずつ順番に同じセリフが繰り返されていました。

… … … … …

「大っきらいだったのよ、私あの歌、『いつでも夢を』 …

毎年さ、海開きの朝には、漁協の音の割れたスピーカーから聞こえてくるでしょ?」


♪いつでも夢を いつでも夢を …

「 … うんざりするのよね、あれ聞こえると。

いい歳したおばちゃんたちがさ、何朝からはしゃいじゃってんのって … あっ、ごめんね」


かつ枝や弥生がいるのに思わず口が滑った春子。

「でも、今聴いたら、たぶん違うんだろうな …

夏さんがさ、橋幸夫のファンだって知ってたらさ … ちょっとニヤニヤしながら、聴けたような気がする」


春子は立ち上がりました。

「はあ、そういうのいっぱいあるんだろうなあと思ったら、なんか悔しくなってきちゃった」

そして、夏が戦っている手術室の方を見つめました。

「どうしよう?

もしこのまま目覚めなかったら … 私、夏さんのこと知らな過ぎて泣けないわ。

情報量少なすぎて涙も出ないわ」


… … … … …

♪星よりひそかに 雨よりやさしく …

つぶやくように歌い出したのは、弥生でした。

「ええっ?」

♪あの娘はいつも歌っている

弥生だけでなく、かつ枝、美寿々、珠子までが歌い始めました。

「ちょちょちょ、ここ病院だから、うるさいといけない」

「春ちゃんも一緒に歌うべ!」


止める春子の手を弥生は握りました。

「知らないし、今嫌いだって言ったじゃん」

「じゃあ、ユイちゃん」


ユイを振り返る弥生。

「ユイちゃんも知らないから」

♪声が聞こえる …

しかし、続きを歌い出すユイ。

「じぇじぇっ?」

ユイにつられて、組合長と大吉も加わります。

♪  … 淋しい胸に 涙に濡れたこの胸に ~

待合室で合唱が始まってしまいました。

… … … … …

次はいよいよアキがセリフを言う番です。

立ち上がるアキ。

「母ちゃん、親孝行できなくて … ごめんなさい」

渾身の思いを込めたセリフでした。

アキを見つめるひろ美 …

… … … … …

♪言っているいる お持ちなさいな いつでも夢を いつでも夢を …

いつしか春子も皆の歌の輪に加わっていました。

背後から近づく人影。

「見て!」

ユイが指した方向を一同が振り向くと、そこに手術を終えた医師が立っていました。

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2013年08月18日 (日) | 編集 |
さて、次週の「あまちゃん」は …

アキ(能年玲奈)と春子(小泉今日子)のもとに、夏(宮本信子)が倒れたという連絡が入る。

最後まで希望を捨てるなよ

心配するアキを制止し、春子が一人、北三陸に旅立つ。駆けつけた春子がみまもる中、夏は心臓の大手術を受ける。

生きてる限り大事じゃねえ時期なんてねえし

その頃、アキは太巻(古田新太)がプロデュースする映画のヒロイン役のオーディションを受けていた。それは、かつて春子が秘密裏に主題歌を歌った『潮騒のメモリー』のリメイク作品だった。さまざまな思いを胸に、審査に臨むアキ。

もしこのまま目覚めなかったらさ、あたし夏さんのこと知らな過ぎて泣けないわ

夏の心臓の手術は無事に成功、アキはその知らせに安堵し、春子は夏に付き添い、しばらく北三陸にとどまることを決める。

その間、自宅で種市(福士蒼汰)と二人っきりになり、ドキドキする中、アキの異変に気づいた春子が水口(松田龍平)を自宅に走らせる。

天野を吹き替えにしたら、また後悔することになるぞ

そして映画のオーディションはいよいよ最終審査に。太巻が厳しい目を光らせ、ライバルにはかつてのGMTの仲間・小野寺薫子(優希美青)がいる中、アキはヒロインの母親役の鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)との芝居のテストに挑む。

さっさと行け!

親孝行できなくて、ごめんなさい!


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2013年08月17日 (土) | 編集 |
第120話

< 母親とマネージャーににらまれながら、彼氏からの電話さ出ま~す >

「もしもし、天野です … じぇっ? じぇじぇっ、じぇじぇじぇっ?!」


種市が電話で伝えてきた情報をアキは思わず春子に教えてしまいました。

「ママ大変、『潮騒のメモリー』がリメイクされるって! … 太巻さんと鈴鹿さんが寿司屋でしゃべってるって!」

「 … あんた誰としゃべってるの?」


… … … … …

「いや、自分も断片的にしか聞いてねんだけど、確か天野の好きな映画だったなと思って」

「覚えててくれたんだ ~ 」

「あたっりめえだ … 彼氏だもの」


横から春子の手が伸びてアキの携帯を取り上げました。

「それ確かな情報なの? … っていうか、どちらさん?」

いきなり電話の相手が春子に代わって、慌てる種市。

「あ … 自分、種市です」

「あ~ら、南部ダイバー … ねえ、リメイクっていうことはさ映画になるのよね、そうよね?」

「自分も断片的にしか … 」

「主題歌はどなたが歌うんですか?」

「あ~、鈴鹿さんも同じこと気にしてました」

「ははは、そりゃそうよね … っていうか、それどこから湧いた話?

鈴鹿発信、太巻発信、誰発信?」


余り具体的なことを突っ込まれても、種市は「断片的にしか」と答えるだけです。

「太巻発信だったら、私許しませんから!」

まるで尋問するかのような春子の迫力に20歳過ぎた男が泣きはじめました。

「断片的にしか分かんねえから!」

「種、どうした? 大丈夫か?」


様子がおかしい種市を見て、梅頭が声を掛けました。

「ヒロインは、誰がやるの?」

「お、おおお、お … 」


嗚咽しながら、答えた種市 …

「オーディション?!」

… … … … …

リアス。

「ユイちゃん、これ見た?」

吉田がスポーツ新聞を持って駆け込んできました。

「何?」

受け取った新聞の芸能欄に大きく『“潮騒のメモリー”リメイク決定』の文字がありました。

「じぇじぇっ?!」

ユイより早く驚く大吉。

「『潮騒のメモリー』っつったらおめえ!」

「♪来てよ その火さ 飛び込んで ~ だべ?」


保の歌は微妙に間違っていました。

「いやいや ♪好きよ 大吉 抱きしめて ~ だべ?」

「いやいや ♪ダメよ 刺青 お断り ~ だべ?」


大吉と吉田、もうワザと外しています。

「いやいや ♪白いカモメか 波しぶき ~ だべ?」

「うるせえ、南部ダイバー!」


自分は棚に上げて、磯野を一喝した吉田。

♪来てよ その火を 飛び越えて ~

ユイの歌の後に続けて、男たちは声を合わせて歌いました。

♪砂に書いた アイ・ミス・ユー

「いいなあ ~ !」

「 … っていうか、大吉さんのはちょっと引きました」


そうユイに言われて、ショックを受ける大吉。

「なすて、俺だけ? … 」

… … … … …

吉田が記事を読み上げ始めました。

「伝説のアイドル映画が、25年の時を経て今よみがえる。

メガフォンを取るのは、稀代のヒットメーカー太巻さんこと荒巻太一、アメ横女学園、GMT5のプロデューサーにして振付師 … 交代」


吉田は新聞を磯野に渡しました。

「 … コンパニオンに囲まれて、カニ三昧の宴会の後は魅惑の温泉が … 楽園へようこそ … 」

… … … … …

純喫茶アイドル。

ドアを開けて入ってきたのは、河島でした。

「ごめんなさい、わざわざ来ていただいて」

この店を指定したのは水口でした。

「いやいや、アメ横じゃ、社長に会ったら気まずいもんな … 読んだ?」

河島はカウンターに置いてあった『潮騒のメモリー』の記事が載っている新聞を指しました。

「ええ、結構でかく扱われてますよね?」

「さすがの企画力だよ、鈴鹿ひろ美を引っ張り出すとは … 」

「結構、集まってるんですか、応募?」


2,000通くらいは集まっていることを知って驚く水口。

「 … うちの天野アキも出しました。書類、ダメもとで」

… … … … …

「ユイちゃんも送ったらいいのに」

大吉が言うと、保も賛成しました。

「んだんだ、一般公募っつったら、誰が送ってもいいんだべ?」

「いいです、私は」

「ユイちゃんがヒロインさ選ばれたら、北鉄の知名度はさらに上がるべ」


打算いっぱい悪い顔の大吉。

「だけど、私なんかが選ばれたら、頑張ってるアキちゃんに悪いもん」

「さすが、自分が選ばれること前提だ … 」


感心する、保 … あり得ないことではありません …

「いやいやいや … 」

「見てえなあ ~ ユイちゃんがヘビを飛び越えるの」


しみじみと言った、吉田。

「こういうのは、あれだべ?

本人でなく、お兄ちゃんが勝手に送っちゃうパターンだべ?」

「えっ、送った方がいい?」


磯野に言われて、ヒロシはユイに確認しました。

「いいよ、やめてよ!」

「またまたまたまた ~ 」


声をそろえる男たち。

「よし、足立ヒロシ … 履歴書、買ってこい!」

席を立とうとしたヒロシをユイは止めました。

「本当、やめてください!」

「まあまあまあまあ ~ 」


… … … … …

ふたたび、アイドル。

「例えば、演技経験ゼロの子でも可能性あるんですか?」

水口に聞かれて、河島は吹き出しました。

「何おまえ、本当に一般公募だと思ってるの?

ははは、お前素人じゃないんだから … 」

「 … 出来レースか」


水口は失望して新聞を放りました。

「まあ、どっちみち、天野は太巻さんに盾ついて辞めたんだから … 200パーセントあり得ませんよね」

「それがそうでもないんだわ … 」

「えっ?」


ここからが本題と前置きして河島は話しはじめました。

「小野寺ちゃん、カナヅチなんだわ。

で、天野泳げるだろう? … 海潜ってウニ取ってたんだろう?」

「ああ、それで呼び出したんすか? … なるほど」


水口は、アキの特技を生かした抜擢かと理解しました。

「水ん中だったら、背格好違うけど分かんないと思うんだよね」

しかし、すぐにそれは勘違いだったことに気づきました。

「ということで、そういう前提で書類審査は合格すると … 」

「吹き替え要員だったら、お断りします!」


声を荒げた水口、河村は慌てて周りを気にしました。

「バカにしないでくださいよ!

ずっと奈落に押し込められて、ようやく陽のあたるところに出たのに … 何が悲しくて、またシャドウやんなきゃいけないんすか? … しかも昔の仲間の!」


水口は席を蹴って立ち上がりました。

「この話、聞かなかったことにします」

「おい、待てよ、水口!」


店の出口に向かう水口 … その時、扉が開いて、入って来たのは、太巻でした。

… … … … …

太巻と対峙する水口。

「うわっ、太巻さん! 懐かしい ~ 」

甲斐はカウンターを飛び出しました。

「ご無沙汰しています」

「彼ね、ここの常連だったの! 25年くらい前かな … 幾つになったの?」

「51です」


懐かしさのあまり、あれこれ口走る甲斐。

自分の年齢が65歳だと改めて確認して愕然としています。

… … … … …

< 数日後、合格通知が届きました >

書類審査に合格したアキは有頂天で『潮騒のメモリー』を歌っています。

オーディションは明日、場所は東京EDOシアター、受験番号は236番です。

「まあ、1次なんてこんなもんでしょ … 浮かれてないで、面接ちゃんと頑張んなさいよ」

春子はアキにクギを刺しました。

「でも、なすてだべ?

ママと太巻さんはハブとマングースだべ?」


天敵という意味のようです。

「その娘がなすて受かったんだべ?」

アキでなくても不思議に感じるところです。

水口はその理由を知っていました …

… … … … …

話は数日前、太巻がアイドルに現れた時点に戻ります。

「君の事務所に悪意があるわけではない … ただ、『潮騒のメモリー』は俺にとっても起死回生のカードだ。

GMTをトップアイドルにするために是非とも小野寺で行きたい」

「いいよね、小野寺ちゃん … 熱いよね?」


口を挟んだ甲斐ですが、太巻ににらまれて黙り込みました。

「だが、鈴鹿さんの出した条件は、オーディションでヒロインを選ぶこと … その真意は天野にチャンスを与えるということは明白だ。

つまり、これは折衷案なんだ。

どちらも立てるためにはこうするしかないんだ」

「うちの天野を影武者として使うことが折衷案ですか?」


水口は納得がいきません。

「『潮騒のメモリー』は、俺と鈴鹿さんが出会った作品だ」

「天野春子もですよね」

「黙れ!

… 今からその話をする」


… … … … …

「もう落ち着かないんだよ!

鈴鹿さんが天野を可愛がっているのを見ると … 何かこう罪滅ぼしをしているみたいでさ!」


『天野さんクビにするなら、私も辞めますから … 女優を辞めるんです』

「でも、鈴鹿さん、ご存じないんですよね? 春子さんが歌ってること」

「俺の前ではそういうことにしてる。

でも、分かるだろう、普通?

声全然違うし、片や絶対無理音感だよ … 知っててダマされたふり続けているんだよ、25年も。

たち悪いよ …

罪滅ぼしなんかしなくていいんだよ … 悪いのは全部俺なんだからさ!」


『私の声がレコードになるんですか? … 鈴鹿ひろ美の名前で?』

… … … … …

席を外させられてた河島が店に戻ってきました。

「社長、そろそろ次のお仕事が … 」

席を立った太巻。

「ま、そういうことだから … お前の方から天野の説得頼むよ。

悪いようにはしないから」


そう言って店を後にしました。

「『悪いようにしないから』か … 何か聞いたことあるな。

あっ、春ちゃんか」


甲斐が独り言のようにつぶやきました。

『君自身のデビューのことも、ちゃんと考えてる … 悪いようにしないよ』

「『悪いようにしないから』って、悪い奴のセリフだよね?」

水口の顔を見て、苦笑いしました。

… … … … …

アキは書類審査に通ったことをユイに電話で報告しました。

「じぇじぇ、何それ、すごくない?! 皆に言っていい?」

自分のことのように喜び興奮するユイ。

電話をハンズフリーに切り替えて、早速、目の前にいる梨明日の皆に報告しました。

歓声を電話で聞きながら、アキは少し照れながら言いました。

「書類だよ、書類、これから1次審査だから … つうかユイちゃん、夏ばっぱ来てる?」

「夏さん? … 来てないよ、お休みだから」

「うそ、家さ電話したけど、出なかったよ」


夏には大吉が明日の朝、家に寄った時に伝えてくれるそうです。

「でもよかったね本当に、夢に一歩近づいたじゃん」

「今のうちにサインもらわねえとなあ!」


勉さんの大きな声が聞こえました。

「頑張ってね!」

「うん、ありがとう」


… … … … …

< そして、オーディション当日 >

「おはよう、夏ばっぱ ~ ウニ丼取りさ来たぞ」


入口の戸を開ける大吉 … 夏の姿が見当たりません。

「夏ばっぱ!」

声を掛けても返事がありません。

「 … まさか、また海さ行ったか?」

しかも、こんな早い時間に …

ふと、作業小屋の戸の隙間から猫が中を覗いて鳴いているのが見えました。

「夏ばっぱ!」

作業小屋の戸を開ける大吉。

… 床に夏が横たわっていました。

「夏ばっぱ?

ばっぱ、夏ばっぱ! 夏さん、おいっ、夏さん!!」


… … … … …

「アキ、面白いこと言おうとしなくていいんだぞ、普段通りで十分面白いんだから」

アキの絣半纏を用意しながら正宗は言いました。

その時、春子の携帯にメールの着信。

開いた途端、鼻で笑った春子は画面をアキに見せました。

『お母さん倒れた!(‘jjj’)/』

「大吉っつあん?」

「 … しかいないでしょ、こんなことすんの!

気にしなくていいからね」


24年ぶりに春子を北三陸に呼び戻した時と同じ内容でした。

「アキはオーディションに集中!」

しかし、昨日の電話のこともあってか、何か胸騒ぎがするアキ。

「ママ!」

「早く支度して」


しかし、今度は家の電話がけたたましく鳴ります。

やはり何か感じていたのか、誰よりも早く受話器を取ったのは春子でした。

大吉の切羽詰ったような声が耳に飛び込んできました。

「ウソじゃねえって、今度は!!

夏ばっぱ、呼んでも返事しねえんだよ!」


夏は今、大吉の知らせで駆けつけた救急車に運び込まれるところでした。

受話器を耳に当てたまま、動けない春子。

「どうしたの? ねえママ、ばっぱどうしたの?」 

騒然としている電話の向こう、かつ枝が何か懸命に春子に伝えようとしています。

「春ちゃん、春ちゃん … どうした、春ちゃん、聞こえてるか?」

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2013年08月16日 (金) | 編集 |
第119話

< 2010年9月、ようやく天野アキの人気に火がつきました … といっても、まだまだネット上の話です。

海女さん時代の動画、お座敷列車、海女カフェの映像から、最近のGMT時代の動画や『見つけて こわそう』の名場面など … それがきっかけでテレビ出演のオファーも増えました。

一方、上野方面には … 暗雲が立ち込めていました >


オフィス・ハートフル企画会議。

チーフマネージャーの河島の報告を太巻は渋い顔をして聞いていました。

「え ~ GMT5のセカンドシングル『地元サンバ』の初動ですが、関東地区が7位、関西地区が6位、配信の方は順調に伸びまして、初登場4位となっています」

スタッフが拍手するのを制して太巻は言いました。

「拍手要らない、時間もったいないから … どうして1位取れなかったんだろう?」

渋い顔の訳は、ランキングのせいだけではありませんでした。

手元にある雑誌のグラビアで事務所をクビにしたアキを目にしたからです。

単独で数ページ取り上げられるということは、それなりの人気が出てきた証拠でした。

「自分ノセイカモシレナイネ … 」

そう発言したのは、アキに代わってGMT5のメンバーに加わったベロニカでした。

「自分ガ、せんたー取ルノ早スギタ感ハ否メナイヨネ?」

「そ、そんなことない、ベロニカ … っていうか、メンバーは企画会議に出ちゃいけない」


いつの間にか、会議の席についていたベロニカを河島は注意しました。

「まにあっくナ方向ヘ振リ過ギタ感ハ否メナイヨネ?」

カタコトの日本語でネガティブな発言を続けるベロニカ。

「ベロニカ、そんなことはないけど … ちょっと、取りあえず1回外出ようか?」

河島はベロニカを会議室から追い出しました。

「ブラジル人なのに、全然陽気じゃねえな … 」

太巻は気を取り直して、河島に資料を配らせました。

「ここに来て、GMTおよび本体のアメ女含めて、過渡期に来ているなというか、伸び悩み感は否メナイヨネ?」

誰かの口調がうつっていました。

「そういう時は、新しいことにチャレンジしようということで … 」

太巻がホワイトボードをくるりと回すとそこには … 『太巻映画祭』と大きな文字で書かれていました。

「太巻、映画撮ります!

… つきましては、企画を募集します!!」


… … … … …

テレビ局の楽屋。

絣半纏、海女の衣装でアキは出番を待っています。

後ろに控えている水口、アキのグラビアを何故か厳しい眼差しで見つめていました。

そして、アキが楽屋を出る際にひとこと尋ねました。

「アキちゃん、彼氏できた?」

目を見開くアキ。

「間もなく本番で~す!」

… … … … …

「 … 本日のゲスト、教育テレビ『見つけて こわそう』で話題沸騰のご当地アイドル、天野アキさんです」

女性司会者に紹介されても、アキはさっきの水口のひとことが気になってうわの空でした。

「アキちゃんは、北三陸で高校生の時に海女さんとして海に潜っていたということで … 今日はそのコスチュームでご登場願いました … 」

< なすて? … なすて、水口さんにバレたんだべ? >


種市に告白した時、水口は寿司屋の中にいたはずでした。

< ひょっとして … ?! >

アキは頭の中で、物陰からふたりの様子を覗いて、ニヤリと笑った水口のイメージを勝手に想像していました。

< あり得る! … ってことは、知ってて泳がせたな ~ チクショウ … 大人って怖えっ >

『CMの契約は1年間だから、その間は恋愛禁止だから … しょうがないですよね、キャッチコピーが“受験が恋人”ですもんね』

… … … … …

「 … アキちゃん、ねえ、アキちゃん?」

「あっ、はいっ!」


司会者の呼びかけにようやく応えたアキでした。

「最近どうですか … お仕事は?」

「今は、恋人がお仕事です」

「アキちゃん?」

「今は、恋人がお仕事です」

「 … え、アキちゃん、それはどういう意味なのかな?」


水口の言葉が頭の中をぐるぐる回っていて、おかしなことを口走ってしまいました。

「あ、間違えた! … お仕事は恋人です!」

オフィスでその様子を見ていた春子。

「 … ばか?」

「あれれ?」


… … … … …

放送事故と紙一重 … 何とか乗り切ったものの、生放送なので、そのまま全国のお茶の間に流れてしまいました。

純喫茶アイドル。

「『仕事が恋人』でしょ?」

「 … すいません」


水口は、アキのグラビアが載ったページを開いてテーブルの上に置きました。

「これ見て、ピンと来たんです。

男が出来ると顔つきが変わるって、昔、太巻さんから教わったの … 口元が緩んだり、目の瞳孔が開いたり、焦点が合わなくなったり …

覚えてるよね? ここで予備校のCMの面接したの」


『そういったスキャンダル等が出ますと、契約破棄になりかねないので … 』

今にも泣き出しそうな、いやすでに泣いているアキ。

「ううう … 」

「いちいち泣かない!」

「だって、だって … 叩かれるもの」


何といっても、一番怖いのは母、春子でした。

「 … 知るかっ

で、相手は誰? … いつ知り合って、いつからつき合ってるの?」


水口が問い詰めてもアキは口を開こうとしません。

「 … 言えないか?

じゃあ、ひとつだけ教えて … 板前、板前じゃない?」


またも目を見開くアキ。

「ふっ、板前かよ」

… … … … …

無頼鮨。

座敷に鈴鹿ひろ美と太巻、河島がいるところを見ると … 何やらビジネスの話のようです。

「こちらをご覧ください」

河島がひろ美に資料を手渡しました。

「太秦 … 太巻?」

表紙を目を凝らして、見返すひろ美。

「太巻映画祭です」

「まあ、ちょっと恥ずかしいんですが … 」


河島の説明に太巻は照れながら頭を下げました。

オフィス・ハートフルの全面出資で気鋭の映画監督9人の新作映画を製作するという企画でした。

「条件はですね … うちのタレントを主演に使って、純然たるアイドル映画である … それだけです」

「土足で踏み荒らすわね ~ 」

「CDやDVDが売れなくなってきてる … もはやピークは過ぎています。

アメ女もGMTも余命1年か2年、その後ソロとして誰が生き残れるか? … 逆算して、戦略を立てないと。

… とはいえ、確実にコケるでしょう」

「いつになく弱気ね」


ひろ美は意外という顔をしました。

「いや、むしろ強気です。

… 引き際も自分らしさを貫き通したいだけですから」


… … … … …

資料をめくる、ひろ美。

作品のラインナップを見て、怪訝な顔になりました。

9本と聞いていた作品が10本載っているのです。

そして、最後に挙げられている作品のタイトルは …

「この『潮騒のメモリー』って、あの『潮騒のメモリー』じゃないわよね?」

「あの『潮騒のメモリー』です」

「監督の荒巻さんっていうのは?」

「 … 私です」


太巻は言い切りました。

「(交渉中)って?」

「交渉中です」


ふたりしてひろ美のことを指しました。

「じぇじぇじぇっ!」

< 鈴鹿さんの口から、渾身のじぇじぇじぇが飛び出したところで、お忘れの方のためにも、映画の概要を … >


… … … … …

< 『潮騒のメモリー』は、1986年に公開された、鈴鹿ひろ美のデビュー作です >

舞台は、宮城県沖に浮かぶ架空の島『鈴鹿島』。

貧しい漁村に生まれた少女『ひろ美』と漁師の『新助』、ふたりの若者の悲恋を描いた名作です。

特に語り草にもなった名場面 …

「飛び越えて来い! … 新助、私が好きなら、そのヘビを飛び越えて来い!」

… … … … …

「ヘビのシーンはカットします」

敢えて語り草になったシーンをカットするという太巻。

「ああ、そうね … その方がいいわね。

っていうか、ねえ本当にやんの?」

「権利は取れそうなんです … あとは主演女優次第です」


太巻の横で河島もうなずいています。

「いや、無理無理無理 … お断りします」

「鈴鹿さんのデビュー作であると同時に、私の原点でもあるんです。

お願いします!」


ふたりの男に目の前で頭を下げられても、ひろ美は断りました。

「できません、17歳の海女の役なんて …

無理よね、隊長?」


何故かしら、そう呼ばれて … それでも敬礼する梅頭。

呆気にとられた顔でひろ美を見つめる太巻と河島。

「何よ? 見えないでしょ、17歳には … どんな技術駆使しても」

目じりを押さえてあげてみせるひろ美。

「はい … っていうか、主演じゃねえっす」

「えっ?」

「一番最初に申しましたが、うちの所属タレントを主演に使った純然たるアイドル映画だと」


やっと勘違いに気づいたひろ美でした。

「そうよね … ははは

分かってますよ、どうせ母親役でしょ?」

「図々しいな」

「図々しいですね」


うなずき合った太巻と河島、それに便乗して梅頭まで …

「図々しいですよ」

ひとりだけ、ひろ美ににらまれました。

… … … … …

「主演は彼女を考えています」

促されて、座敷に上がってきたのは … 薫子でした。

「以前ここでお会いしました、GMT5の小野寺薫子 … 宮城県出身の16歳です」

「ああ、なるほど … 宮城が舞台だもんね」

「はい! 宮城と言えば … 」


いつもの挨拶を始めると、ふたりが合いの手を入れました。

「ずんだ、ずんだ」

「 … 結構です」


ひろ美はこのアメ女流の挨拶が好きではないようです。

「リメイクと申しましても、そのままやる訳ではございません。

設定だけ踏襲して、ストーリーは大幅に … 」

「ラストシーンは?」


河島の説明を遮って、ひろ美は尋ねました。

「エンディングですよ、主題歌が流れるでしょ?

… 今回は誰が歌うんですか?」


意味深な質問でした。

< そうです … 『潮騒のメモリー』のラストシーン、荒れ狂う海と夕陽を背に立つ主人公、ひろ美 … そこで流れる主題歌は、涙なくして聞けません。

それを歌っていたのは、誰あろう … 若き日の天野春子でした >


… … … … …

春子は、社長席でパソコンの画面に見入っていました。

今日の放送の反響は大きく、アイドル関連の掲示板にはスレッドが立てられてお祭り状態です。

やっちまったな

司会者も真っ青

じぇじぇじぇの天野アキ

はい、彼氏の存在、決定! …

しかし、春子の機嫌は決して悪いわけではありません … かえって話題になるくらいに思っているようです。

そんな春子の顔色を窺うかのようにオフィスに入ってきたアキは、こそこそとソファーに座りました。

「何よ?」

アキの態度を不審に思った春子が尋ねました。

「 … 何でもねえ」

< どうすべえ … やっぱ、ママに言うべきなのか? >


そこへ水口が帰ってきました。

「ねえ、すごい反響じゃない? パークスタジオ」

「あ、そうなんすか?」

「見て、『恋人がお仕事です』って勝手に動画が作ってアップしてるやつがいる」


それは、インタビューを受けている相撲取りの高見盛の声がアキの「恋人がお仕事です」に差し替えられているという他愛のないモノでした。

「ヒマな奴がいるもんすね ~ 」

< 言えねえ、彼氏がいるなんて … 恋人が板前なんて、口が裂けても言えねえべ >


… … … … …

ふたたび、無頼鮨。

「分かりました、やりましょう」

ひろ美の言葉に、ホッと胸をなでおろす太巻たち。

「ただし、ひとつだけ条件出させて … ヒロインはオーディションで決めましょう」

「わ、私は?」


戸惑う薫子にひろ美は言いました。

「あなたも受けなさい … 私が立ち会って決めます。

ごめんなさいね、私が関わる以上、コケるなんて御免ですから」

「 … いいでしょう」


太巻はひろ美の申し出を受け入れたのでした。

… … … … …

アキの携帯に着信 … 種市からです。

「じぇっ!」

「誰から?」


春子に聞かれて、曖昧に誤魔化すアキ。

「うん、ちょっと … 」

「出なさいよ」


アキは水口の視線が気になって出ることができません。

そっと席を立ちオフィスを出ようとしましたが … 呼び止められました。

「何処行くの?」

「 … トイレ?」

「さっき行ったばっかじゃない」


アキは観念しました。

< 母親とマネージャーににらまれながら、彼氏からの電話さ出ま~す >

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2013年08月15日 (木) | 編集 |
第118話

『許してもらえなくてもいいんだって、それでも家族に会いたいんだって … 謝りたいんだって』

< こうしてユイちゃんのお母さんは北三陸さ帰りました。

… 当然、ユイちゃんは受け入れることができませんでした >


『ごめんなさいで済むわけないじゃん!

私、高校辞めたんだよ! … 何もかもあきらめたんだよ!』

< 東京さいるおらにできることは、これぐらいでした … >

アキから送られてきたヘン顔のメールを見て、泣き笑いのユイでした。

… … … … …

「 … 返って来ねえな」

ユイにヘン顔のメールを送ったアキと種市。

今の状況を予想すると、返信がなくても当然のことです。

「来るわけねえべ、それどころじゃねえべ」

「んだな、なにしろ1年も失踪してたんだもんな」

「 … 今ごろ、修羅場だ」


ユイのことを考えると胸が痛むアキでした。

「考えたら、可愛そうなやつだよな、ユイも … 後先考えずに東京さ来ちまえばよかったのに」

アキは東京EDOシアターを見つめました。

… もしユイが東京に出て来ていたら …

「先輩、それは今だから言えることだぞ。

まして、ユイちゃんは夢も希望もあったんだもの … 」


『アイドルになりたい!』

「ああ、何だかな … せっかく天野とつきあったのに、顔を合わせるとユイの話ばっかりだ」

少し不満そうに種市は言いました。

「しゃあねえべ … ユイちゃんは、おらたちのアイドルだもの」

「んだな … 」


その時、アキの携帯に着信が … ユイからの返信でした。

「おっ!」

慌ててメールを開いたアキが笑い出しました。

「じぇじぇじぇ」

「何、どうしたどうした?」


アキの携帯を覗き込んだ種市も、思わず吹き出しました。

メールに添付されていたのはお返しのヘン顔でした。

「すげえよ、やっぱユイちゃん、かっけえよ」

そう言っているうちに、種市にも返信が届きました。

「うわっ、すっげえ顔」

さっきの顔に劣らぬヘン顔が返ってきました。

ユイは思ったより元気なのかと、少しだけ安堵したふたり。

アキは画像を上へスクロールさせて、本文を表示させました。

そこに書かれていたのは …

『アキちゃん、逆回転してよ ( T jjj T ) 』

『逆回転』それは、アキが出演している番組『見つけて こわそう』の中で持っている … 壊れたものを時間をさかのぼらせて元に戻すという不思議な力でした。

アキの脳裏に、春子がよしえに言った言葉がよみがえりました。

『逆回転できないもんね、人生は … 』

ユイがどんな思いで、このメールを打ったのか … アキは言葉を失くしていました。

… … … … …

「春子さんが言ったのか? 逆回転できねえって … 」

保が聞き返すと、よしえはうなずきました。

「ええ、壊れたら壊れっ放し、元には戻らないって」

「それはまあ、それは春子にしか言えねえ言葉だな」


夏が言ったことに、納得する一同。

その春子が、ずっとユイの面倒を見ていたことを、勉さんがよしえに伝えました。

「それも伺いました」

『あなたが家出したせいで、ユイちゃんが荒れたこととか … 髪の毛染めて、悪い仲間とつるんで … 高校辞めちゃったこととか、知らないでしょ?』

「想像もつかなくて、あの子のそんな姿 … 」

「お、写真ならありますよ」


今野が当時写した写真をよしえの前に置きました。

「今野さん、そんな空気じゃねえべ!」

… 大吉の他にも空気を読まない男がいました。

「しかも皆さんに優しくしていただいたおかげで立ち直って、海女さんになったことも … 」

今野が渡した髪を染めていた頃のユイの写真を見ながら、よしえは言いました。

「なんか悔しくて … 」

「 … 悔しい?」


夏が聞き返しました。

「だって、あの子 … 弱い自分さらけ出したってことでしょ?

それができたら、どんなに楽かって思いながら、日々暮らしてましたから。

でも、あなたが倒れて … 」


よしえは言葉に詰まりました。

「何だ? 言いてえことは、全部言っちまえ」

「んだ、ここはスナックだ … 犯罪以外は何でも許される場所だ」


と、美寿々と弥生 … そこまで自由でねえですが …

… … … … …

「夫のいない生活、想像して怖くなったんです。

私何のために感じのいい奥さんやってたんだろうって … 子育て終わったら私終わりって …

かと言って、よそ者だし … 今更、じぇじぇじぇとか言えないじゃないですか」

「それで、財布だけ持って飛び出して来たのか?」


弥生に聞かれて、うなずくよしえ。

かつ枝は「現実逃避」、美寿々は「ひとり駆け落ち」だと言いました。

「 … 何もかんも、やんだぐなったってわけだ」

「なすて帰ってきた? … 春子さんさ説教されたからか?」


珠子が尋ねました。

しかし、首を振ったよしえ。

「春子さんには、むしろ止められました … 許してはもらえないって。

だけど、帰ってきたのは、やっぱりここが好きなんだと思います … ここで、家族と一緒に過ごした時間が、その思い出が、暗い過去になるなんて耐えられないから」


よしえは立ち上がって、さっきからずっと黙って話を聞いている功に向かって言いました。

「許してくれなくて構いません … 家に置いてください」

そして、同じように黙ったままのヒロシの方も向きました。

「元通りに修復できるなんて思ってません … 特にユイのこと、ユイのことは … 取り返しのつかないことしちゃった」

泣き崩れるよしえ。

「母親失格です! … だけど一緒にいたいんです。

また4人で暮らしたい」


功は、嗚咽しているよしえの肩に手を置いて言いました。

「元通りになんか、ならなくてもいいよ。

だって、ここにいる皆さんは、皆もう君が弱い人間だってこと知ってるんだから」

「んだな、逃げて帰ってきたんだから … もうよそ者じゃねえ」


大吉の言葉に皆がうなずきました。

「私だってな、以前の体じゃない … ヒロシもユイも1年前とは違う … 何もかも元通りじゃないんだよ。

まあ、ヒロシはよくやってくれてるけど、父さんお前には看取ってほしくない」


ヒロシは功の顔を見返しました。

「できれば、母さんがいい!」

功の言葉に女性陣から拍手が起こりました。

「だからいいな?」

「 … 親父にそう言われたら、そうするしかない」

「ありがとう、ありがとうございます … 皆さん、ありがとうございます」


よしえは皆に向かって涙ながらに頭を下げました。

「堅え、堅えべ、頭なんか下げんなよ ~ 」

美寿々が飛んできて、よしえの肩を抱きました。

その前に立ちはだかったのは、かつ枝です。

「よし、試しにおらのこと、『眼鏡会計ばばあ』って呼んでみろ」

「 … 眼鏡会計、眼鏡ばばあ」

「眼鏡ふたつも!」


一同が、どっと笑いました。

「おらのこと、アンジェリーナ・ジョリーって呼んでみろ」

弥生の無理難題に、また一段と高まる笑い声。

「ありゃ、夏ばっぱ何処さ行った?」

珠子の声で一同、夏がいつの間にかいなくなっていたことに気づきました。

… … … … …

「ただいま ~ 」

玄関の扉を開けた夏、家の中は真っ暗、迎える人はいません。

夏が灯りを点け、その後からユイが夏の荷物を抱えて入ってきました。

「悪いな、ユイちゃん … おら、長旅で疲れちまって」

梨明日からここまで荷物運びにユイの手を借りたのでした。

… いや、それを口実にユイをあの場から連れ出したのでしょう。

… … … … …

夏は茶の間の自分の指定席に着くと、大の字になってひっくり返ってしまいました。

台所でのどを潤しながら、ユイが尋ねました。

「どうだった、東京? 橋幸夫に会ったの?」

夏はうれしそうに笑っています。

「あ・え・た … へへへへ」

「よかったじゃん」


思い出し笑いをしている夏。

「アキちゃん、元気だった?」

「ああ、あいつは何も変わってねえ」

「だけど、東京でもそこそこ有名人なんでしょ?」

「そんなこと気にする奴じゃねえ、アキは … 相変わらず、びゃーびゃーびゃーびゃーうるさかった」


アキらしいなとユイは思いました。

「さすが、かっけえな … アキちゃんは」

アキとユイ、ふたりはお互いがお互いにとっての『かっけえ』存在でした。

… … … … …

「ユイちゃん」

突然、真顔になった夏がユイに尋ねました。

「お母さんと仲良くできっか?」

「 … わかんない」


少し考えてから、答えたユイ。

「わかんないけど、何だろう … 顔見た瞬間は何だろう … わあって抱きつきたいような … 」

「そりゃ、おめえ … 親子だもんな」

「 … 抱きつかないけどね」


何度もうなずく夏 … 自分と春子のことと重ねていたのかも知れません。

「だけどなんだか、自分の限界感じたっていうか … 所詮、子供なんだなって思った」

ユイは、飲み物を手に茶の間に移りました。

「ねえ、他には? 橋幸夫にしか会ってないの? … お台場とか、秋葉原とか行ったんでしょ?」

しかし、夏から返事は戻ってきません。

「ねえ、ばっぱ?」

横たわっている夏の顔を覗きこんだユイ。

夏は目を開けたまま、ピクリとも動きません。

「ばっぱ、ばっぱ!」

ユイは、慌てて夏の肩を叩きました … 反応がありません。

「ヤバい、どうしよう?!」

… … … … …

「ああ、心配ねえ … 眠ってる証拠だ」

電話でアキにそう言われて、ユイは改めて夏の顔を見直しました。

「眠ってる? … これが寝てるの?」

「夏ばっぱ、目半分開けて眠るんだ」


よくよく耳を澄ますと、夏の寝息が聞こえてきます。

「そうなんだ … 」

取りあえず、胸をなでおろしたユイ。

「 … お母さんに会った?」

「うん、ちらっと」

「いがったな」

「 … いがったのかな?」

「だって、足立家再結成だべ?」

「バンドじゃないけどね」

「 … つうことは、『潮騒のメモリーズ』も再結成だ」


アキは壁に貼った、お座敷列車の時の写真を見つめていました。

「水口さんも会いたがってるべ … 」

『僕はあきらめてないよ!

絶対いつかデビューさせる … アキちゃんとふたりでまた“潮騒のメモリー”歌ってもらうから、お座敷列車で … いや、なんなら満員電車で歌ってもらうから、その時は頼むよ!』

「アキちゃん … もう無理だよ」

「なすて?」

「私もう来年20歳だよ … 」

「おらも20歳だ!

歳なんか関係ねえべ、20歳だろうが、30歳だろうが、40歳だろうが、ユイちゃんは皆のアイドルだ!」


決して、慰めでもお世辞でもない、アキの偽らざる本心でした。

「 … アキちゃん、いつもありがとうね」

「うん、おやすみ … 」


… … … … …

電話を切ったアキは、ユイのヘン顔をもう一度見返しました。

同じようにユイも、アキの写真を見ていました …

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2013年08月14日 (水) | 編集 |
第117話

< 夏ばっぱは、あこがれの橋幸夫さんに会うことができました。

しかも、橋さんは、女優の鈴鹿ひろ美さんのことは覚えてなかったにも関わらず、夏ばっぱのことは … バッチリ覚えていたのです >


… … … … …

< 夏ばっぱが橋幸夫さんと感動の再会を果たしていたちょうどその頃、大吉さんと正宗さんは … >

正宗の案内で東京見物に周っているふたりは、純喫茶アイドルで一服しているところでした。

「東京さ来て今日で3日になるな …

今日は朝から、あっちゃこっちゃ連れてってもらった。

井之頭公園、スーパー銭湯、駒沢公園、スーパー銭湯、代々木公園、スーパー銭湯 … 」

「いや、何処案内していいか、分からなくて」

「汚れて、洗って、汚れて … 童心に帰った、楽しかった」


少しホッとした表情の正宗です。

「テレビで観たラーメン屋さん行きてえって言ったら、名前も分からねえのに探してくれて … 行列ができてたら、サッと抜け道さ入って、上野美術館のエジプト展さ連れてってくれた。

おかげで並ばずにラーメン食えた上にツタンカーメンまで観れた …

あの、1点も無駄のねえ移動は、行き当たりばったりか?」

「まあ、たまたま知ってる店だったから」

「アドリブか?!」


驚いたように身を乗り出した大吉。

「 … ですね、もう20年以上走ってますから」

… … … … …

大吉はよろけながら立ちあがりました。

「参った … カッコいいよ、正宗君。

それに引き換え俺は、敷かれたレールの上をダイヤ通りに走るだけ」


大吉は勝手に店の窓を開けて、顔を出しました。

「毎日毎日、鉄道マニアと病院臭え老人を乗せて … 」

「そりゃ、大吉さん言い過ぎだ」


首を振る正宗。

「途中でラーメン食いたくなっても回り道もできねえ、抜け道もねえ、上りと下りの繰り返し …

たまにブレーキかけて、景色を眺めるのがささやかな反抗さ」


いきなり振り向いて、声を大きくしました。

「大都会東京で渋滞を避け、縦横無尽に駆け巡るあんたとは … 同じ運転手でも、格が違い過ぎる」

席に戻って泣きはじめました。

「そりゃだって、電車と車は違いますから … 」

「電車じゃねえ!

目つぶって、よく思い出してけろ、北鉄のフォルムを!」


正宗は目をつぶりました。

「上に電線走ってるか? 走ってねえべ、電線」

確かに …

「言われてみれば、そうですね」

「ディーゼルで走ってるんだよ、電気じゃねえんだよ … だから電車でねく、汽車なのよ!

もっと言えば、レールの上を走るバスなのよ ~ 」


増々大きくなる大吉の声、他の席の客もチラチラと振り向いて見ています。

「はあ?」

「 … 第3セクター、破れたり!

モータリゼーション、大勝利だ!!」


大吉はまた席を離れて、正宗のすぐ横に立ちました。

「プロポーズ撤回、おら潔く身を引く!

マサ、春ちゃんをよろしく!」


頭を下げる大吉、それにつられて正宗も頭を下げました。

カウンターの中から、甲斐がその様子を微笑んで見ています。

… … … … …

「よかった ~ 」

「はい?」


安堵の表情で笑いだす正宗、大吉は怪訝な顔をしました。

「何となく今日は、いやこういう展開になるような気がして … 最悪話し合いで決着がつかなかったら、もう決闘もありかなって、ある程度覚悟はしてたんです、はい」

そう言いながら、正宗はグローブを外しました。

「それで、それで何度も公園に連れてったのか?」

「はい … こう見えてもさ空手の有段者だし、広いとこ連れ出して肉弾戦に持ち込めば勝てると思って … 」


折り畳み式の警棒や、チェーンなど、体中に隠していた武器を次々に外し始めました。

「いやあ、話の分かる人でよかった ~ 」

大吉だけでなく、甲斐をはじめ店中が思いっきりどん引き …

… … … … …

< こうして、夏ばっぱと大吉さんが北三陸さ帰る日がやって来ました >

大きな目的を果たすことができた、夏にとって大満足の旅でした。

「こっちはこっちで満喫しましたんで」

春子に礼を言った後、アキと顔を見合わせて、またふたりして笑いました。

「何があったか知んないけど、ずっとニコニコしてんのよ」

… … … … …

「正宗さん、荷物を車に運んでくれ」

大吉に頼まれて、振り向いた正宗。

何やらふたりでアイコンタクトを交わした後、正宗は荷物を抱えて部屋を出て行きました。

「お願いしますね、夏さん」

夏の面倒を頼まれた大吉はうなずくとそのまま春子の前に立ちました。

「春ちゃん … 俺の思いは重すぎるから、正宗さんさ全部託したからな」

いつになく真面目な大吉、春子にはよく意味は分かりませんでした。

「あの男は本物だ。

春ちゃん … 大事にしてもらうんだぞ」


曖昧にうなずいた春子。

その時、玄関のチャイムが鳴りました。

… … … … …

「長居は無用だ、もう帰るぞ」

「ちょっと待ってよ、持っていてもらいたいもんがあるんだから」


春子が引き止めても、帰るとなったらせっかちな夏です。

「土産は要らねえ、もう駅で適当に買うから、いいからいいから」

「手ぶらで帰す訳にはいかないでしょ」

「帰るぞ!」


夏が玄関のドアを開けると … そこに立っていたのは、足立よしえでした。

「じぇっ」

「足立先生の … 奥さん」


目を見張る夏。

< ママからのお土産は、なんとユイちゃんのお母さんでした。

ママはおらたちが幸夫さ熱を上げている間に何度も相談に乗っていたのです >


よしえは深く頭を下げました。

「説教は勘弁してあげてね、私が散々やったから」

「 … よく考えたのか?」


夏の問いかけによしえはうなずきました。

「それも散々聞いた … 許してもらえなくてもいいんだって、それでも家族に会いたいんだって。

謝りたいんだって、ねっ?」


よしえはまたうなずきました。

「そんじゃ、おめえ … 連れて帰るしかねえじゃないか」

「 … お願いします」


… … … … …

< という訳でユイちゃんのお母さんが約1年ぶりに、北三陸さ帰ってきました >

改札を出る大吉、夏、そしてよしえ。

よしえの足が止まりました。

駅舎内には、笑顔のユイのポスターが至る所に貼ってあります。

… … … … …

無頼鮨の裏口。

ベンチに腰かけているアキに種市は聞きました。

「夏さん、もう着いたかな?」

「 … んだな」


気のない返事をしたアキでした。

突然立ち上がったかと思うと、種市の顔に携帯を向けて、写真を撮りました。

「 … 何?」

「何って、待ち受け … おらたち、つき合ってるのに、1枚も写真ねえなと思って」


今写した写真を確認したアキは「つまんねえ」とひとこと。

「カッコつけねえで、もっとおもしれえ顔してけろ!」

もう一度、カメラを向けました。

「おもしれえ顔? … 分がった」

注文通りに、ヘン顔をする種市。

「はや、早く撮れ … 」

シャッターを切るアキ。

「 … まあまあだな」

… … … … …

梨明日を覗く大吉。

連絡を受けた吉田が、こそこそと外に出てきました。

「大丈夫、ユイちゃん何にも知らないから … 足立先生とヒロシ君はちょうど病院さリハビリさ行ってます。

ただね、町の人たちはね、何か集まってる」

「じぇじぇっ、なすて??」

「何か呼んじゃいました ~ 」


屈託なく話す吉田。

「吉田君、困るよ ~ 誰にも言うなって約束!!」

「そこまでお人よしじゃありません」


… この男ときたら本当にもう …

「こそこそすることねえよ … おい、行くぞ!」

腹をくくった夏は、よしえを促しました。

… … … … …

店の中には、吉田が呼んだと言った通り、常連がほぼ全員集まっていました。

「ただいま ~ 」

夏の姿を見て皆の歓声が上がりました。

「おかえりなさい!」

笑顔で迎えるユイ。

「土産は特にねえ … その代り、懐かしいお客連れてきたぞ」

夏は一度店の外に出て、よしえの手を曳いてまた入ってきました。

「ほいほい、入れ入れ … 」

「じぇじぇじぇっ?!」


店に入ったところで、よしえは一同に向かって頭を下げました。

静まり返った店の中。

「何、何、何 … 何これ?

ちょっと、えっ、こういうの困るんですけど … 」


ユイから笑顔が消え、戸惑いの顔に変わりました。

「ユイ … 」

小刻みに震えているユイ。

「リアクションできないよ。こんなの … わかんない、わかんない、わかんない」

誰もひとこともしゃべりません。

「何で黙ってるの?」

「 … ごめんね」


よしえは蚊の鳴くような声で謝りました。

「ごめんねじゃなくてさ … 何、帰ってきてるの?

今更 … 今更だよ、本当に。

帰ってきた、ははははは … ダメだ、笑けてきた」


ユイは早足でカウンターの中に入りました。

… … … … …

「まあまあ、ユイちゃん … お母さんも心の底から申し訳ねえと思ってるようなんだよ」

とりなす大吉。

「ここさ座ったら?」

保が席を勧め、美寿々は飲み物を尋ねました。

「あとほれ、あれもあっぺ … カスス、カスス … 」

「粕漬けか?」

「カスス・オレンジ!」


弥生の言葉にどっと笑いが起こりました。

… どことなく白々しい笑い。

「うるさいよっ!」

ユイが怒鳴って、店がまた静まり返った瞬間、ドアが開いて功とヒロシが店に入ってきました。

「 … すいません、でも気遣わないでください。

知ってるんだから、皆さんがあの人のこと陰で悪く言ってるの … 夫と子供と田舎捨てた、見かけによらずしたたかな女だって …

言ってるんだよ、皆」


ユイは涙を溜めた目で、よしえをじっと見据えました。

「言い返せないよ … そのまんまだから」

うつむいたよしえも涙を流しながら、何度もうなずいています。

「今だって思ってるよ … 今更、どの面下げて帰って来たって!

本当、よく返って来れたよね?」

「 … ごめんなさい」

「ごめんなさいで済むわけないじゃん!

私、高校辞めたんだよ!

何もかもあきらめたんだよ!」


… … … … …

「ユイ、それぐらいにしなさい」

功の声によしえは振り向きました。

「もういいだろ?

母さん責めても、しょうがないんだから」


ユイは店を出て行ってしまいました。

「 … 何しに帰ってきたの?」

ヒロシがよしえに尋ねると功がそれを制しました。

「黙れ、しゃべるな!」

「黙んねえよ、だって逃げたんだぞ!」

「皆さんがいる前で醜態をさらす気か?」


しかし、夏は言いました。

「どうぞ、お構いなく、遠慮なくやってください。

口挟みませんから … おらたちにとっては所詮、他人事だし … よしえさんも、それなりの覚悟で戻って来たようですから、なっ?」


夏に促されてよしえは、功とヒロシに頭を下げました。

「ごめんなさい … 」

… … … … …

ユイは、薄明かりの駅舎のベンチにひとりぼんやりと腰かけていました。

着信を知らせた携帯を手に取りました。

アキからのメールでした。

添付されていた画像を開くと … それは、種市のヘン顔でした。

ユイの顔が少しだけほころびました。

そのうちに、種市からもメールが届きました。

「へへへへ … 」

声を出して笑うユイ。

… アキのヘン顔です。

泣き笑いのユイでした …

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2013年08月13日 (火) | 編集 |
第116話

「会いてえ、男がいるのさ」

夏の道ならぬ恋の相手が橋幸夫とわかって皆は胸をなでおろしました。

その時、無頼鮨に入ってきた客を見て驚いた大吉。

目を剥いて口を開けたまま …

「えっ、えっ、まさかまさか …」

「まさか、幸夫??」


客の足音が座敷に近づいてきます。

「えっ、何?」

… 足音の主は、鈴鹿ひろ美でした。

… … … … …

「何だあ、鈴鹿さんかよ ~ 」

失望を隠せない一同、失礼な話です。

「何で、寿司屋入っていきなりがっかりされなきゃいけないのよ」

ひろ美は隣の座敷に上がりながらぶつぶつ文句を言っています。

「だって、幸夫が出てくると思うべ、タイミング的に」

「幸夫?」


アキはつい立をよけて、ひろ美に夏のことを紹介しました。

「この人、おらのばあちゃん」

「天野夏でがす … 孫が大変お世話になりまして」


挨拶を交わす夏とひろ美。

「かねがね、天野さんから聞いております」

顔を上げた、ひろ美の表情が一瞬強張りました。

つい立の陰から大吉が何ともいえぬ嫌らしい顔でひろ美のことを見ていたのです。

ひろ美は無視して夏に話しかけました。

「現役の海女さんだそうで」

「はいっ」


それでも、しつこい視線が気になって、ひろ美は大吉に尋ねました。

「 … 何ですか?」

「2回目ですよね? … 2回も会うなんて、運命を感じますよねえ」

「いいえ、私の行きつけの店にあなたが2回来ただけです」


ぴしゃりと跳ねつけたひろ美ですが、そんなことお構いなしに大吉はまた携帯をかけ始めました。

前回のことで懲りているひろ美は慌てて止めに入りました。

「電話しないでください!」

「でも、声聞かせねえと田舎もんは信用しねえから!」

「田舎もんとはしゃべりません!」


思わず口にしてしまった、ひろ美 … ここにいる者はほとんど田舎もんでした。

「やだ … そういう意味じゃなくて … はははは」

笑ってごまかしましたが、他に笑っているのは世田谷出身の正宗だけでした。

… … … … …

「問題はどこさ行ったら、幸夫に会えるかだな」

いいタイミングで料理を運んで来た、アキが言いました。

「幸夫?」

「夏ばっぱのあこがれの人だ」


夏はひろ美にも説明しました。

「46年前に一度会ったきりなんです」

「わあ、ロマンチックね」

「せめて、行きつけの店でも分かればなあ … 種市君、橋幸夫来ねえか?」


大吉は種市に尋ねました。

「いやあ … 」

困った種市が梅頭の顔を見ると …

「寺門ジモンは来るけどね … 」

… … … … …

「ちょっと、ゆきおって橋幸夫?」

「鈴鹿さん、そのくだり散々やったから … 」


アキが迷惑そうに言いました。

「私、知ってるけど」

「だから、入ってくるなって、都会っ子はそっちでカッパでも … 」


邪険にするアキに構わず、夏はひろ美に尋ねました。

「何を知ってるんですか?」

「橋さんですよね … 共演したことがあります」

「じぇじぇじぇ!」

「ねえ、誰かこういうの持ってない?」


ひろ美は人差し指を左右に振りました。

… キレれてないっすよ?

「これですか?」

正宗がタブレットを取り出しました。

「そう、映画『潮騒のメモリー』で検索して … 私のデビュー作に橋さん出てるのよ」

「あった!!」


確かに橋幸夫がキャスティングされていました。

「しかも友情出演だべ!」

「夏ばっぱ、鈴鹿さんと橋さんは友情で結ばれてましたよ」


小百合にそう言われて、喜ぶ夏。

「ってことは、おらにとっても友達の友達だな!」

いつの間にか、ひろ美はアキの友達に格下げされているようです。

… … … … …

「そうじゃないんです!」

ひろ美はグラスを片手につい立を越えて来て、夏の隣に座り込みました。

「友情出演って言うのはね … 本来ならこんな小さな役でご出演願うのは申し訳ないんですが、ひとつ友情に免じて御出演いただけませんか? っていう意味なんです」

ひろ美の説明を聞いて納得する夏。

「橋さんの他にも由紀さおりさんとかそうそうたる顔ぶれに脇で出ていただいたの」

そう言った後、ひろ美はグラスの酒を一気に飲み干しました。

「だけど私、とんでもないことしちゃって …

舞台挨拶の時だったかしら、私が先に登壇して、まず由紀さおりさん、次に橋さんを呼び込む段取りだったの。

だけど、はじめてだからすごい緊張して、『由紀さん』『橋さん』って間違っちゃいけないって何回も自分に言い聞かせたの … 『由紀さん』『橋さん』って。

そしたら、『幸 橋夫さん』って、言っちゃったんです」

「じぇじぇじぇ ~ 」

「 … それ以来、橋さんとは会っていません。

だから、ごめんなさい」

「なんだよ ~ 」

< そんな鈴鹿さんを説得して、何とかアポイントを取ってもらい … 夏ばっぱは、あこがれの幸夫さんに会えることになりました >


… … … … …

布団を並べて眠るアキと夏。

何度も寝返りを打っていた夏がおもむろに起き上がりました。

「あ ~ だめだ、眠れねえ … 」

「ウニ、数えたか?」

「 … 2,000個も数えた。

アキ、やっぱしおら会うのをやめるべ」


弱気なことを言いだしました。

「なすてさ?」

「会っちまったら、男と女のことだ、どうなるか分がんねえべ … まして、橋さんはおらの永遠のアイドルだ」

「そんなバカな … 66歳と67歳が」


アキは可笑しくなって夏の顔を見ました。

しかし、夏は真剣そのものです。

「どうにかなるのか?」

「 … おめえどうなんだ?

種市先輩と … 」

「じぇ … なすて、それを?」

「へんっ、バレバレだあ ~

寿司屋でよ、アイコンタクトしてたべ?」


血相を変えるアキ。

「ママには内緒だど、ママには言うなよ、ママには!」

「い ~ 言わねえ」


夏はいたずらっぽく笑いました。

「そうか、バレバレか … 」

… … … … …

次の日 …

「じぇじぇっ?!」

アキが出かける準備をして部屋を出ると、ウニ柄の着物を着てめかし込んだ夏が待っていました。

夏は人差し指を口に当てて、静かにするように合図すると、急いで出かけようとします。

「あら、夏さん、どちらにおでかけ? 歌舞伎かなんか?」

春子に見つかってしまいました。

「晩飯いらねえから、遅くなっからよ! 行くべ、行くべ」

「何処行くのよ?」


しかし夏は春子の質問には答えず、アキの手をつかむと、いそいそと玄関に向かいました。

「おらも遅くなるから、んじゃあな ~ 」

「んじゃあなって … 」


… … … … …

早足でテレビ局内を進むひろ美の後に続くアキと夏。

「歌番組の収録は、巻く場合が多いから急いで!」

< 結局、鈴鹿さんもついてきました>

「なすてだ?」

「便乗よ、あんたのお祖母ちゃんに便乗して、昔のこと水に流してもらうのよ」


先を行くひろ美の足が止まりました。

前方のパーテーションの向こうのブースの席に座ってスタッフと打ち合わせしているのは … 橋幸夫でした。

夏は思わずアキの背中に隠れました。

「あれか?」

うなずく夏。

「幸橋夫?」

橋幸夫だって!」


ひろ美が慌てて訂正しました。

橋は、ひろ美に気づいて立ち上がりました。

「ああ」

ブースを出てこちらに近づいてきます。

夏が隠れたので、アキもそれに倣いました。

「女優さんの?」

「鈴鹿ひろ美です」


深くお辞儀するひろ美。

「わざわざ、お電話いただいたそうで … 見てますよ、静御前。

どうも、初めまして」


橋はひろ美に手を差し出しました。

手を握り返すひろ美。

「はじめて … ではないんです。

デビュー作で、『潮騒のメモリー』という映画でお世話になったんです」

< 覚えてないんだ >


物陰から、ふたりの様子を覗くアキ。

「はは … 思い出した。

『潮騒のメロディー』ね」


愛想笑いするひろ美。

どうやら、橋の態度から察すると、本当は覚えていないような気がします。

< だめだ … >

これでは、夏のことなど、到底覚えている訳がありません。

ふと後ろを振り向くアキ … 夏の姿がありません。

「ばっぱ?」

今来た廊下をこそこそと引き返して行く夏を見つけました。

「夏ばっぱ、ばっぱ、おい、何で逃げるんだよ?!」

アキは夏に追いつきました。

… … … … …

「おら、やっぱし会わねえで帰ります」

いつもの勢いがありません。

「せっかく来たのに … 」

「いやいやもう、顔見れただけで十分だ」

「 … 夏ちゃん?」


近づいてきた橋に声を掛けられて、夏は固まりました。

「夏ちゃんだよね?」

橋は夏の顔を覗きこんできました。

「あの、ほら、北三陸の海女の夏ちゃんだよね、そうだろ?」

「はい … 夏です!」


夏は橋の顔も見ることができずその場に直立不動で返事をしました。

「じぇじぇじぇ … 覚えてるんですか?」

「一緒に歌ったよね? 体育館でさ … いやあ、懐かしい。

でも、変わらないね?」

「橋さんこそ、いつまでもお若くて」


やっと、橋の顔を見ることができました。

「いや、それうれしいよ」

橋はアキのことを見ました。

「まごまご、孫です」

「孫? 夏ちゃんの?」

「はい」

「はははは … 孫だってよ、鈴木さん」


引きつった笑顔のひろ美。

橋は笑顔で夏に尋ねました。

「あの、これから何かある?」

… … … … …

リアス。

「あったよ、ユイちゃん … 見つけた!」

「マジで?」


店にやって来た勉さんが古い1枚の写真を、ユイに手渡しました。

「何何、写真?」

ちょうどいたヒロシも寄ってきます。

「俺が撮った … ちょっとピントが甘えけど、夏さんと橋幸夫」

セピア色に変色したモノクロの写真の中、19歳の夏が橋幸夫と並んで写っていました。

「夏さん、若い … 」

そうつぶやいたユイ。

ちょうど、今のユイやアキと同じ歳でした。

… … … … …

突然の橋幸夫の来店に無頼鮨は沸きました。

アキとひろ美、駆けつけた小百合、居合わせた客たち、厨房から出てきた梅頭は色紙を抱えています。

座敷に即席に作られたステージ、マイクの前に橋と夏が並んで立ちました。

『いつでも夢を』のイントロが流れて … 橋が歌い始めます。

♪星よりひそかに 雨よりやさしく あの娘はいつも 歌ってる

あの時と同じように橋にリードされて夏も歌いました。

♪声がきこえる 淋しい胸に 涙に濡れた この胸に …

< その晩、夏さんは、おらやママの前では見せたことねえようなキラキラした笑顔を振りまいていました。

しゃっこい海さ潜って、ウニを取る夏ばっぱではなく …

北三陸の元祖アイドル夏ちゃんの姿がそこにありました >


… … … … …

「本当にありがとう … お元気でね」

橋が帰るのを見送った後、夏はひろ美に感謝のしるしとして、『北の海女』の手拭を渡しました。

「鈴鹿さん、つまんねえもんですけど … 『北の海女』のシンボルなんです」

受け取った手拭を眺めるひろ美。

「アキが東京さ行く時に、これ持たせてやったんです」

「まあ、そうなんですか?」

「 … どうなんでしょうね。

おらからすると、あの子が東京で芸能界で、どうにかなるとは思えねえんだ」


ひろ美は言葉なく笑いました。

「ははは、ウニ1個取るのに3ヶ月かかったんですから … 」

「芸能界と海の中は違いますから」


今はそれだけ言うのが精いっぱいでした。

「今後とも、孫のアキのこと … どうかよろしくお願いします」

夏は深く深く頭を下げました。

「こちらこそ … 」

ひろ美も夏に向かって同じように頭を下げました。

… … … … …

「ただいま ~ 」

ご機嫌で帰ってきた夏とアキを出迎えた春子。

「水水、水くれアキ」

「何 ~ 飲んでるの?」


思い出し笑いをする夏。

「何、ヤケ酒?」

仲の良すぎるふたり、仲間外れみたいで少し面白くないようです。

「何、何処行ってきたのよ?」

帯を解きながら夏は言いました。

「東京も捨てたもんでねえなあ ~ 」

そんなことを口にしてうれしそうに笑う夏を見て、気味悪がる春子。

忠兵衛が、漁から帰ってきた時とはまた違った雰囲気です。

「何?」

夏の背中をピシャリと叩きました。

「何でもねえ!」

アキが笑いながら夏の手を取ると夏もアキをマネて言いました。

「何でもねえ!」

こんなに楽しそうな母を見るのは滅多になかったことです。

何はともあれ、悪いことではありません。

肩を組んで部屋に入って行くふたりの背中を春子は微笑ましく見つめていました。

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2013年08月12日 (月) | 編集 |
第115話

< 夏ばっぱが、66歳にして初めて東京さ来ました

つきそいは、おらの大親友ユイちゃん … ではなぐ、大吉さんでした >


アキは正宗と共に上野で夏たちのことを出迎えました。

「お義母さん!」

「あ、正宗さん、久しぶり」

「おおっ、モータリゼーション!!」

< 夏ばっぱが東京さ来たのには … それなりに大きな理由がありました >


… … … … …

「ただいま、夏ばっぱ来たよ ~ 」

アキと正宗は取りあえず、夏たちを世田谷のマンションに連れて行きました。

「何年、これ築何年?」

マンションに着くなり、大吉が大きな声で尋ねました。

「買ったのは、10年前です」

「いらっしゃい … 疲れたでしょ、座って座って」


出迎える春子。

「そうかい、ここが春ちゃんと正宗さんの『愛の巣』なんですね」

「今は、事務所として使ってます ~ 」

「ローンなんぼ残ってるんだ?」


大体3分の1は返済したと正宗は嫌な顔一つせずに大吉に答えます。

「は ~ そんだら、残り20年ローン地獄か、ご愁傷様」

「すまねえな、正宗さん … 田舎者特有のやっかみだ、悪気はねえから」


夏が正宗に大吉の無礼を詫びました。

「悪気しかねえよ … 北三陸から、悪気を運んできました」

… … … … …

「いやいやいや、大したもんだべ ~ スケバンの春子が、東京の世田谷の一等地さ、はあ、こんだけの物件持ってな ~ 」

夏は部屋の中を見渡しては、しきりに感心して、嬉しそうに言いました。

「やめてよ、そんなんじゃないんだから … 」

こそばゆい顔で謙遜する春子。

「正宗さん」

そして、夏は正宗の前にいきなり正座しました。

正宗も慌てて同じように正座します。

「 … 本当にありがとうございました」

正宗と向き合った夏は深く頭を下げました。

恐縮して正宗もまた同じように頭を下げます。

「これ、ゆべしと … 手拭でがす」

夏は『北の海女』と書かれた手拭を正宗に手渡ししました。

「ありがとうございます」

うやうやしく受け取った正宗でした。

「やめてったら … そんなことより、どういう風の吹き回しよ?

… 夏さんが東京来るなんてさ、スカイツリーならまだできてませんけど ~ 」


今まで頑として北三陸を出なかった夏が何故急に … 春子は不思議に思っていました。

「そんなものは興味ねえ … おめえらふたりが、おらさ会いに来るより、おらひとりが来た方が安上がりだべ?」

「ま、結局二人で来たけどな」


タナボタで上京した大吉は上機嫌です。

「ユイちゃんが急に行きたくねえって言うからよ … 」

しかし、訳を知っている夏は、少し複雑な顔をしました。

「アキ、今日はお祖母ちゃんとふたりで寝てね」

「やった ~ ばっぱ、荷物をおらの部屋さ運ぶぞ」


気を取り直した夏は、アキの部屋へ案内されて、また感嘆の声を上げていました。

… … … … …

< 一方、北三陸では、海女カフェも観光協会もお盆休み … >

大吉が留守中、駅長代理の吉田は駅務室で人目をはばかることもなく愛妻弁当を新妻のしおりに食べさせてもらっていました。

しおりが自分の作った弁当を見て怪訝な顔をしました。

「なんだこれ? … チーズじゃなくて消しゴム!」

すでに一切れは、吉田の口の中に入っています。

「はははは」

吉田は、ひと笑いして、消しゴムを吹き出しました。

「新婚じゃなかったら、ぶっ飛ばしてるぞ … はははは」

< 大人たちはヒマを持て余し … スナックさ集まり、ミサンガを編んでいました >

昼食を取りにリアスを訪れたヒロシは、一瞬何事が始まったのかと凝視してしまいました。

リアスのカウンターに海女クラブの面々が並んで、あくびを噛み殺しながら、ダラダラと手を動かしていました。 … 何もここでやらなくてもいいものを …

「もう着いたかな?」

美寿々が夏たちのことを尋ねると、保が時計を見ながら答えました。

「ああ、んだね」

海女クラブだけでなく、保や今野、磯野、休みなのに行くところがない連中が集まっていました。

… … … … …

「なすて、行かねかったのさ、ユイちゃん?」

「んだんだ、あんなに楽しみにしてたのに」


今野夫妻がユイに尋ねました。

「いいの … 店もあるし、お父さんも心配だし」

特に何事もなかったようにユイは答えました。

「足立先生なら、ピンピンしてますよ」

昨夜もカラオケでアルフィーのメリーアンを歌っていたと保。

「お店だって、おらと弥生さんが交代で見るって言ったのに」

「さては、ユイちゃん、大吉に脅されたか?」


美寿々とかつ枝もユイに尋ねました … 事情を知らないとは言え、ユイには酷な質問が続きます。

「行きたくねえって言ってるんだから、そっとしておいてやれや … 」

見るに見かねた勉さんが珍しく強い口調で言いました。

< ユイちゃんが東京行きをキャンセルした訳を勉さんだけは知っていました >

アキの電話を受けたヒロシが、ユイに伝える時に、偶然そばにいた勉さんも耳にしてしまったのでした。

< 自分を捨てた母親をユイちゃんはまだ、許すことができなかったのです >

… … … … …

アキは、夏を純喫茶アイドルに連れて行きました。

ドアを開けると、そこには夏に取って、懐かしい人が待っていました。

「夏ばっぱ!」

「おお、安部ちゃん!」


泣いて、再会を喜び合うふたり。

「どうだい、まめぶ大使? … 手応えは?」

「まずまずだあ … 」


少しホッとしたような夏でしたが …

「ウソだ … さっぱりだ。

B級グルメのコンテストで2年連続、横手焼きそばに負けたのが痛かった」


小百合が悔しそうに話します。

「アキちゃんがテレビで取り上げてくれたが、三又又三は箸もつけねかった」

「あの野郎、岩手出身のくせに!」


吐き捨てた大吉。

「彦摩呂さんは、『甘さと塩っぱさの譲り合いだあ!』って叫んでたよ」

彦摩呂の口調をマネる正宗。

「口惜しいけど、言い得て妙だ」

「私は嫌いじゃありませんよ」


皆の視線がコーヒーを淹れている甲斐に集まりました。

アキは夏に甲斐のことを紹介しました。

「マスターの甲斐さん」

「春子さんも昔、ここでウエイトレスしたんだど ~ 」


小百合からそう聞いて、驚く夏。

「いや、まあ、親子二代で … それはそれは」

甲斐に『北の海女』の手拭を渡しました。

「甘い団子さえ、よけてしまえば、極めてけんちん汁ですし … 団子をいったん取り出して、冷蔵庫でいったん冷やして、そのあとでスイーツとして … 」

それはもう『まめぶ』ではありません … それぞれが素材の状態なら嫌いではないといったところでしょう。

「まめぶの話はもうたくさんだ!

それより、明日からの東京見物の予定は?」


気の短い大吉 … まめぶや琥珀など、自分が興味ない話しは聞かないスタンスでした。

「完璧だ!

ちょっと、タイトなスケジュールだが …

午前8時半に正宗さんのタクシーで世田谷を出発、先ずは東京都庁を見物 … その後、新宿御苑、国会議事堂、皇居を回り … 銀座へ移動して、歌舞伎を見ながら昼食 … 午後2時、工事中のスカイツリーをバックに記念撮影して、お台場のアウトレット … 浅草、アメ横を回り、晩御飯は上野の無頼鮨を予約しています」


以上が、小百合が立てたスケジュールでした。

… … … … …

次の日の夕刻、ほぼ1日のスケジュールを終えた一行はようやく無頼鮨にたどり着きました。

「タイトすぎるべ!」

「本当だよ、修学旅行じゃあるめいし … 」


一番若いアキでさえ、もうヘトヘトになっています。

「このあと、予定では秋葉原で買い物になってますけど … 」

「明日にしましょう … いや、明日は休みましょう」


運転手の正宗が確認すると、スケジュールの立案者自らがキャンセルをしました。

「だらしねえな ~

んだら、明日はおらとアキで一日別行動だ」

「別行動?」

「実は … 」


夏は皆を集めると、ひそひそと話しはじめました。

「会いてえ、男がいるのさ」

「じぇじぇじぇっ?!」

「やかましいっ!

誰にも言うなよ、特に春子にはな … 何があっても、バレてはなんねえぞ!」


皆に念を押す夏。

「おら約束できねえ!

黙ってる自信がねえ! … だから聞かねえ!」


大吉は両手で耳をふさいでしまいました。

「じゃ、僕も」

正宗も同じように耳をふさぎます。

… … … … …

「結婚して、春子が生まれて44年か … おら、北三陸から一度も離れたことがなかった。

夏は海女として海さ潜り、ただひたすら夫の帰りを待つ漁師の嫁だった」

「その反動で春子さんは派手好きな娘になったんですね」

「聞こえてんじゃねえか!」


正宗も大吉もちゃっかり聞いていました。

「そんな天野夏ですら、66年の人生の中で1回だけ、道ならぬ恋に … 溺れたことがある」

「じぇ~じぇ~じぇ~っ!」

「うるせーっ!」


やかましい大吉をアキは一喝しました。

「誰? その人、東京の人?」

夏は恥ずかしそうに、でも聞いてほしそうに答えました。

「でへっ、名字は言えねえ … 下の名前は … ゆぎお!」

… … … … …

「ゆぎお?!」

一方、梨明日でもちょうど同じ話題 … かつ枝が夏本人から聞いたという話を皆にしていました。

「んだ、ゆぎおっつう男と昔何やらあったそうだ」

「鳩山か?」

「あるいはこれ、青島か?」


組合長と今野は思いつくまま名前をあげました。

「どっちにしろ、なかなかの大物ですよ」

したり顔の吉田。

「あっ!!」

突然、声を上げた弥生。

「そういえば、おらも聞いたことある。

夏ばっぱが酔っぱらってよ、ここだけの話だって前置きしてよ … 」


ドスン!

その時、勉さんが磨いていた琥珀をカウンターの上に落としました。

「わっ、何? 何だよ、勉? 勉アフレック?!」

一同、驚いて勉さんに注目しました。

「いや、何でもねえです … 」

「びっくりさせるんなよ ~ 」


… 勉、小田勉、和田勉と一字違い!

… … … … …

時代は、1964(昭和39)年に遡ります。

当時17歳だった学生服の勉さんが慌てて体育館に駆け込んでいきました。

中には紅白の幕が張られていて、大勢の町民が集まっていて、ほぼ満席です。

空いている席を見つけてこそこそと座る勉少年。

「それでは、漁業組合婦人部を代表して … 袖が浜の天野夏さんからの花束の贈呈です」

つかえつかえで司会者が紹介すると、客席の後方から19歳の夏が海女姿で花束を抱えて現れました。

スポットライトに照らされ、壇上に上がり、緊張しながら花束を差し出しました。

「ようこそ、北三陸へ」

花束を渡した相手こそ、当時20歳で人気絶頂の歌手『橋幸夫』その人でした。

… … … … …

無頼鮨。

「橋幸夫っ?!」

一同、声をそろえて驚きました。

「夏ばっぱ、会いたい男ってまさか?!」

「橋幸夫なのか?」


小百合と大吉に尋ねられて、夏はハニカミながらうなずきました。

「んだ ~ 橋幸夫さあ」

「じぇじぇじぇ ~ 」

「誰、誰?」


アキの年代では知らないのも無理はないかもしれません。

「昭和39年の春、北三陸の体育館で、橋幸夫のリサイタルがあってよ!!」

… … … … …

「いかがですか? 橋さん。ここ北三陸市は海女漁の北限なんです」

司会者の説明を聞き、橋は夏の姿を見て尋ねました。

「えっ、じゃあ君もこの姿で海に潜って?」

「はい、ウニや貝を取ります」

「へえ、若いのにエライねえ … お嫁さんにしたいぐらいだ」

会場から拍手と歓声が起こりました。

「どうでしょう? 次の曲は、吉永小百合さんとデュエットした曲なんですけども、今日は是非、夏ちゃんと一緒に歌いたいねえ」

「じぇじぇっ!」

橋の提案に目を丸くして驚く夏。

「夏ちゃんって、おらか?」

橋は笑顔でうなずきました。

♪星よりひそかに 雨よりやさしく あの娘はいつも 歌ってる …

夏は歌う橋の横顔をじっと見つめていました。

そのうちに橋は夏の背中にそっと手を置きました。

「歌って」という合図でした。

♪涙に濡れた この胸に …

… … … … …

「またまたまた ~ 」

梨明日の誰もが勉さんの話を信用しませんでした。

「北三陸さ、橋幸夫が来たなんて話、おら聞いたことがないぞ!」

組合長にもそんな記憶がありません。

「観光協会さも記録残ってねえよ」

保が言うように記憶にも記録にも残っていない『橋幸夫リサイタル』

しかし、勉さんが嘘をついてるようには見えません。

「いやいや、本当だっつうの!

あれからしばらくの間 … 夏さん、この界隈でアイドルだったでしょ?」

「夏さんが?」


ユイが意外 … といった顔で勉さんの話を聞いています。

「昭和39年だったら、覚えているはずだよな、弥生?」

かつ枝が振り向くと、いつの間にか今野夫妻はステージに立って … 自分たちの歌う『いつでも夢を』に酔いしれていました。

… … … … …

♪いつでも夢を いつでも夢を …

< 勉さんの話が本当だとすると、夏ばっぱこそが北三陸の元祖アイドルってことになります >

… … … … …

ふたたび、無頼鮨。

夏の道ならぬ恋の相手が橋幸夫とわかった皆は胸をなでおろしていました。

「いらっしゃい!」

入口の方を見ていた大吉が、驚いて立ち上がりました。

「えっ、えっ、まさかまさか …」

目を剥いて、口を開けたままの大吉。

「まさか、幸夫??」

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2013年08月11日 (日) | 編集 |
さて、次週の「あまちゃん」は …

♪星よりひそかに 雨よりやさしく あの娘はいつも 歌ってる …

ユイ(橋本愛)の代わりに大吉(杉本哲太)が付き添いとなって、夏(宮本信子)が東京にやってくる。

逢いてえ、男がいるのさ

実は夏の上京には秘めた目的があった。それは、ある男性に会うということ。夏は、46年前の‘ある思い出’が忘れられずにいたのだ…。

橋幸夫?!

鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)のつてで、夏は憧れの人との再会を果たす。

ごめんなさいで済むわけないじゃん!

春子(小泉今日子)と話し合ったよしえ(八木亜希子)は、夏とともに北三陸に帰ることに。ユイと対面するが、ユイは母を許すことができない。よしえは、功(平泉成)やヒロシ(小池徹平)に、失踪の経緯や戻ってきた理由を語る。

今は、恋人がお仕事です

その頃、アキ(能年玲奈)は芸能人としての人気が少しずつ高まり、仕事が増えるようになっていた。

自分のせいかも知れないね

一方、GMTは伸び悩み、焦る太巻(古田新太)は巻き返しのために、ある計画を立てる。

太巻、映画撮ります!

それは映画の製作だった。

主題歌は、どなたが歌うんですか?

太巻は鈴鹿ひろ美に出演を依頼するが、鈴鹿は出演を引き受ける代わりに、ヒロインをオーディションで選ぶことを条件に出す。

さっそく全国に募集がかかり、アキも応募。書類審査に合格し、嬉々として次の審査に備えていた。

ようやく陽の当たるところに出たのに、何が悲しくてまたシャドウやらなきゃいけないんすか?

北三陸でもアキの応援で盛り上がっていたが、ある日、異変が起きる。

あまちゃん 公式サイト他を参考)


あまちゃんニュース

ゲスト出演者発表!橋幸夫

本人役でゲスト出演、『いつでも夢を』の隠されたエピソードが明らかに!

朝まで“あま”テレビ

これまでの「あまちゃん」をダイジェストで一挙放送!

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おまけ …
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2013年08月10日 (土) | 編集 |
第114話

「じぇじぇっ?!」

純喫茶アイドルに駆けつけたアキ。

< ママに呼び出され、喫茶店さ行ってみると … そごにいだのは、ユイちゃんのママでした >

春子と向かい合って座っているよしえ、街角で配られていたアキの広告が載ったティッシュを見て予備校に電話を入れたようでした。

「この子と連絡取りたいって … 大変だよね、有名になるとさ、こういうの増えるからね。

会ったこともない親戚とか、名前も知らない同級生とかね ふふふ」


冗談ぽく話した春子。

「ご心配おかけしました」

よしえはうつむいたまま、蚊の鳴くような声で言いました。

アキがいつか上野で見かけた時とは別人のように、やつれて見えます。

「ご家族には?」

春子が尋ねると、首を横に振りました。

「じゃあ、知らせましょう」

そう言って立ち上がった春子をよしえは止めました。

「ダメよ、警察にも知らせなくっちゃ … あなた、家出人なんですから」

… … … … …

「上野さいましたよね?」

「えっ?」


アキがよしえに尋ねました。

「 … 見かけました」

「いつ?」


聞き返したのは春子です。

「年末、路上ライブの日だ … 安部ちゃんもいた」

「何で言わないの?」

「 … ひとりじゃ、ねがったから」


見知らぬ男性と談笑しながら歩いていたのでした。

「あっ、ストーブさんには言いました … 男と歩いてたって。

だから、電話しなくていいど」


アキは春子に言いました。

よしえは黙ったまま、今にも泣きそうな顔をしてうつむいています。

… … … … …

リアスでは、盆休みに夏と一緒に上京することになったユイがガイドブックを見ていました。

「ねえ、勉さん … 東京のお土産、何がいい?」

「ええっ、買ってきてくれるの?」


一瞬驚いた勉さん、その顔が笑顔に変わりました。

「500円以内な、へへへへ」

カウンターの中にいた夏がそう言うと、3人で笑い合いました。

「いらっしゃい」

ドアが開いて、顔を出したのはユイの父、功とヒロシでした。

リハビリの帰りに寄ったようです。

「ご飯、食べた?」

ユイが尋ねると、ヒロシはまだだと答え、功は …

「取りあえず、リハビリの後はビールだろう!」

と笑いながら答えました。

「ウニ丼は?」

「とっくに売り切れだ」


オムライスならすぐできると、厨房に立つユイ。

… 足立家の親子関係、兄妹関係は良好のようです。

「さあ、指先のリハビリでもするか?」

功は勉さんから琥珀磨きの道具を受け取ると、同じように磨き始めました。

「いよいよ来週か?」

カウンターに置いてあるガイドブックを見てヒロシが言いました。

「うん」

「帰ってきたら、忙しくなるぞ ~ 9月には本気獲りだ」


功のグラスにビールを注ぎながら夏が言うと、厨房のユイは答えました。

「絶対2個は獲るから … アキちゃん、1個だったもんね」

… … … … …

「 … 自信をなくしてしまったんです。

主人が倒れて、一時は意識もなくて、呼びかけても返事もないし … 万が一このまま目を覚まさなかったら、残された私はどうなるんだろうって」


訥々と話しはじめたよしえ。

「それで、お財布だけ持って?」

よしえが失踪したその日に春子は北三陸の駅舎のベンチで、ひとりぼんやりとしていた彼女を見つけて声を掛けていたのでした。

「あの日のうちにバスで盛岡まで出ました。

最初は、2、3日したら帰りたくなると思ってたの … だけど、どんどん遠くに来てしまって … 上野で一緒にいたの昔の上司です」


パートを紹介してもらったとよしえは言いました。

「 … 臨時の声の仕事です。

結婚式の司会とか、ナレーションとか … あっ、これもそうです」


甲斐がかけているテレビから流れてきたGMT5の『地元に帰ろう』のスポット、このナレーションもよしえの仕事だったのです。

「じぇじぇじぇ … じぇんじぇん、気づかなかった」

「こちらこそ、じぇんじぇん、気づかなかったよ」

「もちろん、これじゃ生活できないから、コンビニでバイトしたり … なんか久しぶりに、というか、ほぼ初めて、ひとりの人間として世間とか関われたような気がしたんです。

足立功の妻じゃなく、自分を見つけたような … 」


… … … … …

「美味い!」

ユイのオムライスを一口食べた、功とヒロシが声をあげました。

満足そうに微笑むユイ。

… … … … …

「それまでは、家族しか見てなかった。

いつも夫の顔色伺いながら、子供の反応見ながら、肉だな、魚だな、野菜が足りてないな … とか、自分じゃ何も判断できない状態だったんです」


春子が今はどうなのかと尋ねました。

「あれから、1年近く経って、自分を取り戻して … 今はどういう心境?」

よしえは黙り込んでしまいました。

「ごめん、言いにくいか … 」

「いえ、本当に自分勝手な話ですけど … 寂しいです。

家族に会いたいです」


そう話しながら、すすり泣きました。

「主人と子供たちに会いたいです。

でも … 」

「無理でしょうね」


よしえは顔を上げて … 春子の顔を見ました。

「残酷なようだけど、取り返しつかないと思う。

あれだ、ほら、アキがやってる … 見つけて壊すやつ?」

「逆回転?」


春子はうなずきました。

「そう、逆回転できないもんね … 人生は。

壊れたら、壊れっ放し、もう元には戻らない … 残念でした」


どのような意図があるのか … 春子は慰めたりは一切せずに本人が言ったように残酷で厳しい言葉をよしえに容赦無くつきつけました。

自分のしたことを後悔し、涙をかみしめているよしえ。

「でも、皆本当に心配してるからさ … 無事でいることだけは知らせてあげよう … いいよね?」

よしえがうなずいたのを見て、春子はアキに目くばせしました。

電話を掛けに店の外に出て行く、アキ。

… … … … …

アキからの電話を受けて、ヒロシは梨明日から出てきました。

店の中は、大吉たちも集まって来て、ユイと夏の送別会の最中です。

♪ゴーストバスターズ!

「ああ、カラオケ始まっちゃった … で、何?」

「 … 良い知らせと悪い知らせ、どっちが好きですか?」

「アキちゃん、悪い知らせが好きな人はいないよ」

「ですよね? … じゃあ、悪い方から。

私、天野アキは、種市先輩とつきあうことになりました ~ ♥ 」


顔色が変わって、言葉を失うヒロシ。

「あっ、良い知らせ先に言っちゃった」

「えっ、えっ?」

「続いて、悪い知らせ … 」

「待って待って、全然追いつけないよ!

… 今のどこが良い知らせなの?」


アキにとっての良い知らせでした。

「 … おめでとう。

で、悪い方は?」

「今、お母さんと一緒です … お母さん、うちのママとしゃべってます」


… … … … …

「ご存じないでしょ?

あなたが家出したせいで、ユイちゃんが荒れたこととか … 髪の毛染めて、悪い仲間とつるんで … 高校辞めちゃったこととか、知らないでしょ?」


春子の話を聞いた、よしえの顔に驚きが走りました。

「夏さんや海女クラブや勉さんや大吉さんや … まあ、私やアキや皆が、ユイちゃんがこれ以上道を踏み外さないように遠くから見守ってたこととか …

腫れ物に触るように接したら、余計傷つくから、ワザと乱暴に扱ったりとか、優しくしたりして、家族みたいに接して … ようやく心開いて、スナックで働き始めたこととか、今年の夏は海女やってることとか …

そういうこと、何にも知らないでしょ?」

「はい、ごめんなさい … 」


泣き顔のよしえ。

「謝んなくてもいい … 私も家出組だからさ」

ヒロシへの電話を終えたアキは店内に戻って来ていました。

「田舎バカにして、都会にあこがれて家出して … 和解するのに25年も掛かっちゃったよ!

だから、まあ家出の先輩として、ひとこと言わせてもらうね。

 … 田舎、なめんなよ!」


よしえをにらみつけました。

… … … … …

梨明日。

賑わう店内、ヒロシがユイに近づいて、耳打ちしました。

… ユイの顔から笑みが消えました。

< 結局、ユイちゃんは … 東京に出てきませんでした。

夏ばっぱが理由を訪ねたら、ユイちゃんはこう言ったそうです。

『自分を捨てた母親にどんな顔で会ったらいいか、分からない』 >


… … … … …

「ごめんね、せっかく会えると思ったのに … 」

ユイはアキに電話で謝りました。

「いや、まあしょうがねえ … また、今度にすっぺ」

「今度なんてあるのかな?

だって、さすがに不安になるよ … 一生ここから出られないんじゃないかって … だって、夏ばっぱが初めて東京行くって時でさえ、こうなんだもん。

こういう運命なんだって、思った方が楽なんじゃないかな?」


ユイには珍しく弱気な発言でした。

「そんなこと言うなよ、ユイちゃん!

来れるって、たかが東京だぞ! … 盛岡から、2時間半だぞ!」

「うん … 近いのにね。

近いのに遠い」


どことなくあきらめたように寂しく笑ったユイ。

< 種市先輩とつきあうこと、ユイちゃんには言えませんでした … >

… … … … …

アキは上野まで上京する夏のことを出迎えに行きました。

「あ、アキちゃん! 夏ばっぱいた!」

「夏ばっぱ!」

「アキ ~ 」

< 予想通り、ばっぱのつきそいは大吉さんでした >


アキの顔を見るなり、夏は植え込みに座り込んでしまいました。

「いや ~ もう疲れた疲れた … トンネルさ入るたびに、耳がキーンキーンってしてよ」

「夏ばっぱが東京さいるなんて、何だか信じらんねえなあ ~ いつまでいるんだ?」


予定では一週間でした。

「いやあ、いやいや … 明日にはもう帰る!

もう人が多くて、まあうんざりだわ … 早ぐ家さ連れてってけろ!」

「心配すんな、コンピューターさ、バッチリ時刻表入れてきたべ。

2時31分の上野発の銀座線さ乗って … 」


しかし大吉の努力は水の泡、正宗がタクシーで迎えに来ていたのです。

「お義母さん!」

「あ、正宗さん、久しぶり」

「おおっ、モータリゼーション!!」

< あとで分かることですが、夏ばっぱが東京さ来たのには … それなりに大きな理由があったのです >


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2013年08月09日 (金) | 編集 |
第113話

『先輩、お、おらと … つきあってけろ!』

< 種市先輩さ交際を申し込んだ後、運が向いてきたのか …

子供番組のレギュラーが決まり、更に予備校のイメージキャラクターに選ばれました。>


『神技ゼミナール』キャッチコピーは、『受験が恋人!』

セーラー服姿、学ラン姿、アキは自分が受験生に扮した大きな看板を見上げていました。

< でも、素直に喜べねえ事情がありまして … >

一度はすっかり冷めたはずの種市への思いが再点火、自ら告白したアキ。

『 … 自分は天野のことが好きだ』

初恋が成就した … と思った矢先に持ち上がった話しでした。

『CMの契約期間が1年だから、その間は恋愛禁止だって』

『 … 自分は天野のことが好きだ』

『彼氏とか恋人がいるとマズイんだって』

『 … 自分は天野のことが好きだ』

『そういったスキャンダル等が出ますと、契約破棄になりかねないので』

彼氏などいる訳がないと決めつける母。

『じゃあ、引き続き恋愛御法度ってことで』

「なすて、このタイミングで?」

「あ、アキちゃんだ!」「ぎゃくかいてん!」


突然、子供たちに囲まれるアキ。

『見つけて こわそう』が大当たりのアキは今や子供の人気者でもありました。

… … … … …

東京EDOシアター。

CDシングルの週間ランキングを見ている荒巻。

「ああ、落ちてないね」

GMT5の『地元に帰ろう』は今週も1位をキープしていました。

「はい、今週は大物のリリースが重なったんで、半ばあきらめていたんですが」

そう答えた河島、太巻が見ているランキング誌の裏表紙を見て息を飲みました。

『神技ゼミナール』の広告、アキの顔が出ていたのです。

「順位はともかく、枚数的になあ … 」

太巻が気づいていないうちに取り上げようと手を伸ばしました。

「次のシングルはちょっと考えないとな … 付録とかな、何?」

「あ、いえ … 」


誤魔化す、河島。

「あ、またデキ婚?」

スポーツ紙の見出しに目が行った太巻はランキング誌を置いてそちらを手にしました。

慌てて、ランキング誌を隠す河島でしたが、今度はスポーツ紙の裏面に『神技ゼミナール』の広告が、1面でさっきより大きくアキの顔が載っています。

「他人事じゃないよ、うちも恋愛御法度とか言ってるけどさ … デキちゃったらもう祝福するしかないもんな」

『神技ゼミナール』の広告は幅広く打たれていました。

改めて見渡すと、他の雑誌も言うに及ばず、団扇やファイルケース、ペットボトルにまで、アキの顔がついています。

太巻の目に触れないようにスタッフルーム中、河島は隠して廻りました。

「こいつら保健体育とかまともに受けてないんだろうな ~ うちもやるか、保健体育?」

ちょうど、テレビで『見つけて こわそう』が始まったので、飛んで来てテレビのスイッチを切りました。

「何だ、お前はさっきから? アメリカのコメディアンみたいに!」

少しも落ち着かない河島のことを気にする太巻。

「 … ちょっと、ティッシュ、どっかないですかね?」

「うん、持ってるよ」


しかし、太巻が取り出したポケットティッシュにもアキの顔が …

「なんじゃ、こりゃ?!」

… … … … …

アキの顔が載っているとは知らずに、町で配られていたものを無意識に受け取っていたのでしょう。

街角でこのティッシュを受け取り、アキの顔を見て、足を止めた女性がいました。

失踪中のヒロシとユイの母、足立よしえでした。

… … … … …

無頼鮨。

帽子を深めにかぶり、大きなマスクをしたアキが入って来ました。

「何よ、芸能人じゃあるまいし!」

待ち合わせていたひろ美が、その姿を見て笑いました。

「 … 一応、芸能人でがす」

「知ってるわよ、すごいじゃない … 電車の中吊り全部、天野さんよ」

「電車さ乗ってるんですか?」


45歳にして、地下鉄デビューだと胸を張りました。

「便利よね、運転手に行先言わなくても、上野まで来られるなんて」

にっこりとうなずいた梅頭はアキに言いました。

「アキちゃん、お腹空いてる? … ヒラメのいいのが入ったんだよ」

少し自慢げに切り身を見せました。

「じゃあ … ウニ」

「カッパ下さ~い」

「 … そうすか」


… … … … …

「相変わらず忙しいのか?」

「相変わらず … タメぐちね」


いつものことながら、決して気を悪くしてはいないひろ美です。

「あ、すみません」

「大変なのよ、天野さんが辞めてから … セリフ合わせの相手いないから、開店前にここに来て彼にお願いして」


飲み物を運んできた種市のことを指しました。

「じぇっ、種市先輩が?」

「下手くそだわ、訛ってるわで、出前入ると抜けちゃうわで … お話になんないのよ、はははっ」


下手くそで訛ってるのは、自分も一緒だとアキは言いました。

「でも、オファーいっぱい来るでしょ?」

「来るには来るが … ドラマのオファーは全部断ってるんだ」

「どうして … 自信ないの?

40回もNG出しちゃったもんね」


ひろ美はアキの肩を抱いてポンポンと叩きました。

「それもあるが … ママが急に主役にこだわり出して」

「はあっ?」


… … … … …

「脇はダメ、やっぱり … 下手なのバレちゃうから。

主役が一番バレないのよ、何でか分かる?

周りが助けてくれるから … 昔のアイドルなんか、ダイコンばっかりよ、だからいきなり主役でデビューさせるのよ。

あれだってそうよ、『潮騒のメモリー』の鈴鹿ひろ美」

… … … … …

春子の言ったことをアキから聞いたひろ美は、目くじらを立てて怒り出しました。

「私が、ダイコン? ダイコン … 信じられない!

たしかに、主役デビューだけど、新横浜映画祭新人賞もいただきました。

ちょっと売れたからって何様のつもり?

お母さん呼んで来なさい … 詳しくお話し伺いたいわ!」

「 … 止めた方がいい、毒しか吐かねえから」


それもそうかもと、妙にうなずくひろ子。

「それに実は相談っつうのは、他でもねえ … ママのことなんだ」

「お母さんがどうしたのよ?」


続けて話そうとしたアキですが、後ろで手仕事をしていた種市に尋ねました。

「出前行かねえんですか?」

「えっ?」


… 種市に聞かれたくない話題のようです。

「いつも大体、話の途中で出前行くべ、今日は?」

「いや … 開店前だから」


… … … … …

「ママのプレッシャーが重いんです。

水口さん雇ったのに結局ほとんど現場さ来てるし、来れない時は家帰ったら、細かく色々聞かれて …

こないだも初めてバラエティーさ出て、何か特番みたいな … 」


… … … … …

テレビ収録を終えて家に帰ってきた、アキと正宗。

春子は、アキの顔を見るや否や、早速根掘り葉掘り聞き始めました。

「ねえ、ちゃんと品川に拾ってもらった?」

「 … 」

「ちゃんと庄司に筋肉見せてもらった?」

「ちゃんと有吉にあだなつけてもらったの?」

「ちゃんと竹山に切れてもらった?」

… … … … …

「無理です!

一度に色々できねえです!」


アキは思わず立ち上がっていました。

「落ち着いて天野さん … ほら、ウニ食べて」

ひろ美がなだめましたが、アキはカウンターの前を行ったり来たりしはじめました。

「大体、芸能人が100人もいて、前さ前さ出ようとワサワサしてる番組でおらに何ができる … 」

やはり何か、種市が邪魔なようです。

「なあ … 先輩、出前は?」

しかし、注文もないのに出前に行ける訳もなく …

「だから … 」

「行って来い … 何となく行って来い」


アキの気持ちを察した梅頭が命令しました。

「そうよ、頼まれなくても行きなさい … 不景気なんだから」

ひろ美の言葉には少し首をかしげた梅頭です。

種市は何も持たずにすごすごと店を出て行きました。

… … … … …

「期待する気持ちは分かるけど …

お母さんちょっとあれね、一昔前の芸能界の常識に囚われてるんじゃないかしら?

今はそんなガツガツすると、却って引いちゃうから」

「欲求不満なんです!」

「はっ?」


思わずアキの顔を見るひろ美と梅頭。

「あ、すいません … 本題さ入ります」

「??? じゃあ、今までの話は?」

「どうでもいいです」


アキはけろっとした顔で言いました。

… … … … …

「GMT辞めて、ようやく恋愛できるべっつうことで、勢いついで、種市先輩さ告白したんです」

梅頭がチラッとアキを見ました。

「そしたら、つき合うべって … つまり両想いだったんです」

顔を上げる梅頭、ひろ美はのけ反りました。

「 … ところが、予備校のCMが決まってしまって、1年間彼氏作っちゃダメな契約だったんです。

1年なんて無理です、もう走り出した恋の汽車は停まりゃしねえです!

もうサカリのついた猫背のメスのサルなんです!」


唖然とする梅頭。

「どうしたらいいべ?」

「う~ん … どうしたらいいかな、大将?」


何と答えていいのか、考えあぐねたひろ美は梅頭に振りました。

「あっ、確か出前が … あったような … 気がするな … 」

逃げるように、店の奥に引っ込んでしまいました。

「鈴鹿さんもアイドルだったんですよね?」

「うん、まあ … 25年前はね」

「恋愛御法度だったんですよね?

どうしてたんですか? … その欲求不満の方は?」


… … … … …

「まず、『欲求不満』って言葉止めよう、誤解されるから。

女子はあんまり使わない方がいい」


ひろ美はただ『恋愛』と言えばいいと言いました。

「 … 適当にやってたわよ」

「その適当にがわかんねえんだ。

どういうこと? … 隠れて逢ってたってことか?

帽子かぶって、マスクして、デートしてたってことか?

… それは、つきあってるって言えるのか?」

「じゃあ、つきあうって何?」


ひろ美は反対にアキに尋ねました。

「鈴鹿さん … 止めてよ、女子中学生じゃあるめいし、男とつきあったことねえのか?!」

「あるわよ、太巻さんと ~ 」

< うわあ、すっかり忘れてた … この人、太巻さんの元カノだった >


それは、『潮騒のメモリー』でブレイクした後のことでした。

「悪いけど、今の天野さんより、ずうっと、ずうっと、大事な時期よ」

… … … … …

「恋愛を取るか、仕事を取るか決められないから、一緒にしちゃえって、彼と一緒に事務所立ち上げたの。

欲張っちゃ、ダメよね … 1年も続かなかった。

でも、後悔してないの … だって、どっちかしか選べないなんて、誰が決めた?

恋愛か仕事かじゃなくて、私の場合、恋愛も仕事もよ」

「 … 恋愛も仕事も?」

「そう、バレなきゃいいのよ

… なんて、ママに聞かれたら大変だけどね」


ひろ美は、いたずらっぽくアキの顔をのぞきこみながらそう言いました。

… … … … …

「 … ただいま戻りました」

エア(?)出前から戻ってた種市に言って、勘定を済ませたひろ美。

「ま、適当におやんなさい」

そうアキの耳元でささやくと、気を利かせて帰って行きました。

… … … … …

「この間いただいたお話の返事ですけど …

前向きに検討します、という方向でお願いします」


店の中にふたりきりになった途端、アキは種市にそう言って頭を下げました。

「あっ、本当か?

… 自分でいいのか?」


笑顔で、もう一度聞き返した種市にうなずくアキ。

「やったあ!!」

しかし、喜ぶ種市を制してアキは言いました。

「ただ … くれぐれも、1年間は、ママには内緒でお願いします」

怪訝な顔をする種市。

「大事な時期なので、ごめんね」

「どうした、天野? … 訛ってねえぞ」

「あ、本当だ … 何でだろう?」


改めて、見つめ合ったふたり。

「 … 天野」

「先輩 … 」


種市が近づいて、顔を寄せてきました。

思わず、よけてしまったアキ。

「えっ?」

「あっ … まだ、早いよな?!

ごめんごめんごめん、ごめん … 」

「 … 早くねえ!!

おら、もうすぐ20歳だ … 遅いぐれえだ!」


アキは怒ったようにそう言うと、種市の方を向いて目を閉じました。

「天野 … 」

今度こそ … 唇が触れそうになった瞬間、テレビドラマのようにアキの携帯が鳴りました。

またも出鼻をくじかれた種市。

アキは電話に出ました。

「もしもし、うん … もうすぐ帰る」

電話は春子からでした。

「えっ … じぇじぇっ?!」

… … … … …

アイドルに駆けつけたアキ。

扉を開き、店に飛び込みました。

< そこにいたのは、ユイちゃんのママでした … >

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2013年08月08日 (木) | 編集 |
第112話

「ズルじゃないわよお!」

春子に丸めた台本で脳天を思い切り叩かれたアキは、次の瞬間 … 泣き出しました。

「春子さん?!」

< ママに … いや、社長に叩かれました >

「なりふり構わず、取ってきた仕事です … これ、ねっ?

専業主婦が、無い知恵絞って、頭下げて … これがママの全力、精一杯、誰にも迷惑なんてかけてません!」


テーブルをバンバン叩きながら、まくし立てる春子を水口がなだめました。

「ちょっと、落ち着きましょう」

「何の努力もしねえでドラマだのバラエティーだど出たら、天狗になっちまう …

はあ ~ ? … 天狗になれたら大したもんなんだよ!」


正宗も春子を止めました。

「やりたくねえ!」

言うことを聞かないアキ、一歩も譲らない春子。

「やるのっ!」

その時、ふたりにも増して大きな声を出して止めたのは、正宗でした。

やめなさいっ!

… … … … …

正宗の一喝で黙り込んだ春子とアキ、しかし …

< 事態は何も解決していませんでした。

ただひとつだけ、お湯が沸きました … >

「ごめん … 自分で思ってたより、1.5倍ぐらい大きな声が出た」


つい大声を上げてしまったことを詫びました。

「僕は、個人タクシーの運転手だし、芸能界のことは分からない … みのもんたを赤坂まで乗せたことがあるぐらいだ。

あと、オネエのメイクさん? … よくテレビに出てる『どんだけ ~ 』の人、おかっぱの『どんだけ ~ 』の、ガタイのいい『どんだけ ~ 』 … 知らないか?」

「 … 知ってるわよ、知ってて黙ってるの」


冷たい視線を投げかけている春子、正宗は気を取り直して言いました。

「とにかく僕は素人だから、意見はしない … でも、この家で久しぶりに3人揃っているのにギスギスしてほしくないんだ」

さっきからケトルがお湯を沸いたことを知らせています。

「お湯、湧いていますけど?」

「うん、そう … お湯が沸いているのに、誰も止めに行けないような空気にしてほしくない」


春子はもう1回、念を押すように言いました。

「沸かした人が止めればいいんだね、はいはい」

しかたなくガスを止めに立つ正宗。

… … … … …

「何なのよ … まだ根に持ってるの?」

「何が?」


ひとまず落ち着いた春子はアキに尋ねました。

「ママのせいで事務所、クビになったと思ってるんでしょ?」

… 図星でした。

「皆と同じステージ立ちたかったのに、ママが台無しにしたって言いたいんでしょ?」

見事に言い当てられたので、答えることができないアキです。

「謝ったら、許してくれるの?

ごめんなさい … お詫びにお仕事取ってきました。

どうか、ママの顔を立てて、お願いします … って、頭下げたら、機嫌直してくれんの?」


優しい口調から一転、目を剥いて迫る春子。

そして、反抗的なアキ。

「頭なんか、絶対下げねえくせに … 」

「当たり前よ!

あんたのために頭下げても、あんたには頭なんか下げません!

大体さ、何で行かせたのよ? 水口君も」


矛先は水口に移りました。

「いや、いい刺激になるかなと思って … 」

「そんなポジティブな子じゃないのよ、アキは!

地味で暗くて … 」

「春子さんっ!」


キッチンから戻ってきた正宗が春子がそれ以上言わないように止めました。

… … … … …

「 … あんなの一時のもんだよ。

若気の至りだよ!

毎年さ、可愛い子30人か40人か集めて、才能ないのに舞台上げてさ … その中から10年後、何人残ってると思う?

… せいぜい、ひとりかふたりだよ。

だったら、最初からひとりでやった方がいいじゃないのよ?!」

「分かってるよ、分かってるけど … もし、辞めずに残ってたらって、考えてしまうんだ。

もし、GMTさ残ってたら … 」


今まで、ほとんど黙って話を聞いていた水口が口を開きました。

「だったら、ユイちゃんどうなるの?」

「ユイちゃん?」

「もし、お父さんが倒れてなかったら、あのタイミングでユイちゃんと一緒に東京へ来てたら … ふたりでアイドルになれてたかな?」


『すぐ行くからね、すぐ行くから待っててね … 』

「当たりめえだべ!」

「でも、実際なってないでしょ、今 … ふたりとも。

あれから、もうすぐ1年になるよ。

もしとか、誰のせいとか言ってたら、1年なんかアッという間に過ぎちゃうんだよ。

… ズルとかインチキとか、アキちゃんも俺もそんなこと言える身分じゃないんだ … 切羽詰ってるんだ」


水口の話に考え込むアキ。

「もう1年か … 早いね」

しみじみと春子が言いました。

『皆に好かれたね、こっちに来て皆に好かれた … あんたじゃなくて、皆が変わったんだよ!

自信持ちなさい、それはね、案外すごいことなんだからね!』

… あの日からもうすぐ1年が経とうとしているのです。

「早えな … 」

「本当、早いよなあ」


不謹慎にも正宗は、同窓会で再会して少しの間つきあっていた女性のことを思い出していました。

… … … … …

「悪かったわよ … すみませんでした」

そうおどけたように言いながら、春子はアキの髪の毛をかきむしりました。

「 … タレントの頭叩くなんて、最低だね」

自戒する春子。

「おらもごめん … 社長さ向かって、ズルだのインチキだのって … ママでねがったら、またクビになるところだった」

春子は笑いながら、アキの頭を撫でました。

その時、キッチンタイマーが鳴って …

「あ、すみません」

ひとり分のカップラーメン、正宗はフタを剥がすと食べ始めました。

… … … … …

「 … で、どうしますか?」

水口が話を本題に戻しました。

「無理にやらなくてもいいわ、アキ。

でも、どれかできそうなの、1個だけ選んで … ママができるのはここまで。

ここから先は自分で切り拓いていくのよ」


アキは並んだ台本を見比べ … そして、1冊手に取りました。

「これかな?」

その番組のタイトルは、『見つけて こわそう』。

「あ、それ僕です … 子供向けの教育番組。

大した仕事じゃないんですけど、混ぜときました」


すると、正宗がラーメンをすすりながら口を挟んできました。

「うん、いいかも知んない … 最近の幼児番組、アバンギャルドだもんね。

アキには、ピッタリだよ」

「 … やりたいの?」


アキは春子にうなずきました。

< その選択は、結果的に大当たりでした >

… … … … …

『見つけて こわそう』

司会は、さかなクン、アキはそのアシスタント … 『ぎょぎょぎょ』と『じぇじぇじぇ』のコラボです。

< 『見つけて こわそう』は、身近なものを見つけては壊すことで、モノの大切さを逆説的に教える新番組。

その斬新な設定が受け、『子供がモノのありがたみを知るきっかけになった』『コップやお皿を割らなくなった』という声が続々寄せられました >


… … … … …

「受ける ~ これ、アキちゃんのキャラにピッタリだよね」

リアスで『見つけて こわそう』を見ながら、楽しそうに笑うユイ … すっかり以前のユイに戻ったようで、夏は目を細めてその横顔を眺めていました。

「ユイちゃん、今度おらと東京さ行かねえか?」

「えっ?」


いきなり夏に誘われてユイは目を丸くしました。

「お盆休みによ、ふたりして東京さ遊びに行くべえ」

「じぇじぇ、本気かえ夏ばっぱ?」


北三陸さえ出たことがない夏が東京だなんて、かつ枝が驚いて確かめました。

「んだ、7月にはいっぺえ稼いだし、だからちょっくら羽伸ばしてえなあと思ってさ」

「んでも、夏ばっぱ、東京さなど、行ったことねえべ?」


弥生も尋ねました。

「だから、ユイちゃんにガイドしてもらうべえって」

「 … いいけど、私も行ったことがないよ」

「じぇじぇっ?!」

「修学旅行は?」


驚きのあまり腰を浮かせながら、勉さんが尋ねました。

「怪我して行けなかった … お風呂で転んで骨折したの」

「ジャイアント馬場だな」


また、珠子の分かりにくいモノの例えです。

「あれ、ご存じない?

ジャイアント馬場って風呂場で怪我して、巨人からプロレスへ転向したんです」

「プロレスできるならプロ野球もできそうなもんですけどね」


いつの間にかカウンターに座っていた吉田夫妻がマニアックな解説をしてくれました。

… 分かる奴だけ、分かればいい!

どういう心境の変化だと美寿々が夏に聞きました。

「いやあ、何にも … 春子とは今まで絶縁状態だったから、行く気がしねがったから、今はアキもいるし … 」

「んだら、俺が行くべ!」


何処で聞きつけたか、大吉が笑顔で立っていました。

「いやいやいや、それには及ばねえよ、駅長さん」

「気にすんな、疲れたら俺がおんぶしてやっからよ」

「 … 空気を読めよ」


リアスの客全員が大吉のことをにらみつけていました。

< そうです … これは、夏ばっぱの粋な計らいだったのです。

東京さあこがれてたユイちゃんをサラッと連れ出すための … >


ガシャ ~ ン!

「見ろ、ツボが粉々になったど!」

空気が読めない男、大吉が指差したテレビの中では、アキが大きなツボを落として粉々に壊したところでした。

「よ ~ し! じゃあ、お待ちかね … 逆回転だあ!」

アキが腕をぐるぐる回すと、壊れたはずのツボの破片が集まって、元に形に戻りました。

『ぎゃくかいてんは アキちゃんだけの のうりょく! みんなはマネしないでね』

「じぇじぇじぇっ?!」

「ぎょぎょぎょっ?!」


… … … … …

純喫茶アイドル。

「え、えええっ?!」

ただの逆回転のトリックなのに目が飛び出すほど甲斐は驚いています。

「じぇじぇじぇっ!」

アキの元には早速ユイから電話が掛かっていました。

「夏ばっぱとユイちゃんが?!」

「そう東京行くって、お兄ちゃんも1週間ぐらいならお父さんと大丈夫だって」


うれしそうに電話するユイ。

アキはワクワクしてきました。

「じゃあ、来んのか … ついにユイちゃん、東京さ来んのか?」

「うん、行く!」

「やったああああ ~ !」


大声を上げて飛び上がるアキ。

「うるさいっ!」

テーブル席で客と打ち合わせ中の春子がアキを注意しました。

「失礼しました ~ 」

頭を下げる甲斐。

… … … … …

「ねえママ、夏ばっぱとユイちゃん、東京さ来るって」

打ち合わせ中だろうがお構いなしのアキです。

「聞こえてたから … あのこちらね、CMプランナーの萩尾さん」

アキに目の前に座っている男性を紹介しました。

「CM?」

「『見つけて こわそう』観て、連絡くださったんだ」


水口が経緯を話しました。

「神技ゼミナールという予備校のイメージキャラクター募集してまして、クライアントもアキちゃんに興味示してますんで、是非!」

荻野は企画書を見せながら、アキにそう言いました。

「じぇじぇじぇっ!」

持っていたお盆をアキが落としてしまったので、その音が店中に響き渡りました。

「失礼しました ~ 」

「何よ? … 」


… … … … …

< ユイちゃんで思い出した … おら大問題を抱えてたんだ! >

『先輩 … お、おらと、つ、つきあってけろ!』

< 種市先輩さ、告白してしまったんだ。

そして … >


『わかった、よし、つきあうべ … 』

『やんだっ』

< 自分がら告って、自分がら断ってしまった。

それなのに … >


『自分は天野のことが好きだ』

『いやいやいや … だって、先輩はおらじゃなくて』

『ユイとはもう何でもねえ、もう別れた …

返事はいつだっていい … じっくり考えてけろ』

『やっぱ、つきあってけろ、先輩!』

< 結局どうなったんだ? … おらは先輩とつきあうのか?

つきあわねえのか? >


… … … … …

「問題ないよね、アキ?」

「えっ?」

「今の話、聞いてたでしょ?」


春子は自分が座っていた場所にアキを座らせました。

「はい … 全然聞いてないです」

「CMの契約期間が1年間だから、その間は恋愛禁止だって」


代わりに水口が説明しました。

「うん、彼氏とか恋人とかいるとマズイんだって」

「 … しょうがないですよね、キャッチコピーが『受験が恋人』ですもんね」

「ええ、そういったスキャンダル等が出ますと、契約破棄になりかねないので」


萩尾の言葉にうなずく春子と水口。

< 『じぇ!』も出ませんでした … >

「でも、いないもんね、彼氏とか … 全然大丈夫です」


そう決めつけられるのも悔しいものですが …

「じゃあ、引き続き恋愛御法度ってことで」

< うわああ、どうすべえ? >


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2013年08月07日 (水) | 編集 |
第111話

< ミサンガ1本切れた夜、アキは地元の先輩に励まされました >

家路を急ぐアキは無頼鮨の裏で種市と出くわしました。

「ここが踏ん張りどころだぞ!

天野、ひとりぼっちでツレエのは分がる … でも、今逃げちゃダメだ」

「先輩 … 」

< 一度はすっかり冷めた恋の病が … いやいやいや、ダメだ!

何しろ、おらはアイドル … 恋愛はご法度。

… じゃねえ!! GMTをクビになった今、おらをしばるものは、国の法律以外になにもねえ! 

恋愛御法度解禁、鎖国は終わった! … 開国ぜよ、夜明けが来たぜよ! >

「先輩っ!」


アキは思わず叫んでいました。

「 … どうした、天野?」

初めて見かけて一目ぼれした日、北高での潜水実習 … 北三陸での種市との思い出。

『 … その火を飛び越えます!』

「先輩 … お、おらと、つ、つ、つつ、つきあってけろ!」

… … … … …

… 口走っていました。

「 … わかった、よし、つきあうべ」

驚いた顔をした種市でしたが、意外にも簡単にOKすると、アキの両肩に手を伸ばしてきました。

「やんだっ」

その手を払って身を固くしたアキ。

「じぇじぇっ? な、何だおめえ?」

「だって、今のおら普通でねえもん! … 海の底では判断力が鈍るもんだ。

今度にしてけろ」

「 … 分がった … そういうことなら、今度にすっぺ。

ただ、自分の気持ちは変わんねえ … 自分は天野のことが好きだ」


顔がほころんでくるのを隠せないアキでしたが …

「いやいやいや … だって、先輩はおらじゃなくて」

「ユイとはもう何でもねえ、もう別れた」


ユイは結局、東京に彼氏が欲しかっただけで、東京行きをあきらめたと同時に自分は用無しになったと、訥々と話しました。

「それ、いつの話?」

「別れたのか? … 正月」


大分前のことでした。

「もっと前から天野のこと気になってたけどな … 」

照れくさそうに話した種市。

「 … いつから?」

「自分が『海の底』いた時だ」

「じぇじぇじぇ ~ もっと前じゃん、すっげえ前じゃん?」


種市が座っているベンチの隣に腰かけるアキ。

「あれからずっと、天野のこと一番に考えてた … いつか、思いを伝えっぺと思ってた」

「何だよ、なすて早く言わねえんだよ?」


不満顔のアキに種市は言いました。

「そりゃおめえ、恋愛御法度だったからよ」

… … … … …

「ま、返事はいつだっていい … じっくり考えてけろ」

種市は立ち上がってそう言うと、店に戻ろうとしました。

「やっぱ、つきあってけろ、先輩!」

アキは後を追って、そう叫びました。

「 … じっくり考えたか?」

うなずくアキ。

「おら、先輩が好きだ」

種市は、先程と同じようにアキの両肩に手を伸ばしてきました。

アキは今度は拒まずに、そのまま種市の両手で肩をつかまれて、そしてお互いに見つめ合いました。

… … … … …

「アキちゃん?」

振り向くアキ、シアターの裏口に薫子が立っていて、こちらを見ていました。

「やんだっ」

思わず種市から離れたアキ。

「ごめん、また今度」

言うより早く、アキは走り出していました。

「アキちゃん、待ってけろ!」

その後を薫子は追いましたが、出待ちのファン達に見つかって、取り囲まれてしまいました。

… その様子を物陰からアキは見ていました。

… … … … …

いろいろな思いを抱えて自宅に戻ったアキ。

春子は電話中でしたが、アキの気配を感じて切り上げました。

無言のまま、ふて腐れたような顔のアキに春子は尋ねました。

「アキ、あんた何処行ってたの?」

「別に … 」

「何よ、別にって … 水口さん、心配して電話くれたんだよ」


春子の問いかけに答えることなく、自分の部屋にこもってしまいました。

… … … … …

無頼鮨。

シアターを上がったGMTのメンバーもようやく揃っていました。

… 薫子の顔が見えないようですが …

携帯を閉じた水口。

「無事、家に着いたみたい」

取りあえず、ホッとする一同。

「ばってん、会わせる顔がなかって、アキちゃん水臭かね?」

真奈の言葉に皆は苦笑いしました。

「いつもの明るさで誤魔化したくなかったんだよ … 『お疲れ、よかったよ』で、笑顔で迎えたら、せっかく感じた悔しさも流れちゃうだろ?

ちゃんと落ち込むことも必要なんだよ」


水口はそう言った後に立ち上がりました。

「 … 見捨ててすまなかった」

メンバーを残して退職したことを謝罪しました。

「えっ、そんな … 」

水口の気持ちもよく分かる、しおりたちは答えに困っています。

「そして、立派になったな … おめでとう」

他人行儀な水口が、やけおかしくて皆笑っていました。

「 … でも、俺もこのままじゃ終わらない。

アキちゃんとふたりで、必ず見返してやるからな」

「ちばりよ ~ 水口!水口!」


立ち上がって、おどけながらエールを送る喜屋武を他の客に迷惑になるとしおりが止めました。

思わず笑顔になる水口。

… … … … …

「今日じゃなかったかな … 」

座敷の上がり口に控えていた種市がつぶやきました。

… 水口の話、決意を耳にして、アキに自分の思いを伝えるのが少し早かったと思ったのかも知れません。

「えっ?」

「あ、いや … 先にお会計いいですか?」


伝票を受け取った水口、本来ならばお祝いにご馳走してあげたいところなのですが、現在収入ゼロの身でとてもそんな余裕がありません。

すると、一番年少のベロニカが水口の手から伝票を取り上げ、金額を確認すると …

「水口、2,000円でいいよ … 皆は、5,000円通しね」

「 … ソーリー」


… … … … …

一方、部屋に閉じこもったアキは、電気も点けずにベッドの上にうずくまっていました。

「アキ、入るよ」

ノックをして春子が部屋のドアを開けました。

灯りを点ける春子、アキはヘッドフォンをつけたまま振り向きもしません。

春子に尻を叩かれ気がついて、もそもそと体を起こしました。

ヘッドフォンを外させて、アキの隣に腰かける春子。

「何、あんた、アメ横行って来たんだって?

で、どうだった … 皆?」

「カッコよかったよ、すごい盛り上がってた。

… おらがいねぐなって、かえってよぐなったんでねえか?」


ヒガミっぽいことを口にしたアキ。

「何よ、あんた … 辞めたこと後悔してるの?」

「してるよ、してるに決まってるじゃん!」


我慢しきれずにアキは立ち上がりました。

「 … バカね、アキ。

ママがちゃんと仕事取ってきてあげるから」

「そういう問題じゃ、ねえっ!」


春子が止めるのも聞かず、アキは外に飛び出して行ってしまいました。

ため息をついた春子、アキが何を聴いていたのか、ヘッドフォンに耳を当てました。

♪好きです 先輩 覚えてますか?

朝礼で倒れた私 …

… … … … …

夜道をあてなく走るアキ。

< おらだって、あの中さ、いたかもしんねえのに … いや、確実にいたんだ。

あのまま、デビューしてたかもしんねえんだ。

なのにママが、ママが切れるから … >


『こんな事務所、こっちから願い下げだけどね! … 普通にやって、普通に売れるもん作んなさいよっ!』

< ママのせいだよ、ママのせいじゃん! >

目の前にトンネルが現れ、アキは足を止めました。

あの日、ユイは袖が浜の駅からトンネルに向かって叫びました。

『アイドルになりた ~ い!』

そんな記憶がアキによみがえりました。

おらもアイドルになりてえど ~ 

… … … … …

「ただいま!」

本業を終えて、帰宅した正宗。

春子は押し入れから、あれこれと引っ張り出して、何やら探しています。

「何やってるの?」

「あった ~ !!」


1冊の手帳を手にしています。

「これだ、これ … 一か八か、本気出してみる? 黒川さん」

手帳には、数枚の名刺がスクラップされていました。

「名刺?」

「そう … 私に影武者やらせた奴らのね」

「えっ?!」

「いざという時の切り札になると思って、全部捨てずに取っといたの。

… まずは、こいつから」


春子が選んだ名刺は、『潮騒のメモリー』のチーフディレクター・柏木誠司のものでした。

… … … … …

春子はその柏木をアイドルに呼び出しました。

彼は現在、ミレニアムレコードの制作本部長に出世していました。

「ご立派になられて … 」

「まだ、この業界にいたんだね … で、どういったご用件で?」

「私じゃなくて、娘なんです」


後ろに控えていたアキに挨拶をさせました。

「アイドルになりたくて、岩手から上京して来たんですよ」

「歌唱力は?」

「そんなの別の人に歌わせちゃえばいいのよ!」


笑顔でそう言った春子。

柏木の顔が一瞬ひきつりました。

「はははは、冗談きついな」

< スリーJの女社長、天野春子がついに動き出しました … >


… … … … …

次に会ったのは、関東テレビのプロデューサーの馬場健一郎です。

「ここだけの話なんですけど、柏木さんが気に入ってくれて、ミレニアムからCDデビューが決まったんですよ」

< ウソにウソを塗り重ねて、ママは交渉を続けました >


お次は、毎朝テレビのチーフ・プロデューサー、桂啓介。

「困ったわ ~ 馬場さんの所で女優デビューすることが決まってるの」

「ああ、残念だけど、今回は … 」

「レギュラーだったら、向こう蹴りますけど … よろしくお願いします。

… 私が果たせなかった夢を娘にかなえて欲しいんですぅ」


泣き崩れる春子。

< それは、まるでアイドルになれなかった、かつての少女・天野春子による復讐劇を見ているようでした >

… … … … …

< そして、ついに … >

スリーJプロダクション。

大したものでテーブルの上には十数冊の台本が並びました。

「ざあっと、こんなもんよ!」

「すげえ … 」


ドヤ顔の春子、感心している水口 … アキはちょっと複雑な表情ですが。

「まあ、演技は素人だって言ってあるしさ、最初はセリフもあったりなかったりだしさ …

忙しくなるよ!」


自分の好きな番組もあると、正宗も喜んでいます。

ところが、このいいムードに水を差したのは、アキ本人でした。

「やりたくねえ」

「えっ?」

「 … ママごめん。

でも、おら今は何もやりたくねえ」


春子は我が耳を疑いました。

「ちょっと、あんた何言ってるの?

… この仕事貰うためにママがどんなに苦労したか」

「インチキじゃん!

これ全部、ママのコネでしょ? おら何にもしてねえ … こんなんで、何の努力もしねえで、ドラマだのバラエティーなど出たら、天狗になっちまう」

「あのね、世の中にはテレビに出たくて出れない人が五万といるんだよ」


アキを諭そうとした水口を春子は制しました。

「聞こう … アキの言い分、最後まで聞いてみよう」

… … … … …

「だから、気持ちはうれしいけど、おら … ズルしてまで仕事欲しくねえ」

「ズルじゃないわよお!」


春子は丸めた台本でアキの脳天を思い切り叩きました。

言葉を失うアキ、次第に顔が崩れて … 大泣き … です。

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2013年08月06日 (火) | 編集 |
第110話

「天野アキです、よろしくお願いします」

「本当何でも、アシスタントでも何でもやりますから」


今日も水口はアキを売り込むためにテレビ局回りです。

「お願いします!」

< ママが会社を立ち上げて1ヶ月、水口さんは必死におらを売り込んでくれました >

「好き嫌いしませんから、グルメレポーターとかも」

< … 仕事がないと、水口さんの給料もないので必死です。>

「この子なんですけど、セリフがない役でもやりますから … 」


… … … … …

「セリフのない役なんてやりません!」

水口からの報告を電話で受けた春子はきっぱりと言い切りました。

「いい、水口君? アキの武器はね、あの何とも言えない訛りなの!

セリフがなかったら活かせないでしょ?

… アシスタントもグルメレポーターも結構だけれども、ベースはあくまでもアイドルなんだからね!

安売りしないでもらって … っていうか、うるさいんだけど!」


キッチンで炒め物をしている正宗を怒鳴りつけました。

「あ、ごめん」

チンジャオロースを作っています。

「ええっ、グラビア?」

電話に戻った春子の声を聞いて、正宗の手が一瞬止まりました。

「それは、え ~ 例えば、水着?

え ~ 水着 … どうする?」」


春子は正宗の顔を見ました。

「 … 僕に聞かないでよ」

そう言った、正宗の目は必要以上に泳いでいました。

… … … … …

「袖が浜海岸の海開きに先駆けて、我が『北鉄のユイちゃん』が『海女のユイちゃん』になって帰ってきました ~ 」

北三陸駅、駅舎内に大吉の声が響き渡り、大きな拍手と歓声が上がりました。

『帰ってきた 北鉄のユイちゃん!撮影会』と書かれた横断幕の下、髪を元の黒に戻したユイが、海女姿でウニを片手に笑顔で手を振っています。

「ただいま ~ 」

「お帰り ~ 」


ユイが叫ぶと、集まったファンが一斉に応えました。

その一番前に陣取っているのは、今はアイドル評論家として名をなしたヒビキ一郎です。

本人が『ユイ押し』と豪語するように、復活を耳にして、わざわざ駆けつけたのでした。

「黒い髪になって、黒い交友関係を断って、あの伝説の美少女が帰ってきました ~ 」

大吉が言わなくてもいいようなことを口走りましたが、ファンは気にすることなく盛り上がっています。

「可愛い ~ ウニ頭に乗っけて!」

要望に応えるユイ、一郎は写真を撮りまくります。

「2010年夏、春ちゃんがいなくても、アキちゃんがいなくても、北三陸にはユイちゃんがいます!

海女のユイちゃんがいま ~ す!!」


笑顔を振りまくユイ。

久しぶりにあの頃の活気と賑わいが戻った … 北三陸駅でした。

… … … … …

数日後、その一郎が今度は、アキのバイトする純喫茶アイドルにやって来ました。

「やっぱり、黒髪だよな、ユイちゃんは」

タブレットに入れたユイの写真を画面をフリックさせながら次々と見せてきます。

「ほら、これなんかベストショットなんじゃない?」

「んだな … 」


まともに見ようともせずに、面倒くさそうに答えたアキ。

「 … どれが?」

「だから、その海女さんの奴!」


… 全部、海女さんでした。

「じゃあ、全部ベストショット!!」

「 … 何その態度?

干されて元気ないって言うから、励ましに来たのにさ」

「ほされてえ?」


アキは一郎に詰め寄りました。

「事務所、干されて辞めたんだろ?」

にらみ合うふたりの横から、甲斐が手を伸ばして、テーブルの上に置いてあったタブレットを落としました。

「ああっ、ジジイ何すんだよ?! … 弁償、弁償!」

目を剥いて怒っている一郎に甲斐は静かに言いました。

「アイドル評論家のヒビキ一郎だろ? … 雑誌の連載読んでるよ」

「あっそ、ありがとう」


タブレットを拾いながら、礼を言った一郎。

「 … 面白いとは言ってないけどね」

「何だこれ?」


タブレットと一緒に一郎が拾ったのは … アキの腕に巻かれていたミサンガでした。

「じぇじぇじぇっ!」

それを一郎の手から奪い取ったアキ。

「どうした、アキちゃん?」

「おらのミサンガ、いつのまにか1本切れてた」

「やったじゃん!」

「 … っていうことは、今日こそ念願の初仕事かあ?」

< 水口さんがテレビ局周りから帰ってきました。

無表情ですが、収穫がなかったことは一目瞭然です … >


水口は、無言でカウンターにつくと、缶コーヒーを取り出して飲み始めました。

「おい … 一応、うち純喫茶」

甲斐へ返事する代わりにため息をついた水口。

< 水口さんにとって、収穫ゼロは収入ゼロを意味するのです >

… … … … …

「あ、来てたんですか?」

水口は一郎がいることに気づきました。

「今日のGMT祭り行くの?」

「 … 行く訳ないでしょ」

「GMT祭りって何だ?」


アキは初耳でした。

「知らねえの?

『地元に帰ろう』10万枚突破記念のイベントだよ」


一郎はタブレットでイベントを告知するサイトを開いてテーブルに置きました。

しかし、アキには見せたくない水口はタブレットを叩いて床に落としてしまいました。

「おいっ、俺のタブレット何だと思ってるんだよ?!」

「 … おら何で誘われてねえんだべ?」

「気、遣ったんじゃない?」

「そうか … 気、遣わせちゃったか … 」


どことなく寂しそうなアキを見て、水口は改めて尋ねました。

「 … 行かないよね?」

水口を見つめ返したアキ。

… … … … …

結局、ふたりは東京EDOシアターまでイベントを観にやって来てしまいました。

< 衝撃でした。

ついこの間まで一緒だった仲間が、共に奈落で汗かいてた仲間が、目の前で歓声を浴びている … スポットライトを浴びて輝いている、練習の成果を存分に発揮している … >


オープニングが終わって、リーダーのしおりが客席に向かって声を掛けました。

「皆、こんばんは ~ 」

割れんばかりの歓声が起こります。

その様子をアキも水口も複雑な思いで見ていました。

「地元系アイドル、GMT5 … まだまだ駆け出しの私たち、まずはリーダーの私から自己紹介行きま ~ す!」

しおりがいつもの自己紹介をすると、しおりコールが上がりました。

「何か、遠くに行っちゃったみたいだよ … 」

つぶやくように言った水口。

「 … んだ」

アキも同じように感じていました。

次は薫子の番です。

「私の名前は?」

小野寺ちゃ ~ ん!

薫子の問いかけに観客が答える、それを繰り返すという水口と作り上げてきた自己紹介。

路上イベントの時は、ほとんど誰も知らずに寒い状態でしたが、今はファンに浸透して … 薫子も生き生きとして見えました。

「くそっ、完成している」

くやしそうに吐き出した水口。

真奈、喜屋武と自己紹介は続きます。

「喜屋武ちゃんは、あんま変わってねえ」

そんなアキの言葉も耳に入らないのか、水口の表情は強張ったままです。

「 … で、中退した天野アキちゃんに代わって加わった新メンバー … 」

「中退 … 」


その言葉の響きがアキはショックでした。

「父は山梨なのね、母はブラジル人なのね、自分はベロニカなのね … 」

カタコトの日本語、新メンバーのベロニカは、まだ13歳でした。

「 … それでは、GMT5のデビューシングル『地元に帰ろう』聴いてください」

スローなイントロが流れ始め、それに合わせてメンバーは踊っています。

「ずっと一緒に頑張って来たのにね」

「 … うん」


水口の言葉にうなずいたアキの目はどこかうつろでした。

♪地元に帰ろう 地元で会おう

あなたの故郷 私の地元

地元 地元 地元に帰ろう …

< まぶしかった。

本当は自分もあそこにいたはずなのに … そう思うと余計に … >


… … … … …

ステージが終わって、GMT5のメンバーはロビーでファンと握手を交わしています。

少し離れた場所で、その様子を見ながら水口は河島に礼を言いました。

「何か、何かすっかり大きくして頂いて … 」

「いやいや、元々ポテンシャルの高い子たちだったから」


握手を終えた一郎に声を掛けたのはGMTのハッピを着た太巻でした。

「いい感じに仕上がっていますね」

「ありがとうございます ~ またよろしくお願いします ~ 」


番頭のようにペコペコ頭を下げる太巻を見ながら河島は言いました。

「普通、プロデューサーがあそこまでやるか? … やらないだろう」

一郎だけにでなく、太巻は誰にも彼にも腰を低くして頭を下げまくっています。

「挨拶してきます … 筋通すなら早い方がいいから」

水口は河島が止めるのも聞かずに太巻に近づきました。

「太巻さん、あの … 」

しかし、太巻は徹底して水口のことを無視しました。

… 執念深くて、小っちゃいと春子が称した通りの男でした。

「 … アキちゃん?」

真奈がアキに気づいてしおりに教えました。

抜け出して、アキに駆け寄るしおり。

「 … 来てくれたんだね」

「へへへ … 」


照れくさそうに笑い合ったふたり。

「 … お寿司屋さんで待ってて、後で行くから」

しおりは辺りの様子を窺がいながらそう言いました。

… … … … …

無頼鮨。

「 … 遅えなあ」

カウンターに並んで腰かけて待つ、しょぼくれた雰囲気のアキと水口。

メンバーは中々やって来ませんでした。

「後悔してねえか? 事務所辞めたこと」

アキが尋ねると、水口は聞き返しました。

「そっちこそ?」

「うん、全くしてねえ訳じゃねえ」

「まあ、そもそもアキちゃんが決めた訳じゃないもんね」


『普通にやって、普通に売れるもん作りなさいよ!』

「ママのせいじゃねえ!

けど … カッコよかったなあ、皆」

「まさか、こんな早く明暗が分かれるとは思ってもみなかったよ …

元々ポテンシャルが高いって?

… 俺の目が節穴みたいに言いやがって」


水口には珍しく愚痴を漏らしました。

… … … … …

奈落では、GMTのメンバーを並べて、太巻が今日のステージの反省会をしていました。

「ダンスの切れが中途半端!」

「はいっ!」

「歌もMCも訛りも、アンコールの出のタイミングも何もかも中途半端!」

「はいっ!」

「 … ばってん」


意外にも真奈が言葉を返しました。

「ばってん、なんだ?」

「ばってん、笑いは起こっとったです」

「ああ、笑っとったよ、俺がな! … 笑うしかなかったよ。

それに何だ、あの沖縄の、え ~ っと、カチューシャ?」


… カチャーシーでした。

「どっちでもいいんだけど、長い割にはヤマがない!」

反省会というより、ダメ出し、荒さがし、あげつらいでした。

「もう一度、奈落からやり直すか? … 路上からやるか?」

… … … … …

「帰るべっ」

突然、アキが立ち上がりました。

「えっ?」

「まだ会えねえ、皆さ会わす顔がねえ … 会って、何言っていいか分かんねえ」


アキは帰り支度を始めました。

「そっか … じゃあ、送ってくよ」

「水口さんは残ってろ … 皆さ、ほめてやってけろ」


うなずく水口。

… … … … …

アキが店を出ると、奈落に出前を届けてきた種市と出くわしました。

「 … 天野、えっ、帰るの?」

種市は奈落に残っている皆のことを気にしながらアキに尋ねました。

アキはうなずいて立ち去ろうとします。

「ここが踏ん張りどころだぞ!」

背中から声を掛けられて、アキは振り返りました。

「天野、ひとりぼっちでツレエのは分がる … でも、今逃げちゃダメだ」

「先輩 … 」

「南部もぐりも、んだべ?

最後は孤独との戦いだべ … 深い海の底でひとりになってみて、やっと自分と向き合える」

「 … なすて、なすて、今日に限って、そんなに優しいんだ?」

「わかんねえ … でも、海の底さいる天野に空気送り込むのは、自分しかいねえべ」


♪白い鴎か 波しぶき、若い血潮が 躍るのさ …

… 今、アキの耳には『南部ダイバー』が聞こえていました。

… … … … …

「あっ!」

「どうした?」


アキは左の手首に手をやりました。

< そうか、切れたのは種市先輩がくれたミサンガだったか?

思いがけず励まされ、一度はすっかり冷めた恋の病が … >


種市を見つめる、アキ。

… 種市もアキのことを見つめ返しました。

♪好きです 先輩 覚えてますか 朝礼で倒れた私

都会では 先輩 訛ってますか …

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2013年08月05日 (月) | 編集 |
第109話

< ママが会社を立ち上げました >

マンションのリビングが、スリーJプロダクションのオフィスです。

< 会社にするのは、意外と簡単でした … パパの貯金の一部を資本金にして、余ったお金で社長のイスを買いました >

皮張りの立派なイスに腰かける春子。

< あと、ホームページを作りました … 以上です >

「 … お腹すいたでしょ、お昼パスタでいいよね? … 漁協の長内さんからいただいた瓶詰のウニが残ってるし」

「おら、ウニのパスタ食いてえ!」


キッチンに立とうとする正宗を春子が制しました。

「ダメよ、ここはリビングじゃなくてオフィスなんだからね」

「でも、昨日もウニ丼作って食べたじゃない?」

「昨日は日曜日だからいいの、平日はダメ! … ウニのパスタなんて手の込んだもの社員は作らない!

昼間は出前、作るならラーメンまで!」

「 … ママ」

「社長って呼んで」


… … … … …

春子のヘンなこだわりのせいで、ラーメンをすする3人。

その時、オフィスの電話が鳴りました。

「はい、スリーJプロダクションでございます」

「 … あ、間違えました」


電話してきたのは、長内組合長でした。

「春子ですけど … 」

「何だ、春ちゃんか ~ びっくりした … ウニ届いたか?」


春子は電話をモニターに変えました。

「今年は小振りだけど、身が詰まってて美味えべ?」

「うん、美味かった!」


アキが代わりに答えます。

「おっ、アキちゃんもいたか?」

リアスからかけてきているようです。

「うん、皆変わりない?」

「変わりねえな … あ、北鉄の吉田君が結婚するぐれえだ」

「じぇじぇっ?!」

「しかも相手は観光協会の栗原ちゃんだぞ ~ 」


そう言ったのは大吉です。

その栗原の左手の薬指には婚約指輪が光っています。

「じぇじぇじぇっ」

「へへへ … そういう形になりました」


電話を替わった吉田がうれしそうに報告しました。

「でも、栗原ちゃんって、ストーブさんとつきあってなかった?」

「アキちゃん、それは言わねえプロミスだべ … わははは」

「くっついたり、離れたりの繰り返し … それが地方都市の青年の特権さ」


そう言った保自身もヒロシと似たようなものです。

「あのねアキちゃん、私分かったの … 甘いマスクの男性って、頭の中も甘いのよ。

つまり、話が面白くない … その上、無口。

つまんないテレビを音声消して見てるようなもんなのよ」


ヒロシ本人もリアスにいるのに栗原の酷い言いようです。

「その点、吉田の話は … すべらんなあ ~ わははははは」

結婚が決まった本人はカウンターの中でご機嫌です。

「え ~ という訳で、足立ヒロシ君は今、失恋レストランの片隅で … 涙の味のチャーハンさ食べているのさ」

保の言葉をきっかけに、店にいる一同が声を合わせて歌い始めました。

♪ねえ、マスター ねえ、マスター ねえ、マスター

… … … … …

「うるさいね、切っちゃおうか、これ?」

いつ終わるか分からない戯言にいらいらしてきた春子。

「そういう訳で、アキちゃんからお祝いビデオレターいただきたい訳」

ようやく大吉が本題を言いました。

「ビデオレター?」

「そうそう … お色直しの間、会場で流すから」

「そういうことは、事務所を通していただけますか?」


春子が口を挟みました。

「 … 事務所?」

「はい、天野アキは、弊社の所属タレントですので」

「 … 弊社の?」

「今回は謝礼は結構ですので … ただ、企画書かイベント概要をメールかファックスで送って … 」


電話を切る大吉。

「何で切るんだよ、大吉?!」

「ふんっ! 変わっちまったな、春子 … ギスギスしやがってよ!」

「 … 正確には、ギスギスシタ女が、一時だけ優しくなって、またギスギスに戻ったんだけどな」


… … … … …

じっと耐えながら、チャーハンを食べ終わったヒロシ。

勉さんの座っているテーブルに置いてある、小さな琥珀を手にしました。

「勉さん、これいくら?」

「あ、300円か」


ヒロシは1,000円札を渡すと、その琥珀を持って栗原の元に向かいます。

「裸で悪いけど … お祝い」

笑顔もなくそう言って、琥珀を手渡しました。

「 … ありがとう」

ヒロシはそのまま、店を出て行きます。

琥珀を掌に載せたまま、困ったような顔をしている栗原。

「 … 捨てちゃえよ」

吉田に不機嫌そうに言われて、灰皿に捨ててしまいました。

… … … … …

< というわけで、天野アキの記念すべき初仕事は … >

吉田と栗原へのビデオレターでした。

アキは海女の格好に着替えて、春子が構えるビデオカメラの前に立ちました。

「副駅長の吉田さん、観光協会の栗原ちゃん、ご結婚おめでとうございます … スリーJプロダクションの天野アキです」

「もっと笑顔で」

「はいっ、本当はそちらにお伺いしたかったのですが」

「そういうのは残念そうに言わなきゃさ」


注文が多いカメラマンです。

「ちょちょちょ、何処行くの?」

正宗が出かけようとするので春子が止めました。

「 … 仕事ですよ」

本業の個人タクシーです。

「おらもバイトなんだけど」

「 … バイトとか言わないでよ、タレントなんだからさ。

営業って言いなさい。

黒川さんも、外回りって言いなさい」

「黒川さん?」


目を剥く正宗。

「ホワイトボードに黒川外回りって書きなさい!」

春子の言う通りにしながら、正宗が言いました。

「どこまでも会社にこだわるんだね」

「だって、楽しいんだもん … 専業主婦がいきなり社長だよ。

たまんないよね ~ 」


まだまともな仕事さえ取れていない会社ですが、社長業を楽しんでいる春子でした。

「社長、晩御飯はどうします?」

「あっ、いらない … 面接だから」

「面接?」

「現場マネージャー雇おうと思って … アキも立ち会ってよ」


… … … … …

面接は、アキのバイト先、アイドルで行われました。

偶然、甲斐が点けたテレビから『地元に帰ろう』が流れはじめ、アキは思わず目を見張りました。

♪地元 地元 …

< 私の声だ … でも、歌ってるのは見たこともないハーフの女の子 >

薫子、しおり、真奈、喜屋武の他、新加入したベロニカという名の少女が次々に画面にアップで映ってポーズを取りました。

『太巻プロデュース、アメ女の妹分、地元系アイドル GMT5 … まもなく始動!』

「ベロニカ、熱いよね … 山梨とブラジルのハーフなんだってさ。

地元の概念を変えたよね」


甲斐がいち早く仕入れた情報をひけらかしました。

< 本当は、おらが歌ってるのに … >

アキの顔が強張っています。

… … … … …

「それでは、追って連絡させていただきます」

数名との面接を終えた春子がため息をつきました。

「 … 覇気がないのよね。

どいつもこいつも、いい大学出てるくせにさ」


カウンター席に今日はスーツを着込んだ水口が座っています。

「あの … 」

恐る恐る春子に声を掛けるアキ。

「何? … 今の気に入った?」

アキは、そっと水口を指差しました。

「ダメよ ~ 」

取りつく島もなく却下しました。

「だよね … 覇気がねえもんね」

「そうじゃなくて … いや、それもあるけど」


テレビからまたGMT5デビューのスポットが流れ出します。

「すごいわね、GMT5 … これだけスポット打つのに宣伝費いくら掛かってるんでしょうね?」

そう言いながらも、春子は甲斐にチャンネルを替えさせました。

「1万枚売らなきゃ、解散なんでしょ … 油売ってていいの?」

振り向いた水口の口から出たのは …

「10万枚です。

予算も10倍になりました … だから、俺なんかもう用無しなんです」


水口は立ち上がって、春子の前に履歴書を出しました。

「このままじゃ、悔しいっす。

太巻の奴を一緒に見返してやりましょう」


春子は水口の顔を見つめました。

「俺じゃだめっすか? マネージャー」

「ダメよ」


ふたつ返事の春子。

「ママ、なすて?」

「 … 確かにうちとあんたは同じ敵と戦ってる … でも、今手を組んだら、こっちが引き抜いたことになっちゃうじゃん。

あんな執念深くて、小っちゃくてさ、無駄に権力もってる男、敵にまわしたら … この業界ではやっていけない。

簡単につぶされます」


春子の言うことはもっともでした。

「 … わかりました」

「ごめんね」


… … … … …

「電話1本かけていいすか? … 男として筋通しますんで」

水口はおもむろに携帯を取り出しました。

「ちょっと待って、誰にかけるの? やめて … 」

「もしもし、水口です … ユイちゃん?」


春子は慌てて止めましたが、電話の相手はユイのようです。

ユイはリアスを開店するため北三陸駅に着いたところでした。

「ごめん、君との約束果たせなかった」

「えっ?」

「会社、辞めることにした … ごめん。

太巻さん裏切って、春子さんが新しく作った事務所でアキちゃんのマネージャーやることにした」


たった今、春子にダメだしされたばかりですが、水口はそう口にしました。

「ごめんね、元々は君を太巻さんに引き合わせてデビューさせることが目的だったのに、こんなことになっちゃって …

本当、申し訳ない!」

「いいです、そんな … 」

「よくないでしょ!

だって、これで完全に君の夢が断たれてしまったんだから」

「いいんです … とっくにあきらめてるから。

それより、アキちゃんのことよろしくお願いします」


また熱い水口が目を覚ましました。

僕はあきらめてないよ!

絶対いつかデビューさせる、アキちゃんとふたりでまた『潮騒のメモリー』歌ってもらうから、お座敷列車で … いや、なんなら満員電車で歌ってもらうから、その時は頼むよ!」


電話を終えた水口は、店を後にしようとします。

「 … 合格」

「えっ?」


春子の言葉に振り返りました。

「水口さん、アキのことよろしくお願いします」

そして、春子の方から水口に深く頭を下げました。

「よろしく」

笑顔のアキ、水口も慌てて頭を下げました。

「よろしくお願いします

カウンターの中から甲斐もそう言って、頭を下げていました。

… … … … …

自分では、あきらめていたはずの夢 … 水口の電話でユイの心は少し揺れていました。

「どうした、ユイちゃん? ボっとして」

夏に声を掛けられて、我に戻るユイ。

「あ、おばあちゃん … ごめんごめん、お店開けなくちゃ」

「誰としゃべってたんだ?」

「 … あっ、春子さん会社作ったって」


驚く夏。

「アキちゃんを売り込むための事務所だって、聞いてない?」

「あの野郎、何も話してねえ … 」


半分あきれ顔の夏でした。

「すごいね、春子さん … やるって言ったらやるんだね」

「 … プールさ、行ってきたのか?」


うなずくユイ。

「長く潜れるようになったか?」

「うん、大分」


一時期、荒れていた頃の荒んだ感じが、ユイの表情から消えていました。

「よしっ、スナック開店だ」

… … … … …

テレビ局。

「よろしくお願いします」

水口は早速、アキを連れて挨拶回りを始めました。

「あれ、あんたハートフルの?」

見覚えのある職員に声を掛けられました。

「ああ、それが先月一杯で退社しまして … 今、スリーJプロダクションという事務所でこの子のマネージャーを」

「天野アキです、よろしぐ」

「訛ってるねえ」

「そうなんですよ、岩手の子なんで … 東北のドラマとかあったら是非!」

「さっき宮城の子と会ったなあ」


男が指差す方を見ると、河島が別の職員に薫子のことを紹介しているのが見えました。

「やべっ!」

思わず身を隠して、様子を窺がう水口とアキ。

「宮城の子なんで、東北のドラマとかあったら、ひとつ … 」

同じような売り込みをしているのが聞こえました。

… … … … …

「隠れることないじゃない」

アキは聞きなれた声に振り返りました。

「じぇじぇっ?!」

鈴鹿ひろ美でした。

役の為の衣装でしょう、白衣に身を包んだひろ美は水口の手から名刺を取りました。

「あら、独立したの?」

「ママが社長で、パパが運転手なんだ」

「相変わらず、タメぐちね」


そうは言ったものの、ひろ美は笑っています。

「あ、すみません」

「大変よ、これから … 私も独立した後、2~3年は仕事なくて …

でもまあ、このまま太巻さんのとこにいて、芽が出ないより干された方がマシかもね」


ひろ美は水口にも名刺を返しながら言いました。

「あなたもね」

「 … よろしくお願いします」


真顔になって、アキを見つめた、ひろ美。

「いつか一緒にお芝居しましょうね」

思いもしなかった、ひろ美の言葉にアキは力一杯うなずきました。

「はいっ!」

差し出されたひろ美の手を、アキは握り返しました。

「絶対よ!」

「絶対っ!」


ひろ美はアキの肩をポンと叩くと行ってしまいました。

立ち去る背中を見送ろうとした時 …

「あっ!」

河島と薫子と鉢合わせしてしまいました。

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2013年08月04日 (日) | 編集 |
さて、次週の「あまちゃん」は …

アキ(能年玲奈)を売り出すため、春子(小泉今日子)は、芸能事務所を設立する。さらに、水口(松田龍平)がアキのマネージャーとして雇われることに。

ベロニカ、熱いよね …

しかし一向に仕事の依頼は来ない。対照的にアキが抜けた後のGMTは、社長の太巻(古田新太)が自らプロデュースしたこともあって、人気が沸騰する。

自分は天野のこと …

おらと …


仲間の活躍を見て落ち込むアキだったが、種市(福士蒼汰)に励まされて、アキは胸の奥にしまっていた恋心が再燃してしまう。

一方、北三陸にいるユイ(橋本愛)は、夏休みに夏(宮本信子)とともに東京に遊びに行く計画を練っていた。

おらはアイドルになりてえど ~

アキは幼児番組にアシスタントとして出演したことをきっかけに、人気が出始め、さまざまな仕事をこなすようになる。

お母さん呼んできなさい、くわしくお話し伺いたいわ

アキは女優の鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)に、アイドルとして恋愛を禁止されているものの、種市への思いが抑えられないことを相談。鈴鹿は、自身の経験から‘仕事と恋愛’について語る。

逆回転できないもんね、人生は …

そんなある日、ずっと行方不明になっていたユイの母・よしえ(八木亜希子)がアキと春子を訪ねてくる。アキはユイに電話し、よしえが見つかったことを告げるが…。

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2013年08月03日 (土) | 編集 |
108話

『こんなのウチの娘の声じゃないもの!』

『冗談じゃない!

うちの娘、鈴鹿ひろ美と一緒にしないで!』

GMT5のデビュー曲、『地元に帰ろう』を売り出すために太巻が使った手口が気に入らない春子は、奈落に乗り込んで太巻と盛大にやり合いました。

その結果 …

< デビュー直前、おらは事務所をクビになりました >

クビというより、春子の方から三行半を叩きつけて、無理やりアキに事務所を辞めさせたといった方が正しいでしょう。

最初、抵抗したアキでしたが、最終的には母の心を慮って、それに従ったのでした。

『太巻さんさ伝えてけろ。

頼む!この通りだ … GMT、デビューさせてやってけろ!」』

『ママが、あんたのこと絶対アイドルにしてやるからね』

< … と、威勢のいいママでしたが、当面は特にすることもなく … >

マンションでソファーに寝転んでテレビを見ることぐらいしかやることがありません。

「 … 家事でもすっか」

気だるそうに立ち上がった春子。

< 同じく、おらもやることがなく … 合宿所を出て、ママと同じ道を歩み始めていました >

アキは、かつて春子が働いていた店、純喫茶アイドルでバイトを始めていました。

甲斐が見ているテレビにちょうど鈴鹿ひろ美が出演しているトーク番組が映っています。

< 突然のことで、鈴鹿さんにちゃんと挨拶できなかったことだけが、心残りでした >

アキがいなくなって、迷惑メールの拒否の他、SUICAのチャージに手を焼いてるようです。

… … … … …

「 … 懐かしいなあ、原宿なんて … バンドやってた頃を思い出すな」

< そうつぶやいて、水口さんはブラックコーヒーを一口すすりました … 何だか自分に酔っている感じでした >


何故、水口がここにいるのか?

普段着の水口は、自分の思い出話をはじめました。

「明治通りのライブハウスとか出たなあ … 客いないんだし、座りなよ?」

水口は、アキに向かいの席に座るよう促しました。

「バンドやってたんですか?」

イスに腰かけながら、お愛想を言うアキ。

「あ、うん、ベース弾いてたんだ … 『バースデイ・オブ・エレファント』ってバンドで」

「象の誕生日ですね?」

「まあ、もっと深い意味あるんだけど。

その頃、太巻さん紹介されてさ … 当時、アイドルとか超バカにしてたんだけど、しゃべってみたら、ピュアで熱くて、すごくよくしてくれて」

< って言うか、何のつもりだ? … 仕事サボって、退屈なヒストリーなんぞ語りやがって >


アキが心の中で毒づいてるのも知らずに水口は話し続けています。

< ああ、退屈だ ~ お客さん、来ねえがなあ? >

「 … そんな俺を太巻さんが、GMTプロジェクトのチーフに抜擢してくれたんだよ」


それまでは、うわの空で適当に相槌をうっていただけでしたが、少し興味がある話にアキは耳を傾けました。

「でも、国民投票ぐらいからかなあ … どうなんだこの人って」

単なる偶然か、アキが春子の娘だと知った頃に重なります。

「あ、水口さん … 太巻さんに伝言伝えてくれましたか?」

… … … … …

アキが事務所を辞めた日 …

アキの伝言を伝えに、水口が社長室を訪れると、太巻と河村はすでにアキの後釜の選考を始めていました。

「社長、ちょっと今よろしいでしょうか?」

「お前もちょっと座って考えろ!」

「急いで、天野の代わり見つけないと!」


河島も水口を急かしました。

「天野の代わりは、いませんっ!」

… … … … …

「じぇじぇじぇ?」

「ごめん、正反対のこと言ってしまった」


申し訳なさそうに頭を下げる水口。

「何してんんだよ? … ガキの使いじゃあるめいし!」

「 … だって、なんか悔しくて」


… … … … …

「ビジネスとしての意見です … 天野がいなかったら、GMTは売れません!

そんなことも分からないとしたら、社長 … ちょ、ちょっと勘が鈍ったんじゃないですか?」


太巻のことを初めて面と向かって批判した水口でした。

「おいっ!」

河島が冷や汗をかきながら水口を咎めました。

しばらく黙って水口のことを凝視していた太巻が口を開きます。

「 … 絶対だな?」

「はいっ」


太巻は水口の胸倉に手を伸ばしましたが、つかみ損ねて空振りしました。

しかし、ひるむことなくテレビクルーにカメラを回すように指示を出しました。

「天野がいなかったら、絶対売れないんだな?」

「はい」

「絶対だな?!」

「絶対です」

「面白え、わかった … じゃあ、俺が売ってやるよ、GMT。

俺が本気出したら、1万じゃ済まないぞ … 10万枚売ってやるよ、水口」


水口に詰め寄る太巻。

「お前ごときが俺にビジネス語るだのさ … 目にもの見せてくれるわ!」

またもカメラを意識した芝居がかった言い回しで見栄を切りました。

… … … … …

「 … という訳で、CDは予定通り発売される。

声は差し替えられないから、アキちゃんの声が残っちゃうけど」

< 声だけか … ママと一緒だ >

「ごめんね、ロボットみたいな声で」

「いや、おらともかく、皆がデビューできるのはよがった。

… で、水口さんはどうすんだ?」


水口はコーヒーを飲み干しました。

太巻のやり方に異を唱えたために会社に行きづらくなっているのです。

「どうって、社長に頭下げるのはプライドが許さないし … とは言え、会社辞める度胸もないしなあ。

… 琥珀でも掘りに行くかな?」

「よしっ、勉さんに電話すっぺ!」

「いやいやいや、そこまで迷ってないけど」


半分冗談で言ったことを真に受けたアキを水口は慌てて止めました。

「 … いろいろ楽しかったな」

ツラいことも多かったけど、思い返せばアキにとって楽しかった仲間との奈落生活でした。

… … … … …

水口はふとユイのことを思い出しました。

「どうしてるかな? … 正月以来、しゃべってないけど」

「あ、そうそう海女さんになるって」

「えっ?」

「今年の夏、海に潜ってみるって」

「じぇじぇ、あのユイちゃんが?」

「びっくりだべ? … おらも帰って潜りてえなあ ~ 」


水口はふたりで潜ればいいと勧めました。

「 … いや、やめとくべ」

「どうして?」

「まだ、こっちで飛び込んでもいねえから …

海女になる時もそうだった … 最初は、夏ばっぱに背中押されて … そのあと、やっと自力で飛び込んだ。

今、ユイちゃんも自力で飛び込もうとしてるんだ。

… それなのに、邪魔しちゃ悪いべ」


アキは、たまになるほどと感心するようなことを言います。

「だから、今はママを信じて … もうちょっと、こっちでがんばる!」

「できるよ、アキちゃんなら。

思うんだけど、いつもアキちゃんの周りには、自然と人が集まってきて、皆自然と笑顔になるだろ?

それって、才能っていうか … 本当の意味でアイドルとしての資質があるって事だと思うんだ」


水口は立ち上がって熱く語りました。

しかし、アキは聞いているのかどうか携帯をかけ始めました。

「アイドルって、自分でなったり宣言したりするものじゃなくて … 周りに集まってる人間がアイドルにしていくんじゃないかな?」

アキは電話の相手に相槌を打っています。

「ねえ聞いてる?」

「うん、うん … ちょっと待って」


アキは自分の携帯を水口に渡しました。

「えっ、ユイちゃん?」

「勉さん」


少しがっかりした表情をみせて水口は電話に出ました。

… … … … …

勉さんは、いつものごとく、リアスにいました。

「 … 聞いたぞ、水口 … 行き詰ってるそうだな?」

「あはは、いや … 」

「じゃあ、来い! 今来い、深夜バスで来い!」


自分以上に熱い勉さんの声を聞いて、水口は電話口で苦笑いしました。

「おらが死んでも、琥珀が待ってるからな … 8,500万年前から、お前のこと待ってるぞ!」

「はい … 」


勉さんは、ユイに乞われて電話を代わりました。

「もしもし … 」

「えっ、ユイちゃん?」


しかし、ユイの方は水口には、これといって用がないらしく、アキに代わるように言いました。

… … … … …

「 … プール行って来たの、まだ1分潜れないけど … 磯野先生にほめられた」

「そうか、何か反対になっちまったな … ユイちゃんが海女さんになって … 」

「アキちゃんがアイドルだもんね」

「 … しかも、クビになっちゃうし」

「大丈夫だよ。

アキちゃんと一緒にいると、誰でも笑顔になれるもん … だから、アキちゃんの周りには、自然と人が集まってくるんだよ。

それって、アイドルの基本じゃん」


偶然にも、ユイは水口と全く同じことを言いました。

感極まって泣き出したアキを見て水口と甲斐が心配しています。

「 … 何処にいても、何をしてても、アキちゃんはアイドルだよ。

ユイが言うんだから間違いないよ」

「 … ありがとう、ありがとう、ユイちゃん」

< 水口さんには申し訳ないけど、同じ言葉でもユイちゃんに言われた方が、ずっと心に響くもんです >


… … … … …

< だけど、おらの日常は相変わらず、パッとしません。

北三陸や上野の喧騒が、まるで前世の記憶のように感じられ、もうずっとここに座ってたみたいに、地味で暗くて向上心も協調性も個性も華もないパッとしない子だったみたいに … ただただ静かに時は流れていました >


ダイニングで、サヤエンドウの筋を取っている春子。

正宗とアキはリビングのソファーに腰かけ … 正宗はパソコン、アキはタブレットにイヤフォンをつないで何か聴いています。

家族3人、同じ空間にいながら、お互いに会話もなくそれぞれ別のことをしている … いつかもこんな風景を見たような気がします。

そして、春子の手からサヤエンドウが、ひとつこぼれて床に落ちました。

その音が響き渡る …

「わああああ … 」

突然、春子が声を上げて立ち上がりました。

そんな春子に目をやる正宗とアキ。

「ああ、怖い … 何やってるんだろう、私?」

「 … ママ?」

「ダメじゃん、家事なんかやってちゃダメじゃん?

マメなんか剥いてる場合じゃないじゃん!」


「やばいやばい」とつぶやきながら、アキに近づきました。

「あんたさ、アイドルになるんじゃなかったっけ?」

「え、何?」


唖然として春子の顔を見るアキ。

「何じゃないわよ、あんた大事なこと忘れてる!」

春子はアキの手からタブレットを奪うとイヤフォンを引き抜きました。

… … … … …

しかし、タブレットの画面を見た春子は怪訝な顔をしました。

キーボードの鍵盤が表示されたアプリが立ち上がっています。

アキは春子からタブレットを受け取ると、鍵盤を弾きながらその音に合わせて声を出しました。

♪わたしの ~

♪わたしの ~

それは、『地元に帰ろう』のレコーディングの時、春子から30回ダメだしされた箇所でした。

「何、ずっと練習してたの?」

春子はアキを責めた自分を恥ずかしく思いました。

「忘れてない、忘れてないね … ごめんね」

そう言ってアキの頭を撫でました。

「 … パパは、パパはよ?」

矛先は正宗に移りました。

「 … どうした?」

春子はパソコンの画面を覗きました。

チャットしていた … わけではなく、そこには、海女姿のアキの写真が何枚も映し出されていました。

「何よ、これ?」

「何って、ブロマイド … 」

「こんなの作ってどうすんのよ?」

「タクシーのさ、シートの背の所にポケットがあるでしょ? そこに入れとくの」


プロマイドの裏には連絡先とプロフィールが書いてありました。

『天野アキ あまちゃんですが、お芝居、歌、ダンス、なんでもやります!お仕事下さい!』

「 … ダサいよぉ

相談して、こういうのちゃんと相談して ~ 」


口ではそう言いましたが、うれしそうな顔をしています。

「ごめんごめん、パパにできることってこれくらいしかないから」

照れくさそうな正宗。

アキはそんな両親のことを笑顔で見つめました。

… … … … …

目標を見失いかけていたのは、自分自身だったのです。

春子はおもむろにまとめていた髪をほどきました。

「ねえ … 会社作ろうか?」

「えっ?」

「プロダクション … 3人で事務所作ろうよ!」

「じぇじぇじぇ ~ 」


春子はアキを指差しました。

「所属タレント!」

次に自分。

「社長!」

「 … パパは?」

「運転手!」


… 相変わらず。

「いいじゃん、やろう、会社!

ねっ、こっから始めよう!!」

「うんっ!」


笑顔で顔を見合わせた3人。

… … … … …

「いいじゃん、いいじゃん」

早速、正宗が作ったプレートを玄関のドアに取りつけました。

「海女になる時は、夏さんだったけど … 今度はママがあんたの背中を押す番だね」

春子に言われて、アキは笑顔でうなずきました。

「覚悟しときな、思いっきり押すからね」

正宗がドアを開くと、春子は本当に思い切りアキの背中を押しました。

「えいっ!」

「うわっ! 」

< 会社の名前はスリーJプロダクションに決まりました。

天野アキ、再スタートです! >

(‘jjj’)/


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2013年08月02日 (金) | 編集 |
107話

< 実家に届いたGMT5のデビュー曲、『地元に帰ろう』のCD … それが、ママの逆鱗に触れました >

太巻の手でラフミックスされた『地元に帰ろう』を聴いた途端、春子の表情は険しくなりました。

「 … 何これ?」

… … … … …

奈落では、太巻自らGMT5に『地元に帰ろう』の振付を指導していました。

「ダ ~ ッ!

地元感が足りないよ、ステップに地元感が!」


ダンスを止めた太巻は、おもむろに真奈のことを指差しました。

「たとえば、君! … 沖縄だろう?」

「佐賀です」

「佐賀だろう? … もっと佐賀感を!」


つかみどころのない漠然とした、言葉遊びのような指導 …

「パッションだから!」

派手なジェスチャー、すべてテレビカメラを意識したことでしょう。

「はいっ! もう1回お願いします!」

メンバーは再びダンスを始めました。

ディレクターチェアに腰かけながら、あくまでもカメラ目線の太巻。

「どこまで話したっけ? … あ、そうそう、上海ではね」

すべてが太巻のシナリオ通りに事は進んでいました … ここまでは …

突然、姿を現した春子がテーブルにCDを叩きつけました。

その音に振り向く一同。

そして、太巻をにらみつける春子。

春子の姿を見て、太巻は腕を組みました。

「これ、録りなおしてください」

… … … … …

「だって、こんなのウチの娘の声じゃないもの!」

そう言って、春子はCDを太巻の目の前に放り投げました。

「私ね、レコーディング立ち会ったんです。この子たちこんな風に歌ってな … 」

春子は自分に向けられたカメラに気づきました。

「何、撮ってるの?」

太巻は1回カメラを止めさせると、立ち上がりました。

「参ったなあ、何が気に入らないのか知らないけど … 取りあえず、もう一度聴いてみましょうか?」

CDを再生する河島。

「何って、このロボットみたいな宇宙人みたいな声よ!」

「ロボット?」


春子の言葉に眉間にしわを寄せる太巻。

「何かやったでしょ? 機械で」

イントロの後、ボーカルが始まります。

♪地元に帰ろう 地元で会おう …

まるでヴォーカロイドの声のようなエフェクトがかかっています。

「ほら、これっ!」

指摘する春子を見て、太巻は小馬鹿にしたように含み笑いを始めました。

「何よ、笑いごとじゃないでしょ?」

親玉に媚びうるように笑っている河島が言いました。

「お母さん、perfumeとか知ってます?」

明らかに見下した言い方です。

「知ってますけど … 何、マネしたの?」

「最初聴いた時に普通だったから、ちょっといじっただけじゃないですか?」


太巻のそんな説明で春子が納得する訳がありませんでした。

「何で?」

「だって、面白くないから」

「だから、面白くないと何がいけないの?」

「面白くないと売れないでしょ?」

「売れるためなら、何やっても許されると言うことですか?」

「 … お母さん、今社長取材中で」


見かねた水口が一度、春子に矛先を収めさせようとしましたが、それを太巻は制しました。

「いやいい、面白いから回して行こうか?」

テレビクルーに声を掛ける太巻、春子は慌ててサングラスを掛けました。

「大丈夫、モザイクかけて声も変えるから … 」

… … … … …

そんなふたりのやり取りを不安そうに見つめるアキとGMTのメンバー。

「改めて説明しましょう。

このGMTの基本的なコンセプトは、地方色を前面に打ち出していく … つまり、素朴さとか親しみやすさとか。

けれどそれだけじゃ弱い、インパクトがない!

だから、あえて対極に振ってみたんです … テクノとかハウスとか、近代的なギミックを引用することで、それによって生まれる違和感」


カメラを意識してまるでプレゼンするように語る太巻、春子はひとことで切り捨てました。

「ようするに奇をてらったって訳ね」

「 … バッサリだな」

「良かれと思ってやったんですね … わかりました、文句はありません。

まあ、売ることを考えるのがあなたたちの仕事でしょうから。

… ひとつ問題なのは、本人たちの了承をあらかじめ得たのかって言うことなんですよ」

「いいえ」

「勝手にやったの、どうして?」

「断る必要がないと思ったからです」

「どうして?」

「 … 時間がなかったから」


不自然なまでにカメラ目線にこだわる太巻の顔を、春子は手で自分の方に向かせました。

「こっち向いてしゃべって!」

「 … プロデューサーとしてのひらめきを大事に」

「アキはどう思った?」


太巻の話を最後まで聞かずに春子はアキに尋ねました。

「さっきの聴いて、アキはどう思った?」

アキは少し困ったように、でも正直に答えました。

「おら、何かヘンな感じと思った … でも、皆はかっこいいねって、近未来だねって」

「皆じゃなくて、アキはどう思ったの?」

「 … ヘンな感じって思った」

「おい、天野!」


アキを注意した河島のことを逆に春子が問いただしました。

「何何何何、ヘンなものをヘンって言ってはいけないんですか? ここではっ」

チェアに腰かけている太巻を見下ろしながら話す春子。

「この人そんなに偉いんだ?

社長に誰も意見とかできないんだ? ここはっ」


河島も水口も答えることができません。

「私は嫌い、こういうの大っ嫌い!

こんなの誰が歌っても一緒じゃないですか?

大体、本人たちの許可も得ずに勝手に声変えるなんて、歌い手に対する配慮が足りないと思います!」

「 … なるほど、貴重な意見どうもありがとうございます」


立ち上がる太巻、カメラの前なので平静を装っているようです。

そんな太巻をまるで挑発するかのように春子は続けました。

「いいえ … まあ、じゃあいいや、CDはこれで行くとして、歌番組どうすんの? 太巻さん。

得意の口パクですか?」

「おいっ!」


そのひとことに太巻はキレました。

「やめて、春子さん!」

水口が止めましたが、既に遅かりし …

「冗談じゃない!

うちの娘、鈴鹿ひろ美と一緒にしないで!」


… 太巻は『地元に帰ろう』を世に出すために『潮騒のメモリー』の時と全く同じことをやろうとしていたのです。

「カメラ止めろ!」

太巻の怒号が奈落に響き渡りました。

… … … … …

「今の絶対使うな」

太巻は恐ろしい顔、ドスの利いた低い声でテレビクルーにくぎを刺しました。

戸惑いを隠せないGMTのメンバー。

「鈴鹿ひろ美って何、どういうこと?」

当然、疑問を口にしたしおり。

「かなわんなあ、素人が現場に土足でズカズカ入って来てエラそうに!」

一気に豹変した太巻 … 怒りのあまり本性を露わにしたのです。

「慈善事業ちゃいまんねん、商売やってまんねん … どうせ、売れんのにいらん金使いたないねん!」

「 … どうせ、売れん?」


太巻の言葉にショックを受けているメンバーに向かって追い打ちを掛けました。

「売れへんよ、君らなんか。

ハッキリ言うて、GMTは企画倒れや … せやから、こうしてテレビ使こうて回収できるとこから回収しとんねん!

君らみたいなもんが、デビューできるだけで、ありがたいと … せめて親御さんには思ってもらわんとなっ!」


太巻は、居丈高にまくしたて、しっかりと春子を見据えました。

強面の自分が、関西弁で凄めば大抵の者は怖気づくはずでした。

しかし、そんな手は百も承知の春子は少しもひるむことなくにらみ返しました。

… … … … …

春子は、アキの手を取りました。

「帰るよ、アキ!」

「えっ?」


そして、ふたたび太巻の方を向き直って言いました。

「どうせ、クビなんでしょ?」

何も答えない太巻。

「ふん、こんな事務所、こっちから願い下げだけどね!」

「 … どうして、僕の邪魔ばっかりするんだ、君は?」


サングラスを外す春子。

「こっちのセリフよ! … どこまで器小っちゃいの?

普通にやって、普通に売れるもん作んなさいよっ!」


その時、太巻は今の春子に、『潮騒のメロディー』をレコーディングした時の春子の面影を見ました。

同じように春子も、あの日、ブースの外で自分の歌をうなずきながら聴いていた若かりし日の太巻の真剣な眼差しが脳裏をよぎったのです。

♪潮騒のメモリー 17才は寄せては返す 波のよう …

「じゃあね!」

感傷を振り切るように言うと、春子はアキの手を引いて奈落から出て行きました。

… … … … …

「ママ、離して、離してけろ」

「いいから来なさい」

「離してって言ってんべ!」


アキは、楽屋口で春子の手を振りほどきました。

「アキ … 」

「おらは、おらなりに一生懸命やってきたんだ。

そんなに簡単に辞められねえ!」


春子はアキの気持ちなど考えずに出てきてしまったことに気づきました。

「 … ごめん。

でも、これはおらの問題だ … ちょっと、考えさせてけろ」


そう言ってアキが振り返ると、奈落から追いかけてきたメンバーと水口が立っていました。

「アキ、行かないで」

「やっと、5人でデビューのできるチャンスやなかと?」


喜屋武が真奈がアキを引き留めました。

アキは改めて母に尋ねます。

「どうしても行かなきゃだめか? … ここで皆とやって行くわけにはいがねえのか?」

… … … … …

無言のまま、うつむいている母を見て、アキは悟りました。

「分がってる、ダメなんだな … 分がっている … 」

「ごめんね …

あんたが私の娘じゃなかったら、こういう形でもいいかも知れない。

でも、ママ嫌なの … どうしても許せないの」


アキは春子を見つめました。

母には似あわない哀しい顔をしています。

アキはうなずきました。

「しょうがねえ … ここさ来る前から、おらママの娘だ」

「アキ … 」


… … … … …

「水口さん、今度こそおら辞めます。

お世話になりました」


深くお辞儀しました。

「アキちゃん … ずっと続けるって約束したばっかりだべ?」

「ごめん … 」


薫子の言葉に胸が痛むアキでした。

そして、仲間のために今の自分にできることは …

「太巻さんさ伝えてけろ、おら今日で辞めるが頼みがある … 」

アキは水口に向かって言いました。

「GMTのデビューは取り消せねえでけろ。

おらのせいで皆がデビューできねえのは困る、悲しい … ただでさえ、1回流れてるし …

頼む、皆を見捨てねえでやってけろ!

早く奈落から外さ出してやってけろ!」

「アキちゃん … 」

「元々おら、40位の繰り上げ当選だ … おらの代わりなんてなんぼでもいるべ?」


やるせない顔で見つめる仲間たちにアキは精いっぱいの笑顔を見せました。

「頼む!」

水口の目の前で土下座をするアキ。

「この通りだ … GMT、デビューさせてやってけろ!」

水口は屈みこんで、しっかりと答えました。

「わかった、伝えておく」

その言葉を聞いたアキは、立ち上がりました。

「絶対だぞ!」

水口に念を押した後、改めて皆の顔をひとりひとり見渡しました。

「じゃあな!

しおりちゃん、真奈ちゃん、喜屋武ちゃん、小野寺ちゃん … 頑張れよ」


アキは壁から自分の名札を外して、警備室の窓口に置き、頭を下げました。

< 今度こそ、おらは本当に事務所をクビになりました >

母の元に歩み寄り、メンバーたちに見送られてシアターを後にしました。

… … … … …

< そして、水口さんは、おらの伝言を伝えに行き … >

水口が社長室に入ると、太巻と河村はすでにアキの後釜の選考を始めていました。

「お前もちょっと座って考えろ!」

春子とのいさかいなど、まるで無かったように、頭を切り替えている太巻。

「急いで、天野の代わり見つけないと!」

河島も水口を急かしました。

天野の代わりは、いませんっ!

… … … … …

「こんなんじゃ、終わらせないからね!

まだまだやるからね … ママが、あんたのこと絶対アイドルにしてやるからね」


うなずくアキ。

「クビにしたこと、後悔させてやるんだから!」

もう一度、アキはうなずきました。

アメ横の町を見下ろすような東京EDOシアターを決意も新たにふたりは仰ぎ見ました。

その巨大なモニターには、ちょうどGMTの衣装を着ておどけるアキが映し出されていました。

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