NHK朝ドラ『花子とアン』『ごちそうさん』『あまちゃん』…ストーリーを勝手に解釈&裏読み … ほぼネタバレ…
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2013年09月30日 (月) | 編集 |
ごちそうさん

第1話

昭和20年夏、大阪。

< これは、物を食らう物語でございます。

食べずには生きていけぬ、人間たちの物語でございます >

「はい、皆で分けんのやで、あるからな」

焼け野原にごった煮の大なべ、子供たちに食事を配る卯野め以子の明るい声が響いていました。

< 私の孫娘の物語でございます。

食べることを愛し、食べさせることを愛した、私の孫娘 … >

「おばちゃん、ごちそうさん!」

笑顔でめ以子に礼を言った少年。

< 『食らうことは、生きること』

これは、命のまぶしさを、命をただ愛した、ひとりの女の物語でございます >

「また、おいで ~ 」

め以子も笑顔で少年たちを見送りました。

… … … … …

さかのぼること34年、明治44(1911)年春。

東京・本郷。洋食屋の娘・め以子は、6歳で尋常小学の一年生。

< この娘は、とんでもない食いしん坊でした >

朝の食卓を囲む、父・大五、母・イク、祖母・トラ、弟・照生、そして見習いの山本。

「め以子の食べっぷりは目がすくようだね」

茶碗に山盛りのご飯を頬張るめ以子を見て、トラが笑いながら言いました。

「美味いだろ? お父ちゃんの料理は世界一だろ?」

オムレツを食べながら、大五の言葉にうなずいた、め以子。

め以子にとって、父のオムレツと祖母のぬか漬けは最高の味でした。

「ま、それにしても、こんな馬鹿でかいのよく焼けたねえ」

文句を言いながらも、オムレツを口に入れたイク … 目を閉じて味わっています。

「なあ? でっかいのにフワフワしてるだろ?」

「ほんと ~ で、卵いくつ使ったんだい?」


途端に言葉に詰まる大五。

腕はいいが金勘定が苦手な夫に口うるさいイク。

「10日過ぎたら、黄身がペタンコになるんだからよ …

どうせ、客に出さないんだから、いいじゃねえかよ?!」

「おばあちゃん、新しい卵だとさ … 」

「口に物を入れたまま、しゃべるんじゃないよ!」


… … … … …

ある日、イクは、め以子の学校に呼び出されます。

慌てて駆けつけた職員室で、顔や手足が傷だらけのめ以子を見て驚くイクでしたが、 … 着物にニワトリの羽がついているのを見つけました。

「あんた一体、何を??」

「ニワトリ小屋に入りましてね … 」


生みたての卵を取ろうとして、ニワトリたちに襲われたと、担任の教師が渋い顔をして説明しました。

「生みたての卵で作ったら、オムレツ、もっと美味しいかなって … 」

朝からそのことがずっと気になっていて、目の前にあった卵に手が伸びてしまったのでした。

「でも、学校の物を勝手に取っちゃ、よくないよな?」

め以子が取ってきた卵を見せながら担任の教師は尋ねました。

うなずくめ以子。

「ほら、何て言うんだい? こういう時、言わなきゃいけないことがあるだろ?」

母に促されて、め以子が思いついた言葉は …

「その卵ください! 食べないと、もったいない」

「ごめんなさいでしょうが!」


イクは顔から火が出るような思いで、め以子の頭をつかんで、無理やり下げさせました。

… … … … …

客に出すために用意してあった杏のシロップ漬けをこっそり全部食べてしまったことと合わせて、罰として夕飯抜きだと言い渡された、め以子。

「お母ちゃんから、今日は本当にご飯抜きだって … きつく言われてね」

母へのとりなしも効かなかったことを伝えに来た祖母。

しょんぼりする、め以子にトラは言いました。

「でも、生みたての卵で作ったオムレツは食べてみたいよね?」

「おばあちゃんもそう思う?」

「思う、思う …

だけどね、め以子、外にあるものを食べる時は、気をつけた方がいいよ。

おばあちゃんの知り合いは、盗んだ柿を食べて、腸チフスになったんだよ」


息を飲む、め以子。

「命が助かったから、いいようなものを … 本当に危なかったんだよ。

盗み食いをして、お腹こわしたらどうなる?

… 去年、お腹痛になった時のこと思い出してごらん」

「 … カニ」

「社長さんにいただいた美味しいカニ、め以子食べさせてもらえなかっただろう?」


去年のことを思い出して悔しそうな顔になった、め以子はうなずきました。

「お腹こわすと損だよね?」

「おばあちゃん、私、私もう絶対、盗み食いしない!」


… … … … …

「じゃ、ご褒美をあげようかね?」

トラが懐から取り出した包みを開きました。

「カステラ!」

カステラを手にしたトラは、ひとり芝居を始めました。

「何、お主は長崎の生まれか?

何何、後生だから斬らんでくれ?

何、斬らずと割ってほしいとな? 何故じゃ?

それは、割った方が … 」

「美味いからじゃ ~ 」


トラは笑いながら、カステラを半分に割って、め以子に手渡しました。

すぐさま、かぶりつくめ以子、満足そうな顔をしました。

「たくましいね、め以子は … 食べたい気持ちが強いってことは、生きる力が強いってことだよ。

仏様が、め以子にくれた贈り物だよ」


祖母の言っていることの意味がよく分かりませんでしたが …

分かったような顔でうなずいた、め以子でした。

その様子を廊下でそっと窺っていたイク。

フッと微笑むと、持っていたパンをちぎって口の中に入れました。

… … … … …

ある日、め以子は、寺の境内で友達のちよを探していました。

裏に回った時、本堂を覗いていた同級生の源太と目が合ってしまいました。

いつも学校でちょっかいを出してくる源太が嫌な、め以子は、そそくさと逃げようとします。

しかし、あとを追ってきた源太に腕をつかまれてしまいました。

「おい、お前ちょっと手伝え」

「何を?」


… … … … …

本堂の裏に連れて行かれた、め以子は、源太やその仲間たちに交じって、格子窓から中を覗きました。

「ほら、仏さんの前に供えてある、あれなんだけどよ」

お経を唱える和尚の横、三方の上に見たこともない真っ赤な食べ物が供えてありました。

「何あれ?」

「あれ、食ってみてえと思わねえか?」


その言葉に祖母の戒めを忘れて、笑顔になる、め以子でした。

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2013年09月29日 (日) | 編集 |
あまちゃん

連続テレビ小説『あまちゃん
2013年4月1日(月)~9月28日(土)全156回

< スタッフ >
作/宮藤官九郎 音楽/大友良英 アニメーション/鉄拳

< キャスト >
ヒロイン 天野アキ/能年玲奈

アキの家族

アキの母 天野春子/小泉今日子 若き日の春子/有村架純
アキの祖母 天野夏/宮本信子
アキの父/黒川正宗 尾美としのり
アキの祖父/天野忠兵衛 蟹江敬三

最北の海に潜る海女たち

今野弥生/渡辺えり
長内かつ枝/木野花
熊谷美寿々/美保純
安部小百合/片桐はいり

北三陸の人びと

北三陸駅・駅長 大向大吉/杉本哲太 若き日の大吉/東出昌大
北三陸駅・副駅長 吉田正義/荒川良々
観光協会・会長 菅原保/吹越 満
観光協会・職員 栗原しおり/安藤玉恵
琥珀(こはく)掘り 小田勉/塩見三省
商工会長 今野あつし/菅原大吉
漁協・組合長 長内六郎/でんでん
漁協・事務員 花巻珠子/伊勢志摩
高校の先輩 種市浩一/福士蒼汰
高校教師 磯野心平/皆川猿時
アイドルおたく ヒビキ一郎/村杉蝉之介

足立家の人びと

ユイの兄 足立ヒロシ/小池徹平
アキの親友 足立ユイ/橋本愛
県議会議員 足立功/平泉成
ユイの母 足立よしえ/八木亜希子

東京の人びと

女優 鈴鹿ひろ美/薬師丸ひろ子
プロデューサー 荒巻太一/古田新太
マネージャー 水口琢磨/松田龍平
マネージャー 河島耕作/マギー
GMT(埼玉) 入間しおり/松岡茉優
GMT(福岡) 遠藤真奈/大野いと
GMT(徳島) 宮下アユミ/山下リオ
GMT(沖縄) 喜屋武エレン/蔵下穂波
GMT(宮城) 小野寺薫子/優希美青
GMT(山梨・ブラジル) ベロニカ/斉藤アリーナ
アメ女(センター) 有馬めぐ/足立梨花
純喫茶アイドル店主 甲斐さん/松尾スズキ
無頼寿司大将 梅頭/ピエール瀧

※放送順に一覧にしてみました。

故郷編


第1週 おら、この海が好きだ!


誰よりも地味なヒロイン、登場。


| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |

第2週 おら、東京さ帰りたくねぇ


いよいよアキ、本格始動。


| 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |

第3週 おら、友だちができた!


アイドルになりたあい!


| 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |

第4週 おら、ウニが獲りてぇ


わざわざ人がやってきた!


| 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 |

第5週 おら、先輩が好きだ!


『ずぶん』に、胸キュン!


| 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |

第6週 おらのじっちゃん、大暴れ


やっぱり、ここがいちばんいい!


| 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | 36 |

天野春子

第7週 おらのママに歴史あり


潮騒のメモリー、春子のメモリー。


| 37 | 38 | 39 | 40 | 41 | 42 |

第8週 おら、ドキドキがとまんねぇ


恋の、ばがやろう!


| 43 | 44 | 45 | 46 | 47 | 48  |

足立ユイ

第9週 おらの大失恋


友情が走る、お座敷列車。


| 49 | 50 | 51 | 52 | 53 | 54 |

第10週 おら、スカウトされる!?


ビフォー&アフター。


| 55 | 56 | 57 | 58 | 59 | 60 |

第11週 おら、アイドルになりてぇ!


ママなんか、大嫌い。


| 61 | 62 | 63 | 64 | 65 | 66 |

第12週 おら、東京さ行くだ!


行ぎだくねえけど、行ぐ!


| 67 | 68 | 69 | 70 | 71 | 72  |

大向大吉

東京編


第13週 おら、奈落に落ちる


おら、東京さ行くだ!


| 73 | 74 | 75 | 76 | 77 | 78 |

第14週 おら、大女優の付き人になる


ユイちゃん、壊れる。


| 79 | 80 | 81 | 82 | 83 | 84 |

第15週 おらの仁義なき戦い


北三陸へ、帰りでえ!


| 85 | 86 | 87 | 88 | 89 | 90 |

第16週 おらのママに歴史あり2


自分のために、歌ってみれば。


| 91 | 92 | 93 | 94 | 95 | 96 |

第17週 おら、悲しみがとまらねぇ


アキの前に、春子の壁。


| 97 | 98 | 99 | 100  | 101 | 102 |

第18週 おら、地元に帰ろう!?


太いものには、巻かれない!


| 103  | 104 | 105 | 106 | 107 | 108 |

第19週 おらのハート、再点火


くれぐれにも、ママには内緒で。


| 109 | 110 | 111 | 112 | 113 | 114  |

第20週 おらのばっぱ、恋の珍道中


決着、つけさせてもらいます!


| 115  | 116 | 117  | 118 | 119 | 120 |

第21週 おらたちの大逆転


天野アキ、鈴鹿アキになる!


| 121 | 122 | 123 | 124 | 125 | 126 |

第22週 おらとママの潮騒のメモリー


申し訳ない、春ちゃん。


| 127 | 128 | 129 | 130 | 131 | 132  |

復興編


第23週 おら、みんなに会いでぇ!


そんでも、走るべ、前を向ぐべ。


| 133 | 134 | 135 | 136 | 137 | 138 |

第24週 おら、やっぱりこの海が好きだ!」


変わらないこともある。


| 139 | 140  | 141 | 142 | 143 | 144 |

第25週 おらたち、いつでも夢を


まだまだ笑える、強さがある。


| 145 | 146  | 147 | 148 | 149 | 150 |

第26週 おらたち、熱いよね!


ここから、スタートだべ。


| 151 | 152 | 153 | 154 | 155 | 156 |

潮騒のメモリーズ
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2013年09月28日 (土) | 編集 |
最終話

2012(平成24)年7月1日。

北三陸駅には、『祝 運転再開 北三陸鉄道 リアス線』の横断幕が掲げられ、記念式典が行われる駅前広場にはたくさんの人々が集まりました。

ついに今日、「北三陸~畑野駅間」の運転が再開されるのです。

「昭和59年の開通から28年、市民の足として走り続けた北鉄は今日、復活します!」

1番列車が出るホームから市長の足立功が声高々に宣言すると、ブラスバンドの演奏が始まり、人々から大きな拍手と歓声が起こりました。

「見えるか? 吉田君」

「見えますよ」


念願の運転再開に感無量の大吉と吉田。

「あのカメラ、どっきりカメラじゃねえよな?」

多くの報道関係のカメラを見て大吉の声は震えています。

「あんなにいっぱいいたら、どっきりカメラでもいいです」

「越えたよな、84年の開通式、越えたよな」


涙をこらえて、うなずき合ったふたりです。

… … … … …

「 … すいません、通してください」

階段に並んだ溢れんばかりの人々をかき分けて、ホームに下りてきたのは、正宗でした。

吉田の顔を見つけました。

「あっ、吉田さん、春子さん知りませんか?」

「鈴鹿さんと一緒に7時の新幹線でお帰りになりました」

「はあ? なんで教えてくれないんですか!」


吉田の胸倉をつかんだ正宗。

「旦那さんはいいんですか?って聞いたら … いいんですって答えたので、お知らせしませんでした」

「どうしたのよ?」


何事かと、吉田に尋ねた大吉。

「黒川さんがなんだか … 面倒くさい」

「またか ~ 」


… … … … …

「では続いて、市長の娘さんで、ミス北鉄の足立ユイちゃんによります、テープカットです!」

保に紹介されてユイが登場すると、今まで以上の拍手と歓声 … ひと目、見ようと押し寄せる人々。

「ちょっと、押さないでください」

よろめいた正宗に押された吉田が、大吉を押して、その大吉がまた次の人を … 将棋倒しのように次々に連鎖して反対側の端にいたユイを突き飛ばしました。

その反動で、ユイはくす玉のひもを引いて、予定より早く割ってしまいました。

「すいません、すいません!」

皆に頭を下げる大吉。

… まるで、28年前のデジャブ …

くす玉から運転再開を祝う垂れ幕と紙吹雪。

それを合図に、ブラバンが景気のいい演奏を始めました。

バンザイ ~ バンザイ ~

… … … … …

「出発、進行!」

指差し確認した大吉が笛を吹くと、ユイと乗客を乗せた電車がホームを滑り出しました。

バンザイを連呼して見送る功、ヒロシ、正宗、保 …

< 2012年7月、北鉄は北三陸~畑野間で運転を再開しました >

「今日は、北の海女の海開きの日です」


電車の中でユイが知らせると、乗客から拍手が起きました。

袖が浜に差し掛かると、浜で海開き恒例の餅まきをしているアキや海女クラブのメンバーたちが見えてきました。

「アキちゃ~ん!!」

窓から顔を出して手を振るユイ。

「ユイちゃん、ユイちゃ~ん、後でね ~ 」

それに気づいて、アキも手を振り返しました。

車窓にびっしりと貼りつくようにこちらを見ている乗客たち、それを見上げて夏が言いました。

「あっちもすげえなあ ~ 」

「うん、おらも負けてらんねえ!」

< 袖が浜も過去最高の人出 >


素潜りの実演、鈴なりの観光客たちに手を振って応えながら海に入るアキ。

息を大きく吸い込んで、潜りました。

< 海女カフェの補修と再建で、海女クラブはそこそこの借金を抱えていました >

弥生もかつ枝も美寿々も小百合も、潜る潜る …

< 幸い、海の底にはゼニがゴロゴロ落ちていました >

繁殖が成功して、岩を埋め尽くすほどのウニが戻ってきています。

… … … … …

「ぷはっ!」

水面に顔を出したアキに夏は尋ねました。

「どうだ ~ どうだ、アキ?」

「最高~だ!!」


立派に育ったウニを高く掲げたアキ。

どよめく観光客、夏も笑顔で手を叩いて、何度もお辞儀しました。

… … … … …

『次は終点、畑野~畑野です』

吉田のアナウンス。

畑野駅でも、多くの地元の人々が電車を迎えてくれました。

『おかえり!北鉄』の横断幕、大漁旗、踊りながら鉦や太鼓を叩く音 …

< 今は、畑野までですが … そう遠くない将来、この線路が東京までつながるのです >

ここから先は、来年、平成25年に全線復旧の予定です。

『折り返し、北三陸行きになりま~す』

手を振る人々に見送られて、北三陸駅目指して走り出した電車。

… … … … …

観光協会。

昨晩、ヒロシや種市たちが夜を徹して描き上げた『潮騒のメモリーズ』の看板も元の位置に掲げられました。

ジオラマの修理も終わり、観光協会のホームページもヒロシの手でリニューアルされました。

窓から、駅舎を出てくる観光客の人数を数えている保。

「来るね … うん、グループで来るね」

< 袖が浜も北鉄も満員御礼 >

「お客さんがたくさん来るね、はっははっは」


… … … … …

< 行き場を失った観光客の受け皿になったのが、勉さんの採掘場 … 1時間500円の体験コースでした >

坑道から出てきた子供たちに質問する勉さん。

「まだ、人間は地球上には存在しません … じゃあ、何がいた?」

元気よく手を上げた女の子を指しました。

「恐竜!」

「そう、恐竜です!」

「おじちゃん、これ琥珀?」


体験採掘をしていたひとりの男の子が数センチの黒い棒状の塊りを勉さんに見せました。

「 … うん?」

手に取って、じっと見つめていた勉さん … 突然!

「じぇじぇじぇっ!」

… … … … …

「水口君、水口君、大変!」

大騒ぎでリアスの窓口から顔を出した勉さん。

水口はカウンター席で注文した焼きうどんを待っているところでした。

「こ、こ、こ、こ、これ見て!」

さっきの男の子が見つけた黒い塊を持っています。

「無理っす … 今、焼きうどん、待ってるんで」

「ごめんね、勉さん … 今日、いっぱいで座れないの」


リアスも千客万来、小百合ひとりでは間に合わないと、手伝っているよしえが申し訳なさそうに言いました。

「まめぶ以外は、30分待ちです」

「30分だと? … こっちは、8,500万年待ったんだよ!」


いつになく興奮気味の勉さん、小百合に向かって大声を上げました。

店に入って来て、水口の目の前にもう一度、塊りをつきつけました。

「何か、動物のフンだね?」

「カリントウですね?」


呑気に答えた、功と吉田。

「恐竜の骨ですよ!!」

「じぇじぇじぇ」

「白亜紀に生きてたとされる肉食恐竜コエルロサウルス類の後ろ足の指!

人間でいうと、薬指か中指の第2関節、つまりここ!」


そう言って、水口の掌に当てました。

「はい、焼きうどん、お待たせ!」

水口にしてみれば、焼きうどんの方が興味があるようです。

「えっ、そんなに珍しいの?」

隣に座っていた、ヒビキ一郎が尋ねました。

「そりゃもう、琥珀なんかより全然!」

「 … 琥珀なんかよりって言っちゃ、だめだよ ~ 」


常日頃、琥珀を軽く見ている吉田ですが、勉さん本人がそれを言ったらお終い … と、諌めました。

「だって、こんな状態のいいの、ふたつとないから!」

「じゃあ、これもですかね?」


水口は昨日見つけた、同じような塊りを勉さんに見せました。

「えっ?」

ひと目見て、またも驚く勉さん。

「箸置きにちょうどいいんですよね」

急に様子が変わった勉さん、小さな声で水口に言いました。

「 … 僕が見つけたってことには … ならないよね?」

「いやあ ~ それは … 証人がいますし … 」


証人、多過ぎです。

「水口さん、お待たせ!」

そこへ『潮騒のメモリーズ』の衣装に着替えたアキが店に入ってきました。

ざわめく店内。

… … … … …

ホームには、すでにお座敷列車が停車していました。

「え ~ お座敷列車『潮騒のメモリーズ』号、まもなく発車です」

アナウンスする大吉。

衣装を着たアキとユイがホームに現れると、満員の乗客が拍手と歓声で迎えました。

< ついにこの日が来た … 水口君は興奮を隠しきれませんでした >

ふたりの後をビデオカメラを構えてついてきた水口です。

< 2年半ぶりのお座敷列車、『潮騒のメモリーズ』復活!

明日の1面トップはもらった! >

「出発!」


… … … … …

「待って下さ~い!」

慌てて階段を駆け下りてきたのは、春子に置いてけぼりを食った正宗でした。

「乗せて、大吉さん … 乗せて下さい!」

大吉にすがりついて、懇願しました。

「いやいや、それは無理だ、マサ … お座敷列車は、来月分まで予約で一杯!」

そう、冷たく言い放つと電車に乗り込んでいきました。

こればかりはどうしようもないと … すまなそうな顔で、その後に続く水口。

がっくりとホームに座り込んだ正宗。

最終回まで、こんな扱い … 

その目の前にチケットを差し出した人がいました。

顔を上げた正宗 … ヒビキ一郎でした。

「 … いいんですか?」

「明日も乗るし … 言ってみりゃ、あんた、『潮騒のメモリーズ』の生みの親みたいなもんだし」

「産んではないけど … ありがとうございます!」


一郎の手を握った正宗、喜び勇んで電車に乗り込みました。

… … … … …

「大変長いことお待たせいたしました。

いよいよの登場でございます … 『潮騒のメモリーズ』」


割れんばかりの拍手、喝采 …

しかし、カーテンを開けて、顔を出したのは、吉田でした。

ブーイング …

「大変失礼しました … さあ、登場で~す」

手招きする大吉と吉田。

今度こそ、アキとユイが登場しました。

「私たち、潮騒のメモリーズ … ゼェェット!!」

… … … … …

『 … 続いてのニュースです。

東日本大震災で被害を受けたローカル線が、今日、一部運転を再開しました。

地元市民に交じって、全国各地の鉄道ファンがエールを送りました。』

純喫茶アイドル。

甲斐のテレビから、今日の北鉄運行再開の模様を映したニュースが流れています。

『そして、午後には、地元アイドルを乗せたお座敷列車・潮騒のメモリーズ号が運行しました … 』

ユイと歌うアキの姿が映ると、甲斐が興奮して声を上げました。

「この子、昔うちでバイトしてた!

この子のお母さんもね、うちでバイトしてたの … 『潮騒のメモリーズ』、今一番熱いよね!」


ウエイトレスにそう語っても、興味なさそうに、テーブル席を片付けに行ってしまいました。

「 … 失礼しました ~ 」

… … … … …

< 後日、ふたりの活躍は地元の新聞でも大きく報じられました。

… 残念ながら、1面トップではありませんでした >


トップを飾ったのは、『北三陸で8,500年前の肉食恐竜の骨発見!』という見出し、例の黒い塊 … 恐竜の骨を発見したふたり、水口と少年の写真でした。

「めちゃ悔しい ~ 」

ファイナル勉さん …

… … … … …

『潮騒のメモリーズ』のステージをカメラで追っていた水口、ふと車窓から外を見て気づきました。

「お、ヒロシ君、すごいよ!」

お座敷列車に向かって、手を振るたくさんの人々が見えます。

田んぼの中で手や旗を振る人、電車と一緒に畦道を走る子供。

『おかえり』の文字も見えます。

笑顔、笑顔、笑顔 …

… … … … …

ベーリング海上 N58° 0"W178° 0"

「見れ! これ、おらの孫」

船室でパソコンに映ったアキの姿を自慢げに外国人の船員に見せる忠兵衛。

「マイ・ドーターズ・ドーター」

「Oh! シー・イズ・キュート」

「メモリーズ・オブ・潮騒よ!」


… … … … …

「ありがとう!」

アキとユイは、終点の畑野駅で電車を下りました。

北三陸へ戻って行く電車へ手を振って見送るふたり。

アキはふとその手首のミサンガを見つめました。

「どうかした?」

「ミサンガ、今日こそは切れると思ったのに …

しょうがねえか、いっぺえ間違えたもんな ~ 」

「私も! … 今までで一番ヤバかった!」


顔を見合わせて笑ったふたり。

「まだまだ、完成しなくていいべ?!」

「うん … 明日も明後日もあるもんね」

「明日も明後日も … 来年もある。

今はここまでだけど、来年はこっから先にも行けるんだ!」


アキはホームの先を見つめて言いました。

線路はトンネルへと続いています。

しばし、黙ってそれを見つめていたふたり。

ふいにユイがアキの肩に手を置いて言いました。

「行ってみようか?」

「じぇじぇっ?」

「行こう、アキちゃん」


その先を指差したユイ、ホームを下りて線路を歩きはじめました。

後に続くアキ。

トンネルの入り口で手をつないで奇声を上げてバンザイをしました。

微かに見える反対側の出口目指して、どちらからともなく走り出したアキとユイ。

そして …

長いトンネルを抜けると、そこに広がったまばゆい光の中へ、ふたりは飛び出して行きました。

… これから始まる新しい物語へと …
おしまい


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あまちゃんニュース

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あまちゃん』総集編
10/14(月・祝)NHK総合
《前編》午前8:20~9:48 / 《後編》午前10:05~11:35

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2013年09月27日 (金) | 編集 |
第155話

「アキ … ママの花嫁姿、見たい?」

「見でえ!」

< … という訳で、おらのひとことで、3組の合同結婚式が開かれたのでした >

式も無事に終わり …

< 余興は、いっそんの『南部ダイバー』に始まり … 種市先輩の『南部ダイバー』。

足立先生の手品は、背広からずっと、ハトの鳴き声が聞こえてました。

弥生さん、かつ枝さん、美寿々さんのperfumeでは、けが人が出て … >


perfumeに扮した3人に向け気合を入れてペンライトを振っていた、ヒビキ一郎の脱臼癖の肩が外れてしまったのでした。

< … 急遽、おらも加わり、三度目の『南部ダイバー』 >

♪白い鴎か 波しぶき、若い血潮が 躍るのさ ~

< 『南部ダイバー』に次ぐ『南部ダイバー』 … そして、花束贈呈 >

… … … … …

ふたたびステージに上がった、3組の花婿花嫁。

< とはいえ、安部ちゃんは身寄りがなく、大吉っつあんのお母さんは早々に酔いつぶれてしまい …

結果、花束は夏ばっぱに集中しました >


抱えきれないほどの花束を受け取った夏。

拍手を受けて、ステージを下りようとするのを司会進行の保が止めました。

「え、それではあの … 春子さんのお母様で袖が浜海女クラブの会長であられます、天野夏さんからひとことお願いします」

拍手、歓声 …

「おら、しゃべること、ねえんだがら」

突然のことで、一度は固辞した夏でしたが、それでもマイクを用意されて … 観念しました。

… … … … …

「え~と … 天野家の初代、マーメイドでがす」

一同、どっと受けました。

「鈴鹿さん、わざわざこんな辺鄙なとこさ来てくれて … ありがとうごぜいます」

まず、ひろ美に深く頭を下げた夏、ひろ美も同じように下げました。

夏はひろ美の手を握りました。

「あんたが動いてくれたおかげで、20数年前に拝めなかった、娘の花嫁姿を図らずも見ることができました。

できれば、忠兵衛さんにも見せたかったが … 全部叶ったら、あの人もうここさ帰ってこねぐなるから」


ごもっとも ~ と笑う一同。

夏は花婿花嫁たちを椅子に座らせました。

「お互いもう、若くねえんだから」

夏が何か言うたびにどっと沸く会場です。

… … … … …

「大吉!」

名前を呼ばれて、立ち上がった大吉と小百合。

「今度こそ、安部ちゃん泣かしたら、おらもう北鉄乗んねえど ~

ウニ丼、作んねえぞ ~ 分かったか?!」


大吉をにらみつけて、そう言いました。

「はいっ」

しっかりと返事をした大吉、「ありがとう」を繰り返す小百合。

「 … それから、荒巻ジャケ」

「シャケではないんですけど … はい」


にこやかに立ち上がった太巻。

「あんたみてえな金持ちが、田舎さ目つけることはいいことだ ~ どんどん金出せ ~

そしたら、おらたちもどんどん元気出すべ!」

「んだんだんだ!」


立ち上がった弥生と太巻を座らせると、夏は会場に向かって、ゆっくりと話しはじめました。

… … … … …

「一昨年倒れてまして、去年は地震があったりして … 明日はどうなるか分かんねえ毎日を送ってましたが、娘や孫に助けられて、なんとか生きてます。

明日は、『海開き』でがす!

今年は、ウニも帰って来たし、去年のリベンジでがす!

いっぺえ潜って、いっぺえ取って、そんで ~ 一段落したら … まあ、これは毎年言ってることですが …

今年こそ、海女引退するつもりです」


静まり返った会場。

夏を見つめる春子、アキ。

「これからは、おめえたちの時代だ … 老兵は去りゆく …

去る者は追わないで下さい ふふふ」


満面の笑みをたたえた夏。

「最後に …

本日は、皆さん、おらの夢を叶えてくれて、どうもありがとう」


皆に向かって、深く深くお辞儀しました。

そして、春子も …

拍手 …

「夏ばっぱ … 」

「何だ?」


思わずつぶやいたアキ、夏が即反応しました。

「えっ … ごめん、返事するとは思わねがった」

「あらまぁ」


… … … … …

披露宴の最後に一郎がカメラマンで集合写真の撮影です。

「あれ、水口さんは?」

アキが水口の姿が見当たらないことに気づきました。

「えっ、あ、いないね … いつから?」

辺りを見回すユイ。

「いても気づかねえのに、いねえと気づくもんだな … 」

… … … … …

その水口は、琥珀の採掘場でひとり作業をしていました。

… 今日ぐらい休みにすればいいのに …

トンネルの外に運び出した、ふるいの中に奇妙な物が混ざっているのを目に留めた水口。

「何だ、これ?」

手に取って、眺めました。

数センチの黒い動物の骨のようなものです。

… … … … …

梨明日。

披露宴を終えた新郎3人が集まって、改めて祝杯を挙げていました。

お互いの琥珀の指輪を見比べる3人。

「微妙に色、違うんですね」

「まあまあ、何にせよ … おめでとうございます」


本日、何回目かの乾杯をしました。

「見に行かれるんですよね? 明日、お座敷列車」

店番の吉田が太巻たちに尋ねました。

「いやいやいや、見て行きたいのはやまやまなんですが … あしたから、鈴鹿の東北ツアーが始まりますんで」

残念そうな太巻。

宮城や福島を回るのです。

「いや、でもテレビもありますし、水口にカメラ回させます」

当然、事務所の社長の春子も …

「ついていくでしょうね … 」

「ええっ、もう帰っちゃうの? もう1日ぐらいいいじゃない!」


不満顔の大吉、それ以上に不満そうに正宗は言いました。

「居たいですよ、そりゃ僕だって!

こないだのお座敷列車も乗ってないし … 今日も鈴鹿さんの歌、僕だけ聞いてないし!」

「ふふふ」


思い出し笑いの太巻。

「再婚しても、蚊帳の外ですね」

平然とした顔で吉田がきついひとこと。

… … … … …

天野家。

「きゃ ~ !」

ビールを手にした春子が2階の隠し部屋のドアを開けると、ベッドの上にいたひろ美が驚いて声を上げました。

その声に逆に驚く春子。

「ごめんなさい、ごめんなさい … っていうか、なんでいるの?」

「ずっと、お借りしてたんです … 社長は?」

「 … ここ、私の部屋だから?」


納得して笑ったひろ美は、謝ってベッドから立ち上がりました。

「いやいやいや、座ってて下さい … お酒とか要ります?」

しかし、すでに嗜んでいたひろ美でした。

「じゃあ、ちょっとお邪魔して … 」

… … … … …

ふたりは並んでベッドに腰かけました。

ここでも琥珀の指輪を見せ合っています。

「 … 懐かしいわね、ここ」

部屋を見渡して、ひろ美は言いました。

「そうでしょ?」

春子は1枚のLPを取り出してジャケットを見せました。

「これとか、ヤバくないですか?」

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「渋谷哲平!! 同じの持ってる ~ 」

「マジで?!

… え ~ じゃあ、これはこれは?」


今度はシングルのジャケットを見せました。

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「太川陽介!」

「そう、持ってる!」

「持ってます? Lui-Lui!」


同じような趣味だったと分かって、少女のように大はしゃぎするふたり

… … … … …

窓から夕陽さす駅舎。

「はい、どっちがいい?」

ユイが2本のペットボトルを見せて、アキに聞きました。

「こっち、ありがとう!」

アキはベンチに腰かけながら言いました。

「カッコよかったね、鈴鹿さん … さすが、天下の大女優だべ?」

何か考えていたユイ、おもむろにアキに尋ねました。

「アキちゃんはさ、どっちが辛かったと思う?」

「えっ、どっちが?」

「鈴鹿さんと、春子さん … 」

「ああ、影武者問題か」

「私は鈴鹿さんの方が辛かったと思うんだよね」

「どうして?」

「何となく … ステージ見てて、そう思った」


ユイにそう言われて、アキも考えてみました。

… … … … …

懐かしい音楽話に盛り上がった春子とひろ美。

春子は、オーディションのために録音したデモテープまで、ひろ美に聴かせました。

「何か、変な感じ … 自分の部屋に鈴鹿ひろ美がいるなんて」

微笑むひろ美。

「楽しかったですか? 今日 … 」

「はい」

「 … 吹っ切れた?」


ひろ美は少し考えて、うなずきました。

「私も!」

「それは … よかった」


ふたりは、顔を見合わせて笑いました。

… … … … …

アキは、ユイの質問の答えを出せずにいました。

どちらが辛かったなんて決めることはできません。

「知ってた? 明日、全国放送のテレビも来るんだって ~ 」

突然、ユイが話題を変えて、不安げに言いました。

「うん、ママに聞いた」

平然と答えたアキを見て、笑ったユイ。

「ふふふ、アキちゃんは、平気だよね」

ほんの短い間でしたが、仮にも全国区のアイドルだったのです。

「うん … ユイちゃんがいるから、怖くねえ!

東京では、ひとりだったからな …

訛ってる方だけじゃ、『潮騒のメモリーズ』って、いえねえべ?

もちろん、可愛い方だけでもダメだ!

… ふたり揃うのは、何年ぶり?」

「3年ぶり」

「3年かあ ~ 長かったような、あっという間だったような … 」


ユイはアキの顔を見ました。

「 … 私は、長かった」

見返したアキ、ユイは微笑んでいます。

駅舎に飾ってある、3年前のお座敷列車の写真に目をやりました。

… … … … …

観光協会では、ヒロシと種市、しほり、そして勉さんが、明日のために『潮騒のメモリーズ』の新しい看板を描き起こしていました。

「あ、ちょっと、種市君! アキちゃんの方ばっか、描かないでよ!」

アキの絵の方ばかり念を入れて描いてるように見えて、嫉妬したヒロシ。

「そんなことねえです! 自分、平等に描いてます … 絵具だって、5色ずつ使ってます」

「早くしねえと、朝になるから!」


しょうがない男の子たち、しほりが注意しました。

… … … … …

< そして、翌朝 >

2012年7月1日、袖が浜海岸海開きの朝が明けました。

『海女クラブの皆さん、おはようございます ~ 』

漁協のスピーカーから、海開きを知らせるアナウンスが聞こえてきます。

その声で目を覚ましたアキ。

『本日7月1日、天候もよく、予定通り、袖が浜海岸海開きを行います ~ 』

「じぇじぇっ、この声は?」

聞き覚えのある声、でもその声は海女クラブのメンバー誰のものでもありません。

「どう、ビックリした?」

いつの間に後ろにいた、春子がアキに尋ねました。

興奮気味にうなずいたアキ。

「サプライズだ … 超サプライズだ!」

… … … … …

その声の主は、鈴鹿ひろ美でした。

漁協仮事務所のマイクの前に座ったひろ美、傍らには原稿を持った太巻。

「海女クラブの皆さん、おはようございます!」

「おはようございます ~ 」


窓から覗いている、美寿々、かつ枝、小百合が目の前で答えました。

流れ出す『いつでも夢を』。

「海女クラブの皆さんは、速やかに旧漁協前、海女カフェ前に集合してください。

7時より、安全祈願のご祈祷を行います」

「鈴鹿さん、僕たちも7時の新幹線に乗って … 」


太巻の言葉に、ひろ美は「分かっています」というようにうなずきました。

「繰り返します ~ 」

… … … … …

仏壇に手を合わせる春子、その横で海女姿のアキは神棚に手を合わせました。

「じゃあ、行くね」

スーツケースを手にした春子。

ひろ美のツアーに同行するのです。

「もう行くの?

… せめて、開通式見て行けばいいのに」


名残惜しそうなアキに春子は言いました。

「や・め・と・く … いろいろ思い出しちゃうから」

「そっか … 」


少しさみしそうに笑ったアキ。

「まあ、がんばってね!」

「うんっ!」


今度は元気よく返事をしました。

… … … … …

浜に出る前にアキは高台に昇って、そこから海を見渡しました。

快晴の空高くトンビが鳴いています。

大きく手を広げるアキ。

♪いつでも夢を いつでも夢を …

< 2012年7月1日、私の故郷、北三陸が大きな一歩を踏み出します >

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2013年09月26日 (木) | 編集 |
第154話

会場に響き渡る、ひろ美の澄んだ伸びのある歌声、魅了されて耳を傾ける観客。

♪ … 来てよ その川 乗り越えて ~

三代前から マーメイド 親譲りの マーメイド …

「なんつった今?」

かつ枝に尋ねた美寿々。

「『三代前からマーメイド』だと … 夏ばっぱのことだべ?

… あの野郎、さては最初から決めてたな」

♪ … 好きよ 嫌いよ …

ひろ美は見事に歌い切りました。

割れんばかりの拍手、喝采 …

… … … … …

「もう、始まっちゃいました?」

海女カフェに飛び込んできたのは、正宗でした。

「おお、マサ、来たのかい?」

「残念 ~ たった今、本編は終わってしまいました」


保の言葉で、へたり込んだ正宗の肩に吉田が手を掛けました。

「ご心配なく、アンコールもありますから … まっ、民話の読み聞かせですけどね」

まだ興奮冷めやらぬ会場を覗きながら、笑い合った大吉と吉田。

「ああ、最高だったな … 『潮騒のメモリー』」

「さすが、ブランクを感じさせねえ歌声でしたね」

「春子さんがでしょ?」


正宗の言葉に怪訝な顔をする一同。

「春子さんが歌ったんでしょ?」

「ちょっとちょっと、何言ってんの? この人は … 今日は鈴鹿ひろ美のリサイタルだよ」

「んだんだ、なんぼ声だけでも、鈴鹿ひろ美と春子さんの違いぐらい分かるべ … バカにすんな!」


目を剥いて怒る吉田 … しかし、正宗はもう一度聞きました。

「よかったんですよね?」

「ああ、最高だった」

「やっぱり、春子さんだ ~ 」


春子のカバンを抱きしめて、満足そうに微笑む正宗。

… … … … …

アンコール、アンコール …

観客の声に応えて、再びステージに現れた鈴鹿ひろ美。

その様子を並んで見つめている太巻と春子。

「大した人だよ … 」

「本当だよね ~ よりによって、私の地元でさ」

「しかも、東北の復興支援だよ。

上手くいったからよかったようなものの … 脇汗すごいよ、押さえてないと溢れちゃうよ」


ひろ美は観客席に向かって問いかけました。

「今日はいかがでしたか?

皆さん、楽しんでいただけましたか?」


「最高」という声と大きな拍手が返ってきました。

その時、春子の胸にある疑問が湧きました。

「 … わざとだったりして」

「わざと … えっ、わざとって何?」


太巻には春子の言っている意味がよく分かりません。

「わざとで上手くは歌えないでしょう?」

「今日じゃなくて、今までがよ」

「えっ … わざと下手に? どうして??」


… … … … …

「今回の東北チャリティーツアーは、どうしても、この北三陸から始めたかったんです。

私の所属事務所の代表が、こちらの出身で … 彼女とは、若い頃からの腐れ縁で … 」


ひろ美は、会場の春子を見つけて会釈しました。

「その娘さん … そうです! この海女カフェを作った、天野アキちゃん!」

ひろ美は、袖にいるアキとユイを手招きしてステージに呼びました。

「北鉄のミス、ユイちゃん!」

アイドルのふたりの登場で盛り上がる会場。

「アキちゃんとは、映画でも共演したし、お祖母ちゃんの夏さんには … 」

ステージから夏を探しましたが、姿が見当たりません。

「夏ばっぱ、さっきまで、ここで聞いてたぞ ~ 最高だって!」

隣に座っていたかつ枝が代わりに答えました。

… … … … …

「言ってましたよね、確か『歌手志望じゃなかった』って」

春子の話を黙って聞いている太巻。

「でも、駆け出しのアイドルだから断れなくって … 」

「しかたなく、わざと下手に … 最初から?」


ステージでもちょうど、ひろ美がその頃の話を始めました。

「アイドルと呼ばれていた当時も実は、歌が苦手で … 歌番組も何度か出ただけ。

人前で歌うなんて、もっての外 … はい」


ひろ美の意外な発言にどよめく会場。

「 … そんな訳ないよね?」

自分で言い出したことながら、春子は否定しました。

「やだやだ、知りたくない … ていうか、考えたくない!」

耳をふさいだ春子。

「 … でも、万が一そうだとしたら?」

… … … … …

「だから、初めてなんです。

初めて自分の意志でステージに立って、歌を … ずっと、封印していた歌を歌いたい。

皆さんに笑顔を届けたいと思って、来ました」


大きな拍手に包まれたひろ美。

「 … プロだわ」

そう言って、絶句する春子。

「そう思わせてくれた、天野家の皆さん、そして、北三陸の皆さん … 本当にありがとうございました!」

< 果たして本当に、猛練習の成果なのか? たまたまの大当たりか?

… あるいは、元々歌える人だったのか?

真相は、本人にしか分かりません >


もう、どちらでも構わない … 春子はステージの上の3人が手を繋いで高く掲げた姿を微笑みながら見つめていました。

< とにかく、チャリティーリサイタル、大盛況! >

… … … … …

< 終演後は急遽、サイン会が行われました >

ひろ美の前には長蛇の列。

そこへ姿が見えなかった夏が、何かを探しているように、辺りを見回しながら入って来ました。

「お義母さん、どうかしました?」

それに気づいた正宗が声を掛けると …

「恥ずかしい … 忠兵衛さん、見当たらなくて」

「えっ?」

「必ず行くって言うから、待ってたのに!」


腹を立てている夏を見て、困惑する正宗。

… … … … …

数時間前、正宗は天野家で忠兵衛に会っていたのです。

旅支度を整えた忠兵衛は正宗に宮古まで送るように頼みました。

「 … お義父さんは何処行くんです?」

「何処って、おめえ … また漁さ出るのよ」

当然のように忠兵衛。

「 … 何で、今日?」

「今日、船が出るからよ!」

「だけど、明日は海開き、北鉄の開通式 … 今日は、その前夜祭ですよね?」

「だから、今日なんだ」

ふたりは、取りあえず腰を下ろしました。

「地震もあったし、心細いかと思って帰って来たのによ … 皆、忙しくてよ、おらなんかほったらかしだ!

頭さ来たから、誰にも会わねえで行くわ!

はっ、ざまあみろだあ ~ 」

荷物を手にした忠兵衛を正宗は慌てて止めました。

「お義父さん、お義父さん、1分だけお時間いいですか?」

「なんだよ?」

正宗は忠兵衛の前に正座をして畏まりました。

「僕たち、やり直すことにしました … お騒がせしました!」

「そうか … 正宗君も苦労するな ~ 」

しみじみと言う忠兵衛。

「春子は、俺のDNAと夏さんのDNAのブレンドだからよ … 一筋縄じゃ行かねえもんな?」

うなずいた正宗の肩をがっしりとつかんで忠兵衛は言いました。

「油断するなよ!

人生を航海に例えると … 1回目よりも、2回目の方が危険を伴うからよ」

「はいっ!」

正宗の真剣なまなざしを見て、にやりと笑った忠兵衛。

「行くべえ!」

意気揚々と玄関に向かいました。

… … … … …

また漁に出る忠兵衛を宮古まで送って行ったとは、夏に言いだせない正宗。

「一緒に探しましょうか? ねえ、お義母さん」

「浜の方かも分かんねえな、行くべ、行くべ」


浜まで出て、あちこと探し回るふたり。

< 私と正宗さんが忠兵衛さんを探している、その頃 >

「春ちゃん、春ちゃん、こっちこっち」


春子は弥生に呼ばれて、控室へ行くとウエディングドレスを着せたマネキンを見せられました。

「 … これ、どうだべ?」

「ああ、どうかな ~ まあ、いいんじゃない?

鈴鹿さんの歳考えると、ちょっと派手だけどね」

「いやいや、鈴鹿ひろ美のはこっちだ」


今野がカーテンを開けると、もう1体、ウエディングドレスを着たマネキンが立っていました。

「 … 安部ちゃん、丈大丈夫なの? 結構、背高いよね?」

小百合が着るものだと思って、ドレスの丈を気にする春子。

「おらは、文金高島田 ~ 」

反対側のカーテンを開ける小百合、そこには白無垢が掛かっていました。

「じゃあ、これ、誰が着んのよ?」

「春ちゃんだ」


当然のように言った今野。

「わたしぃ???」

「うん、ほら、おらたちと鈴鹿ひろ美さんが合同で披露宴やることになってるべ?

それでほら、せっかく春ちゃんと正宗さんもいるし …

2組も3組もいっしょだべ ~ つって、急遽、おらが発注かけたんだ!」

「衣装代、負けっからよ」


ニコニコしている弥生。

「いやいやいや、無理だ」

「マサのタキシードもあるんだ」

「いやいやいや、無理無理無理 … 」

「頼むじゃ、春ちゃん! 縁起物だべ!」

「着ろって、夏ばっぱ喜ぶ顔、見たくねえのか?」


かつ枝までそう言って勧めますが、春子はまったくそんな気にはなれません。

「今更、こんなの着て喜ばないってば!」

… … … … …

そこへ、忠兵衛を探しに出ていた夏と正宗が戻って来ました。

部屋の上がり口に疲れたように座った夏。

「夏ばっぱ、具合でも悪いのか?」

心配する一同。

「 … 忠兵衛さん、行っちまった。

沖さ、行っちまった … 黙って、行っちまった … 」

「じぇじぇじぇじぇ ~ 」

「ごめん … 誰にも会わずに行くって」


結局、隠し通せずに夏に打ち明けた正宗でした。

「やっと帰って来たと思ったら、よりによって … 海開きの前の日に、北鉄もまだ走ってねえのに … 」

気落ちして、嘆く夏に向かって、頭を下げた正宗。

「引き留めるべきでした … すみません」

「いやいやいやいや …

『行ぐな』って言っても、やっぱし行ぐ。

『行け』って言っても、行く … あ ~ ああ」


深い深いため息をついた夏は、雁首揃えている一同を改めて見て、訝しげな顔をしました。

「何してんだ? おめえたち?」

「いやいや … ほらほら、いつもの、管巻け、管巻け、いつものな」


そう言いながら、かつ枝が夏を連れ出しました。

… … … … …

「ママ、お座敷列車の練習するから、見で!」

入れ替わりに顔を出したアキとユイ。

「えっ、なんかあったんですか?」

なんとなく微妙な雰囲気を感じたふたりです。

春子が遠慮がちにアキに尋ねました。

「アキ … ママの花嫁姿、見たい?」

突然にそんなことを聞かれても、意味が分からず戸惑うアキ。

「 … 見たくない?」

「見たい?」


小百合と今野も尋ねました。

「見でえ … 」

アキの言葉を聞いて、俄然張り切り出した大吉たち。

隠していたウェディングドレスを見せました。

「見でえ!」

今度はハッキリと笑顔で答えたアキ。

「 … ユイちゃん、見たくないもんね?」

それでも、往生際が悪い春子。

「見でえ!」

… … … … …

「それでは、お待たせいたしました。

新郎新婦たちの入場です!」


司会進行役の保が合図すると、カーテンが上がって … まず、純白のウェディングドレスをまとった、ひろ美とタキシード姿の太巻が登場しました。

拍手、歓声 …

そして、その前に白無垢の小百合と紋付袴の大吉。

< という訳で、ママたちも急遽、結婚式を挙げることになりました >

最後に、ウェディングドレスの春子とタキシードの正宗が現れました。

春子の姿を見て、驚いて立ち上がった夏。

< ヴァージンロードを歩く、6人の中年 … 皆、何となく半笑いでした。

おらも、こんなに面白え結婚式はそうそうねえと思う。

… でも、時間もったいねえし、この人たちをご存じねえ方には、さっぱり面白くねえだろから、ざっとダイジェストでご案内しますね >


… … … … …

< 神父さんは北三陸市にはいねえので、勉さんにお願いしました >

厳かに登場した勉さん神父、3組の新郎新婦の前に立ち、右手を上げました。

「病める時も、健やかなる時も、永遠の愛を誓いますか?」

どこからか、むせび泣く声 … 大吉でした。

< 大吉っつあんは、うれしいのか、悔しいのか … 基本、泣きっぱなし。

安部ちゃんは、謝りっぱなし >

「誓います!」


春子に向かって誓う大吉。

「安部ちゃんでしょ! 向こう向こう!」

< この町の人じゃない、鈴鹿さん、太巻さん夫妻も、何だかうれしそう …

一方、パパとママと夏ばっぱは、どんな顔していいか分からないようです >


照れくさそうに、夏を見た春子。

少し戸惑い気味の笑顔を返した夏。

… … … … …

「それでは、誓いの口づけを … 」

「ない、ない、ないよ!」


勉さん神父は言いましたが、春子が頑として拒否したため、カットされました。

「じゃあ、指輪の … 」

用意されたのは、琥珀の指輪です。

またも、手元が狂って落としたりなんだり …

それでも、何とかかんとか … 指輪の交換も無事に終えて、幸せそうな6人です。

< 取りあえず、おめでとうしか … 言えねえ! >

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2013年09月25日 (水) | 編集 |
第153話

2012年6月30日。

「は~い、私は今日、岩手県北三陸市に来ています!」

朝のワイドショー、北三陸駅からの生中継、女性アナウンサーが軽快な調子でレポートしています。

「春子さん、北三陸だって!」

出勤の支度をしながら、正宗は春子に声を掛けました。

しかし、春子はまだ寝ているのか、返事も何も返ってきません

「 … 北三陸リアス線が、いよいよ明日7月1日に運行を再開します ~ 」

駅舎に集まった人々から歓声と拍手が起こりました。

「それに合わせまして、様々なイベントが開催されます。

こちら市長の足立功さん … 」


功に続いて、駅長の大吉を紹介する女子アナ。

「更に、ご当地アイドルの … 」

「潮騒のメモリーズです!」


ユイとアキが決めのポーズを取ると、一段と大きな歓声が上がりました。

そんな様子が映るテレビを横目で見ながら、正宗は不安な気持ちにかられていました。

春子の姿がどの部屋にも見当たらないのです。

「さあ、そして、本日は前夜祭としまして、なんと北三陸市に縁のある女優、鈴鹿ひろ美さんがチャリティーコンサートを開くそうです」

正宗は、ふと思い立って、壁に貼られてある案内状を確認しました。

6月30日 … 今日は、太巻とひろ美に加えて、急遽、大吉と小百合の結婚披露宴も海女カフェで行われることになっていました。

一応、欠席という返事はしてあるのですが …

嫌な予感がした正宗は、取るものも取りあえずマンションを飛び出して行きました。

… … … … …

< 鈴鹿ひろ美チャリティーリサイタル、開演まであと1時間 >

海女カフェにやって来たアキ、準備が整ったホールを見て目を見張りました。

「すごい … 何かちゃんとしている」

スタッフと一緒に椅子を並べていたユイが笑って答えました。

「ふふふ … うん、何かちゃんとしちゃってる」

ステージでは、バックを演奏するバンドがリハーサルを行っています。

太巻から贈られた最新の音響設備のおかげでクリアなサウンドがホールに響いています。

「鈴鹿さんは?」

「楽屋にこもってる」


その方向を指差すユイ。

「 … 大丈夫かな?」

< 実は3日前、アキは親友のユイにだけ、真相を打ち明けていました >


… … … … …

アキと水口の口から真相を知ったユイは驚いて声を上げました。

「え ~ 何それ、マジで?!」

そんなユイをアキは落ち着かせて椅子に座らせました。

「だって、それじゃあ … 春子さん、鈴鹿ひろ美の影武者じゃん」

「落ち武者」

頭を振るアキ。

「落ち武者じゃん … 」

ユイが言い直すと、アキは納得してうなずきました。

違う違う。

「 … 影武者じゃん!」

携帯プレーヤーを取り出して、鈴鹿ひろ美の『潮騒のメモリー』をかけて改めて納得するユイ。

「春子さんだ … 春子さんの声だもんね、うわ ~ 」

「つまり、あと3日で鈴鹿さんの音痴を直さないといけない」

「音痴なの?」

「音痴だ … それに始末が悪いのは、本人にその自覚がほとんどない。

だから、音痴って言うと、落ち込む」

「あら、面倒くさっ」

水口はアキに確認しました。

「でも、大分マシになってるんだよね?」

「うん … ママの話では、たまに当たるって」

「たまに当たる?」

< そうなんです … 10回に1回、いやもっと低い確率で、たまに音程が合うことがあり >

しかし、本人はずっと合っているつもりなので、いい時とダメな時、その違いが分かっていないのでした。

… … … … …

アキと水口が楽屋を覗くと、当のひろ美は、『潮騒のメモリー』の歌詞を見ながら悩んでいました。

「『三途の川のマーメイド』のところ」

「そんなのいいから練習してよ」


思わず口にしたアキ。

『寄せては 返す 波のように』は、夏に言われて、そのまま歌うことにしたのですが …

「まあ、確かにな、『三途の川』はな … 」

眉をしかめるかつ枝。

「んだら、『三度の飯よりマーメイド』は?」

「『三段腹のマーメイド』は?」


小百合と美寿々。

「『三枝のアイラブクリニック』は?」

… 水口、ホントにそれでいいのか?

「せめて、マーメイドは残しませんか?」

ヒロシの提案。

「ちょっと、どうでもいいけど、あと30分で開演ですよ!」

「じぇじぇじぇっ?!」


ユイに言われて、一同、ひろ美を残して慌てて楽屋から出て行きました。

… … … … …

< さすがに根強い人気を誇る鈴鹿さん … アイドル時代からのファンはもちろん、家族連れやお年寄りなど、幅広い層のファンが訪れました。

まだ、仮設住宅にお住いの皆さんには、特別招待席が用意されました >


あの男 … ヒビキ一郎も当然駆けつけています。

「いや ~ 2009年の海女ソニは熱かったわ ~ 」

一角を陣取ったオタクさんたちから上がる歓声、拍手。

入り口近くに太巻の顔も見えます。

「いいんですか? … 今更、遅いか … 」

水口の顔を見返しながら太巻は言いました。

「いつでも逃げられるように、ここにいるんだ。

… 安心しろ、最悪の事態を回避するために、『影武者』が向かっている」


そう言ってコードレスのマイクを取り出しました。

… … … … …

「ねえ、ばっぱ、祖父ちゃんは?」

忠兵衛の姿が見当たりません。

「どっかにいるはずだがな ~ 」

辺りを見回す夏。

「まあ、いいか … そこ座ってけろ」

… … … … …

忠兵衛は、まだ自宅にいました。

仏壇に向かって手を合わせて、夏のパソコンに映る家族写真を見て微笑んでいます。

誰かが走ってくる足音 …

「こんにちは!」

玄関から入って来たのは、正宗でした。

「あれ、お義父さん?!」

「おお、ちょうどいがった … 正宗君、宮古まで送ってけろじゃ」


そう言った忠兵衛の傍らには旅支度がしてあります。

「 … 春子さんは?」

「春子? … 東京だべ?」

「いや、東京から来たんです。

急にいなくなったんです!」

「そうか … なら、ほれ、あれだ … 海女カフェ?」


そう言いながら身支度を整える忠兵衛。

「えっ、お義父さんは何処行くんです?」

「何処って、おめえ … また漁さ出るのよ」


当然のように忠兵衛。

「 … 何で、今日?」

「今日、船が出るからよ!」


… … … … …

海女カフェ。

開演を今か今かと待ちわびる観客 …

カンカン帽に白いスーツを着た組合長がステージに現れました。

拍手 …

「もっと、大きく拍手 ~ 」

拍手、歓声 …

「高い所から、失礼します。

ご存じ、北三陸市漁業協同組合の長内です … 当、海女カフェのオーナーです」

「いいの? 来ないの? 組合長の挨拶始まっちゃったよ!」


焦って電話をかけている太巻。

「男のスピーチとおなごのスカートは、短いほどいいと言います。

… 以上です!」


拍手 …

「終わっちゃったよ、挨拶終わっちゃったよ!

いいの? リサイタル始まっちゃうよ ~ 」


開始のブザーが鳴りました。

… … … … …

「鈴鹿ひろ美が北三陸にいる ~ 」

花道の舞台に上がった磯野の音頭で鈴鹿コールが始まりました。

「鈴鹿コール、始まっちゃったよ … 」

ステージ袖に控える、着物姿のひろ美。

女優の時と違って、緊張しているのが伝わってきます。

「大丈夫です … なるようになるから」

ユイに言葉を掛けられて、ひろ美はうなずきました。

「んだ、なるようにしか、なんねえから」

同じことでも、身もふたもないようなアキの言い方、ひろ美はアキを軽く叩きました。

ユイが真相を知ってから、3日間 … 夜、スタッフが帰った海女カフェで、ふたりに協力してもらって、ヴォイストレーニングを続けていたのです。

「ありがとう … 行って来るね」

… … … … …

「聞こえないんだけど! えっ?」

海女カフェにようやく到着した春子。

「春ちゃん?!」

出迎えたのは大吉でした。

「ちょうどいがった、ファックスでも報告したが、おらと安部ちゃん … 」

今はそれどころではありません。

春子は、ホールの入り口のカーテンをまくり上げました。

ステージで観客席に向かって頭を下げるひろ美。

袖から見ているアキは春子に気づきました。

しかし、その姿は …

「じぇっ?!」

アキの目に映ったのは、若かりし頃の春子でした。

「マイク頂戴!」

「春ちゃん、マイク!」


太巻の元に駆けよる春子、その手からマイクを受け取るとステージに向かって走る。

「どいてどいてどいて!」

「春ちゃん、電池!!」


春子が手にしたマイクから電池が飛び出して、太巻の眉間に命中しました。

「あいたっ!」

ひっくり返る太巻。

ステージ袖に駆け込んだ春子、何とか間に合いました。

春子に気づいたひろ美。

… … … … …

その時、『潮騒のメモリー』のイントロが流れ出しました。

歌い出す春子。

♪来てよ その火を 飛び越えて 砂に書いた …

しかし、電池が入っていないマイクではその声は会場には届きません。

万事休す …

ひろ美は微笑むと、落ち着いてマイクに向かいました。

♪アイ ミス ユー

… 奇跡が起こりました。

♪北へ帰るの 誰にも会わずに 低気圧に乗って 北へ向かうわ

完璧な音程でした。

ステージ袖でひろ美の歌に聴き入るアキとユイ、そして春子。

♪潮騒のメモリー 17才は寄せては返す 波のように激しく ~

「さすが、プロだな」

「紛れもねぐ、鈴鹿ひろ美だ」


かつ枝と美寿々の言葉通り、海女カフェにいるすべての人がひろ美の歌に心を打たれていました。

「すごいね … 」

「んだ、大当たりだ」


うなずき合ったユイとアキ。

『逃げるのもう嫌なんです … 下手でもいい、不完全でもいい、自分の声で歌って、笑顔を届けたい!』

『私の声がレコードになるんですか? … 鈴鹿ひろ美の名前で?』

アキは見ました。

反対のステージ袖で満面の笑みをたたえる若き春子を、その目に光る涙を …

< その少女の姿は、それっきりもう見えなくなりました … >

… … … … …

一番を歌い終わったひろ美は、今一度春子の顔を見て、そしてスタンドからマイクを外して、花道を歩き始めました。

静まり返っていた観客席から、一斉に拍手と歓声が起こりました。

♪ … 来てよ その火を 飛び越えて 夜空に書いた アイム ソーリー

感極まり、ひろ美を見つめる太巻。

♪来てよ その川 乗り越えて ~

三代前から マーメイド 親譲りの マーメイド …

「なんつった今?」

かつ枝に尋ねた美寿々。

「『三代前からマーメイド』だと … 夏ばっぱのことだべ?」

それを聞いて微笑む夏。

「あの野郎、さては最初から決めてたな」

♪ … 好きよ 嫌いよ …

「なすて、あんたが泣いてるの?」

「すいません … 」


いつの間にか大泣していた太巻。

「拭けほら、涙で顔がテッカテカだぞ」

… … … … …

ひろ美は見事に歌い切りました。

割れんばかりの拍手、喝采 …

ステージ袖の春子と微笑みを交わす、ひろ美。

そして、長い長いひろ美の闘いが幕を閉じたのです。

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2013年09月24日 (火) | 編集 |
第152話

袖が浜を見下ろす丘の上の監視小屋、ひろ美はひとり海を眺めていました。

「寄せては返す波のように 来てよその火を飛び越えて … 」

つぶやいたのは、『潮騒のメモリー』の一節。

コンサートで歌うに当たって、ひろ美は少し気になっていることがあったのです。

… … … … …

< 突然、送りつけられた招待状。

一方、北三陸では、鈴鹿ひろ美のリサイタルを目前に控え、『海女カフェ』が何とな~く完成しました >

「いいですか? キリないから、これで完成ということで」


作業を続けている皆にヒロシは声を掛けました。

ディスプレイされた琥珀を熱心にチェックしている勉さんにアキは尋ねました。

「ファイナル勉さん?」

「あ、ちょ、ちょっと、待ってて … 」


勉さんは、飾ってある琥珀の向きを直して、満足そうに笑いながら言いました。

「ファイナル勉さん!」

「 … はい、お疲れ様でした」


拍手 …

… … … … …

< その頃、場末のスナックでは、なんとな~く悪いウワサが … >

「怪しいと思うんですよね ~ 」


連れだって、梨明日に入ってきた吉田夫妻、しほりが首をひねりながら吉田に話しています。

「いやいや、考え過ぎだって!」

「だけど、海女カフェも完成したのに、練習する気配さえない … 」

「うん? なになに、何の話?」


ふたりの会話に首を突っ込んだ保。

「うちのこれが、鈴鹿ひろ美はホントに歌、歌えんのかって」

驚いて、思わず手が滑って、磨いていた琥珀を落とした水口。

「それどういうこと?」

「ふつかほど前、駅でばったり会ったんです」


… … … … …

しほりは娘のさおりをベビーカーに乗せていました。

「さおりちゃん、『だんご3兄弟』好き?」

「好きだよね ~ 大好きなんです」

「ちょっと、歌っちゃおう」

手拍子を取って、ひろ美は歌い出しました。

… 顔色が変わるしほり。

「そのメロディーが、何ともいえない不穏で、不快な旋律で … 今にも魔界の門が開き、そこから聞こえる死霊のうめき声のような …

死霊の『だんご3兄弟』なんです!」


今までご機嫌だった、さおりは泣き出す始末、しほりは慌ててその場から逃げ出したのでした。

… … … … …

「えっ、要するに音痴ってこと?」

ユイがしほりに聞き返しました。

「いやいやいやいや、歌っこ上手いよ、鈴鹿さんは」

「んだんだ、昔は歌番組とか出てたもんね」


当時を知る、保と吉田が否定しました。

… 影武者がいたとは知らず。

「栗原ちゃんは、リアルタイムで聴いたことねえから分からないんだよ」

… … … … …

< その頃、当の鈴鹿ひろ美は … チャリティーコンサートの準備も大詰め >

天野家の居間で、当日の曲順を考えていました。

「老眼ですか?」

お茶を運んできた夏が、眼鏡をかけているひろ美を見て言いました。

「ははは、そうなんです … もう、手放せなくて」

笑い合ったふたり。

「春子とひとつ違いでしたっけ?」

「早生まれなんで、学年だとふたつ上です」


ひろ美は、思い切って夏に『気になっている』ことを尋ねました。

「ねえ、お母さん、これ、どうしたもんかしら?」

「何が?」


夏に見せたのは『潮騒のメモリー』の歌詞カードでした。

何か所か赤鉛筆でアンダーラインが引いてあります。

寄せては 返す 波のように

「こちらの皆さんが聴いたら、津波を連想するんじゃないかしら?」

不安そうな顔をして聞きました。

「するね … それが、何か問題でも?」

「あっ、ほら、ここも!」


三途の川の マーメイド

「ひっどい歌詞 … 」

「ああ、そこ変えるんなら、ここも変えねばなんねえな ~ 」


夏が指差したのは、『17才』でした。

「 … 『47才』にせねばなんねえな ~ 」

ひろ美は口の中で言い換えてみて … 吹き出しました。

「いやだあ、語呂が悪い ~ 」

夏もひと笑いした後、ひろ美に言いました。

「歌っても歌わなくても、津波のことは頭を離れませんから … どうぞ、お構いねぐ」

「え?」

「それよりも、有名な大女優さんが、わざわざこんな田舎さ来て、目の前で歌ってくれる …

ああ、それだけで皆、大喜びでがす」


深く頭を下げました。

ひろ美も同じように下げ返しました。

「春子は東京さ、出てったが、あんたのようにアイドルにはなれねがった …

でも、めんこい孫連れて帰って来た。

いや ~ おらの人生、大逆転だ ははは」


そんな風に笑う夏を見て、ひろ美の良心が痛みました。

「ねえ、お母さん … ちょっと、聞いて」

夏にすべてを話そう …

「春子さんが … 」

その時、急に玄関から賑やかな一団が入って来ました。

… … … … …

忠兵衛とアキ、長内夫妻、それに大吉でした。

「往生際が悪いぞ、大吉! 男ならビシッとケジメつけろ!」

なんだか、かつ枝に叱られている大吉。

「夏さん、1本つけてけろじゃ!」

「はいはいはい」


夏は台所へ行きながら、ひろ美の顔を見ました。

「何か言いました?」

「 … 私、やります」


ひろ美は笑顔でそう言うと、夏に代わって台所へ向かいました。

それを見た忠兵衛。

「あららら、今日は女優のお酌で飲めるど!」

「居候ですから ~ 」


… … … … …

「夏ばっぱ、夏ばっぱ、大吉がついに覚悟を決めた!」

「えっ?」


かつ枝が興奮気味に言いましたが、夏には何のことか分かりません。

「明日、ほれっ、北鉄の試運転があるべ?

… 無事で済んだら、プロポーズするってよ!」


組合長が発表しました。

「誰の?」

「誰のって、おめえ … 安部ちゃんしかいねえべ!」


忠兵衛に言われて驚く夏。

「じぇじぇじぇっ」

1升瓶を抱えてきたひろ美が夏以上に驚いています。

「じぇじぇじぇって程のことじゃねえぞ」

「んだんだ、元々夫婦だからな」


割と冷静な長内夫妻。

「でも、随分昔の話よね?」

「22年前」

「 … 別れたのは?」

「それも、22年前」

「半年で別れたんだど、鈴鹿さん … 2クールだな」


酒をお燗するための竹筒を差し出しながら、アキが言いました。

大笑いする一同。

「大吉、ホントにいいのか?」

夏は大吉の顔をまじまじと見つめました。

「試運転の後、話があるからリアスさ来てけろって伝えた!」

「ほら見ろ! プロポーズしたのも同然だべ?!」


… … … … …

翌日。

北鉄の車庫、アキが何やらゴソゴソとやっています。

「あ、駅長 … 車両点検、終了しました」

試運転のためにやって来た大吉を待ちかねたように迎える吉田。

「試運転、お願いします」

「うん」


指差し確認しながら、車両の裏に回ろうとした大吉を吉田は慌てて止めました。

「こっちは問題ねえですから、どうぞ乗ってけろ」

その声を聞いて、隠れるアキ。

吉田に促されて、大吉は運転席に乗り込みました。

… … … … …

「揺れはどう?」

状態を確認しながら電車を走らせる大吉。

所々で、沿線の人々が集まって、電車が近づくと手を振っています。

中には何故か電車を指差して笑う人も …

窓から顔を出して、時には手を振ってそれに応える大吉。

… … … … …

リアス。

大吉と待ち合わせた小百合が店に入って来ました。

「あら、アキちゃん?」

珍しくアキがひとりきりで店番です。

「何だべ? 今日に限って随分ヒマだね」

客が誰ひとりいない店内を見て小百合は言いました。

「安部ちゃん、コーヒーでいいか?」

「うん」


… … … … …

時間は昨夜へと遡ります …

「いいのか? 大吉、あせってねえか? … 春子が正宗さんと再婚して」

くどい程、念を押す夏。

「いや、そりゃまあ、関係ねえとは言い切れねえが … 

若え頃、若気の至りでくっついて別れたが、お互い知らねえ仲じゃねえし …

今更、歳も世代も違う『ゴーストバスターズ』も知らねえ若い娘っこと所帯持つなんて、面倒臭え」

「それは、さすがに安部ちゃんに失礼じゃないかしら?」

ひろ美がムッとして言いました。

「 … だよね」

あっさりと認めた大吉。

「でも、偽らざる気持ちなんだよね ~ 」

… … … … …

「おら、いいと思う!」

「アキ?」

「震災婚だの、授かり婚だの、何かと理由がねえとくっつかないのが大人だべ?

だったら『面倒臭え』婚も、立派な理由だど思う」

思わぬアキの助言。

「何より、大吉っつあんと安部ちゃん … すっげえお似合いだど思う!」

「さすがアキだ、いいこと言うな ~ 」

忠兵衛がアキの頭を撫でました。

「どうなんだ、大吉?

安部ちゃんのこと、好きか?」

夏が尋ねると、一同の視線が大吉に集中しました。

「うっ、う ~ ん」

「悩んじゃダメよ! スッと言わなきゃ!」

また、ひろ美に叱られました。

… … … … …

「好きでねがったら、こったらに悩まねえべ … 好きだから、幸せになってもらいてえがら、悩むんです。

元夫婦間の友情を壊したくねえんです。

春ちゃんも好きだ、鈴鹿さんも … でも、おらやっぱり、安部ちゃんなんです。

まめぶと一緒です。

甘えのか、辛えのかも分かんねえのに、だんだん好きになってしまった … 理由なんて忘れちまった」

… … … … …

「吉田君、見ろよ! 皆の笑顔 … まだ試運転だっつうのに、こんなに温かく迎えられるとはな」

沿線に集まってくる人々は一向に絶えることはありません。

電車に向かって手を振る人、一緒に走る人、写真を撮る人 …

「本当ですね、駅長」

何かを隠しているような、空々しい吉田の返事。

「いや、鈴木のばっぱ … 笑い過ぎでねえか?」

… … … … …

「決めた!

試運転終わったら、『再婚してけろ』って言うべ!」

「ホントにいいのか?」

最後にもう一度、夏は問いただしました。

「い、い … 言えんのか?」

… 大丈夫なのか、大吉?

… … … … …

試運転を終えた電車が北三陸駅に戻って来ました。

「じぇじぇじぇ、安部ちゃん、あれ見て!」

窓からそれを見ていたアキが、どこかワザとらしく小百合を呼びました。

「なになに?」

アキが指差す方を見た小百合。

ホームに入ってきた電車を見て、驚き … 店を飛び出して行きました。

改札口で立ち尽くす小百合。

「大吉っつあん … 」

『安部ちゃん オラど 結婚してけろ! 大吉』

電車の車体に大きな文字で書いてありました。

そんなことには気づかずに電車を下りてくる大吉、ネクタイを締め直しました。

… … … … …

「いがったな、安部ちゃん」

アキは小百合の背中から声を掛けました。

「アキちゃん、ありがとう!」

小百合は振り向いて両手でアキの手を握りました。

はっとして、手を引っ込めたアキ。

「えっ?」

「 … 何でもねえ、へへ」


ペンキのついた手を隠したのです。

大吉が走って来るのを見て、ふたりは急いでリアスに戻りました。

… … … … …

「安部ちゃん … 」

「はいっ」


店に駆け込んで来た大吉は窓際のテーブル席に腰かけている小百合の正面に座りました。

「落ち着いて、よ~く聞いてけろ …

おらと、おらともう一度 … って、何処見てんだ?」


チラチラと落ち着かない小百合の視線の先を追った大吉。

だあっ! ~ じぇじぇじぇっ!!

電車の横に書かれた文字に今初めて気づきました。

… この電車で試運転して来たことを知り、愕然とする大吉。

立ち上がった小百合。

「こちらこそ、よろしくお願いします … 大吉さん」

大吉も立ち上がりました。

「大吉さん!」

大吉の胸に飛び込んで来る小百合。

しかし、大吉は寸でのところで止めると、カウンターの中でガッツポーズをとっているアキに向かって大声で尋ねました。

「ちょっと、誰? あれ書いたの誰?!」

… … … … …

アキの手についたペンキが誰が犯人か物語っていました。

そんなことには構わず、クラッカーを取り出して鳴らたアキ。

「おめでとう ~ !!」

それを合図にパーテーションが開いて、奥からお馴染みの顔ぶれが勢ぞろいして現れました。

『おめでとう!大吉 安部ちゃん』の横断幕、そして、紙吹雪、歓声 …

「ちょっと、もう ~ 鈴鹿さん! 夏ばっぱ!」

「おめでとう!」

「よぐ言った、大吉 ~ 」


大吉の肩に手を置いてうなずく忠兵衛。

「まだ言ってねえよ! 言わせてよ!!」

ヒロシが大吉に花束を渡しました。

「ほれほれ、今しゃべったらいいべ!」

同じように花束を持った小百合と向い合せにされました。

「あのあのあの … 安部ちゃん、お、お、おらど、もう一度 … 最 … 」

大吉の顔を覗きこむ小百合。

「だめだ、言えねえ! やっぱ言えねえ!!」

カウンターに突っ伏してしまいました。

その隣に座る小百合、言葉などなくても通じています。

うれし泣き … 涙、涙 … 笑顔、笑顔、笑顔。

< 取りあえず、おめでとうしか言えねえ … >

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2013年09月23日 (月) | 編集 |
第151話

「じぇっ、鈴鹿さんが?!」

「はあ?! 何で鈴鹿さんが実家にいんのよ?」

< 何故、私とアキがこんなに慌てているのか? … 簡単にご説明いたしましょう。

突然、北三陸でチャリティーリサイタルを開くと言い出した鈴鹿ひろ美。

しかし、彼女は … >


「ずっと、コンプレックスだった … 移ろいやすい音程を私なりに克服したい」

つまり、音痴。

< そう、この事実を知る者は … >

春子、アキ、正宗、水口、そして鈴鹿ひろ美本人とその夫の太巻の6人だけ。

< そして、夫の太巻さんは北三陸に向かったのです > 

… … … … …

北三陸についた太巻は、東京の正宗に電話で確認しました。

「ええ、軽食喫茶リアスとスナック梨明日、ふたつあるんだけど、どっちのリアス?」

ちょうど、喫茶リアスの方の出入り口から出て来たユイが看板をしまい始めました。

その容貌にしばし見惚れる太巻。

「 … ごめん、今ボーっとしてた … 」

「だから、入り口は別々だけど、中は一緒なんです。

あっ、この時間だと、ちょうどスナック開店の頃かな?」

… … … … …

太巻は、正宗に言われた通り、スナック梨明日の方の入り口に回りました。

その時、また偶然にドアが開いて、ユイが梨明日の看板を出してきました。

太巻に気づくユイ。

太巻もその女性がユイだということに気がつきました。

「やっと会えたね … 」

… … … … …

< あこがれの人の登場に胸騒ぎを隠せない、『潮騒のメモリーズ』の可愛い方 …

その緊張は、訛っている方にも伝わりました >

「だ、大丈夫か?」


アキが声を掛けましたが、黙ってうつむいたままのユイです。

「困るよ、勝手にどっか行っちゃ … 心配するでしょ?」

カウンターのひろ美の隣の席に腰かけながら太巻は困った顔をして言いました。

「ごめんなさい … 」

「本当だよ。で、どうしたの?」


春子が怖い、春子のレッスンが厳しすぎるからだと言い訳するひろ美。

「それは、あれでしょ … 君のことを心配しての『愛のムチ』でしょ?」

しかし、ひろ美にはそうは思えなかったのです。

「 … なんか、うっぷんを晴らしてるんじゃないかしら?」

「どういう意味よ?」

「あの ~ すみません。

大きい声でしゃべるか、ボックス席に移動してしゃべるかして … 気になるから」


カウンターの隅でこそこそ話しているふたりに大吉が口を挟みました。

「あ、ごめんなさい … 挨拶が遅れました」

立ち上がった太巻。

「んだね、挨拶まだだね」

「ついでに言うと注文もまだだな」


弥生に言われて、太巻は赤ワインと生ハムを注文しました。

「荒巻と申します … 家内がご迷惑をおかけしております」

「いやいや、私ここの駅長の … 」

「うっぷんを晴らすってどういう意味よ?」


大吉の挨拶など聞かずにひろ美との話に戻りました。

< 敏腕プロデューサーと大女優、世間を騒がした大物カップルは、場末のスナックで浮きまくっていました >

「あれっ?」


アキはユイの姿が見当たらないことに気づいて、店の外へ出て行きました。

… … … … …

「実は、春子さんが彼女のヴォイストレーニングを担当しておりまして … その指導方法がいささかスパルタすぎると … 」

太巻が一同に経緯を説明し始めると、ひろ美が横から尋ねました。

「スケバンだったですって、あの方 … そうでしょ?」

「そりゃ、おめえ … 春子は北三陸の初代『積み木崩す』だもの」

< ちょっと、やめてよ、弥生さん! >

「コーヒー牛乳買って来いって言われて、カフェオレ買って来た男子がぶっ飛ばされたんですよ」

「あ、それ俺だ … 『甘さが足りねえ』って言われて、殴られて、前歯が飛んだの」

< 菅原君も安部ちゃんも、思い出さなくていいから >

「優しい一面もあったべ ~ いじめてる小学生、助けたり」

< そうそう >

「カバンつぶして、中さ鉄板入れて、武器にしてましたもんね」

< 吉田、あんた学年全然違うじゃん! >

「懐かしいなあ ~ 天野春子、最強伝説」


遠い目をした保。

「県内最大規模の暴走族グループ、解散に追い込んだの春子さんだって聞きましたよ」

最初は面白そうに聞いていたひろ美ですが、だんだんエスカレートしていく話に怯え始めました。

「袖が浜に渡り鳥が来なぐなったのも、春子さんのせいだって聞きますもんね ~ 」

「優しい一面だってあるって、子犬拾ってきて可愛がったり … 」

< そうそうそう >

「駅長さん、やけに片持つじゃない?」

「まあ、春子は俺に惚れてたからな ~ 」


そう言って、ウーロン茶のロックを口に含みました。

< 大吉さん … >

「ああ見えて、積極的な女でね … 猛烈にアタックされました」


本人がいないと思って、好き勝手言う大吉。

「 … どうでもいいお話の途中、申し訳ありません。

可愛い方の子は?」


ユイがいないことに気づいた太巻。

「 … 私?」

お約束の弥生。

「ユイちゃんなら、随分前に出て行きましたよ」

「 … 水口?!」


そう言ったのが水口だと知り、驚く太巻。

「えっ、今気づいたんですか?」

隣に座っていた勉さんが目を丸くしています。

それだけ、水口がすでに皆に溶け込んでいるということかもしれません …

… … … … …

「なんで?

なんでGMTとかさ、鈴鹿ひろ美とか、なんで急に来んの? … 太巻さんまで … なんで?」


ユイは駅舎のトイレに逃げ込んで、中から鍵をかけて出てきません。

少し混乱しているようです。

トイレの前で黙ってユイの話を聞いているアキ。

「なんで、わざわざこんなド田舎の終わっている過疎の町に … 今まで誰も見向きもしなかったくせに、なんで急に来んの?

ねえ、地震があったから?」

「 … ユイちゃんがいるからだよ」


水口でした。

「皆、君に会いたいんだよ。

『潮騒のメモリーズ』の可愛い方に … 」


水口の言葉にうなずくアキ。

「訛ってる方もうなずいてるよ」

「んだんだ … ほら、ユイちゃんが去年、言ってた通りになったべ?」


『よし、決めた!

私こうなったら、ここから一歩も出ない … 東京なんか行かない!

私に会いたければ、皆北三陸に来ればいいんだもん、ねっ?』

「 … これから電車が通って、海女カフェも作って、もっと来るぞ!

なあ、せっかく会いに来たんだから、出ておいでよ … なあ?」

「ユイちゃん ~ 太巻です。」


ついに太巻の登場です。

「どうして、トイレにこもっているのかな?

お腹が痛いのかな?

キリキリ痛いのかな?

それとも、シクシク痛いの … 」


ドアが開いて、ユイが出てきました。

「 … 痛くないです」

「あっそ … 改めまして、太巻です」


ユイは頭を下げ終わると太巻に言いました。

「私、東京へは行きません」

「えっ?」

「ここでやって行きます、アキちゃんと、水口さんと一緒に … 『潮騒のメモリーズ』」で!」


アキの手を握るユイ。

さっきのドア越しの話で何か大切なことを思い出したようです。

「でも、君もう20歳だろ?

いつまでも、ご当地アイドルじゃ先見えないし … 東京に出るには、今がラストチャンスじゃないかな?」

「東京も北三陸も、私に言わせれば、日本なんで … お構いねぐ」


そう言うと、また頭を下げました。

「もうね、ずっとやって行きます!

私たち、おばあちゃんになっても、ずっと『潮騒のメモリーズ』です!」


決めポーズを取ったユイ、アキも慌ててポーズを取りました。

「それは …

かっこいいねっ」


にやりと笑った太巻でした。

… … … … …

一方、盛り上っている店の中。

大吉と保がひろ美にマイクを渡しました。

快く受け取ったひろ美。

『潮騒のメモリー』のイントロが流れ出しました。

歓声を浴びて、ステージに上がるひろ美。

しかし、間一髪、飛び込んで来たアキが、またひろ美を突き飛ばして、マイクを奪い取りました。

「ダメだって!

… 油断もスキもねえなあ ~ 」

「すみません … 」


アキはひろ美の代わりに歌って誤魔化しました。

… … … … …

駅舎に残った太巻と水口。

「 … 多少、歌えるようになってるんですよね? 鈴鹿さん」

「う~ん、春子さんに任せっぱなしで、俺もずっと聴いていない … でも、元があれだからな」


絶対音感のある水口がのた打ち回るほどの歌 …

「いいんじゃねえかな ~ 人前で下手な歌うたって、恥かいてさ、殻破れるなら … それだけでも、あの人に取っちゃ、大躍進だよ」

「変わりましたもんね、鈴鹿さん。

鈴鹿さんの付き人になれば、アキちゃんも少しは成長するかなって、思ったんですけど …

むしろ、鈴鹿さんの方が影響受けちゃうっていう」

「お前もだろう? 水口」


苦笑いするふたり。

「仕事もそこそこ順調だったのに、こんな田舎で琥珀掘って … 面白いか?」

「 … これ見てください」


水口はポケットから、ひとかけらの琥珀を取り出して太巻に手渡しました。

その琥珀の中には、アリが閉じ込められていました。

「琥珀って、8,500万年前の樹液が固まってできてるんです」

… 8,500万年前のアリでした。

「俺が掘り当てたんです。

これ見てると、真ん中のアリがユイちゃんで、その周りを固める樹液が田舎の地元意識なんじゃないかって …

アキちゃんみたいに、日の目を見ることはなかったけど、地元意識に守られて、ユイちゃんの魅力は永遠に色あせないっていう … 」

「水口 … 」


顔を見合したふたり。

「ごめん ~ 全然、ワカンナイ!」

「でしょうね … 俺も自分で言ってて、違うなって思いました」


突然、思い出したように膝を叩いた水口。

「海女カフェ、行きましょう!」

… … … … …

水口は、太巻とひろ美を連れて、海女カフェを訪れました。

ヒロシや種市、磯野たちが修復作業を続けています。

「あ、どうも … ご無沙汰してます」

「おお、寿司屋の … 」

「わ ~ ちょっと、芸能人来るなら言ってよ!!

恥ずかしい、こんなポロシャツで! もっといいポロシャツ持ってるのにぃ ~ 」


大騒ぎする磯野のことは関せず、太巻はフロアを見渡して言いました。

「これ全部、天野が?」

「天野が作ったやつが津波で流されて、それを皆で修復しています」

「業者に発注する予算がなくて、あっ、すみません … オープンまでには何とか … 」


太巻は説明するヒロシの相手をせずにひろ美に聞きました。

「ここで歌うんだ?」

「ここで歌うんです」


そう答えたひろ美。

「まずいな … 」

水口の方を振り返って、そう言いました。

「 … まずいですよね」

「すいません … 精一杯、がんばってるんですけど、如何せん素人仕事で」

「だろうね … 」


申し訳なさそうに話すヒロシにバッサリと太巻。

「これは、プロには到底マネできない … 雑なのに『愛』がある」

「すみません」

「いや、ストーブさん、今褒められてるんですよ」


種市に言われて、戸惑うヒロシ。

「僕が上野で劇場作る時に目指したのが … これだ」

太巻は、ヒロシと種市の顔を見て言いました。

「えっ、こんな掘っ建て小屋が?」

思わず口走った水口。

「 … 褒められてないじゃん?!」

… … … … …

「正直、さっきまでいくらか寄付しようかと思っていた。

売名行為じゃないよ。

鈴鹿ひろ美の初リサイタルだ … それに相応しい会場を作るのは、プロデューサーとして、当然の出費だ」

「金出すって言ってるぞ」


種市にささやく磯野。

太巻は花道に上がりました。

「でも違った … これでいい、これがいい!

お金かけたら、ちゃんとしちゃう … この絶妙なバランスが崩れちゃう」

「 … 金出さねえって、言ってますね」

「どっちなんだ?」


太巻は花道を通って、ステージに上がりました。

そして、おもむろにダンスを始めました

「踊り出しましたね」

「 … バカなのか?」


呆気に取られて見守る一同。

ステップを踏んで、くるっと回転して決めのポーズ、それを見て微笑むひろ美。

「プロでもない、素人でもない、アマチュアのなせる業 … まさにアマカフェだ」

ステージの下でうなずく水口。

「鈴鹿さんのおかげですよ」

種市にそう言われて、ひろ美は意外そうな顔をしました。

「ずっと、後回しになってたんです、ここ

… 皆、半分あきらめてたし」


そんな話を始めたのは美寿々でした。

「だって、いらねえし、こんな田舎にカフェ … ずっと、浮いてたし、壊して元の漁協にすんべって。

だけど、アキちゃんが … 」


『海女カフェ、復活させっぺ!

ここさ、もう1回、海女カフェ作るべ … 』

「海女カフェ建てて、ユイちゃんやアキちゃんが歌って、地元を元気にするんだって …

それが、今おらに出来ることだって言うの」

「そしたら、鈴鹿ひろ美が歌いに来るよって話になって、慌ててリフォームしたんです」


種市は説明しました。

「皆、すっげえ楽しみにしてます … よろしくお願いします!」

ヒロシがひろ美の手を両手で握りました。

満面の笑みのひろ美。

「まずいな … 」

「 … まずいですよね?」


太巻と水口。

「いいの? ホント、大丈夫?」

太巻に聞かれてひろ美は、しっかりとうなずいてステージに上がりました。

「ここで歌うの … それが、おらに出来ることなの」

「そっか … じゃあ、がんばって。

僕、帰るから」

「えっ、東京にですか?」

「僕も … 僕に出来ることやるよ」


そう言って、海女カフェを後にしました。

… … … … …

< 後日、海女カフェには、最新の音響設備が導入され … 関係者各位には、このようなファックスが届きました >

スリーJプロダクションにも届いた、そのファックスを見て春子は我が目を疑いました。

「はあ?!」

< … 結婚披露宴? >

「はあ? 何これ??」


『結婚披露宴のお知らせ

荒巻太一&鈴鹿ひろ美

日時 6月30日(土)

於・海女カフェ(北三陸市)

18時00分(受付17時より) … 』

< 確かにそれは、太巻さんにしか出来ないことだけど … >

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2013年09月22日 (日) | 編集 |
さて、次週の「あまちゃん」は …

じぇじぇじぇ ~

鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)が本当は音痴なのではないかという噂が北三陸に渦巻く中、ついにチャリティコンサートの日がやってきた。

春子(小泉今日子)による地獄の特訓の甲斐もなく、鈴鹿は音痴を克服できていなかった。東京から会場に駆けつけ、鈴鹿の代わりにステージの影で歌おうとする春子。しかしマイクの電源が入らない。絶体絶命のピンチに、鈴鹿は自分自身の声で「潮騒のメモリー」を歌い出す。

春子さんが歌ったんですよね?

かつて鈴鹿の替え玉としてこの曲を歌っていた春子は、過去の記憶と複雑な思いがよみがえる。そして、会場に鈴鹿の歌声が響き渡る…。

超サプライズだ!

コンサートが終わった後、鈴鹿と太巻(古田新太)、大吉(杉本哲太)と安部(片桐はいり)、そして春子と正宗(尾美としのり)の合同結婚式が行われ、その席で夏(宮本信子)が重大な発表をする。

2012年7月1日。北鉄は被災した一部区間が復旧、北三陸駅は1984年の開通式の際のような熱気に包まれていた。一方、袖ヶ浜では、海開きが行われて過去最高の人出に。

出発 ~ !

その後、お座敷列車に乗り込むアキ(能年玲奈)とユイ(橋本愛)。北鉄の車内で2人が初めて出会ってから3年。2人は思いを込めて「潮騒のメモリー」を歌う。

じぇじぇじぇ ~
あまちゃん 公式サイト、YAHOO!テレビガイド他を参照)

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2013年09月21日 (土) | 編集 |
第150話

吉田が忠兵衛から取り上げたウニ丼を美味しそうに頬ばるひろ美。

「すずが、すろみ、女優の … 」

吉田は荒い息遣いで、そう口にしました。

「女優?」

怪訝な顔をする忠兵衛。

「美味しい ~ 」

満足そうな顔をしているひろ美に吉田は確認しました。

「 … ですよね?」

うなずきながら箸が止まらないひろ美です。

< なんの前触れもなく、鈴鹿ひろ美が北三陸に現れました >

「ニヤニヤしてねえで、返せおらのウニ丼!」


取り返そうとする忠兵衛を思いっきり引き離した吉田。

… … … … …

「じぇっ、鈴鹿さんが?!」

海から上がって、髪を乾かしていたアキの元に吉田から電話で連絡が入りました。

「そうなの、今ちょうどウニ丼完食して … 忠兵衛さんの方は冷酒で黙らせた」

「黙ってねえど、このウニ丼泥棒! 何が女優だ!」


悪態をつかれても、ひろ美は涼しい顔でお茶をすすっています。

そこへ、大吉、種市、保の3人が店に入って来てカウンター席に着きました。

「ウーロン茶、ロック!

… じぇじぇじぇっ、鈴鹿さん?」


思わず立ち上がる3人。

「あっ、種市君、駅長さん … 誰かしら?」

ひろ美は初対面の保に尋ねました。

「観光協会の菅原です … ファンです、大ファンです」

「またまた … ジャガー横田のファンだったくせに!」

「おう、帰って来たぞ、大吉」


忠兵衛は誰も気づいてくれないので、自分の方から大吉の肩を叩きました。

「あ、忠兵衛さん、ちょっと待ってね」

後回しにされました。

「遠いところをわざわざ … 」

「いいえ ~ 」

「こっちのが遠いぞ、2年ぶりだぞ!」


せっかく帰って来たというのに、面白くありません。

「でも、あれですよね … リサイタル、30日ですよね?」

今日はまだ6月18日です。

「来てくれたのは、うれしいんですけど … 言っていいですか?

早すぎ ~ 」


保がそう言うと、ひろ美は笑いながら答えました。

「本番に向けて、気持ち作りたいから … 前乗り」

… … … … …

「天野さんは?」

「アキちゃん、今こっちさ向かってます」

「あんた、アキ知ってんのか?」


ひろ美に尋ねた忠兵衛。

「ええ、まあ、付き人だったんです … 昔」

そう言われて、改めてまじまじとひろ美の顔を見た忠兵衛が、指差しながら立ち上がりました。

「おめでた弁護士?!

おめえ、さては女優か ~ 」

「だから、なんべんも言ったでしょ?」


あきれる吉田。

「 … おばあちゃまもよく知ってますよ」

「おばあちゃま?」

「ふふふ、夏さんと橋幸夫さんの仲を取り持ったのも私です」


忠兵衛が夏の亭主だとは知らないひろ美が余計なことを口走りました。

大吉と種市が慌てて誤魔化そうとしました … すでに遅かりし。

… … … … …

天野家では、いつもの顔ぶれが集まって、ひろ美と忠兵衛の歓迎会が始まりました。

しかし、へそを曲げている忠兵衛は、ひとり離れて座っています。

リアスでの話を聞いて大笑いする一同。

「笑いごとじゃねえべ!

… 亭主の留守中にだど、しかも橋幸夫? ~

今すぐ出て行け!」

「ああ? おらが出てったら、この家ほとんど空き家だぞ?」

「こら1本取られたな! 忠兵衛さん」


組合長に言われて、すごすごと引き下がって行く忠兵衛でした。

… … … … …

「夏さん、皆さん、お変わりなくて安心しました」

ひろ美は改まって、皆の無事を喜びました。

「周りが変わりましたからね ~ ここら辺りでも何人かは死んでしまったし、こいつらの家も流されたし」

うなずく長内夫妻。

「でも、せめて無事だった奴らだけでも、変わらず笑ってるべえって … 」

深刻な顔で聞いていたひろ美ですが、夏だけでなく長内夫妻までが笑っているのを見て、精一杯の笑顔を作りました。

「祖父ちゃん、地震あったのに、なすて帰って来ねがった?」

アキは、ずっと気になっていたことを忠兵衛に尋ねました。

「なすて帰えんねばなんねえ?」

忠兵衛の答えは素っ気ないものでした。

「夏ばっぱ、心配でねがったか?」

同じように思っていたのか、かつ枝も尋ねました。

「無線で確認できたべ ~ 」

当の夏はそう言いましたが、かつ枝は少し不満な顔をしています。

「陸が大変な時に、陸さ上がってどうする?

むしろ、海さ出たおらたちがよ … 海で銭こ稼いで、陸の連中さ助けねばなんねえべ ~

だから、帰って来ねがった」

「かっけえ … 」


忠兵衛の話に感動したひろ美がそう口にすると、帰って来てからはじめて忠兵衛の頬が緩みました。

… … … … …

「あ、ユイちゃん?!」

玄関の戸を少し開けて、ユイが覗いていました。

「ユイちゃん、おらの親友で、一緒に『潮騒のメモリー』歌ってた子だ」

迎えに出たアキがひろ美にユイを紹介しました。

皆は上がるようにユイに勧めましたが、遠慮して中々上がってきません。

… … … … …

「はあっ?! 何で鈴鹿さんが実家にいんのよ?」

アキから電話を受けた春子 … 驚いているということは、ひろ美はやはり無断で北三陸へ向かったようです。

「 … 前乗り? 前過ぎるでしょうが!!」

「それ、散々聞いてる … 今、なんかユイちゃんと熱く語り合ってるよ」


… … … … …

「 … いや、おめでた弁護士シリーズもパート5までは、よかったですけどね。

助手が柳沢慎吾さんに代わってから、数字は上がりましたけど、コアなファンは離れたじゃないですか?

… ひかる一平さんの方がよかったですね ~ 」

「やっぱり? … そうなのよ」


ディープな会話で意気投合しているようです。

… … … … …

「 … という訳で、鈴鹿さん、うちにいますんで、ご心配ねぐ。

以上、北三陸から、天野アキがお送りしました ~ 」

「あんた、酔っぱらってんの?!

アキ、アキ!!」


しかし、すでに電話は切れていました。

イスに腰を下ろした春子、ため息をついてひとこと。

「またひとり、飛べない鳥が、北三陸に逃げて行った … 」

… … … … …

歓迎会もお開き … すでに皆、寝静まった天野家。

「天野さん ~ 起きてる?」

アキを探して、ひろ美が2階へ上がって来ました。

「加湿器があったら、出していただける?」

薄暗い上に勝手が分からない、ひろ美 … よろけた拍子にアキの部屋のドアを押してしまって、中へ転がり込みました。

「痛っ … 」

顔を上げたひろ美、部屋の様子を見て目を見張りました。

「やだ、やだやだ、懐かしったら、ありゃしない」

< でしょうね … だって、その部屋は1984年で時間が止まっているんですもの >


立ち上がって、部屋中を見渡すひろ美 … 1枚のLPレコードを手に取りました。

「 … ひかる一平!」

懐かしそうに見つめています。

「ああ、鈴鹿さん?」

ひろ美は目を覚ましたアキに尋ねました。

「何なの? この部屋」

「ママが高3の夏まで使ってた部屋だ。

アイドルを夢見て、そこで履歴書書いたり、音楽聴いてキュンキュンしてたんだと」


ひろ美は、その机の上のスタンドを点けました。

「おらも高3の夏まで使ってたんだ」

「天野さんも?」

「んだ、ママとガールズトークしたり、ユイちゃんと将来の夢語り合ったり、アイドルさあこがれたり、懐かしい …

こういう部屋で見た夢を鈴鹿さんみたく叶えられる人って、ひと握りなんだよな ~ 」


アキは自分もそのひとりだということをスッカリ忘れているようです。

ひろ美は机の上に置いてあった、アキが海女カフェから拾ってきた『潮騒のメモリー』のCDジャケットを手にしていました。

… … … … …

写真館でわざわざ撮ったポートレイトを履歴書に同封する春子。

「岩手県から来ました … 趣味はアイドル鑑賞で、テレビを見ることです。

好きなアイドルは、松田聖子ちゃんです」

頭の中で思い浮かべる、オーディションを受けている自分のこと。

「 … あなたの色に染めてください。天野春子、18歳」

ベッドに倒れ込む春子。

「かあ ~ これ、合格、合格!」

… そんな一部始終を見続けてきた部屋 …

… … … … …

「 … ねえ、明日からこの部屋使っていいかしら?」

ひろ美は、ふいにアキに聞きました。

「じぇっ、鈴鹿さんが?」

「うん … 気持ち作るには持って来いだわ」


なんだかワクワクしているように見えます。

「いいけど、狭いでしょ? ホテルさでも泊まったら?」

「いいの、ここでいいの!」


ベッドに座り込んだひろ美。

「 … ううん、ここがいいの!」

… … … … …

次の朝。

アキが居間に下りると、パジャマ姿の忠兵衛と夏が困ったような顔をして台所を眺めていました。

何だかモーターが回転するような音がずっとしています … それは、アキが思い出したくない音でもありました。

「ご飯は?」

アキが尋ねると、ふたりは台所を指差しました。

「おはよう、天野さん!」

バッチリ身支度を整えたひろ美が台所に立っています。

あの音はやはり、ひろ美のジューサーミキサーの音でした。

忠兵衛と夏は、早朝から聞こえ始めたこの音で起こされたのです。

「出た! 鈴鹿スペシャル … 」

「そうよ ~ 鈴鹿のいるところに、鈴鹿スペシャルありよ」


恐る恐るひろ美に声を掛けた夏。

「鈴鹿さん、おら、67年間、朝はご飯と … 」

「その習慣、今日から変えましょう ~ ほいっ!」


鈴鹿スペシャルをなみなみ注いだコップを夏に渡しました。

「 … 飲まなきゃダメか?」

「声出るから ~ ほいっ!」


アキにも同じように渡しました。

「あんた、魔女なのか?」

「いいから、ほいっ!」


渋々受け取った忠兵衛。

「ほいっほいっ!」

顔を見合わした3人は、観念して … 鈴鹿スペシャルを一気に飲み干しました。

う”わ” ~ ~ ~

… … … … …

< 朝食の後、アキと鈴鹿さんは、会場の下見に行きました >

「わっ、鈴鹿ひろ美!」


心の準備なく、ひろ美の姿を見たヒロシは思わず声を上げてしまいました。

「この人、ストーブさん、観光協会の海女カフェ担当で、ユイちゃんのお兄ちゃん」

「足立です … 当日は舞台監督的なことをさせていただきます」


アキに紹介されてヒロシは緊張しながら挨拶しました。

「勉さん、水口さん今日来てねえの?」

「ああ、さっきまでそこでペンキ … 」


ペンキ塗りに夢中になっていて気づいていなかった勉さん、ひろ美を見て直立不動になりました。

「す、鈴鹿、ひ、ひろ美!!」

笑って会釈した拍子に、ひろ美は身を屈めて水槽越しに様子を窺がっていた水口と目が合いました。

「あ … ご、ご無沙汰してます」

「何してんの? こんなとこで … 」

「あれ、あれあれ?」

「 … バックれて、すいませんでした!」


頭を下げた水口を放っておいて、ひろ美はステージに上がりました。

「水口君、円満退社じゃなかったのか?」

問いただした勉さん。

「いや、なんか、面倒くさくて … あ、メールはしました」

… ダメじゃん、水口。

ステージに立ったひろ美はフロアを見渡しながら言いました。

「売り上げは、地域復興に役立ててください」

「はいっ」


… … … … …

リアス。

ひろ美を囲んで盛り上がっています。

「こいつなんかね、春ちゃんと交換日記してたんですから!」

保の春子がらみの過去を暴露する大吉。

「あらまあ」

「読みます? これ貸出自由ですから」


吉田が棚から取り出してひろ美に手渡しました。

「やめてよ ~ ああ、読まれでまう ~

先輩も人のこと言えねえべ、春子さんに何回も告白して、何回も振られて」

「あはははは … 最終的に何だか分かんねくなって、安部ちゃんと結婚して」


カウンター内の小百合がうなずきました。

「安部ちゃんも同級生なんですよね」

「同級生たって、春子さんは学園のマドンナで、私なんか給食のスパゲッティミートソースの中に何故か迷い込んだ輪ゴムですもの … 」


一同、大笑い。

… … … … …

「 … でも、あれねえ ~ 天野家は昔からずっと話題の中心だったのね」

春子と保の交換日記をめくりながら、ひろ美がしみじみと言いました。

「そりゃそうだべ、夏ばっぱは海女クラブの初代会長で、春ちゃんは北三陸一のスケバンだもの」

大吉は、北の海女のパネルを取ってひろ美に見せました。

「その娘のアキちゃんは『潮騒のメモリーズ』だもんね」

ポーズを取りながら、そう付け加えたのは勉さんです。

「三者三様だけど、代々北三陸のアイドルだったんですね ~ 」

… … … … …

「どれ、北三陸名物、駅長の『ゴーストバスターズ』聞いてください」

大吉がマイクとリモコンを持つと、皆からブーイングの声が上がりました。

「鈴鹿さんのカラオケも聴きたいな ~ なんてね」

「吉田君、それはいくら何でも図々しいべ?」


また始まった吉田と保の猿芝居 … ひろ美を見る一同。

「 … 構いませんよ」

「本当ですか?!」

「リサイタルの予行練習も兼ねて!」


ひろ美は積極的にステージに上がりました。

流れ出す『潮騒のメモリー』のイントロ。

「来た ~ 生きててよかった!!」

「本物だ!!」


ひろ美が歌い出そうとしたその時、もの凄い勢いで飛び込んできたアキがマイクを奪いました。

「きゃっ!!」

「 … 危ねえ、ダメだべ!」


ひろ美をにらみつけたアキ。

「ごめんなさい … あ、そうか」

すごすごとステージを下りるひろ美。

「何やってるんだ?! 水口さんもいながら!」

怒りが収まらないアキ。

「 … あっ、そうか … ごめん」

… ダメじゃん、水口。

キツネにつままれたような顔の一同。

… … … … …

「もしもし、正宗君? ハイハイ、今着きました北三陸駅です」

駅舎に入ってきたのは、太巻です。

「 … ハイハイ、リアスね?」

辺りを見回す太巻。

「ええ、軽食喫茶リアスとスナック梨明日、ふたつあるんだけど、どっちのリアス?」

タブレットで確認しながら電話の向こうの正宗に尋ねました。

「 … 中で繋がってる? 意味わかんない」

ちょうど、喫茶リアスの方の出入り口からユイが出てきて、看板をしまい始めました。

その容貌にしばし見惚れる太巻。

「 … ごめん、今ボーっとしてた … うん、何何?」

その場を立ち去る太巻。

リアスのドアが開いて、顔を出したユイ。

今、ここにいた人、見おぼえがある顔 … 確か …

辺りを見渡しましたが、すでに太巻の姿はありませんでした。

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2013年09月20日 (金) | 編集 |
第149話

天野家の朝。

< 2012年3月、あの日から1年が経ちました >

いつものように仏壇に手を合わせるアキ。

「あれっ?」

「何だ、アキ? 朝ご飯だぞ」

「祖父ちゃんっていつから帰って来てねえ?

なあなあ、ばっぱ、震災の後、帰って来た? … 来てねえべ?

遺影は? … ねえべ!

どういうこと?!」


夏が答えるスキがないほど、矢継ぎ早に聞いてくるアキ。

「うるせえな ~ もう!」

「 … 帰ってくんのか?

なあ、ばっぱ、遺影がねえってことは、祖父ちゃん近々帰ってくんのか?」

「あ ~ もう、うるせうるせうるせ!」

「 … 或いは、まさか、祖父ちゃん?」


アキは勝手に良からぬことを想像して、顔を強張らせました。

「心配すんな、忠兵衛さんは元気だ!」

… … … … …

夏はアキに仏壇の引き出しを開けて見せました。

そこに入っていたのは … 

「パソコン?」

< 夏さんの病気と震災を経て、忠兵衛さんと夏さんは、ネット電話で繋がっていました >


夏がパソコンを開けて電源を入れると、ディスプレイに忠兵衛の顔が写りました。

「よう、夏さん … ボアノイチ、ボアノイチ、ポルトガルは今、まだ夜中だ ~ 」

画面に向かってキスをする忠兵衛、その様子を微笑みながら見ている夏。

まさか、夏がこんな風にパソコンを使っているとは思ってもみなかったアキは目を丸くしました。

「な、なんで?」

「 … わいふぁい?」


… … … … …

< 2012年春、北鉄は北三陸~袖が浜間を往復運転しつつ、7月1日からの本格的な運転再開に向け、点検作業も大詰めです >

「だから、ネズミの絵描かねえでよ!」


車体をチェックしていた吉田が目の色を変えて怒りました。

以前にも同じようなことがありましたが、誰かが勝手に超有名ネズミのキャラにそっくりの絵を車体の横に描いてしまったのです。

「子供は喜ぶけど、大人は胃が痛くなるんだから!」

… … … … …

< 一方、6月30日オープン予定の『海女カフェ』は、遅々として進まず … >

ヒロシの働きかけに応えた有志や海女クラブのメンバー自らの手で瓦礫を撤去、きれいに掃除して片づいた海女カフェ跡に夏やアキ、関係者が集まっています。

< 漁協のかつ枝さんが計算してるのは、『海女カフェ』再建に掛かる費用の見積もり、つまり支出。

栗原さんが計算してるのは、『海女カフェ』再建をサポートする企業の協賛金、一般からの寄付金、つまり収入 >


ものすごい形相で電卓を叩いている、かつ枝としほり。

「できました ~ 」

「こっちも出ました ~ 」


保がふたりの電卓の画面を見比べました。

支出は、11,285,000円、収入は、9,174,403円です。

「はい、かつ枝さんの勝ち ~

さすが、眼鏡会計ばばあ … 栗原ちゃん、足元にも及ばない」


保の判定では、かつ枝の勝ちでしたが …

「お前、勝ってどうするんだよ?」

組合長が言った通り、支出が収入を上回っているということは、再建費用が足りないということでした。

「どこか切り詰めねえと、海開き間に合わねえど」

「分がってる … 」


夏の言葉にアキはうなずきました。

「でも、天下の鈴鹿ひろ美が来るのに、まさかビールケースの上で歌わせる訳にはいかねえべ」

保の言うことも十分承知しています。

「しゃあねえ、水槽あきらめんべ」

「だったら、魚もあきらめんべ」

「ドイツ製のシステムキッチンもあきらめんべ」

「エスプレッソマシーンもあきらめんべ」


皆の声を聴いて、ヒロシが完成予定図から、あきらめた物に×をつけて行きました。

「おやおや、まだまだ切り詰められそうですよ ~ 」

見積書を見直していたしほりが、結構必要以上に豪華なものも載っていることに気づきました。

「フロアの面積を半分に、メニューはまめぶと乾きもの中心、照明はミラーボール … 」

「これでどうだ、眼鏡会計ばばあ?」


ヒロシから出た案をつきつけたアキ、今一度試算するかつ枝。

「何とか予算内には収まるが … これじゃ、梨明日で歌うのと大差ねえべ」

落胆の声が一同から上がりました。

… … … … …

♪来てよ その火を 飛び越えて ~

そのリアスで熱唱している弥生、一緒に店番をしているユイが気持ちが入っていないタンバリンを鳴らしています。

その時、駅務室で電話をしていた大吉は、見知らぬ挙動不審の男が駅舎に入って来たのを目にしました。

深く帽子をかぶって、サメの絵柄のついたリュックを背負ったその男、コソコソとリアスの中を覗いています。

電話を切り上げた大吉はその男にそっと近づいて首根っこを押さえました。

「ぎょえ!」

… … … … …

「まず最低限の設備で開業して、海女さんたちの実演で黒字が出たら買い足しませんか?」

「口で言うのは簡単だけど、出るか? 黒字」


ふたたびヒロシが出した案も不安がありました。

「去年、瓦礫撤去したけど … 結局、ウニは戻ってこなかったもんな」

< そう … 以前、アキが潜った時には、ウニはほとんどいませんでした >

「去年、放流したウニが卵産んで、ちゃんと育ってくれればいいが … こればっかしは、潜ってみねえと分かんねえど」

「そうなのか?」


アキが聞き返すと夏はうなずきました。

「津波で一遍流されるたら、元に戻るには通常3~4年かかる」

「じぇじぇっ!」


組合長の言葉に驚くアキ。

「悪いが … 今年は無理、期待できねえな」

見通しは決して明るくないということです。

… … … … …

「アキちゃん、アキちゃん、ちょっといい?」

吉田がアキに声をかけました。

大吉から電話があり … 不審者を捕まえたらしいのです。

「不審者??」

身を乗り出す一同。

「はい、怪しい男がウロウロしてっから、声掛けてとっ捕まえたら、アキちゃんの知り合いだって言うんだと」

「おらの? … 名前は? 歳はなんぼぐらい?」

「それが、何を聞いても『ぎょぎょ』ってしか言わねんだと」

「じぇじぇじぇっ!」


… … … … …

アキたちが北三陸駅にかけつけると、その男は駅務室でイスに縛りつけられていました。

「さかなちゃん?」

「さかな先輩?」

「おさかな野郎?」

「サカナクション?」


好き勝手な名前で呼ぶ一同。

「どこ? 人面魚!」

リアスから飛び出して来たユイ。

「 … 惜しいけど、全部違います」

ヒロシがその男の帽子を脱がせると、その下にもまだ帽子をかぶっていました。

見覚えのあるさかなの帽子のその人。

「さかなクン!」

「正解でギョざいます!」

「じぇじぇ ~ 」


慌てて、縄をほどく大吉。

「駅長が失礼しました。

… っていうか、ご無沙汰してます」

「ギョ無沙汰してます、アキちゃん」

「えっ、何でまた北三陸に?」

「はい、アキちゃんどうしてるかなと思って、ネットで検索したら、こちらの観光協会のホームページにたどり着いたんです」


それは、ヒロシが撮影してアップした『潮騒のメモリーズからのお知らせ』と題した動画でした。

… … … … …

「じぇじぇ、訛りすぎる海女のアキです」

「ミス北鉄、足立ユイです」

「せ~の、潮騒のメモリーズ Z(ゼット)!!」


体全体を使ってZを表現したアキとユイ。

「今日は私たちの思い出の場所、『海女カフェ』に来ています」

「2009年夏にオープンした『海女カフェ』ですが、昨年の津波で被害を受け、未だ再建のメドが立っておりません」


ユイが手にしたのは、アキが浜で拾った復興応援のノボリでした。

「震災前は、ここさきれいな水槽が並んでいて、珍しい魚や珍しくねえ魚がたくさん泳いでたんです」

ふたりはステージに上がって、『潮騒のメモリーズ』の看板の前に立ちました。

「7月1日の開業に向けて、私たちも精一杯頑張りますので、皆さんもどんどん北三陸さ来てけろ!」

「北鉄も畑野まで走るど ~ 」


… … … … …

「 … そこで、自分にも何かできることはないかなと考えて …

そうだ!さかなクンのコレクションを寄贈しようと思ったんです」

「さかなクン、コレクション?」

「はい、さかなクンの水槽と珍しいお魚をプレゼントしようと思って!」

「じぇじぇじぇっ!」


… … … … …

< 6月に入り、『海女カフェ』にさかなクンのコレクションが運び込まれました。

その頃には、『海女カフェ』の再建も着々と進んでいました。

予算が足りず、震災前の『海女カフェ』には、到底およびませんが … 手作り感あふれる、温かいお店になりそうです >


真っ白に塗られた壁には、子供たちが絵を自由に描きこんでいます。

「アキちゃんよかったね ~ 」

幾度となく北三陸まで足を運んで協力してくれたさかなクン。

「うん、完全に元通りじゃねえが … 『逆回転』成功だべ?」

アキが親指を立てると、飛び上がったさかなクン。

「ぎょぎょぎょ!」

「じぇじぇじぇっ!」


… … … … …

< 種市先輩、ストーブさん、勉さん、それにユイちゃん … 皆いろいろあったけど、今ここにいる。

そのことが、たまらなくうれしいアキでした >


皆、絵具だらけになりながら、楽しそうに絵を描いています。

子供たちの笑い声 …

「おらも描く!」

アキも絵筆を取ろうとした時、ウェットスーツを着た夏と美寿々が呼びに来ました。

「何してんだ? 早くいくぞ!」

「あっ、ごめんごめん、すぐ行く!」


… … … … …

同じ頃、長い旅から北三陸に帰ってきたひとりの男がリアスに顔を出していました。

天野忠兵衛その人です。

「帰って来たぞ ~ 」

店番の吉田に出迎えられて、忠兵衛は一番奥の席に落ち着きました。

そして、もうひとり … スーツケースを引いた女性がリアスを訪れました。

全身黒づくめ、黒い帽子にサングラスをした、その女性は手前の席に腰かけました。

「すいません、今日、『海女カフェ』に水槽と魚が入って、皆そっちさ行ってるんですよ」

せっかく忠兵衛が帰って来たのに、自分の他に誰もいない理由を申し訳なさそうに吉田が話ました。

「夏ちゃんもか?」

「夏さんは、浜です」

「ふん、なんだクソ面白くねえ」


吉田が女性に注文を聞くと、横から忠兵衛がウニ丼を注文しました。

「あっ、私も」

「 … 残念、最後の1個」


吉田はふたりの真ん中にひとつ残っていたウニ丼を置きました。

「ふふふふふ … 」

カウンターの端と端で見合った忠兵衛と女性。

突然に吉田!

「あ、最初はグー! じゃんけんぽんっ!」

… … … … …

袖が浜。

< 7月1日の海開きに先立って、いよいよ海女クラブがウニの繁殖具合を確かめることになりました >

ウェットスーツに着替えたアキ。

美寿々はすでに海に浸かっています。

「準備ができたら行くぞ、アキ!」

「はいっ!」

< この日の水温14℃ >

「しゃっこい!」


つま先を海につけたアキが足を引っ込めました。

「ちゃんと体慣らしてから潜るんだぞ」

石段の上から注意を与えた夏。

先ず美寿々が、そして大きく息を吸い込んだアキが海の中へ消えて行きました。

夏は心配そうに海を見つめています。

しばらくして、美寿々が海面に顔を出しました。

「どうだ?」

続いて、アキが勢いよく浮び上ってきました。

「美寿々、アキ、ウニいねえか?」

「ばっぱ、大変だ!」


浮きに捕まりながらアキは叫びました。

「ど、どうした?」

身を乗り出して不安そうに覗きこむ夏。

「ウニで岩が見えねえぐらいだ!」

そう叫んだアキは今取ってきたウニを高く掲げて見せました。

「じぇじぇじぇ ~ 」

「やった ~ 繁殖大成功だ、ばっぱ!」


美寿々の手にも黒々とした立派なウニが握られています。

手を叩いて喜ぶ夏。

その声を聞きつけて、浜にいた人たちが集まって来ました。

アキは、夏にめがけてウニを放りました。

… 初めて会った時、夏がそうしたように …

ウニを拾った夏は感嘆の声を上げました。

そして、両手で大事に持つと、目の高さまで掲げて、ウニに向かって恭しく頭を下げました。

… … … … …

アキはもう一度、海の中へ潜りました。

海底の岩の上は、至るところ、ウニで一杯です。

笑顔のアキ、指先でつまめるほどの稚ウニを見つけました。

< アキは、言葉を失いました … ま、どっちにしろ水中なので声は出ませんが … 

これで漁ができる、北鉄も走る、海女カフェも皆のおかげでオープンできる。

賑やかで楽しい、2012年の夏がやって来ました >


うれしさの余り、海中をまるでイルカのように泳ぎまわるアキ …

そして、ふたたび海面に顔を出すと、もう一度同じようにウニを高く掲げて叫びました。

「なんぼでも取れるど ~ !」

… … … … …

一方、リアスでは …

「あいこでしょ!」

まだ勝負がつかず、ジャンケンが続いていました。

「しょ!」

「あいこで … しょ!」


女性がパーを出すと、一瞬遅くチョキを出した忠兵衛。

「やった ~ おらの勝ちだ!」

「後出し、今の後出しです!」


女性はサングラスを外して、吉田に訴えました。

素顔を見て驚愕する吉田 … 目の前にいる女性は、女優の鈴鹿ひろ美でした。

「 … 考えられない!」

「うるせえっ!

おら、このひと口を楽しむために、7つの海を乗り越えて帰って来たんだからよ!」


今まさに箸をつけようとする忠兵衛から、吉田は無理やりウニ丼を奪い取って、ひろ美の前に置きました。

「何すんだ? このわらし!」

「す、す、すずが、すろみ … 」

「すずが、すりみ? … 何だそりゃ?」

「女優、すずかひろみ」


美味しそうにウニ丼を頬張るひろ美でした。

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2013年09月19日 (木) | 編集 |
第148話

「じぇっ?! … 吉田さん、何これ?」

吉田が駅舎の柱に貼っていたのは、『鈴鹿ひろ美 チャリティーコンサート』と書かれたポスターでした。

< 鈴鹿さんが、東北でチャリティーライブをやると言いだしました >

「 … 歌うのか?!」


なんと、春子自身がひろ美のヴォイストレーナーを買って出たのです。

… … … … …

現在の北三陸にはリサイタルを開けるような会場がないことを大吉は春子に電話で伝えました。

しかし、春子から思いもよらぬ場所の名前が出てきたのです。

「あ、海女カフェで?!」

「じぇじぇじぇっ?!」

「そうなの ~ 岩手、宮城、福島って回る予定なんだけど … その前にアキが作った海女カフェで歌いたいって、本人の希望なの …

でも、あれよね、地震でね … 」

「んだな ~ 流されちゃったもんな」


再建設の計画もあり、可能性はゼロではありませんが …

「ちなみに時期は、いつ頃を考えてる?」

「う~ん、鈴鹿さんは … 」


その時、大吉は突然、あることを思い出しました。

「その前に春ちゃん … 再婚、おめでとう」

「あ、ありがとう」


ふいをつかれて少し戸惑った声で答えた春子。

大吉は、海女カフェの担当者、ヒロシと電話を代わりました。

「あのね、震災からちょうど2年だし、鈴鹿さんは3月って言うんだけど … 」

「3月?!」


ヒロシもアキも大吉も、ぶったまげました。

いくらなんでも急すぎます。

「無理無理無理!」

「 … そう無理なの、こっちにしても準備が間に合わないの、それじゃ …

あ、アキに代わってくれる?」


… … … … …

ヒロシに代わって電話に出たアキに春子はいきなり言いました。

「あんたさ、『あのこと』くれぐれも皆には内緒だからね」

「ああ、言わねえ … 」


アキは電話機を持って駅務室の外に出ました。

「でも、どうすんの? またママが落武者になんの?」

「アキ、アキ、アキ!!」


春子は慌てて止めたので、アキも気づきました。

「ごめん!」

「 … 春ちゃんが、落武者?」


『影武者』と『落武者』を間違えるアキのクセで何とか事なきを得ました …

「影武者は、金輪際やらない!

そのために、今歌唱指導してるの … じぇじぇじぇでしょ?」


… … … … …

春子の前で歌うひろ美。

♪来てよ その火を飛び越えて ~

春子はひろ美の歌を止めて、手本をみせましたが、中々その通りにはできません。

「来てよ ~ だよ?

来てよ ~ 来てよ ~ 来てよだよ!」

何度も何度も繰り返し、思わず詰め寄って行く春子。

「優しく教えてください。

褒められて、伸びてきたんです、私 … 」

涙ぐむひろ美。

「今のとこ、褒めるとこ1個もないの!」

… … … … …

「 … 大変だな」

アキは春子の苦労が目に見えるようでした。

「そういう訳で、海女カフェの再会のメドが立ったら教えて」

… … … … …

観光協会に海女カフェ関係者が緊急招集されました。

「要するに、海女カフェば建直せば、鈴鹿ひろ美が来るってことか … 」

海女カフェの模型を手にした保。

吉田が言いました。

「そんな映画がありましたよね … それを作れば奴が来る」

「『フィールド・オブ・ドリームス』ですね」


妻のしほり。

「海女カフェ作れば、ひろ美が来る … 作るか菅原?」

大吉に問われた保。

「うん … 前はなんぼ掛かったっけ?」

「2,000万だ」

「無理無理無理 … 」


かつ枝から金額を聞いた一同、速攻で白旗を揚げました。

「ローンの未払いは災害保険でなんとかなるけども、新しく立て直すとなると … とてもとても」

首を横に振ったかつ枝。

「前みたいに立派なものじゃなくてもいいんです。

小さくてもステージがあって、音響設備があれば!」


何とか形だけでも再建にこぎつけたいヒロシですが、組合長はテーブルを叩きました。

「それどこじゃねえよ!

おらとこの住む家も、まだねえんだど!」


それを言われると、何も返せないヒロシでした。

「あきらめろ、海女カフェ担当、今は北鉄を宮古まで通すことが最優先だ」

「んだ、1に北鉄、2が市民ホール、3~4がジオラマでガールズバー … 海女カフェは5番だ」


保はヒロシの掌に海女カフェの模型を置きました。

「ジオラマは最後でいいべ!」

組合長が席を立つと、保に向かって声を荒げました。

… 危うく聞き流すところでした。

「んだんだ、ジオラマの中だけで復興しても虚しいだけだ!」

珍しくまともなことを言った吉田に、しほりがガールズバーの模型をつきつけました。

「ガールズバーって要りますか?」

「 … 要るよ」


… … … … …

海女カフェ担当として、仮事務所に来たヒロシの報告を聞いて、海女たちは憤りました。

「ふざけるな!

隙間風の入るプレハブで冬越そうとしてんだぞ!」

「んだんだ、海女カフェが最優先だ!」


怒りが収まらない美寿々と弥生がヒロシに食って掛かりました。

「だったら、皆さんで組合長、説得してくださいよ!」

「 … それはできねえ、おらとかつ枝さんの友情に亀裂が入るべ」


トーンダウンした弥生。

「確かに、かつ枝さんも仮設住宅さ入ったはいいもの、先の見通しは何も立ってねえものな」

かつ枝に同情した小百合、他の皆も気持ちは同じでした。

「北鉄はどうなってんだ? … 国の補助受けられるのか?」

夏が厳しい口調でヒロシに問いただしました。

しかし、ヒロシが答えられるような話ではありません。

「これで、廃線になったら、公約違反だべ!」

またも火がつく弥生。

「皆さん、すみません … 」

黙々とミサンガを編んでいたユイが声を掛けましたが、騒ぎが大きくて誰も気づきません。

「海女カフェができても、そこまでの足がなきゃ話になんねえ!」

すみません!


今度はさっきより大きな声を上げました。

ユイに注目する一同。

「 … 口じゃなくて、手動かしませんか?」

「ユイちゃん … 」

「これも大事な復興支援です。

1本につき100円、ねっ? … 大事にしてください」


ユイの正論に、海女たちは矛先を収めて作業に戻りました。

アキは少し驚いていました。

以前のユイだったら、こういう時は我関せずとして知らん顔していたはずだからです。

< 皆、目に見えてイライラしている … 殺伐としたムードが充満していました >

… … … … …

仮事務所からの帰り道、アキは改めて、港の周りを見渡してみました。

見た目には瓦礫は大分片付きましたが、その代り、作業していた人たちの姿も消えて、ほとんど人影もなく閑散としています。

< もうすぐ1年が経つのに、何ひとつ改善されない >

道端に破れた底引き網の山と一緒に汚れた復興応援のノボリが捨てられていました。

汚れたノボリを海水で洗うアキ。

顔を上げて海を見つめると、懐かしい思い出が浮かんできました。

< 活気にあふれた2009年の夏は、もう戻ってこない … >

自然とアキの足は海女カフェの跡に向いていました。

< きれいな水槽も、オープンデッキも、巨大モニターも、跡形もなく消えてしまった … >

… … … … …

「えっ?」

薄暗いステージ … だった場所に人影。

「 … 誰?」

若かりし頃の春子でした。

< 断っておきますが、これは幽霊じゃありません。

だって、私生きているし … >


… 当の春子は、ひろ美の歌唱指導に手を焼いている真っ最中でした。

< じゃあ、何故? どうして、若い頃の母の姿がアキには見えるの?

… 理由はよく分かりません >


ただ、最初の頃と比べて、アキはさほど驚かなくなっていました。

若春子はアキに向かって手招きしました。

ゆっくりと近づくアキ。

手に何か持っています … 泥だらけになった『潮騒のメモリー』のCDジャケットでした。

アキはジャケットを受け取って、それを見つめました。

… 一体、どういうメッセージなんでしょう?

気がつけば若春子の姿はなく、背後で何やら人が入って来る気配がします。

アキは咄嗟に身を隠していました。

… … … … …

物陰から様子を窺がっていると … 入って来たふたつの人影が床に落ちていた瓦礫をふたりがかりで運び始めました。

そこへ、もうひとつの人影が飛び込んでくるのが見えました。

「すいません、遅くなりました!」

ヒロシです。声で分かりました。

「いやいや、我々も今来たところですから」

「これ、持って行っちゃっていいよね?」


先に入って来ていたのは、水口と勉さんでした。

ふたりは、瓦礫を外へ運んで行きました。

「あ、種市君、そっち持って!」

後から種市まで入って来ました。

アキが隠れるのは止めて物陰から出ていくと、すぐに種市が気づきました。

「天野?」

「あっ、アキちゃん? … 何してんの?」

「ストーブさんは何してるんですか?」

「ああ、せめて再建のメドは立たないけど … 瓦礫の撤去と掃除ぐらいは自分たちでやっておこうと思って」

「業者に頼むと金掛るしな」


ヒロシが声を掛けると種市も水口と勉さんも快く手伝いに来てくれたのです。

「ユイの言う通り、口じゃなくて手動かさねえと … 」

少し照れたように笑ったヒロシ。

そう言って、ふたりは瓦礫を運び始めました。

駆け寄り、手を貸すアキ。

「あ、大丈夫?」

「軍手使え、ほら」

「ありがとう!」

< こうして、有志による清掃作業が自然発生的に始まりました >


それは、日を追うごとにひとりふたり増えて … 組合長を始め漁協関係者や海女クラブのメンバー、観光協会、青年部と有志の輪は広がって行きました。

… … … … …

「で、お腹に力入れて! 背筋伸ばして!」

春子の方も根気よく、ひろ美への歌唱指導を続けています。

懸命に春子の指導に従うひろ美 … 捗る捗らないは別として …

… … … … …

倒れたままになっていた『潮騒のメモリーズ』の看板、アキとユイの手で綺麗に汚れが落とされて … 今、男たちによってステージに立て掛けられました。

「ありがとうございました」

瓦礫が片付けられたホールの跡、ステージの上からヒロシは有志一同に向かって深く頭を下げました。

< 更によい報せが舞い込みました >

… … … … …

拍手に迎えられて市長の功は梨明日のステージに上がりました。

「え ~ 北三陸鉄道の復興計画が具体的となり、ここ北三陸から畑野の区間を7月1日の海開きの日から運行することが決定しました!」

用意したくす玉が割られて、紙吹雪が舞い散り、拍手と歓声、クラッカーも鳴りました。

「大吉君、北鉄を代表して、ひとこと」

功に促されてステージに上がった大吉。

「皆さん、ようやくこの日が来ました。

7月1日といえば、1984年に北鉄が開通したメモリアルデーです。

… 思えば、我が北鉄は震災の5日後から … 」


いろんな思いが込み上げてきて言葉に詰まる大吉。

「泣くな!」

弥生からの叱責。

「はい …

震災の5日後から、半ば強引に列車を走らせて、やれ税金泥棒だ、やれ赤字製造列車だと陰口を叩かれながら … 例え、例え、儲からなくても … 例え、線路の両脇が瓦礫の山でも … 変わらずに北鉄が走っている、相変わらず … 」


大吉は溢れる涙を拭いました。

「 … 5、6人しか乗ってねえのに走っている、その事実が、市民の心の支えになると信じて頑張ってきました」

「ううううう … 」


大吉を責めたはずの弥生の方が唇をかみしめて泣くのを我慢しています。

その声が大吉の耳まで届きました。

「弥生さんこそ泣くなあ!」

「泣いでねえ!!」

「んだら、おらも泣がねえ ~

全線が開通するその日まで、おら … 」

「泣けっ!」


美寿々の声をきっかけに声を上げて泣き出した大吉。

「大吉!!」

弥生は大きく手を広げて大吉を抱きしめました。

もらい泣きする人も …

弥生と抱き合って泣いている大吉に代わって、副駅長の吉田の音頭で乾杯!

… … … … …

「あらそう、よかったじゃない ~ 」

アキが報告のために実家に電話を入れると、留守の春子に代わってひろ美が出ました。

「じゃあ、鈴鹿もその日にしようかしら?」

「じぇっ? … その日は」


アキはユイが書いた予定表をめくりました。

その日は、『お座敷列車』で『潮騒のメモリーズ』完全復活の予定でした。

「だって、お祭りでしょ? いっぱい人来るでしょ?」

「だから、バタバタして、お構いできねえと思う」

「 … じゃあ、前夜祭にしましょう、30日」

「ナイス、土曜日!」


アキとひろ美の電話を横で聞いていた大吉が思わず声を上げました。

「だけど、ママに聞いてみねえと」

事情をすべて知っているだけに不安を隠せないアキ。

「社長には、私からそのように伝えておきますから」

ひろ美は春子がいないのをいいことに社長のイスに腰かけながら言いました。

「じゃあ、6月30日、海開きの前日で決定な?」

アキは渋々承諾しました。

「よしっ!」

早速、駅舎のポスターに開催日『6月30日』、会場『海女カフェ』と書きこむ大吉。

「よっしゃあ ~ 」

ひとりきりの事務所で自ら気合を入れるひろ美。

… 本当に大丈夫?

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2013年09月18日 (水) | 編集 |
第147話

2012年2月、北三陸市長選挙 …

< 北鉄の存続を掛けた市長選挙が始まりました >

かねてから表明してた通り、北鉄の再建と地元の復興を公約に掲げて、足立功は市長選に立候補しました。

「北鉄は市民の足、復興のシンボル!

2013年の全線の復旧を目指し、一致団結してやっていく所存でございます!」


選挙事務所に集まった支援者の前で力強く演説する功に拍手が起こりました。

「それでは、お待たせいたしました。

足立功のサポーター、『潮騒のメモリーズ』です!」


よしえのマイクに紹介され、お馴染みの衣装を来たアキとユイが登場すると、より一層大きな拍手と歓声が上がりました。

「海女のアキちゃんです」

「北鉄のユイちゃんです」

「せ~の … 『潮騒のメモリーズ』です!」


お互いが相方を紹介して、決めのポーズを取る … 変わらないスタイルです。

< 再結成した『潮騒のメモリーズ』が動き始めました >

… … … … …

『潮騒のメモリーズ』を従えて、漁協の仮事務所を訪れた功。

漁業関係者たちや海女クラブの面々の拍手に迎えられて、演説を始めました。

「 … 何でもかんでもね、自粛をすればいいというのじゃないんですよ!」

「んだんだ!」

「震災から間もなく1年です … 本当に復興は果たされていますか?

北鉄、北の海女、北三陸の誇り! 宝です!

重要な観光資源なんです!」


功のひと言ひと言に真剣なまなざしでうなずく、かつ枝や弥生たち。

「んだんだんだ ~ !」

そこでアキが拳を掲げて声を上げると、それに倣って皆も同じように声を上げました。

「んだんだんだ ~ !!」

「市民の側に立った復興を、皆さんと一緒に考えて行きます!」


拍手 ~

「どうかひとつ、この足立功に力を貸してください!」

突然、床に膝をついた功。

「おやじ?!」

ヒロシでさえ信じられない行動に出ました。

「お願いします!」

深く頭を下げて、今までこれだけは絶対にしなかった土下座をしたのです。

どよめく一同 … 反対に全員が土下座で返しました。

つられてアキとユイまでも …

< 土下座が功を奏したのか、『潮騒のメモリーズ』の効果か …

とにかく、足立先生は見事当選! 北三陸市長に選出されました >


… … … … …

梨明日で開かれた祝賀会。

万歳三唱の後、大吉は泣きながら功に言いました。

「いや、ホントにね ~ こんなに美味いウーロン茶飲んだの初めてですよ、先生!」

保、吉田と共に功の肩や手をマッサージしはじめました。

「はははは … 大吉君、菅原君、これからだよ。

まずはね、北鉄を1区間でも長く走れるようになっ」

「得意の土下座でお金回してもらわないとね」


一度やってしまったら、わだかまりがなくなったのか、功は抵抗なく土下座ができるようになっていました。

「先生、今でなくていい!」

「やめて下さい、先生!」


別の席に座っている客に向かって土下座をはじめて、大吉たちが慌てて止めています。

… … … … …

その様子を見ているユイとアキ。

「いがったな、ユイちゃん」

「いがったのかな? … だって、市長の娘でご当地アイドルなんて、無駄にセレブ感でちゃわない?」

「もともと、それ程親しみやすくねえがら、大丈夫だ」


歯に衣着せぬアキの言葉、でも的を得ていたので、ユイは笑ってうなずきました。

… … … … …

にぎやかな店から抜け出したヒロシ、ひとり駅舎のベンチに座って、手酌でビールを飲んでいました。

「ストーブさん?」

偶然出てきたアキ。

「 … どうした? そんな所で黄昏て?」

「いや、黄昏てはいない … 風に当たろうと思って」

「気をつけてください。

自分が思ってる3倍は、負のオーラ出てますからね」

「よく言われる … ふっ」


苦笑いしました。

「そんな顔して、ホーム立ってたら、誰が見ても飛び込むと思うからね!」

表現はどうであれ、心配してくれているのは分かりました。

「 … アキちゃん、今回は本当にありがとうね」

「いやいや、礼には及ばねえ、おら1票入れただけだもん」

「親父もだけど、それよりユイのこと … 」

「ああ、それこそ礼には及ばねえ、親友だもの!

それに、おらの最終目標は、海女カフェの復活だ … 肝心のユイちゃんが落ち込んでたら、海女カフェ建てても、しゃあねえがらな」


ヒロシは微笑んでいましたが、ふとアキの言ったひと言が気になって、聞き返しました。

「アキちゃん、選挙行ったの?」

「んだ、おらもう20歳だもの … 国民の義務だ」


そう言いながら、ビールまで飲んでいます。

「お、お酒飲んでる … 」

「まあな、形だけだ … へへへ」

「へえ ~ 」


アキはテーブルの上のビール瓶を取るとヒロシに向けました。

「あ、どうもどうも」

「まあまあまあ ~ 」


アキに酌してもらったコップを手にヒロシは尋ねました。

「そっか … 初めて北三陸来た時、いくつだっけ?」

「高2の夏だから、16だな」


そう言いながら、手酌しようとするアキ。

「ああっ、まあまあ ~ 」

お返ししようとヒロシは瓶をつかみました。

「まあまあ ~ 」

遠慮するアキと「まあまあ」の言い合い …

「 … って、何だか、おっさんみてえ」

顔を見合わせて大笑いのふたり。

… … … … …

「ストーブさん、おら変わったかな?」

駅舎には何枚も貼られてある自分の写真を見ながらアキが尋ねました。

「えっ?」

「16の時より、少しは大人になったかな?」

「いや」


そう答えてヒロシはビールをひと口飲みました。

「そうか … 」

「あっ、ごめん … でも、ウソついても仕方ないし。

アキちゃんは全然変わらないよ … それはでも、すごいことだと思うよ」


ヒロシの話を聞いているのか聞いていないのか、アキは写真を見ながらウロウロしています。

「 … 東京の子が田舎に来てさ、海女になって、東京行ってアイドルになって、映画に出て、また帰ってきて … それで、変わらないんだもの。

たいしたもんだよ!

普通いろいろあるって … いい気になったり、派手になったり、男できたり」

「男はできたよ!」


しっかり聞いていました。

「うん … でも、基本は変わらない、アキちゃんは」

「いがった」


アキはヒロシの顔を見てニッコリ笑いました。

「いがった?」

「うん、芸能界さいると … っていうか東京がそうなのかな?

成長しねえと、怠けてるみたいに言われるべ?」


窓を開けて夜風を入れました。

「でもな、成長しなきゃダメなのかって思うんだ。

人間だもん、放っておいても成長するべ?

背が伸びたり、太ったり痩せたり、おっぱいでかくなったりな … それでも変わらねえ、変わりだぐねえ部分もあると思うんだ。

あまちゃんだって言われるかも知んねえけど、それでもいい!

うん、プロちゃんにはなれねえし、なりだぐねえ!」


言葉もなく、うなずいたヒロシ … 遠い目をしました。

「何だよ? 黄昏て」

「いや … 『男ができたよ』のダメージが予想外に重くて … 」


今ごろになって効いてきたようです。

「変わんねえな、ストーブさんは!」

アキに背中を叩かれて、やや引きつった笑いを返しました。

「がんばっぺ、海女カフェ担当!」

グラスを突き出したアキ。

「うん、がんばっぺ!」

そのグラスに自分のグラスを合わせて鳴らしました。

そして、ビールを飲むふたり … アキは苦い顔をしてひと言。

「あ ~ 美味ぐねえ ~ 」

… … … … …

スリーJプロダクション。

テーブルの上に置かれたポスターの刷り上がり見本 …

『鈴鹿ひろ美 チャリティーリサイタル in 東北』

「勝手に進めたことは謝ります … だけど、もう決めたことですから」

誰に相談することもせずに、ひとりで勝手に引き受けてしまったのです。

「いやいやいやいや ~ 決めるのは社長の私ですから、あなたは一所属タレント」

春子は言い切りました。

「 … 『一』って、ひとりしかいないのにね」

ひろ美は隣に座っている太巻と一緒に笑いました。

「 … すいません、半分は私の責任です」

くすりとも笑わない春子を見て、謝罪した太巻。

「そこに貼らないで!」

春子は、チャリティーコンサートの刷り上がりを壁に貼ろうとしている正宗を注意しました。

「やっと見つけたんです … 私にできること。

私がやらなきゃいけないこと。

今までは女優として、役を介して、東北の皆さんに元気になってもらいたいと思ってきたけど …

もっと直接励ましたい … 生身の鈴鹿ひろ美の声をね、届けたいって」

「 … リサイタルということは、歌を歌われるということですよね?」


春子は、念のために聞きました。

「歌以外に表現方法あります?」

「ありますよ ~

朗読とか、ポエトリー・リーディングとか、あと … 詩吟とかねえ?」


太巻もうなずきました。

「むしろ、被災地の皆さんも喜ぶんじゃないですかね?

歌は、ほら、持ち歌は少ないし、ブランクもあるし … 」


春子が言葉を選んでいると、ひろ美の方から口にしました。

「音痴だし?」

… … … … …

♪来てよ その火を 飛び越えて … 砂に書いた アイ ミス ユー

その歌の音程はカラオケから大きく外れていました。

怪訝な顔をしている春子に太巻は言いました。

「そう … 彼女、音痴なんだ」

「 … こういう歌かと思いました」

「そうだよね、逆に誰もこんな風に歌えないよね」

… … … … …

「チャリティソングのイベント、断ったでしょ? 無断で。

… 傷つきました」


ひろ美は知っていました。

「 … すみません」

申し訳なさそうに、春子は素直に頭を下げました。

「僕はね、提案したんだよ … 最悪、春子さんが代わりに歌って」

太巻をにらみつけたひろ美。

「社長を責めている訳じゃないの。

ただ、あなたは自分が影武者だったことを告白して、スッキリしたかもしれないけど …

私はまだ渦中にいるんです。

闘ってるんです … 自分の『移ろいやすい音程』と」


上手いこと言い換えました。

「逃げるのは、もういやなんです!

下手でもいい、不完全でもいい、自分の声で歌って、笑顔を届けたい!

… ずっと、コンプレックスだった『移ろいやすい音程』を私なりに克服したい」


ひろ美の話に真剣に耳を傾けている春子。

『私はまだ渦中にいる』という言葉が気にかかっているのでしょうか …

「そう思って、去年の夏から、口の堅いヴォイストレーナーについて、レッスンしてるんです」

「そんなに前から?」


ひろ美は、にっこりとうなずいて立ち上がりました。

「今日は、その成果をお見せします」

「え”っ、鈴鹿さん歌うの?!」


一番に驚いたのは太巻でした。

「わっ、どうしよう?! 心の準備が … 」

慌てる正宗。

そんなことは構わずに、ひろ美は深呼吸しました。

「アカペラで?」

歌い始めるひろ美。

< 太巻さん、正宗さん、そして私 … 偶然、あの時の3人です。

あれから25年、人々が失いかけてる笑顔を歌で取り戻してほしい … 果たして、その思いは? >


… … … … …

「 … どうかしら?」

1曲、歌い切ったひろ美は3人に尋ねました … 期待を持って。

… しかし、何の反応も返ってきません。

どう答えればいいのか、分からないのです。

太巻は、ひろ美に微笑み返しました。

「ダメか … 」

がっくりと肩を落とすひろ美。

「ダメじゃないよ、全然ダメじゃないよ … うん、伝わるものはあったよ、ね、ねっ?」

「えっ、いや、ぼ、僕は素人なんで … 」


太巻に同意を求められた正宗は、愛想笑いで逃げました。

「ほ~ら、笑った ~ 笑顔を取り戻した。

確かに音程は移ろいやすかったけども、その移ろいが味になってたし … 誰もこんな風に歌えないよ」


何か言えば言う程、ぬかるみに嵌っていくようなものでした。

「だめだ、全然ほめてない … 」

頭を抱えてしまいました。

… … … … …

「 … いつから?

その、ヴォイストレーナー?」


春子はもう一度、ひろ美に確認しました。

「去年の夏から … 」

「すぐクビにした方がいい! お金もったいない!!

… 私がやります」

「えっ?」


一同、我が耳を疑いました。

「私が歌唱指導します! 鈴鹿さんの … 」

聞き間違いではありません … 春子は、高らかに宣言しました。

「やるの? リサイタル?」

「やりましょう!」


ひろ美の顔を見る春子。

沈んでいたひろ美に笑顔が戻りました。

春子も微笑んで、何度もうなずきました。

… … … … …

北三陸駅。

アキがウニ丼の車内販売を終えて戻ってくると、吉田が何やら駅舎の柱に貼っていました。

「じぇっ?!」

鈴鹿ひろ美のポスターでした。

「吉田さん、何これ?」

「今朝、いきなり届いたんだよ、30枚!」

「チャリティーリサイタル … 歌うのか?!」


目を見開いたアキ。

「場所と日時は未定なんだって … 駅長が今、春子さんとしゃべってるけど ~ 」

何だか吉田はうれしくてしょうがないようです。

… … … … …

急いで駅務室に入るアキ。

「 … それは、こっちとしては是非来てもらいてえが、いかんせん会場が … いや~ 公民館じゃ、味気ねえべ?」

せっかくの話ですが、現在の北三陸にはリサイタルを開けるような会場がないのです。

「 … とは言え、市民ホールは震災後、復旧してねえし … 鈴鹿ひろ美の希望は?

えっ?

あ、あ、海女カフェで?!」

「じぇじぇじぇっ?!」


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2013年09月17日 (火) | 編集 |
第146話

< 地元系アイドルGMT5が北三陸にやって来ました >

アキと一緒にGMTのメンバーが改札を通って出て来ると、たちまち学生たちに取り囲まれて、駅舎内はもう大騒ぎ。

「じぇじぇじぇじぇじぇじぇじぇ ~ !」

最大級の『じぇ』でお出迎えの大吉。

「やっぱり、現役アイドルは違うな」

人込みを縫うように歩きながら、アキは実感していました。

自分だって、つい最近まで、そんな世界にいたのです …

その様子を見ていたユイはといえば、『営業中』の札を裏返すと店の中に逃げるように入ってしまいました。

… … … … …

アキは、GMTのメンバーをリアスに招き入れました。

本来はスナック営業の時だけ開放するパーテーションを開けて店内を広くしました。

「いや~、皆さん、わざわざ遠いところを」

席を用意しながら、大吉がメンバーを歓迎しました。

「チャリティコンサートで東北をツアー中なんです。

昨日は宮古で今日は移動日なんで」


少し足を伸ばしてアキに会いに来たことを河島は説明しました。

「なんかまだ信じられません。こんな田舎に天野以外のアイドルが ~ 」

興奮して舞い上がっている磯野、保やヒロシまでウキウキしています。

「『GMTがやってきたじぇじぇじぇ』だな」

… … … … …

保のギャグをサラッと流して、河島はアキに尋ねました。

「ところで天野、紹介してよ … 例の相方」

「相方?」

「『潮騒のメモリーズ』の訛ってない方ね」

「可愛いか方やなかと?」


横からしおりと真奈も興味津々に言いました。

「ああ、ユイちゃん」

「何?」


名前を出されて、テーブルの準備をしていたユイは返事しました。

一同の視線がユイに集まります。

「 … 可愛い」

ユイに釘付けになる河島。

「こちら、オフィスハートフルの、ちっちゃい方の河島さん」

「 … まあ、あの大きい方はいないんだけど」


ユイに名刺を渡す河島。

「あ、水口さんの?」

「そう … あいつ、俺の後輩、ふふふ、今いくつ?」


しかし、ユイは軽く挨拶しただけで、買い物に出かけてしまいました。

「お人形さんのごと可愛かねえ」

「素材の違いは否めないよね」


メンバーの間からため息が漏れました。

「でも、なんか影があるね」

しおりが口にすると、河島は「そこがいいんだよ」とうなっています。

「ごめん、たぶん人見知りしてんだ。

しゃべってみたら、意外とおもしれえし、そのギャップがまたたまんねえんだ」

「 … たまんねえ」


河島はひとめで気に入ったようです。

… … … … …

「ところでお腹空いてない?

ウニ丼、ちょうど人数分あるんだけど」


メンバーから歓声が上がりましたが、磯野が何やら図々しいことを切り出しました。

「その前に … 差支えなかったら、例のやつ見たいなあ ~ ずんだずんだっていう … 」

磯野だけでなく、大吉や吉田たちも期待一杯の顔で見ています。

プライベートだからと、河島は渋りましたが … 

「やっぺし、河島さん、アキちゃんの地元だし」

「そうだよな、チャリティーツアーですからね!」


メンバーの好意に折れて、自己紹介だけは許可が出ました。

全員がステージに上がると、恒例の自己紹介を順番に披露しました。

「 … 5人合わせて、地元系アイドル … せ~の、GMTファーイブ!」

決めのポーズを取った時に、今野と弥生が店に入ってきました。

「あらあら、何だか有名なアイドル来てるって聞いたんだけど」

「残念、今自己紹介終わったとこだ」

「もう1回お願いできませんか? … これ、復興祈願の靴下プレゼントすっから」


有無を言わさずにメンバーに握らせる弥生。

「あ ~ いたいた!」

もの凄い勢いで入って来たのは、珠子のふたりの娘の手を引いたかつ枝でした。

「おめえ達の好きなあのGMTだど」

「 … かつ枝さん、琴が好きなのAKBだけども」

「うるさいっ」


自己紹介が終わったところだと知ると、無理やり妹に頭を下げさせました。

「そこを何とかお願いします」

「 … あの、これ結構消耗するんですよ」

「大ファンなんですぅ!」


今度は無理に手を上げさせられて半べそをかいている妹。

「 … 大ファンの顔じゃないでしょ?」

「やります! チャリティ、チャリティ」


… … … … …

< その頃、東京でもあるチャリティの企画が進行していました >

「番組の企画なんですけれど、こんなのが … 」


スリーJプロを訪れた太巻、春子に企画書を差し出しました。

『東北を笑顔に SMILE FOR とうほく』

「著名人総勢80人によるチャリティーソング、楽曲は森山直太郎さんの『さくら』 … 」

春子は太巻の顔を見上げました。

「無理無理無理! … お断りします」

企画書をつき返しました。

「でもチャリティーでしょ … 断りづらいなあ」

「 … 歌わせるの?」


もちろん、鈴鹿ひろ美のことです。

「まさか … 」

顔色を変えて否定した太巻。

「ですよねえ ~ えっ、本人は、オファーがあったこと知ってんの?」

「家内に … 」


そう言いかけて、太巻は咳払いして言い直しました。

「鈴鹿さんには見せてません。

というのも、最近、家内 … は、歌に興味を示しておりまして」

「えっ?!」

「口の堅いヴォイストレーナーを紹介しろと … あなたがあんなこと言うから」


春子のことを恨めしそうに見ました。

『音痴様様です』

「私のせい? やだ、怖い ~ ってか無理!

絶対無理音感の持ち主なんだから」

「分かってます! 誰よりも分かってます。

でもね … 歌の歌詞、『さくらさくら』の1行だけなんですよ」


太巻は企画書を開いて、春子に見せました。

「そうなんだ?」

… それならば、もしかしたら何とかなる?

「はい … ただし、前を歌うのが森公美子、後ろがセリーヌ・ディオン(交渉中)なんですけど、ふふふふふ」

思わず笑う太巻。

「無理! 音痴が際立つ!」

… … … … …

ユイが買い物から帰って来ると、GMTが2度目の自己紹介をしているところでした。

さすがに続けて2度は見ている方も盛り上がりに欠けるようで …

そんな雰囲気を感じたアキはベロニカの後に自分もステージに飛び入りしました。

「じぇじぇっ!」

一気にボルテージが上がる一同。

しかし、一瞬ユイが不快な表情を見せました。

「岩手県北三陸で海女さんやってます! 潜水士の資格も持ってます …

海女ちゃんこと、天野アキです!」

「じゃあ5人、いや6人合わせて、地元系アイドル … せ~の、GMTシーックス!」


アキも入れて決めのポーズを取ると、拍手と喝采が起こりました。

その様子をじっと見つめるユイ。

… … … … …

「さあ、まめぶできたよ ~ 」

「懐かしい!」


小百合のまめぶを手にしたメンバーに河島は告げました。

「お前ら、それ食ったら移動するぞ」

「え ~ ?!」

「まだ、よかろうも … 」

「相変わらず、忙しいのか?」


この夏はずっとチャリティーだったと喜屋武が答えました。

「アキは、海女さんやってないの?」

「うん、今年はウニが津波に流されちまって … 」


そんな話をしているところへユイが口を挟みました。

「お話し中、すみません …

あの追加でご注文いただいてもよろしいでしょうか?」

「あ、お構いねぐ」


しかし、そういう意味ではなかったようです。

「いつまでも貸切りにしてたら、商売になりませんから」

やはり、この騒ぎを快く思っていないようです。

… … … … …

その時、今日の潜水作業を終えた種市が店に入ってきました。

「おお、種市、遅いじゃん」

「てめえら、ホントに来たのか?」

「種市、男前になったね ~ 」


再会を喜んで種市を取り囲むGMT。

「えっ、なんでそんなに親しいの?」

うらやましいのか、いっそん …

「劇場裏のお寿司屋で、しょっちゅう会いよったから」

「あっそ、あっそ … 教え子、教え子だし」


軽くスルーされました。

「で、どうなの、順調?」

ユイは話を遮って種市の前に立ちました。

「すいません、ご注文ご注文」

笑顔で催促するユイ。少しひるんだしおりでしたが明るく返しました。

「じゃあ、コーラ、ファイブ ~ 」

「ちっ」


ユイは確かに舌打ちしました。

… … … … …

「今は海中の瓦礫撤去やってる。

今日で袖が浜の作業は、終わりました … お盆過ぎにとはいきませんけど、20日頃には潜れます」


種市の報告を聞いて、磯野たちはうなずきました。

「安部ちゃん、20日には潜れるど!」

ハイタッチするアキと小百合。

「違うんだよ ~ ほら、アキとどうなの?」

「まだ、つきあいようとやろ? チューしたとやろ?」


ふたりを囃し立てるしおりたち。

またそれを邪魔するかのように、ユイは大きな音を立ててコーラをテーブルに置きました。

「 … ユイちゃん?」

顔を上げたユイ。

「カラオケありますけど、歌います?」

さすがにそれは、河島は断りました。

「『地元に帰ろう』聞きたいですね ~ 」

「こらこら、いくら何でも失礼だべ?」

「んだよ、プ、プライベートですもんね」


吉田、大吉、保の見え見えの猿芝居。

「別に … 」

「いいんですか?」


… … … … …

結局、今度は歌うためにステージに上がったGMTとアキ。

♪地元に帰ろう 地元で会おう ~

店の大漁旗にサイン、駅舎で記念撮影 …

そして、別れの時間が来ました。

「久しぶりに会えてうれしかった」

「可愛か方にもよろしく」


ユイの対応も、さほど気にしていないようです。

「いや、うちら危なかったからね、あの子が上京したら間違いなくセンター」

今の自分たちは現役のアイドルだという余裕から出たセリフかも知れませんが、あながち冗談でもないでしょう。

「そうか … そうだよね」

アキは駅舎に貼ってある『潮騒のメモリーズ』の時のユイの写真に目をやりました。

ここにいる誰にも負けてはいないように見えました。

「お前ら運がよかったと思わなきゃな」

河島の言葉にうなずくメンバー。

「がんばってけろ、応援してるから」

「アキちゃんもね」

「またな!」


6人で握手を交わして、皆は次のコンサートの地へ旅立ちました。

… … … … …

「ええっ、GMTが来たの?!」

スナックタイムになってから水口を連れて、梨明日に顔を出した勉さん、昼間GMTが来たことを知って残念そうに言いました。

「勉さん、知ってんのか?」

やはり、スナックタイムから店に来た夏が驚いています。

「そりゃもう ~ 作業中、ずっと聴いてますよ!」

サイン入りの大漁旗を手に悔しがっています。

「ちょっと言ってよ、ここ? ここさ座ったの?」

いつもの指定席に腰を下ろしました。

「あ、まだ温けえ ~ 」

「そこは、マネージャーの河島さんです」


ヒロシに言われて立ち上がりました。

「河島さん、来てたんだ?」

「んだ、ユイちゃん見たら、上がっちゃって … 名刺渡すのが精一杯だった」

「へえ ~ すごいじゃん」

「別に … 」


ユイは、そんな水口とアキの話にも興味なさそうな顔をしていました … 表向きは …

… … … … …

「 … っていうかさ、あのレベルでテレビとか出れるんだね」

「えっ?」

「いや、あの小野寺って子も思ってたより普通っていうか … 若くて可愛いだけ?

リーダー性格悪そうだし、沖縄の子はキャラだけ … 」


洗い物の手は休めずにGMTのダメ出しを始めました。

「ベロニカは?」

試しに水口は聞いてみました。

「あれは狙いすぎ、あの枠はトリンドルがいるから厳しいっしょ!」

< 腹黒ユイちゃん、久々に復活です >

「ずば抜けて可愛い子もいないし、ずば抜けて歌が上手い子もいないし …

アイドルとしては、限りなくCに近いB級!

♪地元に帰ろう ~ っていうか、お前らが ♪田舎に帰れ ~ って感じ」

< 毒舌のアクセル全開! フルスロットルです >


… … … … …

「ちょっと待ってけろ、一応、皆おらの友達で … 」

「友達? ああ、そうだよね、ごめんごめん」


あっさりと謝ったかと思いきや …

「いやでもさ、友達だからって、いきなり押しかけてきて大騒ぎして、素人レベルの歌聴かされて …

興味ねえ人間にとって、この上なく迷惑だし … リーダー、性格最悪だしぃ!

アキちゃん、GMTだったら、余裕でセンター取れるよ!」


それもまた失礼な言い草ですが … 何か面白くなってきました。

「 … じゃあ、ユイちゃんだったら?」

薄笑いを浮かべながら尋ねた水口。

「私は … 私はいいよ、もうそういうの」

まだまだ、容易く尻尾は見せないようです。

アキが水口の顔を窺うと、小さく目くばせしました。

そして夏も同じように … アイコンタクトの3人。

… … … … …

「でも、あんな変なアイドルでチヤホヤされるんだったら、『潮騒のメモリーズ』の方がよっぽど可能性があると思うな」

「じゃあ、やろうよ!」


カウンター内に入ったアキはユイの横に立って言いました。

「えっ、やんないけど … やんないよ、お店あるし …

でもさ ~ 」

「何だよ、さっきから、『でもさ!でもさ!』って …

やりたいの? やりたくないの?」

やりたいよ!


ついに、ユイからその言葉を引っ張り出したアキ。

「 … やんないよ … やりたいよ … でも、やんないよ」

標語みたいなことを言いました。

「やりなよ!」

水口に言われても。

「 … やんない」

「やればいいのに」


夏に言われても。

「やんないよ … 」

あとひと押しです。

「やれよっ!」

「やるよっ!」


怒鳴ったヒロシに思わず怒鳴り返していたユイ。

「やった ~ !」

すかさず勉さん、ガッツポーズ!

… … … … …

「はははは … 」

笑い出した夏、水口、勉さん、ヒロシ …

「マジで?」

笑顔で念を押したアキ。

ユイは、カウンターの下から1冊のノートを取り出すと、ヒロシにつきつけました。

「えっ?」

ノートを開くヒロシ、水口も覗き込みました。

『潮騒のメモリーズ現象~第二章』と書かれたタイトル。

「何これ?」

「再結成から、お座敷列車までのストーリーをまとめたの、読んどいて」


ノートに細かい文字でびっしりと書き込まれています。

「やる気まんまんじゃん」

うれしそうなアキの声。

「もう失敗は許されないからね … 前回の反省を踏まえて、しっかり戦略練らないと」

やると決まったら、テキパキと仕切り始めました。

「水口さん、わんこチャンネルの池田Dに連絡しておいて。

あと、お兄ちゃん、観光協会のホームページで再結成の情報流して!」


水口もヒロシも、ユイの勢いに煽られて … しかし、うれしそうに引き受けました。

そして、ユイはアキに向かって頭を下げました。

「ごめん … 私、ウソついてた。

ぜんぜんあきらめきれてないし、ぜんぜん吹っ切れてないし … ものわかりいい振りしてたけど、無理!

GMTの歌、聴いてたらイライラしちゃって … あ、もちろん、私に。

なんか同じ年なのに何やってんの、私って?

… うん、いつも面倒くさくて、ごめんね」


ユイちゃん、自分でも分かってたんだ … 

話を聞き終わったアキは、たったひと言。

「おかえり」

「えっ?」

「面倒くさいユイちゃん、おかえり」
 

そう言ってアキは、右手を差し出しました。

… 北三陸に帰ってきてから、ずっとこの時を待っていたアキでした。

「ただいま!」

ユイは不適な顔を作って答えると、アキの手を握り返しました。

そんなふたりを微笑ましく見守る夏、水口、勉さん、ヒロシ …

『潮騒のメモリーズ』第二章の始まりです。

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2013年09月16日 (月) | 編集 |
第145話

天野家の玄関に立っていたユイの姿を見た水口はうれしそうに話掛けました。

「久しぶり … 」

< 水口君とユイちゃん、実に1年半ぶりの再会でした >


『デビューしたいんです! … 東京へ行って、アイドルになりたいんです』

< ユイちゃんに取っては、今一番会いたくない人でした >

「 … 何でいるの?」


目を見開いたユイ、しかし視線は合わせずに水口に尋ねました。

「あきらめきれなくて … もう一度、君とアキちゃんで『潮騒のメモリーズ』 … 」

「やりません!」


笑顔で近づこうとする水口めがけてミサンガの束を投げつけると、外へ逃げて行ってしまいました。

「ユイちゃん!」

後を追ってアキも家を飛び出しました。

「あの野郎、漁師の魂を … 」

そう言いながら、玄関に散らばったミサンガを拾う夏。

… … … … …

「それにしても変わってますよね … こんな田舎にわざわざ仕事辞めてくるなんて」

挨拶のため、梨明日に顔を出した水口にヒロシは言いました。

「あ、辞めてないです。春子さんの計らいで … これ」

水口は、名刺を差し出しました。

『スリーJプロダクション 岩手北三陸支社長 水口琢磨』

「むしろ、出世しちゃった感じで … あ、でも歩合なんで、アキちゃんとユイちゃんがメディアで取り上げられた時だけ、マネージメントする形で」

梨明日を窓口とさせてもらって、基本的にはまた勉さんに世話になるつもりだと水口は言いました。

「勉さんが許してくれたらの話しだな」

吉田に言われてうなずいた水口。

「でも、新しい人生の出発点としては、これ以上ふさわしい環境はありませんから」

そう言って、カバンから琥珀磨きの道具を取り出すと、今日は顔を見せていない勉さんの指定席の隣に座りました。

「んだんだ、私もちょうど新しい恋を探してたの」

カウンターから出てきて、ニコニコしながら水口の横に腰かけた美寿々。

「 … 見つかるといいですね」

… … … … …

「それより、ミズタク!

マサと春ちゃんが再婚するってのは、リアルか?」


一気に飲み干したコップを置いて、大吉が尋ねました。

「リアルですね」

「めでたい! 限りなくウーロン茶に近い、ウーロンハイ!」


注文を受けた美寿々がからかいます。

「ホントは少しさみしいクセに」

「春ちゃんにはマサが一番しっくりくるんだ …

よしっ、おらも新しい恋を探すべ!」


大吉がそう宣言したのと同時に店に入ってきたのは、小百合でした。

「ああ、疲れた ~ 美寿々さん、ミサンガ今日の分」

美寿々に手渡した後、しょぼしょぼした目をこすりました。

「 … ??」

一同が自分に注目していることに気づいた小百合。

「えっ?」

「なすて、このタイミングで?」


あきれ顔の吉田。

ひときわするどい視線を向けている大吉でした。

「安部ちゃん … 」

「 … 大吉っつあん?」


見つめあうふたり。

「いやいやいやいやいや … 」

… … … … …

その頃、ユイとアキは線路の上を歩いていました。

< そこは北三陸鉄道リアス線の車庫 … 3月11日以降、運行がストップして、出番を失った車両が多く眠っています >

「ねえ、ここ来たことある?」

「種市先輩と … 」


アキはユイに、その時のことを話しました。

… … … … …

「その火を飛び越えて来いって意味ですよね?」

「ダメだ、天野来るな!」

「せんぱ ~ い!!」

… … … … …

「 … 恥ずかしい」

恥ずかしいけど懐かしい思い出でした。

「その後、映画でそういうシーンやったんでしょ?」

「あ、やったね」


ユイに言われて、改めて実感しました。

「すごいよアキちゃん、夢かなえているよ」

小さく拍手したユイ。

「いやいや … 」

「私、アキちゃんと友達でよかった ~ 」

「えっ?」

「これからも仲良くしてね」


ユイは何を今更 … アキは思わず背を向けてしまいました。

< 重っ … 何かわかんないけど、重っ!

うれしさよりも重圧感に息が詰まりそうなアキでした >


… … … … …

ふと、横に目をやると …

「あ、これお座敷列車! んだべ、そうだよね?」

「 … 懐かしいね」


言葉とは裏腹にどことなく冷めているようなユイです。

「やっぱりおら、北鉄が好きだ。

ユイちゃんと初めて会ったのも北鉄だし、ウニ丼売ったり、ウニ丼食ったり … 」

「 … 駅でケンカしたりね」


お座敷列車の直前のことでした。

種市のことで頭が一杯で練習に身が入らないアキにユイが切れたのでした。

「あん時ごめんね … っていうか、私にとって青春の1ページになっちゃった」

そう言うと、ユイはお座敷列車から離れてどんどん奥へと入って行きました。

< 重っ … どこから攻めても、重っ! >

かといって、放っておく訳にもいかないアキは、ユイの後を追いました。

… … … … …

ユイは、ひとつの車両の前で足を止めて見つめていました。

「 … ユイちゃん?」

「これ、私が閉じ込められた車両」


『奇跡の車両』とよばれた列車でした。

「 … あれから乗れなくなったの、北鉄。

震災から5日で走り出したんだけど、無理だった。

今はもう平気だけど」


そう言うと、ユイは入り口の手すりに手を掛けて列車の中に入って行きました。

「ユイちゃん!」

アキがユイに続いて乗り込むと、真っ暗な車内でユイはあの日自分が座っていたボックス座を見つめていました。

そして、窓に頭をつけ …

… … … … …

「ユイちゃん、見てはダメだ」

「もう遅い … 」

… … … … …

ふたたび、梨明日。

「あん時のユイちゃんの表情、今も目に焼き付いてる …

何が起きたのか分からねえのに、もうあきらめてるような、なんとも言えねえ顔だった … 」


大吉は、あの日のユイの身に起きた出来事を水口に話して聞かせていました。

「そうだったんですか … 」

「だからよ … そのユイちゃんを引っ張り出して、お座敷列車やろうなんて、容易いことじゃねえぞ、ミズタク」

「んだ、あのヌメッとしたテレビ局のディレクターですら、どうにもなんねかったんだから」


吉田も茶化すこともなく真顔で言いました。

「それでもやるべって言うんだったら、青年部が全力でバックアップするべ、なあ足立君」

「はい、最終的には兄として、俺が説得しますよ」


保の言葉にうなずいたヒロシ。

「その一部始終をヌメ~っと撮らせていただきたいな~」

いつの間に、水口がいた席に『ヌメっとしたディレクター』池田がカメラを構えて座っていました。

「あれっ、水口さんは?」

「帰ったよ … 今晩中に勉さんに挨拶したいって」


美寿々が答えました。

… … … … …

「地震の話よりさ、芸能界の話なんか聞かせてよ」

ユイはボックス席から離れて、別の席に腰を下ろしながら言いました。

「えっ?」

「誰と誰が仲悪いとか、誰が性格悪いとか聞きたい。

… 帰ってから、1ヶ月も経つのに、アキちゃん全然話してくんないんだもの」

「ごめん、聞きたぐねえかなと思って」


少し戸惑い気味のアキにユイは笑いながら言いました。

「 … 地震の前はね」

ユイはそう前置きをして話しはじめました。

「アキちゃんがテレビ出ると消してた。

CDも1回も聴いてないし、映画も見ていない … ごめんね」

「悔しかったし、嫉妬してる自分も嫌いだった …

周りも私に気つかってたのかな?」

「でも、今はもう悔しくないよ。

皆も私に気つかわないし … 悔しいとか嫉妬とか、そういう感情が湧くのって、元気な証拠なんだよね」


およそユイの口から出るのにふさわしくない … 聞きたくなかった言葉でした。

< やっぱり重い … 表情や口調は明るいのに、重い … >

「ごめんね、重くて … そろそろ行こっか」


アキの表情を読んだのかユイはそう言って、アキの手を取りました。

… … … … …

梨明日。

吉田はカラオケに『潮騒のメモリー』を入れましたが、途中で切なくなって歌うのをやめてしまいました。

「お座敷列車か … おらも時々、夢に見るなあ」

「にぎやかだったもんね」

「もうあんな大勢人が来ることなんて、ねえかもしんねえな … 」


吉田と保のせいでしんみりとしかけた店の雰囲気。

ウーロンハイを飲み干して、コップを乱暴に置いた大吉。

「懐かしん … 」

懐かしんでる場合でないべ?!


大吉が叫ぶより一瞬早く、吉田のマイクを奪って声を上げたのはアキでした。

「大吉さん!」

大吉はといえば、そのまま椅子から落ちて寝てしまいました。

… … … … …

「あんなもんじゃねえ …

今のおらとユイちゃんが本気出したら、あんなもんじゃねえや!」


目を剥いて声を荒げるアキを見て呆気にとられる一同。

… アキは一先ずマイクをテーブルに置きました。

「ごめん … さっきまでユイちゃんとしゃべってたんだけど、あんまり張り合いねえからさ ~ 」

テーブルを叩いたアキ。

「ユイちゃん、いつからああなった?

昔はもっと腹黒くて、自己中だったべ?!

… 今はなんか、何しゃべっても作り笑いでうなずくだけで、なんも返って来ねえ!

なんか、そういう諺あるよね?

暖簾に! 暖簾に … 押し寿司みてえな!」

「腕押し! 暖簾に腕押し!」


大吉を介抱していた小百合が黙ってられずに指摘しました。

「やるよ …

おら、お座敷列車、ユイちゃんがやらなくても … 安部ちゃんとふたりでもやるよっ!

「いやいやいやいやいや … 」

「早すぎるべ、いやいやいやって否定するの早すぎるべ!」


否定されるとしても、即では面白くない小百合でした。

アキはまたテーブルを叩きました。

「あんた方にとっては、懐かしい思い出かも知んねえが、おらにとっては大事なスタート地点だ!

海女カフェ復活に向けての大事なチャンスだ!

真剣にやってもらわないと困るんだ!!」


はじめて見るアキの姿に息を飲み絶句する一同。

「あ … 」

その時、アキは思い出しました。

『遊びじゃないんだよ!

アキちゃんにとっては、高校時代の思い出づくりなのかも知れないけど、私にとっては大事なチャンスなんだあ!

真剣にやってくんないと困るんだあ!』

アキが吉田たちに吐いた言葉は、あの時のユイの言葉そのままだったことに気づいたのです。

「 … どうしたの?」

急に黙り込んだアキのことを不審に思ったヒロシが尋ねました。

「なんでもねえ!」

ふて腐れたように、そう答えたアキでした。

… … … … …

『小田こはく工芸』

水口は、入り口で勉さんがやって来るのを待っていました。

微かに聞こえてくる聞き覚えのある曲。

♪地元に帰ろう …

水口は顔を上げて、音が近づいてくる方を見つめました。

暗がりの中、ラジカセを手にやって来たのは勉さんです。

勉さんは水口の姿を見つけると足を止めました。

「ご無沙汰してます … お元気ですか?」

水口は駆け寄って挨拶しましたが、勉さんは一瞥もせずに物置から作業道具を手押し車に積み始めました。

「あれから勉さんの教えを胸に原石を、アイドルの原石を磨いて来ましたが … 何ていうか、志半ばで断念して戻って来ました」

道具を積んだ手押し車を押して坑道の入り口へと運ぶ勉さん。

その後を追いながら、水口は話し続けました。

「初心に帰って、今度こそ、今度こそ本気で琥珀と … 」

「うるせえな!」


やっと口を開いたと思ったら、どやしつけられました。

「 … 口じゃなくて、手動かせ」

「えっ?」

「こん中にあるべ … 道具、忘れたか?」


水口は慌てて物置への扉を開けました。

そこには、水口用と書かれた札の下、以前使っていたヘルメットや作業服が、そのままの状態で残っていました。

思わず勉さんのことを見る水口。

「ついて来い」

「はいっ!」


勉さんは微笑み、坑道へ向かって歩きはじめました。

… … … … …

「はい、だから、もう少しゆっくりしゃべって下さい」

ある日、アキが帰宅すると夏が困った顔で電話をしていました。

「誰?」

「だから、その『で~じ』が分からないさ」

「じぇじぇっ! … ちょっと貸してけろ」


アキは夏から受話器を受け取ります。

「喜屋武ちゃん?」

電話の相手はアキが思った通り、喜屋武でした。

「夏ばっぱ、うちのこと忘れてる … もう、で~じ悲しい。

海女カフェもさ、瓦礫の山だしさ」

「海女カフェ? … なすて、喜屋武ちゃん、海女カフェさいるの?」

「あ、もしもし天野?」


喜屋武に代わって電話に出たのは河島です。

「ああ、ちっちゃい方の河島さん」

いきなり失礼なことを口走ったアキ。

「 … 実はさ、宮古で復興チャリティコンサートがあって、そういえば、天野の実家『この辺さ~』『この辺たいね』って話になって、足伸ばしてみたんだけど」

「じぇっ、じゃあ皆いるの?」


… … … … …

北三陸駅。

「駅長、駅長!」

駅務室から飛び出して来た吉田が大吉に報告しました。

「た、た、大変! GHQが来てます!」

駅舎のベンチに座っていたお爺さんがお茶を吹き出しました。

「GHQ?」

「GHQ … なんかしっくりこねえな ~ G、G 」

「 … GMT?」


リアスから顔を出したユイ。

「イエス! GMTが来てます!!」

その言葉と同時に駅舎がざわめきだしました。

アキと一緒にGMTのメンバーが改札を通って出てきたのです。

途端に高校生たちに取り囲まれ … ちょっとしたパニックです。

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2013年09月15日 (日) | 編集 |
さて、次週の「あまちゃん」は …

おら、お座敷列車、ユイちゃんがやらなくても、安部ちゃんとふたりでもやるよ!

アキ(能年玲奈)とユイ(橋本愛)を再びアイドルにしようと、水口(松田龍平)が北三陸に戻ってきた。しかし、ユイの心は固く閉ざされたまま。水口の話に全く聞く耳を持たない。ユイは心に深い傷を抱えていた。アキはユイを心配し、多くの思い出が詰まったお座敷列車を復活させようと考える。一方、水口は、再び琥珀(こはく)堀りの勉(塩見三省)に弟子入りすることに。そして意外な客が北三陸にやってきて?!

GHQが来てます!

チャリティーコンサートで東北各地をまわる途中、アキを訪ねてきたGMTの仲間たち。現役のアイドルの登場に町は大騒ぎに。かつての仲間の活躍を誇らしく感じるアキ。一方、ユイはGMTを苦々しい思いで見つめていた。あきらめていたアイドルへの夢を再び思い出したユイは…。一方、春子(小泉今日子)と太巻(古田新太)は悩んでいた。鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)にコンサートの出演依頼が来たのだ。

震災から間もなく1年です。復興は果たされていますか?

GMTが北三陸にやってきたことをきっかけに、一度はあきらめたアイドルへの夢が、ユイの中で再びよみがえった。アキとユイは「潮騒のメモリーズ」を復活させ、活動を始める。北三陸市長選挙で、功(平泉成)が当選し、北鉄の存続に向けて動きだす。一方、東京では、鈴鹿ひろ美が東北各地を回るチャリティーコンサートで歌うことを勝手に決めてしまい、春子は困惑していた。

海女カフェ作れば、ひろ美が来る … 作るか、菅原?

鈴鹿ひろ美が東北でチャリティーコンサートを開くことが決まり、北三陸にもやってくることに。春子が歌の特訓をする一方、アキはコンサート会場となる海女カフェの再建に燃えていた。しかし、町の復興が難航する中、海女カフェの再建は思うように進まず、人々の心にも影を落とす。そんな中、アキたちはできることからはじめようと、がれきの撤去作業に取りかかる。

フィールド・オブ・ドリームスですね?

北鉄の運転再開が海開きの日に決まり、鈴鹿ひろ美のコンサートはその前日に開かれることになった。会場となる海女カフェの再建に、アキや町の人々は大忙し。そこに、アキがかつてテレビで共演したさかなクン(本人)がやってくる。さかなクンの手助けもあり、海女カフェは新しく生まれ変わる。その頃、喫茶リアスには、まだ東京にいるはずの鈴鹿がいた。そして、漁から帰った忠兵衛(蟹江敬三)と…。

予定より早く北三陸にやってきた鈴鹿ひろ美の登場に、町は大騒ぎ。ユイも大女優を前に興奮を隠せない。天野家に転がり込んだ鈴鹿は、春子がかつて青春を過ごした隠し部屋を気に入り、コンサートまでの間、使うことにする。翌日、梨明日で大吉(杉本哲太)らと話した鈴鹿は、天野家の3代、夏(宮本信子)・春子・アキが、それぞれ北三陸のアイドルだったのだと気づく。

あまちゃん 公式サイト、YAHOO!テレビガイド他を参照)


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あまちゃんニュース
9月20日(金)「あさイチ」プレミアムトーク:能年玲奈
8:15~9:54
※もう一度みたいシーン大募集

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2013年09月14日 (土) | 編集 |
第144話

< 突然、北三陸に現れた男 … 無頼鮨の大将、梅頭、その豪快な食べっぷり >

梅頭は、リアスのカウンターに腰を落ち着けて、黙々とウニ丼を食べ続けています。

その様子を唖然として見つめる吉田とユイ。

しばらくして、知らせを受けた種市、アキ、磯野が駆けつけて来ました。

「梅さん …

お世話になってる寿司屋の大将です」


磯野と吉田に紹介した種市。

「じぇじぇ、じゃあ、わざわざ東京がら?」

「何で? お盆休みなんだよね?」


ユイの質問に種市は目が泳ぎました。

< どうやら、種市君は大将に無断で東京を後にして来たようです >

「すいません! 勝手して、すいません!」


種市は突然、梅頭に向かって頭を下げました。

ちょうど、ウニ丼を食べ終わった梅頭、空になったドンブリに手を合わせると … 種市の方へ向き直りました。

そして、立ち上がって、勢いよく近づいて来ます。

思わず、目を閉じて顔を伏せる種市、身構える磯野。

種市の前に立った梅頭の手が上がって … 肩をポンと叩きました。

「何も言うな、種、言わなくても分かってる … 」

顔は怖いけど、優しい目をしています。

梅頭はユイに札を差し出して、またウニ丼を手に取りました。

「こんな美味いもの食える奴は、東京なんか来なくていい!

… こっちでがんばれ」


種市の顔を見つめる梅頭、言葉なくうなずいた種市。

すると、梅頭はうろたえている磯野に向かって頭を下げました。

「種市のこと、よろしくお願いします」

「 … 押忍!」


顔を上げた梅頭は、例の笑顔を見せました。

< 無頼鮨の大将、梅頭さん。

北三陸市に滞在した時間わずか48分、たいらげたウニ丼7つ … そして、10時間かけて帰って行きました >

「ありがとうございました!」


… … … … …

次の朝、今朝も天野家の作業小屋では夏たちが慌ただしくウニ丼をこしらえています。

「おはようございます」

顔を出した種市、ユイが母屋に声を掛けると、絣半纏を着た海女姿のアキが出てきました。

「なんだアキ、お盆まで素潜り禁止だど」

「違う違う、今日はドキュメンタリー番組の取材だ」


弥生に説明するアキ … 結局、こちゃこいテレビの池田に協力することにしたみたいです。

皆に見送られて、アキは種市と一緒に出掛けて行きました。

… … … … …

純喫茶アイドル。

「 … 保証人にはなるなって、死んだ親父の遺言なんだよね」

正宗から差し出された婚姻届を前に、甲斐はそう言いました。

「いや、保証人じゃなくて、証人だから」

「あ、そうなの?

… でも、ここに誰の名前が入るかだよね」


夫になる人の欄には正宗の名前が書いてありますが、妻になる人は空欄のままです。

「ていうか、普通書いてから持ってくるよね?」

「すみません、びっくりさせたくて … 」


驚いた顔をして自分を指差す甲斐。

「マスターじゃなくて、春子さんをびっくりさせたくて」

「ああ、そうなの?

… でも、何で私なんだろう?」


そんなやり取りをしているうちに、春子が店に入って来てしまいました。

慌てて婚姻届を隠す正宗。

春子の後から、水口がついて来ます。

「ひとりで来てって言ったのに … 」

「ああ? … ああ、ごめんごめん」


どうやら、春子は別件でやって来たようです。

「緊急事態」

水口のことを指差しました。

… … … … …

「 … 何かあったの?」

「仕事辞めたいんだって」

「ええっ?!」


テーブル席についた春子の目の前に、水口は辞表と書いた封筒を置いて頭を下げました。

「長い間、お世話になりました」

「 … 本気なのね?」


辞表を手に取った正宗が不審な顔をしました。

「っていうか … えっ、中身は?」

封筒の中身は空っぽです。

「えっ?」

「 … 中身? 辞表って中身要るんですか?」

「は~あ??」


封筒を丸めてテーブルに叩きつけた春子。

… 水口はハートフルを辞めた時も空の封筒を出したのでしょうか?

… … … … …

「鈴鹿さんの現場について約半年、本当にいい経験させていただいて、フォローしていただいたり、疲れの取れる入浴剤いただいたり、ポン酢をいただいたり … 」

「なんなの、その奥歯に物が詰まったような、奥歯そのものがないような … ハッキリ言いなさいよ!」


春子の迫力に押され気味の水口。

仕事が面白くない … 

「ハッキリ言いなさいっつってるの!」

「仕事が面白くないんです」

「ダメじゃん」

「 … ダメですよね?」


横から尋ねる正宗。

「理由は分かってるの?」

「太巻さんの会社のころから、ずっと新人を発掘するセクションで、ずっと磨けば光る原石を扱ってきました。

でも、始めから光ってる女優さんにどう接したらいいか分からないんです。

だって、出来上がってますから … 僕が何かしなくても、周りが光を当ててくれてるんです」


黙って聴いている春子。

「 … だめだ、論点ずれてる。

鈴鹿さんは悪くないんです … ただ、僕が自分が思っている以上にアイドル熱高めというか、それ以外に興味ないっていうか … 」

「分かるよ … 鈴鹿さんも僕ら世代のアイドルだったけど、結婚しちゃったもんな」


甲斐のことは、置いといて …

… … … … …

「君が無類のアイドル好きっていうのは、薄々分かってたよ。

でもね、水口君 … 好きじゃないことや向いてないことを避けて生きていけるほど、今の世の中甘くないと思うよ」

「すみません」


正宗の言葉に水口は頭を下げました。

「理想を掲げて、それを実現できる人間なんて、ひと握りだ。

それができなくて皆苦しんでる … 人生は長い、道に迷ってもいい、遠回りしてもいい、混んでたら脇道に入ればいい … 何処かで誰かを拾うかもしれない。

ついた場所が目的地だよ」


人生をタクシーになぞらえた正宗の話、本人は内心「いいこと言った」感があったようですが …

「そうかな ~ ?

ごめん … 私、この人の意見に大反対」


春子がいきなり否定しました。

「着いた場所が目的地って … そんなの言い訳じゃん! 自己満足じゃん!

脇道、遠回り、誰か拾う …

電波少年かよ?


問い詰めるように正宗の顔を見ました。

「 … 目的地は見えてるの?」

正宗は視線をそらして、水口に尋ねました。

「はい … 戻りたい場所はあります」

「お座敷列車でしょ?」


春子は見透かしていました。

「 … はい。

やっぱり、あれが僕の原点っていうか … 」


水口はカバンからビデオカメラを取り出しました。

… … … … …

♪来てよ その火を 飛び越えて 砂に書いた アイ ミス ユー ~

それは、お座敷列車での『潮騒のメモリーズ』の映像でした。

「拙いけど、一生懸命歌うふたり、それを見守る田舎の人たちの屈託のない笑顔と拍手、声援と窓の外の景色と、全部が終わった後の虚無感と … 僕の中のアイドルって結局これなんです。

この時の興奮を追い求めてるんだなあって … 」


カメラを甲斐のテレビに繋いで映した映像を見ながら水口は言いました。

「興奮しているようには見えなかったけど?」

皮肉っぽく言った春子。

「顔に出ないからね」

フォローした正宗は、この映像を見るのは初めてでした。

「熱いよ ~ 何だよ、これ? ここにいたかったよ!」

… 顔に出過ぎの甲斐でした。

「この感じをどうにか出せないかって、GMTで模索して … 何とかアキちゃんを歌手デビューさせるとこまで行ったけど …

今、北鉄が袖が浜で止まってるって聞いて、なんか、なんか、もったいないなって …

復旧さえすれば、線路は日本中に繋がっているんだから、北三陸に限らず全国に広めていけるんじゃないかって」


… … … … …

袖が浜では、ドキュメンタリーの撮影が始まっていました。

「ご無沙汰してます!

『潮騒のメモリーズ』でおなじみ、海女のアキちゃんです」


素潜りの実演場をバックにカメラの前に立ったアキ。

「せっかく帰って来たんですが、今年はウニがいないんで潜れません、じぇじぇじぇ …

でも、私たちはあきらめません!

港に船が戻ってくる日を信じて、復興のシンボル、海女のミサンガを編んでいます!

これは、津波で破損した、底引き網を再利用して作りました。」


… … … … …

仮事務所では、海女クラブのメンバーに混ざって、ユイもミサンガを編んでいます。

「ユイちゃん、これ緩い緩い、もっと引っ張んねば、ほら!」

まだ編むのに慣れていないユイのおぼつかない手元を見てかつ枝が横から口を出しました。

「いいのいいの、気持ちだから!」

海女クラブの面々もユイに言いたいことを言い、ユイもおばさんたちに負けていません。

お互い遠慮なく、おしゃべりをしながら楽しそうにミサンガを編んでいました。

… … … … …

純喫茶アイドル。

男3人は、お座敷列車で歌う『潮騒のメモリーズ』の映像を見続けていました。

「あんたもか … 」

春子の声に振り向く3人。

「あんたも北へ行くのね?」

水口に向かってそう言った後、苦笑いしました。

「 … 種市君がね、田舎に帰っちゃったのよ」

「えっ、寿司屋の?」

「そう …

そんなにいいか? 北三陸 … だって、何にもないじゃん。

まめぶとウニ丼と釣鐘洞と、あと何だ?」

「琥珀 … 」


水口を見て、うなずく春子。

「 … っていうか、私の地元だよ!

何であんたの方が好きになるのよ?」

「 … すみません」


ふたりのやり取りを横で聞いている正宗の頬が緩みました。

… … … … …

「わかったわよ … 行きなさい」

春子はあっさりと水口を許しました。

「えっ、いいの?」

意外な顔をしたのは正宗です。

「だって、心がここにない人、引き留めたって無駄じゃん …

『去る者は追わず』よ


… それは、夏の決め言葉でした。

指摘しようとした水口を春子は遮りました。

「うるさいっ!

鈴鹿さんには自分で言いなさいよ … そこまで面倒みきれないからね!」


水口との話が済んだ春子は、さっさと店を出て行ってしまいました。

「ちょっと、待ってよ ~ 」

後を追いかける正宗。

… … … … …

「あれえっ?!」

ふたりを見送った後、突然、甲斐が声を上げました。

「 … どうしました?」

「わわわわ、忘れ物 ~ 」


甲斐が取り出したのは、さっき正宗が春子に見つからないように隠した婚姻届です。

「婚姻届?」

「お、俺頼まれてたんだよ」

「あれ、これ片方しか書いてませんよ?」


慌てる甲斐。

「あわわわわ … 」

妻になる人の欄に署名してしまいました。

「あ ~ 何やってんだよ、俺!

俺、配偶者じゃないよ!!」


… … … … …

「 … という訳で、恥ずかしながら … 戻って来ちゃいました」

スリーJプロダクションを退職した水口は、すぐさま東京を引き払って北三陸に戻って(?)来ました。

天野家を訪ねて、アキと夏に報告する水口の表情はやけに明るく見えます。

「いや、うちは来る者は拒まずだから、構わねえんだ」

夏と顔を見合わせて笑った水口にアキは尋ねました。

「生活どうすんだ? … 仕事ねえど」

「いや、それはなんとか … アキちゃんにもいい知らせ」

「なになに?」

「アキ、おめえの父ちゃんと母ちゃん、ヨリ戻すみてえだ」


代わって答えたのは夏でした。

「 … なあんだ」

アキの薄い反応に拍子抜けした水口。

「そこは、じぇじぇじぇ ~ でしょ?」

… … … … …

「ただいま ~ 」

正宗が仕事から帰宅すると、春子が何かを一生懸命に捜していました。

「あれ、何捜しているの?」

「判子よ、判子!」

「判子ここだよ、ほら」


正宗は判子入れを春子に差し出しました。

「 … 黒川じゃなくて、天野の!」

そう言うと、また引出しの中を捜しはじめました。

「えっ?」

ふとテーブルの上に見た正宗。

「 … 春子さん」

春子の署名を終えた、婚姻届が置いてありました。

ようやく判子を見つけた春子は捺印すると、正宗に差し出しました。

「はい、書いて!」

泣きながら震える手で署名する正宗。

… … … … …

「あのふたりはずっと夫婦だもの … 今更、天野でも黒川でも中身は一緒だ」

アキの言葉に、水口も「もっともだ」と思ってうなずきました。

「水口さん、北三陸はな … 離婚率の高さとワカメの収穫高で有名なんですよ」

夏の話を感心しながら聞いている水口です。

… … … … …

「夏ばっぱ、ミサンガ今日の分」

仮事務所からミサンガを届けに来たユイが開け放しになっている玄関から入ってきました。

背を向けて座っていた水口、その声に振り向きました。

「久しぶり … 」

< 水口君とユイちゃん、実に1年半ぶりの再会でした >


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2013年09月13日 (金) | 編集 |
第143話

< 青年部による海中作業が集中的に行われ、ウニの放流も始まり、北三陸は再生に向かって一歩踏み出しました >

梨明日。

『1,133人』 … 復興祈願の乗客数が書かれた垂れ幕を感慨深そうに手に取って見ていた大吉。

空いた食器を下げているアキに向かって言いました。

「アキちゃん、春ちゃんさ電話繋いでけろ」

「まずいですよ、こんな時間に」


たしなめたのはヒロシでした。

「うるせ ~ 」

大吉は、ウーロンハイの焼酎抜きをユイに注文すると、カウンター席に戻りました。

「今じゃないと、ダメなんだ … ちゃんと、お礼言わねえと」

「お礼?」

「んだ、アキちゃんのこと、気持ちよく送り出してくれてありがとうって …

ユイちゃんもだ … 道踏み外した時、手を差し伸べてくれたのは、春ちゃんだものな」


話を聞きながら、ユイはすばやくスポイトで大吉に出すウーロン茶に焼酎を注ぎました。

「そうなのか?」

種市にうなずきながら、ユイは大吉にウーロンハイを渡しました。

「結局、春ちゃんはいるんだよ ~ 北三陸に …

いや、今はいねえけど、間違いねぐいるんだ」


そう言って、大吉はウーロンハイを口に含みました。

… … … … …

「あ、ママ、寝てた?」

アキが言われた通り、電話を掛けると … 案の定、春子は寝ていました。

「 … 何時だと思ってるのよ?

っていうかさ、どんだけ楽しいか知んないけどさ、電話ぐらいしなさいよ!」


寝入りばなを起こされたこととあいまって不機嫌な春子です。

「 … で、何?」

「大吉っつあんが、お礼言いたいって、ママに

… 大吉っつあん、ママだよ」


電話を代わろうと、アキが大吉の肩に触れた途端 … 椅子から滑り落ちて床に寝転びました。

イビキをかいて寝ています。

「 … ごめん、寝ちゃった」

「はああ ~ ??」


完全に熟睡しているようです。

「うん、また電話する … 必ずする」

そう言って、アキは電話を切りました。

… … … … …

眠っている大吉をヒロシと種市は、床からソファーに移しました。

「あれ?」

アキはカウンターからユイの姿が消えたことに気づきました。

「お兄ちゃん、タクシー来たよ … 帰ろう」

… ドアを開けて顔を出したのは、ユイでした。

いつの間か、タクシーを捕まえてきたのです。

「じぇ、えっ? 一緒に?」

「帰ろうよ、お金もったいないじゃん」


ユイにそんなことを言われたのは初めて、酔いつぶれた大吉のことも気になるヒロシです。

すると、ユイは早足でヒロシに近づき、腕をつかんで低い声でひとこと …

「気、遣えよ」

さっさと出て行くユイ、ようやく飲みこめたヒロシも慌てて後に続きました。

< 寝てる人、琥珀の人を除くと、恋人同士ふたりきり … >

… … … … …

「懐かしいな ~ 」

店から出てきた種市が、誰もいない駅舎を見渡して言いました。

「ここで資格試験の勉強教えてもらったよね」

隅に並んで置いてある勉強机、椅子をひいて席に着いたアキ。

「ああ ~ 天野も一応、潜水士なんだよな」

「はいっ、先輩も久しぶりに潜ったべ? … どうだった?」

「やっぱ、三陸の海はいいなと思った」


隣の席に座る種市。

「もちろん、今は瓦礫だのヘドロだのがあって、綺麗な海じゃねえけど …

命の源っつうか、人類も動物なんだなっつうか、うまく言えないけど、基本だなって思う」


アキもなんとなく分かるような気がしました。

「今回、地震の後でさすがに皆落ち込んでるんじゃないかと思ったけど … 皆楽しそうに笑ってる。

真ん中に天野がいるからだ」

「やめてけろ、こっぱずかしい … 」


思わず席を立ったアキ。

「いや本当だ。

東京でも、こっちでも、天野の周りには、いっつも大勢人がいる、皆楽しそうに笑ってる。

… そこが、ユイとは違う」

「ユイちゃんと?」

「うん …

ユイは、こっちがユイの笑顔見たくなるけど、天野はこっちが先に笑っちまう。

… だから、ふたりが揃うと最強っつうか、無限っつうか、お互いがお互いのアイドルっつうか … ああ、なんかいい例えがある気がすんだけど、出てこねえ」


喉まで出かかっているのに出てきません。

「ビールに枝豆みてえな?」

「いや、もっといい感じの … 」

「 … 月と太陽でねえの?」


リアスの入り口に立った琥珀の人 … 勉さんでした。

「カラオケ、歌いま~す」

そう言うと、また琥珀を磨きながら店に引っ込んでいきました。

「えっ??」

「月と太陽か … そうかも知んねえ」


種市は壁に貼ってある、潮騒のメモリーズの時のふたりの写真を見つめました。

「月を照らすために太陽があって、太陽に照らされるために月があるもんな … 」

「先輩 … 」


月はユイ、太陽はアキ? …

… … … … …

次の日の朝、天野家の作業小屋。

「何だよ、せっかく気を利かせたのに … 何にもなかったの?」

ウニ丼を運び出しながら、ユイはアキに不満そうに言いました。

「うん … でも、いろいろ話したよ」

「話しただけ?」

「うん … でも、いいこと言ってたよ。『月と太陽』とか」

「だから、それは勉さんが言ったんでしょ?!」


うなずくアキ。

「で、いつまでいるんだっけ? 種市先輩」

「ああ、お盆辺りまでとか言ってた」

「辺りまでって … 」


ユイはあきれた顔でアキを見ました。

「あ~あ、早く潜りてえなあ」

「お盆までの辛抱だ」

「ザックリしてんな!!」


突然、ユイが声を荒げたので、ウニ丼を運び出していたかつ枝と弥生がふたりの方を見て、小百合と美寿々も小屋から出て来ました。

「あのね、アキちゃん、ごめんね、お節介かも知れないけどね、もっと自分勝手でいいと思うんだ」

「お、おら、割と勝手な方だけど … 」

「こんな田舎で遠慮してたら、あっという間にこうなっちゃうよ!

えっ、なりたいの?」


ユイの指さす方に、かつ枝、弥生、美寿々、小百合 …

「失礼しましたっ!」

ユイは弥生たちが運び出したウニ丼のつまった番重を持ち上げて歩き出しました。

「大丈夫だ … 先輩、こっちさ帰ってきて店出すって言ってたし」

「あたしのこと甘く見ないでよ。

アイドルはあきらめたけど、女としてはむしろこれからだと思ってるから …

アキちゃんの彼氏だから、スイッチ切ってるだけだからね!

すぐ入るからね、スイッチ! … 失礼しました ~ 」

< 怖え ~ アキは軽い旋律を覚えました …

自分が可愛いことを知ってて、実際可愛い女子には、そんな恐ろしいスイッチが内蔵されているのか?! >


… … … … …

午後からは雨が降りました。

港に下りると、調査船の上で磯野と話をしている種市が見えました。

< 考えないようにしてたけど、ユイちゃんと先輩はつきあってた … それは、紛れもねえ事実だ >

北高の潜水土木科の準備室で種市に告白した時のことがよみがえりました。

『自分、ユイが好きなんだ』『つか、もうつきあってる』『正式につきあってる』『バリつきあってる』『遠距離恋愛だ』

『遠距離恋愛バリバリだ!』

言葉がアキの頭の中をぐるぐるとまわりはじめました。

「うわ ~ !!」

泣き出したアキは傘を放り、叫びながら、走り出しました。

「天野?」

その声に気づいた種市と磯野。

「天野、どうしたの?」

防波堤を灯台目指して走るアキを咄嗟に磯野が追いかけました。

「うわ ~ !!」

「天野、待て、飛ぶな!!」


走る走る走る、走る走る走る!

「待て、早まるな!!」

灯台の先、アキは海に向かって防波堤を蹴りました。

「や・ん・だ ~ !!」

追いかけてきた磯野も勢い余って …

「あ・ま・ぞ ~ ん!!」

ふたつの大きな水しぶきが上がりました。

< 磯野先生が『あまぞん』と叫びながら、海に飛び込んだ、ちょうどその頃 … >

… … … … …

< 観光協会に懐かしい男がやってきました。

『岩手こっちゃこいテレビ』のディレクター、薄い色眼鏡の池田さんです >

「もう、帰って来てるなら、来てるって教えてくださいよ、水臭いなあ」

「ははは、アキちゃん今プレハブだよね?」


保がヒロシに確認しました。

「プレハブ?」

「袖が浜に仮設の漁協がありまして、そこに」


ヒロシが説明すると、池田はすかさずカメラを取り出しました。

「カメラ、回していいですか?」

… … … … …

漁協仮事務所。

壁には寄せられた多くの応援メッセージ、それを目で追っている種市。

着替えたアキが入ってきました。

「天野、心配しなくても、自分何処さもいかねえ」

「先輩 … 」

「瓦礫撤去が終わるまでは、ここさ残るつもりだ」

「いいのか? 種市」


磯野も驚いています。

「海さ潜ってみて、改めて実感しました。

自分が思ってた以上に復興は困難であると、それと同時に自分の中で『南部もぐり』の血が騒ぎました」

「種市 ~ 」

「だから、精一杯働きます … 今やれること、やります!」


男泣きする磯野。

「種市 … 聞いたか? 天野!」

「はいっ!」

「おめえの彼氏は男の中の男、南部ダイバーだ!

せ ~ の!!」


♪白い鴎か 波しぶき、若い血潮が 躍るのさ ~

しかし、またもアキの脳裏に、今度はユイの言葉がフラッシュバック …

『すぐ入るからね、スイッチ』『すぐ入るからね、スイッチ』

「だめだめ、早く東京さ帰って!」

「えっ?」

「近距離はダメなんです! 遠距離で、なるべく遠くさ行って!!」

「 … 天野?」


… … … … …

そこへ、池田を連れたヒロシがやって来ました。

「ストーブさん?

じぇじぇ、岩手なんちゃらテレビの? … 」

「覚えてくれてて光栄です ~ こっちゃこいテレビの池田です」


以前より腰が低く愛想もいい池田、さっそくカメラを回し始めようとします。

「な、何ですか?」

アキは不審な顔をしました。

「復興ドキュメンタリーを制作してるんだって」

説明するヒロシ。

「応援してましたよ ~ 皆、アキちゃんのことを …

『潮騒のメロディー』? 残念だったね、ヒット間違いなしだったのに、自粛になっちゃって」


調子のいいことを言う池田 … っつうか、見ても聞いてもいねえな、おめえ。

「ユイちゃんも結局、人気に火がつかなくて … 今じゃ、スナックのママでしょ?

惜しいことしたなあ ~ 」


ヒロシはアキに企画書を手渡しました。

… … … … …

同じ頃、北三陸の駅舎にひとりの男が入って来ました。

革ジャンに革のパンツ、全身黒づくめ、体格のいいその男は、店の準備をしているユイの前に立ちました。

「な、何ですか?」

… … … … …

『復興ドキュメント 震災が変えた少女達の運命』

企画書のタイトルです。

「地元の復興のためにがんばる君の姿に密着して、その姿を通じて、震災の教訓を日本中に発信するべきだと思うんだ」

池田は企画の意図をアキに説明しました。

「おら、ひとりですか?」

「いや … できれば、ユイちゃんも。

君から言ってもらえば、やる気になってくれるかな?」


黙って池田の話を聞いているアキ。

「ふたりの頑張る姿を見たら、きっと全国のファンから励ましの声が届くと思うんだ」

「 … お構いねぐ」

「お、おかま?」

「励ましていただかなくても、自分たちで何とかするし、やってるし … だから、お構いねぐ」


企画書を池田につき返しました。

「天野 … 」

「失礼だったら、謝ります。

でも、あんまり、地元のため、東北のためって言われると、違うっていうか …

おらは、ただ潜りてえだけです。

潜りてえから、おらの好きだった海を取り戻して、おらの好きな人が集う海女カフェを復活させて、おらの好きな可愛い電車を走らせてえ … それだけです」

「うん、その思いが全国のファンに伝われば … 」


アキは首を振りました。

「それは違うんです」

「どうして? … 向かってる方向は一緒だと思うんだけどなあ」


池田は困った顔をしました。

「おらひとりだけがやる分には構いません。

でも、おらひとりが頑張ってるみたいなのは違うんです … ユイちゃんががんばってねえみたいに見えるのは違うんです」


アキの思いが伝わって、皆黙って耳を傾けていました。

「本当はふたりでやりてえ …

でも、ユイちゃんは闘ってるんです … おらよりも、おらなんか想像できねえほど、ハードな体験をして、それを乗り越えようとしてるんです。

だから、今は無理強いしたくねえんです」


… … … … …

その時、種市の携帯に着信が … ユイからでした。

「じぇっ?」

ユイからアキに代わるように言われた種市は携帯を渡しました。

「もしもし、心配したよ … 携帯繋がんないから」

「ごめん、海さ落ちちゃって … どうしたの?」

「なんかね ~ 変な客がいるの、副駅長がアキちゃんの知り合いじゃないかって


リアスの中から小窓を開けてユイと吉田はその客 … 先ほどの黒ずくめの男の様子を窺がっていました。

男は駅舎のベンチに腰を下ろして、リアスで買ったウニ丼を頬ばっています。

「見た目はね、真夏だっつうのに皮ジャン着てる、うん … 訳あり感半端ない。

よく見ると、ムショ帰りの小林薫つうか、小林捻持つうか … 小林感も半端ない」


電話を代わった吉田は言いました。

ウニ丼を食べ終わった男はまたこちらに向かって歩き出しました。

そして …

「ウニ丼下さい!」

小窓から注文しました。

「 … へい、いらっしゃい」

その革ジャンの男は … アキや種市のよく知っている顔!

無頼鮨の大将、梅頭でした。

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2013年09月12日 (木) | 編集 |
第142話

「ユイ … 」

聞きなれた声に振り向くユイ。

大きな荷物、食料品を乗せたキャリーを曳いて、立っていたのは … 種市でした。

「 … ただいま」

久しぶり、それも予期せぬ元カレとの再会でしたが、ユイは特に驚く様子もなく普通に答えました。

「おかえり」

< 種市君が北三陸に帰ってきました >

… … … … …

「せんぱ ~ い!」

種市帰郷の報せを聞いたアキは浜から自転車を飛ばして駆けつけ、そのまま駅舎に走り込んで来ました。

「先輩! 先輩! 先輩は?」

勢い余って、吉田の向う脛に自転車の前輪をぶつけて止まりました。

ムッとしている吉田に謝ることもせずに、種市の居場所を問いただすアキ。

「種市先輩、どこ、どこどこ?!」

吉田がリアスを指差すと、急いで小窓を開けました。

「いた ~ 」

種市はカウンターに腰かけ、ユイが相手をしていました。

自転車のまま、リアスに入って行くアキ。

… … … … …

「なすて? なすて、先輩、お盆に帰ってくるって言ってたのに」

種市に会えてうれしいことには違いありませんが、突然帰郷した訳をアキは尋ねました。

「震災以降、ずっと気になってて … 」

「何がですか?」


横から口を挟んだのは吉田です。

「何がって … 北三陸のことが」

「いやいや、お構いねぐ ~ 」


吉田は意味ありげに言うと、目の前のピラフを頬張りはじめました。

「本当は、アキちゃんが気になってでしょ?」

「いやいや、お構いねぐ … 」


ユイにそう言われて、照れるアキ。

「もちろん、天野も … ユイも。

だけど、海とか、天野が作った海女カフェが流されたとか、そっちも気になって … 」

「梅さん、よく許してくれたね?」

「梅さん?」

「寿司屋の大将だ。顔怖えけど、優しいんだ」


アキはユイに教えました。

… … … … …

「本当におふたりは、つきあっているんですか?」

また吉田が横槍を入れてきました。

「えっ?」

「つきあってるならつきあってるで、誰が見てもわかるように、ペアルック着るとか、ひとつのジュースさ2本のストロー射して飲むとか … してください」


いつの間に店に入ってきていたのか、アキの自転車のスタンドを立てて、ヒロシとふたり乗りしながら、保が言いました。

吉田、保、ヒロシの3人は、お揃いの黄色い復興祈願のポロシャツです。

「フリーのイケメンが歩いてると、青年部に戦慄が走るんで … なあ、足立君?」

「そうすね」


吉田に振られたヒロシは自転車をこぎながら、敵意ある目で種市をにらんでいます。

「あれ、お兄ちゃんって、昔はイケメン枠じゃなかった?」

ユイに指摘されたヒロシはムッとして自転車を下りて来ました。

「うるせえなっ」

「降りたの? イケメン枠から降りたってことでいいの? … 脱落?」


子供を相手にするようなユイの話し方が癇に障ったのか …

「うるせえよ! 元ヤンのくせに!」

「お兄さん、それは言い過ぎですよ」


止めに入った種市、ユイも負けずに言い返しました。

「元イケメンに言われたくな~い!」

「ユイもお兄さんに失礼だべ?」

「お前のお兄さんじゃねえよ!」


突然、アキが無言のまま席を立ちました。

「 … 自分、ユイの元カレだから」

「つうことは、元お兄さんですね? ははは」


茶々を入れる吉田。

… … … … …

「アキちゃん、どうした?」

皆から離れて、ソファに腰かけたアキを気にかけ、勉さんが声を掛けました。

不安げな顔のアキ。

「何だか、怖くなってきた … 」

「何が?」


種市が心配そうに覗きこみました。

「おらの大好きな北三陸に、安部ちゃんが帰ってきて、種市先輩が帰ってきて、ユイちゃんとストーブさんが兄妹げんかしてで …

もう、これ以上の幸せなんかねえんじゃねえかって。

うばっ」


小さい子供みたいに泣き出しました。

「そんなことで泣かねえでよ、アキちゃん」

あの吉田が困ったような顔をしています。

「そうだよ ~ 兄妹げんかぐらい、アキちゃんのためなら毎日だってやるよ」

ユイは泣いているアキの前にしゃがみこみ、なだめるように言いました。

「それは、さすがに勘弁だけど … もっと楽しいことたくさんあるって!

今より悪くなることないって!」


皆の視線がヒロシに集まりました。

「あ、すみません」

「今より悪くなることはない、か … 」


つぶやいた勉さん、うなずく保。

「確かに … 震災からこっち、景気も最悪だしな」

「はあ ~ ため息はピラフの匂い」


… … … … …

その後、磯野に会いに学校へ行く予定の種市でしたが、保から午後になったら観光協会へ来ることを聞き、それまで待つことにしました。

アキと種市が観光協会を訪れた時はすでに会議は始まっていて、ホワイトボードの前に立った磯野が『K3RKDNSP』のメンバーに報告をしている最中でした。

ふたりはしばし、部屋の外で入るタイミングを待ちました。

「以上が、3ヶ月に及ぶ海底調査による、三陸海岸の被害報告及び水質調査の結果です」

いつになく真剣な表情の磯野からの報告を聞いた夏が質問しました。

「ようするに、おらたちがこれ以上潜っても、それは意味がないってことだな?」

「じぇっ?!」

「いやいや、それどころか … もう潜らねえでけろって話だ」

「そこまでは言ってねえべ、なあ磯野先生?」


かつ枝をたしなめて組合長が尋ねました。

「はい … しかし、海底の瓦礫が危険な上に、ウニのえさになるワカメや昆布の上に堆積している現状では、ウニの繁殖が望めないのは事実です」

… … … … …

「あの、いっそんが真面目にしゃべってる」

「ああ、別人みたいだ」


ひそひそ話が聞こえたのか、アキだけ磯野に見つかってしまいました。

< では、ウニの繁殖に関する『基礎知識』と震災による影響を、北三陸高校・潜水土木科の磯野心平教諭に説明していただましょう >

「押忍!

ウニは海の中で産卵します。

孵化した受精卵は、海中を漂う植物プランクトンを食べながら、『稚ウニ』と呼ばれる大きさに成長し、更に大きくなると昆布やワカメなど海草を食べ、3~4年で5センチを超える『親ウニ』に成長するのです。

… しかし、3月11日の津波によって、多くの親ウニが陸に打ち上げられたり、沖に流されるなどして、失われました …

このまま数少ないウニを取り続けると、秋の産卵期に親ウニがいなくなり繁殖もストップしてしまいます」

そんなことは分かってるんだよ!!


磯野の説明を聞いていたかつ枝が突然キレて大声で怒鳴りました。

「す、すんません … 」

「ここで実演やめたら、明治から続いた海女漁の伝統もストップしてしまうべ?!」

「んだ、ウニと海女との闘いだ」


うなずいた珠子。

「ウニが育つまで3~4年、他の魚介類で繋げればいいんだけども … 」

そう言う美寿々も無理な話だと分かっていました。

… … … … …

「よその海から、親ウニもらって放流することはできねえですか?」

待ちきれなくなった種市は部屋に入ってきました。

「ほっ! なんだ、くのやろ! 種市でねえか?!」

うれしそうに駆け寄る磯野。

「あらあら、元南部ダイバー!」

「ご無沙汰してます。

… 産卵中のウニを被害の少ねえ地域から買い付けて放流することはできねえですか?」

「ああ、なるほど! 八戸の漁協にコネあるから聞いてみっか?」


種市の案を聞いて、ひざを叩いた組合長。

「でも、都合よく卵産むかな … 」

今度はかつ枝が不安そうに言いました。

「その前に瓦礫を撤去して、海藻を育てる活動しなければ … そもそもウニのエサが … 」

そんなことは分かってるんだってよ!!


またも、かつ枝に怒鳴られた磯野。

「私のこと嫌いですか?」

「ウニは銭だ!

同情するなら、ウニ取らせろだあ!!」


拍手する海女クラブの面々。

… … … … …

矢面に立つ磯野、夏は尋ねました。

「その瓦礫の撤去は、何月までかかるんだ?」

「 … 年内にはなんとか」


それを聞いて、かつ枝たちに失望の色が見えましたが …

「今月中にやれ!」

厳しい口調で夏は言いました。

「じぇじぇじぇ!」

後ずさりする磯野。

「海女クラブは、お盆まで休業する。

遠慮ねぐ、徹底的にやれ!

… その代り、お盆過ぎたら、遠慮なく潜らせてもらうぞ」


年内というのも相当無理をしてのことです。

磯野は返事することをためらっています。

「いやあ、夏さん … それはいくら何でも無理あるんでねえか?」

「んだんだ、北鉄の復旧のめども立ってねえのに」


助け船を出したのは保と大吉でした。

「それなりに危険の伴う作業だし」

組合長でさえ、二の足を踏んでいます。

「そんなことは、皆分かってらよ … 」

夏は立ち上がりました。

「だからこそ、ここで本気出さねばどうする?

いつまでたっても、被災地だぞ! … それでいいのか?」


一同の視線は夏に集まりました。

そして、夏は振り返って磯野の顔をにらみつけました。

「 … いぐねえべ?」

その勢いに飲まれ、磯野は直立不動、姿勢を正しました。

「よろしぐ頼むど」

それだけ言うと夏は出口に向かいました。

その後に続く海女クラブ。

♪星よりひそかに 雨より優しく …

鼻歌まじりで出て行きました。

… … … … …

「相変わらず、かっけえな、天野の祖母ちゃん」

種市に言われて、アキは夏たちの背中を見送りながら、うなずきました。

「種市、おめえしばらくいるのか?」

「はい、お盆までは」

「そんなら、手伝え! 

県外からダイバー来てるが、人手が足りねえ … OBにも片っ端から声掛けるべ」

「えっ、やるのか? 今月いっぱいで?」


目を丸くする組合長。

「あそこまで言われて、男が動かねえなんて … ウソでしょ?」

「いっそんもかっけえ!」


アキは初めて磯野のことを尊敬のまなざしで見つめました。

「初かっけえ!いただきました ~

よしっ、カップかぶれば魚の仲間だ! 今月中に震災前の海に戻すつもりで、がんばるべえ!!」


ファイティングポーズをとった磯野。

「いつまでも被災者じゃいられねえすけな!」

大吉も男気を感じて立ち上がりました。

「よしっ、おらも他県の漁協さ声掛けて、ウニの繁殖やってみっぺ!!」

組合長も腹をくくったようです。

「天野! 種市! 景気づけに『南部ダイバー』歌うか?

よいしょっ!」


♪白い鴎か 波しぶき、若い血潮が 躍るのさ …

< 夏さんの言葉が青年部の心に火をつけました。

ウニが育つ環境造りのための瓦礫撤去や、防波堤の土台造りが行われ … 漁協が仕入れた親ウニの放流も始まりました。

海女クラブの皆さんも遊んでいる訳にはいきません。

県外から仕入れたウニで、ウニ丼の出荷を増やし … >


♪ウニは銭、銭 ウニは銭 ~

「夏ばっぱのウニ丼で~す!」

< それをアキが車内販売して … その様子を観光協会のWEB担当が撮影し、ホームページに随時アップすると … >

「はい、帰ってきた海女のアキちゃんです!

今日も44食売り切りました ~ 来週は『レールウォーク北鉄』と題して、袖が浜の駅から宮古方面さ、線路の上を歩きます!」


レールウォーク北鉄のお知らせ

… … … … …

『レールウォーク北鉄』当日。

「あの、本日はみなさん、こんなにたくさんお集まりいただき、ホントにありがとうございます!」

多くの参加者を前に挨拶する大吉、感激して涙で言葉に詰まります。

「ホントに、ホントに … 」

「出発進行 ~ !!」

< さすが、春まで現役アイドルだっただけあって、面白いようにオタクさんたちが釣れました >


いや、参加者はオタクさんだけでなく、アキが子供番組をやっていたからか親子連れも少なくありませんでした。

アキを先頭に線路を歩く一行。

「それでは、皆さんお取りください」

「お好きなことを書いてください」


そう言いながら、大吉たちはマジックペンを配布しました。

参加者たちは今は不通となっている線路のまくら木にそれぞれが北鉄に対するメッセージを書き込みました。

『みんなでがんばっぺ!』『LOVE北鉄』『北鉄ガンバ!』『復活!北鉄』 …

色とりどりのペンで書きこまれていくメッセージ …

その後に始まったのは、アキとの記念撮影。

「どけよ、そこに立ったら写っちゃうだろ!」

カメラを構えた吉田に毒づいたのは、ヒビキ一郎でした。

なんだかんだ言う割に、北三陸でイベントがあると顔を見せる一郎です。

「じゃあ、撮ってもらおうか?」

吉田が一郎にカメラを渡すと、他の参加者も我も我もとカメラを一郎に預けました。

「はい、まめぶ ~ 」

自己中なのか、人がいいのか、よく分からない男です。

… … … … …

イベント終了後、梨明日に集まった青年部のスタッフ。

「今週の復興祈願の乗客 … はいっ!」

ステージの吉田が掲げた垂れ幕には『1,133人』の文字。

拍手、そしてクラッカー!

「まあ、全盛期には遠く及ばないけれど … 大したものだな」

「いやあ、1,000人の大台に乗っただけでも、立派なものだ!」


満足そうな保と大吉、しかし吉田は物足りなさそうにつぶやきました。

「これで、ミス北鉄が乗ってくれたらなあ ~ 」

吉田の視線を感じたユイ。

「だから、無理だよ私はそういうの」

何となく、あしらい方も慣れてきました。

「ヒビキさんからも何か言ってくださいよ」

あきらめきれない吉田は、カウンター席に腰かけている一郎に泣きつきました。

「場末のスナックで働く少女が実はアイドルの卵だった … それを知りつつ、敢えて声を掛けず遠くから眺めるという今の状況。

個人的には嫌いじゃないですね ~ 」


雰囲気に酔う一郎。

「黙っててくださいよ … っていうか、帰ってくださいよ!」

… … … … …

「私も今の自分、嫌いじゃないよ」

テーブルに料理を並べながら、そうユイは言いました。

意外な顔をする男たち。

「アキちゃんのおかげで、田舎の良さにも気づいたし、チヤホヤされなくなった代わりに陰口叩く人もいなくなって … 皆優しく見守ってくれるから、満足してるよ」

そう言うとユイは、カウンター内に戻って、調理の続きを始めました。

< そんなこと言われたら、何も言えない …

ユイの決意は固い、アキは途方にくれました >


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2013年09月11日 (水) | 編集 |
第141話

開店間もない無頼鮨。

「いいな、それ」

刺身に包丁を入れている種市の手首に結んだ復興ミサンガを見て梅頭が言いました。

「えっ? ああ、天野が送って来たんです。

… 要りますか?」

「くれんの?」


興味を持ったような口調の梅頭に種市はアキから送ってきたうちのひとつを譲りました。

腕に巻いてあげると、梅頭は満足そうな顔をしました。

「ありがとう」

「500円です」


一瞬唖然とした梅頭ですが、復興祈願と聞いて、快く義援金と書かれた貯金箱に500円玉を入れました。

「ありがとうございます!」

… 磯野に言われて、アキが送ってよこした抱えきれないほどのミサンガです。地元のためにひとつでも多く売り捌けという磯野の無言のメッセージでした。

… … … … …

「こんばんは ~ 」

鈴鹿ひろ美が水口を従えてやって来ました。

「奥よろしいかしら?」

いつもの一番奥の座敷に腰を落ち着けたふたり。

… … … … …

「お買い上げ、ありがとうございます」

ひろ美と水口もミサンガを購入してくれました。

種市が引っ込むと水口は台本を取り出して言いました。

「じゃ、明日撮るシーンを順番に行きますね」

ひろ美が酔ってしまう前に台本のセリフ合わせです。

< 7月に入り、我がスリーJプロダクションの看板女優、鈴鹿ひろ美も本格的に仕事を再開しました >

『おなご先生、絶賛奮闘中』という新しく始まるドラマの主役に決まったのです。

「先生、3年間どうもありがとう」

「皆も卒業おめでとう … この学び舎は今年で無くなっちゃうけど、思い出は消えないからね。

さあ、好きなことを書いていいわよ」

「やった ~ 」


ひろ美は、一瞬迷うような表情を見せましたが … ふたたび、台本に目線を落としました。

「 … それから先生、ずっと言いだせなかったことがあるんです」

「えっ?」


今までただ台本を棒読するだけだった水口がリアクションを入れました。

「そろそろ、身を固めようと思います」

「あれ?」


あせって台本をめくり出す水口。

「来月、結婚を発表することにしましたので、記者会見のセッティングをしてください」

いくら台本をめくっても、今のセリフが見つかりません。

「あれ? … 何ページですか?」

… … … … …

「じぇじぇ、水口さん結婚するんですか?」

水口から電話で「結婚をする」と聞いたアキは目を丸くしました。

「俺じゃないよ、鈴鹿さん」

何故か、純喫茶アイドルのカウンターでエプロン姿の水口でした。

「ああ …

じぇじぇじぇじぇじぇっ!


一瞬納得しかけたアキですが、さっき以上の驚きです。

「『じぇ』5つか、妥当な数だと思う。

春子さんも相当驚いてるし、マスターはショックで寝込んじゃうし … 」


そう言いながら、椅子を並べて横たわっている甲斐の頭におしぼりを乗せました。

「今、俺が店番してる」

テーブル席の方に春子と正宗、向かいにひろ美たちが座っています。

「え、でも確か鈴鹿さんって太巻さんと … 」

「つきあってたっていうか、別れてなかったみたい」

「じぇじぇ ~ 」


ひろ美の隣に座っている … 結婚する相手は、当然のごとく太巻でした。

… … … … …

「噂は本当だったんですね … おふたりがご夫婦だったという」

先ず、正宗が口を開きました。

「始まったから切るね」

水口は電話を切りました。

「内縁、内縁、内縁ですけどね」

「役所に届は出してなかったの」


不機嫌そうな顔の春子が尋ねました。

「いつから?」

「ふふふ … いつからにする?」


いたずらっぽく笑ったひろ美、やや緊張気味な太巻の顔を覗きこみました。

「いつからにする? じゃなくて、事実を話してください」

「でも社長、女優としてイメージがありますから … 」

「それは私が考えますから、先ずは本当の話を」

「彼女とは、事務所を立ち上げた時、つまり君が僕に愛想を尽かして、田舎に帰るといった日」


ひろ美に代わって太巻が答えました。

「僕が引き留めた時だ!」

春子は驚く正宗と顔を見合わせた後、太巻に確認しました。

「平成元年?」

「平成元年、平成元年」


うなずく太巻、微笑むひろ美。

「覚えやすいんです」

「携帯電話、バカデカかったよね」


幸せそうなふたりを前に春子は面白くなさそうにソッポを向きました。

… … … … …

しばし、会話が途切れた後、ひろ美が話しはじめました。

「これまでも何度か話す機会はあったんです。

ちゃんとしようっていうか、式を挙げて、ブーケもトスして、新婚旅行も行って … 」

「やるからには大きくスポーツ新聞の一面も飾りたいですし、式も生中継したいですし、司会は徳光さんに面白くやっていただきたいし、ブーケもカバちゃんに面白くキャッチしていただきたいし … ハワイもね、行くなら改編期に特番からめてと … 」

「根っからのプロデューサーなの」


苦笑いする春子。

「これもまあ、ズルズル引き伸ばしてもダメだと思って、10年ほど前に会場を抑えたんですが …

その日、たまたま他局でアントニオ猪木が上空3,000メートルからスカイダイビングをするということで … 」

「国立競技場ね、見たよテレビで」


体を起こしながら甲斐が言いました。

「 … よりにもよって、アントニオ猪木の晴れの舞台の日にカブってしまうなんて」

「それが、どうしてこのタイミングで?」

「やはり震災の影響ですよね」


ひろ美は答えました。

「何でもかんでも … 」

小声で吐き捨てた春子でした。

聞き返したひろ美、春子は気にせず続けるよう促しました。

「あのような未曾有の災害を経て、当たり前に昨日と同じ明日が来るわけじゃないって、私も彼も考えて、被災地を回って、できる限りのことをして …

で、ふと我に返って、残りの人生を想像した時に … なんだろう?

ふふふふふ、そばにいて欲しいなって、思ったんです」

「お互い、自然にそう思えたんです」


… … … … …

「震災婚ですね … 流行ってるみたいですよ、今。

『震災婚』とか『絆婚』とか言うんですって」


正宗の話にうなずくひろ美、太巻がつぶやきました。

「なんか … やだな」

「えっ?」


怪訝な顔をするひろ美、太巻は慌てて言い直しました。

「いや、しますよ。

震災婚上等、こうなったら派手に … とは、いきませんけど、男としてケジメをつけます」

「どうかしら? 社長」


ふたりの話をひと通り聞いた春子ですが … 答えに困りました。

「どうって、私に聞かれても … 」

実際、春子がいいの悪いの言う問題ではないのです。

「でも、さっき、何でもかんでもっておっしゃったから」

「あ、ごめんなさい」


『何でもかんでも』震災にかこつけるような風潮を快く思っていなかったので、思わず口に出てしまったのです。

「僕は素敵だと思います」

正宗の言葉に驚く春子。

「きっかけは何でもいいんです。

ずっとそばにいて見守ってきた一番の理解者と20年越しに結ばれるなんて … 素敵だと思います」


うれしそうに笑って、太巻の顔を見たひろ美。

「あれ、自分を重ねあわせてますよね?」

水口が甲斐にささやきました。

「女優として、アイドルとしてのイメージを優先し、独身を貫き、そんな鈴鹿さんを太巻さんは陰ながらサポートして … うううう」

まるで自分の言葉に酔っているかのような正宗、涙がこみ上げてきて言葉に詰まりながらも言いました。

「 … 長い間、ご苦労様でした!」

とうとう泣き崩れました。

「あ~あ、泣いちゃった」

「一番関係ないのにね」


あきれる傍観者の水口と甲斐。

… … … … …

「 … 私は、よく分からない」

春子は笑顔を作ろうとしましたが、うまくいきませんでした。

「分からない?」

ひろ美に尋ねられてうなずいた春子。

「鈴鹿さんのせいで私は歌手の道をあきらめて、結婚して家庭に入ったんですから … それは事実なんです。

もう気にしてませんけど。

だから、鈴鹿さんが捨てた方の人生を代わりに歩んできたような …

妻として、母として、家族がいたことで保っていたんだなあ、私はって … 今、改めてそう感じて、ビックリしてます」

「春子さん … 」


口を挟んだ正宗。

「結婚とか、おめでたいって一度も思ったことないけど … でも、今『おめでとう』って言いそうな自分にビックリしてます」

「私が歌が下手じゃなかったら?」


春子は慌てて否定しました。

「いいえ、そうじゃない! … むしろ、音痴だったから彼と知り合えて、アキが生まれたんです!

… 音痴、様様です。」


… … … … …

「ふふふ、そうよね ~

私が女優一筋でやってる間に、アイドルから母親になり、スナックのママを経て、今や社長だもの。

あなたの方が、目まぐるしいわよね?」


変わらぬ笑顔のひろ美ですが、その手は力一杯に太巻の腕をギリギリとつねっていました。

「そうですよね … おめでとうございます」

春子は吹っ切れたかのように笑顔になって、頭を下げてふたりを祝いました。

ところが …

「ひどいっ!!」

泣き顔のひろ美が突然立ち上がって叫びました。

「音痴様様ってあんまりよ!」

「ごめんなさい!」


ここは素直に春子は謝りました。

太巻の顔を窺がうひろ美、コクコクうなずいています。

「いいの ~ うふふ」

笑顔に戻り、腰を下ろしました。

< 音痴発言の是非はともかく、ふたりの結婚は明るいニュースとして、それなりに世間を騒がせました >

… … … … …

無頼鮨。

「岩手県大船渡市では、震災後初めてとなる定置網漁が今朝行われ、サバなどが水揚げされて … 」

テレビから流れてくる被災地のニュースに目を奪われて、仕事する手が止まっていた種市、梅頭に注意されました。

「すいません … 」

「気になるのか?」


種市はうなずきながら、もう一度謝りました。

… … … … …

< そして、8月に入ったある日 … >

「こんにちは ~ 」


浜へ向かう坂道、瓦礫を片付ける人たちに挨拶しながら、アキは自転車を漁協の仮事務所へと走らせていました。

坂を下りきった辺りに、見覚えのある車が止まっています。

『安部そば』 … 小百合のまめぶ販売のバンでした。

「じぇじぇじぇっ!」

事務所へと急ぐアキ。

「ねえねえ、安部ちゃんのクルマあったよ!」

慌てて飛び込んできたアキを見て笑う一同。

「アキちゃん!」

小百合はすでに事務所に上がって皆と談笑していました。

「ただいま!」

「なすて ~ 安部ちゃん、なすて?!」

「アキのことが心配で、お盆まで待てなかったんだと」


かつ枝がからかうと、小百合は照れて打ち消しながら答えました。

「3年頑張って、当初の目標も達成できたし … 」

「100万食、売り切ったんだと」


横から珠子が言いました。

「じぇじぇじぇっ!」

「そばとうどんも入れてな …

安部小百合、晴れて『まめぶ大使』卒業です」


皆に向かって敬礼する小百合。

「お疲れ様!」

拍手、喝采、皆からの労いの言葉。

「すげえな、安部ちゃん、かっけえよ ~ 」

「やめてよ、恥ずかしい」


謙虚な小百合は、しきりに照れまくっています。

「おら、誇りに思うど。

安部ちゃんが、おらの『落武者』だったなんて … 」

「影武者ね、影武者! … 『落武者』なんてやってないから」


組合長は、どっちでもいいと言いましたが、拘る小百合です。

「もう20歳になるのに『影武者』と『落武者』の違い分からないなんて、そんなの恥ずかしいよ」

「 … ごめん」


… … … … …

「 … 流されちゃったんだね … 海女カフェ」

小百合に言われて、アキの表情が少し曇りました。

「そうか ~ 3年前は、まだねがったもんな」

「なんだか、遠い昔みたいな気するな ~ 」


しみじみと、美寿々と弥生。

「見たかったなあ、アキちゃんの作った海女カフェ … 」

壁に何枚か貼ってある写真を見ながら、小百合は本当に残念そうにつぶやきました。

「見れるべ … おらが、もう1回、海女カフェ作る!」

立ち上がったアキ。

「そこで、安部ちゃんにまめぶ作ってもらう!」

アキを見つめる小百合。

「花巻さんとふたりで、おかわり自由のまめぶばーやってもらう!

コキ使ってやる!」

「頼もしいこと!」


アキのひと言で、沈みかけた雰囲気が吹き飛んで皆に笑顔が戻りました。

< アキは決意を新たにしました。

安部ちゃんやユイちゃん、夏ばっぱ … 町の皆が笑顔になれるように、ここにもう一度、海女カフェを造るんだ! 

そのためにも、客を呼ばねば … すっかりウニが減ってしまった袖が浜の海をどうにかして、元に戻さなければ … >


浜から海を見つめていたアキ、高まる思いに声を上げました。

やるど ~ !!

「がんばってね」


声を掛けてきた通りすがりのおばさんに笑顔で返したアキでした。

… … … … …

< お盆を待たずに、北三陸を訪れた者がもうひとりいました >

大きな荷物、食料品を乗せたキャリーを曳いて、駅舎に入ってきたのは … 種市でした。

「あ、すいません、どいてください」

リアスからウニ丼の詰まった番重を抱えて出てきたのはユイでした。

「ああ、重い」

ユイは、種市だとは気づかずに番重を台に乗せました。

「ユイ … 」

聞きなれた声に振り向くユイ。

「 … ただいま」

「 … おかえり」


… … … … …

種市の帰郷、ユイとの再会 … アキはまだ知らず、海を見つめていました。

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2013年09月10日 (火) | 編集 |
第140話

「私はいいや … 」

アキとふたりで駅舎に出てきたユイは、そう口にしました。

「いいって?」

「だから、もう表舞台に立つのはいいっていう意味」

< 何がユイちゃんを変えてしまったのか … アキは自分の目で確かめたかった。

震災から4ヶ月が経っても、港には船が1艘もなく、閑散としていました >


「『ミス北鉄』とか、『潮騒のメモリーズ』とか … 歌ったり、踊ったり、潜ったり … それは、私にとって今できることじゃないし、やるべきことでもないからさ」

… … … … …

アキは大吉に無理を言って、ユイと大吉たちが乗った電車が閉じ込められたトンネルへ連れて行ってもらいました。

「足元さ気をつけろ」

「うん」


大吉に先導されて、トンネルへ入って行くアキ。

< この中にユイちゃんは、車両ごと閉じ込められたんだ … >

「見るな! ユイちゃん、見てはダメだ … 」

「 … もう遅い」

… … … … …

真っ暗なトンネルを抜けると、アキの目の前に広がったのは … ねじ曲がった線路が瓦礫によって寸断され、手つかずのまま放置されている光景でした。

< 言葉を失いました。

あの日、ユイちゃんが見た景色はこんなもんじゃなかったはず …

それも含めて、アキはユイが負った心の傷の深さを思わずにはいられませんでした >


… … … … …

袖が浜の灯台。

『海死ね』 … アキは若かりし頃の春子が書いた落書きに手を当ててみました。

< ユイちゃんだけじゃない … 夏ばっぱも、海女クラブの皆さんも、勉さんも、大吉さんも、菅原さんも、皆皆、多くのものを失い、それでも笑ってるんだ >

ふいに駆けだしたアキ。

「いてっ」

何かに足を取られてつまずいてしまいました。

「どうした、アキ?」

偶然通りかかった夏でした。

「夏ばっぱ、これ何?」

アキの足を引っかけたのは、ボロボロになった底引き網でした。

津波で打ち上げられたものが無造作に積み上げられて浜の至る所に寄せ集めたままになっているのです。

網を手にしていたアキは、手首に巻いたミサンガと見比べていたかと思ったら … いきなり走り出しました。

… … … … …

アキが駆け込んだのは、袖が浜漁協の仮事務所でした。

「花巻さん、これでミサンガ作るべ!」

「あ?」

「復興祈念のミサンガ作るべ!」

「底引き網でミサンガ?」


横で聞いていた組合長が怪訝な顔をしました。

「んだ、ミサンガの材料が高くて買えねえって、観光協会の栗原さん言ってたべ?

んだから … 」

「アキ、それはダメだ」


厳しい口調で却下したのはかつ枝でした。

「なすて? よぐ見たら綺麗だし、ただ捨てるにはもったいねえべ?」

「違う、捨てるに捨てられず置いてあるのだ」

「海ん中にも、岩に絡まった網がいっぺえあるんだぞ」


珠子と磯野がアキに網が放置してある事情を教えました。

「もったいねえな … 」

どうしてダメなのか、不満顔のアキを諭すように組合長は言いました。

「アキちゃん、底引き網には漁師の魂が宿ってるんだ … 神聖なものなんだ」

… … … … …

「だったら、尚更、放っとく手はねえべ?」

アキの後を追って来た夏が、息を切らしながら事務所に入ってきました。

「夏ばっぱ?」

「網で作るから、意味があるんだ。

手首さ巻いたミサンガ見るたびによ … 1日も早く漁さ出るべって気になるべ?

それが、復興のシンボルだ!

… しかも、売り上げで新しい網が買える、一石二鳥だあ!!」

「金取んのか ~ ? 」


美寿々が、あきれたように夏に聞きました。

「あったりめえだ! … 転んでもタダで起きねえ北三陸だぞ ~ !」

「さすが夏ばっぱだ!」


夏のおかげで、組合長を始め、かつ枝たち皆が納得してくれました。

… … … … …

リアス。

早速作った試作に勉さんが琥珀の珠を取り付け、それを弥生が仕上げて、網のミサンガが形になりました。

カウンターに腰かけている男どもを見比べた弥生は、ヒロシの手首を取ると今出来たばかりのミサンガを結びつけました。

「おおっ!」

「いいね ~ 復興祈願、海女のミサンガ・パート2 … いぐね?」


歓声が上がり、大吉の言葉通り、底引き網のミサンガの出来はなかなかのものでした。

拍手!!

「 … っていうか、何でストーブさんの手さ結んだの?」

アキに尋ねられた弥生は、申し訳なさそうに答えました。

「ごめん … なんか一番、幸薄そうな顔してたから … 」

… … … … …

「こんにちは、帰ってきた海女のアキちゃんです!」

底引き網のミサンガを観光協会のホームページに載せて宣伝するためのビデオ撮影です。

「このたび、北三陸市と北鉄が協力して … ごめん止めて」

何故か、言葉に詰まったアキは撮影役のヒロシにカメラを止めさせました。

「何、何?」

「 … おらひとりじゃ、もの足りねえべ?」


横で傍観しているユイも一緒にビデオに入るように頼みました。

「私はいいの … アキちゃん、芸能人なんだから、自信持って!」

しかし、カメラの前に立つことは頑なに断って、アキを励ますユイでした。

仕方なくうなずくアキ。

「このたび、北三陸市と北鉄が協力して、復興祈願・海女のミサンガを作りました!」

… … … … …

その日、種市から電話がかかってきました。

アキが送った復興祈願のミサンガが届いたからです。

ふたりが話をするのは、アキが北三陸へ帰ってから、初めてのことでした。

「じゃあ、弥生さんやかつ枝さんが作ってるのか、これ?」

不安そうに尋ねる種市。

「いや、先輩さ送ったのは、おらが作った」

「いがった ~ 弥生さんやかつ枝さんの願い込められても困るからな … ありがとう」


アキはちょうど、洗濯した海女の絣半纏を干していたところでした。

「元気か?」

「うん、北鉄は、ひと駅しか動いてねえし、漁船も出てねえけど … 皆、元気だ」

「皆でなくて、天野のこと聞いてんだけど」

「ああ、ごめん … あ、磯野先生から連絡なかった?」


潜水土木科の後輩と海底調査をやっているので、種市に帰ってきて手伝ってほしいようでした。

「でも、もう何年も潜ってないし … 板前になるって決めたからな。

お盆に帰るって、いっそんさ伝えてけろ」


アキは、居間で横になっている夏の顔を覗きこみました。

両目をしっかり閉じています。

起きている証拠です。

久しぶりの彼氏との電話だけど、滅多なことは言えないとアキは思いました。

「お盆か、早く会いでえなあ ~ 」

「うん、自分もだ」

「また電話してけろ」


夏ばっぱが本当に寝ている時に …

「うん、じゃあな … 」

… … … … …

「電気代も電話代ももったいないべ」

いつの間にか真後ろに立っていた夏に話しかけられて、電話を切ったばかりのアキは驚いて振り返りました。

「ばっぱ … 」

「よし、晩飯でも作るか」


外に出て、干していたワカメを取り込み始めた夏。

後を追って外に出てきたアキは、おもむろに夏に尋ねました。

「夏ばっぱは、怖くねえの?」

「 … 怖い? 何が?」

「海だ … 津波、見たんだべ?」

「見たよ … 高台からな」


手を休めることなく、答えた夏。

「潜りたぐねえとか、思わないの?」

夏は振り向きました。

「潜らなければ、どうやって生きていくんだ?」

「リアスもあるし、ミサンガ作れば、小遣い稼ぎになるべ?」

「 … それじゃあ、張り合いねえなあ」


夏はワカメを手に家に入って行きます。

アキは後を追いながら問い続けました。

「元々が忙しすぎるんだよ、夏ばっぱ!

もう、67歳だべ? … 四捨五入したら、100歳だべ」

「どこで、四捨五入してんだ?」


あきれる夏。

「また、体壊したら大変だべ? 今度はママいねえし …

皆、自分のことに精一杯だ」


夏は何も答えずに台所に入って行きます。

「ウニいねえし … せめて、潜るのは辞めだらどうだ?」

… … … … …

黙々と台所仕事を続ける夏。

「おら見ちまったんだ … 流された船とか、車とか、ひん曲がった線路とか …

あんな光景見たら、普通逃げ出したくなるべ?」


… 夏は、ようやく手を休めて静かに話しはじめました。

「いいかアキ、海が荒れて大騒ぎしたのは、今度が初めてじゃねえ … 50年前のチリ地震の時も大変な騒ぎだった。

まさか、生きてるうちにもう1回、怖い目に合うとは思わねがった」


アキは夏の前に座りました。

「でも、だからって、海は怖えって、決めつけて潜るのやめて、よそで暮らすべなんて …

おらそんな気にはなんねえ」


… … … … …

「皆もそうだ。

例えば、漁協のかつ枝と組合長な … ひとり息子が19歳の時に波に飲まれてよ、その遺影だの遺品だの全部流されて … それでも、ここで笑ってる。

笑って暮らしてる、かつ枝と長内さんにさ、なあおめえ、『ここにいたら、危ねえよ』だの『海から離れて暮らせ』だの言えるか?

… おら言えねえ。

おらだって、もしここ離れたら … 忠兵衛さん、どこに帰ってくるんだ?

高原のログハウスか? それとも、世田谷のマンションか?」


アキは忠兵衛の姿を思い浮かべました。

「 … 似合わねえな」

思わず笑うと、深刻だった夏の表情も緩みました。

「ふふ … だから、ここで待ってるしかねえんだ。

忠兵衛さんと引き合わせてくれた海が、おらたち家族のおまんま食わせてくれた海が1回や2回、へそ曲げたからって、よそで暮らすべなんて …

おら端っから、そんな気持ちで生きてねえど」


そう言いながら、真っ直ぐにアキを見つめた夏。

「うん」

夏の話で何か吹っ切れたような気持ちになりました。

… … … … …

「いるか ~ ?」

「夏さ~ん!」


家の外から笑い声が聞こえてきて、突然にぎやかになりました。

漁協でミサンガを編んでいた長内夫妻と磯野が酒と肴持参でやって来たのです。

「 … 噂をすれば、北三陸のベストカップル!」

夏が出迎えるより早く、家に上り込んできたかつ枝が聞き返しました。

「え? 誰と誰が ~ 」

「組合長と『眼鏡会計ばばあ』だ!」

「この野郎 ~ 」


アキが笑いながら憎まれ口を叩くと、かつ枝はうれしそうに抱きついてきました。

「天野、天野、ほれミサンガ! 種市さ、送ってやれ!」

磯野がよこした作りたてのミサンガ。

アキの手から持ちきれないほどのミサンガがこぼれました。

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2013年09月09日 (月) | 編集 |
第139話

2011年7月1日 海開き。

「よし、ウニ取るど ~ !!」

歓声に送られてアキは、海に潜りました。

< 2011年の夏が始まりました … が、あれ?あれ、あれあれ? >

ほどなくアキは水面に顔を出してしまいました。

「どうした、アキ?」

ウニを取った訳でもないのに … 不審に思った美寿々が声を掛けました。

「ウニ、いねえ!」

「またまた ~ よく潜ってみろ」


アキはうなずいて、再び潜ります。

しかし、やはりウニは全く見当たりません。

< 2年前の夏、岩にびっしり貼りついていたウニが今年はいません >

… … … … …

観光協会。

< 震災後、始めての首脳会議が行われました >

出席者は … まあ、お馴染みの顔ぶれ総出席です。

司会進行役の大吉が、ホワイトボードに何やら長たらしいアルファベットを書いています。

ちょうど、やって来たユイがアキの隣に座りながら尋ねました。

「あれ、何のパスワード?」

『KDTOK 3RKDNSP MMMYP GB』

「転んでも ただで起ぎねえ 北三陸を 今度こそ何とかすっぺ 目にもの見せてやっぺ ゴーストバスターズ」

… の略だと、大吉は笑顔で拳を上げました。

「長えよ、大吉!」

「ごめん … 気持ちが先走ってまって」


かつ枝に非難された大吉が肩を落としながら、ホワイトボードに書いた文字を消そうとすると … 弥生が、大声を上げました。

「あ~あ … まだ書き写してねえべ!」

書記でもないのに、変なところに律儀な弥生です。

「懐かすぃ ~ こういう無駄なやりとりを震災前は、しょっちゅうやってたね … 」

「いちいちしんみりすんな!」


余計なことが多くて肝心な議事を進めることができない大吉を夏がたしなめました。

… … … … …

< 大吉さんが、センチメンタルなのには訳がありました >

肩を落としたままの大吉に代わって、立ち上がった吉田が新聞を手に話しはじめました。

「こちら、ご覧ください」

北鉄の記事が一面に載っています。

『復旧に80円

北三陸鉄道復旧に課題』

「 … 80円?」

「なんてね … 」


吉田は指で隠していた文字を見せました。

「80億円?!」

「宮古から北に延びる北三陸鉄道、釜石から南に延びる南三陸鉄道 … どちらも大きな被害を受け、その復旧にかかるお金が … 」


80億円と試算されているのでした。

「じぇじぇじぇじぇじぇ!」

桁違いの額に目を丸くした一同。

「こりゃもう、おらたちでどうこうできるレベルの金額じゃねえ、国の保護を期待しねえと」

「出すのか? 国が … そったら、金?」


深刻な顔をした大吉に組合長が尋ねましたが、簡単に答えることができません。

「いやあ、こんなこと言っちゃ何だが … もっと有効に使うべきでねえの?」

商工会長の今野の意見も、もっとものこと … 食って掛かる吉田を止めながら大吉は言いました。

「止めろ吉田君、これが偽らざる市民の本音だ!」

「いや、言っちゃなんだがさ … 」

「言っちゃなんなら、言うな、ブティック野郎!」


吉田は腹いせに、ジオラマ上のブティック今野の模型にハナクソをつけました。

… そう言えば、震災で無残に破壊されたはずのジオラマが見事に修復されています。

観光協会が復興事業として優先的に取り組んだのがジオラマの修復 … ということ?

… … … … …

「確かに商工会長の言うとおり、税金使って復旧する意味あんのかって声は無視できねえ。

でも、同じように復旧を願う声も無視できねえ … なあ、ユイちゃん?」


ユイを見る一同。

「えっ?」

いきなり大吉に同意を求められたユイは、戸惑っています。

「おらとユイちゃんが、閉じ込められた車両が倉庫さ帰って来た時 … 」

< あの日、トンネルで停車し、津波の被害を逃れた列車は、『奇跡の車両』と呼ばれ、復興のシンボルになりました >


車両基地に戻ってきた『奇跡の車両』を出迎えたのは北鉄の職員だけでなく、多くの市民も駆けつけました。

その中にあの『鈴木のばっぱ』もいました。

「危ねえど、鈴木のばっぱ … 何してんだ?」

車両の前に立って動かないばっぱに大吉は声を掛けました。

「何って、おめえ … おらのこと守ってくれた北鉄さ、お礼言わねば。

1日も早く、元のように走りますように … 」


ばっぱが手を合わせると、周りにいた皆も同じように手を合わせ … そして、夕日に照らされた車両を愛おしそうに見つめていました。

その光景に感動している大吉と吉田 …

「おら、言えねがった … 今後、北鉄は存続の危機にさらされます。

あの車両も、もう二度と動かねえかもしんねえ、とは … とてもじゃねえが、言えねがった」


… … … … …

「市民だけじゃねえ、多くの鉄道ファンから存続を望む熱いメッセージが届いてる」

「これは、ほんの一部です」


ヒロシが段ボールから、千羽鶴や手紙、北鉄を描いた絵、メッセージの寄せ書き等を取り出して皆に見せました。

「俺は腹くくった … 大事な市民の足として、観光資源として、たとえひとりでも利用者がいる間は走らねばなんねえ。

国営でも民間でもねえ、第3セクターだからこそ、非常時には採算度外視して走るべきなんです!」

「んだんだんだ!」


大吉の言葉に拳を振り上げて叫ぶ弥生。

「被災したのは、おらたちだ! … 国が何と言おうと、被災者がいるって言ってるんだから残せ!」

かつ枝も興奮気味に言いました。

「んだんだんだ!」

組合長も立ち上がりました。

「こうなったら、北鉄の全線開通を最終目標にして、復興計画を推進すっぺ!」

「んだんだんだ!んだんだんだ!んだんだんだ!」

「いいぞ、弥生さん! もっとコイン取れ!」


各地から寄せられた応援の品々やメッセージに奮い立った者もいましたが、冷静に冷めた目で現実を見ている者もいました。

「 … んじゃ、銭はどうする?」

水を差したのは、夏でした。

「このご時世だ … 国の復興予算を北鉄さ、回してくれるとは思えねえ」

「 … んだんだんだ ~ 」


撃沈する弥生。

< 大変だ ~ 大人たちの話を聞いて、アキは途方に暮れていました。

海女カフェを建直してくれなんて、言える空気じゃない … >


アキは助けを求めるような気持ちでヒロシのことを振り返りました。

< 観光協会の海女カフェ担当者は … 頼りになりません >

紙に落書き … 弥生の似顔なんか描いています。

… … … … …

「そろそろ、出るね」

ユイがアキの耳元でささやきました。

「えっ?」

「ごめん、お店開ける時間だから」


そう言うとユイは、夏にも目くばせをして部屋から出て行ってしまいました。

… 誰の話にもほとんど表情も変えず、発言することもなくただ黙ったまま座っていたユイでした。

… … … … …

部屋を出ようとしたユイは、ちょうどやって来た父・功と鉢合わせしました。

「 … 何、何、何の話?」

「寝坊した人には教えません、じゃあね」


さっさと出て行ってしまいました。

ユイと入れ替わりに席に着いた功、ユイが言ったように寝坊したのか髪の毛に寝癖がついたままです。

… … … … …

「夏さん、こないだの海開きはどうだったんですか?」

今野が尋ねました。

「それこそ、アキちゃん効果で集客増えたんでねえの?」

客足は例年通りでしたが、そもそも …

「ウニがいねえ」

落胆する一同。

「やっぱり、津波のせいですか?」

恐る恐る聞いたアキにしほりが何枚か写真を手渡しました。

「じぇじぇじぇっ!」

そこには、無数のウニが瓦礫等と一緒に浜に打ち上げらた光景が写っていました。

「袖が浜の例年の水揚げの80%の量に当たるウニが死んだ」

哀しげにそう話した組合長。

「やっと取ってもよ、震災の影響で東北で取れる海産物は危ねえでねえかって、ふ、ふう … 」

言葉が出てこない弥生。

「風評被害か?」

「ふざけんな!

何度も何度も水質調査して、安全だって証明されたから、おらたちは潜ってるつうのによ!」

「北鉄もダメ、ウニもダメかあ?」


盛り上がりかけた勢いが、まるでしぼんでいくようです。

「せっかくアキちゃんが帰ってきたのに、宝の持ち腐れか ~ 」

「ユイちゃんも一緒に海女さんやってくれたらなあ ~ またオタクさんが食いつくんだけど … 」


嘆く大吉と吉田。

… … … … …

「そろそろ、発言したら?」

ヒロシが、黙ったままの父・功にそう言いました。

「いや、いいよ … 寝坊しちゃったんだからさ、しゃべる資格ないから」

しかし、夏たちに促されて、ようやく話しはじめようとした時 … 遮るように突然アキが立ち上がりました。

「ミサンガ!!」

出鼻をくじかれた功、アキはそのまま思いついたことを話しはじめました。

「今、手首さ1本だけ残っているミサンガ見て、思い出したんですけど …

ミサンガまだ売ってますか?」

「それも今年は自粛してるの … 材料費が意外とバカになんねえの」


申し訳なさそうに答えた、しほり。

「そもそも、ミサンガってこう、チャラチャラした感じでしょ?」

余り快く思っていないのか、吉田?

「ただ募金だの義捐金だの集めるより、いいと思うんだけどな … 」

あきらめきれないアキです。

「復興祈願のミサンガ … いぐねえ、勉さん?」

「いいと思う! 何しろ、琥珀は順調ですから!」


しかし、他に話に乗ってくる者はいない … やや空回り気味のふたりでした。

… … … … …

「足立先生、復興予算は正しく市民に支払われるんだべか?」

「いやあ、どうなんでしょうかね?」


夏が功に尋ねましたが、返ってきた答えはまるで他人事のようでした。

それを保に指摘されると、功は声を大にして言いました。

「他人事だよ … もう議員じゃないからね」

寝耳に水、驚く一同。

「えっ、あら? … あはは、言ってなかった?」

立ち上がって畏まる功。

「思うところがありまして … 辞職しました」

「じぇじぇじぇっ?!」


… … … … …

「ああっ! よぐ見だら、それ議員バッジでねぐ、シジミの殻だ!」

保が指差した先、功のジャケットの襟元には議員バッジの代わりにシジミの殻が着けてありました。

「あはは、二日酔いにはシジミ汁がいいって言うから」

屈託なく笑った功。

「な、なすてこのタイミングで辞めるかな ~ ?」

功の力を必要とする時期なのに … 唖然とする大吉。

しかし、功は平然と話を続けました。

「もうすぐ、市長選ですから!

え ~ 来年の北三陸市の市長選に立候補することにしました!」


… 静まり返った一同に向かって功は言いました。

「ここで、じぇじぇじぇ、だろ?」

「 … 親父、本気で言ってるのかよ?」


息子のヒロシでさえ初耳のことです。

「私が市長になった暁には、北鉄の1日も早い全線開通を目指して、復興計画を立て直します!」

… … … … …

その夜、功は梨明日で改めて、市長選への出陣する決意表明を行いました。

功と一緒にステージ上がったよしえがマイクを持ちました。

「ええ、このたび主人が大きな決断をしました。

本当言うと体調面でまだ不安もあるんですが … 何より、いろいろとお騒がせした足立家ですので … 」


ここで、功がヒロシとユイもステージに上がるように指示しました。

「 … 今度は少しでも皆さんに恩返しできたらと思います」

「え~ 今後とも、足立功同様、足立家をよろしくお願いいたします!」


功が締め、揃って頭を下げる足立家の4人。

拍手、そして歓声。

「いいぞ、ついでに『潮騒のメモリーズ』も復活してまれ!」

保の掛け声に笑顔のアキ … しかし、ユイは無表情のまま …

… … … … …

「私はいいや … 」

アキとふたりで駅舎に出てきたユイは、おもむろにそう言いました。

「いいって?」

「だから、もう表舞台に立つのはいいっていう意味」

「 … ユイちゃん?」

「ごめんね、どうでもいいっていう意味じゃないよ」


荒れていた頃に言ったこととは違う … ということでしょう。

「こんな時だし、北三陸のために、っていうか東北のためにかな? … 今できることとか、やるべきことをやるっていうのは立派っていうか、当然のことだと思う。

でも、『ミス北鉄』とか、『潮騒のメモリーズ』とか … 歌ったり、踊ったり、潜ったり … それは、私にとって今できることじゃないし、やるべきことでもないからさ」

< 返す言葉もありませんでした。

アキには想像もつかない体験をユイちゃんは、あの日したんだ … >


… … … … …

「ねえ、ユイ、マカロニどこ?」

店から出てきたよしえがユイに尋ねました。

「棚の左下 … え、何で?」

お通しのサラダを作るためと知ると、ユイは自分がすると言って席を立ちました。

「ごめんね … 海女カフェがオープンしたら、私も手伝いに行くから。

がんばって!」

「うん」


笑顔でそう返すしかなかったアキでした。

< その時のユイちゃんの表情は、あきらめたようにも、無理をしているようにも見えませんでした >

アキはふと、駅舎の壁に掲げられた、お座敷列車の時のふたり … 『潮騒のメモリーズ』の写真を見つめていました。

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2013年09月08日 (日) | 編集 |
さて、次週の「あまちゃん」は …

北三陸の観光協会で、久々に首脳会議が開かれた。津波による被害で、北鉄は廃線の危機に、袖が浜でもウニが壊滅的な打撃を受けていた。そんな中、足立功(平泉成)が北三陸市長選挙への立候補を表明、北鉄の存続を誓う。町は一丸となって復興の道を探り始める。アキ(能年玲奈)は「潮騒のメモリーズ」の再結成を夢見ていた。

潜りでえから、おらの好きだった海を取り戻してえ

アキは町を歩いてまわり、あらためて震災の被害の大きさに息を呑む。それでも潜り続ける北の海女たち。その笑顔の裏に隠された心の傷に気づき、心を痛めたアキは、浜辺に放置されている魚網を見つけ、復興のミサンガを作ることを思いつく。

ずっと言い出せなかったことがあるんです

突然、鈴鹿(薬師丸ひろ子)と太巻(古田新太)が、結婚を発表。春子(小泉今日子)と正宗(尾美としのり)は、驚きつつも祝福する。一方、北三陸には、種市(福士蒼汰)と安部(片桐はいり)が帰って来た。アキは「海女カフェ」再建への思いをあらたにする。

種市との再会を喜ぶアキ。一方、袖が浜の海底調査の結果、ウニの捕獲を自粛する必要に迫られる。しかし、夏(宮本信子)の掛け声で、海中の瓦礫(がれき)の撤去やウニの放流を急ピッチで行い、海女漁の復活を目指すことに。

私はいいや … もう表舞台に立つのはいいっていう意味

「潮騒のメモリーズ」を主人公にした番組が、復興企画としてもちあがる。だが、ユイ(橋本愛)はアキの誘いを断る。ユイは、震災のときに北鉄の車両に閉じ込められ、念願の東京行きもかなわず、大きなダメージを負っていた。

長い間、ご苦労様でした

あんたも北へ行くのね


春子と正宗が、甲斐を保証人として再婚に向けて動いていた。そんな中、水口(松田龍平)が春子に辞表を出し、「潮騒のメモリーズ」再結成のため、北三陸へ向かう。水口とユイは1年半ぶりの再会に。

やるど ~ !
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あまちゃんニュース
9月13日(金)は、『あまちゃん』を、音楽で楽しもう!
★秋の夜長のあまちゃんライブ 番組収録風景をご紹介。

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2013年09月07日 (土) | 編集 |
第138話

< 震災に屈することなく、北の海女たちは今年も海に潜ります >

夏を先頭に『いつでも夢を』を合唱しながら、浜から引き上げてくる海女クラブの面々。

「ちょっと先行ってて!」

思い立ったように列から離れて走り出したアキにかつ枝が声を掛けました。

「何だアキ、便所か?」

「海女カフェ寄ってく」


この坂を上れば、海女カフェはすぐでした。

「なすて?」

「懐かしいがら … 」

「やめどけ」


何故、弥生が止めるのか、理由が分からないアキに美寿々が言いました。

「 … アキちゃんが懐かしいと思うものは、もうねえよ」

すると、夏がアキの手を取って海女カフェに向かって歩き出しました。

… … … … …

< 旧漁業協同組合があった場所にアキが海女カフェを建てたのが2009年 … >

アキはようやく弥生たちがここへ来ることを止めた理由が分かりました。

海女カフェ … だった場所はブルーシートで覆われていました。

変わり果てた建物の中に入ると、そこは泥だらけ、いろいろなものが散乱していて、見る影もありません。

皆はアキになるべくならこの光景を見せたくなかったのです。

「袖が浜は、ここが一番被害酷かったんだ … これでも大分片づいたんだよ」

言葉を失くして、立ちすくんでいるアキに美寿々が教えてくれました。

「 … 魚は?」

やっと口を開いたアキの質問に片づけに来ていた組合長が答えました。

「死んだ … 全部。

水槽も壊れてしまったしな ~ ほら足元気をつけて」


アキは組合長に誘導されて、ステージがあった場所に立ちました。

「保険おりんのか? … いっぺえ、ローン残ってんだべ?」

現実的なことを聞いた弥生。

「金のことはいい、それよりせっかくアキが作ってくれた憩いの場が … 」

くやしそうなかつ枝。

アキが突然、しゃがみ込んで、床の泥を手で払い始めました。

そこに倒れていたのは『潮騒のメモリーズ』の看板でした。

< それは、ストーブさんこと足立ヒロシ君と種市君が中心になって、徹夜で作った看板です。

… 思い出の詰まった看板です >


… … … … …

「誰のせいでもねえんだ、アキ」

夏の顔を見たアキ。

「自然のいいところばかり利用して、自然の怖えところ目背げて … そのうち、忘れてまう。

それが、人間の傲慢さだ」


夏の言葉を聞き終わったアキは再び、看板の泥を払い続けました。

「さ、帰って、ひと眠りすっぺ」

それを合図に海女たちは出口に向かい始めました。

アキは … また突然立ち上がりました。

決めた!

アキの声に足を止めて振り向く一同。

「海女カフェ、復活させっぺ!」

「アキちゃん?」


呆気にとられる海女たち。

「ここさ、もう1回、海女カフェ作るべ!」

「おめえ、夏ばっぱの話聞いてなかったのか? 今」


目をキラキラと輝かせるアキに弥生はあきれたように言いました。

「大体聞いてた。

ようするに … 気にすんなって意味だべ?」


夏にそう尋ねたアキ。

一瞬驚いた顔をした夏ですが … 小さく微笑み返すと、うなずきながらそのまま外に出て行きました。

… … … … …

「正直、分がんねがった。

おらに出来ること、やるべきことって何だべって、ずっと考えてた。

東京でテレビ見でだら、あまりに問題が山積みで … 何万人のデモ行進とか、何100万トンの瓦礫とか。

正直、おらひとりじゃどうにもなんねえって気になっちまう」


かつ枝も弥生も美寿々もアキの話に真剣に耳を傾けていました。

「がんばろうとか、ひとつになろうとか言われても、息苦しいばっかりでピンと来ねえ」

そう言いながらアキは、よけた泥の中から現れたユイの似顔を見つめて微笑みました。

「でも、帰ってきたら、いろいろハッキリした。

取りあえず、人は元気だ! … 皆、笑ってる、それはいいことだ」


うなずく海女たち。

「食べるものも、まあある … 北鉄も走ってる、それもいいこと。

んだ、東京さいだら、いいことが耳に入って来ねえんだ。つれえことばっかりで …

あれ、何の話だ?」

「 … 海女カフェ?」

「んだ、おらが作った海女カフェが流された … 直すとしたら、おらしかいねえべ?

これぞまさにおらに出来ることだべ?」


海女たちはアキの話に感心していましたが、あまりにも途方もない話でもありました。

「無理だよ」

「あ、ユイちゃん」


水を差したのはユイでした。

ヒロシからアキが帰ってきたという連絡を受けてやって来たのです。

「 … 気持ちは分かるけど、無理。

これは現実だから、逆回転はできないよ」


… … … … …

袖が浜駅。

ふたりはホームに立ち、海を眺めていました。

カモメの泣き声、かすかに波の音も聞こえてきます。

「どう変わった?」

ユイはアキに尋ねました。

「え?」

「変わんないように見えるよね? 今日は海、穏やかだし」


あの日、この海が …

「何で帰ってきたの?」

「え?」

< 覚えてないんだ … アキは少し悲しくなりました >


『 … 怖くて行けない。アキちゃんが来てよ!』

「ごめん、言い方がキツかったね?」

戸惑うアキの顔を見て、ユイは明るい声で繕いました。

「でも、デビューして、これからって時期じゃん … 春子さん心配したでしょ?」

「ちょっと … でも、すぐ分かってくれた。

ママは、ママのやりでえこと見つかったみてえだし」


アキはユイが座っているベンチの隣に腰かけました。

「ユイちゃんは?」

「私が何?」

「 … 落ち着いた?」


アキが、一瞬迷ったことをユイは見逃しませんでした。

「ふふふ、言葉選ばないでよ … 落ち着いてるよ、私はずっと … 心配しなくても。

週3でスナック出てるし、彼氏できたし」

「じぇっ!」

「紹介しないよ、ダサいから」


そう言いながらも、スマホの待ち受け画面を見せました。

< 似顔絵? >

「ハゼとジミ・ヘンドリックスを足して2で割った感じ」


… 小太りの愛犬家ではありませんでした。

ユイの謙遜でなく、本当にハゼのそっくりな似顔絵です。

< 割れない … 2で割ったら、人間でなぐなる >

「でも、優しいんだ … 見た目ダサいけど、私のことすごく大事に思ってくれてるの。

ハゼ・ヘンドリックスだけど ふふふ」

「へへへ … 」


… … … … …

「 … 私も随分、考え方変わったよ」

ユイは立ち上がり、ホームをゆっくりと歩きはじめました。

「自分のこと、ツイてない女だと思ってたけど … もう不幸とか通り越して、悪運強いのかもって思うようになった」

あこがれの東京へと続いていたはずの線路が途切れていたのを目の当たりにしたユイ …

「東京へ行っても、私アイドルになれなかった気がする。

… 無理してる訳じゃないよ、本心で言ってる」


アキを振り返って言いました。

「アキちゃんみたいに皆に好かれて皆を笑顔にする才能 … 私にはないもん。

うん、これでよかったんだよ」

「そうがな?」


不満顔のアキ。

「そうだよ … っていうか、そうなの」

… … … … …

「で、アキちゃんは何で帰ってきたの?」

「決まってるべ!

ここが一番いいところだって、ユイちゃんに教えるためだ!」


アキも立ち上がって、どんどん歩いてユイの前に立ちはだかりました。

「1回も東京さ行ったことがないユイちゃんの代わりに、おらが東京さ行って芸能界とかこの目で見で、いろいろ経験して …

でも、結局ここが一番いい、北三陸が一番いいぞって、教えてやるためだ!」

「本当に? … 本当にここが一番いい?」

「間違いねえべ!」


アキは、そう言い切ると、親指を立てました。

「 … 大好きなアキちゃんがそういうなら、信じようかな」

ユイも親指を立てて笑顔で応えました。

握り拳を合わせるふたり。

「へへへ … 」

「ようし、決めた私。

こうなったら、ここから1歩も出ない! 東京なんか行かない!

私に会いたければ、皆北三陸に来ればいいんだもん、ねっ?」

「んだ!」


… それでこそ、ユイちゃんだ。

昔、「アイドルになりたい」と叫んだのと同じ場所でした。

「 … アキちゃん、帰って来てくれて、ありがとう」

… … … … …

7月1日 海開き。

「ああ、いい天気だ ~ 」

快晴の空を仰いで、伸びをした夏。

< 道のりは長え、でもやらねばなんねえ … わざわざ帰っていたんだから >

海開きのアナウンスの大役を任されたアキは、ひと足先に浜に仮設された漁協の仮事務所に向かっていました。

『おはようございます ~ 本日は7月1日、袖が浜海岸海開きです。

海女クラブの皆さんは、速やかに集まってください ~ 7時より、安全祈願のご祈祷を行います ~ 』

「 … あ、美寿々さん、代わってけろ!

おら、うっかり、普通のパンツ履いてきちまった … 濡れたら困るから、替りのパンツ取ってくる」


アキとアナウンス役を代わった美寿々が慌てています。

「アキちゃん、マイク入ってるよ!」

「じぇじぇっ!」


… … … … …

< 今年の海開きは復興祈願を兼ねた特別なイベントになりました。

震災後、わずか4ヶ月で海女の実演が行われると聞きつけ、地元の新聞やタウン誌の取材も来ました。

そして … >

「じぇじぇっ?!」


ヒロシがホームページにアップした『海女のアキちゃん・復活!!』の動画を見て、ヒビキ一郎をはじめとするオタクの一団が押し寄せてきたのです。

「やっぱり、天野アキは三陸の海が似合うって! … 東京じゃ、パッとしなかったもんね!」

「なんだとこの野郎!」


相変わらずの一郎の毒舌に腹を立てたアキを宥めたのは保でした。

「まあまあ、アキちゃん … アキちゃんとユイちゃんが揃う滅多にねえチャンスだもの。

ただ指加えて見てる訳にはいかねえべ ~ 」


保とヒロシ、それに大吉と吉田が一斉に上着を脱ぐとその下はお揃いの黄色いポロシャツを着ていました。

その胸には『北三陸を今度こそ何とかすっぺ』略して『K3RKDNSP』と描かれています。

「また?」

「はい、このポロシャツは向こうで売ってま~す!」


即売会を始める始末。

「よろしぐ頼む … だって被災地だもの」

「転んでもただじゃ起きない北鉄だ … よろしぐ頼むじゃ ~ 」


悪い顔をした保と大吉たちが、アキのことを頼りにして取り囲みました。

< 相変わらず、したたかさは健在です >

… … … … …

「アキ ~ はよ来い!」

夏から呼ばれたおかげでアキは、大吉たちから解放されました。

「よし、ウニ取るど ~ !!」

一郎たちの歓声に送られてアキは海に下りて行きました。

< 2011年の夏が始まりました >

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2013年09月06日 (金) | 編集 |
第137話

盛岡で乗り換えたバスはもうすぐ北三陸に到着します。

懐かしい景色が見えてきました。

アキは夏にメールを打ちました。

『Sub:もうすぐ帰るよ

今年は潜らないよね?

アキ』

< ついに1年半ぶりにアキは、北三陸に帰って来ました >

… … … … …

2011年6月24日。

北三陸駅前のロータリーにバスが着き、アキが下りてきました。

< 町は閑散としていました。

まるで、3年前初めてこの土地を訪れた時のように … いや、それ以上に寂れていました >


駅前デパートを見上げるアキ。

観光協会の窓に『がんばっぺ東北!』の文字が見えます。

しかし、『北の海女』と『北鉄』の看板は外されて壁に立てかけられたままでした。

< 北三陸市を襲った津波は、川をさかのぼったものの、その川が二股に別れていたため、勢いが分散されたようで、街中は壊滅的な被害は免れました。

しかし、人的な被害も出た沿岸部の打撃は大きく … 流された車や家屋も少なくなかったそうです >


アキは観光協会を訪ねました。

カギは開いていましたが、保やヒロシの姿はなく、騒然とした部屋中に全国から届けられた衣類などの救援物資が入った段ボールが所狭しと積まれています。

< 覚悟はして来たものの、アキは言葉を失いました >

壁には、応援メッセージ、移転のお知らせ、求人情報が無造作に貼られています。

アキはふと目についた、足元に落ちていたものを手に取りました。

それは、ジオラマから落ちた『海女カフェ』の模型でした。

アキは『海女カフェ』を元の位置に戻しました。

無残にあちこちヒビ割れて壊れたジオラマを見つめながらアキは思ったのです。

< もっと早く帰って来ればよかった … >

… … … … …

観光協会を後にしたアキは、北鉄の駅へ。

< 駅にも誰ひとりいませんでした >

薄暗い駅舎、もちろんリアスも閉まったままです。

『大地震の影響により現在、北三陸~袖が浜間の1駅区間運転となっております』

切符売り場の貼り紙。

無料運行は5月で終了しましたが、6月よりはひと駅区間100円で運行しているようです。

「ひと駅区間 … 」

そうつぶやいたアキは、窓口に100円玉を置いて、ホームへ向かいました。

入れ違いに駅務室から出てきたのは、吉田でした。

… … … … …

誰もいないホームでひとり、電車を待っていると、線路に1匹のキツネが迷い込んできました。

キツネ相手に歌って踊ってみせるアキ。

… 黙っていると落ち込みそうな気持を紛らわしました。

「間違いねえです … 今、ホームでキツネと戯れています」

その様子を駅舎の中から窺がいながら、吉田はどこかへ電話で知らせていました。

電話を切った後、アキが窓口に置いた100円玉に気づいて、それを手に取って微笑む吉田。

… … … … …

北三陸を出た電車はアキの他、誰も乗客は乗ってはおらず、ひとり占めでした。

< 久しぶりに可愛い電車に揺られながら、アキはこの土地で暮らした3年前の日々を思い返していました。

この車内で、初めてユイに出会った時のこと。

ふたりでウニ丼を売りまくったこと。

ケンカもした … それから、お座敷列車 >


車窓から見える風景は所々震災の傷跡が垣間見えました。

< 全ては思い出、今となっては過去の出来事 … いや、もはや前世の出来事ぐらい遠い記憶。

もう、あの日々は二度と帰らないんだ >


… … … … …

座席に腰かけ、ほんの少し微睡んでいたアキ。

< おや? >

どこかで誰かが自分の名前を呼んでいるような … それもひとりでなく大勢 … そんな気がして … 席を立ちました。

「間もなく終点、袖が浜 ~ 袖が浜に到着します」

列車後部の運転席から出てきた懐かしい顔、吉田でした。

「吉田さん!」

「おかえり!」


吉田は走り出したかと思うと、窓を開けて、アキにホームを見せました。

「じぇじぇじぇじぇじぇっ!」

近づいてくる袖が浜のホームの先端でたくさんの人がこちらに向かって手を振っています。

垂れ幕や小旗、大漁旗まで見えます。

「安部ちゃんから駅長がメールもらったんだ。

でも、皆どこで待っていいか分かんなくて … でも、アキちゃんなら北鉄さ乗るはずだって、駅長が」


『おかえり』『おかえりアキちゃん』の文字。

「ただいま … 」

アキは窓から身を乗り出して大きく手を振って応えました。

「ただいま ~ !!」

「おかえり!!」


皆の歓声に迎えられて、ホームに滑り込む電車、それに合わせて走る、走る一同。

… … … … …

ドアが開くのが待ちきれなかったように、いきなり弥生が抱きついてきました。

「アキ ~ よく帰って来たなあ」

その上から、抱きしめるかつ枝。

「弥生さん、かつ枝さん」

「いがった、また会えていがった!」


泣き出さんばかりの喜びようです。

「つまんねかった ~ アキちゃんがいねえから、毎日がつまんねかった!」

美寿々もアキを抱きしめました。

「美寿々さん、会いたかった」

「アキちゃん!」


勢いでアキのことを抱きしめそうになった勉さんですが、思いとどまって両手でアキの手を握りました。

続いてアキの手を握ったのはヒロシです。

「アキちゃん、有名になっても何も変わらないね」

保は『おかえり』の札を見せて、アキの頭を撫でました。

笑い声に包まれた袖が浜のホーム。

「皆もちっとも変わんねえ … ホントにご無事でよかったです」

皆に向かってお辞儀をしたアキ。

「んだな、ここさいた連中は何とかやってる」

無愛想な珠子も笑顔でアキを迎えました。

「夏ばっぱは?」

そういえば、夏の顔が見当たりません …

「あ … 夏さんは … 」

何故か言葉を濁す珠子。

「さあ、行くべ行くべ」

大吉に急かされて、取りあえず一行は、天野家に向かいました。

< 皆、ちっとも変わんない … そうアキは言いましたが、本当はちょっと変わったなと思いました。

うまく言えないけど、強さと明るさが増したというか、笑っていられることがうれしくてたまらない … そんな笑顔でした >


… … … … …

天野家の居間でさっそくアキの歓迎会が始まりました。

「皆、ホントに変わんないね」

「塞ぎ込んでてもしゃあねえからな」


かつ枝の前向きな言葉。

「ほれ、まめぶ入れっど ~ 」

囲炉裏にかけてある鍋にまめぶを放り込む弥生。

「いや、びっくりしたべ?

駅さ着いたら誰もいねえし、観光協会はまるで廃墟だし」


相変わらず遠慮なしの大吉。

「廃墟は言い過ぎだべ先輩、あれでも大分マシになったのさ」

看板が外されていたことを気にするアキに余震が多かったためだとヒロシが説明してくれました。

… … … … …

「あれ、お母さんは?」

さっきまでいたはずの珠子の姿が見当たらないことに気づいたアキ。

娘ふたりは皆と一緒に囲炉裏を囲んでいます。下の娘が答えました。

「パートさ戻った … よろしぐって」

組合長の話では、珠子は家を全部流されてしまって、大変な目にあったのだそうです。

「アキちゃんさ、ひとめ会いでえがら、パート抜けて来たんだ」

そう話したのは、アキのような海女になりたいと言っていた姉の方です。

「ま、おらのとこもほぼ全壊だ … 今、親戚の家さ世話になってる」

「仮設住宅申し込んだんだが、いつになるか ハハハハ」


深刻なことなのに朗らかに笑いながら話す長内夫妻。

「線路もな、まだ復旧の目途が立たないし … 」

「アキちゃんユイちゃん人気で建てた海女カフェも … 」


ヒロシは慌てて保を止めました。

帰る早々アキの耳には入れたくはないという思いやりでした。

「とにかくこれからだ … 何もかんもこれからだ!」

「んだな」


大吉の言葉に皆はうなずきました。

… … … … …

「アキちゃん! あららら、アキちゃん、ホントに帰って来た!」

「天野、くぬやろ ~ なすて連絡よこさねえ!」


アキが帰ってきたことを聞きつけた、今野、磯野、しほりの3人が顔を出しました。

「ごめん、いっそん」

「くぬやろ、見ろこれ!」


磯野は慰問に訪れた有名人たちにサインを入れてもらったジャージを自慢げに見せました。

「サンドウィッチマン、中村雅俊、中に若貴コンプリート … そして、EXILEのヒロシ!」

「EXILEにヒロシはいませんよ」


ヒロシに突っ込まれる磯野。

「えっ?」

「いるのは、HIROですよ」

< 磯野先生は、復興ボランティアで瓦礫の撤去に精を出しているようです >

< 副駅長の吉田さんと結婚した栗原さんは、女の子を出産しました >

「アキちゃん、写真見る?」


アキにアルバムを手渡すしほり。

写真を見せながら、吉田が話してくれました。

「地震のショックで予定日が早まったんだ」

「じぇ」


新居も水に浸かってしまって、避難所から病院へ運んで … まだ停電していたので、懐中電灯で照らして出産したのだそうです。

「大変だった ~ でも、その分うれしかった」

写真の中、そんな苦労などなかったかのように幸せそうに微笑むしほりの腕には、吉田にそっくりな赤ん坊が抱かれていました。

「めんこい … 」

… … … … …

「アキ、団子何個食う?」

「3つ … いや、4つ!」


まめぶが煮えたので、弥生がよそってくれました。

「ほれ、食え!」

< 温かい笑い声に包まれながら、アキはこの家の主の不在について、考えずにはいられませんでした >


… … … … …

ひと息ついたアキは、浜を目指して坂道を下ってみました。

漁港に近づくと震災の、津波の被害が次々と目に飛び込んできました。

積み上げられた瓦礫、ひっくり返ったトラック … 柵やブルーシートで囲われた場所も多く、立ち入り禁止の立札が幾つも目につきました。

地元やボランティアの人々が瓦礫の撤去作業をする中を通り抜け、海女の実演を見せていた辺りには破れた網や壊れたブイが山積みになっていました。

壊れた手すりの代わりにロープが張られていて、海には人影はまったくありません。

< やっぱり、今年は潜らないんだ … 

無理もない、あんな津波の被害の後じゃ、潜るなんて怖くてとても …

と、思いきや >


… … … … …

「いてっ!」

アキの背中に何か硬いものが当たりました。

振り向くと足元に落ちていたのは、トゲトゲの立派なウニでした。

辺りを見回すアキ。

水面に浮び上ってくる人影が見えます。

ザバア!

< はあい、出ました ~ >

「じぇじぇじぇっ?!」


水しぶきを上げて、現れたのは夏でした。

< 袖が浜海女クラブ会長、天野夏さんは完全復活して、今年も現役バリバリです >

海から上がった夏は、階段の降口に腰かけました。

その首には見事な昆布をマフラーのように巻いています。

アキが初めて出会った時と同じスタイルでした。

「はっ、帰って来たのか? アキ はは」

「なすて? 夏ばっぱ、なすて潜ってんだ?」

「なすてって … おもしれいからに決まってるべ」


夏は何を分かりきったことを聞くんだ … とでもいうように答えました。

階段を上り始めた夏。

「アキ!」

アキが振り向くと、さっきまで飲み食いしていたはずの弥生たち海女クラブメンバーがウェットスーツを着込んで集合して来たところでした。

「じぇじぇ、な、何? … 皆、今年も潜るの?」

「当たりめえだ、来週海開きだど」

「少ねえが、ウニもいた … 潜らねえって手はねえべ?」


頼もしい海女の大先輩たち。

「なんだあ ~ 」

アキは無性にうれしくなってきました。

… … … … …

「じゃあ、メール返してくれればいいのに!」

浜に上がってウニの殻を剥きはじめた夏に文句を言いました。

「ああ、メール?」

「送ったじゃん、今年も潜るの、潜らねえのって … 見てないの?」


アキに咎められて夏は「しまった」という顔をしました。

「 … やっちまった」

「?」

「夏ばっぱ、また携帯持って潜ったのか?」


美寿々に言われて、夏はうなずき … ウェットスーツから携帯を取り出しました。

「あ ~ あ ~ 」

大笑いする一同。

「 … 電気入んねえ … 4台目だあ ~ 」

< 2011年夏、北の海女たちは今年も海に潜るのです >


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2013年09月05日 (木) | 編集 |
第136話

純喫茶・アイドル。

店に飛び込んで来たアキは、いきなりその言葉を口にしました。

「ママ!

おら、岩手さ、帰りてえ! … 北三陸さ、帰りてえ!」


… … … … …

春子も正宗も、アキがいつかこんなことを言いだしそうな予感はありました。

「本気なの?」

うなずいたアキに春子はあきれた顔で尋ねました。

「つうか、これ何回目だ?」

「4回目 … 海女になる時と、南部もぐりやる時、あとアイドルになる時 … で、今日」

「分かってるんだ? … じゃあ、ちょっと厳しいこと言ってもいいよね?」


アキは身構えました。

「ホントにさ …

やりたい放題なのよ、あんたは!!


春子が声を荒げた時にちょうど店に入ってきた水口、何事かと様子を窺がいました。

「大丈夫、今始まったとこ」

甲斐に促されてカウンターにつきました。

「ごめん … 」

「しかも、全部中途半端!

海女も潜水士もアイドルも … 普通はね、次のチャンスに向けて踏ん張るの!

ここであきらめたら、B級アイドル止まりよ!」

「B級にはB級の良さがあるよ」


横から口を挟んだ甲斐を水口がたしなめました。

… … … … …

「あきらめる訳じゃねえんだ。

だだ、今は、お芝居とか、歌とかよりも気になることがあって … 」


その後、言葉を濁しました。

「何が気になってるのよ?

言ってみなさい、自分の口で」


「 … 夏ばっぱのことだ。

それがら、ユイちゃん、北鉄、海女カフェ、リアス、琥珀 … 」

「 … わかった」


春子は止めましたが、それでもアキは続けました。

「皆のことが気になる! … 北三陸の皆のことが!!」

「もうわかった!」


ウンザリ顔の春子。

「まったく、振り回される方の身にもなってよね」

「ごめん … 」


… … … … …

「考えてみたら、マスターって案外キーパーソンですよね?」

水口にそう言われましたが、甲斐にはどういう意味か分かりません。

「春子さんがスカウトされたのもここだし、正宗さんが告白したのもここでしょ?

このお店がなかったら『潮騒のメモリー』も生まれてないし … それどころか、アキちゃんも生まれてないのか … 」

「ごめん … 俺、テレビ観てたんで、テレビに夢中で全然聞いてなかった。

うわあ、もったいない!」


重要な場面に立ち会っていながら、何ひとつとして覚えていない甲斐。

「 … どうする?」

… … … … …

「どうすんのよ?!」

アキにそう問いただすと、春子は立ち上がって、正宗の顔を見ました。

「私ね、18歳までしか親に育てられてないから、それ以降の育て方知らないからね!」

「僕だって知らないよ、男だし、ひとりっ子だし …

ただ … 」


正宗はアキの前に座り直しました。

「この1年、3人で暮らして … すご~く楽しかった。

その前に、離婚してひとりの時間が長かったから … 余計そう思うのかも知れない。

うん、楽しかった」


アキの顔を見ながらなんどもうなずく正宗でした。

「おらも今までで一番楽しかった」

「 … ありがとう」


… … … … …

「ほっこりしないでよね、勝手に!

何、この空気? … 最終回?

冗談じゃないわよ、人生はまだまだ続くのよ!」


なあなあでうやむやに流されそうな雰囲気に春子は喝を入れました。

「わかった … どうせ言っても聞かないんでしょ?

好きにしなさい!」


そして、アキがしたいようにすることを許しました。

… さじを投げたように見えますが、実際は最初から許すつもりだったのでしょう。

「ママはどうするの?」

アキはすかさず聞き返しました。

「えっ?」

「東京へ残るよね?」

「いや、ちょっと待って!」


春子は当然、アキと一緒に帰るつもりでした。

「 … だから、こんなに不機嫌なんだけど」

「いいよ、来なくて … つうか、来ねえでけろ」


思いもしなかったアキからの言葉。

「せっかくふたりヨリ戻ったんだし … それに、鈴鹿さんのことも心配だ」

震災以降、パッとしないひろ美。

「ようやく仕事始めたようだけど、まだ本調子じゃねえ。

真面目過ぎんだよな … ママがそばにいて、ハッパかけてやんねえと、またすぐダメになりそうで心配だから」

「 … いいの?」


… … … … …

「何が?」

「ママ、東京に残ってもいいの?」

「そうしたいんだべ?」


春子は自分でも驚くほど素直にアキの言葉にうなずきました。

アキのために始めたプロダクションの社長でしたが、今では自分自身も、この仕事にやりがいを感じ始めていたのです。

「じゃあ、好きにしろ! … なんつって、ふふ」

1本返されました。

「今度は、おらが背中押す番だな。

… 社長、鈴鹿さんのこと、よろしぐ頼んます。

コキ使ってもいいから、元の大女優さ戻してけろ」


春子の前に立って、深く頭を下げました。

「 … ちょっと、ちょっとなんか言ってよ」

戸惑う春子は、正宗に助けを求めました。

「僕たち、ヨリ戻したんだね」

ボロボロと涙をこぼしています。

「どこに感動してんのよ? … 全く、何それ、台無し!

やだもうパパ … 」


春子自身、泣き出しそうなことを隠すため、ふたりに背を向けて窓の外を見る振りをしました。

「お世話になりました」

アキはカウンター席の水口にも深く頭を下げました。

「お疲れ … 」

背を向けたまま、そう答えただけの水口。

満足そうに微笑む正宗、アキを見つめる春子 …

… … … … …

< 次の日から、アキの挨拶回りが始まりました >

「お世話になりました!」


アキがひろ美に挨拶をしたのは、収録中のスタジオでした。

カメラが回っている前にいきなり飛び出したアキを慌てて引き戻す水口。

収録後、改めて挨拶をしてきたアキにひろ美は尋ねました。

「ねえ、ホントに地元に帰っちゃうの?

… 行きっ放しなの?」

「いや、分かんねえです … 2~3年で帰ってくるかもしんねえし、2~3日かも知んねえし」

「じゃあ、私も行こうか? … お祖母ちゃんに挨拶したいし」

「ダメですよ、働いていただかないと」


引き留めたのは水口でした。

ひろ美までいなくなったら、スリーJプロダクションはタレント・ゼロになってしまいます。

「もう ~ 働け働けって、何なのよ! 何て事務所?!」

化粧台の前に突っ伏してしまいました。

そんなひろ美を可愛らしく感じたアキ。

「鈴鹿さんからいただいたお言葉、生涯忘れねえです」

『今、日本で“天野アキ”をやらせたら、あんたの右に出る女優はいません。

だから、続けなさい。

向いてないけど … 向いてないけど、続けるって言うのも、才能よ』

「向いてないのに続けるのも才能 … いいこと言うじゃない?」

「あ、いや、おらでねくて、鈴鹿さんが … 」


自分の言葉ですが、ひろ美は何か大事なことを思い出したようです。

「 … じゃあ、もう少し続けようかな?

向いてないけどね」


振り向いたひろ美はアキに笑いかけました。

本番の声が掛り、スタジオに戻るひろ美にアキは言いました。

「おら、日本一の天野アキになります」

ひろ美はアキの手を握って、そして愛おしそうに抱きしめました。

「がんばんなさい」

腕を解くと、アキの背中を思い切り押しました。

今一度、ひろ美に向かって頭を下げたアキ。

スタジオに消えていくひろ美の背中を見送りました。

… … … … …

東京EDOシアター。

「お世話になりました」

「そうか … 天野は、地元に帰るんだな」


感慨深そうにそう言った河島。

「それ言われたの3人目、へっへっへ」

こんなところは全く変わっていません。

いろいろなことがありましたが、笑顔で握手を交わした太巻とアキ。

… … … … …

無頼鮨。

「お世話になりました」

「俺はただここで握ってただけだから … ありがとう」


いつもの笑顔の梅頭でした。

その後、小百合とGMTのメンバーが送別会を開いてくれました。

「今までいろいろとありがとう」

「こちらこそ、夏ばっぱや皆によろしく」


小百合はもう少し、東京でがんばるようです。

「彼氏は?」

周りを見回す小百合、種市は厨房の奥で卵焼きを作っていて出てきません。

「やんだ、おら余計なこと言っちまった?」

アキは種市の背中を見つめました。

… … … … …

送別会もお開き …

店の外に出たアキは、EDOシアターを見上げました。

様々な出来事が胸をよぎります。

ツラいことの方が多かったはずなのに … 万感胸に迫ったアキは、メンバーの方へ向き直りました。

「お世話になりました」

「アキッ!」


皆がアキに抱きついてきました。

苦楽を共にした大切な仲間です。

泣き笑いの少女たち。

< 地元に帰る者、都会に残る者、東京が地元なのに田舎に向かう者。

それぞれの気持ちが分かるから、皆笑顔で送り出すのです >


… … … … …

皆と別れたアキはその足で夜行バスの乗り場に向かいました。

チケットを持ったアキがバスに乗り込もうとした時でした。

「アキ!」

アキは自分を呼び声に振り向きました。

風呂敷包みを手にした種市がこちらに向かって走ってきます。

「アキ、アキ!」

いつものように『天野』ではなく『アキ』と初めて呼ばれました。

「先輩?」

息を切らした種市は、風呂敷包みを差し出しました。

「これ、卵焼き、バスん中で食え」

一生懸命焼いていたものでした。

「ありがとう」

「走ったから、くずれたかも知んないけど …

元気でな」


笑顔でうなずくアキ。

「俺も一人前になったら帰っから … 遠距離恋愛、がんばっぺ」

「はいっ!」


運転手がバスが間もなく発車することをアナウンスしました。

ふたりは名残惜しそうに見つめ合い … そして、アキはゆっくりとバスに向かいます。

♪白い鴎か 波しぶき、若い血潮が 躍るのさ …

どちらからともなく歌い出した『南部ダイバー』

バスに乗り込んだアキは、座席の窓を開けました。

♪カップかぶれば 魚の仲間 俺は海の底 南部のダイバー

走り出したバスに向かって、種市はちぎれんばかりに腕を振ってくれました。

泣きながら卵焼きを頬張るアキ。

< アキは、1年半ぶりに北三陸へ帰ります >

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2013年09月04日 (水) | 編集 |
第135話

震災が起きて1ヶ月以上経ちましたが、アキは自分が今どうしたいのか分からないまま悩んでいました。

北三陸で過ごした楽しい思い出や記憶が薄れていくような不安にかられる時 … そんな時、アキはひとりひとりの顔を思い出していました。

皆がどんな顔をして笑っていたのかを …

「 … 足立先生と奥さん、いっそん … 」

昼間、種市にこの話をした時から、誰かひとり忘れているような気がして、ずっと気になっているのです。

ふと部屋の隅に置いてある段ボールの箱が目に入りました … それは、電気ストーブが入っていた箱です。

「あっ! ストーブさん! … ストーブさん、忘れてた」

ようやく思い出せました。

苦笑いするヒロシの顔が見えるようで … 頬が緩むアキでした。

… … … … …

純喫茶・アイドル。

「 … やっぱり帰りたいのかしら?」

何気なくつぶやいた春子。

雑誌に載っているアキの記事を読んでいた水口は顔を上げて、向かいの席に座っている春子を見ました。

「アキ … あの子、岩手に帰りたいのよ」

春子は、昨夜、アキが何を言おうとして止めたのかを考えていたのです。

< 社長のひとことが、水口君の背中に重くのしかかりました >

… … … … …

2011年5月20日、雑誌の取材。

「今、はまってるものですか?」

アキはライターからの質問に考え込んでしまいました。

「マイブームみたいなことなんですけど」

取材の様子を見守りながら、水口は春子の言葉を思い返していました。

< 何故、気づいてあげられなかったんだ … 水口君は自分を責めました。

タレントが今何を考え、何を欲しているのか、先回りして考えるのがマネージャーの仕事なのに … 何をやってるんだ、俺は?! >

「ホクロから生えた毛、伸ばすことですかね ~ 」


アキは腕のホクロをライターに見せています。

< 違う、俺は目を背けていたんだ! >

「あっ、あとヨリ目、ヨリ目にはまってます! やりましょうか?」


ヨリ目をしてみせるアキ。

< アキちゃんが岩手に帰ると言い出したら、今までの苦労が水の泡 … だから、気づかないフリしてたんだ。 

元々ユイちゃんに誘われて、芸能界を目指した彼女に野心はなかった >


取材がひと通り終わると、スタジオで写真撮影が始まりました。

< … もう思い残すことはない、岩手に帰って大好きな海に潜ってウニを取りたい … その気持ちを誰にも打ち明けられず、カメラの前で健気に笑顔を作っている … >

「そう言えば、アキちゃん、実家大丈夫でした?」


ライター自信は、何気なく聴いた質問でしたが、アキの表情が強張りました。

「岩手の、確か海沿いだったよね?」

「あ … はい、祖母がひとりで暮らしてて … 」

「帰ったりしないんですか?」


アキに取ってデリケートな質問、完全に笑顔が消えてしまいました。

「アキちゃん、笑顔 … 笑って」

水口の言葉に助けられて、アキは笑顔を取り繕いました。

… … … … …

次の仕事までの時間調整に水口は、アキをアイドルに連れて行きました。

< 水口、お前はどうしたいんだ? … 夏が近づいている … このままアキちゃんを、東京砂漠に繋ぎとめるつもりか? 水口 >

「何ですか?」


さっきからずっと自分のことを見つめたままの水口にアキは尋ねました。

「えっ? あっ、いや … 何だか、ゴメンね、変に時間空いちゃって … 」

「お構いねぐ … ゆっくり考え事したかったんで」

< ゆっくり考え事?! い、岩手のことか? >

「マイブームはなんですか? とか、はまってるものは? とか … アイドルらしい答えって何なんですかね?」

< … 違った >

「やっぱり、編み物とか、雑貨集めとかですかね?」


安心したような、それでいて肩透かしを食ったような … 複雑な気分で水口は答えました。

「あと、無難に音楽鑑賞とか、コスメとかね」

「ホクロの毛伸ばすのはまずかったですね? … パブリックイメージがありますもんね」


この子なりに考えているんだな、でも言葉の意味わかっていないでしょ? … そんなことを思いながら、うなずく水口。

… … … … …

その時、甲斐が見ているテレビから『地元に帰ろう』が流れ始めました。

すぐさま、アキもテレビの画面に目をやります。

「 … 大船渡市の避難所にGMT5のメンバーが慰問に訪れました。

炊き出しを振る舞い、復興を誓って、ヒット曲『地元に帰ろう』披露、会場は大盛り上がりでした」

GMT5の歌に合わせて手拍子する人々、笑顔、子供たち …

「熱いよね ~ どうせ売名行為だろうけどさ、日本を元気にしてるよね」

テレビを見ながら、そう言った甲斐の言葉、アキの目も画面にくぎ付けです。

< 岩手め … >

… … … … …

無頼鮨の裏口、ゴミ出しに出てきた種市。

「 … 俺は今、岩手県と闘ってる」

突然聞こえてきた水口の声がする方を種市は見ました。

「うわっ!」

水口は塀の前に出された粗大ゴミの中に隠れるように座っていました。

「なかなか手強い」

そう言うと水口は立ち上がりました。

「全国47都道府県でも、北海道に次いで広大な面積を誇る岩手県だからな … 圧倒的に不利だ」

意味の分からないことを口走っている水口のことが少し心配になった種市。

「大丈夫ですか?」

水口は振り返り、反対に種市に質問しました。

「お前はどうなんだ? 種市浩一 … 闘ってるのか?」

「闘ってはねえです … 仕込中です」


生真面目に答えた種市、却ってそれが水口をイライラさせました。

「アキちゃんとどうなってんだって聞いてんだよ、それぐらい分かれよ!」

「 … 1回キスしただけです」


途端に声を荒げた水口、食って掛かりました。

「そんなこと聞いてない!

自慢すんじゃねえよ … つうか、自慢すんじゃねえよ!」


… … … … …

その頃、自宅のベッドの上でため息をついたアキ。

< ひと月前、アキはこんなメールを夏さんに送りました >

『夏ばっぱ。

今年の夏は潜らないよね?

アキ』

< その返事は … >

『お構いねぐ』

… 素っ気ない一文だけでした。

… … … … …

「天野さ~ん」

部屋に入ってきたのはひろ美でした。

「ぬれ煎餅食べる?」

いまだにやる気が出ない様子のひろ美がアキに尋ねました。

「ヒマだったら、仕事したらどうですか?」

少し意地悪を言うと、哀しそうな顔をしました。

「お母さんのマネをして …

気晴らしに映画でも観ない?」


1枚のDVDを取り出しました。

< それは、公開後1週間で打ち切られてしまった、アキのデビュー映画『潮騒のメモリー』でした >

ふたりは自分たちが主演の映画を観ながら号泣していました。

「もったいねえよ、鈴鹿さん … こんなにいい映画なのにな」

「本当よね … あんたはまあまあ。

… 私は、最高」


アキは『北の海女』の手拭で涙を拭いました。

… … … … …

6月1日、純喫茶・アイドル。

その日、水口は1本の企画書をアキの目の前に置きました。

『私らの音楽』

「歌番組ですか?」

「うん、出演依頼」

「 … 『潮騒のメモリー』ですか?」

「いや、できれば違う曲がって言われてる … いい曲なんだけど、歌詞がちょっとって」


しかし、アキには違う曲などありませんでした。

「うん、知ってる … だから、断ろうとしたんだけども … 」

企画書のページをめくっていくアキ。

「じぇっ?!」

そのページには、出演予定者(交渉中)として、『GMT5 × 天野アキ』、楽曲は『地元に帰ろう』と書かれていました。

「そうなんだよ、GMTの出演が先に決まってて、向こうが君と共演したいって、提案してくれたんだ。

『地元に帰ろう』をアキちゃんと一緒に歌いたいって」

「でも、社長がなんて言うか … 」

「どっちの? 太巻さん? 春子さん?」


… どちらもでした。

「太巻さんも悔いが残ってるみたい。

覚えてる? 劇場公演が震災で中止になった時 … 」


『中止じゃない、延期だぞ』

太巻はアキにそう言いました。

「 … 約束を果たそうとしてくれたんだよ。

あ、もちろん君のお母さんもやらせたがってる」


… … … … …

< 彼は、ところどころウソをついていました。

本当は水口君の持ち込み企画で、自ら太巻さんに直談判して、頭を下げ成立させたのです … アキのために >


「お前の頼みだから、一肌脱ぐか」

太巻はそう言って、プロデューサーに話をつけてくれました。

「太巻さん、ありがとうございます」

「恩を売るだけだぞ … お前に対する売名行為だ」


… … … … …

「どうかな?」

アキは少し考えていましたが、笑顔でうなずきました。

「 … わかった、やるべ!」

ホッとする水口。

「やったあ!」

カウンターの中で聞いていた甲斐が思わず声を上げていました。

「あ、ごめん … でも、うれしい。 … 俺見るよ、録画して何度も見るよ!」

… … … … …

収録当日のスタジオ。

アキとGMT5のメンバーは、震災の日以来の再会、形はどうであれ、同じステージに立てること … 皆にとって思い入れのある『地元に帰ろう』を歌えることを喜び合いました。

♪地元に帰ろう 地元で会おう あなたの故郷 私の地元 …

その様子を見ながら、水口は、種市との会話を思い出していました。

… … … … …

「アキちゃんを東京に繋ぎとめるためには、種市浩一とのラブが必要なんだ」

「え、でも … CMの契約があるから、恋愛御法度 … 」


戸惑いの表情の種市に水口は言いました。

「しょうがねえ、解禁だ … 俺ひとりじゃ岩手に勝てねえ」

「でも、天野は … 岩手に帰りてえんじゃないでしょうか?」


種市はアキから聞いたことを種市に話しました。

「寝る前に皆の笑顔、思い浮かべるんだそうです。

… でも、ユイの笑顔だけ、思い出せないって … 言ってました」

「それ … それ、メチャメチャ帰りたがってるよ!」


… … … … …

種市から聞いた話 … 水口はモニターに映るアキを見ているうちに目頭が熱くなってくるのが分かりました。

「 … 水口、泣くんなら、外で泣け」

太巻に見透かされて、水口は頭を下げてスタジオの外に出て行きました。

ドアにもたれて、溢れ出る涙を拭おうともせずに水口は何かを考えていました …

… … … … …

純喫茶・アイドル。

甲斐と一緒に春子と正宗はアキとGMT5が歌う『地元に帰ろう』を観ていました。

♪ … 私の地元 地元 地元 地元に帰ろう

歌の最後にメンバーがそれぞれの地元の名前を叫びます。

埼玉、仙台、佐賀、沖縄、ブラジル、そして … 岩手。

「熱いよね、これ … 永久保存版だよね」

演奏が終わるのを、待ち構えていたように正宗は春子に言いました。

「ねえ春子さん、僕の考え過ぎかも知れないけど … もしかしてアキは、岩手に帰りたいんじゃないかな?」

「 … 今頃?」


春子だけでなく甲斐まで正宗の顔を見てしまいました。

何も答えない春子に、正宗はもうひとつ聞きました。

「君はどうなの?」

「え?」

「帰りたいんじゃないの?」


正宗にそう言われて、春子は改めて自分の胸に聞いてみました。

… … … … …

その時、アキが店に飛び込んで来ました。

「ママ!」

春子の元に駆けよって … ついにその言葉をアキは口にしました。

「おら、岩手さ、帰りてえ! … 北三陸さ、帰りてえ!」

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2013年09月03日 (火) | 編集 |
第134話

2011年3月11日。

< その夜、帰宅難民と呼ばれる人々で、東京の道という道はごった返していました >

アキもその中のひとり、アメ横の東京EDOシアターから世田谷の実家目指して、人の波に混ざって歩いていました。

1時間前 …

アキの携帯はようやくユイに繋がりました。

「もしもし、ユイちゃん? 今どこ? … えっ、線路?」

暗い、辺りが真っ暗な中、ユイは線路を歩いていました。

「北鉄がトンネルの中に停まって、さっきまでいた。

今、大吉さんと鈴木のばっぱと一緒にトンネルから出て歩いてるの … 避難所があるんだって」


「 … そうか、いがったあ、繋がって」

アキは、水口と種市にうなずいてユイの無事を伝えました。

「ごめんね、明日行けなくなっちゃった … 」

「いいって、延期になったし … 中止でねくて、延期だから。

必ずやるから、おいでよ」

「 … 中止だよ」


アキは聞き返しました。

「延期じゃなくて中止。

もう行けない … 怖くて行けない … アキちゃんが来てよ!」

「ユイちゃん … 」

「 … 道が無くなってたの、線路が途中で終わってたの」


そこまで言うと、「電池が切れそう」とユイは電話を切ってしまいました。

「ユイちゃん?」

東京へと続いていたはずの道が寸断されていたのを目の当たりにしたユイのショックは計り知れないものでした。

泣きながら、線路を歩く … 来た道を引き返していくユイ。

… … … … …

数時間かけて実家にたどり着いたアキ。

「よかった … 」

玄関まで出てきて、娘を迎えた両親 … 春子はドアの前に立っていたアキを力いっぱい抱きしめました。

「何あんた、何、歩いて帰って来たの?」

「うん」

「電話ぐらいしなさいよ、心配するじゃないの!」

「 … ずっと起きてたの?」

「眠れないわよ!

実家も … 夏さんも連絡取れないし」


アキは急いで夏から届いたメールを春子に見せました。

『Sub:みんな無事

御すんぱいねぐ』

夏らしい、ただそれだけのメールでしたが、無事ということが分かって安堵する春子でした。

… … … … …

3月12日 …

瓦礫に埋もれた北鉄の線路を頼りに、避難所を目指す人たちを見ながら大吉は吉田に言いました。

「とにかく列車走らせるぞ … 吉田君、一刻も早く列車走らすぞ」

「だって、線路が … 見たでしょ?

途中でねじ切れて、あれじゃどうにもなんねえ … 」


しかし、大吉はあきらめていません。

「幸い、袖が浜までの線路は問題ねえ。

安全確認して、再開だ!」

「駅長 … 」

「走れるかどうかの問題でねえ … 走らなくちゃなんねえのだ!」

「 … 俺もそう思います」


ふたりの後ろから声を掛けてきたのはヒロシでした。

「車は流されて使えねえ、国道は瓦礫でふさがって … 人が線路の上歩いている状態で …

北鉄が走るっていうだけで、勇気づけられる人はいっぱいいると思います」

「足立、この野郎 … いいこと言うじゃねえか、足立 … 」


ヒロシの言葉に吉田も心を動かされたようです。

「走るべ!

例え1区間でも、ひと駅分の往復でもいい … 誰も乗らなくてもいい。

運行を再開することが使命だ」

「んだね、北鉄は市民の足、地元住民の足ですもんね」

「第3セクターの意地、見せっぺ!」


… … … … …

再開するためにはトンネル内に停まっている列車を外に出さなければなりません。

大吉たち北鉄の職員、保やヒロシたちも協力して、人力で列車を押し続けました。

「動いたぞ!」

< こうして、北三陸鉄道リアス線は、被害の少なかった北三陸~袖が浜間の運行を開始しました。

3月16日、地震からわずか5日後でした。

1日たった3便、通常時速90キロで走るところを20キロのノロノロ運転、なので運賃はタダ … それでも、走るしかなかった … 走ることが北鉄の意地、大吉さんの意地でした >


大吉が袖が浜の駅から列車を発車させようとした時です。

「待ってけろ ~ 」

駅の階段を番重を下げた夏が急ぎ足で上がってくるのが見えました。

「夏ばっぱ?!」

「北鉄さ走ってるのに、おらが休んでる訳にはいかねえべ」


夏は息を荒くして、よろよろと駆け寄って来ました。

「夏さん、でも、ひと駅しか走りませんよ」

吉田が申し訳なさそうに言うと、夏はうなずきました。

「ああ、ちょうどいがった ~ おらもウニ足んなくて、5つしか作ってねえ!

さあ、乗せろ乗せろ … 」


列車に乗り込む夏を見ながら、大吉は感激していました。

「出発進行!」

折り返し運転の為、列車は北三陸目指して走り出しました。

… … … … …

「吉田君、ちょっとあれ … 」

車窓から外を見ていた大吉が指差す方 … 走る列車に向かって、沿線の人が手を振っています。

「おっ、ありがとう! どうもどうも」

「駅長、見て見て」


反対側の道にも手を振る人たちが何人も … 列車を追いかけて、走る子供たち。

「ありがとう! 危ねえど、気いつけろ ~ 」

ヒロシが言っていたように、北鉄が走るということが、人々に希望と勇気を与えているのでした。

… … … … …

< それから、ひと月余り経った、4月29日 … 東北新幹線が運転を再開しました。 

耳慣れない言葉が飛び交っていました。

『節電』『デモ』『風評被害』『自粛』『就任』『解任』、そして『絆』 >


今やオフィス・スリーJの所属タレントとなった鈴鹿ひろ美でしたが、震災以来どこかおかしく、事務所でくすぶっていました。

< 映画『潮騒のメモリー』は、公開後1週間で打ち切りになりました。

CDは、ひっそり売られていましたが、宣伝は自粛 … >

「しょうがないわね … よりによって、このご時世に、『寄せては返す波のように』 … なんて、歌詞」


ため息をつきながらソファーに物憂げな顔をしてもたれているひろ美でした。

「っていうか、鈴鹿さん!」

春子がイライラしながら、大きな声で呼びました。

「 … はい」

「大変申し上げにくいんですけど … そろそろお仕事していただいても、よろしいですか?

このままじゃうち、タクシーの営業所になってしまう ~ 」

「 … いってきます」


正宗は居心地悪そうに仕事に出かけて行きました。

入れ替わりに帰ってきたのは水口です。

「ほら、優秀な現場マネージャーが帰ってきましたよ ~ 」

水口は早速、ひろ美の前に台本を置きました。

「おめでた弁護士のスピンオフの台本です … 鈴鹿さんは、ワンシーンの友情出演です」

「お断りして頂戴」


台本を手に取ることもせずに断ったひろ美。

「また?」

あきれている春子に向かって、ひろ美は強い口調で言いました。

「もちろん出たい! ありがたいと思う … だけど、東北の方々に申し訳なくて」

「東北の人間が働けっていってるんです!

ほら、働いてます!」


春子が指差したテレビには、アキの姿がありました。

『じぇじぇじぇのぎょぎょぎょ』

< 子供たちのためにいち早く番組は再開 … タイトルは、変更されました >

「しょうがない、このご時世『見つけてこわそう』 … 不謹慎よ」


ため息をつくひろ美。

… … … … …

< 悩んでいるのは、鈴鹿さんだけではありません >

「売名行為って言われるんです」


無頼鮨のカウンター席、太巻は梅頭につらそうに話しました。

「炊き出し行っても、行くとこ行くとこ貴乃花親方とバッティングして、全然目立たないし … 」

「いや、目立たないとか言うから、『売名』って言われるんじゃないですか?」


珍しく太巻に意見した河島。

「メニューもよくなかったんだよね … 向こうチャンコでさ、こっちベーグルだろ?

全然合わない ふふふふ」


初めて監督した映画も1週間で打ち切り … 自嘲的に笑った太巻でした。

… … … … …

< 娯楽に関わる多くの人が、自分自身に問いかけました … ドラマや映画や歌が無くても、人は十分生きていける。

でも、水や食べ物、電気や燃料がないと、人は困る、生きられない … 世の中がすっかり変わってしまった … 3月10日まで、日々どんな気分で暮らしていたか、アキもまた思い出せず …

自分がどうしたいのか分からないでいました >


アキが立ち寄ったコンビニ … 商品が揃わずにスカスカの棚から何点かを選んで購入しました。

おつりの小銭を募金箱に入れるアキ …

… … … … …

アキは、いつものように裏口で種市を待っていました。

「ゴールデンウイークの予定は?」

出てきた種市にアキはいきなり尋ねました。

「ああ、3、4、5は休みだけど … 」

「田舎さ帰らねえの?」


板前の修業が本格的に始まったばかりなので帰れないという種市でした。

「安部ちゃんも仕事だって、みんな忙しいね」

何となく漂う気まずい空気 …

「天野は帰りてえのか?」

「 … 分かんねえ」

「帰りたくねえのか?」

「 … 分かんねえ」


アキは体の動かして、種市に背中を向けました。

「帰ったからって、おらに何ができるわけでねえし … 何もできねえのに、帰っても迷惑だべ?

… 何しろ、『被災地』だもん」

「『被災地』か … 」


種市もその言葉を噛みしめるように口にしてみました。

「皆が無事なら、最初は十分だと思ってた。

でも、家さいて、テレビのニュースばっか見てると、たまんなぐなる …

何だか、北三陸で過ごした1年ちょっとの … おらの楽しかった思い出が、記憶が薄れていくっていうか … 塗り替えられていくっていうか」


なんと答えればいいか種市は迷っていました。

「だから、寝る前にひとりずつ思い出すんだ。

… 皆が、どんな顔して笑ってたか …

夏ばっぱ、大吉っつあん、菅原さん、吉田さん、今野さん、勉さん、いっそん!

組合長、祖父ちゃん、弥生さん、眼鏡会計ばばあ、美寿々さん、花巻さん、いっそん!」


吹き出す種市。

「栗原さん、足立先生と奥さん、いっそん!」

「いっそんのインパクトすげえな」

「へへ … あれっ? 誰か忘れてねえか?」


勉さん? … いや、違う … どうしても思い出せません。

「 … まあ、いいや。

とにかく、ひとりひとりの笑った顔、思い出してがら寝るんだ」


種市はうなずきました。

「でも … ユイちゃんだけは、どんな顔して笑ってたか、思い出せねえ … 」

「 … 確かに」

「会いでえなあ … 」


… … … … …

「ただいま ~ 」

自宅に戻ったアキ、迎えた春子は社長席でパソコンに向かっています。

アキは、ホワイトボードの行先を消すと春子のいすの肘置きに腰かけました。

「何?」

「え?」


春子はアキの顔を覗きこみました。

「お仕事してるの … 何か言いたいことあるの?」

「 … いや、特にねえです」


アキは立ち上がると「おやすみなさい」と、ひとこと … 自分の部屋へ入って行きました。

< その夜、アキは夏さん宛てに、こんなメールを打ちました >

『夏ばっぱ。

今年の夏は潜らないよね?

アキ』

< 夏さんからは、こんな返事が返ってきました >

『お構いねぐ』

アキは携帯を閉じて、北三陸にいる人たちのことを指折り思い出してみました。

「夏ばっぱ、大吉っつあん、いっそん、組合長 … 」

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2013年09月02日 (月) | 編集 |
第133話

2011年3月11日。

< それは、突然やってきました … >

明日開催されるアキのファーストコンサートのために上京するユイは列車の窓から北三陸の海を見つめていました。

同じころ、体調がおもわしくなく、休んでいる夏を心配した長内夫婦は天野家の居間に控えていました。

「かつえ、おめえ落ち着きがねえな?」

今日に限って猫のかつえの様子がおかしい … その時、突然に警報のような音が夏の部屋から聞こえて来ました。

携帯電話から発せられるその音に目を覚ました夏。

… 画面には『緊急警報』の文字が表示されています。

「どうした?」

「何の音だ、おい?!」


慌てた長内夫婦は夏の部屋へ …

列車が畑野のトンネルに入った時でした。

衝撃を感じたユイは、その勢いで椅子に座り込んで身構えました。

… … … … …

東京EDOシアター。

明日に備えたレッスンの最中のアキとGMT5。

「あれっ?」

体がよろけたアキ … 最初は何が起こったのかよく分かりませんでした。

「なんか揺れてるよ?」

「やんだあ、地震?」


天井を見ると証明が振り子のように揺れているのが見えます。

… … … … …

春子は、正宗とふたりで事務所にいました。

「ちょっと待って、地震?地震?」

テーブルに積んであった、アキのCDが揺れで一気に床に落ちて散らばりました。

「ちょっと大きいね」

「大きい、危ない危ない!」


… … … … …

EDOシアターのオフィス。

「でかい、でかい!」

大きな揺れに慎重に身を屈める太巻、河村、水口、スタッフたち …

「やばい、やばい、まだ揺れてる」

… … … … …

無頼鮨。

治まらない揺れ、梅頭が種市に客のひろ美を連れて外に出るように指示しました。

… … … … …

倒れるステージの電飾、慌てて逃げ惑うスタッフ。

奈落に落ちてくるセリ。

小百合がアキをかばうように抱えてしゃがみ込みました。

体を寄せ合うしおりたちGMT …

… … … … …

「止めろ! ブレーキ、ブレーキ!!」

大吉が運転手に命じて列車を緊急停車させました。

急ブレーキの反動、列車はきしむ音を立てながら止まりました。

… … … … …

観光協会。

事務所の窓ガラスはメチャメチャに割れ、保自慢のジオラマは落下物のせいで無残な姿になっています。

保やヒロシの姿はありません …

… … … … …

< 3月11日、午後2時46分の時点で、運行中だった北三陸鉄道リアス線の車両は2台。

1両は海に迫る高台で止まり、もう1台は畑野トンネルの中 …

乗客は、ユイちゃんの他に鈴木のばっぱ、親子連れがひと組、部活帰りの中学生がふたり … >

「ユイちゃん大丈夫か?」


イスに寄りかかっていたユイに大吉が声を掛けました。

「 … 何、これ?」

「分かんねえ。

ごめんな、ユイちゃん … 仙台さ、何時に着けばいいんだっけ?」

「5時半 … 」


大吉もユイも何度か試しましたが、携帯電話が何処にも繋がらずに、状況が把握できません。

< 大吉さんやユイちゃんも事態が呑み込めず、ただ暗いトンネルの中で呆然としていました >

… … … … …

揺れが治まり、アキたちが倒れたものや落ちたものを直しているところへ太巻や河島、水口が血相を変えて下りてきました。

「皆、大丈夫? ケガない?」

奈落にいたものは皆、無事でした。

「震源地宮城らしいぞ」

太巻は宮城に母がいる薫子にすぐ電話をするように指示しました。

< じぇじぇ … 明日、お披露目ライブなのに … あの日、多くの人がそうだったように、アキもまた事態の深さを理解していませんでした >

「実家は?」


しおりに尋ねられてアキは気づきました。

震源地が宮城なら、北三陸もそう遠い場所ではありません。

「ユイちゃんに電話してみたら?」

水口が言う通り、アキはすぐにユイの携帯に電話しましたが … 何度かけても、『しばらく経ってから、おかけ直しください』という電話局のメッセージが流れるだけで一向に本人に繋がりません。

「しばらく経ったから、かけたのに … 」

… … … … …

「 … 現在位置、教えてください」

トンネルの中で止まったままの列車、大吉はようやく外の吉田と無線が繋がりました。

「現在地、畑野トンネルです」

「 … こちらから、指示を出します。お待ちください、お待ちください … 」


無線の向こうの吉田の様子がいつもと違います … まるで感情がない、淡々とした話し方 …

「吉田君、もしもし、吉田君? 運転指令!」

無線が雑音で聞こえなくなり、また列車が、ぐらぐらと揺れはじめました。

< 余震は絶え間なく続きました。

落ち着け、大吉!

こういう時は、お客さんを不安にさせたはダメだ!

… 大吉さんは何度も自分にそう言い聞かせました >


大吉は笑顔を作ると、乗客に向かって話しはじめました。

「え ~ 只今、大きな地震がありました。

あの、御心配ねぐ … 状況が分かり次第、あの、改めて … 」


その時です。

大吉の言葉を遮るように無線から、吉田の声が … 叫び声が聞こえてきました。

「津波! 津波が来ます! 大津波警報発令!! … 避難します!!」

… … … … …

15時53分 …

オフィスのテレビの前に集まった一同。

アキの目は画面にくぎ付けになっていました。

津波が町を …

< 映画か何かみてえだな … とても現実に起こっていることとは思えませんでした。

周りのみんなも『うそ~』とか『何これ?』『何で?』とか、取りあえず声に出すものの … 気持ちが追い付いてなくて … >

「天野、お前の実家は海沿いだろ?」


太巻にそう言われたアキですが、何をどうしたらいいのかすぐに思いつきません。

「漁協さ、電話してみる」

震える声で小百合が言ったのを聞いて、アキも慌てて夏の携帯に電話しました。

そこへ、母親に電話が繋がらず、メールも送れないと、青ざめた顔の薫子がオフィスに入ってきました。

「混戦しているんだ今、後でかけなさい」

そう諭した河島、今にも泣き出しそうな薫子を慰めるしおりたち。

アキも小百合もやはり連絡を取ることができませんでした …

… … … … …

16時30分 …

ユイたちを乗せた列車は相変わらずそのままの状態でした。

ほんの少し微睡みながら、ユイは大吉の声を聴いていました。

「皆さん … ご存じの通り北鉄はディーゼル車ですから、停電はしません。

燃料もたっぷり積んであります。

暖房もあるし、トイレもあるし … 」


大吉は精一杯の笑顔で乗客たちに不安を感じさせぬよう振る舞っていました。

「腹減ったよ~」

しかし、母親と一緒に乗っていた幼い兄妹にそう言われ、大吉は困惑しました。

さすがに食料の備えはありません。

母親は子供たちをたしなめましたが、鈴木のばっぱが自分が持っていたゆべしを譲ってくれました。

< 救助は来ない … いつまで待っても埒はあかない!

ついに、大吉さんは決断しました >

「乗客の皆さん。

あの、ちょっとトンネルの外の状況、見て来ます。

ご心配ねぐ … 安全が確認できてから、皆さん誘導しますんで、そのまま …

あの、すぐ戻ってきますから、お待ちください」

< そう言って、大吉さんはドアを開け、外へ出ました >


真っ暗なトンネルに降り立った大吉。

「こっちが近えか … 」

そのまま進行方向へ進むことを選択しました。

< その小さな弱々しい光を頼りに、大吉さんは歩きはじめました >

列車がヘッドライトをつけてくれたおかげで少し足元が明るくなりました。

♪ツッツクッツッツ ツッツクッツッツ … ゴーストバスターズ!

自分を奮い立たすため、大吉は歩きながら十八番のゴーストバスターズを口ずさんでいました。

… … … … …

しばらく歩いて、トンネルから出た大吉、目の前に開けた光景を見て呆然と立ちすくみました。

大吉から少し遅れてついて来てしまったユイ。

「見るな … ユイちゃん、見てはダメだ」

振り向いた大吉の目には涙があふれていました。

「ごめん … もう、遅い」

すでにユイの目にも大吉と同じ光景が映っています。

線路はトンネルから出たところで瓦礫に埋もれて、寸断されていました。

< そこでふたりが見た光景は言葉にできるものではありませんでした >

ユイの … 東京へと続いていたはずの道は、そこから先は無くなってしまったのです。

< ただひとつ言えるのは、あの時ブレーキを掛けなければ、ふたりはその光景を見ることすら叶わなかったということ … もう1台も高台に停車したため、津波の被害を逃れました。

それは、後に『奇跡の車両』と呼ばれ、復興のシンボルになったそうです >


… … … … …

19時33分 …

夏に電話するアキ、しかし相変わらず「繋がりにくい状態」という電話局のメッセージが流れるだけでした。

< 夜になっても、母親の安否が確認できない小野寺ちゃんのために、河島さんや水口さん、太巻さんまで会社に残っていました >

「お待ちどう様!」


夕食を用意した小百合が奈落に下りてきました。

「安部ちゃん、漁協と連絡取れた?」

首を横に振る小百合。

「大吉さんも繋がらない …

ほらっ、沈んでてもしょうがないよ! 皆、食べっぺ!」


不安な顔をしているアキの尻を叩くと、一同の前にお盆を置きました。

「おっ、豚汁?」

意外そうな顔をしているしおりに小百合は尋ねました。

「まめぶのがいがったですか?」

「いや、豚汁の方が好きなんだけどね … でも、なんか今はまめぶ食べて文句言いたかった」

「甘いとか、しょっぱいとかね」


GMTには違う意味でまめぶが受け入れられているようでした。

「安部ちゃんといえば、まめぶやもんね … ドラえもんのドラ焼きみたいなもんたい」

「まめぶはポケットには入りません」

< 安部ちゃんのちょっと的はずれなツッコミで数時間ぶりに笑顔が戻りました >


その時、河島が息を切らせながら奈落へ駆け下りて来ました。

「小野寺、お母さん無事だったぞ!」

… … … … …

仙台市内の避難所にいると、ブログのコメント欄に書き込んでくれたファンがいて、無事なことが分かったのです。

オフィスのパソコンでそれを確認した薫子は胸をなでおろし、泣き出してしまいました。

「天野、いっそんと繋がったぞ!」

オフィスに走り込んできたのは種市でした。

「えっ、何て?」

「 … それが、一瞬だけ着信があって、すぐ切れたがら … 話しはできなかった。」


安堵と失望。

「ユイからは?」

種市に尋ねられて、首を振るアキ … こちらからも繋がらないし、ユイからの連絡もありません。

「時間的にはちょうど、北鉄に乗ってる頃だな」

水口の言葉に愕然とする種市。

「大丈夫だ、ユイは大丈夫ですよね」

自分自身を納得させるようにそう言いました。

… … … … …

ここで、太巻はひとつの決断を、皆に伝えました。

「皆 … 明日のイベントは延期する」

苦渋の選択、厳しい表情の太巻。

「中止じゃなくて、延期だ … なっ」

アキに向かって言い聞かせるように言いました。

「だから、今日は帰れる者は帰って、自宅待機」

太巻の話を聞いていたアキ、うなだれたかと思ったら … ガクッと膝をつきました。

それほどのショックだったのか?

「うん、天野?」

しかし、アキは床を這いつくばり始めました。

「アキ?」

そして、机の下に潜って …

「どうした、天野? お前の家はそこか?」

何かを探しているようにも見えます。

「 … あった!」

「何が?」


机の下から這い出して、立ち上がったアキの手には、ちぎれたミサンガが握られていました。

「わあ ~ !!」

GMTのメンバーから歓声が上がりました。

「大丈夫だ! 皆、絶対無事だ!」

アキは叫びました。

他愛のないおまじないのミサンガですが、今は皆それを信じてうなずき合いました。

… … … … …

その頃、奈落に置き忘れてきたアキの携帯に着信 … メールが届いていました。

『新着メール 夏ばっぱ』

… 夏からでした。

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2013年09月01日 (日) | 編集 |
さて、次週の「あまちゃん」は …

それは、突然やってきました …

GMTのメンバーとともに、念願の初ライブが決まったアキ(能年玲奈)。だが、前日の2011年3月11日、東日本大震災が発生する。北三陸市や北鉄は津波の被害を大きく受け、アキのライブも延期、映画「潮騒のメモリー」も海を扱った題材であったため、公開1週間後に打ち切りとなってしまう。

東日本大震災の混乱が続く中、大吉(杉本哲太)を中心に北鉄を復旧すべく懸命の努力が始まる。TVを通して伝わって来る故郷の様子に心揺れるアキ。だが、そんな折、アキが出演する子供番組「見つけてこわそう」が、タイトルを変えいち早く再開することが決まる。自らを奮い立たせ、アイドルとしての仕事を必死で続ける。

北三陸に帰りたいという思いを誰にも言えずに悩むアキ。そんなアキに、水口(松田龍平)が歌番組の企画を持ち込む。番組でGMTメンバーとともに「地元に帰ろう」を歌い終えたアキは、故郷に帰る決意を固める。

アキは、春子(小泉今日子)に「北三陸に帰りたい」と宣言する。春子は、中途半端に仕事を投げ出すべきでないと諭すが、アキの決意は固い。春子と正宗(尾美としのり)は、東京に残って仕事を続けるべきだと、逆に提案する。

もっと早く帰ってくればよかった …

震災から3か月後。アキは、1年半ぶりに北三陸に帰った。駅を出て町へ降り立つと、地震と津波の傷跡は生々しく、風景は一変していた。しかし、出迎えてくれた町の人々は、たくましく、前向きに日々を生きていた。

「お前はどうしたいんだ?」「道のりは長え、でもやらねばなんねえ」

北三陸に帰ってきたアキは、「海女カフェ」が津波で壊滅的な被害を受けたことを知る。思い出の詰まった場所の惨状にショックを受けるが、海女カフェの再建こそが自分のやるべきことだと確信する。

そして、2011年の夏が始まりました

あまちゃん 公式サイト、YAHOO!テレビガイド他を参照)


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