NHK朝ドラ『花子とアン』『ごちそうさん』『あまちゃん』…ストーリーを勝手に解釈&裏読み … ほぼネタバレ…
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2013年10月31日 (木) | 編集 |
第28回

『探さないで下さい め以子』

置手紙を残して、め以子は部屋から消えていました。

イクは大五に気づかれぬよう、タマにホールを任せると、め以子を捜しに外に出ました。

… … … … …

「私のこと、好きじゃないんでしょ?!」

「何でそういうことになるんですか!」


通りに出ると、言い争っているめ以子と悠太郎に出くわしました。

「だって、好きだったら、親兄弟捨ててでも一緒になろうって … 」

せっかく意気込んで、駆け落ちの準備をして乗り込んだのに、悠太郎には全くその気はなく … 納得がいかないまま、なだめられながら、ここまで戻って来ていたのでした。

「め以子!」

ふたりに駆け寄るイク。

「悠太郎さん、ありがとうね … め以子、連れて帰ってきてくれて」

「いいえ、ちょっと無茶を言い出しはったもんで … 」


隣でふて腐れているめ以子をイクは叱りつけました。

「悠太郎さんは学校もあるんだよ!

少しは相手のことも考えなさい!」

「でも … 」

「お父さんが許してくれはるように考えますから、少し待っててください」


悠太郎の言葉に、渋々うなずいため以子でした。

… … … … …

駆け落ちが未遂に終わった次の朝、め以子はイクに叩き起こされました。

「 … 今日から夏休みじゃない」

弁当を作る必要もないので、起きる気にならないめ以子ですが、布団をはがされてしまいました。

眠い目をこすりながら、台所に行くと、かつお節を掻くように言われました。

「えっ、かつお節はお母ちゃんの係じゃない?」

「あっ、できないんだ?」

「できるよ ~ お割烹でも習ったもん!」


引き受けたものの、思うように削ることができません。

見かねたイクが削り方のコツを教え、手本をして見せました。

母に教わった通りにやっているつもりなのですが … 一向に上手くいきません。

出来上がった削り節を確認しましたが、短くて粉々 …

「お母ちゃん、代わって ~ 」

あきらめて、投げ出しました。

… … … … …

「あんた、お姑さんにそれ言うの?」

「えっ?」

「意見が通らなきゃ、むくれて飛び出す、相手の立場でものを考えることも出来ない、かつお節ひとつ掻けない …

はあ ~ 私が姑でも、何でこんな娘をって、思うね …

悠太郎さんのこと待ってる間にさ、あんたにもやるべきことが、山ほどあるんじゃないの?」


イクは、弁当作りだけしか出来ないめ以子に家事を仕込むつもりだったのです。

… … … … …

目的を与えられため以子は俄然やる気を出しました。

… まずは、味噌汁、朝ご飯の準備。

食後は板の間の雑巾がけ …

「四角いところを丸く拭かない」「板目に沿って拭く」

クマから注意を受けながらも終わらせると、次は従業員の賄いのおむすびを握り、その間には洗濯も済ませました。

… … … … …

「はあ … やっと寝られる … 」

慣れない家事でへとへとになって床に就いた時、ひとつやり残していたことを思い出しました。

… 糠床の世話です。

睡魔と闘いながら、かき混ぜて野菜を入れるめ以子。

< そうそう ~ 主婦って疲れるのよ >

… … … … …

そんなある朝、大五がめ以子の作った味噌汁に手をつけようとしませんでした。

別に機嫌を損ねたわけではないようですが …

「食いたかねえんだから、仕方ねえだろ」

と言うだけです。

「この暑さですからね ~ 食欲が落ちてるんですよ。

毎年、この時期はこうですよ」


洗い物している時にクマから理由を聞かされました。

「そうだっけ?」

父の体調のことなんて、今まであまり気に掛けたことはありませんでした。

「がんばってね ~ 家族の体調に合わせて、食欲を出させるようにするのが、主婦の腕の見せ所だよ」

イクからそう言われても、大五に嫁ぐわけじゃないと、口をとがらせため以子。

「そうだ ~ 暑気払いに美味しいお味噌汁作ってさしあげたら、旦那さんも結婚許してくださるかもしれませんよ?」

「何で?」

「まあ、反対する理由はいろいろおありでしょうけど … お嬢さんがしっかりしてきたところ見せれば、『ああ、これなら大丈夫だ』ってんで、考え直してくれるかもしれません」


クマの言うことは余り当てにはなりませんが、大五のことは心配でした。

… … … … …

「冬瓜とミョウガ」「シジミと大根おろし」

め以子が思いついた食材は、もうすでにクマが作って試したものでした。

「う~ん、何かないかな ~ こう、思わずかっ込みたくなるような … 珍しい … 」

め以子とクマが悩んでいるところへ、友達が訪ねて来たと、タマが呼びに来ました。

… … … … …

店で待っていたのは、桜子でした。

「め以子、久しぶり … 暑いね ~ 」

「うん、箱根の別荘行ってるんじゃなかったの?」

「 … 毎晩毎晩、食事時に見合いばっかさせられて … 先に帰って来ちゃった」


屈託がなく笑いました。

「いい人、いなかったの?」

「悪くないんだけど … 面白くないのよね」

「面白くない?」

「うん、結婚するんだったらさ ~ もうやっぱり、あきの来ない人じゃないとさ」


… … … … …

「 … でね、海でも行かない? め以子」

「えっ?」

「女学校最後の夏だし … 民ちゃんも誘って、パ~っと!」


め以子も行きたいのはやまやまでしたが … 厨房の大五に目をやりました。

「言っといで … 何とでも誤魔化しといてやるから」

ふたりの話を耳にしたイクが大五の目を盗んで、小声で言いました。

うれしそうにうなずいため以子。

「じゃあ、民ちゃんにも言っておくね」

… … … … …

店を出て行く時、桜子は隣のテーブルで賄いを食べている室井に気づきました。

「美味しそうですね ~ 賄い」

「ああ、美味いんですよ ~ 」

「 … 西門さんは今頃、何食べてるんでしょうね?」


笑顔で厳しいひと言 … スプーンを持つ手が止まった室井。

… … … … …

数日後、千葉の海水浴場を訪れた3人娘。

黄色い声を張り上げて、はしゃいでいます。

ひと泳ぎした後、木陰でめ以子の作ってきた弁当を広げました。

「美味しい!」

「め以ちゃん、腕上がったね」


夏休みになってから毎日毎日、イクやクマに仕込まれている賜物でした。

… … … … …

「 … 本当にもう1ヶ月も会ってないの?」

民子が心配そうに尋ねました。

「うん … 音沙汰もないし …

さすがに新しい下宿は見つけてると思うけど … 」


それも知らされていませんでした。

… … … … …

その頃、悠太郎は研究室にいました。

その手にしているのは、教授から渡された本です。

「こちらに残るなら、この人につくのはどうかね?

鉄筋コンクリートの大きな仕事も多いし … 」

本を渡す時に教授が言った言葉を思い出して、また考え込んだ悠太郎。

気晴らしに研究室を出て、校内を歩いていると、日傘を差した亜貴子が立っていました。

… … … … …

「ほな亜貴は、春から仙台か?」

亜貴子は、いつぞや話していた通り、進路を決めたことを報告に訪れたのです。

「入れてくれたらな …

悠ちゃんは、就職、そろそろ決まった?」


悠太郎はベンチに腰掛けながら答えました。

「こっちでしようかなって思うてる」

「東京で?!」


亜貴子は意外という顔をしました。

「 … 何で?」

「あんな ~ 俺、結婚すんねん」


少し照れながら話した悠太郎。

一瞬、亜貴子に動揺が見えましたが、笑顔を作って相手は誰かと尋ねました。

「開明軒の … 」

「ああ … それで、こっちで?」

「 … あんな家、やっぱ連れて帰るのはな」


自分の家を『あんな家』と呼んだ悠太郎。

「悠ちゃんはそれでええの?」

「ええよ」


さばさばとした顔で答えた悠太郎に亜貴子は納得がいかないようです。

「けど実家は?

… 帰らなかったら、悠ちゃん、お父さんと同じことすることになる … 」

「それ以上、言わんといてくれ」


やんわりとですが、悠太郎は亜貴子の言葉を遮りました。

… … … … …

ふたりの間に微妙な空気が流れましたが、気を取り直して亜貴子は言いました。

「けどまあ、あれやな … それは、裏を返せば、自分の夢より家族より大事な人が出来たってことやな。

それは、おめでとうってことやんな」


しかし、悠太郎は亜貴子の祝福にも、先ほどのことが気になって、笑うことができません。

「ごめんな、変なこと言うて … 忘れて」

「亜貴 … 」

「ほな、行くな」


何となく気まずい雰囲気のまま亜貴子は立ち去りました。

… … … … …

「西門さん、こっちで就職してくれたりはしないの?」

海から引き揚げる道すがら、民子が訪ねました。

「め以ちゃんがこっちにいるなら、おじさんも反対しないんじゃないの?

今までと変わりない訳だし … 」

「それは、ないんじゃないのかな ~ 街造りは西門さんの夢だし」

「それ、東京じゃダメなの?」


桜子に聞かれ、め以子は少し考えてうなずきました。

「ダメだと思う」

… … … … …

ふと、め以子は浜の露店に目を止め、フラフラと近づいて行きました。

「どうしたの?」

後ろから覗く桜子。

め以子が見ていたのは、網かごいっぱいのアジでした。

… … … … …

「おい、め以子ちょっと遅くねえか?」

厨房の大五が少しイライラし始めています。

「汽車が混んでるんじゃないのかい?」

とぼけるイク。

め以子は今日、学校の遠足で千葉に出かけたことになっていました。

「 … まさか、あいつと会ってんじゃねえよな?」

「はあ? もう帰って来るよ」


いい加減面倒くさくなったイクは邪険に答えました。

「図星か? 図星だな?!」

その態度に下手な勘繰りを入れる大五です。

「夏盛り 吠える親父は 蝉の声 七日の後の 定めを知らず … ってね」

一首詠んだタマ。

「どういう意味だ、タマちゃん?」

何となく詠まれた意味が大五にも分かって、ムッとして聞き返しました。

「 … 室井さんのくだらない小説のセリフ読んだだけです」

上手に責任転嫁して逃げたタマ。

「ただ飯食らいがこの野郎!」

慌てたのは室井です。

もちろんそんなことは自分の小説には書いてありません。

「書いてないです、書いてないです!」

タマから原稿用紙を取り上げて大五に見せました。

… … … … …

「おかえり … 」

入り口が開く音に、め以子と思ってイクが振り返ると … 入って来たのは、悠太郎でした。

悠太郎は帽子を脱いで頭を下げると、大五に向かって言いました。

「大将、お話があります」

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2013年10月30日 (水) | 編集 |
第27回

「夢を見てたんです … 」

「 … 夢?」


悠太郎は、今見ていた夢の話を語り始めました。

「山登りしてて、よそ見して歩いてたら、沼に落ちてまうんです …
そこが、納豆の沼なんです」

「 … なんで納豆?」


… … … … …

「もがけばもがくほど、沈んでって … もうあかん、このまま納豆の中で息絶えるんやと思った時 …

あなたがやって来るんです」


め以子は腰を下ろして、悠太郎の夢語りにつきあっていましたが、今ひとつ理解できずにいました。

… 人の見た夢の話なんて、そういうものです。

「 … で、あなたは、エライこと長い鉄の棒を持ってくるんです」

「鉄の棒って、山に落ちているものなんですか?」


… そこは、夢ですから ~

「それを沼に下ろしてくれて、僕はそれに伝って、登って行こうとするんですけど …

あなたは、何故か分からないんですが、わざわざ降りて来るんです」


人の夢の中に出て来た自分の行動ですが、め以子は顔をしかめました。

「納豆の沼にですか?」

「そうです ~ 降りて来て、『もう大丈夫だから』って言うと … 納豆を吸い上げるように食べ始めるんです。

それこそ、口の幅で、吸い上げるんです … 妖怪みたいに」

「 … 妖怪」


よりによって、妖怪?

 … ドン引きするめ以子。

「それに笑って、目が覚めて …

目が覚めたら、あなたがいたんです … 僕を助けてくれた、あなたがそこにいたんです」


… … … … …

それで、話は終わりのようですが、結局何が言いかったのか、め以子には分かりません。

しばらく考えて、思いつきました。

「あ … ああ、だからあんなにビックリしてた訳ですか?

大丈夫ですよ、別に弱みにつけこんで、取って食おうなんて思ってないし … 私のせいでまかり間違って死なれたら、寝覚めが悪いんで来ただけですから」


その言葉に、悠太郎の表情が険しくなりました。

「 … お粥、適当に食べてくださいね」

もう長居は無用と、め以子が立ち上がって戸に手をかけた時 …

「アホなんか? ほんまに!」

… … … … …

悠太郎が今まで出したことがないような大声でめ以子のことを怒鳴ったのです。

「 … あなたとおったら、どんなとこでも平気や、いつでも笑ってられるって、そういう話をしてんのや」

「 … 」

「あなたとおったら、納豆の沼かて抜け出せると思うたって … そういう話をしてるんや!

けど … 助けてくれいうのは、そこにあなたを引きずり込むことになるから … 辛い目にも、合わせるかもしれんから …

それでもええかって、聞いてるんです」


ようやく、め以子にも悠太郎が何を言いたかったのかが理解できました。

「 … それって、あの … それ … 私と一緒になりたいってことですか?」

おずおずと尋ねため以子。

悠太郎を膝を正して座り直しました。

「大好きなんです … あなたの食べてるの。

せやから、あなたを一生食べさせる権利を僕にください」


そう言って、頭を下げました。

… … … … …

め以子の頬をつたう涙。

うなずき、そして答えるめ以子。

「 … お願いします」

顔を上げた悠太郎に向かって、め以子も頭を下げました。

「よろしくお願いします」

め以子の涙は喜びの涙でした。

安堵の表情をする悠太郎 …

… … … … …

「私、いらないんじゃないですかね?」

部屋の外では、室井に連れて来られた医者が身の置き場に困っていました。

「 … いらないんじゃないですかね」

うなずいた室井、中のふたりにもらい泣きしていました。

… … … … …

「あ、そういえば、就職ってどうするんですか?」

お粥を食べていた悠太郎は、大阪市役所を考えていたと答えました。

「公共の建物に関われるし、街を安全に整備していくのも、やっぱり市役所やし … 」

『住みよい街を作るのが夢』という、いつか聞いた話をめ以子は思い出していました。

「 … けど、東京を離れるのは、やっぱり寂しいですよね?」

「大丈夫です」


… … … … …

帰宅しため以子、まだ表だって喜ぶことはできないのですが、何かにつけ思い出してはニヤニヤしていました。

糠床の世話をしながらもデレデレは止まりません。

< そうだね ~ 夢みたいだね ~ >

両手で、頬っぺたをつねったり、叩いたり …

< 大丈夫 … 夢じゃないよ >

「痛い … うふふふ」

そんなめ以子の様子を階段の降り口で覗いている人影 … 何故だか、声を殺して男泣きしている大五でした。

… … … … …

次の日、大五の元に見慣れない老紳士が訪れて、何やら頼まれごとをして帰って行きました。

「誰だい? 今の客」

「見合いの紹介、頼んでるみたいですよ」


タマから聞いて初めて知ったイクは、大五を問い詰めました。

「お父ちゃん、何でまた見合いなんか?!」

「だってよ ~ め以子に早くいい相手みつけてやんねえとよ」

「はあ?」

「あいつ、夜中にひとりで笑ったり、てめえの面殴ったりよ … きっと、袖にされたことが辛くって、おかしくなりかけてんだ」


め以子のことが心配なのは分かりますが、せっかち過ぎるとイクはあきれていました。

… … … … …

「おっ父ちゃ~ん、今日の賄いなあに? うふふっ」

ご機嫌で店に顔を出しため以子 … 事情を知らない者には、おかしくなりかけているようにしか見えません。

「お前、この子見て何も感じねえのか?」

その時、入り口の扉が開いて、入ってきたのは … 悠太郎と室井でした。

… … … … …

「大将、お話があってきました」

店に入るなり、悠太郎は大五に向かって言いました。

「こっちはねえよ、帰えれ!」

取りつく島のない大五に悠太郎はいきなり頭を下げました。

「お嬢さんを僕にください!」

驚く大五とイク、店の一同 … ひとり喜びをかみ殺しているめ以子。

「 … お嬢さんを僕にください」

今一度、大五の目を見て言いました。

「 … め以子を?」

「はいっ」


真っ直ぐと目をそらすことなく答えた悠太郎。

「お父ちゃん、西門さんはね、実は私のことを思って断ってくれてたの … 」

め以子の言葉には耳を貸さず、大五は悠太郎を殴りつけました。

… … … … …

「ふざけるんじゃねえよ!

てめえ、この間いらねえって言っただろうがよ!」


悠太郎は立ち上がりながら事情を説明しました。

「僕の家はややこしくて …

僕は今まで家庭の幸せみたいなものをあきらめてたんです … 自分には縁がないもんやって。

だけど、この家に来て、こんな家ええなって … 食事するのが楽しみになるこんな家、ホンマにええなって。

こんな僕でも、お嬢さんと居れば、幸せになれる気がするんです。

だから … 」


大五は悠太郎の言葉を遮りました。

「おいっ、てめえが幸せになりてえから、うちの娘よこせだ?

そんな了見あるかよ?

てめえを幸せにするために、俺はこいつを育てた訳じゃねえんだよ!」

「決してそういう … 」

「てめえは、め以子を幸せにするために何するって話だよ!」


… … … … …

話は決裂、悠太郎と室井は開明軒を追い出されてしまいました。

「 … まさか、あんなに怒るとはね ~ 」

室井の言葉に店を振り返った悠太郎。

「幸せにするため … か … 」

大五に問いただされて、悠太郎は咄嗟に答えることができなかったのです。

… … … … …

「西門さんの家は人間関係が複雑なんだって …

だから、私のことを思って断ってくれてたの!」


め以子がいくら取り成そうとしても大五の怒りが収まることはありませんでした。

店の外に向かって思いきり塩をまいた大五。

「幸せにしてほしいって、どういう神経してんだよ!」

「だから、それは … 」

「出来ようが、出来まいが、『幸せにします』って言うんだよ!

それが男ってもんなんだよ!」


生真面目な性格ゆえに、口先だけの返事が悠太郎には出来なかったのでしょう。

「 … そんなことが分かんない奴は、ロクなもんじゃないよ!」

「分からず屋っ」


… … … … …

次の日。

桜子と民子は、通学路でめ以子が怪しい男にずっと尾行されているのを目にしました。

教室で顔を合わしため以子は、浮かない顔をしていました。

… 昨日、悠太郎と以心伝心の仲になれたと報告してきた時はあんなに浮かれていたのに …

「通天閣に会いにいかないように見張られてんの?」

「そう ~ もう嫌らしいったらありゃしないわよ!」


尾行していた男は、大五に命じられた山本でした。

「 … 西門さんとどうやって連絡取ろう?」

「手紙、書いたら?」


民子が手を差し伸べました。

「私、伝書鳩してあげるから」

「 … 心の友よ ~ 」


人一倍大柄なめ以子が小柄な民子を抱きしめました。

… … … … …

め以子からの信書を預かった民子と桜子は室井の下宿を訪ねました。

「ねえ、こういう所って、どうやって暮らすの?」

初めて目にする安下宿、お嬢様育ちの桜子には全く想像がつかないようです。

ふたりが躊躇していると、戸が開いて室井が顔を出しました。

「えっと、室井さん … 」

勇気を出して民子は声をかけました。

まさか自分に用があるとは思わなかった室井はポカンとしています。

「これ、西門さんに渡してほしいんですけど … 」

民子に封筒を差し出されて、室井は困ったような顔になりました。

… … … … …

「 … 追い出された?」

室井の話によると … 大五から、悠太郎を匿っているのなら、賄いを食べさせないと脅されて、止むを得ず、出て行ってもらったということで … 仕方がなく民子たちは信書を持ち帰って来たのです。

その話を聞いて、め以子は我慢できなくなりました。

寝泊りする場所をなくしたら、病み上がりの悠太郎のことが心配でなりません。

「お父ちゃん、何でそこまで反対するの?!」

め以子の話など取り合わずに仕事を続ける大五。

「お父ちゃんだって、西門さんのこと気に入ってたじゃない?!

スープ運んでもらったり、階段直してもらったり … ありがてえ、ありがてえって、言ってたじゃない!」

「別に頼んだ訳じゃねえや!」


確かに、今の大五の悠太郎に対する嫌い様は尋常ではありません。

「ああ、そう … もういいっ!」

… … … … …

その夜、いつまで経っても賄いを取りに来ないめ以子を心配したイクが部屋まで運んで行くと …

部屋はもぬけの殻、机の上には書置きがありました。

『探さないで下さい め以子』

… … … … …

室井の下宿を追い出された … というより、自ら出た悠太郎は、教授に事情を話して、研究室に泊まる許可を得ていました。

「火だけは気をつけてくれよ」

「はい、ありがとうございます」


教授が帰ると、静かな研究室に悠太郎はひとりきり … 長いため息をつきました。

「 … どうしたもんか?」

八方ふさがりでした。

ふと、誰かが窓を叩く音がして … 振り向きました。

め以子でした。

… … … … …

慌てて窓を開けた悠太郎。

「 … どないしたんですか?」

窓から身を乗り出してきため以子 … 表情が強張っています。

「か … 駆け落ちしましょう!!」

思い切ったことを口走りました。

「駆け落ち??」

悠太郎の言葉に何度もうなずいため以子でした。

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2013年10月29日 (火) | 編集 |
第26回

め以子は帰宅するなり、自分の部屋でひっくり返っていました。

その理由は … 食べ過ぎです。

「ヤケ食い?」

「学校帰りにお友達とずいぶんたくさん食べてらしたようで … 」


イクに報告をしながら、クマは今更ながら残念そうに話しました。

「何とかなんないもんなんですかね?

私は、おふたりでいる様子が好きだったんですよ」

「私も脈がないとは、思えなかったんだけどね ~ 」


悠太郎の取った行動がどうしても合点がいかないふたりでした。

「あの ~ じ、実は、あの … 」

ふたりの会話を賄いを食べながら聞いていた室井が、何かを切り出そうとした時、厨房から大五が顔を出しました。

「信用ならないっていうんだ! ああいうインテリゲンチャは!

… 気があるって見せかけて、人の心を弄ぶんだ! なあ?」


大五から同意を求められた室井はうなずき、何かあったのか、わざとらしく尋ねました。

「あの男のせいでめ以子の見合い、おじゃんになってよ ~ しかもあの野郎、め以子のこと振りやがってよ!」

「え ~ そうなんですか?」


初めて知ったように、下手な芝居で驚いた室井。

「この辺うろついてたら、お前教えろよ ~ ただじゃおかねえかんな!」

悠太郎のことを気に入っていただけに、その反動で時間が経つにつれて怒りが増して来ているのかもしれません。

「馬鹿なこと言ってんじゃないよ!

… 室井さん、気にしなくていいからね」


イクにたしなめられて、大五は余計に意地になったようです。

室井が食べている賄いの皿を取り上げ、お預けの状態で聞きました。

「お前、俺の味方だよな?」

「もちろんですよ ~ 」


… … … … …

室井の部屋で寝込んでいる悠太郎。

咳き込みながら、布団の上で体を起こしました。

一向に下がらない熱、浴衣も汗びっしょり。

「 … 着替えるか」

トランクを開けると、まず目に入ってきたのは、弁当箱でした。

… … … … …

部屋でひっくり返っていため以子が、突然何か思いついたように飛び起きました。

「これは絶対びっくり … 」

机に向かうと、料理ノォトにせっせと書き込み始めました。

『お菓子のやうな弁当 … 』

そのうちにふと手を止めました。

もう悠太郎に弁当を作る必要はないのです。

「ばっかみたい、私 … 」

… … … … …

しかし、め以子は昨日思いついた料理を作って、桜子と民子に披露しました。

弁当箱のフタを取ると、桃色、黄色、緑色の団子が入っていました。

「わあ、可愛い ~ 」

「きれい!」


め以子は、感嘆の声を上げているふたりに食べるよう勧めました。

「甘い ~ 」

好評でした。

「これお団子なの?」

もち米を少し加えた団子に、緑はグリンピースの粉、黄色はきな粉、桃色は桜でんぶをまぶしたものだと説明しました。

「すごい ~ お菓子弁当、幸せ ~ 」

「 … でしょ?

私も思いついた時、うれしくなっちゃって」


会話の途中、め以子は自分のことをじっと見つめている民子の視線に気がつきました。

「うん?」

「あ … お弁当作りは、その … 止めないんだ?」


それは、め以子自身も感じて迷ったことでした。

「うん、これまで止めたらバカみたいじゃない?

… せっかく楽しいこと見つけたのに」


そう考えて、続けることにしたのです。

落ち込んでいため以子の前向きな姿勢を見て、民子は喜んでいるようです。

「次は和菓子屋から縁談来るかもしれないしね」

「 … そういうこと」


桜子のそんな冗談にも笑って応えため以子でした。

… … … … …

その日、め以子が帰宅すると、クマが悠太郎がいた部屋の掃除をしていました。

「片付けしてたの?」

「西門さんの学生服、女将さんが返しに行かれて … 」


… … … … …

帝国大学を訪れたイク、悠太郎が学んでいる教室を探していました。

慣れない場所で迷っていると …

「開明軒の女将さん?」

声をかけてきたのは、近藤でした。

「ああ、近藤さん … あの、西門さんは?」

「今日、休みなんですよ … 風邪ひいたみたいで」


イクは、め以子が悠太郎に借りた制服を返しに来たことを告げました。

「ああ、あん時の … 振袖の」

「えっ、見てたんですか?」

「ええ、まあ遠くからなんで、よくは見えなかったんですけど」

「実は … うちの娘が求婚して、断られたんです」


その話は知らなかったようで、近藤は驚いていました。

「 … 意外だな」

「私もお互い脈があると思ってたんだけどね ~ 」


近藤はしばらく考えてから、話し始めました。

「それ、もしかしたら … お嬢さんのためじゃないですかね … 」

… … … … …

イクは、近藤から聞いた話をめ以子に伝えました。

「 … だから、悠太郎さんのご家族っていうのが、どうも複雑でね ~ しかも長男で、お父さんは亡くなってるし、家族の面倒見ないといけないんだってさ。

そんなややこしい所に、あんたを連れて帰るのは忍びなかったんじゃないかって … 」


黙ってイクの話を聞いているめ以子。

「悠太郎さん、め以子のこと大事に思ってくれてたんじゃない?」

しかし、そんな話を聞かされても、今更どうなるわけでもなく …

… … … … …

次の日。

モヤモヤとした気分が晴れずに学校の廊下を歩いていため以子は、偶然通りかかった割烹室から出てきた宮本と出くわしました。

「あら、どうしました?

… 最近、おむすびはどうですか? 上手くいってますか?」


悠太郎が出て行ってから、以前のように助言を求めて訪れることもなかったのです。

「私 … 」

その時、廊下の向こうから生徒たちの悲鳴が聞こえてきました。

ふたりが慌てて駆けつけると … 逃げ惑う生徒たちの後ろで、室井がうろうろと誰かを探すような仕草をしているではありませんか?!

「室井さん?!」

め以子の姿を見つけて、ホッとした室井は、人懐っこい顔で手を振りました。

… … … … …

宮本立会いの下、め以子は割烹室で室井の話を聞きました。

「室井さんの所に?」

「お願い ~ 大将には言わないで … 俺、賄い食わしてもらえなくなるから」

「言いませんよ! それで? … 」

「悠さん、熱出したの知ってる?」


イクから聞いて、風邪をひいたらしいということは知っていました。

「どうも、こじらせちゃったみたいで … 」

医者にも診せず、十分な栄養も取らず、不衛生な場所で寝ているだけですから …

「悠さんというのは、下宿していた納豆の方ですか?」

宮本に尋ねられて、うなずくめ以子。

早い話、室井は、め以子に一度、悠太郎のことを見舞いに来てほしいと頼みに来たのでした。

「私が行ったって、治るわけじゃないし … 」

「だって、溺れため以ちゃんを助けてこうなってるんでしょ?」


室井は食い下がりました。

「とにかく、私はもう関係ないですから … 」

割烹室から出て行こうとするめ以子。

「死にゃあしませんよ、風邪くらいで … 肺炎にでもならなければ」

宮本は室井に言いました … め以子にも聞こえるような大きな声で。

振り向いて宮本の顔を見ため以子。

「あら、まだいたの?」

… … … … …

め以子は台所で糠床の世話をしながらも、宮本の言葉が気になっていました。

< そうだね ~ たかが風邪くらいで、滅多死にゃあしないよ、死にゃあね …

2、3日食べないくらいで、平気だよ

でも、室井さんのことだから、医者なんか診せてくれてないよね … きっと、ロクなもんも食べさせてないしね … >

一度考え出すと、よからぬ想像が頭から離れなくなりました。

「う~ん、もうっ!」

< えっ、何だい? >

「死んでしまえ、あんな奴!」

… … … … …

め以子は家を飛び出しました。

何やら袋を抱えて走る走る走る …

… … … … …

着いた場所は、室井の下宿先です。

「め以ちゃん、来てくれたんだ?!」

室井は宮本から、め以子は必ず来ると言われて、外に出て待っていたのです。

「あの、これ少しですけど、お医者さんに診せる足しにしてください」

め以子は室井に金を包んだ紙と、米が入った袋を手渡しました。

「一番要ると思って … 」

「ありがとう ~ 」


それだけで立ち去ろうとするめ以子を室井は引き止めました。

「あの、僕、これからお医者呼びに行くから、ちょっと悠さん見ててよ」

「えっ?」

「お粥でも作ってあげてよ、台所使っていいから」


め以子の返事も聞かず、もらったコメの袋を渡すと行ってしまいました。

… … … … …

薄暗い廊下を歩くめ以子、室井の部屋の前で足を止めました。

「西門さん?」

部屋の外から名前を呼びましたが、返事はありません。

少し戸を開けて、部屋の中を覗きました。

布団の上で真っ赤な顔をした悠太郎が眠っているのが見えました。

そっと中に入って、悠太郎の傍らに座るめ以子。

悠太郎の頬に軽く手で触れてみると … すごい熱です。

額に載せた手拭いの位置を直して、め以子は部屋から出ました。

台所を借りて、お粥の支度を始めました。

… … … … …

悠太郎は熱で浮かされていました。

苦しそうな息遣い … 険しい表情、何か夢でも見ているのでしょうか?

… … … … …

しばらくして、め以子が包丁を使う音が部屋まで聞こえてきました。

すると、うなされていた悠太郎の表情が穏やかに変わっていきます。

それどころか、寝ているはずの悠太郎が声を出して笑い始めたのです。

「!!」

突然、目を覚ましました。

体を起こして、辺りを見回す悠太郎 … 夢を見ていたことに気づいたようです。

「アホか、俺は … 」

… そんな夢だったのでしょうか?

ため息をついた悠太郎。

… … … … …

その時、戸が開く音がしたので、そちらに顔を向けました。

「室井さん … ?!」

悠太郎は我が目を疑いました。

立っていたのは、室井ではなく、め以子だったからです。

夢の続きではないことを知った悠太郎は、め以子に背を向けて布団に横になってしまいました。

… … … … …

「これ、ここに置いたら帰りますから … 」

め以子は枕元にお粥をのせた盆を置きました。

「 … 何でおるんですか?」

ぶっきらぼうに尋ねた悠太郎。

「風邪をひいたのは、私が川に落ちたせいですから … 」

そう言いながら、め以子が手拭いを取り替えようとすると、悠太郎は断りました。

「自分で出来ます」

その態度が意固地に感じて、め以子は少しムッとしました。

「 … じゃあ、お粥、ここに置いておきますんで」

め以子が部屋を出て行こうとすると、悠太郎が呼び止めました。

「あの … 」

足を止めて、振り向いため以子。

悠太郎は、ゆっくりと体を起こして、布団の上に座りました。

そして、ポツリと言いました。

「夢を見てたんです … 」

「 … 夢?」


果たして …

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2013年10月28日 (月) | 編集 |
第25回

「あなたを一生食べさせます!

朝も昼も夜も、私はあなたに美味しいものを食べさせます。

だから … 私を一生食べさせてください」

見合いの席を逃げ出して、悠太郎の元に駆け付け … そして、自分からプロポーズをしため以子。

め以子の手に自分の手を重ねた悠太郎。

しかし、その口から出た言葉は …

「お断りします」

め以子の耳には、そうはっきりと聞こえました。

… … … … …

「えっ?」

「 … お断りします。

あなたとは、結婚できません」


握っていた手でめ以子の手を外しました。

「でき … ない?」

「はい」


目をそらしてしまった悠太郎。

「 … そうですか」

め以子の消え入るような声 …

最高に盛り上がっていた気持ちでしたプロポーズも、ドラマチックな結果は訪れずに、当たって砕けてしまいました。

… … … … …

うつむいて歩く悠太郎、その少し後から、ずぶ濡れのまま悠太郎の学生服の上着を羽織っため以子が、トボトボとついて来ています。

家に着いた途端、母屋から大五の怒鳴り声が聞こえてきて、ふたりは足を止めました。

「俺はお前のそういう態度が気に食わねえっつってるんだよ!

あいつの気持ちが分かってんなら、なんで前もって見合い断んねえんだよ?!」

「本人が行くっつてんだから、仕方ないだろう?!」

「 … お前それでも母親か?!」


先方をはじめ、恩人である新井社長の顔をつぶした上に、イクがめ以子の本心に気づいていながら自分には隠していたことに、大五は腹を立てていました。

… … … … …

大五とイクが言い争っている中、家に上がってきた悠太郎とめ以子。

「め以子、どうしたんだい?」

ずぶ濡れのめ以子を見て、イクは驚いて駆け寄りました。

「私が川に落ちちゃって … 」

「おい、お前いつからそういうことになってたんだよ?」


大五は悠太郎の顔を見るなり問いただしました。

答えることができない悠太郎。

「こっちが好意で置いてやりゃあ、コソコソ娘に手出しやがってよ …

それが帝大生のやり方か、おい?!」

「やめてよ、お父ちゃん … 」


いたたまれなくなった、め以子が止めに入りましたが、大五の怒りは収まりません。

「俺ゃあな、あんたのこと信じてたんだよ … それをコソコソ、恩を仇で返しやがってよ!」

「やめてってばっ!」


… … … … …

「別に何もないし … 私、断られたんだから」

「断られた?」

「私から言ったんだけど、ダメだって … 私とは、結婚できないんだって … 」


その言葉に大五だけでなく、イクも顔色を変えました。

「 … そうなの?」

イクに尋ねられて、うなずいた悠太郎。

「だから、お父ちゃんが怒るようなことは何もないの … 」

め以子が着替えに行こうと階段に足をかけた時、しばし言葉を失っていた大五がようやく口を開きました。

「 … 断ったっていうのは、どういうことだ?」

悠太郎に詰め寄りました。

「てめえ、うちの娘に文句あるってのか?

なんだ? お偉い帝大生には、洋食屋の娘は釣り合わねえ ~ そういうことか、お前?!」

「そういうことや、ありません」


悠太郎は否定しましたが、先ほど以上に怒り心頭の大五の耳には届きません。

「でけえしよ、大食らいだし、お頭も空っぽかもしんないけどな … 真っ直ぐだし、明るいし、飯炊かせれば美味えし …

おめえにそこまでコケにされる筋合いはねえってんだよ!!」


… … … … …

「 … おっしゃる通りやと思います」

「じゃあ、お前、断ったって … どういう了見だ、この野郎!」


悠太郎の胸倉に掴み掛りました。

「やめてよ、お父ちゃん!」

め以子は大五を引き離しました。

「お願いだから … 」

大五が悠太郎のことを責めれば責めるほど、自分のことが惨めに思えてくるのです。

「出てけ! 今すぐ出てけ!

その忌々しい面、二度とさらすんじゃねえぞ!」


イクがとりなしましたが、大五はそっぽを向いて座り込んでしまいました。

悠太郎はひと言も弁解もせずに、頭を下げると、その場から去りました。

… … … … …

「 … 何かご事情があるんじゃないですかね ~ 

私は、決して脈がなかった訳じゃないと思いますけどね」


ずぶ濡れになった晴れ着の手入れをしながら、クマがめ以子を慰めました。

「もういいよ … クマさん」

うつろな目のめ以子、今は何を言われても辛いだけでした。

「姉ちゃん! 悠太郎さん、本当に出ていくぞ!

早く止めないと!」


照夫が慌てて呼びに来ましたが … め以子はそんな気にもなれませんでした。

… … … … …

『都合により本日休業』の貼り紙。

開明軒の入り口を、荷物をまとめた悠太郎が見つめていました。

そして、頭を下げると、店を後にして歩き始めました。

… … … … …

「あれ、悠さんどうしたの? その荷物」

声をかけてきたのは、たまたま店のそばにいた室井でした。

「出ていくことになりまして … 」

室井は驚きましたが、すぐに心当たりを思い出しました。

「もしかして … あの後、何かあったの?」

「 … あの後って?」


… … … … …

取りあえず、行く当てのない悠太郎を室井は自分の下宿へ連れて行きました。

「そんなことになってたとは … 僕の米の話が説得力ありすぎたかな ~ 」

結果はどうあれ、自分が考えた話で人を動かしたことに、室井は悪い気はしていませんでした。

あまり元気がない悠太郎 … 卯野家を追い出されたことが応えているようです。

そんなことには構わずに室井は、ひょうひょうと尋ねてきました。

「あ、でも何で断っちゃったの? 亜貴子ちゃん?」

「僕と結婚するいうんは、女の人にとって、せんでええような苦労することでしかないんですよ」

「でも、そんなこと言ってたら、一生結婚なんてできないんじゃないの?」


自分のことは棚に上げて室井は言いました。

「だから、結婚なんてしなくてもええくらいに考えてたんです」

そう言った後、悠太郎はひとつくしゃみをしました。

… … … … …

部屋にこもったままのめ以子。

イクが廊下から様子を窺うと、窓辺に座って悠太郎がいた部屋をじっと見つめているのが分かりました。

その切なげな表情に胸が痛むイクでした。

… … … … …

次の朝、卯野家の食卓はまるでお通夜のようでした。

誰ひとり口も利かず黙々を食事をして … 大五やめ以子に気を使っているだけでなく、皆それぞれ悠太郎がいなくなったことに寂しさを感じていました。

もう家族と同じ存在だったのです。

め以子が悠太郎が座っていた場所に目をやると、照夫がきちんとひとり分開けていました。

「もっと広く使えよ。

皆、なんかせせっこましく使うクセついちまってよ ~

でけえのいなくなって清々したよ、広々して … なあ、め以子?」


自分で追い出しておきながら、大五も内心はやはり寂しいのでしょうか … 皆の手前、明るく振舞っていますが、無理しているようにも見えました。

… … … … …

登校しため以子は教室に入る時、自分の席で読書をしている桜子と目が合いました。

しかし、桜子はすぐに目をそらして、ふたたび本を読みはじめてしまいました。

『どうして逃げるの? ちゃんと勝負しなさいよ!』

め以子の耳には叱責した桜子の声が残っています。

気まずい雰囲気のまま席に着くと、民子がこちらに気づきました。

「おはよう、め以ちゃん … お見合いどうだった?」

め以子は、知らん顔をしている桜子にも聞こえるように答えました。

「お見合い … 逃げ出した」

微かに反応した桜子。

「私、ちゃんと言ったのよ … 自分の気持ち … だめだったけど」

ふたりは、め以子の顔を見ました。

「結局、お見合い途中で反故にして、走ってって、勢いあまって川に落ちちゃってさ …

そこまでして ~ そこまでして、プロポーズしたのによ、『お断りします』よ … へへへ、嫌になちゃうわよね?」


身振り手振りを入れて、努めて明るく報告しました。

「 … 私、この先、お嫁に行けるのかしらね?」

… … … … …

「許せない!」

桜子は、そう言うと席から立ち上がりました。

「 … 桜子?」

「私、通天閣に文句言ってやる!」

「何で?」


桜子につられて、民子まで立ち上がりました。

「私も行く!」

「ちょっと待ってよ ~ 文句も何もないじゃない?」


理由が分からずに戸惑うめ以子。

「私の友達、泣かしたじゃない! … 文句言って何が悪いのよ?」

め以子は、その言葉にグッときながらも答えました。

「でも、向こうにだって、選ぶ権利はあるし … 選ぶ … 権利は … 」

ずっとこらえていた涙が一気に溢れてきました。

それを見て同じように … もらい泣きするふたり。

しゃがみこんでしまっため以子の肩を抱いた桜子。

「今日、カフェ行こう」

うなずくめ以子。

「ミルク飲もう」

反対側に寄り添った民子。

「男なんていくらでもいるんだから」

それをきっかけに3人は声を上げて大泣きし始めました。

教室の入口で、宮本が不思議そうな顔で見ているのにも気づかずに …

… … … … …

帝大の教室。

こちらから聞かなければ、余計なことは何も話さない悠太郎でした。

「この間、あの後どうだった?」

近藤が気にして尋ねましたが、そのことには答えずに …

「どっか、下宿ないかな … 」

「何で?」


まさか追い出されたとまでは考えが及ばない近藤は怪訝な顔をしました。

そして、弁当がないことにも気づきました。

「あれ、お前、今日弁当は?」

「ない … ないもんは、ないっ」


悠太郎は立ち上がって、窓の外に目をやりました。

差し込む陽がまぶしい … 目を細めた悠太郎 … その刹那、景色がゆがんで、意識が遠退きました。

倒れる悠太郎。

… … … … …

放課後、カフェを訪れた3人。

「私、よ~く分かったわ … 男って、追うと逃げる生き物なのよ。

追っちゃダメなのよ、追わせなきゃ」


しみじみと語る桜子。

「 … あの、今さら何てこと言ってくださいますのって … 感じなんですけど」

桜子に煽られて、あえなく玉砕してしまっため以子でした。

「でも、このカフェって、縁起悪いわよね ~ 」

め以子や桜子と違って、直接実害は被っていない民子が、ポロリと口を滑らせました。

「言っちゃだめ ~ 」

ふたりは、民子のことをうらめしそうに見つめました。

「ああ、どっかにいい男いないかな ~ 」

… … … … …

め以子は、ふと悠太郎が座っていた席を振り返りました。

あの席に座っていた悠太郎の肩に、め以子が誤って生クリームを飛ばしてしまったのがきっかけでした。

『すいませんっ!』

『結構です … 余計なお世話なんで』

出会った時は、最悪の印象だったのに …

思い出すとまた泣きたくなってきました。

それを察した桜子が、ミルクのお代りを注文しましたが …

「プディングとサンデーと、あと、あと … パンケーキもください!」

悲しみを紛らわすためにものすごい勢いで食べ続けるめ以子でした。

< め以子が、ヤケ食いに明け暮れていたその頃 …

悠太郎は、高熱に浮かされていたのでございました >

あれから世話になっている室井の部屋で悠太郎は寝込んでいたのです。

川に入って冷えた体をロクに乾かしもせず、そのまま下宿を追い出され … 睡眠不足、栄養不足が続いたからかも知れません。

室井は水に浸した手拭いを、熱で真っ赤な顔をした悠太郎の額にのせました。

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2013年10月27日 (日) | 編集 |
まずは、先週のおさらいを …



それでは、次週の「ごちそうさん」は?

断ったていうのはどういうことだ … お偉い帝大生には洋食屋の娘は釣り合わねえ、そういうことか?

悠太郎(東出昌大)にプロポーズし、断られため以子()。大五(原田泰造)は激怒して悠太郎を追い出す。

少しは相手のことも考えなさい!

落ち込んでやけ食いするめ以子。家族に屈託があるらしい悠太郎が、め以子を思ってのことではというイク(財前直見)の意見にも耳を貸さない。

室井(山中崇)の下宿に転がりこんだ悠太郎は、高熱を出してしまう。室井から悠太郎の容態を聞き、下宿に来ため以子はお粥を作るはめに。

目覚めた悠太郎は納豆にまつわる奇妙な夢の話をし、やはりめ以子を一生食べさせたいとプロポーズする。

どういう了見だ? この野郎!

喜んだのもつかの間、一度断っておいて求婚してきた悠太郎に、大五はまたも激怒。一切会うことを禁じる。め以子は駆け落ちを企てるが、悠太郎に説得されて戻る。

イクに改めて料理の基本を仕込まれ驚くめ以子。家族それぞれを思い食事作りに心を砕くことを教わる。

悠太郎はめ以子のため東京での奉職を申し出るが、大阪の街づくりへの情熱を知るめ以子は承知しない。

暑い中仕事をする大五にと、魚と薬味入りの冷たい味噌汁「がわがわ」を作っため以子。大阪で新たな家族のために頑張り、幸せになってみせると許しを乞う。突然大五はめ以子に、鶏のフォン(がらスープ)作りを手伝えと言う。

18年間、ごちそうさまでした!

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2013年10月26日 (土) | 編集 |
第24回

「あなたのお蔭で僕は、とても昼が幸せでした … 今のあなたは、幸せを作り出す力を持った女性です。

せやから、幸せになれると思います」

見合いが急に明日に決まったことを知って、悠太郎がくれた言葉をめ以子は布団の上で思い返していました。

そして、悠太郎もまた同じように、眠れぬ夜を過ごしていたのです。

… … … … …

イクは仏間で衣桁に掛けため以子が明日着る振袖を見つめていました。

娘の気持ちに気づいているイクは、この縁談を大五のように心から喜ぶことができずにいたのです。

「これでいいのかね ~ お母ちゃん?」

家族写真に写っているトラに問いかけたイクでした。

… … … … …

次の日の朝。

イクが台所に顔を出すと、め以子がいつものように弁当を作っていました。

「今日もお弁当作ってるのかい?」

「うん、西門さん、ボート部の試合なんだって」


見合い当日だというのに、悠太郎のためにせっせとおむすびを握っているめ以子を見て、イクはいじらしくなってしまいました。

「 … め以子、熱あるんじゃないか?」

「えっ? ないよ」

「じゃあ、お腹痛くないか?」

「いや、別に」


め以子に言葉の裏を読むことを期待しても無理な話でした。

ため息をついたイク。

「そんなことでもあったら、お見合い行かなくてもいいのにね ~ 」

その言葉で何故あんなことを聞いたのか、め以子はやっと気づき、手を止めてイクのことを見ました。

「あんた、ホントにそれでいいのかい?」

心配そうに尋ねたイク、目をそらしため以子。

「お母ちゃん … 私、まるやで幸せになれる気がするの、なれる気がするから ~ 」

そう言いながら、悠太郎の弁当箱を開けました。

中にメモが入っています。

『用意もあるでせうから、今日は結構です。

慣れない競技の助太刀なので、早めに出ることにします』

悠太郎の字でした。

… … … … …

悠太郎はすでに競技場に来ていました。

まだ誰もいない土手に立って、川を見ていると、近藤が部員たちを引き連れてやって来ました。

「おい、西門、早いな ~ 」

「まあな … 」


… … … … …

両親、見合い話を持ってきた新井社長と共にまるやを訪れため以子。

3人は、客間に通されました。

「失礼します」

しばらくすると、見合い相手がまるやの主人、女将と共に現れました。

「 … 今日はよくお越しくださいました。

当主の太一郎、息子の真二郎でございます」


両家が挨拶を交わした後、見事な料理が乗った膳が運ばれて来ました。

め以子は、焼き魚をひと口食べて、その美味しさに思わず声を上げてしまいました。

「め以子さんは、何か食べられないものとかないの?」

真二郎が尋ねました。

「あ … イワシは、あんまり好きじゃない … かも」

「よしっ、よしよしよし … 今度、俺のイワシ料理食わしてやるよ」


笑った真二郎、物おじせず、男らしくなかなかの好人物のように見えました。

しかし、その笑顔を見ても何も感じない … 少しもときめかないのです。

め以子は、目をそらしてうつむきました。

… … … … …

試合の前に腹ごしらえしようと皆は弁当を広げています。

ひとり離れてぼんやりと座っている悠太郎に近藤がおむすびを差し出しました。

「いらん … 」

「お前、今日弁当は?」

「 … 見合いなんや。

さすがにそんな日に頼まれへんやろ」

「見合い?」


不機嫌な顔でうなずいた悠太郎。

「けどさ、ほら、ちゃちゃっと握ってもらうくらい … 」

「あれは、ちゃちゃっと握れるような、おむすびちゃうんや。

朝早うから、ごっつていねいに米炊いて、しちめんどくさい手間かけて具作って、熱々の飯を火傷しながら握って … そうやって、はじめて出来上がるんや」


その話を聞いて、何故あんなに美味しかったのか、近藤も理解しました。

「 … 愛されてんだな、お前」

… … … … …

「えっ?」

「そんなの惚れられてるに決まってんだろ」


悠太郎に動揺が走りました。

「あ、いや … いや、彼女の場合は、ちょっとちゃうんや!

ものすごい食い意地が張っていて、そのついでに俺の分がある訳で … むしろ、それを好意やとか、そういう風に解釈するのは、彼女のたぐい稀なる食い意地に対する侮辱というか … 」


無意識のうちにそんな理論武装をして誤魔化していた事実を近藤に指摘されたことで気がつき、悠太郎は今までにないほどうろたえていました。

「バカだろう、お前?」

あきれたように笑うと、近藤は行ってしまいました。

… … … … …

席を外して一時廊下に出ため以子。

中庭の向こうから自分を呼ぶ声がして、振り返りました。

「 … 室井さん?!」

塀によじ登った室井が顔を出して手を振っているのが見えました。

「何やってるんですか?」

「 … 結婚は米じゃないか?」

「こ、米?」

「新米の時期は、どうやっても甘いけど … 時が経つにつれ、スカスカのボソボソになっていく。

だから、炊き方が大切だし、工夫が必要になってくる。

それをしないと不味いんだが、それをするのは手間だ …

その手間を喜んでやれる相手だと、結婚は上手くいくんじゃないか?」


昨日、め以子が店の前で尋ねたことの答えを、わざわざ伝えに来たのでした。

「あ、め以ちゃん、俺これ小説に使っていいかな? ~ いいよな?」

自分でも会心の出来だったのでしょう。

… 言い終えた途端、バランスを崩して落ちていきました …

「結婚は、米 … 」

め以子はつぶやいてみました。

… … … … …

め以子が客間に戻ると、先方と大五の間で話が弾んでいました。

以前、開明軒に訪れたことがあるようで、真二郎がオムライスのことを褒めています。

「あれはね、め以子の案なんですよ」

「えっ、お料理も?」


驚く女将に慌てて大五は否定しました。

「料理なんぞしなくていいんですよ、美味いもんが分かれば」

どっしりと構えた真二郎がめ以子を見ながら言いました。

め以子は膳の上から茶碗を手に取って、ご飯を見つめています。

「こいつはね、他のことはまだまだなんですけどね ~ 飯炊くのだけは上手いんですよ」

「本当ですか?

… 今度食べさせてくださいよ」


しかし、め以子は首を横に振っていました。

… … … … …

「炊けない … 」

やっと聞き取れるほどの小さな声でした。

「あんな風には、炊けない」

静まり返った一同。

うなだれため以子は泣き出していました。

「 … ある人の『ごちそうさん』が聞きたくて … だから、私、炊けたんです。

ごめんなさい」


席を立って、部屋を出て行こうとするめ以子。

「おい、め以子!」

「め以子、忘れ物!」


引き留めようとした大五を差し置いて、イクは傍らにあった包みをめ以子に手渡しました。

「お弁当」

「母ちゃん … 」


黙ってうなずくイク … こんなことになりそうな予感があって用意していたのでしょうか。

「さあ、行きな」

め以子を見送ったイク。

… … … … …

「女将、一体?」

「何考えてるんだ、お前?!」


問いただす新井社長と詰め寄る大五。

突然、イクは、まるやの人たちに向かって土下座をしました。

「申し訳ございません!」

… … … … …

まるやを飛び出しため以子、振り袖姿のまま走る走る走る。

… … … … …

「 … 本当に馬鹿な子で、馬に鹿と書いて馬鹿と読みますでしょ ~ あの子は本当にもう馬と一緒なんです。

目の前に夢中になれるものがないと、そんな人参がないと走れない子なんです … それがないと、縦のものを横にもしないんです。

あんなザマでは、こちらに参りましたところで、ロクな働きも出来ぬと存じます。

そんなこともわきまえず、このような場所にしゃしゃり出てしまい … 本当に申し訳ありませんでした」


もう一度、深く頭を下げたイクでした。

… … … … …

弁当箱を抱えて笑顔で土手を走るめ以子。

… … … … …

河原に集まった大勢の観衆から送られる声援の中、ボートのレースは始まっていました。

川面を何艘ものボートが競い合って滑るように進んで行きます。

近藤の合図に合わせて、悠太郎も5人の選手と共にオールを漕いでいました。

… … … … …

ようやく競技場に到着しため以子は、目を凝らして悠太郎の漕ぐボートを探しました。

「西門さん …

がんばれ ~ 」


悠太郎の姿を見つけため以子は、観衆をかき分けながら川岸に近づきます。

「帝大、がんばれっ!」

… … … … …

「がんばれ ~ 」

め以子の声に悠太郎は気づきました。

しかし、前を向いて懸命に漕ぎ続けます。

… … … … …

ボートに合わせて、河原を並走するめ以子。

晴れ着を着ていることなど、すっかり忘れたように全力で走り続けています。

「西門さん、がんばれ ~ 」

… … … … …

観衆から離れため以子、その眼には帝大のボート … 悠太郎しか入っていません。

「西門さん、あ … 」

次の瞬間、め以子の姿は消えて、水面に大きなしぶきが上がりました。

「止まれぇ!!」

… … … … …

め以子が川に落ちたことに気づいた近藤がボートを止めました。

「皆、すまん!」

悠太郎は、オールから手を離して川に飛び込みました。

… … … … …

水中でもがいているめ以子。

晴れ着を着ているので、思ったように身動きが取れません。

自分めがけて悠太郎が泳いでくるのが見えました。

悠太郎は、め以子を抱えると、水面に向かって …

… … … … …

岸に倒れこんだふたりを何事かと観衆が遠巻きに見ています。

「何を、何をやっとんねん、あんたはっ?!」

乱れた呼吸の中、悠太郎はめ以子を叱りつけました。

やはり呼吸を乱しながら、め以子がとった行動 … 悠太郎の手を握りました。

「あなたを一生食べさせます!」

ずぶ濡れのまま、見つめ合うふたり。

「朝も昼も夜も、私はあなたに美味しいものを食べさせます。

一生食べさせます!

だから … 私を一生食べさせてください」


め以子からのプロポーズでした。

見つめる悠太郎 … め以子の手に自分の手を重ねました。

しかし、その口から出た言葉は …

「お断りします」

め以子の耳には、そうはっきりと聞こえました。

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2013年10月25日 (金) | 編集 |
第23回

「お母ちゃん … 私、お見合いする」

め以子の決断にイクは驚いて聞き返しました。

「いいのかい? それで」

「だって、いい話だもん ~

待ってたって、これ以上の話きっとないだろうし … それにさ、お父ちゃんだって、喜んでくれるでしょう?」


そう言った本人は作り笑い、喜んでいるようには見えませんでした。

… … … … …

「新井社長は、父ちゃんの恩人なんだよ」

「恩人?」


朝の配達の道すがら、悠太郎は照夫から、大五と新井社長のこれまでの経緯を聞かされました。

「父ちゃんの料理に惚れ込んで、店出す時に金くれてさ ~

実際は、ちゃんと返したらしいんだけど、金ポンと出して、この金で俺の台所を作れって …

父ちゃんとしちゃ、社長の頼みには応えたいっていうのも、あるんじゃないかな?」


… … … … …

ふたりが配達を終えて戻ると、朝食もまだなのに大五が出かける支度をしていました。

「何処か行くの?」

「ああ、社長に見合いお願いするって報告にな ~ あいつやっとその気になってくれてよ」


そう照夫に話した大五はご機嫌です。

思わず、台所のめ以子を振り返った悠太郎 … おむびを弁当箱に詰めている、いつもの光景でした。

… … … … …

停留所に向かう道、並んで歩く悠太郎とめ以子。

「今日は作ってもらえんと思ってました」

悠太郎は、お見合いのことであんなに怒らせてしまった次の日なので、あきらめていたのです。

「これは、自分でやるって決めたことだから、自分のためにやらないと … 親切じゃないんです、でしょ?」

め以子自身は、あまり気にしていないようなので、少し安心しました。

… … … … …

「 … ああ、今日は何ですか?」

性懲りもなく尋ねました。

「な~んでしょう?」

こんなやり取りも、ふたりにとって朝の恒例になっていました。

「アワビとか旬ですけど?」

「そんな高いの使ってる訳ないでしょ」

「アンコ?」

「おはぎじゃないんですから」


… … … … …

掛け合いをしながら歩いているうちに停留所に着きました。

「けど、ようネタ切れになりませんね」

「あと、ちょっとですから … 」

「 … あと、ちょっと?」

「縁談、断られたら別ですけど … 」


見合いが上手くいけば、当然そういうことになります。

「そうか … そうですね」

「そうそう」


昨日とは違って、何か吹っ切れたようなめ以子でした。

反対に悠太郎の方が戸惑っている風にも見えます。

「 … 見合い何処でするんですか?」

「さあ ~ でも、まるやのご飯食べてみたいですね ~

お店じゃなくて、お家の方の … あ、でも、もちろんお店でも食べたいですけど」


… … … … …

「お見合い?!」

弁当の時間、桜子も民子も突然の話に驚きました。

「うん、もう決まったの」

平然と話すめ以子のことを民子は問いただしました。

「西門さんはどうすんの?」

「どうするもこうするも、そもそも何もないんだし ~

それにね、お見合いの人、すごく条件がいいの … 実家は、老舗の料理屋でまるやってとこなんだけど、知ってる?

そこの次男坊で、ゆくゆくは暖簾分けだから、お姑さんとの同居もないし … 私に求められているのは、美味しいものを食べたり、意見言ったり、そういうことなんだって ~

もう夢みたいな話じゃない?」


まるで予め準備していたような話をふたりにしました。

「いただきま~す」

め以子が弁当に箸を伸ばそうとしたその時、ずっと黙って聞いていた桜子が立ち上がりました。

「め以子、ちょっと … 」

有無を言わさず、め以子のことを教室の外へと引っ張り出しました。

… … … … …

「いただきます」

おむすびを味わって食べている悠太郎の肩越しから、近藤の手が伸びてきて、弁当箱からひとつ残っていたおむすびをかすめ取りました。

そして、許可も得ずに食らいついてしまいました。

「何だこれ? 何入ってるんだ? … いやあ、美味い!」

「行儀悪すぎるやろ!」


近藤の手から、食べかけのおむすびを奪い返した悠太郎。

「 … いただきますくらい言え!」

悠太郎ににらまれて、席に着いた近藤。

「いただきます」

仕方なくうなずいた悠太郎に近藤が思い出したように尋ねました。

「あっ、そうだ … お前、明日空いてる?」

… … … … …

め以子を教室から引っ張り出した桜子は、昼休みで誰もいない割烹室まで連れて来ました。

「何よ ~ ご飯が … 」

「逃がさないわよ!」

「逃げないわよ、別に」

「逃げグセあるじゃない … め以子は!」


何かに腹を立てている桜子。

「えっ?」

「辛くなったり、面倒くさくなったら、すぐ放り出して … そういうところあるじゃない!」

「 … 桜子に言われたくない」

「一緒にしないでよっ! 私は逃げないわよ!」


声を荒げた桜子の勢いに押され気味のめ以子。

「そうかな? … 」

「私は自分の気持ちから逃げたりしない」


… … … … …

「どうして逃げるの?

かなわないような相手がいるから? まだ戦ってもいないのに …

恥かくのが嫌だから?

だから、だから降りるの?」


め以子を責めたてる桜子 … いつもの陽気で優雅な彼女ではありません。

「桜子、どうしちゃったの?」

「私、あんたのそういうところ … 大っ嫌い!

ちゃんと勝負しなさいよ ~ 負け戦でも、ちゃんと戦いなさいよ!」


そう怒鳴った桜子の目に光るものがあることに、め以子は気づきました。

… … … … …

割烹室から桜子が出ていくのを見た宮本は、そっと廊下から中を覗きました。

… … … … …

「桜子ちゃん、逃げられたの … 」

ふたりの後を追ってついて来ていた民子が、め以子に話したのは昨日の出来事でした。

「お兄様のお友達ね、桜子のお父さんから圧力かけられたんだって」

最近、『栞の君』に会えないということは、め以子も知っていました。

「桜子は、それなら自分が親を説得する、勘当されてもいいって、何もかも捨てるからって食い下がったんだけど … 」

『俺の将来、潰す気か?』

男はそう言うと、桜子を残して、逃げるように店を出て行ってしまったのです。

… … … … …

「 … だから、め以ちゃんにイライラしちゃったんじゃないかな?」

民子の話を聞きながら、め以子は唇をかみしめていました。

「しんどいの … 

相手の顔色とか、言葉とかに振り回されて、振り回されてる自分が嫌になって … 好きになるって、しんどい」


め以子も泣きたくなりました。

「だけど、素敵だったよ」

民子の言葉に顔を上げため以子。

「納豆食べさせようってがんばったり、おむすび一生懸命作ったり … すごく生き生きして可愛かったよ。

『食べたい』って気持ちが、『食べさせたい』に変わって、きれいになって、優しくなって …

人を好きになるって、ホントにすごいなって、私もいつかこんな風になってみたいって」


民子の言葉はめ以子の胸にしみていくようでした。

「一生のうちで、自分を変えるほどの恋なんて、どれだけあるのかな?」

まっすぐにめ以子のことを見つめていた視線を少し外しました。

「もうちょっと応援したかったな … 」

涙ぐむめ以子。

… … … … …

家に戻って来ため以子は、店の入り口の悠太郎が造った階段を見つめていました。

脇にある椅子に腰かけていると、店から室井が出て来ました。

「あれ、どうしたの? め以ちゃん」

「室井さん … 結婚って何なんでしょうね?」

「何って … 俺にそんなこと聞く? 嫁の来手もないのに … 」


結婚について考え込む室井。

… … … … …

そこへ、大五が新井社長のところから戻って来ました。

「おい、め以子 ~ 見合いな、明日になったから」

「えっ?!」


随分急な話です。

「め以ちゃん、お見合いすんの??」

「ちょうど明日は休みで、日柄もいいんだと … だから、明日でどうだって」

「えっ、明日?!」


当のめ以子より、驚いて騒いでいるのは室井でした。

「堅えのもなんだし、まるやさんの家で飯でも食おうってよ」

「えっ、まるやって、あのまるやですか?」

「うるせえんだよ、お前、黙っとけ!」


そう言いながらも、大五は上機嫌です。

… … … … …

「お父ちゃん、あの私 … 」

大五は店に入ろうとしましたが、何か言いたげなめ以子を見て足を止めました。

「あの … 」

「 … うん、なんだ?」

「ううん、何でもない … 」


大五の顔を見たら、何も言えなくなってしまいました。

… … … … …

「ただいま戻りました」

め以子が糠床の世話を終えた頃、悠太郎は帰って来ました。

「 … 遅かったですね」

「ボート部の助太刀頼まれて、にわか練習させられて … 」


慣れないことをやらされて、疲れているみたいでした。

悠太郎に明日のことをなんて話そうか、め以子は考えていました。

すると、悠太郎の方から …

「あ、明日」

「明日?

… 明日が何ですか?」

「ボート部の試合に行かなきゃならないんで、もしお願いできれば、おむすび … 」


手にした包みに手をやった時、クマがめ以子に声をかけました。

「お嬢さん、ちょっといいですか?

明日のお見合いのお振袖なんですけど … 」


驚きを隠せない悠太郎。

「すぐ行くから、ちょっと待ってて」

… … … … …

「何か急にそういうことになってしまって」

「 あ … そうですか … 何処でやるんですか?」

「向こうのお家で … 」

「そうですか …

いやあ、願ったりかなったりやないですか ~ 向こうさんと気が合うてるってことなんでしょうね」


どことなくぎこちない会話が続きました。

「そうかも知れませんけど … 」

「『けど』何ですか?」

「それだけで … そういうことだけで … 幸せになれるんでしょうか?」


悠太郎は目を閉じて考えました。

… … … … …

悠太郎の答えを待つめ以子 … いつかもこんなことがあったような …

ゆっくりと目を開けた悠太郎は、包みから弁当箱を取り出しました。

「今日も美味しかったです。

… 昨日も、一昨日も、最初の1日を除いて、不味い日は1日としてなかったです。

あなたのお蔭で僕は、とても昼が幸せでした」


微笑むめ以子。

「せやから … 大丈夫やと思います」

「えっ?」

「あなたはもう何も出来ない、何もしない子供やない … 今のあなたは、幸せを作り出す力を持った女性です」


いつもの理屈っぽい言い回しではなく、考えながら話していることが分かりました。

悠太郎を見つめるめ以子。

「 … せやから、幸せになれると思います」

悠太郎は、「ごちそうさんでした」と弁当箱を渡すと自分の部屋に戻って行きました。

… … … … …

「幸せになれる」と、悠太郎は言ってくれました。

しかし、それはめ以子が待っていた答えではなかった …

渡された弁当箱を持ったまま、いつまでも動けないめ以子でした。

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2013年10月24日 (木) | 編集 |
第22回

「お前にやっとこさ、見合いの話が来た」

「み、見合い?! … 私が??」


大五は笑顔でうなずきました。

「お前、まるやって料理屋知ってんだろう?」

「お堀端にある老舗の?」

「そうそう ~ 社長があそこの馴染みでよ、食べるのが好きで舌のするどい嫁なんて、金出しても欲しいんだってよ」

「でも … 私でいいの?」

「おう、いいみたいだぞ。

社長の話だと、向こうさんは家事なんて当てにしていない、そういうのは女中さんに任せたらいいだってよ」


それは、め以子にもってこいの話でした。

「お前いいよな? 受けちまっていいよな、この話」

大五は、相当乗り気です。

「ちょ、ちょっと待って」

「もう、考えることもあるんだろうからさ ~ 」


め以子の気持ちも関係なくせっかちに話を進めようとする大五のことを、イクがたしなめました。

「ほら、賄いよそってやるからおいで」

大五からめ以子を引き離しました。

「おい、ちゃんと考えろよ!」

… … … … …

め以子を厨房へ引っ張ってきたイクは小声でそっと言いました。

「返事、急がなくていいから」

うなずくめ以子。

「 … それからこれ、忘れてたよ」

皆に見られないように、そっと帳面をめ以子に渡しました。

「あ … 」

… … … … …

め以子は糠床をかき混ぜながら、先ほどの見合いの話のことを考えていました。

< そうだね ~ 来年は卒業だしね ~ 悪い相手じゃなさそうだし、というよりも … >

「 … 理想的?」

< そうだよね ~ またとない話だよね ~ >

「あっ、明日のおむすび?!」

明日からまた頑張ると、悠太郎と約束したことをすっかり忘れていました。

「どうしよう … 」

全く何も考えていません。

< め以子、め以子!

お祖母ちゃんのお腹ん中、ぐ~っとかき回してご覧 >

手に当たったものを取り出すと、それは古漬けのキュウリでした。

「 … 取り忘れか?」

… … … … …

古漬けのキュウリを使った具をいくつか考えて、帳面に記しました。

「これは、これでよし」

帳面を閉じて表紙を眺めていると、悠太郎が食べている姿が目の前に浮かんできます。

「 … お呼びでないんだよね」

机の上に置いた帳面の上に顔を乗せました。

「私はそういうことなんだから … 」

… … … … …

「め以子、昨日の話考えたか?」

朝食の時、大五がまた念を押しました。

「うん、あ、え~と … うん」

曖昧な返事をしため以子。

「お前、一体何を迷ってんだよ? … こんないい縁談、二度とねえぞ?!」

大五の言葉に反応したのか、悠太郎がめ以子の顔を見ています。

「分かってる … 分かってるって」

そうは答えましたが、歯切れの悪いめ以子です。

「分かってるならいいけどよ … 」

悠太郎の様子が少しおかしい? … イクだけがそれに気づいていたようです。

… … … … …

「僕の記憶が確かやったら、あなたは以前、自由結婚を目指してるって、おっしゃってた気がするんですけど … 」

電車を待つ停留所で、悠太郎が突然そんなことを聞いてきました。

「はい」

「それは、もうええんですか?」

「ああ … お見合いもひとつの出会いじゃないですか?」


割り切っているようなもの言いに聞こえました。

「ええ話やって、大将言うてはりましたけど … そうなんですか?」

「これ以上ないってくらい、理想的なんです」

「へえ …

じゃあ、何を迷ってるんですか?」


め以子は悠太郎を見て … そして、空を見上げました。

そして、少し迷った後、悠太郎に尋ねました。

「 … 西門さんは、した方がいいと思いますか?

お見合い、した方がいいと思いますか?」


うつむいて、考えるポーズを取った悠太郎。

… … … … …

「僕が答えるの変やないですか?」

答えを待っていため以子に悠太郎が言ったのはそんな言葉でした。

「えっ?」

「 … ただの書生ですよ」


何かを期待していた訳ではないのですが …

「あ … そうですよね」

笑うしかありません。

「そうですよ ~ 赤の他人なんですから」

「そうですよね … 」


どことなく空々しいふたりでした。

… … … … …

「西門君、ちょっといいかね?」

悠太郎が弁当を食べようとしていると、そこに教授が訪れました。

「それが、噂の弁当かね?」

「噂?」

「毎日違う握り飯が入っているそうじゃないか?」


大方、近藤あたりが言いふらしたのでしょう。

「召し上がりますか?」

遠慮せずにおむすびをひとつ受け取った教授は、本題に入りました。

「 … 例の話は考えてくれたかね?

やはり何と言っても、日本の中心は東京だ … ここに残った方が断然面白い仕事も出来ると思うよ」


亜貴子にも話していたように、卒業後も東京へ残るように勧められているのです。

「それは、分かってるんですけど … 」

「君が感じている使命感をここで果たしてもいいんじゃないかね?

亡くなられたご母堂も大阪でなければと思っているわけではなかろう ~ 」

「頭では分かってるんですけど … 」

「全くこっちに残る未練なんかはないのかね?」

「ないですね」


躊躇なく言い切った悠太郎でした。

… … … … …

「それでね、何かよく分かんないんだけど ~ ふたりが一緒になることは許されないってことなんだって!

どういうことなんだろうね ~ 」


め以子は、桜子と民子に悠太郎から聞き出した話を報告していました。

「血を分けた兄妹とか?」

「やっぱり??」

「 … そんな訳ないじゃない!

あれなんじゃないの、どっちかに許婚がいるとか?」


いずれにせよ、桜子の予想は小説じみていました。

「め以ちゃん、大丈夫?」

民子が心配そうにめ以子の顔を覗き込みました。

「うん? 何が … 」

「もう、お弁当ないんだけど」


そう言われて、空になった弁当箱を箸でつついていたことに気づきました。

「あはは … やだ ~ 私ったら、もうお腹空いちゃって … 馬鹿よね、お間抜け」

… … … … …

放課後、桜子と民子は染井庵にいました。

「訳分かんないな、め以子 … 何かあったのかな?」

あの陽気さが、無理をしているようで、ふたりには不自然に見えたのです。

「 … 桜子ちゃんは?」

め以子のことも心配ですが、民子は目の前の桜子のことも気になっていました。

「栞の方とは、連絡取れた?」

「昨日もカフェで待ってたんだけど … 」


… 会えなかったようです。

ちょうどその時、店に入ってきたふたり連れの学生を見て、桜子の顔色が変わりました。

「 … いた」

「えっ?」


ふたり連れのうちのひとりが『栞の君』だったのです。

桜子は、席に着こうとした『栞の君』の目の前に立ちはだかりました。

「どうなさってたんですか?」

… … … … …

開店前の開明軒。

イクが店で帳簿をつけていると、悠太郎が顔を出しました。

「あら、お帰りなさい」

「あの、女将さん … ちょっといいですか?」


遠慮がち悠太郎が聞いてきたことは …

「め以子さんのお見合い相手の家のことなんですけど … 」

何故、悠太郎がそんなことを聞くのだろうと、イクは思いましたが …

「ああ、まるやって料理屋、悠太郎さん知ってるかい?

そりゃあ、立派なお店でね ~ 」

「あ、そやなくて … その、家族関係とか … 」

「お姑さんが、どうとかかい?」


悠太郎はうなずきました。

イクはそんな悠太郎を見て、何かを察したような顔をしました。

「そのお姑さんが是非にってゆう話でさ …

相手の二男坊には、ゆくゆくは暖簾分けするって言ってるらしいから、いずれは別居になるんじゃないかね ~

滅多にない、いい話だよ」

「ああ、そうですね ~ ホンマに」


それだけ聞くと、店を出て行こうとする悠太郎をイクは呼び止めました。

「悠太郎さんはさ、このお見合いした方がいいと思う? しない方がいいと思う?」

探るような目で悠太郎の顔を覗き込みました。

「女の人は、嫁ぐ先で人生が決まってしまいますから … 不幸にはなって欲しくないやないですか」

イクには、悠太郎の気持ちは計り知れませんでした。

… … … … …

め以子は、母屋の台所に立っていました。

「 … 焼きおむすびですか?」

「はい、やってみたくなっちゃって … まあ、お弁当には向かないかも知れませんけど」


そう言いながら、悠太郎にもひとつ差し出しました。

「熱いうちがいいんですよ、早く早く」

焼きおむすびを持ったまま、何かを考えている悠太郎を見て、め以子は怪訝な顔をしました。

「見合いした方がええと思います」

おもむろに言いました。

「 … そうですか?」

戸惑いを隠せないめ以子。

「何を迷ってはるのか知りませんけど、つまらん悩みなんか放り出してしまった方がええと思います」

悠太郎の言葉を聞いているうちに、め以子の表情が険しくなっていきます。

「本当にええ話やと思いますし、家の中も円満そうやし、何よりお姑さんのお眼鏡にかないそうというのが … 」

「私だって … そのくらいのこと、分かってるんです」


声を荒げて、悠太郎の言葉を遮りました。

「分かってんですよ、そのくらいのこと!

大体、西門さん関係ないでしょ?

私がお見合いしようが、どうしようが … 」


顔を見てるとだんだん怒りがこみ上げてきます。

「聞いてきたのは、そっちやと思いますけど?」

「 … そうですね … ああ、そうですね、そうですね!

わざわざご丁寧に貴重なご意見ありがとうございました!」


… … … … …

自分の部屋に戻っため以子は、机の上にあった料理ノォトをごみ箱に投げ捨ててしまいました。

しかし、拾い上げてまた手に取りました。

ページをめくって読み返してみます。

悠太郎の言っていることは何ひとつ間違ってないし、自分のためを思って言ってくれたことは分かっています。

でも、何でこんなに腹が立って … こんなに悲しいんでしょう。

「馬鹿みたい … 私」

涙が溢れてきて … 帳面に顔を押しつけていました。

… … … … …

居間にひとり残された悠太郎は、暗い表情で、め以子の部屋がある二階を見上げていました。

何を思う悠太郎 …

… … … … …

朝、め以子はいつものように台所でおむすびを握っています。

「おはよう、今日は何にするんだい?」

台所に顔を出したイクを待っていたかのように、め以子は言いました。

「お母ちゃん … 私、お見合いする」

「?!」


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2013年10月23日 (水) | 編集 |
第21回

「西門さんには、その … 思ってる人がいるって … それって、もしかして … 亜貴子さん?」

「嫌いなわけないでしょ?

亜貴のような人を嫌いな人なんて、そうそういないと思いますが」

… … … … …

昨夜の悠太郎の言葉が耳から離れないめ以子、うつろな表情でおむすびを握っています。

「おはよう ~ 」

イクが声をかけても、ボ~っとしたままです。

「何かあったのかい?」

「 … 何も」


明らかにいつもと違うめ以子、具合でも悪いのかと顔を覗き込んだイク。

「おはようございます」

照夫の配達の手伝いを終えた悠太郎が戻って来ても、顔を見ずに蚊の鳴くような声で挨拶しただけです。

… … … … …

「今朝、め以子、元気なくなかったか?」

厨房の大五もめ以子の異変に気づいていました。

「そうなんだよ ~ 」

心配そうに、顔を見合わせた大五とイク。

… … … … …

停留所で電車を待つ間もいつもと違うめ以子の態度に悠太郎は戸惑っていました。

柱に頭をつけて、カリントウをかじっています。

「どうしたんですか?」

悠太郎が尋ねても「別に」と答えるだけ。

「今日何ですか? おむすび」

気を取り直して尋ねましたが …

「なんでしょう … 」

教えるはずはないのですが、返事にも全く気が入っていません。

「今まで入ってないもんですよね?」

「何でそう思うんですか?」

「だって、1回も同じもの入っていたことないやないですか」


… それがどういう意味だということまでは気づいていない悠太郎でした。

キッと睨み返しため以子。

「西門さん、私のこと分かってるみたいな言い方しないでいただけますか?」

「そんな言い方しましたか?」

「しました … 大体、あなたのしゃべり方は紛らわしいんです!

色々色々、誤解を招くような言い回しなんです!」


完全に八つ当たりでした。

「 … そうですか?」

「そうなんです」


… … … … …

弁当の時間。

「今日は何や?」

おむすびをひと口食べた悠太郎が怪訝な顔をしました。

「お、今日は梅干か?」

近藤は何気なく言いましたが、悠太郎は驚いた顔でおむすびを見つめたままです。

「おい、どうかしたか?」

「 … 事件や」

「えっ?」

「これは、事件や … 」


… … … … …

「め以子 ~ これ好きでしょ? ア・ゲ・ル … 私、嫌いだから」

桜子が分けてくれたおかずをめ以子は「いらない」と返しました。

「えっ!!」

声を合わせて驚く桜子と民子。

「なんで、なんで?」

「お腹痛いの?」


心配して尋ねるふたり。

「あちきだって、人並みに食欲がない時だって、ござんすわいな ~ 」

冗談ぽく言っても元気がありません。

「 … 西門さんと何かあった?」

民子に聞かれて目を見開いため以子。

「何も ~ ある訳ないでしょ ~

そもそも、何もないんだから … 一体全体、何をおっしゃってくれちゃってるので、ございまして ~ 」


声は裏返り、見事にうろたえるめ以子 … 何かあったと、言っているようなものでした。

… … … … …

放課後、染井庵。

め以子は、桜子と民子に一部始終のことを白状させられました。

大笑いするふたり。

「そんなに笑わなくたっていいじゃない! もうっ」

「確かに … 確かによく食べるし、見様によっちゃ、元気が出る人もいるかもしれないけどね」

「ああ、それで、私にあんなに気遣ってたんだ?」


民子も笑いが止まりません。

「もういいよ ~ どうせ、恥ずかしい勘違いしてましたよ、私は」

しかし、本人は真剣に悩んだりもしていたのです。

「で、どうすんのよ?」

ひと笑した後、桜子が尋ねました。

「別にどうもしないわよ」

「亜貴子さんとやらに通天閣持ってかれちゃってもいいの?」

「持ってかれるも何も、向こうの方が先っていうか … すでにもうこう入れない雰囲気があるっていうかさ … 」


そう言いながら、ふたりを見ると、また笑いをこらえています。

「いや、私、別に通天閣のこと好きな訳じゃないから … そういうんじゃないから、違うからね!」

ふたりは何も言っていないのに、ムキになるめ以子。

… … … … …

「でも、その答え方って、微妙よね」

民子が真顔になって言いました。

「亜貴子さんのような人を嫌いな人間なんて、そうそういないって、一般的な話にも取れるじゃない?」

「いやでも … そういう感じじゃなかったよ」

「でもまあ、取りあえず聞いてみたら? … 亜貴子さんと通天閣がどういう関係なのか …

まかり間違って、見てて元気になる人って、ホントにめ以子のこと言ったのかもしれないし」

「いや、でもそういうこと聞くと … 何か、私が通天閣に気があるみたいじゃない?」


この期に及んでまだそんなことを言っています。

「なかったら普通に聞けるわよね?」

桜子と違って、民子は優しく諭すように言いました。

「そうだけど … 」

… … … … …

卯野家の台所。

イクは偶然、糠床のそばに落ちていた、め以子の料理ノォトを見つけました。

『お母ちゃんの作るおにぎりは冷めても硬くならないのに … 』

ビッシリと調理法や感想などが書き込まれていました。

「こんなのつけてたんだ ~ 」

娘を微笑ましく思うイクでした。

その中の一文に目が止まりました。

『 … 西門さんの分、厚くて美味しいところを食べてもらう』

「 … 」

… … … … …

その帳面を持ったまま厨房に行くと、大五がしんみりと話しかけてきました。

「なあ、やっぱり … め以子もそれなりに焦ってるのかな?」

今朝のめ以子の様子が気になっているようです。

「女学校も卒業だしよ … ほら、見合いの口とか、そういうの気になったりしてるのかとかよ」

「 … どうだろうね」

「そういうことも、ちゃんとしてやんねえといけねえよな … 」


イクは手にしため以子の帳面を大五に見せるかどうか迷っていました。

… … … … …

その時、店の方で誰かが入ってくる音がしました。

「こんにちは ~ 」

「あ、社長」


イクは帳面はひとまずしまって、社長を迎えに厨房を出ました。

「いらっしゃいませ」

「ちょっと今いいかい?」

「社長、今日はいいスズキが入ったんで、ソテーなんかお勧めですけど」


大五も顔を出しました。

「いやいや、め以子ちゃん、最近どうしてる?」

食事ではなく、め以子に用事があるみたいです。

「ええ、相変わらず元気ですよ」

「そうか ~ いや、実はさ … 」


… … … … …

「ごきげんよう ~ 」

め以子と民子は、ひとり先に染井庵を後にする桜子を見送りました。

「ねえ、桜子、栞の君と待ち合わせかな?」

事情を知らないめ以子が尋ねると、民子の顔が少し曇りました。

「どうかな? … 最近、連絡取れないんだって」

「えっ、お兄様のお友達なのに?」


民子はうなずきました。

「聞いても、知らないとしか言わないんだって … 手紙出しても、返事戻ってこなくて … 」

「 … 何かあったのかな?」


最近、め以子は放課後、弁当のことで宮本の元に入り浸っていたので、そんな話も初耳でした。

「め以ちゃんは幸せだね」

「えっ、何で?」

「いつでもふん捕まえて、とっちめられるじゃない?

お弁当だって、渡せば空になって戻ってくるんでしょ?」


… … … … …

め以子が家に戻ると、珍しく先に帰っていた悠太郎が居間で出迎えました。

自分の部屋でなく、ここで図面を引いていたようです。

「何でそんなところでやってるんですか?」

「やっちゃいけないですか?」

「いや … どうぞ、ご自由に」


いつものことですが、今日は特に不愛想に感じました。

… … … … …

「あの ~ 何かあったんですか?」

め以子が台所で弁当箱を洗っていると、悠太郎が声をかけてきました。

「うん?」

「何か大変なことでも … 」


首をかしげるめ以子。

「今日、梅干やったでしょ? … 梅干は二度目なんです」

まだ言っている意味が分からないめ以子でした。

「これは、大事件でしょ?」

「あの、おっしゃってる意味がよく … 」

「あなたは自分で作るなら、絶対に毎日違うおむすびを食べようと決めていたはずです。

その『食い意地』だけは、誰にも負けないはずです。

つまり、あなたが同じおむすびを作ったということは … 何かあったことの証しやないでしょうか?」


話は理屈っぽいですが、要はめ以子のことを心配しているということでしょう。

「 … 作ろうとしていたのが、上手くいかなかっただけです」

「本当にそれだけですか?」

「それだけです」

「そうですか?」


まだ疑っているようです。

「明日からは、また頑張るんで」

その言葉を聞いて、ようやく納得して、居間に戻って行きました。

もしかして、そのことが気になって、早く帰ってきて、わざわざ居間で仕事をしながら待っていたのかも …

「 … 心配してくれたんですね?」

「ええ、どうせなら、弁当は楽しみたいですから」

「弁当ですか … 」


心配なのは弁当なのね … め以子は口を尖らせました。

… … … … …

め以子は手首に巻いた包帯に目をやりました。

洗い物をしていたせいで濡れてしまっています。

悠太郎を見ると、もう図面の方に集中しているようです。

しかし、桜子や民子の言葉を思い出して、思い切って尋ねました。

「あの … 家が近くだったんですか?」

顔を上げてこちらを見た悠太郎。

「亜貴子さん … 幼なじみって」

「 … ああ、現場が一緒で知り合ったんです」

「現場?」

「僕の母が巻き沿いになった火事の現場です。

亜貴子の両親は、その時の火傷や怪我で亡くなったんです。処置が間に合わなくて …

初めはふたりとも、泣いたり、怒ったりばっかりで …

『何で、うちの親が死ななあかんかってん』『何か悪いことしたんか?』って、そんなんばっかりで」


… … … … …

「でも、ある時、亜貴が言い出したんです。

『私は医者になる』って、『お父さんとお母さんは、死んで私に夢を残してくれたんや』って … 

『私はそう思うことにする』って」

「 … それで、西門さんも?」

「そうですね ~ 影響されましたね」


め以子は戸惑いを隠せませんでした。

しかし、まだ肝心なことは聞いていません。

「ああ、何かすごいですね ~ ひとりは医者に、ひとりは街造りにって …

ひょっとして、いずれは将来を誓ってるとか?」

「それはないです」


悠太郎は真っ向から否定しました。

「えっ?」

「それだけは、あり得ないんです」

「 … 何でですか?」

「そういう関係になることは許されないからです」


どうしてだか、理由はよく分かりませんでしたが …

め以子はそれ以上は聞くことはしませんでした。

… … … … …

「私、賄いもらって来ます」

何となく、居づらくなって、賄いを口実に外へ出ました。

すぐに厨房には行かずに戸にもたれかかりました。

< しょっぱかったね ~ め以子 … 重い重い話を聞かされちゃったね ~

「大好きなんです、いずれは一緒になるつもりです」って、明るくそう言われた方が、何かまだ救われるね ~ >

包帯の巻かれた右手首を握って、め以子は目を閉じて考え込んでいます。

「何か、もうやだ … こんなの」

< … えっ? >

目を開けて、つぶやき … そして、両手で頬を叩きました。

「もう、やめた!」

< … そうなっちゃうの? >

… … … … …

「ご飯頂戴、大盛りで!」

厨房に入りましたが、誰もいません。

見ると、店の方に皆集まっているようでした。

「 … どうしたの?」

め以子が店に顔を出すと、大五は皆を解散させて仕事に戻らせました。

そして、ニコニコしながら手招きしてめ以子を呼びました。

「何?」

「よかったな ~ お前、本当によかったな ~ 」


しみじみと言う大五。

「えっ、何が?」

全く意味が分かりません。

イクのことも見ましたが、何も言いません。

「お前にやっとこさ、見合いの話が来た」

「み、見合い?! … 私が??」


笑顔でうなずく大五。

寝耳に水 … ただ呆然とするめ以子でした。

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2013年10月23日 (水) | 編集 |
第20回

め以子が開明軒の前で出くわした女性は、悠太郎の知り合いでした。

相談があって訪ねて来たと言う彼女を店に招き入れる悠太郎。

そんなふたりがお似合いに見えて、自分をひどくみじめに感じてしまう、め以子でした。

… … … … …

「学校どう?」

「まあまあや」

「亜貴のまあまあは、できてるってことやな」

「悠ちゃん、変わらへんね」


会話を聞いただけで、ふたりの親密度が分かるようです。

「いらっしゃいませ」

厨房から出てきた大五とイクに悠太郎は女性のことを紹介しました。

「友人の村井亜貴子といいます」

「はじめまして」


亜貴子は朗らかに笑って挨拶しました。

しゃしゃり出たのは、客でもないのに店に入り浸っている室井でした。

「いや ~ 僕、室井っていうんですよ。

室井と村井、一文字違いですね ~ 」

「いや ~ ホンマですね」


如才なく話を合わせた亜貴子。

「結婚しても、変わらなくていいですね」

「ほな、せんでもええですやん」


あつかましい室井のことを上手に受け流しました。

「元気のいいお嬢ちゃんだね ~ ねえ、お嬢ちゃん、何か食うか?

ごちそうするよ」


大五も亜貴子のことを気に入ったようです。

… … … … …

ちゃっかり、ふたりと同じテーブルに座った室井。

「亜貴子さんはどうして、東京へ?」

「女子医専に通っているんです」

「え ~ お医者の卵? すごいね ~ じゃあ、お家は結構な資産家で?」

「いいえ ~ 無理言うて、通わせてもらってるんです。

せやから、頑張らないと」


室井の質問にも嫌な顔せずにハキハキと答えている亜貴子。

微笑んで見ている悠太郎が何か言いたげな顔をしていることに気づきました。

「何、悠ちゃん?」

「亜貴見てると、なんやこっちも頑張らんとって、思えてくるわ」

「 … それは、私かて同じや」


水を運んで来ため以子が、そんなふたりのやり取りを聞いていました。

… … … … …

「う~ん、美味しいこのスープ」

大五のスープをひと口飲んで、声を上げた亜貴子。

「せやろ? ここの大将が名人なんや」

悠太郎はまるで我がことのように自慢しました。

「悠ちゃん、気に入られてるんやろ?」

「そうかな?」

「見てたら、分かるわ」


厨房から、め以子は不機嫌な顔で見ています。

… … … … …

「ああいうの今時じゃシャンっていうんだろ? キリっとしてよ」

「でも何か、馴れ馴れしくない?」


大五まで亜貴子にニヤケているので、め以子はあまり面白くありませんでした。

「いい女っていうのは、お前、そういう気の使い方するんだよ。

美人ってのはな、いるだけで相手を緊張させちまうからよ ~ お前、なんも分かってないな」

「いい女でも美人でもありませんからね ~ 」


… … … … …

「あっ!」

ちょっとした油断で、め以子は目の前に置いてあった熱い鍋を触ってしまいました。

「何やってんだ? お前」

「ああ、火傷してら」


右手の手首が赤く腫れ上がっています。

「あの、よかったら診ましょうか?」

騒ぎを聞きつけた亜貴子が厨房を覗きました。

「ああ、いやそれほどのことじゃないと思うんで … 」

「でも、痕残ったりしたら … ちょっと、入れてもらってええですか?」


… … … … …

亜貴子は、め以子に手首を水道の水で冷やさせていました。

「あの ~ まだですか?」

「まだや … 痕残したくないやろ?」

「別にこのくらい … 」

「何言うてんの ~ あんた、そないな別嬪さんで」

「 … べ、別嬪?」


そんなこと生まれてこのかた言われたことがなかっため以子でした。

「別嬪やんか ~ 背もスラッと高うて、外国の雑誌のモデルさんみたいや」

「そう … なんですか?」

褒めらているようですが … 実感がありません。

「大将、すいません … 冷めてしまうの、もったいなかったんで」

め以子の治療のため、亜貴子は厨房の調理台の上で食事を続けていました。

「いや、こっちこそ、うちの馬鹿がホントすみません」

「いえ ~

このカレー、無茶苦茶美味しいですね … どうやって作るんですか?」

「そいつは、秘密でしてね ~ 」

「教えてくださいよ ~ どうせこんなに上手に作れないんですから」


厨房の男たちはデレデレでした。

… … … … …

「1日1回、ちゃんと薬塗ってね」

包帯を巻きながら、亜貴子は指示しました。

「はい … あの、よかったんですか? ひとりで」

「うん?」

「 … 西門さん」


自分の治療に掛かりきりにしてしまっため以子は、少し申し訳なく思っていました。

「ああ、一文字違いの人と楽しくやってるみたいやし … 」

黙々と食べている悠太郎の横で室井が何か熱く語っている最中です。

亜貴子はめ以子の手をしげしげと見ました。

「ええ手してんな ~ 指長うて、丈夫そうで」

「そうですか?」

「うん、手術向きや ~ うらやましいわ ~ 力がいるところでもガンガン縫えそうや … はい、終わり」


包帯を結び終えました。

「あの … ありがとうございました」

「こちらこそ、ごちそうさんでした」


礼を言っため以子、お返しに亜貴子も、笑顔で頭を下げました。

その時、め以子は、自分もいつの間にか亜貴子に好感を抱いていたことに気づきました。

… … … … …

「はあ ~ あのカレー、最高やったわ」

停留所のベンチに腰掛けながら、亜貴子は言いました。

「ええな、悠ちゃん、あんなの毎日食べてるん?」

「亜貴、結局何を相談に来たんや?」


室井が邪魔だったり、め以子の火傷があったりで、肝心の相談を聞きそびれていたのです。

「ああ、せやった、せやった … ホンマやな」

笑い出した亜貴子。

悠太郎も亜貴子の隣に腰掛けました。

「怪我人見ると、忘れてまうんやな」

「ごめん、ごめん … 」


ひと息ついて、亜貴子は話し始めました。

「あのな、今の先生に大学行くの考えてみいひんかって言われてんねん」

「すごいやんか?! 女子で行けるゆうたら」


悠太郎は喜びましたが、亜貴子本人は複雑な顔をしています。

「 … 東北やねんけど」

「 … 遠いな」

「うん … お金もかかるしな」

「光男さんは、どう言うてはんの?」

「あの人は多分、私がそうしたいならええよって、言うてくれはるから … せやから、まだ言うてへんねん」

「相変わらず、理解あるな … 」

「うん、理解ある」


そう言って、亜貴子は立ち上がりました。

… … … … …

「無責任なこと言うけど … ええ言わはるなら、甘えたら?」

悠太郎も立ち上がりました。

「けどな … 」

「親父さんとお袋さんにもろうた夢やろ?」


うなずいた亜貴子。

「 … 悠ちゃんはどうするの? 来年」

「俺も、こっちに残らへんかって話あったんやけどな … 」

「けど、お母さんにもろた夢やから?」

「せや … 」


… … … … …

「せや、あの子 … もしかして、かなり家事してる?」

め以子のことです。

「まあ、弁当は作ってくれてるけど … 」

「手の皮、すごい厚かったから」

「ああ、毎日、熱々のご飯で、おむすび握ってるからちゃうか?

… 熱々のご飯でやらんと、おむすびって美味ないねんて」


それで亜貴子は何かを察したようでした。

「それ … 火傷してんねんで」

「そうなん?」

「 … お熱い話やな」


ため息をついた後、停車した電車に向かって歩き出しました。

「相変わらず、そういうとこ鈍いねんな ~ 」

振り向いてそう言うと、デッキに乗り込みました。

「何?」

「あかん、教えたらん」


亜貴子を乗せた電車は走りだし … 見送る悠太郎。

… … … … …

開明軒の厨房は、亜貴子の話でもちきりでした。

「いや ~ 気持ちのいいお嬢さんだったな」

大五もよほど気に入ったようです。

「俺もあんな姉ちゃんがよかったな ~ 」

… … … … …

め以子は、母屋の台所で明日のおむすびを試作していました。

白身魚フライにタルタルソースを絡めたものを具に入れたのですが … 思っていたほど美味しくありません。

料理ノォトに反省点を書き込みました。

「はあ ~ 明日、どうしようかな?」

ふと、手首の包帯を見て、亜貴子のことを思い浮かべました。

< どんな人だったんだい?

… そうかい、頭がいいのに、気さくで明るくて、一生懸命で、頑張ってる姿が素敵で … >

め以子には、非の打ちどころがないように思えました。

『亜貴見てると、なんやこっちも頑張らんとって、思えてくるわ』

悠太郎の言葉が耳に残っています。

… … … … …

「はっ!」

その時、め以子は桜子と民子から聞いたことを思い出して、息を飲みました。

『西門さんの意中の方っていうのは、よく食べて、一生懸命で明るくて、見てると自然と元気になるような方なんですって … 』

「あれって … 」

すべて亜貴子に当てはまりました。

呆然とするめ以子。

そこへ、亜貴子を送った悠太郎が戻って来ました。

慌てて、料理ノォトを隠して、台所を飛び出しため以子ですが、居間で悠太郎と鉢合わせしてしまいました。

「あ、あの … 」

「何ですか?」

「前に民ちゃんから聞いたんだけど …

西門さんには、その …  思ってる人がいるって」


咄嗟に口に出して聞いてしまいました。

「民ちゃん?」

「剣道の試合の後に、聞いたって … 」

「 … ああ ~ 」


ようやく分かったようです。

「それって、もしかして … 亜貴子さん?」

悠太郎は考えるポーズを取りました。

「あっ いや、私は別にどうでもいいですけどね …

うちの店にもまた来るかもしれないし … そしたらほら、一応、対応とか、あの … 」


声は裏返り、何かしどろもどろになっています。

… … … … …

「亜貴子さんのこと、好きなんですか?」

ついに聞いてしまいました。

怪訝な表情の悠太郎。

「嫌いなわけないでしょ?」

即答されて、め以子は悠太郎の顔を見返しました。

「亜貴のような人を嫌いな人なんて、そうそういないと思いますが」

… 怒ったような顔にも見えました。

しばし、言葉をなくした、め以子でしたが … なんとかうなずきました。

「そう … ですよね」

とにかくこの場から逃げ出したい気分でいっぱいでした。

「あの、私 … 賄いもらってきます」

… … … … …

母屋から飛び出しため以子は、厨房に行くことはせずにその場に座り込んでしまいました。

今までのことを思い返すと、泣きたくなってきます。

『私は、あなたのこと好きになりませんからっ!』

すべて勘違いの独り相撲だったなんて …

「何やってるの? こんなとこで」

厨房から出てきた照夫に声をかけられても、返事する元気もないめ以子。

「姉ちゃん?」

「 … 姉ちゃん、馬鹿かもしんないわ」

「は?」

「はは … 本当に馬鹿かもしんないわ」


もう一度繰り返し言いました。

め以子が何故、突然そんなことを言い出したのか、照夫には分かりませんでしたが …

「うん、まあ気づけてよかったんじゃないの?」

大五にどやされないうちに、忙しい厨房へ戻って行きました。

< 穴があったら入りたい … まさに、そんな気分のめ以子でございました >

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2013年10月21日 (月) | 編集 |
第19回

< 1922年、大正11年梅雨時。

孫娘のめ以子は、下宿人の西門悠太郎が店の階段を造る姿に刺激を受け、食べることにしか興味がなかったのに、自らも包丁を握り、初めて料理らしい料理に挑戦。

食べさせる喜びというものを、生まれて初めて味わい … ようやく、弁当ぐらいは自分で作るという、年頃の娘としては当たり前のことができるようになりました。

ここに至るまで17年、思えば長い道のりでございました >

「おはよう ~ 」

イクが台所に顔を出すと、すでにめ以子は慌ただしく、今日の弁当を作っている最中でした。

「まあ、朝から大騒ぎだね ~ たかがおむすびにこんな面倒なことを」

感心するやら、あきれるやら …

今朝は、ゴボウを刻んでいました。

「それ、何作ってんだい?」

め以子が作っているのは、おむすびの中に入れる具なのですが、イクが尋ねても「秘密」と言ってニヤニヤするだけで、それが何になるのかは教えてくれませんでした。

… … … … …

ご飯が炊きあがると、しゃ文字でほぐして、おむすびを握る手つきも堂に行ってきました。

< ですが、遅くかかった病はなんとやら … 夢中だね、め以子 >

… … … … …

朝の食卓。

「悠太郎さん、納豆平気になりましたね?」

平然と美味しそうに納豆をかけたご飯を食べる悠太郎を見て、照夫が言いました。

「というより、もう好きになってきてません?」

山本の言葉にイクがうなずいています。

「意外なんですが、どんどん好きになっているような気がします。

… クセが強いだけに、一度魅力が分かると、病みつきになるんですね」


悠太郎は納豆のことを言っているのは分かっているのですが、反応して味噌汁を吹いてしまっため以子は、大五達に笑われました。

「でも、お嬢さん、ご飯炊くの上手くなりましたよね ~ お弁当のおかずも作れるようになったし」

「食べる専門だった、め以ちゃんがな ~ 」


感心しているクマと山本。

「どういう心境の変化なのかね ~ ふふふ」

からかい気味にイクが笑うと、め以子はムキになりました。

「ご飯を食べるのは、1日たった3回しかないのよ … 大事にしないといけないでしょ?

一番大事にできるのは、自分で作ることだって、気づいただけ!」

「まあ、やっと気づいてくれて、ありがてえよ」


大五は冗談っぽく言いましたが、内心はうれしいはずでした。

… … … … …

「姉ちゃんてさ、どうすんの? 卒業したら」

照夫に突然、尋ねられましたが、まだ本気で考えいないことでした。

「まあ、私は家で … 」

「花嫁修業っていう名のスネカジリか?」

「うるさいわね!」

「修業しても行く当てなんて、あんのかね?」


今朝のめ以子は、格好のからかいの対象になっていました。

「あ、そうだ、悠太郎さん … 悠太郎さんも今年卒業だよね?

… ついでに、この娘もらってもらえないかね ~ 」


イクの冗談にめ以子は目を丸くしましたが … 当の悠太郎は特に驚きもせずに聞き返しました。

「め以子さんをですか?」

「ついでって、私にだって選ぶ権利ってものが … 」


少し考えていた悠太郎ですが、め以子のことを見て、ひと言だけ。

「おっしゃる通りです」

め以子は複雑な気分でした。

「あんのかね? 選ぶ権利なんて」

「ホントにね ~ 」


無神経に笑った両親 … ふて腐れるめ以子。

… … … … …

「はい、お弁当です」

「はい、いただきます」


縁側で悠太郎にお弁当を渡すめ以子。

クマに見送られて、ふたりは家を出ました。

「おむすび、今日は何ですか?」

「な~んでしょ?」

「ゴボウは使ってあるでしょ?」

「 … どうしてですか?」


今朝の味噌汁の具にゴボウが入っていたからでした。

… … … … …

停留所で電車を待つふたり。

「どうして、教えてくれないんですか?」

「どうして、教えないの分かってて、聞くんですか?」

「なんで、そんなに自信がないんですかね … 」

「はっ?」

「だって、何が入ってるか分かると、楽しみが減るから言わん訳でしょ?」


それが、どうして自信がないことになるのか … め以子には分かりませんでした。

「開明軒には、メニューがありますよね。

客はそれを見て注文する … 言わば、客は何が来るか分かってて注文する。

それでも、それを超えて、感動させるのが美味しい料理やないんですか?」

一理ありましたが、め以子も負けていません。

「じゃあ、何が食べたいのか、言ってもらえます?

… そうすれば、毎日毎日考えなくても済むんですけど」


黙って、顔をそらした悠太郎。

「すみません、他にも考えることがたくさんあるんで … 」

「そうですか、そうですか ~

帝大生のご立派な頭は、くだらん飯のためにある訳やない ~ って、訳ですね」


朝のこともあってでしょうか、何故か意地悪くつっかかっため以子でした。

… … … … …

悠太郎は、考えるポーズを取ったままです。

「何か言いましょうよ!」

間が持たなくなって、悠太郎を責めました。

「僕は、あなたを信じてるんやと思います」

「えっ?」

「 … あなたの『食い意地』を」

「食い意地?」

「僕とあなたの弁当が同じものである限り、あなたは美味しいものを作り続けるはずです。

… 何ひとつ当てにならないあなたやけど、『美味しいものを食べたい』そこだけは信じていいはずです」


… 他に言いようがないのかしら?

またも、褒められてるのか貶されているのか、分かりづらい話です。

「 … ご期待に沿えるよう、頑張ります」

そう答えるしかありませんでした。

「期待してます」

そうこうしているうちに、電車が停留所に入って来ました。

… … … … …

弁当の時間。

ひと口食べて、微笑んだ悠太郎。

「やっぱり、入ってるやないか」

予想通り、おむすびの中にはゴボウが入っていました。

「はあ、今日も美味そうだな ~ 1個食おうか?」

悠太郎は、横から伸びてきた近藤の手を払いました。

「替えんなよ、そのくそ不味い飯と!」

悠太郎の肩に手を置いた近藤。

「俺が替わってやったおかげで、お前は毎日毎日美味い飯食えてんだよなっ?」

それを言われては … 迷ったあげく、おむすびを半分に割って、近藤に差し出しました。

「渋ちんやね ~ 」

「関西人やからな」


… … … … …

「お前さ、来年どうするんだよ?

大学、残れって言われてるんだろ?」


そう尋ねながら、おむすびを口に入れた近藤。

「美味っ! これ、何入ってんの?」

ひと口食べて、悠太郎は考えました。

「 … ゴボウと豚肉を味噌で煮てるんかな?」

「お前さ、残った方がいいんじゃないの?

… こんな美味い飯、毎日毎日食えるんならさ ~ 」

「いつまでも、厄介になる訳にいかんやろ … 」


まさか食いものが理由という訳ではないでしょうが、悠太郎は迷っているようです。

… … … … …

「卵に朝のお味噌汁をちょっと入れると、お出汁も効くし、ネギやワカメや具も入るのよ」

民子から弁当に入っていたおかずの調理法を聞いて、め以子は料理ノォトに書き込みました。

「なるほど ~ 」

「め以子、変わったよね ~ 」


桜子に言われましたが、本人はあまり自覚がないようです。

「自分で作ってくるなんて、信じられないわよね」

民子とうなずきあいました。

「いや ~ やり出すと楽しくって … 手前味噌っていうの?

自分で作ると、倍美味しいっていうか … 」


意味深に笑いながら桜子が尋ねました。

「ねえ、通天閣のもめ以子が作ってるの?」

「んっ … うん、まあ ~ ついでだから … 」


急に歯切れが悪くなりました。

「へ ~ ついでにこんな大層なものを毎日毎日?」

また顔を見合わせ笑ったふたり。

「誤解しないでねっ、私は自分が食べたいから作ってるだけなんだから!

通天閣なんてついでなんだから!」


懸命に弁解するめ以子。

「ふぅ~ ん」

「ホントだって … 民ちゃん」

「分かった分かった、気にしてないから」


め以子なりに悠太郎のことは、民子を気遣っていたのかもしれません。

「ねえ、今日久々に行かない? 染井庵」

「行っちゃおうかな ~ 」


甘味処へのお誘い … 以前なら、先頭に立って名乗りを上げていたのに …

「わ、私はちょっと用事が … 」

言葉を濁しました。

「ふぅ~ ん」

怪しむ目つきのふたり。

「ホントにそんなんじゃないからね ~ 」

学校に来てもからかわれの対象でした。

「うん、もうっ!」

… … … … …

放課後、め以子が訪ねたのは、割烹室の宮本でした。

「何か面白いものないでしょうか? おむすびに入れる具」

「もうそろそろ、同じ物作ってもいいんじゃないですか?」

「卒業まで毎日毎日、違う物作るって決めたんです」


決めたまではよかったのですが … め以子にとって至難の業でした。

故に最近は、宮本に助言を求めていたのです。

「開明軒の料理から考えてみたらいかがですか?

… 何も具は和食でなくても構わないと思うのですが」


そう言われて、め以子は、開明軒のメニューを思い浮かべました。

「 … フライとタルタルとか?」

微笑み、うなずいた宮本。

「美味しいかも ~ 」

… … … … …

染井庵のふたり。

「最近、放課後あれでしょ?」

「宮本先生にお弁当の相談行ってるんでしょ?」


桜子と民子にはお見通しでした。

「あれ、絶対なんかあったよね?」

「でも、なんか聞いてる?」


ふたりとも特に何も聞いてはいませんでしたが、相手はどう考えても通天閣 … 悠太郎しかいません。

「私に気兼ねしてるのかな? … ホントにもう気にしてないのに」

時代は違っても、女子が揃えば、恋話でした。

「桜子は? どうなの、あの栞の方と」

『交際を申し込まれたの … お兄様のお友達で、よく本貸してくださってて … ある時、挟まってた栞がね、お手紙になってたの』

桜子の表情が少し翳って、ひとつため息をつきました。

「最近、さっぱり会えないのよね ~ お兄様に聞いても忙しいだけしか教えてくれなくて … 」

… … … … …

め以子は、家路を急いでいました。

「フライとタルタルを絡めて … 」

考えただけでも美味しくなりそうで、たまらなくなってきました。

「はあ ~ 決まり、もう絶対決まり!」

… … … … …

店の前まで帰ってくると、入り口の前に見知らぬ洋装の女性がひとり立っていました。

紺のワンピースに紺の帽子を被って、年齢はめ以子と同じくらいでしょうか …

「入りにくいのかな?」

め以子は女性に近づいて声を掛けました。

「あの、お気軽にどうぞ」

驚いた顔でめ以子を見つめる女性 … きれいな人でした。

「あ、うちもうすぐ開店しますんで」

店の関係者と分かったようで、女性は笑顔を作りました。

「おおきに ~ 」

め以子から勧められて、女性は入り口の階段を上がり始めました。

階段も、あれからすぐ、竹元が約束通りに色とりどりのタイルを送ってくれたので、見違えるように立派になっていました。

「この階段、手すりまでついてるんですね」

「ああ、うちに下宿している学生さんがやってくれたんです … 足の悪い人にも上りやすいようにって」


女性は、手すりを撫でながらつぶやきました。

「 … 相変わらずやな」

「えっ?」


… … … … …

「亜貴っ?!」

それが名前なのか、女性は振り向きました。

声を掛けたのは … 悠太郎でした。

女性 … 亜貴は悠太郎に向かって微笑みました。

悠太郎も今まで見せたことがないような笑顔で亜貴に駆け寄って来ました。

「悠ちゃん、久しぶり」

「よう分かったな、ここにおるって」

「ちょっと、つて辿って … 」


ふたりは知り合い、それもごく親しい間柄のようです。

「なんかあったんか? わざわざ … 」

心配そうな顔をした悠太郎、亜貴はうなずきました。

「ちょっと、相談があって」

「あ、中で話聞こか?」


店の邪魔にならないかと遠慮している亜貴を待たせて、悠太郎は大五に断りに店に入って行きました。

… それまでの間、め以子にはひと言も声を掛けないどころか、一瞥さえもしていません。

「あんなに慌てんでも、逃げへんのに」

亜貴は、クスッと笑って、め以子の顔を見ました。

「ああ … そうです … よね」

愛想笑いのめ以子。

「ええって、入って!」

「じゃあ … 」


< それは、本当にお似合いのふたりに見えて … >

亜貴を店に招き入れると、悠太郎はめ以子を外に残したままで店のドアをピシャリと閉めてしまいました。

< なんだか、自分をひどくみじめに感じてしまう、め以子でございました >

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2013年10月20日 (日) | 編集 |
まずは、先週のおさらいを …



さて、次週の「ごちそうさん」は?

事件や …

悠太郎(東出昌大)の弁当作りを買って出ため以子()。め以子の食い意地を信じるという悠太郎に、毎日違う種類のおむすびを、と意気込む。

悠ちゃん、久しぶり …

そんな折、亜貴子(加藤あい)という女性が訪ねてくる。悠太郎との親しげな様子に、みじめな気持ちになるめ以子。亜貴子は医学を学ぶ、明るく気さくな女性だった。「よく食べて、見ていると元気になる人が好き」という悠太郎の言葉は、自分ではなく亜貴子では、と思い当たるめ以子。

幼なじみって、将来を誓ってるとか?

ふたりは幼なじみで、同じ大阪の火事で家族を亡くしたことを聞かされる。亜貴子との結婚は許されないと言う悠太郎に複雑な気持ちになる。

こんないい縁談、二度とねえぞ

気を取り直しかけた矢先、め以子に見合い話が。料理屋の次男との縁談に大五(原田泰造)は乗り気だが、イク(財前直見)はめ以子の気持ちを思いやる。め以子は悠太郎に相談するが、止めてはもらえない。

ちゃんと戦いなさいよ!

見合い当日、悠太郎はボート部の試合に助っ人として参加。め以子はいつものように弁当を用意するが悠太郎は持たずに家を出てしまう。

自分を変えるほどの恋なんてどれくらいあるのかな?

見合いの席。食事が進み、最後のご飯を見ため以子は、自分がご飯を炊いてあげたいのは悠太郎だけだと改めて気づく。

西門さん!

そして …
ごちそうさん 公式サイト、YAHOO!テレビガイド他を参照)

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2013年10月20日 (日) | 編集 |
第18話

「食えてもた … 22年、食われへんかったのに … 」

知らなかったとはいえ、納豆を食べられたということは、悠太郎にとっては結構、衝撃的な出来事でした。

その時、廊下を誰かが走ってくる音がして、部屋の障子が思い切り開かれました。

「西門さんっ!」

… 満面の笑みをたたえた、め以子でした。

… … … … …

「あなたの普通は開けてから声をかけるなんですね」

浴衣の袖に手を通しながら、悠太郎はあきれたように言いました。

しかし、め以子は全く悪びれることなく悠太郎の目の前に正座しました。

「好きな食べ物は思いつきましたか?」

「えっ?」

「考えてみるって言ってたじゃないですか?」


そういえば、そんなことがあったような …

「明日から私、自分の分とついでに西門さんの分、お弁当作ることにしたんで」

「ああ、そうですか … 」


悠太郎は、しばらく考えるポーズを取りました。

「 … じゃあ、おむすびを」

考えた割には、在り来たりの注文だったので、め以子は少し不満でした。

「馬鹿にしてます? 私のこと、どうせおむすびくらいしか作れないだろうって」

「そういう言い方はおむすびを馬鹿にしてませんか?」

「そうじゃないですけど … 」


口を尖らせため以子。

「けど … なんですか?」

「 … 分かりました。

明日からは、世界で一番美味しいおむすびを目指して、精進いたします」


力まかせに障子を閉めて出て行きました。

… … … … …

「はい … 」

朝、大学へ出かける悠太郎にめ以子は蚊の鳴くような声で弁当箱を差し出しました。

昨日の勢いはどこへ行ったのやら …

「ありがとうございます」

礼を言う悠太郎の顔もまともに見ずにうつむいたまま、逃げるように先に出て行ってしまいました。

「どないしたんや?」

その答えは、弁当の時間になれば分かるでしょう …

… … … … …

「うわっ、どうしたの? これ」

め以子が開けた弁当箱の中身を見た桜子は思わず口に出してしまいました。

途中で落としたのか … ぐちゃぐちゃのおむすびに焦げたサケ … 見るも無残な状態です。

民子も目を丸くしています。

「自分で作ったの … 」

今にも泣きだしそうなめ以子。

「ええっ!」

声を揃えて驚きました。

「め以子が自分でお弁当作ったの?」

「どういう風の吹き回し?」


ふたりとも信じられないといった顔をしています。

「うん、難しいんだね ~ 料理って … 」

火の加減が分からずサケは焦がすし、その間に煮物は吹きこぼれるし …

炊き立てのご飯は熱すぎて、しっかり握ることができませんでした。

それでも、肝心の味がよければ … ポロポロと崩れそうなおむすびを取って、ひと口食べため以子。

「 … 何これ?」

… … … … …

帝大の研究室。

「いただきます」

弁当箱を開けて、一瞬固まった悠太郎でしたが …

何事もなかったかのように食べ始めました。

… … … … …

お役目の糠床をかき混ぜながらも出てくるのは、ため息ばかりのめ以子でした。

< 明日もあれじゃあね ~ >

そこへ、イクが慌ただしく母屋に入ってきました。

「め以子、それ終わったら、ご飯炊くよ」

「えっ?」

「いい機会だからさ、あんたもご飯炊くの覚えといた方がいいだろう?」


このくらいの時間、店の準備があるイクはそんな暇はないはずでした。

「だから、忙しくなるまでだよ ~ さっさとやるよ!」

… … … … …

イクは、先ず米のとぎ方から教えました。

「米をさっと洗って、すぐ水を捨てる … この時もグズグズしないでさっさとやること」

「は~い」

「水を捨てたら、米をとぐ。

この時のコツは強くとぎ過ぎないこと、強いと米が割れちゃうからね」

「強さって?」


イクは「やってみな」と言って、め以子と代わりました。

そして、何故か目を閉じました。

め以子は見様見真似で、米をとぎはじめました。

「わあ、強い強い」

力を弱めて調子をゆるめた、め以子。

「まだ強いね」

め以子がもう少しだけ弱めると、イクはうなずきました。

「そのくらい」

「えっ?」


… 目を閉じている母が何故、力の具合が分かるんだろう?

不思議に思っため以子にイクは言いました。

「その音くらいがいいね ~ 」

「音?」


イクは米をとぐ音で力の具合を判断していたのでした。

… … … … …

米をとぎ終わって、釜を火にかけると、イクは腰かけてまた目を閉じました。

「音、聞いてみな」

そう言われて、め以子は釜に耳を近づけました。

チリチリと聞こえます。

「その音に変わったら、水が無くなったってこと」

目を開けて立ち上がったイク。

「この音に変わったら、30秒くらい強火にする」

ガスの栓を今よりも開けました。

「米は音が大事なんだ … 」

「そう、音でといで、音で炊く」


… またひとつ勉強になりました。

… … … … …

「蒸らして、15分 … 炊きあがり」

イクは釜のフタを取り、しゃもじでご飯をほぐしました。

「じゃあ、これをお櫃に移して、少し冷ましてから、おむすび握ろうか」

「あ、待って … おむすびは、熱々で握った方が美味しいんでしょ?」

「 … でもあんた、今朝無理だったろう?」


心配そうな顔をしたイク。

「熱々が美味しいんでしょ … 」

イクの顔をじっと見つめて、もう一度め以子は尋ねました。

「 … やる?」

「 … やる」


うなずき合った、イクとめ以子でした。

… … … … …

やると決めため以子は、手を水で濡らして、塩をつけました。

そして、しゃもじでご飯を取って、手のひらに載せました。

「あっ、熱熱熱、つつつ … 」

力を入れて握れずに、まるで手のひらの上で転がしているようです。

「代わろうか?」

イクにそう言われても、め以子は断りました。意地でも、出来るようにならなければ …

「握る時のコツは、力を入れ過ぎないこと。

米と米の間に空気を含むように … 優しく握るんだよ」


手本を見せながら、イクは言いました。

熱いのを我慢して、懸命にイクの手つきを真似るめ以子。

… … … … …

何個か握るうちに、どうにか様になっては来ました。

「いただきま~す」

自分が握ったおむすびの試食です。

「う~ん、これこれ … 食べるとご飯が、ほろ~ってほぐれて」

「だから、おむすびって言うのかね?」

「?」

「結んだものが、ほろっとほぐれるように … 」


母はうまいことを言うなと、め以子は思いました。

「おむすびひとつにも出来るにはいろいろあるんだね ~

炊き方だけでもコツが … 」


指折り数えるめ以子。

「そうだね ~ 他にも色々あるよ。

新米を炊く時は、水を少なめにするとか、梅干を入れる時には、梅酢も一緒に入れて炊くとか … 固めが好き、柔らか目が好き、海苔は乾いた状態で巻きたい、巻き上げて慣らしといた方がいい … とかね」


イクの話を感心して聞きながら、め以子は、手にしていたおむすびを見つめました。

「奥が深いんだね … おむすびって」

「じゃあ、後は片付けといて」


そろそろイクは店に戻らなければなりません。

「 … あっ、お母ちゃん」

「うん?」

「忙しいのに、ありがとう」

「そう思ってるんなら、1回で覚えてよ」


笑いながら言ったイクにめ以子はうなずきました。

… … … … …

「ただいま戻りました」

いつもより少し帰るのが遅くなった悠太郎が、居間を覗くと …

「 … 何やこれ?」

ちゃぶ台の上にいくつもおむすびが並んでいました。

「あっ、お帰んなさい!」

台所からお茶を運んで来ため以子に悠太郎は尋ねました。

「何ですか? これは … 」

「おむすびってね、塩とかご飯とか海苔とか … そういうことで色々変わるらしいんですよ。

どれがどうなるのか、考えてたら、やってみたくなっちゃって」


嬉しそうに答えため以子、悠太郎に座るよう促しました。

「で … こうなった訳ですか?」

「西門さんも食べてみてくださいね」


ちゃぶ台についた悠太郎にめ以子はひとつひとつ説明し始めました。

「これがうちの台所で使っているお塩、これがお店で使っているお塩、こっちが社長からいただいた外国のお塩で、こっちが糠床に使ってるお塩 …

で、こっちの列が固めに炊いたご飯で、こっちの列が柔らかめに炊いたご飯。

それぞれに海苔ありと海苔なし!」


全部で8種類×4個ずつで32個のおむすびが並んでいます。

… … … … …

「これ、全部塩むすびですか?」

「はい」


当然のように返事しため以子。

「梅干とか、かつお節とか無しですか?」

「おむすび本来の味の違いを確かめるには、邪魔だと思うんです。

一緒に西門さんにとっての、世界一の塩むすびを探求しましょう!」


め以子はまず端のおむすびを取って、悠太郎に手渡しました。

「そんな、微妙な味 … 」

… 分かるのだろうか?

悠太郎は、ひと口食べて、おむすびを見ました。

「 … どうですか?」

「あの弁当を作った人とは思えないです」

「それ … 不味かったって言ってますよね?」

「いや ~ 心配しましたよ。

あなたの舌が壊れたんか、僕に対する嫌がらせかって … ど下手なだけやったんですね?」


褒めているのか、貶しているのか … め以子には、どちらかというと、後者に聞こえました。

「 … また、あのおむすびにしますよ」

口を尖らせました。

… … … … …

「あなたは、そんなことしませんよ」

怪訝な顔をしため以子。

「 … あなたは、愛してますから」

め以子の顔を見て悠太郎は言いました。

面と向かって、そんなことを … 絶句するめ以子。

「食べることを愛してるでしょ?」

「あっ … ああ、ああ」


… そういうことですか。

「食材をわざとダメにするなんてできませんよ」

「はいっ」


今度は笑顔でうなずきました。

それから、ふたりは黙々とおむずびの食べ比べを続けました。

… … … … …

自分の部屋に戻っため以子は、母に教わったことや、おむすびの作り方など、今日覚えたことを真新しい帳面に書き留めていました。

そして、表紙には、『め以子料理ノォト』という題字とおむすびの絵を描き入れました。

… … … … …

次の朝の食卓。

悠太郎が皆を驚かせました。

あれほど頑として手を出さなかった納豆を目一杯ご飯に載せて美味しそうに食べはじめたのです。

注目して見ていた一同、誰からとなく拍手と歓声が上がりました。

「悠さん、やる ~ 」

「子供やないんですから … 」


照夫にからかわれて、真っ赤になって照れている悠太郎。

手を取り合って喜ぶめ以子とイク。

… … … … …

「はい、お弁当です!」

め以子は、いつものように出かける悠太郎に縁側で弁当を渡しました。

「ありがとうございます」

「ついでですから」


今日は割と自信ありげな表情です。

… … … … …

道を行く悠太郎が、足を止めて、後ろを歩いていため以子のことを見ました。

「 … どうしたんですか?」

「あの ~ 今日も塩むすびですか?」


弁当のことが気になったようです。

「嫌ですか?」

め以子は悠太郎を追い越しました。

「別にそんなことないですけど … 」

昨晩、あれだけ塩にぎりばかり食べたので … さすがに、少し飽きました。

後に続く悠太郎。

め以子は振り返りました。

「違いますよ」

「 … 何ですか? 今日は」


ちょっと期待しているようにも聞こえました。

「何でしょう ~ 」

勿体ぶっため以子です。

いつの間にか、ふたりは並んで歩いていました。

< 兎にも角にも、足並みが揃ったようでございます >

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2013年10月18日 (金) | 編集 |
第17話

「これは、あなたの砥石だったのではありませんか?」

宮本の言葉で、忘れかけていた気持ちを思い出しため以子は、家に帰ると、早速台所に立ちました。

まな板の上に納豆をあけて … 包丁を持って、うなずくと細かく刻み始めました。

< 刻んで、形をなくしてね ~ 何かに混ぜ込むのかね? >

刻んだ納豆を器に移して、そこに砂糖を入れ、味見しました。

「うん、いけるかも … 

そこへ今度は味噌を加えました。

< お砂糖と味噌、甘辛い味にするんだね? >

油を少々 …

< 油で包むと、匂いも和らぐね … えっ、そんなもんも入れんのかい? >

め以子は南京豆を包丁で砕きはじめました。

… … … … …

その頃、悠太郎は、ひとりの客を連れて、店の前まで帰って来ていました。

客というのは、大学の講師でもある建築家の竹元勇三です。

「おい、君が下宿している洋食屋というのは、この開明軒という店かね?」

竹元は不機嫌そうにステッキで店のことを指しました。

「 … ご存知ですか?」

知っていて、わざと悠太郎は尋ねました。

「最低な店だということは知ってるね」

忌々しそうに吐き捨てた竹元。

「食べはったんですか?」

「食べずともわかるね」

「 … さっきの講義で何事も試してみるべきだと、おっしゃってませんでしたか?」


悠太郎にそう言われた竹元、少し考えた後 … 店の入り口をにらみました。

何か確認でもするかのように階段や手すりをステッキで叩いていたかと思うと、ゆっくりと店に入って行きました。

… … … … …

「先日は、申し訳ありませんでした」

イクは、店の不手際に腹を立てて帰ったはずの竹元が再び店を訪れたこと … それも、悠太郎の大学の講師だったことを知り、驚いた上に恐縮してただ頭を下げました。

「足の方はいかがでしたか?」

メニューから目を上げた竹元。

「 … 足?

私の足は治ったが、この子の傷は一生治らんよ」


白い靴についた傷をイクに見せました。

「申し訳ありませんっ」

… … … … …

一方、台所のめ以子が、次に持ち出したのは、山芋でした。

皮を剥きたいのですが、ぬるぬると滑って中々思うようにいきません。

… … … … …

竹元は、テーブル一杯に並んだ料理を黙々と食べています。

「お口に合いますでしょうか?」

空いた食器を下げに来たイクが尋ねると、トンカツをひと切れフォークで刺して答えました。

「この豚は真珠だな … 豚に飾られた真珠だ」

そう言った後、口に頬張りました。

「はあ … 」

… … … … …

厨房に戻ってきたイクを待ち構えていた大五。

「美味えって、美味くねえって?」

「分かんないわよ … 言ってることが、訳わかんないのよ」


… … … … …

「あの階段、誰が造った?」

不意に竹元が悠太郎に尋ねました。

「 … 僕です」

悠太郎がひとりで造ったことを知って、舌打ちをしました。

… … … … …

め以子は、何とか皮が剥けた山芋を、すり鉢で卸していました。

しかし、ぬるぬるは相変わらず …

「もうっ!」

山芋のついた手で顔をこすっため以子。

< あ、ああ あ ~ 痒い手でかくと、どんどんかいかいが … >

手や顔を水で洗っても、痒みは中々収まりません。

… … … … …

食事を終えて、店を出てきた竹元は、改めて入口の階段を見ながら、悠太郎に言いました。

「コンクリートは、むき出しかね?」

「 … 余りよくはないですよね」


しかし、それが学生で素人の悠太郎の限界でした。

「コンクリートも劣化するし、第一似合わない!

一見よくありそうな料理に、バカみたいに手をかけてるだろう、ここの大将は?

あんなに手が込んでるとは、ほとんどの奴らは気づかん。

あんなに柔らかく豚を仕上げても ~ 美味い、美味い ~ そういうことしか伝わらん。

そういうことを言っているんだ、俺は … 」


竹元はステッキの先を悠太郎の肩に置きました。

「この店で未熟なのは、お前が造ったこの階段だけだ」

ハッとする悠太郎。

「仕方がないから手を貸してやる … 」

… … … … …

「め以子、今日ご飯 … 」

忙しい上に竹元の来店、め以子も何も言ってこないのですっかり夕食のことを忘れていたイクでした。

母屋に戻って、台所で奮闘しているめ以子に気づきました。

「… 何やってるの?」

山芋に手こずりながら、め以子は言いました。

「皆、お節介だって言ってたけど … 私、やりたいことって、他になくて …

もっと、工夫したら、お節介じゃなくなるかもって … だけど、山芋ひとつ卸すのも、まともに出来なくて … 」


自分を情けなく思うめ以子でした。

「酢水に漬けんだよ … 芋は酢水に漬けると痒みも抑えられるし、色も変わんないからね」

… … … … …

竹元が去った後の店の前、悠太郎はひとり階段に腰かけて、眺めていました。

手すりに汚れを見つけて、手拭で拭いていると、中から大五が顔を出しました。

「おうっ、悠さん、どうだった? 竹元さん」

そのことが気になって、待ちきれずに出てきたのです。

「大将の料理にふさわしい階段になるように、タイルを送ってくださるらしいです」

「えっ?」

「大将の手の込んだ暖かい料理に、この階段は似合わないって … 」

「 … そんなこと言ってくれたのかよ?」


大五は感激していました。

「悠さん、入って入って、ビール飲もう!」

… … … … …

色々な具を混ぜた納豆は油揚げの袋に詰めました。

それを鍋で油を熱しているイクの元に運ぶめ以子。

「いいかい? よく見てるんだよ」

イクは小麦粉を水で溶いたタネを箸の先で少しつまんで油の中に落としました。

「これだと、まだ温度が低すぎるんだよ … タネが沈んでるだろ?」

「うん」

「逆に温度が高すぎると、表面だけ揚がって中に火が通らない …

ま、でもいろいろあってね、サツマイモなんかは低めで揚げる方がいいし、エビやイカなんかは高めの方がカラッと揚がる」

「へ ~ 」


め以子の知らないことばかりでした。

… … … … …

「ごめんね ~ め以子」

突然、母に謝られて、め以子は戸惑いました。

「あんたが何も出来ないのは、私のせいだよ ~ 忙しい忙しいで、何も教えもしなかったから … 」

「私も覚えなかったし … 」


照れくさそうにそう言った娘の顔をイクは見つめました。

… … … … …

「もういいかな?」

もう一度、油の中にタネを落としたイク。

「うん、このくらいがちょうどいい … タネが一旦沈んで、すぐ浮き上がる」

「ホントだ ~ 」

「じゃあ、やってみて」


揚げる準備が整ったら、あとはめ以子が任されました。

め以子は鍋の前に立ち、皿の上に盛られた油揚げの袋を手でひとつつまむとそのまま油の中に落とそうと構えました。

「えっ、た、高すぎるって! もっと、ほら、鍋肌からそ~っと入れて」

身振り手振りで教えました。

言われた通り静かに入れるとジュと揚がる音が聞こえてきました。

「わあっ!」

軽く声を上げて、次々に油揚げの袋を入れていくめ以子。

その様子を優しく見守るイク。

… … … … …

店の厨房では、照生が大五と悠太郎のために酒の肴をこしらえていました。

「よし、こんなもんか」

皿に盛って運ぼうとする照生。

そこへ、母屋から戻ってきたイクがめ以子が揚げたばかりの料理が乗った皿を差し出しました。

「照、これも一緒に持って行って」

「何だよ、これ?」

「いいから、持ってって」


イクの後からついて来ため以子も小声で頼みました。

め以子の目を見て何かあると察した照生は、うなずいてそのまま運んで行きました。

… … … … …

「お待たせしました ~ 」

「お、お前は仕事が遅いね ~ 」


大五はすでにご機嫌です。

「さあ、悠さん、食って食って」

め以子の料理は悠太郎の目の前に置かれています。

「 … これは何ですか?」

「何だそれ?」


大五も見たこともない料理だと気づきました。

「これは … 照は作ってねえな」

厨房から慌てて出ていくイク。

「ああ、ちょいと聞いて作ってみたんだよ ~ 美味しいよ、食べてごらん」

悠太郎に勧めました。

「うん、どれどれ … 」

まずは大五が箸を伸ばしました。

悠太郎も箸ではつかみましたが、匂いを嗅いだりして警戒しているようです。

… … … … …

「 … どうですか?」

ひと口で食べた大五に悠太郎は尋ねました。

「ん? … うん、美味いよ ~ 俺はね」

「俺は?」

「これよ、多分 … 」


ここで、大五に余計なことを言われたら、すべてが水の泡です。

厨房から覗いているめ以子は気が気ではありません。

「中にはさ ~ いろんなものが入ってるから、何が出てくるか分かんないんだよ」

「へえ ~ 」


大五の言葉を遮って、上手く取り繕ったイクの話にうなずいてる悠太郎。

「 … 面白いですね ~ じゃあ、いただきます」

悠太郎も大五と同じようにひと口で放り込みました。

心配そうに見つめるめ以子。

口を動かしながら、悠太郎は考えています。

そのうちに飲みこみました。

… … … … …

「美味しいですよ、これ … 甘いんか、辛いんか、不思議な味で … 」

その言葉に、パッと笑顔になり … そして、泣きそうになるめ以子。

「 … これ、何入ってるんですか?」

悠太郎に聞かれて、イクは厨房の奥に声を掛けました。

「め以子、何入ってるんだっけ?」

微笑み、悠太郎の前に姿を現しため以子。

「 … 納豆です」

笑いながら、イクの背中に抱きついて、そしてもう一度言いました。

「納豆です!」

… … … … …

目を見開き、愕然とする悠太郎。

「やっぱそうだよな ~ 」

大五にも分かっていました。

「うん!

納豆に砂糖と味噌とごま油と辛子、あと南京豆を砕いて入れて、それに山芋を混ぜて、油揚げの袋に入れて揚げたの」


種明かしをしため以子。

キツネにつままれたような顔の悠太郎はもうひとつ箸でつまんでまじまじと見つめています。

「西門さん」

「あ、はい」

「美味しかったですか?」


め以子は悠太郎の顔を覗きこんで聞きました。

「はい … ごちそうさん … でした」

め以子、イク、大五から笑い声が上がりました。

「お母ちゃん、ありがとう ~ 」

泣き笑いのめ以子、涙を拭いました。

… … … … …

なんか久しぶりに心が晴れて笑うことができた気がするめ以子。

台所で糠床をかき混ぜていても笑顔が止まりません。

自分が作った納豆の料理を悠太郎が食べた場面を思い浮かべました。

「 … ごちそうさん … でした」

あの時の悠太郎の顔ときたら …

< そうだろ? め以子 … 楽しいだろ? 作るのは >

め以子は両掌を見つめて、握りしめました。

< 自分の手で、もぎ取った、『ごちそうさん』は、とびきりだろ?

この味を、ゆっくり、しっかり、育てていくんだよ >

… … … … …

悠太郎は、自分の部屋で上半身裸になって、座ったままで竹刀の素振りをしていました。

竹刀を置いてつぶやく …

「食えてもた … 22年、食われへんかったのに … 」

悠太郎にとっては結構、衝撃的な出来事だったようです。

その時、廊下を誰かが走ってくる音がして、部屋の障子が思い切り開かれました。

「西門さんっ!」

… 満面の笑みをたたえた、め以子でした。

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2013年10月17日 (木) | 編集 |
第16話

開明軒の入り口、腐って壊れた階段は取りあえず応急処置をして、足元に気を付けるように注意書きを貼りました。

怒りながら帰っていた紳士を見送った悠太郎は、大五達から経緯を聞きました。

「 … 階段でケガを?」

「どうしても腐って来るんで、その度にちょこちょこ直してるんですけど」


木製の上、雨ざらし、客も多いので、傷みが早いのです。

「そりゃもう、一からやり直さなきゃ、ダメだってことだろ?

… もうガタが来てるんだよ」


修理ではなく、作り直さなければダメだとイクは言いました。

「う~ん、でもやり替えても、またダメになっちゃうんだよな ~ 」

考えあぐねいていると、悠太郎が自ら手を上げました。

「僕、腐らん階段造りましょか?」

驚いて悠太郎の顔を見た一同。

「悠太郎さん、そんなことも出来るの?」

「職人やありませんから、どこまで出来るかは分かりませんけど …

やらせてください、お願いします」


悠太郎の方で頭を下げました。

「そりゃ、助かるよ! なあ?」

「うん、本当にいいんですか?」


手放しで喜ぶ、大五とイク。

しかし、何故かめ以子だけ、浮かない顔をしていました。

… … … … …

次の日、め以子が学校から帰って来ると、店の前では悠太郎がすでに新しい階段を造り始めていました。

照生の手を借りて、コンクリートを流し込む型枠をこしらえています。

「あ、姉ちゃん、お帰り … ちょっと、後はよろしく」

「えっ、ちょっと ~ 」


め以子の返事も待たずに、自分は仕事があるからと、店に戻ってしまいました。

その時、また急に降り出した雨。

慌てて、シートを広げた悠太郎が、め以子に声を掛けました。

「そっち、持っててください!

できるだけ濡らしたくないんです、早く!」


… … … … …

「嫌なお天気でございますね ~ 」

クマが軒下にてるてる坊主を下げながら言いました。

梅雨時なので、雨が降るのは仕方がないことです。

悠太郎は、作業は一時中断して、図面を引いています。

「クマさん、足痛むの?」

「昔、膝をやりましてね ~ 梅雨時は時々 …」


膝をさすっているクマとめ以子のそんな会話を聞いた悠太郎は、書いていた図面を手に取って見直しました。

「そうか ~ どうせなら、手すりもあった方がええですよね?」

「あ、そりゃ助かる方も多いでしょうね ~ 」

「じゃあ、そうしましょう」


クマの意見を聞いて悠太郎は図面に手すりも書きこみ始めました。

「本気?」

悠太郎の横顔は真剣そのものです。

… … … … …

「これ、西門さんのです」

厨房に夕食を受け取りに来ため以子は、悠太郎の分の盛りが余りにも多いので、目を丸くしました。

そんなめ以子に大五が言いました。

「悠さん、朝から大変だったんだよ ~ 大学行って工具借りたり、いらないセメントもらってきたりして …

晴れてるうちに少しでも進めたいからってお前、昼もロクに食ってねえからよ!

きっと、めちゃめちゃ腹減ってると思うからよ」


… … … … …

め以子が食事を居間に運んでいくと、悠太郎は図面を前に、うたた寝をしていました。

「ご飯で来ましたよ」

声を掛けましたが、目を覚ましません。

ぐっすり眠っているのを、起こすのも悪いと思って … そのまま、ひとりで食事を取りはじめました。

… … … … …

「め以子、め以子、もう ~ 何でこんなとこで寝てるんだい?」

イクに起こされため以子 … 食事を取った後、自分もうたた寝してしまっていたようです。

いつの間にか食器は片付けられていて、悠太郎の姿もありません。

「さっき、悠太郎さんが下げてくれたよ」

「 … 西門さんは?」

「階段 … 」


驚くめ以子。

「夜もやるの?」

… … … … …

外に出ると、雨はすっかり上がっていて、悠太郎はコンクリートを造っていました。

コーヒーを運んできため以子が声を掛けても、気づかずに作業を続ける悠太郎。

「あの、西門さん」

少しそばに寄って、大きな声で言うとようやく気がつきました。

「コーヒー、飲みませんか?」

「あ … ありがとうございます」


… … … … …

ひと休みして、コーヒーを飲む悠太郎。

隣に腰かけため以子。

あの傘の一件以来、なんとなく悠太郎と話すのが気まずいめ以子でした。

何か話さなければ … 話題を探しました。

「あっ … 西門さんが親切だって、褒めてましたよ。 民ちゃんが」

「民ちゃん?」


首をかしげる悠太郎。

「私のお友達の … お弁当の」

「ああ、あの日本人形みたいな … 」

「いい加減、人の顔、覚えましょうよ … その民ちゃんが、西門さんは親切だって、言ってましたよ」

「 … 親切なんかやないですよ」

「そんな照れなくても … 」

「照れてなんかないですよ。

ホントに親切なんかやないんです … この階段を直すのは」


本人が言う通り、照れているような話し方ではありませんでした。

「やらんと、自分が後悔するだけの話で … 」

コーヒーを飲み終えて、作業を再開した悠太郎は、手を動かしながら話を続けました。

「僕の母は、僕が12歳の時に火事で死んだんです」

「えっ?」

「出かけた先で火事が出て … 火の回りが早くて … あれよあれよという間に大火事になって …

母は、逃げ遅れた子供を助けようとして、倒れてきた家に逃げ道をふさがれてしまったそうです」


悠太郎が初めて話す身の上話でした。

「道が狭くて、木造の建物が立て込んでるとこで …

その時、思たんです … 母は、こんな街やなかったら、死なんかったって。

それから、安全で住みよい街を造るのが僕の夢なんです」


… … … … …

放課後の教室、掃除をしているめ以子たち

「あのさ ~ ふたりは『夢』ってある?」

め以子は民子と桜子に尋ねました。

「ないわよね? 普通 … お嫁に行くだけだもんね、私たち」

すると、民子が遠慮がちに言いました。

「先生っていいなって … 私、子供好きだし、親が許してくれたら、師範受けようかなって」

「ええっ?!」


意外でした。

一番、家庭的だと思っていた民子がそんなことを考えていたなんて。

「さ、桜子は? … 桜子はないわよね?」

「 … 文章書く仕事、してみたいなって … 最近」

「ええっ?!」

「ふふっ、あこがれよ、ただの … でも、本やっぱり好きだし」


そういえば、桜子はいつも本を持ち歩いていました。

… … … … …

悠太郎の階段造りは続いていました。

型枠にコンクリートを流し込んでは乾かす、そしてまた流し込む …

学校から帰ってきため以子は、しばしその様子を眺めていました。

め以子に気づかず、黙々と作業する悠太郎。

… … … … …

居間でひとり窓辺で頬杖をついてぼんやりとしているめ以子。

悠太郎をはじめ、民子や桜子まで、皆それぞれに『夢』を抱いて生きていることを知って、少なからずショックを受けていました。

私の『夢』は何だろう? … そう自分自信に問いかけても、何も答えは返っては来ませんでした。

… … … … …

その朝、最後に白い手すりを打ち込んで作業を終えた悠太郎。

ついに開明軒の新しい階段は完成しました。

歓声と拍手。

「ありがとう、悠さん」

大五から順番に代わる代わる階段を上り下りして笑顔の一同。

め以子は、その輪には加わらず、そっと学校に向かいました。

… … … … …

授業中もうわの空 … 休み時間もポツリとひとりきり、廊下で隠し持っていた駄菓子を食べながら、物思いにふけっていました。

「 … 美味しそうですね、卯野さん」

宮本でした。

め以子は初犯でありません。

しかし、宮本は静かな口調で言いました。

「見逃してほしいですか?」

… … … … …

こちらは帝国大学。

「 … あの人?」

教壇に上がった講師を見て、何処かで見覚えのある顔だと悠太郎は思いました。

… 開明軒で転んだ紳士でした。

「ここの卒業生で竹元さんっていって、アメリカで最先端の工法を視察して来たんだって … ここんとこ話してくれてるんだよ」

耳打ちした近藤。

悠太郎は、開明軒の階段にここ数日掛かりきりだったため、自分の大学の講師だとは分からなかったのです。

「諸君! 20世紀の都市の建築は、鉄筋コンクリート造で造られるべきである、これを認識するように。

都市の生活者が安全に暮らせるように … 何より先ずその点から考えるように、耐火性の高い、鉄筋コンクリート造ありきで考えなければならない。

諸君が、この国の未来に貢献するために、先ずここから出発する」


… … … … …

め以子は再犯を見逃してもらうことの引き換えに、宮本から割烹室の包丁を研ぐ手伝いを命じられました。

「砥石に対して、こう! よろしくお願いしますよ」

「はい … 」


隣の宮本のやり方を手本にしながら、め以子は庖丁を研ぎ始めました。

静かな割烹室に、ふたりが包丁を研ぐ音だけが聞こえています。

しばらくして、め以子は宮本に尋ねてみました。

「先生は、どうして教師になったんですか?」

「女は料理人にはなれないし、気づいたらこの道を選んでましたね」


あっさりと教えてくれました。

「私、『夢』ってないんですよ ~ やってみたいこととか、何もなくて … 考えてみたこともなくて」

最近、このことばかり考え込んでいるめ以子でした。

… … … … …

「包丁というのは、実はただの鉄の板なんですよ … 研がなければ、包丁にはなりません。

『夢』というのも、そういうものじゃないですかね?」


め以子は宮本の横顔を見ました。

「ただの鉄の板を研いで使って、研いで使って、そんなことを繰り返すうちにやっと自分が望む刃の角度が見えてくるんです。

それは、自分の手を動かして、何度も何度も砥石で研がなければ、永遠に分らないものです」


自分が研いでいる包丁の刃を見つめるめ以子。

宮本は、傍らに置いてあったノートを取ると、そこに挟んであったメモをめ以子に差し出しました。

『納豆嫌ひに、納豆を食べさせる方法や如何。

ご意見迄』

それは、め以子が悠太郎に何とか納豆を食べさせようと、桜子と民子に助言を求めて回したメモでした。

「これは、あなたの砥石だったのではありませんか?」

め以子の顔を見上げて微笑んだ宮本。

… … … … …

「どうして食べられないの? こんなに美味しいのに … 」

「食べさせたいんです」

「美味しいって思うものが多い方が幸せだって思っただけなんだけどな ~ 」

… … … … …

め以子は、宮本の言葉であの時の気持ちを思い出したのでした。

… … … … …

「竹元さん!」

悠太郎は、講義が終わって教室を出て行った竹元の後を追って、声を掛けました。

「西門悠太郎と言います。

もう少しお話、聞かせていただけませんか?」


… … … … …

自分が今、何をすべきなのか、うすぼんやりと分かった気がしため以子。

家に帰ると、早速台所に立ちました。

まな板の上に納豆をあけて … 包丁を持って、うなずくと細かく刻み始めました。

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2013年10月16日 (水) | 編集 |
第15話

開明軒は、今夜も千客万来、大繁盛です。

イクが話していたように日曜は特に忙しく店は満席、厨房では大五達が慌ただしく注文の料理をこなしていました。

それとは打って変わって、母屋の方は静かなものでした。

居間でめ以子がひとりきり、不機嫌そうな顔をして煎餅を食べています。

「遅い … 」

柱時計をにらんでつぶやきました。

試合はとうに終わったはずなのに、悠太郎はまだ帰って来ません。

「いや、何待ってるんだろう? 私」

ひとり、首をひねっため以子。

… … … … …

「ただいま戻りました ~ 」

悠太郎が帰ってきました。

「お帰りなさい」

居間に顔を見せた悠太郎、ご機嫌な雰囲気なのは、酒を飲んでいるからでしょうか。

「何食べてるんですか?」

「三輪屋の煎餅です」

「煎餅?」


いつもの悠太郎と違ってヘラヘラしています。

「 … 食べます?」

お愛想に聞くと、「是非」と言って腰を下ろしました。

「いただきます!」

煎餅をつかむとバリっとかじりました。

「あ、お茶入れますね」

「おおきに!」


ちょっと調子が狂います。

「お酒入ると、なんか感じ変わりますね」

「そっちこそ、何や今日は親切やないですか ~ お茶入れてくれるなんて」

「そ、そんなことないですけど … 」

「“けど”なんですか?」

「酔っぱらいが煎餅詰まらせて死んだら、寝覚め悪いですから」


め以子の憎まれ口にも今日の悠太郎は笑っています。

「分かります ~ 初めて意見が一致しましたね」

「ご機嫌ですね ~ 

何かいいことあったんですか?」


すると悠太郎は待っていましたとばかりに答えました。

「我が校は2番だったんです」

「へえ ~ 1番じゃなかったんですか?」


お茶を注ぎながらめ以子 …

「何言うてるんですか?

2番が一番ええんですよ、次は1番だって思えるやないですか?」

「そういうもんですかね … 」

「そうですよ ~

弁当も美味かったし … お友達、料理上手いですね ~ 可愛らしいし、気がつくし …

ホンマにあなたたち友達なんですか?」


急に真顔に戻って尋ねました。

「『心の友』でございます」

悠太郎の目の前に湯呑みをドンっと置いて、にらみつけました。

… … … … …

次の日。

登校しため以子は、なんとなく浮かない気持ちを、軽く頬を叩いて振り払って、笑顔で教室に入りました。

「おはようございます ~ 御機嫌よう、桜子様、民子様」

早速、昨夜、悠太郎から聞いたことを民子に伝えました。

「お料理上手で気がついて、可愛いって言ってたよ、民ちゃんのこと」

「ああ、そうなの … 」


しかし、民子の反応はいまいち …

不審に思っため以子。

「 … なんか、おセンチになってない?」

「通天閣、好きな人いるらしいよ」


代わりに答えたのは桜子でした。

「ええっ?」

「それとなく、つきあっている人いるか探り入れたらね … 」


… … … … …

「そういう方はいませんけど … 」

「その“けど”って何ですか?」

踏み込んだ、桜子。

「“けど”としか、言いようのない関係なので … 」

ハッキリと言わない悠太郎に、民子は自分で尋ねました。

「それ、どういう方なんですか?」

… … … … …

「西門さんの意中の方っていうのは、よく食べて、一生懸命で明るくて、見てると自然と元気になるような方なんですって」

悠太郎本人からそう聞いたと、民子は沈んだ顔で話しました。

… … … … …

授業を終え、帰宅しため以子は、常連の室井が店の前でひっくり返っているところに出くわしました。

「どうしたんですか? 室井さん」

「ああ ~ 階段 … 」


見ると、店の入り口に上がる木製の階段の板が腐って外れていました。

「ああ、また腐っちゃいましたか ~ 」

ガタがきていた階段が、室井が足を掛けた時に壊れてしまったのです。

転んだ拍子に放り出してしまった原稿用紙を拾い集める室井。

それを手伝いながら、め以子は尋ねました。

「最近、小説うまくいってます?」

「いや ~ 主人公が、ある女を好きになるっていう出来事が、今ひとつしっくりこなくて …

この女っていうのが、何の取柄もない女で、僕としては、何の取柄もない清々しさのようなものに惚れてほしいんだけど ~ これがなかなか … 」


一瞬考えため以子。

「何の取柄もないんだけど … 見てると元気になる … とか?」

「 … 元気?」

「私の知り合いは、見てると元気になる女性が好きみたいです」

「ああ、あるかも知れないね ~ そういうことは」


め以子の話に腕を組んでうなずいた室井。

「僕もめ以ちゃん見てると、元気になるもの」

「 … 私、何の取柄もないってことですか?」


少し不機嫌な顔になっため以子を見て、室井は吹き出しました。

「違う違う、そうじゃないけども ~

あの、め以ちゃんの食べっぷり見てると、何かつまんないこと、どうでもいい気になることもあるって … そういうこと」

「へえ ~ そうなんですか … 」


原稿用紙を拾い続けながら、め以子は考えました。

いつか誰かにも同じようなことを言われたような …

… … … … …

「!! … うそっ?!」

ようやく思い当たりました。

「め以ちゃん?」

め以子の様子がおかしくなったことに気づいた室井。

「うそ ~ !!!」

め以子は、持っていた原稿用紙をくしゃくしゃにして放り出すと、家の中に駆け込んで行きました。

… … … … …

家に上がっため以子は、ひとしきりウロウロした後、台所へ行き、糠床を取り出してかき混ぜ始めました。

< 落ち着いて、め以子 … 落ち着いて >

「西門さんの意中の方っていうのは、よく食べて … 」

「ホンマによう食べはりますね ~ 」

「一生懸命で明るくて … 」

「一生懸命やってくれはったのに … 」

「見てると自然と元気になるような方なんですって」

「 … あなたを見てたら、元気が出るってことです」

め以子の頭の中で、民子から聞いた話と悠太郎が自分に言った言葉が交互に浮かんでは消えました。

… … … … …

無意識に手に取った糠漬けのキュウリを丸かじりするめ以子。

そのまま仰向けにひっくり返りました。

「 … 私が、民ちゃんの恋敵???」

何だか悲しくなってきました。

< まず、西門さんの気持ちを確かめた方がいいんじゃないかね? >

… … … … …

「だ、大丈夫ですか?!」

ひっくり返っているめ以子の顔を慌てて覗きこんだのは悠太郎でした。

突然、目の前に現れた悠太郎の顔、驚いため以子は、跳ね起きました。

「 … 倒れはったのかと思った」

ホッと胸をなでおろした悠太郎。

「あっ … 心配してくれたんですか?」

「そらそうでしょ ~ どう見ても、糠漬けつまみ食いして、ぶっ倒れたとしか思えないやないですか?」


め以子の両手には、かじりかけのキュウリがしっかり握られたままでした。

自分の部屋に戻ろうとした悠太郎ですが、何か思い出したように振り返りました。

「あの、ヒトデって食べられるものもあるらしいですよ」

「えっ?」

「ヒトデ … 気にしてたやないですか?」


「好きな人、人、人 … ヒトデはなんですか?」

… 思い出しました。

「それで、わざわざ調べてくれたんですか?」

「まあ、僕もちょっと気になったんで … 」


口から出まかせに言ったことを、ちゃんと覚えてくれていたなんて … め以子は困惑していました。

< 何分、殿方から女性として見られたことがないめ以子でございます …

そのようなおなごが親友の思い人が、自分のことを思っているかもしれないという、込み入った局面に出くわすと妙な考えをするものでして … >

布団に入っても、あれこれ考えてなかなか寝付けないめ以子。

「 … でも、私は別に好きじゃないのよね?」

自問自答しました。

おもむろに布団から起き上がっため以子。

「私が嫌われればいいのか?!」

< … てな具合に、め以子はねじれた塩梅の決心をしてしまったのです >

… … … … …

次の朝が来ました。

「悠太郎さん、おはようございます」

「おはよう!」


庭で竹刀の素振りをしている悠太郎と照生が挨拶を交わしています。

その後すぐ、め以子も前を横切りました。

「おはようございます」

「気軽に声を掛けないでくださいませ!」


悠太郎の方を向きもせずに立ち去るめ以子、首をひねる悠太郎 …

… … … … …

朝の食卓。

「どうぞ」

め以子は納豆の入ったドンブリを悠太郎の前に差し出しました。

「えっ?」

戸惑っている悠太郎。

「世話になってるくせに、うちの納豆が食べられないって言うんですか?

… 嫌なら、出てけばいいのよ!」


意地悪そうな顔で言い放っため以子をイクが咎めました。

「何言ってんだよ? あんたは!」

… … … … …

休み時間。

睡眠不足と無理な態度を続けたせいで、め以子は机にうつらうつら臥せっていました。

耳元に民子と桜子の会話が聞こえてきます。

「 … そんなことになるの?」

「そうそう、仲のいい友達同志が同じ人、好きになっちゃうの」


め以子はハッとして立ち上がりました。

「そんなんじゃないわよっ!」

… 桜子の読んでいる小説の話でした。

… … … … …

帰り道、橋の上で佇むめ以子。

「 … 疲れた」

不意に水面にいくつのも波紋が … 空を見上げため以子、にわか雨でした。

「あの ~ 」

振り向くと傘を差した悠太郎がいました。

「ついでやし、一緒に帰りましょう」

め以子に傘を差し掛けて来ました。

しかし、め以子は拒んで先に歩き出しました。

「け、結構です! 男女7歳にして … ですから!」

「それは、こないだ、ご自分で否定してたやないですか?!

僕は、男に入らないんでしょ?」

「先生に見つかったら、怒られる」

「先生、こんなところまで、来はらへんでしょ?」

「うちの先生は割といるんです! この辺にも」

「じゃあ … 」


あくまでも相合傘を拒むめ以子に悠太郎は傘そのものを差し出しました。

「あなたに風邪をひかれるのは嫌なんです」

「私が風邪をひこうがどうしようが、あなたには関係ないと思いますけど … 」


悠太郎の目を見て話せません。

「傘を貸さなかったから、風邪をひかれたという状況を目の当たりにするのは、僕の主義やありませんから!」

目の前に差し出された傘。

しかし、め以子は受け取ることができません。

「 … 好きになりませんから」

「えっ?」

「こんなことで … こんなことくらいで、私はあなたのこと好きになりませんから!」


泣きながら走り出していました。

… … … … …

め以子が土砂降りの中、店の前まで帰って来ると、先日と同じように人が倒れていました。

背広に白い靴、ステッキを持った紳士が足を押さえてうずくまっています。

「大丈夫ですか?」

駆け寄るめ以子。

修理したはずの階段がまた壊れていました。

… … … … …

肩を貸して、紳士を店内に運び込んだめ以子。

何事かと心配顔のイク。

「階段落ちちゃって、足ひねられたみたいで … 」

「申し訳ありません … 今、お医者の方を」


厨房から大五も出てきて、頭を下げました。

「申し訳ございません … 踏み板がいかれているようで」

その言葉を聞いた途端、紳士の顔色が変わりました。

「知っていたということか?

危険なのを、知っていたということかね?!」


ステッキを叩きつけて、激昂する紳士。

「あ、いや … いかれてるということは … 」

「私は、そういう輩に虫唾が走る性質でね!」


紳士は痛む足を引きずりながら出口に向かいました。

「待ってください! 今、お医者様を!」

「いらんっ!」


め以子の言葉にも、聞く耳持たずに店を出て行ってしまいました。

… … … … …

紳士が外に出た時、ちょうど帰ってきた悠太郎と出くわしました。

「大丈夫ですか?」

痛む足を抑えている紳士を見て、手を貸そうとしましたが、反対に怒鳴り返されてしまいました。

怒りが収まらず、罵倒を浴びせながら去っていく紳士の背中を見送った悠太郎。

その様子を店から覗いていため以子でした。

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2013年10月15日 (火) | 編集 |
第14話

悠太郎に苦手な納豆をなんとかして食べさせようと、あれこれ手を尽くしため以子でしたが …

頑として口にしない悠太郎、父大五には怒られる始末でした。

「嫌だって言ってるやつに無理に食わせるなっつってんだよ!」

… … … … …

「 … という訳なんです」

弁当の時間、め以子は桜子と民子に事の顛末を話しました。

「お父さんの言う通りじゃない?

私だって、朝から目の前にクサヤのコース並べられたら、トンガラかるわ」


桜子が身震いしながら言いました。

「だって、美味しいって思うものが多い方が、幸せだって思っただけなんだけどな ~ 」

そういうめ以子の気持ちも分からないではありませんが …

「あの … め以ちゃんって、西門さんのこと好きなの?」

民子が遠慮がちに聞きました。

「何であんな人?

偏屈だし、意地悪だし、納豆食べられないし … どうやったら、好きになれるっていうのよ?!」


思わず、強い口調で答えてしまいました。

「 … そう思わない?」

め以子は桜子に同意を求めましたが … 黙ってうつむいている民子を見て、桜子は尋ねました。

「民ちゃん、気になるの? 通天閣」

民子は、こくりとうなずきました。

「えっ!? なんで ~ 」

信じられないめ以子。

「だって、素敵じゃない!」

民子の目が、輝き始めました。

「ど、どこが ~ ???」

… … … … …

「 … 頭いいし、かっこいいし、優しいし ~ 」

うっとりと夢見るように話す民子。

「め以ちゃんにお料理で理科教えてくれた話なんて、もう素敵過ぎて …

私、赤点取りたくなっちゃった!」


恥ずかしそうに顔を手で隠しました。

顔を見合わせため以子と桜子。

「まあ、ものは考えようだから … 」

桜子の言葉に首をひねっため以子。

おもむろに顔を上げて民子は言いました。

「でも … 以心伝心の方はいらっしゃるわよね ~ あんな素敵な方ですもんね」

「 … それとなく、聞いてみようか?」


成り行き上、仕方なく口にしため以子でした。

… … … … …

め以子と悠太郎は店で働いていないので、自然と一緒に夕食を取ることになります。

「何か?」

さっきから何となくめ以子の視線を感じていた悠太郎でした。

「あの … いしん … 」

後の言葉が続きません。

「いしん? … 明治のご維新のことですか?」

「いえ、そうじゃなくてですね … 」


不思議そうな顔でめ以子が話すのを待っている悠太郎。

「好きな人 ~ 」

「好きな人?」

「好きな人、人、人 … ヒトデはなんですか?」


突拍子もないことを聞かれて、不審な表情に変わりました。

「あの海にいるやつですか?」

「そうです … あの、色、色とか?!」

「だいだい色の奴がなじみがありますかね」

「 … そうですかね」


一体何を聞いてるんだと、め以子は自分でも思いました。

しばし、黙って食事をするふたり。

「あの … 」

悠太郎に話しかけられて、ドキッとするめ以子。

「もしかして、食べはるんですか?」

「いや … 食べませんよ、何言ってるんですか?!」

「じゃあ、どうして?」

「 … 機会があったら、いいかもしれませんね。

食べられるんですかね ~ 」


そう答えながらも箸を休めないめ以子を見て、悠太郎は笑いながら言いました。

「ほんまによう食べますね ~

何や、あなたを見てると悩んでるのが、アホらしくなってきます」


眉をひそめるめ以子。

「 … バカにしてます?」

「してませんよ ~ あなたを見てたら、元気が出るゆうことです」

「そうですか … 」


悪い気はしないめ以子でした。

… … … … …

「悠太郎さん、試合土曜だっけ? 日曜だっけ?」

突然、入ってきたイクが悠太郎に尋ねました。

「日曜です」

「試合?」

「悠太郎さん、剣道の試合があるんだよ」


イクからそう聞いても、め以子には全く興味がないことでした。

「あ、そうだ、め以子! あんた、お弁当作ってよ!

日曜日は忙しいし、クマさんも法事だって言ってたしさ、ねっ、頼んだよ!」


め以子の返事も聞かずに急いで店に戻って行ってしまいました。

「何で私が … 」

ふて腐れるめ以子に悠太郎が神妙な顔で言いました。

「あの ~ 頼む身で言いにくいんですけど … 納豆だけは … 」

「入れませんよっ!」


… … … … …

「お弁当か … 」

台所で糠床に野菜を入れながら、め以子は悠太郎の弁当のことを考えていました。

< そうだね ~ 運動するから、量はあった方がいいかもね。

… 嫌いなのは、納豆だけど、好物は何なんだろうね? >

何だかんだ言っても、弁当を作る気にはなっているめ以子でしたが …

「 … 何で私が悩まなきゃ、い・け・な・い・のっ!」

… … … … …

「そのお弁当、民ちゃんが作ったら?」

悠太郎の弁当のことを学校で話すと、桜子が思いついたように言いました。

「えっ?」

「め以子がお弁当作るの、わざと忘れて … 困ってる通天閣に、偶然来ていた民ちゃんが、それとなくお弁当渡すってのは、どう?」

「偶然会って、それとなくお弁当って … 」


民子は躊躇していますが、桜子は強引に話を持って行こうとします。

「いとこの応援に来たんですけど、作り過ぎちゃったんで … とか、何とでも言いようがあるじゃない?」

「私、そんなお芝居できないわよ」

「大丈夫、大丈夫、しゃべるのは私が適当にやってあげるから ~ ねえ、め以子?」

「えっ? … ああ、うん」


桜子の勢いに思わずうなずいてしまった、め以子。

「西門さんの好きなお料理って、何かな?」

民子もその気になって来たようです。

… … … … …

め以子にすれば、願ったりかなったりの話のはずなのですが … 何故かあまりうれしくもありません。

「おかえりなさい」

め以子に出迎えられた悠太郎が心配そうな顔をして鼻をひくつかせました。

「納豆はもうやりませんよ」

安心して、空の弁当箱を渡し、部屋へ行こうとする悠太郎を呼び止めるめ以子。

「あの … 好きな食べ物って何ですか?

お弁当、残されるのも嫌なんで」

「別に、何でも … 」

「でも、何かあるでしょ? 好物」

「好物? 好物 … 」


そんなに考えることなのか … め以子にしてみたら不可解でした。

「 … 納豆以外は、特に好き嫌いは」

「へえ ~ 意外と幸せな性質なんですね?」


首をかしげた悠太郎。

「好きなものばっかりってことでしょ?」

め以子の言葉に、また例の考えるポーズを取りました。

「 … 多分、あなたが言う『好き嫌いがない』と、僕の『好き嫌いがない』は、意味合いが違うと思うんです」

今度はめ以子の方が首をかしげました。

「あなたの『好き嫌いがない』は、『ほぼ全て好き』であって、僕のは、『ほぼ全て嫌いやない』なんやと思います」

「はあ … 」

「ええ機会なんで、ちょっと考えてみます」


… … … … …

自分の部屋で駄菓子をつまみながら、ぼんやりとさっきの悠太郎の言葉の意味を考えているめ以子。

< どういうことなんだろうね? >

窓からは、灯りの灯った悠太郎の部屋が見えます。

… … … … …

試合当日の朝。

「何で弁当頼んだこと忘れてんだよ!

あんたのおつむの中には何が入ってるんだい?!」


め以子は、イクに空の弁当箱で頭を叩かれました。

「塩か、砂糖か、米糠かっ!」

「ごめんなさ~い」


急いで弁当をこしらえようとするイク、そんなもの渡されたら、せっかくの企みがおじゃんです。

め以子は慌てて止めました。

「 … そうだ、私あとから持ってくから!

遅れたら困るでしょ?」


悠太郎を追い出しため以子は、ホッと胸をなでおろしました。

… … … … …

『東京学生剣道対抗戦』

め以子が遅れて試合場に着くと、すでに桜子と民子は観戦していました。

「どうしたの?」

「忘れたフリしたら、お母ちゃん作りはじめちゃってさ」


ご心配なく … その弁当は、め以子が来る途中に平らげました。

「 … 転んだことにする」

「ごめんね、私のわがままで」

「いいの、いいの、美味しかったし … あ、通天閣どこ?」


民子の顔がパッと明るくなりました。

「あそこ、ほら、次じゃない?」

ちょうど悠太郎は面をつけているところでした。

… … … … …

「大将、西門選手!」

審判が悠太郎と相手の選手の名前を呼びました。

拍手に迎えられて、ふたりの選手は竹刀を構えて蹲踞しました。

「あらら、素敵、通天閣」

姿勢を正した悠太郎を見て、桜子がささやくと、民子はうれしそうに微笑んでうなずきました。

め以子にはよく分かりません。

「はじめっ!」

上段の構えを取った悠太郎、相手の気合いが試合場に響きました。

しかし、お互い構えたままで、一向に攻め込む気配がありません。

「 … 出方、見てるんじゃない?」

民子の言葉にうなずく桜子。

その時、相手が一気に攻め込んできました。

攻めを受ける悠太郎。

かさに来て、責め続ける相手の選手 … 素人の目には悠太郎の劣勢に見えますが、少しずつ間合いを詰めていました。

次の瞬間、悠太郎の竹刀が一閃 … 相手の面を打ち据えました。

「面ありっ!」

悠太郎の一本勝ちでした。

「勝った、勝った!」

皆に合わせて、め以子も拍手していました。

そして、悠太郎のその凛々しい姿に見とれているめ以子でした。

… … … … …

「こけた?」

弁当の時間、め以子の言い訳を聞いて、悠太郎は絶句しました。

「ごめんなさい … 」

め以子が頭を下げて謝っているところへ、筋書き通りに桜子と民子が現れました。

「あら、め以子?」

「やだ、桜子来てたの? … 民子も、民子も!」

「民子が、いとこの応援に行くって言うから」

「やだ ~ 知らなかった ~ 」


ソッポを向いている悠太郎の前に民子が立ちました。

「あの … よかったら、お弁当作り過ぎちゃったんで … 」

差し出したのは、作り過ぎたにしては大きい包みでした。

「ええんですか? … そんな」

「はいっ、是非!」


… … … … …

試合場の床の上、向かい合って座った悠太郎と民子。

気を利かせて、少し離れて座る桜子とめ以子。

悠太郎が二段重ねの重箱を広げると、中には煮物やいなり寿司が詰まっていました。

「あの ~ お口に合いますか?」

「自分で作らはったんですか?」

「はい」

「お料理、お上手なんですね」

「そんなっ … 」


頬を赤らめる民子。

「お似合いよね … フフッ」

桜子の言葉に気のない相槌を打っため以子でした。

「これ全部食べてもええんですか?」

「どうぞ … 作り過ぎたんで」


そんなふたりのやり取りを横目で見ながら、何故か不機嫌になって行く自分がいました。

め以子はお茶を飲み干すと立ち上がりました。

「私、そろそろ … 」

… … … … …

ひとり、先に試合場を出てきてしまいました。

ぼんやりと歩く、帰り道 … ふと、足を止めて、空を見上げました。

抜けるような青空です。

「 … いい天気」

< 首尾は上々 … けれど、何処か晴れぬ気持ち。

その気持ちの名を、め以子はまだ、言葉に出来ぬのでありました … >

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2013年10月14日 (月) | 編集 |
第13話

< 大正11(1922)年春。

私の孫娘のめ以子は、銀座のカフェでとある帝大生に生クリームを飛ばしつけ … 後日ひょんなことから、この西門悠太郎と同居をすることになりました。

いろいろと虫の好かぬことが続き、ついにある日 … >

「要は、あなたには魅力がないんです」

< 彼の放った強烈なひと言に逆上!>

「勉強するわよ!」

< … ですが、その結果、食べ物に対して、生まれて初めて、食べること以外の興味を抱き …

同時にまた、別の興味も抱いてしまったみたいです >

「なんだったんだろう? あれ … 」

悠太郎の顔を見ていて急にドキドキして、息苦しくなった … その意味までは、まだ気づいていないめ以子でした。

< と、申せど、私は糠床の身 … もどかしくも見守るばかりでございます >

… … … … …

卯野家の朝、食卓を囲む一同。

悠太郎のことが何となく気になるめ以子、偶然目が合い、慌てて視線を逸らして、何事もなかったようにご飯を頬張りました。

「ほんまによう食べはりますね ~ 」

そんなめ以子を見て、感心している悠太郎。

皆は笑いましたが、め以子は口を尖らせて言いました。

「いけませんか?」

「褒めてるんです … 人生、楽しそうやって」


悠太郎の言葉が素直にそのまま受け取れないめ以子、憎まれ口を叩きました。

「西門さんは、不味いの我慢して食べてるんですか? ~ 可愛そうに … 」

「悠さんは顔に出ないだけなんだよ ~ ちゃんと美味いの!」


大五がとりなしました。

「好き嫌いが表に出ると、問題が起こることもありますんで … 」

何となく言葉を濁した悠太郎に照生は尋ねました。

「問題? … でも、嫌いなものとかでたら、どうするんですか?」

「照生、あんたホント人を見てないね ~

西門さん、朝の納豆、1回も手つけてないだろ?」


あきれたようにイクが言うと … 一同の視線が悠太郎に集まりました。

「 … バレてましたか」

「西の方の人は、あまり食べつけないからね ~ 」


… … … … …

「えっ、えっ、え??

… どうして食べられないの? こんなに美味しいのに!」


納豆が食べられないなんて … め以子には信じられません。

「あっ、食べてみましょうよ ~ 取りあえず、1回 … 食わず嫌いはよくないですよ!

こんな美味しいのが食べられないなんて、人生損してますよ」


納豆の入ったドンブリを手に悠太郎に近づいて行きます。

「初めはあれでも、この匂いとねばりがそのうちクセになってくるんですよ ~

ダマされたと思って、ひと口!」


悠太郎の目の前にドンブリを差し出しました。

「すいません … 」

手で押し返す悠太郎。

「絶対美味しいですから、ひと口 … あの、ひと粒とか?」

「ごめんなさい、勘弁してください」

「最初、鼻つまんで食べてみたらどうですか?」


頑として受け取らない悠太郎、イクが止めてもあきらめずに勧めるめ以子。

「鬱陶しい!

お前、いやだっつってるんだから、無理に食わすことねえだろが!」


しつこいめ以子のことを見かねた大五が怒鳴りました。

「 … 人にはそれぞれ好みってもんがあるんだよ!

押しつけんじゃねえよ!!」


… … … … …

授業中 …

教師の宮本の目を盗んで、桜子にメモを渡しため以子。

それを見た桜子は民子に回しました。

『納豆嫌ひに、納豆を食べさせる方法や如何。

ご意見迄』

こちらを見た桜子と民子にめ以子は小声で言いました。

「何でもいいから ~ 何でもいいの ~ 」

「大根おろしとあえると、食べやすいですよ …

今は実習の時間ではありませんけどね」


いつの間にか民子の横に立っていた宮本が、メモを取り上げました。

「 … 卯野さん、あとで割烹室へ」

… … … … …

授業が終わった後、め以子は言われた通り、宮本がいる割烹室に出頭しました。

「どうして、納豆の食べ方を尋ねたのですか?」

宮本は庖丁を研ぎながら、め以子に聞きました。

「家に下宿している帝大生が納豆が食べられないので、皆から意見を募って …

あんな美味しいものが食べられないなんて、勿体ないと思うんです。

美味しさを分からせたいと、思いまして …

どうにかして、食べさせたいんです」


何も言わず、ただ庖丁を研ぐ宮本。

「勉強を教えてもらったお礼もありまして … 」

宮本は、庖丁を研ぐ手を止めました。

「子供の好き嫌いを直す方法のひとつに、自分でこしらえさせてみせるというのがあります」

「えっ?」

「彼にも自分で調理させてみるといいかも知れませんね」


それだけめ以子に伝えるとまた手を動かし始めました。

「 … あの、私怒られないんですか?」

恐る恐る尋ねため以子。

「怒りましょうか?」

「い、いいえ、結構です! ありがとうございました!」


礼を言い、割烹室を出ていくめ以子の背中を見つめながら、つぶやいた宮本。

「食べさせたいねえ … 」

… … … … …

「 … それでお嬢さん、西門さんに納豆をこしらえさせるんですか?」

「ものは試って言うし … 」


帰宅しため以子は、宮本から聞いたアイデアをクマに話すと、買い置きしてあった納豆をドンブリにあけて、悠太郎の帰りを待ちました。

そこに帰ってきた悠太郎。

「おかえりなさいませ ~ 」

出迎えため以子の態度に違和感を感じた悠太郎 … 台所の方からする匂いに鼻をひくつかせました。

「あの ~ ちょっと、手伝って欲しいことがあるんですけど」

「学校の課題が残ってまして … 」


何かよからぬ企みを察知したのか … 迷わず断りました。

「ほ、ほんのちょっとなんで」

「ちょっとなら、勘弁!

だ、男子厨房に入るべからずと言いますし」

「いや、うちは殿方が台所に入る家だから、気にしないで!」


しかし、め以子の手をかい潜って、悠太郎は逃げて行ってしまいました。

… … … … …

その夜。

自分の部屋でドンブリに入れた納豆をかき混ぜているめ以子がいました。

「かように糸を引きおって、そちは何とも情け深いおなごじゃの ~ 」

< め以子、何か嫁入り前の娘が言うセリフじゃなくなってるよ … >

「さてと … 」

十分にかき混ぜた納豆が入ったドンブリを机の上に置きました。

その前には色々な薬味が並んでいます。

それをひとつずつ納豆に入れて食べ比べ始めました。

< 梅干しは … あ、思った通りの味なんだね。

山椒は … 意外に! そう、臭みが消えるような気がする ~ いいかも知んないね >

しかし、何かまだ物足りない感じがします。

「やってみるか … 」

そうつぶやいため以子は、厨房へ行き、棚から様々な調味料を取り出しました。

その顔は、まるでいちごのジャムに指を入れて舐めていた、幼い頃のようにウキウキしているように見えました。

< あらら、楽しくなってきちゃったんだね ~ め以子 >

… … … … …

次の朝が来ました。

配達を終えて帰ってきた照生と悠太郎。

食事の時間なのにめ以子の姿だけ見当たりません。

「あれ、姉ちゃんは?」

「起きてはいるみたいなんだけど … 出てこないんだと。

どうせ宿題でも忘れてたんだろう」


自分の指定席につきながら悠太郎は食卓に納豆が並んでいないことに気づきました。

「切らしちまったんだよ ~ 昨日まではあったのにね」

イクとトラが顔を見合わせて首をかしげています。

密かに微笑んだ悠太郎。

… … … … …

「お待たせしました ~ 」

布巾を掛けたお盆を手に現れため以子。

「め以子それ何だい?」

ちゃぶ台の真ん中にお盆を置くと、布巾を取りました。

「どうぞ!」

そこには、6つのドンブリに納豆が!!

思わず鼻をつまむ悠太郎。

「これはキュウリのすりおろしたのと赤シソを混ぜたもので、こっちは味噌と山椒、これは漁りの佃煮を入れてみたの … ま、他にもいろいろあるから食べてみて」

得意げに説明しました。

「これ全部、め以ちゃんが?」

「はい!」


… … … … …

め以子の納豆は家族には好評でした。

「美味い!」

「これ納豆って分かんないかもね」

「美味しい ~ 」


しかし、ひとり手をつけない悠太郎です。

「西門さんもちょっとだけ試してみませんか?

これなんか特に臭みが抑えられてると思うし」


め以子に勧められても、一度は断った悠太郎ですが、周りの雰囲気に負けて … 止むを得ずドンブリを手にしました。

自分の取り皿に数粒とって、じっと見つめています。

「はあ ~ 」

ため息をつき、顔を強張らせながら、ひと粒箸で掴みました。

注目する一同。

目をつぶって恐る恐る口に運んで … 

「すいません! やっぱり遠慮しときます!」

皿に取った分も合わせてドンブリに返してしまいました。

「ひと口ぐらい!」

「もったいないこともしたくないんで … 」


がっかりするめ以子 …

… … … … …

「私のことは、な~んも努力はしないって詰るのに、自分はいいんだ … へ ~ 」

「はあ?」

「私には、無理やり勉強させたくせに!」


せっかくの苦労が報われず、面白くないめ以子です。

ここで言わずにはおられませんでした。

「無理やり? … 確か合意の上やったと思いますけど」

「合意って … いつ私が教えてくれってお願いしました?」

「でも、あなたも楽しんでたじゃないですか?!」

「楽しんでないです!」

「もっともっとって言うてたやないですか?!」


まるで痴話げんかのような言い争いを見て、トラと山本は吹き出しました。

… … … … …

「おい、お前これキャビア入れただろう?」

横から口を出した大五。

「ええっ、キャビア!」

納豆にキャビア … 驚く一同。

さすがのめ以子も引け目を感じているようで …

「 … ちょっと、もらっただけじゃない」

「冗談じゃねえ! これいくらすると思ってんだ?!」


目の色を変えて怒る大五。

「まあまあまあ ~ 初めてめ以子が自分から料理する気になったんだから」

イクが大五をとりなしました。

「お父ちゃんだって、料理人でしょ?

納豆の美味しさを伝えたいとか思わないわけ?」


しかし、逆ギレのめ以子が火に油を注ぎました。

「教えてやるよ … 悠さんが教えてくれって言うならな。

けどな、嫌だって言ってるやつに無理に食わせるなっつってんだよ!」


大五の方に理がありました。

「黙って食え!」

… … … … …

しかし、あきらめが悪いのがめ以子です。

「 … お父ちゃんだって昔、『ご飯は出さねえ、パンだ!』とか、押しつけてたじゃない … 」

小さい声でブツブツ言っています。

「黙って食えよ!」

笑いの絶えない賑やかなことが当たり前の卯野家の食卓が険悪な雰囲気に包まれてしまいました。

< 人間、思い通りに糸はひけぬものでございます >

「ほんますんません!

一生懸命やってくれはったのに … 」


自分のせいで親子ゲンカまで起きてしまった … 責任を感じて謝った悠太郎でした。

< ですが、この時の悠太郎が放ったひと言が後々、思わぬ方向に糸をひくことになったのでございます >

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2013年10月13日 (日) | 編集 |
まずは、先週のおさらいを …



さて、次週の「ごちそうさん」は?

西門さん、朝の納豆、1回も手つけてないだろう?

め以子()は、大阪出身の悠太郎(東出昌大)が納豆を食べようとしないことに気づく。

どうして食べられないの?

おいしいものは食べさせたいめ以子は、薬味を変えるなど工夫するが、悠太郎は頑として食べず、しつこいと大五(原田泰造)に叱られる。

気になるの? 通天閣

民子(宮嶋麻衣)の悠太郎への好意を知り、桜子(前田亜季)の提案で、悠太郎の剣道の試合で民子手作りの弁当を勧めることに。計画はうまくいくが、め以子はなぜか面白くない。

素敵じゃない!

悠太郎が「よく食べて、見ていて元気が出る人」が好きと知り、め以子は自分ではないかと意識し、混乱する。

僕の母は、火事で死んだんです

そんな折、開明軒の壊れた階段で客がけがをする騒ぎに。修理を買って出て一生懸命に直す悠太郎。大阪の火事で母を亡くした悠太郎は安全な街作りへの夢をめ以子に語る。

やりたいことって、他になくって …

自分の夢とは何か悩むめ以子に、教師の宮本(奥貫薫)は納豆のことを思い出させる。

階段でけがをした客・竹元(ムロツヨシ)は悠太郎の帝大の先輩で、アメリカで最先端の工法を学んでいた。開明軒にもう一度現れた竹元は店を気に入り、悠太郎の階段作りに手を貸す。

はじめて、め以子が自分で料理する気になったんだから

やはり納豆をおいしく食べてほしいと、め以子は自ら走り回って調達した材料で料理を始める。
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2013年10月12日 (土) | 編集 |
第12話

「 … いただきます」

スコッチエッグを前にナイフとフォークを持っため以子。

悠太郎は、その様子を無言で見つめたままです。

「食べないんですか?」

そんなに見られていては食べにくい … め以子は悠太郎に尋ねました。

「先にどうぞ … あなたが食べたら、僕も食べます」

め以子は首をかしげましたが、言われた通り、スコッチエッグにナイフを入れました。

「ん?! これ … 」

サクサクの衣の中から、トロリとした黄身が溢れてきました。

「ああ、これ!」

口に入れるめ以子。

「う~ん、これ、私が思ってたスコッチエッグです!

黄身とソースとお肉が一体になって … 」


もう止まりません、食べる食べる …

「スコッチエッグとは … 」

「?」


… … … … …

「スコッチエッグとは、簡単に言うと、ゆで卵をひき肉で包んで揚げたもんやそうです。

肉を薄くして、揚げ時間を短くすれば、卵の半熟は維持できますが、それでは肉のうまみが物足りなくなる」


悠太郎の話にうなずくめ以子。

「そこで、僕たちが着目したのが … 熱伝導、比熱です」

「あっ、試験に出てきた!」

「そうです。

大将に聞いたところ、経験値だが、卵より肉の方が熱が伝わりやすい … ということは、同じ厚さがあったとしても、肉だけで構成されている部分は、火の通りが早いはず」


悠太郎はノートに図を描きながらめ以子に説明してくれました。

「つまり、全体を楕円形にして、卵のこちら側に肉を固めてしまえば、肉の総量を保ちつつも卵の半熟を維持できる揚げ時間で済むんやないか … そう考えた訳です」

それが成功して出来上がったのが、このスコッチエッグでした。

皿を手に取って、じっと眺めているめ以子。

「料理は化学です。

熱伝導も比熱も、あなたの人生と決して無関係やないと思います。

… そう思えば、少しは理科に興味も出てきませんか?」


め以子は身を乗り出して、悠太郎に尋ねました。

「それから? … もっとないんですか? そういうこと!」

笑顔のめ以子、目がキラキラと輝いていました。

… … … … …

次の朝。

糠床の前、しっかりと漬けてあったきゅうりと、これから漬けるきゅうりを手に説明する悠太郎。

「漬けると、かさが減るのは、中に含まれる水が外に出るからです」

め以子と一緒に聞いているイクとクマも大きくうなずきました。

「何故、水が外に出るかというと … これは、糠床に含まれる浸透圧ゆえなんです」

「 … 浸透圧」


… … … … …

コップに牛乳を注ぐ悠太郎。

「牛乳が何故白いか、考えたことありますか?

これは、水の中にコロイドになった粒子が浮いてるからなんです」

「待ってください、コロイドがないとただの水ってことですか?」

「そうです」


め以子は牛乳を飲み干しました。

「じゃあ、コロイドが美味しいってことですね?」

… … … … …

割烹の授業。

料理は科学と関係がある … それが分かっため以子は俄然興味が湧いて、やる気が出てきました。

「ああ、網網網!」

魚を網で焼こうとしていた桜子を見て声をあげました。

「熱くしないと、くっついちゃうよ」

「えっ?」

「魚のたんぱく質の凝固点は60度だから、それ以上の温度になっていれば、くっつかないんだって」


よく分からないけれど、感心する桜子と民子。

その様子を担任の宮本が微笑ましく見ていました。

… … … … …

卯野家の台所。

赤シソをゆでた紫のゆで汁に酢を加えるめ以子。

途端に色が赤く変わりました。

「これは、お酢の酸性に色素が反応して、赤くなったんですよね?」

め以子は、悠太郎に確認しました。

「はい、アントシアニンという色素です」

… … … … …

め以子が作った、シソのジュースを仏壇に供えるイク。

「人が変わったみたいよ、お母ちゃん」

ハツラツとしため以子のことを、トラにうれしそうに報告しました。

「でも、もともとは、ああいう子だったのよね ~ 熱くなれるものがあれば、バカみたいに突っ走れる … 」

イクが思い浮かべていたのは、病床のトラにいちごを食べさせたくて、一生懸命だった幼いめ以子の姿でした。

思い出し笑いをするイク、台所の方から、得意気なめ以子の声が聞こえてきます。

「赤シソとお酢は、美容と疲労回復にいいんですよね …

『料理は科学』ですよね!」


… … … … …

め以子は、カステラを手で割って考えています。

「カステラって、切るより割った方が美味しい気がするんですけど?」

理由を考える勇太郎。

「 … それは、おそらく舌に当たる表面積が増えるからやないでしょうか?」

包丁で切れば、切り口はまっ平ですが、手で割ればギザギザなので表面積は大きくなります。

「ああ、そうか ~ !」

め以子は、半分のカステラを悠太郎に分けました。

「お祖母ちゃん、こうやってくれたんですよ、こうやった方が美味しいからって …

すごいですよね、昔の人の知恵って ~ こんな理屈なんて知らないのに、ちゃんと理にかなったことしてるなんて」


カステラを美味しそうに頬張るめ以子の顔をじっと見ている悠太郎。

その視線に気づくめ以子。

「 … どうかしたんですか?」

… … … … …

「実は、僕はずっとあなたに言いたいことがあるんです」

思いつめたような顔でそう言いました。

「は、はい … 」

身構えるめ以子。

「実は … 僕たち、試験に出ないことばっかりやってしまってるんです」

「えっ、なっ、あっ … うっ、ううう」


慌てて教科書をめくるめ以子。

「今日ぐらい普通にやりましょか?

基本的なことは、できてると思いますから、すんなりといくと思いますし … 」

「お願いします!」


… … … … …

そして、再試験の日がやってきました。

再試験を受ける生徒はめ以子ひとりです。

目の前に答案用紙が置かれました。

「 … はじめてください」

桜子と民子が心配そうに廊下から様子を窺がっています。

少し離れた場所から宮本も見ていました。

一問、一問、問題を解いていくめ以子 …

… … … … …

制限時間が来て、答案用紙を引き上げ、教壇で採点を始める教師。

後はもう祈るだけ … 目を閉じるめ以子。

「卯野さん」

採点が終わったようです。

教師の元へ行き … 下を向いたままで答案用紙を受け取りました。

恐る恐る顔を上げて、答案用紙を見つめました。

… … … … …

卯野家。

廊下を行ったり来たりしている悠太郎。

大学にいても、め以子の試験の結果が気になって、何もしても捗らずに、すでに帰宅していたのです。

微かに誰かが走ってくる足音が聞こえてきました。

め以子でした。

悠太郎は慌てて部屋に入って戸を締めます。

庭に走り込んできため以子、縁側から家に上がると、いきなり悠太郎の部屋の戸を開きました。

「西門さん!」

慌てていたために上下逆さまに持っていた本を持ち直して、落ち着きを装う悠太郎。

「普通、開ける前に声をかけませんかね?」

そんなことには構わずに、悠太郎の目の前に答案用紙をつきつけました。

… 点数は56点。

なんとか、落第は免れたのです。

… … … … …

安堵のため息をついた悠太郎。

「 … 楽勝でした」

得意顔で笑っため以子。

「これは、ギリギリ言うんです」

「まあ、そういう言い方もありますけど … 」

「けど、何ですか? … まったく」


悠太郎は、め以子の手から答案用紙を取るとよくよく見直しました。

「まずは、『よくやった』とか言いませんかね?」

口を尖らせました。

「普通、まずは、『ありがとう』と言いませんかね?」

そう言いながら、立ち上がってまた考えるポーズの悠太郎。

… … … … …

じっくりと答案用紙を見つめたまま動かない悠太郎。

「あの、それ返してもらっていいですか?」

黙ったままです。

「もういいじゃないですか、試験終わったし … 返してください」

「ああ!」


何か思いついて、突然声を上げました。

「そうかそうか ~ ああ、スッキリしました」

そう言いながら、め以子に答案用紙を返しました。

「 … 何がですか?」

め以子にはさっぱり分かりません。

「字が … 」

「字?」


答案用紙を見直しため以子。

「大きい字と小さい字が入り乱れてるんです」

「ホントだ」


確かに言う通りでした。

「で、大きい字の所は全部○で、小さい字の所は全部×なんです」

「ホントだ ~

何でだろう? 私 … 」

「多分、自信がある所は知らんうちに堂々と書いて、ない所はしょぼしょぼ書いたんと違います?」


正にその通りでした。

納得して微笑むめ以子に悠太郎は言いました。

「もう何処が分からないか、ちゃんと分かってるやないですか … 」

悠太郎の顔を見上げため以子。

「 … よかったですね」

とても穏やかで優しい顔に見えました。

… … … … …

「あっ、あ、あ … いや、い … えっと、えっ … 」

急にドキドキして、息苦しくなってきました。

自分でも顔が赤くなってくるのが分かって、思わず答案用紙で隠しました。

「ごちそうさまでした!」

そう叫ぶと、答案用紙を悠太郎に渡して廊下を走って行ってしまいました。

「何、食うたんやろ? … 」

… … … … …

居間の方まで逃げてきため以子、まだドキドキは収まっていません。

「空気 … 空気、入れよう … 」

台所に行き、糠床をかき混ぜ始めました。

< ああ、いいね ~ 息が出来るよ …

まあ、あんたは息出来てないみたいだけどね ~ 息が出来ないのは、走って来たからじゃないよ。

それはね、め以子 … >

め以子は悠太郎の顔を思い浮かべて、胸を押さえました。

< … あんたの人生が走り出したってことなんだよ >

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2013年10月11日 (金) | 編集 |
第11話

「これって、付け文よね? そうよね?」

学校に着いため以子は、袖に入っていた手紙を桜子と民子に見せました。

「どう見てもそうでしょう?」

うなずく桜子。

「いたずらじゃないわよね … 桜子、まさかこれ入れたり?」

「してない、してない!」

「じゃあ … 」

「め以子、おめでとう!」


桜子がめ以子に抱きつきました。

「 … こういうの危なくない?」

手放しで喜びあうふたりに用心深い民子が水を差しました。

「だって、この人が良からぬこと考えてたりしたら … ねえ?」

「大丈夫じゃない? 相源寺って割とひと目もあるでしょ?」


反対に楽観的な桜子。

「 … 行かない方がいいかな?」

め以子に少し迷いが生じました。

「じゃあ、私たちもついて行けばいいじゃない?」

「本当?!」


… … … … …

帝国大学、建築学科教室。

窓辺に立ち、得意の考えるポーズを取っている悠太郎。

「おい、陽ささないんだけど」

机で本を読んでいた近藤が注文をつけました。

背の高い悠太郎に窓辺に立たれたら、陰になってせっかくの陽が部屋に入って来ないのです。

「比熱ってどうやったら理解できるんやろ?」

しかし、悠太郎の口から出たのはそんな言葉でした。

「そんなの分からない奴いるのか?」

「下宿先の子に勉強教えとったら、何処が分からへんか分からへんって … もうやめるって」


昨晩のめ以子の件をまだ気にしていたようです。

「まあ、本人がそう言うなら、それでいいんじゃないか?

別に比熱分からなくても死ぬ訳じゃあるまいし … 」


身も蓋もないような、近藤の答えでした。

「だって、興味が持てなきゃ、勉強なんか苦痛なだけじゃないか … 別に無理やりすることじゃないだろ?」

「興味?!」


… … … … …

悠太郎が卯野家に戻ると、厨房では相変わらず大五達が新作料理に手を焼いている最中でした。

開店の準備をしているイクに悠太郎は尋ねました。

「あの ~ め以子さんの興味があることって何ですか?」

「えっ、な、何で?」


唐突にそんなことを聞かれて、イクは戸惑いました。

まさか、この人、め以子のことが …

「学問の為です」

「学問?」


当てが外れました。

「飼育記録でもつけるの?」

「いえ、生物学の専攻ではありませんから」


従業員のタマの冗談にも、マジに答えた悠太郎です。

「でもあれよね ~ 女将さん。

お譲さんの興味って言ったら、食べることだけよね?」

「 … 食べること?」

「そう、あの子の興味は食べること … たったひとつの取柄は『舌』」


… … … … …

「こらっ! 誰が食っていいって言ったんだよ?! この似非文士が!」

勝手に入り込んでいた室井幸斎が、断りもなく試作の料理をつまんだのを咎める山本の声が聞こえてきて … 悠太郎は厨房を覗き込みました。

「何、作ってはるんですか?」

「ああ、悠さん … スコッチエッグってやつなんだけどな ~ 」


揚げ物の中に入れた卵の黄身をトロッとした状態で出したいのですが … 揚げると、どうしても中のゆで卵に火が通り過ぎてしまうのでした。

考え込む悠太郎。

… … … … …

放課後、め以子は指定された時刻に相源寺の境内で『付け文の君』を待っていました。

少し離れた木の陰からその様子を見守る桜子と民子。

「相当、緊張してるね」

桜子の言葉にうなずいた民子。

「 … 大丈夫かな?」

突然、め以子が腰を屈めました。

どうやら、背を低く見せようと思ってとった行動のようです。

しばらくそのままでいましたが、顔をゆがめて元の姿勢に戻ってしまいました。

「あきらめた?」

ふたりが笑っていると、ひとりの学生がめ以子に近づいていくのが見えました。

「来た!」

… … … … …

小柄なその学生は、め以子の前に立ってお辞儀をしました。

同じように頭を下げた、め以子。

「何処か、座れるところにでも … 」

「 … はい」


め以子は、自分の肩ぐらいの身長の男の後に従います。

その後をつける桜子と民子。

学生とめ以子は、甘味処に入って行きました。

… … … … …

しばらくすると、学生がひとり、め以子を残して店を出て帰って行きました。

急いで、桜子と民子が店に入ると … め以子はぼんやりと座ったままでした。

「彼、照れて、先帰っちゃったの?」

民子が尋ねましたが、何も答えないめ以子。

「どうしたの? 手でも握られた?」

め以子の前の席に腰かけながら桜子が聞きました。

「あ … 」

そう言ったまま、うつむいてしまっため以子。

「どうしたの?」

突然、顔をあげて言いました。

「民ちゃん、今の人どうだった?」

「えっ?」

「民ちゃんに以心伝心の人がいるかどうか … 聞きたかったみたい」


驚くふたり。

「まだるっこいことしないで、自分で聞けって話よね ~ 男のくせに …

ああ、でもよかったよ ~ 私の方もあの人は、ちょっと … だったし」


目に涙をいっぱい溜めながら、何とか明るく話そうとしているのが分かりました。

「だって、並ぶと、つり合い取れないんだもん!

あの人、私には … つんつるてんよ!」

「つんつるてん、か?」


笑顔で応えた桜子でしたが、民子は複雑な顔をしています。

「そうそう ~ 私には、つんつるてん … 」

… … … … …

足どりも重く、落ち込んだめ以子が帰宅すると、店の方から歓声が聞こえてきました。

そして、拍手 …

厨房の様子を窺がうめ以子。

大五や山本、照生の他に、室井や悠太郎までコック服を着ています。

「あっ、め以ちゃん、ちょっとこっち来なよ! 面白いよ ~ 」

室井が手招きしましたが、め以子は断りました。

「いい … 取り込み中みたいだし」

「そんなこと言わねえでよ、いい勉強になんぞ!」


大五が何かおかしなことを言いました。

「 … 勉強?」

「そうそう ~ そんなデカい背じゃ、嫁の貰い手もないかも知れないんだから、せめて料理の腕ぐらい磨いて … 」


照生が悪気はなく言った冗談でしたが、今のめ以子にはキツ過ぎるひと言でした。

「 … おい、どうした? め以子」

大粒の涙が頬をつたっています。

「好きでなったんじゃないから … 好きでこんなに大きくなったんじゃないから」

慌てふためる男たち。

「お、お前、腹減ってるのか? 飯食いな、飯」

め以子の涙の理由 … 空腹しか思いつかない大五でした。

戸を閉めて立ち去るめ以子。

「俺、そんなにひでえこと言っちゃったかな?」

困惑する照生。

考えるポーズの悠太郎 …

… … … … …

め以子が居間に下りると、悠太郎が読書をしていました。

一瞬、躊躇しましたが、そのまま無視して通り過ぎようとすると … 悠太郎が声を掛けてきました。

「食事は、店終わったら作ってほしいって頼んどきました」

「西門さんは?」

「手間になるんで、僕も一緒にとお願いしました」

「 … 西門さんは、悲しい思いしたことないですか?」


どうしてだろう、悠太郎に尋ねていました。

「何がですか?」

「背 … すごく大きいじゃないですか?」


本に目を落としたままの悠太郎。

「男の人はないですよね … 」

ため息のめ以子 …

おもむろに話し出した悠太郎。

「 … 歩いてるだけで、珍しいもの見るような目で見られたりはしますよ。

『通天閣』って、陰で言われたり」


ドキッ

「普通に話してるのに、『偉そうや』って言われたり …

でも、僕は女の人やないですから、あなたほど傷つくことは多くはないと思います」


… … … … …

「男はやはり、見上げてほしいという人も多いですから … あなたにとっては、腹立たしいことも多いと思います」

初めて悠太郎の話にうなずくことができため以子でした。

「まあ、腹立たしいとまでは行かないですけど … 」

少し気をよくしため以子は食卓の上に置いてある煎餅に手が伸びました。

「けど …

あなたほど、そのことを都合よく使うことも多くはないと思います」


手が止まっため以子。

「都合 … よく?」

… この人は何が言いたいんだろう?

「あなたは自分が異性に好まれないのを、すべて背のせいにしてませんか?」

「だって、背が高いとそれだけで敬遠されるし!」

「そのこと自体は否定しません。

けど、それだけが理由やと思うのが、間違いや言うてるんです。

要はあなたが … 魅力がないんです!」


本から目を話して、め以子の顔を見ながらきっぱり言いました。

… … … … …

「ど、ど、どうして、あなたにそこまで言われなきゃならないんですか?

あなたに私の、な、な、何が分かるって言うんですか?!」


怒りのあまり、言葉が上手く出てきません。

「大してわかりませんけど …

僕はあなたのええところ、今のところ、ひとっつも見つけられていません」


悠太郎は、め以子の欠点をひとつずつ挙げ始めました。

「学問をしたくても、できない人間が一杯いる世の中で、あなたは学校に通わせてもろうているのに『勉強は嫁に行くから、どうでもええ』と言う。

『嫁に行く』というクセに、しみ抜きに対する知識ひとつない。

女性として見られたいと願ってる割に、女性らしい気遣いは何ひとつない。

周囲の迷惑を顧みず、がなり立て、クリームを飛ばしたのにも気づかない …

何の努力もせず、誰のことも好きになってないのに、好かれることばかりを願ってる。

… そういう、何の魅力もない人間にしか見れません」


決して間違ってはいないので、反論の余地がないのは確かでした。

だけど、昨日今日知り合った人に何故そこまで言われなきゃいけないのか …

「たとえば、100圓やるから、あなたに恋文を書けと言われても書けませんね。

まあ、僕に文才がないからかもしれませんが … 」


… … … … …

「勉強するわよ!」

勢いよく立ち上がっため以子 … これだけひどいことを面と向かって言われたのに、もう泣くことはしませんでした。

「勉強してやるわよ!

教師になれるぐらいしてやるわよ!

… それでいいんでしょ?」


部屋から教科書を持ってくると、悠太郎の読んでいる本の上に叩きつけました。

「 … 勉強、教えてください」

「少し後にしましょう … 空腹で気力が出ません」


涼しい顔でまた読書を始めました。

「先生、私、今からやりたいんですけど」

「 … じゃあ、自習で」


何だか、焦らしているような …

… … … … …

時計は、午後10時を過ぎました。

空腹に耐えきれないめ以子が煎餅に手を伸ばそうとした時、悠太郎がふたり分の食事を運んできました。

お盆の上には、スコッチエッグがふた皿乗っています。

「ああ、食べられるんですか?」

「食べる以外に何か用途があるんですか?」


ああ言えば、こう言う …

「まずは、いただきましょう」

いつの間にか、悠太郎のペースでことが運んでいるような気がするめ以子ですが … 取りあえず、腹が減っては何とやら ~

「 … いただきます」

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2013年10月10日 (木) | 編集 |
第10話

昨日のことがあって …

朝からむしゃくしゃしているめ以子 … 袖の中に隠してきた駄菓子をむしゃむしゃと食べながら、大股でどんどん道を歩いて行きます。

「まあ!」

「迫力だね ~ 」


ただでさえ、背が高く目立つめ以子、通りすがりの人が振り向いて見ています。

め以子がにらみつけると、そそくさと行ってしまいました。

「おはよう」

桜子と民子です。

「ねえねえ、どうだった? 帝大の学生さん、昨日来たんでしょ?」

桜子が待ち構えていたように尋ねてきました。

め以子は袖に手を入れて、むしゃむしゃ食べ続けています。

「やけ食い?」

… … … … …

「えっ、来たの『通天閣』だったの?」

「うん」

「それは幻滅の悲哀だわ」

「もう ~ 幻滅!

それだけじゃなくてね … あの人、私のこと、これっぽっちも覚えてなかったの」

「ああ、それはもう、とんがらがっちゃうわ」

「分かる? 分かってくれる?」


うなずいた桜子にめ以子は抱きつきました。

「心の友よ ~ 」

「ほら、教室行こう … 遅れるよ」


遅刻してはいけないと、民子が促しました。

「もっと、それだけじゃなくてね … 」

教室に向かいながらも、め以子は話し続けました。

… … … … …

悠太郎は、朝起きると、上半身裸になって庭で竹刀の素振りを始めたのです。

「青瓢箪じゃなかったんですね ~ 」

「ホント … 」

それをウットリと見つめるクマとイク。

… … … … …

いつもより早く朝の配達から戻ってきた照生。

「西門さんが手伝ってくれてさ …

本当に助かりましたよ ~ またこれからもよろしくお願いします」

快くうなずく悠太郎。

… … … … …

「こんなにきれいに食うやつはそうそうにいねえや」

悠太郎が食べ終えた焼き魚の皿を見て、大五が感心しています。

「ここの料理が美味しいからですよ」

「いやいやいや、悠さんの親御さんがしっかりしてなさるんだよ」

「いえいえ、この台が広くて食べやすいからですよ … ごちそうさまでした」

家族の誰もが、悠太郎に好感を抱き、悠太郎自身も卯野家を気に入ったようでした。

しかし、め以子はそんなやり取りを苦々しく眺めていたのです。

… … … … …

「何か嫌らしい … 嫌らしい『通天閣』」

「でしょ?

ホントはあんな嫌味ストなのに、皆ころ~っとダマされちゃってさ」


教室につきましたが、め以子の怒りは収まりません。

「もう出てかないかな?」

そう言いながら、また駄菓子を口に放り込みました。

「め以子 … 」

急に目くばせをする桜子、それに気づかずに話を続けるめ以子。

「大きいし、下駄なんてこ~んなよ、こんな」

身振り手振りで説明します。

「め以子、うしろ … 」

「邪魔だったらありゃしない!」


袖に手を入れたところで、後ろから肩を叩かれました。

振り向いて、息を飲むめ以子 … 担任の宮本でした。

「口の中のものを出しなさい」

素知らぬ顔で飲みこんだ後、口を開けて宮本に見せました。

「 … その袖の中には何が?」

「お裁縫道具です」


口から出まかせを言いました。

「まあ、そうですか ~ 」

宮本はめ以子の袖を取って逆さに振りました。

床に落ちた紙袋からこぼれて散らばった、あられや金平糖。

… 罰として、校庭の草むしりをさせられため以子でした。

… … … … …

次の授業は理科、先日行われた筆記試験が返されています。

「私、呪いでもかけられてるんじゃないかしら? … 」

先生から名前を呼ばれましたが、上の空のめ以子。

「卯野め以子さん!」

もう一度呼ばれて、ようやく気づき、先生の元へ。

答案用紙を受け取り、目を見開きました。

驚くなかれ … 点数は、1点。

「 … 放課後、職員室まで来てください」

… … … … …

職員室から、うなだれて出てきため以子。

すかさず桜子と民子がよってきました。

「 … で、どうだった?」

「来週の再試験で、50点以上取らないと … 落第だって」


め以子は手で顔を覆いました。

「大丈夫? め以ちゃん?」

「 … 想像できない。

50点以上取れてる自分が想像できない ~ 」


… … … … …

帰り道、橋の上で欄干に寄りかかって、1点の答案用紙を見つめるめ以子。

「ここまで当たらないとは … 」

自分が情けなくなってきました。

通行人と触れ合った拍子に風に飛ばされた答案用紙。

「あっ」

飛んでいく答案用紙を下駄で押さえて拾ってくれたのは … 偶然通りかかった悠太郎でした。

「1点 … 」

しっかり見られてしまいました。

「返してください!」

慌てて奪い返しため以子に悠太郎は笑いながら言いました。

「よう取れましたね、1点やなんて」

「えっ?」

「僕も子供の頃やったんですよ ~

100点取るより、1点取る方が難しいんちゃうやろかって。

他は全部間違えて、1つだけ正解書いて … 配点読み違えて、3点になってしまいましたけど」


今にも泣きそうな顔でにらんでいるめ以子に気づいた悠太郎。

「 … もしかして、ワザとやないんですか?」

言い返すことができずに、ソッポを向きました。

「はあ … 」

そして、ため息をついてその場に座り込んでしまいました。

「そんなに悔しいんですか?」

「困ってるんです。

来週の再試験で50点取らないと … 落第なんです」


水面を見つめながら打ち明けました。

「僕でよかったら、勉強見ましょうか?」

思いもよらぬ申し出でした。

「えっ、いいんですか?」

「まあ、50点ぐらいなら、そんなに手間もかからないと思うんで … 」


… … … … …

一方、大五達は例の新作料理 … どうしたら、卵を半熟にできるのかで、試行錯誤を続けていました。

「お父ちゃん、賄いちょうだい」

悠太郎に勉強を見てもらう前に夕食を済ませるためにめ以子が居間に賄いを運んできました。

「親には言わないでくださいよ」

「何をですか?」

「再試験のこと … バレなきゃバレないで済むことですから」

「50点取らんと、いずれバレますけど」


ズバリ言われました。

「そのくらい分かってます!」

… … … … …

2階のめ以子の部屋、机に向かってふたりは並んで座っています。

何やら、そわそわと落ち着かないめ以子でした。

「あの ~ 」

「はいっ!」


話しかけられて、何故かビクつくめ以子。

「試験の範囲の確認なんですが … ここまでですか?」

教科書を広げて近づく悠太郎、咄嗟にめ以子は離れました。

「どうかしましたか?」

不審に思って尋ねた悠太郎。

「男女7歳にして、席を同じうにせず … って」

「 … 男女?」


悠太郎は立ち上がって、また顎に手を当てて考え始めました。

「男女?」

「 … もういいです。

女性としては、見られていないっていうことですよね?」


どうせ、会ったことさえ忘れられていた程度の存在ですから … しかし、悠太郎は否定しました。

「いえ、僕はあなたに男性として見られてると意識して置いた方が、ええいうことでしょうか?」

それも困る … 身震いしため以子は机に戻りました。

「お願いします」

「はいっ … じゃあまず、熱伝導と比熱のところからやりましょう」


… … … … …

イクが台所に入ってくると、2階からめ以子の教科書を読む声が聞こえてきました。

「へえ ~ 珍しいこともあるもんだね ~ 」

どういう風の吹き回しか、こんなことは滅多にないことです。

思わず吹き出してしまいました。

… … … … …

『膨張する割合が最も大なるは、下記のうちどれか?』

悠太郎が作った試験問題です。

気体、液体、固体の3つの中から選択するのですが … さっぱり分かりません。

「気体?」

指差して、悠太郎の顔を窺がいました。

「液体?」

また、顔を見ました。

「固体 … 」

表情を変えず、黙ったままの悠太郎。

「 … これかな?」

「僕の顔には答えは書いてありませんよ」


… … … … …

答え合わせの結果、半分はできていました。

「本当?」

思わず顔がほころぶめ以子ですが …

「でも、勘でやりましたね?」

「 … そんなことないですよ」


声が裏返りました。

「本当に理解できてるならば、問1が解けて、問2が解けないなんてことは、あり得ないんです」

完全に見透かされています。

「それじゃあ、何にもならないじゃないですか?

分からないなら、分からないって言ってくれないと … 」


少し強い口調になった悠太郎です。

目が泳ぐめ以子。

「どこが分かりませんか?」

気を取り直して尋ねた悠太郎。

「どこが分からないかが … 分からない」

「 … すいません、それどういうことですか?」


め以子は、反対に質問してきた悠太郎の顔を見ました。

「分からないとこが分からんやなんて … 」

悠太郎は困惑していました。

しかし、め以子にはまるで『どうして分からないのか?』と責められたように聞こえたのです。

め以子は教科書を閉じて言いました。

「や~めたっ!」

… … … … …

「やめやめ … もうやめます、私!」

「えっ?」

「熱伝導とか比熱とか、私の人生に関係ないし!

落第してもしなくても、大して変わらないもの … どうせ、どの道、お嫁に行くだけだし!」


せっかく勉強を見てくれている悠太郎に少し後ろめたさを感じながらも、め以子は続けました。

「学校なんて、箔つけるために行ってるようなもんだし、どうだっていいのよ、別に!」

ほとんど八つ当たりです。

「 … そうですか」

… … … … …

台所で糠床をかき混ぜるめ以子。

ムキになっているようで、かき混ぜ方も乱暴です。

< 痛っ、痛っ … もうちょっと、優しくやっとくれ >

ふと手を止めました。

< そうだよね ~ 勉強ができる人には、出来ない人の気持ちは分かんないよね ~

でも、あの人、一生懸命教えてくれたよね? >

「面倒くさい … 」

< えっ、面倒くさい? >

「もう、本当に … 結婚したい」

< 少しばかりご説明いたしますと …

この当時、結婚が決まってしまえば、女学校を中退することは珍しいことではなく、またそれは羨ましがられることであったのでございます >

… … … … …

< ご縁があれば、再試験がどうであれ、体裁よく学業からおさらば出来る … め以子は情けないとしか言いようのない夢想に取りつかれておったのでございます >

そうなると、道で行き交う若い男性のことをついつい目で追ってしまうめ以子でした。

「め以子 ~ 」

桜子でした。

「どう? 勉強進んでる?」

「 … 聞かないでよ ~ 」


手で顔を覆った拍子に袖の中に何か入っていることに気づきました。

「ん??」

ひとえに結ばれた紙、手紙のようです。

解いてみると …

『お話したいことがあります … 本日、午後4時に相源寺境内にて、あなた様をお待ち申し上げております』

それは、紛れもなく『付け文』でした。

< ですが、そのバカ娘に … 本当に付け文をするバカが現れたのです >

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2013年10月09日 (水) | 編集 |
第9話

近藤の後から入って来たのは、あの『通天閣』でした。

「あっ、あ … 」

驚いて言葉が出て来ない、め以子。

『通天閣』と目が合いましたが、向こうは表情ひとつ変えずにいます。

厨房から出てきた大五とイクに向かって近藤は頭を下げました。

「はじめまして、近藤と申します。

… あの、実は大変勝手なんですが、僕の代わりにこいつが御厄介になることはできませんでしょうか?」


二度驚く、め以子。

「あ、うちは構いませんけど … 」

「でも、なんで急に?」


近藤は、事情を説明しました。

元々、『通天閣』は近藤と同じところに世話になっていたのですが、今回彼が移ることになった家に先祖伝来の由緒ある欄間があり、背の高い『通天閣』は頭がぶつかってしまうのです。

「こいつの頭がぶつかりそうになる度に、御主人が心配でたまらない、心臓が止まりそうになると … 」

「まあ、卒倒されちゃ、たまんねえよな」


うなずく大五とイク。

「そういうことなんで、こちらのおうちさえよろしければ … 」

「よろしくないです!」


思わず、『通天閣』の言葉を遮っため以子に注目する一同。

「うちも欄間大事ですから … 」

… … … … …

しかし、話はまとまり、近藤ではなく『通天閣』が卯野家に下宿することに決まってしまいました。

「なんで『通天閣』なのよ … 」

へそを曲げていため以子ですが、イクに呼ばれて仕方なく、家族と並んで座りました。

大五が『通天閣』にひとりひとり紹介しているところです。

「 … で、これが長女のめ以子」

不機嫌な顔で頭を下げため以子。

「よろしくお願いします」

「今は、高等女学校の5年生です」


『通天閣』の本名は『西門悠太郎』といいました。

「帝大では、何を?」

イクが尋ねました。

「建築の勉強をしてます。

鉄筋コンクリート造の建築物の設計を学んでます。

簡単に言うと …

鉄筋を組んで、その周りに木の型枠を作って、中にコンクリートを流し込んで固める … つまり、人口の石造りの建築なんですが、これが木造、レンガ造りなどに比べて、耐震性、耐火性において、ずば抜けて優れているんです。

鉄筋コンクリートが更に素晴らしいのは … 」


なかなか終わらない悠太郎の説明、専門的な話に大五やイクはただ感心してうなずいていますが、め以子は飽きていました。

「いやあ、それでわざわざ帝大へ?」

「はい」

「ああ、立派、立派立派」


膝を崩した大五、ざっくばらんな口調になって聞きました。

「飯どうだ? 大阪とはずいぶん違うだろう?」

「違いますけど … 僕は、何食べても美味しいと思う性質で」

「よかったね ~ あんたと同じ … ちょっと、何怒ってんの?」


不機嫌面のめ以子に気づいたイク。

「別に … 」

「やだ、照れてんの?」

「照れてないですよ! そんなんじゃありません!」


そんなめ以子を不思議そうに見ている悠太郎。

「デカい図体して、子供っぽいですが … 悪い子じゃないんで、よろしくお願いします」

イクの言葉にめ以子は口を尖らせました。

… … … … …

め以子は、イクに悠太郎のことを家の中を案内するように言いつけられました。

「ここからがお店になってて、井戸は使うなら、そっちの角にありますから」

「ようでけた配置ですね ~ 」


母屋と店の間の通路から、居間に連れて行きました。

「食事はここで皆で食べます。

朝は大体6時くらいです … 夜は、お店から賄いをもらって、あとはクマさんが少し作っておいてくれたりもします。

遅くなる時は、言ってくだされば、取っておきますんで … 」


腕を組んでちゃぶ台を見ている悠太郎。

「 … 何か?」

「いや、銘々膳やないんですか?」

「ああ … うち、忙しいんで、手間になるって言って、お祖母ちゃん … 祖母が皆でわっと食べるようにしたんです」

「へえ ~ 楽しそうですね」


この時、悠太郎が初めて笑顔を見せました。

「そうですかね … 」

首をかしげため以子。

… … … … …

「 … で、ここがあなたの部屋になります」

「陽当りもよいし、ええお部屋ですね」

「亡くなった祖母が使っていたお部屋なんで」


め以子が掃除をして、きれいに磨き上げた部屋でした。

「ああ、そうなんですか? … それは勿体ない。

ありがとうございます」


悠太郎は、恐縮して丁寧に頭を下げました。

め以子は、そんな悠太郎のカフェであった時とは番う、礼儀正しく誠実な態度に却って腹が立ってきました。

… … … … …

荷物をほどいた悠太郎は、中から茶碗や弁当箱を取り出しました。

「あの、これ渡してもろうて、よろしいですか?」

部屋の入り口で黙って悠太郎を見ていため以子ですが、我慢できずに口にしました。

「いい加減、変なお芝居やめてもらえます?」

「芝居?」

「今日、初めて会ったみたいな … 」


きょとんとしている悠太郎。 

「こないだ会ったじゃないですか? … 銀座のカフェで」

「 … カフェ?」


考える悠太郎 … め以子の顔を見つめました。

「ああ! ああ ~ でっかい声のスプーン振り回してた人やないですか?」

ようやく思い出したようです。

「 … 忘れてたんですか?」

「いや ~ どうでもええことは頭が忘れてしまうみたいで」

「どうでもいい?」


悠太郎の言い草にカチンときため以子。

「どうでもええでしょ?

あなたがスプーン振り回してたことなんて」

「それは、ちょっと失礼じゃないですか?

あった人のこと覚えてないとか … そういうのって … 」

「 … 失礼?」


悠太郎は立ち上がり、顎に手を当てて考え始めました。

「失礼 … 失礼 … 」

「だから何なのよ? そのポーズ」


たしかカフェでも同じようなポーズで考え事をしていました。

「じゃあ、あなたは、失態を延々と覚えられてた方がええいうことですか?」

「え?」

「学校帰りにカフェに寄り、聞くに堪えないような会話を大声でまき散らし、挙句の果てにスプーン振り回し、人に生クリームを飛ばしつけたことを僕の記憶に焼きつけてもらいたい。

… そういうことですか?」


ものすごく悪いことをしていたような言われようでした。

「そうじゃないですけど!」

「じゃあ、覚えてる必要もないやないですか」


理屈では、め以子の負けでした。

「そうですね … けど … 」

何か納得がいきません。

「けど、何ですか?」

「でも … 」


真剣な顔をして聞いてくる悠太郎を見ていたら、反論するのも面倒くさくなりました。

「だったら、今日が初対面ということで、問題ないですよね!

失礼しました!」


茶碗や弁当箱を手にすると、障子を勢いよく閉めて、部屋を後にしました。

… … … … …

母屋から出てきため以子。

「テル、賄いちょうだい!」

店の裏口で素材の用意をしている照生に向かって、まるで怒っているような口調で言いました。

「何、怒ってるの?」

「いいからちょうだい!」

「遅くなるけど、今日は皆一緒に食おうって、父ちゃん言ってたよ。

… 西門さんの歓迎もかねて」

「じゃあ、私の分だけちょうだい!

私は一緒に食べないから … 宿題があるから!」


… … … … …

ひとり、賄いの夕食を終えため以子は、2階にある自分の部屋にこもっていました。

1階では悠太郎の歓迎会を兼ねた夕食が始まったようです。

気になっため以子は戸を開けて、下の様子を窺がいました。

美味しそうな匂いが漂ってきます。

… … … … …

一同は、店で料理を囲んでいました。

「おう、どうなんだよ?

美味いのか、美味くねえのか、俺のスープ鍋はどうなんだよ?」


黙々と食べているだけの悠太郎に大五が尋ねました。

すでアルコールがまわっているようで、顔は真っ赤です。

悠太郎は改めて、手にしたスープをひと口ふた口と味わいました。

「大将 … 最高です!」

途端ににやける大五。

「 … だろう?

8時間かけて、出汁を取るんだよ、このスープは!

これさえありゃよ、残り物の野菜やら何やら、何でも美味くなるんだ」


自慢げに語りました。

「これ、どうやって作るんですか?」

「えっ、興味あんの?」

「興味深いですね … 何をどうすれば、こうなるのか」


顔を見合わせたイクと照生。

「そういうこと聞くと、めちゃめちゃ長いですよ」

「余計なこと言ってんじゃねえよ、おめえは!

おめえもよく聞いとけ!」


悠太郎に耳打ちした照生が大五にどやされました。

「いいか?

このスープはな、火加減が大事なんだ … 時間をかけてゆっくりと煮込んでいくんだ … 」


… … … … …

延々と続いている大五の話。

飲物を取りに厨房に入ったイクが、裏口から覗いていため以子に気づきました。

「宿題終わったかい?」

「まだ … 」

「食べてかないかい? 皆、盛り上がってるよ」

「 … いい、糠床の世話に来ただけだから」


そう言うと、母屋に戻ってしまいました。

… … … … …

台所で糠床をかき混ぜるめ以子、やはり少し店の方が気になります。

ふと、棚の上にいちごジャムがあるのを見つけました。

居間に持って行き、パンにつけて食べるめ以子。

「ふふふ … 」

その味に幼い頃のことを思い出しました。

『ジャム返せ!』

大事にしていたジャムをため池に落とされて、取っ組み合いのケンカになったこと。

雨の中、いちごを探してきてくれた … 源太のことでした。

「 … 源ちゃん、どうしてるのかな?」

もう何年も会っていません。

… … … … …

め以子は庭に置いた、いちごの鉢植えを見に行きました。

「今年もダメだったか … 」

実は、ひとつも生っていません。

「いちごですよね? それ」

いつの間にか後ろに立っていた悠太郎でした。

「難しいんでしょ? いちごって実らせるの」

「そうですね … 」


素っ気なく答えため以子。

「趣味なんですか?」

「違います … いちごは特別なんです。

ちょっと、思い出があって … 」

「思い出?」

「幼なじみの …

幼なじみって言っても、もうとうに引っ越しちゃったんですけど。

… お互い何処かであっても、もう分からないんだろうな ~ 」


… … … … …

「そんなこと、ないんちゃいます?」

め以子には気休めに聞こえました。

「西門さんは、こないだのことだって覚えてなかったじゃないですか?」

「でも、その方は絶対覚えてると思いますよ」

「そうですかね?」


何故、そんな風に言い切れるの? … そう思っため以子。
 
「忘れられへんでしょ?

そんな、『ジャム返せ』って、飛び掛かってきた女の子のこと」

「?!」

「一緒にお供えのいちご盗んで、お尻ぶたれたりしたんでしょ?」

「 … 何で、そんなこと知ってるんですか?」


… … … … …

「お父ちゃん!」

もの凄い剣幕で店に入ってきため以子。

「8歳の時はお堀の鯉だよ!

あいつ、鯉捕まえようとして来てよ ~ 」


大五はお銚子片手に手酌しながら、め以子の昔話をしています。

「大将、もう聞き飽きた、それ … 」

タマが言うように、大五は酒が進むといつもめ以子の幼い頃の話を面白おかしく話すのでした。

「お父ちゃん、余計なこと言わないで!

子供の頃のことベラベラしゃべんないで! 酒の肴にしないでって言ってるの!」


肩を揺すられて大五は、め以子の顔を見上げました。

「あれっ? お前、今日何捕まえて来たの?」

「はあ?」

「そろそろよ ~ 食いもんじゃなくて、いい男のひとりでも捕まえて来いっつうんだよ!」

「こい泥棒、こいはこいでも、こい違いってね ~ 」


タマが鯉と恋をかけて川柳を詠みました。

「ああ ~ 上手いね、タマちゃん!」

「なるほどね ~ 」


大笑いする一同。

「何? … な、何? 何なのよ、もう!」

< 空回りを続ける … め以子17歳の春でございました >

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2013年10月08日 (火) | 編集 |
第8話

「今日のご飯は何かな ~ ♪ 」

鼻歌まじりに帰宅しため以子、大五や山本、照生たち一同の視線が自分に集まっていることを感じました。

「 … な、何?!」

ちょっと待てと、手で合図した大五は、料理を一皿、め以子の前のテーブルに置きました。

「これ、食ってみろ!」

皿の上には、テニスボールほどの大きさの揚げ物が乗っています。

「あ、もしかしてこれ、新しいお料理?」

「うん、ちょっと食ってみてくれよ」


試作の料理を、め以子に食べてもらって意見を聞こうと待っていた訳です。

食い意地の張った … いや、め以子の意見はこういう時に結構参考になるのです。

テーブルについて、フォークとナイフを手にした、め以子。

め以子を囲んで、注目する一同。

まず、揚げ物を半分に割ると、中にひき肉に包まれたゆで卵が入っていました。

それを口に運ぶ、め以子。

「 … どうだ?」

め以子は眉間にしわを寄せて味わっています。

「うん … 美味しいんだけど … ちょっと、もそもそしてる?」

少し首をかしげました。

ため息をついた一同。

「口当たりだよな?」

大五も同じことを感じていたようです。

「うん、もっとこの黄身とかが、トロ~ンとしてたら … たまらないんだけどなあ」

「そうなんだよな ~ 口当たりの優雅さっていうのが、うちの身上だもんな」


しかし、卵は温度の調節がとても難しいのです。

「そうなんですよ、卵はね ~ いろいろとね ~ 」

「何知ったかぶってんだよ … 大体、お前なんで来てんだよ?!」


最近、開明軒に入り浸っている自称文士の室井幸斎に山本が突っかかりました。

「やだな ~ お客じゃないですか」

「客っていうのはな、金払うやつのことを言うんだよ! ねえ、おタマちゃん」

「そうだよ、あんた … いつ出るの? 小説」


従業員のタマにもツッコまれ、今書いているという小説を取り出しました。

「でもさ、きっとできるよ、お父ちゃんなら」

め以子はそう信じています。

… … … … …

そこへ、出かけていたイクが戻ってきました。

「あっ、め以子、それ食べたら、お祖母ちゃんのお部屋だったところ片付けて」

「ん?」

「家に帝大の学生さんが来るんだよ」

「 … 帝大?」


め以子は、カフェで会った男 … 『通天閣』をイメージして、渋い表情になりました。

「それがさ、社長のお隣のお宅が書生さん何人かおいてたらしいんだけど … 仕事で引っ越すことになって、引き取り先を探してるって話でさ。

家でもひとり面倒見てくれないかって、相談されてたんだよ」

「でも、いいんですか? … 一応、年頃の御嬢さんもいらっしゃるのに」


心配した山本がイクに耳打ちしました。

「そこが狙い目じゃないか ~ なんせ、帝大だよ、帝大 … 末は博士か大臣かだよ」

イクと山本は大五の顔を窺がいました。

腕を組んで難しい顔をしています。

「 … それはそれで心配かい?」

イクが尋ねると、大五は立ち上がって … イクの手を握りました。

「がんばってくれよ、母ちゃん」

「あいよ!」


ほくそ笑むふたり。

… … … … …

「お、お母ちゃん … 来るのって、どんな人?」

「何だい、気になるのかい?」


イクは懐から1枚の写真を取り出しました。

「社長に借りてきてもらったんだよ、名前と顔ぐらい知りたいじゃないか」

手際のいいイクでした。

その写真を見て、驚くめ以子 … 何人かの学生の中に紛れもなく『通天閣』の姿がありました。

「 … どの人?」

恐る恐るイクに尋ねため以子。

「え~とね … この人」

イクが指でさしたのは、『通天閣』 … の隣に立っている学生でした。

「近藤さんっていうんだって」

め以子は胸をなでおろしました。

… … … … …

その夜、台所で糠床をかきまわしながら、め以子は写真の近藤の顔を思い出していました。

自然とにやけてきます。

< そうだね ~ 近藤さん、なかなか男前だったね >

め以子は何を思ったのか、手に取った糠を自分の頬に塗りたくり始めました。

< 何やってんだい?

あっ、ああ ~ 糠で磨いてんのかい? >

… … … … …

次の日、割烹室での実習授業中。

「つるっつるは、つるっつるだけど … 何か臭いよ?

うん、新しい米糠でやったら?」


め以子の頬に鼻を近づけて桜子は言いました。

「ちょっと、面倒くさくて … 」

「でも、何で急に美容に興味が出たの?」


不思議そうに尋ねた民子、め以子と違って決して実習の手は休めません。

「 … 実はさ、家に学生さんが下宿することになって」

め以子は、声を潜めてふたりに話しました。

「え~っ?! … 何処の?」

「帝大 … 」

「まさか、『通天閣』だったりして … 」

「違う、違う! 近藤さんっていう、きりっとした学生さん」


他人事ながらはしゃぐ桜子。

「あ、でも … その人、割に小柄みたいなんだよね」

「気にし過ぎ … それに一緒に暮らすってなったら、いいところ一杯見せられるんじゃない?

見かけだけじゃなくて」

「そう? ~

そうよね … 中身とか性格とか、そういうところが大事なのよね ~ 」


民子の言葉に気をよくしため以子です。

「その通りです」

肩を叩かれて、め以子が振り向くと、そこには割烹の教師、宮本が立っていました。

「大切なのは、女性としての嗜みですよ ~ つまみ食いに夢中になって、鍋を焦がさないような」

火にかけたままの鍋に目をやって、慌てているめ以子に、宮本は追い打ちをかけました。

「糠床の匂いも気をつけた方が、よろしいかと思いますよ」

「あ、はい … 」


… … … … …

帰宅しため以子は、俄然張り切り出して、学生が入る部屋の掃除を始めました。

布団を干して、畳みをあげて叩き、部屋にハタキをかけ、文机を磨き、電気の傘を拭き … これでもう迎え入れ体制は万全でした。

… … … … …

「いよいよ今日よね ~ 未来の旦那様が来るの」

弁当の時間、桜子がからかい気味に言いました。

しかし、強張った顔のめ以子 … 柄にもなく緊張しているようです。

「やめてよ ~ からかうの」

「でも、お部屋はきれいにしたんでしょ?」

「部屋はね …

でも、私が … こういう時って何着たらいいのかな?」

「洋装は? 素敵なの作ったって言ってたじゃない?」

「 … いきなり、おめかしし過ぎじゃない?」


民子は、普段の銘仙でいいのではと答えました。

「地味すぎない?」

「じゃあ、振袖」

「お見合いじゃあるまいし!」


意外と難しいものでした。

「こういう時の服装こそ、お作法で教えてほしいわよね。

お辞儀とか挨拶ばっかりじゃなくてさ」

「そんなにこだわらなくてもいいんじゃない? 普段通りで」

「 … そりゃあ、民ちゃんはそれでいいよね ~ できるだけ、民ちゃんみたいに、小さく可愛らしく見せたいっていうか … 」


その時、ふいに桜子が口走りました。

「あっ、確か背を低くする方法 … 載ってたような … 」

「何それ??」


… … … … …

放課後、甘味処。

「ここ、ここ!」

お汁粉を食べているめ以子の前に雑誌を広げて置いた桜子。

それは女学生向け雑誌の相談コーナーでした。

『 … 背が高いせいで殿方から、まったく見向きもされません。付け文はおろか、お見合いの話もありません。

このままでは将来が不安です。

背が低くなる方法をご教授ください』

まるで自分の境遇そのものでした。

「 … この人、私?」

「答えは?」


『大変、お悩みのようですね。

ですが、残念ながら、背を低くする方法はありません』

め以子は雑誌を置いて、天を仰ぎました。

しかし、回答にはまだ続きがありました。

『私どもとしては、背が高いことを魅力的に見せることをお勧めします。

洋装などなさってはいかがでしょう? 素敵だと思います。

もっと自分に自信を持って … 』

桜子が読み上げるのを聞いていた、め以子。

「そんな答えで答えって言うな!!」

思わず、声をあげ、テーブルを叩いて立ち上がっていました。

「はしたないわね ~ 」

他のテーブルの客たちが眉をひそめてこちらを見ています。

「すいません … 」

すごすごと座り直した、め以子でした。

… … … … …

「でも、これ一理あるよ ~ 最後まで読んでなかったでしょ?」

その続きを読み始めた民子。

『ですが、もし小さく可愛らしく、野に咲く花のような風情をお望みなら、立ち振る舞いを研究なさってはいかがでしょう?

小さくとも、堂々としている人は大きく見えますし、大きくとも、つつましいという印象を与える方もいらっしゃるのではないでしょうか?』

民子はニッコリとめ以子を見ました。

「でも、私 … 別に立ち振る舞いは普通でしょ?」

「普通じゃないわよ! 声、デカすぎ、弁当もデカすぎ」

「そうかな? ~ 」


速攻で桜子に否定されましたが、本人は納得できないようです。

「あっ、め以子、民子のマネをすればいいのよ!」

「えっ?」


桜子の言葉に民子本人も驚いています。

「えっ、でも … マネってどうすれば?」

「私のマネなんか、や、やめた方がいいわよ … 絶対、かっこよくないわよ!」


必死になって断る民子にめ以子は言いました。

「今、謙遜はいいから」

「 … それに、そんなに何か違う?」


皆それぞれ、我が身のことになると自覚がないようです。

「あっ、歩幅は違うかも … 」

… … … … …

店を出て、確認すると … め以子の2歩を民子は3歩で歩いていることが分かりました。

「私、大股だったんだ ~ 全然気がつかなかった」

背の高さ、足の長さも大分違うからでしょう。

「 … 私と一緒に歩くの大変じゃなかった?」

「いい運動になるから」


そんなことは気にしていないように、民子は朗らかに笑っています。

「 … 可愛い」

同性の自分からみても、そんな民子は愛おしく思えました。

「あとは、これよ ~ この奥ゆかしい受け答え」

桜子の言葉にうなずいた、め以子。

「私、がんばるっ!

じゃなくて … 頑張ります」

しおらしく言い直しため以子でした。

… … … … …

身をかがめて小股で歩く、め以子。

店の中を窺がいながらドアをやさしく開けました。

「ただいま戻りました ~ 」

そんなめ以子の仕草をトイレを我慢しているのかと勘違いしたイク。

「あ、ついでにご不浄の紙足しといて」

「違うよ!

じゃなくて … 違いましてよ」


カバンをそっと置くと、ゆっくりとイスに腰かけました。

「お母様、今日いらっしゃる方は、もういらっしゃって?」

「はあ?」


聞き直したイク。

「今日いらっしゃる方は、もういらっしゃって?」

思わず吹き出すイクとタマ。

「何で笑うの?」

「だって、あんたさっきから ~ 」

「歌舞伎の女形みたいですよ」


ふたりに大笑いされため以子は頬を膨らませています。

そんなめ以子にイクは言いました。

「まあまあ、気持ちは分かるけどさ ~

一緒に暮らすわけだし、気取れば気取るだけ、あとが恥ずかしいよ」

「別にそんなんじゃないけど … 」


… … … … …

その時、ドアの開く音がしました。

緊張して、振り向くめ以子 … 下駄をはいている足元が見えました。

立ち上がって、イクの後ろに隠れため以子。

そして、そっと入口の方を覗くと … 写真で見た、近藤が立っていました。

め以子は微笑みました。

しかし … 

「あっ!」

近藤の後ろから『通天閣』が入って来たのです。

「あっ、あ … 」

… 次の言葉が出てこない、め以子でした。

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2013年10月07日 (月) | 編集 |
ごちそうさん 卯野め以子

第7話

< 自分が食べることばっかりだった孫のめ以子が、私にいちごをご馳走してくれてから、早10年が経ちました。

そして、め以子は、花の女学生になっておりました。

私は、この世から糠床に住みかを替え、この家もまた随分変わりました。

大五は、フランス料理の香りを残しつつも、親しみやすい洋食を次々と生み出し、開明軒は中々の繁盛ぶりを見せ、照生は店に修行に入り、お得意様へ朝のスープの配達などをしております。

イクは、前以上に店の切り盛りに忙しく、家のことは女中のクマを頼りにしておりました >

… … … … …

「まったくいくつになったら、まともに起きられるんだい? 女学校も5年だろ?」

忙しい朝、ようやく起きてきため以子をイクは小言で迎えました。

「起きてはいたよ、いろいろやることあるの」

鏡を前にして、中々思うように髪型が決まらなかったのです。

「どうでもいいから、納豆と漬物やっとくれ!」

… … … … …

「う、う~ん … クマさん、このアジの焼き加減最高!」

「まあ、お嬢さんの食べっぷりは胸がすくようでございますね」


アジの干物をおかずに山盛りのご飯を頬張るめ以子、クマが笑いながら言いました。

背はすくすく伸びましたが、これだけは幼い頃のままでした。

「 … どこまで変わんないつもりなのかね ~ 」

あきれ顔のイクの言葉など、食事に夢中のめ以子の耳には入ってきません。

「納豆、最高!」

… … … … …

「お嬢さんは、どうして台所にお立ちにならないんですかね ~ これだけ食べることがお好きなんだから、自然と作る方にも興味がわくもんじゃあ?」

め以子が学校に出かけた後、イクと並んで洗い物をしながら、クマが首をひねりました。

「前に聞いたらさ … 」

『だって、何もしなくても、美味しいもんいっぱい出てくるんだもん。

私が余計なことしない方がいいじゃない?』

「でも、それじゃあ、お嫁に行っても困りますよね ~ 」

「そう言ったらさ … 」


『どうせ、そのうちやらなきゃならないんだから … 何も今やることないじゃない?』

「頼みの綱と思って、女学校に放り込んだんだけど … 」

「 … だけど?」

「あてが外れたね ~ 」


… … … … …

「ご機嫌いかが、め以子様?」

女学校への通学路、振り向くと同級生の堀之端桜子と野川民子でした。

「この柔らかい春の陽のようでございましてよ、桜子様、民子様」

わざとらしい、お嬢様言葉。

顔を見合わせて吹き出した3人。

「何見てたの?」

日傘を差した桜子が尋ねました。

「あっ、あっちにね、新しいおしるこ屋ができたの … 行きた~い」

「はいはい、そのうちね」


いつものことかと、軽くあしらわれました。

… … … … …

授業中。

「かりのこ。 削り氷にあまづら入れて、新しき金鋺に入れたる … 」

民子が音読する清少納言の枕草子を退屈そうに、ぼんやりと聞いているめ以子。

「水晶の数珠。藤の花。梅の花に雪のふりかかりたる。いみじう、うつくしきちごの、いちごなど食ひたる … 」

「えっ?!」


思わず、声をあげてしまっため以子です。

「 … どうしたんですか?」

不審な顔をする教師にめ以子は質問しました。

「この頃から、いちごってあったんですか?」

… … … … …

「木いちごなら、木いちごって書いといてって話よね … 清少納言もさ」

皆に笑われため以子、弁当を食べながら口を尖らせました。

そう言いながらも、向かいに座っている桜子の弁当箱に目をつけました。

「桜子様、その淡い桃色したそれ、おひとついただけて?」

「 … よろしくてよ」


桜子が寄こしたサンドウィッチを、すかさず口に入れるめ以子。

「う~ん、美味しい!

いいな、桜子は … 料理人がいる家なんて、理想的よね。

嫁ぐならそういうところよね!」


桜子は、実業家の娘で教室の中でもひときわ華やかなお嬢様です。

「め以子の家だって、コックさんだらけじゃない?」

「あの人たちは、家のために料理してくれる訳じゃないもん!」

「大変なんでしょうね? お料理屋さんって」


民子は、学業優秀、控え目で楚々として常識をわきまえた女性です。

家庭環境も性格も違う3人ですが、いつも行動を共にする仲の良い親友でした。

「そうだ … 今日、帰りに銀座のカフェで、お茶をいただきません?」

「かふぇ?」


桜子のお誘いを大きな声で聞き返しため以子、民子が慌ててたしなめました。

「お兄様のお仲間のお父様が経営しているところで、私も何回か連れてってもらって … よかったら、いらっしゃいって言われたの、ご馳走してあげるからって」

… … … … …

放課後、3人はその店を訪れました。

洋風の店内には、外国の音楽が流れ、コーヒーを飲んで歓談している洋服姿の男女、給仕をするのは着物にエプロン姿のウエイトレス … め以子が初めて目にする景色でした。

「素敵 ~ 別世界みたい ~ 」

「隅行こう、隅 … バレたら退学だから」


ウットリとしているめ以子の手を引いて、民子は店の隅の席に連れて行きました。

席に着くなり、メニューを手にしため以子。

「何、食べようかな? … 何食べても、無料なんだよね」

「一応、常識考えよう」


釘を刺した民子、め以子はうなずいていますが伝わったかどうか …

桜子は、入り口付近に座っていた男性と話をしています。

民子は気になっているようですが、め以子はそんなことは気にかけずに、早々に注文をしました。

「すいません、プディングとサンデーと … あと、サンドウィッチもください」

… … … … …

め以子の前に並んだ注文した品々。

プディングの乗った皿を手にすると左右に揺すって言いました。

「う~ん、震えておるのか、おぬし? 愛い奴よの ~ 」

「やめてよ、その芝居がかった言い方 … もう、恥ずかしい」


トラ譲りのめ以子の口上を桜子が注意しましたが、平気な顔をして続けています。

「寂しがるでない、おぬしの相手も、すぐにしてやるからの」

パフェに向かってそう言いながら、プディングをスプーンで口に運びました。

「う~ん、とろける … 私がとろける … 次はそなたの相手をしてやろうかの ~ 」

… … … … …

「さっき、随分親しそうに話してたけど … 」

民子が桜子に尋ねました。

「 … 実はね、交際を申し込まれたの」

「?!」

「お兄様のお友達で、よく本貸してくださってて … ある時、挟まってた栞がね、お手紙になってたの」

「素敵!」

「それでね、私はその裏にお返事書いて返して、それでね … 」


恋の話に盛り上がるふたりのことを、サンデーのクリームを口の周りにつけたまま、ボ~っと見ているめ以子。

「いいな ~ 桜子 … 何、その小説みたいな話?」

意外な顔をしてめ以子を見返した桜子。

「でも、め以子はどうでもいいでしょ? こんなこと」

「よくないよ! 何言ってんの?」

「ひょっとして、そういうこと興味あるの? め以ちゃん」


これまた意外という顔で民子が聞きました。

「 … あるよ」

「ええっ!」


声を合わせて驚いたふたり。

「気づかなかった ~ 」

「そうだったのね ~ 」


大笑いするふたり。

… … … … …

さすがのめ以子も少しショックです。

「ぽつねん … 」

「だって、め以ちゃんは食べ物にしか興味ないのかなって … 」


口の周りのクリームを拭いながら、め以子は言いました。

「だって、結婚の話とかしてたじゃない」

「いつ?」

「料理人がいる家に嫁ぎたいな ~ とか」

「それは、美味しいご飯を食べたいって話でしょ?」

「違うわよ、私だって、以心伝心 … 自由結婚、目指してるの!」


声を荒げて、立ち上がっため以子。

「赤い糸で繋がった人と恋に落ちて、突っ走りたいの!」

「 … そうだったの?」


宥めて席に着かせた桜子。

「でも、その人がすっごく貧乏で、まともにご飯食べられそうにもなかったらどうすんの?」

「そうそう、その時、愛を貫けるの? … め以子は、ご飯よりも男の人を愛すことができるの?」


め以子に取って、究極の質問でした。

プディングとサンデーを見つめ、口を尖らせながら考え込んでいます。

そんなめ以子を見て、また笑い出したふたり。

「とにかく興味はあるの! 機会がないの! この背のせいだと思うんだけど …

この背だとさ、やっぱり男の人、見下ろすことになっちゃうじゃない?

それがなきゃ、もっとこういろいろ … それらしいこと、あると思うの!」


興奮して勢いよく振り上げたスプーンに残っていたクリームの塊が飛んで … 後ろの席に座っている学生の肩にくっついてしまいました。

… … … … …

「私だって、桜子みたいに … ん?」

スプーンに乗せたはずのクリームがなくなっています。

とりあえず、舐めてはみました。

「あの … 大丈夫ですか?」

向かいの学生は民子に尋ねられると、少し振り向いて学生服の肩にべったりとついたクリームを手拭で拭き取りました。

そして、何事もなかったかのように読書に戻ります。

「あ … すみません!」

め以子は、ようやく自分が飛ばしたクリームが男の学生服を汚してしまったことに気づきました。

「大丈夫ですか?」

立ち上がり、ちょうどウエイトレスが運んでいた水をもらって、自分のハンカチを浸しました。

「あの … よろしいですから、ほんまに」

「ほんとすいません … 拭いてもいいですか?」

「 … 結構です。余計なお世話なんで」


男は、め以子のことをまともに見ようともせずに断りました。

… … … … …

「余計なお世話?」

「シミを取るゆうのが、物質を物質で包み込んで、取り除くという行為です」

「 … 物質?」


男の言いたいことがめ以子にはよく分かりません。

「生クリームでできるシミの正体は油です。

油と水は、『水と油』というぐらい仲が悪い … つまり、溶け合わん」

「そうですよね … 」


意味も理解できずにうなずいため以子、顔を見ればそれは分かりました。

「あなたがしているこの行為は、なんの効果もなく、むしろシミをすり込む効果しかない」

「へ ~ 」

「ほな、そういうことなんで … 」


それだけ言うと、男は本に目を戻しました。

… … … … …

「帝大か … 」

男の学生服の襟についているバッジを見て桜子がつぶやきました。

「う~ん … でも、でも、効果ありますよ!」

「どんな?」


め以子の言葉に男は顔をあげて聞きました。

この時、図らずも初めてお互いの顔を見合わせたふたり。

「悪いことしたなとか、伝わるでしょ?」

「悪いと思ってる? … 」


男は、顎に手を当てて考えながら立ち上がりました。

目を見張って言葉を失っため以子。

人一倍背が高いめ以子が見上げるほど、男は身長がありました。

「悪いと思っている、悪いと思っている … ああ、じゃあ」

何か思いついたようです。

「何でしょう?」

「少し声を押さえていただけるか、席を変わっていただけると、僕としては助かりますね」


暗にうるさいと言われたようなものでした。

男はイスに座ってまた本を読みだしました、

… … … … …

店を出てきた3人、今頃になって腹が立ってきため以子でした。

「あんな意地の悪いこと言わなくたっていいわよね?」

うなずく桜子。

「頭いいの通り越して、不気味よ、不気味!」

「あんな人、なんでカフェにいるのよ?!」

「 … 西の人だったね」


民子のひとことで、め以子は思いつきました。

「あ、あれなんだっけ?

大阪にあるっていう、大きな塔みたいな … 」

「通天閣?」

「そう、通天閣!」

「いい! 通天閣だ … あやつめ、通天閣だ!」


め以子に同意した桜子です。

「おのれ、通天閣!」

憎々しげに吐き捨てると、一刀両断にしため以子でした。

… … … … …

「今日のご飯は何かな ~ ♪ 」

鼻歌まじりに帰宅しため以子。

店のドアを開けると … 大五や山本、照生たち一同が首をそろえて待っていました。

自分に視線が集まっていることを感じため以子。

「 … な、何?!」

… 何か叱られるようなことしたっけ?

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2013年10月06日 (日) | 編集 |
まずは、先週のおさらいを …



さて、次週の「ごちそうさん」は?

大正11(1922)年。卯野め以子()は17歳。食べることへの情熱とおいしい物への興味は増すばかり。祖母・トラ(吉行和子)は亡くなったが、大五(原田泰造)とイク(財前直見)の洋食屋は順調で、め以子はのんきな女学生生活を送っているが、背が並外れて高いことが唯一の悩み。

ある日カフェで友達との話に夢中になり、生クリームを大学生の服に飛ばしてしまう。拭おうとして断られて言い合いになり、理屈で言い負かされため以子は、長身で大阪弁の大学生を「通天閣」と呼び留飲を下げる。

卯野家では帝大生を下宿させることに。期待しため以子だが、現れたのはあの通天閣・西門悠太郎(東出昌大)だった。カフェの一件を忘れている悠太郎に、なぜか傷つくめ以子。

そんな折、理科の試験で1点を取ってしまい、悠太郎から勉強を教わることに。全くついていけず、どうせ嫁に行く身と開き直るが、努力をしない無為な生活を、悠太郎に痛烈な言葉で指摘される。

一方、悠太郎はめ以子に興味を持たせようとスコッチエッグを例に、料理に科学が応用されていることを示す。がぜんやる気が出ため以子はなんとか落第を免れるが、喜んでくれた悠太郎の笑顔に思いがけず胸の高鳴りを感じて戸惑う。

ごちそうさん 公式サイト、YAHOO!テレビガイド他を参照)


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2013年10月05日 (土) | 編集 |
第6話

見知らぬ男と手をつないで歩く、め以子。

赤嶺さんの家は、すぐ近くのはずなのに、それどころか、辺りに家など見当たらなくなってきました。

「ねえ、ここお家ないよ」

「 … そうだね」


心細くなってきた、め以子が男に尋ねると、そう答えただけで、どんどん人気のない道を歩いて行きます。

「赤嶺さんって、お家だよ」

「もうちょっとだから」


和尚の言葉を思い出した、め以子。

『人さらいが出とるそうだからな』

め以子は、男の顔を見ました。

男は微笑みましたが、め以子にはその顔が不気味に見えたのです。

思わず振りほどいた手を男はまたつかみ直しました。

「離して!」

しっかりと握った男の手に咬みついた、め以子。

「あっ、痛てっ!」

手を放したスキに逃げ出しました。

「あ、待って、待って!」

男は、慌てて追いかけてきます。

一生懸命に逃げる、め以子。

坂道を駆け上がると、レンガ造りの立派な建物が見えて来て … ちょうど、白衣を着た大柄な男が出てきました。

「助けて!」

その男は、手に鎌を持っています。

「その子を捕まえろ!」

追い着いた男が、その大柄な男に向かって言いました。

… えっ、ふたりは仲間?

… … … … …

「亡くなった赤嶺先生は、いちごの研究をしてたんだよ」

そこは、大学の実験農場でした。

男たちは、赤嶺という人の教え子たちだったのです。

「これが、いちご?」

畑を見ながら、め以子は尋ねました。

ハンチング帽の男から、め以子が病気の祖母にいちごを食べさせたいという話を聞いた大柄な男が、残念そうに言いました。

「 … あげたいんだけど、もう生る時期過ぎちゃってるんだよな ~ 」

「探そう、どっかに残ってるかも知れないし」


ハンチングの言葉に、め以子は微笑んで、畑に入りました。

葉をかき分けて、いちごを探す3人。

「僕たちの夢でもあるからね … 限られた、ご大家の人たちだけじゃなくて、誰でもいつでも、いちごを食べられるようにしたいっていうのが。

お祖母ちゃんにも、ぜひ食べてもらいたいよ」


葉の中で、め以子の手が何か塊りに触れました。

「あった ~ 」

そこに、3粒にいちごが残っていました。

… … … … …

開明軒。

「め以ちゃん、ちょっと遅すぎやしませんか?」

時計を見ながら山本が心配そうに、イクに言いました。

もう午後4時を回っています。

「その辺で油売ってんだろ?」

「でも、おやつ食べに帰って来てませんよ … おかしくないですか?」

「確かにね … 」


顔を見合わせたイクと大五。

… … … … …

その頃、め以子は譲ってもらった、いちごの入った袋を手に家路を急いでいました。

走り回ったり、畑でいちごを探したりで、さすがに少し疲れてきました。

「ふ ~ 」

石段に腰を下ろして、ひとやすみ。

… お腹も空いてきました。

「ひと粒だけ … 」

そうつぶやくと、袋からいちごをひとつ取り出しました。

「いただきま~す」

… … … … …

人さらいのこともあるので、心配になったイク。

め以子を捜して寺までやって来ると、源太たちが遊んでいました。

「源ちゃん、め以子見なかった?」

「あいつ、帰ってないの?」


随分と前に店の前で、め以子に会っていた源太は驚いています。

「ああ、ありがとう … でも、大丈夫だから心配しないで」

「おばちゃん、俺も捜す!」


… … … … …

「 … こっちだったよね ~ 」

実験農場までは、男から逃げるために無我夢中だったので、周りの景色など覚えるヒマもありませんでした。

め以子が少し道に迷っていると、まずいことににわか雨が降ってきました。

… … … … …

「もうちょっと、もうちょっと、もうちょっと … 」

自分に言い聞かせながら歩く、め以子、髪も着物もずぶ濡れです。

「あっ!」

つまずいて転んだ拍子に、いちごが入った紙袋を水路に落としてしまいました。

慌てて、水路に入って袋を拾いましたが …

「えっ?!」

袋の中は空っぽ … 急いで、手探りで水の中を探しました。

「!!」

何かを踏んづけた感触 … 

「うそっ?!」

いちごを踏み潰してしまいました。

… … … … …

「いた ~ !!」

め以子を見つけた、源太。

駆け寄る、イク。

「あんた、何やってるの?! ほれ、さっさと上がんな!」

水路の中、手のひらの上の潰れたいちごを見つめたまま動かない、め以子。

「何やってるの? さっさと上がんなさいって!」

「 … いちご、落としちゃって」

「えっ、いちご?」

「お祖母ちゃん、いちご食べたがってたから … 」


イクは、め以子が今まで何をやっていたのか、理解しました。

「分かった … 分かったから、上がりな」

それでも、まだ水路に落としたいちごを探そうとする、め以子。

「でも、お祖母ちゃん、いちごなら … 」

「いい加減にしなさい!」


め以子の頬を叩いた、イク。

「あんたが病気になったらどうすんだよ?

そのことで、一番悲しむのはお祖母ちゃんなんだよ!」


イクは、め以子を引っ張り上げると抱きしめました。

め以子の手には潰れたいちご、それをじっと見つめている源太でした。

… … … … …

家に戻った、め以子は、トラの部屋の前まで来て、障子に手を掛けました。

しかし、どうしても開けることができずに、その場を離れました。

台所にしょんぼりと座って、ため息をついた、め以子。

「 … め以子」

後ろから抱きしめたのは、トラでした。

「おばあちゃん … 」

「いちご探しに行ってくれたんだってね … うれしいよ、ありがとう」

「でも、落としちゃった …

お祖母ちゃんは、いっつもおやつくれるのに、美味しい糠漬けくれるのに … 私は、ジャムもあげなくて、いちごも … 」


涙があふれてきて言葉にならなくなってしまいました。

「ご馳走さま … 」

め以子の耳元でささやいた、トラ。

「えっ?」

トラは、め以子と向き合うと、もう一度言いました。

「ご馳走さま、め以子 …

昔はね、食事を用意するのは今よりもっと大変で、お客さんに食事を出すために、馬を馳せて走り回って、野菜や魚を集めさせたんだって。

そこまでしてくれたことの感謝を『ご馳走さま』って言葉に込めたんだよ。

だから、『ご馳走さま』は、『馳せ走らせる』って書くんだよ」


トラは、め以子の手を取ると、手のひらに指で『ご馳走さま』とゆっくりと一字一字書いてみせました。

「だからね、ご馳走さま、め以子」

「ご馳走できてないよ … 」

「こんなに走り回ってくれたんだもん、十分ご馳走さまだよ。

お祖母ちゃんね、もう十分お腹いっぱいだよ」

「私、1個食べちゃった ~ 食べなければ、ちゃんともって来られたのに … 」


自分自身に悔しくて、涙が止まりません。

… … … … …

「め以子 ~ 」

バタバタと足音がして、ずぶ濡れ、泥だらけの源太が上がって来ました。

笑顔で、め以子の前に差し出した手のひらには …

ひと粒の真っ赤ないちごが乗っかっていました。

目を丸くする、め以子。

あれから、雨の中ずっと、水路の中を探してくれていたのです。

源太は、め以子の手を取ると、いちごを手渡しました。

「ふふ、じゃあな!」

さっさと帰って行く源太の後を追う、め以子。

「ありがとう、源ちゃん!」

振り向きもせずに駆けて行った後ろ姿に礼を言いました。

… … … … …

め以子は、きれいな水でいちごを洗うと、トラに差し出しました。

「おうおう、頬を真っ赤に染めおって、何を怒っておるのか? そなたは … 」

トラのおどけた口調に笑う、め以子。

「なになに、近こう寄れ … ほれほれ、もっと近こう寄れ」

め以子はトラの口にいちごを近づけて … 入れました。

いちごを味わうように食べるトラ。

「美味しい? お祖母ちゃん」

「 … ご馳走さま、め以子」

「うんっ!」


め以子はうれしくて、トラに抱きつきました。


卯野め以子、6歳の頃の出来事です …

… … … … …

< それから、赤ナスご飯とオムレツは、のちに『オムレットライス』という名前になりまして …

開明軒のオムレットライスと大層評判になりました >

… … … … …

< やがて、私は浮世からお暇をいただきました …

今は、糠床に住みかを替え、この台所の隅から、人知れずこの家を見守っている次第でございます >

… … … … …

大正11(1922)年春。

< め以子はその後、すくすくと育ち … すっかり大きくなりました >

三つ編みに袴、女学生姿の、め以子。

仏壇のトラに手を合わせた後、陰膳に供えた小さなオムレットライスを手に取りました。

「じゃあ、いただきます」

ひと口でペロリと食べてしまいました。

「う ~~ ん!」

美味しさに唸る仕草は幼い頃の、め以子でした。

< 立ち振る舞いは、変わらぬまま … >

急に背が伸びため以子は、鴨居におでこをぶつけることもしばしば …

< 大きく、大きくなってしまったのでございます >

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2013年10月04日 (金) | 編集 |
第5話

「脈も乱れがちだし、心臓も弱っているようですな」

倒れたトラを往診した医師は、大五とイクにそう告げました。

「あの、お母ちゃんは?」

「今すぐどうということはないと思いますが … 余り無理はさせないで下さい」


… … … … …

安静に眠っているトラの枕元には、め以子と照生が心配そうに座っていました。

「あんたたち、もう寝なさい」

戻ってきたイクに尋ねる、め以子。

「お母ちゃん、お祖母ちゃんは病気なの?」

「歳も歳だからね ~ それなりにガタは出てくるさ。

大丈夫だよ、無理させなければって、お医者様も言ってたし …

いい子にして、お祖母ちゃんに余計な世話かけないってことだよ」


め以子はトラを見つめながら、うなずきました。

… … … … …

次の日の朝。

「おはよう!」

「まあ、今日は早いね ~ 」


いつも自分では起きてはこない寝坊助の、め以子が早起きして降りて来たので、イクは目を丸くしました。

「何かすることってある? 手伝えること」

「ああ ~ じゃあ、ご飯をお櫃に移してくれる?」

「うん!」


トラに世話をかけないように、自分が家の手伝いをしようと考えた、め以子でした。

… … … … …

学校に行くと、源太が声を掛けてきました。

「よお、め以子!」

「おはようございます!」

「昨日のこと、父ちゃんに言ったら、今度店に行くって」

「よろしくお願いします!」


… いつもと調子が違いました。

「お前、なんか変じゃねえか?」

「 … お祖母ちゃん、倒れちゃったの」


驚く、源太。

「だから、私ががんばるのです!」

… … … … …

学校が終わると、家まで走って帰りました。

「ただいま ~ 

何か、何かやること … 」


家に着く早々、息を切らしながら、イクに尋ねる、め以子。

「じゃあ、これ畳んでくれる?」

イクは、今取り込んでいた洗濯物を渡しました。

… … … … …

洗濯物を、め以子に任せたイクは、廊下の雑巾がけを始めました。

「それ、私やる!」

「洗濯物は?」

「もうできた!」


め以子は、イクから雑巾を奪いました。

… … … … …

洗濯物に目をやるイク … きちんと畳めていません。

ため息をついて、畳み直すイク。

「お母ちゃん、もう終わった!」

「もう?」


いくら何でも早すぎます。

「私、水汲みに行って来るね」

そう言うや否や、部屋を飛び出して行きました。

「水汲みはもういいよ!」

め以子を追って、廊下に出たイクは、危うくすべって転ぶところでした。

きちんと絞っていない雑巾で拭いたので、廊下が水浸しです。

… … … … …

「気持ちはありがたいんだけどね … 二度手間になっちまうっていうのが … 」

厨房で困った顔で話すイクに大五は言いました。

「この機に教えればいいじゃねえかよ?」

「今それどころじゃないだろ?」


その時、外で水がこぼれる音がしました。

そして、泣き声 …

汲んだ水を運ぶのを手伝わせていた、弟の照生が転んでしまったのです。

「薬箱どこ?」

「あ、もういいから ~ 」


自分がやると言って聞かない、め以子。

「じゃあ、おやつ買って来てくれるかい?」

トラの好きそうな、おやつをと言われて、め以子は勇んで出かけて行きました。

… … … … …

「お祖母ちゃん、おやつ買って来たよ」

早速、トラの部屋に届けた、め以子。

「おやまあ、脇村屋まで行ってくれたのかい? 遠いのに」

トラは布団の上に体を起こして、嬉しそうに言いました。

「お祖母ちゃん、好きでしょ?」

「うん、ありがとう」


トラは袋からあんパンを取り出すと、ちぎってひと口食べました。

「美味しい? お祖母ちゃん」

「うん、美味しいよ ~

でも、あとはふたりでおあがり」


そう言うと、ひと口食べただけのあんパンを差し出しました。

「えっ、あんパンだよ?

お祖母ちゃんの大好きな脇村屋のあんパンだよ?」

「 … そうなんだけどね」


大好物の脇村屋のあんパンも食べられない程、重い病気なのだろうか? … め以子の不安が募りました。

「お祖母ちゃん、本当に大丈夫?」

「動かないから、お腹空かないのかね ~ 」

「 … 本当にいいの?」


優しく微笑んで、うなずいたトラ。

あんパンを受け取った、め以子は、半分に割って、照生と分けて食べました。

「子供の食べてるのはいいね ~ 何だか元気が出てくるよ」

美味しそうに食べているふたりを見てそう言いました。

「お祖母ちゃん、何かして欲しいことってない?」

「じゃあ、糠漬け漬けてくれるかい?」


… … … … …

「お野菜をお塩で揉んで ~ 布巾でよく拭いてっと、糠床をひっくり返すように … 」

め以子と照生は、トラに教わった通り、糠床を手でかき混ぜた後、野菜を埋めるように入れました。

「お姉ちゃん、糠漬け美味しくできるかな?」

「お祖母ちゃんの言う通りにやったんだもん、美味しいに決まってるよ!

上手にできたら、食べてもらおうよ」


… … … … …

しかし、その出来は …

翌朝の食卓。

め以子たちの作った糠漬けを微妙な顔をして食べている大五。

当の、め以子は、あからさまに不味そうに食べています。

「いう程、不味くないよ … 初めてにしては上等、上等、ねっ?」

山本の言葉に大五も相槌を打ちました。

「でも、お祖母ちゃんのとは … 」

「ひと晩で同じ味出されたら、お祖母ちゃんだって立つ瀬ねえだろうが ~ 」

「 … 言われた通りにやったのに ~ 」


漬け上がるのを楽しみにしていたのに … 落ち込む、め以子。

… … … … …

浮かない表情のイクがトラの部屋からお盆を下げてきました。

食事にほとんど手を付けていません。

「胃に物を入れると気持ち悪くなるんだって … 」

「食わなくなると、どんどん食えなくなるって言うからな …

何かねえのか?

どんな時にでもよ、これだけは食べるってやつはよ」


考え込むイク …

… … … … …

学校から帰ってきて、店の前に座り込んだ、め以子。

自分の手のひらを鼻に当てました。

「同じなのに … 」

「何が同じなんだよ?」


通りかかった源太が尋ねました。

「手の匂い … お祖母ちゃんと … でもね、味は同じじゃない」

「味?」

「あの糠漬け、食べられないんだよな ~

お祖母ちゃん、よくならないと … 」

「よくないのか? お祖母ちゃん」

「うん」


返事した、め以子が源太の顔を見ると、小指で鼻をほじっている最中でした。

「なんか食べたいって思う物ないのか?」

「 … あった!

ありがとう、源ちゃん」


め以子は勢いよく走り出しました。

… … … … …

め以子の走ってきた先は寺でした。

『いつか、一緒に食べようよ!』

… 小指を立てた源太を見て、トラと指切りをしたことを思い出したのです。

境内で掃き掃除をしていた、和尚を見つけました。

「め以子、祖母ちゃん倒れたっていうのは本当か?」

「そのことなんだけど … あのあの、いちごって持ってきた人のお名前とか … 教えてください」

「何するつもりなんだ?」

「お祖母ちゃんにいちご食べさせたいの … このままじゃ、お祖母ちゃんの糠漬け食べられなくなっちゃう!」


祖母のことを一途に思う、め以子。

め以子の行動する原理は、必ず食が絡んでいました。

「亡くなった方は、赤嶺さんと言ってな … まだここにご家族の方が住んでおられると思う。

帝国大学の裏手の方かね ~

大人と一緒に行くんだぞ、人さらいが出とるそうだからな」


住所を書いた紙を渡しながら、和尚はそう念を押しました。

しかし、め以子はそのままひとりで探しに行ってしまいました。

… … … … …

「赤ナス、こんなに頼んだのかい?」

ボール一杯に剥いた赤ナスを見て、イクは驚くやら、あきれるやら。

「うん、これから俺は世界一の赤ナスご飯を作り出さなきゃなんねえからな」

もう笑うしかありません

そこへ、警察官が店に入って来ました。

「店に貼り紙を貼ってもらいたいんだが … 」

それは、最近出没している、人さらいの人相書きでした。

… … … … …

帝学の近くまでやって来た、め以子は分れ道で立ち止まりました。

もう近くまで来ているはずです。

和尚に書いてもらった住所を確認しました。

「お嬢ちゃん、どうかしたの?」

振り向くと、ハンチング帽をかぶった男が立っていました。

「あの ~ ここに行きたいんですけど」

め以子は近づいてきた男に、紙に書かれた住所を見せました。

「どうしてここに?」

「私のお祖母ちゃん、病気で … いちごをあげたくって」

「そうか … 」


男は少し何かを考えてから、答えました。

「じゃあ、おじちゃんが連れて行ってあげるよ」

「本当?」

「本当だよ」


笑顔になる、め以子。

男は、め以子の手を取って、歩き出しました。

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2013年10月03日 (木) | 編集 |
第4話

「新聞にある人がお父ちゃんの料理のこと書いたんだよ。それがさ、あんまりいい風には書かれてなくてね … 」

一緒におやつを食べている時、トラが大五とイクのケンカの原因となったことを話してくれました。

「私も今日、ケンカしちゃった」

「どうして?」


め以子は、いちごジャムのことで源太とケンカになってしまったことを話しました。

「う~ん、ひと口ぐらいあげりゃ、よかったじゃないか?」

「あれは、私のもんなのに、何で皆そういうこというの?!」


トラといい、先生といい、まるで自分の方が悪いように言うことが、納得いかない、め以子です。

「どうして、め以子は、ひと口もあげないんだい?」

「 … 減るから」

「そうか、減るからか … でもね、ジャムが減っても増えるものがあるんじゃないかい?」

「そんなもんなんて、ある訳ない」


トラは「あるよ」と言いましたが、め以子は譲りません。

「じゃあ、ジャムは減らなくても、代わりに減ったものはないかい?」

トラに尋ねられて、め以子は考えました。

『絶対、友達じゃねえよ!』

何故か思い浮かんだのは、そう叫んだ源太の顔でした。

「 … ない」

しかし、強情な、め以子です。

「そうかい?」

見透かしたようなトラ、しかし、それ以上は何も言いませんでした。

… … … … …

次の日、学校へ行くと、め以子の机が『ケチンボ メイコ』とチョークで落書きされていました。

落書きを手で消していると、いつも源太とつるんでいるふたりの男子が寄ってきました。

「お前んとこの店、不味いんだって?」

「えっ?」

「新聞に書いてあったんだろ?」

「あれは … 」


言葉に詰まる、め以子。

「お前の父ちゃんだもんな、客には高い金でカスしか出さねえんだろ?」

そこへ顔を出した源太、め以子の耳元で言いました。

「ケチンボ、め以子!」

ケチンボ、め以子! 欲張り親子! ケチンボ、め以子! 欲張り親子!

3人で、そう囃し立てました。

「お父ちゃんは、そんなことしないもん!

卵だって新しいのしか使わないし、お客さんに一番美味しいものをって、一生懸命、ちゃんと … お父ちゃんは …

お父ちゃんの料理は世界一なんだから!」


… … … … …

開明軒。

「おい、今日やめるか?」

気乗りしない表情で仕込みをしていた大五がおもむろにそう言うとコック帽を脱ぎ捨てました。

「予約も入ってねえし、一杯やりにでも行くか?」

返事に困っている見習いコックの山本。

「あんた、何考えてるんだい?」

咎めるイクに大五は言いました。

「これからはよ ~ 予約の分だけ、やるって形にしようかと思って ~

その方が無駄も出ねえし、うちの料理を食いたいって奴だけ、来るだろうし … 」

「 … 本気じゃないよね?」


イクは怖い顔でにらみました。

「町場にフランス料理の灯をともすのが、あんたの夢じゃなかったのかい?

それをこの程度のことで投げ出すのかい?」


黙ったままの大五。

… … … … …

そこへ、め以子が源太やその取り巻き、チヨを引き連れて帰って来ました。

何事かと尋ねるイク。

「お料理作って!」

「えっ?」

「皆、うちの店が不味いって言ってんの …

そうじゃないって、分からせて!」


イクは大五の顔を見ましたが、ソッポを向いています。

「 … 分かった。

いいよ、皆座ってな!」


… … … … …

驚いたのは厨房にいた大五です。

「母ちゃん、勘弁してくれよ!」

「どうせ、予約も入ってないんだ ~ 」

「お代は? … ガキから取れるわけないだろ?」

「 … 自信ないんだ?

子供は正直だからね、美味しいって言わす、自信がないんだろう?」


そこまで言われた大五は、コック帽をかぶって調理を始めました。

山本と顔を見合わせて、微笑むイク。

… … … … …

「ねっ、美味しいでしょ?」

パンを食べる源太たち尋ねる、め以子。

「脇村屋のあんパンの方が美味えよな ~ 」

… … … … …

牛肉の赤葡萄酒煮込み、フォアグラのフラン等、店自慢の料理を振る舞いました。

「なあ、箸ないの?」

「フォークで押さえて、ナイフで切るの!」

「ねえ、ご飯ちょうだい!」


厨房からその様子を見て、大五はため息をつきました。

「これ、腐ってる」

初めて食べた味、思ったままに答えたチヨ。

「腐ってない、腐ってない、こういう味なの!」

「でも … ごめん」

「お肉は? お肉は美味しかったでしょ?」

「牛鍋の方が美味えよ」


ガッカリした、め以子。

… … … … …

少しでも、大五が自信を取り戻せるかと思って、め以子の頼みを聞いたイクでしたが …

子供たちから「美味しい」のひと言も引き出すことができずに、逆効果だったのでしょうか?

「じゃあ、行くか?」

ひと通り食べて、席を立とうとする源太たちを、め以子は慌てて引き止めました。

「ちょっと、ちょっと待ってよ!

もっと、もっと美味しいのだすから、待って、待って!」


… … … … …

厨房に飛び込んできた、め以子。

「お父ちゃん、赤ナスご飯とおっきいオムレツ作って!」

め以子が世界一美味しいと思っているものでした。

「私のお弁当に入っているやつ」

「ありゃ、残り物で作る賄い」

「でも、お弁当交換した時、チヨちゃん、美味しいって言ってたの!

オムレツも絶対にビックリするから!」

「だめだよ … あんなの人前に出せるようなものじゃねえよ。

出せねえって言ってこい!」


… … … … …

「やだ … 」

「ああ?」

「だって、お父ちゃんの料理は世界一美味しいんだもん!

美味しいんだから … 美味しいって言わせなきゃダメだよ」


今にも泣きそうな顔でそう訴える、め以子。

「私もお父ちゃんの料理、好きだよ」

黙って聞いていたイクが、いても立ってもいられずに口を出しました。

「1週間も煮込んだドミグラスソースも、丁寧に裏ごししたホワイトソースも、トロットロのポタージュも ~

ああ、フランス料理だなあって …

でもね、だからこそ思うんだよ。

そんな、父ちゃんが作りゃ、なんだってフランス料理だよ。

なべ底のソースと冷や飯で作った赤ナスご飯は、立派なフランス料理だよ。

お父ちゃんにしか作れないフランス料理だよ」


黙って、イクの話を聞いていた大五でしたが …

「 … 飯あるか?

飯、持って来い!」


め以子とイク、ふたりの思いは大五に伝わりました。

「あいよ! … め以子も手伝って!」

「うん!」


… … … … …

「うわ ~ !」

子供たちの顔が一斉に輝きました。

「当店特製の赤ナスご飯と巨大オムレツでございます。

どうぞ召し上がれ」

「いただきま~す!」


イクの言葉を待ち切れなかったかのように、源太たちは赤ナスご飯を食べ始めました。

め以子は、イクが盛り分けたオムレツをひとりひとりに配るのを手伝っています。

「どう?」

「美味え ~ 」

「美味しい!」

「本当?」

「ホント、ホント!」


め以子は源太のことを見ました。

「おう … うん、まあまあな」

「め以ちゃんも、食べてみなよ」


チヨにそう勧められた、め以子ですが …

「私、お客さんじゃないから」

しかし、その、め以子の前にあの源太が自分の赤ナスご飯の皿を差し出しました。

イクの顔を窺がう、め以子。

「 … 特別だよ」

「うん!」


源太から皿を受け取ると、スプーンで口に運びました。

… … … … …

め以子が急に赤ナスご飯を食べていた手を止めて、オムレツを見つめました。

何を思ったか、赤ナスご飯の上にそれを乗せて、一緒にかっ込みました。

「おい、食いすぎだろ!」

め以子の食べる勢いに自分の分がなくなることを心配した源太。

「うん、う ~~~~ 」

唸り始めた、め以子。

「一緒に食べてみて、一緒に!

すっごい、すっごい美味しいから!」


それは、今でいうオムライスのようでした。

皆、め以子と同じように、オムレツを赤ナスご飯の上に乗せて食べ始めました。

「美味っ!」

「美味しい ~ 」


… … … … …

「いい顔して、食いやがんな ~ 」

「本当 … 」


そんな、子供たちを厨房から笑顔で見つめている大五とイク。

「時が経ちゃさ、ナイフとフォークも馴染むようになるよ」

「なんか … そんなこたあ、どうでもいいような気がして来たよ」


子供たちの笑顔が思い出させてくれたのです。

「俺、こういうの好きでコックになったんだよな」

微笑み、うなずいたイク。

… … … … …

大五の料理に満足して帰る皆を店の外まで見送りに出た、め以子とイク。

「また来てよ、今度はお財布持った人と」

イクが笑いながら言いました。

「美味かったです!」

「ありがとう」


この子たちのおかげで、大五にも笑顔が戻ったのです。

め以子の前にやって来た源太が照れくさそうに …

「あのよ … ごちそうさま、め以子」

源太が赤ナスご飯を分けてくれたことを思い出した、め以子。

「私も、ごちそうさま!」

笑い合ったふたり。

… … … … …

夜、台所で糠床をかきまわしているトラに、め以子は言いました。

「お祖母ちゃん、私分かったよ」

「えっ?」

「ジャムが減ると増えるものだよ」


トラは笑いながら尋ねました。

「『ごちそうさま』でしょ?」

うれしそうなトラ。

「ジャムは減るけど、『ごちそうさま』は増えるもんね」

「ははは … め以子、ごちそうさまっていうのは … 」


トラが急に胸を押さえました。

「お祖母ちゃん、どうしたの?」

心配そうに顔を覗きこんだ、め以子、トラは笑いかけようとしましたが … そのままうつぶせに横たわってしまいました。

「お祖母ちゃん!」

苦しそうにうずくまっているトラ。

「お祖母ちゃん! お祖母ちゃん!」

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2013年10月02日 (水) | 編集 |
第3話

め以子が厨房へ入ると、いつもは陽気な大五が険しい顔で新聞を広げて読んでいました。

『覆面記者[味一番]のあまから探訪記』という記事に、開明軒が取り上げられているのです。

「 … お父ちゃん?」

め以子のことに気づいていないのか、大五は立ち上がって新聞を投げ捨てました。

「素人が利いた風なことぬかしやがってよ!」

< 新聞に載ったひとつの記事が、店に大きな波紋を呼び起こしておりました >


… … … … …

縁側でひとり、いちごジャムのビンに指を入れて、美味しそうに舐めている、め以子。

それを、弟の照生が物欲しそうに見つめています。

「美味しいかい? お祖母ちゃんと照にも、ひと口おくれよ」

「だめ、私のだから!」


め以子は、ひとり占めにして、決して誰にも分け与えようとはしませんでした。

… … … … …

『コックは、帝国グランドホテルで修行した身だという、さすがに良くできた料理ではある。

だが、味は本家の模倣であり、この店ならではというものが何もない。

食べなれた身からすれば、ただ真面目なだけで、驚きも発見も何の面白みもないのだ。

意匠、サービスはといえば、やはり街の料理屋の域を出ない。

にも関わらず、一流店気取りで、客に米の飯は出さず、箸は使わせない。値も決して安くはない。

これなら、筆者なら、もうひと踏ん張り弾んで、本家に行く … 』

「 … 何とも、中途半端な店であった」

イクは、大五が憤慨した新聞記事を読んで、先日店に訪れた背広姿の客のことを思い出しました。

「あのお客さんか … 」

ナイフ、フォークは使い慣れていないからと箸を要望したくせに、断ると器用に使いこなしていたのです。

「何とかしなくちゃね … 」

… … … … …

「大した食い意地だね」

朝の食卓、ジャムのビンを巾着袋に入れて首から下げて起きてきた、め以子を見て、あきれるトラ。

「いやあ、お待たせお待たせ ~ 」

そこへ、昨日とは打って変わって上機嫌の大五が運んできた料理を見て、め以子が目の色を変えました。

「何、これ? ~ 」

「新しい料理を考えようと思ってな … 帝国グランドでも出さないような、本格派のフランス料理だ!

どうだ、美味そうだろ?」


不満顔のイクに気づかぬふりをする大五。

大喜びのめ以子は料理を次から次へと平らげていきます。

「美味えだろ? お父ちゃんの料理は世界一だろ?」

「うんうん」

「あんたこれさ、まだ出せる物、使ってるだろ?」

「この際よ、素材ももうちっといいもんに変えようと思ってよ」

「そんな金何処にあんだよ? 今うちはね … 」


イクの小言を遮るように、唸り声を上げたのは、め以子でした。

一同が注目すると、ひとりでパンにジャムをつけて食べています。

真似しようと、イクがジャムに手を伸ばすと、め以子はビンをつかんで離そうとしません。

「め以子!」

「いいじゃねえかよ … 手に入るようになったらな、お父ちゃんが生のいちごで世界一美味えジャムつくってやんからな」

「どいつもこいつも … 」


イクはため息をつきました。

… … … … …

め以子は、イクが止めるのも聞かずに、いちごジャムを入れた巾着袋を下げたままで学校へと出かけて行きました。

「おい、め以子、何だそれ?」

源太に目をつけられましたが、腹痛の薬だと誤魔化しました。

「へえ ~ お前が腹痛いなんて、雪でも降るんじゃねえか?」

… … … … …

弁当の時間。

「お腹、治ってよかったね」

美味しそうに食べている、め以子を見て、友達のチヨが言いました。

「ああ、うん、もう大丈夫 … 痛たたた、あれっ?」

お腹を抱えて、教室を出ていく、め以子。

… … … … …

裏庭のため池のほとりでこっそりと、いちごジャムを舐めていると、後をつけてきた源太に見つかってしまいました。

「おい、め以子、それ薬じゃねえだろ?」

「薬だよ!」

「誰にも言わねえから、ひと口くれよ」


あっと言う間にビンを取り上げられてしまいました。

「返してよ!」

源太が瓶を持った腕を振り上げた拍子に手から離れて … ため池にボッチャ ~ ン!!

慌てた、め以子は何の躊躇もせずに、ため池に入って、ビンを探しました。

着物をびしょびしょにしながら、拾い上げたビンには、ジャムはもう流れ出てしまって、空っぽでした。

「うそ … 」

「お前がくれないから、こうなったんだからな」


池から上がった、め以子は源太につかみかかりました。

「ジャム、返せ!」

取っ組み合いのけんかになる、め以子と源太。

… … … … …

「学校に持ってきたことは、さておき … 卯野も、ひと口ぐらいあげてもよかったんじゃないか?」

職員室に立たされたふたり、担任の教師が、め以子を諭しました。

「 … 友達だろう?」

「友達じゃない … 友達じゃない!」


思わずそう言い切った、め以子。

「おう! 絶対、友達じゃねえよ!」

源太もソッポを向きました。

… … … … …

「私、悪くないもん!」

ふくれっ面で家に帰った、め以子でしたが、店のテーブルに並んだ料理を見た途端に笑顔が戻りました。

「うわっ、わっ、わっ、わっ、何これ? ~ 」

「こりゃなあ ~ これが、鴨のオレンジ煮だろ、こっちが、虹鱒のショーフロア」

「すっご~い」

「こっちは、小鯛にカニを詰めて、バターで焼いたもんだ、これが鴨のパテ」


め以子が生まれて初めて見る美味しそうな料理ばかりでした。

「これは、帝国グランドでも、こんな料理出さないぞ … 食べてみるか?」

喜び勇んで、口に運ぶ、め以子。

「美味いだろ? お父ちゃんの料理は、世界一だろ?」

「うん!」


… … … … …

「 … 逃げてんじゃないよ」

ずっと黙って、繕いものをしていたイクが、ポツリとつぶやきました。

「その子に食べさせたら、美味しいって言うに決まってんだろ?!」

黙ってこちらを見ている大五にイクは続けました。

「こんな、手間も金もかかるもん、うちみたいな小さな店で出せる訳ないだろ?

… 一体、いくらかかってんだい? 何時間かかってんだい?」

「できてんだろうがよ!」

「続きゃしないだろうが、こんなの!」


イクは、今繕っていたボロボロのナプキンを大五の目の前につきつけました。

「これが、うちの現実なんだよ!

コックを雇う金もない、借金だってロクに返せちゃいない … こんなもん作ったって、どうにもなりゃしないだろうが?!」


… … … … …

「じゃあ、どうすりゃいいんだよ?

… 味は本家の猿まね、何の面白みもねえって、言われたんだぞ!

ひっくり返るようなもん作ろうと思って、何が悪いんだよ?」

「押しつけがましいんだよ、あんたの料理は!

どうだ、美味いだろう? 俺の料理は本格的だろうって …

お客さんはね、あんたの腕前を拝みに来てる訳じゃないんだよ。

ちょいと美味しいもんを、いい気分で食べたいんだよ。

お肉はご飯で食べたいんだよ、ナイフとフォークじゃ、せっかくの料理も味わえないんだよ。

… そこをはき違えるから、あんな風に書かれちまうんじゃないのかい?」


自分なりに考えたことを、イクに頭ごなしに否定されてしまった大五。

職人気質で生真面目な大五は、こんなやり方しか思い浮かばなかったのです。

「じゃ、何作りゃいいんだよ? 教えてくれよ … 俺なんかより、よっぽどいろいろ分かってらっしゃるみたいだからよ!」

「そういうことじゃ … 」


席を立った大五は、コック帽を床に叩きつけました。

「やってられっかい!」

少し言い過ぎたかもしれないと思ったイクでしたが、後の祭りでした。

大五は、そのまま店を出て行ってしまいました。

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