NHK朝ドラ『花子とアン』『ごちそうさん』『あまちゃん』…ストーリーを勝手に解釈&裏読み … ほぼネタバレ…
--年--月--日 (--) | 編集 |
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月30日 (土) | 編集 |
第54回

残り少ない氷を削って、め以子は本日最後の『焼氷』を悠太郎が座っているテーブルに置きました。

マッチを擦ってメレンゲに火を灯します。

「ブランデーですか?」

炎を見つめながら、つぶやくように尋ねた悠太郎。

「火が消えたら、メレンゲを潰してお召し上がりください」

め以子は不愛想に他人行儀な口調で答えると、下がってしまいました。

フロアにひとり残された悠太郎は焼氷を食べ始めます。

「コーヒーのシロップなんですね」

独り言のようにまたつぶやきました。

「途中からは、梅シロップが加わっている … 」

しばらく、眉間にしわを寄せながら見ていため以子が突然声を荒げました。

「焼氷の話に来たの?」

氷を食べるスプーンを持つ手が止まった悠太郎。

「大きな声でする話じゃないんで … 」

そう返されて、め以子は悠太郎の前の席に座りました。

向かい合ってはいますが、お互いに目を合わせず顔をそむけたままです。

… … … … …

室井と希子、馬介の姉が市場から引き揚げてくると、店の前には馬介をはじめ、桜子、源太たちが集まっていました。

め以子たちをふたりきりにしようと気を利かせて外に出ていたのです。

しかし、店内があまりにも静かなので、一同はそっと中の様子を覗いました。

… … … … …

め以子を前にして、悠太郎は静かに話し始めました。

「僕が父を許せなかったのは … 僕も逃げ出したかったからです。

仕事を辞めて戻って来たんも、お静さんを落籍せたんも、皆僕たちのためやのに … よかれと思うてやったことが全て裏目裏目に出てしまう。

… そんな父に僕は同情してました」


ところが、正蔵はひと言もなく姿を消してしまったのです。

「首でも括るつもりなのではないか、本気でそう思いました」

とにかく、皆で手を尽くして探して …

「せやけど、見つかった先は、別の女性のところでした」

… … … … …

「愕然としましたよ。」

その事実に怒り、お互いを罵り合う和枝とお静 … 自分の後ろで怯えて震えている幼い希子を見て、悠太郎は宣言したのでした。

『僕がこの家を守る』 

「 … 僕がこの家を守る、これからはあの人は死んだと思ってやっていこうって」

ただひとりの男である悠太郎は無理をしてでも、そう言うしかなかったのです。

「せやけど … その気持ちだけで生活が変わる訳やありません」

傷ついた和枝とお静は、その矛先を前にも増して相手に向けたのです。

「僕は、迂闊なことを言わないように、何か言う前に口に手を当てて考えるクセがつきました」

あのポーズにそんな秘密があったのです。

わずか13歳だった悠太郎の気持ちを考えると、胸がしめつけられるように痛むめ以子でした。

… … … … …

「姉さんの料理をほめれば、お静さんの料理は不味いと言うてることになる … お静さんの料理をほめれば、姉さんたちの総攻撃が始まる。

僕にできることは … 何も表情に出さず、食べるということでした」


そう言われると、下宿し始めた頃の悠太郎の食事する姿はまさにそんな感じだったことをめ以子は思い出しました。

「そんな中で、僕がすがったのは … 安全な街を造るんだという志と、父への憎しみでした。

いつか立派になって、この家を建て直して、見返してやるんやと」


そうやって、悠太郎はずっと生きてきたのでした。

… … … … …

「せやけど …

あなたに会えて、あなたの家族に出会って、ゴールは少し違うんやないかって、思い出したんです。

こんな食卓が欲しい、こんな家庭が欲しいと思い始めました」


… それもまた、父親を見返すひとつの形だと考えたのです。

… … … … …

「相手の幸せを考えることが愛情やと言うならば … 僕は、あなたの手を離すべきやと思います」

いつしかめ以子は目にいっぱいの涙をためて聞いていました。

「それは、何度も何度も考えて …

せやけど、それをしないのは、僕は …

嫌だからです。

あなたは僕が手に入れた、たったひとつの宝ものですから。

… せやから、他の人に取られやしないかと、いつもひやひやしています。

『私はこんな掃き溜めにいる人間ではない』と、言い出しはしないかと不安で …

くだらん、ホンマにくだらん人間やと思います」


そう言いながら、悠太郎も泣いていました。

「せやけど、僕を … 僕を見捨てないでください」

泣きながら、め以子に向かって、手をつき頭を下げました。

… … … … …

「 … 悠太郎さんって、バカだったのね。

私のこと『宝物』だなんて思う人、他にいないし …

バカで、子供で … 分かろうと思えば、合図はいくらでも出てたのにね」


め以子は悠太郎の傍に行くと、その手を握りました。

顔を上げてめ以子を見つめた悠太郎。

「私もバカで … ごめんね」

め以子の目から涙がぼろぼろとこぼれています。

「ひとりにして、ごめんね」

立ち上がり、そして抱擁し合うふたり。

テーブルの上の食べかけの焼氷はすでにほとんど溶けていました …

… … … … …

「元のさやだね ~ 」

「本当、ごちそうさまって感じ」


入り口のガラス越しに見ていた室井と桜子も胸をなでおろしました。

涙もろい室井はもらい泣きしています。

希子も安堵してホッと微笑みました。

… … … … …

「源ちゃん」

ひと足先に自分の職場 ~ 牛楽商店に戻っていた源太の元にめ以子が顔を出しました。

「一番いいお肉ちょうだい」

「あ?」

「悠太郎さんが、今日はビフテキにしようって」


源太が店の外に出ると、市場の入り口に悠太郎が立っていて、こちらに向かって頭を下げました。

源太も染丸まで連れ出して、ひと芝居打った甲斐があります。

「ホンマにいっちゃんええのにするからな?」

「うんっ!」


… … … … …

「せやけど、よう歌えたな、希子」

つい何時間か前、希子はここで大勢の前に立って歌ったのです。

「ちい姉ちゃんのこと考えたら、歌えた。

ちい姉ちゃんの焼氷、食べてもらうんや ~ って思ったら …

お兄ちゃんもいつか変わるよ … お父さんのこと許せる日が来ると思う」


あの引っ込み思案で人の顔色ばかり窺っていたような希子が、こんなにもしっかりと自分にものを言っている … 悠太郎は何だかうれしいような複雑な気分でした。

「生意気言うて … 」

いつ以来でしょうか、兄妹が顔を見合わせて笑いました。

< そうだよね ~ 希子ちゃん、氷はいつか溶けるもんね >

… … … … …

そんな希子も家に近づくほどに不安になっていました。

「お姉ちゃん、怒ってるよね … きっと」

「希子ちゃんは大丈夫でしょう?」

「あなたも意外に大丈夫かも知れませんよ」


意味深な悠太郎の言葉に首をかしげため以子でしたが、その理由はすぐに分かりました。

家の前まで来ると、3人の気配を感じたのか、門を開けてお静が飛び出して来ました。

「おかえり ~ よお、帰ってきてくれたな ~ 」

待ち構えていたように諸手を広げ迎えてくれました。

め以子が恐る恐る玄関を覗くと、和枝がこちらをにらんでいます。

「あ、あの … 」

「蚊も出てきたさかい、早う閉めて … 」


そう言っただけで、特に咎めることもせずに奥に引っ込んでしまいました。

「せやせや、早う早う入って!」

そんな姿を見て、おかしそうに悠太郎が話しました。

「ふたりだけ残ったら、もう殺し合わん勢いでして … もう疲れ切ったんやと思います」

… … … … …

その晩の西門家の食卓には、牛楽商店の最上級の肉を焼いたビフテキが並びました。

一切れ食べた希子が幸せそうな笑顔になり、お静も口にした途端 …

「このお肉、ホンマ美味しいな ~ 」

肉も美味しいけれど、和枝とふたりきりの食事から解放されたことが何よりうれしい … そんな感じです。

「悠太郎さんが奮発してくれました ~ お替りあるんでどんどん食べてくださいね」

「希子の記念でもありますし … 」


め以子が希子の歌のことを話すと、お静は感心していましたが、和枝は不愉快な顔をしました。

「芸人やあるまいし、はしたない」

希子も今までならここで、言葉に詰まっておどおどしてしまったのでしょうが、「ごめんなさい」ときちんと謝ることができるようになっていました。

… … … … …

「あ、あの、お義姉さん、お口に合いませんか?」

め以子は和枝の顔色を覗いました。

「な~んも聞いてまへんさかいな …

別れる言うてはったんが、いきなり戻って来はって、肉出されても、ノド通りまへんわ」


悠太郎の顔を見ため以子。

「親父のことは、皆の気持ちが揃うのを待つってことに話がつきました。

僕も姉さんもお静さんも、皆がその気になったら、縁を復活させることも考える。

そうならなくても、め以子は無理強いはしない … 自然に任せようってことで」

「 … 時々、様子を見に行くってことで … 」


異論は出ませんでした。

和枝はため息をついて、あきれたような顔をしていましたが … 取りあえず一件落着のようです。

… … … … …

翌日、建設課の部屋では、糠床のツボがなくなっていることに気づいた藤井が途方に暮れていました。

「ない … ない、ない?!」

「あ、糠床か ~ さっき、赤門の嫁さんが来て、持って帰りよったで」

「べにこ ~~ !!」


< トラですよ >

「べにこって、名前までつけとったんか?」

… … … … …

糠床の帰る場所は … 牛楽商店でした。

源太のことを信頼した悠太郎から許可が下りたのです。

「トマト?!」

久しぶりに再会した大切な糠床の中にトマトを見つけため以子は驚きの声を上げました。

思った以上にきちんと世話をしてくれていたことを知り、め以子は悠太郎のことを見直していました。

「悠太郎さん、結構やるな ~ 」

< 悠太郎さんじゃないからね … 藤井さんだからねっ >

「め以子、上手いこといってるのか、最近は?」

源太に尋ねられて、め以子は答えました。

「あちらを立てれば、こちらが立たず … でもまあ、気長にやるわよ」

< そうそう、糠床だってね、美味しくなるまで時間がかかるんだから >

「氷はいつか、溶けるもの … 」

糠床をかき混ぜながら、そうつぶやきました。

夫婦は話し方しだいで9割うまくいく

新品価格
¥1,470から
(2013/11/30 14:27時点)



雨のち晴レルヤ / 守ってあげたい

新品価格
¥1,059から
(2013/11/30 14:28時点)



NHK連続テレビ小説「あまちゃん」完全シナリオ集 第1部 (単行本1(5000円未満))

新品価格
¥1,785から
(2013/11/30 14:28時点)


スポンサーサイト

朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月29日 (金) | 編集 |
第53回

2階から駆け下りてきた室井は、皆に向かって手にしていた原稿用紙を突き出しました。

「室井幸斎、作詞 … 焼氷の唄です!」

「 … う、うた?」

「どれどれ」


一同は、室井の周りに集まって、原稿用紙を覗き込みました。

「このオルガンって、置いてあるってことは、弾ける人がいるんですよね?」

馬介から姉が弾くことができると聞いて桜子と室井は笑顔でうなずき合っていますが、め以子には桜子が何をしたいのか今ひとつ分かりません。

「これどうするの?」

「ビラ配りながら歌うの ~

お姉さんに簡単は節つけてもらいたいんですけど?」


桜子が頼むと、馬介は快く引き受けました。

「えっ、ちょ、ちょっと待って、歌って誰が?」

「もちろん、あなたです」


め以子に問われた桜子は、当然のように希子のことを指さしました。

希子の『ゴンドラの唄』があまりにも見事だったことを思い出して、考えついたアイディアなのです。

きょとんとした顔で後ろを振り向いた希子 … 誰かいる訳もありません。

「えっ! う、うち?!」

… … … … …

馬介が『ヒマを持て余している』と言っていた姉は、早速、室井の詞にメロディーをつけて、焼氷の宣伝歌は完成しました。

しかし、肝心の希子が人前で歌うのは、どうして恥ずかしいと固辞したため、仕方なく立案者の桜子本人が歌うことになっていました。

そのためのレッスン … オルガンの前でまず馬介の姉が手本に歌い、それに倣って桜子が歌っています。

♪氷 氷 氷なのは ~ ♪

明らかに手本とは違う独創的な節回し(?)にアレンジされた桜子の歌声が聞こえてきます。

その横で室井と街で配るビラを描いている希子が申し訳なさそうにその様子をチラチラと見ていました。

「そんな顔しなくていいよ、あれはあれで結構楽しんでやってるんだから」

「すいません … 」


… … … … …

調理場では、め以子は懸命に氷を削り、馬介はメレンゲを作るためにボールを抱えて必死に泡立てています。

ずっと氷を扱っていたため、め以子の手はかじかんでしもやけになっていました。

「ちい姉ちゃん、それ痛くないん?」

心配して声をかけた希子。

「ああ、それより、こっちが … ね ~ 」

ひっきりなしに動かしていた手首を押さえたり、ブラブラさせながら、馬介と顔を見合わせてうなずき合いました。

「がんばりましょう、馬介さん … ここが正念場です!」

「はいっ」


… … … … …

その日の夕食時の西門家。

「出ていかはって、7日になりますけれど … どうしはるつもりでっか?」

悠太郎の給仕をしながら、和枝は聞きました。

「希子も戻してもらわなあきまへんし … 」

「明日、籍を外す話をしようと思うんで、少し待ってもらえますか?」


思いがけない悠太郎の言葉に頬が緩みかけた和枝でしたが、はたと気づきました。

「えっ、籍入れてはったんでっか? わての許しもなしに!」

「結果的に汚すことになってしもうて … 姉さんの言うとおりしておけばよかったと思うてます」

「 … やっと分かりはったんだすか?」


悠太郎がそうまで言うのであれば、この際、もうそのことには、こだわる必要もないかと … 和枝は満足げに何回もうなずきました。

「姉さんの言うとおり、合わへんところに縛りつけとくのも殺生ですから …

この家に来たのが間違いやったんです」


… … … … …

夜も大分更けたのに、いつまで経っても調理場から上がってこないめ以子を気にして、希子が様子を見に行くと … め以子はテーブルの上に置いた梅を漬けたビンをボ~っと見つめていました。

誰のことを考えているのか希子には分かりました。

「ちい姉ちゃん … 」

そっと声をかけると、め以子は明るく装って振り向きました。

「うち、お兄ちゃんに来るように言おうか?」

「ううん、別にそう言うんじゃないから …

もう、寝なきゃね … 明日は、新しい焼氷を売り出す大事な日だもんね」


… … … … …

あくる日、源太は馴染みの芸妓・染丸を伴って市役所を訪れていました。

「なあなあ、源ちゃん、何しに行くんかいい加減教えてよ ~ 」

源太のことを憎からず思っている染丸は、頼まれて訳も聞かずにホイホイついてきたのです。

「ええから … とにかく、わいの隣でニコニコしとってな」

2階にある建設課へ行くために階段を上がりきった時、源太は驚いて足を止めました。

「あれ? 師匠」

部屋の前に先客がひとり … 正蔵が立っていたのです。

源太は慌てて、染丸と共に物陰に隠れました。

… … … … …

しばらくして … 部屋から出てきた悠太郎に正蔵は声をかけました。

「話すことなんかありません」

立ち去ろうとする悠太郎のことを無理に引き留めました。

「今ここで止めんと、め以子さん、ホンマにどっか行ってしまうかも知れんのやで」

「 … ご心配なく、言われなくても分かってますよ」

「わしが、どっか行く … なっ、遠いとこ行くさかい、それでどうや?」


悠太郎は、正蔵をにらみつけました。

「あなただって、逃げ出した家でしょ?」

返す言葉を失った正蔵。

「問題はもうあなたではないですし、関係者気取りは不愉快です」

もう引き留めることさえも出来ずに正蔵は、立ち去る悠太郎の背中を見つめるだけでした。

その哀れな姿に出ていくことをためらう源太。

「ちょっと、時間を置くか … 」

… … … … …

新装開店した『うま介』。

しかし、店内に客の姿はなく、馬介、め以子、希子の3人が退屈そうにぼんやりと座っているだけでした。

「あ ~ お客さん、来うへんな … 」

つぶやいた馬介。

未だ誰ひとりとして訪れて来ないのです。

… … … … …

「おお、通天閣!」

昼休みになって建設課から出てきた悠太郎を源太は呼び止めました。

「飯、一緒に食わへんか?」

その手には『ちょぼ焼』がありました。

… … … … …

悠太郎は源太たちを休憩室に連れて行きました。

「そちらの方は?」

源太は染丸のことを自分の女だと紹介しました。

「ま、そういうことで ~ 勘違いは完全に勘違いやと分かってもろうた上でや。

お前ちっと小さ過ぎるで … ケツの穴!」


いきなり言われてムッとした顔で見返した悠太郎。

「わしには会うな、師匠には会うな、密通でも何でもないのに …

ケツの穴、ちっこいにもほどがあるやろ?!」

「 … あなたたちと一緒のところを見ました。

楽しそうでした。

あなたたちといた方が彼女も幸せなんやろうし … 僕としても別れて自由にしてやろう思うてます」


… … … … …

「 … 話はもうええかな?」

それだけ言って部屋を出て行こうとする悠太郎。

「カッコつけんなや!」

源太は一喝しました。

「ヤキモチ焼きで、しつこうて、懐のちっこうて、お前めちゃめちゃカッコ悪い男やろが?

ええ加減、そのカッコつけ止めっ!

… 鬱陶しいんじゃ!!」


黙ったままの悠太郎。

「ちゃんとあいつと話し合え! 自分の思うてることを、あいつにぶつけて分かってもらえ!」

「 … 言いましたよ」

「言うてへん … お前が言うたんはな、ただ何があったか言うただけやろ?

わし何となく聞いたけど、あいつと同じこと思うたわ … そんな昔のこと掘り返さんと、前見たらどうやって!

これからどうしたいんか、腹の底の本音を正直に言え!」


… … … … …

「 … 嫌われないでしょうか?」

悠太郎から返って来たのは、そんな言葉でした。

「あっ?」

「かなり女々しい、鬱陶しい話やと思うんですけど … 」

「それであかんかったら、もうあかんやろ …

どっしょうもないところも好いてもらわなへんかったら、そんなもんどの道、続かへんわい!」

「源ちゃん、惚れ直すわ ~ 」


肩怒らせて出て行く源太の後を染丸が追って行きました。

… … … … …

一方、『うま介』は依然としてひとりの客もなく、これでは前と何も変わりません。

「あ ~ お客さん、来うへんな … 」

「来ませんね … 」


客が来ないことには、腕の見せ所さえ作ることができません。

室井たちが市場でビラを配っているはずなので、誰かひとりぐらいつき合いで来てくれてもよさそうなものでした。

しかし、希子には気になることがありました。

「ちい姉ちゃん … うち、ちょっと見てくるね」

そう言うや否や店を飛び出して行きました。

… … … … …

希子が市場に着くといつも通りの賑わいでした。

ただ牛楽商店の前だけポカンと空間が開いていて … そこでは台の上に立った桜子が『焼氷の唄』を熱唱していました。

♪氷 氷 氷なのは 間違いないのさ ~ ♪

顔をしかめたり、耳をふさいだりしながら、買い物客は牛楽商店の前を避けて通っています。

室井が配るビラさえほとんどの人が受け取ろうとさえしません。

希子は足元に落ちていた捨てられたチラシを拾いました。

気づいて駆け寄る室井。

「皆、耳ふさいじゃってさ ~ ああ、これじゃヤブヘビだよ ~ 」

… 音痴の大物女優の比ではありませんでした。

… … … … …

希子は自分が歌うのを拒んだせいだと分かってはいました … でも人前で歌うなんて、考えただけで足がすくんでしまいます。

希子は、め以子が今まで自分のためにしてくれたことを思い返していました。

そして、何よりかじかむ手、傷む手で懸命に氷を削っていた姿を希子は傍でずっと見てきていたのです。

このままではそれも水の泡になってしまいます。

「 … 天神橋筋、世にも不思議な焼氷 … うま介印の焼氷 … 」

気がつけば希子の唇から歌がこぼれ出していました。

その歌は最初は小さな声でしたが、次第に大きくなって … 桜子の耳にも届きました。

「希子ちゃん?」

桜子は急いで希子の手を引っ張って、今まで自分が居た場所に立たせました。

… … … … …

買い物客は何が始まるのかと立ち止まって希子のことを見ています。

多くの視線を受けて、戸惑う希子でしたが … 励ますようにうなずいている室井と桜子を見て、覚悟を決めました。

馬介の姉がオルガンで伴奏を始めると、希子は自然と歌い始めました。

♪氷 氷 氷なのは 間違いないのさ

ところが どうにも 噂だと

なんでも 火を噴く氷だと ~ ♪

その愛らしい歌声に買い物客がどよめきました。

す~っと、笑顔になった希子は歌い続けます。

♪氷のお山に白帽子 パッと火が点きゃ こんがり焼けて

溶けそうで 溶けない もどかしさ ~ ♪

希子の歌に合わせて手拍子まで起こり始めました。

こうなると不思議なもので、今まで誰も相手にしなかったチラシも飛ぶようにさばけて行くのです。

♪熱くて 冷たい あの人と ~ 甘くて 苦い 恋の味 ~ ♪

… … … … …

見る見るうちに『うま介』に押し寄せる客、客、客 …

看板メニューの『焼氷』は大好評!

人から人へと評判は広まって、店は大盛況!千客万来!!

♪あっと驚く玉手箱 ~ 一度食べたら もう虜

あなたも私も あなたも私も テーブル囲んで ドレミファソ

食べってみはって 摩訶不思議

寄っておいでな 天神橋筋 …

世にも不思議な焼氷 うま介印の焼氷 ~ ♪

… … … … …

見事に歌い上げた希子。

いつの間にか市場から溢れるほどに集まった買い物客から拍手と大きな歓声が上がりました。

その中に悠太郎の姿もありました。

源太の言葉にうながされた悠太郎は、め以子の元へと向かう途中、人だかりに合い、その前で歌っているのが我が妹だと知って立ち尽くしていたのでした。

引っ込み思案の希子がこんなにも多くの人の前で歌を披露しているなんて … いつしかそれは感動に変わっていました。

… … … … …

希子は始めて味わう充実感に涙ぐみながらも微笑んでいました。

そして、人ごみの中に悠太郎を見つけました。

悠太郎も優しげな笑みをたたえながらこちらを見つめています。

「ほら … 」

室井も悠太郎に気づいたようで、希子にチラシを1枚渡しました。

希子は悠太郎のところへ行き、それを差し出しました。

じっと見つめ … 黙ってはいましたが、希子の言いたいことは悠太郎に伝わっていました。

「悠さん、早く行かないとなくなるよ ~ 」

希子と室井に背中を押されて悠太郎は『うま介』へと歩き出しました。

… … … … …

その頃、『うま介』は桜子が最後の客を送り出したところでした。

氷の残りもあと少し …

「じゃあ、今日はもう閉める?」

「うん、そうだね」


そんな会話をしている時、店に誰かが入って来る気配がしました。

「あ、すいません … 」

客かと思って、断ろうとした桜子がハッと息を飲んだので、め以子はふと入り口の方向を見ました。

そこに立っていたのは … 7日ぶりに会った悠太郎でした。

心と耳にのこるCMのうた

新品価格
¥2,132から
(2013/11/29 19:11時点)



連続テレビ小説 ごちそうさん オリジナル・サウンドトラック「ゴチソウノォト」

新品価格
¥3,150から
(2013/11/29 19:12時点)



あまちゃんアンコール~連続テレビ小説「あまちゃん」オリジナル・サウンドトラック 3~ あまコレBOX付コレクターズエディション【初回限定盤】

新品価格
¥3,675から
(2013/11/29 19:13時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月28日 (木) | 編集 |
第52回

今は閑古鳥が鳴いている『うま介』を流行りの店にする!

桜子に名前負けしていると言われたメニュー『焼氷』を改良するため、め以子は店主のうま介と共に試行錯誤を繰り返していました。

そして、ようやくその試作が完成したのです。

め以子は、かき氷にコーヒーシロップをかけただけの現在の『焼氷』の上にブランデーを湿らせた氷砂糖を砕いて乗せました。

室井や桜子、希子が見守る中、それにマッチの火を近づけると … 見事かき氷の上に炎が灯りました。

「おお、すごい!」

歓声を上げる一同。

「 … で、火が収まったら、下の氷と一緒に食べてもらう」

め以子の説明通り、桜子から順番に『焼氷』を試食しました。

「うん、美味しい」

「いける、いける」


希子も笑顔でうなずきました。

… … … … …

皆は満足そうですが、め以子には少し気になることがありました。

「でも、どうしても焦げ目が出てそれが味に影響するのよね」

「もう十分ちゃう? おもろいし」


馬介もそう言いますが、すっきりしない顔のめ以子。

「1回は話のタネに来てくれる気がするんですけど、それで終わっちゃうような気がして …

何ていうか、驚きを超える感動が!」


『 … 言わば客は何が来るか分かってる。

それでも、それを超えて感動させるのが美味しい料理ってもんやないんですか?』

その時、め以子が思い浮かべていたのは、いつか悠太郎が開明軒の料理を評して言った言葉だったのです。

… どうやったら『焼氷』をそんな看板メニューにできるのだろう?

気がつけば、め以子は無意識にあご手を当てて考えていました。それは悠太郎のクセでした。

「とにかく、これじゃまだ、ダメな気がするんです」

… … … … …

大阪市役所・建築課。

ソファーにどっと座り込んだ悠太郎と大村、ふたりとも大あくびをしました。

「思いついてよかった … 雨天体操場を2階へ持ってくやなんて … 」

「よかったです … 」


期限ぎりぎりのところで思いついて、何とか図面を仕上げたのでした。

精根尽きたふたりは、目を閉じてそのまま眠ってしまいそう …

その時、勢いよくドアを開けて部屋に入ってきたのは藤井です。

「改定案出してきたで ~ ほな、飲みにいこか?!」

応える者はひとりもいません。

… … … … …

幾日かぶりに家に戻った悠太郎を迎えたのは、言い争っているお静と和枝でした。

「何でうちの布団だけ取り込んどいてくれへんの?!」

お静が出かけている間ににわか雨が降り、一緒に干してあった布団のうち、和枝は自分のだけ取り込んでお静のはそのまま放っておいたのです。

「びしょびしょやんか!」

「干したん忘れとりましてな ~ 」


台所仕事をしながらとぼける和枝。

自分のだけは取り込んだことをお静が咎めると、平然と答えました。

「誰かが入れてくれはったみたいですわ」

「鬼やな、あんた … 」


悠太郎の顔を見て、お静は泣きついてきました。

「もう早う、め以子さんと希子ちゃん連れて帰ってきて!

… あの人に会うくらい、許したったら?

別に一緒に暮らすわけやなし … 」


それを聞いて、和枝がお静に食って掛かりました。

「あんさんみたいなお荷物まで押しつけられて、わてと悠太郎さんがどれだけ今日まで苦労してきたか?

… お荷物には分かりまへんわな?」

「あんたらの父親に頼みこまれて来たんや!

面倒見んのは、当たり前やろ!」


うんざりした悠太郎は、そっと2階へ上がろうとしましたが、お静に呼び止められます。

「悠太郎さん、逃げるんか?」

「眠いんや ~ 起きたら聞きますから … 」


… … … … …

部屋に入った悠太郎は、着替えもせずに掛布団だけつかむと畳の上に倒れ込みました。

しかし、疲れているはずなのに、何故か寝つくことも出来ずに … ふと辺りを見回しました。

改めて見ると、め以子の荷物がひとつもありません。

< 違うから … 荷物がないのは、和枝さんが放り出したからで … >

悠太郎は体を起こして考え込み始めました。

< 違うから … 固い意志を持って、出て行った訳じゃないから >

ハッとする悠太郎。

< 違う、お父さんの所でもないから … 源ちゃんの所じゃないから >

気になり出すと、目がさえて寝るどころではなくなってしまいました。

… … … … …

悠太郎の足は市場へと向いていました。

しかし、こんな時間ではほとんどの店は閉店しています。

牛楽商店もすでに戸を閉めた後でした。

「嫁はん、探しとるんか?」

店の前で考えあぐねていると、向かいの乾物屋の定吉が声をかけてきました。

源太と派手にやり合ったことで、この市場では悠太郎のことを知らない者はいません。

「 … 通りがかっただけです」

立ち去ろうとする悠太郎に定吉は反対側の方向を指さして言いました。

「そこ曲がって、ちょっと行ったとこの『うま介』いう喫茶店におるで」

「 … 通りがかっただけです」


定吉の顔を見ながら、もう一度言うと、頭を下げて、教わった方へ歩き出しました。

… … … … …

『うま介』を探し当てた悠太郎は、ガラス戸越しにそっと店の中を覗き込みました。

店主らしき男とめ以子に希子だけでなく、東京にいるはずの桜子と室井までいることに驚いていると、桜子が入り口に近づいてきたので、慌てて身を隠しました。

店内が蒸すらしく、扉を開けただけでしたが、お蔭で皆の会話がよく聞こえるようになりました。

… … … … …

これから、め以子がふたたび改良を加えた『焼氷』のお披露目が始まるところです。

「これ何?」

氷砂糖とは違うものがかき氷の上に乗っているのを見て桜子が尋ねました。

「氷の上にメレンゲを乗っけたの … で、そこにブランデーをかけて … はい、馬介さん」

め以子の合図で馬介がマッチでメレンゲの上に火を灯しました。

「おお!」

「素敵! わくわくする」


以前より煌々と輝き揺れる炎を、皆は微笑みながら見つめていました。

… … … … …

「じゃあ、そろそろ食べてみて」

火が消えたのを確認しため以子が3人の席の前に『焼氷』を置きました。

「いいこれ、いいよ ~ 」

ひと口食べた室井が絶賛しました。

「もっと、もっと下」

馬介が器の下の方の氷も食べるように指示しました。

「おおっ?!」

「そう、コーヒーだけじゃ飽きるからって、途中から梅シロップの味に …

これは、馬介さんの考えです!」


照れくさそうに頭をかいている馬介。

「コーヒーと梅シロップって合うのね」

「でしょう?」

「 … すごい。ちい姉ちゃん、ホンマにすごい」


美味しそうに食べながら、希子もめ以子のことをほめ称えました。

「これで十分生きて行けるんじゃない、め以ちゃん?」

「そうよね ~ 通天閣に頼らなくても、これだけの腕があれば … 」


その声は、入り口の陰の悠太郎にも届いていました。

… … … … …

「やって行けるかどうかは分からないけど … 」

め以子の言葉に耳を傾ける一同、もちろん悠太郎も …

「 … でも、楽しい」

そう言って、くったくなく笑っため以子。

悠太郎は思い出しました。

東京にいた頃のめ以子は、こんな風に笑う女性だったということを …

「これ食べてもらえるかと思うと、ドキドキする ~ 」

楽しそうに談笑する一同の声を背に、悠太郎は呆然とその場から離れて行きました。

… … … … …

『焼氷』に関しては何とか目途が立ちましたが …

問題は、まずどうやって人を集めるかだと桜子は室井に言いました。

「ビラを配るだけじゃダメなの?」

「始めだけでいいんだけど … もっとさ、こうパ~っと人に寄ってきて欲しいのよね」


桜子の要望に応えて、め以子は見事に看板メニューを作りました。

次は自分が何かやる番だと桜子は考えているのです。

そんなことを室井と話しながら、市場を通りかかった時、牛楽商店から源太の威勢のいい声が聞こえてきました。

「は~い、ただ今より、牛楽商店の日々誓文払い、誓文払いやで ~ 」

途端に買い物客が押し寄せる牛楽商店。

「そこの別嬪さん、そこの別嬪さんも大安売りやで ~ 」

「こういうこと?」


その様子を見た室井が桜子に聞きました。

「こういうこと!」

… … … … …

め以子は、新生『うま介』で出すもうひとつのメニューとして『カスタード巻』を考案しました。

ただ、馬介はそのふたつとコーヒーだけで大丈夫なのかと不安に思っているようです。

「実家のことを思い出してたんですけどね …

お父ちゃんも昔、いろいろ作りたがって、いろんなメニューを腕自慢みたいに出してたんです。

… で、結局、経費ばかりかさんじゃって」


このメニューだったら、いつも置いておく材料は限られるので、そういう心配が少なくて済むのだとめ以子は言いました。

「あのな … ちょっと、考えてんけどな … 日替わりのジュースってどやろ?」

売れ残りや、そのまま出すにははばかる果物や野菜でもジュースにすれば気にならないし、毎日変わるというのも楽しみではないか … と、馬介は伺いを立てました。

自分が店主なのに遠慮深いことです。

め以子や桜子に煽られて、遅まきながらやる気を出してきたのかもしれません。

「いいです … いいです、それ! 馬介さんも天才 ~ 」

め以子にほめられて、馬介は本当にうれしそうに笑いました。

「早くそれも出来るようにしっかりこの店流行らせましょうね」

… … … … …

建築課。

め以子の糠床の世話は、いつの間にか藤井の役目になっていました。

糠床に話しかけながらかき混ぜるのが日課でした。

「実はね ~ 嫁の糠床とお袋の糠床を半分半分、こっそり混ぜ合わせてみたんですよ。

せやのに、うちの方が美味い、わての方が上やて … アホですわ、アホ」


そんな様子をうつろな目で見ている悠太郎。

< 悠太郎さん、今そこに引け目感じないでいいから … >

ふと思い出したのは、昨晩のめ以子の笑顔でした。

「楽しそうだったよな、め以子 … 」

… … … … …

うま介では、店主の馬介と住人たち、それに源太が加わって夕食のテーブルを囲んでいました。

まるで新装開店の前祝の晩餐のようです。

「ミソポタミア・カレーってこれ、味噌が入ってるんですか?」

「うん味噌が大事」


感心するめ以子。

源太が口にしているのはキュウリを挟んだサンドウィッチ … だから、『河童パン』

ほとんどダジャレのネーミングでした。

… … … … …

そういえば、室井の姿が見えません … 2階で原稿用紙に向かっているようです。

「ねえ、桜子、ふたりはさ … 何がどうやって駆け落ちしてきたの?」

再会した途端にめ以子が家を追い出されたり、目まぐるしいほどいろんなことがあったので、そんなこともまだきちんと聞いていませんでした。

「うん … 卒業してから、私よく開明軒にお邪魔するようになったのよ。

それで、小説好きだって話したら、室井さんに原稿見せられるようになって … 自慢げに。

でも、ひどいの。

登場人物の誰ひとりとして感情移入できないのに、文章だけはやたらカッコつけてて …

私なんだか腹立ってきちゃって、正直に言っちゃったの」


め以子は恐る恐る聞きました。

「 … なんて?」

「生まれて初めて小説って、紙のムダでもあるんだなって感じた … って」


… … … … …

「そしたら、あの人泣いちゃって ~ 」

「泣いた?」


あきれ顔の源太。

「そうなの ~ いい歳して、おいおい … 悲劇の主人公みたいな泣きっぷりな訳よ。

もう、それがもう ~ また腹が立ってきて … 」


話しているうちに思い出したのか、次第に厳しい口調になっていました。

「 … で、また何か言ったの?」

「涙でその字が流れても、悲しいと思うのは、この世であなたひとりのことでしょ … って」

「きつ … 」


希子ですらドン引きしていました。

… … … … …

その室井は、2階で一生懸命何かを書き綴っていました。

たまに自分の書いた文章を読み返しては、涙をぬぐっているようにも見えます。

… … … … …

「よう立ち直りはりましたな、室井さん … 」

馬介は同情しています。

「おかしいのがね、書き直して、次に読めって持ってきた原稿のタイトルが …

『涙でその字が流れても』っていうの」

「そのまんまやん!」

「そうなの ~ でも今度は、主人公の気持ちがちゃんと伝わってきて … 前よりはずっとよくて。

で、そう言ったら、また泣くの … 今度はうれし泣き」


一同、桜子と室井のロマンスに聞き入っていました。

… … … … …

「それから、じくじくふたりで直した原稿が、入選したのね ~

それで、その結果を一刻も早く言いたくて、彼が私の家に忍び込んだのよ。

そしたら、番犬に追い回されてる訳 … で、木に登りながら、慌てて言ってるの。

怪しいもんじゃない、僕はあの人の下僕なんだ … あの人は僕の幸運の女神なんだよ … って」


… … … … …

「何かもう ~ 本当にダメな人なんだなって思って …

この人は、私がいなきゃ本当にやっていけないんだろうな ~ って思ったら、何か涙出てきてね」


親の財産ではなく、自分自身をこんなにまで必要としてくれる人はいないのではないかと … 桜子は気づいたのでした。

「私、たぶん、そういうものに飢えてたのね」

そんな話をした桜子の顔がめ以子にはとても幸せそうに見えました。

「せやけど、後悔してへんの?

蝶よ花よじゃ、暮らせへんで」


源太は現実主義でした。

「いいの、そんなの! … 私はもっとすごいもの手に入れるつもりだから」

「 … すごいもの?」


何だろうという顔で希子が訪ねました。

「室井さんが一流作家になるっていう『奇跡』」

「男前やな ~ あんた」


そう言い切った桜子にさすがの源太もシャッポを脱ぎました。

… … … … …

『この人の夢は、私の夢だから … 私の夢でもあるから』

またもめ以子が思い浮かべていたのは、悠太郎との思い出 … 断固として結婚に反対している父に対して自分が口にした言葉でした。

そんな思いを振り切るように、目の前の食事を頬張りました。

… … … … …

「出来た ~ 」

その時、大声を上げて、室井が2階から駆け下りてきました。

「出来た?」

「うん!」


桜子に向かってうれしそうにうなずいた室井。

「 … 何がですか?」

怪訝な顔をして室井を振り返った馬介。

室井は皆の前に立って、手にしていた原稿用紙を突き出しました。

「室井幸斎、作詞 … 焼氷の唄です!」

「 … う、うた?」


一体??

浪漫図案 明治・大正・昭和の商業デザイン

新品価格
¥2,940から
(2013/11/28 21:32時点)



大正時代の身の上相談 (ちくま文庫)

新品価格
¥714から
(2013/11/28 21:33時点)



NHK連続テレビ小説 ごちそうさん レシピブック

新品価格
¥1,470から
(2013/11/28 21:32時点)



あまちゃんメモリーズ 文藝春秋×PLANETS

新品価格
¥1,365から
(2013/11/28 21:32時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月27日 (水) | 編集 |
第51回

「私、離縁する」

悠太郎の心無い言葉に傷ついた、め以子が口にした「離縁」のふた文字。

しかし、朝からこの時間まで何も食べていないという、め以子にしてみれば考えられない状態では、まともな判断も出来ないと源太は考えました。

「腹減ってんのやろ ~ 取りあえず、食べてから考えへん?」

… … … … …

め以子は、室井が連れ帰った馬介がこしらえた料理を次々に平らげました。

「ほ~れ、焼氷やで ~ 」

念願の焼氷も目の前に置かれました。

ひと口食べため以子 … 

「これ、コーヒーのシロップかけただけじゃないですか!」

期待が大きかっただけに、ダマされた気持ちでした。

「焼いたように見えるでしょ?」

馬介の言葉に白ける一同。

客が名前を珍しがって注文したとしても、2回目はないような代物でした。

… … … … …

「せやけど、お前どないすんねん? … 義妹まで巻き込んでもうて」

満腹になって取りあえず落ち着いたように見えるめ以子に源太は尋ねました。

「帰るんやったら、早い方がええと思うけど?」

「私もう、何で大阪来たのか、分かんなくなっちゃった … 」


何と答えればいいのか、皆が考えあぐねていると … 桜子が口を開きました。

「じゃあ、もう離縁しちゃえ!」

離縁を言い出しため以子本人が驚いています。

「あんな家、戻ることないない ~ ここで皆で楽しくやればいいじゃない?」

「 … そ、そうかな?」

「いや … あんたな、あんたかて駆け落ちしてきたばっかりやろ ~

どないして、食うてくつもりなんや?」


源太がそう思うのももっともなことでした。

「自分たちの食べるぐらい、何とかなるでしょ」

楽観的な桜子にめ以子の心も揺れ始めました。

「そうよね … 働けば … 」

朝から晩までこき使われて、嫁とも認められず、1銭ももらえない西門家の嫁より、ひどい仕事なんてないと桜子は言いました。

「そうよね … そこでやれたんだもんね」

「そうよ、もっと自信持っていいわよ ~ だから、どんな仕事も屁の河童!」


… … … … …

「このお嬢さんら大丈夫なん?」

「いや ~ 大丈夫なんですかね ~ 」


不安を感じた源太が尋ねても室井は桜子を見てニコニコしているだけです。

「もう、男なんて当てにしないの ~ 新しい人生を生きるのよ!」

「心の友よ ~ 」


盛り上がったふたりは、ひしっと抱き合いました。

… … … … …

「えっ、戻らんかったんですか?」

め以子の代わりに着替えを届けに来た和枝に、昨晩ふたりが家に戻らなかったことを聞いた悠太郎は驚きを隠せませんでした。

何だかんだ言っても、結局は家に戻っているものばかりと思っていたからです。

「悠太郎さん、あの人はな ~ 西門の家に合いはらしまへんのや。

今回のことでよう分かりはったやろ?」


返事も出来ない悠太郎。

「合わへんところに縛りつけとくんは、それはそれで殺生な話やと思いますで … 」

笑い出したいのを我慢して、神妙な顔をしている和枝。

「 … 分かってますよ、そのくらい」

… … … … …

大阪を見物をしたいという桜子に誘われて、め以子は希子も連れて街へとくり出していました。

屋台を冷やかしながら目に止まった『ちょぼ焼』という可愛いおやつを買いました。

「これ東京にはないわよね?」

「ちい姉ちゃん、食べたことなかったんですか?」


この辺りでは、ごく一般的な食べ物のようです。

… 真四角な本体の上、縦横に丸いふくらみが並んでいて、主に駄菓子屋などで子供たちのおやつとして販売されていました。(現在のたこ焼きの原型とも言われています。)

思えば、ずっと家事が忙しくて街を散策することもなく、名物と称するものもほとんど口にしていないめ以子でした。

「め以子が大阪の美味しいもの食べてないなんてね ~ 」

「改めて考えてみると、私ホントによく我慢したかも … 」


何だかものすごく損をしていた気分のめ以子でしたが …

「?」

ちょぼ焼の丸い部分を見つめていたら、海苔が眉毛に見えてきて … 悠太郎の顔が浮かんできました。

「通天閣だけが男じゃないわよ」

桜子に心を見透かされてしまいました。

「な、何で分かったの?!」

急に黙って何かを考えている様子を見れば誰にでも分かります。

… … … … …

♪いのち短し 恋せよ乙女 ~

突然、歌いだした桜子 … 何年か前に流行した『ゴンドラの唄』でした。

しかし、お世辞にも上手とは言えない、滅茶滅茶な音程です。

「何なの、その歌?」

「 … 違う?」

「違うわよ ~ 」


め以子も歌ってみせました。

「あれっ?」

やはり、メロディがどこかおかしい … 桜子のことを言えません。

ふたりが首をひねっていると、後ろにいた希子がふと口ずさみました。

♪いのち短し 恋せよ乙女 ~

「 … や、ないですか?」

「上手 ~ 」

「きれいな声」


駆け寄るふたり。

「すごい、もう1回歌って!」

恥ずかしそうに手を振る希子 … 実は歌うことが得意で大好きだったのです。

… … … … …

源太がうま介に顔を出した時、居たのは馬介と室井だけで、女性3人は大阪見物に出かけたままでした。

「働くんちゃうかったんか?」

「ねえ、何考えてるんでしょうね ~ 」


まるで他人事のように話す室井、あきれ顔の源太は尋ねました。

「なあ、あんたの嫁さん、あれ何者なん?

何か、わし見たことがない類の人なんやけど … 」


すると、室井はうれしそうに話し始めました。

「いや ~ あの人はね ~ 生まれながらのお嬢さんでね はははっ

いやもう、生まれてから、人に命令しかしたことないんだよ」


大笑いしている室井。

「何でうれしそうなんか、全然わからんけど … 」

「いや、その命令が実によくてね ~ 何だかわからないけど、従っちゃうんだよね」

「それ、働くの絶対向いてないちゃうの?」


室井は桜子の意見を聞いて、原稿を書いていたら、何と初めて佳作に入選したのだと、新聞の切り抜きを見せました。

「彼女は、僕の幸運の女神なんだよ」

話の途中でしたが、馬介が昨晩め以子のために出した料理の代金を室井に請求しました。

「あ、彼女がね … あんな料理で金取るなって」

「えっ?」


絶句する馬介。

… … … … …

そこへようやく女性たちが戻ってきました。

店に入るなり、3人は意味ありげに店内を見回していました。

「ホントだね … 」

顔を見合わせてうなずき合ったため以子と希子。

「うん、何が?」

意味が分からず、男たちは怪訝な顔をしました。

「ああ、この店、絶対流行ってないからって話してたの」

目の前に店主がいるのにも関わらず、遠慮することなく、桜子は言いました。

「へっ?」

唖然とした馬介。

「お前らな、馬介さんの前でそういうこと言うなや!」

慌てて諌めた源太でしたが、桜子は悪びれることなく答えました。

「だから、流行らそうよって、話じゃない ~

私たちは働かなきゃいけないし、だったらこの店流行らせるのが一番いいんじゃないかって」

「あんな ~ やったこともないのに商い舐めんなよ?」

「舐めるも何も … これより悪くなることないでしょ?」

「へっ?」


もうケチョンケチョンです。

「エラそうなこと言うたかて、お前ら素人やろ?」

「素人だけど ~ め以子は洋食屋の娘な訳だし、私も親の商いは見てきたし … 」

「けど …

流行ってないかも知れへんけど、僕には僕のやりたい店あんねん」


自分の店のことなのに … やっと口を出すことができた馬介でした。

すると、桜子は … 

「焼氷は素晴らしいです。

焼氷も河童パンも通天閣パルフェも、馬介さんのアイディアは素晴らしいです」


ほめ殺し?

「ただ … ただ、名前負けしてる。

そこだけ改善したら、ここはすごい店になる ~ だから、焼氷をもっと売れるようにしませんか?」


… … … … …

「そういう話やったら … 」

呆気なく桜子の口車に乗って、にっこりと笑った馬介。

「ええんかい、それで?!」

「よし、じゃあ決まり!

め以子、後よろしくね ~ 」


話がまとまったと分かると、桜子は希子に案内を頼んでまた出かけようとしました。

「えっ、私ひとり?」

「だって、私居ても役に立たないもん … 美味しくしてよ、焼氷」


今度は、室井までついて行ってしまいました。

… … … … …

「もう … 」

すべて任されて困惑しているめ以子

「こんなことやってる場合、違うとちゃうの?」

源太は諭すように言いました。

「わし、どうもしっくりこんのやけど …

西門の人間やないって、そらショックかも知らんけど、女中やおなごしやて散々言われてきたことやろ?

何で今更?」


め以子は、自分のことを分かってくれていると思っていた悠太郎から言われたことがショックだったのです。

「とにかく、私もう決めたから … 働くから!

馬介さん、まず氷の削り方教えてください」


… … … … …

その日、西門家を訪ねたのは、正蔵の長屋によく顔を見せているあの女性でした。

ガス調理を見せてもらうという口実で、正蔵に頼まれて家の状況を探りに来たのです。

お静に案内されて台所に通されると、食事の支度をしているのは和枝でした。

「あの ~ 若いおなごしさんが実演してくださるって … 」

「もう、見られへんかも知れまへんわ ~

やってた子、この人が追い出しはったさかいに」


人聞き悪いと慌てて否定する和枝。

「勝手に出て行ってしまったんどす。

… お酒の飲み過ぎで、どうかしはったんちゃいますか?」

「いや、よう言うわ ~ あないな嫌がらせしてはって」


… … … … …

長屋に戻った女性は、正蔵に見てきたことを報告しました。

「何や、め以子ちゃんおらんかったよ」

「えっ?」

「出て行きはったとか、追い出したとか、言うてはったけど … 」


… … … … …

「う~ん … でもやっぱりまだ、ただのかき氷ですね」

め以子は氷の削り方を工夫したりして、試行錯誤を繰り返していましたが … どうやっても、結局はかき氷にコーヒーのシロップをかけただけのものでした。

「あかんのですか?」

「いや、いけなくはないんですけど … 」


焼氷と呼ぶには相応しいものではない気がするのです。

思案するめ以子と馬介。

そんなめ以子の元を源太に連れられた正蔵が訪ねてきたのでした。

… … … … …

申し訳なさそうに何度も頭を下げる正蔵。

「すまんこっちゃったな ~ いや、こないなことになってしもうて …

わしひとりが悪者になってな、それで「ちょん」っと幕が下りたらと思ったんやけれども … かぼうてくれたんやって?」


やはり、め以子が思っていたように、あの振る舞いは芝居だったのです。

め以子は悠太郎から聞いたことを問いただしてみました。

「師匠、皆のこと放り出して逃げたって … 本当なんですか?」

「和枝とお静がえらいことやり合いおってな、もうどっちか追い出せみたいな勢いになって … で、わしは … どうにもでけなんだや」


本当の話のようです。

「しかも、女の人の所、転がり込んだって?」

一瞬バツが悪そうな顔をした正蔵。

「 … いや、そらまあ、女の方が手っ取り早ようかくもうてくれよるからな ふふふ」

「もう、笑いごとじゃないですよ!」


全て悠太郎の言ったとおりでした。

… … … … …

「あの … もう、わし堪忍してもらおうと思うてへんし、戻る気もない。

なあ、だからわしのことはもうええさかいに … どうぞ、あんた家へ戻ってくれへんか?」


必死に懇願する正蔵でしたが …

「もう、そういうことじゃないんです。

私、もう気力がないんです … 悠太郎さんのためにって、がんばっていけるような … 」


そんなめ以子の言葉を聞いて、正蔵は悲しそうな顔になりました。

… … … … …

その頃、桜子たち3人は屋台のうどん屋にいました。

それはいつか悠太郎とめ以子がふたりで訪れたあの屋台でした。

「桜子さんは、ちい姉ちゃん、離縁した方がええと思ってるんですよね?」

ほぼ1日を共にして、希子は普通に会話ができるほど桜子に打ち解けていました。

桜子は少し考えて答えました。

「う~ん、どっちでもいいかな?」

「じゃあなんで … 」

「絶対に離縁なんてダメって人いるでしょ ~ だったら、離縁すればって言う人がいれば、気が楽じゃない?

皆が同じ方向、向いてるのって、よくないわよ ~ それだけのことよ」


うどん屋の店主が感心しています。

「まあ、氷はいつか溶けるもんだし、なるようになるよ」

室井もそう言いました。

希子は少し気が楽になったようで … 微笑み小さくうなずきました。

… … … … …

馬介や源太たちも引き上げて、店にひとりになっため以子は、調理場で氷を見つめていました。

< 焼氷だって … どうやって、氷を焼くのかね? >

その時、め以子の頭に浮かんだのは … 女学生時代、悠太郎に試験勉強を教わった時に言われた言葉でした。

『料理は科学です』

… 科学で氷を燃やせるのでしょうか?

… … … … …

一方、建築課の悠太郎。

「予算をあと1万削るとなると、どうやっても教室か雨天体操場のどっちかを捨てんことにはな … 」

会議で厳しい状況を語る大村の言葉を聞きながら、悠太郎が思い出していたのは … 和枝のいけずで山のように積まれた鯛を黙々と始末していため以子の姿でした。

『やるしかないのよ』

ハッとする悠太郎。

「 … もう少し、何か考えましょう ~ 捨てるのはいつでも出来ますから」

… … … … …

め以子も何か思いついたのか … また氷を削り始めていました。

< あんたたち、やっぱり … 戻った方がいいんじゃないかと、思うけどね … >

甦る『ゴンドラの唄』―「いのち短し、恋せよ、少女」の誕生と変容

新品価格
¥3,360から
(2013/11/27 20:24時点)



連続テレビ小説 ごちそうさん Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,155から
(2013/11/27 20:24時点)



あまちゃんファンブック2 おら、やっぱり「あまちゃん」が大好きだ!

新品価格
¥1,365から
(2013/11/27 20:25時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月26日 (火) | 編集 |
第50回

め以子を訪ねてきたのは、桜子と室井 … およそあり得ない組み合わせのふたりでした。

その上、駆け落ちしてきたと、桜子は言いました。

「駆け落ちって、ふたりがどうして?」

あまりにも突然、想定外のことにめ以子は混乱しています。

「いや ~ そうなっちゃったんだよ」

デレデレの室井。

「いろいろあってね … 」

駆け落ちしてきた割にふたりから悲壮感のようなものは全く感じられません。

… … … … …

ふたりは、め以子の傍らで様子を覗っている和枝とお静に気づきました。

「どちらがお義母さんですか?」

あちゃ ~ 一番踏んではいけない地雷を室井が踏んでしまいました。

「貫録あるけど、お義姉さんで … お義母さんが童顔でいらっしゃって」

ものすごく気まずく紹介しため以子。

現在のめ以子の立場、状況を全く関知していない上、お姫様気質の桜子は物おじせずに和枝に向かって言いました。

「すみません、あの ~ 住む所が見つかるまで、2~3日ご厄介になれませんか?」

「め以子はんのお友達どすか?

… お泊めしたいのは山々なんですけど、どうも出て行かはるみたいで … 」


にこやかな顔で答えました。

驚いて、め以子のことを見たふたり。

「出てかない … 出て行きませんよ!!」

慌てて否定しため以子ですが、和枝は聞く耳を持ちません。

「そういうことでして、すいまへんけどお引き取りくださいますやろか … そこまで、お送りしますさかい」

玄関わきに置いてあった、ふたりの荷物をつかむと、サッサと外に出て行きました。

「ちょちょ、ちょっと!」

和枝を追うふたり。

「ここ置いときまっせ」

門を出ると道端に荷物を下ろしました。

「 … 待ってください」

後から出て来ため以子共々、3人を外に追いやると、門を閉めて、鍵まで掛けてしまいました。

「やられた … 」

… … … … …

「 … と、いう訳で、たった今、家から追い出されたところです」

め以子はふたりに大まかな事情を説明しました。

「いや ~ 思った以上に大変な家なんだね」

同情しているような口ぶりですが、どこか面白がっているような室井。

「 … 大変なんです」

肩を落とすめ以子。

「ねえ、取りあえず仲直りしてよ」

「えっ?」

「だって、私たち今日泊まるとこないし ~ 」


このふたり、人の話を聞いていなかったのでしょうか …

… … … … …

仕方なく、め以子はふたりを市場へ連れて行きました。

源太や正造以外に頼れる当てもなく、顔見知りといったら、ここの人たちくらいしかいないのです。

まずは、八百屋の女将 ~ おタネに相談しました。

… 当人たちは、関東にはない商品を珍しがったり … まるで観光気分です。

「源太に頼んだらええねん ~ あの子、顔広いさかい」

「え、いや、おタネさん、私今、源ちゃんと会えない … 」


しかし、おタネは源太を呼び止めてしまいました。

「どないした?」

「あんな ~ この人ら、め以ちゃんの東京の友達なんやて … 」


め以子は源太にふたりのことを任せるのもそこそこに、気になっている家へと急いで帰ろうとしました。

「駆落ちしてきてな、落ちつけるとこ探してんのやて ~ どこか安うてええとこ知ら~ん?」

め以子に代わって、おタネが世話を焼いてくれました。

少し考えた源太。

「 … 焼氷屋の上はどやろ?」

「焼氷?!」


その名前を聞いて、め以子の足が止まりました。

… … … … …

源太は3人を焼氷屋へと案内しました。

「ここや」

赤いガラス戸、樽で作った看板に『うま介』と書かれています。

「個性的ね」

室井と顔を見合わせ、つぶやいた桜子。

「ごめん、馬介さん」

店に入りながら店主の名を呼ぶ源太。

鍵はかかっていませんでしたが、店内には誰もいません。

モダン(?)な造りというのでしょうか ~ 馬の置物があると思えば、人形浄瑠璃の首があったり、西洋の甲冑、オルガン … 不思議な空間でした。

壁のいたるところに貼られたメニューは、『河童パン』『山椒ソーダ』『鍵盤サンド』『通天閣パルフェ』などと奇妙な名前ばかり。

め以子は、その中に『焼氷』があるのを見つけました。

… … … … …

「馬介、馬介」と源太が何度も何度も呼んで … それでも誰も出てこないと、あきらめかけた時 …

「何ですか ~ 」

2階から声がして、店主の高木馬介が寝起きのような顔をして下りてきました。

「生きとるか?」

「生きとるで ~ 」

「 … 大丈夫かいな?」


見るからに頼りなさそうな感じです。

「あんな、このふたり、東京から訳ありでこっち来てんて … 」

ふたりは、室井桜子と『夫』の室井幸斎と名乗り、挨拶しました。

「2階まだ空いとったら、貸したってほしいんやけど」

「ああ、ええよ」


ふたつ返事で無事住む所が決まりました。

… … … … …

「じゃあ、私これで … 」

そうです … め以子はこんなところにいる場合ではなかったのです。

「えっ、焼氷は、食べなくていいの?」

桜子に言われて、ひとしきり迷っため以子ですが …

「お、落ち着いたら、また来るから」

後ろ髪をひかれる思いで、帰って行きました。

… … … … …

「あんさん、どないなつもりや?!」

息を切らして家の前まで戻って来ため以子は、和枝の怒鳴り声で足を止めました。

め以子の荷物を積んだ大八車を動かそうとしている和枝の前に立ちはだかっているのは … 希子です。

「どきい!

どきて、どきて言うてるんや!」

「あ、戻ってきた」


め以子に気づいたお静。

大八車を引く和枝を唖然として見つめるめ以子。

「何や? 心、入れ替えはったんでっか?」

「入れ替えてません … けど、出てくつもりもありません!」

「そんな言い分通ると思うてますんか?」

「お義姉さん … 」

「はいはい、どいて ~ 希子、あんたもどきいっ!」


業を煮やして、大八車を動かし始めた和枝。

「お義姉さん、師匠は … 」

「 … うちも出てく」


… … … … …

「ちい姉ちゃんが出ていくのやったら、出てく」

顔を上げた希子は、生まれて初めて和枝に逆らい、そして反抗的な目でにらみつけました。

「希子ちゃん … 」

一瞬絶句した和枝でしたが …

「ほうか …

ほなもう、勝手にしいっ!」


大八車から手を放すと、家に入って行ってしまいました。

… … … … …

建築課。

「で、何かええ案、思いついたか? 赤門」

大村に尋ねられましたが、悠太郎にもこれといった打開策は見つかっていませんでした。

「しゃあないから、教室の数減らすか?」

「それは、反対です。

子供たちにはゆとりある空間で学んでほしいんです … せやったら、校長室や職員室、あと便所の面積を見直しませんか?」


そんなやり取りをしている時、め以子が訪ねてきたと藤井が伝えてきました。

… … … … …

廊下で待っていため以子。

「何ですか?」

正蔵のことに加えて、仕事も思うようにはかどっていない悠太郎はいつになく素っ気なく言いました。

「お義姉さんに、お義父さんに会うなら出てけって追い出されて … 1階に希子ちゃんも」

「希子も?」


意外という顔をした悠太郎。

「私が行くなら、一緒に出てくって」

あの希子が … にわかに信じがたいことではありましたが、今の悠太郎には深く考える余裕がありません。

「そうですか … 」

平然を装いそう答えました。

「 … それで?」

その言い方は、め以子にはひどく冷たく感じられました。

… … … … …

「お義父さんのこと、許してくれない?」

黙って目を伏せた悠太郎。

「私の知ってるお義父さんはね ~ 優しくて、面白くて、皆に慕われてる、そういう人なんです。

昔、いろいろあったことは分かるけど …

今は別人っていうか、きっと変わったんだと思うのよ。

だから … ちょっと考え直してみてもらえないですか?」


視線を挙げた悠太郎、逆にめ以子に質問しました。

「 … そもそも、あの人が戻りたいって言うたんですか?」

「そんなことは言ってないけど … 」

「あの人が居て、誰が楽しくなるんですか?」

「えっ?」


悠太郎の顔を改めて見つめため以子。

その眼は、正蔵に対する憎しみで染まっているように見えました。

「楽しくなるのは、あなただけやないんですか?

あの家の誰も、あの人も、戻ることなんて望んでないと思いますけど」


確かにそうかもしれない … いや、違う …

「私は望んでます!」

「あなたは西門の人間やないでしょ?」


… … … … …

悠太郎は口にしてしまった瞬間、「しまった」と言う顔をしました。

「 … あの10年を一緒に過ごしてないという意味でです」

しかし、後の祭り …

「そりゃ、そうだけど … そんなこと言ったら、嫁は何も言うなってことになるじゃない。

私は私なりに一生懸命、悠太郎さんや皆がどうしたら楽しくなるかって考えてやって来てる訳なんだけど」

「それは感謝してますよ。

感謝してますけど、今回のこれは違うって言うてるんです」

「 … 決めるのは悠太郎さんなの?

何が正しくて、何が間違ってるか、決めるのは悠太郎さんなの?

悠太郎さんが望んでることをやってるうちはいいけど、それを外れたらダメって … そういうこと?!」

「そんなこと言うてないやないですか?!」

「言ってるじゃない?!」


もうお互い感情的になってしまっていて … 話せば話すだけ、取り返しのつかない方向へ進んでいくようです。

… … … … …

「私の判断は要らないってことでしょ?

お前は分かんないんだから、黙っとけ ~ そういうことでしょ?」

「 … つきつめて言えば、そういうことになるかも知れませんね」


ヤケになるな、悠太郎 …

「ほな、仕事に戻りますんで … 」

踵を返した悠太郎の背中に向かって、め以子は問いかけました。

「私を … 私を幸せにするって言ったじゃないですか?

私がその方が幸せだと言っても、お義父さんを許してはくれない訳ですか?」

「 … 許せませんね」

「それは、私の気持ちより、自分の気持ちの方が大事ってことですよね?」


振り向いた悠太郎。

「私より、自分の方が大切ってことですよね?」

少し動揺した悠太郎は何か言おうとしましたが …

「分かりました … よく …

よっく分かりました!」


め以子は涙をこらえ、そう言い捨てると、悠太郎の前から立ち去りました。

後を追うこともせず、悠太郎もまた職場へと戻って行きました。

… … … … …

うま介の住人となった桜子と室井。

桜子たちから、め以子が家を追い出されたことを知った源太。

そのまま放って帰ることも出来ず、結局ここに残って、3人でどうしたものかと思案していました。

「何や、しち面倒くさいことになってんな … 」

「め以子は要領悪いからね ~ 」


桜子の言葉にうなずく室井。

… … … … …

その時、店の入り口が勢いよく開いたと思ったら、しかめっ面のめ以子が突っ立っていました。

「あれっ … もう落ち着いたの?」

確かに落ち着いたら、また来るとは言っていましたが、とてもそんな風には見えません。

「誰?」

源太が後ろに控えている希子を指さしました。

「 … あ、妹です」

「えっ?」


蚊の鳴くような声だったので聞き返しました。

「何か荷物持ってきたの?」

店の外に止めてある、荷物を積んだ大八車を見て、室井が尋ねました。

「 … あんた、もしかしてまさか??」

その言葉をきっかけに、わっと泣き出しため以子。

倒れ込むように桜子に抱きつきました。

「め以ちゃん?!」

「ど、どないしたんや?」


… … … … …

「め以子、何があったの?」

桜子の腕の中でめ以子は泣きながら話し始めました。

「 … 4時に起きたの」

「そこからか?」

「起きて、皆のご飯用意して … 片付けて … お掃除して … お見合いの準備して … 」


まるで幼子のように拙いめ以子の話を一同はいちいちうなずきながら耳を傾けていました。

「邪魔したら、蔵に閉じ込められて … 出されたら、お義父さん寝てて … 許してあげてって言ったら、追い出されて … 」

「うんうん、その辺はもう聞いた」

朝から何も食べてないの ~ 


… … … … …

「えっ、そこか??」

拍子抜けした源太。

「焼氷頼んで!」

桜子は室井に言いつけました。

「えっ、でももう、馬介さん帰っちゃったよ!」

「連れて来なさいよ ~ 倍付で払うって言って」


脱兎のごとく飛び出して行った室井。

… … … … …

め以子は桜子の膝の上で泣き続けています。

「あ、あの … ちい姉ちゃん … 」

聞き取れないような小さな声で話しかけてきた希子の顔を桜子は見ました。

「大っきな声で!」

「あ、あの、ちい姉ちゃん … ずっと女中扱いされてて … で、祝言も挙げてもらえんと、それでも一生懸命、皆のためにがんばってきてくれたんです」


人見知りの希子ですが、桜子にめ以子のこと伝えようと、精一杯の声を出していました。

「それやのに、お兄ちゃんに『西門の人間やないねんから、口出すな』って言われたみたいで … 」

… … … … …

悠太郎は、実家に帰っていた間の遅れを取り戻そうと、黙々を図面を引いていました。

顔を見合わせた藤井と大村。

まず藤井が遠慮がちに話しかけました。

「あの ~ さっき、嫁さんとケンカしてたよね?」

廊下に出て話していたとはいえ、あれだけ言い争っていれば、内容までは分からないにせよ、ほぼ筒抜けでした。

仕事の手を止めた悠太郎。

「とにかく今日は帰った方がええんちゃう?」

「後は、わしやっとくさかい」


大村も心配していました。

「帰っても僕からは、あれ以上言うことはありませんので … 」

ふたりの好意は受け取らずに、再び手を動かし始めました。

… … … … …

しばらく時間が経って少しだけ気持ちが静まっため以子。

悠太郎の心無い言葉に傷ついた彼女は、ある決意を口にするのでした。

「私、離縁する」

駈落ち (光文社文庫)



NHK連続テレビ小説 ごちそうさん 上

新品価格
¥1,365から
(2013/11/26 20:48時点)



Kindle版

NHK連続テレビ小説 ごちそうさん 上



あまちゃんアンコール~連続テレビ小説「あまちゃん」オリジナル・サウンドトラック 3~ あまコレBOX付コレクターズエディション【初回限定盤】

新品価格
¥3,675から
(2013/11/26 20:49時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月25日 (月) | 編集 |
第49回

< 和枝が持ってきたお見合いを、め以子は何とか壊そうとしたものの、蔵に閉じ込められてしまいます。

そこに現れたのが … 死んだはずの悠太郎の父親でございました >

「私、この人のこと知ってるんですけど … 」

め以子が蔵の中で見つけた写真、そこにはお静と並んで写っている捨蔵の姿がありました。

< ついに、西門家の秘密が明かされるのでございます … >

… … … … …

酔いつぶれて、座敷でイビキをかいて寝ている捨蔵。

彼は、なんと和枝、悠太郎、希子の実の父親 … 西門正蔵だったのです。

その傍らに座り込んだままの希子。

め以子が捨蔵を連れて来たのではないかと疑っている和枝は、まるで尋問でもするかのように尋ねました。

「ほな、呼んできた訳やないんやな?」

「違います!

その … 相談はしましたけど … 」

「相談?」

「お見合いのこととか、どうすればいいかとか … 」


それを聞いて、和枝は目くじらを立てて怒りました。

「あんさん、口出しできる立場やないやろ!」

め以子は、救いを求めるような目で悠太郎を覗いましたが … 顎に手を当て、うつむいたままです。

「大体、何で知りおうた?」

お静が訪ねました。

「 … お料理上手いお爺さんがいるって、お肉屋さんに紹介されて … 」

肉屋と言う言葉に反応して、横目でめ以子をにらんだ悠太郎。

「でも、私も源ちゃんも師匠がお父さんだなんて、全然知らなくて ~

師匠もそんなことひと言も … 酉井捨蔵って名前」

「 … 分かりました」


め以子の言葉を遮るように、悠太郎が口を開きました。

「分かりましたから、とにかくもう二度と … あの人と会わんとってください」

「え、何でですか … お見合い壊したから?」

「どうもこうもない! あかんもんは、あかんのや!」


正蔵には、もう会うなと言う悠太郎と和枝、お静にいたっては死んだことになっているとまで言いました。

「何でそんなことになってるんですか? … 本当に死んだと思われてたんですか?」

「あんさんは、知らんでよろし!」


取りつく島もなく和枝にはねつけられました。

… … … … …

「僕らはあの人に捨てられたんです」

「捨てられたって … 」


悠太郎の言葉に戸惑いを隠せないめ以子。

「そんなこと、この人に話さんでええやろ?」

和枝はそう言いましたが …

「もう、知っといてもうた方がええんとちゃう?」

お静に言われて、悠太郎はこれまでの事情を話し始めました。

… … … … …

「あの人は、元々鉱山の技師をしとって、ほとんど家にはおらん人やった … 」

年に何回かだけ帰ってきて、家のことは悠太郎たちの母親に任せきりだったのですが、その母親が火事で亡くなってしまったことで、仕事を辞めて家に戻ってきたのでした。

「そしたら、1年も経たんうちに、お静さんを連れてきて …

『今日から、お前らの世話をしてくれる新しいお母さんや』って」

「えらいこと頼み込まれてな ~ 可哀そうになったから、うちは親切でここに来てあげてんで … 」


長くなりそうな、お静の話を制して、悠太郎は続けました。

「正直、早すぎるんやないかとも思ったけど … 」

正蔵が立ち直るのならと口出しはしなかったのですが … その矢先、和枝が嫁ぎ先から戻って来てしまったのでした。

「ほしたら、この人に追い出されそうになってな ~ 」

「妹らの世話しに来はったって言わはるから、わて戻って来ましたさかい、お引き取りいただいてよろしいですって … 」


ふたりの間で言い争いが起きそうになりましたが、話を急ぐ悠太郎に止められました。

「まあ、こんな状態が続いて …

ある日突然、いきなりおらんようになったんです」


… … … … …

「けど、何か理由があったんじゃないの?」

め以子はどうしても正蔵のことを悪くは思えないのです。

しかし …

「 … 結局、見つかったのは温泉宿でした」

そこで酒びたりの上に、女中といい仲になっていて …

「それでも、姉さんとお静さんは事情があるんやないかと思って、迎えに行ったんです」

ふたりの顔を見た正蔵は、裸足のまま泡食って逃げて出してしまったのでした。

悠太郎の話を、お静は唇をかみ、和枝は目を閉じて聞いています。

… … … … …

「その時やっと、僕らは捨てられたんやって分かったんです。

それから、もう親父は死んだと思おうって、皆で決めて …

そうやって、僕らはずっと生きてきたんです」


これがこの家に起こった出来事の核心 … 本当の歴史でした。

「知らんと会うてたことやし、責めるつもりはないけど …

これからは、あの人と会わんとってください」


… … … … …

悠太郎の話を聞き終わって、め以子は、正蔵のことを思い返していました。

『また、いつでも好きな時に来なはれ』

『妹さんの気持ちというのが、一番大事なんやないんかいな … 』

自分が知っている正蔵を、悠太郎の話に出てくる人物とは重ねることができないのです。

「けど … だけど、師匠 … 何ていうか、皆のこと思ってますよ。

私に親切にしてくれたのだって、きっと私が悠太郎さんの嫁だから … 」

「それは、あなたの思い込みとちゃいますか?!」


和枝が意外に思うほど、悠太郎はめ以子にきつく返しました。

それでも、素直にうなずくことができないめ以子。

「今日のことだって、希子ちゃんのこと心配で見に来てくれて …

ああいう方法で、泥をかぶって止めようとしてくれたんじゃ?」


… … … … …

「あの … 」

座敷にいた希子が、気まずくなって黙り込んでいた一同に声をかけました。

「なんや、希子?」

「お父さんが … 」


いつの間にか座敷で大の字になってイビキをかいていたはずの正蔵の姿が消えていました。

… … … … …

「痛い痛い痛い … 」

正蔵を蔵から力ずくで引きずり出した悠太郎。

「仏さんに近い人間は、もうちょっと優しく扱うもんや!」

正蔵は悠太郎の手を振り払って、悪態をつきました。

「それ、返してください」

しまったという顔をした正蔵は、カンカン帽に隠していた包みを悠太郎に返すと、裏口から出て行こうとしました。

「まだあるでしょ?」

「 … 厳しいな」


ため息ひとつついて、懐から懐中時計を取り出した正蔵。

「そんなことやろうと、思ったわ」

あきれ顔の和枝。

「師匠、何でこんな??」

め以子には信じられないことでした。

そんなめ以子に正蔵は懇願して言いました。

「め以子さん、小遣い5円ほど、都合してくれやらへんかな?」

いきなり正蔵の肩をつかんで激昂した悠太郎。

「帰れ!

… 二度と戻って来んな」


正蔵はすごすごと帰っていきました。

「うわべは優しそうに見えるかも知れんけど、本性はああいう人なんです。

あなたも分かったら … 」

「違うと思います!」


… … … … …

「だって、師匠、お金なんて必要ないもの。

そんなのなくても楽しそうに暮らしてるし … 今のはわざと自分が悪者になろうと」

「とにかく、金輪際会わんとってください」


悠太郎らしくもなく、頭ごなしに言いました。

「 … 嫌です」

め以子は逆らいました。

「会いたいです。

私、師匠 … 好きですから」


憤然としている悠太郎。

「だって、だって師匠 … 皆のこと本当に心配してるもの。

昔は、そりゃいろいろあったかもしれないけど ~ 今は、ホントに … 悪いとも思ってるんだろうし …

昔のことは水に流して、受け入れてあげたら … 」

「無理です!」


… … … … …

「それだけは、絶対に無理です」

「どうして?」


頑として受け入れない悠太郎、め以子は悲しくなってきました。

「理由は先ほどお話したと思います。

… すいませんけど、もう仕事に戻らなあかんので」


そう冷たく言い放ち、背を向ける悠太郎。

「ちょっと待ってください」

「あなたがどうしても会うというのなら …

この家を出て行っていただくしかありませんね」


め以子は我が耳を疑いました。

悠太郎の口からまさかそんな言葉が出てくるなんて … 。

それに、こういう時の敬語は、余計に突き放された感じがするものです。

「ちょ、ちょっと待って」

「仕事や言うてはるのが、聞こえまへんのかいな?」


ここぞとばかりに、め以子を咎めた和枝。

「あんさんのせいで、蔵ん中も家ん中も滅茶苦茶だすけど?

早う、始末しはらな … 」


あわよくば、悠太郎とめ以子の仲が、自分が望むような方向へ進んでいきそうな … そんな雰囲気を察しているのでしょう。

… … … … …

大阪市役所、建築課。

「いやあ、糠ってホント難しいですよね ~ 」

悠太郎の代わりにめ以子の糠床の世話を買って出た藤井。

さっきから何やら糠床に向かって話しかけています。

「と言うのもね、うちの嫁は生糠が好き言うんですけども、お袋は煎り糠が好きなんですよ」

< どっちも美味しいと思うけどね? >

「せやから、うちには糠床がふたつあるんです」

< どっちも食べられて、いいんじゃないですか? >

「どっちも食べられるのは、ええんですけどね ~ 問題はどっちも美味しいないゆうことなんですよ ~

どうやったら、こんな美味しい糠床になるんですかね?」


傍から見たら、ひとりごとにしか聞こえません。

< 塩が多すぎるとか、混ぜ方が悪いとか … >

「何をブツブツ言うてんねん ~ 気色の悪い!」

見かねた大村が注意しました。

「いや、僕、この糠床とおると妙に落ち着くんですよ ~ 」

「落ち着くな! … 落ち着いてる場合やないやろちゅうねん?

わしら、休日返上で働いてとるんやで!」


… ごもっともです。

… … … … …

「遅なりました … 」

そこへ実家から悠太郎が戻ってきました。

「西門君、おかえり ~ 」

待ち構えていたように、糠に漬けてあった玉ねぎや赤ナスを差し出した藤井でしたが …

「今は遠慮しときます」

< そう、カリカリしないで、ひと息入れない? >

あまりにも素っ気ない態度を不審に思ったのか …

「何かあったのか? お見合い」

「説明すると、終わらなくなりそうなんで、割愛させていただきます」


… … … … …

「悠太郎さんまで怒るとは … 」

座敷の後始末をしながら、め以子は手伝ってくれている希子にボヤいてしまいました。

「 … ごめんなさい」

「希子ちゃんが謝るようなことじゃないでしょ?」

「けど、うちがうじうじしてたからこんなことに … 」


希子は、原因は自分にあると責任を感じていました。

「遅かれ早かれ、こういうことにはなってたと思うわよ」

め以子の言うとおり、希子のことがなくてもいつか正蔵のことが発覚すれば、同じようなイザコザは起きていたでしょう。

「何か上手い方法ないかな … 師匠と仲直りする」

め以子は、自分のことより、正蔵のことを心配していたのです。

「お父さんおらんようになって、お兄ちゃんとお姉ちゃんはずっとお金の苦労してきたし … お静さんは『人生狂った』って、恨んでるし …

さすがに難しいと思います」

「希子ちゃんは … 希子ちゃんは、どう思ってるの?」


そう尋ねられて、少し考え込んだ希子。

「皆ほどきつい気持ちはないけど、でも、お兄ちゃんとお姉ちゃんの気持ち考えたら … 」

幼かった故、希子にはほとんど実感として残っていないのかも知れません。

「そうよね ~ 」

… … … … …

ドサッ

その時です。

2階から、風呂敷包みが放り投げられて、ふたりの目の前に落ちました。

それは、め以子の持ち物でした。

め以子が慌てて手に取り、階段下から2階を見上げると … 和枝がもうひとつ同じように放り投げました。

間一髪、身をかわしてよけため以子。

「お義姉さん、止めてください!」

「手伝うてあげてますのやん」

「えっ?」


和枝の言っている意味がよく分からないめ以子。

「せやかて、あんさん、出て行きはんのやろ?」

「で、出て行きませんよ!」

「ほな、あの人には会いはらへんの?」

「それは … 話し合いたいと思います」


和枝の思う壺でした。

またひとつ風呂敷包みを放ってよこしました。

「止めてください!」

「あんさんの図々しいことには開いた口がふさがりまへんわ ~

来て3月で、ようもそないに家のことに口挟めますな!」


そう言いながら、また放りました。

… … … … …

「ちょっと、め以子さん … お客さんやけど?」

玄関の方からお静の声がしました。

それどころではないのですが … 仕方なく応対に出ため以子。

… … … … …

玄関で待っていたのは … 懐かしい顔でした。

「桜子、室井さん?!」

奇妙なあり得ない組み合わせのふたり。

「 … どうしたの?」

「駆け落ちしてきたの」


微笑みながら、桜子はあっけらかんとそう言いました。

「ええっ?!」

父、帰る [DVD]

新品価格
¥4,011から
(2013/11/25 20:13時点)



NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」ごちくん'sキーホルダー「ごちそうさんロゴ」(カラー)

新品価格
¥525から
(2013/11/25 20:15時点)



NHK連続テレビ小説「あまちゃん」完全シナリオ集 第1部 (単行本)

新品価格
¥1,785から
(2013/11/25 20:18時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月24日 (日) | 編集 |
まずは、先週のおさらいを …



それでは、次週の「ごちそうさん」は?

師匠(近藤正臣)が悠太郎(東出昌大)らの父・西門正蔵だと知って驚くめ以子()。正蔵は鉱山の技師だったが、後妻の静(宮崎美子)と和枝(キムラ緑子)の折り合いの悪さに耐えかねて、逃げ出したのだった。

正蔵に会うことを許さないという悠太郎に、め以子は反発する。

そこに駆け落ちしてきた桜子(前田亜季)と室井(山中崇)が現れ、仰天するめ以子。とりあえず源太(和田正人)を頼り、馬介(中村靖日)の焼氷屋「うま介」に間借りすることに。

それだけは絶対に無理です!

私、離縁する!


め以子は希子(高畑充希)とともに悠太郎を職場まで訪ね、正蔵との和解を説くが、けんもほろろな態度に腹を立て、自分もうま介に駆け込み、離縁を宣言してしまう。平静を装うが、ショックを受ける悠太郎。

驚きを超える感動が …

一方め以子はふとした拍子に希子の歌がうまいことを知る。客の来ないうま介を流行らせようと、焼氷の改良に取りかかるめ以子。室井は宣伝の歌を作る。

アホですわ、アホ。

源太は市役所に押しかけ、正蔵との確執やめ以子への気持ちを語ろうとしない悠太郎をなじる。

焼き氷は素晴らしいです。

♪あなたも私もテーブル囲んで、ドレミファソ ~


め以子が工夫をこらした焼氷が完成し、発売当日、希子は思い切って焼氷の歌を歌う。め以子の焼氷は飛ぶように売れ、店を閉めようとしたとき現れたのは悠太郎だった。

ごちそうさん 公式サイト、YAHOO!テレビガイド他を参照)

連続テレビ小説 ごちそうさん Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,155から
(2013/11/24 15:27時点)



ピアノミニアルバム 「NHK連続テレビ小説 ごちそうさん」

新品価格
¥735から
(2013/11/24 15:27時点)



NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」 雨のち晴レルヤ (NHK出版オリジナル楽譜シリーズ )

新品価格
¥600から
(2013/11/24 15:28時点)



ギターピース186 雨のち晴レルヤ by ゆず

新品価格
¥525から
(2013/11/24 15:29時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月23日 (土) | 編集 |
第48回

「どうやったら、ご飯が楽しいお家になるのか、どうしたら、ならないのか …

ちゃんと、その眼で見て考えてから、お嫁に行きなさい」

め以子の言葉に希子はしっかりとうなずきました。

しかし、お見合いは翌日 …

「と言ったところで、お見合い止めるって言って、お義姉さん聞いてくれる訳ないだろうし … 」

無暗に和枝の顔を潰す訳にもいきません。

明日ために一時帰宅した悠太郎に余程相談しようかとも思いましたが … め以子は思い止まりました。

< そうそう、言うと巻き込んじゃうことになるもんね >

結局、考えついたのは、自分が粗相して、お見合いを潰すという手段でした。

… … … … …

明くる日、見合い相手の紙問屋の三島の跡取りとその両親を連れて倉田が西門家を訪れました。

見合いの席、倉田による紹介の後、挨拶を交わす両家の面々 … しかし、自分の番が来ても、希子はうつむいたままです。

「希子、ご挨拶は?」

和枝にうながされても、挨拶できません。

「すんません、あがってもうて、顔も上げられんみたいです」

「いや、えらいこと『隠者もん』っていうのは、ホンマなんですね」


… 内気で引っ込み思案ということです。

「すんません、奥手な子で … 」

にこやかな顔をしている和枝ですが、内心はヤキモキしていました。

… … … … …

「口が立つ嫁ほど、厄介なもんもおまへんさかいに、ありがたいお話でごわんな」

そう言いながら、湯呑のフタを取った三島の女将の手が止まりました。

「 … 何か?」

和枝が尋ねると、茶碗を差し出して見せました。

「このお茶碗、危のうおまっせ」

ふちが欠けてギザギザになっています。

「ああっ、すんません ~ これっ!」

慌てて、め以子を呼ぶ和枝。

「あ ~ 、ごめん!」

無作法に座敷に入ってきたかと思うと「替えるね」と母親の手から無理やり湯呑を奪い取りました。

「あっ?!」

父親の湯呑には虫が入っていました。

「あははは、いつ入ったんでしょう? … これも替えますね」

その湯呑をお盆に乗せようとして勢い余って隣の息子のひざにお茶をこぼしました。

「熱っ!!」

そりゃもう大騒ぎ …

「あんさん、何やってはんの?」

「あ ~ 、ごめんなさい。

いつもこうなんで、すいません、ホント … あははは、あはは」


ふすまを無造作に閉めて出て行きました。

… … … … …

「すんません、ホンマにすんません」

平謝りする和枝。

「おなごしさん、代えはった方がよろしんちゃいますか?」

「おなごしちゃいます … 僕の家内でして」


悠太郎の言葉に絶句する三島夫妻。

「しきたりでしてな … あの、嫁には1年間、おなごしをしてもらいまんねん」

「 … ほな、あの方、いずれ親戚に?」


不安そうに尋ねる女将の声をふすまの外で聞いていため以子は、してやったりとほくそ笑んでいました。

「今日は、あがってるんやと思うんだす … いつもは、ホンマにようでけた子で」

「 … 何で今日だけほめるのよ?」


め以子は次の手のために台所へ引っ込んで行きました。

… … … … …

「お茶の神様、お塩の神様、ごめんなさい」

引きあげてきた3人の湯呑の中にそれぞれひとさじの塩を落としました。

「あんた、何してるの?」

よりによって、お静に目撃されてしまいました。

和枝にお見合いの席に顔を出さないようにくぎを刺されていたお静ですが、やはり気になって覗きに下りてきたところでした。

「お茶に塩入れてるの?」

言葉に詰まるめ以子。

… … … … …

座敷では、三島の息子がバイオリンを弾けることが話題に上っていました。

「よろしゅうおすな ~ 希子、聴かせてもらい、なあ?」

盛り上げようと必死な和枝、しかし希子は相変わらずうつむいたままです。

「よろしいですよ、希子さん … ぜひ」

… … … … …

「 … 水臭いな ~ そうなら、そうと言うてくれたらええのに」

まずいところをお静に見つかってしまっため以子は、止むを得ず、企みを打ち明けたのです。

「和枝ちゃんの顔潰すなんて、おもろいやんか ~ 」

「だから言わなかったんです。

お義姉さんはお義姉さんなりに、希子ちゃんのこと考えてやってる訳ですし … 」


ところが、ふたりの会話は、お茶の催促に出てきた和枝にしっかりと聞かれてしまっていました。

… … … … …

和枝はそんなことは臆面にも出さず、台所に顔を出しました。

「め以子はん、あのな ~ 」

いきなり現れた和枝に驚くふたり。

「あ、あの、お茶はすぐに … 」

「ああ、取りあえず、お茶はええさかい ~ 掛け軸捜すの手伝うてくれはる?」

「掛け軸?」


何故、お見合いの途中で掛け軸が必要なのか?

「ほな、まあ、せいぜい気張ってな ~ あんじょうやりや」

お静は出かけて行きました。

… … … … …

和枝はめ以子を蔵へ連れて行きました。

「お義姉さん、どの箱ですか?」

「あめ色のちょっと変わったんおまへんか?」


薄暗い蔵の中、積まれた木箱を動かして、和枝が言うような箱を探すめ以子。

夢中になっていて、和枝がそっと後ずさりして、蔵の外に出たことに気づきません。

蔵の扉が閉まる音に振り向きました。

「えっ?」

慌てるめ以子 … 扉は押しても引いてもビクとも動きません。

「お義姉さん? … お義姉さん、開けてください」

どうやら、掛け軸云々はウソで、ここにめ以子を閉じ込めることが目的だったようです。

… … … … …

邪魔者を追い払った和枝は、自らの手でもてなし始めました。

三島の主人が好きだという料理屋の仕出しを用意し、酌までしています。

「お姉さん、手ずからやっていただいて、何やすいまへんなあ」

「とんでもないことでね、不手際ばかりで … どうぞ、お上りになっておくれやす」


… … … … …

一方、閉じ込められため以子は … 何とか外に出ようと、奮闘中でした。

< ああ、別な入り口探してんのかい? … ないと思うけどね >

閉められた扉以外に出入り口はないのか懸命に探しましたが、やはり見つかりませんでした。

< まあ、見合い終わったら、開けてくれるんじゃ …

終わったらじゃ、ダメなのか?! >

ふと、上から光が差し込んでいることに気づいて、見上げため以子。

天井近くに小さな格子窓がありました。

< 無理じゃないかね? … 柵もあるし >

しかし、め以子は裸足になって、箱の上によじ登りました。

柵に手をかけた時、足元に積まれていた書物の山が崩れてしまいました。

「わ ~~~~ !!」

… … … … …

「め以子は?」

姿を見せないめ以子のことを不審に思った悠太郎は和枝に尋ねました。

「寝させた … 熱があったみたいで、それでおかしかったみたいやわ」

たったひとりの味方を失った希子 …

… … … … …

何とか怪我はせずに済んだめ以子でしたが、蔵の中には崩れ落ちた書物が散らばっていました。

拾い集めていると、その中に写真の台紙が混ざっているのを見つけました。

何気なくそれを開いて写真を見るめ以子。

「?!」

… … … … …

和やかに食事は進み、和枝の思惑通りに事は運んでいました。

「希子はん、全然手つけてはらへんけど?」

相変わらず、ひと言も話さず、料理に手をつけることもせず、ただうつむいて座っているだけの希子。

三島の女将が気にかけています。

「胸がいっぱいやもんな ~ 」

和枝が取り成しましたが、希子の表情は辛そうに見えました。

「希子、何かあるんか?」

心配した悠太郎に声をかけられ … 初めて、口を開きました。

「う、うち … 」

蚊の鳴くような声 … 一同の目が希子に注目します。

和枝がそのまま続けるように、にっこりと目で合図しました。

… … … … …

「 … うちは … うちのようなもんは、三島さんのような立派なお家には … 相応しくないんやないかなと」

震える声でそこまで言うと、言葉に詰まってしまいました。

「いややわ ~ すいません、この子緊張して … 」

「いや、そうやなくて … 」


ところが、この希子の言葉に三島の息子がいたく感激してしまいました。

「ええわ、ええ子やな ~ 希子さん」

「ホンマにな、今時こんな控えめなお嬢さんいてはらへんわ」


両親も一緒に感心して希子を見ています。

「う、うちはホンマに … 何の取り柄も … 」

その時です。

突然、西門家が座っている後ろのふすまが勢いよく開かれ … 倒れ込むように入ってきたのは、酉井捨蔵でした。

… … … … …

目を見開き、その姿を見つめ、絶句する悠太郎、和枝、希子。

「 … ごめんなすって」

酔っぱらっているのか、捨蔵はヘラヘラしながら、その手には水ナスが握られていました。

「正造はん … 戻ってきはりましたんでっか?」

驚く倉田は捨蔵のことを知っているのか … しかし、何故か正造と呼びました。

「知りまへん … ほんまに何で?」

捨蔵に見つめられて、怯える和枝。

捨蔵がそのまま三島親子の前に歩み出ようとした時、立ち上がった悠太郎が腕をつかんで阻止しました。

「出てってください」

「離せ」


その手を振りほどいた捨蔵。

「本日は … 」

「出てって!」


帽子を取って挨拶しようとした捨蔵を引き戻した悠太郎。

「おいっ、父親に向こうて、出てけはないやろ?

えっ、せっかく戻ってきたんやないかい!」


… … … … …

父親?

捨蔵は確かにそう言いました。

「一体、どういうことでっか?!」

三島の主人が声を荒げて倉田を問いただしています。

「お亡くなりになられてるって伺ってましたけど … 」

「へ ~ 死んだことになっとりましたんですかいな、わて」


笑いながら腰を下ろした捨蔵。

「何とまあ、ひどい話でんな ~ 」

傍らにあったお銚子を勝手につかむとラッパ飲みしました。

「出てけって!」

悠太郎の言うことを聞かずに三島夫妻の間に座り直しました。

「いや、あのな ~ これあの、早速でなんでございますけれど …

10円貸してもらえまへんやろか?」


今にも卒倒しそうな和枝。

「いやホント、手詰まりでございまして ~ 娘も息子も冷たいんで、小遣いもくれまへんのや … 」

… … … … …

「おいっ、ええ加減に!」

引きずってでも追い出そうとする悠太郎。

しかし、そうはさせまいと捨蔵は必死にあがきます。

「5円でもよろしいわ ~ なあ、ちょっと5円、わ … 」

急に苦しそうに胸を抑える捨蔵。

次の瞬間、その場にもどして、ぶっ倒れてしまいました。

… … … … …

お静が頃合いを見計らって戻ってくると、憤然とした顔の三島親子が引き上げていくところでした。

「ホンマにすいませんでした」

深く深く頭を下げて見送る和枝、悠太郎、そして倉田。

3人が見えなくなると、ふたりは今度は倉田に頭を下げました。

「ああ、ええ … わてが何とかするさかいに」

「ホンマにすいませんでした」

「ええがな、ええがなもう、和枝ちゃん … 頭上げて」


気の毒になるほど、倉田に詫びを入れている和枝。

「どないしたん?」

お静は悠太郎に尋ねましたが、黙ったままです。

… … … … …

そそくさと家に入ったお静、座敷の剣幕を見て、顔をしかめました。

そして …

その真ん中に大の字になってイビキをかいている捨蔵を見て、顔色を変えました。

「えっ?! … いや、ええ??」

傍らには放心状態の希子が座っています。

「いや ~~ 」

逃げ出して玄関まで来たお静。

倉田を見送って戻ってきた和枝に尋ねました。

「 … あれ、あれ何、何で?」

「知らんがな … 」


こっちが聞きたいというような顔をしました。

「和枝ちゃんが?」

「わてが呼びますかいなっ!」

「ほな、誰が?」


そう聞かれて … 和枝の頭に浮かんだのはめ以子の顔でした。

… … … … …

蔵の扉が開いて、険しい顔をした和枝が顔を出しました。

「あんさんがあの男呼ばはったんか?」

責めるように問いただすと、め以子は写真を見ていた顔を上げて、和枝の方を見ました。

その表情は困惑しています。

「あの … お父さんって、亡くなられてるんですよね?」

やはり、この女が … 和枝はめ以子のことをにらみつけました。

「私、この人のこと知ってるんですけど … 」

手にしていた写真を和枝の方に向けて、その人物を指さしました。

… め以子が指さした男、その写真にお静と並んで写っているのは捨蔵だったのです。

< ついにめ以子は、この家の本当の歴史を … この家に起こった出来事の核心を知ることになるので、ございました >

お見合い (角川ホラー文庫)



雨のち晴レルヤ / 守ってあげたい

新品価格
¥1,190から
(2013/11/23 19:08時点)



あまちゃんメモリーズ 文藝春秋×PLANETS

新品価格
¥1,365から
(2013/11/23 19:09時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月22日 (金) | 編集 |
第47回

『希子ちゃんは、結婚したい気持ち、したくない気持ち、どれくらいの割合ですか』

弁当箱に忍ばせた手紙、め以子の質問に希子からは … どちらも五分五分という答えが返って来ました。

次の日から、め以子と希子の弁当箱を介した手紙のやり取りが本格的に始まったのです。

『結婚したい五分って何ですか?』

『お嫁に行く以外、ほかの道は考えにくいし、家から逃げ出せる唯一の手段やからです』

『結婚したくない五分は何ですか?』

『結婚して楽しく暮らすのは、とても難しいことに見えるからです。

何でもできるお姉ちゃんや、明るく元気なちい姉ちゃんでもそうなんやから、私なんて嫁いだら、間違いなくいじめられます。

私は家族を作るのが怖いです。

結婚が怖いです』

自分をはじめとする周りの人間が、希子に不安を感じさせていることを知っため以子でした。

… … … … …

『放課後、教室に残っていてください』

その日のめ以子からの手紙にはそんなことが書いてありました。

希子が、ひとり放課後の教室で読書しながら待っていると、背の高い女学生が教室に入ってきました。

「ちい姉ちゃん … 」

「女学生にまだ見えるかな?」


髪をおさげに結い、袴姿のめ以子でした。

「 … 見えるけど」

「つんつるてん!」


自分の袴ではないので、め以子には丈が足りていません。

思わず吹き出す希子。

… … … … …

「あ、ねえ、手紙、びっくりしたわよ ~

希子ちゃんって本当はすごく賢いんじゃない?」

「え?」

「理屈が通ってて、自分が見えてて … 私なんて、もっとも~っと、アホで愚図だったわよ」


悠太郎には「なんの魅力もない」と、キツイ言葉をパシッと言われたことも話しました。

「ホンマですか?」

希子は意外そうな顔をしています。

「ちい姉ちゃんは、もっと自信満々で来たんやと思って … 」

「自信?」

「うん、私ならこんな化け物屋敷でも平気やって」

「化け物屋敷?」


希子もなかなか言うものです。

確かに狐と狸が化かし合いをしていますが …

「違うわよ ~

アホだから、何も考えてなかったの … 同じ釜のご飯食べてる人間が心からいがみ合うなんて、想像も出来なかったの」


それは幸せな生い立ちを送ってきたということでした。

… … … … …

め以子は希子の前の席に腰掛けました。

「希子ちゃん、私ね … 皆で食べるご飯は美味しくて、それはすごく楽しいことだって、希子ちゃんに知ってほしいの …

知ってから、お嫁に行ってほしいの」


希子は目を丸くしてめ以子の話を聞いています。

「あんな、怖いとか、抜け出せるとか、そういう理由じゃなくてね ~

例えばね、『あの人、ええ人やけど、ちい姉ちゃんのご飯が美味しいから出て行きたくないわ』とか、希子ちゃんが冗談とか言ってね。

『甘えたこと言ってると、痛い目見まっせ』って、お義姉さんがピシって言って、『失敗しても、男なんてそのへん転がっとる ~ 』って、お静さんが軽口叩いてさ …

で、悠太郎さんは … ちょっと、寂しそうで … で、『ご飯なんて、いつでも届けてあげるわよ ~ 』って、私が能のないことばっか言って …

そんな風に送り出したいな ~ って … 私の勝手な希望なんだけどね」


め以子のつかみどころのない話をうつむきながら聞いていた希子、静かに答えました。

「逃げ出すみたいに行ったら … 何かあった時、また逃げ出したくなるかも知れませんね」

「 … そういうことっ、そういうことが言いたかったの!」

「今、四分六になりました」


驚いため以子の顔をみて可笑しそうに笑いました。

… … … … …

希子の気持ちの整理はつきました。

後は和枝にいつそれを伝えるかです。

その日の夕食時、め以子に背中を押されて、希子は思い切って …

「あの、お姉ちゃん … 」

「悠太郎さん、いつ帰って来はんの?」


希子の決心を知ってか知らずか、和枝に出ばなをくじかれた感じになりました。

「明日、着替えを届けに行こうかと思っているんですけど … 」

「日取り決めなあきまへんから、帰れそうな日、聞いてきてもらえまっか?」


しかし、希子はあきらめずもう一度、切り出しました。

「何?」

希子の言うことに耳を傾ける和枝。

「 … うち、結婚するの怖くて … ちゃんとやっていける自信ないから …

お見合い、したくないです」


震える声を振り絞って、言うことが出来ました。

「何もせんうちから、自信なんかできますかいな ~ そんなもんは、嫁に行って、なんやかんや動くうちに出てくるもんです」

「け、けど … 」

「何や? この人にしょうもない知恵つけられたんか?」


全てお見通しといった顔でめ以子を見た和枝。

… … … … …

「あの … お義姉さんの言う、いいお話って何ですか?」

「家柄と財産と、話くれはった人に力あることでんな ~ 」

「えっ?」


何の迷いもなく答えた和枝、そこに相手の人柄や本人の気持ちは入っていませんでした。

「その人の顔潰したら怖い思たら、自ずと嫁を大事にするもんです。

せやから仲立ちのない縁はあかんのだす」


暗にめ以子のことを否定しました。

「えらい仲立ちあっても、毛虫みたいに嫌われた人もおるけどな ~ 」

誰のこととは言いませんが、お静がそう言って面白そうに笑っています。

「惚れた腫れたで一緒になって、1年もたんかった方に言われとうないですな ~ 」

話がおかしな方へ向かい始めました。

「この際、自分の縁談まとめはったら?」

「そんなもん、もうありまへんよって … お静さんがもうひと踏ん張りして出てってくれはりまっか?

惚れた腫れたが大事な方が、旦さんおらんようになって、延々ここに居はるのも可笑しな話 … 」

「和枝ちゃんが、ひとりになったら可哀そうやんか!

希子ちゃんも出て行って、悠太郎さんもめ以子さんもいつか出て行くかも知れんけど …

うちだけは、くたばるまで、ず~っと、ず~っと、世話かけたげるさかいな ~

へばりついて、離れへんさかい … 安心しときや!」


希子の話など何処かへ行ってしまっていました。

「お里が知れまんな … 」

… … … … …

ふたりの言い争いがひと段落した頃、希子がつぶやくように言いました。

「 … もうええです」

「えっ?」

「ず~っとこうですから、この家は …

皆で仲良くなんて日は、来いへん」


寂しく笑った希子。

… … … … …

「ほな、妹さん、明日見合い決まったんか?」

め以子は偶然、市場で会った捨蔵に結果的に縁談は和枝の思い通りに進んでいることを伝えました。

「旦さんも、うちに縛りつけとくよりは、その方がいいって … 」

膨れ面のめ以子。

「何や、納得してない感じやな?」

「希子ちゃん、全然楽しそうじゃなくて …

けど、行った先で、パッと幸せになるかも知れないし ~ 余計なお世話なんですよね、私の … 」


め以子は買い物かごの中の水ナスを手にしました。

「だから、今日は、元気出してもらおうと、好きなものを作ろうかなって …

希子ちゃんは、エビと水ナスを優しい味に炊いたのが好きなんです」


いろいろと相談に乗ってもらった礼を言い、市場を後にしようとしため以子を捨蔵は呼び止めました。

… … … … …

「あんた、それでええんか?

旦さんの家、幸せにすると言うたんと違うんかいな ~

その子も幸せにするって言うたやろ?

あれはもうええんか?」


捨蔵はそう言いましたが、め以子は少し自信を無くしていました。

「できるか、できないか分からないことにつきあわせるのは … 」

「できる、できへんの問題ちゃうのや!

… やるねん!

大事なことは、その覚悟や」


… … … … …

め以子が買い物から戻ると、すでに帰宅していた希子が台所に居ました。

梅仕事の時、希子用に処理した梅を入れたツボ ~ 希子梅と書いた紙を自分で貼りました ~ のフタを外して中を見つめています。

「希子ちゃん、どうしたの?」

希子は立ち上がると弁当箱をめ以子に渡しました。

「今日の梅干 … 」

「ああ、お砂糖とお醤油でちょっと煮てみたの ~ 美味しかった?」

「うん」


ふっと微笑みうなずきました。

「 … これ、次どうしはるんですか?」

希子梅のツボを指さし尋ねました。

「梅雨が明けたら陽に干すの、ザルにこうザ~ッと並べてね。

それから本漬けをして、ひたすら寝かせる … 」

「どれくらいで出来上がるの?」

「1年ぐらいかな?」


希子はツボを名残惜しそうに見つめました。

「食べたかったな … 」

… … … … …

「出来たら、嫁ぎ先に … 」

そこまで言いかけた時、め以子の頭の中を、先程の捨蔵の言葉がよぎりました。

長い間(ま)の後 …

「届けない」

め以子はそう口にしていました。

「?!」

振り向いた希子。

「食べてみたかったら、ここにいなさい。

ここにいて、私のやること全部見てなさい … 失敗も、成功も、全部」


… … … … …

「私はきっと、いろいろ失敗すると思う。

希子ちゃんの言う通り、楽しいお家になんて出来ないかも知れない …

でも、その失敗だって、希子ちゃんにとっては無駄にはならないと思う」


幾筋もの涙が希子の頬をつたわっていました。

「どうやったら、ご飯が楽しいお家になるのか、どうしたら、ならないのか …

ちゃんと、その眼で見て考えてから、お嫁に行きなさい」


希子は自分のためにこんなことを言ってくれる人に初めて会いました。

「はい」

涙をぬぐって微笑んだ希子は、大きくうなずきました。

そして、笑う合うふたり。

「私もがんばる」

希子はめ以子の肩に顔をうずめていました。

書くだけで奇跡が起こる 魔法の手紙

新品価格
¥1,365から
(2013/11/22 19:27時点)



連続テレビ小説 ごちそうさん オリジナル・サウンドトラック「ゴチソウノォト」

新品価格
¥3,150から
(2013/11/22 19:35時点)



あまちゃんファンブック2 おら、やっぱり「あまちゃん」が大好きだ!

新品価格
¥1,365から
(2013/11/22 19:36時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月21日 (木) | 編集 |
第46回

「今日はエライ楽しかったな ~ 皆さん、出来上がったら、梅ちょうだいって言うてはったけど、足りるかいな ~ 」

め以子のガスを使った梅の調理は、女房達に好評で、皆満足して帰って行きました。

後片付けをしながら、お静はご機嫌でした。

しかし、め以子は心に引っ掛かるものがありました。

「あ、あの … こういうやり方って、和枝さんを追い詰めませんか?」

「ええっ? 別にガス見せただけやん」


とぼけてみせたお静ですが、浮かない顔のめ以子を見て、本音を吐きました。

「せやかて無理やで、絶対 ~ 皆で楽しゅうとか …

あの人はな、あんたがどうやろうが、仲ようやろうなんて、これっぽっちも思ってないで。

… 正直な、正直、4人やったら楽しくやっていけると思わへん?」


顔をのぞきこんだお静、め以子は目をそらしてしまいました。。

「 … 5人でこうできたら、もっと楽しいんじゃないかなって、思います」

お静は不満そうな顔をしました。

「うちかて、ご近所さんにずっと色眼鏡で見られて来てんねんで」

それは、和枝のいけずのせいだと、め以子にも分かります。

「それを、あんたの株上げたろう思うて、お上手言うて、集まってもろうたんや」

何となくそんなことじゃないかと感づいていため以子です。

「お静さんの気持ちは、ありがたいんですけども … 」

「もうええわ」


機嫌を損ねたお静は自分の部屋へ戻って行ってしまいました。

… … … … …

中々うまくはいかないものと、ため息をついた時、和枝が帰って来ました。

「お義姉さん、おかえりなさい」

和枝はめ以子に目もくれずに、希子に向かって手招きしました。

「希子、話があります」

… … … … …

あくる日の朝食の時、明らかに希子の様子はいつもと違いました。

茶碗を手にしたまま、箸を動かさずにボ~っと1点を見つめたまま …

「希子ちゃん、お口に合わない?」

心配しため以子が言葉をかけても、首を振るだけです。

「希子、何かあったんか?」

悠太郎の問いかけに代わりに答えたのは和枝でした。

「希子に縁談があるんだす」

和枝はニコニコしながら話を続けました。余程いい縁談なのでしょう。

「倉田さんの口利きでな ~ 紙問屋の三島のボンボンと」

「紙問屋の三島?!」


その名前を聞いただけで悠太郎は驚いています。

「ええ話でっしゃろ?

希子は大阪一の紙問屋の若御寮人さんですわ、ああ」


和枝の声は上ずっています。

「けど、希子ちゃんはまだ16 … 」

「一番ええ時やおまへんか ~ 」

「希子はそれでええんか?」


悠太郎が訪ねても、希子は黙ったままです。

「正直に言うてええねんで」

「 … 正直」


希子が何かを言いかけた時、遮るように和枝は言いました。

「16の子に嫁に行きたいも、行きとうないも、決められますかいな ~ 」

「16やったら、決められるでしょ?!」

「今までわてが妹らにつけてきた縁に間違いがありましたかいな?」


そう言われると … 和枝の見立ては決して間違ってはいませんでした。

「わては、痛い目みましたさかいな …

話は吟味しとります 」


それは、説得力がある言葉でした。

… … … … …

め以子は、希子のことが気にかかって … 家事をしていても、ふとした拍子に思い出しては何度も手を止めていました。

「せやから言うたやろ?

あの人と折り合おうなんて無理やって」


気がつけば、目の前にお静がいます。

「 … 何の話ですか?」

「こんなん、希子ちゃんがあんたに懐くから … よそに出したれいう縁談や」

「えっ?!」


… … … … …

「ねえ、源ちゃん、ちょっと聞いて」

あんな騒動があって何日も経っていないのに、め以子がひょっこりと顔を出したので、牛楽商店の大将と女将は唖然としています。

「あっ!」

その反応を見て、め以子は我に戻りました。

今までの習慣で自然と足がここに向かってしまったのでした。

「しっ、しっ!」

しかめっ面の源太に追い払われて、め以子は慌てて市場を後にしました。

… … … … …

牛楽商店から、自分の職場である市役所の建築課へ、糠床を運んで来た悠太郎。

糠床の世話が新たな日課として加わっていました。

< 希子ちゃんに大店の御寮人さんなんか、務まるのかと思う訳ですね? >

悠太郎もやはり、内気でおとなしい妹の縁談のことが気にかかっていたのです。

無意識に糠だらけの手をあごに持ってくる悠太郎。

< あらあら、糠のついた手で、悠太郎さん! … あらま ~ >

あごまで糠だらけになって初めて気づきました。

「赤門!」

その時、大村が血相変えて戻ってきました。

表情からすると悪い知らせのようです。

「けったくそ悪いぞ ~ 小学校建設の議会承認、下りんかもしれんで!」

「何でですか?!」


自分の手が糠だらけということも忘れて、大村の肩をつかんでしまいました。

「ごっつう、糠臭いよ … 」

… … … … …

「御堂筋の買収にエライ金掛ってな ~ 港もやらなあかん、病院も急務や言うて、いろんな意見が出てまとまらんのや」

藤井は苦しそうな顔をしてふたりに状況を伝えました。

「せやからって、小学校が出来るのを待ってる子は大勢いるんです」

「 … 予算を削減されるのは、もう目に見えてる。

とにかく、大急ぎで費用軽減を図って、審議中に計画を出し直しや」

「腹立たしい限りやけど … 赤門、やるで!」

「はいっ!」


大村の言葉に意気を感じた悠太郎でした。

… … … … …

源太に相談することができなかった、め以子が行きついたのは … 捨蔵の長屋でした。

今日も梅仕事で女子供が集まっている中、捨蔵はめ以子を縁側に座らせました。

「 … で、相談というのは何や?」

「義理の妹の縁談を、義理の姉が持ってきたんです。

で、義理の母は … 」

「もう義理はやめよう ~ 話、長なるし … 」


母はこの縁談は妹が自分に懐いたのを引き離すためだと言うのだが … いくら、姉が自分のことが嫌いでも妹の一生を決めるような話をいい加減には決めないと思うこと。

他の妹の縁談も姉が決めたようで、それは全部良縁だったこと。

相談の内容は、ざっとこんな感じでした。

「 … 私どうしたらいいのかなって」

しかし、捨蔵には少々理解ができない話でした。

「なんで、あんたがそこで悩むの?」

… そう問われて、め以子も考え込みました。

… … … … …

「え、う~ん、希子ちゃんが幸せじゃないと … 私が幸せじゃない … ですかね」

「何でそこで、あんたが幸せじゃないの?」


首をひねる捨蔵。

「希子ちゃんは、旦さんの妹で …

で、希子ちゃんが幸せになると、旦さんが幸せになるじゃないですか?

で、旦さんが幸せになると … 結果的に私が幸せになる訳で …

ひとりひとりの幸せが、家族の幸せになる … と、思うからですかね … 」


自信はないけれど、大体そんなところだと、め以子は思いました。

… … … … …

ふと捨蔵を見ると目頭を押さえていました。

「師匠?」

「ああ … いや、ええ話やった。

どんならんな ~ もう年取るとあっちこっち栓が緩んでしもて … あはは」


照れくさそうに笑いました。

「けど、それ何やろ、妹さんの気持ちというのが一番大事なんやないんかいな?」

「でも、妹、自分の気持ちもよく分からないみたいで … 」

「ああ、そうか ~ 頭の整理がつかへん時というのは、相談相手が要るな …

どや、あんた、その相手になってあげたら?」


捨蔵の言葉で、自分が希子にしてあげられることに気づいため以子は笑顔でうなずきました。

… … … … …

め以子が家に戻ると、和枝のきつい声が聞こえてきました。

「同じこと何べん言わせはんの?!」

台所を覗くと、割烹着を着た和枝が、希子のことを叱りつけているところでした。

「ええとこの御寮人さんいうても、自分でひと通りできまへんと、おなごしに指図できまへんやろ?!」

見かねため以子が恐る恐る口を挟みました。

「 … 私、教えますよ」

「冗談も大概にしなはれ!」


にらみつけられました。

「ほれ、希子!」

和枝に促された希子は、すりこ木を手にしてすり鉢の中の身をすりつぶそうとします。

その動作は、め以子からも見てもぎこちなく感じました。

「う ~ あんさんは、ホンマにぶっさいくやな ~ 」

嘆く和枝にめ以子はもう一度 … 思い切って言いました。

「お、お義姉さんより私の方が上手いと思います!」

… … … … …

ハッとする希子。

「 … 今、何や聞こえましたけど?」

振り向いた和枝。

「教えるのがです …

お義姉さんは勘がいいから ~ 私はほら、勘が悪いから、希子ちゃんが何が分からないのかが … 分かると思うんです」


「あきまへん!」

即、却下されました。

「あんさんは西門の人間ちゃいますさかいな、うちの希子に妙な匂いつけられたら困りますさかいな!!」

… … … … …

「ごめんください」

その時、玄関の方から声がしました。

め以子が応対に出ると、悠太郎と同じ部署の者だと男は名乗りました。

「 … 実は、西門君の担当の仕事がややこしいことになりまして、しばらく泊まり込みになりそうなんですわ」

… … … … …

め以子は市役所の悠太郎のもとへ当座の着替えを届けに訪れました。

「お仕事、大変なの?」

「1、2週間で収まると思うけど …

あれから、希子の話は?」


悠太郎もそのことが気になっていたのです。

「うん … まあ、お義姉さんが家事仕込んでる」

「希子は何も言うてこうへん?」

「言いたそうではあるんだけど … 」


今はそうとしか言いようがないめ以子でした。

< こうして、め以子はひとりで、この件に対処せねばならなくなったのでございました >

… … … … …

「あ、せや、希子 ~ 先方さんは黒磯太夫が贔屓やさかい、学校帰りに見に行きまひょう」

家事だけでなく、趣味や嗜好まで先方が好むものを仕込もうとする和枝、それに逆らえず従うだけの希子。

「何や、売られていくみたいやな … 希子ちゃん」

め以子とふたりの時、お静が希子を憐れむかのようにつぶやきました。

「お静さんはどう思います? … 希子ちゃん、行きたくないんですかね?」

「どうやろな ~ 」


自分だったら、行くと、お静は口にしました。

意外という顔をしため以子。

「 … せやかて、あの人と一緒におらんでようなるやん」

それも一理あるかも知れない …

「何とか、話しなきゃなあ … 」

とにかく、希子の気持ちを確かめることが先決でした。

… … … … …

夜、皆寝静まった頃を見計らって、め以子は希子の部屋の前まで忍んで来ていました。

音をたてぬようにそっとふすまを開けると …

ここにいるはずのない和枝が布団の中からこちらをにらんでいました。

希子はその奥に布団を敷いて寝ています。

慌ててふすまを閉めため以子。

思わず、上げそうになった声を飲みこみました。

< 希子ちゃんの気持ちを確かめようにも … どうにもこうにも、声すらかけられない。

そんな中、め以子は、はたと … ある手を思いついたのでございます >

… … … … …

その手とは …

昼食の時間、希子が弁当のふたを開けると、おむすびの上にコヨリが乗っていました。

それは、め以子から希子に宛てた手紙でした。

『め以子です。

家では話しにくいので、今日からお弁当の時間に希子ちゃんとお話ししたいと思っています。

… … … … …

希子ちゃんは、結婚したい気持ち、したくない気持ち、どれくらいの割合ですか。

答えを、弁当箱に入れて戻してください』

「 … 割合」

手紙を読み終えた希子はつぶやきました。

… … … … …

希子から戻された弁当箱を開くめ以子。

果たして、返信の手紙は入っていました。

『私の気持ちは、五分五分です。

希子』

それは、少し予想に反した答えでした。

… … … … …

相談しがいのある人になる 1時間で相手を勇気づける方法 (こころライブラリー)

新品価格
¥1,470から
(2013/11/21 19:16時点)



NHK連続テレビ小説 ごちそうさん レシピブック

新品価格
¥1,470から
(2013/11/21 19:17時点)



あまちゃんアンコール~連続テレビ小説「あまちゃん」オリジナル・サウンドトラック 3~ あまコレBOX付コレクターズエディション【初回限定盤】

新品価格
¥3,675から
(2013/11/21 19:18時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月20日 (水) | 編集 |
第45回

にらみ合ったままの悠太郎と源太。

「どうも必要以上に妻に親切にしていただいているようですけど、今日を限りに金輪際やめていただきたい」

「わりゃ、礼のひとつもなしか?」


源太の大きな声を聴きつけて市場の人間が牛楽商店の周りに集まってきました。

「嫁はん、世話になっといて、礼も言わずにエラそうにやめとけか?」

「一般的な親切の領域を逸脱している男に礼を言うアホがどこにおるんですか?」

「あいつがここに来るのは、お前のせいやろが!

お前がしっかりせえへんから、あいつがここに来て、ウダウダウダウダ悩まなあかんのやろが!」


痛いところを突かれました。

「右も左も分からんと、糠床抱えて泣いとったん知っとんのか?

食費もらえん言うて、市場走り回ったん知っとんのかっ?

お前、そん時何しとったんや? … お前がそんなやから、あいつが苦労すんのやろがっ!」


返す言葉がありませんでした。

「あいつはな … 四六時中、お前のことばっか考えとるわ。

ここ来ても、お前やお前んちの話ばっかりや!

そんな嫁はんを、何でお前が信じてやらへんのや?!」


完全に源太の方に分がありました。

め以子の苦労を知りながら、ほぼ何もできず、ここに飛んで来たのも自分の嫉妬心からでした。

「よう言うた!」

「その通り!」

「お前、ええこと言うたぞ、源太!」


やじ馬たちから声がかかりました。

… … … … …

「自信なんてあるか … 」

ポツリつぶやいた悠太郎。

「あっ?!」

「うちの嫁さんはな … ごっつ可愛らしいんや!」


お ~~~ っ!!

今度は大きな歓声が上がりました。

「 … そんなもん、心配なだけや!」

思わず赤面するめ以子。

市場の女将さんたちは囃し立てます。

 … 相思相愛でした。

源太は何だかアホらしくなって来ました。

… … … … …

ふたりはやじ馬の中にめ以子がいることに気づきました。

「あの … ちょっと、その … 」

小走りにかけ寄っため以子は、悠太郎と源太の間に入って、ふたりを分けました。

「けんかはやめてよ ~ へへっ」

「何でうれしそうやねん?」


にやけているめ以子を見て、怪訝な顔をした源太。

「だって … 私、なんかすごくモテてる人みたいで …

私のために争わないで♪」


どっと笑う一同、め以子には何故皆が笑ったのか分かりません。

… … … … …

「 … 旦さん、悪いけど、わしこんなアホ、タダでくれる言うても、熨斗つけて返すわ」

源太はめ以子を悠太郎の方へ押すと、店の奥に引っ込んでしまいました。

結局、源太に何ひとつ言い返すことができず、自分の至らなさを痛感した上に、相当恥ずかしい思いをした悠太郎。

一刻も早くこの場から立ち去りたい … め以子の手を取ると歩き出しました。

「あっ、悠太郎さん!」

「もうここには来るな、ええな?!」

「でも、糠床が!!」


悠太郎は踵を返して、店に戻りました。

「 … すみません、糠床返してもろうてええですか?」

トミから糠ツボを受け取ると、そそくさとめ以子を連れて帰って行きました。

そんなふたりの背中を見送る和枝。

今の騒動を物陰から一部始終見ていました。

「 … 何やこれ?」

… … … … …

「抜本的に対処した結果、このような運びとなりました」

糠ツボを建築課の部屋へ持ち帰った悠太郎、大村は困惑した顔をしています。

「すいません、明日からは勤務時間外に世話しますんで」

そう言って、糠床をかき混ぜ始めました。

「そうは言うてもお前 … 」

大村の立場では、いいとも悪いとも言えません。

「おっ、糠床やないの?!」

部屋に戻ってきた藤井が嬉々として声を上げました。

「これ食べてええの?」

「是非!」


取り出したばかりの漬物を口に入れました。

… … … … …

「ちい姉ちゃん、何かあったん?」

しまらない顔で台所に立っているめ以子を見て、希子が尋ねました。

最近は和枝がいない時は結構、会話できる仲になっていました。

「え ~ 」

含み笑いをするめ以子。

お静も顔を覗き込んできます。

その訳を知っている和枝が板の間から顔を出しました。

「あ、おかえりなさい、お義姉さん」

希子は和枝ににらまれて、後ずさりします。

「今日、肉やないの?」

「あっ … ちょっと、いろいろあって … 」


そう言いながらも、頬が緩んでいるめ以子。

企みが思惑通りに進まず、却ってめ以子を喜ばすような展開になってしまったことに憤りを感じている和枝でしたが、このこと自体は誰を咎めるわけにもいかないのです。

「肉や言うたら肉にして」

「えっ?」

「嫌なん?」

「あ、いいえ … 洋食に興味持っていただけたのがうれしくて」


め以子は慌てて肉を買いに出かけて行きました。

… いけずの調子も狂いっぱなしです。

… … … … …

仏頂面で夕食の肉じゃがを食べる悠太郎。

「それ、別のお肉屋さんで買いましたから」

気にしないようにと断るめ以子、悠太郎は黙々と箸を進めるだけです。

「糠床、元気ですか?」

甘い声で尋ねました。

… … … … …

一方、源太は、捨蔵の長屋で浮かない顔をしながら外を眺めていました。

「できたで」

肴を用意してきた捨蔵が傍らに放ってある手紙に気づき、手に取りました。

「おっ、め以子さんから手紙もろうたんかいな?」

「わいと一緒になりたいって、書いてあったんや」


鼻で笑った源太。

「ふ~ん」

「だけどそれ、絶対あいつからちゃうから ~ そんな達筆ちゃうちゃう」


そう言いながらも少し寂しそうにもみえる源太でした。

「うん、せやな … 」

その字に心当たりでもあるように、手紙を見てうなずいた捨蔵です。

… … … … …

「おもろないことばっかりやわ、お母ちゃん」

こちらにも浮かない顔をした人がひとり … 和枝は仏壇に手を合わせていました。

「あの、お義姉さん」

そこへ、遠慮がちに声をかけてきたのは、浮かない顔の原因 … め以子でした。

「何や?」

「次の日曜日なんですけど … 皆で『梅の仕事』しませんか?

お義姉さんがいてくださると、助かるんですけど … 」

「 … 分かった」


意外にもあっさり承知してくれました。

別段、何か思惑があるようなこともなさそうです。

「あ、ありがとうございます!」

< こうして、め以子は皆に声をかけ、日曜日には家族で『梅の仕事』ができることになったのでございます >

… … … … …

板の間の中央に梅が山ほど入った木箱が置かれて皆でその周りを囲みました。

「これ全部梅干にするんですか?」

悠太郎が尋ねると、め以子は張り切って答えました。

「ううん、梅干だけじゃないの ~

砂糖漬けに梅ジャム、甘露煮に梅味噌に梅酒、それから … 希子ちゃん用に甘い梅干も作ります」

「よかったな、希子」


希子もタスキ掛けをして準備万端です。

「で、作業はいろいろあるんですけれども、何をするにも絶対やらなきゃならないのが … このホジホジです!」

「ホジホジ??」


め以子は、皆に竹串を配りながら説明しました。

「この生り口をこの竹串でこうホジホジして … 取るんです」

まずは、試しにやってみせると、それに倣って皆作業を始めました。

… … … … …

和気藹々と梅仕事が進む中、ようやく2階から和枝が下りてきました。

「あ、お義姉さん、待ってたんです … 一緒にやりましょう、ホジホジ」

しかし、和枝はそれには答えず、希子を呼びました。

「希子、早う支度してくれますか?」

「えっ?」

「倉田のおじちゃんが、食事招待してくださったさかい、早う着替え」


突然のことに戸惑う希子。

「でも、お義姉さん、今日は皆で梅をって … 」

「急に用が入ったんや、いくで、希子」


有無をも言わさず、頭ごなしに命令する和枝。

「姉さん … 」

「希子ちゃん、そんなおもろないとこ、行きたないって」


悠太郎が諌めようとした時、お静が口を挟みました。

「大体、皆で今日やろう言うてたやん、勝手に用入れたのそっちやない」

「希子!」


希子は座ったままで動こうとしません。

「 … うち … ここで、梅の仕事したい」

勇気を振り絞って、和枝に向かって自分の気持ちを伝えたのです。

… … … … …

「勝手にしい」

言い捨てると、和枝はひとりで出かけて行ってしまいました。

め以子が気にしていると、お静は清々したように言いました。

「ええやん、ややこしいのおらんで、気楽や ~ 放っとこ、放っとこ!」

… … … … …

「すんません、倉田はん … わてひとりですねん」

待ち合わせたサロンで、和枝は申し訳なさそうに頭を下げました。

「ああ、ええよええよ ~ 急やったし、まあ、希子ちゃんとも話したかってんけどな」

「あの嫁のせいで、家ん中グチャグチャですわ」


ソファーに座るなり愚痴をこぼし始めた和枝。

「希子まで言うこと聞かんようになって」

まだ顔色を覗いながらですが、今までだったら理不尽なことでも言うなりになっていた妹が自分に逆らったのです。

「皆、誰のお蔭でここまでこれたと思ってるんか、ない金しぼりだして、頭下げて回って … 」

注文を取りに来たウェイターに愛想よくコーヒーを頼んだ和枝は、その後、深いため息をひとつつきました。

「倉田はんに昔言われましたやろ?

苦しい時こそ、看板降ろしたらあかんって … 気負いなくしたら、落ちていくのも簡単やて。

妹、弟にみじめな思いさせたなかったら、わてが気張らなあかんって!

… あの嫁はそういうもん、何か全部コケにするんや」


黙って愚痴を聞いていた倉田が気の毒そうに尋ねました。

「そんな生意気言いよるんか?」

和枝は頭を振りました。

「言わしまへん …

けど、おるだけでコケにされてる気にさせるんや!」


… … … … …

「私って、そんなに虫が好かないのかな?」

『ホジホジ』が済んだ梅を、すり鉢でつぶしていため以子は、ふと和枝のことがまた気になりだしました。

「あなたがどうのこうのやないですよ。

嫁ぎ先でやられたんと、同じことやり返してるだけですから」


悠太郎は、初めて、め以子に和枝が嫁ぎ先でどんな目に合っていたかを話し始めました。

「姉さんは何でもキチキチやる人ですから、そらもう生意気やって毛嫌いされたみたいです。

それでも、子供もおったし、何とかかんとかがんばってたんですけど …

その子が事故で死んでもうて … 子供もおらんようなったし、これ幸いにって離縁を切り出されたらしいです」


まるで他人事のように話す悠太郎にも少なからず違和感を感じため以子でした。

まだ幼い頃のことだったので、実感として残っていないのでしょうか?

「それ … 誰も何も言ってあげなかったの?」

「親父はさすがに向こうの家に文句言うたらしいです … あんまりやないかって」


すると、姑はぬけぬけと言い返したそうです。

「なんぼでも言うとくれやす … それで、この人と縁が切れるんやったら、安いもんですわ ~

これまで、なんぼやんわり言うても、分かってくれはらしまへんで …

さあ、お引き取り願えまっしゃろか?」

… … … … …

め以子には、そんなひどいことを言う人がこの世にいるということ自体信じられませんでした。

「あなたには、信じられへんかも知れませんね」

温かい家庭、善良で優しい人たちに囲まれ、恵まれた環境ですくすく育っため以子 …

… … … … …

「 … 追い出されて戻ってきたら、新しいお義母さんが来てたってこと?」

「まあ、姉さんからしたら、そうなりますよね。

それで、芸妓上りなんてとんでもないって、お静さんを追い出そうとして … 仲裁役の親父はおらんようになって … 今に至る訳です」


和枝のめ以子に対する態度、お静との確執 … 思ったより根深い事情があることを知っため以子でした。

… … … … …

「 … 陣取り」

ホジホジをしながら、希子がつぶやきました。

「ず~っと、陣取り … 」

うなずいた悠太郎。

「せや、あのふたりは、ず~っと、陣取りやっとるようなもんや ~

勝ったかて、何の褒美もないのにな … 」

「そういえば … 」


さっきから、お静の姿が見当たりません。

「何処行ったんだろう?」

… … … … …

噂をすれば …

玄関の戸が開いて、お静が戻ってきました。

「ほな、入っておくれやす ~ 」

お静の後から数名の女房達がついて入ってきました。

「お静さん、その方たちは?」

「あ、これがガス?」

「ええな ~ 」


台所まで入ってきた女房達はガスコンロの前を取り囲みました。

「ちょっと出たら、道で逢うてな ~ ガス入りましてんって立ち話したらな、皆さん見たいって言わはって」

よく見たら、め以子にはどこか見覚えがあるような顔ぶれでした。

「若御寮人さん、これ手入れはどないんだす?」

「わ、わかごりょん?」

「あんさんのことや、若奥さん」


お静にそう言われて、め以子は戸惑いながらも女性たちに説明しました。

「 … 薪と違ってススが出ないので、簡単なんです … サッと拭くだけで」

ひとりの女性が梅が入っている鍋に目を止めました。

「これは、何?」

「これは、梅のジャムを作るんです。

他にも甘露煮とか、梅の味噌とか … 梅たくさんいただいたんで」


女房達は、自分等の質問に丁寧に答えるめ以子に好感を抱いたようです。

「和枝さんが言わはるんと、ちと違いますようですな ~ 」

「ホンマは、ごっつ~ええ子ですねん」


やけにめ以子を持ち上げるお静でした。

「め以子はん、梅仕事、ガスでやってお見せして」

「あ、はい … 」


言われた通り、ガスコンロに火をつけるところから実演するめ以子。

「ごっつ~ええ子やねん」

お静はもう一度言いました。

「なあ、悠太郎さん?」

「ええ、まあ … 」


ガスを扱える自分を取り込むことで、和枝から西門家における地位を奪う … お静のふるまいから、希子の言う「陣取り」という言葉が頭に浮かんだめ以子でした。 

< 追い出すか、追い出されるか …

この家には、そんな理屈しかないのかと、ふと寂しくなった、め以子でございました >

けんかをやめて

新品価格
¥250から
(2013/11/20 18:32時点)



竹内まりやのセルフカヴァー収録

Impressions

新品価格
¥2,200から
(2013/11/20 18:33時点)



連続テレビ小説 ごちそうさん Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,155から
(2013/11/20 18:33時点)



あまちゃんメモリアルブック NHKウイークリーステラ臨時増刊10月30日号

新品価格
¥1,050から
(2013/11/20 18:34時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月19日 (火) | 編集 |
第44回

「 … め以子さん、肉屋の男とええ仲みたいやで」

悠太郎の顔に動揺が走ったことを見逃さなかった和枝。

「天満の商店街の牛楽商店いう店の源太とかいう男らしいけどな … 」

辺りを気にしながらひそひそと話しました。

「その手には乗りませんよ。

め以子に限って、そんなことするはずありませんから」


悠太郎は平静を装っています。

「けどな ~ 慣れん土地で悠太郎さんは忙しいし、しきたりで籍も入れてあげられんよって … 心が動くのもしゃあないのかもしれんわ。

幼なじみらしいけど、話聞いてた?」

「 … 聞いてました」


和枝は嘘だと見抜きました。

「ほなら、大丈夫やね」

しかし、それ以上は何も言わずに帰って行きました。

… … … … …

「お姉さん、どうやったん?」

建築課に戻ると、藤井と大村が心配して尋ねてきました。

「ああ、別段 … 」

笑って返した悠太郎ですが、内心は穏やかではありませんでした。

机に向かっても、全く集中できません。

おもむろに机を両手で叩いて立ち上がりました。

「少し抜けます … 」

… … … … …

職場を抜け出した悠太郎は、市場を訪れていました。

牛楽商店を見つけると、その大きな体を縮こめながら、中の様子を覗いました。

「女将さん、ちょっと行ってきます」

店の奥から源太とめ以子が出てきたので、慌てて、向かいの乾物屋に身を隠しました。

「ねえ、源ちゃん、今日はどんなことすんの?」

「ああ、着いてからのお楽しみや」

「もう、教えてえな、源ちゃん」

「ええから、黙ってわいについてこい」


聞きようによっては『ええ仲』と取れるような、そんな会話を交わしながら市場を出て行きました。

… … … … …

楽しそうに談笑しながら、歩いていくふたりの後を尾行していくと、いつの間にかいかがわしげな雰囲気の街に足を踏み入れていました。

「ええ男やわ ~ 」

「うちらと飲まへん?」


この街の女たちに絡まれて、断っているうちに、悠太郎はふたりのことを見失ってしまいました。

「め以子 … 」

… … … … …

源太とめ以子が捨蔵の長屋に着くと、何人もの女や子供が集まっていて、たくさんの梅の実を前に皆で作業していました。

「梅がいっぱ ~ い!」

梅の木だらけの空き地があって、毎年季節になると実った梅をたくさんもらえるのだと、いつかここに来た時にも会ったことがある女性が教えてくれました。

「師匠、これは何を作ってるんですか?」

捨蔵は、入り口辺りで火にかけた鍋のひとつをしゃ文字でかき混ぜていました。

「これな、梅のジャムや」

もうひとつの鍋は甘露煮です。

「他にもほれ、味噌漬けがあるやろ、粕漬けがあるやろ、もうなんぼでも作れる ~ 」

捨蔵の話を聞いただけで、め以子は美味しそうでたまらなくなってしまいました。

… … … … …

め以子たちを見失ってしまった悠太郎は、仕方なく職場に戻っていました。

いかがわしい街で消えたふたり … 信じていても不安は募ってきます。

< そうそう ~ め以子のことだからね、肉屋の配達手伝ってるとかね …

確かにお楽しみとか言ってたけどさ、行った先でもらえるお団子のことかもしれないよ、そうそう ~ >

不安を消そうとすればするほど、よからぬ疑念が膨らんできます。

図面の書き損じに消しゴムをかけようとして、くしゃくしゃにしてしまいました。

< 色街で男と食べるお団子 … >

「そんな団子があるか?!」

思わず、声を出してしまいました。

「 … 何やねん?」

大村をはじめ、職場の同僚が皆、悠太郎に注目しています。

すごすごと立ち上がった悠太郎。

「 … あの … 今日はもう失礼してええですか?」

… … … … …

長屋では、一同が車座に座って、梅の実のヘタを竹串でつついて取っていました。

「源ちゃん、意外とていねい ~ 」

器用に取る源太を見てめ以子は感心しています。

「何言うてんねん、わいほど細やかな男もおらんで」

「そんな顔して、どこが細やか?」

「お前の目は節穴か?!」

「何でやねん」


こうして見てるとふたりは『ええ仲』というよりは『ええ相方』に見えました。

「 … けどなんや、片思いみたいやな」

め以子たちを見ていた捨蔵が、意味深にそうつぶやいた時、め以子を押しのけて、ふくよかな女が源太の腕に抱きつきました。

「源ちゃん

「 … 染丸!」


彼女が噂の染丸でした。

「もう、なんやご無沙汰やな ~ どこぞで、悪さしとったと違うの?」

迷惑そうな顔をしている源太を笑いながら、め以子は、席を立ちました。

… … … … …

「じゃあ、師匠、私そろそろ … 」

「ああ、今日はおおきにな」

「いいえ、楽しかったです」


捨蔵は、め以子に『梅仕事』の段取りを詳しく書いた紙を差し出しました。

「『梅仕事』はよろしいで … 皆で楽しめる」

「はいっ!」


… め以子は捨蔵が何を言いたいのか、何となく理解できました。

… … … … …

め以子が捨蔵から分けてもらった梅の実を荷車で引いて、家路を辿っていると、川沿いの道で学校帰りの希子を見つけました。

ぼんやりと佇んで川面を見つめていた希子。

「タダでくれるって言うから、梅いっぱいもらって来ちゃった」

車輪が溝にはまって手こずっているめ以子を見て、希子は和枝がいないことを確認してから後ろに回って押してくれました。

「おおきに」

恥ずかしそうにうなずく希子。

「じゃあ、お姉ちゃんに見つからないように … せ ~ の!!」

… … … … …

西門家の台所、鯛の山の次は梅の山が並びました。

希子は手に取って、匂いを嗅いでいます。

「希子ちゃんって梅干苦手でしょ? … 目つぶって、飲みこんでるじゃない?」

め以子はちゃんと見ていたのです。

「ねえ、一緒にやらない? … 梅の仕事。

希子ちゃん用にあんまり酸っぱくならないのも考えるから」


希子は尋ねました。

「お姉ちゃんがおれへん時?」

「ううん、皆いる時 … お義姉さんにも手伝ってって言う。

こんなにあるし、皆でやった方が絶対楽しいし … 皆でやりたいの」


め以子がそう言って見つめると、希子はニコリと笑いました。

… … … … …

市役所を早退した悠太郎は、真っ直ぐ家に帰って来ました。

「早かったんですね ~ 今日は」

悠太郎の脱いだ背広をハンガーに掛けながらめ以子。

「早かったら、まずい訳でもあるんですか?」

「ううん、皆でご飯が食べれるんでうれしいです」


め以子は素直に喜んでいました。

着物に着替えて腰を下ろした悠太郎。

「肉屋 … 肉焼きませんね、最近」

「ああ、お義姉さんに怒られそうですし」

「そうですか … 」
 

どことなく余所余所しい悠太郎ですが、め以子は気づいていないようです。

「 … ほな、肉屋には行ってないんですか?」

「お肉食べたいんですか?」

「肉屋へ行ってるのか行ってないのか聞いてるんです」

「行ってますよ」


あっさりと認めため以子に驚く悠太郎。

「糠床預かってもらってるから、お世話しに … 言ったじゃないですか?」

「そんなこと言いましたっけ?」

「言いました。

幼なじみがお肉屋さんやってて、預かってもらってるって」


悠太郎は全く記憶にありません。

「ホンマに言いました?」

「言いました」


… … … … …

その日は、西門家一同揃っての夕食でした。

「せや、肉の話」

お静の「肉」という言葉に、可愛そうなくらい反応した悠太郎、それを見逃さない和枝。

「ガスの人、今度、肉焼いてくれへんかって言うてたで ~

音とか派手やし、バァッと火の立つやつ、やってくれへんかって」

「けど、お肉はちょっと高いですよね … 」

「ガスの人に協力してんねんから、材料のお代はもうたらええやん ~ なあ、悠太郎さん?」

「どうでしょうね … 肉は」


強張った顔、裏返った声で答える悠太郎。

笑いをかみ殺す和枝。

「私、お肉屋さんに相談してみましょうか?

お肉屋さんにも宣伝になる話かもしれませんし … 」

「できんの? そんなこと」

「まあ ~ 知らない仲じゃないですから … ちょっと、相談してみますね」


目を見開いて動揺する悠太郎。

しかし、何も言うことはできません。

そんな弟を眺めている和枝 … 面白いほど、思った通りの効果があったようです。

… … … … …

次の朝、め以子から弁当を渡されても、悠太郎は仏頂面で「おおきに」とひと言、返しただけでした。

そのまま出かけようとするので、め以子は呼び止めました。

「え、えっ、何か聞かないの?」

「 … どうせ、答える気ないんでしょ?」


何で機嫌が悪いのか、め以子には分かりません。

玄関まで後を追うと、悠太郎は振り向いて言いました。

「あなたは隠し事ばっかりや」

身に覚えのないめ以子は首をひねるばかりでした。

… … … … …

牛楽商店、開店の準備をしている源太 … ショーケースに肉を並べていると、いつの間にかその上に『源太さん江』と書かれたコヨリが置いてあるのに気づきました。

… … … … …

「赤門、デカいというのも意外と大変やな?」

昼飯を食べようとしている悠太郎の前に座りながら大村が気の毒そうに言いました。

悠太郎の額には絆創膏が貼られていました。

いつもなら、そんなことは決してしないのですが、建築課の部屋に入る時にドアの鴨居に頭をぶつけて出血してしまったのです。

「気が散ると、こういう事態になりがちなんです」

「 … 何かあったんか? こないだから」


和枝が訪ねて来てから、悠太郎の様子がおかしくなった … 大村だけでなく建築課の誰もが感じていました。

おむすびを手に取って見つめている悠太郎。

『まあ ~ 知らない仲じゃないですから 』

昨夜のめ以子の言葉が耳に残っていました。

「言うてくれへんか?

わしでよかったら、相談のるで、こう見えてもな … 」


突然、立ち上がった悠太郎。

「 … 何やねん? 急に」

「抜本的に対処してきます!」


… … … … …

市場の休憩所。

源太が先ほどのコヨリを解くと、それは達筆な女文字で書かれた手紙でした。

『近頃は、主人と居るより、あなたとご一緒している時の方が、幸せを感じます め以子』

… 見る人が見れば(誰の目から見ても?)、め以子の文字ではないことは明らかです。

源太は、空を見上げて考え込んでしまいました。

… … … … …

「あ、お義姉さん、おかえりなさい」

め以子が夕食の買い物に出かけようとしたところへ、何処かに出かけていた和枝が戻って来ました。

「あら、買い物?」

「あ、あの、お義姉さん … 今日、洋食にしてもいいですか?」


和枝はいい顔をしませんでした。

「悠太郎さんが、昨日から肉がどうのこうの言ってて … 食べたいんだと思うんですよ」

いくら考えても、悠太郎が機嫌が悪い理由が分からないめ以子 … 唯一思い当たるのが、肉のことだったのです。

「ちゃんと、お義姉さんのお口に合うような仕立てにしますから … 」

肉と聞いて、和枝の表情が一変しました。

「そら、楽しみでんな ~ 」

うるさがたの許可を得ため以子は喜び勇んで市場に向かいました。

… … … … …

め以子が市場の入り口をくぐると、牛楽商店の前に立っている悠太郎の姿を見つけました。

「?」

声をかけようとした時、悠太郎が女将のトミに向かって話し始めました。

「糠床を預かっていただいてる、西門悠太郎と申しますが … 」

ポカ~ンとしているトミに悠太郎は続けました。

「妻の幼なじみとおっしゃる方は、いらっしゃるでしょうか?」

ようやくめ以子の亭主だと理解したトミ。

「 … ああ、源太やね?」

慌てて、店の奥に飛んで行きました。

… … … … …

「め以ちゃんの旦さん、来てはんねんけど」

「 … め以子の?」


暖簾をかき分けて、奥から出てきた源太。

店の前の悠太郎と目が合いました。

その瞬間、仲良く出来そうな相手ではないと … お互いが感じていました。

「わいやけど … 何のようや?」

黙ったまま源太を見下ろしている悠太郎。

「何しに来たんや?」

斜に構える源太。

め以子は対峙するふたりを見つめたままです。

そして、そんな状況を物陰から覗っているのは、誰あろう … 変装した和枝でした。

百年の梅仕事

新品価格
¥1,785から
(2013/11/19 19:50時点)



NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」 雨のち晴レルヤ (NHK出版オリジナル楽譜シリーズ )

新品価格
¥600から
(2013/11/19 19:52時点)



ピアノミニアルバム 「NHK連続テレビ小説 ごちそうさん」

新品価格
¥735から
(2013/11/19 19:52時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月18日 (月) | 編集 |
第43回

大正12(1923)年春。

< 度を増す、和枝のいじめについに堪忍袋の緒が切れため以子でしたが … 大量の鯛を一時に処理しなければならないという、魚島事件を経て … 隅から隅まで美味しく頂く、始末の料理を体得 >

「私、皆の笑った顔、もっと見たい … 皆のごちそうさんが聞きたい」

悠太郎の尽力で念願のガスも引かれた西門家。

< 悠太郎のために、自分のために、楽しい食卓を作りたい … 改めて思っため以子でございました >

… … … … …

その日、西門家の夕食には、ガスで炊いたご飯が並びました。

「これガスで炊いた、ご飯?」

うれしそうに茶碗を手に取るお静。

「はい、食べてみてください」

「うん、美味しい!」


新しいもの好きのお静は素直に喜んでいます。

「どうですか? お義姉さん」

「味は同じでも、薪の方が美味しゅうおす … 手間ひまかかっとるという、有難味がありますさかいな」

「手間ひまかけても、文句ばっかり言うてはるクセに」

「文句やない、感想や」


どちらにせよ、文句は言われることに変わりはないようです。

こんなお静と和枝のやりとりも日常茶飯事、め以子もだいぶ慣れていました。

… … … … …

「なあ、実際のところ、火点けんのに手がかからへん他に、どこがええの?」

お静はめ以子にガスを使う利点を尋ねました。

「温め直しが楽なので、温かいものを温かく食べられます。

それから、火加減を自由に塩梅できますから、失敗が少なくなるんです」

「それ、ちゃんと説明せなあかんな」


ガスを使っているところを見学させるというのが、無料でガスを引いてもらった条件なのです。

何となく張り切っているお静に和枝は嫌味を言いました。

「そりゃ、きれいなべべ着て、人前に立ちたいですもんな ~ 」

「箪笥の奥で出番待ってる子が、ようけおるからな」

「分不相応にお子さん作り過ぎなんと違います?」


ああ言えば、こう言う … 険悪になりかけた雰囲気を立て直そうと、め以子は和枝に提案しました。

「あ、お、お義姉さん、よかったら実演なさいませんか?

お義姉さんが見事な手さばきで料理して見せたら見に来た人 … 」

「見世物みたいなマネ、ごめんだす」


取りつく島もなく却下されました。

「希子ちゃん、今度の … 」

「希子にそんな恥ずかしいことさせんといて!」


結局、お静とめ以子だけで実演することとなりました。

… … … … …

社交的で人前に出るのが好きなお静が、それこそ見世物のような口上でガス会社の人間 ~ 吉村が連れてきた数名の主婦たちを上手にあしらって … いかにガスが便利なのかを教え込むと、め以子が料理を実演してみせました。

「 … 何と、火加減もこのひねりひとつ、ひねりひとつでよろしおます!

天ぷらもカラっと揚がって美味しおすで ~ 」


試食した主婦たちは皆、ガスに興味を抱いたようでした。

「西門さんからお話もうた時は、半信半疑やったんですけど、実際見せると説得力ちゃいまんな」

好印象を持って帰って行く主婦たちを見送りながら、吉村はお静に言いました。

「うちでよければ、いくらでも協力いたしますんで、何ぼでも言うてください」

「近いうち相談させていただきますんで ~ お家さん」

「お家さんなんて、止めてください、老け込みますわ」


そんな会話をしているところへ、和枝が帰って来ました。

「一番上の娘の和枝です … 和枝、ご挨拶」

「この度は、お世話になりまして」


母親風を吹かせたお静、外面のいい和枝はにこやかに挨拶しましたが、家に入るや否やめ以子に塩をまいておくように指図しました。

「 … まいていいんですか?

後から、もったいなとかおっしゃいませんか?!」


… … … … …

数日後、和枝は手土産を持って、建築課の部屋を訪ねました。

… そういえば、今日はまた悠太郎の給料日です。

「ごめんください ~ 課長さん」

しかし、部屋の中では、ちょうど悠太郎が藤井から給料袋を受け取ったところでした。

入り口で佇む和枝を見て、悠太郎はニコリと笑って、手にした給料袋を見せると、背広の内ポケットにしまい込みました。

… … … … …

その夜、帰宅した悠太郎は、皆の前に給料袋を置いて言いました。

「僕の今月の給料です … この金は西門の金です。

せやから、皆でお金の割り振りを決めたいと思います」


家族全員の前できちんと決めておけば、和枝も無茶なことはできないと悠太郎は考えたのでした。

「ええんちゃうの? 公平で」

うなずくお静、不満そうな顔の和枝、め以子と希子は後ろに控えていました。

「ほな、家長なんで、僕から取らしてもらいます」

給料袋から出した全額の中から、悠太郎が取った額を見た和枝が不満を口にしました。

「僕の小遣いとガス代の見込みなどで10円、借金の返済分で10円 … 更に食費として、30円いただきます」

食費を20円から一気に10円増額しました。

「食費、そんなにいりやらしまへんやろ?」

異を唱えた和枝に悠太郎は毅然と言いました。

「365日、皆で美味しいものを食べることを、この家の最優先事項としたいと思います

… 更に、食卓はめ以子も一緒に囲むことにします」

「おなごしが一緒に食べるなんて、聞いたことありまへんで!」


皆の意見を聞こうと言う悠太郎でしたが、め以子が「今はお金のことだけで」と取り成したので、取りあえず後回しにしました。

… … … … …

「ほな、姉さんとお静さん、必要な分を言うてください」

悠太郎の言葉に、和枝は25円、お静は10円と声にしました。

残っている額は25円しか残っていません。

「あんさん、そんなにいりまへんやろ ~ 何もしてはらへんのに?」

和枝にそう言われたお静はあっさりと手を引いたのです。

「ほな、うちええわ」

これには、和枝も肩すかし食ったような顔をしています。

「 … ええんですか?」

さすがに1円もいらないというのはおかしいと、悠太郎は確認しました。

「三味線習いに来はる人も増えましたしな ~ 」

「黙って、ツケで買い物もなしですよ」

「分かってますよって、着道楽は控えますっさ」

「 … 何企んではりますのんかいな?」


和枝のように口にはしませんが、ここにいる皆が同じことを思っていました。

「いややわ ~ 和枝ちゃん。うち、め以子さんが一所懸命やってはんの見て、心入れ替えましたんや」

… … … … …

自分の部屋に引っ込んだお静。

「糸は3本 … 4本はいらん … 」

三味線をつま弾き、糸をきりきりと張りながら、そうつぶやきました。

… … … … …

「お義母はん、それ、風読んだんだろう?」

糠床の世話に訪れため以子からお静の話を聞いた源太が言いました。

「 … ガスも入ったし、給料も旦さん仕切りになって、お前らについた方が得やと踏んだんやろ」

「うち借金だらけだし、取り合うような財産もないし … 得も損もないと思うんだけど」

「そうは思わんから、10年も嫌がらせ続けとんのやろ?」

「嫌がらせ?」


め以子には意味が分かりません。

「せっせこ、せっせこ、義姉さんが貯めた金、パ~っと使うて着道楽しとるのやろ?」

… お静が嫌がらせのためにワザと着道楽をしている?! … 思いもよらぬ話でした。

「知らんで ~ けど、そういうことも考えられるんちゃうかって話や」

「 … そんなこと、しないよ」


… … … … …

「何や、おもろなかったか? 初田治」

うかない顔をしている和枝、親しい株仲間の倉田が尋ねました。

今、ふたりで寄席から出てきたところでした。

「 … おもろないのは、落語やありまへんわ」

「何や、何ぞあったんかいな?」

「弟は給料取るようになったら家長気取りで、芸者上がりは尻馬に乗って母親面しよるし …

あの非常識な電信柱が来てから、私の調子は散々ですわ」


憂鬱そうに首を横に振る和枝。

「おっ?」

話をすれば … 数軒先で、め以子が買い物をしているのが見えました。

向こうは、こちらに気づいていません。

知らん顔して立ち去ろうとする和枝。

「おい、め以子!」

め以子を呼ぶ男の声で和枝は振り返りました。

… … … … …

「忘れ物や」

市場で買った物を牛楽商店に忘れてきたようで、源太が追いかけてきてくれたのです。

「何や、肉屋の源太やないか?」

倉田は源太のことを知っているようです。

「天満の商店街のやんちゃ坊主や」

「へえ ~ 」


店先で試食を分け合うふたりをじっと見つめる和枝。

… … … … …

倉田と別れた和枝は、ひとり市場に足を踏み入れて、牛楽商店を探し当てました。

買い物客の振りをして店を覗く和枝 … 店の奥に見覚えのある糠ツボがあります。

「あれは、肉漬けてはりますの?」

「いいえ ~ 人さんの糠床、預かってますねん」


女将のトミは聞かれていないことまでペラペラ話し始めました。

「何でも家に置いとかれへんらしゅうて … きっつい小姑はんがいはるらしゅうて、ほかされんねんて」

「 … そんな家、出はったらええのに」


きっつい小姑は答えました。

「わてもそう思いますねんけどな ~ うちの源太と一緒になったらええって」

「源太さん?」

「もともと、幼なじみらしゅうて、ふたりでよう一緒に出掛けるし … 仲ええんよ」

「へえ ~ 」


そこへ戻ってきた源太。

「 … そうでっか」

源太を見つめる和枝の目が輝き始め、薄ら笑いを浮かべました。

… … … … …

その夜、め以子は悠太郎の夕食の給仕をしながら、義父とお静の関係を尋ねていました。

「ああ、父親がお静さんにエライこと入れ揚げて、引かせたんや … 前にも言わんかったっけ?」

「お義姉さんは、そもそもお義父さんが入れ揚げたってところが、気に入らなかった … のかな?」

「?」

「 … 何か糸口ないかなと思って、お義姉さんとお静さんが何とか仲良くなれる」


そんなことを考えているめ以子を見て、悠太郎はポツリと言いました。

「世話掛けますね … 」

「いいえ ~ ガスのお蔭で時間出来ましたから」


… … … … …

翌日、仕事中の悠太郎の元にまた和枝が現れました。

「西門君 … お姉さん、また来てはるで」

藤井にささやかれて、入り口の方を見ると、何故かいつもと違って元気のない和枝がため息をついていました。

… … … … …

和枝は悠太郎を人目をはばかるように廊下に連れ出しました。

「何ですか? 話って」

そして、思わせぶりに話し始めました。

「あのな … 信じるんも信じへんも、あんたの自由やけど … 」

声を潜めて真剣な眼差しで悠太郎を見ながら告げ口しました。

「 … め以子さん、肉屋の男とええ仲みたいやで」

悠太郎の顔に動揺が走ったことを和枝は見逃しませんでした。

入門長唄三味線セット(全長99cm)

新品価格
¥39,000から
(2013/11/18 16:29時点)



杏のふむふむ

新品価格
¥1,365から
(2013/11/18 16:30時点)



LIGHTS

新品価格
¥1,290から
(2013/11/18 16:32時点)



NHK連続テレビ小説「あまちゃん」完全シナリオ集 第1部

新品価格
¥1,785から
(2013/11/18 16:31時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月17日 (日) | 編集 |
まずは、先週のおさらいを …



それでは、次週の「ごちそうさん」は?

念願のガスコンロが入って喜ぶめ以子()。悠太郎(東出昌大)が給料の使途を割り振ることになり、一見落ち着いたように見える西門家。

そんな折、和枝(キムラ緑子)はめ以子と源太(和田正人)が親しげなのに目をつけ、悠太郎の耳に入れる。悠太郎は気になって二人の後をつけるが見失ってしまう。

あなたは隠し事ばっかりや

め以子たちは師匠(近藤正臣)の長屋で、大量の梅で梅干しや梅ジャムなどを作る「梅仕事」にいそしんでいた。帰宅後不機嫌な悠太郎に、わけがわからないめ以子。

あいつがここに来るのはお前のせいやろが?!

悠太郎は源太に直接詰め寄るが、め以子の力になれない自分の弱さを指摘され、言い返せない。言い合いを聞いため以子は、悠太郎の思いがうれしく照れてしまう。

西門家でも、みんなで梅仕事をしたいめ以子。静(宮崎美子)は喜び、希子(高畑充希)も和枝にけん制されるが思い切って加わる。

希子に縁談があるんだす

そこへ和枝が見合い話を持ち込み、十六歳の希子は戸惑う。静と和枝の争いが続く家から逃げ出したい気持ちと、結婚への絶望感を抱える希子。

食べてみたかったら、ここにいなさい

師匠に相談を持ちかけた末、め以子は希子に、どうしたら幸せな家になるかを自分で見定めてから結婚するよう伝える。

見合い当日、思いがけずめ以子は西門家の秘密を知ることに。

ごちそうさん 公式サイト、YAHOO!テレビガイド他を参照)

連続テレビ小説 ごちそうさん Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,155から
(2013/11/17 11:18時点)



連続テレビ小説 ごちそうさん オリジナル・サウンドトラック「ゴチソウノォト」

新品価格
¥3,150から
(2013/11/17 11:18時点)



NHK連続テレビ小説 ごちそうさん レシピブック

新品価格
¥1,470から
(2013/11/17 11:19時点)



雨のち晴レルヤ / 守ってあげたい

新品価格
¥1,200から
(2013/11/17 11:19時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月16日 (土) | 編集 |
第42回

和枝のいけずで西門家の台所は40匹もの鯛で所狭しと埋め尽くされていました。

『わてら、腐ってまうん?』

『美味しう食べてくらはらしまへんのかいな ~ 』

「もう、もう … んも ~~~ っ!!!」

鯛たちの嘆き声が聞こえてきたような気がして、め以子はまるで雄叫びをあげながら、家を飛び出して行ってしまいました。

… … … … …

「師匠 ~ 師匠、師匠、師匠!」

め以子が向かったのは、『ほうるもんじいさん』酉井捨蔵の長屋でした。

「な、なんや?」

いきなり、息を切らせて駆け込んできため以子に目をパチクリさせている捨蔵。

「鯛が … 鯛が、鯛が大変なんです!!」

め以子は捨蔵に事の経緯を話しました。

「義理の姉のいけずで何処も受け取ってもらえなくて、家に鯛が溢れ返っているんです。

40匹くらい!」

「?!」

「もう ~ もう全部ほっぽってやりたいんです。

けど、だけど … 鯛の声が聞こえたんです。

『わてら、腐ってまうん?』『美味しう食べてくらはらへんの』って」

「 … 鯛って、船場言葉、遣いますか?」

「そうなんです!

鯛に罪はないんです!

… とにかく、とにかく全部、全部、美味しく食べてあげたいんです!」


… … … … …

捨蔵に、どうしたらいいのか、教えを乞いました。

「とにかく、今日食べる分と、7日ぐらい経ってから食べる分 … それから、後に食べる分に分けたらよろしいのや。

保存することやな」

「あの、どんな方法が?」

「この本、貸してあげよう」


捨蔵は1冊の本をめ以子に差し出しました。

「 … 鯛の料理がぎょうさん書いてある」

それは、『鯛百珍料理秘密箱』という本でした。

… … … … …

それから、め以子は市場に寄って、『鯛百珍』に載っている料理を作るための材料を買い込みました。

め以子が家に戻ってみると、お静の姿が見当たりません。

そして、少しだけですが、鯛が減っていることに気づきました。

「あんた何処行ってたん?」

そこへ、お静が希子を連れて戻ってきました。

「鯛、減ってます … 」

め以子のいない間に、希子に手伝わせて、知り合いに配ってくれていたのでした。

「あんまり力になれんで、ごめんな ~ 」

その気持ちだけでも今のめ以子には十分にうれしいことでした。

「いや ~ せやけど、これ、どないしたらええやろな」

配っても一向に減らない鯛の山を目の前にして、さすがのお静も困惑顔です。

め以子は甘えついでにふたりに切り出しました。

「じゃあ、もうちょっと … お手伝いしてもらえますか?」

お静と希子の手も借りて、鯛を片っ端からさばき始めたのでした。

… … … … …

その頃、東京のイクの元には、め以子が数日前に出した手紙が届いていました。

『お父ちゃん、お母ちゃん、食料品をいろいろと取り揃え送ってくださり、ありがとうごさいました。

私は、元気に過ごしています。

もちろん、大阪の慣習や家風に馴染めないこともありますが。

… … … … …

お母様のお静さんは、明るく気さくでおしゃれなとっても素敵な方です。

妹の希子さんは、繊細で優しい心根の可愛い子です。

姉の和枝さんは、厳しい方ですが、それは優しさの裏返しだと思います。

悠太郎さんが気配りしてくださるので、平穏に暮らしています。

… … … … …

けれども、祝言は少し待ってください。

西門家には祝言は1年後というしきたりがあるのです。

これは、何か不都合があった場合、嫁の籍を汚さない知恵だそうです。

だから、少しお待たせしますが、余計な心配はしないようお願いします』

手紙を読み終えたイクは、その内容に反して何故か不安を感じたのでした。

… … … … …

仕事を終えて帰って来た悠太郎は、やはり出先から戻って来た和枝と家の前で一緒になりました。

「あれ、早やおますな」

「今日、魚島のご挨拶だったのでは?」


喪服姿の和枝を見て悠太郎は不審に思って尋ねました。

「知り合いに不幸が出ましてな、朝から出てましたんや」

白々しくそう言った和枝、もちろんめ以子にいけずするための作り話で … 1日中何処かで時間を潰していたのです。

「ほな、魚島は?」

「わてもそれ心配してますねんけど … 」


今、家の中では、め以子が鯛の山に囲まれて、泣いているか、怒っているか、それとも逃げ出してしまったか … 

しかし、和枝の予想は見事覆されてしまうのです。

… … … … …

「次、鯛の五色揚げ出しますけどいいですか?」

和枝たちが玄関をくぐると、め以子の元気な声が聞こえてきました。

「こんなところで何やってはるの?」

台所には、慌ただしく料理しているめ以子だけでなく、お静と希子の姿もありました。

「鯛ぎょうさん、もろうて ~ め以子さんが鯛をなあ」

にこやかに答えたお静。

「あ、おかえりなさい ~ ちょうどよかった、これから鯛の五色揚げ出しますから、お義姉さんも悠太郎さんもすぐ着替えてきてください」

和枝の思惑は外れ、め以子は明るくふたりのことを出迎えました。

よくよく見れば、お静と希子は台所の上り口に座って料理を口にしています。

「何でこんなとこで食べてはるの?!」

和枝は希子のことを咎めたのですが、代わりにお静が答えました。

「手伝うてる途中で食べ始めて … 何となくこのまんま」

「膳出しましょか?」


上着を脱ぎながら、悠太郎も手伝い始めました。

「お義姉さんは、どんな食べ方がお好きですか?

いくらでもありますから、何でもおっしゃってください」


魚島のことなど全く触れないめ以子にイラッときた和枝でした。

「わて、いただいてきましたさかい、結構ですわ」

仕掛けた張本人の自分が責めることも出来ず、かと言って一緒に食べる気にもなりません。

「お義姉さん … 」

部屋に引き上げようとする和枝をめ以子は呼び止めました。

「 … ご愁傷様でした」

頭を下げため以子。

和枝は振り向きもせずに2階へ上がって行ってしまいました。

… … … … …

「鯛めしできました ~ 」

その夜、西門家の食卓には何種類もの鯛料理が並びました。

皆、嫌というほど鯛を堪能したのです。

… … … … …

ごちそうさんでした」

「もうあかん … ごちそうさん


満腹になって満足そうな顔の悠太郎とお静。

ひとり希子だけがまだ皿の上の鯛の頭を箸でつついています。

「希子ちゃん、何やってるの?」

め以子が尋ねると、希子は小さな骨を取り出しました。

その骨は小さな鯛の形をしています。

「鯛の鯛 ~ 」

にっこりと笑ってうなずいた希子。

… 鯛の鯛とは、鯛の骨の一部で、その形がそのまま鯛に似ているためそう呼ばれ、昔から「めでたい鯛の中でさらにめでたい形である」と縁起がいい物とされていました。

「鯛の鯛か、忘れとった」

「うちもやろう!」


希子のマネをしてふたりも自分が食べた鯛の頭をつつき始めました。

そんな様子を微笑みながら見ているめ以子。

西門家に来て初めてといっていい、夕食時の団欒に幸せを感じていたのです。

… … … … …

夕食後、鯛せんべいを肴に晩酌している悠太郎。

「それ何してるの?」

まだ台所でせっせと働いているめ以子に尋ねました。

「残った骨でポワソン取ったの、魚のフォン。

で、これがわたの塩漬け」

「きれいに始末したな ~ 」

「 … 始末?」

「隅から隅まで使い切って … こういうのが始末がええ言うねん」


この時、め以子は以前、和枝に言われた言葉を思い出していました。

『こんなん、始末ちゃいまっせ … これは、ただのどケチだす』

「これが、ホントの始末か … 」

… 和枝の言葉には、ただのいけずだけでなく真理が隠れていることが多々ありました。

「美味しく食べる方法はあるのよね … 骨もわたも … 人もきっと一緒だよね?

骨は食べられないけど、いい出汁が出るし、わたは使いにくいけど、その分、珍味になるし …

嫌なとこといいとこって、見方ひとつっていうか、扱い方ひとつっていうか … きっと、そういう風にすれば、楽しいお家になるのよね?

今日みたいに、ご飯食べられるのよね?

私、皆の笑った顔、もっと見たい … ホントに!

皆のごちそうさんが聞きたい」


… … … … …

『父上様、母上様、お元気でおられますか。

め以子さんからの手紙が届いたと思いますが、内容は全部嘘です。

… … … … …

西門家のしきたりというのも、姉のついた嘘です。

め以子さんは、嘘だと承知の上で、女中待遇に甘んじてくれています。

無理難題にもめげず、明るく過ごしています。

ひたすら料理の腕を磨き、楽しい食卓にすべく、日々奮闘してくれています。

… … … … …

その姿はいつか、いい加減な母に反省を促すと思います。

意志の弱い妹には強さを植え付けることと思います。

意固地な姉が頭を下げて、祝言を挙げてくれと、頼んでくる日は、遠くないと信じています。』

… … … … …

私の態度を不甲斐なくお感じでしょうが、もうしばらく見守っていただきたく存じます。

私も精一杯、努力します』

開明軒には、め以子から手紙が届いたすぐ後に悠太郎からもこのような手紙が届いていました。

め以子の手紙を偶然見てしまった悠太郎は、ひそかに自分も手紙を書いて、実情を明かした上で、改めて自分の決意を伝えてきたのでした。

「私、ちょっと様子見に行って来ようか?」

不安が当たっていたイクは居ても立ってもいられなくなっていました。

「まあ、仲良く頑張ってんだから、いいんじゃねえか?」

大五の言葉にイクは悠太郎とめ以子の封筒を並べて見つめました。

「 … そうだね ~ ふたりが仲良いんだったら、いっか」

イクは思い直して微笑み、大五はうなずきました。

… … … … …

捨蔵が長屋に戻ると、上り口に返却された鯛百珍にめ以子からのお礼の手紙が添えてありました。

留守の間に訪れて置いて帰ったようです。

その傍らに手拭いの掛った皿も置かれています。

「おっ、鯛せんべえや」

ひと口かじった捨蔵。

「美味い … 」

… … … … …

数日後。

何と西門家にガスが引かれることになりました。

念願のガスに喜ぶめ以子、物珍しそうに見ているお静と希子。

そんな話は聞いてなかったと、和枝は血相を変えて悠太郎を問いただしました。

「悠太郎さん、何やってはるの?!」

ガスを実際に使っているところの見学を許すという条件で無料で引いてもらえたのと、悠太郎は答えました。

「知らん人が家に??」

目を剥いた和枝に悠太郎はにこやかに言いました。

「姉さんのお力で、西門200年の名に恥じぬ応対をお願いします」

代わる代わるガスの着火を試みては盛り上がっている一同を見て、これ以上何を言っても無駄と悟ったのか、和枝もあきらめたようでした。

「美味しいもん、期待してます」

「はいっ、がんばります!」


< こうして、少しずつ変化の兆しが見え始めた西門家でしたが …

この新たな住人の登場によって、邪な火を心に灯した人物がいたのでございました >

その人物とは …

鯛 (柴田ブックス)

新品価格
¥1,890から
(2013/11/16 19:02時点)



連続テレビ小説 ごちそうさん Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,155から
(2013/11/16 16:49時点)



あまちゃんメモリーズ 文藝春秋×PLANETS

新品価格
¥1,365から
(2013/11/16 16:50時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月15日 (金) | 編集 |
第41回

「あんさん、魚島って知ってまっか?」

襟を正した和枝はめ以子に尋ねました。

「うおじま?」

「鯛がな、卵産みに一斉にやってきますのや … それが島みたいに見えるから、『魚島』いいますねん。

きれいな鯛が安うあがってきましてな ~

その時期に鯛を親戚やお世話になってる方に配って歩く習慣ががありましてな、『魚島季節(どき)のご挨拶』いいます」


め以子はうなずいていましたが、何故和枝がそんな話を聞かせてくれるのか分かりませんでした。

「 … その手配をお願いできまっか?」

… … … … …

和枝はめ以子に魚島季節の鯛を32匹手配するように言いつけ、15円渡しました。

夕食を取りながら、その話を聞いた悠太郎は唖然としました。

「そら、いくら何でも無理やないですか?」

15円では到底無理な話、しかし無理は承知の上で引き受けため以子でしたが …

「無理しないで放っておったらどうですか?

あなたがやらんかったら、姉さんが自分でやるでしょうし … 」

「 … そうよね」


歯切れの悪い返事をしため以子。

… … … … …

「あなたは、姉さんの言う、祝言のしきたりってどう思ってます? … 信じてますか?」

突然、悠太郎は尋ねました。

「信じてない …

けど、嘘だからって、無理やり祝言挙げたところで、お義姉さんの許しがない限りは、西門の親戚とか来てくれないだろうし …

そんなの見たら、お父ちゃんだって、カンカンだろうし … 私に対する風当たりだって、強くなるだけだろうし …

結局は、お義姉さんに認めてもらわない限り、何も変わらないのよ。

やるしかないのよ」


そんなふたりの会話を、和枝が2階の廊下から聞いていました。

… … … … …

自分の部屋に戻った和枝は、机の前に座って、帯に挟んでいた匂い袋を手にしました。

袋を撫でていると、またあの記憶が …

むせび泣く和枝に抱きつく幼い男の子。

「お母ちゃん、お母ちゃんどないしたん?」

心配そうに尋ねるその男の子は、匂い袋と同じ柄の着物を着ていました …

… … … … …

「32匹、15円 ~ ?!」

め以子が提示した金額に市場にある鮮魚店の銀次は大きな目を更に大きく見開きました。

「 … っていうことなんですけど」

「ああ、もう帰って、帰って!」


全く話になりません。

しかし、め以子も簡単にハイそうですかという訳にはいきません。

「ちょっと、話だけでも … 」

「忙しいねん!」

「忙しいんですか?」

「魚島季節、始まってるさかい!」


そうでなくてもめ以子の相手をしている暇はないのです。

「あ、じゃあ … 私、働きます!」

料金の不足分は働いて … ということで、め以子はその日から家事の合間に銀次の店を手伝わせてもらうことになりました。

… … … … …

< こうして、め以子の大忙しの日々が始まったのです >

大きな声で店の呼び込み、出前配達 …

出前の途中、偶然に和枝と鉢合わせしてしまいました。

「ちょちょちょっと、あんさん、何してはんの?」

「魚屋さんをお手伝いしてて … 」


め以子は正直に答えました。

「手伝うて、あんさん、西門のもんがそんな?!」

さすがの和枝もめ以子がそこまでするとは思いもよらなかったようです。

「 … 今、西門のもんって?」

思わず口走ってしまった和枝でした。

「言うても、おなごしかて内々のもんやさかい」

そう言って、取り繕いましたが、わずかながらも動揺が見えます。

ちょうどそこへ、和枝の株仲間の旦那衆が通りかかりました。

「和枝ちゃん … 知り合いか?」

「いや、何でもあらしまへん」


パッと態度を切り替えた和枝を見て、め以子は気を利かせてその場を去りました。

… … … … …

その夜。

悠太郎の給仕をしながら、め以子は座ったまま眠ってしまっていました。

「 … ごめんな、苦労ばっかりで」

め以子を起こさず、その寝顔に謝った悠太郎でした。

… … … … …

鮮魚店を手伝いはじめてから数日が経ち、め以子は銀次から教わって、次第に新鮮な魚が見極められるようになっていました。

「おお、よう分かったな ~ 」

銀次にほめられましたが、あまりうれしそうではありません。

「分かると、ちょっと辛いとこないですか?

どの子も好きで古くなってる訳じゃないんだし … 」


め以子らしい理屈です。

「そやからな、出来るだけ早う美味しゅう食べてやらなあかんねん」

その言葉で納得しため以子でした。

< こうして、め以子が少し魚のことが分かるようになった頃 … >

… … … … …

魚島季節のご挨拶の前日、め以子は和枝から仏間に呼ばれました。

「明日の8時には、鯛持ってきますんで … 」

「15円で出来たん?」

「 … 一応」


次はどんな『いけず』が出てくるのか … 恐る恐る答えました。

「ふ ~ ん」

意味ありげな和枝の返事でした。

「それまでに魚箱を蔵から出して置けばいいんですよね?」

言われる前に先に先にと確認をするめ以子でした。

「あんさんも、きちんとしてな」

「?」

「あんさんも、わてと一緒に回るんやで」


仏壇を向いていた和枝が振り返りながらそう言いました。

「えっ?」

「ええ機会だす … 親戚に紹介して回ったるさかい、一張羅で頼んまっせ」


和枝の口から出た言葉に、め以子は我が耳を疑いました。

「わて、昔、嫁ぎ先で同じようなこと姑に頼まれましてな …

わては、渡された銭では工面でけませんでした。

あんさんみたいに働いてでも工面するのが、正解やったのかも知れまへんな」


そう話す和枝の顔はいつになく穏やかに … め以子には見えたのでした。

… … … … …

「嫁ぎ先の話をしたんですか?」

部屋に戻っため以子が報告すると、悠太郎は信じられないといった顔をしました。

「えっ、珍しいの?」

「はい、かなり … 」


何だかうれしくなってきため以子。

「少しは認めてくれたのかな … その ~ 少しだと思うんだけど」

「 … だといいですね」


久しぶりにめ以子の明るい顔を見た気がして、その苦労が報われることを願う悠太郎でした。

… … … … …

魚島季節のご挨拶の日の朝。

め以子のために銀次は見事な鯛を32匹揃えてくれました。

「ありがとう、銀次さん」

「まあ、うまいことやりや」


荷車に鯛が入った箱を積んで、め以子が家に戻ると … 喪服姿の和枝が待っていました。

「ごめんな ~ 急な葬式が入ってもうてな、行かんとあかんなりましたんや。

… 悪いけど、お願いできまっか?」

「私ひとりでですか?」

「戻ったら、わても一緒にやりますさかい。

鯛、悪なるさかい、あんさん行けるところから行っといておくれやす … 頼んましたで」


和枝に頼りにされたと思った、め以子は張り切って引き受けました。

… … … … …

一張羅の着物を着ため以子は、鯛の入った黒塗りの木箱を手に最初の家を訪問しました。

「西門でございます … 魚島季節のご挨拶に参りました」

め以子が鯛を差し出すと、その家の女房は怪訝な顔をして尋ねました。

「あの、どちらさんでっか?」

「西門悠太郎の『家内』でございます」


家の使いとして胸を張って笑顔で答えました。

「あんさんみたいな方おるとは、うちは聞いとりまへんで。

… お引き取りください」


素っ気なく言うと、戸を閉めてしまいました。

2軒目。

「もういただいてるんで、結構です!」

またも門前払いを食らいました。

3軒目も同じく …

「 … 私の顔、分からないからかな?」

あきらめて立ち去ろうとした時、若い女性 ~ たぶん、この家の嫁でしょう ~ にそっと呼び止められました。

「あの、西門さんとこのお嫁さん?」

「はい」

「 … どこ行かはっても同じやと思いますわ」


女性の話では、昨日、すでに和枝の名前で鯛が届いていて、一緒についていたという手紙を見せてくれました。

… 自分と同じような立場のめ以子に同情したのかも知れません。

『悠太郎の連れ帰った東京のおなごが私の言うことを聞かず、一人前の嫁として自ら魚島季節のご挨拶をやると言い出しました。

気の強い嫁で、私の手に負えまへん。いくら一緒にやろう言うても、聞きまへん。

ご挨拶も済んでおりませんのに、そちら様に突然伺うこともあるかも知れません。

止める力のない私をお許しくださいませ』

上手にめ以子を悪者に仕立ててありました。

< 相変わらず、大層ないけずだね … >

少しも認めてなどくれてはいませんでした。

それどころか、親戚まで巻き込んで今までで一番手の込んだいけず … め以子は自分の甘さを思い知らされました。

… … … … …

足取りも重く、家に戻っため以子をお静が明るく迎えました。

「ご苦労さん、見てこれ ~ 立派やな、きれいわ ~ 」

「 … 増えてる?!」


台所には、め以子が用意した他にも何匹も鯛が増えていたのです。

「皆、お返しの鯛やって、持ってきはってな ~ 」

にこやかに笑っているお静をめ以子は恨めしそうな顔で見つめました。

「あれ?」

め以子が鯛をそのまま持って帰ってきていることにやっと気づいたお静。

「鯛、受け取ってもらえんかったん?」

そんなめ以子を見て、すべてを理解したようです。

「またやられたんか?!

せやから言うたやろ、まともに取りおうてもムダやって … どないすんの、この鯛?

40匹はありそう!」


… … … … …

「知りませんっ!」

ついにめ以子はブチ切れました。

手にしていた箱を勢いよく置くと声を荒げて言いました。

「お義姉さんがやったんだから、お義姉さんに聞いてください!!」

「で、でも、この鯛 … 」

「だったら、お静さんが考えてください!」


お静に当たってしまいました。

「もう、いつもいつも私ばっかり、もうっ!」

悔しいやら、情けないやら … 立ちすくむめ以子。

「 … 大丈夫?」

… … … … …

『腐るん?』

「えっ?!」

その時、め以子には確かに聞こえました。

『腐っても鯛言いますねんけど … 』

『わてら、腐ってまうん?』

『ホンマに?』『何でえな?』

『瀬戸内の海に卵、産みに寄ったのに?』

『せめてきれいに食べてもらわんと … 』

それは、鯛たちの嘆きの声でした。

『美味しう食べてくらはらしまへんのかいな ~ 』

『骨までしゃぶってや ~ 』

耳を押さえても次から次へと飛び込んで来るのです。

… … … … …

鯛を見つめると悲しそうな目をしているような気がしました。

「 … どないした?」

お静が心配して声をかけました。

「もう、もう … んも ~~~ っ!!!」

め以子はまるで雄叫びをあげながら、家を飛び出して行ってしまいました。

ああ、ついに …

「 … きてもうたんちゃうか??」

天然真鯛 炭火焼 500g~600g

新品価格
¥2,580から
(2013/11/15 19:30時点)



ピアノピース1036 雨のち晴レルヤ by ゆず

新品価格
¥525から
(2013/11/15 19:31時点)



NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」 ごちくん'sキーホルダー「GOCHICO」

新品価格
¥525から
(2013/11/15 19:32時点)



あまちゃんファンブック2 おら、やっぱり「あまちゃん」が大好きだ!

新品価格
¥1,365から
(2013/11/15 19:32時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月14日 (木) | 編集 |
第40回

西門家を突然訪れた希子の担任の関口、帰宅した和枝が座敷で応対していました。

「いつも希子がお世話になっております。

今日は、わざわざお越しいただきまして … 希子が何ぞいたしましたか?」


担任が予告もなく直々に家庭訪問に来るとは、何かあったと考えなければいけません。

「実は、希子さんのお弁当のことなんですけど …

先月から、希子さんが教室でお昼を食べなくなって … 一応、注意はしたんです。

そうすると、必ず謝るんですけど、次の日もやっぱり教室にはいなくて …

気になって、私こっそりと後をつけてみたんです。

そしたら、おむすびが三角やったんです」


関口の話を聞いて、和枝は目を見開いて驚いています … お茶を運んできため以子の耳にも入りましたが、意味が分かりませんでした。

「ご存じなかったですか?」

「ちょっとそこ座り!」


和枝はめ以子を傍らに座らせて問いただしました。

「あんさん、三角に握ってはるの、わざと違うな?」

「えっ?」

「三角のおむすびは、弔辞に出すもんなんです … お葬式とか法事とか!」


東京都とこの辺りの風習の違いをめ以子は知らなかったのです。

「ご存じなかったんですね?」

「あ、はい … えっ、そうなんですか?!」


知らなかったこととはいえ、とんでもないことを続けていたのでした。

「希子さん、どうも一度それを面白がられたそうです。

… これからは気をつけてあげてくれますか?」

「ホンマに申し訳ございませんっ」


関口に向かって両手をついた和枝を真似てめ以子も同じようにして頭を下げました。

かえって恐縮している関口に和枝は言いました。

「いえ、妹に拘束を破るようなことをさせてしまったんですから … 『女中』の物知らずのせいとはいえ、全ては私に責がございます」

… … … … …

夕方、帰宅した希子にめ以子は謝りました。

「ごめんね、おむすび。

今日、学校の先生が来て教えてくれたの」


関口が訪れたことを知って驚く希子。

「 … 知らなかった私も悪いけど、嫌だって思ったら、嫌だって言って。

ねっ、怒ったりしないから …」


希子は、困ったような顔で黙ったままめ以子の顔を見つめています。

「ほら、教えてくれると、勉強にもなるし …

あれかな ~ 私、大きいから怖い?

もの言いにくいかな?」


うつむいた希子は、泣き出してしまいました。

「 … ごめんなさい」

「の、希子ちゃん、そ、そんなに泣かないで」


まさか泣くとは思っていなかっため以子は慌てました。

2階から下りてきた和枝がめ以子の前に立ってにらみつけました。

「悪いのは、言わなかった希子ですか?」

「違います」


め以子は決して希子を責めたのではなかったのですが … 和枝はそうは受け取りません。

泣いている希子の肩を抱くとサッサと奥へ連れて行ってしまいました。

「お兄ちゃん、何であんな人連れてきはったんやろうな?

大丈夫やで ~ まだ祝言あげてへんさかいな ~ 」


唇をかみしめ、ふたりの背中を見つめるめ以子。

… … … … …

悠太郎は、藤井と大村に連れられて、例の立ち飲みの店に来ていました。

「ちなみにそれホンマなんか? 1年祝言挙げんしきたりって」

「こういうことには疎くて … あるもんなんですか?」


大村に尋ねられて反対に聞き返した悠太郎に藤井は言いました。

「祝言なんて、挙げん方がええで」

「えっ?」

「あれはな、各種もめごとの一式詰め合わせや。

結納の品目から始まり、日取りが気に入らん、花嫁衣装が気に入らん、これをどないするかいうてもう ~ 」


横でいちいちうなずいていた大村。

「まあ、えらいこっちゃ、うん … で、お前とこの嫁はん、そのしきたり本気で信じとるのか?」

「う~ん、どうなんでしょう ~  取りあえず、姉に気に入られようと必死ですけど」

「けど、そのおばはん … 」


藤井が何か言い始めましたが、構わず悠太郎は言いました。

「すいません、僕そろそろ失礼してもええですか?」

「僕の話まだ終わってないけど … 」

「 … 帰りたくないんですね?」

「君かて帰りたないやろ?」

「いうても、うちの妻は明るいですから」


… … … … …

「ただいま帰りました ~ 遅うなりました」

帰宅した悠太郎が台所へ足を踏み入れると、め以子は振り向きもせず、座ったままで「おかえりなさい」とボソッと言いました。

煮干しの頭を黙々と取っています。

「ご飯は?」

「上の人に誘われて、食べてきました」


弁当箱を返そうと近づくと、居間に膳が用意されているが分かりました。

「悠太郎さんは平気でした?

… おむすび、三角形はお葬式用なんですよね?

恥かいてたら、ごめんなさい … 私のせいですよね」


さっきから一度も悠太郎の顔を見ようともせずに煮干しの頭を取り続けています。

「姉さんと何かあったんですか?」

「悠太郎さんに言ったら、家のことで気をもませるなんて、嫁失格だって言われるから言えません」


… もう半分言っているも同じでした。

「それ今日やらんでも、もう遅いし … 」

「誰かさんのお弁当箱も洗わないといけませんから」


とげのある言い方です。

「それくらい自分で … 」

め以子は立ち上がって、振り向くと、悠太郎をにらみつけました。

それは、悠太郎が初めて見るめ以子の顔でした。

「お弁当洗わせたって言われるから … もう寝てくれはりまっか?」

唖然とする悠太郎、ただ言われた通りにするしかありませんでした。

… … … … …

「 … 姉ちゃんに似てきたんちゃうか?」

自分たちの部屋に引っ込んだ悠太郎は、ふと机の上に広げたままの便箋に目が留まりました。

それは、め以子が両親に宛てた書きかけの手紙です。

何となく読んでしまう悠太郎。

「こんなん … 」

手紙を読み終えた悠太郎は考え込んでしまいました。

… … … … …

次の日の昼。

悠太郎が弁当箱を開けると、俵型のおむすびが入っていました。

… 関西ではこの形の方が主流のようです。

おむすびの形状で何かあったことは確かですが、悠太郎には想像することができませんでした。

「どう、奥さん今日も明るかった?」

「 … 電球切れてました」


悠太郎の言葉を聞いて藤井はうれしそうに続けて何か言おうとしましたが、人に呼ばれて行ってしまいました。

… … … … …

沈んだ気持ちのめ以子は洗濯をするのにも身が入りません。

ただ惰性で手を動かしているようなものです。

お静の出した洗い物を手にした時、その浴衣が今まで見たことがない新しいものだと気がつきました。

ちょうど、玄関から出ていくお静が見えたので、め以子は思わず呼び止めていました。

「お静さん、これ新しいの買われたんですか?」

お静は少しばつが悪い顔をしましたが、笑っています。

「こないだお願いしましたよね?

お静さんも無駄遣い控えてくださいって … 私が肥汲みまでしてるのに、少しは … 」

「せやかて、あんた洗い方きついやろ ~ それで気に入ってたん傷んでしもうたんや。

ええやんか ~ 浴衣1枚ぐらい」


いつもの調子でしたが、深刻なめ以子の表情を見て、笑うのをやめて謝り始めました。

「ごめんな ~ 分かってんねん、悪いお義母はんでごめんな ~ 」

… … … … …

「悪いのは私か … 全部 … 」

洗濯を続けているうちに次第に何ともやるせなくなってきました。

その気持ちがどんどん膨らんできて、怒りに変わって … 思わず、洗っていた浴衣を地面に叩きつけていました。

「もうっ!」

それだけで収まらずに、すでに洗い終わったもの、これから洗うものまで次々に放り投げてしまいました。

… … … … …

そのまま家を飛び出しため以子は、顔を強張らせ、肩を怒らせて進む … 行く先は市場でした。

「おお、め以子いいとこに … 」

源太に声をかけられましたが、無視してそのまま行ってしまいました。

… … … … …

出先から戻った和枝は、裏庭に散らばった洗濯物を見て、立ちすくみました。

その脳裏によぎったものは …

かつて、自分も嫁ぎ先で同じように洗いかけの洗濯物を地面に叩きつけてしまった経験がありました。

「お母ちゃん、どないしたん?」

そんな和枝に抱きついてきた幼い男の子が尋ねました … とうに忘れていたはずの記憶の中の出来事でした。

… … … … …

市場の休憩所でしかめっ面でアンパンを頬張っているめ以子。

目の前に山盛りのいちごが入ったザルが差し出されました。

「いちご、いる?」

源太でした。

しかし、め以子はそっぽを向きました。

「きらい … 」

「えっ?」

「きらい … きらいきらい、皆大っきらい!

お義姉さんはいじわるだし、お義母さんはいい加減だし、妹は卑怯もんだし …

もう、皆大っきらい!!」


… … … … …

「けど、しゃあないちゃうの?

ダマされて、売られて来たわけでもないんやろ … 分かってて来たんやろ?」

「けど!」

「そんなに嫌やったら、離縁でも何でもしたらええやん?

それが嫌やったら、まあ … ここで粘るしかないわな ~ お前が選んだ男の家族やねんから」

「分かってるわよ、そんなの!

分かってるけど … 」


涙が出そうになって、言葉に詰まっため以子に源太はもう一度いちごのザルを差し出しました。

「これ、八百屋のおばはんから … おおきにって」

「えっ?」


源太からざるを受け取っため以子。

「お前、このあいだトマトの水煮とか西洋の薬味とかくれたやろ?

おばはんにもやったら、勉強になったわって … そんなに困ってんのやったら、糠漬け美味いから売ったらどうやろかて、うちの女将さんと話しとったわ。

皆商売やからな、お前にタダで物くれてやる訳にはいかんけど、いろいろ力になろう思うてんねんで。

旦さんに365日美味いもん食わせんのやろ?

… そんなんでどうするねん?」


め以子は涙をこらえながら、膝の上に置いたいちごを見つめました。

そして、ひと粒手に取って、口に運びます。

うなずくめ以子、源太も手を伸ばして、いちごを口にしました。

いちごを食べ続けるめ以子の頬をこらえきれずに涙がこぼれ落ちました。

… … … … …

源太に励まされて、気を取り直して、家に戻っため以子。

裏庭に放り出したままのはずの洗い物がきれいに洗濯し直された上に、干してまでありました。

「 … これ?」

め以子が戻ったことに気づいた和枝が裏庭に出てきました。

「あの、これ … お義姉さんが?」

「途中で放り出して、だらしないにもほどがあります!」

「すいません … 」


一応、責められはしましたが、思ったより軽く済みました。

それに何といっても、まさか和枝が自分の代わりに後始末してくれるなんてことは、夢にも思っていなかっため以子でした。

… … … … …

「あんさん、魚島って知ってまっか?」

襟を正した和枝はめ以子に尋ねました。

「うおじま?」

… また新たな試練?

木曽の桶屋 たらい(60?)

新品価格
¥23,000から
(2013/11/14 15:25時点)



NHK連続テレビ小説 ごちそうさん レシピブック

新品価格
¥1,470から
(2013/11/14 15:26時点)



あまちゃん 完全版 Blu-rayBOX3<完>

新品価格
¥16,705から
(2013/11/14 15:27時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月13日 (水) | 編集 |
第39回

め以子は、源太に連れて行かれた長屋で『ほうるもんじいさん』と呼ばれている老人を紹介されました。

「飯食わしたって欲しい奴おんねんけど … 始末で苦労してんねん」

『ほうるもんじいさん』 ~ 源太は『師匠』と呼んでいます ~ に微笑みかけられて、め以子は緊張気味に頭を下げました。

「ああ、これ土産」

源太が手渡した桶の中身を見て、師匠はたいそう喜びました。

「おお、これ牛の臓物やないか ~ 」

「どないすんの、こんなん?」


連れの女が気味悪そうに声を上げました。

「これ、精つきまんねんで」

ひょうひょうと言った師匠は、一同を部屋へと招き入れました。

… … … … …

「どないした?」

入り口の所にボ~っと立ったまま、師匠を目で追っているめ以子に源太が声をかけました。

「あ … あの人、言わなかったな、と思って」

「何を?」

「私の背のこと」


今まで、初対面の人は、必ずと言っていいほど、め以子の身長のことに触れてきたものでした。

… … … … …

師匠は、早速、入り口にある小さなカマドに鍋をかけて料理を始めました。

その間、手持無沙汰のめ以子は師匠の部屋の中を見回していました。

壁にはカタカナとローマ字の一覧が貼られ、文机の上には、論語などの書物が無造作に置かれています。

「あの人って、先生なんですか?」

め以子は、女がそばに来た時に尋ねました。

「この辺の子供に読み書きソロバンをか教えてる。

学校行かれへん子も多いし … 私ら、本読んでもろうたり、代書もしてもろうてる」

「代書?」

「恋文書いてもろうたりな、いろいろや」

「もともとは何してたんですか?」

「全然教えてくれへんねん … 怪しいことしてたんかも知れへんな」


そう言いながら、女は全く気にしていないように師匠を見て微笑みました。

… … … … …

「何ですか、これ?」

師匠が鍋のフタを取ると、見たこともないようなものがグツグツと煮込まれていました。

め以子には何か得体の知れないものに見えたのです。

「半助や」

そう言われても、め以子には分かりません。

「何なんですか?」

師匠が菜箸でつまんだ塊の正体は … うなぎの頭でした。

「うなぎ屋で、ひと盛り3銭で売ってりよるんや」

「3銭?!」


あまりの安さに驚くめ以子。

上手いこと言って、勉強してもらえたら、2銭にまではなると師匠。

「これ本当はな、うなぎの中に焼き豆腐とネギ入れて煮るんやけど … わしは、オカラや。

オカラはタダで分けてもらえる」


ネギの代わりは、土手で摘んできた野草です。

「これをポン、ポンと入れて … どうや?

春の香りがして、これタダや!」


め以子は鍋から漂う匂いを嗅いでみました。

「これ … 美味しい」

「えっ?」

「もう、匂いだけで美味しい … 絶対、美味しい!!」


唾を飲みこんで、鍋をじっと見つめています。

「わあ ~ えらい食道楽やな … 」

師匠は目をパチクリとさせていました。

… … … … …

女学校。

階段下の廊下で隠れるようにして、弁当のおむすびを食べていた希子は、担任の教師に見つかって咎められていました。

「西門さん、また … どうして教室で食べへんのです?」

どうやら、今日が初めてのことではないようです。

「 … ええ加減、訳を教えてもらえまへんか?」

… … … … …

こちら、め以子は、師匠が作った半助をものすごい勢いで食べていました。

次から次へと、うなぎの頭にしゃぶりついては平らげていくめ以子。

その食べっぷりに言葉をなくして、唖然と見ている3人。

「 … うん?」

め以子は自分の前の食べ殻の山に目をやりました。

「あっ、ああ ~ !」

「やっと気いついたか?」


夢中になって、自分だけ食べていたことにようやく気づいため以子でした。

「すいません ~ 美味しくて … 」

申し訳なさそうな顔をするめ以子に師匠は、少し顔を引きつらせながらも言いました。

「うんうんうん … たんと食べなはれ。

わしらは、さっきもろうたお土産、後でやるさかいな」


… … … … …

「あの … 私見て、何とも思わないんですか?」

め以子は疑問に感じていたことを師匠に尋ねました。

「ええ、よう食べる人やな ~ とか?」

「そうですけど … いや、そうじゃなくて、皆、背にびっくりするから」


立ち上がってみせました。

「ああ ~ よう育ってはります」

言われてみて、今初めて気づいたような師匠でした。

「けど、何でそないに大きいなったんやて … 聞くまでもないわ」

食べ殻の山を指さして笑いました。

「父が洋食屋をやっていて、美味しいものばっかり作るんで … うちは折れた箸直して、初ガツオ食べるような家だったんです」

め以子は座り直しながらそう話しました。

「ああ、そらまたええ家に育たはりましたな ~ 」

… … … … …

め以子が名前を尋ねると師匠は『酉井捨蔵』と名乗りました。

「ああ、『ほうるもんじい』でよろしい」

「いいえ、師匠って言います。

こんな美味しいもの教えていただいて ~

私、知りませんでした … 捨てるようなもんで、こんな美味しいもんが出来るなんて」

「そうか、そうか … ああ」


人の名を聞く前にまず自分が名乗るべきなのに、め以子ときたらまた箸を動かし始めています。

「ああ、こいつは、卯野め以子」

代わりに答えた源太。

「今は、西門」

「ああ、せやせや、西門め以子」


酒を飲んでいた手が止まって、め以子の顔を見つめた捨蔵のことを女が茶化しました。

「嫁いではったんや、残念やったね、師匠 ~ 」

… … … … …

「師匠、今日は本当にごちそうさんでした。

このお礼はいつかちゃんとしますんで … 」


かしこまって頭を下げため以子は帰り支度を始めました。

少しでも早く、始末の料理を試してみたいのです。

「ああ … 」

しかし、め以子の名前を聞いてから、捨蔵の様子は明らかに変でした。

「じゃあ」

「あ、ちょっと、め以子さん」


部屋を出て行こうとするめ以子を捨蔵は呼び止めました。

「また、いつでも好きな時に来なはれ …

いやいや、もう、あんたの食べっぷりを見とったら、こっちの方が幸せになる」


… いつか、別の人にも同じようなことを言われたのをめ以子は忘れているようです。

「はい、本当にごちそうさんでした」

… … … … …

市場に戻っため以子は、始末の料理に使える食材を探していました。

… … … … …

め以子が帰った後、捨蔵は源太の土産の牛の臓物を料理していました。

「め以子ちゃんのこと、染丸には言わんといてやるからな」

「ホンマ何もないから ~ 今日かて、旦那と約束した言うから、協力したらなしゃあないなて …

約束したんやて、1日3食365日、美味いもん出し続けるって」


源太と女のそんなやり取りを横目で見ながら、微笑んだ捨蔵は、酒を口に含みました。

… … … … …

その夜、西門家の夕食には、め以子流の始末の料理が並びました。

「魚屋さんが普段は捨ててしまうサバの頭を半分に割って、ショウガの古漬けと一緒に炊いたのと、少し傷んでるからお店には出せないと言っていたキャベツを八百屋さんからいただけたので、それを細かく刻んでお澄ましの中に入れて … 全部で10銭で出来ました!」

「そら、がんばったな ~ いただきます」


お静はほめてくれましたが、和枝は不満そうな顔をしています。

「ああ、これが始末ってものなんですね ~ 捨てるもんでこんなに料理が出来ちゃうなんて …

私、もう感激しちゃって」


うれしくてしょうがないめ以子は少し有頂天になっていました。

「食べる時に銭の話、やめてもらえまっか?

それに、こんなん始末ちゃいまっせ … これはただの、どケチだす」


そんなめ以子に水をかけて、和枝のダメ出しが始まりました。

「これ全部、ほおるもんのかき集めですやん!

わてらこれから、残飯ばっかり食べさせられるんでっか?」


… … … … …

夕食後、め以子は帳面にひと月にかかる食費を試算してみました。

ほうるもんの料理を否定されたら、20円で賄うのはやはり厳しいのです。

< そうだね ~ 後は、野草を摘むとか、庭で野菜を作るとか、魚釣りに行ったりするしかないよね … >

「 … め以子さん」

和枝の目を盗んで下りて来たのは、お静でした。

「あんたな ~ 嫌がらせにまともに応えてどないすんの?

… ええ加減、受け流しとき」


め以子がどんなにがんばっても和枝は認める気などないとお静は教えてくれました。

「けど … もしかしたら、まかり間違ったらってこと、あるかも知れないじゃないですか?」

お静は首を大きく振りました。

「それこそ、向こうの思う壺やで。

手抜くこと覚えんと … 頭、おかしなるで」


… … … … …

遅く帰宅した悠太郎の食事の世話をしながら、め以子は相談しました。

「何かないかなと思って … お金かけずに皆に美味しいもの食べさせる方法」

「 … 少し回しましょうか?」

「ううん、お金はなしで何とかしたいの」


め以子はいつも悠太郎がするようにあごに手を当てて考えてみました。

悠太郎もまた同じように …

「あっ … あかんあかん」

一瞬何かを思いついたようでしたが、すぐに自分の中で却下してしまいました。

「あ、今何か思いついたでしょ?」

「 … 何でもないです」


それでもめ以子は無理に聞き出しました。

… … … … …

肥を汲むと、青物市場に野菜を売りに来た農家が野菜と替えてくれる … という話でした。

< そこまでするのかい? め以子 … >

… … … … …

次の日。

天秤棒で肥桶を運んで、僅かばかりの野菜を手に入れため以子が家に戻ると、ちょうど荷物が配達されてきたところでした。

荷物はめ以子宛て、送り主は実家のイクからでした。

トマトの水煮やクッキー、イチゴジャムなど食材がびっしりと詰まっていて、め以子は感嘆のお声を上げました。

その中に母からの手紙も同封されていました。

『め以子、元気に過ごしていますか?

お父さんは仕事、仕事、照夫はいい加減の毎日、ポンちゃんも相変わらずです。

少し変わったことは、店に時々、桜子さんや民子さん、宮本先生も来てくださるようになったことです。

みえると、め以子の女学校時代のバカな話を披露してくれます。

バカだバカだと思っていた以上のバカさ加減で、赤面させられっぱなしです。

そんな話をクマさんとしていると、まるでめ以子がいるような気になりますが、お米の減り方の遅さに、ああ、め以子は嫁に行ったんだなと、しみじみ思います。

祝言はいつになりそうですか? お父さんも気にしています。』

手紙を読み終えた、め以子。

実家で待っている父と母のことを思うとため息が出ました。

… … … … …

糠床の世話の時にめ以子は、イクから届いた品々をすべて源太に譲ってしまいました。

「これホンマにもろうてもうてええの?」

「うん、見つかったら、また捨てろって言われるし … 師匠とか定吉さんとかにも分けてあげてもらえる?」

「 … お前も切ないの ~ 金はもらえへん、もろうたもんも使えへんって」

「ホントに … 」


め以子が何か言いかえしてくるかと思っていた源太ですが、当てが外れて … 心配になったようです。

「何や、ホンマに元気ないな」

「ちょっと、むなしくなっちゃって … 認めてもらえる日って、来るのかなって」


… … … … …

め以子は両親に手紙を書きました。

たくさんの食材を送ってもらったお礼、自分は元気だということ、西門家の家族のこと ~ すべて本当のことは書けませんが ~

そして、しきたりで祝言は1年後になるということを書き綴りました。

… … … … …

「ごめんやす ~ 」

その時、玄関で誰かが訪ねてきた声がしました。

め以子が戸を開けるとそこには、女性がひとり立っていました。

「 … どちら様ですか?」

「希子さんの担任の関口と申します」


… 一体どんな用事で訪れたのでしょうか?

日本一短い「母」への手紙―一筆啓上賞

新品価格
¥945から
(2013/11/13 21:15時点)



NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」 雨のち晴レルヤ (NHK出版オリジナル楽譜シリーズ )

新品価格
¥600から
(2013/11/13 21:16時点)



ピアノミニアルバム 「NHK連続テレビ小説 ごちそうさん」

新品価格
¥735から
(2013/11/13 21:17時点)



NHK連続テレビ小説「あまちゃん」完全シナリオ集 第1部

新品価格
¥1,785から
(2013/11/13 21:17時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月12日 (火) | 編集 |
第38回

「こんな … こんな無茶な話ないでしょ?!」

ものすごい剣幕で帰って来た悠太郎、和枝の前に給料袋を叩きつけました。

「 … 無茶でっか?」

平然と答えた和枝、ふたりはにらみ合ったままです。

ふと、悠太郎は、め以子が手にしている紙幣を目にしました。

「それ?」

「あっ … 食費だって」


その額を確認して、また和枝に向かって大きな声を上げました。

「こんなに食費、絞る必要ないでしょ?!

…食費は一番大事な」

「悠太郎さんのお給料が75円。

そこから、学費の借金のかかりが10円、希子の学校が月3円。

悠太郎さん、お静さん、希子のお小遣いでおよそ10円、株仲間のお付き合いは10円ほどかかりますし … ご近所、親戚の冠婚葬祭、宮城山のタニマチもせなあきまへんし。

今月は、魚島もありますさかいな ~ 」


学費以外は、ほとんど家の体面を保つための出費でした。

「何で、食費絞って、相撲取りのタニマチせなあかんのですか?!」

「タニマチ降りた、でけんようになった言われることが問題なんだす!

あんた、200年続いた西門の顔つぶす気でっか?!」


反対に悠太郎に怒鳴り返しました。

… … … … …

仏壇に向き直って、手を合わせている和枝に悠太郎は尋ねました。

「姉さんは、家と人とどっちが大事なんですか?」

ひとつため息をついた和枝。

「今、この家には何人おりますんや? … そちらの方、含めんでな」

「5人です」


きちんとめ以子のことも含めて答えました。

「東では、面白い物の数え方、しはるんですな ~ 

… 西門の家はいくつですか?」

「ひとつです」

「4つあるもんと、たったひとつしかないもん … どちらが大事かアホでも分かりますがな」


和枝の言葉に悠太郎はあごに手を当てて考え始めました。

… … … … …

「 … 僕が間違うてました」

「お分かりやったら … 」


和枝の話を遮るように悠太郎は言いました。

「本家と分家合わせると、西門は4つありますね … 4人と4つ、同じですね」

「 … で、この人は入れへんでええんやね?」


ああ言えば、こう言う …

「家作もあるでしょ?!」

「あんなもん、『あの人』のツケ払たら、終わります」


… 『あの人』とは?

「とにかく、こんなこと続けるようやったら、別居を … 」

「ふたこと目には別居、別居って …

自分さえ上手いことやったら、わてらおなごはここに置き去りでっか?

『僕がこの家を守る』って誓いはったんは、もう反故でっか?」


ぐうの音も出ない悠太郎 … 仏間を出て行ってしまいました。

… … … … …

「 … ごめんな」

自分たちの部屋で悠太郎はめ以子に謝りました。

「私の方こそ、何も考えないで、ガス、ガスって浮かれてました」

和枝のやり方が許せないだけでなく、言いかえすことが出来なかった自分のふがいなさに対して腹を立てている悠太郎でした。

「この家は、悠太郎さんが守るって言ったの?」

「 … おやじがおらんようになって、男は僕しかおらんし … そら、言うやろ」


責められたと思ったのか、悠太郎は少し不満そうに答えました。

「悠太郎さんは、昔っから、悠太郎さんなのね … 」

しかし、め以子は幼い悠太郎の面影を見ていたのです。

… … … … …

「ねえ、この家って … そんなに、その … 借金があるの?」

聞きにくそうに尋ねため以子。

「学費やら何やらで、火の車やったのはホンマや」

「それを、お義姉さんが株で何とかしてきたってこと?」

「う~ん、そういう言い方も出来るけど … 株だけやってる訳、ちゃうからな」


悠太郎の話では … 和枝には株仲間の旦那衆がいて、その昔馴染みの金持の隠居たちとの交際にも金がかかるということでした。

「まあでも、実際その人らにいろいろ世話になってるから、非難できんこともあって …

せやから、ややこしいんです」


初めて西門家の家計の内情を知っため以子でした。

「 … 取りあえず、あの人に釘刺しに行ってきます」

… … … … …

悠太郎が向かった先は、お静の部屋でした。

「家の内情はご存じだと思うんで、着道楽はもう少し控えていただけると … 」

「ごめんな ~ ホンマに、ごめんな ~ 」


泣きながら、そう繰り返すお静。

「あかんあかんって思うてんねんけど、つい買うてしまうねん … 」

廊下で話を聞いていため以子は、部屋に戻ってきた悠太郎に尋ねました。

「今、お静さん泣いてなかった?」

「いっつも、ああやねん!

見ててみい、絶対直さへんから」


『西門は支払いをせん』とは絶対言われたくない和枝に付け込んで、お静は着物をツケで買ってしまうのでした。

「 … 本当にややこしいのね」

思わず口をついて出てしまっため以子でした。

… … … … …

< さて、その夕食は … >

皆ムスッとして誰ひとり口をきこうともせず … 険悪な雰囲気、重たい空気に包まれていました。

これではいけない … 耐え切れなくなっため以子が口を開きました。

「そうだ、春菊! あ、こっちでは菊菜っていうんですよね?

随分柔らかいですよね ~ 東とは、やっぱり土が違うんですかね?」

「知りまへんな ~ 」


和枝の素っ気ないひと言で話が終わってしまいました。

それでも、めげないめ以子。

「お静さん、どうですか? その茶碗蒸し … お静さん、プルプルしたもんがお好きですよね?」

「 … 今日は、食べたなかった」

「 … 」


悠太郎ときたら、自分の食事が済むとサッサと部屋に戻ってしまいました。

< せっかく皆が揃ったにも関わらず、何とも味気ない座となってしまいました >

一同の膳を片付けた後、カッカしながらひとり食事をとるめ以子。

… … … … …

「食費の足しにしてください」

布団を敷いているめ以子に悠太郎は自分の小遣いの入った封筒を差し出しました。

「いいです、もらった分でやります」

しかし、め以子は受け取ろうとしません。

「あなたに美味しいもんをたべさせんと、お義父さんに向ける顔がありませんから」

封筒を手に取っため以子。

「私ね、お義姉さんに認めてもらいたいの。

こんなことで、どうにかなるか分からないけど … やらなきゃ、絶対に認めてくれないでしょ?」


そう言うと、改めて封筒を悠太郎に返しました。

そして、笑顔をつくると、また布団を敷き始めました。

「無理しないでください … 無理は体に良くないです」

机に向かって本を読みだそうとした悠太郎に枕が飛んできました。

め以子が投げたのです。

「無理しないと、こんなのやってけないじゃないですか?!」

「 … すいません」


横を向いたままのめ以子に頭を下げました。

「すいませんも嫌いです」

もうひとつの枕も投げつけため以子。

「すいません」

今はそう言うしかない悠太郎でした。

め以子は掛布団を抱えて悠太郎の方へ倒れ込み、そのまま顔をうずめています。

… 泣いているのでしょうか?

頭を撫でようとした悠太郎はその手を払われてしまいました。

… … … … …

「昨日、大丈夫やった?」

建築課の自分の席にぼんやりと座っていた悠太郎に藤井が申し訳なさそうに話しかけてきました。

「大丈夫な訳ないやないですか」

悪いのは藤井ではないのに、八つ当たりしたい気分でした。

「 … 今日行く? 行っとく?」

責任を感じているようで、飲みに誘いましたが、悠太郎は遠慮しました。

「 … 家の中が非常事態なんで」

「いや、おらん方がええわ … 男がいると余計ややこしなるからね」


肩を叩くと行ってしまいました。

「僕が逃げたら、うちは終わりますから … 」

誰に言うともなくそうつぶやいた悠太郎でした。

… … … … …

糠床の世話に訪れた牛楽商店でめ以子は源太に愚痴っていました。

「ひと月20円、大人5人で … 相当がんばらないと無理よね?」

しかし源太から返ってきた言葉は期待していたものとは違いました。

「大したことないやん」

「えっ?」

「初ガツオ、食べんでも人死なへんで」

「だけど、食べ物ケチるなんて … 」


不満顔のめ以子。

「ケチれなんて言うてへんやん、上手いことやれ言うてんねん!

例えばやな、お前そこに新しい昆布入れとるけど … 」


め以子は糠ツボに真新しい昆布を入れているところでした。

「出汁取った後の昆布どないしてんねん?」

「 … 捨ててるけど」

「捨てへんねん!

普通、その出汁取った後の昆布をそこに入れたりすんねん … 糠床なんて、それで十分やねん!」


< ええ ~ そんな風に言われちゃうと、ちょっと … >

… … … … …

源太はめ以子を定吉の店へ連れて行って、出汁を取った後の昆布で作ったという塩昆布を食べさせました。

「 … どや、それなりに食えるやろ?」

「はい」

「残りもんを上手いこと始末すんのが、台所預かっているもんの腕や」

「始末?」

「せや、材料を端から端まで上手いこと『始末』して、腹に収める。

大阪の料理はな、『始末の料理』や」


定吉の言っていることは分かりました。

しかし、何か物足りなさを感じていることも確かでした。

「 … 所詮、出汁取った後の昆布は、出汁取った後の昆布っていうか … 」

「何から何まで、そないに美味のうてもええやろが!

何処のお姫さんやねん?」

「だって、ご飯って1日3回、たった3回しかないのよ!」

「知るか」


いい加減面倒になってきている源太です。

「悠太郎さんにも1日3食、365日美味しいもの食べさせるって約束したの」

「知るかっ」


しょんぼりとしため以子。

子供の頃から源太はこんなめ以子に弱いのです。

「ちょう、待っとき … 」

… … … … …

源太は、め以子を市場から連れ出しました。

「源ちゃん、また遊ばない?」「飲みに来て ~ 」

途中、いかがわしげな街を通り抜けた時、客引きの女たちから声をかけられる源太。

お馴染みのようです。

「源ちゃん、こういう所で遊ぶの?」

やや引き気味のめ以子。

「あ、いや … わいは、遊びたないねんけどな … 遊びに来て来てってせがまれんのや」

「へ ~ 」


… … … … …

目的の長屋はその街の一画にありました。

「師匠 ~ 源太やけど」

鍵のかかっていない扉を勝手に開けて、中に入る源太。

人影がありません。

「 … 何や、留守かいな?」

「師匠?」

「ああ、知り合いのじいさんやねんけどな … 料理が、ごっつ上手いねん。

『ほうるもんじいさん』って呼ばれてんねんけどな」

「ほうるもん?」


人が放る(捨てる)ような物でも上手いこと使って料理するので、ついたあだ名でした。

… … … … …

「何や、源太?」

長屋の間の狭い通路を若い女と腕を組んで歩いて来た老人が源太の名前を呼びました。

「おお、おった」

「染丸さみしがっとたぞ」

「いらんこと言わんでええねん …

ちょう、飯食わしたって欲しい奴おんねんけど」


この老人が『ほうるもんじいさん』のようです。

「わいの幼なじみで東京からこっち来て、始末で苦労してんねん」

挨拶をするめ以子。

『ほうるもんじいさん』につられて、め以子も笑顔になっていました。

< その笑い方は、とてもよく知っている誰かに似ているとは … まだ気づかぬ、め以子なのでございました >

始末の料理―皮も葉っぱもおいしく食べる (レタスクラブMOOK)

新品価格
¥1,200から
(2013/11/12 20:33時点)



雨のち晴レルヤ / 守ってあげたい

新品価格
¥1,200から
(2013/11/12 20:34時点)



今日の「あまちゃん」から(仮)

新品価格
¥1,680から
(2013/11/12 20:35時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月11日 (月) | 編集 |
第37回

< 悠太郎と結ばれ、大阪にやって来ため以子。

しきたりにより、1年間は嫁ではないと言われ、義理の姉・和枝にはさんざんいびられため以子でしたが …

絶食により、上方の味を感じられるようになり、見事西門家の味を再現 … >

和枝のいけずにも何となく慣れてきていたある日、め以子はお静に尋ねました。

「あの … 和枝さんの恋人ってどんな方なんですか?」

「あんた、何? … その話」


お静は好奇に満ちた顔で反対にめ以子に質問しました。

「和枝さん、毎日お出かけなのは、逢引きだって … 」

め以子の話を聞いた途端にがっかりした顔をしたかと思ったら、笑い出しました。

「あんた、それは ~ 」

… … … … …

お静の話によると … 和枝が毎日出かけるのは、逢引きなどでなく、株の仲買場に通うためだということでした。

「株やってるんですね ~ 和枝さん」

「ここんちは、ちっこい家作からしか入ってくるもんないさかいな ~ 和枝ちゃん、それをちびちび増やしてはるんや」


和枝が西門家の家計を支えていたのです。

め以子は少し見直しました。

「まあ、逢引きちゅうんは、上手いこと言うたもんや … あの人の恋人はお金やからな」

「 … すごいんですね、お義姉さん」


… … … … …

< 大阪に嫁いで、1ヶ月 … 和枝に認められようと、上方の料理の習得に必死のめ以子でございます >

「なんや、今日の甘ったるいな ~ 」

昼食に出された煮物をひと口食べた和枝が注文をつけました。

「あ、すいません」

め以子は、お静の膳に置かれたまだ箸をつけていない煮物と和枝の煮物を交換しました。

「お義姉さんのこっちです」

人によって味を変えているのかと、お静が尋ねました。

「 … 大した手間じゃないですから ~ お静さんの分はすぐに作り直して … 」

「ええ、ええ、そのくらい」


お静は和枝が箸をつけてしまった煮物でも気にせずに受け取りました。

「あんさん、わざと逆に置きはったん?

… 間違えずに置いたら、誰も気づきはしまへんもんな ~ こんなにやってますって、分からせるために、わざと間違えはった?」


ひねくれたものの見方しかできない和枝です。

「そんなことしませんよ ~ 」

「申し訳ないけどな … このくらいする嫁もおなごしも、山ほどいてます。

自慢げに言うたら、恥かきまっせ!」


… … … … …

「ようやるな、あんた ~ 

三度三度、ぬく炊いて、朝昼晩、違うおかず作って … しかも、人に合わせて味変えてるやなんて」


炊事の合間に裏庭で薪を割るめ以子を見ながら、お静は感心して言いました。

謙遜をするめ以子。

「ええ子やな … あんたは」

「料理は面倒じゃないんですけど … これが、どうも」


薪割は、結構な重労働でした。

「こんなん、ガス入れたらええやん」

お静は簡単に言いますが、和枝がそう容易く入れてくれる訳がありません。

「もうすぐ、悠太郎さんのお給料日やろ?」

「そうですね … そうですよね!!」


… … … … …

市役所、建築課。

「何でこないに配管用の場所、こんなにいらんやろ?」

「火が出た時のことを考えて、各所に水栓を配置しようと思ってまして」

「小学校やぞ、こんなもんそないにあったら、ガキがいたずらして目も当てられんことになるぞ!」

「そこは、教育者の技量に任せる範疇ではないでしょうか?!」


相変わらず歯に衣着せず、言いあう大村と悠太郎。

「 … ああ言や、こう言う ~ 赤門、可愛げないな ~ 」

しかし、どこか様子が以前と変わってきています。

大村は悠太郎の仕事に対する姿勢を、悠太郎は大村の技量を認め合った上での議論でした。

… … … … …

「西門君、お姉さん来てはるで」

そこへ、何と和枝が藤井に連れられて、建築課に顔を出しました。

「何しに来たんですか?」

警戒をする悠太郎、和枝はにこやかに答えました。

「ご挨拶に決まってるやんか、半人前がお世話になってんやさかいに …

いつも、弟がお世話になっておりまして ~ 」


愛想よく笑った和枝は、奮発した手土産を藤井に渡しました。

… … … … …

「ガス入れるのって、いくらぐらいかかるかな?」

め以子は糠床の世話に訪れた、牛楽商店で尋ねました。

大将が言うには、ガス管引いたり、コンロを買ったり、全部で10円くらいはかかったようでした。

「 … そうなんですか」

思ったより高額なものだと知っため以子でした。

… … … … …

その後、め以子は鮮魚店で初ガツオを目にします。

「おぬし、もう参ったのか?」

「どうや? 江戸っ子の血が騒ぐやろ ~ 」


店主の銀次の言葉に負けた訳ではないでしょうが … 今日の晩御飯は決まりました。

… … … … …

その夜の西門家の夕食には、初ガツオの料理が並びました。

「カツオのたたきに、カツオとネギの煮物、たたきの薬味はおろしショウガ、ミョウガ、オオバ、ネギ、辛子といろいろ揃えましたんで、好きなものをお使いください」

喜んでくれるものとばかり思っていたのですが、皆はどこか白けているような雰囲気です。

「 … な、何か?」

「初ガツオなんか、ホンマに食べる人いるんやな ~ と思うて」


そう言いながらも、お静はうれしそうに食べ始めました。

「えっ、何で食べないんですか?

あっ、西門のおうちでは、初ガツオ食べないというしきたりが?」

「西には、明日には半値になるものを、ありがたがって高い銭払う阿呆はおらんのだす」


和枝があきれたように言いました。

「けど、値段だけのことはありますから … 美味しいんで、どんどん食べてくださいね。

あ、お義姉さん、きっと辛子つけて食べるのがお好きだと思いますよ」


カツオに伸びていた和枝の箸が止まりました。

「あっ、希子ちゃん、このポン酢、ちょっと酸っぱいから、こっちの醤油でどうかな?」

少し驚いた顔でめ以子を見た希子。

「余計なお世話せんといておくれやす!」

箸を放り出した和枝。

「 … でも、希子ちゃんは酸っぱいのが苦手で」

「好みに合わせて味変えて、腕自慢かも知れませんけどな ~ こんなことされると、好き嫌いも治りませんねん」

「でも、希子ちゃん、そんなに好き嫌いは … 」

「嫁に行って苦労するのは、希子なんだす!

… あんさんの考えは一事が万事、底が浅いんですわ」

「 … すいませんでした」


何故、謝らなければいけないんだろう?

… … … … …

「いや ~ ホンマに美味かったです」

仕事から帰宅した悠太郎は、初ガツオをとても喜んでくれました。

「皆もこんな風に食べてくれたら、気持ちがいいのに … 」

ため息まじりのめ以子。

「せっかく大枚はたいて買って来たのに … 」

その言葉に悠太郎の顔色が変わりました。

「えっ、あなたが出したですか?」

め以子は言葉を濁しました。

「もしかして、最近のやたら豪勢なのは …

姉さんにちゃんともらうものは、もらいって!」

「大丈夫です … それに明日は悠太郎さんの初お給料日ですもんね」


め以子に言われて、気づいた悠太郎 … 顔がほころびました。

「それで、ひとつお願いがあるんですけど … 」

上目づかいで悠太郎を見ため以子です。

… … … … …

朝、め以子は女学校に出かける希子に弁当を渡しました。

「はい、希子ちゃん、お弁当」

弁当箱を受け取った時、希子はめ以子の顔を見つめました。

そして、何か言いたげな表情。

「うん?」

「希子、早う行きなはれ!」


しかし、和枝に急かされて、慌てて出て行ってしまいました。

… … … … …

続いて出てきた悠太郎。

「悠太郎さん、今日も遅いんですか?」

「きっと今、僕の顔はガスコンロに見えてるんでしょうね?」


微笑みながら悠太郎。

「便利になる分、時間も出来るし … そしたら、もっと美味しい料理作れるし、そしたら … 」

悠太郎の耳元でささやきます。

「ひょっとして、もしかしたら … お義姉さん、祝言早めてくれるかも知れないじゃない?」

ふたりは、座って仏壇に手を合わせている和枝の後姿を振り返りました。

「 … そんなこと、あったらいいですけど」

悠太郎は出かけて行きました。

… … … … …

「また、おぬしと暮らせる … こんな日が来るとはの ~ 感慨無量じゃあ」

金物店の店先に並んだガスコンロに思わず頬をすり寄せるめ以子でした。

< まもなく、愛おしいコンロが台所にやってくる … そう信じて、疑わないめ以子でございました。

… が!! >

… … … … …

支給された給料袋の封を開けて、金額を確かめた悠太郎は、首をひねりました。

明細通りの額が入っていないのです。

藤井に確認すると …

「えっ、せやかて、君のお姉さんが … なんや金遣いの荒いしたたかな嫁さんが来てって言うてはったけど」

先日、挨拶に訪れた時に藤井にそう吹き込んでいたのです。

「それで、姉に給料渡したんですか?

… 普通渡しますか?!」


… … … … …

その頃、め以子は和枝に呼ばれて、ひと月の食費だと言われて、封筒を手渡されていました。

「これからは、ひと月、これでお台所やってくれはりまっか?」

受け取った封筒の中を確認しため以子は、あまりの少なさに困惑していました。

「あっ、ひとり分ですか?」

「全員分です。

… それで全部賄ってくださいまし、お任せしましたで。」


慌てるめ以子。

「えっ、ちょっと … 出来る訳ないじゃないですか、こんなの!

お姉さんは、美味しいご飯食べたいとか思わないんですか?」

「銭かけたら、美味しいご飯なんぞ誰でもできます!

… 銭かけずに『世界一美味しい』ご飯が食べとおす!」

「いや … でも、お義姉さん、これは … 」


理屈はそうであっても、どう考えても無理だとめ以子は思いました。

… … … … …

そこへ、ものすごい剣幕で悠太郎が帰って来ました。

怖い顔をして和枝の前に座りました。

「今日は、早よおますな?」

平然と話す和枝。

「こんな … こんな無茶な話ないでしょ?!」

和枝の前に薄っぺらな給料袋を叩きつけた悠太郎。

「 … 無茶でっか?」

にらみ合うふたり。

一体、何が起きたのか … 戸惑うめ以子でした。

トロかつお3柵(180~200g前後×3柵)【トロかつお】【トロカツオ】【トロ鰹】【初がつお】【戻りがつお】【カツオたたき】【鰹たたき】【寿司】【レシピ】【ギフト】【築地市場】

新品価格
¥3,980から
(2013/11/11 16:22時点)



連続テレビ小説 ごちそうさん オリジナル・サウンドトラック「ゴチソウノォト」

新品価格
¥3,150から
(2013/11/11 16:23時点)



あまちゃんメモリーズ 文藝春秋×PLANETS

新品価格
¥1,365から
(2013/11/11 16:24時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月10日 (日) | 編集 |
まずは、先週のおさらいを …



それでは、次週の「ごちそうさん」は?

め以子()は大阪の料理を習得しようと懸命だが、和枝(キムラ緑子)は認めない。

こんなに食費、絞る必要ないでしょ?!

ガスコンロを欲しがっていため以子だが、悠太郎(東出昌大)の給料は和枝に横取りされる。

ごめんな ~

そして静(宮崎美子)の着道楽にも頭を悩ませる。

大阪の料理はな、始末の料理や

食費をやりくりするうちにめ以子は、源太(和田正人)ら市場の人々から、食材をとことん使いきる「始末の精神」を学び、源太が師匠と仰ぐ、長屋住まいの男(近藤正臣)と知り合う。

料理がごっつううまいんや、『ほうるもんじいさん』って呼ばれてんのやけどな

牛や豚の臓物をおいしく料理する師匠。め以子は、うなぎの頭を使う半助豆腐に驚き、始末の料理の本質を目の当たりにする。

ちょっと様子見に行って来ようか?

そんな折、東京の実家から小包が届く。食材の数々と温かい手紙に胸が熱くなるめ以子だが、頼るわけにいかない。

認められずにめ以子が苦しんでいる折、和枝は「魚島季節(うおじまどき)のあいさつ」という、鯛(たい)をやりとりする大阪の風習の手伝いを命じる。

悠太郎は何かの策略では、と和枝を疑う。が、親戚に紹介するとの言葉にめ以子は喜び、魚屋の手伝いまでして必要な鯛を少額でまかなってみせる。

西門の顔、つぶす気でっか?!

当日、め以子は独りで鯛を配るはめになったばかりか、どの家からも追い返される。そしてめ以子のもとに大量の鯛が残される。

もう、皆大嫌い!

ごちそうさん 公式サイト、YAHOO!テレビガイド他を参照)

連続テレビ小説 ごちそうさん Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,155から
(2013/11/10 10:35時点)



NHK連続テレビ小説 ごちそうさん 上

新品価格
¥1,365から
(2013/11/10 10:35時点)



雨のち晴レルヤ / 守ってあげたい

新品価格
¥1,200から
(2013/11/10 10:36時点)



能年玲奈 2014カレンダー

新品価格
¥2,360から
(2013/11/10 10:37時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月09日 (土) | 編集 |
第36回

どうやったら、和枝の … 西門のおついの味を出せるのか?

まずは、それがどんな味だったかを知ることから始めようと、め以子はお静に尋ねました。

「お静さんは、お義姉さんのおつい知ってますよね ~ 私が来る前は毎日お義姉さんがおつい作ってたんですよね?」

しかし、め以子が来るまでは、食事はおなごしが用意していたそうでした。

ただ、昔、一緒に団子を作ったことはあると、お静は話し始めました。

「団子丸めて、ふたりできな粉の上にコロコロ転がしとってん …

ほな、『お静さんは団子転がすのお上手でんな ~ うちの父転がすのなんて簡単でしたやろ』って言われてな

 …

うちはな、あの人にせがまれてせがまれて、この家に入ってんで!」


話がおかしな方向に進んでいました。

「あの … お静さん、昆布のこと … 」

ひとしきり愚痴った後、お静は思い出したように言いました。

「 … けど、和枝ちゃんは、昆布しか使うてなかった気がするわ」

「えっ?」

「カツ節とか煮干しとか、全然使うてなかったとちゃうんかな … 」


… … … … …

… 昆布だけで、とても美味しいおつい?

め以子が、板の間の拭き掃除をしながら悩んでいると、2階から、身支度を整えた和枝が下りてきました。

今日もまた何処かへ出かけるようです。

「 … なんや?」

「あ … 毎日毎日、何処にいらしてるのかな ~ って」

「逢引きや」


一度はうなずいため以子でしたが、声を上げてしまいました。

怪訝な顔をして、戻る和枝。

「 … すいません、いってらっしゃいませ」

… … … … …

「そりゃ、ものごっつうええ昆布使うてはったんちゃうかな?」

和枝は昆布しか使っていないと聞いた乾物屋の定吉は、料亭などに卸している山出の中でも元ぞろえという最高級の昆布を見せてくれました。

「これいくらするんですか?」

「これで、1円50銭」


… め以子の時代の1円は、ものすごく大雑把にいうと、5,000円くらいの価値はあったようです。

「ええっ! そんなの普通の家じゃ使えないですよ ~ 」

「けど、結構な旧家なんやろ? お嬢はんとこ」

「でも … そんなにお金のある家じゃないみたいだし … 」


… … … … …

その日、悠太郎は仕事が終わった後、大村に立ち飲みの店に誘われました。

店に入るなり、大村は問い正してきました。

「合わせ梁の図面、あれどういうつもりや?」

「 … あきませんでした?」

「えらい恥かいたわ … しかも、わしの名前勝手に入れやがって。

嫌がらせにもほどがあるやろ?」


悠太郎が引いた図面について会議が大騒ぎになったのでした。

しかも、設計者の欄には大村の名前が入っていたのです。

「大村さんのを参考にして、僕なりにやってみたんですけど … 木造、やっぱり向いてないんでしょうか?」

ため息をついた大村。

「あんな、わしと一緒にやったかて、得にならんで ~ 公共建築で木造は、これから確実に下火になるしやな」

「僕の夢は、安全な街を造ることなんです … 頑丈な街を。

もちろん、コンクリートで造れるに越したことはないですけど、現実にはお金も人も足りひん訳で …

その中で少しでも、夢に近づこうと思うんやったら … 僕は、木造と正面から向かい合うべきなんです。

木造でも安全に対して取れる措置を追求していくべきなんです」

「ほんで、あの合わせ梁か?」


うなずく悠太郎を見て、大村の頬が緩みました。

「ほなまあ、せいぜいがんばってくれや」

今までのように決して嫌味ではないようです。

「わしかて、作ったもん、壊れてほしいないしな」

… … … … …

「へい、お待ち ~ 」

ふたりの目の前に、小皿でフタをされた湯呑が置かれました。

「何ですか、これ?」

悠太郎は初めてみるものです。

「これか? … これはな、魔法の酒や」

大村がフタを取ると、湯呑の酒の中に昆布が入っていました。

「飲んでみい」

言われるままひとくち飲んで … あまりの美味さに驚く悠太郎を見て、大村は愉快そうに笑いました。

… … … … …

その夜も、め以子のおつい作りは続いていました。

「普通の昆布は、どうしたって普通の昆布よね ~ 」

しかし、どうにも上手くいかずにとうとう行き詰っていました。

「ただ今戻りましたよ ~ 」

普段とは違う悠太郎の陽気な声が聞こえてきました。

あれから、大村と相当飲んだようで、ふらつく足取りで家に入ってきました。

「何持って帰ってきてるの?」

一升瓶を手にしています。

「魔法の水や … 」

「えっ?」

「安酒のくせにな、上等酒に化けよるんや」


そのまま台所に入ると、瓶の栓を抜きました。

そして、茶碗に酒を注ぎ、傍らにあった昆布をちぎって、その中に浸しました。

「昆布でな、上等酒になるんや」

訝しげに見ているめ以子に茶碗を差し出す悠太郎。

「飲んで、め以子のために買うて来たんや」

め以子が受け取ると、悠太郎はフラフラと土間の上り口にひっくり返って寝てしまいました。

… … … … …

「ちょっと、起きて ~ 絶対、運べないから!」

起こそうと腕を引っ張っても、びくとも動きません。

「 … 無理」

あきらめて、横に腰を下ろしました。

「安酒とか上等酒とか言われても、私よく分かんないのよね … 」

先ほどの茶碗を手に取り、匂いを嗅いだ後、少しだけ口に含んでみました。

「 … うん?!」

… … … … …

め以子は、水を張った鍋に茶碗の酒を入れて火にかけました。

沸騰前に鍋を火から下ろして、味見してみると …

「これ … 近づいてる?」

偶然ですが、悠太郎がヒントを与えてくれました。

昆布と一升瓶を見つめて考えるめ以子。

… … … … …

< それ以来、め以子は、ありとあらゆる試行錯誤を繰り返しまして … >

昆布を火であぶる、浸した昆布を天日干しする …

酒を入れたどんぶりに昆布を細かく刻んで入れてみました。

匂いを嗅ぎ、そしてまた考える …

手順と結果を料理ノォトに書き留める … この帳面もすでに何冊目かになっていました。

< … ついに、ある方法にたどり着いたのでございます >

… … … … …

その日の夕食は、悠太郎の帰りも早く、家族が揃っていました。

め以子のおついを口にする一同。

「 … 味、どうですか?」

め以子は恐る恐る尋ねました。

「これ、一緒やで」

いの一番にお静が言いました。

ホッと肩の力が抜けるめ以子。

「どうやったん?」

「昆布にお酒をサッと塗って、それを小さな小さな火であぶって … それで出汁を取ったんです」

「西門の味やな ~ 」


悠太郎の言葉にめ以子はうれしそうに笑いました。

無表情の和枝 … しかし、何も言わないということは、文句のつけようがない味だということでしょうか …

… … … … …

「ちい … ちい姉ちゃん」

そうつぶやいた希子。

「ちい姉ちゃん?」

「ああ、大きい姉ちゃんはおるもんな」


笑ってうなずいたお静。

め以子のことを姉と認めたのでしょう。

… 希子はめ以子がおついの味を出すために試行錯誤を繰り返しているところも見ていたのです。

ごちそうさん … でした」

おついを飲み干すと、小さく微笑みました。

「はいっ」

喜びに溢れるめ以子、そんなふたりを微笑ましく見る悠太郎。

西門家の食卓は、久しぶりに温かい雰囲気に包まれている … かに見えました。

しかし、和枝だけは希子のことをにらみつけていたのです。

… … … … …

夕食後、希子の部屋を和枝が訪れていました。

「あんさんは認めはったってことでっか?

… わてが認めてへん、あの人を勝手に姉と認めはったってことでっか?」


強い口調で問い詰める和枝、希子はうつむいて黙ったままです。

「分かりました … はなら、わては、あんさんを妹と思いまへんから」

ようやく口を開いた希子。

「 … うちが … 間違うとりました … 」

「間違うてたって、これからどないしはんの?」

「 … できるだけ、口ききまへん … 」


… … … … …

朝が来て、いつものように出かける悠太郎にめ以子は弁当を渡しました。

「今日何ですか?」

「何でしょう?」


学生時代からずっと続く同じ会話です。

悠太郎が出かけると、すぐ後に希子が出て来ました。

無言で弁当を受け取り出て行く希子。

その後から、慌ただしく出て来た和枝。

「お姉様、いってらっしゃいませ」

耳をふさぎ、眉間にしわを寄せました。

「お国なまり、直してくれはる?!」

一度はうなずいため以子でしたが …

「えっ、えっ? 私??」

取り合わずに、そそくさと出かけていく和枝。

その背中を見送りため息をついため以子ですが …

「 … けど、何か慣れてきたな」

妙に納得しています。

< 和枝のいけずにもだんだんと慣れていった、め以子でしたが … >

… … … … …

「これも頼むわ ~ 」

裏庭で洗濯しているめ以子にお静が洗い物の浴衣を差し出しました。

「はい」

それを受け取りながら、め以子はお静なら知っているかもと思って尋ねました。

「あの … 和枝さんの恋人ってどんな方なんですか?」

その質問に首をかしげるお静。

「だって、毎日逢引きなさってるんでしょ?」

お静はめ以子を見つめ、そして考え込みました。

急に笑顔になると反対にめ以子に尋ねてきました。

「あんた、何? … その話」

「えっ?」


… まずかったかしら?

僕の姉ちゃん

新品価格
¥1,260から
(2013/11/9 15:13時点)



連続テレビ小説 ごちそうさん オリジナル・サウンドトラック「ゴチソウノォト」

新品価格
¥3,150から
(2013/11/9 15:13時点)



あまちゃんファンブック2 おら、やっぱり「あまちゃん」が大好きだ!

新品価格
¥1,365から
(2013/11/9 15:14時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月08日 (金) | 編集 |
第35回

1日でも早く大阪の味に慣れようと、絶食までしていため以子でしたが、4日目についに倒れてしまいました。

「腹減らして、明日の夜、どっか美味いもんでも食いに行きましょう」

それまでは、自分も絶食につき合うと悠太郎は枕元でめ以子と約束しました。

… … … … …

座敷に下りると、家族一同が集まっていました。

「め以子さんは?」

目の前で倒れられたお静が心配そうに尋ねました。

「明日の夕方、専門の病院に連れて行くんで、それまでは寝かせといてください」

「どっか悪いん?」

「 … よくないかも知れません」


わざと深刻な顔をして見せた悠太郎。

「食事は取りたくないって言うているんで、無理には食べさせんとってください」

「大きい柄して、体が弱いんやね ~ 」


和枝があきれたように言いました。

「そうですね … 姉さんに迷惑をかけるかも知れませんから、いっそ別居した方がええかも知れませんね」

一瞬、和枝の顔色が変わりました。

「悪いですけど、今日明日は各自で食事してください」

… … … … …

職場に戻った悠太郎は、藤井に別室へと連れて行かれました。

「 … 大村さんが、君、木造に向いてないから、外してくれって」

自分がいない間にそんな話をされていたのです。

「すぐコンクリートの仕事に入るように調整するから、それでええ?」

「はい … 」


了解はしましたが、何故かスッキリしない悠太郎でした。

… … … … …

< そして、翌日 … ふたりは再び、あの店に向かったのでございます >

それは悠太郎と訪れた屋台の夜泣きうどん屋でした。

テーブルに突っ伏したままのめ以子を見て、店主は心配そうに聞きました。

「大丈夫かいな、その人?」

「たぶん … 」


悠太郎はめ以子に尋ねました。

「ホンマにここでよかったのか?」

「うん、一番分かるし、違い … 」


… … … … …

め以子の目の前にどんぶりが置かれましたが、力が入らず箸は悠太郎に割ってもらいました。

しかし、今度は上手く持つこともままならず … 息することさえ苦しそうです。

「なあ、その人、うどん屋やのうて、病院行った方がええんと違うの?」

見かねた店主が、もう一回聞きました。

「大丈夫です … これ食うたら、生き返るはずです」

悠太郎は匙をもらって、汁をすくって、め以子の口に含ませました。

「うぐっ … 」

目を見開いたまま動かないめ以子。

「大丈夫か? … め以子?」

め以子は、悠太郎の手から匙を受け取ると、どんぶりをつかんで、自分で汁をすくって飲みました。

「美味しい ~ 昆布が、めちゃくちゃ利いてる」

「ほら、もっと食うて、何杯でもええで」


悠太郎が箸を渡すと、今度はしっかりと持って、うどんをすすり始めました。

「うんうんうん」

泣きながら、貪るようにうどんを食べるめ以子。

「そんなに美味いか? わしのうどん」

何度もうなずくめ以子を見て、店主も泣き出しました。

… … … … …

うどんを次から次へと平らげて、め以子の前にはどんぶりの山が並びました。

その様子をうれしそうに見つめる悠太郎。

すっかり元気を取り戻しため以子は、最後のどんぶりの汁を飲み干してひと言。

「はあ ~ ごちそうさん!」

… … … … …

「昆布出汁ってカツオよりまろやかなのよね ~

やわらかくて、まったりしてて … どっちかっていうと、女っぽい」


帰り道、め以子はご機嫌でした。

「うれしそうですね?」

「うれしいよ ~ 分からなかったことが、分かるんだもん!

目の前が、ば~って開けたみたい … これからは私、大阪の食べ物もどんどん美味しくなるのよ。

もう、楽しみで楽しみで … 」


ふと悠太郎が足を止めました。

「うん?」

「 … あなたは、すごいですね ~

そうやってどんどん変わって行って … 始めは料理も勉強も何も出来へんかったのに … 」


その過程を見てきた悠太郎でした。

「変わらんといけませんね、僕も。

ままならぬ中でやって行けるように … 」


… … … … …

悠太郎は、め以子を先に家に帰すと、その足で建築課の部屋に戻りました。

大村が昔引いた小学校の図面を引っ張り出して広げてみました。

「立面 … 出入り口 … 部屋の配置」

今まで見ようとも思わなかった、木造建築の図面 … 頭から否定せずにまず向き合うことから始めよう … そうめ以子に教わった悠太郎でした。

… … … … …

「わしはそなたのよさに気づかずにおった … 今まですまんかったの ~

これからは、嫌というほど可愛がってやるからの」


め以子は、台所の昆布にそう話しかけていました。

… … … … …

次の朝。

め以子が昆布で出汁を取っていると、お静が起きてきました。

「おはようさん、もう体ええの?」

「はい、大丈夫です … お薬がよく効いたみたいで」

「うち、味見しようか?」

「それももう大丈夫です」


すっかり打ち解けたふたりのやり取りを、居間から和枝が見ていました。

… … … … …

昼になって、め以子は糠ツボを預かってもらっている牛楽商店へ糠床の世話に訪れていました。

「あ、ねえ ~ ひょっとして昨日やってくれた?」

昨日は具合が悪くなってしまったので、世話に来ることができなかったのです。

「おお … よう漬かってたのはいただいてもうたけどな」

「ありがとう ~ 源ちゃんってこういう時、頼りになるよね」


め以子は、頼りになったついでにもうひとつ源太に甘えました。

… … … … …

め以子の話を聞いた源太は向かいの乾物屋へめ以子を連れて行きました。

「定吉っつあん、おるか?」

「何やその昆布みたいなお嬢はんは?」


源太から定吉を紹介してもらっため以子は、まずは店の奥で切り分ける前の昆布を見せてもらいました。

「こんな大きいんですか? 昆布って … 」

「せや、びっくりするやろ?」


全長2メートル以上はあります。

「昆布いうてもいろいろ種類があってな …

出汁取るにええのは、山出昆布や利尻昆布、煮物やつくだ煮に向くのが、これや日高昆布」


手帳に書き込むめ以子。

「で、何しはるの?」

「あ … まずは、とっても美味しいお出汁が取れるようになりたいです」

「それやったら、『おつい』がええかな?」

「おつい?」

「汁物 … それこそ、出汁だけで勝負する椀物やな」

「それいいですね! それやってみたいです!」


… … … … …

め以子は、定吉に教わった調理法を早速、牛楽商店の厨房を借りて実践してみました。

そして、出来上がったおついを源太と牛楽商店の店主に味見してもらいました。

「ああ、昆布とカツオの香りがええな ~ 」

「ええですね ~ 」


しかし、何故か首をかしげるめ以子。

「十分美味いやん?」

「美味しいんだけど、うどん屋さんで習ったのとそんなに変わらないというか … 」


何か物足りないのです。

「よしっ、もう1回定吉さんのとこ行って来よう … 煮干しとかシイタケとか、いろいろ合わせを試してみたらいいって言ってたし」

そんなめ以子を見送りながら源太が懐かしそうにつぶやきました。

「 … 昔のままや」

… … … … …

「なんやこれ?」

外出から戻った和枝は、居間の床一面に並んだいくつもの椀を見て、呆気にとられていました。

「おついです。

ご存知かと思いますが … 昆布は産地によって味が違います。

山出昆布、利尻、日高、皆微妙に味わいが違うそうです」


め以子の話を聞きながら、お静と希子は困惑した顔で並んだ椀の前に座っています。

「 … 更にそれに合わせるものが、かつお節、煮干し、あご、シイタケ、干し貝柱、各種ご用意しました。

さあ、西門家にとって一番のおついを探求しましょう!」


やる気満々のめ以子 … そう、実家にいた頃、美味しいおむすびを作ろうと試行錯誤した時と同じです。

「アホらしい …

この人らが美味しい言うたのだけ、後でもらうわ ~ 部屋、持ってきて」


和枝は、サッサと2階へ上がってしまいました。

… … … … …

「 … さて」

め以子は気を取り直して、お静と希子を見ました。

「これ全部?」

恐る恐る尋ねたお静。

「はい」

当然のようにめ以子は答えました。

「どれから行きましょうか?」

… … … … …

大阪市役所、建築課。

「あれ、西門君まだ帰られへんのか?」

藤井に声をかけられて、悠太郎は残っているのが自分だけだと気づきました。

「まだ、ちょっと … 」

「そうか、ほな、お先に」


部屋にひとり残った悠太郎は、机の上のものを寄せると、図面を取り出して引き始めました。

… … … … …

夜も更けて、悠太郎が帰宅すると、居間ではめ以子がひとりで並んだ椀を片付けているところでした。

「 … これ?」

「あっ、おかえりなさい」


『一緒に西門さんにとっての世界一の塩むすびを探求しましょう!』

悠太郎もあの時のことを思い出して、頬が緩んでいました。

「またやったんか?」

おかしくて仕方がありません。

「 … で、どうやった?」

ふくれっ面なので思うように上手くはいかなかったようです。

「かなわないって … 和枝さんのおついには … 」

… … … … …

「もう無理、もう堪忍 … 」

何杯もおついだけ飲まされたお静がとうとう音を上げていました。

「そんなこと言わないで … 希子ちゃんは、どれが一番好きだった?」

「 … ど、どれも美味しいです」

相変わらず蚊の鳴くような声で答えました。

「じゃあ、敢えて言うならどれが一番好き?」

「一番は … ないです」

「えっ、どういうこと?」

「お姉ちゃんのおついの方が美味しい … 」

小さい声ですが、きっぱりと言い切りました。

… … … … …

め以子が、希子の言葉から受けたショックは小さくはありませんでした。

「ねえ、そんなに美味しいの? 和枝さんのおついって」

「まあ、姉さんのというよりかは … 死んだお袋のって言うたほうがええと思いますけど」

「それって … 西門の味ってことよね?」


また新たな壁にぶち当たってしまった、め以子でした。

昆布と日本人 (日経プレミアシリーズ)

新品価格
¥893から
(2013/11/8 19:01時点)



NHK連続テレビ小説 ごちそうさん 上

新品価格
¥1,365から
(2013/11/8 19:02時点)



あまちゃん 完全版 Blu-ray BOX 2(Blu-ray Disc)

新品価格
¥13,364から
(2013/11/8 19:03時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月07日 (木) | 編集 |
第34回

悠太郎は、泣きじゃくるめ以子を近くの夜泣きうどんの屋台へ連れて行きました。

「何があったんですか?」

「糠床捨てられて … ケンカになって … 」


め以子は鼻をひくつかせながら、ことの顛末を話して聞かせました。

「家戻ったら … 運送屋に荷物 … 」

大八車に積み上げられた荷物に目をやる悠太郎。

「 … あれ全部?」

うなずくめ以子。

すると、悠太郎は吹き出してしまいました。

「何で、何で笑うのよ? 私がどれだけ … 」

「せやかて、あれ全部、姉さんひとりでえっちらおっちら運んでたってことやろ?

えらい大層ないけずやなって思って … アホや」


め以子もその光景を思い浮かべてみました。

「アホや … 」

腰をかがめて大八車を引いている和枝を想像するとバカバカしくなってきました。

「へい、お待っとさん」

うどん屋の店主がふたりの前にどんぶりを置きました。

「ここ美味いらしいですよ、市役所の先輩が言うてました」

しかし、汁をひと口飲んで、め以子は首をひねりました。

「昆布がよう効いてて美味いでしょ?」

横を見ると、悠太郎は美味しそうに食べています。

他の客も、悠太郎と同じように舌鼓を鳴らしていました。

しかし、め以子には汁の味が薄くよく分からないのです。

「私だけ違うの? 舌が違う … 」

… … … … …

悠太郎に大八車を引いてもらいながらの帰り道。

「こっちは昆布の出汁が基本なのね」

「そんなに違うもんですかね?」

「確かにこっちの食べ物、何かいちいち違うな ~ 味薄いなとは思っていたの。

… 不味いっていうのは、いけずで言ってるのばかりじゃなかったのね」


め以子の顔を見て、悠太郎はまた笑いました。

「アホといけずか … えらいとこから、大阪弁覚えていってますね」

「ちゃかさないで!

ねえ、どのくらいで東京の味って慣れた? … あ、納豆以外 … 」

「 … 全然気にならんようになったのは、半年ぐらいですかね」


考え込むめ以子。

< それは、ちょっと長いよね … >

… … … … …

「うん、美味しなってる」

次の朝、め以子の作った味噌汁に口をつけたお静が味を褒めました。

「うどん屋さんで昆布出汁の取り方習ったんです」

め以子は和枝にも味加減を尋ねました。

「やっと人の食べるもんになったわ」

「 … ありがとうございます」


希子には、猫舌でも大丈夫なように冷ましてあることと、弁当も用意したので持って行くように伝えました。

小さく微笑む希子。

そんなやり取りを見つめる和枝。

… … … … …

何事もなく、無事に朝食は済んで、後片付けをするめ以子。

味は進歩したとはいえ、まだまだ口に合わないのか、和枝の椀には味噌汁が残っていました。

椀を手に取っため以子 … それを飲みそうになって … 首を横に振って思い止まりました。

グ ~

腹の虫が鳴いています。

「 … 我慢、我慢、我慢 … 」

< おや? 何を我慢してるんだい、め以子? >

… … … … …

市場に買い出しに訪れため以子、何か様子がいつもと違います。

野菜を買い終えた後、うつろな目で鮮魚店の店先を見つめました。

「ええのあるで ~ 」

店員に声をかけられましたが、断ってフラフラと歩き出しました。

グ ~

また腹の虫が聞こえます。

目をつぶって腹を抑えため以子、どこからかいい匂いが漂ってきます。

「どうだい?」

目を開けると、鼻先に焼肉が入った器を突きつけられていました。

「美味いで ~ ちょっと、食うていけ」

『牛楽商店』の店員のその男は器をめ以子に渡そうとします。

思わず手が伸びそうになっため以子でしたが …

「結構です … 」

その場から立ち去ろうとします。

「何遠慮してんねん?! め以子」

「結構です! … あ?」


確か今、名前を呼ばれた …

驚いて、店員の顔を振り返りました。

「今、何故 … 私の名前??」

「やっぱり … わいや!

源太や、泉源太!」


… 幼なじみの泉源太との十数年ぶりの再会でした。

「え ~ ?!」

… … … … …

「源ちゃん、今はお肉屋さんなの?」

「おう、父ちゃん死んで、母ちゃんの実家行ってんけど、家業は人いっぱいでな … 奉公に出されて、それからあっちゃこっちゃ … 結局な」


市場で買い物をしているめ以子のことを何回か見かけて、もしかしたらと思っていたのでした。

「お前は、何でこっちに?」

「うん、こっちの人と一緒になって」

「嫁?」

「うん」


源太は腹を抱えて笑い出しました。

「わははは ~ ようもろうてくれる人おったなあ?」

「うるさいな ~ 」

「おおそうや、せっかくやし、何か食おうや ~ おもろい店、あんねんで」


再会を喜ぶ源太に誘われましたが、め以子は言葉を濁しました。

「い、今は、ちょっと … 」

「焼氷って知ってるか?」

「 … 焼氷?

焼いてあるの? 氷なのに?」


ものすごく興味をひかれました。

「不思議やろ ~ 」

「だめだめだめだめ … だめっ!」


しかし、今日のめ以子は食べ物の話なのに乗って来ません。

「ええやんけ、行こうや ~ 」

「だめもう、それ以上誘惑しないでよ!」


うずくまってしまいました。

「のべつまくなし、手出したらあかんで!!」

通りすがりのオバサンに勘違いされて、源太は注意されてしまいました。

「何言うてんねん、ちゃうわ!」

… … … … …

「 … そうだ!」

め以子は首からかけていた風呂敷包みを開けました。

包まれていたのは糠ツボでした。

留守の間、和枝に捨てられないように、肌身離さず持ち歩いていたのです。

「源ちゃんとこのお肉屋さんに、この糠ツボ置かせてもらえない?」

< えっ、私をお肉屋さんに? >

「 … なんで?」

「家に置いておくと、いろいろこの子の身に危険が … 」

「ええけど」

「本当?

すっごい、すっごい、助かる … 毎日世話しに来るから、じゃあよろしくね」


源太に糠ツボを預けると、め以子は帰って行きました。

… … … … …

台所で夕餉の支度をしているめ以子。

通りかかったお静に味見を頼みました。

「 … こっちの味、私よく分からないので」

箸に取って食べてみるお静。

「うんうん、普通に作れるようなったやん」

「よかった ~ 八百屋さんで作り方習ったんです」


そこへ帰ってきた和枝、め以子の顔を見るなり尋ねました。

「め以子さん、糠床どうしはった?」

「 … 処分しました」


信じられないといった表情の和枝。

「実家から持って来たものも、もらってくれる当てが見つかったので、2、3日中に処分します」

そう言いながら、台所仕事を続けるめ以子。

「へえ ~ 」

不審に満ちた顔をしながら部屋に上がっていきました。

… … … … …

夜、給仕をしながら、食事する悠太郎をじっと見つめているめ以子。

グ ~

またまた、め以子の腹の虫が鳴きました。

「 … 食べる?」

悠太郎がお椀を差し出すと、め以子は首を振りました。

「ううん、食べたから … 」

そう言って、コップの水を飲み干しました。

空いたコップには、またすぐ水を継ぎ足します。

「何でそんなに水?」

「ああ … お水、美味しくて … さすが、水の都よね」

「 … 意味ちょっと、ちゃうけど」


… … … … …

< そして、数日が過ぎ … >

裏庭で洗濯しているめ以子、心なしかやつれて見えます。

洗濯桶のそばに置いてある、のりが入った器に目が行きました。

「め以子さん、ちょっとこれもお願い … 」

洗い物を持って出てきたお静が、器を手にして、刷毛についたのりをじっと見つめているめ以子を見て … 訝しげに尋ねました。

「のり、どうかしたん?」

「あ、いや、別に … 」


洗い物をを受け取ろうと立ち上がりましたが、フラッと … そのまま倒れてしまいました。

「いやっ、め以子さん?!」

… … … … …

大阪市役所、建築課。

「さようか … 赤門いうんは幼稚園やったんやな」

悠太郎は、仕上げた図面を目の前で大村に破かれてしまいました。

「3年かけて落書き教えよる」

「大学は、これからはコンクリートの時代やという認識なんで」


悠太郎は、初めて口答えしました。

「矩計図ひとつ書けんやつがよう言うわ」

そっぽ向いて仕事に戻ろうとする大村に言い返しました。

「その言い方は卑怯ですね。

これをコンクリートでやれ言われたら、あなたできないでしょ?」

「なにい?!」


気色ばむ大村、課長の藤井が慌てて間に入ります。

「何で、何十年も使う校舎がコンクリートやないんですか?

その方が耐久性も耐火性も … 」

「学区によっては、人口がどんどん増えるのに予算が追いつかん … 木造しか建てられんとこもあるんや」


藤井が内情を明かしました。

「そんなこと言ってたら … 」

「あんな、仕事いうもんは、ままならぬ現実の中でやるもんなんや。

偉そうに理想だけ語りたいんやったら、赤門帰れ!」

「あの、ひとつだけええですか?

その、赤門赤門言うんは、止めてもらえますか?」

「何や、俺の母校をバカにするなってか?」


鼻で笑った大村。

「いえ、大村さんが見苦しいからです」

「何やと?!」

「20年引いてきはったんやったら、もっと自分に自信を持たれたらどうですか?」

「お前なあ!!」


大村が声を荒げたその時、建築課の部屋に飛び込んで来たのはお静でした。

「悠太郎さん、め以子さんが … 」

… … … … …

「絶食したって、変わる保証なんてないでしょ? … 舌なんて」

布団の中から、申し訳なさそうな顔をして見上げているめ以子 … 1日でも早く大阪の味に慣れようと、ここ数日間絶食していたのでした。

「悠太郎さんは、薄い味から濃い味に慣れたでしょ?

私はその逆だから、もっとかかるんじゃないかって … 空腹は最高の調味料だっていうし、その時は何だって美味しいって思えるだろうし … 」

「倒れたら、元も子もないやろ?!」


め以子は悔しそうな顔をしました。

「 … だって、こんなんじゃ、ご飯が楽しみになる家なんて作れないじゃない。

悠太郎さんに幸せにしてくれって言われたのに、私何の役にも立ってないじゃない。

他に何にもできないのに、料理までできなかったら … だめじゃない」


め以子の悔しさの対象は、自分自身でした。

横を向いて悠太郎に背を向けて、布団をかぶってしまいました。

… … … … …

「 … いつまでやるんや? 絶食」

「5日くらいかなって」

「明日までか …

ほな、僕もつき合いますよ」

「えっ?」


振り向くと、悠太郎は優しく微笑んでいました。

「腹減らして、明日の夜、どっか美味いもんでも食いに行きましょう」

「うん」


布団の中で少し照れくさそうにうなずきました。

三日食べなくても大丈夫!!断食のすすめ

新品価格
¥1,680から
(2013/11/7 15:35時点)



連続テレビ小説 ごちそうさん Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,155から
(2013/11/7 15:36時点)



ありがとうあまちゃん じぇじぇじぇ大研究

新品価格
¥980から
(2013/11/7 15:37時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月06日 (水) | 編集 |
第33回

その夜、め以子は帰宅した悠太郎の給仕をしながら、その日あった出来事 ~ 和枝に何をされたかを話して聞かせていました。

「 … 根性っていうのが、こうねじくれて、からまって、塩漬けのワカメみたいになってるのよ。

でもね、ワカメは食べると美味しいんだから … あの人は煮ても焼いても食えないんだから … 」


いくら愚痴っても愚痴り足りないめ以子。

夕飯を黙々と食べながら、話を聞いているだけの悠太郎のことがじれったくなってきました。

「何か言ってよ!」

「 … ごちそうさんでした」


食事を終えた悠太郎は、め以子の方に向き直ると頭を下げました。

「め以子、ごめん … ホンマにごめん」

そこまでしなくてもと、却ってめ以子は慌てました。

「あ、頭上げてよ ~ 分かってて来たんだから … 私が甘く見てただけだから …

こちらこそごめんなさい、愚痴ばっかり言って。

もう言いませんから」

「それはいけません。

あなたの我慢の容量はさして大きくないと思います … 小出しにその都度、僕に八つ当たりするように、心がけてください」


何となく複雑な気持ちでうなずいため以子。

「もう他にはないですか?」

「あっ … 西門の家って、1年間は籍入れないって本当?」


悠太郎も初耳でした。

「 … 知らないの?」

「あ、じゃあ ~ 明日、ちゃっちゃと入れてきますよ。

昼休みに1階の戸籍係でちゃっちゃと … 」


… … … … …

次の朝。

朝食の準備に台所に出ため以子、鍋のフタを取って驚きました。

昨日作ったフォンがなくなっているのです。

「うそ … 」

… … … … …

「え ~ 今日は、スープや言うてたやん

膳に並んだ味噌汁を見て、お静が口をとがらせました。

「すいません、出そうと思ってたんですけど … 」

そう言いながらめ以子は、横目で和枝の顔を見ました。

「あら、また失敗しはった?」

和枝は涼しい顔をして、ご飯を食べています。

「何故か、なくなってたんです … 朝になったら」

「へえ、不思議なこともあるもんやね ~ 」

「鍋が勝手にひっくり返ったのかもしれませんね」

「おもろいこと言わはるな ~ 東の人は」


どちらも負けていません。

… … … … …

「姉さん、祝言の件なんですけど … 」

話の合間をみて、悠太郎がうやむやにされている祝言について切り出しました。

「しきたり通り、1年後には盛大に挙げるように、縁者には話通しときましたさかいに …

皆さん、来年楽しみしてる言うてはりましたわ」

「め以子の何がそんなに問題なんですか?」


単刀直入に聞きました。

「問題があるなしやのうて、しきたりが あ ~ 」

話の途中で大きなあくび。

「 … ごめんな、何や昨夜よう眠られんて … 夜中、大きい人らがドッタンバッタンしてはったさかい」

… 狼狽えるめ以子。

「あ、それで鍋ひっくり返ったんと違う?」

吹き出すお静。

… … … … …

突然、無言で立ち上がる希子。

「もう行くんか?」

お静に聞かれて、小さくうなずきました。

「あ、希子ちゃん、お弁当!」

め以子は用意してあった弁当を渡そうとしましたが、振り向きもせず、受け取らず出て行ってしまいました。

ふと、希子の膳を見ると、味噌汁がほとんどそのまま残っていました。

… … … … …

< … とはいえ、傷つくのは、己ばかりではなく、め以子の手をかけた食べ物たちもまた、犠牲になる訳でございまして …

め以子には、それも、何ともたまらぬものでございました >

裏庭に捨てられたフォンを見つけて、うなだれるめ以子。

… このままじゃいけない。

… … … … …

「何や話して?」

め以子は、和枝に西門家の味を教えてくれるよう乞いました。

「 … その言葉を待ってました。

め以子はん、わてな、その言葉が聞きとおましてん」

「えっ?」

「心のどこかで西門の家の味なんぞバカにしてはるんやと思うて、耐えられぬもんがおましたんや」

「えっ、そんな … すいません、そんなつもりは全然 … 」

「ほな、家から持ってきたもん、全部処分してくれはるな?

いろいろ持ってきましたやろ?

味噌とか、カツオとか、梅干とか … あれ全部捨ててきてくれはる?」


しばし躊躇しため以子でしたが …

「分かりました。

誰かもらってくださる方を探すってことでいいですか?」

「ええですよ … 

あっ、あの糠床も忘れんとな」


それだけは、承知できないめ以子です。

「あれは、ここのと混ぜて使えばいいじゃないですか?

いろいろ混ぜた方が美味しくなるって言いますし …

あれは、卯野の家に伝わってきたもので、子供の頃からずっと世話を … 」


うなずいて聞いていた和枝でしたが、め以子が実家の名前を出した途端、顔色を変えました。

「それを捨てるんが、ケジメいうもんだす!」

… … … … …

糠床を捨てることだけはできないめ以子は、和枝に教えてもらうことをあきらめて、お静の部屋を訪れました。

「うちに、西門の味?」

「はい … 」

「そんなん、できる訳あらへんやん」


笑い出しました。

「そもそも、それがでけへんって、和枝ちゃんに台所追い出されてんから …

きつかったで ~ あの頃はまだ他に娘4人おってな … 和枝ちゃんと一緒になって、『あんたのご飯まずい』って … 」


和枝について、聞けば聞くほど、気が滅入ってくるめ以子でした。

「あっ、その浴衣もっかい洗って」

お静はころっと変わって、め以子に指図しました。

「えっ、でもこれ、昨日洗って … 」

「のりが雑で着心地悪いんやわ」


… … … … …

「もう ~ 誰か西門の味教えてくれる人いないかな ~ 」

台所でのりづけ用のご飯を探していると、糠床のツボが置いた場所から無くなっていることに気づきました。

「えっ?」

辺りを捜しても、何処にも見当たりません。

胸騒ぎがして、裏庭に出ると …

和枝が、ツボの中から糠床を捨てている最中でした。

「止めてください!」

ツボを奪い返すと、その勢いで和枝はひっくり返ってしまいました。

「何でこんな酷いことするんですか?

これだけは、勘弁してくださいって言ったじゃないですか?!」

「だからこそやないの!

あんさんが自分ではよう捨てはらん言うから、わてが代わりに捨てたろう言うのに …

勘弁してほしいのは、こっちやわ!」


捨て台詞をして、外へ出ていきました。

… … … … …

軽くなったツボを両手で抱え、捨てられた糠床を見て、涙ぐむめ以子。

< め以子、大丈夫だから … まだ、ちょっと残ってるから >

ツボの中を覗くと、ほんの少しだけですが、糠床が残っていました。

< そんなに怒らないで … 怒ったら、終わり … >

しかし、め以子はどうしても我慢ができません。

ツボを置くと、和枝の後を追いかけました。

… … … … …

立ち話をしている近所の女たちに会釈をして、歩き出そうとした和枝をめ以子は呼び止めました。

「お義姉さんは、私の何がそんなに気に食わないんですか?」

大きい声だったので、女たちもこちらを見ています。

「おっしゃってください … 直しますから」

すると、和枝はめ以子に近づくと、薄笑いを浮かべてささやきました。

「亜貴子ちゃんって知ってる?

悠太郎とええ感じやった子でな ~ あの子がよかってんわ ~ わても悠太郎も」


そう言いながら、今度は声に出して笑い出しました。

「そりゃそやろ?

亜貴子ちゃんとあんさんでは、『月とスッポン』」


和枝に挑発されて、め以子は思わずつかみ掛かっていました。

「 … め以子はん … 見られてまっせ」

ハッとして手を離しため以子。

「お隣の御寮人さんらやわ … もうここら辺、歩けはらしまへんな ~ 」

それも計算ずくの上のことだったのでしょうか …

「出てってやるわよ … こんな家、出てってやるわよ!」

「残念やわ ~ 」


… … … … …

糠床のツボだけ持って家を飛び出しため以子の足は悠太郎のいる市役所に向いていました。

建築課の部屋の前まで来て足を止めました。

< 仕事中だもんね … >

結局、会うことはせずに市役所を出ため以子、行く当てもなくたどり着いたのは市場でした。

ここは、相変わらず活気にあふれて賑やかです。

< 西門さんの家、帰ろうよ、め以子 …

ここにいると寂しくなるだけだよ … 人がいればいるほど、寂しくなっちゃうよ >

め以子は市場を後にしました。

… … … … …

重い気持ちで家に戻っため以子。

部屋に入ると、自分の荷物が一切なくなっていることに気づきました。

ちょうど通りかかったお静に尋ねると …

「ああ、これな ~ 実家に送られたんちゃうか?

うちも昔やられてな、食べさしのおまんまとか、ゴミ箱の中のもんまでご丁寧に詰め込まれてな ~ 」


容赦ない和枝の嫌がらせでした。

… … … … …

大阪市役所、建築課。

悠太郎は、大村に叱責されていました。

初仕事として仕上げた図面が使い物にならないのです。

「梁の断面が、でかすぎるやろ!

赤門出て、矩計図ひとつ引けんのか?!」


鉄筋コンクリート構造が専門の悠太郎は、木造建築に関してはよく知らなかったのでした。

「 … すいません」

「3年間、何してはったんかいな ~

引き直せ!」


図面を押し返されてしまいました。

… … … … …

め以子は、お静から運送業者を聞いて、間一髪、送り出される前に自分の荷物を取り返すことができました。

大八車に山と積まれた荷物を引いて、夜道を帰らなければなりません。

< 何故私は、こんな時間にこんな所で、ひとりで大八車を引いているのか?

あまりの理不尽さに、もう涙さえ出ないめ以子でございましたが … >

「 … め以子?」

足を止めて振り向くと、仕事を終えて帰宅途中の悠太郎が立っていました。

「どないしたん?」

その言葉がきっかけになって、め以子は一気に泣き出しました。

「 … もうやだ」

荷物を積んだ大八車に目をやる悠太郎 … ただならぬことです。

「もうやだ … 私」

ただただ泣きじゃくるめ以子でした。

心が折れそうな嫁が読む本―姑と暮らすシンプルな習慣

新品価格
¥893から
(2013/11/6 11:58時点)



連続テレビ小説 ごちそうさん オリジナル・サウンドトラック「ゴチソウノォト」

新品価格
¥3,150から
(2013/11/6 11:59時点)



あまちゃんファンブック2 おら、やっぱり「あまちゃん」が大好きだ!

新品価格
¥1,365から
(2013/11/6 12:00時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月05日 (火) | 編集 |
第32回

「何で、あんさん、一緒に食べはんの … あんさん、女中やろ?」

め以子には和枝の言っている意味が分かりませんでした。

「あ、あの … 嫁です … けど」

「西門にはな ~ 1年間は籍入れへん、お披露目はせえへん、しきたりがおます。

せやから、可愛そうやけど、当分は女中扱いしかできゃしまへんねのやわ」

「えっ?」

「長い歴史の中でいろんなことがおましたんや。

家風に馴染まなんだり、ややこが生まれなんだり、夫婦のそりが合わんかったり …

せやから、1年間は様子を見ようことになりましたんや」


和枝のもっともらしい理屈にめ以子は思わずうなずいてしまいました。

「せやから、わて、め以子さんのために女中、里に帰しましてん。

同じ女中言いましても、嫁と思て来てる人が指図されるのは、いくら何でも可愛そうや思うてね」

「あ … お、お気遣いありがとうございます」

「分かってくれてはったら、よろしおす」


礼は言ったものの、何か腑に落ちません。

… … … … …

「これ、おうちのおむし?」

味噌汁をひと口飲んだ、お静が訪ねました。

おむし … 味噌のことです。

「はい、いろいろ持ってきたんで … 」

「ちょっと、何や変わった味やね」

「辛い … 」


希子がつぶやきました。

「東京では、これが世界一でっか?」

和枝は顔をしかめて、味噌汁を鍋に戻してしまいました。

「わては、向こうで、お冷とおこうこでぶぶ漬けにしますけど」

そう言うと、茶碗を持って席を立ってしまいました。

「お、こうこ … ぶ、ぶ?」

… … … … …

結局、3人とも、め以子の作った朝食にほとんど手をつけませんでした。

何が悪かったのか分からないめ以子はひとり板の間で食事をとっていました。

< め以子 … 気づいとくれ … め以子 … 水が … >

ふと、糠床のことが気になって、ふたを開けてみました。

「えっ?!」

中に水が溜まっています。

… … … … …

「お義姉さんっ!」

血相を変えため以子が和枝の部屋を開けると、ピシャリとふすまを閉められてしまいました。

「お、お義姉さん、入ってもいいですか?」

改めて、部屋の前に座って、声をかけ直すめ以子。

「 … どうぞ」

和枝はどこかに出かけるらしく、鏡台の前に座って、髪を整えている最中でした。

「手短にお願いしまっさ」

「あの … 糠床、変なんですけど?!」

「へえ」

「とっても辛くなってるんですけど … もしかして、大量のお塩入れました?」


和枝は、おなごしに任せたので、間違えたのかも知れないと、涼しい顔で答えました。

… … … … …

納得がいかないまま、め以子が台所で後始末をしているところへ顔を出したのは、お静です。

「そんなこと、ある訳ないやん」

め以子の話を聞いてそう言いました。

「ですよね?

お義姉さんが、間違えたんですよね … お料理、あんまし好きじゃないって、おっしゃってたし」

すると、お静はめ以子のことを気の毒そうに見ました。

「あのな ~ 和枝ちゃん、ごっつい料理上手いで」

「えっ、じゃあなんで … ワザとってことですか?」


笑い出したお静。

「鈍い子やな ~ あんた」

「な、何でそんなこと … 」


そんなことされる理由が分かりません。

「そら、あんたが気に食わんからに決まってるやんか」

身に覚えが全くありません。

「あの人はな ~ そもそも、悠太郎さんの縁談は、自分が仕切るつもりやってん。

自慢の弟に持参金のたんまりついた、ええとこのいとはんとな …

それが、いきなり、恋女房連れて戻ってきて、おもろい訳あれへんやんか!

もうおるだけで、虫好かん訳や」

「え、そんな … でも、私どうしたら?」

「あの人、あんたが何をどうしたかて、認める気なんかないと思うで」


… … … … …

大阪市役所。

初出勤した悠太郎は建築家に配属され、課長の藤井耕作から紹介されているところでした。

「西門君は、東京帝国大学工学部建築学科の卒業で、専門は鉄筋コンクリート構造です」

悠太郎は、大村崇介という、学校の図面を引かせたら右に出るものはいないという技師と一緒に学校を担当するよう指示を受けました。

「よろしくお願いします」

「ちっともお願いされてる気せえへんけどな」


小柄な大村は、悠太郎のことを見上げながら言いました。

「まあええわ、手始めにこれ図面」

渡された図面を開いてみる悠太郎。

「 … 木造?」

… … … … …

め以子は、家にあった調味料を全て小皿にあけて、味見をしていました。

「何か違うな ~ 」

… 味が薄いのです。

< 色も薄いよね ~ >

ちょうどその時、御用聞きが注文の品を届けにやって来ました。

「あの、いろいろ揃えたいものもあるんですけども … 普通のお味噌も欲しいし、お醤油も普通のやつ」

め以子の注文を聞いて、御用聞きは怪訝な顔をしました。

「 … 普通のもん入れてると思いまっけど?」

「普通じゃなんですよ、あんな薄い醤油!」

「今度のおなごしさん、なんやうるさいな ~

ほな、自分で市場行ったらどうでっか?」


… … … … …

御用聞きに言われて、め以子は市場を訪れました。

「うわ ~ 」

買い物客でごった返す通りを見ると、ワクワクしてきました。

呼び込みの声に誘われて青果店を覗くと、見たこともない野菜が並んでいました。

「これ何ですか? … どうやって、食べるんですか?」

「何や、知らんのかいな? これはシロナ言うてな … 」


… … … … …

「手々かむイワシ ~、手々かむイワシやで ~ 」

鮮魚店の店員に呼び止められため以子は、イワシの口に指を近づけました。

「おい、ホンマにやるアホがあるか? 手かむぐらい生きがええいうこっちゃ」

… … … … …

め以子は途中で買ったアンパンをかじりながら市場を物色して回りました。

「 … 何かあっさりしてるな、このアンパン」

今夜の夕飯の献立を考えていると、ひと際威勢のいい呼び声が耳に飛び込んできました。

「は~い、皆様 ~ お待たせしました!

ただ今より、牛楽商店の日々誓文払い、日々誓文払い ~ 牛楽商店の毎日誓文払い!」


誓文払いとは … 大安売り、セール、現在のタイムサービスのようなものでしょうか。

『牛楽商店』の店先に買い物客が殺到しています。

「大安売りが始まりま~す! ここにあるもん、全部半値やで ~ 」

その光景を見ているうちにめ以子は、今日の献立を思いつきました。

「洋食だったら … 」

しかし、人が押し寄せていて中々商品までたどり着けません。

め以子は、群がる一段より頭ひとつ高い背を生かして、その場で大声を上げました。

「もも100匁 ~ もも100匁ください!」

め以子に気づいて、注文を聞き返す店員。

「もも100匁、それから、ヘレも100匁、あと骨もください」

「骨? お姉ちゃんが使うの? … ちょう、待っとき」


… … … … …

家に戻っため以子は、早速調理にかかりました。

ひき肉をこねて、カマドには、フォンを取るための鍋がかかっています。

「 … ガス入れてよね」

薪をくべ、竹筒で息を吹きかけながら … 愚痴るめ以子。

… … … … …

夕食の時間。

「 … 何なんこれ?」

膳に並んだ料理を見て、和枝が不機嫌そうに尋ねました。

「キャベツのサラダやて、何や洒落てんね ~ 」

お静はニコニコしながら皿を手に取って眺めています。

「メンチカツ、お待たせしました ~ 」

め以子が台所から、揚げたてのメンチカツを運んできて、皆の皿に取り分けました。

「ええ、匂いやな ~ 」

「熱いうちが美味しいんで、このソースつけて召し上がってくださいね」


皆に行き渡ると、真っ先にお静が箸をつけました。

「美味しい ~ 懐かしいわ … 明星亭を思い出すわ」

め以子の料理をお静は気に入ったようです。

「明星亭、行かれたことあるんですか?」

「昔は、よう食べに言ってな ~ 」


め以子は今朝の失敗を取り戻せた気になっていました。

「じゃあ、明日はスープにしますね」

… … … … …

め以子は、希子がメンチカツに手をつけていないことに気がつきました。

「希子ちゃんは、お肉苦手?」

「猫舌やねん、この子」


代わりに答えたのは、お静でした。

「じゃあ … ちょっと切っておくね」

食べやすいようにと、菜箸でメンチカツを半分に割ってあげました。

この時、希子が小さく微笑みました。

… … … … …

和枝に至っては、メンチカツどころか、一切、手を付けないまま、膳をにらみつけています。

「あ、お義姉さんのも、お切りしましょうか?」

その言葉が終わらないうちに、和枝は膳をひっくり返してしまいました。

「か、和枝ちゃん?!」

驚くお静、怯える希子。

和枝はめ以子に向かって怒鳴りました。

「ここは、西門の家だす!

あんさんがどう思ってるか知りませんけど、その家にはその家の家風いうもんがあります。

嫁に入るいうことは、家風に染まるいうことです。

台所を継ぐいうんは、味を継ぐいうことです。

… それをいきなり、縁もゆかりもない料理作って、腕自慢でっか?

ふてぶてしいにも、ほどがありますわ」


… … … … …

「聞いてますんか?」

床に転がったメンチカツを見つめたまま、黙っていため以子がようやく口を開きました。

「 … おっしゃってることは分かりますけど … これはないんじゃないですか?

食べ物をこんなに粗末にして!」


声を荒げため以子、和枝をにらみつけました。

しばらくにらみ合いが続いた後、和枝は言いました。

「なるほどなあ ~ ほな、あんさん食べはったら?」

め以子がひるんでいると、和枝は追い打ちをかけてきました。

「おや、口だけでっか?」

こうなったら、め以子も後には引けません。

転がっているメンチカツを手に取るとかぶりつきました。

今度は、和枝の顔に驚きの色が見えました。

「美味しいです … いいお肉です」

挑戦的な目で和枝を見返しため以子。

その様子を上目づかいで見つめるお静、目を丸くしている希子。

め以子はメンチカツだけでなく、サラダまで手を伸ばしました。

… … … … …

「ごちそうさまでした」

すべて食べつくしため以子は和枝に尋ねました。

「 … 食べましたけど?」

「まだ、そこ残ってますよって」


和枝の視線の先にあったものは、飛び散ったソースでした。

「舐めはった方が、ええんと違う?」

目を見張るめ以子。

「 … お掃除、ご苦労さん」

人を小バカにしたように笑うと、2階へ上がってしまいました。

… それが、西門家に来て迎えた最初の日の出来事でした。

百日膳低足 黒

新品価格
¥5,608から
(2013/11/5 15:14時点)



NHK連続テレビ小説 ごちそうさん 上

新品価格
¥1,365から
(2013/11/5 15:15時点)



ありがとうあまちゃん じぇじぇじぇ大研究

新品価格
¥980から
(2013/11/5 15:16時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月04日 (月) | 編集 |
第31回

大正12(1923)年春。

< 悠太郎とめ以子のふたりは、駅弁をいただきつつ、一路大阪へ向かっておりました >

汽車が駅に停まるたび、そこの名物を買って、それを全て平らげた後、まだミカンを食べ続けているめ以子でした。

「め以子 … 」

初めて名前で呼ばれて、手を止め、恥ずかしそうに悠太郎の顔を見ました。

「他に呼びようもないでしょ?

うちの実家の話なんですけど … 」

「何度も聞いたって …

一番上のお姉さんは出戻りで、お母さんは後妻さんで実の子供はいなくて、末の妹さんは女学生で引っ込み思案で … で、お姉さんとお母さんが折り合いが悪いんでしょ?」


平然と話しため以子に、悠太郎は心配顔で念を押しました。

「せやけど、ほんまに分かってる?」

「大丈夫だって … お母ちゃんだって、言ってたじゃない、『そのくらい、よくあるっこと』だって。

お父ちゃんだって、『同じ釜の飯食ってれば、何とかなる!』って」


そう言って、のん気に笑っていますが、悠太郎の不安は消えません …

「うちの父親のことは、まだちゃんと言うてなかったですよね?」

「えっ、お母ちゃんからちょっと聞いてるよ … 亡くなられたんでしょ?」

「 … まあ … うん … 」


言葉を濁した悠太郎。

… … … … …

そうしているうちに汽車は大阪に到着しました。

「着いた ~ 」

「 … 着いてしまいましたね」


見るものすべてが珍しく、買い物客で賑わう商店街の店先に並んでいる、初めて見る品々に目を奪われるめ以子でした。

「さあ、急ぎましょか … 汽車も随分遅れてしもたし」

悠太郎はうながしましたが、め以子は風呂敷包みの中から1冊の本を取り出しました。

「何やってるんですか?」

め以子は『大阪料亭めぐり』と書かれたその本のページをめくって悠太郎に見せました。

… 現代でいう、グルメガイドのような本でした。

「 … あの、おうちに行く前に、ちょっと私ここに寄りたいんです。

明星亭、ここのカレー、ご飯にカレーがまむしてあるらしいんですよ ~ 『まむし』って『まぶす』って意味なんですよね?」


これから、夫になる人の実家に始めて行くというのに、まるで遠足気分のめ以子です。

悠太郎は本を取り上げると、さっさと歩き出しました。

「悠太郎さん、寄って行きましょうよ ~ 」

「 … さすがに、もうええやないですかね?」


東京を出てから、ひっきりなしに食べ続けていため以子、それに予定より遅い時間に帰って何を言われるかも心配でした。

あきらめきれないめ以子の目に飛び込んできたのは … 明星亭の看板でした。

「あ、あそこじゃないですかね?」

言うが否や走り出していました。

… … … … …

ふたりが実家に着いた時は、陽はとっぷりと暮れていました。

「 … 立派なお屋敷ね」

「古いだけです」


悠太郎の後について、め以子は西門家の門をくぐりました。

「遅うなりました ~ ただ今、戻りました」

奥の間から、着物姿の年配の女性が出てきて、にこやかに笑って、ふたりのことを出迎えました。

「おかえりやす、悠太郎さん、汽車大変やった?」

「途中で止まったりしてもうて … 」


ひとしきり挨拶が済むと女性はめ以子のことに触れました。

「あ、この方がお手紙の?」

「ええ、ついぞお返事はいただけなかった、手紙の方です」


不満そうな顔の悠太郎を気にもせずに女性はめ以子に名前を尋ねました。

「め以子と申します … よろしくお願いします、お義母様」

… … … … …

「うふふ … 一番上の姉の和枝言います」

いきなりしくじっため以子でした。

「す、すいませんっ、私」

「悠太郎さんとの間に妹4人おりますさかい、歳離れてますんや … まあ、貫録あるいうことに、しときましょうか?」


和枝はさほど気にもしていないように笑っています。

悠太郎には、ああは言ったものの、内心は多少身構えていため以子でしたが、感じのよい姉の和枝にホッとしていました。

「ほな、どうぞ、せまいとこですけど」

「 … 失礼します」


家に上がり込むめ以子を横目で見た和枝の顔から一瞬笑顔が消えました。

その和枝を警戒心がある眼で探るように見ていた悠太郎でした。

… … … … …

ふたりは座敷に通されて、め以子は悠太郎の家族と対面しました。

義母の静は歳は和枝とさほど変わらないように見えます。

愛想よく笑いながら、め以子に言いました。

「うちはお静さんでええからな … お義母さんだなんて、老け込みそうでいややねん」

妹の希子は、話に聞いていたように大人しそうな子でした。

「 … よろしくお願いします」

うつむき加減で小さな声で挨拶しました。

… … … … …

自己紹介が終わり、悠太郎はいきなり切り出しました。

「それで、手紙に書いた祝言の件ですけど … 」

「ご実家、洋食屋さんなんやて?」


まるで悠太郎に話をさせないかのように、和枝はめ以子に話しかけました。

「はい ~ もう食べてばっかりの家で」

「それで、そんなに大けならはった?」

「父が美味しい料理ばっかり作るもんで … こんなことに」

「お父様のお料理、そんな美味しおますの?」

「はいっ、手前味噌ですけど、私の父の料理は世界一です」


にっこりと笑ってきっぱりと答えため以子です。

「そら楽しみですわ ~ 世界一の料理なんてな」

穏やかに会話が続いていますが、悠太郎は難しい顔をしたままです。

… … … … …

「お姉さんは、お料理はお好きなんですか?」

「わては、好き言えるほどの腕やありまへん … あなたは、随分おやりになりはるの?」


こちらに来るまでの間、大五に鍛えられたことを話ました。

「そら頼もしいわ … ほな、お台所お任せしてええんかいな?」

「えっ、任せてくださるんですか?」

「世界一の洋食屋さんのいとはんが、どんなお食事作りはるんか楽しみやわ」


め以子は、やる気になって喜んでいますが … 姉の言葉には、何か裏があるような気がしてならない、悠太郎です。

… … … … …

「あの、これって桜餅ですか?」

め以子はお茶うけに出された菓子のことを尋ねました。

「ああ、なぎさ屋の桜餅やけど」

東京の焼き皮の生地に餡を包んだものとは違って、つぶつぶの餅で餡が包まれていました。

「いただきます」

手でつかむと頬張りました。

「うっ … 美味しいです、こんなの初めて食べました」

その様子を見て、驚く和枝と静。

そんなことには気づかずに、め以子は、パクパクっとあっという間に食べつくしてしまいました。

… … … … …

め以子が後片付けを手伝おうとすると、和枝が制しました。

「ええ、ええ … 今日は疲れたやろ?

おなごしがやるさかい」


おなごし … 女中のことです。

「あっ、この糠漬けもやっておいてあげるから」

「えっ、いや、そんな … 」

「明日から、大変やから、今日はゆっくり休みはって」


め以子は、和枝の言葉に甘えることにしました。

糠床を持って出て行こうとする和枝を悠太郎は呼び止めました。

「ついぞお返事いただけなかった手紙に書いた祝言の件ですけど … 僕としては、出来るだけ早く挙げたいと思うてるんですが … 」

「もうちゃんと段取りしとりますさかい、安心しておくれやす」

「ホンマですか?」

「きちんと西門の嫁として、お迎えできるよう支度しております … それで、返事だすヒマもなかったんです」


思いきり不審な顔をしている悠太郎を見て、和枝は吹き出しました。

「この顔 ~ め以子はん、こんなへそ曲がりのどこがええの?」

… … … … …

部屋で荷物を解きながら、め以子は悠太郎に言いました。

「優しいお姉さんじゃない? … 凛としていて、素敵だし。

お義母さん … お静さんは、美人で明るいし、希子ちゃんなんて、少女雑誌の絵みたいだし … 」

「絶対何か企んどる」


和枝に『へそ曲がり』と言われた時に顔でした。

「心配し過ぎだって … お祝いのことだって、ちゃんと考えてくれてるって言ってたじゃない」

… … … … …

皆、寝静まった後、台所では、和枝が糠床をかき混ぜていました。

< すいません … 孫が悠太郎さんより先に玄関から上がって、お義母さんと間違えて、すみません … あっ、ああ ~ >

必要以上に強い力でかき混ぜられて … 糠床から悲鳴が聞こえてくるようです。

… … … … …

翌朝、食事を任されていため以子は、米を炊こうとして、西門家はガスを引いていないことを初めて知りました。

慌てるめ以子、ちょうど起きてきた悠太郎。

「ねえねえ、悠太郎さん、ガスじゃないの?!」

「あ、はい … 」

「言ってよ ~ 薪ってどこにあるの?」


裏庭に出ると、丸太が積んであるだけでした。

「まさか、割るとこから … 」

悠太郎が薪を割ってくれている間におなごしを捜しましたが、何処にも見当たりません。

… … … … …

「すいません、もう出なあかんので … 初出勤なんで、早ういかなあかんのです」

結局、悠太郎の朝食と弁当には間に合いませんでした。

… … … … …

カマドに薪をくべて、竹筒で吹いて火を起こしていると … 静がのんびりと起きてきました。

「朝からご飯炊いてるの?」

「えっ?」

「お櫃の中、ゆんべのあるで」


お櫃のフタを取ると食べるには十分な量が入っていました。

「どうしよう? 炊けちゃう … 」

「大変やな ~ 」


手伝うそぶりも見せずに、ニコニコ笑いながらその場から立ち去ろうとする静に味噌のありかを尋ねました。

「そこの下 ~ 」

流しの下にあったツボのフタを開けると、見慣れた味噌とは違う … それは白味噌でした。

指に取って舐めてみて、やはり首をかしげるめ以子。

その間にもお釜が吹きこぼれています。

… … … … …

「 … すみません、薪で炊くのに慣れてなくて」

ご飯は上手く炊くことは出来ず、お膳の上にはおこげが並びました。

「ガスくらいあると思うわな ~ 」

静の言葉にすまなそうにうなずいため以子。

「それは、えらい申し訳ないけど … これどういうことかいな?」

「え?」

「何で朝から、おぬくなん?」


おぬく … 温かいご飯のことです。

「ここは、夜に1回だけ炊くんや」

静が教えてくれましたが、それならそうと先に言っておいてほしいものでした。

「あ … でも、温かい方が美味しくないですか?」

「温こうてもな ~ 」


おこげが盛られた茶碗を差し出した和枝、昨夜とは別人のように冷たい表情です。

「あ、確かに今朝は失敗しましたけど … 昼からは … 」

「三度三度炊くつもりでっか? 薪かて、タダやあらしまへんねんで」

「 … ああ、じゃあ、薪代は私出しますから … 皆で温かいご飯食べましょうよ」

「あんさんが出すの? … ほな、ええわ」


… … … … …

「すみません … 次からは、がんばりますんで」

め以子は自分の膳を並べました。

「いただきますは、お静さんが、それともお姉さんが?」

ご飯をよそっているめ以子に和枝が怪訝な顔をして尋ねました。

「何で、あんさん、一緒に食べはんの?」

「えっ?」

「 … あんさん、女中やろ?」


和枝の言っている意味が分からず、ポカン … 呆気にとられるめ以子でした。

鋳物かまど 兼用かまど No4

新品価格
¥12,600から
(2013/11/4 16:30時点)



雨のち晴レルヤ / 守ってあげたい

新品価格
¥1,200から
(2013/11/4 16:31時点)



NHK連続テレビ小説「あまちゃん」完全シナリオ集 第1部

新品価格
¥1,785から
(2013/11/4 16:32時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月03日 (日) | 編集 |
まずは、先週のおさらいを …



それでは、次週の「ごちそうさん」は?

大阪に来ため以子()と悠太郎(東出昌大)。西門家では、悠太郎の継母の静(宮崎美子)、姉の和枝(キムラ緑子)、妹の希子(高畑充希)が温かく出迎える。悠太郎から聞いていたのとは大違いだ。

… 口ききまへん

しかし翌朝和枝は、一年は入籍を許さず女中扱いだと告げ、め以子が苦労して作った朝食には手をつけない。静はのらりくらり。希子は口をきかない。

悠太郎は大阪市役所の建築課に初出勤するが、大村(徳井優)ら古参の先輩たちに辟易(へきえき)する。

あんたのご飯、まずいって

め以子は市場に出かけ、食材の豊かさに目を見張るが、はりきって作った料理は和枝にひっくり返される。

台所を継ぐいうんは、味を継ぐいうことです

考えた末、和枝に大阪料理の教えを乞うが、東京から持ってきたぬか床を捨てろと言われる。

もうやだ ~

家を飛び出しため以子はうどん屋で、自分が大阪の昆布だしの味がわからないと気づき、絶食して東京の味に慣れた味覚を変えようとする。

そんな折、大阪に引っ越していた幼なじみの源太(和田正人)と再会して驚き、市場の肉屋で働く源太にぬか床を預ける。

もっと食うて、何杯でもええで

め以子は絶食が過ぎて倒れてしまい悠太郎に叱られる。回復後、昆布だしの吸い物を何種類も作るが和枝の味にはかなわない。悩むめ以子の前で悠太郎は、なぜか酒に昆布を入れてみせる。

美味しい ~

ごちそうさん 公式サイト、YAHOO!テレビガイド他を参照)

連続テレビ小説 ごちそうさん Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,155から
(2013/11/3 10:04時点)



NHK連続テレビ小説 ごちそうさん 上

新品価格
¥1,365から
(2013/11/3 10:05時点)



NHK連続テレビ小説「あまちゃん」完全シナリオ集 第1部

新品価格
¥1,785から
(2013/11/3 10:05時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月02日 (土) | 編集 |
第30回

夜も大分更けましたが、大五とめ以子のフォン作りは続いていました。

「沸騰したら、フツフツになるぐらいに弱火にする」

「フツフツ?」

「ボコボコでやると、フォンが濁っちまうんだよ ~

で、そのまま3、4時間くらい灰汁をすくいながら煮ると … 」

「3、4時間も?」

「家でやる時は、ストーブにでもかけときゃいいよ」


… … … … …

「父ちゃん、姉ちゃんにフォンの作り方教えたいだけなんだよ ~ 何か俺、だしに使われたみたい」

照夫が苦笑いしながら、ふたりだけにするために母屋に引き上げて来ました。

「お母ちゃん、俺、子供持つなら娘がいいな」

「何で?」

「だって、可愛くて仕方ないんだろう? 娘って」


軽い嫉妬でも感じているのでしょう。

「息子もいいもんよ」

母にそう言われて、はにかんだ照夫でした。

… … … … …

こまめにスープの灰汁をすくっているめ以子、ふと大五の視線に気づきました。

「あっ、灰汁すくい過ぎ?」

「あ、いや … お前、やっぱでけえなと思ってよ」

「もう ~ お父ちゃんが、美味しいもんばっか作るからだよ …

お父ちゃんの料理が美味しいから、こんなに育っちゃったの」


話しているうちに昔のことを思い出しました。

「昔は特に豪華だったし … 朝から大きなオムレツ出てさ」

「客来なかったからな ~ 材料、余っちまってな」

「お母ちゃん、早く普通の賄い出せるようになりたい … って、ブ~ブ~言ってたよね」

「 … お前が、オムレットライス美味いって教えてくれたお蔭で、何とかなったようなもんだ」


『だって、お父ちゃんの料理、温かいし美味しいんだもん!』

大五は幼い頃のめ以子を思い浮かべて、目を細めていました。

「まあ、お前は美味い美味いって、言ってただけだけどな … 」

… … … … …

「ねえ、フォンって、どうやって使うの?」

「何でも使えるぞ …

野菜を煮てこせば、ポタージュになるし、米煮て使えば、雑炊にもなるし … 何だかんだ入れて煮詰めりゃ、ソースにもなる」

「 … フランスのお出汁?」

「そうそうそう」


このフォンは、開明軒の料理の味の基本でした。

… … … … …

「覚えといてくれよな、め以子 …

俺よ、お前に何もいいもんやれなかったからよ ~ 上出来のお頭も、男好きのする見かけも、何もよ。

俺がやれたのは、食い気と丈夫な体くらいのもんでよ …

人に自慢できるようなもんは、何もやれなかった。

だから、せめて、最高の旦那をと思ってたんだけど … お前、勝手に見つけてきたしよ」


大五は寂しそうに笑いました。

「俺がお前にやれるもんは、もう … こんなもんくれえのもんでよ」

大五を見つめため以子。

その眼は涙で潤んでいました。

「お父ちゃん …

私さ、小さい頃から本当に、毎日毎日、朝起きるのが楽しみだったの … 今日何が出るんだろう?って。

寝てる間にね、食べる夢見るの … で、夢から起きたら、そのご飯が本当にあるの …

お弁当も、おやつも本当に美味しくてさ … 『こんなの食べたい』って言ったら、それが本当になって出てきて、こんな子他にいるのかなって思う。

私みたいに幸せな子、そうそういないと思うよ」


悠太郎の言葉を今改めて実感しているめ以子でした。

「いないと … 」

涙で言葉に詰まるめ以子。

大五も唇を真一文字に結んで、涙をこらえていました。

「今度は、ガキにお前がそうしてやってくれ … 」

ようやく、それだけ言葉にした大五でした。

うなずくめ以子。

… … … … …

いつの間にか、外は朝が訪れていました。

厨房でうたた寝をしている大五をイクがそっと起こしました。

「お疲れ様 … 」

「何だ、お前も寝てなかったのかよ?」


熱いお茶をすするふたり。

「め以子は?」

「散歩行くって … うれしくて、眠れそうにねえからってよ」


… … … … …

め以子は、早朝の人気の少ない公園、橋の上で朝の風景を眺めていました。

見上げれば青空、心地よい風、自然と笑顔になります。

ふと近づいてくる足音、そちらに目をやると … 悠太郎が歩いて来るのが見えました。

め以子は意外そうな顔をして、悠太郎に駆け寄りました。

「何してるんですか? こんな時間に」

「 … あなたこそ?」

「散歩です


自分も散歩だと悠太郎は答えました。

「えっ、新しい下宿も、この近くなんですか?」

悠太郎は一度うなずきかけましたが、頭を振って言い直しました。

「本当は、その … 」

次の言葉が、なかなか言い出せずに迷っているようでしたが …

「 … あなたをさらいに行こうと思たんです」

… … … … …

思い切って口にした悠太郎。

「 … さ、さらう?」

「そうです」


一瞬戸惑ったような顔をしため以子でしたが、次第にこみあげてくる喜びの感情を抑えきれずに、悠太郎に抱きついていました。

そして、耳元でささやきました。

「もういいんです … そんなことしなくたって …

お父ちゃん、許してくれたんで」


今度は悠太郎が戸惑いの表情を見せる番です。

「あっ … 」

何を思ったのか、体を離しため以子。

「けど … せっかくなんで、もう一度言ってもらえますか?」

め以子の図々しいおねだりを聞いて、思わず悠太郎の頬が緩みました。

そして、お返しに自分からめ以子を抱きしめました。

「お断りします」

… … … … …

月日は流れて、大正12(1923)年春。

め以子は、女学校の卒業式の日を迎えていました。

「これから、あなたたちは、様々な道を歩いて行かれることと思います。

色々な人と出会うことでしょう ~ 暖かい人も、冷たい人も、幸せな人も、さびしい人も … どうしても馬が合わないということもあるかも知れません。

ですが、そんな時にはどうか思い出していただきたいんです。

食べなければ、人は生きていけないんです。

あなたと私は、どこがどれほど違っていようと、そこだけは同じです … 同じなんです」


卒業式の後、教室で宮本がくれた言葉でした。

… … … … …

め以子たちのクラスの謝恩会の会場となった開明軒。

貸し切りの店内に溢れんばかりのクラスメート、大人数分の料理を用意するために厨房は大わらわです。

「もう ~ 何だって、うちで謝恩会なんてやるんだよ!」

そこにめ以子がチキンフライの追加を受けてきました。

「皆が食べたいって、お父ちゃんの料理は世界一だって!」

「バカ野郎 … 」


口ではそう言いながら、悪い気はしない大五、可愛い娘のために惜しまず腕を振るっています。

… … … … …

「わあっ!」

民子から、目の前に大きなハート形のクッキーを差し出されて、め以子は思わず声をあげました。

『ご結婚 おめでたう。 め以ちゃん』

「宮本先生に習って、皆で焼いたの」

「ご結婚、おめでとう」


宮本の祝辞に続いてクラスメートから拍手が起こりました。

「ありがとう!」

… … … … …

そして、大阪に旅立つ日がやって来ました。

駅には、め以子たちを見送るために卯野家、開明軒の一同が全員集まりました。

< かくして、私は無事、め以子と一緒に西門の家へ参ることとなりました >

め以子の腕には、糠床を分けた小さなツボが抱かれています。

「本当にお世話になりました」

皆に向かって悠太郎は頭を下げました。

「こんな娘なんで、いろいろとご迷惑かけると思いますんで、よろしくお願いします」

イクの言葉にうなずいた悠太郎は、大五に向かって誓いました。

「お父さん、絶対にお嬢さんを幸せにしますから」

「まあ、その何だ … 食うだけは、たらふく食わせてやってくれよ。

そんで、ほとんど大丈夫だからよ」


照れ隠しか、寂しさを紛らわすためか … 大五のそんな言葉に皆から笑いがこぼれました。

「もうちょっと、いいこと言ってよ」

「言ったじゃないかよ、一番大事なことをよ」


汽笛が発車の合図を知らせました。

… … … … …

汽車に乗り込んだふたりは、デッキに立って別れを惜しんでいます。

走り始めた汽車 …

涙ぐんだめ以子は、手を振る皆に向かって、ひとりひとりの名前を叫びました。

「お父ちゃん、お母ちゃん、テル、クマさん、山本さん、タマちゃん …

18年間、ごちそうさまでした!」
 

旅立ち~卒業ソングBESTセレクション

新品価格
¥2,065から
(2013/11/2 12:53時点)



連続テレビ小説 ごちそうさん オリジナル・サウンドトラック「ゴチソウノォト」

新品価格
¥3,150から
(2013/11/2 12:54時点)



あまちゃんメモリーズ 文藝春秋×PLANETS

新品価格
¥1,365から
(2013/11/2 12:54時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2013年11月01日 (金) | 編集 |
第29回

「お父ちゃん、もう賄い食べた?」

海水浴から戻っため以子が厨房に顔を出すと、従業員一同が集まっていました。

ただならぬ雰囲気にホールの方を覗くと、悠太郎が大五とイクと向かい合って座っているのが見えました。

「話があるって、悠太郎さんが来てさ」

照夫から事情を聴いため以子はホールの様子をそっと窺いました。

… … … … …

「近くに家を借りてもええですし、大将さえよければ、僕はここから仕事に通おうかと思うてます」

悠太郎の話を苦虫をかみつぶしたような顔で聞いている大五。

「それなら、め以子さんも今までと変わりなく過ごせますし … 実家のいざこざにも巻き込まれずにすむと思います …

僕がこちらで就職するという前提で、もう一度お考え願えないでしょうか?」


そんな悠太郎の申し出を聞いて、め以子はいても立ってもいられなくなって、思わず飛び出していました。

「ダメ、絶対ダメです!

そんな、こっちで就職なんて、何考えてるんですか?

… お母さんのくれた夢はどうなるんですか?」

「それは、今ええですから」


め以子は大五の方へ向き直りました。

「お父ちゃん … 西門さんはね、火事に巻き込まれて、お母さんを亡くしてるの。

だから自分の手で大阪を安全な街にしたいって、だから階段も直してくれたの、手すりもつけてくれたの。

その夢は、西門さんなの … 西門さんが生きてきた全てなの …

私の夢でもあるから、この人の夢は、私の夢だから … だから、分かってもらえないかな?」


大五のことを見つめるめ以子。

ずっと黙って聞いていた大五が、口を開きました。

「 … そんな大層な夢を女ひとりのために変えちまう奴を、俺は信用できないね!」

席を立つ大五。

「お父ちゃん!」

「どうしても一緒になりてえんだったら、もういい、出てけっ!

勘当だよ … その代り、二度とうちの敷居またぐなよ」

「お父ちゃんっ!」


… … … … …

再び、話は決裂、大五の許しを得られませんでした。

「私もう家出ます」

悠太郎を停車場まで送りながら、め以子もムキになって言いました。

困ったような顔をした悠太郎。

「何処に住むつもりなんですか?」

「友達の家とか … 」

「2、3日ならともかく、何か月も受け入れてくれるんですか?」

「 … じゃあ、住み込みで働きます」

「堪忍してくださいよ ~ 」


め以子の話は現実が伴っていません。

「じゃあ、どうするんですか?」

「だから、こっちで就職するって言うたんですけど」

「でも、私そんなことされたくないです!」

「それはどうも余計なお世話でしたね」


悠太郎としては、考え抜いた果ての決断だったのです。

「だって、こんなことくらいで … 」

「こんなことや、ないでしょ?」


声を荒げた悠太郎。

「自覚がないのかも知れんけど … あなたは、ものすごく幸せな中で育って来てるんです!

あんないい家、他にないんです。

それこそ、こんなことで失ってええもんと違うんです」


… … … … …

「それでもよかったって、思えるくらい、ふたりで幸せになれば、いいんじゃないですか?」

「それとこれとは、別ですよ …

お父さんやお母さんに何かあった時、駆け付けることも、でけんようになるかも知れないんですよ。

そんなのあなた、絶対後悔するでしょ?」


卯野家の幸せな関係を壊すことは絶対にしたくない悠太郎なのです。

め以子はそれ以上は何も言うことが出来ませんでした。

… … … … …

「 … あれ言われちゃ、おしまいだよ」

厨房で包丁を研いでいる大五の前に立って、イクは言いました。

「分かってんだろ? 自分でも … 」

「だから、好きにすればいい言って、言ったじゃねえかよ」


ため息をついたイク。

「私ゃ、もう止めないよ?」

「勝手にしろ … 」


… … … … …

裏庭では、山本、タマ、照夫の3人がどうしたらいいものかと相談していました。

「大将、もう後に引けなくなっちゃってるよな?」

「 … 意地だけで生きてるからね」


3人は、心情的にはめ以子の味方でした。

何とか大五に気持ちよくふたりのことを許してほしいと思ってはいるのですが …

自分たちが何か言っても、火に油を注ぐだけだと分かっています。

「あっ … あの人だったら、ダメかな?」

照夫が誰か適任者を思いついたようです。

… … … … …

「おい、ポン! テル何処行った?」

店の一番忙しい時間、照夫の姿が見当たりません。

「さあ? ご不浄だって聞きましたけど … 」

「ご不浄? あいつ、どんだけ長いんだよ!」


そこへ、照夫が慌てて戻って来ました。

「おいっ、すぐ手を洗って、ジャガイモの皮!」

「はいっ」


仕事に戻りながら、照夫は山本に目配せしました。

… … … … …

母屋の台所では、め以子が海で買ってきたアジを前にして、クマの言葉を思い起こしていました。

『暑気払いに美味しいお味噌汁作ってさしあげたら、旦那さんも結婚許してくださるかもしれませんよ?』

こうなったら、今自分がやれることをやるしかない …

手にした料理ノォトにはアジを買った店で教わった『がわがわ』という調理法が記してあります。

「あら、何作ってるの?」

店をあがってきたイクがザルの上のアジを珍しそうに見て尋ねました。

「うん、ちょっとね … 」

… … … … …

閉店した店の入り口、大五はイスに腰掛け、腕を組んで何か考え込んでいます。

「もう看板かい?」

顔を上げると、新井社長が立っていました。

「ああ、社長、何か召し上がりますか?」

「あ、いや、そのままそのまま … 」


新井社長は店に戻ろうとする大五を制しました。

… … … … …

「何がそんなに嫌なんだ? … いい青年だって、気に入ってたじゃないか?」

仕事中に店を抜け出していた照夫は、新井社長に相談しに行っていたのです。

大五は新井社長に本音を漏らし始めました。

「あいつ、どんどん変わってくんですよ …

てめえじゃ、何もしなかったのに、ただの食いしん坊が、おむすび作って、弁当作って、どんどん大人になって … そいつの夢は私の夢なんて、いっぱしの女みたいな口きくようになって …

そいつに惚れすぎてて … 俺、なんか怖いっつうか …

惚れてたら、何だってしちまうじゃないですか?」


新井社長は、黙って大五の話に耳を傾けていました。

「それこそ、どんな辛いことだってやるだろうし … あいつはバカだから、それこそ何だってやっちまうだろうし … 」

そのことが心配で頑として許さなかったのでした。

新井社長は笑い出しました。

「それを、お前さんが言うかね?」

社長の顔を見た大五。

「 … 無一文のお前さんの夢を、自分の夢と思って、やってきてくれた人がひとりいるじゃないか?

彼女が苦労してきたところは、たくさん見たけれど … 不幸に見えたことは、一度もなかったよ」


それだけ言うと、大五の肩を叩いて、新井社長は帰って行きました。

… … … … …

大五が店に戻ると、ちょうどめ以子がお盆に椀をのせて運んできたところでした。

「何だこれ?」

いぶかしげに見た大五にめ以子はひと言 …

「がわがわ」

漁師の料理で、食べる時に「がわがわ」という音がするから、この名前がついたそうで、アジの身を叩いて、シソやショウガやネギなどの薬味をたくさん入れて、冷やした汁に氷を浮かべたものだと、め以子は説明しました。

「お父ちゃん、食べてみて」

テーブルの上に置きました。

大五は席に着くと、「がわがわ」を食べ始めました。

「 … 美味しい?」

「まあ、食える」


不愛想に答えた大五ですが、箸を休ませることなく食べています。

… … … … …

「お父ちゃん … 私さ … がんばるから …

ややこしい家だって言ってたし、いろいろ大変なこともあるかも知れないし …

私、バカだし、頼りないかも知れないけど … 気に食わないって言われても、へこたれないから。

ちゃんと、相手のこと見て、ご飯つくりから。

ちゃんと、努力するから。

絶対に幸せになってみせるから …

だから、大阪行かせてくれないかな?」


顔をしかめながら、め以子の話を聞いていた大五。

何も言わずに残っていた「がわがわ」をかっ込みました。

… … … … …

その頃、悠太郎の新しい下宿先を室井が訪ねていました。

「いいとこ住んですじゃないか ~ ちょっと話があって … 」

灯りがランプひとつしかない暗い部屋に通された室井は、とつとつと話し始めました。

「 … 僕が小説書くことにね、親兄弟は皆、止めとけとしか言わないんだよ。

僕が大丈夫だって、いくら言ったって、認めてもらえないわけ … 」


自分の身の上を話す室井。

「多分、そういうもんだと思うんだよね ~ 親って。

けど、上手くいったら、きっと手のひら返して喜ぶんだよ。

『よかった』『よく頑張った』って … 」


室井が何を言いたいのか、悠太郎には何となく分かってきました。

「だから、僕は …

僕は、大将がどう言っても、め以ちゃん連れて行っていいと思う。

悠さんが、ちゃんと幸せにしてあげれば、いつかきっと分かってくれることだと思う」


口下手な室井が自分のために一生懸命話してくれたことに、悠太郎は感動していました。

「 … 初めて、室井さんの口からタメになることを聞きました」

照れて頭をかく室井、ハッと思い出しました。

「でも、俺がこんなこと言ったって、大将には … 」

「言いませんよ」


こういうところも室井らしいな ~ 悠太郎はおかしくて笑いました。

… … … … …

「がわがわ」を平らげた大五は、顔をひと撫ですると、立ち上がって厨房に向かおうとしました。

誠心誠意、思いは伝えたけど、やはり大五は許してくれなかった … め以子がそう思った矢先 …

「タスキと前掛け持って来い」

「えっ?」


… … … … …

言われるがまま、め以子がタスキをかけ、前掛けをして、厨房に戻ってくると …

大五は、照夫に手伝わせて、鳥のフォンの仕込みを始めていました。

「 … たまにはお前も手伝え」

「いいけど … 」

「鶏ガラに残った血の塊を取って、血抜きをするんだ」


… … … … …

「鶏ガラを熱湯にくぐらせて、霜降りにする」

いちいち何をしているのか口に出しながら指示する大五。

「それくらい分かってるけど」

いつもやっていることなので、何を今更と思う照夫でした。

「確認だ、確認!

時にはちゃんと言葉にしないといい加減になるだろ?!」


そう言われると返す言葉はありません。

「まあ、大きめのボールとザルに入れて、上から熱湯をかけるっつう方法もあるわな。

… 家庭では、その方がやりやすいかも知れねえな


家庭? … め以子は大五の顔を見ました。

大五は、こと細かく丁寧に説明しながら、自分でも手本をして見せました。

手伝わせることで、開明軒の料理の味の基本を娘に伝えているのです。

それは、ふたりの結婚を許したという、無言のメッセージでした …

冷凍 国産チキンブイヨン(出し汁)無添加 1kg 色々な料理に♪

新品価格
¥1,155から
(2013/11/1 16:35時点)



雨のち晴レルヤ / 守ってあげたい

新品価格
¥1,200から
(2013/11/1 16:36時点)



あまちゃん 完全版 Blu-ray BOX 2(Blu-ray Disc)

新品価格
¥13,364から
(2013/11/1 16:37時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。