NHK朝ドラ『花子とアン』『ごちそうさん』『あまちゃん』…ストーリーを勝手に解釈&裏読み … ほぼネタバレ…
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2013年12月31日 (火) | 編集 |
福生のご隠居がお亡くなりになりました。

あまりにも突然、ご冥福をお祈りいたします …

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2013年12月30日 (月) | 編集 |
それでは、新年1月6日からの「ごちそうさん」は?

昭和7(1932)年。め以子()は大阪の地になじみ、三人の子の母となっている。

悠太郎(東出昌大)は竹元(ムロツヨシ)の命令で、大阪の地下鉄建設に関わることに。希子(高畑充希)はラジオ放送局に就職している。

め以子は、食べものに全く興味を示さず、何を考えているかわからない長女のふ久(原見朋花)に悩んでいた。

ふ久、学校行かれなくなってしもうたで、どうするん?

別に行かんでもええもん


ある日ふ久が近所の男子に石でけがをさせる騒動が起きる。問いただすめ以子に、石を落としただけと返事するふ久。その後小学校でボヤを出し停学になってしまう。

何やってるんですか? あなた母親でしょ?

こんな時だけ、父親面しないでよ!


ふ久が普通でないのではと思い悩むめ以子。悠太郎に打ち明けるが、逆に母親としての自覚を問われて言い合いになる。

め以子は正蔵(近藤正臣)のアドバイスでふ久に向き合おうと決意。ふ久が浮力や重力による現象に興味を持ち、いろいろな実験を試みていたことを知る。

♪アイスクリン

ある日、露店のアイスクリンを珍しく勢いよく食べるふ久。め以子はショックを受けるが、ふ久から家でアイスクリンを作ってくれと頼まれてはりきる。食べたふ久からは、思いがけない言葉が。

言うてええのん?

一方、悠太郎は竹元の厳しい要求と、難事続きの現場との板挟みの毎日。現場でけがをした悠太郎は、病院で亜貴子(加藤あい)と再会する。

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2013年12月29日 (日) | 編集 |
第78回

正蔵からの手紙を読み終えた悠太郎は、長屋の前まで来ていました。

明りの消えた部屋、恐る恐る引き戸に手を伸ばした時、勢いよく中から戸が開きました。

入口に立っていた正蔵は、背中に大きな荷物を背負い、鍋釜まで手にしていました。

まるで夜逃げでもするかのような格好です。

「今度は何処行くつもりや?」

悠太郎に聞かれて、正蔵は気まずそうな顔で外へ出てきました。

「初日の出、拝もうと思うてな … 腹減るやろと思うて、おせちや」

め以子からもらったおせちです。

悠太郎は思いつめたような顔で正蔵のことを見つめています。

「何かあったんか?」

こんな夜に悠太郎がわざわざ自分を訪ねてくるなんて、よほどのことでした。

「 … 生まれるから」

「今日か?!」


昼にめ以子と会った時、予定日は来月と聞いていたので、正蔵は驚きを隠せません。

「 … 孫の顔くらい見に来たら?」

… … … … …

「えっ、えっ?!」

正蔵は我が耳を疑いました。

「爺ちゃん、やってみたらええやんか?

俺は親になるから、あんたはちゃんと爺ちゃんになったらええやんか … 」


涙をこらえながら悠太郎の話を聞いている正蔵。

「俺はあんたの息子やから、あんたが世間に作った借りは返さなあかん!

誰よりも頑丈なもん造る … あんたが壊して回った分、皆を守る建物を造る。

造って回るから ~

せやから、逃げんと隣で見とけ思う!」


… … … … …

正蔵はくるっと向き直ったと思ったら、部屋の中へと戻って行ってしまいました。

「おい … ?!」

閉じられた戸の前で、愕然とする悠太郎。

しかし、ややあって戸は再び開かれ、荷物をおろした替わりに一升瓶を手にした正蔵が出てきました。

「ええんか? ホンマにええんか?」

涙でくしゃくしゃになった顔で聞いてきました。

父を見る悠太郎の目にも涙が … 何度もうなずくと抱きつきました。

… … … … …

悠太郎と正蔵が家に戻ってきた時、2階から元気な産声が聞こえてきました。

「生まれた … 」

… … … … …

「め以子もお母さんか ~ 」

産婆から赤ん坊を渡されため以子は、生まれたばかりの我が子の手を握って、目を潤ませていました。

「 … 入ってええですか?」

悠太郎の声がして、イクが襖を開けました。

「元気な女の子ですよ」

促されて、悠太郎はめ以子と赤ん坊が寝ている枕元に腰をおろしました。。

「汗だくじゃないですか?」

め以子は見上げながら悠太郎の額の汗をぬぐいます。

正蔵の長屋から全力で走って戻ってきた悠太郎はめ以子に負けじと汗びっしょりだったのです。

「あなたほどやないです」

そう言いながら、赤ん坊の顔を覗き込みました。

… … … … …

「おう、入ってくださいよ、正蔵さん」

大五が、玄関の前で遠慮していた正蔵を見つけて、家の中に入れようとしていました。

「え、お父さんどうした?」

驚いた希子が尋ねました。

悠太郎は、急いで2階へ上がって行ってしまったので誰も事情が分からないのです。

「あ、いや … ちょ、ちょっとお祝いにな … あのすぐ帰るさかいに … 」

手にしていた一升瓶を渡して、そのまま帰ろうとすると …

「お、お、お蕎麦茹でるの手伝うたら?」

お静はそうひとこと言って、わざとそっぽを向きました。

その言葉をかみしめる正蔵。

「 … せやな」

「ほな入りましょう!」

「寒いからもう早う入って!」


うしろにつかえていた源太にも急かされて、正蔵はようやく家に足を踏み入れることができたのです。

… … … … …

茹であがった蕎麦は2階にも運ばれ、赤ん坊に乳をやるため、両手がふさがっているめ以子は、悠太郎の手で食べさせてもらっています。

「ホンマにご苦労さんでした」

幸せそうに蕎麦をすすっため以子に改めて労いの言葉をかけた悠太郎。

「お蕎麦の味するのかな?」

お乳を飲んでいる赤ん坊の顔を見ながら、め以子らしい疑問でした。

「せんと思いますよ ~ 」

微笑みあうふたり。

… … … … …

板の間では、正蔵と源太も加わった総勢9名が賑やかに年越し蕎麦をすすっていました。

「め以ちゃんの名前ってどっからきたんですか?」

ふと室井が尋ねました。

「女は命を産むから、命の子だ … 命の子と書いて、『めいこ』と読ませようって」

苦笑交じりにイクが話すと、一同が納得したようにうなずきました。

「それじゃあ、あんまりにもこっ恥ずかしいから … かなと当て字にしたんだよ」

< そうそう ~ あんたらケンカするから … 私がそう言ったんだよ >

「照の時なんか … お天道様の天道ってつけようとしたんだよ ~

もう、じゃあ、生きることを照らすってことで … 照生でいいじゃないって」


< 言ったのは、私だけどね … >

… … … … …

「西門家はどうなんですか? お名前って」

次は、桜子が正蔵に尋ねました。

「いや ~ あの、美しい字を、ひと文字ずつ … 」

「あっ、悠太郎君には悠久の悠、希子ちゃんには希望の希ですね!」


照れくさそうにしていた正蔵に代わって室井が言い、桜子とふたりで「文学的 ~ 」と盛り上がっています。

… … … … …

「あの ~ やや子の名前ってどないします?」

お静の言葉に顔を見合わせた両家の祖父母。

「ああ … 顔見て、考えましょうか?」

イクの提案に皆、笑顔で同意しました。

… … … … …

4人が部屋を覗くと、赤ん坊を挟んで親子3人寝息を立てていました。

「食べたら、寝てもうたか … 」

「せ~ので、ごちそうさまですね」


お静とイクが小声で言い、静かに笑いました。

… … … … …

「ほな、帰る … 孫の顔も見せてもろうたし … 」

しばし寝顔をながめていた正蔵が口にしました。

思いもよらぬ、悠太郎の計らいに感謝しつつ、立場をわきまえなければならないと考えているのでしょう。

「暗うて、足元悪いし … どうせやったら、朝までおったら?」

しかし、このまま帰っても寒々とした部屋が待っているだけです … 正蔵はお静の言葉に甘えることにしました。

「 … せやな」

いつの間にか、残っていた全員が2階へと上がって来て、部屋の前に集まっていました。

遠くで鳴り始めた、除夜の鐘 …

… … … … …

年が明けて … 西門家は何年かぶりに賑やかな元日の朝を迎えていました。

食卓の真ん中にめ以子がこしらえたおせち料理が並べられると一同がどよめきます。

「こりゃまた、大阪のおせちっていうのは、こういうもんなんですか?」

豪華なおせちに感心している大五にイクは言いました。

「め以子が考えたのよ」

昨晩、大仕事を終えたばかりのめ以子ですが、皆が勢ぞろいする年始の挨拶なので赤ん坊を抱いて、一緒の食卓についていました。

「悠太郎さん、ちょっといい?」

め以子は悠太郎に赤ん坊を預けると、おせちについての説明を始めました。

「おせちには、願いが込められてるって聞いて … このお重には、私なりに願いを込めてみました」

… … … … …

「海苔を使った鶏だんごは、希子ちゃんの人生がこのまま波に乗っていきますようにって作りました」

鶏だんごが波を形取っていました。

「波に海苔で、波に乗る」

… … … … …

「これは、お義母さん」

油揚げの袋をかんぴょうで結んだ巾着煮でした。

「お静さんがいつまでもお義母さん … お袋さんでいてくれますようにって」

「おおきに ~ 」

「で、実は中身が2種類あって、ひとつは関西風のまったりとした白みそ仕立ての豆腐あんで … もうひとつは、関東風の甘辛いくわいが入ったしんじょ入り。

これ、お母ちゃん」

「ありがとう」


お静とイクは顔を見合わせて笑いました。

… … … … …

「で、これがお父ちゃん」

大五には、鯛の子を使った寒天寄せでした。

「お前、俺は駄洒落かよ?」

皆がどっと笑いました。

「 … いつまでも、そのままでってこと」

何だかんだ言っても大五もうれしそうです。

… … … … …

次は照生の料理です。

「これ一見分からないけど、鯛が使ってあるの」

早く大五を追い越しますようにという意味でした。

「なるほど ~ 」

「100年早えんだよ!」


… … … … …

正蔵には、梅酢蓮でした。

「離れてても見守っていてくださいねって意味で、こう蓮根なんですけど … ちょっとずれちゃいましたかね」

お静と並んで座っている正蔵は恐縮して料理を受け取りました。

「いやいやいや … あの、これいただいたら、もうええ頃加減のところで私、いにますさかいに … 」

すると隣のお静が …

「皆さんに西門の雑煮作ってからにしたら?」

「 … せやな」


皆が笑いました。

悠太郎にも異論はありません … 今、腕の中で眠っている赤ん坊が上げたこぶしをしまうきっかけを与えてくれたのでした。

… … … … …

「あ、それ … 魚のお料理、和江ちゃん?」

お静が指さしたのは和江の好物、イワシを使った料理でした。

「 … お義姉さんと、私にでもあります。

もっともっと、美味しいって『イワシ』て行きたいって」


… … … … …

「で、最後の悠太郎さん …

これは、卵をふぐで包みました」


皆の顔から笑顔が消え、驚きに変わっています。

「 … ふぐって、大阪ではご禁制やんな?」

「尼崎のお料理屋さんでもらいました」


何故、ふぐなのかを悠太郎は質問しました。

「ふぐをこうして、安全に食べられるようになるには、たっくさんの食いしん坊たちが、命を落として来たんだって …

で、その人たちのお蔭で、今こうしていただけるんだって聞いて … 」


… … … … …

「悠太郎さんは、料理は人を傷つけないって言ったけど … そんなことないんですよ。

ふぐとかキノコとか … 安全な水だって、誰かが命を懸けて食べられるよって教えてくれたものなんです。

きっと、今私たちが手にしてるものって、皆そうなんじゃないのかなって … でも、今の私たちだって未来への下ごしらえだと思うんです。

それでいいんじゃないのかなって」

「せやな ~ やれるだけやってな … 」


悠太郎はとてもいい顔で笑い、そして正蔵の顔を見ました。

正蔵も穏やかに笑い返し、小さくうなずきました。

… … … … …

「あっ!」

突然、大五が大声を上げたので、何事かと皆が注目しました。

「名前、『福』じゃねえか?

ほらっ、皆に福をもたらす子ってことでよ、ねっ?!

そうだよ、これしかねえ!」


すると、正蔵が …

「 … め以子さんに因んで、ひらがなの『ふ』、永久の『久』、『ふ久』」

宙に指で書いて見せました。

「これいいです!

これしかない … ねっ、ね?」


興奮気味に皆に聞く大五。

両家の祖父母たちは賛成のようです。

「いいの? 何か決まりそうだけど … 」

照生が悠太郎とめ以子に一応確認しました。

「ええやないですか?」

悠太郎はそう言って、赤ん坊をめ以子に返しました。

「ふ久ちゃん、ふ久ちゃん」

め以子が顔を覗き込んで呼びかけると … 目をぱっちりと開けて、笑ったように見えたのです。

「 … いいみたいです」

「決まった! おめでとう ~ 」


西門家の食卓には、明るい笑い声が響いていました。

< 大正13年元旦、これは西門家に福(ふ久)が来た日のお話でございました >

来年もよろしくお願いします … 皆様、よいお年を!

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2013年12月27日 (金) | 編集 |
第77回

< さて、大晦日でございます >

め以子のおせち作りもいよいよ佳境に入った頃、餅の用意をしていないことが発覚しました。

「もう、何で餅ついてないんだよ?! ズボラにも程があんだろ、お前!」

糯米のふかし具合を見ながら、め以子を責めた大五。

「男手なかったんだもん ~ 」

< 女たちはおせちの仕上げ、男たちはもちつきに大わらわ … >

… … … … …

何とかかんとか、片がついた後 … め以子と希子は作り立てのおせちを届けに、正蔵の長屋を訪れました。

「お義父さん、おせちできましたよ」

< それは、そんな慌ただしい日のことでございました >

「はは … おおきに」

おせちを受け取った正蔵は、め以子の大きなお腹に目をやりました。

「もう、そろそろかいな?」

「来月って言われてます」


正蔵は、懐に手を入れると風呂敷にくるまった包みを取り出して、め以子に差し出しました。

「これ、ご祝儀や」

め以子は遠慮しましたが、「これぐらいのことはさせて」という正蔵の気持ちを汲んで、ありがたく頂くことにしました。

「ほな、まあええお年を」

「お父さんも」


別れ際にめ以子は肝心なことを思い出しました。

「あ … おせち、『願い』の料理ですよね?」

正蔵からの宿題の答えでした。

「えっ?」

急に言われて、正蔵はきょとんとしています。

「 … 忘れてましたね?

じゃあ、よいお年を」


… … … … …

帰り道、め以子と希子は、道に倒れている染丸に肩を貸す源太を見かけました。

「どうかしたのかな ~ 何で一緒にいてはるんですかな?」

希子は、やけに気になるようです。

「ふたりでお伊勢さん行くんじゃなかったっけな … 」

「えっ、えっ … あのふたり、そういう仲やったんですか?」


そう言われると仲睦まじく見えてきて … 動揺する希子。

ところが、め以子はそれどころではなくなっていました。

「ちい姉ちゃん?!」

希子が振り向くと、顔をゆがめため以子がお腹を押さえながら、ゆっくりとうずくまっていくところが目に映りました。

… … … … …

そんなことは露知らず、大五たちは、つきたてのお餅に舌鼓を打っている最中でした。

「う ~~ ん、つきたてのこの時だけなんだよな、これはよ!」

「どんなごちそうより … でんな ~ 」

「一番食いつきそうな人がまだなんですけど … 」


食い意地のはっため以子がつき上がりの時間になっても帰ってこないのはおかしい …

そんな噂をしていると、玄関が開く音がして、血相を変えた希子が駆け込んできました。

「産婆さん、呼んでください! 生まれてしまうみたいです!」

… … … … …

急に産気づいため以子は、桜子と室井に支えながら苦悶の表情で家に入って来ました。

慌てて産婆を呼びに走る悠太郎、お湯を沸かす桜子 …

「め以子、さあ、上行くよ … ?!

あんた、一体何やってるんだい? こんな時に!」


イクは我が目を疑いました … め以子は苦しみながらも餅を頬張っているのです。

「今しかねえもんな ~ つきたてはよ!」

大五は納得してうなずいていますが、あきれる女たち …

… … … … …

その頃、正蔵は部屋の中を片付け始めていました。

すす払い … という訳でもなさそうです。

… … … … …

何とか2階に寝かされため以子。

産婆も到着し、出産の準備も整い、イクを残して後の一同は、下で待機しています。

「お母ちゃん、それ取って」

布団の上のめ以子は、机の上に置いてある先ほど正蔵から渡されたご祝儀の包みを指さしました。

「これかい?」

包みを開けると、中にはご祝儀の他に『悠太郎、め以子さん江』と書かれた手紙が入っていました。

… … … … …

階下では、悠太郎が心配そうに2階を見つめています。

好奇心旺盛な室井が隙をみて上がっていこうとして、桜子からこっぴどく叱られました。

「今じゃなくていいだろ?!」

「今、今渡したいの!」


2階からそんなイクとめ以子が言い争う声が聞こえてきて …

「あ、悠太郎さん … ちょっと来てくれるかい?」

階段から顔を出したイクが手招きをしました。

… … … … …

悠太郎がイクの後について急いで2階へ上がると、め以子は廊下まで這って出てくるところでした。

「どないしたんですか?」

め以子は、駆け寄った悠太郎の腕をつかみ、正蔵からの手紙を握らせました。

「何ですかこれ?」

「 … よんで … よんでよ … 」


ものすごい形相で悠太郎のことを見上げながら、後ずさりして部屋へ戻っていきました。

「 … がんばってな」

… … … … …

悠太郎は、ひとり縁側で正蔵の手紙を読み始めました。

悠太郎、め以子さん

もうすぐ、子供が生まれるんですね。おめでとうございます。

これから親になる君たちに話しておきたいことがひとつだけあります


… … … … …

私は昔、鉱山で技師をしていました。

詳しく言えば、掘削した鉱石の精錬をしていました。

主に銅をです


日清日露戦争の軍備は銅で整えたといわれる程の国の基幹産業だった銅の精錬。

正蔵は自分の働きが国を豊かにしていると素直に思っていました。

銅の精錬には、鉱毒というものがつきもので、当然正蔵もその認識は持っていましたが、とやかくいうこともない、豊かになるというのはそういうことだと思っていたのです。

… … … … …

「う ~~ もう無理 ~ 」

あまりの痛みに、イクに抱きついて弱音を吐くめ以子。

「もうすぐ年越しそばだから … がんばれ」

気を持ち直しため以子は、そばを思って何度もうなずきました。

… … … … …

 … せやけど、鉱毒の被害は思たよりも深刻なものやということが、私の勤める鉱山でもあからさまになってきたのです

近くの河川には魚が浮かび、作物は実らないようになり … 山はまる禿で土砂崩れも起こるようになってしまいました。

もちろん、人間だけが無事な訳はありません … 成長する前に命を落とす子供も増えていったのです。

… … … … …

やがて周辺の村から抗議の声が大きくなり始めた頃、正蔵は立ち退き要請や土地の買い上げなどを任される立場に就かされました。

「何か手だてを … このままじゃ、村の人間は水も飲めねえ!」

自分たちの引き起こした被害を突きつけられる日々に神経が擦り切れそうになったその頃 …

君のお母さんが亡くなったんです

… … … … …

もう分ったでしょう。

私は、家族のためにと言いながら、渡りに船と山から逃げ出したんです


… … … … …

そうして、因果なもんで、遂には逃げ込んだ家族からさえも逃げました

… … … … …

しかし、どれだけ逃げようとも逃げ切ることはできなかったのです。

そして、ある日、正蔵は気づきました。

困難から逃げることと引き換えに、自分の生きている価値のようなものを、永久に失ってしまったことを。

… … … … …

悠太郎。

どれほど注意を払うたと言うても、過ちに前もって気づくことはできません。

悠太郎。

豊かさを追い求め、豊かさを失うのが、悲しいかな人間という生き物です。

けど、過ちを犯した後に、どう生きるかを選ぶことはできるんです


… … … … …

もし、過ちと戦い続ける姿を見せられていたならば、君にそのことを伝えられたのではないかと思います。

ただ、ただ、逃げ続ける私の背中は、君に過剰な責任感と、間違うことへの恐怖心を与えてしまった気がします。

ホンマにすいません


… … … … …

 … 父親となる君に、私のこの間違いだらけの人生が、何かの役に立てばと思い、筆を執りました。

悠太郎、め以子さん、どうか私のような親にならないように


… … … … …

どうか、あなたたちは生まれてくる子供に、輝く未来と豊かな誇りを与える人であってください

正蔵の長い長い手紙を読み終わった悠太郎は … 家を飛び出していました。

夜の道を息を切らして走った悠太郎の行先は、正蔵の長屋でした。

… … … … …

不在なのか、正蔵の部屋の明かりは消えていました。

「親父 … 」

茫然と見つめる悠太郎。

「親父!」

もう一度呼びましたが、やはり返事はありません。

恐る恐る引き戸に手を伸ばした時、勢いよく中から戸が開きました。

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2013年12月26日 (木) | 編集 |
第76回

「お父ちゃんが見つかったとか、そんな大事なことをよ ~ 俺に何の報告も相談もなしか?!

おいっ、悠さん?」

「 … すいません」

憤慨して、2階へ上がってきた大五は、あてがわれた和江の部屋でふて寝してしまいました。

「嫁入り先のことにグダグダ首突っ込んでも仕方ないだろ?」

後から上がってきたイクが諭します。

「 … 照に嫁が来て、嫁の実家がうちのやり方に口出ししてきたら、あんたふざけるなって怒鳴るでしょうが?」

頭の半分ではイクの言うことを理解しながらも、自分が知らないことばかりで … 頼りにされていないのだと、悔しいやら寂しいやら … やるせない気持ちでいっぱいの大五なのです。

… … … … …

「ちょっと、よろしいでっしゃろか?」

襖の外でお静の声がしました。

イクに促されて不機嫌な顔のまま起き上がった大五。

お静は部屋に入ると、ふたりの前に神妙な顔でかしこまって座りました。

「あの … ふたりに怒らんとってやってください」

顔を見合わせた大五とイク。

「死んだことにするしかない家にしてしもうたんは、うちと和江ちゃんなんです。

… 悠太郎さんは、いなくなった父親の代わりになるんやって、13歳の時から気張ってきて … その恨みつらみを捨て切れないんです。

それを、め以子さんは一所懸命宥めようとしてくれてまして …

きちんと始末がついたら、お知らせするつもりやったんと思います。

… ホンマこの通りです」


畳に両手をついて深々と頭を下げたお静。

恐縮してイクが頭を下げると、さすがの大五も同じようにしました。

… … … … …

次の朝。

昨晩と打って変わって静かな西門家の食卓、誰ひとり口も利かず黙々と箸を動かしています。

大五の顔色をうかがう一同。

しかし、本人はさっさと食事を済ませると、席を立ちました。

「あの … お義父さん、きちんとお話をさせてもらませんか?」

悠太郎が後を追いましたが、取りつく島もなく、行く先も告げずに出かけて行ってしまいました。

… … … … …

果たして大五が向かったのは、正蔵の長屋でした。

「ホンマに会うんですか?」

無理やり案内させらている源太が尋ねました。

「取りあえず、挨拶しねえ訳にはよ」

「 … どういう挨拶するつもりなんですか?」


気が短い大五に探りを入れた源太。

「そりゃ、お前 … いや、普通の親同士のだよ!」

あまり乗り気ではない源太ですが、仕方なく長屋の前まで連れてきました。

「師匠、おる ~ ?」

… … … … …

呼ばれて顔を出した正蔵を見た大五は、唖然として突っ立っていました。

たぶんもっと破天荒な感じの強面でも想像していたのかもしれません。

「あの、この人な ~ め以子の親父さん」

… … … … …

ふたりを招き入れた正蔵は、鯛の腸を酒と醤油で漬け込んだものに柚子を絞って振舞いました。

「う ~ 美味っ!」

ひと口食べて感嘆の声を上げた大五。

「たまらん! これが腸ってウソやろ?」

「ははは … そうやろ? 捨てたらあかんやろ、何でも」


喜ぶふたりを見て、正蔵はうれしそうに笑いました。

「これが大阪の始末ってやつですか?」

「そうそう!」


正蔵が差し出した酒を盃で受ける大五。

… … … … …

「いや ~ もう、め以子さんが来てくれはったお蔭で、あの家もちょっと風通しがようなりましてな … ホンマにありがたい話です」

かぶりを振った大五。

「いやもう、あんなバカ娘 … ホントに迷惑ばっかりおかけしていることかと … 」

「とんでもない、とんでもない … いや、あの人、ホンマに明るうて素直なええお嬢さんですな ~ 」


大五は感激して頭を下げました。

「 … お嬢さん、実のところはどうなんでしょうな ~ 西門のもんにあきれ果ててはらしまへんか?」

「いや、あいつは呑気にやってるみたいですけどね。

… 悠さんは、仕事大変みたいです」


… … … … …

「何か難しいことはよく分からないんですけど … その、コンクリートで小学校を造ることを任されたらしくて …

子供のいる所ですから、できるだけ頑丈にって考えてるみたいなんですけど、その ~ 何つうか …

方策がいろいろ難しいってことなのかな」


昨晩、悠太郎から聞いた話の覚えているところをかいつまんで話しました。

「 … 震災の後は、もうどうしてもそういうことになりますわな」

悠太郎も同じようなことを言っていました。

「あの … 新しい技術というのは、まあ未完成な技術な訳でっしゃろ?

その手の悩みは、尽きまへんわ … 」


分野は違っても技術屋だった正蔵には悠太郎の悩みがよく理解できるようです。

… … … … …

正蔵の話を聞いていて大五は昨夜のめ以子の言葉を思い出しました。

「 … あの、悠さんの相談に乗ってやったらどうですか?」

盃を持つ手を止めて大五の顔を見た正蔵。

「あ、いや … 俺には、てんから分かんねえ話だから、その … やっぱり親子っていうのかな ~ 察しがよろしいっていうか … 」

「まあまあ、どのくらいまでご存じか、よう知りまへんけど …

私がそんな話をしたら、あいつ、頭から火吹きます」


正蔵は、自嘲気味におどけてみせました。

「 … けど、それが親の役目っていうやつじゃないすかね ~ 」

「えっ?」

「火吹かれてもね、言ってやった方がいいこともね」


… … … … …

休みの間にも遅れを取り戻せたらと、悠太郎は机に向かってみましたが … そんな簡単な訳にはいきません。

出るのはため息ばかり …

出かけたままの大五のことも気になります。

鉛筆を放って、引っくり返ってしまいました。

… … … … …

「お父ちゃん、夕ご飯には戻ってくるかな ~ 」

照生をお供に夕ご飯の買い出しに市場を訪れため以子。

「すねちゃってるからな ~ お姉ちゃんも悠太郎さんも、滅多に手紙も寄こさないし … 室井さんのことも源太さんのことも本人たちから初めて聞いてさ。

そういうのって、何かさみしいじゃない?」


… 年がら年中、大五と一緒にいる照生だから分かることなのかも知れません。

… … … … …

牛楽商店の奥を覗くと、大将やトミ、タネの3人が揃って机の上の何かを凝視しています。

興味がわき、店に足を踏み入れため以子。

「ふぐだ ~ !!」

「ぎょぎょ!」


慌てる3人。

「あ ~ ふぐちゃうちゃうちゃう … これな、鉄砲いう魚や!

買うて来たちゃうで、落ちてあったんを拾うて来たんや ~ 」


ふぐはご禁制の魚なのです。

「えっ、でも … ふぐですよね?」

気まずそうな顔をする3人。

「そう言っておこうっていう話だよ」

事情を知っている照生が言いました。

「武庫川から、あっちでは売ってますさかいな ~

まあ、ちゃんとした人がさばいたら、まず当たることはおへん」


言い訳をするタネ。

「当たると死ぬから、鉄砲言うようなったんや … まあその、数々の食いしん坊らのお蔭で、わてらには食べるための方法が残されたっちゅうこっちゃ!

… ありがたい話や」


大げさに手を合わせるトミ。

め以子は、じっとふぐを見つめていました。

… … … … …

「今日も鍋かいな ~ 」

お静がニコニコしながら台所に顔を出しました。

「すいません、お台所がおせちでもう … 」

大人数なので、手っ取り早く鍋なのです。

「魚すきって言うんだって」

「美味いんだって


支度を手伝うイクと照生。

… … … … …

「ご主人さん、まだお帰りになりまへんな ~ 」

「ああ、ええ … 」


イクも気にはしているのですが … 朝出たきりで一向に帰ってくる気配がありません。

「お兄ちゃん、探しに行きましたけど … 」

「えっ?」


… … … … …

一方、大五は正蔵とすっかり意気投合して、相当出来上がっていました。

… すでに一升瓶も空になって転がっています。

「いや、美味しいって言わせたい!

おい、源太 ~ 牛骨持って来いよ、牛骨!

牛骨は洋食の始末だ ~ !!」

「始末や ~ !!」


ご機嫌なふたり。

ふたりの世話もほとほと飽きてきた源太。

「せやな、あんたらどう始末するかいな … 」

すると入口の戸が開いて、近所の女が顔をのぞかせました。

「師匠、表に男の人、来てはるよ ~ 」

「誰や?」

「何や通天閣みたいに大けえ人」


… … … … …

そろそろ鍋の下ごしらえも終わる頃、源太が訪ねてきました。

「あ、源ちゃん … どうしたの?」

「いや ~ あのな、悠太郎さんが師匠の所へ親父さん呼びに来てな … 」


混乱するめ以子と希子。

源太は今朝のことから順に説明を始めました。

「まず、親父さんが師匠に会いに行ったんや … そこ悠太郎さんが迎えに来てな ~ で、ふたりで飲みに行ってもうたんや」

… … … … …

♪ 夜は寝ながら お月さん眺めて エ~ゾ、エ~ゾ … 帝都復興 エ~ゾ、エ~ゾ

悠太郎は大五を馴染みの立ち飲みの店に誘いました。

「優しそうなお父さんじゃねえかよ」

「はい … 」


今日の悠太郎は否定しませんでした。

「悠さん、ホントのところどう思ってんだよ?」

「 … め以子さんが来て、あの人ともう一遍関わりが生まれて … 印象が変わりつつあるのは事実です」


悠太郎らしい理屈っぽい言い回しでした。

「戻ってきてほしゅうないって言い張ってるのは、もう僕なんですよね … 」

「じゃあ、もういいじゃねえかよ ~

こっち戻って、ウロウロしてるってことはよ … 何だかんだ言って、戻りたいってことなんだろうしよ」

「何かこう ~ 理由がないんですよ。

上げたこぶしをしまうきっかけというか … 」

「分かる、分かる」


それは大五にも経験があり、痛いほどよく分かりました。

「こう、きっかけなんだよな … そうなんだよ」

… … … … …

いくら待っても帰ってこない大五と悠太郎を待つのをやめて、食事を始めたのはいいのですが … め以子は、ふたりが喧嘩などしていないか心配でした。

「まあ、なったらなったで、しゃあないやろ?」

「今更心配してもどうにもなりませんからね ~ 」


お静とイクは、腰を据えてドンと構えています。

「けど … 」

その時、玄関の外から調子っぱずれの歌声が聞こえてきました。

「 … 復興節?」

… … … … …

「ただいま、戻りました ~ 」

悠太郎の大きな声。

♪ 夜は寝ながら お月さん眺めて エ~ゾ、エ~ゾ …

肩を組んで、立ち飲みの店で、バイオリンの流しが歌っていた復興節を歌いながらのご帰還です。

「も ~ お父ちゃん、悠太郎さん、大丈夫?」

「うるせ ~ 俺と悠さんはな、本当の親子になったんだ!!」

「はいっ!」


♪ 帝都復興 エ~ゾ、エ~ゾ …

ふたりはフラフラと家に上がって、座敷に笑いながら倒れ込んでいきました。

「仲直り … したんかな、これは?」

どうやら、それは確かなようです。

「何、もう … ひどい … 」

仲良く眠りこけています。

あきれると同時にホッとして笑って見ている一同でした。

< 悠太郎と大五が、親子だ、親子だと騒いでる頃 …

もうひとりの父は、ある決心を固めていたのでございました >



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2013年12月25日 (水) | 編集 |
第75回

着々と進んでいる、おせち作り … しかし、もう少しというところまで来て、め以子は悩んでいました。

料理ノォト、頁の一番上に書かれた文字 …

『悠太郎さん 健康でいてほしい 応援したい』

< 悠太郎さんの分ね ~ これは考えちゃうよね ~

最近、元気ないしね … お仕事、大変なのかね?>

台所で考え込んでいると、2階から掃除道具を持った希子が下りてきました。

「皆さんがお泊りになるのって、お姉ちゃんの部屋でええんですよね?」

「うん … ??」

「今日ですよね? 卯野家の皆さん来はるの」


希子に言われる今の今まですっかり忘れていました。

… … … … …

正蔵のことを皆に口止めしておかないと … め以子は、うま介へと急ぎました。

「桜子、今日、お父ちゃんとお母ちゃん来るんだけど … 師匠っていうか、お義父さんのこと黙っといてもらえるかな?」

ちょうど、店の外を掃除していた桜子に話を通そうとした時、突然、店の窓が開きました。

「何、黙っとくんだよ?」

め以子が懐かしい声に振り向くと、大五、イク、照生の3人が笑いながらこちらを見ていたのです。

「あ ~ !!

お父ちゃん、えっ、何で?!」


… … … … …

「すぐにお家に行こうって言ったんだけどね … この人、焼き氷が食べたいって聞かなくって」

あきれ顔のイク。

「そう、焼き氷!」

しかし、残念なことに、焼き氷は夏期限定の商品でした。

そこへ、焼き氷の情報源であろう室井が店に下りてきました。

「どうも、大将、その節は … 」

「どうした、お前? きったねえな ~ 」


髪はぼさぼさ、無精ひげ、風呂も入ってなさそうな室井を見て、大爆笑の大五。

「震災の後、ずっとこうやって書いてて … 」

やや心配そうな桜子。

室井は、挨拶もそこそこに席に着くと、小説の続きを書き始めました。

「よう、何書いてんだよ?」

「おでんを通じて、世界のあるべき姿を表現しています」


顔を見合わせた卯野家一同。

「 … 今、こんにゃくが、その確かな存在意義について、皆に理解されたところです」

訴えるように語って、涙ぐむ室井。

「うん … お前も頑張ってんだな」

あまり関わってはいけないと感じたのか、大五は、桜子が焼き氷の代わりにと運んできたカスタード巻を口にしました。

「美味い、これ!!」

「それ食べたら、行くからね!」


まだ行きたいところがあると、呑気な大五の尻を叩いて … ようやく卯野家ご一行は西門家にたどり着きました。

… … … … …

客間に通され、ひと通り自己紹介を終えた両家の面々。

大五は緊張気味、照生は同年代の希子に鼻の下を伸ばしているとめ以子にからかわれました。

「あの ~ もうひと方、その … 」

「今日、お義姉様の方は?」

「ああ … 言ってなかったわよね、ごめん … お嫁に行かれたの」


拍子抜けするイク。

「そうなの?」

「 … いろいろあって、震災の前にね」


大五の顔色が変わりました。

「聞いてねえぞ、俺」

「 … あの大事に電報ひとつ寄こさなかった人に言われたくないです」


再会していくらも経っていないのに父娘の口喧嘩が始まりました。

「やめなさい、もう恥ずかしい!」

… … … … …

そんなやり取りを見ていた希子とお静が顔を見合わせて、笑っています。

「こんなんやね、ちい姉ちゃんの家って」

「ホントすいませんね ~ ガサツな娘で」


悪びれることのなく大五。

「いいえな ~ 明るうて、助かってます」

「いつでも熨斗つけて返してもらって構わないですから ~ 」

「何てこと言うの!」


せっかちな大五は照生を連れて、「市場でも覗きに行ってくる」と出かけて行ってしまいました。

「すみません、もう、来た早々騒がしくて … 」

冷や汗かきっぱなし … 恐縮するイクでした。

… … … … …

「ああ、いいよ、お母ちゃん、座っててよ」

台所に立っため以子をイクは手伝い始めました。

「じっとしてるのも性に合わないからね ~

けど、安心したよ … 仲良さそうで … どうなってることかと思ってたから」


最初からこうだった訳ではありませんが …

「お父ちゃんも心配してたんだよ ~

あんた、もうちょっとマメに手紙寄こしなさい」

「 … ごめんなさい」


母には、すべてお見通しでした。

… … … … …

市場をひやかした大五たちは、気に入ったのか、またうま介で腰を落ち着けていました。

「随分違うんだな、食いもん」

「ああ、こっちは牛が中心なんだよ ~ カツって言ったら、牛カツでよ」


大五は、店に入ってきた若い男が、自分たちのことをじっと見つめているのに気づきました。

「 … おじさん?」

「うん?」

「やっぱりそうや ~ !!

源太や源太、め以子の同級生やった」


そういえば、どことなく幼い頃の面影があります。

「ああ ~ 源ちゃんか?!

おお、大っきくなったな ~ 何、お前こっち住んでんのか?」

「 … あれ、あいつから聞いてなかったんですか?」

「あいつ、そういう大事なこと何にも言わねえんだよ!」


みるみる不機嫌な顔になりました。

「まあ、忙しいですからね … 」

… … … … …

「なあなあ、源ちゃん、お知り合い?」

一緒にいた染丸がふたりに愛想よく挨拶しました。

「ああ、こちら、め以子の親父さんと弟さん」

「ああ、そうなんどすか?

私もう、師匠にはずっとお世話になってて ~ 」


事情を知らず口を滑らせた染丸 … 凍りつく、源太、桜子、うま介 …

「 … 師匠って?」

大五は怪訝な顔をしています。

「あの、め以子さんのお義父さん」

「 … の従兄弟! うん、亡くなったお義父さんの従兄弟で、え ~ わしらもお世話になってて、なあ?」


慌てて、取り繕いましたが …

「それも聞いてねえけどな … 」

輪をかけて不機嫌になる大五。

… … … … …

「何も見せるものがないということは、どういうことだ?!」

仕事納めの日、図面の進捗状況を尋ねられて、手ぶらでやってきた悠太郎に竹元の怒りは爆発しました。

「 … 僕の力不足です」

「力不足だと … コンクリート造は、お前の専門だろう?

大学で一体、何を習ってきたんだ?!」

「習ってきたことに自信が持てないんです。

震災で、コンクリートが必ずしも安全でないことが分かって … これをやっていれば大丈夫だという確信が、自分の中に持てないんです」


書きかけた図面は、到底納得が出来るものではなく、結局は破り捨ててしまったのでした。

「申し訳ありませんでした」

「責任感はあるが、責任を全うする覚悟はなかったということか … 」


期待を裏切られた怒りもあきらめに変わったのか、静かな口調で言いました。

「 … もういい、この案件は別の人間に任せる。

お前には荷が重すぎた … お前には失望した」


そういい渡すと、さっさと部屋を出ていこうとしました。

「待ってください、竹元さん!」

「ちょうどいい機会だ、教えてやろう!

この世で私が一番嫌いな言葉は … がっかり … がっかりだ」


… … … … …

「まあ、明日から休みやし … 気持ち切り替えてな」

藤井の慰めの言葉も、今の悠太郎の耳にはまるで責められているかのように聞こえました。

「よいお年を … 」

藤井が帰り、建築課の部屋は、悠太郎と大村ふたりだけです。

「あんな、棟梁 … どんだけやってみたって、完璧なんかあらへんで。

しゃあない、どっかで肚くくらんと」


… … … … …

足取りも重く、帰宅して門をくぐると、家の中から自分の沈んだ気持ちとは正反対なにぎやかな声が聞こえてきました。

「め以子、お前何やってるんだよ?!」

「こっちは薄味なの! まだこれ濃いから」


西門家の人たちに自分の料理を振舞おうと、市場で食材を買い込んできた大五でしたが、慣れない関西風の味付けに戸惑っていました。

「お義父さん … 」

「おお、悠さん、お邪魔してるよ」


悠太郎が顔を出すと、本当にうれしそうな顔をして迎えました。

「すいません、遅うなりまして」

「忙しいんだろう? 分かってるよそんなこと … 待ってろよ、美味しいの作ってやっから」


変わらぬ大五の人柄に触れて、少しだけ気が休まった悠太郎でした。

… … … … …

「こっちは酒と醤油で焼く、東京は割り下で煮るって具合かね ~ 」

大五がこしらえたのは、東京風のすき焼きです。

まずはひと口食べたお静。

「あら … 美味しい」

「どうも ~ まあ、不味いって言われたら立つ瀬がないですからね ~ 」


そう言いながらも気を良くしている大五。

「ほ~ら、薄めてちょうどよかったじゃない」

「 … 黙ってろ、お前は」


… … … … …

「味、合わせていただいて、物足りないことないですか?」

気を遣って尋ねた希子。

「元々味が濃いもんだから、平気だよ ~ ありがとう」

「大丈夫、大丈夫」


皆、短い時間ですっかり打ち解けて、楽しい食卓になっています。

… … … … …

その中でひとり静かな悠太郎のことが大五は気になったようです。

「悠さん、元気ねえじゃねえか?」

「いえ … 仕事でちょっと」

「何、困ってんだよ? 言ってみな」

「 … 飯、不味うなりますよ」

「いいからいいから、言えよ ~ 親子じゃねえか?」


竹元、藤井、大村たちにはある意味、突き放されたような思いがあった悠太郎には、大五の言葉が身に染みました。

「 … そうですね。

あの、コンクリート造の諸学校の設計を任されたんですけど … 」

「おお、すごいじゃねえか?」

「子供が生活するところですから、できるだけ頑丈なものをと思うているんですけど … これが実に判断が難しくて」

「ほう ~ 」


ただただ感心して聞いている大五、悠太郎も誰かに聞いてもらいたかったか、だんだんと饒舌になり専門的なことまで話し始めていました。

それでも大五は、「ほう」だとか「へえ」だとか声を出してうなずいていますが、分かっていないことは明白でした。

… … … … …

「そんな難しいこと“こっちの”お父さんに言ったってダメよ ~ そういうことは、“向こうの”お義父さんにでも相談しないと … 」

いつもの調子で大五に突っ込みを入れただけ … 軽い気持ちだったのでしょう。

め以子は自分の失言に気づいていませんでした。

「まあ、あの人やったらな … 」

つられて口が滑ってしまった、お静 … 言ってからハッとしています。

「 … 何だったら私、“向こうの”お義父さんに相談しましょうか?」

そう言った後、ふと顔を上げると … 場の雰囲気が一変していて、一同の視線が自分に集まっていました。

… … … … …

「向こうのお父さんって?」

め以子が、ようやく自分の大失態に気づいたと同時に、イクが尋ねました。

「ここのお父さんって亡くなってるんだよね?」

「 … まさか、新しいお父さんってことじゃないですよね?」


困ったように首を振ったお静。

「えっ、えっ … ひょっとして、生きてる … とか?」

照生の言葉に、もう隠しきれないと観念した悠太郎。

「 … はい、生きてます」

「聞いてねえぞ、俺ぁ … 何だこりゃ、どういうこった?」


… … … … …

「死んだって言ったよな? … そう言ったよな、悠さん」

「ゆ、行き方知れずだったんです。

10年前に家出てってしもうて … せやから、もう死んだも同じいいますか … 」


お静は悠太郎を庇おうとしました。

「あ、そうなんです … 生きてるって分かったのも、今年に入ってからで」

希子も必死に説明しました。

「何月だ?」

悠太郎に尋ねた大五。

「6月の終わりです」

「6月 … 半年も前じゃねえか?

どうしてそんな大事なこと言わねえんだ?!」


大声を上げた大五に言い返しため以子。

「いろいろ事情が複雑なの!」

「複雑もクソもあるかっ?!」


卯野家全員が反射的に食卓を抑えました。

「おうっ、おとうちゃんが見つかったとか、そんな大事なことをよ ~ 俺に何の報告も相談もなしか?!

おいっ、悠さん?」

「 … すいません」

「お父ちゃんに言ったって仕方ないでしょ?」


… … … … …

「言いたかないけどな ~ 祝言も挙げてもらえねえ、こいつが女中扱いされてるってのも俺は我慢してきたよ!

それはな … 悠さんのこと信じてきたからだよ!

悠さんだったら、絶対悪いようにはしねえってよ!

けどよ ~ こんな隠しごと多いんじゃ、お前 … 悠さんのこと信用できねえじゃねえかよ?!」


返す言葉もなく、大五を見つめる悠太郎。

「だって、そりゃよ ~ 悠さん、俺のこと信用してねえってことだろ?

当てにもしてねえってことだろ?」

「 … そんなつもりは」


頭に血が上った大五の言い分は極端でしたが、果たして間違っているとも言えませんでした。

「じゃあ、何で何も言わねえんだよ?!

… お前、今日だって言うつもりはなかっただろう?」


痛い所を突かれましたが、その通りでした。

「 … はい」

… … … … …

その言葉を聞いた大五は席を蹴って立ちました。

2階へ上がっていく大五、後を追うイク …

自分の軽はずみなひと言で楽しいひとときが台無しになったことをめ以子は悔やんでいたのでした。

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2013年12月24日 (火) | 編集 |
第74回

め以子は、西門の家に尋ねてきた岩淵という男を正蔵の長屋に案内しました。

「 … お久しぶりです」

岩淵を見た正蔵は、明らかに動揺しています。

「あ … むさくるしい所ですけど、まあどうぞちょっとお入り … 」

岩淵を家の中へと招き入れた後、め以子は「積もる話があるから」と体よく追い払われてしまいました。

… … … … …

正蔵と向かい合って座った岩淵は、おもむろに鞄を開け、中から小さな木箱を取り出しました。

「いつも、先頭に立っていた長田さん、覚えてらっしゃいますか?」

「 … よう覚えてます」

「先日、お亡くなりになりました」


正蔵の顔に驚きが見えました。

「あなたに渡してくれというのが、遺言だったそうで … 会社の方に送られてきました」

岩淵は木箱のふたを開けて、正蔵の前に置きました。

そこに入っていたのは、遺髪でした。

「それでは、お渡ししましたんで … 」

うろたえている正蔵のことを意に介さず、岩淵は席を立ちました。

「ちょっと、ちょっと!」

岩淵を呼び止めた正蔵。

「あの、あそこ … あの村はどうなってますのやろ?」

「 … あの時のままですよ。

あなたが放り出した … あの時のままです」


振り向きもせず、立ち去る岩淵の背中を悲痛な面持ちで手を合わせ見送った正蔵でした。

… … … … …

「僕かて知りませんよ … あの人の仕事の話なんて」

め以子は、夕飯の給仕をしながら、悠太郎に正蔵がどんな仕事をしていたのかを尋ねたのですが、素っ気ない返事でした。

「 … それ、何かおかしくないですか? 皆知らないなんて」

すでに、お静や希子にも聞いていたのですが、返ってきた答えは悠太郎と同じようなものだったのです。

「勤め人の家って、そんなもんとちゃいます?

年に何回かしか、おらんような人やったし … あなたかて、僕が今何やってるかなんて、よう知らんでしょ?」

「知ってますよ ~ 小学校でしょ」


… … … … …

そんな会話を交わしながら、悠太郎は、お替りをよそるにも体制を直す程、大きくなっため以子の腹を見つめていました。

「 … 来月には生まれるんですよね?」

「この子に何か関係あるんですか?」

「いや … この子かて、小学校に通うやないですか」

「えっ、この子の小学校、悠太郎さんが建てるんですか?!」


また、め以子の早とちりです。

「ちゃいます!

ちゃいますけど、小学校いうんは、小さい子供が通うとこでしょ?

ごっつう安全に頑丈に造ったらなあかんやないですか … 」


め以子にも責任重大ということが分かります。

「そんな大切なものやのに、今までの計画を白紙にして、コンクリート造で僕が設計し直すことになってしまったんです!」

… … … … …

「えっ? えっ、それってすごいことじゃないですか?」

め以子には何故、悠太郎が腹を立てているのか分かりません。

「えらいことやないですか?! お祝いしないと!」

「まだ始まったばっかりなんで、うまくいくとは限りませんから … 」


悠太郎の表情は冴えません。

「でも、よかったですよね ~ そういうお仕事ができて」

「えっ?」

「自分の手で子供たちに安全な学校を造ってあげられる機会ができたってことでしょ?

… 悠太郎さんの夢が叶えられるってことじゃないですか」

「まあ、前向きにとらえると、そうなりますよね … 」


後ろ向きなことばかりを考えていた自分に気づいた悠太郎でした。

しかしまだ、め以子のように手放しで喜ぶこともできず、「がんばります」とだけ言いました。

… … … … …

翌日、め以子は改めて正蔵の長屋を訪ねました。

「大抜擢だと、思うんですけど … 大喜びっていう風でもないんですよね」

「まあ、大仕事やからな ~ 気が張り詰めとんのやろ?」

「こう『やったるで!』って、ならないんですか?」

「 … そんなもん人によるわいな」


石橋を叩いても渡らない悠太郎と、見る前に跳んでしまうめ以子との性格の違いでしょう。

… … … … …

「あっ、そう言えば、昨日の方、何のお話だったんですか?」

一瞬、目が泳いだ正蔵。

「 … 昔の知り合いが亡くなってな … その報告や」

「そうだったんですか … 」

「それを聞きに来たんかいな?」


反対にめ以子に探りを入れるように聞き返しました。

「あっ … あの、それもあるんですけど …

あのですね ~ 西門のおせちを教えていただきたくて … 」

「おせち?」


め以子は正月に実家の家族が来るので、食べさせたいと遠慮がちに伝えました。

「ふ~ん 皆、来はるんかいな … 」

ほんの一瞬ですが、羨ましそうな表情が出てしまった正蔵。

「あっ、お義父さんも呼ぼうって、私たちは言ったんですよ … 言ったんですけど、その … 息子さんが … 」

「いやもう、期待はしてへんさかいに …

それに、わしはわしで用事があるしな」


正蔵は気を取り直して、「よし、分かった」と西門のおせちを教えてくれました。

… … … … …

何冊目かの『料理ノォト』に、め以子はすべて書き留めました。

「教えていただいて、ありがとうございました。

師匠 … あ、お義父さん」


慌てて言い直しました。

「ほなまあ、師匠として言わしてもらうけどな … おせちって何や思う?」

「 … お重に詰めたお正月の料理ですよね。

お正月早々お台所に立たなくて済むっていう … 」


通り一遍の答えしか言えないめ以子を見て、正蔵は悪戯っぽい顔をして笑いました。

「 … 違いますか?」

「まあ、暇があったら考えてみといて ~ 」


… … … … …

「何やろこれ?」

「何でしょうね?」


正蔵の長屋から帰宅すると、め以子宛てに小包が届いていました。

差出人は、何と、和江です。

「ちょっと … 開けてみてえな」

包みを解くと『寸志』と書かれた熨斗が現れました。

「これ、産着 … おむつも!」

「あっ、これホンマに和江ちゃんが?」


『もうじき、必要になるかと思い、用意いたしました。

ひと針、ひと針、祈りを込めて縫い上げました。

お使いいただければ幸いです。

和江』

「お義姉さ~ん!」

感激するめ以子。

「何や、人変わったんかいな ~ 」

お静は信じられないといった顔をしています。

… … … … …

「うん?」

そのうちに、希子が妙なことに気がつきました。

「 … これ、糸の端、留まってませんよ」

言われて確認すると、どれも同じで、糸の先を引っ張るとそのまま抜けてしまいます。

感謝したのも束の間、がっくりと肩を落としため以子。

何か思い当たることでもあるのか … 首をかしげているお静。

「お義母さん、どうしたんですか?」

「ちゅうかな ~ 糸を留めてへんのって、確か仏さんに着せる経帷子の縫い方だったような … 」


一同に衝撃が走り、手にしていた、産着やおむつを放り出しました。

「あかん、これはっ!

呪いや、和江ちゃんに呪いかけられとる! ちょっと、塩、塩、塩持って来て ~ !!

見たらあかん、見たらあかん!!」


… … … … …

「 … で、どうしたの、それ?」

め以子から話を聞いた桜子は、興味津々です。

「要は、糸が留まってたら、それでいいんじゃないかって話になって … ちょっと解いて、足りないところ縫い直して … で、使うことにした」

「逞しいというか、けち臭いというか … 」


それを聞いて桜子だけでなく、馬介まで大笑いしています。

何処へ行っても、和江のきめの細かい『いけず』は健在でした。

あたふたするめ以子たちを想像して、ほくそ笑んでいるのでしょう。

「ま、おせちに願いを、おむつに呪いを、ってとこやな」

「 … 願い?」

「おせちは、『願い』を込めた料理やんか?

黒豆は、今年もまめまめしく働けますようにって、いうことやろ ~ 数の子は、子孫繁栄 ~ たたきごぼうは、根を張って生きていけますようにて。

昆布は、よろこんぶ ~ にらみ鯛は、めでたいの語呂合わせ ~ 海老を使うんは、長寿 … 腰が曲がるまでいうことや。

きんとんは、金やな … お金、儲かりますようにて。

昔の人はな、いろんな『願い』を、年の初めの料理に込めたんや」

「へ ~ 」


馬介のウンチクを聞いて、すっかり感心してしまっため以子。

思わぬところで、正蔵の宿題の答えを手に入れました。

… … … … …

誰かに教えたくなっため以子は、帰り道に牛楽商店の源太にその話をしました、

「ええ習慣やな ~ 年の初めから日本中の人が願うて … 」

「そうよね ~

願いたくなること、今年いっぱいあったのよね」


め以子はしみじみ言いました。

「 … せやな」

「あっ、源ちゃん、お正月どうしてるの?

お父ちゃんとお母ちゃん、こっちに来るから … 」


突然横から、染丸が顔を出し、め以子の言葉を遮りました。

「源ちゃんは、うちとお伊勢さんに行くんです ~ ふたりの行く末をお願いしに行くんです ~ な ~ 」

「ええ、ああ … 行く末??」


しどろもどろの源太を見て、思わず噴き出しため以子でした。

… … … … …

建築課。

ひとり残業して机に向かっている悠太郎。

図面がなかなか思うように捗りません。

今出ている方向性でも十分だという意見もあるのですが、悠太郎には納得できない部分があって、譲れなかったのでした。

書いては消し、また書いては消す … 終いには破ってしまいました。

「分からん … 」

… … … … …

すっかり煮詰まってしまって … 引き上げて帰宅した悠太郎。

「ただいま戻りました ~ 」

しかし、め以子は例のノォトに夢中で旦那様が帰ってきたことにも気づきません。

「あの … ただいま戻りましたけど」

耳元で言われてハッとするめ以子。

「あっ … あ、お帰りなさい」

「今、鉛筆食べてませんでした?」


無意識に咥えてはいましたが、食べてはいませんでした。

「あの、ちょっと、おせち考えてて … 」

「おせちってそんなに考えるもんなんですか?」


馬介の話に感銘を受けため以子は、西門家のおせちに加えて、自分なりのものにも挑戦しようと考えているのです。

「 … 料理って、ええですね」

悠太郎が唐突に言いました。

「??」

「料理は人を傷つけへんやないですか」

「まあ、食べるものですからね」


そんなことを言いながら、どことなく元気のない悠太郎が気になりました。

… … … … …

昼間。

自分なりのおせちを作るため、め以子も試行錯誤していました。

作っては味見、また作っては味見 …

「よしっ!」

< め以子のおせち作りは着々と進んでいましたが … 最後のひとつをまだ決めかねていました >

料理ノォトを開いため以子、その頁には …

『悠太郎さん 健康でいてほしい 応援したい』

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2013年12月23日 (月) | 編集 |
第73回

年の瀬も近づいたある日、め以子の元に母イクから1枚のハガキが届きました。

「お母さん、何て?」

「 … 来ていいかって … お正月、皆で来ていいかって」


挨拶も兼ねて卯野家の3人で伺いたいと書いてあったのです。

うれしそうに笑って、ふたりに報告しため以子でした。

… … … … …

「お正月、楽しくなりそうですね」

ニコニコしている希子とお静を前にして、め以子は眉間にしわを寄せて考え込んでいました。

「どないした?」

「あ … あ、あの、この機会にお義父さんをって思ったんですけど … 無理ですよね、悠太郎さん」


それで難しい顔をしていたのです。

「言うだけ言うてみたら?」

「だけど、無理強いはしないって、約束しちゃったし … 」

考えあぐねていると、お静が何か思いついたようです。

「なあ、あのな … 」

… … … … …

一方、悠太郎は、藤井から棚上げ寸前だった小学校建設の計画変更の話を伝えられていました。

「そんな?! 今更コンクリート造に変更やなんて!!」

「藤井君?!」

「 … あの小学校、元々予算厳しかったのしってるやろ?」


藤井は心苦しそうに事情を話し始めました。

「そこに震災支援や何やらで、もう凍結しよういう話になりかけてたんや …

けど、ここまで計画自体は固まってるもんやし、新たにコンクリート造の小学校の模範として造ったらどうかって … 竹元さんが言い出したみたいなんや」

「模範?」


不愉快そうに聞き返した大村。

悠太郎は部屋を出ていこうとしています。

「ちょ、ちょっと、西門君!」

「抜本的に対処してきます!」


… … … … …

「確かにコンクリート造の大多数は安全でした。

しかし、現に倒壊したものもありますし、倒壊した場合の被害は、木造建築の比ではなかったことをご存じのはずだと思います」


市庁舎内にいた竹元を捕まえて噛みつきました。

「 … この段階で、模範を設計しろというのは、あまりにも時期尚早ではないでしょうか?!」

黙って悠太郎の話を聞いていた竹元。

「じゃあ、やめよう」

あっさりと悠太郎の抗議を受け入れたかに見えましたが …

「立ち消えになるくらいならと思っただけだ!」

大声で怒鳴りつけると立ち去ってしまいました。

… … … … …

その後は、何を言おうが聞く耳を持たず … 疲れ果て帰宅した悠太郎でした。

「ただいま戻りました … 」

玄関を入ると、希子が飛んできて、畳に両手をついて出迎えました。

「お帰りなさいませ、今日もお疲れ様でした」

こんなことは今まで一度もなかったことです。

その上、脱いだ靴を磨くとまで言い出しました。

家に上がったら、お静がにこやかな顔で食事の前に風呂に入るよう勧めました。

「えっ、お静さんが焚いてくれはったんですか?」

「へえ、今日はえらい冷え込むな ~ 」


… … … … …

市役所。

帰り支度を終えた竹元を呼び止めたのは、大村でした。

「 … ちょっと、お時間よろしいですか?」

… … … … …

風呂から上がった悠太郎に用意されていたのは、大好物のかき鍋でした。

「暖めておきましたから」

席に着いた悠太郎に丹前を羽織らすめ以子。

「ほら、悠太郎さん、かき食べ、かき」

お静は、鍋をよそってくれました。

「お兄ちゃん、お酒飲んで、お酒」

希子は酒を勧めてきます。

家族全員の態度が変です … 素直に喜べない悠太郎。

「 … 何かあるんですか?」

顔を見合わせて笑った3人。

「おかしいでしょう ~ こんな至れり尽くせりな」

… … … … …

め以子が目くばせすると、お静が切り出しました。

「ああ、あのな ~

年の瀬からな、卯野の親御さんと弟さん、こっち来たいいうてはんねんけど … ええかいな?」

「そんなん、ええに決まってるやないですか!」


ふたつ返事で了承 … というより大歓迎しています。

ここまでは予定通りの問答、想定内でした。

「それでね、その … 何ていうか … 誤解されたままになってること、あるじゃない?」

め以子が遠まわしに言いましたが、悠太郎は首をひねっています。

「あの人 … 死んだままになってへん?」

お静の言葉で、勘の悪い悠太郎もすべてを察し … 無表情で食事をとり始めてしまいました。

め以子のためということもありますが、本音を言えば自分自身も正蔵に帰ってきてほしいお静は、それでも話を続けました。

「こんな有様で親御さん呼んだら、この家どうなってんのやって、心配しはる思うねん。

せやから、居てはる間だけでも来てもろうた方がええんちゃうかなって … 」

「言わんかったら、済むことやないですか」

「あ、でもほら、誰かの口から伝わってしもうたらどないするん?」


希子も援護射撃です。

「せやで ~ 室井さんなんか、どんだけ口止めしたかて何が起こるかわからへんよ?」

悠太郎に集まる視線。

… … … … …

「 … 分かりました」

意外とあっさり折れた雄太郎に皆ホッと胸をなでおろしたのもつかの間 …

「ほなその間、僕は、うま介の2階に寝泊まりさせてもろうて … あの人には、ここに来てもらいましょ」

とんでもないことを言い出したので、お静は慌てました。

「ちょ、ちょっと待って!

そんなことしたら、心配しはる … 」

「ホンマのことを告げるというなら、きちんと告げましょう。

あの人が、どれだけええ加減なことをしてきたかも細大漏らさずお伝えし、何故娘をこんなところにやってしまったかと、後悔の念を募らせていただきましょう」


正蔵のことになると人が変わったように意固地になってしまう悠太郎。

あえなく企ては失敗に終わりました。

… … … … …

その頃、大村は竹元を例の立ち飲みの店に誘っていました。

「コンクリートを使用する方が被害が少ないのではないかということは、わしでも分かります。

せやけど、この落ち着かん時期に … 今後、市の建築の模範になるかもしれんもんを、何であえてあいつにやらせるのか …

そこがいささか理解に苦しむというか」


疑問をぶつける大村。

「大した才能もありませんしね」

「そんなこと言うてまへんがな! … 抜擢いうても少々荷が重過ぎるんやないかと」


見どころはあっても、悠太郎はまだ経験の浅い新人でした。

「妙な縁があって、あいつの義理の父親に聞いたんですが …

あいつは、大火で母親を亡くしていて、それがこの仕事を志すそもそもの初めだそうです。

初めて会った時、下宿先の店の客がケガをするのを見るのが嫌だ … その思いだけで、何の現場経験もないのにコンクリートの階段を造ってました。

あいつにたったひとつの才能があるとしたら、それは責任感です。

溢れんばかりの当事者意識です。

… 加えてあいつは、その目で被害を見てきています。

私は、抜擢でも何でもなく … あいつが今、必要なものを持っていると判断しただけです」


そう話した後、昆布酒に口をつけました。

「 … 安酒も昆布が放り込まれることで、上等酒になると私は思うんですがね」

そして、残っていた酒を一気に飲み干した竹元。

緊張が解けたかのように大村の頬が緩みました。

「おもろいこと言いまんな ~

お替りどうでっか?」

「 … いただきましょう」


… … … … …

「ケンモホロロでしたね」

後片付けをしながら、希子がお手上げという顔をしました。

「まあ、期待はしてなかったけど … 」

そのことも大事ですが、おむつにも頭を悩ましているめ以子です。

「もう、誰かおむつ縫ってくれないかな ~ 」

「忙しゅうなりますよね ~ お正月の支度やら、お年始回りやら、全部うちらでやらんとあかへんし」

「えっ、それ大変なの?」


そんなこと、今の今まで考えたこともなかっため以子です。

「うん … 親戚のあいさつ回りとかホンマに … どないします?」

今までは、和江がやっていたことです。

「あ … あ、おせちとかお餅とかは任せておいてね」

「ん?」


振り向いてめ以子の顔をじっと見た希子。

「だって、ほら ~ 私まだ女中だし … 」

「ご飯かて一緒に食べてるやないですか?」

「けど … 家の外まで、しゃしゃり出るのもね、厚かましいっていうか … 」


和江に言われ続けたことですが、ここぞとばかり利用しました。

「ちい姉ちゃん、もうそれ、え~ように使うてません?」

目をそらしため以子 … バレバレでした。

… … … … …

翌日、糠床の世話をしていため以子は、ふとおせちのことが気になりました。

「おせちって … 」

< そうそう、お家によって、入るものが微妙に違うのよね >

そんなことを考えていると、玄関の外で呼ぶ声が聞こえてきました。

… … … … …

「西門正蔵さんは御在宅でしょうか?」

正蔵を訪ねてきたのは、見知らぬ中年男でした。

「義父は、今、その … 別宅におりまして … どちら様ですか?」

岩淵護と名乗ったその男、身なりはきちんとしていて礼儀正しいのですが、どことなく影がありました。

以前、正蔵の下で働いていたそうです。

「お目にかかることはできないでしょうか?」

… … … … …

何やらいわくありげな感じがして、居場所を教えていいものか迷っためいこでしたが、結局長屋まで案内することにしました。

「この辺りに暮らされているんですか?」

色街を抜ける時、岩淵は尋ねました。

「紆余曲折ありまして … 」

「ご家族と幸せに暮らされているとばかり思っていました」


岩淵は意外に思っているようです。

「あの … 岩淵さんは義父とどんなお仕事を?」

「お聞きではないですか?」

「私は嫁ですので、詳しいことは … 」

「 … 鉱山の普通の仕事ですよ」


あまり人に話したくないような雰囲気を感じ、め以子は少し不安になっていました。

… … … … …

「もう一度、竹元さんの所へ行ってきます。

やっぱり今はまだ、コンクリート造は時期尚早ですよ」


コンクリート造の被害状況を報告書にまとめた悠太郎が、そう言って出かけようとした時です。

「赤門、上がやれ言うんやから、やれや」

突然、大村がそんなことを言い出しました。

「わしに気遣わんでもええし」

「 … そうやないです」

「ええ話やないか ~

計画は継続してくれる言うし、赤門はコンクリート扱える。

グズグズ言わんと、やったらええがな!」


設計者の大村に言われて戸惑う悠太郎。

「それにやな ~ わしの校舎、どうせあかんようになんのやったら … 赤門に設計し直してもらいたい」

おどけて笑った大村。

「せやで、僕らもがんばって知恵絞りだすさかいに … やってみようや」

藤井も背中を押しました。

「さてさて、わしは何をしたらよろしおまんのやろね ~ 棟梁?」

「棟梁?」

「おう、今日から頭は赤門や!」


… … … … …

「お義父さん、め以子です ~ お義父さんにお会いしたいという方が、家の方にいらっしゃったんですけど」

長屋の外から声をかけると、正蔵はいつもの調子で顔を出しました。

「へえへえ、どちらさんやな?」

しかし、岩淵を見た途端、顔を強張して絶句しました。

「 … お久しぶりです」

そんな正蔵の動揺がめ以子にも伝わってくるようでした。

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2013年12月23日 (月) | 編集 |
さて、今週の「ごちそうさん」は?

お正月、楽しくなりそうですね

東京の家族が正月に来ることになり、喜ぶめ以子()。

あの人、死んだままになってるやん

正蔵(近藤正臣)も招きたいが、悠太郎(東出昌大)は許さない。

悠太郎は竹元(ムロツヨシ)にコンクリート建築の小学校を造るよう命じられる。関東大震災の記憶に悠太郎は悩むが、生まれる子どものことを思い真剣に取り組む。

ある日、め以子は正蔵と一緒に仕事をしていたという男性を長屋に案内する。正蔵の過去と関係があるらしい。

おせちってなんやと思う?

め以子は、おせちに新しい年への願いがこめられていると知り、はりきって準備する。まもなく大五(原田泰造)・イク(財前直見)・照生(井之脇海)が到着し、にぎやかに。

が、め以子の一言から正蔵の件がばれて大五を怒らせる。

それが親の役目ってやつじゃないですかね …

大五は正蔵に会いに長屋に行くが、意外にも意気投合する。迎えに来た悠太郎と酒を飲み、その複雑な心中を聞いてやる大五。

大みそか、ふぐを料理しつつ、おせちを仕上げるめ以子。が、急に陣痛が始まる。

逃げんと、隣で見とけ思う!

陣痛の合間にめ以子は正蔵からの手紙に気づく。逃げ続けた過去を詫び、息子夫婦を思う心情にあふれた手紙。悠太郎は長屋へと駆け出していく。

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2013年12月23日 (月) | 編集 |
第72回

「 … ただいま戻りました」

玄関に立っていたのは、煤けたように薄汚れ、疲労困憊の表情をした悠太郎でした。

無事に帰って来てくれたことは、うれしいのですが、出て行った時と比べてあまりの変わりように、一瞬言葉を失ってしまっため以子でした。

… … … … …

取りあえず、風呂に入って、夕食の時間までひと休みすると、少しは顔に生気が戻ってきました。

「もう、秋なんですよね ~ 」

季節も感じるヒマもなかったのでしょうか。

しかし、秋の食材を使った料理を美味しそうに食べる悠太郎を見て、め以子は安堵しました。

「卯野の皆さん、お元気やったん?」

「多少のケガやヤケドはあったようですけど、お元気で … 僕がうかがった時には、すでに皆さん総出で店のたくわえ使って、炊き出しされてました」

「炊き出し?!」


自分たちも被害に遭っているのにと驚くお静。

「元気なんです、うちの家族」

自分の両親らしいと笑いながら、少し誇らしく思うめ以子でした。

「無事を知らせる電報打ったかとお尋ねしたら、『そんなもの打ってる暇あるか!』って怒鳴られました」

「お母ちゃんは?」

「子供が出来た言うたら、あなたがどれだけ食べてるか思うと、申し訳ないって、頭下げられました」


その時のことを思い出したのか、悠太郎は可笑しそうに笑っています。

「 … しっかり食べて、しっかりいい鍋底大根になるんです」

「なべぞこだいこん?」

「はいっ」


… … … … …

『鍋底大根は、美味くなくてはならない!

引っくり返った具たちのために、全力で美味くならなくてはいけないっ!

… じゃなきゃさ、死んだちくわやはんぺんに申し訳が立たないじゃないか?!』

「 … 室井さん、そんなこと言わはったんですか?」

室井の『鍋底大根』の話を聞いた悠太郎は、通じる思いがあったのでしょうか、神妙な面持ちになりました。

「うん、それでね … 今、目の色変えて書いてはるみたい」

「どんなものを?」

「それがね、童話なんだって」


希子の話を聞いて、め以子は吹き出し、お静も目を丸くしました。

「童話かいな?」

「うん、しかも登場人物が皆食べもんで … で今、鍋の中で昆布とカツオが運命の出会いを果たしたところらしい」

「 … 想像つきませんね」

「でも、それが室井さんなりの鍋底大根なんやて」


分かる人だけ分かればいいということでしょうか …

「僕も考えんとあきませんね … 鍋底大根」

悠太郎の言葉に他の3人もそれぞれ自分の『鍋底大根』は何かと思い浮かべているようでした。

… … … … …

部屋で布団に寝そべった悠太郎は、大きく伸びをしました。

「やっぱり、家はええですね ~ 屋根があって、布団があって、ご飯が出てきて …

ありがたい話ですよ」

「思ったより、元気なんですね … 悠太郎さんは」


戻ってきた時の室井に比べると、悠太郎は拍子抜けするほど元気に見えました。

「 … 現場に入るまでに、一応の状況は聞いてましたし … かなり覚悟した上で入ったんで …

大火の現場も、まあ見たことない訳ではありませんし … 被害の規模は違いましたけど」

「明日、食べたいものはありますか?」

「何でもええですよ、普通でええです」


… … … … …

しばらくして、片づけを終えため以子が部屋の前まで戻ってくると …

中から、苦しそうな悠太郎のうめき声が聞こえてきます。

襖を開けると、布団の上でうなされている悠太郎の姿が目に飛び込んできました。

め以子は駆け寄って、険しい顔で息を荒くしている悠太郎の額をそっとなでました。

「平気な訳ないわよね … 」

当たり前のことに感謝し、普通のものに喜ぶ … そんな言葉の裏を読み取ってあげられなかったことを心で詫びため以子でした。

… … … … …

翌朝、め以子はいつものように、出かける悠太郎に玄関で弁当を手渡しました。

「今日、何ですか?」

「な~んでしょう?」


小さく微笑んだ悠太郎 … こんなささやかなやり取りに、自分が日常に戻って来たことを実感しているのでしょう。

… … … … …

久しぶりに出勤した市役所で、悠太郎は藤井や大村たち同僚に写真を見せながら報告しました。

「めちゃめちゃ活躍したんやて?」

「活躍したというより … 使われ倒したというた方が正しいと思いますけど」

「まあ、しゃあないわな ~ 何でもやります言うて、行ってんやから」

「 … こっちの仕事は、ご迷惑おかけしましたよね。

ホンマにすいませんでした」


ところが … 大工も請負業者も皆、復興に行ってしまって、建築課は意外にヒマだったのです。

「資材も向こう優先やろうし … 当分は、まあそんな状態やろう。

… 小学校も棚上げになるかもしれんし」


大村の話に悠太郎の顔色が変わりました。

「ただでさえ、予算がないいうて、中止になりそうになってたもんやで … 」

「 … そんなもんなんですか?」

「そんなもんなんですよ … 」


答えた大村自身が不満顔です。

… … … … …

「なんや? 今日はまた熱心やな ~ 」

いつもより入念にあれこれ考えているめ以子に定吉が声をかけました。

「悠太郎さんが戻ってきたんですけどね … 」

「ほな、サービスせな」

「 … そうなんですけどね」


考え込むめ以子。

… … … … …

「これがあの浅草とはな … 」

悠太郎が持ち帰った写真を見て、思った以上の惨状に竹元もショックを受けていました。

「レンガ造は倒壊や崩壊、木造密集による延焼の被害がもっとも大きかったようです」

「これは?」


竹元が手に取ったのは、ひしゃげて傾いたビルの写真でした。

「コンクリート造の建築物でも、火災の熱で窓ガラスが溶けて延焼してしまうので … 」

「改良の余地ありだな!」


次々に写真を目にする竹元。

建物と一緒に映っている被災者にはひと言も触れず、無残な残骸も研究対象としか見ていないような物言いに、悠太郎は少なからず不満を感じていました。

「よし、調査結果を整理しろ! … 来週中に頼む」

「 … はい」


… … … … …

「何だ? 浮かない顔だな」

「 … 気が重いだけです。

圧死や焼死や、まるで建物が … 人を殺しているようでした」

「ははっ、無駄な感傷だな」


悠太郎には、竹元が鼻で笑ったように聞こえました。

「天災なんて明日は我が身だぞ。

参考になる … それぐらいの思いでみれんのか?

建築を生業とするんだったら!」


その言葉に頭に血が上った悠太郎は、我慢できずに机を叩いて大声をあげていました。

「あなたは見てないから、そんなことが言えるんです!!」

… … … … …

「そうだ … お前は見てきているんだ。

それを自覚しろと言っているんだ!」


負けず劣らぬ声で怒鳴り返すと、一気にまくしたてました。

「いいか?

今の大阪の都市計画を担う人間で、現場に行ったのは誰もいない … お前だけが現場を見ているんだ!

つまり、今のお前の発言は、上の人間を左右する … そういう力を持っている」

「えっ?」

「この報告は、今後の調査の方向を決定づける …

今のお前が切ろうとしている舵は、確実に都市計画事業の進むべき方向を決める!

… 身の程知らずが … 今、お前はそういう場所に立っているんだ!」


竹元は、そういうことまで考えて悠太郎が救援隊に加われるように口添えしていたのです。

返す言葉が見つからず、不本意ながらも従うしかありませんでした。

… … … … …

「あ、動いた!」

悠太郎の帰りを待っているうちに台所でうたた寝してしまっていため以子。

ちょうど悠太郎が帰宅しました。

「ありがとう」

お腹に子に礼を言って迎えに出ました。

… … … … …

悠太郎が着替えて板の間に下りてくると、膳の前にいくつもの小皿が並んでいて、それぞれに違った具が盛られていました。

不思議に思って見ていると、台所からめ以子が土鍋を運んできました。

「先に寝ててくださいよ、体のこともありますから」

「隙をみて、昼寝していますから」


不機嫌そうな言葉を軽く受け流すと、その土鍋を悠太郎の前に置きました。

「 … 何ですか?」

「ふっふっふっふ … 」


含み笑いをしながら、傍らに腰を下ろすと、おもむろに土鍋のふたを取るめ以子。

「 … 新米です」

炊きたての新米でした。

「うわあ!」

悠太郎の顔にパアッっと笑みがさしました。

… … … … …

しゃもじを入れて蒸らした後、手のひらに水と塩をにつけると …

「これを、このままですね ~ 」

悠太郎の目の前でおむすびを握り始めました。

「お弁当のおむすびって冷えてるでしょ?

新米の熱々は格別だから ~ はい、まずはお塩でどうぞ!」

「ほな、いただきます」


め以子の手からおむすびを受け取ると、待ちきれなかったように口に頬張りました。

「う ~ ん、美味い、美味いです!

お米が甘うて、もうこれだけで十分です!」


手についた米粒をひとつひとつつまんで食べながら、め以子。

「旬の力ですね ~ 」

… … … … …

そんなめ以子を見つめながら、悠太郎はポツリと言いました。

「守らんと、あきませんね … 」

「?」

「この生活を守っていくのが、僕の仕事ですよね … 僕の鍋底大根ですね」

「そうですね ~ まあ、新米くらいは、心置きなく買えるお給料が欲しいですね」


少し、ピントのずれため以子の返事でしたが、それはそれで幸せと感じた悠太郎 … こういうのが『ごっつう可愛らしい』ところなのでしょう。

「まあ、そうですね」

め以子には悠太郎が何がそんなに可笑しいのか分かりませんが … 元気を取り戻してもらうことが目的だったので、よしとしたようです。

「さあ、旦那! 次、何しやしょう?

どの子もいい子入ってますよ ~ どの子行きますか?」


避難所にいた勝田のマネでした。

「どの子もいい味、出しやすぜ!」

寿司を握る手つきをして悠太郎に聞いため以子。

「結局は、それをやりたかったんですか?」

図星でした。

避難所の陰から見ていて、やってみたくて仕方がなかったのです。

「えっ … ダメですか?」

「あなたは、そのままでいてくださいね … 」


そう言われため以子は、素直に言葉通り受け取って …そのままの格好で動きを止めてしまいました。

その仕草に輪をかけて笑い出した悠太郎、もう止まりません。

「えっ、何? 何?」

依然、訳が分からず、戸惑うめ以子。

「そのままでっていうから … もういいですか? これ … 満足しました?」

… … … … …

それから、め以子とお静は、ガス漏れ騒動で、しばらく遠慮していたガス調理の実演を再開しました。

まず、め以子がガスコンロでメザシを焼いてみせています。

頃合を見計らってお静の出番です。

「この時、この時だす!

グラ~っと来たら、どないしますか?」


大げさなジェスチャーでお静は一同に尋ねました。

「へっついさんは、水がないと大変なことになりますな ~ ところがガスは … 」

コックをひねって、あっという間に火を消して見せるめ以子。

< 関東大震災は、遠く大阪の人々の心まで、揺さぶりをかけただけでなく …

やがて、その街造りをも、大きく突き動かしていくことになったのでございます >

… … … … …

年の瀬も近づいたある日 …

「そんな?! 今更コンクリート造に変更やなんて!!」

棚上げ寸前と噂だった小学校建設の計画変更を告げられた悠太郎は藤井に食って掛かりました。

「藤井君?!」

大村も問いただしましたが、藤井はただ辛そうな顔をして黙っているだけです。

… … … … …

街のあちらこちらに歳末大売り出しののぼりが上がり、人々は年末年始の準備に追われ、いつもより通りを慌ただしく行きかっています。

… … … … …

め以子のお腹も大分大きく目立つようになっていました。

裁縫があまり得意でないふたり … め以子とお静がおむつを縫っています。

和江がいくらか準備してくれてはいたのですが、おむつはいくらあっても多いということはありません。

「痛っ!」

針で指をさしたお静。

「そろそろ、お正月の支度もせんとな … 」

「 … そうですね」


こんな調子で … 中々はかどらないものです。

「ちい姉ちゃん、手紙来てるよ」

希子からハガキを受け取っため以子。

「お母ちゃんから ~ 」

それは、母イクからの便りでした。

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ようやく追いつきました …

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2013年12月21日 (土) | 編集 |
第71回

うま介から戻っため以子は、ぼんやりと台所の上がり框に腰掛けながら、今しがた桜子から聞いた民子の手紙の話を思い返していました。

「先生が火事に巻き込まれて … ご遺体の確認に時間がかかったみたいなんだけど …

傍にあった包丁にお名前が残ってたって」

女学校の卒業の日に宮本がくれた教えを実感したその日に、恩師の訃報を耳にしため以子。

信じられない … あまりにもショックが大きすぎて、涙も出ない …

割烹室で包丁を研いでいたありし日の宮本の姿が目に浮かびます。

厳しい先生で、人一倍叱られた思いもあります。

納豆嫌いの悠太郎に何とか食べさせようと、助言を求めたこともありました。

そういえば、西門の家へ来てから一度も納豆を口にしていないことに気づきました。

「 … 納豆、食べたい」

… … … … …

しかし、市場でも納豆を見かけた記憶はなく、案の定、どの店にも売ってはいませんでした。

源太だったら、知っているかも … 

「源ちゃん、納豆が食べたい時ってどうしてる?」

元々東京の人間だから、納豆が食べられないということはありません。

「 … こっち来てから、食うのやめてもうたな ~

どないした?」


元気がないめ以子を見て、源太は尋ねました。

「ちょっと、食べたくなって … 」

「こっちじゃ、食べんからなあ」

「そっか … ありがとう」


去っていく姿が、やけに寂しそうだったので、気になった源太でした。

… … … … …

夕暮れ時の街をうつろな表情で歩いていくめ以子。

… … … … …

「ちい姉ちゃん、来てませんか?」

早じまいしたうま介に、希子がやってきました、

おそらくここへ来る前に牛楽商店に寄ったのでしょう。

源太も顔を出しました。

「買い物行ったきり、帰ってこないんです」

心配顔の希子。

「わしが最後に見た時は、納豆探しとったんやけど」

「あ … 」


納豆と聞いて、桜子には思い当たることがありました。

「 … 私たちの先生がお亡くなりになったの …

め以子、その先生に納豆の料理相談してたから … 作りたくなったんじゃないかな?」


それで合点がいった、というような顔を源太がしています。

「そういうことだから、そのうち戻ってくるとは思うけど … 」

… … … … …

「すいません、遅くなりました … 」

結局、納豆を手に入れることができずにめ以子が家に戻ると … 玄関に、家族以外の履物が並んでいました。

「お帰り ~ いやあ、そないに結いあげてもろうたんや」

出迎えに出てきたお静、ふみに結いあげてもらった髪を初めて見て関心を示しています。

「あの … これ?」

並んだ履物に目線を下しため以子。

「ああっ、桜子ちゃんらがな ~ 関東煮作って持って来てくれたんや」

座敷には桜子と室井、それに馬介が関東煮の鍋を前にめ以子の帰りを待っていました。

… … … … …

「こっちには、おでんにタコを入れるのよね」

竹串にささったタコの足を食べながらめ以子がそう言うと、希子が「おでん」という言葉に首をかしげました。

「そうそう、こっちでは“関東煮”っていうのよね ~ 東京では、おでん」

桜子の説明で希子とお静は、初めて知ったようです。

「何でそないなことになってんのやろうな?」

「ああ、元々は関東で“おでん”いわれてたものが、こっち伝わってきて … せやから、こっちでは、“関東煮”っていわれるようになったんちゃうかって、聞きましたけど」


馬介のうんちくに感心する一同でした。

… … … … …

小さくため息をついため以子。

「どないしたん?」

「 … 関東煮はこっちに根付いたのに、納豆は根付かなかったんだな ~ って思って」

「やっぱりなかったのね?」


思わず口を滑らせてしまった桜子でした。

「あ … あの、うちがちい姉ちゃん捜してて、で … 源太さんが、納豆探してたって教えてくれはって … それで、桜子さんが納豆探してた訳を … 」

ここに居る全員がめ以子が納豆を探し歩いていたことと、その理由を知っていたということです。

「もしかして、それで皆心配して来てくれたの?

ごめんね、何か … 」


め以子は申し訳なさそうな顔をしました。

すると、桜子が関東煮をよそった小皿と箸を一膳、め以子の隣の空いてる席に置きました。

… それは、宮本へ手向けた影膳でした。

「あんたのためだけじゃないわよ。

… 一緒にお弔いしたかったの」

「 … お弔い?」

「食べることをさ、すごく大切にしていた方じゃない …

それを教えてくださった、先生じゃない」
うなずくめ以子。

「だから、しっかり食べて、しっかり生きていくのは … 先生に対する供養だと思うのね」

涙をこらえて話す桜子。

「バクバク食べているところを見せるのが、先生一番喜んでくれると思うの」

「 … そうね」

「でしょ?」

「よ~し、そういうことなら … いただきます!」


声を合わせて、タコの足にかぶりつき … 泣きながら笑ったふたりでした。

… … … … …

< やがて、夜も更けた頃 … 室井は、震災後の東京で見たことを語りだしたのです >

お銚子を何本か開け、少しろれつの回らない口調の室井 … 酒の力を借りなければ、とても話すことができなかったのかも知れません。

「追いつかないんだよ … 何もかも。

生きてる人が、今日生きるのに精いっぱいで … ご遺体を何とかしたくても、してる余裕がなくて …

物も … 人も余裕がなくて … そんなこといっぱい見てて」


あたかもその光景が目の前に見えているかのような室井です。

… … … … …

「あっ、向こうでもさ ~ おでん食べてた。

僕、炊き出し手伝いながら、食いつないでたんだよ。

そん時にさ … また揺れがきて、おでんがひっくり返っちゃったんだよ ~ 鍋から、何もなくなっちゃってさ … 」


… … … … …

「けどね … その引っくり返った鍋の底に … ひとつだけ、ガビガビに焦げた大根がね、へばりついてたんだよ。

まっ茶色でさ、底が焼け焦げててさ ~

けど、いや ~ 美味かったんだあ、この大根が。

… 当たり前なんだよね、他の具が出した味、全部吸ってんだから」


… … … … …

「それ食べながら、思ったんだよ … 鍋底大根は、だから美味い!

いや、美味くなくてはならない!

引っくり返った具たちのために、全力で美味くならなくてはいけないっ!

… じゃなきゃさ、死んだちくわやはんぺんに申し訳が立たないじゃないか?!」


… … … … …

皆、ひと言も聞き逃すまいと、声も立てずに、室井の話に耳を傾けています。

時に怒り、時に笑い、そして泣きながら話す … 今の室井にはその説得力がありました。

「書かなきゃって … あ、ぼ、僕も美味しい鍋底大根にならなきゃって!」

それだけ話すと、胸の中にあったものをすべて吐き出せたのか … 「寝ます」と食卓に突っ伏して眠り込んでしまいました。

< そうだね ~ ならなきゃね >

自然と一同の目は鍋へと … 偶然にも室井の話と同じように煮詰まった大根がひとつだけ残っていました。

< 残ったあんたらは、皆美味しい鍋底大根に … >

… … … … …

翌日。

め以子は、宮本を偲ぶかのように包丁を研ぎはじめました。

『包丁というのは、実はただの鉄の板なんですよ … 研がなければ、包丁にはなりません。

そんなことを繰り返すうちに、やっと自分の望む刃の角度が見えてくるんです。

… 夢というのも、そういうものじゃないですかね?』

心の中で恩師の教えを思い出しながら、刃を研ぐめ以子。

『食べ物には力があるさかいな ~ 』

『生きる力を与えてくれたのは、あんたの味噌汁だった … 』

タネの言葉も、ふみの言葉も、思えば宮本の教えに繋がっていました。

宮本が言った自分の望む刃の角度がおぼろげながらも見えてきた気がするめ以子でした。

… … … … …

宣言した通り、室井もうま介の傍らで執筆活動を開始していました。

いきなり立ち上がってはひとり芝居のようなことをして、また原稿用紙に向かう …

店を手伝いに来ていた希子が不思議そうに見つめていると、桜子が耳打ちしました。

「声かけちゃダメよ」

希子はうなずきましたが、客がいる時にあれをやられたら、営業妨害になりかねません。

… … … … …

そこへ、慌ただしく現れたのは源太でした。

「お ~ 希子ちゃん、手伝いか? 感心やな ~ 」

そう言った後に見慣れないものを差し出しました。

わらに包まれた筒状のもの … それが、納豆だと希子は初めて知りました。

「あいつに渡したって」

そして、また風のように出て行ってしまいました。

「どこから持ってきたのかしら?」

「あいつのこういうとこ、ホンマすごいな ~ 」


心底、感心しているふたりでした。

… … … … …

「め以子は、大丈夫あれから?」

桜子が声をかけましたが、希子は源太が出ていった扉をじっと見つめたまま固まっていました。

「 … えっ、あ、あ … まだ、大きい救援所とか残ってるやないですか。

差し入れ持って回ってます」


何故かしら高鳴る鼓動を悟られないように明るく振舞いました。

「人の心に寄り添うのは難しいって … 」

『お義姉さんの時だってそうだった。

でも、誰だってお腹が空くじゃない?

私が分かる唯一の真実って … それしかないの』

「 … 食べ物の力を信じていこうと思う」

そう、め以子が言っていたことを希子は話しました。

「変わったような … 変わってないような … 」

桜子が言うと、3人は顔を見合わせて笑いました。

… … … … …

< そんなめ以子の所に … >

夕餉の支度をしていると、玄関から誰かが入ってくる音がしました。

「おかえりなさい」

出迎えに出ると、そこには …

< 重い荷物を背負った悠太郎が戻ってきたのでございました >

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2013年12月21日 (土) | 編集 |
第70回

何処からか、漂ってくる香ばしい匂い。

「秋刀魚か?」

「秋やな ~ 」


その時でした。

あれだけ呼んでも起きなかった、ふみの目がうっすらと開いているのです。

源太は、煙の元を目指して駆け出していました。

… … … … …

「美味そうに焼けてきたじゃねえかよ、おい」

避難所の裏で数人の男たちが七輪を囲んで秋刀魚を焼いていました。

「ちょっと、この秋刀魚貸して!」

源太は男たちが今まさに箸をつけようとしている秋刀魚を七輪ごと取り上げました。

「あとで倍にして返すから!」

… … … … …

炊事場。

「実りの秋や ~ 美味しいもんぎょうさん出てくるわ」

タネは希子と話ながら、め以子にも聞こえるような声で言いました。

「食べ物には力があるさかいな … そう、思わへん?」

このことを、ふさぎ込んでいるめ以子にも伝えたかったのです。

「め以子さん、め以子さん!」

騒々しくめ以子を呼びに来たのは、お静でした。

… … … … …

いったい何事かと、お静の後について外に出ると、源太が網の上の乗せた秋刀魚をふみの顔に近づけながら、一生懸命話しかけていました。

「やっぱこれやろ? これやんなあ?!」

今の今まで七輪に乗っかっていた秋刀魚は、網の上でまだじゅ~じゅ~と音を立てています。

ふみは精一杯開けた目でそれをじっと見つめていました。

『僕のあげる!』

『僕のも!』

ふみの耳には思い出の中の子供たちの声が聞こえていました。

… … … … …

「じゃあ、俺のも」

そういうと、ふみの亭主は、子供たちと同じように自分の分の秋刀魚が乗った皿をふみの前に置きました。

彼女の前には、4枚もの皿が並んでいます。

「いいわよ、あんたまで」

「俺らもういいんだよ、なあ?」

うなずき合う男3人。

「そう?」

「本当、秋刀魚好きだよね ~ お母ちゃん」

… … … … …

あの家族はもうこの世にはいない … 

『もういいから食えよ、母ちゃん』

笑顔でそう言った亭主の面影。

秋刀魚を見つめている、ふみの目から涙がこぼれてきました。

『 … 食えよ、腹いっぱい』

ふみの手が震えながらもゆっくりと伸びて … 秋刀魚をつかんだのです。

そして、銀色に輝くその脂がのりきった身にかぶりつきました。

声をあげて泣きじゃくりながら何回も何回も …

「はあ ~ 秋刀魚は大したもんやなあ」

タネの言葉にめ以子もお静も皆、ホッとしてうなずき、同時にもらい泣きしていました。

… … … … …

< それから … >

その日、本職は寿司職人だった勝田が中心となって、避難所はにわか寿司屋に早変わりしました。

「おい、何すんだ、旦那?

たまんねえよ、今日は … いい子が揃っててよ!」


威勢のいいタンカを切りながら、皆の注文に応えて次々に寿司を握っていく勝田。

避難所の中はまるでお祭りのようににぎやか、幸せそうな顔、笑い声 …

「マグロ頂戴、マグロ」

いつもはもてなす側の女将たちも今日は逆の立場です。

… ふみも美味しそうに握りを口に運んでいます。

廊下からそっとその様子をうかがうめ以子の顔にも安堵の笑顔が戻っていました。

『人の役に立ってるちゅうことで、自分が救われとるのやな ~ 』

正蔵の言っていたことが、今はとてもよく理解できました。

… … … … …

数日後、新たな行先が決まった勝田が避難所を出ていく日がやって来ました。

「これ出しとった糠漬けの糠床です」

め以子の糠床を取り分けた小さなツボを源太から渡された勝田は大層喜びました。

「これだったのか ~ お静さんの糠漬け?」

「ええ」


お静は、ちゃっかり皆に自分が漬けた糠漬けとして配っていたのです。

「ありがとう、お静さん、助かるよ」

そして、勝田はふたりに礼を言い、去っていきました。

< ひとり、またひとりと、親戚や知人の元へ去っていき … いつしか、避難所は数人を残すのみとなりました >

… … … … …

最後のひとりとなっていた、ふみも明日、東京に戻ることになったと、め以子は源太から聞きました。

「あの人も明日で最後なんか?」

避難所の帰りに寄ったうま介で、その話に触れると、ふみと面識のない馬介まで名残惜しそうにしています。

「悠太郎さん、まだ帰ってこないの?」

「ああ、調査もあるからって … 室井さんは?」


反対にめ以子が尋ねると、桜子は心配そうな顔をして首を横に振りました。

「せや、もう随分になるわな」

お静の言葉に桜子は募る不安を口にしました。

「何かあったのかな … ただでさえ、ずれた人じゃない?」

「 … 心配ね」


そんな話をしていると、ドアが開く音がして … 桜子が入口に目をやると、衣服は薄汚れてボロボロよれよれの室井が立っていました。

慌てて出迎える桜子。

しかし、室井の様子が少しおかしい … 強張った顔をしていて、中々店の中に入ろうとしません。

「なあに? 大丈夫?」

重い口をようやく開きました。

「お義父さんも、お義母さんも … ご無事だったよ。

… 民ちゃんも」


皆の安否を確認してきてくれたのです。

桜子が顔を覗き込むと、ひきつった笑顔をみせました。

「何か、俺、疲れちゃって … 」

店の中に足を踏み入れたと思ったら、誰にあいさつするでもなく、2階へ上がって行ってしまいました。

… … … … …

その夜、め以子がまた糠床を取り分けているのを見て、希子が尋ねました。

「谷川さんにもあげるんですか?」

「うん、源ちゃんに聞いてもらったら、ほしいって言ってたって」

「この糠床、随分いろんなところに住むようになりますね」


微笑んでうなずいため以子。

勝田だけでなく、多くの人が避難所を出ていく時、め以子の糠床を分けてもらって行ったのでした。

< おかげ様で … いろんな方の家が見られてね、楽しいよ♪ >

… … … … …

翌日。

ふみは避難所最後の朝食を前にしていました。

ありがたそうに、おついのお椀を手に取り、その匂いを嗅ぎました。

「いただきます」

ふうふうした後、ひと口すすりました。

そして、手にしたお椀を見つめ直しています。

それは美味しいものを食べた時に人がする幸せそうな顔でした。

… … … … …

ここの炊事場で食事を用意するのも今朝の朝食で終わりました。

め以子が念入りに掃除をしていると、背後で戸の開く音がしました。

「あ、源ちゃん、そこ置いといて」

源太が食器を下げてきてくれたのだと思って、そのまま掃除の手を休めずにいると …

「ごちそうさま」

「いいえ、お粗末さ … 」


聞き覚えのあるその声に、ハッとして振り向くと、入口に食器を手にしたふみが立っていました。

「あ、あの … 」

「やっぱり」

「 … 気づいてたんですか?」


… … … … …

ふみは、他に誰もいなくなった避難所にめ以子を連れていきました。

そして、鏡の前にめ以子を座らせると、髪を梳かし始めたのです。

「 … 髪結いさんだったんですね」

「亭主は、髪油やら小間物やら扱っててね」


ふみの口から初めて聞く身の上話にめ以子は耳を傾けました。

「私のせいで、家は火事になったようなもんで … そこに居るのも居たたまれなくなって … それで、フラフラこっちにやってきたんだけど。

生きていたくもないけど、死ぬほどの思いきりも出なくて … そのくせ、お腹ばっかり鳴るのが嫌だったのよ。

心では私なんか死んじまえばいいって思ってるのに、お腹が空いてね ~

そんな自分が情けなくて、絶対に食べるもんかって … 」


程度の違いこそあれ、め以子には身につまされる話でした。

… … … … …

「けど、結局 … 秋刀魚には勝てなかった …

匂いがした途端、うわってなって … ああ、食べたいなって思ったら、亭主と子供のことが頭に浮かんで …

『食べていいよ』って言われてる気がしてね …

そんなはずないのに、都合よくできてるもんだね、人間てのは」


見違えるように元気になったふみですが、依然そのことに関しては自分を許せずにいるようでした。

… そうじゃないんです。

め以子は、思わず振り向いていました。

「あ、あの … 私も心配しながら、お腹鳴りました。

嫌だったけど … だけど、どんな人でも、そこだけは一緒なんです。

一緒じゃなきゃいけないと思うんです。

それは、皆生きてるってことだから … どこがどんなに違っても、分かり合っていける最後の砦っていうか …

あの、そういうこと、女学校の先生が言ってました。

だから … そんな風に、自分のこと責めないでください」


ふみは黙ってめ以子を見つめています。

「あ、すみません … 」

また出過ぎた口を利いてしまったかも … 謝っため以子は前に向き直りました。

… … … … …

ふみはふっと笑みをこぼし、まため以子の髪を梳かし始めました。

「 … ありがとね。

炊き出しだってのに、あんな美味しいもの出してくれて」

「別に大したもんじゃ … 」

「何言ってんの?!

お味噌汁なんて、ご丁寧に一度も同じものなんてなかったじゃないの」


分かってくれていた人がいたこと、め以子は少しうれしく思いました。

「お蔭さんで、朝ご飯を食べたら、昼は何だろう? って思うようになった。

昼を食べたら、夜は何だろう? … 夜を食べたら、明日の朝は何だろう? って …

そうしているうちに5日経って、10日経って … いつの間にか、櫛が握りたくなってた。

きっかけを与えてくれたのは、秋刀魚だったけど … 生きる力を与えてくれたのは、あんたの味噌汁だった」


ふみは、鏡に映っため以子の顔を見て言いました。

「本当にごちそうさまでした」

料理を作った者冥利に尽きる言葉にめ以子の胸と目頭は熱くなり、鏡の中にはふたりの笑顔がありました。

< こうして、ふみを送り出し … この救援所は役目を終えることとなりました >

… … … … …

「め以子?」

後姿だったので、桜子は顔を見るまで、め以子だとは気づきませんでした。

「 … どうしたの? その頭」

「谷川さんね、髪結いさんだったの … で、結ってくれたの」


ふみは腕のいい髪結いだったのでしょう ~ 結構気に入った、め以子は少し自慢げに髪に手をやりました。

「へえ ~ 仲直りできたのね」

「うん … 食欲でね。

ねえ、あれホントよ ~ 宮本先生が、卒業式におっしゃってたの … 」


『食べなければ、人は生きてはいけないんです』

… … … … …

宮本の名前を聞いた途端、桜子の表情が曇ったように見えました。

理由が分からず、不思議そうな顔をしているめ以子の前の席に桜子は腰かけました。

「あのね、め以子 … 」

神妙な顔つきでその後をいいあぐねています。

やがて意を決したように話し始めました。

「 … 民ちゃんから手紙が来たんだけど」

「うん」


… … … … …

『たべなければ、人は生きてはいけないんです。

あなたと私が、どこがどれほど違っていようと … そこだけは同じです。

同じなんです』

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2013年12月20日 (金) | 編集 |
第69回

避難所の一番の楽しみといえば、食事の時間でした。

不安や悲しみ、つらいこと … しばし忘れて笑顔に戻れる時です。

炊事場に復帰しため以子が作る、精一杯手をかけた料理は皆を喜ばせていました。

「このお大根、ていねいに手をかけてくれますね ~ 美味しいです」

お静も裏方に徹しているめ以子に代わって、トミやタネたちと一緒に配膳など、人の相手をする仕事を手伝っていました。

「糠漬けもどうぞ」

め以子の糠漬けもなかなか好評です。

「美味いな、これ!」

糠漬けに舌鼓を打っているのは、いつぞや谷川ふみに話しかけていた男 … 勝田半次郎です。

「あ、そうだ ~ 」

勝田は、思い出したように懐から1枚の紙切れを取り出すとお静に差し出しました。

それは、手書きの東京の地図に赤鉛筆で細かく被害状況が書き込んでありました。

親族の消息を気にしていため以子のために、自分の記憶や避難所の人に話を聞きまわってまとめてくれたのです。

「まあ ~ おおきにすんません」

… … … … …

「ええ加減なもんやし、人によっては見たくないもんになってまうやろけどって」

勝田の言伝を添えて、お静は炊事場のめ以子に地図を渡しました。

「頭下がるな」

「自分のことでいっぱいいっぱいやろにな」


トミとタネも感心しています。

「 … ご飯、頑張らないと」

それが今のめ以子ができる恩返しでした。

… … … … …

「ちょっと待ってや ~ 何でそないなことになんねん?!」

源太が止めるのも聞かず、マサを先頭に婦人会の連中が息巻いて炊事場に入ってきました。

「当たり前ですやろ、そんなん、この子に対する当てつけですがな!」

谷川ふみがあれ以来一切、何も口にしようとしないというのです。

「あんさんが余計なことするからでっせ!

ここで死なはったら、あんさん、どないしてくれはりますの?」


まるで言いがかりです。

「それは、あんた、ちょっと言い過ぎちゃうの?!」

憤慨するお静。

「食べもんは、お宅らの専門いわはるから、炊事場はお任せしてますんや!

このまま食べはらへんかったら、お宅らのせいですからな!!」


それだけ言って、マサは取り巻きを引き連れて出ていってしまいました。

彼女たちが気にしているのは、ふみの体のことでなく、自分たちの体面やメンツなのです。

呆気にとられているめ以子の横で、お静がぽつりとつぶやきました。

「 … 誰かさん、思い出すな」

… … … … …

「はい、お腹空いてるのやろ?

そんなこけた頬っぺたして … おつい、ひと口だけどうですやろ?」


トミが話かけたのですが、ふみはもうろうとして横たわっているだけです。

「ひょっとして、具合悪うしてはる?

それで食べられへんとかかいな?」


タネがそう言うと、ふみはゆっくりと起き上がり … フラフラとした足取りで出口に向かって歩き始めました。

「ちょっと待って、行く当てあるん?」

気づいた源太が声をかけましたが、何も言わず避難所を出ていこうとします。

「ちょちょちょちょ、ちょっと待って!」

前に立ちはだかった源太、ふみはその場にヘナヘナと座り込んでしまいました。

… … … … …

「私があんなこと言ったから、むきになってるのかな … 」

話を聞いて、気にしているめ以子に源太は言いました。

「もう、お前が作ってると思うてないと思うで」

「とにかく、自分から食べてもらわんとな ~ 」


トミが言うように、め以子がどうこうだからの問題ではなくなっています。

「思わず飛びつくようなもん出すしか、ないんかいな?」

お静はそう言いましたが、誰もふみのことを何も知らないのです。

皆、考え込んでしまいました。

しばらくして、め以子が口を開きました。

「 … 東京の人ってことは間違いないんですよね?」

… … … … …

「め以子ちゃん、何とかなったで!」

炊事場でめ以子が天ぷらを揚げているところへ、定吉が運んで来たのは … 打ち立ての新蕎麦でした。

源太に頼まれた定吉が蕎麦が打てる人を捜して、事情を話して打ってもらって来てくれたのです。

「東京の人ってそんなにお蕎麦好きなんですか?」

手伝いに来た希子が珍しそうに尋ねました。

関西ではやはり蕎麦よりうどんなのです。

「うん、江戸っ子の秋といえば、新蕎麦なんだけどね ~ 」

… … … … …

「こっちで蕎麦が食えるとは思わなかったよ」

「この天ぷら、上手に揚げてあるわね」

「今年はあきらめてたんだよな、新蕎麦」


め以子の思惑通り、天ぷら蕎麦は東京から避難してきた人々に大変喜ばれました。

「どうぞ、新蕎麦です」

お静がふみの前に丼を置きましたが … 食べたそうな顔をして、生唾まで飲み込んではいたものの … やはり、口をつけようとはしなかったのです。

… … … … …

その夜、め以子たちは避難所の帰りにうま介に集まりました。

「 … けど、よう我慢できんな、もう丸2日やろ?」

「死ぬつもりなんかな ~ 」


お静が何気なく口にした言葉に、ドキッとする一同。

「せやけど、それ以外何かある?」

「でも、それだったら、わざわざ大阪まで避難してきたりしますかね?」


桜子の疑問ももっともなことでした。

「理由はともかく、このままじゃ本当に … 」

… … … … …

これといった解決策も見つからないままその日はお開きでしたが …

源太はその足でもう一度、避難所に戻りました。

「ちょっと、話聞きたいんですけど … 」

スルメを手土産に裏庭で酒盛りしていた勝田たちの話の輪に加わりました。

源太は勝田に地図を描いた時のことを尋ねました。

「谷川さんってその時、何か話してくれました?」

「ああ、まあ、内心では悪いことしたって思ってたんだろうな … ちゃんと話してくれたよ」


… 意外でした。

源太は続けて、少し突っ込んだことを尋ねたのです。

「あの … あの人、なんで食わへんか知ってます?」

… … … … …

め以子たちが家に戻ると、玄関の戸に手紙が挟んでありました。

「ちい姉ちゃん、お兄ちゃんから」

手に取ってめ以子に渡す希子。

手紙の上にメモが貼ってあります。

『西門君から手紙を託った人が市役所に持って来てくれました。

このような形で失礼いたします。

藤井』

留守の間に藤井が届けてくれたものでした。

… … … … …

この中に実家の家族の安否の情報が書かれているかも知れない。

しかし、それはいい知らせとは限りません。

「開けたろうか?」

躊躇しているめ以子にお静が手を貸そうとしましたが …

「 … 大丈夫です」

意を決しため以子は自分の手で封筒を開けました。

『お父様、お母様、照夫君、山本さん、クマさん、タマさん

全員、無事です。

詳細は戻ったら話します。

取り急ぎ。

悠太郎』

ホッと肩の力が抜けため以子。

「皆さん、無事やったんですね」

「よかったな ~ 」


希子とお静も喜んでくれて、涙ぐみうなずいため以子でしたが … ふと、あることが心をよぎりました。

「もし、これが逆だったらって …

谷川さん、逆だったのかも … 自分だけ無事で … 」


『今更、力出して、私どうしろっていうのよ?!』

ふみの顔を思い浮かべた、め以子でした。

< 想像するにも限界があるね … こういう時に同じ気持ちになるっていうのは、実はとてもとても難しいことでね >

父母に手紙を書こうとペンをとりましたが、そんなことを考えていると、手が止まってしまいました。

『こういう時は、人の気持ちに寄り添うちゅうのは、難しいこっちゃ』

そういえば、正蔵も同じようなことを言っていた … 改めて、人の身になることの難しさを実感しため以子でした。

… … … … …

世を捨て、何の悩みもしがらみもなく自由気ままに生きているように見える正蔵でしたが …

その晩は、悪夢にうなされていました。

「人殺し!」

「子供を返せ!」

正蔵を取り囲んだ多くの人々が口々に「人殺し」と罵りながら、鬼の形相で迫ってくるのです。

ガバっ!

飛び起きた正蔵。 

辺りを見回しましたが、誰かいるはずもなく … ため息をつきました。

心臓が早鐘のように鼓動を打ち続けていました。

… … … … …

翌日、め以子たちが朝食の用意をしている炊事場に源太が顔を出しました。

「地震、昼やったろ?

昼ご飯の煮炊きの火が元で、ご家族亡くなりはったらしいんや」


勝田たちから聞いたという、ふみの身の上話を聞かせてくれました。

「ほんで、自分だけ生き残ってもうたんちゃうかってのが、皆の話すり合わせて出てきてとこでな …

どこまで思いつめとるか分からんけど、飯食わへんのは … 自分を責めてるちゃうかって」


め以子は自分も同じような気持ちにかられたことがあったので、身につまされる思いでした。

… … … … …

「 … じゃあ、火の通ってないものだったら、食べてもらえるかな?」

「う~ん … こういうことって、理屈やない気がするんや。

もっと、こう、体の奥から、食いたいってなるような … そういうもん」


漠然としすぎて難しい注文です。

「大変っ、た、谷川さんが!」

その時、慌てふためいて駆け込んできたのはトミでした。

… … … … …

源太たちが駆けつけると、心配した人たちに周りを囲まれて、ふみは布団に横たわったままでした。

「谷川さん、起きてください!」

いくら名を呼んでも、目を覚まさないのです。

「大丈夫か、脈は?」

め以子は傍に行きたいのを我慢して、部屋の外から祈るようにして見つめています。

直ちに医者が呼ばれました。

「随分と弱ってはるし、入院されたほうがええですな」

… … … … …

「ちい姉ちゃんのせいではないですよ」

食事の支度を続けながらも、ふさぎ込んでいるめ以子を見て希子が声をかけました。

「 … 何か、情けなくなっちゃって … 人一倍食べてばっかりのクセに、食べる気にさせることひとつ出来なくて … 」

こうなると、少しくらいの慰めでは効かないようです。

炊事場の外からその様子を見ていたタネ。

何を思ったのか、急に威勢よく入って行きました。

「さあ、芋洗おう!」

ハッとしてタネの方を見るめ以子。

「洗おう」

タネはもう一度、め以子の目を見ながら言いました。

「 … はい」

… … … … …

その頃、源太は、勝田や定吉の手を借りて、ふみを大八車の乗せたところでした。

「ほな、行くか … 」

病院に向かって出発しようした時 …

何処からか、香ばしい煙が漂ってきました。

「秋刀魚か?」

「秋やな ~ 」


誰かが秋刀魚を焼いているのでしょう。

その時です。

ふと、ふみの顔を見たお静が驚いて源太のことを叩きました。

「痛っ、痛っ、痛い、何もう? … ?!!」

あれだけ呼んでも起きなかった、ふみの目がうっすらと開いているのです。

源太は、煙の元を目指して駆け出していました。

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2013年12月17日 (火) | 編集 |
第68回

< 地震発生翌日、関西から関東へ救援隊や物資を乗せた船が続々と派遣されていきました。

悠太郎を乗せた『あんです丸』も3日、港を出発。

卯野家の安否は未だ分からぬまま、地震発生から1週間が経過しておりました … >

… … … … …

お静は何かしらでも情報が得られないかと、うま介まで足を運んでいました。

しかし、桜子の元にも室井からまだ何も連絡は届いていませんでした。

「 … どうですか、め以子は?」

「相変わらず、心配しかしてへんわ」


新聞を読んでは心配になって、心配になったら糠床をかき混ぜて、気持ちを落ち着かせ … その繰り返し。

「糠漬け … 何やどんどん不味なってんねん。

ああなってまうのは、分かんねんけどな … 」

「め以子はお父さんお母さん大好きっ子ですからね」

「 … 桜子ちゃんは、しっかりしてはんな ~ 同い年やのに」


桜子は頭を振りました。

うま介も以前に比べてお客さんも増えていますし … 働いている間は忘れていられるだけだと答えました。

「忙ししたったらええんか … 」

… … … … …

本来は楽観的なめ以子でしたが、家にこもって新聞などで悲惨な状況ばかりを目にしているうちに、何につけ悲観的に考えてしまうようになっていました。

糠漬けが不味くなったのも、何かよくない前兆かと心配している始末です。

< 糠漬けが不味くなっているのは … あんたが糠床を混ぜすぎてるからだよ。

暑いんだよ ~ 勝手に不吉な予感にすんじゃないよ! >

ふと、流しの下に何か銀色に光るものが落ちているのを見つけました。

拾ってみると、それは50銭玉でした。

慌てて元あった場所に戻しため以子。

< それ、ここに来た時から落ちてるから ~ 今どうのこうのって話じゃないから! 

… 今あんたが、50銭拾ったからって、お父ちゃんとお母ちゃんの運が減る訳じゃないから! >

こんなことばかり考えていると、本当に気持ちが病んでしまいます …

… … … … …

「め以子さん、め以子さん!」

息せき切って、お静が戻ってきました。

「集会所で東京から避難してきた人、受け入れるんだって!

炊き出し、手伝いに行こう!」

「 … 炊き出し?」


うま介に食器を借りに来た源太からこの話を聞いたお静は、忙しく動いていれば、少しは気が紛れるかもしれないと考えたのです。

… … … … …

「順番に、順番に並んでください!」

避難所となった集会所には、すでに多くの人々が集まっていて、源太たち町の有志が世話をしていました。

汚れた着物、乱れた髪、疲れ果てた表情 … 怪我をしている人も少なくありません。

そんな人たちと家族が重なって、め以子はつらくなりました。

避難民の行列を誘導していた源太がめ以子たちのことを見つけました。

「おお、炊き出し来てくれたんか?

奥の炊事場に皆おるから、行ったって … 助かるわ」


… … … … …

「おっ、湯島だったのか、あんた?」

集会所に足を踏み入れようとした時、そんな声が耳に入り、め以子は足を止めました。

「何丁目だ?

いや ~ 俺の知り合いがあの辺に住んでてさ … 」


建物の入り口で手続きしている女に男が馴れ馴れしく話しかけていますが、その女は返事する訳でもなく、受付を済ませました。

「あ、あの … 開明軒って洋食屋知りませんか?」

め以子は思わず女に声をかけていました。

「あの、ご存知ですよね、あの辺りにお住まいなら … 私の実家なんです!

どうなったかご存じありませんか … よく燃えたのってどの辺ですか?!」


お静が止めるのも聞かずに矢継ぎ早に問いかけました。

「よかったですね … こっちに嫁いで」

「えっ?」

「 … 親は知らないけど」


生気のない声でそう答えました。

「おい、そんな言い方しなくてもいいじゃねえか?!」

男に咎められると、女は顔をそむけ、ふら~っと建物に入って行ってしまいました。

… … … … …

建物の中は足の踏み場もないほどの人で溢れています。

奥の炊事場では、市場の女将連中や婦人会の面々が働いていて、め以子もおむすび作りに加わりました。

「そらあんた、間が悪いわ ~ 向こうさん、今それどこやないねんから」

「そうですよね … 」


トミに言われて、自分の思慮の浅さになお更落ち込むめ以子でした。

… … … … …

炊き出しの前には長い行列ができています。

そのひとりひとりがおむすびとおついを手にしました。

頬張る人、貪るように食べる人、感謝する老人、微笑みあう子供たち …

「たんと食べてくださいね」

「まだお替りありますから、どうぞ」


配膳の手伝いをしていため以子は、先ほどの女が何も手にせず隅の方でうつむいて座っているのを見つけました。

「さっきはすみませんでした … 私が至らなくて … これ、どうぞ召し上がってください」

おむすびを差し出しましたが、女はまた顔をそむけました。

「 … 他の人にあげて」

「皆さん、ひととおり渡ってますから、遠慮なく」


すると今度は背中を向けてしまいました。

「 … じゃあ、お味噌汁だけでも」

椀を手に取って女の前に回り込みました。

「食べないと力出ませんから」

女が目の前に差し出された椀を手で払いのけたので、め以子はおついを浴びてしまいました。

「だ、大丈夫?」

慌てて駆け寄るお静。

熱いおついをまともに浴びたら火傷してしまいますが、幸い大事には至りませんでした。

「何てことするんだい? せっかく頂いたもんを!」

「もったいねえ、おい、味噌が泣いてるぞ!」


他の被災者たちが非難しても女は頑なにうつむいたままです。

… … … … …

「あ、でも … ホントに食べないと、力出ませんから … 」

言い続けるめ以子に女は聞き返してきました。

「 … 力出してどうしろっていうの?」

「えっ?」

「ねえ … 今更、力出して、私どうしろっていうのよ?!」


押さえていたものを吐き出すように声を荒げました。

「だから … こういう時だから、食べなきゃいけないと思います」

「ちょっとちょっと、あんさん下がっときなはれ!」


婦人会のリーダー各の女性 … マサがめ以子のことを引き離そうとします。

「 … 何してくれはりまんねん?!」

女は、立ち上がらされため以子の大きなお腹に気づき、憎々しげににらみつけました。

なおもあきらめないめ以子は、ふたたび女の横に座り直して続けました。

「つらい気持ちは分かります … でも、食べないから、どんどん気が滅入っちゃうんです … 」

その瞬間、め以子は女に平手打ちされていました。

「 … あんたに私の何が分かるっていうの?」

… … … … …

「避難して来はった人を怒らせて、何考えてはりまんのや?」

炊事場に戻っため以子は、マサたちから注意を受けましたが、素直に聞くことができません。

「食べないと、体持たないじゃないですか?

本人は食べたくないって言っても、体が食べたがってると思うんです。

私だって、心配で食べたくないって思ったけど … 食べたら、少しは落ち着いたし … 」

「とにかく、もうここへは顔出さんとっておくれやす」

「でも、このままあの人食べなかったら、どうするんですか?!」

「 … 落ち着いたら、食べはりますわ」


納得できず食い下がろうとするめ以子をお静が宥めました。

「落ち着き、なあ、落ち着き」

… … … … …

婦人会の面々が出て行ってしまった炊事場で、タネが口を開きました。

「確かにめ以ちゃんは来ん方がええかも知れんな … 」

「 … 何でですか?」

「お腹 …

もちろん、ほとんどの人は、『生まれはるんや、めでたいなあ』って思はるやろ。

けど、今の今は、複雑な気持ちになる人もおるかもな」


タネに言われるまで、思いもつかなかったことでした。

… … … … …

「何や、誘うて悪かったな … 」

避難所からの帰り道、お静が申し訳なさそうに謝りました。

少しでも気が紛れたらと考えたことが、却って仇になってしまったと、お静自身も落ち込んでいました。

「そんなことないです … 私が軽はずみだったんです」

悲観的に加えて、すっかり自己嫌悪に陥っているめ以子でした。

… … … … …

そして、また、心配しながら、悠太郎の知らせを待つだけの毎日です。

新聞の消息欄を目を皿のようにして見て、父母たちの名前がないことに胸をなでおろし、深い息をついため以子。

… … … … …

め以子の足は自然と正蔵の長屋へ向いていました。

「家に居たら居たで、落ち着かなくて … 」

「ん? ほな、避難所に行ったら、落ち着くんかいな?」


正蔵に聞かれて、め以子は改めて考えてみました。

「バタバタしてた時は、少し紛れていた気がします」

「何や ~ ほな、非難してきた人に救われとったんかいな?」


可笑しそうに笑った正蔵。

「えっ?」

「ええ、そうやないか?

ちょっとこう手動かすことで ~ どうにもならん心配事から、ほんのちょっとの間救われとったんやろ?」


そう言われてみると、その通りかもしれません。

「何か、最低ですね … 私。

気晴らしに避難所行って、大変な目に遭った人たちに、したり顔で自分の考えを押しつけて … 」


せっかく正蔵に会いに来たのに、また悲観的な気持ちが顔を出して来ました。

「へえ、そんなこと言うたら、わしなんかず~っとそんなんばっかりや」

… … … … …

「はっは … わしな、どうしようもない人間やろ?

仕事もせんと、家もほったらかしで、何の役にも立たん … この世のごく潰しや」

「そんなこと … 」


返事に困るようなことを正蔵は言いました。

「でもな ~

この長屋の子供らに、字教えたり、ソロバン教えたりしとるとな …

何やこんな、どうしようもない身の上が、ちょっとええもんに思えてくる」


まじまじと正蔵の顔を見つめため以子。

「人の役に立っとるちゅうことで … 自分が救われとるんやなあ ~

まあしかし、こういう時は、人の気持に寄り添うちゅうことは難しいこっちゃ … 気を使うたつもりが却って、的外れになったりしてな」


め以子は身につまされる思いでした。

「私は私で救われに行っとって、それが誰かの役に立っとるんやったら、結構な話やないか ~

こんくらいの気持ちでおったらええのや」

「けど … 」


婦人会からは『もうここへは来るな』、タネからも『来ない方がいい』とまで言われしまっため以子です。

「あのな ~ 表に出なんだら、それで済む話やないかいな」

「あっ!」


… … … … …

長屋の帰りにめ以子はそのまま避難所の炊事場に顔を出していました。

「あの … あの、私やっぱりここでお手伝いしたいです。

絶対表には出ませんから、ここで下ごしらえしたり、ご飯炊いたりするだけでいいんで … 」


皆は驚き、マサは渋い顔をして婦人会の面々その顔色を覗っています。

「あの … ダメですか?」

恐る恐るもう一度尋ねると …

タネが炊事場の外に立っているめ以子のことを中へと引き入れて、婦人会に向かって援護射撃してくれました。

「あの ~ この子、ごっつう料理できるんですよ!」

「そうそう、こんな大根ぱぱぱ~って、なっ?」


トミも手にしていた大根を突き出して、め以子の顔を見ました。

「あっ … ぱぱぱ~です」

… … … … …

避難所であっても、子供たちは元気に遊び回っています。

裏庭で相撲を取る男の子たちをぼんやりと見ているのは、め以子とひと悶着あったあの女 … 谷川ふみでした。

… … … … …

タネとトミの口添えもあって、め以子は炊事場に復帰することが叶いました。

無心にただ黙々と大根の皮をむき続けるめ以子。

< 山のような大根を剥くことに、しばし救われる人間がいる一方で … どんどんと自分を追い込む人間がいたのでした >

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2013年12月16日 (月) | 編集 |
第67回

大正12年9月1日。

正午少し前に発生した地震の揺れは、しばらくして収まりました。

「結構揺れたな ~ 」

土間の上り口に伏せていたお静が体を起こしながら言いました。

「大丈夫ですかね?」

台所に立っていため以子は棚から物が落ちてこないように支えることで精一杯でしたが、特に被害もなく、調理台から包丁が滑り落ちた程度のことで済みました。

… … … … …

「今、揺れましたね … 何処ですかね?」

悠太郎は、テーブル一面に崩れてしまった本を積み直しています。

「うん、何処か …

じゃあ、頼んだぞ!」


自分の用事が済んだ竹元は、サッサと席を立って出口に向かいました。

「あっ、竹元さん!」

悠太郎は、まだ竹元の依頼を引受けた訳ではありません。

「私に相応しい知的かつ華麗な抜き書きをな!」

「僕は僕で仕事が … 」

「君も興味があるところだろう?

… 大いに期待している」


そう言われると、悠太郎も引き受けざるを得ませんでした。

… … … … …

「 … 沼津?」

「うん、何かそっちの方が震源みたいですよ」


夕食の配膳をしながら、希子が昼の地震の話題に触れました。

「ああ、新聞出とったな ~ 」

まだこの時点では、その程度の認識だったのです。

「悠太郎さん、ご飯にしましょう」

竹元から預かった何冊もの専門書を抱えて帰って来た悠太郎は、奥の座敷に座り込んで真剣に読み込んでいました。

ああ言っていたものの、竹元の言葉通り、興味がある内容だったのと生来の気真面目さで … すっかり嵌ってしまっていました。

「悠太郎さん?」

一度や二度声をかけたくらいでは通じません。

… … … … …

< その翌日 … >

せっかくの日曜日だというのに、悠太郎は朝から専門書に掛かり切りでした。

ひと通り熟読した後、次に『竹元が読んだ方がいいところ』の抜き書きを始めていました。

しかし、この一連の作業は、悠太郎に取っても有意義なことには間違いはありませんでした。

案外、竹元はそのことを意識して、悠太郎に依頼したのかも知れません。

「大変ですね、抜き書き」

め以子がお茶を運んできても、薄ら返事するだけで作業に没頭しています。

… … … … …

「西門君、おるか?!」

突然、玄関の戸が開く音がして、藤井のひどく慌てたような声が聞こえて来ました。

悠太郎が応対に出ると、日曜だというのに背広姿の藤井が立っていました。

「すぐ、役所の方へ来てくれって!」

「えっ、どうしたんですか?」

「東京が、東京が全滅やって!」


… … … … …

呆然としている悠太郎とめ以子。

「 … どうも、東京神奈川の方の地震らしいわ。

至急応援を頼むて、神奈川県警から無線電信があったらしゅうて … 」

「あの … 東京が全滅って … あの、全部ですか?」


め以子は尋ねましたが、藤井にも招集がかかっただけで、詳しいことはまだ分からないのです。

「なんせ、電話も電報も全然繋がらんみたいで … とにかく行こう、西門君」

「行って状況聞いてきます」


そう言って、悠太郎は藤井と市役所へ出かけて行きました。

… … … … …

ふたりが市役所に着くと、同じように緊急招集された職員たちが慌ただしく動き回っていました。

大村の姿を見つけた悠太郎は、すかさずに状況を尋ねました。

「今、上の人間が集まって、緊急会議開いとるとこや」

情報は相当混乱しているようです。

「鉄道は? 交通はどうなってるんですか?」

「 … それもよう分からんのや」


そこへ、会議に出ていた職員が戻って来ました。

「救援の船を出すことになった!

… わしらは、手分けして救援物資の手配するようにて」


それを聞いて、建築課の部屋を飛び出した悠太郎。

「おい赤門、何処行くんや?!」

… … … … …

向かった先は、『緊急対策本部』と書かれた部屋です。

「失礼します!

建築課の西門悠太郎です。

救援物資を手配するということは、届ける人間がいるということですよね?

僕にその役割をさせてもらえないでしょうか?」


お偉いさんたちの前にいきなり名乗り出たのです。

しかし、公安部の管轄なので、建築課の悠太郎は部外者でした。

「僕、東京の地理には詳しいです。

きっとお役に立てると … 」


それでも食い下がっていると、助役の新条が尋ねました。

「君は向こうに身内が居るんですか?」

「 … そうです」

「さっきからそういう職員が何人も来ていてね … 察してもらえないでしょうか?」

「身内の安否確認を最優先にするつもりはありません!

お願いします!」


… … … … …

め以子と希子も駅まで行ってはみたのですが、そこでも電話も電報も繋がらないということで、何の情報得られずに消沈して家に戻って来ていました。

「ホンマに?

そんなに酷いことになってんの … 」


め以子は玄関の上り框に座り込んでしまいました。

希子は、そんなめ以子をお静に任せると、桜子に様子を聞きにうま介へと出かけて行きました。

うつむいたままのめ以子の隣に腰掛けて、そっと肩を抱いたお静。

… … … … …

「どうやって行くつもりよ?

鉄道だってどうなってるか分かんないわよ!」


希子がうま介の前まで来ると、旅支度をした室井のことを桜子が必死に止めている最中でした。

「歩けばいいじゃない … 弥次喜多だってさ」

「私が見に行かなくていいって言ってるの!

駆け落ちしてきたんだから … 家を捨てるって、そういうことなんだから」


室井は、桜子の家族の安否を確認するために東京へ行こうとしているのです。

「 … うん、そうか … 分かった」

諭された室井は店に戻ろうとして … 油断した桜子の横をすり抜けると、走って行ってしまいました。

… … … … …

結局、桜子も何も分からないようで … 仕方なく希子は市場を覗いてみました。

荷物を運び出す人々が忙しく行き来する中、牛楽商店に行ってみると、ここでも源太たちが大八車に荷物を積み込んでいるところでした。

「あの … な、何してはるんですか?」

「食いもんやら何やら向こう送るんやて、役人が買いにまわっとるわ」

「食べ物も足りないんですか?」

「さあ、よう分からんけど … ああ、あいつは?」


源太はめ以子の様子を尋ねました。

「どうしてええか分からんみたいで … 」

「せやろな …

ああ、今日糠床持って帰ったり ~ 何かあったら、かきまわしとるさかい … あったら落ち着くやろ?」


… … … … …

部屋で休むように言われため以子ですが、横になる気にもなれずに実家から持ってきていたアルバムを開いていました。

女学校の卒業謝恩会の写真、家族で店の前で写した写真 … 

ふと、厨房で働いている父母や照夫のことを思い浮かべました。

「揺れたの、お昼頃 … 」

あの時間帯に火の気がないはずがありません。

不安は募るばかり … 思わずアルバムを閉じて、胸に抱きしめました。

「め以子さん、入るで ~ 」

ろくに食事をとっていないめ以子を心配したお静がお茶と饅頭を持ってきてくれました。

「とにかく何かお腹に入れ」

「 … いいです」


とても食べる気になれないめ以子でした。

「ほな、ここ置いとくな」

気を利かせて出て行きました。

… … … … …

「ただいま ~ 」

部屋に入ったままのめ以子に代わって、お静が台所仕事を始めた頃、糠ツボを抱えた希子が戻ってきました。

「 … で、何や分かった?」

ただ大変らしいということしか分かりませんでした。

お静も希子も、余り期待はしていなかったのですが、それでもやはり落胆は隠せません。

… … … … …

ふたりが話していると、お盆を手にしため以子が2階から下りてきました。

心なしか先ほどよりも、元気がありません。

「ちい姉ちゃん、大丈夫?」

うなずいため以子が持っているお盆には空の皿が載っているだけです。

「食べた?」

お静が喜んでいると、め以子は何故か情けなさそうな顔をしました。

「お腹空いて … こんな時にお腹空くなんて、何か嫌になっちゃって。

お饅頭5つも私、バッカなんじゃないのって … 」

「あんたそれは、お腹の子が食べたがってんで、なあ?」

「あ … そう、お腹の子は分からへんから。

ちい姉ちゃん、関係ないから」

「 … そうかな?」


しかし、まだ浮かない表情です。

「大体な ~ あんた、食べるのはお母ちゃんとしての仕事やで!

あんたが食べんと、その子生きてかれへんねんで、なあ?」


ふたりがかりで宥められて、ようやく何とか納得したようです。

… … … … …

そこへ、慌ただしく悠太郎が帰って来ました。

玄関からそのまま台所へ入ってくると、流しでコップに水を汲みました。

「どうやった? 何か分かった?」

「 … 救援隊として、東京へ行けることになりました」

息を切らしながらそう言いました。

「悠太郎さんが?」

「竹元さんの口添えで … 」


… … … … …

管轄外の上、東京に身内がいる職員は悠太郎だけでないと、救援隊に加わることを許さなかった新条助役に掛け合ってくれたのは、偶然に会議室に現れた竹元でした。

「大阪の都市計画のためにも、迅速かつ的確な調査が必要です。

そのためには、コンクリート造や木造の建築、また東京の地理にも詳しい、動き回れる体力のある若者の派遣を … お願いに上がりました」

… … … … …

「 … 救援活動が終わったら、残って建築物の被害状況を下調べするという条件で … 雑用係として加えてもらいました。

まあ、状態を見ながらなんで … 確認に行ける保証もないし、向こうからの電報が届く方が早いということもあり得るんですけど。

合間をみて、何とか安否確認できればと … 」


そう言ったあと、悠太郎はコップの水を一気に飲み干しました。

「救援物資、集めてる最中なんで … 戻ります!」

このことをめ以子に伝えるために忙しい中、抜け出してきたのでした。

職場に戻ろうとする悠太郎をめ以子は呼び止めました。

「悠太郎さん、ありがとう … ありがとうございます」

深くお辞儀しました。

「僕も気になるから行くんです」

悠太郎の優しさでした。

… … … … …

それでも、まだ家族に対する不安が消えた訳ではありません。

ただ、源太が言ったように、糠床をかき回していると、少しは気が落ち着くような気がしました。

「ちい姉ちゃん、その糠床どのくらい前のなん?」

「 … 50年か、60年かくらい?」


あまり深く考えたことがなかったので、不確かでした。

「わあ、そんなに?!」

希子は、それでも十分驚いていましたが …

< ホントは、100年超えてるけどね >

「運がいいんやね、その糠床」

「?」

「だって、そんだけ長い間、生き延びてきた ~ いうことでしょ?」

「うん、そうだけど … 」


やはり、気を落ち着けても … 何かにつけ、不安に苛まれ … その度、胸が押しつぶされそうになってしまうめ以子でした。

… … … … …

悠太郎が乗る救援船が発つ日、め以子は差し入れを持って市役所を訪れました。

カゴ一杯に詰め込んだおむすびです。

「 … これ、船の中で皆さんで」

「今日、何ですか?」


受け取りながら、悠太郎はいつものように尋ねました。

「な~んでしょう?」

いつものようにおどけて教えません。

微笑む悠太郎 … ふたりだけが分かる儀式でした。

「お~い西門早う、荷物まとめるで!」

「ほな、行ってきます」


先輩職員にうながされて悠太郎は歩き出しました。

「いってらっしゃい、気をつけてね!」

その声に振り向き、小さくうなずいた悠太郎。

悠太郎の背中が見えなくなった頃 … め以子の笑顔は消えていました。

< 大丈夫、きっと大丈夫だ … お父ちゃんもお母ちゃんも民子も女学校の皆も …

不安を押し殺すしかないめ以子でございました >

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2013年12月15日 (日) | 編集 |
さて、次週の「ごちそうさん」は?

東京が全滅やて?!

関東大震災の詳細は、翌日ようやく大阪に入ってくる。

どうやって行くつもりよ? 鉄道だってどうなっているか分からないわよ!

東京から避難してきた人を受け入れるんだって …


東京の家族を思い動揺するめ以子()。が、妊娠中の身で動くことができない。大阪から救援物資を送ることになり、悠太郎(東出昌大)は市役所の救援班に加わり東京へ赴く。

本当に食べないと力でませんから …

力出して、私どうしろっていうのよ?!


家族の安否を悠太郎に託し、め以子は静(宮崎美子)とともに、東京からの避難者のための炊き出しに加わる。が、その一人の谷川ふみ(星野真里)に、開明軒の無事を尋ねたうえ、無理に食事を勧めて怒らせてしまう。

め以子は正蔵(近藤正臣)の助言で、避難者の前に出ずに炊事場を手伝い始める。

家族の無事を知らせる悠太郎の手紙に、め以子はほっとする一方、ふみは一切食事をとろうとしない。ふみは自分の煮炊きの火が原因で、家族を失ったのだ。

とうとう、ふみは倒れてしまうが、さんまを焼くにおいに目を覚ます。さんまには夫や子供たちの思い出があった。源太(和田正人)がさんまを差し出すとむさぼるように食べ始める。ふみは、生きる力を自分にもう一度与えてくれた食事が、め以子によるものだと気づいていた。

一緒じゃなきゃいけないと思うんです … 皆生きてるってことだから

ふみを励ますめ以子だが、やがて大切な人の死を知らされることに。め以子もまた、亡くなった人の思いを受け継ぐ決意を新たにする。

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2013年12月14日 (土) | 編集 |
第66回

「あかん …

どないしても … あんたを好きになんか、なれへんわ」


和枝は、苦しげにそう言いました。

… … … … …

「えっ?」

和枝の頬を流れる幾筋もの涙の線。

「あんたを見てると、虫唾が走る。

いびられても、泣かされても、私は好きですって?

… まるで仏さんやな。

気持ちええやろ?」


和枝は、箸を置きました。

「そんなつもりは … 」

「許された方がどんだけ惨めかやなんて、思いもつかんやろ?!」


理不尽な言いぐさでした。

め以子は責められる理由が分からずに唖然としましたが、すぐに台所を離れて行く和枝を呼び止めました。

「待ってください!

私、いびられたことも泣かされたことも忘れてませんよ … 嫌ですよ! 思い出したら、腹立ちますよ!

だけど、嫌なとこもいいとこも一緒だと思うから … あれだけ舌を巻くような意地悪ができたのは、お義姉さんが細やかで人の気持ちがよく分かるからで …

それがお料理に向かうと、優しいお料理になるから … だから腹が立つけど、好きになっちゃうんじゃないですか!」


必死に訴えるめ以子。

背を向けたままで聞いていた和枝は振り返りました。

「どんだけおめでたいんや?」

… … … … …

「あの料理に何か入ってると思わへんの?」

「えっ?」

「わてが好意だけでやってたと何で思える?」


そう言いながら近づいてくる和枝。

一瞬、動揺しため以子でしたが …

「 … お義姉さんは、そんなことはしません」

その時、和枝は信じられない行動に出ました。

土間の上り口に立っていため以子の肩を押したのです。

バランスを失っため以子は危うく転びそうになって … ふたりの声を聞きつけて傍らにいた希子に支えられて、なんとか踏みとどまりました。

「和枝ちゃん!」

やはり部屋から出てきていたお静も駆け寄ってきました。

「これでも好きなんて言えるんか?!」

ぐずぐずとへたり込んだめ以子に追い打ちをかけるように声を荒げて言いました。

「一緒に暮らそうなんて思うんか?!」

… … … … …

「 … 出てって … もう、出てってください」

震える声で言っため以子の目からは涙がポロポロとこぼれています。

「それでええんや … わてを追い出すんは、あんさんや」

静かな口調でそう吐き出した和枝は、逃げるように自分の部屋へと戻って行きました。

「どうしてですか?

どうしてこんなふうになっちゃうんですか?」


泣き崩れるめ以子 …

… … … … …

帰宅した悠太郎は、お静から今日の出来事を聞きました。

「それで、め以子と姉さんは?」

「部屋 … め以子はんには、希子ちゃんがついてくれてる。

… あれは、ちょっと離れさせんと、もうどうにもならん思うわ」


決して、和枝を追い出したいのではなく、お静も本心からふたりのことを心配していました。

< それからほどなくして … 和枝は、一旦、倉田さんの別荘へ移ることになりました >

… … … … …

幾日か経ち … 倉田が西門家を訪ねて来ました。

「昨日見に行ったら、元気んなっとったで ~ 土いじりやっとた」

取りあえずは、安心した一同に倉田は話を続けました。

「ほんでな ~ やっぱり、和枝ちゃん、誰も和枝ちゃんのこと知らんとこへ行った方がええと思うんや」

しかし、いつまでも倉田に世話になる訳にはいかないと悠太郎は思っていました。

「和枝ちゃん、話してた農家、見に行きたいって急に言いだしてな ~

こんな自分でも求めてくれはるんやったら、そこに嫁に行きたい … 」

「 … 農家? 和枝ちゃんが?」


まったく想像だにしなかったことに、お静だけでなく家族皆が戸惑っていました。

… … … … …

「倉田さん、あの … 私、何であんなに嫌われちゃったんでしょうか?」

和枝が出て行ってからずっと考えてはいるのですが、答えが出せずにいるめ以子でした。

「うん … 和枝ちゃん、前にボソッと言うとったんやけどな ~

自分がされたんと同じこと、あんさんにして … それでも、全然めげんあんさんがおって … しかも、あんさん自分のこと好きやとまで言う。

何やもう、自分のくだらなさ突きつけられて … やりきれんようなったん違うかな?」


め以子に責任はなく、和枝の自業自得といえばそれまででした。

しかし、何故、和枝がそうせざるを得なかったのかを … ここにいる誰もが知っているので、胸が痛みました。

特にめ以子は傍からも分かるほど、深く傷ついてしまったのです。

「 … いけずは、私の方だったんですね … 知らないうちに、ずっと … 」

… … … … …

その夜、め以子と希子は、和枝の部屋に残っていた荷物をまとめていました。

ふと、手に取った裁縫箱を何気なく開けため以子。

きれいに縫い上げた布が何枚もきちんと畳まれて入っていました。

一番上の白い布を広げてみると、それは …

「これ、全部 … おむつ … 」

裁縫箱の中、残りもすべておむつでした。

「作ってくれてたんですね … 」

… … … … …

初めて作った食事をひっくり返されたこと、大切にしている糠床を捨てられそうになったこと … 

和枝から受けた数えきれない、いけず。

『わてを追い出すんは、あんさんや』

『どうしてこんなふうになっちゃうんですか?』

お互いに分かり合おうとした結果、傷つけあってしまったふたりでした。

しかし、隠れてコツコツとこのおむつを縫ってくれていた和枝、その姿を思い浮かべると、め以子は泣けて泣けて仕方がありません。

「 … お義姉さん … 鰯みたい」

苦手で大嫌いだったのに、め以子はもうその味を知ってしまったのです。

「嫌いになんかなれない … 」

め以子はおむつを胸に抱きしめていました。

… こんな形のまま、和枝と別れたくない … そう思っため以子でした。

… … … … …

「この建物はな、この真ん中のホールを通らんと行き来できへんようになっとるんや」

先日から、大村がこしらえていたのは、そんな概念で設計した建築模型だったのです。

「ケンカした時も、お互いに避けとったのにやな ~ 出会いがしらに出会うてしもうたりしてな …

嫌でも、面突き合わされてしまうんや、こういうのようないか?」

「 … ええですね ~ 」


大村の問いかけに悠太郎はそう答えました。

その時、思い浮かべていたのは … 

… … … … …

< そして、和枝の旅立ちの日 … >

駅に向かう和枝と倉田を道の途中で待っていたのは、風呂敷包みを抱えため以子でした。

「何で?」

「 … さあな、たまたまちゃうか?」


倉田はとぼけていますが、誰が教えたのかは明白でした。

まっすぐ和枝に向かって歩いて来ため以子。

「い、言い忘れたことがありました … 」

「何?」


不審な顔をして、身構える和枝。

ごちそうさんでした! … 鰯」

元気にそう言って、ぺこりとお辞儀をしました。

「何やいな、わざわざそんなこと言いに来たんか?」

拍子抜けしたような倉田。

「はい!

私はお義姉さんのことが大好きですから」


め以子は、ぬけぬけと口にしました。

そして、顔をひきつらせている和枝に風呂敷包みを差し出しました。

「これ、お礼です。

私の糠床です … 好評なんですよ」


和枝が受け取る訳もなく …

「 … いる訳ないやろ、そんなもん」

「そんなこと言わずに持っててくださいよ ~ 私の忘れ形見として」

「あんさんのことなんか、これっぽっちも覚えときとうないんや」

「これは、いけずなんです」


… … … … …

「はあ?」

和枝にはめ以子の言っている意味が理解できません。

「私がお義姉さんのことを好きだっていうことが、お義姉さんを怒らせるなら …

私は、お義姉さんを好きだって言い続けます。

… それが、私のいけずです」


困惑している和枝にめ以子は続けました。

「きちんと、いけずにはいけずで返したいと思います」

「 … えらいたいそうないけずを」


和枝は目を閉じると、深く息を吸い込み …

そして、目を開けて、にっこりと微笑みました。

「そら、どうもおおきに」

手にしていた荷物を降ろし、日傘を閉じると、め以子から糠床を受け取りました。

… 瞬間、そのまま地面に叩きつけてしまいました。

… … … … …

「あんさんのために割ったってんで。

な~んぼでも、いけずができるように」


そう言って不敵な笑いを見せました。

… それは、いけずをしていた頃の憎たらしいけど、凛とした和枝の顔でした。

負けじと、微笑み返すめ以子。

「また … また、送りますから!」

… … … … …

「行きまひょう、倉田はん!」

荷物を手にして、サッサと歩き出した和枝。

倉田はめ以子の肩をポンと叩くと後を追って行きました。

「ず~っと、ず~っといけずし続けますから」

和枝の背中に大声で叫ぶめ以子。

「何や、えらい屁理屈やなあ」

「ホンマ、かないまへんわ ~ 」


倉田にそう答えた和枝は晴れ晴れと笑っていました。

… … … … …

ふたりの姿が見えなくなった頃、め以子は地面に落とされたままの糠床に手を触れて謝りました。

「あ~あ、ごめんね」

< いいよ ~ 役に立てたみたいで、おばあちゃん、うれしいよ …

これで、これからも少しは繋がっていけそうだね >

め以子は、和枝との間に生まれた絆を確かに感じていました。

… … … … …

和枝が去ってから数日が経ちました。

その日 …

め以子は、和枝に送る荷物を用意していました。

「何、これ?」

その中にあった瓶詰を手にしたお静が尋ねました。

「オイルサーディンっていうのを作ってみたんです。

美味しく出来たんで、お義姉さんに送りつけようと思って」


和枝も知らない調理法の鰯を送るといういけずです。

「畑の肥やしにされるんちゃうか?」

… … … … …

その日 …

悠太郎は、昼休みに竹元からうま介に呼び出されていました。

テーブルに何冊も積まれた専門書を前に、焼氷を食べながら竹元は当然のように指示しました。

「私が読んだ方がいいところを抜き出しておいてくれ」

「 … 何で僕が竹元さんの下働きせんといかんのですか?」


悠太郎が不満を口にした時、突然、部屋がガタガタと揺れ始め …

… … … … …

台所にいため以子は慌てて棚を押えました。

< め以子の包丁を滑らせ、悠太郎の本を崩したこの揺れは …

後に関東大震災と呼ばれることになり、それは大阪という都市の運命を、そして西門家を … 大きく揺り動かしていくことになるのでした >

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2013年12月13日 (金) | 編集 |
第65回

しばらくして、和枝がめ以子の元に食事を運んできました。

「すごいですね、お義姉さん … どうやったら、こんなにきれいにできるんですか?」

和枝は、膳に料理を並べ、お粥をよそると部屋を出て行ってしまいました。

その間、ひと言も口を利かずに …

「 … いただきます」

お粥をひと口食べため以子は、その優しい味に感動しました。

… … … … …

「こんにちは ~ 」

め以子がいないと、さぞや忙しいことだろうと、希子はうま介に顔を出しました。

「どう、め以子?」

「大丈夫です。でも、まだ動いたらあかんので … うちでも何か手伝えることあるかなって」

「それがね … 」


桜子は厨房を指さしました。

今まではなかった見慣れない機械が置かれていました。

その中に氷の塊を乗せて、ハンドルを回すと、見る見るうちに削られて … あっという間に山盛りのかき氷が出来上がりました。

♪ うま介印の焼氷 ~ うま介印の焼氷 ~

楽しそうにハンドルを回している馬介と室井。

これで馬介の腕が腱鞘炎になる心配も解消されたのです。

「京都帝大の英知を結集し、竹元教授が開発してくださったの」

ふとテーブルを見ると、焼氷を貪るように食べている竹元がいました。

竹元は手を止め、扇子でテーブルを叩きました。

「この程度で結集というのは、京都帝大の英知に対する侮辱だ」

「 … 失礼いたしました」

「次は、ミキサーというものを作ってやるからな!」


そう宣言すると、焼氷の追加を注文しました。

「はい、心待ちにしております」

愛想よく返事した桜子は、希子にそっと耳打ちしました。

「要は、焼氷お替りしたかったみたいなの … 」

… … … … …

うま介を後にした希子が買い物のため市場に寄ると、皆がめ以子に食べさせるようにと、肉やら魚やら野菜やら果物やら … 山のように食材を持たせてくれました。

… この市場でどれだけ、め以子が愛されているかが分かりました。

… … … … …

希子が家の前まで帰って来ると、お静がガス会社の人を平謝りで送り出しているところに出くわしました。

「これからも、気つけてくださいよ」

「ホンマすんませんでした … 」


近所の誰かが通報したようで、ガス漏れを出したことで、ものすごくしぼられてしまったのです。

「何 ~ あんたそれ?」

お静は、抱えきれないほどの荷物をかついだ希子を見て、目を丸くしました。

「皆がちい姉ちゃんにって … 」

「クジラか、クマか何かと間違われれてるとか?!」


大笑いするふたり。

そんな一部始終を和枝は見ていたのです。

… … … … …

その頃、悠太郎は、謝罪と報告のため、サロンで倉田と会っていました。

「和枝ちゃんにしてみたら、どんどん形見狭なるやろ?

詐欺に引っ掛かったんも、ガス漏れも、人の口に戸は閉てられんし … 

これで悠太郎君にやや子まで出来たら、もう居場所ないんとちゃうやろか?」


そんな倉田の言葉を悠太郎は複雑な思いで聞いていました。

「気配ろうとは思てるんですけど … 」

… … … … …

お静と希子は、め以子を気晴らしさせようと部屋を訪れていました。

♪ 団扇 片手に 夕涼み ~ 雲が 悋気で 月隠す … チョイと 蛍が 身を焦がす ~

お静の三味線と小唄で大喜びのめ以子。

「お義母さん、すご~い」

「ふふふ、一応、おっしょさんさかいな」


… … … … …

体調もだいぶよくなってきため以子は布団の上でじっとしている生活が苦痛になっていました。

「暇で、暇で … 本当に動いちゃいけないんですかね?」

そんなめ以子に希子は戒めるように言いました。

「ちい姉ちゃん、流産しかかったんですよ。

今は休むのが母親の仕事です」

「はい … 」


め以子は大人しくうなずくしかありませんでした。

和枝に意見したことと言い、今の希子は昔のただの引っ込み思案の少女とは違いました。

そんな希子に変えたのは、誰あろう … まさか自分だとは、夢にも思わないめ以子でした。

… … … … …

「ほな、呉服屋呼ぼか?」

「何で呉服屋なんですか?」

「いろいろあるやんか ~ 産着とか、お宮参りの祝い着とか」


3人の楽しそうな会話が聞こえる廊下、和枝が部屋の前で洗濯物を持ったまま立っていました。

目を閉じる和枝。

ふいによみがえる、嫁ぎ先での情景 …

「なんで今頃、やや子ができんねん」

咎める姑の声。

「しゃあないやろ、できてもうたもんは」

吐き捨てるような夫の声。

「子だけもろうて、里帰すわけにはいかんの?」

… 思い出したくもない記憶。

和枝は目を開くとつぶやきました。

「妬んだらあかん … 」

洗濯物をそっと戸の前に置くと、その場から立ち去りました。

… … … … …

台所に立った和枝は、希子から言われたことを思い返していました。

『お姉ちゃんの心が、いびつやからと思う』

『そんなんしてたら、どんどん周りの人、離れていくよ。

せやから、いつまで経っても寂しいんや … 』

< しんどいね ~ 和枝さん。

子供じゃないから、長く生きてるから … 変わるのはしんどいね >

… … … … …

その晩。

め以子の前には、市場の人たちから届いた食材を使って和枝がこしらえた見事なご馳走が載った膳が3つも並びました。

「すご~い、これどうしたんですか?」

未だに誰ともひと言も口を利かない和枝に代わって希子が説明しました。

「市場の人らが、ちい姉ちゃんに精つけさせろって」

「へえ ~ あっ、お代は?」

「いりませんって」

「ほんまに?」

「 … ちい姉ちゃん、大阪弁になってる」


… … … … …

「姉さん、まだ口利いてくれへんのですか?」

その夜、帰宅した悠太郎が心配そうに言いました。

… 倉田に言われた言葉が心に引っ掛かっているのです。

「うん、ご飯は出してくれるんだけど …

あっ、でもね、すごいの ~ お義姉さんの料理。

美味しいだけじゃなくて、彩とか盛り付けとか … もうきれいで」

「 … それって、すごいんですか?」


悠太郎には何がすごいのかよく分かりません。

「すごい気づかいじゃない!

だって私、今、食べることしか楽しみないのよ」

「 … いつものような気もしますけど」


にやける悠太郎。

しかし、め以子は真剣そのものです。

「鰯 … 初めて食べられたの、もう全然生臭くなくてね」

め以子にとって画期的な出来事でした。

「あ、それから … これ」

きれいに畳まれた洗濯物の間に匂い袋が挟んであるのを見せました。

「 … あなたを大事に思ってくれはじめているってことで、ええんでしょうかね?」

「まあ、私なのか … 子供なのか、どっちか分かんないけど … でも、うれしい」


… … … … …

< こうして、め以子は1週間ほど、和枝のご馳走を食べ続け … 晴れて動ける身となったのでごさいます >

お礼がてらに久しぶりに訪れた市場。

銀次の店で鰯を見た時、め以子は正蔵の言葉を思い出しました。

『習うたらどうや? 和枝に … 頼られるちゅうのも、張り合いの出るこっちゃ』

… … … … …

和枝は自分の部屋で裁縫をしていました。

何枚もの白い布、それは … 

その時、またもよみがえる忌まわしい記憶。

ズタズタに切り刻まれた生地を前に呆然とする自分の姿。

しかし、和枝は首を振って、とらわれそうな思いを消し去りました。

そして、自分に言い聞かせます。

「 … なんでうちだけは、あかん」

ふたたび裁縫を続けました。

「お義姉さん」

部屋の外でめ以子の声がして … 和枝は縫っていたものを慌てて後ろに隠しました。

「 … お、お願いがあるんですけども」

… … … … …

台所へ下りて来た和枝にめ以子は、トロ箱一杯に買ってきた鰯を見せました。

「私、ずっと鰯が苦手だったんです。

けど、お義姉さんの出してくれる鰯はどれも美味しくて ~

私に教えていただけないかなと、思う次第でございまして … 」


なれない言葉なので、言い回しがおかしくなってしまいました。

無表情で聞いていた和枝。

め以子は上目づかいで見ながら、頭を下げました。

すると … 和枝は手にした、ざるに鰯を移しはじめました。

「お願いします」

… … … … …

和枝は、頭を取った鰯をどんぶりに入れた塩水で洗うと、次々に手で器用に開いていきます。

め以子も慌てて見様見真似で同じようにしますが、和枝の手際のよさに適うはずもなく …

「 … 皮も剥くんですか?」

すべて剥き終わると、それをすり鉢に入れ、味噌と山椒を加えて、すり身にしました。

「いい匂い ~ 」

それをひと口大に丸めて、つみれの下ごしらえを作りました。

油を温めると、先ず身から分けた骨を揚げて骨せんべいです。

「うん、これいくらでも行けますね」

休む間もなく手際よく、つみれを上げ始めました。

いくつか揚がると、それを食べてみるようにめ以子に差し出しました。

揚げたてをホクホクしながら口に入れため以子。

「さっぱりして、柔らかくて … 」

… … … … …

無言でつみれを揚げ続けている和枝。

め以子はその横顔を尊敬の念をこめて見つめて言いました。

「 … 料理って、本当に人柄が出ますよね。

大雑把な人の料理は、やっぱり大雑把で … 繊細な人の料理は、やっぱり繊細で … 気配りのできる人の料理は、丁寧で優しくて。

私、お義姉さんの料理、すごく好きです。

あの、お義姉さんから見たら、私の料理許せないところいっぱいあったと思います。

鈍感だし …

でも、これから少しずつ直していきたいと思うので … いろいろ教えていただけたら」


め以子が頭を下げると、鍋の中でつみれを転がしていた和枝の手が止まりました。

… … … … …

ふと鍋に目をやっため以子、つみれが揚がり過ぎてしまいます。

「お義姉さん、つみれ … お義姉さん?!」

和枝の顔を見て、め以子はハッとしました。

頬を幾筋もの涙の線が流れて …

「あかん … 」

それは、久しぶりに聞いた和枝の声でした。

「どないしても … あんたを好きになんか、なれへんわ」

苦しそうにそう言って、目を見開きました。

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2013年12月12日 (木) | 編集 |
第64回

「お、お姉ちゃんが、おらんようになった … 」

「えっ?!」


自分の部屋に閉じこもったまま、食事もとらずに出て来ようとしない和枝。

余りの静けさに不審に思ったお静と希子がふすまを開けてみると … 部屋はもぬけの殻。

ただの紙切れと分かった株券が散らばっているだけ … 和枝の姿はどこにもありませんでした。

「ただ出かけただけやったら、ええねんけどな」

「私も捜してきます」


… … … … …

あちらこちら捜し回っため以子は、市場の中まで和枝を見かけなかったかと聞いて回りました。

市場では和枝の人相自体分からない人も多かったのですが …

「取りあえず、見慣れんおばはん歩いて来たら、片っ端から声かけたらええんちゃう?」

源太が皆をそう仕切ってくれて、タネは『直に暗くなるから』と、懐中電灯を貸してくれました。

馬介、室井、桜子も店を閉めて捜索に協力してくれました。

… … … … …

市役所の悠太郎の元には希子が知らせに走りました。

「姉さんが?!」

「うん、ここ来たら教えて」


それを聞いていた、藤井と大村も一緒に捜すと名乗りを上げました。

… … … … …

「師匠、お義姉さん … 来てませんか?」

長屋まで走り続けてきため以子は息も切れ切れに正蔵に報告しました。

「戻ったら居なくなってて ~ 今、皆で捜してるんですけど … 」

それを聞いた正蔵が長屋を飛び出そうとした時、め以子がフラフラと座り込んでしまいました。

「どないしたんや?!」

「あ … 今日、なんかちょっと、変で … はあ、はあ」


その姿を見て、正蔵はあることを思い出しました。

「め以子さん、家へ戻ろう …

あの子な、ちっこい頃から、何かもう拗ねたらすぐに蔵の中入って座り込んだりしてましたんや … もしかしたら、ほれ」


… … … … …

辺りはもうとっぷりと日が暮れて、夕闇に包まれています。

万が一、和枝が戻ってきてはいけないと … お静はひとり、家に残って待っていました。

表で人の足音がする度に立ち上がっては、玄関の方を見ますが … ただの通りすがりばかり。

その時、庭の方から確かに物音が聞こえました。

「和枝ちゃん?」

縁側から庭を見渡しましたが、誰の姿も見当たりません。

「?!」

ふと見ると、蔵の扉が少しだけ開いています。

… … … … …

「 … 和枝ちゃん?」

恐る恐る蔵の中を覗くお静。

「いやっ?!」

突然誰かに背中を押されて、お静は蔵の中へと転げ落ちてしまいました。

そして、静かに閉まっていく扉 …

「和枝ちゃん?」

鍵がかかる音。

「何で? 何で、こんなことすんの?!」

扉はビクとも開きません … 閉じ込められてしまいました。

「和枝ちゃん!!」

… … … … …

お静を蔵に閉じ込めた和枝は、台所に入ると、電気を消し … その眼でガスコンロを見つめました。

… … … … …

大急ぎで家に戻って来た正蔵とめ以子。

門には鍵がかかっています。

「お静さんが中に居るはずなんですけど?!」

「電気も消えとるで ~ 」


家の中の灯りは全て消えていて、真っ暗です。

その時、め以子は微かな異臭に気がつきました。

「 … これ、ガス?」

「?!」


… … … … …

ふたりは、勝手口に回りました。

「あかん、こっちも開かへん!」

「お義姉さん、お義母さん、居ますか?

居たら返事してください!」


め以子は戸を叩きましたが、何も返って来ません。

傍らにあった薪を手に取った正蔵。

「そこ、どき!

あんたはちょっと離れとき … あんたは吸うたらあかんのや!」


め以子を脇に押しやると、薪でガラスを叩き割りました。

… … … … …

「ちょっと、何やの?」

「いや、ちょっとあんた、えらい臭いけど」


騒ぎを聞いて、集まって来た近所の人たちを慌てて応対するめ以子。

「すいません!

ちょっと、ガス漏れてるかもしれなくて」


… … … … …

正蔵はガラスを割ったところから腕を入れて、掛けてあったしんばり棒を外すと、戸を開けて家の中に飛び込みました。

充満しているガスに思わず鼻と口を押えました。

暗闇の中、懐中電灯で照らすとガスコンロの前にしゃがみ込んだ和枝が映し出されました。

その手にはマッチを持っています。

「それ … こっち渡し」

手を差し伸べて、少しずつ近づいていく正蔵。

「 … 来たら、点ける」

震える手で今にもマッチを擦ってしまいそうな和枝。

「こっち渡し … 和枝」

「気安う、呼ばんとって!」


和枝はガスにむせながら、よろよろと立ち上がりました。

「つ、つ … 点けるで」

「何言うてるのや、アホンダラ!!」


飛び掛かる正蔵。

マッチを擦ろうとする和枝 … 刹那、何者かがその手を叩きました。

土間に散らばるマッチ。

… … … … …

「姉さんを外に、早う!」

間一髪、駆け付けた悠太郎でした。

「よっしゃ!」

和枝を抱えて表に出る正蔵。

ガスの元栓を閉めた悠太郎も後に続きます。

… … … … …

「お義姉さん、大丈夫ですか?!」

裏庭に倒れ込んだ和枝に駆け寄っため以子。

「 … 余計なことを」

咎めるような口を利いた和枝の頬を正蔵が叩きました。

頬を押さえ、うつむく和枝。

「ダマされて、ガス吸うて … そんなん、詐欺師の思う壺やないか?

生きて見返したろうと、思わなあかんのんと違うんか?」


… … … … …

「 … ずっと、そうしてきたんやんか。

ずっと、わてを不幸にした奴を見返したろうて …

何でわてだけ、いっつもいっつも、こんな目にあわなあかんねん?!」


和枝は、今まで決して口にはしなかった … 溜めに溜めた思いを吐き出しました。

「何が悪いねん?

顔か?! 性格か?! … 違うやろ、こんなん運だけやろ!

運が悪いのいつ治るんねん?

どうやったら、治るねん?!」


和枝は匂い袋を握りしめていました。

「 … 20年や。

20年近う、ええことなんて、ひとつもないんや!

… わては、もう疲れたんや」


その眼は家族にさえ見せたことがなかった涙であふれていました。

そんな和枝に誰ひとり声をかけられずにいると … 

「 … お姉ちゃんが、ええことないのは … お姉ちゃんの心が、いびつやからと思う」

口を開いたのは希子でした。

… … … … …

「今まで、いろいろ不幸せやったと思う。

けど、それを人にやり返してええ理由にはならへんし … 」


希子の声は今にも泣きそうに震えていました。

「そんなんしてたら、どんどん周りの人、離れていくよ。

せやから、いつまで経っても寂しいんや。

寂しいから、つけこまれたんや!」


和枝は、うつろな目で黙って聞いています。

「 … ほんまに20年間、ええことひとつもなかったん?

今日かて、倉田さん血相変えて捜してくれたし、市役所の人も、うちらやて皆、お姉ちゃんのこと心配して …

そういうのは、ええことちゃうん?

お姉ちゃんのええことには入れてもらわれへんの?
 
そうやって、悪いことばかり振り返って … せやから、いびつやって言うんや!」


精一杯そこまで言うと、こらえ切れずに泣き出してしまいました。

泣きじゃくる希子をしっかり抱きしめた悠太郎。

… … … … …

和枝はスッと立ち上がりました。

「か、和枝 … 」

歩き出そうとした和枝を呼び止めたのは正蔵です。

「お前は、ええ子やった ~ 真面目なええ子やった。

お前の悪いんのは、心やない。運でもない … 親や」


正蔵の顔をにらんだ和枝。

「あんな所へ嫁に行かせてしもうたワシは、ホンマにボンクラや。

恨むんやったら、ワシやで」


和枝は無言のまま、家に入って行きました。

… … … … …

その姿を見ていため以子は、突然どうしようないほどの腹痛に襲われました。

「ちい姉ちゃん!?」

腹を押さえながらうずくまっていくめ以子。

「どないしたんや?! め以子!」

駆け寄る悠太郎。

「何や、腹痛いんか?!」

うなずくだけで声が出せません。

「何食うたんや?!」

… … … … …

「お姉さんの方は、大丈夫でしょう ~ ガスもそんなに吸うてへんみたいやし。

奥さんの方は、まあしばらく寝とった方がええでしょうな … 」


往診を終えた医師を見送りに出てきた悠太郎と希子。

門から少し離れた塀の前に正蔵が立っていました。

ふたりの容態が心配なのですが … 悠太郎の手前、家に入ることは憚って、周りをウロウロしていたのです。

「帰る … い、今帰るとこや ~ さいなら … 」

悠太郎の顔を見て、バツが悪そうに … 逃げるように帰って行きました。

その背中を無言で見送る悠太郎。

希子が見上げると、どことなくいつもと表情が違いました。

「皆に見つかりました言うてくるね」

「 … 今日はおおきにって … 今、逃げてった爺さんにも言うといてください」

「うん」


希子は微笑んでうなずくと、正蔵のあとを追いかけて行きました。

… … … … …

悠太郎が部屋に戻ると、布団に横たわっため以子は困ったような顔をしていました。

「いやあ、驚いちゃうわよね … 」

枕元に腰を下ろした悠太郎は半分怒ったように言いました。

「あなたはそれでも大人の女性なんですか?

どうしたら、気づかずに過ごせるんですか? … 何か月も」

「ちょっと太ったなあとは思ったんだけどね。

ほら、食べ物が変わったからかな ~ とか」

「 … アホなんですか?」


あきれて口調がきつくなってしまいました。

「すいません … 」

「当分は安静にしろって話ですから … 寝ててくださいね」


つまらなそうな顔をして悠太郎の顔色を覗っているめ以子。

「まったく … 」

そう言いながら、め以子に布団をかけ直してあげましたが …

「暑いんです ~ 」

また剥いでしまいました。

しょうがないなと思いながら、頬が緩む悠太郎。

め以子は、悠太郎の手を取ると、自分のお腹の上に置きました。

微笑みあうふたり。

「取りあえずお静さんに … ?!

あれ、お静さんは??」


ようやく思い出してもらえたお静 … まだ蔵の中に閉じ込められたままでした。

… … … … …

次の朝。

和枝に続いて、め以子まで寝込んでしまった西門家。

「しばらく家のことは?」

「あんたとうちしか、ないわな … 」


希子とそう話しながら、お静が台所に立とうとした時、2階から割烹着を着た和枝が颯爽と下りてきました。

唖然としているふたりを尻目にテキパキと準備する和枝。

「あ、お姉ちゃん … 昨日は言い過ぎて、ごめんなさい」

「和枝ちゃん?」


台所に下りると、米を研ぎ始めました。

「 … してくれるん?」

何を言われても返事もしませんが、その横顔は穏やかに見えました。

「ほな、何か手伝おうか?!」

うなずき合うお静と希子。

… … … … …

め以子は台所から聞こえる小気味のよい包丁の音で目を覚ましました。

「お義姉さん … 」

< 誰もが、それは、和枝の再生だと思ったのでした … そう願ったのでした >

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2013年12月11日 (水) | 編集 |
第63回

「大阪というのは、東京より暑いんじゃないのか?」

建設課の部屋、扇風機の前に陣取って、風を独り占めにしてもまだ吹き出てくる汗。

竹元は、この部屋の暑さに腹を立てていました。

「京都の方がもっと暑うないですか?」

廊下では、やはり「暑い暑い」と、とぼやいてばかりいる藤井が大村から説教を受けています。

「心頭滅却すれば、火もまた涼しっちゅうやろ?!」

「あの声だ、声 … あの声が暑さを倍増させるんだ!」


大村の甲高い地声にまで八つ当たりしている竹元。

そう言いながらも、律義にもきちんとスーツ姿にネクタイを締めている竹元に悠太郎は言いました。

「夏だけ、靴やめはったらどうですか?」

「お前は、私の生き方に、文句あるのか?!」


やぶへびでした。

「怒ると、また暑うなりますよ …

けど、最近どうして市役所に足運んではるんですか?」


待っていましたとばかりに立ち上がった竹元。

「大阪市の都市計画事業が、私に監修を頼んできてね ~ ハイヤーは出ないんだがな」

… … … … …

め以子は正蔵に和枝のことを報告するために長屋を訪ねていました。

「けど、あの和枝が再婚するとはなあ ~ 世の中何が起きるか分からんなあ」

先の嫁ぎ先でひどい目に合ったことを知っているだけに感慨深そうな正蔵でした。

「お義姉さんって、ホントに気が回るっていうか、細かいんですよね ~

まあ、そうじゃなきゃ、あんな的を射たいけずできる訳ないんですけどね … 改めて気がついたっていうか」


正蔵は、和枝は小さい頃からよく気が利く几帳面な子だったと話しました。

「わしが墨すっといて言うて頼んだらな、ほなちょうどええ頃加減の濃さにすって出して来よるんや。

それをほめたら … お父はんの時には100と68回、お母はんの時は92回と決めてあるって言いよった。

お父はんは濃い目が好きやさかいなって … 」


懐かしそうな正蔵。

自分には、とても考えられないことだと、子供の和枝に感心するめ以子でした。

「あっ、あの … ひとつ聞きたいんですけど。

お義姉さんが持ってる匂い袋ってご存知ですか?」


正蔵の顔が少し陰りました。

「 … あれ、和枝の死んだ子供の着物で作ってある」

「形見ってことですか?」


和枝が見せた表情には、そんな切ない理由があったのです。

「でも、それ、もう擦り切れてもいいっておっしゃってたんですけど … どういう意味ですかね?」

そこまでは、正蔵にも分かるはずもなく …

… … … … …

その頃、和枝は安西と、とある墓地を訪れていました。

和枝の息子が眠る小さな墓標に供え物をして、手を合わせるふたり。

… … … … …

墓参りを終えた和枝たちは、蝉しぐれの中、川べりの緑の小径を歩いていました。

「お子さん、おいくつだったんですか?」

「 … 6つです。池に落ちて亡くなったんです。

それを理由に嫁ぎ先を追われて … わて、えらい姑に嫌われましてな、『几帳面すぎて、鬱陶しい』言われて。

それからもう苦労続きで … 何とか踏ん張ってこられたんは、この子のお蔭だす」


足を止めた和枝は帯に挟んでいた匂い袋を手に取って、安西に見せました。

「気持ちが挫けそうになるたび、この子を握りしめましてな …

この不幸を忘れたらあかん … こんだけ不幸なんやから、幸せになってええはずや … せやないと人生のソロバンが合わんやろうて。

とどのつまり、恨みの力で気張ってきましたんや」

「もう擦り切れてますね」


優しく笑った安西。

「 … もう、そういう生き方やめえって言われてるんやと思います。

同じ生地で新しいの作ろう思うてますねん … 今度はもっと優しゅう撫でてやろうと思います」


… … … … …

悠太郎は、大阪は暑いだけではないと … 竹元をうま介に連れて来ました。

焼氷に火が灯るのを見て、驚愕する竹元。

しばらくして、火が消えたことを確認すると恐る恐るかき氷にスプーンをさしました。

そして、ひとさじ口に運び … 食べる … 食べる食べる、もう止まりません。

あっと言う間に平らげてしまいました。

「何だこの、人の心を惑わす、罪深い黒い魔女は?!」

竹元にしてみれば、最大級の賛辞を口にしたのです。

「気に入ったんですね」

間髪入れず、追加注文をしましたが … 桜子が申し訳なさそうに頭を下げました。

「すいません、おひとり様、一杯までにさせていただいてます」

「何だと?!」


好評なのはありがたいことなのですが …

この暑さで、来る客来る客すべてが焼氷目当て … ひとりで氷を削っている馬介が手の筋を違えてしまったため、止むを得ず制限を設けたのでした。

「申し訳ありませんが、またいらしてくださいませ」

「まあ、それなら仕方ないな … 」


竹元にしては珍しく大人しく引き下がりました。

… … … … …

「あっ、そういえば … 経済学部の安西教授って知ってはります?」

悠太郎は、安西と同じ京都帝大に籍を置いている竹元に機会があればいろいろ尋ねようと思っていたのです。

「ああ?」

「縁のある方で … 」

「安西?

ああ、あの夢と現の間を行きかう先生なっ」


どうやら知っているようです。

「夢と現?」

「ボ~っとしてて、人の話を聞いているんだか聞いていないんだか分からん先生だろ?

… そのくせに言うことはやけに鋭い」


一目置いているかのような口ぶり … しかし、悠太郎が感じている印象とあまりにも人物像が違いました。

「いや、あの … シュッとした、ええ男の」

「お前の審美眼はどうなってるんだ?」


ちょうど、懇親会の写真があると、懐から手帳に挟んであった写真を取り出して見せてくれました。

「これが安西先生だ」

竹元が指さしたのは、悠太郎が知っている安西とは似ても似つかぬ … 初老の紳士でした。

「?!!」

… … … … …

正蔵の長屋の帰りに市場で買い物を済ませてきため以子が玄関でお静や希子と立ち話をしているところへ、血相を変えた悠太郎が家に飛び込んで来ました。

「おかえりなさ … 」

何も言わずにものすごい勢いで2階へと駆け上がったかと思うと、あっという間に下りて来て、再び表に飛び出して行ってしまいました。

その手には、先日和枝から譲られた株券が握られていました。

… … … … …

一体何事だったのだろうと、3人が話していると …

今度は、和枝がご機嫌で土産まで買って帰って来ました。

「どないした?」

め以子たちの様子がおかしいことに気づいた和枝。

「さっき、悠太郎さんが血相変えて出て行ってなあ … 」

お静が不安そうに言いましたが、もちろん、和枝にも心当たりなどありません。

そこへ、息を切らしながら、戻って来た悠太郎。

真っ赤な顔をして、和枝に株券を見せて言いました。

「姉さん、この会社はありません!」

「えっ?」


悠太郎の言葉の意味が理解できない和枝。

「登記もされてませんし、この住所もありません!

これは … この世にない会社の株券やったんです」


絶句する和枝、しかしまだ事情がよく飲みこめてはいない様子です。

「詐欺やったんです!」

… … … … …

「 … 何、言うてはんの?」

和枝は笑おうとしましたが、引きつってうまく作れません。

「取りあえず、警察に行きましょう」

「 … あの人も、同じの買うてはったし … あの人もダマされたんと違う?」

「それも警察で確かめましょう」


和枝の手を取った悠太郎。

「ちょっと待って!

明後日、あの人と約束してるから … 話、ちゃんと聞いてからでええやないの!」


懇願する和枝を無理やり引っぱって出て行く悠太郎の背中、め以子たちは、呆然と見送ることしかできませんでした。

… … … … …

安西と、名乗っていた男は、本人でないことは、警察が確認をしました。

夏季休暇を利用して外遊に出ていた安西になりすまして、勝手に部屋のカギを開けて入り込んでは、教授のような顔をして、和枝を信用させてしまったのです。

それでも和枝は男のことを、約束した日に待ち合わせした場所、サロンで待ちました。

その手にしっかりと匂い袋を握りしめて …

『何か事情があったに違いない』

『あの人もダマされたんや』

そうであれば、せめてもの救いでした。

< 待てど暮らせど安西は来ず …

しばらくして、詐欺事件として報道されました >

『稀代の詐欺師、捕まらず 海外逃亡か』

< 複数の人間による組織ぐるみの犯行で、被害者はのべ50人、被害総額は100万円にのぼる大規模なものでございました >

北浜のサロンに出入りし、株で儲けたらしい人物の情報を得ては、近寄って … 言葉巧みに取り入る手口。

… … … … …

「め以ちゃん、これお義姉さんに … 」

め以子に事件のあらましが載っている新聞を渡そうとした室井が桜子にお盆で思いきり叩かれました。

「どういう神経してんのよ?」

室井なりに気遣った上のことだったのですが …

天神祭の時、安西との馴れ初めを嬉しそうに何度も何度も語っていた和枝を思い出すと桜子も胸が痛みます。

「 … お義姉さん相変わらず?」

「うん、寝込んだまま … 」


食事ものどを通らないようなので … これから、正蔵に相談に行こうと思っているめ以子でした。

… … … … …

「和枝ちゃん、どない?」

悠太郎は、和枝のことを心配した倉田からサロンに呼び出されていました。

「 … 抜け殻みたいになってます」

「そら、そうやろな … 」


倉田は目頭を押さえました。

「和枝ちゃんがあんまりにも可哀そうでな ~

いつもいつも報われんで … 何であの子だけ、こんな目に … 」


親代わりと言っていいほど、陰ひなたになって面倒を見てくれている倉田は、和枝のことが不憫で仕方がありません。

… … … … …

大々的に報道されたので、正蔵の耳にも和枝の話しは届いていました。

「和枝はどないや?」

「食べれば少しは気力も出ると思うんで、何か好きなものでも作ってあげたいと思うんですけど …

口利いてくれないんですよ。

何かお義姉さんの好きなもの分かりますか?」


和枝は子供の時から好き嫌いのない手のかからない子だったと正蔵は言い、少し考え込みました。

「ああ … しいて言うたら、鰯かいな」

それを聞いて、め以子には心当たりがありました。

「そう言えば、鰯、鰯って … 」

安西に振舞う料理を決める時にしきりに口にしていたことを思い出しました。

「うん、鯛や鮃は確かにそら美味い。

けど、鰯は、『7度洗たら鯛の味』いうてな ~ 扱いと手の掛け方で、味が全然違うっていいよる」


しかし、鰯はめ以子が唯一苦手とする食材でした。

「私、鰯だけはどうも好きになれないんですよね」

「何でやな?」

「パサパサしてるし、小骨も多いし、そういうのが気になると … 生臭さも気になっちゃって」


すると、正蔵は思ってもみなかったことを言い出しました。

「なら、習うたらどうや? 和枝に … あいつの鰯料理は絶品やで ~ 」

「あ、お義父さん、今は … 」

「め以子さん、頼られるちゅうのも … 張り合いの出るこっちゃ」


そう言われると、確かにそうかもしれません。

… … … … …

和枝の部屋の前、手つかずにそのまま置かれている食事を見て、お静と希子は顔を曇らせました。

「お姉ちゃん、具合どう?」

声をかけても返事がありません。

「和枝ちゃん、水羊羹買うてきたさかい食べへん?」

うんともすんとも返って来ません。

物音ひとつしないことを不審に思ったふたりは顔を見合わせました。

「開けるで … 」

お静はそう言って、ふすまを開けました。

… … … … …

正蔵から言われたように和枝に料理を習おうと、鰯を買って帰って来ため以子。

台所で支度を始めたところ、2階から希子が階段を駆け下りてきました。

「どうしたの?」

「お、お姉ちゃんが、おらんようになった … 」

「えっ?!」


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2013年12月10日 (火) | 編集 |
第62回

「あの、私と一緒になってくれますか?」

待っていたはずの安西からの求婚の言葉 …

しかし、和枝は躊躇していました。

「 … その前に、わての話聞いてもらえます?」

無言でうなずいた安西。

「今日は取り繕うてましたけど …

家もガタガタで、父親は蒸発するし、皆仲悪いし … 借金もぎょうさんおますねん。

わては、毛虫のように嫌われて、嫁ぎ先を追い出された出戻りだす。

… 子もひとり亡くしてます」


和枝は、負い目と感じていることを包み隠さず、正直に口にしました。

「そんなんでも、よろしおすか?」

安西はフッと息をついて笑いました。

「 … 気が楽になりました。

私の出番がありそうでうれしいです。

お金だけは専門です … 何かしら、役に立てると思います」

「先生 … 」


… … … … …

和枝の部屋に洗濯物を置きに来ため以子は、机の下に小さな紺の巾着袋が落ちているのを見つけました。

それは、年季が入った今にも擦り切れそうな匂い袋でした。

何気なく手に取ると、とてもいい匂いが香ってきました。

… … … … …

「無事にお嫁に行くことになりそうだす」

翌朝、家族が揃った朝食の席で和枝は報告しました。

心から喜んで、和枝を見つめた一同。

「祝言は、挙げへんの?」

「ふたりとも二度目やし、先生もこっちに親戚おらんさかい … こないだので、ええんちゃうかって」


お静が尋ねると、まるで娘のようにハニカミながらそう答えました。

笑顔でうなずき合った悠太郎とめ以子。

「あの ~ ちい姉ちゃんらの祝言は?」

こういう時に聞いておかないと … 希子が気を利かせて和枝に尋ねました。

「せやな … そろそろ考えんとな」

流れからいって、認めざるを得ない状況と読んだ希子の作戦勝ちです。

「あの、お義姉さんが落ち着いてからでいいですよ … 」

め以子はのん気なことを言っていますが、悠太郎は違いました。

「ホンマですよ? 聞きましたからね!」

真顔で念を押しました。

「へえへえ」

「念のため、一筆書いてもろうてよろしいですか?」


いつ和枝の気が変わってもいいようにと、箸を置いて、紙と筆を捜し始めた悠太郎です。

「あっちもこっちもお熱いことやな」

お静が希子と顔を見合わせて笑っています。

そんな家族を見ながら、和枝も喜びをかみしめていました。

… … … … …

「ほな、ええ人やったんか ~ 安西先生とやらは?」

「いろいろ苦労された方みたいで … 」


悠太郎が報告すると、大村は自分の身内のことのように喜んでくれました。

「お姉さんも苦労してはるさかい、ええ夫婦になれるんとちゃうんか?」

「 … そうなって欲しいです」


ふと、悠太郎は大村の机の上が気になりました。

「こないだからそれ何やってはるんですか?」

ハサミで何やら切ったり、工作のようなことをしています。

「これか? これはな、わしのな … 」

説明しかけた時、藤井が悠太郎へ来客を知らせました。

ドアのところに立っていたのは、倉田でした。

… … … … …

その日、和枝が大学へ安西を訪ねると、部屋には見知らぬ男が座っていました。

「じゃあ、先生、明日まで返事ください」

地質学専門の横山と紹介されたその男は、そう言って、部屋を出ていきました。

「 … お返事って?」

「ええ、まあ、これなんですがね」


安西はテーブルの上に置かれた鉱石を和枝に見せました。

「石が何か?」

「よく見てください」


和枝が石に顔を近づけると … 表面の一部が金色に光っています。

「これっ、金でっか?」

… … … … …

市役所を訪ねてきた倉田は、昼休みを待って、悠太郎のことをサロンへと連れ出しました。

「実はな … ちょっと、縁談があるんやけどな」

「縁談?」


もしやまた希子に … ?

しかし、倉田が持ってきたのは和枝の縁談でした。

「 … ちょっと、ボソッとこぼしとったさかいに当たってみたんや。

ひとつは大きい農家の後妻さんの口、もうひとつはお寺さんなんやけどな … 」


倉田は安西とのことは全く知らなかったようで、悠太郎から和枝が嫁ぐことになったと聞いて、目を丸くして驚きました。

「あっちゃ ~ ホンマかいな?!」

「はい、倉田さんにはお知らせしないとと思ってたんですけど … 僕らも会ったのはついこないだで」

「そうか … そうでっか!

ああ、そらまた、めでたいめでたい ~ で、相手は?」

「学者さんです … 京都帝大の」

「こらまた、ハイカラな!」


ここにもまた和枝の再婚を喜ぶ人がまたひとりいました。

「それにしてもな、和枝ちゃん、最近ついとるな ~ 」

悠太郎には、倉田の言っている意味が分かりませんでした。

「持っとった株で、エライこと当たって … 」

「えっ?!」


… … … … …

不安を感じた悠太郎が帰宅すると、ちょうど和枝も安西の所から帰って来ました。

いきなり切り出す悠太郎。

「姉さん、持っとった株が当たったって、ホンマですか?」

「何で知ってんの?」


倉田が市役所に来たことを話した悠太郎は、和枝に儲かったという額を問いただしました。

言葉を濁していた和枝ですが、悠太郎に執拗に聞かれて答えました。

「 … 5,000円くらい」

「ごせんえん?!」


横で聞いていため以子は飛び上がらんばかりです。

# 現在の1,000万円近くの額です。

十分な大金でした。

「そのお金、今は持ってはります?」

「何やの、急に?」


訝しげに聞き返した和枝。

「その … まずは、倉田さんの借金を返すべきではないかと … 」

「倉田さんが催促に来はった?」

「いや、そうやないですけど … 」


和枝は、ちゃんと耳を揃えて返すよう考えていると言いました。

「 … まさか、先生に渡してないでしょうね?」

一番気に係っていることを口に出してしまいました。

「してへんよ … わてが持ってるさかい … なんやのもう!」

悠太郎の言葉に動揺したように見えた和枝、そそくさと部屋へ引き上げて行きました。

… … … … …

何となく気まずい悠太郎と和枝、その空気を感じてか、皆無言で夕食を取っていました。

雰囲気を変えようと希子は和枝に尋ねました。

「お姉ちゃん、新婚旅行とか、行かへんの?」

「ああ、どやろ … 考えてなかったけれど … 」


結婚が決まった時と比べて、何とも素っ気ない返事です。

「今度いつ会うんですか?」

悠太郎が重たい口を開きました。

「 … 聞いて、どないすんの?」

「僕も立ち合いたいんですけど」

「 … 何かあったん?」


事情を知らないお静は戸惑っています。

「安西先生はやっぱり怪しいかも知れません」

悠太郎の中では、すでに安西は真っ黒でした。

「ええ加減なこと言わんとって!」

「何かあってからでは、遅いんですよ」

「子供やないんやから放っておいて!」

「放っておけないから、言うてるんです」


弟であっても、娘に対する父のような気持でした。

「関係ないやろ、悠太郎さんは!

わてが増やしたお金やないの ~ どないしようが、わての勝手やろ?!」


興奮気味に答えた和枝、それを言われたら悠太郎には返す言葉がありませんでした。

… … … … …

食後、逃げるように自分の部屋に戻った和枝は、貯金通帳を手に考え込んでいました。

ああは言ったものの … 悠太郎の気持ちも分からないではありません。

昼間の安西の話を思い返していました。

… … … … …

「これっ、金でっか?」

安西はいくつかの社名を羅列した紙を見せました。

「私としては、ここと組むのがいいと思うんですけどね」

その中から1社指さしました。

「そこだけは、まだ上場してない会社なんです」

「ひょっとして、この会社に投資すれば … 」

「ははは … さすがですね。

そういうことです」

… … … … …

疑い出したら、きりがない … 

あきらめかけていた幸せが目の前にある … 安西の話を信じているというより信じたいと思っている和枝でした。

… … … … …

台所では、め以子から大体の話を聞いたお静。

「悠太郎さんが疑うてはんのも分かるけど … それだけでは、決められんわな」

「そうですよね … 」


め以子も何とも言いかねています。

「お姉ちゃんが、株始めたんは、家の借金返すためやし … そこはひとりで頑張ってきた訳やし … あんまり、口挟むのも … 」

希子は父が居なくなってから、家を守ってきた … 衣食住を与えられ、学校に行かせてもらえたのも和枝のお蔭だということをきちんと理解していました。

「そうよね … 」

… … … … …

次の日。

和枝は安西と待ち合わせしたサロンにいました。

約束の時間に遅れて現れた安西。

「例の鉱山会社の方と話をしてまして … 開発に伴って、あなたと私の出資分も受け付けてもらえるよう話をつけてきました」

嬉々として話す安西。

「あの … そのお話なんですけど … やっぱり、止めようかなって」

和枝が申し訳なさそうに切り出すと、安西は意外というような顔をしました。

「弟に取りあえず、払える分から返していくのが筋やろって言われて … それもそうかなって」

和枝の話を聞いて、渋い表情になった安西。

「もしかして、私のこと疑ってます?」

ハッとして安西の顔を見た和枝。

安西は自嘲気味に話を続けました。

「 … いいですよ。

この手の話では、そういう疑いはつきものですからね。

あなたにそう言われると … さすがに傷つきますけど」

「先生を信用してない訳じゃないんです」


和枝が苦しそうに答えると、安西は笑い出しました。

「ははは … してないじゃないですか?」

言葉に詰まる和枝。

「けど、信用というのは … 無理強いすることじゃ、ありませんからね。

あなたを責める資格は私にはありません」


そう言うと、今度は困ったような顔をしています。

その顔を切なく見つめる和枝。

… … … … …

その夜、和枝は珍しく悠太郎とめ以子の部屋を訪れました。

手にしていた風呂敷包みを開くと中は株券の束。

そして、それを悠太郎に手渡しました。

「この株?」

「それ、悠太郎さんにあげるさかいに …

上場したら、べらぼうに上がるやろうから、それ売って、借金払てもうて」


それは安西が勧めていた鉱山会社の株券でした。

「これからは、名実ともにあんたがこの家の大黒柱やろ?」

「 … もしかして、姉さんのそのために?」


始めから、すべて悠太郎に渡すつもり … 自分が嫁ぐ前に借金の清算も済ませようとした故のことだったのです。

「きっちりけじめはつけんと、気色悪い性分やさかいな … 」

和枝の真意を知った悠太郎とめ以子は感激していました。

… … … … …

「お茶っぱの上に氷 … 」

め以子は茶こしから、ガラスの急須に落ちる玉露のしずくを見つめていました。

「これだけですか?」

横に立っている和枝に尋ねため以子。

和枝に乞うて『氷出しの玉露』の淹れ方を習っているところです。

「大した手間やないやろ?

けど、夏場のお客さんには喜ばれるさかいに」

「涼を取る知恵ですね?」

「風鈴、よしず、あと、匂い袋とかな」


め以子は和枝の言葉で、先日のことを思い出しました。

「あっ、お義姉さんの匂い袋、擦り切れそうになってましたけど … 繕っときましょうか?」

「 … あれは、擦り切れてええねん」


め以子は理由を尋ねましたが、和枝はそれ以上は語ろうとしませんでした。

とても悲しそうな顔に見えました。

… … … … …

相変わらず、うだるような暑さ、蒸し風呂の建設課。

藤井が勝手に持ち込んだ扇風機を回したせいで、図面やら何やらが部屋中で舞い始めました。

「お前、何やってんねん!

ホンマもんのアホかっ?! 紙は命やろ ~ 」


大村に咎められても、暑さで思考回路もショートしているみたいです。

そして、もっと暑苦しいのが …

「西門っ! どうしてここは、こんなに暑いんだ?!」

扇子を全開で仰ぎ、怒鳴りながら入ってきたのは竹元です。

悠太郎、うんざり顔 …

… … … … …

その頃、京都帝大にひとりの初老の紳士が帰って来ました。

旅行鞄を手にしたその紳士はとある部屋の前に立ち、鍵穴に鍵をさし込んだあと、首を傾げました。

「うん?」

ドアを開けて、部屋の中を見回す紳士。

「確か閉めといたはずなんだが … 」

そうつぶやいて、紳士が入って行った部屋は … 安西教授の部屋でした。

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2013年12月09日 (月) | 編集 |
第61回

「先生が … 先生が家に、挨拶に来はるて!」

そう言って、和枝は板の間の上り口に腰を下ろしてしまいました。

「来はるって?」

「 … 家族の皆さんに会いたいて」


和枝の言葉にめ以子だけでなく、お静、希子までが慌てだしました。

「えっ?! た、た、た、た、大変!」

「えらいこっちゃ、えらいこっちゃ!」

「お姉ちゃん、お姉ちゃん … 」


右往左往する西門家の女たち。

… … … … …

め以子は、帰宅した悠太郎に待っていたように、早速その話を報告しました。

「それは、その … 姉さんを移築していただけるって、ことですか?」

「何て言い方するんですか?!」

「 … すいません、動揺してて」

「十中八九、結婚を前提としてるんじゃないかって、お静さんが … 」


悠太郎は、そのお静がどういう考えなのかも気に係りました。

「お静さんは何て?」

「お義姉さんにやっと来た幸せだから、一致団結してがんばりましょうって」

「一致団結?」

「はい、一致団結です ~ 皆で!」


め以子は強くこぶしを握って、悠太郎の顔を見つめました。

… … … … …

翌朝の食卓はそのことについて打ち合わせのようになりました。

「ほな先生は、うちは一家円満やと思ってはるいうことですか?」

和枝の顔を唖然と見つめる一同。

「いややわ ~ 円満やないの」

「まあ … まあ、ええやないの、そういうことにしとこうや」


この際仕方がないと、お静が皆を取り成しました。

「 … そうやなあ、お義母はん」

絶句して、和枝の顔を見返したお静。

和枝は皆にもお静のことを『お義母はん』と呼ぶように言いました。

その上、め以子にも『話がややこしくなるから』と、当日は、おなごしみたいな着物は止めるように言いつけました。

「ちゃんと悠太郎さんの嫁らしゅうしはって」

「えっ、いいんですか?」


お静を『母親』、自分を『嫁』と認めるような口ぶりに、却って戸惑ってしまうめ以子でした。

… … … … …

「あの … あの人のことは、どう言うてはるんですか?」

悠太郎が気にして尋ねると、和枝は『それが問題』、というような顔をしました。

「まだ何も言うてへんのやけどな … どないしまひょう?」

「この際、うちに来ていただいたらどうですかね?」


ここぞとばかりに、め以子は提案しました。

「家族になったら、隠し通せることでもないですし … ウソついてたって言われるよりは、正直に」

「せやわな ~ 」


お静も乗り気ですが、悠太郎は許しません。

「行方不明で … もう恐らく死んでもうてるってことで、ええんちゃいますかね?」

「 … でもそれやと、お父さんが家出した訳ありな家や、みたいになれへん?」


め以子たちの意見に加勢した希子。

「8年前に山に遊びに行って、行方不明になったってことにしときましょう ~ それならば、問題にもならないはずです」

正蔵のことになると、決して譲ろうとしない悠太郎でした。

「無理強いしない」という約束があるため、あきらめため以子ですが、不満いっぱいでした。

… … … … …

「これと、これ、どっちがええかな?」

何着か広げた着物の中から2着を肩にあててお静は尋ねました。

相手をしているのは希子です。

「どっちでもおきれいですよ」

「けど ~ こっちは、ちょっとくだけてるかな?」


ヘタすると、このためにまた新しい着物をあつらえかねません。

「お義母さんがお嫁に行くんちゃうんですよ」

諭すようにくぎを刺した希子でした。

… … … … …

「め以子はん♪」

裏庭で洗濯物を干していため以子は、和枝の猫なで声に飛び上がらんばかりに驚いて振り返りました。

「なんや?」

め以子があまりにも驚いているので不審に思った和枝。

「あ、今 … 名前で呼ばれたんで … 」

「あのな ~ 先生がお越しになる時のお料理だすけど … 」


自分に対してこんなに物腰柔らかく話す和枝ははじめてでした。

「あ、何でしょう? … 私にできることだったら、何でも … 」

「一緒に考えてくれはる?」

「一緒にって … お義姉さんと?」


命令ではなく、頼まれるなんて … 今までのことを思うと、信じられないことでした。

「嫌なん?」

途端に険しくなった和枝の表情に慌てるめ以子。

「いえいえ、もう ~ 一所懸命考えます、もう … 頭が沸騰するくらい考えます!」

… … … … …

「安西真之介、東京帝国大学卒業後、米国に留学し、経済学の研究を進める一方、ニューヨーク・ウォール街の株式取引の実情をつぶさに観察し、独自の株式理論を構築した … 京都帝国大学経済学部教授に就任 …

はあ ~ 」


素性を知るのも、ひとつの手だと、略歴に目を通しため以子でしたが … 難しそうな言葉が多く、お手上げです。

「せっかくやし、少し珍しいもんをお出ししたいんや」

「う~ん、洋行帰りだし … 洋食とか?」

「あんさんは、ホンマに考えが浅おますな!」


却下でした。

「じゃあ … あえて、関西の家庭料理とか?」

「それ、ええかもな!」


今度は食いついてきました。

「あえて、鰯づくしとかな」

「ぎょ、ぎょ、ぎょ!」

「 … 何やそれ?」

「いや、鰯は止めといた方がいいんじゃないですかね … あっ、ほら、余りにも安いし」

「そこがええんやろ?

安いのに、ごっつう美味しなるいうんが」


… … … … …

< お忘れかも知れませんが … め以子は、鰯が唯一苦手な食べ物なのでございます >

このままでは、鰯料理に決まってしまう … め以子は、藁をもすがる思いで安西の略歴を見返しました。

「あっ! … 長崎県出身ってあります。

長崎の料理なんてどうでしょう?

一緒になっても、故郷の味を作ってもらえるって、伝わりますし … 」


和枝は、め以子が差し出す安西の略歴に目をやり … そして、顔を上げたと思ったら、本をバタンと閉じました。

「ほな、ちょいと調べてきますわ」

「えっ?」

「大将が長崎出身の店があるさかい … お昼食べがてら、ちょっと聞いてきますわ」


善は急げ、思い立ったが吉日と、出かけようとする和枝。

「あ、じゃあ、お供します!」

しかし、和枝から返って来た言葉は …

「何で?」

ひとりで出かけて行ってしまいました。

… … … … …

「いや、しかし、あのお姉さんがね ~ 」

悠太郎から、和枝の結婚話を聞いた藤井は、意外といった顔をしました。

「どこまで、分厚い猫かぶりはったんか … 」

「今までの方が猫かぶっとった違うか?」


悠太郎の言葉に大村がそう返しました。

「えっ?」

「根はまじめで几帳面な人やろ、あの人 … 大事にされたら、ええ奥さんになるんとちゃうか?」


事実、その通りでした。

「 … よう分かりますね?」

しかし、数回見かけた程度で話もロクにしたことがないような和枝のことをそこまで見抜いている大村を悠太郎は感心していました。

… … … … …

「あんさん、何やってはんの?!」

その日、悠太郎が帰宅すると、台所にはめ以子だけでなく和枝もいて … 何やら文句をつけられていました。

「何やってはるんやろ?」

横で見ていた希子に尋ねました。

「長崎の料理を試しに作ってみてはんねんけど … 」

め以子の包丁さばきが気に入らないらしく、本人は錦糸卵のつもりなのですが、タコ糸だと言われてしまいました。

「もうええ、うちやるわ」

焦れて代わりに始めた和枝、言うだけあって見事な出来栄えです。

目を見張るめ以子に、ゴボウの笹ガキをするように命じました。

「 … はい」

横目でめ以子の手つきを確認すると、耳元で念を押しました。

「笹ガキいうのは、笹の葉の薄さでっせ … 分かってはるな?」

… … … … …

数時間後、ようやく解放されため以子は、自分たちの部屋に戻ると、布団の上にドッとうつぶせに倒れ込んでしまいました。

「 … 何してたんですか?」

「器磨き … 蔵ん中ひっくり返して、洗って、磨いて … それぞれのお料理に一番合うのを選ぶんだって」


そのまま眠ってしまいそうなめ以子に悠太郎は頭を下げました。

「ご苦労さんです … 」

… … … … …

< かくして、安西先生がやってくる日となりました >

客間には、悠太郎とお静、希子、それに同席することを許されため以子も嫁入りの際に持ってきた着物を着て席についていました。

和枝は、炎天下を歩いてきた安西の前にガラスの器に入ったお茶を置きました。

ひと口飲んだ安西は目を見張りました。

「これは?」

「氷で出した玉露だす」

「へえ ~ 何とも言えないお味ですね … 汗もひきますし」


お静も感心しています。

「これは、ええわ ~ 和枝ちゃん、普段からやってえな」

「毎日やと、飽きまっせ」


安西の横で微笑んでいる和枝は、普段とはまるで別人でした。

… … … … …

「不思議な味 ~ 」

め以子も氷出しの玉露を味わっていると、そっと和枝に客間の外に呼び出されました。

「お料理用意して」

結局はいつも通り … でした。

… … … … …

め以子が料理を用意する間、客間では、お静や悠太郎を相手に安西の『株談義』が花咲いていました。

「結局は、株で一番儲けるのは事業者ですよ … 」

「ほ、ほな … 出てる株をあれこれ買うよりも、儲かりそうな事業やりそうな人に出資した方がええということですか?」


お静が尋ねると、安西は笑顔でうなずきました。

「先生もそういうこと、されてはるんですか?」

少し神妙な顔の悠太郎の質問に答える安西。

「まあ、多少は … 」

… … … … …

そのうちに食卓には、天ぷら、錦糸卵の乗った押寿司、豚の角煮など、和枝が腕をふるった長崎の郷土料理がめ以子の手によって並んでいきました。

「 … これは、何のお料理ですか?」

安西の言葉に一瞬手が止まっため以子。

「お郷、長崎ですよね?」

和枝言われて、ハッとする安西。

「あっ、ああ ~ そうでした。

両親は、とうに亡くなっておりますし、私は外遊や東京で … ああ、懐かしいです」

「そう思いまして、ご用意しましてな」


安西の態度に疑念を感じて、怪訝な顔をしている悠太郎とお静。

しかし、和枝はまったく気にもせずに料理を口にした安西に味加減を伺いました。

「どうだすか?」

「 … うん、郷の味と」


… 言いかけましたが、ふっと笑いました。

「 … ウソはいけませんね」

「ウソ?」

「私はこんなごちそういただけるような育ちじゃなかったんです。

貧乏人のせがれで、ある銀行家の馬番をしてたんです。

そこで盗むように金のことを覚えていって … それが主の目に適って、学校に行かせてもらえたんです。

… 和枝さんはきっといいお家のお嬢さんなんだろうと思うと、言いあぐねてしまって」


安西の話を聞いて和枝は、苦労人だということと、その実直さになお更惹かれてしまったようです。

「お口に合いますやろか?」

悠太郎が、その主の名前を聞こうとしましたが、和枝の言葉と重なってしまって、そのままになってしまいました。

「美味しいです … 亡くなった親にも食べさせてやりたいです」

「ほな、ぎょうさん召し上がってください」

「そうですよ ~ 足りなくなったら、すぐ市場に行きますから」


単純なめ以子も安西に好感を抱いていました。

「そういうことやないのよ ~ 」

「はははは … 本当にもう、いただきます」


め以子の無邪気さに場が一気に和みました。

… ただひとり、悠太郎だけが釈然としない顔で座っていました。

… … … … …

「あの人、なんやあやしないですか?」

会食が終わり、安西を見送って和枝が出て行った後、悠太郎が言い出しました。

「食べたことなくても、故郷の料理くらい知ってるもんやありませんか?

世話になった旦那さんの名前も答えへんかったし … 」

「そんなこと聞いてましたっけ?」

「うちもちょっと変やと思ててんけどな」

「そうでしょ?」


お静の言葉に我が意を得たりと悠太郎。

「初めは金目当てかと思てんけどな … よう考えたら、うち借金しかないがな ~ 」

「 … まあ、そうですね」


お静の言うとおりでした。

「そうですよ ~ 」

と、め以子。

「 … そうですね」

と、悠太郎。

「勘ぐり過ぎですよね」

自分自身に言い聞かせるように言う悠太郎のことをめ以子は微笑ましく見つめました。

「 … 何ですか?」

それに気づいて、訝しげに尋ねました。

「ふふ、心配してるんですね ~ お義姉さんのこと」

「そらそうですよ ~ 今度は幸せになってほしいやないですか」


照れ隠しにそっぽを向いた悠太郎を、お静、め以子、希子、西門家の女性が笑っていました。

… … … … …

「では、ここで失礼します」

表通りに出たところで、安西はそう言いました。

「お気をつけて … 」

お辞儀して歩き出した安西。

結局、家族と対面しただけで、和枝が期待していたような話しは一切、安西の口からは出てきませんでした。

しかし …

少し歩いて、安西は足を止めて振り向きました。

そして、ふたたび戻ってきて、和枝の前に立ち … 帽子を脱ぎました。

「あの …

あの、私と一緒になってくれますか?」


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2013年12月08日 (日) | 編集 |
さて、次週の「ごちそうさん」は?

一緒になってくれますか?

一致団結してがんばりましょうって

和枝(キムラ緑子)の交際相手の安西(古舘寛治)の来訪に、盛り上がるめ以子()たち。

何や、怪しないですか?

株に詳しいという安西の話しぶりに、悠太郎(東出昌大)は漠然と不信感を持つが、無事結婚が決まり一同は喜ぶ。

これ、金でっか?

和枝は安西に投機話を持ちかけられ、迷いつつも金を渡す。一方め以子は正蔵(近藤正臣)から和枝のすり切れた匂い袋が、我が子の形見であると聞く。

悠太郎は竹元(ムロツヨシ)を通じて安西の経歴詐称を知り、和枝のもとに向かうが間に合わない。安西の詐欺だと知りショックを受ける和枝。

お姉ちゃんがおらんようになった

元気づけようとめ以子は、正蔵に和枝の好物を尋ね、自分が唯一苦手な鰯(いわし)だと知る。その矢先、和枝がいなくなってしまう。家族総出で探しているうちに、めまいを覚えるめ以子。

生きて見返したろうと、思わなあかんのんと違うのか?

そのすきに和枝は台所でガス自殺を図るが、間一髪、助けられる。その夜め以子の妊娠がわかり、一同は仰天しつつも喜ぶが、和枝は一層いたたまれない気持ちに。

安静を命じられため以子のために、和枝は無言で料理を作る。すべて繊細で優しい味で、なかでも鰯の料理に感動しため以子は、体調が戻るとさっそく作り方を習う。

それでも好きやなんて言えるんか?

め以子はこれからも教わりたいと頼むが、和枝の返事は意外なものだった。

どうしてこんな風になっちゃうんですか?

ごちそうさん 公式サイト、YAHOO!テレビガイド他を参照)

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ごちそうさんNEWS
「msn west」に不定期に掲載されている【ごちそうさんの舞台裏】

(1)来週からは「杏」が大きな口を開けて…
2013.10.5 07:00

(2)素も食いしん坊の「杏」…料理レッスンの合間に“キンピラ”“つみれ”次々口に
2013.10.12 07:00

(3)大阪弁、製図、ボートを猛勉強した「悠太郎=東出昌大」…どうなる「め以子」との“不器用な恋”
2013.10.26 07:00

(4)憎々しすぎて笑えてしまう「和枝=キムラ緑子」の強烈演技…曲者「西門家3人女」のヒミツ
2013.11.9 07:00

(5)「卯野家×西門家」違いを鮮明に表現…“大阪の暮らし”甦らせる美術スタッフの“こだわり”
2013.11.23 07:00

(6)おどおど末妹「希子=高畑充希」はホントは21歳、大学4年生…演技衣装のままPCで「卒論」送って大奮闘
2013.12.7 07:00

ごちそうさん前半総集編・放送決定!
朝ドラ・杏さん、『和食』文化遺産登録に「世界に魅力を伝えたい」
2013.12.5 21:53
NHK大阪放送局は5日、“嫁いびり”など話題満載で絶好調の連続テレビ小説「ごちそうさん」について、前半の総集編を31日午前8時から総合テレビで1時間半にわたって放送すると発表した。

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2013年12月07日 (土) | 編集 |
第60回

片づけを終えため以子は、様子を覗いにお静の部屋を訪れていました。

「あんた、あの人から何か聞いたん? … うちとあの人とのこと」

「私、お静さんが無理やり落籍されたって話聞いて … だまし討ちで一筆取られたって話とか」


すると、お静は文机の引き出しから一通の文を取り出して、め以子に見せました。

『誓文

私 西門正蔵は 千代菊と夫婦になります』

正蔵、千代菊と連名で書かれて、それぞれの拇印が押されていました。

「 … 書かしたんは、うちやで」

「えっ?」

「酔わして書かしたんは、うちの方」


… … … … …

板の間では、ようやく祭から解放されて帰宅した悠太郎が給仕する希子に、何故獅子舞をしていたのか説明していました。

「 … それで、手伝いに行ったら、皆腹痛を起こして ~ 差し入れのおむすびが原因やと思うんやけど。

人が足らんようになって … 」


急きょ、無理やり駆り出されたという訳だったのです。

「大変やったんや」

ホッと息をついて、うなずいた悠太郎でした。

… … … … …

部屋で疲れた体を休めようと2階に上がった悠太郎は、お静の部屋から漏れてくる声に足を止めました。

「 … うちが、あの人に初めて会うたんは、10歳の時や。

ひとりぼっちで大阪に来て、2年目の夏やった」


… … … … …

天神祭の日、姐さん芸妓にハモニカを買いに行かされたお静でしたが、せっかく買ったそれを転んで台無しにしてしまったのでした。

「姐さんに折檻される思うたら、うち泣いてしもうて … その時にハモニカくれたんが、あの人やった」

… … … … …

「 … 泣かんとき」

転んでしまったお静に手を差し伸べた正蔵。

その手を取って立ち上がったお静に正蔵は優しく尋ねました。

「大事ないか?」

お静の着物の裾の汚れを払う正蔵。

そして、自分が持っていた包みをお静に差し出しました。

「これ、持っていき」

包みの中身は、白いお菓子 … ハモニカでした。

「正蔵さん」

女性に名前を呼ばれて、正蔵はお静の前から立ち去って行きました。

… … … … …

「 … あんな旦さんがええなって、幼ごころにも思たもんや ~ 初恋やな、うちの」

照れくさそうに笑ったお静。

「それから、何とかかんとか芸妓になって、おもろいこともおもろないことも山のようにあって … 芸妓稼業もそろそろ潮時かな思た頃、またあの人に会うたんや … 」

… … … … …

お座敷での再会、老けてはいましたが、お静はあの正蔵だということがひと目で分かりました。

… 正蔵の方は、少女に昔、ハモニカを与えたことなど覚えてさえいなかったかも知れませんが …

酌をするお静に正蔵は名を尋ねました。

「 … 千代菊言います」

「ほう、千代菊 … ええ名前や」

… … … … …

「この人は、仏さんがくれた、うちの最後の旦さんやと思た。

『一緒になって』って、会うたその日や … アホやろ?」


思い返しては、おかしそうにまた笑いました。

しつこくつきまとって … ある日、酒に薬を盛って … それを飲んで朦朧としている正蔵に一筆書かせた。

「 … それが、ホンマ」

め以子が正蔵から聞いていた話とまったく逆でした。

「けど … 師匠も、何であんなウソを?」

それが心に引っ掛かりました。

… … … … …

「ああ、始まりはたまたまやな ~

やり合うてる時、和枝ちゃんが言うたんや … 『あの人、ダマくらかして入り込んだクセに』って」


するどいところを突かれたお静は思わず口にしてしまったのです。

『入れあげたんは、あんたの父親や … ダマされたんは、うちや!』

それをたまたま聞いたいた正蔵。

「 … じっと、うちの方見て、ホンマにごめんなって、悪かったな、お静って …

あの人は、あの日からずっ~と、ウソついてくれてんねん」


正蔵らしいとめ以子は思いました。

「弱い人やと思う、ずるい人やと思う、実のない人やと思う … けど、あの人より優しい人を、うちは知らんのや」

… … … … …

「和枝ちゃんへの意地もある、芸妓稼業へ戻りたなかったもある … せやけど、うちがここに居ついてもうた一番の理由は … 」

それは、決してみじめな思いなどではないとめ以子には分かりました。

「 … み、未練ですか?」

お静の目には光るものがありました。

「私も押しかけ女房みたいなもんで … 」

ハッとする廊下の悠太郎。

… … … … …

「悠太郎さん、初めはとっても素敵に見えて … でも、一緒に暮らすと全然カッコよくなくて …

それでも、好きで … 前より好きで … そういう気持ちですか?」


笑顔がお静の答えでした。

「私、ちゃんと分かりたいんです。

お静さんの気持ち、ちゃんと分かってますか?」


お静は、泣き出しため以子の頬の涙を手で拭いながら …

「あんたが娘でよかったわ ~ 」

ふたりは手を取り合って … 泣いて、そして笑いました。

… … … … …

その頃、長屋では正蔵と源太が夜風に当たりながら、残りのハモニカを肴に酒を酌み交わしていました。

源太がハモニカを渡すには渡せたが … いろいろと邪魔が入って、結局、きちんと説明ができなかったことを報告すると …

「お静さん、怒ってへんかったかいな … 」

正蔵は、そのことばかりを気にして、何度もため息をついています。

「意地張らんと言うたええのに ~ 戻りたいんやろ? 本音は」

「13歳の時から、歯食いしばって家長やってる男がおるんやで …

戻らんのが、せめてもの筋や」


… … … … …

廊下でめ以子とお静の話を立ち聞きしてしまった悠太郎。

正蔵とお静の馴れ初めだけでなく、それは今まで知らなかった … 知ろうともしなかったことばかりでした。

真っ暗な部屋に机のスタンドの灯りだけ、頬杖をついて、ぼんやりとそれを見つめていました。

… … … … …

夜空に数発の花火が上がって、集会場では大村たちが締めの儀式を行っていました。

< こうして、天神祭は終わり … >

… … … … …

大阪の街にも西門家にも日常が戻ってきました。

「お静さん、何で急に着物売る気になったんですか?」

台所の手伝いをしながら、希子が尋ねました。

2階の部屋では、所狭しと広げられた着物を前にお静と値踏みする古着屋がソロバンを弾き合っています。

「もういらないんだって ~ これからは、前向きに居座るんだって、ダメ亭主を持った女房として」

め以子の説明で、分かったような分からないような … 希子はうなずきました。

「あ、それから、これからは、お母さんって呼んでって」

… … … … …

天神祭は終わっても、夏はまだこれから … 依然、うだるような暑さの建設課の部屋で悠太郎たちは図面をひいていました。

「何だ、この暑さは ~ 蒸し風呂じゃないか?!

働きながら風呂にも入ろうという、斬新な発想の元に、このような環境を敢えて作り出しているのか?!」


突然入って来て大声をあげているその小柄な男を見た悠太郎 … 忘れもしない、帝大で講義を受けていた建築家の竹本勇三その人でした。

「竹本さん、お久しぶりです!」

挨拶しましたが、竹本は訝しげに見るだけです。

「 … 西門悠太郎です。

開明軒の階段の時にお世話になった … 」

「ああ、あの無骨極まりない階段を作った、あの西門君か?」


そう言いながら、忙しく扇子を動かし続けています。

「えっ、何でこちらへ?」

「京都帝大の建築学科の教授を頼まれてね ~

愚かな建築界がようやく私に追いついてきたという訳だ! へっ」


相変わらず、清々しいほどの自信とデカい態度です。

… … … … …

「構へん、構へん、そこで広げて ~ 」

古着屋が帰ったと思ったら、今度は別の男たちが訪れ、お静に言われるがまま居間に反物を広げ始めました。

「お、お義母さん、その方たちは?」

恐る恐る尋ねため以子。

「呉服屋さんや、見たら分かるやろ?」

そんなことは、何となく分かりました … め以子が聞いたのは、何しに来たのかと言うことです。

「いや ~ 今日は、ぎょうさん買うてもらえるいうことで … ええのようけ持ってきました」

にこにこしながら反物を眺めているお静をめ以子は台所の方へ引っ張りました。

「何で売ったばかりで、また買うんですか?!」

「今までは、和枝ちゃん憎しで大して買いたないもんまで買うてたからな ~

これからは、ホンマにうちの好きなもんだけを買うねん!」


基本的に何も変わっていないお静に頭を抱えため以子です。

「せや、これからあの人のとこいくんやろ?

今まわりに居てはるおなごのこと、ちゃんと聞いてきて …

特にな、あの嫁はん気取りの年増な、あれハッキリさせといて!」

「ご自分でお聞きに … 」


反物のところへ戻ろうとしたお静ですが、思い出したように振り向きました。

「それからな … あの人にな … 」

… … … … …

め以子はハモニカの入っていた重箱を返しに正蔵の長屋を訪れました。

代わりにハモのちらし寿司を詰めてきました。

「やあ、きれいやな ~ 」

正蔵は喜んで重箱を手に取りました。

「それから、伝言です … お静さんから」

お静の名前を聞いて、身構える正蔵。

「 … ハモニカ、ごちそうさん … だそうです」

「ほうか … ははは、おおきに」


ほろっとして、やがてくしゃくしゃな顔で笑いました。

… … … … …

「いろいろ教えていただいて、ありがとうございます」

京都帝大の廊下、今日も安西から経済についての教えを受けた和枝は頭を下げました。

「いえいえ、お安いご用ですよ」

軽く会釈をして教授室に戻ろうとする安西を和枝は呼び止めました。

バッグから白いハンカチを取り出すとためらいがちに安西に差し出しました。

S.A … 安西真之介のイニシャルが刺繍してあります。

「私の名前 … 」

「差し上げます … こんなお礼しか、できゃしまへんけど … 」


… … … … …

「お義父さんのところによく来ている女の人ですけど … 親切で来てくださってるだけみたいですよ」

家に戻っため以子は、夕餉の支度をしながらお静に報告しました。

「 … 年増だなんて、罰当たりますよ」

「ふ ~ ん」


そう言いながらも少し安心したようなお静です。

そこへ、慌てた様子で和枝が帰って来ました。

「あ、おかえりなさい」

ただならぬ表情の和枝。

「先生が … 先生が家に、挨拶に来はるて!」

そう言って、和枝は板の間の上り口に腰を下ろしてしまいました。

挨拶と言うことは … ?!

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2013年12月06日 (金) | 編集 |
第59回

希子の提案で、ふたりきりでもご馳走を食べて天神祭の獅子舞を待つことに決めため以子は早速料理に取り掛かっていました。

「ただいま戻りました」

「お邪魔しま~す」


買い物から戻った希子の後から入ってきたのは、室井でした。

「どうしたの?」

「うま介も半ドンやし、どうせなら一緒にお獅子待とうって」


少しでも賑やかにしようと、希子が気を利かせたのでした。

「桜子と馬介さんも店の片付けが終わったら来るって」

「ホントに?」


… … … … …

集会所では、町衆が獅子舞に出る前の腹ごしらえをしていました。

皆にお茶を入れて回る悠太郎。

ふと大村が手にしている獅子頭が目に止まりました。

『家族皆でお獅子が来るの待とうって … 』

そう訴えため以子の言葉が今頃になって気になりだしました。

「あの … 獅子出発したら、僕帰ってもええですか?」

大村に伺いを立てましたが、取りつく島もなく却下されてしまいました。

… … … … …

め以子が腕を振るった天神祭のご馳走が並んだ西門家の食卓。

馬介と桜子もやって来たので、宴を始めようとしたその時でした。

「どなたか来てはんの?」

安西と出かけていたはずの和枝が帰って来たのです。

「お、お義姉さん、先生を案内してたんじゃ??」

急なことだったので、室井たちを家に上げてもいいか許可を得ていないめ以子は慌てました。

「家族でお獅子待つもんやって話したら、そういうお祭りなら帰りはった方がええんちゃうかって」

安西は遠慮して帰ってしまったと言いながら、客間の方を怪訝な顔で覗きました。

「何や遠慮のない方らでいっぱいみたいだすけど … 」

「どうもどうも、その節は ~

駆け落ちしてきた時に追い出された … 」


すると室井が愛想をふりまきながら近づいてきました。

「ユニークですよね、お義姉さん、いける口ですか?

僕一度お話ししてみたいと思ってたんです」


小説のネタにでもする魂胆なのか興味津々です。

遠慮のない室井の態度に和枝が怒り出すのではないかと気が気でないめ以子。

「何でっか? この方」

「す、すいません」


しかし、室井はそんなことお構いなしです。

「お義姉さん、出来たものつまみながら、ちょっと一杯やりましょうよ ~

お履き物脱いで脱いで」


和枝に何か言うスキも与えず、グイグイと奥へと引っ張って行ってしまいました。

それを唖然と見ていた希子がつぶやきました。

「室井さんって … すごい … 」

… … … … …

「ほな、行くで」

若い芸妓を従えたお静は、廊下に正座するとお座敷のふすまを開けました。

「おいでやす ~ 」

両手をついてお辞儀して、顔を上げたお静は、座敷に座っている客のひとりを見て、目を見張りました。

正蔵が末席に座っていたのです。

それも垣根越しに覗き見た年老いた姿でなく、若々しい正蔵が …

「よう、千代菊、よう来てくれた」

 … ほんの一瞬の幻でした。

今夜、座敷に呼んでくれた昔馴染みの旦那の声で我に返ったお静は、笑顔をつくろいました。

… … … … …

集会所では、いよいよ獅子舞たちの出発です。

出発に際して講元の訓示が始まりました。

あきらめきれない悠太郎は大村にしつこく食い下がっていました。

「もうええんちゃいます? 何やるんですか、この後?」

「もちろん、後片付けがあるがな ~ 」


その時です … 最前列に並んでいた町衆の何人かが腹を押さえてうずくまりました。

それに合わせたようにあちらこちらで次から次へと …

… … … … …

例年ならとっくに獅子舞がやってくる時刻でした。

しかし、今年は祭囃子もまだ聞こえてきません。

希子が様子を見に表に出ると、同じように近所の人たちも待ちかねて門の前に出ていました。

「希子ちゃん、お獅子まだ来いへんのやわ」

「今年は遅いな ~ 」


近所の小母さんたちと話を交わす希子。

… … … … …

一方、家の中では、室井と桜子に挟まれた和枝はいつになくご機嫌でした。

始めのうちは警戒していましたが、次第に室井のペースに巻き込まれて …

すでにお銚子を何本も空けています。

「ご不浄から出てきたら、先生が ~ 」

可笑しくてしょうがないといった風に、安西との馴れ初めを話しています。

「お義姉さん、その話もう5回目ですよ」

笑い上戸でしょうか? … そういえば、悠太郎も …

… … … … …

「もう5杯めやで?」

「うん、美味しくって、美味しくって ~ 」


気持ちがいいほどの勢いで天神祭の料理を食べるめ以子のことを横で見ている馬介自身の顔も幸せそうでした。

希子とふたりきりだったはずの夜がこんなに賑やかで楽しく過ごせるなんて …

室井のおかげで、和枝のご機嫌もよく、め以子も気兼ねなくご馳走にありつけているのです。

「でも … 」

ふと箸を止めため以子。

「皆で一緒に食べたかったな ~ 悠太郎さんもお静さんも … お義父さんも … 」

欲を言えばきりがないとは分かってはいるのですが …

… … … … …

久しぶりだからという訳ではないのでしょうが、お静はお座敷に集中できずにいました。

最近何かにつけ思い出す、少女の頃の記憶 …

「 … 泣かんとき」

転んでしまったお静に手を差し伸べた見知らぬ男。

その手を取って立ち上がったお静に男は優しく尋ねました。

「大事ないか?」

そして、男は自分が持っていた白いお菓子 … ハモニカをお静に差し出しました。

「これ、持っていき」

… … … … …

「お獅子、まだな?」

「なんや、えらい遅れとるな ~ 」


ここにも獅子舞を待ちわびている人たちがいました。

「なあ、傘踊りやってんか? 千代菊、得意やったやろ?」

「ええ」


旦那の要望でお静は三味線を握りました。

芸妓の踊りに合わせて鳴らし始めたその時でした。

弦が、ぷっつんと切れてしまったのです。

「いや … 」

「なんや、切れてしもたんか?」


旦那の言葉に、お静は畳の上に三味線をそっと置きました。

「もう、千代菊は居らんみたいですわ … 」

そう言って寂しく笑いました。

… … … … …

「お~い、居るか?」

め以子が5杯目のどんぶり飯を食べ終えた頃、源太が突然やって来ました。

「源ちゃんどうしたの?」

持っていた風呂敷包みを差し出した源太。

「うん、私に?」

「いやあの … 頼まれてんけどな」


源太が事情を説明しようとした時、希子が飛び込んできました。

「お獅子、お獅子、お獅子来ますよ ~ 」

慌てて表へと急ぐ一同。

取りあえず、め以子は風呂敷包みを抱えたまま、源太と一緒に皆の後に続きました。

… … … … …

微かに聞こえる祭囃子を聞きながら、皆で家の前に並んで待っていると、提灯に照らされた通りの向こうから獅子舞がやって来るのが見え始めました。

「あ、来た来た!」

沿道の人々から手拍子が起こりました。

ソレッ! ソレッ!

獅子舞の後ろからは、傘踊りや鳴り物の一行がついてきます。

ソレッ! ソレッ!

獅子舞に頭をかみつかれて笑顔になる子供 … 獅子舞に頭をかまれると、魔除けになるとか、病が治るなどのご利益があると言われ、子供は頭がよくなるように差し出すのでした。

「さすが天神祭、立派なお獅子だね ~ 」

東京から来たばかりの室井と桜子は初めて見る天神祭に感激していました。

「けど何や、今年は大きいない?」

和枝の言葉に源太もうなずきました。

「確かに … 」

… … … … …

「大きい気するな ~ 」

横から口を挟んだのは … お静でした。

「そうですね ~ 」

そう答えた後、め以子はハッとしました。

「お静さん!」

バツが悪そうに笑ったお静。

「な、何で?」

「やっぱり、お稽古とお座敷は違うわ ~ 何や、ヤキ回ってしもうてな … 」


それは方便だとめ以子は感じましたが、お静が戻ってきてくれたことがうれしくてうれしくて仕方がありません。

… … … … …

いよいよお獅子はこちらに近づいてきます。

「 … お兄ちゃん?」

その時、お獅子を見ていた希子がそうつぶやきました。

一行の中、ひときわ背の高い獅子の頭を操っているのは … 紛れもなく悠太郎でした。

… 和枝と源太がいつもより大きいと感じたのも当然でした …

「あれ、お兄ちゃんや!」

どうして?

め以子は目を見張りました。

ソレッ! ソレッ!

悠太郎は獅子を頭の上にかざして踊りながらゆっくりとこちらに向かって来ます。

「悠さんだ!!」

驚いた後から大喜びする一同。

… … … … …

悠太郎の獅子は西門家の前に立つとお祓いをしてから、舞を披露し始めました。

背の高い悠太郎が獅子を頭上に掲げては低くかがみこむ、にわか仕込みとは思えないほど見事な舞でした。

やんややんやの喝采のあと、悠太郎は獅子を手に持ってひとりひとりの頭をかんで回ります。

< これは、西門家に訪れた奇跡の瞬間でございました >

目と目を見交わした悠太郎とめ以子 … め以子はうれしそうにうなずき微笑みました。

やがて悠太郎の獅子は、次の家の前へと歩き出しました。

ソレッ! ソレッ!

… … … … …

悠太郎の背を見送っため以子は、少し離れた場所に提灯の灯りにうっすらと照らし出された正蔵の姿を見つけました。

驚き、急いで傍にいたお静と希子にも教えました。

正蔵もめ以子たちが自分に気づいたことが分かったようで、身の置き場がなさそうな顔をしています。

お静がにらむと、ぎこちなく小さく頭を下げました。

それを見たお静は、フッと力が抜けたように微笑んでお辞儀を返すと、正蔵は目をそらして立ち去ってしまいました。

… … … … …

獅子舞の一行が通り過ぎて、通りに集まっていた人たちもそれぞれの家に戻って行きます。

「何で、悠さん?」

室井に尋ねられましたが、め以子にも理由は分かりません。

「め以子、ちょっとちょっと」

源太は、さっきからめ以子に何かを伝えようとしていました。

「あんな … 」

め以子が抱えた風呂敷包みを指さして、ようやく説明しかけた時、室井が目ざとく近寄って来てしまいました。

「何これ、食べ物?」

「ああ、もうええわ ~ さいなら!」


… … … … …

家に入って、風呂敷を解くと中は重箱でした。

皆の前で改まってフタを開けると入っていたのは … 

「 … なあに?」

重箱の中を覗きこんだお静は顔色を変えて座り込んでしまいました。

それは白くて … ハモの湯引きに見立てた、幻の菓子 …

「ハ、ハモニカ … これ、ハモニカ … 」

うわごとのように繰り返す室井。

「 … そうですか?」

め以子もそうではないか思って … 隣のお静に確認しました。

重箱を受け取ったお静。

「何で、源太さんが?」

桜子の言葉にめ以子は、正蔵のことを思い出しました。

「師匠 … 」

ハッとする希子。

お静は重箱を手に、ハモニカを見つめたまま動きません。

… … … … …

「すいません … あの、私が師匠に … お静さんが食べたいかもとか、言ってしまって …

それで、作ってくれたんだと思うんです。

あの … 余計なことだったら、ごめんなさい」


源太は密かにこのことを伝えようとしていたのです。

申し訳なさそうにお静の顔を見ため以子。

しかし、お静は手にした重箱からハモニカをつかむとひと口頬張りました。

驚いて注目する一同。

お静は、ふた口、三口 … 泣きながらハモニカをひとつ食べ切りました。

「ふふっ、こんな … こんなんとちゃうねんで … ホンマは、もっときれいやねんで」

何回も鼻をすすりました。

「こんな … こんな、ぶっさいくちゃうねん」

そう言いながら、また手を伸ばして、ひとつつかみました。

「 … けど、こんなに、美味しゅうもなかったな」

愛おしそうに正蔵のハモニカをまた見つめました。

「こんなに美味しいもんでもなかったわ … 」

泣きながら笑って、もう一度口に運びました。

… … … … …

宴は終わり … め以子は台所で洗い物をしていました。

片付けを手伝っていた希子がふいに手を止めました。

「今日 … 一瞬だけ、皆で一緒に過ごしたんとちゃいます?」

「えっ?」

「お獅子来た時、お父さん居ましたよね?」

「あっ … ああ!!」


希子の言うとおりです … 間違いありません。

「そうですよね?!」

「そうよね、希子ちゃん!

家族皆で過ごしたのよね ~ 」


確かに … 形はどうあれ、西門家の家族全員が同じ場所に … ほんの一瞬ですが揃ったのです。

< 天神祭の夜、西門家に起きた小さな小さな … 奇跡のお話でございました >

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2013年12月05日 (木) | 編集 |
第58回

「芸妓に戻るて?」

お静から相談を受けた置屋の女将は驚いて聞き返しました。

「まあ、あんたやったら、上手いことやるやろけど …

本気なんか?」

「もう、潮時ですさかい … 」

寂しそうに笑ったお静でした。

… … … … …

そのお静のためにもハモニカを作ることを決めため以子は、室井がハモニカについて教わったという市場の青果店のトミの元を訪れました。

「白くて、ふわふわ … 」以外、材料や作り方について尋ねると、トミは『天神祭のことなら何でも知っている』という人物を紹介してくれたのです。

… … … … …

その人物は市役所にいました。

それも悠太郎と同じ建設課に …

「勤務中なんですが ~ 」

うだるような暑さの部屋、め以子がやって来た理由が、天神祭に関わることと聞いて、悠太郎はうんざりした顔をしました。

「天神祭に詳しい小さな巨人がいるって … いるんでしょ?」

「あ ~ はっはっは、あ ~ はっは ~ 」


高笑いとともに名乗り出たのは、大村でした。

「それは誰に聞いても、わしのことやがな」

「ハモニカの作り方について、聞きたいんですけど?!」


大村に駆け寄るめ以子。

「へっへっへ … まかしとき!

先ずやね、きれいなきれいなタライを3つ用意してください … 」


天神祭の前日、め以子はついにハモニカの作り方を突き止めたのです。

… … … … …

家の前まで戻って来ると、和枝が希子に手伝わせて、門に祭りの飾りつけを施していました。

「あっあっ、すいません ~ すいません!」

「ホンマに前の日に幕も提灯も出さんて、ご近所さんになんぞあったって思われますで!」


軽く注意しただけで後をめ以子にまかせました。

「あの、天神祭の献立なんですけど、西門の家のものって決まってますよね?」

め以子は、和枝を呼び止めてお伺いを立てようとしましたが …

「あ、わて、明日おらんさかい … 先生に案内してほしい言われてな」

少し照れくさそうな顔をして、家に入ってしまいました。

「 … そうなんですか?」

… … … … …

「えっえっ、帰って来ない?」

その日、帰宅した悠太郎から、明日は家に帰れないと告げられたのです。

「大村さんの手伝いで当日は市中引回しになりました」

連日の猛暑の上、仕事が終わってからも祭りの手伝いに駆り出され続けて、ややご機嫌斜めの悠太郎でした。

「え、ちょっと、断ってよ ~ 市役所は半ドンなんでしょ?

家族皆でお獅子が来るのを待とうって … 」

「あの人に借りを作ったんは誰ですか?」


それを言われると、返す言葉がないめ以子です。

… … … … …

希子と一緒に夕食の後片付けをしていると、そこにお静が帰って来ました。

「遅かったですね、お静さん」

「明日の打ち合わせしとってな … 天神祭、芸妓は書き入れ時やさかい」

「? 明日のためのお三味線の稽古ってことですか?」

「 … 出てみようかなあ、思て、久しぶりに … お座敷」


それは、芸者に復帰するということでした。

「料理屋でな、お客さんらとお祭り祝うんや ~

天神祭は人手が足らんさかい、枯れ木でも床の間に飾っとけって ふふふっ」


和枝、悠太郎に続いて、お静まで家を空けると言うのです。

「そんな … そんな … 天神祭は皆でって … 」

「ごめんな、間悪うて」

「 … いえ、私が勝手に突っ走ってただけですから」


口ではそう言いながら、め以子の落胆ぶりは希子が心配するほどでした。

「ホンマに明日やないとあかんのですか?」

「約束してしもうたさかいな ~ ごめんな」


希子が訪ねても、お静はそう答えただけで自分の部屋に引っ込んでしまいました。

… … … … …

片付けを終え、寝間着に着替えため以子が部屋に戻ると、悠太郎はすでに寝息を立てていました。

電気を消してからも、布団に座って悠太郎の寝顔をにらんでいたら、無性に憎らしくなってきて … 枕を投げつけてしまいました。

しかし、目を覚ますこともなく、その枕を抱え込んで寝返りを打った悠太郎。

枕を無理やり取り戻して、め以子は背を向けて布団に横になりました …

… … … … …

ひな壇に供えられた獅子頭に手を合わせる町の顔役たち、人が行き交う賑やかな通りに並んだ面や風車などを売る屋台、わくわくする子供たち、にこやかに挨拶を交わす人々、浴衣の女性、涼しげな音色を奏でながら通り過ぎていく風鈴屋 …

< そして、いよいよ天神祭と相成りました >

「3、2、1 … 」

またも秒読みの大村。

「半ドンじゃ、いくど ~ 赤門、時間やで ~ ごめんやっしゃ!」

渋々と席を立った悠太郎の前に2枚の浴衣を手にした藤井がやってきました。

「西門君、僕行かれへんわ ~ 戻らんと何されるか分からんし」

ほとほと困った顔で、母親と妻の浴衣、どちらを着たらいいと思うか尋ねました。

その質問を顎に手を当てて考える悠太郎、すがるような目で答えを待つ藤井。

「僕やったらですね … 両方とも着ません。

おふたりに由縁のない浴衣を着ます」


それを聞いた藤井の顔がパッと明るくなりました。

「それやっ!」

… … … … …

「会社も商売もお休みのようですね」

「ええ、この日は皆、家族や知り合いと家でお獅子を待つんですんよ」


天神祭の習いを説明しながら、和枝は安西と並んで賑わう通りを歩いていました。

「和枝さん … 」

ふと立ち止まった安西に名前を呼ばれ、和枝は振り向きました。

… … … … …

お座敷に出る準備を終え、ひと足先に持っていくよう置屋の使いの者に三味線を預けたお静。

鏡の前に座って、自分の顔を見つめていました。

… … … … …

板の間には、すっかり気落ちして、ぼんやり座っているめ以子。

その目の前に希子が差し出した包みは、寒天でした。

「ハモニカ … 作ってみましょうよ?」

希子の顔を見ため以子。

「今日じゃなくてもいいし ~

皆で過ごそうと思ってたのに … 結局、皆出てっちゃうし … ハモニカ作っても、お静さんもいないって言うし … 」


そこへ、唇に紅い紅をさし、薄紫の着物を着たお静が2階から下りてきました。

「ほな、行てきます」

腰をかがめて挨拶すると玄関に向かいました。

… … … … …

「お静さんって、毎年天神祭はお座敷出てるの?」

め以子に尋ねられて、希子はかぶりを振りました。

「 … 私がうるさいから、家に居たくなくなっちゃったのかな?」

張り切っていた反動か、め以子は悲観的な考えを口にしていました。

「あの … お静さん、もしかして … 家、出てくこと考えてたりしないですよね?」

「えっ?」


希子がつぶやいた言葉、め以子は全く考えも及んでいないことでした。

「 … その、復帰のお座敷とか?」

… … … … …

考えるより早く、め以子は裸足のままでお静の後を追っていました。

「お静さん!」

まだ門を出たばかりのお静は、何事かと驚いて振り返りました。

「あんた、足?」

裸足のめ以子は泣きそうな顔をして立っています。

「出て行くとか、考えてないですよね?」

いきなり尋ねられたお静は、一瞬目を見開いて顔を強張らせましたが … すぐにニコリと微笑みました。

「出て行くこと考えないんかって言うたは、あんたやんか?」

咎めるている風ではなく優しいげな口調でした。

「あっ、いや、言いましたけど … それは … 」

言葉に詰まるめ以子。

「分かってるって、冗談や冗談」

悪戯っぽく言った後、真顔に戻りました。

「 … あんたの言うとおり、ホンマは何べんも何べんも出て行こう思うててん。

けど、くやしいとか、うらみとか、み … 」


その先に言おうとした言葉を一度飲みこみました。

「 … みじめな思いに足引っ張られて、ずるずる8年も居てもうたんや …

言うてくれて、おおきに」


そして、またあの笑顔を見せました。

「ホンマ、嫌味とちゃうで」

まるで今生の別れのような顔をしているめ以子に軽くお辞儀をすると、お静はゆっくりと歩き始めました。

何も言えず、め以子はお静の背中を見送ることしかできませんでした。

… … … … …

玄関でお静の話を聞いていた希子は何か思いついたような顔をすると、部屋に戻って行きました。

… … … … …

肩を落としため以子が台所に戻って来ると、希子は出かける支度をしていました。

「希子ちゃんも出かけるの?」

「買いもん行ってきます」

「でも … 」

「ええやないですか、ふたりかて …

うち、ちい姉ちゃんのハモ食べたいです」


自分をいたわる希子の気持ちがしみました。

「ふたりで、い~っぱい食べましょうよ」

希子の言葉と笑顔で少し元気が戻った気がするめ以子は、何度も何度もうなずいていました。

… … … … …

集会所では、獅子舞に繰り出すために集まった人たちの世話をせっせと焼いている悠太郎の姿がありました。

「若いのに気が利くな ~ おおきに、おおきに」

「エライ! 赤門エライ! 市役所の誉や、ちょっと座れ座れ!」


大村に無理やり、顔役が座っている輪に引っ張り込まれて、酒を注がれています。

… … … … …

「お婆ちゃん、どないした?」

入り口付近に座っている若衆が大皿を持った老婆が立っていることに気づいて、声をかけました。

「おむすび、差し入れです」

若衆に手を引かれて、集会所の中へと足を踏み入れた老婆。

< 思えば、この一歩が … >

… … … … …

「ほな、行ってきます」

買い物かごをかけて、玄関を出て行く希子。

< … この一歩が、この日の奇跡の始まりでございました >

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2013年12月04日 (水) | 編集 |
第57回

「姉さん、逢引きしとったんです … 」

街で偶然、逢引き中の和枝と出くわした悠太郎。

最近のご機嫌の良さの理由は、そういうことだったのかと納得した悠太郎、希子、め以子。

しかし、反対に機嫌が悪いお静には、しばらくの間、伏せておこうと誓い合った矢先のことでした。

「 … あんた、男、でけたやろ?」

… … … … …

一同が揃った朝食の席、和枝のしぐさや雰囲気から読み取ったのでしょう … お静には、1分で見抜かれてしまいました。

「 … そうとは、限らないんじゃないですか ~ ねえ?」

茶碗と箸を持ったまま固まっている2人に同意を求めため以子の声はうわずっていました。

「何や、悠太郎さん、昨日のこと言うたん?」

「言うてないですよ、言うてないです!」


和枝に問われて慌てて否定した悠太郎。

「別に言うてもええけどな … 」

平然と箸を進める和枝。

「何や、あんたら知ってたん?」

知らぬはお静ばかりなり。

「あ … ぼ、ぼ、僕は、たまたま見たんです」

「けど、言ってはるような関係ちゃいまっせ」


和枝は昨晩悠太郎にも説明したように、株式のことを教わっているだけだと言いました。

… … … … …

「ふ~ん、まあせいぜいダマされんようにな … 」

お静の言葉に和枝は眉をひそめました。

「金目当ての詐欺かも知れんから、気をつけなはれ言うてんねん」

「何で金目当て?」


鼻で笑った和枝。

「せやけど、あんさん、他に何もないがな ~ 若こうもないし、色気もないし」

「あ、お静さん!」


め以子がたしなめようとしましたが、すでに遅し …

和枝も負けてはいませんでした。

「男っ気ないからって、ひがまんといてくれます?」

にこやかに返しました。

「男っ気? えっ、株式教えてもろとるだけの清い関係ちゃうかったん?」

揚げ足を取られて、和枝の口調がきつくなりました。

「わてはちゃんと人見ますさかいに …

甘い言葉にダマされて、家族をほっぽらかして逃げるような男にダマされたりせんさかい、安心しておくれやす」

「よういうわ ~ あんたらの父親やろ?」


またいつものやつが始まってしまったと、表情を曇らせた悠太郎と希子。

「あんさん連れて来はった時から、もう親とは思ってまへんさかい」

「あの親にして、この子ありやな … こんな家、関わらんかったらよかったわ」


… … … … …

「ほな、出ていかはったら? わては全く構いまへんで ~ 」

「うちはな、あんたらの父親に頼み込まれて、わざわざ芸妓辞めてんで!

いっぱしの芸妓やったんを、あんたらの父親に人生わやにされたんやんか?!

ようそんな口利けるな!」


誰も口をはさむことも出来ず、際限なく続く言い争いをめ以子はひやひやしながら見つめていました。

「そやから、いつでも、戻りはったらええのに!

悪いけど、わてらいっぺんもあんさん引き留めたことなんかおまへんで ~

勝手に居座りはったん、あんさんでっしゃろ!!」


とうとう我慢しきれなくなり立ち上がって座布団を手にしたお静を、悠太郎とめ以子が慌てて止めました。

怒りに肩を震わせるお静は、悠太郎を振り払って、2階へ上がって行ってしまいました。

「お静さん!」

… … … … …

少し落ち着く頃を見計らって、め以子はお静の元へおむすびを運んで行きました。

「あんたは、どない思うてるん?」

「あの、私は来てまだ半年も経ってないんですけど … もう何度も、出てってやるって思いました」


お静に尋ねられて、正直な気持ちを口にしため以子。

「お静さんも思ったと思うんです。

お義父さんはいなくなって、まま子は自分に反抗するばかりで … 」


お静の場合、味方をしてくれる者は一切おらず、その上まだ4人も悠太郎の上に娘が居たのですから、め以子どころの比ではありませんでした。

「 … 芸者さんに戻るってことは、考えたりしなかったんですか?」

遠慮がちなめ以子の質問に答えることもなくお静は、「ごちそうさん」と、おむすびを食べるのを止めてしまいました。

… … … … …

< 分かんないね ~ お静さん、どうしちゃったんだろうね? >

うま介の厨房で、一心不乱にメレンゲを泡立てているめ以子でしたが、あの後ひと言も話さず、ふさぎ込んだようにしていたお静のことが気になっていました。

そこへ、息を切らして帰って来た室井。

「分かったよ、め以ちゃん、『ハモニカ』は、お菓子だ!!」

「お菓子?!」

「うん、おタネさんが教えてくれたんだけどね …

昔、天神祭の夜店で一時期出てたお菓子なんだって!」


白くて、ふわふわで、きゅ~んと甘酸っぱくて … それが湯引きしたハモの形に見立ててあるのだと室井は、まるで自分は食べたことがあるかのように熱く語りました。

め以子は話を聞いただけで、目の前にその姿が浮かぶようでした。

「 … で、ハモに似ている『カン』、寒天の『カン』なのかな ~ 語呂が悪いんで、それを皆『ハモニカ』って、呼んでたんだって」

め以子はうま介を飛び出して、正蔵の長屋に走っていました。

… … … … …

「知ってる、知ってる、ハモに似た … これくらいのお菓子や」

やはり、正蔵も『ハモニカ』のことを覚えていたのです。

「師匠 … お義父さん、食べたことあるんですか?」

「ああ、ええ、まあ、物珍しかったからな … 話のタネにと思うて」


しかし、め以子が作り方を尋ねても、料理に興味を持つ前のことなので、分からないと答えました。

正蔵は、どうしてハモニカの作り方が知りたいのか尋ねました。

「お静さんが食べたがっている … かも、知れなくて」

「かも?」

「分からないんですよ … 何か心当たりありません?

お静さんと … その … ハモニカの関係というか … 」

「いや、何やそんなこと、聞いたことがないな ~ 」


正蔵が分からなかったら、もう終わりだと、め以子は何とか思い出してほしいと無理を言いましたが … 記憶をたどっても、どうしても思い出すことはできませんでした。

… … … … …

「師匠は、お静さんのことどう思ってるんですか?」

「ええ?」

「入れ揚げて落籍せて来たんでしょ?」


正蔵は筆を止めて、め以子の顔を見ました。

「あ … あ、ああ、そうや …

初めて会うた頃は … もう歳はそこそこいってたけれどな、三味線は上手いし、話はおもろいし、そらまあ ~ 笑ろた顔が可愛らしねん!

愛嬌のある芸妓やったな ~ 」


… … … … …

「 … 千代菊やないか?」

稽古を終えて、置屋を出てきたお静はそんな風に呼び止められました。

振り向くと、芸者時代にご贔屓にしてくれていた馴染みの旦那が若い芸妓を連れて立っていました。

「わあ、お久しぶりだすな ~ 」

「何や、三味線持って … あ、今、教えてなはんのやな ~

もうお座敷には戻って来いへんのか?」

「こんなお婆ちゃん、幽霊出たって大騒ぎになりますわ」


冗談と笑い飛ばしたお静でした。

「そんなことあるかいな … 千代菊のファンはぎょうさん居ったんやさかいに。

わて、今でもブロマイド持ってまっせ」

「もう骨董品ですがな」

「どえらい値打ちもんでございます」


愛嬌のある顔で笑ったお静でした。

… … … … …

正蔵はめ以子にお静との馴れ初めを語り始めていました。

「わし、ひとめ惚れや ~

『頼むさかい、嫁に来て』言うて、こう拝み倒したんや …

『奥さん亡くして、まだ1年も経ってへんのにあんた、何を考えてはりますねん!』

もう、けんもほろろ!」


当然だとめ以子は思いました。

「そこでや、わし一策考えた」

「一策?」

「大枚はとうてな、ひとりでお静さんをポンとこうあげてや ~

『なあ、今日が最後や、つきおうて』言うて、お酒を … 」


その酒の中に薬を入れて飲ませて … 朦朧としているお静の手を取って、一筆書かせたのでした。

『一緒になります』

「一筆取ったら、こっちのもんや!

『これ見てみなはれ、あんたここに書いたやないか、書いたやろ?』言うて、落籍せた」


正蔵の話にめ以子はほとほとあきれていました。

「それで … それで、面倒くさくなったら、ポイっですか?」

「 … いや、ポイはしてへん … わしが居らんようになっただけや。

反省はしとるで」


… … … … …

「師匠、お静さんの笑顔が可愛らしかったって言いましたよね?」

うなずいた正蔵。

「今はね … 目、つりあがってますよ」

迫るめ以子に正蔵は息を飲んで後ずさりしました。

「元はと言えば、師匠のせいですからね!」

ものすごい剣幕でめ以子は長屋から出て行ってしまいました。

… … … … …

うま介に戻っため以子は、行き場のない怒りを氷にぶつけて … 力任せにガリガリと削り始めました。

「もう ~ 信じらんない!

いい加減で女ったらしで、お静さんの言ってた通り!」

「 … ハモニカは?


馬介に聞かれるまで、すっかり忘れてしまっていました。

「よく分かんないって …

そうよ、ハモニカも分かんなかったのよ!」


またガリガリ

「ほな、どうすんの?

ハモニカ … 」


「 … 作んない」

ガリガリガリ

め以子の言葉にどうしようもなく悲しげな顔になった馬介。

「どうすんの?!」

馬介の声があまりにも大きかったので、め以子の手が止まりました。

「白うて ~ ふわふわなんやで!」

… 馬介さん、どうしちゃったの?

「きゅ ~ んと、甘酸っぱくて、ハモの湯引きにそっくりの幻のお菓子なんやで …

め以子ちゃんは、作らんでええの?

作りたくないの?

食べたないの?」

「それは … 」


答えあぐねているめ以子。

「お義母さん、喜ぶんじゃないかな ~ 」

「えっ?」

「ハモニカ出てくるまで、子供がお菓子待ってるみたいな顔してたよ …

あれは、ホントに食べたかったんじゃないかと、僕は思うな ~ 」


つらいところを室井に突かれて、め以子の気持ちは揺れ始めました。

「その幻のお菓子が天神祭の日に出てきたら、お静さんきっと喜ぶわよね ~ 」

室井とうなずき合う桜子。

… … … … …

「けど … 」

『こういうの止めてくれるかいな』

先日のお静の言葉も気にかかっていました。

「 … 踏み込むなって」

すると、希子がめ以子の前に立ちました。

「やってみましょう、天神祭やし!」

そうです … なにわ友あれ、天神祭なのです。

気づけば、一同の視線がめ以子に集中していました。

馬介などは、涙まで流しています。

「 … そうよね、天神祭だもんね …

やってみよう!」


… … … … …

夕闇迫る長屋、窓辺にひとり持たれて、酒を嗜む正蔵。

先程め以子に言われたことを思い返しているのでしょうか … 

そんな寂しげな姿をお静が塀越しに心配そうに覗いていました。

その場を去ろうとした時、表から正蔵を呼ぶ若い女の声が聞こえてきました。

「師匠 ~ おひとり?」

「いや、あんたとふたりや」


一変、軽口を叩く正蔵。

「てんごばっかり!」

女と楽しそうにやり取りをする正蔵を見て、お静は小さく微笑みました。

… … … … …

皆から背中を押されて、お静のためにも『ハモニカ』を作ることを決めため以子でしたが …

『白くてふわふわ』だとか『寒天』を使ってあるとか、断片的なことだけで具体的なことは何ひとつ分かっていませんでした。

取りあえず、思いつくがまま帳面に書き留めています。

「ふわっふわだもんね … 皆で食べたいな」

そんなめ以子の横に希子がちょこんと座っていました。

… … … … …

正蔵の長屋を後にしたお静は、その足で置屋にふたたび顔を出していました。

「芸妓に戻るて?」

驚いて、お静に聞き返した女将。

「もう、潮時ですさかい … 」

そう言って、寂しそうに笑ったお静でした。

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2013年12月03日 (火) | 編集 |
第56回

その晩、お静は悠太郎と室井に両脇を抱えられて帰って来ました。

玄関で酔いつぶれて眠るお静。

「何があったの?」

め以子に尋ねられ、室井が事情を説明しました。

「ネタ探しに酒場をウロウロしてたら、偶然、お静さんを見つけて … 」

… … … … …

そこは、悠太郎も大村たちとよく利用している立ち飲みの店でした。

ひとりでコップ酒を飲んでいるお静に室井は声をかけたのです。

「ああ、駆け落ちしてきた人や!」

… … … … …

「前から話し聞いてみたかったし、飲みながらお話聞いてたんだよ。

そしたら、ついつい飲み過ぎちゃって … 」


室井は少し気まずそうに話しました。

「どんな話してたの?」

「う~ん、ほとんどは、お父さんの話しかな ~ いい加減で女ったらしで、責任感の「せ」の字もない最低の男だって」


悠太郎の顔が引きつっています。

… … … … …

「何であんなんに引っ掛かってもうたんやろ?」

大分酒がまわって、足元がおぼつかないようになってきたお静。

「そろそろ帰りましょう … ねっ?」

室井が勘定を口にしたのを聞いたお静はそれを制して店主に尋ねました。

「待って … ハモニカない?」

たまたま流しの人が忘れていったものがあって、それをお静に渡すと …

「これとちゃう … こんなんとちゃう!」

普通、ハモニカと言われて思い浮かべるのは楽器です。

しかし、お静は違うと言って、いきなりそのハモニカで室井を殴りつけたのでした。

そこへちょうど、天神祭の手伝いを終えた悠太郎たちが店に入ってきて …

… … … … …

「 … とまあ、こういうことなんだけど」

「すいません … 」


室井に頭を下げた悠太郎とめ以子。

「ああ、いいのいいの、大したことないし …

それよりさ、大阪には別に『ハモニカ』っていわれるものがあるの?」


しかし、悠太郎は知りませんでした。

「何なんだろうね ~ ハモニカって?」

興味津々の室井、首をひねるめ以子。

「ハモニカ … 」

お静がもう一度うわごとのように口にしました。

… … … … …

あくる日。

二日酔いで起きて来られないお静を除いた全員が揃った朝食の時、それは起こりました。

「ふふふっ」

茶碗を手にした和枝がふいに楽しそうに笑ったのです。

信じられないものでも見るような顔で、自分を凝視している3人に気づいた和枝。

「どないした?」

「 … い、今、わ、笑うたから … お姉ちゃん」


ドギマギしながら答えた希子。

「わては、いつもニコニコしてますがな ~ 人聞き悪いこと言わんとって」

やけに機嫌がよく、また笑いました。

「それより、あの人具合どうや? … えらい飲んできはったんやろ?」

お静の体調の心配までして、め以子に尋ねました。

「あ、はあ … 」

「汁物ぎょうさん持ってってあげ、深酒には汁物が一番やさかいな」


およそ和枝の口から出るはずのない、お静へのいたわりの言葉 … 表情まで柔らかく見えます。

どういう風の吹き回しかと戸惑うめ以子。

何か企んでるいのではと怪訝な顔で和枝を見つめる悠太郎 …

… … … … …

め以子は、和枝に言われた通り、冷ました『おつい』をお静の部屋へ運びました。

「 … 気が利くやん」

布団の上に体を起こしたお静は美味しそうにおついを口にしました。

「あ、そうだ、お静さん … あの、ハモニカって何なんですか?」

途端、お静の顔色が変わりました。

「昨日、酔っぱらって、お店で『ハモニカ出せ』っておっしゃったの、覚えてません?」

「へ ~ そんなこと、うち言うたん?」

「 … おっしゃったみたいです」


何だか落ち着かない様子です。

「あれやん … ほれ、楽器の」

「そうじゃないって、おっしゃったみたいで … 」

「ほな、なんやろな … 」


め以子が正蔵のことも尋ねようとすると、おついを飲むのも止めにして、「頭が痛い」と、また布団に臥せってしまいました。

… … … … …

希子は夏休みの間、和枝の目を盗んで、うま介の手伝いに顔を出していました。

「希子ちゃん、代わって代わって ~ もう朝から氷削りでさ ~ 」

評判の焼氷を目当てにやってくる客が多くて、室井が音を上げています。

「え ~ うち出来るかな? それ」

そう答えながらも希子は楽しそうです。

「それは、私が代わるから … ちゃんと調べるのよ、ハモニカのこと」

そう桜子から言われた室井は、母親から遊びに行くのを許可された子供のようにうれしそうに店を飛び出していきました。

「ハモニカ?」

「ああ、調べたいんだって … 小説のためだか、単なる興味のだか知らないけど」


希子は、め以子も室井と同じと笑いました。

… … … … …

その頃、め以子は、糠床の世話で牛楽商店に居ました。

糠床をかき混ぜながらも、『ハモニカ』が気になって仕方がありません。

< お静さん、絶対にとぼけてるよね?

欲しくなかったら、ああは言わないよね ~ >

うわごとのように『ハモニカ』と口にした時のお静の顔を思い浮かべました。

< お酒出す所で出せって言ったってことは … >

「おい、もうエライ長いことかき回してんで!」

源太に言われて、ハッと我に返っため以子でした。

「あ、ごめん ~ 暑かったね?」

糠床に向かって謝りました。

< まあ、夏だからね … >

… … … … …

「せやせやせや ~ 昨日、お前んとこのお義母はん、何や大トラになったらしいやん?」

酒場の出来事は噂になって広まるのも早いようです。

「そうなの …

あっ、源ちゃん、『ハモニカ』って何かあるかな? … 楽器以外で」

「肉のアバラのところ、『ハモニカ』いう人もおるって聞いたことあるけど」


あまりにもあっさりと答えは返って来ました。

「えっ、そうなの?!」

源太が声をかけると、店主がその部位を見せてくれました。

「タレに漬けこんでな、焼いたら美味いねんぞ ~ 」

「これが?!」


すると、女将がメカジキの背びれのところもそう呼ぶと教えてくれました。

「これもな、魚もな ~ 食べてる恰好がハモニカ吹いてるように見えるって」

両手で持って口に当てる素振りをして見せました。

「ああ ~ ああ!!」

まさにそんな感じでした。

< 『ハモニカ』食べたら、天神祭の話もしやすくなるかもね ~ >

… … … … …

天神祭が近づいた街では、あちらこちらで、祭囃子や獅子舞の練習をしている光景が見られます。

「腰、気いつけや!」

大村に誘導されて、悠太郎と藤井は酒の一斗樽を集会場に運び入れていました。

「悪いな ~ 忙しいのに手伝うてもろうて」

「何を言うたりまんねん、大阪の人間だったら当たり前でんがな!

ね ~ 血沸き肉躍る、天神祭」


街の顔役に調子よく答えている大村。

半強制的に毎日こき使われて、ふて腐れているのは、悠太郎。

「何や、その仏頂面?」

… … … … …

牛楽商店で仕入れた情報を元にめ以子は、夕食に『ハモニカ』らしき料理を並べました。

メカジキの背びれの部分を醤油、砂糖、日本酒で煮込んだものと、タレに漬けこんだアバラ部分の肉を炭火で炙ったものです。

「お静さん、喜ぶだろうな ~ 」

ところが、め以子の思惑通りにはいかず … 膳に並んだ『ハモニカ』を見てお静は表情を曇らせました。

「何、これ?」

「えっ … 『ハモニカ』ですけど」


黙り込んでしまったお静。

「 … あれっ、違いました?」

すると、お静は不機嫌に答えました。

「こういうの止めてくれるかいな … 」

「えっ、でも … あの、お静さん食べたいかなって思って … 」

「酔うた時のことなんて、蒸し返されとうないん … 分からんか?!」


珍しくお静が和枝以外の人間に声を荒げました。

しかし、それを恥じるかのように「いただきます」とひと言、食事を始めました。

… … … … …

本日の手伝いを終えた建設課の3人は例の立ち飲みの店に居ました。

「どう、家ん中? そろそろ何かあるんちゃうの? 天神祭やし」

「ああ、姉は何故かご機嫌ですし、母が … 」


悠太郎の話を最後まで聞かず、藤井はいつものように自分の家のことを愚痴り始めました。

「何が大変かいうたら、もう浴衣 ~

僕の浴衣をね、おかんと嫁はんが毎年新しいのを用意しよるねん」

「風呂入る前と後で着替えたらええやないですか?」

「それ違うねんって!

風呂入る前におかんの着たら、『先そっち着るん?』って言われて …  出た後に嫁はんの着たら、『きれいになったら、そっち着るんか?』言われて … 」


… … … … …

め以子と希子が夕飯の後片付けをしているところへ悠太郎は帰宅しました。

「おかえりなさい」

何も言わず、うつろな顔つきで、のそ~っと台所に入って来た悠太郎。

弁当箱を受け取っため以子が「美味しかった?」と尋ねると、小さくうなずきました。

大して気にせず、食事の準備をするめ以子。

「 … 今日、夜、いらんて、姉さん」

ボソッと悠太郎。

「えっ?」

「外で会うて … 

姉さん、逢引きしとったんです」

「へ ~ 」


め以子の反応の薄さに驚く悠太郎。

「び、びっくりしないんですか?」

「だって、『逢引き』って、株やってるってことでしょ?」


西門家に来たばかりの頃、そう言って和枝にからかわれため以子でした。

「えっ?」

「ホンマの逢引きです!」

「え ~~~~ !!」


… … … … …

軽くひっかけて、立ち飲み屋を出た時、悠太郎は見知らぬ男性と並んで歩いてきた和枝に出くわしたのです。

持っていたカバンを落とすほど驚いている悠太郎に気づいた和枝は駆け寄ってきました。

「何や、ハトが豆鉄砲食らったような顔して?」

和枝は連れの男に悠太郎のことを紹介しました。

和枝に『先生』と呼ばれていたひげ面のその男は、安西真之介と名乗りました。

「安西先生は、京都帝大で経済いうの教えてはって … 株のこといろいろ教えてもろうてるのや」

「東京から来たばかりで、私は代わりに関西のことを教えてもらってるんです」


驚きのあまり何も言葉にできない悠太郎に代わって、藤井が訪ねました。

「どうやって知り合いはったんですか?」

「北浜の店でな、わてがご不浄から出てきたら、ハンケチ失くした先生が往生してはって … 」


ハンケチを貸してもらったのがきっかけだと安西は言いました。

「エライ臭い仲でんな ~ 」

藤井の大したことない冗談にも和枝は嫌な顔もせず朗らかに笑っていました。

そういえば … 持ち株が暴騰したと、和枝が狂喜していた時、このひげ面をサロン内で見かけたような気がします。

… … … … …

和枝のことをふたりに話した後、悠太郎はあごに手を当てて何かを考えこんでしまいました。

そして、同じようなポーズで思案するめ以子と希子。

「ご機嫌の理由は、これやったんやないでしょうか?」

そうです、きっとそうです!

「あっ … あの、思い出し笑い?!」

にっこりと笑った和枝の顔が3人の脳裏にフラッシュバックしました。

「 … 怖かったですよね?」

実感がこもった希子の言葉に何回もうなずいため以子。

< その夜、人生経験の足りない3人は … >

こそこそと相談を始めました。

「 … で、お静さんに言うの?」

め以子が切り出すと、悠太郎は希子に聞きました。

「まだ早いでしょうか?」

「ううん、わ、分かりません」

「どうするのよ、悠太郎さん?」

「僕、こういう分野はくわしくないんで … 」

「しっかりしてよ ~ 」

「ここは女性の意見で … 」


< 侃々諤々 ~

取りあえずは、お静の機嫌が直るまでは、伏せとくことにしようと、誓い合った3人でしたが … >

… … … … …

次の日の朝。

一同が揃った朝食。

微かな笑みを称えて食事を取る和枝。

そのしぐさもどことなくしなやかな雰囲気が漂っているようです。

気にしてはいけないと思いつつ、ちらちらと見てしまう、悠太郎、希子、め以子。

和枝の隣で黙々と食べていたお静が、ふいに口を開きました。

「 … あんた、男、でけたやろ?」

< 1分でばれたのでございました … >

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2013年12月02日 (月) | 編集 |
第55回

< 希子のお見合いの場を滅茶苦茶にした師匠は、悠太郎たちの父親 … つまりは、お静の夫の正蔵でございました。

かつて、家族を捨てて蒸発してしまった正蔵。

どうにか正蔵と今後も会うことだけは認められたものの、西門家の人々は、まだ正蔵にわだかまりを抱えたままでございました。

皆の気持ちをいつかは溶かしたい … と思いながら、め以子は大阪で初めての夏を迎えていました >

… … … … …

その日、め以子が市場の鮮魚店を覗くと、銀次がハモをさばいていました。

「銀次さん、忙しそうですね」

「もうすぐ天神祭やからな … 天神祭のごちそう言うたら、何ちゅうてもハモや」

「ハモ?」


銀次は出前用にこしらえたハモの湯引きを見せてくれました。

竹で作った器に笹の葉が敷かれてその上にハモの白い身が乗っていました。

「きれい!」

「ハモのごちそう作って、天神さんのお渡りを待つんや」

「お渡り?」


『お渡り』とは、獅子舞などの祭りの行列のことをいい … 家族皆でそれが回って来るのを待つのだと、銀次は教えてくれました。

「家族、皆で … 」

… … … … …

蝉の声が聞こえる部屋で、お静は何やら古い手紙を読み返していました。

小さくため息をつくと、それを丁寧に折り畳んで、机の上にある若い芸者の写真の横にそっと置きました。

… 若い頃のお静でした。

… … … … …

出かける準備をして、階段を下りて来たお静。

「 … 天神祭にお父さん呼ぶ?」

台所の方からそんな希子の声が聞こえて来て、足を止めました。

「そう、一緒にお家でお獅子待ちませんかって、今日師匠に話してみようかと思って」

「それ本気で言うてはります?」


め以子に不安そうに聞き返した希子。揉め事になるのは必至だからです。

「お祭りだし、1日くらい … ダメ?

1日だけ全部忘れて、美味しいハモたべてさ ~ 」


… … … … …

「あの人のとこ行くん?」

ふいにお静が声をかけてきました。

「あ、はい … 」

「ふ~ん … しがらき、持っていくん?」


め以子の手元を覗き込んだお静。

土産にしようと作った大阪の夏の菓子『しがらき』を切り分けていたところでした。

お静はうなずきながらも何か言いたげな素振りを見せています。

「様子見に行くのはいいって … 」

咎められるとでも思ったのかめ以子は念のため断りを入れました。

しかし、お静から返って来たのは …

「あれ、ホントなん?

… あの人、家のこと気にしてるって?」


その口調に僅かながらも関心があるかのような雰囲気を感じため以子。

「あっ、ホントです! ホントですよ ~ 師匠、本音は戻って来たいんだと思うんですよ」

ここぞとばかりに話し始めました。

「あ、あの人がそう言うたん?」

め以子には、お静の心が揺れているように見えました。

「 … まあ、私の考えなんですけど … あ、なんなら一緒にいらっしゃいません?

きっと、お義父さん生まれ変わったんだって、お静さんも … !!」


傍にあった包丁を握ったお静。

「あんな ~ 修羅場になっても、ええの?」

… … … … …

そのままお静は出かけて行ってしまいました。

「お静さんって芸者さんだったのよね?」

「そうです … 千代菊いうて、若い頃はブロマイドも出回ったぐらい人気者の」

「それをお義父さんが入れ揚げて、辞めさせて … 挙句の果てにポイっ」


さすがに恨むなと言う方が無理ではないかと、希子に言われて、め以子も否定はできませんでした。

… … … … …

め以子が希子を連れて長屋を訪れると、正蔵は芸妓たちを集めて通りで賑やかに焼肉をしていました。

「昼からご機嫌ですね ~ 」

「ああ、もうじき天神祭やさかいな」

「そのことなんですけど … お義父さん」


話すには絶好のタイミングなので、め以子はいきなり切り出しました。

「天神さんの日に家にいらっしゃいませんか?」

途端、表情が曇って目をそらした正蔵。

おどおどしながらふと入り口に立っている希子に気がつきました。

そして、ゆっくりと立ち上がって、近づいて …

「お、お父はん … お見合いの時はどうも … 」

先に口を開いたのは希子の方からでした。

「あんた、うちの娘によう似てる … 」

「 … 娘です」

「わ、わかってる … 」


10年ぶりの末娘にどう接していいのか戸惑っているのでしょうか …

「冷たい、お、お、お茶でも飲まんか?」

あたふたと用意し始めました。

そんな正蔵を見て、顔を見合わせ微笑むめ以子と希子。

… … … … …

お静の出かけた先は、自分もいたことがある芸者置屋、女将に頼まれて若い後輩たちに三味線や踊りの稽古をつけているのです。

稽古を終えて帰ろうとするお静を女将が呼び止めました。

「あ、千代菊、ちょっとお茶飲んでいき」

女将は今年入ったばかりだという見習いの少女に茶を持ってくるよう言いつけた際に掃除の仕方が悪いと小言を言いました。

そんな様子を微笑みながら見ているお静。

少女が奥に引っ込むと女将は優しい顔になって言いました。

「あんた、ここへ来た時、あんくらいの時やったな … 」

「ええ」

「正蔵はん、戻って来たんやて?」


呼び止められた理由はこのことだったようです。

「 … 戻って来たというか … ミナミに居ったんです」

「ふ~ん、いっぺん、顔見に行ってやったらどうや?

… 天神祭やし、仲直りもしやすいちゃうか?」


… … … … …

置屋から浮かない顔で出てきたお静、偶然すれ違った風鈴売りを振り返りました。

思い出したのは、さきほどの少女と同じ年頃のこと …

「泣かんとき」

転んだまま泣いているお静に、その男は手を差し伸べて言いました。

手を借りて起き上がったお静。

「大事ないか?」

心配そうにお静に尋ねた男 …

「 … 天神祭やしな」

そうつぶやき、お静はクスッと笑いました。

… … … … …

♪え ~ 奴さん、どちらへ行く ~

正蔵の長屋では、すっかり打ち解けた希子が三味線に合わせて芸妓たちと一緒に歌っていました。

… 和枝が知ったら目を剥いて怒りそうな …

それを愉快そうに眺めている正蔵。

「あの、お義父さん、天神さんのことなんですけど …

皆で一緒にご飯食べませんか?」


中途半端に誤魔化されたままだった、今日訪ねてきた本題を改めてめ以子は正蔵に伝えました。

「天神さまや ~ 」

正蔵はめ以子の話をはぐらかすと、希子たちの歌に合わせて踊り始めてしまいました。

「お義父さん!」

「今日は何言っても、あかんと思うわ … またにしとき」


顔なじみの女になだめられても、あきらめきれないめ以子でした。

いい調子になった正蔵は酒がまわったせいもあるのでしょう … よろよろと倒れ込んで、女の膝を枕にしながら、手拍子をし始めました。

そんな様子を塀の陰から見つめる目 … お静でした。

… … … … …

建設課。

現在のようにエアコンなどない部屋はまるで蒸し風呂。

悠太郎はタライに水を張って机の下に置き、そこに素足を入れて暑さをしのいで仕事をしていました。

それでも顔から汗は噴き出てきます。

「5、4、3、2、1 … 」

いきなり秒読みを始めた大村。

「5時や ~ !!

今年も来た来た来ましたよ ~ 」


頭には鉢巻、タスキをかけてそわそわと出かける準備を始めました。

「何、仕事してるねん ~ 早う片付け ~ 行くど、赤門!」

「 … 何処行くんですか?」

「手伝いや!

これから1週間、天神祭のお手伝いへ行くんや!」


… … … … …

「赤門、シャキッとせい!」

祭りの集会場。

張り切る大村に仕切られて、藤井と悠太郎は何やら重たい荷物を運ばされました。

「これ毎年つきおうとるんですか?」

「家おるよりましやからな」


… … … … …

株仲間の集まるサロン、ここにも浮かない顔がひとり … 和枝でした。

「倉田はん、わてに何かええ縁ありませんかいな?」

いきなり思いもよらぬことを聞かれて、目を丸くする倉田。

「ないですわな ~ この歳で …

あ~あ、何でわてはこうツキがおまへんのやろ?」


和枝が投げやりになりかけたその時 …

「和枝ちゃん、これっ!!」

倉田が手元に届けられたメモを見て大声を上げました。

「米冨紡績が、暴騰や!」

サロン中に触れ回る小僧。

和枝が受け取ったメモには、『米冨紡績株 190円20銭 → 286円25銭 +96円5銭』と書かれていました。

悲鳴を上げながら、ソファーから立ち上がった和枝。

持っている株がうなぎ上りに値上がりしているのです。

「あわわわ … と、取りあえず、顔洗うてきます」

そんな和枝のことを、あまり見かけないひげ面の男が目で追っていました。

… … … … …

西門家。

悠太郎だけでなく、和枝もお静も今日に限って夕食の時間になっても帰って来ません。

め以子は希子とふたりきり。

結局、正蔵から天神祭の返事をもらうことができませんでした。

「お父さん、気にはしてても、やっぱり家には戻りたくないんやないですかね?」

「何で?」

「だって、戻ったって、針のムシロやないですか …

あそこでああやって暮らして、で、ちい姉ちゃんがたまに様子見に来てくれるのが、一番ええと思ってるんと違います?」


希子の言っていることがほぼ正しいのかもしれません … でも、そうは思いたくない、正蔵は家に帰りたがっているのだと信じたいめ以子でした。

… … … … …

正蔵は、め以子が持ってきてくれた『しがらき』を、ひとり縁側で食べていました。

表を親子連れが天神祭の話をしながら通り過ぎていくのが聞こえました。

「ふっ、天神祭か … 」

思い出し笑いの正蔵。

… … … … …

ふたたび西門家。

玄関の外で人の声が … ようやく誰かが帰って来たようです。

「おかえりなさい」

出迎えるめ以子。

扉が開いて入ってきたのは、悠太郎と室井に両脇を抱えられたお静でした。

「はいはい、ちょっと座りますから ~ 」

上り口に降ろされたお静は畳のあるところまで這いずって … そして、そのまま眠り込んでしまったようです。

「 … どうしたの?」

め以子は、こんなお静をみるのは初めてでした。

その時、お静の口から …

「ハモニカ … 」

確かにそう聞こえました。

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2013年12月01日 (日) | 編集 |
さて、次週の「ごちそうさん」は?

天神祭です。家族皆でお獅子が見られますように …

天神祭が近づき、め以子()は家族全員で巡ってくる獅子を待ちたいと願う。

戻らんのは筋や

が、希子(高畑充希)と一緒に訪ねるも正蔵(近藤正臣)は取り合わず、見ていた静(宮崎美子)は落胆。偶然酒につきあった室井(山中崇)は静の、「ハモニカ」を出せという言葉をめ以子に伝える。

一方、悠太郎(東出昌大)は天神祭の手伝いに。正蔵を家に呼ぶことは断じて許さない。

め以子は静にハモニカについて尋ねるが、とぼけて答えない。源太(和田正人)らから、肉や魚にハモニカと呼ばれるものがあると聞き、料理して出すが静は不機嫌に。

姉さん、逢引しとったんです

え~~?!


ある日、悠太郎は和枝(キムラ緑子)が安西(古館寛治)という男と一緒にいるところを見て仰天する。

め以子はハモニカとは何かをつきとめ、正蔵を問いただすが、はぐらかされて怒り心頭。ハモニカの詳細は大村(徳井優)に教わることに。

あんたらの父親に人生わやにされたんやんか!

芸妓に戻るて??


天神祭の当日、静はお座敷に、和枝は安西と出かけてしまう。め以子はハモなど季節の食材でごちそうを用意するが気が乗らない。

が、静と和枝は帰宅。源太も食べ物らしい包みを持ってくる。西門家の面々の前を獅子が通りすぎた瞬間、正蔵を見かけるめ以子。包みの中身はハモニカで、め以子は祭の日の小さな奇跡を思い返す。

家族皆でお獅子が来るの待とうって …

ごちそうさん 公式サイト、YAHOO!テレビガイド他を参照)

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