NHK朝ドラ『花子とアン』『ごちそうさん』『あまちゃん』…ストーリーを勝手に解釈&裏読み … ほぼネタバレ…
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2014年01月31日 (金) | 編集 |
第101回

次の日、め以子は集会所で多江を捕まえると、『興亜建国パン』の作り方が書かれた紙を突きつけて訴えました。

「見たんですけど、このパン、絶対不味いと思うんです。

どうせやったら同じ材料で違うもん作りませんか?

小麦粉と魚粉と野菜でお焼きみたいなものにするとか … 卵入れたら、もっと美味しなると思いますし」

「卵なんか入れたら、意味ありまへんがな!

大切なんは安い材料で、しっかり栄養取ることなんです」


多江は、め以子の言い分など認めようともせずに紙を突き返しました。

「 … せやけど、これ絶対不味いですよ」

美味しく食べられるように工夫することのどこがいけないのか、め以子にはさっぱり分かりません。

「あのな、西門さん、そもそも美味しいもん食べよう思うこと自体、ぜいたく極まりない話やねんで ~ 」

「えっ?」

「前線の兵隊さんのこと考えたら、美味しいの不味いの言うてられますか?」


それは、金科玉条のような言葉でした。

多江にとって一番大事なことは、栄養評議会 … お国の言われた通りのものを作ることだったのです。

… … … … …

すごすごと、家に戻っため以子は、不本意ながらも『興亜建国パン』を作り始めました。

すり鉢で煮干しをすり潰している時、冷たい視線を感じて顔を上げると、そこにふ久がいました。

「何でやるん?」

「えっ?」

「そんなに嫌やったら、やらなかったらええん違う?」


ふ久の目にも嫌々やっているように見えていたのです。

「しゃあないやろ、約束してもうてんから」

「別のもんにしたら、あかんの?」


それは、め以子自身も感じていた疑問でした。

「あかん、言わはんねんから、しゃあないやろ ~ あんたの学校とは話が違うの!

ご近所なんて、止めとうても止められへんの!

… おかしいな思うても、やらなあかんことはやらなあかんの!」


その言葉は自分自身に言い聞かせたようなものでした。

「けど … 皆がそないしたら、おかしなことがおかしいって言われへんまんまにならへん?

おかしいまんま … 」


ふ久の言うことの方が正論だということをめ以子は分かっていました。

しかし、今それを言い出したからといって、どうなる訳でもないというのも事実でした。

「知らんわ ~ そんなんっ」

め以子は若いふ久のように、嫌なものは嫌といい、逃げ出すことができない自分に苛立っていたのです。

黙って作業を再開すると、ふ久はやるせない顔をして2階へ上がっていってしまいました。

… … … … …

< メリケン粉とベーキングパウダー、大豆粉、海藻の粉、魚粉を入れ篩にかける … 砂糖と塩を溶かした水に、篩った粉と刻んだ野菜を入れ、サックリと混ぜ合わせる。

これを丸めたものを、蒸し器に入れて、10分 … >

め以子は恐る恐る蒸し器のふたを開けました。

湯気とともに何ともいえない匂いが漂ってきたので、思わず顔をしかめて手で鼻を覆いました。

< とうとう出来上がっちゃったね … >

… … … … …

集会所には、それぞれがこしらえた『興亜建国パン』を持ち寄って集まりました。

「ほな、行きましょか?」

一同、多江の後に続きます。

< こんなもの食べさせていいのかね? >

うしろめたさというより、まるで罪悪感に近いものに苛まれているめ以子でした。

… … … … …

「この値段までやったら、出せると思うんですけど」

なにわ工業の社長にけんもほろろ、ほとんど門前払いを食らってしまった悠太郎たち。

木崎に改めて提示したのは、公定価格を上回ってギリギリねん出できる金額でした。

「けど、さすがにこれ、まずいんとちゃいますかね?」

思わず大きな声を出してしまった木崎は慌てて声をひそめました。

「 … 官の人間が闇価格でっていうのは、さすがに … 」

「もしもの時は、僕が責任とりますよ」

「西門さんひとりの責任で済むかどうか … 話引っ張ってきた相澤さんかて … 」


当然、そうなれば、木崎本人にも火の粉は降りかかってくることでしょう。

「ここは、竹元先生にご納得いただくのが賢明やないでしょうか?」

… … … … …

しばらく経って、みねが大きな袋を持って、西門家にやってきました。

「これ、引き取ってくれって … 」

みねに渡された袋の中身を見ため以子は戸惑いました。

婦人会の有志が作って、小学校に寄贈したばかりの『興亜建国パン』が入っていたのです。

「これ、何?」

「婦人会の方で処分してくれって、学校の方からつき返されてんて …

学校は食べ物粗末にすんなって、教えるやろ?

せやけど、ここまで不味いと、捨てるなとも言われへんよって、先生が指導に困るからって」

「そんな ~ 」

「ホンマ災難もええとこやね ~ ほな」


みねに責任は全くないのですが、帰っていくその背中をうらめしく見つめため以子でした。

… … … … 

傍らでじっと見つめていたお静とふ久。

お静が試しにと、袋からひとつ手に取りましたが、ひと口食べて放り出してしまいました。

「これ … これ、人の食べるもんちゃうで ~ 家畜のえさやそれ」

… … … …

め以子は食卓の上に新聞紙を敷くとその上に突き返されたパンを広げ、こまかくちぎり始めました。

「それ、何すんの?」

怪訝な顔で見ているお静。

「畑の肥やしにでもします」

「はあ ~ ぜいたくな肥やしやな」

「ホンマに … 」


そう答えながらも悔しいやら、腹立たしいやら …

… … … …

『肥やしにしか、ならんようにしたのは、どこのどいつや?』

その時、め以子には確かにそんな声が聞こえました。

「えっ、えっ?」

辺りを見回しましたが、声の主は見当たりません。

『わしや、わしや ~ お前の手の中や!』

思わずパンを置いて、後ずさりしため以子。

『わしはな、美味しい御出汁になれたんじゃ ~ この、ボケっ!』

「 … 煮干しさん?」


… … … …

お静とふ久は、め以子の様子がおかしいことに気づきました。

『別の形で仲良うなりたかったな ~ お豆さん』

『はいな ~ 昆布さん。

僕とあなたと大根さんと、美味しい煮物にもなれましたのに … 』

『ホンマに何考えとんねん、アホンダラ!』

「昆布さん … 大豆さん … 」


どうやら、この食材たちの声はめ以子にしか聞こえていないようです。

いや、それとも … め以子の良心が作り出した幻聴?

… … … …

そういえば、ずっと昔にも同じようなことが一度ありました。

あれは、大阪に来た最初の年、魚島季節の頃、和枝のいけずのせいで大量に余ってしまった鯛たちに責められた時のことでした。

あの時は、正蔵の力を借りて何とか切り抜けることができたのでしたが …

… … … …

『お前らも言うたれ、言うたれ!』

『なあ、砂糖さん』

『ホンマやな ~ 小麦粉さん … 甘いパンになれましたのにな』

「 … 怒ってはる」

『こんな扱いあり得へん!』

『誰も食べてくれへんのかいな ~ 』

『悲しいわ!』

『普通に出会っていれば ~ 美味しいご飯になれたのに ~ 』


… … … …

食材たちの嘆き、悲しむ声に苛まれ、怯えた顔で耳を押さえていため以子。

突然、パンをつかむと、無理やり口に詰め込んで、食べ始めました。

「あんた、大丈夫か?」

このパンの味を知っているお静が心配して尋ねましたが、め以子はうなずき口を動かしています。

… … … …

すると、見かねたふ久が横からパンに手を伸ばしました。

しかし、め以子はその手を払いのけます。

「食べんでええっ!

こんなもんは食べたらあかん … あんたは、食べたらあかん!!」


そのくせ、自分は無我夢中、一心不乱にパンを口に運んでいます。

< 苦行、苦行、ああ、苦行 …

この世のものとは思えないパンを食べ続ける苦行の中でめ以子は … >

思えば、幼いころから美味しい『ごちそう』に囲まれた人生でした。

『食べたい』から『食べさせたい』に変わったあの日 …

『私、皆の笑った顔がもっと見たい ~ 皆のごちそうさんが聞きたい … 』

< ただただ、おのれの人生を振り返っておりました >

… … … …

< そして、その苦行を終えた時 …

め以子はおのれの原点に返っておりました ~ どこに向けていいのか分からない憤りとともに >

板の間に大の字に仰向けに横たわったまま微動だに動かないめ以子。

お静と3兄妹は声をかけるにかけられずに少し離れて様子をうかがっていました。

「大丈夫かな ~ 何か倒れてるけど」

「まあ、ちょっと食べ過ぎやからな … 」

「 … 今日、晩御飯ってどう?」


まあ、それがさしあたっての問題でした。

「作ってとは、言い難いわな ~ 」

「ほな、わしやろうか?」


祖母と兄の会話を聞いていた活男が名乗りを上げた時、め以子がおもむろに起き始めました。

… … … …

「大丈夫か? … 胃薬でも飲むか?」

お静の問いかけに首を横に振っため以子は、ゆっくりと立ち上がったかと思ったら、買い物かごを手にすると、土間に下り履物を履きました。

「ど、何処に行くん?」

「 … 買い物、行ってきます」


そう答えると、よろめきながらも玄関を出て行ってしまいました。

… … … …

うつろな目、おぼつかない足取り … 夢遊病者のようにフラフラと道を行くめ以子。

… … … …

「お母ちゃん、うちには食べるなって … 何でやろう?」

ふ久はずっと考えているのですが、答えが見つけられずにいました。

すると、台所に立っていた活男が話し始めました。

「お母ちゃん、結婚する時、お父ちゃんと約束したんやて ~

3食、365日美味しいもん食べさせるって … せやから、きっと、わしらにもそうなんや」

「何でそんなこと知ってんの?」


お静は不思議に思って尋ねました。

「手伝いしてる時に聞いたことある」

… … … …

「トミ、もう終いにしようか?」

源太が出征してから塞ぎがちなトミ、心配したマツオは店を早終いしようとした時です。

「マツオさん … 」

いつの間に現れたのか、店頭の陳列棚に手をついて、め以子が辛そうに立っていました。

息を飲んだマツオ。

「大丈夫か? どないしたん?」

気を取り直して尋ねたトミ。

「 … お肉ください」

「ああ ~ 何がいるんや? … なんぼいるんや?」


め以子は、すっと腕を上げて店の奥を指さしました。

「あれ、ください … 」

め以子の指さす方をたどるマツオ。

そこにあったのは、調理台の上、まださばいていない巨大な牛肉の塊でした。

「 … あれ?」

マツオが確認すると、め以子は大きくうなずきました。

… … … …

牛楽商店の前に人だかりが出来ています。

しばらくすると、包んだ肉の塊を天秤棒に吊るして担いだめ以子とマツオが店の奥から出て来ました。

「牛楽さんよ、それどないすんのや?」

「婦人会で何かすんのか?」


やじ馬から質問が飛びましたが、マツオ自身何も聞かされていないので答えようがありません。

「め以ちゃん、どないすんの ~ これ?」

天秤棒の前を担いでいるめ以子に尋ねました。

しかし、め以子は質問には答えず、天秤棒に肩を入れなおすと前進し始めました。

め以子が進んでいくと人だかりはさ~っとふたつに分かれて横に寄りました。

その間を通り抜けていくめ以子とマツオ。

… … … …

「肉、ごっつい肉!」

「ぜいたくやんか、これ ~ 」


行きかう人からそんな声が聞こえてくる中、ふたりはまるで神輿のように肉を担いで夜の街を練り歩いて行きます。

… … … …

西門の台所にドカッと下された肉の塊。

「今日、お肉なん?」

おどおどと尋ねたお静。

しかし、家族で食べるにしては量が多すぎます。

め以子は一切何も説明もせずに牛楽商店から借りてきた牛切包丁を構えました。

その姿は鬼気迫るものがあります。

目を見張る一同。

そしてザクッと肉に包丁を入れ、さばき始めたのです。

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2014年01月30日 (木) | 編集 |
第100回

「お母ちゃん、これ何?」

いつもと同じ朝、家族が揃った西門家の朝食。

泰介が今日の節米料理に入っている具を尋ねましたが、め以子は何だか様子がおかしく、心ここにあらずという感じで、ボ~っとしたままです。

「お母ちゃん?」

「 … 素麺をきつね色になるまで炒めて、ご飯の上に乗せて塩入れて炊いたんや」


見かねた活男が代わりに説明しました。

食べることが好きな活男は料理にも興味があるようで、台所を手伝うことも多いのです。

「今日も貧乏ったらしいな ~ 」

「ああ、そうですね … 」


お静の言葉にも気の抜けた相槌を打っただけのめ以子を一同はまじまじと注目しました。

「何や、あんた今日は1席ぶたへんの?」

「ぶつ? … 何をですか?」


いつもならば、お静の節米料理に対する文句を退けた後、どんな工夫がしてあるかをこと細かく解説するめ以子だったはずです。

「お母ちゃん、大丈夫?」

「え、何が?」


何処かちぐはぐな感じです。

その理由を推察した悠太郎、難しい顔でめ以子を見つめていました。

… … … … …

玄関を出た悠太郎、川久保、希子の3人。

「やっぱり、親しい人が出征してしもうて、気落ちしてはるんですかね?」

「源太さん、ええ人ですもんね … 」

「君にとってもな」


川久保の言葉に笑い出した希子。

「えっ、どういうことや?」

首を捻った悠太郎。

「ああ … うち、昔、源太さんのことちょっとええなと思っとったんよ」

「えっ、そうやったんか?」


誰にも打ち明けず、心に秘めた恋でした。

「 … 昔の話よ」

「昔の話が一番性質悪いんですよ … 」


すると、川久保は何かを思い出そうとして、希子に確認しました。

「えっ … あきよ … さん?」

ドキッとする悠太郎。

「あきよさん … やったかな ~ 」

希子と川久保は意味深に顔を見合わせると、笑いながら歩き出しました。

「言うたんか?」

慌ててふたりの後を追いかける悠太郎。

… … … … …

しかし、め以子の様子がおかしい理由は、別なところにありました。

< そうだよね ~ ちょっと言いにくいよね ~

源ちゃんも心配だけど … イチゴがなくなったことがやたらに気にかかるだなんて、あきれられるに決まってるもんね >

「けど、何かな … 」

< 嫌な予感がするんだね? >

… … … … …

「 … 何ですか、これ?」

お静から手渡された回覧板を見ため以子は思わず声を上げていました。

そこには、『砂糖割当配給制実施』の文字があったのです。

「お砂糖の配給制?」

「たぶんこれからは、砂糖が自由に買えんようになるってことちゃうか」

「自由に買えない? … お砂糖に統制がかかるいうことですか?!」


情報は瞬く間に行きわたり、め以子が市場を訪れた時には、砂糖を求める人で長蛇が出来ていました。

… … … … …

一方、建設中止となった現場から資材調達するという打開策を思いついた悠太郎でしたが、当初の目論見通りには中々事は運んではいませんでした。

「潰れそうなのは結構あるんですけど、雲行きが怪しいもんは、うちと同じように資材が間に合わんでって理由ですから … 鉄筋が交付済みでってとこはまず … 」

そこへ、息せき切って部屋に飛び込んできた部下の相澤、これぞという情報を入手してきました。。

「オリンピックの観光客見込んで、大阪駅前に計画されてたホテルなんですけど … オリンピックの中止にかかわらず、計画続行してきたらしいんですけど …

それが、ここに来て、人手不足で断念するって」


鉄筋はすでに受領済みと知った悠太郎はてきぱきと職員に指示を与え始めました。

「よしっ、今から木崎さんにこっちに来るように言うてくれ!」

… … … … …

結局、砂糖を手に入れることができなかっため以子は、うま介に寄ってボンヤリとしていました。

「桜子 … どうなっちゃうんだろうね ~ この国は?」

「はあ?」

「だって、砂糖が自由に買えなくなったのよ … イチゴもいつの間にか消えてたの。

これって、ものすごくものすごく怖いことじゃない?」


つい先日までの勢いは何処へ … 身近な状況の変化でようやく危機意識が芽生えてきたのでしょうか。

「はい、どうどう ~ 」

おろおろと立ち上がっため以子を桜子はまるで動物の相手でもするように宥めました。

「め以子、め以子 … ほら、アメダマ」

さすが、付き合いが長いだけはあります。

め以子は、もらったアメダマを口入れて少しは落ち着いたようでした。

「 … ほとんど調教やな」

馬介と室井が感心しています。

… … … … …

「何も泣くほどのことないじゃない ~ まだ、ある所にはあるらしいし … 」

「ああ、配給もそれなりの量はあるらしいで」


するとめ以子は訥々と話し始めました。

「私ね、ず~っと、お砂糖に助けられてきた気がするの … 辛い時にはいっつも甘いものが私を … 」

悠太郎に自ら求婚して断られた時、和枝のいけずで家を飛び出した時 …

「源ちゃんも、イチゴも、お砂糖も … 私の大事なものが、どんどん知らないうちに取り上げられていく気がして」

そう言って、また涙ぐむめ以子。

そんなやり取りを見ていた室井ですが、いつものように茶化したり、空気を読まない言動はなく、滅多に見せたことがないような真剣な顔で何かを考えていました。

… … … … …

め以子が帰った後、馬介がやや持て余し気味に言いました。

「けど、まあ泣くことはないわな ~ 」

「でも、め以子の人生はあれがすべてだから …

食べて食べさせて以外、な~んもないんだもん。

すっからかんなんだもん」


それは桜子故に理解できることなのかも知れません。

室井はといえば … 猛然と原稿用紙に向かって、一心不乱にペンを走らせ始めていました。

今日のめ以子に何か刺激を受けたことは推測できます。

なにわともあれ、やる気をみせた夫の姿に微笑む桜子でした。

… … … … …

足取りも重く家路をたどるめ以子。

掲示板の標語に目が留まりました。

『日本人ならぜいたくはできない筈だ』

その時、思い浮かべたのは、タネの言葉です。

『 … いちご作るんやったら、別のもん作ろういうようになってきているみたいでな ~

手間かかるし、お腹膨れへんし、ぜいたくやて』

貼り紙の前に手のひらを差し出して『ぜいたく』という文字を隠してみました。

< 日本人ならイチゴはできない筈だ … 何かしっくりこないよね?

日本人ならイチゴは食べられない筈だ … いや ~ あったら、絶対食べるよね >

そんな他愛のないことを考えているところへ、多江を先頭に婦人会の面々が通りかかりました。

… … … … …

「西門さん、ちょうどよかった!

新しい貼って回るん、あんさんも手伝うて」


多江は手にしていた新しい標語が書かれた貼り紙をめ以子に手渡しました。

『ぜいたくは敵だ!』

その紙に書かれていた言葉です。

「 … ぜいたくは敵になったんですか?」

「今更、何言うてはんの?」

「お砂糖もぜいたくやから、規制されたんですか?」

「当たり前やん ~ 砂糖は味をようするだけで、骨弱するし、体には害しかあらへんの知りはらへんの?」


得意顔の多江、め以子にしてみれば初耳のことでした。

「えっ?」

「百害あって一利なし … ぜいたくの極みや」

「せやけど、お砂糖食べると元気出るやないですか?

害ばっかりってことはないと … 」

「お国がそう発表したんや ~ 砂糖は害やて、こないだ発表したんや」


… … … … …

その頃、悠太郎は木崎とともに、建設中止になったホテルから鉄骨を譲り受ける交渉のため、その会社 … なにわ工業の社長の元を訪れていました。

譲渡価格など条件を提示した書類に目を通している社長。

緊張の面持ちの悠太郎たちの前に茶菓子が運ばれてきました。

菓子が乗った皿を手に取る悠太郎。

「見事な金継ぎですね」

割れた皿が金を使って貼りあわせてありました。

「ははは ~ それね、わての趣味ですねん。

割れた皿でもね、やり方次第で、別の違った景色が見えてくる … それが面白おます」


自分の趣味をほめられた社長は上機嫌です。

しかし、商売の話は別でした。

読み終わった書類を乱暴に木崎に投げ返したのです。

「話になりまへんな ~ その条件では」

「どの辺りがでしょうか?」

「どの辺りが?!

言わな分からんのかいな ~ 公定価格で来とるやないか?!」


木崎は官の仕事なので自由に予算を動かすことができないと訴えました。

「その辺は勘案していただけると … 」

「はっはっはっは ~ 冗談はやめてくれるか?

官やいうても、裏から来とるんやろが!

… 公定でいくんやったらね、それこそ軍に買い取ってもらいますわ」


自分の方が立場が強いことが分かっていて笠に着る社長。

「帰り!!」

… … … … …

その夜は、婦人会の定例会の日でした。

め以子は近所の主婦みねとともに出席してはいましたが、以前のようにやる気が湧いてこないのが事実でした。

「あ、お砂糖買えた?」

「いいえ … どっか買えるとこあります?」

「この辺やったらね ~ 」


ところが肝心なところで、多江が現れたので話の腰を折られてしまいました。

「この度、婦人会では栄養評議会で考案された『興亜建国パン』の普及に協力することになりました」

多江の口から出たのは聞きなれない名前のパンでした。

「これひとつで完全な栄養が取れ、しかも節米になるという画期的なパンでして … 当婦人会といたしましては、北天満尋常小学校に300個、このパンを寄付することとなりました」

一同からどよめきが起こりました。

300個というのは、どえらい数です。

「 … そういう訳でして、調理にご協力いただける方、どなたかいらっしゃりませんか?」

多江は、最近、小学校では弁当を持ってこれない生徒も出てきたこと、弁当泥棒も頻繁に起きていることなどを例に挙げて、子供たちのためにと訴えました。

… … … … …

「それで、結局、引き受けてしもうた?」

め以子からの報告を聞いて、お静は少しあきれたように聞き返しました。

「そんなん、お弁当持ってこられん子がいるって言われたら … 」

「人がええですね ~ お義姉さんは」


川久保も苦笑いです。

「こまいことやけど … 材料って後で補てんしてもらえん?」

泰介に尋ねられて、め以子は慌てだしました。

「おかしいやんね ~ 普及っていうんやったら、普通出すべきやんね ~ 」

そのあたりも曖昧にされたまま、結局持ち出しになりかねません。

体よく押し付けられた感がいっぱいです。

すると、今度は婦人会で渡された材料と作り方が書いてある資料を読んでいた活男がめ以子に尋ねました。

「お母ちゃん、これホンマに合うてる?」

め以子は怪訝な顔をして資料を手に取りました。

「これ、印刷間違うてるんとちゃう?」

改めて目を通しため以子。

「 … 見てなかったん?」

「配られてすぐお開きやったから … 」


不安になった希子も横から覗き込みました。

『興亜建国パン』とあり、その横に続けて、材料として、メリケン粉、魚粉 …

「魚粉ってこれ、何?」

「魚粉いうたら … 」

「飼料とかに使う、あれですよね?」


悠太郎と川久保が眉をひそめました。

魚粉に続けて、海藻粉、大豆粉と続き、最後には野菜の切れ端が挙げられていました。

「 … どんな味か、皆目分からへんな ~ 」

お静の言う通りでした。

確かなことは決して美味しい訳がないということです。

もうここまでくると、節米を通り越して本当に家畜のえさでした。

「あきまへん!」

め以子は資料を食卓に叩きつけました。

「このパンはあきまへん!!」

こんなものを子供に食べさせてはいけない … 怒りに震えるめ以子でした。

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2014年01月29日 (水) | 編集 |
第99回

姿をくらましていた源太が戻ってきた次の日。

め以子は、明晩開くことになった出征祝の打ち合わせのため、牛楽商店に顔を出していました。

「出征祝のお料理、源ちゃん何か食べたいものある?」

「あらかた言うてもうたしな … あっ!」


そう言いながらも源太はあるものを思いつきました。

「イチゴ … せや、お前 ~ イチゴ買うて、イチゴ!

わし、あん時のイチゴ返してもろうてへんで ~ 」


… … … … …

「イチゴ、今年品薄でな ~

手間かかるし、お腹膨れへんし、ぜいたくやて … いちご作るんやったら、別のもん作ろういうようになってきているみたいでな」


タネの青果店をはじめ、め以子が当たった店はどこも、いちごを取り扱っておらず、結局、源太にはあきらめてもらうことになってしまいました。

残念なことにそういうご時世だったのです。

… … … … …

糠漬けの世話をしていると、幼い頃の懐かしい出来事が浮かんできました。

お寺の供え物のイチゴを一緒に盗んだこと、イチゴジャムを取り合ったこと … トラに食べさせようとしていたイチゴを川に落としてしまった時、探し出して来てくれたのも源太でした。

イチゴはめ以子と源太にとって、思い出深い果物でした。

< そうだね ~ あの頃、手に入らなかったイチゴが皆が食べられるようになって … いつの間にか、また消えちゃったんだね … >

… … … … …

ほとんどの店が閉店した夜の市場、牛楽商店だけはまだ明かりが灯っていました。

店の中では、源太がひとり愛用の包丁を丁寧に研いでいる最中でした。

全て研ぎ終わると、次はまな板、その後はテーブルと、店中を入念に磨き上げました。

きれいに片付いた店を感慨深く見渡した源太。

「お世話になりましたね ~ 」

トレードマークの鉢巻を外して、テーブルの上に静かに置きました。

… … … … …

次の日、うま介には『本日貸切り』の貼り紙がされて、市場の仲間など源太の出征を祝う人たちが大勢集まりました。

西門家からも、泰介、活男、川久保と希子の夫妻がすでに参加。

ふ久もお静と後から来るはずですし、悠太郎も仕事が終わり次第、顔を出す予定でした。

テーブルの上には、め以子たち女性陣が腕を振るったご馳走や酒が並んでいます。

牛楽商店提供の最上級の肉を焼いたビフテキも運ばれてきました。

今夜ばかりは、ぜいたくが何だかんだは、関係ありません。

… … … … …

入営のため、丸刈りにした源太が皆に酌をして回っています。

「源太おじさん」

源太が振り向くとそこには泰介と活男、それに桜子たちの娘、文女が並んで立ってました。

「おお、文女ちゃん、また大きゅうなったな ~ 」

「この度はおめでとうございます」


3人は揃って頭を下げました。

「わしが行ったら、すぐ日本の大勝利や!」

… … … … …

しばらくすると、源太の挨拶が始まりました。

「え ~ 皆さん、ご存じやと思いますが …

わしは、丸々したおなごを好んでまいりました」


どっと受ける一同。

「ところが先日、今まで縁のあった女性にお別れを言いに回りましたところ … ことごとく皆、スッとしておりました。

遺憾の極みでございました。

こんな戦争は早く終わらせんといけません。

このままやと、日本中の女が … あないなことになってしまいます!」


そう言って、源太が指さした先に立っていたのはめ以子でした。

「えっ、私? … 何でやねん?!」

今度は大爆笑する一同。

「おい、これは食うとるで ~ 」

「つかなあかんとこに、ついてへんだけや!」

「 … えらいすいませんな ~ 」


湿っぽくならないようにと源太流の見事な挨拶でした。

「泉源太は、『おにく』のために、一命を捧げ戦って参ります!」

そう言って敬礼した源太に拍手と喝采が …

「今日は、食うて食うて、食うてくださ~い!!」

… … … … …

「お待っ遠はんです ~ 」

そこへ、お静が何と数名の綺麗所を引き連れてやって来ました。

息を飲む源太。

「わてからのハナムケや」

一瞬静まり返った男性陣から歓声が上がりました。

お姉さんたちに囲まれた源太。

「これ、行きとうのうなるやんか ~ 」

… … … … …

め以子は一番後から入ってきた若い芸者を見て驚きました。

「ふ久?!」

日本髪を結い、化粧をして、きれいに着飾ったふ久だったからです。

「ふ久やって、分からんやろ?」

馬子にも衣装、得意げに笑ったお静の仕業でした。

め以子はあることが気になり出して、お静に尋ねました。

「お義母さん、これ … なんぼかかったんですか?」

知らぬ顔の半兵衛 …

… … … … …

♪ えらやっちゃ、えらやっちゃ、よいよいよいよい ~

三味線の音に合わせて踊る芸者たち、皆も立ち上がって見よう見まねで踊り始めました。

ずっと沈み込んでいたトミも活男に促されてマツオと一緒に踊りの輪に加わっていきます。

♪ えらやっちゃ、えらやっちゃ、よいよいよいよい ~

め以子はふと、厨房でふ久が源太に封筒を渡しているところを目にしました。

… … … … …

「ふ久ちゃん、何なんこれ?」

源太が封筒に入っていた紙を広げると、一面に細かい数字が書き込まれていました。

3. 1415926535 8979323846 2643383279 5028841971 …

「円周率 …

何にも考えとうない時、これ覚えたら忘れられる」

「うん、おおきに」


ふ久は源太がこれから、何も考えたくなくなるような場所へ行くのだと理解しているようです。

「おじさん … ホンマは逃げようと思ってたん違う?」

突然のふ久の質問に源太の顔が一瞬強張りました。

すべてを見透かすかのようなふ久の目、源太は包み隠さず話しました。

「まあ、チラッとは考えてんけど … 逃げるとこなんか何処にもないからな ~ 」

そんな会話、め以子がいる場所までは届きませんでした。

ふたりだけの秘密です。

… … … … …

宴もたけなわ … 突然、オルガンの音がして、馬介と室井一家が皆の前に一列に並びました。

「え~っと、今日は源太さんの門出ということで … 源太さんにお祝いの歌を用意しました」

桜子が挨拶すると、一同がどよめきました。

室井と顔を見合わせた桜子。

「私たちは駆け落ちしてここへ来ました。

あの時、源太さんがいてくれなかったら、どうなっていたことと思います。

… そんな思いを込めて作りました」


前置きが終わると、馬介の姉・龍子がオルガンで伴奏を弾き始めました。

作詞・室井幸斎、桜子、作曲・高木龍子 … そして、歌うはもちろん、川久保希子。

♪ 高く 遠く あてどもない空 道をなくした あの日

差し出された 君の手のひら 描かれていた希望の地図 ~


希子の澄んだ歌声と、室井の歌詞に心打たれ、皆は感動していました。

… … … … …

め以子は、思い出しました。

ずぶ濡れの源太からイチゴを渡された幼い日。

見知らぬ土地で、途方に暮れていた時、近くにいてくれたあの日 …

♪ ああ、君よ忘るるな

かけがえのない君であること 君にすがる者たちのこと

僕たちは ここで 待つ ~


め以子が目をやると、源太は辛そうに背を向けて、酒を一気にあおっていました。

… … … … …

大分時間も経ち、源太の姿が見当たらないことに気づいため以子。

酔いつぶれて扉の外に横たわったいました。

「大丈夫、源ちゃん?」

目を閉じたままで返事もありません。

め以子は傍らに座って顔を覗き込みました。

「明日、ちゃんと行ける?」

水の入ったコップを差し出しました。

「ほらっ」

すると、源太の手がスッと伸びて、め以子の手をつかみました。

「 … ない」

「うん?」


口の中で何かつぶやいています。

「行きとうない … 」

無意識のうわ言かも知れませんが、確かに聞こえました。

… … … … …

そんなふたりの様子を仕事が終わって駆けつけた悠太郎が偶然にも見てしまったのです。

「 … 出征祝や」

悠太郎は、め以子に気づかれないように、踵を返して今来た道を戻っていきました。

源太は、め以子の腕をつかんだまま眠っているように動きません。

… … … … …

何も知らず、帰宅しため以子は、悠太郎が戻っていたことを知って残念そうに言いました。

「出征祝、顔出してくれはったらよかったのに」

「 … 個人的に済ませましたので」

「えっ?」


当然ですが、め以子には悠太郎の言っている意味が全く分かりません。

「寝ます」

席を立った悠太郎は、階段の上がりしなで振り向きました。

「僕は … ひょっとしたら、源太さんの『代用品』なのかも知れませんね」

「はっ?」


こういうところは、いつまで経っても成長しない … できない悠太郎でした。

少なからず自覚があるようで、そんな自分を恥じるように2階へと急いで上がっていってしまいました。

「 … 代用品?!」

何かをひらめき、手を叩いため以子。

怪我の功名といえばよいのか … 悠太郎の嫉妬がめ以子に決定的なヒントを与えたのです。

… … … … …

二日酔いに効くからという訳でもないでしょうが … 昨晩の礼と出発の挨拶に訪れた源太に、馬介と桜子は試行錯誤を重ねているタンポポコーヒーを出しました。

「 … どう?」

「うん、まあまあやな ~ 」


しかし、まあまあであっても、飲めるところまでは進歩しているのです。

「戻って来る頃には、もっと美味しゅうしとくさかい」

馬介の言葉に笑ってうなずいた源太。

「ほな、わし行くわ」

源太が席を立とうとした時、息を切らせながらめ以子が飛び込んできました。

「源ちゃん!」

… … … … …

「はい ~ 腹ごしらえ、してって」

弁当箱を源太に差し出しました。

「おお … 」

受け取ってフタを開けた源太は目を見張りました。

弁当箱の中身はイチゴでした。

いや … イチゴに模して作った『代用品』だったのです。

「わあ、よく作ったね、こんなの」

横で見ていた桜子が感心して言いました。

源太はヘタの部分をつかんでひと粒取り出しました。

「つまめるの?」

更に驚く馬介。

「どうぞ ~ 代用品で申し訳ないけど」

「ほな、いただきます」


口の中へと放り込みました。

それは、忘れもしない子供の頃に食べた開明軒の赤ナスご飯の味でした。

イチゴの赤は赤ナスご飯の赤だったのです。

「お前んちの味やな … 」

微笑み、うなずくめ以子。

… … … … …

「ほなね … 」

店を出て行こうとするめ以子を源太は呼び止めました。

「 … ごちそうさ」

しかし、め以子はその言葉を遮ったのです。

「まだやから!

まだ、いっぱい残ってるでしょ?

全部食べてから、ごちそうさん言いに来て … 」


振り返っため以子の目には光るものがありました。

戸惑った源太の顔が笑顔に変わり、いつものように答えました。

「おうっ!」

「うん … ほなね」


源太は、め以子の背中を見送った後、しっかり腰を下ろして、赤ナスご飯のイチゴをかみしめました。

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2014年01月29日 (水) | 編集 |
第98回

「来てもうたんや、赤紙 … 」

源太が手にしていたのは召集令状でした。

「まあ、しゃあないわな ~ こればっかりは」

赤紙を机の上に置いた源太は、さばさばと言いました。

「 … 女房子供もおらんし、わしみたいな奴が行くのが一番ええんやし」

「そやけど … 」


源太のことを我が子のように思っているトミは泣き崩れてしまいました。

「まあまあまあ ~ そんなもん、バッバッと上手いこと立ち回るさかい大丈夫や!」

… … … … …

「おお、何する?」

トミに泣かれて持て余していた源太は、カゴいっぱいのタンポポを持っため以子のことに気づきました。

「よう似合うとるな ~ ごんぼう!

そうしよると、何やお前、ごんぼうの精みたいや」

「ええっ、いや、これタンポポ、タンポポの根!」

「 … 何すんねん、そんなん?」


コーヒーの代用品を作ると聞いた源太はあきれて大笑いしました。

「草の根まで食うんやな?」

「放っといて!」


そんないつものやり取りもどこか空々しく … 

いつまでも泣き止まないトミと強張ったマツオの顔を見て、め以子もまた黙り込んでしまいました。

… … … … …

タンポポコーヒーを試作するためにうま介を訪れため以子は、タンポポの根を水洗いしながら、源太に赤紙が届いたことを報告しました。

「そうか … 源太、行くんか?」

め以子は、桜子が何か言いたげな顔で見つめていることに気がつきました。

「 … 何?」

「別に … 」

「言いたいことあるんなら、ハッキリ言ってよ」

「分かってるんだろうから … 言わない」


先日の一件以来、何となくギクシャクしているふたりでした。

「どうせ、勝手ですよ!

今まで旗振って、送り出してきましたよ … そのくせ、いざとなったら、『何で源ちゃんが』って思ってるわよ!」


め以子自身、自分の言動と矛盾する感情に戸惑ってたのです。

「せやけど … お国のためなんだから … 皆、我慢してそうしてるんだから、仕方ないじゃない」

桜子としても、め以子を責めようとは思っていませんでした。

… … … … …

一方、悠太郎は久しぶりに昔の上司である藤井と再会していました。

「 … どないですか、民間の景気は?」

「いや ~ ぼちぼちやな」

「あ、いつ満洲から戻って来はったんですか?」

「こないだや」


藤井は数年前に市役所を退職して、大陸に渡っていたのです。

「鉄筋の確保、えらいことなってるみたいやな?」

「設計も変更に次ぐ、変更で … 」


話しているうちに眉間にしわを寄せ、考え込んでしまった悠太郎を見て、藤井は何故か笑い出してしまいました。

「何ですか?」

「いや ~ 昔もこんなことあったな、思て … 小学校の時、皆で夜っぴいて、設計変更して … 」

「ああ、やりましたね ~ 」


悠太郎も新人の頃を思い出して笑い出しました。

「議会承認が下りへんかもしれん ~ いうてな」

ハッとする悠太郎。

「 … そういえば、べにこさん元気?」

… べにこさんとは、昔、建築課でめいこの糠つぼを預かっていた時、世話をしていた藤井が勝手につけていた呼び名です。

「それですよ、藤井さん!」

「べにこ、何かあったん?」


突然、席を立った悠太郎は、礼を言うと、藤井を残して部屋を出て行ってしまいました。

… … … … …

高速鉄道部の部屋に戻った悠太郎は、慌ただしく職員を集めました。

「軍需、軍需で苦しんでるのは、うちだけやない!

潰れたり、建設途中で暗礁に乗り上げる計画もぎょうさんあるはずや」

「そこから鉄筋引っ張って来るゆうことですか?!」


悠太郎が言わんとするところをいち早く見抜いた真田が興奮気味に叫ぶと、一同から感嘆の声が上がりました。

「手分けして、目星をつけて回るんや!!」

… … … … …

「ほな、行ってくるわ」

気の抜けたようなトミにそう告げて、出かけようとした源太は、再び市場に立ち寄っため以子と、店の前で鉢合わせしました。

「あ、どっか行くん?」

「ああ ~ ちょっと、これんとこ行ってくる」


源太は小指を立てて見せました。

「あ … そう」

「ほなっ


歩き出した源太をめ以子はもう一度呼び止めていました。

「あの … 」

怪訝な顔をして見ている源太にめ以子は頭を下げました。

「おめでとう … 」

それは、赤紙が届いた者に対する礼儀でしたが、さっきはどうしても言えなかったのです。

「うん … おおきに」

一瞬、複雑な表情をした源太でしたが、笑顔を作って礼を言うと、今度こそ出かけて行ってしまいました。

その背中を見送りながら、これでいいんだと思う反面、居たたまれない気持ちに苛まれるめ以子でした。

… … … … …

夕飯の席でめ以子が家族に源太のことを話すと、食卓は静まり返ってしまいました。

「源太おじさんが … 」

活男でさえ、そう言ったままで言葉をなくしています。

「 … お国のためなんですから、笑って送り出してあげましょう」

「うん、立派なことや … 」

「せやな」

「義務ですもんね … 」


活男、泰介、希子と、皆自分自信を納得させるかのように言いました。

「いつなんですか?」

出征する日を尋ねた川久保。

「入営するんは、1週間後かな」

… … … … …

「あ ~ もう、うっとうしい!

こんな戦争、止めてもうたらええのに」


お静の言葉にめ以子は目を剥いて怒り出しました。

「何ちゅうこと言うんですか?!」

「ご飯も貧相になるし、男もおらんようなるし、ロクなことないがな」

「せやから、1日も早う終わらせるために、皆で頑張ってるんやないですか?!」


激高するめ以子を横目にしながら、ふ久はほとんど食事に手を付けずに席を立ってしまいました。

「お姉ちゃんもうええの?」

「 … もうええの?」


訝しげに尋ねるめ以子。

「お母ちゃんの話でお腹いっぱいや … 」

非難する様な目でめ以子を見ると、2階へと上がっていってしまいました。

… … … … …

数日後。

め以子のタンポポコーヒーの試作品が何とか完成しました。

馬介、桜子と3人で試飲するのですが、め以子の表情からもあまり自信がないことが読み取れます。

せ~ので口に含んだ後、ひとり残らず顔をしかめました。

「ホンマにドイツの人はこんなん飲んではるん?」

咳こんでむせながら馬介はめ以子に尋ねましたが、分かるはずもありません。

第一、この製法が本当に正しいかどうかも怪しいのです。

「コーヒーください」

のこのこと2階から下りてきた室井に全員が自分のカップを差し出しました。

何も知らずにひと口飲んだ室井は、物凄い形相で裏庭に飛び出して行ったのでした。

これではとても店に出せる代物ではありません。

… … … … …

そこへ、マツオと銀次が血相を変えて店に顔を出しました。

店内をざっと見渡したふたり、マツオが声を潜めてめ以子に尋ねました。

「め以ちゃん、源太知らんか?」

「えっ?」

「 … 源太さん、どうかしたんですか?」


心配そうに桜子。

「あいつ … まだ、戻ってけえへんねん」

「それって … 」


め以子の問いかけに、マツオは無言でうなずきました。

「逃げた ~ ?!」

大声を上げた室井の口を、慌てて塞いだ銀次。

「聞かれたら、どないすんねん? お前は!!」

… … … … …

一同は、手分けして源太の行きそうな場所を捜しましたが … さっぱり足取りさえつかめません。

め以子は、心当たりを一回りしたところで、室井と出くわしました。

「何処行っちゃったんだろうね ~ 」

ヘラヘラ笑っている室井を見て、め以子は心底情けなくなってきました。

「本当に捜す気あります?」

「大変だよね ~ 兵役逃れって、重罪だよね ~ いや ~ 困ったもんだよね ~ 」


困ったもんだは、あんたの方だ … どついてやろうかと真剣に思った時でした。

目の前の洋装店から、真新しい洋服を着たふ久が出てきたのです。

… … … … …

「ふ久! 学校は?!」

走り寄るめ以子、好奇心丸出しの室井も後に続きます。

「その服どうした?!」

「買うてもろうた」


ふ久は観念したのか逃げも隠れもせずにめ以子の質問に答えました。

「誰に?!」

口をつぐんでしまったふ久。

その時、たった今、ふ久が出てきた店から顔を出したのは … 竹元でした。

「 … 何だ?」

… … … … …

め以子は事情を聴くために、ふたりをうま介へと引っ張っていきました。

興味津々の室井が運んできたコップの水を一気に飲み干しため以子は、対峙して目の前に座っている竹元に尋ねました。

「あの … どういう関係なんですか?」

「私は、この子を愛している」


竹元は、キッパリと言い切りました。

親子ほど歳が離れたふたりに注目する一同。

「 … 愛って?」

動揺しながらも問いただしため以子。

「この子の才能を愛しているんだ … この子の物理の才能には非凡なものがある。

それは、分かってるか?」


やや、ホッとしているめ以子に竹元は反対に聞き返しました。

「ああ、昔から算数と理科だけは … 」

「『だけ』でいいんだ!

… 天才とはそういうものだ!」


竹元の言葉に、妙に納得してしまうめ以子。

「それを、愚劣としかいいようのない教育者どもが、虫けらのごとく踏みにじったんだぞ!」

「ふ、踏みにじったって?」


すると竹元は、隣でうつむいて座っているふ久に向かって静かに話しかけました。

「自分で話せるか? 猫娘」

… … … … …

「何で勤労奉仕の時間に勉強してるんですか?」

担任の女教師に咎められたふ久は、思ったままを口にしました。

「何で学校で勉強したら、あかんのですか?」

「勤労奉仕は銃後を守る者の義務です!

今や婦人の務めは、子を産み、皇国の母となることです!」

ヒステリー気味に怒鳴り続ける担任に少しも臆することなくふ久は答えました。

「それって、学校いらんということになりませんか?」

「皆そうやって我慢してるんです!」

「皆我慢してたら、私も我慢せなあかんのですか?」

ふ久には全くその気がなくても担任にすれば、それは反抗的な態度でした。

担任の手がふ久の頬を思い切り叩いていました。

… … … … …

程度の差こそあれ、担任の言い分は、め以子が常日頃口にしていることと同じでした。

「 … そんなことが何回かあって、行くん嫌になって … フラフラしとったら、竹元さんのとこ来て勉強してええ言われたんや」

「それでタンポポコーヒー?」


ようやく合点がいきました。

「私以外誰がいる? あんな可憐な飲み物提案するのは … 」

ここでお呼びでない室井がまたしゃしゃり出て、下世話な横やりを入れました。

「でも今日は完全に逢引きですよね ~ 逢引きですよね ~ 」

次の瞬間、竹元のビンタが室井を張り倒していました。

「奥、親ならもう少し子供のことを考えてやれ」

頭ごなしに言われ、反論するめ以子。

「考えてますよ!

この後、師範に通えるようにって」

「この子には集団行動の才能は皆無だ!

そういう子にとって、今の学校がどれほど行きにくいものなのか、考えてやったことはあるのか?」


「学校辞める訳には行かへんや … 」

「学校行かなければ勉強できないのか?!

… 料理以外はとんだボンクラだな、貴様はっ」


… … … … …

結局、竹元に押し切られた形で、ふ久がしばらくの間、学校を休むことを認めてしまっため以子でした。

家路の途中、め以子はふ久を何とか宥めすかそうとしました。

「大事にならんうちに、学校戻んねんで」

「辞めようかな ~ 竹元さんとこいた方が勉強できるし」


随分と懐いたものです … そういえば、ふ久は子供の時から竹元の髭に興味を持って、ちょっかいを出していた子でした。

「師範どうすんの?

卒業しないと、師範、進まれへんで」

「竹元さん、何やったら、大学の先生紹介してくれるって」


ああ言えば、こう言う …

… … … … …

「 … で、結局たちの悪い風邪ひいたことにして、休むことに落ち着いたんですか?」

帰宅して報告を受けた悠太郎。

め以子は竹元にも腹を立てていました。

「竹元さんも竹元さんですよ ~ 普通、無断で匿いますか?

親に連絡してきませんか?」


考えるポーズの悠太郎、答えは割と早く返ってきました。

「ふ久に自分を重ねてもうたちゃいますかね?

… 皆がするから、自分も我慢せんといかんいう考え方が、そもそも馴染まない人たちもいるんですよ」


悠太郎は寛容な考え方をしていますが、め以子は面白くありません。

「わがままですよ」

… … … … …

次の朝。

お墨付き(?)を手に入れたふ久は朝食の時間も食事しながら堂々と計算式を解いています。

「お姉ちゃん、今日から学校行けへんの?」

「うん、風邪」

「風邪ってどこが??」


泰介、活男 … 弟たちは姉のことを気にかけていますが、本人はいたって平然としていました。

「ええの ~ 見えへんけど、風邪ひいてんの」

「悪いけど、万が一、何か聞かれたら、話し合わしといてや」


め以子はいい加減、面倒になりかけいるようです。

お静は世間体でも気にしているのでしょうか?

「見えへん風邪や、言うんやな ~ よっしゃ!」

お調子者の活男が茶化しました。

「見えへんはいらんからね!

… あんたも風邪をひいてるんやから、出たらあかんで!」


め以子はふ久にも釘を刺しました。

こうでも言っておかないと、フラフラと竹元のところへ出かけて行きかねません。

… … … … …

「あの ~ 源太さんの出征祝っていつ頃になりそうですか?」

希子に尋ねられため以子ですが、さすがに行方不明だとまでは言えません。

「うん … 聞いとくわ」

「その時は、皆で行こうな」


川久保の言葉にうなずいた泰介と活男。

… … … … …

「源ちゃん、どうするつもりなんだろう?」

数日が経ちましたが、源太の消息は一向に分かりません。

「ねえ、源太さん、東京に行ってるってないかな?」

「えっ?」


桜子に指摘されるまで、考えてもみなかったことでした。

「小さい頃は、向こうにいたんでしょ?

昔馴染みに会いに行ってるとか … 」


あり得ないことではありません。

め以子は早速、大五に連絡を取ろうと席を立ちました。

… … … … …

その時です。

当の源太が扉を開けてうま介に入って来たのです。

「源ちゃん?!」

「えっ?」


呆気にとられているめ以子を尻目に源太は、皆と同じテーブルの席に腰を下ろしました。

「どないしたん?」

「何処行ってたのよ、今まで?」

「えっ、いや ~ 女んとこやけど」


狐につままれたような顔の一同。

「せやから、順繰りに、全部顔見に行っとったんや …

いや ~ 所帯持って、遠くに行ったのやらもおったから、往生したわ」


話し終わるのも待たずに、め以子は源太につかみかかりました。

「全部やったら、全部ってちゃんと言うて行きなさいよっ!!」

胸ぐらをつかまれ、体を揺すられた源太は何がなんやら分からず、うろたえた顔をしています。

「兵役逃れやったらどうしようって、マツオさん、もの凄く心配してたんやからねっ!」

「 … ごめん」


… … … … …

め以子が手を放すと、源太は元座っていた椅子にへたり込みました。

「 … タ、タンポポコーヒー飲んでみる?」

ひとまず落ち着かせようという馬介の気遣いでした。

「お、おお ~ 飲む飲む」

しかし、怒りが収まらないめ以子は、そのまま出口に向かいました。

「入営いつだっけ?」

桜子の声でめ以子の足が止まりました。

「ああ、3日後や ~ ははは … 」

そう言って笑った源太に、桜子、馬介、室井までが言葉をなくしていました。

め以子は … やはり、扉の前で立ち尽くしていたのです。

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2014年01月28日 (火) | 編集 |
第97回

< 正蔵の大往生の後 … 駅舎は立派に出来上がり、地下鉄は無事開通いたしました >

地下鉄に乗るために集まって来る人の波。

ホームにあふれる人、人、人 …

< ですが … その一方、昭和12年、盧溝橋に端を発した日中戦争は存外に長引くこととなり … >

時は経ち … 昭和15(1940)年、5月。

『日本人なら ぜいたくはできない筈だ』

街のあちらこちらにそんな貼り紙が見受けられるようになっていました。

< いつの間にやら、こんな時代に …

物資を軍事に振り向けるために、繊維や金属は国家による統制が始まり … 米もまた実質的な節約を求められておりました。

… 節米料理と申します。

そんな中、め以子は … >

板の間の上がり口に腰をおろし、目を閉じ顎に手を当てて何やら考え込んでいるめ以子。

突然、パッと目を見開き、すくっと立ちあがりました。

「来た? お母ちゃん」

「活男、油揚げ出して!」


後ろに控えていた活男にそう指示すると、慌ただしく台所に向かいました。

「よっしゃ!」

活男は、母のこのひらめきを待っていたのです。

< … めっぽう元気な、おばちゃんになっていました >

… … … … …

< ふ久は高等女学校に通い、物理に夢中な風変わりな女学生。

泰介は中学校に進学し、野球部に在籍 … 活男は相変わらずの食いしん坊でした >

希子は川久保と結婚し、ふたりはそのまま同居していました。

ひとり減っても、また増えても … 朝食は家族がそろって食卓を囲む、これだけは昔と変わっていません。

皆が席に着いたのを見計らっため以子が手を叩いて合図しました。

「はい、じゃあご飯にしましょう」

「また、節米料理かいな ~ 」


茶碗に盛られたご飯を見て、お静がぼやくことしきり。

「命がけで戦うてはる兵隊さんのこと思たら、ぜいたくなんてでけへんでしょう?」

「うちかていつ死ぬか分かれへんのに ~ 婆さんの明日も命がけやねんで」


毎朝、こんな調子なので、隣に座っている希子が笑いながら言いました。

「 … 大丈夫ですよ、お義母さんは」

「お義姉さん、これ何なんですか?」


川久保が尋ねました。

節米料理といっても、め以子はいろいろと工夫しているのです。

「これな ~ ジャガイモを皮ごと細かく切って、油揚げもみじん切りにして … それにちょっとお醤油入れて、それでお米と一緒に炊いたんよ」

「香りがええんや ~ 」


め以子がひらめいたその場にいた活男が、香りを吸い込みながらニッコリ笑いました。

「ほな、いただきましょか ~ 」

読んでいた新聞を置いて、悠太郎が号令をかけると、一同が一斉に食べ始めました。

… … … … …

ただひとり、ふ久だけは食卓まで教科書を持ち込んで、食事に手も付けずに懸命に数式を解いています。

め以子は、しばらくそのまま眺めていましたが、ふ久は一向に止めようとしません。

「ふ久!」

わざと音を立てて茶碗を置いて声をかけましたが、顔さえ上げようとしません。

和気あいあいと食事していた皆の方が気にして、ふ久に視線が集まりました。

「ふ久、ご飯!」

もう一度呼び、今度は同時にふ久の目の前で手を叩きました。

さすがに気づいて顔を上げたふ久ですが、ムッとしてめ以子のことをにらみつけています。

「ご飯食べる時は、ご飯食べ!」

「 … いただきます」


仕方なく、茶碗と箸を手にしましたが、目は教科書から外しません。

「行儀悪い ~ ご飯食べる時は勉強、止め」

め以子は教科書を閉じて、ふ久のひざの上に置きました。

すると、食べるのを止めて、また教科書を広げて数式を解き始めたのです。

「食べんと体もたんやろ?!」

しかし、聞く耳を持たないふ久。

「うん、もう ~ 勝手にしっ!」

… … … … …

片時も教科書を手放さないふ久、読みながら玄関を出て行きました。

「ふ久、人ぶつかるよ! ほらっ」

ふ久の前方から歩いてくる人が … ぶつかると思った瞬間、見事に避けて、そのまま行ってしまいました。

「おはようございます ~ 」

ちょうど出てきた、近所の主婦と挨拶を交わしため以子。

「ふ久ちゃん?」

「ああ言えば、こう言ういうか … ああすれば、こうするいうか、もう ~ 」


ほとほと手を焼いていることを伝えると、どこも同じだと慰められました。

… … … … …

「おふたりさんっ」

そこに顔を出したのは、『大日本国防衛婦人会』のタスキをかけた、ふ久の小学校時代の同級生の母親、高山多江でした。

「本日、3時からご出征がありますさかい、よろしゅう頼んますな」

『大日本国防衛婦人会』とは、出征兵の歓送迎、遺族の慰問、防空訓練など、戦時体制の協力を活動の主とし、20歳以上の婦人は強制的に加入するよう定められていました。

当然、め以子もその一員でした。

… … … … …

出征する男性の実家の前には、国旗と幟が掲げられ、婦人会の他、近所の人が日の丸の小旗を手に集まっていました。

「 … お国のために一命を捧げ、戦って参ります!」

勇ましい挨拶、万歳三唱と小旗を振るめ以子たちは、こんな風にして何人も出征兵を戦地へと送り出して来たのです。

♪ 勝って来るぞと勇ましく誓って国を出たからは ~

… … … … …

「千人針にご協力をお願いします」

千人針とは、一枚の布に多くの女性が糸を縫い付けて結び目を作る祈念の手法で、戦地に赴く出征兵に武運長久のお守りとして持たせました。

町で千人針の協力を求める婦人会の前を、半鐘を乗せたリアカーが通り過ぎていきました。

「鉄が足りへんさかい、半鐘もご出征やね」

すると、何を思ったか、め以子は一歩前に出て万歳三唱を始めたのです。

「半鐘さんも頑張りや ~ 万歳 ~ 」

他の仲間も遅れじとめ以子に続いて声を上げました。

… … … … …

「昨今は、半鐘までも出征するようなご時世でございまして … 我々といたしましても、鋭意努力はしておるのですが … 」

市役所の会議室では、高速鉄道部・建築課の会議が開かれていて、建設会社の木崎が資材調達が思うようにできないことについての弁明をしていました。

「米英からの資源輸入が差し止められる状況の中で、金属資源のその多くは軍需に差し向けられる有様でして … その予定量の鉄筋の確保が … 」

しどろもどろの木崎を遮り、口を開いたのは、ずっと無表情で聞いていた竹元でした。

「私が … 今日ここに居るのは、設備の仕上げについての話し合いのためだったはずだが …

何故、新聞を読めばわかるようなことを延々を聞かされねばならんのだ ~ 西門っ?!」


肩書は高速鉄道部・建築課の課長に出世した悠太郎が竹元の疑問に答えました。

「状況を把握していただかないと、ご納得いただけないかと … 」

「ご納得?

ははは ~ 今まで私が何度ご納得してきた、西門?

天井高をあきらめ、アーチをあきらめ、島型のプラットホームをあきらめ …

これ以上、何をあきらめご納得しろというのだ?」


竹元の罵声を浴びながらも黙って耐えるしかない悠太郎でした。

… … … … …

「何や、どんどん薄すなってない?」

うま介でコーヒーを口にした源太が渋い顔をしました。

「コーヒー、輸入制限かかってもうてな ~ 税金も上がっとるし」

喫茶店を経営する馬介にとって、頭が痛い状況でした。

「今年、焼き氷できんのかいな?」

「コーヒーシロップが問題でな … 」


稼ぎ頭の目玉が店に出せないとなると、死活問題になりかねません。

… … … … …

「あっ、桜子 ~ 」

店にめ以子が入ってきたのを見て、源太が突然慌て始めました。

「どうしたの?」

「悪いんやけど、これお願い ~ 千人針」

「また?」

「婦人会の仕事なんだから、仕方ないじゃない」


そう言いながら、め以子は人一倍熱心でした。

「よくやるわよね ~ あんた」

桜子の口調は面倒に思っているようです。

「お国のために戦いに行ってくださるのよ!

できるだけのことはしてさしあげたいのが人情じゃない?

… ああ、源ちゃん?」


源太はめ以子に気づかれない間にコソコソと店を出て行こうとしたのですが、見つかってしまいました。

「おお ~ 」

「 … あっ、今日、肉無しデーか」

「ああ、せやねん」


< 少しご説明いたしますと …

この年の4月から、お肉はぜいたくだっていうことで … 月に2回はお肉を食べない、売ってもいけないという日が決められておりました >

… … … … …

「あっ、ちっと ~ わし急いでるねん … 馬介さん、ほなまた!」

まるで逃げるように出て行こうとしましたが、ちょうど店に入ってきた女性と鉢合わせしてしまいました。

理由は分かりませんが、切羽詰まったような顔をした女性は源太を見るなり尋ねました。

「あの … 牛楽さんの?」

源太に用事がある ~ というより、ここで待ち合わせしていた雰囲気です。

「ちょちょちょ、ちょと … 」

源太は女性を店の隅に連れていくと、何処から取り出したのか … 包みを渡しました。

「ほな、これ ~ 見つからんようにな」

「おおきに、おおきにな … 」


女性は感謝して源太に何回も頭を下げながら出て行きました。

… … … … …

そんなやり取りをしていた源太を不審な目で見つめているめ以子。

しらばくれて帰ろうとするのを呼び止めました。

「ちょっと ~ 今の … お肉?」

「えっ! … 違うで」


あくまでも白を切った源太ですが見え見えです。

「何考えてるの? 今日、肉無しデーでしょ?」

「あ ~ もう、いちいちうるさい奴っちゃな!」

「皆、我慢してるのに ~ 何でそういうことを?!」

「売ったのは、昨日! 今日は渡しただけです ~ 」


あの女性の様子からすると、贅沢するためではなく、余程の訳があったのでしょう。

逃げるように出て行った源太の背中にめ以子は追い討ちをかけました。

「せいぜい気つけや!」

… … … … …

「かっこいいわよね ~ 源太さんって」

しかし桜子は、そんな源太に惚れ惚れしたような口ぶりです。

「えっ?!」

「何があっても変わらないじゃない?」

「そうかな … 」


確かに子供の頃から本質はあまり変わっていないのかもしれませんが、め以子にはそこが危なっかしく感じるところでした。

「それに比べて … 」

桜子は、やるせなさそうに、棚に置かれた本に目をやりました。

室井の新作『おでん皇国戦記』です。

「すごい人気じゃない?

子供の教育にもいいって、大評判よ」

「最悪よ!

1ページに1回は『お国のため』って出てくるのよ … うんざり」


それの何処がいけないのか ~

「けど、今はそれが必要なんじゃない?

ひとつになって、心合わせて戦うことが!」


桜子はそんなめ以子に対しても、うんざりした顔を見せました。

… … … … …

一触即発? … そこまでいかなくても、これ以上揉めないようにと、馬介が慌ててふたりの間に割り込んで、話題を変えました。

「あっ、いや、ちょっと ~ め以子ちゃん、頼みがあるんやけどな」

「うん?」

「コーヒーの代用品、一緒に考えてくれへん?」


… … … … …

引き受けたものの、そう簡単に見つかるはずもなく … 悩んでいるところへ帰ってきた、ふ久にまで思わず尋ねてしまいました。

「コーヒーの代用品になりそうなもの、何かないかいな?」

「 … 」


階段を上がりかけたところで立ち止まって、無言でこちらを見つめているふ久。

め以子は尋ねた瞬間に後悔していました。

「ああ ~ 聞く方が間違いでした … どうぞどうぞ、お勉強なさってください」

「 … タンポポがええらしいで」

「えっ、タンポポって … どうやって作るん?」


物理にしか興味がないとばかり思っていたふ久が答えたので、め以子だけでなく、隣に座っていたお静もまじまじと顔を見上げました。

「そこまでは知らん、ドイツではそうやって作るんやて」

「誰に教えてもろたん、そんな?」


お静でなくとも気になりました。

「 … 友達」

そう素っ気なく言うと、2階へ上がっていってしまいました。

「友達って、居るんかいな?」

「さあ ~ ?」


… … … … …

自分の部屋へ入ったふ久は、いきなり畳の上に大の字になって引っくり返ってしまいました。

「3.141592653589 … 」

天井をボ~っと見つめながら、呪文のように円周率をつぶやきました。

… … … … …

帰宅した悠太郎と希子夫妻にも代用品を尋ねましたが、これといって思いつかないようです。

ふ久から聞いたタンポポが唯一の収穫でした。

「タンポポの根って確か漢方にも使われていますよね」

「コーヒーにする時って、どないしたらええんかな?」

「乾かして、煎るんとちゃいます? … 普通のコーヒーと同じで」


希子の話を聞いて、め以子はまずはとにかく試してみようという気になっていました。

「何や、ほっこりしますね」

川久保の言葉に大きくうなずきました。

「せやろ ~

まあ、味はやってみなわからへんけど … 代用品っていうても、そんな寂しい感じがせえへんのがええやろ?

それに銃後が節約するんは、人として当たり前やと思うんよ。

前線で命がけで戦うてくれてはる人に対して ~ ねえ?」


め以子は隣の悠太郎に同意を求めましたが … 浮かない顔をしていました。

「 … どないかしたんですか?」

「鉄筋にも代用品があったらええんですけどね … 」


… … … … …

悩みの種は尽きない悠太郎。

重い気持ちで、高速鉄道部の部屋に戻って来ると、懐かしい人が待っていました。

「相変わらず、でっかいなあ ~ 」

振り向くと、そこに人懐っこい笑顔。

「よっ!」

「藤井さん?!」


… … … … …

「めいちゃん、きれいやな ~ 」

「やろう? タンポポやねん」


カゴいっぱいにタンポポを摘んできため以子はその足で、市場の牛楽商店を訪れました。

「源ちゃん、これなんぼ ~ ?」

いつのもように店の前で声をかけましたが、源太はおろか誰も出て来ません。

勝手知ったる … で、店の奥に入ると店主のマツオにトミ、源太と3人とも揃っていました。

「どうも ~ 」

しかし、何か様子がおかしい … マツオは渋い顔で腕を組んだまま、トミはがっくりと肩を落とし、源太は背中を向けたまま振り返りもしません。

「何かあったんですか?」

め以子が尋ねると、答えたのはマツオでした。

「 … 来てもうたんや」

「何がですか?」

「赤紙 … 」


吐き捨てるようにそう言われて、源太のことをよくよく見ると … その手に握った赤紙 … 召集令状を、じっと見つめていました。

「 … 赤紙」

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2014年01月26日 (日) | 編集 |
さて、次週の「ごちそうさん」は?

昭和15年。厳しくなる食糧事情の中で、め以子()は節約料理に工夫をこらす。

私はこの子を愛している

あ、愛って …


悠太郎(東出昌大)は相変わらず地下鉄の建設に携わっているが、資材は不足する一方。子どもたちは成長し、ふ久(松浦雅)は高等女学校で物理に夢中。泰介(菅田将暉)は中学校で野球部に。活男(西畑大吾)は洋食屋で修業中だ。

万歳、万歳 ~

め以子は報国婦人会の一員でもあり、出征する兵を見送り千人針に精を出す。

来てもうたんや …

そんな中、源太(和田正人)が召集される。お国のためとはいえ、ショックを受けるめ以子。

兵役逃れって、重罪だよね

源太が食べたいというイチゴを探し回るが手に入らない。が、源太の出征祝いは、親しい者みんなで心づくしの料理を食べ、にぎやかに行われる。

め以子は源太の本音を聞いて無力感を感じつつも、代用品でイチゴを作り明るく送り出す。

贅沢は敵になったんですか?

贅沢(ぜいたく)は敵であり、砂糖も配給の贅沢(ぜいたく)品だと見なされることに納得がいかないめ以子。婦人会では魚粉で興亜建国パンなるものを作り、小学校に贈ることに。

め以子はまずいものを作ることに抵抗する。結局パンはまずすぎて小学校から返却される。

怒りとともに、おいしいものを食べ、食べさせたいという信念を思い出しため以子は、肉屋に走り食べきれないほど買いこんでくる。

ごちそうさん 公式サイト、YAHOO!テレビガイド他を参照)

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2014年01月26日 (日) | 編集 |
第96回

「 … お父上をここにお招きしろ」

「えっ?」

「開業までは恐らく無理なんだろう?

だったら、お前が案内して、中をお見せしろ」

「 … 何でですか?」


自分の言っていることの意図を即座に理解できない悠太郎に短気な竹元は苛立ち、声を荒げてしまいました。

「図体ばかりでかい息子が … きちんとやってるかどうか心配されていた。

貴様のような凡庸な人間にとって、仏に近い人間の言うことは、ありがた味があるはずや」


口では罵りながらも、余命幾ばくも無い父親に自分の仕事を見せて安心させてやれ … という思いやりでした。

… … … … …

「ほな、行ってきます」

数日後、工事が休みの日を見計らって、悠太郎は正蔵を建築途中の地下鉄の工事現場に案内しました。

父子だけで出かけるなんて、初めてのことかも知れません。

め以子は、正蔵を乗せた車いすを押しながら、出かけていく悠太郎を見送りました。

… … … … …

薄暗い建築途中の駅舎の中を進んでいくふたり。

「 … 複雑や、ありませんか?」

「うん?」

「こういう所へ来るのは?

… 地下鉄の開発かて、銅山と似たようなところありますし … 」


そういうことを考えて、ここへ正蔵を連れて来ていいものかと、迷っていたのです。

「将来的には、崩落かて、地盤沈下かて起こらんとも限りませんから … 」

今もまだ迷っているのでしょう ~ 冴えない表情の悠太郎。

「わしがこんなこと言えた義理やないんやけど …

どっちへ転ぶや分からんからこそ、開発やら技術なんちゅうもんの裏には、『良心』が貼りついててほしいと思うんや」


悠太郎はひざを折って正蔵の話に耳を傾けました。

「わしゃその剥がれてしもうたもんを、自分の食う方に貼りつけてしもうた …

別に開発やら技術を嫌うておるんやないんやで ~ むしろ技術ってなもんは、技術でしか救えんもんやろうと、そう思ってる」


正蔵は振り向き、悠太郎の顔を見ながら言いました。

「期待してるで ~ 」

その言葉で悠太郎は、ためらいを忘れることにして、胸を張って父に自分の仕事を見てもらう決心をしたのです。

… … … … …

しばらく行くと更に地下へと続く長い階段が現れました。

車いすはここまでです。

「足元、気つけてください」

正蔵は悠太郎に手を引かれながら、おぼつかない足取りでゆっくりと1歩1歩階段を下りていきました。

「気つけてくださいね」

自分のことを気遣う悠太郎の顔を見た正蔵は、昔のことをふと思い出しました。

『誰よりも頑丈なもん造る … あんたが壊してまわった分、皆を守る建物を造る。

せやから、逃げんと隣で見とけ思う!』

熱いものが胸にこみ上げてきます。

正蔵の顔に自然と笑みが浮かび … その視線の先には地下鉄のホームが広がりました。

… … … … …

「天井がこう高うて、丸うなってんのや ~ そこにエスカレーターってなもんがつくらしいで」

夕食の時、正蔵は興奮しながら家族に今日見てきた地下鉄の駅舎の話を身振り手振りを使いながら話て聞かせました。

「すご~い!」

「ええな ~ お祖父ちゃんだけ」


正蔵の話を目を輝かせながら聞いている子供たち、活男と泰介がしきりに羨ましがりました。

「ホーム、あの電車が着くホームがこんな長いんやわ … 」

「将来を見越してああなってて」

「そうかいな ~ はっはっはっは」

「張り切って大丈夫かいな?」


少しはしゃぎ過ぎではないかと、お静が心配するほど、今日の正蔵は生き生きしています。

「もうあんなもん見せてもうたら、地下鉄乗るまでは死んでも死に切れん気分になる … 元気が出るのや ~ 」

… … … … …

「これ何や、色々入ってるな ~ 」

め以子から受け取ったおついの椀を見て正蔵は尋ねました。

「源ちゃんが持って来てくれたもん使うて、で、希子ちゃんが貸してくれた本に載っての作ってみたんです … どうですか?」

ありがたそうに、おついに口をつけた正蔵。

その満足そうな顔を見てお静が笑いながら言いました。

「聞かんでもええんちゃう?」

正蔵はおついを何回も何回もじっくりと味わっていました。

… … … … …

「お義父さん、元気になってましたね」

台所で後片付けしながら、め以子は傍らに座ってお茶を飲んでいる悠太郎を振り返りました。

「なあ、よう食べとったな」

今夜の正蔵は、よく食べ、よくしゃべり … 愉快な時間を過ごしたのです。

「連れていって正解でしたね」

迷っていた悠太郎に気づいていため以子でした。

照れくさそうに笑うと、お茶をすすった悠太郎。

竹元の粋な計らいに感謝していました。

… … … … …

「 … こんな幸せでええんやろか?

わしみたいなあかんたれな、おっさんが … ここんとこ、ず~っとええことばっかりや」


布団に横たわった正蔵はお静にそう尋ねました。

「悪いこともぎょうさんあったから ~ とんとんやな」

「ははっ、せやな ~ 」


お静は母親が子供をあやすかのように正蔵の手を取ってポンポンと叩きました。

「ええことも悪いことも、腹いっぱいの人やね、あんさんは」

「せや … ごちそうさんな人生やな」


しみじみと笑いあったふたり。

… … … … …

翌朝。

朝食の支度をしているめ以子。

「おはようございます」

2階から下りてきた悠太郎が台所を覗き込みました。

「おついですか?」

「うん、さっぱりと」


め以子に頼まれて希子が子供たちを起こしに行こうとした時、ふ久が自ら下りてきました。

「おはよう、今日は自分で起きられたん?」

「おはようさん」


しかし、様子が少し変です。

挨拶も返さず、無言でめ以子の前まで行くと …

「お母ちゃん … お祖父ちゃん、まだ寝てる」

… … … … …

何気なく聞いていた悠太郎でしたが、突然衝撃が走ったかのように、2階へと駆け上がっていきました。

後に続く希子とめ以子。

… … … … …

お静が枕元で見守る中、正蔵は、ふ久が言った通り、まるで眠っているかのようでした。

悠太郎はゆっくりと布団の横に座って、静かに声をかけました。

「お父さん … 」

希子も隣から正蔵の顔を覗き込んで同じように声をかけました。

「お父さん … 」

め以子は傍らにいた子供たちの手を握って、正蔵の顔を茫然と見つめていました。

涙が頬をつたわります。

「 … 今日、朝ご飯何やったん?」

おもむろにお静に尋ねられて、め以子はうろたえながらも答えました。

「白和えと … お漬物と … あと、鮭昆布のおついです」

「 … せやねんって」


お静は正蔵に話しかけました。

「昨夜な … 」

… … … … …

「なあ、今日美味しかったな ~ 明日何やろな?」

布団の中から尋ねた正蔵。

「何やろね ~ ?」

そのお静の口調がまた母親のようで … 正蔵は、本当にうれしそうに笑いました。

… … … … …

「 … 朝起きたら、おらへんようになってはった」

お静は涙を堪えて笑顔を作ると、家族ひとりひとりに感謝の思いを伝え始めました。

「希子ちゃん、ええ祝言見せてくれて、おおきに … 」

正蔵にとって、まさに夢のような1日でした。

… … … … …

「活っちゃん、干し柿、おおきに。

泰ちゃん、100点、おおきに。

ふ久、お膳、おおきに … 」


正蔵にしてみれば、この子たちの存在がどれだけ心を和ませていたことでしょう。

… … … … …

「悠太郎さん、どえらいもん見せてくれて、おおきに」

お静の顔は我慢していたはずの涙でくしゃくしゃでした。

「め以子はん … 毎日毎日ご飯、ほんまにおおきに」

泣きながら、首を横に振っため以子。

「皆のお蔭で … お腹いっぱいで、逝きはった … ごちそうさんやて、逝きはった。

大往生や、これ以上ない大往生やった」


… … … … …

家族に囲まれて安らかに眠る正蔵。

悠太郎と希子、兄妹にとって心残りは幾らでもありますが、最後の最後に親孝行らしきことができたのがせめてもの救いでした。

初めて身近な人の死に接して涙する子供たち、優しかったお祖父ちゃんはもう二度と目を覚まさないのです。

「おおきにな、おおきにな ~ 」

お静は感謝の言葉を繰り返しました。

独りぼっちの彼女が温かい家庭を手に入れられたのも正蔵のお蔭でした。

め以子は … 大阪に来たばかりで右も左も分からなかった頃から今日までずっと、蔭になり助けてもらったこと … 正蔵からもらった数えきれないほどの恩義、そして教え …

悲しみがあまりにも大きくて、今はただただ泣くことしかできませんでした。

… … … … …

ちょうどその頃。

庭の柿の樹に残っていた最後のひと葉が音もなく落ちるところを目にした和枝。

全てを悟ったように秋の空を見上げました。

… … … … …

正蔵の葬儀もあっけなく終わり、悠太郎は気が抜けたように縁側で、あの日の和枝と同じように空を見上げていました。

「 … どうぞ」

お茶を運んできため以子が傍らに座りました。

「干し柿?」

盆の上にお茶と一緒に並んでいます。

「お義父さん、作ってくれはったの」

ふたりは、それぞれに正蔵の干し柿を手に取りました。

一礼して、干し柿を口に入れため以子。

手にした干し柿をじっと見つめていた悠太郎が突然言いました。

「あの … ありがとうございます」

め以子は、勘違いしてお茶の入った湯呑を手渡そうとしましたが …

「せやのうて ~ 親父のこと。

最高の送り方してもろうた気がします」

「私やのうて … それ言うなら、希子ちゃんとか、お義母さんとか、お義姉さんとか … 」


しかし、悠太郎はかぶりを振りました。

「最高ですよ ~

明日のご飯考えながら、逝ったなんて … 僕の時もそうしてくださいね」


そう言って、雄太郎は干し柿を食べ始めました。

め以子は眉をひそめ、顎に手を当てて考え込んでしまいました。

… … … … …

「 … 嫌ですね」

め以子の出した答えでした。

「私より長生きしてくださいよ」

今度は悠太郎が考えるポーズを取りました。

「 … 自信ないですね。

あなた、長生きしそうですから」


振り返って笑った悠太郎。

否定はせずに顔をほころばせため以子。

そして、ふたりは秋の高い空を見上げ、旅立った正蔵を見送ったのです。

仏壇の前には、ふたりの祝言の写真が飾られ、干し柿が供えられていました。

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2014年01月25日 (土) | 編集 |
第95回

悠太郎とめ以子の祝言は滞りなく進行していました。

宴もたけなわ … め以子が目の前の膳に並べられた料理に箸をのばそうとした時です。

「ちょちょちょっ、あんさん! まさか食べはるつもりだすか?」

それを偶然目にした和枝が驚いたように声をあげました。

「えっ、せやかて … 」

何がいけないのか、め以子には分かりません。

和枝は苦虫を噛み潰したような顔でめ以子の前に座りました。

… … … … …

「何なんだす ~ このお膳は?

杉玉は親の仇みたいに大きいし … 」

「縁起ええと思たんで … 」


はじまったな ~ 横で希子、正蔵、お静が笑いをかみ殺しているのを知ってか知らずか、和枝のめ以子への『ダメ出し』は加速していきます。

「何なんでっか? この雑魚?!」

次は粕漬に対する小言でした。

皿の上には小ぶりの切り身が2枚と海老が1尾乗っているだけです。

「せやけど、小っちゃいけど、鯛とかもあるんですよ」

少し自慢げに言いましたが、和枝は一刀両断に斬り捨てました。

「雑魚は雑魚でっしゃろ?!」

「名もない魚でも、美味しゅうできるよって … 」


目を見開いた和枝。

め以子はものすごく話しづらそうに説明しました。

「 … 肩書や名前やなくて … 美味しいかどうかやて …

大事なこと見失わないでって、希子ちゃんに伝えたくて」


考えに考え抜いた思いを込めた粕漬けだったのです。

「嫁として認めてもらえんでも、あんさんは幸せやて、言いたかったんかいな?」

… ほぼ図星でした。

「いや、認めていただければ、それはそれで … 」

め以子の言葉に、正蔵たちは吹き出してしまいました。

「あんさんはもう … わてを苛立たせるために生まれたようなお人だすな ~ 」

「あの … 美味しくなかったですか?」

「普通!」


最初は不安そうに見ていたイクと大五もふたりの漫才のような掛け合いを見て笑い出しました。

そのうち、め以子も口答えしはじめました。

「杉玉、中まで味、染ませるの大変だったんですよ!」

「せやから大きすぎるんやて、言うてるやろ ~ 」


悠太郎まで腹を抱えて大爆笑です。

「大きい方がいいかなと」

「おかしなこと言わはるな ~ この人は」


真剣に言いあうふたり … それがまた周りの人から見れば面白くて …

… … … … …

祝言も無事に終わりました。

「もうお帰りやないとあきませんか?」

め以子の家族が今日中に東京へ戻るということを知った悠太郎が名残惜しそうに言いました。

せっかくだから、1日だけでも泊まっていってほしいと思っていたのです。

その上、大五は結構酔っていて、イクと照生の肩を借りなければ歩けないほどでした。

「店、休んで来てるんで … 」

イクが申し訳なさそうに言いました。

そう言われるとこれ以上は引き留めることができません。

「姉ちゃん、またな … 」

大五を支えながら、そう言った照生が、何だか以前よりもずっと頼もしくなったと感じため以子でした。

「ありがとうございました」

親子で3人の背中を見送っていると、大五が突然、シャキッとして、こちらを振り返りました。

「め以子 ~ 元気でやれよ」

ニッコリと笑った後、またふらつき … ふたりに抱えられるようにして帰って行ったのです。

… … … … …

「なんやのもう ~ 」

和枝の声が聞こえてきて、め以子たちは慌てて家の中へと戻りました。

玄関の脇の部屋に室井が酔いつぶれていて、それを和枝が怪訝な顔で見ていただけでした。

「大丈夫ですか?」

気持ちが優しい泰介が和枝に手を差し伸べました。

和枝は、一瞬戸惑うような顔を見せましたが、愛想よく「おおきに」と手を軽く握り返して立ち上がると玄関に下りました。

「あの、お義姉さん」

「はるばるありがとうございました」

「ありがとうございました」


悠太郎とめ以子は改めて和枝に礼を言いました。

ふたりが無事に祝言できたのも、和枝が許してくれたお蔭でもありました。

… … … … …

「あのな ~ これからは、ミセス・キャベジの料理、手本にするとええ思うわ」

「えっ?」

「あれは、うちの長患いの年寄にも食べ易う作ってあるさかい」


め以子は混乱しました。

和枝の口からどうしてミセス・キャベジの名前が???

「えっ … ミセス・キャベジって … お義姉さん?」

め以子は恐る恐る尋ねましたが … 否定も肯定もせず、涼しい顔の和枝。

「ええっ! ええ ~~~ !!」

慌ただしい足音がして、希子が驚いた顔を出しました。

「ミセス・キャベジって、お姉ちゃんだったんですか?」

「あんさんの見かけ倒しの雑な料理でも採用されてるから、わての料理でもいけるんちゃうか思ったら … 案の定や」


あんぐりと口を開けたままのめ以子。

「名前出すと、あんたが気遣うての採用になるかも知れんやろ?」

同じように口を開けている希子の顎を弄びました。

「 … それが嫌で匿名でやっとったんや ~

まっ、わての方が分が悪い状態で、採用数は倍ですわ … ほな、バイバイ」


してやったりの和枝は、意気揚々と帰っていきました。

見送ることさえできずに、呆然と立ち尽くすめ以子。

苦笑いの悠太郎。

… … … … …

招待客もすべて帰って、後片付けも終わり、ひと段落した西門家の一同は、和枝が送ってきた柿の葉寿司を皆で味わいました。

ひと口食べた正蔵は感激のあまり声になりません。

「この味や、なあ?」

「うんうん」


確かに昔食べた母の味そのものだと悠太郎と希子はうなずき合いました。

子供たちも幸せそうな顔で頬張っています。

「うん、これたまらんな ~ 」

「美味いやろ ~ なあ?」


早くもふたつめに手を伸ばした正蔵は、お静にこの柿寿司がいかに美味しいかを語って聞かせました。

「生寿司が臭そうないのに、酢がピ~っと立ってのうて、柿の葉の香りが溶け込みよって … ご飯はべとついてへんし」

ご機嫌でした。

め以子の柿の葉寿司の時と比べると、雲泥の差です。

… … … … …

「何が秘訣なんですかね?」

「 … 何でしょうね」


希子の問いかけにも素っ気なく答えため以子、さっきからひとりだけ面白くなさそうな顔をしています。

「まだ怒ってるんか? キャベジさんのこと … 」

顔色をうかがう悠太郎、め以子は悔しくてしかたがありません。。

「何やものすごく負けた気がするんです ~ 」

「何なん、その話?」


話が見えないお静に悠太郎が説明しました。

「この人、姉さんに知らんうちに、ず~っといけずされとったんです。

… ラジオを通して、もう何年も … 姉さんのせいで投稿が採用されんようなってたんです」


ミセス・キャベジの話を聞いたお静はある意味感心していました。

「は ~ それはまあ、信じられんほど手の込んだいけずやな ~ 」

「どこまで行っても、敵いませんよ ~ 知恵も料理の腕も」


… … … … …

声を上げて笑った正蔵。

「けど、何や ~ 夢みたいな1日やったな、ええ?

ふたりの祝言見られて、そこに和枝まで居って … 柿の葉寿司までついてきた!」

「ホンマですね」


子供のようにはしゃぐ正蔵を見ていたら、め以子の悔しさも何処かへ消えてしまいました。

「ホンマに … 」

… それは突然でした。

今の今まで笑いながら話していた正蔵が胸を押さえて食卓に突っ伏してしまったのです。

「えっ、あんさん、どないした?」

「お義父さん?!」


… … … … …

「 … では、大事になさってあげてください」

正蔵の診察を終えた医師はそう言って帰っていきました。

取りあえず、一命は取りとめましたが、あまり芳しい状態ではないのです。

「お祖父ちゃんどうなるの?」

今は落ち着いて布団に横になっている正蔵を見下ろして、心配して尋ねた泰介。

「寝ているだけや」

笑いながらそう言って、お静が子供たちを安心させました。

「希子ちゃん … ミセス・キャベジのお料理が載ってる台本、写させてもらえへんかな?」

和枝の考えた料理であれば、正蔵の舌に合うとめ以子は考えたのです。

もしかしたら、和枝はこういうことがそう遠からず起こることを見越して、今になってわざわざ自分の正体を明かしたのかもしれないと、め以子は思いました。

… … … … …

< その日から、西門家の女たちは、正蔵のために動き出しました >

希子が台本から書き写してきた調理法を元に料理をこしらえるめ以子。

< … それぞれが出来ることを >

… … … … …

「お母ちゃん ~ お祖父ちゃん、これ食べるかな?」

活男の手には、正蔵と一緒に作った干し柿がありました。

いい具合に食べ頃です。

「持っていってみようか?」

「うんっ」


ちょうどそこへ学校から泰介が帰って来ました。

「ただいま戻りました ~ 」

挨拶もそこそこに2階へ駆け上がる泰介、その後を干し柿を持った活男が続きます。

… … … … …

2階の部屋では、お静の三味線と小唄に正蔵が聞き入っていました。

「お祖父ちゃん … これっ、これ見て」

いきなり部屋に入ってきた泰介が正蔵に渡したのは、試験の答案用紙でした。

算数の計算と国語の書き取り、どちらも100点です。

「へえ、100点満点や ~ よう、やったな ~ 」

正蔵に見せたくて、学校からずっと走り続けて来ました。

「お祖父ちゃん、干し柿出来たで ~ 干し柿!」

兄に競うように活男は干し柿を正蔵に手渡しました。

「よう出来た、よう出来た ~ よう乾いて、ええ色してるな」

め以子がそんな微笑ましい光景を廊下から見ていると、いつのまにふ久が横に立っていました。

部屋には入っていかないで、何かを考えているようです。

… … … … …

夕方になり、め以子が正蔵の食事を膳に用意していると、またふ久がやって来ました。

「お母ちゃん … 」

ふ久はお盆を手にしています。

「どないした?」

「一緒に食べる」

「?」


… … … … …

「お義父さん、ええですか?」

正蔵がめ以子の声に答えると、襖が開いて、ふ久を先頭に子供たちがそれぞれ膳を持って入ってきました。

「なんや、なんや?」

布団の前に一列に並んで膳を置き、座る子供たち。

「なんやいな?」

「ふ久が一緒に食べたい言うて … なっ?」


こくりとうなずいたふ久、正蔵を喜ばせるために自分は何が出来るのか考えた末のことでした。

「へえ ~ へへへ」

うれしそうに笑った正蔵。

… … … … …

正蔵と子供たちは向かい合って食事をとり始めました。

おついを口にした正蔵。

「ああ、何か懐かしい味やな ~ 」

「あ、それ、お義姉さんが考えたおついなんです」

「ほう、どうりで … へへ」


… … … … …

「子供らが食べてるとこっちゅうのは、見てて楽しいな ~ はは」

目じりを下げながら、子供たちに見入る正蔵。

「お替り!」

「はあ ~ お替りやて … 爺ちゃんも、がんばらんとあかんな、はははは」


機嫌よく箸を進める正蔵を見て、この子たちの存在が、どんな薬よりも効果がある ~ め以子は、そう思ったのでした。

… … … … …

「あの子ら、そんなことしたんですか?」

帰宅した悠太郎はめ以子からその話を聞いて、驚き、そして感心していました。

「皆、お義父さんに褒められたくて、仕方ないんですよね」

「親父も爺ちゃん冥利に尽きると思いますよ」


そんな話をしていると希子が帰って来ました。

「あ、これ … こないだの追加の写しと … あとこれね、お料理の先生がええんちゃうかって」

帰る早々、料理法と一緒に1冊の本をめ以子に渡しました。

それは、食養生の献立の本でした。

「ああ、おおきに ~ わあ、これすごいなあ」

本を夢中でめくるめ以子。

… … … … …

「西門のお父上が倒れた?!」

うま介で室井から正蔵のことを聞いた竹元は、愕然として立ち上がりました。

「そうなんですよ ~ 悠さんの祝言の後に … いやあ、いい祝言でね ~

お蔭で書きたいことが色々!」


最近、西門家近辺で小説の題材になりそうな出来事が多く、ようやく執筆を再開した室井のペンも殊のほか捗っていました。

「祝言があったのか?!」

当日明かされた祝言だったので、仕事関係は誰も呼ばれていないのです。

「 … というより、してなかったのか?!」

誰もがそう思うでしょう。

「ところで、西門のお父上は、かなり … 」

竹元は、ここまで室井に聞きかけましたが、よくよく考えて … 改めて桜子に聞き直しました。

「西門のお父上はかなりお悪いのか?」

「 … よくはないみたいです」

「そうか … 」


… … … … …

「ほな、師匠 ~ また来るわ」

正蔵が倒れたことを聞きつけて、見舞いに来ていた源太が2階から下りてきました。

「あ、帰るん?」

「うん … あ、これ」


台所で糠床の世話をしていため以子に何やら包みを手渡しました。

開いてみると中には高価な高麗人参が入っていました。

「こんなん高いんとちゃうの?」

「ええ、ええ … もろうといて」


め以子が躊躇していると、らしくもない真剣な顔で言いました。

「ええんや ~ ホンマの親父の時は何もでけんかったから … 」

実の父親を幼くして亡くした源太は、酉井捨蔵と名乗っていた頃の正蔵に父親の面影を見ていたのかも知れません。

「 … こんくらいのことはさして」

そんな源太の気持ちを汲んでめ以子はありがたく頂戴することにしました。

「ほな、おおきに」

… … … … …

< 皆が出来ることをしている中で … 何ひとつできない悠太郎は、自分を不甲斐なく感じておりました >

竹元のチェックでやり直しとなったタイルが再度仕上がってきたのですが …

「また、微妙に色違いませんか?」

2枚のタイルを見比べて不安そうな真田。

「 … せやな」

しかし、ちらっと見ただけで気のない返事の悠太郎。

その時、真田は図面を見て何かひらめきました。

「これ、タイルで上だけ覆ったらようないですか?

どうせ、下までは全部見えへんし … あっ、そうか!」


我ながらいいアイディア、真田はそう思った時、何者かにステッキで尻を思い切り突かれました。

「あっ、痛て!」

振り向くとそこに冷ややかな目をした竹元。

「すみません ~ 」

すごすごと表へ逃げていく真田。

… … … … …

「おいっ」

竹元がいることに気づかないのか、雄太郎はぼんやりと考え込んだままです。

「◎×▲☆◇★ !!!」

「 … あ、いらしてたんですか?」

「親父さん倒れたらしいな … 何故か私が招かれなかった祝言の後に」


結構細かいことにこだわる竹元でした。

「 … 出たかったんですか?」

「誰が出たかったと言った?

招かれなかったと言っただけだ!」


悠太郎にとって今はそんなことどちらでも構わないことでした。

「それより … お父上をここにお招きしろ」

「えっ?」


何故、急に竹元はそんなことを …

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2014年01月24日 (金) | 編集 |
第94回

刻一刻と迫る祝言の時刻。

希子があきらめかけた時、部屋の襖が勢いよく開かれました。

「希子ちゃん!」

血相を変えため以子の後について、急いで玄関に行くと、そこには …

倉田に伴われて、和枝を先頭にその他4人の姉たちが揃って立っていました。

「 … お姉ちゃん」

「柿の葉、落ちんかったからな ~ お母ちゃんの名代や」

「名代?」


玄関の脇に控えていた悠太郎が尋ねました。

「今年は何でか、葉の落ちん柿が1本だけありましてな ~

今日まで落ちんかったら、こらお母ちゃんが『行け』言うてはんのやろって … 」


め以子は、和枝の話はもしかしたら、希子の祝言に出席するための方便ではないかと思いました。

「上がってもええか?」

「はい、どうぞこちらへ」


倉田に促されて、め以子は皆を奥へと案内しました。

なにわともあれ、やっとのことで西門家の姉弟姉妹が久しぶりに勢ぞろいすることに相成りました。

… … … … …

「上手いな ~ 将来は絵描きさんかな?」

文女のお絵描きを目を細めて見ている室井 … と、その時、西門家に居たはずの川久保が息を切らして、うま介に飛び込んできました。

「 … 来た?」

待ってましたとばかりに立ち上がった室井。

「来はりました ~ 万事よろしゅうお願いします!」

「任されたっ!」


トンボ帰りで西門家へと戻っていく川久保。

嬉々とした室井は、2階に向かって声をかけました。

「来ましたよ ~ 」

… … … … …

「 … どないした?」

座敷に集まった娘たちのことを柱の陰から、こそこそと覗いている正蔵をお静は不審に思って尋ねました。

「話してきたら?」

「何を言うたらええか … 分からへん」

「自分の娘やろ?」


気になるけど出ていく意気地のない正蔵にあきれ顔のお静。

「別れた時は、確かに娘やったんやけど … 今は … 」

和枝を輪の中心に談笑する姿は、いかにも喧しそうなおばちゃん連中でした。

「言うことなんて、ふたつだけしかないやろ?

『今日はおおきに』と『昔はすまなんだ』 ~ なあ、早う行き!」


… … … … …

「め以子、希子ちゃんが呼んでる」

台所にいため以子は桜子に言われて、希子の部屋へと顔を出しました。

「えっ、えっ?」

そこに希子の姿はなく、花嫁衣装もまだ衣桁に掛かったままでした。

「まだ着てないの?!

ねえちょっと桜子、希子ちゃんは??」


すると、桜子は落ち着いて襖を閉めました。

そして、人差し指を立てて、静かにするように合図し、事情を話し始めました。

「聞いて、め以子 … 」

… … … … …

1階の襖を取り外し、座敷をぶち抜いて用意した宴席。

集まった人々の前、すでに希子は川久保と並んで正座していました。

「皆様、本日は、お忙しいところお運びいただきまして、ありがとうございます」

口上を述べました。

「 … 実はひとつ、皆様に私と川久保からお願いがございます」

何事かと、希子の言葉に耳を傾けた一同は、この後、度肝を抜くことになります。

「この場におきまして、私の兄と義姉の … 祝言を上げさせていただきたいと思います」

… … … … …

悠太郎本人はもちろんのこと、家族でさえ誰も知らなかったことでした。

真っ先に席を立ったのは和枝でした。

希子は慌ててその前に立ちはだかります。

「お姉ちゃん、話聞いて」

「だまし討ちにも程がありますやろっ!」


怒りに震え、大声で希子を罵りました。

「わてらは、あんたの頼みやから、飲めんもんも飲んでここに来たんや ~ それをようも、まあ … 」

「話、聞いて!」


負けじと大きな声を上げた希子の迫力に一瞬たじろいだ和枝。

「 … ちい姉ちゃんね、今まで祝言やらへんかったの、なんでか分かる?」

「知らんがなそんなの … 」

「お姉ちゃんに認めてもらわれへん祝言なんて、意味ないと思てはるからや。

お姉ちゃんを追い出した自分にそんな資格はないって … 」


… … … … …

あらかじめ希子から、この計画を聞いていた桜子は共犯 … 協力者でした。

「希子ちゃん、もうどうしても和枝さん呼んでやるんだって ~ あっちこっちに大ウソついて走り回ってたのよ」

真相を知っため以子が急いで廊下に出ると … 希子の声が聞こえてきました。

… … … … …

「うちね … うち、ちい姉ちゃんが来るまで、何の取得もない何もでけへんあかんたれやった。

もう、うちは何てしょうもないんやろうって … ずっとしょうもないまま生きていくんかなって思ったら、毎日憂鬱やった」


それは、和枝も承知していて、何とかしてあげなければと気を揉んていたことでした。

「でも、ちい姉ちゃんが来て … うちにもええとこあるよって教えてくれた。

そっから、少しだけ声が出るようになった。

声が出るようになったら、自分の言いたいことも少しずつ言えるようになって …

そっからはもうトントン拍子で … 温かい人たちに囲まれて … 好きな仕事が出来て …

うちはちい姉ちゃんに人生をもろたんです」


… … … … …

め以子は、その場に立ちすくんで、希子の話に泣いていました。

「うちはお姉ちゃんに育ててもろうて、ちい姉ちゃんに人生をもろうた …

ふたりとも大好きやから、お姉ちゃんにちい姉ちゃんのこと認めてもらいたい … その姿をお父さんに見せてあげたいの」


顔を背けながらも、黙って希子の話を聞いている和枝の目も潤んでいるように見えました。

じっと見つめていた希子は、和枝の前にゆっくりと正座しました。

… … … … …

「希子、そらないで!」

「うちら、まるで悪者みたいやんか?!」


冨美と満子、ふたりの姉が我慢できずに希子を責めました。

「ずるいと思てます!

いやらしいやり方やと思います ~ 何て言われたって構いません。

でも … 」


畳に手をついて、和枝に向かって土下座しました。

「これだけはお願いします」

隣の川久保も一緒に頭を下げています。

すると、悠太郎も前に出てきて同じように頭を下げました。

「お願いします」

3人の子供たちまでが父親に倣いました。

「ちょっと、やめてえな!」

「子供まで ~ 卑怯やで」


もうふたりの姉、志おりと逸も口ぐちになじりました。

「倉田さん?!」

しかし、倉田が頭を下げると … 台所にいた源太、タネ、銀次、馬介までもが座敷に上がって来て …

和枝はまるで土下座の輪に囲まれてしまいました。

「もう、何や頭下げる方が、気の毒な気すんねんけど … 」

そして、お静と正蔵も …

… … … … …

いきり立つ冨美たちとは裏腹に和枝の表情は穏やかでした。

ため息をひとつついて、周りを見渡しました。

「皆さん、頭上げてもうても、よろしいでっしゃろか … 」

静かに話し始めました。

「芝居がかった身の上話に、ええ大人が頭下げて ~

昭和いうんは、こないなご時世なんだすな …

わてはもうよその人間だすし、口出す立場でもおまへんさかい …

好きにやっておくれやす」


それだけ言うと、もといた席に再び戻りました。

… … … … …

希子は泣きながら、和枝に抱きつきました。

「おおきに ~ お姉ちゃん、おおきに」

「 … 行儀悪いで、やめとくなはれ」


どんな時でも礼を重んじ場所をわきまえている和枝は希子をたしなめましたが … しっかりと抱きついて離れない希子、「おおきに」と繰り返しました。

… … … … …

裏庭では … め以子が手拭いを顔に押し当てて泣いていました。

自分たちの祝言を大がかりなウソをついてまで譲ってくれた希子、それを許してくれた和枝 … 長年の苦労が報われた瞬間でした。

後から出てきた悠太郎が、そっとめ以子の肩を抱くと、泣きじゃくりながら胸に顔をうずめました。

… … … … …

「それでは、新郎新婦の入場です」

希子の合図で、羽織はかま姿の悠太郎と花嫁衣装に着替えため以子が廊下を歩いてきました。

「でかっ!」

「通れるんかいな?」


背の高いふたり、鴨居に頭がぶつからないように悠太郎は身をかがめ、め以子も角隠しに注意しながら座敷に入ってきました。

「馬子にも衣装やな」

「きれいやな ~ 」

「さすが実のお母さんの見立てやな ~ 」


お静と正蔵の会話の通り、見栄えのよいあでやかなめ以子の着物姿に感嘆の声が上がりました。

和枝でさえ、目を奪われています。

「お母ちゃん、きれいやな ~ 」

活男をはじめ、子供たちも母の晴れ姿を誇らしげに見つめています。

ふたりは一同の前をゆっくりと通り抜けて、金屏風の前に座ると、両手をつき頭を下げました。

… … … … …

新婦側の最前列ですすり泣く声 … 顔を上げため以子は目を疑いました。

「お父ちゃん?!」

そこで、男泣きしていたのは、父、大五でした。

「お母ちゃん?!」

そればかりか、イクや照生まで並んで座っていました。

「お父ちゃん、早いよ」

「だって、お前 … 何年越しだよ?」


その言葉を聞いて、まため以子の目に涙が溢れてきました。

「よかったな ~ 希子ちゃんに感謝しろよ」

照生にそう言われて、微笑みあう希子と川久保。

希子は、和枝が出席してくれることを信じて、東京からめ以子の家族を呼びよせて、うま介の2階で待ってもらっていたのでした。

「め以子、きれいだよ … 」

め以子は、堪え切れずに両手で顔を覆って泣きました。

… … … … …

涙を拭って、隣を見ると … 悠太郎はうなずいて、挨拶をはじめました。

「柄ばかりが大きなふたりが一緒になって、もう9年になります。

ホンマにようも、こんなに続いてきたものやと思います。

… お恥ずかしい騒動も多く、その度に皆様にご迷惑をかけ、教えられ … そして支えられてまいりました。

今日のこのよき日もまた、僕たちの力では到底迎えられませんでした」


… … … … …

「これは、皆様からのご馳走やと … 心からそう思てます。

最高の心づくしに、感謝の言葉に代えまして … 」


ふたりは声を合わせて言いました。

ごちそうさんです!」

すると、子供たちも同じように頭を下げながら、声を合わせて大きな声で …

ごちそうさんです!」

誰からとなく巻き起こる拍手。

ふと、正蔵と目が合っため以子は小さくうなずきました。

正蔵は涙を堪えているように見えます。

無表情ながらも皆に合わせて拍手している和枝。

笑顔の源太、桜子、銀次、タネ。

室井はもらい泣きしています。

納得したように微笑みうなずく倉田。

め以子はもう一度、皆に向かって頭を下げました。

見つめる希子。

ようやく泣き止んで、力いっぱい拍手する大五、そして、イク、照生 …

め以子の目に幸せの涙が光りました。

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2014年01月22日 (水) | 編集 |
第93回

「せやな ~ 当日のお膳は、鯛のお頭、ハマグリの吸いもん、それに赤飯や」

まだ昼間だというのにお銚子をつけてきた正蔵は盃をなめながら、西門家に伝わっている祝言の献立を挙げていきました。

それを帳面に書き留めるめ以子。

「うん、西門独特のま~るいお煮しめも … 大根でも人参でも芋でも何でも、ま~るうするんやな」

西門の家が元々造り酒屋だったことが由来だと正蔵は説明ました。

「まあ、あの杉玉を真似したんやな ~ 」

「杉玉って、あの ~ 軒先に吊るしてある?」

「そうそうそうそう、最初はあれ緑色のきれいなやつやな ~ あれ『新種が出来ましたで」っていう看板や。

それがだんだん日が経つにつれて、こう黄色から茶色、黒とこう変わってくるわな …

カサカサになっても形だけは丸いまんまや」


正蔵は目の前に両手で円を描きました。

「 … つまり、夫婦はいつまでも円満にという、ご先祖さんの考えやな はっはっはっは」

「しゃれてますね ~ 」


… … … … …

「あ、それから、魚の粕漬があったな … 」

「粕漬?」

「うん … その時の魚に何を選ぶかによって、御寮人さんの才覚が問われる ~ ちゅうやっちゃ」

「才覚?!」

「趣味がええかなとか、機転は利くのかいな ~ というのが試されるんや」

「あっ … 聞かんかったら、よかったです」


め以子の困った顔を見て、正蔵も失敗したなと後悔しましたが …

「言わんかったら、よかった … な」

後の祭りでした。

聞かなければ、知らないで済んだことでも ~ め以子は聞いてしまったのです。

和枝みたいにやりたいと、自分で言いだした手前、それに応えなければ …

… … … … …

「どれも美味いけど、マナガツオとか鮭とかがええんとちゃうか?

西門の酒粕に合う思うけどな」


め以子は魚屋の銀次に相談しましたが、返ってきたのはありきたりな魚の名前でした。

「せやけど、それって普通ですよね?」

「普通が一番美味いんやで」

「せやけど、そこに才覚って感じられます?」


そこまで考えて、商売している者もいないでしょう。

「ここで何を出すかが、御寮人の才覚らしいんです」

「 … 才覚かて、め以ちゃん ~ そんなな、ない袖は振れんやろ?」


銀次に核心を突かれ … 悔しいけれど、否定はできないめ以子でした。。

「そうなんやけど … そうなんやけど!!」

… … … … …

その頃、悠太郎と希子は、うま介で恩義がある倉田に祝言の報告を済ませたところでした。

「で、支度は進んでんのか?」

「はい、西門の親戚の方は比較的鷹揚で、祝言用の酒や酒粕も分けてもらえたんですけれど … 」


悠太郎はその後、言葉を濁しました。

「姉ちゃん連隊か … 」

倉田は西門家の事情を熟知しています。

「はい、これがもう、押しても引いても … 」

「別にええのんと違うか? 基本的にはもうよその人なんやし」

「僕はそれでもええと思うんですけど … 」


悠太郎は希子の顔を見ました。

「 … お父さん、この間倒れてしもうたし、もう歳やし ~ 姉妹揃ったとこ見せてあげたいんです」

「次に集まるとしたら、自分の葬式かも知れへんしな」


皆、和枝が『来る』と言わなければ来てはくれないし、『来る』とも言えないようなのです。

「 … 和枝ちゃんとこは、もう行ったんか?」

「明日、直にお願いに上がろうかなと思ってるんですけど … 」


そう言いながら、希子は倉田の顔をじっと見つめました。

「えっ、そ、その目は … わしか?!」

… … … … …

「ほんで、粕漬とお煮しめは決まったんかいな?」

糠漬けの世話をしているめ以子に正蔵がそれとなく尋ねてきました。

「お煮しめは目途がついたんですけど、粕漬が決められへんで ~

やっぱり、粕漬で美味しいお魚って、皆が知ってるもんになるというか … 」

「才覚ちゅうもんは、味の問題だけやないと思うがな ~

祝言いうのはな ~ ふたりの新しい旅立ちを祝福することと、『まあ、これから親戚づきあいになりますんで、よろしゅう』いう、そういう席や。

その席でめ以子さんが、何を伝えたいのか … それが大事や」


正蔵は、悩んでいるめ以子に、ちょっとした糸口を与えたのです。

「 … 何を伝えたいのか?」

… … … … …

次の日、希子は倉田に伴われて、和枝の嫁ぎ先を訪問しました。

「返事はお伝えした思いますけど」

… ケンモホロロです。

「お父さんの話、ちい姉ちゃんから聞いてる?」

「まだ元気なんやろ?」

「けど、いつまで元気か分からんとこあるでしょ?」


和枝は黙り込んでしまいました。

「お姉ちゃんからしたら、お父さんに文句言いたいこと山ほどあると思うけど …

でも、やっぱり最後は気持ちよう、親孝行したい思わへん?

生きてるうちにお父さんに姉弟姉妹揃たとこ、見せてあげたい思わへん?」

「畳の上で死ねるだけでも、あの人にしたら上出来なんちゃうか?」


吐き捨てるように和枝。

希子はあきらめませんでした。

「雲の上のお母ちゃんも、うちら揃てるとこ見たら、安心しはるんちゃうやろか?

… お母ちゃんも喜びはるんちゃうやろか?」


… … … … …

「大人になりはったな ~ あんさん」

和枝と対等に話し、意見を伝える … 女学校時代の希子では考えられないことでした。

「こんな時だけ、お母ちゃん引き合いに出して … エライこと、世慣れたやり口だすな ~ 」

まだまだ、和枝は希子が簡単に敵う相手ではありませんでした。

「どないしても、わてに出てほしい言うんやったら ~ ちい姉ちゃん、追い出してもらえまっか?」

「それは … 」

「それはでけん ~ これは飲めでっか?

アナウンサーいうんは、エライこと居丈高でんな ~ 」


出来ないことと知っていて、無理難題を吹っかけてくる … 和枝のことを希子はにらみつけました。

すると、今までひと言も発せずにふたりの話を聞いていた倉田が待ったをかけました。

「 … 今日の所は、これで帰ろうか ~ 希子ちゃん」

… … … … …

「 … どの道、お料理でばたばたしてる思うし、私は別にええですよ」

和枝の条件を聞いため以子は、それで済むのであればと、自分が引っ込むことを申し出ました。

しかし、お静が納得しません。

「それはないで ~ せやのうても、あんた和枝ちゃんにいらん義理立てして祝言もせんで …

これ以上、遠慮すること何もない!」

「僕もそう思います。

あなたは、この家の御寮人なんですから」

「う~ん、まあでも、ホンマに別に構わない … 」


粕漬の件で悩まされている『御寮人』という称号は、今のめ以子にとって、あまり有難いものではありませんでした。

… … … … …

「 … そうしてもらってええ?」

希子から出た、まさかの言葉に場が静まり返りました。

「希子ちゃん、あんた ~ ようそんな酷いこと言うな … 」

咎めるお静 … しかし、今日の希子は少し違いました。

「やっぱり、うち、お姉ちゃんに出てもらいたいんです。

お父さんのためにもどうしても … 」

「いや、そこまでして出てもろうても、親父も喜ぶとは思えへんけど」

「お兄ちゃんには分からへんかも知れへんけど … お姉ちゃんは、うちにとってお母さんでもあったんです。

育ての親でもあったんです」


そんな希子の気持ちをめ以子は分かってあげたいと思いました。

「ええよ、そうしよう」

悲しげな目で、め以子のことを見つめる希子。

「 … どうだって、ええやないですか ~ 肩書なんて」

平然な顔をして見せましたが、全く辛くない訳ではありません … けれども、希子と正蔵のために涙を飲むことも厭わないめ以子でした。

… … … … …

「 … これでよかったんかいな?」

後から話を聞いた正蔵は、台所に立つめ以子に話しかけました。

「和枝の代わりにがんばる言うてたのに … 」

その和枝のいけずで、め以子が祝言に出られなくなったことを申し訳なく思っている正蔵でした。

「まあ、その方が料理に集中できますし … 」

「め以子さんには我慢ばっかさせてしまうな」


そう言ってくれる人がいるだけでも十分などと思った瞬間、肝心なことを思い出しました。

「あっ、せやけど、そのことで粕漬思いついたんです!」

「えっ?」

「まっ、こういうの『結果の功名』っていうんですかね ~ 」

「 … 『怪我』の」


ハッとするめ以子。

「怪我の功名 … 」

… … … … …

『当日、ちい姉ちゃんには、台所に入ってもらうことになりましたので … 』

希子の手紙を携えて再び和枝の元を訪ねた倉田。

読み終えた和枝は、軽くため息をつきました。

「ははは ~ どないや?

無理が通ったら通ったで、やりにくいもんやろ?」


全てを見透かしたような倉田の言葉。

表情ひとつ変えない和枝ですが、次の1手を考えているのかもしれません。

… … … … …

「なあ、和枝ちゃん ~ あの柿、いつもこうなんか?」

庭を見ていた倉田が、少し葉の色づきが遅い柿の樹を珍しく思って尋ねました。

「ああ、今年だけ何でか、葉落ちへんのですわ」

「へえ ~ 何でかな?」


その時、和枝はあることを思いつきました。

「ほな、こうしましょか?」

… … … … …

『 … 柿の葉が当日まで残っていたら出席します』

倉田が和枝から預かってきた手紙には、そんな謎の一文が書かれてありました。

「何ですか? この『柿の葉が残ってたら』って … 」

「しょうことないがな ~ ほな、柿の樹に決めてもらうって言いだしてんから」


ただ預かってきただけの倉田にそこまで分かる訳か、ありませんでした。

「え ~ そんなんこっち、お姉ちゃんの条件のんでんのに … 」

「もう、ええんちゃう? 来てもらわんで」

「わしのためなら、もうええ」


頭を抱えていた希子が、バッと顔を上げました。

「倉田さん … ちょっと待っててもらえますか?」

「ええっ?!」

「今、返事書いてきますから」


言うが早く、2階へと駆け上がっていく希子。

「ちょちょちょ、ちょっと待ってえな ~

こんな郵便でやってもらえんかいな … 1日仕事やで ~ 」


西門姉妹の意地の張り合いの巻沿い、倉田はまるで伝書鳩でした。

ただただ恐縮する正蔵とお静。

… … … … …

< けれどその後、和枝からは返事は来ず … そうこうする間に、祝言の前日となってしまいました >

「あっ、お着物直してなかったみたいですけど、大丈夫ですかね?」

お静と明日の準備をしながら、め以子はふと気になりました。

今更なのですが、め以子に合わせてこしらえた着物なので、希子には丈が長すぎます。

「裾引きにするつもりちゃう? それやったら、大丈夫やろ」

着物に詳しいお静の言うことに、め以子はホッとしました。

… … … … …

「ただいま戻りました」

ちょうどそこへ明日の花嫁が戻ってきました。

「お帰り ~ どやった、川久保さんとこの親御さん?」

「うん、楽しみにしてくれてはる」


それより、気になることがあって、希子は急いで帰ってきたのです。

「 … お姉ちゃん、返事来た?」

首を横に振るめ以子。

「も ~~~ 」

イライラしながら2階へ上がって行ってしまいました。

顔を見合わせるお静とめ以子。

… … … … …

そして、祝言当日。

天気は快晴、絶好の祝言日和です。

西門家の門には家紋の入った幕が張られ、その前で正蔵とお静が招待客を出迎えています。

玄関をくぐると、そこには悠太郎と子供たちが控えていました。

… … … … …

一方、本日の主役である希子は自分の部屋でヤキモキしていました。

髪を高島田に結った希子は、花嫁衣装の前を行ったり来たり …

「食べんかて、状況は変わらへんで」

傍らに座っている川久保はそう言って、希子に腹ごしらえしておくことを薦め、自分もおむすびをひと口頬張りました。

「何でこんな時、食べてられるんですか?」

… … … … …

台所では、料理の準備もいよいよ佳境 … め以子は慌ただしく動き回っていました。

「め以ちゃん、おついそろそろよさそうや ~ ちょいと見てもろうてもええか?」

さすがにひとりでは賄いきれないだろうと、助っ人に駆けつけてきてくれたタネ …

「お頭焼けたで ~ 」

銀次の店の台所を借りて頼んだ焼き物、それを源太たちが運び込んできました。

「おおきに ~ すいません、お台所お借りして」

「ええ、ええ ~ いつもうちの子がおやつ食べさせてもろうてるしな」


ああ、情けは人の為ならず …

「ほな、もう1回戦行きましょか?!」

「ほな、よろしゅう頼みます ~ 」


源太の号令で次の準備に引き上げていきました。

… … … … …

「お邪魔しま~す!」

源太たちと入れ替わりに、威勢のいい男が入ってきました。

「お届けもんで~す!」

風呂敷に包まれた大きな箱です。

「何やろ?」

何処からかのお祝いだったらかもしれないと、め以子はすぐに包みを解きました。

熨斗紙に書かれた『ご結婚 御祝』と見覚えのある達筆な文字が目に飛び込んできました。

「えっ?!」

その下には『山下和枝』の署名があり、やはり、送り主は和枝でした。

急いで、箱のふたを開けると、その中には … ずっしりと、柿の葉寿司が詰まっていました。

「お義姉さん … 」

思わずふたを閉じため以子。

「もう ~ これが出席???」

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2014年01月21日 (火) | 編集 |
第92回

単身、和枝の嫁ぎ先を訪ねため以子。

その家は予想をはるかに裏切り、農家とはいえ立派な門構えのお屋敷 … いわゆる豪農でした。

め以子は緊張した面持ちで家の前に立ちました。

< わてのことを厄介払いしておいて、ようもまあ、そないなことノコノコと聞きにこれまんな ~ >

「何で、わての大事なお母ちゃんのお料理をあんさんに教えなあきまへんの?!」

こちらの話を聞いたら、そんな言葉が返ってきそうだと、会う前から憂鬱な気持ちになっているめ以子でした。

< … 聞こえてくるようだよね >

… … … … …

ちょうど、野良着姿の女が畑仕事から戻ってきたので、め以子は声をかけました。

「あ、あの … ちょっと、お伺いしたいんですけど … 」

振り向いた女の顔を見て、め以子は腰を抜かさんばかりに驚きました。

使用人だとばかり思っていたその女は … 和枝でした。

「 … 何?」

… … … … …

「農家いうたら、囲炉裏ひと間、思とったけど … 何や、こんな金持っとるんかいな ~ 」

勝手に人の心を代弁しながら、着物を着換えた和枝が客間で待つめ以子の前に現れました。

「相変わらず、考えが透けて見えまんな ~ 」

相変わらずは、お互い様と思いながら、め以子は手土産に持ってきた糠ツボを差し出しました。

「あの ~ これ、くだらんもんですが … 」

< … くだらんもんでございます >

「まあまあ、懲りずにどうも」

一応、受け取ることは受け取ってくれました。

「あの … 畑に出られてるんですか?」

「ちょっとはやらんと、小作のことも分からしまへんしな …

やることぎょうさんおますさかい、手短にお願いできまっか?」


… … … … …

「あの … 実は、お義父さんが倒れられてですね」

「えっ?!」


和枝の顔に一瞬緊張が走りました。

「 … 今はお元気なんですけど、次の発作が起きたら、あかんって言われてて …

それで、その ~ 柿の葉寿司をですね … 前のお母様のお得意であられたと聞き及びましたる、柿の葉寿司をですね、食べたいとおっしゃられまして … 」


め以子は座布団を外すと、畳に両手をついて頭を下げました。

「つきましては、柿の葉寿司を私にご教授いただけないかと … 参上仕った次第でございまして … 」

緊張して、おかしな敬語を使いながらも一所懸命に頼み込みました。

… … … … …

そっと顔を上げると、和枝はニコニコと笑っています。

「あ、あの … 」

つられて笑顔を作るめ以子。

「は、はは … お義姉さん?」

「は、は、は … 」


笑いながら座ったままでにじり寄ってきた和枝は、いきなり両手でめ以子の頬をつかみました。

「お、お義姉さん … 」

「は、は、は … 」


顔は笑っていますが、目は笑っていません。

「どんだけ面の皮が厚いと、そんな口利けるんか思いましてな ~

何で、わての大事なお母ちゃんのお料理をあんな父親に今更食べさせてやらなあかんの?」


頬をつかんでいる手を左右に揺さぶりました。

め以子の予想通りの反応でしたが、まさか頬をつかまれるとまでは思ってもみないことでした。

「そこをなんとか … 」

「はあ、伸び~る、伸び~る … 」


め以子の顔を玩具のように弄びました。

… … … … …

め以子が逃げ帰った後、和枝はおなごしのお貞に命じて糠床を庭に撒かせました。

< ああ、今度は土に返されますか … 割られるよりはいいですけどね >

本人は、そんなことはもう忘れたかのように、縁側でお茶を飲みながら、柿の樹を見上げています。

「今年は色づくん遅いな ~ 」

「でも、この樹だけでございますよ ~ 他所のはもう、色変わってますさかい」


お貞からそう言われて、もう一度、柿の樹に目をやったのは、さきほどとは別人のような … 気の抜けた顔の和枝でした。

… … … … …

「ケンモホロロやったか … 」

「もう、頬っぺたちぎれるかと思いました」


家に戻っため以子から話を聞いたお静は、和枝らしいと可笑しくなりました。

… … … … …

ふと見ると、夕餉の支度をしているめ以子が、また鯖をさばいていました。

「この鯖、また?」

「えっ?」

「もう、ここらでええんちゃうかな ~ 気持ちは十分やし … 」

「 … サバ味噌です」


… … … … …

「ただいま戻りました ~ 」

夕食も済み、大人3人が居間でお茶を飲んでいるところへ希子は帰って来ました。

何となくいつもとは様子が少し違う希子に首をかしげていると … 促されて後から見知らぬ男性が顔を出しました。

「突然お邪魔して、申し訳ありません」

「 … 会社の方?」


正蔵が尋ねると、希子はうなずきました。

「うん、先輩の … 」

どういうことかと察した、め以子とお静は顔を見合わせて微笑みました。

「 … 川久保啓司と申します。

技術を担当しております」


… … … … …

「はあ、それで ~ 希子を送ってもろうてたんですか?」

「ええ、まあ … 」


不審者騒ぎの話を初めて聞いたお静は希子を咎めました。

「何で言わへんの? 危ないやろ」

「 … いらん心配かけるかな思て … ごめんなさい」

「ほな、今日もそれで?」

「えっ、今日はその … 」


め以子に尋ねられた川久保は、希子の顔をちらっと見ると、突然床に手をつきました。

「あの … お嬢さんをいただけませんでしょうか?」

「えっ?!」


動揺する正蔵とは裏腹にお静とめ以子は笑顔で口を手で覆いました。

「いきなりなんですが … 」

「あっ、あの … いきなりではないんよ。

こう、うちん中ではちゃんと人柄を見て決めたこというか … 」


すると、正蔵が希子の顔をマジマジと見つめて尋ねました。

「お前、結婚はもう怖ないんか?」

… … … … …

何故、父は真剣な顔でそんなことを聞いたのか … 希子は思い出して、笑いはじめました。

「ああ … ふふふ、そんなんやったね ~ うち」

戸惑った顔をしている川久保に説明する希子。

「あのね、昔 … うちがお見合いした時に『結婚、怖い怖い』言うて … 」

「けど、ずるずる見合いすることになってしもうて … ほしたらや、この子」


お静はめ以子を指さしました。

「見合いつぶそうとして、虫の入ったお茶出したり、お茶こぼしたり … 」

「そこは言わんでもええやないですか」


恥ずかしがるめ以子、笑い転げる希子とお静。

「そんなんやから、和枝姉ちゃんにちい姉ちゃん、蔵に閉じ込められて … 」

「う~ん、もうええやないですか ~ 」


… … … … …

「 … そこに、ぐでんぐでんになったこの人が … 『ごめんなすって』って!」

大爆笑する一同、川久保は目を丸くしました。

「ホンマですか? それ」

「いや ~ 改めて人様に話すと、何やアホみたいやな ~ 」

「ホンマですね ~ 」


笑って話せるようになったということは、今の西門家は幸せだということです。

「ホンマにあかんたれやったな ~ うち」

あの無口で引っ込み思案だった希子は今は話すことを仕事にしているのです。

「ほなもう ~ わしは今度つぶさんでもええんかいな?」

そう希子に尋ねた正蔵 … それは、この結婚を認めたということでした。

「はい … つぶさんとってください」

… … … … …

「め以子さん、1本つけよう」

「あ、はいっ!」


倒れて以来、酒を控えていた正蔵でしたが、今夜は飲まずにはいられない気分でした。

「あんさんはあかんで!」

「酒は百薬の長いうてな ~ 」

「ほな、あんさんはもう薬漬けやな … 」


… … … … …

< かつて、正蔵が働いていた銅山から悠太郎が戻ってきました >

悠太郎が重い足取りで家の前まで戻ってきた時、ちょうどお静が客を見送っているところに出くわしました。

その客に悠太郎は見覚えがありました。

確か、お静がひいきにしていた呉服屋です。

「ただいま戻りました」

「ああ、お帰り」

「 … 着物作るんですか?」


また、着道楽の虫が騒ぎ始めんだろうか …

「そのつもりやってんけどな … 希子ちゃん、め以子はんの借りる言い出してな」

「め以子の着物を?」


悠太郎には話が見えません。

「あっ、花嫁衣装をな … 」

「はあ?!」


… … … … …

「僕がおらんうちにそんなことになっとったんですか … 」

希子から説明されて、ようやく合点がいった悠太郎でした。

「そうなんよ ~ よう考えたら、ちい姉ちゃん、花嫁衣裳作ってきはったな ~ って」

「お母ちゃん、それなりに気合入れて作ってたし … 使うてもらった方が着物も浮かばれるやろうって」


め以子はしまい込んであった着物を取り出して、希子に見せていました。

… 結局、め以子は正式の場でこの着物の袖に手を通していないのです。

「反対? … お兄ちゃん」

顎に手を当てて考え込んでいる悠太郎を見て、希子は尋ねました。

「いや、せやのうて … これは少し、あれもあるんですか?

その … 親父に見せるために急いだというか … 」


さすがにズバリとは聞きにくいことであり、答えにくいことでもありました。

「でも、あれよ … 本当にそうなったら、ええと思ってたんよ」

川久保を連れてきた日の希子を見ていため以子にはそれはよく分かりました。

… … … … …

「それでね … 祝言はこの家で挙げたいんよ」

「ほな … ほな、お料理とか式の段取りとか、そういうのはうちで全部?」


め以子が念を押すように聞き返しました。

「ちい姉ちゃんには迷惑かけますけど … 」

そう言って、頭を下げた希子。

「あ、別に迷惑やないけど … 」

いつものめ以子ならふたつ返事で引き受けているはずなのですが … 何となく言葉を濁しました。

「大丈夫?」

悠太郎も不安に感じたのか、め以子に確認しました。

「大丈夫 … と、言いたいとこやけど」

「僕ら祝言挙げてませんからね?」


… そういうことなのです。

「 … 手順とかしきたりとか、いろいろあるんでしょうね?」

「あっ、この際、予行演習でざっと挙げてみます?」


しかし、悠太郎の思い付きをめ以子は受け入れませんでした。

「ダメです!

ダメですそんなのは … 挙げないって決めたんですから」

「頑固やな ~ 」

「ええんですよ、私は … 今更蒸し返さないでください」


… どんな理由があったのでしょうか?

「あ … お願いは出来ますかね?」

希子が申し訳なさそうに、顔を覗き込みました。

「ああ、うん、大丈夫 … 何とかなる!

… 何とかする」

「ほな、よろしゅうお願いします」


… … … … …

「どうかしたんですか?」

希子が部屋を出て行った後、着物をじっと見つめているめ以子を見て悠太郎は尋ねました。

「ああ … あっ、鉱山どうでした?」

逆に聞き返されて、悠太郎は深く長いため息をつきました。

「 … 何も変わってなかったです。

痛んだ土地はそのまんまでした」

「そうでしたか … 」

「せやけど … 親父の生き方が少し分かった気がします」


悠太郎が正蔵について、こんな風に口にしたのは初めてです。

「 … 生き方?」

「あの人が始末ようするいうのは ~

あかんようにした土地いうか … 自然へのつぐないなんでしょうね」

「そうかも知れませんね … 」

「僕の仕事のこと、ホンマはどう思てるんかな?

自然を無理から開発していくという意味では同じやないですか … 」


帰って来てから、どことなく晴れない表情をしていたのは、そんなことを考えていたからだったのです。

… … … … …

悠太郎とめ以子の部屋を後にした希子は、その足でうま介を訪れていました。

「あら、希子ちゃん、いらっしゃい」

出迎えた桜子に希子は切羽詰まった顔で言いました。

「あの … 頼みがあるんですけど」

… … … … …

「こうせんと、食べられへんの?」

裏庭で縄に連なった柿を吊るしている正蔵。

お手伝いの活男の無邪気な質問に笑顔で説明しています。

「そや、こうした方が美味しい食べられるんや」

「へえ ~ 」

「なあ、活っちゃん … どんなもんでも工夫したら、食べられるようになるんやな」


この吊るした柿はいずれ甘い干し柿になるのです。

それを食べた時、活男はどんな顔をするか、正蔵はそちらの方が楽しみでした。

… … … … …

「あの、お義父さん … 」

め以子に声をかけられ、正蔵は振り返りました。

「 … 西門家の祝言のしきたりとか料理とか教えてもらえます?」

「そんなもん、気楽にやったらええがな ~

好いたもん同士が一緒になるんやさかいに」


正蔵は柿を吊るす手を休め図にそう言いました。

「 … お義姉さんみたいにやりたいんです」

「和枝みたいに?」


うなずいため以子。

「お義姉さん、こういうこと大事にしてはったから ~

お義姉さんがここに居はったら、きっとこうやりはったって … そういう風に希子ちゃんを送り出してあげたいんです」


そんな風に言われたら、断ることもできない正蔵でしたが …

「 … そうか」

まだあまり乗り気ではないのでしょうか? … 表情は冴えません。

「はい、お願いします」

そんなことには気づかずに張り切るめ以子でした。

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2014年01月20日 (月) | 編集 |
第91回

工事現場の詰め所。

竹元が別々の梱包から取り出した2枚のタイルを手に取りました。

後ろで神妙な顔で控えている悠太郎と真田。

「同じ色のはずですけど … 」

あまりにも入念に見比べているので、真田が思わず口を出してしまいました。

「やり直しだ … 色の浅い方に揃えろ」

実はふたりとも微妙に色合いが違って仕上がってきたことに気づいてはいました。

しかし、品質や構造上は全く支障がないので、そのまま使おうとしていたところに、竹元が現れてチェックし始めたのでした。

「離れた所に使うたら、分からないのでは … 」

「やり直しだ」

「トイの縞はさめば、分かりませんよ」


工期とコストの問題から、このまま何とか進めたい悠太郎たちですが、そんな誤魔化しで納得する竹元ではありませんでした。

「やり直しだ!」

… … … … …

西門家。

今日も泰介は同級生たちを連れて帰ってきています。

「おばちゃん、お水頂戴 ~ 」

常連となった彼らは、だんだんと遠慮がなくなってきました。

追加のおやつを台所で作っているめ以子は手が離せません。

「自分でやって!」

「おばちゃん、今日のいまひとつやで ~ 」


それどころか、食べさせてもらっている分際で注文までつけるようになってきていました。

「ほな、もう帰って!」

何だかんだと文句を言いながらも、毎日毎日いろいろと趣向を凝らして、子供たちが喜ぶようなおやつを用意するめ以子でした。

… … … … …

その時、裏庭から急ぎ足で入って来たのはふ久でした。

「ふ久、どないしたん?」

「お祖父ちゃん、変なとこで寝てる」

「ええっ?」


不審に思って、裏庭に出てみると … 収穫した柿の処理をしていたはずの正蔵が横たわっているのが見えました。

「あっ、お義父さんっ?!」

慌てて、駆け寄るめ以子。

「大丈夫ですか? お義父さん!」

正蔵は意識がありません。

「お義父さん!」

… … … … …

往診で呼ばれた医師の処置で、正蔵は取りあえず落ち着いて眠っています。

「次に発作が起きた時には覚悟をした方がええかも知れませんけれども」

医師は帰り際にそう言いました。

「 … 次の発作て、どのくらいで?」

「3日後かも知れんし、3月後かも知れんし … 3年後かも知れんしな、ははは」


不安そうに尋ねたお静に医師は飄々と答えました。

「あの ~ 食事とか、何か気を付けた方がええこととかありますか?

… 食べた方がええもんとか」

「しっかり、機嫌よう食べられるんが一番ですわな … 美味いもんを美味しいにっちゅうこっちゃ」


… … … … …

医師を見送った後、め以子にはお静が塞ぎ込んでいるように見えました。

「お義母さん … 」

「まっ、3年の方やろ ~ 憎まれっ子、世にはばかる言うし … 」


自分に言い聞かせるように笑顔を繕ったお静 … きっと、そうに違いないとめ以子も思いました。

「お祖母ちゃん!」

慌てて、子供たちがお静を呼びに来ました。。

「お、お祖父ちゃんがどうかしたんか?」

「 … お腹空いたて」


… … … … …

意識を取り戻した正蔵は、め以子が用意した雑炊を美味しそうに食べています。

「よう、食べられるな ~ 」

そう言いながらも、お静はうれしそうに笑いました。

「倒れるのかて、体力いるのやで」

軽口を叩き、いつもの正蔵とあまり変わらない様子です。

「お義父さん、何か食べたいもんとかあります?」

「お医者はんに言われたんや ~ しっかり、機嫌よう食べさせって」

「 … ほな、何言うてもええんか?」


ふたりがうなずくと、正蔵は鶴を食べてみたいと言い出しました。

「美味しいて聞いたんや」

食い意地の張っため以子も興味を示します。

「あと … 熊の手!」

「ああ ~ どんな味なんでしょうね … 熊の手」

「死ぬまでに一遍食べてみたいなあ」


盛り上がるふたりをお静は一蹴しました。

「そんなもん食べたら、体がビックリするわ ~

何かこう … もっと普通のもんないの?」

「 … 普通?」


… … … … …

そう言われて、考え込んだ正蔵。

「あ … 」

「何ですか?」


何か思いついたような顔をしたので、め以子は尋ねました。

「う … いや、別に … あの … あらへん」

おどおどとして、正蔵は言葉を濁しました。

… … … … …

正蔵の容態は緊急を要する状況ではなかったため、悠太郎と希子には、帰宅をした際に報告されました。

「倒れたけど、元気は元気なんですよね?」

「ま、取りあえずはそう見えるんですけど … 」

「でも、もういつお迎えが来てもおかしない歳ではありますよね」


改めて考えると希子の言う通りでした。

黙り込んでしまったふたりにめ以子は言いました。

「長生きしていただけるように、私ももう少し考えてみます。

お食事とか … 」


… … … … …

「前の奥さんのお料理なん?」

夜、こっそりと布団を抜け出して仏壇の前に座っていた正蔵。

2階で寝ていたはずのお静がいつの間にか後ろに立っていました。

「 … 食べたいもんて」

「いや、何も … 」

「正直に言い、怒らへんから」


その顔は正蔵には怒っているように見えました。

お静は、正蔵の前に座ると、仏壇を見つめながら言いました。

「お料理上手なお方やったんやろ?

和江ちゃん見とったら分かるわ … そんなとこで張り合う気もないさかい、言うて」


… … … … …

「柿 ~ ?」

正蔵の口から出たのは、『柿の葉寿司』でした。

「柿の葉寿司って、柿の葉っぱで巻いてあるお寿司?」

「亡うなった奥さんがな ~ 季節になったら樽いっぱい作って、それ持って皆で行楽に出たりしとってんって …

うちが来る前の、まだなんのわだかまりもない頃に … 」


お静の話を聞きながら、め以子には、それを白状した時の正蔵の怯えた顔が目に浮かぶようでした。

「作れる? あんた」

「あ、やったことないですけど、作り方さえ聞けば … 」

「ああ、ほな頼むわ ~ 」

「あの … 作り方とか、何入ってたとか?」

「チョロチョロ ~ っと、市場でも行って聞いてきてえな」


それだけ言うと、お静は何処かへ出かけてしまいました。

… … … … …

丸投げされため以子が困惑していると、2階から正蔵が下りてきました。

「め以子さん … 別に作らんでもええしな … 柿の葉も … 」

「なあ、それ美味しい ~ ??」


め以子の膝の上で聞いていた活男は興味津々です。

「わし、作り方もよう分からへんし … 」

… … … … …

まずは作り方をと … 市場に出かけため以子でしたが、案外あっけなく問題は解決しました。

最初に顔を出した魚屋で尋ねると銀次が知っていたのです。

「そない難しいもんやないで ~

柿の葉に包んで、押し寿司作るだけや … 具は、しめ鯖とか鮭とか、小鯛、まあこの辺かいな」

「 … 安いし、鯖でやってみようかな?」


そして、柿の葉は源太のツテで手に入れて … め以子は早速、柿の葉寿司作りに取り掛かりました。

… … … … …

< 塩しておいた鯖を酢に漬け込んで、昆布ではさんで寝かせる … 酢飯を作って、握って、柿の葉にネタと一緒に包んで … 重しをして >

「 … で、1日置く」

め以子がそう言うと、活男が不満そうに声を上げました。

「え ~ 今日は食べられへんの?」

正蔵やお静と一緒に酢飯を扇いだり、柿の葉に包む手伝いをした活男は、てっきりすぐに食べられるものとばかり思っていたようです。

「これな … 美味しい食べよう思たら、1日辛抱せなあかんのや ~ 」

… … … … …

「お父さん、昨夜倒れてしまいはったん?」

例の不審者騒ぎのお蔭で、希子と川久保は、一緒に話をしながら昼食をとる … くらいには親しくなっていました。

「まだ、元気なんですけどね …

いつまでも居る訳やないんやな ~ って」

「親孝行、したい時には親はなし … てな」

「 … そうなんですよね」


考え込む希子。

そんな希子を見て、川久保は何か思いついたようです。

… … … … …

次の日。

1日経って … 出来上がった柿の葉寿司が、西門家の食卓に並びました。

「うわ ~ 美味しそうや ~ 」

「うんうん」


満面の笑みを見せながらうなずく正蔵。

「ほんま好きやねんな ~ 」

あきれ顔のお静。

「 … 分かった?」

「分かるわ ~ 」


その上、め以子が西門のおついまで用意したことを知ると、正蔵は泣き出さんばかりに喜びました。

「これこれ、これが無いとあかんねん ~

ほなま、いただこうか?!」


… … … … …

「 … どうですか?」

出来具合を正蔵に尋ねため以子。

「いや … 」

すると、正蔵はお静の顔を見ました。

「美味しいな ~ 」

「うん、まあ、こんなもんや」

「 … こんなもん?」

「こんなもん、こんなもん」


そう言いながらも、ペロリと平らげると、正蔵はまた手を伸ばしました。

… 喜んではくれているようですが、何となく引っかかっため以子でした。

… … … … …

「 … 今ひとつやんね?」

悠太郎と希子にも味見してもらいながらも、め以子はいまいち自信がありませんでした。

「いや … せやけど、それなりに食べられますよ」

悠太郎の奥歯に物が挟まったような言い方も気になります。

「そりゃ、食べられはするけど … どこが違う?」

「う~ん、何やもうちょっとまろやかな味やったような … 生寿司は、こんな酢がたってのうて … 」


め以子が作ったのは柿の葉寿司には間違いありませんでしたが、亡き母の味を知っているふたりにとって、それは別物だったのです。

「浅めに漬けた方がええんかな ~ ご飯は?」

何とかその味に近づけようするためのめ以子の苦労が始まりました。

… … … … …

< それからも、め以子は試行錯誤重ねてみましたが …

酢を弱くすると、生寿司は生臭く、ご飯の甘さと相まって持ったりし過ぎたり … 置き時間によっても、味が変わってしまい、柿の葉寿司は簡単そうに見えて、実に … >

「む、難しいっ!」

< … ものなのでございました >

… … … … …

「 … お義父さん、今日のは?」

「う、美味い」


何日も何日も、日に幾度となく柿の葉寿司を食べさせられ続けている正蔵。

お静とあの活男でさえもげんなりしています。

「 … けど、もう十分や」

自分のために一所懸命になことを知っているので我慢していましたが、さすがにもう限界のようです。

< そうだね ~ これじゃあ、ただ味見させせてるだけだよね … >

… … … … …

「お姉さん、頑張りはるな」

希子からめ以子の話を聞いた川久保が感心しています。

「ねえ ~ 頭は下がるんですけど … 」

そのお蔭で希子の弁当もここ最近、ず~っと柿の葉寿司でした。

「あ、よかったら … 」

おすそ分けしてもらった柿の葉寿司をつまみながら川久保は、さりげなく話題を変えました。

「 … それで、親孝行思いついた?」

「う~ん、考えてはいるんですけどね … 」


川久保は少し逡巡した挙句、おもむろに口にしました。

「 … 花嫁姿見せるっていうのは?」

「誰のですか?」

「君でいいんやない?」


何となくうなずいていた希子ですが、よくよく考えて … ハッとして顔を上げました。

「えっ?」

川久保と目が合って … 思わず立ち上がった希子。

「えっ、えっ、あっ、えっ?!」

何故か焦っています。

「あかん? … まだ早い?」

「いや、明日でもええです!」


にっこりと笑い返した希子でした。

… … … … …

その夜、帰宅した希子は、玄関をくぐったところでふと足を止めました。

自分が川久保のあの言葉を待っていたことに気づいた希子、思い返す度に自然と顔がほころんでくるのでした。

「ただいま戻りました ~ 」

今日は先に帰っていた悠太郎が調べているのは時刻表でした。

「お兄ちゃん、どっか行かはるんですか?」

「明日明後日でお義父さんが勤めてた鉱山見に行くんやて」


夕食の用意をしながら、め以子が代わりに答えました。

「今どうなってるか、ちょっと見てこよう思て … ええ報せあったら、親父も喜ぶやろ?」

悠太郎なりに考えた親孝行でした。

希子が自分の親孝行も口に出そうか迷っていると、悠太郎がとんでもないことを口走ったのです。

「あ、この人、和枝姉さんのとこ行くんやて」

そう言って、以子のことを指しました。

「えっ?!」

希子は我が耳を疑いました。

「亡うなった、お義母さんの柿の葉寿司、お義姉さんならきっと作り方わかるでしょ?」

どうやら本気のようです。

「 … でも、教えてくれるかな?」

「まあ ~ 言うだけ無料やし … 

うん、行ってみるわ」


そう言って笑ってはみせましたが、内心は不安でいっぱいのめ以子です。

< こうして、め以子は … 単身、和枝の嫁ぎ先を訪ねたのでございました >

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2014年01月19日 (日) | 編集 |
さて、次週の「ごちそうさん」は?

正蔵(近藤正臣)が倒れ、め以子()はどんな食事がいいか尋ねる。静(宮崎美子)に怒られそうだという正蔵。つまり先妻の得意料理の柿の葉ずしだった。

お義姉さんみたいにやりたいんです

どんだけ面の皮厚いとそないな口利けるんか思いましてな ~


さっそく柿の葉とさばを調達して作ってみるが、思いどおりにできず四苦八苦するめ以子。思いきって和枝(キムラ緑子)に作り方を尋ねにいくが、きっぱり断られる。

一方、希子(高畑充希)は川久保(茂山逸平)に正蔵のことを相談するうちに、花嫁姿を見せてはと結婚を申し込まれる。

お嬢さんをいただけないでしょうか

希子の希望で花嫁衣裳を新調せず、使われていないめ以子のものを借り、祝言を家であげることに。希子は和枝を訪ね式に来てくれるように頼みこむが、め以子を追い出すならという返事。め以子は当日は台所に引っ込むと申し出る。

和枝からは柿の木に葉が残っていたら出席すると謎のような返事がくる。

祝言当日、め以子は準備にてんてこ舞い。和枝は亡き母の名代だと柿の葉ずしを携えて現れる。

そして嫁いだ姉たちが勢ぞろいする中での希子の発言に、一同仰天することに。祝言の後、正蔵は寝ついてしまい、め以子は滋養がつく食事にいっそう工夫をこらす。

僕の仕事のこと、どう思うてるんかな?

期待してるでえ ~


正蔵の病気を知った竹元(ムロツヨシ)から、悠太郎(東出昌大)に思いがけない提案が。

毎日毎日、ご飯おおきに

ごちそうさんです!


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2014年01月18日 (土) | 編集 |
第90回

め以子が裏庭を見ると、暗がりの中、そこに悠太郎が立ってたのです。

そして、ゆっくりと家の中に入って来ました。

「悠太郎 … 」

正蔵たちも悠太郎に気づき、め以子は立ち上がって悠太郎と対峙していました。

… … … … …

ふたりは、月明かりの縁側に場所を移して、腰をおろしました。

「何処に居はったんですか?」

「 … 詰め所に居ました」

「ご飯は?」

「その辺で済まして … 」

「 … 亜貴子さんのとこへは?」

「一度だけ行きました」


今まで伏せていた顔を上げため以子、正直に答えた悠太郎をにらみつけました。

「カレーをご馳走になって … 結果的に言うと、振られました」

「振られた?」


眉間にしわを寄せ聞き返しました。

「はい … 振られました」

「えっ、それって … 」

「僕も言いたないんですけど … あなたに夢の中まで検閲されるんで、敢えて全面的に説明させてもろうてええですか?」


そう言われて、め以子もうなずき、ふたりはひざを突き合わせるように座りなおしました。

「 … こういった訳です」

悠太郎は律儀にも、うしろから抱きしめる仕草をして見せました。

… … … … …

「光男さんな ~ 一緒になってからは、うちが遅うなっても食べへんで待っててくれてはって …

『今日、何があったん?』『どんな患者さんが来たん?』って、静かな声で聞いてくれはってな」

悠太郎の腕の中で、亜貴子は話しを続けました。

「ええ人、言うたら聞こえはええけど … 生きてはるのに、死んでるみたいやて、うちは酷いこと思ってた」

悠太郎はそっと腕を緩めるとその手を肩に置きましたが、亜貴子はゆっくりと離れていきました。

「 … 最後も、穏やかでね ~

『自由に生きや』って、いまわの際に言いはった」

… … … … …

「ああ、ずっと知ってはったんやなって、しんどかったろうなって、辛かったろうなって … 」

ボロボロ泣きながら話す亜貴子。

「悠ちゃん … うち、悠ちゃんとこうなったらええなって、ずっと思ってた。

これが、うちの夢やと思ってた。

けど … 今は、何でここに居るんは … 光男さんやないんやろって、思ってる」

そして、亜貴子は小さな声でひと言「ごめん」と言いました。

… … … … …

「 … それ、ホンマに振られただけやないですか」

話を聞き終えため以子は腹を立てていました。

「そう言うたやないですか」

「振られたから、戻ってきただけやないですか!」


責めるめ以子に悠太郎は、開き直りともとれる言葉で返しました。

「しゃあないやないですか?!

僕の戻るとこはここしかないんですから」


… … … … …

「大体酷いですよ … よう考えたら、何で僕が追い出されなあかんのですか?」

「悠太郎さんが無理してるのが、嫌やったんです。

… 横で見てるのが、耐えられへんかったんです」

「ほな、もうこれ以上、僕に無理させんとってください!」


… … … … …

「亜貴のカレーは、それなりに美味しかったですけど、僕には無理です。

あなたのカレーがある限り、よそのカレーを心から美味いというのは僕には無理なんです


悠太郎の『無理』は、め以子の言う『無理』とは、別モノでした。

「僕はたぶん、どんなカレーを食べても、あなたのカレーを思い出してまうんです。

… あなたのところに戻って来てしまうんです」


胃袋をガッチリとつかまれているという訳でした。

「せやから、もう二度と追い出すとか、無駄なことせんとってください」

その代わり、悠太郎の言葉はすべてのことを水に流させて、め以子の心をガッチリとつかんでしまったようです。

め以子の頬を涙が流れ、振り上げたこぶしが力なく悠太郎の腕を叩きました。

その手を掴んで、握り返した悠太郎。

… … … … …

板の間から、ふたりの様子を窺っていた一同。

「飲みなおしますか?」

「 … せやな」


桜子の提案に皆がうなずきました。

… … … … …

「やっすいおなごやの ~ 結局、カレーひとつでコロリか?」

次の日、肉を買い求めに来ため以子から、一部始終を聞いた源太があきれて言いました。

振り回されていた自分たちがアホらしく感じられます。

「何とでも言うて ~ もうちょっとおまけして」

「あ ~ ?」


もうひと切れ、秤の上に乗せました。

「おおきに♪」

「けど、ふたり職場近いんやろ ~ また会うこともあるんちゃうの?」


源太の言葉にめ以子は少しだけ不安そうな顔をしました。

「 … 源ちゃん、あのね … 私、いつか亜貴子さんに感謝できるくらいにはなりたいな思ってる」

「感謝?」

「亜貴子さんと出会わなかったら、悠太郎さんは今の悠太郎さんやなかったかも知れん …

せやから、下ごしらえしてくれはったんやって、思えるようになりたいなって … 今は、まだ無理やけどね」


… … … … …

買い出しを終えため以子は、正蔵と一緒に台所に立っていました。

カレーに入れる具の下ごしらえをしているめ以子の横で正蔵は時間をかけて、牛すじを煮込んでいます。

め以子のカレーは正蔵から教わった始末の料理を発展させたものでした。

「すじ肉はどうですか?」

「うん … ほれ、ええ具合やろ?」


… … … … …

「ほな、お先失礼します」

いそいそと帰宅しようとした悠太郎の前に立ちふさがったのは、詰め所に飛び込んできた竹元でした。

「おい貴様、どうやってこの ~ ◎×▲◇ORZ ~ トイの幅、注文と違わないか?!」

怒りのあまり何を言っているのかよく聞きとれませんが … 手にしたトイを悠太郎に突きつけました。

「違わへんと思いますけど … 」

「これは復讐か?」

「 … 明日でええですか?」

「私のデザインをトイの幅ひとつで、台無しにしようとする、お前の下剋上か?!」

「明日でええですか?! … 今日はカレーなんで」

「かっ???」


… … … … …

大阪ラヂオ放送。

放送を終えた希子と川久保がスタジオから出て来ました。

「今日もありがとうございます」

これから送ってもらって家に帰るのです。

「乗りかかった船やから … 」

「あ、あの … 」


川久保に何か言いかけた希子は、視線を感じて振り返りました。

そこに、あの不審者の男が座ってこちらを見ていたのです。

… … … … …

立ち上がって希子に近づいて来る男の前に川久保が立ちはだかりました。

そして、希子の手を取って、スタジオの中へと逃がそうとしました … が、希子は川久保の手を解いて男の前に歩み出たのです。

「あ、あの、うち … 」

咄嗟に今度は希子の方から川久保の腕をつかみました。

「こ、この人と一緒になりたいんです!」

一番驚いているのは川久保です。

「 … 希望ですけど …

好いてくださってるのに、すいません」

「ほな … ほな、ひとつだけ言うこと聞いてくれるか?」


男の言葉に身構える希子と川久保。

… … … … …

どんな無理難題を要求してくるのか … しかし、男の願いを聞いたふたりは拍子抜けしてしまいました。

スタジオのマイクの前に座らされた希子に、男は副調整室から『おはようさん、新吉さん』と書かれた紙を見せました。

これを読んで欲しいというのです。

「おはようさん、新吉さん」

すると、男 … 新吉は、首を横に振り、胸に手を当てて、心を込めてというジェスチャーを見せました。

「おはようさん、新吉さん」

希子が言われるがまま、感情を込めてマイクに向かうと … 新吉は、笑顔になり、両手で大きな丸印を作って見せました。

最後には、川久保と固い握手まで交わしていました。

… … … … …

「ただいま戻りました ~ 」

め以子のカレーが出来上がった頃、悠太郎が帰って来ました。

「失礼する!」

何故か竹元を引き連れて …

… … … … …

カレーをひと口食べた竹元は、満足そうにうなずくと熱く語り始めました。

「この圧倒的存在!

無限のひろがり ~ 心が震えるようだ …

エネルギッシュでありつつ繊細、情熱の裏にある緻密な計算 … 大らかに見えて、何が入っているのか見当がつかない …

すなわち、カレーとは、女そのもの!

わけてもこれは女の中の女 … カレーの女神だ! 奥っ」


何を言っているのかよく分かりませんが、ほめているのは確かなようなので、め以子は礼を言いました。

「変わったお人やな?」

「面白いこと言わはるな … 」


顔を見合わせるお静と正蔵。

… … … … …

「おいっ、こいつが死んだら、私がもらってやってもいいぞ ~ 奥っ!」

「えっ?!」


よほど、め以子のカレーが気に入ったのでしょう。

「お父さん … 」

泰介が不安そうに悠太郎の顔を見ましたが、め以子のカレーに夢中で耳に入らなかったようです。

「私は仕事柄、海外に行くこともある … お前が、異国の食べ物に接すれば、それはもう、造詣の深い … ?!」

興味を持ったのか、ふ久が横から手を出して、竹元のガイゼル髭を触っていたのです。

「何だ … 猫娘、何がしたいんだ?」

「こら! ふ久、座り!」


… … … … …

「お父さん、食べてばかりやのうて、何か言おうや ~ 」

周りの騒ぎなど、全く気にかけず、ただカレーを貪るように食べている父親の尻を叩いた泰介でした。

「うん? … お替り!」

「お替り、わしも!」


悠太郎に続いて、活男も空になった皿を元気に差し出しました。

「はいっ!」

笑顔で受け取るめ以子。

お替りした大盛りのカレーを幸せそうに頬張る悠太郎。

… … … … …

賑やかな食事も終わり、竹元を見送りに正蔵は表まで出て来ていました。

「 … 失礼いたします」

「あの ~ あいつ、ちゃんとやっとりますかいな?」


気にはなっていましたが、皆がいる所では憚っていたのでしょう … 歩き出そうとした、竹元にそれとなく悠太郎のことを尋ねました。

「いや ~ ご迷惑をおかけしてるんやないかと思いましてな … 融通の利かんところがありますのや」

「そうですね ~ いつまで経っても馴染みません。

私の美を理解しようという発想は皆無 … どこまで行っても『安全』『安全』の一点張りです」


吐き出すように言った竹元、正蔵は恐縮してしまいました。

「 … 有難い話です」

最後に正蔵の顔を見て真顔でそう言いました。

うれしさと感謝の念がこみあげてきた正蔵は、竹元に向かって頭を下げました。

「おおきに … 」

そして、立ち去っていく竹元の背中にもう一度頭を下げる正蔵。

… … … … …

板の間。

後片付けをしているめ以子の傍らで横になっている悠太郎。

「まだ動けないんですか?」

少し苦しそうに腹をさすっている悠太郎を見てめ以子は声をかけました。

「はあ ~ 食べ過ぎました」

「あ、お薬いりますか?」


しかし、それには答えずに悠太郎はめ以子を見上げて、布巾で食卓を拭いていたその手に自分の手を重ねました。

「美味しかったです … 」

目を伏せて微笑むめ以子。

体を起こす悠太郎。

「 … ごちそうさんでした」

「はい」


見つめ合うふたりの顔が近づいていきました …

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2014年01月17日 (金) | 編集 |
第89回

「お母ちゃ~ん … 」

部屋に閉じこもってしまっため以子、心配した子供たちが声をかけてもやはり返事は返ってきません。

「 … ほな、ここ置いとくからな、お母ちゃんの大好きな具のおむすび」

「お母ちゃん、鶏みそのおむすびやで ~ 」


食事になっても下りてこないめ以子のためにおむすびを運んできたのですが、戸が開く気配どころか物音ひとつしません。

仕方がなく、3兄弟は顔を見合わせてうなずくと、おむすびを乗せた盆を部屋の前の廊下に置き、その場を立ち去りました。

… … … … …

一方、悠太郎は亜貴子に誘われるがまま、夕食を食べに部屋までついてきてしまっていました。

「はい」

食卓に座った悠太郎の前に亜貴子はカレーが入った皿を置きました。

「変わったカレーやな?」

「ミセス・キャベジの特製カレーや」


め以子のライバルの名前、亜貴子も希子の番組の愛聴者のようです。

… … … … …

子供たちが寝る時間になっても、廊下のおむすびは手つかずのままでした。

「お母ちゃん、出てきへん」

活男の言葉にうなずくふ久。

「何、あったんやろな … 」

泰介が不安そうにつぶやきました。

… … … … …

「ほな、お兄ちゃん、今日帰って来はらへんのですか?」

「この人、連れて帰るって出て来はったのに … ほだされて帰って来はってな ~ 」


居間では、お静と希子に挟まれて座らされた正蔵が肩身が狭そうに弁解していました。

「けど、あんな状態で帰って来よっても、め以子さん苦しめるだけやと思たんや」

「 … 子供らにはなんて?」

「お父さんはお仕事急に忙しうなって、で、お母さんは急に具合悪なった言うてある」


それでも、勘のいい泰介は相当疑っているようです。

「お兄ちゃん … 」

… … … … …

その悠太郎は亜貴子の作ったカレーを食べている最中でした。

「亜貴も料理するんやな … 」

意外そうに言うと、亜貴子は少し照れくさそうに笑って話し始めました。

「光男さん、表出えへん人やったから ~ 一緒に楽しめるもんって食事ぐらいやったしね …

美味しい?」

「うん … 美味しいけど、ちょっとあっさりめやな」


黙々と食べながら、め以子の牛すじカレーを思い出していた悠太郎でした。

… … … … …

悠太郎の横顔を見ていた亜貴子、その視線が棚の上に飾ってある写真立てに移り … それに気づいた悠太郎も写真立てを見つめました。

「そこの写真、光男さん?」

ふと亜貴子を見ると、うつむいて … 堪え切れずに泣き出していました。

「亜貴、どないしたんや?」

「ごめん、ごめんな … 誰かとこうやって、家でご飯食べるなんて … 二度とないて思てたから」


席を立ち、背中を向けて泣き続ける亜貴子。

悠太郎も思わず立ち上がると、後ろから亜貴子のことを抱きしめてしまいました。

… … … … …

夜が明け、子供たちは恐る恐る襖を開けて、母の部屋の前を確かめました。

盆の上のおむすびは無くなっています。

「食べてる!」

「 … けど、出てけえへんか」


部屋の戸に手をやった泰介が肩を落としました。

ここはまだ閉じられたままです。

… … … … …

子供たちからめ以子のおむすびが無くなっていたことを聞いた正蔵たちは取りあえずひと安心でした。

「けど、お母ちゃんの具合ってあれで治るん?」

泰介に尋ねられて、大人たちは答えに困ってしまいました。

「おかわりっ!

最後やから多めにして」

「おむすび置いといたら、出てくるん?」


活男と泰介、年の差で仕方がないのですが、対照的なふたりです。

泰介は目の前のご飯に手を付けていません。

「泰ちゃんは心配せんでええから … ほら、しっかり食べ、なっ?

活っちゃんはいつもと変わらんな ~ 」


父と同じようにあごに手を当てて考え込む泰介。

< 具合が悪いって、ウソだよね ~

むくれて、出てこなくなっちゃったんだよね … どうしたら、出てきてくれるのかね ~ >

… … … … …

「泰 ~ おばちゃん、どうや?」

放課後、同級生たちが寄ってきました。

「どうもならん … 」

「そろそろおばちゃんのおやつ食べたいんやけど?」

「食べたいな ~ 」

「せやな … 」


… … … … …

「 … 私が邪魔者」

桜子から聞いた言葉を繰り返す源太。

「そう言って、しゃべんなくなっちゃったのよね … 」

亜貴子に会った後の、め以子の落ち込み方が尋常でなかったことを知り、うま介に集まっている面々も心配していました。

… ひとりを除いて。

「桜子、見に行ってみる?」

源太に言われて、うなずく桜子。

すると、文女と遊んでいた室井がそれを聞いて、しゃしゃり出ました。

「あっ、僕行ってくるよ ~ ね、ね、文女見てて」

桜子は無視して、外したエプロンを室井に押し付けて、源太と出かけて行きました。

… … … … …

め以子は、昨日とほぼ同じ姿勢で畳の上に横たわったまま … 食欲に負けて、深夜におむすびに手を出しましたが、部屋から出て行く気力は湧いてきません。

『この世で、たったひとりの心許せる相手を後から来て持ってったんは … あなたなの!』

亜貴子の言葉を思い出すたび、胸が痛みました。

… … … … …

「活っちゃん、ほら、丸屋のちょぼ焼きやで ~ 」

いつもなら喜んで食らいつくはずの活男でしたが、様子が変です。

「しょぼ焼きがええ … お母ちゃんのしょぼ焼きがええ!」

泣き出してしまいました。

こうなってくると、お静にも手に負えません。

「もう、どないすんの?」

「しょうがないやないかい … 」


正蔵とふたりで持て余していると、そこへ泰介が学校から戻ってきました。

久しぶりに同級生を引き連れて …

… … … … …

「こんにちは ~ 」

「お邪魔します ~ 」


子供たちは口々に挨拶をすると、泰介に続いて台所から板の間へ上がり込んできました。

「泰ちゃん、今日はあかんで!」

「2階、2階!」


お静が止めるのも聞かず、泰介は同級生の先頭に立って2階へ上がって行ってしまいました。

… … … … …

「私なんて、居ない方が … 」

め以子がそんな言葉をつぶやきかけた時、廊下を歩いてくる足音が部屋の前で止まりました。

「お母ちゃん!」

泰介の声でした。

「おばちゃん、おやつ ~ !」

ハッと、身を起こしため以子。

「いつまで待ったらええねん!」

「おばちゃん ~ お腹ぺっこぺこや!」


泰介の同級生が一緒になって、廊下の前で大声を出しているのです。

「う、家帰り … 家で食べ!」

め以子は苛立ち、そう口走りましたが … 声に力がなく、外の子供らには届きません。

「お母ちゃん、しょぼ焼き作って ~ 」

活男の声でした。

… … … … …

「お母ちゃんのしょぼ焼きが食べたいねん!」

め以子の部屋の前に並んだ子供たち。

横でお静が不安そうに見守っています。

… … … … …

め以子は声が聞こえる方を見つめました。

「活っちゃん … 」

… … … … …

その時です。

前もって打合せしていたのでしょう、泰介は目で合図して、手を叩き始めました。

「しょ~ぼ、しょ~ぼ、しょ~ぼ、しょ~ぼ」

同級生たちもそれに合わせて同じように手を叩き、活男も加わって「しょぼ焼き」の大合唱です。

「しょ~ぼ、しょ~ぼ、しょぼ焼き!」

いつの間にかお静も一緒に手を叩いていました。

「残り物の … 」

「しょぼ焼き!」


それどころか、合いの手まで …

「しょ~ぼ、しょ~ぼ、しょぼ焼き!」

「何でもかんでも … 」

「しょぼ焼き!」

「始末の料理や … 」

「しょぼ焼き!」


… … … … …

ついに天岩戸は勢いよく開かれ … そこには、子供たちを見下ろしため以子が立っていました。

「おばちゃん、今日、メッチャクチャ機嫌悪いからなっ」

怖い顔でそう言った後、にっこり微笑みました。

「死ぬほど、しょぼくれとるで!」

「やった ~ !! 」


大喜びする子供たち。

泰介と活男は抱きついてきました。

… … … … …

「おばちゃん、しょぼ焼き、めちゃ美味い!」

「お母ちゃん、しょぼ焼き、めちゃ美味いわ!」

「おばちゃん、ホンマたまらん!!」


汗だくになって、しょぼ焼きを焼き続けるめ以子。

食欲旺盛な子供たち相手、焼いても焼いても間に合いません。

「美味い!」

「美味い!」


… … … … …

「そのお肉、あげるの?」

うま介を出た後、源太が店から持ってきた包みを見て、桜子は尋ねました。

「あいつにはな ~ 千の言葉より、1枚の肉や!」

とっておきの上等の肉の大奮発でした … さすが付き合いが長いだけあって心得ています。

… … … … …

西門家の前まで来たふたりは、何だか家の中がやけに騒々しいことに気づきました。

「美味い、美味いわ ~ 」

「なんぼでも食べれるわ ~ 」


そっと覗くと … 

台所で、正蔵とお静に手伝ってもらいながら、慌ただしく、しょぼ焼きを焼くめ以子の姿がありました。

「おばちゃん、もうないで ~ 」

「あんたら、飲んでるやろ ~ 噛んで食べ! アホんなる!」

「おばちゃん、早うして!」


顔を見合わせて笑う正蔵とお静。

「しょ~ぼ、しょ~ぼ、しょぼ焼き!」

またまた、大合唱が始まってしまいました。

… … … … …

「お肉いらなかったわね」

「 … せやね」


なにわともあれ、ホっと安心したふたり。

め以子を立ち直らせたのは、子供たちの声 … 食べ物で人を笑顔にしたいという気持ち … め以子の原点でした。

… … … … …

大阪ラヂオ放送。

川久保がいつものように希子を迎えに行くと、姿が見当たりません。

「すいません、もう帰ったんですか? 西門君」

「今日は早めに帰りたいからって、早退したで」


上司の言葉を聞いて、川久保も慌てて局を後にしました。

… … … … …

自分がいない時に、あの男が現れたら …

結局、希子に追いついたのは、もう西門家が目の前の場所でした。

何事もなかったことに胸をなでおろす川久保。

… … … … …

「おおっ」

「 … 源太さん」


玄関をくぐろうとした希子は中から出てきた源太と鉢合わせしました。

「えっ、どないしたんですか?」

「肉、持ってきたんだけど … なんや、いらんようなってもうて」

「 … 何かすいません」


め以子がらみのことだと察した希子は頭を下げました。

「ほな」

源太の背中を見送る希子。

その目からは以前のような切なさは感じられません。

しかし、離れた場所から見ていた川久保にはそんなことまで分かる訳もなく、まして源太とどういう関係なのかも聞いたことはありませんでした。

ただ、送っている最中に何回か会った時に、希子の態度から憎からず思っていることは感づいていました。

早めに帰りたかった理由もこれだったのかと勝手に思い込んでしまいました。

… … … … …

「川久保さん!

心配して来てくらはったんですか?」


立ちすくむ川久保の姿を見て、希子は駆け寄って来ました。

「う、うん … 何にもなかったらええねん。

彼、上手くいくとええね」


意味も分からず、軽くうなずいた希子。

「えっ?」

すでに川久保が立ち去った後でした。

… … … … …

その晩、夕食も済んだ後、一度出直した桜子と室井が西門家を訪れていました。

「ごめんなさい、何か押しかけちゃって」

「へへへ、かまへんかまへん ~ 皆で飲んでる方が楽しいてええのんや … なあ、め以子さん」


め以子が部屋から出てきたことで、正蔵も少し安堵して、酒も進んでいるようです。

「はい、ありがたいです … 気が紛れるし」

「 … あのさ、亜貴子さんとどういう話したの?」


遠慮がちに桜子が尋ねました。

「えっ … 」

その質問に、皆の視線が一斉にめ以子に集まりました。

「もう、言うてもええんちゃう?」

「ふたりが秘密にしてきたことやし … 」


お静に言われても躊躇するめ以子、それを聞くことが目的の室井は遠慮を知りません。

「今更そんな義理立てることないんじゃない?

… もう取られちゃったんだしさ」


横にあった盆で室井の頭を思い切り叩いた桜子。

「あの … 男がな、古女房に飽きてしもうて、妾の所へ転がり込みよったんや ~

ほんで、毎日毎日一緒に暮らしてたら、その妾の方がなんや女房みたいになってきて … はっ、その男、結局元の女房と浮気した … 」


正蔵の物の例えが気に入らなかったのか、お静は桜子から盆を受け取ると「あほう」と正蔵の頭を叩きました。

「なんやねんな ~ 」

だらしない男ふたりのお蔭で場が和みました。

… … … … …

「でも ~ うち、お兄ちゃん戻って来ると思うけどな」

さっきから何か物思いにふけったような感じだった希子がおもむろに言いました。

「毎日一緒におるって … 強いですよ」

… その言葉の意味が分かるのは、もう少し後のお話です。

… … … … …

「けど、ホンマどうするつもりなん? … これから」

改めて問われて、め以子はお静の顔を見ました。

「悠太郎さん、迎えに行くか? … 一緒に行ったろか?」

め以子は盃の酒を飲み干しました。

「 … 待ちます。

気持ちは縛れへんから … 悠太郎さんの気持ちに任せます」

「健気だね ~ 」


感心する室井、正蔵も何度もうなずいています。

「でも、何があっても、私はここから出て行きませんけど … ええですか?」

「いや ~ ええっ、あんたは出てったらあかん、あかんえ!」


慌てる正蔵。

「せやな、まさかの時は悠太郎さんに籍外れてもろうたら、ええねん!」

そこまでは考えていなかった正蔵はお静の顔を困った顔をして見ました。

… … … … …

「子供にはお母ちゃんの方が大事ですからね ~ 」

そんなことを言いながら、よそ見をしていた室井が酒をこぼしてしまいました。

台所へ布巾を取りに立とうとした桜子が、ハッと踵を返してめ以子に耳打ちしました。

「め以子 … 」

桜子が目くばせした先 … 裏庭を見るめ以子。

暗がりの中、そこに悠太郎が立っていました。

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2014年01月16日 (木) | 編集 |
第88回

「出てってくれますか?」

てっきり機嫌が直ったとばかり思っていため以子の口から思いもよらぬ言葉。

「出てけって、何でですか?」

この期に及んでまだ白を切っている … め以子はそう思ったら、押さえていた怒りが爆発しました。

「何で?」

… … … … …

「あかん、蔵へ行こう!」

もう、犬も食わないなんとやらの域を超えていました。

幼い子供たちに両親の生々しい言い争いなど見せてはいけない … 正蔵は慌てて、お静と希子に子供たちを蔵へと避難させました。

昨晩、自分と話していた時と今のめ以子の変わりように戸惑いながら、自分も居間を出て行く正蔵。

… … … … …

「何でって、あなたが浮気してるからでしょう!」

「 … してませんよ!」

「じゃあ、何で新聞読むのやめたんですか? 忙しいのにご飯に戻って来るんですか?」

「何が悪いんですか?」

「悪いと思ってるから、そういうことするんでしょう?!」

「あなたがずっと機嫌悪いからやないですか! … むくれて嫌味ばっかり言うて」

「私のせいですか?

私が悪いんですか?

毎日毎日、料理作って、お弁当作ってる私のせいですか?!」

「そんなこと言ってないでしょ?」


… … … … …

「『ごめん、亜貴』って何ですか?」

「えっ?」

「『ごめん、亜貴』って何がどう『ごめん』なんですか?

鬼みたいな嫁がいるから会えなくなって『ごめん』ですか?

押し切られて、結婚してもうた『ごめん』ですか?」


悠太郎には何の話かさっぱり分かりません。

「寝言で言うてたんです」

「 … 寝言って」

「困りますよね ~ 夢の中のこと言われたって、自分じゃどうしようもできないんだから …

でも、だから、ホントなんでしょ?

もう無理しないでくださいよ」


そう言うと、改めて荷物を押し付けました。

… … … … …

「追い出したんだ? 悠さん」

め以子はうま介へ行き、ことのあらましを皆に報告しました。

心配する一同の中で、ひとり嬉々としている室井は、これからどうするのかと尋ねてきました。

メモを片手に、まるで取材です。

やはり、この男は他人の不幸を小説のネタとしか考えていないようです。

「 … 何とかなるでしょ」

「お前、どうかしてへんか?

あったかどうか分からん程度の可愛らしい浮気を … 」


あきれ返る源太。

しかし、め以子は言いました。

「浮気やないから ~ あれは、本気やから」

「本気って?」


そこまで言うには何かあったのかと、桜子は尋ねました。

「夢見てさ … 『ごめん、亜貴』とか、言っちゃってるの … 何よそれ、どんな夢よって …

私、どんだけ悪者なんよって … やってらんないわよって … 」


誰もがかける言葉が見つからず黙り込んでしまっても、メモを取り続ける室井。

… … … … …

「そういうことなんで … ご報告でした」

店を出て行っため以子の後を追って、桜子は引き留めました。

「一緒に亜貴子さんとこ行こう」

「えっ?」

「ちゃんと、ハッキリどういう関係なんだか聞きに行こう … 意外に大したことじゃないかも知れないよ」


及び腰のめ以子に桜子は尚も問い質しました。

「もう嫌いなの? 悠太郎さんのこと … ホントにこのままでいいの?」

「 … いい」

「はい、出た … 逃げ癖!」


… … … … …

一方、ふたりのことで心を痛めていた正蔵は悠太郎の職場に顔を出していました。

「ほな、何かいな ~ その子は、昔時々うちに遊びに来ていたあの子か?」

「 … そうです」

「その子と一緒になろう思うてたんか?」

「 … 一時期、僕らはお互いしかいないような状態でしたから」


め以子と出会った頃、それはもう叶わない状況だったのです。

「今は?」

「現実的にどうこうとは全く考えてないですけど …

そら、好きか嫌いかって言われたら、好きですよ」


男同士ということもあってか、正蔵には本音を口にしていました。

「め以子を好きになるきっかけはあっても、亜貴を嫌いになるきっかけはなかったですから」

「正直なやっちゃな、お前は … 」

「あそこまで言われたら、ウソついてもしゃあないですから」


… … … … …

「 … ほな、邪魔したな」

それだけ聞くと、サッサと帰ろうとする正蔵に悠太郎は何か物足りなさを感じました。

「戻れって言わないんですか?」

「そんなこと、言えた立場かいな ~ 俺」


悠太郎の話を聞いて、この話、最後は納まるところに納まると判断したのでしょう。

「戻ってきたなったら、いつでも帰って来たらええ … そん時は、わしも一緒に怒られたる」

飄々と話す父を見て、思わず頬を緩めた悠太郎でした。

… … … … …

桜子に煽られため以子は、意を決して、亜貴子の診察室を訪れていました。

「桜子、やっぱりひとりで行く」

同席してくれるという桜子のことを断りました。

「2対1ってやられたら、嫌じゃない?」

「 … 大丈夫? 落ち着いて聞ける?」


うなずくめ以子、緊張した面持ちで診察室に向かおうとすると、ドアが開いて、出てきた亜貴子と鉢合わせしました。

… … … … …

「 … ホンマ、久しぶりですね」

診察席に腰かけながら、亜貴子。

実際、め以子がまだ女学生時代、実家の開明軒で一度会っただけの仲でした。

「今日はどうされました?」

そう言って、め以子のことを座るよう勧めましぬた。

「あの … うちの主人とは、どのようなご関係でしょうか?」

顔は強張り、目は伏せたまま、オドオドとした口調で尋ねました。

「友達やと思うけど」

反対に亜貴子は腰を落ち着けて、堂々と答えました。

「どんな友達ですか?」

「普通の」

「普通って、どういう普通ですか?」

「普通は普通や」


埒が明かないと思っため以子は質問を変えます。

「ほな、昔ふたりの間に何があったか、教えてください …

私には、聞く権利がある思います」

「 … 権利?」

「妻ですから … 」


… … … … …

一瞬、亜貴子が不快な顔をしたように見えました。

しばしの沈黙の後、あきらめたかのようにひとつため息をつき話始めました、

「悠ちゃんと最初に出会たんは … 」

「火事の現場ですよね … そこで悠太郎さんはお母さんを亡くされて、亜貴子さんはご両親を亡くされて … 」

「それが縁で話すようになって、悠ちゃんは街造り、うちは医者になろうって誓い合うたんや … 」


… … … … …

しかし、亜貴子は、身を寄せていた親戚には、「そんな金は出せない」と言われて … 困っていたところに来たのが、村井家の養女となって学資援助を受けるという話でした。

… それはいずれ、村井家の息子に嫁ぐことが条件だったのです。

「うちは飲んだよ ~ それしか道はなかったし … けど、そこの光男さんいうんは、やっぱりあの大火事に遭うた人で、顔も体も火傷を負っててな …

悠ちゃんは、悠ちゃんで、お父さんとこに後妻さんが入って来て、ぐちゃぐちゃになってて … 」


現実から逃げ出したいふたりは、本当に逃げ出したのです。

… … … … …

「えっ、それって … 駆け落ちっていうことですか?」

「そう言うたら、カッコええけど …

現実はしょぼくれたもんで、駅まで行って、そこで終わりや。

けど、その時、悠ちゃん、泣いてくれてな ~ 」


『俺が大人やったら、亜貴のこと守れるのに … 亜貴の夢、叶えられえるようにしてやれるのに』

「ものすごううれしかった … ひとりやない、うちのために泣いてくれる人が世の中にひとりだけは居るんやて」

… … … … …

「それからは、覚悟決めて、うちは村井の家へ入って、悠ちゃんは家に戻って …

特別なことは何もなかった … お互い、相談事が出来たら、話に行くようなつきあいや。

ここで話してたんも、そういうこと。

普通のお友達」


亜貴子はめ以子を安心させるためなのかそう言った後、笑顔を見せました。

… … … … …

「 … もうええかな?」

それでも、あとひとつ確かめたいことがある。

「結局、亜貴子さんはずっと、悠太郎さんを好きだったってことですか?」

再び、亜貴子の顔に不快感が走りました。

「 … そういうことですか?」

それは確かめるまでもないことでした …

「あのな ~ うちにも我慢の限界があるんやけど」

「えっ?」

「あなたに権利振りかざされて、こっちは話したくもないこと延々話させられてるんやけど!」


亜貴子が怒るなんて、め以子の想定外でした。

「だって、私は … 」

「悠ちゃんの奥さんやから?

うちはあなたに何から何まで答えなあかんの?

すっごい権利やね、それ」

「そういうつもりは … 」

「うちからしたら、後から来て横取りしてったんは、そっちなんやで?!」


決定的な言葉でした。

「この世で、たったひとりの心許せる相手を後から来て持ってったんは … あなたなの!」

… … … … …

診察室から出てきため以子は、まるで本当の病人みたいにフラフラとベンチに座り込んでしまいました。

「何があったの?」

心配して尋ねる桜子。

抜け殻のような、め以子はつぶやくように言いました。

「 … 邪魔者は、私やった」

… … … … …

「あれっ … わあ、潰れてもうたんか?」

その店は看板は外され、窓も扉も木材で打ち付けられていました。

悠太郎はここで夕食を取ろうと考えていたのです。

仕方なく立ち去ろうとした時 …

「悠ちゃん?」

声のする方を見ると … 偶然通りかかった亜貴子でした。

「カレー、食べに来たん?」

「ああ … ここやんな、昔来てた」

「せや」


ふたりの馴染みの店だったようです。

「 … 今日、家で食べんでええの?」

「うん、今日はな … 」


その亜貴子にも理由は分かりました。

「ほな、うちで食べる?」

… … … … …

「どないしたん?

… め以子さん、開けて!」


家に戻っため以子は、何も言わずにそのまま部屋に閉じこもってしまいました。

真っ暗な部屋の中、畳の上に横たわるめ以子。

お静が外からいくら声をかけても返事もなく、戸も開きません。

「め以子さん、め以子さん … 」

悠太郎と亜貴子の、とても自分が入る余地のない強い絆を知ってしまっため以子。

深く傷つき、打ちのめされていました。

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2014年01月15日 (水) | 編集 |
第87回

< め以子が出かけていく悠太郎たちを不機嫌に見送ってから1週間 … め以子は更に不機嫌になっておりました >

気が晴れる訳ではないのですが、うま介に来ては愚痴っていました。

「何がそんなに不服やねん?」

「いっくら言うてもやめへんかったのに、急に食事中に新聞読むのやめたん」

「ええやんか?」


源太にはそれのどこが悪いのか分かりません。

「子供と一緒に登校までして、夜ご飯には戻って来るんよ」

「何があかんねん? 反省してはんのやろ」

「それって、結局はやましいことがあったってことやない?

… 何もなかったら、そんなことする必要もないやん」


結局、今は何かしても、しなくても、気に入らないということなのでしょう。

「 … 大変やな、悠太郎さん」

馬介がふと漏らしたそんなつぶやきもめ以子は聞き逃しませんでした。

「何が? … 何が、どう大変なん?」

席を立って、馬介に食ってかかりました。

「やめなよ、め以子 … 怖いって」

見かねた桜子が止めに入ると、その言葉にも過剰に反応しました。

「どうせ大きいですからね ~ 大女ですからね!」

「背のことは言ってないでしょ」


誰彼かまわず当り散らすめ以子を源太が諌めました。

「ええ加減にせんと、ホンマに愛想つかされるで!」

しかし、今は素直に聞くようなめ以子ではありません。

「ええ ~ ええ、ええ、どうせ私は可愛げがありませんよ!」

捨て台詞とともに店を出て行ってしまいました。

「何や、あれ?」

「ちょっと、手に負えんな … 」


… … … … …

「なあ、あのふたり、どないなってんのやろ?」

お静と正蔵のふたりも、雰囲気最悪の上辺だけの家族団欒に気疲れしていました。

「こんなことは、考えとうないんやけど … これやろな ~ 」

正蔵が小指を立てると、お静が傍らで遊んでいる活男の目に触れないよう手で隠しました。

「せやな … あの怒り方は」

そんな話をしているところへめ以子が戻って来ました。

玄関の戸の開け方や物の置き方も、どことなくぞんざいで、不機嫌なことがビンビンに伝わってきます。

何も言わずに台所仕事を始めため以子にお静は遠慮気味に尋ねました。

「なあ、何かあったんなら、言うてくれへん?

そういうのこっちも気になるし … 」

「ああ、ほな、気にせんといてください」


お静と正蔵は、顔を見合わせてしまいました。

… … … … …

昼休みの詰め所。

悠太郎は、弁当箱を開けようとしていた手を止めて、ため息をつきました。

このふたを開けるのも怖い … そんな気分です。

そんな様子を後ろの席から見ていた池本。

彼に責任は全くないのですが、それでもめ以子に軽口を叩いてしまったことを気にしているようです。

「どや、今日終わったら、お姉ちゃん居るとこいくか?」

「遠慮しときます … 絞殺されますんで」


あながち冗談とも言えず、そう思うと猶更食欲もわかず … 結局、弁当は真田に食べさせてしまいました。

… … … … …

「おばちゃん、今日もあかんかな?」

「う ~ ん」

「しょぼ焼きたべたいな ~ 」


泰介には、何と答えてよいのやら分かりませんでした。

そんな話をしながら、同級生たちと帰ってくると …

「おばちゃんやっ!」

め以子が家の前で水撒きをしているのが見えました。

慌てて身を隠す子供たち。

水の撒き方さえ、投げやりな感じです。

そのうちに柄杓が柄から外れて飛んでしまいました。

顔をしかめ、柄の部分をじっと見つめて、微動だにしないめ以子。

「 … 帰るわ」

同級生たちは、今日もあきらめて、それぞれの家へと帰って行きました。

… … … … …

「ほな、お先に失礼します」

やらなければならない仕事はいくらでもありました … かといって、残業しても、こんな精神状態では思ったようには捗らないことも分かっていました。

定時に上がった悠太郎が詰め所の外に出ると …

「亜貴?!」

表で亜貴子が待っていました。

「久しぶりやな」

「 … せやな」


蚊の鳴くような声で答えた悠太郎。

「抜糸はちゃんとした?」

「ああ … 別の病院でしてもろて」


ホッとした顔をする亜貴子。

「ほんなら、よかった ~ それだけ、気になってて」

「それで、来てくれたん?」

「たまにおるねん ~ ホッタラカシにしてそこから膿んでしまう人 …

やっとたら、それでええねん」


それだけ告げると亜貴子は、背を向けて歩き始めました。

… … … … …

何歩か歩いて立ち止まった亜貴子、悠太郎は事情を説明しなければと思いました。

「亜貴 … あんな … 」

「ええよ … 何となく分かってるから …

もう昔とは違うのに、うちもちょっと甘え過ぎたわ。

め以子さんにも、ゴメン言うといて」


亜貴子は振り返ってニッコリ、「ほなね」とひと言、去って行きました。

… … … … …

家に戻った悠太郎を出迎えたのは、お静でした。

台所から、包丁でまな板を叩く音が聞こえてきます。

悠太郎はその足で奥へと向かいます。

め以子は包丁を両手に持って、肉を細かく叩いていました。

「ただいま戻りました」

手も休めず、顔も見ることなく、「おかえりなさい」とだけ返しため以子。

「お弁当、ここ置いときますね ~ 美味しかったです」

「はい」


流しに置かれた弁当箱を開けため以子の顔色が変わりました。

「えっ、何で海老の尻尾残ってるんですか?」

悠太郎は尻尾まで食べる人なのです。

「 … 実は、ちょっと食欲がのうて、人にあげたんで」

「私のお弁当は、食欲をなくしますか … 」


またまな板に向かうめ以子。

「そんなこと言うてないやないですか」

「ほな、誰かさんと食事の約束でもありましたか?」


このひと言に悠太郎もカッとなりました。

「僕は約束したことは守りますよ!」

しかし、め以子は無視して手を動かし続けています。

「ええ加減にしてくださいよ ~ 何をどうしろ言うんですか?」

業を煮やした悠太郎は、め以子の肩をつかんで無理やり振り向かせました。

「何するんですか? 危ないでしょ!」

「話しかけてるでしょ!」


にらみ合うめ以子と悠太郎。

「行った ~ !」

その時、ふたりの横を紙飛行機がかすめて飛んで行きました。

… … … … …

「向こうまで行ったで、お祖父ちゃん!」

飛ばしたのは泰介でした。

「おお、よう飛んだなあ はっはは … 」

居間から集まってくる子供たち。

「お父ちゃん、拾うて」

悠太郎は活男に乞われて、流しに落ちていた紙飛行機を拾いました。

「おおきに!」

「 … 悠太郎さんも着替えて、飛行機見たってや ~ 詳しいやろ?」


お静の言葉にうなずいた悠太郎は2階へと上がって行きました。

… … … … …

夕食も終わり、皆それぞれの部屋で布団に入った頃。

糠床の世話をしているめ以子の元へ正蔵がやって来ました。

「め以子さん … 」

気づいため以子が正蔵の方を見ると、いきなりその場に土下座しました。

「すまんっ!」

「えっ、あっ、ちょっと、やめてくださいよ ~ 何でお義父さんが?!」


慌てて止めるめ以子。

「どうせ、悠太郎が何かしでかしたんやろ?」

「 … しでかしたっていうか、元からそうやったことなんで」

「元から?!」


愕然とする正蔵。

「悠太郎さんには、昔なじみの女の人が居るんです。

その人との間には、ふたりだけの秘密みたいなもんがあって … そういう関係に勝手にイライラしてるんです。

嫌になっちゃいますよね ~ ええ歳して女学生みたいに … 」


自分の振舞を客観的に分かりながらも、気持ちのやり場がなく、どんどん不機嫌になっていため以子でした。

「悠太郎さんも、たぶんその人のことが好きで … もし、その人と一緒になれるんやったら、私のことは選ばなかったと思うから … 」

そう考え出すと、悠太郎のなすことすべてが憎らしく思え、八つ当たりしてしまう … そんな自分も嫌だったのです。

… … … … …

「 … そうなんやろうかな?」

「?」

「め以子さん、あんたと初めて会うた時 … わし、ああと思た。

あいつがあんたを選びよったこと、ストーンと腑に落ちたんや。

窮屈な生活しかできへんかったあいつが、あんたにあこがれよった気持ち … わし、よう分かる」


正蔵が感じたことはきっと間違っていません。

ただ、亜貴子と一緒になれるのだったら、め以子のことを選ばなかったというのも否定はできないでしょう …

… … … … …

「こんなこと、わしが言うても、意味ないわな ~ 」

「いいえ … 」


しかし、この正蔵のとりなしでめ以子のやるせない気持ちは一気に治まる方向へと向かって行ったのです。

… … … … …

子供部屋。

3人の寝顔を見つめるめ以子。

< そうだよね ~ お母ちゃんがイライラしてちゃ、子供たちがかわいそうだよね >

め以子は、決心しました。

もう一度、悠太郎ときちんと話そうと …

… … … … …

自分たちの部屋を覗くと、悠太郎もすでに布団で寝息を立てていました。

め以子は枕元に座って声をかけました。

「悠太郎さん、悠太郎さん … ごめんなさい、ちょっとお話しできませんか?」

「 … ごめん」


耳を傾けるめ以子。

「 … 亜貴」

「 !! 」

「ごめんな、亜貴 … 」


それは、寝言でした … そして、確かに亜貴子のことを呼んだのです。

… … … … …

次の朝。

「おはようございます」

2階から下りてきた悠太郎は、挨拶に応えため以子の笑顔を見て、ホッとしていました。

昨晩まであった自分のことを受け付けないようなトゲトゲしさまで感じられなくなっていたのです。

「うわ ~ 小皿いっぱいやん!」

「なんや、豪華やな」


子供たちが食卓に並んだご馳走を見て、歓声をあげています。

「何かあったんですか?」

希子も不思議そうに尋ねました。

「なんや急に作りたくなってしもうて … 」

栗ご飯にオムレツ …

「なんやこれ、悠太郎さんの好きなもんばっかりやな ~ 」

「ホンマです … これ食べたかったんです」


お静の言葉に悠太郎もうれしそうな顔をしてめ以子のことを見ました。

「そう?」

… … … … …

美味しそうに、栗ご飯を頬張る悠太郎。

「お母ちゃん、美味いわ!」

活男の声に微笑むめ以子。

家族一同、朝からのご馳走を堪能していました。

ようやく、め以子の機嫌が直り、ふたりのケンカも終わったと誰もがそう思っていたのです。

悠太郎本人も …

… … … … …

流しで洗い物をするめ以子の元に悠太郎が食器を運んできました。

ごちそうさんでした。

今日は、朝から美味しかったです」

「そうですか ~

最後やったんで、腕ふるってみました」

「えっ? … 最後って」


悠太郎はめ以子の背中に聞き返しました。

笑顔で振り返っため以子。

「出てってくれますか?」

表情ひとつ変えずにそう言うと、傍らにまとめてあった風呂敷包みを悠太郎に押し付けました。

そして、もう一度。

「出てってくれますか?」

じっと見つめるめ以子からは、もう笑顔が消えていました。

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2014年01月14日 (火) | 編集 |
第86回

悠太郎の留守中に工事現場に差し入れに訪れため以子は、そこで偶然、亜貴子の姿を目にしました。

「えっ?!」

こちらには気づかずに帰っていく亜貴子のことを目で追うめ以子。

「どうもどうも ~ わしも呼ばれてよろしいですか?」

ちょうど詰め所から出てきた池本にめ以子は尋ねました。

「あの、今、出ていかはった人?」

「ああ、西門君のセンセイでっせ」

「 … センセイ?」

「昔からの知り合いらしいですね ~ 」


やはり、亜貴子に間違いありません。

でも、悠太郎はそんなことひと言も言っていなかった …

「でも、奥さん心配でしょ? あんなお友達」

「そうですね … 」


笑い返そうとしましたが顔が引きつります。

「まあ、大丈夫ですよ ~ 思うほど亭主もてもせずって言いますからね」

「そうですね … 」

「えっ?」


め以子が池本に差し出した小皿にはキュウリの漬物がひとかけら乗っているだけでした。

「ぎょうさん食べて、お仕事がんばってください」

焦点の定まらないうつろな目、心ここにあらずといった顔のめ以子でした。

… … … … …

「ただいま戻りました」

悠太郎が詰め所に戻って来た頃には、め以子はすでに帰った後でした。

机の上に置いてある弁当箱に気づく悠太郎。

「あ、これ亜貴 … 松田先生が持って来てくれはったんですか?」

「ええ、診察室に忘れてはったの、お弁当やからって」


代わりに受け取った真田が答えました。

「西門君 ~ 奥さん差し入れ来てくれはってな … 忘れもんや」

池本がバスケットと風呂敷包みを差し出しました。

こんなものまで忘れて帰るとは、余程ショックが大きかったのでしょう。

「 … うちの来たんですか?」

「ああ、えらいこと美味い差し入れ持って来てくれはってな ~

エッグなんか、人の心をエッグる美味さっていうかな」


… … … … …

め以子の忘れ物と弁当箱を並べた時、悠太郎に衝撃が走りました。

「会いました? … ふたり、会いました?」

顔色を変えて池本に尋ねました。

「 … 会ってないけど、奥さんは見はった」

万事休す …

「ほんでな、わしは、てっきりお前は言うてるもんやと …

松田先生が担当で、奥方は気が気でないやろね ~ みたいな、軽口を … 西門 ~ すまん、西門」


平謝りする池本。

余計なことを … 悠太郎は頭を抱えてしまいました。

しかし、すぐに思い直しました。

「ええんです … ええんですよ … 何もやましいことありませんから」

まるで、自分に言い聞かせるように … 

そんな言葉も空しい悠太郎でした。

… … … … …

め以子は真っすぐに家には戻る気にはなれず、うま介で焼け食いの真っ最中でした。

「毎朝、毎朝早く行ってたのは、診察室行くためだったのね … 看護婦さんもいない時間よね」

どことなく落ち着かないでいたり、急に手土産を買ってきたり … 今にして思えば、合点がいくことばかりです。

桜子相手に愚痴をこぼし、悔し涙を流すめ以子。

「いや ~ 悠さんも考えたな ~ 」

「なあ、朝の診察室 … 」


馬介、室井に源太も加わった男3人が下世話に茶化しているのをみて、桜子は思いきりテーブルを叩きました。

「 … でも、め以子どうするの?」

「えっ?」

「通天閣、とっちめるつもり?」

「え、だって … 朝の診察室にふたりっきりよ、ふたりっきり!」

「けど、そこに行ってたことしか、分かってない訳よね?

だから … 早めに行って治療してもらってたよ ~ 以上、終わり … じゃない?」


そう言われれば身もふたもないことでした。

「だって … ウソついてたのよ!

早く、現場に行くためだって … 何もないなら、何でそんなウソ … 」

「ああ、もう ~ ええやんけっ、浮気のひとつやふたつ!」


いい加減、焦れた源太が思わず口をはさみました。

「僕も聞かん方がええ気するな ~

聞いてもうたら、白黒別にして、ごっつやりにくうならへん?」


うま介も桜子と同じようなことを言いました。

室井は、小説のネタにでもと考えているのでしょうか … 他人の揉め事は楽しくてしょうがないといった顔です。

しかし、そんな心がけだと遠からず自分の身にも不幸が降ることになるような … 予感がします。

… … … … …

皆の言うことも分からないではありません … しかし、到底納得することはできないめ以子でした。

「ただいま戻りました ~ 」

「こんにちは ~ 」


また今日も泰介が同級生たちを連れて帰って来ました。

「おばちゃん、今日何?」

顔をしかめるめ以子、とてもそんな気持ちの余裕がありません。

「帰って、今日はないから … 」

「何もなかったら、しょぼ焼きでええで!」

「今日はないっ!」


思わず強い口調で返していました。

「ごめん、今日は … 」

母に何かあったことを察した泰介が皆に詫びました。

「おばちゃん、ごめんな ~ 」

同級生たちも様子がおかしいめ以子のことが少しは気になったのか、口々にそんなことを言いながら帰って行きました。

子供たちの気遣いに気づくこともなく、ただぼんやりと夕飯のおかずの鯖に塩を振り続けるめ以子でした。

… … … … …

「川久保さん … ホンマに、ホンマにもうよろしいですよ」

心配して送ってくれるのはありがたいのですが … 申し訳ないという気持ちの方が大きくなってきている希子でした。

「え、いや、でも … ええ運動にもなるし、気にせんといて」

いくら遠慮しても、何やかんやと口実をつけて止めようとはしない川久保に結局押し切られていました。

「川久保さん、野球やってらしたんですよね?」

「うん、うん」


歩いている間も特に話が弾むという訳でもなく、たまに他愛のない会話を途切れ途切れに交わす程度でした。

不審者もあれ以来、一度も影すら見せず … ふたりは油断していたのかもしれません。

… … … … …

その男は突然、目の前に現れました。

いつかスタジオの前で迫ってきたあの男でした。

咄嗟に川久保の後ろに隠れた希子。

「何や、お前?」

男は川久保のことをにらみつました。

「西門君 … 」

緊迫した空気、川久保は落ち着いた口調で希子を呼びました。

「 … はい」

「 … 逃げるで」

「えっ?」


川久保は、希子の手を握ると、男に向かって大声で叫びました。

わ ~~~ っ!!

男が耳をふさいで一瞬怯んだ隙に脱兎のごとく走り出しました。

… … … … …

< さて、その晩は …

め以子は、きっと怒っているであろうことを予想しつつも、やましいところは一切ないものとして振舞おうと目論んでいる悠太郎が …

取りあえず今日の所は、何も気づいていないことにしようと思っている、め以子の元に帰ってくるという … >

め以子との問答を想定しながら歩いて来る悠太郎 … ああだこうだと考えているうちに家に着いてしまいました。

「ただいま戻りました ~ 」

「おかえりなさい ~ 」


仕事の疲れなど微塵も感じさせない明るい声の悠太郎と不自然なほどの笑顔で迎えるめ以子。

< … かなりややこしい食卓となりました >

… … … … …

「ほな、今日希子まだなんですか?」

「ひょっとして、ええ人でもできたんですかね ~ 」


変に言葉の裏を読んで態度がぎこちなくなる悠太郎。

しかし、め以子は平然とお茶を飲んでいます。

「あっ、このおつい、ようでけてますね」

「そうですか? いつもと一緒ですけど」


にこやかな顔ですが、どことなく取り付く島がないという雰囲気。

焼き魚を口にした悠太郎の顔が歪みました。

「あっ、ごめんなさい … それ、失敗して」

「いや、結構いけますよ ~ 美味しいです、ご飯進みますし」


あれだけ塩を振ったら、しょっぱくてどうしようもないはずです。

「そう言うてくれると、助かるわ ~ 」

白々しい会話も途絶え、め以子はただ微笑み、悠太郎の横顔を見つめていました。

そんな視線を感じながら、食べ続ける悠太郎。

… … … … …

「 … あかん」

突然、め以子が口にした言葉にギョッとする悠太郎。

「あかん … 耐えられへん」

め以子の顔から微笑みが消えました。

「えっ、ちょっと … 何するんですか?!」

悠太郎の手から茶碗を取り上げると、板の間から押し出しました。

… … … … …

そして、悠太郎が追い込まれたのは蔵の中でした。

蔵の戸を完全に閉めて、仁王立ちしため以子。

「子供ら、起きますから … 」

蛇ににらまれた蛙の様な悠太郎。

「悠太郎さん!」

「 … 何?」

「悠太郎さん!」


上から覆いかぶさるように見下ろしました。

… … … … …

一方、夜道を不審者から逃げ回っていた希子と川久保はどうなったかというと …

「もう、おらへんか?」

物陰から顔を出して、辺りを見回すふたり。

「 … 大丈夫そうやな」

うなずく希子。

どうやら無事にまくことができたようです。

ホッとすると同時に、希子は川久保に確かめずにはいられませんでした。

「あの、やっつけてくれるんやなかったんですか?」

すると、川久保は意外という顔をして聞き返してきました。

「逃げるのあかん?」

「 … いやいや、あかんことないですけど」


てっきり腕に覚えのある人だと思っていたからです。

「殴られるとな ~ ごっつ痛いねん … あれはあかん、余計な恨みを産む。

逃げ回って、もうええわってなってくれたら … それは、それでええ話やろ?」


真面目な顔で話す川久保の顔を希子は、まじまじと見つめてしまいました。

「 … あかん?」

「いえ … す、素敵やと思います」

「その代わり、出んようになるまで送ってあげるな」


性懲りもなく、まだ続けるつもりのようです。

希子は、何だか無性に可笑しくなって、笑い転げてしまいました。

「ほな、私も逃げ足鍛えとかんといけませんね ~ 」

… … … … …

「治療をしながら、積もる話もしたいんで、早朝に行っていた … つまりは、そういうことですか?」

じっくりと腰を下ろして聞いた悠太郎の言い訳をまとめるとそういうことでした。

「それ以上でも、それ以下でもありませんよ」

こうなった上は、悠太郎も開き直りました。

「はな、何で ~ 何で私にひと言、そう言ってくれないんですか? … 亜貴子さんに会ったよって、話したいから、朝行くよって」

これは明らかに悠太郎に非があるようにも思えますが、果たして正直に話していたとして、快く送り出していたかは怪しいものです。

「別に言う必要もないやないですか?」

「へえ、何でですか?」

「せやかて … 一度、会うたことがあるだけで … あなたと亜貴は他人やないですか?」


亜貴という呼び方もめ以子の癇に障りました。

「しゃあないでしょ?

ずっと、そう呼んできたんですから … あなたかて、源太さんのこと、源ちゃん、源ちゃん言うてるやないですか?」

「私と源ちゃんは、もう小さい時からの知り合いなんです!

あなたと亜貴子さんみたいな … 何や … とにかく違います!」


もう子供のケンカでした。

… … … … …

「大体、どういう関係なんですか?

昔、そういう関係にはならへんみたいなこと言うてましたけど … 」

「 … それは、僕の口からは言えない … 」


急に歯切れが悪くなりました。

「何で言えないんですか?

どうして、秘密にするんですか?」

「亜貴が言わないと決めてることだからです」

「私が教えてくれって、頼んでも教えてくれない訳ですか?

私がそれで嫌な思いしても、悠太郎さんは … 」


め以子の言葉を遮り、悠太郎は言い返しました。

「ほな、あなたは、桜子さんが必死で隠してることを僕に頼まれたら話すんですか?」

「そうやけど … そうやけど、それは」

「とにかく、あなたがそこまで気に入らんのやったら、もう行きませんから … それで堪忍してもらえませんか?」


… … … … …

次の朝から悠太郎は自分から言い出した通り、出勤前の病院通いは止めにしました。

「今日は、はよ出んでええの?」

何も知らないお静が尋ねました。

「ええ、まあ」

「お仕事、楽になったん?」

「これから、また朝は一緒に食べるからな」


そう答えると、泰介はうれしそうにうなずきました。

「 … 朝はね」

ご飯をよそりながら独り言のようにつぶやいため以子。

「朝はって、どういう意味ですか?」

「ああ、別に … 夕食は一緒ではないですよって意味です」


朝しかない子供たちと一緒に食事できる時間を放ってまで、亜貴子に会いに行っていたことへの嫌味でしょうか …

「そうですか … 」

「はい」


目が泳いでいる悠太郎、め以子は平然としています。

… … … … …

「 … あんたらケンカでもしたんか?」

「昨夜、何かあったんですか?」


ここまでくれば、さすがに誰もが気づきます。

3人の子供たちも一斉にめ以子の顔を見ました。

「犬も食わん … 」

図らずも、同じ言葉を発したふたり。

「犬も食わんような話です … なっ?」

「 … そうです」


案外、悠太郎は本気にそう思っていたのかもしれません … この時は。

「あんたら、ようケンカするもんな」

「ケンカするほど、仲がええいうてな」

「ホンマなんですかね ~ それ」


いちいちとげのあるめ以子の言葉でした。

… … … … …

「あらっ、今日は新聞読まないんですか?」

「ええ、食事の時は食事を味わおうと … 」


久しぶりに一家全員そろって、楽しいはずの食卓が重い雰囲気に包まれていました。

… … … … …

「来えへんか … 今日は … 」

腕時計で時間を確かめた亜貴子。

いつもなら、とっくに悠太郎が顔を出している時刻でした。

実際、今日で抜糸、治療も終わりのはずだったのです。

… … … … …

「はい」

玄関で悠太郎に弁当を渡すめ以子。

「あっ、今日何ですか?」

笑いかける悠太郎、め以子は無表情のまま答えました。

「秘密です」

「 … ほな、行ってきます。

ようし、行くぞ!」


悠太郎は、待っていたふ久と泰介に明るく声をかけました。

「行ってきます ~ 」

ありふれたいつもの朝の風景でしたが … それは上辺だけのものでした。

< このめ以子の不機嫌な態度は、やがてとんでもない事件を呼び起こすことになるのでございました >

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2014年01月13日 (月) | 編集 |
第85回

「もうず~っと、好きで好きで、困ってる」

早朝の診察室、亜貴子の言葉に悠太郎は何と答えていいのか分からず困惑していました。

「 … 仕事がな」

「仕事?」

「何や思たん?」

「あ、いや … 」


とんだ勘違いでした。

しかし、ホッとしたはずなのに少し残念な気もする悠太郎。

「趣味とかないんよね、うち …

お芝居やら映画やら、行けばそれなりに楽しいんやけど … 論文読んでる時の方が没頭できるし、人づきあいも苦手やしな ~ 」

「 … どこがやねん?」


自分と違って、誰とでも如才なくつきあうことができる亜貴子の冗談だと思って、悠太郎は突っ込みました。

すると、亜貴子は意外にも真面目な顔で話し始めました。

「苦手やで ~ 取り止めのない話してる分にはええけど、こと身の上の話になると、うちの場合、ベラベラしゃべれるもんちゃうからな」

それは、悠太郎も身につまされることでした。

「ウソついたり、ごまかしたりで、くったくたや ~

せやから、本音で話せる相手はおらんし … 時々、ここに悠ちゃんおったらなあと思たよ」


そんな話をしながら、亜貴子は悠太郎の頭の包帯を巻き終えました。

「はい、お疲れさんでした」

… … … … …

「 … この時間やったら、来られるで」

手を洗っている亜貴子の背中に悠太郎は思わず口にしていました。

「えっ?」

「現場すごいことになってるから、どっかでゆっくりいう訳にはいかへんけど … 」

「 … ホンマに?」


振り向いて悠太郎の顔を見た亜貴子。

「ああ … どうせ、消毒にも来なあかんしな」

… … … … …

牛楽商店。

「今日は、アレか?」

源太が尋ねた『アレ』とは、牛すじを使ったとある料理のことでした。

「うん、悠太郎さんケガしたし、好物やし … すじは皮膚にもええって雑誌に載ってたし」

そう言った後、め以子は秤の上に乗っている牛すじを見てから、源太の顔を甘えるような目で見つめました。

「もうちょっと … 」

舌打ちしながらも、もうひと掴み、塊を加えた源太。

「これでどうや?」

「おおきに ~ 」


すっかり、大阪のおばちゃんが板についてきため以子です。

「ほやけど、ようやるな ~ ごっつ手間かかんのに」

「これが、私の仕事やから」


そう言って、め以子は幸せそうに笑いました。

… … … … …

うま介。

「トイ、トイ、トイだぞっ!」

連呼しながら立ち上がった竹元。

「あの美しいアーチに無粋極まるトイをくっつけようとしたんだぞ!

あの通天閣はっ!!」

「だから、通天閣止まりなんですよね ~ 」


ヒマつぶしに話し相手をしている室井が無責任な相槌を打ちました。

「エッフェル塔にはなれへんのやな」

うま介の言葉にうなずいた竹元は興奮して目の前にあった室井の頬にビンタをくれました。

「痛っ ~ 」

「トイみたいな顔しやがって貴様!」


とんだとばっちりです。

「 … 失礼ですが?」

背後から呼び止める声がして、振り向く竹元。

そこには、背広姿の見知らぬ青年が立っていました。

竹元が息を飲むほどの容姿端麗、涼しげな眼の青年は心地よい響きのする声で尋ねました。

「このシャツは巴里仕立てですか?」

目を見開いて、言葉を失っている竹元。

近づいてきた青年は、シャツの腕の辺りを撫でて、ウットリしています。

「よくお似合いですよ ~ この縞が … 」

「 … 縞?」


… … … … …

「トイをデザインとして埋め込めばいいと思ってな … どうだ?」

青年の言葉に触発されたかのように新しいアイディアを描き起こした竹元は、それを持って早速、詰め所を訪れていました。

「いや、ええですけど … 何でそんな急に?」

トイを付けることに断固反対していた竹元の突然の方針転換に悠太郎たちは戸惑っています。

「無地もいいが、縞もいい … まあ、それだけの話だ」

「あ、女と一緒ですね ~ キタもいいけど、ミナミもええみたいな … なっ?」

「何言うてるんですか?」


見当はずれな池本の物の例えに白ける悠太郎。

「そうだ! 何を言ってるんだ?

女もいいが … 男もいいだ」

「えっ?」

「美しさとは、そういうものだ … では、設計の方よろしく頼む」


何かに取り憑かれたような眼差し、いつもとは調子が違う竹元、異様な余韻を残して去っていきました。

… … … … …

「ほな、明日の朝からずっと7時に出るんですか?」

「はい … 排水の設計をやり直さなあかんので」


どことなく様子がおかしい悠太郎、不審に感じているめ以子でしたが、それが女性がらみのことだとは、ゆめゆめ思ってもいませんでした。

「 … 何ですか?」

何か見透かすように顔をじっと見つめています。

「忙しくても、病院だけはちゃんと行ってくださいよ」

「あ、はい … 」


当然、そのつもり … それが目的ですから。

め以子の不安はそれだけでした。

ホッとした顔になって、悠太郎の前に腕によりをかけた牛すじのカレーを置きました。

難関を切り抜けた(?)悠太郎も安堵の表情をして、目の前の牛すじカレーに目をやります。

「はあ ~ いただきます!」

満面の笑み、歓喜のため息 … 牛すじカレーこそ悠太郎の一番の好物なのです。

美味しそうに頬張る悠太郎の横顔 … この顔が見たくて手間も惜しまないめ以子でした。

「悠太郎さん、これホンマに好きですよね ~ 」

「これ、ホンマ堪りませんよ ~ 」

「今日のは特別柔らかく煮えてるでしょ?」

「あなたのカレーは、天下無敵です!」


… … … … …

< それからしばらくの間、め以子は何も知らずに悠太郎さんを送り出し …

悠太郎さんは、消毒のついでだと、自分に言い訳しつつ、亜貴子さんとの早朝デートを繰り返しました >

「ほな、結婚してたことも伏せてたんや?」

「うちの場合、結婚しても苗字変わらへんし … 『何でそんなことになってるんや』って聞かれるから、どうしても言わなあかん時以外は … 」

「ふ ~ ん」


… … … … …

め以子は、『毎日の料理』を聴くために、うま介を訪れていました。

「忙しいんやな? 悠太郎さん」

「ホンマに … 寝る暇もないみたいで」


ラジオから聞こえる、夫の職場に料理を差し入れして喜ばれたという主婦のインタビューが、め以子の耳に留まりました。

「差し入れか … 」

… … … … …

「恋がしたい、恋がしたい、恋がしたい!」

ラジオの音をかき消して、突然、絶叫しはじめた桜子。

「ちょっと、桜子!」

店に客も居ることだし、め以子がたしなめました。

「ああ、だってさ ~ つまんないんだもん!

室井さん、何も書かないし … 文女と遊んでばっかりだし …

私、何でこの人と一緒になったのって、思うことない?」


同意を求めるようにめ以子の顔を覗き込みました。

「うん … じゃあ、私そろそろ ~ ごちそうさん

め以子がうま介から退散しようとした時、ちょうど、文女を背負って帰って来た室井と鉢合わせしました。

「室井さん、そろそろ書かないと、桜子に捨てられるよ … 」

「えっ、えっ?!」


そう言い残して帰って行っため以子。

… … … … …

「おっ、もう大分治ってきたな」

薄くなった悠太郎の包帯を見て、池本が言いました。

「あのきれい先生にも会えんようなるね ~ 」

「はあ … 」

「マルナカ百貨店のケーキがええで」


池本が何を言いたいのか悠太郎には分かりません。

「奥さんどう?

ケーキ、サービスしとった方がええで ~ 」


意味深に笑いながら行ってしまいました。

「 … そんなんとちゃいますから!」

… … … … …

「川久保さん、ホンマにもうよろしいですよ」

あれから、不審者も現れることもなく、数日が経っていました。

心配して送り続けてくれている川久保にも何だか迷惑をかけているようで心苦しい希子でした。

「油断したらあかんで ~ 僕がおるから出へんだけで、ホンマはその辺に隠れとるかもしれん」

川久保は辺りをキョロキョロと見回しました。

「そうですかね ~ 」

「あっ、ひとつ提案があるんやけどな」


唐突に足を止めた川久保、耳を傾ける希子。

「 … 僕と一緒に暮さへんか?」

「すいません、うち今、部屋、埋まってもうてて … 」


川久保の意図は希子には通じなかったようです。

「おおっ、お姉ちゃん、エライ別嬪さんやな ~ 」

源太でした。

先日この辺で会った時に連れていたのとは違う女性に声をかけているところに出くわしてしまいました。

「腹減ってへん? 何か食いに行こうや ~ 焼き氷って知ってるか?」

… … … … …

今夜の夕飯の時の話題は、桜子のことでした。

「恋がしたいって言うたってね ~ 」

夫の悠太郎のことが好きで仕方がないめ以子には分からない感情でした。

「でも、駆け落ちしてしまうくらいの情熱の持ち主ですからね」

「 … 希子ちゃん、どうなん ~ その、気になる人とか?」


希子にこんなことを聞くのは初めてです。

「う ~ ん 、、

ええなって思う人は、結婚に難あり … というか」


たった今、その現場を目撃したばかりでした。

「 … 妻子ある方とか?」

不安そうに尋ねるめ以子、希子は吹き出してしまいました。

「違いますよ!」

… … … … …

「ただいま帰りました ~ 」

そんな会話を交わしているところへ、悠太郎が帰って来ました。

「 … 希子ちゃん、不倫の恋はあかんよ」

「?!」

「だから、違いますよ ~ 見てても、結婚には向かへんなって思う人おるやないですか」

「いくら好みでも、浮気する旦さんはな … 」


… … … … …

「これ、ここに置いときますね」

流しの前に吊るしてきた小さな箱を置くとぎこちなく手を洗い始めた悠太郎。

台所に下りてきため以子がその箱を見て歓喜の声を上げました。

「あっ、これ、マルナカ百貨店のケーキやないですか?!

… どうしたんですか?」

「職場の人に勧められて … 美味しいらしいです」


め以子の顔をまともに見ることができません。

… … … … …

部屋で着替えを済ませた悠太郎、机に手をついて、深いため息をつきました。

< そんなに罪悪感覚えるんだったら、もう行かなきゃいいじゃないかね ~ >

『本音で話せる相手はおらんし … 時々、ここに悠ちゃんおったらなあと思たよ』

あの亜貴子の言葉が耳に残っている悠太郎です。

< ああ、そうなんですか … そっちはそっちで、罪悪感覚える訳ですか?

ただでさえ孤独な亜貴子さんをひとりにしてしまったって … まあ、罪悪感って、便利な言葉ですね … >

… … … … …

「美味しかったよな ~ あそこのカレー」

「亜貴、大盛りにしとったよな」


それでも、早朝デートは続いていました。

「 … 次はもう抜糸でええわ」

傷の具合を見ながら亜貴子は言いました。

「ああ、そうなんや … 」

「名残惜しかったら、またケガしたら?

ここ入院もできるし、毎日毎日、手とり足とり看病やで」


長いつきあいですが悠太郎には、亜貴子の話はどこまでが本音か分かりません。

「 … 看護婦さんがな」

本気にしかかると、こんな感じではぐらかされます。

わざときわどいことを言って、悠太郎の反応を楽しんでいるようなところがあります。

「何や思た?」

… … … … …

その日、め以子は出かける途中にうま介に立ち寄っていました。

先日の桜子の発言も気になっていましたし …

「へえ、現場に差し入れに行くんだ?」

「うん、考えたらそういうことしてなかったなって … 」


ここで聞いたラジオがきっかけで思いついたことです。

室井がいるからでしょうか … この前の様な素振りは見せない桜子でしたが、その代わりおかしなことを聞いてきました。

「あのさ、悠太郎さんが通ってるのって … 大阪南総合病院よね?」

「うん、そうだけど」

「悠太郎さん、何か言ってた? … 誰かにあったとか?」

「特に … 何で?」


何故、桜子が急にこんなことを聞くのか不思議に思うめ以子。

「あそこ … ほら、結構有名な人とか来るって聞いたから」

「悠太郎さんはいても気がつかないんじゃないかな … 」

「そうよね ~ 」


どことなく白々しい桜子の態度、うしろで聞いている室井と馬介もいつもと違う雰囲気ですが、特に気にする理由もないので … め以子は席を立ちました。

「じゃあ、私そろそろ … 馬介さん、ごちそうさん

… … … … …

「何にも知らなかったね、め以ちゃん!」

め以子が出て行った後、開口一番室井が叫びました。

実は …

室井が外で遊んでいてケガをした文女を担ぎ込んだのが偶然にも亜貴子が働いている病院でした。

早朝だったため、外来の患者もまだおらず、職員もまばらな院内で仲睦まじく話をしているふたりの姿を目にしていたのです。

「何か、嫌な予感するな … 」

… … … … …

め以子が現場を訪れた時、悠太郎は所要で外出していました。

驚かそうと思って、本人には内緒だったのです。

昼時だったこともあって、休憩中の職人たちに持ってきた料理を振舞いました。

「こんな美味いおむすび食べたの初めてですわ ~ 」

「西門さんは幸せもんですね ~ 毎日こんな ~ 」


現場監督の増岡もしきりに褒めちぎってきます。

「もう、何も出ませんよ」

職人たちも大喜びでめ以子の料理に舌鼓を打っています。

「奥さん、もうすぐ西門君戻ってくると思うんで … 美味いわ!」

石川も気遣って声をかけてきました。

「おおきに」

… … … … …

その時、め以子はふと何気なく、詰め所の入口に目をやりました。

「ほな、お願いします」

市の職員に何かを手渡している女性、聞き覚えのある声。

振り向いたその顔は …

「地下鉄、楽しみにしてますね」

「がんばります ~ またいつでも来てください」

「お邪魔しました」


… 忘れもしない、村井亜貴子でした。

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2014年01月12日 (日) | 編集 |
さて、次週の「ごちそうさん」は?

恋がしたい、恋がしたい、恋がしたい!

悠太郎(東出昌大)はケガの消毒のため、という理由で亜貴子(加藤あい)の病院に通う。そうとは知らずめ以子()は、傷に効くというすじ肉を使って特製カレーを作る。

ええやないけ?! 浮気のひとつやふたつ!

病院で見かけた室井(山中崇)から聞いて、桜子(前田亜季)らは心配するが、案の定め以子は悠太郎の職場で亜貴子を見てしまう。問い詰めるめ以子に悠太郎は言い訳するが、かえって亜貴子との結びつきの強さを感じさせる。

素敵やと思います

一方希子(高畑充希)は、男につきまとわれているのを心配してくれる川久保(茂山逸平)と徐々に親しくなる。

出てってくれますか?

悠太郎が亜貴子と会うのをやめても、め以子の気持ちはおさまらない。事情を察した正蔵(近藤正臣)がめ以子に謝る。め以子は子どもたちのためにもと思い直し、話し合おうとした矢先、悠太郎が寝言で亜貴子の名を口にするのを聞いてしまう。め以子の怒りが爆発し、ついに悠太郎を追い出す。

邪魔者は私やった

桜子に促され、め以子は亜貴子を訪ねて関係を問いただすが、悠太郎との子どもの頃からの強い絆に、かえって傷ついて戻ってくる。

これが、うちの夢やと思うてた

追い出された悠太郎は亜貴子の家でカレーを食べることになり、涙ぐんだ亜貴子を思わず抱きしめる。そして亜貴子の口から思いがけない言葉を聞くことに。

あなたのカレーは天下無敵です

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2014年01月12日 (日) | 編集 |
第84回

街灯に照らされたベンチ、並んで座っている少年と少女。

レンガのアーチの外は雨が降っています。

ふたりは雨宿りしているのでしょうか … 

「なんで俺、子供なんや!」

少年は、悔し涙を服の袖で拭い、泣き顔を見られないよう背中を向けました。

「俺が大人やったら、亜貴のこと守れるのに … 亜貴の夢、叶えられえるようにしてやれるのに」

どうしようもない現実。

少女は、心配そうに少年の背中を見つめています。

「悠ちゃん … 」

… … … … …

悠太郎が頭をケガして病院に … 知らせを受けため以子は取るものを取らずに駆けつけ、待合室で、悠太郎が治療を終えるのを待っていました。

一方、思わぬ場所で女医となった村井亜貴子と再会した悠太郎。

「 … 亜貴、いつからここに?」

「先月、代わって来てん … 悠ちゃん、すぐそこで地下鉄作っててんなあ ~

ウソみたいな偶然、あるもんやな」

「うん … 」

「えっ?! あの、ふたりはお知り合いなん?」


池本も驚いています。

「ええ、昔からの友人で … 」

「松田先生、患者さんの奥さんいらっしゃいましたけど」


今、確かに看護婦が亜貴子のことを『松田』と呼びました。

「 … 亜貴、松田って?」

「痛み止め出すから、受付でもらって … 今日は安静にして、せやね、明日来てください」


亜貴子は質問には答えずに、それだけ伝えました。

… … … … …

「戻るつもりですか? そのケガで」

治療を終えて出てきた悠太郎は、め以子や池本が止めるのも聞かずに現場に戻ると言い出したのです。

「さすがに今日は止めといた方がええんとちゃうか?」

「話し合いの途中でしたし」

「けど、頭打ってるんですよね?」


頭に包帯をぐるぐる巻きにした姿は、め以子の不安をかきたてました。

「大丈夫ですよ … 話し合うだけですから。

あっ、受付で薬だけもろといてもろうてもええですか?」

「ええですけど … ホンマに無理せんとってくださいよ」


… … … … …

悠太郎と池本が現場に戻ると、何かただならぬ事態が発生したのか … 職人たちだけでなく、市の職員も総出でバケツに汲んだ水をドラム缶に移していました。

「何や、これ?!」

騒然とした現場を見て、立ちすくむふたり。

バケツの水をあけると、急いでまた坑道へ戻っていく男たち。

その中に真田の姿を見つけた池本が呼び止めました。

「何があったんや?!」

「停電で、排水ポンプがいかれてもうて ~ 地下に水が溢れてもうたんです!!

今、電源復旧しつつ、人力で水掻き出してるんですけど … 」


それを聞いた悠太郎は、真田の後について坑道へ向かって駆け出していました。

「西門君?!」

… … … … …

しばらくすると、頭の包帯まで泥だらけに汚した悠太郎が水が入ったバケツを両手に地上に戻って来ました。

「あいつ、何やっとんねん?!」

「ケガ、大丈夫なんですかね?」


石川と増岡が信じられないといった顔で悠太郎のことを見ています。

悠太郎は、坑道から上がってくるバケツを次から次に受け取り、それをドラム缶に移し続けています。

「真田、ポンプどうや?」

「もう少しです!」

「よしっ!」


そんな悠太郎を物陰から見つめる亜貴子の姿がありました。

何故かしら悲しげなその目には、今必死になって水を汲みだしている悠太郎が記憶の中の少年と重なって映っていたのです。

… … … … …

「不審者、出へんな ~ 」

まるで先導するように前を歩いていく同僚の川久保啓司に希子は声をかけました。

「川久保さん、ホンマにもうええですよ」

ラジオ局に希子目当ての不審者が現れた日以来、こうやって川久保が帰り道を送ってくれているのです。

「もしかして … つきおうてる人に見られたら困るとか?」

「いや、そんな人はいませんけど … 」


その時です。

今、希子が思い浮かべた人物が前から女性連れで歩いてきたのです。

「もう、源ちゃん、いややわ ~ 」

泉源太でした。

仕事が終わってまるで遊び人のような恰好、連れているのは水商売関係の女性でしょうか。

「おお、希子ちゃん!」

すれ違いざまに希子のことに気づきました。

「あ、源太さん … 」

「なんや、活躍しとるみたいやな?」

「源太さんも … ご活躍みたいで」


バツが悪そうに笑った源太でした。

希子が就職してから以前のように頻繁に顔を合わせることもなくなって … 言葉を交わすのも久しぶりでしたが、女性に促された源太は先を急いで行ってしまいました。

「どこ連れてってくれるの?」

「着いてからのお楽しみや ~ 」


そんな会話をしながら遠ざかる二人の背中を寂しそうな目で見つめる希子。

… … … … …

希子の夕飯の給仕をしながら、め以子は女性誌の料理の記事を熱心に目を通していました。

「決め手ってなんやったんですか?」

唐突に希子が尋ねました。

「うん?」

「 … お兄ちゃんと一緒になろうと思った」

「う ~ ん …

かっこいいと、思たよんね ~ まあ、腹立つことも多いけど … 夢に向かって真っすぐ進んで行ってるっていうのが」

「ほな、今も同じやないですか?」

「そうやね ~ まあ、あの人はあんまりかわらんかも知れんね」


… … … … …

ようやく排水ポンプが復旧した現場。

疲れきった職人たちは、各々に体を休めています。

悠太郎は隣に腰かけている石川に向かって頭を下げました。

「偉そうな口利いて、すいませんでした」

「 … お前の言うとることも分かるんやで」


別人のように穏やかな表情、優しい口調でした。

「わしの知り合いでも御堂筋で立ち退き食ろうた奴、おるからな …

その甲斐のあったもんにしてやりたいとは思てる」


負傷しながらも粉骨砕身していた悠太郎の姿を見て、石川も本音を語り始めていました。

「竹元教授の設計、わしも好きなんやで ~ 何か明るうて、楽しなる。

ひと駅ごとにシャンデリアもタイルの色も違うて、なんかワクワクするわい」


初めて見せた笑顔です。

「けどな … 職人さんの顔を見とると、もう堪忍したってくれとも思う。

金で報いることができるなら、まだしも … 尻引っ叩いてやってもうてる状態や」


決して自分の都合だけで反対していた訳ではなかったのです。

悠太郎はこの男のことを誤解していた自分を恥じていました。

… … … … …

「 … 全部やないとあかんか?」

「えっ?」

「二重にするのは一部で、後はトイで何とかならんやろか?」


最大限の譲歩を提案してきました。

「その方が、空間も広う残したままできるし、修繕もしやすいやろ?」

とどのつまり、立場こそ違えど目指すところは同じなのです。

「考えてみます!」

悠太郎の返事を聞いて、石川はうれしそうに微笑みました。

… … … … …

結局、悠太郎の帰宅はいつもと同じく深夜になってしまい、待ちわびため以子はちゃぶ台に突っ伏してうたた寝していました。

女性誌から抜粋したのでしょう ~ 傷に良いといわれる、牛すじを使ったカレーの作り方がノートに書き写されています。

ふと、悠太郎は傍らに置いてあった病院から受け取ってきてもらった薬の袋を手に取りました。

その気配で目を覚ましため以子。

「あ、おかえりなさい … どうしたんですか?!」

背広や包帯の汚れを見て驚いています。

「現場戻ったら、停電で … 皆で水汲みだして … 」

「大変やないですか?!」

「 … 大変やったんです」

「もう ~ 包帯も汚れてるやないですか!」


慌てて、替えの包帯を探そうとするめ以子を悠太郎は止めました。

「いいです、明日消毒行きますから … 」

「ホンマにもう ~ 明日朝一番で病院行ってくださいよ」


め以子が食事の準備に台所へ行った後、悠太郎は手にしていた薬の袋を見ました。

担当医の欄には、やはり、村井ではなく松田 … 松田亜貴子と署名してありました。

… … … … …

翌朝、悠太郎は話していた通り、朝一番で病院に寄るためにいつもより早く仕度を済ませました。

「ホンマにちゃんと病院行ってくださいよ!」

出がけに玄関でめ以子は怖い顔をして念を押しました。

「は、はい」

め以子の目には悠太郎がおどおどしているように見えました。

「あ、サボろうと思ってませんか?」

「そんなことないですよ」

「ちゃんと行ってくださいよ」


そう言いながら弁当を渡しため以子。

「あっ、ありがとうございます」

「 … どうしたんですか? お礼言うやなんて」

「たまにはええやないですか … ほな、行ってきます」


め以子から鞄を奪うように受け取るとそそくさと出かけて行きました。

隠さなければならない理由などないのですが、亜貴子との再会をめ以子に話せなかった悠太郎 …

病院に行くということは、亜貴子に会いに行くということでもあり … 少なからず、うしろめたさの様な気持ちが、挙動不審となってあらわれたのでしょう。

… … … … …

悠太郎を見送っため以子が家族揃った食卓へ戻ると、正蔵が不審そうに言いました。

「何や、あいつまたエライ早いな ~ 」

「一番にお医者さんに掛かりたいんですって、できるだけ現場に遅れたくないから」


それにしても早すぎる時間なのです。

「お兄ちゃん、ホンマに頑張ってますね ~ お仕事」

「ホンマにねえ」

「お母ちゃんだって、ごっつう頑張ってる」


珍しくふ久が話に加わってきました。

「お母ちゃんの見えへん力で家のご飯は出来てるんや!」

そんなことを言われて、め以子は呆気にとられてしまいました。

… … … … …

「せやから、ふ久も頑張ってるんかいな?」

「えっ?」


お静に言われて、め以子は改めてふ久のことを見つめて気がつきました。

いつもだったら、ボ~っとしながらグズグズと朝食をとっているふ久が泰介や活男にも負けないぐらいに黙々と一所懸命に食べているのです。

「ふ久 … 」

め以子は目頭が熱くなっていくのを感じていました。

ふ久は、よく噛んで最後のひと口を飲み込み … ご飯ひと粒残さずに全て平らげました。

きちんと箸を並べて置くと、め以子に向かってニコリ …

ごちそうさん!」

その笑顔を見た時、め以子の目からは涙が溢れてきました。

「うんうん」

「お母ちゃん?」


急にめ以子が泣き出したので、心優しい泰介が心配そうに声をかけてきます。

ふ久は目の前にあった台拭きを取って、め以子に渡しました。

「もう … おおきにな」

思わず、ふ久を抱きしめました。

「見えへん力が、子供育てとるがな ~ 」

笑顔でうなずき合う正蔵とお静。

希子ももらい泣きしています。

台拭きで涙を拭っても泣き止まないめ以子のことを、ふ久は不思議そうな顔をして見上げていました。

… … … … …

「ごめんな、始まる前やのに … 」

診療時間の大分前に病院に入った悠太郎でした。

「早めに出てきてよかったわ」

傷の治療を受けながら、悠太郎は昨日から気になって仕方がなかったことを尋ねていました。

「亜貴 … 松田って、どういうことや?」

亜貴子は答えません。

「もともとの姓やろ?

… 光男さんとは結局、一緒にならんかったのか?」

「一緒になって … 去年、亡くなりはった」

「?!」

「それで、村井のお義父さんとお義母さんが元の姓に戻してくれはったいうか … 」


余韻を残して、それだけ話しました。

… … … … …

「何や困ったことがあったら、言うてや … 力になれることあったら」

すると、亜貴子は真顔になり … 一瞬ためらいましたが …

「 … 言うてええの?」

うなずく悠太郎。

亜貴子は悠太郎の目を見つめました。

「 … 好きで、困ってる」

「えっ?」


意味が分からず聞き返した悠太郎。

「もうず~っと、好きで好きで、困ってる」

悠太郎は、しばし固まってしまいました。

目をそらしドギマギ … そして、もう一度、亜貴子のことを見た悠太郎でした。

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2014年01月10日 (金) | 編集 |
第83回

「ただいま戻りました ~ 」

いつもなら出迎えてくれるはずのめ以子の声が聞こえません。

不審に思った希子が板の間を覗くと、め以子はちゃぶ台に向かってノートに何かを書き込んでいるところでした。

夢中になり過ぎて耳から何も入ってこないのでしょう。

希子は、そっと近づいて、いきなり隣に座って声をかけました。

「何してはるんですか?」

「あっ、おかえり … 」


少し驚いた後、め以子は、うれしそうに質問に答えました。

「ふ久がね、アイスクリン作ってほしいって」

「アイスクリン?」

「 … 私のアイスクリンが食べたいんやて!」


よく見ると目が潤んでいます。

「ホンマですか?」

「ホンマ! 初めてよ、初めてよ ~ あの子が自分から何か食べたいなんて …

もう ~ どうしてやろうかな?」


め以子が、ふ久のアイスクリンに思いをはせていた夜、悠太郎は仕事が徹夜になって帰って来ませんでした。

… … … … …

次の朝、め以子が弁当と着替えを届けに現場を訪れると、詰め所から少し疲れた顔の悠太郎が出てきました。

「寝てないん?」

「ああ、ちょっとな … 」


心配そうに見つめるめ以子に悠太郎は無理に笑顔を作りました。

「大変やね … 」

届け物を渡すめ以子。

「おおきに」

「ほな、頑張ってね」


いろいろ話したいことがありましたが、それどころではないだろうと、今は遠慮しため以子でした。

… … … … …

「えっ、皆で一緒に作るん?」

あれこれ考えた末に、そう決めため以子は、泰介が学校から帰ってくるのを待って、子供たちに伝えました。

「そっ、せっかくやし、皆で作ろう ~ なっ?

自分で作ると、倍美味しい言うし … 」

「ホンマに ~ ?!」


食い意地の張った活男が声を上げました。

「ホンマ、ホンマ … なっ、ふ久も?」

コクリ、うなずいたふ久。

「よ~し、ほな … やるでっ!」

め以子の合図で一斉に台所へ向かう子供たち。

… … … … …

「卵の黄身にお砂糖入れて ~ それを、すりすり ~ 」

め以子はふ久の手を取って、泡だて器を持たせると、一緒に鍋をかき混ぜました。

「すりすり ~ 」

… … … … …

「そこに温めてた牛乳と、生クリームを少しずつ入れて ~ のびのび ~ 」

ヘラでゆっくりと伸ばしていきます。

覗き込んでいた活男にも手を添えさせて、一緒に伸ばしました。

「のびのび ~ 」

… … … … …

「これを弱火にかけて ~ ゆるゆる ~ ゆるゆる ~ 」

そう言いながら体を左右に揺らしながら、ヘラを鍋の中でひるがえしました。

子供たちもめ以子に合わせて体を揺らします。

「ゆるゆる ~ 」

… … … … …

と、突然、め以子が大声を上げます。

「おぬしらっ … そう熱うなるでないっ!

ゆめゆめ、沸騰めされるでないぞ ~ 」


鍋に向かって話しかけているめ以子を見て、子供たちはどうかしちゃったのかと心配そうな顔をしました。

「 … お母ちゃん?!」

「沸騰させるとあかんのや」


声をかけてきた泰介に説明すると、ヘラを渡して交代しました。

「ゆるゆる ~ 」

… … … … …

「そして、いよいよ ~ 」

氷を詰めた桶の中央に置いた鉄製の容器に皆でこしらえた液体を流し込みました。

「これでできるの?」

「うん」


め以子は3人に桶を押さえるよう指示しました。

「で、これをひたすら回す! ぐるぐるぐる ~ 美味しくなあれ ~ 」

… … … … …

一方、悠太郎は …

徹夜で絞り出したアイディアを石川たちに説明していました。

「 … つまり、どうせならアーチを二重にして、この隙間を水を逃がすスペースにしてしまおうという案です。

現時点で漏水が分かっているのは、この3箇所ですが、将来的には漏水個所が増えることが見込まれますし … 抜本的に解決するには、これが一番やないかと」

「本気で言うとるのか?」

「はい、安全性と美観を兼ね備えるためには、これが最善やと … 」

「こんなん出来る訳ないやろ?!」


悠太郎の苦肉の策でしたが、石川はバッサリと切り捨てました。

「工期も金も、どないしてやりくりするんや?!」

「そうでしょうか?」

「そうじゃ!」


席を蹴って立ち上がった石川。

「ただ掘るだけでも難儀やのに … 天井のアーチだ? ホームは島型なんやかんや!

わしらがどんだけ苦労してきた思うてんねん?!」

「 … 分かってます。

それは、分かってますけど … せやからこそ、これだけやってきたんですから、できるだけ高みを目指しませんか?」

「そんなん、お前らの自己満足やろ?!」


… … … … …

「地下鉄を造るのに、市民の多くの方からお金をいただいています。

もっと言えば、この上の御堂筋を造るために、泣く泣く立ち退いてくれた方たちがいます。

せっかく立ち退いたんやったら、できるだけ素晴らしいもんを、できる限りのもんを造りたいと思うのは自己満足なんでしょうか?」


ソファーにふんぞり返った石川を悠太郎は懸命に説得しました。

「1日も早う工事終わってほしい思っている人間もぎょうさんおるわ!」

吐き捨てた石川。

「僕らも大至急、図面上げますから!」

… … … … …

「 … あの、ちょっとええですか?」

完成予想図を見ていた増岡が、何か気にかかったのか、悠太郎に尋ねました。

「このアーチ、二重にするとなると … 壁も二重になるってことですよね?」

「はい」

「そうすると、線路にこう … 列車、入れんようになりませんか?」

「 … はい。

恐らく5センチほど、ホームを削ることになると思います」


それを聞いて、石川の怒りは爆発しました。

「やってられるか、アホ!!」

… … … … …

「待ってください、石川さん!」

けんもほろろ、詰め所を出て行く石川を必死に引き留める悠太郎。

「話、聞いてください!」

「お前が話し合わなあかんのは、わしやない!

お前のセンセイや!!」


それでも悠太郎はあきらめません。

「石川さん、僕らも出来るだけのことやりますから!」

前に回って石川の両腕をつかみました。

「話すことないんじゃあ!!」

石川はその手を振り払い、怒りに任せて悠太郎を突き飛ばしました。

… … … … …

立てかけてあった木材に体がぶち当たり、反動で地面に引っくり返った悠太郎。

その上から倒れてくる何本もの木材の下敷きに …

「西門さん!!」

「西門君!!」


急いで木材をどかす池本たち。

その横で茫然と立ちすくんでいる石川。

悠太郎は頭を押さえながら、よろよろと立ち上がろうとしました。

「 … 石川さん … 話を … 」

指の隙間から染み出てくる鮮血 … それでもまだ石川に訴えようとします。

「昨日、お婆さんが … 」

「先に医者や!!」


… … … … …

池本に付き添われて病院に運び込まれた悠太郎。

頭部の止血処理を施している看護婦に尋ねました。

「どれくらいかかるんでしょうか? 今、仕事の途中で … 」

「そんなこと気にしてる場合ちゃうやろ?!」


池本が諌めた時、ドアが開いて診察室に医師が入って来ました。

「先生、お願いします」

看護婦に促されて診察席に腰かけた医師 … 彼女の顔を見て悠太郎は息を飲みました。

… … … … …

「今日は、3つあるのん?」

ちゃぶ台に並んだ3種類のアイスクリンを見て、お静がニコニコしています。

「はい ~ こっちはいつものアイスクリン。

で、こっちは卵白を使って作ってみました。

で、もうひとつが … 」

「びろ~ん!」


容器に入っていたさじを活男が上にあげると、そのアイスクリンは、餅のように長く伸びました。

目を見張るお静と正蔵。

「かっちゃんのご注文でこんなもん作ってみました」

「どうやってやったんそんなん?」

「それは、食べてみてのお楽しみ ~ 」


意味深な、め以子の含み笑いです。

「たまら~ん!!」

注文のアイスクリンに活男は大喜び、め以子はお静と正蔵にも取り分けました。

期待しながら、ひと口食べたふたりから笑顔が消え … そのまま固まってしまいました。

「 … これ、何?」

「納豆なんです」


あの糸を引くような粘り気は納豆のものだったのです。

「え ~ あのあの … あれかいな?」

「納豆、食べてしもうた」


… … … … …

「はい、ふ久もどうぞ」

納豆アイスクリンを口に運ぶふ久。

「どう?」

すると、ふ久はまたいつものように首をかしげました。

「 … 昨日の方が好き?」

しかし、今度は首を横に振りました。

「ううん」

「よかった ~ 」


ホッと胸をなでおろしため以子。

「もう ~ 昨日の方が好きって言われたら、お母ちゃん悔しいし」

… … … … …

すると、ふ久はおかしなことを口にしました。

「これが、美味しいいうことやったんか?」

「うん?」

「うち、美味しいって、よう分からへんかったんや」

「えっ?」


3人の大人が考え込んでしまいました。

「 … どういうことかいな?」

「美味しいって分からんやん …

お爺ちゃんの美味しいは、うちには分からんやん」

「えっと ~ ほな、不味いいうんは、感じたことなかったん?」


泰介は尋ねました。

「昨日のアイスクリンは、変な味やな ~ って」

「もしかしてやけど、姉ちゃん、友達んちでもの食ったことない?」


ふ久はうなずきました。

「買い食いも弁当のおかず換えっこしたこともない?」

これもまた同じく。

… … … … …

「そないなことやったんか ~ 」

ひとり合点がいったようにうなずいているお静。

「えっ、えっ、あの … ??」

「つまりやな ~ ふ久は、生まれてからず~っと、あんたの料理と、あんたが美味しい思た食べもんしか与えられんかったんや」


それが、何を意味するのか … め以子には分かりません。

「せやからやな ~ 今まで不味いもんを食べたことがなかった訳やろ?

せやから、人が美味しいいうんが、どういうこと指してるんか … ハッキリ分からんかったんや!」

「えっ … そうやったん?」


め以子はアイスクリンを食べ続けているふ久に尋ねました。

「これが美味しいやったら、ずっと美味しかった」

「そんな話やったん … 」


気が抜けていくめ以子でした。

「けど … 美味しいとか、そういうんは、何となく分からんもんなんですかね … 」

「ふ久は腑に落ちんことには何となくこう … うなずくということが出来ん性質なんやろな ~ 」


正蔵がそう評しました。

「 … 難儀な性質ですね」

苦笑いのめ以子。

これで、一件落着と思いきや …

「ごめんください!

お家の方、どなたか?!」


… … … … …

何やら、慌ただしい声が玄関の方から聞こえてきました。

め以子が応対に出ると、悠太郎の部下の真田が緊迫した顔で立っていました。

「何のご用でしょうか?」

「西門さんが … その … 頭ケガして病院に!!」

「えっ?!」


… … … … …

悠太郎の頭に包帯を巻き終わった医師。

「もう、ええよ ~

悠ちゃん」


そう言って笑った彼女は、悠太郎の幼馴染、村井亜貴子でした。

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2014年01月10日 (金) | 編集 |
第82回

今日は、希子の『毎日の料理』の放送日です。

め以子は、ふ久と活男を連れて、うま介を訪れていました。

「ほな、ふ久ちゃん、来週頭から学校行けることになったんや?」

「先生が様子見に来てくれて、実験は台所でお爺ちゃんとやるクセついたからええですよって」


め以子の報告を聞いて、馬介もホッと一安心です。

「今日、桜子は?」

「おう、ハモニカとカスタード巻、置いてもらうって話で百貨店に話行ってる」


さすが、思いついたら動かずにはいられない桜子です。

女房とは正反対にのんびりと構えている室井を見ていたら、め以子はひと言言いたくなりました。

「室井さんも少しは働いたら? … 桜子、書いてほしいって言ってたわよ」

「うん … おでんの国、一応、平和来ちゃったしね ~

僕もそろそろ大人の小説書こうかと思って、準備してるんだよ … いつまでも、いい大人が『おでん』とか『ポトフ』とか、バカらしくなちゃってさ」


そこそこ作品が売れただけで、一端の作家きどりで語る室井を見て、め以子は一抹の不安を感じずにはいられませんでした。

… … … … …

番組開始の時間になり、馬介がラジオを点けました。

「 … では、『私のお料理自慢』のコーナーです。

今日のお題は『干しシイタケ』、皆様よりたくさんの干しシイタケのお料理をお寄せいただきました」

「め以ちゃんも出してたよな?」

「出した! … 干しシイタケと干ぴょうのピクルス!」


ラジオに向かって手を合わせるめ以子たち。

「その中から … ミセス・キャベジさんからのお料理をご紹介します

またも、ミセス・キャベジにしてやられました。

「もう ~ キャベジ!!」

… … … … …

「ふ久ちゃん、美味かったか?」

馬介お手製のフレッシュジュース、感想を聞かれてもやはり「わからん」と首をかしげるだけのふ久です。

「こっちの方は、相変わらずなんか?」

「 … まあ、全く食べへん訳やないし、元気やし、あんまり気に病むのも止めました」

「そのうち、何や大好物も出てくるわ」


そう言って、うま介はふ久の頭をなでました。

「まあ、そのうち、そのうち … 」

焦らず、長い目で見ることにしため以子でした。

「あ、悠さんは? … 相変わらず、忙しいの?」

室井がおもむろに尋ねました。

「うん、それが … 水がどうにもこうにも、ならんらしいです」

「はあ ~ 水がね」


分かったんだか分かっていないんだか …

… … … … …

工事現場の詰め所。

悠太郎と石川が、図面を前に難しい顔をしています。

「 … 防水あれで限界ですか?」

「無理やり止めても、水圧で必ず漏れてくるからな」


石川は図面に漏水個所を書き込みました。

頭を抱える悠太郎。

「ま、こっから先は建築の範疇やさかい … そっちで、好きにやってくれや」

そう言い捨てると、サッサと詰め所を出て行ってしまいました。

考えるポーズの悠太郎 … 

「どないする?」

尋ねる池本。

「 … トイで水逃がすしかないですよね」

「アーチに沿ったトイか … アーチらを立てれば、こちらが立たぬ。

かかりそうやな ~ お金も時間も」

「けどもうそれしかないですよね … 」


… … … … …

その頃、うま介に珍しい組合わせのふたりが顔を出していました。

「あら、竹元教授、お久しぶりです」

桜子が出迎えたのは、竹元と希子でした。

「うん … 彼女から、日替わりジュースなるものを始めたと聞いてな」

「そうなんですよ ~ オーナーの長年の夢で、何が出てくるか分からないメニューをひとつ用意したいと、ず~っと言っていて」


め以子たちと焼き氷を売り出した頃から言っていましたから、もうかれこれ10年近く経っています。

「素晴らしいっ!

私は、そういう発想は大好きだ!!」

「ありがとうございます … ふたりはお仕事で?」

「ああ、明日教授にラジオに出演していただくんで、その打合せしてたんです」

「 … 地下鉄の話ですか?」

「騒音や振動で印象が悪い部分もあるからな ~ その素晴らしさを語って、ご理解をいただこうという訳だ」


そこへ、どこから現れたのか室井が口を挟んできました。

「あの ~ 地下鉄って、大変なんですか?

いろんな思惑が絡み合って … 男同士が互いに足を引っ張り合うような現場なんですか?」

「 … お前は本当にゲスだな」


蔑まされて喜ぶ室井 … 小説のネタ探しだと分かっていても、あきれ顔の桜子です。

「いやいやいや ~ 心配して言ってるんですよ ~

大変なんでしょ、今 … あちこちに水がね、出ちゃってね」


途端に竹元の顔色が変わりました。

「今? 水?」

… … … … …

詰め所では、悠太郎、池本、真田の3人がトイの見本を見比べながら、検討していました。

「あの、トイがアーチに張り出すことを、竹元教授に言わんでいいですか?」

バカ正直に真田が疑問を投げかけました。

ハッとする悠太郎。

「あんだけ、アーチアーチ言うてはったし、トイがそこここに飛び出すの知ったら … 」

「事後報告でええんやないでしょうか?」

「えっ?」


思わず悠太郎の顔を見たふたり。

「言わん方が強度が損なわんもんが出来ると思いますし … 幸い、当分いらっしゃる予定はないので」

「それ、いずれはバレて怒られるんじゃ?」

「後戻りできなくなってから、怒られましょう」


竹元との付き合いも長くなった悠太郎、自然と身につけた最善(最悪)の対処法でした。

… … … … …

「竹元教授が来てくれはりましたけど ~ 」

悪いことはできないものです … このタイミングで現れるとは …

「あかん!」

慌てて立ち上がり、トイを隠す3人。

詰め所の入口に両手に大きな風呂敷包みをぶら下げた竹元が立っていました。

「どうかしたのか?」

「いえいえいえ、何でもないです。ねえ、池本さん!」

「な、な、何ですか、急に突然 … 」

「どないしはったんですか?」


しどろもどろの3人に近づいてくる竹元。

「こっちに出てくる用があってな ~ 今、水が出て大変だと聞いて … 差し入れだ!」

机の上に風呂敷包みを置きました。

風呂敷の下には隠し忘れたトイの図面が残っていました。

「七星屋のビフカツ・サンドだ!

美味いぞ ~ 」


風呂敷を解く竹元、カツサンドの折が幾重にも重なっています。

しかし、悠太郎と池本は図面が竹元の目に触れないかと気が気ではありません。

「何だ? … わがまま放題の私の持ってきたもの等食べたくないか?」

「いやいやいや ~ カツサンド、皆サンド ~ ?

うれしいよな?」

「も、も、もちろんです! … うわあ、こんなに?」

「たくさんあるから、現場に持って行って皆さんに食べて … 」


竹元は、こそこそと風呂敷の下から図面を引っ張り出してまとめている悠太郎に気づきました。

「おいっ、貴様は何をやってるんだ?」

「 … 何でもないです」


悠太郎の態度に不審を感じた竹元は後ろに回りました。

万事休す … 竹元は目に触れたトイを手に取ると、3人に尋ねました。

「何だ、このトイは?

渡すのか? … どこにだ?」


誰も答えられないでいると、トイを放り出して大声を上げました。

「どこだ?!」

天を仰ぐ悠太郎 …

… … … … …

「ほな、明日竹元さんがラジオに出はるの?」

「観覧もできるから、よかったら見に来て」


夕飯の給仕をしながら、希子から竹元がゲスト出演をすることを聞いため以子、ラジオ局の見学も初めてのことなので興味津々でした。

「ただいま戻りました … 」

相変わらず、遅い帰宅の悠太郎でした。

「お兄ちゃん、竹元さんのビフカツ・サンド美味しかった?」

悠太郎の顔を見るなり、希子が尋ねました。

「えっ、会うとったんか?」

「うん、室井さんが水が出て大変やって言ったら、心配しはって … 何かええ差し入れないかって言わはるから」

「何で室井さんがそんなこと知ってはるんですか?」

「ああ ~ 私が言うたからですけど」


がっくり … 力が抜けていく悠太郎でした。

… … … … …

翌日の詰め所。

主だった関係者が集められ、皆深刻な表情をしています。

「いくら竹元先生が言うたかて、躯体のコンクリートはつって、トイ埋め込むはないで … そんなことしたら、トンネル自体の強度がガタ落ちや!」

石川は頑として譲りません。

「トイつけるんが、一番現実的やと思いますけど … 」

現場監督の増岡の意見です。

「わしらもそう言うたんやけど … 」

池本は昨晩のことを一同に伝えました。

… … … … …

「何のためだ?!

何のために血がにじむような思いをさせて、土木の人間にアーチ型のトンネルを造らせたんだ?!

これじゃあ、彼らの努力も台無しじゃないか?!」

トイをアーチに張り出してつけようと考えていることを知った竹元は烈火のごとく怒り、悠太郎を問いただしました。

「いや、せやけど、土木もトイにしろ言いますよ」

「ガッカリだ!」

… … … … …

「別にわしら、ガッカリせえへんし ~ なあ?」

石川の言葉に土木の人間は相槌を打ちました。

「とにかく、躯体のコンクリートは絶対削れんさかい」

そう宣言して、石川たちは出て行ってしまいました。

竹元の言うことは理想であり、石川たちの方が理に適っていると悠太郎も思っていました。

だから、内緒でことを進めようとまで考えていたのです。

… 深いため息をつきました。

… … … … …

大阪ラヂオ放送。

め以子と室井はお互いの子供たちを引き連れて、希子の番組を観覧にやって来ました。

スタジオの前に来ると、人だかりができていました … それも全て女性です。

皆それぞれに花束や贈り物を手にしています。

「人いっぱいやな ~ 」

室井に抱かれた娘の文女が驚いています。

「ねえ、あんなおヒゲのおじさんが人気あるんだね ~ 」

しかし、それは見当違いでした。

「橘梅次郎ですよ ~ 歌舞伎の!」

ガラス窓からスタジオの中を覗いため以子が声を上げました。

「橘梅次郎が来てますよ!!」

ここに集まっている女性たちのお目当ては、その橘梅次郎だったのです。

… … … … …

「どけっ、ほら!」

スタジオ入りのためにやって来た竹元が、たむろしている女性たちをどかそうとしましたが …

「邪魔やねん! どきい、おっさん!」

反対に罵声を浴びせられました。

滅多にない待遇に思わず立ち尽くす竹元。

そのうちに番組が終わり、梅次郎がスタジオから出てきました。

女性たちは、竹元を押しのけて、黄色い歓声を上げながら梅次郎を取り囲んでいきます。

勢い余ってソファに倒れ込んだ竹元。

「あっ、竹元さん大丈夫ですか?」

め以子に声をかけられた竹元は意味不明の言葉を吐きながら立ち上がりました。

気づけば、梅次郎が去ったスタジオ前にはめ以子たちの他、誰もいなくなっていました。

「人、おらんようになったよ ~ 」

「あ、皆、梅次郎を見に来てたのか … な~んだ」


スタジオの扉が開いて、希子が竹元を迎えに出てきました。

「お待ちしておりました。 竹元教授」

「 … 何だ、あの騒々しい輩は?」

「えっ?」

「失礼する!

私は見世物ではないからなっ!」


そのまま出口に向かって歩き始めました。

「えっ、あっ、教授! 待ってください、教授 ~ 」

… … … … …

再び、詰め所。

「もうここは、教授に泣いてもらおうや … トイつける以外に現実的には無理やで ~ 」

池本の言うとおりでした。

しかし、何故だか、今になって最後の踏ん切りがつけられない悠太郎でした。

「そうですよね … 」

「けど、この通り出来たら、ホンマに素晴らしいんでしょうね」


悠太郎が手にしている完成予定図を見ながら真田がそうつぶやきました。

「アホか?! 理想と現実は違うんや!

安全確保のためには、妥協もせんと … なっ」


悠太郎の肩を叩いた池本。

… … … … …

ラジオ局を後にした、め以子たち。

「あ、アイスクリンや!」

活男が目ざとく道端のアイスクリンの屋台を見つけて走り出しました。

「家帰ったら、しょぼ焼き作ってあげるから」

め以子がそう言いましたが、もう子供たちは待っていられません。

♪ アイスクリン ♪ アイスクリン

手拍子で連呼が始まってしまいました。

どさくさ紛れに室井まで加わっています。

「 … 室井さんは自分で買ってくださいよ!」

… … … … …

「何や、お母ちゃんのとはエライ違うな ~ 」

ひと口食べた泰介がそう言いました。

彼にとっては母の味が一番なのです。

「まあ、これはこれでな … 」

「そうそう、露店の味でね ~ 」


室井はふと、ふ久のことを見ました。

「へえ ~ ふ久ちゃんはこういうのが好きなの?」

普段、め以子が作ったアイスクリンなどほとんど見向きもせず、進んで食べようともしないくせに、ここのは黙々と食べ続けているのです。

そんなふ久をめ以子は複雑な気持ちで見つめていました。

… … … … …

再び、大阪ラヂオ放送。

番組を終えた希子がスタジオから出ると、ソファーに腰かけていた見知らぬ男が声をかけてきました。

「西門希子さんか?」

「 … 違います」


希子は咄嗟にウソをついていました。

「人違いです」

そのまま立ち去ろうとしましたが、男は行く手に立ちはだかりました。

「なあ、わしと一緒になってえな ~ わし、あんたの声、好きやねん」

じりじりと迫ってくる男。

後ずさりする希子 … くるっと踵を返して、スタジオに逃げ込みました。

間一髪、鍵を閉める希子。

男は窓から懸命に中を覗こうとしています。

「 … 西門君、どないしたんや?」

真っ青な顔で扉に張り付いている希子を見て、中で後片付けをしていた同僚の川久保啓司が声をかけてきました。

川久保が希子の傍まで来た時、窓の外の男の姿はすでに消えていました。

… … … … …

結局、最終的な決定は明日へと持ち越してしまった悠太郎。

しかし、釈然としないものを感じながらも、池本の言う方向で進めることになるのでしょう。

詰め所を後にして、現場の外に出ると、ちょうど老婆とその娘らしき年配の女性に出くわしました。

「 … 何か?」

「あの … 地下鉄、あんじょう進んでますやろか?」


老婆は尋ねました。

「ああ、ええ、まあ … 」

曖昧な返事しかできない悠太郎。

「はあ、それはまず何よりで ~ 」

「ああ、あの … 母は、御堂筋造る時にここを立ち退いたんです。

大阪を日本一の街にするためやからって … 」


娘の話に横で何度もうなずいている老婆。

… … … … …

詰め所に戻った悠太郎は、机に向かって、紙にアーチ型の図面を引き始めました。

『楽しみにしてますさかいに、ええもん造ってくださいね』

老婆の言葉が耳に残っていました。

… … … … …

め以子は、台所で糠床の世話をしていました。

先ほどのふ久の態度が気になって仕方がありません。

< あれは、ちょっと傷ついちゃうよね ~

毎日親しんできた味より、全く違う露店のアイスクリンの方が好きだなんて … >

「母ちゃん」

気がつけば、目の前に寝間着姿のふ久が立っていました。

「うん … どないしたん?」

何か言いたげなふ久でした。

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2014年01月09日 (木) | 編集 |
第81回

ボヤ騒ぎを起こし、担任の村上からしばらく学校を休むように言われたふ久。

そのこと自体は、さほど堪えてはいないように見えましたが … 少々興奮気味のめ以子に叱られて、自分の部屋にこもって泣いていました。

… … … … …

め以子は台所で不機嫌な顔で夕食の支度をしています。

今日もまた同級生を引き連れて帰ってきた泰介が、おやつのかりん糖を食べながら活男に尋ねました。

「何があったん?」

「おやつくれ言うたら、うるさいて … 」


幼い活男にしたら、それが一番の問題だったのでしょう。

『火つける子なんて、僕ら聞いたことないんです』

『あの子、ちょっと普通やないと違う?』

こうやって、包丁でまな板を叩いていても、村上や多江から言われた言葉が気になってしょうがないめ以子でした。

… … … … …

休憩所で談笑している石川と職人たち。

『火の気に注意』と書かれたその周りで煙草をふかす職人たち、そのうちのひとりがその場に吸殻を捨て、足で踏みつぶしていました。

偶然、それを目にした悠太郎は少し遠慮がちに注意を与えました。

「あの、そこら辺に捨てるの止めてもらえますか … 木材も多いですから」

「ちゃんと消しとるやろ?」


職人をかばう石川。

「 … もしもってことがありますから」

「あんな ~ 皆、防水のためにこっち出張って来てくれてんのやで」

「それとこれとは、別の問題やと思いますけど」

「なんやと?!」


つかみかかろうとする石川を吸殻を捨てた本人が慌てて止めました。

「すいませんでした」

悠太郎に頭を下げると、吸殻を拾いました、

「 … よろしゅう頼みますね」

… … … … …

帰宅した悠太郎を待っていたのは、またも『火』にまつわる話でした。

「ふ久が今日、学校で火つけて … 」

「火?!」

「何や、煙が見たかったんやて … で、いろんなもん燃やして、で … 学校は、ちょっとその … 対応、考えるって … 」

「昨日は石で、今日は火ですか … 」

「 … 本当にね、何考えてるんだか」


め以子の言い方が少し癇に障ったようです。

「あれから、ちゃんとふ久に話聞いたんですか?」

「えっ? … ああ … 話す前にこうなってもうて … 」

「何やってるんですか?

あなた、母親でしょ?!

きちんと話聞いて、ちゃんとふ久の気持ち理解してやらんと … 可愛そうやし、しつけもでけんでしょ?」


頭ごなしにめ以子のことを責めました。

「お兄ちゃん、それちょっと言い過ぎと違うかな?」

板の間で食事していた希子がとりなしたその時、黙っていため以子が突然声を上げました。

「じゃあ、悠太郎さんやってくれる?

悠太郎さんだって親なんだから、ふ久の話聞いてやってよ!

しつけてやってよ!」

「 … 何、怒ってるんですか?」


そんな悠太郎の態度が火に油をそそぎました。

「私、バカだから … ふ久のこと全く分からないんだから …

悠太郎さん、賢いんだから、ふ久のことは悠太郎さんやってくれるかな?」


抑えていたものが噴き出したのです。

「全然居ないくせに、何も知らないくせに … こんな時だけ、父親面しないでよ!」

その言葉に、悠太郎は憮然とした顔で返しました。

「ほな、あなた … 僕の代わりに働いてくれますか?」

… … … … …

「どうにもこうにもいうこと聞いてくれん水相手に知恵絞ってくれますか?

疲れ切ったおっさん相手に言いとうもないことくどくど言うてくれますか?」


悠太郎も同じでした。

溜めていたものが一気に口から出ていたのです。

「お兄ちゃん、話ずれてる … 」

「あなたの相手は子供やないですか?

しかも可愛らしい実の子やないですか?

何を甘えたこと言うてはるんですか?!」


… … … … …

ふたりの言い争う声は2階まで届いていて、心配した正蔵とお静が下りてきました。

「普通じゃないから … やっていいことと、悪いことが分からないの!

普通の人が、自然と分かることが分からないの … 学校行けなくなって、困るとか寂しいとか、そういうことも思わないの!

… そういう子、どうやって育てたらいいのか、私分かんないの!」


興奮して、泣きながら悠太郎に訴えるめ以子。

「ちい姉ちゃん、ちい姉ちゃん」

希子が止めようとしていますが、耳に入らないのか …

「あの子は、あの子は … 」

「世界一のべっぴんや!!」


… … … … …

振り向くと、階段にふ久が立っていました。

ふ久に聞かせないように、お静が大声をあげ、正蔵はふ久の両耳を押さえていました。

ふたりのお蔭で最悪の事態は免れたようです。

「 … お母ちゃんら、やかましいな ~ 今日は、お婆ちゃんらと寝ようか?」

「そうやな、寝よう寝よう」


ふ久を連れて自分たちの部屋へ戻っていきました。

め以子は、自分のことが情けなくなって、顔を押さえてしゃがみ込んでしまいました。

… … … … …

お静と正蔵に挟まれて、ふ久は寝息を立て始めました。

「可愛らしいな ~ 」

お静がふ久の寝顔を見て思わず口にしました。

「お静 … あんた気にならへんのか?」

「うちな、もうこの子、見てるだけでええねん … 何やっても、可愛らしいて可愛らしいて」


指でふ久の頬をなでたお静。

「婆さんやな ~ 」

「爺さんに言われとうないわ … 」


ふたりは、ふ久を間に顔を見合わせて笑いました。

お静にとって、今が一番幸せで穏やかな毎日だったのです。

… … … … …

子供部屋にそっと入ってきため以子。

今夜は、悠太郎の隣で寝る気にはなれなかったのです。

活男のはだけた掛け布団を直した後、ふ久の布団に潜り込もうとした時です。

「お母ちゃん」

話しかけてきたのは、泰介でした。

「ごめん、起こした?」

「僕、お姉ちゃんのこと、好きやで」


ハッとするめ以子。

子供は敏感に母の心の揺れを感じていたのです。

「変わってて、おもろい」

「 … お母ちゃんも、そう思うかな」


その言葉を聞いて、安心した顔になった泰介はまた眠りに戻りました。

… … … … …

悠太郎は、部屋にあっため以子の料理ノォトを手にしていました。

毎日の献立の脇に、ふ久が残した食べ物、よく食べたもの等が事細かに記してありました。

それを見て、頭ごなしに責めた自分を顧みた悠太郎でした。

… … … … …

翌朝。

台所に立つめ以子に悠太郎が近づいてきました。

少しぎこちない朝の挨拶を交わした後、悠太郎は言いました。

「今日は、早う戻ってくるから … 」

「可愛らしい実の娘ですから、私がやりますよ」


それは、決して皮肉でないことは、今のめ以子の表情でわかりました。

「ええんですか?」

「水の相手も、おっさん相手に小言いうのも、私にはできませんから」

「 … できれば、早う戻って来ますから」

「期待せずに待っときます」


そんなふたりのやり取りを板の間から正蔵がそれとなく窺っていました。

… … … … …

「え~っ?! 昼? ご飯連れてってくれるの?!」

飛び上がらんばかりの活男です。

「うん、お爺ちゃんとお婆ちゃんと行こな ~ 百貨店の大食堂」

「ええな ~ 」


学校がある泰介はそういう訳にはいきません。

「うわ ~ 百貨店、うれし ~ 」

家の中を走り回っています。

「あの … ええんですか?」

「ああ、ええ、ええ … 今日は、ふ久とゆっくりお過ごし」


正蔵とお静が、め以子にふ久とふたりきりの時間を用意してくれたのです。

… ふ久に目をやると、いつもと同じように無表情で朝食を食べていました。

… … … … …

台所で食事の後片付けをしているめ以子。

傍らに腰かけていたふ久が突然立ち上がって、火にかかっているやかんを見つめました。

「どないしたん?」

やかんは沸騰していて、蒸気でふたが揺れています。

「何で、揺れてるの?」

「うん? … お湯が沸いてるからや」

「何で、お湯が沸いて揺れるの?」


め以子はそんなこと考えてみたこともありませんでした。

「え ~ 水が、湯気になって … 」

「何で、湯気になったら、揺れるの?」


そう言いながら、ふ久の目はやかんに釘付けです。

「えっ … ゆ、湯気になったら、水が膨らむんやったかな?」

やかんから目を離して、め以子を見上げたふ久。

… … … … …

ちょうどその時、百貨店に出かけようとしている正蔵の姿がめ以子の目に留まりました。

「あ、お義父さん、お義父さん」

「うん?」

「あの、ちょっと教えていただきたいんですけど … 水って、膨らむんでしたっけ?」


あまりにも唐突な質問に正蔵は面食らっています。

「え、いや … ふ久が何で、やかんのふたが揺れるんやって、もう私 … 説明が … 」

「うん?!」


その話を聞いて、正蔵は何かに気がついたようです。

「石、煙 … 」

「どないしたんですか?」


め以子にはさっぱり分かりません。

「お静、悪いけど、今日、かっちゃんとふたりだけで行ってくれへんか?」

「ええけど … 」


お静にも理由は分かりませんでしたが、正蔵が何かふ久のために思いついたことを察して、快く引き受けました。

「かっちゃん、すまんな ~ また今度や」

… … … … …

出かけるのを止めた正蔵は、やかんの絵を描いて、ふ久に説明し始めました。

「お湯になったら、こっから暖かい湯気が出てくるな ~ この湯気は、水よりも軽いやろ?」

ふ久は正蔵の隣に座って真剣な顔で話に耳を傾けています。

「で、軽うて、温かいさかいに、この上へ上がろう、上へ上がろうと、しよるんやな ~

で、上に上がろうとするさかいに、このふたをこれ、ふ~っと持ち上げるんやけども … ふたの方は、落ちよるん」

「ふたは何で落ちようとするの?」

「下へ ~ 下へという、こういう力が働きよるんや」

「力 … 」

「うん、落ちひんかったもん、なかったやろ? … いろいろと試したと思うけど」


ふ久は正蔵の言葉にこくこくうなずきました。

「 … 試した?」

横で聞いているめ以子には、相変わらずさっぱりです。

… … … … …

「上に行く力と、下に行く力」

「ははは、せやせや」


呑み込みが早いふ久を見て、正蔵がうれしそうに笑っています。

「あんな … もう、この辺にはいろんな力が、引っ張りおうたり、ぶつかったりして …

で、この力は目には見えへんのやで」

「 … 見えへん力 … 」

「そう ~ いろんな力がここにはあって、ほんで、ふ久はここにこうやって留まってられるんや」


すると、ふ久はあまり見せたことがない満面の笑顔を見せました。

「月が落ちてこうへんのも?」

「せや!」

「ほなな、ほな、風は何で横に吹いていけるん?」

「風か … 」


ふ久は正蔵の説明を目をキラキラと輝かせながら聞き入っていました。

… … … … …

「はあ ~ ふ久はそんなこと考えとったんかいな?」

百貨店から戻ったお静は、今日の話を聞いて、しきりに感心しています。

「力というものの不思議を考えとったんやな」

「はあ ~ 」

「私には想像もつかないです … 悠太郎さんの血ですかね?」


苦笑いするめ以子。

「どやろか ~ 」

そう言いながらも正蔵は満更でもなさそうです。

「けど、おもろい目を持った子やな … 見えんもんを見ようとしてた」

「 … ふ久にはどんな風に見えてるんでしょうね … この世の中」


その時、め以子はふいに昔のことを思い出しました。

『料理は化学です』

帝大生時代の悠太郎の言葉です。

「台所は、実験室か … 」

顔を見合わせて笑った3人。

「あ、お義父さん … 時々でええんで、ふ久の実験につきおうてやってくれますか?」

「こんな、カビの生えたような頭でもええんかいな?」


またもうれしそうに笑った正蔵でした。

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2014年01月09日 (木) | 編集 |
第80回

格安で手に入れた牛乳 … め以子が企んだおやつとは?!

容器に入れた牛乳を氷いっぱいの桶で冷やしながら、懸命にかき混ぜるめ以子。

桶を押さえたり、適度に塩を入れたり、正蔵も手伝っています。

すると、見る見るうちに牛乳はアイスクリームへと変わっていき ~ 横で見ている活男が歓喜の声をあげました。

「うぉぉ ~ 」

お静はアイスクリームに乗せる薬味(?)を用意しています。

おやつのための共同作業です。

… … … … …

「ただいま、戻りました」

そうこうしているうちに、小学校から泰介が帰って来ました。

「お帰り ~ 今ちょうど、おやつできるから … 」

め以子が、しまったと思った時はもう後の祭りでした。

「おばちゃん、おやつ ~ !!」

「おばちゃん、今日何?」


口々にそんなことを言いながら、同級生たちが泰介そっちのけで台所に入り込んできました。

この子たちは西門家のおやつは、珍しくて美味しいことを知っているのです。

め以子は何を作っているのか隠そうとしましたが、図々しくも覗き込んできます。

「おばちゃん、それ何?」

「おばちゃん、おくれ ~ !!」


何度か甘い顔をしていたら、とうとうこんな調子です。

「帰り! いったん、家帰り!!」

… … … … …

「アイスクリームだ!!」

「食べよう、早く」


アイスクリームの入った容器を持って、2階へ上がっていく泰介と同級生たち。

「おやつギャングが!!」

お静がその背中に吐き捨てました。

かろうじて自分たちの食べる分は確保できましたが、残りを全部持って行かれてしまったのです。

「文句は泰介に言うてください」

断ることをせずに連れて帰ってくる泰介のせいでした。

… … … … …

「山椒は大人の味や」

「桜の香りもええな」

「味噌もいいですよ ~ 」


いろんな薬味を乗せて、食べ比べしたりで、様々な味を楽しんでいるところへ、ふ久が帰って来ました。

「ふ久、こっちおいで ~ ここ、座り」

お静が、ふ久の口にアイスクリームをさじで運びました。

「味が濃いのに、さっぱりしてて美味しいやろ?」

しかし、無表情のふ久。

そんなこと自体、さほど珍しいことではないのですが、今日のふ久は少し様子がおかしいと、め以子は感じました。

「ふ久、何かあった?」

… … … … …

「ちょっと、ふ久ちゃんおる?!」

けたたましい足音がして、高山多江が息子の勝を背負って、ものすごい剣幕で家に飛び込んできました。

「あっ、おった!

ちょっと ~ これっ、何でこんなことした?!」


勝を板の間に下すと、包帯を巻いた足の甲を見せました。

勝 … 小学校の校庭で足の甲から血を出して泣いていたあの少年です。

「えっ … どういう?」

「どうもこうもない! ふ久ちゃんがやったんや!」

「ふ久が?!」

「学校の2階から、でっかい石投げたんや ~ この子が見た言うてんねん!」

「 … ほんまなん、ふ久?」

「落としとったんや」


め以子が問いただすと、ふ久は平然と答えました。

「せやから、投げたんやろ?」

「投げてへん … 落としたんや」


… … … … …

「落としたとこへ、あのボンが通りかかったちゅうことか?」

正蔵が訪ねると、ふ久はうなずきました。

「まあ、何ちゅう言い訳するんや、この子は!

そんなウソをよう … ええっ? 末恐ろしいなあ」


一方的に攻め立てる多江、ふ久の隣で不満そうな顔をしているお静にも食って掛かります。

「何や、その顔は?」

「お宅の息子が、ぼんくらや言うとんのやろ」

「なんやて ~ ?!」


火に油をそそぐようなことを言われて、め以子は慌てました。

「とにかく、投げようが落とそうが、こっちはケガしてんやからな!」

「そりゃもう分ってます … 」


目をひん剥いて怒っている多江に平身低頭のめ以子。

「歩かれへんようなったら、責任取ってもらうさかいなっ」

捨て台詞を残して、多江は勝を背負って帰って行きました。

… … … … …

め以子はふ久と向かい合って、改めて問いただしました。

「ふ久、何で石なんか投げてたん?」

「投げてへん … 落としてたんや」


落としたの一点張り。

「 … ほな、何で落としてたん?」

「落ちひん石、探してたんや」


悪びれることなく、ふ久は答えましたが … め以子にはさっぱり理解ができません。

「そんなもん、ある訳ないやろ?!」

すると、ふ久は俄然、目を輝かせました。

「あるかも知れんやん!」

「 … とにかくな、ケガさせたんはさせたんや!

そういうことは、あかんやろ?」


… … … … …

「石落としとったところに、偶然通りかかった … ホンマはその子に石投げたのに、そう言い訳してると、あなたは思うんですか?」

夜遅く帰宅した悠太郎に報告すると、そんな言葉が返って来ました。

「その方がまだ合点がいくんですよ」

「合点?」

「落ちへん石、見つけたいから、落としてた言うんですけど … それ、8つの子が本気でやることやないでしょ?」

「8つの子いうんは、普通そんなことやらんのですか?」


言葉を亡くしため以子が、自分をまじまじと見つめていることに気づいた悠太郎。

「あ、いや … 僕、その辺、よう分かりませんから」

「まあ、悠太郎さんは土日も、お仕事お仕事ですもんね ~ 」


皮肉たっぷりのめ以子に悠太郎は眉をひそめました。

「しゃあないやないですか」

「 … 大体の常識は分かる年頃やと思います」

「う~ん … もっぺん、話してみたらどうですか?

いずれにしろ、何や理由があるのかも知れんし … 」


… … … … …

その頃、子供部屋では …

とうに寝たはずのふ久は、布団から抜け出して、窓辺に座って、じ~っと月を見上げていました。

その気配に、目を覚ました泰介。

「姉ちゃん、何してるん?」

「 … 月って、落ちてこうへんよな ~ 」


… … … … …

あくる朝。

「とにかく、高いとこからもの投げたりせんこと」

玄関の前で、め以子は、学校に出かけるふ久によく言い聞かせていました。

「人にケガさせるようなことは、やったらあかんよ」

「 … 投げてへん、落としたんや」


ふ久にすれば、そこは譲れないところのようです。

「ほな、落とさんこと … 分かった?」

渋々うなずいたふ久は、ボ~っと出かけていきました。

「ふ久、お弁当ちゃんと食べるんよ」

… … … … …

ふ久がしばらく歩いていくと、通学路の脇で椅子に腰かけた老人が煙草をふかしていました。

その手の煙草から立ち上がっている紫煙に目を奪われるふ久。

煙は、空に向かって伸びていきます。

… … … … …

地下鉄の現場。

不機嫌な顔で詰め所に戻ってきた池本と悠太郎に部下の真田紳太郎が声をかけました。

「 … 何かあったんですか?」

防水作業を始めてくれたまではよかったのですが、ふたりの姿を見て、監視されていると勘ぐった石川から罵声を浴びせられたのです。

「作業の状態見たいんは、当たり前やないですか!」

「まあ、昨日の今日やからな … 」


池本に宥められても、悠太郎は納得がいきません。

「あのレベルの漏水は、土木がやって然るべき仕事やないですか!

それをやらされてるとか、やってやってるとか ~ ええもん作ろうという気概はないんですかね?」

「全く、ウォーターにはうぉたうぉたさせられるな ~

まあ、人それぞれ言い分はあるで … 」


場を和まそうとしたのでしょうが、池本の駄洒落が却って悠太郎をいらつかせました。

… … … … …

子供たちを送り出しため以子は、多江の元へ菓子折りを持って、昨日の謝罪に訪れていました。

「 … せやけど、ホンマにちょっと考えた方がええと思うで」

大分トーンダウンしている多江ですが、そんなことを言いました。

「えっ?」

「ふ久ちゃん … えらい口重いし、言葉にならんから、あんな仕返しするんやと思うわ」


仕返しとは初耳でした。

「昨夜、勝に聞いたらな ~ 昨日、学校でふ久ちゃんにぶつかってしもうたらしいわ。

その仕返しで、石投げてきたんちゃうかって」


我が子の方にも非があることを知ってのトーンダウンだったのです。

「そ、そんな … 」

「あの子、ちょっと普通やないと違う?」

「えっ?」


… … … … …

思ってもみなかったことでした。

台所仕事をしていても、多江の言葉を思い出しては、不安をかきたてられるめ以子でした。

< 大丈夫だよ、め以子。

大体、あんただって、親からすれば、かなり心配な子共だったと思うよ >

鶏の卵盗んだり、お濠の鯉盗んだり、お供え物盗んだり … 

< 盗んでばっかりだったじゃないか?!

… そういうことは、思い出さないんだね >

「お母ちゃん、おやつして!」

活男の声で我に返っため以子。

「お姉ちゃんが戻って来たら … 」

その時、玄関の方から声が聞こえました。

… … … … …

「お邪魔します! 担任の村上です … お母様、いらはりますか?」

め以子が応対に出ると、教師の村上とふ久が立っていました。

「ああ、先生 … いつもお世話になっています」

よく見ると、ふ久は体操着のままです。

「あれ、着物は?」

ふ久は少し困ったような顔で目をパチクリしています。

「火を消す時、水をかぶってしまったんで」

風呂敷にくるまれたふ久の着物を受け取りながら、め以子はよく意味が分からずに村上に聞き返しました。

「ふ久ちゃん、学校で火出したんです」

「えっ?」

「ボヤを出しかけたんです」


… … … … …

いろいろな物を集めて、校庭の隅で火を点けたようなのですが、その火が大きくなってしまって …

「見つけた生徒が、慌てて水をかけてくれた訳なんですけど … 一歩間違うと、大変なことになるところでした」

「ホンマすみません … ふ久、何でそんなことを?!」

「本人は、煙を見たかったと言うんですけどね」


め以子は動揺していました。

「ふ久、今朝お母ちゃんと約束したやろ?

人にケガさせるようなことせんって」

「 … ケガさせてへんやん?」

「させてへんのはたまたまやろ?!」


思わず声を荒げていました。

「8つにもなって、火大きいなったらどうなるかくらい分かるやろ?!

こんなことはしたらあかんの!

分かるやろ?!」


… … … … …

「お母さん、ちょっと … 」

村上が何か話があるようなので、め以子は取りあえず、ふ久を家に上がらせました。

「 … 何でしょう?」

「しばらく学校お休みにしてもらってよろしいでしょうか?」

「えっ?

… 2、3日っていうことですか?」


しかし、村上の口から出たのは耳を疑うような返事でした。

「期間は上と相談したいいうか … 」

「あっ、ちょっと待ってください … その間、ふ久は学校どうしたらええんですか?

小学校は誰でも行ってもええんやないですか?」


うろたえるめ以子に村上は少し強い口調で言いました。

「いいですか、お母さん。

いたずらや乱暴はいくらでもあります。

けど、火つける子なんて、僕ら聞いたことないんです。

… ふ久ちゃんは、かなり変わった子と思わざるを得ないというか … 他の子のこと考えると、軽はずみな対応はできへんのです」


ここにもまた、ふ久を特別扱いする大人がひとりいました。

「とにかく、僕らにも話し合う時間をください」

それだけ告げて、出ていく村上。

「お願いします。 ちゃんと言うて聞かせますから、お願いします … 」

め以子は去っていく村上の背中に頭を下げていました。

… … … … …

台所へ戻ると、ふ久は水で戻した干しシイタケを指でつついていました。

「食べるもんやめて」

「あ、お母ちゃん、おやつして!」


待ちかねていた活男がめ以子の顔を見て、催促をしました。

「ふ久、学校行かれなくなってしもうたで … どうするん?」

め以子はふ久を向き直させて問いただしました。

「 … ええよ」

「えっ?」

「うち、別に行かんでもええもん」

「なあ ~ お腹空いた ~ 」


平然と答えるふ久を見て、め以子はイラッときました。

「よくないでしょ?!

お勉強、教えてもらわれへんようなるし … お友達とも会えなくなるんよ?」

「 … 友達、おらんし」

「おやつ ~ 」

「欲しいと思わへんの? お友達。

皆と仲良くなりたいなって、思わへんの?」

「 … 別に」

「別にって?!」


もう、我が子ながらさっぱり訳が分かりません。

「お母ちゃん、おやつしてって!」

… … … … …

「うるさいっ、後にして!」

まとわりつく活男の手を叩いてしまいました。

わあっと泣き出す活男。

「もう、後でやるから … 」

振り返るとふ久の姿がありません。

… … … … …

裏庭に出てきたふ久、目についた枯葉を拾いました。

後を追ってきため以子。

ふ久の両腕をつかんで、顔を見つめました。

「話してる時は、相手の顔見なさい!

相手の話を聞きなさい!

それが普通なの!」


母の剣幕にふ久は顔を強張らせました。

「普通の子は学校行って、終わったら友達と遊ぶの!

ひとりで石落としたり、火つけたりしないの!

学校行かれへんって言われたら、困るの! 泣くの!!」


… … … … …

ふ久は目に涙をためてめ以子を見つめ返しています。

「どうして、ふ久は … どうして、普通にできひんの?!」

活男もわんわん泣きながら裏庭に出てきました。

「泣くな、泣くな!」

そう言われると、め以子の手を取って余計声を上げて泣く活男。

< 泣きたいのは、こっちだと思う … め以子でございました >

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2014年01月07日 (火) | 編集 |
第79回

< 関東大震災翌年のあの正月から、大阪は随分と変わりました。

関東大震災を期に人や企業が流入し、東洋のシャンゼリゼを目指した御堂筋の拡張工事も始まり、その地下には高速鉄道を同時に建設。

大阪は大大阪と呼ばれる黄金時代を迎えました。

そんな中で悠太郎は … >

竹元からうま介に呼び出された悠太郎は、新しく設置された『高速鉄道課』に移動するように指示されたのでした。

「何で僕が高速鉄道課に?」

「それは、私が地下鉄の駅舎を設計するからだ」


竹元は好物の焼き氷を食べながら、いつものように当然のごとく言い切りました。

「ち、地下鉄?」

「そうだ …

階段を下るとそこには、広大な地下空間 ~ 息を飲むような壮大なアーチ形の天井 … そしてきらめく、特大のシャンデリア。

冷暖房完備で夏は涼しく、冬は暖かい … そこに、最新鋭の高速鉄道が走り込み、梅田から心斎橋まで5分だ」


夢でも見ているように語る竹元。

「お断りします」

しかし、悠太郎は即答して、席を立ちました。

「 … 壊れないぞ」

竹元の言葉に振り返った悠太郎。

「地震で地上がいかれても、地下は壊れにくいらしいし、避難場所にもなるんだけどな ~ 」

痛いところを突いてきました。

< そんな経緯で、地下鉄設計に携わることに …

一方で、震災時における情報伝達の不足から、情報をいち早く知らせる手段として、ラジオ放送が注目され、ここ大阪にも放送局が誕生。

震災時に情報を求めて走り回った希子は、設立意図に深く共感し、無謀にもアナウンサーを志望 >

試験会場で自己PRをする時 …

♪ 氷、氷、氷なのは、間違いないのさ ~

面接官を前にして、かの焼き氷の歌を披露したのです。

< その歌唱力で何故か難関を突破!

なんと、最先端の職業婦人に … >

… … … … …

そして、め以子は …

< 家庭には、ガスコンロが普及。

火の扱いが楽になった家庭の主婦によって、様々な家庭料理が考案され …

め以子は、創作料理の懸賞公募で小遣い稼ぎ … その当選者金を貯めに貯め、氷冷蔵庫を入手 >

ふ久に続いて生まれた長男・泰介を背負いながらも台所で奮闘する毎日でした。

… … … … …

時は流れて … 昭和7年(1932)

め以子は、3人のこの母になっておりました。

… … … … …

朝の食卓。

難しい顔をしながら新聞に目を通している悠太郎に正蔵が尋ねました。

「どや? 地下鉄の方は」

「資材がじわじわ上がって来てますね … 頭が痛いです」


一大事業である地下鉄の建設工事は、着工から数年経った今も完成には至っていません。

「ごめんなさい、遅れました」

2階から下りてきたのは、女学校時代とは打って変わって、洋服に身を包み、モダンな髪型にした希子です。

「何ですか? これ」

席に着くなり、目の前に置かれた料理を見て、め以子に尋ねました。

「うん、アジの開きのポテトサラダ詰め」

「それ、こないだ、うちの番組でやってたの?」

「うん、それに一工夫して、カラシを加えてみたんよ」


自分の番組を持つまでになった希子。

め以子もすっかり関西弁に染まっていました。

… … … … …

「ほなまあ、いただこうか? … いただきます!」

一同が揃って、正蔵の合図で朝食開始です。

食卓には、他にもいろいろとめ以子の創作料理が並んでいました。

3人の子供 … 行儀よく座ってご飯を食べている長男・泰介。

次男の活男は元気よくご飯をかっ込んでは、幸せそうな顔をしていて … その仕草は、幼いころのめ以子を彷彿させます。

それとは対照的に長女のふ久は、元気がなく、あまり食が進んでいません。

「魚と芋って意外と会うもんやな ~ 」

「ほんまやな ~ 」

「カラシがよう効いてますね、生臭さが消えて」


め以子の創作料理は好評のようです。

「でしょ? ~ ほら、ふ久も食べてみ」

ふ久の茶碗に取り分けて与えました。

しかし、「美味しい?」と聞いても「わかれへん」と首をかしげるだけです。

… … … … …

「悠太郎さん、食事の時くらい止めてくれませんか?」

食べながらも新聞を手放さない悠太郎、め以子に注意されても、薄ら返事するだけ。

「そんなにお仕事大変なんですか?」

質問には答えず、お替りの茶碗だけ差し出す悠太郎にため息をついため以子です。

… … … … …

「活男、それ姉ちゃんのやろ?!」

ふ久のおかずまで手を伸ばした活男を泰介がとがめました。

「だって、くれるゆうたもん」

「ふ久、ちゃんと食べんと大きくなれへんよ


め以子が注意しても、返事さえしません。

「 … あんた、人の話ろくに聞いてへんやろ?

授業中もろくに聞いてへんで、ボ~っとしてるて、先生 … 」


以前では、考えられなかったような早口でめ以子は文句を並べます。

「あんたかて、どうせ聞いてない口やったんちゃうの?」

「そ、そんなことないですよ … 」


見透かしたようなお静の横槍に思わず顔を引きつらせた、め以子。

その間にも、活男がふ久の分のおかずをほとんど食べてしまいました。

「活男! ふ久の!」

「始末じゃ~」

「あんたが始末せんでええの!」


… … … … …

「ほな、行ってきます!」

礼儀正しく挨拶をして、泰介が数名の友達と登校して行ったその後から、どこか上の空のふ久はぼんやりとひとりで出かけて行きました。

「お弁当、ちゃんと食べるんよ」

ふ久の後姿を不安そうに見送っため以子でした。

… … … … …

地下鉄の工事現場。

作業員から漏水の報告を受けた現場監督の増岡要司が渋い顔で詰め所に入って来ました。

「また漏水があったんですか?」

「やってもやってもですね ~ 」


図面を広げながら会議の席に着きました。

< 少しご説明いたしますと …

大阪の土地は地盤が軟弱で地下水も多い … いくら、防水をすれど、コンクリートの継ぎ目などから漏水をしてしまう。

この処理に現場はひどく悩まされていたのでございます >

「とにかく、土木の方で防水してもらえますか?

このままやと、タイルを貼る状態にもならないんで」


悠太郎からそう言われた土木担当の石川公之助は増岡に確認しました。

「防水は回せる?」

「今、淀屋橋の作業入ってますさかい、人手が … 」

「せやけど、こちらはこちらで工期もあるんで」

「工期、工期って、お宅の先生が天井アーチしたい言うんで、わしらがどんだけ苦労してる思うてまんねん!」


切れ気味に食って掛かる石川。

「しゃあないやないですか?

竹元さんが、『欧州に引けを取りたくなかったら、天井アーチや』言うて、議会がそれを承認したんですから」

「建築はええの ~ 夢ばっかりで!

ケツ拭くんは、全部土木や!」


悠太郎も負けてはいません。

「階段の位置が、予定よりも50センチもずれていた時は、設計変更でこちらが対応しましたけど?」

「50センチぐらいどうってことないやろ?」

「こちらは、ミリ単位でやっているんですが」

「こっちは自然相手なんや … 具合見ながら掘って行くしかないんや!」


お互いに一歩も引かないふたりのやり取りを見ていた、悠太郎の上司である池本元がとりなしました。

「石川さん、分かる、分かるんやけど …

今更、それ言うたかて、しょうことないですやろ?

タイル貼らんわけにはいかへんし … 何とか頼むわ、この通り」


石川に向かって深く頭を下げた池本。

それに倣って、悠太郎たち高速鉄道課の職員も同じように頭を下げました。

… … … … …

昼休みの小学校。

ふ久は、同級生たちの遊びの輪にも加わらず、校庭でひとり雲間から見え隠れする太陽を見上げていました。

周りを気にせずに突っ立っていたので、走ってきた男子生徒にぶつかられて転倒してしまいました。

「ぼ~っと立っているからじゃ、ボケ!」

悪態を吐かれても、気にもせず、平然と立ち上がると、また空を見上げました。

… … … … …

「 … 続いて、『毎日の料理』の時間でございます。

今日も白鳥女子専門学校の原よしえ先生に、鮭翁焼の作り方を教えていただきます」

ラジオから希子の声が聞こえています。

め以子は、この番組を聴くために、うま介に通っていました。

未就学児の活男は、いつもめ以子がお供で連れてくるので、すっかりお馴染みでした。

今飲んでいるのは、馬介が手で絞った日替わりジュースです。

「お替り!」

「もうないで ~ 」


そう言った馬介の目の前の器には搾りたての果汁が入っていました。

「あるやん?!」

「かっちゃんのはもうないの ~ 」


あとは商品ということです。

「これでいいなら、しゃぶっとき」

「おおきに」


もらったリンゴの芯をかじった活男は唸り声を上げながら、め以子譲りの幸せそうな顔をしました。

「かっちゃんの食べっぷりは胸がすくようだな」

これも、め以子も長年言われ続けていた言葉でした。

… … … … …

「どないしたん?」

浮かない表情のめ以子を見て、馬介は尋ねました。

「うん … 活男はこうやし、泰介もよう食べるし … 何で、ふ久だけって … 」

「相変わらず、食べへんの?」

「食べへんし … 何食べても『美味しい』って言わへんし、『美味しい?』って聞いても『わかれへん』って言うし … 」

「けど、食べることに興味ない子、いるって言うわよ」


そう言った桜子も室井との間に文女(あやめ)という女の子をもうけていました。

その文女を連れて動物園に行ったとのことで室井は留守でした。

「いいな ~ 室井さん、子守してくれて。

悠太郎さんなんて、な~んも」


すると、今度は桜子が浮かない顔になりました。

「私は、いい加減働いてほしいけどね ~ そこそこ売れたら、書かなくなっちゃってさ … 」

『鍋底大根の旅』『おでんの歌、上、中、下』『ちくわに恋するちくわぶ』『練り物合戦記』 …

うま介の本棚には、室井が執筆した本が数冊置かれていました。

… … … … …

「それ、この番組の『私のお料理自慢』に出すやつ?」

うま介は、め以子が書き留めていた便箋を指しました。

「うん」

「め以子ちゃん、かなり採用されとるよな?」

「 … うちのふ久姫様には、一切採用されへんけどね ~ 」


今日は、話がすぐそこにいってしまいます。

「それってさ ~ やっぱりエコヒイキなの?」

興味ありそうに尋ねた桜子、め以子は怪訝な顔で聞き返しました。

「えっ?」

「だって、希子ちゃんの担当番組でしょ?」

「エコヒイキだったら、もっと採用されてます!

一番になってます!」


最近、『ミセス・キャベジ』と名乗る強力なライバルが現れ、苦戦が続いているめ以子でした。

名前も住所も書かずに、作り方だけ送ってくるという謎の人物なのです。

… … … … …

「おお、おったおった!」

店に飛び込んできた源太、め以子にようがあるようです。

「何?」

「牛乳屋がな、何や今日、乳えらいこと余ったらしいて …

いるんやったら、勉強したるでって」

「買う!」


ふたつ返事のめ以子です。

「すぐ買う!!」

「お母ちゃん … もしかして?」


め以子は活男の顔を見て、不敵に笑いました。

< め以子が、今日のおやつを企んでいたその頃 … >

… … … … …

小学校の校庭で足の甲から血を出して泣いている少年。

その様子を校舎の2階から見下ろしているのは、ふ久でした。

< … 小さな大事件が幕を開けていたのでした >

ふ久のその手に握られていたのは … 石ころでした。

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