NHK朝ドラ『花子とアン』『ごちそうさん』『あまちゃん』…ストーリーを勝手に解釈&裏読み … ほぼネタバレ…
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2014年02月28日 (金) | 編集 |
第125回

その夜、め以子は藤井からもらった小麦粉で餃子を作って、皆でささやかながらも悠太郎の出所(?)を祝いました。

「これ満洲のお料理でした?」

希子の言葉に何故か悠太郎と藤井が微妙に反応したことには誰も気づきませんでした。

… … … … …

「あんな、め以子 … 」

皆が食後のお茶を飲み始めた頃、悠太郎が言い難そうに口を開きました。

「拘留は解けてんけど、市役所はクビになったんや」

さすがに無罪放免で、職場復帰とはいかなかったようです。

「それでな … 」

不安そうな顔で身構えるめ以子を見て、悠太郎は次の言葉を飲み込んでしまいました。

「 … 当分は、職探しでうちに居るから」

め以子はホッと胸をなでおろしました。

「何や、そないなことですか … 」

… … … … …

「君、まさか言わんつもりか?」

見送りに外まで出て来た悠太郎に藤井は尋ねました。

「結局、陸軍の軍属として満洲へ行くことになったなんて聞いたら … どれだけ泣くかと思うと」

「せやかて、言わん訳にはいかんやろ?」


少し強い口調で問いただした藤井。

「 … 皆の笑うた顔だけ見ていきたいんです。

皆には、迷惑かけましたし、せめて最後は楽しい思い出だけ残していきたいんです」


… … … … …

次の日、悠太郎は職探しのついでということにして、京都の泰介の下宿先を訪れていました。

「 … どや、理系学科行けそうか?」

「できるだけ頑張るけど …

何で僕には姉ちゃんみたいな才能がないんや ~ いうのが、正直なところやな」


泰介は自嘲気味に笑いました。

「お父さんは、お前の才能の方がよっぽど欲しいけどな ~ 」

「ええ?」

「人の中をちゃんと立ち回って行けそうやないか、お前は …

人の気持ちが読めて、気遣いがでけて、人を動かす知恵も回る … もの凄い才能やと思うで」


自分にはなかった才能を持ち備えた息子に悠太郎は満足そうな顔を見せました。

「こんな父親から、ようこんな奴がでけたて思てるよ」

… … … … …

「お父さんはやらかしてしもうたもんな … 」

「すまんかったな、迷惑かけて」


茶化したつもりだったのですが、まともに父に詫びられて、泰介は少し困惑しました。

「 … かっこええて思たよ。

本気てこういうことやなって、教えてもらった気がする。

この人の息子やいうのが誇らしかった」


父親冥利に尽きる言葉をもらって、悠太郎は感動していました。

… … … … …

「泰介、そんなこと言うてたんですか?」

戻った悠太郎から、その話を聞いため以子も何だかうれしい気持ちになっていました。

「人をくすぐる言い方するんですよ、あいつは」

野球で投手を盛り上げる女房役の捕手をしていたからこそ開花した才能かも知れません。

「末は博士かお大尽やったら、お大尽ですかね?」

「うん … 博士はあっちですかね?」


ふたりともふ久の顔を思い出してにやけました。

「コックの活男も居るし … 楽しい我が家ですね」

こんなに夫婦で落ち着いて話すのはいつ以来のことでしょう … め以子は不謹慎にも失業もすてたもんではないと少し思ってしまいました。

「明日は市内を回るんで、『博士』のお腹見てきます」

… … … … …

「焼夷弾は命中するとな、中身がベトッとくっついて、じくじく轟々といつまでも燃える。

水とか砂やらかけても、ちょっとやそっとで消せるもんと違うんや」


ふ久は『博士』らしく、訪ねて来た悠太郎の顔を見ると、自分が知っている焼夷弾のウンチクを語り出しました。

「あの実験は若干間違うてる思うわ ~ どうせやるんやったら」

「分かった … 」


悠太郎はまだまだ延々と続きそうなふ久の話を止めました。

「 … 分かったから、腹さわってもええか?」

ふ久がうなずくと、悠太郎は恐る恐る大きくなった腹に手を当てました。

「おっ、動いた!」

「もう投げてるから」

「蹴ってんのかもしれへんで?」

「投げとる … 動きが違う」


父親譲りということでしょう。

「 … お前は見えへんもんを見ようとする子やて、お祖父ちゃんが言うとった。

その目で子供のええとこ、見つけてやるんやで」


… … … … …

夕食を済ませて、皆でくつろいでいる時、突然、悠太郎がめ以子に何か食べたいものがないかと尋ねました。

「私の食べたいもんですか?」

「考えたら、こんなゆっくりできるん、仕事決まるまでやし」


もっともらしい理由を聞いて、め以子は俄然ハリキリ始めました。

「ああ、伊佐屋のすっぽん食べてみたいですね ~ カラスミと菜っ葉の炊き合わせがたまらんて」

店自体が営業していないとお静に言われ、め以子は別の店を考えました。

「ああ、ほな、角万の魚すき、玉樹のハリハリも絶品や言うし … あっ、脇坂のビーフシチューもとろっとろや言うし … 」

きりがなく次から次へと出てきます。

「あんた、もの凄、溜めこんどったんやな?」

お静はあきれて笑っています。

「何やかんやでお金もなかったし、子供のことやらで忙しかったし … 気ついたら、ほとんどそういうとこ、行かんまんまでしたね」

悠太郎は、愚痴も言わず、家事をこなし、子供たちを育て上げため以子に感謝し、仕事にかまけて放っておいたことを今更ながら後悔していました。

「開いてるとこ探しましょ」

「ホンマですか?!」


飛び上がらんばかりに喜ぶめ以子。

「今から見つくろいましょ」

… … … … …

ふたりは早速、自分たちの部屋で、本やめ以子が新聞や雑誌の記事を切り抜いておいたスクラップブックを見ながら店を物色し始めました。

「ここはどやろ?」

め以子が開いた本のページを悠太郎に見せました。

「ああ、そこはもうやってませんね」

悠太郎は、その古ぼけた本に見覚えがありました。

『大阪料亭めぐり』

「この本、こっち来た時に持ってきはった本ですか?」

「 … 捨てられないんです」


め以子は照れくさそうにその本を抱きしめました。

そんな仕草を微笑ましく感じる悠太郎でした。

… … … … …

「お兄ちゃん、何やおかしないですか?」

希子は何となく今日の悠太郎に違和感を感じていたのです。

「いつものお兄ちゃんやったら、やっきになって職探しに突き進む思うんですよ」

「 … 確かになあ」


そう言われてみれば、お静もどこか腑に落ちない気がしました。

… … … … …

どうも心に引っかかるものがあった希子は、次の日、うま介で藤井から事実を聞き出しました。

「陸軍の軍属で満洲に行かされるて?!」

「僕の知り合いもがんばってくれてんけどな …

西門君の場合、公衆の面前でのことやったから、無罪放免いうんは、どないしても示しがつかな過ぎるいうことで … 」


面目なさそうな顔をしました。

「けど、何も満洲やのうても … もう無事にたどり着けるかどうかも分からん情勢 … 」

絶望感に苛まれ、言葉につまってしまった希子。

「最後は、皆の笑うた顔見て … 笑うた顔見せて行きたいて」

「 … いつなんですか、出るの?」


… … … … …

「 … 明後日?」

職場で希子からその話を聞いた啓司も余りにも急なことで同じように絶句してしまいました。

「そ、そういうことみたいで … 」

「何で言われへんの?」


誰もが抱く疑問でした。

「最後は楽しい思い出だけを残していきたいからって … 」

悠太郎はそれで満足であっても、め以子の気持を考えると複雑な思いの希子でした。

… … … … …

そんな話をしているところへ、何と当の悠太郎とめ以子が訪ねてきたのです。

「 … どないしたん?」

「料理屋どっこもやってへんかったから、希子の唄、聴きに行こかって」

「今日確か、歌う番組あるちゃうかったっけ?」


ふたりは希子と啓司の計らいで副調整室に入って歌を聴くことを許可されました。

ヘッドフォンから、希子が歌う『蘇州夜曲』が聞こえてきます。

… … … … …

君がみ胸に 抱かれて聞くは 夢の船唄 鳥の唄

水の蘇州の 花散る春を 惜しむか柳が すすり泣く


花をうかべて 流れる水の 明日の行方は 知らねども

こよい映した ふたりの姿 消えてくれるな いつまでも


髪に飾ろか 接吻しよか 君が手折りし 桃の花

涙ぐむよな おぼろの月に 鐘が鳴ります 寒山寺

(作詩:西条八十 作曲:服部良一)

… … … … …

「もの凄うよかったわ ~ 昔より上手になったんとちゃう?」

歌い終えて、ロビーに出て来た希子をめ以子は絶賛しました。

ふたりとも希子の唄に感動していたのです。

「もう ~ 何も出ませんよ!」

「希子の唄はええよ … 幸せな気持ちになれる」


悠太郎とめ以子はうなずき合いました。

「いつも正しい情報言うんは無理かもしれんけど、希子にはいつでも希望を与えられる武器があるんやな」

「 … 何も出えへんよ」


兄の言葉に今にも泣きだしそうな気持ちをぐっとこらえた希子でした。

「はな、また放送あるし、戻ろうか?」

それを察した啓司は希子のことをスタジオへ戻るよう促したのです。

「 … 啓司君」

スタジオに消えようとした啓司のことを悠太郎は呼び止めました。

「今日はありがとう。

… 希子を、よろしく」


… … … … …

帰り道、ポストの前に立ち止まった悠太郎は活男への手紙を投函しました。

その背中にめ以子は言いました。

「急がんでもええんとちゃいます ~ お仕事。

今まで、がんばって来たんやし … 少しはゆっくりしはっても」


おもむろに悠太郎の方から手を握るとめ以子は少女のような恥じらいを見せました。

「ええ歳して … 」

「ええ歳して、照れんでもええやないですか?」


そのまま手をつないで歩き出したふたりでした。

… … … … …

次の朝、小さな奇跡が起こりました。

鶏のタマコがもう産むはずのない卵を産んだのです。

「どうしますか?

この卵、どうしますか ~ 何が食べたいですか?」


茶の間に揃った家族にめ以子は、少し興奮気味に尋ねました。

「あの ~ ちい姉ちゃん、私ら今日、泊りになりそうだから … 」

「残念やけど、うちも ~ 置屋で昔なじみと集まりがあるやさかい … 」


最後の夜をふたりきりにさせようと、口裏を合わせたようです。

「 … そうなんですか?」

「おふたりでどうぞ」

「あ、そう? ええの、ええの ~ ホンマに?」


無邪気に喜んでいるめ以子とは裏腹に悠太郎は苦笑いしていました。

隠していたはずのことがめ以子以外には、すっかりバレていたからです。

め以子が台所へ立った後、夫婦水入らずの時間を用意してくれた家族に向かって頭を下げました。

< こうして、ふたりっきりの1日が始まったのでございます >

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2014年02月27日 (木) | 編集 |
第124回

「課長が逮捕されました!」

家の前でめ以子の帰りを待っていた中西は、開口一番にそう伝えました。

言っている意味がよく理解できないめ以子は中西を家に上げ、詳細を伺いました。

「 … 市役所の主催で防火演習をすることになって、西門課長はその担当をすることになったんです」

そして今日、軍と警察の視察の元、有志と共に防空演習が行われたのでした。

「最初は予定通り、演習が行われていたんですが … さて、水をかける段になって、課長が … 」

中西は、その後、少し迷ってから言いました。

「 … 燃えてるとこに、更にガソリンを撒きはじめたんです」

… … … … …

「空襲いうんはこんなもんやない!

焼夷弾が降ってくるいうんは、空から火ついたガソリンが降ってくるようなもんや!

消してなんかおられん!

命が惜しかったら、とにかく逃げろ!」

茫然と見ている訓練参加者たちに向かって、悠太郎は声を大にしました。

「街は人を守るためにあるんです!

街を守るために人が居るんやないんです!」

警官たちに取り押さえられ、連行されながらも悠太郎は叫びました。

「街を守るために命なんかかけるんは、道理が通らんのや!」

… … … … …

「 … 課長が言い出したんは、防空本部の通達とは正反対のことですから、その場で捕まってもうて … 」

「どないなるんですか?」


お静の質問に中西は、厳罰はまず免れないと苦しげに答えました。

… … … … …

話を黙って聞いていため以子が、突然立ち上がったかと思ったら、玄関に向かいました。

「ちょっと、あんた、あんた何処行くん?」

慌てて、め以子の腕をつかんだお静。

「悠太郎さん、何も間違うてないやないですか?

正しいこと教えようとしただけやないですか?

街の人の命、守ろうとしただけやないですか?」


外へ飛び出そうとするめ以子のことを中西もお静と一緒になって必死に押し留めました。

「捕まらなあかんようなこと、何もしてないやないですか?!」

… … … … …

その時、勝治が飛び込んで来たかと思ったら、開けっ放しになっていた玄関の戸を急いで閉めました。

「今は納めとき!

確かにあんたの言う通りやとは思う。

わし、そこの現場行っとったんや ~ 実際に燃えるん見て、西門さんの言うことが正しいんはよう分かった。

けど、今は納めとき。

… あんたまで連れて行かれたら、この家どないなるんや?」


め以子は勝治に諭されて、その場に座り込んでしまいました。

「火事でお母さん亡くして …

安全な街を作りたいて、それだけで生きて来たんです。

これも、安全のためやからて、今度は引き倒して … 身を粉にして、尽くしてきたんです … 」


悔し涙が溢れてきます。

「それの … それの何があかんのですか?」

… … … … …

人づてに悠太郎のことを知った源太は、希子と啓司に会いに大阪ラヂオ放送を訪ねていました。

そして、今のところ、ふたりまでは嫌疑がかかっていないことを確認したのです。

「ほな、泰介君やらふ久ちゃんも大丈夫か?」

「一応、連絡してみます … 」


身内の人間は動かない方がいいと、希子を制して、全て自分が引き受けると、急いで出かけていきました。

… … … … …

「何やってんねん?」

あちらこちら駆け回った源太が西門家を訪れると、懸命に手紙を書きしたためているめ以子がいました。

「嘆願してくれそうな人に手紙っ」

「もっとなんかないんか?

速いこと動いてくれそうなツテは?」


ことは緊急を要するのです … とても手紙などでは間に合いそうにありません。

「処分決まったら終わりやぞ!」

「知ってたら頼んでる!!」


百も承知のめ以子でしたが、これが今の自分が出来る最善のことなのです。

辺りを見回しまた源太は、ふと防空関係の本が目について、手に取りました。

パラパラとめくると、奥付の横に『藤井工務店蔵書』の判が押されています。

「こいつ、何でこんなもん持ってんねん?」

ハッとするめ以子。

… … … … …

藤井は軍の司令部に幼馴染がいると、悠太郎から聞いていたことを思い出しました。

わらにもすがる思いで出かけようとした時、偶然、藤井本人が顔を出したのです。

「 … 小麦粉持ってきたさかい、晩飯寄せてくれる?」

「藤井さん? … 藤井さん!!」


… … … … …

事情を聴いた藤井は、め以子を伴って、幼馴染の家へと出かけていきました。

「大丈夫かな … お兄ちゃん」

ふたりが出かけた後に戻って来た希子が、その話を聞いて不安そうにつぶやきました。

「藤井さんの幼馴染、司令部に居んのやろ?」

お静の言葉にうなずく源太。

「結構なエライさんやと思うで」

「けど … 何で、ちい姉ちゃんを連れていかはったんですか?」

「ああ、実はな … 」


お静はあごで台所を指しました。

何かをこしらえた名残がそのままになっていました。

… … … … …

藤井の幼馴染、里見は軍の司令部の幹部です。

「いや ~ こんな夜分に悪いな、さんちゃん」

いくら幼馴染といっても、突然の夜更けの訪問に里見は迷惑顔です。

「ホンマに何なんや?」

「まあ、取りあえず、これでも食べてや」


藤井が持参した手土産のカルメラを見せた途端、里見の目の色が変わりました。

「食べてええか?」

言うが早く手に取るとかぶりつきました。

「ようでけとんな ~ このカルメラ。

うちのお祖母ちゃん並みの腕前や」


里見が機嫌よくなったのを見計らって藤井は切り出しました。

「それでな、さんちゃん。

わしの部下がちょっと捕まってもうたんや」

「 … まさかあれか、市役所の?」

「せや」


すると里見の表情がまたもにわかに曇りました。

… … … … …

「あれは、あかん … いくら、こうちゃんの頼みでも … 」

そう言いながらもカルメラを食べるのは止めません。

藤井もここで引き下がる訳には行きません。

「西門君はな、昔、ミナミの大火でお母さんなくしとるんのや …

それでな、安全な街を造りたい … その一心で今までやって来たんや」


藤井は写真を取り出して里見に見せました。

「森花小学校やないか?」

「せや、ここ君の孫通うとたやろ?

震災の混乱なのかで、これ造ったん彼や」

そして、もう1枚、今度は地下鉄の駅舎の写真を見せながら言いました。

「これも全部、あいつがやった。

なあ、さんちゃん ~ こないにでける人間をやな、牢屋に入れとくんはもったいない思わないか?

やるとなったら、ごっつう頑丈なもんを造りよる。

恩に着せて、軍の施設でも何でも造らせたらええ」

「そんなん、軍に反抗しよるような奴に … 」

「あいつに思想性はないんや。

あいつにある思想は、建物は人を守るためにある … それだけなんや。

その立場になったら、最大限兵隊を守るためのもん造る思う」


話を聞きながら、カルメラを1つ平らげてしまった里見は、藤井の顔を覗き込みました。

「これ、全部ええんか?」

藤井はここぞとばかり切り札を切ったのでした。

「ちなみにな ~ この見事なカルメラ焼いたん、そいつの奥さんや。

… 挨拶ええか?」


間髪入れずに、襖を開けると … そこに控えていため以子は、里見に向かってひれ伏しました。

… … … … …

「ご所望であれば、何100回でも、何1000個でもそのカルメラお焼きします。

閣下のために一生作り続けることも厭いません。

ですから、何卒 … 何卒、寛大な処置をお見せくださいませ」


必死に訴え、畳に額をこすりつけんばかりに頭を下げました。

「あんな … 」

しばし黙って見ていた里見が口を開きました。

「 … ドーナットは作れるか?」

… … … … …

フラフラになっため以子が家に戻って来たのは、翌日の朝になってからのことでした。

玄関まで飛び出して来た皆も心配で一睡もできなかったのです。

「 … どうでした?」

め以子は、うなずきましたが、そのまま希子の腕の中に倒れ込んでしまったのでした。

… … … … …

「ほな、今まで延々甘いもん作ってたん?」

取りあえず、茶の間でひと息ついため以子は、ぐったりしながらも昨晩の出来事を話し始めました。

「ものすごい甘党の方で、お祖母ちゃんとの思い出のお菓子を延々と … 」

ため息をつく一同。

「けど、あるとこにはあるんですね ~ お砂糖」

希子の言葉でめ以子は思い出したように袖から新聞紙の包みを取り出しました。

開くとそこに入っていたのは、砂糖でした。

「あんまり腹立ったんで … いただいて来ちゃいました」

そう言いながら、反対側の袖や懐からも同じような包みを何個か取り出して見せました。

「こ、こんなことして、大丈夫なん? あんた」

慌てるお静、め以子まで窃盗罪で捕まったら、元も子もありません。

「これで、ばれるような量、ちゃいましたから … 」

さすが、転んでもただでは起きないというか … 皆は感心するやら、あきれるやら。

「けど、そんなんやったら … 大丈夫なんですよね?」

啓司が肝心なことをめ以子に確認しました。

「まあ、大丈夫と … 思いたい … けど … 」

限界だったのか、そのままちゃぶ台に突っ伏して眠ってしまいました。

自分が今できることは全てやりつくしため以子、後はよい結果が出ることを祈って待つだけでした。

… … … … …

それから数日が経ちました。

その日、め以子は子供たちに里見の家から失敬してきた砂糖で作ったアメを振舞っていました。

大喜びの子供たち。

「おばちゃん、どないしたん? このお砂糖 … 」

め以子は慌てて、その少年の口をふさぎました。

「し~やで、絶対し~やで。

言うたら次から出て来んようなるからな」


きつく口止めすると子供たちは素直にうなずきました。

… … … … …

「僕らにもいただけますか?」

ずっと待ちわびていたその声に振り向いため以子。

台所の入口に藤井に連れられた悠太郎が立っていたのです。

「 … ホンマにすいませんでした」

言い終わるのも待たずにめ以子は悠太郎のことを突き飛ばしていました。

「皆が … 皆がどれだけ心配したと思うてるんですか?!

後先考えんと、これがええ歳した大人のやることですか?!」


涙をボロボロ流しながら、悠太郎を責めるめ以子。

口を真一文字に結んで、見上げる悠太郎には返す言葉がありません。

「あなたを頼りにしてる家族のことを何も考えてませんよね?

考えてたら、こんなことできませんよね?」

「ホンマに … 」


悠太郎が重ねて詫びようとした、その瞬間、め以子が胸に飛び込んできたのです。

「せやけど … 立派でした。

立派なお仕事でした」


悠太郎もまた、め以子のことを抱きしめ返していました。

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2014年02月26日 (水) | 編集 |
第123回

出征した活男から、はじめて届いた1枚の葉書。

「活っちゃん … 」

家に入るのも待ちきれず読み始めため以子の顔に笑みが広がりました。

… … … … …

『父上様、母上様、お変わりありませんか。

私は無事訓練を終了し、実戦部隊に配属される運びとなりました。

念願の主計兵となり、調理の腕も褒められて張り切っております。

奮励努力いたします。

どうかお身体くれぐれも大切になさって下さい。

呉鎮守府 海軍一等主計兵 西門活男』

家族が集まった板の間で希子が葉書を読み上げると、お静の顔にも安堵の色が見えました。

「よかったな ~ 取りあえず、行きたいとこ行けて」

「行った甲斐、ありましたね」


希子の言葉にめ以子はうなずきました。

「そうですよね ~ 」

め以子は悠太郎の顔を見ましたが、何かを考えているのか、目を閉じたままです。

「 … 悠太郎さん?」

「ああ … もちろんです。

取りあえず、よかったですよ … 」


力なく笑うと、2階へ上がって行ってしまいました。

… … … … …

部屋に戻った悠太郎は、昔、正蔵からもらった手紙を出して読み返していました。

『 … 子供に輝く未来と豊かな誇りを与える人であってください』

最後の一節、手紙はそう締めてあります。

しばらくすると、め以子が部屋へ入って来ました。

「悠太郎さん、お仕事今何やってはるんですか?」

悠太郎の態度がおかしいと、不審に思って、上がって来たのです。

「ええですよ … 気い使わんで … 」

「言うてくださいよ ~ 言うたかて、どうにもならんでしょうけど …

何かあったんでしょ?」


… … … … …

「自分が何をやってるんやろって気になるんですよ。

僕は結局、何も守れてないような気がします … 子供たちの夢や未来や … 」


漠然とした不安を口にしました。

「せやかて、街はちゃんと守ってはるやないですか?

心を鬼にして、引き倒しやって … そんなん誰にでも出来ることちゃう思いますよ。

私も子供らも、お父さん居らんと食べていかれへんし … 」

「 … おおきに」


… … … … …

< 気弱になっちゃってね ~ よっぽど、参ってるんだろうね

元気の出るものでも、作ってあげたいけど … 材料がね ~ >

「何かなかったっけな … 」

め以子は台所を見渡しました。

そして、水屋箪笥の戸棚から袋を取り出すと、それをじっと見つめました。

… … … … …

次の朝、西門家の食卓には久しぶりに米の飯が並びました。

といっても、雑炊の様なものですが …

「へえ、お米の配給あったんですか?」

珍しそうに尋ねる希子。

「 … 非常用の煎り米、使うてしまいました」

あっけらかんとめ以子。

「大丈夫なんかいな?」

あんぐりと口を開けているお静。

「あんまり先のことばっかり考えても … ねえ?」

希子は相槌をうちました。

「これどうやって作るんですか?」

悠太郎も興味を持ったのか、普段は聞かないようなことを聞いてきました。

「ああ、煎り米を少しの水で煮てね、昆布とお茶で出汁取って … まあ、何もなくとも、何とか出来るもんですよ」

「 … 何かしら出来るもんなんですね」


め以子の言葉に何かを感じたのか、悠太郎は確かめるように口にしました。

「何かしら出来るもんなんですよ」

… … … … …

「ああ、やっぱり米はええですね ~ 美味しいです」

雑炊をかっ込んだ悠太郎が満足そうな顔をしました。

少しでも元気を取り戻してくれたのなら、なけなしの煎り米を使った甲斐があったというものです。

… … … … …

しかし、そんな悠太郎にまた新たな難問が降りかかって来たのでした。

恩田に呼び出された悠太郎は、突然、信じられないような指示を受けたのです。

「実はな、上から話があって … 疎開区域を変更してほしいんや」

「えっ?」

「ここの一角を保全してほしいねんて」


恩田が地図を指さした場所は建物疎開を進めている区域の中央にありました。

「それは無理ですよ!

ここの一角は、この通りからの消防通路を作るべく疎開させている訳ですから … ここだけ止めるやなんて」

「別のとこから、通路引っ張ってきたらええんとちゃうんか?」


いともたやすく出来ることのように言いました。

「いやいや、勘弁してくださいよ ~

そんなことしたら、引き倒しの数、更に増えてまうやないですか?!」


すると、恩田は苦笑いしながら、声を潜めて言いました。

「どうもな、ここな、議員さんの親戚の家作があるみたいでな … 」

悠太郎は我が耳を疑いました。

一個人の利益のために計画を変更させようとする者がいること、それを飲んでしまう組織 … 街の安全と人命、最優先されるべきことが、ないがしろにされようとしているのです。

「子供いれなあかんくらいに人足りひんのですよ …

昨夜の事故のことお伝えしましたよね?!」


悠太郎は思わず声を大にして立ち上がりました。

「吠えたかて、わしらには何の決定権もないんや …

骨折り損のくたびれ儲けいうことぐらい分かるやろ?」


恩田は宥めながら、悠太郎を座らせました。

「やれ言われたら、やるしかないんや ~ しゃあないんや」

その時です。

「総務局長!」

職員がひとり、慌てて部屋に飛び込んできました。

「東京にB29が来襲したそうです!」

「何やて?!」

「空襲が始まりました … 武蔵野の飛行機工場やそうです!」


恐れていたことがついに現実となったのです。

… … … … …

『本11月24日12時過ぎより約2時間に渡り、敵機70機内外数梯団となり、帝都付近に侵入せり … 』

夕食時のラジオが、東京に於ける空襲の詳細を伝えています。

「なあ、空襲されたんは軍事工場やて言うから、大丈夫やと思うねんけど … 東京のお父はんらどうしてはんの?」

お静がめ以子に遠慮がちに尋ねました。

「 … 疎開はしてないです。

あの性格ですから、お父ちゃんは疎開はしないと思います」


め以子自身も安否を確認する術はなく、無事を祈るだけなのでした。

「まあ、せやけどな … 空襲って、言うほど怖いもんでもないいうしな」

「そうですよね … ちゃんと、防空すれば … ねえ?」


巷に広まっている噂でしたが、気休めでもいいから信じたいめ以子でした。

「 … 火事って、頭で考えるよりも惨たらしいもんですよ」

朝の様子とは一転して、暗い表情の悠太郎がそう言うと、希子も顔を強張らせてうなずきました。

そうです … このふたりは、幼い頃、火事で母親を亡くしていたのです。

… … … … …

火災現場の光景が今も目に焼き付いていました。

母の遺体にかけられた布をめくった時の衝撃 … 悠太郎はそこに横たわっているのが、自分の母親だとはどうしても信じられなかったのです。

「希子、これお母ちゃんなんか?

… お母ちゃんなんか?」

年端のいかない希子は悠太郎の腕につかまって、ただ泣きじゃくるだけでした …

… … … … …

その夜、悠太郎は恐ろしい夢を見ました。

自宅が空襲に見舞われ、め以子とふ久が命を落としてしまった夢でした。

ふたりの名を呼びながら泣き叫ぶ悠太郎の前に正蔵が現れたのです。

「お前、言うたやないか ~

わしが壊して回った分、守って回るて … 俺が守って回る、言うたやないか?」

… … … … …

「わっ!!」

飛び起きる悠太郎。

「悠太郎さん、大丈夫?」

隣に寝ていため以子が、心配して声をかけると …

乱れた呼吸、怯えた顔の悠太郎は、め以子の手を握り締めました。

その上に手を重ねため以子。

「 … 夢を見てました」

悠太郎は「少し風に当たってくる」と言い、部屋を出て行ってしまいました。

… … … … …

不安になっため以子がそっと様子を窺うと、悠太郎は縁側にぼんやりと座っていました。

< その日から、悠太郎は考え込むことが多くなり …

軍事関係の資料を貪り読むようになりました >

… … … … …

そして、悠太郎が取った行動は …

「屋根に水をかけているだけでは、ホンマの火事場になったら、腰が引けてしまう可能性がある思うんです。

疎開地の中に建物の島を残して、実際に火をつけて、防空演習してみるいうんはいかがでしょうか?」


企画書を書き、恩田に提案したのです。

「ええよ、これ! これはええよ、西門君」

手放しで許可しました。

… … … … …

数日後、疎開する室井と桜子たちのためにささやかな送別会がうま介で開かれました。

「え、これ全部いいの?」

「うん、よかったらもらって」


桜子は自分たちが配給されていたものや疎開先に持って行かないものを全て置き土産としてめ以子に残してくれたのです。

「浴衣もいいの?」

「うん、孫のおむつでも縫ってあげてよ」

「ありがとう」


箱の中には、煎り米に砂糖 … めいこは大感激です。

「心の友よ ~ 」

… … … … …

今夜は悠太郎も顔を出していますが、浮かない顔でひとり酒をあおっています。

「何かあったんか?

… 空くの速いがな」


悠太郎の空の盃に源太が酒を注ぎました。

「おおきに …

昔、親父に手紙もろうたことがあるんです。

子供たちに輝く未来と豊かな誇りを与える大人になれって … 普通にまともにやっとたら、自ずとそうなるもんやろて、思ってたんですけど …

うちの子らの青春は、僕らの頃からは考えられんくらい不自由でした。

… こんな世の中にしてしまったのは、僕らなんですよね」


… … … … … 

< そして、ついに防空演習の日を迎えたのでございます >

め以子は桜子たちが疎開した後のうま介に手伝いに訪れていました。

「とにかく、何かおかしいんですよ」

悠太郎の様子が変なのは確かなことでした。

「どのへんが?」

「何かこう … ちょっと、遠い感じがするいうか … 」


ただそれを、口ではうまく説明できないのです。

… … … … …

その頃、悠太郎は防火改修課の部屋で思いつめたような顔で

「西門課長、皆さん揃いましたけど」

防災改修課の部屋で待っていた悠太郎を中西が呼びにやって来ました。

今日の防空演習には、実際に火をつけて消火するという大がかりな物なので、市役所の幹部の他に軍の関係者も視察に足を運んで来たのです。

「 … 今行きます」

悠太郎は深いため息をひとつつき、部屋を出て行きました。

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2014年02月25日 (火) | 編集 |
第122回

め以子とお静が和枝の嫁ぎ先を訪れると、屋敷の前には長い行列が出来ていました。

皆、それぞれ手には着物や美術品など金目のものを手にしています。

ここで食料と交換してもらうためにやって来た買い出しの人たちでした。

「次の方 ~ 」

並んでいる人々は、和枝の前にひとりずつ順番に通され、持参したものを値踏みされるのです。

庭に面した縁側に猫を抱いて座っている和枝。

交換の相場は、和枝の言うがままでした。

ほんの少しの傷や日焼けなども見逃さず、元々少ない取り分の中からでも、きちんと差っ引く細かさ。

気に入らないものは取り合わず、贋作なども見抜く目も肥えていました。

どんなに不公平な条件でも、皆涙を飲んで、和枝から与えられた食料を手に帰っていきました。

… … … … …

そんな和江の前に糠床を差し出す者がいました。

顔を上げると、そこに立っていたのは、め以子とお静でした。

「 … お久しぶりでございます」

目をそらしながら頭を下げため以子。

「どちらさんでっか?」

和枝は冷たく言い放ちましたが、お静は愛想よく答えました。

「可愛い可愛い義妹と、あんたのお義母さんやないの ~ 」

「お引き取り願いますか … 」

「ほな、お邪魔しますわな」


お構いなしに和枝の横をすり抜けて家に上がっていくお静。

め以子もその後に続きました。

… … … … …

ふたりが通された座敷には、山積みの着物や、壺や掛け軸などの美術品が所狭しと置かれています。

和枝が食料と引き換えにせしめたものでした。

「何やこれ?」

ふたりが面食らっていると、突然、和枝が現れました。

「買い出しの足元を見て、またえらいこと集めはったな ~

よっぽど、ごうつくなことしてはんのやろな ~

相変わらず、考えが透けて見えまんな」

「 … そんなこと思ってませんよ」


猫を抱いたまま、上座に座った和枝。

「まあ、きれいな猫やね ~ 」

「米の替りに置いていかはる人いましてな」

「かいらしくて、よう似合うてる ~ 和枝ちゃんに」

「皆さん、そう言わはりましてな … 寂しい婆さんに猫はよう似合いはりますな ~ って」


猫の背中を撫でながら言いました。

「 … 寂しいやなんて、失礼やな ~

ご両親看取って、旦さん看取って、子供一人前にして … 和枝ちゃんは寂しいんやのうて、立派っ!」

「上手いこと、家乗っ取ったって言わはる人もいはりますけどな」


言うことすべて嫌味で返されて、お静は二の句が継げません。

… … … … …

「あ、あの … 実は、ふ久にややこがでけたんです」

め以子は思い切って切り出しました。

「ふく?」

「悠太郎さんの娘です … お義姉さんの姪っこです」

「はあ ~ ほんなん居りましたかいな?」

「何や、もうボケたんか?」


め以子は、お静を諌めると、本題に入りました。

「それで、その … ふ久の疎開を受け入れていただけないかと … 」

「ふ久だけな、うちはええで」


和枝と会ってお静は気が変わったようです。

「もちろん、タダやなんて言いません ~

お金もきちんと入れますし、これ、手始めにお持ちして … 」


め以子が持参した着物を差し出そうとすると、お静が慌てて引っ込めました。

「ええんちゃう?

こんなん、ぎょうさん持ってはるみたいやし … 」

「ああ、いらんわ ~ そんなボロ」

「 … こんな、かいらしい色、どないしたかて似合わへんもんな」

「お義母さんっ」


このふたりは丸くなったどころか、まったく昔のままでした。

この上、ケンカにでもなって、和枝にへそを曲げられたら元も子もありません。

… … … … …

「 … それで、あのお義姉さん」

「受け入れてあげてもええで ~ 」


頼みに来たというのにおかしな話ですが、め以子にしてみれば意外な返答でした。

こんなにあっさりと受け入れてくれるとは思っていなかったのです。

「ホンマですか?」

思わず身を乗り出しため以子。

「西門の子やない ~ わてにかて、そら情はあるわ」

「お義姉さん … 」


感激しているめ以子でしたが、話には続きがあったのです。

「ただし … ひとつ条件がおます」

「何ですか?

… 何でも言うて下さい」

「西門の家の権利を … わてに渡すことだす」


… … … … …

和枝は、いけしゃあしゃあと言ってのけました。

「そんなこと出来る訳ないやないですか!」

いくら、ふ久のためとはいえ、まったく別の次元の問題でした。

「う、うちら、住むとこなくなるやないの?!」

食って掛かるお静に和枝は涼しい顔で答えました。

「貸したげますがな ~ 」

「何で、うちらが、うちらの家で店子にならんとあかんの?!」

「お嫌なら、無理にとは言わしまへんけど ~ 」


受け入れることができないと分かっている上でのいけずでした。

… … … … …

「あ、どないしましょ、そのお着物?

親戚のよしみで、米かなんかに換えたげましょうか?」

「いらん!」「はい」

「 … 換えてもらいましょうよ、お米ですよ、お米!」

「あんた、これ、米何俵買える思うてんの?」


言い合っているふたりを横目に、和枝は席を立ってしまいました。

「決まったら、声かけておくれやす」

庭には買い出しの人の列が待っているのでしょう。

「ドブに捨てるようなもんやで ~ これぽっちにしかならへんで!」

「せっかく来たのに!」

「あかんあかんあかん!」


… … … … …

「防空演習、お断りしたいんですけど」

悠太郎は、総務局長の恩田に昨日言い渡された民間への防空指導の断りを入れていました。

「何でや?」

「建物疎開で手一杯ですし … 軍事的に正しい知識を仕入れる暇もありませんし」


引き受ける以上は、いい加減なことはしたくない悠太郎でした。

「そんなこと言わんと、頼みますよ ~

君の働きは上も評価してるんやさかい … あないに問答無用に引き倒しでける男はおらん … 街の安全を守りたいいうのは、伊達やないて!」


恩田は悠太郎の肩を叩くとサッサと行ってしまいました。

… … … … …

「よお!」

足取りも重く防火改修課の部屋へ戻った悠太郎を出迎えたのは、藤井の人懐っこい笑顔でした。

「西門君 … あれ、何かちょっと、小さなった?」

勝手に自分の席に座っている藤井を見て、イラッと来た悠太郎。

「忙しいんです … 何のご用ですか?」

あからさまに嫌な顔をして見せました。

「ちょっと、大事な話があるんやけど …

今日、君んとこお邪魔してもええか?」

「えっ?」

「芋も持ってきたさかい … 」


そう言うと、割と立派なサツマイモを手渡しました。

… … … … …

「お芋だらけやけど、美味しそうですね」

その夜の西門家の食卓には、藤井の芋を使った料理が並びました。

「ありがとうございます」

め以子は藤井に笑顔で礼を言った後、お静のことをキッとにらみました。

「しつこいな ~ あんた、まだ怒ってるん?」

「せっかく行ったのに、手ぶらで帰って来てん … 」


結局、お静が譲らなかったので、あきらめて帰ってきた訳です。

「ふ久の疎開のためや、言うから出したんや!

食べ物に換えられて、たまるかいな ~ 」

「もう着てくとこもないのに」

「戦争終わったら、パ~っと着るんです!」

「 … それまで生きてはるんですかね?」


め以子も中々言うようになっていました。

… … … … …

「いや ~ 君んち、相変わらずやね ~ 」

ふたりのやり取りを見ていた藤井がうれしそうに悠太郎に言いました。

「 … 今日は、たまたまですよ」

「今日、どっか行きはったんですか?」


お静は、今日の和枝の家での出来事を藤井に話しました。

「うちの孫が腹ボテでしてな ~ 疎開頼みに和枝んとこ行ったんです。

ほしたら、家屋敷寄こせ言われましてん」


天を仰いだ悠太郎。

「はあ ~ 相変わらず、大胆ないけずですね ~ 」

… … … … …

そして、藤井の『大事な話』というのは …

「こちらです」

め以子が糠床のツボを目の前に置くと、藤井はまるで昔の恋人と再会したように話しかけました。

「何や、えらい小さなってしもうて … 」

藤井に預かってもらった頃に比べたら、ひと回りもふた回りも小さなツボになっていました。

< もう、私もいい年ですからね … >

「ちゃんと食べるもん食べとるか?」

< 自然と食も細くなりますから、大丈夫ですよ >

「奥さん、これ『べにこ』に」

< トラですよ >

藤井がめ以子に渡した紙袋には米糠が入っていました。

「べにこに糠足したってください」

「おおきに ~ 」

「それから、これも … 」


それは、新聞紙に包まれた野菜でした。

「こんなんも、食わしたってください」

め以子は礼を言いながら、ふと思いつきました。

「糠床、お分けしましょうか?」

「えっ?」


何故だか藤井は戸惑いの表情を見せました。

「おうちにもおありでしょうから、よろしければですけど … 」

「この時局に僕は守り切れるんでしょうか?

べにこさんを … 」


嫁にでももらうかのような口ぶりです。

「藤井さんも … 食べもんの声、聞こえたりします?」

もしかして、同類かと思って尋ねため以子ですが、べにこ(?)を分けてもらえる喜びで悦に入っている藤井は気づきませんでした。

… … … … …

「そんな少しでええんですか?」

藤井を見送りに外に出た悠太郎は、僅かばかりの糠床が入った小さなツボを両手のひらで包むように持っている藤井に聞きました。

「僕も今、ひとり暮らしやしな … 」

「そうなんですか?」

「息子は東京に赴任しとるし、女房と嫁は孫連れて疎開しよったし …

居らんと寂しいもんで、何や君んとこの嫁姑戦争見てたら、懐かしゅうて涙出そうなったわ」


悠太郎は、昔の嫁小姑戦争に比べたら、可愛いものだと思って、顔をほころばせました。

「あっ、あの … 藤井さんの会社て、軍の仕事請け負うてはりますよね?」

「ああ、幼馴染が司令部におってな ~ 」

「軍事関係の資料とか手元に揃うてたりしますか?

焼夷弾のこととか詳しく書いてあるような … 」


藤井の顔が少し強張りました。

「 … 何でやの?」

「今度、民間の防空指導することになって … 本格的に勉強を」

「勉強すんの、わざわざ? … あんまり、無理しなや」


うなずいた悠太郎。

「しかし、君 … 今だに若者みたいだな ~ 」

… … … … …

「結局、どないしますか?」

家の中に戻って来た悠太郎は、め以子に尋ねました。

「ふ久ですか?」

「 … 何やったら、僕が話ししに行きましょうか?」


自分が行けば、姉もさすがに家屋敷を寄こせとまでは言わないだろうと悠太郎は思っていました。

「そんな暇ないやないですか?」

め以子は藤井からもらった糠を糠床に混ぜながら答えました。

「何とか、1日ぐらい都合しますよ」

妊娠中の娘のことです。何事にも代えられません。

「 … 私が何とかしますよ。

ひとつ手を思いついたんで」


… … … … …

次の日、め以子は、父親の別荘に家族で疎開することに決まった桜子に相談しました。

ふ久とお静を一緒に預かってくれないかということを。

「うん、お父様に頼んでみる」

桜子は快く引き受けてくれたのです。

「ごめんね ~ 本当にごめんね」

何度も何度も頭を下げるめ以子に桜子は言いました。

「何言ってんの?

駆け落ちしてきた時、め以子が助けてくれなかったら、今の私はなかったわよ …

今度は私の番じゃない?」

「ありがとう、桜子」


情けは人の為ならず … 持つべきものは親友です。

「けど … 少しだけ待ってもらってもい?

戻って、お父様のご機嫌取ってからの方が、上手く事が運ぶと思うのよ」

「もちろん ~ 本当にありがとうね」


桜子は、め以子も来られないのかと尋ねました。

「私の疎開は認めてもらうの難しいだろうし … 寄ってくる子供らにおやつもあげないといけないし」

「『ごちそうさん』も大変だね」

「あげるってほど、あげられてないのよ … 」


寂しそうな顔をしため以子でした。

… … … … …

藤井に無理を言って入手した軍事資料を持って、悠太郎が防災改修課の部屋に戻ると、中西達が難しい顔を突き合わせていました。

「課長 … 」

「何かあったんですか?」

「引き倒しの現場で … 死者が出ました」

「死者って?」


中西の話によると …

人手が足らなくて頼んでいた学徒動員の中学生の少年が、引き倒す家の台所に忍び込んで食べ物を物色していたらしいのです。

「声かけたんですけど、返事はないし … こっちは、気づかんと、そのまま引き倒してしもうて … 」

… … … … …

防災改修課の責任者である悠太郎は中西達を伴って、死亡した少年の家を訪れました。

「申し訳ありませんでした」

少年の亡骸の横に茫然と座り込んでいる母親は、すすり泣きながら小さな声で話し始めました。

「 … 泥棒なんか、する子やなかったんです。

優しい子で、亡くなったうちの人も、よう可愛がってくれたんですよ。

乳が、私が乳が出ん言うたから … 」


母親の腕の中には、乳飲み子が抱かれていました。

この赤ん坊のために、母に食べさせるものを探していたのかも知れません。

「情けないです … 何で、こんな情けない死に方せんとあかんのですか?

この子は何のために生まれて来たんですか?」


母親は決して悠太郎たちだけを責めている訳ではなかったのでしょうが、その言葉は深く胸をえぐりました。

歯を食いしばって聞いていた悠太郎は、今一度深く頭を下げたのです。

「申し訳 … ございませんでした」

… … … … …

め以子が畑仕事を終えて家の前まで帰ってきた時、女性郵便配達員に呼び止められました。

「軍事郵便です」

# 軍事郵便とは、兵士が駐屯地などから、その家族や近親者などに宛てて出す私信のことです。

め以子が受け取った葉書の差出人は …

「 … 活っちゃん」

出征した活男から始めて届いた葉書でした。

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2014年02月24日 (月) | 編集 |
第121回

昭和19(1944)年秋。

< いきなりでございますが、当時の市民には防空義務というものがございました >

戦争は1日1日と激しくなって、敵の空襲もいよいよ現実味を帯びてきていました。

『 … 爆弾というものは、それほど当たるものではありませんし、むしろ防空活動を疎かにして、街を焼けるに任せることの方が恐ろしい … 敵の思う壺ですから』

しかし、ラジオでは識者が『空襲は、さほど恐ろしいものではない』といかにもしたり顔で話しています。

< 要するに、空襲時には、市民が一丸となって、まず街の火消しに当たれ … >

… … … … …

< 一方で、建物を疎開する作業も続けられておりました。

空襲の被害を少しでも軽くするためです >

「空襲の際の延焼を防ぐためには、空地を設けることが必要不可欠となります。

皆さんの安全を守るためです!

お国の勝利のためにも、何卒ご理解とご協力をお願いします」


市民の協力を得ながら建物疎開を進めている悠太郎でしたが、中には頑として指示を受け入れない者も少なくはありませんでした。

「わしはな、誰が何と言おうと、絶対立ち退かん言うとるやろ!」

しがみついてくる老人に悠太郎は冷たく言い放ちました。

「結構です。

どうしても立ち退かないとあらば、あなたごと引き倒すまでです」


そして、作業員たちに解体開始の合図を出しました。

< その迷いのないやり口に悠太郎は『疎開の鬼』と異名をとっておりました >

… … … … …

「はい、お弁当」

「今日なんですか?」


いつもの朝のやりとりですが、どこか大儀な感じで悠太郎は返しました。

「な~んでしょう?」

「 … もう、おむすびでもないですし … 」


西門家の食糧事情も御多分に漏れず、更に悪化していました。

「ああ … 旦那、それを言ったら、お終いやないですか ~ 」

め以子は茶化しましたが、悠太郎はニコリともせずにうなずくと、ため息をひとつついて出かけていきました。

「疲れてるな … 」

… … … … …

裏庭ではお静が洗濯物を干していました。

昔は火事には一切、手を出さなかったのですが、最近は何やかんや手を貸してくれるのです。

「まあ、仕事がきついんやろ ~

何ぼ安全のためやかて、人様の家引き倒すんは、気持ちええもんちゃうやろし」


お静の言うように悠太郎はまさに精神的疲労の方が大きいのでしょう。

「夜ももの凄う遅いですもんね … 食事ももう少しがんばってあげたいんやけどな」

「この子、卵産まんようなったな ~ 」


め以子がエサをやっている鶏のタマコをまじまじと見つめて言いました。

「まあ、そんなに長うは生まれへんよって、言われてはいたんですけれど … 」

# このままだと、タマコの運命は鍋の具でしょうか?

「あ、今日、畑の後、うま介手伝いに行ってきますね」

「エライ人気らしいな ~ あんなもんが … 」


… … … … …

お静が『あんなもん』と顔をしかめたものとは …

最近、室井が摘んでくる雑草をすり潰してジュースにしたものをメニューに加えたところ、何故かしら好評で、それを目当ての客が訪れるようになっていたのでした。

「せやけど、体にええんよね ~ これ」

「わて、肌がつるつるしてきた気がすんねん … 」


タネとトミもこのジュースを愛飲しているのです。

話の種にと、飲みに来た源太と銀次が、ひと口飲んで顔をしかめているように決して美味いものではなく、健康や美容にいいというのも眉唾物でした。

「けど、何であんな名前になったんや?」

『よしだ汁』という名前に銀次が首をひねりました。

「ああ、あの … 確か … 何やった?」

すると、命名者である室井が得意げに話し始めました。

「いや ~ これね、材料がその時ある野生の草やら葉っぱやらでしょ?

つまり、徒然の草 … 徒然草!

『徒然草』といえば … そう、吉田兼好!

もう、『よしだ汁』以外にないでしょ!」


かなり強引で独りよがりな命名でした。

「『徒然草』でよかったんちゃうか?」

銀次の言葉に皆はうなずきました。

「ねえ ~ 桜子がよう許したわよね」

… … … … …

「ごめんごめん、遅くなっちゃって ~ ありがとう、め以子」

そこへ、桜子が慌ただしく帰って来ました。

出かける用事があると言うので、め以子は店を手伝いに来ていたのです。

「何処へ行ってたの?」

「実はね … 」


改まって桜子が口にしたこととは …

… … … … …

「引き倒しても、引き倒しても、終わりませんな ~ 」

部下の中西が嘆いたように、建物疎開は終わることなく次から次へと対象を追加していたのです。

「空襲来んでも、街無くなりそうですよね … 」

「ほんまですわ」


疎開が終わった区画を赤で塗りつぶしている悠太郎の言葉通り、冗談でなくそのうちに本当に地図が真っ赤になりそうな勢いです。

「西門君、ちょっとええかな?」

部屋に入ってきたのは、総務局長の恩田でした。

「実はな、防火改修課の方でも民間の防空指導に当たってくれへんかって、上の方から要請が来てるんだ」

「防空指導て?」

「要は建物から火が出た時、怖がらんと消火できるように指導しろいうこっちゃ」


そんなことは悠太郎にも分かりますが、指導に当たるような人員は防災改修課にはいないのです。

「まあまあ、これ読んでちゃっちゃと済ましたらそれでええから」

恩田はお構いなしに、『時局防空必携』という本を置いて出て行ってしまいました。

「ちゃっちゃとて … 」

悠太郎はめまいがして椅子に座り込んでしまいました。

… … … … …

すると、恩田と入れ替わりにひとりの男が入って来ました。

「防火改修課いうんはここか?!」

5月に建物疎開に協力したというその男、今度はその移転先が『防空陣地』に指定されると言われたと、応対に出た中西に怒り心頭で食って掛かりました。

「どないなってんねん、どないなってんねん?!」

ただただ頭を下げる中西と悠太郎は代わりました。

「疎開地域の策定は内務省の管轄で、私共に権限はないので、そちらへ行っていただけますでしょうか?

… 以上、ご質問は?」


感情を殺して、事務的に対応すると、男は悔しそうに歯ぎしりしながら出て行きました。

… … … … …

西門家の夕食。

子供達が居なくなって、大人だけの味気ない食卓。

加えて、外で働いている3人は仕事の疲れで余り口もきかずにただ黙々と食べているだけです。

「これ、カボチャの種煎ってすり潰してみたんです ~ ゴマみたいでしょ?

カボチャは、わたも種も茎も捨てるとこないから助かります」


そんなめ以子の話にも力なくうなずくだけの悠太郎です。

「悠太郎さんも、活っちゃんの無事を祈って、活っちゃんの分も召し上がってくださいね」

活男のために用意した影膳を勧めました。

「大丈夫かいな ~ 悠太郎さん?」

余りにも疲れている様子に見かねたお静が声をかけました。

「 … 啓司君ほどじゃないですよ」

警戒警報を出す担当になってしまった啓司は、今日は帰っていますが、ここのところ泊り込ばかりなのです。

「なんやもう皆ぐったりやな ~ 」

「ああ、あの、そういえば … 」


め以子は昼間、桜子から聞いた話を思い出しました。

「 … 桜子のとこ、疎開が認められたらしいんです」

「えっ、よう認めてもらえたな?」

「お父様が上手いこと計らってくれはったみたで … 」


駆け落ちして以来、絶縁状態だったのですが、この事態に、一家まとめて別荘地へ呼んでくれたのです。

「まあ、何はともあれ … よかったですよね」

親友がようやく親と和解できたことにめ以子は少しウルッと来ていますが、反応してくれたのはお静だけでした。

… … … … …

「空襲は恐るるに足りません。防空壕に一時避難したら、すばやく消火活動にいそしむこと … 」

寝所で『時局防空必携』の一節を悠太郎が声に出して読んだのを耳にしため以子。

「世間では、そう言う風に言われてますけどね ~ 爆弾は思うほど当たらんもんとか」

「当たらん訳ないでしょ!」


しかし、ラジオでもそう言っているのをめ以子は聞きました。

「とにかく怖がるほどのもんやないって言われてるんです。

悠太郎さんから前聞いたのとは感じが随分違ういうか … 」

「ええ加減なことを …

信じたらあきませんよっ!」


声を荒げてしまってから、悠太郎はハッとしました。

別にめ以子に腹を立てている訳ではないのです。

… … … … …

「 … せや、あれどないなったんですか?

ふ久の疎開先、結局どないなったんですか?」

「ああ、今、諸岡さんとこが受け入れ先探してくれてはりますけど … 」


諸岡が出征した後、ふ久は諸岡の両親と暮らしていました。

「どうにもならんかったら、姉さんとこっていうのは … あり得ないですかね?」

考え込むめ以子 … 昔、嫁ぎ先を一度訪ねた時の、鎌を持った和枝の顔が浮かび上がりました。

「う ~ ん … 」

「 … ないですよね?」


め以子の様子を見て悠太郎は前言を取り消しました。

「すいません … 」

「いや、あ … お義姉さん、昔よりは丸なってはる気はしますけど … 行くのはふ久ですからね。

ちょっと、どうなることか … 怖いゆうか … 」


それは悠太郎も同感でした。

… … … … …

何故、ふ久の疎開先を探しているのかというと … それは、ふ久が諸岡の子を身ごもっているからでした。

妊婦も疎開することを認められているのです。

次の日、め以子は諸岡家を訪ねました。

ふ久の腹は大分目立つようになっています。

「どや、具合?」

「うん、普通」


諸岡の母キヨがお茶を持ってくると、ふ久はめ以子に「ほな、ごゆっくり」とひと言、部屋を出て行ってしまいました。

「もう、ありがとうて ~

ふ久さんに工場の経理やら帳簿やら、手伝うてもろうてるんです。

機械の故障も直してくれますし … うちの人もう『三国一の嫁や!』って」


嫁ぎ先の両親に気に入られているようで、それを一番心配していため以子は安堵しました。

「あ、疎開の話ですよね?」

何でも決まりかけていたのだが、ふ久が別の妊婦に譲ってしまったのだとキヨは言いました。

「えっ?」

「自分は丈夫やからって言わはって … 」


… … … … …

め以子はひっ迫した食糧事情の中、『ごちそうさん』として、少ないながらも何とか子供たちにおやつを与え続けていました。

ごちそうさん!」

おやつを食べ終わった少年が、台所に置いてあるサツマイモをじっと見つめていました。

「ごめんな … これは、おばちゃんとこの人らの分やさかい」

め以子が諭すと、少年はうなずき、礼儀正しくもう一度礼を言って帰っていきました。

ごちそうさんでした!」

「はい、またね ~ 」


食べ終えた子供たちを見送っているところへ、お静が帰って来ました。

「何や、子供ら痩せたな ~ 」

どうにかしてあげたくても、め以子もめ以子で精一杯でした。

… … … … …

「お義母さん、私 … お義姉さんとこ、行ってきます」

「か、和枝ちゃんとこ?」


突然め以子に告げられて、驚くお静。

「もしもの時のふ久の疎開のお願いに … 背に腹は代えられませんから」

「行くん?」

「はいっ」


それに関して、め以子はお静にもうひとつ大事なことを言わなければなりません。

「つきましては … ですね」

… … … … …

ふ久を預かってもらう代償として、和枝にお静の着物を差し出すというのです。

もちろん、お静は納得した訳ではありませんが、め以子は半強制的に取り上げてしまいました。

「せやけど … 何で、うちの着物でないとあかんの?

最後の一張羅なんやで!」

「私なんてもう一枚もないんですよ」


しかし、やはりあきらめきれないお静は、一度リュックサックに詰めた着物を取り出して抱え込んでしまいました。

「西門の古道具あるやろ?

ほれ、掛け軸とか、埃かぶった重箱とか … 」

「そんな … すっからかんです」


とうの昔に米や味噌に替っていたのです。

「あんたが、ごちそんさん、ごちそうさんやて振舞うから」

どうあっても着物は手放したくないお静です。

め以子はお静の腕を両手でつかみました。

「お願いします!

ふ久のためなんですよ!

… ひ孫のためなんです」

「 … ひ孫?」

「そうです」


『ひ孫』という言葉に、お静の心は葛藤し始めました。

… … … … …

そして、出した答えは …

「ほな、うちも行く!」

「えっ?」

「あんたに任したら、和枝ちゃんに手玉に取られるだけやないの ~

うちは疎開認められるんやし … ふ久、預けるんやったら、うちも一緒に居った方がええやろ?」

「まあ、そうなんですかね ~ 」


却って事を荒立てるような予感がしてしょうがないめ以子です。

「何や、気に入らんのかいな?」

「いいえ … 」


め以子は仕方なく妥協しました。

「まあ、黙って見とき ~ うちのお上手、見せたるから」

取りあえず着物はリュックに戻しましたが、あわよくば何も渡さずに済ませようという算段なのです。

… … … … …

悠太郎と希子が仕事から戻ると、書置きが残されて、ふたりの姿はすでにありませんでした。

「ほんで、ふたりで姉さんとこ行ってしもうたん?」

「そういうことみたいやね … 上手いこといくんやろか?」


用意されてあった食事をよそりながら希子は不安げに言いました。

「う ~ ん … どやろな … 」

どうしようもなく気が重い悠太郎でした。

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2014年02月23日 (日) | 編集 |
それでは、次週の「ごちそうさん」は?

空襲って怖いもんでもない言うしな …

め以子()は、空襲に備えての建物疎開を強行している悠太郎(東出昌大)の激務を心配する。しかし、空襲時の消火の指導まで担当することに。

受け入れてあげてもええで ~

諸岡家に嫁いだふ久(松浦雅)が妊娠、め以子と静(宮崎美子)は考えた末、和枝(キムラ緑子)を訪ねる。ふたりはふ久の疎開を頼みこむが、西門の家屋を譲ることを条件に出され、あえなく引き下がる。

そんな中、建物疎開の現場で中学生が亡くなり、苦しむ悠太郎。

お兄ちゃん、何やおかしないですか?

め以子は非常用のわずかな米を使い、おいしいもので元気づけようとする。が、人命を守るという志からかけはなれた仕事に悠太郎はいっそう悩む。

西門課長が逮捕されました!

ある日配給から戻ってきため以子は、悠太郎が逮捕されたと聞いて驚く。

信じたらあきませんよ!

悠太郎は、空襲に備えた消火訓練を計画し、その現場で予定外の行動をとった。集まっている人々に、空襲の際には逃げろと説いたのだ。

何かしらできるもんなんですよ …

め以子は悠太郎を救おうと必死でつてを探し、藤井(木本武宏)の幼なじみの軍関係者・里見(木下隆行)に会いにいく。里見が甘い物好きと知り、大量の菓子を作るめ以子。

あんた追いかけ!

なんとか拘留は解かれて戻ったものの、悠太郎には厳しい処分が待っていた。め以子の悲しむ顔を見たくない悠太郎は、市役所をクビになったと嘘をつくが、その日が近づいてくる。

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2014年02月22日 (土) | 編集 |
第120回

「がんばっといで … 」

断腸の思いで、活男が海軍を志願することを許した、め以子。

出征していく息子に何をしてあげられるか … それは、必ず主計科に配属されるように、調理の腕を仕込むことだと考えたのです。

その教えを乞うために東京の父・大五に手紙をしたためていました。

「お義父さんにですか?」

部屋で手紙を読み返していた、め以子を見て、悠太郎は尋ねました。

「いろいろ聞きたいことあって … やっぱり、大人数の調理と家庭の調理では違うことが多い思うんですよ。

どうやって、配置が決まるかは知りませんけど、有利になるための武器は持たした方がええやないですか …

私にできることは、もうそれだけです。

… それだけしかないやないですか … 」


口に出すとまた涙がにじんできました。

うつむいた、め以子を抱きしめる悠太郎。

悠太郎の腕の中でさめざめと泣き続けるめ以子でした。

… … … … …

め以子の手紙を受け取った大五は、すぐさま、ことこまかな指示を書いた返事を寄こしてきました。

『め以子へ

本当なら、活っちゃんをかっさらって、うちの店にぶち込みたいところだが、そうもいかない。

本当にすまない。

この上は、卯野の意地にかけて、活っちゃんを厨房に送り込むだけだ。

以下、俺の考えを記す』


… … … … …

『戦場で一番求められるのは速さだ。

とにかく包丁づかいを鍛えろ』


め以子は活男の修行に使う食材を用意するため、近郊の農家に赴いて、なけなしの着物と交換にリュックサック一杯のジャガイモを手に入れてきました。

それをひたすら活男に皮むきをさせました。

… … … … …

『鍋振り、すりこぎ、裏ごし、とにかくコックは重労働だ。

特に手首を使う。

いかれちゃ、話になんねえ、鍛えろ』


フライパンで手拭いを振らせて鍋ふりの練習です。

この練習によって手首の鍛錬にもなるのでした。

… … … … …

『聞いた話だが、とにかく滅法握り飯を作るらしい。

こりゃ、きっとお前の方がうめえな。』


米に麦を混ぜて炊いたご飯でおむすびを握る練習です。

「ホンマは、アツアツで握った方が美味しいんやけど、速さ考えたら、少し冷ましてからの方がええかもしれん」

その話を聞いて、炊きたてのご飯をしゃ文字を使って冷ましている、め以子の手を活男が止めました。

「炊き立てで無茶苦茶早う握れるようにする!

… それが一番ええんやろ?」


そう言うと、アツアツのご飯を手に取って俵型に握り始めました。

手のひらの熱さに耐えながら握り続ける活男を、め以子は頼もしげに見つめました。

こうして、め以子による活男の修行の日々も瞬く間に過ぎて行ったのです。

… … … … …

出征を明日に控えた日、うま介の皆がささやかな出征祝を開いてくれました。

「美味しいっ」

タンポポコーヒーを飲んだ活男。

「そうか? 

戻って来たら、ホンマのもっと美味いコーヒー、飲ませたるからな」


馬介の言葉に笑顔でうなずいた活男。

「はい、木の葉芋餅もどうぞ」

「活っちゃんのために、活っちゃんの分だけ作ったんだよ ~ 」


何もしていないと室井を諌めた桜子。

幼い頃からめ以子に連れられて、この店に来ていた活男は、この店の住民たちにとって子供のように可愛い存在でした。

… … … … …

「この場でよかったんかいな?」

厨房のめ以子に源太が尋ねました。

「今は人呼んで派手に出征祝やったら、怒られるし … 共同炊事にかこつけるんが一番やろ。

… 源ちゃんも戻って来たし、ここ縁起ええしな」


活男も活男のことを好きな皆に囲まれて、心づくしの料理を食べながら、楽しそうに話しています。

「ふ久ちゃんと泰介君は?」

「うちの出征祝は明日の朝ごはんやから … 」


… … … … …

そして、その朝はやって来ました。

め以子が朝食の準備に台所へ下りてくると、すでに台の上を丁寧に拭いている活男の姿がありました。

「早いな ~ 活っちゃん」

「今日は、わし作りとうて … 」

「えっ?」

「 … あかん?」

「今日は、お母ちゃんにやらせてえな」

「わしも作りたいんやけど … 」


出征の日の朝食だから、息子のために作りたい母と家族のために作りたい息子。

め以子が微笑むと活男も微笑み … 結局ふたりで作ることになりました。

… … … … …

め以子が、この日のために取っておいた5個の卵を見せると活男は歓声を上げた後、尋ねました。

「何作ろうか?」

「牛乳あったら、オムレツにしたとこやけどな … 」


考え込んだふたり。

「 … 豆乳やったら?」

「ああ … やろか?」


今に始まったことでなく、この母子はこうやって、工夫しながら料理を創作してきたのです。

… … … … …

卵をかき混ぜる活男。

その横顔を見ていたら、め以子はふと、昔、皆でアイスクリンを作った時のことを思い出しました。

活男をはじめ、ふ久や泰介、子供たちがまだ幼かった、戦争などなかった頃のことが次々に浮かんできます。

目頭が熱くなるのを覚え、それを悟られないように調理を続けるめ以子でした。

… … … … …

家族全員が揃った食卓の真ん中には見事なオムレツが置かれていました。

「わ ~ ウソみたいやな ~ 」

感嘆の声を上げたお静。

「このオムレツは … 活っちゃんが焼いてくれました」

「わあ、上手に出来たね」


皆から口々にその出来栄えをほめられて、照れ笑いする活男。

特訓の成果か、活男の料理の腕は飛躍的に上達していたのです。

「わし、分けるわな … 」

そして、活男は手ずから、皆の皿に取り分けました。

「ほな、いただきます」

牛乳の代わりに豆乳を使ったことに気づいたのは希子でした。

「うん、活っちゃんの案で」

「美味いよ ~ 活男」


活男のために帰って来た泰介とふ久も美味しそうに味わっています。

「ようでけてる」

「柔らこうて、さっぱりしてますね」


活男は自分は箸もつけず、皆が食べるところを幸せそうな顔をして見渡していました。

… … … … …

「このお出汁の餡も活っちゃんが作ったん?」

「それは、お母ちゃん」

「活っちゃんのオムレツには、やっぱり … カツオでしょ」

「ケチャップなかっただけやろ?」


活男はようやく箸を手にすると、オムレツにかかっている出汁をすくって口に入れました。

「 … お母ちゃんの出汁や」

生まれた時から食べなれている母の味でした。

め以子の目には光るものが。

食事は和やかに進み、幸せな時間はゆっくりと流れていきました。

< 最後かもしれないもんね … 皆とご飯食べるの …

言いたくないね、あの言葉は … >

『あの言葉』が聞きたくて、美味しいものを作ると決めため以子でしたが … 今日だけは、いつまでも、この食事を続けていられたらどんなにいいか、そんなことを考えていたのです。

… … … … …

食卓の上にあるものは全て食べつくされて、皿にキュウリの糠漬けがひと切れだけ残っていました。

誰も手を付けようとしないのは、これを食べてしまった時、『あの言葉』を言わなければならないからでした。

それは、活男との別れを意味していました。

しかし、いつまでもこうしている訳にもいかないことを誰もが知っていました。

その役を買って出たのは悠太郎でした。

「お父さんがもろてええですか?」

「あ、はい … 」


< いやだよ ~

私ゃ、行かせたくないんだよ … 活っちゃんは、ここに残って、私の世話をするんだよ … ああ … >

… … … … …

最後のひと切れを食べ終えた悠太郎は、箸を置いて、活男の方へ向き直りました。

「活男 … ごちそうさん

「 … はい」


父の言葉にうなずいた活男。

「活っちゃん、ごちそうさん

「こうなったら、思いっきりやっといで」


悠太郎に続いて啓司と希子が声をかけました。

「うん」

「料理、楽しんどいでな」

「卑怯もん言われても、一番安全なとこ、逃げんねんぞ。

ええか、絶対やぞ」


ふ久、泰介と言葉を聞いているうちに活男の目は涙で一杯になっていました。

「活っちゃん … 」

「うん?」

「行かんとって ~ 」


皆が言いたいのを我慢していた言葉をお静は惜しみなく口に出して、活男の手を握りました。

取り乱しかけたお静を希子が宥めています。

… … … … …

「活っちゃん …

すごく、すごく美味しかった … ごちそうさん


め以子は、お静のように、いやそれ以上に … 今からでも泣いて引き留めたい気持を押さえて言いました。

「兵隊さんの『ごちそうさん』、一杯聞いておいで。

聞いたら、戻っておいで … 戻ったら … また、一緒に … 一緒に … 」


泣くまいと決めていた涙が溢れてきて、言葉に詰まってしまいました。

すると、代わりに活男が口にしました。

「アイスクリン … アイスクリン、作ろな」

「うん」


め以子がさっき思い出していた光景 … 活男にとっても忘れがたい思い出だったのです。

「今度は牛乳でオムレツ作ろな … わし、いろいろ覚えてくるさかい、楽しみにしとってな」

泣き顔で何度もうなずくめ以子。

「お母ちゃん … ごちそうさんでした」

活男は深く頭を下げました。

泣きながら、笑いながら、め以子は応えました。

「 … お粗末様でした」

… … … … …

仕度を整えた活男、出発の時はやって来ました。

皆は見送るために表に並んでいます。

「ほな、いってきます」

先程とは打って変わって、覚悟を決めたような凛々しい顔をした活男。

黙ってうなずいた悠太郎。

「いってらっしゃい」

め以子も今度は涙なしの笑顔で送りました。

活男は微笑み、前を向いて歩き出しす。

「活っちゃん!」

め以子の声に振り向いた活男。

「 … 元気でやるんやで!」

今一度微笑み、うなずくと、また歩き出した活男。

め以子は、活男が去っていた道をいつまでも見つめていました。

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2014年02月21日 (金) | 編集 |
第119回

「お母ちゃん、わし … やっぱり行かせてほしい」

「あんたは、お母ちゃんを人殺しにするつもりか … あかんもんは … あかん!」


家族の説得も届かず、海軍主計科への志願をあきらめようとしない活男に、め以子は心ならずも厳しい言葉を返していました。

ハッとして、涙を溜めた目でめ以子を見つめる活男。

本来なら、ただ活男が夢を持って巣立っていくだけの話なのです … こんな時代でさえなかったら …

< どうしたら、あきらめてくれるのかね … >

糠床をかき混ぜながら、思いめぐらせるめ以子 … とある方法を思いついたのでした。

… … … … …

翌朝、活男が起きてくると、め以子は裏庭で鶏の世話をしていました。

昨晩のことがあるので、朝の挨拶もためらっていると、め以子の方も気づいて先に微笑みかけてきました。

少し安堵して微笑み返すと、卵を取り出して見せました。

「産んだで ~ 」

昨日貰って来たばかりの鶏が早速卵を産んだのです。

活男は思わず、母の元へ駆け寄っていました。

「ど、どないすんの、それ?」

「お姉ちゃんの内祝い、一緒に考えようか? 活っちゃん」

「えっ?」

「志願出すんは、そのあとでもええやろ? … 間に合うやろ?」


まるで志願することを認めたともとれる物言いに活男もうなずいていました。

… … … … …

これが、め以子の企てた作戦でした。

「改心させる?」

仕事に出かけようとする悠太郎、啓司、希子の3人にこっそりと打ち明けたのです。

「活っちゃんにその気がなくなれば、行かへん訳ですよね?」

活男は料理がしたいだけだから、家で料理している方が楽しいと思ったらそれでいいというのが、め以子の理屈でした。

幸い(?)工場は復旧などで2、3日休みになるようなのです。

「ここで、ふ久の内祝いをやってしまって、べったり手伝わせたら、気も変わると思うんよ ~ 」

そう言いながら、め以子は3人に弁当を配りました。

「今日のおむすびの具は活っちゃん作ですから ~ 珠玉の感想を考えながら、食べてください」

… … … … …

ふたりは早速、内祝いの献立の相談を始めました。

西門の祝の膳は、鯛に赤飯にお吸い物、杉玉に粕漬ですが、今はこれだけ揃えるのは至難の業です。

「 … 杉玉って大根で作った?」

「覚えてんの?」

「うん、お母ちゃんらのお祝いの時に食べたやつやろ?

… きれいやなって」


まだ幼かったはずなのに、活男はちゃんと覚えていたのです。

「お姉ちゃんにも、どうにかして作ってあげようや」

「せやね ~ 」


め以子の思惑通りことは進んでいます。

「せやっ!

お豆腐はどやろ?」


豆腐で杉玉を作るというアイディアです。

「お豆腐は、おからやったら何とか … 」

「うち、大豆はあるんやな … お豆腐って作られへんの?」

「せやね … 」


思惑以上の効果にめ以子も驚きました。

活男はやる気満々です。

… … … … …

その日、悠太郎がいつもの時間に帰宅すると、め以子が夕食の支度が遅れていることを詫びました。

「にがり作るために海水汲みに行ってたんですか?」

「それで遅くなってしもうて」


台所では活男が豆腐を作るために大豆を絞っているところでした。

「ええ顔してますね … 」

その横顔を見て、悠太郎がめ以子にささやきました。

懸命に調理している活男は、水を得た魚でした。

… … … … …

< こうして、ふ久が内祝いのために戻って来ました >

「ええんですか? 内祝いに僕までお邪魔して」

相変わらず遠慮深い諸岡にお静が笑って返しました。

「何言うてんの、祝言はうちが呼ばれるんやさかい」

「うちは大したことできへんのにって、恐縮してましたよ … 」


そんなことより、ふ久が気になるのは、泰介が戻っていないことでした。

そうそう帰ってばかりもいられず、今回は欠席とのことです。

「祝言には来るて!」

「 … ふたり揃わんのか」


諸岡と泰介が揃わないとふ久は妄想できないのでした。

「それいつまでやるつもりですか?」

「それはそれ、これはこれや … 」


… … … … …

そして、祝いの席には、活男とめ以子が腕を振るった料理が並びました。

「うん、美味しい ~ 」

おついに口をつけた諸岡が声をあげました。

「これ、フグですか?」

食卓の中央に置いてある皿に花びらのように円盤状に並べられた刺身を啓司が目を丸くし見ています。

「うん、フグだけはまだ自由販売だから ~ 鯛はあかんかったけど、ふぐは仕入れることできたって、銀次さんが」

… … … … …

「けど、豪勢ですね ~ 」

諸岡は感激していました。

このご時世にして、これだけのご馳走を揃えられたのも、地下室に蓄えておいた食材を娘の内祝いというだけでなく、活男に思う存分料理させるために惜しむことなく出して来たからでした。

「あ、活っちゃんにお礼言うたって … この杉玉のお豆腐、活っちゃんが作ったんよ」

「こちらですか? わぁ ~ ホンマに?」


器の中のすべすべの丸い豆腐にとろみがあるたれが掛かっています。

「すごいな ~ 」

諸岡に褒められて、活男は照れたように笑いました。

め以子もひと口食べてみました。

「うん、美味しい!」

お世辞抜きに活男の料理は美味いのです。

… … … … …

食事もひと段落した頃、め以子が運んできたのは卵の黄身の粕漬でした。

「これ、卵の粕漬ですか?」

赤みがかった黄色の球形が皿の上に3つ並んでいるのを見て、諸岡だけでなく悠太郎も目を見張りました。

「うんっ、少しやけど、産んだから」

「はあ、卵 … 」

「こんなん始めて見るわ ~ 」


啓司もお静も感心しています。

「これね、活っちゃんの創作なんですよ」

活男の肩を自慢げに叩いため以子 … 始めて見るのも当然でした。

「食べてみて、食べてみて!」

活男が勧めると、まず男性3人がひとかけらずつ口に入れました。

見る見るうちに3人の顔がほころんでいきます。

「これは、ひれ酒によう合いますね ~ 」

顔を見合わせて微笑みあうめ以子と活男。

すると今の今まで舌鼓を売っていた諸岡が急にうつむいて鼻をすすり始めました。

「こんな …

行く前に、こんな美味いもの食べられるなんて … ありがとうて、ありがとうて … 」


心のこもった料理に感極まって、ただでさえ涙もろい諸岡は大泣で、め以子と活男に頭を下げ続けました。

… … … … …

「何してんの?」

め以子が台所に下りると、さっきから姿が見えなかったふ久が何やら箱のようなものを設置して待っていました。

「これの使い方、説明しよう思て … これで芋煮て見せるわ」

「 … これ?」

「火無しコンロの改良版」


大分前に試していたものは使い物にならなくて、ふ久に何とかしてくれるよう頼んだことがあったのを、め以子は思い出しました。

以前の見るからに頼りなさそうな物とは違って、ずっしりと頑丈そうな出来栄えです。

「ここに真空の層を作ったから、断熱効果が高まってる。

余熱でもきちんと調理できるはずや」

「 … おおきに」


ふ久の言っている意味の半分も分かりませんが、何かうまく出来そうな気がします。

「前から仕組みは考えとったんやけど、道具がのうて … 諸岡君のお義父さんにも手伝うてもろうて」

そういえば、諸岡の父親は工場を経営しているそうですから、この程度のものだったら容易に造ることができたのでしょう。

それよりも、め以子はふ久が諸岡の親とも上手くやっているようなので、安心しました。

… … … … …

め以子は芋を洗っているふ久にそれとなく活男の話を伝えました。

「活男がな … 志願したい言うてるんよ。

料理がしたいから兵隊になるて …

ふ久はどう思う?」


姉としてどう思うのか気になりました。

ふ久は振り向くと、座敷にいる活男を見つめました。

皆から料理の腕をほめられて、何とも言えないうれしそうな顔をしているのが見えます。

「お母ちゃんの … 息子やな ~ って、思う」

それはどういう意味なのでしょう …

め以子はそれ以上は尋ねることはできませんでした。

… … … … …

宴は終わり、諸岡とふ久は帰っていきました。

ふ久は玄関を出たところで足を止め、しばらく家を見つめていました。

思うのは、母のことか、それとも弟のことか …

「ふ久さん?」

諸岡はふ久に近づくと手にしていた荷物を受け取りました。

「おおきに」

夜道を並んで歩いていくふたり。

… … … … …

「お姉ちゃん、こんなものよう作ったな ~ 」

活男は、火無しコンロの改良版を興味深そうに触りながら、楽しそうにしています。

め以子は洗い物をしながら、話すなら今だと思いました。

「活っちゃん …

何も船に乗らんでも、料理は出来るとは思わへん?」


活男から微笑みが消えて、真顔になりました。

め以子は洗い物の手を止め、活男の隣に腰かけます。

「毎日は無理やけど、ここでお母ちゃんと一緒に料理して … 皆の『ごちそうさん』聞いて、なあ?

それではあかん?」


活男は黙ったまま、悲しそうな目でめ以子のことをじっと見つめています。

「 … あかんか?」

母の質問には答えられずにうつむく活男。

… … … … …

2階から下りて来た悠太郎は、その場に立ち尽くして、ふたりのことを見ていました。

しばし沈黙の後、活男は静かに話し始めました。

「わしな、今まで皆が兵隊になりたい言うのまったくピンと来へんかってん。

けど …

今日、初めてお国のために働きたい思うた。

諸岡さんが食べてくれるん見て、お国のために働き行く人のために少しでも、美味しいもん作りたい … 作ってあげたいって … 」


活男は自分の両手のひらを広げて見ました。

「わしの手は、そのためについとるんちゃうかって … 思うた」

め以子の企ては逆に活男の背中を押していたのです。

言葉をなくしているめ以子の顔をもう一度見つめました。

「 … お母ちゃんみたいになりたい。

わしは、兵隊さんの『ごちそうさん』になりたい」


目には涙をいっぱい溜めています。

「 … あかん?」

活男の決心は前にもまして揺るぎのないものになっていました。

… … … … …

ふたりは無言で見つめ合っていました。

しばらくして、目をそらしたのはめ以子でした。

「 … 大きなったんやな、活っちゃん … 大きなってしもうたんやな … 」

め以子の目からも涙がこぼれます。

うれしいはずの息子の成長がこんなにも悲しく、め以子を泣かせます。

自分自身に言い聞かせるように何度もうなずき、笑顔を作ろうとしましたが …

くしゃくしゃの顔、震える声で活男に言いました。

「がんばっといで … 」

活男は大きな目から大粒の涙をこぼしながら、母の言葉にうなずきました。

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2014年02月20日 (木) | 編集 |
第118回

「お母ちゃん、わし志願する … 海軍に志願する!」

勤労奉仕から戻るなり、活男はここ最近見せたことがなかったような笑顔で興奮気味に話しました。

「今日な、工場に海軍の偉い軍人さんが来はってな ~ 主計科いうんは、コックがおるんや!

そこ入ったら、船の上でコックの修行が出来るんや!

すごいねんで、海軍の料理って、明治の始めからフルコース作っててんて!

… 日本の洋食の草分けみたいなもんやねんて」


あの代用肉に小麦粉を使っていることを言い当てた軍人から聞いたのでしょう。

活男は鞄から1枚の書類を取り出しました。

「親の同意がいるねんて ~ 書いて」

手渡されたのは、海軍志願兵の志願書で、すでに本人の署名は済ましてありました。

め以子は一瞥しただけで、それを丸めて鶏のカゴの中に放りこんでしまいました。

「何すんの?!」

「 … アホなんか?」


目を見開いた活男。

「ホンマもんのアホなんか、あんたは?!」

… … … … …

め以子にいくら叱り飛ばされても、活男は食い下がりました。

「活っちゃんが志願?」

「それで、ああなってるんですか?」


希子と悠太郎が帰ってきた時、活男は何とか認めてもらおうと、台所仕事をするめ以子の周りをつきまとっていました。

「 … 前線ちゃうねんで、主計科いうんは ~ 厨房におるんやで」

「船、沈んだら一緒やろ」

「基地に配属のこともあるて」

「基地かて一緒や」

「本格的な西洋料理!」

「今そんなもん出してる訳ないやろ!」


頑として聞く耳持たないめ以子に活男は攻め方を変えてきました。

「 … お母ちゃん、大変やんか?

ひとり居らんかったら、食べ物は少しは楽になると … 」

「配給は、人数掛けや」


… … … … …

「あと3年 …

あと3年でわし、いやでも兵隊行くやんかっ?!」


活男には珍しく声を荒げました。

「3年のうちに終わるかもしれんやろ?」

「徴兵ではまず、主計科は無理やねん!

少なくとも志願せんと … 」

「志願したかて、なれるもんちゃうやろ?」


何がどうあっても、め以子は行かせたくないのでした。

… … … … …

その時、突然、防空サイレンが鳴り響きました。

「避難訓練や!」

話しはここで打ち切り、一同、防空頭巾を被って表へと飛び出して行きました。

… … … … …

訓練から戻って、ようやく遅い夕食になりました。

「近頃、訓練多いな ~ もう年寄には敵わんわ」

「まあね、来てからでは遅いですから」


ぼやくお静を希子が宥めました。

皆、そう遠くない時期に戦況が厳しくなるのでないかと、薄々は思っていたのです。

「活っちゃん、足りるか? もっと食べ、ほら」

め以子は食が進んでいない、活男の前におかずを寄せました。

「 … 戦争行かんでも、空襲来たら死ぬかもしれんよな?」

さっきの話の続きのようです。

「来んうちに終わるかもしれんやろ」

… … … … …

次の日は、婦人会の共同炊事の日でした。

献立は、め以子考案の大豆粉を使った肉の代用品です。

め以子は、下準備のために一足先にうま介を訪れていました。

「コックになりたいから、志願かいな?」

活男の話を聞いて、馬介も驚いています。

「そう、もう何考えてるって話ですよ」

「けど、今時はそうでもせんと、料理人にはなれんからな … 」


活男の気持ちも分からんでもないと言った口調です。

「えっ、そうなの?」

「労務調整令知らないの?

40歳未満の男子は、料理人とか美容師とか、そういう職業に新たについちゃいけないのよ」

「今は仕事も選べないんだね … 」


桜子から説明されて、自由業の室井がしみじみとつぶやきました。

「こんなことなら、小学校出た時から修行に出してやればよかったわよ … 」

… … … … …

活男の働いている軍需工場で志願書を提出したのは、結局のところ、たった1名だけでした。

「毎日毎日、何のために食わしてきたんやって言われたわ」

どこの親も志願させてまで息子を戦場に送り出したくはなかったのです。

「 … そうなるよな」

母のことを思い出して、弁当を見つめた活男でした。

… … … … …

休憩を終えた活男たちが、持ち場に戻ろうとしている途中、突然警報機が鳴り始めました。

「煙が上がってるぞ!」

「大変や!」


活男たちが向かっている工場から黒煙が立ち上っているのが見えました。

そのうちに真っ赤な炎が …

… … … … …

その頃、め以子は共同炊事の真っ最中でした。

蒸し器のふたを取ると、大豆粉と小麦粉を練り上げて作った代用肉がいい具合に膨らんでいて、皆から歓声が上がりました。

「これが大豆から作ったお肉?」

「これをフキと一緒に炒めて、煮物にしましょう」


そこへ、室井がザル一杯の野草を摘んで戻って来ました。

「シロツメクサとオオバコとユキノシタ!」

「葉っぱもんうれしいな ~ 」

「配給もなくなったしな … 」


以前は見向きもしなかったような雑草でも今はありがたく感じる、そんなご時世でした。

「建物無くなって出来た空き地を畑にしてる人、結構いましたよ」

室井の話を聞いて、婦人会でもという意見が出ていた時、ひとりの男が息を切らせて店に飛び込んできました。

「西門課長の奥様いはりますか?」

男は悠太郎の部下でした。

「 … 落ち着いて聞いてください。

息子さんのお勤めの工場で事故がありました。

今、課長が病院の方、確認に行ってます … 」


め以子は取るものを取らず、部下の男と一緒に店を後にしました。

… … … … …

「活っちゃん!」

め以子たちは、うま介から病院へ向かう途中、悠太郎に連れられた活男と出くわしました。

「大丈夫か、ケガは?!」

幸い、活男は少し擦りむいた程度で、病院にかけつけた悠太郎と家に戻る途中だったのです。

ショックで茫然としている活男に代わって、悠太郎が状況を説明しました。

「 … 活男の班はたまたま休憩中で、用足しに出とったらしい」

「よかった、よかったな … 」


活男が無事だったことで安堵してただただ涙するめ以子。

すると、活男がやっと重い口を開きました。

「 … 友達、吹っ飛ばされた … 小学校が、一緒やった奴 … 死んでもた … 」

… … … … …

め以子がうま介へ活男の無事の報告と共同炊事の後片付けに行っている間、活男の傍には悠太郎がついていました。

お静が淹れてくれた茶を勧めても活男は手を付けようとはしません。

「活男?」

机に向かってうつむいていた活男は、座りなおして悠太郎の方を向きました。

何かを思いつめたような顔です。

「お父ちゃん、わし … 」

… … … … …

「嫌な言い方やけど、これで活っちゃんも目ぇ覚めたやろ … 」

「 … そうかもしれませんね」


うま介から戻って来ため以子がお静や希子と話をしていると、2階から活男と悠太郎が下りてきました。

「活っちゃん、お腹空いたやろ?」

め以子が尋ねると、活男は小さくうなずきました。

「まず、ご飯にしようか … ほな、待っとり」

活男は少し落ち着いたように見えました。

このまま、お静が言っていたようにあきらめてくれることを願ってしまうめ以子でした。

… … … … …

しかし、活男は、夕食が済むのを待っていたかのように切り出しました。

「お母ちゃん、わし … やっぱり行かせてほしい」

活男の気持ちは変わってはいませんでした。

「何で … 」

「何でやの、何で?!」


め以子以上に活男に詰め寄ったのはお静でした。

「あんた、今日ごっつう怖い目見たんやろ?

あんなんちゃうねんで … あんなことでは済まされへんねんで!」

「活っちゃん、主計科いうたかてね、兵隊やねんで …

ご飯炊いてるだけとは違うんよ」


希子も諭しました。

「 … このまま、好きでもないこと毎日やって … それで、事故とか空襲で死ぬんやったら …

せめて、好きなことやって、死ぬ方がええ。

このままやとわし … 何のために生まれてきたんか分からん … 分からん」


堪え切れずに涙を流しながらそう訴えました。

皮肉なことに今日の事故で活男の気持ちがいっそう固まってしまったのです。

「あんたは、お母ちゃんを人殺しにするつもりか … 」

ハッとして、顔を上げ、母の顔を見た活男。

「あかんもんは … あかん!」

… … … … …

夫婦の部屋。

「 … 知ってはったんですか?」

何も口出ししなかった悠太郎を、め以子は問い質しました。

「さっき、聞きました」

やはり … それなら、何故止めてくれなかったのか … め以子は悠太郎をにらみつけました。

「お父さんは、活男の同意書書いてやる気になってますよね?

何でですか?

何でそんなこと思えるんですか … 活男が可愛くないんですか?」

「子供の希望握りつぶすんは、親の仕事やないって、あなたこないだ言うたやないですか?」

「せやかて …

ふ久が結婚するのとは、訳がちゃうやないですか?!」


結婚と海軍志願を同じ土俵に上げる夫の頭の中がめ以子には理解できません。

「敢えて、最悪の場合を考えてみました。

ここで活男の意を汲んで行かせて戦死した場合と、説き伏せて行きたくもない工場に行かせて空襲で死んだ場合と …

僕は、後者の方が耐えられないと思いました」

「志願したかて、望み通りのところへ行けると限らんやないですか?

結局、やりたくもないことだけ、やらされるかもしれんやないですか?

明日、突然戦争が終わるかもしれんやないですか?!」


… 何故、夫も活男も、どの道を選んでも死に至るとしか考えられないのか?

悠太郎は質問には答えず、向き直って、め以子のことを見つめました。

「あなたは納得せんといてください」

「えっ?」


… この人は何が言いたいんだろう?

「 … 活男を行かせるのは僕です」

悠太郎の中ではもう答えは決まっている … め以子は知りました。

「バカにせんとって下さい … 

私は別に責任逃れしたい訳やないですから」


それよりも、思いやりのつもりかもしれないその言葉が、許せないめ以子した。

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2014年02月19日 (水) | 編集 |
第117回

ふ久が諸岡のところへ夜這いしていたと言う泰介。

「よ、よ、よば … 」

余りの驚きに言葉がうまく出てこない悠太郎に代わってめ以子は尋ねました。

「それ、ホンマなん?」

申し訳なさそうに頭を下げた泰介は、続きを話し始めました。

… … … … …

「何やってるんですか ~~~ ?!」

諸岡の部屋の襖を開けた泰介の目に飛び込んできた光景。

力ずくでのしかかろうとするふ久と、押し倒されながらも必死に抵抗する諸岡の姿でした。

部屋に入った泰介は諸岡からふ久を引き離しました。

「姉ちゃんこそ、これはちょっとやり過ぎと違う?」

ふ久から逃れた諸岡はシャツの胸元ははだけ、息遣いも荒く困惑顔です。

「どう見ても、諸岡さん困ってはんねんけど!」

我が姉ながら、常軌を逸した行動を咎めた泰介。

ところが諸岡の口から飛び出したのは意外な言葉でした。

「困ってませんよ!

… 困ってはいませんけど … 困ったなあ … 」


女性に襲われる体験などあるはずもない諸岡は相当混乱しているようです。

… … … … …

泰介はふ久の前に座りなおすと、改めて問い質しました。

「姉ちゃん、何で急にこんなこと言い出したんや?」

常人離れは承知していましたが、まさかここまでやるとは泰介も想定外だったのです。

「諸岡さんのこと急に好きになったん?」

すると、ふ久は訥々と話し始めました。

「うちな、諸岡君と泰介でふたりで居る時に妄想しとってん」

「妄想?」

「うん、男の熱い友情いうか … 女の入り込めん世界いうか … 」


泰介は何とか落ち着きを取り戻して座っている諸岡と顔を見合わせました。

「 … けったいな趣味やな」

「始めはただの趣味やと思ってた。

けど、泰介、次の年もピッチャーの子連れて来たやろ?」


それでまた同じことをしようとしたのだが、「できへんかった」とふ久は言いました。

… … … … …

「 … できへんかった?」

「諸岡君なら、こういう時ものすごくよう食べるのにとか、不必要に礼儀正しいのにとか …

比べてばっかで楽しめんかった」


そういう気持を世間一般では『恋』と呼ぶのです。

恋愛経験の乏しい泰介にもそれくらいは分かりました。

何だかいつもは偏屈な姉がとても可愛らしく見えて、優しく尋ねました。

「それで?」

「諸岡君が居らんようになるって聞いて、この人がもう見られへんかもしれん思うたら …

どないしよう、どうしたらええんやろう思て」


その答えを出すのは、ふ久には計算式を解くより簡単なことだったのです。

「うちに出来ることはひとつしかないやんか。

それがあんたの言うとる『好き』なんかどうか、うちにはよう分からんけど …

うちは諸岡君の子供が欲しいって思った」


… … … … …

諸岡は感動していました。

もうすぐ出征していなくなるというのに、その自分の子が欲しいという女性がいたということ …

「もっと … もっと、早う教えてくださいよ。

もっと早う言うてくれはったら、全然違うたのに … 」


本来なら男冥利に尽きる話かもしれませんが、彼の性格からいって受け入れることはできませんでした。

諸岡はふ久を見て、寂しそうに笑いました。

それでも、ふ久は涙をためた目で諸岡を見つめて言ったのです。

「 … うちに子供残してくれへん?」

… … … … …

「まあ、そういうことやねんけど … 」

諸岡家での出来事はそれで終わりでした。

「姉ちゃん、すごく純粋やなって思たよ。

あの人には、結婚するとかせんとか、どうでもええんや ~ 諸岡さんのことがただ好きで好きで …

とにかく子供を残したい! … だけ、なんや」


泰介もふ久の行動に感動していたのです。

そして、そんな姉を何とかしてあげたいと、あえて両親にすべてを話して聞かせる役を買って出たのでした。

「やり方はえげつないけど … 僕は純粋で強い愛情の持ち方やと、思うた」

ひと通り話を聞き終わった悠太郎は相変わらず苦虫を噛み潰したような顔で聞き返しました。

「それで?」

「それだけです … 後はお父さんに任せる。

お母さん、ご飯して ~ 活男、下でへばっとたで」


そう言って、サッサと部屋を出て行ってしまいました。

… … … … …

腕を組み考え込んでしまった悠太郎。

泰介が何を言いたいがためにすべてを話したことは分かっていました。

め以子はそんな夫を横目にしながら、食事の支度をするために立ち上がりました。

「あ … お父さん」

襖の前で足を止め思い出したように話しかけました。

「うん?」

「子供は、ものすごい支えでもあるんですよ」

「 … せやから何ですか?」

「それだけです … 」


泰介もめ以子も「それだけ」「それだけ」と、まるで父親次第だと言わんばかりの態度に、悠太郎は深いため息をつきました。

… … … … …

「お姉ちゃん、今日は、よう食べるな ~ 」

いつもは本を読んだりしながらの『ながら食い』、少しの量をのんびりと食べるふ久が、食事に集中して、結構な勢いで素麺をすすっているのを活男が不思議そうに見ています。

「何かあったん?」

お静に聞かれても答えようがない泰介です。

そこへ、食事になっても姿を見せなかった悠太郎がゆっくりと階段を下りてきました。

自分の席に着いて一呼吸おくと、おもむろに泰介に尋ねました。

「諸岡君の家は円満なんか?」

思わず悠太郎を見た、ふ久とめ以子。

「まあ、おじさんとおばさんは仲よさそうやで」

「おじさんは何してはるんや?」

「工場をやってはる」


うつむいて聞いていた悠太郎は顔を上げてふ久を見ました。

「ふ久 … 子供育てるいうんは、簡単やないで。

お母さんがお前を育てるのに、どれだけ苦労したか分かってるか?」


ふ久はお椀と箸を置き、父の質問にうなずきました。

「お前に出来るんか?」

「子供いうんは、親の見えへん力で育つもんや … うちもそうするつもりや」


きっぱりと答えたふ久の横顔を見つめるめ以子。

「子供がでけたら、勉強もあきらめなあかんようなるかもしれんで … それはええんか?」

「勉強はやる気になれば、どこででも出来る」

「 … それで、ホンマに幸せになれるんか?」

「自分で決めたことや、後悔はせえへん」


ふ久の決心は固かったのです。

… … … … …

「ほな、今日はぎょうさん食べなさい … 」

「えっ?」


意外という顔をしたふ久。

それで、悠太郎からの質問は終わっていたのでした。

「食べたら、挨拶に行きますよ … あなたも」

「えっ?」


今度はめ以子が驚きました。

「い、今からですか?」

「失礼は承知ですが … 時間も余りないことですし」

「せ、せやかて、そんなに急がんでも … 」


いくら何でもせっかち過ぎると、め以子は思いました。

「子供欲しいんやったら、急がんとあかんでしょ」

その言葉にふ久は父が本気で許してくれようとしていることを知ったのです。

「 … ええの?」

「こっちがようても、向こうさんに断られるかもしれんけどな」


それは、父親としての最後の抵抗だったのかもしれなせん。

「お父ちゃん、おおきに … 」

無言で食事する悠太郎。

安堵して微笑みあうお静と希子。

黙々と食べるふ久、その食事が西門家での最後の夕食になるかも知れないことに気がついているのでしょうか …

… … … … …

食事を終え、身支度を整えたふ久は、玄関を出たところで両親に深く頭を下げました。

悠太郎とめ以子が会釈して返すと、ふたりの前を歩き始めました。

… … … … …

「お義兄さん、決めはったら早いな ~ 」

3人が諸岡家に出かけた後に帰って来た啓司は、自分がいない間に目まぐるしく起こった出来事に感心していました。

「そうなん、びっくりでしょ?」

元々、この話に乗り気だった希子とお静は朗らかに笑っています。

「けど、冷静に考えると、姉ちゃん … あんなんで、嫁にもらってもらえるんですかね?」

いわばこの縁談の立役者と言ってもいい泰介ですが、今頃になって不安になっていました。

「 … 実際、結構迷惑な気が … 」

「迷惑なことあるかいな ~ 

息子の子供産みたいなんて言うてくれる嫁なんて … 家、質にいれても欲しいやろ、当節」


お静の言葉に啓司はうなずいています。

こういう時、いつもなら傍らでニコニコ笑っているはずの活男が、台所に立ったまま何故か話に加わろうとしませんでした。

… … … … …

しばらくして、夜道を戻って来たのは、悠太郎とめ以子ふたりきりでした。

「お母さん、だあだあ泣いてはりましたね … 」

「諸岡君が涙もろいんは、遺伝なんですね」


いくら話しかけても、悠太郎は口を真一文字に結んだまま何も答えません。

「せやから、ここまで急ぐことない言うたやないですか?」

め以子が半ばあきれたように言うと、ようやく口を開きました。

「ひと晩寝ると、決心が鈍りそうで … 」

「ふ久って、もの凄いわがままやないですか?

自分が楽しいことしかやらんし、やりたいことは必ずやるし … 

そんな子ですから、大丈夫ですよ」


め以子はそう言いますが、悠太郎は … 前途多難なふ久の行く末を思うとやはりため息が出ました。

「今、猛烈に卯野のお義父さんとお酒が飲みたいです … 」

… … … … …

次の朝、寮に帰る泰介に、め以子は家にある食料をあれもこれもと持たせようとしました。

「ええって ~ お母ちゃん、寮でご飯出てるから」

「そんなんで足りんやろ?」


泰介はありがたいと思いながら、少し気になっていることを口にしました。

「僕より、あいつに食わしたってや ~ 」

「?」

「活男 … 元気ないやん」


ふ久のことばかりでなく泰介は弟のことも気になっていたのです。

「ああ、工場きついみたいでな ~ 」

「台所入ってないん?」

「 … 1日中働いて、台所やらしたら、倒れてしまうわ」

「そうか … 」


泰介は考え込んでしまいました。

「 … 気になるほどやった?」

「う~ん …

あんまり、笑わんようなったなって」


… … … … …

数日後、活男が働いている軍需工場に海軍の将校たちが訪れ、少年たちを庭に集めて、海軍に志願するよう募りました。

「銃後の守りも大切だが、日本男児たるものこの際、一身を投げ打って海軍に志願し、その若き血潮を戦いの第一線に捧げてもらいたい!」

友人たちの中には、志願しようと考える者も出てきましたが、活男はそんな気にはなりませんでした。

きっかけは、昼、活男たちが弁当を食べている部屋へ、顔を出したひとりの軍人が、活男の弁当を目に留めたことからでした。

「何だね、その肉は?」

それは、大豆粉で作った代用肉でした。

活男がそれを説明すると、軍人はたいそう感心していました。

「 … いかがですか?」

遠慮なく手に取った軍人はひと口食べて、すぐに小麦粉も使っていることを言い当てたのです。

「何でお分かりになるんですか?」

驚く活男にニコリと笑って見せました。

… … … … …

「ずっとお願いしてたの、今日やっと譲ってもらえて」

その日、め以子は念願の鶏をようやく手に入れたのでした。

「ずっと、飼いとうて、飼いとうて … 」

お静とふたりで喜んでいるところへ、活男が帰って来ました。

最近は、疲れて元気なく家に入ってくることが多かったのですが、今日はやけに威勢よく家に飛び込んできました。

「お母ちゃん、わし志願する!」

荷物も下さないうちに笑顔でそう告げましたが、突然のことだったので、よく意味が理解できないめ以子でした。

すると活男はめ以子の顔を覗き込むようにして今一度言いました。

「 … 海軍に志願する!」

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2014年02月18日 (火) | 編集 |
第116回

「諸岡君の子供が産みたい」

思いがけないふ久の大胆な告白に諸岡はかつてないほど動揺していました。

「え”~~~~ そ、それは … ?!」

「うちに子供生まれるんはいや?」

「いや、そ、そんなことはないです ~ そんなことは … 」

「ほな、そうさせて」


詰め寄ってくるふ久に諸岡は尻込みしていきます。

「ちょちょ、ちょっと待ってください!

自分は出征するんですよ ~ せやから、自分は … 」


… … … … …

諸岡の狼狽ぶりを見て、ただ事ではないと、駆け寄った泰介でしたが … ふ久の発言を耳にして、どうしたらいいのか分からなくなってしまい、その場でうろたえていました。

「おっ、泰介」

ちょうど戻って来た悠太郎も、玄関の前で言い合っているふたりに気づきました。

「せやから、一生出来んかもしれんやん。

うち、今、諸岡君の子供が産みたい」


手にしていた鞄を落としてしまった悠太郎。

「 … お父さん … おかえり … 」

… … … … …

悠太郎は家族が見守る中、ふたりを前に並べて座らせ、一体どういうことかと問い質しました。

「公衆の面前で、しかも女性から求婚というのはいかがなものなんでしょうか?」

すると、お静がめ以子に耳打ちしました。

「あんた、皆の前で川落ちて求婚したんと違うか?」

子供たちの前で自分の昔話を持ち出されて、こっ恥ずかしいめ以子。

「こういうことは、ケジメいうか … そういうもんがあるやろ?

つきおうて、お互いの気持ちを確かめてから、その先に求婚があるんやろ?!」


ふたりを厳しく諌める悠太郎の言葉にめ以子は少し違和感を感じていました。

「納豆の夢見てすぐ求婚した … 」

どうやらめ以子は自分たちの馴れ初めをお静に残らず話しているようです。

「余計なこと言わんとってください!」

いちいち引き合いに出されたらやりにくくて仕方がない悠太郎は、お静を黙らせました。

… … … … …

「諸岡君のことは3年前から知ってるし、一緒にご飯も食べてたし … さっき、気持ちを確かめて … うちはお父ちゃんの言う通りのことしてると思うけど」

ふ久の反論は理に適っていました。

「 … けど、何で結婚許してもらう話になってんの?」

「えっ?

それは、お前が言い出したんやろが」

「うちは子供産みたいだけやで」


平然と言ってのけたふ久。

これには、め以子とお静も驚きました。

「えっ、ちょちょ、ちょっと待って、ふ久 … あの」

「け、け、結婚せんと、子供産む気なん?」

「 … 結婚は、してもせんでもええ」

「お、お前 … 」


悠太郎は頭を抱えてしまいました。

「結婚はした方がええと思うけど … 」

うなずき合うお静とめ以子。

「 … 諸岡君の子はええな ~ よう知ってるし」

お静が球を放る仕草をして見せると、なんとめ以子はこれにもうなずきました。

「僕も割といいんちゃうかな ~ って」

「目指せ、甲子園やな」

「甲子園か ~ 」


実際のところ、泰介も活男も、そしてめ以子も、お静の言うようにふ久の相手が諸岡だったら何の文句もないのでした。

バンバンバン!

ちゃぶ台を激しく叩いたのは悠太郎でした。

「男が生まれるとは限らんやろ!!」

… … … … …

「あの、おじさん … 」

今まで畏まって悠太郎の話を聞いていた諸岡が口を開きました。

「自分はもうすぐ居らんようになる身ですし … 相手が不幸せになるような結婚は、考えてませんから … 」

ふ久の申し入れを今キッパリと断りました。

「 … 分かってはるんなら、それでええです」

悠太郎も人の親でした。

「ふ久、そういうことやから、あきらめなさい」

「うちは子供居らん方が不幸せやねんけど … 」


不満げに諸岡の横顔を見つめました。

「自分は … 自分は、ふ久さんをそういう目で見ることはできませんから」

正面を向いたまま話すと、「すいません」と頭を下げました。

「 … そう … なんか」

決定的な言葉でした。

勝手に盛り上がりかけた雰囲気が、瞬く間に火が消えたように … しらけていました。

諸岡の方から断ってくれて、安堵していいはずの悠太郎の顔が何故か不機嫌に見えるめ以子でした。

< 東京のお父ちゃんみたいだね … >

… … … … …

「何かすいませんでした … あんなこと言い出すとは … 」

諸岡を見送りに外まで出て来た泰介は、ふ久のことを詫びました。

「いや ~ けど、うれしかったわ」

「えっ?」


振り向いた諸岡は笑っていました。

「ふ久さんがどういうつもりか分からんけど …

行く前に、ごっつうええ思い出、もろたわ」


出征前の諸岡を家に誘ったことを悔やみかけていた泰介は、その言葉で救われた気がしました。

… … … … …

一応、ふ久の騒動は片がついたはずなのに、悠太郎の苛立ちは収まってはいませんでした。

腕を組んで部屋の中を行ったり来たり … め以子が目で追っていることに気づくと、突然まくしたてはじめたのです。

「何なんですか?

さっきからの真剣みに欠ける態度は?!」

「欠けてました?」


自分では、そんな気持は毛頭なかったのですが …

「あなた、ふ久が言い出したこと分かってますか?!

出征する人のとこ、嫁ぎたい言い出したんですよ!」

「 … そうなんですけど、何でか微笑ましい気持ちになってしもうて」


その言葉が余計に悠太郎の神経を逆なでしました。

「大体、あなた気づかなかったんですか? ふ久の気持ち」

「いや … せやかて、ふ久ですよ?

ふ久がそもそも男の人に興味を持つなんて … 」


話をしながら、め以子ははたと気がつき、膝を叩きました。

「だからですよ ~ だからですよ!

ふ久が人に興味を持つなんて、初めてなんですよ … そうですよ、初めてですよ ~ 」

「お母さん、その方向はあり得ませんから」


悠太郎は釘を刺そうとしましたが、め以子はひとりで悦に入った状態です。

「これは万一の機会やないでしょうか?」

「諸岡君は戦争に行きはるんですよ?!」


しかし、め以子の耳には悠太郎の言葉は入って来ません。

「今後、ふ久は人に興味を持つことなんてあるんでしょうか?」

「食べることも、ひと苦労のご時世ですよ?!

ふ久が … あの浮世離れした子が、子供を食べさせて行ける思いますか?」


それは、め以子も心配でした。

ようやく、少し落ち着いた悠太郎。

「とにかく収まったんですから寝た子を起こさんとって下さいよ … 」

… … … … …

< そうなんだよね ~

事情はどうあれ … 可哀そうに、思いっきりお断りされたんだよね ~ ふ久は >

それは紛れもない事実でした。

朝の食卓、誰もがふ久に気を遣って … かといって、慰めるのも憚って、下手なことも言えずに、結局無言になっていました。

「 … や、やっぱり、うちはええな ~ 」

これでは却って不自然だと感じたのか、泰介がぎこちなく話題を振りました。

「今時、これだけ揃えるの大変と違う?」

食卓に並んだおかずをほめることくらいしか思い浮かびませんでした。

「大変やったで」

「それ大変やとおもうで」


活男や啓司が話を合わせましたが … 当のふ久はさておき、悠太郎とめ以子は黙り込んだままです。

「なあ、お母ちゃん?」

「まあ、な ~ 」


聞こえてはいるようですが、気のない返事では、会話が続きません。

… … … … …

「 … さっきからもの凄い圧力を感じるんやけど?」

ふ久の言葉にお静は堪え切れなくなって昨日のことに触れました。

「せやかて、あんた … あないな断り方、女として侮辱されてんで」

「そんなこと言うてもしゃあないやんか」


口を尖らせたふ久。

「断られて幸いですよ … 」

悠太郎のひと言でまた皆、無口に逆戻りです。

… … … … …

例のごとく、うま介に顔を出しため以子は桜子に一部始終を報告しました。

「 … と、いう訳なのよ」

「昔のあんたたちみたいね ~ 」

「そうなのよ … もう懐かしいんだか、照れくさいんだか … 」

「その諸岡君って子は出征するから遠慮してる感じなの?」


それはめ以子にもはっきりとは分かりませんでした。

「通天閣は何て言ってるの?」

「子供が出来たとこで育てられるかって … 」


桜子は首を傾げて言いました。

「私は大丈夫だと思うけどな ~

ふ久ちゃんって、自分でこうだって決めたら、もうテコでも動かないじゃない?」

「うん」

「自分で決めたことなら、案外ちゃんとやるんじゃないかな … って、私は思うけど」


そう言われてみれば、め以子もそんな気がしてきました。

「そうね ~ 自分のやりたいこと絶対譲らない … もんね … あの子 … 」

口にしているうちにだんだん不安になって来ため以子でした。

「どうしたの?」

「何か、すっごい … 危険な予感がしてきて … 」


… … … … …

め以子の予感は的中していました。

諸岡の家に押しかけたふ久は、強引にも部屋にまで入り込んでいたのです。

「昨日、お断りしたはずですけど … 」

困惑する諸岡。

「関係ない … 諸岡君の気持ちは突き詰めるとどうでもええ」

その堂々とした物言いに完全に飲まれる諸岡。

「そんな風に見られへんいうのは不安要素やけど … まあ、そこは実験や」

ふ久は腰を下ろすと、ブラウスのボタンを外し始めました。

「ふ、ふ久さん … いけませんっ!」

慌てて止めようと、手を出したはずみにふ久の手を握ってしまった諸岡。

「!!」

… … … … …

時を同じくして、泰介も諸岡の家を訪ねていました。

「ああ、西門君、昨夜はどうも ~ 」

応対に出たのは諸岡の母・キヨでした。

「あの、先輩いてはりますか?」

「ああ、今、お姉さんと上いてんねんけど」

「えっ?」


泰介は我が耳を疑いました。

キヨが言うには、ふ久は「ふたりきりで話がしたい」と言って部屋に上がっていったらしいのです。

「何かあったの?」

割と呑気な母親でした。

「 … 先輩と姉がふたりきりですか?」

「ふたりにしたら、あかんかったやろうか?」


… … … … …

泰介はキヨに断ると2階へと上がり、諸岡の部屋の前に立ちました。

「 … 先輩、西門です」

声をかけると、返事の代わりに諸岡の悲鳴のような声が聞こえてきました。

「止めてください ~ 」

「せ、先輩?!

… 開けますよ!」


思いきり襖を開けた泰介がそこで見た光景は … ?!

… … … … …

桜子の意見にも背中を押されため以子は、ふ久を応援することに決め、悠太郎の説得を試みることにしたのです。

その夜、家に持ち帰った仕事をしている夫の背中に話しかけました。

「子供のことは心配ですけど … 何とかなると思うんですよ。

言うても、ほら、歩いて行ける距離ですから、私も手伝いに行けるし … 」

「嫁ぎ先にズカズカ上がり込むつもりですか?」

「そこは、まあ ~ 向こうさんに嫌がられたらアレですけど … 泰介から聞く限り、諸岡君のお母さんとは私、馬が合いそうな … 」

「あなたと合うても、しゃあないやないですか?!」


悠太郎には、め以子の考えの浅さが見えて、ことごとく反論を続けていました。

「 … 諸岡君、ええ子やないですか ~ あんなええ子中々おらんでしょう?」

そんなことは悠太郎だって、百も承知のことでした。

「ふ久が可愛いのは分かりますけど、もう少し冷静になって … 」

突然振り向いた悠太郎、声を荒げました。

「僕は何も感情的に反対している訳やないですよ!」

十分感情的になっていました。

「せやけど …

数ヶ月しか一緒にいられない、その後は戻って来るかどうか分からない … 子供がでけたら、ふ久は確実に苦労するでしょう!

勉学の道かて断たれてしまうでしょう」

「そこは … 何とか私が」

「僕もあなたもどうなるかなんて分からないでしょう!

… 健康でいる保証もないでしょう!」

「健康には自信はあります、私」


悲観的な悠太郎と楽観的過ぎるめ以子では、話はいつまで経っても平行線のままでした。

「とにかく、いくら娘の希望いうたかて、こんな結婚認めるのは親のすることやないです。

親の仕事を放棄したのも同じです」

「親の仕事 … 」


… … … … …

その言葉にめ以子は引っかかりました。

「娘の気持ちを握りつぶすんが … 親の仕事なんでしょうか?」

「気持ちいうたかて、諸岡君が出征することになって急に言い出したことやないですか …

状況に酔うてるだけでしょ?」


その時です。

襖の外から泰介が声をかけてきました。

「お父さん、お母さん、ちょっとええ?」

… … … … …

部屋に入った泰介は二人の前に正座して畏まりました。

「何や?」

不審な顔をしている両親に向かって改まって言いました。

「 … これから、僕が今日見てきたことを話します」

「見てきたこと?」


身構えるふたり。

「見たまんま話すから … 怒らんと、最後まで聞くて、約束してください」

緊張しているのか、途切れ途切れの言葉が堅苦しくなっています。

「ああ … 」

父がうなずいたのを確認して、泰介は話を始めました。

「今日、僕、諸岡さんのとこ行ったんや」

「何で?」

「諸岡さん、実はまんざらでもないんかな ~ って、思うて … ホンマの気持ちを聞きに行った」


泰介がそう感じたのには、それなりの理由があったのでしょう。

「ほしたら … 姉ちゃんが … 」

「 … ふ久が?」


身を乗り出しため以子。

「夜這いしとった … 」

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2014年02月17日 (月) | 編集 |
第115回

地下鉄工事が正式に中止と決まって、悠太郎は『防災改修課』への異動を命じられました。

「大まかに言うと、空襲時の火事や延焼から人を守るための仕事なんです」

「雲の上のお義母さんがくれはったお仕事かもしれませんね」


め以子の言うように、悠太郎も自分がこの仕事に就いたことに運命的なものを感じていたのです。

「 … これは、僕がやるべき仕事なんやと思います」

< ですが、悠太郎は、この『防火改修』が実際に何を示すことになるのか、この時はまだ気づいておりませんでした >

… … … … …

< 昭和19(1944)年4月、大阪では空襲に備え、防火帯を確保すべく、建物疎開が行われたのでございます >

つまり、条例で定められた地域の住人に移転先を提供し、住宅を撤去する … それが、建物疎開でした。

対象となる住民を集めた説明会が開催され、悠太郎は部下の中西と共に臨みました。

「 … ということで、皆様のお住まいの地区は建物を疎開 … つまり取り壊すことが確定いたしました」

説明を終えた大西が、住民に移転証明書への署名を求めようとすると、納得できない住民たちが騒ぎ始めました。

「わしは、半世紀あそこに住んでるんやど!」

「生活どないしてくのや?!」


変電所の付近には防火帯を設置するよう、条例で定められていることを中西が懸命になって伝えても、騒ぎは一向に収まろうとしません。

「これから、どこで商売しろいうんや ~

あんたら、わしらに死ね言うんか?!」


会場内は更に、けんけんごうごう …

… … … … …

すると、今まで黙って聞いていた悠太郎が突然、思いきり机を叩きました。

「どの道、死ぬことになる思いますが … 」

静まり返り、悠太郎の言葉に息を飲む住人達。

「米軍が本土に来た場合、変電所は必ず爆撃の対象になります。

電圧塔はなぎ倒され、切断された高圧線からは電流が漏れ出し … 皆さんのお住まいは跡形もなく、焼き尽くされることでしょう … 」


深刻な顔の悠太郎から実感を込めた口調で聞いた現実に恐れをなした住人達は次々に移転証明書に署名したのです。

「課長、こういうのお上手ですよね?」

回収した署名をまとめながら中西は感心しています。

「やらんと皆死ぬやろ … 」

悠太郎は、ニコリとも笑わず席を立ち、会場から出て行ってしまいました。

… … … … …

< 建物疎開が行われる一方でお国の『食物大増産』の掛け声に道路は掘り返され、芋畑に …

残った者は男も女も子供も勤労奉仕で軍需工場などに駆り出され、働きづめ … >

活男も工場での作業が相当きついようで、以前のように台所でめ以子の手伝いをすることも減っていました。

< そして、主婦の悩みは … もちろん、今日のご飯でございました >

「これ何やろ?」

集会場に届いた配給用の見慣れない穀物を見た伸世が尋ねると …

「まあ、よう分からんけど ~ 食べられるんやろ」

口に入れることができれば、御の字というように多江が答えました。

「これ使いにくいんよね ~ 大豆粉」

「生臭いし、煮ても焼いても食われへん」


房子と伸世の会話を聞いたみねはめ以子なら何か工夫しているのではないかと思たようです。

「ああ、これね … お肉みたいの作れるんですよ」

「えっ、お肉?!」


め以子の話しに皆は、興味津々です。

「大豆粉と小麦粉を練り合わせて蒸すんです」

「へ ~~~~~ 」

「それホンマにお肉の代わりになるん?」


感心しながらも半信半疑の一同。

「まあ … 言うても、別もんなんですけどね」

苦労を共有している連帯感からか、婦人会の会員同士の仲は円滑に上手くいっているようです。

… … … … …

「ほな、お先失礼します ~ 」

作業を切り上げて、いそいそと帰っていった時子。

「時子さんとこのアッちゃん、お嫁に行くねんて」

時子と親しい多江からその話を聞いて、め以子は驚きました。

「まだ16かそこらちゃいましたっけ?」

「まあ ~ 男どんどん居らんようなるさかい、早うやらんと孫も抱けんさかい … 」

「 … ご時世ですね」


うなずき合う女たち。

… … … … …

「やっぱし火無しコンロは煮えへんやん」

火無しコンロとは … 木の箱にわらを詰めて内側に布を敷いたもので、煮立った鍋をこの中に入れて後は余熱で仕上げるという調理法です。

燃料節約のため、試してみため以子ですが、鍋の中のジャガイモには上手く火が通りませんでした。

気づくと、ちょうど帰宅したふ久がそれをじっと見つめていました。

「断熱が不十分なんやと思うわ … 作りが雑」

いつもながら的確な指摘。

「ほな、何とかしてくれまっか?」

しかし、ふ久は無言で自分の部屋に引っ込んでしまいました。

「ただいま ~ 」

ふ久と入れ替わりに帰って来たお静は、やけにご機嫌でした。

台所の入口に立って気味が悪いほどニコニコ笑っています。

「どないしたんですか?」

何かいいことでもあったのかとめ以子が尋ねると …

「あとでな … 」

思わせぶりに行ってしまいました。

… … … … …

「ふ、ふ久に縁談ですか?」

夕食後、お静は家族がそろった前でふ久に縁談を持ってきたことを公表しました。

「せや、木材問屋の次男坊でな ~ ごっつう男前やねん」

「お義母さん、ひ孫抱きとなったちゃいますか?」


啓司の言葉に含み笑いしたお静。

「とにかくな ~ ごっつう男前やねん」

『男前』を繰り返すお静は写真を取り出して皆に聞きました。

「見る ~ ?」

手渡された写真を目にしため以子は、首を傾げ … それを希子にも見せました。

ふたりの微妙な反応がお静は面白くありません。

「何や、その顔?」

「いや … そんなにねえ?」


顔を見合わせため以子と希子。

「あんたら、目がどないかしてるんちゃうか?!」

め以子から写真を取り上げると、そのまま、ふ久の目の前に差し出しました。

「どやろ、ふ久? この人」

我関せず、計算式を解いていたふ久は、ようやく顔を上げてその写真を目にしました。

国民服を着て略帽を被り、眼鏡をかけた写真の青年、お静の言うように『ごっつう男前』かどうかは、め以子たちの態度通り微妙でしたが、かといってそう悪い印象はなく真面目な好青年といった感じでした。

「 … どない思う?」

「地下鉄に似てる」


凡人には理解できないふ久独特の感想でした。

… … … … …

「ふ久は嫁にいかんでええ思います!」

さっきから何か言いたげだった悠太郎が声を大にしました。

「ええですか?

ふ久は勉強したい子なんですよ!

家庭に入ったら、いざ勉学できる状態になった時、動けへんようなるでしょ?!」

「そん時はそん時やがな ~ 」

「大体この人、兵隊行ってしまう … 」


言い争っているふたりのことなど気にせず、ふ久は席を立ってしまいました。

全く興味のないことは、例え自分の縁談であっても関係ないのです。

… … … … …

悠太郎は仕事のことで少し苛立っていました。

空襲に備えるためとはいえ、建物疎開は住人を長年住んでいた場所から追い出すことには変わらない … でもそれは人命や街を守るためという葛藤に苦しんでいます。

白地図上の移転証明書に署名した住居を塗りつぶしていると、つい力が入って赤鉛筆の芯が折れてしまいました。

何とも言えぬ感情に頭をかきむしる悠太郎。

… … … … …

「あんたも悠太郎さんも、ふ久のことどう考えてんの?」

一生懸命なのは、お静だけでした。

本人はさておき、両親である悠太郎もめ以子にその気がなければ縁談など進みません。

しかし、め以子の返事は意外なものでした。

「相手が気の毒やと思うんですよ」

「 … 何で?」

「あの子、人に興味ないやないですか ~ 

旦那さんが何言うても、となりでず~っと計算されてるんですよ。

もう可哀そうやないですか?」


… あり得ることです。

「そんなん、婿さん出来たら変わるて!」

ふ久に限って、それはない気がするめ以子でした。

「ふ久ちゃんって … 気になる人とかいたことあるんですかね?」

ふたりの話を聞いていた希子はふとそんなことが気になって口にしていました。

… … … … …

本人に確認してみようということになって、ほとんど好奇心で3人はふ久の部屋を訪れたのでした。

ふ久は机に向かって計算式を解くのは止めず、背中を向けたままで答えました。

「家族は皆好きやし、うま介の皆も好きやで」

ふ久の答えはどこか論点がずれていました。

「そういうのやないんで … 殿方や」

少し突っ込んで聞いため以子。

「室井さんや馬介さんをどう思うかいうこと?」

ふ久の周りにはどれだけ対象となる男性がいないのでしょうか …

「そやのうて … 何と言うたら … 」

め以子は希子に振りましたが、希子も上手いこと言えずお静の顔を見ました。

「 … 恋や!」

「恋?」

「せや … ふ久、恋ってしたことあるか?」


ふ久が初めて、計算式を解いていた手を止めました。

鉛筆を置いて、顎に手を当てて考え始めたのです。

しばらくして、ふ久は机から離れて、3人の前に正座しました。

「あの … 何をもって人は『恋』言うん?

『恋』の必要条件って何?」


… … … … …

「何やろ?」

顔を見合わせた3人。

「理屈ちゃうねん!

何かこう、カ~っと熱うなって、この男や ~ みたいな」


お静の表現に異を唱えるように希子、そしてめ以子。

「じんわりきて … この人 ~ ちゃいます?」

「何となく気になって、気になって … とちゃいます?」


3人三様、皆それぞれ自分の経験を口にしただけ、違うのは当たり前でした。

しかし、ふ久は余計に悩んでしまいました。

「おらん時にどうしてるやろ? って考えてしまうような … 」

その時、お静が思いついたのは恋する者、ほぼ誰にでも共通する気持ちでした。

うなずき合う3人。

「 … そういう人おらんか?」

お静は改めて尋ねました。

少し考えていたふ久がハッとした顔をしました。

「竹元さん … 」

ため息をつく3人。

「ふ久 … まあ、それはな、あんたやのうても皆気になってる」

「この国から独立する」という書置きを残して、大学を辞めてしまった竹元は、消息不明だったのです。

… … … … …

「おおきにごちそうさん!」

「今日も上手かったで」

「明日も来るからな ~ 」


ごちそうさんのおやつを食べ終わって帰る子供たちを玄関で見送るめ以子。

「たまには来んでええで ~ 」

本音とも取れる言葉を吐いた時、笑いながら入ってきたのは … 泰介でした。

「えらいこと人数増えとるな ~ 」

< 泰介は高校2年生、京都で寮生活をしていました >

数ヶ月ぶり、突然の帰宅でした。

「 … うん、ちょっと用があって」

「戻るんなら、戻るて言うてや ~ びっくりするやんか」

「もっとびっくりすることあるで … 」


泰介が門の外へ合図すると … 略帽、国民服姿の青年が顔を出しました。

「あっ、諸岡君!」

… … … … …

「いや ~ ホンマにご無沙汰してもうて」

勤労奉仕から帰宅したふ久は、玄関の前で懐かしいその声を耳にして、慌てて家に入りました。

台所から声の主、諸岡の姿を見て、その場に立ち尽くしたふ久。

「諸岡君は、牛カツ以来かいな?」

「さすがに母に叱られまして … 」


その時、ようやく諸岡はふ久の姿を目にとめました。

「ふ久さん、お久しぶりです」

強張った顔で小さく会釈したふ久でした。

諸岡は大してふ久のことを気にかけずにめ以子との話に戻りました。

「それで、これ … 」

持参した紙包みを差し出しました。

それは、今では貴重な素麺でした。

「ええのこんな?」

「はい、母が持って行けって」


… … … … …

「お兄ちゃん! 諸岡さんも」

活男も戻って来て、ふ久と共に話の輪に加わりました。

「お兄ちゃん久しぶりやな ~ 」

「せやな ~ 元気してたか?」


久しぶりの再会を喜ぶ西門兄弟。

諸岡はふと、ふ久からの視線を感じました。

目が合った時、昔、ふ久がくれた言葉を思い出しました。

『ふたりの青春は私の青春やから … 』

結局、卒業と同時西門家とは疎遠になっていたので、ふ久とも会うことはありませんでした。

… … … … …

「諸岡さん、今日はどないしはったんですか?」

「ああ、実は … 」


活男の質問に諸岡は泰介と顔を見合わせました。

『西門、お前に会いに来たんや』

そんな様子を見ていたら、ふ久はまた昔のようにふたりの会話を妄想して頬を緩ませました。

ふ久は、このふたりが一緒にいるところを見ているのが好きでだったのです。

しかし、諸岡の話しはそんな妄想など吹き飛ばしてしまいました。

「 … 先日、徴兵検査を終えまして … 出征することになる思います」

「最後に挨拶に来はったんや」

「それは … おめでとうございます」


それは出征をする者への礼儀なのですが、め以子はやっとの思いで伝えました。

泰介と同じ世代の諸岡の出征に少なからずショックを受けていたのです。

「こうなったら、手りゅう弾、剛速球で投げ込んできます」

諸岡は雰囲気を暗くさせないようにと気を遣ったのでしょう。

無理に笑顔を作った一同。

「今日は、ご飯食べてく?

… 言うても、何のごちそうもでけんけど」


め以子の誘いに諸岡は、あの頃、泰介によくからかわれた決まり言葉で答えました。

「はい、お相伴させてもろうてもええですか?」

… … … … …

自分の部屋に入ったふ久は考え込んでいました。

諸岡が出征すると聞いた時の気持ちは一体何だったんだろう?

そう言えば、昔 … 泰介と諸岡のキャッチボールを見ているだけで、どうしてあんなに楽しかったんだろう?

< もしかしたら、もうあの楽しい時間は、戻って来ないかも知れないね … >

… … … … …

今もまた、ふたりは同じようにキャッチボールをしていました。

そして、ふ久も玄関からそれを見ていました。

< ふたりを見るのは、これっきりになるかも知れないね >

頭の中で懸命にこの疑問を解く計算を続けているふ久でした。

ふ久は気づきました。

自分は、諸岡のことだけを見ていたことを …

玄関を出て諸岡に近づいていくふ久。

… … … … …

横に立って自分をじっと見つめているふ久の視線を諸岡は感じました。

「ああ、投げてみますか?」

当然、ふ久はボールを投げたい訳ではありません。

少しづつ、諸岡に迫っていきます。

戸惑う諸岡。

「諸岡君 …

うち、諸岡君のこと複製したい」

「ふ、複製って?」

「諸岡君の子供が産みたい」


照れもなく、無表情でそう言ってのけたふ久。

一瞬、ふ久が何を言っているのか判断ができなかった諸岡でしたが …

「え" ~~~ ?!」

改めて考え直すと、ふ久は面と向かってとんでもないことを口にしていたのでした。

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2014年02月16日 (日) | 編集 |
それでは、次週の「ごちそうさん」は?

昭和19年。め以子()は大豆の粉で肉の代用品を作るなど、たくましく生きている。悠太郎(東出昌大)は建物疎開を進める仕事に従事するように。

ふ久に縁談ですか?

静(宮崎美子)がふ久(松浦雅)の縁談を持ってきて、悠太郎は猛反対。

泰介(菅田将暉)の先輩・諸岡(中山義紘)がまもなく出征することになる。明るくふるまう一同。

カ~っと熱うなって、この男や、みたいな

だが、ふ久が諸岡の子どもを産みたいと言い出し驚かせる。結婚はしなくてもいいとまで言い、悠太郎を怒らせるふ久。

何やってるんですか ~

め以子はふ久に味方したくなる。諸岡はきっぱりと断る。ふ久は諸岡の家におしかけ、精一杯気持ちを伝える。

子供欲しいんやったら、急がんとあかんでしょ?

泰介の話からふ久の愛情と真剣さが伝わり、悠太郎とめ以子はふ久を連れて諸岡家に向かう。

軍需工場で働く活男(西畑大吾)が、海軍でコックになれればと主計兵に志願したいと言い始める。

ほんまもんのアホなんか ~ あんたは?!

断固として許さないめ以子。そんな折工場で事故があり、志願をあきらめるかと期待するが、活男の決意はますます強まる。悠太郎は戦時中でコックの修業ができない活男の苦しさを感じ取り、志願を許す気持ちに。

お母ちゃんみたいになりたい

料理がしたいのなら、と、ふ久と諸岡の内祝いの支度を活男に手伝わせるめ以子。二人は大豆の粉を活用して精一杯のごちそうを用意する。が、内祝いの後、め以子は活男が志願する本当の理由を知ることに。

ごちそうさん 公式サイト、YAHOO!テレビガイド他を参照)

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2014年02月15日 (土) | 編集 |
第114回

朗読を終えた室井を待っていたのは、怒り心頭の情報局役人でした。

「どういうつもりだ? 台本にないことを放送して!」

「我々もその … ほぼ終わるまで気がつかず … 」


平身低頭のラジオ局の幹部たち。

マイクの前にうなだれて座ったままの室井に役人はにらみをきかせて言いました。

「ただでは済まんからなっ」

… … … … …

「 … けど、寝てはりましたよね?」

口を挟んだのは啓司でした。

「そちらも職務上よろしゅうないんやないですか?」

「そりゃ今問題やない!」

「子供の番組の台本なんて、上の人は見てはらへんやろうし … 騒ぎ立てる方が、ことを荒立てることになるんやないですか?」


啓司の言う通り、職務の怠慢が明るみに出れば、処分の対象となりうる行為でした。

「しかし、こんな非国民的内容 … 」

ただ、この場だけのことでなく、公共の電波で放送されていました。

役人も「はいそうですか」と簡単に見逃す訳にはいかないのです。

「どこが非国民的なんですか?」

すると、今度は希子が熱弁を振るい始めました。

「 … 海の中で昆布の出汁は無限に広がってるんですよ?

一見、引き分けのように見せながらも、昆布出汁はすべてを包み込んでるんです … これは秘かなおでん皇国の大勝利やないですか?」


役人は苦虫を噛み潰したような顔でそっぽ向いていますが、希子は構わず話し続けました。

「世界が大日本帝国を中心にまとまる、これぞまさに『八紘一宇』の精神やないですか?

だからこそ、どうしても伝えたかったんですよ ~ ねっ??」


すかさず室井に振る希子。

こくこくっとうなずいた室井。

「本当に主義者じゃないのか?!」

「 … 違います。

あの、僕は軍国歌謡だって書いてますし … リンゴだってもらってます。

大日本帝国万歳ですよ ~ 」


… … … … …

結局、室井は軽く注意されただけでお咎めなし、啓司と希子が機転を利かせたおかげでした。

無事にうま介へ帰還すると、皆は安堵の表情で迎えました。

「よかった ~ 戻って来た」

「大丈夫だったの? あんなことして … 」


ホッとしながらも、まだ不安そうな桜子に室井は尋ねました。

「受けた?」

「?」

「 … 笑った?」

「えっ … まさか、笑かすためだけにやったん?」


驚いたというより、あきれている馬介。

「桜子ちゃん、泣いてたから ~ 」

室井のその言葉を聞いて、桜子はまた泣き出してしまいました。

「あっ、あっ … ちょっと、ちょっと … 泣かないで、泣かないで ~ だめ、だめだめ」

それは、うれし涙でした。

… … … … …

その時、め以子が店に慌ただしく入って来ました。

「あの、休みの日とか、早じまいの日でええから、ここを使わせてもらえることってできる?」

挨拶もそこそこにそんなことを頼んだのでした。

… … … … …

数日後。

め以子は、婦人会の会合がお開きになりかけたその時を見計らって提案をしました。

出席者全員に配った紙には『共同炊事をしませう』の文字が見えます。

室井の朗読に感動しため以子が、思い立ったのが『共同炊事』だったのです。 

「うちの隣組でも『共同炊事』いうんをやってみませんか?」

以前にもそんな話が出たのですが、場所がなくてあきらめた経緯がありました。

「場所は確保できたんで …

皆でお料理すれば、木炭の節約になるし、材料も余ってるもんと足らんもんの都合つけやすいし … 一緒に作って食べたら、美味しいし … 集まったら、ほら暖かいし …

どうでしょう?」


… … … … …

「 … 共同炊事って、奥さんも酔狂やな ~ 」

悠太郎は、市役所に顔を出した藤井にその話をしました。

「そうですか?」

「近所のおばちゃん、揃い踏みやろ? … どんな地獄の一丁目や」

「うちのも、結構なおばちゃんのような気しますけど」


ひと息ついた藤井は、高速鉄道課の部屋の中を見渡しました。

「 … 人、減ったな」

席についてる人間もまばらです。

「兵隊にとられたり、軍の仕事に回されたりで … まあ、これからは業務自体もひとつ減りますし」

「やっぱり、あの噂、ホンマなん?」

「 … もうすぐ発表になる思います」


あの噂とは … ???

… … … … …

め以子の提案は受け入れられて、うま介を借りた共同炊事は行われることに決まりました。

「こんなに小麦粉出すん?」

活男が地下室から運び出して来た小麦粉のビンを見て、意外に思った泰介が尋ねました。

「取りあえず、主食になるものは誰かが出さんと … 皆さん、何持って来てくれはるか分からへんし」

言いだしっぺなので、ある程度仕方ないことなのです。

そこへちょうど帰宅した悠太郎が、風呂敷包みを手に台所に入って来ました。

「何、それ?」

「今日、僕宛てに差出人不明で届いたんです」


風呂敷を解くと、中からめ以子のお見覚えのあるツボが出てきました。

「あっ、これ … 」

思わず、ツボを手に取るめ以子。

「心当たりあるんですか?」

それは、竹元にニンニクの梅肉エキス和えを贈った時に使用したツボだったのです。

「そんなもん贈ってたんですか?」

「 … ケンカしはったって聞いたんで、取りあえず付け届けて思うたんですけど … ツボだけ取られて追い返されてしもうて」


事情を話しながらツボのふたを開けてみると …

「あっ?!」

… … … … …

共同炊事の日がやって来ました。

時間にはまだ早いので、集まっているのは、め以子の他は、婦人会の仲間では、みねひとり … あとはうま介の住人たちです。

テーブルに置かれた脈絡のない食材を見て、馬介が尋ねました。

「しかし ~ これで何作るの?」

小麦粉、ニンジン、カブラに大豆、油揚げにスルメ …

そう思ったのも仕方がないことです。

「め以子?」

上の空のめ以子に桜子が声をかけました。

「 … 皆、来てくれるかな?」

参加は自由なので、最近不興を買っているめ以子の提案ということで来ない人もいるかもしれないのです。

そこへ伸世が店に入って来ました。

「出せるんネギしかなかったんやけど … ええ?」

「もちろんです!」


すると、続いて房子がカツオ節を、時子は昆布を持って入って来ました。

その後も、次から次へと人が訪れ、め以子の心配は取り越し苦労に過ぎませんでした。

… … … … …

小麦粉は馬介がうどんを打ち、房子のカツオ節と時子の昆布で出汁を取り … 和気あいあい、共同炊事が始まりました。

「 … うち、何したらええ?」

め以子が、その声に顔を上げると、入口に多江が立っていました。

「高山さん?!」

「これは絶対いるやろ?」


ふてくされたような顔で多江が差し出したものは … 新聞紙に包まれた木炭でした。

「おおきに ~ 火口足りなかったんです … ごっつう助かります」

「ふんっ … 何作るん?」


婦人会の皆は、多江が照れ隠しのため素直になれないのが分かっていて、笑いをこらえながら手を動かしています。

「ああ、カレーうどんです」

め以子が竹元から返って来たツボのふたを取って見せると、そこには目一杯のカレー粉が入っていました。

# そう言えば、め以子は竹元曰く『カレーの女神』でした。

… … … … …

夜になり、うま介には婦人会の仲間の家族も集まって来て … ひとつの鍋で作ったカレーうどんを皆揃って味わいながら食べたのです。

「美味しい!」

「温まるわ ~ 」


『一緒に作って食べたら、美味しいし … 集まったら、ほら暖かいし』 … め以子の描いた通りになりました。

「けど、あんなに小麦粉出して、大丈夫なん?」

「 … ほんなら、今度はよろしゅうお願いします」


時子の疑問も、め以子は軽く受け流しました。

… … … … …

「君か ~ あんなとんでもない話作ったんは?!」

同じテーブルを囲んでいたためか、室井は勝治に先日の滅茶苦茶な朗読の張本人だとバレてしまいました。

「はあ、つい … 」

勝治はああいうことにはうるさい方なのです。

「あきませんでした?」

向かいに座っていたる希子が微笑んで尋ねました。

「けしからん … けど、笑ってもたわ」

どっと笑う一同。

同じ釜(鍋)の飯(うどん)を食べているという気がなせるのでしょうか … 皆、和やかに語り合い笑い合っています。

「実際、苦情とか来なかったの?」

桜子は少し気にしているようです。

「ああ、何軒かは、お叱りの言葉ありましたけど …

皆さん、心の底ではスカっとするとこ、あったんちゃいますかね えへへ」

「君が一番、スカッとしてそうやけどな ~ 」


こんな楽しそうに話す希子を久しぶりに見たような気がして、啓司はホッとしていました。

「まあ、そうかもしれませんね」

… … … … …

め以子は、調理場の隅でひとりぼっちでうどんをすすっている多江を見つけて、近寄っていきました。

「あの ~ 高山さん、おおきに … 木炭、ホンマに助かりました」

ペコリと頭を下げました。

「 … これでいけずは帳消しやで」

言い方や態度は、つっけんどんのままですが、多江なりに反省した点もあったのでしょう。

「けど …

言うとくけど、水かけてもうたんもたまたまやし、告げ口したんもうちとちゃうで!」

「えっ?」


それは、今の今まで多江のいけずだと思っていました。

「やり返されたら困ること、やるかいなっ!」

ハッと気づくめ以子。

「ほな、高山さんも?」

多江は、バツが悪そうな顔をしてソッポを向いてしまいました。

「そうですよね ~ そうやなかったら、あんなに木炭 … 」

慌ててめ以子を引き寄せた多江。

「あんたは声大きい ~ 」

多かれ少なかれ誰でもやっているとは思っていましたが、多江も闇買いをしていたことを知って、急に親近感を覚えため以子でした。

どうやら、仲直りできたような様子を見て、悠太郎もひと安心です。

うどんをすすると、隣でお静が幸せそうな声を上げました。

「温まるな ~ 」

「 … ホンマですね」


… … … … …

「水かけてもうて、すんませんでした」

「私、風邪ひいたんやで … 分かってる?」

「存じております ~ 美味しいですね」


調理場の隅でひそひそ話しながら、うどんをすするめ以子と多江。

いつの間にかわだかまりは消えてなくなっていました。

… … … … …

「どないしたん?」

文女が洗い場に食器を片付けてくると、活男が空っぽになった鍋をじっと見つめて悩んでいました。

「これ、誰が誰にごちそうさん、言うたらええの?」

それを聞いて、後から入って来た、ふ久と泰介も考え込んでしまいました。

… … … … …

考えた結果 … ごちそうさんは、この鍋に言おう ~ ということに相成りました。

一同、テーブルの上の鍋を囲みます。

「ほな、皆さんで … 」

勝治の合図で皆、鍋に向かって一斉に頭を下げたのでした。

ごちそうさんでした!

め以子が提案した『共同炊事』は見事成功を収め … 婦人会の連中は、すでに次の『共同炊事』に思いをはせるのでした。

… … … … …

そして …

放課後のごちそうさんも復活しました。

「うどんをカリッとさせて、カレー粉まぶしたんや」

子供たちは「辛っ! … けど、美味い」などと騒ぎながらも喜んで食べています。

竹元から届いたカレー粉、最後の一握りでこしらえたおやつでした。

「うん、終わったな … 」

ツボを覗いて、空になったことを確認しため以子、今まで全く気がつかなかったのですが、ふたの裏にこよりが貼りつけてあるのを見つけました。

「?」

… … … … …

「 … 今日、地下鉄の工事が正式に中止になりました」

その日、帰宅した悠太郎は壁に貼った駅舎の写真を見ながら、寂しそうにそう告げました。

「資材も一切回って来んようになってしもうたんで …

もう限界でした」


うつむいた悠太郎を見て、め以子は先ほどの子よりのことを思い出しました。

「悠太郎さん … 

カレー粉のふたに貼ってあったんです」


手渡されたこよりを広げる悠太郎。

『これ以上、くだらない妥協の産物が増えなくて何よりだ

工事の中止はむしろ祝福されるべきだが、とりあえずはカレーでも作ってもらえ』

そこには、竹元からのメッセージが書き込まれていたのです。

カレー粉は、ニンニクの礼というよりも地下鉄工事中止の情報を得た竹元からの悠太郎へ対する心遣いだったのです。

今の悠太郎にはその気持ちが心にしみました。

「 … はい、そうさせてもらいました」

… … … … …

次の日、悠太郎に異動の辞令が渡されました。

< けれど、思わぬ仕事が残っていたので、ございました >

『 … 建築部・防火改修課ヘノ異動を命ス』

聞きなれない名前の課への異動を命じられたのです。

「防火改修課?」

「本土空襲に備えて、市中の防空防火に備える仕事や」


上司の言葉とその名称に、いよいよ戦火が激しくなることを予感し、困惑する悠太郎でした。

… … … … …

「ちょっと、うちの痩せとるんばっかりやん!」

「よう似合うてはるで ~ 」


伸世が配給された芋にケチをつけると、恰幅のよい房子がからかいました。

「まあええわ ~ 共同炊事ではサービスしいや、あんた!」

相も変わらない婦人会での光景です。

「ちょっと、皆さん、皆さん、ちょっと皆さん!」

慌てて集会所に飛び込んできたみねが1冊の雑誌を皆の前に差し出しました。

「これ見はった?」

それは、め以子の対談が載るはずだった婦人雑誌でした。

みねが広げたページには、あの婦人会本部の副部長・松島の写真が大きく掲載されています。

「ミナミのごちそうさん??」

こともあろうに松島のことをそう紹介していて、対談の内容は、め以子が行っていることをそのまま … 自慢げに話したものでした。

「えっ?」

「なあ、ひょっとして … 密告したんて … 」


みねの言葉に一同の視線が写真の松島に集中しました。

「こいつか ~~~ ?!」

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2014年02月14日 (金) | 編集 |
第113回

め以子たちは、ふ久の指導の下、氷を作ることに見事成功しました。

「おはようございます ~ 氷さん♪」

一夜明けて、鼻歌交じりに台所に下りてため以子は、愛しい氷を一目見ようと容器のふたを開けました。

♪ 氷、氷、氷なのは、間違い …

「え”っ?!」

め以子の顔色が変わって、そのまま固まって動きません。

「 … お母ちゃん、どないしたん?」

後から下りて来た活男が、め以子の肩越しから容器の中を覗きました。

「え” ~~~~ っ?!」

容器の中の氷は跡形もありません。

「溶けてもた … 」

愕然としているめ以子。

「もっかいや ~ 雪集めてくるわ!」

活男が慌てて裏庭へと飛び出して行きました。

「もっかいや ~~ 」

… … … … …

「馬介さん、すんまへん!」

結局、氷を手に入れることができなかった源太が馬介に詫びているところへ、息を切らしため以子が飛び込んできました。

「うま介さ~ん!」

高く掲げた風呂敷包みをテーブルの上で解いて、中から件の容器を取り出しました。

「 … め以子ちゃん、ひょっとして?」

「氷です!」


ふたを開けると、中には立派な氷の塊が!! 

# 何とか間に合いました。

「わ ~ っ!!」

歓喜の声を上げた馬介と桜子。

「何でお前が持ってこれんねん、くそっ ~ !!」

源太の悔しがること悔しがること … してやったりのめ以子です。

# 厳密にいえば、ふ久の手柄なのですが …

… … … … …

うま介に姿が見えなかった室井は、希子から引き受けたラジオ出演の打ち合わせに大阪ラヂオ放送を訪れていたのでした。

「当日も、ああいう風に情報局の役人がついて、まずいことが起きるとあそこで放送を遮断されるんです」

職員がスタジオを案内しながら、ガラス越しの副調整室を方を見て説明しました。

室井が覗くと、役人は腕を組んで居眠りしていました。

「 … お役人さん、寝てるけど?」

「実際は報道以外の番組はあんまり気にしてはらへんみたいで … 」


… … … … …

約束通り、再びうま介にやって来た男は、焼き氷が用意できたことを知ると、たいそう喜びました。

桜子が男の前に運んだ焼き氷に火を灯しました。

「火が消えたら、お召し上がりください … うま介印の焼き氷です」

揺らめく火を見つめる男の目には涙が浮かんで見えます。

「これよかったらどうぞ … 」

男の肩に半纏をかける桜子。

「 … おおきに」

火が消えるのを待って、男はさじで氷を口に運んで … ひと口ふた口食べた後に静かに話し始めました。

「 … 妻が食べたがっていたんですよ」

「奥様が?」

「結局、連れてこられへんうちに病気になってしもうて … 逝ってしまいまして」


男は自責の念にかられているのか、つらそうな顔をしました。

「向こうで会うたら、どんなやったか話してやりとうて … 」

「 … 向こうでお会いになるって?」


桜子の問いには答えず、男がまた焼き氷を食べ始めた時、勢いよく店の扉が開けられました。

… … … … …

入って来たふたりの男は、見るからに只者ではない雰囲気です。

「 … 特高か?」

息を飲むめ以子。

馬介の予想は当たっていました。

「立て!」

ふたりの特高は焼き氷を食べている男の横に立つと命令しました。

「岩見亮介!」

「立て … 」


しかし、男 … 岩見は無視して焼き氷を食べ続けています。

業を煮やしたひとりが岩見につかみかかって引き起こしました。

「ちょっと待ってください ~ 

あの、逃げようともしてはらへんし … これ食べるぐらいええんちゃいますか?」


め以子は止めに入ろうとしましたが、もうひとりの警官に振り払われて、あえなく転倒してしまいました。

「め以子っ!」

「ちょっと待ってください … 」


… … … … …

「馬介さん?!」

その時です。

岩見を引きずり出そうとした特高を追い越して、開け放された扉の前に馬介が両手を広げて立ちはだかったのです。

「どけっ!」

威嚇する特高に怯むこともせず、馬介は大声をあげました。

「焼き氷っ!

皆で一所懸命作ったんです … 僕は、この人が食べてるとこ見たいんです。

器が空なったとこ見たいんです。

… この人のためやのうて、僕のため … 僕らのため … この人に焼き氷食べさせたってください」


いつもただ飄々と笑っているだけの馬介のどこにこんな勇気が潜んでいたのでしょうか …

馬介は帽子を脱いで、その場に土下座すると …

「お願いします!」

額を思い切り床に叩きつけました。

「馬介さん!!」

「お願いします! お願いします!」


何度も何度も …

「 … 死にますよ。

この人、死んでまいますよ!!」


訴えるめ以子、その間も馬介は土下座を繰り返しています。

額には血がにじんできました。

… … … … …

特高のふたりは顔を見合わせ、上司と思われる方が渋い顔をして言いました。

「1分だけやる … 」

馬介の必死の土下座に特高もほだされたのでした。

岩見は今にも泣きそうな顔でテーブルに戻ると、残りの氷を平らげました。

そして、しゃがみ込んだままの馬介の前に正座すると頭を下げました。

「大将、ごちそうさんでした」

「 … また来てや」


< ごちそうさんだね ~ 馬介さんこそ、本当の … >

… … … … …

下手すれば、自分も特高に引っ張られかねない状況をものともしなかった馬介。

それに比べて …

め以子は自分の不甲斐なさを恥じていました。

家の前まで戻って来ると、待ちかねていた子供たちが集まって来ました。

ごちそうさん!」

何も知らない子供たちは、いつものようにおやつをねだります。

「おばちゃんのことを、そんな風に呼んだらあかん!

… おばちゃんは、ただの … あかんたれや」


… … … … …

「アカだったんだね … お客さん」

室井に大村のことを話しているうちに、桜子は黙り込んでしまいました。

「桜子ちゃん?」

涙をためていました。

「何か … くやしい … 

寒さに凍えて、食べるものも我慢して、命まで差し出すこと求められて … 言いたいことひとつ言えないなんて」


目の前で涙する妻を、いつになく真剣なまなざしで見つめている室井でした。

… … … … …

悠太郎が少しずつ手を入れていた地下室の修復もようやく終わりました。

貯蔵庫に納まった食料品を前にしてめ以子は悠太郎に尋ねました。

「こんなことやったらあかんのですかね ~ ひとり占めせんと、もっともっと振舞うべきなんですかね?」

昼間の馬介を見てから、め以子の心に迷いが生じていたのです。

悠太郎は、手近にあったタマネギをひとつ取ると例え話を始めました。

「ここにおむすびがあったとします。

あなたがこれを食べないと死んでしまう … 同じく隣にはこれを食べないと死んでしまう人がいたとします。

このおむすびをその人にあげられますか?」

「その隣の人って、うちの子ですか?」

「いえ、赤の他人です」

「 … 無理でしょうね」


め以子の答えを聞いた悠太郎から返ってきたのは厳しい言葉でした。

「そう言う人が、ええかっこしたかて後が続きませんし … 皆さんも施されたい訳ない思いますよ」

しかし、め以子が今欲しかったのは、そういう類の助言ではなかったのです。

「う~ん、何かないですかね ~ 貧しても、鈍しない方法。

現実的な … 現実にできる範囲で、何かそういう … 」


… … … … …

「何かないかな … 」

日が改まっても、め以子の頭はそのことでいっぱいでした。

夕餉の支度をしていると、泰介がラジオを点けました。

ちょうど『少国民の時間』が始まる時間でした。

「今日、室井さんが出るんやろ ~ 」

「ああ、そうやったっけ?」


そう言えば、室井がラジオで自作を朗読すると希子から聞いていました。

… … … … …

「今日は『おでん皇国戦記』の作者、室井幸斎さんをお招きしております。

おでん皇国は今、ポトフ帝国率いる連合国と戦ってるんですよね?」


希子に促されて、室井は台本を読み始めました。

「そうです … 一度は友好関係を保っていた両国ですが、ポトフ帝国は変質し、おでん皇国を滅ぼそうとしてるんです」

「では、『激突、おでん皇国連合艦隊大海原の勇者たち』の章です」


… … … … …

室井の朗読は始まりました。

「眼前に広がる大海原 … おでん皇国の軍艦、土鍋丸はおでんの勇者たちを乗せ、一路ポトフ帝国へと進んでおりました … 」

… … … … …

「捕えられた白天の丸を助けに来た昆布之介、ところがそこにいたのは白天に化けた薄汚いソーセージ兵であった!」

西門家のラジオからも、室井の名調子が聞こえていました。

ラジオの前に座って聞き入る泰介。

活男も米をつきながら耳はラジオに傾けています。

ふたりとも『おでん皇国戦記』は愛読したくちで、ストーリーはよく知っていました。

… … … … …

「 … もはやこれまでかと思ったその時!」

この後、原作では、神風が吹いて、おでん皇国が勝利を収めるという話でした。

「 … 海の底から、マグマがどど~ん!」

ところが、室井は突然、台本には書いていない話をし始めたのです。

室井の前に座っている希子は何事が起きたのか理解できずに唖然としていました。

… … … … …

「あれ、神風吹くちゃうんかったっけ?」

ラジオの前の少年たちは皆、この活男と同じ疑問を抱いていたことでしょう。

… … … … …

「続いて天まで届くかと思われる水柱 … 」

副調整室の啓司たちも慌てていましたが、幸い情報局の役員は居眠りの最中でした。

「ゴーゴーと唸る水柱にポトフ帝国の軍艦もおでん皇国の軍艦も、諸共引っくり返ってしまったのです!」

「 … 両方とも?」


希子は思わず、室井に尋ねてしまいました。

「そうです!

両者とも引っくり返り、全ての者が水中へと投げ出されました。

ていや ~ えいや ~ こらさ ~ !!!」


… … … … …

室井の熱演にめ以子と活男も台所の手を休めて、泰介と同じようにラジオの前に座り直しました。

「 … ところが、マグマのせいでしょうか?

海はどうにも温まって来ました。

ぽかぽか … ぬくぬく … ぽか ~ ぽか、ぬく ~ ぬく」


物語はどんどんあらぬ方へと進んでいます。

いつしか希子も室井の話に引き込まれていました。

「その暖かさにおでん種の本能がうずきます。

思わず白天の丸がつぶやきます。

『ええ塩梅や ~ 』

タコ衛門もつい …

『ほっこりするな!』

と頬を赤らめます。

さて、問題は昆布之介!!」


… … … … …

その時、まずいことに居眠りしていたはずの役人が目を覚ましてしまいました。

「 … 余りの気持ちのよさについついお出汁を滲ませてしまっているではありませんか??」

啓司たちは役人に感づかれないように平然と構えていますが内心ドキドキです。

希子も気が気ではありません。

「大根の丞が思わず叫びます。

『あかん! 昆布之介はん ~ お出汁出したら、あきまへん!

それ出したら … それ出したら …

まろやかになってまう ~ 』」


… … … … …

「ははは」

「何やこれ?」


話は全然変わっているけど、西門兄弟は腹を抱えて笑っていました。

… … … … …

「ふと気づくと、にっくきポトフ帝国の兵たちも同じことが起こってるではないでしょうか?!」

更にまずいことに、不審に思ったのか、役人が台本を確認し始めてしまいました。

「 … 陽気な性格のソーセージ兵たち、暖かさに踊り出しております。

それを見たおでんたちも踊り出します。

あなたも私も踊れば楽しい!

気がつくと皆笑顔で炊かれていました … 白天も、タコも、大根も、ソーセージも、キャベツも、ニンジンも …

同じ鍋で … 」


明らかに台本と違う内容だと気づいてしまった役人。

「 … それは、大きな大きな、地球というお鍋でございました」

室井の朗読はここで終わりましたが … 副調整室の中は大騒ぎです。

「『少国民の時間』でした!!」

希子が大急ぎで番組を締めました。

… … … … …

< 唖然、茫然 … >

ラジオの前で室井の晴れ姿を馬介と共に桜子と文女は親子そろって聴いていましたが …

たった今繰り広げられた、自分たちの知っている『おでん皇国戦記』とは別の物語に少し戸惑っていました。

「昆布之介、出汁出してたな … 」

つぶやく文女。

「ソーセージ、踊ってたで」

ポカ~ンと馬介。

「まろやかになってまう … って」

今にも吹き出しそうな桜子。

「ないわ ~ 」

でも、今日の終わり方の方が何倍も好きだと3人とも思っていたのです。

< 大笑い ~ 聴く者たちを混乱の渦に陥れた室井さんのお話でございましたが …

ひとり、この話に心底打たれたおなごがおりました >

… … … … …

ラジオを消して、板の間から出て行く泰介と活男。

しかし、め以子は座ったまま、何か考え込んでいます。

「 … ひとつの鍋。

そうや、ひとつのお鍋や!!」


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2014年02月13日 (木) | 編集 |
第112回

「 … 人にごちそうすんの、金輪際やめます!」

自棄になったのか、め以子は『ごちそうさん』をやめると宣言したのでした。

「来てる子らどうすんの?

… お腹空かして、可愛そうやんか」

「中には、あの人らの子もおんねんで ~

それやのに誰も何も言うてくれへんで … こっちはあげるばっかりで、アホらしゅうてかなわんわ」


活男の言うことにも耳を貸そうとはしません。

… … … … …

「そんな覚悟やったんですか?」

その声で、め以子たちはやっと希子と啓司が帰って来ていたことに気がつきました。

「覚悟?」

ごちそうさんするんは、ちい姉ちゃんなりの世の中への反抗やなかったんですか?」


厳しい口調で問い質した希子。

「えっ … えっ?」

希子が言っている意味も何故怒っているのかも、め以子にはさっぱり分かりません。

「すいません … もうええです」

あきらめたようにうつむくと、自分たちの部屋へ行ってしまいました。

… … … … …

悠太郎も戻って来て、夕食になっても、希子は自分の部屋から出てはきませんでした。

「希子は今、子供の番組やってるやないですか …

そこでもやっぱり子供に『お国のため』にってずっと言い続けてる訳で … それに影響されてしまう子供も随分おるんです」


事情を説明しながら啓司が「口外しないでほしい」と前置きしました。

「大本営発表をラジオが続けてるっていうのも … 戦果に対する表現を選んでいるというか … 」

「表現を選ぶ?」

「 … やっぱり、そうなんですか」


め以子は首をかしげましたが、悠太郎はうすうす感じていたようです。

「ラジオの台本は、そもそも情報局の検閲を通ったもんしか使えませんし ~ 希子はそれをそのまま読むのが仕事なんで、必要以上に気を止むことないんですけど … 」

正しい情報を伝えたいと、放送局に入った希子にはつらいことでした。

「せやから、お義姉さんのしてはったことが、輝いて見えてたんやと思うんです」

「え”っ?!」

「 … お腹の空いた子らに、おやつあげんのは、どう転んでも絶対に正しいことやと言うてました。

世間に対する無言の抵抗やて」


… … … … …

「せ、世間に … 抵抗?? わ、私が???」

当の本人は一切そんなつもりではなかったようで、戸惑っています。

「意識してなかったんですか?」

その場にいたほぼ全員が唖然として、め以子のことを見ました。

「 … 全く」

「ほな、あのステーキは?」


滅多に驚かないふ久が目を丸くしています。

「せや、美味しいもん食べて、食べさせるのが自分の人生やて言うてたやん」

お静に指摘されても、め以子はピンと来ないようです。

「せやから、あれは … 私がそうしたいいう、だけの話なんですけど … 」

「 … 何て言うんやろ、こういうの … 」


困惑して、顔を見合わせたお静と啓司。

「生まれつき … 性分 … 」

泰介が微笑みながら言った的を射た表現に、一同納得してうなずきました。

… 今でいう『天然』でしょうか ~

「まあ今は、あなたの性分そのものが自然と反骨になってしまうんでしょうね」

年は取りましたが、悠太郎にとって、中身は「ごっつうかいらしい」め以子のままなのです。

特別に意識してはいない自然な振る舞いが、周りに影響を与えたり、変えたりしていく … それが、め以子の真骨頂でした。

… … … … …

< なんか皆の言うこと、よく分かんないよね ~ >

結局、ほめられたのか、けなされたんか … どちらなんでしょう?

め以子がもやもやした気分で糠漬けの世話をしていると、傍らで米をついている活男が話しかけてきました。

「 … お母ちゃんはそういうのちゃうわな …

お腹空いとる子見たら、ただ可哀そうになるだけやろ?」

「お腹空いたら、ツライやんか ~ 」


ニコッと笑った活男。

「イライラして、しゃあないもんな … 」

3人の子供の中で、め以子の気質を一番受け継いでいる活男には母の気持ちがよく理解できたのです。

「ポケットからアメ出すだけの話が、何でそんな小難しい話になるんよ ~

ああ、めんどくさっ!」


… … … … …

あくる日、朝一番に希子は、台所で朝食の支度をしているめ以子に昨晩のことを詫びてきました。

「ちい姉ちゃん、すいません … 昨夜、おとなげのうて」

「ううん … 私こそ、何や期待外れでごめんな」


「 … 私、自分が不甲斐ないんですよ。

自分の不甲斐なさは、自分で始末せんと … 」


希子の言うように、何もしてあげられない自分を歯がゆく思うめ以子でした。

… … … … …

その日、集会所に多江の姿はありませんでした。

昨日、水をかぶったせいか、熱を出したらしいのです。

「ちょっと、やり過ぎはったんと違う?」

配給の卵を渡しながら、時子がめ以子のことを責めました。

多江の片棒を担いでいたような時子に、一方的に自分が悪いように言われて、め以子はムッとしました。

「最初に水かけられたん、私なんですけど?」

それに加えて、闇買いのことを密告したのは多江だと疑ってもいました。

「けど、噛みついたんは、西門さんやんか ~

謝りはった方がええんと違う?」


… … … … …

「おかしくないですか ~ 何か?」

眉間にしわを寄せ、口を尖らせ不満顔のめ以子。

それでも、嫌な顔もせずに話しを聞いてくれる馬介 … この店は、め以子にとっての愚痴のはきだめでした。

「まあまあ、風邪ひかんでよかったやない」

「そうですけど … 」

「め以子ちゃんって、風邪ひいたことあるん?」


いくら、め以子だって風邪ぐらいひいたことはありました。

「2、3回くらい?」

自分でもハッキリ記憶がない程度の風邪ということです。

話をしながら、馬介が運んできたのは、ただのお茶でした。

「タンポポコーヒーも、もうほとんどのうなってきてるから … 」

… … … … …

「いっくら何でもおかしいでしょって言ってんの!」

店の奥から桜子の大きな声が聞こえてきました。

「昆布之介は穏やかな優しい性格でしょ?

何でこんな鬼みたいな提督になってんのよ ~ 」

「仕方ないじゃない。

こうしないと、載っけてもらえないんだから」


せっかく『おでん皇国戦記』の執筆を再開した室井でしたが、桜子がその内容を気に入らないようなのです。

「こういうものだからこそ、まだお金入ってくる訳でしょ?」

「作品に対する愛情はない訳?」

「リンゴだってもらえる訳でしょ?」


そんなふたりのやり取りを聞いていため以子は、悠太郎の言葉を思い出しました。

「貧すれば、鈍す、か … 食べるのに困ると、こういうことになるんですよね ~ 」

桜子の意見を聞き入れようとしない室井。

「分かった … 私、もう別れる」

そう言って席を立ってしまいました。

「ええっ?!」

… … … … …

桜子の離婚宣言に皆が慌てたちょうどその時、店に客らしき男がひとり入って来ました。

「いらっしゃいませ ~ 」

見事に営業スマイルに切り替えた桜子でした。

「あの ~ 焼き氷ってありますか?」

店に入るなり、その客はたずねましたが、冬場は扱っていないことを伝えました。

「ああ、そうなんですか ~ いや、あるとは思てなかったんですけど …

あっ、荷物を整理してたら、こんなん出てきまして … 」


男は思い出したように、ポケットから、色あせた紙切れを取り出して見せました。

「あっ!」

「うわっ、懐かしいね ~ これ」


思わず声を上げる一同。

それは、今の焼き氷を売り出した時に街で配ったチラシでした。

「わっ、ホンマ … 20年前くらい?」

「チラシもろうて、食べに行こう行こう思てて … 結局、行かんかったなって。

いや、サッサと来とったらよかったな」


しきりに残念そうにする男を見て、そのまま帰すのは忍びなかったのでしょうか …

「あの ~ 明日、もっぺん来てくれはりますか?

… できるかどうかは分かりませんけど」


馬介は男とそんな約束を交わしてしまったのです。

… … … … …

「何か訳がありそうじゃなかった? あの人 … 」

懸念する室井。

馬介は何とか氷を手に入れようと、顔が広い源太を呼んで頭を下げたのですが …

「氷は難しいで ~ 喫茶店には回してもらえんやろ」

さすがの源太も難色を示しました。

「そこを何とかならへんやろか?」

焼き氷を作るとしたら、氷以外にも色々と材料が必要になります。

「卵は何とかなるん?」

活男が尋ねると、ひとり分なら何とかなると馬介は答えました。

「僕、ちょうど配給受けたんあるし」

自分の分の卵を使うと聞いて、驚くめ以子。

「 … 1ヶ月に1個くらいしか回って来へんのに?」

「黄身食べるからええよ」


それを聞いて、め以子は膝の上に置いたカゴの中にある今日配給を受けた卵を確認していました。

しかし、見ず知らずの人のために使おうという気は起きませんでした。

「コーヒーシロップはタンポポコーヒーでなんとかして」

「あ、うちのでよかったら、梅シロップ … 」


桜子に申し出ため以子、できることと行ったら、この程度のことまでです。

「後は … 氷か … 」

「 … やりますがな ~ がんばりまっせ!」


皆の視線を痛いほど感じた源太は仕方なく引き受けたのでした。

「ホンマ、源太頼んだで ~ 」

… … … … …

「こんな季節に氷なんて、よう食べたなるな ~ 」

め以子から話を聞いたお静は背中を丸めて火鉢に当たりながらそう言って、身震いしました。

「せやから、よっぽどのことなんやろって、馬介さん言うてて … 」

「あっ、せや … 昼間、松島さんいう人が来はってな ~ 」


ケンカのことが伝わったのか、それとも闇買いで摘発された件か … 座談会の話はなかったことにしてくれと断りにきたそうでした。

「 … まあ、そうですよね」

楽しみにしていた座談会でしたが、仕方がありません。

… … … … …

「お母ちゃん! お母ちゃん、ちょっと来て ~ 」

裏口から顔を出した活男が一生懸命に呼ぶので、裏庭に出てみると … 雪が舞っていました。

どうりで冷え込んできた訳です。

「これ、あかんかな? これっ」

雪を指さした活男。

め以子は、ハッとしました。

「雪で、焼き氷?!

うん、いいっ! … 活っちゃん、素敵!」


喜び合うふたりでしたが、家の中から覗いていたお静が水を差しました。

「 … それ、お腹壊せへんの?」

そう言われると、自信がないめ以子でした。

… … … … …

その頃、希子はうま介へ室井を訪ねていました。

希子が担当している番組『少国民の時間』で自作の朗読をするはずだった作家が急に都合が悪くなってしまって、その代役を頼みに来たのです。

「 … そういう訳なんで、お助けいただけると」

「う~ん、いいけど … いいの? 僕なんかで」

「『おでん皇国戦記』は人気ありますし、あの中からどれかひとつ選んでいただければ … 」

「どこでもいいんじゃない?

同じことしか書いてないんだから … どこ切っても『お国のため』って、戦いに行く話ばっかり」


桜子が強烈な皮肉を言って、お茶を置いていきました。

ムッとしても、直接言い返せない室井は希子にささやきます。

「根がお嬢さん育ちだからさ ~ 分かんないのよ、食うためには仕方ないってことがさ」

「室井さんは … 自分が書こうと思ってたことと違う話になってしまっていること、嫌やないんですか?」


希子は室井と自分の境遇をダブらせていました。

「 … 仕方ないよ。

書きたいこと書いたって、出してもらえないし … ヘタすりゃ、引っ張られるし、頭を低くしてやり過ごすしかないよ」


自由気ままに生きているような室井でさえも、長いものに巻かれることを余儀なくされているのです。

… … … … …

軽い失望を感じながら帰宅すると、何やら賑やかです。

「せやから、雪を固めて氷にするのちゃうねん」

台所を覗くと、皆が集まって、ふ久の説明を聞いていました。

「ちゃうの?」

「水を凍らせるために、雪を使うんや」

「雪を使う?」


希子は、少し離れて様子を窺っていた泰介に何をしているのか尋ねました。

「 … 雪を使って、氷を作るんやて」

見たまんまでした。

泰介自身もよく分かっていないようです。

「アイスクリームを作る時と一緒やて」

「せやかて、アイスクリームは、お砂糖も牛乳も入ってるやん? … 氷は水やで」

「零度より下がったら固まるの」

「ホンマに?」


ふ久の話に半信半疑のめ以子。

… そのくらいは女学校の理科の授業でも習ったのでは?

「まあ、ええやん … やってみよう」

「せやね ~ うん、やろうやろう!」


活男の言葉にめ以子はうなずいて、早速氷作りに取り掛かりました。

… … … … …

「水は零度を境に氷になるから、水の熱を雪を使って奪えばええ」

アイスクリームを作る時に使用した金属製の筒に水を入れて、それを桶の中央に置くと、その周りに外から持ってきた雪を入れて囲みました。

「雪は氷の細かい粒、個体の氷が液体の水になる時、周りから熱を奪う … 水から熱を奪うことになる」

ふ久の指示に従って作業を進めるめ以子、泰介、活男。

希子も仲間に加わりました。

「更にここに塩を加えると、その塩が溶ける時にも熱が奪われる … その相乗効果でどんどん冷えていって … 」

「氷ができる?」


姉のことを見上げた活男、注目する一同。

ふ久は小さくうなずきました。

… … … … …

ひと通りの作業は終えましたが、氷ができるまでは時間を要します。

しばしの休憩 …

「ほな、開けるで」

ふ久の言葉に皆が容器の周りに集まりました。

ゆっくりとふたを開けると …

「あっ、できてる!!」

「ホンマや ~ 」

「氷出来てるわ!」

「きれいね … 」


水に浮かんでいる氷に歓声があがりました。

笑顔のめ以子、ふ久の顔を見て、思わず口から出たのは、あの名言でした。

「料理は科学やな!」

「 … せやね」


微笑みを返したふ久でした。

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2014年02月12日 (水) | 編集 |
第111回

突然、地下室を作ってくれと言い出しため以子。

悠太郎に理由を尋ねられため以子は、皆を蔵に連れていきました。

そこで見た光景に一同、目を見張りました。

サツマイモやタマネギなどの野菜や小麦粉、味噌、醤油、様々な食料品が山ほど蓄えられていたのです。

「 … 砂糖の配給制が決まって、これからは何がどうなるか分からん思て … 折をみて買いだめて来たんです。

少しずつ、少しずつ、怪しまれんように …

ありとあらゆる手を使って、ここまで気づかれずに貯めることができました」


闇買いの摘発と引き換えにしてまで、め以子はこの備蓄品の発覚を守ったのでした。

「やってるんやろなって、思てましたけど ~ まさか、ここまでとは … 」

我妻ながら大したものだと感心する半面、め以子の食べ物に対する執着心にあきれている悠太郎でした。

「何を呑気なこと言うてはるんですか?

食べんと生きていかれへんのですよ ~ 食べるもんがのうなったかて、誰もどうにもしてくれへんのですよ!

ここは我が家の『天下分け目の関ヶ原』なんですよ!!

帝大卒の名誉にかけて、誰にも気づかれへん地下室造ってください」


しばし、腕を組んで考える悠太郎。

「地下室 … ありますよ」

「 … あ、あるん?」


目が点になっているめ以子の足元を悠太郎は指さしました。

… … … … …

足元を片付けると、取っ手が施された床板が現れました。

それを悠太郎が上に開くと、埃が舞い上がって … 地下に空間がつながっていました。

「こんなとこに … 」

カビと埃臭い地下室を覗き込むめ以子。

「まあ、部屋いうほどの大きさありませんけど、そこそこ入るんちゃいますかね?」

「何でこんなんあるん?」


嫁に来て十数年、地下室があるなんてことは初耳でした。

「昔は火事が多かったから、いざという時のために貴重品入れとく穴倉作ったんよ」

「前もって教えといてくださいよ … 」


平然とした顔で説明した悠太郎のことを、うらめしそうに見ため以子でした。

… … … … …

それは、次の日、婦人会で共同購入した木炭を配給された時のことでした。

多江からめ以子に渡された木炭は崩れたカスみたいなものばかりだったのです。

「えっ、いや、これちょっと?」

「目方は一緒やで」

「せやけど … 」

「お宅は闇で都合できはるやろ ~ ?」


意地の悪い顔、嫌味たっぷりにそう言った多江、昨晩の闇米の摘発を知っているのです。

「わてら皆、瀬戸際ですさかい、いつも通り遠慮してくれはる?」

すると、こともあろうか、他の仲間までクスクス笑い出しました。

… … … … …

「えらい量の米持ってかれんの見てはった人がおってな ~ 」

後で、め以子に好意的な、みねがそっと教えてくれましたが、だとしたら、なおさら納得がいきません。

「多かれ少なかれ、皆やってることやないですか?」

「まあ、ごちそうさんごちそうさんって人気者やったからな ~

人のウワサも75日、収まるまでの辛抱やて」


2か月半もこんな調子が続くなんて … め以子はうんざりしてしまいました。

… … … … …

「ごちそうさ~ん!」

こんな気分の時であっても、子供たちはやって来ます。

「今日はないっ」

泰介に言われたことも気になって、子供たちを撥ねつけてしまいました。

「またまた ~ 」

「ないもんはないっ!」


め以子をじっと見つめるいくつもの小さな眼差し。

「 … 干しイモだけやで」

情にほだされて、結局、根負けしてしまいました。

「おおきに ~ 」

ごちそうさん、ありがとう」


… … … … …

干しイモを取りに蔵に入っため以子は、わずかな異変に気づきました。

置いたはずの場所に干しイモが見当たらず、覚えのない場所に置かれていたのです。

「 … 誰か、入った?」

ふと見ると、大切な小麦粉が半分以上もなくなっているのが目に飛び込んできました。

「わあ ~~~ 」

… … … … …

一体誰が …

め以子が、一升瓶に入れた米をつきながら、思いを巡らせていると、配給の木炭を見たお静が声を上げました。

「炭、これだけしか配給なかったん?」

もうひとつ腹が立つことを思い出してしまいました。

「あっ、お義母さん、今日蔵入りました?」

「入ってへんよ」


昼間、蔵に入る時間があった者といえば、まず思い浮かぶのが、お静ですが、ウソを言っているようには見えません。

「ほな、誰が … ?」

… … … … …

そんなところへ、活男が戻って来ました。

「お母ちゃん、これおみやげ」

活男は手にしていた包みを開けて見せました。

「うま介でな ~ 今日、カリンゴウいうの出してん。

リンゴを細かく切って、天ぷらみたいに揚げたん」


勧められてひと口食べため以子。

「ちょっと、お塩つけると ~ これがもうたまらんねん!」

活男の言う通りの味にうなずいため以子 … でしたが、はたと気づきました。

「 … 活っちゃん、今日、うちから小麦粉持ってった?」

恐る恐る尋ねると、まったく悪びれることなく、呆気なく認めました。

「うん ~ うま介さん、えらい助かったって」

… めまいがしました。

立ち上がって、活男をにらみ迫っていくめ以子。

意味が分からず、後ずさりしていく活男 …

… … … … …

「 … 少国民の時間です。

今日は『肉弾三勇士』のお話です … お国のために立派に戦い、見事、散華された三勇士。

その素晴らしい活躍を放送劇にてお聴きください」

少年たちに愛国心を芽生えさせ、戦意を高揚させるための放送劇。

希子は、その語り手を務めていました。

実は、この番組に携わっていることが、最近の希子の憂鬱の原因だったのです。

… … … … …

悠太郎は帰宅後、時間を見つけては、地下室を貯蔵庫に使えるように手を入れ始めていました。

「ええやないですか ~ うま介で修行させてもろうてる思たら」

め以子は手伝いながら、今日の活男のことを夫に伝えたのですが、返ってきたのはそんな言葉でした。

「あかん言うてませんよ。

せやけど、一応私に聞いてもらわんと … これはまだ手に入りやすいとか、こっちはもうあかんとか、いろいろ細かいことがあるんです」


すると、悠太郎は振り向き、まじまじとめ以子の顔を見ました。

「意外に渋ちんなんですね、ごちそうさんは … 」

め以子にしてみれば、聞き捨てならない言葉でした。

「せやかて、これ以上、うちのご飯が貧相になったらいやでしょ?」

「 … 貧すれば、鈍す」

「?」

「暮らしに余裕がのうなると、心にも余裕がのうなる … いうことです」


何もめ以子は自分だけのために、こんな嫌なことを口にしている訳ではないのです。

「そんなん、しゃあないやないですか ~

自分の家で食べる分は、絶対確保せんと … まずは、自分の身やないですか?」

「まあ、そうなんでしょうけど …

ごちそうさんいう名前が、多少、仏さんのようなものを期待させる響きがありますよね」

「 … やらんかったら、よかったんです。

闇買いがバレて … こう、風当たりが … 」


め以子は『ごちそうさん』と呼ばれて、頭に乗っていたことを後悔し始めていたのです。

「まあ、しゃあないですよ ~ ほとぼりが冷めるの待つしか」

「皆、呑気にそう言いますけど、私は毎日、針のムシロなんですよ!」


… … … … …

そこで、ふたりが考えたのは、金属供出の成績を上げたがっている婦人会のために、鍋を提供して機嫌を直してもらうという作戦でした。

しかし、いざ選ぶとなると、どの鍋もめ以子にとっては可愛い子供のようなもので、簡単に決めることができません。

そして、悩みに悩んで、泣く泣く、年季の入った両手鍋に犠牲になってもらうことに決めました。

「そなたのことは、決して忘れぬからな ~ 」

鍋を抱きしめ、頬ずりして、別れを惜しむめ以子でした。

… … … … …

その日は、婦人会挙げて防空演習を行う日でしたが、め以子は、鍋との別れを惜しんでいたため、集合時間に少し遅れてしまいました。

集会所の前には、すでに防災頭巾をかぶった女たちが整列しています。

「ああ、始まってた ~ 」

入口の上に焼夷弾が落ちたこととし、バケツリレーして横に立てかけたハシゴの上から水をかけるという訓練でした。

「ではっ、あそこに焼夷弾が落下して、火の手が上がりました!」

多江の夫、勝治の合図で女たちは一斉にバケツリレーを開始しました。

「すみません、遅れて」

着替えを終えため以子が勝治の前に出て詫びを入れていた時、突然、頭の上からバケツの水が降って来ました。 …

ザバ ~ ッ!!

この寒空にびしょ濡れになってしまっため以子。

「堪忍 ~ 」

水をかけたのは多江でした。

「上やろ上!」

「だって、つってもうて … 」


勝治に咎められた多江は片手でハシゴをつかんだ体制で言い訳しました。

「アホか、お前は!! 西門さん、かわいそに ~ 」

「堪忍な、堪忍 … 大丈夫?」


そう言いながらも、多江はハシゴから下りようとはせず、茫然と見下ろしていました。

… … … … …

普段のめ以子なら、笑って済ますことができたのかもしれません。

しかし、悠太郎の言葉通り、「貧すれば、鈍す」 … 心に余裕がない状態でした。

「 … ワザとですか?」

手拭いで濡れた顔を拭きながら尋ねました。

「えっ?」

「ワザとやりはったんですか?」


慌てて、ようやくハシゴ下りてきた多江。

「そんないけずするかいな ~ 」

「昨日の配給かて、いけずなことしはったやないですか?」

「えっ? えっ?」


多江は覚えていませんでした。

やられた方は忘れられなくても、やった方は覚えていない … そんなもんです。

しかし、懸命に思い出そうとはしています。

「 … 何かしたかいな?」

「うちの木炭、カスカスでしたけど … 」


にらみつけため以子。

「ああ ~ あれは、ごちそうさんがいつも皆さんに譲ってくれはるから …

あの、甘えさせてもらおうかな ~ って、なあ?」


横にいた時子たちにも同意を求めました。

「あっ、闇で買えんもんは、あかんとか?」

バシャ!!

多江が言い終わるのも待たずに、め以子はバケツの水をかぶせていました。

… … … … …

「手、つってもうて … 」

め以子は、にらんだまま、バケツを持っていた手をぶらぶらさせました。

にらみ返した多江。

火花が飛び散る目と目。

「ワザとやないて言うたやろ ~ !!」

言うよりも早く、め以子に跳びかかりました。

め以子も負けてはいません。

つかみ合いの大ゲンカが始まりました … 慌てて引き離す一同。

… … … … …

大阪ラヂオ放送。

担当番組の『少国民の時間』の放送が終わってスタジオから出てきた希子は同僚からハガキを渡されました。

それは番組担当者あてに届いた聴取者からの声でした。

ハガキを書いたのは『少国民の時間』がまだ『少年の時間』という名前だった頃より、息子と一緒にずっと聴いているという女性です。

「 … 先日、『肉弾三勇士』の放送劇を聴きました。

手に汗握る展開で三勇士の国を思う気持ちが痛いほど伝わり、童心に帰った息子は「お国に命を捧げる決心がついた」と申し、この度、少年兵を志願いたすこととなりました … 」

その勇気をくれたことの礼を述べて、文章は締めてありました。

… … … … …

「いっそのこと、番組変えてもらえるよう頼んでみたら?」

帰り道、啓司は希子にそう勧めました。

日毎、塞ぎ込むことが多くなっている希子が心配でした。

「私だけが楽になってもええんかな … 」

「 … ええんやないか?

志願したって聞いて、ええ仕事したって思う人もいると思う」


啓司の言葉に力なくうなずいた希子でした。

… … … … …

ふたりが家に着くと、板の間から、お静とめ以子の言い合っているような声が聞こえてきました。

「 … せやけど、何の証拠もないんやろ?」

「水かけられたんですよ!」


目を剥いて声を荒げるめ以子。

「ワザとかどうか分からんのやろ?」

「ワザとに決まってますよ ~ 密告も絶対あの人です。

昔からいけずやったし … 私が座談会出るんも気に入らんかったんですよ」


婦人会から帰って来てからずっとこの話、お静はいい加減面倒になっていました。

「あ ~ あ ~ あんたは、ホンマおばちゃんになったな ~

昔はもっとこう真っすぐ … 」

「私はできるだけのことはしてきましたよ。

闇買いもできるからて、配給かて遠慮しとったし、常会や婦人会やら大したもんやないけど、お菓子作って持ってって、そのお返しがこれですか?」


め以子は希子たちが帰ってきたことにも気づかずに興奮して話し続けました。

「私、もうやめます。

人にごちそうすんの、金輪際やめます!」


ついにそこまで自棄になってしまったのか …

「えっ?」

め以子の口から出た思いもよらぬ言葉に一同は唖然としていました。

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2014年02月11日 (火) | 編集 |
第110回

昭和18(1943)年2月。

「皇軍伝統の精神を真骨頂まで発揮した我が精鋭は、今や後方における戦略的根拠の設定も完了し、初期の目的を達しました … 」

特高の指導の元、大本営発表の原稿を読む大阪ラヂオ放送のアナウンサー。

希子は、それをスタジオの外から憂鬱な気持ちで見ていました。

< 勢いよく始まった太平洋戦争でしたが … >

「 … ガダルカナル島より戦略的転進を完了しました」

「転進 … 」

「物は言いようだね」


うま介では、撤退を転進と都合よく言い換えた放送に、室井は苦笑し、桜子はため息をついていました。

< 日本は勢力を盛り返した連合軍の前に敗戦に次ぐ敗戦。

… にも拘わらず、戦果を偽り続け、もはや後へは引けない悪循環に陥りました。

そして … >

… … … … …

< 国民生活もそれにつれて悪循環。

食品、日用品、衣料品はほぼ全て配給制に移行し … 店頭で自由に買えるものはほとんどなくなりました。

主婦たちは、今日はお米、明日は野菜、明後日は油と、日々様々な配給の列に2時間も3時間も並ばねばならなくなりました。

それは、大変な時間と労力の負担で、隣組単位での共同購入という形を取る人たちが増えました。

持ち回りで並ぶのです。

そんな中、め以子は … >

「あの人やね? のっぽの」

「あの人なんや ~ ごちそうさん!」


配給の列に並んでいるめ以子を見て、遠巻きに噂する人たち、中にはお辞儀してくる人さえいました。

< このご時勢に、子供におやつを配る『ごちそうさん』として、ちょっとばかり尊敬されて … 頭に乗っておりました >

… … … … …

それは、集会所で婦人会で共同購入した野菜の配給があった日のことでした。

自分に配られたカブラが葉っぱばかりだと、伸世が文句をつけました。

「目方は同じでっせ」

分配する側、多江も譲りません。

「せやけど、こんなん不公平や ~ この人のカブラ、コロコロしてはりますがな ~ 」

「何を言うてんの? 大根はあんたの方が太いやないの!」


隣に並んでいた房子も交えて言い争いが始まりまってしまいました。

皆少しでも多くの食料を手に入れようと必死なのです。

「ほな、私のと代えます?」

そこへ仲裁に入ったのはめ以子でした。

「葉っぱの方が栄養あるて言いますし」

「そうなん? … せやけど、腹の足しにはならんし」


め以子は快く自分と伸世のカブラを交換しました。

「えっ、ええの ~ ごちそうさん

そんなめ以子を見て、誰となく口にします。

「さすが、ごちそうさんやな ~ 」

「近所の子にもおやつやってんのやろ? 今時分ようやりはるよな ~ 」


め以子自身は、感謝されたり、ほめられることが目的ではありませんが、そんな声が耳に入って来るとやはり悪い気はしません。

しかし、『ごちそうさん』の評判をこころよく思わない者もいることには気づかないめいこでした。

… … … … …

め以子が配給から戻って来ると、家の前で数名の子供たちが座り込んで待っていました。

「 … 何なの、あんたら?」

ごちそうさん、遅い」

「お腹空いて死にそう ~ 」


め以子の姿を見るなり、口々に勝手なことを言出だしました。

「もう、やかましな ~ おばちゃんにはおばちゃんの生活があるんや」

「どうでもええから、今日何?」

「何やろな ~ 」


焦らした時の子供の反応を見ることも楽しんでいるめ以子です。

… … … … …

「ああ、寒ぶ ~ 」

子供たちの相手を済ませ、夕餉の準備に取り掛かると、今度はお静が身体を縮こまらせながらやって来ました。

「今日何?」

子供たちと全く同じセリフを言って、台所を覗き込みます。

「また、カブラかいな ~ 

こないだもちゃうかった?」

「 … 配られるもんは選べませんからね」


一応、文句は言っても、出されたものはきちんと平らげるお静でした。

… … … … …

そんな話をしていると、裏口から顔を出した活男が声を潜めて伝えました。

「お母ちゃん、小池さん来はった … 」

「あっ … はいはいはい」


その名前を聞いため以子は料理の手を止めて、お静や活男と手分けして、慌てて窓という窓のカーテンを閉め、全ての襖も閉じました。

「そこまでせんでも … 」

活男に促されて、裏口から入ってきた大きな荷物を背負った男 … 小池があきれ顔で言いましたが、め以子は真顔で答えました。

「壁に耳あり、障子に目ありですから …

密告されるといけませんから ~ さっ、早う」


… … … … …

完全に密室となった板の間で小池は荷物を解きました。

荷物の中身は、野菜や米などの食料 … 小池は闇屋だったのです。

< 配給だけでは生活できなかった庶民は、いろんな手だてを講じておりました。

家族の数を水増し申請して配給を受けたり、農家などへ買い出しに行ったり、このように闇屋を利用する者もおりました。

多かれ少なかれ、皆やってることでしたが … 不正には違いなく、警察への密告を恐れ、お互いひた隠しにするのが常でございました >

… … … … …

その夜。

本来なら、カブラだけのはずだった夕飯の食卓にささやかですが汁物が1品増えました。

しかし、茶碗によそられているのは、白米だけでなくサツマイモを混ぜて量を増やしたご飯でした。

「また、お米の闇値が上がったんですか?」

「公定価格の6倍や ~ お砂糖なんて、20倍やて」

「20倍 … ?!!」


め以子の話を聞いた啓司は思いもよらない高騰に目を丸くしました。

「まあ、背に腹は代えられんからな … 」

「市場の人に直接言うて、都合してもらうとかできんのですか?」

「私もお客のひとりやし … 向こうからしたら、キリがなくなる思たら、言いにくうて … 」


普段懇意にしてるからこそ、却って相手の立場になって考えてしまうものでした。

「お金、大丈夫ですか?」

家のやりくりは全て任せっきりの悠太郎ですが、め以子は人に言わずに頑張ってしまう性質なので、不安になって尋ねました。

放っておくと、とんでもない事態になりかねないからです。

「まあ、何とかギリギリやれてます」

… … … … …

「ごめんな ~ 4月から高校の金 … 」

話を聞いていた泰介が申し訳なさそうに口にしました。

「何言うてんの ~

それより、ふ久 … あんたや、あんた!」


め以子は、相変わらず食事しながら難問を解いているふ久の肘をつつきました。

「あんた来年、師範学校卒業やろ ~ どうするつもりなん?」

「 … 人に教えるん、面倒くさい」

「うちでゴロゴロしてたかて、勤労奉仕に駆り出されるだけやんか ~

希子ちゃん、ほらっ、言うたって!」


他人事のように構えているふ久に職業婦人の希子からひと言何かもらいたかっため以子でしたが …

「ああ … 仕事するんも、向き不向きありますし … 」

最近の希子はいまいち元気がありません。

「ほな、わし中学辞めようか?」

活男が名乗りをあげましたが、め以子は相手にしません。

「今は、コックの修行なんて何処行ってもできへんって、何べん言うたら … 」

「なあ、何で … 東京のお祖父ちゃんのとこ、行ったらあかんの?」


勉強するより、コックになりたい活男にとれば、開明軒は最適の環境でした。

幾度となく母に相談したのですが、許してくれないのです。

「今は、あっちもそれどころじゃないねんて ~ うま介さんとこ、手伝うんで我慢しといて」

… … … … …

それでも、学校が終わるのを待ちきれずに、活男はうま介に手伝いにやって来ました。

「馬介さん、今日の日替わりは?」

言葉もなく深いため息で答えた馬介。

「なしか … 」

馬介のアイディアで始めた日替わりのジュースですが、元になる果物が滅多に手に入らない状況なのです。

「どないかせんとな ~ 」

そうは言ってみたものの、これといって考えは浮かびません。

… … … … …

そこへ帰ってきた室井。

手にしているザルの中には、真っ赤なリンゴが何個も入っていました。

「うわっ、美味そ ~ 

これ、どないしたんですか?」


滅多にお目にかかることがないリンゴをどうして室井が … 活男は尋ねました。

「時局ものの、軍国歌謡作って、それで少しもらえたんだけど」

報酬は現物支給ということでしょうか?

「文女ちゃ~ん」

真っ先に愛娘に食べさせたかった室井です。

「え ~ リンゴやんか ~ 」

目を輝かせる文女。

その時、馬介が身を乗り出して言いました。

「それ、出してええ?

いや、買うから ~ 言い値で買うから!」

「え ~ でも ~ そんなにいっぱいないし」


室井はもったいぶりましたが、横から桜子が口を出しました。

「いいですよ、出しちゃいましょうよ」

「ええっ?」


余りの気前のよさに驚く室井。

「食べられない時に、いろんな人に助けてもらって来たでしょ?

… 食べさせてもらったでしょ?」


子供に言い聞かせるかのように室井の顔を見つめた桜子。

「別にここのお客さんには食べさせてもらった訳じゃ … 痛っ!!」

お盆が一閃、グダグダ言いかけた室井の頭を叩きました。

「出せるいうことでええんかな?」

文女に聞いた活男。

「ええと思うよ ~ 」

朗らかに笑った文女でした。

… … … … …

ある日、め以子は婦人会の集まりに自家製の菓子を持参して、お茶請けとして出しました。

配給の里芋と残っていたうどんで作ったその菓子は、作り方を聞いてくる者までいて、みねをはじめとする仲間たちには好評でした。

その日は、婦人会の本部の偉い人たちが天満支部の視察に訪れる日でもありました。

多江が付きっきりで案内をしている年配の女性が副会長の松島で、時々婦人雑誌にも出ているような有名人なのだそうです。

「高山さん、大阪支部長狙ってはるからね ~ 」

みねの言葉に何人かがうなずいていました。

… … … … …

「天満支部では、近頃、金属の供出と国債の購入に力を入れておりまして … 」

「『ごちそうさん』いう人は?」


一所懸命に説明している多江の言葉を遮って、高山が尋ねました。

「『ごちそうさん』いう人、いはるんやろ?」

そう言いながら、松島は集会所の中を覗き込みました。

自分のことを売り込みたかった多江にとって非常に面白くない質問でした。

しかし、衆目の中で、知らないと通すこともできません。

「西門さ~ん」

め以子のことを呼びつけて、松島と引き合わせました。

「そうなんや ~ あなたでしたか?

お会いしたかったんよ ~ 」


… … … … …

帰宅しため以子は、台所仕事をしながら、活男に今日のことを話していました。

「お母ちゃん、雑誌出るん?」

「婦人会の座談会載せるんやて …

それで、『ごちそうさん』呼ばれてる人いうことで、料理の始末とか、献立のこととか話してくれへんかって」


自分の噂が婦人会の副会長の元にまで届いたこと、その上座談会にまで … 益々、頭に乗るめ以子でありました。

「ええな ~ ちい姉ちゃんは … 」

板の間でお静と火鉢に当たっていた希子にも今の話が聞こえたのか、うらやましそうにつぶやきました。

「?」

「『ごちそうさん』って、ええ生き方ですよね」


面と向かってほめられて、こそばゆそうに聞き返しため以子。

「身の回りの人にご飯振舞って、皆が幸せになって、ホンマにええ生き方ですよね ~ 

どんな時代でもそれは、絶対にええことやもん」


自分の生き方をほめてくれるのはうれしいことですが … 今の言い方だと、希子自身の生き方を卑下しているようにも聞こえたのです。

「あんたかて、立派な仕事してるやんか?」

お静も同じようなことを感じたのか、諭すように言いました。

「そうや ~ あんな立派なお仕事、誰もができることちゃうやんか?」

「ええ … 」


希子は、ふたりの言葉に微笑んでうなずいてはいましたが、何か心に引っかかるものがあるめ以子でした。

… … … … …

「西門さん」

玄関で男の声がしました。

こんな時間に誰だろうと、め以子と泰介が応対に出ると、背広姿の目つきの鋭い男たちが立っていました。

「 … な、何ですか?」

「この家が違法な闇物資を購入してるんとちゃうかって、通報があった。

これより、立ち入り検査を行う!」


男たちは情報局の役人でした。

リーダー格の男がそう断ると、役人たちは有無をも言わさぬ態度でズカズカと家の中へと入っていってしまいました。

「ちょ、ちょっと待ってください ~ うちは何も!」

… … … … …

「何やこの米は?!」

ひとりの役人がおひつの中の白米を見て声を上げました。

「配給は玄米のはずやろ?」

「自分らで突いてるんです ~ 皆、お腹が弱くて玄米だと下してしまって、お国のために働けなくなりますから!」


め以子の言い訳に合わせて、お静や泰介が腹を押さえて顔をしかめましたが、役人は構わず戸棚を調べ出しました。

「米は何処や?!」

「何ですか ~ うちは何も」


… … … … …

「おいっ! … 蔵、開けろ」

別の役人が蔵があることを見つけて、め以子に命じました。

「えっ?」

「蔵、開けろ言うとるんや」


万事休す ~ め以子は観念したのか、目を閉じ …

「 … 米は … あそこです」

目を開けると箱階段を指さしました。

リーダー格の役人が調べると、中から袋に入った精米が見つかりました。

「どう見ても、配給米じゃないな?」

< 当時、没収された物資は、公定価格で買い上げられる決まりとなっておりました。

つまり、大損 … >

買い上げられた代金を手に茫然としているめ以子にお静が尋ねました。

「あんた、いくらで買うたん?」

落胆が大きいめ以子は、質問には答えられず、頭を押さえて下を向きました。

「けど、通報って?」

「誰にやられたんでしょうね?」


活男と希子の疑問。

「 … 単に目立ってもうたん違う?」

一同、泰介のことを見ました。

「子供におやつやったりして … そんな余裕あるのおかしいって、思われたとか?」

「かもしれんな … 」


… … … … …

「ただいま戻りました ~ 」

ちょうど、悠太郎と啓司が揃って戻って来ました。

「 … 何やあったんですか?」

台所の上がり口に肩を落として腰かけているめ以子を見て、不審に思った悠太郎は尋ねました。

すると、め以子は、ようやく顔を上げて、ポツリと口にしました。

「お父さん … 地下室作って … 」

「えっ?」


立ち上がっため以子、目には涙をためています。

「絶対に見つからんような … 地下室作って!」

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2014年02月10日 (月) | 編集 |
第109回

「竹元さん、西門です … 失礼します」

その日、悠太郎は、いつもより数倍緊張した面持ちで竹元の事務所のドアを開けました。

「すみません、お忙しいところ … 」

最近、悠太郎がここに来るのは、決まってあまりよろしくない報告がある時でした。

それが分かっている竹元は不機嫌そうに出迎えました。

「全く忙しくはないが ~ 貴様と会いたいほどではないな」

悠太郎は、早速切り出しました。

「花園町の駅舎の件ですが … 結論から申し上げますと、鉄筋は手配できませんでした」

持参した図面を取り出して広げた悠太郎。

「工期を考えても、これ以上時間を取るのは不可能です」

「 … それで?」

「いただいた設計図はこれですが、駅舎の中2階を全面撤廃したいと思います」


目を見開いて絶句した竹元、悠太郎は説明を続けました。

「中2階部分を省略し、地上からホームへ直結した形を取ると、鉄筋が確保された量で賄えます」

竹元は茫然と図面を見つめています。

自分が起こした設計図に今説明している修正が加えられていました。

「何卒、ご承諾願えれば … 」

… … … … …

「洞穴じゃないか?!」

竹元はいきなり両手で机をバンバン叩き始めました。

「こんなもん、洞穴を電車が走ってるだけじゃないかっ?!」

そう叫んで、図面をぐしゃぐしゃに丸めて横に放り出してしまいました。

… … … … …

強張った表情の悠太郎。

「米英と戦争が始まれば、空襲の恐れも十分にあります。

そうなった時、地下鉄の駅舎は防空壕の役割を果たす可能性があります。

… 必要なのは強度です。

この現実の中で、守るべきは人命です」


黙って、悠太郎をにらんでいる竹元 … その目は怒りというより、悲しい色に見えました。

そして、椅子に寄りかかると、すねた子供のようにソッポを向きました。

「 … 今後、地下鉄事業から、私の名前を外してくれ」

… … … … …

予想していた言葉でした。

「 … 上に報告します」

悠太郎は図面を手にして、出口に向かいます。

ドアの前で立ち止まり、竹元に向き直りました。

「竹元さん …

今まで、お世話になりました」


竹元の横顔に深々と頭を下げた悠太郎の目には光るものがありました。

… … … … …

あの牛乳を口にした日から、源太はみるみるうちに快方に向かって …

そして、ついに御粥を食べるまで回復したのでした。

ごちそうさんでした … 」

出された御粥を平らげた源太を不安そうに見つめるめ以子、泰介、活男。

すると、源太が口に手をやって、今にも戻しそうな仕草を見せました。

慌てて身構える3人。

しかし、何とか踏みとどまったようです。

「だ、大丈夫?」

「大丈夫 … な、気がする … 」


一同、ホッと胸をなでおろしました。

「ああ、よかった ~ 」

今度こそ大丈夫だと分かって、喜んで拍手拍手。

「おおきに ~ おおきに」

笑顔で応える源太。

御粥が食べられるようになったということは、精神の方も回復してきたということでしょう。

… … … … …

そんな中、泰介からも吉報がもたらされました。

「あっ、そうや、お母ちゃん!

予選、再開されることに決まったんや」

「ほな、カツ制度も再開させんとね」

「ほんまやな ~ 」


首を傾げている源太に活男が仕組みを説明しました。

「勝っていくごとに、カツの中身が豪華になってって … 最後には牛カツになんねん!」

「おお ~

ほなそれ、わしが何とかしてやるわ」

「えっ?」

「ホンマに?」


一般の家庭で牛肉を手に入れるのは大変難しい状況になっていたのです。

「こんなに面倒みてもろうといて、当たり前やがな ~ 」

「うわ ~ おおきに、源ちゃん!」


喜んだめ以子の少女のような笑顔を見た時、何故かまぶしく感じて … ふと、顔をそらしてしまった源太でした。

その微妙な表情が、少し気になっため以子でした。

… … … … …

「夜分、すみません ~ 奥さん!」

その時です。

玄関の戸が開く音がして、め以子のことを呼ぶ大きな声が聞こえてきました。

何事かと出てみると、大村と藤井に抱きかかえられるように入ってきた悠太郎が倒れ込んできたのでした。

「お父ちゃん?!」

ひどく泥酔しているようで、引っくり返ったまま動きません。

「取りあえず、上へ運んでくれる?」

め以子に命じられて、泰介と活男は、人一倍大きな父を手こずりながら奥へと運んで行きました。

… … … … …

め以子は、大村と藤井に礼を言い、何があったのかを尋ねました。

「何や、鉄筋が足らんから、設計変更するて、竹元さんに言いに行ったらしゅうて」

「 … それで、何であんなに?」


酔うと大抵、陽気になる悠太郎があそこまで泥酔したのはめ以子にも記憶にありません。

「それが … 」

藤井と顔を見合わせた大村。

「竹元さんの設計、跡形もないようなもんやったらしいから ~ 絶縁、言い渡されたらしいわ」

「 … 絶縁?!」

「せやから、竹筋使うたらよかったのに … 」

「アホか ~ あんなもん使うたら、危なくてしゃあないやろ?」


人命を守るために、悠太郎は竹元を斬り捨てたのだと、大村は言いました。

「ほんでも、何やかんやいうても、あいつは竹元さんに心酔してたから、辛かった思うわ …

まあ、優しゅうしてやってな」


… … … … …

大村たちを見送っため以子が寝室を覗くと、悠太郎は布団の上で泥のように眠っていました。

『気持ちええでしょ? … 竹元さんの造る駅は』

机の上には悠太郎がそうほめていた駅舎の写真が並べられたままになっています。

『夢を叶えるために、一番大切なことは … 才能や根性ではなく …

生き残ることです』

薄明かりの中、寝顔を見ると、眉間にしわを寄せて … 苦し気な顔、辛そうな顔をしています。

「早う終わったらええのにな … こんなん」

め以子はそうささやいて額を優しくなでました。

… … … … …

板の間に下りると、源太が座って、壁に貼られた予選のトーナメント表を見上げていました。

「 … 肉、いつ持ってきたらええねん?」

「ああ、確かめとくわ」

「分かったら、早めに言いに来てな … 」


め以子はうなずいた後、ハッとして源太の顔を見ました。

「いや … そろそろ、お姉ちゃんのとこにも顔出したいし … 」

どうやら、ここを出て行くつもりのようです。

め以子は先ほど源太が見せた表情のことを思い出しました。

「人多すぎて、うち居にくい?」

「 … 逆や ~

居心地ええから、ずっと居りとうなってまうんや」


… 吐き捨てるように口にした源太。

『ずっと居たくなるから、出て行くってこと?』 

め以子には理解できない気持ちでした。

… … … … …

次の朝。

西門家の玄関では、職場へ出かけるという二日酔いの夫と、この家を出て行くという病み上がりの幼馴染が並んで靴を履いていました。

「大丈夫? ふたりとも … 」

め以子には、どちらも無理をしているようにしか見えません。

「大丈夫」

「大丈夫や」


しんどそうに腰を上げたふたりは足取りも重く、ふらつきながら玄関を出て行きました。

「いってらっしゃ … あっ!」

め以子が渡し忘れた弁当を持って追いかけようとすると … 門につかまってしゃがみ込んでいるふたりがいました。

… … … … …

結局、悠太郎は休暇を取り、源太は出て行く日を延ばして … 床を並べて客間に寝かされました。

「 … うちの妻にあだ名つけるとしたら、何にしますか?」

唐突に尋ねた悠太郎。

「ゴンボウ … 」

即答する源太。

「ひどないですか?」

「ほな、お前 ~ 何てつけんねん?」

「 … 鉄筋ですかね」

「そっちの方がひどないか?」


どっちもどっちでした。

「僕には … どちらもなくてはならないものなんですが」

「 … ひょっとしてそれ、牽制球投げとんのか?」


横を向く悠太郎。

ふいに襖が開いて、外出着を着ため以子が顔を出しました。

「ちょっと出てくるさかい、大人しゅうしとってや」

… … … … …

め以子の訪れた場所は、竹元の事務所でした。

「という訳で … 」

竹元の前に小さなツボを差し出すめ以子。

「 … ニンニクの梅肉エキスあえです」

中が分かるようにふたを取って見せました。

「何が、『という訳』だ?」

怪訝な顔で問いただした竹元。

「私、義理の姉とかなりこじれたんですけど …

時間が経つと多少こう ~ 丸くなる部分があるいいますか … 逆に時間が必要いいますか … 」

「で、何故それがニンニクになる?」

「竹元さんにはそれまでお元気でいていただきたいやないですか ~

せやから、お許しをいただくために、まずは竹元さんに長生きしてもらわな、あかんやないですか?」


… … … … …

「奥 … つまり、貴様は、わしが年寄だと言いたいのか?」

口調は静かですが、明らかに腹を立てています。

「ああ、いいえ ~ 」

屈託のない笑顔で首を振っため以子。

… … … … …

「去れ!

このシナモンスティックめっ!!」


激高して、め以子を事務所から叩きだす竹元。

「しな、しなもんすてぃっく??」

「ニッキ棒のことだ!!

添えもんのクセに、やたらと自己主張が激しいところがそっくりだ ~

でしゃばり過ぎなんだ!!」


怒鳴り散らした後、ドアを閉めてしまいました。

「あ、え、ちょ … た、竹元さんっ!」

ドアを叩くめ以子。

するとドアがバッと開いて、出てきた竹元はめ以子が手にしているツボをつかみました。

「何なんですか ~ これがほしいんですか?」

「◎×▲♂◇ ~ !!」


無理やり奪い取ると、今度こそ完全にドアを閉じてしまいました。

< 本当に相変わらず、よくわかんない人だね ~ >

まあ、受け取るものは受け取ってくれたので … よしとしため以子でした

… … … … …

「ただいま戻りました ~ ごめんな、すぐお昼にします … さかい … 」

家に戻って台所に足を踏み入れため以子は思わず固まってしまいました。

流しの上に無造作に置かれたままの糠漬けのツボ、糠だらけのまな板、包丁、キュウリの切れっ端 …

一体何があったのか??

その時、客間の方から悠太郎と源太の楽しそうな笑い声が聞こえてきたのでした。

… … … … …

怪訝な顔で襖を開けると …

布団など片付けて、あぐらをかいて座り込んだふたりは、め以子が作った弁当や糠漬けを肴にご機嫌で酒盛りをしているではありませんか?!

「 … 何やってんの?」

怒りを抑えて尋ねため以子。

「迎え酒です」

悪びれることなく答えた悠太郎。

「ホンマ、頭痛いの治りますね ~ 」

「こっちも、もう何や … すいすい食えるわ ~ 」


美味しそうに、おむすびを頬張りました。

出かける前に覗いた時は、背中を向け合っていたのに、酒の力でしょうか? … すっかり打ち解けて仲良くなっています。

「最初から酒飲んどった方がよかったんちゃうか?」

「ホンマですよ ~ あんな大騒ぎせんで ~ あっはは」


飲むわ、食うわ、そして、笑うわの大騒ぎです。

「出てけ … 」

… … … … …

ふたりの会話を聞いていため以子の怒りが沸点を超えました。

「出てけ …

この、アホ、ボケ、カス!!」

「えっ?」


ポカ~ンと見上げている源太。

「そら、言い過ぎとちゃいますか?」

他人事のような悠太郎。

しかし、め以子の怒りは源太に対してだけではありません。

「あんたもや ~ !!」

横に積んであった枕を投げつけました。

「な、何ですか?」

「人が心配してんのに … もう!」


もうひとつあった枕を手に持つと目茶目茶に殴りはじめました。

「通天閣、もうっ!」

「痛てっ」


意味が分からず、拾った枕で防御するだけの悠太郎。

「 … ほな、わし帰るな ~ 」

這う這うの体で逃げるように出て行った源太です。

「源太さんっ、えっ?!」

ひとり残された悠太郎、め以子の攻撃は終わりません。

「ええ加減にせいや! もう毎回毎回!」

< かくして、源太は、店に復帰することになり …

泰介は、順調に勝ち上がり … >

… … … … …

決勝進出の試合が行われている日のことでした。

活男が仏間を覗くと、目を閉じて合掌して掲げたこぶしを小刻みに振り続けているふ久の姿がありました。

「 … 何やってんの?」

恐る恐る尋ねると …

「見えへん力で呼びよせてる」

活男には理解不可能な答えが返って来ました。

すると …

「ただいま戻りました ~ 」

「こんにちは ~ 」


泰介に続いて入ってきたのは、久しぶりの諸岡でした。

「 … おかえりなさい」

祈るのをやめたふ久は満足そうな顔です。

… … … … …

その夜の食卓。

「お待ちしました ~ 皆さん、お待ちかねの … 牛カツです」

め以子と活男がカツの盛られた皿を運んでくると、一同から上がる歓声。

しかし、牛カツとは名ばかり … さすがの源太もこのご時世で難儀したようです。

「薄っ!!」

ハムのような肉を見てお静が思わず声に出してしまいました。

「いや、結構いける思いますよ」

… … … … …

肉の薄さは、調理法で補いました。

これも正蔵ゆずりの始末の極意です。

カツを口にした皆が目を見張り、唸り声をあげています。

「下味ついてるんですね ~ 」

「ソースのうても食べられるやろ?」


め以子と一緒に腕を振るった活男が自慢げに希子に話しています。

「もっとどうぞ!」

「すまんな ~ 」


一度壊れかけた南中バッテリーの友情も復活、それを見て小さく微笑んでいるふ久。

『見えない力』で呼び寄せたのは、南中の勝利、それとも …

… … … … …

「泰介はいつか、甲子園に行くて決めたらしいですよ … 僕もいつかまた、竹元さんと仕事できますかね?」

悠太郎は寝物語にめ以子に尋ねました。

め以子は今日の竹元の怒りようを思い出してしまいました。

「ああ、どうでしょうね … 」

曖昧な返事に不満そうに妻の顔を見た悠太郎。

わざわざ会いに行って余計に怒りを買ってしまっため以子は、夫に話す訳にもいかずに視線をそらしてしまいました。

「終わったらええですね … 戦争 … 」

「そうですね … 」


ため息をついた悠太郎。

< め以子の願いも空しく、日本が太平洋戦争に突入したのは … この年の暮れのことでございました >

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2014年02月09日 (日) | 編集 |
それでは、次週の「ごちそうさん」は?

源太(和田正人)が快方に向かいめ以子()はほっとする。回復した源太は、精肉店に復帰。め以子は、野球の地方大会を勝ち上がった泰介(菅田将暉)らのために、わずかな牛肉を都合し牛カツをこしらえる。

帰れ、この◎×▲♂◇めっ!

悠太郎(東出昌大)は資材不足のため竹元(ムロツヨシ)の望む地下鉄を建設できず、絶縁を言い渡される。苦しむ悠太郎。め以子は、いずれは悠太郎と和解をと、健康によいニンニクの梅肉エキスあえを竹元に届ける。

天下分け目の関ヶ原なんですよ!

やがて太平洋戦争が始まる。

昭和18年には、配給の列に並んでようやく乏しい食糧が手に入る状態。め以子は、闇で買うなどして子どもたちにおやつを配り「ごちそうさん」と言われ続けている。が、近所にねたまれ闇物資の購入を密告される。

人にごちそうすんの、金輪際やめます!

ごちそうさん』すんのは、ちい姉ちゃんなりの世の中への反抗やなかったんですか?


配給でも仲間はずれにされ、ついには取っ組み合いのケンカをするはめに。め以子は「ごちそうさん」を止めると宣言し、希子(高畑充希)に非難される。希子は戦意高揚ばかりが目的のラジオ番組の仕事に悩んでいた。室井(山中崇)の文学も戦時下にふさわしい内容を強いられる。

私、もう別れる

そんな折うま介で焼氷の注文が。訳がありそうな客のためにめ以子や馬介(中村靖日)らは奔走して材料を調達する。ふ久(松浦雅)のおかげで氷を作ることに成功し、焼氷を客に差し出したとき思わぬ邪魔が入る。

マグマがどど~ん!

一方希子のラジオ番組では、室井が自作の児童文学を朗読することに。検閲を受けた台本を読み始めた室井だが、物語があらぬ方向に進んでいく。ラジオを聴いていため以子は、ご近所さんと一緒に食糧難を乗り切る方法を思いつく。


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2014年02月08日 (土) | 編集 |
第108回

「 … 食いもんが、死体になるんです」

戦場での敵 … 人を殺した経験が源太の精神を追い詰め、食べ物を受け付けることができない状態にしていたのです。

「食べるいう行為そのものが、しんどいんやと思う」

亜貴子はめ以子にそれだけを伝えて帰っていきました。

命を持たないものだったら大丈夫ということなのでしょうか …

ひとり台所で糠漬けの世話をしながら、め以子は考えていました。

「どうして、源ちゃん … 」

… そんな身体になってしまったんだろう?

そう言えば、亜貴子はこんなことも言っていました。

「食べるいうんは、『命を頂く』いうことやろ?」

ハッとするめ以子、源太が食べられない理由が分かった気がしました。

… … … … …

「ただいま帰りました ~ 」

亜貴子の姿を見て、慌てて表に逆戻りしてしまった悠太郎が、頃合を見計らって戻って来ました。

「なあ、殺したんかな … 源ちゃん」

「えっ?」

「人を … 殺したんかな?」


め以子は困惑した顔で尋ねました。

「 … そりゃあ、戦場ですからね」

戦場に行くということはそういうことだと、今になってはじめて実感しため以子でした。

「大丈夫ですか?」

心配して、隣に腰かけた悠太郎。

め以子は、堪え切れないように悠太郎の腕にすがっていました。

「それが、ええとか悪いとかやなくて … きつかったやろうなって、源ちゃん」

源太の気持ちを考えると、胸が張り裂けそうです。

… … … … …

源太はもうろうとしたまどろみの中で人の気配を感じて少し目を開けました。

枕元に泰介が座っていて、顔を覗き込んでいるのが見えました。

「あの … 聞きたいことあるんやけど」

源太が目を覚ましたことに気づくとそう声をかけてきました。

「いい?

ひどいことかも知れんけど … 」


かすかにうなずいたのが分かりました。

「おじさん、また戦争行かされるやろ?

それでも … その … 自棄にならへんの?」


源太は目を見開きました。

「わし … 夢があんねん」

「夢?」

「 … 千人のお姉ちゃんとつき合うんや」


泰介は失礼だとは思いながら、笑ってしまいました。

「誰もが口揃えて無理やって言う … けど、あきらめへんのは、わしの自由やろ?」

そう言って源太は泰介の顔を見上げて、力なく、でも精一杯の笑顔を見せたのでした。

源太の話を聞いて、その笑顔を見ていたら、囚われていた何かから解放されたような … そんな気持ちなっていました。

何故だか分かりませんが、涙が止まりません。

「 … どないしてん?」

「どないしたんでしょう?

何だか、どないしたんでしょう … 」


… … … … …

「親父もきっと、そういう経緯を味おうてたと思うんですよ ~

せやから、始末にこだわってたんやと思うんです … 奪ってしまった命へのせめてもの償い、いいますか … 」


源太のことを正蔵の人生になぞらえた悠太郎の話を聞いて、め以子は少し落ち着きを取り戻しました。

そして、考えたのは、源太のために今自分が何ができるかをということでした。

… … … … …

次の朝。

一番で出かけていっため以子と入れ替わるように亜貴子が再び西門家を訪れました。

「ああ、おはようさん」

驚く悠太郎に構わず、亜貴子が家に上がった時、泰介が血相を変えて飛び出してきました。

「お父ちゃん、源太さんの様子、変なんやけど … 」

… … … … …

「泉さん!」

亜貴子が頬を叩いても何も反応しない源太。

「足、持ち上げてください」

亜貴子は悠太郎に指示した後、枕を外して心臓マッサージを始めました。

「皆さん、声かけてあげてください … 早くっ!」

… … … … …

源太の容態が急変した頃、め以子は市場にいました。

買い物を済ませた時に、追いかけてきた泰介から知らせを受けて、慌てて戻って来たのです。

「源太さん」

「源太おじさん」

「源太さん聞こえる?」


皆が声をかける中、亜貴子の必死のマッサージが続いています。

「源ちゃん!!」

そう言ったきり、め以子はその場に立ちすくんでしまいました。

「何か言え、め以子っ!

呼び戻すんや、早う ~ 源太さん、なくしてまうで!!」


一体、何を言えばいいのか … うろたえる、め以子。

その時、口をついて出た言葉 …

「ジャム … 返せ … 」

… … … … …

め以子は源太の枕元に行くと、肩をつかみました。

「ジャム返せ!

私、あの時のジャム、まだ返してもらってへん!」


それは、ふたりがまだ小学生の時のことでした。

め以子が大事にしていたイチゴのジャムを源太が丸ごとダメにしてしまったことがあったのです。

「 … ジャムわやにして、返しもせん。

弁当食うて、礼も言わん …

源ちゃんは、そんな奴やなかったはずや ~ !!」


… … … … …

ずぶ濡れの源太が差し出した手 … その中にはひと粒のイチゴ。

目を見張るめ以子。

源太は、め以子の手を取ると、それを手のひらに乗せ、ニッコリと笑う。

「じゃあな!」

「ありがとう、源ちゃん!」

… … … … …

フッ … フッ … フゥ ~ っと、息を吐いた源太。

そして、薄らと目を開けて、め以子の顔を見ました。

「め以子 … 」

息を吹き返した源太を見て、安堵する一同。

め以子の声が届いたのか、亜貴子の懸命の処置のおかげか … 源太は戻って来たのです。

… … … … …

「源ちゃん、私ね … 食べもんの声が聞こえる時があるんよ。

鯛も、煮干しも、小麦粉も話すんや ~

それでも問答無用に切り刻んで、叩いて、焼いて … 私にとって、生きることは殺すことや。

せやけどな、止めることなんてできんのよ ~ せんかったら、こっちが死んでしまうもの。

せやけど、たまには例外があるんや」


そう言って、め以子が手に取ったのは、温めた牛乳が入った椀でした。

朝一番で市場に買いに行っていたのは牛乳だったのです。

それを源太の顔の横に差し出しました。

「ここからは何の声も聞こえへん。

乳出したかて、お母ちゃん牛は死なんから … せやから、大丈夫や」


め以子は源太の上半身を抱き起こして、椀を持たせました。

源太は両手で包むように持った椀に口を当てると、ゆっくりゆっくりと流し込みました。

何度も何度も …

… … … … …

源太の容態が落ち着いたのを見届けた一同は、それぞれ職場や学校に出かけていきました。

「あんな風に育ててきてもろうて ~ 死んだみたいに生きとったら、バチ当たるね」

泰介は並んで歩いている父に宣言しました。

「どんな形になるか分からんけど …

いつか、絶対、僕、甲子園行くわ」


それは大会予選の初日に見せたあの時の泰介の顔でした。

「行ってみせる!

… 歌はもうええで」


ひとつ成長した息子のことを頼もしく思う反面、何故か心から喜ぶことができない悠太郎でした。

… … … … …

「ホンマにありがとうございました」

亜貴子が気にかけて訪ねてきてくれたお蔭で源太は一命をとりとめたのです。

いくら感謝してもしきれない、め以子でした。

「礼を言われる筋合いはないわ ~ これ見せに来ただけやから」

鞄から1枚の写真を取り出すとめ以子に見せました。

「?」

「 … うちの旦那様」


いつの間にか亜貴子は再婚していたのです。

「軍医 …

身長190センチ、ベルリン大学卒 … うちにベタ惚れで、男のクセに料理上手 … で、年下や」


何をとっても誰かさんより上とでも、言いたいのでしょうか …

呆気にとられているめ以子から写真を取り返し、「ほなね」とひと言、帰っていきました。

「 … ごちそうさんでした」

… … … … …

その夜、悠太郎は自分が高速鉄道課に配属されてから携わってきた駅舎の写真を机に並べてみました。

『 … 考えてみるこっちゃな ~

自分か竹元さんかやのうて、世の中で今いっちゃん大切にせなあかんもんを考えるしかないわ …』

写真を眺めがら、先日の大村の言葉を思い返していたのです。

「それ、心斎橋ですか?」

悠太郎が手にしていた写真を横から見た、め以子が尋ねました。

「せや … 」

すると、め以子は身を乗り出して、クイズでも解くように写真をひとつひとつ指さしながら名前を当てていきます。

「こっちが梅田で ~ 淀屋橋 … 」

悠太郎は頬を緩ませました。

「気持ちええでしょ? … 竹元さんの造る駅は」

「そうですね ~ 」

「この頃の駅はぜいたくなんです。

天井がアーチで、ホームには柱が無くて、シャンデリアもタイルの色も駅ごとに違って … 」


建築の過程で対立はしても悠太郎は竹元のデザインは大好きでした。

め以子は何枚か、雰囲気が違う写真があることに気がつきました。

「こっちのは、天井も低くて … 何や殺風景ですね?」

途端、表情が曇った悠太郎。

「 … ぜいたくは敵やいうて、こうなっていったんです」

「夢のない話ですね … 」


… … … … …

「夢はキャタピラに潰されていく時代になったんです。

夢を叶えるために、一番大切なことは … 才能や根性ではなく …

生き残ることです」


そういう時代に生きている … 自分もめ以子も、そして子供たちも … それは、逃れることができない事実だったのです。

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2014年02月07日 (金) | 編集 |
第107回

市場で突如倒れてしまった源太。

1週間ほど、きちんとした食事を取って養生すれば治るという医者の見立てを聞いて、め以子はしばらくの間、西門家で面倒みることに決めたのでした。

「源ちゃん、源ちゃ … 」

食事を運んできため以子に起こされた源太は、息も荒く、怯えたような顔で後ずさりしました。

「源太さん?」

横に控えていた泰介に声を掛けられて、我に戻った源太ですが、なぜ自分がここにいるのか分からないようです。

「わし … えっと … ???」

「源ちゃん、栄養失調で倒れてんよ」


め以子の説明を聞いて、ようやく合点がいったようです。

「ああ、そうやったんか … 」

「物足りんかもしれんけど、消化のええもんの方がって思て」


め以子は茶碗によそった雑炊を源太に手渡しました。

「 … いただきます」

しかし、さじにすくっただけで中々口に入れようとしません。

やがてゆっくりと口に運びましたが、顔をしかめて … 無理に飲み込みました。

「口に合わん?」

不安そうにのぞき込んでいるめ以子。

「あ … いや、美味いで」

見るからに無理やりに食べ続ける源太。

「 … ごちそうさんでした」

何とか平らげて、横になろうとしましたが … 突然、苦しそうに口を押えました。

「源太さん?」

よろよろと立ち上がると …

「お母ちゃん!!」

食器を片付けようとしていため以子が泰介の声に振り向いた時は、源太はもう縁側の先にうずくまっていました。

「源ちゃん?!」

… … … … …

そんな騒ぎの中、帰宅した悠太郎と啓司。

「 … 何で源太さんが?」

取り込み中のめ以子に代わって、お静から源太が客間にいることを聞いた悠太郎は眉をひそめましたが、事情を知って、やむを得ないことだと納得したようです。

結局、源太は食べたものを全て戻してしまいました。

白湯を飲んで、何とか落ち着きを取り戻しました。

「 … もっと、さっぱりしたもんがよかったかな?」

傷病除隊となった後も、こんな症状が続いていて、それがだんだん悪化していたのです。

「何やったら、わし食えるんやろ?」

力なくつぶやいた源太。

「憑りつかれとるんかも知れん … 」

「憑りつかれるって、狐とか?」


源太は答えることもなく横になってしまいました。

… … … … …

その後も源太の身体は白湯以外は何も受け付けず、衰弱していく一方でした。

「何食べても吐くて、胃が悪いんとちゃいます?」

往診に来た医師にしつこく尋ねても、弱ってはいるが胃自体がいかれている訳ではないと同じ診断が下されるだけでした。

「安静にして、消化のええもんを食べさせたってください」

医師の言葉にうなずいため以子ですが、すでに何度も試みていることだったのです。

「め以子 … ごめんな … 」

青ざめた顔、か細い声で布団の中から詫びた源太。

「何言うてんの ~ 水臭い」

… … … … …

市場の連中も源太のことを心配していました。

め以子が店の前を通った時、タネが声をかけてきました。

「源太、どない?」

「それが … 何も食べられへんで」

「ああ、蒸してきたんもあるんかいな?」


タネと話をしていて、め以子はふと思いつきました。

「タネさん、トマトある?」

冷やしたトマトならさっぱりと食べられるかもしれません。

しかし、残念なことにトマトは入荷してはいませんでした。

「 … 冷たくして、美味しいもん??」

トマトの代わりになるもの ~ め以子は店頭に並んだ野菜をじっくりと眺めました。

… … … … …

め以子が選んだのは、カボチャでした。

蒸かしたカボチャを刻んで、すり鉢でていねいに漉して作ったスープを冷やして源太に出しました。

「暑いんもあるかと思てな ~ 源ちゃん、さっぱりするで」

うつろな目、弱弱しく差し出した手で器を受け取った源太。

「おおきに … 」

今度こそ ~ め以子はそう祈りました。

… … … … …

しかし、器の中にほとんど残っているスープが結果でした。

< どうして、食べられないんだろうね? >

台所でため息をつく母の背中を板の間から泰介が見つめていました。

… … … … …

悩んだ末にめ以子が訪れた場所は … 大阪南総合病院、亜貴子の勤め先でした。

ワラをもつかむ気持ちで頼ったのは、かつても恋敵(?)だったのです。

「今日はヒザ悪うしはったん?」

問診票を見ながら尋ねた亜貴子。

「う、ウソいつわりでございまする … 」

この変な敬語は、苦手な相手に頼みごとをする時のめ以子のクセでした。

「は?」

「 … ちょっと相談したいことがあって ~ 」

「また、悠ちゃんが浮気したとか?」


人聞きの悪いことを … 真顔で聞いてきました。

「ちゃいます!

あの、幼馴染が兵隊から帰って来たんですけど … 食べられないんです」

「食べられない?」

「一旦は食べるんですけども、戻してしまうんです」

「まあ、何かしらお腹に優しいもんから食べさせることやな ~ 」


ありきたりのことしか亜貴子からは返ってきませんでした。

「 … うち、専門外やし」

「いや、専門外やから、別の … か、画期的な意見、言うてくださいよ」


それは、無茶な注文でした。

「 … すいません」

… … … … …

家に戻っため以子は、間髪を容れずまた台所に立ちました。

お静は何事でもあきらめないめ以子のことをいつもながら感心していました。

「で、今度は固めるんかいな?」

「もしかしたら、水分がこの … ムカムカさせるんかなって」


試せることは全て試す気でした。

「 … お祓いするか?

キツネ憑いてる言うてはんのやろ?」

「ああ、そっちも考えた方がええですかね ~ 」


… … … … …

「 … 何が何でも、食べさせなあかんの?」

ふたりの会話を板の間で聞いていた泰介が、つぶやくように漏らした言葉でした。

「えっ?」

「元気になったら、また行かされる人がほとんどやろ?」


暗い声で、泰介は続けました。

「いろんな所、送られて … 結局、死ぬまで行くことなるやんか?」

泰介は立ち上がって、母の顔を責めるように見ました。

「そのたんびに、あんな辛いことなるんやったら … ここで静かに看取ってあげた方がええいう考え方はないん?」

め以子のしていることが、源太を無理やり、戦場に送り返すための行為に見えて違和感を覚えていたのでした。

一体何が、泰介をこんな考え方をするまでに変えてしまったのか?

ふ久も、活男も、希子も、お静も … 誰もが言葉をなくして、泰介の顔を見つめていました。

… … … … …

「源ちゃんがそう言うてるんか?」

一歩前に歩み出ため以子が尋ねました。

「 … 違うやろ?」

「けど、また同じことなるんやで … 死なせに行くために治しているようなもん」


そういい返しながらも、泰介は悩み、そして迷っていました。

「死なん人間なんておらんやろ?!」

め以子は険しい顔でにらみつけると、声を荒げました。

「死ぬの当たり前や ~ あんたもあたしも!

… 源ちゃんだけが死ぬようなこと言うてるけど、分からんやろ?

あたしかて、あんたかて、明日いきなり丸焼けになるかも知れんやろ?」


悲しいやら、情けないやら、涙があふれてきます。

「どうせ死ぬなんて言い出したら、アホらしゅうて飯炊きなんてやってられるか?!」

… … … … …

その時、思いもよらぬ来客者が訪ねてきました。

「亜貴子さん?!」

「診させてもろうてええ?」


さっきはああ言ったものの、やはり気になってしまう亜貴子の性分でした。

「画期的な意見は言われへんかも知れんけど … 」

… … … … …

一方、悠太郎は久しぶりに大村から誘われて、懐かしい立ち飲みの店を訪れていました。

偶然、顔を出した藤井も遠慮することなく着いてきて、図らずも何年かぶりに元建築課の3人が揃いました。

「えっ、昆布持ち込みになったん?」

昆布酒が売りだったこの店も物資不足のため、客自身が持ち込む方式に変えざるをえなかったようです。

大村は自分と悠太郎の分だけしか用意していませんでした。

しかし、そんなことでめげるような藤井ではありません。

「配給が7分搗きになったやろ?

それで嫁と息子の嫁が精米するかどうかで揉めてるんです」


世代が代わっても相変わらず嫁姑問題に悩んでいました。

大村は知り合いを頼って、九州に疎開するようです。

… … … … …

「それより、どうや地下鉄は?」

悠太郎は、鉄筋量の不足で、竹筋の使用を検討していることを話しました。

「ああ ~ 竹筋な」

「性能的には未知数です」


竹筋を売り込みたい藤井が口を挟もうとしましたが、悠太郎はそれを制して、大村の意見を仰ぎました。

「 … これが竹元さんの造る最後の駅になるとしたら、竹筋取り入れますか?」

「竹筋言い出したのは誰や ~ 竹元さんか?」

「いいえ … 」

「 … 現実を考えてみるこっちゃな ~

自分か竹元さんかやのうて、世の中で今いっちゃん大切にせなあかんもんを考えるしかないわ …

なっ、藤井君!」


… … … … …

西門家の客間では、亜貴子による源太の診察が続いていて … め以子たちは板の間で終わるのを待っていました。

「遅いな ~ 永遠の恋敵」

冷やかしたお静をめ以子がたしなめました。

すると、希子もおもしろがって言いました。

「ちい姉ちゃんって、気まずい人のとこへ、よう平気でいきますよね」

亜貴子といい、和枝といい … いざとなったら、躊躇せずに乗り込んでいけるのがめ以子でした。

「平気やないよ ~

けど、何か … 別に殺されるわけやないから、まあいいかって」


和枝のことでも思い出したのか、お静は吹き出しました。

「おばはんになったな ~ あんた」

… … … … …

ひと通りの診察を終えた亜貴子に源太が尋ねていました。

「わし … もうあかんのですか?」

「せやね ~ このままやったら」


亜貴子は包み隠さず答えましたが、源太はショックを受けるでもなく、ただボ~っと天井を見ていました。

「なあ、ホンマは自分で食べられへん理由、分かってんのと違う?

… 手がかりもらえんと、助けることはでけへん」


源太がわずかに亜貴子の方へ顔を動かしたように見えました。

「 … 食いもんが、死体になるんです」

「どんな?」

「わしが、殺した … 」


… … … … …

帰宅した悠太郎は玄関の戸を開けて、我が目を疑いました。

何故か亜貴子が家にいて、台所でめ以子とふたりで会話していたからです。

思わず、腰を引いてこそこそと表に戻ってしまいました。

「結論から言うと、食べるいう行為そのものが、しんどいんやと思う」

それが亜貴子の見立てでした。

「 … しんどい?」

「食べるいうんは、『命を頂く』いうことやろ?

お肉もお魚も野菜も … 」


… … … … …

「ほな …

ほな、命を持たん食べ物ならええいうことですか?」


しばらく考えたのち、め以子は亜貴子にそう尋ねていました。

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2014年02月06日 (木) | 編集 |
第106回

『今後5年間、全国大会は中止 … 甲子園はないんやて』

準決勝を目前にして、目標を断たれた泰介。

め以子は糠漬けの世話をしながら悩んでいました。

< 何て言って慰めればいいのかね … >

『5年後があるわよ』

その頃には泰介はもう甲子園という歳ではありません。

『来年、戦争が終わるかもしんないし』

… あまりにも能天気です。

いくら考えても、慰める言葉が見つかりません。

そうしているうちに、諸岡を見送った泰介が家に入ってきてしまいました。

… … … … …

「あっ、泰介 … 」

2階へ上がろうとした泰介を呼び止めていました。

「え … 何や … 食べたいもんある?」

結局、め以子が泰介にしてあげられることは、それなのです。

戸惑うような顔から、ふうっと笑った泰介。

「何でもええよ ~ 普通で」

その無理のない笑顔に少しだけホッとしため以子でした。

… … … … …

次の朝。

泰介のことが気になるのか、皆いつもより早く板の間に下りてきています。

「お兄ちゃん、昨夜どうやった?」

活男に尋ねた悠太郎。

「う~ん、遅くまで起きとったけど」

「どんな様子やった?」

「別に、普通 … 」


そこへいつもと変わらない泰介が下りてきました。

「おはようございます」

泰介の目がチラッと壁に貼られたままのトーナメント表にいきました。

それに気づいた希子が慌てて剥そうとしましたが …

「別にそのままでええですよ ~ 予選は最後まであるかも知れへんし」

特に気にしていないような言い方です。

「お母さん、今日からお弁当普通でええから ~ 朝の練習もないし」

「あ、そうなん?」

「もう作ってもうた? ほなら、そのままでええけど」


うっかりいつもの調子で弁当を詰めてしまいました。

「何か … ごめんな」

「ははっ、謝るん変やで」


気配りが足らなかったと、め以子は謝りましたが、泰介は笑い飛ばしました。

ひと晩寝たら、悔しさも忘れてしまったということはないでしょうが、反対に家族に気を遣って平静を装っているのかも知れません …

余りにもサバサバしてみえて、皆が拍子抜けしてしまうほどです。

… … … … …

開店間近の牛楽商店。

お姉ちゃんの所からの朝帰りにしては、浮かない顔の源太がやって来ました。

「おはようさん … 」

「おお、源太おはよう ~ 」


待ちかねていたように奥から飛び出してくるマツオとトミ。

「どやった? 姉ちゃんは」

「ああ … ああ」


曖昧に笑った源太の顔、目の下にクマが出来ています。

「何やお前、寝てないんか?」

「 … 当たり前やないですか ~ 」


見栄を切った源太を見て、マツオとトミは顔を見合わせて笑いました。

「ご飯は食べてきた?」

源太が戻って来て、沈みがちだったトミも以前の元気が戻っています。

「ああ …

これやっときますわ」


何となく返事をはぐらかしたようにも聞こえましたが、早速仕事に取り掛かりました。

「ああ、すまんな ~ 源太」

… … … … …

愛用の包丁を握って、まな板の上の肉に当てようとした時、源太に異変が起きました。

手が動かないのです。

そればかりか、小刻みに震え始めました。

何かに怯えるように、腰を引いた源太。

「どうしたん?」

トミが不審に思って、声をかけました。

「あ、いや … 別に」

そう答えた源太の顔は真っ青でした。

… … … … …

「ちょっと、ひと休みさせてもらってええかな?」

買い物の途中でうま介に寄っため以子は、この店には似つかない重たい雰囲気を感じました。

窓際の席に原稿用紙を手にした放心状態の室井が座っていて、桜子と馬介が遠巻きに様子を窺っています。

「 … 何かあったの?」

「出版できなくなったんやて」


出版が決まっていた小説が検閲に引っかかってしまったと桜子が説明しました。

「検閲って … そんな引っかかるような話だったの?!」

「ただの恋愛小説だったんだけどね ~ 」


室井は淡々と語りました。

「砂糖がね、よくないんだって …

塩をなめて生きてきたような男がさ、砂糖なめてる女にあこがれるってところがさ … ぜいたくを煽ってる、非国民だって。

『塩と水』ならいいって」


め以子にしてみれば、小説自体も不可解ですが、そのくらいのことで検閲に引っかかるのは理不尽に思えました。

「海水できちゃいますね … 」

「海水作ってどうすんのよ?! そんな話じゃないのよ!!」


め以子が思わず口にした言葉に桜子は激昂して、食って掛かりました。

「『塩と砂糖』じゃなきゃ、意味がないのよ!」

「 … ごめん」

「海、作っちゃうのもいいかもね ~ 」


苦笑いしながら立ち上がった室井は、そのままうつむいて2階へと上がっていってしまいました。

… … … … …

「もうっ、もうっ!」

やり場もない怒りを落ち着かせるためか、桜子は席に着きました。

その隣に腰を下ろしため以子を見て、『ごめんね』というように微笑みました。

「いい小説だったのよ … 室井さんにしか思いつかないような、おかしな設定で …

けど、ああ生きるってこういうことだな、愛するってこういうことだな、塩も砂糖もあってこその人生だなって … 」

「うん … 」


< そうだよね ~ かけてきた夢がつぶれた時って、怒ったり泣いたりするもんだよね …

やっぱり、泰介は無理してんのかね? >

… … … … …

その足で市場に寄っため以子。

牛楽商店の前に差し掛かった時です。

「おいっ?!」

突然マツオの呼び止めるような声がしたかと思ったら、源太が飛び出してきました。

「どないしてん? 源太 ~ 」

「あっ、あっ、ああ ~ 」


源太は、悲鳴ともうめき声ともとれるような声を上げて、向かいの定吉の店の前にうずくまっています。

「どうかしたん?」

「ひゃ ~ !!」


め以子が背中に触れると、驚いたようにバッと跳ね起きました。

手に構えた包丁をめ以子の方に向けて、怯えきった表情の源太。

「源ちゃん?!」

ハッとして自分の手にある包丁に目をやりました。

「す、すまん … 」

刃を押さえながら、よろよろと店に戻っていく源太。

「 … 何があったん?」

源太は、まな板の上にある肉の塊に目をやりました。

「あかん … 」

包丁を置くと、また後ずさりし始め …

「 … わし … あかん … 」

そうつぶやいた後、マツオとトミ、め以子の目の前で仰向けに引っくり返ってしまいました。

「源太 ~ 源太!!」

「源ちゃん!!」


気を失った源太、騒然となる市場。

「医者や、医者呼んで来い!!」

… … … … …

泰介たちは、結局予選が続くのかどうかもはっきりとはせず、取りあえず今日は午後の練習もなくなったので、下校することにしました。

「やっぱり、お前んち行くの止めとこうかな … 」

め以子をはじめ西門家の家族、ふ久にまで今まで通りに来るように誘われている諸岡でしたが、いざとなると迷っていました。

「えっ、何でですか?」

「なんや、また泣いてまうかも知れんしな」

「熱いですね、諸岡さんは」


泰介はいつまでも諸岡のように熱い気持ちのままでいることができない自分に気づいていたのです。

思わず、そんな言葉が口をついて出てしまいました。

「悔しないんか? お前」

「そら、悔しいです。

けど、どの道、20歳やそこらで兵隊に行くまでのことや思たら、何か … 」


怒り、悲しむことさえ空しく感じ初めていました。

「せやからこそ、今しかないと思わんのか?」

諸岡の問いかけにも答えることができません。

失望したのでしょうか … 諸岡は泰介を残して無言で立ち去ってしまいました。

… … … … …

泰介が帰宅すると、玄関が何やら騒がしく … ぐったりとした源太が銀次とマツオによって担ぎ込まれたところに出くわしました。

心配そうに源太の周りを取り囲む、活男、お静、そして、め以子。

「源太おじさん!」

「まあ、どないしたんや?!」


マツオは源太の体を懸命にさすりながら、事情を説明しました。

「いや、急に倒れてしもうてな ~ お医者に診せたら、ロクに食うてへんからちゃうか言われて … 」

「1週間ほど、ちゃんと食べさせたらって、お医者さんも言うてはったから … それぐらいやったら、家でって」


面倒を見ると名乗り出た、め以子が、ふたりに頼んで運んでもらったという訳です。

泰介は入口に立ち尽くし、ただ茫然と見つめるだけでした。

… … … … …

そんな騒動が起こっていることなど知る由もない悠太郎。

藤井が無理矢理置いていった『竹筋コンクリート建築』の資料に目を通している最中でした。

資料は、建築の事例などを掲げて、十分耐えうる竹筋の強度、いかに優れた工法であるかを謳っています。

悠太郎は、竹元が描き起こした駅の完成予想図を手に取りました。

それは、夢と理想を形にしたような、世界に誇れる美しい駅の姿でした。

『俺の設計を守ることがお前の仕事じゃないのか?!』

… … … … …

夕暮れが近づき、訪れる客もなく、ため息をついたうま介。

店を早じまいしようとした時、突然、悠太郎がドアを開けて入ってきました。

「おっ、悠さん ~ 珍しな」

「ええですか?」


… … … … …

悠太郎は馬介が煎れたタンポポコーヒーを手に取ると尋ねました。

「これ代用品なんですよな?」

責められたのかとでも思ったのか、戸惑った顔をした馬介。

「あ、いや ~ 僕も代用品を使わんかって、持ちかけられてまして … それを使うたら、駅の設計は変えんでやれるんです。

… それでちょっと」


馬介は、ふっと微笑んで、うなずきました。

「僕は、どうでもええもんが好きなんや」

そう言いながら、悠太郎の前の席に腰かけました。

「別にこんなもん飲まんでも、死にもせえへんし ~ どうでもええ人には、ホンマにどうでもええんやろうけど」

タンポポコーヒーを愛しそうに見つめています。

「けど … コーヒーっておもろいやん?」

「おもろい?」

「黒いし、苦いし … こんなもん美味う感じて、どういうことやて ~

無駄や言うたら、無駄やけど … 僕は無駄なもんが好きやから、代用品でもって」


… … … … …

「無駄こそ、文化なんだよ」

悠太郎は不意に聞こえたその声に振り向きました。

いつの間に2階から下りてきていた室井が階段に腰かけていました。

「せや、室井さんの小説とかな ~ 」

「そ、そうだよ」


立ち上がった室井。

「その無駄なもんに人生かけてるんやから、おもろいよな?」

『階段を下ると、そこには広大な地下空間。

息を飲むような壮大なアーチ型の天井 … そしてきらめく特大のシャンデリア』

悠太郎は、以前この同じ席で自分が描く地下鉄の姿を熱く語っていた竹元のことを思い出していました。

彼もやはり、無駄なものに人生をかけているような男のひとりなのでしょう …

… … … … …

「これ、どないしたん?」

台所に並べられている肉や野菜、魚介類などの食材を見て、活男が尋ねました。

「ああ、源ちゃん倒れたから、皆して心配して ~ 食べさせてやってくれって」

「けど ~ 一体全体どういうことなん?

向こうでロクに食べられへんかったってこと?

こっち戻って来てからは?」


矢継ぎ早に質問するお静。

しかし、本当のところ、め以子にもよく分からないのです。

「 … とにかく、まあ食べればええ話みたいです」

この時、まだめ以子はその程度のこととたかをくくっていたのでした …

… … … … …

客間に寝かされた源太。

今は落ち着いて、静かに寝息を立てています。

枕元には泰介が付き添って控えていました。

『20歳やそこらで兵隊に行くまでのことや思たら … 』

諸岡に話したように、遅かれ早かれ自分も源太と同じように戦場に駆り出されるのです。

そんな思いを巡らせていると、そっと戸が開いて、め以子が顔を出しました。

「 … どう?」

ハッとする泰介。

「まだ寝てはる」

め以子はうなずくと、雑炊が乗った盆を手に部屋へと入って来ました。

… … … … …

「源ちゃん ~ ご飯にしよか?」

声をかけましたが、熟睡しているのか全く反応しません。

め以子は、そっと源太の肩を揺らしました。

「源ちゃん、源ちゃ … はっ!」

不意に上半身を跳ね起こした源太。

め以子を見て座ったまま後ずさりしました。

「 … 源太さん?」

泰介に呼ばれて、我に戻った源太。

「ああ … 」

しかし、息は荒く、また先ほどのように何かに怯えたような顔でふたりのことを見ている源太でした。

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2014年02月05日 (水) | 編集 |
第105回

『段階式カツ制度』が功を奏してか、南中は順調に駒を進めて、今日は第3回戦。

これに勝てば、いよいよ準決勝進出です。

当然、勝利を信じているめ以子は、今夜のカツの中身、白身魚を買うために銀次の店を訪れていました。

しかし、肝心の白身魚が店頭にありません。

「イカではいかんか?」

「白身魚って、約束なんですよ」

「ほな、これは?」


誰か知りませんが、横から口を出して、イカやタコの隣に並んでいるエイを指さしました。

「えっ、エイって白身なん?」

銀次に尋ねため以子。

「そこは、白身でエイのやろ ~ ボケっ!」

どこか聞き覚えのある声に振り向くと、そこに立っていたのは …

「げ、源ちゃん?!」

出征したはずの源太でした。

「ただいま ~ 」

… … … … …

思いもよらなかった再会、め以子は源太をうま介に連れていきました。

戦地で病気になった源太は、任務不適格で傷病除隊となって戻ってきたのです。

「身体、大丈夫なん? エライ痩せたみたいやけど … 」

め以子の問いかけにも聞いているのかいないのか、ボ~っとしたままの源太です。

「源ちゃん?」

「 … ああ、ロクなもん食えんかったからな ~

まあ、美味いもん食うてたら、そのうち戻るやろ」


本人はそう言いましたが、傷病除隊になったことを考えると、少し心配なめ以子でした。

… … … … …

桜子がタンポポコーヒーを源太の目の前に置きました。

「タンポポコーヒー、居らん間に美味いことできるようなったで」

出征の時に源太と約束を交わしていた馬介は、戻って来たらまず最初に味見してほしかったのです。

しかし、源太はなかなか手を付けようとはしません。

「美味なっとるて … 」

もう一度、馬介に勧められて …

一瞬ためらいましたが … カップを手に取ると、ひと口だけ口に含みました。

そして、深いため息をついて、ぼそっとつぶやきました。

「戻って来たんやな … 」

… … … … …

「取りあえず、よかったね ~ 大きい声では言えんけど … 」

め以子が口にした言葉 … ここに居る皆、同じ気持ちでした。

「 … よし、ほな行くわ」

「えっ、もう?」

「お姉ちゃんの所、行ってやらんとな … 」


そう言うと源太は、うま介を出て行ってしまいました。

少しつれない態度に物足りなさを感じる一同。

「 … 美味しゅうなかったんかな?」

自信を持って出したタンポポコーヒーを、ひと口しか飲んでくれなかったことを馬介は気にしています。

… … … … …

「これちょっと見てくださいよ ~ 直して直して、ついに穴開いたんですよ!」

相澤が木崎の足を持って、穴の開いた靴を見せて悠太郎に訴えました。

「このままやと、工期に差支えてきます。

上に事情を話して、僕らで設計変更することにしませんか?」


じっと見つめて迫って来る相澤に悠太郎は思わず顔をそむけました。

しかし、彼の言うことは決して間違ってはいません。

「もう限界かもな … 」

悠太郎が弱音を吐きかけた時、真田が言い難そうに口を開きました。

「あの ~ 実は昨日、竹元先生お見かけしまして … 」

「何か話したか?」

「話はしなかったんですけど … その …

どうも、竹元先生も鉄筋探して掛け合ってくれてはるみたいで … 」


天を仰ぐ、悠太郎。

「今言うか? … それ」

先程までの勢いをそがれたような相澤。

「もう少し、粘りますか … 」

悠太郎は止む無く、結論を出すのは先延ばしにしました。

… … … … …

そんな時、藤井が『ええ話がある』と高速鉄道課に顔を出したのです。

「何ですか? ええ話って」

いつものように愛想(調子)がいい藤井のことが今日は何だか気に障って、悠太郎は素っ気ない口調になっています。

「な ~ んでしょ?」

その受け答えに、またイラッとする悠太郎。

「な ~ んでしょ?」

「 … まったく偶然やと思うんですけど … 冒涜されてるような気になるんで、止めてもらえますか?」


… … … … …

「ええ話いうんは、これや!」

藤井は鞄から資料を取り出すと机に置きました。

『竹筋コンクリート』 … 表紙にはそう書かれています。

「知ってる?

鉄筋の代わりに竹使うやつ」


当然のことですが、悠太郎も知ってはいました。

「君知ってるのは、昔のやろ?

今のもっとすごいんやで ~ 橋とか造れんねんで」

「いくらようなったかて、僕は怖ぁて使えませんね … 言うたかて竹でしょ?」

「一回とにかく読むだけ読んでみてえな、なっ、なっ」


仕方なく資料を受け取る悠太郎。

… … … … …

「よかったな ~ 源太さん、戻って来たん?」

源太のことをめ以子から聞いたお静は我がことのように喜んでいます。

「はい … まあ、ちょっとこう痩せてましたけど、無事に」

「そりゃ、よかったな ~ 」


何度も繰り返しています。

「お母ちゃん、これでええの?」

台所で、エイの下ごしらえを手伝っている活男が、め以子に指示を仰ぎました。

「うん、エイは霜降りしてヌメリ取らんとあかんから … 」

… … … … …

「あっ、こっちも戻って来た」

表の物音を聞きつけたお静は席を立って、玄関を見ました。

やはり、試合を終えた泰介と諸岡でした。

「おかえり ~ 」

しかし、今日のふたりは前回までと違って、沈んだ顔をして入って来ました。

「あれっ、あかんかったんか? 試合」

「ううん、勝った … 」


ニコリと笑った泰介。

「おお、すごいな ~ 」

拍手する、め以子たち。

3回戦も突破、いよいよ次は準決勝です。

それなのに、泰介は少しもうれしそうではありません。

諸岡は台所の入口に突っ立ったままです。

「 … 何かあったんか?」

不審に思ったお静が問いただすと、泰介は訥々と話し始めました。

「試合は勝った。

けど … 全国大会は、なしやって」

「えっ?!」

「今後5年間、全国大会は中止 … 甲子園はないんやて」


それだけ言うのが精一杯で、泰介は黙ってうつむいてしまいました。

「えっ、えっ、えっ … 何で、そんなん急に、そんなことになって … 」

一体どういうことなのか、め以子は混乱していました。

「自分らも、よう分からんのですけれど … 試合終わったら監督から言われたんです」

黙ったままの泰介に代わって諸岡が説明しました。

「せやけど … そんな … 何で??」

口を開けば『何で』という言葉しか出て来ません。

… … … … …

「ほな、自分はこれで失礼します」

頭を下げて帰ろうとする諸岡をめ以子は慌てて引き留めました。

「ご飯、ご飯食べていき … 」

「いただけませんよ、そんな … もう、甲子園ないのに」


辛そうに答えた諸岡。

「今更そんなこと言わんでも ~ 大会始まる前から来てはったやんか?」

活男も引き留めました。

「それは … 」

すると、め以子が何かを思いついて、手を叩きました。

「あっ、けど ~ 予選は最後まであるんちゃうの?」

「それは、あるかもしれませんけど … 」

「ほな、試合はまだ続くかも知れへんやんか ~ カツ食べんと」

「もう、用意してあんで」


今日もまた、自分たちの勝利を疑わずに、約束のカツを用意してくれていため以子 … 今までもずっとそうだったことを諸岡は思い出しました。

「 … ほな、お相伴させていただきます」

「うんうん、そうして ~ ほら、ふたりとも手洗って来っ」


何とか笑顔を作ったふたり。

ちょうど戻って来たふ久が入口で佇んで見つめていました。

< 戦局拡大の影響で、この年 … 甲子園での全国大会は突然、中止となったのです >

それは、準決勝まで勝ち進んでいた諸岡や泰介にとって、はしごを外されたような仕打ちでした。

… … … … …

「あんまり、湿っぽうならんようにしような」

諸岡からそう言われ、笑顔でうなずいた泰介。

そんな会話を部屋の外の壁にもたれて、窺っているふ久がいました。

… … … … …

「中止ですか … 」

夕刻になって、帰宅した悠太郎と啓司もそのことを知って、肩を落としました。

「そうか … いや … 」

残念というより険しい表情をみせた啓司。

そこへ、め以子が慌ただしく何処かからか帰って来ました。

「あった?」

すかさず尋ねたお静。

「結局、鶏飼うてはるお家に頼み込んで1個だけ売ってもらえました」

め以子が卵を1個取り出して見せると、お静と希子は手を叩いて喜びました。

「卵?」

首をかしげた悠太郎。

「うん、衣に使う分しかなかったから … ふたりにつける分だけでも思て」

… … … … …

「これ、無茶苦茶美味いんですよ ~ 」

活男が諸岡に説明しているのは、め以子がやっとの思いで手に入れた卵で作ったタルタルソースです。

諸岡と泰介のカツの上にだけ乗せられました。

「何なんですか ~ これはっ?!」

ひと口食べた諸岡、いつも以上に大きな声を上げました。

その声につられて、皆思わず笑顔になりました。

「美味しい?」

「美味しいなんてもんやないです!!」


身震いするほど感激しています。

「ほらっ、ガツガツ行け ~ ガツガツ、泰介も!!」

お静がふたりを煽りました。

… … … … …

「この上にかかってるのどうやって作るんですか?」

西門家で出てくる料理は、当時まだ一般の家庭の食卓には上がらなかったような … 諸岡が初めて食べる美味しいものばかりでした。

タルタルソースは余程美味しかったと見えて、め以子に作り方まで尋ねています。

「ああ、これな ~ 卵でマヨネーズ作って、そこに糠漬けのキュウリとらっきょを刻んで … 」

事細かに作り方を教えた、め以子。

感心した諸岡はふと他の人のカツに目をやりました。

そして、タルタルソースは自分と泰介のカツにだけかかっていたことを知ったのでした。

「 … 僕たちのために?」

「大変やと思うやろ?

ところがや ~ 鶏飼うてはるおじさんに、おばちゃんがニコ~って笑たらな … フッて卵が出てきてんよ ~ 」


面白おかしく話すめ以子。

ところが、諸岡は笑うどころか、箸を止めて、うつむき加減で聞いています。

「早う食べや」

お静が促されて、諸岡はふたたび箸を持ち直しました。

「おばちゃんの魅力で一発やっていう話しやっ!」

「それはちゃうんと違います?」

「なんで ~ 」


希子に突っ込まれて、言い返しため以子。

にぎやかな笑い声に包まれた食卓。

… … … … …

しかし、お椀と箸を持った諸岡の肩が震えていることに泰介とふ久は気づいていました。

だんだんうつむき加減が大きくなって、しまいには下を向いてしまいました。

「諸岡さん … 」

泰介の声で、諸岡に注目した一同。

静まり返った中で、諸岡は箸を置きました。

「すいません … こんなに応援していただいたのに、甲子園行かれへんで …

ほんま、すいません!」


泣きながら頭を下げる諸岡。

「何言うてんの ~ 」

おどけて返そうとした、め以子でしたが、顔が涙でくしゃくしゃになっていました。

「あんたら何も悪うないやんか?!」

お静も涙声です。

「わしもカツ三昧やったし!」

「私らもええ夢見せてもろうたよ」


代わる代わる声をかけた活男と希子。

事実、それは本当のことでした。

子供のように泣き続ける諸岡。

「さっき、泣かへん言うたやないですか?」

そう突っ込みながら、泰介の目からも涙があふれそうです。

「今、そんなこと言うなや ~ 」

… … … … …

「もう ~ もう食べ ~ おばちゃんの分も食べ ~ 」

自分の皿を諸岡に差し出すめ以子。

「祖母ちゃんの分も、ほら食べ」

ふたりの前にカツの皿が集まりました。

泣きながら黙々と食べ始めた諸岡と泰介。

「ぎょうさん食べ ~ お替りはいくらでもあるからな ~ 」

… … … … …

食後、悠太郎は啓司を誘って、部屋を移って酒を酌み交わしていました。

「もしかして … 知ってはったんですか?

こうなるかも知れんこと」


甲子園大会の中止を聞いた時の啓司の態度が気になっていたのです。

「 … 今年はあるて、思うてましたよ」

「今年は … って?」


… … … … …

表では、いつものように諸岡と泰介が投球練習を行っていました。

甲子園大会は無くなってしまいましたが、それでも諸岡の投球には変わらぬ熱がこもっています。

… … … … …

「口外はしないでほしいんですけど … 」

そう断って、啓司は自分が今している仕事のことを話し始めました。

「僕は今、あちこちに放送の拠点局を増設する仕事しているんです」

「このご時世に、増設ですか?」


うなずいた啓司。

「とうとう米英とやるってことですか?」

「僕らもただ作れて言われてるだけなんです」


でも、それは明らかに敵の空襲があっても、放送が機能不全に陥らないための予防策としか思えないと啓司は話しました。

「ホンマにそんなことになるんですか … 」

… … … … …

しばらく投げ込んだふたりが家の中へ戻ろうとした時、いきなりふ久が玄関から飛び出して来て、諸岡の前に立ちました。

「あの … 諸岡君」

随分前から、西門家に訪れている諸岡ですが、ふ久から話しかけられたのは初めてのことでした。

「 … これからも遠慮せんと来てな」

「えっ?」

「 … ふたりの青春は、うちの青春やから」


それだけ伝えるとサッサと家に引っ込んでしまいました。

何と言おうか考え抜いた言葉だったのでしょう。

ニコリとも笑わなかったのは、緊張していたせいかもしれません。

姉の性格が分かっている泰介は可笑しくて仕方がありませんでした。

< いつの世も変わらぬ青春の佇まい … けれど時代は移り変わっていくのでございました >

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2014年02月04日 (火) | 編集 |
第104回

「何やないかいな ~ 料理で甲子園へ行かせる方法とか、甲子園へ行ける魔法の料理とか … 」

カレーの効果に気をよくしため以子は、活男を相手に次なる手を考え始めていました。

「カツでええんちゃうの? 願掛けで」

「カツはあかん!

お母ちゃんがカツ作るやろ … で、相手の子のお母ちゃんもカツ作るやろ、それ同点やんか?」

「さっすがやな ~ お母ちゃん!」


そんなふたりのやり取りを見て、お静が不安げに悠太郎に尋ねました。

「活っちゃんは、あれでええんかいな?」

「ホッとしますよね ~ 」


悠太郎は和やかな顔で微笑んで見ています。

「 … お兄ちゃんはこれでええんかいな?」

今度は希子に悠太郎のことを尋ねましたが笑顔でうなずくだけです。

… … … … …

そこへ、ようやく啓司が帰って来ました。

疲れているせいでしょうか、どことなく元気なく見えます。

残念なことに食事は済ませて来たそうです …

「お母ちゃん、ボロきれとか綿とか何かない?」

2階から下りてきた泰介が、すり切れてボロボロになったキャッチャーミットを見せました。

「これ、直したいんや」

「あんた、こんなんでやってた?」


ミットを手に取ってあきれるめ以子。

「みっともない ~ ミットやな」

活男の駄洒落に苦笑いの泰介。

「 … 今は皆、こんなやの!」

「ちょっと、泰介 … 」


ミットに伸ばした泰介の手をつかみました。

「あんた、これ?!」

真っ赤に腫れ上がった手のひらを見て、驚く一同。

慌てて手を引っ込めた泰介。

「今は皆、こんなやの」

そう言いながら、ミットを手にしました。

「お祖母ちゃんが、新しいの買うたろか?」

せっかくのお静の好意でしたが、もう売っているところもないと泰介。

「とにかく、諸岡さんが思いきり投げられるようにしたいねん。

諸岡さん、最後やし … 」


… … … … …

「へえ ~ 意外と器用なんですね?」

その後、泰介からミットを預かった悠太郎は自ら針と糸を使ってほころびを修理し始めたのです。

「そこそこの器用さがないと、建築はできないと考えたことはないんですか?」

「ないですね ~ 」


め以子はめ以子でお世辞にも上手とは言えない手つきで針仕事をしています。

「あなたは、いつまで経っても、清々しいほど浅はかですね」

笑顔でそう言った悠太郎、負けじと返しため以子。

「生まれた時から、分別臭い人に言われたないです」

憎まれ口を叩き合いながらも、ふたりは顔を見合わせて笑っていました。

… … … … …

あくる朝。

泰介が玄関で悠太郎に直してもらったミットを手にはめて具合を確かめています。

「具合ようないか?」

寝間着姿のままの悠太郎が心配そうに尋ねました。

「やっているうちに慣れてくれるような気がする … おおきに!」

やはり素人の修理ではしっくりこないところがあるのかも知れませんが、父が夜なべまでしてくれたことがうれしい泰介でした。

「あかんかったら、言うてくれ」

あくびをかみ殺した悠太郎。

そこへ、め以子が昨日と同じように重箱に詰めた弁当を運んできました。

やはり眠そうなところを見ると、この弁当のためにいつもより早起きしたのかもしれません。

「あ … 下、カレー入ってるから」

「えっ、これカレー入ってるん?」

「うん、皆元気出るって好評やったから ~ こぼさんようにな」


… … … … …

その日も午後を回り、め以子は雑誌から切り抜いた料理法を並べて、今夜の献立を考えていました。

『成長に欠かせないビタミンを補給/ねばねば丼』

『まぐろに含まれる良質な、たんぱく質が、筋力作りに最適/まぐろのカツ』 …

< どうも、ピンとこないね … >

「こういうことやないような … 」

ひとり首をひねる、め以子。

「なあ、何してんの?」

め以子が難しい顔で考え込んでいるのを見て、お静が声をかけてきました。

「ああ ~ 甲子園に行ける魔法の料理」

「しつこいな ~ あんた」


しつこさもここまでくれば大したものだとお静。

ふと見ると、近所の子供たちが家の中を掃除しているではありませんか。

「な、何あれ?」

「ああ ~ いつもタダでおやつあげるのもようないかな思て、労働してもろうてるんです」


感心するやらあきれるやら …

… … … … …

「ちょっと、何サボってんの?」

め以子は、その中のひとりがこっそり隠れて休んでいるのを見つけて注意しました。

すると、その子の言い分は …

「張り合いないねんもん」

「何でやの?」

「せやかて ~ がんばったって、がんばらんかったって、出てくるもん皆同じなんやろ?」


それを聞いて、め以子ははたと思いついたのです。

「ああ、これや!!」

… … … … …

「真田君、どっかでミットって手に入らへんかな?」

泰介に心置きなく球を受けさせたいと思う悠太郎は、ことあるごとに色々な人に聞いていました。

しかし、中々 …

その時、木崎が悠太郎を訪ねて慌ただしくやって来ました。

額の汗をぬぐい深刻な顔をした木崎を見て、全てを察した悠太郎。

「またですか … 」

… … … … …

悠太郎は真田、相澤を伴って木崎とともに竹元の事務所を訪れました。

竹元は机の上にズラ~っと並べた靴を磨きながら、黙って話を聞いています。

「大変申し上げにくいのですが、予定されていた鉄筋がどうも … 」

言葉を濁した木崎に代わって相澤が興奮気味に後を説明します。

「ご存知かと思いますが、すでに大阪駅すら鉄筋が回らず工事が中止されてる状況ですから!」

その言い方が気に障ったのか、竹元がすっくと立ち上がりました。

「お腹立ちのこととは思いますが … もう一度、花園町の設計をやり直し … 」

悠太郎の言葉を遮って、竹元は何かを差し出しました。

「食え!」

それは靴墨でした。

「この靴墨全部食ったら、設計変更してやる」

絶句する悠太郎。

「死にますよ、そんなもん食うたら!」

我慢できずに言い返した相澤。

「私が、どれだけお前らのクソを食わされてきたと思うんだ?!」

「僕らがいつそんなことをしましたか?!」

「私の辞書では、『言い訳』と書いて『クソ』と読むんだ」

「 … 戦時統制」


相澤がそう口に出しかけた時、竹元は激昂して目の前の靴を手にして振り上げました。

「俺の起こした戦争じゃねえ!!」

間一髪、振り下ろされた靴を傍にあった靴ベラで見事受け止めたのは剣道の有段者でもある悠太郎でした。

「大事な靴に傷がつきますよ」

… … … … …

やり場のなくなった手を下した竹元は、その手できれいに並んでいる靴をなぎ倒しました。

床に落ちた靴を拾う悠太郎。

「俺の設計を守ることがお前の仕事じゃないのか?!」

「部下を守ることも仕事です」


悠太郎はキッパリ竹元に言い切りました。

「じゃあ、両方やれ!

… このウドの大木がっ!」


竹元が怒りに任せて投げつけた靴が悠太郎の腹部に命中しました。

堪える悠太郎。

「 … 竹元先生!」

今まで怯えていた木崎が声を上げたのです。

「ご自分で手配してみはったらどうですか?」

「何?」


震える声で木崎は続けました。

「先生、言うばっかりで … 何もしてはらへんやないですか?!

私らが毎日毎日、どんだけ駆けずり回ってるか … 」


木崎は自分の靴を脱ぐと、竹元の目の前に突き出しました。

「見てくださいよ、この靴!!」

ボロボロで今にも底が抜けそうな靴を見て … 何と竹元は笑い出したのです。

「ふはっ、はーはっは … 無能の切り札は、お涙ちょうだいかっ?」

「木崎さんはっ!」


木崎を庇おうとした悠太郎の言葉を遮った竹元。

「じゃあ、やる …

この靴、この靴、この靴 … 全部やる!

だから、意地でも鉄筋見つけてこい!

分かったか?! この底抜け浪花節野郎があっ!!」


… … … … …

竹元との攻防にほとほと疲れ切って帰宅した悠太郎。

「うわっ、ホンマええんですか?」

玄関を入ったところでそんな泰介の弾んだ声が聞こえてきました。

… … … … …

泰介の左手には、新品ではありませんが、今までのものとは比べ物にならないような立派なミットがはめられています。

その感触を確かめるように右手のこぶしでバンバン叩いてみせました。

「やったな ~ 泰ちゃん」

横で見ているお静もうれしそうです。

「おおきに、叔父さん!」

「どういたしまして」


どうやら、啓司からの贈り物のようです。

「これでもう遠慮はいりませんよ」

隣に座っている諸岡に胸を張る泰介。

「ほんまか?」

こんな無邪気にはしゃぐ泰介も珍しいことです。

ふ久もどことなく、うれしそうな顔をしています。

… … … … …

「ああ、おかえりなさい」

め以子の声で皆が悠太郎が帰ってきたことに気づきました。

「ミット、啓司君が?」

「あっ、そうなんです ~ 大学時代の友達からお古もろうて来てくれて」


… … … … …

「お義兄さん、ちょっとええですか?」

食後、部屋にいた悠太郎を啓司が訪ねてきました。

部屋に入るなり啓司は年の差があまりない義兄に向かって頭を下げました。

「すいません、差し出がましいことして … 」

「えっ?」

「やっぱり、修繕すると具合のええもんじゃないらしいんで」


啓司は、自分が勝手にミットを用意したことで、悠太郎が気を悪くしたのではないかと気にしていたのです。

「ああ、いや … こちらこそ、気回してもろうて」

反対に頭を下げた悠太郎、そんなことはまったく思ってもいませんでした。

「断ってからとも、思うたんですけど … 慣れるのに時間もいるやろし」

「僕は仕事で、手一杯で … 父親らしいこと、何もできてませんから ~

ホンマありがたいです」


… … … … …

「 … やっぱり、そんなに大変なんですか?」

「資材が … 前々からかなり厳しかったんで、それを見込んで竹元さんにも花園町の設計は、かなり質素な物にはしてもらってたんですけど …

それでも難しくなってきてしもうて」


悠太郎の話を聞いて、啓司は難しい顔になって黙り込んでしまいました。

「ああ … すいません、何か、啓司君、話しやすいんで … 」

「黙ってるのが仕事ですから ~ 」


おどけて返した啓司、悠太郎はホッとして顔をほころばせました。

「せやから、泰介にはこう ~ ガツンと決めてほしいんですよ」

手のひらを握りこぶしで叩きました。

「何や、スカッとしたいですよね!」

啓司も膝を崩して、ざっくばらんに言いました。

「何やありますよね ~ そういうの!」

「スポーツはそのためにあるんですよ」

「そうですよね ~ 」


意気投合したふたり。

悠太郎は昼間のことをしばし忘れていました。

… … … … …

「段階式カツ制度?」

「そうです」


活男に聞かれて、め以子は机の上に広げた紙を傍らに座っている泰介と諸岡に見せながら説明し始めました。

そこに書かれているのは甲子園予選大会のトーナメント表です。

「1回戦に勝てば、野菜とイワシのカツ ~ 2回戦に勝てば、イカ ~ 3回戦に勝てば白身魚というように、勝ち上がっていくごとに、中身が豪華になっていき ~

準決勝に勝てば … 牛カツになります」


これが『段階式カツ制度』の全容でした。

どうだとばかり、め以子はふたりの顔を覗き込みました。

「 … 牛カツ?」

「牛 … ですか?」


返ってきた反応をみて不安になるめ以子。

「あかん?」

「お ~~~~ !!!」


突如、雄たけびを上げる南中バッテリー。

「出た? やる気出た?」

「出たっ!!」

「 … それ、わしらも食べられる?」


当然だと、め以子は活男にうなずきました。

「もう行きます、絶対行きます!

準決勝で倒れるつもりで投げます!!」

「 … それ、あかんのちゃう諸岡君?」


お静が突っ込んだように、甲子園はその先です。

しかし、今の諸岡の耳に入りません。

「西門 ~ 俺は絶対に勝つ!!」

「はいっ!」


がっしり手を握り合ったふたりを見てふ久は目をまん丸くしていました。

… … … … …

1回戦が行われる日の朝。

♪ 勝って来るぞと勇ましく ~ 誓って国を出たからは ~ 手柄たてずに死なりょうか

西門家は家族全員が家の前に揃って、露営の歌で泰介を送り出しました。

♪ 打撃の音を聴くたびに ~ 瞼に浮かぶ、カツの波

「泰介 ~ !!」

全員で拍手。

こんな朝から何事かと出てきた近所の人たち。

「ご出征?」

そう思ってもおかしくはありません。

「バット持っとるけど … 」

「泰ちゃん、どっか行くの?」


照れくさそうに笑った泰介。

「ほな … 行ってきます」

「いってらっしゃい」

「行け ~ 泰介 ~ !!」


泰介は、こんなに熱くなった父を久しぶりに見た気がしました。

< ままならない現実の中で、泰介の夢は … 皆の希望になったのでございます >

… … … … …

結果は快勝、2回戦進出です。

その夜は、食卓に約束通り、野菜とイワシのカツが並びました。

「わ ~ 美味しい!!」

… … … … …

そして、次の試合。

「 … どうやった?」

息を飲んで、結果を尋ねた銀次。

め以子は少しもったいぶってから答えました。

「勝ちました!」

市場にひろがる歓喜の声、万歳三唱。

「これやな!」

銀次は両手にイカを掲げました。

… … … … …

山のように盛られたイカカツに食らいつく泰介と諸岡。

「お替りください!」

あっという間に最初の一杯を平らげた諸岡。

「食べるの早いですね」

「食うたらまた表で練習や」


『段階式カツ制度』が功を奏してか、ふたりは食い気もやる気も満々でした。

「ええよ ~ ぎょうさん食べ」

… … … … …

そして3回戦。

「今日は白身魚か … 」

壁に貼ったトーナメント表を見つめるめ以子。

め以子は今日も当然勝つことを信じて、夕飯の準備を進めています。

その次は準決勝で牛カツ。

そして、その先は … 最終目標、甲子園は目前に待っていました。

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2014年02月03日 (月) | 編集 |
第103回

昭和16(1941)年、夏。

< この年の4月から、米が配給制になりました。

日中戦争が長引き、米ばかりでなく、木炭などの燃料、酒なども配給制に … 肉や魚、野菜などはまだ自由販売を許されておりましたが、品薄かつ商品も偏ってきておりました >

配給所で米を受け取り、その足で市場に寄っため以子でしたが、思うように必要なものが手に入らず … 鬱々とした気分で牛楽商店に顔を出すと、相変わらずふさぎ込んだトミが店先に腰かけていました。。

「トミ、今日はもうヒマやから休んどき」

心配したマツオがそう勧めても、何故かそこから動こうとしません。

< 戦地に行った源太の姿もまた、店先にはありませんでした >

… … … … …

それでもできる限りの食材を買い込んで家に戻って来ると、め以子の姿を見つけた近所の子供たちが走り寄って来ました。

「あっ、ごちそうさん

ごちそうさん、今日何? ごちそうさん


子供たちは、め以子が作ってくれる、おやつを目当てに毎日、西門家に集まって来るのです。

< そんな中で、め以子は『ごちそうさん』として … 近所の子供たちの体のいいカモにされておりました >

… め以子自身は、カモにされているとは思ってはおらず、子供たちが喜ぶ姿を笑って見ているのでした。

「噛んで食べ ~ 」

… … … … …

「毎日毎日、こんなにぜいたくしていて、大丈夫なんですか?」

その晩、夕食の食卓に並んだ料理を見て、感心して希子が尋ねました。

「ぜいたくに見えるて ~ 」

うれしそうに顔を見合わせため以子と活男。

「 … 実はこれ、キャベツの芯を細かく切って、小麦粉を水で溶いたもんの中に入れて、両面焼いたん」

母と一緒に知恵を絞った活男が得意顔で希子に説明しました。

「近所の子等にのべつまくなし、おやつやるさかい、やらんでもええ工夫せんとあかんようなるんや」

そう言いながらもお静は半分あきらめたような顔をしています。

「しゃあないやないですか ~ 私は『ごちそうさん』なんですから」

「何とかもおだてりゃ樹に登る ~ やな」


… … … … …

そこへ、残りの西門家の男連中が顔を揃えて帰ってきました。

「お帰りなさい ~ 皆さん、ご一緒に」

悠太郎、啓司に続いて泰介、その後ろ、玄関の外に立っていた青年がめ以子の姿を見て、一歩前に進むと帽子を脱いで頭を下げました。

「お邪魔いたします!

今日もご相伴にあずかってよろしいでしょうか?」


礼儀正しくハキハキとした青年をめ以子は笑顔で迎え入れました。

「どうぞ」

「では、失礼いたします」


もう一度深々とお辞儀した青年を見て笑う泰介。

「その挨拶、いつまでするつもりですか? 諸岡さん」

< この諸岡という青年は、泰介の通う天満南中学校の5年生、野球部の投手。

そして、泰介は捕手でございます。

… その縁で、最近ではしょっちゅう、ご飯を食べに来るようになっていたのでございました >

昼は近所の子供ら、夜は諸岡と、食材のやりくりに苦労していないのでしょうか?

… … … … …

「お前、またひどうなってないか? 手 … 」

洗った手を拭くために借りた手拭いを返そうとした諸岡の顔色が変わりました。

手拭いを受け取ろとして差し出した泰介の左の手のひらが真っ赤に腫れ上がっていたからです。

原因は彼の投げる剛速球でした。

「えっ? … こんなもんですよ、前から」

泰介自身はそれ程きにしていないようですが、諸岡は責任を感じているようです。

… … … … …

「ケモノやな ~ 」

お静が笑ったように、食べ盛りのふたりの食いっぷりは気持ちがいいほどでした。

頻繁に訪れている諸岡は家族ともすっかり打ち解けていました。

「で、どうなんや、諸岡君 … 肩の具合は?」

「ここのご飯のおかげで滅茶苦茶ええです」


啓司の質問にも頼もしい答えが返ってきました。

「まった、また ~ 」

め以子にとっては作り甲斐のあるうれしい言葉でした。

「今年は甲子園まっしぐららしいやん」

「はいっ」


… … … … …

「えっ?」

め以子の箸を持つ手が思わず止まりました。

「 … そうなん?」

「天満南中は、下馬評ではひょっとして … 東金岡中抜いて代表になれるんやないかて」


仕事がらそういうことには詳しい啓司ですが、当然め以子も知っていることとばかり思っていたようです。

「えっ、皆知ってた?」

家族に尋ねるめ以子、首を振る活男、他の者も無言です。

「泰介 ~ あんた何でそんな大事なこと言わへんの?!」

… … … … …

「え … えっと … 」

め以子に咎められて、泰介は返事に困っているようです。

「 … 言うたかて、何も変わらへんからちゃいますか?」

悠太郎が助け舟を出しましたが、め以子は食って掛かりました。

「変わりますよ ~ 

知ってたら、ご飯かて … なあ?」


目の前に座っている活男もうなずきました。

「豪華になるよな … 」

「せやけど、それは … 甲子園行けるんやったら、応援するけど、甲子園行けへんのやったら、別段応援せえへんいう非常に現金な話になりません?」

「いや、そ ~ ですけど … 」


悠太郎流の理屈に言葉に詰まるめ以子。

… … … … …

「お母ちゃん、僕らお母ちゃんの気持ち、十分もろうてるから

泰介の言うことに諸岡もうなずいています。

「せやけど … 一膳ちょっとご飯食べてたら、早う走れて決勝点取れるとかあるかも知れへんやないですか?!」

「 … 胃もたれして、走れない状況の方が考えやすいですけど」


悠太郎に笑いながら揚げ足を取られてしまいました。

他のことならいざ知らず、食べ物を軽んじた発言を放っておくことができましょうか。

「今、ご飯の力、バカにしましたね?」

「お母ちゃん、僕らこのご飯で十分やから ~ 」


ムキになりかけているめ以子を懸命に宥める泰介。

その時、め以子は自分の膝を思い切り叩きました。

「行かせて見せますから ~ 私のご飯で甲子園!」

そうタンカを切ると、諸岡の茶碗を取って、ご飯を大盛りによそいました。

「あんたら、何が何でも甲子園、行くねんで!」

… … … … …

「なあ、西門 ~ ああなるから、言わんかったんか?」

食後、泰介の部屋で諸岡は可笑しそうに笑いながら尋ねました。

「 … うちの母親は過ぎたるは及ばざるがごとしって、知らん人なんです」

苦笑いの泰介。

「お前んちの人、皆変わってんな」

諸岡はめ以子の料理が目当てということもありますが、この家の雰囲気が好きでついつい泰介の言葉に甘えて訪れているのでした。

そんな仲のよいふたりのことを廊下の柱の陰から、ふ久が覗いていました。

… … … … …

次の朝。

泰介はめ以子から渡された弁当を見て唖然としました。

それは、いつもの弁当箱でなく、風呂敷に包んだ何段も重ねられた重箱でした。

「でっかいね … 」

「余ったら、皆で食べて」


戸惑う泰介に微笑むめ以子。

「野球は皆でするもんやろ?」

そう言いながら奥から両手に包みを下げた活男が出て来ました。

「せや ~ それから、これも皆で食べて」

め以子は活男から包みを受け取ると中身を泰介に見せました。

自家製の『ニンニクの梅肉エキスあえ』と『柚子の皮の砂糖漬け』でした。

「疲れとれるから ~ 」

そう説明した活男、今や、め以子のよき助手です。

「 … おおきに」

「いってらっしゃい ~ がんばりやっ!」


学校の道具より多い食料を持たされて出かけていく泰介を満足げに見送ったふたりでした。

… … … … …

め以子は助言を求めに、うま介にやって来ました。

ここもやはり、食材不足の影響でほとんどのメニューを品切れと表示せざるを得ない状況です。

カフェに訪れること自体ぜいたくと言われかねません。

「何かないですかね? お料理で甲子園に行かす方法」

余りにも漠然とした相談に馬介も何と答えてよいやら …

「普通に元気の出るもん、作ってやっとったら、それでええんちゃうの?」

「それは誰でもやりますよね … 」


皆の前でタンカを切った手前、人と変わったことをやって、必ず目的を達成させたいめ以子でした。

「あ、ねえ、桜子、何かない?」

「それ以上やったら、鬱陶しいと思う!」


いつになく機嫌悪そうに答えた桜子。

「 … 何よ ~ とんがらがっちゃって」

実は、桜子は、今あることが気になっていて、それどころではなかったのです。

… … … … …

ちょうどその時、桜子の不安の元 … 室井が帰って来ました。

「ああ、どうだった? どうだった?」

入って来るなり、矢継ぎ早に聞きましたが、室井は無言でテーブルの上にあった、め以子の水を一気に飲み干し … もったいぶった後、いきなり声を上げました。

「決まった ~ !!」

「本当? ホントに本当?!」


一転、笑顔になって室井と抱き合う桜子。

「何が決まったんですか?」

馬介に尋ねため以子。

「室井さんの新作『塩と砂糖』出ることになったんやわ」

「へ ~ いや、すごいやないですか?」

「いや ~ やっとね ~ 中々出してくれるってとこなかったんだけど … 」


ホクホク顔の室井。

「でも、本はもうとっくに出してるじゃない?」

「まあ、児童小説も楽しかったんだけど … 僕の目標は大人の読む小説書くことだったからさ ~ 」


『塩と砂糖』は成人対象の小説のようです。

「 … 何でもいいのかと思ってた」

「何言ってんの?!

昔言ったでしょ ~ 何の取得もない女に惹かれるという人間の不思議みたいなものを書きたいって!」

「 … そうでしたっけ?」


め以子だけでなく視聴者のほとんどが覚えていないことでしょう。

「はあ???」

「とにかく、もう ~ 開明軒行ってお礼しなきゃね」


桜子とうなずき合う室井を見て意外に思うめ以子

「大将には、どれだけ食わしてもらったか分からないからね ~

あれがなかったら、途中であきらめてたかも知れないよ」


… … … … …

室井の話を聞いてめ以子は、妙に納得できるものがありました。

「 … そうですよね。

やっぱり、ご飯は、夢を叶えますよね?」

「当たり前じゃない … 何言ってるの?

食べなきゃ、夢は叶わないよ!!」

「そうですよね?!」


め以子、我が意を得たり!!

「私もがんばりますっ!」

… … … … …

室井の言葉に背中を押されため以子は、牛楽商店を訪れました。

「トミさん … 」

気の抜けたように腰かけていたトミはめ以子の姿を見て、店先に出て来ました。

「 … 何する?」

しかし、ガラスケースの中には何も入っていません。

「えと ~ 今日、お肉は?」

「来週まで入らんねんわ ~ 」


せっかく思い立ったのに … 仕方がないことですが、出鼻をくじかれた感じのめ以子でした。

「源太がおってくれたらな ~ 都合してくるの上手やから … 」

ため息をついたトミ。

商品がないだけでなく活気もない牛楽商店でした。

… … … … …

するとそれを気にしてか、マツオが調子よく奥から出て来ました。

「まあまあ、便りがないのは、ええ便りいうてな …

ああ、それより、南中強いらしいな ~ 」

「はい … 」


人に言われるまで知らなかった母親がここにいます。

「あっ、オットセイどうや?」

「オットセイ?!」

「精つくで ~ 」

「それは、ホンマ、ホンマよ … 」


やけに実感がこもった言い方をしたトミ。

め以子の目に『牛肉以外の肉類、ご相談ください』の貼り紙が入りました。

「あっ、あとはタツノオトシゴ」

「ああ … 」


これも強壮作用の効果があるみたいです。

め以子の迷っているような顔を見て残念そうなマツオ。

「あかんか … けどな、牛食べるちゅうのは、本を正したら同じこっちゃねんけどな ~ 」

「いや、私はそれほど抵抗がないいうか ~ むしろ、食べてみたいんですけど … 」


食に対して好奇心が旺盛なめ以子は当然そう来るのですが …

「 … 皆はどうですかね?」

問題は家族がどう思うかでした。

「う~ん、他にな ~ 」

… … … … …

結局、め以子は買ったのか … それは触れないことにします。

今夜の献立はカレーでした。

例のごとく、泰介は諸岡を連れて帰って来ました。

「お邪魔いたします」

慣れても礼儀正しい諸岡。

夕食時もノートを手放さないふ久ですが、この弟の先輩のことが少し気になるようです。

しかし、話しかけるでもなく、目が合えばそらしてしまいます。

… … … … …

「わあ ~ カレーや」

「美味そうや」


竹元から『カレーの女神』の称号をもらっため以子のカレーに諸岡、泰介の南中バッテリーは舌鼓を打ちました。

「今日のカレーは、具がありませんね?」

カレーと聞いて牛すじカレーを期待した雄太郎が少し首をかしげました。

「栄養がちゃんと吸収されるように、肉も全部細かくしたんです ~ ふたりとも無茶苦茶元気になるよ」

やはり … 買ったのでしょうか?

… … … … …

「何や、このカレー、ごっつう力湧いてきますね」

「そうですね」

「いや ~ 何かポカポカしてきたな」


諸岡と泰介の会話を聞いて、何故かほくそ笑んだめ以子。

… … … … …

カレーの効果か、元気を持て余した若いふたりは食後に表でキャッチボールをはじめました。

いやキャッチボールというより本格的な投球練習です。

バシッ、バシッと小気味のよい音を立てて、泰介のミットに吸い込まれていく諸岡の速球。

その様子をふ久は玄関の陰から星明子のようにこっそりと覗いていました。

「う … 」

何球目かの球を捕球した時、泰介が少しうめき声を漏らしました。

慌てて駆け寄る諸岡。

「あっ、すまん!」

「いえ、大丈夫です」

「体、エライ温まってもうて … 」

「ちょっと、手見せてみい」


諸岡は泰介にミットを外させました。

… … … … …

ふ久のいる場所からは、離れているのでふたりの会話まではよく聞こえません。

だから、ふ久は勝手に想像してみました。

『嫌なんです ~ 先輩の球を他の誰かが受けるなんて …

最後の甲子園やないですか?

先輩の剛速球を最後まで、この手で感じていたいんです 』

『西門 … 』

今まで見せなかったふ久の新たな一面でした。

… … … … …

「若いね ~ あの子ら」

何にせよ、お静は元気のいい若者を見ているのが楽しいようです。

「まっ、これがご飯の力ですよ」

してやったりと悠太郎の顔を見ため以子。

苦笑いの悠太郎、遅れて帰って来て今カレーを食べている希子のことをふと見ました。

「何や、希子 ~ 水ばっかり飲んで?」

「何や、ポッポポッポしてもうて … 」


手で顔をパタパタと仰ぐ希子。

「啓司さん、早う戻って来たらええのにな ~ 」

意味ありげに笑ったお静。

「ああ、今日遅いですね … 」

… … … … …

その啓司は、今夜はまだラジオ局にいました。

同僚から手渡された書類には丸秘の判が押されています。

その内容を読んだ啓司の顔が曇りました。

「今年で最後かもな … 甲子園」

… … … … …

その甲子園が手の届くところまで来ているふたりは、無心に投球練習を続けるのでした。


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2014年02月02日 (日) | 編集 |
それでは、次週の「ごちそうさん」は?

僕、甲子園行くわ

行かせて見せますから … 私のご飯で、甲子園


昭和16年夏。多くの食料が配給制になり、手に入らないものも増えている。

め以子()は、甲子園を目指す泰介(菅田将暉)のために、予選で勝ち上がると最後は牛カツが食べられる制度を作り、盛んに応援する。西門家には泰介の先輩の諸岡(中山義紘)がよく食べにきている。

部下を守ることも仕事です

この、底抜け浪花節野郎が!


一方悠太郎(東出昌大)は、資材不足が極まって竹元(ムロツヨシ)と議論を続ける日々。鉄ではなく「竹筋」コンクリートを使うべきか悩むが、大村(徳井優)に取るべき道を示される。

源太(和田正人)が病気で除隊となり戻ってくるが、やつれた様子にめ以子は心配する。

ふたりの青春は、うちの青春やから

結局戦争のため、甲子園は中止となり、家族一同がっかりする。ラジオ局の仕事で予兆をつかんでいた啓司(茂山逸平)は驚かず、悠太郎とともに今後に思いをはせる。

め以子は、泰介と諸岡に少ない材料で工夫してカツをふるまう。そんな折、倒れた源太が西門家で看病されることに。食べることができず栄養失調に陥っていたのだ。

源ちゃんは、そんな奴やなかったはずや!

め以子は亜貴子(加藤あい)を訪ねて相談し、思いつく限りの食べやすい料理を作るが源太は弱るばかり。往診した亜貴子は食べられない理由が戦争での体験にあると聞きだす。そしてついに源太が危篤状態に。

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2014年02月01日 (土) | 編集 |
102回

その夜 …

悠太郎が仕事から帰って来ると、門の前に何人かが集まっていました。

「ええ匂いしてきたで」

「けど、お裾分けでるんかいな?」

「せやけど、あら食べきれんやろ ~ 」


そんなことを口々に、門の隙間から家の中を覗き込んでいる人までいます。

「何かあったんですか?」

いったい何事かと悠太郎が尋ねると、この家の主が帰ってきたことを知った近所の人たちがさっと門の前を開けました。

… … … … …

悠太郎が家の中に入ると、台所から肉を焼くジュージューという音が聞こえ、いい匂いが漂ってきます。

肉を焼いているのはめ以子、その横で活男が肉の塊をさばいています。

板の間には、泰介、川久保、希子、お静が並んで座っていて、焼きたてのステーキをつまんでいました。

「あの ~ 表えらいことになってますけど?

肉、ごちそうしてくれるみたいな話になってますけど … というより、何がどう?」


事情が全く飲めない悠太郎。

「何をやっとるんや ~ この家は?!」

騒ぎを聞きつけて、飛び込んできたのは多江の亭主の高山勝治、その後から多江を先頭に婦人会の面々も続いてきました。

「こんな肉ぶら下げて戻って来て、何を考えとるのや?」

活男がさばいている途中の肉の塊を見て声を荒げました。

「これぶら下げて来たんですか?」

驚く悠太郎。

しかし、め以子はステーキを焼くことに専念していて、答えるどころか振り返りもしません。

「せやっ、非常識にもほどがあるやろ?

皆が辛抱しとる時に、こんなぜいたくして! … 日本人としての心 」


… … … … …

すると、勝治の言葉を遮るようにめ以子は話し始めました。

「私は … 美味しいもんを、いっぱい食べて育ちました。

大人になって、人に食べさせる喜びを知って … それだけで、ホンマにそれだけで、今日までやって来ました」


め以子はステーキを焼く手は休めずに話し続けます。

「家族や知り合いや、友達や子供らの友達とか … 美味しい顔で『ごちそうさん』って言ってもらいたい …

私の心は、それしかありません。

せやから、私はあんな … 犬も食わんようなパン、作ったらあかんかったんです。

世間がどうでも、作ったらあかんかったんです」


そのパンを自分自身で始末する苦行の果てに取り戻しためいこの『原点』でした。

… … … … …

め以子は焼きあがったステーキをまな板の上に置くと、それをひと口大に切っていきました。

「美味しゅう作って、美味しゅう食べさせんと … それだけは守り抜かんと … 生かしてもろてる、甲斐もないんです」

そして、皿に盛ったステーキを勝治に差し出しました。

「どうぞ、召し上がってください」

戸惑いながらも皿を手にした勝治は、思わずステーキの匂いを嗅ごうとしました。

「あかん、あかんで、あんた … ぜいたくは敵!」

ハッとして多江の顔を見る勝治、婦人会の連中も生唾を飲み込みながらもうなずいています。

… … … … …

「ぜいたくは、す・て・き、やで」

そう口にしたのはお静でした。

「ええもんを買うて、使い切る … 始末いうんは、最高に素敵なぜいたく思いますで ~

ぜいたくは敵やなんて、浪華っ子の名が泣きますで!

お肉大きますさかい、始末手伝うてくれますと、助かりますんや ~ 」


愛想よく笑いかけました。

すかさず箸を手渡す悠太郎。

「始末やな ~ これは … 」

言い訳しながら、ステーキに箸を伸ばす勝治。

「ちょっと、ウソやろ? あんた」

そんな亭主を見て、多江はたしなめようとしましたが、活男が顔を出して多江にも尋ねました。

「焼き具合何がええですか?」

その間に勝治はひと切れ口に運んで頬張りました。

「ほな … こんがりで」

観念したというか、ステーキの誘惑に高山夫婦は負けたのです。

「美味いな ~ 」

勝治の声を聞いて、め以子の顔からも笑みがこぼれました。

… … … … …

め以子は次から次へとステーキを焼き続けました。

それを、お静と希子が婦人会だけでなく表に集まっていた人々にも順々に振舞いました。

西門家に集った人々は家の中も外も皆一緒に最高のステーキを堪能していたのです。

… … … … …

「お母ちゃん、大胆やな ~ 」

川久保に言われてふ久は素直にうなずきました。

「うん、びっくりした」

今日1日、目で追った母の行動、耳を傾けたその言葉 … それは新鮮な驚きと感動をふ久に与えていました。

「居場所がないんやったら、自分で作るっていう手もあるよね … 」

川久保の言葉にふ久は、もう一度、母のことを見つめました

… … … … …

宴が終わり、夜も更けて、寝所で悠太郎とふたりきりになると、め以子は急に不安になって来ました。

「大丈夫ですかね、明日から ~

どうしましょう? 村八分にされたりしたら … 」


心細そうにうろたえているめ以子を見て悠太郎はおかしくて仕方ありません。

「あなたはホンマに気が大きいんか、小さいんか分からない人ですね」

「いや、私は時々、カ~っとなるだけで … ノミの心臓ですよ」

「大丈夫ですよ ~ ビフテキ、絶品でしたし … お義母さんの援護射撃も利いていましたし」


高山夫婦のメンツをつぶさずに、まずこちら側に引き入れてしまった、お静の手管は見事なものでした。

「ああいうあしらいは、さすがですよね ~ 」

「土地の文化、語られると … 人は弱いもんですね」


と … 悠太郎の脳裏にある光景が浮かびました。

「見事な金継ぎですね」

「 … わての趣味ですねん」

それは、なにわ工業の社長を元を訪ねた時のことでした。

悠太郎はおぼろげながら、商談を進める手がかりを見つけた気がしました。

「あのね、悠太郎さん … 」

そんな時、め以子が言い難そうに切り出しました。

「あのお肉 … ちょっと高かったのね … ごめんね」

それだけ言って、布団をかぶって寝てしまいました。

「ん?!」

行き詰っていた仕事にわずかながらでも光明が見えてくると、何故か家庭のことも気になりだしました。

「 … 高いってなんぼやったんですか?」

寝たふりのめ以子。

悠太郎はかぶっている布団を剥いで、しつこく問い質しました。

「なんぼですか?」

… … … … …

次の日。

め以子は不安な気持ちのまま、表に出ると、道の向こうで近所の主婦たちが井戸端会議の真っ最中でした。

何だか自分の話をされているような気がして、思わず顔をそらしてしまいました。

「ごちそうさ~ん!」

笑顔で駆け寄ってきたのは、みねでした。

「ゆんべはごちそうさん ~ ごちそうさん!」

少なくとも、みねは喜んでくれているようです。

「あっ、どういたしまして … 」

その後からやってきたのは、昨日最初は文句を言うために夫婦で乗り込んできた多江でした。

「ちょっと!」

上からものを言う態度は相変わらずですが …

「あんな ~ 」

何を言い出されるのかと、め以子は身構えました。

「慰問袋作るさかい、食べもん何にするか、考えといて ~ 」

コロッと、いつになく愛想よく笑顔で、め以子を頼ってきたのでした。

「お肉の時、婦人会のタスキかけてはったやろ?

それで、それは婦人会がしてくれたごちそうや思てる人もぎょうさんおって … お礼言われてご機嫌さんなんやわ」


多江が行ってしまった後にみねがこっそりと教えてくれました。

ホッと胸をなでおろすめ以子。

… … … … …

ごちそうさん ~ 」

次に声をかけてきたのは、年配の男性でした。

「いてはった、いてはった」

め以子の姿を見るとうれしそうに近づいてきます。

「これ、ゆんべのお礼や ~ 砂糖やで ~ 」

そう言いながら包みを差し出しました。

「え、ええんですか?」

「どうぞどうぞ …

えっへへ、また頼むわな ~ ごちそうさん!」


… … … … …

皆やけにめ以子に向かって『ごちそうさん』『ごちそうさん』と繰り返します。

「 … 私のこと?」

老人の背中を見送りながら首をひねっていると、道の向こうにいた主婦たちが通り過ぎざまに声をかけていきました。

「ごちそうさ~ん」

「ゆんべはごちそうさん」


< そうなのです …

め以子はこの事件を機に『ごちそうさん』というあだ名をつけられることになったのです >

「『ごちそうさん』か … 」

悪くはないな ~ そう思っため以子でした。

… … … … …

一方、再びなにわ工業を訪れた悠太郎。

持参した書類に目を通した社長は、ことのほか憤慨しました。

「ふざけとるんか?!」

「 … いえ」


首を横に振った悠太郎。

「いえってこれ、こないだと一緒やないか?!」

社長が怒るのも無理ないことです … 前回と全く同じ公定価格で算出した買い取り金額を提示したのです。

話にならんと書類を放って返しました。

「帰れ!」

席を立った社長に悠太郎はきっぱりと言い返しました。

「ふざけてません!」

そして、悠太郎は立ち上がりました。

「今日は社長のお慈悲にすがりに参りました」

「はあ?」

「社長は大阪はどんな街やと思いはりますか?」

「そらまあ、お前 … 商売人の街やないかい」

「大阪は、お上が面倒みてくれませんでしたから …

中央公会堂の建設も大阪城の再建も市民の皆さんからの多大なご寄付やご協力で何とか出来たもんです。

それはこの街の文化です!

社長の大事にしてはる『始末の心』とともに … 」


悠太郎はテーブルの上に出された茶菓子の乗った金継ぎの皿に目をやりました。

「どうか、今一度、浪華のあきんどの心を見せてはいただけないでしょうか?

お願いします!」


… … … … …

「ああ、中々いい苦味じゃないか … 」

馬介と桜子が更に試行錯誤を重ねた、タンポポコーヒーをひと口飲んだ竹元。

滅多にほめることをしない男が絶賛しました。

「タンポポに煎った麦を加えてコクを出しました」

竹元のお墨付きをもらって喜び合うふたり。

コーヒーを味わっている竹元の目の前に無粋にも悠太郎は図面を広げました。

「竹元さん …

不足分の鉄筋の80パーセントは確保できました」


つまり、浪華のあきんどの心意気は健在だったということです。

「せやから、何とか … ここの変更だけ、ご納得いただけないでしょうか?」

「 … いい苦味だ」


構わず話を続ける悠太郎。

「やはり、階高は下げたいと思います。

そうすることによって、こちらの梁と柱は小さくなりますし … 」

「バカ者っ!!」


突然、大声を張り上げた竹元。

「いちいち聞くな鬱陶しい! … 自分で判断できんのか?!」

竹元流の了解に、思わず頬が緩む悠太郎。

「ほな、自分で判断させてもらいます」

これで遅れていた工事の再開の目途が立ちました。

… … … … …

「ところでだ!

… 最近、猫娘はどうしてる?」


自分の所にさっぱり顔を出さないので、実は気にかけていた竹元だったのです。

「ああ、学校に戻りました」

竹元は意外に思ったようです。

「やってけてるのか?」

「 … 自分から調理におけるエネルギー効率の研究がしたいと申し出て、認められたそうです」

「こしゃくな!」


不愉快気味に吐き捨てましたが、娘のことを気にかけてくれる竹元、有難いことだと思った悠太郎でした。

… … … … …

「ただいま戻りました」

ふ久が学校から戻ると、玄関のところまで漂ってくる煙 … 台所ではめ以子と活男が何だか悪戦苦闘しています。

「煙たいやろ ~ ごめんな」

横で見ているだけのお静。

よくよく見れば、ガスコンロの上に置いた網の上で肉の塊を焼いていて、め以子が一生懸命に団扇で扇いでいます。

「何してんの?」

「源ちゃんからお肉が食べたいって手紙が来てな ~ 乾燥させたお肉、燻してるんやけど … 」


立ち上がって来る煙でむせながら、め以子が説明しました。

「 … 缶か何かないの?」

ふ久の顔をまじまじと見る3人。

「煙逃げたら、効率悪いやろ?」

合点がいく3人。

… … … … …

ふ久は一斗缶を網の上にかぶせました。

「 … この方がええやろ?」

煙も少なくなって、燻製も効率よく仕上がるでしょう。

「おお、凄いな ~ 」

拍手喝采する3人。

ふ久は少し照れくさそうな顔をしました。

… やはり、料理は科学です。

< つかの間、平和な日々を取り戻したかのような、西門家でございました。

しかし、この後 … マッチ、木炭、粉ミルクと、食品、生活必需品が配給制に切り替わり …

昭和16年、ついに米までが配給制となったのでございます >

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