NHK朝ドラ『花子とアン』『ごちそうさん』『あまちゃん』…ストーリーを勝手に解釈&裏読み … ほぼネタバレ…
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2014年03月31日 (月) | 編集 |
花子とアン

第1回

1945年(昭和20年)東京・大森。

村岡花子は、机に向かって原稿用紙にペンを走らせていた。

彼女の職業は翻訳家。

分厚い辞書をめくりながら、現在執筆中なのは …

『曲がり角を曲がった先に何があるのかは分からないの。

でも、それはきっと … きっと、一番良いものに違いないと思うの 』

突然、空襲警報のサイレンが聞こえてきた。

花子は、原稿を書く手を止めて窓のカーテンを開けて、空を見上げた。

爆音を上げて無数のB29が群れをなして飛んでいる。

ほどなく、焼夷弾の投下が始まり、街はみるみる炎に包まれていった。

* * * * * * * * * *

< 昭和20年4月15日、東京の夜空に100機を超えるB29が現れ、大森の街も恐ろしい爆撃を受けました >

火の玉のような焼夷弾のかけらが花子の家の屋根を破って、畳の上に落ちて来た。

花子は慌てて水をかけて、布団をかぶせて消火に当たった。

「お母様!」

娘の美里が花子の姿を探して飛んできた。

「美里、防空壕に逃げましょう! 早く行かないと危ないわ!」

その時、爆風で窓ガラスが割れ、花子の机の前に山のように積まれている本が燃え上った。

執筆途中だった原稿用紙にも燃え移った炎は一気に広がっていく。

< もしも、この夜、たった1冊の原書が燃えてしまったら、私たち永遠に出会えなかったかもしれません …

皆が大好きな、あの『赤毛のアン』に >

「何?」

「命よりも大切なもの」


部屋から飛び出してきた花子が胸に抱えていたのは、翻訳中の原書と辞書だった。

* * * * * * * * * *

空襲の中、逃げ惑う人々。

花子と美里も火の粉が降る街並みを抜けて、防空壕を目指して走った。

目前に泣きじゃくる幼い兄弟。親とはぐれたのだろう。

花子は駆け寄った。

「大丈夫、大丈夫よ ~ お寺まで逃げるの、大きな防空壕があるから」

「怖いよ ~ 」


怯えて足がすくんでしまっているようだ。

夜空を紅蓮に染めて燃え上る炎、空からは無数の焼夷弾が降ってくるのが見える。

「花火みたいね … 」

花子は、一番恐ろしいものを、一番楽しいものに例えたのだ。

美里や子供たちは一瞬心を奪われたように空を見つめていた。

「想像してみて。

これから皆であの花火の中を、走り抜けるの … 怖くないでしょ?」


うなずく子供たちの手を花子は握った。

「さあ、行きましょう!」

< この勇ましいおばさんは、村岡花子は、『赤毛のアン』を初めて日本語に訳した翻訳家です。

これは、花子とアンが出会い、日本中の人たちに夢と勇気を送り届けるまでの物語 … >

* * * * * * * * * *

時はさかのぼり … 1900年(明治33年)甲府。

見事に実ったブドウ棚の下を通り抜けていく、天秤棒の両側に桶を担いだ少女。

< 花子こと、安東はなです。甲府の貧しい農家の家に生まれました >

「いや、冷てえな ~ 」

川に浸した手を引っ込めたはなは、桶を手にすると川の水を汲みはじめた。

ふと気づくと川の中央辺りに白鳥の群れがいた。

「おはようごいす ~ おまんらも早起きじゃんね」

はなの元気な声に驚いたのか、白鳥たちは次々に飛び立っていった。

「ああ、待ってくりょう … 」

ため息をついたはなだったが、「ようし」とひと言、目を閉じた。

すると、はなの体は鳥のように高く舞い上がった …

< はなは、小さい頃から夢見る力を持っていました。

眠い朝やつらい力仕事の時、こうやって、想像の翼を広げれば、どんな鳥よりも高く飛ぶことができるのです >

「富士山じゃんけ!」

そう思った瞬間、桶が落ちてしまって … はなは空想の世界から現実へと呼び戻された。

* * * * * * * * * *

水をくんだ後の桶はずっしりと重く、天秤棒が幼いはなの肩に食い込んでくる。

行きの何倍も掛かって、田んぼに囲まれたかやぶき屋根のわが家へたどり着くと、ちょうど野良仕事へ出かける祖父の周造が出て来た。

「お祖父やん、おはようごいす」

「おはよう」


続いて、ひとつ年上の兄・吉太郎。

「兄やん、行ってこうし」

一番最後に母のふじが慌ただしく飛び出してきた。

「はな、ももとかよの世話頼むじゃんね ~ ももが腹空かして泣いたら、畑に連れてきてくれちゃあ」

「うん、おっ母、早く行けし」


家族を送り出したはなは、まず汲んできた水を瓶に移し、その後、一番下の妹・ももを背負って子守をしながら、かまどの火を起こして … 炊いた麦飯でおむすびに握った。

< はなは、こんなに小さくても、この家の大事な労働力なのです >

* * * * * * * * * *

「おっ母、昼飯じゃん!」

はなは、おむすびを家族に届けると、休む間もなくまた水汲みのために川に向かった。

水汲みをしていると河原を幼なじみの木場朝市が本を読みながら通りかかった。

「ええなあ … 」

はな本を読んだことがない。家の手伝いばかりで学校にさえ行っていないのだ。

読書に夢中の朝市は、はなのことに気づかずに通り過ぎていった。

「突撃 ~ !!」

そこへ、ガキ大将の徳丸武が子分共を引き連れてやってきた。

「はな、はなたれ、おまんちは小作で貧乏なもんで、学校も行けんずら?!」

「貧乏、貧乏、はなたれ ~ 貧乏!」


悪ガキたちにはやし立てられても、相手もせずに水を汲み続けるはなに武は少しイラついたようだ。

「何とか言えし、はな!」

「はなじゃねえ、おらのことは花子と呼んでくりょう!」

「はあ?」

「花子と呼べし!」


そんな、はなの言い分を武は鼻で笑った。

「こいつ何言うだ?

小作のクセに花子 ~ 笑わせるじゃねえか、はなたれ!」


調子に乗った子分のひとりが水桶のひとつを川に放り込んだのだ。

「何するで?!」

はなが咎めると、悪ガキたちは蜘蛛の子を散らすように逃げていってしまった。

* * * * * * * * * *

「はな、大丈夫け?」

「はなじゃねえ、花子と呼んでくりょう」

「ああっ!」


騒ぎに気づいて戻って来た朝市が川の方を見て驚きの声を上げた。

放り込まれた桶が川の流れの乗って流れ出してしまったのだ。

慌てて、後を追おうとしたその時、… 一陣の風のようにふたりを追い越した男が水しぶきを上げながら川に走り込んだ。

「はな ~ ほれ!」

その男は拾った桶をはなに向かって掲げた。

「おっ父、帰ってきただけ?」

はなの父親、吉平だった。

川の中だというのに構わず駆け寄ってきたはなを吉平は抱き上げた。

「お ~ 帰ったぞ ~ 」

* * * * * * * * * *

< はなのお父は行商をしています。

甲府特産の生糸を東京に売りに行き、替りに日用品を買い付けて、こちらで売るのです >

「ちょっと待ってろし」

「何で?」


数か月ぶりに家に戻った吉平の言葉に子供たちはワクワクしながら待った。

「おまんたちにとっておきの土産があるんだぞ」

勿体つけながら、床の上に四角い包みを置いた。

「土産?」

「お父、何ずら?」

「 … これじゃあ ~ !!」


包みを取ると、それは『おやゆび姫』と書かれた1冊の本だった。

「そりゃあ、何ずらか?」

食事の支度をしながら見ていたふじが尋ねた。

「絵本じゃ」

「てっ、絵本?!」


本と聞いて興味を示したはなとは正反対に、他のふたりの兄妹の顔に失望が走った。

「 … 食いもんがよかった」

ふじがあきれたように尋ねた。

「誰が読むで?」

周造に至ってはあからさまに嫌な顔をした。

「そうさな ~ ここんちは、婿どんしか字読めんだからな」

しかし、ただひとりはなだけは大喜びだ。

「て ~ 本じゃん、本物の本じゃんけ!

おら初めて、本に触った … 夢みてえじゃん!」

「はな、夢みてえか?」

「うん、おっ父ありがとう」


手にした本を物珍しそうに見回すはなを見て吉平自身もうれしそうだ。

「やっぱし、はなはおっ父の子じゃ」

* * * * * * * * * *

兄弟たちはすでに囲炉裏端に座って、箸と茶碗を手にしていた。

「はなも飯にしろし」

ふじに呼ばれても、はなは本に夢中だった。

「はな、逆さまじゃ … 」

吉平に言われるまで、はなは気づかなかった … いや、分からなかったのだ。

「はなは、1年生ずら ~ 学校で字は習っとらんのか?」

「家の手伝えが忙しくって、学校には1日も行っちゃいん」

「てっ ~ 1日も??」


ふじの言葉に目を丸くして驚いた吉平。

「あんた、知らなんだだけ?」

「そうさな、1年のうち半分も家にいねえだからな … 」


周造はこの一見浮ついて見えるこの婿殿のことを、あまり快く思っていないようだった。

* * * * * * * * * *

次の日、はなは朝から吉平に連れ出された。

「ほら、はな急げ ~ 今日から学校行くだよ!」

はなの手を取って走りながら吉平はそう言った。

「学校?」

「これまでの遅れを取り返すだ」

「おっ父、おら学校なんか行かんでいいだよ」


はなは足を止めた。

「ももの子守があるし、家の手伝えしなきゃならんだよ」

家にとって、自分が大事な働き手であることを、はな自身も知っていた。

「はなは、うんとこさ本が好きじゃん?

ほれなのに字が読めん … あんまり不憫でお父は放っとけん」

「ふんだけんど、おらは … 」


吉平は構わず、はなの手を引いて学校へ急いだ。

* * * * * * * * * *

ようやく学校の前まで来ると、予鈴が鳴っていた。

< ああ、夢にまで見た学校でした >

校門に立って、校舎をながめたはなは、その瞬間、家の手伝いのことなどすっかり忘れていた。

「学校じゃん、学校じゃん ~ おっ父、学校じゃん、学校じゃん」

思わず、校庭を走り出した。

「はな ~ 転ぶじゃねえよ!」

* * * * * * * * * *

吉平がすぐに学校に話をつけたのか、すんなりと、はなは教室へと連れていかれた。

「新しく入学した、安東はなさんずら、おまんら仲良くしろし」

担任の本多先生から皆の前で紹介され、緊張しているはなはぎこちなく頭を下げた。

教室に入るのさえ初めてのことだった。

「取りあえず、ここへ座れ」

本多先生は空いている席の前に立って、机に手を置いてそう指示した。

「はい … 」

すると、はなは何を思ったのか、机の上にちょこんと正座してしまった。

笑い出した級友たち、しかし、はなの顔は真剣そのものだった。

「今まで学校来ちゃいんから、ほんなこんも分からんのか?」

そうからかったのは、ガキ大将の武だった。

「おら、先生に言われた通り、やっただけずら」

はなが言うと、また爆笑が起こった。

ただひとり笑わずに、はなのことを心配そうに見つめる生徒がいた。

幼なじみの朝市もこの組だった。

本多先生が、椅子に座るように言い直していると、突然後ろの扉が開いて、吉平が顔を出した。

「はなの言う通りじゃ ~ 先生の言い方の方が間違っとる」

「余計なこん、言わんでくれちゃあ」


* * * * * * * * * *

はなが生まれて初めて受ける授業が始まった。

「学問して、佳き人となれ、ずら ~ 」

黒板に書かれた文字を本多先生が読み、その後を生徒が声を合わせて復唱する。

「学問をして、佳き人となれ、ずら」

「よしよし、ほうずら、ほうずら ~ よく読めたずらよ ~ 」


その時、今度は窓を開けて吉平が顔を出した。

まだ帰らずに、廊下からガラス越しに中の様子を窺っていたのだ。

「ほういう、なまった言葉で子供らに教えるのはどうじゃろ?

これじゃあ、東京じゃ通じんぞ … ずらずらずらずら」

「おまんはまだいただけ?

授業の邪魔ずら ~ 帰ってくれちゃあ!」

「俺は子供らの教育のために言っとるんじゃ!」


食い下がる吉平に手を焼いた本多先生は『修身』の一節を唱えた。

「先生は、尊み敬え、ずら ~ 」

それに合わせて復唱する生徒たち。

* * * * * * * * * *

吉平は、追い立てられるように学校をあとにした。

「あんな田舎教師にゃ、はなを任せられん」

その日、吉平は姿を消した。

* * * * * * * * * *

< そして、一週間後 >

学校に通えるようになった、はなだったが、一番下の妹ももを背負って授業を受けることもしばしばあった。

それは当時、この地方では珍しいことではなく、教室を見渡せば、はなの他にも同じような生徒は何人かいた。

「ふ、ぼ、は … わ、れ、を、や、し、な、い、そ、だ、て … そ、の、お、ん、ふ、か、し … 」

つかえつかえで、まだたどたどしいが、この短い期間ではなは取りあえずひらがなを読むことができるようになっていた。

「てっ、おまんは、もう字覚えただけ ~ がとう頑張ったじゃん」

感心した本多先生にほめられて、はなはうれしかった。

「ほら、おまんら ~ がんばらんと、はなに追い抜かれちまぞ ~

武、聞いてるだけ?」


上の空で、隣の席の級友とふざけ合っていた武が本多先生から拳骨を食らった。

* * * * * * * * * *

「さあ、皆、石盤とろう石出せし」

本多先生が黒板の方を向いた瞬間、武は立ち上がって … はなが背負っているももの髪の毛をぐいっと引っ張った。

当然、泣き出すもも。

はなは振り返って、後ろの席に座っている朝市のことをにらんだ。

しかし、朝市は意味が分からずポカンとしている。

「誰でえ、ボコを泣かしたは?」

「朝市君でごいす」


本多先生に問いただされて、武はすかさず罪を擦り付けた。

「 … 朝市け?」

「はな … 」

「はなじゃねえっ、こん卑怯もん!」


言うが早く、はなは朝市の石盤を取り上げるとそれを振り下ろした。

朝市は肘を上げて防いだが石盤はこなごなに砕け散った。

泣きじゃくるもも。

「はな、朝市、立ってろ!」

* * * * * * * * * *

< その頃、はなのお父は … とんでもない場所でとんでもないことを考えていたのでした >

「 … ここけえ」

上京した吉平は、探し当てた洋館の前に立ち、その立派な外観を見上げてほくそ笑んだのだった。

< この続きはまた明日、では皆さま、ごきげんよう、さようなら … >

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2014年03月30日 (日) | 編集 |
ごちそうさん 卯野め以子

連続テレビ小説・ごちそうさん

2013年9月30日(月)~2014年3月29日(土)全150回

番組公式サイト

NHK 総合
月~土
前8:00~8:15
後0:45~1:00(再)

NHK BSプレミアム
月~土
前7:30~7:45
後11:00~11:15(再)
[1週間分まとめて再放送]
土・前9:30~11:00

< スタッフ >

作/森下佳子
演出/木村隆文、小林大児
音楽/菅野よう子
主題歌/ゆず(雨のち晴レルヤ)
制作統括/岡本幸江

< キャスト >

卯野家
卯野(西門)め以子/ 、(幼少期/豊嶋花)
卯野大五/原田泰造
卯野イク/財前直見
卯野照生/井之脇海
卯野トラ/吉行和子

西門家
西門悠太郎/東出昌大
西門正蔵(酉井捨蔵)/近藤正臣
西門静/宮崎美子
西門ふ久/松浦雅
西門泰介/菅田将暉
西門活男/西畑大吾
西門(山下)和枝/キムラ緑子
西門(川久保)希子/高畑充希
川久保啓司/茂山逸平

女学校
堀之端(室井)桜子/前田亜季
野川民子/宮嶋麻衣
宮本先生/奥貫薫

その他
泉源太/和田正人
村井亜貴子/加藤あい
竹元勇蔵/ムロツヨシ
室井幸斎/山中崇
高木馬介/中村靖日

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2014年03月29日 (土) | 編集 |
最終回

「奥、カレーを作れ!」

振り向くと、見知らぬ男を連れた竹元が立っていたのです。

め以子は取りあえずふたりを蔵座敷へと招き入れました。

席に着いた竹元は連れの男の横顔にうっとりと見惚れています。

「どないなおふたりなん?」

お静に聞かれましたが、泰介に分かるはずもなく首を振りました。

大昔のことになりますが、うま介で竹元に声をかけて来た美青年がいました。

整った顔立ちにどことなくその面影があります。

もしかしたら、年齢を重ねた姿なのかも知れません。

とにかく竹元は、美しいものが大好きなのです … 老若男女問わずに。

… … … … …

ひとしきり見惚れた後、竹元はおもむろにめ以子の方に向き直りました。

「さあ、じゃあ頼んだぞ! 奥、カレーを作れ」

相変わらず傍若無人な物言いでした。

持参してきたカレー粉の入った瓶が座卓の上に置いてあります。

「いや、今からはお時間が … 」

もう夜も大分更けているので、め以子は困った顔をしました。

すると、連れの男が初めて口を開いたのです。

「ここはカレーの女神の神殿とお伺いしました」

「そうだ、つべこべ言わず作れ!

作ったら、あいつも匂いにつられて戻って来るんじゃないのか?」

「いや、犬やないんですから … 」


… … … … …

甲子園の開会式の日がついにやって来ました。

『本日休業』の紙が貼られたうま介には、西門家、諸岡家、商店街の面々が集まっていました。

これから皆で甲子園に乗り込むのです。

「め以子は甲子園行けないか … 復員列車着く日じゃね」

残念そうな桜子、泰介がめ以子からの伝言を伝えました。

「お父さん戻ったら、一緒に駆けつけるて」

うま介の住人にもひとり、不参加を余儀なくされた人がいました。

最終回を迎える『阿呆の佛』の原稿が仕上がっていない室井です。

「僕もやっぱり行く、せっかくの甲子園だもの!!」

「お父さんは明日の最終回書かなあかんやろ!」


逃げ出せないように文女たちに椅子に縛り付けられてしまいました。

「 … で、め以子ちゃん、家で待ってるん?」

「あ、いや、駅前で …

ぎょうさん作った方がカレー美味なるから、どうせなら売るて」


竹元の説にも一理あると思っため以子は、悠太郎の大好物のカレーを仕込んで駅前の広場で店を広げていたのです。

… … … … …

復員列車が着くと、大勢の復員兵が次々と駅舎から出てきました。

あちらこちらで再会のドラマが繰り広げられていますが、悠太郎の姿は一向に見つかりません。

「どないや?」

そこへ源太がやって来ました。

「ええの? 甲子園」

「ああ、ええ、ええ … 」


と言いながら、『一杯50円』と書かれた貼り紙を見て目を丸くしました。

「何やお前、たっかいな ~ 」 

「悠太郎さん戻って来たら、パ~ッとタダにするんや」


すると、復員兵の妻らしき女性が声をかけてきました。

「あの、これ、もうちょっと安うしてもらえませんか?

匂いたまらんで … この人食べたいみたいで」


傍らに立っていた夫がペコリと頭を下げました。

「ああ」

め以子は一瞬考えましたが … 皿に飯を盛ってカレーをよそいました。

「どうぞ」

妻から料金を尋ねられ、め以子は「復員のお祝い」だと微笑みました。

「おおきに、いただきます!」

うれしそうにカレーにがっついた夫、妻は「おおきに、おおきに」と何回も繰り返しました。

… … … … …

『お富士のその炊き出しは、復員兵をわんさと呼び寄せた』

め以子はいつの間にか商売抜きで駅から出てくる復員兵たちにカレーを配り始めていました。

源太も忙しくなった店を手伝いに入っています。

ごちそうさん

「はい」


皆、本当に久しぶりに口にするカレーに舌鼓を打ち、美味しそうに、幸せそうに、貪るように食べています。

ごちそうさん

「はい」

「おおきに」


め以子の店の周りは笑顔で一杯になりました。

『お富士は、「ごちそうさん」の声を山ほど聞いた。

だが、肝心の夫を呼び寄せることは何故かできないのだった』

… … … … …

しばらくすると、復員兵たちの姿も絶え、駅前も静かになってきました。

め以子と源太は残ったカレーを食べました。

「美味いな、これ ~ 通天閣、好きなん分かるわ」

しかし、め以子の表情は冴えません。

『あなたのカレーがある限り、僕はここに戻ってきてしまうんです』

そう言っていたのに、やはり今日も待ちぼうけでした。

「ああ、美味かった ~ ごちそうさん

源太がカレーを平らげた時、め以子がひとつため息をつきました。

「何や?」

「もう、聞かれへんかも知れんな、思て … 悠太郎さんの『ごちそうさん』」


始めて弱音を口にしました。

「戦争終わって、まだ2年も経ってへんやろが」

「うん … せやけどな、戻ってきたら、話そ思て、ええこと話のネタ書いとってんけど」


め以子は懐から悠太郎の手紙を取り出しました。

「 … 書くとこのうなったんや」

隙間なく書きこんである便箋を見せました。

… … … … …

「ほな、お前 … わしと一緒になる?

お互いひとりやし、わしと所帯でも持つか?」


ホ~ホケキョ、ケキョ、ケキョ、ケキョ …

ウグイスの鳴き声が聞こえるのどかな春の日差しの中、源太の言葉をボ~っと聞いていため以子でしたが …

少しの間を置いてから気づいたらしく、突然狼狽え始めしました。

「はあ? はっ、いや … だっ、だ ~ !!」

「何やねん、その反応?」

「だだだだ、だって、だって … あり得へんでしょ、そんなん!

私と源ちゃんがて??

せやけど、私太ってへんやん!

子供たちかて … 

大体、大体2年も経ってへんし ~ 」

「おう、せやからそう言うたやろが」


ハッとするめ以子。

「あっ … ひ、引っかけた?」

「紙のうなったぐらいで凹むなや、あかんたれが!

お前はしゃあないの、惚れた弱みやねんから、ず~っと、ず~っと待つしかないの!」


悔しいけど、その通りでした。

「 … けどまあ、わしもひとりやから、お前もひとりで気張れや」

何度、こんな風に源太に元気づけられたことでしょう …

め以子は素直にうなずいたのです。

… … … … …

< そうだね ~ 覚悟しなきゃ、いけないのかも知れないね … 長期戦になること >

店じまいしため以子は、道具を乗せた大八車を引いて我が家へと戻って来ました。

< ひょっとしたら、とんでもなく長い … >

そんなことを考えていたら、気が遠くなってきて、思わずその場にしゃがみ込んでしまいました。

< とんでもなく長い … とん … >

その時、め以子は信じられない光景を目にしました。

< 飛んだ?! >

目の前を子豚が飛び跳ねて横切って行ったのです。

… … … … …

訳が分からず、逃げていく子豚を目で追うめ以子。

「捕まえてください!」

その声に振り向くと、家の中からひとりの復員兵が飛び出してきて、子豚を追いかけて角を曲がっていきました。

呆然と見送っため以子。

そして、またその角を逃げてくる子豚を追いかけて復員兵は戻って来ました。

その顔は … 

子豚はまた反対側へと走り去り、復員兵も目の前を通り過ぎました。

… … … … …

「こ、これ、ホンマなんかな … 」

夢の中にいるように目まぐるしい出来事、子豚と復員兵が走り去った角を見つめながら、め以子はつぶやきました。

すると、ほどなくして、捕まえた子豚を抱えた復員兵が、傾きかけた陽を背にして、こちらに向かってゆっくりと歩いてくる姿が見えました。

その顔は … 紛れもなく、悠太郎でした。

見間違いではなかったのです。

「ただいま帰りました … 奥さん」

ニコリと笑った悠太郎。

「 … おかえりなさい」

夫を目の前にしても、め以子はまだ狐につままれたような心地です。

… … … … …

「あの、あの … 復員列車に乗ってはりました?」

「ああ、事情があって、3日前に博多の方に引き揚げて来たんですよ」

「 … そう … なん … ですか」


今日の列車で着いたのなら、カレーの匂いに誘われて姿を見せない筈がないと思ったのです。

「向こうで養豚場を経営されてる方と知り合いになって、もらう約束をしてたんで、先にそちらに寄って豚もろてきたんです」

平然と話す悠太郎を見ていたら、沸々と怒りがこみ上げてきました。

「何やって … 何やってるんですか?!

できるだけ早う戻るて言うたやないですか?!」


悔しくて、悔しくて、涙も出てきました。

「 … 私がどれだけ心配したて」

「あなた、僕の手料理食べたい言うたやないですか?」


『 … 食べたいもん、もうひとつあった ~ 悠太郎さんの手料理』

悠太郎が満洲に立つ日に確かにめ以子はそう言いました。

「 … 言いはったでしょ?」

「それって?」


うなずいた、め以子は悠太郎の腕に抱かれている子豚に目をやりました。

「一度だけ、満洲で子豚の丸焼きを食べる機会があって … これがもう、ごっつう美味しゅうて、美味しゅうて …

どうしても、あなたに食べさせたくて。

作り方も習うてきました」


… … … … …

見れば、悠太郎の目にも光るものがあります。

悔しい涙は喜びの涙に変わって … 顔を両手で覆って泣きじゃくる、め以子。

そして、悠太郎の胸に飛び込みました。

「最高です、悠太郎さん!

ええ豚です … ええ豚です」

「腹いっぱい食べましょね」

「はい」


悠太郎もめ以子の背に腕を回して、家の外だということも忘れてふたりは抱擁していました。

… … … … …

しばらくして、ふいにめ以子が身体を離しました。

「 … 悠太郎さん、豚?」

ハッとする悠太郎。

「豚?」

子豚を抱いていたはずの手は、め以子の腰にあります。

ふたりは辺りを見回しましたが、子豚の姿がある筈もなく、すでにどこかへ逃亡した後のことでした。

… … … … …

一方、応援を終えた甲子園組は、再びうま介に集合していました。

焼き氷にカスタード巻、ハモニカに吉田汁 … 看板メニューがテーブルには並んでいます。

「下関商業の河村、ええ球投げてましたよ」

泰介と啓司、諸岡が観戦してきた試合の話で盛り上がっています。

「ええな ~ 行けて」

横で浮かないしている希子、実況担当にはなれなかったため、局内の仕事で甲子園には行くことはできなかったのです。

同じく留守番組だった室井は、未だ原稿が書き終わらずに悩んでいる最中でした。

「まだできてへんの?」

「最後が ~ 阿呆の最後が ~ 」


あきれる文女、そう言われてもどうにもこうにも結末がうまくまとまらないのです。

源太の姿が見当たりませんが、いつになっても姿を見せないめ以子を呼びに行ったと聞いて、お静が表情を曇らせました。

「今日もあかんかったか … 」

… … … … …

そうこうしていると、源太がひとりきりで戻って来ました。

「め以子は?」

「 … 多分、今日は来んのちゃうかな?」


桜子に尋ねられて、何となく思わせぶりに答える源太。

「何かあったん?」

心配そうに身を乗り出したお静。

「皆も帰らんほうがええんちゃうかな?」

西門家の面々に向かって意味ありげに言うと、勘のいい泰介が立ち上がりました。

「 … もしかして?!」

「戻って来たん、悠太郎さん?!」


お静が大声で尋ねました。

源太は否定はしませんでした。

顔を見合わせた啓司と希子、涙ぐむ馬介と桜子。

「お祖父ちゃん増えるね ~ 」

ふ久が諸岡の膝の上にいる大吉に言いました。

「よかった ~ 」

店中の人たちが悠太郎の帰還を祝って喜びの声を上げています。

… … … … …

すると、血相を変えた室井が源太に駆け寄ってきました。

「どんな感じ?

ねえ、それどんな感じだった?!

再会した時って、ふたりどんな感じだったの ~ 」

「そらもう … 甘 ~ い、感じや」


どっと沸く一同。

「 … それって、どんな感じ??」

「知らんがな ~ 」


しつこく食い下がる室井を源太は振り払いました。

… … … … …

悠太郎とめ以子は何年かぶりで夫婦水入らずの時間を過ごしていました。

悠太郎は自分の手紙の裏にびっしりと書き込まれた、め以子の日記を読んでいます。

め以子は戸棚の上にしまっておいたチョコレートの封印を解きました。

「美味しそうですね」

あっという間に半分平らげてしまったのを見て悠太郎は笑いながら言いました。

幸せそうにうなずいため以子。

「これもあげます」

め以子が悠太郎の分だと言って半分寄こしたチョコレートを差し出しました。

「 … ほ、ほんまですか?

チョコレートですよ、チョコレート … 」

「はい、どうぞ」


悠太郎は、それをめ以子の手に握らせました。

「 … ごちそうさんです」

ふたりは顔を見合わせて笑いました。

涙の河も 海へと帰る

誰の心も 雨のち晴レルヤ 雨のち晴レルヤ …


おわり ♪


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2014年03月28日 (金) | 編集 |
第149回

「オオキニ」

め以子から分けてもらった糠床を手に、覚えたての日本語で礼を言ったモリスは、満足げに帰って行きました。

… … … … …

しかし、数日後、希子から伝えられたモリスの言葉にめ以子たちは憤慨したのでした。

「 … なんでそんなことになるん?」

「せやかて、勝利は自分たちでつかみ取った方が美味しいやろって言わはって … 」


希子自身も困惑していました。

「ヤミー、何とかしてくれるんちゃうかったん?!」

「そう、これハイスクールの学内新聞やねんけど」


モリスから渡されたという新聞を差し出しました。

「カーチスさん、学生野球でかなりのスター選手やったらしいんです」

新聞の見出しには『LITTELE BIG TOM AGAIN!!』の文字、そしてハイスクール時代のトムの写真が載っていました。

「けど、体が小さかったせいで、結局プロにはなれんで …

でも、彼は当然大リーガーになるつもりやったから、その後、別の人生を歩むにあたって、相当苦労されたみたいで」

「プロ野球の選手になられへんかったら、学生野球なんて意味ないやろって話かいな?」


お静が半ばあきれたように言いました。

ことの原因は、当初耳にしていたこととは違う、もっと根深いところにあるようです。

「なんか、哀しいな … 」

泰介がため息交じりにつぶやきました。

「結果はどうでも、熱中することに意味ある思うんやけどな ~ 」

… … … … …

「ほなら、そう思てもろたらええんちゃうの?」

確かにめ以子の言う通りなのですが …

「それが、どうやったら分かってもらえるかですよね … 」

啓司が難しい顔をして首をひねりました。

「あっ、それから … カーチスさんは、アイスクリームに目がないから、是非参考にするようにて」

直接手を貸さない代わりにモリスはいくつかのアドバイスを与えてくれたのでした。

「アイスクリーム?!」

『アイスクリン … アイスクリン、作ろな』

め以子は、活男と出征の時に交わした約束を思い出していました。

「なあ、こういうのどやろ?」

それがきっかけになって、何か妙案がひらめいたようです。

… … … … …

め以子は早速、アイスクリームを作る材料道具一式を担いで、うま介に駆け込みました。

「あ、め以子ちゃん?!」

店が米軍御用達になって以来、心ならずも疎遠になっていた、め以子が顔を出したので、馬介は驚いています。

「 … 一緒にアイスクリン作ってくれる? 私と」

もちろん、ふたつ返事でうれしそうにうなずいた馬介でした。

… … … … …

め以子にしてもアイスクリームは、思い出いっぱいの食べ物でした。

子供たちがまだ小さい頃、一緒に作ったこともありました。

ボールの中のクリームをかき混ぜていると、幼い活男の手をとって、同じようにした記憶がよみがえってきます。

… … … … …

泰介と諸岡、啓司たちは、め以子が馬介たちと共にこしらえたアイスクリームを携えて、再び『民間情報教育局』のカーチスの元を訪れました。

「今日は、お土産を持ってきました」

前回の折衝の際に言葉の壁を痛感した泰介は、今回は自らの言葉で伝えるために英語を猛特訓、通訳は入れませんでした。

それを受けて、付き添いで来ていた希子がカーチスの前に2種類の器を置きました。

「こちらは卵の黄身で作ったアイスクリーム、こちらは白身で作ったアイスクリームです。

どうぞ、両方とも召し上がってください


大好物を勧められて、カーチスはまず黄身で作ったアイスクリームを食べました。

「 … 美味い」

続けて、もう片方の白身のアイスクリームも口に入れると、意外というような顔をしました。

「こちらもいい!」

すかさず泰介は話し始めました。

「野球もそのようなものだと思うんです。

学生野球もプロ野球も、どちらも素晴らしい!」


カーチスは、泰介の顔をちらっと見ましたが、そのままアイスクリームを食べ続けました。

「野球は戦時中に敵性スポーツだと抑圧されました。

それでも僕らは、敗れた球に紙を詰め直して野球を続けました。

野球が好きだったからです!

… 僕たちは全員、プロの選手にはなれませんでした。

でも、だからといって、あの時間の価値が損なわれるわけではありません!」


… … … … …

その頃、すべてを泰介たちに託しため以子は、うま介の前で活男が遺した手帳を広げて … 活男らしいメモを読んでは、面影を思い浮かべていました。

そして、今度こそうまくいくようにと祈るのでした。

… … … … …

「 … 仲間と共に過ごしたあの日々は、抑圧の中で最後まで白球を追いかけた日々は、僕たちの自信となっています。

その自身は、これからの人生の折々に、きっと僕たちを支えてくれることと思います」


無言でアイスクリームを食べ続けるカーチス。

すると啓司が、ハイスクールの新聞に載っているカーチスの記事を本人に向けて掲げました。

「トム・カーチスは、その小さな体で特大のホームランを放った。

9回裏、絶体絶命のピンチで見せた彼のアーチに、僕たちは勇気をもらった。

ありがとう、小さくて大きなトム」


見事、英語で暗誦してみせたのです。

「あなたもそうだったのではないですか?」

泰介がそう語りかけた時、ちょうど2種類のアイスクリームを平らげたカーチス。

その口元が柔らかな笑みを浮かべるのを一同は目にしました。

… … … … …

その夜、うま介は歓喜の声であふれていました。

泰介たちは、吉報を持ち帰ることができたのです。

カーチスは甲子園大会の中止を撤回することを約束をしてくれました。

「よくやった、ようやった!」

労をねぎらうめ以子。

「やったな!」

「ホンマ、皆さんのおかげです!」


源太をはじめ応援してくれた人たちに頭を下げた泰介。

「大吉、お前、甲子園行けるで!」

抱き上げた息子に夢を託して、感極まった諸岡は泣いています。

「活男、おおきに! おおきに!」

め以子は手帳を両手で掲げて、大声を張り上げました。

活男が泰介たちを見守ってくれていたような気がしたのです。

「活男、おおきに ~ !!」

泰介が同じように声を上げると、皆が我も我もと叫びました。

活男に届くようにと …

… … … … …

そんな賑わいの輪から外れて、そっと店の外へ出て行く、ふ久の姿がありました。

ふらふらっと闇市を歩いていると、一陣の風が頬をなでながら通り過ぎていきました。

『ひょう ~ ひょう ~ っと、入ってくるの、これが風や。

この力は、目には見えへんねんで … 』

『 … 見えへん力?』

遠い昔のこと、正蔵と交わした会話をふと思い出した、ふ久でした。

「 … お祖父ちゃん」

空を見上げると、春の風がほころび始めた桃の花を揺らしているのが見えました。

… … … … …

ひと回りしてきた、ふ久が戻って来ると、店の前では、め以子が大吉を相手にボール遊びをしていました。

「お母ちゃん」

「ああ、どこ行ってたん? 皆、中でお祝いしてるで」

「 … あんな、うちも大吉にな、何かええもん残してやりたい」


唐突なふ久の話にめ以子は首をかしげました。

「うち、電気作りたいんや」

「 … 電気?」

「風や地下熱や波や太陽や … この世の中には見えへん力があふれとる。

それを電気に作り変える仕組みを残したい。

行けるんやったら、大学行きたい」


諸岡や泰介たちの行動に刺激されたのか … ふ久は忘れかけていた志を取り戻したのです。

「お祖母ちゃんも、ひい祖母ちゃんもおる … 諸岡のお家かて、暖かい人ばっかりや。

どこでも行き、日本でも外国でも …

たぶん、あんたはそのために生まれたんやろ」


すべてを理解してくれた母の笑顔を見て、ふ久はあふれる涙を止めることができませんでした。

… … … … …

『甲子園が戻って来ました。

ふ久が戻って来ました。

心の中に活っちゃんも戻って来ました』

「 … 悠太郎さんは、いつ戻ってきますか?」

手紙の裏、残り僅かな隙間を今日の日記で埋めため以子でした。

… … … … …

その日、め以子が炊き出しから戻って来ると、お静が血相を変えて飛んできました。

「今 … 今、蔵にな … 」

お静は目で蔵座敷の中を覗いて見るように促しました。

「はっ?!」

息を飲むめ以子。

倉田と差し向かいに座っていたのは、和枝でした。

「何で、何で、何で??」

慌てて台所に逃げ込んだめ以子。

「知らんがな ~ 倉田さんがいきなり、友達連れてきたでぇって、それ持って」

め以子がザルにかかっていた手拭いを外すと、中身はこともあろうに鰯の山盛りでした。

「鰯か … 」

… … … … …

それでも何とか料理に仕上げて、蔵座敷に運んで行きました。

「 … 鰯のエスカベッシュでございます」

「まあ、世界一の洋食でっか?」


仏頂面の和枝。

「はい」

め以子は自信ありげに応えたのでした。

「ほな、ま … いただきます」

和枝は箸を手にしました。

「美味いわ、うん」

先に箸をつけていた倉田は満足そうにうなずいています。

… … … … …

表情ひとつ変えずに食べる和枝。

め以子は、頃合を見計らって切り出しました。

「 … あの、ありがとうございます」

膝を正し、両手をそろえてつくと頭を下げたのです。

「あの時、お義姉さんから突き放されたことで … 私、自然と心の準備ができてた気がします。

何やかんや言うても、図太く生きていけそうやとか、そういう妙な自信みたいなもんももろて」


和枝は、め以子の話に一切受け答えせずに、ただ黙々と料理を食べています。

「 … あれは、わざとそうしてくれはったんですよね?」

笑顔で和枝の顔を覗き込みました。

「ただのいけずだす」

和枝のことですから、そんな答えが返ってくることをめ以子は知っていました。

もし仮にそうだったとしても、和枝によってめ以子が救われたということは紛れもない事実なのです。

「お味どうですか?」

「 … 普通」


これもまた予想通りの返事。

め以子は何故かうれしそうにハリキリはじめました。

「そうですよね?

これは、わざと普通に作ったんです。

次はびっくりしますよ ~ お持ちします」


め以子が蔵座敷を出ていくのを見送ったあと、和枝はとてもいい顔をして微笑んだのでした。

… … … … …

食事を終えて外に出た和枝は思い出したかのように見送りのめ以子に言いました。

「 … ほな、悠太郎さんが戻ってきたら、連絡ちょうだいな」

「えっ?」

「この話せなあきませんさかい」


懐から取り出したのは、疎開を受け入れてもらった際に泰介が一筆記した覚書でした。

「忘れてはりましたやろ ~ この家はわてのもんでっせ!」

唖然としため以子の情けない顔を見ると愉快そうに笑いました。

「ほな、また来るわ」

そして、楽しげに覚書をひらひらさせながら、さっさと帰って行きました。

「 … もう、来んでええですよ ~ 」

め以子が、憎らしい背中を見送った時、背後で声がしました。

「奥、カレーを作れ!」

振り向くと、見知らぬ男を連れた竹元が立っていたのです。

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2014年03月27日 (木) | 編集 |
第148回

『自分を蔵座敷に招いて、最高の日本料理を出すこと』

それが、モリス大尉から出された条件でした。

しかも、『最高でなければ協力しない』とまで言われたのです。

果たして、め以子はその話、受けて立つことにしました。

泰介たちの夢を叶えるために …

… … … … …

「最高の日本料理なんて無理やろ?

いうても、め以ちゃん、料理人でも何でもないんやからな」


この話をめ以子から相談された銀次をはじめとする市場の仲間たちはそう懸念しました。

「いや、そもそも日本料理って、いったい何なんですかね?

何をもって日本料理て … 」
 

め以子の疑問を聞いて、銀次は大笑いです。

「また、アホなくせに、難しいこと考えようとしてからに ~ 」 

しかし、そこを踏み違えると間違えそうな気がするのでした。

「踏まえたところで、お前、料亭みたいなもんでけんやろ?」

それは、源太の言う通りなのですが、だからこそこうして相談しているのです。

皆、いまいち真剣みが感じられません。

め以子は両手で座卓を叩きました。

「甲子園 … 甲子園がかかってるんですよ。

この席には甲子園がかかってるんですよ!」


… … … … …

「ねえ、フランス料理と日本料理の一番違うとこってどこかな?」

切羽詰まっため以子は、職業斡旋所の電話を借りて、東京の大五に尋ねてみました。

「そりゃお前、ソースだろ、ソース。

フランス料理は料理ごとに合わせて作るソースが肝だけどよ ~ 日本料理はソースがほとんど発達しなかったんだよ」

「なんで?」

「そりゃお前、醤油が優れもんだからだよ。

あんだけ何にでも合うソースって考えてみろ ~ 他にねえだろが?!」

「お醤油か … 」


め以子は何か手がかりをつかみかけたような気がしました。

「じゃあな、ちょっと照んとこのガキがきてるからよ!」

もう少し話を聞きたかったのですが、大五に慌ただしく電話を切られてしまいました。

… … … … …

「おばはん … 」

入口のところに香月がいたので、め以子は電話を借りた礼を言いました。

「かまへん、かまへん ~ ついでにうまいもん横町、寄ってったらどうや?」

め以子の考案した料理は今でも大人気なのだそうです。

… … … … …

< そうこうしているうちに、件のお方がやってくる日となりました >

「師匠、活っちゃん、宮本先生 … どうか見守っていてください」
め以子は天窓越しに空を見上げ、手を合わせて祈りました。

… … … … …

「ええお肉 ~ こんなのよう手に入ったね」

源太が飛び切りの牛肉を持ってきてくれたのです。

「ちょうど食べ頃のいっちゃんええやつや、日本人は肉がわかってないとは言われとうないしな」

ここぞという時に、やはり頼りになるのは源太でした。

タネも「とろけそうに甘いネギ」と菊菜を用意してくれました。

… … … … …

おぜん立てが整ったところへ、モリスが到着しました。

台所から、お静が蔵座敷に案内するのが見えます。

め以子が外へと出ると、何やら大きな包みを抱えた希子が困った顔をして立っていました。

「どないしたん?」

「それが … 」


包みを開くと、大きなブロック肉が現れました。

「こ、こ、これ?」

以前、希子に食材は持ち込みだと言われたことを覚えていたのか … この肉を使って何か作れということのようです。

… … … … …

「脂少ないし、すき焼きに向く肉やないな」

せっかく上等な肉を用意してきた源太は少し残念そうです。

「せやけど、きれいなお肉やね … 」

そのブロック肉を見つめているうちにめ以子の顔がほころんできました。

「これ、絶対美味しい!」

… … … … …

座敷に上がったモリスには、料理が出来上がるまで少し時間がかかることを伝えて、取りあえずビールと糠漬けが出されました。

< アイ・アム・ジャパニーズ・ピクルス … でございます >

台所では、源太やタネ、ふ久まで手伝って、料理に取り掛かっていました。

源太がタコ糸で縛ったブロック肉を、め以子がフライパンで表面を焼きます。

庭に泰介と諸岡、銀次が急ごしらえで造った釜に火をつけて … 一斗缶に入れた肉をその上に置きました。

… … … … …

こんがりと焼きあがったブロック肉が運ばれてくると、モリスは怪訝な顔をしました。

「ローストビーフでございます」

め以子が肉を切るために包丁を手にすると、モリスは強い口調で言いました。

「これは日本料理じゃないって」

希子がその言葉を訳しました。

「日本料理は、素材の力を最大限生かすものなんです」

そう言いながら、平然と肉に包丁を入れていくめ以子。

「このお肉は、これが一番美味しいと判断しました」

め以子の言葉を希子から伝えられたモリス、取りあえずは理解したようです。

切り分けたローストビーフを茶碗によそった熱々の白米の上に乗せていくめ以子。

モリスはその手元をじっと見つめています。

「醤油という日本のソースと日本のハーブです」

醤油ダレをかけて、その上にきざんだネギとわさびを置きました。

「どうぞ召し上がってください」

… … … … …

すると、モリスは目を閉じて合掌しながら、何かをつぶやきました。

< あれが、いただきますかね? >

お祈りを終えたモリスは、箸ではなくフォークを使って、白米の上に乗ったローストビーフをひとくち食べました。

瞬間、希子の方を向いて微笑んだように見えました。

そして、続けてふたくち、みくち … それは、間違いなく満足している、美味しい顔でした。

ほっとしため以子は、黙々と食べ続けるモリスに悠太郎や活男の姿が重なって、思わず目頭が熱くなるのを覚えました。

< 美味しい時の顔って、ホントに皆似てるね >

… … … … …

ふと気がつくと、モリスは茶碗を置いて、め以子のことを見つめていました。

「あ、ああ、お替りしましょうか?」

モリスは語り始めました。希子がそれを訳して伝えます。

「料理好きの息子さんを無理やり軍人にしたそうです」

モリスは胸のポケットからロケットを取り出して息子の写真を開き、見つめながら話を続けました。

希子の顔に一瞬驚きが走りました。

「 … それで、真珠湾で亡くなられたそうです」

ハッとしため以子も懐から活男の手帳を取り出しました。

「私にも … 料理好きの息子がいました。

ご飯作るために兵隊になって、船に乗って戦死しました」


希子が訳す言葉にモリスは静かな表情で耳を傾けていました。

「 … 私は … アメリカを許すことができません」

「だから、あなたに会いたかった」


… … … … …

「憎まずにいるのは苦しい … 憎んでもやはり苦しい。

憎まずにいたいが、それもできない。

でも、息子なら、あなたのおむすびを食べてみるんじゃないかと思って、試してみたら美味しかった」


モリスはそう、め以子に語りかけたのです。

… … … … …

「 … ココカラ、好キニナレル」

め以子の頬を涙がひと筋流れました。

その時、頭上がぱあっと明るくなって … 一同が見上げると、天窓からまばゆいばかりの光が差し込んでいました。

「美味しい顔って同じなんですよね … 日本人もアメリカ人も。

食べなければ、生きていかれへんから、きっと同じなんですよね」


肉親を愛おしむ心だって、そして亡くした時の悲しみだって、きっと同じなのです。

お互いが話す言葉は分からない筈なのに、その瞬間、ふたりの心は通じ合っていました。

「 … 忘れんようにせんとあきませんね。

命をかけて争うほどの違いはなんもないんやて」


… … … … …

「 … お替りしましょか?」

「Yes,please」


再び、め以子が尋ねると、モリスは穏やかに笑って茶碗を差し出しました。

「美味しかったですか?」

泣き笑いのめ以子、緊張気味だった蔵座敷の雰囲気が一気に和やかに変わっていました。

… … … … …

一部始終を扉の外から窺っていた泰介は、奇跡の様な瞬間を目の当たりにして、感動していました。

その時、突然扉が開いて、希子が顔を見せました。

「お相伴しませんか ~ って」

諸岡やふ久、源太たち、蔵の前でヤキモキしながら、結果を待っていた全員、モリスの好意で蔵座敷の中に呼ばれたのです。

「もちろんです」

満面の笑顔で応えた泰介でした。

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2014年03月26日 (水) | 編集 |
第147回

復員兵を乗せた列車が駅に着く度、め以子は降りてくる人々の中に悠太郎の姿を探しました。

再会を喜び合う家族の姿があちらこちらで見られる中、め以子は今日も無駄足でした。

落胆して家に戻って来ると、お静が声をかけてきました。

「悪いけど、うちは8年待ったで」

屈託なく笑ったお静の顔を見て、少しだけ元気が出たような気がします。

「負けませんよ ~ 」

… … … … …

部屋に入ると、泰介の他に啓司と諸岡が来ていました。

「お義姉さん、この春の中等学校野球大会は甲子園でやるってのは聞いてはりましたか?」

め以子も新聞で読んで知っていました。

「去年の夏は西宮やったけど、今年の春は甲子園なったんやな」

お静の言葉に啓司はうなずきました。

「そうです。

接収してた甲子園を部分解除して、球児たちに使わせるて … 僕はこの件でアメリカの野球に対する愛に感動してたんです。

さすが、ベースボールの国やて」


だんだんとまくし立てるような口調になってきました。

「 … 怒ってるんかな?」

お静とめ以子は顔を見合わせました。

「そ、そ、それがですよ … それが、こっこっこっ」

憤りのあまり言葉に詰まった啓司に代わって諸岡が続けました。

「この期に及んで、GHQが、GHQが、GHQ!」

「その決定を自らひっくり返して … 」


3人の中では比較的落ち着いている泰介が後を引き受け、最後は結局、啓司が叫びました。

「甲子園は使わせへん、大会は中止するて言うてきよったんですわ!」

怒りに震える啓司の横でうなずいている諸岡と泰介。

「また、甲子園のうなるいうこと?

… そんなん、絶対あかんやんか!!」


… … … … …

「せやけど、なんで1回大丈夫やったもんがあかんようになったん?」

「その辺の事情を希子に … おっそいなあ」


啓司には珍しく、イライラして落ち着きがありません。

お静とめ以子は台所で夕餉の支度をしています。

「啓司さん、怒るとあんな感じなんやな ~ 」

「なんや、始めて見ますね」


啓司の意外な一面を見た気がしました。

… … … … …

「ごめん、遅くなって」

「遅いよ、ホントに …

それで、どやった ~ 何か分かった?」


帰宅が遅くなった希子が家に上がるのも待ちきれないかのように啓司はせっかちに尋ねました。

「主催の人らは甲子園での開催を実現すべく、米軍の神戸軍政部と折衝を重ねてるらしいのよ。

取りあえず、そこの許可は下りたみたいなんやけど …

そこにね、GHQの『民間情報教育局』とかいうところから突然、開催を中止するよう言うてきたらしいの」


本来的に学生野球は『民間情報教育局』の管轄で、要するに親方に話をせずに決めてしまったということなのです。

「話通してへんかったから、それでそのヘソ曲げてしもうたと?」

「まあ、簡単に言うとそういうことですね」


お静に尋ねられて希子はうなずきました。

… … … … …

「それだけのことで?

それだけのことで中止て … 」


め以子には信じられませんでした。

「なんちゅうケツの穴の小さき話なんですか ~

夏の大会の時、GHQは、『野球が再び日本の若者の血潮を沸かせるだろう、おめでとう』とまで、言うてたんですよ。

それが … 」


余りにも次元の低い理由を知って、啓司の怒りはなおさら増したのです。

「僕らに何かできることないかな?

目標がある日突然奪われるような、あんな思いは … 僕は、後輩にはさせとうない」

「その通りや」


甲子園出場まであと一歩のところまで行きながら、戦争のためにその機会を奪われてしまった、泰介と諸岡の無念を目の当たりにしているめ以子も黙ってはいられません。

「何でもするから言うて!

アメリカの差し入れに腹下し仕込もか?!」


… … … … …

< その日から、怒涛の署名集めが始まりました >

「お買い物の皆様 ~

若者たちの夢を守るために、署名をお願いします!」


うまいもん横丁に源太の声が響きました。

その傍らで、お静と大吉を連れたふ久が署名を受け付けています。

礼を言いながら、うまいもんを配るめ以子。

< こんな方たちも … >

牛楽商店のマツオやトミ、銀次やタネも署名集めに協力してくれました。

< 当然、こんな方たちも … >

うま介には、泰介と諸岡の声掛けで野球部OBが集結していました。

「生き残った僕らに出来ることは … この手で、甲子園を取り戻すことだけや!」

ふたりの熱弁に仲間たちが鬨の声を上げ署名用紙を手に街へと繰り出して行きました。

… … … … …

< ラジオ組は … >

「 … なるほど、煮沸をすることで寄生虫を予防されてるということですね?

ところで、虫と言えば、野球ですが … 野球はお好きですか?」


< かなり強引なインタビューを展開し、街の声を集めました >

希子のインタビューに戸惑う人もいましたが、そんな時は啓司がマイクを奪って、自分が知っているかつての好試合、名場面を延々と語っては、甲子園大会の重要性を訴え続けたのです。

… … … … …

< こうして、いよいよGHQに直接、市民の声を届ける日が訪れました >

集めた署名用紙と街の声を録音したテープを携えた啓司、諸岡、泰介と共に野球のユニフォームに身を包んだOBが西門家の前に勢ぞろいしました。

< 折衝の場で手渡すことが許されたのです >

「では、思いのたけをぶつけに行って参ります」

啓司は希子から、諸岡はふ久からと、それぞれの伴侶から激励を受けました。

そして、泰介は …

「ほな、お母さん」

「しっかりやるんやで!」


め以子から気合を入れられると力強くうなずきました。

まるで出陣するかのような雰囲気の中、お静が突然合図して『露営の歌』を歌い出したのです。

♪ 勝ってくるぞと勇ましく ~ 

すると女性たちが声を合わせて大合唱で送り出したのでした。

… … … … …

「ほな、私、仕事終わったら、もう1回来ますね」

希子が台所に顔を出すと、め以子は食事の支度をしていました。

「今日は、皆に何作るんですか?」

「お米のコロッケ。

米、米(ベイ)にカツ! アメリカに勝つて」


そう笑っため以子の横顔を見ていたら、思わず口に出していました。

「 … 最近、顔出さんでごめんな」

「ええ、ええ ~ 忙しい分かってるし …

来えへんいうことが、思いやりやてこと分かってるから、大丈夫」


その言葉を聞いた時、希子の胸の中に一気に熱いものがこみあげてきました。

「だけど、私、ちい姉ちゃんのこと好きなんよ。

ちい姉ちゃんは、私のお姉ちゃんでお母さんで、一番大事な友達で …

何でそんな人のこと、傷つけるような仕事してんのやろなって」


め以子は、そんな希子が愛おしくて抱きしめました。

「分かってるから ~ 大丈夫」

… … … … …

放送局に着いた希子を待っていたのは、モリスからの呼び出しでした。

「何故アンナコトヲ、ヤッテルノカ白状シロト、オッシャッテマス」

例の強引なインタビューについて厳しく尋問されたのです。

… … … … …

その夜。

黙々と、め以子の作ったライスコロッケを食べる啓司、諸岡、泰介の姿がありました。

3人とも折衝から戻って来てからひと言も口を利かないのです。

「 … あかんかったん?」

「どんな感じやった?」


恐る恐る、ふ久とめ以子が尋ねると、啓司は引きつった笑い顔で諸岡の顔を見ました。

「ご説明しますとですね … 」

一体どんなことが起こったのか、諸岡は話し始めました。

… … … … …

自分たちは何ひとつ聞いていなかった …

啓司たち一同を前にして、『民間情報教育局』の局長カーチスは開口一番そう言いました。

「それは反省してるて、散々言うてるやないですか?」

通訳が啓司の言葉を伝えると、カーチスから返ってきたのは、「学生の本分は勉強であり、そもそも年2回も大会があるのはどうかしている」という返答でした。

「春モ夏モ野球シテタラ、あほニナル … ト、言ウテハリマス」

「それなら大丈夫です。

日本には『文武両道』という言葉がございまして … 身体と頭脳を同時に鍛えることができます」

それを聞いたカーチスは紙に何かを書きはじめました。

手応えを感じた啓司は、振り返ると泰介たちに目で合図しました。

安堵する一同でしたが、そんなに甘いものではなかったのです …

「面白イ、ゼヒ見シテクレト、言ウテハリマス」

カーチスから差し出された紙を笑顔で受け取った啓司でしたが、にわかに表情が曇りました。

そこに書かれていたものは数学の方程式でした。

腕立て伏せをしながら、それを解いてみろというのです。

「身体と頭脳を同時に鍛える … 」

… … … … …

「 … 無念であります」

一部始終、話し終わって、諸岡はがっくりと肩を落としました。

結果、署名は受け取ってもらえたものの、大会中止は翻すことは出来なかったのでした。

「数学やなかったらな … 」

文系出身の啓司は負け惜しみです。

「あっ、あんた?!」

数学といえば、ふ久ですが … 運動の方がダメなことを思い出して、あきらめため以子でした。

「言葉の壁も大きいんや思うんだ。

やっぱり、相手の言葉で話さんと … 伝わらん」


今日そのことを、つくづくそう実感した泰介でした。

… … … … …

ちょうど、そこへ希子が戻って来ました。

「あ、あかんかったんやね … 」

3人の顔を見れば、誰からでも結果は明白でした。

「聞かんうちから分からんといてよ」

啓司は口を尖らせました。

「 … 実は私もばれて、ヤミーに呼ばれて」

一同に驚きが走りました。

「えっ、それで大丈夫やったん?」

「いや、まあ、事情を説明したら、助けてやってもええて」

「えっ?!」


… … … … …

「どうもね、『民間情報教育局』の局長のカーチスさんとヤミー、同じハイスクールやったらしいんよ。

それで、面識あるみたいで」


降って湧いたような話に啓司は身を乗り出しました。

「それで、助けてくれるて?」

「けど … それにはひとつ条件があるて」


そう言った後、希子はめ以子の方を見ました。

「ヤミーをここに招いて、最高の日本料理を出すこと。

… 最高でなければ、協力しないと


さあ、どうする、め以子??

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2014年03月25日 (火) | 編集 |
第146回

め以子が蔵座敷から出ようとした時、お静に連れらて入ってきたのは、写真の女性、野川路代でした。

路代はめ以子に軽く会釈して、蔵座敷に上がり、室井の前に座るとお辞儀しました。

実物の方が写真より美しく可憐に見えます。

「どうも … 」

一体誰? と、聞きたくなるように、格好つけた室井を見て、め以子ばかりかお静にまで悪寒が走ったのでした。

… … … … …

「へ ~ 室井さんそんな格好つけてるの」

め以子が泰介と話しながら、台所で料理を支度をしていると、お静がご注進に戻って来ました。

「助平がほとばしっとるで、あれ!」

「何言ってるんですか?」


お静の話では、室井はいつの間にか路代の横にピタ~っと座っていて、路代もまんざらでもないみたいに見えたのだそうです。

「 … 今日は、蔵座敷が連れ込みになる日かも知れん」

「かなんな ~ 」


頭を抱えるめ以子、ふと気づくと泰介が蔵座敷を覗いているのが見えました。

「泰介、あんた何やってんの?!」

「 … いや、室井さんやったら、覗いてもええんちゃうかなって」

「ええ訳ないやろ!」


と言いながら、め以子も蔵の中のふたりに視線が釘付けになっていました。

「あっ、お母さん … 」

その時、泰介が蔵座敷と逆の方向を見て驚きの声を上げました。

肩を叩かれて振り向いため以子は目を見張って息を飲んだのです。

… … … … …

蔵座敷の中のふたりは、席を離れて向かい合って座っていました。

「雪のようだね」

室井はそんなことを言いながら路代の手を取って撫でている最中でした。

「 … 失礼します」

め以子が入って来ても、室井は路代から手を放そうともせずにべったりとくっついたままです。

「あ、ご飯来たかな ~ 」

「ご飯はまだなんですけど … 奥様がお着きです」

「おく君?

そんな知り合いいないけどね ~ 」


開け放たれた扉から入ってきたのは … 誰あろう、桜子でした。

「お久しぶり、室井さん」

… … … … …

その声にぎょっとして振り向く室井、入口に立っている桜子を見て、顔からさ~っと血の気が引いていくのが分かりました。

路代の手を握ったまま、固まって動けない室井に構わず、桜子は座敷に上がってきます。

「まあ ~ 仲良し?」

そう言われて、室井はパッと手を離しました。

「 … あの、先生?」

不審な顔をしている路代のことを「もういいから」と言って立ち上がらせると、さっさと蔵座敷から追い出してしまいました。

「ごめんね、またね ~ はい、どうもどうも ~ お世話様 ~ 失礼します」

… … … … …

「追い出すことなかったのに」

「 … 何しに来たんだよ?!」


声を荒げた室井。

「興味あるじゃない?

自分の旦那がどんな相手と交際してるのか」

「悪趣味だよ、覗きなんて!」

「ふっ、誰が言ってるの?」


鼻で笑った桜子は座卓に座りながら、そこに置いてあった手紙の束を手に取りました。

「楽しかった? … 文通?」

慌てて奪い取る室井。

「関係ないでしょ、もう … 僕たち別れてるよね?

そういう解釈でいいよね?」

「楽しかった?」


… … … … …

問い質された室井は観念して、楽しかったことを認めました。

「あ、彼女は、僕の文学を理解してくれてまして … 」

「ディケンズだとか、西鶴だとか?」

「そうなんだよ ~ その感性が素晴らしいんだよ」

「『涙でその字が流れても』も読んでて?」

「そう! 発禁になったやつまで、どうにか手に入れて読んでくれて … 」

「『阿呆の佛』は、まさに集大成!」


この時、室井は嫌な予感がしました。

手にしている手紙を見直し … そして、桜子の顔を見ました。

まるで手紙の内容を知っているかのような口ぶりです。

「えっ?」

無言でうなずいた桜子。

「えっ、ちょっと、ちょっと待って!」

焦って、他の手紙も何通か取り出しては見直しました。 

「ひょっとして … 

僕が文通してたのって???」


… … … … …

桜子がポーチから取り出して、座卓の上に置いたのは … 室井が野川路代宛てに出した手紙の束だったのです。

愕然とした室井は、その手紙の束に手を出そうとしましたが、桜子は取り上げて、室井めがけて投げつけました。

… … … … …

「ひどいことするな ~ 」

外から様子を窺っていため以子、さすがに室井の肩を持ちました。

「ねえ ~ ちょっと可哀そうですよね」

言わば片棒を担いでいた当人の言葉に、め以子たちは思わず路代の顔を見つめてしまいました。

「あんさんは、どないな関係の?」

首を傾げたお静。

「あっ、私、民子の姪です」

「民ちゃんの?!」


桜子からアルバイトしないかと頼まれて、手紙の清書と受け取りもしていたことを白状しました。

… … … … …

蔵座敷の中では、手紙を拾い集めている室井の前で、桜子はその中の1通を平然と読み上げていました。

「『塩と砂糖』のはなしが出ましたが、路代さん、あなたは砂糖の様な人だ」

「やめて ~ 」

「すべてを甘く丸く包み込む。

白状しよう、僕はあなたのことを思わない日はない」

「 … ごめんなさい」


しかし、桜子は止めるどころか読みながら蔵座敷の中を歩き回り始めました。

「思えば、ずっとしょっぱい女房に支配されていました」

「ごめんなさい!」

「偉そうで気まぐれで … 」

「いやウソ、それウソだから!」

「あまつさえ、戦争中にの句を放り出すような女だ。

ひどくない?

普通そんなことする?

しないよね」


… … … … …

「ひどいでしょ?

… いきなり文体が変わって」


何だか話の方向がおかしくなってきました。

ただひたすら謝っていた室井がポカンとして桜子を見上げました。

「雑っ!」

桜子は、座卓の上に手紙を叩きつけ、室井の顔を見つめました。

「室井さんは大作家になったんだから、こんな手紙書いちゃだめよ。

書簡集って出るのよ、死後。

あの作家が普段どんなことを考えてたのか、書いてたのかって、皆読むんだから、この文体の混乱は … ないっ!」


… … … … …

「 … 桜子ちゃん?」

「でも、手紙に書いてたことはホント … 『阿呆の佛』は、ホントにおもしろい。

バカバカしくて、くだらなくて、猥雑で …

でも、根底に焼け跡を生き抜く人たちへの愛がある。

命への愛がある」


この時、室井はようやく桜子の真意に気づいたのです。

「 … ねえ、『阿呆の佛』を書かせるために、僕のことを追い出したの?」

「室井さんを走らせるには、過酷な状況が必要だから。

どうしても、読んでみたかったの … 室井さんが焼け跡で描く物語を」


桜子の実家の別荘で衣食住満たされてぬくぬくと過ごしていた室井を奮起させるためにあえて放り出したのです。

そして、室井は見事その期待に応えたのでした。

すべてを告白した桜子の顔は涙で一杯でした。

… … … … …

「ひどいよ … 」

「 … ごめんね」

「ひどいよ、桜子ちゃん」


涙と鼻水でくしゃくしゃの室井の顔。

「もう ~ もう、もう」

そう叫びながら、桜子に抱きつきました。

「大好きだよ ~ 」

… … … … …

蔵の外では、ひとりめ以子がもらい泣きしていました。

「泣くことないがな ~ 」

半ばあきれたように隣に腰かけたお静。

「よかったなって、元のさや収まって … 」

… … … … …

め以子と桜子が積もる話に花を咲かせている横で、室井はすでに酔いつぶれていました。

「東京に戻って、民ちゃんに会ってね … それで、姪御さん紹介してもらったのよ。

女優志望だから、いい勉強になるかもって」

「そうだったんだ … 」

「 … め以子のことはさっき室井さんから聞いた」

「何て?」

「いろんなことが宙ぶらりんなままだって」


まさにその通りでした。

め以子は盃の酒を口に含みました。

「活っちゃんを殺したんは、何やかんや言うて … 行かしてしもた私やと思ってる。

私が変わらなあかんて思ってるんやけどね。

… 活っちゃんのこと考えたら、やっぱり、かわいそな気がして。

私だけは許したらあかんような気がして」


め以子はひとつため息をつきました。

「出口が見つからんのよ」

… … … … …

蔵の外では、今の話を立ち聞きしてしまった泰介が室井のために抱えてきた布団を持って、バラックへと戻って行きました。

「 … お母さん、僕らには話されへんのかな ~ 本音言うか」

「アメリカのことか?」


母は、桜子に話していたようなことを家族の前では一切口に出したことがありませんでした。

「まあ、近すぎるいうんはあるかな」

め以子が本音をぶつけたら、どう言葉を選んでも、泰介も希子も責めることになってしまうだろうとお静は言いました。

「まあ、当分はこんな塩梅でいくしかないやろな … 」

「何や、孤独やな、お母さん。

周りに人居っても、ひとりなんやな … 」


母が哀れに思えたのです。

「当たり前やんか、そんなこと」

泰介は思わず、お静の顔を見てしまいました。

「人は皆ひとりや。

それぞれ勝手がちゃう。理屈もちゃう。

せやからこそ、腹の底からひとつになれる瞬間いうんは … ごっつうありがたいんやて分かるんやで」


お静から諭すように言われた言葉は、泰介の胸に強く響いていました。

… … … … …

あくる日。

倉田が、若牛蒡をもらったので何か作ってくれと、ひょっこりやって来ました。

め以子は倉田に会ったら聞きたいことがあったのです。

「あっ、倉田さん、お義姉さんって会うてはります?」

「うん、ちょくちょく手紙でやり取りしたりはしてるけどな … 何ぞあるんか?」

「どないしてはるかな ~ 思うて」


疎開で世話になって以来、ずっとご無沙汰していたのです。

「 … 近頃、昔のお義姉さんの気持ち分かるようなってきて」

へえっという顔をした倉田。

「まあ、少しなんですけど … 」

… … … … …

室井の元に戻った桜子はまた以前のように、うま介で働くようになっていました。

「何や、花が咲いたようやな」

源太が言ったように、英語が堪能で米兵とも何不自由なく会話が出来る明るく美人の桜子がいるだけで店の雰囲気はガラッと変わりました。

以前にも増して、桜子にぞっこんの室井。

客の大半は米兵ですが、馬介も店の経営は順調でした。

「どないしたんや?」

ひとり浮かない顔の泰介に源太は尋ねました。

「腹の底からひとつになれる瞬間て、どんなもんかなって」

昨晩のお静の言葉がずっと気になっているのです。

… … … … …

その時です。

啓司と諸岡という珍しい組み合わせのふたりが血相を変えて店に入って来ました。

「西門!」

「泰介君!」


ふたりは、泰介をはさむようにして立ちました。

「 … 何ですか?」

「僕はね、平和主義者やけど … これは戦わなあかんと思うんや」


啓司には珍しく高揚した顔、強い口調で言いました。

「断固戦うべきや!」

反対側では諸岡がいきり立っています。

「ちょっと待ってください … 何と戦うんですか?」

ふたりは店の中を見渡し、そして泰介の肩に手を置くと、怒りに声を震わせました。

「 … GHQや!」

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2014年03月24日 (月) | 編集 |
第145回

深刻な顔をして訪ねて来た藤井。

「藤井さん、どないしはったんですか?」

「西門君のことなんですけどね … 」


取りあえず、藤井を蔵座敷に通しました。

「知り合いが先日、満洲から引き揚げてきまして、終戦の時に西門君見た言いますんや」

め以子の顔に驚きが走りました。

「えらいこと大きいて、眉毛の濃い人やったから、こちらの西門君で間違いないと … 」

初めて耳にした悠太郎の生存情報に喜び合うめ以子とお静、しかし藤井の話には続きがありました。

「 … けど、その後どうも … 抑留されたやないかて」

終戦後武装解除し投降した日本軍捕虜らを、ソ連(現ロシア)が主にシベリアに労働力として移送隔離し … 厳寒環境下で満足な食事や休養も与えられず、苛烈な労働を強要させられたことにより、多くの抑留者が死亡した。(Wikipedia シベリア抑留より)


「抑留て … 」

喜びもつかの間、お静は絶句しましたが、め以子は藤井のことを真っすぐ見据えて尋ねました。

「生きてるんですよね?」

「はい … それはそうやと思います」


め以子は懐の悠太郎の手紙を握りしめました。

「ほな、私は待っとったらええだけですよね … ここで」

そう気丈に答えたのでした。

… … … … …

一年後。

昭和22(1947)年3月。

< め以子は、復員列車が着く度に、悠太郎の姿を捜しに行く日々を送っておりました >

ある朝の食卓。

泰介は4月から大学に復学することになった旨を報告しました。

「人捜しの方はもう大丈夫なん?」

「尋ね人は、もうかなり減ってきたみたいやけどね … 」


お静の問いに泰介は何故かめ以子の顔色をうかがいながら答えています。

「ああ、こないだ新聞に、アメリカが子供んためのホームちゅうん作ったて」

泰介がまため以子の方を気にして、お静に目くばせしました。

察したお静が、雰囲気を変えるためにラジオをつけると … いきなりアメリカのジャズが紹介されて、トランペットのイントロが流れ出しました。

顔をしかめるめ以子、泰介は慌ててスイッチを切りました。

はれ物に触るようなふたり … め以子は無言で食事を続けています。

気まずい空気を何とかしたい泰介は新聞を手に取りました。

「あっ、今日の『阿呆の佛』、おもろかったで」

『阿呆の佛』とは、室井が新聞に連載している小説で、好評を得ていました。

「このお富士って主人公、アホすぎていらいらするんや。

こんなんいる訳ないやろ!」


ケンモホロロ … め以子はあまり好かないようです。

… … … … …

その日の午後、泰介は良き相談相手の源太とうま介にいました。

「お前は、ホンマんのとこはどないしたいんや?」

「こっちの仕事も完全に片ついたわけやないし … お父さん戻って来るまではて思ってるんですけどね」

「お前の仕事はアメリカさんと関わっとるしな」


自分の仕事のことで、母をピリピリさせているのではないかというのも、復学を決めた理由のひとつでした。

抑留のことは、いまだによく分からない状態が続いていて、それが話題に上がると皆の表情が暗くなるのです。

… … … … …

「まあ、どっかであきらめなきゃいけない日が来るのかもね ~ 」

そんな気持を逆なでするように口を挟んできた室井に源太が激昂しました。

「ホンマにしばくぞ、お前!」

「だってさ ~ 来ない人を待って待って、人生棒に振るってのも、もったいない話じゃない?

明日に向かわなきゃね ~ 」


新聞連載が好評のせいでしょうか … やけに前向きでご機嫌な室井は、笑いながら店を出て行ってしまいました。

「 … せや、あいつ、そろそろ気ついてるか?

室井さんにいろいろネタにされてること」

「まったくの他人事やと思うて読んでますね」

「あほやな ~ 相変わらず」

「まあ、そこは『阿呆の佛』ですから … 」


… … … … …

そんなこととは夢にも思わない『阿呆の佛』は、事務所の前で子供たちを相手に炊き出しを続けていました。

「おばちゃんどないしたん?」

め以子が、前を通りかかった復員兵の一家をじっと目で追っていたのが気にかかったようです。

「うん、おばちゃんとこ、おっちゃんまだ帰って来てへんのや」

「それって、生きてはるん?」


悪気はないのですが、子供は正直に思ったままを口にしてしまうものでした。

「そんなん、生きてるに決まっとるやんか」

そう言って無理に笑って見せました。

< この年の1月、アメリカの救済物資によって、全国的に小学校の給食が始まりました >

… … … … …

< 戦災孤児を引き取るアメリカ人夫婦などもおり … 

め以子としてはアメリカに良いところも多分にあると分かりつつ、活男のことを思い起こすと、やはり許すわけにはいかないと思ってしまうのでございました >

チョコレートと活男の手帳を持って、ぼんやりと考えているところへ、突然、室井がやって来ました。

「め以ちゃん ~ お願いがあるんだけどさ」

浮ついている室井に『お願い』などと言われ、め以子は不吉な予感がしました。

「 … 何ですか?」

「僕に蔵座敷使わしてもらえないかな?

来週のどっか、6時くらいから、ふたりでお願いできるかな?」


意外な『お願い』でしたが、予定表を確認すると … 空きはありました。

「おおきに … ほな、承ります。

お料理のご希望あります? 苦手なもんとかは … 」

「あんまり気にしなくていいんじゃないかな ~

どっちかって言うと料理より、会話を楽しみたいって風だし … あ、最後は何か甘いものでも出してもらえると」


出先から戻って来て、入口で室井のことをずっとうさん臭そうに見ていたお静が言いました。

「女か?」

… … … … …

「えっ?!」

驚いたのはめ以子です。

「女やろ?

あんた、逢引きする気やろ」


言い当てられた室井でしたが、少しも慌てることもなく、却って自慢話を始めたのです。

「僕のファンだって言うからさ ~ どうしても会いたい言うからさ ~ 」

「桜子はどうするん、知ってるん?」


すると、今度は開き直りました。

「2年近くになるし、もういいんじゃないかな?

… お互い新しい人生をさ」


あきれ返るめ以子。

「とにかく、よろしくね ~ この人だから」

室井が見せたのは、美人でなおかつ若い女性の写真でした。

… … … … …

その頃、事務所では泰介が戦災孤児を養子にしたいというアメリカ人夫妻と少年を面会をさせていました。

「ちょっと、電話借りるで」

そんな場所に突然め以子が現れたので、泰介は慌てて、見つからないように夫妻と少年を表に連れ出したのです。

幸いめ以子は、それどころではなく気づかずに … 桜子の元へ電話しました。

… … … … …

「 … いいの?

相手、すごい可愛い子だったわよ」

「あら、よかったじゃない ~ 」


め以子は、文女のことや生活はどうするのかと尋ねても桜子は呑気なものでした。

「実家だしね … まあ、よろしく言っといて」

それだけ言うと、電話はぷっつりと切られてしまったのです。

「もう ~ 知らないからね!」

… … … … …

もやもやした気分で戻って来ると、楽しそうな笑い声が聞こえてきて、蔵の前でふ久たち親子3人がお静も混ぜてボール投げして遊んでいました。

「どやった? 桜子ちゃん」

め以子の顔を見るなり、お静は尋ねました。

「 … まったくどうでもええ感じでした」

ため息のお静。

「人の気持ちは変わるからな … 」

「そうですけど、駆け落ちまでしてきたのに」


どうにも、あのふたりの態度が納得がいかないめ以子でした。

… … … … …

「あんたも変わったもんな … 」

大吉を見るふ久は、すっかり母親の顔をしています。

あの食事をする時間も惜しんで勉強をしていたふ久がです。

「ふふふ、子供はおもろいしな ~ あきへんし」

喜ぶべきことなのですが、それでもめ以子は少しだけ気になりました。

「学校は、もうええの?

新聞で読んだんやけど、アメリカのおかげで男女共学になって、早速、帝大にも女学生が入ったんやて」


め以子が知っているようなことをふ久が知らない訳がありません。

しかし、ふ久は黙ったままでした。

「工場も回りだしたんやし、ちょっと考えてみてもええんちゃう?」

「 … 私の中の問題なんや。

昔みたいに居ても立ってもいられんような、そういうもんがもうないんよ」

「大ちゃんにあげてもうたんかな … 」

「そうかも知れんわ」


穏やかな顔でふ久は笑いました。

< けど、何か寂しいね … あのふ久はもうどこにもいないのかね?

戦争と同時にどこかへ … >

大吉と楽しそうに遊ぶふ久を物憂げな気分で見つめてしまうめ以子でした。

… … … … …

『いろんなことが変わっていきます』

その夜、悠太郎の手紙の裏にそうひとことだけ書き入れました。

もう殆ど書き込むところがなくなってきています。

「 … 私だけ、そのままです」

そうつぶやき、頬づえをつきました。

… … … … …

そして、室井が蔵座敷を予約した日がやって来ました。

ボサボサだった髪をさっぱりと整え、背広をあつらえて現れた室井を見て、唖然とするめ以子。

付き合いは長いめ以子ですが、こんな室井を見たのは初めてでした。

「何、どうしたの?」

まったく似合わない気取ったポーズを取られた時、思わず寒気が走りました。

「 … やる気が服着て歩いてるみたい」

「そう? えっ、そうかな ~ あ、でも僕一応、先生だしさ」


出るのはため息ばかりです。

「いや ~ 文面から察するとね、どうも学のある人みたいで」

有頂天の室井は女性からもらったという手紙の束を懐から取り出して、その中の1通をめ以子に渡しました。

いやいや受け取っため以子は仕方なく目を通しましたが …

「ディケンズを彷彿させる風刺とユウモアの精神と、人間の性を西鶴のごとく愛おしみ … 」

何が何だか、さっぱり分かりません。

「『阿呆の佛』は、まさに先生の集大成と呼ぶにふさわしい?!」

… … … … …

当の室井は、女性の写真を見てだらしない顔でにやけています。

「みっちゃん  

写真にキスをするのを見て、め以子は我慢できなくなって席を立ちました。

「ほな、ごゆっくり」

蔵座敷から出ようとした時、扉が開き、お静に連れらて入ってきたのは … 写真の女性でした。

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2014年03月23日 (日) | 編集 |
まずは、先週のおさらいを …



それでは、次週の「ごちそうさん」は?

どうか、見守っていてください

昭和22年。め以子()は蔵座敷で料理を振る舞いながら悠太郎(東出昌大)を待ち続けている。

ずっとずっと待つしかないの

そんな中、室井(山中崇)からファンの女性と会うために蔵座敷を使用したいと申し出がある。舞い上がっている室井に、め以子はあわてて東京で暮らす桜子(前田亜季)に連絡するがそっけない返事が。

お久しぶり …

当日、蔵座敷に美しい女性を迎え、でれでれしている室井だが、思わぬ展開となる。

断固戦うべきや!

啓司(茂山逸平)と諸岡(中山義紘)が激昂して泰介(菅田将暉)を訪ねてくる。ようやく甲子園で行われるはずの野球大会が、GHQに許可を取り消されたのだ。

何と戦うんですか?

め以子らは甲子園での大会再開のために署名を集め、希子(高畑充希)は野球がテーマの街頭取材で後押しするが、上官のモリスにとがめられる。訳を聞いたモリスが力を貸す条件は、め以子の蔵座敷だった。

アメリカ嫌いのめ以子だが、モリスの希望する「最高の日本料理」に知恵をしぼる。当日め以子はモリスから、意外な言葉を聞く。

忘れてはりましたやろ?

和枝(キムラ緑子)や竹元(ムロツヨシ)がめ以子の蔵座敷を訪れ、悠太郎を思い出すめ以子。

奥、カレーを作れ!

駅近くの雑踏でカレーを売りながら復員兵と家族の再会を見つめる。

そして源太(和田正人)と二人きりでカレーを食べる。

わしと所帯でも持つか?

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2014年03月22日 (土) | 編集 |
第144回

活男と同じ船に乗っていた小関という青年。

青ざめた顔で何も言えず、固まったように動かないめ以子に代わって、お静が震える声で尋ねました。

「ほな、活っちゃんは?」

小関は苦しそうに絞り出すような声で答えました。

「立派な最期だったそうです」

… … … … …

戦死公報という紙切れ1枚に書かれていることなど信じなかった、め以子の一縷の望みが今ぷっつりと断たれてしまったのです。

「あの … これをと思いまして」

小関は手帳を取り出し、ちゃぶ台の上に置きました。

「荷物に西門君の手帳が紛れ込んでて … 」

ハッとしため以子は手帳を手に取って開きました。

最期のページに『西門活男』と署名してあります。

「あの … 活男は海軍でお役に立ちましたか?」

お静は小関に尋ねました。

「 … 西門君はいつも笑ってて、皆に可愛がられてました」

泣きながらうなずいているお静。

め以子は、手帳に視線を落として、ぼんやりしたままです。

「握り飯を作るのがとても速く上手で、『ごちそうさん』って言われると、うれしそうな顔をして …

『うちの母親はごちそうさんってあだ名なんや』て、いつも自慢してました」


… … … … …

泰介から活男のことを伝え聞いた源太が様子を見に訪れると、め以子は蔵座敷の階段に腰を下ろして、活男の手帳を読んでいるところでした。

「おう、なんや、それ?」

いつもと同じ調子で尋ねると、意外にもめ以子は穏やかに微笑みながら答えました。

「活っちゃんの手帳。

すごい活っちゃんらしゅうて、ちょっと笑てしまう」

「 … そうなんか?」


しばらく手帳を見つめていため以子がおもむろに言いました。

「源ちゃん … お葬式やろう思うんやけど」

わずかに語尾が震えていました。

「 … やるんか?」

「もう、ええ加減弔うてくれって … 活っちゃん、そう言うてるような気するんよ」


決して信じなかった活男の死を今ようやく受け入れようとするめ以子がいました。

「源ちゃん、手伝うてくれる?

… 源ちゃんの助けが要るんやわ」


背を向けたままのめ以子の肩が震えているのが分かりました。

「なんぼでも … 何でも言えや、め以子」

… … … … …

玉子焼、赤飯、ホットケーキ、親子丼、ノリツケ焼、アンコロモチ、カレー …

食いしん坊の活男の手帳らしく、ほとんどのページに『食べたいもの』の名前がつらつらと書き記してありました。

しばらくページをめくっていると、日付が入った文章が出てきました。

… … … … …

1月19日

けったいな夢を見た。

朝、わしは起き出して、いつものように調理場へ行った。

けど、そこは何でか、台所で、お母ちゃんがぐつぐつと何か作っとる。

わしがぼーっと見とると、お母ちゃんはいきなりくるっと振り向いて、変な歌を歌いながら手招きした。

「こっちの飯は美味いぞ」

わしはフラフラとつられて、ちゃぶ台に座って待つ。

お母ちゃんはそこにカレーを踊りながら持ってきて、わしは笑うてしもうて、「いただきます」と言って、カレーを食べようとする。

けど、何でか食べられへんで、いつの間にかお母ちゃんはおらんようになってて、「ごちそうさん」は言えんかった。

… … … … …

2月10日

肉じゃがとお浸し、ネギと揚げの味噌汁、今日もあかんかった。

… … … … …

3月12日

ドーナツとしょぼ焼、今日もあかんかった。

夢やもん、しゃーない。

けど、生きて戻れたら、お腹いっぱい食べて …

… … … … …

その日、蔵座敷には家族とうま介の仲間が集まりました。

「これが活っちゃんのお葬式か … 」

しみじみとつぶやいた馬介。

源太が闇市を回って、市場の仲間にも声をかけ、足を棒にして食材を集めてくれたおかげで、座卓の上には活男が夢で食べられなかったものが並びました。

どうしても材料が揃わなくて、作れなかったものや、思い通りに仕上がっていないものもありますが、これが今できる精一杯のご馳走でした。

「先に活っちゃんに取ったってええ?」

お静とめ以子が料理を皿に取り分けて、活男のための影膳を用意しました。

「活っちゃんは、よう食べるさかいな ~ 」

そう言って、お静はどっさりと盛ったのです。

… … … … …

「活男、お前のおかげで、今日はこんなご馳走が並びました … おおきに」

泰介が家族を代表して、涙を堪えながら挨拶を述べ …

「ほな、いただきます!」

活男を送る宴は始まったのです。

… … … … …

できるだけ、湿っぽくならないように活男を送ってあげたいのですが … 何を食べても活男の美味しそうな顔が浮かんできて、皆その度に涙ぐんだりしてしまいます。

それでも、時間が経つにつれ、食が進み、空いた皿が増えていきます。

ふと、め以子は活男の膳に目をやり、どっさりと盛られたままの料理を見て、寂しそうにつぶやきました。

「活っちゃんは、もう … お腹空かへんのやな … 」

… … … … …

誰の目にも見えなかったのかも知れませんが …

活男は確かにそこに居ました。

皆を見下ろすように階段に腰かけて、め以子の作った料理を黙々と口に運んでいました。

そして、すべて平らげて、「ごちそうさん」そう言って微笑んだ後、旅立って行ったのでした。

… … … … …

宴も終わり、皆がそれぞれの家に帰った後、め以子はいつもの日記をつけていました。

『活男のお葬式をしました。

みな来てくれて、いいお葬式でした』

和枝が言ったように、この悲しみは一生消えないものかもしれません … いや、決して消えることはないでしょう。

「 … 前向かんと … 向かんとね」

自分自身に言い聞かせるように何回も声に出して言っため以子でした。

… … … … …

しばらくして、うま介の新装開店の日がやって来ました。

「なんや、今ひとつ代わり映えせんな ~ 」

お静がそう言ったのも無理はありません。

新装開店といっても、店の雰囲気やテーブルやいすの配置までは以前のままなのです。

「竹元さんが、この店はこうじゃないといけないんだって」

再建を支援した竹元のこだわりだと室井が説明しましたが、お静は実は面倒くさかったのではないかと思っているようです。

… … … … …

「ええよ、め以子ちゃん、座っとって」

お静と泰介と共に開店祝いに訪れため以子は、昔のように厨房を手伝っていました。

「ええ、ええ ~ 馬介さんこそ、皆のとこ行ってきたら?」

「ええの? おおきに」


馬介には屋台を任せきりだったし、桜子もいないので、め以子は出来るだけ手伝うつもりでいたのです。

「いらっしゃいませ ~ 」

ドアが開く音を聞いて、振り返っため以子の顔が強張りました。

入ってきたのは、ふたりの米兵だったのです。

「caffe」

席に着く米兵を目で追っていため以子でしたが、気を取り直して、コーヒー豆の缶を手に取りました。

しかし、その缶に書かれている文字も英語、アメリカ製だと気づくと、思わず缶を置いてしまったのです。

馬介が慌てて飛んできました。

「め以子ちゃん、ごめんな ~ 僕、やるな」

「 … 馬介さん、ごめんな」


そう言うと、そそくさと店の外に出て行ってしまいました。

後を追う泰介とお静。

… … … … …

「頭では分かってるんや。

せやけど、私はお母ちゃんやから …

活っちゃんの仇の国の人に、コーヒー淹れたりはでけへん」


ちょうど開店祝いにやってきた源太と希子夫婦がその場に居合わせて、め以子の話を耳にしてしまいました。

「うま介が復活するんはうれしい。

せやけど、私は … 来られへんわ」


そう告げてひとり立ち去っていくめ以子を誰も声をかけることさえできずに見送るだけでした。

… … … … …

翌日、希子は先日の返事をモリス大尉に伝えました。

「義姉の息子は、終戦間際に海の上で戦死しました。

… だから彼女は、あなたに料理を出すことは出来ないと思います」


毅然とした態度できっぱりと断ったのです。

ベッカーからの通訳を聞いたモリスは無言で、窓際に置かれた写真を見つめました。

そこにはモリスと彼の息子らしき少年が並んで写っていました。

… … … … …

その頃、め以子がちょうど糠床の世話を終えた時、藤井が訪ねてきました。

「藤井さん、どないしはったんですか?」

藤井は、とても言い難そうに切り出しました。

「西門君のことなんですけどね … 」

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2014年03月21日 (金) | 編集 |
第143回

いよいよ完成した蔵屋敷。

入口のコンクリート製の階段、め以子は、その手すりに懐かしそうに触れると微笑みました。

一歩一歩確かめるように上がって行くと、その後をお静と泰介も続きました。

期待に胸を高鳴らせながら、扉を開けると …

「わあ ~ 」

3人から感嘆の声が上がりました。

見違えるように生まれ変わった蔵の中、座卓が置かれた畳の座敷と板の間があって、階段を上がった所にも席が用意されています。

「ええわ ~ これ」

早速、座卓に座ったお静は、子供みたいにはしゃいでいます。

め以子も腰を下ろしてみました。

頭上から光を感じて見上げてみると、天井にはめられた窓ガラスを通して青空が見えました。

「ああ、空見える」

「あれ、いいですね!」


泰介も興奮気味です。

「青空が見えるもええし、星空が見えるもええでしょ」

会心の出来に大村も自信ありげに笑いました。

「カレーの菩薩やのうてよかったな!」

お静の冗談に皆大笑い。

「藤井さん、大村さん、ホンマにおおきに … 」

め以子たちに改めて礼を言われたふたりは、却って恐縮してしまって、反対に頭を下げ返していました。

… … … … …

「あの、近頃、め以子ちゃんどんな具合?」

数日後、泰介は事務所の前で馬介からそんなことを尋ねられました。

「ああ、元気にやってますよ ~

こないだは、倉田さんが大きな新巻鮭持って来はって、結局近所の人たちにまで振舞うことになって … 」


養子をもらった勝治と多江も蔵座敷で一緒に鮭料理を堪能したのです。

そのうちに、倉田の友達の細川がいきなり卵を持って来たり、太田などは手ぶらでやってくることも …

「面白なってきたんか、自分から仕入れして … 自分から営業して、走り回ったりしてます」

「ほな、機嫌ええの?」

「性に合ってるんでしょうね」

「そうか … 」


泰介は馬介があることをめ以子に言い出す機会をうかがっていることを知っていました。

「そろそろ言うても大丈夫なんと違いますかね?

… アメリカ嫌いも大分薄らいできてますし」

「そうなん?!」


身を乗り出した馬介。

「そうそう … そもそも遠慮しすぎなんや、馬介さんは」

ふたりの話を横で聞いていた源太にもそう言われましたが、馬介はまだ踏ん切りがつかないようです。

… … … … …

蔵座敷の料理や給仕は、め以子がこなしているのですが、お酌などの接待は昔取った杵柄でお静が相手をしていました。

ここ最近、普段は洋装ですが、その日ばかりは着物姿に戻って、本人も楽しんでいる風に見えます。

ごちそうさん?」

お静が聞き返すと、細川が笑いながら答えました。

「暗号や、暗号」

「ここへ来ることな、何て言おうかなって考えてな ~

ほんで、昔あんさんが『ごちそうさん』って呼ばれてたって話思い出してな」


倉田が給仕しているめ以子の顔を見て笑いました。

「名前知れて、混むのも嫌やしな ~ おっ、今日『ごちそうさん』やてな」

倉田たちにすればここは息が抜けて、美味しいものが食べられる、秘密の隠れ家みたいな所なのでしょう。

「懐かしいな ~ 」

め以子は昔、よくそう言って、近所の子供らが集まって来ていたことを話しました。

「それが、今は爺さんばっかり、来るようになったてか?」

… … … … …

その日、め以子は泰介について事務所を訪れていました。

ふ久と諸岡が粉ミルクを受け取りに来ると聞いたからです。

諸岡の父の工場もなかなか思うように受注がとれないようで、ふ久が苦労しているのではないかと心配していたのです。

「もともとは工場、何作ってはったやんか?」

「主には花瓶やら食器やら作ってたんです」


居合わせた源太と諸岡が話しています。

「大体こういうもんや」

すると、工場で作ったものだというガラスの花瓶を、ふ久が泰介に渡しました。

ガラスの表面に見事な細工がしてあります。

「あげる ~ ミルクもろうてばっかりやさかい」

「確かに、今こういうもん欲しがる人は少ないわな … 」

「これ、蔵座敷に置かせてもろてもええ? 蔵ん中、寂しいし」


花瓶を手にしていため以子が代金を払おうとすると、諸岡は慌てて遠慮しました。

「いや、ちょっと、ええですよ、お義母さん」

「何言うてるの ~ これを買うたの」


め以子の親心に諸岡が頭を下げているところへ、室井が馬介を引っ張って飛び込んできました。

… … … … …

「あ、馬介さん … すんませんね、屋台任してしもうて」

「ちょっと、話があるんだって」


無言で気まずそうな顔をしている馬介に代わって、室井がやけにうれしそうにそう言いました。

ここまで来て、馬介も肚をくくったようです。

「 … あんな、め以子ちゃん。

僕もそろそろ『うま介』やろうと思うてんねん」

「えっ?」


突然のことだったので、驚いため以子でしたが、よく考えたら当然の話でした。

「新しく屋台やりたいいう人も大分減ったし、香月さんももう問題ない言うてて」

「子供らへの炊き出しは僕らが事務所でやればええかて話やし」


源太も泰介も馬介から相談されて、大分前から知ってはいたのでした。

「ええやろか、僕戻って?」

「そんなん、私にどうこういうことやないやないですか ~ いつからですか?」

「今、竹元先生が直してくれてはって … 」


肝心なのはその後のことなのです。

「うん、それでな、店たぶん、オンリミットになるんや」

「おん、りみとって何?」

「 … 米軍の立ち寄り自由な店や」


馬介は心苦しそうに口にしました。

… … … … …

馬介には、め以子の表情が一瞬曇ったように見えました。

「そういうことを条件に資金引っ張てきたいうか、それでしかでけんかったいうか …

実際、コーヒー確保するんも、それが一番ええし、せやからその … 」


最近、馬介の様子が少しおかしかった理由がようやくめ以子にも分かりました。

自分の気持ちを慮って、律儀な馬介がどれだけ悩んでいたのかを考えると、め以子は反対に申し訳ない気持ちで一杯でした。

「私は、アメリカは嫌いやけど、馬介さんの淹れてくれるコーヒーは好きやから。

その好きの方が勝ってるから」


め以子のそのひと言で馬介は安堵の表情を見せました。

「おおきに、店開いたら来てな!」

「当たり前や、早よ復活してくださいよ ~ カスタード巻にハモニカも」

「焼き氷な、うん」


案ずるより産むか易し、源太たちも胸をホッとなでおろしたのです。

「まっずい汁、あったよな、あれなんやっけ?」

「吉田汁!」


その命名者である室井ときたら、ひと騒動起こることを期待していたようで、何事もなく収まった上に、和気あいあいとしている一同のことが面白くないようです。

「何かつまんない!」

元々そういう気はありましたが … あの手紙以来、桜子からは一切音沙汰もなく、気持が相当ひねくれていました。

… … … … …

その後、め以子は泰介の聞き取り調査の順番を待っている子供たちに炊き出しを振舞いました。

雑炊が子供たちに行きわたった後、腰を下ろしてぼんやりと考えていると、「どうかしたのか」と泰介が尋ねてきました。

「ああ … 子供には引受先、大人には仕事なんやなって思て」

そう言って、ふ久から渡されたガラスの花瓶を取り出して見つめるめ以子。

これだけの技術があっても需要がなければ利益は生まれないのです。

やはり、ふ久と大吉のことが心配でした。

… … … … …

その日、倉田は、見事な鰤を持参し、はじめての客を連れて蔵座敷に現れました。

「この人な、これから羽振りようならはんねんで ~ 」

「やめてくださいよ、倉田はん」


その時、ふいに停電になり、お静が慌ててランプを探しに席を立ちました。

「ほらな、羽振りようなる!」

「やめてくださいて、もう ~ 」


見るからに血色のよいその人は名を光峯といい、ランプの口金工場の社長だと倉田が紹介してくれました。

「 … ランプ」

め以子は、お静が灯したガラス製のランプの灯に何故か目を奪われていました。

… … … … …

「こんばんは!」

倉田たちを見送った後、め以子は大急ぎで諸岡家に駆け込みました。

「どないしたん?」

「ふ久、あんたんとこランプのガラス造り!

口金会社の社長さん見つけたさかい、お母ちゃん取り持ったるさかい!」


家に入るなり、一気にまくし立てました。

「お義母さん、言うてはることがよう … 」

困惑顔の諸岡。

「せやから、これからもっと電力不足になんねんて!

ほしたら、ランプが売れるんやて」


倉田からそんな情報を仕入れた以子は、居てもたってもいられずに飛んできたのでした。

「それ違うん違う?

… 電力不足やったら、電力造らんと作らんと」


ふ久は冷静に答えましたが、め以子の耳に入りません。

「 … ランプや、諸岡君! 上がらせてもらうで」

め以子は諸岡の父、弘士と相談するために家に上がり込んできました。

… … … … …

そんなある日、希子はまたもモリス大尉に呼び出されました。

「 … あの、今日は何でしょうか?」

モリスが一体何を言い出すのか、希子は緊張した面持ちで尋ねました。

「コード・ネーム・ゴチソウサン」

「 … はい?」


… … … … …

馬介が自分の店に戻ることが決まってから、め以子は時間を見つけては職業斡旋所の前で炊き出しをするようになりました。

「ちい姉ちゃん」

「ああ、希子ちゃん」


突然、希子がやって来ました。

「お仕事は?」

「ああ、ちょっと取材で出て来たんです」


希子はまたこの間と同じような困ったような顔をしています。

「あのね …

あの、例のモリス大尉」

「ああ、おむすびヤミーの人?」

「そう、そのヤミーがどこでかちょっとわからへんねんけど、『ごちそうさん』のこと聞いたみたいで …

で、あの、行きたいって言い出して … 」

「えっ?」


畳だし、落ち着かないだろうし、材料も持ち込みだということを伝えればあきらめると思ったそうなのですが、逆に喜んでごっつい肉を持って行くと言い出したことを、申し訳なさそうに説明しました。

「 … どないしましょう?」

め以子も今までのように無下に断ることはしませんでしたが、それでも「はい、そうですか」と容易く引き受ける気にもなれません。

「ちょっと考えさせてもろてええ?」

… … … … …

炊き出しを終えため以子が帰宅すると、門の前に見知らぬ青年が立っていました。

「あの、泰介のお友達ですか?」

年恰好から見て、そうではないかと思って声をかけてみると、青年はめ以子に向かって深く頭を下げました。

「いえ、私は … 西門活男君と同じ船に乗っとったもんです」

「 … 活男と?」


… … … … …

め以子は胸騒ぎを感じながらも、その青年、小関を家に招き入れました。

「僕は西門君と同じ主計兵でして … その … 最後の出撃の時は、病気で基地の病院に入れられてたんです」

小関の話にめ以子は動揺していました。

「 … 生き残りの恥さらしです」

無念そうに、自分を責めるように、小関は口にしました。

青ざめた顔で何も言えず、固まったように動かないめ以子に代わって、お静が震える声で尋ねました。

「ほな、活っちゃんは?」

小関は苦しそうに絞り出すような声で答えました。

「立派な最期だったそうです」

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2014年03月20日 (木) | 編集 |
第142回

< 倉田さんの援助により、バラックは瞬く間に建ち、蔵座敷の準備も着々と進んでおりました >

木造建築を得意とする大村が中心になって職人たちが慌ただしく作業する現場にお静がお茶を運んできました。

「どないですか?」

「藤井君が、何やかんや木材集めてくれたおかげで、何とか予定通り進められてますわ」


そこに諸岡が父の工場で受注したガラスを納品にやって来ました。

「おっ、よう出来たやんか ~ ええ感じやで」

「助かりました、発注があって」


このガラスを屋根にはめるのです。

… … … … …

「誰か ~ おろすん手伝うて ~ 」

朝から何処かへ出かけていため以子が、荷物を目いっぱい積んだ大八車を引いて戻って来ました。

「何や、夜逃げしてきたみたいやな」

「倉田さんやお友達に何やいろいろもろうて来たんです」


食器に座布団、畳まで積んでありました。

「こら助かりますわ」

「まあ、お古やいうんは一目瞭然やけどな」


お静が食器の入った箱を下ろしながらそんなことを言いましたが、お古といっても倉田やその知人の持ち物だったのですから、そこいら辺にある物とは品が違いました。

「ほな、もっかい行ってきます」

荷が全部下されると、め以子は休む間もなく、今度は闇市へと大八車を引いて出かけていきました。

「えらいご機嫌さんでんな」

その背中をお静と大村は笑いながら見送ったのです。

< やるとなったら、考えが膨らむもの … 楽しくなってきた、め以子でしたが …

アメリカに対する嫌悪感は以前のままでございました >

… … … … …

闇市に向かう途中で、群がる子供たちにチョコレートをまいている米兵の姿を、またもや目撃しため以子は放ってはおけませんでした。

「ちょっと、あんたら?!

投げるなて、なんべん言うたら分かるんや!!」


怒鳴りつけても言葉が通じないため、チョコレートが欲しいのかと思って米兵はめ以子にも差し出しました。

「アホなんか?!」

「アホナンカ?

… プリーズ、プリーズ」

「いらんて、もう!」


… … … … …

職業斡旋所の前では、源太と馬介が何やら話し込んでいました。

「 … そんなに気遣うことか?」

「め以子ちゃん、アメリカのもんやからって、チョコレート食べへんのやろ?

あの、め以子ちゃんがやで」


室井が隠れて食べているのではと茶々を入れましたが、馬介の顔は真剣でした。

「活っちゃんのこともあるし … 僕、活っちゃんと仲良かったし」

どうやら、馬介は、め以子に遠慮して、何かに迷っているようです。

「やってられへんやろ、そんなこと言い出したら」

そんな話をしていると、当のめ以子がやって来ました。

「何が、やってられへんの?」

「ああ、うん、あのね … 」


危うく口を滑らせそうになった室井を源太が慌てて追い払ってしまいました。

… … … … …

「あ、馬介さん、これあげる」

め以子が馬介に渡したのは、結局受け取ってしまったチョコレートでした。

「おおきに … 」

馬介の複雑な表情にめ以子は気づかずに、そのまま事務所に入って行きました。

… … … … …

め以子を待っていたのは、米を買ったことで懇意になった真岡でした。

取りあえず揃えなければならない調味料と薬味になる野菜などを調達してもらったのです。

「おじ様たちに『料理してんか』って、何かしら持って来られたら、絶対にいるんはこういうもんやろ?」

「それで、食べていけるんかいな?」


香月もそこが気になるようです。

「分からへんけど … 取りあえず、始めてみることにしたの」

その時、事務所の外で何かが崩れるような物音がしました。

表に出てみると、地面に散らばった缶を前に慌てている泰介と、大吉を背負ったふ久の姿がありました。

「あんたら、何やってるの?」

ふたりはめ以子の顔を見ると、気まずそうに笑いました。

『DRIED MILK』

転がっている缶には横文字と外国人の母親が赤ん坊に哺乳瓶でミルクを飲ませている絵が描かれています。

… … … … …

バラックに戻っため以子は、ふ久が大吉に哺乳瓶で粉ミルクを飲ませるのを見てから、ぐちぐちと文句を言い続けています。

「粉ミルクなんか飲まさんでも … 」

「しゃあないやんか ~ お乳出えへんのやから」

「どないすんの、こんなもん飲ませて、大吉の目が青なったら?」


それは、ふ久には思いつかない発想でした。

「 … おもろすぎる」

め以子が気に入らないのは、粉ミルクというより、アメリカ製という点のようです。

「アメリカの援助物資、配るん手伝うてんの?」

次は泰介に尋ねました。

「うん、子供の保護してる事前の団体が結構あって … 僕の活動知って、お互い協力しよう言うてくれて」

不機嫌にうなずいた母を見て、泰介は膝を正して座りなおしました。

「 … お母さん、正直に、正直に言うとな …

戦災孤児に対する手当とか考え方とか、アメリカの方が格段に上や。

日本人の子供を養子にもろうてもええていうアメリカ人夫婦も居はる。

援助がないとやっていかれへんのも現実やし、アメリカには見習うべきところもたくさんある思う」


め以子は家族の顔を見渡しました。

お静もふ久も黙ったままです。

「何や、情けないな ~ 大和魂はどこ行ったんや」

… … … … …

一方、希子が務める大阪ラヂオ放送でも信じられないようなことが起こっていました。

「そ、それホンマですか?」

希子はたった今、上司の大野から聞かされた話に我が耳を疑っていました。

「ホンマや」

「ホンマにホンマに自分らで取材してええんですか?」


何度も何度も確認する希子に、大野は米軍がやっていいと言ってきたことを告げました。

「民意を反映した放送をするためには、新聞記事の焼き直しではあかん。

自分らの足で市民の意見を聞かんといかんらしい」

「すごいやないですか!」


< 少しご説明いたしますと …

当時のラジオの報道は、新聞記事の受け売りばかりで、独自取材というものはなかったのでございます >

「まさか、こんな風に認められるなんて … 」

それは、希子が一番望んでいた報道の理想でした。

同僚たちも手を取り合って喜んでいます。

「ま、言うても、検閲はある訳やし、米軍のオイタなんかは絶対に放送させてもらえんけど … 」

「けど、大した進歩ですよ!」


啓司の言葉に希子がうなずいていた時、突然ドアが開いて、モリス大尉の通訳を務めているベッカーが入って来ました。

「希子、モリス大尉ガ話ガアル」

… … … … …

「皆、ころっころ、もう ~ 」

すでにお静は畳が入った部屋で就寝し、泰介は用事があると事務所に出かけて留守、め以子はひとり昼間のことを思い出して、カッカしながら糠床をかき混ぜていました。

そんな時間に、困ったような顔をした希子がやって来ました。

「ああ、どないしたん?」

「実はですね … 」


… … … … …

部屋を訪れた希子にモリスは、ベッカーを介して質問しました。

「アノ弁当ノヒトハ、ドウシテルノカ?」

蔵座敷の話が決まってから、め以子は弁当を売りに来ることを辞めてしまっていたのです。

「 … さあ?」

とぼける希子。

モリスは、またあの『ライスボール』が食べたいのでどうにかしろと命令しました。

「いや、そう言われても、私には … 」

しかし、モリスは、め以子が希子の義理の姉だということも知っていました。

「義理ノ姉ダロ、何トカシロ」

… … … … …

「 … それで?」

希子の話に、め以子はあからさまに嫌な顔をしながら尋ねました。

「それで … モリス大尉にお弁当作ってもらわれへんやろか?」

「嫌、嫌や、そんなん絶対嫌や!」


当然、そういう返事が返ってくるでしょう。

「お、お願いします」

「大体希子ちゃん、信用ならんて言うてたやん」


希子までもが寝返るのか … め以子はそう思いました。

「信用はしてないけど、でも … 逆らうとややこしいことになるんで。

何とかお願いできませんか?!」


すがるような目でめ以子を見つめる希子。

め以子にもそんな希子の立場が分からないでもありませんでした。

… … … … …

考えた結果、め以子は『日本風おむすび弁当』と『アメリカ風Omusubi弁当』の2種類を用意して売ることにしたのでした。

「ちい姉ちゃん … 」

「大きく出はりましたね ~ 」


放送局の中に堂々と店開きしため以子、日本風が10円なのに対して、アメリカ風は100yenというその価格設定を見て希子と啓司は苦笑いしました。

< やるからには、ガンガン、アメリカからふんだくってやろうね、め以子! >

「 … 材料費かかってるし」

「えっ、中身違うん?」

「同じもんやったら、何か言われるかも分からんから」


… … … … …

すると、早速モリスがやって来ました。

「Oh,omusubi!」

指を指しながら、うれしそうに近づいてきます。

「 … アメリカはこっち」

強張った顔のめ以子が手振りで示すと、モリスはうなずき、アメリカ風の方をひとつ取って、め以子に代金を支払いました。

「おおきに … 」

緊張気味に一応、礼を言いました。

モリスは、ロビーのソファに座って、待ちきれなかったようにおむすびを食べ始めました。

「あ、お義姉さん」

昼時なので、久しぶりにめ以子が弁当を売っていることを知った大野を始め常連だった日本人の職員たちも買いにやって来たのです。

「僕にもひとつ」

「毎度 ~ 」


モリスの時と違って、日本人には愛想のいいめ以子。

… … … … …

「Yummy!」

「えっ?!」


その時、おむすびを頬張っていたモリスが口にした言葉にめ以子は凍り付きました。

モリスは通訳のベッカーや数名の米兵におむすびを見せながら、何か話しています。

慌てて店じまいし始めるめ以子。

「な、何してはるんですか?!」

モリスのことをにらみながら、残っている弁当を風呂敷に包んでいるめ以子に希子は尋ねました。

「せやかて今、『闇』て、『闇』て!

… これ、新手の摘発やったんと違う?」


それを聞いて、希子と啓司は、思わず吹き出してしまいました。

「『Yummy』いうんは、美味しいいう意味らしいですよ」

「 … そうなん?!」


… … … … …

モリスからの評判を聞いた米兵たちが集まって来て、アメリカ風のおむすびも飛ぶように売れ出して、あれよあれよという間に完売と相成りました。

ロビーは、め以子のおむすびを食べる人々であふれました。

日本、アメリカ関係なく席を同じくして、何やら楽しそうにおむすびを頬張っています。

< 何だか、可愛いとことあるね ~ アメリカ人も

美味しい顔っていうのは、アメリカ人も日本人も変わらないね >

恐ろしくて、憎いだけの存在だったアメリカ人なのに …

… … … … …

バラックに戻っため以子は、新聞紙にくるんでしまってあったチョコレートを取り出してみました。

包みをなでてから、鼻を近づけてみました。

甘い香りがたまらなく心をくすぐります。

しかし、め以子は「食べたい」という誘惑を振り払うようにかぶりを振って、チョコレートを元の新聞紙で包みなおしました。

「ふたり、戻ってくるまでは … 」

それを箱に入れて、棚の高いところへと載せてしまいました。

そんな母を板の間から微笑んで見ている泰介。

< まあ、そんなことをしているうちに …

いよいよ、蔵屋敷が出来上がったのでございます >

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2014年03月19日 (水) | 編集 |
第141回

< さっそく西門家のバラック造りと蔵を座敷にしつらえる計画が始まりました >

め以子は施工を藤井に発注することにしました。

「すいません、大村さんまで」

「かまへん、かまへん、どうせ藤井君に呼び戻されとったから ~

建てもんぎょうさんあるから、小さい爺さんでも働けるて」


打ち合わせに訪れた藤井は、疎開先の九州から戻ってきた大村を引き連れてきたのでした。

「蔵座敷て、どんな風にしたいんや?」

「あっ、あの … 」


め以子が大村の質問に答えようとした時でした。

「奥っ!」

懐かしい呼び声と共に蔵に入ってきたのは … 行方不明だった、あの男でした。

「た、竹元さん?!」

「生きてはったんですか?」


… … … … …

「奥、大変なことになってるじゃないか?!」

「ああ … 空襲で焼けて … 」

「うま介がなくなってるじゃないか?!

どうなってるんだ? どうなるんだ ~ 焼き氷は?!」


久しぶりの再会なのに、開口一番がこれです。

… … … … …

相変わらずの竹元でしたが、ひとつだけ変わったことがあるといえば … 何故か、やけに日に焼けていることでした。

「センセイ、独立しはったって聞いてたんですけど?」

お静の質問に竹元は、無人島で暮らしていたと答えました。

「過酷だったが、素晴らしい日々だった。

住居を造り、井戸を掘り、見晴らし台を造り、木の実を採取し、海の幸で命をつなぐ … 」

「そんなん、ホンマにできるもんなんですか?」


め以子には、にわかに信じがたい話でした。

「できるに決まってるだろっ!

古来の人は昔、そうやって暮らしていたんだ。

空から爆弾が落とせるようになっても、無人島で暮らす術がないとは … 実に愚かしい。

人類とは、進化しているのか、退化しているのか、分からんな!」


何となく言いたいことが分かるような気がして、皆黙り込んでしまいました。

… … … … …

「さて、座敷の話だったな、奥っ!」

竹元も蔵の外で聞いていたようです。

「あ … あの、藤井さんと大村さんにお願いしてるんで。

お気持ちは嬉しいんですけれど … 」

「私がやってやると言ってるんだぞ」

「いや、竹元さんにお願いするようなモダンなもんやありませんし、予算も … そんなにありませんし」


め以子が丁重に断ろうとすると、突然また激昂しました。

「がっかりだ!

奥、お前は私のことが全く分かっていない!

私はデパートの大食堂並みの男だぞ ~ 蕎麦のつけあわせにハンバーグステーキを食せる男だぞ!」


竹元が突いてくるステッキをお盆で受けながらも、一体どんな男なんだろうとめ以子は思いました。

「何でこんなにこの蔵の改築やりたがるんですかね?」

「金かかるもんばっか建てはったさかい、発注ないんとちゃうか … 」


藤井の疑問に大村の予想。

「そうだ! 私は建てたいんだ!

一面が焼野原だというのに、建て放題だというのに … 私の情熱はあふれかえるばかりなのに!

このままじゃ、私は … 爆発だっ!!」


… … … … …

「 … まあ、ほな、一緒にやりまひょか?」

大村の提案に意外にも素直にうなずきました。

「ええんですか?」

「もちのろんや ~ 何しろセンセイは、おもろいもん造らはるし」

「面白うのうてええんやけどな … 」


ポロッと本音をこぼしため以子。

「 … じゃ、奥さん、どうしましょ? ご希望を」

藤井が仕切り直して、改めてめ以子の希望を尋ねました。

「来てくれはった人がくつろげたらそれでええんですけど …

悠太郎さんやったら、こう建てるみたいなんがあると、うれしいな ~ て」


… … … … …

「赤門の建てそうな?」

「あのバカの?」

「西門君 … 」


おかしなことに3人とも首をひねって考え込んでしまったのです。

「何や難しいですか?」

つきあいが長く、ずっと一緒に仕事をしてきた人たちだから、容易いことと考えていため以子でしたが、思惑は外れたようです。

「いやいや、あの … 難しい言うか、赤門らしさて ~ なあ、いまひとつ … 」

大村が言いあぐねていると、横から竹元がバッサリと切り捨てました。

「ないんだ!

あいつには建築的な個性が何ひとつ!」

「えっ?」

「とにかく、安全で頑丈でいうこと以外になあ、いまひとつ … 」

「こだわりがないんだ!」


3人が3人とも同じ感想のようです。

「 … せやったんですか?」

… … … … …

そこに泰介が源太を連れて帰って来ました。

「お、何や、蔵の相談?」

「よかったら、源太さんも知恵出して」


お静に促されて源太も話しの輪に加わります。

… … … … …

「あ、そうや! 小学校の窓のうて … 」

藤井が震災後のことを思い出して笑い出すと、大村と竹元もあったあったとうなずきました。

気負いすぎで思いつめた悠太郎が倒れない建物にこだわり過ぎて、ほとんど窓のない校舎を設計したことがあったのです。

「ほんで、これ倒れんけど … 中の人、病気になるでって」

大村の話を聞いて、いかにも悠太郎がやりそうなことだと、め以子とお静も笑い出しました。

… … … … …

「そうだ、窓がないというのはどうだ?!

いっそ斬新じゃないか!」


今の話にヒントを得たのか、竹元はラフスケッチを始めました。

「ええかもしれまへんな ~ 」

無責任に賛成した大村。

「いえいえ、嫌ですそんな … 窓ないなんて、うっとうしいやないですか?!」

慌てて止めるめ以子。

… … … … …

「せやけど、よう考えたら、うっとうしい男やったしな ~ 」

そのうちに源太までが悠太郎の話をし始めました。

「どこが? どこが?」

聞き捨てならないとめ以子は問い質しましたが … ヤブヘビでした。

「ありもせん浮気疑うて、怒鳴り込んできて」

「えっ、お父さんそんなことしたん?」


興味を抱いた泰介がめ以子に真意のほどを尋ねました。

「いや、『うちの女房はかいらしいんや』て  … 昔の話よ」

息子にのろけるめ以子。

「 … ほんで、ひったくるみたいに糠床持って帰りよったんや」

「糠床?」


ある日、突然、市役所に糠床(べにこ)が来た理由を藤井は20年以上経って初めて知ったのです。

「赤門、恥ずかしいことは『割愛します』言うて、何にも言いよりませんねん」

もう何の話をするために集まっているのか分からなくなっていました。

「柄はでかいのに器は小さいやっちゃですからね ~ 」

「真面目なだけです!」


源太がまた煽ると、め以子が懸命に擁護しました。

… … … … …

「いいな、それ!

蔵は大きいが、座るところは1畳しかないというのはどうだ?

… 空間であいつを表現するんだ」

「おっ、茶室の発想でんな」


竹元の思い付きにまたも無責任にうなずいた大村。

「器が小さいやないんです!

常識的な人なんです ~ 常識的な場所に」

「 … 常識的かな ~

非常識極まりないことして、満洲送られた気もするけどな … 」


泰介も少しからかい気味に言いました。

「そこは情熱家やの!

普段は分かりにくいけど … 実は、情熱家やの」


… … … … …

「じゃあ、赤だな ~ 情熱の赤!

壁面は赤一色だ!」


そう言って、スケッチに手を入れる竹元。

「嫌です ~

そんな真っ赤っかやなんて!」


すると、お静までが面白がって昔の話を蒸し返してきました。

「安全、安全いうても、家内安全の方はな … 」

ころころ笑いながら口にしたお静をめ以子はたしなめましたが、さっそく大村が食いついてきました。

「えっ?!

まさか赤門、浮気しよりましたんか?」

「もうやめましょう … 」

「何だ、その興味深い話はっ?!」


顔をひきつらせているめ以子に構わず、源太が説明します。

「いやね、こいつがね ~ 通天閣のこんな(小っちゃな)話を、こ~んな大きいして、大騒ぎしてな」

「やめてっ、ホンマに」

「いつ、いつ頃の話だ?」

「一緒にカレー、食べはったやないですか?」


お静に言われて思い出した竹元でしたが、それでまた何かひらめいたらしく大声を上げました。

… … … … …

「ああっ、ああっ、ああっ!!」

立ち上がっては天井をぐるりと見渡しました。

「カレーだ! 見えたぞ、奥!!

カレーだ … この空間の決め手はカレーの女神だ!!」

「はあ ~ ???」


スケッチに描きこむ竹元。

「オブジェだ … 巨大なカレーの女神が、この空間全体を見下ろすんだ」

「いや … あの、日本的な空間が … 」


め以子は、泣きたい気持ちでした。

「じゃあ、カレーの菩薩だ!

カレー色だ … カレー色、カレー色、カレー色 … 」


念仏のように唱えながら、せっせと描きこんでいる竹元。

もう誰も着いていけずに、皆、ただ呆然と竹元のことを見つめています。

「カレーショック!! … すなわち、彼一色だ」

「『おんりぃゆう』っちゅうやっちゃね?」

「いや、ぜ、ぜ、絶対嫌です、そんなお座敷!」


… … … … …

「何を言うんだ、奥?!

カレーの菩薩とはすなわち奥、お前自身なんだぞ」

「ええっ?!」

「天空から、あいつの空間を見守るというのは、お前なんじゃないのか?

これを『愛』と呼ばずして、何と呼ぶ?」


残念なことに、め以子には竹元の話している意味がほとんど理解できずにいたのでした。

「まあ、お前独占欲強いしな」

「え、そんなこと … 」


め以子が源太に反論するヒマも与えずに竹元は断言したのです。

「そうだ!

この空間は、お前の愛と勘違いのファシズムだ!」


… … … … …

「嫌や … そんな座敷 … 」

うわ言のようにつぶやくめ以子を尻目に竹元は腰を下ろすと再びスケッチに専念し始めました。

源太と泰介はその様子がおかしくてたまらないようで、腹を抱えて笑っています。

「大変やったろうな、西門君」

ずっと、この竹元を相手に仕事をしていたことを考えると、脱帽する思いの藤井でした。

「大した奴っちゃたと思うで、実際 … ええ男やったと、わしは … 」

「あ、あの … 大村さん。

まだ亡うなってませんから、まだ亡うなってませんからね ~ 悠太郎さん」


しみじみとまるで故人を語るかのような大村に、め以子はくどいほど念を押しました。

「ああ、すまなんだ ~ 」

慌てて謝った大村でした。

「藤井さん、その後、父のことで何か分かったこととかて?」

泰介が尋ねましたが、いまだに満洲からの引き揚げ自体が始まっておらず、藤井も何とも言えないのでした。

「そうですよね、まだ情報が … 」

ため息交じりのめ以子。

… … … … …

「生きている!」

そう力強く言い切ったのは、竹元でした。

「 … そう決まってるんだ。

あいつが死ぬわけがない ~ 私なら、あいつをそばに置きたくないからな」


スケッチの手を休めることはなく、竹元は話し続けました。

「屁理屈で面白みもない、しかもいるだけで物理的に閉塞感が倍増する。

そんな男を、そばに置きたい神も仏もいるはずがない!」


毒舌まじりでしたが、お世辞や慰めなど決して口にしない竹元の言葉だからこそ、め以子はうれしく思いました。

… … … … …

「め以子ちゃん、今日くずイモ余ったから、持ってきたで ~ 」

仕事の帰りに寄った馬介の顔を見た途端、竹元の態度は一変しました。

「マスター!!!

うま介がなくなってるじゃないか、マスター?!」

「ああ、空中でボボボボボボ、ドカ~ンって」

「どうするつもりなんだ?

今後、どうする考えなんだ ~ うま介は?」


まだどうするか分からないと答えると、スケッチを放り出して、「今後について話し合おう」と、馬介を連れて出て行ってしまいました。

… … … … …

「行ってしもうたな … 」

台風一過の様な蔵の中、苦笑する一同。

「竹元さんとお姉ちゃんて何か似てるな ~

自分が興味あることにしか目向かんのやな」


確かに泰介の言う通りかもしれないと、め以子も思いました。

「せやけど、やっぱり天才は天才やな」

竹元が放り出して行ったスケッチを見ながら大村は言いました。

「 … ホンマは大好きなんでしょうね」

大村からスケッチを渡された藤井もひと目見て、うなずきました。

「ホンマやな ~ 」

横から見ていた源太まで、感心しています。

「何がですか?」

… … … … …

「これ、見てみ」

め以子にスケッチを差し出す源太。

見ると、蔵座敷のラフはほぼ描き上がっています。

そこには …

め以子が望んでいたような日本的な空間が描かれていました。

「カレーの女神、おらんやん?」

「何や、普通やね?」

「何やったんやろ ~ あれ?」


ホッとしたような、でも少し拍子抜けしたような顔のめ以子たち。

「まあ、冗談やったんやろ?」

源太はそう言いましたが …

「いやいや、そんなことおまへんで ~

ここ、見てみなはれ!」


大村に言われてよく見ると、階段の素材をコンクリートと記してありました。

「階段、わざわざコンクリートとはな … 」

「粋なことしはるわ」


さすが、大村と藤井は見逃さなかったのです。

… … … … …

ラフをじっくりと見直しため以子は感動していました。

「わざわざ手すり?」

泰介に分からないのも無理はありません。

それはまだ悠太郎が帝大生だった頃に開明軒に設置したあのコンクリートの階段を彷彿させるデザインだったのです。

『安全で住みよい街を造るのが、僕の夢なんです』

あの日の悠太郎の言葉が耳に聞こえるようで … め以子は目頭が熱くなってきました。

「 … これ、あの人、迎えるための座敷やないですか … 」

いつしかめ以子の頬を涙がひと筋 … そして、涙は笑顔に。

そんな様子を見守りながら、少し寂しげな表情の源太、それに気づくお静 …

< こうして、蔵座敷の建築が始まっていくのでございます >

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2014年03月18日 (火) | 編集 |
第140回

希子の助言を受けて、め以子は放送局で弁当を売ることになりました。

「お母ちゃん、今日菜っ葉飯でええの?」

泰介が我が家の畑から菜っ葉を引っこ抜いてきました。

「うん、菜っ葉と天かすで」

「天かす?」


屋台で出た天かすをもらってきたのです。

闇市でめ以子が顔を出して商売することは出来なくなりましたが、代わりに馬介が屋台を仕切っていました。

「ちょっとしっとりして、ええ思うんや ~ 大根は炒めてきんぴら風にして」

「なあ、もうええ加減、屋根つけてもらおうや」


仕込みの手伝いをしているお静が震えながら懇願しました。

夏のうちはよかったのですが、冬を迎えて吹きっさらしの中での炊事仕事はさすがに堪えます。

「下ごしらえ済んだら、火つけますさかい … 早う、温かいとこまで行きつきましょう」

そう言っため以子もかじかむ手で米を研いでいました。

… … … … …

出来上がったおむすび弁当は、こっそりと放送局に運び込んで、あとは希子が売りさばいてくれる手筈になっていました。

その時に前日の代金と竹皮の包みも回収するのです。

「川久保君のお義姉さんの弁当はええね ~ 同じもんが続かへんところがええわ」

め以子の弁当は秘かに好評を得ていました。

希子と啓司の上司、大野もめ以子の弁当の常連でした。

「でも、何かこう無理くり替えてるな、みたいな日ありません?」

「それがええんや ~ 何とか違う風にしたろいう、せめてもの母心みたいな」

「言うときます。喜びます」


そんな話をしながら弁当を広げているところへ、通りかかった米軍の上官が足を止めました。

「これは、モリス大尉!」

慌てて起立する3人。

モリス大尉はテーブルの上のめ以子のおむすび弁当をしげしげを見つめています。

「あっ、お弁当ですか? どうぞどうぞ!」

「えっ?」


大野は、まだ包みを開いていなかった希子の分を断りもなく差し出してしまいました。

… … … … …

め以子が放送局から帰宅すると、蔵の入口に見慣れない靴が2足並んでいました。

ふ久が諸岡と共に大吉を連れて訪ねてきていたのです。

「ふ久、大ちゃん ~ 諸岡君まで!」

諸岡家が全員、こちらに戻って来たことをお静がうれしそうに伝えました。

これで、大吉とも頻繁に会うことができるからです。

「大ちゃん、おばあちゃんやで ~ 」

人見知りで泣き出した大吉は、め以子が抱き上げると輪をかけて大泣きしました。

「分からへんのやろ」

「 … 会えへんかったもんな」


ちょっと寂しそうな顔でふ久の腕に大吉を返しながら、め以子は夕飯に誘いました。

「ええんですか?」

「ええよ、ええよ ~ たいしたもんは出されへんかもしれんけど」


… … … … …

「お父さんがよう投げてたボールやで ~ 」

ようやくご機嫌が直った大吉を泰介が野球のボールであやしています。

『叔父さん、僕、叔父さんのミットにズドンしたいでちゅ』

『大吉!』

その様子を見て、ふ久は久しぶりに妄想して、ひとりでにやけていました。

… … … … …

「大ちゃんは、ほんま大きなったな ~ 」

「今んとこはな … 」


しみじみとめ以子が言うと、ふ久が気になることを口にしました。

「疎開先でようしてもろたから。

これからはそうもいかんやろ … 」


諸岡の父親の工場も、かなり燃えてしまって、発注もなく、一から考え直さないといけない状態なのです。

「 … とにかく、大吉死なせんためにもなんとかせんと」

そう言ったふ久はもういっぱしの母親の顔をしていました。

… … … … …

「これ、少ないけど持って行き」

夕食を終えて、帰るふ久たちにめ以子は、出来る限りの食料を持たせようとしました。

「こちらのおうちかて大変なんじゃ … 」

遠慮する諸岡にめ以子は気にすることがないように言いました。

「大ちゃんにや。

しっかり食べんと、あんたもお乳出えへんやろし、諸岡君かて仕事でけへんやろ?」


ふたりは感謝して頭を下げると、め以子の気持ちを受け取りました。

「おばあちゃん、バリバリ稼ぎまちゅからね ~ 」

ふ久の腕の中で眠っている大吉にそっと話しかけるめ以子でした。

… … … … …

次の日もめ以子は放送局に弁当を届けにやって来ました。

いつものように、希子とこっそりと受け渡ししていたのですが、昨日の軍人、モリス大尉に見つかってしまったのです。

近づいてくるモリスに緊張するめ以子と希子。

しかし、モリスは咎める訳でなく、弁当を包んだ風呂敷を指さして言いました。

「One for me」

ふたりは顔を見合わせました … 何を言っているのか分からないのです。

すると、モリスは風呂敷包みごと取ると、ポケットから取り出した札を、め以子に差し出しました。

売ってくれということのようです。

「いや … あんたに売る弁当はない!」

め以子の強張った顔を見て、代金が足らないとでも思ったのか、モリスは更に取り出した札をテーブルの上に置くと、風呂敷包みを抱えたまま部屋を出て行ってしまいました。

「ちょ、ちょっと、あんた!!」

後を追おうとしため以子を希子が呼び止めました。

「 … えらいこと、儲かってますけど」

おむすび弁当には見合わない大金が置かれていたのです。

「おのれ … アメリカ … 」

… … … … …

「何でただでさえ少ない米を、わざわざアメリカに … 」

帰宅しため以子は、悔しいという気持ちが儲かったという気持ちに負けてしまった自分を顧みて、自己嫌悪に陥っていました。

「せやけどこれ、ボロ儲けやな ~ 」

売り上げを勘定しながらお静はホクホク顔です。

「お金の問題やないです … 」

… … … … …

「め以子ちゃ~ん、いてる?」

その時、蔵の外で倉田の呼ぶ声が聞こえてきました。

「どないしはったんですか?」

知人らしきふたりと共に訪れた倉田は、おかもちを下げていました。

「この人、細川はんがな、これもらいはってんけどな ~ うまいこと料理してもらわれへんやろか?」

おかもちの中身を確かめため以子は声を上げました。

生きているタコが数匹、にょろにょろとうごめいていたのです。

「タコはな、鮮度が命なんや ~

礼はするさかいに、なんとかしてもらわれへんやろか?」

「 … 分かりました」


世話になっている倉田の頼みです。

それに礼も出す聞いて … バリバリ稼ぐと大吉にも約束しため以子に断る理由はありませんでした。

… … … … …

倉田たちの相手はお静に任せて、め以子が表でタコの調理に取り掛かっていると、泰介が戻って来ました。

丸々一匹のタコに塩をふっている母を見て、何事かと目を見張る泰介。

「ああ ~ 屋台行って、ほうるもん焼きのつけだれもろて来て。

あ、あと柚子と生姜探して来て … たれ、ゆず、しょうが!」


泰介は「たれ、ゆず、しょうが」と唱えながら再び出かけて行きました。

… … … … …

「すいません、こないなとこで … 」

倉田が持参した酒をお酌しながらお静が申し訳なさそうに言いました。

「ええがな、ええがな ~ タコがあれば」

「ホンマ、ホンマ」


テーブルの代わりに茶箱、蔵の片隅に眠っていたような粗末な器しかありませんが、倉田たちは別に気にしていないようです。

「お待たせしました ~ 」

ほどなくして、め以子が板の上に載せたゆでタコを運んで入って来ました。

「待ってたで ~ 」

「ゆでたてのタコに勝るもんはないんで、まずはこれで … 」


め以子は、倉田たちの目の前で、泰介が用意した大皿代わりの瓦の上にタコの足を食べやすい大きさに切って盛り付けていきました。

「どうぞ ~ 」

早速、笑顔で箸をのばす倉田たち。

「さて、どんなもんかいな?」

「美味い!美味い!」と声を上げながら、舌鼓を打つ3人。

「ゆで加減がええわな ~ また」

「おおきに ~ どんどん行きますよ」


… … … … …

お次は串焼きです。

「おお、香ばしい匂いや、焼きもええな ~ 」

3人の食べっぷりと、美味しそうな顔を見て、傍で控えているお静や泰介も自然と笑顔になります。

… … … … …

そして、最後は土鍋で炊いたタコ飯でした。

「うわ ~~ 」

「夢にまで見たタコ飯や」


土鍋のふたを取ると倉田たちから感嘆の声が漏れました。

「ほな、よそわせてもらいます」

タコ飯にしゃ文字を入れた時、め以子の腹が鳴る音が聞こえてしまいました。

「ああ、わしらもな ~ 大分食べたさかいに、あんたらも食べてえな」

倉田の言葉に一番喜んだのは … さっきからずっとお預けを食らっているような状態だった泰介でした。

「えっ、ええんですか?」

「もちろんや ~ 」

「おおきに、いただきます!」


… … … … …

倉田の好意でめ以子たちもタコ飯のお相伴に与りました。

「たまらんな ~ このタコ飯」

「生姜があってホンマよかったです」

「ネギがまたこれ ~ 」

「これ、うちの畑のなんですよ」


すると、め以子の心づくしのタコ料理を味わって、すっかり満足した倉田がとんでもないことを言い出しました。

「め以子ちゃん、あんた座敷やってえな ~ 」

「えっ?」

「わし、金なんぼでも出すさかいに … ここ、わしの座敷にして、毎日わしに美味いもん作ってえな ~ 」


まるで子供が菓子でもねだるような倉田、め以子が戸惑っていると、お静が前に乗り出してきました。

「ホンマですか?

倉田はん、ホンマにお金出してくれはるんですか?」

「ホンマやがな ~ ホンマ!」


酒の上での話だろうと、め以子はたしなめましたが、お静は気にしません。

「さすが倉田はん!

せやけど、ここ倉田はんの座敷にしたら、うちら住むとこないんだすわ ~

どないしたらええでっしゃろ?」


芸妓時代に身につけた話術で、お静は上手に話しを進めていきます。

「そっちへバラック建てたらええがな ~

ガスも引き、ガスも! ええ台所、造りいな ~ 」


お静のことを厚かましいと諌めていため以子でしたが、ガスや台所と聞いて、激しく心が動きました。

「ホンマですか?!」

「うん、ホンマやがな」

「い、一筆、書いといてもろうてええですか?」


本気だという証拠に倉田はなんの躊躇もなく泰介の言う通り、念書を書いて渡したのでした。

… … … … …

『覚

西門家の蔵を私の座敷として使はせて貰ふ

相応の費用は私が全て負担する

昭和20年12月4日

倉田義男』

「ごっつう、ええ話やないかい?

バラックに蔵座敷ってお前 … 」


め以子から倉田の念書を見せられた源太は度肝を抜いて驚いています。

「それは、ホンマにありがたい話やねんけど … 」

「何や?」

「倉田さんの相手してるだけで、食べていけるんかなって」


いろいろ痛い目にあった経験がめ以子を用心深くさせていました。

「一体、どんな形でやんのや?」

「基本的には、倉田さんの材料持ち込みでってことなんです。

毎回、ちゃんとお礼はするって言うてくれてはるんですけど … 」


め以子に代わって泰介が説明しました。

「せやけど、どれくらい来はるつもりか分からへんし … 稼がんとあかんしな」

「まあ、客ない日は弁当売ったりしてもええ訳やし。

美味いもん出しとったらそのうち、客筋は自然と広がってくるちゃうか?」

「そういうもんなん?

私、どうも分からへんで … 」

「まあまあまあまあ ~ カチカチ決め込まんと、始めて見たらええやん?

お前、人に料理すんの、好きなんやから」


… … … … …

源太のこの言葉がめ以子の背中を思い切り押して、倉田の話に乗ることを決断させました。

「うん、せやね ~ 」

< という訳で、何だかめ以子は、御座敷を始めることになったのでございます >

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2014年03月17日 (月) | 編集 |
第139回

「これが罪いうんやったらな ~ 飯食わせ、あほんだら!!

米俵を運び出そうとした警官を突き飛ばした上に大見得を切っため以子は、当然のごとく捕縛されてしまいました。

「この米、持って帰るん? 持って帰るんやろ?!

警官はいつから泥棒になったんや!!」


こんな状況にあっても、悪態をつくのをやめないめ以子のことを警官たちは容赦なく連行して行きました。

… … … … …

「まあ、多少きつめに説教されて、米没収されて終わりやろ」

香月の言葉を聞いて泰介は少しホッとしていました。

「警察から事前の通達はなかったんですか?」

「 … 知っとったら、おばはんには教えるわい」


源太の質問に不機嫌そうに答えた香月。

ふたりの会話を聞いて、泰介は驚いていました。

「事前に聞けるもんなんですか? そういうのて」

「まあ、いろいろあるんや ~ その辺は」


まだ学生の泰介には分からない裏の世界があるということでしょう。

「別のとこから力が働いたんですかね?」

「かもな … 」


… … … … …

「それで、あの子まだ連れてかれてしもうたまんまなんかいな?」

ふ久の疎開先から戻ったお静は、め以子が逮捕されたことを、馬介から聞かされました。

その上、泰介が源太と警察へ様子を見に行ったと知って、もう気が気ではありません。

「そうなんですよ ~ 心配ですよね ~ 」

心ない言葉を吐いてお静に突き飛ばされた室井。

ほどなくして、泰介と源太はめ以子を連れて戻って来ました。

「取り調べってどうだった?

牢屋は入って来た?

女囚見た?」


仏頂面のめ以子に室井は矢継ぎ早に尋ねましたが、源太に無言でたしなめられました。

… … … … …

「あんたは、もう ~ ホンマ何やってんの?

… なあ、どつかれたりせんかったか?」


お静はめ以子を責めましたが、それは心配していたが故のことでした。

「どついたんは、お母さんや … 」

警察に行ってからもひと悶着あったようで、余程手を焼いたのか、泰介が少し憔悴しているように見えました。

「まあ、アホなおばはんがやったことやて、罰金増額でチャラにしてくれたんや」

お静は一瞬言葉をなくしましたが、それでも源太の話に胸をなでおろしました。

「まあ、まあ、まあホンマ、罰金で済んで、よかったな ~ 」

しかし、そのひと言が、くすぶっていため以子の怒りにまた火をつけてしまいました。

「どこが … どこがええんですか?」

顔を見合わせた源太と泰介。

「何で私が罰金払わんとあかんの?!

米盗られて金払うなんておかしやろ ~ 逆やっ!!」


帰りの道すがら、ずっと聞かされ続けた話がまた蒸し返されそうになる … 源太と泰介は、め以子のことを慌ててなだめました。

「あ~あ~ お前、何も悪ない、何も悪ない!」

「だっておかしいやろ? おかしいやろ!

なあ、なあ、なあ?」


… … … … …

その時、お静は1枚の写真を取り出して、め以子の目の前に突き付けました。

「大ちゃんや ~ 」

それはふ久から預かって来た、孫の大吉の写真だったのです。

「ほ~れ、ほ~れ、ほれっ!」

お静から写真を受け取っため以子、今までつりあがっていた目尻は下がり、頬は緩んでいきます。

「大ちゃん … 」

「かいらしかったで ~ ごっつう、かいらしなってたで ~

会いたいやろ ~ なあ?

… 捕まってしもうたら、会えんようになるな」


「うまい!」顔を見合わせた泰介と源太。

「せやけど … 」

「祖母ちゃんお縄になったら、大ちゃんかわいそやろ?!

泰ちゃんかて、将来、大臣になるのに、お母ちゃんがミソつけてどないすんの?!」


さすがは、お静でした。

め以子の一番つらいところを突いて、渋々ながらも承知させてしまいました。

… … … … …

そうはいったものの、釈然としないめ以子でした。

< けど、納得いかないよね ~ どう考えたって、あれは泥棒だよね >

怒りに任せて、糠床をかき混ぜていると、蔵から泰介が出てきました。

「お母さん、僕のことは気にせんでええよ。

… 大臣は、ならへん思うし」


< そう言われちゃうとね … >

「これからは … 上手いことやるわ」

… … … … …

「何や、今日も行くん?」

翌朝、いつものように闇市へ出かけようとするめ以子と泰介を見て、お静は意外そうな顔をしました。

あんな騒動があった次の日だからです。

「お米盗られてしもうたし … 借金もありますから」

「借金 … 懐かしい響きやな」


お静に悪気は一切なかったのでしょうが、その言葉にめ以子の心はチクリと痛みました。

「 … ほな行ってきます」

… … … … …

闇市に来てみると、ただの一軒も店を開いている者はおらず、ひとりクズいも屋のおやじが昨日の後片付けをしているだけでした。

「大事なかったですか?」

「あんたかいな ~ 」


心配して声をかけため以子でしたが、おやじの態度は冷ややかなものでした。

「ほとぼり冷めるまでな、やられへんのやで」

「そうなん?」

「そうやがな ~ あんたのせいやで」


この時、め以子は始めて、自分がやらかしたことに少しうしろめたさを感じ … 親父に向かって頭を下げていました。

「おう、おばはん」

気づくと、香月が源太と一緒に立っていました。

… … … … …

「何で私は商売したらあかんのですか?」

事務所に連れていかれため以子は香月から、今後、闇市で商売してはいけないと言い渡されたのです。

「おばはん、あんだけ暴れて、何で罰金ぐらいで出られた思う?」

「それは … 向こうが間違っているからに決まってるやん」


香月は、自分が裏から手をまわして、何とか罰金で収めてもらったことを暴露しました。

「えっ?」

「それで、まあ、おばはんには市で商売させんいうんが、向こうの出した条件や」


め以子は考え込みました。

「ほな、変装します」

その程度の答えしか思いつきませんでした。

「アホか?

こんな大女、他に誰が居るいうねん!」

「屈むわ!」

もう表に出んな!


… … … … …

ムっとして腰を下ろしため以子は、香月のことをにらんで、テーブルを数回叩きました。

「ショバ代て何のためにあるんですか?

こういう時に守ってくれるから、払ってるとちゃうんですか?

… それは、そちらの力不足とちゃうんですか?」


負けじと香月もテーブルを叩き返します。

「しゃあないやろ?!

今回は進駐軍にやられたようなもんやねんから!」

「は?!」


どういうことなのかと泰介は尋ねました。

「配給どうにもならんさかいな、お上がまず進駐軍に泣きついたんや。

ほしたら、闇市があるやないかと。

あそこには食糧が流れとる、泣きいれる前にまず、自分らであれどうにかせい言われて … 」


源太の説明を聴き、泰介は納得しました。

「それで、警察が闇市に … 」

「せやなかったら、前もって聞いてるわ


無念そうに香月も吐き捨てました。

「アメリカか …

アメリカのせいで、私は米持って行かれたんか」


またしても、にっくきアメリカの仕業。

め以子の怒りは静かに燃え上っていました。

… … … … …

仕方なくあきらめて、帰路についため以子と泰介。

途中、め以子は足元に落ちていた茶色い四角の包みを拾いました。

かすかに甘い香りがして、その包みに鼻を近づけました。

「 … チョコレート?!」

ふと見ると、道の先の方で米兵の周りに子供たちが群がっています。

「ギブ・ミー・チョコレート!」

子供たちが口走ると、米兵たちは持っていたチョコレートを地面にばらまきました。

それを競って奪い合う子供たち。

「まずいっ!」そう感じた泰介は、慌ててめ以子を促しました。

「お、お母さん、帰ろ ~ 別のとこから帰ろ」

ところが、め以子は耳を貸さず、米兵に向かってどんどん歩き出したのです。

… … … … …

「ちょっとあんた ~ 食べ物投げたらあかんやろ?!

そんなことも分からんのか、どアホ!!」


怒鳴りながら、拾ったチョコレートを差し出しました。

しかし、日本語を理解しない米兵は笑いながらチョコレートを押し返してきました。

「いや、返す言うてるんや!

人が話してる時は、ガムかみなっ!」


… … … … …

結局、め以子はチョコレートを持ち帰って来てしまいました。

「あかんやろ? チョコレート配るなんて」

仕事の帰りに寄った希子と啓司に向かって力説するめ以子。

「チョコレート見せられて、心動かん人間なんておらんやろ?

どんな悪い人でも、思わず許してしまいそうになるやんか … 」

「 … 許してしまいそうになったんやろな?」


小声で啓司に尋ねられて泰介はうなずきました。

「 … 食べもんでつるなんて、人のいっちばん弱いとこ衝いて、汚いわ!

汚いやろ、アメリカは!!」


心が動きかけた自分にも腹を立てているようです。

「アメリカって、そういうところありますよね?」

すると、黙って聞いていた希子もめ以子の話に乗っかって来ました。

「ニコニコしてるくせに、結局やってることは、軍と同じなんですよね」

「そうそうそう、とにかく、のっけは笑顔やねん、笑顔」

「窃盗かて暴行かて、米兵のやったもんは報道したらあかんし … 今日かて、落語の敵討ちがあかんて」


軍国主義の復活を煽るようなことはするなと、仇討の件があるというだけで、のどかな落語の台本が赤字だらけで返されてきたのでした。

進駐軍の威光に沿わないと判断されたものは認めないのです。

「せやろ、チョコレートやろ ~ あいつらチョコレートやろ?」

よく分からない、め以子のものの例えですが、米兵憎ければ、チョコレートまで … ということでしょうか?

「あれは、かなりの苦味を甘味で誤魔化してますよ」

「せやっ!」


… … … … …

その時、め以子はふと横に座っているお静に目をやりました。

「お義母さん、何やってはるんですか?」

「あんた、食べへんのやろ?」


ちょっと油断している間にお静がチョコレートの包装を破こうとしていたのです。

「これ、アメリカの配っとるもんなんですよ」

「食べるか食べへんか聞いてますのんや」


め以子は、甘い匂いの誘惑に負けそうになって … 思わずかぶりを振りました。

「私は、悠太郎さんと活っちゃんが戻って来たら食べます」

決して「食べない」とは言わなかっため以子に泰介と啓司は笑いをかみ殺しています。

「チョコレート戦争や」

「今更開戦って … チョコッと遅いな ~ 」


… … … … …

「アメリカも少しはええとこあるんやけどな … 」

め以子たちには聞こえないような小さな声で啓司は泰介にささやきました。

「野球には理解あるし」

「あっ、学生野球復活したて、新聞に出てましたよ!」


プロ野球も早々に再開しそうだと啓司。

本場だけあって野球には寛容なようです。

… … … … …

「えっ、お弁当?」

希子と話していため以子が突然素っ頓狂な声を上げました。

「闇市で店やりはらへんのやったら、放送局にこっそりお弁当売りに来はったら?」

「ええの?」

「だって、お昼食べられへんで、我慢している人も多いし … こっそりやる分には … ねえ、啓司さん」

「それは、皆困ってるしね」


希子の提案に啓司も賛成したのです。

「お弁当か … 」

闇市を締め出された、め以子にとってみれば、願ったり叶ったりのことでした。

… … … … …

『いろいろありましたが、お弁当を作ることになりました。』

め以子は日記を綴りながら、昔を思い出していました。

「今日なんですか?」

「な~んでしょ」

悠太郎とのそんなやりとりが浮かんできて微笑むめ以子。

「 … ああいう風なんが、いいかな?」

< こうして、め以子はお弁当を作ることになったのでございました >

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2014年03月16日 (日) | 編集 |
それでは、次週の「ごちそうさん」は?

闇市のめ以子()の店が警察の手入れにあい、米を取りあげられ罰金を払わされる。泰介(菅田将暉)や源太(和田正人)はなだめるが、怒りをつのらせるめ以子。

お前、人に料理すんの好きなんやから

闇市で商売できなくなり、希子(高畑充希)の放送局で弁当を売ることに。

そこに来るアメリカ人にまで無理やり売らされるはめになる。が、活男を思うとアメリカだけは受け入れられないめ以子。

座敷やってえなあ ~

倉田(綾田俊樹)の発案で、西門家の蔵を改築して料理を出す「お座敷」を始めることになる。藤井(木本武宏)や大村(徳井優)が相談にのっているところに、竹元(ムロツヨシ)が現れる。

どうなるんだ? 焼き氷は!

竹元がデザインする奇想天外な座敷にめ以子は猛反対するが、思いがけない結果に。

おもろすぎる

せやろ、チョコレートやろ、あいつらチョコレートやろ?

アメリカに対しては相変わらずで、投げられるチョコレートをめ以子は絶対に食べようとしない。

チョコレート戦争や

そんな折アメリカ人がめ以子のおむすびを気に入り、希子を通してさらに売るように伝えてくる。

ゴチソウサン

渋々従っため以子は初めてアメリカ人の「おいしい顔」を見る。

お座敷の営業が徐々に軌道に乗り、め以子は再び食べてもらう喜びを感じ始める。希子からアメリカ人がお座敷に来たがっていると聞き、迷っている矢先、海軍で活男と同じ船に乗っていた青年が訪ねてくる。

源ちゃんの助けがいるんやわ …

ごちそうさん 公式サイト、YAHOO!テレビガイド他を参照)

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2014年03月15日 (土) | 編集 |
第138回

思い立ったが吉日。

あくる日から、泰介は早速行動に移しました。

子供らの身元確認に焼け跡などを回り始めたのです。

め以子は泰介の言葉を源太に伝えました。

「ここに来る子らにも、名前や手がかりになりそうなこと聞いといてくれって … 出征者の安否確認も貼ってええて」

「 … ほんで、活っちゃんと通天閣の分?」

「うん」


< こうして、闇市に人捜し、尋ね人の掲示板が立つことになりました >

香月に話すと意外にも、職業斡旋所の片隅を事務所に使うよう提供してくれたのです。

「すいません、あの … 」

掲示板を食い入るように見ていたひとりの復員兵が事務所に入って来ました。

… … … … …

「ちょっと、あんた!!」

そんな中、桜子の父親の別荘に疎開していたお静が連絡も入れずに突然戻って来ました。

屋台で注文のおむすびを握っていため以子の顔を見るなり、目の色を変えて尋ねました。

「お金ある? お金!」

桜子に見立ててもらったのか、モダンな洋服に身を包んでいました。

「洋服かいらしいですね ~ 」

慌てているお静は、馬介の言葉に耳を貸さず、売上金が入ったざるに目をつけ、手に取りました。

「お金借りてくで … 一攫千金や!」

言うより早く駆け出しました。

「桜子ちゃんは ~ 一緒ですか ~ ?」

後を追う室井。

め以子も馬介に後を頼むと追いかけます。

… … … … …

「それ、そこの、これ下さ~い!」

お静が駆け込んだのは古着の屋台でした。

反物を受け取ろうとするお静。

「要りません!」

間一髪、め以子は間に合いました。

「いえ、要ります」

「要りません!」

「 … どっちやの?」

「桜子ちゃんは?!」


… … … … …

「はあ、その着物ごっつうお買い得なんや?」

お静の話では、銘仙と友禅が同じ値段で売っていて、他にも掘り出し物が結構あったのだそうです。

結局買いそびれたお静は、ふくれっ面でおむすびを食べながら、源太たちに愚痴っていました。

「一割の値段で売られてんねん、買わん手はないやろ?」

「そんなお金ないですよ ~ ただでさえ借金あるのに」

「ん? 家建てたん?」

「 … お米買いました」

「ぜいたくして!」


どちらがという話です。

「なんや、あんた、お母はん戻って来たのに文句ばっかり」

「うれしいですよ ~

うれしいですけど、うれしさを吹き飛ばすあれやこれやなさってくれますんで … 」


… … … … …

「あの … 桜子ちゃんは?」

室井が桜子のことを聞きだそうとした時、泰介がやって来ました。

「お祖母ちゃん!」

「泰ちゃん、泰ちゃん!」


抱きついて喜ぶお静。

「お祖母ちゃんも元気そうやな」

泰介は見知らぬ少年を連れていました。

「あっ、ああっ!」

め以子はその少年の顔に見覚えがありました。

藤井から糠床を盗んで追いかけられていたあの少年でした。

「何?」

少年を指さして声を上げため以子を見て、泰介は怪訝そうな顔をしました。

「ああ、まあ、ええわ … その子、どないしたん?」

「掲示板の再会第1号なんや!!」


… … … … …

泰介は少年を連れて職業斡旋所に入って行きました。

中で待っていたのは、先程の復員兵です。

「お兄ちゃん!」

その顔を見るや否や少年は駆け寄りました。

「寂しかったやろ? よう頑張ったな」

「うん」


兄に抱きしめられて、泣き出す少年。

ふと見ると、香月がもらい泣きしています。

「こういうのあかんねや ~ 」

涙で顔がくしゃくしゃになっていました。

… … … … …

泰介がホッとしていると、め以子がおむすびを運んできました。

「これ、再開のお祝いです。少しですけど … 」

め以子は少年に自分のことを覚えていないか尋ねてみました。

しかし、少年は首をかしげています。

「まっ、ええわ ~ 」

少年の頭をなでると、おむすびを勧めました。

「えらいすみません … ほな、いただこか?

かっちゃん」

「うん!」


兄は弟ことを、確かに「かっちゃん」と呼びました。

「か、かっちゃん、いうんですか?」

「和正いいますのや」


め以子はおむすびを頬張る少年を見て、幼い頃の活男のことを思い浮かべました。

目頭が熱くなってきます。

「おばちゃん、ごちそうさん!」

和正少年のその言葉で堪えていたものが堰を切ったかのように溢れてきて、声を上げて泣き出してしまいました。

… … … … …

余りの泣きように泰介とお静が宥めましたが、ふたりの目にも光るものがあったのです。

そんな様子を傍観していた室井がそっと表に出て行きました。

「アホの仏は、声を上げて泣く … 」

そうつぶやき、懐から取り出した手帳に書き留めています。

横で源太に見られていたことには気づかず …

… … … … …

その夜は、お静が無事に帰宅したことを喜んで、蔵に皆が集まりました。

食卓に並んだのは、うまいもん、ほうるもんにカエルもん、そしておむすびです。

「あんた、まだ家直さへんの?」

「そんな時間ないですよ … 」

「バラック建ててるとこ、結構あるやんか ~ 藤井さんあたりに頼んで、ちゃっちゃっと」


お静は気楽なもんです。

藤井も市内にいるようですが、忙しいのでしょう。

… … … … …

「あの ~ 桜子ちゃんは?」

さっきから何度も聞くタイミングを逸していた室井がやっと伝えることができました。

「あっ、あ~あ」

思い出したように、自分の荷物の中から封筒を取り出したお静。

「あのな、これ預かって来ました」

室井は奪い取るように封筒を手にしました。

『もうそちらには戻らないかもしれません。

戻らないかもしれません

桜子』

呆然とする室井。

「うわ ~~~ 」

余りにも気の毒過ぎて、黙り込む一同。

「 … 何で、何で、何で2回も?」

「知らんがな ~ まあ、愛想つかされたんとちゃうか?」


手紙を預かって来ただけのお静に分かるはずもありません。

「何かしました?

僕、あそこで何かしました?!」


本人は気づいていないだけで、きっと色々やらかしたのだと誰もが想像していました … 

「何で、こんな急に?!」

「 … 人の心なんてそんなもんや。

まあまあ、やれることやって … 惚れ直してもらうしかないわな」


食後のお茶をすすりながら、諭すお静。

「がんばれ、がんばれ ~ ほらっ」

め以子はおむすびを、源太はカエルもんを差し出しました。

… … … … …

『お義母さんが戻って来て、家が明るくなりました。

かっちゃんという子に会いました。』

「今日はええこと多かったな ~ 」

いつもの日記をつけていると、希子夫婦が訪ねてきました。

「どないしたん?」

「 … お兄ちゃんのことなんやけど」

「うん」


いいことが続いた日なので、もしかしたらと、め以子は期待してしまいました。

「 … ごめん、まだ分からへんの。

満洲から引き揚げてくる人、まだ居てはらへんで」


申し訳なさそうに言った希子。

期待した分、め以子の落胆は大きかったのですが、それでも気を取り直して言いました。

「うん … 大丈夫、戻って来るわ … きっと」

… … … … …

< そして、その日は突然にやって来たのでございます … >

それはまだ料理の仕込みをしている時間でした。

お静がふ久と大吉の顔を見に行くと、疎開先まで出かけて行ってしまったことを、め以子は泰介から聞かされました。

「ええな ~ 私も行きたかったな」

「今度、行こうや」


そんな約束を交わして、身元確認に出かけていく泰介を見送った時、背広姿の見慣れない客がやって来ました。

「ああ、すいません … ご飯まだ炊けてないんですよ」

無言で屋台の前に立つ男を不審に思いながらもめ以子は応対しました。

男が軽く会釈したその時でした。

「手入れや ~ 警察が来たぞ!!」

そんな叫び声が闇市に響いて、警官がなだれ込んできました。

「早う逃げえ!!」

… … … … …

「あっ?!」

腕をつかまれため以子 … 目の前の男は警察官だったのです。

「なんぼのもんや ~ !」

取り押さえようと乗り出して来たその男に馬介がズタ袋をかぶせて押しのけたのです。

その隙にめ以子は、ざるに入っていた金を懐に入れて表に飛び出しました。

「め以子、こっちや!」

通りの向こうで源太が呼んでいます。

源太に誘導されて路地裏を逃げるめ以子と馬介。

しつこく追いかけてくる男の行く手に源太は辺りの物を手当たり次第に投げつけて妨害しました。

… … … … …

少し離れた物陰に逃げ込むと、そこには泰介もいました。

しばらくここで様子を窺って闇市から脱出するのが源太の算段です。

騒然となった闇市に怒号が飛び交い、逃げ惑う人たち。

警官に捕えられたくずイモ屋のおやじが殴られ、蒸かしイモの人や靴磨きの少年たちまで連行されて行きます。

商品は全て没収です。

その時、め以子は自分の屋台から警官たちが米俵を運び出していくのを目にしました。

「おいっ?!」

「お母さん!」

「め以子ちゃん!!」


3人が気がついた時は、すでに遅く … め以子は肩を怒らせて屋台に向かって突進していたのです。

その勢いで思いきり体当たりすると警官たちは突き飛ばされて引っくり返ってしまいました。

… … … … …

「この米は … 私の米や ~ !!

米俵を抱えて絶叫するめ以子。

「どんだけ盗ったら気すむんや?!」

今まで心の底でくすぶっていた怒りが、とうとう爆発したのです。

「食べるもん盗られて、家も、旦那も、子供も、何もかんも盗られて、ここにおるんや!

皆、皆そうや!

死んでしまうからしてるんや!」


縄につながれている女性たちもめ以子の言葉にうなずいています。

誰もかれも、涙を流し、その顔は怒りに満ちています。

「私らに、これ以上、死ね言うんか?

これが罪いうんやったらな ~ まず …

飯食わせ、あほんだら!!


… … … … …

「お母さん!!」

追いかけまわしていた男が近づいてきて、素早くめ以子に縄をかけたのです。

「ま、こうなるわな … 」

源太はすでにお手上げ、開き直りにも似た心境でした。

< 昭和20年秋、それは突然の出来事でございました >

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2014年03月14日 (金) | 編集 |
第137回

その夜、泰介の復員を祝って、西門家の蔵ではささやかな宴が開かれました。

希子夫妻に源太、馬介、室井、それに倉田の姿も見えます。

電気もなく明りはロウソクの火、食卓もなく床に敷いたゴザに車座になって座りました。

ごちそうなど何もありませんが、め以子が炊き立ての白米で握ったおむすびと、始末の極意でこしらえた鍋が並びました。

「これが噂のほうるもん鍋ですか?」

「ええ出汁出てるんよ ~ 」


蔵の中に『ほうるもん鍋』が煮えるいい匂いが漂っています。

「お義姉さんのおむすびや ~ しかも白い」

「いつぶりやろね?」


久しぶりの白米に啓司と希子も感慨深げです。

「ほな、皆さん召し上がって」

「いただきま~す」


心づくしの料理に舌鼓を打つ一同。

「あ~美味い、美味しい」

「美味い」


そんな満足そうな顔を見てめ以子は本当にうれしそうに笑いました。

… … … … …

宴もひと段落した時、ふいに啓司が真顔になって言いました。

「 … けど、これから世の中ガラッと変わっていくよ。

まあ、どんな風に変わるかは分からんけどな … 」

「何?」


興味を示しため以子でしたが、ラジオ局が占領軍に接収されたことを耳にすると、表情を曇らせ黙り込んでしまいました。

「どんな感じ?」

そんなことには気づかずに好奇心の塊、室井が尋ねました。

「要求が多いんですよ。

冷暖房完備せやの、便所改修せやの」

「ふ~ん、それが当たり前の国なんかいな?」


馬介も感心しています。

「運び込まれてくる物資みてても、段違いな気がしますね」

「コーヒーはあった?」

「毎日飲んどりますわ ~ あいつらガブガブ飲むんですよ」


… … … … …

泰介はめ以子の微妙な変化に気づいていました。

すると、源太に蔵の外へ出るように誘われました。

「わしの口から言うてええもんかと思うけど …

活っちゃんの戦死公報が来たんやて」


まだ知らされていなかった泰介の顔に衝撃が走りました。

「紙1枚のもんやし、信じるもんかて思うとるみたいやけど。

占領軍の話とかは、ピリピリしよるかもしれんから … 」


誰も悪気はなかったのですが、少し無神経だったのかもしれません。

「何何、何の話?」

そこへまた室井が空気を読まず、首を突っ込んできました。

「何でもない。

ああ、今日でここ出て行くさかいな ~ 室井さんも出るで」

「ええっ?」

「アホ ~ 泰介居るんやから、もうわしらいらんやろ」


そんな気はさらさらなかったらしい室井を連れて源太はその夜、西門家から出て行きました。

… … … … …

自分より若く、自ら主計科に志願した活男の戦死の報せが来たことを聞いて … 泰介はしばし呆然とその場に立ち尽くしていました。

「 … そうか … 活男」

母の悲しみと弟の無念を思って目を閉じました。

… … … … …

一度、寝床に入った泰介でしたが、なかなか眠れずに、蔵の外に出てみると、月明かりの下、母が蔵の前に並べた木箱の菜園の世話をしていました。

「お母さん」

「何や、眠つけんかった?」

「僕が行った後、あっこでどうしてたん?」

「 … どうしてたて、畑やっとたよ」


せっせと手を動かし続けてため以子でしたが、ふと手を止めました。

「あのな …

活っちゃんの戦死公報が来たんや。

紙1枚のことやさかい、ホンマかどうか分からん思うで」

「うん」


源太から聞いたとも言えず、ただうなずいた泰介。

「 … 分からんからな」

念を押すようにもう一度、泰介もまたうなずきました。

… … … … …

「それからは、ひとりに慣れた方がええて … 和枝伯母ちゃんにな、言われて。

ひとりで畑して、ひとりでご飯食べてた」

「ひとりで … 」


たったひとりで活男の戦死というつらい思いを抱えて耐えていた母を思うと胸が締め付けられる泰介でした。

「畑てな ~ 世の中なんよ。

普通に手入れしてるつもりでも、何で?ってことが起こるんよ。

お母ちゃんの世話なんか、大きいとこでは関係ないんや … 無力やな~って。

せやけど、ほな、どないしたらよかったんやろって。

どないしたら、こんな風にならんかったやろか … そんなことばっかり考えてた」


… … … … …

「 … 答えは出たん?

どうしたらよかったかて」

「笑われても、怖うても、恥ずかしうても … 言わなあかんことは言わなあかん。

おかしい思うたら、言わないあかん。

これは、無力な大人の責任や。

偉い人は、それを言わせなあかん ~ 山のように言わせて、聞く耳を持たなあかん。

たぶん、どっちも無責任やったんや」


焼け跡に戻って来てからのめ以子はまさにその思いを実践していたのです。

… … … … …

め以子は、『うまいもん』の他に屋台で『おむすび』を始めました。

具はなし、味噌、菜っ葉から客自身が選び、注文を受けてからその場で握って出来たてのおむすびを食べてもらう方式です。

泰介は、客を上手にあしらう母のことを感心して見ていました。

まるで、ひとかどの商人のようです。

「おお、お前、大学生がこんなこと手伝うとるのか?」

「およびでない感じなんですけどね … 」


店に顔を出した源太の言葉に泰介は苦笑いしました。

… … … … …

「おじちゃん、靴墨のうなった」

源太を待っていたかのようにいつもの少年たちがやって来ました。

「おお、ちょっと待ってな ~ 後で持ってくるわ」

「あんたら、おこげ食べていき」


め以子は、おこげの部分を握っておいたおむすびを少年たちに与えました。

「おおきに ~ 」

少年たちはきちんと礼を言い、屋台の傍らに用意してある席についておむすびを頬張り始めました。

「子供に仕事させてるんですか?」

「何かやらんと食うていかれんからな」


源太は少年たちが自立できるように靴磨きをさせていたのです。

「 … 需要も出てきたしな。

復員兵増えたし、よそ行った人も戻って来たし … まあ、米軍が一番のお得意さんやけどな」


… … … … …

「あ、泰介、あんた別にここおらんでええよ」

め以子からは退屈そうに見えたのか、実際居ても手伝えるようなことはありませんでした。

「疲れとれんやろし ~ 戻ってゆっくりしとき」

「ほな、お言葉に甘えて」


母の言葉に素直に従ったのは、泰介なりに思惑があったからです。

「ちょっと、やりたいことあるから」

そう言うと、そそくさと屋台から立ち去りました。

「なあ、あいつ大学てどうなってん?」

「ああ、来週くらいには戻るみたいなこと、言うてたけどね」


… … … … …

闇市を後にした泰介は、そのまま蔵には戻らずに、あるものを探して焼け跡を歩き回っていました。

「おっ!」

泰介が駆け寄ったのはドラム缶でした。

ドラム缶の傷み具合を確認する泰介。

ふと気づくと、周りで何人かの少年たちが瓦礫の下を漁っていました。

親を亡くした兄弟でしょうか、弟が見つけたガラクタに兄が首を振っているのが見えました。

… … … … …

め以子が闇市から戻ると、蔵の前では泰介がドラム缶でこしらえた五右衛門風呂を沸かしていました。

「高山さん? みねさん!!」

久しぶりに会った多江とみねは、湯上りの風情で腰かけています。

湯船には勝治が浸かっていました。

「何や、あんたお風呂やってたん?」

「うん、そしたら、皆さん来はって … 」

「えっ? 皆さん、入りはったんですか?」


男の勝治ならいざ知らず … この場所では丸見えです。

「あんまり人通らへんし、平気やで」

平然と答えた多江、みねもうなずいています。

… … … … …

「皆さん、いつ戻って来はったん?」

「戻って来てないよ ~ ちょっと、用があって来ただけ」


夫を亡くしたみねは子供らと一緒に疎開先に移ろうと考えているそうです。

「ええな、泰介君戻って来て … 」

かつての威勢の良さが、すっかりなりを潜めた民江が消え入るような声で言いました。

「勝は、英霊になりはったから」

そんな民江の気持ちが痛いほど分かるめ以子はかける言葉も見つかりません。

「子供な、もらおうか言うとんのや、な?」

「うん … それもええかな、思って」


勝治の言葉に寂しく笑った民江。

「せやね … 」

そう相槌をうつのが精一杯のめ以子でした。

… … … … …

3人が帰った後、め以子と泰介もひと風呂浴びてさっぱりとしました。

「おおきに ~ またやろな、お風呂」

おむすびと糠漬けの夕食を食べながら、め以子は機嫌よく言いました。

しばらくすると、頃合を見計らっていたのか、泰介が改まって話し始めました。

「あのな、お母さん …

僕、しばらく休学しようかな思て」

「なんで?!」

「人捜しとか、養子縁組の世話とか、始めようかなて」


思いもよらぬことでした。

泰介は、戦争が終わったら、友達とケンカしたいとか、恋がしたいとか、いろいろやりたいことがあったはずでした。

「お母さんは炊き出しやって、源太おじさんは子供に仕事やって、それはそれで頭下がる …

けど、やっぱり根本的な解決にはならへんやんか?」

「それはそうやけど … 」

「せっかく生き延びたのに、家焼けてもうて、すれ違いになってしもうてる親子とか兄弟とかいるかも知れへんし、孤児になったって分かったら、もらいたいて言うてくる近所の人も居るかも知れへんし」


… … … … …

め以子にも泰介が言っていることは分かりました。

しかし、母親として手放しに賛成する気にはなれなかったのです。

泰介は膝を正して、め以子の正面に座りなおしました。

「今やらんと、後悔する気がするんや。

できたはずのことをやらんかった自分が嫌んなるいうか … 」


その言葉を聞いため以子は、いつか遠い昔に似たようなことを言った人を思い出していました。

泰介の顔に強い意志を感じたのです。

「 … 休学やで。

そのままずるずる辞めるいうんはなしやからな」


休学を許しましたが、きちんと釘も刺しました。

「うん、おおきに」

… … … … …

『泰介が昔の悠太郎さんと同じようなことを言いました』

日記に綴っため以子。

泰介に悠太郎の面影を見ていたのです。

だんだん父親に似てきた気がしました。

「この話、早うしたいな … 」

つぶやいため以子でした。

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2014年03月13日 (木) | 編集 |
第136回

め以子は闇市を出て、焼け跡をふらふらと懐かしい声のする方へ歩いていきました。

< め以子、そっちじゃないよ ~ こっちだよ

め以子、め以子 ~ >

振り向いた時、何者かがぶつかって来てました。

見ると地面に引っくり返った少年、その傍らには風呂敷包みが転がっています。

「あ~あ、大丈夫か? ごめんな ~ 」

風呂敷包みを拾い上げ、少年の腕をつかんで起こすめ以子。

< め以子、あたしだよ ~ め以子。

あたしはここだよ >

「べにこ ~~~ !」

その時、絶叫しながら駆けてくる男が見えました。

「藤井さん?!」

「その子、その子捕まえてください!」


少年はめ以子が抱えている風呂敷包みを奪おうとします。

「それ糠床なんですよ!」

間一髪、少年は藤井の手をすり抜けて脱兎のごとく逃げていってしまいました。

「べにこ!」

「えっ?!」


め以子は手にした風呂敷包みの中を見ました。

< 久しぶりだね ~ め以子 >

… … … … …

「べにこをお宅にお返ししに行こうと思てたんです。

嫁が藤井の糠床を抱えて戻って来ることになりまして … その、べにこの存在がバレると … 」


そう言って、藤井は風呂敷包みをめ以子に渡しました。

< 私ゃ、日陰の女だからね … >

「ここで別れるのが、お互いのためやと思いまして … 」

こんなに糠床を大切に人間同様の扱ってくれるのは藤井しかいません。

め以子は風呂敷包みを解き、ツボのふたを取って、糠床と再会しました。

「奥さん?」

涙ぐんでいるめ以子を見て、心配そうな顔の藤井。

「うちのは焼けてしもうて …

もう二度と、二度と会えないかと思うてたんで … すいません」


… … … … …

夜、め以子は久しぶりに糠床を混ぜていました。

< ああ、ホッとするね ~ あんたの手は …

そうかい ~ あんたも、ホッとするかい? >

手についた糠の匂いを嗅いだめ以子が幸せそうな顔をしていると、源太が戻って来ました。

「よかったな、糠床戻ってきて」

「うん … 幸先ええわ。

皆、ちゃんと戻って来るから、あきらめんでええよって言われてる気する」

「そうか … 」


め以子は漬かっていたキュウリを割って片方を源太に差出しました。

「おお、久しぶりやね ~ 」

< 源ちゃんには、いつまでもお世話かけるね ~ >

ポリポリとふたりがキュウリをかじる音だけが聞こえています。

「 … どうしてるんかな?」

「卯野の家か?」


懐かしい味に触れて、ふいに東京の家族のことが気になっため以子と同じように源太も子供の頃を思い出していたのです。

「うん、電報は打ったんやけど … 」

… … … … …

数日後、め以子は突然、香月から職業斡旋所に呼び出されました。

「 … 私が料理教えるんですか?」

「せや、『うまいもん横丁』作りたいんや」


闇市の一角に美味いものを売る屋台を並べたいと香月は構想を語りました。

「ええですね」

め以子にも興味ある話です。

「やろ?

そこで、おばはんにな、品書き考えたり、料理の指導をやってもらいたんや ~ 」


あごに手を当てて考えるめ以子。

「どや?」

香月はすでに源太には話を通してありました。

「 … ええですけど、指導料いただけますか?」

め以子も世間にもまれたのか、随分と逞しくなっていました。

「食道楽同士、けち臭いこと言いなや ~ 」

「ショバ代分、いただきたいんですが」


香月の鼻先に手のひらを差し出しました。

… … … … …

め以子は、きっちりショバ代を取り戻して来ました。

「馬介さん、どう?」

馬介はあれから、め以子の屋台を手伝ってくれています。

「まあ、そこそこ売れとるかな … 」

さすがにあの爆発的な売れ行きも陰りを見せていました。

「あ、こっちあかん?」

試しに並べてみた糠漬けはまったく売れていません。

「やっぱり、お腹ふくれる方のがええんやろな」

「そらそうか … 」


< すいませんね ~ >

「糠漬けって絶対に脇役じゃない」

そう言う室井こそ脇役でした。

… … … … …

「それ、糠漬けですよね?!」

ちょうどその時、通りかかった復員兵の男が、め以子の糠漬けを見て目の色を変えました。

「 … はい」

「きゅ、キュウリいただけますか?」


言うが早く、男はキュウリにかじりつくと感嘆の声を上げました。

「そ、そのまま?」

呆気にとられている馬介。

「なすびも!」

男はナスも丸かじりしました。

「うわ ~ 美味い ~ これは、糠まで美味いです!」

余りにも大げさに喜ぶので、やや引き気味の一同。

「ありがとうございます … あ、2円になります」

め以子が勘定を口にすると、男は突然手を握って来ました。

「あの ~ お願いがあるんです!」

「 … 何でしょう?」


… … … … …

「ほな、明後日」

「おおきに ~ 」


立ち去る復員兵・真岡と入れ違いに源太が屋台に顔を出しました。

手を取り合って喜んでいるめ以子、室井、馬介の3人を見て、怪訝に思って何事か尋ねました。

「何や、今のお客?」

「お、お、お米、買わへんかて … 3俵!」


舞い上がっているめ以子たちを見て、ひと言吐き捨てるように言いました。

「 … アホか、お前?」

「えっ?」

「食い逃げちゃうん?

… お前、糠漬けのお代もろうたか?」


ハッとする3人。

「あ ~~~~ 」

… … … … …

しかし、その夜、め以子にうれしい報せが舞い込みました。

ラジオ局の希子に宛てて、卯野家の電報とふ久からのハガキが届いたのです。

『チチコツセツスルモミナブジ ソチラノヤウスシラセ』(父骨折するも皆無事 そちらの様子報せ)

「 … 素っ気ないな」

電報とはいえ、余りにも素っ気ない文面に苦笑いしため以子でしたが、ようやく安心することができました。

ふ久のハガキに目を移すと、一面に小さな足形が押してありました。

「これ … 大吉?!」

「裏、見てください」


希子に促されてハガキをひっくり返すと、「みな生きてます」の文字の横に6人分の拇印が押してあり、その中に諸岡のものもありました。

「諸岡君、戻って来たん?!」

「 … そういうことですよね」


希子の言葉にめ以子は何度も何度もうなずいていました。

… … … … …

『卯野家、無事 諸岡家、無事 大吉すくすく』

早速、め以子は日記に綴りました。

< よかったね ~ め以子 >

「あと、3人 … よしっ!」

… … … … …

そうこうしているうちに、闇市の一角には『うまいもん横丁』の看板が掲げられました。

そして、め以子が新入りに料理の指導をしていると、先日の復員兵・真岡が大八車を引いて現れたのです。

「奥さん ~

いや、遅うなってすみません、お米持ってきました」


約束した通り、きっちり3俵の米俵です。

バツが悪そうにめ以子から目をそらして隠れる源太。

しかし、喜んでばかりもいられないめ以子でした。

「源ちゃん、ちょっとええ?」

屋台の隅に源太を呼びました。

「 … 何や?」

「お金ある?」

「いくら?」

「4500円 … 」

「あるか ~ そんなん!!」


試しに聞いてみただけ、源太がそんなに持ち合わせている訳がありません。

め以子は、真岡を待たせて、代金を工面するために希子の元へと走りました。

… … … … …

しかし、いくら希子でもそんな大金は用意できません。

「誰か、貸してくれそうな人??」

「借金、借金、借金 … 」


その時、希子の頭に浮かんだのは倉田の顔でした。

… … … … …

め以子の帰りを待っている一同。

大慌てで室井が駆け込んできました。

「警官だよ!」

闇市の手入れに現れた警官の姿を見て、報せに飛んできたのです。

「取られちゃうよ ~ 米、米!」

ざわめく闇市、逃げ惑う人。

大急ぎで米俵を隠そうとする源太たち。

しかし、万事休す … ふたり組の警官がこちらに向かって歩いてくるのが見えました。

… … … … …

「お待たせしました ~ 」

倉田を引き連れて戻って来ため以子を迎えたのは、がっくりと肩を落とした真岡と源太たちでした。

「何や?」

「どないしたん?」


不審な顔をするめ以子と倉田。

すると室井が悔しそうに話し始めました。

「手入れの警官が来て … 米がっ!!」

「えっ、うそ … うそやろ?!」


愕然とするめ以子。

皆の肩が震えて … 突然、大声で笑い出しました。

「あははははは ~~ 」

め以子には何が何だか分かりません。

「なんちゅう顔しとんねん!! わはははは」

情けない顔のめ以子を見て、腹を抱えて笑っている源太。

「それがさ、そいつニセ警官だったんだよ ~ 警官のふりしてカツアゲしようとしてさ、ひどいよね ~ 」

「源太がな、制服の徽章見て、見破ってくれて


ついでなので、皆でひと芝居うってめ以子をからかったのでした。

「ほな … ほな?」

「よいしょ ~ !!」


源太と馬介がシートを取ると、米俵が現れました。

「米や … 」

「神様、仏様 … お米様 ~ !!」


だまされたことなどすっかりと忘れて、米俵に抱きついため以子でした。

「今日は、このお米で皆でお祝いしましょう」

… … … … …

倉田から借りた金で3俵の米を買い上げため以子は、惜しみなく炊き出して、おむすびに握ると、闇市にいる人たちに分け隔てなく振舞ったのでした。

大人も子供も美味しそうにおむすびを頬張っています。

「いかがですか?」

見ず知らずの人にまで笑顔で配り歩くめ以子を見て、倉田は感心していました。

「太っ腹やな ~ 」

名の知れた商売人の倉田にまでそう言わしめため以子の大盤振る舞い。

「アホですから、後先考えられんのですよ」

実は愛情のこもった源太の言葉です。

「アホの仏か … 」

倉田のつぶやきは、め以子を表す的を射た表現でした。

「倉田さん、ホンマにありがとうございました」

「ちょっと、面食らうたけどな ~ 」


め以子から受け取ったおむすびを倉田も美味しそうに口にしました。

… … … … …

「お母さん、これもろてええの?」

声のする方に顔を向けため以子。

泰介でした。

笑顔の泰介がそこに立っていました。

「ただいま、戻りました」

「 … 泰介」


涙で滲む泰介の顔。

め以子はよろよろと近づくと、泰介の腕や肩を確かめるように触り … そして、ひしっと抱きしめました。

「お帰り … 」

「ただいま」


しばらく抱擁した後、ハッとして、おむすびを差し出しました。

「ご飯、食べ」

「 … いただきます」


うなずいて、おむすびを頬張る泰介。

< 泰介が戻り、米もやって来た、幸せいっぱいのその日 … 別の米の軍団、米軍もまたやって来たのでございました >

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2014年03月12日 (水) | 編集 |
第135回

「誰に断って商売してんのや?」

「 … 断り?」


闇市に屋台を出すのに誰かに断らなければいけないなんてことは、め以子は知りませんでした。

「おい!

ここは、わしらのシマなんじゃ ~ 勝手に店開いてどないするつもりじゃ?」

「あかんかったんですか?」

「当たり前じゃ!

ショバ代払え、ショバ代」


すごむチンピラ。

ショバ代の意味も分からないめ以子に源太は「店を開く場所代」だと教え、間に入ってとりなそうとしました。

「あのう ~ ああ、こいつ今日でやめるみたいなんで、大目に見てやってくれませんかね?」

「やめへんよ!」


しかし、やめる気などないめ以子は口をはさみました。

「もうやめとけ!」

「何で指図 … 」

「うるさい! 戻れ、田舎」


チンピラを前にして言い争いが始まりました。

室井は … この隙に逃げ出そうと企てましたが、親玉に見つかって一喝され、慌ててめ以子の手から売り上げを取り上げると、そのまま手渡してしまいました。

すると、親玉はその中からショバ代を抜いて残りを室井に返しました。

「うまいもん作りや ~ 」

手下と共に引き上げていきました。

… … … … …

「何であんなお金取られなあかんの?!」

納得がいかないめ以子はチンピラたちの後を追おうとして、また源太に止められました。

「よそ様の土地で店出すんや … しゃあないやろ」

「せやかて、ここ建物疎開されたとこやんか!

絶対にあの人らの土地やない思うねんけど … おかしいよね、こんなん」

「ほなな、お前のやってるこれかておかしいやろ?

闇やぞ、立派な犯罪やぞ!」

「そ、それは … 生きていかんとあかんのやから、しゃあないやん … 」


うしろめたさもあり、言葉を濁らせました。

「お前にもしものことがあったらな、わしは通天閣に合わせる顔がないんじゃ!」

「えっ?」


カッときていらないことまで口走ってしまった源太、すかさずごまかしました。

「 … 何でもない」

「とにかく、私はここに居るから。

もう、ショバ代も払うたしな」


… … … … …

夜になって、源太がどこからから調達した大きな酒樽を蔵の前に運び込んで来ました。

「何、この樽?」

「暮らすのにちょうどええからな ~ 」

「 … ここ住むん?」

「お前みたいなでかいんが、仏さんになって転がってたら、うっとうしいからな!

社会に対するご奉仕じゃ!」


憎まれ口を叩いていますが、腹に据えかねても、め以子のことを放っておくことは出来ないのです。

… … … … …

『 … うまいもんという馬のイモを揚げたんが売れました。

皆、手伝ってくれて、助かりました』

日課となった、悠太郎への報告をしたためるめ以子。

「悠太郎さん … 」

ため息ひとつついて、その名前をつぶやいため以子のことを、複雑な思いで見つめている源太が居ました。

… … … … …

ところが次の日、闇市には『うまいもん』を騙る店が何軒も現れたのです。

「あら ~ あらららららら ~ マネされてもうたな!

これもう昨日の1割も売れへんな ~ 」


うれしそうな源太。

しかし、め以子の負けん気にも火が付きました。

「室井さん、砂糖と醤油、安う買うてきて!」

あきらめるどころか、味を変えて勝負しようというのでした。

… … … … …

「何であいつあんなムキになってんねん?」

希子なら何か分かるかと思った源太は、ラジオ局を尋ねました。

「 … ショバ代ひとつにおかしいおかしいて食うてかかりよるし、どないかしとるんちゃうか?」

そこで初めて、活男の戦死公報が届いたことを聞かされたのです。

「えっ?」

「家も思い出の品も、何もかんも焼かれてしもうて …

家族のためだけに生きてきた人がホンマに、全部取られてしもうたような状態で。

心の奥底で、ものすごい怒ってるんやないかなと」

「 … 怒る?」

「何に向かってなんかは分からんけど、とにかくあそこで皆を迎えるんや ~ 絶対にそうするんや言うて、聞かないんですよ。

気合で全部元通りにしてやろうと、思うてはるのかも知れません」


ようやく合点がいった源太は少女の頃のめ以子のことを思い出していました。

「 … そういうやっちゃもんな」

… … … … …

闇市に戻ると、め以子は片づけをしているのが見えました。

「おばちゃん … 」

そこに昨日の少年が、顔を出しました。

「ああ、ちょっと待っとき」

残りもののイモを出そうとしていると、少年は手招きして仲間を呼びました。

「ああ、5人?」

この人数では少し足りないかも知れません。

困ったような顔をしているめ以子に源太は声をかけました。

「作ったれや ~ イモはわしが何とかしたるさかい」

希子の話を聞いて源太もめ以子を田舎へ帰すことをあきらめていたのです。

「 … よろしくお願いします」

申し訳なさそうにめ以子は頭を下げました。

「お前、何持ってこられても料理できるん?」

「まあ、毒あるもんとか、難儀な下ごしらえとかいるやつやなかったら … 」


… … … … …

次の日。

め以子と室井が源太が仕入れてくるイモを待って暇を持て余しているところへ、あのチンピラの親玉 … 香月が近づいて来ました。

「おう、おばはん!」

「 … 何ですか?」

「そこのおっさんな、新入りやねん」


隣で店を広げている男を指さしました。

「暇やったら、イモの蒸かし方教えたってくれ ~ うまいこと蒸かせんで往生しとるさかい」

見ると、慣れない手つきで手こずっているようでした。

「ええですよ。

ええですけど、あなたに言われたからやるんとちゃいますからね ~ 」

「はあ?」

「 … おイモさんが可哀そやからやるんです」


… … … … …

「いやあ、イモ売るの初めてでな ~ 」

戦争で仕事を失くしたその男は何と香月に仕事を都合してもらったのだそうです。

「ここはそういう人、多いんやで」

「 … そうなんですか?」


意外でした。

そう思って、香月を目で追ってみると、いつも屋台で売っているものを何かしら食べながら闇市をぶらぶら歩いていて、店主たちとも気安く言葉を交わしています。

嫌われ者という訳ではないみたいです。

「あの … これ、お礼。

少ないけど、これ育てて、何かのたしにして」


男は野菜の苗を差し出しました。

「ええんですか? ありがとうございます」

「こちらこそ、ホンマにおおきに」


… … … … …

「うまいもんって何?」

その声に振り向くと、笑顔の馬介が立っていました。

「あっ、馬介さん、戻ってきはったんですか?」

「うまいもんって何?」


こういうネーミングにかけては元祖の馬介にすれば気になるようです。

「馬のおイモ揚げただけなんですけど … 結構評判ようて」

「へ ~ 食べられる?」


源太が仕入れに行っていることを説明していると、め以子の名前を呼びながら懐かしい顔が走って来ました。

八百屋のタネと牛楽商店のマツオです。

「皆、無事やったんですか?」

手を取って再会を喜び合う一同。

「源太から聞いたんやけどな、くずイモ買うてくれるってホンマ?」

「あっ、はい、買います」


マツオは配給には回せないものだと言ってホルモンを見せました。

「どやろ、買わへんか?」

「はい、買います … やります、私!」


俄然やる気がわいてきため以子です。

「おばちゃん!」

昨日の少年たちがバケツを抱えてやって来ました。

「食べられるもんやったら、何でも買うてくれるでって、おっちゃんが」

バケツにかぶせてある布をめくって中を見ため以子が顔をしかめました。

「カエル … 」

溢れるばかりのウシガエルでした。

「源ちゃん ~

分かった、買う! … せやけど、ちょっと待ってな」


財布の中身を確認するめ以子。

「 … しゃあないわ」

有り金叩いて全て買い取りました。

… … … … …

「あのおばはん何もんなんや?

… 今日いろんな食いもんがあのおばはんとこに集まっとったけど?」


香月から「話がある」と呼び止められた源太は、彼が仕切っている職業斡旋所を訪れていました。

「ああ、何でも始末できる言うから、売りに行ったら買うてくれるでて、方々に言い回ったんですわ」

金は欲しいが、自分で店まで開いて売るまではしない人が結構いるのではないかと源太は踏んでいたのです。

黙って聞いていた香月はおもむろに切り出しました。

「話言うんはな … 」

… … … … …

め以子の店は「うまいもん」に加えて「ほうるもん」「カエルもん」と献立が3つに増えました。

その初日、室井と源太の他に馬介、そしてマツオにトミ、銀次、かつての市場の仲間も助っ人に駆けつけてくれたのです。

「皆さん、今日はお手伝いありがとうございます。

ご存知かと思いますが、私、現在、正真正銘のすってんてんでございます!

売れなければ明日はございません。

何卒、ご協力のほどお願いいたします!」


… … … … …

「うまいもん ~ うまいもん!」

「ほうるもんにカエルも~ん!」

「浪速っこやったら食うていかんか~い!!」


源太と銀次の市場で鍛えた呼び込みの声が闇市に響き渡ります。

「うまいもんですよ ~ どうですか ~ うまいもん、うまいもん」

イモを揚げるトミ、串に刺したカエルを焼いているのは馬介です。

「ぷりっぷりで美味いで ~ カエルもん、カエルもん」

ホルモンを炒めるのはめ以子。

次から次へとやってくる客、次第に行列になっていき … め以子たちはひたすら調理し続けてます。

… … … … …

「おばちゃん、手伝えることある?」

顔なじみになった少年たちでした。

「あるある ~ 」

可愛い呼び込みに誘われてまた集まってくる客、客、客。

め以子の店の周りは、美味しい顔で埋め尽くされていっぱいです。

… … … … …

「おおきに ~ 」

最後のひと皿を客に手渡して、見事全て売り切ることができました。

「はあ ~ これで終いです ~ 皆さん、おおきに ~ 」

拍手と歓声が上がりました。

… … … … …

残りもので食事している一同から、少し離れた場所に腰かけて、め以子はぼんやりとしていました。

身体はぐったり疲れていますが、何故か心地がいい …

「大丈夫か? め以ちゃん」

「うん、疲れた … 」


タネの問いかけに答えるめ以子、そう言いながら顔は自然とほころんできます。

「寝ぇ、寝ぇ、ここでちょっと寝とき」

「せやけど … なんや、楽しかったな ~ 」


一緒に働いた皆の顔を見ていると、何だか充実感でいっぱいになってきました。

… … … … …

< め以子 … >

その時です。

め以子は、ふいに懐かしい声に名前を呼ばれた気がして、顔を上げて立ち上がりました。

「どないしたん?」

「呼ばれてる … 」


< め以子っ >

他の者には分からなくても、め以子の耳には確かに聞こえています。

め以子は声のする方へふらふらと歩き出していました。

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2014年03月11日 (火) | 編集 |
第134回

いつの間にかあたりはとっぷりと日が暮れて暗くなってきたので、取りあえず一同は蔵の中へと入ることにしました。

椅子もテーブルもなく、床に敷いたござの上、ロウソクの火をはさんで、め以子は希子たちと向かい合って座りました。

希子が持っていた乾パンを広げたハンカチの上に置き、め以子に勧めました。

「どうぞ」

一瞬躊躇しため以子でしたが、ひと言礼を言って乾パンに手を伸ばした時、希子がおもむろに尋ねてきました。

「荷物、どないしはったんですか?」

「 … うん?」

「大きい荷物持ってはったん、どないしはったんですか?」

「ああ … ちょっと、お、落としてん」


ごまかすにしてももう少し上手いウソをつけなかったものでしょうか … 

誰の目にも盗られたことは明白でした。

… … … … …

「よう分かりはったでしょう? 今ここがどういうとこになってるかて」

うなずいため以子。

「明日の汽車で戻ってくれはりますね?」

「 … 戻るって?」


話の腰を折って室井が口をはさみました。

「義理のお義姉さんのところに疎開してはったんですよ」

「えっ、そこって戻れるの? … 戻らせてもらえるの?」


啓司から説明されて色めき立つ室井。

「いや … 皆の安否、確認せなあかんし」

「それは、私がやります言いましたよね?

女ひとりで焼け跡でこんな鍵もかからんような蔵で、どんだけ不用心かさすがに分かりはるでしょう?」

「せやけど、ほら、室井さんいてるし … 」

「室井さんに何を期待してるんですか?

ちい姉ちゃんに何かあったら、もう私、お兄ちゃんに何て言えばええんですか?」


必死の説得にものらりくらりと答えるめ以子に希子の口調は次第に強くなります。

… … … … …

すると、め以子は腰の袋に入っていた封筒から家族写真を取り出して、それを見ながら話始めました。

「皆戻って来た時に誰も居らんと、嫌やんか ~

明日、悠太郎さん戻って来るかも知れんやろ?」

「絶対にまだです!

外地からの引き上げは、まだ始まってないようですから」


放送局に携わる希子の情報は確かでした。

それに、戦争が終わって昨日の今日です。

「活っちゃんかて、ほら、ひょっこりこっちに戻って来るかも … 」

「ほな、泰ちゃんはどないするんですか?

泰ちゃんはむしろ向こうに戻って来るんと違いますか?!」


… … … … …

「ここがええの!

ここで待ちたいの … 戻って来たら、一番に『おかえり』言うて、ご飯出したいの!」


突然大きな声を上げため以子。

「 … ここが私の家やから、それが私の仕事やから、私の人生やから!

ず~っとそうしてきたから、そうしたいの。

何で、それのどこがあかんの?

何でそれを、あかん言われな、あかんの?」


困惑した啓司は、希子の顔を見ました。

希子は目を閉じて、深いため息をつきました。

「 … もう、理屈やないんでしょうから」

人生まで持ち出されたら、もう踏み込むことは出来ない … 説得はあきらめるしかありませんでした。

「 … おおきに」

… … … … …

『希子ちゃんと啓司さん、室井さんに会えました。

お義母さん、ふ久は無事のようです。

泰介も内地にいるんやないかって、希子ちゃんは言っていました。』

め以子は、悠太郎の手紙の裏に今日あった良い出来事だけを書き留めました。

… … … … …

「こんなとこに地下室あったんだ?」

蔵の地下室に保管してあった味噌や調味料などは、ほとんど無事でした。

しかし、これだけでは生活していくことは出来ません。

畑をやろうと思って、和枝からもらってきたつなぎの食料は奪われ、配給も室井の話だとあてにはならないようでした。

「 … 食べもんとか皆どうしてはるんですか?」

… … … … …

すると、室井はめ以子のことを闇市へと連れて行ってくれました。

「何でもあるやないですか!!」

そこには、食料だけでなく、日常品や衣料品、腕時計やメガネまでありとあらゆるものが売られていて、多くの人でにぎわっていたのです。

「本当に、どこに隠してあったんだろうね」

「食べるもんもぎょうさん … 」


ジャガイモに饅頭、雑炊に焼き魚 … フライ饅頭の匂いに引き寄せられため以子はその値段を見て、驚きました。

2個で10円もするのです。

米などは『ひと升40円』で売っています。

「公定の … 50」

80倍の価格でした。

… … … … …

「皆どうやって暮らしてはるんですか?」

ものは売っていても、こんなに高価では手に入れることは容易ではありません。

「家にある着物を売ったり、買い出ししてきたものを売ったり、拾ってきたものを売ったり … とにかくものを売って …

今、ホントにたいへんなことになっちゃってるんだよ」


造兵廠の倉庫などから掠めて生きているくせに、したり顔で話す室井。

「買えへんのやったらどいて」

ふたりは屋台の親父に追い払われた時、偶然、目の前で食い逃げしようとした男が捕まって殴られるのを目の当たりにしました。

呆然とするめ以子に室井はここぞとばかり切り出しました。

「意地張らずにさ、お義姉さんとこ戻ろうよ ~ 僕も一緒に行ってあげるから」

室井のことですから、あわよくば自分もこの暮らしから逃げ出そうという魂胆でしょう。

… … … … …

その時、め以子は『ジャガイモ1貫10圓』と書かれた店を見つけました。

「ここ、割と安い … 」

それもそのはず、通常なら売り物にならない、馬などの家畜のエサにするような、くずのジャガイモでした。

しかし、そのひと口大のジャガイモを手に取ってみると、意外に身は詰まっているし …

「1貫8円でどやろ?」

… … … … …

「焼け跡買います?」

新聞に載った広告を見て、希子は怪訝な顔をしていました。

「どないしたんや?」

希子はその広告を掲示にも見せました。

「『焼け跡買います』って、倉田さんがけったいな広告だしはって … 」

「倉田さんって、昔世話してもうてた?」

「そうそう ~ ええでも、何で今時分こんなことしてはんのやろ?」

「 … ひょっとして、今土地だけは安う買えるんと違うかな?

こんな有様やし、よそに移るて決める人も多そうやし … 」


あきんどはいつの時代もあきんど … 感心する希子でした。

… … … … …

1貫8円のくずイモを買って帰っため以子は、焼け跡の井戸の掃除を始めました。

「 … 取りあえずは水ですから」

井戸を使えるようにすると、め以子はくずイモをひとつひとつ丁寧に洗って汚れを落としました。

室井に作ってもらったかまどに鍋をかけ、油で揚げてみました。

揚がったイモに塩を振りかけて、よくまぶして … 試食してみると …

「ほくほくしてて、皮カリッとしてて、美味しいよ、すごいよ!」

「なかなか ~ 」

「安くて済むし、いいねこれ!」


大絶賛する室井です。

食べるそばから、また手が伸びます。

… … … … …

め以子ははたと思いつきました。

「これ … 商売にならへんかな?」

「えっ?」

「取りあえず、何かせんと生きていかれへんでしょ?

種買うて、畑作っても、ひと月はかかるし … これなら、材料は安いし、仕込みも洗うだけ、調味料は塩だけで十分やし … 」


室井はもうひとつ手に取って見つめました。

「 … 馬のイモで?」

「馬のイモで … 」


オウム返ししため以子。

「馬のイモで … 」

室井は何か考え込んできます。

「あきませんか?」

うまいもぉ ~ ん!!


突然、大声を上げた室井。

「え、えっ … な、何?」

「名前だよ、名前 ~ いるでしょ?」


馬のイモで『うまいもん』!!

… … … … …

翌日、ふたりはさっそく、闇市に屋台を開きました。

『うまいもん 15個5圓』

め以子がイモを揚げて、室井が呼び込みをする役割分担のはずでしたが、いざとなったら室井が尻込みし始めました。

「 … 室井さんは呼び込みに行ってきてくださいよ!」

「ゴホン、ゴホン … 僕、声出すの得意じゃないんだよね ~ 」

「私は揚げんとあかんので!」


商売が始まる前から揉めていると …

「何やってんねん、お前?」

あきれ顔で立っていたのは、源太でした。

「源ちゃん?!」

「本職、来た ~!!」


… … … … …

無事と再会を喜ぶ暇もなく、源太は牛楽商店で鍛えた声で呼び込みを始めました。

「はいっ、うまいもん、うまいもん!

馬のイモからうまいもん!

浪速の新名物『うまいもんぼおる』いかがっすか ~ !!」


源太の手慣れた呼び込みのお蔭で足を止める人、手ごろな価格設定に試しに買ってみて、思いもよらぬ美味さが評判を呼び、集まってくる客 … いつの間にか屋台の前には行列が出来ていました。

休みなくジャガイモを揚げつづけるめ以子、客に手渡してお代を受け取るのは室井の役目です。

「15個5円、15個5円、15個5円 ~ 早う買わんと、のうなるで ~ !」

カゴいっぱいに仕入れたくずイモはあっという間に底をつき、室井は買い足しに昨日の親父の屋台に走りました。

「これ全部ください!」

店にあったイモごと買い上げました。

… … … … …

「美味いわ ~ 」

「ホクホクやで ~ 」


あちらこちらから、うまいもんを食べた人たちの声が聞こえてきます。

そのうちに呼び込みも必要なくなって、源太はへとへとになった室井に代わって売り子に回りました。

「おばはん、ごっそうさん! また来るわ」

「はいっ!」


そんな客の言葉にめ以子は笑顔で返しました。

… … … … …

追加したイモも全て売り尽くし、初日だというのに大盛況でした。

「売上 … 310円、材料費その他諸々が100円だから、210円の儲け!!」

売り上げを勘定していた室井が歓喜の声を上げました。

「すごいな ~ 」

# 一概にいえませんが、昭和20年当時の100円は10万円くらいでしょうか …

「源ちゃん、これ少しやけどお礼 … お酒でも飲んで」

め以子は売り上げの一部を源太に渡そうとしましたが、源太は受け取ろうとしません。

それどころか何故か不機嫌な顔をしています。

「訳分からんうちに手伝うてもうたけど …

お前、何で戻って来てんねん?」

「 … 戦争終わったし、皆戻って来る前にやらなあかんこと、たっくさんあるやん。

家も直さんとあかんし」

「そんなん、希子ちゃんと川久保さんに任せとったらええやんか?!」


ここでもまた説教が始まりかけた時、め以子は屋台の前に落ちていたイモを拾っている少年に気づきました。

「あ、それ今日の僕のご飯だよ ~ 」

め以子は室井が店の端に避けておいた袋をその少年に渡してしまいます。

「これどうぞ ~ ちょっと揚がりすぎてるけど」

少年は礼も言わずに受け取ると、道の反対側で背を向けながら頬張り始めました。

「お腹空いてたんやな ~ 」

微笑むめ以子を見て、余計苛立つ源太。

「あんな、お前 … 」

… … … … …

「おい、おばはん!」

源太の言葉を遮った声に振り向くと、いかにもガラの悪そうな男たちが数名立っていました。

「 … 誰に断ってここで商売してんのや?」

中心にいる親玉らしき男はアイスキャンディーをなめながら、め以子のことをにらんでいます。

「 … 断り?」

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2014年03月10日 (月) | 編集 |
第133回

「お義姉さん、私、今日戻ってもええですか?」

昭和20(1945)年8月15日。

長い戦争が終わったことを知ったその瞬間、め以子はもう居てもたってもいられずに和枝に願い出ていました。

「あの … 電車すぐには乗られへんと思いますよ」

傍らに控えていたハナの言葉もまったく気にもかけません。

「皆戻って来るし、あそこおらんと … 」

「あんさん、これから向こうでどないして暮らしていかはるおつもりでっか?」

「ここで暮らしたみたいにいうか …

蔵住んで、蔵のうなってたら、小屋立ててもええし ~ 畑やって、それで、取りあえずは生きていけるし」


まるで容易いことのように和枝に答えました。

しばらくめ以子の顔をみつめていた和枝でしたが、案外あっさりと許しました。

「 … ほな、そうしはったら?」

… … … … …

そうと決まったら、すぐにでも発つと言うめ以子に和枝は、リュックサックいっぱいの食料と、畑にまく野菜の種まで持たせてくれました。

「ほんまにお世話になりました ~ これだけあれば、畑出来るまで食べていけます」

「そない思うんやったら、二度と世話かけんとっておくんなはれ」

「はい … ほな、失礼します!」


お辞儀して、歩き出しため以子に向かって、和枝は声をかけました。

「二度と戻って来んでええで ~ !」

垣根の前で振り向いため以子。

「落ち着いたら、お礼に伺います」

ニッコリ笑い返すと、去って行きました。

その背中を見送る和枝にハナが苦笑いしながら言いました。

「いけずしはりますね ~ 」

「 … そうでっか?」


和枝はとぼけました。

「西門の奥さん、市内どないなってるのんか、分かってはらへんと違いますかね?」

「まあ、大丈夫でっしゃろ。

一番きつい暮らしに、黙々と耐えはったんやから」


止めても聞くようなめ以子ではないし、やりたいようにさせても心配ないほどに立ち直った … そう和枝は感じていたのです。

… … … … …

街に戻っため以子は、焼野原と瓦礫の山、いたるところに遺体が転がる悲惨な光景を目の当たりにしました。

そんな中を通り抜けて、まずは希子たちがいる放送局を訪ねたのです。

「ちい姉ちゃん!」

ふたりはロビーで抱き合って、お互いの無事を喜び合いました。

「もう、あの後どないなったんかなと思ってて」

「ごめんな ~ 心配かけて」


啓司も顔を出しましたが、色々と忙しいらしくすぐに呼ばれて戻って行ってしまいました。

「忙しそうやね?」

「うん、修理もあるし … 放送内容も変更変更で … 」


建物を修理する人たちが局の中を慌ただしく行き来しています。

「びっくりしはったでしょ? 市内、えらいことなってて」

「 … 亡うなった人、そのままになってた」

「そんな状態やから … 気持ちは分かりますけど、もうちょっと落ち着くまで、お姉ちゃんのとこ居はった方がええんと違いますかね?」


心配する希子をはぐらかしめ以子は話題を変えました。

「皆はどうしてる?」

ふ久も大吉と名付けられた赤ん坊も大丈夫じゃないかと答えると、矢継ぎ早に諸岡の安否を尋ねてきました。

「諸岡君も泰ちゃんも、たぶん内地にいる可能性が高い思いますけど」

「大阪の聯隊に聞きに行ったら分かるやろか?

… 取りあえず、行ってみるだけは行ってみるわ。

悠太郎さんのこともあるし … 」

「ちい姉ちゃんは夜の汽車で戻ってください!」

「せやけど、家のこともあるし … 」


何とか、め以子を安全な和枝の元に帰したい希子ですが、説得中に奥の方から戻るように急かす声が聞こえました。

「忙しいのに悪かったな ~ あの、これ少ないけど … 」

立ち上がって、野菜を手渡すめ以子。

「ちい姉ちゃん、お願いしますよ、戻ってくださいよ」

「うん、わかった … ほな、またな」


… … … … …

しかし、め以子が次に訪れたのは軍の施設と思われる建物でした。

「あの、ここは軍の … 」

ちょうど中から出て来た男に尋ねようとしましたが、話も聞かずに忙しく行ってしまいました。

がっかりしため以子の足音で瓦礫のくずれる音 … 驚き目を向けると、這いつくばった老人が物乞いをしていたのでした。

「これ、少しですけど … 」

腰の袋からわずかですが食料を与えました。

… … … … …

気を取り直して、建物に向かおうとした時でした。

「あの、安否の確認ですか?」

振り向くと人の良さそうな顔をした男が立っていて … め以子がうなずくと、自分も行くところだと言いました。

「入口はこちらですよ」

言われるがままついていくと、男は建物の裏に回って、どんどん人気のない方へ歩いていきます。

「 … あの?」

振り向いた男は、まるで別人のように不敵に笑いました。

そこへ、もうひとり人相の悪い男が走って来て、先にいた男に金をつかませました。

それを合図に数名の男たちが現れて、め以子のことを取り囲みました。

… だまされた?!

「やめ、やめてっ!!」

逃げ場のないめ以子はしっかりと荷物を抱きしめましたが … あえなく奪われてしまいました。

あっという間の出来事、男たちの姿はもうどこにもありません。

「 … やられた」

… … … … …

せっかく和枝が用意してくれた食料も種も全部奪われてしまっため以子、仕方なくそのまま西門家があった場所へと向かいました。

「まだ、誰も戻ってないか … 」

唯一焼け残った蔵に近づくと … 戸が少し開いているのが分かりました。

何者かがカギを開けて入った形跡があり、思わず後ずさりするめ以子。

辺りを見渡して、落ちていたビンを拾うと、それを構えながら、戸を開けました。

蔵の中は無人でしたが、誰かが寝泊まりしていたような形跡があります。

置いた覚えのない缶詰が目に入りました。

「 … 軍用品?」

何者かがここで食べていたようです。

その時です。

何やら気配を感じて振り向いため以子は、背後に現れた人影に悲鳴を上げながらも身構えました。

薄汚れた着物に顔も手も真っ黒け、木の棒を構えたその人物 … 見覚えのある顔でした。

「 … 室井 … さん?!」

「 … め以子ちゃん?」

「室井さん、何でここに?」


室井もめ以子だと気づいて抱きつかんばかりの喜びようです。

「め以ちゃん、もう戻って来たの? 戻って来たの?!」

… … … … …

室井は、この蔵に住みついて、造兵廠の倉庫から持ち出したコークスや焼け跡で探し出した金属を売って生き延びていることを告白しました。

「それ … ええんですか?」

「今、食べてくためには仕方ないんだよ … それぐらいは当たり前っていうかね」


間違いなく犯罪ですが、そう言われると、何にも言い返せないめ以子でした。

「あ、そうだ!」

め以子は盗られずにひとつだけ残った荷物の中から笹にくるまった包みを取り出しました。

「 … 食べもん」

和枝が持たせてくれたおむすびが2つだけ残っていたのです。

め以子は大きい方を室井に差し出しました。

… … … … …

「いただきます」

め以子はその言葉を聞いてドキッとしました。

泰介が出征した後、和枝の家では食事はひとりきりだったので、人から「いただきます」なんて言われたのは、何か月ぶりだったからです。

何だかうれしくなって、自分のおむすびにかじりつきました。

… … … … …

ひと息ついたら、め以子は仲間の消息が気になって、室井が知らないかどうか尋ねました。

「馬介さんってどうなさってるか … 」

「桜子ちゃん宛てに店焼けて疎開したって手紙着てたよ」


源太をはじめとする商店街の連中は安否は不明でした。

「 … 桜子のとこは? お義母さんは?」

「皆元気だと思うよ」

「 … 何で室井さんだけ?」


桜子からいきなり追い出されたという室井、本人にはまったく追い出されなければならなかった理由が思いつかないようでした。

「焼け跡で … 焼け跡で、ご飯くれる人なんて誰もいなくてね ~

やっと、僕にご飯くれる人が … 」


言葉に詰まる室井。

それから、ふたりは黙って黙々とおむすびを食べ続けました。

… … … … …

「 … ごちそうさまでした」

食べ終わった室井はめ以子に向かって深々とお辞儀して言いました。

「ごちそうさま」も同じように何か月かぶりです。

感無量のめ以子も室井に向かってお辞儀して返しました。

ごちそうさんでした」

人から恵んでもらうことさえできなかった室井も誰かと食事するのは久しぶりのことでした。

お互いの胸に熱いものがこみ上げてきて … それは涙に変わりました。

「ごちそうさまでした」

ごちそうさんでした」


… … … … …

そして、涙は笑顔に変わり、ふたりの声もだんだんと大きくなって … 何度も何度も叫んでいると …

め以子の目の前に、怒った顔の希子と啓司が立っていました。

「 … 戻るて、言いはりましたよね?」

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2014年03月09日 (日) | 編集 |
それでは、次週の「ごちそうさん」は?

終戦を迎えた日。め以子()は大阪に戻ることを決意する。が、大阪市内は荒れはてており、さっそく荷物を奪われる。

西門家になぜか室井(山中崇)がおり、驚くめ以子。

夜の汽車で戻ってください

心配する希子(高畑充希)に、和枝(キムラ緑子)のもとに帰るように説得されるが、家族を待つというめ以子の意志は固い。

うまいも ~ ん!!

闇市に足を運んだめ以子は、くずジャガイモを揚げて売ることを思いつく。

誰に断って商売してんのや?

源太(和田正人)の助けで商売を始めたものの、さっそく香月(波岡一喜)らチンピラに場所代を請求されるはめに。

わしゃ、通天閣に合わせる顔がないんじゃ!

激怒したあげく源太にまであたるめ以子。不思議がる源太に、希子は活男の戦死公報のことを伝えめ以子の気持ちを思いやる。

私が料理教えるんですか?

め以子は闇市の屋台でおいしく食べてもらうことにやりがいを感じ始める。藤井(木本武宏)と再会し、手元にぬか床が戻る。やがて実家の卯野家と、ふ久の嫁ぎ先の諸岡家が無事とわかる。

私の米や ~

久しぶりに米を手に入れ、炊き出しに精を出した日に、泰介(菅田将暉)の復員という最高の喜びが重なる。活男の件に衝撃を受ける泰介。め以子の周囲に集まる子どもたちを見て、身寄りを亡くした人たちのために動き始める。

一攫千金や!

そして東京から戻った静(宮崎美子)にめ以子は驚きながらも喜ぶ。

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2014年03月08日 (土) | 編集 |
第132回

薄暗い部屋でひとり茶かいをすすり、タクワンをかじるめ以子。

ずるずるばりばり、ずるずるばりばり …

うつろな目で茶碗の中に残っている粥を見つめる。

手から滑り落ちた箸。

突然、め以子は膳に腕をつきました。

「こんなことのために … ご飯、作って来たんと違う!」

… … … … …

親戚の不祝儀から和江が帰宅した時、部屋には食べかけの膳が残されたままで、め以子の姿は消えていました。

和枝は、慌てて外に出て道の先を見ましたが、人影は見当たりません。

「うち、捜してきましょか?」

様子が気になって、戻って来たハナから、和枝はめ以子の元に活男の死亡告知書が届いたことを知りました。

「 … 行かんでええ」

「けど、変な気起こしはったり … 」

「 … 死ねんかった。

このくらいでは、わては死ねんかった」


和枝の脳裏をよぎったのは、同じように息子を亡くした時の記憶だったのです。

… … … … …

その頃、め以子は活男の死亡告知書を握り締め、夜道を何かに憑かれたかのように進んでいました。

慣れぬ足元の悪い山道、つまずいて転んでしまいました。

起き上がり、告知書を懐にしまおうとした時、悠太郎の手紙がないことに気づきました。

転んだ拍子に飛び出たのでしょう、手紙は斜面に落ちています。

片手で突き出した枝をつかんで、もう片方の手を封筒に伸ばしました。

前かがみの体制で何とか封筒を手にした時、つかんでいた枝が折れてしまって … め以子はそのまま斜面を転がり落ちてしまいました。

… … … … …

気がつくと、仰向けに倒れているめ以子の上に無数の星が瞬いていました。

ぼんやり見つめていると … ぐ~っと、腹の虫が鳴きました。

「 … 活っちゃん。

母ちゃんなあ ~ 活っちゃん、居ったとしても、そっちには行けそうにないわ。

お腹の空かん国には行かれへん … 」


3人の子の中で一番め以子の気質を受け継いでいた活男、食べることが好きだった食いしん坊の活男 …

「活っちゃんもなあ、戻って来た方が … 何ぼかええんとちゃうかいな … 」

… … … … …

め以子がいなくなってから数日が経ちました。

「 … さすがに捜した方がええんと違います?」

見かねたハナが和枝に進言していたところへ、武夫に連れられてめ以子が帰ってきました。

「山ん中で道に迷いはったらしい」

髪は乱れ、着物は泥だらけでボロボロ、抜け殻のような表情のめ以子が立っていました。

武夫に礼を言った和枝は、いきなりめ以子の胸倉をつかむと引きずるようにして外へ出て行きました。

畑まで連れて来ると、め以子の体を放り出したのです。

そして、首根っこをつかんで、枯れている芽を鼻先に突きつけました。

「枯れてるやろ? せっかく出てきた芽が!

… あんさんが放り出したからやで。

あんさんがやることやったらへんから、死んでもうたんやで!

あんさんが殺したんや!」


和枝に叱責された言葉がめ以子の心をえぐりました。

「その通りです … その通りです。

あの子を殺したんは … 私です」


枯れてしまった芽と活男が重なって、激しく自分を責めていました。

そして、畑に突っ伏してただただ泣きじゃくるのでした。

… … … … …

置き去りにされため以子は畑の手入れをしてから家へ戻りました。

「活男君の戦死、ホンマかどうか確かめに行こうとしはったんか?」

板の間で出迎えた和枝の問いかけに微かにうなずいため以子。

「あのな、ひとつだけ教えといてあげますわ。

活男君がホンマに亡うなったかどうかは知りまへんけど …

子供亡くすいうんは、1年やそこら泣き暮らしたかてどないもなりまへんで。

慣れるのに10年、20年、人によっては一生かかりますさかい。

それは覚悟したほうがよろしで」


… … … … …

「あ … あの … ご飯、一緒に食べてください」

奥へ入ろうとした和枝に向かって、め以子は追いすがるように言いました。

「ひとりで寝て、起きて働いて … ご飯食べるだけやなんて … 私 … 」

「あんさんは見送るお人やろ?

心も体も生きる力が強うて … おそらく見送って見送って、最後はひとりで生きるお人や」


和枝の言葉は、め以子の本質を的確にとらえていました。

め以子には、その表情は優しくも見え、厳しくも見えたのです。

「ひとりに慣れはった方がええ」

毅然と拒否した和枝はその場を立ち去りました。

… … … … …

和枝に諭されたように、め以子はひとりで食事を取り、ひとりで畑を耕し、ひとりで眠る日々を続けました。

… … … … …

ある日、畑に行くと、収穫を間近に控えていた大根がほとんど無残に食い荒らされていました。

イノシシの仕業でした。

め以子は竹を組み合わせて頑丈な策をこしらえました。

… … … … …

雨の日は部屋で、家族の写真をながめたり、悠太郎の手紙を何回も読み返したりして過ごしました。

ひとりにもだいぶ慣れた頃、季節は夏を迎え、畑には多くの作物が実りました。

見事なニンジンを手に微笑むめ以子。

… … … … …

昭和20(1945)年8月。

その日、和枝の家には多くの人が集まり、ラジオの前に正座をして、その放送に耳を傾けました。

皆が神妙な顔をして無言で頭を垂れている中、一番うしろに控えていため以子は収穫したばかりの瑞々しいナスを手に取りました。

「終わった? … 終わった」

それは、長かった戦争の終わりを伝える玉音放送だったのです。

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2014年03月07日 (金) | 編集 |
第131回

和枝は早速、何処からか鯛や鯖など、食材を調達し、柿の葉寿司の仕込みを始めました。

このご時世にこれだけ揃えるのは至難の業です。

め以子は目を丸くして和枝に尋ねました。

「これどないしたんですか?」

「面倒なんですけど、しゃべらんとあきまへんか?」


和枝は調理の手を休めることなく言いました。

さすがの和枝でも面倒な手順を踏まなければ、揃えられなかったのかもしれません。

ハナは鍋でい草を煮ていました。

「後で分かりますさかい、ご飯炊いてくれまっか?」

め以子も慌てて、作業に加わったのです。

… … … … …

出征を翌日に控えた日。

夕飯は約束通り、柿の葉寿司が振舞われました。

ふたりとも、いつもの部屋でなく、茶の間で食事することを許され、ハナも一緒に泰介の出征を祝ったのです。

うれしそうな顔をして席に着いた泰介が目の前の皿に盛られた柿の葉寿司を見て首をかしげました。

「あれ … これ、柿の葉寿司やないですよね?」

「柿の葉はまだ若すぎてな ~ どうにも包めんから、笹の葉寿司で堪忍や」


寿司を笹の葉で包んでい草で巻いて結わいてありました。

「笹の葉にい草て、ちまきみたいですね」

「お義姉さんが縁起担いでくれはったんよ」

「教えたったやろ ~ あんさん言いなはれ」


和枝は、め以子に花を持たせて説明する役を任せました。

「ああ、あれや … 昔、大陸に物書きが居ってな … 事情があって、川に身投げしたんよ」

「 … 詩人な」


頼りのないめ以子の説明、口を出さないと決めた和枝でしたが、思わず口をついて出てしまいました。

「でな、慕うとった人らが『これ食べ ~ 』って、笹の葉で包んだちまきを川に流してん」

頭を抱える和枝。

「ほしたら、しばらくして、その人の幽霊が出てきてな。

『食べたいけど、これではばらけてもうて、わてのとこまで届きまへんねん』って …

で、皆で知恵絞って、ちまきい草で巻いてな … ほしたら、『食えたで ~ 』って」


話し終えてニコニコしているめ以子を見て、和枝はイライラ。

「何や、あんさんが話すと有難味の薄い話に聞こえますけど …

要するに、い草は『邪気を払ってくれる』転じて『難を逃れる』いうことだす」

「 … 屈原の故事ですよね」


泰介の方が心得ていました。

「伯母さん、お母さん、ハナちゃん … ありがとうございます。

いただきます!」


… … … … …

泰介は3人に礼を言うと、笹の葉寿司を頬張りました。

そんな息子を見ながら、目じりを拭っため以子。

そして、そんなふたりを黙って見つめている和枝。

… … … … …

「美味しかったな ~ お寿司」

寝床に入っても泰介は和枝の笹の葉寿司のことを思い出していました。

あの味こそ西門家の味なのです。

「ホンマ、いつまで経ってもかなわんわ … 料理の腕も、才覚も気遣いも」

め以子ひとりだったら、とても泰介の望みを叶えてあげることは出来ませんでした。

「ホンマは会うときたい人とか居ったんちゃうの?」

「 … お母さん、僕な ~ 遅かれ早かれ、こうなるやろなって思うてて … もし死ぬとしたら、最後に誰を守りたいやろって思うたら …

それは、お母さんやった … 残念ながら、今のところはな」


だから、母がひとりになってしまう前に居場所を見つけてあげたかったのです。

め以子は起き上がって、布団の上に正座しました。

「お母ちゃん … あんたに何かしてやれたんかいな?

何や、何も … 何もしてやれへんかった気がするわ。

お母ちゃんらしいこと、何も … 」


送り出す日を明日にして、そんな気持に苛まれているめ以子でした。

「お母さんは、一番大事なこと教えてくれたで」

泰介も体を起こしました。

「生きてるいうことは、生かされてきとるいうことなんやて … 僕は命の犠牲の上に成り立った『命の塊』なんやて。

せやから、僕の命はすり切れるまで使いたいて、思てた。


… … … … …

僕やりたいこといっぱいあるんや。

もういっぺん野球したいし、お酒とかも飲んでみたいし、くだらへんことでケンカして殴り合いのケンカとかもしてみたいし …

お父さんみたいに、自分を賭けて仕事してみたいし … 」


そして、泰介は振り返ってめ以子の顔を見ました。

「お母さんみたいに …

誰かをアホみたいに好きになってみたい」


うなずいため以子。

… … … … …

「 … 僕は、僕にそれを許さんかったこの時代を … 絶対に許さへん!

僕は … この国を変えてやりたい!

せやから、這ってでも帰ってくるさかい …

生き返らせてや!」


暗がりで泰介は顔をそむけてはいましたが、涙を流しているのが分かりました。

泰介が初めて見せた怒り、そして弱さでした。

「あそこでまた皆でご飯食べさせてな」

め以子は泰介の頭を撫でて、そして抱きしめ、繰り返し言いました。

「任せとき … 任せとき」

… … … … …

あくる朝、泰介を気丈に送り出しため以子は、和枝に感謝の意を伝えました。

「お義姉さん、この度はありがとうございました。

無事、送り出すことができました」

「ま、日本中の女がやってるこっちゃ … 」

「 … 畑行ってきます。

あの子の植えた二十日大根の芽が出るころなんで」


そう言って、休む間もなく農作業に出かけていきました。

それと入れ替わりにハナが入って来ました。

「今日は西の山下の方で不祝儀出たらしいんで、遅うなります」

「 … うちはどないしましょう?」


ハナもやはりめ以子のことを気にかけていたのです。

「いつも通りでええよ ~ 思たよりしっかりしてるし」

… … … … …

夕方、作業を終えため以子が家に戻ると、上がり框に封書が置いてありました。

め以子宛ての手紙 … 差出人は希子です。

腰かけて封を開けるめ以子。

中に入っていた便箋に挟まれていたものは、悠太郎とめ以子の祝言の時に写した家族写真でした。

回りが少し焼けてしまっていますが、皆の表情はよく分かります。

『 … 瓦礫の処分をしていたら、奇跡的に1枚無事でした。

何はなくとも、これだけは残るなんて、何だか救われました』

「ホンマにね … 」

泰介が出征した日に届くなんて、幸先がいいのかもしれない … そんな気がして微笑んでいると、誰かが家に入ってくる気配がしました。

… … … … …

「ごめんください」

「はい、山下は今出かけておりまして … 」


しかし、その役人と思われる男は和枝に用があってきた訳ではありませんでした。

「こちらに西門さんはいらっしゃいますか?」

「私ですけど?」


め以子が本人だと知ると、男は帽子を脱いで頭を下げました。

「公報が届いています」

男が差し出した封筒を受け取るめ以子。

… … … … …

「 … どないしはったんですか?」

紙切れを手にしたまま、土間に佇んでいるめ以子に気づいたハナが声をかけました。

『海軍上等兵 西門活男

右 昭和二十年三月十八日 沖縄西方海域方面ノ戦闘ニ於テ 戦死 セラレ候 … 』

届いたのは、活男の死亡告知書だったのです。

ハナの問いかけも応えず … しばらく微動だにしなかっため以子ですが、突然。家を飛び出して行ってしまいました。

… … … … …

「これ、これホンマなんかいな?

希子ちゃん、分からへんよな ~ そんなん、こんな紙切れ1枚送られてきたかて … 」


め以子は、ラジオ局の希子の元へ電話をかけていました。

「 … 間違いいうこともありますから、信じることない思います」

すぐに駆けつける訳にもいかない希子は、まずはめ以子を落ち着かせようとそう伝えました。

「そうやんね ~ そうやんね ~ ごめんね」

… … … … …

家に戻った時は、もう辺りは暗く、ハナの姿はありませんでした。

鍋のふたを取ると、ハナが用意してくれた茶かいが入っています。

明りも点けず、部屋で食事をとるめ以子 … うつろな顔 … ずるずるばりばり、ずるずるばりばり。

空しく響くだけの夕食でした。

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2014年03月06日 (木) | 編集 |
第130回

め以子が庭に回ってみると、和枝は縁側に座っていました。

「後ろ向いて屈んで」

言われたように、和枝の前に背を向けて屈んだめ以子。

「ちょっと乗るさかいな」

「え、えっ?」


肩に手をかけてきました。

「足首やったんや、村の寄合出なあかんさかい ~ 早う」

猫のタイチと遊んでいて足首をひねってしまったのでした。

おぶって行けということのようです。

「ええんですか?

私、わざと落とすかもしれませんよ」

「何や?

わてのこと好きや言い続ける言いはった、あれは反古でっかいな?」


人が昔、口にしたことを決して忘れず、持ち出す和枝の得意技でした。

「僕やりましょうか?」

泰介が代わろうとしましたが、め以子も意地になりました。

「どうぞ、お義姉様」

め以子が背中を差し出すと、当然のような顔をして乗って来ました。

「あんた、大きいだけで、乗り心地悪おますな ~ 」

め以子はよろよろと歩き出しました。

… … … … …

寄り合いが終わって、再び和枝を背負って帰って来ため以子、さすがに往復はきつく、腰にきました。

「ちょっと、あんさん ~ おかいさん作ってくれはる?」

休む間もなく言いつける和枝。

「私がやるんですか?」

「いや … 足悪い婆さんに飯炊け言わはるんでっか?

あんさん、鬼だすな ~ 」

「 … 分かりました」


… … … … …

「そのお魚使うんですか?!」

ハナが顔色を変えたのも無理はありません。

め以子は何処で見つけたのか、とっておきの魚を持ち出してきたのです。

「ちょっと、そんなええのん使わんとって!」

「お義姉さんのお身体にええもん、お作りしますんで … 」


板の間から和枝に文句を言われても、め以子は涼しい顔で答えました。

和枝はハナに取り上げるよう命じましたが、め以子は魚の乗った皿をハナの背では届かない高い棚の上に置いてしまいました。

「台や、台持っといで! … 痛っ!」

足首のことを忘れて、思わず立ち上がろうとした和枝は引っくり返ってしまいました。

ハナが台を取りに行っている間にさっさと調理し始めるめ以子。

「 … 結構、気力あるやんか?」

こっそりと見ていた泰介は可笑しくて仕方がありませんでした。

… … … … …

次の日、め以子はハナと一緒にジャガイモの仕分けを手伝わされました。

「それはこっち … ホンマにあんさんはトロ臭い!」

板の間に座って指示を与えるだけの和枝。

め以子の慣れない手つきを見てイライラしています。

「 … 何で、わざわざこんなことせなあかんのですか?」

「供出分と自分とこで売りさばく分に分けるんや ~

目方が同じいうとこが穴や」


供出分の方があきらかに粒が小さく、売りさばく分は大きく出来がいい物でした。

「こっちが私らの配給に回ってくるんですか … 」

「文句あるんやったら、自分で作りはったらええがにゃ … にゃ ~ 」


抱いているタイチに話しかけ、足を引きずりながら奥へと行ってしまいました。

… … … … …

め以子は昨日泰介から聞いた話を思い出していました。

「えらい身勝手な仏さんやな … 」

ぼそっとつぶやくと、横で作業していたハナがふっと笑いました。

「配給にええもん出しても、営団の小役人に抜かれたり、横流しされますから … それがお嫌いらしゅうて。

それやったら、困って買い出しに来る人にええもん売りたいて」


意外な事実でした。

和枝は、このハナという少女には本音を漏らしているようです。

… … … … …

それから数日が経ちました。

「伯母さん、足だいぶようなりはったな ~ 」

「明日から、もう私はお役御免やて。

… あんさんのトロ臭い手つき見んで済むと思うと、ホッとしますわ ~

イライラして、心臓止まるかと思うとったさかいやて」


和枝の世話をしないで済むようになったら、また例の土地が待っています。

め以子が和枝にかかりきりの間は泰介がひとりで耕し続けていたのです。

「 … あんな、お母さん。

僕、そろそろ今日と戻ろうかな思うんやけど」


泰介はまだ学生の身分でした。

最初は、め以子を和枝の元に預けたら、すぐに帰るつもりだったのですが … 母が心配で今日まで長居をしてしまったのです。

「あ … あ、そうやね。

そろそろ学校始まるもんね … 」

「 … もうちょっとおろか?」


泰介にはめ以子が一瞬心細そうな表情をしたように見えました。

「いや、そんなん … ちゃんと帰り。

学校なんやから、帰らなあかんよ ~ 大丈夫、だいぶ昔の感じ思い出してきたし … 」

「明日の昼までは、居るさかい」


… … … … …

「そうでっか ~ 明日帰りはるんでっか?」

「はい、ホンマにお世話になりました」


泰介は和枝に学校へ戻る報告と今までの感謝の意を伝えました。

「畑、もうちょっと仕上げてから行ってほしかったですけどな」

「 … あの、ひとつお願いがあるんですが」


泰介はダメもとで口にしてみました。

「時々、母と一緒に食事をとってやっていただけないでしょうか?

母は食卓を囲むことにすべてを賭けてきたような人ですから、とうとうひとりになってしもうて … かなり堪える思うんです」

「女はひとりでご飯食べられるようならんと … 」


ポツリと和枝がつぶやきました。

「えっ?」

「まっ、考えときますわ」


断られなかっただけでも、よしと泰介は思いました。

… … … … …

「あ、ついでにそれ持ってって」

和枝の指さした先、箕の上にジャガイモの種芋と二十日大根の種が入っていました。

「明日、植えてから行きはったら、どないだす?

可愛い息子と植えた思たら、あの人も大事に世話しはりますやろ?」


泰介が植え方を尋ねると、和枝はあきれ返った口調で言いました。

「京都帝大はそんなことも知らんのかいな?」

… … … … …

翌日、泰介はめ以子と一緒に自分たちが耕してきた畑に、和枝から教わったやり方で種芋を植え、二十日大根の種をまきました。

「お母さん、これできたら送ってな」

「ああ、ほな、がんばって育てんとな」


和枝の思惑通り、母がこの畑にやりがいを感じてくれたら、それはそれで安心できることでした。

… … … … …

「西門さ~ん!」

ハナの呼ぶ声に振り向くふたり。

「追いかけ茶かな?」

そう思いましたが、今日は何も手に持っていません。

息を切らせて走って来たハナ、いつもと少し様子が違います。

「奥様が、すぐに家に戻って来いて!」

そう告げられた泰介の顔からサーっと血の気が引いていくのがめ以子には分かって …

思わず、腕をつかんでいました。

「何か用事で呼んでるだけかもしれへんし … 取りあえず、行ってくるわ」

努めて平静を装い、母の手を解くと、ハナと共に走って帰って行きました。

自分を言い聞かせるようにうなずいため以子は畑仕事を再開しました。

… … … … …

畑に水を撒いていましたが、め以子の心の中の暗雲は一向に消えません。

泰介も戻っては来ません。

居てもたってもいられなくなって、め以子は家に戻りました。

… … … … …

「 … 何やった?」

泰介は部屋にこもっていました。

襖の外から、め以子が恐る恐る尋ねても返事はありません。

意を決して部屋に入ると、泰介は静かに机の前に座っていました。

「うん … 来てしもうたわ、お母さん」

机の上には赤紙が置かれています。

「そう … 」

へなへなとしゃがみ込んだめ以子。

「 … そうか」

ついに泰介まで行ってしまう ~ 体中の力が抜けていくようです。

「 … 逃げ切れへんかった」

寂しく笑った泰介。

… … … … …

め以子は気を取り直して、泰介に尋ねました。

「何 … 食べたい?

泰介、何食べたい?」


自分が泰介にしてあげられることを考えたのです。

「 … 何でもええの?」

「うん … 何でも、何でもええよ」


その時、泰介の頭に浮かんだのは …

子供の頃に食べた柿の葉寿司でした。

祖父の正蔵の大好物、家族が全員揃っていた … 西門家が一番幸せだったころの思い出 …

… … … … …

「 … それで、あの、泰介が、お義姉様の作ってくれはった柿の葉寿司をもう一度食べたいと申しておりまして … お教え願えないかと … 」

泰介の希望を叶えたい一心で、め以子は和枝に頭を下げました。

「教えたって、あんさん … 米も魚も手配できゃしませんやろ?」

「はい … 」


和枝はひとつため息をつきました。

「素直にお願いします言うたらええもんを …

材料は、わてが揃えますさかい」

「ホンマですか?」

「行かはるんやったら、もう、あんさんの息子やないさかいな。

… 御国の人になるいうことやろ?」

「 … はい」


め以子は消え入るような声で返事をしました。

和枝に言われて、出征させるというのは、そういうことだと思い知らされたのです。

それから、和枝は隣の部屋から風呂敷包みを持ってきて渡しました。

「仕度もありますやろ … 」

赤紙が来たことを知って、急きょ揃えてくれていたのでしょう。

「ホンマに … ホンマにありがとうございます」

心遣いがありがたくて、深く頭を垂れているめ以子に向かって、和枝は厳しく言いました。

「あと5日や、頭上げてなはれ

… … … … …

部屋に戻って、風呂敷包みを開けると、布と裁縫道具、便箋に切手と封筒、筆記用具にインク、それに付近の地図まで入っていました。

「 … さすが、非の打ちどころがないわ。

仕度に入りそうなもん、全部入ってる」


感謝するとともに改めて和枝のすごさに感服した次第でした。

「これ使うてええ?」

泰介は便箋と筆記用具を手に取りました。

「友達とか会いにいかんでええの?」

「何処に居るかわからんし … 5日ないのに会うてる間ないよ」


以心伝心の人もいないようですし …

「希子叔母ちゃんと啓司叔父ちゃんには知らせてみるな」

「ええよ ~ 来るのもひと苦労やろうし、忙しいやろし … 僕から手紙出しとくから」


… … … … …

夜も更けて、め以子は夜なべして、和枝が用意してくれた布で泰介の下着を縫っていました。

傍らで寝息を立てている泰介に目をやると、目頭が熱くなってきます。

ふと先ほどの和枝の言葉を思い出しました。

涙を拭って、頬を叩きました。

「しっかりせい … 」

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2014年03月05日 (水) | 編集 |
第129回

翌日、ふ久のことをキヨと菊子が迎えにやって来ました。

「諸岡のお祖父ちゃん、無事やて、よかったな ~

西門のお祖父ちゃんも、きっと無事やからな」


め以子は腕の中の孫にそう語りかけました。

「 … 今度こそ皆でご飯食べような」

「ひい祖母ちゃんやで、覚えといてや ~ 」


お静も別れを惜しんで赤ん坊の顔を覗き込んでいます。

名残は尽きませんが … め以子は赤ん坊をふ久に返しました。

「ほな … あんたもしっかり食べんねんで。

お母ちゃん倒れたら、終わりやからな」

「うん」

「必ず食べさせますさかいに … 」


め以子がキヨに頭を下げると、お静と泰介もそれに倣いました。

ふ久たちが疎開先に旅立った後、お静も桜子の元へと出発しました。

… … … … …

お静の見送りは泰介に任せて、め以子は西門家の焼け跡に向かいました。

瓦礫をよけて物色してみましたが、これといった物は見つからず、ほとんどが灰燼と化していました。

しばらくすると泰介が戻って来ました。

「お祖母ちゃん、列車乗れた?」

「うん、ずっと立ってなあかんてぶうぶう言うてたけど … お祖母ちゃんのことやから、うまいこと言うて座らせてもらうやろ」

「ま、せやね」


その光景が目に浮かぶようで、め以子は笑いました。

「よしっ、ほな … お母さんも行くで!」

「え?」

「僕が上手いことやるから ~ 伯母さんのとこ行くで!」


… … … … …

泰介は嫌がるめ以子を何とか言いくるめて、和枝の家に行くことを了承させました。

要は土地を手放さずに済めば、取りあえずめ以子も異論はないのです。

「そんなんで、上手いこといくはずないて … 」

しかし、和枝の家に向かう道中で泰介から聞かされた方法は、どう考えても無理がありました。

「やってみんと分からんやん」

め以子には泰介のこの自信の根拠がどこにあるのか不思議でした。

… … … … …

「はあ、それは難儀でしたな ~ 」

和枝に一部始終を説明した泰介、すべて任せるように言われているめ以子は、ただ緊張しながら黙って横に座っているだけでした。

「母の受け入れを … 何とか、お願いできないでしょうか?」

「何や勘違いしてはるみたいやけど …

わては一度も受け入れんなんて言うてまへんで ~ 条件飲みはらんのは、そちらの方で」


すると、泰介は手にしていた風呂敷包みを解き、中に入っていた缶のふたを開けて、和枝に見せました。

「 … これのことですよね?」

その中に入っていたのは、真っ黒に焼け焦げてくずれかかった紙切れと熱で溶けて原型を留めていない小さな塊でした。

「何やこれ?」

「土地の権利書と印鑑です」

「 … ふざけてはる?」

「いいえ ~

ホンマにこれが権利書で、これが印鑑なんです!」


め以子は内心冷や冷やしながらも、物おじせずに和枝と交渉する泰介の度胸は我が息子ながら大したものだと感心していました。

自分だったら。あっという間にボロを出していたに違いありません。

「悠太郎さんが、そんな大事なもん、燃えるようなとこ入れておく訳ないやろ?!」

さすがに見抜いたのか和枝は少し声を荒げました。

「ホンマなんです。

燃えへんとこないような、空襲やったんです … 何なら一緒に見に行ってもええですよ」

「 … 取りあえず一筆書いといて」


この要求も泰介には想定内のことでした。

「僕も母も権利者ではないので、法的には無効や思いますけど … それでもええですか?」

… … … … …

こうして、泰介は和枝にめ以子を受け入れることを何とか認めさせ、狭いながらも部屋をあてがわれたのでした。

「取りあえず置いてもらえたからええじゃない?

… けどあれやな、骨のありそうな人やな」


和枝に対する泰介の印象はそれ程悪いものではなかったようです。

「呑気なこと言うて … 」

め以子は実際、和枝がいつ怒り出すかハラハラしていたのです。

「希子叔母ちゃんから出て行きはるまでのことは大体聞いたけど … 和枝伯母さんここではどんな風に暮らしてはったん?」

「奥さん亡くされた旦那さんのとこに後妻に入りはったんや」

「今は伯母さんひとり?」

「20年やからね ~ 順繰りに見送りはって、息子さんらは家業継ぎはらへんかったて聞いてるけどね … 」


… … … … …

「め以子はん!」

そんな話をしていると、襖の向こうで和枝の呼ぶ声が聞こえました。

「はい!」

慌てて開けると、目の前に和枝が立っていたので、め以子は腰を抜かしそうになりました。

「お台所手伝ってくれはる?」

「 … 私も一緒にですか?」

「なんや、働きもせんと居座るつもりやったんか?」

「え、いや ~ と、とんでもない」


… … … … …

仕度して台所に顔を出しため以子は目を見張りました。

随分と長い間目にしていない新鮮な野菜がそこには豊富に揃っていたのです。

カゴいっぱいの卵までありました。

「どないしはりました?」

感慨に浸っていると、若いおなごしの沢田ハナが声をかけてきました。

「こんなお台所、久しぶりで … 」

「ほな、やりまっせ!」


思う間もなく、尻を叩かれため以子でした。

… … … … …

手持無沙汰の泰介は家の周りを散策していました。

畦道ですれ違った老人に挨拶をすると、話しかけてきました。

「あんた、この辺の人やないな?」

「 … そうです。

山下さんの所に母がご厄介になるんで」


改めて帽子を脱いでお辞儀すると、老人から強い口調で返されました。

「あんた、この辺であそこの身内や言わん方がええで!」

… … … … …

ひと回りして戻って来ると、め以子が出来上がった料理を膳に並べ、おひつからご飯をよそっているところでした。

「うわっ、美味しそう!」

泰介にとっても、め以子にとっても久しぶりに見るまともな食事でした。

「何で3膳なん?」

そこへ、奥から出て来た和枝が怪訝な顔をして尋ねました。

「あっ … ハナちゃん、通いやないんですか?」

「えっ、あんさんら、これ食べはるつもりでっか?」

「 … せやかて、一緒に作ろうって」

「そら、手伝うてとは言いましたけど …

はあ ~ いきなり押しかけてきはって、白いおまんままで食べはるつもりでっか?」

「せ、せやけど … これ、どう見ても、おひとりの量とちゃうやないですか」

「ハナに持って帰らそう思て、余分に作ったんだす」


そう言われて驚いたのはハナの方でした。

「 … 持って帰り、弟らなあ ~ 具合悪いんやろ?」

見事、和枝にしてやられました。

手口は十分知っていたはずなのに、ひさしぶりの食材を前にして、うっかり気を抜いてしまったのです。

… … … … …

ふたりに与えられたのは、いち膳の麦飯と数切れのタクアンと菜っ葉の漬物でした。

それを三畳の部屋へ持って行って食べさせられたのです。

ため息をつくめ以子。

母に悪いとは思いながらも、泰介は何故か笑いが止まりませんでした。

… … … … …

翌朝、ふたりが起きてくると、和枝の姿がどこにも見当たりません。

「まだ寝てはるのかな?」

ちょうどその時、すでに畑でひと仕事を終えた和枝が戻って来ました。

「都会の方らはまあ、お殿様みたいでんな ~

はあ、わてらはもったいないもったいないて、お陽さんと一緒に動きますけど … 都会の人らはそんな貧乏性なことしはりませんもんな ~ 」


起きる早々嫌味を言われました。

「 … 何をいたせば、よろしいでございましょうか?」

… … … … …

「今日中にこれ、全部 … 」

ふたりが命じられた仕事は、手つかずで雑草だらけの荒れ地を今日中に耕せというのです。

呆然と途方に暮れるめ以子と泰介でした。

… … … … …

「あの、奥様 … 」

食事の支度をしている和枝を手伝いながらハナが遠慮がちに尋ねました。

「何であの人らには、『訳の分からない』いけずされるんですか?

… 奥様らしゅうないいうか」


ハナの話を聞いている和枝の顔はことのほか穏やかでした。

「あの人とわてはな、死ぬまでお互いにいけずし合うて約束したんや。

いやでもせなしゃあないやんか ~ ホンマにもうやることぎょうさんありますのに … 」


心から難儀そうに言った和枝でした。

… … … … …

腹をくくったふたりは、気を取り直して、仕事に取り掛かっていました。

「朝ご飯、食べそびれたな … 」

「僕、何かもろうて来ようか?」


空腹も限界に近づいた時、鍋と盆を手にしたハナが走ってくるのが見えました。

「西門さん ~

『追いかけ茶』持ってきました!」


… … … … …

何とか朝食にありつける … ふたりは仕事の手を休めて、ハナが用意した席に腰を下ろしました。

「『追いかけ茶』いうんです。

奥さんらがご主人が出た後に炊いて、追いかけて持ってくるから」


それは、和枝が作っていたお茶で炊いた粥でした。

「この辺では『茶かい』いうんです」

茶碗によそった茶かいを手渡しながらハナが教えてくれました。

… … … … …

茶かいをすする時「ずるずる」という音がして、つけ合わせのタクアンをかじる時には「ばりばり」という音がします。

「にぎやかな音するご飯やね ~ ずるずるばりばり」

「家族多いともううるさいですよ。

この辺では『ずるずるばりばりは、家族の音』いうんです」


ハナは、兄弟も何人かいるらしいので、大家族なのかも知れません。

… … … … …

「おお、ハナ ~ ちょっと運ぶん手伝うてくれ」

そこに偶然、農具を積んだ荷車を曳いて通りかかったのはハナの父親・武夫でした。

「僕、行くわ」

泰介は、茶碗に残っていた茶かいをかっ込むと立ち上がりました。

… … … … … 

ハナの家は、和枝の山下家の小作の農家でした。

農具を下ろすのを手伝いながら、泰介は昨日の出来事を武夫に尋ねました。

「昨日歩いてたら、道で会うた人に、伯母の身内やて言わん方がええみたいなこと言われたんですけど …

何でですか?」

「先々代 … 奥様の舅はんは、『仏さん』言われてはったんです。

小作が小作料払わんでも『ええでええで、大変やろ』で、保証人にはなってくれはるで … 」


和枝も、姑が倒れて後妻としてやってきた頃は、気は回って手も早く、畑仕事も厭わないので、『三国一の嫁』と評判だったそうです。

「それが ~ 先々代が亡うなりはったへんからかいな、ばったばった大鉈を振るい始めはったんです」

「 … 大鉈」

「ご自分で出向いて取りたてはしはるし、押収するし、書類まで書かしはるし ~

『三国一の嫁』は、あっという間に『鬼嫁』言われるようになって … 」


何事にもきちんとけじめをつけないと気が済まない和枝らしい話だと泰介は思いました。

「伯母は、何て?」

「何も言わん。

何も言わんと、黙々と小作に作物の品種変えるよう言うたり、肥料工夫するよう言いはったり …

それがえろう成功してな ~ わしみたいに楽になった者も多て。

そういう連中は『奥様こそ仏さんみたいや』と思うてる … 厳しいけどな」


武夫の話を聞いた泰介は和枝の本性を垣間見た気がして、自然と頬が緩んできました。

… … … … … 

1日の仕事を終え、井戸端で手足を洗っている時、泰介は武夫から聞いた話をめ以子に伝えました。

「けどあれやな ~

何で未だに、お母さんにだけはしょうもないいけずしはるんやろな?」

「それは … ずっと、いけずし合うて約束したからや」

「はあ?」

「まあ、約束守ってはるだけとも言えるんや … 」


泰介にはよく理解できない関係でした。

「ほな … お母さんも、やり返さんと」

「 … 今、そんな気力は」


居候の身であるし、抱えきれないほどの心配事もあり、生きるだけでいっぱいいっぱいでした。

… … … … …

そこへ、和枝に言いつけられたハナがめ以子のことを呼びにやって来ました。

「あの、奥様が呼んではるんですけど … 」

次はどんな難題を吹っかけてくるのか … め以子と泰介は顔を見合わせました。

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2014年03月04日 (火) | 編集 |
第128回

「ふ久、ふ久?!」

「姉ちゃん!」


ふ久は大破したリヤカーから放り出されながらも、しっかりと赤ん坊を抱きしめていました。

「ふ久、ふ久、大丈夫か?」

少し離れた場所へ飛ばされていため以子も這いずるようにして、ふ久に駆け寄りました。

何とか赤ん坊ともども無事なようです。

しかし、辺りは、燃え盛る火の海、逃げ惑う人々、叫び声、建物が崩れる音 … 

「死んでしまう … 死んでしまう

呆然と立ち尽くしため以子は、ふと懐に手を当てました、

「はっ?!」

悠太郎の手紙がありません。

慌てて、見回すと、幸い足元に落ちていました。

手紙を拾って、祈るようにそれを胸元に押し当てました。

顔を上げた時、頭上の百貨店の看板に書かれた『地下鉄心斎橋駅』の文字が目に飛び込んできました。

「 … 悠太郎さん」

「お母さん、大丈夫?」


しゃがみ込んだままのめ以子を心配して泰介が声をかけました。

「地下や … 」

「えっ?」


すくっと立ち上がっため以子は叫びました。

「地下鉄や!」

… … … … …

先陣を切って駆けてきため以子。

ふ久は泰介が背負って、赤ん坊はキヨが抱き、お静と産婆が後に続いてきました。

そこは、地下鉄心斎橋駅の入口でした。

しかし、鍵がかかっていて中に入ることができません。

「すいません ~ すいません、開けてください!」

門を揺すって、大声をあげましたが、誰も出てきません。

「開けろ、開けろ ~ !!」

思いきり蹴飛ばしても、びくともしません。

業を煮やしため以子は、立札を手に取ると、その柄の部分で門を壊しにかかりました。

「開けろ、開けろ ~ !!」

… … … … …

「おい、やめんかい! 何やってんねん?!」

ようやく駅員が門の向こうから飛び出して来て、め以子を止めました。

「空襲時は、駅は開けられへんのや ~ 危険なんや!

防空法で、そう決まっとるんや」

「この地下鉄造ったんはうちの人や!

何かあったら、地下鉄に逃げ込めって、ここに書いてある!」


め以子は悠太郎の手紙を突きつけました。

「 … ここが一番、安全なんや!

造った人がそう言ってるんや ~ 何の、何の信じられんことがあるんや?

ホンマに、ホンマにお願いします」


め以子が門の向こうの駅員に頭を下げると、ふくを背負った泰介も同じように頭を下げました。

… … … … …

め以子の気迫に負けた駅員は鍵を開け、門を開きました。

「皆、早う中へ!」

め以子に促され、辺りにいた人々が口々に礼を言いながら、ホームへと続く階段を下って行きます。

悠太郎の手紙に頭を下げて感謝した後、め以子も皆に続きました。

… … … … …

薄暗いホームへなだれ込む人々。

悠太郎の手紙に書いてあった通り、頑丈な建築物で守られたこの場所は地上のどんな場所よりも安全でした。

ホッとひと息ついため以子たち。

「大丈夫か、ふ久?」

ふ久はうなずいて、キヨから赤ん坊を受け取りました。

… … … … …

しばらくすると、警笛が聞こえ、暗闇の向こうから電車が走ってくるのが見えました。

人々が不思議そうな顔で見つめる中、ゆっくりとホームに停車しました。

「梅田方面は火が回ってませんから、取りあえずそちらへ走らせます」

先程の駅員でした。

「おおきに、おおきに」

この駅員がめ以子の言葉を信じて、門を開けてくれたお蔭でここにいる人たちは命拾いできたのです。

… … … … …

電車の中は、すし詰め状態でした。

「 … お母ちゃん、おおきに」

ふ久に礼を言われた時、め以子は改めて、生まれたての命を守ることができたことを実感したのでした。

「抱っこさせてもろうてええ?」

始めて抱いた我が孫は、すやすやと眠っていました。

「 … 悠太郎さん、お祖父ちゃんになったで」

< 守ってくれたね、悠太郎さん … 守ってくれたね … よかったね、め以子 … >

… … … … …

次の日。

残り火がくすぶる中、家に戻って来ため以子たちは、信じられない光景を目の当たりにしました。

空襲は、一夜にして街を焼き尽くし … 西門家も蔵だけ残して、家屋は全て焼け落ちてしまっていたのです。

しばし呆然と立ち尽くしていため以子ですが、赤ん坊の泣き声で我に返りました。

「とにかく、落ち着けるとこどっか探さんと … 」

出産したばかりのふ久の体調も心配です。

「め以子!」

瓦礫をよけながら、現れたのは源太でした。

「よかった、皆無事か?」

ホッとした後、め以子の腕の中で泣いている赤ん坊を見て驚いた顔をしました。

「 … その子?」

「空襲の中で生まれたんや ~

源ちゃん、取りあえず、ふ久とこの子、どっか避難できるとこってある?」

「うま介は焼けてへんから、あっこやったら」


… … … … …

源太にふ久やお静のことを頼み、め以子と泰介は、焼け跡に残りました。

敷地内を回っていると、瓦礫に埋もれたかまどの残骸が目に入りました。

泣いたり笑ったりしながら、料理を作った … 嫁いで以来ずっとそこはめ以子の城だったのです。

その傍らには、焦げて壊れたちゃぶ台が転がっていました。

家族そろって食事した日々 … 遠い昔のことのようです。

… … … … …

台所だった場所でめぼしい物を探していると、瓦礫の間に割れた陶器の破片が見えました。

ハッとして手に取るめ以子。

糠床のツボでした。

底の部分に焦げてこびりついた糠床の亡骸 …

「半分、地下室に移しといてやったらよかったわ … 」

… … … … …

町内の様子も昨日とは一変していました。

見渡す限りの焼野原で、め以子たちと同じように、多くの人たちが自分の家があった場所で探し物をしているのが見えます。

め以子と泰介は、蔵の前に『うま介にいます』という立札を立てて、その場を後にしました。

… … … … …

「め以子ちゃん、泰ちゃんも大丈夫やったか?」

奇跡的に無事だったうま介は多くの焼け出された人たちを受け入れて、避難所のようになっていました。

「子供抱えているお母ちゃんらに2階使うてもらうさかい … ふ久ちゃんも一緒に」

め以子は馬介に頭を下げました。

ふ久たちさえ落ち着ける場所があれば、取りあえずは安心できます。

… … … … …

「ふ久、食べるか? 中は大丈夫や思うねんけど」

焼け跡で見つけてきた焦げた芋を割ってふ久に食べさせていると、傍らに座っていた同じように赤ん坊を抱いた女性の視線を感じました。

「 … どうぞ」

割った半分を渡すとその女性はありがたそうに受け取りました。

… … … … …

その晩は、立札を見て駆けつけた希子も加わって、め以子と泰介が焼け跡から掘り出して来た芋や野菜を食べながら、皆で食卓を囲みました。

「これからどないすんねん?」

源太が西門家の女性たちに尋ねました。

「ああ、うちは桜子さんとこに」

ひ孫の顔を拝んだお静は予定通りの疎開です。

「私と啓司さんは、取りあえず放送局に寝泊まりして、そばにアパートでも探そうか思うてる」

放送に携わっている希子たちは大阪を離れる訳には行かないのです。

ふ久もキヨが迎えに来たら、疎開先に向かうことになっていました。

… … … … …

「お前はどないすんのや?」

ひとり、行先が決まっていないめ以子でした。

「お静さんと一緒に行く訳には行かんのか?」

「遠いし、活っちゃんも悠太郎さんも戻って来るとしたら、こっちやろうし … ふ久かて、あんな無茶して、この後大丈夫かどうかも分からへんし … 」


何だか理由をつけて、この場所を離れたくないような口ぶりです。

「和枝さんのとこは受け入れてもらわれへんの?」

来るのなら家屋敷を渡すように言われていることをお静が説明しました。

建物は蔵を残して、焼けてはしまいましたが、土地の権利はまだ残っているのです。

「そんなん渡してでも、行った方がええと思うけどな」

「私の一存で渡すなんて、ありえへんわ …

ちょっと、ふ久の様子見てくるな」


そう断ると、まるでこの話題から逃げるかのように2階へと上がって行ってしまいました。

「 … あそこあきらめてしもうたら、皆戻って来えへんような気してるちゃうかな?」

お静は2階を見上げながらそう言いました。

… … … … …

『14日、ふ久に子供が生まれました。元気な男の子です』

いつの間にか、め以子は外に出ていました。

木箱を机代わりにして、月の明かりを頼りに悠太郎の手紙の裏に出来事を書いていると、店の中から泰介が出てきました。

「何やってるの?」

泰介は、お静の言葉が気になって、母の姿を捜していたのです。

「お父さんにな、戻って来たら話したいこと書き留めてるの」

泰介が覗き込んで見ると、配給のこと、酒の特配があったこと、押し入れの隅からクッキーが出てきたこと … 取りとめなく書き記してありました。

「いいことしか書いてへんやん」

笑うと、少し寂しそうに答えました。

「悪いこと考え出したら、気力のうなってしまうさかい … 」

それで心のバランスを保っているかのかもしれません。

泰介が改まって、母に身の振り方を尋ねようとした時でした。

「空襲の時、地下鉄走ったのって … ええこと? 悪いこと?」

反対に尋ねられた泰介は、昨晩のことを思い返しました。

『この地下鉄造ったんはうちの人や!

何かあったら、地下鉄に逃げ込めって、ここに書いてある!

… ここが一番、安全なんや!』

「ええ悪いは別にして … お父さん、喜ぶと思うけどな」

泰介の答えに満足そうに笑っため以子。

「そっか ~ ほな、書いとこう」

せっせと鉛筆を走らせる、そんな母を微笑みながら見ていた泰介でした。

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2014年03月03日 (月) | 編集 |
第127回

満洲へ旅立った悠太郎が残した便せん何枚もにしたためられた長い長い手紙。

め以子は、その裏に悠太郎に伝えたい出来事を書き留めておくことにしました。

『 … ふ久とお義母さんの疎開先が無事決まりました。

お義母さんは桜子のところ、ふ久は諸岡さんの親戚のところへ。

送別会は、鶏鍋です』

め以子は台所にかけてある鍋の中を覗き込みました。

いい具合に茹っています。

「 … おおきにな」

疎開するふたりのために、タマコの最後のご奉公でした。

… … … … …

朝、西門家の食卓を囲む人数も4人にまで減っていました。

これでお静が疎開すれば、め以子と希子夫婦だけということになります。

棚の上に飾ってある、悠太郎とめ以子の結婚式の時と比べたら、随分寂しくなったものです …

「希子ちゃん、何時ぐらいに戻って来られそう?」

「う~ん、8時には」


今夜の送別会は、諸岡家の皆も集まって、ここで開かれることになっていました。

「はあ、鶏鍋 … 」

啓司が、残念そうにため息をつきました。

今夜は泊りなので、送別会には出られないからです。

「ちゃんと取っといてあげるわよ」

「お願いしますね」


め以子に頼んだ啓司の顔は真剣でした。

… … … … …

「 … あとひと月おったら生まれんのに ~ どうせやったら、産んでから行ったらええのに … 」

疎開はひ孫の顔を見てからと決めていたお静の愚痴がまた始まりました。

「もう ~ 東京、名古屋と空襲来てしもうたんですから。

大阪も危ないいわれてますし」

「早産やったら、もうそろそろ出てくるん違う?」


こんなことを言って、今まで延ばしていたのですが … そんな状況ではなくなってきていました。

「粘り過ぎです。

ホンマにも行ってもらいますからね」


め以子に頑としてはねつけられて、お静は恨めしそうな顔をしています。

< 悠太郎が満洲に行った後、おやつを食べに来ていた子供たちも学童疎開へ。

周囲からは随分、人が減り、食べ物のことを考えるのが少しだけ楽になりましたが …

離れてる分だけ、案じることばかりが多くなっておりました。

悠太郎の無事、活男の無事、諸岡の無事、卯野の家のこと … >

… … … … …

「泰ちゃん、今日戻って来るの?」

め以子が仏壇に手を合わせていると、お静が横に座りました。

京都の泰介も送別会のために帰ってくるのです。

「 … 泰ちゃん、自棄になってへんやろか?

結局、理系入られへんで」

「自棄になったりする子やないと思いますけど … 」


しかし、そんなことを言われると、不安になってきて、もう一度仏壇に手を合わせました。

「泰介が兵隊に行かんで済みますように!」

お静も、め以子に倣って手を合わせました。

… … … … …

その頃、泰介は家に戻る前に、うま介に顔を出していました。

「もう、腹くくらんとあかんのかも知れませんね」

理系に入れなかったことが結構応えているようで、店にいた源太に相談していました。

「 … お前、今晩空いてるか?

お姉ちゃんのとこ連れてったるさかい」

「えっ?!」


ドギマギする泰介を源太と馬介がニヤニヤしながら見ています。

「何や、興味ないんか?」

慌ててかぶりを振った泰介。

「いや、あ、あの ~ 今日、お祖母ちゃんとお姉ちゃんの送別会があるんですよ」

爆笑する源太と馬介。

「何言うとんねん!

そんなもん、5分で勝負つくわい!」

「 … 何言うてるんですか、野球は9回裏まであるんですよ!」


… … … … …

「ちょっと ~ 誰も来んのやけど、どういうこと?」

鶏鍋の用意も終え、約束の時間もとうに過ぎているのに、諸岡家の人間は誰も姿を見せません。

泰介もまだ戻って来ません。

そんな時、玄関から諸岡の妹の菊子の声が聞こえました。

め以子とお静が出迎えると、やって来ていたのは菊子ひとりでした。

走って来たのか、肩で息をしています。

「皆さん、後から?」

「それが、お義姉ちゃん、産気づいてしもうて!」


… … … … …

「うちに顔見せに出てきてくれたんか ~

なんちゅう、なんちゅうようでけたひ孫や!」


お静の喜びようといったらありません … そそくさと出かける準備を始めました。

「ほら、行くで!」

「行くでって、お鍋 … 」

「そんなん、放っとき!」

「せやかて、ふ久に精つけさなあかんし … 」


め以子を置いて、菊子とふたりで先に出かけて行ってしまいました。

… … … … …

このまま無駄にしては、始末の精神に反する上、タマコの供養にもならないと、め以子が鍋を諸岡家に運ぶ支度をしているところへ、泰介が帰って来ました。

「 … どないしたん?」

ひとりで慌ただしく、準備しているめ以子を見て、不審に思って尋ねました。

「ふ久がな ~ 産気づいたらしゅうて」

「ええっ?!」


… … … … …

一方、帰ろうとした矢先に緊急の仕事を与えられてしまった希子は、マイクの前に座って原稿を読んでいました。

『 … 敵機の憎むべき空襲は、帝都東京、名古屋と続きました。

大阪にも敵機が来襲するかも知れません。

それが今夜であるかも知れません。

大阪府民は動揺することなく、防火防空の準備点検を怠らぬことが肝要です … 』

… … … … …

啓司がスタジオに顔を出すと、放送を終えた希子が、難しい顔をしながら原稿を読み返していました。

「どないしたん?」

「『それが今夜であるかも知れません』って、いつも入ってた?」


やけにその一文が気になっていたのです。

「 … 入れるようにしたん違う?」

「もう、いつ来てもおかしないやもんねえ … 」


… … … … …

「活男から何か来た?」

め以子の手伝いをしながら泰介が尋ねました。

「写真のところに葉書置いてあるよ」

自分に続き、父まで家を離れてしまって、ひとりになっため以子のことを案じていました。

「お父さんは?」

「 … 着いたことは着いたんとちゃうかな?

ほな、行こか」


意外に素っ気ないなと思った時、め以子が着物の懐に封筒を入れるのが見えました。

「何それ?」

「お父さんが残してくれた手紙」


前言撤回、素っ気ないのは照れかも知れません。

「分厚いな」

「いろいろ書いてあるの」


活男の葉書は皆のものだけど、父の手紙は母のものなのです。

少しからかってみたくなりました。

「それは持ち歩くんや?」

「ええやろ!

あんたは居らんの? 以心伝心のお嬢さんとか」

「いしんでんしん?」


め以子は、自分たちが女学生時代に流行っていた言葉で「相思相愛の人」のことだと教えました。

「 … おればええんやけどな ~ 」

… … … … …

諸岡家に着いて、め以子がふ久の部屋に顔を出すと …

産婆に付き添われたふ久は、天井からつるされた綱を両手で握って、円周率を唱えていました。

「大丈夫か?

何かしがむもんとか持ってこようか?」

「生まれたら呼ぶから、向こう行っといて!」


め以子を退けると、苦しみながらもまた円周率を唱え続けました。

「3.14159265358979323846 … 」

… … … … …

仕方なく一同は、め以子たちが用意してきた鶏鍋をつつきながら待つこととなりました。

「予定より早やない?」

泰介が気にすると、諸岡の母・キヨが笑いながら言いました。

「お母さんが、随分食べるもん工面して運んでくれはって … 育ち過ぎ言われて」

「それで早よでてくるんかも知れませんね ~ 」


お静は思いが叶ってご機嫌です。

… … … … …

「どないしたん?」

泰介はめ以子が思い出し笑いしていることに気づきました。

「ああ、そういえば、ふ久もひと月早う生まれて来たな思て … 」

「大晦日でな ~ 卯野のお父さんとお母さんと弟さんも来てはってな」


お静が懐かしそうに話しました。

「桜子と源ちゃんも来てて … お義父さんも来てはって …

にぎやかでしたよね ~ あの頃は」


しみじみと話すめ以子の横顔が少し寂しそうに見えたのでしょう ~ お静が明るく励ましました。

「皆そのうち戻って来るし、今日もまたひとり増えるがな」

… … … … …

生まれてくる子を待ちわびながら、鶏鍋を囲んで和気あいあいの一同。

キヨがふ久の様子を窺いに行こうと腰を上げたその時でした。

突然、サイレンの鳴る音が聞こえてきました。

「空襲警報や!」

声を上げた諸岡の父・勤。

皆慌てて立ち上がりました。

「落ち着いて、落ち着いてね」

… … … … …

「ふ久っ!」

め以子とキヨは慌てて、ふ久の元に駆けつけました。

「今、どないな具合ですか?」

産婆に様子を尋ねたキヨ。

「まだちょっと掛かりますわ」

「まだ ~ ?!」


… … … … …

「まだもうちょっと掛かるらしいから …

ややこ生まれたらすぐ連れていくさかい、先逃げて!」

「僕残りますから、お祖母ちゃんと妹さん、先にお願いします!」

「分かった!」


母親ふたりと泰介が残り、勤がお静と菊子を連れて先に避難することになりました。

… … … … …

外からはサイレンの音だけでなく、半鐘を鳴らす音や、避難する人たちの騒がしい声が聞こえてきます。

「まだ来んといてよ … 」

台所で湯を沸かしながら、め以子は祈るような気持ちでつぶやいていました。

… … … … …

勤と菊子に庇われながら、路地を逃げて来たお静でしたが、何を思ったのか突然足を止めてしまいました。

「西門さん?」

「やっぱり、うち、戻る!」


そう言うが早く、踵を返して、人の流れに逆らいながら、今来た道を戻って行ってしまいました。

… … … … …

産湯を運んで来ため以子。

「どうですか?」

あと、ひと息でした。

「皆、待ってるで ~ 早う出といでな ~ 」

め以子がお腹の子に話しかけていると、突然襖が開いて、避難しに行ったはずのお静が入って来ました。

「お義母さん?!」

「どないしはったんですか?」


驚くめ以子とキヨにお静は言いました。

「あんたら、どっちか先、避難しい!

うちは、どの道、老い先短いさかい …

あんたら何かあったら、ふ久が困る言うてるんや!」


ふたりが譲り合っていると …

「生まれましたで ~ !」

産婆の声に続いて、赤ん坊の元気のいい産声があがりました。

「生まれた … 」

… … … … …

泰介は、どこからか調達してきたリヤカーを止め、家に足を踏み入れた時、その泣き声を耳にしました。

ホッと息をつき、笑顔になる泰介。

「 … 生まれましたよ、諸岡さん」

… … … … …

「弘士さん、男の子や … 」

傍らに寝かされた赤ん坊を見て、ふ久は疲れた顔に穏やかな微笑みを見せました。

め以子もキヨもお静も涙ぐみ喜びをかみしめています。

しかし、落ち着いている時間はありません。

「悪いけど、急いで乳飲ませたって」

一刻も早く、避難しなければならないのです。

産婆に急かされて、め以子がふ久の体を起こして、赤ん坊を抱かせようとした時でした。

遠くで爆弾が破裂する音が聞こえてきました。

遂に空襲が始まったのです。

「リヤカー用意したから、皆逃げるで!」

部屋に泰介が飛び込んできました。

… … … … …

空襲が始まった街、燃える炎の中を逃げる人々、布団にくるまったふ久と赤ん坊を乗せたリヤカーを引いて走る泰介。

それに続くめ以子たち。

真っ赤に染まった遠くの空に無数の焼夷弾が落ちてくるのが見えます。

道の先の様子を見に行っていたキヨが慌てて戻って来ました。

「向こうは火の海で、これ以上は行かれへん!」

「えっ?!」


その時、目の前の建物が崩れ落ちて来ました。

咄嗟にふ久を庇っため以子の上に降る瓦礫。

「大丈夫か?」

「どっか安全なとこ?!」


泰介が辺りを見渡したその時、炎に包まれた木材がリヤカーの上に倒れてきて …

ふ久が投げ出されてしまいました。

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2014年03月02日 (日) | 編集 |
それでは、次週の「ごちそうさん」は?

臨月が近いふ久(松浦雅)と静(宮崎美子)が疎開することになり、め以子()は送別会の準備をする。

生まれる、生まれる ~

が、その夜ふ久が突然産気づき、急きょ静と泰介(菅田将暉)とともに諸岡家へ向かう。

一方希子(高畑充希)と啓司(茂山逸平)もラジオ局に残り、空襲を警戒することになる。

空襲警報や ~

皆、逃げるで!


空襲警報のなかお産を見守るめ以子たち。男の子が生まれると同時に空襲が始まり、め以子たちはふ久と赤ん坊をリヤカーに乗せて、避難を始める。

悠太郎さん …

開けてください!


め以子は悠太郎の言葉を思い出し、地下鉄心斎橋駅に逃げ込む。そして地下鉄が動いたことで大勢の命が助かる。

翌日戻ってみると西門家は蔵を残して燃え落ちていた。

伯母さんのとこ行くで!

えっ?


改めてふ久や静を疎開させ、め以子と泰介はついに和枝(キムラ緑子)のもとに身を寄せる。

ふざけてはる?

いえ …


め以子は、女中仕事に加えて畑仕事までさせられる。和枝の強烈さにあきれる泰介。

学校に戻ることにした泰介だが、赤紙が届く。め以子は和枝に柿の葉寿司の作り方を教えてもらおうとするが、代わりにい草で工夫した寿司を教わる。おいしそうに食べる泰介に涙するめ以子。

泰介を気丈に送り出した日、め以子のもとにある知らせがもたらされる。信じることができないめ以子は、和枝の家を飛び出していく。

ごちそうさん 公式サイト、YAHOO!テレビガイド他を参照)

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