NHK朝ドラ『花子とアン』『ごちそうさん』『あまちゃん』…ストーリーを勝手に解釈&裏読み … ほぼネタバレ…
--年--月--日 (--) | 編集 |
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月30日 (水) | 編集 |
第27回

「どうして舞台の主役なんて引き受けたんですか?」

自ら名乗りを上げておきながら、まったくやる気を出さない蓮子をはなは問い詰めた。

「復讐したい人がいるの …

はなさん、私の復讐につき合ってくださらない?」


『復讐』という言葉を聞いて、はなは蓮子が以前口にした話を思い出していた。

「うちの者たちは、私を厄介払いするためにここの寄宿舎に入れたんです。

あの人たちの思い通りになってたまるかと … つまり、復讐してやろうと思ったんです」

「 … 復讐って、もしかして蓮子さんのおうちに方たちにですか?」

< はなは彼女の秘密に一歩踏み込んでしまったようです >

* * * * * * * * * *

「ええ … 私、家の者たちを憎んでいますの。

私をこの学校に入れたのは、体のいい幽閉なんです」

「幽閉?」

「世間へ出て顔をさらすな、知り合いとも連絡を取るな … そういうことよ」

「何故そんなことを?」


はなには理解できない話だった。

「出戻りの私は、葉山家の恥さらしだからよ!」

『厄介払い』の次は『恥さらし』と蓮子は自らを辱める言葉を重ねた。

「私には、あなたのお父様のように思ってくれる家族はひとりもいないの」

娘のために土下座までする吉平の姿を蓮子は目にしていた。

「それどころか、私の存在を世間から消そうとしているのよ。

だから、私がここに居ることをおおっぴらにして、あの人たちが一番大事にしている世間体をぶち壊してやりたいの」

「 … そのために舞台の主役を?」

「ええ」


蓮子が話すような家族がいること自体、はなには信じがたいことだった。

* * * * * * * * * *

腑に落ちないこともあった。

「だったら尚のこと、舞台のお稽古一生懸命やりましょうよ!

私はここに居るってことを世間の人たちに大きな声で叫びたいんですよね?

どうせ舞台に立つなら、思いっきりやって喝采浴びた方がいいじゃないですか」


はなはクラスメートたちがこの舞台にどれだけ賭けているかを話した。

「この大文学会が終わったら、学校を辞めてお嫁に行く人もいます。

皆でひとつになって最高の思い出を作ろうとしているんです」


しかし、そんなはなの言葉にも蓮子の心は響かなかったようだ。

「悪いけど、お芝居が失敗しようと成功しようと、そんなことどうでもいいんです」

はなはもどかしかった。

「何でそんなひねくれてるのかな … 」

思わず漏らしたひと言に蓮子の顔色が変わった。

「 … 今なんて?」

ハッとして謝ったが、後の祭りだった。

「そりゃあ、ひねくれてますよ … 私はあなたたちより8つも年増なんですから!

あなたみたいに真っすぐ単純になんかなれっこないでしょ?!」

「でも、単純になった方がきっと楽しいですよ。

とにかく、復讐のことは脇に置いて … ロミオとジュリエットを成功させましょう」


何を言っても火に油を注ぐだけだった。

「もう結構、子供じみたお説教はうんざりです!」

そういう自分の方こそ、子供のようにすねて背を向けてしまった。

* * * * * * * * * *

< ジュリエット役の蓮子様は完全にへそを曲げてしまい … それ以降、稽古に来なくなってしまいました。

はなの選択は逆効果だったみたいですね >

稽古に打ち込んで、完璧にセリフを覚えてくる亜矢子にはなは感服した。

それだから尚更、自分のせいで蓮子の機嫌を損ねてしまったことに責任を感じていた。

「私がひどいことを言ったから … 」

「はなさん、何を言ったの?」


茂木に聞かれて、はなはありのままを話した。

「蓮子さんのこと、ひねくれてるとかいろいろ … 

あの葉山様に対してそんなことを?!

「どうしよう ~ 本当にごめんなさい」

… 一同は驚きを見せたが、しかし誰もはなを責める者はいなかった。

「はなさんが謝ることはないわ、お稽古に来ない人が悪いんですもの」

今のはなに出来ることは、後半の脚本を急いで書き上げることしかなかった。

< 大文学会は2週間後に迫っていました。

… 本当に間に合うのでしょうか? >

* * * * * * * * * *

< その頃、吉太郎は一大決心をして、あるところへ向かっておりました >

「おい、ちょっと待てし!」

夜の甲府の街を急ぐ吉太郎、困ったような顔をしてあとから追いかけているのは武だ。

* * * * * * * * * *

武の父、甚之介は県知事の口利きで先日甲府入りした甲府連隊の連隊長を料亭で接待している最中だった。

「いやあ、徳丸君は甲府一の大地主で生糸の商売も手広くやっているんです」

「これをご縁に、ひとつよろしくご指導お願えします」


甚之介から酌されたブドウ酒をひと口に飲んだ連隊長が目を見張った。

「これは?!」

「甲州のブドウ酒でごぜえます」

「はあ ~ 東京の司令部で出されるものより、はるかに美味い!」


連隊長は上機嫌だ。

「陸軍さんでもブドウ酒を?」

「将兵の滋養強壮、それと何より士気を高めるのに役立ちますからな」

「なるほど ~ 」


* * * * * * * * * *

「困るですちゃあ、お引き取りになってください!」

廊下から聞こえる女中の叫び声、お座敷の障子が思いきり開かれた。

「失礼します!」

そこにひれ伏していたのは吉太郎と武だった。

「吉太郎、武、おめえら何をしに来ただ?!」

甚之介は無礼を咎めたが、吉太郎は構わず連隊長に向かって訴えた。

「連隊長様、おらを軍隊に入れておくんなって!」

「何を言うとるだ ~ 武、どういうこんだ?」


武は、甚之介が連隊長のために一席設けると口を滑らせてしまったところ、吉太郎が会わせろと言って聞かなかったと、困り果てた顔で答えた。

「お願えでごいす、おらを軍隊に入れておくんなって!」

甚之介に怒鳴られても、吉太郎はその一点張りだ。

すると、連隊長は吉太郎に尋ねた。

「お前はいくつになるのか?」

「17でごいす!」

「家族は?」

「両親と祖父、妹が3人おりやす」

「ご両親はお前が志願することに賛成か?」

「ほれは … 」


吉太郎は口ごもってしまった。

まだ家族の誰にも話はしていなかったからだ。

* * * * * * * * * *

「連隊長殿、誠に申し訳ございやせん。

この吉太郎は、うちの小作の倅でやして、あとでよく言って聞かせやすんで ~ 今日の失礼は、何卒お許しくださいませ」


甚之介は平に頭を下げて謝罪した。

少し思案していた連隊長だったが、吉太郎に向かって言った。

「吉太郎君、17歳にしてお国へご奉公願い出るとは実に見上げた心がけである。

だが … 今は長男として家を守り、ご両親につくすのが第一の務めだろうが?」


二十歳の徴兵検査を待ってからでも遅くない、まずは親孝行に励めというのが連隊長からの答えだった。

「分かったかな?」

「 … はい」


うなずいた吉太郎だったが、その顔は決して納得はしていなかった。

* * * * * * * * * *

< 一方、お父の吉平は … >

伝道行商の報告のため、久しぶりに労民新聞社に戻っていた。

「それで、各地の農村の手応えはどうでしたか?」

浅川は労を労ったあと成果を尋ねた。

「社会主義への期待をひしひしと感じています。」

初対面となる山田国松のことも紹介した。

「この男は新潟の饅頭売りですが、先生の本を読んでいたく感動し、伝道行商の仲間にしてくれと」

「正直、本の中身は難しくてよく分かんねえけど ~ 吉平さんの後ついて歩いてます」


国松は人の良さそうな顔をして笑った。

「私たちの戦いは始まったばかりです」

浅川の言葉にうなずくふたり。

「では、乾杯!」

お互いの盃を重ね合った。

< 正反対の方向へ進む父と息子 … 親子なのに、皮肉なものですね >

* * * * * * * * * *

蓮子は相変わらず稽古に現れず、はなの脚本もまだ未完だった。

不安に思った茂木は富山にも稽古場に顔を出して生徒たちに指導するよう懇願した。

「いいえ、私は … 」

頑なに拒否する富山は足早に立ち去ろうとした。

「 … あの方のこと、まだ引きずってらっしゃるんですか?」

* * * * * * * * * *

その日の稽古は場所を講堂に移していた。

「はなさん、ちょっと代役を頼んでもいい?」

姿を見せない蓮子の代わりにはなが亜矢子の読み合わせをつき合うこともあった。

茂木からの要請は断った富山だったが、自然と足が稽古場に向かっていた。

入口の陰から身をひそめるようにして稽古の様子を覗いた。

その表情はどこか哀しげだ。

「おお、愛しいジュリエット … 夜が明ける、私は身を隠さねばならない。

ジュリエット、しばしの別れだ。」

「ロミオ様、どうしたら私たちは運命に打ち勝ち、永遠の愛を手にすることができるのでしょう?」


富山は思わず顔を背けて、胸に手を当てた。

< 富山先生は、ロミオとジュリエットのお芝居に何か辛い思い出があるのでしょうか? >

* * * * * * * * * *

深夜の寄宿舎ではなは脚本の執筆を続けていた。

周りから亜矢子たちの微かな寝息が聞こえてくる … はなは眠気を堪えながら鉛筆を走らせた。

東の空が白んでくる頃、はなはようやく脚本を書き上げることができた。

原稿用紙の最後に『The End』と書いて鉛筆を置いた。

* * * * * * * * * *

はなは書き上げたばかりの原稿用紙を手に部屋を出た。

早朝の中庭には誰ひとりいない。

思いきり腕を広げて背伸びをして、朝の空気を吸い込んだ。

「できた ~~ !」

その時、渡り廊下に人影が … どういう訳か、蓮子が通りかかった。

足を止めて驚いた顔ではなを見つめた。

人の気配を感じたはなも振り向いた。

目が合ったふたりはお互いに気まずそうな顔をした。

「どうしたんですか、こんな朝早く?」

… それはお互い様だろう。

「何だか目が覚めて … 」

「こないだは、出過ぎたことを言ってすみませんでした」


そう言って、はなは頭を下げたが、蓮子は答えることもなく背を向けて歩き出した。

* * * * * * * * * *

「待ってください。

このままだとジュリエットの役、降ろされますよ」


足を止めた蓮子の横顔に動揺が見えた。

「 … 舞台に立てなくなってもいいんですか?」

「いいえ」


振り向いた蓮子は、はなをにらんだ。

はなは蓮子に近づくと手にしていた原稿用紙を差し出した。

「じゃあ、これ読んでください。

… 徹夜で書き上げた脚本です。私なりに脚色も加えました。

これを読んでやるかどうか決めてください」


蓮子に手渡すと、はなの方からその場を立ち去って行った。

< まるで挑戦状のように、ロミオとジュリエットの脚本を突きつけたはなでした。

… ごきげんよう、さようなら >

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/30 16:26時点)



月組 宝塚大劇場公演 『ロミオとジュリエット』2012 Special Blu-ray Disc

新品価格
¥15,429から
(2014/4/30 16:27時点)


スポンサーサイト

朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月29日 (火) | 編集 |
第26回

どんな思惑があって、蓮子はロミオ役を買って出たのだろう?

「他にどなたかいらっしゃいませんか?」

進行役の鶴子が尋ねたが、蓮子の他に立候補する者は現れなかった。

「 … いらっしゃらないようなので、ロミオは葉山様に決定します」

まばらな拍手など気にせず、蓮子は満足そうに微笑むと「御機嫌よう」と教室を後にした。

< 大文学会の主役に手を上げた凛子様に生徒たちはびっくり!

中でも一番驚いたのは … はなでした >

「私、あの方がロミオなんて嫌っ!

葉山様って、何を考えてるか分からなくて、何だか怖いんですもの … 」


亜矢子が今にも泣き出しそうな顔で言った。

< おやおや ~ 早くもひと悶着ありそうですね >

* * * * * * * * * *

「(えっ、蓮子が?)」

蓮子がロミオ役に立候補したことを茂木から報告を受け、バラックバーン校長も驚きを隠せなかった。

「彼女もやっと前向きになってくれたようですね」

手放しで喜んでいる茂木とは対照的に富山は懐疑的だった。

「私はとても信じられません。

彼女が本当に心を入れ替えたなら話は別ですが、そんな風には見えませんし … 」


* * * * * * * * * *

はなが第3幕までの執筆を終えた脚本が、印刷されて皆に配布された。

いよいよ芝居の稽古が開始、はなは脚本の続きを急いだ。

しかし、ロミオ役の蓮子が稽古に顔を出さない。

「ロミオがいなきゃ始まらないじゃないの!

葉山様、本当にやる気あるのかしら?」


はなは、亜矢子たちの目が確かめてきてほしいと無言で語っていることを感じた。

「 … 続けてて」

ひとり蓮子の部屋に向かった。

「蓮子さん、前半の脚本が出来たので、稽古場に来てください!」

部屋に居るのは分かっているのに返事がない。

はなは「入ります」と断って、ドアを開けた。

* * * * * * * * * *

部屋の中で蓮子は畳の上に座って、歌を詠み短冊にしたためているところだった。

「優雅に歌なんて詠んでる場合じゃないんですけれど」

「 … 何でしたっけ?」


蓮子のとぼけたような顔を見て、はなは頭に血が上った。

「蓮子さん、ロミオの役引き受けましたよね … 忘れちゃったんですか?」

「ああ、私のことはお構いなく ~ どうぞ皆さんで進めてください」

「そんなっ、ロミオが居なければお稽古になりません!

今すぐ稽古場に来てください!」


蓮子にこんなに強く物申すのも、はなだけだった。

* * * * * * * * * *

< 一方、甲府の若者たちは、それぞれの将来を模索していました >

吉太郎と朝市が珍しく連れ立って河原にいた。

釣竿の糸を垂らしている吉太郎の横で朝市は読書に勤しんでいる。

「朝市は本当に百姓辞めて教師になるだけ?」

「 … うん」

「おらもやっとやりてえこんが見つかっただ」

「へえ ~ 」


朝市は本から顔を上げて吉太郎を見た。

「兵隊になる」

「 … 兵隊?」


にわかに朝市の顔が曇った。

「こないだ甲府に連隊がやって来たら ~

道端で見てるうちに体中がカ~ッて熱くなって … これだって思っただ」


吉太郎はうつむいている朝市の隣に腰を下ろした。

「朝市には言うけんど … おら、東京の女学校行ってるはなにずっと引け目感じてただ。

かよもうちに金送るために工場行って、妹らに先越されたみてえで …

おら、長男なのにこのままでいいずらかって、ずっと考えてただよ」


軍隊に入れば、家族を楽させることができると、意気込んでいる吉太郎に朝市は話した。

「おらのお父も兵隊だっただ。

おら、顔も知らんけど … 赤ん坊の時、日清戦争で死んだだよ」

「ほうか、お国のために死んだだけ … 」


知らなかったこととはいえ、少し気まずい吉太郎だった。

* * * * * * * * * *

はなに無理やり稽古場に連れ出された蓮子だったが、セリフが自分の番になっても脚本をながめているだけだ。

「次、ロミオのセリフです」

はなに促されても、どこをやっているのかさえ把握していなかった。

「 … ここです」

脚本に目を通すと吹き出した。

「何かおかしいですか?」

「おお、愛しいジュリエット … 私はあの月に誓う、そなたへの永遠の愛を!」


ロミオのセリフを読み上げ、また笑った。

「 … こんな芝居じみたセリフ、恥ずかしくて言えませんわ」

「これ、お芝居ですから」

「こんな陳腐なセリフに感情込めろと言う方が無理です」


蓮子のその物言いに亜矢子がかみついた。

「それはいくら何でも、翻訳してくれたはなさんに失礼じゃないですか?!」

「私よりもシェークスピアに失礼です」


はなも見過ごすことは出来なかった。

しかし、蓮子は大あくびで返した。

「失礼 … 昨夜、寝不足だったもので」

* * * * * * * * * *

「ちょっと、どういうおつもりですか?

自分から主役をやりたいとおっしゃって、そういう態度はないんじゃないですか?!」


声を荒げた亜矢子をはなと鶴子が慌てて宥めた。

稽古は一時休憩。

亜矢子が腹を立てるのも無理はないと、蓮子の態度を責める言葉が聞こえてくる。

「私、あの方の相手役なんかできません!」

我慢できなくなった亜矢子は、蓮子がロミオ役をやるのならジュリエット役を下りるとまで言い出した。

ところが蓮子は「どうぞ」と平然と答えた。

「蓮子さん?!」

とうとう亜矢子は泣き出す始末だ。

* * * * * * * * * *

その時、生徒のひとりから報告を受けたブラックバーン校長と茂木がやってきた。

「今度はどうしたんですか?」

「すみません、役のことで揉めてしまって … 」


ブラックバーン校長から報告するように命じられて、亜矢子は訴えた。

「配役を変えたいんです。

葉山様がロミオのままだと、私ジュリエットをやりたくありません!」


はなの通訳を聞いて、校長はしばし考えた。

そして出した答えは …

「(では、あなたはロミオをやりなさい)」

亜矢子を指さしてそう言った。

「 … 私がロミオを?」

「嫌なら降りなさいとおしゃってます」


冗談ではなかった。

はなから校長の言葉を伝えられた亜矢子は苦渋の表情を見せながらも言い切った。

「やめません!

葉山様のせいで皆とお芝居出来なくなるなんて、やっぱり嫌です」


校長は蓮子にも尋ねた。

「あなたは?」

さすがにこの状況は想定してはいなかったようだが、意地でも後には引けないだろう。

「私も降りません … 必ず舞台に立ちます」

きっぱりと答えた。

「 … 困りましたね、どうしましょう」

茂木は困惑しているが、校長は涼しい顔をして言い渡した。

「(では、蓮子がジュリエットをやりなさい)」

皆から驚愕の声が上がった。

「(そして真面目に稽古しなさい ~ 分かりましたね?)」

* * * * * * * * * *

校長の前では成り行き上あのように答えてしまったが、あれほどジュリエット役を熱望していた亜矢子だ。

中庭に出てはなとふたりきりになると涙を流して悔しい思いをぶちまけた。

「どうしてこんなことになっちゃったのかしら?

あの人がジュリエットで、私がロミオなんて …

本科最後の大文学会だから、素敵なドレスを着て舞台に立ちたかったのに」


蓮子は皆の神経を逆なでして失敗させたいだけだとまで口にした。

「 … 私もあの人が何を考えてるか分からない。

けど、ブラックバーン校長のご判断は間違ってないと思うの」


はなの言葉に亜矢子は少し不満そうだった。

「醍醐さんは背が高いから、きっとロミオ役素敵よ。

私、醍醐さんのロミオ見てみたい」

「 … はなさん、本当?」

「うん、絶対に会うと思う」


ようやく亜矢子に笑顔が戻った。

* * * * * * * * * *

稽古に戻った亜矢子は、見事にロミオを演じてみせた。

はなと茂木もほっと胸をなでおろしていた。

「いいですね、醍醐さんのロミオ」

「うん、ジュリエットよりずっと適役だわ」


怪我の功名、はなの言う通りブラックバーン校長の判断は正しかったようだ。

「 … あとは、葉山さんね」

その当人は脚本を残したまま部屋に戻ってしまっていた。

* * * * * * * * * *

はなは憤然として、蓮子の部屋を訪ねた。

「これ、忘れてました」

脚本を突きつけた。

「わざわざどうも」

何事もなかったように紅茶を飲む蓮子。

「稽古場に来てください」

「皆さん一生懸命すぎて疲れちゃうんですもの」


蓮子はカゴの小鳥と戯れはじめた。

「蓮子さん、無責任すぎます!

どうしてですか、どうして舞台の主役なんて引き受けたんですか?」


はなは蓮子を厳しく問い詰めた。

「 … ちゃんと説明してください。

蓮子さん!!」


* * * * * * * * * *

「復讐したい人がいるの …

はなさん、私の復讐につき合ってくださらない?」


その大きな瞳ではなのことをじっと見据えた蓮子。

はなはまるで吸い込まれていくような錯覚を覚えていた。

< ドキドキしていました。

こういう危険な香りのする人に、女の子は心ならずも惹かれてしまうものなのです。

… ごきげんよう、さようなら >

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/29 16:22時点)



ロミオ&ジュリエット [Blu-ray]

新品価格
¥1,071から
(2014/4/29 16:23時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月28日 (月) | 編集 |
第25回

< 葉山蓮子様との出会いは、はなにとってまるで春の嵐の訪れのようでした >

甲府のふじの元に届いたはなのハガキにも蓮子のことが書き綴られていた。

「前略、お母 …

私は8つ年上の編入生と、ひょんなことから言葉を交わすようになりました。

伯爵のご令嬢ですが、どこか寂しそうな人です」


伯爵の令嬢と聞いて、ふじは目を丸くした。

「はなは、きっとこの人と友達になりてえだな」

代読していた朝市が笑いながら言った。

そこへ、田んぼに行っていた周造が吉太郎のことを捜しに戻って来た。

家の何処にも吉太郎の姿は見えなかったが、ふじはてっきり周造と一緒に出掛けたとばかり思っていたのだ。

「 … 何処へいったずらか?」

* * * * * * * * * *

< その頃、甲府に軍隊がやって来ました >

大通りを行進していく軍隊を沿道から日の丸の旗を振って歓迎する群衆の中に吉太郎はいた。

< 吉太郎の胸の内に何かが沸き起こっていたのです > 

* * * * * * * * * *

1909年(明治42年)・4月。

< 秀和女学校では年に一度の大きなイベントが近づいておりました >

富山が黒板に『秀和女学校大文学会』と文字を書くと生徒たちがざわめき始めた。

「今年は本科最後の大文学会ですもの、頑張りましょう!」

亜矢子や鶴子たちも色めき立っている。

< 大文学会というのは、今でいう文化祭のことで、出し物は生徒たち自らが考えて、全員参加のイベントです。

何故ここまで、生徒たちが熱くなるかと申しますと … >

「去年は、リア王のコーデリアを演じた桜子先輩が舞台で見初められて、財閥の御曹司のところへ嫁がれたのよね」

「ご子息の花嫁候補を捜しにわざわざ見に来るお母様方もいらっしゃるそうよ」


< … という訳なんでございます >

ほとんどの生徒は良縁をつかむ絶好の機会と考えているのだ。

「 … 演目と配役を早く決めて、舞台映えする衣装を作らなくては … うちは両親や親戚が総出でくるって言ってるの。

あっ、はなさんのご家族は?」


亜矢子は、話の輪に加わらずに自分の席で読書しているはなに無邪気に尋ねた。

「うちは遠いから … 」

そう答えたが、家族を呼ぶことも衣装代を出すことも、はなにとって経済的に無理な話だった。

* * * * * * * * * *

「あの方はどうなさるのかしら?」

鶴子が亜矢子に耳打ちした。

同じく、自分の席で読書している蓮子のことが気になるようだ。

「私には関係ございませんって、お顔なさっているけど … 」

亜矢子は、するするっと蓮子に近づくと声をかけた。

「あの … 葉山様のご家族も大文学会においでになりますの?」

「 … 呼んでみようかしら?

さぞかし面白いことになるでしょうね」


意味深な言葉、謎めいた微笑みに亜矢子たちだけでなく、はなまで首をかしげてしまった。

* * * * * * * * * *

放課後、はなが図書室で本を選んでいると、ここでも大文学会の話題が耳に飛び込んできた。

「今年もリア王やるのかしら?」

「他のお芝居もやってみたいわ!」


彼女たちは談話室で相談しようと出て行ってしまった。

「あなたは、他の生徒のようにはしゃがないの?」

本棚の陰から突然現れたのは蓮子だった。

「蓮子さん … 」

「興味がないの?」


不思議そうな目ではなを見ている。

「私のうちは貧しいから、舞台の衣装なんて作れないし、家族を呼びたくても呼べないんです」

はなの話を聞いた蓮子の顔が少し驚いたように見えた。

「そう ~ そう言う人もいるのね … 」

蓮子はくるりと背を向けた。

「うちの者たちは、私を厄介払いするためにここの寄宿舎に入れたんです」

はなの頭にあの時の蓮子の言葉がふいに浮かんだ。

「あの、蓮子さんは … 」

蓮子に聞きかけた時、亜矢子がはなのことを捜して迎えに来た。

「はなさん、ここにいらしたの?

皆さんお集まりよ、早く ~ お急ぎになって」


亜矢子は蓮子がいることにも気づいたが、彼女には声をかけずに、机の上にあったはなの荷物を手にすると出口に向かった。

はなは蓮子のことを気にしながらも、亜矢子の後に従って図書館を後にした。

ふたりと入れ替わりに茂木が入ってきた。

「葉山さん、お兄様が面会にいらしてますよ」

* * * * * * * * * *

「あの方には近づかない方がいいって言ってるのに」

はなに荷物を手渡しながら、亜矢子は眉をひそめて、咎めるように言った。

「 … あちらから話しかけられたの」

「私、はなさんのことが心配なの … あの方と関わると、またよくないことに巻き込まれそうで …

はなさんもこないだのことで懲りたでしょ?」


はなは曖昧にうなずいた。

「それより、大文学会を成功させましょうよ」

亜矢子は笑顔に戻ると、談話室へとはなの手を引いた。

* * * * * * * * * *

「今、演目の相談をしていたの。

去年も一昨年もリア王だったでしょ、せっかくだから新しいお芝居をやろうってことになって」


談話室に顔を出したふたりに鶴子が話し合いの途中経過を伝えた。

すると、亜矢子がはなが今図書室から借りてきた本に目を付けた。

「ねえ、ロミオとジュリエットはどうかしら?」

「えっ、これを舞台で?!」


驚くはな。

「舞踏会の場面もあるし、華やかでロマンティックだわ」

「素敵ね、賛成!」


鶴子が支持すると、まわりの生徒たちもこぞって賛成の声を上げた。

「満場一致ですわね ~ はなさん、最後まで翻訳して脚本を書いてくださらない?」

突然降って湧いたような話に戸惑うはなだった。

* * * * * * * * * *

蓮子が面会室を訪れると、兄の葉山晶貴伯爵がいらいらしながら待っていた。

「何だ、私に話というのは?

忙しいから手短にしてくれ」


蓮子の顔を見るなり、不機嫌そうに口にした。

「 … お兄様にお願いがあります。

ここから短歌の先生のところに通わせてください」


葉山伯爵は怪訝な顔をした。

「ここの生活は退屈です … 生徒は皆年下で話が合いません。

歌を詠むことだけが、私の慰めです。

短歌の先生について、もっと深く日本文学を学びたいのです」


外出するのには父兄の許可が必要なのだ。

「だめだ!」

葉山伯爵は蓮子の願いをにべもなく退けた。

「お前はここから一歩も出るな … 知り合いに手紙を書くのも禁ずる!」

「そんな?!」

「お前がここにいることは、親類縁者誰にも知らせていない。

おとなしく身を隠してろ」


すでに葉山伯爵は帰り支度を始めていた。

「少しは身の程をわきまえたらどうだ?

父上が芸者に産ませたお前を、やっとのことで子爵の家に嫁がせてやったというのに … 離縁されて戻って来るとは、いい恥さらしだ。

これ以上、葉山の家の名を貶めるな」


面会室を出て行こうとする葉山伯爵の背中に蓮子は言葉を投げつけた。

「いくらお兄様たちが私の存在を隠そうとしても … 私はこうして息をして生きているんです!

私にも意志というものがあるんです!」


必死に訴える蓮子を葉山伯爵は鼻で嗤うと面会室を後にした。

* * * * * * * * * *

舞台の演目は「ロミオとジュリエット」に決まり、はなは台本の翻訳と脚色を引き受けていた。

進行役に選出された鶴子が教室で報告すると富山の顔色が変わった。

「いいえ、ロミオとジュリエットなんてダメです … 私は反対です」

思わぬ横やりが入ってしまった。

「富山先生、どうしてですか?」

はなの質問にも大文学会の演目として相応しくないと答えただけだ。

「今年もリア王になさい … この通り台本もありますから」

しかし、亜矢子たちは納得がいかない。

「去年と同じなんて嫌です!」

「もう配役や衣装も皆と相談してるんです!

富山先生、やらせてください!」


皆、いつになく執拗に富山に食い下がった。

* * * * * * * * * *

ちょうど教室の前を通りかかったブラックバーン校長と茂木が騒ぎを聞きつけて中に入ってきた。

「 … どうしたんですか、富山先生?」

「舞台の演目のことで生徒たちが言うことを聞かなくて … 」

「(私たち、ロミオとジュリエットをやりたいんです!)」


はなは英語で訴えた。

すると、ブラックバーン校長はうなずいた。

「(なるほど ~

生徒の意志を尊重しましょう)」


あっけなく校長から許可が下りた。

はなから校長の言葉を聞いた亜矢子たちから歓声が上がった。

富山も校長の判断には従うしかなかった。

「では、あなたたちだけでおやりなさい。

私は一切手を貸しませんので … 」


それだけ言い捨てて出て行く富山、せめてもの抵抗だった。

その背中を茂木が複雑な顔で見つめていた。

< 富山先生は、ロミオとジュリエットを嫌う訳でもあるのでしょうか? >

* * * * * * * * * *

「この物語は、互いに憎み合う家に生まれたロミオとジュリエットが深く愛し合いながらも、その運命に引き裂かれてしまうという悲劇です」

はなは黒板に登場人物の相関図を書いて物語の概要を説明をした。

「それでは、主役のロミオとジュリエットから決めていきましょう ~ 我こそはと思う方は手を上げてください」

進行役の鶴子の言葉に数名の生徒が手を上げた。

手を上げた生徒は皆、ジュリエットを希望している。

「私もジュリエットです!」

その中でも立ち上がって名乗りを上げたのは亜矢子だった。

「 … 醍醐さんなら、ジュリエットにぴったりですわ」

気迫負けしたのか、誰もが辞退して … ジュリエット役は亜矢子に決定した。

* * * * * * * * * *

「ロミオ役はどなたかいらっしゃいませんか?」

「はなさん、一緒にやりましょうよ ~ はなさんがロミオならお稽古が楽しいわ」


亜矢子ははなを推薦したが、脚本で手一杯だと断った。

そうでなくても、衣装も用意できないはななのだ。

「ロミオは男役だから、背の高い方がよろしいですね」

皆の視線がクラス一長身の大倉澄子に集中した。

しかし、澄子は許婚が見に来ることを理由に固辞した。

「男役で主役なんて、目立ち過ぎて破談になったら … 困りますから」

ところが、その時まで我関せずと読書していた蓮子が澄子の言葉に反応を示した。

「 … 困りましたね、他にどなたかいらっしゃいませんか?」

皆それぞれ顔を見合わせたが、名乗りを上げる者はいない。

「誰か勇気を出して、手を上げてください」

* * * * * * * * * *

静かに手を上げた者がひとり現れた。

教壇に立っていた鶴子とはなは目を疑った。

手を上げたのは、蓮子だったからだ。

「蓮子さん?!」

皆が一斉に蓮子の席を振り返った。

蓮子は右手を上げて微かな笑みを湛えている。

「 … ご冗談でしょ?」

そう言ったきり、絶句する亜矢子。

「葉山様、本当に主役のロミオをやって下さるんですか?」

鶴子が確認すると、蓮子はゆっくりと立ち上がった。

「ええ … やります」

きっぱりと答えると、教室がざわめいた。

< さて、蓮子様は何を思って、ロミオの役を買って出たのでしょう?

… ごきげんよう、さようなら >

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/28 16:41時点)



ロミオとジュリエット [Blu-ray]

新品価格
¥1,663から
(2014/4/28 16:39時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月27日 (日) | 編集 |
まずは、先週のおさらいを …



それでは、次週の「花子とアン」は?

ロミオとジュリエットはどうかしら?

修和女学校の一大行事・大文学会が近づき、はなの学級は「ロミオとジュリエット」を上演しようと盛り上がる。

当山先生?

恋愛劇をやることに富山(ともさかりえ)は猛反対するが、生徒たちの熱意を聞いたブラックバーン校長(トーディ・クラーク)は上演を許可。はな(吉高由里子)は級友たちから脚本の執筆を頼まれ、「ロミオとジュリエット」の原書を日本語に翻訳するべく日夜奮闘する。

一方、兄・晶貴(飯田基祐)と面会した蓮子(仲間由紀恵)は、教養のため短歌を学びたいと申し入れるが、冷たく断られる。

はなさんはどっちを選ぶの?

クラスで配役を決める日、ジュリエット役は醍醐(高梨臨)にすんなり決定。しかし肝心のロミオ役は、男役であり力量も問われることから皆尻込みし、一向に決まらない。

本当に葉山蓮子さんがロミオ役を?

その時、それまでまるで興味のなさそうだった蓮子が、突然立候補。はなたちが驚くなか蓮子はロミオに決まり、茂木(浅田美代子)は、蓮子も前向きになって来たかと胸をなでおろす。

例の復讐の件、私でよければ付き合います!

ところが稽古が始まると、蓮子はろくに稽古場に現れず、醍醐たちは反発を強める。はなは蓮子の部屋を訪れ、真意を問う。すると、蓮子は「はなさん、私の復讐につきあってくださらない?」と謎の言葉を告げる…

連隊長様、おらを軍隊さ入れてくだせえ!

一方甲府では、軍隊入りを強く望む吉太郎(賀来賢人)が、あるところへ向かっていた…

花子とアン 公式サイト、YAHOO!テレビガイド他を参照)

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/27 11:22時点)



花子とアンへの道: 本が好き、仕事が好き、ひとが好き

新品価格
¥1,512から
(2014/4/27 11:23時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月26日 (土) | 編集 |
第24回

はなに酒を飲ませたのは自分だったという蓮子の爆弾発言。

「あなたは校則を破った上に何も知らない級友を巻き添えにしたんです」

富山はブラックバーン校長の言葉を蓮子に伝えた。

「以前あなたに事情を聴いた時、はなさんが勝手に飲んだとうそをつきましたね?

… 今日、本当のことを言いにきたのは何故ですか?」


茂木の質問に答えるよう、ブラックバーン校長は蓮子に言った。

「 … 別に理由などございません。

いずれにせよ、私はもう退学になるんですから、もういいじゃないですか」


蓮子の態度に富山は激昂した。

「あなた何なんですかその態度は?!」

その剣幕に思わず、はなが代わりに頭を下げてしまった。

* * * * * * * * * *

ブラックバーン校長は改めて処分を言い渡した。

「(ふたりの処分ですが …

安東はな、葉山蓮子 … ふたりとも退学にしません)」

「ブラックバーン校長?!

ふたりとも退学にはなさらないって … ありがとうございます!」


はなはブラックバーン校長に向かって頭を下げた。

安堵の表情を見せる茂木と対照的に富山は納得がいかない。

「( … 安東さんはまだしも、葉山さんは退学にするべきです!

何故ですか ~ 伯爵家の令嬢だからですか?)」

「(いいえ、断じて違います)」


真っ向から否定したブラックバーン校長に富山はその理由の説明を求めた。

* * * * * * * * * *

はなは蓮子から促されて、ふたりのやり取りの内容を訳した。

「神様は、どんなに罪深い人間でも悔い改めれば、お許し下さるとおっしゃっています。

そして、彼女の様な生徒を救うのが、秀和女学校の使命だからです」


とうとうと話すブラックバーン校長の言葉を訳し続けた。

「ただし、ここにいたければ条件があります。

集団生活のルールは守れますか?

今日から誰もあなたのことを特別扱いしません … 自分のことはすべて自分ですること、真摯な気持ちで勉学に励むこと、食事は皆と一緒に食堂で取ること。

これまでの習慣をすべて捨てて、新しい自分に生まれ変わるのです」


はなの口を通して伝わるブラックバーン校長の言葉は、蓮子の頑なな心を揺らし始めていた。

* * * * * * * * * *

「 … ブラックバーン校長は信じています。

あなたはきっと変わることができる」


ブラックバーン校長はそう締めくくった。

そして、はなは生涯初めて、見事に通訳という大役を果たし切ったのだった。

* * * * * * * * * *

校長室から出てきた茂木は富山に尋ねた。

「はなさんの通訳はどうでしたか?」

「 … 完璧からはほど遠いですが、まあ意味はつかめていたんではないでしょうか」

「そうですか … 」


茂木は満足そうに微笑んだ。

富山に動揺が見えるのは、はなの英語力に驚愕しているのに他ならないからだ。

* * * * * * * * * *

はなは蓮子の後を追った。

「蓮子さん、ありがとう。

私今朝はすっかりあきらめていたんです … 学校に残れるなんて夢みたいです。

本当にありがとう」


舞い上がっているはなに比べて、蓮子はいつもにも増して冷ややかだった。

「 … 正直驚きました。

あなた、英語だけは大したものね」

「ああ … さっきは夢中だったんです。

校長先生の言葉をひと言も漏らさずに、ちゃんとお伝えしなくてはと」

「十分伝わりました」


うれしそうなはなに蓮子は釘を刺した。

「でも、はなさん、何か勘違いなさっているようね。

私はあなたにお礼を言われるようなことは何もしておりません。

本当に退学になりたかったんです」


蓮子の言葉に驚くはな。

「うちの者たちは、私を厄介払いするためにここの寄宿舎に入れたんです。

あの人たちの思い通りになってたまるかと … つまり、復讐してやろうと思ったんです。

あなたのためなんかじゃありません」


蓮子は、立ち尽くすはなを残して立ち去って行った。

家族に対する復讐なんて、はなには信じられない話だった。

* * * * * * * * * *

「ご心配をおかけしました。

また皆さんと一緒に学べることになりました」


教室の前で、心配して待っていた亜矢子たちクラスメートは、はなが退学せずに済んだことを知って、我が事のように喜んでくれた。

「本当によかったわ」

「でも、よく退学にならずに済みましたね?」


はなが蓮子が校長室に来て何もかも話してくれたお蔭だと伝えると、亜矢子が顔を曇らせた。

元々この騒動のきっかけは蓮子自身が作ったことを知っているからだ。

「あの方とは、あまり関わらない方がよろしくてよ。

彼女は葉山伯爵家のご令嬢で、一度嫁いだけれど、もめ事を起こして離縁されたんですって … 」


何処からか仕入れてきた彼女の過去を気にしていた。

* * * * * * * * * *

教師の中にも蓮子のよからぬ噂を口にする者がいた。

蓮子の授業態度に不満を抱いている国語教師の綾小路が、同じように彼女を快く思っていない富山に中庭で話している。

「葉山様は、この学校にたどり着くまでにいろいろとあったみたいですよ」

「いろいろ?」

「 … 離婚して、自暴自棄になって、夜な夜な芸術家の男たちを侍らせて遊び歩いていたとか、浴びるようにお酒を飲んでいたとか … もう耳を覆いたくなるような噂ばかりです」


偶然、渡り廊下を歩いていた蓮子の耳に届いているのも知らず、話し続ける綾小路。

「清らかなうちの校風には馴染むのは難しいでしょう」

* * * * * * * * * *

夕食を知らせるベルが聞こえてきた。

はなは亜矢子に先に食堂へ行くように告げると、蓮子の部屋を訪ねた。

「蓮子さん、お食事の時間です」

ドアをノックしたが反応はない。

「 … 食堂で待ってますから」

そう言い残してその場を立ち去った。

* * * * * * * * * *

食事は始まったが、蓮子は姿を現さなかった。

はなは料理に手をつけず、昨日の蓮子と交わした話を思い出していた。

* * * * * * * * * *

「私はあなたより8つも年上なんです」

「それがどうしたんですか?

あなたはいつも周りの人に守られて、面倒なことはすべて周りにやらせて … 何も傷ついたことないんでしょ?」

「私は16の時 … 」

* * * * * * * * * *

… あの時、蓮子はどんな言葉を飲み込んだのだろう?

「はなさん、どうかなさったの?」

考え込んでいるはなを見て、鶴子が声をかけてきた。

「あっ … いいえ」

はなは首を振り、入口に目をやった。

誰も来る気配はない。

「 … いらっしゃらないわね」

誰にという訳でなく、茂木がつぶやくように言った。

* * * * * * * * * *

はなが食事に手を付けようとした時、食堂の扉があく音がした。

一同の目が入口に集まり、蓮子が静かに入ってくるのが見えた。

「 … 珍しい方がいらしたわ」

「一度も食堂にいらっしゃらなかったのに、どういう風の吹き回しかしら?」


そんな声が聞こえてくる。

亜矢子は諌めたが、はなは席を立って、笑顔で蓮子を出迎えに向かった。

「蓮子さん、私の隣開いてますからどうぞ」

しかし、蓮子ははなを無視して、ひとり離れた席に腰を下ろしてしまった。

* * * * * * * * * *

「茂木先生、私が … 」

茂木が運んできた料理を、かをる子が受け取った。

皆が注目する中、蓮子の前に食器と一緒に並べて置くと、その場所から動かずにじっとにらみつけた。

かをる子の無言の圧力に蓮子は視線を逸らした。

食堂の時間が停まってしまったようだ … 誰ひとり身動きせずに固唾を飲んでいる。

しばらくすると、蓮子がかをる子の方をチラチラと見始めた。

何か言いたそうなのだが、うまく声に出来ない … そんな風に見える。

「 … ありがとう」

ようやく、そのひと言が口から出てきた。

「何ですって、ありがとう?

目上の私に向かってその言葉遣いは何ですか?!」


言語強制会の元会長の血が騒ぐのか、かをる子の罵声が一気に蓮子に降りかかった。

「ありがとうございますと言い直しなさい!」

蓮子はそんな言葉には耳を貸さずにおしぼりに手を伸ばした。

「ちょっとあなた、何なさってるんですか ~ 聞いてるんですか?!

いつもいつもそのような態度を取って … 」


見かねた茂木が宥めながら、かをる子を自分の席に戻らせた。

怒りの収まらないかをる子は、その矛先をはなへと向けたのだ。

「あなたもそうですよ ~ お世話係なんだからしっかりしてください!!」

またもとばっちりだ。

しかし、今日のはなは、それも悪い気はしなかった。

< 生まれも育ちも、まるで違うふたりがこの先、生涯の腹心の友になろうとは …

まだ神様しかご存じありませんでした >

すました顔で食事する蓮子を見て、はなは笑顔になっていた。

* * * * * * * * * *

< その頃、甲府の街では … >

大通りに軍靴の音が鳴り響いていた。

甲府入りした軍隊を沿道から日の丸の旗を振って歓迎する群衆。

その中に吉太郎の姿もあった。

勇ましく行進する兵隊たちを目を輝かせて見つめていた。

「て ~ 何100人いるで!」

「武、これでがとう景気がよくならあ」


徳武親子はまた違った思惑で期待に胸を膨らませていた。

「甲府連隊万歳!」

「万歳!万歳!」


< 甲府に軍隊がやって来たことで、人々の運命も大きく変わっていくのでした。

… ごきげんよう、さようなら >

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/26 16:43時点)


連続テレビ小説 花子とアン オリジナル・サウンドトラック

新品価格
¥3,146から
(2014/4/26 16:43時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月25日 (金) | 編集 |
第23回

< はなは意を決して、葉山蓮子様の部屋へ乗り込みました >

「お話があります」

「 … 今はお話ししたくありません」


蓮子は素っ気なく言うとドアを閉めようとした。

慌てて手でドアを抑えたはな。

「このまま私だけ退学になるなんて、どうしても納得いかないんです。

… 中に入れてください」


必死のはなに折れた蓮子はドアを開いて中に入ることを許した。

< いよいよ、はなと蓮子様の対決です >

* * * * * * * * * *

部屋に入ったはなは我が目を疑った。

「 … 何これ?」

本はテーブルや床に乱雑に置かれ、着物は脱いだまま、敷きっぱなしの布団は今まで誰かが寝ていたようにみだれていた。

「泥棒が入ったんですか?」

皮肉ではなくはなは本当にそう思った。

「世話係のあなたが謹慎になってしまったので、片付ける人がいないんです」

蓮子は恥ずかしげもなく、あっけらかんと答えた。

「これでは落ち着いて話もできません。

取りあえずきれいにしましょう」


< 華族様のご令嬢なるものは、何てバカバカしい怠け者なのだろう … と、あきれるはなでした >

てきぱきと片付けていくはな、蓮子はそれをただ眺めているだけで手伝おうという気持ちなど持ち合わせていないようだ。

* * * * * * * * * *

大方片付けた後、布団をたたんでいると、掛布団の下から草履が出てきた。

「 … こんなものが?」

「あら、そんなところにあったの」


にっこり笑った蓮子は草履を片方履いていなかった。

悪びれることなく、出てきた草履を履く蓮子を見て、はなはひと言言わずにはいられなくなった。

「『あら』ではなくて、『ありがとう』ではないでしょうか?

人に何かをしてもらった時、『ありがとう』と言えと、お父様やお母様から教わらなかったのですか?」

「 … ありがとうと言ってほしいんですか?」


蓮子は不思議そうな顔をして、はなを見つめた。

「結構です」

年長者のクセにそんなことも分からないのか … 口にするのもバカらしかった。

* * * * * * * * * *

「はなさんは、私に文句を言いにいらしたのでしょ?

自分は真面目な給費生なのに、退学の危機に瀕している …

『全部あなたのせいだ、滋養の薬だとブドウ酒を飲ませたあなたのせいだ』

それなら、庇ってくれるのが筋だろうと、私を糾弾しにいらしたのでしょう?」


すべてまるっとお見通しだと言わんばかりの蓮子だった。

「 … そうです。

そこまでお分かりなら、私をこの窮地から救っていただけませんか?」

「お断りします。

私は止めました … あなたが外に出て騒いだりするから、あんなことになったんです。

あなたは酔っていて覚えていないかも知れませんが … 」


はなは微かに残っている記憶をたどっていた。

… 確かに蓮子の言うことに間違いはない気がする。

「おっしゃる通り、調子に乗った私が一番悪いです。

でも … お酒だと知っていたら、絶対口にしたりしませんでした」


* * * * * * * * * *

「私もひとつ聞きたいことがございます。

… 何故、あなたは告げ口しないんですか?

あの時、私もぶどう酒を飲んでいたのに、先生方に言いつけないんですね?」

「告げ口して何が変わるんですか?

私それどころじゃないんです、自分のことで精一杯なんです!」


はなは告げ口するという思考自体持ち合わせていなかったのだ。

「もし本当に退学なんかになったら、これまで支えてくれた家族の苦労が全部 … 水の泡になってしまうんです。

家族を悲しませると思うと、情けなくて、自分に腹が立って … 」


目に涙を溜めたはなのことを、蓮子はその大きな目でじっと見つめた。

「家族 … そんなに大切なもの?」

「どうしてそんなこと聞くんですか?

離れていても家族はいつも … 私のここに居ます」


はなは自分の胸に手を当てた。

「 … 皆そうでしょ?」

しかし、蓮子ははなの問いには答えずに視線を逸らした。

< はなはこの時まだ知りませんでした。

… 家族の愛情を知らない人もいるということを … >

* * * * * * * * * *

蓮子ははなに年齢を尋ねた。

「私、16ですけど」

「そう …

16なら例え退学になったとしても、いくらでもやりなおせるじゃないの。

私から見れば、あなたは自由で幸福な小鳥よ」


その言い草にはなは思わずカッとしてしまった。

「幸福な小鳥?

何言ってるんですか、私絶望のどん底ですよ ~ あなたのせいで」

「 … 大げさね」


蓮子はあくまでも冷静を装っている。

「何の苦労もしたことない人に言われたくありません!」

はなは他人をこんな風にののしるような娘ではなかった … 切羽詰まった状態と蓮子の煮え切らないような態度がそうさせてしまったのだ。

「私はあなたより8つも年上なんです」

「それがどうしたんですか?

あなたはいつも周りの人に守られて、面倒なことはすべて周りにやらせて … 何も傷ついたことないんでしょ?」


その言葉に蓮子はキッとなって、はなをにらみつけた。

「私は16の時 … 」

しかし、蓮子はそこで言葉を飲み込んだ。

はなは、蓮子の瞳の奥に深い悲しみを見たような錯覚を覚えた。

「蓮子さん … 」

* * * * * * * * * *

その時、ドアをノックする者がいた。

「はなさん、こちらに居ませんか?」

亜矢子の声だった。

部屋から消えた謹慎中のはなを探し回っていたのだ。

「 … 16の時、どうしたんですか?」

「何でもございません。

… 今日は小鳥たちがうるさいこと」


蓮子ははなの問いには答えずに亜矢子の応対に出た。

* * * * * * * * * *

「何でこんな大事な時に葉山様のお部屋なんか行ったのよ?」

亜矢子たちに部屋に連れ戻されたはなは厳しく責められた。

「心配かけてごめんなさい」

ちょうどそこへ、かをる子がブラックバーン校長からの伝言を携えて部屋を訪れた。

「 … 明朝9時、校長室に来るようにと」

「分かりました」


はなはもうすっかり観念していた。

すると、かをる子はそのまま部屋に上がってきて、はなの前に座ると、神妙な顔で口を開いた。

「はなさん …

あなたとは、同じお部屋で寝起きを共にした先輩後輩です」

「はい … 」

「編入生として来た頃、あなたはまだ小さく大層訛っていました」


かをる子の声が震えていた。

「 … こんなことになるなんて、誠に … 哀惜の念に堪えません」

はなは意外だった。

厳しいだけの先輩と思っていたかをる子が自分のために涙を流してくれている。

彼女も人の子だったのだ。

「白鳥様!

まだ退学と決まった訳じゃないのに、どうしてそんなことおっしゃるんですか?!」


初めて亜矢子がかをる子に食って掛かったのも、はなを思ってのことだった。

皆それぞれ立場は違えど、はなを愛しているのだ。

「はなさんが居なくなるなんて、私には考えられない」

「 … 醍醐さん」

「10際の頃から私の隣にはいつもはなさんが居たんですもの … 」


はなは果報者だった。

* * * * * * * * * *

はなが去ったあと、蓮子はスタンドの明かりだけの暗い部屋から外の景色をぼんやりと眺めていた。

庭の桜はもうほとんど散ってしまっている。

それでも、何枚かひらひらと舞い降りてきた。

蓮子は懐から昨日、兄の葉山伯爵から渡された小切手を取り出した。

『この金をお前にやるから、二度と家に戻って来るな … ここを追い出されたら、お前の居場所はもう何処にもないんだからな』

手に力が入り、小切手は握りつぶされていた。

* * * * * * * * * *

翌朝、はなは言いつけられた通り、9時に校長室のドアを叩いた。

「安東はなです」

部屋ではブラックバーン校長の他、茂木と富山も待っていた。

「(ゆうべは眠れましたか?)」

「( … いいえ)」


それは当然のことだろう。

「(はな、あなたの処分ですが … )」

ブラックバーン校長が最終処分を伝えようとした時、突然ドアが開いて … 入ってきたのは、葉山蓮子だった。

「葉山さん … どうしたんですか? ノックもしないで」

「今、大事な話をしてるから出て行きなさい」


茂木と富山が咎めたが、蓮子はものともせずに、ブラックバーン校長の前に立った。

* * * * * * * * * *

「ブラックバーン校長、安東はなさんにお酒を飲ませたのは … 私です。

私が先に部屋でブドウ酒を飲んでいたのです。

そこへはなさんが来たので、滋養のお薬だと言って勧めました」


蓮子の告白に茂木と富山に驚きが走った。

「(自分が何をしたか分かっていますか?)」

ブラックバーンの質問に蓮子はふてぶてしく答えた。

「どうぞ、私を退学させてください」

「 … 蓮子さん?!」


< 蓮子様の爆弾発言で、ただただ混乱するはなでした。

… ごきげんよう、さようなら >

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/25 18:58時点)



アンのゆりかご―村岡花子の生涯 (新潮文庫)

新品価格
¥810から
(2014/4/25 18:58時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月24日 (木) | 編集 |
第22回

「バカやろう … 何でじゃ、何で酒なんか?!」

面会室の前の廊下で中の様子を窺っていた亜矢子は、ドアの向こうから聞こえてくる吉平の剣幕に驚いて、校長室へと走った。

「ブラックバーン校長、大変です!

… 安東はなさんのお父さんが暴力を振るっています」


< こうして、はなが起こしたブドウ酒事件は、ますます大きな騒動になっていくのでした >

* * * * * * * * * *

「お父、ここは男子禁制だから!」

「校長先生に会って、謝るだ」


はなの手を引いて校長室へと急ぐ吉平に廊下にいた生徒たちから悲鳴が上がった。

「Stop!」

亜矢子から報告を受けて面会室へ向かう途中のブラックバーン校長、茂木、富山の3人と出くわした。

ブラックバーン校長は、吉平に出て行くよう命令した。

「ブラックバーン先生、お話があります」

必死の形相の吉平を茂木は諌めた。

「お父様、今日はお引き取り下さい」

「 … さっき、はなさんのことを叩いたそうですね?」


富山に問いただされて、吉平は苦悶の表情でうなずいた。

「私は … 初めて娘に手を上げました」

* * * * * * * * * *

廊下にいた生徒たちも不安そうに事の成り行きを見つめている。

その中に亜矢子と鶴子の姿もあった。

「 … 今は冷静に話し合うのは無理です。

お帰りください」


富山からブラックバーン校長の言葉を伝えられた吉平は、はなの手を引っ張って、ふたり揃ってひざまずいた。

「校長先生、先生方 … 娘がとんでもねえこんをしでかしちまって、申し訳ありません!」

はなの頭を押さえつけ、自分も這いつくばるように土下座した。

その様子を蓮子も階段の上から見ている。

「娘がしでかしちまったこんは、どういでも許されるこんじゃありません!

… 申し訳ありません、本当に申し訳ありません」


「申し訳ありません」と何度も何度も繰り返し訴える吉平。

はなも父と一緒に必死に頭を下げ続けた。

その悲痛な叫びに … 亜矢子たちも胸を痛めていた。

「お父様、どうかもう … 」

見かねた茂木が声をかけた。

結局、この件は、ブラックバーン校長が一旦預かることとなった。

* * * * * * * * * *

そんな光景を目の当たりにして、蓮子は何を思ったのだろうか …

中庭のベンチにひとり腰かけていた。

* * * * * * * * * *

吉平と入れ違いに秀和女学校を訪れたのは、蓮子の兄、葉山晶貴伯爵だった。

「 … そんなことがあったとは、妹によく言って聞かせます」

蓮子が校長室に顔を出した時、葉山伯爵は今回の騒動について謝罪している最中だった。

「もういろいろ問題を起こしてるそうだな?」

葉山伯爵は蓮子を見るなり不愉快そうな顔をした。

「 … お兄様、何しにいらしたの?」

「しばらく東京を離れていて、やっとご挨拶に伺ったんだ。

そうしたら、案の定 …

何故お前は何処へ行ってもそうなんだ?」


兄妹だというのにどこかよそよそしいふたりだった。

* * * * * * * * * *

「妹もここを大変気に入っている様子です ~ どうぞよろしくお願いいたします」

葉山伯爵はガラッと態度を変えて、ブラックバーン校長たちに向かって、にこやかな笑顔を見せた。

「(学校に寄付させて下さい)」

そう言うと、懐から取り出した小切手をテーブルの上に置いた。

額面は、千円だった。

「 … そんなにたくさん」

傍らに控えていた茂木が息を飲んだ。

「妹がお世話になるのですから、これぐらい当然です」

「(こんなに大金は受け取れません)」


ブラックバーン校長は受け取らない。

「困りましたね … 」

「では、この近くに孤児院がありますので、恵まれない子供たちに寄付をなさっては?」


茂木の提案に葉山伯爵は快くうなずくと、一度小切手を懐へ納めた。

* * * * * * * * * *

校長室を後にした葉山兄妹。

「お兄様、厄介払いで来てよかったですね」

そう言い捨てて立ち去ろうとする蓮子に葉山伯爵は、先ほどの小切手を突きつけた。

「この金をお前にやるから、二度と家に戻って来るな」

その表情は校長室にいた時と別人のように冷たかった。

「 … 孤児院に寄付するはずじゃ?」

「多額の寄付をしておけば、お前が何かしでかしても目をつぶってくれると思って小切手を切ったんだ」


蓮子は絶句した。

「 … 妹に手切れ金を渡す兄もいるんですね」

そんな皮肉を言うのが精一杯だった … 声は震えていた。

「ここを追い出されたら、お前の居場所はもう何処にもないんだからな」

* * * * * * * * * *

部屋で謹慎中のはなの元に製糸工場で働くかよからハガキが届いた。

「はなさんは4人兄妹でしたね?」

ハガキを持ってきてくれた茂木が尋ねた。

「はい」

「うちは8人兄妹なの。

父はご維新で没落した氏族でしたけど、早くに亡くなって … 長女の私が弟や妹の面倒を見なければならなかったの」


初めて自分の身の上話を聞かせてくれた。

「母の内職を手伝いながら、死に物狂いで勉強して、師範の資格を取ったんです。

だからつい、昔の自分に … はなさんを重ね合わせてしまうの」


少し照れくさそうに笑った。

「あなたが初めてここへ来た時のこと、今でもよく覚えているわ。

お父様に手を引かれて、不安そうだったけど、瞳はキラキラ輝いていて、意志の強さみたいなものが伝わってきました。

そして、英語の勉強に没頭するようになって … 分からない単語があると、英語の辞書を引きに図書室まで走るあなたを見ていつも思ってました。

この子は、人より苦労した分、この学校できっと素晴らしいものを身につけてくれると。

そう信じて応援してきたんです。

苦しみに耐えた分だけ、人は成長するのですよ」


はなは茂木がどんな気持ちで自分のことを見守ってくれていたのかを知った。

「 … ごめんなさい。

私、取り返しのつかないことしてしまいました」


申し訳なくて、自分が情けなかった。

「はなさん …

とにかく、校長先生の判断を待ちましょう」


* * * * * * * * * *

茂木が部屋から出て行ったあと、はなはかよからのハガキを手に取った。

『お姉やん、勉強がんばってるけ

おら、製糸工場で毎日汗まみれになって働いてるだよ

朝から晩まで休みもなくて、かんとくさんにどなられてばっかしいるけんど、しんぼうしんきゃね

一日の仕事が終わると、へとへとで寝るだけだ

ここの楽しみは寝るこんだけだ

* * * * * * * * * *

つらくてたまらん時は、あのクッキーのことを考えるだよ

お姉やんが焼いてくれた甘いクッキーの味を思い出すと、どんなつらいこんもしんぼうできるさ

クッキーの缶は、おらの宝ものだよ

姉やん、今度会ったら、おらに夢の国みてえな女学校の話をうんとこさ聞かしてくれちゃあ

おら、お姉やんのことを考えると、力がわくだよ

ほれじゃあ、さいなら

かよより』

* * * * * * * * * *

「かよ … 」

ハガキを読み終えたはなの頬を涙が濡らしていた。

< はなはその時、強く思いました。

このまま退学になってたまるものかと … >

* * * * * * * * * *

はなが向かった先は … 蓮子の部屋だった。

「 … どなた?」

ドアをノックすると、蓮子の声が返ってきた。

「蓮子さん、はなです ~ 開けてください


しかし、ドアが開く気配は一向になかった。

「開けてくださるまで、ここを動きませんから

毅然とした声で伝えると、ほどなくドアはゆっくりを開かれて、蓮子が顔を覗かせた。

はなは蓮子を見据えて言った。

「お話があります」

< 女と女の対決です。

… ごきげんよう、さようなら >

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/24 16:30時点)



にじいろ

新品価格
¥1,080から
(2014/4/24 16:31時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月23日 (水) | 編集 |
第21回

「皆、起きろ ~~ お星様があんなにきれいですよ ~ 」

深夜の中庭で、大声を上げていたはなはご機嫌で歌まで歌い出した。

♪ Twinkle, twinkle, little star ~

窓から見ている亜矢子たちもこんなはなを目にするのは初めてだった。

「はなさん、どうしちゃったの?」

「あれは、帝大生の北澤様が歌ってらした歌ですわ」

「まだあの失恋を引きずってたのね …

早く止めないと、先生たちが起きてしまうわ!」


しかし、すでに遅く、騒ぎを聞きつけたブラックバーン校長や茂木をはじめとする教師たちが駆けつけてきてしまった。

「お星様があんなにきれいで … !」

あ然とした顔の教師たちに囲まれていたことに、はなも気がついた。

「これはこれは … 皆様、ご静聴、誠にありがとうございます」

お辞儀をした拍子にバランスを崩して、引っくり返ってしまった。

「はなさん?!」

* * * * * * * * * *

「(ワインの匂いが!)」

「ワインって … ブドウ酒のことですか?!」


はなを抱き起そうとしたスコットの言葉が茂木には信じられなかった。

窓から見ていた生徒たちからも驚きの声が上がった。

「ブドウ酒ですって?!」

「大変!!」


< はながお薬だと思って飲んだのは、ブドウ酒だったのです。

当然のことながら、飲酒は最も重い校則違反です >

唯一真相を知っている蓮子は、素知らぬ顔で部屋へと戻っていってしまった。

引っくり返ったはなはそのまま、また眠り込んでいる。

< … すやすや寝てる場合じゃありません >

* * * * * * * * * *

翌朝、はなは朝日を顔に受けて目を覚ました。

いつもの部屋と何だか様子が違う …

「 … ここは?」

目を凝らすと、ブラックバーン校長が覗き込んでいた。

「ブラックバーン校長?」

傍らには茂木と富山も控えていた。

ハッとするはな。

「 … 私どうしてこんなところに?」

そこは校長室のソファーの上だった。

「(はな、気分は?)」

「はなさん、まさかとは思うけど … 昨夜、お酒を飲みましたか?」

「お酒?!」


茂木に尋ねられて、跳ね起きたはなだったが、ひどい頭痛に顔をしかめた。

「 … まさか、お酒なんて飲んだことありません!」

「おかしなものを飲まなければ、そうはなりませんわね」


富山に言われて、はなは昨晩の記憶をたどった。

「あ …

昨日、葉山蓮子さんの部屋でブドウのお薬なら飲みました」

「ブドウのお薬?」


* * * * * * * * * *

すぐさま、蓮子も校長室に呼びつけられた。

「お呼びでしょうか?」

蓮子は何食わぬ顔ではなの隣に立った。

「単刀直入に聞きます。

はなさんにブドウ酒を飲ませたのは、あなたですか?」


富山が訳して伝えたブラックバーン校長の質問に、蓮子は躊躇せずに答えた。

「いいえ」

はなは蓮子の顔を見た。

「 … ブドウ酒は、滋養のために私が家から持ってきたものです。

はなさんがそれを勝手に飲みました」

「えっ?!」


一同に驚きが走った。

「(はな、本当ですか?)」

ブラックバーン校長は、静かにはなに確認した。

「 … 私、本当によく覚えてなくて …

始めは、蓮子さんがお薬だと言って注いでくれて … そうですよね?」


はなが同意を求めても蓮子は答えようともしない。

「お薬だと、おっしゃいましたよね?」

語気を強めると、のらりくらりと口を開いた。

「お酒は百薬の長と申しますもの」

はなは泣きたい気分だった。

「 … つまり、葉山さんのブドウ酒を、あなたが見つけて勝手に飲んだんですね?」

富山からそう聞かれても、実際のところ、はなの記憶はあいまいだった。

「はなさん、校長先生の目を見て答えなさい」

茂木が促した。

しかし、申し開きしようにも自信がないのだ。

「私、本当によく覚えてなくて … ごめんなさい」

ただただ頭を下げることしかできなかった。

「ここでは飲酒はもちろん、お酒を持ち込むことも禁じられています。

酔っぱらって夜中に騒ぐなんて、もってのほかです!」


茂木もさすがにはなをかばう訳にはいかなかった。

* * * * * * * * * *

ブラックバーン校長から、蓮子に与えられたのは、ブドウ酒没収、反省文100回という罰だった。

「わかりました … 以後、気をつけます。

もう下がってよろしいですか?」


蓮子は一礼すると、校長室から出て行ってしまった。

「(私はどうなるのでしょう?)」

残されたはなは不安そうな顔でブラックバーン校長の顔を見た。

この部屋にいる誰もが(富山でさえ)、はなが勝手にワインを飲んだなどとは思っていなかった。

しかし、相手が蓮子であるだけに、処置が難しい問題だったのだ。

* * * * * * * * * *

早速、ブドウ酒を没収するために、かをる子が蓮子の部屋にやってきた。

蓮子が持ち込んでいた数本のワインを取り上げたかをる子は、まるで鬼の首でも獲ったかのようだ。

「ブラックバーン校長は寛大ですね ~ よく反省文くらいで済みましたよ。

大体あなたはですね … 」

「授業が始まりますので、失礼いたします」


話を途中で遮ると、さっさと教室へと向かった。

* * * * * * * * * *

「酔っぱらってたんですって … 」

「葉山様のお部屋でこっそりブドウ酒を飲んだそうよ」

「葉山様もさっき、校長室に呼ばれてましたわ」


授業中だというのに教室はその話題でもちきりだった。

「(静かに!)」

富山は叱り飛ばしたが、亜矢子ははなのことが心配だった。

はなの姿は教室にはない。

「先生、はなさんはどうなるんでしょう?」

「 … 取りあえず、謹慎中です。

秀和女学校始まって以来の不祥事ですから、退学は免れないでしょう」

「退学?!」


教室に悲鳴のようなどよめきが起こった。

* * * * * * * * * *

授業が終わると、蓮子の元に亜矢子や鶴子をはじめとする同級生が集まってきた。

「葉山様、私たち、はなさんを助けたいんです。

はなさんは、真面目な給費生で、校則を破って羽目を外すような人じゃないんです!

勉強熱心で、家族思いで、私たちの何倍もいい子なんです」


そんなはながどうして酒など飲んだのか …

亜矢子は、はなが退学にならないように、一緒に校長に掛け合ってくれるように頭を下げた。

「私には関係ないことなので … 」

冷ややかに言うとその場から立ち去った。

* * * * * * * * * *

「ブラックバーン校長は、何故あのような生徒を編入させたのでしょう?」

蓮子の背中を憮然とした顔で見つめながら、綾小路は首を傾げた。

「彼女の家は由緒ある伯爵家ですよ … きっと多額の寄付をなさったんでしょう」

富山の言葉に合点がいったようにうなずいた。

* * * * * * * * * *

謹慎を言い渡されたはなは寄宿舎の部屋でひとり悲観に暮れていた。

「お父、お母 … 今度こそ本当にここに居られなくなるかもしれない」

* * * * * * * * * *

< その頃、吉平は東京に居りました >

田舎の参道とは違って、大勢の人が行きかう通りに店を開いた吉平。

自然と売り声にも力が入って、ひとだかりもできていた。

「今の世の中を変えるためには、ぜひとも社会主義なる思想を知っていただきたい!

ぜひとも本を買ってください ~ 応援してください!」


さあこれからだという時に弟分の山田国松が大慌てで帰ってきた。

「 … 娘様の学校、秀和女学校って言ったべ?」

うなずく吉平。

「近くの八百屋で聞いたんだけど ~ そこの生徒が酒かっくらって、大騒ぎして退学になりそうなんだと」

それが、甲府から出てきて真面目に頑張っていた女の子らしいと国松が聞いてきたのだ。

「て ~~~ ?!」

* * * * * * * * * *

仰天した吉平は、取るものも取りあえず、秀和女学校に駆け込んでいた。

ほどなくして、面会室にはながやって来た。

「グッドアフタヌ~ン、はな」

強張った顔のはなは、吉平とのお約束の挨拶にも応えることができなかった。

「お父 … 」

「何かあっただか?

実は、変な噂聞いたんじゃ ~ 秀和女学校で甲府出身の生徒が問題起こしたって」


吉平は無理に繕ったような笑顔で尋ねた。

「まさか、はなのこんじゃねえわな?」

はなは吉平のことをじっと見つめていた。

「お父 … ごめんなさい」

頭を下げたはな。

父に申し訳なくて、申し訳なくて、涙が出てきた。

「 … 私、多分退学になると思う」

「バカやろう!」


顔を上げた瞬間、吉平の手がはなの頬を叩いた。

「何でじゃ、何で酒なんか?!」

叩いた吉平の方も今にも泣きだしそうな顔をしていた。

「私、お酒だって知らなかったの …

ある人のお部屋に行ったら、懐かしいブドウの匂いがして、滋養のお薬だと言われて勧められて … 」

「ほれが、ブドウ酒だっただか?」

「お酒って知ってたら、私絶対飲んだりしなんだ!

本当だよ!

お父、信じて … 」


* * * * * * * * * *

はなは父からの言葉を待った。

「 … お父も信じてくれんだけ?」

「分かっとる ~ はなは、ウソなんか言っちゃいんって、お父が一番よう分かっとる!

でも、ほんでも … 悪いこんは悪い!」


吉平は涙を見せないように、はなに背を向けたのだ。

「はな、退学になっても仕方ねえこんしちまっただ … 」

がっくりと肩を落としてソファーに座り込んだ。

「本当に … ごめんなさい」

はなは自分の迂闊さが悔しくて情けなかった。

「私、皆の希望の光になれなんだ … 」

父のすすり泣く声が聞こえてきた。

< はなは生まれて初めて父親にぶたれました。

でも、はなにとって、それよりもつらかったのは … お父の涙でした。

* * * * * * * * * *

… ごきげんよう、さようなら >

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/23 19:42時点)



NHK連続テレビ小説「花子とアン」 タイトルロゴキーホルダー(横)

新品価格
¥540から
(2014/4/23 19:43時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月22日 (火) | 編集 |
第20回

< はなより8つ年上の編入生、葉山蓮子様がやって来てから、学校中が何やらざわざわとしておりました。

けれどもこれは、まだこれは … 嵐の前兆に過ぎなかったのです >

そして、はなは否応もなく蓮子と深く関わることになる。

ブラックバーン校長から、蓮子の世話係に任命されたのだ。

「世話係、私が?!」

蓮子が直々にはなを指名したと茂木から聞いたはなは戸惑いを隠せなかった。

* * * * * * * * * *

次の朝、はなが蓮子の部屋に朝食の時間を知らせに訪れた時、白鳥かをる子がもの凄い剣幕でやってきた。

かをる子ははなを押しのけて激しくドアをノックした。

「開けなさい、食事をみんなと一緒にしない不届き者がいると聞いて参りました。

葉山蓮子さん、開けなさい!!」


すると、ドアが開いて蓮子が顔を見せた。

蓮子の美貌に一瞬息を飲んだかをる子だったが、気を取り直していつものようにまくし立てた。

「あなたは集団生活のルールというものをお分かりではないようなので、私が教えて差し上げましょう!」

敵意を剥きだしてにらみつけるかをる子に対して、蓮子は黙ったまま涼しげな目で見つめ返した。

「いいですか、食事は食堂で … 」

「今朝は食欲がないので、お食事は結構です。

… 御機嫌よう」


ドアをピシャリと閉めてしまった。

「ちょっと危ないでしょうが!!」

話を途中で打ち切られた上に目の前でドアを閉められたかをる子は、怒りの矛先を傍らでポカンとしているはなに向けた。

「この鼻をドアで挟まれるところでしたよ ~ あの高飛車な態度は何なんですか?!」

< 朝からとんだとばっちりでございます >

* * * * * * * * * *

昨日、授業中にやり込められた富山も蓮子のことを苦々しく思っているひとりだった。

「葉山蓮子という編入生は、本当に学ぶ気があってここに来たんですか?

私はそうは思えません … 授業中も挑発的で、他の生徒に悪い影響がないか心配です」


校長室で抗議する富山を茂木はなだめた。

「これまで彼女がすごしてきた環境とあまりにかけ離れているので、始めのうちは摩擦があるかも知れませんが、しばらく見守ってあげましょう」

「(私たちの学校に来てくれた生徒は皆マイガールですよ。

どんな事情を抱えていようと … )」


ブラックバーン校長からもそう言われて、富山は渋々承服せざるを得なかった。

* * * * * * * * * *

始業時間が近づき、はなは蓮子を再び迎えに上がった。

「改めて自己紹介します。

今日からお世話係をさせていただく、安東はなです … 本名は『はな』ですが、『花子』と呼んでください」

「では、参りましょう ~ 『はな』さん」


人の話など聞いていない蓮子、はなは不満顔であとに従った。

* * * * * * * * * *

それは、古文の授業中のことだった。

教師の綾小路が鶴子に紫式部について、どのような女性と思うかという質問をした。

「 … 学問に打ち込み、教養にあふれた素晴らしい女性です」

いかにも教師が好みそうな模範の解答だった。

綾小路は次に机の上の教科書も開かずにいる蓮子のことを指名した。

「私は、まったくそうは思いません ~ 紫式部は実に意地悪な女性です」

「はあ?」

「紫式部日記の中で、同じ時代に活躍した清少納言の悪口を書き綴っています」


そのような異を唱えられるのも、紫式部の作品を熟知しているからのことだった。

「 … 次に進めましょう」

閉口した綾小路はそう言って、黒板に向かった。

一度席についた蓮子だったが、退屈そうにしていたかと思ったら、再び立ち上がると、断りもなく教室から出て行ってしまった。

「あらっ、葉山様は?」

黒板から向き直って、綾小路は蓮子の姿が消えたことに気がついた。

その言葉にクラスの皆も一斉に蓮子の席の方に目をやった。

誰ひとりとして蓮子が出て行くところを見た者はいなかった … 世話係のはな以外は。

あまりにも見事な脱走劇に声をかけることさえできなかったのだ。

「ふらりとお出かけに … 」

「連れ戻しなさい!」


またもとばっちりだった。

* * * * * * * * * *

「葉山様、葉山様 ~ 」

学校中を捜し回った挙句、礼拝堂で蓮子を見つけた。

「ここにいらしたんですか?」

蓮子は祭壇に向かって十字架を見つめていた。

「授業中いなくならないでください」

「 … ねえ、あなたは神様って本当にいると思う?」


はなの抗議を気に留めることもなく、振り返りもせず唐突に尋ねてきた。

「えっ?」

「もしいなかったら、信仰なんてまるで意味のない無駄なものということになってしまうわね」


この人は一体何が言いたいのだろう … はなはとにかく蓮子を連れて、少しでも早く教室へ戻りたかった。

「本当に困るんです ~ 教室に戻りましょう」

「あの退屈な授業が終わってから戻りましょう」


蓮子の言い草にカッときたはなは語気を強めた。

「あなたは退屈でも、私は勉強しなければならないんです!

田舎にいる家族のためにも。1分も無駄にできないんです!」


すると、蓮子は意外というような口調で尋ねた。

「あなた、家族のために勉強してるの?」

「ええ … いけませんか?」


蓮子にじっと見つめられて、はなは思わず目をそらしてしまった。

* * * * * * * * * *

「え ~ ??

吉平さんの娘様は、そんげいい女学校さ行ってるだか?」


< あら、いつかの饅頭売り、いつの間にお父の仲間になったのでしょう? >

饅頭の代わりに吉平から渡された浅野中也の社会主義の本を読んで心酔した饅頭売り、山田国松は伝道行商の仲間に加わって各地を一緒に回っているのだ。

「そりゃあ、将来楽しみだべ?」

国松の言葉に満足そうにうなずいた吉平だったが、次の瞬間ほんの少し表情を曇らせた。

「ふんだけんど ~ 長男や妹らには、ロクな教育も受けさせてやれなんで … あの子ら、なんぼ働いても地主や資本家に搾り取られるばっかだ。

こういう世の中、間違っとるじゃろ?

一度壊して、作り変えさにゃならん!」

「んだ、んだ!」


力説する吉平だったが、店を広げた山寺の参道は人っ子ひとり通らなかった。

* * * * * * * * * *

一方、甲府では、朝市の教会通いがリンの知るところとなり、ひと悶着起こっていた。

安東家で愚痴をこぼしている最中のリンと、ふじの手習いにやってきた朝市が運悪く鉢合わせしてしまったのだ。

「朝市、おまんどういうつもりで?

兄やんたちが汗水たらして働いてるだに、毎日教会で何してるだ?!

もうほんなとこ行くじゃねえ!!」


普段は親に口答えなどしない朝市だったが、この時は違った。

「いや、明日も行く … おら、勉強がしてえだ」

「勉強だと?!

この親不孝もんがあ ~ 」


勉強をして親不孝呼ばわりは、朝市が不憫だ。

握り拳を振り上げたリンをふじが慌てて止めた。

「 … お母、すまねえ ~ おら、百姓にはならん。

師範学校受けて、教師になる」

「てっ … 」


腰が抜けんばかりのリン。

「やっと、自分のやりてえことが見つかっただ」

朝市のこの決断は、リンだけでなく安東家の人々にも少なからず驚きを与えた。

* * * * * * * * * *

特に衝撃を受けたのは、同世代の吉太郎だった。

晴々と宣言をした朝市の姿が仕事をしながらも頭から離れなかった。

「吉、おまんも百姓辞めたくなっただけ?」

周造はそんな吉太郎の心を察して尋ねてきた。

「 … 時々考えるだよ ~ このままここで終わりたくねえって」

「そうさな ~ 時々考えてみるのも悪かねえさ …

わしなんざ、考えてばっかしいるうちに … 爺になっちまったけんどな」


自虐気味に笑った周造を見て、吉太郎もふっと微笑んだ。

* * * * * * * * * *

「毛布をお届けに参りました」

「そこへ … 」


相変わらず蓮子ははなのことをまるでメイドか何かのように扱った。

頼みごとをしておきながら、自分は椅子に座ったまま読書をしつつ、グラスに注いだ紫色の飲み物を嗜んでいる。

はなは不満を感じながら、言われた通り畳の上に毛布を置いた。

その時だった。

はなは部屋に立ち込める匂いに気がついた。

「この部屋、いい匂いがしますね」

蓮子は取り合わず、読書を続けている。

「懐かしい ~ ブドウ畑の匂いがする」

「 … 懐かしい?」

「私の家は山梨の甲府でブドウ畑がたくさんあるんです。

秋になるとこの匂いでいっぱいになります」


* * * * * * * * * *

蓮子は手にしていたグラスをはなに見せた。

「これ、ブドウを絞った滋養のお薬よ … 体が温まって、よく眠れるの」

「へえ ~ 」

「よろしかったらいかが?」


思いもよらぬお誘いだった。

懐かしさも相まって、はなは蓮子が差し出したグラスを受け取ってしまった。

「じゃあ、いただきます」

ひと口飲んで、はなは目を見張った。

「美味しい!

このお薬、美味しいですね!」


残りをあっという間に飲み干してしまった。

蓮子は、その飲みっぷりに少し驚いているようだったが、お替りを勧めた。

「あ、いただきます!」

はなはグラスに注がれた液体をまたもや一気に飲み干すのだった。

半ばあきれ顔の蓮子。

「 … そんなにお気に召して?」

「はい!

ブドウの香りが胸いっぱいに広がって、体中がポカポカしてきました」

「お好きなだけどうぞ」


蓮子はビンごとはなに差し出した。

「 … いいんですか?」

* * * * * * * * * *

「このお薬、本当に最高ですね ~ 」

グラスを何杯か空けたはなの様子がおかしくなっていた。

椅子に寄りかかって、妙にへらへらしている。

「何だか楽しくなってきました」

「もうそのくらいにしておいたら?」


蓮子にたしなめられて、はなは口を尖らせた。

「え ~ もっと、飲みましょうよ … せ・ん・ぱ・い」

「 … 先輩?」

「ねえ、先輩 ~ 」


はなは蓮子が読んでいる本に目を付けた。

「与謝野晶子なんて読んで … 気取ってんじゃないですよ。

蓮子せんぱ~い!」


蓮子は手に負えないといった顔ではなを見た。

* * * * * * * * * *

「my girl,Good night.」

その時、ドアの外で消灯前の見回りをしているスコットの声が聞こえた。

「ああ、この声!」

うれしそうに立ち上がったはなを蓮子は慌てて取り押さえると、その口を手でふさいだ。

* * * * * * * * * *

「(ミス葉山、大丈夫ですか?)」

返事がないことを不審に思ったスコットがもう一度声をかけてきた。

すると、小さく開いたドアから蓮子は顔を見せた。

「 … おやすみなさいませ」

安心したスコットはうなずき、そして立ち去って行った。

* * * * * * * * * *

ドアを閉めて、ホッとひと息ついた蓮子。

振り向くと、はなはテーブルに突っ伏して眠りこけていた。

「 … こんなに酒癖が悪いとは思わなかったわ」

* * * * * * * * * *

「皆、起きろ ~~~ !」

深夜、寝静まった寄宿舎にそんな大声が響き渡った。

目を覚ました凛子はテーブルに目をやった … 酔いつぶれていたはずのはなの姿がない。

「皆、起きて ~~~ !」

廊下から聞こえてくるのは、はなの声だった。

* * * * * * * * * *

はなは扉を開けて中庭に飛び出した。

酔って火照った顔に夜の空気が心地よかった。

「あ ~~ 気持ちいい!」

両手を広げて大きく背伸びしたはなは、また大声を出した。

「皆、起きろ ~~~ 皆、起きろ ~~~ !」

蓮子はそっと窓から様子を窺った、流石にまずいことになったと思っているようだ。

はなは叫ぶのをやめない。

楽しくて楽しくて仕方がない ~ ふわふわと天にも昇る心地だ。

そのうちに何の騒ぎかと亜矢子をはじめとする生徒たちも起きてきて、廊下の窓からはなを見ていた。

はなはへらへらと笑いながら皆に向かって手を振っている。

「お星様があんなにきれいですよ ~ 」

呑気なことを言っていると思ったら、キラキラ星を歌い始めた。

♪ Twinkle, twinkle, little star ~

< ブドウのお薬というのは、案の定、お酒だったんですね ~

この時代は、未成年の飲酒は法律では禁じられていませんでした。

しかしながら、ここは厳格なミッションスクールです … ご機嫌でいられるのは、今のうちだけですよ、はなさん >

♪ Twinkle, twinkle, little star ~

< … ごきげんよう、さようなら >

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/22 19:11時点)



花子からおはなしのおくりもの

新品価格
¥2,160から
(2014/4/22 19:11時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月21日 (月) | 編集 |
第19回

1945年(昭和20年)東京。

その夜も村岡花子の翻訳作業は続いていた。

「『おお、ダイアナ』

やっとのことでアンは、ささやくような声で言った。

『ねえあんた、私の bosom friend になってくれて?』」


『bosom friend』 … 初めて出てきた単語だ。辞書を引くと、bosomは『懐』とか『内部』といった意味だった。

「親友、心の友 … 」

いくつか候補を原稿用紙の裏に書き出してみたが、どうもしっくりとこない。

「はあ、違うな … 」

花子はふと夜の窓に目をやった。

ガラスに映った自分の顔の向こう、暗闇の中を数枚の桜の花びらがひらひらと舞い落ちるのが見えた。

「 … 腹心の友

自然とその言葉が口をついて出た。

「私の腹心の友になってくれて?」

次から次に、舞い落ちてくる花びらに、花子は遠い日の記憶を呼び起こすのだった。

* * * * * * * * * *

1909年(明治42年)・4月。

寄宿舎から校舎へ向かう路、校門の脇の桜は満開だった。

晴れやかな顔で見上げたはなは一句詠みたい気分になった。

「まなびやに 帰りてみれば さくら花 いまをさかりに さきほこるなり … 花子」

その時、学校の前に一台の黒塗りの自動車が停まった。

運転手が開けたドアから下りてきたのは、紫の見るからに上等な着物を身にまとった気品のある女性だった。

折しも吹き出した春の風が桜吹雪を彼女の上からまき散らして、はなはあまりの美しさに目を奪われてしまった。

落ち着いた雰囲気は、はなより年上に見えた。

「御機嫌よう」

はなは声をかけられたが、咄嗟に声が出てこなかった。

「校長室は何処かしら?」

「 … ご案内します」


ようやくはなが答えると、女性は荷物を持った運転手を従えて歩き始めた。

はながこの先は男子禁制だということを伝えると、運転手は荷物をその場に下して、女性に向かって最敬礼した。

「いってらっしゃいませ、お気をつけて」

女性は自分の荷物だというのにそのまま歩いて行ってしまったので、仕方なくはなが持って後を追った。

< これが、不思議な編入生と、はなとの出会いでした >

* * * * * * * * * *

女性は、はなが苦労して荷物を運んでいるというのに一切手を貸そうともしない。

まるでお嬢様とその従者のようだ。

ふたりが校舎に入ると、玄関のホールにいた生徒たちが注目した。

「どちらのご令嬢かしら?」

「なんてお美しい方でしょう」


亜矢子や鶴子も遠巻きに噂をしている。

「まあ、もうお着きになられたんですね」

茂木がやってきて、女性のことを出迎えた。

女性の名は、葉山蓮子、編入生だった。

「迎えが遅いので、この子に案内してもらいました」

「それは大変失礼いたしました」


茂木があまりにも丁寧に頭を下げるので、はなは女性の横顔をまじまじと見つめてしまった。

「はなさん、ご苦労様」

はなが荷物に手渡している間に女性はさっさと奥へと行ってしまった。

< 先生にも高飛車な態度の編入生に、はなはただ圧倒されておりました。

一体何者なのでしょう? >

* * * * * * * * * *

「あのお召し物をご覧になった?

帯は京都の西陣のそれは高価なものでしたわ ~ きっと大変なおうちの方よ」


興奮気味の亜矢子と鶴子の話しを聞いても、はなにはピンとこなかった。

「はなさん、あの方と何お話になったの?」

興味津々な亜矢子と鶴子。

「あ … 校長室は何処かと聞かれて」

「どんなお声でした?」


はなは声色を真似してみせた。

「他には?」

「 … 迎えが遅いのでこの子に案内してもらいました」


我ながら結構特徴を捉えられたと気をよくしていると、背後からその本人と茂木がやってきていた。

「てっ?!」

* * * * * * * * * *

「茂木先生、私たちの部屋、松平さんがお嫁にいらしてひとり分開いております。

よろしかったら、私たちのお部屋へいらっしゃいませんか?

歓迎いたします」


亜矢子が申し出たが、それには及ばなかった … 蓮子には特別に個室が用意されていたのだ。

おまけにはなは夕食の時間になったら、蓮子のことを食堂まで案内するように言いつけられてしまった。

* * * * * * * * * *

蓮子の部屋は、椅子と丸テーブルが置かれた洋風の作りだが、畳敷きのスペースもあり、個室といってもはなたちの部屋よりはるかに広かった。

大きな窓からは春の日差しがさしこんでいた。

茂木の蓮子に接する態度といい、彼女は特別待遇だった。

* * * * * * * * * *

「 … 葉山伯爵の妹さんですか?」

茂木、富山、綾小路、秀和女学校で数少ない日本人教師の3人が談話室に集まっていた。

話題は編入生の葉山蓮子についてだ。

「それにしても随分大人びてますね、おいくつなんですか?」

「24ですから、同級生より8歳年上ということになりますね」


綾小路の質問に茂木が答えると、ふたりの顔に驚きが浮かんだ。

「 … その年で何故うちの学校へ?」

「そういった事情はブラックバーン校長がご存知ですから … 詮索するのは止めましょう」


茂木自身は何かを知っているのかも知れないが … ふたりには釘を刺した。

* * * * * * * * * *

夕食の時間となり、はなは蓮子の部屋のドアをノックした。

「お食事のお時間です ~ 食堂へご案内します」

しばらくドアの前で待ったが返事がないので、もう一度声をかけてみた。

「 … 食堂へは参りません。

こちらでいただきます」


顔を見せず、ドア越しでそう伝えられ、はなはまたもや仕方なく、今度は食事を運んでくるはめになった。

食事を運んできたことを伝えると、ようやく部屋に入る許可を出した。

しかし、はなが食事が乗ったトレイをテーブルの上に置いても、蓮子は本を読んだままで顔を上げようとさえしない。

「もう下がっていいわ」

しまいにはそんな言葉だけではなを部屋から追い返した。

「 … 失礼いたしました」

思わずへりくだって部屋を出てきてしまったはなだったが、どうにも納得がいかない気分だった。

「もう下がっていいわ … 普通ありがとう、よね?」

* * * * * * * * * *

次の日、蓮子ははなたちのクラスに編入された。

「今日から、皆さんと一緒に学ばれる、編入生の葉山蓮子様です」

皆に紹介したあと茂木が、ひと言挨拶をするように蓮子に求めた。

蓮子は同級生たちの顔を見渡したあと、静かに口を開いた。

「 … 御機嫌よう」

それだけだった。

「本当にひと言ですね … 」

苦笑いの茂木。

* * * * * * * * * *

休み時間になった途端、亜矢子たちが蓮子の周りを取り囲んだ。

「葉山様、ここの前はどちらの学校にいらっしゃったんですか?」

「華族女学校ですか?」

「それとも、ご両親のもとで花嫁修業なさっていらしたのかしら?」


蓮子は薄笑いを浮かべて答えた。

「 … ご想像にお任せします」

何を言っても、優雅さをかもしだす蓮子の振る舞いに亜矢子たちは憧憬の眼差しを贈っていた。

蓮子はといえば、休み時間だというのに皆の輪に加わらず、席についたまま本を読んでいるはなのことが気にかかったようだった。

* * * * * * * * * *

『前略、お母、お変わりありませんか

こちらは今、校庭の桜が満開でそれはそれは美しいです

かよと約束した通り、私は主席を取れるように精進しています

数学とお裁縫はどうしても苦手ですが、英語の勉強はやればやるほど楽しくなります

もうじき、田起こしですね

お祖父やんに無理して腰を痛めんように伝えてくれちゃ

お母もお身体を大切に

Thank you 花子』

はなから届いたハガキを例のごとく、ふじは朝市に代読してもらった。

「朝市、いつも Thank you ね」

「いいえ … ?!」


朝市は、ふじへの便りの他に追伸があることに気づいた。

それは自分に宛てたものだった。

『追伸

朝市、勉強続けてるけ?

私も頑張るから、朝市もこぴっと頑張れし』

そんな短い一文だったが、朝市の何よりの励みになった。

* * * * * * * * * *

そんな朝市は時間を見つけては、教会の図書室で本を読み漁っていた。

「朝市君、いつも感心だね」

振り向くと森牧師が優しい笑顔で立っていた。

「ふんだけんど、うちの母は米作るのに何の役にも立たんて …

ここに来てるのも内緒なんです」


何ともいえない寂しげな顔で答えた。

すると、森牧師はうなずいて、朝市の隣に腰を下ろした。

「 … それじゃあ、人の役に立つ勉強をしたらどうだろう?」

「ほりゃあ、どういうこんですか?」


朝市は目を輝かせた。

* * * * * * * * * *

ふじへのハガキに書いた通り、はなは英語の勉強が楽しくて仕方がなかった。

その日の授業の教材はシェークスピアの『ロミオとジュリエット』、はなは英文を読み上げながらその部分を和訳していた。

「Kisses her.
… ジュリエットに接吻する。

Thus from my lips,by yours,my sin is purged.
… ほら、あなたの唇のお蔭で、私の唇の罪が清められました」


はなの和訳は相変わらず、富山の言うところの「砕けすぎた」ものだった。

「そこまでで結構です」

突然、富山は物語の先を続けようとするはなを止めた。

「 … この先は割愛して次の章に移ります」

「待ってください!

ここは、ロミオとジュリエットが愛を確かめ合う大変重要な章だと思うんです」


すでに何度もこの戯曲を読んでいたはなは見逃すことができずに異議を唱えてしまった。

「授業の教材として相応しくないと言ってるんです」

「 … どうして相応しくないんですか?」


富山の言うことが理解できず、食い下がったはな … 教室の雰囲気は張り詰めてしまった。

「もういいでしょう?」

富山が忌々しそうにため息をついた。

「あなたのように授業の進行を妨げる生徒のせいで、このクラスはただでさえ遅れてるんです」

はなの言い分など無視して授業を進行させてしまった。

* * * * * * * * * *

あきらめたはなが席に座ったその時だった。

「やわ肌の あつき血汐にふれも見で さびしからずや 道を説く君 … 」

おもむろに蓮子がその歌を詠み上げた。

「 … 何ですか、その歌は?!」

富山は怪訝な顔をして尋ねた。

「与謝野晶子です」

「そんなことを聞いてるんじゃありません!

英語の授業中に何故短歌なんか?」


クラス中の視線が集まる中、蓮子は涼しい顔で答えた。

「何故かしら?

今のやり取りを聞いていたら、急にこの歌が頭に浮かびましたの」

「あなたまで授業の邪魔をするんですか?」

「先生は男女の恋愛を汚らわしいものだと決めつけていらっしゃるようですね …

それは、ご自身の恋愛経験が乏しいからでは?」


教室がざわめき、富山の顔から血の気が引いていくのが分かった。

「何を言うの?!」

明らかに動揺を隠せない富山だった。

「あなたは教師を侮辱するんですか?」

「いいえ、客観的な感想を述べただけです」


蓮子は表情ひとつ変えずにいけしゃあしゃあと言ってのけた。

* * * * * * * * * *

「出ていきなさい … Go to bed!」

激昂した富山の声が何故か空しく教室に響き渡った。

「では、お先に … ごめんあそばせ」

立ち上がった蓮子は軽く会釈すると教室から出て行ってしまった。

怒りに震えながらも呆然と見送るだけの富山。

はなは自分のことがきっかけになった気がして困惑していた。

< どうやらこの編入生、富山先生より一枚も二枚も上手のようですね … >

* * * * * * * * * *

廊下に出た蓮子の目の前には、立ちすくむブラックバーン校長と茂木の姿があった。

しかし、蓮子はまったく怯むこともなく、ふたりにも会釈した。

< ごめんあそばせ ~ >

廊下を歩く蓮子はふと足を止めて窓の外、音もなくひらひらと舞い落ちる桜の花びらを見つめていた。

< … ごきげんよう、さようなら >

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/21 20:04時点)



連続テレビ小説 花子とアン オリジナル・サウンドトラック

新品価格
¥3,146から
(2014/4/21 20:04時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月20日 (日) | 編集 |
まずは、先週のおさらいを …



それでは、次週の「花子とアン」は?

何て美しい方でしょう

彼女の家は由緒ある伯爵家ですよ


本科に進級した春、はな(吉高由里子)は、運命的な出会いをする。20代半ばの女性が突然編入してきたのだ。その女性、葉山蓮子(仲間由紀恵)の美しさと優雅な物腰に、校内は噂で持ちきりとなる。

あの高飛車な態度は何なんですか?

出て行きなさい!


蓮子ははなに荷物を運ばせるなど高飛車に振る舞い、授業では富山(ともさかりえ)を「あなたは恋愛経験が乏しい」と挑発し、激怒させる。

ところが茂木(浅田美代子)はなぜか蓮子に気を遣っている様子で、ブラックバーン校長(トーディ・クラーク)もはなを蓮子の世話係に任ずる。

これはこれは、皆さん

はなさん?!


ある夜、はなが蓮子の個室を訪れると、蓮子は自分が飲んでいた飲物を「葡萄で作った薬だ」とはなに勧める。信じて飲んでしまったはなは、なぜか気分が良くなってしまい、校内を大声で歌いながら踊って回る。

何事かと集まった生徒や教師たちの前で、しまいには眠り込んでしまうはな。彼女が飲んだのは葡萄酒だったのだ。

バカやろう!

校長たちに事情を問われた蓮子は「はなさんが勝手に飲んだ」と言い放ち、はなは愕然とする。前代未聞の不祥事に、はなは処分保留のまま謹慎となる。

私を退学させてください

そんな折り、蓮子の兄・葉山晶貴伯爵(飯田基祐)が女学校を訪れる。蓮子が女学校に編入したのには、ある深い事情があった…

何の苦労もしたことない人に言われたくありません!

花子とアン 公式サイト、YAHOO!テレビガイド他を参照)

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/20 11:23時点)



アンを抱きしめて―村岡花子物語

新品価格
¥2,160から
(2014/4/20 11:24時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月19日 (土) | 編集 |
第18回

はなは東京へ戻って来た。

寄宿舎ではなを出迎えたのは、白鳥かをる子だった。

「御機嫌よう ~ あなたが留守の間、これが届きました」

かをる子はいつになく愛想よく近づいて来ると、一通のハガキを手渡した。

差出人は北澤だった。

裏を見ると、『恭賀新年』という文字以外すべて黒く塗りつぶされているではないか。

「真っ黒?!」

「適切でない表現がありましたので、私が墨で塗りつぶしました。

~ あしからず」


かをる子はいけしゃあしゃあと言ってのけた。

< あしからずじゃねえ! … と、心の中で叫ぶはなでした >

* * * * * * * * * *

部屋には、亜矢子、幸子、鶴子の3人も親元から戻ってきていた。

「『恭賀新年』、その続き何て書いてあったんだろう?」

はなから真っ黒に塗りつぶされたハガキを見せられた亜矢子たちも我が事のように腹を立てている。

「あの方、人のロマンスの邪魔ばかりするんですもの」

「ご自分が行き遅れた腹いせですわ」

「私たちもああならないように早く結婚しないと」


亜矢子と鶴子がそんな話をしていると、幸子が突然、結婚が決まったことを報告した。

「てっ、結婚?!」

「まさか、例のイノシシみたいな方と?」


幸子はうなずいた。

「両親に強く説得されましたの。

こんなにいい条件の縁談は今しかない ~ 売れ残らないうちに、早く決めなさいと」

「 … お式はいつですの?」

「先方のお仕事の都合で来月そうそうに …

お式の準備があるので、皆さんともお別れです」


幸子の態度からは学校を辞め、友達と別れる寂しさなど微塵も感じられなかった。

むしろ、勝ち誇ったような顔さえしている。

「そ、そうですか … 」

はなにはあまり実感がわかない話しだったが、亜矢子は違った。

「はなさん、急に私も焦ってきたわ」

「えっ?!」

「いい縁談が降るようにあるのは、16か17まで!

その先はどんどん条件が悪くなって … 20歳過ぎたら、もうロクな縁談が来なくなるんですって!」


初等科の頃から良縁に恵まれることを目標にしてきた亜矢子にとって、幸子に先を越されたのが余程悔しいのだろう。

< お嬢様たちの適齢期が16か17歳というのは、そんなにオーバーな話ではございません。

当時、秀和女学校では、卒業を待たずに『寿退学』する生徒が、何と半数近くもいたのですから … >

* * * * * * * * * *

新学期が始まったはなの元にふじからハガキが届いた。

『はな、頑張って勉強してるけ

こないだは、クッキーとやらをごちそうさまでした

こんなうめえもん、見たこんも食ったこんもねえって、うちじゅう皆大喜びだっただよ

かよは、はなのクッキーを全部平らげて、元気に製糸工場へ行きました

きれいなクッキーの缶を宝もんにするちゅって、持ってただよ

はなも、体に気つけて頑張れし

お母より』

ふじの便りと一緒に朝市の言葉も書き添えてあった。

『追伸

おらもはなに負けられん

教会の図書室で本を読んでます

やっぱし、本は面白いけんど、はなに追いつくには何年かかるずら

朝市』

「朝市 … 」

女工として働き始めたかよ、勉強を再開した朝市、それぞれ新たな一歩を踏み出したのだ。

* * * * * * * * * *

学校の裏庭でハガキに目を通していると、茂木から声をかけられた。

顔を上げると、ブラックバーンと富山も一緒だ。

「おうちはいかがでしたか?」

「お蔭さまで家族と大層いい時間を過ごすことができました」


感謝の言葉を述べたはなに対してブラックバーンは言った。

「(言っておきます … 今度門限を破ったら)

Go home forever and ever.(永遠に)」

「つまり、退学ということですね」


補足した富山。

「あなたは前科があるのですから、次の日曜学校では本当に気をつけなさい」

「はい」


茂木の戒めにはなはうなずきながら、『日曜学校』という言葉に心が揺れた。

日曜学校へ行けば、また北澤に会うだろう。

< もう一度会いたい気持ちと、ウソをついてしまった後ろめたさがごちゃ混ぜになって眠れないはなでした >

* * * * * * * * * *

年が明けて初めての日曜学校の日がやってきた。

礼拝の時、はなは視線を感じて横を見た。

北澤が見つめていた。

* * * * * * * * * *

「 … 花子さん」

子供たちとカルタをしている時、はなは北澤に呼ばれた。

北澤の後についていくと、牧師とミニー・メイが待っていた。

「わざわざすみません。

迎えの人が来たので、ミニーは今日カナダに帰ります。

… おふたりにお別れを言いたいそうです」

「Hana,Tsukasa … (紙芝居、とても楽しかったわ)」

「(僕もとても楽しかったよ … 花子と親指姫ができて)」

「(ありがとう、さようなら)」


ミニーは北澤の頬に、そしてはなにもキスをした。

「(元気で)」

「I miss you.(また会いたい)」


ふたりは牧師に連れられて出て行くミニーを見送った。

もし、はなが門限を破らなかったら、ミニーはふたりにとってキューピッドになっていたかもしれない …

* * * * * * * * * *

日曜学校の後、はなは北澤に誘われて近くの参道をそぞろ歩いた。

「年賀状、届きましたか?」

「すみません、あれ読めなかったんです。

厳しい先輩に墨で塗りつぶされてしまって … 」

「そうだったんですか … 」


北澤はがっかりしたような、それでいて少しホッとしたような複雑な表情をした。

「『恭賀新年』の後、何て書いてあったんですか?」

「参ったな … じゃあ、今言います」

「はい」

「『会えない時間が、あなたへの思いを育ててくれます』 … と書きました。

金沢へ帰っていた時の率直な気持ちです。

それで、ハッキリ自分の心に気がついてしまいました」


北澤は真剣な顔をして、はなに向き直った。

「花子さん、僕はあなたが好きです。

花子さんさえよければ、近いうちにご両親にもお目にかかって …

結婚を前提にしたお付き合いをお願いしたいと思っています」

「け、結婚?!」


* * * * * * * * * *

「ちょっ、ちょっとお待ちになってください」

思いがけない北澤の告白にはなは動揺を隠せなかった。

「もちろん、返事は今すぐにとは言いません」

北澤は肩の力を抜いてふうっとひと息ついた。

「 … やっと言えた」

「あの … ひとつ聞いてもいいですか?」


はなは自分のどこを好きになってくれたのか尋ねた。

「子供が好きで、笑顔が実に素敵なところです。

あなたの笑顔を見ていると、ご両親にこよなく愛されて、温かい家庭に育った人だということが、伝わってくるんです」

「 … はい、本当にそうです。

けど … けど、北澤さんが思っていらっしゃるような家族とは全然違うんです」


はなの深刻そうな顔を見て、北澤から笑みが消えた。

「どういうことですか?」

「 … ごめんなさい」


はなは北澤に向かって頭を下げた。

「私、ウソをつきました。

私の父は、貿易会社の社長なんかじゃありません … 行商人です。

大きな荷物を担いで、あちこち駆けずり回って、生糸や日用品を売っているんです」


* * * * * * * * * *

「私のうちは小作の農家で、ハガキを書いても母は字が読めません。

私の幼なじみに読んでもらって、返事も代筆してもらうんです。

妹のかよは、製糸工場の女工になりました … 今頃、苦労して頑張ってるはずです」


話していると、ひとりひとりの顔が浮かんできた。

「 … 私、そんな家族が恥ずかしくて、北澤さんにウソをつきました。

けど、そんな家族に支えられて、東京で勉強させてもらっているんです。

大好きな家族なんです。

だから … 本当にごめんなさい」


言葉に詰まったはなは、ただ頭を下げ続けた。

そして、居たたまれなくなって駆け出した。

* * * * * * * * * *

「花子さん!」

「 … 本当は『はな』です。

両親からつけてもらった名前は『花子』じゃありません」


はなは振り返って北澤を見つめた。

「でも、『花子』って呼んでもらえて … うれしかった。

さようなら」


はなは歩き出した。

北澤はもうはなを呼び止めはせず、ただその背中を黙って見送っていた。

はなは自分ではなく、家族のために学問する道を選んだのだ。

それは、真実を打ち明けられたことより重かった。

< はな、16歳の冬でした >

自分で決めたことなのに、涙が出てきて止まらないはなだった。

< ではまた来週。

… ごきげんよう、さようなら >

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/19 16:35時点)



アンのゆりかご―村岡花子の生涯 (新潮文庫)

新品価格
¥810から
(2014/4/19 16:35時点)




『ごちそうさん』のスピンオフドラマ【ごちそうさんっていわしたい】
本日放送!!

NHK BSプレミアム 4月19日(土)19:30~21:00

あのメンバーたちにまた会える!連続テレビ小説「ごちそうさん」が、スピンオフドラマとなって帰ってきます。ヒロイン・め以子の息子・泰介の初恋を巡って、おなじみの顔ぶれが大騒ぎ!抱腹絶倒のコメディです。

出演:杏、東出昌大、キムラ緑子、高畑充希、和田正人、茂山逸平、菅田将暉、前田亜季、山中崇、中村靖日、松浦雅、千原せいじ、吉行和子、宮崎美子 ほか

朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月18日 (金) | 編集 |
第17回

「はなには、黙ってろって、口止めされたけんど …

かよちゃん … 年明けたらすぐ、製糸工場の女工になるだ」

「女工?!」


はなにしてみれば、寝耳に水の話だった。

「今年は台風のせいで米がさっぱり取れんで、皆ろくすっぽ寝ないで内職してたけんど … ほんでも大変らしくて、かよちゃん自分で働き口探してきただよ。

昔のはなみてえに」

「 … 知らなんだ」


はなはしゃがみ込んでしまった。

「おら、恥ずかしい … 皆の苦労も知らんで。

おらのために、皆無理してご馳走こせえてくれただな …

朝市、おら、穴があったら入りてえ ~ 今すぐここに穴掘って入りてえだ!」


知らなかったこととはいえ、かよも給費生になれなんて、何てひどいことを言ってしまったのだろう … かよが言った通り、呑気な自分が情けなくて涙が出てくる。

* * * * * * * * * *

「モグラみてえじゃん」

すると、朝市もはなの横にしゃがみ込みながら笑った。

「サナギがチョウになって帰ってきたと思ったら ~ なんでえ、モグラけ?」

はなは口を尖らせたが、ハッとして立ち上がった。

「てっ、油売ってる場合じゃねえ … 」

水汲みの途中だったことを思い出したのだった。

* * * * * * * * * *

1909年(明治42年)・元旦。

安東家の人々は、揃って家の外へ出て、富士山のご来光を拝んでいた。(吉平だけは正月を迎えるのを待たずにまた行商に出てしまっていたが)

「明けましておめでとうごいす ~

今年は、天候が荒れねえで、お米がうんとこさ取れますようお願えしやす」


一家を代表して周造が祈ると、一同も手を合わせた。

目をつぶって一心に祈っているかよ。

その横顔を見つめたはなも胸中にある決意を固めていた。

* * * * * * * * * *

正月早々、はなは頼みごとをするために徳丸甚之介を訪ねて行った。

美しく成長したはなを見て、甚之介は誰か分からずに怪訝な顔をしてみせた。

「ご無沙汰しております。安東花子です」

「ああ、ふじちゃんの娘の」


その声を聞いて、家の奥から武が飛び出してきた。

「てっ、おまん、はなたれのはなけ?」

「 … 武」

「こないだ汽車で会ったときゃ、きれいな着物着てたから、どっかのお嬢様と思ったじゃんけ」


武から捜し出すように言いつけられていた女性が実ははなだったと知って、三郎が驚いている。

「 … 地主様、お願いがあって参りました」

「何ずら?」

「私に働き口を世話してください、お願いします!」


* * * * * * * * * *

「私は本当によく働きます。

こないだはひとりで学校中の大掃除をしました。

… 英語も少しならできます」


はなは必死に自分を売り込んだ。

「おまん、確か東京の女学校へ行ったんじゃなかっただけ?」

「はい … でも、働き口があれば、女学校はいつでも辞めます」


本気かと甚之介は訝しがっていたが、はなは頭を下げて頼み込んだ。

「こりゃあ、ふじちゃんとこ相当困ってるだな … 」

甚之介は三郎たちと顔を見合わせた。

「 … だけんど、この不景気に簡単に稼ぎ口が見つかる訳ねえずら」

「そこを何とか!」

「ねえと言ったらねえ!

商売の邪魔だ、帰ってくれじゃ」


けんもほろろの甚之介、それでもはなは土間に土下座までした。

「地主様、何でもしますから、お願いします!

お願いします、お願いします … 」


* * * * * * * * * *

野良仕事に出ていたかよが戻ると、ふじが朝市に字を習っている最中だった。

「何をしてるで?」

「ははは、かよが製糸工場行ったら、自分でハガキぐれえ書けるようになりたいと思って … 」


石盤に書いた「カヨ」という文字を見せた。

「お母 … 」

かよは母の気持ちがうれしかった。

そこへ、リンが息を切らせて駆け込んできた。

新年の挨拶もそこそこにリンはふじに尋ねた。

「はな、女学校辞めて働くだと?」

「えっ、はなが?」


ふじもかよも狐につままれたような顔をしている。

「知らんだけ?

徳丸さんとこで、働き口世話してくりょって、頭下げてただと」


いつものことながら、リンの情報を仕入れる速さは神がかりしていた。

「あ … おばさん、おらのせいずら」

朝市には思い当たる節があった。

「おらが … はなにかよちゃんの話しなんしたから … 」

「朝市、黙っててって言ったじゃん!」

「ごめん!」


申し訳なさそうに謝った朝市を見て、かよもそれ以上責めることは出来なかった。

* * * * * * * * * *

日が傾きかけた頃、はなは戻って来た。

「はな、ちょこっとこけえ座れし」

「 … 何で?」


ただならぬ雰囲気の母に、はなは何事かと腰を下ろした。

「女学校辞めて働きてえって、徳丸さんに頼みに行ったそうじゃんけ?」

「てっ?!」


驚きの声を上げたのは、囲炉裏端に座っていた周造だ。

「 … はい」

「おら、許せねえ … 」


真っ先に口を開いたのはかよだった。

「女学校を辞めるなんて … お姉やんがほんな簡単に勉強を投げ出しちまうなんて」

「かよ … 」

「情けなくって、悔しくって、力が抜けた。

何のために働きに出るだか、おらまで分からんくなっただ」


かよは唇をかみしめた。

「はな、皆心の中で応援してるだよ ~ かよも吉太郎も」

ふじは優しく言い聞かすように話し始めた。

「東京の立派な学校で頑張ってるはなのこんを思うと、誇らしい気持ちになって、皆 … 力が湧くだよ。

ここいらで惨めなこんがあっても、おれたちにははなみてえな家族がいるっちゅうだけで勇気が出るだ」

「ふんだけんど … おらだって、家族の役に立ちてえ!

皆が苦労してるだに、おらだけ勉強さしてもろうなんて … 」

「分からん奴じゃ!」


今まで黙っていた吉太郎が声を荒げた。

「 … はなが今辞めたら、お母たちのこれまでの苦労が全部水の泡じゃんけ!」

それだけ言うと、吉太郎は席を立った。

「兄やん!」

「畑見てくる」

「畑行くならおらも!

地主さんに働き口なんかねえって断られただ … 畑なら、おらも手伝えるから」


野良仕事の用意をしている吉太郎の背中にはなは訴えた。

「さっさと東京帰っちめえ、ここに居られても食いぶちが増えるだけずら」

ぶっきらぼうに言うと家から出て行ってしまった。

「吉!」

後に続く周造とはな。

* * * * * * * * * *

「な~んだ、地主さんに断られただけ?」

かよがホッとした顔でふじのことを見た。

すでに働き口を決めてきてしまったと早とちりしていたのだろう。

「ああ ~ 」

ふじも胸をなでおろしたのだった。

* * * * * * * * * *

「兄やん!」

籠を担いで吉太郎を追おうとするはなのことを周造が制した。

「はな、自分の手、見てみろし」

周造からゆっくりと諭すように言われて、はなは両掌を胸の前で広げてみた。

白魚の様な、すらっと伸びた指だった。

周造はその手を取って、裏返して手のひらを見せた。

「 … ほの手はもう百姓の手じゃねえ」

はなは、ハッとして周造の顔を見た。

「ほの手は … 米を作るより、わしらが作れんもんを作るのに使えし。

皆、ほう思っとるだ」


吉太郎の一見冷たい態度もはなに対する思いやりなのだ。

周造は微笑み、はなの頭を子供の頃のようになでると畑へと下りて行った。

「お祖父やん … 」

はなは自分の手を握りしめた。

もうおらの進む道はひとつしかない …

はなの顔を夕日が染めていた。

* * * * * * * * * *

ほどなくして、はなが東京へ戻る日がやってきた。

女性ばかりの見送りだった。

「ほいじゃあね」

「お姉やん、お嬢様たちに負けるじゃねえだよ。

一番取らんと承知しんよ」


かよの言葉にはなは笑ってうなずいた。

「かよも体に気をつけて頑張るだよ」

「うん」

「じゃあ、行ってきます」

「はな、こぴっとするだよ!」


はなが歩き出すと、畦道から転げるように朝市が現れて、はなの手から鞄を受け取った。

「お姉やん、元気で」

皆笑顔ではなを見送った。

* * * * * * * * * *

「へえ、武に会っただけ?」

「小学校の時とちょっこも変わってなんださ」


帰省した時と違って、ふたりは談笑しながら並んで歩いた。

見えない壁が取り払われたようだ。

「あいつは隣町の商業学校に行っただ」

「朝市の方がうんと勉強好きだったのにね」


その言葉に朝市が足を止めた。

「学校行かんでも勉強はできる」

「え?」

「はな、おら勉強続けるじゃん。

… 学校行かんでも、本が思いっきし読めるとこ、はなが教えてくれたじゃんけ」

「てっ、あすこ?」

「うん、教会の本の部屋!」


ふたりは腹を抱えて笑い出した。

「夜中に忍び込んだじゃんね!」

「牧師さんに見っかって、池に落っこったら!」

「ほんで、朝市だけ捕まってさ ~ 」


今となっては、懐かしくて、おかしくて涙が出るような思い出だった。

* * * * * * * * * *

ふと、はなが真顔に戻った。

「 … ここでいい」

朝市は少し寂しそうな顔を見せたが、うなずいて、鞄をはなに返した。

朝市にとって至福の時間はあっという間に過ぎたのだ。

「ふんだけんど、朝市、何で急に勉強始めようと思ったで?」

「ほれは … はなにまた会えたからじゃん」


朝市は迷いながら答えた。

「 … 会えてよかったさ」

「おらも … 皆に会えてよかったさ」


はなにしてみれば深い意味はないのだろうが、「皆」というのが朝市には少し不満のようだ。

「あっ、皆に食べてもろうの忘れた」

「忘れもんけ?」


はなは鞄を広げて、しまい込んで忘れていたクッキーの缶を取り出した。

「これ、お土産のクッキー」

「 … くっきい?」

「西洋のお菓子だ ~ おらが焼いたの。

これ、皆に渡してくれちゃ」

「分かった」

「朝市も食べていいだよ」


はなにしてみたら、自分は皆の中のひとりだということを朝市は分かっていた。

「ほんじゃあ、さいなら」

「 … さいなら」


今度こそ本当の「さいなら」だ。

歩き出したはなに朝市はもう1回大きな声で言った。

「さいなら!」

はなも振り向き手を振っている。

去りゆくはなの後姿を切なく見送った朝市だった。

< … ごきげんよう、さようなら >

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/18 20:18時点)



連続テレビ小説 花子とアン オリジナル・サウンドトラック

新品価格
¥3,146から
(2014/4/18 20:18時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月17日 (木) | 編集 |
第16回

< ブラックバーン校長の取り計らいで、はなは5年ぶりにうちへ帰れることになりました >

甲府の家へと続く懐かしい道で、はなは野良仕事の途中の朝市とすれ違った。

しかし、ふたりはお互いに誰だか分からずに、会釈しあっただけだった。

ふと足を止めた朝市は振り返って、今すれ違ったばかりのはなの背中を見つめた。

「 … まさか?」

この辺りでは見かけない、あか抜けた女性だったが、会釈した時に何となく見覚えがある面影を見たような気がしていた。

「はなけ?」

呼び止められて振り向いたはな。

ふたりは、少し離れた場所からまじまじとお互いの顔を見つめ合った。

「 … ひょっとして、朝市?」

朝市がうなずくと、はなは笑いながらお辞儀をした。

「お久しぶりです、花子です」

まだ信じられないといった顔で恐る恐る近づいてくる朝市。

「本当にはなけ?」

すると、はなは少し不機嫌な顔をして言った。

「はなではございません … 花子と呼んでください」

昔、数えきれないほど聞いたセリフだった。

「やっぱし、はなだ … 」

「 … では、御機嫌よう」


はなはすました顔で言うと、家がある方向へ踵を返した。

慌てて後を追った朝市は、はなの手から鞄を奪い取ると、はなの後に従って歩き出した。

* * * * * * * * * *

安東家。

ふじとかよは、「まだか、まだか」とはなの帰りを待ちながら、甲州名物のほうとうを打っていた。

わら仕事をしている周造と吉太郎もどこかそわそわしていて、皆入口の方を気にしている。

戸の障子に人影が写った。

笑顔になるかよ。

「はな、まだけ?!」

戸を開けて顔を覗かせたのは、隣のリンだった。

* * * * * * * * * *

「ここはちっとも変わりませんね」

はながいくら話しかけても、朝市はうなずくだけでまともに口を利かず、目も合わせずに少し離れてついてくるだけだった。

ようやく帰ってきた我が家の前から見える懐かしい景色に向かって思いきり腕を広げて深呼吸してみた。

「気持ちいい ~ 」

そんな横顔を朝市はまぶしそうに見つめていたが、はなが振り向くとやはり目をそらしてしまった。

< 朝市ったら、なんでひと言もしゃべらねえだ?

何怒ってるだ?

… と、はなは思っておりました。

怒っているのではなく、朝市は声が出なかったのです。

サナギだったはなが美しいチョウになって、帰ってきたみてえで … >

* * * * * * * * * *

はなが家に足を踏み入れると、家族全員が「てっ」と言ったきり、絶句してしまった。

「御機嫌よう … ただいま帰りました」

成長したはなと何回も面会している吉平だけが、にこやかにはなのことを出迎えた。

「グッドアフタヌ~ン、はな」

「 … グッドアフタヌーン、お父様」


上がり框に腰かけていたリンがはなの顔を覗き込んで尋ねた。

「おまん、本当にあのはなずらか?」

「ええ、私そんな変わりました?」


はな自身は5年前と何も変わっていないつもりだったのだ。

「 … そうさな、どこのお嬢様かと思ったずらよ」

周造の言葉にはなの横に立っていた朝市も激しくうなずいている。

「お帰り、はな ~ はあ、大きくなったじゃんね ~ 」

涙をいっぱい溜めたふじの顔を見て、はなは胸に熱いものがこみ上げてくるのを感じた。

「お母、お祖父やん、兄やん、かよ、もも … おばさん、朝市」

ひとりひとりの名前を呼ぶと皆それぞれがうなずいた。

「 … 会いたかったさ!」

「あ ~~ !」


5年ぶりの再会を喜びあった。

* * * * * * * * * *

その夜の食事ははなの好物が並んだ。

「うわ ~ 美味しそう!」

ほうとうをよそった椀を手にしたはなにかよがふじの苦労話をきかせた。

「お母、これこせえるのに昨日からあっちこっち駆けまわって大変だっただよ」

「ありがとう … おらの好きなんばっかじゃん」


家族に囲まれて、はなも甲府弁に戻っていた。

「うめえ ~ 」

久しぶりのふじの手料理に舌鼓を打っているはなに吉太郎が言った。

「毎日、華族のお嬢様たちと同じごちそう食ってたら、こんなもん口に合わんら?」

「ううん、お母のほんとうは日本一じゃ」


偽りのない本当の気持ちだったが、何故か吉太郎は突っかかってきた。

「無理しんでいい」

「 … 兄やん」

「ほりゃあ、はなは寄宿舎で肉だの卵だの贅沢な食事さしてもらっているが … 」


吉平の話に幼いももが無邪気に尋ねた。

「肉だの卵だの、毎日け?」

「おう … ほの分、朝から晩まで勉強しとるんじゃ」

「おらたちとは、まるっきし違う世界の話じゃん」


かよの顔からす~っと微笑みが消えてしまった。

吉平は構わず話し続けた。

「勉強は本当努力して頑張ったもんが勝つ。

身分や金持ちかどうかなんて関係ねえ、はなは本当よく頑張ってるだよ」


上機嫌な吉平とは対照的に吉太郎とかよは黙り込んでしまった。

「お父、せっかくのご馳走が冷めちもうよ」

この話を切り上げたいはなが吉平を促した。

部屋には気まずい空気が漂っていた。

吉平は何も感じていないようだが、ふじは取り繕おうと明るく振舞った。

「皆、たんと食えし ~ はなの好物の草餅もあるずら」

「てっ、草餅?!」


はなが目の色を変えた。

「お祖父やんと吉太郎がついてくれただよ」

「ずっと食べたかったさ ~ ありがとう!」


はなにとって、やはりふじの料理が日本一だった。

* * * * * * * * * *

< せっかく焼いたクッキーですが、はなは皆に渡すのをためらっていました >

そんなことがあって、はなはクッキーの缶を荷物の中にしまい込んでしまった。

* * * * * * * * * *

はなが帰省の際に乗った汽車の同じ車両に偶然乗り合わせた男子学生。

彼は徳丸甚之介のひとり息子、武の成長した姿だった。

武は家に帰ると、三郎たち使用人を集めた。

「見たこんもねえような別嬪でごいすか?」

「同じ汽車に乗り合わせて、その娘っ子も甲府で降りただ」


武も見初めた娘がまさかはなだとは夢にも思っていないようだ。

「おら、あの人とお近づきになりてえ ~ どこに住んでるだか、見つけ出してくりょう。

着てるもんが上等だったから、きっと大地主か、いいとこのお嬢様ずら」


得意げに話していると、突然障子が勢いよく開いた。

「ここいらにうちより大地主なんかいる訳ねえずら!」

父、甚之介の姿を見て、武は慌ててひれ伏した。

「武、そんなこんより、この成績はなんで?!」

甚之介は不機嫌な顔で、武に成績表を突きつけた。

見るに堪えない評価が並んでいる。

「おなごにうつつ抜かしてる場合け?!」

成績表で武の頭を思い切り叩いた。

「勉強しろしっ!」

* * * * * * * * * *

「どうでい、おらお姫様みてえけ?」

かよがはなが着ていた真っ赤な着物を羽織ってももに尋ねた。

ももはうなずくと、自分はリボンを頭に乗せてみせた。

「もももお姫様みてえ」

ふたりで笑いあっていると、普段着に着替えたはなが部屋に入ってきた。

慌てて着物を脱いだかよに、はなは言った。

「かよ、よく似合う … 脱ぐことないじゃない」

実は、その着物は借りものであることを伝えた。

はなが帰省することを知った亜矢子が、前夜わざわざ着物と鞄を持って寄宿舎に戻ってきてくれたのだ。

「久しぶりに故郷にお帰りになるんでしょ ~ きれいに変身して、お母様たちをびっくりさせてお上げなさい」

「 … 鞄も靴も全部その醍醐さんって友達が貸してくれたの」

しかし、何故かかよの表情は固い。

はなは思い切って尋ねてみた。

「ねえ、かよは上の学校には行かないの?」

「 … いかん」

「どうして?」

「兄やんに言われただよ。

おなごが勉強なんしたって、お嫁に行くのに邪魔なだけずらって」

「でも、勉強で知らなかったことが分かっていくのって、本当にワクワクするわよ」


かよはうつむいている。

「かよ、歌が好きだったじゃない?」

「歌は好きだけんど、勉強は嫌いだ」

「秀和女学校にはね、楽器がたくさんあって、毎日誰かが音楽を奏でているの」


かよが少し興味を示したようにはなには見えた。

「本当にいい学校だから … かよもきっと気に入ると思う」

* * * * * * * * * *

「何でほんなこん?」

「私ね、実はずっと考えていたの。

かよも給費生として、うちの学校に編入すればいいんじゃないかって」


はなの言葉にかよはフッと笑った。

「姉やんは、呑気でいいずら」

「えっ?」


喜んでくれるとばかり思っていたはなは、かよから返ってきた反応に戸惑っていた。

「もう、おらのことは放っといてくれっちゃ!」

そう言い捨てて、かよは部屋を飛び出して行ってしまった。

* * * * * * * * * *

その頃、吉平はふじに表に連れ出されていた。

「なんじゃ、こんなところで話って?」

暮れも押し迫った夜の空気は身も凍るほど冷たかった。

「あのボコたちの前じゃ、でけん話だから … あんたはすぐにまたどっかへ行っちもうし」

「ほういうこんか … 分かった。

子供たちも大きゅうなったし、こうでもしんと、ふたりっきりになれんからな ~ 」


吉平は何を勘違いしたのか、ふじの肩を抱いてきた。

「何を寝ぼけたこん、言ってるで ~ いい年こいて。

あんた、ほんなだから、吉太郎やかよの気持ち分かってやれねえだよ」


そこまで言われても吉平には心当たりがなかった。

「あんたは、はなだけが自慢で他のボコたちはどうなってもいいだけ?」

「ほんなこたねえ!

ただ、はなは5年ぶりにやっと帰ってこれて、今しかうちに居れんから」

「ほれは、かよも同じずら!」


ふじの言っている意味が吉平には分からなかった。

「 … どういうこんだ?」

* * * * * * * * * *

部屋を飛び出したかよが駆け込んだのは、周造と吉太郎が夜なべ仕事をしている納屋だった。

「どうしたで、かよ?」

不審に思った周造が尋ねたが、かよは唇を真一文字に結んで何も言おうとはしなかった。

* * * * * * * * * *

母屋では、ももと一緒に布団に入ったはなが物語の読み聞かせをしていた。

「皆、どこへいったずら ~ 遅いじゃんね」

ももを見ると、すでに小さな寝息を立てていた。

* * * * * * * * * *

翌朝、はなは久しぶりに水汲みのために川に下りてきた。

「ひゃあ、冷てえな ~ 」

手がちぎれそうなくらいの川の水も懐かしい感覚だった。

「おはようごいす … おまんらも早起きじゃんね」

白鳥たちの群れに昔のように挨拶をしてみた。

次々に飛び立っていく白鳥たち。

あの頃と同じ景色の中、何かが違う気がして、はなはひとつため息をついた。

ふと気づくと横に同じように水汲みにきた朝市がいた。

「あ … 朝市、おはよう」

「おはよう」


挨拶を交わした後、朝市ははなの顔をじっと見つめていた。

「はな、元気ねえじゃんけ?」

朝市の優しい言葉にはなは思わず本音を漏らしてしまった。

「私、帰ってこねえ方がよかったのかな?」

* * * * * * * * * *

「 … 長い間、うちに帰らなかったから、もう私の居場所なんて無くなっちまったみてえで …

上手く言えないけど、かよも兄やんも何か壁があって。

ああ … 朝市もだけど」


朝市は少し逡巡していたが、水汲みしていた手を止めて、はなに近づいてきた。

「はなは、何にも分かってねえ。

かよちゃんのこんも … 何も分かってねえじゃんけ」

「 … かよがどうしたの?」


はなは朝市の顔を覗き込んだ。

「黙ってろって、口止めされたけんど … 」

「教えて、朝市」

「かよちゃん … 年明けたらすぐ、製糸工場の女工になるだ」

「女工?!」


< 5年ぶりに故郷に帰ってきたはなを待っていたのは、冷たいからっ風と厳しい現実でした。

… ごきげんよう、さようなら >

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/17 16:11時点)



村岡花子と赤毛のアンの世界

新品価格
¥1,728から
(2014/4/17 16:11時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月16日 (水) | 編集 |
第15回

< 見栄を張ってウソをついてしまったはなは本当のことを打ち明けようとして … 今度は門限破り。

はなの初恋は一体どうなってしまうのでしょう? >

寄宿舎の門限を知らせるチャイムを聞いて、懸命に走ったはなだったが、校門はすでに閉ざされた後だった。

「どうしよう?」

やむを得ず、はなは校舎の裏に回ると鉄柵を乗り越えて中へと飛び下りた。

裏庭を走り出したはなの目の前に人影が現れた。

「 … はなさん?」

茂木と富山のふたりだった。

「あなた?!」

「あっ、校門が閉まっていたので … 」

「泥棒のように柵を乗り越えるとは!」


荷物と履物を抱えて立ちすくむはなのことを富山はにらみつけた。

* * * * * * * * * *

「申し訳ありませんっ」

ブラックバーン校長の前に突き出され、平身低頭謝罪するはな。

「給費生が門限を破るなんて、あってはならないことです」

「あなたは、皆さんのご寄付のお蔭でここで学ぶことができるんですよ」


校長の傍ら、富山と茂木がはなのことを厳しく叱責した。

ブラックバーン校長は、遅れた理由を尋ねた。

「(送ってくれた人と、少し話し込んでしまって … )」

「(それは、男の学生ですか?)」

「 … Yes」


正直に答えたはなだったが、ブラックバーン校長の怒りがひしひしと伝わってきた。

「 … Go to bed for ever and ever … ですね?」

頭を下げて、出て行こうとするはなをブラックバーン校長は呼び止めた。

「(待ちなさい、はな。

そんな軽い罰で済むと思ってるんですか?)」

「(校長、最も重い罰を)」


待ち構えていたかのように富山は進言した。

「 … 停学か、退学か」

はなはその言葉に改めて自分が犯した過ちの重大さを知ったのだった。

* * * * * * * * * *

次の日。

< 今日から冬休み … 生徒は皆、うちに帰りますが、はなは今年も寂しく寄宿舎に残ります。

それどころか、とんでもない冬休みになりそうです >

玄関口のホールで家路を急ぐ生徒たちのことを見送るはなは、姉様かぶりに襷をかけて箒を手にしていた。

「はなさん、どうしたの、その恰好?」

帰り支度を整えた亜矢子たちが驚いた顔をして駆け寄ってきた。

「門限を破った罰として、学校と寄宿舎の大掃除を命じられました」

「たったひとりで大掃除なさるの?」

「お気の毒に … 」


苦笑いしたはなのことを幸子と鶴子は同情した。

「はなさん、一緒にお手伝いしたい気持ちは山々だけど … ご存じの通り、お掃除は大の苦手なの」

亜矢子も申し訳なさそうな顔をしてみせた。

「お気持ちだけで結構よ」

「それに両親がロンドンから帰国したの」


何年かぶりの再会、すぐにでも飛んで行きたい気分なのだろう。

はなにもよく理解できた。

* * * * * * * * * *

皆が帰宅して静かになった校舎、はなは掃除を始めた。

「さあ、はなさん、急がないと今年中に終わりませんよ」

茂木に発破をかけられ、はなはうなずいた。

* * * * * * * * * *

その頃、甲府の安東家には吉平が半年ぶりに帰宅していた。

ふじ、かよ、もも、女性陣の歓迎ぶりとは対照的に、周造と吉太郎は出迎えることもせず、ただ黙々と仕事を続けたままだった。

「お父、お姉やんに会っただけ?」

吉平の土産の饅頭を頬張りながら、かよが尋ねた。

「ああ、はなはすげえぞ ~ 華族のお嬢様たちにも負けとらん。

英語の成績は学校で一番じゃ!」

「てっ、一番?!」


かよもふじも目を丸くして驚いている。

「お祖父やん、饅頭食わんのけ? 美味えよ」

ももに言われて、周造はようやく仕事の手を休めて、饅頭を受け取った。

「吉太郎もひと休みして、食えし ~ 朝から働きづめで疲れたら?」

「聞いたか? お姉やん、一番だと」


かよの言葉に吉太郎は素っ気なく答えた。

「おなごが学問なんしたって、ろくすっぽなもんにならんじゃんけ。

ほんなもん、嫁に行くのに邪魔なだけずら」

「何を言うだ?

あの女学校で一番取るのがどんだけ大変なことか、はなの苦労をちったあ分かってやれし!」

「分かりたくもねえ!」


吉平に意見された吉太郎は、ムスッとした顔で外へ出て行ってしまった。

* * * * * * * * * *

広い学校と寄宿舎をたったひとりで掃除をするということは、掃除が得意なはなにとっても大仕事だった。

朝から晩まで休むことなく励んだとしても何日かかるのだろう …

長い廊下をぞうきん掛けしている時、目の前に立ちはだかった者がいた。

顔を上げると、監督役を仰せつかった白鳥かをる子が仁王立ちして見下ろしていた。

「もっと力を込めて、もっと早く!」

「 … はい」

「廊下が終わったら、カーテンとシーツのお洗濯!

先生の部屋も心を込めてお掃除するんですよ!!」

「はい」

「それから学校中の窓ガラス拭き!」


かをる子は容赦なく次々に指示を与えてきた。

* * * * * * * * * *

何十枚もあるシーツを洗濯し終えて、裏庭に干しているはな。

ふとした時に北澤のことを思い浮かべてしまうことがあった。

「花子さんのお父様は貿易会社を経営なさってるんですね」

「Will you marry me?」

少しでも気を抜いていると、すぐさま、かをる子の叱咤が飛んだ。

「怠けるな、急ぎなさい!」

「はいっ」


はながシーツの陰からそっと覗くとじっと監視しているかをる子と目が合った。

ニヤッと顔をゆがめてほくそ笑んだ顔を見た時、はなはゾクッと寒気が走った。

まるで、監視することに生甲斐でも感じているかのように思えたからだ。

* * * * * * * * * *

一方、茂木と大宮は生徒たちが集めた歳末の寄付金を持って、孤児院を訪ねていた。

「どうぞお納めください」

寄付金の包みを受け取って礼を言った牧師の横に、あのミニー・メイが立っていた。

牧師に促されて、ミニーは茂木にメッセージカードを添えた丸めた画用紙を差し出した。

「お宅の生徒さんに渡していただけますか?」

『Dear Miss Hana Thank you!!』

メッセージカードに書かれた文字だった。

「 … はな?」

「それは、ミニーが書きました。

クリスマス会の日は、皆が帰った後で、ミニーのために特別に英語で紙芝居をしてくれたそうで … 」


ミニーは微笑んでいる。

ふたりに驚きが走った。

「 … それで、はなさん遅くなったんだわ」

* * * * * * * * * *

預かってきたのは、はなと北澤が紙芝居をしている様子を描いた絵だった。

茂木はブラックバーン校長に訴えた。

「 … 事情をくみ取って、はなさんの罰を軽くしていただけないでしょうか?」

富山に英語で伝えてくれるように頼んだが、拒否されてしまった。

「門限を破ったのは事実なんですから、罰を軽くするなんておかしいと思います。

それに、その絵をご覧になってください。

男の学生とこんなに楽しそうにくっついて … ふしだらな!」


その上、何故「あんな生徒」に肩入れするのかと聞き返してくる始末だ。

「 … あんな生徒?」

茂木は富山の方こそ、何故そこまではなを毛嫌いするのか不思議だった。

「彼女は教師に対して反抗的です。

私は授業を妨害されて迷惑されているんです!」


息巻く富山をブラックバーン校長は諌めた。

「(タキ、どうしたんですか? … 感情的になって)」

「( … 失礼しました)」


ミニーの絵をずっと眺めていたブラックバーン校長は、顔を上げてふたりに告げた。

「(私に考えがあります)」

* * * * * * * * * *

気が遠くなるような大掃除だったが … 残すところ、礼拝堂だけとなっていた。

< 5日間、はなは孤軍奮闘し、やっとの思いですべての大掃除を終えました >

「終わった … やっと終わった!!」

はなは声を上げて思いきり背伸びをした。

どこからともなく拍手が聞こえてきて … 教師たちが礼拝堂に入ってきた。

「(はな、終わったのね)」

「(ご苦労様)」

「お蔭で学校も寄宿舎もぴかぴかになりましたね」

「(はな、ありがとう!)」


口々にはなのことを労った。

「(どういたしまして)」

* * * * * * * * * *

すると、ブラックバーン校長が茂木を伴って姿を現した。

「(校長、終わりました)」

報告を受けたブラックバーン校長は、はなに封筒を差し出した。

「(はな、大掃除の給金です … 3円入っています)」

はなの顔色が変わった。

「3円?! … とんでもない。

罰当番でお掃除しただけですから」

「遠慮しないで ~ ブラックバーン校長の気持ですから。

ありがたく頂戴なさい」


茂木はそう言ったが、それでもはなは戸惑っていた。

「いいえ、だってそんな … 遠慮するに決まってるじゃないですか、3円もの大金」

ブラックバーン校長から封筒を預かった茂木は、はなの手を取ってそれをつかませた。

「これで、甲府までの往復の切符を買いなさい。

あなた、この5年間一度もおうちに帰ってないでしょ?」


真意を知ってもまだ遠慮しているはなをブラックバーン校長は一喝した。

「Hana,Go home!(おうちへかえりなさい!)」

それだけ告げるとはなに背を向けて歩き出した。

「(ブラックバーン校長、ありがとうございます!)」

有難く好意を受け取ったはなは立ち去るブラックバーンに向かって深くお辞儀をした。

教師たちからまた拍手が起こった。

はなは給金が入った封筒を固く握りしめていた。

* * * * * * * * * *

縁側で朝市から読み書きを教わっていたふじの元にうれしい知らせが届いた。

「ごめんなって ~ 安東ふじさんに電報ずら」

「電報?」


差出人ははなだった。

家の奥から飛び出してきた吉平が郵便配達人から奪うように手にした電報を慌てて開いた。

『アスカヘル ハナコ』

「はなが帰ってくるぞ ~~ !!」

「て ~~~ !!!」


* * * * * * * * * *

帰省する前夜、はなはスコットに教わりながら、クッキーをこしらえていた。

「あ、茂木先生 ~ 明日、朝早くの汽車で帰ります」

はなは様子を見に来た茂木にうれしそうに報告をした。

「乗り遅れないようにね」

「はい」

「おうちの方へお土産?」

「うんと美味しいクッキーを焼いて、皆をびっくりさせたいんです」


クッキーの生地をこねるはなを茂木はやさしく見つめていた。

* * * * * * * * * *

翌日、はなは甲府へと向かう汽車の中にいた。

学校にいる時とは、見違えるような小奇麗な赤い着物と袴に身を包んでいた。

膝の上には昨晩焼いた家族への土産のクッキーを入れた缶がある。

そっとふたを開けてみると、香ばしい甘い匂いが香った。

クッキーを食べた時の家族の顔を想像して、はなは微笑んでいた。

* * * * * * * * * *

はなが座っている車両にひとりの男子学生が乗ってきた。

「て … 」

その男子学生は、あか抜けた雰囲気のはなの姿を見て驚いている。

「次は甲府、甲府です」

車掌が到着が近いことを知らせて通路を過ぎていった。

< じっと座っていられないほど、はなの胸は高鳴っていました。

何しろ5年ぶりにうちに帰れるのです。

… ごきげんよう、さようなら >

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/16 18:47時点)



アンのゆりかご―村岡花子の生涯 (新潮文庫)

新品価格
¥810から
(2014/4/16 18:48時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月15日 (火) | 編集 |
第14回

「花子さんは、英語の発音が実にきれいですね」

「てっ … 花子?!」


はなの視線は目の前にいる北澤に釘づけになってしまった。

「どうかなさいましたか、花子さん?」

「何でもございません」


はなは逃げるように部屋を出た。

胸の高鳴りが止まらなかった。

< 生まれて初めて、『はな』を『花子』と呼んでくれる人が現れ … はなは恋に落ちてしまったようです >

* * * * * * * * * *

「1、2の3!」

学校へ戻った亜矢子たちが、談話室のテーブルの上に同時に置いたのは、本日の収穫 … 施設に来ていた男子学生たちから受け取った付け文だった。

「醍醐さんが一番多いですわね」

「皆さんだって ~ 」


数を競い合う3人から少し離れて、はなはぼんやりとソファーに腰かけていた。

「あら、はなさんは一通もいただかなかったの?」

亜矢子が話しかけても上の空だ。

「ついに奥手のはなさんにも、ときめく男性が現れたようね?」

「え?」

「北澤様でしょ?」

「ち、違います!」


はなは心の内を見透かされて、顔を真っ赤にして立ち上がった。

「隠しても駄目ですわ」

亜矢子だけでなく、鶴子と幸子もおかしそうに笑った。

「はなさんも早く、北澤様から付け文がくるといいわね」

「では失礼して、私たち読ませていただくわ」


そう言って、3人がテーブルに置かれた付け文の紙縒りを開いて読もうとし始めた時、ふと入口を見たはなは、ハッとした。

亜矢子たちに伝える暇もなく、談話室に入ってきたブラックバーン校長が彼女たちの手から手紙を次々に取り上げた。

そして、テーブルに残っていた付け文も一緒に、暖炉の火の中へと放り込んでしまった。

あっという間の出来事だった。

亜矢子たちには、反省文100回の罰が与えられた。

* * * * * * * * * *

「全部燃やすなんて … 」

「あの中に私の王子様がいたかもしれないのに … 」


寄宿舎で反省文を書きながらも亜矢子は少しも反省などしてはいなかった。

「こうなったら、次は絶対ブラックバーン校長に見つからないように上手くやりましょう」

「醍醐さん … 」


はなは呆気にとられた。

「門限の5時までに全部開封して、外で読んでから帰りましょう。

… 付け文には、将来の結婚と女の幸せがかかってるんですもの!」


そう必死で口にした亜矢子を見て、はなはもう何も言えなかった。

* * * * * * * * * *

反省文を書いている3人の傍らで、はなこはミニーのために絵入りの単語カードをこしらえていた。

「はなさんは本当に子供が好きなのね」

鶴子が感心して言った。

「泣いてるミニーちゃんを見ていたら、うちの一番小さい妹のこと思い出して …

毎日、私がおんぶして学校行ってたんです」

「妹さんをおんぶして学校へ?」


信じられないという顔をした鶴子に、はなはうなずいた。

「ここには、そういう生徒はいないけれど …

私が行ってた尋常小学校では、女の子は子守をしながら授業を受けていました」


そんな話を聞いて、亜矢子が少し遠慮がちに言った。

「はなさん … 余計なことかも知れないけど …

北澤様とお近づきになりたかったら、あなたが給費生だということは、黙っておいた方がよくってよ」


はなには亜矢子の言う意味がすぐには理解できなかった。

「あの方のお家は金沢の由緒ある御家柄で、お父様は地元で一番の名士なんですって。

家柄もよくて、帝大生で、背も高くて …

私、はなさんに好きな方ができてすごくうれしいの。

是非、あの方と上手くいってほしいのよ、だから … 」

「醍醐さん。

… ありがとう」


はなは亜矢子の言葉を遮ってしまった。

「でも私 … そんなウソをついてまで、帝大生とお近づきになんてなりたくありません」

亜矢子にまったく悪気がないことは、はなもよく分かったいた … それ故、言葉を選んで答えたつもりだったが、結果的には少しきつい言い方になってしまった。

< その時は、心からそう思うはなでしたが …

* * * * * * * * * *

次の日曜日。

あの方と目が合うと、やっぱりどうしても、ドキドキとときめいてしまうのでした >

「来週、孤児院の子供たちのためにクリスマス会を開き、何か面白い余興をやろうと思うんです」

日曜学校の後、北澤からそんな提案がされ、秀和女学校の一同も協力することを快諾した。

「何をやるんですか?」

はなから尋ねられて、北澤は岩田と顔を見合わせた。

「 … それが、まだ決まってなくて」

「皆さんの得意なものを教えていただけませんか?」


幸子は琴、鶴子は日舞と、あまりクリスマスに似つかわしくない特技を口にした。

「あの、紙芝居はどうでしょう?

紙と絵の具があればできますし、子供たちきっと喜んでくれると思うんです」


はなの案に北澤が興味を示した。

「たとえばどんな?」

「 … 親指姫は?」

「アンデルセンの『親指姫』ですか?]


北澤も『親指姫』を知っているようなので、はなは何だかうれしくなった。

「はい」

満場一致で出し物は、はなの提案した『親指姫』の紙芝居に決定した。

* * * * * * * * * *

皆は早速、準備に取り掛かった。

紙芝居は『親指姫』の話を知っているはなと北澤が担当し、その他は部屋の飾りつけの制作に当たった。

背景の色付けをしながら北澤が尋ねた。

「花子さん、『親指姫』はいつ読まれたんですか?」

「ああ、父が一番最初に買ってきてくれた絵本なんです」


思えば、はなが生まれて初めて手にした本だった。

あの時のことを、今も思い出すと自然と顔がほころんだ。

「そうですか ~ いいお父様ですね。

お父様は、どんなお仕事をしていらっしゃるんですか?」


突然、父の職業を聞かれて、はなは一瞬言葉に詰まってしまった。

「父は … あちこち飛び回って商いをしております」

当たり障りのない、曖昧な言い回しになっていた。

「海外にもよくいらっしゃるのですか?」

「 … 海外?」

「花子さんの英語の発音はお父様仕込かと」

「ああ … 英語は … 最初だけ、父に教わりました」


決してウソではなかった、が …

「やっぱりそうか ~

花子さんのお父様は貿易会社を経営なさってるんですね?」


北澤が明らかに勘違いしていることは分かったが、はなはついうなずいてしまった。

「 … ええ、そうです」

そんなやり取りを聞いていた亜矢子は、はなが本当のことを話さなかったのをみて、安堵していた。

しかし、はな自身は口にした傍からに後悔していた。

亜矢子には、あんなことを言いながら … 後ろめたい気持ちに苛まれていた。

* * * * * * * * * *

< その頃、お父はお父で家族の知らない秘密の仕事をしておりました >

それは『伝道行書』、浅野から委託された社会主義を説いた新聞や書籍を地方を回って売り歩いていたのだ。

「日露戦争が終わって、国は軍隊にばっか金を使っている。

そのために税金をどんどん上げて、俺たちの暮らしは苦しくなるばっかりだ。

こんなことでいいのか ~ いいはずかない!!」


農村にある神社へ続く参道で声を張り上げていた。

「皆さん、こんな世の中を変えるのは『社会主義』なる思想です!

まずは、ここにある本を読んで、勉強してみませんか?」


吉平が掲げたのは、浅野の著作『社会主義入門』だ。

「お願いしま~す!」

足を止める者もそれなりにいたが、売れ行きは芳しくはなかった。

「ちょっとおめえ!」

吉平の横で店を広げている饅頭売りの男が怒鳴り込んできた。

「どっか行ってくんねえか?

おめえがいると、こっちの客まで逃げて、商売あがったりだ!」


男は饅頭の包みを吉平に押し付けた。

「ほれ、これやるから、早くどっか行ってくれ!」

「ほれじゃあ、代わりにこれ読んでみてくれちゃ ~

字読めんでも分かるだよ」


吉平は饅頭の礼だと、嫌がる男に無理やり『社会主義入門』をつかませた。

* * * * * * * * * *

< そして、いよいよクリスマスの日がやって来ました >

「昔々ある所に、子供のいない女の人がひとりで住んでいました … 」

孤児院の子供たちは、はなたちが作った紙芝居にすっかり見入っていた。

しかし、日本語が分からずに、つまらそうに座っているミニーを見た時、はなは自分の迂闊さに気づいたのだった。

紙芝居の後、子供たちにひとりひとりにプレゼントを配って、クリスマス会は幕を下ろした。

「大成功でしたね」

「ええ、では私たちもこれで … ごきげんよう」


女学校へ引き上げようとする亜矢子のことを岩田が呼び止めた。

すれ違いざまに、亜矢子の袂の中へとそっと付け文を滑らせていった。

それを皮切りに何人かの男子学生が同じように …

< 携帯電話やメールがない頃、男性はこんな風に、お目当ての女性の袂に付け文を投げ入れたのです >

「よいクリスマスになりましたね ~ 楽しかったですね」

* * * * * * * * * *

ミニーのことが気にかかっていたはなは彼女の姿を探した。

廊下に出ると窓辺で頬杖をついて、寂しそうな顔で空を眺めているミニーを見つけた。

すると、北澤が近づいてきた。

「あの子に英語で紙芝居をやってあげたいんです」

はなは驚いて北澤のことを見つめた。

自分もまったく同じことを考えていたからだった。

「花子さん、親指姫をやっていただけませんか?」

「ええ … 」


* * * * * * * * * *

それからふたりは、ミニーのためだけに英語で紙芝居を始めた。

『ツバメは親指姫を背中に乗せて、花の国に連れて行ってくれました。

そこには小さい王子様がいて、親指姫をひとめ見て好きになりました。

王子様が言いました。

… 私の妻になってください』


北澤がはなの顔を見てそう言った。

「えっ?」

セリフと分かっていながら、はなはドキッとしてしまった。

「えっ?」

はなの反応に北澤も戸惑っている。

『王子様 … 私もお慕いしております。

… と、親指姫は言いました』


何とか、物語を続けはしたが、はなの鼓動は早鐘のように高鳴ったままだった。

『ふたりは結婚して幸せに暮らしました』

* * * * * * * * * *

冬の日は短く、紙芝居を終えた頃、辺りはすっかり暗くなっていた。

北澤ははなのことを送ってきてくれた。

寄宿舎の傍まで来ると、門の前のガス灯の下に亜矢子たち3人が集まっているのが見えた。

「彼女たち何をしてるんですか?」

「付け文を寄宿舎へ持って帰ると、校長先生に燃やされてしまうんです」

「えっ、そうなんですか?」


お眼鏡に適った相手からなのだろうか、亜矢子たちはそれぞれ手にした手紙を嬉しそうに見せ合っているようだ。

すると、3人が急に慌てて袂に手紙を隠すのが見えた。

茂木が顔を出したのだ。

はなと北澤も急いで街路樹の陰に隠れた。

「あなたたち、何をしてるんですか?

早くお入りなさい!」


* * * * * * * * * *

「はあ、びっくりした ~ 」

ホッと胸をなでおろしたはな。

「こんなところ見つかったら、大変でしたね」

「はい」


うなずいたはなだったが、あまりにも北澤の顔が近くにあった。

お互いにドキッとするふたり。

「 … 僕は正月は金沢に帰ります。

しばらくお会いできませんね」

「ええ … 」

「今日は本当に楽しかった」

「ええ、私も」

「今度は新年会をやりましょう」


< はなはウソをついてるのが、急につらくなりました >

「北澤さん … 」

はなは真実を打ち明けようと思った。

「はい」

「 … 実は私、給費せ」


はなの言葉は寄宿舎から聞こえてきたチャイムでかき消されてしまった。

ハッとしたはなが北澤に時間を尋ねると、彼の懐中時計は5時を1分回っていた。

門限を知らせるチャイムだったのだ。

「てっ、大変だ ~ 門限破っちまった」

思わず、口走ったのは甲府弁だった。

「えっ?」

「北澤さん、また … ごきげんよう、さようなら!」


北澤に向かってお辞儀して、街路樹の陰から飛び出したはなは寄宿舎の門を目指して必死に走っていた。

< はなの初恋、この分では先が思いやられますね。

… ごきげんよう、さようなら >

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/15 19:21時点)



アンを抱きしめて―村岡花子物語

新品価格
¥2,160から
(2014/4/15 19:21時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月14日 (月) | 編集 |
第13回

1908年(明治41年)12月。

15歳になったはなは美しい娘に成長していた。

< 5年前、秀和女学校に編入した頃は、英語が恐ろしくて、西洋人の先生たちから逃げ回っていたはなでした。

それが今では、 横文字の本がなくてはならぬほど、英語が大好きになりました >

* * * * * * * * * *

その日、はなは図書館へと急いで廊下を走ってるところをブラックバーン校長に見つかってしまい、『Go to bed』の罰を与えられてしまった。

読んでいる本に出てきた単語、『palpitation』の意味が分からないため、図書館の辞書で調べたかったのだ。

「う~ん、何だろう? この単語」

はなが寄宿舎の布団の中で分厚い本とにらめっこしているところへ、授業を終えた亜矢子たちが戻って来た。

「ごきげんよう」

かをる子と高子は卒業して、この部屋の住人ははなと亜矢子、そして同級生の松平幸子、畠山鶴子の4名となっていた。

「はなさん、また廊下を走って『Go to bed』?」

はなは極まりが悪そうに笑った後、単語の意味を調べるために亜矢子から辞書を借りた。

* * * * * * * * * *

机に向かったはな。

後ろから聞こえてくるのは、幸子が両親から縁談を勧められているという話だった。

「まあ、お相手はどんな方?」

「御家柄は申し分ないけれど、イノシシみたいな方。

もっと素敵な方が現れないかしら?」


顔ぶれは変わっても、この部屋の話題は以前と変わらなかった。

「今度、日曜学校へ行けば、出会えるかも知れなくてよ」

「そうね!」


亜矢子の言葉にふたりが歓喜の声を上げたのと同じくして、辞書を引いていたはなも声を上げた。

「あったあった、『palpitation』!

… 『ときめき』か ~ 」

「出会いのときめき?」

「ロマンスのときめき?」


盛り上がる彼女たちにはなは言った。

「いいえ、これは90歳のお爺さんのお話なので、『動悸、息切れ』と訳した方がよさそうです」

興ざめする一同。

恋愛話に加わろうとしないはなに亜矢子は尋ねた。

「ねえ、はなさんはどういう時にときめくの?」

「それは …

こんな風に辞書を引く時です。

未知の言葉が明らかになる時のワクワクした気持ちがたまりません」

「辞書にときめくなんて」

「本当にはなさんって変わってること」


おかしそうに笑う3人に向かって、はなは真剣な表情を見せた。

「あの、繰り返し申しますが …

私のことは『はな』ではなく、『花子』と呼んでください!」

「あら、『子』のつく名前なんて、ここにはいくらでもいるじゃないの。

『はな』の方が、はなさんらしくってよ」


亜矢子の言葉にふたりもうなずいた。

気のいいルームメイトたちだが、はなはこのことだけが唯一不満だった。

* * * * * * * * * *

「前略、お母様、お元気ですか?

花子は元気でやっております。

富士山はもうすっかり雪化粧をして、美しいでしょうね」


時折届くはなからの手紙、それを朝市に代読してもらうのが、ふじの楽しみになっていた。

「 … 今度のお正月も甲府に帰れませんが、どうか皆様お体を大切に、佳いお年をお迎えください。

ごきげんよう、Thank you 花子より」


文字も大人びて、文面もすっかりあか抜けていた。

「お母様だなんて … てっ、よその人みたいじゃんね」

リンの言葉にふじも周造も笑ってはいるが、少し寂しそうだ。

「そうさな … もう5年もここには帰ってこんだからな」

あっという間の5年だったが、改めて口にすると、とても長い年月だった。

「朝市、おらに字を教えてくれんけ?

いつか自分ではなに便りを書えてみてえだけんど … 今更、字を覚えようなんて、無理ずらかね?」


まさかふじがそんなことを言い出すなんて … 驚いた朝市だったが、快く引き受けた。

「ほんなこんねえら、一緒に頑張るじゃんけ!」

< はなに負けないくらい勉強が好きだった朝市は、上の学校へは進まず、お百姓さんになりました >

* * * * * * * * * *

あれほど苦手だった英語の授業も、今でははなの一番得意な教科になっていた。

「My hair is turning gray. … 私の髪は灰色に変わってきました」

富山の英訳に首を傾げるはな。

「That is a long story. … それは、長い物語です」

「 … そうかな ~ 」


はながつぶやいたのを富山は聞き逃さなかった。

「安東さん、質問があるならおっしゃい」

「 … 私は少し違う訳をしました」

「言ってごらんなさい … あなたの『訳』とやらを」


はなは立ち上がった。

「My hair is turning gray. … 私は白髪が増えてきました」

「That is a long story. … 話せば長いのよ」

「 … つまり、あなたは私の訳が間違ってると言いたいの?」


富山の言葉から不快感がにじみ出ていた。

「いえ、そういう訳では … 」

はなは慌てて否定した。

教室はざわめきだした。

「そんな砕けた訳は、私の授業では認めません!

… わかりましたね?」


相変わらず、富山とはそりが合わないはなだった。

* * * * * * * * * *

「はなさんの訳の方が自然で分かりやすかったわ、自信を持って」

休み時間になると、亜矢子や幸子、鶴子、ルームメイトたちがはなを慰めてくれた。

「ありがとう」

「でもはなさん、そんなにお勉強ばかりしてると、富山先生や白鳥様のようにお嫁に行きそびれてしまうわよ」

「えっ?!」

「噂をすれば … 」


< はなの天敵の白鳥かをる子様です。

卒業後は職員として学校に残り、今もこの通り幅を利かせていらっしゃいます >

廊下にいた生徒たちは、まるで大名行列でも見送るように両端によけてお辞儀をした。

その間を厳かに進んできたかをる子が、壁を背に直立不動のはなや亜矢子たちの前で立ち止まった。

「安東はなさん」

名前を呼ばれたはなは何を言い出されるのか冷や冷やした。

「お父様が面会室でお待ちです」

「てっ?!」


思わず甲府弁を口走ったはなのことをかをる子がにらんだ。

「いえ、失礼いたします」

はなは、かをる子の小言が始まる前に逃げるようにその場から立ち去った。

小走りで面会室へ向かっていると、今度は茂木から注意を受けてしまった。

「廊下は静かに歩きなさい」

* * * * * * * * * *

「お父!」

はなが面会室に飛び込むと、吉平はお約束の挨拶をして見せた。

「グッドアフタヌ~ン、はな」

「グッドアフタヌ~ン、お父様」


お父様なんて呼ばれ、吉平はこそばゆいような顔をした。

「元気そうじゃな」

「お父、今度は何処へ行ってたの?」

「うん、東北の方をあちこちな ~

あ、ほういえば、寮母の茂木先生から聞いたぞ。

英語の成績、学校で一番だそうじゃな」

「あはは … うん、英語だけは。

ふんだけど、数学やお裁縫は苦手で … 」

「一番なんてすげえじゃんか ~

やっぱし、お父の見込んだ通りじゃ、はなはうちの一家の希望の光じゃ」


はなは少し照れくさそうに笑った。

* * * * * * * * * *

「はな、今度の冬休みは甲府へ帰れ。

皆、はなに会いたがってるだぞ」


吉平だけはこうして行商で上京した折にふれ、はなと面会していたが、他の家族とは5年の間一度も会ってはいなかった。

「だけんど … 」

「金のこんは心配するな。

汽車賃ぐらい、お父が何とかするから」


はなは少し考えた後、首を振った。

「やっぱりいい … そのお金で、お祖父やんやお母や皆に腹いっぺえ美味しいもん食べてもらって」

吉平は複雑な顔をした。

「お父、寄宿舎の正月も悪くないのよ。

誰もいないから図書室は借り切りで、毎年本を好きなだけ読むの」

「はな … 」


< はなのそんな強がりを、お父もよく分かっておりました >

帰っていく父の姿を校舎の窓から見送りながら、はなはつぶやいていた。

「皆に会いてえなあ … 」

そんなはなの姿を見ている茂木がいた。

* * * * * * * * * *

< 日曜日がやって来ました。

はなたちは毎週、孤児院に出向き、恵まれない子供たちのために奉仕活動を行います。

それにしても、お嬢様たち、随分と気合が入っております >

はなを除いた女学生たちが念を入れておしゃれしているのには理由があった。

この活動には、秀和女学校の生徒だけでなく、男子学生たちも参加しているからだった。

子供たちと一緒に賛美歌を歌いながらも、亜矢子たちの視線はチラチラと男子たちに注がれていた。

< 礼拝の後は、いよいよ待ちに待った日曜学校。

ミッションスクールの生徒にとっては、異性と知り合う唯一のチャンスです >

「あの背の高い岩田様、お家は財閥で大富豪ですのよ」

「その隣の北澤様は、金沢の由緒ある家柄で、帝大一の秀才なんですって … おまけにあの通り、眉目秀麗」


男子学生を物色して色めき立つ亜矢子たち。

そんな思惑などないはなは、子供たちに交じって無邪気に遊んでいた。

* * * * * * * * * *

はなは、遊びの輪に加わらずにポツンと立っている外国人の少女が気になった。

英語で語り掛けて、クッキーを差し出したが、受け取ろうともしない。

『あっちで皆と遊ばない? … 行きましょう』

手を取って連れていこうとすると、その手を振り払われ … しまいには少女は泣き出してしまった。

『びっくりさせてごめんなさい』

泣き止まない少女に困っていると、帝大生の北澤がやって来た。

北沢は、少女の前に屈んで顔を覗き込むと優しく尋ねた。

『この歌知ってるかな?』

♪ Twinkle,twinkle,lettle star, How I wonder what you are.

泣き止んだ少女に向かって、北澤はもう一度尋ねた。

「Can you sing?」

少女はうなずき、北澤と声を合わせて歌い始めた。

♪ Twinkle,twinkle,lettle star, How I wonder what you are. …

* * * * * * * * * *

少女 … ミニー・メイのご機嫌はすっかり治って、はなの手からクッキーを受け取って美味しそうに食べている。

彼女は、カナダから貿易商の父と一緒に来日したのだが、父が不慮の死を遂げてしまったため、この施設にいることを鶴子が聞いてきた。

「 … ずっと誰にも心を開かなかったらしいの」

「そう … 」


そんなミニーも、ようやくはなに微笑んでくれた。

「はなさん」

亜矢子に呼ばれて振り向くと、北澤と岩田が立っていた。

「先ほどはありがとうございました」

はなが礼を述べると北澤は謙遜して言った。

「いえ、僕は何も … たまたま一曲だけ、知ってる童謡を歌っただけです」

北澤は10歳の時からイギリス人の家庭教師がついていて、英語が堪能だと岩田が話した。

「そうなんですか?!」

「花子さんは、英語の発音が実にきれいですね」

「てっ!」

「申し遅れました。北澤です」


何だか、はなの様子がおかしい。

「花子さん?」

「てっ … 花子?!」


< はなは、心臓が飛び出すかと思いました。

生まれて初めて、はなを花子と呼んでくれる人が現れたのです。

palpitation!

これぞ『ときめき』というものでした。

… ごきげんよう、さようなら >

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/14 16:26時点)



村岡花子: 「赤毛のアン」の翻訳家、女性にエールを送りつづけた評論家 (KAWADE夢ムック 文藝別冊)

新品価格
¥1,296から
(2014/4/14 16:28時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月13日 (日) | 編集 |
まずは、先週のおさらいを …



それでは、次週の「花子とアン」は?

はな(吉高由里子)は、英語が大好きな女学生へと成長していた。同室の醍醐(高梨臨)たちが将来の結婚相手の話題に盛り上がるのも気にせず、英語の本を夢中で読みふけるはな。

ときめきか ~

ところがある日、醍醐たちと孤児院への奉仕活動に出かけたはなは、そこで出会った帝大生・北澤(加藤慶祐)に思わず胸がときめく。

花子さん …

それを見た醍醐は、北澤と親しくなるために、貧しい家の出身であることを黙っていた方がいいと助言。その場では取り合わないはなだが、北澤との会話の中で、つい嘘をついてしまうのだった。

ふしだらなっ

さらに、孤児たちのため、北澤と一緒に夜まで紙芝居を語り聞かせていたはなは、女学校の門限を破ってしまう。

Go home!

罰として学校中の大掃除を命じられるはなだが、見事にやりとげ、ブラックバーン校長(トーディ・クラーク)からごほうびの汽車賃をもらう。

こうして、女学校へ入学して以来、初めて甲府に里帰りしたはな。

道で朝市(窪田正孝)と再会するが、朝市は見違えるようにきれいになったはなに戸惑うばかり。

姉やんは、呑気でいいずら

さっさと東京帰っちめえ


実家に帰ったはなはふじ(室井滋)や周造(石橋蓮司)と再会を喜び合うが、兄・吉太郎(賀来賢人)や妹・かよ(黒木華)の態度がどことなくそっけないことに気づく…

おらだって家族の役に立ちてえ … 大好きな家族なんです

花子とアン 公式サイト、YAHOO!テレビガイド他を参照)

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/13 11:56時点)



連続テレビ小説 花子とアン オリジナル・サウンドトラック

新品価格
¥3,146から
(2014/4/13 11:57時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月12日 (土) | 編集 |
第12回

はなは、スコットに自分が犯してしまった不正を告白して、必死に謝っている姿を、通り掛かった富山と茂木に見られてしまった。

「安東はなさん、今の話は本当ですか?」

富山に問いただされた、はなは観念して正直に答えた。

「 … はい、全部本当です」

「やっぱり、そんなことじゃないかと思っていました。

ブラックバーン校長に報告して、厳重に処罰していただきます」


< はなが二学期の課題で、スコット先生の恋文を丸写しにしたことが、とうとうバレてしまいました >

富山は、はなの腕をつかむと、校長室へと連行していった。

* * * * * * * * * *

報告を受けたブラックバーンは、言葉をなくしていた。

「生徒に不正があったことを心からお詫びします。

私の監督不行届きです」


茂木は、何とか穏便に済まそうとするが、富山はいかなることがあろうとも不正は不正だと、厳しく処分することを主張した。

ブラックバーンは、怒りと悲しみに染まった目で、うつむいているはなを見つめていた。

「Ando hana … 」

「 … はい」


名前を呼ばれたはなは、蚊の泣くような声で返事をした。

「Go to bed! (ベッドに行きなさい、永遠にベッドに行ってなさい!!)」

* * * * * * * * * *

はなの不正の話は、同室の3人の知るところとなった。

「退学は免れませんわね … 」

高子の言葉にうなずいたかをる子は、沈んだ顔の亜矢子に言った。

「はなさんが居なくなって、一番困るのはあなたですね?

これからはサボらずに自分でお掃除当番をしなければいけませんものね」


* * * * * * * * * *

< その夜、はなは眠れませんでした >

ブラックバーンが読み上げるはなの手紙を耳にした時のスコットの驚いた顔を思い出す度に胸が痛んだ。

* * * * * * * * * *

< 翌日になっても、はなの謹慎は解けませんでした >

「起きなさい ~ 面会の方がいらしてます。早くお支度をしなさい」

かをる子が布団から出ることができないはなを呼びに来た。

* * * * * * * * * *

「グッドアフタヌ~ン、はな」

「てっ?!」


面会の方というのは、吉平だった。

「はな、久しぶりじゃな」

はなは、何べんも何べんも夜、ガス灯の下で待ちぼうけを食ったことを告げた。

「すまんな ~ 急に忙しくなって、あっちこっち飛び回ってたんじゃ」

『伝道行商』のためだった。

やっと時間ができたので、正式な手続きを取って会いにきたのだ。

「はな、勉強はどうじゃ ~ こぴっと精進してるけ?」

うつむいて黙ったままのはな。

「大丈夫じゃ、自信持て、はなは他の子とは違う神童じゃからな」

すると、今にも泣きだしそうな顔で、はなは話し始めた。

「お父、申し訳ねえ …

おら、もうこの学校にはいられんだよ」


* * * * * * * * * *

はなから一部始終聞いた吉平は、ブラックバーンとの面会を望んだ。

「この度は、娘がとんでもないことをしでかしてしまって、本当に申し訳ありませんでした。

この通りでございます」


吉平はブラックバーンに向かって深く頭を下げて、はなが犯してしまった不正を謝罪した。

「はなは、私の様な学のない親のもとで小さい頃から働きづめでした。

本が大好きなのに、学校にもろくに行かせてやれなくて …

でも、ここに入れていただけて、娘の進むべき道は大きく広がりました。

はなは、うちの一家の希望の光なんです … 灯った光を、どうか消さないでください」


吉平は「お願いします」ともう一度頭を下げた。

富山に自分の言葉をブラックバーンに訳して伝えてほしいと請うのを、はなが止めた。

「お父、もういいだよ ~ おら、退学になって当たり前だ。

だけんど、ここを出て行く前に、スコット先生にちゃんと謝りてえだ」


はなはブラックバーンに訴えた。

「英語がしゃべれたらどんなにいいかって、おら布団の中でほればっかし考えてた」

* * * * * * * * * *

「富山先生、はなさんの謝罪の気持ちをスコット先生に英語で伝えてやってください」

「どうして私がこの子の通訳なんかしなきゃならないんですか?」


はなのせめてもの思いを果たさせようと願う茂木、富山は不満そうな顔をした。

「お願えしやす!」

はなと吉平も富山に頭を下げた。

「おら、スコット先生の歌聴いて、あんなに嫌だった英語も初めて心に響いてきただ。

ほれなのに、ひでえことしちまって … 謝らんと、どうしても甲府に帰れないだよ!

お願えしやす!!」


* * * * * * * * * *

ブラックバーンに促されて、富山は仕方なく、はなの言葉を伝えた。

『スコット先生に謝りたいから、私に通訳しろと … 』

それを聞いたブラックバーンは、頭を下げたままのはなのことをじっと見つめた。

「Hana!」

突然、名前を呼ばれ、はなは頭を上げてブラックバーンを見た。

「Speak English … If you want to stay here,you must learn English.」

「 … ここに居たければ、英語を学びなさい」


ブラックバーンは、はなの前に立った。

『そうすれば、あなたは強くなれます』

「はいっ」


はなは、力強くうなずくと、そのままブラックバーンのことを真っすぐに見上げた。

ブラックバーンが謝罪を受け入れ、はなを許してくれたことを知った吉平は皆に向かって何度も何度も礼を言った。

ホッと安堵する茂木。

はなが学校に残れるという不本意な言葉を伝える役となった富山は複雑な表情だった。

ブラックバーンの心を動かしたのは、謝罪の言葉ではなく、この子の将来に計り知れない可能性を感じたからだったのかもしれない。

はなのことを慈愛に満ちた目で見つめていた。

* * * * * * * * * *

< その日から、はなは生まれ変わったように猛勉強を始めました >

数日後、はなは掃除のためにスコットの部屋を訪ねた。

「 … スコット先生」

ドアをノックしたが、返事はない。

はなはこの日、スコットに会えたら、直接謝罪するつもりだった。

あの時、ブラックバーンは言った。

「Speak English」

それは、通訳を介してではなく、自分の言葉で伝えろと言う意味だと、今のはなには分かっていた。

「Miss.Scott … I'm sorry.(ごめんなさい)

I was Bad girl.(私は悪い子でした)

I not want you unhappy.(私は先生を傷つける気はなかったんです)

I'm sorry.

I'm sorry … 」


覚えたばかりのたどたどしい英語だった。

しかし、謝罪は聞き入れられなかったのか … ドアは閉ざされたままだった。

* * * * * * * * * *

あきらめたはなは一歩下がって、ドアに向かって頭を下げた後、廊下を引き返し始めた。

するとドアが開く音が聞こえた。

はなが慌てて振り向くと、部屋の中から、ゆっくりとスコットが姿を現した。

「Hana. I forgive you.(あなたを許します)」

そう言って、スコットは部屋を後にしようとしたが、ふと足を止めた。

「Thank you.」

スコットの顔は微笑んでいた。

* * * * * * * * * *

「お母、元気け?

今日、おらのしゃべった英語が初めて通じただよ。

スコット先生に『ごめんなさい』がやっと言えただよ」


そんな文面で始まるはなからの手紙が甲府に届いた。

「 … 学校にも残れるこんになっただよ」

「てっ、よかったよ ~ 」


朝市がそこまで読み上げると、ふじは胸をなでおろした。

悩んでいるはなに自分は何もしてやることはできなかったが、一番の気がかりだった。

「朝市、続き早く読めし」

リンが先を急かした。

「毎日毎日、朝から晩まで英語の勉強をこぴっとしてるだよ」

傍らで聞いていた吉太郎が、さも興味なさそうに仕事に戻っていったが、ふじにはその横顔にも安堵の色が見えた気がした。

「あれ? この字は何ずらか?」

手紙の文末に朝市も見たことがない文字が書かれていた。

「こりゃあ、西洋の字じゃねえだけ?」

リンの言葉を信じて、ふじと朝市は教会の森牧師を訪ねていった。

* * * * * * * * * *

そこに書かれていたのは『Thank you』、『ありがとう』という意味だと森牧師は教えてくれた。

「は ~~~ 」

我が子のことながら、ふじは感服してしまった。

「へ ~ はなさんは、もう英語が書けるんですか」

森牧師もしきりに感心している。

そんな様子を門の外から覗いていたのは、徳丸甚之介、武の親子だった。

「お父様、エーゴってなんずら?」

「西洋人の使う言葉じゃんけ」

「てっ、やっぱし、はなたれはバカじゃん!

エーゴなんて、クソの役にも立たんだに」


武は、そうほざいた途端、甚之介から頭を思いきり叩かれた。

「武、おまんも精進しろし、小作のボコに負けたら、承知しんぞ!」

ふじはといえば、はなからの手紙を宝物のように両手で持ち、うれしそうに「Thank you」と何度もつぶやいていた。

* * * * * * * * * *

猛勉強の甲斐があって、はなは少しずつ英語が読めるようになっていった。

そうなると、寸暇を惜しんで図書館の本を読み漁った。

廊下を歩きながらも本を手放さないはなを見るにつけて、茂木は少し心配だった。

「お茶の時間も、お部屋に戻ってからもずっとああなんです。

あんなに根詰めて大丈夫かしら?」

「そんなに長くは続きませんよ」


いまだに、はなに対しては手厳しい富山はそう吐き捨てるように言うとサッサと行ってしまった。

ブラックバーンは、そんなはなのことを優しい笑みを浮かべ見守っていた。

* * * * * * * * * *

そして、時は瞬く間に流れて …

5年後。

< はなは15歳になりました。

秀和女学校の本科へ進み、英語が本当に好きになりました >

相変わらず、英語の本に夢中、いかなる時でも分厚い本を読みながら廊下を歩くはな、なりは成長してもやっていることは5年前と変わらなかった。

生徒の中には奇異な目で見る者もいたが、気にするはなではなかった。

「 … この単語、何だろう?」

分からなことがあると、すぐに解明しないと気が済まない性質だった。

そうなると、図書室へ向かって一目散に走り出すのだ。

* * * * * * * * * *

「Stop!!」

ブラックバーンの声を聞きつけて、部屋から顔を出した教師がはなの首根っこを押さえた。

『はな、また廊下を走りましたね?!』

『校長、ごめんなさい … 急いでいるんです。

どうしても辞書が必要で、図書室へ … 』


はなは常習犯だった。

「また、口答えですか?」

はなの理解者である茂木も校則の遵守、礼儀や行儀作法には厳しかった。

「Go to bed,Hana!」

引きずられるように連行されていきながら、はなは訴えた。

「あの、はなじゃありません ~ 私のことは花子と呼んでください!」

何年言い続けていることだろう …

< まだ一度も花子と呼ばれたことのないはなでした。 

… ごきげんよう、さようなら >

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/12 20:17時点)



花子とアンへの道: 本が好き、仕事が好き、ひとが好き

新品価格
¥1,512から
(2014/4/12 20:18時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月11日 (金) | 編集 |
第11回

< はなは、落第寸前でしたが、何とか課題を書き上げて提出しました。

それにしても、ABCを覚えたばかりのはなが、どうして英語の手紙を書けたのか … 少し嫌な予感が致します >

『生徒の手紙です、採点をお願いいたします』

『楽しみです』


そう言って、ブラックバーンは富山から手紙の束を受け取った。

* * * * * * * * * *

その日の夕食の前に茂木が皆の努力を讃えた。

「英語の課題、全員無事に提出できたそうですね ~ ホッとしましたよ」

取り分け、はなのことを心配していたようだ。

「よく頑張りましたね」

褒められても、心から喜ぶことができないはなだった。

* * * * * * * * * *

数日後、課題の合否の結果は、ブラックバーンだけでなく、茂木やスコット他の教師たちも立ち合いの上で発表された。

ブラックバーンから渡された成績表を富山は確認した。

「二学期の課題の結果を発表します。

このクラスは … 」


生徒たちは目をつぶって祈り始めた。

「全員合格」

結果が告げられて、皆の口から安堵の声が漏れた。

落第を覚悟していたはなもホッと胸をなでおろしていた。

「一番点数が高かったのは … 安東はなさんのお手紙です」

同級生たちから驚愕の声が上がった。

生徒ばかりでなく、茂木も信じられないという顔ではなのことを見た。

しかし、誰よりも驚いていたのは、はな自身だった。

* * * * * * * * * *

「Everybody!」

ブラックバーンは、はなの手紙を取り出した。

「これから、ブラックバーン校長が皆さんの前でそのお手紙を読んでくださります」

「Dear Miss.Blackburn … 

親愛なるブラックバーン校長先生へ

私がどれぐらい校長先生を愛しているかを申し上げるために、お便りしようと思います

私は先生に永久にお仕えしようと思っております」


ブラックバーンが読み上げる手紙を富山が翻訳して皆に伝えた。

「あなたは大変美しい。

あなたに出会ってから、あなたを思わなかった日は一日もありません」


はなは、スコットのことが気になっていた。

手紙の内容を聞いていくうちにスコットの顔色が見る見る変わっていくのが分かった。

そして、こちらを見たスコットと目が合ってしまって、はなは思わず目をそらした。

「私は一日中、あなたのことを思っています。

親愛なるあなたへ … おやすみのキスを贈ります」


大胆な表現に同級生たちは、また声を上げて、はなのことを振り返って見た。

* * * * * * * * * *

スコットの様子がおかしいことに気づいた茂木が声をかけた。

「スコット先生、どうかなさいました?」

『急に気分が … 失礼します』


手紙の朗読はまだ途中だったが、スコットは逃げるように教室から出て行ってしまった。

* * * * * * * * * *

「 … 愛をこめて 花子」

手紙が読み終わると、教師たちから拍手が起こった。

『素晴らしい手紙だわ』

『あなたは小さな詩人ね』

「校長先生への敬愛の気持ちがあふれています」


口々に賞賛の声が送られた。

* * * * * * * * * *

『素晴らしい!

… でも、本当にあなたが書いたのですか?』

「私もとても信じられません。

本当にあなたが書いたのですか?」


ブラックバーンと富山の言葉に教室は静まり、一同は、はなに注目した。

『はな、答えなさい』

はなは立ち上がった。

「あなたの貧弱な英語力で、何故この完璧な英文が書けたのか …

何か不正をしたんじゃないんですか?」

「富山先生、そこまで決めつけなくても … 」


茂木は諌めようとしたが、富山はそれを遮って、はなにきつく言った。

「もう一度聞きます。

これ、本当にあなたが書いたの?」


はなはうなずいた。

「はい … 鉛筆で書えたのは、おらです」

手紙をもう一度確認した富山は、確かにはなの筆跡だとは認めた。

「 … じゃあ、今ここで、英語でスピーチをしてください」

「えっ?!」

「あなたは金曜日のイングリッシュ・スピーキング・デイも外国人の先生たちから逃げてばかりいましたよね?

もし本当にこれだけの文章が書けるなら、英語で何かしゃべってください」

『Speak english,Hana.』


そこではながみせたのは、例の朝昼晩の挨拶だった。

「それは、お父さんから習ったんでしたね … その3つ以外には?」

* * * * * * * * * *

絶体絶命のはなの口から出たのは …

♪ The water is wide, I can't cross o'er ~

夜ごと、耳にしていて、いつの間にかすっかり覚えてしまったあの歌だった。

『この海は広すぎて 私には渡れません 大空を舞う羽もありません

どうか ふたりが乗れる小舟をください ふたりで漕いでゆきます 愛する人と私で … 』

その歌詞は、まるで故郷に恋人を残してきたスコットの心境を歌ったような内容だった。

スコットは恋人への思いをこの歌に託して、毎晩口ずさんでいたのだろう。

もちろんはなに歌詞の意味など分かるはずもなかった。

しかし、スコットの発音を真似て歌うはなのことを、疑う者はもういなかった。

* * * * * * * * * *

「すごいわ、はなさん!」

一曲完璧に歌い終えたはなに向かって、茂木が拍手し始めると、それは教室中に広まった。

戸惑い気味に腰を下ろしたはなにブラックバーンは疑ったことを謝罪し、そして手紙の礼を述べた。

感動しているようだった。

はなに初めて見せた優しい顔だった。

『よく出来ました』

ブラックバーンに促されて、皆からもう一度拍手が起こった。

ただひとり、富山だけどうにも腑に落ちない、そんな顔をしていた。

< こうして、はなは落第の危機は切り抜けたのですが …

その陰で激しく傷ついてる人がいたのです >

* * * * * * * * * *

休み時間の談話室で、はなは話題の中心だった。

「はなさんズルいわ、あんなに英語がお上手なのに隠していたなんて」

そう言いながらも亜矢子は、はなと一緒に落第から逃れられたことを喜んでいた。

「学校中大評判ですよ ~ 英語の課題で最高点をいただいたそうね」

「能ある鷹は爪を隠すと申しますけれど、あなたが鷹とは驚きました」


高子や、あの口うるさいかをる子にまで褒められた。

「人は見かけによらないものですね ~ ほほほほ」

しかし、褒められれば褒められるほど、はなは無口になって塞ぎ込んでいった。

紅茶の用意ができたことを茂木が告げた時、はなはとうとう居たたまれなくなったように席を立ってしまった。

「 … おら、失礼しやす」

* * * * * * * * * *

談話室を後にしたはなが訪れたのは、礼拝堂だった。

祭壇の前にひざまずくと、手を合わせた。

「神様、おらとんでもねえこんしちまった … 」

はなは、スコットの部屋を掃除した際に、偶然ゴミ箱の中に見つけた手紙をそっくりそのまま書き写して提出していたのだ。

< はなは、わらにもすがる思いでした。

まさか、それが恋文とは思ってもみなかったのです >

「 … あれは、スコット先生が大切な人に書えた手紙で、あの歌も大切な人を思って歌ってただ。

おら、取り返しのつかんこんしちまった。

神様、どうしたらいいずらか? … 教えてくりょうし」


* * * * * * * * * *

神様は答えてはくれなかった。

放課後、亜矢子と共に掃除のためにスコットの部屋を訪ねたが、ドアは閉ざされたままだった。

ちょうど通りかかった富山から『今日は掃除をしなくてもいい』という言伝を伝えられた。

スコットが体調を崩したことを知り、愕然とするはなだった。

* * * * * * * * * *

スコットは夕食の席にも姿を現さなかった。

「スコット先生、食事ものどを通らないなんて、どうしたのかしら?」

「さあ?」


茂木と富山の会話が聞こえてきた。

スコットは、はなが行った『不正』のことを知っている。

そのことが原因で体調まで崩してしまった。

しかし、それを誰にも話してはいない。

はなは、より一層自責の念に苛まれるのだった。

* * * * * * * * * *

数日後、甲府のふじの元にはなからの手紙が届いた。

早速、朝市が代読するために呼ばれた。

「お母、元気け?

おらはやっとこさ学校に慣れたけんど、あんまり元気じゃねえ」

「えっ?!」

「 … 人の心を傷つけちまっただ。

言葉が分からんて、恐ろしいこんだ。

ほのせいで優しいスコット先生を傷つけちまっただよ。

謝りてえけんど、おら英語がまるっきししゃべれんし、どうしたらいいんだか分からんで …

こんなこんになるんなら、落第になった方がよっぽどよかったさ。

お母、おらどうしたらいいずらか?」


* * * * * * * * * *

手紙を読み終えた朝市は、ふじにすぐに返事を書こうと急かした。

「ふんだけんど、おらもう何て言ってやっていいんだか … 」

「そうさな … 」


安東家の人たちも困惑するしかなかった。

* * * * * * * * * *

その日、はなは校内で久しぶりにスコットの姿を見かけた。

階段で偶然に出くわしたのだ。

「スコット先生!」

はなはいきなり頭を下げた。

「スコット先生、ごめんなさい!

おら、ずっと謝りたかったですけんど … 」


スコットは戸惑いながら、はなを見つめた。

「先生の部屋の掃除してて、ゴミ箱に落ちてた紙っぺらを見たら、英語が書えてあったから …

おら、それを丸写しにしちまったです。

落第したくなくて、ほのこんで頭がいっぺえで … おら、とんでもねえこんしちまった。

ごめんなさい、ごめんなさい」


はなは何度も何度も必死に頭を下げていた。

< 言葉が通じないのは分かっていながら、謝らずにはいられないはなでした >

* * * * * * * * * *

「 … 安東はなさん」

名前を呼ばれて振り返ると、そこに富山と茂木が立っていた。

「今の話は本当ですか?」

すべて聞かれてしまったようだ。

「答えなさい!」

富山ににらみつけられたはなは身をすくませていた。

< おお怖い ~

… ごきげんよう、さようなら >

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/11 16:30時点)



アンのゆりかご―村岡花子の生涯 (新潮文庫)

新品価格
¥810から
(2014/4/11 16:30時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月10日 (木) | 編集 |
第10回

「グッドイブニング ~ はな」

秀和女学校の生活に耐えきれなくなったはなは、ある夜、脱走を試みようとした。

それを思い止まらせたのは、はなの様子を気にして柵越しに学校を覗いていた父、吉平だった。

「お父!」

< 一か月ぶりの親子の再会でした >

その時、寄宿舎から美しい歌声が流れてきた。

「スコット先生 … 」

スコットの歌声は、はなの心に優しく響いたのだった。

* * * * * * * * * *

< あの晩から、件のガス灯の下がはなとお父の秘密の待ち合わせ場所になりました >

その日も、はなは皆が寝静まった部屋をこっそり抜した。

「 … はなさん?」

十分注意していたはずだったのに、見回りしていた茂木に見つかってしまった。

「こんな時間にどうしたの?」

「あ … ご不浄に、行きたくなって」


腹でも壊したのか、ついていこうかと心配する茂木を何とか誤魔化して、はなは父の待つ場所へと急いだ。

* * * * * * * * * *

はなが約束の場所へ顔を出した時、吉平はあきらめて帰ろうとしたところだった。

「グッドイブニング、お父」

「グッドイブニング、はな」

「 … お父、昼間会いに来てくれりゃいいだに」


息を切らしながら、はなは不満そうに言った。

「すまん、昼間は仕事が忙しくてな …

どうだ、学校は?」

「校長のブラックバーン先生は鬼みてえにおっかねえ。

英語の富山先生は全然笑わんし、寮母の茂木先生は時々優しいけんど、行儀作法にうるさくて … 」

「大変じゃな ~

で、友達はできたけ?」


はなは首を横に振った。

「お嬢様たちの頭ん中は、お見合いや縁談の事ばっかしで、おらさっぱり話についていけねえさ」

「ふ~ん、ほうか」


はなは家族の様子を尋ねた。

「ああ、お母ははなの心配ばっかりしとる … 腹空いてねえか、風邪ひいてねえかって」

吉太郎は相変わらず野良仕事に勤しんでいて、かよは昔のはなみたいにももの子守をしているそうだ。

* * * * * * * * * *

「はな、ここでやってけそうか?

… 給費生は、はなひとりだけだし、肩身の狭い思いしてるじゃねえだか?」


はなは黙ってしまった。

「この前も、この柵乗り越えて、逃げようとしてたら?」

はなは笑顔を作って、柵に登って月を見ていただけだとウソをついた。

「毎日、腹いっぱいご馳走を食わしてもらって、ふかふかの布団で眠って、図書室には、うんとこさ本があるし …

おらだけ、家の仕事もしなんで、御姫様みたいな暮らしさせてもらってるら?

ありがたくって、もってえねえだよ」


はなの言うことに吉平はいちいち「ほうか、ほうか」と微笑みながらうなずいていた。

「お父、おら逃げねえ ~

お嬢様たちに負けねえよう、こぴっと精進する」

「ほうか … うん」


すると、今宵も寄宿舎の二階から、スコットの歌声が聞こえてきた。

「またあの歌じゃ」

「スコット先生また歌っとる … 」


* * * * * * * * * *

12月がやってきた。

富山から二学期の総まとめとして出された課題は … Write a letter to miss.Blackburn.

日頃の感謝の思いを込めて、ブラックバーン校長に英語で手紙を書くというものだった。

「今週いっぱいに提出してください。

期日を守れなかった者、ブラックバーン校長がお読みになって、合格点が取れなかった者は落第とみなし … 上のクラスに進級できません」


教室がどよめいた。

* * * * * * * * * *

次の裁縫の授業になっても、はなの頭は英語の課題のことでいっぱいだった。

「どうしよう、英語の手紙なんて書いたことないわ」

そんなことを言いながらも、亜矢子はそつなく仕上げるのだろう。

「おら、やっとこさABC覚えただ … 英語の手紙なんて逆立ちしても無理ずら」

授業に身が入らないはなから、茂木が縫いかけの布を取り上げた。

「何ですか、この縫い目は?」

* * * * * * * * * *

寄宿舎に戻ったはなは机に向かったが、鉛筆を手にしただけで、ただの一行も思いつかないままだった。

「はなさん、私の辞書を貸してあげるから、一緒に頑張りましょう」

「醍醐さん … 」

「私、はなさんに落第されたら困るの。

だから、頑張って一緒に進級しましょうね」


はなにとって亜矢子の好意は涙が出るほどうれしかった。

「手紙はまず最初に『Dear Miss.Blackburn』って書くんですって … 親愛なるっていう意味よ」

しかし、すぐさま、かをる子の横やりが入ってしまった。

「小さい人たち。

課題は試験と同じですから、助け合ってはいけません。

富山先生に知られたら、ふたりとも落第になりますよ!」


いかにも融通がきかない底意地の悪そうな顔で言った。

「醍醐さん、ありがとう。

おら、何とかひとりで頑張ってみるじゃん」


自分のせいで亜矢子まで道連れにしたら申し訳が立たない。

「それにその訛りはいつになったら直るんですか?」

かをる子のはなに対する小言は尽きなかった。

* * * * * * * * * *

同じ頃、例の『労民新聞』に駆け込む吉平の姿があった。

「あの、宿に言伝をいただいてたということで?」

入口近くの席にいた佐々木に声をかけると、先日とは打って変わって愛想よく応対して浅野を呼んだ。

浅野もにこやかな顔で吉平を出迎えた。

「いやあ、いらっしゃい。

この間は、せっかくお訪ねいただいたのに、留守をしていて失礼いたしました」


留守ではなかった。

佐々木に調べさせて、吉平が役に立ちそうな人間だと判断したから、会うことに決めたのだろう。

「あなたは私共の運動に非常に共鳴してくださっている」

「はい、講演会に参加して、貧しい者、労働者のために新しい法律を作ろとするその熱意に打たれました」

「実は、あなたのような賛同者を待っておりました。

あなたに是非やっていただきたいことがある」


吉平は自分が浅野から認められたと思って、もう舞い上がるような心地だった。

「何でもやらせてもらいます」

「あなたは全国のあちこちを巡る行商人だ。

その行商のついでに、私たちの思想について書かれた新聞や書物を売ってほしいのです。

書物が売れれば、それだけ私たちの思想が広まることにもなる。

名付けて『伝道行商』 ~ お願いできませんか?」


吉平に断る理由はなかった。

『伝道行商』という名前も何だか重要な任務を与えられたように勘違いさせた。

「やりましょう、伝道行商!」

ふたつ返事で引き受けてしまったのだ。

< お父がそんなことに首をつっこんでいるとは、家族は思ってもみませんでした >

* * * * * * * * * *

「はなは、暮れも正月も帰ってこんだけ?」

安東家に顔を出したリンが尋ねた。

「そうさな … 」

「冬休みは帰れるだと … ふんだけんど、甲府までの汽車賃送ってやれねえし」


ふじの返事を聞いて、朝市が肩を落としたことは誰も気づかなかった。

「婿殿が、東京へ行ったきり戻ってこんから、はなの様子も分からん!」

「ほれ見ろし ~ ふんだから、反対しただよ。

キリスト教の学校なん行ったら、婿殿みてえな西洋かぶれになって、嫁の貰い手もなくなるだよ!」


相も変わらず、人の家の事情に首を突っ込むリンのおせっかいぶりだった。

「いや … 嫁の貰い手なら、おる!」

朝市の言葉に一同、一瞬仕事の手を止めた。

「ほんな物好きが居る訳ねえら ~ 」

リンは我が子の顔を見てそう言い捨てた。

* * * * * * * * * *

『伝道行商』を快諾してしまった吉平は、めっきり秘密の待ち合わせ場所に姿を見せなくなっていた。

「 … お父、忙しいのかな?」

はなは今夜も待ちぼうけだった。

ただ、スコットの歌は毎晩聞こえてきた。

< 英語の歌詞は分からないけれど、何故かこの曲に心惹かれるはなでした >

門前の小僧 … いつしか、はなもスコットの声に合わせて口を動かしていた。

< この曲は、別れた恋人への気持ちを歌った歌です。

スコット先生には、日本に来る時、別れを告げた恋人がいたのです >

* * * * * * * * * *

次の日は、課題の手紙の提出期限だった。

授業の終わりに富山は言った。

「今日までですから、まだ提出していない人は早く出してください」

亜矢子もすでに提出を終えていた。

はなの便箋に書かれていたのは、その亜矢子から教わった『Dear Miss.Blackburn』の一行だけだった。

< はなは、絶望してしまいました … >

* * * * * * * * * *

それでも、自分に与えられた仕事であるスコットの部屋の掃除は怠らなかった。

… この仕事もいつの間にか、はなだけという日が多くなっていた。

「お父、ごめん … おら、これで落第ずら」

落第することを覚悟したはな。

ふと掃除をする手を止めた。

「まだまだと おもひすごしおるうちに はや 落第のみちへ むかふものなり」

思い浮かんだのは、そんな日本語の一句だった。

ため息交じりに、掃除を再開した拍子に後ろにあったゴミ箱を倒してしまった。

散らばった紙くずを拾い集めていると、くしゃくしゃに丸められた英文を書き綴った便箋が目についた。

「何でえ、こりゃ?」

* * * * * * * * * *

課題である生徒たちからブラックバーン校長に宛てた手紙を携えて、校長室へと向かう富山。

その後ろを追う者あり … はなだった。

廊下を走ってはいけないことは知っているけど、今はそれどころではなかった。

「富山先生っ!」

渡り廊下のところでようやく追いついて、声をかけた。

「これ、お願えしやす!」

手紙の入った封筒をうやうやしく差し出した。

「あら、間に合ったんですか?」

意外というような言い方だった。

「お願えしやす!」

「 … 分かりました。

ブラックバーン校長に読んでいただきましょう」


表情ひとつ変えず、ニコリともせず、はなからの手紙を受け取った。

< さて、はなは一体どんな手紙を書いたのでしょう?

この手紙がトンデモナイ騒動を引き起こすのでした。

… ごきげんよう、さようなら >

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/10 19:37時点)



アンを抱きしめて―村岡花子物語

新品価格
¥2,160から
(2014/4/10 19:38時点)



朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月09日 (水) | 編集 |
第9回

「お母、会いてえよ!」

< 規律の厳しい寄宿舎の生活に馴染めず、はなは重いホームシックに罹ってしまいました >

同室の亜矢子もまた、はなと同じように両親からの手紙で帰心を募らせていた。

ふたりは礼拝堂に忍び込んで、祭壇に向かって祈った。

「もし本当に神様がいらっしゃるなら、おらの願いを聞いてくれちゃ …

早く家に帰してくりょ」

「神様、私もこんな所もういや … お父様、お母様のいるイギリスへ行かせてください」


“何故そんなにここがいやなのですか?”

礼拝堂に声が響いた。

「てっ、神様け??」

「 … だって、神様、ここには凄くおっかない先生がいるんですもの」


はなも横でうなずいてた。

「ブラックバーンちゅう、鬼みたいにおっかねえ先生だ」

「私たちをここから出してもらえないなら、あの人たちをカナダに帰しちゃってください」

「神様、お願えしやす!」


* * * * * * * * * *

そんな祈りを捧げるふたりの背後から足音が聞こえてきた。

はっとして振り向くと、ブラックバーン校長と富山が立っていた。

ふたりは息を飲んだ。

神様の声の正体は富山だったのだ。

富山は校長に何か耳打ちしている。

「校長先生は、あなたたちみたいな悪い子をよい子にするためにはるばるカナダからいらしたのです。

何ですか、今のお祈りは?」


* * * * * * * * * *

「ここに入ってくる多くの子たちが罹るホームシックです。

あの子たちも直に慣れるはずです」


ブラックバーンを前にしてふたりを擁護する茂木に富山は反発した。

「茂木先生は甘すぎます!

茂木先生がそんなだから甘えるんです」

『あのふたりに仕事を与えましょう』


ホームシックの特効薬は体を動かすことだと、ブラックバーンは言った。

* * * * * * * * * *

ふたりに与えられた仕事は、スコットの部屋の掃除だった。

実家でも掃除などさせられたことがない亜矢子の不満を耳にして、はなは目を丸くした。

「掃除したことねえだけ?」

「家では使用人がするの」


スコットの部屋の前には茂木が待っていた。

「お部屋に入る時は、ノックなさい」

はなは、いきなりドアを開けようとして注意されるが、ノックの意味が分からない。

代わりに亜矢子がしてみせた。

「お部屋をお掃除に参りました」

スコットは、授業のために、後のことを託すと部屋から出て行った。

* * * * * * * * * *

部屋に足を踏み入れたふたりは目を見張った。

「まあ、きれい!」

部屋の中にはベッドがあり、鏡台の前にはネックレスなどのアクセサリーや香水のびんが置かれていた。

「不思議の国みてえだ … 」

「ふたりとも、遊びにきたのではなくて、罰当番ですよ。

分かってますか?」


茂木にたしなめられて、ふたりはいい返事をした。

「鏡台と机の上は、スコット先生の大事なものばかりですから、決してさわらないように。

しっかりやってくださいね」


* * * * * * * * * *

茂木が立ち去るのを見届けた亜矢子は、戒めなど忘れて、鏡台の前に釘づけになった。

「お母様の部屋にもこんなのなかったわ」

一方のはなは、姉様かぶりをして、タスキをかけると早速ハタキをかけはじめた。

「女の子はきれいなものに囲まれていれば、元気が出るんですもの」

亜矢子は勝手に鏡台のイスに腰掛けてしまった。

「はなさん、見てごらんなさい!」

手にしたロケットペンダントを開いて、はなに見せた。

「これきっと、スコット先生の大切な人よ」

外国人男性の顔写真が入っていた。

「 … ずいぶん、鼻の高え男の人だな」

同じ写真を見ても、はなと亜矢子では目の付け所がまったく違った。

「いいなずけかしら?」

* * * * * * * * * *

夕方になって、部屋に戻ってきたスコット。

ドアノブに手をかけて、ぴかぴかに磨き上げてあることに気づいた。

部屋に入るとため息をついた。

塵ひとつなく掃除され、タオルやシーツもきちんとたたまれていた。

* * * * * * * * * *

放課後、談話室では生徒たちが話の花を咲かせていた。

かをる子たちの話題は、高子が先日したというお見合いのことだった。

「お相手はどんな方ですの?」

「外交官ですの」


一同が歓声を上げた。

「来年、フランスの大使館に赴任するので、卒業を繰り上げてくれないかなんて、無茶なことをおっしゃるのよ」

そう言いながら、高子もまんざらでもなさそうだ。

傍らに興味津々の亜矢子、まったく無関心のはな。

* * * * * * * * * *

そこへ、茂木と富山が連れだってやってきた。

「醍醐さん、安東さん。

スコット先生が、お部屋が大変きれいになったと喜んでらっしゃいましたよ。

あなたたちに毎日お掃除当番をお願いしたいそうです」

「はい、喜んで」

「はい」


真っ先に返事をしたのは亜矢子の方だった。

「 … お掃除も結構ですが、その調子で英語の授業はもっと頑張ってくださいね」

富山は見抜いていたようだ、掃除がほとんどはなの仕事だということを。

* * * * * * * * * *

富山が懸念した通り、はなの英語力は一向に進歩しなかった。

授業についていけず、基本的な質問でさえまともに答えることができずに富山をいらつかせた。

* * * * * * * * * *

「あの子はここに馴染もうともしないし、英語の授業にも全くついてこられません。

このままでは、これまでの給費生と同じように学校を去ることになると私は思います」


はなに対する厳しい所見をブラックバーンに報告する富山。

「でも、そうと決まった訳じゃ、富山先生」

茂木は必死になって、庇おうとした。

* * * * * * * * * *

「あの鳩に乗っかって、甲府の空まで飛んで行けたらな … 」

窓から見える空を飛んでいく数羽の鳩に、はなは故郷への思いを重ねていた。

< ここでは、空想の翼を広げることもできず … はなは、羽の折れた鳥のようでした >

* * * * * * * * * *

< その頃、行商で東京へ来ていたお父は、またもやトンデモナイことを考えていました >

吉平が訪れていた場所は、社会運動家の浅野中也が主催している『労民社』という新聞社だった。

… といっても、屋根の上に『労民新聞』という看板を掲げているだけで、ごく普通の家なのだが。

以前、上京した際に浅野の街頭演説を聴いて、すっかり心酔していたのだ。

建物の中に入ると、雑然とした部屋で数名の男が机に向かって仕事をしていた。

「あの ~ 」

応対に出た男は吉平を怪訝そうに見ている。

「何か?」

「私は、キリスト教を信仰していて、神の下では金持ちも貧乏人も皆平等だという考え方に共鳴しております」


男はそれがどうしたという顔をした。

「あの講演会で、それを実現しようと孤軍奮闘している浅野先生のお姿、大勢の労働者の熱気に感動しました。

私にできることは何でもしますから、協力させてください!」

「でしたら、これを」


ペコリとお辞儀した吉平に男は傍らにあった新聞を手渡すと、仕事に戻ってしまった。

それは、労民社に対する寄付の募集記事だった。

「 … 寄付ですか?

私は、甲府から生糸を売りにきたしがない行商です。

寄付する金なんてありません」

「そうですか … でしたら、結構ですよ」


余りにも素っ気ない返事だった。

意気込んで入ってきた吉平だったが、意気消沈して引き上げて行った。

「行商って言ってたな?」

奥から出てきた社主の浅野が、吉平と応対していた男、佐々木に確認した。

「面白そうだ … 宿を突き止めてくれ」

* * * * * * * * * *

「白鳥様は、まだご縁談はないんですか?」

その夜、就寝時間が近づいた頃、寄宿舎の部屋で亜矢子が突然かをる子に尋ねた。

「それは、降るようにございますよ ~

ただ、私のお眼鏡に適う男性がなかなかいらっしゃらなくて」

「秀和女学校の生徒は、外交官や貿易会社の殿方から引く手あまたなのよ」


先輩ふたりの話を亜矢子は目を輝かせて聞いていた。

その時、ドアをノックする音がして、スコットが顔を出した。

『皆さん、おやすみなさい』

『おやすみなさい、スコット先生』


* * * * * * * * * *

明りを消して、布団に入ってしばらくすると、亜矢子が小声で話しかけてきた。

「はなさん、私我慢して、ここで頑張ることにしたわ」

驚いたはなは、体をうつぶせに起こして、頭の上で寝ている亜矢子の方を見た。

亜矢子も同じような体制でこちらを見ていた。

「お母様のお手紙にも書いてあったの … ここの生徒でいれば、山ほどいい縁談がくるんですって」

「 … えんだん?」


はなと同じ10歳なのに、亜矢子はもう縁談のことを考えていた。

「小さい人たち、早くおやすみなさい」

かをる子に注意されてしまった。

「あっ、ちょっとご不浄へ」

消灯前に行かなかったことを、かをる子に咎められたが … はなは、そんな方便を使って部屋を抜け出した。

* * * * * * * * * *

渡り廊下から見上げた月は甲府で見た月と同じ姿ではなを見下ろしていた。

はなは、亜矢子のように割り切ることなんかできない … 縁談なんて、まだ雲をつかむような話だった。

「家に帰りてえな … 」

そう口にすると、もういてもたってもいられなくなってしまった。

「 … お父、ごめん。

おら、お父の期待には応えられんさ」


はなは、裏庭へと駆け出すと、学校を囲んでいる鉄の柵をよじ登り始めた。

ついに脱走することを決意したのだ。

「グッドイブニング … 」

* * * * * * * * * *

よじ登った柵の上から、声のする方に目をやると … ガス灯に照らし出された吉平の姿があった。

「グッドイブニング ~ はな」

例の身振りをして、はなのことを見上げ、ニコニコしながら近づいてきた。

「てっ、お父?!」

はなが声を上げたので、吉平は口の前で人差し指を立てた。

「ほら、危ねえから下りろ ~ 滑って落っこったら大変じゃ」

はなは、仕方なく柵の下へと下りた。

* * * * * * * * * *

ふたりは柵をはさんで向かい合った。

「はな、元気してたか?」

はなは、両手で柵をつかんだまま何も答えない。

「どうしただ? 元気そうじゃねえな」

「おら、ホームシックに罹っちまって … 」

「なんじゃ、ほりゃあ?」

「先生たちが言ってたけんど … ホームシックちゅうのは、お母に会いたくなって、家に帰りたくなる病気みてえだ」

「ホームシックか … 」


すると、吉平は急に笑い始めた。

「へえ ~ はな、もうほんな難しい英語、覚えただか?

やっぱし、はなはすげえな」


いつもと変わらない父、いつもの調子で、いつもの笑顔だった。

「お父、おら … ちょっこし、元気になっただよ」

笑顔を返したはなを見て、吉平はうなずいた。

「お父の顔見たら、こぴっと元気になったさ」

「お父もじゃ、はなの顔見たら … こぴっと元気になった」


柵から手を伸ばしてきて、はなの頬を触った。

「お父!!」

* * * * * * * * * *

その時、寄宿舎から歌声が流れてきた。

二階の明かりが漏れている部屋からだ。

「美しい声じゃ」

ふたりは思わずその美しい歌声に聞きほれていた。

「スコット先生 … 」

カーテンから覗いて見えた顔はスコットだった。

< この時初めて、あんなにも嫌いだった英語が、はなの心に優しく響いてきたのでした

… ごきげんよう、さようなら >

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/10 01:05時点)



スコット先生が歌っていた唄、『悲しみの水辺』といって、スコットランド民謡 … だそうです。

ささやく夜

新品価格
¥1,505から
(2014/4/10 01:04時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月08日 (火) | 編集 |
第8回

< はなの秀和女学校での生活が始まりました。

では、寄宿生の一日のスケジュールをざっとご紹介しましょう。

朝6時、起床のベルが鳴ったら、速やかに起床。

きちんと身支度を整えて、7時から朝食をいただきます >

「てっ、これが朝飯け?!」

焼き魚、白米に味噌汁、ここではごく普通の朝食であったとしても、甲府にいた頃には考えられないご馳走だった。

< 8時に講堂に集合し、礼拝に参列します >

はなは、亜矢子の見様見真似で、手を組んで目を閉じた。

「ア~メン!」

< 午前中は、日本語の授業です。 >

筆記用具といえば、石盤とろう石その他、吉平が使う墨と筆しか見たことがなかったはなは、鉛筆とノートの存在を初めて知った。

< 昼食をはさんで、午後からは、いよいよ英語の授業です >

* * * * * * * * * *

英語教師の富山を伴って、ブラックバーン校長が教室に入ってきた。

校長と同級生たちが英語で挨拶を交わして、授業は始まった。

「今日は、ブラックバーン校長が考案なさった、50センテンスを直々にレッスンしてくださいます」

富山が授業の内容を説明すると、黒板に一斉に1から50までの番号が振られた英文が貼りだされた。

< 50センテンスとは … 朝起きてから、夜床に行くまでの日常生活の行動を細かく綴った50の英文です。

秀和女学校の生徒はこれを暗誦することで、規則正しい生活習慣と共に英文の基本を身につけるのです >

校長は、前の席に座っている生徒から順番に指名していった。

難なくスラスラと答える同級生たちを見て、亜矢子がはなに小声でささやいた。

「 … とてもついていけないわ」

「おらもだ … 」


そのうちに亜矢子の番がやってきてしまった。

「when did you get up? (何時に起きましたか?)」

英語で質問されて、立ち上がった亜矢子は、少し考えてからやや自信なさそうに答えた。

「I … I got up at 6 o'clock today(私は、6時に起きました)」

「Very good!」


ブラックバード校長は満足そうにうなずいた。

「醍醐さん、英語は何処で学びましたか?」

ホッとした顔の亜矢子に富山が尋ねた。

「貿易の仕事をしている父から少し教わりました」

* * * * * * * * * *

次はいよいよ、はなの番だった。

「when did you get up?」

「安東さん、ブラックバーン校長がおまけをしてくださって、醍醐さんと同じ質問ですよ」


たった今の校長と亜矢子のやり取りを聞いてはいたが、何と答えたらいいのかという以前に質問の意味さえよく分からなかった。

校長は、立ち上がったはなに近づき、もう一度質問した。

「あっ … 」

言葉に詰まっていたはなの頭にある言葉が思い浮かんだ。

「ぐっど … グッド・モーニング」

左の掌を顔の横に広げてそう答えていた。

「 … ふざけているの?」

富山にはそんな風にしか見えなかった。

はなはかぶりを振った。

「おら … じゃなくて、私もお父に教わりました」

上京する汽車の中で吉平が「これさえ覚えておけば大丈夫」と言って教えてくれた、身振り手振りを交えた英語の挨拶を、はなはその場でやってみせた。

「 … グッド・イブニング!」

級友たちは大爆笑した。

「はなさんって本当に面白いわ」

亜矢子も笑っているが、はな自身は笑わせる気など全くなく、真剣そのものだった。

校長と富山は注意する気もうせたのか … それ以上は何も言われなかった。

* * * * * * * * * *

< 5時半から夕食。

今日は週に一度、洋食のディナーが振舞われる日です >

教師や生徒たちは、ナイフとフォークを巧みに使って食事している。

「箸じゃねえ??」

「はなさん、ナイフとフォークを使ったことは?」


戸惑っているはなに茂木が尋ねた。

「ねえです ~ どうするだか、教えてくれちゃ」

「どのようにするのか、教えていただけますか!」


目の前の席に座っているかをる子に早速言い直された。

「ど、どのようにするのか、おせ~て … 」

「教えていただけますか!」


< はなが何か言う度に、言語強制会の会長役に言葉の間違いを指摘され …

でも、もっと怖いのは、西洋人の教師に英語で話しかけられることでした >

『私が教えましょう』

後ろの席の外国人教師が見かねて、はなに声をかけてきた。

『ナイフは右手に、フォークは左手に持ち … こうやって切ります』

はなの手からナイフとフォークを取って、目の前で料理を切ってみせた。

『やってごらんなさい』

優しく分かりやすく教えてくれたのだが、はなの頭は英語でいっぱいいっぱいだ。

「 … さっぱり分からん??」

あれこれしているうちに手元が狂った。

「あっ!」

フォークから外れたプチオニオンがテーブルの上をころころと転がって … 富山の目の前で止まった。

* * * * * * * * * *

< はなに取って最大の恐怖は金曜日です。

週に一度の『イングリッシュ・スピーキング・デイ』は、外国人教師とどこで会っても、すべて英語で話さないとならないのです >

「 … 来た!!」

亜矢子とふたりで廊下を歩いていると、前からきた外国人教師が来るのが見えた。

『もう学校には慣れましたか?』

『はい、先生』


亜矢子は流暢な英語で答えた。

はなは、踵を返して来た道を戻り始めていた。

ところが、今度はそちらから校長と富山がやって来たのだ。

立ち止まったはなは … 後ずさりした後、また振り返って走り出した。

『廊下を走ってはいけません!』

その声を聞きつけて、教室から顔を出した別の教師に、はなは腕を捕まれ囚われてしまった。

* * * * * * * * * *

「離してくりょう ~ 痛たた、離してくりょう」

じたばたしながら、校長の前に突き出された。

「何故逃げるのですかとお尋ねです」

富山が校長の言葉を訳して伝えた。

「英語がさっぱり分からんから … 」

「日本語を使ってはいけません」


はなは半べそになった。

「おら、ただ好きな本が思いっきし読みたくてここへ来ただよ。

何でこんな目に遭わなきゃ … 」

『黙りなさい!』


怒鳴るブラックバーン。

「もう勘弁してくりょう!」

はなは逃げ出そうとしたが、ふたりの教師に行く手を阻まれて取り押さえられてしまった。

「Go to bed!!」

< … それは、ブラックバーン校長の最大級のおしおきです >

* * * * * * * * * *

寄宿舎に戻されたはなは、病気でもないのに布団を敷いてそこに入っているように言いつけられた。

「ブラックバーン校長のお許しが出ない限り、食事はいただけません。

… 目をつぶって、心を落ち着けて、ひとりでよく反省してください」

「 … はい」


はなは、茂木から言われた通りに目をつぶりはしたが、何を反省したらいいのか … 自分は反省しなければならないことをしたのだろうか?

理不尽な気持ちでいっぱいだった。

目をつぶると、甲府にいる友達の顔が浮かんできた。

朝市、サト、武 …

ブドウ畑の下を皆で走っていた頃のことを想像した。

「 … 皆、どうしてるか?

会いてえなあ ~ 」


* * * * * * * * * *

しばらくして、安東家にはなからのハガキが届いた。

はなからの便りに家族一同が沸いたが、あいにく誰も字を読むことができない。

そこへ上手いこと、隣の朝市が顔を出した。

「うちの人、行商行ってるから、おまんこれ読んでくれっちゃ」

「はなから?!」


朝市の顔もパッと明るくなった。

* * * * * * * * * *

お母、お父、おじいやん、兄やん、かよ、もも、元気け

おらは元気です

毎日、食ったこともねえようなごちそう食って、元気でやってるだよ

だから、心配しなんでくりょ

みんなもお元気で

元気な花子より

* * * * * * * * * *

『毎日ごちそう』と聞いて、かよとももは羨ましがっていた。

元気でやっていることを知って安堵する一同の中で、ひとりふじだけが表情を曇らせていた。

「元気、元気って、随分と元気の数が多くねえだか?」

「 … そうさな」


皆、ふじの言葉で改めて気がついたようだ。

* * * * * * * * * *

そんなある日のこと。

休み時間に生徒たちがくつろいでいる談話室へ、若い外国人教師スコットと富山たちがお盆を手に入ってきた。

『お茶にしましょう』

「スコット先生がクッキーを焼いてくださいましたよ」


富山の言葉に歓声が上がった。

皆が集まっていく中で、はなは、その輪に加わらずにソファーに座ったままぼんやりしていた。

「はなさん、召し上がらないの?」

亜矢子が、はなの分までクッキーをもらってきてくれた。

「あ、ありがとう」

ひと口食べたはなは目を見張った。

「甘い … 」

生まれてこの方、食べたことがない美味しさだった。

「さすが本場の味ね」

「こんな美味えもん、うちの皆に食わしてやれたらな … 」


このところ何かにつけて、甲府のことを思い出してしまう。

家族のことばかり考えてしまうはなだった。

そこへ、茂木が亜矢子の元へロンドンの両親から届いた手紙を渡しにやって来た。

「あっ、安東さんも … 甲府から」

はなは、ハガキを受け取って驚いた。

「てっ、お母?!」

差出人は、字が書けないはずのふじからだった。

* * * * * * * * * *

ふたりは落ち着いて手紙を読むために寄宿舎へ戻った。

ふじからのハガキは、朝市が代筆したものだと分かった。

* * * * * * * * * *

はな、本当に元気にしてますか

はなは、うんと辛抱強いボコだけんど、あんまし辛抱し過ぎるんじゃねえだよ

あんまし便りに元気、元気と書えてあると、けへって心配になるだよ

つれえ時にはつれえと、さみしかったらさみしいと、正直に言ってくりょう

離れていても、おかあはいつも、はなの味方じゃん

体に気いつけるだよ

おかあより

* * * * * * * * * *

優しい母の声が聞こえてくるようだった。

鼻の奥がつ~んとして、目頭が熱くなってきた

「お母 … お母っ」

「お母様っ」


思わず母の名を口にしたその時、横で両親からの手紙を読んでいた亜矢子も同じように声を上げた。

振り向くと、机に突っ伏した亜矢子の肩が震えていた。

「醍醐さん、大丈夫け?」

「 … 大丈夫じゃないわ。

私、毎晩こうやって泣いていたの … 皆に聞こえないように …

お母様っ、会いとうございます」


泣きじゃくる亜矢子を見ていたら、はなも益々思いが募ってきた。

「おらもだ … お母に会いてえ」

堪えていた涙が一気にあふれてきた。

< すっかりここに馴染んでいるように見えた同級生も、実は … はなと同じくらい重いホームシックに罹っていたのです >

そんなふたりの様子を部屋の外で窺っていた茂木が静かにその場から立ち去って行った。

* * * * * * * * * *

「お母、会いてえよ!」

はながそう叫んだ時、ちょうど部屋に戻って来たのは、かをる子だった。

「『会いてえよ』ではなく、『お会いしとうございます』」

どんな場合であっても言語強制会の会長は言葉の乱れを許しはしなかった。

< 『うるせえ!』 … と、心の中で叫ぶはなでした。

… ごきげんよう、さようなら >

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/8 20:25時点)



赤毛のアン Blu-ray メモリアルボックス

新品価格
¥31,025から
(2014/4/8 20:27時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月07日 (月) | 編集 |
第7回

1945年(昭和20年)

戦時下の東京。

ほの暗い書斎で、村岡花子は翻訳途中の原稿を読み返していた。

「 … 『名前は何て言うの?』

子供はちょっとためらってから、『私をコーデリアと呼んでくださらない?』と、熱心に頼んだ。

『私の名前ってわけじゃないんですけど、素晴らしく優美な名前なんですもの』

『コーデリアというんでないなら、何ていう名前なの?』

『アン・シャーリー。アンなんて、とても現実的な名前なんですもの』 … 」


花子は、主人公の少女のセリフを読んで可笑しくて吹き出してしまった。

「私みたい … 」

自分も少女の頃、親がつけてくれた『はな』という名前ではなく『花子』と呼ぶように、誰彼かまわず言っていたことを思い出したのだ。

花子は、記憶のページをめくっていった。

* * * * * * * * * *

1903年(明治36年)

< はなは、10歳で故郷の甲府を旅立ちました。

汽車に乗るのも東京へ行くのも、生まれて初めてのことばかり … はなの小さな胸は緊張と不安で、今にも破裂しそうでした >

目の前の席に座っている父、吉平は行商でどちらも慣れっこだった。

平然とした顔でおむすびを頬ばっている。

「お父、おら … 」

はなの強張った顔を見て、吉平は言った。

「心配するな ~

秀和女学校は、そりゃあ素晴らしい学校じゃ。

はなの大好きな本が山ほど読めるし、海の向こうのカナダっちゅう国から来た先生たちが英語で授業してくださるんじゃ」

「 … エーゴ?」


はなは首を傾げた。

「うん、グッドモーニング、グッドアフタヌーン、グッドイブニングじゃ」

「なんでえ、ほれ? … 何かの呪文け?」


吉平は、笑いながら、英語の挨拶だと教えた。

「お父もこれしか英語は知らんが、これさえ覚えとけば大丈夫 ~ なんとかなる!

朝はグッドモーニング、昼はグッドアフタヌーン、夜はグッドイブニングじゃ」


今度は身振りを交えて教えた。

そんな話に夢中になっていたふたりは、汽車がトンネルに入っていくのに気づかずに、窓を開けたままだった。

「ああ、大事な日なのに、すすだらけになっちまった」

咳き込みながら衣服についたすすを払っている吉平の顔を見て、はなが笑い出した。

「ははは、お父、鼻!」

鼻の穴の周りがすすで真っ黒だ。

そう言うはなも同じだった。

「やっと笑ったな」

ようやく笑顔を見せた、はなの顔を吉平は手拭いで拭った。

* * * * * * * * * *

「はな、着いたぞ ~ ここじゃ」

「てっ … 」


< そこは、はなが生まれ育った甲府の村とは、まるで別世界でした >

頑丈な門に守られ、そびえ立つ洋館の校舎を前にして、はなはすっかり委縮していた。

「いいけ? はな … 華族のお嬢様なんかに負けるな。

しっかり精進して、見返してやるだぞ」


父の言葉にうなずくのが精一杯だった。

* * * * * * * * * *

はなは、吉平に手を引かれて、校舎に足を踏み入れた。

し~んと静まり返っていて、誰の姿も見えない。

「ごめんくださいませ!」

吉平が大声で挨拶をしたが、返事はない。

「今日は日曜日じゃから、学校は休みずらか?」

二三歩、歩みを進めた時、頭の上から怒号が飛んで来た。

振り向くと階段から外国人の女性が怖い顔でにらんでいた。

『男は立ち入り禁止です!』

「あの ~ 今日から、こちらでお世話になる娘のはなです。

私は父親の … グッドアフタヌーン」


傍らに控えていたふたりの和服姿の日本女性のひとりが前に出て言った。

「 … 安東はなさん、ようこそ秀和女学校へ」

< 秀和女学校は、明治時代の初めにカナダの宣教師によって作られたミッションスクールです。

生徒の多くは、華族や富豪といった特権階級のご令嬢でしたが … はなは、吉平の奔走で特別に入学を許されたのでした。

学費免除の給費生として … >

* * * * * * * * * *

はなと吉平は校長室へと案内された。

「校長のミス・ブラックバーン先生です」

もうひとりの女性が外国人女性のことを紹介した。

「私は、校長の通訳を担当する英語教師の富山です」

「寄宿舎の寮母とお裁縫の教師をしております茂木でございます」


ふたりともこの学校の教師だった。

「娘がお世話になります」

ポカンとしたままでいたはなは、吉平から挨拶するよう促された。

「ぐ、ぐっど … 」

汽車の中で教わった英語でしようすると、日本語でいいと言われた。

「 … 安東はなでごいす … よ、よろしくお願えしやす」

ブラックバーンと富山タキは、ニコリともせず返事もしない。

「よろしくね、はなさん」

茂木のり子の優しい声を聞いて、はなの緊張が少しだけ溶けた。

「本当の名前は、『はな』だけんど、おらのことは『花子』って呼んでくりょ」

「『はな』で結構でございます」


吉平が慌てて取り消すと、はなが不満そうな顔をした。

* * * * * * * * * *

学校に荷物を預けると、吉平は、はなに向かって言い聞かせるように言った。

「はな、今日からここがはなの家じゃ」

「そうですよ、はなさん ~ 神様の御前では、人は平等、身分なんて関係ありません。

寄宿生は皆、姉妹同然ですからね」


茂木の言葉は、はなや吉平にとってありがたい内容だったが、対照的に富山の話は厳しいものだった。

「ただし、あなたは給費生です … その自覚だけは忘れないように。

ここでは、徹底した英語教育をしています。

特に給費生は、他の生徒よりも一層、勉強に励まねばなりません。

一回でも落第点を取ったら、学校をやめてもらいます」

「てっ?!」


思わず発してしまったはなのひと言に富山は怪訝な顔をした。

「あっ、すいません … あの、甲府の訛りです。

… あの、はなの他にも給費生がいると伺ってるんですが?」


吉平の質問に富山は表情ひとつ変えずに答えた。

「落第して、学校を去りました」

「てっ?!」

「 … 以上です。

お父様は、もうお引き取り下さい」


吉平は、もう一度頭を下げてから、後ろ髪を引かれる思いで学校を後にした。

* * * * * * * * * *

その後、茂木がはなを連れて寄宿舎を案内した。

「ここが、今日からお友達と生活するお部屋です」

部屋の中には、畳が敷かれていて、きれいな着物を着た3名の女学生が居た。

< 寄宿舎では、予科、本科、高等科の生徒が一緒に暮らしていて、少女から成人した生徒まで年齢はまちまちでした >

女学生たちは、横一列に並んで、ニッコリ笑ってはなのことを迎えた。

「ごきげんよう」

「 … ごき?」

「編入生の安東はなさんです」


茂木から紹介されて、はなは3人にお辞儀をした。

同室になったのは、高等科の白鳥かをる子、本科の一条高子、そして、はなと同じ編入生の醍醐亜矢子だった。

「私もここへ来たばかりなんです」

「本当け?」


亜矢子の父親は貿易会社の社長で、母親と共にイギリスで暮らしているそうだ。

「でも、大きい方たちが、それは親切にしてくださいますわ」

「大きい方?」


はなは思わず、白鳥かをる子のことを見上げた。

他のふたりに比べて、かをる子は体格がよく、ずんぐりむっくりとしていた。

< 『大きい方』というのは、目方のことではなく … ここでは、上級生は『大きい方』、下級生は『小さい人』と呼ばれていました >

そんなことは知らないはなは、かをる子を見て妙に納得していた。

「はなさん、私とお友達になって下さらない?」

「いいずら ~ おらこそ、友達になってくれっちゃ!」

「まあ、うれしい!」


亜矢子は、はなの手を取って喜んだ。

「おらのことは、『花子』と呼んで … 」

「小さい人たち、ちょっとお待ちになって!」


さっきから、はなが甲府訛りで何か言う度に、眉をひそめていたかをる子がふたりの会話を遮った。

「今の言葉遣いは感心いたしません!

『私こそ、お友達になっていただきとう存じます』と言うべきです」


はなのことを見下ろして注意を与えた。

「えっ?」

「白鳥さんは『言語強制会』の会長ですから、言葉遣いには厳しいんですよ」


茂木に説明されたが、はなにはよく理解できなかった。

「言葉の乱れは、精神の乱れです。

美しく正しい日本語を話せるように、努力なさってください」


何となくうなずいたはな。

「まあ、急には無理だから、ゆっくりと直して行きましょう」

茂木が、しゃちほこばるかをる子のことを執成した。

* * * * * * * * * *

その時、夕食の時間を知らせる予鈴が聞こえてきた。

「 … 食堂へ参りましょう」

部屋を出て行く茂木の後を白鳥、一条と続いた。

「はなさん、おリボンはどうなさったの?」

「はっ、おリボン?」

「髪におリボンをつけないのは、着物に帯を締めないのと同じなんですって」


はなが持っていないと知ると、亜矢子は自分がつけていたリボンを取ってはなの髪につけてくれた。

* * * * * * * * * *

その頃、甲府では …

一日の野良仕事を終えた、周造、ふじ、吉太郎が家に戻って来たところだった。

「くたびれた … はな、水をくりょう」

土間に道具を下ろした吉太郎がいつものクセではなの名を呼んでいた。

「はなは居ねえだ」

「てっ、ほうじゃんけ … 」


ふじの顔を見ると、ももが走ってきた。

「お姉やんが居ないと、ももが言うこときかんし … つまらんじゃん」

その後から出てきたかよはふくれっ面だ。

はなが居なくなって、安東家の皆は少し調子がくるってしまったようだ。

「はなは、どうしてるだかね ~ 」

「そうさな ~ 華族のお嬢様なんかと上手くやっていけるずらか?」

「大丈夫大丈夫、きっと今頃、目キラキラさして、大好きな本、思いっきし読んでるら」


ふじは自分自身を安心させるかのようにそう言ってうなずいた。

* * * * * * * * * *

はなは、食堂へと向かう廊下を亜矢子の後をついて歩いていた。

歩きながら、何かを探していているのか、しきりにキョロキョロと落ち着かない。

はなは、その部屋の前で立ち止まった。

「ちょっと待ってくりょう!」

「 … はなさん?」


亜矢子に声をかけると、部屋の扉を開けて中に入って行ってしまった。

* * * * * * * * * *

「本じゃん、本の部屋じゃんけ!」

そこは、図書室だった。

はなが女学校へ行きたいと思った一番の目的の場所だった。

村の教会とは規模が違う広い部屋中に並んだ本棚、部屋の中央に階段があり中二階にもまた本棚があった。

「これ、全部読んでいいずらか?」

はなは興奮して声を上げていた。

「読んでもよろしいのですか … と、聞くものですよ」

どこからか返事が返ってきた。

部屋に入った時は気づかなかったのだが、富山が机に座って仕事をしていた。

「読んでも、よ … 」

「もちろん読んでもいいのです … ただし、読めればですけど」


はなは、富山の妙な言い回しまでは気づかずに、喜んで近くにあった本棚から本を一冊手に取った。

頁をめくったはなはまた驚きの声を上げることになる。

「て ~ なんでえ、こりゃ??」

本を棚に返して、別の本を取り出した。

同じだった。

はなが見たこともない文字で書かれた本ばかりだった。

「ここは全部、英語の本です」

はなは富山の顔を見つめた。

「 … エーゴ?」

「明日からの授業について来られるかしら?

… まあ、頑張ってください。

落第して退学になった他の給費生のようにならないように」


富山は、冷めた声でそう言い放つと、サッサと出ていってしまった。

< 『おら、こんなとこでやってけるんだろうか?』

はなは、心の底から不安になりました。

… ごきげんよう、さようなら >

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/8 00:09時点)



連続テレビ小説 花子とアン オリジナル・サウンドトラック

新品価格
¥3,146から
(2014/4/8 00:10時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月06日 (日) | 編集 |
まずは、先週のおさらいを …



それでは、次週の「花子とアン」は?

一回でも落第点を取ったら、学校を辞めてもらいます

東京の修和女学校に編入したはな(山田望叶)は、英語教師の富山(ともさかりえ)に「一度でも落第点を取ったら退学」と告げられ、緊張する。

ごきげんよう

はなは寮母の茂木(浅田美代子)に寄宿舎へ案内され、同室の醍醐(茂内麻結)と意気投合するが、上級生の白鳥(近藤春菜)には言葉遣いや振る舞いを厳しく注意されてしまう。

なんでえ、こりゃ?

やがて校内で大きな図書室を見つけ、大喜びするはなだが、並んでいるのは全て英語の本だった。

翌日からの規律厳しい生活、洋風の食事など、はなには驚き、戸惑うことばかり。

グッドモーニング

とりわけ英語の授業には、全くついて行けない。

さらに校長のブラックバーン(トーディ・クラーク)に口答えし、謹慎を命じられてしまう。落ち込んだはなはホームシックに陥り、甲府の家族に思いを馳せる。

そんな彼女を茂木は優しく見守ろうとするが、富山はあくまで厳しく接するのだった。

ここでやってけそうか?

ある夜、ついにはなは学校から脱走しようとするが、塀ごしに声をかけられる。相手はなんと父・吉平(伊原剛志)だった。久しぶりに再会した吉平に励まされ、ちょっとだけ元気を取り戻すはな。

その時、どこからか美しい英語の歌声が聞こえて来て、はなの心に響く。それは、ある外国人教師の歌声だった…

はなじゃありません、私のことは花子と呼んでください

花子とアン 公式サイト、YAHOO!テレビガイド他を参照)

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/6 13:16時点)



アンのゆりかご―村岡花子の生涯 (新潮文庫)

新品価格
¥810から
(2014/4/6 13:18時点)



Kindle版

アンのゆりかご―村岡花子の生涯―(新潮文庫)



アンを抱きしめて―村岡花子物語

新品価格
¥2,160から
(2014/4/6 13:17時点)



Kindle版

アンを抱きしめて 村岡花子物語


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月05日 (土) | 編集 |
第6回

1903年(明治36年)

< はなは、いつか大好きな本を思いっきり読んでみたいという夢を秘めながら、上の学年に上がりました >

その日、3年の年季奉公が明けた吉太郎が家に帰ってきた。

「吉太郎、元気にしとったけ?!」

ふじも周造も涙ながらに吉太郎を迎えた。

「ああ、死ぬほどこき使われたけどな」

吉太郎は笑いながら答えた。

「兄やん、おみやげは?」

妹たちにせがまれた吉太郎が、羊羹を取り出すと妹たちは大喜びした。

* * * * * * * * * *

夕食には、御祝にささやかだけど小さい焼き魚がおかずについた。

「奉公先じゃ、腹いっぱい食えただけ?」

「いんや、おらが一番年下なもんで、遠慮しろって言われて」

「大変だったな … しっかり食えし」


茶碗山盛りによそってもらったお替りの飯を頬張る吉太郎。

そんな様子を微笑み見ている一同、はなも自分の身代わりに奉公に出た兄が無事に帰って来てくれてうれしかった。

* * * * * * * * * *

一家団欒のところに、行商に出ていた吉平も帰って来た。

「お父、兄やん帰ってきてるさ」

「おお、もう奉公明けただけ?」


しかし、吉太郎は一瞥しただけで何も答えなかった。

「あんた、すまんじゃんね ~ もう、夕飯残ってねえだよ」

ふじは空のお櫃を見せた。

「酒くれ … 」

吉太郎の父に対するわだかまりは消えていなかったのだ。

久しぶりに家族が全員そろったというのに、雰囲気は気まずいものになってしまった。

* * * * * * * * * *

吉太郎が戻ってきたお蔭で家の仕事も大分楽になった。

薪割りなどの力仕事も吉太郎は難なくこなした。

「吉太郎、無事に帰ってきたはええけんど … 婿殿とはやっぱり折り合いが悪いずら?」

庭先で吉太郎の働きっぷりを眺めている周造に隣のリンが尋ねた。

何故、この女は人様の家の事情に詳しいのだろう。

「そうさな … 」

「ふじちゃんは、何であんな変わりもんの亭主と一緒になったずら?

あんなよそもんとくっつかんでも、なんぼでもましなんがいたじゃんね」

「 … よそもんだから、引っかかっちまっただよ」


うしろに茶を運んできたふじが立っていた。

「よそもんだからって、どういうこんで?」

リンは一瞬気まずそうな顔をしたが、好奇心の方が勝ったのか聞き返した。

すると、珍しくふじが吉平との馴れ初めを話はじめた。

「 … もうお彼岸だに、熱い日だったさ」

* * * * * * * * * *

行商でこの土地を訪れた吉平が熱さのせいで、ふじの見ている前で倒れたのがきっかけだった。

そこはブドウ畑を抜ける道で、井戸も川も近くにはない場所だった。

ふじは、咄嗟に実っているブドウの実を絞って果汁を吉平の口に流し込んだのだった。

* * * * * * * * * *

「そもそもほれが大きな間違いのはじまりけえ?」

大笑いするリンにふじも笑いながら話を続けた。

「あの人は、行商でいろんな土地へ行ってるだから ~ 何処へも行った来んねえおらは、初めて聞く話ばっかで … 」

* * * * * * * * * *

それから、暇を見つけては、人目を忍んで逢引きした。

ふじが見たことがない海の話も吉平はしてくれた。

「 … こういう話、退屈じゃ?」

ふじはかぶりを振って、もっと聞かせてくれとせがんだ。

うなずいた吉平は思い出したように小さな木箱を取り出した。

「これ、江戸の職人がこさえた櫛じゃ」

箱の中にはきれいな細工が施された櫛が入っていた。

吉平はそれをふじの髪に挿した。

「ああ、やっぱり、ふじさんによく似合う」

* * * * * * * * * *

「て ~ ほうやって、お父とお母は結婚しただか?」

はなが目をキラキラさせながら近づいてきた。

枝拾いから戻ってきていて、今の話を一部始終聞いていたのだ。

「おやゆび姫と王子様みてえじゃん」

「 … はな、聞いとっただけ?」


ふじは気恥ずかしそうだ。

「ボコに聞かせる話じゃねえずら」

「そうさな … 」


周造は腰を上げ、吉太郎を連れて田んぼに出かけ、リンも帰って行った。

* * * * * * * * * *

「お母がお父を好きになったんは、おらが本を読んでる時の気持ちと同じじゃんけ」

はなは、うれしそうにそう言った。

「ほれ、どんな気持ちで?」

「本を読むと、行ったことねえ場所や、見たことねえ景色が、どんどん頭に浮かんでくるだ。

じっとしていられんほど、ここがドキドキして熱くなる」


両手で胸を押さえたはなのことを、ふじはじっと見つめた。

「はな …

思いっきし、本が読みてえけ?」

「えっ?」

「はな、言ってたじゃんけ ~ うんと本がある家に住みてえって」

「そりゃあ、おらの夢ん中の話だ」


ふじは何か思いつめたような表情になった。

「お母、どうしただ?」

しかし、ふじは答えずに空を見上げた。

* * * * * * * * * *

その夜のことだった。

夕食時、一同が集まった席で、ふじはいきなり周造に切り出した。

「お父やん、お願えがありやす」

訝しげな顔をしている周造に向かって、ふじは両手をついた。

「はなの夢を叶えてやってくりょ。

はなを東京の女学校に行かしてやってくりょ」


そう言って、頭を下げた。

これには、周造だけでなく、はなも驚いた。

「お母 … 」

「どうしただ?」

「ずうっと、考えてただよ、いつかこの子の夢を叶えてやりてえって」


吉平はといえば、黙って、ふじの話を聞いている。

「はなは、家の仕事を手伝ってくれて、自分が遊びてえのも我慢して、妹たちの面倒みてくれて …

本当に本当にいいお姉やんだ」


はなは、目をパチクリさせた。

「これっからは、はなの好きなようにやらしてやりてえだよ!」

* * * * * * * * * *

「吉太郎も奉公から帰ってきたし、この機会に …

はなを東京に行かしてやってくりょ ~ お願えしやす、お父やん!」


涙を流したがら額を床に擦り付けた。

それを見て、吉平も同じように周造に頭を下げたのだった。

「お願えします!」

周造は、茶碗に残っていた飯をかっ込むと母屋を出て行ってしまった。

はなは、頭を下げたままの両親をじっと見つめた。

* * * * * * * * * *

納屋にこもった周造は、わら仕事に勤しみながら、お富士の言葉を思い返していた。

最初は、吉平の差し金かと思ったが、話を聞いてみるとそうでもなさそうだ。

はなの夢を叶えてやりたい … その気持ちはよく分かる。

しかし …

納屋の戸が開いて、顔を覗かせたのは、はなだった。

「はな … 」

するするっと入ってきて、周造の隣にちょこんと座って、はなは言った。

「ずっと、お祖父やんの傍にいるよ」

いつぞや交わした約束をはなは忘れずにいたのだ。

「そうさな ~ 」

はなの頭をなでた周造は、何だか肩の力が、す~っと抜けていくようだった。

「ふんだけど … はなのお母は頑固で、一度言い出したら、絶対に聞かん」

吉平との結婚もそうだった。

「富士山といっしょずら ~ テコでも動かんし、たまには噴火もする。

名前が、ふじだからな」


そう言って、周造は笑いながら、もう1回はなの頭をなでた。

* * * * * * * * * *

次の朝。

周造から納屋に呼ばれたふじが、嬉々として飛び出してきた。

「あんた、お父が許してくれたさ!」

行商に出かけようとしていた吉平と手を取り合って喜んだ。

「はな、よかったな!

これでやっと東京の女学校へ行けるだぞ」


はなはポカ~ンとした顔をして、両親のことを見ている。

「はな、おめでとう」

「 … どうしただ、はな?

もっと、うれしそうな顔しろし


< と、言われても … はなは、まだ実感が湧きませんでした >

* * * * * * * * * *

< そして、尋常小学校の皆にサヨナラを言う日がやってきました >

本多先生に呼ばれたはなは教室の前に出た。

別れのあいさつは、3年前に続いて2度目のことだった。

しかし、今度は奉公のためではない。

「皆も知っての通り、はなは東京の女学校に転校するこんになりました。

今日で最後じゃんね」

「 … 皆さん、いろいろありがとうごんした」


夢を叶えるための旅立ちだった。

「この学校のことも、皆のことも、決して忘れんさ」

教室は静まり返ってしまった。

「 … どうしただ、今日で最後ずら?

何か言えし!」


* * * * * * * * * *

突然、席を立った朝市が自分の机の上に正座した。

その姿を見て、皆は思い出した。

はなが、この教室に初めてやって来た日のことを …

何も知らなかったはなが、先生に言われるがまま、机の上に正座してしまったことを。

「はなのことは、決して忘れんさ!」

隣の席のサトも席を立って、机の上に正座した。

「はなちゃん!」

すると、教室中の皆も我も我もと同じように正座すると、口々にはなに別れの言葉を手向けた。

「さいならだ」

「さいなら、はなちゃん」


はなの胸に熱いものがこみ上げてきた。

つぶらな目から大粒の涙がこぼれてくる。

級友たちも同じだった。

* * * * * * * * * *

「皆 … 皆 … 」

「おまんの言いてえことぐれえ、分かるさ」


武の声だった。

はなが顔を向けると、机の上に正座をした武が得意顔で続けた。

「おらのことは、花子と呼んでくりょう ~ ずら?」

「 … ほうずら」


泣き顔のはなはうなずいた。

「あ、安東 … 」

何か言おうとした本多先生が言葉に詰まった。

見ると顔を手で押さえている。

上を向いて、泣くのを堪えているようだ。

「元気でいろし!」

「さいなら、はなちゃん」


何度も何度も別れの言葉は繰り返された。

はなは深く深くお辞儀をした。

* * * * * * * * * *

皆は校庭の外まで出てきて、学校を去るはなを見送ってくれた。

「はなたれ ~ 」

「はな ~ 」

「さいなら ~ 」


はなは、もう涙は見せなかった。

くるっと前を向くと歩き出した。

< こうして、10歳のはなは故郷を旅立ちました。

曲がり角の先には何が待っているのでしょう?

この続きはまた来週 … ごきげんよう、さようなら >

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/5 21:00時点)



赤毛のアン―赤毛のアン・シリーズ〈1〉 (新潮文庫)

新品価格
¥724から
(2014/4/5 21:01時点)



アンの青春―赤毛のアン・シリーズ〈2〉 (新潮文庫)

新品価格
¥680から
(2014/4/5 21:02時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月04日 (金) | 編集 |
第5回

< まだまだと おもひすごしおるうちに はや、しのみちへ むかふものなり

幼いはなが詠んだ辞世の歌は、はなや安東家の人々の運命を大きく変えることになるのでした >

吉平は、熱に浮かされたはなを背負って、夜の道を病院を目指して走っていた。

「はな、もう少しの辛抱じゃ、頑張るだよ ~

諦めちゃいけん、人間、諦めたら、おしめえだ」


吉平が担ぎ込んだ病院の医師が処方してくれた薬の甲斐もあって、はなの病状はみるみるうちに回復していった。

* * * * * * * * * *

翌日、はなは布団の上に体を起こして、御粥を食べることができるまでになっていた。

「お母、白いお米じゃん」

「うん、ありがてえねえ ~ 吉太郎が奉公へ行ってくれたお蔭じゃん」

「ほうか … はな、うんと食え」


はなが滅多に口にしたことがない、白い米だけの御粥を食べさせてもらっていると、隣の朝市がやって来た。

「はな、熱下がったずらか?」

「あ、朝市」

「元気になってよかったじゃん」


笑顔でうなずいたはなに朝市は野で摘んできた花を差し出した。

しかし何故か、はなはそれを受け取ろうとしない。

「はな、どうしたで?」

「恥ずかしがるこんねえら?」


ふじと吉平はそう言ったが、はなは別に恥ずかしがっている訳ではなかった。

「何べん言ったら分かるずらか?

おらのことは、花子と呼んでくりょう」


はなは、朝市のことをにらんだ。

「お姉やんがまたおかしなこと言ってるじゃんけ」

かよが傍らでももの相手をしながら、あきれている。

「ほうだね ~ 」

「ははは、いい加減にしろし、はなでも花子でも、どっちでもいいら?」


すると、はなは真剣な顔で、今度は吉平のことを見た。

「お父、おらは、面白半分で辞世の歌を詠んだんじゃねえ。

おら、あん時、本当に死ぬ覚悟したんだよ … いっぺん死んで、生まれ変わったも同じだ。

おら、生まれ変わったこの命を大事にするだよ」


子供の戯言と、侮っていた吉平とふじだったが、はなの考えは思いのほかしっかりとしたものだった。

「ふんだからやっぱし、自分の好きな名前を自分で付け直すことにしただよ。

皆、おらのことは … 花子と呼んでくれろ」


とても7歳の子が考えることではない … 周造は笑っているが、吉平とふじは言葉をなくして、はなのことを見つめていた。

「朝市、分かっただけ?」

朝市がうなずくと、はなはニッコリ笑って、やっと花を受け取った。

* * * * * * * * * *

「 … やっぱし、この子はただもんじゃねえ。

天才か? いや、ひょっとしたら、神童かもしれん」


はなの書いた辞世の歌を見直すうちに、吉平はまたとんでもないことを考えていた。

* * * * * * * * * *

数日後、ほぼ全快したはなは、野良仕事に出た周造に弁当を届けに来たついでに手伝い始めた。

「はな、病み上がりずら、無理すんじゃねえぞ」

「花子は平気だ!」

「ははは、何で、はなじゃなくて、花子がそんなにいいだか、祖父やんにはさっぱり分からん」


周造は、理由を尋ねた。

「ほりゃあさ ~ 花子と呼ばれた方が、自分のことをありがたく思えるじゃんけ」

よく理解できずに首をかしげている周造の横に、はなは座った。

「お祖父やんも自分のこと、周造じゃなくて、周右衛門とか、周左衛門だと思ってみろし」

「周左衛門? わしが?」

「ほの方がずっと気持いいだよ ~ 自分のことをありがたく思えるだよ。

おら思う、人も物も名前が大事だ! 名前が変われば、見える景色も変わるだよ。

自分が花子だと思うと … 」


はなは目を閉じた。

「ほ~ら、風の匂いも違うじゃん」

両手を広げて、思いきり息を吸い込んでいるはなのことを周造は微笑みながら見ていた。

「はなは、本当に面白いボコだ。

祖父やんは、はなと居ると退屈しん」

「ふんじゃ、ずっとお祖父やんの傍にいるさ。

… ほれと、はなじゃなくて花子だ」


* * * * * * * * * *

その頃、ふじひとりの安東家に、隣のリンが「はなのことで話がある」とやって来ていた。

「はなちゃんが病気になって、寝込む前の夜だけんど … 朝市が夜中に教会に忍び込んで、捕まっただよ」

「えっ?」


ふじのわらを打つ手が止まった。

「何でも図書室で本が読みたかっただと。

… 朝市を誘ったのは、ひょっとしたら、はなちゃんじゃねえかと思っただよ」


その話を聞いて、ふじにも思い当たることがあった。

そこへ、何も知らないはなが周造と一緒に戻って来た。

* * * * * * * * * *

「はな、おまん、隠してるこんあるら?」

帰るや否や、ふじは、はなを問いただした。

「ずぶ濡れになって帰ってきた時のこんだよ」

母ににらまれて、はなは言葉に詰まってしまった。

「おら … 」

正直に白状しようとしたその時だった、吉平が何と森牧師を連れて帰って来たのだ。

「さあ、牧師様、どうぞ ~ 」

吉平に招かれて家に入った森牧師は、はなの顔を見ると、にっこりと笑った。

「やあ、はなちゃん」

はなは大きく目を見開いた。

『お前は、友達を置いて逃げた卑怯者だ!』

あの高熱でうなされていた晩の恐ろしい夢に出て来た森牧師のことが強烈に脳裏に焼き付いていたのだ。

< はなはパニックに陥っていました。

これから皆の前で牧師様におしおきをされるのでしょうか … >

* * * * * * * * * *

しかし、幸か不幸か、森牧師がやって来た理由は、はなが恐れていたことではなかった。

「 … へえ、これ本当に君が?」

吉平から、はなが書いた辞世の歌を見せられた森牧師は、とても信じられないという顔をした。

「7歳の女の子がこれを詠んだとは … 」

そして、事実だと知るといたく感心してしまった。

「やっぱし、牧師様もほう思うでしょ?」

森牧師からお墨付きをもらったようなものだ、吉平は得意顔で言った。

「私はこれを見て、心に決めたです。

この子は神童じゃ ~ 1日も早くこんな田舎じゃなくて、東京の女学校へ行くべきだと!」


後ろから、ふじがつついたが、吉平は気にも留めずに話し続けた。

「家のもんたちは皆、学問の大事さがこれっぽちも分かっとらんのです。

学のある牧師様から、皆を説得して欲しいんじゃ … どうか、お願えします」


わざわざ森牧師を招いた理由はこのためだった。

「お父、ほのことはもういいって … 」

「いいから、はなは黙ってろし」


* * * * * * * * * *

「 … 本気ですか?」

森牧師は吉平に念を押した。

「お父さんは本気で秀和女学校の寄宿舎にお嬢さんを入れたいと?」

「はいっ、本気です」

「 … そうですか」


そう言ったきり、森牧師は腕を組んで考え込んでしまった。

どこで聞きつけたのか、表に村人たちが集まってきていて、ことの経緯を見守っていた。

「お願えします、娘の将来がかかってるだ」

森牧師の余りにも長い沈黙に少し不安になった吉平は、もう一度頭を下げた。

「では … はっきり言わせてもらいます」

安東家の家族だけでなく、やじ馬たちも息を飲んだ。

「 … 私は反対です」

* * * * * * * * * *

「て ~~ 反対?」

吉平は反対されるとは全く予想していなかったようだ。

「あの女学校にお嬢さんを入れるのは、いくらなんでも無理がある」

「無理?」

「あそこの生徒は、華族や富豪のお嬢様ばかりです。

いくら、はなさんが優秀で学費免除の給費生として入学できたとしても … 華やかなお友達と上手くやっていけるでしょうか?

… 生まれも育ちも、あまりにもかけ離れている」


だから、はなが辛い思いをするのではないかという森牧師の意見を聞いて、吉平は納得がいかなかった。

いつも教会で話していることと違うからだ。

「ほんな ~ 牧師様はおっしゃったじゃねえですか?

神様の前では金落ちも貧乏人もねえ、皆平等だって?!」

「 … そうです。

しかしまた、金持ちと貧乏人がいるのも、厳然たる事実です!」


* * * * * * * * * *

「この際だから、こぴっと婿に言ってやれし!」

一番先頭で見ていたリンが周造を煽った。

リンは元々、女が学問するなんて、ろくなもんにならないという考えを持っていた。

「そうさな …

わしの目の黒いうちは、はなを東京の女学校なんか絶対に行かせん!」

「よしよし、よく言ったじゃんけ!」


それをきっかけに、やじ馬たちが一斉に騒ぎ出した。

「小作のはななんか、華族の女学校なんか行ける訳ねえら」

その中に、はなを目の敵にしている武もいた。

吉平は黙って、はなが辞世の歌を書いた台帳を手に取った。

森牧師の言葉は重く、この話はこれで終わりだった。

ホッとしていいはずの、はなだったが、何故か父の悔しい気持ちが手に取るように分かった。

* * * * * * * * * *

落ち込んだ吉平は、ぷいっと何処かへ出かけてしまって、夜になっても戻らなかった。

周造が納屋に引っ込んで、ふたりきりになるのを待って、はなは、ふじの前に正座して改まった。

「お母 … おらずっと黙ってて、ごめんなさい」

ペコリと頭を下げた。

「ウソついて、ごめんなさい」

もう1回、頭を下げたが、ふじは知らん顔して、わらを編み続けている。

「おら、奉公行く日の前の晩、朝市と教会行っただよ。

教会の人に見つかって、朝市は捕まって、おらは逃げて帰ってきたけんど … 罰が当たったさ。

… 明日、牧師さんに謝ってくる」

「こぴっと、謝ってくるだよ」


こっくりうなずくと、ふじは手を休めて尋ねてきた。

「はな、他にもウソついてねえけ?」

「えっ?」

「おまん、本当は本がいっちょ好きだよね?

女学校行って、好きな本いっぺえ読みてえじゃねえだけ?」


母に本心を見透かされて、はなは慌ててかぶりを振った。

「本なんか嫌えだし、華族のお嬢様が行く女学校なんか、ちっとも行きたくねえ」

「本当け?」


ふじは立ち上がると、棚の上から『おやゆび姫』の本を手にした。

「お母は字読めんから、ここに何書えてあるだか、さっぱり分からん …

ふんだけんど、はながこれを読むと、幸せでいっぱいの気持ちになることだきゃあ分かるだよ。

… おまんの顔が、キラキラするだ」


* * * * * * * * * *

「ご飯を腹いっぺえ食べてる時よりか、キラキラするだから … 分かるだよ。

はな、何でずっと本に触らんで?

そんなはなよりも、キラキラしてるはなの方がいいに決まってるじゃんね」


ふじは、はなに『おやゆび姫』を手渡した。

「お母、おら … 」

はなは口ごもった。

「言ってみろし、遠慮しんで」

「 … 嫌えになろうと思ったけんど、やっぱし上手くいかねえ。

好きなもんは好きだ、本がうんとこさ好きだ!

ほれと、いつか教会の本の部屋みてえな家に住んで、片っ端から本を読んでみてえさ ~

思いっきし、本読みてえ!!」


はなが突然大声を上げたので、寝ぼけたかよが立ち上がって … また寝た。

声を殺して微笑みあう、はなとふじ。

はなは『おやゆび姫』を開いた。

< 嫌いになろうとしたのに、余計大好きになってしまった。

はなにとって本は … まるで、初恋の人みたいですね。

… ごきげんよう、さようなら >

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/4 20:25時点)



『赤毛のアン』と花子: 翻訳者・村岡花子の物語 (ヒューマンノンフィクション)

新品価格
¥1,404から
(2014/4/4 20:26時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月03日 (木) | 編集 |
第4回

教会の図書室に忍び込んでいたのを寅次に見つかってしまった、はなと朝市のふたりは逃げる途中に池に落ちてしまった。

「こら ~ 待て ~ 」

森牧師や寅次の声が聞こえてくる。

はなは朝市の助けも借りて、自力で池から這い上がった。

「朝市、捕まれし」

「おらいいから、早く行け!」


森牧師たちはすぐ近くまで迫って来ていた。

「早く、早く」

朝市は池の中から、そう指示した。

はなは躊躇していたが、うなずくと池を離れて走り去った。

間一髪、寅次が手にしたカンテラで池を照らした。

「居たです!」

池の中で震えている朝市。

「何だ子供じゃないか … 大丈夫か?」

侵入者が子供だったと知って、森牧師は驚いていた。

* * * * * * * * * *

ずぶ濡れのはなが何とか家までたどり着くと、ふじが飛び出してきた。

はなが居ないことに気づいて探しに行こうとしたところだったらしい。

「はな、何処へ行ってたで?!」

* * * * * * * * * *

< 朝市のことが気になりつつも、はなはいよいよ奉公先へと旅立つ時を迎えました >

「お祖父やん、お母、兄やん、かよ、もも … しばしの別れずら」

はなは見送りに出てきた家族に笑ってみせた。

「お姉やん」

ふたつ年下の妹かよがいつもはながしているように、末の妹のももを背負っていた。

「かよ、ももの子守頼むだよ」

うなずく、かよ。

「はな、逃げて帰ってくんじゃねえぞ」

兄の吉太郎の言葉に今度は、はながうなずいた。

「いや、はなは辛抱強えボコだ。

ほんだけんど、辛抱できんぐれえ辛えこんあったら … いつでも帰ってこい」


ふじが、はなの手を取ってそう言った。

泣きはらしたような顔で目は潤んでいた。

「お母 …

大丈夫さ、奉公は3年の約束だ。

3年なんてすぐだ」


はなは周造の方へ向き直った。

「お祖父やん、身体に気ぃつけてくれろし」

「はなも、元気でいろし」


* * * * * * * * * *

「朝市、見送りに来てねえけ ~ どけえへ行っちまっただか、姿が見えんだよ」

見送りに顔を出したリンは朝市を探していた。

「おばさん、朝市まだ帰ってこんだけ?」

「うん」


はなは俯いた … 朝市が心配だった。置き去りにして逃げてきてしまったことを後悔していた。

* * * * * * * * * *

「ちょっくら、ご免なって」

そこへ、徳丸商店の三郎が、はなの奉公先の使者を連れてやって来た。

「花子でごいす、よろしゅうお頼み申します」

はなは使者に向かって頭を下げると、三郎は不機嫌な顔をした。

「 … ほれがまずいこんになっただ。

話が違うて、女のボコじゃ、いらんだと」

「えっ?」


三郎の言葉に一同唖然とした。

「先方は力仕事ができる、男のボコをお望みで」

「ほんな … 」

「ほんじゃ、はなはお役に立たんですね?」


ふじが嬉々として、使者に尋ねた。

「ほうじゃ、男のボコしかいらん」

「そうさな、はなは何処にもいかんで、ずっとここに居ろし」

「ふんだけど … 」


周造もホッとしているようだが、当のはなは困惑していた。

「何ずら、人騒がせな話じゃんけ ~ 餞別の腹巻までやったに」

そう言いながら、リンもうれしそうだ。

* * * * * * * * * *

「ほんじゃあ、前に置いてったこの俵、持ってくわ」

俵を担いで帰りかけた三郎と使者を吉三郎が呼び止めた。

「待ってくりょう、男ならここに居る。

おらが奉公に行くずら」

「吉太郎?!」

「兄やん?!」


呆気にとられている家族に構わず、吉太郎は使者に駆け寄った。

「おらを連れてってくりょう」

「ほりゃあ、だめだ!

兄やんが居んようになったら、お祖父やんもお母も困るやんけ!」


吉太郎を止めて、はなはもう一度使者に向かって頭を下げた。

「おら、力仕事でも何でもしますから、おらを連れてってくれちゃあ!」

「はな、女はいらんちゅうとるじゃんけ、おらが行く」


* * * * * * * * * *

吉太郎は家に入ると、さっさと準備を始めてしまった。

「吉太郎、考え直してくれっちゃあ!」

ふじは必至で思いとどまるように頼んだが、吉太郎の意志は固かった。

「お母が止めても、おらは行く」

「 … どういで?」

「おらは、お父に好かれちゃいん … 」


吉平の何気ない言葉や態度が吉太郎を傷つけていたのだ。

「いつか、このうち出てこうと思ってただよ。

ちょうどいい折じゃんけ」


準備を終えた吉太郎は立ち上がって、皆を見た。

「おらが行けば、米が残る … 冬が越せるじゃんけ」

吉太郎なりに考えた最善の選択だったのだ。

もう誰も何も言えなかった。

「お母、ふんじゃあな … 」

吉太郎は表で待つ三郎と使者の元へと向かった。

「兄やん、兄やん!」

「吉太郎!」


はなとふじの呼ぶ声に吉太郎は振り返って、深々とお辞儀をした。

「 … 気ぃつけて」

母の泣き顔に小さくうなずいた吉太郎は、三郎たちの後について歩き始めた。

「兄やん、兄やん」

泣きながら裸足のまま後を追うはな、ふじはその場に泣き崩れてしまった。

「兄やん!!」

吉太郎は振り向くこともせずに行ってしまった。

* * * * * * * * * *

「おらが奉公先なんか頼まんかったら、兄やんが行くこたぁなかったさ … おらのせいだ」

自分のことを責めるはなに周造は言った。

「ほうじゃねえ、そうさな ~ 貧乏神のせいずら。

汗水たらして働いて、寝る間も惜しんでこうして内職して … ふんでも貧乏なんだから、誰も悪くねえ。

悪いのは、貧乏神ずら」


わら仕事をしている周造の横で膝を抱えて塞ぎ込んだままのはな。

「元気出せ」

はなの頭をなでた周造が顔色を変えて、その手のひらを額に当て直した。

「熱いぞ、はな、熱があるじゃんけ?!」

* * * * * * * * * *

「大変だ ~ はな、熱出しただぞ!」

周造は大慌てで、はなを抱いて、母屋へと駆け込んだ。

「えっ?!

朝、濡れて帰って来たから、風邪ひいたずらか?」


急いで布団を敷くと、はなを寝かせた。

「はな、大丈夫け?」

意識も朦朧としたはな、呼吸も苦しそうだった。

* * * * * * * * * *

夜になり、外は雨が降って来た。

「ああ、また熱が上がったみたいじゃん」

額の上に乗せた濡れた手拭いも高熱のせいですぐに温くなってしまう。

「困ったよ」

< はなは、罰が当たったと思いました。

朝市を置き去りにして、自分だけ逃げて帰って来た罰です >

布団の中から、はなは天井をうつろな目で、ぼんやりと見上げていた。

熱があるせいだろうか、視界が歪んでいる。

ふと、障子がひとりでに開くのが見えて、はなはドキッとした。

その向こう、表をとてつもなく大きな足が地響きを上げながら通り過ぎていった。

はなは息を飲んだ。

次の瞬間、天井に大きな指が差しこまれて、唸り声をあげながら屋根を取り外してしまった。

「牧師様、教会で悪さしたボコが、ここんちに居るずら」

開け放たれた天井から、寅次の巨大な顔が覗き込んでそう言った。

「どうれ?」

同じように森牧師の巨大な顔が、はなのことを見下ろした。

目を見開くはな、あまりにも恐ろしくて声も出ず、身動きもできない。

「ほこのボコ、出てこ ~ 」

「出てこないと、こうだぞ!」


家を左右に揺さぶった。

「きゃ ~ やめてくりょう!」

「お前は友達を置いて逃げた卑怯者だ!」


< 想像の翼は、いつもは、はなを勇気づけてくれますが …

時には、こんな風に恐ろしい幻想の世界に迷い込んでしまうこともあるのです >

* * * * * * * * * *

「ごめんなさい、ごめんなさい … 卑怯もんはおらでごいす。

本の部屋さ行って … おらだけ、逃げちまって … 」


うなされて、苦しそうに、うわ言を口にするはな。

「 … ほんのへや、何ずら?」

「許してくれろし … 助けて、お父 … 」


助けを求めて、天に向かって延ばした腕を、ふじと周造が握りしめた。

「お父は帰ってこんから、祖父やんで我慢しろ!」

「お父、お父 … 」


* * * * * * * * * *

< そのお父は … >

東京にいた。

< 労働者の集会に参加していました >

「 … 我々労働者は過酷な労働を強いられ、生活は一向に改善しない!

労働者の権利を保護する法律を作るべし!

労働者教育の充実を図るべし!」


熱に浮かされた娘が自分を呼んでいることなど、つゆ知らず … 集会に集まった人々と共に拳を振り上げていた。

* * * * * * * * * *

< はなの熱は、ふつか経っても下がりませんでした >

ようやく吉平が戻って来た時、家の前をうろついていたのは朝市だった。

「ようっ、朝市、何しとるんじゃ?」

「あっ、おじさん、大変じゃん … はなが!」


* * * * * * * * * *

「はな ~ !!」

朝市から、はなの容態を聞いた吉平は、慌てて家に飛び込んできた。

「はな、大丈夫け?!」

「あんた、やっと帰ってきただけ … はな、ずっとうわ言で『お父、お父』って言ってるだよ」


ふじは、涙ながらに吉平を責めた。

「はなっ、しっかりしろし!!」

「ああ、お父 … 」


大声で呼びかけると、はなはうっすらと目を開け、吉平の顔を見て力なく笑った。

「はな、お父が悪かっただ。

はなが死ぬほど、辛い思いしてる時に傍にいてやらんで … 心細かったら?」


吉平はボロボロと涙をこぼしていた。

「すまんな ~ こんな、お父 … 許してくれじゃあ!!」

号泣する吉平を見て、かよも不安になったのか、泣きながら、はなのことを呼んだ。

「お姉やん!!」

そんな家族の様子を見て、はなは自分の命が長くはないと思ってしまった。

「 … おら、やっぱし、死ぬだな」

「バカこくでねえ!

死んじゃだめだ … はなはまだまだ生きんきゃだめずら!」


そう声をかけた周造も泣いていた。

「 … まだまだ?」

「ああ、何10年も、まだまだこれっからだ」


* * * * * * * * * *

「お父、書くもんあるけ?」

朦朧とする意識の中で、はなはそんなことを口にした。

「筆と紙をくりょうし」

「どうしただ、無理するんじゃねえ」


ふじがたしなめたが、それでもはなは欲しがった。

「お父、早く、筆と紙 … 」

吉平は、はなに墨を含ませた筆と台帳を渡した。

半分起こした身体をふじに支えられながら、はなが何か書きはじめた。

「こりゃ … 」

はなが書き終えた文字を見た吉平が動揺している。

「何ずら?」

文字が読めないふじたちは、吉平の顔を見た。

「こりゃ、はなの辞世じゃ … 」

一同に驚愕が走った。

「辞世の歌じゃ!」

「 … まだまだと おもひすごしおるうちに はや、しのみちへ むかふものなり はなこ」


詠み終えたと同時に、はなの身体からガクッと力が抜けた。

「はな ~~ !!」

「今までお世話になりやした … ありがとうごいす」


再び布団に横たわったはなは、そう言った後、静かに目を閉じた。

「わあ ~~~ !!」

「はな ~~~~ !!」


吉平とふじの悲鳴のような慟哭。

* * * * * * * * * *

ふと、吉平が顔を上げて尋ねた。

「 … 医者には診しただけ?」

「医者??」


当然診せてはいなかった。

「何で医者に診せんだ?!

… はな、まだ辞世の歌は早え!!」


吉平は、はなを抱きかかえると、脱兎のごとく家を飛び出した。

< この辞世の歌が、はなの運命を大きく変えることになるのでした。

… では、ごきげんよう、さようなら >

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/3 16:14時点)



村岡花子: 「赤毛のアン」の翻訳家、女性にエールを送りつづけた評論家 (KAWADE夢ムック 文藝別冊)

新品価格
¥1,296から
(2014/4/3 16:14時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月02日 (水) | 編集 |
第3回

突然、はなは東京の学校には行きたくない、本も読みたくなくなったと言い出した。

その上、弁当まで要らないと言った。

「 … ったく、はなの奴、どうしたんや?」

はなの心変わりは吉平にしてみれば不可解なことだった。

父の嘆きをわら仕事を手伝いながら聞いていた吉太郎がはなの代わりに自分が東京の学校に行ってやってもいいと口にした。

「吉太郎、おまん何を言うとるんじゃ ~ あそこは女学校じゃ」

吉太郎は女学校の意味さえ分からなかった。

無理もない、勉強が嫌いで尋常小学校さえすぐにやめてしまっていたのだ。

「ほんな奴が東京の学校行って、やっていける訳ねえら!

… ったく長男のくせに張り合いがねえ」


* * * * * * * * * *

< はなと朝市は、あの石盤事件以来、ずっと口を利いていませんでした >

朝市の方は、はなが落としたろう石を拾ってあげたり、何とか仲直りの糸口を作ろうとするのだが、はなは頑なだった。

「はなちゃん、ずっと言おうと思っちょったけんど … 」

そんなある日、学校からの帰り道で、はなはサトからことの真相を知らされた。

「朝市君は悪くないだよ。

おら見ただよ、ももちゃんの髪引っ張ったのは … 」


真犯人の名前を聞いたはなは、朝市に悪いことをしたと後悔したのだった。

* * * * * * * * * *

< 小作料の値上げで、お母たちが困っていることを知ったはなは、ますます一生懸命、家の仕事を手伝うようになりました >

夜なべのわら仕事も、眠い目をこすりながら手伝った。

< 仕事は山ほどあったので、あんなに好きだった学校も休みがちになりました >

その日も学校を休んだはなが川で水を汲んでいると、この前のように本を読みながら朝市が河原を通りかかった。

ふたりはお互いのことに気づいたが、朝市に謝る機会を逸したままだったはなはバツが悪そうに目を伏せてしまった。

天秤棒で担いで、坂道にかかった時、とうに行ってしまったと思った朝市が手を貸してきた。

「 … はな、学校来れんくれえ忙しいだけ?」

心配そうな顔をしてそう尋ねてきた。

はなは立ち止まって、桶を下に置くと、朝市に向かって頭を下げた。

「朝市 … おらが悪かったじゃん。

卑怯もんなんて言っちまって、石盤も壊しちまって … ごめん、許してくりょ」


ようやく素直に謝ることができた。

「はなは怒ると、おっかねえからな」

顔を上げると、朝市は微笑んでいた。

「おっかねえだと?」

はなも笑った。

仲直りができて、ホッとしたのは朝市も同じだった。

「行くじゃん」

ふたりは、一緒に水桶をはなの家まで運んだ。

* * * * * * * * * *

「はな、あんまし学校休むと、せっかく覚えた仮名や漢字忘れちもうら?」

はなは、かぶりを振った。

「大丈夫さ、本なら毎日読んでるだよ。

こうして目つぶると、本でいっぺえの部屋行けるさ」

「 … また夢の話け」

「夢じゃねえさ、こないだ中入っただよ。

村の教会の本の部屋じゃん」


はなは、あのステンドグラスのある図書室を思い浮かべていた。

「 … あんなところに一生住めたら最高じゃんね」

* * * * * * * * * *

ある日、はなは、ふじに言いつかって、家で作った籠や草鞋を納めるために町までやってきた。

問屋を探していると、偶然、使用人の三郎を伴った甚之介と出会った。

「あ、地主様、ちょっくら教えてくれろし ~ 籠の問屋さんはどこずらか?」

道を教えた後、甚之介ははなの顔をまじまじと見た。

「おまん確か、ふじのとこのボコけ?」

「はい、花子でごいす ~ 本当は、はなだけんど、花子と呼んでくりょうし」

「どっちなんずら?」


怪訝な顔をしながら歩き出した甚之介をはなは、もう一度呼び止めた。

「あ、もう1個教えてくれろし。

地主様、おらのようなボコでも、雇ってくれる人は居るずらか?」

「ほりゃあ、ねえ事ねえら」


そう聞いたはなは、荷物を下ろすと、甚之介に頭を下げた。

「ご無心でごいす、口利いてくれろし」

* * * * * * * * * *

< それから、ほどなく、徳丸家の使いがやってきて … >

米俵を担いでやってきた三郎から給金の前払いだと聞いても、ふじにはまったく心当たりがなかった。

「奉公先は長野の材木問屋だ」

「待ってくりょ、奉公って何の話ずら?」

「花子だか、はなとかいうボコに頼まれて、徳丸様が手を尽くしてくださっただ」


ふじと周造は驚愕した。

「本当に、はながお願えしたですか?!」

「ほうさよ、近えうちに迎えのもんが来るずら」

「てっ?!」


* * * * * * * * * *

ふじは血相を変えて、徳丸商店に駆け込んだ。

「徳丸さん、ご無心ですから ~ 奉公の話、なかったことにしてくれろし」

甚之介は不機嫌な顔をしている。

「なんぼ幼なじみのふじちゃんの頼みでも、ほりゃできん」

「ほんなこん言わんで … あの子はまだ、7つじゃんけ」

「うちの武と同じ歳ずら、親元から離すは不憫じゃんね ~

んだけんど、花子だか、はなというボコが自分から頼み込んできただよ」


幼なじみの娘ということもあったのかもしれない、甚之介が無理を言って探し出した奉公先だった。

「何とかしてくれちゃ、この通りずら」

いくら土下座されても聞けないこともあった。

先方が居ることだし、何より自分の面目をつぶされたくはなかった。

「今更、ほんな勝手通る訳ねえら!」

* * * * * * * * * *

結局、はなの奉公は決まり、小学校もやめることになった。

「安東はなさんがお家の都合で学校をやめることになったずら」

教室の前に立って、本多先生からそう説明されると、同級生たちがざわついた。

「はなちゃん、やっぱし東京の女学校へ行くだけ?」

「ううん、違う」


すると、武が立ち上がって得意げにしゃべった。

「奉公に行くずら、うちのお父様が世話してやったじゃん」

自分で決めたことだったが、はなは学校をやめることがつらくて俯いていた。

「はな、身体に気ぃつけて頑張れし」

本多先生の言葉にうなずいたはなは、皆に向かってお別れの挨拶した。

「短い間ですけんど、お世話になりました」

* * * * * * * * * *

はなが奉公に出る前の晩、ふじは泣きながら荷物の用意をしていた。

「すまんね、はな … うちが貧乏なばっかしに」

すると、はなは明るい顔をして答えた。

「お母、ほんな顔しんで … お父が前に言ってたら、奉公に行きゃ、字もそろばんもこぴっと覚えられるって。

ほれ聞いた時から、おらもいつか方向に行きてえと、ずっと思ってただよ」


家族に心配かけないように精一杯健気にふるまうはなが、ふじには不憫でしかたなかった。

そこに隣のリンがやってきた。

「はなちゃん、これ、おばちゃんのお古だけんど、持ってけし … 奉公先で腹こわさんようにね」

餞別を差し出したリンも目に涙を浮かべていた。

「てっ、おばさん、ありがとごいす」

「 … 吉平さんは、こんな時にいねえだけ?」

「行商で東京行ったきりで … 」


もちろん、はなの奉公のことは知らない。

「そうさな … 婿殿は大事な時にいたためしがねえだ」

「こんな時ぐれえ、吉平さんも帰ってくりゃいいだに … 」


その時、開けっ放しになっている戸から、そっと顔を出した朝市が、はなから見えるように合図すると、戸口に葉っぱを置いて姿を消した。

その葉っぱには、『ミナガ ネタラ ムカヘニ ユク』と文字が刻まれていた。

* * * * * * * * * *

夜更けになって、皆が寝静まった頃、カンテラを手にした朝市が忍び足で安東家に近づいてきた。

はなも表で隠れて朝市のことを待っていた。

「朝市、これ何ずら?」

先程の葉っぱを見せて尋ねると、朝市は「しっ」と口の前に人差し指を立てた。

そして、はなについてくるように言うと走り出した。

「朝市、何処へ行くで?」

「はなの一番好きなとこ!」


* * * * * * * * * *

着いた場所は教会だった。

朝市は塀を乗り越え、中へ入って門を開いた。

「はな、こっち」

はなは、言われるがまま、朝市の後に従った。

ふたりは教会の建物の中に忍び込んだ。

* * * * * * * * * *

図書室は、ステンドグラスを通して差し込んでくる月の明かりで幻想的に見えた。

「て ~ はなが言う通り、本が山ほどあるじゃんけ」

朝市も、はなに負けないくらい本が好きだった。

「ほうずら … 」

「奉公に行ったら、本は読めんら ~ 今のうちに思いっきし読んどけし」


はなは、うなずくと、手あたり次第に本を読み始めた。

朝市が、本を持つはなの手元をカンテラで照らしてくれた。

「て ~ 綺麗じゃん」

見たこともないような色彩の羽を持った昆虫の絵だった。

次に開いた本には、外国の街の風景が載っていた。

「これは何ずら?」

目に入るものすべてが珍しくて … はなは夢中になって、次から次へと本を取り出しては開いた。

「おもしれえ、おもしれえじゃん」

面白くて、楽しくて、はなは笑いながら本をめくった。

時間が経つのも忘れて、いつしか本の世界に入り込んでいた。

* * * * * * * * * *

「はな、誰か来る … 逃げよう」

朝市の声で現実の世界に呼び戻された。

耳を澄ますと階段を上がってくる足音が聞こえる。

「早く!」

本棚の陰に隠れて息を殺していると、大きな影が図書室に入って来るのが分かった。

ふたりは隙を見て、階段へ向かって走り出した。

「誰でえ?!」

その物音に気づいて、大きな影は振り向いて叫んだ。

「そこで何をしてるだ?!」

蔭の正体は、教会使徒の合田寅次だ。

「はな!」

ふたりは階段を飛ぶように駆け下りた。

「待てっ!」

後を追おうとした寅次は階段を踏み外して、一気に滑り落ちてしまった。

「えらいこんだ ~ 牧師様 ~ !!」

階段の下で引っくり返ったまま大声で森牧師を呼んだ。

* * * * * * * * * *

窓から逃げ出したふたりは、教会の外へと一目散に走った。

「待て ~ 」

「待ちなさい!」


騒ぎを聞きつけて出て来た森牧師もふたりの背中に向かって叫んだ。

「寅次君!」

森牧師と寅次は急いでふたりの後を追いかけた。

* * * * * * * * * *

はなと朝市は、真っ暗な森の中を走り抜けていた。

捕まったら、えらいことになる … 何か魔物が恐ろしい声を上げながら追いかけてくる、そんな気がして、はなは無我夢中で走った。

その時、木の根っこにつまずいてしまったはなは、そのまま池に転げ落ちてしまった。

「はなっ、捕まれし!」

朝市は精一杯に手を伸ばした。

はなが朝市の手を握った瞬間、支えにつかんでいた枝が折れて、朝市も池に落ちてしまった。

「朝市、大丈夫け?」

「はな … 」


< はなと朝市の運命はいかに?!

… ごきげんよう、さようなら >

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/2 19:17時点)



※おすすめ!

アンを抱きしめて―村岡花子物語

新品価格
¥2,160から
(2014/4/2 19:18時点)


朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
2014年04月01日 (火) | 編集 |
第2回

< はなのお父はとんでもない場所で、とんでもないことを考えていたのでした >

そこは私立修和女学校、ミッション系の名門校だった。

「あの ~ 」

吉平は校内を歩いていたふたりの外国人の女性教師に駆け寄った。

「あの、ちょっくらお尋ねします。

この学校に入るには、どうしたらええでしょうか?」


突然の闖入者に驚いている女教師たちにお構いなく、吉平は話し続けた。

「うちにかしこい娘が居るんです。

女の子だけんど、とびっきりええ教育を受けさせてえんです ~ おねげえします!」


女教師たちは、自国の言葉で、男子禁制だから早く出て行くように伝えたが、吉平に分かるはずもなかった。

「 … ありがとうごいす、お願えします」

* * * * * * * * * *

字が読めるようになったはなは、吉平の土産の『おやゆび姫』の本を片時も離さずに読みふけっていた。

「はなも座れし」

「うん … 」


食事だとふじが呼んでも、薄ら返事するばかりで、なかなか本を読むのをやめないはなを兄の吉太郎がからかった。

「はなは、飯より本の方がいいずらよ ~ 」

自分の分の飯を取り上げられそうになって、慌てたはなは、やっと囲炉裏端に座った。

「いただきます」

* * * * * * * * * *

「帰ったぞ ~ 」

いざ食べ始めようとした時、ここ何日か姿をくらましていた吉平が帰ってきた。

「急いで食え、食ったら皆ででかけるだぞ」

帰る早々何事だと、ふじが尋ねると、町の教会へ行くと言う。

「一家そろって、洗礼を受けるんじゃ!」

「また、お父の気まぐれが始まっただ」

「そうさな … 」


吉太郎と周造は振り向きもせずに黙々と飯を食べている。

「あんた、また今度聞くさ」

ふじもまともに相手はしていない。

「 … ったく、家のもんは皆揃って」

「お父、『せんれい』って何ずら?」


ただひとり、興味を持ったはなが吉平に尋ねた。

* * * * * * * * * *

吉平は食事を済ませたはなを連れて、町にある『阿母里基督教会」へ駆け込んだ。

「牧師様、この子に洗礼をお願えします」

突然のことにこの教会の牧師、森は面食らった顔をした。

「 … 大急ぎで、洗礼を!」

「大急ぎで … またどうして?」

「東京の女学校にこの子を入れてえんじゃ ~ 洗礼を!」


そんなことは、はな自身も初耳だった。

* * * * * * * * * *

「お前のとこの婿さん、西洋かぶれでおかしくなっちまっただけ?」

隣に住んでいる木場リンが、ふじたちが野良仕事している田んぼに顔を出した。

リンは、はなの幼なじみで同級生の朝市の母親だった。

「ここんとこ、町の教会に入り浸っちょるだってね」

「あら、よ~く知っとりますね」


乾燥させたわらをまとめながら、ふじが答えると、リンは胸を張った。

「あら、あたしを誰だと思っとるで?」

「 … 村一番のおしゃべり婆」


ぼそっとつぶやいた吉太郎が、ふじに諌められたが … 事実のことだった。

安東家の騒動にもしょちゅう首を突っ込んでくる。

「リンさん、すまんね ~ 」

「年がら年中、仏頂面こいて、何もしゃべらん爺よりもましじゃんね」


リンはわざと周造に聞こえるように言った。

「ほれと、はなのことだけんど … あのボコは父親に似たずら、困ったもんじゃ ~

女のボコのクセに本や勉強が好きなんて、ろくすっぽなもんにはならん!

本なんか読まんように、母親のおまんがこぴっとしつけんと、えれえこんになるら」


* * * * * * * * * *

教会では、森牧師が吉平から、はなに洗礼を受けさせたい理由を聞き出していた。

「あそこは、キリスト教の学校じゃから、はなに早く洗礼を受けさせんと …

どういでも、はなをあの修和女学校に行かせたいんです … お願いします」


信教のためではないと知って、森牧師はため息をついた。

「お父さんの気持ちは分かりましたが …

あんなに小さいお嬢さんを女学校の寄宿舎に入れるとなれば、ご家族全員の理解と応援が必要です。

よく話し合ってください」


諭すように話す森牧師の言葉に、さすがの吉平も考え込んでしまった。

* * * * * * * * * *

一方、はなは、教会の2階にこっそりと上がっていた。

誘われるように足を踏み入れたその部屋で、はなは信じられない光景を目の当たりにする。

「て ~ 本じゃん」

部屋全体にたくさんの本棚が置かれていて、見たこともないような数の本が並んでいた。

「てっ、全部本じゃんけ!」

中央の大きなステンドグラスからさす光、まるで夢を見ているようだった。

* * * * * * * * * *

「おっ父、てえへんじゃん ~ こんなにうんとこさ本がある」

その声を聞きつけて、吉平も2階へと上がってきた。

「おっ父、この世には、こんなにうんと本があっただけ?」

目をキラキラと輝かせて尋ねたはなに吉平は言った。

「ここは、大事な本ばっかしだから、入って来ちゃ … はな」

「何でえ?」

「東京の女学校へ行ったら、大好きな本がなんぼうでも読めるだぞ」

「本当、どこにあるで?」

「ほんだから、東京じゃ。

毎日、思っきし本が読めるんじゃ ~ ほういう学校に行きてえか?」


はなは元気よくうなずいた。

「ようし、お父に任せとけ!」

* * * * * * * * * *

その晩、夜なべ仕事でわらを編んでいるふじに、吉平は昼間の話を切り出した。

「 … 東京の女学校?

何を夢みてえなこん、言うちょるですか … 」


ふじからは当然のごとく、そんな言葉が返ってきた。

「はなの夢を叶えてやるんじゃ」

「うちの何処に、ほんなお金があるですか?」

「金は一銭もかからん。

キリスト教の学校では金持ちも貧乏人も平等じゃ、貧乏人には特別に給費生っちゅうもんがあるんじゃ」


金銭的な問題だけではなかった。

「西洋かぶれで頭のおかしくなった婿さん … あんた、村の人らにほう言われてるだよ」

憐れむようなふじの顔を見て、吉平は少し傷ついたようだったが、それでも食い下がった。

「何と言われようと、俺はあの子にこぴっとした教育を受けさせてえんじゃ …

俺は小さい頃に奉公に出されて、寺子屋にも学校にも行けなんだ。

奉公先でこき使われながら、苦労して苦労して、読み書きとソロバンを覚えたんじゃ」

「その話は … てっ、何べんも」

「ほんだから、俺は働きづめのあの子が不憫なんじゃ。

親がしてやれる、精一杯のこんをしてやりてえんじゃ」


働きづめなのは吉太郎も同じだとふじから言われた吉平は、突然膝を正して座りなおした。

「一生の頼みだ … あの子を東京の女学校に行かしてやってくれちゃ!

頼む、はなのためじゃ」


* * * * * * * * * *

< あっという間に噂は村中に広まり … >

「はな、東京の学校へ行くって、本当け?」

噂を気にした朝市が、弁当の時間に尋ねてきたが、はなは返事さえしなかった。

「はなちゃん、朝市君が聞いてるじゃん」

隣の席のサトもはなと同じように幼い兄弟を背負って登校して来ていた。

「卑怯もんとは一生口利かん」

授業中にももを泣かせたことは濡れ衣だったが、はなは朝市が犯人だと信じたままだった。

何故か朝市はひと言も弁解しなかったのだ。

「おい、はなたれ」

真犯人の武が、子分を引き連れて、はなの机の前に立ちはだかった。

「おまんのような小作が東京の学校なん行ける訳ねえら!」

無視して弁当をかっこんだはながポロポロと米粒をこぼしたのを見て、武は眉をひそめた。

「こぼすな、行儀悪いら」

< お行儀が悪い訳ではありません。

麦やヒエやアワのお弁当は、箸でつかめません … どうしてもポロポロとこぼれてしまうのです。

全部白い米のお弁当を持たせてもらえるのは、飛び切り裕福な家だけでした >

地主の息子、武には分かるはずもないことだった。

* * * * * * * * * *

そんなある日、武の父親、徳丸甚之介からのお達しがあり、ふじやリンたち小作一同は徳丸商店に集合させられた。

「地主様から話があるだと、何ずらか?」

「ろくな話じゃねえら … 」


ふじとリンがひそひそ話をしていると、奥から如何にも高そうな着物を着た甚之介が現れた。

恰幅がよく偉そうな髭を生やした甚之介が見下ろすと、土間に座っていた小作たちが一斉に頭を下げた。

「小作の衆、聞いてくりょ!」

蔭から見ている武の目には父の姿はまるで殿様のように映っていた。

「さすがずら … おらのお父さんは」

甚之介が何を言い出すのか、一同は固唾を飲んだ。

「生糸相場が落ちて、うちもうんと苦しい。

こうなったら、小作料上げる他ねえだ」


土間がざわめいた。

「 … 今年は、1反あたり米4俵とする!」

一方的な通達だった。

「てっ!」

「4俵?!」

「去年、小作料上がって、また上げられちゃ、食っちゃいけんじゃん」


ざわめきは一段と大きくなった。

「いいな?!」

しかし、誰ひとり逆らうこともできず、首を垂れるしかなかった。

小作にとって、地主の言葉は絶対だったのだ。

* * * * * * * * * *

「 … どうするで」

「本当に食えんくなんな … 」


今夜も夜なべ仕事をしながら、周造とふじは途方に暮れていた。

「隣のリンさんが、吉太郎を奉公に出せちゅうだけんど、あの子がいないと田んぼも畑もやっていけんじゃんね … 」

「そうさな ~

婿殿が行商なんかやめて、地道に田んぼ手伝ってくれりゃあ、どうにか食うだけは食っていけるけんど …

せめて、このわら仕事で稼がんと」

「本当にすまんこんです … お父」


苦労を掛けている年老いた父に詫びることしかできないふじだった。

すると、そこに吉平がほろ酔い加減で帰って来た。

ふじが酒を飲んできたのかと問い質すと、悪びれることなく答えた。

「勝沼行ったら、出来そこないの葡萄酒飲まされたんじゃ、ああ不味かった

周造は無然として、納屋にある自分の寝所に行ってしまった。

* * * * * * * * * *

「あんた、こぴっと聞いてくれっちゃ」

ふじは改まって夫に話し始めた。

「何じゃ、ふじ … おっかねえ顔して」

「また小作料が上がって、今年は4俵納めにゃならんですよ」

「てっ ~ また値上げけ、あの欲張り地主め?!」


大声を張り上げた吉平をふじはたしなめた。

「 … あんたもちっと、考えてくれっちゃ。

家にはたった2俵しか残らんだよ … このまんまじゃ、この冬すら一家7人越せんじゃん」


そんな父母のやりとりを、はるは寝床の中で聞いていた。

* * * * * * * * * *

翌朝、いつものように水汲みから戻って来たはなに吉平は言った。

「そうじゃはな、今日は家の仕事も学校も休め」

「何ででえ?」

「教会の牧師様が特別にあそこの本を読んでいいって言ってくださっただ」


はなは、目をまん丸にした … 思いもかけない、飛び上がりたいような話だった。

「東京の女学校に行く前にいろんな本を読んどかんとな」

しかし、昨夜の父母の話を聞いてしまったはなは素直には喜ぶことができなかった。

「どうした、はな?」

「 … お父、おらは東京の学校なんかいかん」


半ばあきれて吉平の話を聞いていたふじと周造も、はなの言葉を聞いて、思わず仕事の手を止めて振り返った。

「何でや ~ 思いっきし、本が読みてえって、目きらきらさせて言っとったじゃろ?」

「東京の学校なんか、ちっとも行きたくねえ … 本ももういいだよ、ちっとも読みたくなくなったさ。

教会はお父ひとりで行ってくれちゃ」


突然のはなの心変わりに吉平は戸惑っていた。

「ほれから、今日から弁当はいらん」

今度は、ふじが驚いた。

「はな??」

「平気、平気 ~ 」


そう言うと家を飛び出した。

「 … なんじゃ、あいつ?」

* * * * * * * * * *

弁当の時間、はなの姿は教室から消えていた … 後ろの席の朝市は人一倍気になっていた。

ももを背負ったはなは、校庭にいた。

高い空に鰯雲が広がっている。

「もも、見ろし、白い米のおまんまがあんなにいっぺえ」

空を見上げたはなはももに話しかけた。

「 … こうするだよ」

魔法でもかけるかのように両目を閉じた。

しばらくして目を開けたはなには、ぽっかりと空に浮かんでいる雲のおむすびが見えていた。

手を伸ばしてつかむと、それをむしゃむしゃと頬張ったのだった。

「ああ、美味えなあ ~ 」

< はなは、得意の空想の翼を広げて、空腹を忘れようとしていました。

本が思いっきり読めるという女学校のことも忘れてしまおうと思っておりました。

… ごきげんよう、さようなら >

連続テレビ小説 花子とアン Part1 (NHKドラマ・ガイド)

新品価格
¥1,188から
(2014/4/1 20:55時点)



花子とアンへの道: 本が好き、仕事が好き、ひとが好き

新品価格
¥1,512から
(2014/4/1 20:55時点)


 

朝ドラ関連のブログ一覧はこちらです。よろしくお願いします!

にほんブログ村 テレビブログ 朝ドラ・昼ドラへ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。