NHK朝ドラ『花子とアン』『ごちそうさん』『あまちゃん』…ストーリーを勝手に解釈&裏読み … ほぼネタバレ…
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2014年08月08日 (金) | 編集 |
第113回

伝助の口添えで銀行から受けた融資によって、村岡家の庭の一角に出版社兼印刷会社の工房が完成した。

工房といってもささやかなものだが、ここから村岡印刷あらため『青凛社』の新たな一歩がはじまるのだ。

「英治さん、もうちょっと下げて … 右が上がり過ぎてる」

「これぐらい?」


入口に掲げる看板の位置が、なかなか定まらないのを見て、平祐が苛立ち気味に横から口を出した。

「看板ひとつ取り付けるのにいつまでかかってるんだ?」

「なんたって、社の顔ですから!」

「お義父様に相談役になっていただく会社ですから」


花子の言葉で、平祐も目の色を変えて、英治に指示しはじめた。

< たくさんの友人たちの力を借りて青凛社が誕生しました >

ようやく取り付けが完了した看板を見て、花子は満足そうにうなずいた。

「うん、完璧よ!」

一同は万感の思いで真新しい看板を見上げたのだった。

* * * * * * * * * *

その時、会社のために引いた電話のベルがけたたましく鳴り響いた。

「きっと予約の電話よ」

すでに今朝の朝刊に『王子と乞食』の予約受付中の広告を載せていたのだ。

「花子さん、早く出ないと!」

花子は呼吸を落ち着かせて受話器を取った。

「はい、青凛社でございます」

交換手が甲府からの電話だと告げて、電話をつないだ。

「もしもし、はなたれけ?」

緊張感に水を差すような電話の声は武だった。

「はな、会社設立おめでとう!」

いきなり電話の相手が朝市に代わった。

「朝市 … ありがとう」

「ほれにしても、はなたれのくせに新聞に広告出すなんて、生意気じゃんけ」

「武 … 」


コロコロと相手が代わる … たぶん、ふたりで受話器を奪い合っているのだろう。

「はな、『王子と乞食』生徒にも読ましてえから、一冊予約頼むじゃん」

「て … 朝市、ありがとう」

「おうおう、朝市、もう電話代もったいねえからな」


まだ話があるという朝市から受話器を取り上げて、武が電話を切ってしまった。

「切れちまった …

でも、朝市が一冊予約してくれた!」

「そうか、朝市さんが … 」


< とういう訳で、『王子と乞食』の予約第一号は朝市でした >

すると、また電話が鳴った。

「はい、青凛社でございます!」

* * * * * * * * * *

青凛社があつらえた印刷機はほとんど手動式の小型のものだった。

まずは平祐が昔取った杵柄で、機械を操作して、英治に手本を見せた。

一枚、一枚と刷上げていく地道な作業だ。

平祐から引き継いだ英治は刷上った原稿を見ながらインクの量などを調整して試行錯誤を重ねていった。

* * * * * * * * * *

そして、数週間後 …

< 『王子と乞食』の単行本がついに完成しました >

英治の装丁、村岡花子訳と書かれた表紙を花子は愛おしく撫でた。

英治が最後の頁をめくると、発行者村岡英治と青凛社の文字が見えた。

ふたりは微笑みあった。

思い描いていた通りの本に仕上がった。

英治は、最初の一冊を郁弥の遺影の前に供えた。

「郁弥、これからも美しい本を、たくさん作るからな」

感慨深く見つめる平祐の目に光るものがあった。

* * * * * * * * * *

「出来ただね … 」

かよは自分の部屋の文机の上に『王子と乞食』の単行本が置かれていることに気づいた。

そっと表紙をめくると、そこには …

『郁弥の思ひに捧ぐ』と書かれていた。

かよはその文字をそっと指でなぞった。

* * * * * * * * * *

数日後、懐かしい人が花子を訪ねてやって来た。

その日、花子は締め切りが迫った翻訳に追込みをかけていた。

もうすぐ梶原が原稿を受け取りにやって来る時間だ。

「お客さんだよ」

歩を抱いた平祐がそう告げた。

「ああ、もう梶原さんいらしたんですか」

約束の時間より少し早い、花子は焦った。

「すいません、ちょっと待っててもらってください」

「いや、違うよ … 」


* * * * * * * * * *

来客は、ブラックバーン校長と富山タキのふたりだった。

「大変お久しぶりですね。

あなたが卒業して以来かしら?」

「ええ、本当にご無沙汰しております」


花子の目には、富山はあの頃と少しも変わっていないように映って見えた。

「(ブラックバーン校長もお元気そうで … )」

「Thank you.

(秀和女学校でも犠牲者が出て、タキもふさぎこんでいましたが … 今は元気になりました)」


富山が携えていたのは、『王子と乞食』の単行本だった。

「この本のおかげで生徒も私もずいぶん明るくなりました。

… 震災後の唯一の明るい出来事でした」

「富山先生 … 」

「今のは褒めました」


花子は本望だった。

恩師の言葉に目頭を熱くしながらうなずいた。

「Hana.

(人生は進歩です。

最上のものは過去ではなく、将来にあるのです)」

「(その言葉は私のここにあります)」


ブラックバーンの言葉に花子は胸に手を当てた。

「 … (私は生涯、あなたの生徒です)」

* * * * * * * * * *

「花子さん、今度こそ梶原さんだよ」

平祐に案内されて梶原が居間に顔を出した。

「原稿、上がったそうだね」

梶原は富山に気づき、富山は思わず目を伏せた。

「 … ご無沙汰しています」

「こちらこそ … 」


ふたりはお互いにぎこちなく挨拶を交わした。

「今、梶原さんに翻訳のお仕事をいただいているんです」

花子が今日が締め切りだということを伝えると、富山はブラックバーンを促して、帰り支度をはじめてしまった。

「えっ、今いらしたばかりなのに?!」

「では、私たちはこれで … (参りましょう)」


* * * * * * * * * *

慌ただしく村岡家を後にした富山とブラックバーン。

「富山先生!」

後を追いかけて飛び出してきた梶原が富山を呼び止めた。

立ち止まり、ゆっくりと振り返った富山。

「え~と、その … 」 

呼び止めたまではよかったが、言葉に詰まる梶原。

「『ニジイロ』 … 毎号、拝読しておりました」

口を開いたのは富山の方だった。

「そうですか … 」

「新しい号は、もう出さないのですか?」


梶原は心苦しそうに答えた。

「会社が焼けてしまって … 

僕は今、向学館に戻っているんです」


そう言いながら、富山に近づいていった。

「そうでしたか … 」

ふたりの間に沈黙の時間が流れた。

* * * * * * * * * *

「実は震災の時、何故か一番最初に浮かんだのは … どういう訳か … 梶原さんの顔でした」

富山は目に涙を溜め、声が震えていた。

「ご無事でよろしゅうございました」

そして、深々とお辞儀した。

「タキさん … 実は僕も、真っ先にあなたのことを考えました。

あなたもご無事でよかった」


顔を上げた富山は涙をぬぐい、軽く会釈すると、路地の先で待っているブラックバーンの方へ歩き出した。

「あの … 」

梶原は今一度、富山を呼び止めた。

「また、会っていただけますか?」

富山は微笑みうなずくとブラックバーンの後を追っていった。

「ご連絡します」

梶原は喜びをかみしめ、村岡家へ戻っていった。

* * * * * * * * * *

誰もが震災という困難を乗り越えて、少しずつ前へと進み始めていた。

しかし、かよは時間があれば、郁弥の遺影の前に座って、あの日から止まったままで動かない腕時計を眺める日々を送っていた。

郁弥への思慕と、素直になれなかった後悔の念に苛まれて、かよの心は郁弥の時計と同じだった。

そんなある日のことだ。

かよは、雨上がりの陽の光に誘われて庭に出た。

以前に見つけた勿忘草が更に辺り一面を埋め尽くすように花をつけて咲いていた。

思わず目を奪われていると、花子も庭に下りてきて、隣りに並んだ。

「 … 時間は止まっちゃいんだね」

かよはひとり言のようにつぶやいた。

* * * * * * * * * *

「よく似合います … 」

「あの、結婚したら、子供何人ぐらい欲しいですか?

… 僕はいっぱい欲しいですよ」

「かよさん、あなたは僕の女神です … 僕と結婚してください」

* * * * * * * * * *

郁弥との思い出が、笑顔が、声が、かよの脳裏に浮かんでは消えた。

「郁弥さん … ありがとう」

かよの頬をいく筋もの涙が流れた。

* * * * * * * * * *

そんなふたりの様子を縁側から見ている平祐と英治がいた。

「郁弥が好きだった花だ … あんなにたくさん咲くとはな」

「父さんが種をまいたんですか?」


英治に訊ねられて、平祐は無言で微笑んだ。

* * * * * * * * * *

花子は勿忘草の花を一輪手折って、かよの髪に挿して飾った。

「かよ、よく似合う」

かよがふっと肩の力が抜けたように笑った。

「お姉やん … ありがとう」

< 止まっていたかよの時間がまた動き出しました。

… ごきげんよう、さようなら >

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