NHK朝ドラ『花子とアン』『ごちそうさん』『あまちゃん』…ストーリーを勝手に解釈&裏読み … ほぼネタバレ…
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2014年09月06日 (土) | 編集 |
第138回

1941年(昭和16年)12月8日。

ラジオから流れる臨時ニュースに花子と英治は愕然とした。

< 日本は太平洋戦争へと突入したのでした >

それから村岡家には、旭やももの他に近所の人々が大勢詰めかけ、居間のラジオの前で続報を待っていた。

しかし、ラジオ局は軍歌や軍艦マーチをずっと流したままだ。

「『コドモの新聞』の放送はどうなるのかしら?」

花子にとって、そのことも気がかりだった。

「来なくていいって、君に連絡があったから、別の番組をやるんじゃないかな … 」

その時、音楽が止み、チャイムの音が聞こえてきた。

* * * * * * * * * *

「臨時ニュースを申し上げます、臨時ニュースを申し上げます。

帝国海軍は、ハワイ方面のアメリカ艦隊並びに航空兵力に対し、決死の大空襲を敢行し、シンガポールその他をも大爆撃しました」


* * * * * * * * * *

「やったぞ、米英を大爆撃だ!」「こりゃ、勝ち戦だ!」

かよの店ではラジオを聴くために集まった客から歓声が上がり万歳の大合唱が起こった。

「日本軍やりましたね!」

村岡家の居間も同じように歓喜に沸いていた。

「私、やっぱりJOAKへ行ってくるわ」

しかし、『コドモの新聞』のことが気になる花子は、その輪から抜け出してJOAKへと出かけて行った。

* * * * * * * * * *

ラジオ局に着くと、職員たちが慌ただしく局内を行きかっていた。

騒然とした中、花子が会議室を覗くと、軍や情報局の関係者が集まっていた。

テーブルの上には山積みになった資料が置かれている。

「村岡先生、どうなさったんですか?」

花子に気づいた黒沢が廊下の隅に誘導した。

番組のことが気になってやって来たことを伝えた時、漆原が通りかかった。

「これはこれは、村岡先生。

本日はいらっしゃらなくて結構でしたのに」

「漆原部長、今日の『コドモの新聞』の放送はどうなるんでしょう?」

「はは … それならお気になさらず」


その時間帯には内閣情報局からの重要な放送をすることが決定したと黒沢が話した。

「アメリカ、イギリス軍と戦闘状態に入ったということは、非常に勇ましいニュースですから、いらっしゃらなくて結構と申し上げたんです。

これほど重要なニュースを女の声で伝えるのはよろしくありませんから」


いつもながら漆原の言葉の端々には花子を見下している本音が現れていた。

* * * * * * * * * *

そこへ、廊下を厳かに近づいてくる一団があった。

< 先頭をやってくるのは、情報局を取り仕切る偉い役人です >

「皆様、ご苦労様でございます ~ 制作部長の漆原でございます」

情報局情報課長の進藤隆雄に向かって、漆原は米つきバッタのように頭を下げた。

「よろしくお願いします」

漆原は進藤たちを指揮室へと案内した。

* * * * * * * * * *

進藤はそのままスタジオへと入って、マイクの前に座った。

原稿に目を通している進藤に向かって、スタジオ内に控えていた有馬が言葉をかけた。

「僭越ながら …  原稿は抑揚をつけず、淡々とお読みください。

発音、滑舌に特に注意を払ってお読みいただくと、よろしいかと思います」


花子に指示したのと同じことを、情報局のお偉方にも臆面なく伝えたのは、有馬のアナウンサー魂だった。

スタジオは彼の聖域なのだ。

進藤が無言で有馬を見つめると、部下の役人が有馬をスタジオから連れ出した。

指揮室からも追い出されてしまった有馬、そこには中の様子をうかがう花子がいた。

* * * * * * * * * *

村岡家の柱時計はそろそろ6時を指そうとしていた。

「お母様、今日は何のお話しするのかな?」

美里は『コドモの新聞』がはじまるのを楽しみにしていた。

「今日はお母様のお話はないみたいだ」

「えっ、だってお母様ラジオ局へ行ったんでしょ?」


英治は何て答えたらよいのか苦笑いしてしまった。

* * * * * * * * * *

6時の時報の代わりに例のチャイムが鳴り、一同がラジオに聞き耳を立てた。

「国民の方々、ラジオの前にお集まりください!」

聞こえてきたのは、いつものアナウンサーではなく年配の男の勇ましい声だった。

「いよいよその時が来ました … 国民送信軍の時が来ました。

政府と国民ががっちりとひとつになり、一億の国民が互いに手を取り、互いに助け合って進まなければなりません」


* * * * * * * * * *

その声はラジオの電波に乗って、日本全国に届いた。

甲府では徳丸商店に吉平やふじ、朝市たちが集まって、宮本家でも家族全員が揃って、それぞれの思いを胸に、この放送に耳を傾けていた。

* * * * * * * * * *

「政府は放送によりまして、国民の方々に対し、国家の赴くところ、国民の進むべきところをはっきりとお伝えいたします。

国民の方々は、どうぞラジオの前にお集まりください。

放送を通じて、政府の申し上げますることは、政府が全責任を負い、率直に正確に申し上げるものでありますから、必ずこれを信頼してください … 」


* * * * * * * * * *

「あんな雄たけびを上げるかのように原稿を読んで … 」

花子の横で有馬がつぶやくように嘆いた。

「原稿を読む人間が感情を入れてはいけない。

それをあんな一方的に押し付けるような … 」


怒っているような悲しんでいるような有馬の横顔を花子は見た。

「有馬さん … 」

「今日からラジオ放送の在り方は、変わってしまう」


その間も進藤の人を奮い立たせるような熱弁は続いていた。

「 … 国民ひとつになった総進軍しますところ、烏合の衆である敵はいかに大敵でありましても断じて恐れるところはありません!」

* * * * * * * * * *

「素晴らしい放送でした ~ 感動しました」

スタジオから出てきた進藤を漆原は声を裏返して絶賛した。

しかし、役所に戻る彼らを見送るために出てきた廊下で花子の姿を見ると、途端に不機嫌な顔になった。

「まだいたのかね?」

漆原は成り行き上、進藤に花子のことを紹介した。

「こちら、子供向けの番組を担当する村岡花子女史です」

「語り手として子供に大層人気がある先生です」


黒沢が付け加えると進藤が興味を示した。

「国論統一のために、今後一層ラジオ放送は重要になります。

放送を通じて、子供たちをよき少国民へと導くことを期待します」


そう花子に告げて、進藤は帰って行った。

* * * * * * * * * *

花子は … 強張った顔で一点を見つめ、しばらく動かなかった。

そして、ゆっくりとスタジオに目をやり、マイクを見つめた。

じっくりと考えた挙句 … 小さく深呼吸をして、漆原たちを見た。

「あの … 漆原部長、黒沢さん、お話があります」

「どうなさったんですか?」


黒沢が訊ね、漆原は怪訝な顔で花子を見た。

「今日限りで『コドモの新聞』を辞めさせていただきます」

「 … 何故ですか?」

「私の口から戦争のニュースを、子供たちに放送することは出来ません」


花子の言葉に漆原はあきれたように口を開いた。

「村岡先生、たった今、情報局情報課長から、あんなにありがたい言葉を賜ったばかりでしょうが?!」

花子は毅然と返した。

「それで決心がつきました」

* * * * * * * * * *

「村岡先生 … 」

黒沢は絶句した。

漆原は、一瞬、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしたが、気を取り直して花子に告げた。

「いいでしょう ~ お辞めくださって結構です。

ラジオを通じて国民の心をひとつにしようという時に、あなたは … 所詮、『ごきげんようのおばさん』だ!」


労う言葉は言えなくても、罵るのことは忘れなかった漆原だったが、花子はまったく堪えはしなかった。

彼の言う通り、自分が『ごきげんようのおばさん』以上でも以下でもないことを一番望んでいたのは花子自身だったからだ。

* * * * * * * * * *

漆原の後を追うように、黒沢も一礼すると花子の前から立ち去った。

やっとけじめがつけられた花子は清々しいような気分でもあった。

ふと、有馬の視線に気づき、振り返った。

「有馬さん、後をお願いします」

一礼した花子に有馬は言った。

「私は、感情を込めず、正しい発音、滑舌に注意して、一字一句正確に原稿を読み続けます」

誰に対してもその信念を譲らない有馬は尊敬に値するアナウンサーの鏡だと花子は思った。

有馬の厳しさがあったからこそ、素人だった自分が今日まで『ラジオのおばさん』を続けてこれたのだ。

そう思ったら、目頭が熱くなってきた。

「 … お世話になりました」

すると、有馬は一度も見せたことがなかった笑顔で花子のことを労った。

「お疲れ様でした」

有馬もまた花子の潔さに感動していたのだ。

* * * * * * * * * *

「村岡先生 … 

出口に向かう花子を呼び止めたのは黒沢だった。

「これ、持っていらしてください」

黒沢が差し出したのは、番組に花子宛てに届いていた子供たちからの手紙の束だった。

家族でラジオを聴いている絵に『はなこおばさんごきげんよう』と書かれたハガキを目にして花子は思わず微笑んだ。

「 … お考えは変わりませんか?」

黒沢は訊ねたが、ハガキを見ても花子の気持ちは揺るがなかった。

「はい … 」

「そうですか … 残念です」


黒沢の最後の賭けも空振りに終わったのだ。

「申し訳ありません。

9年間、お世話になりました」


思えば、黒沢に出会わなかったら、自分が『ラジオのおばさん』になることはあり得なかったのだ。

そう思うと感慨深かった。

花子は深く頭を下げた後、振り向き歩き出した。

< 日本はとうとう大きな曲がり角を曲がってしまいました。

… ごきげんよう、さようなら >

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