NHK朝ドラ『花子とアン』『ごちそうさん』『あまちゃん』…ストーリーを勝手に解釈&裏読み … ほぼネタバレ…
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2014年09月09日 (火) | 編集 |
第140回

太平洋戦争の開戦後、日本軍の連戦連勝が伝えられ、人々の戦意は高揚していた。

亜矢子は戦地の様子を視察すべく、シンガポールへと出発し、和平活動を模索する龍一は、蓮子にしばしの別れを告げ旅立って行った。

村岡家では、石が投げ込まれ、玄関の戸のガラスが割られるという事件が起きた。

< それぞれが戦争の波に飲み込まれていました >

* * * * * * * * * *

後日、花子はカフェーで、かよに事件のあらましを話した。

「それで、石を投げた犯人を見たの?」

「それが美里と同じ歳ぐらいの男の子だったの、『非国民』って叫んで … 」


そのことで少なからずショックを受けている花子だった。

「きっと軍国少年だね」

店を手伝っているももが言った。

「石を投げられたのは、お姉やんたちにも責任があると思う」

かよの口から出たのは、花子にとって意外な言葉だった。

「え?」

かよは眉をひそめた。

「お姉やん、本当に分かってる?

お姉やんたちがどう見られてるか」

「どうって … 」


花子は困惑していた。

「もも、あの話、お姉やんにちゃんと話した方がいいよ」

かよに促されて、ももは遠慮がちに話しはじめた。

* * * * * * * * * *

「 … お姉やん、美里ちゃんに『ラジオのおばさん』を辞めたのは、戦争のニュースを読みたくないからだって言ったそうね?」

「ええ」

「旭さんも近所の人に訊かれたんだって。

お姉やんはどうして、日本軍の勝利のニュースを読みたくないのか … 日本が負ければいいと思っているのかって」


ももの話を受けて、かよが厳しい顔で花子に言った。

「お姉やんが英語の仕事をしてることは、大勢の人が知ってるし、お姉やんの家に外国人が出入りしていたことも近所の人たちは皆知ってるんだよ。

敵国の言葉が分かって、敵国に知り合いがいるだなんて … 近所の人たちは皆よく思ってないんじゃないかな?」


花子にとって思いもよらぬことだった。

「お姉やんの家には英語の本や敵国のレコードもあるでしょ?

こんな時だし、本当に気をつけないと、もっとひどい目に遭うかも知れないよ」


かよが苦言を呈したのは花子たちの身の安全を思ってのことだった。

しかし、何故か素直にうなずけない花子だった。

* * * * * * * * * *

「いらっしゃいませ」

その時、店に入ってきた客は数名の軍人だった。

「やあ、かよちゃん」

「先日はどうも」


常連らしくにこやかに挨拶した軍人たちをかよは席に案内した。

* * * * * * * * * *

複雑な思いで店を後にした花子の後をかよが追ってきた。

「お姉やん、これで美里ちゃんに甘いものでも作ってあげて」

小さな紙袋を花子に手渡した。

中身を確認した花子は驚いた。

今では手に入りにくくなっている砂糖が入っていたのだ。

「お砂糖なんてどうしたの?」

「うちの店は軍人さんのご用が多いから、いろいろ都合してもらってるの。

甘いもの食べれば、お姉やんも元気になるよ」


まさか受け取ることが出来ないとも言えず、花子は笑顔を作って礼をした。

* * * * * * * * * *

花子が留守の村岡家を訪ねてきたのは吉太郎だった。

割れたガラスの代わりに貼られた新聞紙を見て、吉太郎も石が投げ込まれたことを知った。

「ご心配おかけしてすみません」

「もし、また何かされるようなことがあったら、すぐに報せてください」


英治が花子は直に戻ることを伝えたが、吉太郎は英治に話があって来たと言った。

「失礼ですが、青凛社の方は如何ですか?」

「 … 正直にお話しすると、かなり厳しい状況です」


英治は雑誌も休刊せざるを得なくなり、印刷の受注もなく、近いうちに会社を閉めることになるかもしれない状況を話した。

「差し出がましいようですが、軍関係の印刷の仕事をなさったら如何でしょうか?」

「軍の仕事 … ですか?」


軍の仕事だったら、優先的に紙とインクが配給されるし、自分が便宜をはかれることを仄めかした。

「あの、それは、花子がお願いしたんでしょうか?」

「いいえ、はなは何も … 私の考えです」


吉太郎は苦笑いした。

* * * * * * * * * *

花子が家に戻ると、英治はひとり、工房でぼんやりと本を手に取って眺めていた。

青凛社の原点ともいえる『王子と乞食』の単行本だった。

「英治さん」

声を掛けると、驚いたように振り返った。

「ああ、おかえり花子さん」

「今日ね、かよの店でお砂糖をもらってきたの」


花子はわざと明るい声で英治に話した。

「美里が学校から帰って来たら、久しぶりにお菓子を焼くわね」

「ああ」


笑顔でうなずいた英治に花子は、ついでのように、かよに叱られてしまった話も付け加えた。

本当は割と傷ついていたのだが、英治に悟られまいと、明るく振舞ったのだ。

ところが、花子の方が英治の様子が何処かおかしいことに気づいた。

「英治さん、何かあったの?」

「 … さっき、吉太郎さんがいらして、青凛社で軍の印刷の仕事をしないかって、言ってくれたんだ」

「引き受けたの?」


花子が訊くと、英治はため息をついて首を振った。

「断ってしまった … 」

英治は花子に向き直った。

「青凛社を閉めて、僕も軍需工場に働きに出ようかと思う」

「え?!」

「軍の仕事を受ければ、細々とでも青凛社を続けて行けたかもしれないのに … ごめん、花子さん」


後悔しているというより、花子に対して申し訳ない気持ちがいっぱいの英治だった。

しかし、花子は微笑みながらかぶりを振った。

「断ってくれてよかった」

それは偽らざる本心だった。

「青凛社は女性と子供たちのために作ったんですもの」

「本当にいいんだね?」


英治はホッとしながら訊きかえした。

うなずいた後、花子はなんだか無性にうれしくなってきた。

英治のお蔭で滅入っていた気持ちが一気に晴れていくのが分かった。

* * * * * * * * * *

「ねえ、英治さん … 踊ってくださらない?」

そう言って、英治の前に手を差し出した。

「ええ ~ 踊るって?」

英治は印刷機が置かれて、踊るスペースなどない工房を見渡した。

「レコードはかけられないけれど、ほら … 」

花子は瞼を閉じた。

「こうすれば、いくらでも音楽が聞こえてくるわ」

想像の翼を広げてみせたのだ。

英治も微笑みながら花子の手を取った。

ふたりはお互いの体を近づけ、狭い工房の中でゆっくりと踊りはじめた。

< あらゆるものを禁止されたとしても、想像の翼までは誰も奪うことは出来ませんものね … >

* * * * * * * * * *

1943年(昭和18年)・秋。

< 戦況は坂を転げ落ちるように悪化して行きました >

花子と美里は、家の前に出て、戦死者の遺骨を抱えた遺族が通り過ぎるのを弔意を込めて見送った。

* * * * * * * * * *

一方、蓮子はふたりの子供と共に龍一の帰りを待つ日々を送っていた。

< 家を出た龍一は、短い手紙を寄こすだけで、一度も帰って来ませんでした >

その晩、夕食時に点けていたラジオが、政府が理工理系以外の学生の徴兵猶予の停止を決定したことを伝えた。

「そんな … 」

絶句する蓮子とは対照的に純平は嬉々として立ち上がった。

「お母様、ようやく僕もお国のために戦えるんです。

お母様たちを守るために戦えるんです!」


< 昭和18年12月、大勢の大学生が本を捨て、学徒出陣して行きました >

「安心してください。

必ず命を賭けて、日本を守りますから … 」


純平が出征する日もそう遠からずやってくるのだろう。

* * * * * * * * * *

1944年(昭和19年)・7月。

< その翌年、マリワナ沖海戦で日本軍は大敗。

サイパン島も陥落し、いよいよ本土決戦が叫ばれるようになりました。

食糧をはじめ、あらゆるものが日を追うごとになくなっていました >

軍需工場に出かける英治と学校へ行く美里のために花子が用意する弁当も、おかずが梅干しひとつだけの日の丸弁当が精一杯だった。

それでもふたりは「食べられるだけありがたい」と笑顔で出かけて行った。

* * * * * * * * * *

ふたりを見送っていると、近所の主婦が回覧板を届けにやって来た。

「今日は10時から防空演習ですよ」

「はい」

「夜は灯火管制の見廻りもありますから、光が漏れないようにね」


翻訳の仕事からも久しく離れ、町内会の演習等にも真面目に参加して行くうちに「非国民」呼ばわりされることもなくなっていた。

昼、花子が縁側で干し野菜を作るために、輪切りにした芋などをひもに通していると、頭上を爆音を立てながら飛行機が通り過ぎていった。

花子の脳裏にかつてブラックバーンが話した言葉が思い浮かんだ。

「これからの飛行機の進歩は世界を平和に導くか、戦争をもっと悲惨にするかどちらかです。

我々人類は飛行機をどう使おうとしているのか … 平和か、戦争か」

花子は遠ざかっていく飛行機の影を目で追いながらつぶやいた。

「平和か、戦争か … 」

* * * * * * * * * *

花子が灯火管制に触れないように居間の電燈に黒い布を被せようとしていた時のことだった。

「ごめんください … 醍醐です」

シンガポールに視察に出かけていた亜矢子の声がした。

花子は慌てて、玄関で亜矢子を出迎えた。

「醍醐さん、帰っていらしたのね」

亜矢子がシンガポールから無事に戻ったことを喜んだのも束の間だった。

「醍醐さん?!」

玄関先で佇む亜矢子は青ざめた顔で、花子を見るなり、その目をうるませた。

「はなさん … 」

「醍醐さん、どうしたの?」


< 南方から帰って来た醍醐に一体何があったのでしょうか?

… ごきげんよう、さようなら >

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2014年09月08日 (月) | 編集 |
第139回

< 太平洋戦争の開戦を機に花子は9年間続けた『ラジオのおばさん』を辞めました。

そして、日本とカナダは敵対する関係になったのです。

昭和16年開戦直後、日本中が勝利を確信し、大きな興奮に包まれておりました >

* * * * * * * * * *

「もうラジオでお母様の声を聴くことは出来ないの?」

花子がうなずくと美里は残念そうな顔をした。

「お友達も皆寂しがるわ … 」

「ごめんなさい」


美里は、花子がラジオの仕事を辞めてしまった理由を訊ねた。

「それはね … 戦争のニュースを子供たちに伝えたくなかったから」

「どうして?」

「国と国は戦争になってしまったけれど、敵方の国には、お母様の大切な先生やお友達がたくさんいるの」


花子は懇切丁寧に説明したが、果たして幼い美里に理解できただろうか …

* * * * * * * * * *

1942年(昭和17年)・冬。

< 年が明けてからも、日本軍の連戦連勝は伝えられ、人々の戦意は高揚していました >

ある日、花子は家の前で割烹着にタスキをかけた女性たちの集団同士のいざこざに出くわした。

「一体どういうつもり?」

「そっちこそどういうつもりさ?」


先を急ぐ花子はそのままやり過ごそうとしたのだが、その片方の一団にかよの姿を見つけてしまった。

「かよ、どうしたの?」

「ああ、お姉やん … ちょっと、今忙しいの」


店はももに任せてきたと言った。

* * * * * * * * * *

< おや … いつか、吉原から蓮子の家に逃げてきた雪乃さんじゃありませんか? >

雪乃は、かよがいる一団のリーダー格のようだった。

「あなたたち退きなさい。

ここは私たちがご出征される方をお見送りする場所です」


相手の先頭にいる女性が雪乃たちに向かって命令口調で言った。

どうやら出征兵士を見送る場所の取り合いで揉めているらしい。

「退くもんですか。

私たちはお見送りするために2時間も前からここで待ってたんです」


雪乃は毅然とはねつけると、用意してきた千人針を見せつけた。

「そっちこそ退きなさいよ」

かよたちの仲間のひとりが負けじと言い返した。

* * * * * * * * * *

< この頃、各地の婦人会は統一されていましたが、山の手の奥様達と水商売の女の人たちは仲がいいとは言えませんでした >

「皆さん、白粉塗ってご商売なさってる方がお似合いでしてよ」

「私たちだって日本の女です … お国のために尽くしたいんです。

命を捧げて戦って下さる兵隊さんを思う気持ちは奥様達には負けませんわ」


雪乃の言葉にかよたちはしっかりとうなずいた。

どちらにもそれなりに言い分があり、お互いに決して譲ろうとはしなかった。

約束がある花子は、仕方なくその場を後にした。

* * * * * * * * * *

花子の行く先は、かよの代わりにももが取り仕切っているカフェータイムだった。

亜矢子にこの店に呼び出されたのだ。

「お姉やん、いいところに来てくれた」

ラジオから流れた日本軍優勢の戦況を耳にした客たちが祝杯を上げ始めて、とても、ももひとりでは対応しきれなかったところだった。

援軍扱いされた花子は、亜矢子を待たせて接客の手伝いをするはめになってしまった。

* * * * * * * * * *

「醍醐さん、お待たせしてごめんなさい」

店がようやく落ち着き、花子は亜矢子の元へと腰を据えることができた。

「ううん、商売繁盛で何よりね … 今日は、かよさんは?」

「ああ、婦人会で忙しいみたいなの」

「すごく熱心にやってるんです。

… こんな自分でも、お国の役に立ててうれしいって言ってました」


ももの話を聞いて、亜矢子はかよのことを褒めていたが、花子は曖昧に相槌を打つことしかできなかった。

* * * * * * * * * *

「醍醐さん、今日は何か大事な話があるって?」

「ええ、はなさん … 」


亜矢子は改まって花子の方に向き直った。

「私、シンガポールに行くことにしたわ」

「ええっ?!」

「長谷部先生にペン部隊のことお願いしていたけど、なかなかお返事をいただけなくて …

もう待ちきれなくて、貿易会社をしている父のツテで出発することにしたの」


いつもながら、亜矢子の行動力には驚かされる花子だった。

「大丈夫なの?

ひとりで南方に行くなんて … 」

「実は昨夜、吉太郎さんにもご報告をしたの」


* * * * * * * * * *

「シンガポール?!

フィリピンより情勢は安定していますが、危険です … 考え直してください」

「吉太郎さんは軍人として懸命にお働きです … この戦時下、私も無為に過ごしてはいられません。

それに、戦地の様子を見たら、銃後の人々に何か役立つ記事を書けるかも知れません」

吉太郎は必死に止めたが、亜矢子の決意は変わらなかった。

「あなたの決意は固いんですね … 」

「はい」

「 … では、くれぐれもお気をつけて。

無事に帰ってきてください」

あきらめて、そう言って亜矢子を送り出したのだった。

* * * * * * * * * *

「 … いつお立ちになるの?」

「今夜の汽車で神戸へ向かって、それから船で」


あまりにも急な話だった。

念願がかなった亜矢子は満足げに笑っているが、花子は不安いっぱいで彼女の顔を見つめた

* * * * * * * * * *

< そして、ここにもひとり、旅立とうとしている者がおりました >

旅支度を整えた龍一は、去年他界した浪子の遺影に手を合わせていた。

その後、純平の部屋の襖を静かに開けて、眠っている息子に向かってささやいた。

「純平、お母様と富士子を頼む」

* * * * * * * * * *

居間を覗くと、蓮子が縫物をしていた。

「君が靴下を繕ってくれるとはね … 」

「亡くなったお義母様に針仕事もちゃんと教えていただきました」


厳しかったが、蓮子にとって浪子はいい姑であった。

浪子にしつけられたお蔭で、一家の主婦として暮らしていく術を身につけたのだ。

「さあ、これも持っていってください」

蓮子は繕い終えた靴下を龍一に手渡した。

「ありがとう … じゃあ、そろそろ行くよ」

「遠くに行かれるんですね?

… お帰りは?」

「今度は長くなるかもしれない。

半年か、一年 … 」


龍一自身にも確かなことは分からないのだ。

「とにかくこの戦争を、一日も早く終わらせなければ … 」

悲痛な顔の蓮子は無言で一点を見つめていた。

* * * * * * * * * *

「待って、あなた」

玄関で靴を履き終えた龍一は蓮子に呼び止められて振り返った。

「 … 転ばないように気をつけて」

その言葉に強張っていた龍一の頬が緩み、微笑みに変わった。

ふたりが出会った頃、何故かよく転んだことを思い出したのだ。

「ああ」

心細さに押しつぶされそうな気持ちを必死に隠しながら、蓮子は夜道に消えていく龍一の背中を見送った。

* * * * * * * * * *

青凛社はめっきり仕事が減り、工房の印刷機も止まったままになっていた。

「さっさと日本が勝ってくれればいいですね。

そうすれば、また元通り本が作れるのに … 」


旭は知人からの紹介で軍需工場に働きに出ることを決めた。

* * * * * * * * * *

「そう、旭さん、軍需工場に … 」

花子に旭のことを伝えながら、英治は顔を曇らせた。

「うん、これだけ仕事の注文がないと、僕も考えないとな」

「大丈夫よ、私も頑張って働くから」


そう言って英治を慰めた花子自身も翻訳の仕事が全くなかった。

「でも大丈夫、なんとかなるわ」

花子の前向きな思考に英治は思わず笑顔になった。

「君はいつも明るくていいな」

「気持ちぐらい明るくしなくちゃ」


美里が点けたラジオから、有馬が読む『コドモの新聞』が聞こえてきた。

「小国民の皆さん、こんばんわ」

美里と並んで座って、ももの次女の直子も一緒にラジオに耳を傾けていた。

* * * * * * * * * *

「帝国陸海軍は東亜の各地で連戦連勝を続けています … 」

「今日も戦争のニュースばっかりね」


美里はラジオを消すと英治にレコードをかけるようせがんできた。

「よし、じゃあ聴こうか」

英治が蓄音機のレコードに針を落としたその時だった。

玄関の方からガラスが割れる音が聞こえた。

「非国民!」

それは、子供の声だった。

玄関へ行くと、投げ込まれた石と割れたガラスが散乱していた。

英治は慌てて外へ飛び出した。

「待ちなさい!」

しかし、犯人たちは逃げながら、もう一度「非国民」と叫ぶと路地を走って曲がり角へと消えた。

* * * * * * * * * *

「お母様、怖い!」

花子は怯えている美里と直子を庇うように抱きしめていた。

「大丈夫よ、大丈夫だからね」

泣きじゃくる娘たちを必死に宥める花子だった。

< 村岡家に石を投げたのは、まだ幼さの残る少年たちでした。

… ごきげんよう、さようなら >

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2014年09月07日 (日) | 編集 |
さて、次週の「花子とアン」は?

美里(三木理紗子)から、なぜラジオの仕事を辞めたのかと聞かれた花子(吉高由里子)は、敵方の国には大切な友人たちがいるから、戦争のニュースを子どもたちに伝えることはできないと話す。

日米開戦直後は日本軍の連戦連勝が伝えられ、人々は勝利を信じて高揚していた。

シンガポール、危険です、考え直してください

醍醐(高梨臨)は戦地の様子を視察すべく、シンガポールへと出発する。

バンサイ、バンザイ

かよ(黒木華)は雪乃(壇蜜)に誘われる形で婦人会に加わり、出征兵士の見送りなど“銃後”の活動にいそしむようになる。

和平活動を模索する龍一(中島歩)は、蓮子(仲間由紀恵)にしばしの別れを告げ旅立ってゆく。

非国民!

村岡家では、石が投げ込まれるという事件が起きる。花子はもも(土屋太鳳)からも、旭(金井勇太)が花子の仕事のことで近所の人からなじられたと聞き、自分が英語に関わる仕事をしているという理由で「非国民」のように扱われることにショックを受ける。

そんな折り、吉太郎(賀来賢人)が英治(鈴木亮平)に、仕事が激変している青凛社に軍関係の仕事をあっせんしようと持ちかけるが …

お父は何も分かってない!

戦況は悪化してゆき、昭和19年、本土空襲の危険がささやかれる中、甲府の吉平(伊原剛志)が村岡家を訪れる。花子たちに疎開を勧めに来たのだ。

母のことが心配です

一方、陸軍に入って訓練を受けていた純平(大和田健介)が、特別休暇をもらって1年ぶりに宮本家へ帰って来た。

今の私には命よりも大切なもの …

花子とアン 公式サイト、YAHOO!テレビガイド他を参照)

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2014年09月06日 (土) | 編集 |
第138回

1941年(昭和16年)12月8日。

ラジオから流れる臨時ニュースに花子と英治は愕然とした。

< 日本は太平洋戦争へと突入したのでした >

それから村岡家には、旭やももの他に近所の人々が大勢詰めかけ、居間のラジオの前で続報を待っていた。

しかし、ラジオ局は軍歌や軍艦マーチをずっと流したままだ。

「『コドモの新聞』の放送はどうなるのかしら?」

花子にとって、そのことも気がかりだった。

「来なくていいって、君に連絡があったから、別の番組をやるんじゃないかな … 」

その時、音楽が止み、チャイムの音が聞こえてきた。

* * * * * * * * * *

「臨時ニュースを申し上げます、臨時ニュースを申し上げます。

帝国海軍は、ハワイ方面のアメリカ艦隊並びに航空兵力に対し、決死の大空襲を敢行し、シンガポールその他をも大爆撃しました」


* * * * * * * * * *

「やったぞ、米英を大爆撃だ!」「こりゃ、勝ち戦だ!」

かよの店ではラジオを聴くために集まった客から歓声が上がり万歳の大合唱が起こった。

「日本軍やりましたね!」

村岡家の居間も同じように歓喜に沸いていた。

「私、やっぱりJOAKへ行ってくるわ」

しかし、『コドモの新聞』のことが気になる花子は、その輪から抜け出してJOAKへと出かけて行った。

* * * * * * * * * *

ラジオ局に着くと、職員たちが慌ただしく局内を行きかっていた。

騒然とした中、花子が会議室を覗くと、軍や情報局の関係者が集まっていた。

テーブルの上には山積みになった資料が置かれている。

「村岡先生、どうなさったんですか?」

花子に気づいた黒沢が廊下の隅に誘導した。

番組のことが気になってやって来たことを伝えた時、漆原が通りかかった。

「これはこれは、村岡先生。

本日はいらっしゃらなくて結構でしたのに」

「漆原部長、今日の『コドモの新聞』の放送はどうなるんでしょう?」

「はは … それならお気になさらず」


その時間帯には内閣情報局からの重要な放送をすることが決定したと黒沢が話した。

「アメリカ、イギリス軍と戦闘状態に入ったということは、非常に勇ましいニュースですから、いらっしゃらなくて結構と申し上げたんです。

これほど重要なニュースを女の声で伝えるのはよろしくありませんから」


いつもながら漆原の言葉の端々には花子を見下している本音が現れていた。

* * * * * * * * * *

そこへ、廊下を厳かに近づいてくる一団があった。

< 先頭をやってくるのは、情報局を取り仕切る偉い役人です >

「皆様、ご苦労様でございます ~ 制作部長の漆原でございます」

情報局情報課長の進藤隆雄に向かって、漆原は米つきバッタのように頭を下げた。

「よろしくお願いします」

漆原は進藤たちを指揮室へと案内した。

* * * * * * * * * *

進藤はそのままスタジオへと入って、マイクの前に座った。

原稿に目を通している進藤に向かって、スタジオ内に控えていた有馬が言葉をかけた。

「僭越ながら …  原稿は抑揚をつけず、淡々とお読みください。

発音、滑舌に特に注意を払ってお読みいただくと、よろしいかと思います」


花子に指示したのと同じことを、情報局のお偉方にも臆面なく伝えたのは、有馬のアナウンサー魂だった。

スタジオは彼の聖域なのだ。

進藤が無言で有馬を見つめると、部下の役人が有馬をスタジオから連れ出した。

指揮室からも追い出されてしまった有馬、そこには中の様子をうかがう花子がいた。

* * * * * * * * * *

村岡家の柱時計はそろそろ6時を指そうとしていた。

「お母様、今日は何のお話しするのかな?」

美里は『コドモの新聞』がはじまるのを楽しみにしていた。

「今日はお母様のお話はないみたいだ」

「えっ、だってお母様ラジオ局へ行ったんでしょ?」


英治は何て答えたらよいのか苦笑いしてしまった。

* * * * * * * * * *

6時の時報の代わりに例のチャイムが鳴り、一同がラジオに聞き耳を立てた。

「国民の方々、ラジオの前にお集まりください!」

聞こえてきたのは、いつものアナウンサーではなく年配の男の勇ましい声だった。

「いよいよその時が来ました … 国民送信軍の時が来ました。

政府と国民ががっちりとひとつになり、一億の国民が互いに手を取り、互いに助け合って進まなければなりません」


* * * * * * * * * *

その声はラジオの電波に乗って、日本全国に届いた。

甲府では徳丸商店に吉平やふじ、朝市たちが集まって、宮本家でも家族全員が揃って、それぞれの思いを胸に、この放送に耳を傾けていた。

* * * * * * * * * *

「政府は放送によりまして、国民の方々に対し、国家の赴くところ、国民の進むべきところをはっきりとお伝えいたします。

国民の方々は、どうぞラジオの前にお集まりください。

放送を通じて、政府の申し上げますることは、政府が全責任を負い、率直に正確に申し上げるものでありますから、必ずこれを信頼してください … 」


* * * * * * * * * *

「あんな雄たけびを上げるかのように原稿を読んで … 」

花子の横で有馬がつぶやくように嘆いた。

「原稿を読む人間が感情を入れてはいけない。

それをあんな一方的に押し付けるような … 」


怒っているような悲しんでいるような有馬の横顔を花子は見た。

「有馬さん … 」

「今日からラジオ放送の在り方は、変わってしまう」


その間も進藤の人を奮い立たせるような熱弁は続いていた。

「 … 国民ひとつになった総進軍しますところ、烏合の衆である敵はいかに大敵でありましても断じて恐れるところはありません!」

* * * * * * * * * *

「素晴らしい放送でした ~ 感動しました」

スタジオから出てきた進藤を漆原は声を裏返して絶賛した。

しかし、役所に戻る彼らを見送るために出てきた廊下で花子の姿を見ると、途端に不機嫌な顔になった。

「まだいたのかね?」

漆原は成り行き上、進藤に花子のことを紹介した。

「こちら、子供向けの番組を担当する村岡花子女史です」

「語り手として子供に大層人気がある先生です」


黒沢が付け加えると進藤が興味を示した。

「国論統一のために、今後一層ラジオ放送は重要になります。

放送を通じて、子供たちをよき少国民へと導くことを期待します」


そう花子に告げて、進藤は帰って行った。

* * * * * * * * * *

花子は … 強張った顔で一点を見つめ、しばらく動かなかった。

そして、ゆっくりとスタジオに目をやり、マイクを見つめた。

じっくりと考えた挙句 … 小さく深呼吸をして、漆原たちを見た。

「あの … 漆原部長、黒沢さん、お話があります」

「どうなさったんですか?」


黒沢が訊ね、漆原は怪訝な顔で花子を見た。

「今日限りで『コドモの新聞』を辞めさせていただきます」

「 … 何故ですか?」

「私の口から戦争のニュースを、子供たちに放送することは出来ません」


花子の言葉に漆原はあきれたように口を開いた。

「村岡先生、たった今、情報局情報課長から、あんなにありがたい言葉を賜ったばかりでしょうが?!」

花子は毅然と返した。

「それで決心がつきました」

* * * * * * * * * *

「村岡先生 … 」

黒沢は絶句した。

漆原は、一瞬、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしたが、気を取り直して花子に告げた。

「いいでしょう ~ お辞めくださって結構です。

ラジオを通じて国民の心をひとつにしようという時に、あなたは … 所詮、『ごきげんようのおばさん』だ!」


労う言葉は言えなくても、罵るのことは忘れなかった漆原だったが、花子はまったく堪えはしなかった。

彼の言う通り、自分が『ごきげんようのおばさん』以上でも以下でもないことを一番望んでいたのは花子自身だったからだ。

* * * * * * * * * *

漆原の後を追うように、黒沢も一礼すると花子の前から立ち去った。

やっとけじめがつけられた花子は清々しいような気分でもあった。

ふと、有馬の視線に気づき、振り返った。

「有馬さん、後をお願いします」

一礼した花子に有馬は言った。

「私は、感情を込めず、正しい発音、滑舌に注意して、一字一句正確に原稿を読み続けます」

誰に対してもその信念を譲らない有馬は尊敬に値するアナウンサーの鏡だと花子は思った。

有馬の厳しさがあったからこそ、素人だった自分が今日まで『ラジオのおばさん』を続けてこれたのだ。

そう思ったら、目頭が熱くなってきた。

「 … お世話になりました」

すると、有馬は一度も見せたことがなかった笑顔で花子のことを労った。

「お疲れ様でした」

有馬もまた花子の潔さに感動していたのだ。

* * * * * * * * * *

「村岡先生 … 

出口に向かう花子を呼び止めたのは黒沢だった。

「これ、持っていらしてください」

黒沢が差し出したのは、番組に花子宛てに届いていた子供たちからの手紙の束だった。

家族でラジオを聴いている絵に『はなこおばさんごきげんよう』と書かれたハガキを目にして花子は思わず微笑んだ。

「 … お考えは変わりませんか?」

黒沢は訊ねたが、ハガキを見ても花子の気持ちは揺るがなかった。

「はい … 」

「そうですか … 残念です」


黒沢の最後の賭けも空振りに終わったのだ。

「申し訳ありません。

9年間、お世話になりました」


思えば、黒沢に出会わなかったら、自分が『ラジオのおばさん』になることはあり得なかったのだ。

そう思うと感慨深かった。

花子は深く頭を下げた後、振り向き歩き出した。

< 日本はとうとう大きな曲がり角を曲がってしまいました。

… ごきげんよう、さようなら >

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2014年09月05日 (金) | 編集 |
第137回

1939年(昭和14年)・10月。

< 9月に第二次世界大戦がはじまり、いよいよスコット先生もカナダに帰国することを決意しました >

「(あなたに渡したい本があります)」

別れを告げに村岡家を訪れたスコットは花子に一冊の本を手渡した。

『ANNE OF GREEN GABLES 』

… 本の題名だった。

< 花子はついに、あの本に出合いました! >

* * * * * * * * * *

「(ルーシー・モンゴメリというカナダの作家の作品です。

日本に居る間、この本が心の友でした)」

「(そんな大切な本、いただけません)」


花子は慌てて手にしていた本をスコットに返した。

しかし、スコットは改めて言った。

「(あなたに持っていてほしい。

… 私たちの友情の記念に)」

「友情の記念?」


* * * * * * * * * *

「お母ちゃま、何のお話してるの?」

縁側で絵本を読んでいた美里が居間に入ってきて花子の横にちょこんと座った。

「スコット先生がね、この大切なご本をくださるとおっしゃってるの」

「何ていうご本?」

「『ANNE OF GREEN GABLES』

… そのまま訳すと、『緑の切妻屋根のアン』ね」

「どんなお話なの?」

「お母ちゃまもまだ読んだことがないから分からないわ」


すると、美里は興味津々と本をめくりはじめた。

* * * * * * * * * *

「(あなたの小さい頃を思い出しますね)」

スコットの言葉を花子が伝えると、美里はうれしそうに笑った。

「お母ちゃまも美里ぐらいの時、英語が大っ嫌いだったの」

「て ~ お姉やんが英語大っ嫌いだったなんて、信じられない」


ちょうどお茶を運んできたももが意外という顔で花子を見た。

「秀和に入ったばかりの頃、皆が何をしゃべっているかちっとも分からなかったんだもん」

花子は思い出した。

英語を好きになるきっかけを与えてくれたのは他ならぬスコットだったことを。

「スコット先生のお歌を聴いたら、はじめて英語が心に優しく響いてきたの」

* * * * * * * * * *

花子はスコットに彼女の歌う『The Water Is Wide』が大好きだったことを伝えた。

「お母ちゃま、歌ってみて」

突然、美里がねだると、ももまでが聞いてみたいと言い出した。

「 … (スコット先生、一緒に歌ってください)」

スコットは快くうなずいた。

♪ The water is wide, I can-not get o'er.
And neither have I wings to fly
.give me a boat that can carry two,
And both shall row, my love and I.

(この海は広すぎて 私には渡れません

大空を舞う羽もありません

どうか ふたりが乗れる小舟をください

ふたりで漕いでゆきます 愛する人と私で … )

* * * * * * * * * *

仕事を終えて工房から引き揚げてきていた英治と旭も居間の前で聞いていて、美里やももたちと一緒に拍手をした。

「素敵な歌だね ~ 」

旭が歌の意味を訊ねてきた。

「この歌は別れた恋人への気持ちを歌った歌なの」

悲しい歌だということを一同は知った。

「(あの頃はカナダに居た恋人を思って歌っていた。

その彼も … 先の大戦で戦死しました)」


スコットは目を伏せ、恋人の写真が納めた首から下げたロケットを握りしめた。

* * * * * * * * * *

「(ありがとう、はな。

最後にとても素敵なオモイデが出来ました)」


見送りに出た花子にスコットは礼を述べた。

「(こちらこそ … )」

「はな … (いつかきっと平和が訪れます。

その時、あなたの手でこの本を日本の少女たちに … )」


花子は手に持っていた『ANNE OF GREEN GABLES 』 に目をやり、スコットに誓った。

「(約束します。

平和が訪れたら … この本を翻訳して、たくさんの人に読んでもらいます)」


スコットは胸に込み上げてくるものを抑え、花子の手を握った。

「(ありがとう … さようなら、はな)」

「(またお会いしましょう)」


笑顔でうなずいたスコットは最後に言った。

「ごきげんよう」

「 … ごきげんよう」


< 日本が戦争へと向かう中、日本とカナダをつなぐ大切な一冊が花子の手に託されたのでした >

* * * * * * * * * *

スコットが帰った後、花子は早速、書斎の机に着くと『ANNE OF GREEN GABLES 』の表紙を開いた。

< それは、カナダのプリンスエドワード島という小さな島を舞台にした物語でした。

そばかすだらけの痩せっぽっちな、ニンジンのように赤い髪の少女、アン・シャーリーが人々と心を通い合わせていう様子が活き活きと描かれています。

花子はみるみる夢中になりました >

夜になり、美里が眠りにつく時間になっても、花子は書斎からは出てはこなかった。

英治がそっと覗くと、スタンドの灯りの下、本の虜になっている花子がいた。

* * * * * * * * * *

「 … 『おお、ダイアナ』

やっとの思いでアンは言った。

『ねえ、私のこと、少しばかり好きになれると思って?

私の … 』」

『my bosom friend?』


花子はその一文を指でなぞった。

「親しい友 … 私の親友になってくれて?」

親友 …

花子はふと、本から目を離して顔を上げた。

「 … 私は時代の波に平伏したりしない」

あの日の蓮子の顔が脳裏をよぎった。

「世の中が何処へ向かおうと、言いたいことを言う … 書きたいことを書くわ」

* * * * * * * * * *

秀和女学校時代の蓮子との思い出が次から次に浮かんできた。

「蓮様 … 」

花子が目をやったのは、懐かしい栞だった。

そっと手に取る。

蓮子の字で、『翻訳者・安東花子、歌人・白蓮』と記してある。

* * * * * * * * * *

花子は栞を傍らに置くと、本に視線を戻した。

< スコット先生から託されたこの本を日本の少女たちに送り出すことが出来る日を心から願う花子でした >

* * * * * * * * * *

1941年(昭和16年)・冬。

< けれども … 2年過ぎても、中国との戦争は終わる気配はありませんでした >

村岡家の近所からも何人もの若者が戦地へと出征して行き、花子たちもそれを見送った。

* * * * * * * * * *

そんなある日の早朝のことだった。

けたたましく鳴る電話のベルに花子たちは目を覚まされた。

「こんな朝早くに誰だろう?」

花子が電話に出ると、受話器の向こうからは黒沢の声がした。

「朝早くに申し訳ございません。

今週は村岡先生に台頭していただく予定だったのですが … 今日は村岡先生にはお休みしていただくことになりましたので、お電話しました」


辺りが何やら騒々しい … 緊迫した声で黒沢は伝えた。

「どうしてですか?」

「大変重要なニュースがありまして … 」


花子の疑問に黒沢はそれだけしか答えなかった。

「黒沢君、皆様がいらっしゃったぞ」

後方から漆原の声が聞こえた。

現場だけでなく、重役の漆原までこんな朝早くから出社しているとは、相当重要なニュースのようだ。

「急なことで申し訳ございませんが、今日はお休みいただき、明日改めてお越しください」

そう言って、黒沢の電話は切れた。

* * * * * * * * * *

ラジオ局にやって来たのは、軍人および情報局の役人たちだった。

「こちらでございます」

漆原が一同を指揮室に丁重に案内した。

スタジオの中ではすでに準備を整えた有馬がマイクの前に座って待機していた。

有馬はいつになく緊張した面持ちで礼をした。

コップの水を飲み、原稿を確認する彼の額に脂汗が滲んでいる。

こんなことは珍しいことだった。

有馬がゴクリと喉を鳴らした。

* * * * * * * * * *

「新聞にはそれほど重大なニュースは出てないな」

英治が届いたばかりの朝刊を見ながら首を傾げた。

「そう … 」

それより今は朝食の仕度に花子は追われていた。

七歳になった美里に食卓の準備をするように言いつけた時だった。

ラジオから聞きなれないチャイムが流れてきた。

「何のチャイムかしら?」

* * * * * * * * * *

「臨時ニュースを申し上げます、臨時ニュースを申し上げます」

チャイムに続き、有馬のアナウンスがはじまった。

「大本営、陸海軍部、12月8日、午前6時発表。

帝国陸海軍は、本8日未明、西太平洋に於いて、アメリカ、イギリス軍と戦闘状態に入れり … 」


< とうとう、太平洋戦争がはじまりました。

… ごきげんよう、さようなら >

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